任天堂のドラガリアロスト、今日詳細発表――新モバイルゲームの配信開始は9/27

任天堂がモバイル市場に参入するのは遅かったが、いったん参入すると新ゲーム投入のペースはきわめて着実だった。 任天堂の新しいモバイルRPGはAndroid版、iOS版で9月27日から配信される。

ドラガリアロストというタイトル自体は去る4月に発表されていたが、われわれは詳細はつかんでいなかった。任天堂は今日この後、Mobile Directのページで詳細を公開する(下にエンベッドしたYouTubeでライブ配信される)。

ドラガリアはサイバーエージェントのゲームのグループ企業、サイゲームスが制作した。同社はグランブルーファンタジーなどの人気ゲームで知られる。このゲームは クロスプラットフォームで、スクエアエニックスでファイナルファンタジーを手がけた皆葉英夫がキャラクターをデザインしている。任天堂はサイゲームスとの提携の一環として株式を一部取得している。これは両社の関係をいっそう密接にするのに効果があるだろう。

任天堂では新ゲームについて巨大スケールのRPGであり、「人と竜の新たな契約」だとしている。重要な点だが、プレイは無料だ。これは任天堂の初期のモバイルゲーム、スーパーマリオランの販売が伸び悩んだことからマーケティング戦略をシフトさせたものだろう。

〔日本版〕こちらは ドラガリアロストの日本語ページ。今日(8/30)、日本時間では12:30から詳細がインターネットで発表される。

原文へ

滑川海彦@Facebook Google+

“検索がいらない”サロン予約アプリ「requpo」がVCやアイスタイルらから約2.3億円を調達

ユーザーのリクエストに対して美容師から提案が届く、“検索不要”のサロン予約アプリ「requpo(リクポ)」。同サービスを提供するリクポは8月29日、環境エネルギー投資、アイスタイル、アドウェイズ、マネックスベンチャーズ、iSGSインベストメントワークス、SMBCベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資により、総額約2.3億円を調達したことを明らかにした。

requpoの特徴はユーザーが起点となり、面倒な検索なしでサロンを予約できる点だ。従来のように美容室側が用意したメニューやスケジュールに合わせてサロンを探すのではなく、ユーザーが登録したリクエストの内容に興味を持った美容師側からオファーをする。

前回の記事でも紹介した通り、この仕組みで2016年11月にビジネスモデル特許を取得した。

ユーザーはエリアやメニュー、希望金額、おねだり、日付、時間、髪型(任意)を登録しておけば、あとは美容師からのアプローチを待つだけ。1回のリクエストには最大で3人からアプローチが届くので、気に入ったものを選べばいい。

もちろんエリアによって違いはあるけれど、たとえば美容師が多い表参道エリアだと5分ほどで3つのオファーがくることも珍しくないそう。結果的に手間なくスピーディーに、自分の要望に合ったサロンを予約できることがユーザーにとってのメリットだ。

以前から提供していたiOS版に加えて2018年の1月にAndroid版をリリース。エリアも拡大し、1都3県の一部地域(東京、神奈川、埼玉、千葉)のほか愛知や大阪、福岡の各エリアでも対応を開始している(requpoでは美容師ユーザーの登録数が一定数に達したエリアごとに提供する仕組み)。

また前回調達した資金を活用してプロモーション面も強化。2017年9月には乃木坂46の伊藤万理華さん(現在は同グループを卒業)をPRキャラクターに起用してコラボCM動画を展開した。これらの取り組みの成果もあり、リクポ代表取締役CEOの木崎智之氏によると「1年前に比べると登録ユーザー数が約20倍、美容師数も約10倍に増えている」という。

ユーザー層に関しては18歳〜24歳の女性が最も多く半数近くを占め、25歳〜34歳の女性も加えると全体の70%ほどになるそう。また女性向けのブランディングをしてはいるものの男性でも利用でき、実際に男性のユーザーもいるようだ。

requpoの仕組みはリクエストにマッチした美容師からすぐにオファーが来るのであれば、確かに使い勝手がいいだろう。リクエストはスマホから数十秒〜数分程度でできるし、検索のわずらわしさもない。一方でリクエストをしても美容師からの反応が全くなければ、却って余計な手間とストレスがかかってしまう。

木崎氏の話では、まさにこのマッチング率をあげることに現在力を入れているそう。たとえば大きめのサロンからの要望が多かったという“店舗アカウント”(オーナーが髪を切っている最中でも、他のスタッフが代わりにオーナーの枠で予約を取れる機能)などを今後追加していく方針だ。

「requpoは美容師の空き時間をシェアリングエコノミー化しているような側面があるので、いかに美容師ユーザーにとって提案しやすいような設計を作れるかがマッチング率をあげるポイントにもなる。単に美容師の数を増やすというだけでなく、アプリ側の改善や機能開発を強化していく」(木崎氏)

今回調達した資金はこれに向けて主にエンジニアを中心とした人材採用と、プロモーション強化に用いる計画だ。

リクポは2015年12月の設立。これまでも2016年3月にTLMと複数のエンジェル投資家からシードマネーを、2016年12月にコロプラ、ベクトル、大和企業投資、エンジェル投資家から8000万円を調達している。

リクポのメンバー。最前列の中央が代表取締役CEOの木崎智之氏。

月額500円からの家具レンタル「CLAS」リリース、家具を“持たずに利用する”選択肢広げる

買うのではなく、必要な時だけお金を払って利用する権利を得る。近年サブスクリプションやシェアリングエコノミーといった概念がさまざまな分野に広がり、モノやサービスに対する人々の価値観や行動を変えつつある。

その中で今回着目したいのは、比較的まだ“買うもの”というイメージが強い「家具」だ。つい先日もオフィス家具の月額レンタルサービス「Kaggレンタル」を紹介したばかりだけど、この記事で取り上げたいのは個人を主な対象とした月額500円からの家具レンタルサービス「CLAS」。

運営元のクラスでは8月29日より東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県(離島など一部地域は対象外)にて同サービスをスタートした。

家具は自社生産、修理して複数回シェアを前提に安く提供

上述したようにCLASはチェアやベッド、ソファ、テーブルなどの家具が月額500円から利用できるサービスだ。レンタル料金には配送料や保険料が全て含まれているので追加費用は不要。家具の交換や返却も自由にできる(ただし最低利用期間が半年となっていて、半年以内での交換や返品には送料などの負担がかかる)。

繊細な人だと「レンタルだと汚れやキズを気にしてしまう」とプレッシャーを感じてしまうかもしれないけれど、通常の使用内の汚損や破損ならば修理費用は発生しない。またユーザーの過失により家具を全損 / 半損した場合も、返品送料実費は負担しなければならないが、修繕費は取らない方針なのだそうだ。

レンタル料金がかなり安く設定されている上に配送料や保険料も含まれていて、かつ通常範囲の汚れや破損は追加必要も不要と聞くと、正直これでビジネスとして成立するのかが気になる。

その点についてクラス代表取締役社長の久保裕丈氏に話を聞いたところ、CLASでは修理(リペア)して複数人に同じ家具をシェアすることを想定しているそう。耐用年数も長めに考えているため、月額の料金もその分だけ安く抑えることができるという。

