Apple WatchでPCR検査より1週間早く新型コロナの陽性診断予測可能、マウントサイナイ医科大学発表

マウントサイナイ医科大学の研究者によると、Apple Watchをはじめとしたウェアラブルハードウェアにより、現行のPCR検査よりも最大1週間早く新型コロナウイルス(COVID-19)の陽性診断を効果的に予測できることが、「Journal of Medical Internet Research」に査読済み論文として発表された。

Warrior Watch Study 」という調査では、Apple WatchとiPhoneのアプリを使いマウントサイナイ医科大学のスタッフが参加した。参加者はアプリを使用して健康データのモニタリングと収集を行い、新型コロナウイルスの潜在的な症状やストレスを含む、その他の要因について直接的なフィードバックを1日ごとに記入し提供するよう求められた。

研究期間中、研究チームは「数百人の医療従事者」の参加を募り、2020年4月から9月までの数カ月間に渡ってデータを集めた。この研究の著者らが観察していた主要な生体信号は心拍変動(HRV)で、人の神経系への負担を示す重要な指標となる。この情報が新型コロナウイルスに関連して報告された症状に関する情報(発熱、疼痛、空咳、胃腸の問題、味覚および嗅覚の消失など)と組み合わせられた。

Warrior Watch Studyでは検査の確定診断が出る1週間前までに感染症を予測できただけでなく、診断後すぐに参加者のHRVパターンが正常化し、陽性検査から約1~2週間後には正常に戻っていたことも明らかになった。

この研究の実際の医療現場への影響について、この研究の著者らは結果を予測し、リスクのある他の人々から個人を分離するのに役立つと述べている。最も重要なことは、これにより遠隔で行う手段が提供されることで、介護者は身体検査やPCR検査を行うことなく新型コロナウイルスの発症を予測または検出できるようになり、発症が疑われるリスクの高い状況下において予防措置を講じるのに役立ち、感染力が強くなる前に伝播を予防できる可能性がある。

この研究は現在進行中で、新型コロナウイルスがケアワーカーの健康に与えるその他の影響について、睡眠や身体活動といった要因が疾病とどのように関連しているのかを含めて、Apple Watchのようなウェアラブルデバイスとその搭載センサーが他に何を伝えることができるかを検討するために拡大していく予定だ。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

自分でも何を求めているかわからない従業員のメンタルヘルスケアソリューションを提供するmoka.care

moka.careは、あなたの心理的な幸福度を向上させるための手助けとなるいくつかのサービスを構築しているフランスのスタートアップだ。同社はそのソリューションを企業に直接販売している。契約した企業は自社の従業員にmoka.careへのアクセスを提供することができる。

moka.careは資金調達ラウンドで、元AlvenのパートナーであるJeremy Uzan(ジェレミー・ウザン)氏とRaffi Kamber(ラフィ・カンバー)氏が設立したVC会社であるSingularから250万ユーロ(約3億2000万円)を調達した。この日の調達ラウンドには、多くのエンジェル投資家が参加しており、Algoliaの共同創立者でCEOのNicolas Dessaigne(ニコラス・デサイン)氏、Made. comとTypologyを起ち上げたNing Li(ニン・リー)氏、DataikuのCEOであるFlorian Douetteau(フロリアン・ドゥエトー)氏、 LeetchiとMANGOPAY創設者のCéline Lazorthes(セリーヌ・ラゾルテス)氏、OpenClassroomsのPierre Dubuc(ピエール・デュバック)氏、LeCabのMarc-Antoine de Longevialle(マーク・アントワン・ド・ロンジェヴィアル)氏、JobTeaserのAdrien Ledoux(
アドリアン・ルドゥー)氏、Station FのRoxanne Varza(ロクサーン・バルザ)氏、CASTALIEのThibault Lamarque(ティボー・ラマルク)氏、IndyのCôme Fouques(コモ・フークス)氏が名を連ねる。

メンタルヘルスに関して、企業は十分な対応をしていないとMoka.careは考えている。多くの企業では、従業員は会社から電話番号を教えられ、そこに電話すればメンタルサポートを受けることができると言われるが、実際にそのようなヘルプラインに電話をかけている従業員はほとんどいない。

だからこそ、このスタートアップはまったく違うアプローチを取っている。その最も重要な原則は、人が求めるものはさまざまだということ。そして気分が落ち込んでいるとき、何を求めているのかは、必ずしも自分でわかっていないということだ。moka.careに連絡すると、あなたが何を求めるのかを理解するために、同社は30分ほど話をする。

その後は、3つの主なオプションが用意される。1つ目は、moka.careが心理学者や認定を受けたアドバイザー、免許を持つセラピストなどの専門家を紹介すること。2つ目は、特定のトピックを中心としたグループセッションの開催。たとえばリモートワーク、ワークライフバランス、自分に対する自信などだ。そして3つ目として、moka.careではこれらのトピックに関するコンテンツも提供している。これらのコンテンツにアクセスして、自分のことをもっと知ることができる。

このようなきめ細かなアプローチにより、人々が手遅れになる前にメンタルヘルスの問題に取り組めることをmoka.careは望んでいる。従業員がすでに過剰なストレスや疲労、燃え尽き症候群などで苦むようになってから、セラピストを紹介したくはないだろう。

従業員は最初のセッションで料金を支払う必要はない。企業が契約するmoka.careのプランに含まれているからだ。このことによって、従業員は気軽にmoka.careのサービスを受けてみることができるはずだ。もちろん、その後も予約を取りたいと思えば、料金を支払わなくてはならなくなる。

雇用主にとっても、moka.careは新規参入時のハードルを下げようとしている。クライアントはいくつかの使用率に基づいて、従業員数と利用期間に応じたサブスクリプションプランに同意することになる。もし、従業員がそれ以上にmoka.careを利用しても、雇用主は追加金を支払う必要はない。もし、従業員がまったくmoka.careを利用しなかったら、同社は余剰金を企業に返還する。

現在は30社ほどの企業がmoka.careと契約しているが、これは合わせて数千人の従業員がアカウントを作成してこのサービスにアクセスする可能性があるということだ。moka.careは現在、約50人の開業医と提携を結んでいる。

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タグ:moka.careメンタルヘルスフランス資金調達

画像クレジット:moka.care

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

高齢者向けフィットネスプログラムのBoldがシードラウンドで約7.4億円を調達

コロナ禍でバーチャル健康&ウェルネスプラットフォームの人気が高まる中、ある新しいスタートアップが高齢者に特化した取り組みを始めている。デジタル健康&ウェルネスサービスのBoldは、加齢にともなう健康の問題を防ぐために、パーソナライズされたエクササイズプログラムを無料で提供する計画だ。Boldを創業したのはAmanda Rees(アマンダ・リース)氏とHari Arul(ハリ・アルル)氏で、同社は2月第1週にシリコンバレーを拠点とするAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のJulie Yoo(ジュリー・ユー)氏が主導するシードラウンドで700万ドル(約7億4000万円)を調達した。

リー氏はインタビューで、自分の祖母が転倒したりしないように介助していたときにBoldを思いついたと語った。「転倒などの問題が起きるのをただ待つのではなく、長く健康でいるにはどうすればいいかをずっと考えていました」という同氏は、ダンスとヨガを学んだ自身の経験を生かしてBoldを始め、祖母がこの先転倒することのないようバランスを維持する訓練をサポートした。「高齢者向けに間口を広げ、利用しやすいソリューションを構築しようと情熱を注いできました」。

使い方はわかりやすい。ユーザーはウェブベースのプラットフォームでフィットネスに関する簡単な情報を入力し、目標と現在の状況を伝える。その情報をもとにBoldはプログラムをパーソナライズする。プログラムは週に1回座ったままでできる太極拳のクラスから、毎週数回実施する有酸素運動と筋トレのクラスまで幅広い。リー氏は「メンバーの現在の状況にぴったり合うクラスから始め、そこからこのプログラムを通じて短期間で効果が出るエクササイズに進んでいきます」と説明する。

現在、高齢者の医療費の増加が懸念され、現在と将来の両方の世代のために医療費をいかに削減するかが注目されている。転倒は医学的には必ずしも複雑な事故ではないが、骨折などの重傷につながる危険がある。Boldの転倒予防アプローチは、転倒を検知したときに救急に発信するネックレスやブレスレット型のモニタ機器よりも積極的なソリューションだ。バーチャルプログラムを提供すれば、リスクのある高齢者がジムで新型コロナウイルス(COVID-19)感染の危険にさらされることなくエクササイズをすることができる。

このようなエクササイズが有効だという研究結果がある。単純で強度の低いエクササイズであっても、バランスと筋力が強化され転倒を減らすという。転倒は現在、高齢者のケガと、ケガによる死亡の原因の第1位だ。

