オーロラ観測ロケット「LAMP」が高速に明滅する「脈動オーロラ」に突入、電子・光・磁場の詳細な観測に成功

2022年3月4日(現地時間)、打ち上げ場所のアラスカ州・ポーカーフラットで観測された脈動オーロラ

2022年3月4日(現地時間)、打ち上げ場所のアラスカ州・ポーカーフラットで観測された脈動オーロラ

名古屋大学は3月29日、名古屋大学宇宙地球環境研究所をはじめとする研究グループが、アメリカのアラスカ州よりNASAのオーロラ観測ロケット「LAMP」を明滅するオーロラに向けて打ち上げ、オーロラの中の電子、光、磁場の詳細な観測に3月5日(現地時間)に成功したと発表した。

これは、名古屋大学(三好由純教授、能勢正仁准教授)、宇宙航空研究開発機構(JAXA。浅村和史准教授)、東北大学(坂野井健准教授)、東京大学電気通信大学(細川敬祐教授)、九州大学からなる共同研究によるもの。ロケット実験にはこの他に、NASA、ニューハンプシャー大学、ドートマス大学、アイオワ大学の研究者も参加している。

オーロラは、宇宙から降り込んだ電子が地球の超高層大気と衝突して発光する現象だが、その中に、高速に明滅する「脈動オーロラ」というものがある。近年では日本の人工衛星「れいめい」「あらせ」による観測などで脈動オーロラの研究が進んでいるが、その発光層の広がりや、明滅と電子との関係、脈動オーロラにともなって降ってくる電子の上限エネルギーについては解明されていない。

脈動オーロラといっしょに降り込むキラー電子の想像図

脈動オーロラといっしょに降り込むキラー電子の想像図

研究グループは2020年、脈動オーロラが起きているときは「キラー電子」と呼ばれる数百キロ電子ボルトの超高エネルギー電子が降り注ぐ現象(マイクロバースト)も同時に起きているという仮説を示したが、脈動オーロラとキラー電子を同時に観測した例はなかった。そこで研究グループは、アメリカの研究者とともに「LAMP」(Loss through Aurora Microburst Pulsation)計画をNASAに提案。採択されると、日米の研究機関でロケットに搭載する観測装置の開発を行った。日本側は、名古屋大学が磁力計、東北大学が光学観測系、JAXAが電子観測系を担当した。

ロケットに搭載されたオーロラカメラ

ロケットに搭載されたオーロラカメラ

2022年2月24日、アラスカ州ポーカーフラットリサーチレンジの射場にロケットをセットし、同時に、アラスカ北方のベネタイとフォートユーコンにもオーロラ高速撮像用のカメラ群を展開すると、脈動オーロラの出現を待った。そして待機すること10日目の3月5日、大きなオーロラ爆発が起こり、それに続いて脈動オーロラが発生すると、ロケットが打ち上げられた。LAMPロケットは脈動オーロラに突入。すべての機器が順調に作動し、「理想的な状態」で観測が行われ、観測データの取得が確認された。今後の詳細な解析により、脈動オーロラの変調機構、キラー電子との関係が明らかになることが期待されている。

現在研究グループは、スウェーデンの次世代型三次元大型大気レーダー「EISCAT-3D」が2023年に稼働を開始するのに合わせて、その視野内に観測ロケットを打ち上げる「LAMP-2」の検討を進めている。


画像クレジット:©脈動オーロラプロジェクト

次世代型mRNA創薬の実用化に向けた名古屋大学発スタートアップCrafton Biotechnology設立

次世代型mRNA創薬の実用化に向けた名古屋大学発スタートアップCrafton Biotechnology設立

名古屋大学は3月18日、メッセンジャーRNA(mRNA)の製造、分子設計・医学に関する知見、AI、データサイエンス、シンセティックバイオロジー(合成生物学)などの最先端技術を融合し、次世代型mRNA創薬を目指す名古屋大学発スタートアップCrafton Biotechnology(クラフトンバイオロジー)を3月1日に設立したと発表した。国産mRNAワクチンの速やかな供給をはじめ、がんや遺伝子病の治療、再生医療にも応用されるmRNA創薬に取り組むという。

Crafton Biotechnologyは、名古屋大学、京都府立医科大学、早稲田大学、理化学研究所、横浜市立大学の共同研究を実用化することを目的に設立された。10年以上にわたりmRNAワクチンと医薬品の開発に取り組んできた名古屋大学大学院理学研究科の阿部洋教授と京都府立医科大学大学院医学研究科医系化学の内田智士准教授らが、AI、データサイエンスを専門とする早稲田大学の浜田道昭教授、シンセティックバイオロジーを専門とし進化分子工学の手法を採り入れた次世代mRNAの製造法と設計法を開発する理化学研究所の清水義宏チームリーダー、さらに、副反応の少ないmRNAワクチンの開発を進める京都府立医科大学大学院医学研究科麻酔科学の佐和貞治教授と横浜市立大学眼科学の柳靖雄教授らが連携し、「強固なベンチャーエコシステム」を構築するという。そのとりまとめを行うのが、代表取締役を務める名古屋大学大学院理学研究科の金承鶴特任教授。そのほか、安倍洋教授が最高科学責任者、内田智士准教授が最高医療責任者に就任した。名古屋大学インキュベーション施設に拠点を置き、各研究機関の技術をライセンス化して一元的に集約。mRNA技術の事業基盤を確立し開発を促進する。