「既存のサービスはレンタルではなくローンに近い印象を持っている。つまり買い切る前提で元の金額を複数回に分けて払うようなもの。2年で定価に達するくらいの金額感で、実際購入に切り替えられるサービスもある。一方でCLASはリペアをして次に回すのを前提に考えていて、耐用年数も5年など長めに想定している。その期間にぐるぐる回って最終的に利益が生み出せればいい」(久保氏)

CLASの家具は中国の工場にて自社生産したもの。現地のネットワークなども駆使して極力原価率を抑えるような仕組みを構築している。またテーブルやチェアは木材を使用することで、表面をヤスリなどで削れば新品に近い形まで綺麗になり、再度別のユーザーにシェアしやすいのだという。

これが実現できるのは、クラス取締役COOの白河衛氏がもともとインテリア家具の輸入や販売事業を手がける会社を10年以上やっていることも大きい。

「短期間で元の値段を回収しようとすると、どうしてもユーザーが手軽に使いづらい価格になる。それを変えるためには回収期間を長くできるようなリペアの設計も含め工夫が必要。原価率や配送効率、在庫効率などは当初からかなり綿密に設計している。チームにネットリテラシーと家具リテラシーが高いメンバーがそれぞれいるのも強みだ」(久保氏)

家具を持たずに利用する選択肢を作る

久保氏はいわゆる連続起業家だ。外資系コンサルティングファームのATカーニーに勤めた後、2012年に女性向けファッションコマースサービスを運営するミューズコーを創業。2015年には同社を約17.6億円でミクシィへ売却している。

クラス代表取締役社長の久保裕丈氏

CLASは元値分を一度回収できさえすればその先はひたすら利益を生むエンジンとなるが、とにかくイニシャルコストがかかる事業だ。7月にはANRI、佐藤裕介氏、光本勇介氏、中川綾太郎氏から資金調達を実施(金額は非公開)。久保氏は「結構な回数の増資が必要だと覚悟している」そうで、「起業1周目だったら絶対やりたくないような商売」とも話す。

なぜ新たなチャレンジの場にこのようなビジネスを選んだのか。その理由は久保氏自身が引越しをする度に間取りの問題などでインテリアを買い直す経験をし、その手間や費用を削減できないかと考えていたから。そして現在のマーケットや同業のプレイヤーの状況などを踏まえ、このビジネスに可能性を感じたからだ。

「家は賃貸でも気にしない人が多いのだから、同じように家具も持たずに利用するという選択肢があってもいいはず。まだ直接的に競合となるようなプレイヤーは日本でいないと思っているが、『家具は買うのが当たり前』という考え方を変えていく、新しい文化を作っていくのが大きなチャレンジになる」(久保氏)

事前にアンケートで好きな家具のブランドを聞いてみたところ、約6割が無回答だったそう。「洋服などに比べると、家具に関してはブランドに対して強いこだわりある人は少ないのではないか」というのが久保氏の見解で、だからこそ自社ブランドでもしっかりとした物を作れればチャンスはあるという。

CLASは5月にティザーサイトを公開し事前登録を受け付けていたが、これまでに5000件近くの登録があった。メインのユーザー層は20〜30代で人生で2度目の引越しをしようとしている層だが、個人だけでなくコワーキングスペースの運営会社やホームステージング事業者など法人からの引き合いも強い。

今後は自社ブランドに加えて家具好きのユーザー向けに既存ブランドの家具をラインナップに加えることも計画しているそう。また家具に限らず「暮らしを軽やかにするもの」を同じようにレンタルで展開することを考えていて、たとえば家電のレンタルなどは今年度中の提供も検討しているという。

ビズリーチの「HRMOS」から2年ぶりに新サービス、働く人とチームのパフォーマンス最大化を支援

社内の人事関連のデータを一箇所に集約することで、活躍する人材の行動や成果を人工知能が学習し、働く人にとってよりよい環境を機会を創出する戦略人事クラウドーービズリーチが一大プロジェクト「HRMOS(ハーモス)」の構想を発表したのは約2年前のことだ。

2016年6月に第1弾の「HRMOS採用管理」をリリースして以降大きな動きはなかったけれど、水面下では基盤となるシステムを時間をかけて開発していたようで、本日2年ぶりに新たな構想とプロダクトが明らかになった。

ビズリーチは8月28日、今後のHRMOSの世界観を伝えるブランドサイトを公開。合わせてチームのパフォーマンスを向上させる2つの新サービス、目標管理ツールの「Goal」とフィードバックツールの「Spotlight」のトライアル版をリリースした。

HRMOS Coreを中心に2つのモジュールを提供

前回からアップデートされたHRMOSでは「Human OS」をコンセプトに掲げ、基盤となるデータベース「HRMOS Core」を軸に2つのモジュール(サービス群)を提供する。

ひとつが企業単位で導入するHRサービスを集めた「HRMOS for COMPANY」、そしてもうひとつがチームのパフォーマンスを向上させる「HRMOS for TEAM」。今まで提供してきたHRMOS採用管理は前者に、そして今回発表したGoalとSpotlightは後者に属する。

HRMOSに集まった人に関するデータを学習・分析して、従業員にとってより良い環境や機会を提供するという考え方自体は変わっていないそうで、その構成や位置付けが少しブラッシュアップされた形だ。

ビズリーチ取締役CTOの竹内真氏に話を聞いたところ、従来ほとんどの会社で埋もれてしまっている日々の小さな行動データに着目したことが、HRMOS for TEAMの開発に繋がったのだという。

「人が普段働いている中で具体的にどんなことをやっていて、その結果がどうだったのか。そのような日々の細かい行動はほとんどの会社でデータ化されていないし、そもそも記録すら残っていない。結果的に通期や半期で評価をされる際に、小さな行動や結果はほぼ対象にされておらず、埋もれてしまっているのではないか。そこをもっとうまくサポートしたいという思いから始まった」(竹内氏)

これまで可視化されてこなかった日々の小さなデータをいかに集め、それによって働く人がいかに毎日モチベーション高く働けるようにサポートできるかがHRMOS for TEAMのコアとなる考え方だ。

ここに含まれるのは2〜3人の小さなチームから使える複数のツール。従業員エンゲージメントやピープルアナリティクスといった文脈で紹介されるもので、様々な側面からチームとそこで働く人のパフォーマンス最大化を支えることを目的としている。

目標管理のGoalとフィードバックのSpotlight

そのひとつであるGoalは、コミュニケーションやコラボレーションの要素を入れた目標管理システムだ。

設定された目標に対して日々の進捗をインプットし、直感的に可視化できるダッシュボード機能を搭載。各メンバーの目標をチームで共有してアドバイスを送ったり悩みを相談できる。

「通期とか半期が終わってどうだった?ではなく、日々のプロセスをログに残して確認できるようになる。目標が達成できた要因、達成できなかった要因など小さな行動を集積し、活用できるのが特徴だ」(竹内氏)

特にスタートアップなどではプロダクトの方向性やそれに紐づく個人の目標が急に変わることも珍しくない。全員の目標がチームに共有されることで、お互いの目標が変化した際にもフォローし合えるだけでなく、質の高い目標設定へと導くアシスト機能や目標設定の形骸化をふせぐリマインド機能も備え、個々人の目標管理をサポートする。