ケガを減らせば治療の機会が減り、病院や健康保険会社にとってもコスト削減につながるだろう。そのためBoldはシード資金に加え、メディケアアドバンテージ(訳者注:米連邦政府が運営する高齢者および障がい者のための健康保険がメディケアで、病院保険と医療保険、処方薬プランなどを含む「オールインワン」のプランがメディケアアドバンテージ)を扱う企業やリスク対策企業との連携を開始し、Boldのエクササイズプロブラムをユーザーが無料で利用できるようにする計画を立てている。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Bold資金調達エクササイズ高齢者

画像クレジット:Bold

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(文:Sophie Burkholder、翻訳:Kaori Koyama)

グーグルがスマホのカメラだけで心拍数と呼吸数を測定できる機能を3月より順次提供開始

Google(グーグル)は、ユーザーがスマートフォンにすでに搭載されているカメラのみを使用して、重要な健康の数値を測定できる機能を導入する。通常は専用のウェアラブルデバイスを使わないと測定できない人々の健康とフィットネスに関わる機能を、これらの機器を持たない人でも利用できるようにするのが狙いだ。2021年3月から導入されるこの機能は、最初はGoogleのPixel(ピクセル)スマートフォン専用だが、将来的には他のAndroid(アンドロイド)スマートフォンにも提供を拡大する計画だという。ユーザーはスマートフォンに搭載されているカメラを使うだけで、心拍数と呼吸数を測定できるようになる。

通常これらの数値を測定するためには、専用のハードウェアが必要だ。たとえばApple Watch(アップルウォッチ)や、Googleが買収したFitbitが製造しているフィットネストラッカーに搭載されている、赤や緑の光を使った心拍数モニターなどだ。Googleのハードウェアとソフトウェアのチームは、健康テクノロジーディレクターのShwetak Patel(シュウェタク・パテル)氏が率いるGoogle Health(グーグルヘルス)部門とともに、コンピュータビジョンを利用することで、スマートフォンのカメラだけでこれらの測定を可能にする方法の開発に成功した。同社によれば、その測定結果は臨床グレードの測定機器に匹敵するという(Googleはその測定結果を証明するための調査を行っている。学術誌を介して査読を求めているこの論文は、プレプリントとして公開されている)。

呼吸数については、「オプティカルフロー」と呼ばれる技術を利用しており、呼吸時に胸の動きをモニターして、そこから呼吸数を割り出す。健康状態の良い標準的な人と既存の呼吸器疾患を持つ人の両方を対象とした臨床検証研究では、Googleの測定したデータは、対象者全員の平均で、誤差が1分間に1呼吸以内という正確さを示したという。

心拍数については、Googleはまず、カメラを使ってユーザーの指先の「微妙な色の変化」を読み取り、そこから酸素を含んだ血液が心臓から体の他の部分に流れるタイミングを示す指標を得ている。同社のデータ検証(これも外部レビューの対象となっている)によると、様々な色の皮膚を持つ人々を対象に行った試験で、誤差の平均が2%以内に留まる精度を示したという。Googleは同じ技術が人々の顔の色の変化でも機能するように取り組んでいるが、こちらはまだ探索段階だという。

Googleは、これらの測定機能を3月中に、ユーザーがGoogle Fit(グーグルフィット)アプリを介して利用できるようにする予定だという。最初はGoogle自社製のスマートフォンであるPixelシリーズのデバイスのみで利用可能だが、その後「数カ月以内に」Android 6以降のOSを搭載する他社のスマートフォンにも適応機種を拡大する計画だと、同社は述べている。

グーグルがスマホのカメラで心拍と呼吸数を認識する新機能発表、Pixelから提供スタート

「チームは、日常的なスマートデバイスの可能性を解き放つ方法に取り組んできました」と、パテル氏はこの新機能に関するプレスブリーフィングで述べている。「これには、家庭内のスマートデバイスや、携帯電話、そしてそれらのデバイス内でますますユビキタスになり始めているセンサー類をどのように活用し、健康とウェルネスをサポートするか、ということが含まれています」。

ワシントン大学のコンピュータサイエンス教授であり、デジタルヘルスに関する研究でACM Prize in Computing Award(コンピューテングの技術開発に貢献した個人を称えるAMC賞)を受賞したパテル氏は、ユビキタスな消費者向けデバイスに搭載されている強力なセンサーが利用できるようになったことと、AIの進歩が相まって、日々の健康モニタリングがこれまで以上に身近なものになり得る、と語っている。

「ヘルスケアは今後、本当に重要な分野になると思います。病院の4つの壁で囲まれた中だけに留まらず、日常的な生活の中でも、自分の健康状態を測定し、そのフィードバックを得られるようになることは大事なことです」と、パテル氏はいう。

Googleがこれらの機能について、人々が自分自身で健康状態を監視するための使用を意図したものであると明示していることは注目に値する。つまりそれは診断や医療ツールとしての使用を意図したものではないということだ。それはこの種の機能にとってごく普通のことである。一般消費者の使用を意図したツールに、米国食品医薬品局による医療グレードのデバイス認証を取得することによる責務を引き受けたいと考えている企業は多くないからだ。そのため、Google Fitはこれらの測定結果に基づくガイダンスやアドバイスを一切提供していない。その代わりに、測定結果が医療用に意図されていないという一般的な免責事項を提示し、さらにユーザーがこれらの数値を確認した方がよい理由のいくつかについて、非常に高レベルの説明を提供している。

市場に出回っているウェルネスやヘルストラッキング専用の製品の多くは、たとえばOura Ring(オーラリング)のように、測定値に基づいてより多くのガイダンスと実用的なインサイトを提供している。Googleはこれらの機能について、情報の利用を完全にユーザーの手に委ねることにし、そこまで関与するつもりはないようだ。とはいえ、この測定値は、医師と共有するべき貴重なリソースになる可能性がある。特に潜在的な健康問題について懸念している場合は、従来の方法よりも便利で継続的に使用しやすい健康モニタリングの一手段となるだろう。

パテル氏は、センサーを組み合わせることで既存のデバイスのトラッキング機能をどのように強化できるか、その可能性を探ることにGoogleが興味を持っていると述べている。また、iPhoneにこの機能を提供する可能性があるかという質問には、今のところAndroidに注力しているが、最終的な目標は、確かに「できるだけ多くの人々」が利用できるようにすることだと答えた。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

在宅フィットネスのPelotonが配達短縮のためにロジスティックへ約105億円投資

これは長い目で見ればおそらく「いい問題」の範疇に入る。記録的な業績となった四半期の後に、Peloton(ペロトン)は「プロダクト配達にかかる受け入れ難い待ち時間」のために、航空便と船便による配達に1億ドル(約105億円)超を投資すると発表した。

フィットネス企業であるPelotonは、パンデミックの期間にかなりの関心を引き寄せたテック企業の1社だ。実際、このところVCは自らの関心を満たすスピードで。在宅フィットネスソリューションに資金を注入することはできないようだ。LuluLemon(ルルレモン)による5億ドル(約527億円)でのMirror(ミラー)買収から、Apple(アップル)やSamsung(サムスン)のプラットフォームに至るまで、2020年は在宅ワークアウトソリューションにとって当たり年だった。

Pelotonは直近の四半期に10億6000万ドル(約1118億円)を売り上げ、前年同期比200%を上回る成長だった。この業績はウォール・ストリートの予想を上回った。次の四半期も絶好調となることが予想されており、減速する兆しはない。

「今回の投資が短期的な収益を押し下げる一方で、会員のエクスペリエンスの改善は当社の最優先事項です」と同社が認めたことで、株価は少し下げた。供給のボトルネック解消に向けた今回の巨額の支出は明らかに長期的な意味合いを持つ。

もちろん同社の収益がパンデミック後に安定するかは今後、判明する。新型コロナのワクチンによってあちこちでジムが再び利用できるようになれば、Pelotonや他のブランドはやや減速するのではと筆者は予想する。しかしながら、たとえ新型コロナが過去のものになっても、リモートワークのように在宅ワークアウトも根づく側面があるかもしれない。

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タグ:Peloton投資

画像クレジット:Ezra Shaw

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルがスマホのカメラで心拍と呼吸数を認識する新機能発表、Pixelから提供スタート

GoogleのフィットネスアプリGoogle Fitに、スマホカメラを使った呼吸数・心拍数計測機能が加わります。

呼吸数の計測は、スタンドなどに立てたスマホのカメラで胸から上をとらえることで、服ごしの体の動きを画像認識で推測する仕組み。

Google Fitは従来から、スマホを持って歩いた際の位置情報や動きを使い、ウォーキング等の移動距離と歩数を推定して、運動量や消費カロリーの目安として記録する機能を備えています。

