アップルは完全な自動運転車の2025年販売を目指すとの報道

Apple(アップル)は、長年開発を進めてきた電気自動車の焦点をより明確にしようとしているのかもしれない。Bloombergの報道によると、Appleは現在、半自動運転機能を備えた従来型の車両ではなく、完全な自動運転車に関心を移しているという。新しいプロジェクトリーダーであるKevin Lynch(ケビン・リンチ)氏は、最初のモデルを自分で運転することを望んでいると関係者は述べています。

同社は、それに合わせて計画を加速させているという。Appleは最近、5〜7年後の発売を目標にしていたが、関係者によると現在、2025年つまりわずか4年後を目指しているとのことだ。しかし、この計画は「流動的」であり、予定どおりAppleが完全な自律型システムを完成させることを軸にしている。同社は、自動車のプロセッサーに関する「中核的な仕事」の多くを終えたとされる。

また、Appleは、ラウンジのようなシート、中央にタッチスクリーンのインフォテインメントシステム、そしてハンドルもペダルもない「理想的な」インテリアを念頭に置いているとの情報もある。さらに緊急時用の引き継ぎ運転モードも検討されているとのことだ。

Appleはコメントを控えている。この新しい優先事項は、役員の退任弱気なパートナーなどでこれまで何度も挫折を経験してきたプロジェクトに役立つことになるだろう。また、VWのように、同時期に完全自動運転またはそれに近い自動運転を提供することを計画している既存の自動車メーカーと肩を並べられるかもしれない。しかし、完全自動運転には、予測が難しい交通事情や雪などの天候問題など、多くの課題がある。Appleがクルマの発売を遅らせたり、少なくとも運転手に一定の条件で運転を代わってもらう必要があったとしても不思議ではない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunchCron

原文へ

(文:Jon Fingas、翻訳:Katsuyuki Yasui)

Baiduのロボットタクシーサービス、2030年までに100都市での展開を目指す

Baidu(バイドゥ)は、自律運転の実現に向けた取り組みを強化している。中国のテック企業Baiduは、検索エンジンでその名を知られ、現在も収益を検索広告に大きく依存している。しかし、同社は自律運転への大きな賭けが将来的に報われることを期待している。

BaiduのロボットタクシーサービスであるApollo Goは、2025年までに65都市、2030年までに100都市での展開を目指していると、Baiduの共同創業者でCEOのRobin Li(ロビン・リー氏)は現地時間11月18日のアナリスト向け電話会議で語った。

これは、Baiduが大量のライセンスを現地の規制当局から取得しなければならないことを意味する。そして最終的には、これらの許可のうちどれだけがApollo Goに商業活動を許可し、サービスが実際にどれだけの乗車数を集めることができるかが、このビジネスの持続可能性を左右することになる。

今のところ、リー氏はBaiduが「おそらく乗車数では世界最大のロボットタクシーサービスプロバイダーである」と見積もっている。第3四半期だけで、Baiduは11万5000回の乗車を提供しており、同氏は第4四半期の乗車数を「みなさんが世界のどこかで耳にする報告数よりもはるかに多い」と予想している。

運転技術の向上という点では、Baiduはこれまでに1600万キロメートル以上のL4(自走式)走行距離を達成している。これは、第1四半期の報告書に記載された620万マイル(約997万キロ)から増加している。

しかし、これらの膨大な数字は、閉鎖された地域の指定ルートではなく、交通量の多い都市部の道路で実際にどのくらいの走行が行われているのかがわからなければ、意味がない。

中国の多くの自律運転車企業と同様に、Baiduもロボットタクシー事業を展開する一方で、先進的な運転支援技術を自動車メーカーやOEMメーカーに提供している。

Baiduは2017年から、オープンソースのApolloプラットフォームを通じて自動車会社に運転ソリューションを提供している。同プラットフォームは数百の企業ユーザーを蓄積しているが、同社は特定のパートナーとの緊密な関係を育んできた。例えば、中国のGeely(ジーリー)と合弁会社を設立して電気自動車メーカーのJidu Auto(ジドゥ・オート)を設立し、パートナー企業が500億元(77億ドル/約8940億円)を出資している。

画像クレジット:Baidu

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Akihito Mizukoshi)

現代自動車が「衛生的なインテリア」を備えた電気自動車SUVのコンセプトカー「SEVEN」を公開

Hyundai(ヒョンデ、現代自動車)は、ロサンゼルスオートショー2021で、新しいSUV型電気自動車のコンセプトカーを発表した。「SEVEN(セブン)」と名づけられたコンセプトカーは、回転式のラウンジシートから、同社が「衛生的」と呼ぶインテリアまで備えている。新型コロナウイルス感染流行が始まってから3年目を迎えた今の時代に、それは相応しい機能といえそうだ。

コンセプトカーというものは、その名のとおり、未来のクルマの可能性を示す創造性と技術の習作だ。だから、モーターショーでコンセプトカーとして発表されたクルマが、将来必ずしも販売店に並ぶとは限らない。しかし、ヒョンデは今回、フルサイズSUVのコンセプトを、実際にディーラーで購入できるプラットフォーム上で実現して見せた。

コンセプト:衛生的なインテリア

完全な自動運転車が、実際に大衆のものとして実現する日に備えて、ラウンジのようなインテリアや360度回転するシートを備えたコンセプトカーを、ヒョンデのみならず多くの自動車メーカーが披露している。だが、SEVENコンセプトのユニークな特徴は、衛生的なインテリア機能にある。

まず「Hygiene Airflow(ハイジーン・エアフロー)」システムが、前席と後席の乗員間の空気の流れを分離する。ルーフレールに設けられたインテークから取り入れた空気が、車内で上から下へ流れ、リアホイール後方のベントから排出されるという仕組みで、ヒョンデでは「バーティカル(垂直)モード」と呼んでいる。これを「ホリゾンタル(水平)モード」、つまり我々が一般的な自動車の換気と考えているモードに切り替えると、空気は前方から後方へと移動する。ヒョンデによると、このシステムは航空機に採用されている先進的なシステムからヒントを得たもので、走行中でも停車中でも作動するという。

画像クレジット:Abigail Bassett

将来的に自動運転車は複数の人々で共有することになるため、ヒョンデは空気の流れを調整するだけでなく、乗客が入れ替わる間に車内を清潔にするコンセプトも披露した。新型コロナウイルスは、呼吸器系の飛沫やエアロゾルを介して感染し、布地を含むあらゆる表面で何時間も生存できるため、ウイルス感染流行時代においては、非常に現実的な懸念といえるだろう。

SEVENには、乗客がクルマから降りた後に実行されるUV-C除菌サイクルが備わっている。UV-C(紫外線C波線)は、空気、水、非多孔質表面を殺菌できる効果があり、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2ウイルスを死滅させると、FDA(アメリカ食品医薬品)から報告されている。ただし、UV-C光は目や皮膚を焼く可能性があるため、プログラムを実行する前にすべての乗員を車外に出す必要がある。

垂直エアフローとUV-C殺菌に加えて、ヒョンデは将来のウイルスの拡散をさらに防ぐために、内装に抗菌機能を持つ銅や、衛生加工された生地を使用するなどの興味深い工夫も施している。

さらにSEVENには、乗客の靴の洗浄と消臭を行う「シューケアコンパートメント」も装備されている。

実際の充電と航続距離

 

このSEVENコンセプトは、ヒョンデの電気自動車用プラットフォーム「Electric Global Modular Platform(E-GMP、エレクトリック・グローバル・モジュラー・プラットフォーム)」をベースに作られている。このプラットフォームは、ヒョンデのクロスオーバー電気自動車「Ioniq 5(アイオニック・ファイブ)」をはじめ、KIA(起亜、キア)の新型電気自動車「EV6」など、Hyundai Motor Group(現代自動車グループ)の他の車両にも採用されているものだ。同グループの高級車ブランドであるGenesis(ジェネシス)から将来登場する電気自動車の基盤にもなる。

このプラットフォームでは、400Vと800Vの両方の急速充電に対応できるようになっており、実際に市販されているIoniq 5の場合、350kWのDC急速充電器を使えば20分以内にバッテリーを10%から80%まで充電することができる。ヒョンデによれば、同社が提供する77.4kWhの大型バッテリーパックによって、一度の充電で300マイル(約483km)以上の航続距離を得ることが可能だという。

コンセプトカーはそのほとんどがベーパーウェアではあるものの、ヒョンデのSEVENコンセプトは、想像と現実が融合した興味深いデザインで、同社が考える未来の交通手段を示唆するものになっている。

