世界的に盛り上がっているスマホシーンですが、それと並行して多くのモバイルスタートアップが日本でも世界でも立ち上がっています。モバイルの場合悩ましい点が、アプリをリリースする度にApp Storeの審査を通す必要があり、ウェブベースのPCに比べてテスト&リリースのイテレーション的なアプローチが難しいこと。その現状を上手く脱しなければユーザーに長く使ってもらえるアプリを作り上げることは至難の業、、、ということでその壁を打ち破れず実際に多数のモバイルスタートアップの死をその目に見てきたアンドリュー・チェンが、モバイルスタートアップの成功の秘訣について考察します。 — SEO Japan
最近、いかにしてモバイルスタートアップが1999年のように失敗しているかについてブログ記事を書いた。この記事では、大半のモバイルスタートアップが最初のバージョンを出荷するのに時間をかけ過ぎていて、さらにその後のアップデートにもあまり時間を費やし過ぎているというものだ。その結果、彼らは、1999年のウォーターフォール型の製品開発プラクティス(註:企画・設計・プログラミング・テストなど開発を工程毎に明確に分けて進めていく昔からある開発スタイル)を連想させるような形で失敗している。私たちはもっとうまくやることができる。
前回の記事は、テックコミュニティ全体にとっての課題となるべくして書かれた。そして、私たちがイテレーションサイクルをどのように改善するのかについて、たくさんの素晴らしい返答をもらった。このアイディアと提案は、いくつかの異なるカテゴリーに分けられる:
- 適切な(最小限の)製品を選択すること
- ローンチの前に市場をテストすること
- 素早くコーディングと出荷をすること
特に、YCombinator卒業生からいくつか優れた意見を得たので、それらのコメントを取り上げたいと思ったのだ。それらは、本当に、かなり良かった。
適切な(最小限の)製品を選択すること
まずは、適切な最小限の製品を選択することが大切だ。Apple Appストアに取り組んでいるスタートアップは、以下の3つの相反することを満たさなければならない:
- ハイクオリティのアプリをリリースする
- それを素早くリリースして、銀行にあるたくさんの資金を使ってイテレートする
- 次のラウンドを獲得するために、資金100万ドル以上を使って十分なダウンロード数を獲得する
これを古典的に言うと、良い、安い、早いから2つを選べ、になる。ほとんどの場合、スタートアップがその支配下に持っているのは、クオリティとリリースするための時間であるため、ここではそれに焦点を合わせよう。良い+早いを手にする一番の方法は、限られた機能を備えた洗練されたアプリを作ることだ。洗練をスキップせず、あまり多くの時間をかけすぎない方法である。
もう一つ重要なことは、既存の市場を選ぶことだ。競合相手はいるが差別化する明白な方法がある場合、プロダクト/マーケット・フィットに達する前にあなたが彷徨う時間は少なくなるだろう(願わくば)。モバイルではイテレーションは高価であることを考えると、これは大きなアドバンテージになる。もし何か新しいことをしようとしていて、それをサポートする顧客行動が存在しないのなら、あなたは時間とお金とイテレーションを要する市場を探す必要があるため、それは恐ろしい状況かもしれない。
Kieranが、洗練されているが制限のある機能について以下のコメントを述べている:
Kieran O’Neill―Threadの創設者
技術的ソリューション側からすると、製品開発の対策は、よりニッチな/1つの機能を備えた/素早いアプリを最初は作って、その後、最初の成功に達したらより大がかりな脱線した目標に拡大することだと思う。あなたが指摘するように、問題はウェブ以上にモバイルではこのプロセスがもっと急速だということだ。
Tonyはこのように言っている:
Tony Wright―Tomo Guidesの創設者
これは素晴らしい記事だ。私はかつてアプリストアで成功するためには大きなローンチが必要だと信じていた。アプリストアには大きな重力があり、トップアプリに入るにはPR爆弾が必要で、Appleの“Most Popular”リストからのオーガニックダウンロードがあなたを大衆の上に維持し続けるのだと思っていた。しかし、私はあまりに多くのブームとなったアプリが、PR効果が徐々に消えるとどん底まで落ちるのを目にしてきた。
私たちサイドの解決策は、より早くローンチしてMVPを再採用することだと思う。PRに必死にならないことだ。ベータオーディエンスを見つけ、彼らの役に立つのだ。たとえあなた(と彼ら)が、恐ろしいテストフライトを通過しなければならないとしても。スケーラブルでリピート可能な顧客獲得に焦点を合わせ、自分の製品/販売の課題の多く/大部分を解決するまではローンチしないこと。そのやり方なら、あなたのローンチは、積み重なった湿った木ではなく、火にガソリンを注いでいることになる。
要は、私たちは早くイテレートして、1日に複数回デプロイするように教えられたのだ。今はそれがベストプラクティスなのだ。例えば、Facebookは、600人近くのデベロッパーを活用して1日に2回デプロイする。しかしながら、モバイルでは、その文化は浸透していない。アプリストアのプロセスが理由で、本当にハイクオリティのプロダクトマネージメントが重要になる。さもなければ、アプリのリリースまでに、簡単に何日、何週間、何か月もかかってしまう。それは素早く動いているとは言えない。
ローンチの前に市場をテストすること
自分のV1が堅実であることをリリースする前に知ることが、超重要になる。その理由は主に2つある:
- アプリストアのリーダーボード。ここでは、継続したトラフィックの上昇がより多くのトラフィックをもたらす。