また Wear OSスマートウォッチやスポーツ・エクササイズ用ウェアラブルデバイスとの連携で心拍数などを記録することもできました。今回の新機能では、スマホのカメラだけで呼吸数や心拍を計測できるようになります。

心拍数のほうはスマホの背面カメラレンズに指先を載せて、血行による僅かな色の変化を捉える仕組み。こちらは古くから実用されている原理です。

(指先でなく顔などを撮影して心拍数を推定する技術は以前からあり、マイクロソフトも Kinect V2センサで商用化していましたが、今回のGoogle Fit 新機能では精度のためか周囲環境の影響を考慮したのか、呼吸と同時には取得できないようです)。

Google Fitのスマホカメラ呼吸数・心拍数計測機能は、来月からまずは Pixel スマートフォン向けに提供します。将来的には他のAndroid端末にも拡大する計画。

グーグルがスマホのカメラで心拍と呼吸数を認識する新機能発表、Pixelから提供スタート

心拍数の計測はスマートウォッチやフィットネストラッカーの多くが備えていますが、呼吸数はバンドを胸や腹部に装着したり、心拍と同じセンサで周期的な変動から推測したり、医学的に正確な計測にはチューブを口に加えたり、あるいは医療用のバイタルセンサやベビーモニターとして設置する専用機器であったりとさまざまな方法はあるものの、手軽な計測機器は普及していません。

スマホカメラだけで認識できるのは手軽で、機械学習や画像処理の勝利ともいえる一方、比較的狭い画角にちゃんと上半身を収め続ける必要があることや、画像処理で胸を動きを推定する原理から、運動をしながら測る用途には不向きです。

カメラの画角に依存しない心拍数・呼吸数モニタリング技術としては、ウルトラワイドバンドを含む電波で動きを捉える技術も研究から応用へと進んでいますが、いまのところ心拍・呼吸モニタ兼用WiFiルータは売っていません(広範囲の人感センサを兼ねるWiFiルータはLinksysが出しています)。

Googleも電波を使った人体の動き認識を研究しており、Pixel 4に搭載したSoliレーダーを今度は据え置きのNest Hubスマートディスプレイに搭載して、ジェスチャ認識や睡眠トラッキングに応用するうわさもあります。

Googleの新Nest Hubスマートディスプレイは Soliレーダー搭載、睡眠トラッキングに活用?

フィットネス用途はもちろん、睡眠時無呼吸やベビーモニター、健康管理でも呼吸数や動きの認識は重要であることを考えると、テレビやスマートスピーカー、ルーターが人間の動きやバイタルを常時監視するセンサを兼ねる未来は意外と早く来そうです。医療や介護的にはすばらしい技術であると同時に、以前なら大往生とみなされていた就寝中の急変による死が可視化されて「救急が間に合わなかった結果」になるかもしれませんが。

Google は新型コロナウイルス感染症への対応や、AI技術・モバイル技術が健康・医療に与える影響について研究者・技術者・臨床家が語るオンラインイベントThe Check Upも開催しています。

WiFi電波で脈拍・呼吸を計る「バイタルラジオ」、MITが開発。精度99% (2015年)

顔の動画像から脈拍を計測する技術、富士通研究所が開発 (2013年)

Xbox Oneの新Kinectは大幅進化、表情や心拍も認識。6人同時に全身キャプチャ(2013年)

Engadget日本版より転載)

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遺伝子検査の23andMeがVirgin GroupのSPACとの合併を通じて公開へ

遺伝子検査とゲノム研究の23andMeは、Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏と同氏の会社Virgin Group(ヴァージン・グループ)のビークルである特別買収目的会社(SPAC)のVG Acquisition Corpとの合併を通じて上場する。この取引で23andMeはクローズ時にキャッシュ約9億8400万ドル(約1040億円)を手にすると予想される。同社はこの資金をプロダクト開発、人材採用、 他の成長戦略に使う。そして同社の評価額は約35億ドル(約3700億円)になり、この合併についての話し合いを詳細に報じた先の記事にあった額に近いものになる。

CEOのAnne Wojcicki(アン・ウォシッキー)氏、Linda Avey(リンダ・ エイヴィ)氏、Paul Cusenza(ポール・カセンザ)氏が2006年に創業した23andMeは、2020年12月に発表した8500万ドル(約90億円)のシリーズFラウンドを含め、これまでに9億ドル(約950億円)を調達した。同社は個人消費者向けの在宅遺伝子テストを最初に開始した企業の1社で、個人が自身のDNAについて、そして潜在的な健康問題や先祖などについて情報を得るのに使えるキットを提供している。

直近では、同社は膨大なゲノムデータをオプトイン式の遺伝子研究リソースに保存している。将来の治療の発見に使うためだ。同社はまた、研究と事業の目的でサードパーティとともに収集するデータの統合と匿名化された共有を通じて収益を上げている。

取引には、ウォシッキー氏とリチャード・ブランソン氏の会社の合併に付随するPIPEへの各2500万ドル(約26億円)の投資も含まれる。合併は2021年第2四半期にクローズする予定で、NYSEにティッカーシンボル「ME」で上場する。

このところのSPAC旋風は、多くのスタートアップ、そしてエグジットイベントがないためにテクニカル的にまだ非公開企業だが、手元資金を確保するのにプライベート投資家に頼る要素を持っている23andMeのような非公開企業がエグジットする手法となっている。

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画像クレジット:ERIC BARADAT/AFP / Getty Images

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

精神科医によるオンラインカウンセリング「マイシェルパ」が資金調達とサービス開始発表

精神科医によるオンラインカウンセリング「マイシェルパ」が資金調達とサービス開始発表

個人・法人向けにメンタルヘルスサービスを提供する313は2月4日、シードラウンドにおいて資金調達を実施したと発表した。金額は非公開。引受先はW venturesおよびEast Venturesなど。また、オンラインカウンセリングサービス「マイシェルパ」の提供を開始した。

マイシェルパは、精神医学および心理学の膨大な知見を基盤とし、確かな経験を持つ医師の監督の下、心の悩みを持つすべての者に信頼できるカウンセリングを届けるプラットフォーム。

マイシェルパを提供する313は医療博士・精神科専門医が運営しており、実際のカウンセリングも臨床心理士や公認心理師などプロフェッショナルが対応。また予約からカウンセリングまですべてオンラインで完結するため、好きな時に好きな場所でカウンセリングを受けられる。カウンセリング1回(50分)あたりの料金は、税込み6600円。追加で費用が発生することはない。

精神科医によるオンラインカウンセリング「マイシェルパ」が資金調達とサービス開始発表

カウンセリング予約の際は、まず予約サイトで臨床心理士や公認心理師の資格を持つカウンセラーを選択する。担当者を選ばず、おまかせ予約とすることも可能。最後に、カウンセリング希望日の2日前までの日付で、スケジュールを選択する。

精神科医によるオンラインカウンセリング「マイシェルパ」が資金調達とサービス開始発表

313によると、有病率から、何らかの精神疾患ないしメンタルヘルス不調を抱えている潜在的な人数を試算すると、日本では1386万人に上るという(「アメリカ精神医学界データ」から同社試算)。しかし、実際の通院者数は約350万人にとどまっており、その背景としては、既存メンタルクリニックの予約が常に困難なことや、メンタルクリニックを受診することへの心理的のハードルが高さが考えられるとしている。

また、日本の寿命・健康ロスの10%は、精神疾患(認知症を除く)によるものとされ、10代〜30代で見ると自殺が死因のトップとなっており、社会的な損失が大きいことが問題視されている(厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」:第7表 死亡数・死亡率(人口10万人対)、性・年齢(5歳階級)・死因順位別 )。

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タグ:医療(用語)自殺予防 / 自殺防止資金調達(用語)メンタルヘルス(用語)日本(国・地域)

医療機関向けAIチャットボットのBot MDがアジア市場拡大のため5.3億円を調達

医療従事者は時間と闘っている。新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の状況ではさらに厳しい。シンガポールに拠点を置くBot MDは、時間の節約に役立つAIベースのチャットボットを提供している。このチャットボットで、医師は病院関係者に電話をかけたりイントラネットにアクセスしたりすることなく、スマートフォンで重要な情報を調べられるようになる。米国時間2月2日、Bot MDはMonk’s Hill Ventureが主導するシリーズAで500万ドル(約5億2500万円)を調達したと発表した。

SeaX、XA Network、SG Innovateのほか、エンジェル投資家のYoh-Chie Lu(ヨーチー・ルー)氏、Jean-Luc Butel(ジャン=リュック・ブテル)氏、Steve Blank(スティーブ・ブランク)氏も支援した。Bot MDはY Combinatorの2018年夏学期に参加していた。