もうひとつのSpotlightはGoal以上に粒度の小さい行動を可視化するフィードバックツール。たとえば「今日の会議でのプレゼンがすごく良かった」など、メンバーのちょっとした“いい仕事”や“取り組み”に対するポジティブなフィードバックをSNS感覚で送り合うのが基本的な使い方だ。

同サービスではメッセージのほかに拍手を送ることも可能。これらのアクションがフィードやダッシュボードを通じて他のメンバーにも共有されることで、チームへの小さな貢献に対する賞賛がどんどん広がっていくような効果もある。

これは竹内氏も話していたけれど、既存のプロダクトだとFringe81の「Unipos」に近い。もっともUniposとは違ってSpotlightの場合は成果給などに紐づいていないため、フィードバックを誘発するハードルが高くなる。

この誘発の仕掛けにはかなり検討を重ねたそうで、たとえばSlackやGoogleカレンダーといった外部ツールとも連動し、そこから得られる情報を基に社員が投稿したくなるようなリマインド機能を取り入れた。

一例をあげると、カレンダーから一緒に会議やイベントに参加するメンバーの情報を吸い上げ「この会議で○○さんを賞賛するような出来事はありましたか?」と通知する、といった具合だ。この辺りは心理学や行動経済学などアカデミックな観点も取り入れているという。

その一方でGoalにしてもSpotlightにしても機能の数に関しては必要最低限のものに絞り、画面のデザインなども含めてシンプルな作りになっている。

「現場の従業員やマネージャーがストレスなく使えるような設計を意識している。人事に言われて無理やり使うのではなく、自分たちから入力したくなるプロダクトにしたい」(HRMOS事業部の事業開発部で部長を務める貝瀬岳志氏)

今までこぼれ落ちてしまっていた日々の行動を可視化

「実際に使ってみると、今まで掴み取れずにこぼれ落ちていた情報がたくさんあったことに気づく。そのような小さな行動をデータとして保存し分析することで、日々の働く時間をもっと良くしたい」と竹内氏が話すように、GoalとSpotlightに関してはビズリーチ内で数ヶ月テスト的に運用。ある程度の利用頻度と効果が確認されたため、まずは今回トライアル版として公開に至ったという。

各ツールはそれぞれ単体でも使うことが可能。今後は一部の企業へのテスト導入を経て、2019年の初頭を目処に正式版をリリースする予定だ。

冒頭でも触れた通り初めてHRMOSの構想を公開し第1弾プロダクトをリリースして以来、同プロジェクトからは久々に大きな発表となった。

「全体の基盤となる裏側のHRMOS Coreを作り上げるのに2年かかってしまったというのが正直なところ。ただ2年かけたからこそ、どんな情報が集まってきてもコアの中で結合できる基盤ができあがってきた」(竹内氏)

このHRMOS Coreもビズリーチ社内ではすでに動き始めているそうで、テスト導入の後「来年のリリースを目標に進めている」という。

LINEチャットでレストラン予約の「ビスポ!」にLINE、本田圭佑氏らが出資

LINEチャットで、さまざまなモノやコトを相談したり、予約したりできる時代。旅行恋愛相談など、TechCrunch Japanでもいくつかサービスを紹介してきているが、8月28日にリリースされた「ビスポ!」は飲食店予約をLINEチャットでできるサービスだ。

ここで「あれ、そういうの既になかったっけ?」と思った方は、なかなか鋭い。実は2015年にLINEがRettyとの提携で「LINE グルメ予約」というお店探しと予約ができるサービスを提供していたのだが、2017年3月にサービスを終了している。

また、飲食店探しをユーザー同士が人力で助け合うサービスとして2015年3月に始まった「ペコッター」も、現在はグルメコンシェルジュサービスとして予約代行をメインのサービスとして運営。iPhoneアプリのほかにLINEボット版を提供している。

こうした飲食×チャットの世界に新たに加わったビスポ!は、一見すると、ほかのチャットボットと同じように「LINEで友だちになって希望条件をチャットすると、店を提案してくれて、最終的には予約もできる」というサービスだ。

運営会社Bespo(ビスポ)代表取締役CEOの高岳史典氏は「ビスポ!は、飲食業の課題に飲食店サイドに立って解決するサービスだ」と、その特徴を説明する。

飲食店業界に入って知った課題

高岳氏は、新卒で日本興業銀行に入行、P&Gでマーケティングを担当した後、コンサルティング会社を経て、いわゆる「ライブドア事件」により一度は解体されようとしていたライブドアに参画し、再編やNHN Japan(現在のLINE)との統合に関わった。ライブドアに参加した経緯や現LINE CEOの出澤剛氏との出会いを本人が綴ったテキストを読んだ方もいるかもしれない。

その後、2013年に飲食業界で起業し、ラムチョップとワインの店「ULTRA CHOP」を経営。5年間で4店舗を展開するに至る。

実は高岳氏は2016年9月に、いわゆる「食べログスコアリセット事件」の発端となる下記ツイートを発信している。新聞や週刊誌などでも話題になったので、ご記憶の方もいるだろう。

ちなみにその後、食べログ運営のカカクコムは「有料集客サービスを利用しているかどうかが点数に影響することは一切ない」とアナウンス。店舗のサービス利用状況や検索結果での優先表示と、点数の更新との間には関連はない(偶然タイミングが重なっただけ)と説明している。

ともあれ、こうして自らが飲食店を経営し、業界向けサービスを見ていく中で課題を感じたという高岳氏。いま提供されているサービスには「飲食店サイドに立ったものは、なかなかない。飲食店を課金対象にしか見ていないサービスが多い」と述べる。そこで「課題を解消することで、日本の飲食店をもっと豊かにしたい」と考え、2018年1月に設立したのがBespoだ。

高岳氏が考える、飲食業界の課題は3つある。直前キャンセル、集客、人材確保だ。

直前キャンセルについては、Bespo設立前の2017年、飲食店経営をしながらマーケティングやITに関するアドバイザーをしていた高岳氏が、ダイナースクラブ、LINE、ポケットコンシェルジュの3者を連携させた「ごひいき予約」サービスをプロデュースしている。

ごひいき予約は、「何カ月も先まで予約が取れない」ような人気店でありがちな、「当日急にキャンセルせざるを得なくなった」席をダイナースクラブが買い取り、LINEの公式アカウント経由で会員に告知、即時転売するというもの。転売後の予約・決済をポケットコンシェルジュのシステムが担当する。

そして今回リリースされたビスポ!が取り組むのは、集客の課題だ。有名店でも人気店でもない、ほとんどの飲食店では、集客ができないことは、キャンセルよりさらに大きな問題となる。

「例えば評判のお寿司屋さんのNo.2が独立して、店を持ったとする。いい素材を確かな腕で出していれば、最初は前の店の常連さんが様子を見に来てくれたりするからよいけれども、ちょっと駅から遠い、といった場合、せっかくよいネタを仕入れていても、ずうっとお客さんを待っていなければならない、なんてことになりかねない。では『食べログ』や『ホットペッパー』に“課金”して検索順位の上位掲載を狙えばよいのか?というと、そういうことでもない」(高岳氏)