- アプリストアのレビュー。ここでは、できる限り5つの星を獲得したい。
これは、ローンチ時の大きな急上昇を手に入れようとする前に、全てのバグを押しつぶして大きなデザインの問題に対処する必要があるということを意味する。そうでなければ、あなたは、バグに悩まされる急上昇と2つ星のレビューを獲得するかもしれない―良くないことだ。
ひそかにリリースしてリブランドすることによって、これをする方法についていくつかの素晴らしいコメントをもらった。以下は、Matt Brezinaの博識なコメントだ:
Matt Brezina―Sincerelyの創設者
これは素晴らしい観察だね、Andrew。私たちがやったことは、Postagramをローンチする前に、アプリ上に私たちの個人名は載せずに、異なるAppleアカウントの下で2~3個の製品バージョンをローンチすることだ。私たちがPRローンチをした時には、その製品は過去4か月の取り組みからブランド化されたバージョンだった。私たちはそれが上手く機能すると分かっていたし、ユーザーが気に入るということも知っていた。それ以降、私たちが1つのリリースの開発に4週間以上費やすことはなかった。そして、特に私たちは、迅速な実験のためにAndroidを使用する―Appleの1週間のアプリ認証はイテレーションサイクルを本当に遅くする。そして、a/bテストをすることの難しさは、現在のモバイル開発環境において私が最も好まないことだ。
ZyngaでMobile Pokerに取り組んでいるKentonもまた、アップデートが簡単であるという理由で試作品の製造にはAndroidを使用するという優れたアイディアについて述べている:
Kenton Kivestu―ZyngaのMobile Pokerを担当するシニアプロダクトマネージャー
解決策の一部は、Appleの認証プロセスの厳しさや遅延に直面することがないAndroidで機能を開発およびテストすることだ。また、Kieranの意見も有効だと思う。Appleはハイクオリティなスタンダードを持っているかもしれないが、Appleの認証を得るために何かを開発するのに6か月も費やす必要があるという真っ当な理由はない。6か月に及ぶ開発期間は、恐らく、フィーチャー・クリープ、範囲が広すぎる、あまりに多くテストしすぎる、洗練し過ぎなどを暗示する。
もう一つの面白いアイディアは、最初に他の場所でアプリをテストすることだ。それは、カナダでもニュージーランドでもいい。アメリカと同じように英語を話すオーディエンスがいてスマートフォンの普及率が高い場所でテストをするのだ。
素早くコーディングと出荷をする
実際に製品開発を実施することとなると、あなたは、本当の障害は何なのか自分自身に問わなければならない。それはAppleに申請すること?では、あなたがそれを7~10日ごとにすることができるとしよう。そして、後ろにさかのぼって、シンプルな目標を定めたとしよう。
あなたが何かをAppleに申請する機会がある時はいつでも、あなたは申請する何かを持っている。
この目標を達成しようとするというのはどんな意味なのだろう?それが意味することは、あなたが結局1週間で製品を築くことになるということだと思う。5日目にはいくつかテストをして1週間のタイムラインでそれを届けることができるように、結局たくさんの機能の範囲を狭めることになる。いくつかの時間のかかる機能に関しては、あなたは、できる限り1週間に近づけ、最小限の待ち時間を許容しようとする。
同様に、毎週アプリを申請する場合でも、あなたは毎日何かを行うことができる―Testflight(註:無料のアプリテストサービス)を使用するのだ。これは、毎日アプリの社内リリースをして友人や家族がそれを試用することができることを意味する。
これはどれくらい実現可能なのだろうか?そう、もう一度言うが、私たちは、ウェブ上では、1日に複数回デプロイするというアイディアに慣れている―モバイルアプリでやってもいいじゃないか?それは可能だ。
結論
これらは、素早くイテレートするための材料だ:シンプルだが洗練されたV1アプリ。ローンチ前のシステマチックな市場テスト。強力でイテレーティブなプロダクトマネージメント。毎週のアプリ申請と毎日のテスト飛行。それを十分なモバイルスタートアップ資金と、私たちがテックに持つ強力なチームと組み合わせれば、私たちはきっとどこかに到達するはずだ!
下のコメント欄では、より良く、より早く、より力強くなるためのアイディアやアドバイスを大歓迎する。
この記事は、@andrewchenに掲載された「How mobile startups can iterate better, faster, stronger」を翻訳した内容です。
モバイルスタートアップ起業家の様々な意見も掲載されており、非常に参考になる記事だったのではないでしょうか。私もこの記事を読んでナルホドと思ったのですが、確かに自由に更新できるウェブサービスと違ってモバイルアプリの場合は申請と承認の過程が常に発生しますからね。事前にどれだけ熟考したとしても、リリースしてみないと分からない点もありますし、リリース前のテスト文化をいかに根付かせることができるかも、成功の確率を上げるためには重要そうです。もちろん、仲間内少人数でテストして自分たちの感性や信念を信じる、、というスタイルもあるでしょうし、実際それで成功したアプリも多いとは思いますが、リスクを減らせることにこしたことはないですし。苦戦中のモバイルスタートアップも多いと思いますが、この記事に何か突破口になるヒントがあることを願います。 — SEO Japan [
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