調達した資金はインドネシア、フィリピン、マレーシア、インドネシアなどアジア太平洋地域での拡大と、コロナ禍における病院や医療機関からの要望に応える機能の追加に使われる。Bot MDのAIアシスタントは現在、英語に対応しているが、2021年後半にはインドネシア語とスペイン語に対応する予定だ。現在はChangi General Hospital、National University Health System、National University Cancer Institute of Singapore、Tan Tock Seng Hospital、Singapore General Hospital、Parkway Radiology、National Kidney Transplant Instituteといった医療機関でおよそ1万3000人の医師がBot MDを利用している。

共同創業者でCEOのDorothea Koh(ドロシア・コー)氏はTechCrunchに対し、Bot MDは一般に複数のシステムに保管されている院内の情報を統合しアクセスしやすくすると説明した。

画像クレジット:Bot MD

Bot MDがなければ、医師は病院関係者に電話をかけてスタッフの状況を聞き、連絡先を教えてもらう必要があるかもしれない。薬の情報が必要なら今度は薬局に電話をかけることになる。最新のガイドラインや臨床のプロトコルを確認する必要がある場合には、院内のイントラネットに接続されているコンピュータを見つけなくてはならないことが多い。

コー氏は「Bot MDの役割は、医師が必要とするコンテンツを365日24時間検索できる単一のインターフェイスに統合することです」という。

たとえばこのコロナ禍で、医療従事者がチャットボットに「体温を記録」と入力すると、その人の情報があらかじめ入力されたフォームが表示される新機能がBot MDに導入された。多くの場合、医療従事者は自分の体温を記録するために1日に2回、所属組織のイントラネットにアクセスしていたが、コー氏によればBot MDでフォームを使えるようになりコンプライアンスが大幅に強化されたという。

Bot MDの導入にかかる時間は統合する情報システムやコンテンツ量によって異なるが、独自の自然言語処理チャットエンジンによりAIのトレーニングは比較的短時間でできるとコー氏は説明する。たとえば最近Bot MDを導入したChangi General Hospitalでは、10日もかからずに利用を開始した。

Bot MDは電子医療記録(EMR)、請求とスケジューリングの統合、アラート、慢性疾患の追跡などの新しい医用アプリをプラットフォームに追加する計画だ。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

慶應大病院が全国のApple Watchユーザーを対象とする睡眠中・安静時の脈拍に関する臨床研究開始

慶應義塾大学病院が全国のApple Watchユーザー対象とする臨床研究開始、App Storeでアプリ配信

慶應義塾大学病院は2月1日、全国を対象とするApple Watchヘルスケアビッグデータの構築と医学的な網羅的解析を目的に、Apple Watchを利用した臨床研究「Apple Watch Heart Study」の開始を発表した。研究責任者は副病院長陣崎雅弘氏、実務責任者は循環器内科特任講師木村雄弘氏。

同院独自の研究用iPhoneアプリケーション「Heart Study AW」は、App Store(日本)よりダウンロード可能。同臨床研究の対象者は以下の通り。また参加同意後、いつでも自身の意思で同意を撤回し、参加を取りやめられる。

  • 日本語を理解できる20歳以上の日本国民の者
  • iPhone(iOS 14.0以降)、Apple Watch(watchOS 7.0以降)の利用者
  • 上記を利用し、App Store(日本)から研究アプリケーション「Heart Study AW」をダウンロードできる者
  • 同研究の参加に同意できる者
  • Apple Watchを睡眠中7日間装着し質問票に回答できる者

慶應義塾大学病院は、今回の臨床研究について類を見ない試みとしており、今後家庭でのデジタルヘルスケアと適切な医療との連携に貢献することが期待されるという。なお、本臨床研究は慶應義塾大学病院が行うもので、Appleが共同研究などで関与するものではない。

同院は、日常生活で着用し、血中酸素ウェルネスや脈拍数などの生体情報を自動的に計測・記録できるApple Watchが、心電図アプリケーションで心電図も記録できるようになり、家庭で可能な予防医療の幅が広がりつつあると指摘。同種の機器が取得するデジタルヘルスケア情報を医療に橋渡しするには、これら情報を集約したヘルスケアビッグデータベースを構築・解析して実際の医療に応用できる情報を抽出することが必要とされるという。

そこで同臨床研究では、Apple Watchの心電図アプリケーションで測定する心電図や脈拍などの様々なヘルスケアデータと、同院独自の研究用iPhoneアプリケーション「Heart Study AW」(App Store)で収集する睡眠・飲酒・ストレスなどに関する調査データを解析することで、睡眠中・安静時の脈拍と生活習慣との関連について、分析を行う。

また、アプリケーション経由でなされる「脈がとぶ」「脈が速い」などの動悸の申告を元に、心電図やヘルスケアデータの変化を解析するという。

心電図は心臓に異常がある時に記録することが重要なものの、病院での限られた検査時間中に症状や異常が現れない場合、病気を検出することが困難という。同研究により、家庭でApple Watchのような機器を使用し的確に心臓の異常を記録できるタイミングはどのような場合であるのかが明らかになり、病気の早期発見につながることが期待されるとしている。

同院に通院する患者対象の研究と、全国のApple Watchユーザー対象の研究の2種類で構成

同研究は、対象者の異なるふたつの研究から構成。そのうちひとつは、「Apple Watch Heart Study慶應義塾版」を利用したもの。同院に通院する心房細動患者の協力のもと、臨床現場で使用している心電図検査(2週間。Holter心電図、携帯型心電図)と、Apple Watchおよび心電図アプリケーションから得られる脈拍データと心電図との比較を行う。

また、ヘルスケアデータを睡眠・飲酒・ストレスとの関係に関して人工知能で解析し、どのような時に不整脈になりやすいかを推定するアルゴリズムを構築する。

全国のApple Watchユーザーを対象とした「Apple Watch Heart Study」では、睡眠中および可能な範囲での日中安静時のApple Watch装着と、動悸などの症状の記録の協力(7日間)を依頼。

慶應義塾大学病院が全国のApple Watchユーザー対象とする臨床研究開始、App Storeでアプリ配信

Apple Watchで収集するデータを活用し、日本におけるヘルスケアビッグデータの構築と解析を行うとともに、慶應義塾版で開発するアルゴリズムを一般国民のデータに対して適用。生活スタイルや申告された症状のデータに焦点を置いた解析を行うことで、適切な精度となるよう評価・改修を行う。

収集したデータは、学会や論文での発表を予定。取りまとめられた情報を医学雑誌、データベース(UMIN-CTR)上などに公表する場合には、統計的な処理が行われ、個人の情報は一切公表しないとしている。

なお同研究は、慶應義塾大学病院が内閣府より受託している戦略的イノベーション創造プログラム「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」研究開発事業(研究責任者:病院長 北川雄光)として実施。Apple提供の臨床研究用フレームワークを利用したアプリ開発の技術的サポートをAppleから受けている。また、ジョンソン・エンド・ジョンソングループBiosense Webster, Inc.のInvestigator-Initiated Study Programからの資金提供および指定寄附の支援によって実施される。

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陽子線がん治療装置の小型化・低価格化開発を手がけるビードットメディカルが7億円を調達

陽子線がん治療装置の小型化・低価格化開発を手がけるビードットメディカルが7億円を調達

小型陽子線がん治療装置の開発を手がけるビードットメディカルは2月2日、シリーズAの第三者割当増資により、2021年1月末時点で総額7億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、メディアーク、ニチコン、Cosylab d.d.(スロベニア)、JA三井リース。

調達した資金により、現在開発を進めている、巨大な回転機構が不要となる「小型陽子線がん治療装置」の開発を加速させるとともに、装置の製品化を進め、企業価値のさらなる向上に努めるとしている。

2017年3月設立のビードットメディカルは、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所(放医研)認定のスタートアップ企業。放医研で培った高度な技術と経験を活かし、「小型陽子線がん治療装置」を開発している。

陽子線治療は体内深部にある腫瘍をピンポイントで正確に照射するため、周囲の正常な組織や臓器へのダメージを低く抑えられるという。しかし、装置が巨大で高額なことが長年普及の妨げになっており、一部の人しか受けられていないのが現状となっているそうだ。

そこで同社は、従来装置から大幅な小型・低価格化を実現し、既存のX線治療室のサイズに合わせて、装置の導入・置き換えを可能にするとしている。陽子線治療の普及に向け、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)および国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの支援も得ながら、装置開発を進めている。