トレタとの連携で空席のみをリアルタイムにレコメンド

ではビスポ!は具体的にどうやって、集客の課題を解決しようとしているのか。

ユーザーにとっては、ビスポ!は検索をせずにLINEチャットで店を見つけて、予約までできるサービスだ。LINE公式アカウントの「ビスポ!(@bespo)」と友だちになって、利用を開始する。

メニューの「かんたん予約」では、チャットボットのガイドに合わせて希望日時、人数、予算、ジャンル、場所などを選べば、希望日時に席が空いている店が候補としてリアルタイムで表示されるので、好きな店を選んで予約ができる。

また「わがまま予約」では、かんたん予約の条件に加えて「アレルギー対応メニューを用意してほしい」「デザートプレートを誕生日用にデコレーションしてほしい」といったリクエストが可能だ。利用できるのは1人当たりの予算が5000円以上から。わがまま予約の場合は、条件に対応できる店があれば、早ければ30分程度で、遅くとも24時間以内に順次返信をくれるので、その中から好きな店を選んで予約することになる。

飲食店側も予約管理はアプリで行う。予約の状況の確認や、わがまま予約の場合に返信して予約を待つかどうかの判断、ユーザーへのお礼メッセージ送信が可能。また、ビスポ!を利用する店舗間で見られる、ユーザー評価とコメントも入力することができる。

肝となるのは「予約台帳と連携しているので、条件の中で、空席のある飲食店のみが自動的にレコメンドされる」という点だ。

「既存モデルの予約サービスでは、店は空席、つまり“在庫”を予約サービス側に預けている状態になる。お客さんにとっては“金曜夜7時”といった在庫が人気なわけだが、そうした在庫が予約サービス上で前日までにはけなかったとしたらどうするか? 実は店は予約サービスから在庫を引き取って『当日予約は電話で』といった形で予約を受けるようにしているんです」(高岳氏)

ビスポ!はトレタの予約台帳と連携することで、リアルタイムでの空席マッチングを可能にしている。「予約の取りっぱぐれがなくなるので、店としては安心できる」と高岳氏は話す。

わがまま予約の場合でも、空席がなければ店に通知は来ず、空きがあるときだけリクエストが通知される。返信するか、スキップするかは店が選べるようになっていて、返信した場合には、ユーザーが店を選択するまでは席が仮予約の状態になる。

「店は、例えば夕方の早い時間帯なら『お客さんを入れたいので、多少のわがままには応えよう』となるが、必ず満席になると分かっている曜日・時間帯で、安めの予算で面倒なリクエストが届いた場合には、スキップすることもできる。いわばリバースオークションのようなスタイル」(高岳氏)

飲食代金の支払いは原則として店舗で行うが、わがまま予約については「訪日外国人客も支払いやすいように」ということで、事前に設定した予算をLINE Payで支払うこともできるよう、年内には機能を実装する予定だという。

高岳氏は「かんたん予約とわがまま予約のどちらが好まれるかは分からないが、まずは両方実装してみて、いろいろと改善していこうと思っている」という。わがまま予約のフリーワードについては、自然言語解析などを使って、より適切なマッチングに結び付けることも検討しているそうだ。

ビスポ!の利用料は、ユーザー側は無料。飲食店側は、初期費用や月額費用は不要で、かんたん予約なら、予約が成立して来店した人数1人あたり300円、わがまま予約の場合は、予約が成立した時点での予算総額の6%を手数料として支払う(来店してからの追加注文には料金がかからない)。ただし、トレタを導入していない飲食店の場合は、予約・顧客台帳の利用料として月額1万2000円が必要となる。

「競合サービスでは、月額の掲載料が店にとっては負担になる。また掲載料に対してどれだけ集客できたのかがつかめず、費用対効果が分からない。ビスポ!は送客した分だけ費用が発生するので、費用対効果が明確だ」(高岳氏)

テクノロジーをふんだんに使って飲食業の課題を解決したい

Bespoではサービスのリリースと同時に、LINE子会社のLINE Venturesとプロサッカー選手・本田圭佑氏の個人ファンドKSK Angel Fund、および複数の個人投資家などから資金調達を実施したことも明らかにしている。調達金額は非公開だが、関係者の話や登記情報などから総額1億円前後とみられる。

チャット画面はLINE、空席データ連携についてはトレタの全面協力により構築したというビスポ!。サービスリリースにあたって、同社にはLINE取締役CSMO/LINE Venture代表取締役の舛田淳氏がアドバイザーとして就任している。

ローンチ時点で、港区、中央区を中心とした約50店舗が参加するというビスポ!は今後、今年中に参加店舗数1000店舗、ユーザー数10万人を目指す。また、2020年には1万店舗、100万人の利用を、国内のみの展開で達成したいとしており、このほかにもインバウンドユーザーによる利用者増をもくろんでいるそうだ。

Bespo(ビスポ)代表取締役CEOの高岳史典氏

高岳氏はそもそも飲食業界で起業した理由をこう語っている。「人と向き合う仕事がしたかった。多くても1日に数十人ぐらいを相手にする仕事、例えばネイルサロンでも美容院でもよかったけれども、たまたまラムチョップと出会って、飲食店で起業することになった。それが今につながっている」

また、飲食業界へ入った当初と今との違いについて「5年前だったらトレタもなかったし、もっと前はLINEもなかった」と高岳氏は言い、「今、このタイミングだからこそ、テクノロジーでできる課題解決はいろいろある。そしてそれは飲食店をやって、1日10人と向き合っていたから見えたこと。そこから1000店舗へサービスを広げれば数万人、1万店舗なら数十万人のユーザーとつながる」と述べている。

「テクノロジーをふんだんに使って、しかしテクノロジーありきではなく課題ベースで解決していきたい」という高岳氏。「今あるコンシェルジュ的なサービスは人力に頼るところが大きく、それは時間も労力もコストがもかかる。完全にテクノロジーで解決する方向で、課題をクリアしていきたい」と話している。

飲食店の経営も、これからも続けていくそうだ。そして「そのときどきで、できる技術を使って課題解決していく」と高岳氏は言う。まだ手を付けていない課題の「人材確保」についても、「解決の糸口となる技術は見つけている」と高岳氏は述べ、「数年内の近いうちに、人材の課題も解決する新サービスを提供するつもりだ」と話していた。

オンラインM&Aマッチングの「TRANBI」が約11億円を調達、後継者問題の解決へ事業承継を促進

オンライン上で事業の売り手と買い手をマッチングする事業承継・M&Aマーケット「TRANBI(トランビ)」。同サービスを展開するトランビは8月28日、VC3社および複数のM&A仲介会社より総額約11億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

調達した資金は事業拡大へ向けた組織基盤の強化、サービス開発およびマーケティング強化に用いる計画。今回トランビに出資した企業は以下の通りだ。

  • SBIインベストメント(SBI AI&Blockchain 投資事業有限責任組合)
  • 西武しんきんキャピタル
  • 三菱UFJキャピタル
  • あがたグローバルコンサルティング
  • アイ・シー・オーコンサルティング
  • ストライク
  • 辻・本郷 ビジネスコンサルティング
  • 名南M&A
  • フォルテワン
  • 優和コンサルティング