画像クレジット:Abigail Bassett

原文へ

(文:Abigail Bassett、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

新型電気自動車「Fisker Ocean」はフォックスコン製回転式スクリーンを搭載

Foxconn(フォックスコン)の特徴が、近々発売される新型電気自動車「Fisker Ocean(フィスカー・オーシャン)」の主要なディテールの1つとなる。

同社はこの電動SUVの量産予定モデルを、米国時間11月17日に開幕したLAオートショーで公開した。

このFisker(フィスカー)初の電気自動車には、Foxconn製の特徴的な17.1インチのスクリーンがダッシュボード中央に搭載されている。このタッチパネルは、縦型の「ポートレート」モードから、横画面の「ハリウッド」モードへと回転可能で、後者は駐車して充電を待つ間に、ドライバーや同乗者が(その名称の元となったように)映画を観たり、ゲームを楽しんだりするためのモードだという。

画像クレジット:Kirsten Korosec

Fiskerの共同創業者兼CEOであるHenrik Fisker(ヘンリック・フィスカー)氏は、この回転式スクリーン技術の特許を申請したと述べている。

Fiskerはまず2020年に、ラスベガスで毎年開催される「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」で、Oceanのプロトタイプを発表した。市販予定モデルとなった今回は、航続距離や各種トリムレベルとその価格、さらにパッシブ充電用のソーラールーフなどの装備も含め、車両に関するより詳細なスペックが明らかにされた。

Fiskerは4種類のトリム、14色におよぶカラーバリエーションの設定を予定しており、ベースグレードの「Ocean Sport(オーション・スポーツ)」の価格は、補助金・税金別で3万7499ドル(約430万円)となっている。このSportではフロントに搭載した1基のモーターが前輪を駆動し、最高出力は275馬力。CATL社製のリン酸鉄リチウムイオン電池を使用し、1回の充電で250マイル(約402km)の距離を走行できる。

それ以外のトリムは、いずれも車両の前後に2基のモーターを搭載する四輪駆動だが、グレードによって性能に差がつけられている。4万9999ドル(約570万円)の「Ocean Ultra(オーシャン・ウルトラ)」は540馬力で0-60mph(約96.6km/h)加速が3.9秒。そして最上位モデルの「Ocean Extreme(オーシャン・エクストリーム)」とそれに準じたローンチ・エディション(先行発売モデル)の「Ocean One(オーシャン・ワン)」は、どちらも6万8999ドル(約790万円)で550馬力を発揮、0-60mph加速は3.6秒に縮まる。

UltraとExtremおよびOneには、ニッケル・マンガン・コバルト電池を使用したCATL製バッテリーが搭載される。各バッテリーの容量は公開されていないものの、Ultraの推定航続距離は340マイル(約547km)、ExtremとOneは350マイル(約563km)を超えるとのこと。

Fiskerでは現在、2つの車両プログラムに取り組んでいる。ロサンゼルスオートショーで注目を集めたFisker Oceanは、欧州の自動車受託製造会社であるMagna Steyr(マグナ・シュタイヤー)が組み立てを担当し、2022年11月に生産開始が予定されている。2022年後半から欧州および米国で納車が始まり、2023年中には生産能力が月産5000台を超える計画となっている。中国の顧客への納車は2023年に始まる予定だ。

そしてもう1つのプログラムとして、Fiskerは2021年5月に、Foxconnと新しい電気自動車を共同開発・製造する契約を締結。ヘンリック・フィスカー氏によると、両社は「かなり早く」デザインを進めており、現在は、トランクを開ける新しい方法の特許取得やその他の技術革新に取り組むなど、エンジニアリングや技術的な詳細に没頭しているという。

おもしろいことに、この自動車製造パートナーシップは、フィスカーが独自のインフォテインメント・ディスプレイの供給を受けるためにFoxconnと話し合ったことから生まれたものだと、ヘンリック・フィスカー氏は17日のTechCrunchによるインタビューで語っている。

「自動車業界が抱えている本当の問題は、車両に搭載されている技術が3年以上も前のものであるということです」と、フィスカー氏はいう。「私たちは、クルマに搭載されているものよりも、携帯電話の方が優れていて、賢くて、速いと常に感じているのですから、これは何かが間違っています」。

同氏はFoxconnとの提携について、その狙いはiPhoneを製造している企業(Foxconn)と同じくらい早く動けるようになることだと語った。

Fiskerは1月にFoxconnとの話し合いを開始し、間もなく契約を締結した。Project PEAR(プロジェクト・ペア)と呼ばれる車両製造の契約が発表されたのは、それからすぐ後のことだ。

画像クレジット:Kirsten Korosec

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スバル初のグローバル展開、新型電気自動車「ソルテラ」がLAオートショーで米国デビュー

SUBARU(スバル)は、2021年5月にチラ見せしていたクロスオーバー型電気自動車の全貌を、11月11日に世界初公開した。そして米国時間11月17日、この「SOLTERRA(ソルテラ)」と名づけられた同社初のグローバル展開となる電気自動車は、ロサンゼルスオートショーで米国デビューを果たした。

ソルテラは、スバルとトヨタの共同プロジェクトから誕生したサブコンパクトクラスのバッテリー駆動クロスオーバーで、トヨタが4月に発表した電動クロスオーバー「bZ4X」とほとんど双子に近い兄弟関係にある。つまり、従来の「スバル BRZ」と「Toyota 86(トヨタ86)」の関係と同様だ。

このクルマを一文でまとめると次のようになる。ソルテラは、アメリカ人の飽くなきクロスオーバーへの欲求をターゲットにしており、トヨタの協力を得てスバルがEV市場に参入する足がかりとなる。

この2年間は、半導体不足により生産が滞ったにもかかわらず、スバルにとっては非常に良い年だった。米国では過去最高の販売台数を記録している。

四輪駆動の中型SUVとして知られる「Forester(フォレスター)」は、販売台数でセグメントをリードしてきたものの、2021年10月の販売台数では、小型クロスオーバーの「Crosstrek(クロストレック)」が最も売れていると報じられている(販売台数ベース)。スバルによると、フォレスターと「Outback(アウトバック)」のオフロード志向を強めたバリエーションである「Wilderness(ウィルダネス)」を販売店に留めておくことは難しく、メーカー希望小売価格より5000ドル(約57万円)も高いプレミアム価格が付けられているとのこと。

トヨタは2019年9月からスバルの20%を保有しているが、その提携は、GMがスバル(当時の富士重工業)との関係を解消した2005年にさかのぼる。トヨタとスバルの提携は、スバルが得意な四輪駆動システムの専門知識をもたらし、トヨタがハイブリッドや電気パワートレインを提供するという形で、双方にとって有益なものとなっている。2つの日本企業は、両社とも新しい領域に踏み込む際には保守的で慎重になる傾向があるが、ソルテラはスバルが考えるオフロード性能を備えた電動クロスオーバーの将来像を示すという意味でも興味深い。

全輪駆動の共有プラットフォーム

ソルテラは、スバルがトヨタと取り組んだ共同プロジェクトであるため、デザイン(特にインテリア)はトヨタに少々似ているが、エクステリア、シャシー、全輪駆動システムはすべてスバルによるものだ。トヨタはバッテリーの調達も担当している。

このバッテリーは、71.4kWhのリチウムイオン電池で、前後車軸の間に格納されており、フロントとリアに搭載された合計2基の電気モーターに接続されている(日本版編集部注:モーターをフロントに1基のみ搭載する前輪駆動仕様もあり)。一度の充電で走行可能な航続距離は460km前後(WLTCモード、日本国内向け基準)になる見込みだという(日本版編集部注:前輪駆動モデルは530km前後)。最大150kWのDC急速充電に対応し、0~80%までわずか30分程度で充電できる。

モーターの最高出力は、前後とも80kWで合計160kW(約217.5ps)。最大トルクは246lb-ft(約333.5Nm)で、低回転から十分な力を発揮するため、いわゆるソフトローダーとしては十分な動力性能が期待できるだろう。(日本版編集部注:前輪駆動モデルは1基のモーターのみで150kW[約204ps]を発生)。

画像クレジット:Kirsten Korosec

オートショーに先駆けて郊外で行われた発表会では、小さな岩が転がる道を登ったり浅い池を越えたりしながら、集まった報道陣の前で写真撮影を行い、軽めのオフロード走行を披露した。

ソルテラには、スバルのトレードマークである左右対称の全輪駆動システムに加え、滑りやすい路面でトラクションを高める「X-MODE(エックスモード)」が搭載されている。1輪が宙に浮くような状況では、ブレーキを自動的に調整して障害物を乗り越えていくことができるため、適度なオフロード性能を備えたEVと言えるだろう。210mmの最低地上高は、同じ電動小型クロスオーバーである「Volkswagen(フォルクスワーゲン)の「ID. 4」やTesla(テスラ)の「Model Y(モデルY)」よりも優れていると、スバルはLAオートショーにおける発表の際に強調していた。