同社の開発する小型陽子線治療装置は、巨大な回転機構を必要とせずに陽子線ビームを多方向から照射できる非回転型ガントリーを搭載。陽子線をどの方向から電磁石に入射させても、1点に収束するように磁場形状を最適化することで、電磁石を回転させることなく、陽子線を任意の角度から照射することを可能にする。

また、肺・肝臓・膵臓など呼吸にともない動く臓器への照射についても、X線透視を使った呼吸同期照射法と高速スキャニング法の組合せによって対応する。

同社は、これら陽子線治療技術の向上と、装置の小型化を実現する画期的な技術により、陽子線治療の普及を促進していくとしている。

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「ブレインケア」という新分野に向けてサプリメントを販売するHeightsが、2.4億円の資金を調達

新しいウェルネス系スタートアップ企業のHeights(ハイツ)は先週、「ブレインケア」というカテゴリーに焦点を当て、正式にローンチすることになった。このスタートアップは、科学的なデータに基づくという「脳に栄養を与える、超高品質で持続可能な植物ベースのサプリメント」を販売する予定だ。

同社はクラウドファンディングのSeedrs(シーダーズ)を通じて170万ポンド(約2億4000万円)のシード・ファンディング・ラウンドを調達しており、これには機関投資家のForward Partners(フォワードパートナーズ)も参加している。エンジェル投資家には、New Look(ニュールック)の創設者Tom Singh(トム・シン)氏、WeTransfer(ウィートランスファー)のDamian Bradfield(ダミアン・ブラッドフィールド)氏、Shazam(ジャザム)のDhiraj Mukherjee(ディラジ・ムカージー)氏、Planet Organic(プラネットオーガニック)のRenee Elliot(リニー・エリオット)氏、イングランド代表のマンチェスター・ユナイテッド所属プロサッカー選手で投資家でもあるChris Smalling(クリス・スモーリング)氏などが名を連ねている。

この資金は、プロバイオティクス(有用菌)の一種で認知と精神的な健康を目的としたサイコバイオティクス(腸内細菌)サプリメントを間もなく発売するなど、顧客拡大と新製品開発のために使用される予定だ。

Heightsの顧客は最初に「脳の健康」の調査を受け、その後、1カ月、3カ月、または1年間の定期購入に申し込むことになる。

これは1日に2つのカプセルを摂取するだけで、定期的にビタミンを摂取する煩わしさを大幅に減少させることができる。

製品は郵便受けに入る形状の変わったボトルに入っており、これは有名なプロダクトデザインエージェンシーのPentagram(ペンタグラム)がデザインしたものだ。サブスクリプションに含まれているコンテンツとコーチングプログラムが顧客を支援し、1カ月後にもう一度、脳の健康調査が行われる。Heightsは使用者の「93%」が1カ月以内に脳の健康スコアを改善したと主張している。

「デザイナービタミン」と表現されることもあるこの新しい市場にいるのはHeightsだけではない。既にHims / Hers(ヒムズ/ハーズ)、Motion(モーション)、Vitabiotics(ビタバイオティックス)、Bulletproof(ブレットプルーフ)などの企業が参入している。

これらの企業は一般的に「ヌートロピックス(向知性)」と呼ばれるカテゴリーに分類される。これは健康な人の認知機能、記憶力、創造性、モチベーションを向上させるように設計されたビタミンやミネラルなどのことだが、市場は小さくない。「セルフケア」、「ヘルスケア」、「自己開発」といった市場は、1兆ドル(約104兆7000億円)以上の価値があり、サプリメントだけで少なくとも1000億ドル(約10兆4700億円)以上の価値がある。

Heights創業者のダン・マレー=サーター氏とジョエル・フリーマン氏、アドバイザーのタラ・スワート博士

しかし、Heightsは前述のプレイヤー達とは違うことをやろうとしていると、共同創設者のDan Murray-Serter(ダン・マレー=サーター)氏は言う。

テキストベースのインタビューで、同氏は次のように語った。「ヌートロピックスと呼ばれるカテゴリーは、実際のところ応急治療に焦点を当てています。それが私たちが『ブレインケア』というカテゴリーの創出に取り組んでいる理由です。なぜなら、人生に「応急治療」なんてないからです。また、この用語とカテゴリーは、人々に「一攫千金」のような誤った希望を抱かせてしまいます。私たちはそれとは違うやり方、つまり科学的に研究された記事やジャーナルの参照から始めています」。

彼は、Heightsがスキンケアやヘアケアのブランドのような位置づけになるだろうと述べている。「人々は、毎日の習慣と実践が長期的な効果を作るものであり、一日だけの奇跡ではないと理解しているからです」。

マレー=サーター氏によれば、科学的には私たちの脳が活性化するために20の重要な栄養素が必要だという。これらは主にマルチビタミン、オメガ3、そして「ヌートロピックス」を組み合わせて購入することで得ることができる。Heightsは、それを体が吸収しやすくする特許を取得したカプセルに入れて、最も「生物学的に利用可能な形」で「最高品質の」成分を供給すると、同氏は語っている。

「ビタミン剤を飲む習慣が定着しない最も一般的な理由の1つは、ボトルが食器棚の中に入ってしまい、無視されてしまうことです。だから私たちは、品質と同時にデザインから始めました」と彼は言う。Heightsのビタミンは独自の、リサイクル可能なボトルに入っており、ユーザーがそれを送り返せば、Heightsもそれをリサイクルして使う。

以前、モバイルコマースのスタートアップ企業であるGrabble(グラブル)を設立したマレー=サーター氏は、慢性的な不安と6カ月間の不眠症に苦しんだ後、Heightsのアイディアを思い付いたという。この問題を解決したのは、通常1日に推奨される最低レベルのビタミンしか入っていない標準的なサプリメントではなく、高品質で高密度のビタミンとサプリメントだった。

共同設立者のJoel Freeman(ジョエル・フリーマン)氏と、認識能力の最適化をテーマにしたニュースレターを開始すると、2人は6万人の読者を獲得した(www.yourheights.com/sundays)。

そして、実際の製品を発売することを思い付いた。

現在、同社のポッドキャスト「Braincare(ブレインケア)」は、ダウンロード数が10万を超えており、重要なチームの一員として最高科学責任者のTara Swart(タラ・スワート)博士(写真)も加わった。

現在の2つの状況がHeightsにとって追い風となる可能性がある。まず第一に、この新型コロナウイルスが流行している時代、世界中の公衆衛生当局や政府は、体の免疫システムを高めるためにビタミンDを摂取することを患者に推奨している。Heightsのカプセル2個には、他の多くのサプリメントと同様、ビタミンD3の「栄養基準値」(旧称:推奨摂取量)の400%が含まれていることは注目に値する。理論的に、これは通常の錠剤の4錠分で接種できるが、Heightsが提供する顧客体験や追加で含まれている他のビタミンは、多くの人にアピールするだろう。2つめは、メンタルヘルスへの意識と良好なメンタルヘルスを維持することへの関心が高まっており、公の場で日常的に話題となっていることだ。Heightsはこれら2つの波に乗るための良い位置にいるように見える。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ローイングマシンにゲーム要素を取り入れた「Aviron」がホームフィットネスに参入

2020年の出来事から得た利益が、ホームフィットネスよりも多かったテック分野はあまりない。新型コロナウイルスが世界的に流行した中で、ジムが大きな問題エリアの1つであると指定されたことから、このカテゴリーへの関心は急速に高まった。突然、自宅でのワークアウトは単なる贅沢ではなくなった。

YCの支援を受けるAvironにとって、それは事業の方向転換するには理想的なタイミングだった。トロントを拠点とする同社は、B2B市場向けに、特にホテルやアパートのような人の出入りの多い環境で使用するために、ゲーム要素を採用したローイングマシンを提供していた。まだ従業員10人の小さな企業で、現在までに約75万ドル(約7900万円)を調達している。

突然、同社はPeloton(ペロトン)のような大手テック企業と市場シェアを競い合おうとしていることに気がついた。

もちろんこれまでのところ、Aviron社自身の売上高は、エクササイズバイクの大手よりもかなり地味なものだ。これまで同社は口コミでの販売に頼ってきたが、2020年7月に消費者向けに発売して以来、1000台近くを販売してきている。このローイングマシンは1台2299ドル(約24万円)で販売されているが、オンラインではそれ以下の価格で見つかる。

Aviron は、マシンを製造するためにODMと提携している。静音性に優れたナイロンベルトや100ポンド(約45kg)の自動電磁レジスタンスなど、いくつかの優れた機能をうたっているが、Aivronの主な差別化ポイントはソフトウェア、特に内蔵ディスプレイを介したオンラインゲーム体験だ。サブスクリプションは月額20~30ドル(約2095〜3140円)で、いつでも解約できることを明言している。