同社は数年以内に国内でmRNAを製造できる体制を整備し、安定供給を目指す。また独自の創薬技術を整備して、新型コロナウイルスに限らず、感染症のパンデミック時に独自開発したmRNAワクチンの迅速な供給を可能にすると話す。また、治療技術の海外依存度が大変に高くなっている現在、医薬品産業における日本の国際競争力を高める上で非常に重要な「ワクチンを超えた医薬品としてのmRNAの応用」として、がんや遺伝性疾患、再生医療への応用にも取り組むとしている。

金属3Dプリンターで超硬合金の金型開発と連続成形に成功、冷却配管・センサー用内部構造を持たせ製造管理が可能に

金属3Dプリンターで超硬合金の金型開発と連続成形に成功、冷却配管やセンサーを組み込む内部構造を持たせ製造管理が可能に

名古屋大学は2月28日、金属3Dプリンターによる超硬合金製の金型の製造と、それを使った連続成形に成功したと発表した。これまで超硬合金の金型では製作が困難だった、冷却配管やセンサーを組み込むための内部構造を持たせることが可能になり、成形製品の性能と品質の向上や軽量化などが期待できる。

自動車のエンジンの酸素センサーやハイブリッド車のリチウムイオン電池用ケースなどは、1枚の金属板を型に押し込みながら成形する「深絞りプレス成形法」によって作られた、つなぎ目のない底付き容器が用いられるが、高精度な製品を高速で成形するために、その金型には超硬合金が使われる。しかし、超硬合金は大変に硬いために加工が難しく、複雑な形状が作りにくいという課題がある。その一方で、製造コストを抑えて製品の品質を保つためには、金型を効率的に冷却するための配管を配置したり、温度や荷重の状態をリアルタイムでモニターするセンサーを取り付けるための複雑な内部構造を設ける必要がある。

そこで、名古屋大学(小橋眞教授、高田尚記准教授、 鈴木飛鳥助教)を中心とする研究グループは、金属3Dプリンターに注目し、金属の粉末をレーザー光線で溶かして積層する「レーザー粉末床溶融結合」(LPBF。Laser Powder Bed Fusion)プリンターを使った超硬合金による3Dプリント技術の開発に着手した。まずは、精密研磨剤メーカーのフジミインコーポレーテッドが、3Dプリントに適した超硬合金の粉末について、最適な原材料の調合、粒度分布、粒子密度、流動性の調整などを経て開発した。そして名古屋大学とあいち産業科学技術総合センターは、造形条件と造形後の熱処理方法を検討。最適条件を見つけ出した。

これを受けて、フジミインコーポレーテッドは3Dプリンターによる造形試験を重ね、超硬エンドミルや超硬ラティス構造体など、さまざま形状を造形できるようにした。さらに、旭精機工業がこの成果をもとに、内部に冷却配管やセンサーを内蔵できる空間構造を持つ深絞りプレス成形金型を製作した。金属3Dプリンターで超硬合金の金型開発と連続成形に成功、冷却配管やセンサーを組み込む内部構造を持たせ製造管理が可能に

完成した金型を実際の製造ラインに組み込んで連続成形の試験を行ったところ、金型にも製品にも問題はなく、製品製造に適用可能であることがわかった。3Dプリントによる超硬合金金型の成功例は、世界にも類がない「非常に画期的な成果」とのことだ。これにより、金型の内部冷却による製品の品質向上と、プレス成形を行いながらインラインで金型の圧力や温度計測を行い成形工程に反映させ、稼働状況の把握による製品精度を向上させる画期的な製造管理が可能になるという。

繊維強化プラスティック・FRPの耐衝撃性をしのぐゴム材料イオン性熱可塑性エラストマーを名古屋大学と日本ゼオンが開発

繊維強化プラスティック(FRP)の耐衝撃性をしのぐゴム材料イオン性熱可塑性エラストマーを名古屋大学と日本ゼオンが開発

名古屋大学は12月20日、化学メーカー日本ゼオンと共同で、繊維強化プラスティック(FRP)よりも耐衝撃性に優れたイオン性のゴム材料(熱可塑性エラストマー)の開発を発表した。その耐衝撃性は、通常の熱可塑性エラストマーの3.1〜4.4倍。同様に軽量で強度の高いガラス性繊維強化プラスティック(GFRP)の0.86〜1.22倍とほぼ同等の性能を示した。これは世界トップクラス。