先の発表イベントでは、スバルはソルテラが階段やオフセットランプのようなオフロードの障害物でテストしている映像を流し、この小型クロスオーバーがどれほどの性能を備えているかを示した。さらに「Jaguar I-Pace(ジャガー・アイペース)」のような競合車と、同じ障害物テストで対決までさせてみせた。

価格はまだ正式には発表されていないものの、スバルによれば、米国では3万9000ドル(約450万円)前後から購入できる見込みとのこと。ソルテラは2022年中旬までに日本、米国・カナダ、欧州、中国などの市場で販売が始まる予定だ。

画像クレジット:Kirsten Korosec

原文へ

(文:Abigail Bassett、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ドラレコの映像からリアルタイムの都市のデジタルツインをつくるNexar

スマートドライブレコーダーで知られるNexarが、Qumra CapitalがリードするシリーズDのラウンドで5300万ドル(約60億4000万円)を調達した。その資金の一部は、クラウドソーシングで一般から提供されたドライブレコーダーの映像から作られ、自動車のOEM各社や都市に提供される、同社の「デジタルツイン」サービスの拡張に充てられる。

このラウンドにはState Farm VenturesやCatalyst、Banca Generali、Valorおよび以前からの投資家であるAtreides Management、Corner Ventures、Regah Ventures、Alephが参加している。

「Nexcarを始めたときから、物理的世界のGoogleになるというビジョンを持っていました。その後、多くのマシンやアルゴリズムが世界に関するデータを必要とするようになり、いずれビジョンどころか必要になると信じています」とNexarのCEOであるEran Shir(エラン・シール)氏は述べている。

Nexarのプロジェクトへの本格的な取り組みは、2019年に立ち上げた「Live Map」で始まった。サービスは、道路のリアルタイムの映像を提供し、コンピュータービジョンを使って工事や標識などの特徴をユーザーに教える。その後Nexarは、このサービスが提供する情報の層や特徴を増やしていった。2015年に創業された同社は、今では毎月1億5000万マイル(約2億4000万km)の道路映像を所有している。

今度の資金はデータの利用しやすさの向上と、ドライブレコーダーからの映像の更新サイクルを数秒に短縮して事故や道路陥没などをすばやく見つけることに使われる。たとえば、ネバダ州南部地方交通委員会はNexarのCityStreamプラットフォームを利用して、工事現場とその前後の交通量を減らしている。

また、シール氏によると、その特徴検出能力により、災害時の道路状況を早く把握可能、冬季には除雪済みの道路がわかるという。

都市行政だけでなく、この映像は自動車企業にも役に立つ。「あなたが自動車関連のOEMなら、Nexar CityStreamの『Autopilot or Supercruise(自動操縦または超高速走行)』を有効にして、障害物や事故や工事などがまったくない、長い道路区間を知ることができる。逆に工事があるときは、終了時にそれらの機能を再有効にできる」とシール氏。

Nexarのデータは、例外的な現象や衝突、異常な道路状況などを見つけられるため、自動運転車のシステムで使われるAIのモデルの訓練にも利用できる。

さらにシール氏は「3年から5年後の自動車がどうなってるか考えると、どれも自律性が極限まで達しているでしょう。そうなると、新しいタイプの地図が必要なはずです。私たちがこれから進んでいく未来には、Googleマップのような地図はもはや役に立たないでしょう」という。

画像クレジット:Nexar

[原文へ]

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

トヨタの電気自動車 「bZ4x 」が2022年半ばに米国登場、最大航続距離402km

トヨタ自動車の新ブランドbzの最初の電気自動車であるbZ4xは、2022年半ばに米国で発売される予定で、推定航続距離は最大250マイル(約402km)だ。

bZ4xは、米国時間11月17日に開幕したロサンゼルスオートショーでともに発表されたスバルのSolterraとほぼ同じモデルだ。bZ4xとSolterraは、トヨタとスバルの電気自動車専用プラットフォームの共同開発という提携で生まれたクルマだ。この2つの車には、テールライトをはじめとするいくつかの小さな違いがある。しかし、一般の人からするとbZ4xとSolterraを見分けるのは難しいかもしれない。

画像クレジット:Kirsten Korosec

トヨタは10月に日本市場向けのbZ4x生産モデルを公開した。米国版は、右ハンドルという点を除いて基本的に同じだが、航続距離の数値が新たに明らかになった。この数値はトヨタの社内推定値であり、生産日近くになって発表されるEPA公式値ではない。航続距離250マイルは、bZ4xの前輪駆動モデルであるXLEのものだ。全輪駆動モデルの航続距離は明らかにされなかった。

bZ4xは、トヨタの二酸化炭素排出量削減に向けた「上記のすべて」アプローチの一環であり、業界が電気自動車中心のアプローチに傾いている中、トヨタはこのスタンスを堅持している。今週行われたイベントでトヨタの幹部は、マイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド、バッテリー電気、水素燃料電池の車両を幅広く提供するという戦略を繰り返し述べた。

画像クレジット:Kirsten Korosec

GM(ゼネラルモーターズ)をはじめとする他の自動車メーカーは、将来的にバッテリー駆動の電気自動車に完全に移行することを約束しているが、トヨタはそれを譲らないようだ。同社は、2025年までにグローバルで約70種類の電動化モデルを提供する計画を発表している。そのうち、15種が電気自動車で、ここにはbZ(beyond zeroを指す)ブランドの7種が含まれる。

2020年代末までに、同社は年間販売台数1000万台のうち200万台がバッテリー駆動車になると見込んでいる。また、200万台は内燃機関を搭載する。残りの800万台、つまりポートフォリオの80%はハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、水素燃料電池車になる。

画像クレジット:Kirsten Korosec

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

ポルシェが電気自動車Taycanにセダンとスポーティワゴンの2種類のGTSを投入

Porsche(ポルシェ)は、汎用性が高くパフォーマンスに特化したGTSの名を、電気自動車Taycan(タイカン)最後の2車種に与えた。

ロサンゼルスオートショーに先立つ米国時間11月16日夜のイベントで、ポルシェはTaycan GTSセダンと、新しい第3のボディスタイルを持つTaycan GTS Sport Turismo(タイカンGTSスポーツツーリスモ)を発表した。この2種類のTaycanの発表は、ポルシェにとっては1世代以上にわたる最大の賭けを締めくくるものになる。ポルシェは2019年秋に発表された4ドアのTaycanの開発に、10億ドル(約1148億円)以上を投じた。それ以降、ポルシェはTaycanを、Cross Turismo(クロスツーリスモ)とともに完全電気式ワゴンへと進めてきた。

今回の新車種の投入によって、後輪駆動のTaycanの4、4S、Turbo、Turbo SそれぞれのセダンとCross Turismoバリエーションと合わせて計10種類となる。しかし、2022年の第2四半期に米国での販売が開始される際に、顧客から最も大きな反響を呼ぶのは、カスタムキャリブレーションとチューニングによって、より激しく、より速い反応のパフォーマンスを実現した今回のTaycan GTSのバリエーションとなるだろう。

画像クレジット:Kirsten Korosec

Taycanの10種類のバリエーションは多い。だが、北米ポルシェのCEOであるKjell Gruner(キエル・グルーナー)氏は、これは個々の顧客の要求を満たすという会社のミッションに合致しているのだと語っている。

グルーナー氏は米国時間11月16日のインタビューで「私たちは決して1つのもので押し切ろうとはしません」と語った。「そしてそれは、単なるバリエーションではなく、それぞれのバリエーションの中にも考えられるのです」。

Tycanのマルチバリエーション戦略は終わったが、ポルシェは次の「エレクトリックベイビー」にも同じような白紙状態からのアプローチを採用するだろう、とグルーナー氏はいう。その次期EVとは、Premium Platform Electric(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)プラットフォームを採用した、ポルシェ初のモデルとなるMacan(マカン)だ。電気自動車のMacanの出荷は2023年に予定されている。

Taycan GTSの話に戻そう

GTSバージョンのTaycanでは、フロントノーズカバー、サイドスカート、サイドウィンドウトリムがハイグロスブラックに変更されている他、ヘッドライトがブラックに着色されている。このTaycanには、リアやサイドスカートなどにGTSのロゴがふんだんに使われている。

車内では、他のモデルと同じインフォテイメントシステムが採用されており、マルチスクリーンのダッシュボードには、1963年のポルシェ911からインスピレーションを得たディテールが盛り込まれている。Apple CarPlayとAndroid Autoは、スマートフォンの表示と機能を車の中央画面に表示するための車載プラットフォームだが、他のバージョンと同様にGTSにも搭載されている。また、フルオートエアコンや充電プランナーなどの機能も備えている。

Taycan Cross TurismoとTaycanセダンをマッシュアップしたようなTaycan GTS Sport Turismoは、リアスポイラーをボディカラーに合わせて塗装し、ホイールアーチにクラッディング(被覆加工)をしていない点が特徴的だ。このSport Turismoは、Cross Turismoワゴンと同じシルエットと収納スペースを持っている。だが、セダンのTaycanよりも低い車高を持つことで、よりレース指向でパフォーマンスを秘めた外観と雰囲気を醸し出している。