創業者兼CEOのAndy Hoang(アンディ・ホアン)氏はTechCrunchの取材に対し、「ローイングは体の筋肉の85%を使います。それにローイングはローインパクトです。多くのメリットがありますが、超退屈で超タフなエクササイズでもあります。それを高強度トレーニングと組み合わせると、誰もやりたがらないようなデスマシーンになってしまいます。それを楽しくエキサイティングにするのに、ビデオゲームを取り入れるより良い方法はあるでしょうか?」。

このシステムには、他の漕ぎ手とのリアルタイム競争を含む、6つの異なるワークアウトのカテゴリがある。初めての人が競技にいきなり飛び込んで怪我をしないように、入門用のワークアウトはいくつか用意されているが、全体的にはPelotonスタイルのクラスは避けている。

「我々のワークアウトは短いものです」とホアン氏はいう。「だいたい10分から15分程度です。それを1、2回やっただけで、最後にはキツくて死にそうになります。Pelotonの方は通常40分から60分で、もう少し強度は低く、抵抗も少ない。そして(向こうは)インストラクターが指導するクラスで、(うちのように)ゾンビには追われません」。

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(文:Brian Heater、翻訳:TechCrunch Japan)

書く瞑想アプリ「muute」がAppStoreのヘルスケア/フィットネス領域で1位獲得、新機能も発表

muuteがアップル「AppStore」ヘルスケア/フィットネス領域ランキングで1位獲得、新機能も発表

ミッドナイトブレックファストは1月29日、ユーザーの思考と感情の記録をAIが分析しフィードバックを行う国内初のAIジャーナリングアプリ 「muute」(ミュート。iOS版)が3つの新機能を2⽉中にリリース予定と発表した。また、リリース後約1ヵ月(1⽉7⽇時点)でAppStore ランキングのヘルスケア/フィットネス領域で1位を獲得したと明らかにした。

muuteがアップル「AppStore」ヘルスケア/フィットネス領域ランキングで1位獲得、新機能も発表

muuteは、感じたことや思ったことを日記のように自由に書き出し、自分の感情と思考を振り返ることで新しい自分を発見するための「ジャーナリングアプリ」。

この「ジャーナリング」とは、欧米で人気のメンタル・セルフケア/マインドフルネスの手法のひとつ。頭に思い浮かんだことをありのままに書くことから「書く瞑想」ともいわれる。

またmuuteの場合、AIによる分析のもと日々のちょっとした気づきや発見を得られる「インスピレーション」、友人からの手紙のような分析レポート「インサイト」などの形で、ユーザーに対してフィードバックを行う。

これにより、ジャーナリング本来の効果「気分や感情の改善」「心身の健康状態の向上」などに加え、過去を視覚的かつ楽しく振り返ることができ、ユーザーは今まで気づかなかった自己の感情の揺れ動きや思考パターン、価値観や願望などを発見でき、新しい自分を見つけることにつなげられるとしている。

10代〜30代の女性を中心に、幅広く広がりをみせる

ミッドナイトブレックファストによると、muuteのローンチ後、同社の予想を上回る形でSNSやnoteなどで反響があったという。10代〜30代の女性を中心に、性別問わず幅広い年齢層に利用されているそうだ。

ユーザーの声としては、「⾃分の頭と⼼の中を可視化して、客観的に整理できるのが便利」「デザインが素敵で可愛いから続けられる」「インサイトが優しくて癒される」などがあったとしている。

同社は、「muuteの正式リリースからまだ約2ヵ月で至らないところも多くあるかもしれませんが、これからもユーザーの皆さんの声に耳を傾けながらより良いアプリにしていきたいと思っています。今後は引き続き、既存機能の改善とmuuteをより楽しくお使いいただける新機能の開発を計画しています。Android版のリリースも予定しています」とコメントした。

現在開発中のAndroid版については、muute公式サイトのWaitlist(ウェイトリスト)にメールアドレスを登録した方には、いち早くリリースをお知らせするとしている。

3つの新機能は、「AI による感情予測機能」「カラーテーマ選択機能」「プライバシーロック機能」

3つの新機能について同社は、継続的にユーザーの方々と対話しながら、既存機能の改善と新機能の開発を行っており、特にニーズが強く、muuteの目指している方向性にも合致した機能を採用したという。

AIによる感情予測機能

AIによる感情予測は、ジャーナル投稿の内容をAIが分析し、感情アイコンを⾃動予測・選択することで、よりスムーズなジャーナリング体験を実現するという機能。

同社によると、感情とその理由を選択してからテキストを記入する既存のフリー・ジャーナリングの方法に加えて、その時に考えていることや感じていることをすぐに書き出したいというニーズが一定数あることが分かったことから、採用したという。

また、テキストを先行入力できるだけでなく、その入力内容をmuuteのAIが瞬時に分析し、感情アイコンを予測・選択する機能で、muuteのAIをより身近に感じられるようにするそうだ。

muuteがアップル「AppStore」ヘルスケア/フィットネス領域ランキングで1位獲得、新機能も発表

カラーテーマ選択機能

カラーテーマ選択機能では、新色として「Green」「Orange」の2⾊を追加。ダークモードの切り替え機能も採用し、カスタマイズ性や就寝前の1⽇の振り返りのしやすさを向上させる。

同社は、「『自分らしさ』を受け入れられる社会をつくる」をmuuteのミッションとして掲げており、アプリデザインの側面からもその実現に貢献したいと考えているそうだ。

その第1歩としてカラーテーマの選択肢を増やし、自分好みの色や今の気分に合わせて、muuteを利用できるようにする。

また、夜就寝前に1日の振り返りとしてmuuteでジャーナリングされるユーザーが多いことも分かり、暗い中でも目に負担をかけずに使用できるようにダークモードも合わせて採用する。

muuteがアップル「AppStore」ヘルスケア/フィットネス領域ランキングで1位獲得、新機能も発表

プライバシーロック機能

プライバシーロックでは、アプリをパスコードや⽣体認証でロックする機能を追加し、プライバシー保護関連を強化。4桁のパスコードでロック設定、Touch IDやFace IDなどの⽣体認証をサポートする。

「自分だけの静かで優しいデジタル空間」として、パーソナルなことでもより安心して書き留められるよう、プライバシーを強化するロック機能を用意する。

muuteがアップル「AppStore」ヘルスケア/フィットネス領域ランキングで1位獲得、新機能も発表

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タグ:ジャーナリングミッドナイトブレックファストmuute瞑想メンタルヘルス(用語)日本(国・地域)

対話型AIを含む遠隔医療プラットフォームのConversa HealthがシリーズBを約21億円に増額

米オレゴン州ポートランドに拠点を置く、バーチャルケアおよびコミュニケーションプラットフォームを提供するConversa Healthは米国時間1月19日、シリーズBの資金調達ラウンドを1200万ドル(約12億4000万円)から2000万ドル(約20億7000万円)に増額したことを発表した。このラウンドは当初の発表のように、Builders VCとNorthwell Healthのベンチャー部門であるNorthwell Venturesが共同で主導している。その他の投資家には、University Hospitalsのベンチャー部門であるUH Ventures、VC企業のP5 Health Ventures、Epic Ventures、StartUp Health、Nassau Street Venturesのほか、今回の拡大ラウンドに新規投資家として参加したGenesis Merchant CapitalとJ-Venturesが含まれている。

ConversaのCEOであるMurray Brozinsky(マレー・ブロジンスキー)氏はこう語る。「特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にともない、これはヘルスケアにおける2つの大きなトレンドですが、自動化とバーチャル化の必要性が認識されています。これらは地平線上にあったものが、新型コロナウイルスのおかげで地平線をもっと近くに引き寄せざるを得なくなり、医療システムは、患者にとってアクセスを可能にし、患者と医療提供者の経験を向上させ、より良い結果をより低コストで得るために必要になっていくと認識するようになりました」。

ブロジンスキー氏は、今後10年以内に、ケアの80%が遠隔で行われるようになると実際に考えている。これにより、よりパーソナライズされ科学的根拠に基づいたケアが可能になるが、自動化への投資も必要になるだろうという。

「Conversaは、プロバイダーのEHR(electronic health record、電子カルテ)やその他の患者データを、最高水準のインタラクティブなデジタルケア・パスウェイと臨床分析エンジンにリンクさせ、24時間365日体制でケアマネジメントを自動化します。これにより、訪問前から訪問後のケアプランのアドヒアランスが向上し、コストが削減され、患者にとってより良い結果が得られます」と、Builders VCのパートナーであり、Conversaの取締役であるMark Goldstein(マーク・ゴールドスタイン)氏は述べている。「Conversaのエンタープライズプラットフォームとデジタルパスウェイのライブラリは、単発のポイントソリューションとは対照的に、プロバイダーが患者の集団全体をケアするために使用されています。Conversaのサービスは、市場の大きなギャップを埋めてくれます」。