中小企業の経営者の高齢化などに伴う事業承継問題は、日本の大きな社会問題のひとつだ。経済産業省が昨年公開した資料によると「今後10年の間に70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の約3割)が後継者未定」だという。

一方で同資料には「休廃業・解散企業の5割は黒字」とあるように、事業を他の人に任すことができれば継続できるものも少なくない。ただし、その事業を任せる人、つまり事業の買い手を探すのが簡単ではなく、多大なコストを要する部分でもあった。

ならばインターネットを使ってオンライン上でマッチングできる仕組みを作ろうというのが、オンラインM&Aサービスだ。

TRANBIのほかにも昨年紹介した「ビズリーチ・サクシード」のほか、アンドビズ(日本M&Aセンターの子会社)の「&Biz」やエン・ジャパンの「MAfolova」。スタートアップが手がける「M&Aクラウド」や「FUNDBOOK」など、関連するサービスが近年一気に増えてきている。

TRANBIは事業の売り手がM&A案件を登録することでスタート。登録した案件が即座に公開され、興味を持った買い手は直接コンタクトを取り事業の売買について交渉する。案件登録やメッセージは無料で、実際に成約に至った場合に買い手が譲渡金額の3%を手数料として支払う。

一般事業主だけでなく、M&A仲介業者、会計士・税理士事務所、金融機関、公的機関など専門家が利用することも可能。その場合は成約時に事業会社から得た手数料の10%をTRANBIに支払う仕組みだ。

2018年7月末時点で同サービスには1万1066社が登録。累計M&A案件数は1417件、累計マッチング数は5410件となっている。

またトランビでは現在60社を超える金融機関、M&A仲介会社と業務提携を締結。今後もこの動きを加速させることで「後継者問題に揺れる中小企業のM&Aによる事業承継を促進し、国内経済・地域活性化に寄与する全国的なネットワークの構築を目指してまいります」としている。

キズナアイが参加するVTuber支援プロジェクト「upd8」運営のActiv8が6億円調達

バーチャルYouTuber(VTuber)など、バーチャルタレントを企画・運営・プロデュースするActiv8(アクティベート)は8月28日、Makers Fundgumiを引受先とした総額6億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

8月にユーザーローカルとCyberVが「VTuberが直近半年間で4000人以上増えた」と発表しているとおり、バーチャルタレント業界は今年に入り、急激に盛り上がっている。VTuber自体も増え、関連するサービスや取り組みも続々と現れている。4月にはグリーが総額40億円の「VTuberファンド」を開始、6月にはVTuber向け配信サービス「ホロライブ」運営のカバーが2億円を調達するなど、投資も活発だ。

4000体のVTuberが存在するといわれるこの業界で、Activ8ではバーチャルタレントによるUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)文化や関連産業の振興を目指し、個人・企業を問わずタレントを支援するプロジェクト「upd8(アップデート)」を運営する。upd8はバーチャルYouTuber人気ランキングでも上位常連のキズナアイも参加するプロジェクトだ。

upd8では、企業とのタイアップといった仕事をバーチャルタレントに紹介するエージェント機能の提供、コミュニティーの創出を行う。コミュニティーについては、リアル、バーチャルに関わらず、イベント実施など、タレントの活動する場を提供している。また、キャラクターの撮影環境についても、スクラッチで開発。サービスとして提供する。

Activ8代表取締役の大坂武史氏は同社の事業を「VTuber業界を活性化することを目的としている」と説明。つまり、UUUMなどのプロダクションがリアルなYouTuberの活動をさまざまな形で支援するのと同じようなことを、バーチャルタレントについて行うということのようだ。

「我々には“生きる世界の選択肢を増やす”という目標があって、その選択肢のひとつがVRの世界だと考えている。バーチャルタレントがVRシステムの上で活動できる舞台をつくり出すため、サイバースペースでのスタジオ事業も行っている」(大坂氏)

Activ8は2016年9月の設立。キズナアイをはじめとするVTuberたちを支援してきた。今年5月31日には、upd8をバーチャルタレントのサポート事業として公式にローンチ。支援プロジェクト、タレント募集を本格化した。

同社はこれまで資金調達については公表してこなかったが、Tokyo XR Startupsなどが既に投資をしており、今回の資金調達は3度目、シリーズBラウンドにあたる。

今回の調達では、VRに造詣の深いgumiと、世界規模でクリエイティブ産業への投資を行うMakers Fundが参加。大坂氏は「バーチャルタレントがVRシステム上で動けること、VR空間で価値創造を行うことにフォーカスしていきたい。人がVR空間で生産を行い、生きていくための仕組みづくりを目指す。また世界×エンタメ市場にも踏み出していくつもりだ」と資金調達の意図について説明する。

具体的には大きく3つの分野に投資する、と大坂氏は話している。1つめはバーチャルタレント支援のための人材確保だ。「トップVTuberのキズナアイの支援を通して、バーチャルタレントの価値の最大化を図りたい。リアルイベント開催やテレビ出演などに加えて、海外でもボーダーレスにチャレンジを応援することで、バーチャルタレントが活躍する場を広げる」という大坂氏。「バーチャルタレントもリアルのタレントと同様、タレントを中心とした360度ビジネス。そのためには、さまざまな場面に対応する人材が必要だ」と話す。

2つめは、upd8を通して、既存のバーチャルタレントとは違ったセグメントからタレントを発掘し、支援すること。大坂氏は「キズナアイ以外でも、バーチャルタレントが必要とされるセグメントはいろいろある」という。「男性タレントや教育コンテンツ向けのキャラクター、音楽などの芸能に特化したタレントなどは、まだ着手されていない領域。こうした分野のタレントも自社でプロデュースしていこうと考えている」(大坂氏)

3つめは、VRシステム自体の拡張だ。「“生きる世界の選択肢を増やす”という目標を掲げているので、VR世界で活動できることを増やしたい。VR内で撮影が完結するような仕組み、システムの開発も進めていく」と大坂氏。「バーチャルタレント支援の範囲の拡大とシステムの深掘りの両方向に投資していくつもりだ」と話していた。

トヨタ、Uberに5億ドル投資――2021年からから自動運転の実用サービス開始を目指す

トヨタ自動車がオンデマンド配車サービスを推進するためにUberと提携し、5億ドルを投資したことが明らかになった。この提携では、ミニバンのトヨタ・シエナUberが開発した自動運転装置を付加し、Uberのネットワークを通じて実用に供するという。

Wall Street Journalが最初に報じ、続いてTechCrunchも確認したこの契約で異例なのは、まだ名前を明かされていないサードパーティーの大規模自動車運用者が加わっていることだ。このサードパーティーは大量の自動運転車を運用する予定だ。関係各社によれば、2021年にUberの配車ネットワークを通じて実際の運用のパイロット・モデルをスタートさせるという。

CEOのダラ・コスロウシャヒは月曜午後に発表された声明で「大規模な自動車運転車の配車はUberにとって初めての試みとなる」と述べた。これは「なんでもまずやってしまって後から謝ればいい」というUberのこれまでのイメージを改善するために役立つだろう。無鉄砲なスタートアップという悪いイメージは3月の自動運転車の死亡事故などが典型だ。