画像クレジット:Kirsten Korosec

特に注目したいのは、今回のGTSには、ドライバーや同乗者が光の入り具合を調整できる新しいパノラミックルーフを採用している点だ。ルーフはデジタル時計のような9つの液晶フィルムセグメントで構成されている。各セグメントは電気的に独立している。充電されると、それらのセグメントは不透明になる。ユーザーはクリア(透明)、マット(不透明)、40%、60%の4種類のプリセットパターンから選ぶことができる。車両の電源がオフになると、ルーフは自動的にマットに切り替わる。システムは前回の設定を記憶しており、車両の電源を入れると、ドライバーが前回選択した設定へと戻る。

画像クレジット:Porsche

Taycan GTSセダンとGTS Sport Turismoの間には、片方は低床ワゴンという明確な違いがあるものの、共通する部分も少なくない。両車とも同じ永久磁石式の1速フロントモーター、大型の永久磁石式リアモーター、2速リアトランスミッションを搭載し、0〜60マイル/h(0〜97km/h)を3.5秒で加速することができる。

93.4kWhのバッテリーと、最大270kWの速さで充電可能な800Vのアーキテクチャを標準装備している。つまり5%から80%までの充電を22.5分で行うことができるということだ。

GTSは、価格とパワーの点でTaycan 4SとTaycan Turboの中間に位置する(ブランドのローンチコントロール機能により、総出力は590馬力となる)。Taycan GTSセダンは13万1400ドル(約1509万円)から、Taycan GTS Sport Turismoは13万3300ドル(約1531万円)からとなっている。どちらの価格にも、配送料、処理費、手数料の1350ドル(約15万5000円)は含まれていない。

また、ポルシェはまだ推定航続距離を発表していないが、GTSの航続距離も4SとTurboの中間になると思われる、つまり227マイル(約365km)から212マイル(約341km)の間になるだろう。

画像クレジット:Kirsten Korosec

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:sako)

カナダのオンライン中古車購入プラットフォームClutchが事業拡大へ約91億円調達

Clutch(クラッチ)は、カナダ最大のオンライン中古車購入プラットフォームになりたいと考えている。2016年に設立された同社は、8000万ドル(約91億円)のシリーズBラウンドを完了したばかりだ。同社はこのラウンドで獲得した資金を、カナダ国内の新しいマーケットに進出するための準備として、チームの拡大、物流機能の拡充、在庫の拡大に充てる。

ClutchのCEOであるDan Park(ダン・パーク)氏は「我々は2023年末までにカナダ人の90%にサービスを提供したいと考えています。そのためには、カナダのいくつかの主要都市でサービスを開始する必要があります。モントリオールやウィニペグなどはカナダの中でも大きな都市であり、最終的には進出する予定です」とTechCrunchに語った。

Clutchは、近年市場に登場した数少ないオンラインカーディーラーの1つだ。オンラインカーディーラー各社は注力する地域を抱える。米国ではCarvanaとVroomが、英国ではCazooが、メキシコではKavakが、それぞれ最大のプレイヤーとなっている。Clutchはトロントに本社を置き、アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州、ノバスコシア州、ニューブランズウィック州、オンタリオ州、プリンスエドワード島州でサービスを展開しているが、2022年にはさらにエリアを拡大する予定だ。海外進出よりもカナダ市場に注力することで、Canada Drivesのような競合他社に先駆けて、数十億ドル(数千億円)規模のビジネスチャンスをつかみたいと考えている。

パーク氏によると、Clutchはこれまでに数千台の中古車を販売し、現在は約1250台超の在庫を抱えているという。同社は、過去の債務融資を使って車両を購入し、オークション、個人販売者、フリートなどから調達した車両を210項目におよぶ厳しい再調整プロセスにかけ、その間にClutchの点検・整備部門が車両の安全性と外観をチェックする。その後、一新されたクルマは平台型トラックにのせられ、パーク氏がいう「ボタンをクリックするとクルマがあなたの家の前に現れるという、可能な限り魔法のような方法で」最終消費者に直接届けられる。

D1 Capital Partnersがリードし、Flight Deck Capital、Canaan Partners、Upper90、Real Ventures、GFC、BrandProject、FJ Labsが参加した今回の資金調達ラウンドは、Clutchが2022年中に従業員を約160人から250人超に増員するのに役立つだけでなく、事業拡大に必要なインフラと物流ネットワークの構築にも役立つ。Clutchはカナダ国内に倉庫を持っていて、そこに車を保管し、最短で翌日には納車できるようにしている。

「在庫を増やし、幅広く多様な車種を揃えることが、来年の大きな課題です」とパーク氏は話す。「顧客がClutchのファンであったとしても、もし顧客が走行距離5万キロのスバルの青いOutbackで2018年以降のモデルを本当に探していて、当社にそのモデルの在庫がない場合、顧客がClutchから購入する可能性はかなり低くなります。我々は、できるだけ多くのカナダ人に対応したいと考えています。そのため、在庫を増やして品揃えを充実させることは、来年のことを考えるとき大きなフォーカスであり、間接的な資金の使い道でもあります」。

eコマースはClutchのビジネスモデルの一部にすぎず、売上高の約半分は保証、保険、融資などのフィンテックサービスによるものだとパーク氏は話す。

「我々がここでやろうとしているのは、本当に合理的な体験を提供することであり、これまでその面での垂直統合はあまり行われてきませんでした」とパーク氏は指摘する。「すばらしい自動車購入体験を提供するだけでなく、消費者をサポートし、また一部のケースでは消費者の信用回復に役立つ金融商品の提示などすばらしい所有体験も提供できます」。

Clutchは、事業規模の拡大にともない、ユニットエコノミクスの向上を目指している。同社のビジネスで最もコストがかかるのは、車両の購入と、生産工程を経て車両を手に入れるための物流だ。カナダ国内でさらに規模を拡大すれば、部品の購入、配送トラックの使用、リフトの使用、その他のコストを効率化することができ、いつかはより多くのユニットで償却できるようになる。

Clutchは中古車マーケットプレイスであるため、在庫のうち電気自動車(EV)はごく一部にすぎないが、パーク氏は今後数年でそれも変わってくると考えている。

「我々のモデルは、EVにより適していると確信しています」と同氏は話す。「EVは一般的に再調整が少なくて済みます。ガソリン車の可動部品は2000個ですが、EVは200個で、当然メンテナンスも少なくなります」。

従来のディーラーの多くは、利益率を得るために部品やサービスに大きく依存しているが、Clutchはそこで利益を得ているわけではない。利益率はさておき、Clutchが内燃機関搭載車を販売する際には、そのクルマが送られる地域に3本の木を寄付するとパーク氏は話した。同社はこれまでに約8000本を植林したという。

画像クレジット:Clutch

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

Lucid Groupの第3四半期末以降のEV予約が1万7000台を突破

Lucid Group(ルーシッドグループ)は上場企業としての最初の四半期を終えた。急成長する高級EV市場で頂点を目指す中、株価は上昇し、顧客への納車も進む。

同社は、2007年にAtievaという名で創業して以来、長い道のりを歩んできた。EV用バッテリーやパワートレインの製造から高級車の製造にシフトし、2021年最も注目されたEV SPAC取引の1つであるChurchill Capital IV Corpとの合併を経て、7月に株式を公開した。

この新規参入EV企業の株価は、10月27日の27ドル(約3100円)前後から、米国時間11月15日の市場終了時には44.88ドル(約5100円)と、この1カ月で約2倍になった。これは、同社が10月末に、16万9000ドル(約1920万円)のセダン「Air Dream Edition」を20数台、顧客へ納入し始めたためだと思われる。その数週間前には、このモデルのEPA(米環境保護庁)認定の航続距離が520マイル(約837km)以上と、市販されているEVの中で最長であると発表していた。

全体として、第3四半期の顧客からの予約は1万3000件に増加し、それが約13億ドル(約1480億円)という売上高に反映された。また、7月には1万1000台だった予約が、四半期末には1万7000台超に増加した。Lucid GroupのCEOであるPeter Rawlinson(ピーター・ローリンソン)氏は、11月15日に投資家に対し、予約の大部分は米国からであり、予約件数順ではサウジアラビアが第2位だったと話した。同社は、サウジアラビアの政府系ファンドから大規模な投資を受けており、現在も同ファンドは筆頭株主だ。

ローリンソン氏は声明で、2022年には2万台の生産能力を達成できることを確信していると述べた。同社の長期的な目標は、それよりほんの少しだけ野心的なもので、10年後までに50万台としている。だが、まずは、520台のDream Editionを顧客に届けることが目標だ。その後、Grand Touring、Touring、Air Pure(ベースモデルで、価格は約7万7000ドル[約880万円]から)を来年に出荷する予定だ。