パンデミックを考慮すると、Conversaのビジネスが急成長したのも不思議ではない。多くの大企業がプラットフォームの使用を拡大しているため、同社のサービスの顧客数は4倍に増加し、財務指標は6倍に増加している。

同社チームは、この勢いに資本を投下するために、既存のシリーズ Bラウンドを拡大し、プラットフォームをスケールするため、より多くのエンジニアを採用することを決めた。ブロジンスキー氏は、パンデミックが終わった後もConversaのようなプラットフォームの必要性は残ると考えている。また、同社はすでに予防接種プログラムのサポートをサービス内で展開しており、消費者の教育を支援するだけでなく、予防接種を受けた後のモニタリング活動も支援している。

「医療機関から聞く話ではどこでも、高齢化が進む中心となる人口層をケアする必要が続くのは変わりませんから、深刻な医療従事者不足も含め、再びパンデミックが発生した場合に備えて準備をしておかねばならないと認識しているようです。」とブロジンスキー氏は語った。「そのため、システムやプラットフォームの必要性はさらに高まり、投資は追加コストというよりは、莫大なリターンとなります」。

関連記事:大麻マーケティングのFylloが同業DataOwlを買収、2021年の大麻ビジネスの爆発的成長に期待

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(翻訳:Dragonfly)

大麻マーケティングのFylloが同業DataOwlを買収、2021年の大麻ビジネスの爆発的成長に期待

Fyllo(フィロ)は、大麻小売業者のためのマーケティングとロイヤルティのツールを提供しているDataOwl(データアウル)を買収した。

25州(そしてプエルトリコとジャマイカ)にまたがる320の大麻小売業者とすでに協業している、とFylloは述べた。マーケティング最高責任者のConrad Lisco(コンラッド・リスコ)氏によると、DataOwlの買収によって消費者データ、デジタル広告、企業コンプライアンスを組み合わせた業界「初のエンド・ツー・エンドマーケティングソリューション」を、CRMとロイヤルティを事業者のPoSシステムに組み込んだDataOwlを通じて提供できる。

Fyllo創業者でCEOであり、以前はデジタルマーケティング会社Amobeeで最高売上責任者を務めていたChad Bronstein(チャド・ブロンステイン)氏は、例として小売業者が販促テキストを通常の顧客に送るのにFylloプラットフォームを使うことができるようになり、さらに重要なことにそうした販促が州や地元自治体の規制に完全に則ったものにできる、と述べた。同氏はまた、ゆくゆくは規制がかかっている他の産業で、大麻以外のものにもプラットフォームを使うことができる、と付け加えた。

「美容、ギャンブルなど、規制がかかっているあらゆる産業で同じことが起こる必要があります。そうした産業はすべてロイヤルティとコンプライアンスの自動化の恩恵を受けます」とブロンステイン氏は述べた。

加えて、Fylloが委託したForrester調査に裏づけられているように、主要ブランドは大麻とCBD(カンナビジオール)コンシューマーに関するデータを使うことにますます興味を持っていると主張した。

リスコ氏は、今回の買収は大麻産業にとって大事な時期に行われると話した。多くの州で大麻販売は必要不可欠な事業と分類され、マリファナの合法化を背景に引き続き勢いがある。

「2020年に大麻は成熟しました」と同氏は指摘した。「10カ月で、違法なものから必要不可欠なものに変わりました。2021年は地域的な(マリファナ)ブランドが大規模展開しようとするのを目の当たりにすることになるでしょう。なので、そうしたブランドは爆発的な成長に投資することができます。彼らは歴史的に、大手ブランドが市場開拓をするときに使うことができた統合マーケティング能力のようなものから除外されてきました」。

FylloはDataOwlのプロダクトにコンプライアンス能力を組み込むことで、そうした能力をマリファナブランドに提供することを目指している、とブロンステイン氏は述べた。同社はまた、全国大麻ロイヤルティープラットフォームを作ることも目指している。このプラットフォームが実現すれば、ある州のマリファナ小売事業者が法に準拠した方法で他の州へとマーケティングを簡単に拡大できるようになる。

買収の金銭的条件は明らかにされなかった。DataOwlの共同創業者Dan Hirsch(ダン・ハーシュ)氏とVartan Arabyan(ヴァータン・アラビアン)氏は残りのチームメンバー同様Fylloに加わり、Fylloの従業員数は110人になる。

「Fylloに合流することでDataOwlのソリューションは、業界で最もイノベーティブなマーケティングプラットフォームを通じて可能な限り幅広い人にアクセスします」とハーシュ氏は声明文で述べた。

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画像クレジット:Bloomberg Creative / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

自社開発のウェアラブルセンサーによる体温の研究・解析を目指すHERBIOが1.2億円を調達

自社開発のウェアラブルセンサーによる体温の研究・解析を目指すHERBIOが1.2億円を調達

HERBIO(ハービオ)は1月20日、第三者割当増資による総額1.2億円の資金調達を発表した。引受先は、Beyond Next Ventures、Velocity LLP。また、あわせて2020年12月24日に第二種医療機器製造販売業許可を取得したことを明らかにした。研究支援アプリケーション「Carekara」(ケアカラ)もサービスを開始する。

HERBIOは直腸温(深部体温)と臍部周辺温度の相関性を確認し、開発中のウェアラブルセンサーで取得したデータを元に研究・解析を実施する研究開発型スタートアップ。

今回調達した資金を活用し、下記の領域にて積極的に投資を実施します。あわせて第二種医療機器製造販売業許可を取得したことにより、現在開発中のウェアラブルセンサーの量産化に向け、さらに顧客ニーズに応える機能改善などを進め、事業展開をより加速する。

  • 開発中のウェアラブルセンサーの量産化
  • 研究により注力するため研究者採用をはじめとした人員強化
  • 医療機関や企業と連携した共同研究の実施
  • 独自技術を活用した医療機器プログラムに対するサービス開発

また同医療機器製造販売業許可は、管理医療機器(クラスII)の日本国内での元売り業者として、薬機法の規制の下、医療機器の海外からの輸入、および日本国内での製造販売が可能となり、医療機器の適正な開発・設計・製造・販売といった機能を保有している。

  • 発効日: 令和2年12月24日
  • 製造販売業品目: 自社開発の医療機器
  • 許可番号: 13B2X10454

研究支援アプリケーション「Carekara」(ケアカラ)

製薬会社からのバーチャル治験や、アカデミックの研究現場での利用ニーズの急速な高まりの中、すでに両現場でスタートしていた研究目的でのHERBIO製ウェアラブルセンサーの活用と併せて使用する、研究支援アプリケーション「Carekara」(ケアカラ)のサービスを開始する。

HERBIO独自技術により、被験者や患者から取得が難しいとされていた体調データを、低侵襲かつ自宅で安全に記録できるようになっているという。

自社開発のウェアラブルセンサーによる体温の研究・解析を目指すHERBIOが1.2億円を調達

Carekaraは、現在開発中のウェアラブルセンサーにより取得されたデータや、日々の体調記録を入力し記録できるPHR(PersonalHealthRecord:個人健康記録)アプリ。

Carekaraは、ユーザーがより簡単に個人の健康情報を入力・記録できるシンプルな操作性とUIを実現し、どの世代の方でも導入しやすい仕様を採用。当初のサービス提供先は製薬会社や研究機関、企業など、BtoBでの取引からスタートし、将来的には一般ユーザーが日常生活の中で利用できるサービスを目指している(当初iOSアプリのみ対応予定)。

今後、コロナ禍で注目される遠隔診療の広がりのサポート、バーチャル治験の促進、体内時計の研究の発展、疾患の早期発見の研究など、同社の研究成果を社会課題と結びつけ、今までにない発見と課題の解決手法を確立し、世界中の誰もが安心して医療を受けることができ、医療と健康に隔たりのない状態の実現を目指す。

HERBIOは、2017年の創立以来「体温」を軸にした独自の技術開発と研究・解析に取り組む。「生きるに寄り添うテクノロジー」というミッションを掲げ、研究成果による社会課題の解決を目指し、世界中の子供からシニアまで健やかに生きることができる世界を実現するとしている。

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遠隔医療のK Healthが約137億円調達、バーチャル保育サービスに進出

膨大な健康アセスメントを利用し、機械学習で医療コストを低減するバーチャル医療企業K Health(ケイ・ヘルス)は、15億ドル(約1560億円)という評価額で行った資金調達を元手に育児のための新しいツールをローンチした。