コスロウシャヒは「Uberの進歩したテクノロジーとトヨタ安全性の確保におけるコミットメントと卓越した製造能力の組み合わせは理想的なものだ。このチームがどんな業績をあげられる大いに期待している」と述べた。

このチームでは「自動運転によるモビリティー・アズ・ア・サービス」という意味でAutono-MaaSという言葉を作った。

トヨタ(アメリカにおける研究部隊、TRI(Toyota Research Institute)を含む)や自動運転車の普及戦略は他社とは異なる。トヨタはドライバーの安全性を高めるガーディアン・テクノロジーと乗客の利便性を図るショーファー・テクノロジーという2種類のアプローチを採用している。ただしどちらのテクノロジーも一連のグループに属する。

トヨタでは高齢者やハンディキャップがある人々向けに完全自動運転車を提供する一方、運転アシスト・モードと完全自動運転モードを随時切り替えて使用できる通常の量産車の製造を目指している。ガーディアン・テクノロジーはドライバーが気づかないうちにバックグラウンドで安全性を強化する。

トヨタのTRIは去る2017年3月に第1世代の自動運転車をデビューさせた。数ヶ月後に発表されたアップデート版、Platform 2.1車両は。シリコンバレーのスタートアップLuminarが開発した小型軽量で対象認識、測距が可能なレーダーシステムを搭載している。

今回の提携合意でUberの自動運転システムとトヨタのガーディアン・テクノロジーの双方がAutono-MaaS車両に搭載され自動運転の安全性の強化に貢献することになる。

トヨタはではさらにインターネット接続車両の安全性を高めるMSPF(モビリティー・サービス・プラットフォーム)と呼ばれる情報インフラを提供する。

TRIのCEO、Gill Pratt博士は「Uberの自動運転システムとトヨタのガーディアン・テクノロジーはそれぞれ独自にリアルタイムで車両が置かれた環境をモニターする。これにより車両、ひいてはドライバーの安全性が強化される」と述べている。

トヨタはこれ以前にもUberと関係を持っていたが、今回の提携によるほどの密接なものではなかった。トヨタはモビリティー企業を目指しており、今年1月のCESで、AmazonやUber、中国の配車サービス、Didi、自動車メーカーのマツダ、ピザチェーンのピザハットなどとともに人間や商品を運ぶ自動運転電気車両の開発を進めていくとことを発表している。この提携により、モジュラーコンセプトに基づくe-Palette車両による幅広い分野での実用化が期待されている。

原文へ

滑川海彦@Facebook Google+

TechCrunch Tokyoに来るべき“2つの大きな理由”

マネーフォワード代表取締役社長 辻庸介氏

今年も11月15日(木)と16日(金)に渋谷ヒカリエで開催される日本最大級のスタートアップ・テクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。毎年開催している同イベントにまだ来たことのない皆さんのために、当日は何を期待できるのか、そもそもTechCrunchとはどんなメディアなのか、説明したいと思う。今ならお得な「超早割チケット」と「学割チケット」を発売中なので、“面白そうだ”と感じてもらえたら来場を検討してほしい。

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきた。現在、米国を始め、欧州、アジア地域等のテクノロジー業界の話題をカバーしている。

日本では2006年6月にTechCrunch Japanが産声を上げた。以降、翻訳コンテンツだけでなく日本オリジナル記事の投稿やイベントなどを開催している。TechCrunch Japanのこれまでについてはこの記事も参照してほしい。

TechCrunch TokyoはそんなTechCrunch Japanが毎年自信を持って開催しているスタートアップ・テクノロジーの祭典だ。今年で通算8回目の開催で、昨年は約2500人が参加した。似たようなイベントがあるなか、なぜTechCrunch Tokyoに来るべきなのかーーそれには2つの大きな理由がある。

Uber共同ファウンダーTravis Kalanick氏

1つめの理由は、多くの旬な海外スピーカーによる講演を見られるから。彼らによる貴重な講演は国内の他社イベントではめったに見ることはできないだろう。たとえば、おなじみの配車アプリUberの共同ファウンダーTravis Kalanick氏は同社のCEOを勤めていた2012年当時、TechCrunch Tokyoに登壇しアジアに事業を拡張し「Uber Tokyo」を発足させるつもりだと述べた。日本法人Uber Japanは翌年の2013年に設立された。また、昨年のTechCrunch Tokyo 2017にはコミュニケーションツールSlack共同創業者でCTOのCal Henderson氏が登壇Slackが日本語版をローンチしたのは2017年11月17日、Henderson氏が登壇した当日だった。

2013年のスタートアップバトルに登場した辻氏

2つめの理由は、“これから”注目すべき新進気鋭のスタートアップによる斬新なプロダクト・サービスをいち早く知ることができるから。TechCrunch Tokyo最大の目玉「スタートアップバトル」では創業3年未満のスタートアップが壇上でピッチバトルを繰り広げる。2017年9月に東証マザーズへの上場を果たしたマネーフォワードの代表取締役社長 辻庸介氏も2013年にスタートアップバトルに参加した“卒業生”の一人だ。当時のマネーフォワードはサービスリリースから1年と経たない小さなスタートアップだった。今年のスタートアップバトルからも将来の上場企業やユニコーンがきっと誕生してくれることだろう。

今年も数多くのドラマが生まれるであろうTechCrunch Tokyo。今後も様々な重大発表を予定しているので期待して待っていてほしい。

現在一般入場者向けとして1万8000円の超早割チケットを9月18日まで、学生のみなさんにはさらにお得な5000円の学割チケットを100枚限定で用意している

チケット購入はこちらから

AIヘッドハンティングの「scouty」が正式公開、転職可能性を知らせるタレントプール機能を追加

「技術力3.74、ビジネス3.56、影響力3.44」——これはAIヘッドハンティングサービス「scouty」で算出された、エンジニアのスコア評価の一例だ。

同サービスではSNSやGitHub、個人ブログなどインターネット上に公開されているエンジニアのオープンデータをシステムが収集。上述した3つのスコアをはじめ、個人のスキルや志向性、活動内容などを含めた“個人の履歴書のようなページ”をAIが自動生成する。

このデータベースから企業は自社の採用要件に合った人材を検索し、スカウトすることが可能。双方の情報を基に質の高いレコメンドを実現することで、企業とエンジニア(いずれはそれ以外の職種の人材も)のミスマッチをなくそうというのがscoutyの試みだ。

そして本日8月27日、2017年5月からのオープンβ版期間を経て同サービスの正式版がついにリリースされた。

正式版には新たにタレントプールという概念が導入。検索内容に合わせてレコメンドされたユーザーだけでなくSNSアカウントを入力することで候補者をタレントプールに追加できる機能のほか、登録した候補者の転職意欲が高まったタイミングで通知してくれる機能が加わっている。

転職潜在層にアプローチできるAIヘッドハンティングサービス

オープンβ版リリース時にも紹介した通り、scoutyのひとつの特徴が転職潜在層のエンジニアもデータベースに登録されていること。システムが自動でWeb上の情報をクローリングして個人のページを作るため、ユーザーによる登録は不要。企業側は転職サービスなどにはいないエンジニアにもアプローチできるチャンスがある。