いずれの車両も、アリゾナ州カサグランデにある同社の工場で生産される。同工場は今後、約285万平方フィート(約26万平方メートル)にまで拡張する。ミステリアスなSUV「Project Gravity」を含め、最終的には2023年末までに同工場で年間最大9万台、全体では最大36万5000台の製造を目指す、とローリンソン氏は話す。

Gravityは2023年後半の生産に向け順調に進んでいることを、幹部が投資家向け電話会議で認めた。ローリンソン氏は、このSUVについて「AirがSUVの分野で果たしたように、GravityもSUVの分野で破壊的な役割を果たします」と誓った以外には、あまり詳細に触れなかった。

財務面では、SPACとの合併とPIPE(公開会社による私募増資)による44億ドル(約5020億円)と、SPAC取引終了時の貸借対照表上の現金を合わせ、約48億ドル(約5470億円)の現金残高で四半期を終えた。CFOのSherry House(シェリー・ハウス)氏は、生産コストは今期の利益に反映されているものの、顧客への納入が10月30日に始まったため、車の売り上げが財務諸表に反映されるのは次の四半期になってからだと明言した。

また、11月15日には、Lucid AirがMotorTrendの2022年カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたことが発表された。「新しいブランド、新しい会社が受賞したことは、私の知る限り、過去に一度しかありません。私はその場にいたので知っています」と、2012年にTesla(テスラ)がModel Sで受賞したときのことを指して、ローリンソン氏は語った。同氏は、2009年にTeslaに入社して以来、Model Sの車両エンジニアを務めていた。

画像クレジット:Kirsten Korosec

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国が独占するEV用電池の鉄系正極材料製造を目指すMitra Chem

Mitra Chem(ミトラ・ケム)の名称で知られるMitra Future Technologies(ミトラ・フューチャー・テクノロジーズ)は、億万長者の投資家Chamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏が創立したSocial Capital Holdings(ソーシャル・キャピタル・ホールディングス)が主導する2000万ドル(約23億円)のシリーズA資金調達を実施した。このスタートアップ企業は、中国以外向けの鉄系正極材料を製造することで、現在、中国が独占している北米のバッテリーサプライチェーン業界を活性化することを目指している。

今回のラウンドには、台湾の億万長者Richard Tsai(リチャード・ツァイ)氏、Fontinalis Partners(フォンティナリス・パートナーズ)、Integrated Energy Materials(インテグレーテッド・エナジー・マテリアルズ)、Earthshot Ventures(アースショット・ベンチャーズ)も参加した。また、かつてTesla(テスラ)でグローバル・サプライ・マネジメントを担当しており、現在はロケット打ち上げ企業のAstra(アストラ)でサプライチェーン担当VPを務めるWill Drewer(ウィル・ドリューリー)氏が、パリハピティヤ氏とともにこのスタートアップの取締役会に加わることになった。

鉄系電池は、特に中国の企業が独占的に製造できる特許を取得していたため、もっぱら中国で主流になっており、欧米ではニッケル系電池が普及していた。しかし、これらの特許が間もなく切れることから、鉄系電池は自動車メーカーにとってますます人気の高い選択肢となりつつある。Tesla(テスラ)は最近、安価な鉄系電池を、全世界向けのModel 3(モデル3)とModel Y(モデルY)に標準搭載することを認めた

自動車メーカーで鉄系電池の採用が進む一方で、問題となっているのが中国の優位性だ。「これは大きなアキレス腱です」と、Mitra Chemの共同設立者兼CEOであるVivas Kumar(ヴィヴァス・クマール)氏は、最近のTechCrunchによるインタビューで語っている。

このサプライチェーンにおけるギャップを埋めるために、同社は中国以外のバッテリーに適用できる鉄系正極材料の製造を計画している。テスラでバッテリーサプライチェーン担当チームに所属していたクマール氏によると、鉄系材料を採用するという決定は、単に地政学的な問題のみならず、特に自動車メーカーが、消費者の幅広いニーズを満たすために、さまざまなモデルのEVを発売することによって、EV用バッテリーに対する市場の需要が高まっていることに応じるためだという。

「バッテリーが自動車に使われている部品の中で最大のものであり、電気自動車の性能を決定する部分でもあることを考えれば、用途別の差別化が必要になるのは時間の問題でした。現在、市場で使用されている単一サイズですべてに合わせる正極材料のソリューションだけでは対応できなくなります」と、クマール氏はいう。

特に、General Motors(ゼネラルモーターズ)やFord(フォード)を含む北米の自動車メーカーが、電池メーカーと提携して電池セル工場を米国内に構えることを次々と発表する中で、米国に垂直的なサプライチェーンのハブを作ることは、ビジネス的にも意味のあることだと同氏は付け加えた。

Mitra Chemは現在、カリフォルニア州マウンテンビューに研究施設を建設中で、2022年半ばまでにプレパイロット生産が可能になる予定だ。同社は共同創業者でスタンフォード大学の材料科学教授であるWill Chueh(ウィル・チュエ)氏が先駆けて開発した機械学習プロセスを採用し、この鉄系正極材料を研究所から生産規模まで、他社よりも早く実現すると述べている。

業界情報会社のBenchmark Mineral Intelligence(ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス)によると、原材料の精製から必須部品の製造、最終的なリチウムイオン電池セルの生産に至るまで、中国はサプライチェーンのすべての段階において、電池業界最大のプレイヤーであるという。

ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスが「リチウムイオン電池の中核を成す部品」と呼ぶ正極や負極などの部品の生産量は、世界の約66%を中国が占めている。また、中国は大規模な電池工場の計画数も最も多く、2030年までに計画されている200施設のうち148施設が中国にあることが、同社の調べで分かった。

クマール氏は、現在の電池サプライチェーンの状況を、歴史的な米国の石油に関する立場に例えながら次のように述べている。

「75年間、米国は石油の純輸入国であり、そのエネルギー面における不利益は、米国の消費者や、時には敵対する他国との関係にも大きな影響を与えてきたことを忘れてはなりません」と、同氏は語る。「今も同じことが起きています。(中略)北米にサプライチェーンのようなものがなく、100%外部に無防備な状態であるということは、過去に石油に関して無防備な状態であったのと同じことになります」。

画像クレジット:ChargePoint

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

電気自動車の駆動用などで需要が高まるネオジム磁石、NIMSが最小限の実験と機械学習による最適な製作条件の予測に成功

国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)は11月15日、永久磁石では最強とされる希土類磁石(レアアース磁石)、ネオジム磁石の製作条件を変えて得たデータを機械学習させることで、最小限の実験回数で磁石特性を最大化できることを実証したと発表した

電気自動車の駆動用などで需要が高まっているネオジム磁石だが、原料合金の組成や温度管理など、その製造工程や加工条件は複雑で、用途に合わせた特性を得るには、これらの無数の組み合わせを考慮し、実験を重ねて最適化しなければならない。

NIMSでは、ネオジム磁石の製作条件と特性のデータを機械学習させ、優れた磁気特性が表れると思われる製作条件を予測した。その予測に従い実際に製作したところ、磁石の特性が効率的に最大化できたとのことだ。この機械学習は、18点という少ない初期データからスタートしている。アクティブラーニングによる特性予測と製作実験を繰り返すと、40回ほどの追加実験で磁気特性が大きく向上したという。

今後は、用途に応じて望みどおりの特性を持つネオジム磁石が素早く開発できるよう、合金組成や磁気特性などのデータの蓄積を進め、アクティブラーニングを活用し、製作条件の効率的な予測を可能にする手法の開発を目指すとのことだ。

電動キックスクーター独TierがNextbikeを買収、マイクロモビリティ業界統一を予見させる大型買収

ドイツ・ベルリンを拠点とするヨーロッパ最大級の電動キックスクーター運営会社Tier Mobility(ティア・モビリティー)は、ドイツの自転車シェアプラットフォームNextbike(ネクストバイク)を買収した。この動きは、TierがライバルのLime(ライム)やVoi(ボイ)などと同じく既存の市場シェアを利用する複合アプローチの採用を示唆するものだ。またこれは、将来マイクロモビリティ業界がさらに統一されることを予見させる大型買収でもある。

2020年、LimeはUber(ウーバー)のマイクロモビリティ子会社であるJump(ジャンプ)を、UberのLimeへの1億7000万ドル(約194億1000万円)の投資の一環として、Jumpが所有するすべての電動自転車、電動キックボードとともに獲得した。そして2021年11月、Limeは5億2300万ドル(約597億3000万円)を調達し、上場を控えた最後のラウンドになるだろうと語った。