熱可塑性エラストマーは自動車の内外装などに広く使われ、その市場規模は世界で年間2兆円にも上るというゴム材料だが、さらなる強度の向上が求められ、研究開発が進められている。名古屋大学大学院工学研究科有機・高分子化学専攻の野呂篤史氏らと日本ゼオンからなる研究グループは、熱可塑性エラストマーのひとつ「ポリスチレン-b-ポリイソプレン-b-ポリスチレン(SIS)ブロックポリマー」のポロイソプレン部に部分的にイオン性官能基を導入し、イオン性の熱可塑性エラストマー(i-SIS)を開発した。

繊維強化プラスティック(FRP)の耐衝撃性をしのぐゴム材料イオン性熱可塑性エラストマーを名古屋大学と日本ゼオンが開発

その引張強度は43.1MPa(メガパスカル)、靭性(粘り強さ)は1m3あたり480MJ(メガジュール)と、従来のSISの4倍以上を示した。だが構造材料として使う場合には、引張強度や靭性よりも耐衝撃性が重視される。そこで、約3kgの棒状の重りを材料に投下して亀裂やくぼみが生じるのに必要なエネルギー量を見積もる耐衝撃性の試験を行ったところ、従来のSISの3.1倍という値が出た。さらに、イオンの種類と価数を変えたi-SISでは4.4倍という結果が示された。GFRPでは、SISの3.6倍という結果だった。つまり、i-SISとGFRPは同等の性能ということになる。

繊維強化プラスティック(FRP)の耐衝撃性をしのぐゴム材料イオン性熱可塑性エラストマーを名古屋大学と日本ゼオンが開発

軽量で耐衝撃性が高く、それでいてゴム材料としての熱可塑性や強靭性を兼ね備え、工業的な生産も可能なi-SISは、車や船舶といった移動体のボディーなどに利用することで、移動体全体を軽量化でき、燃費が向上し、ひいては脱炭素社会の実現に貢献できると、研究グループは話している。

作物栽培システム「宙農」で地球の循環型農業の発展と宇宙農業を目指すTOWINGが約1.4億円のプレシリーズA調達

人工土壌「高機能ソイル」活用の作物栽培システム「宙農」で地球の循環型農業の発展と宇宙農業を目指すTOWINGが約1.4億円調達循環型栽培のシステム開発を展開するTOWING(トーイング)は12月20日、プレシリーズAラウンドにおいて第三者割当増資による約1億4000万円を資金調達を実施したことを発表した。引受先は、Beyond Next Ventures、epiST Ventures、NOBUNAGAキャピタルビレッジ。累計調達額は約1億8000万円となった。

調達した資金により、持続可能な次世代の作物栽培システム「宙農」(そらのう)のサービス開発に向けて、愛知県刈谷市に自社農園を立ち上げて宙農の実証を開始する。研究者・農園長・エンジニアの採用による研究開発体制を強化するとともに、事業開発人材の採用により組織体制を拡大し宙農の量産化に向けたシステム開発を進めるという。また今後、月面や火星の土をベースとした高機能ソイルを開発し、宇宙でも作物栽培可能なシステムの実現を目指すとしている。人工土壌「高機能ソイル」活用の作物栽培システム「宙農」で地球の循環型農業の発展と宇宙農業を目指すTOWINGが約1.4億円調達

TOWINGは、人工土壌による宇宙農業の実現を目標としたプロジェクト宙農を手がける名古屋大学発のスタートアップ。人工土壌「高機能ソイル」を栽培システムとして実用化しており、地球上における循環型農業の発展と宇宙農業の実現を目指している。

この高機能ソイルとは、植物の炭など多孔体に微生物を付加し、有機質肥料を混ぜ合わせて適切な状態で管理して作られた人工土壌の名称。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発した技術に基づき、TOWINGが栽培システムとして実用化した。「有機質肥料を高効率に無機養分へと変換」「畑で良い土壌を作るためには通常3~5年程度かかるが、高機能ソイルは約1カ月で良質な土壌となる」「本来廃棄・焼却される植物残渣の炭化物を高機能ソイルの材料とするため、炭素の固定や吸収効果も期待できる」の3点を大きな特徴とするという。人工土壌「高機能ソイル」活用の作物栽培システム「宙農」で地球の循環型農業の発展と宇宙農業を目指すTOWINGが約1.4億円調達

宇宙で発生した電磁波が地上に伝わる5万キロにおよぶ「通り道」が世界で初めて解明される

「電磁波の通り道」を同時多地点観測する様子 ©ERGサイエンスチーム

「電磁波の通り道」を同時多地点観測する様子 ©ERGサイエンスチーム

金沢大学理工研究域電子情報通信学系松田昇也准教授らからなる国際研究チームは12月10日、複数の科学衛星と地上観測拠点で同時観測された電磁波とプラズマ粒子データなどから、電磁波の通り道の存在を世界で初めて突き止め、電磁波が地上へ伝わる仕組みを解明したと発表した

地球周辺の宇宙空間では、自然発生した電磁波が地球を取り巻く放射線帯を形成したりオーロラを光らせるなどの物理現象を引き起こしているが、1つの衛星や観測地点からの観測では、電磁波の伝搬経路全体を三次元的に捉えることができなかった。そこで研究グループは、日本のジオスペース探査衛星「あらせ」、アメリカの科学衛星「Van Allen Probes」、そして日本が世界に展開する地上観測拠点「PWING 誘導磁力計ネットワーク」とカナダが北米に展開する「CARISMA 誘導磁力計ネットワーク」を連携させて、同時に観測を行った。