マッチング精度を高める土台としてscoutyでは独自のスコアリングの仕組みを開発。たとえば冒頭で紹介した「技術力」「ビジネス」「影響力」という3つの指標は、以下のようなソースを基に評価している。

  • 技術力 : オープンソースプロジェクトの参加経験、GitHubやQiitaなどで公開しているアウトプットの量や他者からのいいね数、質問回答サイトでのベストアンサー数、技術系イベントの参加数など
  • ビジネス :  経験した職歴など(職歴ごとにスコアを付与)
  • 影響力 : Twitterのフォロワー数、フォローとフォロワー数の比率など

scouty代表取締役の島田寛基氏の話では、特に技術力スコアについてはこの数値でフィルタリングする企業も少なくないため、スコア算出のアルゴリズムを常に改善し続けている。

たとえばエンジニアがプログラムを書いた際に添付するReadme(リードミー。コードの説明書のようなもの)を解析してみたところ、この内容と技術力に強い相関関係があったという。そこでReadmeの量や書き方を自然言語処理や機械学習の技術をもとに解析し、スコアに反映することを始めている。

また他者からのいいね数についてはフォロワー数に依存する部分も大きい。そこでどんな人からいいねをされているか「いいねの質」を評価したり、記事の内容からいいね数を予測するアルゴリズムを開発することで、日の目を浴びていないけれど質の高いアウトプットをしているエンジニアが評価される仕組みも実験しているようだ。

収集したデータからエンジニアのスキルや興味分野を分析することに加えて、scoutyは候補者の転職可能性も予測する。これは過去の職歴や在籍経験がある企業の継続年数分布、SNS上での行動(例えばわかりやすいものだと、Twiiterで「辞めたい」と言っているなど)を基にAIが算出したもの。

上述したような仕組みによって、自社の要件にマッチし、かつ実は転職の意欲が高まっているエンジニアをスカウトできるというわけだ。これまでこの仕組みに興味を持った約50社がscoutyを導入。同サービスを通じて20数名のエンジニアが転職をしているという。

とはいえ、法律や外部サービスの規約に基づいた形ではあるもののエンジニアにとってはある意味“勝手に”自分の情報が登録されて、ある日突然スカウトされるわけだから驚くだろう。中には抵抗がある人もいるのではないか。

この点について島田氏に聞いてみたところ「メールを返信してくれるエンジニアの7〜8割は自分のGitHubやブログを見てくれて嬉しい。御社の技術に興味があるので話を聞いて見たいというポジティブな反応を示している」という。

この辺りは実績ができてきたことによって、1年前と比べてもかなりポジティブな反応が増えてきているそうだ。ただ「抵抗がある人もいるのは事実」とのことで、そういったエンジニアの情報の提供を停止する仕組みや体制をこの1年で整備してきた。

データベースから長期に渡って使えるプロダクトへ

ここまではscoutyが当初から備えるコアの部分と、それに関するアップデートを紹介してきたわけだけれど、今回の正式版では新たに「タレントプール」という概念が加わった。

このタレントプールにはscoutyでレコメンドされた人材のほか、SNSアカウントなどを基に人材を追加することが可能。

たとえばTwitterで気になるエンジニアを見つけた場合、Google Chromeの拡張機能を使ってscouty上の詳細なプロフィールやスキルを即座にチェックし、タレントプールに加えるといった使い方ができる。

そのほか普段参照しているブログの執筆者や自社イベントの参加者などを含め、興味を持った人材の母集団を形成し継続的にウォッチしやすくなった。

もちろんタレントプールを形成できるサービスはすでに存在する。ただscoutyの場合は従来から備える転職可能性を予測する仕組みを組み合わせることで、候補者にいつアプローチをするのが良いのかを通知してくれるのがユニークなポイントだろう。

島田氏に聞いたところタレントプールに入っている候補者のSNSの情報を定期的にクロールし、プロフィール変更やSNSで転職意向が高まっているような発言があると通知が飛ぶ仕組みになっているようだ。

今までのscoutyを踏まえるとかなり大きなアップデートとも言えそうだが、島田氏によると「マッチングの部分はある程度理想通りに実現できた一方、潜在層を対象にしているため、転職意向がないとそこで止まってしまうことがひとつの課題になっていた」という。

「ベータ版リリース時の仮説として『人はたとえ転職活動をしていなくても、今よりもいい職が見つかれば転職するのではないか』と考えていたが、それは必ずしも正しくなかった。お互いがいい印象を持っているけど今すぐに転職というわけではない場合でも関係性を継続したいというケースが多く、そのニーズに応える形でプロダクトの方向性を少し変えている」(島田氏)

スカウトに適したタイミングを通知するなど、タレントプールの運用を一部自動化することで「採用に特化したCRMやMA(マーケティングオートメーション)ツールの要素を取り入れたプロダクト」をイメージしているそう。

単なるデータベースではなくツールとして長く使ってもらえるものを目指し、料金体系も従来の月額利用料+成果報酬のプランを廃止し、月額15万円のプラン1本に絞った。

今後はデザイナーなどエンジニア以外の職種以外にも広げていくことを検討しているほか、scoutyの個人ページを本人に公開し、スコアを確認したり情報の追加や削除をしたりできるような仕組みも考えているという。

「たとえばどのような企業が自分のスコアや趣向に近い人を採用しているか、同じくらいのスコアの人はだいたいどれくらいの年収で転職しているかなどがわかると、もっと情報をオープンにする人も増えるのではないか。クローリングの技術も改善していくことで、その人のさまざまな情報が溜まったライフログのようなものを自動で作り、徹底的にパーソナライズしたレコメンドの仕組みを開発したい」(島田氏)

ニューヨークでAiboお披露目(ビデオ)――ソニーのかわいいロボットドッグがアメリカにやってくる

ソニーは先週ニューヨークで復活した新しいAiboを紹介するプレスイベントを開催した。ソニーのアメリカ法人、Sony Electronicsの新事業担当副社長、Michiko Arakiはビデオで次のように述べた。

ソニーが初代のAiboを発表してから20年近くになる。この間、ソフトウェアはもちろんセンサー、アクチュエータなどテクノロジーはあらゆる面で大きく進歩した。さらに現在ではWiFiを通じてインターネットのクラウドにアクセスすることができるようになった。

これにより新しいAiboはオーナーと本当の絆を育てることができる。それぞれのオーナーとの交流を通じて学び続け、独自のパソナリティーを育てていく。交流を深めるほど独自の性格が生まれ、友情も深まる。Aiboは伴侶を求める人なら誰にでも勧められるすばらしいロボットだ。これはソニーがAIとロボティクスの分野で何ができるかを実証するショーケースといえる。

アメリカ向けAiboの価格は2899ドルでAibo本体の他にクラウドAIとの接続契約3年分、Aiboが好きなピンクのボールといったおもちゃ、特製のドッグタグなどが付属する。9月から販売が開始され、出荷はおそらくホリデーシーズンとなるだろう。