TierとNextbikeは契約条件を明らかにしていないが、Tierはこの買収に、2021年10月、同社が世界で複合市場企業としての存在感を高め、戦略的投資と買収を追究するためにSoftbank Vision Fund 2のリードで実施した2億ドル(約228億4000万円)のシリーズDラウンドで得た資金を充てたかもしれない。シリーズDの前には、2021年夏の6000万ドル(約68億5000万円)の債券による調達と2020年11月にやはりSoftbankがリードした2億5000万ドル(約285億5000万円)のシリーズCを実施している。

Tierは他にe-moped(電動スクーター)の車両も所有しており、6カ国への事業拡張の一環としてロンドンとストックホルムでサービスを開始するなど、ここ数カ月間電動バイクに大きく力を入れている。最近Nextbikeは、所有する車両の半数以上が盗難と破壊の被害に遭い、ウェールズのカーディフおよびヴェール・オブ・グラモーガンの運営を中止せざるを得なかった。現在の公共バイクシェア事業を2004年から運営している同社は、破壊された車両を修理、交換する必要に迫られており、状況が改善しなければ当地での事業を恒久的に中止するかもしれない。しかしこの問題は明らかにTierの手に余っている。

ヨーロッパと中東16カ国、160以上の都市で運営しているTierは、ウェールズにはまだ進出していない。Netbikeと合わせると、Tierは400以上の都市で25万台以上の車両を展開することになる。同社の車両には自転車、電動自転車、貨物自転車、電動キックボード、電動スクーターがあり、シェア方法はフリーフロート型、ステーション型、およびハイブリッド型があると同社は言っている。

「Netbikeと同社の数百都市にわたる類を見ない経験と関係性を獲得したことは、当社がバイクシェア事業を次の段階へと進め、より多くの人たちをクルマから降ろし、最も持続可能なモビリティソリューションを提供するまたとない機会です」とTierのCEOで共同ファンダーのLawrence Leushner(ローレンス・ルーシュナー)氏が声明で語った。「2組の強力な経営チームに共通する持続可能性と都市への敬意とTierの財務基盤と資本効率に支えられ、モビリティを永遠に変えるための飽くなき合同ミッションを追究していきます」。

画像クレジット:Tier Mobility

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

EVメーカーCanooのバッテリーサプライヤーにパナソニックを選択、施設拡大計画も発表

2020年に上場を果たした電気自動車メーカーのCanoo(カヌー)は米国の施設を拡大中で、Walmart(ウォルマート)で有名なアーカンソー州ベントンビルに本社と別の施設を設置する計画だ。

2021年11月15日に行われた第3四半期決算発表ではまた、パナソニックをバッテリーサプライヤーとすることや他の施設拡大計画についても発表した。施設拡大には、アーカンソー州フェイエットビルでの研究開発センター設立、同社の米国初のオクラホマ工場でのオペレーション拡大などが含まれる。さらに同社は、ライフスタイル車両の生産開始時期を2023年初頭から2022年第4四半期以前に前倒しすることも発表した。

2021年初め、同社は製造に関する2つの発表を行った。同社は、ライフスタイル車両の生産委託先として、オランダのVDL Nedcarを指名した。VDL Nedcarは、Canooが米国にメガマイクロファクトリーを建設している間、米国およびEU市場向けの車両を生産する。Canooはこれまで、VDL Nedcarの工場で2022年に米国および欧州市場向けに最大1000台の生産を想定し、2023年には1万5000台を生産することを目標としていた。CEO兼会長のTony Aquila(トニー・アクイラ)氏は8月に、2023年の生産台数を2万5000台に引き上げた。

Canooは6月、オクラホマ州に最初の工場を建設する計画を発表した。その際、オクラホマ州は、この施設と製造のフェーズ2を支援するために、3億ドル(約342億円)の非希釈型金融インセンティブを約束した。アクイラ氏は11月15日、オクラホマ州がさらに1億ドル(約114億円)のインセンティブを追加し、合計4億ドル(約456億円)としたと発表した。

「我々は引き続き、『Big News or No News』をモットーにしています。ですので、米国での高度な生産を加速させて2022年第4四半期の前に開始します」とアクイラ氏は声明で述べ、施設がある州や大学から約1億ドルの車両注文を目標にしていると付け加えた。

オクラホマ州の工場には今後、研究開発、ソフトウェア開発、カスタマーサポート、ファイナンスの各センターが設置される予定だ。

第3四半期決算は純損失が8090万ドル(約92億円)となり、前年同期の2340万ドル(約26億円)から約4倍に拡大した。

画像クレジット:Canoo

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

自動運転トラック界、最後の非上場企業として投資家の注目を集める「Kodiak」

シリコンバレーで最後の株式非公開企業の1つであるKodiak Robotics(コディアック・ロボティクス)が、新たに1億2500万ドル(約142億円)の資金を調達した。この資金は、商業化に向けて従業員を倍増させるために使用される。

募集を超えた応募があった今回のシリーズBラウンドは、出資者の数が非常に多いことに加え、主導した投資家の名前が公表されていないことが特徴的だ。TechCrunchが耳にした話によると、ある貨物・物流会社が、このラウンドの戦略的主導投資家として、特別利害関係者向けの金融機関を設立したとのこと。

それ以外の投資家には、新たに加わったSIP Global Partners(SIPグローバル・パートナーズ)、Muirwoods Ventures(ミュアウッズ・ベンチャーズ)、Harpoon Ventures(ハープーン・ベンチャーズ)、StepStone Group(ステップストーン・グループ)、Gopher Asset Management(ゴーファー・アセット・マネジメント)、Walleye Capital(ウォールアイ・キャピタル)、Aliya Capital Partners(アリヤ・キャピタル・パートナーズ)などが含まれる。また、既存投資家であるBattery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)、CRV、Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)も参加した。2021年6月にKodiakへの戦略的投資を発表していたBridgestone Americas(ブリヂストン・アメリカス)とBMW i Venturesは、今回のラウンドで資金を転換した。

Kodiakは、2018年の創業以来、合計で1億6500万ドル(約188億円)を調達している。同社は評価額を公表していない。

多くのスタートアップ企業と同様に、この資金はより多くの人材を雇用するために使われる。Kodiakでは、従業員数を現在の90人から、来年末までに約170人に増やすことを目指している。

創業者兼CEOのDon Burnette(ドン・バーネット)氏によれば、今度の採用は社内のすべての部署に及ぶという。新たに調達した資金は、業務の拡大と保有車両の拡充に充てる予定だ。Kodiakでは、少なくとも15台のトラックを追加し、合計25台以上の自動運転走行車を展開する計画だ。

「私たちは規模を拡大する必要があり、規模の拡大には会社全体の成長が伴います。より多くのドライバー、オペレーター、エンジニアが必要になります」と、バーネット氏はTechCrunchによるインタビューで語った。「研究開発が資金の主な使途であることは間違いありませんが、車両フリートの規模拡大も大きな課題です。当然ながら、この分野を見ていると、商業的な牽引力、顧客、パートナー、走行距離、自動運転貨物輸送ネットワークの規模などへの関心が、ますます高まっていることがわかります。私たちはこれらすべてに対する取り組みを拡大していくつもりですが、それにはお金がかかります」。

今回のシリーズBラウンドは、Kodiakの非常に重要な時期に実施された。同社の規模は、他の自動運転技術企業でトラック輸送を目指しているAurora(オーロラ)やWaymo(ウェイモ)などと比べたら数分の一に過ぎない。しかし、はるかに規模が大きくて資金力のあるライバル企業よりも、Kodiakは資本効率が高いと、バーネット氏は主張している。

これはKodiakが永遠に資金調達を求め続けるという意味ではない。経営の規模が大きくなれば、同社はさらに資金を求め、公開上場や非登録証券市場という選択肢を検討することになるだろう。バーネット氏は合併は考えておらず、買収も求めていないと述べている。

自動運転技術業界の資金調達について、バーネット氏は「今後の展開が非常に興味深い」と語っている。「投資欲求をそそるかという観点から考えると、今回のラウンドが非常に多くの応募を集めたことは、投資家の関心がまだ高いことを示していると思います。競合他社の多くが株式を公開しているため、非公開市場では、Kodiakは大きな進展が見られる最後の非上場の自動運転トラック企業の1つとして位置づけられます」。

10月にKodiakは、第4世代となる自動運転走行トラックシステムの詳細を明らかにし、自社の保有するPACCAR(パッカー)製クラス8トラックを15台、増車すると発表した(現在は10台のトラックが導入されている)。この第4世代のトラックには、フロントルーフラインに設置されたセンターポッドと、両サイドミラーに組み込まれた左右のポッドに、モジュール式のセンサー群が搭載されている。

画像クレジット:Kodiak Robotics

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

本田技研工業がオフロードも走れる最新自律型作業車両を公開

CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)2018で、いくつかのコンパニオンモビリティロボットのコンセプトを公開したHonda(本田技研工業)は、そのうち少なくとも1つ、オフロードを走れる自律走行車の開発を進めている。Hondaとエンジニアリング会社のBlack & Veatch(ブラック・アンド・ヴィアッチ)は、第2世代の自律作業車(AWV)を、ソーラーパネルの建設現場で試用している。