それにより、宇宙空間の特定の場所で電磁波(イオン波)が生まれ、その一部だけが宇宙の遠く離れた場所や地上に届いていることがわかり、そのおよそ5万キロの旅の途中で宇宙のプラズマ環境変動を引き起こし、やがて地上に到達していることを解明した。

宇宙空間には冷たいプラズマが存在し、それが電磁波によって温められると、地上の大気の寒暖の変化のように、宇宙の環境が変化する。特に大規模な太陽フレアによる宇宙嵐が起きると大量の電磁波が発生し、人工衛星の故障、宇宙飛行士の放射線被曝、地上の送電網の障害など、多くの影響をもたらす。電磁波の通り道がわかれば、プラズマ環境変化が様々な場所で同時に発生する仕組みもわかる。

イオン波を4つの拠点で同時に捉えた観測結果

だがそれを解明するには、イオン波が発生している時間帯の、2つの科学衛星と2つの地上観測拠点の位置関係が大変に重要になる。研究グループは、そのタイミングを予測しつつイオン波の観測を続けたところ、2019年4月18日に4つの拠点でのイオン波の同時観測が達成され、同一のイオン波が地磁気赤道から地上に伝搬する「電磁波の通り道」が同定された。それによると、イオン波は5万キロの距離を移動するが、経路の断面はその1/1000ほどと小さい、細長いストロー状であり、広い宇宙空間で、きわめて局所的に伝搬経路が形成されていることもわかった。

あらせ、Van Allen Probesの衛星軌道と地上観測拠点の位置関係

「電磁波の通り道」が解明され、電磁波がどこで発生し、どう伝わるかがわかったことで、安全な宇宙利用に向けた「宇宙天気予報」の精度向上が期待されるという。同研究グループは「地球以外の惑星でも電磁波が発生し伝わっていく仕組みを解明し、宇宙環境変動の網羅的な理解と普遍性の解明へと歩みを進めていきたい」と話している。

この研究には、金沢大学の他、名古屋大学、東北大学、コロラド大学、ミネソタ大学、JAXA宇宙科学研究所、京都大学、九州工業大学、ロスアラモス国立研究所、ニューハンプシャー大学、情報通信研究機構、国立極地研究所、アルバータ大学などが参加している。

理化学研究所ら日本の研究グループが参加するX線偏光観測衛星IXPE打ち上げ、ブラックホールの詳細な観測が可能に

理化学研究所ら日本の研究グループが参加するX線偏光観測衛星IXPE打ち上げ、ブラックホールの詳細な観測が可能に

理化学研究所(理研)は12月9日、X線偏光観測衛星「IXPE」(Imaging X-ray Polarimetry Explorer)がケネディー宇宙センターから打ち上げられることを発表した(日本時間9日午後3時に打ち上げられた)。ブラックホールに落ち込む物質の形、ブラックホール周辺の空間の歪み具合、中性子星の強い磁場で歪められた特異な真空などの「これまでの観測とはまったく質の異なるデータが得られる」と期待されている。

これは、理化学研究所開拓研究本部玉川高エネルギー宇宙物理研究室の玉川徹主任研究員、山形大学学術研究院の郡司修一教授、名古屋大学大学院理学研究科の三石郁之講師、広島大学宇宙科学センターの水野恒史准教授らからなる共同研究。アメリカとイタリアとの国際プロジェクトである「IXPE」衛星に、理研がX線偏光計の心臓部である「ガス電子増幅フォイル」を、名古屋大学が X線望遠鏡の「受動型熱制御薄膜フィルター」を提供している。またプロジェクトには日本から20名を超える研究者が参加している。これによりIPXEは、観測例が極めて少ないX線偏光を捉え「誰も見たことがない新しい宇宙の姿」を明らかにするという。

偏光とは、電磁波の偏りのこと。偏光サングラスは、この光の性質を利用して眩しい光をカットし、風景がはっきり見えるようにしている。同じように、X線偏光を利用することで、X線を放射する天体の詳細な観測が可能となる。X線は大気に遮られてしまうため、宇宙で観測するしかない。そのためX線天文学が始まったのは、人工衛星での観測が可能になった1960年代からのこと。日本ではJAXAの宇宙化学研究所を中心に研究が進められていて、X線天文学は「日本のお家芸」ともいわれている。

試験中の「IXPE」衛星

そんな中で、X線偏光観測の手段として本命視されているのが、NASAマーシャル宇宙飛行センターが中心となって提案されたIXPEだ。この衛星のX線偏光観測能力によって観測できるものには、たとえば、恒星とブラックホールが互いの周りを回っている連星系で、恒星から流れ出した物質がブラックホールが吸い込まれる際に形成されるプラズマの円盤「降着円盤」がある。降着円盤はブラックホールに近づくほど高温になり、ブラックホールの近くではX線を放出する。そのX線の偏光を観測できれば、どんなに高性能な望遠鏡でも観測できない遠くにある円盤の構造が「まるでその場にいるように」観測できるという。