2020年12月に1億3200万ドル(約137億円)を調達した同社は、規模の拡大と、第2四半期までの導入を予定していた高度な電子カルテへのアップグレードのための資金を手に入れている。

2020年、K Healthは、機械学習と一般医療との橋渡し役としての立場を活用し、たった1年で2億2200万ドル(約230億円)を調達した。

今回の積極的な投資からわかるのは、テクノロジーでより安価な医療を提供しようと各社が目指す一般医療を、投資家たちがいかに大きな機会と見ているかだ。

K Healthが提供するのは、月9ドル(約940円)で同プラットフォームでのサービスと医師の診察が無制限で利用できるサブスクリプションだ。さらに月19ドル(約2000円)の精神疾患バーチャル治療や、1回19ドルで受けられる緊急医療相談サービスもある。

患者と投資家が魅力に感じるのは、K Healthがイスラエルの健康維持期間Maccabi Healthcare Services(マッカビ医療サービス)との提携で入手できたデータだ。これは数十年分の患者と健康アウトカムに関する匿名データで、K Health独自の予測アルゴリズムのトレーニングに用いられている。それが、患者の状態の評価や同社所属医師の診断に役立てられる。

理論的に、そのデータによって同社のサービスはバーチャルかかりつけ医師として機能できるようになる。つまり、患者の豊富な医療情報を保有することで、根底にある病状の早期発見や、総合的な視点での治療が可能になるということだ。

製薬会社には、そのデータは収益性の高い創薬の方向性を示す公衆衛生の深い見識をもたらしてくれる。

実際、患者は金を支払っただけのものが得られる。

また同社の精神疾患ケアは、評価や判断を行う資格を持たない医師によって行われるという、同プラットフォームでサービスを提供する人物もいる。つまり、意見不足の医師に当たる可能性があるわけで、病状が改善するどころか悪くなる心配がある。

同社の最高責任者Allon Bloch(アーロン・ブロック)氏の、ほとんどのサービスはリモートで可能だとする評価はおおむね正しい(ブロック氏は90%と見積もっている)が、それは必要な訓練を受けたプロによるリモートサービスであるべきだ。

アルゴリズムにできること、またジェネラリストが医療でやれることには限界がある。K Healthは、その限界を押し上げたいと考えているようだ。

「薬の照会、急性期対応、予防のほとんどがリモートで行えます」とブロック氏。「もっとうまく、もっと安くできる可能性があります」。

K Healthではすでに、緊急治療とサブスクリプションサービスの両方で数万人の患者に対応し、2020年には数千万ドル(数十億円)の利益を上げているとブロック氏は話す。サブスクリプションの利用者と比べて緊急治療サービスを受けた患者がどれだけいたかについては、ブロック氏は公表を控えた。

リモートでサービスを提供する他の業種と同じく、テレメディシン企業もこのパンデミックの間に繁盛している。バーチャル医療の先駆者であるTeladoc(テラドク)とAmwell(アムウェル)の株価も高騰した。

K Healthの支援者は、GGV CapitalとValor Equity Partnersが率いる投資家グループだ。Kaiser Permanenteの年金基金、Burger King(バーガーキング)とKraft Heinz(クラフト・ハインツ)を所有するブラジルの投資会社3G Capital、14W、Max Ventures、Pico Partners、Marcy Venture Partners、Primary Venture Partners、BoxGroupも今回のラウンドに参加した。

同社に協力している団体には、Maccabi Healthcare(マッカビ医療サービス)の他に、同社とバーチャル医療モデルの研究を行っている総合病院Mayo Clinic(メイヨー・クリニック)、K Healthのサービスをホワイトラベルで多くの保険加入者に提供している健康保険大手Anthem(アンセム)がある。

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タグ:K Health遠隔医療資金調達

画像クレジット:Busakorn Pongparnit / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

在宅新型コロナ検査キットで知られるEverlywellが182億円のシリーズDに続きHealthQuestから78億円調達

在宅健康検査キットのスタートアップEverlywellは、12月に発表した1億7500万ドル(約182億円)のシリーズDに続き、7500万ドル(約78億円)を調達した。今回の資金調達はHealthQuest Capitalからのもので、ファンドの創設者でありマネージングパートナーのGarheng Kong(ガルヘン・コン)博士がEverlywellの取締役会に加わる。同社はこの資金調達で得た資金を既存の投資家に流動性を提供するために使用する予定で、12月に発表された13億ドル(約1351億円)の評価額はまだ維持されている。

HealthQuest Capitalの投資ポートフォリオは診断事業の商業化に重点を置いており、同社の親会社は病院や医療費支払者を含むパートナーとのネットワークを持っている。どちらの点も、Everlywellが企業向けのビジネスを拡大していくのに、戦略的に非常に有用なものとなるだろう。

テキサス州オースティンを拠点とするEverlywellは、甲状腺の問題、アレルギー、食物に対する過敏症など、さまざまな健康上の懸念を対象とした家庭用検査キットを開発している。同社はまた、2020年に自宅で使用可能な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検査サンプル収集キットを追加し、その結果、新型コロナウイルス検査と他の製品群の両方から大きな成長を遂げたと、シリーズDの調達のために12月に話を聞いた際、Everlywellの創業者兼CEOであるJulia Cheek(ジュリア・チーク)氏は語った。

HealthQuestのベンチャー部門をパートナーとして迎えることで、同社の消費者向けDTC事業にテコ入れするとともに、補完的な企業向けの活動をさらに発展させることができるだろう。同社はすでに一部の雇用者や健康保険プランと提携しているが、2021年以降のさらなる成長に向けて、今回の提携がそのビジネスの側面を加速させるのに役立つことは間違いない。

関連記事:東大IPCがガンの診断・治療に役立つ独自抗体医薬を開発する凜研究所に2億円を出資

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タグ:新型コロナウイルス 資金調達

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(翻訳:Dragonfly)

東大IPCがガンの診断・治療に役立つ独自抗体医薬を開発する凜研究所に2億円を出資

東大IPCがガンの診断・治療に役立つ独自抗体医薬を開発する凜研究所に2億円を出資

東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)が運営する協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合(協創1号ファンド)は1月19日、抗体を主体とした医薬品および体外診断用医薬品の研究開発を進める凜研究所に対して、2億円の出資を行ったと発表した。

今回の凜研究所への投資は、LP出資先でライフサイエンス・ヘルスケア分野に特化した投資を行うファストトラックイニシアティブとの共同投資となっている。

凜研究所は、研究担当取締役を務める松村保広博士(元国立がん研究センター東病院 先端医療開発センター 新薬開発分野 分野長、元東京大学大学院新領域創成科学研究科 がん先端生命科学分野 客員教授)の研究成果の臨床開発を進めるため、2016年1月に設立された創薬ベンチャー。エーザイで医薬品の研究開発を長年リードした吉松賢太郎CEOのもと、がんの診断・治療に役立つ独自の抗体医薬を開発し、まったく新しい抗体医薬を上市することで、患者に回復への大きな希望を届けることを目指している。

ヒトの免疫機能として病原体などの異物が侵入した際に活躍する抗体において、特定の物質と選択的に結合するというその性質を薬として活用した「抗体医薬」は、今日世界で7兆円を超える製品分野へと成長しているという。

凜研究所では様々な抗体医薬を開発中で、そのひとつがタンパク質TMEM180に結合する抗TMEM180抗体という。大腸がん細胞で高発現し、正常な腸管上皮細胞には発現しないTMEM180を標的とするこの抗体を用いて、大腸がんをはじめとする難治性がんの治療を目指しているそうだ。

またこの他にも、近年注目されるがん微小環境を構成する間質(かんしつ)中の不溶性フィブリンタンパク質を標的とした抗不溶性フィブリン抗体に薬物を付加した抗体薬物複合体(ADC。Antibody Drug Conjugate)など、複数の抗体医薬製品群を研究開発中という。

東大IPCは、抗TMEM180抗体がKRAS遺伝子変異を有する大腸がんなど、現時点で治療法に乏しいがんに対する新たな治療オプションを提供する可能性を持っていること、日本のアカデミア発研究シーズの臨床開発を支援することの社会的意義、などの理由から出資を決定したとしている。

協創1号ファンドは、東京大学関連ベンチャーの育成促進と、東京大学を取り巻くベンチャーキャピタル(VC)の質・量の充実を中心に据えて運用を行なうことで、東京大学の周辺に持続可能なイノベーション・エコシステムを構築し、世界のベンチャー創出拠点のひとつとなることに寄与することを目的としている。具体的な運用として、今までに6つのVCへのLP出資(ファンド オブ ファンズ)と、18社の東京大学関連ベンチャーへの直接投資を行い、現在も積極的に東京大学関連ベンチャーへの直接投資を行っている。

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