これは、複数の自律作業車が連携して作業を行う初めてのフィールドテストだ。自律作業車はトレーラーを牽引し、建設資材や水などの物資を1000エーカー(約4.04平方キロメートル)の作業現場で運んだ。自律作業車は、最大で399kgの有料積載量を運ぶことができ、総重量750kgのトレーラーを牽引することができる。

自律作業車を紹介する動画の中で、Black & Veatchの社員は、このような広い敷地を移動するには時間がかかると述べている。そのような環境では、自律作業車に資材を積んで別の場所に送ることで、社員の移動時間を短縮し、他の作業に充てることができ、効率的に作業を進めることができる。

Hondaは、現場の高精細な地図を作成し、オペレーターが自律作業車の始点と終点を設定できるようにした。自律作業車は目的地から数センチ以内に停止したという。また、自律作業車は自律走行だけでなく、遠隔操作も可能だ。

また、同社によると、高温環境下でも1回の充電で最大8時間の走行が可能だという。自律作業車には、GPS、レーダー、LiDARなどのナビゲーション用センサーや、遠隔監視用の3Dカメラなどが搭載されている。Hondaによると、自律作業車は最大積載量でも、ユースケースに応じて最大27.9マイル(約45km)の航続距離を実現している。

Hondaは、(いまのままでもかわいい)プロトタイプを改良しながら、自律作業車の性能とデザインを向上させることを目指している。また、アタッチメントやツールを追加できるようになるかもしれない。なお、Hondaは、自律作業車の市販化について、まだ明らかにしていない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のKris HoltはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Honda

原文へ

(文:Kris Holt、翻訳:Yuta Kaminishi)

テスラがEV充電施設にスターリンク衛星インターネットアンテナを配備

Tesla(テスラ)のEV充電網Supercharger(スーパーチャージャー)で番組をストリーミングで観たいが、Premium Connectivityにはお金を払っていない、という人も絶望しないで欲しい。公式な代替手段があるかもしれない。Electrekによると、Teslaの電気自動車(EV)のオーナーがSuperchargerステーションでStarlink衛星インターネットアンテナを見つけた。その数や、ドライバーがアクセスできるかどうかはまだ明らかになっていないが、少なくともフロリダには配備されている。

Teslaはこの展開についてコメントしておらず、広報チームも解散したとみられている。

SuperchargerでのStarlinkのブロードバンドは、複数の用途が考えられる。少なくとも、支払いや充電器の状態などの基本的な処理を行う既存の接続を代替または補完することができる。実際に活用すれば、Superchargerをより早く、より多くの遠隔地に設置するのにつながるかもしれない。Tesla以外のEVの充電を可能にし、ステーションネットワークの規模を3倍にしたいと考えている同社にとって、これは重要なことだ。

とはいえ、取引を処理するだけならそれほどの帯域幅は必要なく(米国のStarlink接続の中央値は約97Mbps)、TeslaがSupercharger利用者にWi-Fiを提供するために衛星接続を利用しても不思議ではない。通常、車を充電するのにはテレビ番組を見られるほどの時間がかかる。Premium Connectivityをサブスクしたり、携帯電話をホットスポットとして使用したりしなくても、テレビ番組をストリーミングすることができるかもしれない。充電器の使用が多い場合にはネットワークの混雑が問題になるかもしれないが、便利になり、自宅でStarlinkサービスを利用する顧客が増える可能性もある。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Tesla

原文へ

(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾンがEVメーカーRivianの株を買い増し

Rivian(リビアン)が新規株式公開の際に提出したForm S-1証券登録届出書には、このEV企業の「礎となる複数の投資家」が、IPO価格で最大50億ドル(約5700億円)相当の同社の株を購入することに「興味を示している」という記述があった。その投資家の中にはAmazon(アマゾン)も含まれていたが、この電子商取引の巨大企業は米国時間11月12日午後にその引き金を引いたようだ。

最近提出されたForm 4書類によると、AmazonはRivianの株式を1株あたり78ドル(約8900円)のIPO価格で約2億ドル(約228億円)分購入したとのこと。この買い付けは、合計で256万4102株となり、目標金額である2億ドルちょうどをほんの少しだけ下回るものだった。

これでAmazonは現在、Rivianの株式を1億5836万3834株所有していることになる。これは同日の終値である1株あたり129.95ドル(約1万4800円)で計算すると、205億7938万228.3ドル(約2兆3446億円)の価値がある。Amazonは今回、Rivianの株式を購入するために、1株あたりわずか78ドルを支払っただけなので、同社はこの買い付けによってすでに1億3300万ドル(151億5000万円)以上のアップサイドを得たことになる。

直近にAmazonがIPO価格で購入したRivianの株は、IPO前に保有していたさまざまな株式やワラントが、上場後にクラスA株に変換されたことを考慮すると、アマゾンが保有するRivianの総株式数のわずか1.6%に過ぎない。IPO前の所有権も含めると、Amazonは現在、Rivianの約22%を所有していることになる。

RivianのIPOは、このEV企業にとって大規模な資金調達となり、その時価総額を成層圏まで押し上げる大成功のイベントとなった。例えば、Yahoo Finance(ヤフーファイナンス)によると、先週の取引終了時点で、Rivianの時価総額は1270億ドル(約14兆4700億円)を超えている。

第3四半期にRivianが製造した電気自動車の台数がわずか12台であったことを考えると、同社には製造台数あたり100億ドル以上の価値があることになる。今後はこの比率も下がるだろうが、しかしこのことは、Rivianの評価が過去の実績ではなく、いかに将来の成果に基づくものであるかを強調している。

画像クレジット:Kirsten Korosec

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

イーロン・マスク氏のLas Vegas Loopはいまだ想定された移動速度を達成できていない

ラスベガス観光局(LVCVA)のCEO、Steve Hill(スティーブ・ヒル)氏は、市の広大なコンベンションセンター(LVCC)のキャンパスのさまざまな場所に乗客を運ぶ、The Boring Company(ボーリングカンパニー、TBC)による地下シャトルの計画を発表したとき、最も遠いステーション間の移動にかかる時間は2分弱だと予測していた。

ラスベガス・レビュー・ジャーナルによると、ヒル氏は2019年6月「もしシステムが機能しなければ、すべてのお金を返してもらいます」と述べたという。

TBCの担当者とLVCVAとの間で交わされたメールによると、その「2分間の約束」は、最近では4月にもメディアに対して繰り返している。そのメールは、Plainsiteが公文書法に基づいて入手した5051ページに及ぶ文書の一部だ。

今のところ、その2分間という目標は達成されていないようだ。

同じ記録請求で入手した詳細な運行報告書によると、LVCC LoopのTesla(テスラ)タクシーは、運行開始から6週間で、システムのステーション間の移動に平均4分近くかかっている。

3万回以上の無料乗車と7万5000人以上の乗客を対象としたデータによると、平均3分未満で移動した日はなく、平均5分かかった日もあった(TechCrunchは、システムの総輸送人数が1000人未満の日は除外している)。先週行われた大規模な自動車のカンファレンスの際に撮影されたビデオ(最近のものなので、今回の公開資料には含まれていない)でも、同様の所要時間が記録されている。

数分の遅れは、一般のコンベンション参加者にとってはもちろん大きな違いではないが、CESのような大規模な展示会の際にTBCが乗客数の目標を達成できない場合、多額の金銭的ペナルティが課される可能性がある。この目標と実績の乖離は、最近ゴーサインが出た、ラスベガスのより広い地域の公共Loopネットワークに対するTBCの約束にも疑問を投げかけている。結局のところ、LVCC Loopの実績は、マスク氏の地下タクシーが都市交通の手段として成り立つのか、それともテスラが支援するアミューズメントとしての性格なのかを示すものとなるだろう。

2021年4月9日、ネバダ州ラスベガスで開催されたLVCC Loop(ラスベガス・コンベンションセンター・ループ)のメディアプレビューで、セントラルステーションにデジタルマップが表示された(画像クレジット:Getty Images / Ethan Miller)

より大規模なVegas Loopシステムは、51のステーションと約29マイル(約46km)のトンネルで構成され、市内の多くの観光地を結ぶ計画だ。TBCはVegas Loopのプロジェクトページで、NFLスタジアムからコンベンションセンターまでの距離が、現在のLVCC Loopの4倍以上であるにもかかわらず、4分で移動できるとしている。

また、このままでは、LVCC Loopが1時間あたり4400人の会議参加者を輸送するという目標を達成できるかどうかについても、現実の運行データからは疑問が残る。

TBCは5月のデモイベントで、62台のTesla Model 3、X、Yに3人の乗客(荷物なし)を乗せて、その数字を達成した。しかし、実際には、6月初旬から7月中旬までの間に、それぞれのLoop車両に乗ったのは平均2人にすぎなかった。