IXPEは、SpaceXのFalcon 9ロケットで打ち上げられ、赤道上空高度600kmの軌道を周回する。最初の1カ月で機能や性能の評価を行った後に観測が開始される。運用期間は2年間となっているが、衛星の機能が維持されているかぎり延長されるとのことだ。

IXPEを載せたFalcon 9は、日本時間9日午後3時、ケネディー宇宙センターから打ち上げら、3時34分ごろに衛星を無事、切り離した。

画像クレジット:NASA / BallAerospace

FASER国際共同実験グループ、CERNの衝突型加速器LHCにてニュートリノ反応候補を初めて観測

FASER国際共同実験グループ、CERNの衝突型加速器LHCにてニュートリノ反応候補を初めて観測

LHCにて初観測したニュートリノ反応候補のうちの2例。左側の図は左から、右側の図は画面に垂直な方向からビームが来ている。各線分は反応で生じた粒子の飛跡を表す

九州大学基幹教育院の有賀智子助教らによるFASER(フェイザー)国際共同実験グループは、11月26日、スイスのCERN(セルン。欧州原子核研究機構)において、世界最大、最高エネルギーの大型ハドロン衝突型加速器LHC(Large Hadron Collider)を使用した研究で、ニュートリノ反応候補の観測に成功したことを発表した

このグループは、2018年、LHCのビーム軸上に小型のニュートリノ検出器を設置し、データを取得した。ニュートリノは、LHCでの陽子同士の衝突で生じるさまざまな粒子の崩壊から生じる。だが、衝突の反応として生じた素粒子ミューオンの飛跡は約2000万本も観測されるのに対して、ニュートリノの反応は10事例程度ときわめて少ない。そこで、「膨大な背景事象を処理するために高飛跡密度での飛跡再構成アルゴリズムなどの技術開発」を行い、ニュートリノ反応候補の探索を行った。さらに「粒子の角度情報などの幾何学的パラメーターを用いた多変数解析」による背景事象(余分な要素)の分別を行うことで、ニュートリノ反応候補の検出を初めて実現した。
FASER国際共同実験グループ、CERNの衝突型加速器LHCにてニュートリノ反応候補を初めて観測
FASER国際共同実験グループは、有賀智子助教の他、千葉大学大学院理学研究院・ベルン大学AEC-LHEPの有賀昭貴准教授、九州大学先端素粒子物理研究センターの音野瑛俊助教、高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所の田窪洋介研究機関講師、名古屋大学大学院理学研究科・素粒子宇宙起源研究所の中野敏行講師、同大学未来材料・システム研究所の中村光廣教授、六條宏紀特任助教、佐藤修特任講師、稲田知大博士研究員らで構成されている。

FASER国際共同実験グループ、CERNの衝突型加速器LHCにてニュートリノ反応候補を初めて観測

FASER国際共同実験グループのメンバー(一部)

同グループは、これまで未開拓であった高エネルギー領域でのニュートリノ研究がLHCで可能になることを見出し、同研究を立ち上げた。現在の加速器で生成できる最高エネルギーのニュートリノを研究し、未知の高エネルギー領域において3種類の素粒子(電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノ)に素粒子標準理論を超えた物理の影響があるかを検証することを目指している。FASER国際共同実験グループ、CERNの衝突型加速器LHCにてニュートリノ反応候補を初めて観測

また2022~2024年に本格的な実験を予定しており、LHC陽子陽子衝突に起因する未知粒子探索および高エネルギーニュートリノ測定を実施するという。

名古屋大学が約1ナノミリのカーボンナノチューブ1本からなる超微小アンテナを開発、Wi-Fiにも対応

名古屋大学がカーボンナノチューブ1本からなる超微小アンテナを開発、電磁波を機械的な振動に変えてさらに電気信号に変換名古屋大学は11月17日、大規模なデジタルデータを受信可能なカーボンナノチューブ1本からなる極微小アンテナの開発を発表した。ナノスケールでありながら、安定した高精度のデータ伝送を実現できる。なおカーボンナノチューブとは、六角形の炭素ネットワークが直径約1nm(10億分の1m)の円筒状になったもの。

これは、名古屋大学未来材料・システム研究所の大野雄高教授と豊田中央研究所の舟山啓太研究員らによる共同研究。IoTやAIの利用拡大により、様々な情報を同時に高精度で検知するために、1つのシステムに多数のセンサーを設置する必要が生じてきた。そのため、センサーの小型化が求められている。それがこの研究の背景となっている。

通常のアンテナは、拾った電磁波を電気的な信号に直接変換する。だが、受信したい電波の波長によってその大きさが決まるため、どうしても数ミリから数センチの大きさになる。それに対してこの超微小アンテナは、電磁波を機械的な振動に変え、それを電気信号に変換するというもの。高い機械強度と優れた電気特性を持つカーボンナノチューブを使うことで、ナノスケールにまで小型化が可能になった。

名古屋大学がカーボンナノチューブ1本からなる超微小アンテナを開発、電磁波を機械的な振動に変えてさらに電気信号に変換

原理はこうだ。1本のカーボンナノチューブの一端を固定し、その先端からわずかに離れた場所に微小電極を配置する。ここに直流電圧をかけると、カーボンナノチューブの先端から微小電極に電子が飛び出して電流が流れる。そこに外部から信号(電磁波)が照射されると、カーボンナノチューブの中の電子に静電力が働き、信号に合わせてカーボンナノチューブが振動する。カーボンナノチューブと微小電極との間に流れる電流の大きさは、その距離によって変化するので、カーボンナノチューブが振動することで電流も増減する。これを信号として受け取る。

名古屋大学がカーボンナノチューブ1本からなる超微小アンテナを開発、電磁波を機械的な振動に変えてさらに電気信号に変換

アンテナが非常に小さく、信号から受け取るエネルギーも小さいためにノイズを受けやすいが、符号誤り訂正などのデジタル通信技術を組み合わせば、通信速度は現在主流のWi-Fi環境(80MHzの帯域幅)にも対応でき、通信速度は70Mbpsという十分な性能を発揮する。そのため、画像データやビデオ通話のような大容量データ通信への応用の可能性もあるという。また、さまざまな信号検出にも応用が可能で、生体内や大気中の情報などを直接検出できる可能性も秘めていると、同研究グループは話している。

地上最強生物、水がなくても生きられるクマムシの乾燥耐性の仕組みが明らかに

地上最強生物、水がなくても生きられるクマムシの乾燥耐性の仕組みが明らかに

大学共同利用機関法人の自然科学研究機構生命創成探究センター(ExCELLS)は11月4日、クマムシが乾燥しても生きられる乾燥耐性の仕組みについて、CAHS1というタンパク質分子の振る舞いによるものであることを、世界で初めて解明し発表した

最大でも体長1mm程度のクマムシは、実際には虫ではなく、4対の歩脚を持つ「緩歩動物」(カンポドウブツ)という生き物だ。そんなクマムシは、生育環境から水がなくなると「乾眠」(かんみん。クリプトビオシス。cryptobiosis)という状態になり、代謝を止めて生命活動を一時停止させるが、水が与えられると乾眠状態から復帰して、代謝が再開される。乾眠中のクマムシは、乾燥だけでなく、極度の高温・低温・圧力・放射線などによる環境ストレスにも強い耐性を示し、宇宙の真空状態でも生きていられるため、「地上最強生物」と呼ばれている。

なかでも乾燥耐性が強いものに、ヨコヅナクマムシと呼ばれる陸生のクマムシがいる。ヨコヅナクマムシは、乾燥から身を守るために、細胞の中に何種類かのタンパク質が常備されているといわれているが、その役割はわかっていなかった。

この研究では、とりわけ細胞内に多く存在するCAHS1というタンパク質に着目し、透過型電子顕微鏡でその形を調べ、変化の状態を赤外分光法、核磁気共鳴法、高速原子間力顕微鏡を用いて観察したところ、水分が失われ細胞内のタンパク質の濃度が高まると、水溶液中のCAHS1タンパク質は自然に集合してファイバーを形成し、最終的にゲル状になることがわかった。このゲルは、水分を与えると元の水溶液の状態に戻る。

遺伝子組み換えタンパク質として大腸菌の細胞内に作り出したCAHS1タンパク質も、同じようにファイバーを形成し、ヒト由来の培養細胞の中に作り出したCAHS1タンパク質も、脱水ストレスがかかると大きな集合体を作り、ストレスがなくなると集合体は消失することが確認された。

ヨコヅナクマムシは、このようなタンパク質を細胞内に豊富に持っていて、すぐに脱水状態に対応できる仕組みを備えているという。このタンパク質の集合体は、「細胞が復活する際に必要な成分を保護したり、乾燥によって生じる有害物質を隔離したりする働きがあるのかもしれません」と同センターは推測している。

今回の研究成果は、生命の環境適応戦略を理解するうえで重要な手がかりとなる。「生きているとは何か」の謎に迫るとともに、医療やバイオテクノロジーへの応用研究の推進につながるとのことだ。

この研究は、自然科学研究機構生命創成探究センター分子科学研究所の加藤晃一教授と矢木真穂助教の研究グループと、同センター所属の青木一洋教授(基礎生物学研究所)、村田和義特任教授(生理学研究所)、内橋貴之教授(名古屋大学)、荒川和晴准教授(慶應義塾大学)、古谷祐詞准教授(分子科学研究所/現 名古屋工業大学)と共同で行われた。

Acompanyが秘密計算エンジンQuickMPCに線形回帰分析・ロジスティック回帰分析が可能な分析機能群PrivacyAI実装

名古屋大発スタートアップAcompanyが暗号化したままの計算処理が可能なMPC秘密計算エンジンを独自開発

秘密計算スタートアップAcompany(アカンパニー)は10月26日、秘密計算エンジン「QuickMPC」上で利用できる、秘密計算による機械学習を含めた高度な分析機能群「Privacy AI」(プライバシーエーアイ)の提供開始を発表した。これに伴い、「線形回帰分析」と「ロジスティック回帰分析」という2つの高度な分析手法が提供される。