2019年にTBCが締結した契約では、大規模なコンベンションでTBCが1時間あたり約4000人を移動できない場合、その度に30万ドル(約3420万円)のペナルティが規定されている。これほど大きな違約金が発生すると、Loopの存続に影響を与える可能性がある。Loopが6月の操業開始月に輸送サービスで稼いだのはわずか23万500ドル(約2630万円)だ。TBCは、運行台数にかかわらず、毎月16万7000ドル(約1900万円)の管理費も得ている。

また、LVCC Loopが7月中旬までに輸送した1時間当たりの最高乗客数は1355人だった。これは、LVCCがネバダ州の夏の暑い時期に最大規模の会議を行うことがあまりなく、輸送を必要とする乗客がそれほど多くなかったことが大きな理由だ。例えば、6月に開催された美容関係のコンベンションでは、Loopの運行エンジニアがLVCVAに「乗客数が極端に少ないので、車両数を減らしました」と書いていた。夕方に15分間乗客が入らなかったため、Loopの経営陣が早々にシステムを閉鎖したことも何回かあった。

Loopのサービスには3つのレベルがある。レベル2は、LVCCキャンパスで開催されるコンベンションがないときに、車両5台のみをアテンダントなしで運行する。レベル3は、23台の車両で最大2万人の来場者に対応する。レベル4は、30〜62台のTesla車を使い、最大規模のイベントに対応する。

大きな技術テスト

おそらく1月に開催されるCESには、18万5000人程度の来場者が集まる。Loopは先週、8月にTechCrunchが予測したとおり、70台の車両で運行する許可を得た。それでも、乗客数のペナルティを避けるには、所要時間を短縮するか、説得して1台の車両に少なくとも3人の乗客を乗せる必要がある。また、乗客を乗せずに走行する「ゴーストカー」を削減する必要もある。6月上旬に行われたLoopのオープニングイベントでは、ゴーストカーが大半を占めていた。

現在のトンネルでは、さらに多くの車両を入れることはできない。先週行われた70台のテストでは、市の検査官が「ステーション内のトンネルの中で、1~2秒の差で車両が出入りする場面が複数あった」と指摘した。Loopによる安全分析は、車間距離を6秒に保つことを前提としている。

ポジティブな評価

良いニュースはといえば、乗客はLoopを気に入っているようだということだ。「顧客はこのシステムをとても気に入っていて、キャンパス内の移動手段として利用しています。待ち時間は、最大の混雑時でも2分程度になるよう管理できます」と、Loop OperationsのディレクターSeth Hooper(セス・フーパー)氏は6月末に書いている。当初は15分ごとに2分間だけ点灯していたマルチカラーのトンネルライト「レインボーロード」も、利用者の要望に応えて現在ではほぼ常設となっている。

実は、このシステムの最大の問題の1つは、無許可の侵入者だ。Loopでは、10月にTechCrunchが報じた侵入車両に加え、コンベンションセンターの職員がのぞきに来たと思われる侵入が何度もあった。「無許可車両の最大の犯人は、LVCVAのカートです」とフーパー氏は書いている。

また、動物も侵入した。7月下旬、TBCの社員2名が、サウスステーション近くの雨水管に落ちた子猫を救出しようとした。

TBCとLVCVAは、この猫が最終的にどうなったのかという質問、また、運行データに関するその他の詳細な質問にはすぐに回答しなかった。しかし、TBCは、あらゆる交通機関が直面する安全に関わる事件をカタログ化している。少なくとも3回、Loopのドライバーがカーブを見誤ってフェンスかポールに衝突し、軽度の損傷を受けた。6月末までに発生した乗客のけがは、他の乗客が車両のドアを閉めた際、Loopの乗客が指に小さな裂傷と挫傷を負った1件のみだった。

こうしたデータは非常に貴重だ。TBCは1つの都市全体にサービスを提供するために、この技術を拡大する計画を立てているからだ。なお、LVCCとは異なり、Vegas Loopでは、子どもやペットの乗車が可能かどうか、また、有料の乗車券がいくらになるのかはまだわかっていない。

画像クレジット:Ethan Miller / Getty Images

原文へ

(文:Mark Harris、翻訳:Nariko Mizoguchi

ウガンダで電動バイクの普及を目指す仏Zemboが豊田通商などから約3.8億円を獲得

豊田通商とCFAOグループのコーポレートベンチャーキャピタル子会社であるMobility 54 Investment SASと、DOB Equity、InfraCo Africaは、電動バイクのスタートアップZembo(ゼンボ)の事業成長を支援すべく、340万ドル(約3億8000万円)を出資した。

Zemboはウガンダで事業を展開するフランスのスタートアップで、2018年に設立された。リース・トゥー・オウン(購入選択権付き)プログラムを通じて電動バイクを販売している。また、同国でソーラー充電ステーションとバッテリー交換ステーションのネットワークを運営している。

Mobility 54は、このスタートアップがアフリカ全土で事業を拡大するために「グループ(トヨタ)の自動車事業の大陸全体での存在感を活用して支援する」と話す。加えて、Mobility 54はZemboが最も成長を期待しているバッテリーとソーラーパネルの事業を中心に、同社と新たなパートナーシップの構築を目指す。

「Mobility 54のZemboへの投資は、モビリティ産業の電動化によりアフリカのカーボンニュートラルを加速させることを目的としています。豊田通商とCFAOグループは、アフリカでの自動車販売実績を活かし、Zemboのアフリカでの事業展開に貢献します」とMobility 54は声明文で述べた。

今回調達した資金は、オートバイの台数を約2000台増やし、ウガンダの首都カンパラに60カ所以上の充電・バッテリー交換ステーションを設置するために使用される。Zemboのバイクは、1回の充電で37マイル(約60キロメートル)走行する。

Zemboの共同創業者Étienne Saint-Sernin(エチエンヌ・サン・セルニン)氏は「InfraCo Africa、DOB Equity、Mobility 54といったインパクト重視の組織と提携して、電動ボダ・ボダ(オートバイ)と充電ステーションの開発を継続できることをうれしく思います」と述べた。

「ウガンダのボダボダライダーの収入向上と大気汚染の抑制を両立させるというZemboのミッションは支援者にも共有されており、今回のパートナーシップの原動力となっています。今後も顧客にサービスを提供し、ウガンダで持続可能なモビリティを実現できることを楽しみにしています」と話した。

Zemboは、ウガンダで電動バイクを組み立て、外部の金融機関と協力して、レント・トゥー・オウンプランで販売している。同社のバッテリー・アズ・ア・サービス・モデルでは、ライダーは空になったバッテリーをフル充電されたバッテリーと有料で交換することができる。

InfraCo AfricaのCEO、Gilles Vaes(ジル・ヴェース)氏は次のように話した。「……Zemboは、電動二輪車を市場に提供してきたすばらしい実績を持っています。DOB EquityおよびMobility 54と共同で事業の拡大・発展に取り組むことで、カンパラの都市大気汚染の抑制、雇用の創出、経済発展を促進するZemboの能力を拡大することができます。このプロジェクトは、大気の質を改善し、今世紀半ばまでに二酸化炭素排出量を正味ゼロにするという世界的な取り組みにも合致するものです」。

InfraCo Africaは、6カ国の政府と国際金融公社(IFC)が出資するPrivate Infrastructure Development Group(PIDG)の一員として、インフラプロジェクトに資金と専門知識を提供しており、DOB Equityは東アフリカに関心を持つオランダの一族が出資する投資家だ。

バイクタクシーはアフリカ全土で人気があり、カンパラなどの大都市でも広く利用されている。しかし、騒音や大気汚染の大きな原因とみなされていて、こうした問題は電動化で解決できる。

Zembo Stormバイクは、よりクリーンな移動手段として電動モビリティソリューションを提供するためにアフリカ市場で台頭してきた数多くの企業の1社だ。

他のプレイヤーとしては、ケニアのOpibusがあり、2022年にはオートバイの大量生産を開始する予定だ。同社はTechCrunchとの先のインタビューで、電動移動手段の競争上の優位性として、化石燃料を使う移動手段に比べて最大60%運用コストを抑制できる点を挙げている。

また、電動化は世界が取り組んでいる気候変動問題の原因となっている二酸化炭素の排出量を削減することも期待されている。

しかし、アフリカにおける電動モビリティの普及は始まったばかりであり、チャンスはまだたっぷりある。特にインフラの整備が進めば、その可能性は大きく広がる。このギャップを埋めるために、ZemboやOpibusのような企業は独自のインフラを構築している。

画像クレジット:Zembo

原文へ

(文:Annie Njanja、翻訳:Nariko Mizoguchi