秘密計算とは、データを暗号化したまま分析が行える暗号技術。複数の組織間で暗号化されたデータをやりとりして分析する場合でも、その都度暗号を解除する必要がないため安全が保たれる。だが、Acompanyが開発を進める秘密分散法(秘密データを複数のグループに分散し、それらを合わせることで元データが復元されるという手法)による秘密計算は、高度な専門性が必要で実装が困難だった。そのため、平均や相関など基本的な統計手法しか製品化できず、複数のデータを用いた複雑なデータ分析は難しかった。

そこでAcompanyは、Privacy AIの機能として、複雑な分析を可能にする「線形回帰分析」と「ロジスティック回帰分析」を実装した。線形回帰分析とは、複数のデータの関係性から、特定の値の変動が他の要素にどのように影響を与えるかを分析する統計手法だ。ロジスティック回帰分析とは、複数の要因から特定の結果が起こる確率を説明、予測する統計手法。これらにより、店舗の来客数と特定商品の売上げとの相関関係や、営業マンのアポイント数、残業時間、勉強会への参加の有無と営業成績との相関関係の分析などが行えるようになる。

今後は、「勾配ブースティング木」などの複雑な分析手法をPrivacy AIに加えてゆき、「プライバシー保護とデータ活用の両立」の実行可能領域を拡張させてゆくとAcompanyは話している。

Acompanyは、「データを価値に進化させる。」というミッションのもと、プライバシー情報や機密情報などの活用が難しいデータに対し秘密計算技術を軸に、プライバシー保護とデータ活用の両立を実現する名古屋大学および名古屋工業大学発スタートアップ。主に、QuickMPCの提供を軸に、プライバシー保護およびセキュリティに関するソリューションを展開している。

名古屋大学発、物流AIスタートアップ「オプティマインド」のルート最適化システム「Loogia」を佐川急便が全国的に導入

名古屋大学発、物流AIスタートアップ「オプティマインド」のルート最適化システム「Loogia」を佐川急便が全国的に導入

「ラストワンマイル配送におけるルート最適化サービス」の開発と提供を行うオプティマインドは10月4日、ルート最適化サービス「Loogia」(ルージア)の佐川急便への導入を開始した。佐川急便が集配業務で仕様する情報端末と、リアルタイムで最適な集配手順の決定を行うLoogiaをAPI連携し、ドライバー業務の効率化を図る。

Loogiaは、オプティマインドが開発し運営しているラストワンマイルのルート最適化クラウドサービス。ラストワンマイルとは、物流においては、顧客の手に届けるまでの最後の配達段階のことを言う。このラストワンマイル固有の制約条件を加味したアルゴリズム、地図ネットワークの分析、加工、ビッグデータの学習モデル構築といった独自のノウハウを活かしたサービスとなっている。配送情報を入力すると、40以上の「現場制約」を考慮した最適ルートを計算する。GPSなどから実際の走行データを読み込むことで、精度の高いルートの算出が可能とのことだ。

佐川急便では、配送ドライバーは、出発前に集配先の位置から集配順序やルートを決めているが、今まではドライバーの勘と経験によるところが大きかった。そこをシステム化することで集配順とルートが自動計算される。また、再配送など集配状況が変化した際にも自動でルートが再計算されるため、新人ドライバーも熟練ドライバーも変わりなく、業務が効率化される。

オプティマインドと佐川急便は、2020年8月、14日間の実地検証を行った。時間指定のものも含めて80個の荷物を習熟度の異なるドライバーに配達させ、従来の方法と、Loogiaを使った方法とで比較したところ、Loogiaを使ったほうは、ベテラン、新人とも、ルート組み時間、配送業務時間、走行距離が短縮された。名古屋大学発、物流AIスタートアップ「オプティマインド」のルート最適化システム「Loogia」を佐川急便が全国的に導入

この結果を踏まえ、2020年11月から12月にかけて、全国500名のドライバーに試験導入を実施。すると、とくに新人や習熟度の低いドライバーに有効性が示され、そうした経験の浅いドライバーから継続利用の要望が強く寄せられたことから、全国導入が決まった。

さらにこの試験導入により、Loogiaをドライバー端末に搭載する際の操作性や、配送業務におけるドライバーノウハウのアルゴリズム化といった課題が顕在化した。今後も、課題解決に向けた検討を続けてゆくという。

サブスク型イベント予約サービスのSonoligoが7000万円調達、 関西展開および法人向けサービス開発

サブスク型イベント予約サービスのSonoligoが7000万円調達、 関西展開および法人向けサービス開発

名古屋⼤学発スタートアップ「Sonoligo」(ソノリゴ)は8月26日、第三者割当増資および融資により、合計約7000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、既存株主のBeyond Next Ventures、トビラシステムズ、個人投資家。借入先は日本政策金融公庫で、新型コロナ対策資本性劣後ローンを活用したものとなっている。

同社は、イベント予約プラットフォーム「Sonoligo」を提供。音楽・スポーツ・アートなどの各種オンライン・オフラインイベントを楽しめる個人向けサブスクリプション型サービスとなっており、月額料金は980円〜2980円(税込)としている。

2021年内に同サービスの関西地方への展開を計画しており、調達した資金はマーケティング費用・人件費に投資する。

またWell-Being(ウェルビーイング)分野において、文化の持つ力を活かし貢献することを目的に、社員や会社の文化活動推進に取り組みたい企業を対象とした法人向けサービスの開発、またその販路拡大に投資する。

法人向けサービスでは、2020年より取り組んできた500以上のオンラインイベントや良質な動画コンテンツといった実績を活用し、従業員の文化体験や社内の交流・つながりを創出する仕組みを提案するという。働く人のウェルビーイングを高めることが、コロナ禍などで顕著になりつつある職場の様々な課題の解決につながると考え、注力するとしている。

秘密計算エンジン「QuickMPC」を手がける名大・名工大発スタートアップAcompanyが2億円調達

秘密計算エンジン「QuickMPC」を手がける名大・名工大スタートアップAcompanyが2億円調達

秘密計算エンジン「QuickMPC」を開発するAcompany(アカンパニー)は5月14日、プレシリーズAラウンドにおいて、総額2億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードインベスターのANRIとBeyond Next Venturesの2社、またDG Daiwa Ventures、epiST Ventures。調達した資金は、プロダクト開発、秘密計算アルゴリズムの研究開発および採用・組織体制の強化への投資を予定している。

秘密計算とは、従来の暗号手法が抱えていた欠点を克服した次世代の暗号(秘匿)技術だ。従来の暗号化手法はデータの活用時にローデータ(生データ、非暗号化データ)に戻さなければならないが、秘密計算ではデータの活用時(分析や機械学習モデルの作成といったシーン)も暗号化(秘匿)したまま安全にデータを扱うことが可能となる。

そのため、データのプライバシー保護とデータ流通の両立に期待の大きいものの、これまでのところ研究開発段階に留まっているケースが多いのが現状という。

これを受けAcompanyは、2020年10月リリースのQuickMPCとともに、国内有数の秘密計算テクノロジー企業として、デジタルマーケテイング、医療などのデータ活用時のプライバシー保護が重要である領域へ秘密計算の実用化を推進してきた。今回の資金調達は、これら取り組みを通じて期待されるニーズに応えるべく実施したものとしている。

またAcompanyは、秘密計算を中心とした、プライバシーテックに関連した情報発信およびイベント開催を行うコミュニティ「秘密計算コンソーシアム」を立ち上げ、同コミュニティメンバーの募集を開始した。応募は「『秘密計算コンソーシアム』メンバー募集ページ」より行える。

同コミュニティでは、個人情報保護法の改正を始めとしたデータ活用とプライバシー保護が相反している現状に対応すべく、法令遵守したデータ活用やプライバシー保護テクノロジーの勉強会や情報発信を行う。

Acompanyは、「データを価値に進化させる。」というミッションのもと、プライバシー情報や機密情報などの活用が難しいデータに対し秘密計算技術を軸に、プライバシー保護とデータ活用の両立を実現する名古屋大学および名古屋工業大学発スタートアップ。主に、QuickMPCの提供を軸に、プライバシー保護及びセキュリティに関するソリューションを展開している。

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カテゴリー:セキュリティ
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名古屋大学発AIスタートアップのトライエッティングが3.5億円を調達、東急不動産HDと業務提携

名古屋大学発AIスタートアップのトライエッティングが3.5億円を調達、東急不動産HDと業務提携

名古屋大学発AIスタートアップのトライエッティング(TRYETING)は3月30日、第三者割当増資およびデットファイナンス(借入金)による総額約3億5000万円の資金調達を発表した。引受先は、東急不動産ホールディングス(東急不動産HD)が取り組むTFHD Open Innovation Program、エンジェル投資家。デットファイナンスは三菱UFJ銀行から。

また、東急不動産HDグループのDX推進および新規事業創出を目的に、東急不動産HDと業務提携を行ったと発表した。

2016年6月設立のトライエッティングは、多種多様なアルゴリズムを搭載するノーコードAIクラウド「UMWELT」を主とした「知能作業」を自動化する名古屋大学発AIスタートアップ。また自動シフト作成AIクラウド「HRBEST」はじめ、AIを活用した需要予測、在庫生産管理、マテリアルズインフォマティクスなどでも実績を持つという。

東急不動産HDとの業務提携については、UMWELTを活用することで、同グループの様々な業務のDX化およびグループの幅広い事業領域へのAI活用による新規事業創出を目指す。

TFHD Open Innovation Programは、東急不動産HDがベンチャー企業やスタートアップへの支援や協業の体制を充実させ、新たなグループシナジーの創出と渋谷を中心とした街の活性化を加速するために2017年に設立したプログラム。

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