TechcrunchのAibo記事はこちら

原文へ

滑川海彦@Facebook Google+

“空飛ぶクルマ”の実現めざす米Top FlightがTC Tokyoに登壇

11月15日、16日に開催するスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2018」。これまで、みなさんにはGitHub COOのJulio Avalos氏、そしてdely代表取締役の堀江裕介氏の登壇決定をお伝えしてきたけれど、今日はもう1人登壇者を紹介したいと思う。アメリカのドローンスタートアップ、Top Flight TechnologiesでCEOを務めるLong Phan博士だ。

2014年創業のTop Flightは、ドローンの研究開発と運用を進めることで、将来的に“空飛ぶクルマ”の実現を目指す米国スタートアップだ。Top Flightの現行プロダクトである「Airborg H8 10K」は、全長220センチメートル、全幅180センチメートル、全重量33キログラムの大型ドローン。大きさもそうだけれど、特筆すべきなのはその航続可能時間だ。Airborgには同社が開発したガソリンと電気のハイブリッドエンジンを搭載。これにより、4キログラムの荷物を載せた状態でも2時間以上の航続が可能だという。最大スピードは時速55キロメートルだ。

Top Flightを率いるLong Phan氏は、マサチューセッツ工科大学(MIT)で科学修士と機械工学博士課程を修了したあと、研究者として約20年間ドローンの研究開発を行ってきた人物。その研究成果をビジネスの現場で活かすため、MITの研究仲間だった5人を誘って2014年に同社を設立した。

Long Phan氏

ドローンは日本のスタートアップ業界でも引き続き注目を集める分野であり、聞けば、Top Flightはパートナーシップなどによる日本市場への参入にも積極的だという。それならばと、これから日本で耳にすることも増えるであろうTop FlightをTechCrunch Tokyoにお招きし、創業ストーリー、米国と日本のドローンマーケット、そして空飛ぶクルマの実現までのロードマップを聞こうと登壇のオファーをした。

当日のセッションでは、Long Phan博士から空飛ぶクルマというワクワクする話を聞き、未来への想像を膨らませてほしい。9月18日までは通常4万円のチケットが1万8000円で手に入る“超早割”を実施中なので、ぜひこの機会に購入しておくことをオススメする。

チケット購入はこちらから

ソニーのAiboがアメリカで販売開始へ――高価だがソニーのAIとロボティクスのショーケースに

ペットはお金がかかる。手数料、予防注射、食べ物、医療費…それでも結局は惜しみなく愛情を注いでくれる無二の伴侶を得ることができる。

もしそういうコストを少しばかり節約しようと考えているならロボット・ドッグ、すくなくともソニーのAiboはお勧めできない。ソニーが復活させたAiboは賢くてかわいいが決して安くはない。今日(米国時間8/23)、ニューヨーク市で開催されたイベントでソニーはAiboについてさらに詳しい情報を発表したが、値札は2899ドルだった。

Aiboの魅力(実際多数ある)にもかかわらず、ニッチなプロダクトに留まるだろうと予測せざるを得ない。Sony North Americaのプレジデント、COOのMike Fasuloが私に語ったところによれば、ソニーはホームロボティクスの分野で主要なプレイヤーになることを目指しているという。しかし何年も前からソニーが約束していたものの、この価格ではAiboがメインストリームのプロダクトになることはないだろう。

むしろAiboはソニーがホームロボティクスに力を入れることを象徴する製品だ。現在のソニーの消費者向けロボティクスとAIのショーケースとして機能することは間違いない。ともあれ、かなりかわいい製品に仕上がっている。私はソニーのCESのプレス・カンファレンスに出席してAiboがアメリカに初めて登場したのを見た。すると部屋中に驚きの声が上がった。つわもの揃いのテクノロジー・ジャーナリストたちの心を一瞬で溶かすのは容易なことではない。その点Aiboは大成功だった。

Fasuloは私のインタビューに答えて次のように述べた。

この製品はソニーのイノベーションの能力を示すものだ。このロボットには4000のパーツが組み込まれている。目はOLEパネルを内蔵しており、かわいい表情を作り出す大きな要素となっている。同時に写真撮影の能力も優れている。Aiboは全体としてソニーのイメージ・センサー・テクノロジーをベースにしている。このロボットは22軸の自由度を持ち、きわめて柔軟、多様な動作が可能だ。これは私が見てきた他のロボットのどれよりも優れている。Aiboはソニーがイノベーションにコミットすることを証明し、おそらくはブランディングにも良い影響を与えるだろう。

第1世代のAiboはあらゆる意味で時代に先駆けていいた。しかしその後、コンシューマー向けAI、クラウド・テクノロジーなどすべては当時では考えられなかったほど進歩し、広く普及した。19年のブランクを経て再登場したAiboはどんな性格のペットロボットになったのだろうか?

ソニーはAiboである種のリスクヘッジを図っている。2899ドルという価格は熱心なアーリーアダプター以外にはアピールしそうにない。ではあるが、このロボットは日本では驚くほどの売れ行きを示している。2万台前後が売れたというが、これはソニーの当初の期待以上の数字だろう。Fasuloによれば、アメリカ市場での販売目標は「数千台」だという。

現在Aiboはメインストリーム向けプロダクトではないし、複雑なメカニズムを考えれば将来も大幅に価格が下がることもなさそうだ。しかしソニーは今度こそ(すくなくとも当分の間)ロボティクスに注力するだろう。ソニーの「最初の子犬たち」は3年間のAI Cloudサービスがサポートされる。つまりロボット犬は3年間は健在で跳ね回ることができるわけだ。

驚くほど高価なクリスマスプレゼントを探しているむきは9月から購入できる。またニューヨークのソニースクエアで10月下旬まで実物を見ることができる。

原文へ


滑川海彦@Facebook Google+

AIがホテルの単価を最適化、ダイナミックプライシング支援ツールのメトロエンジンが7億円を調達

AIを活用してホテルや旅館の客室単価の設定を支援する「メトロエンジン」などを展開するメトロエンジン。同社は8月23日、複数の投資家より総額約7億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回メトロエンジンに出資した投資家は以下の企業・個人などだ。

  • SBIインベストメント
  • NECキャピタルソリューション
  • エボラブルアジア
  • JR東日本スタートアップ
  • タップ
  • ベクトル
  • ベンチャーラボインベストメント
  • 菅下清廣氏

メトロエンジンが手がけるのは、事業者がいわゆる“ダイナミックプライシング”を活用するためのサポートツールだ。現在はこれをホテルや旅館向けに提供している。

ダイナミックプライシングとは、モノやサービスの価格を需要と供給に応じて変動させる仕組みのこと。需要予測を基に“適正価格”を設定することで、事業者にとっては収益向上にも繋がる。

海外では宿泊施設やエアチケットだけでなく、ライブやスポーツのチケットなど様々な業界でこの仕組みの導入が加速。日本でもヤフーと福岡ソフトバンクホークスが観戦チケットを価格変動で販売した事例などがあり、その注目度が増してきている。

ダイナミックプライシングでポイントとなるのが、いかに適正な価格を毎回算出することができるか。関連するビッグデータをリアルタイムに集め、それらを徹底的に分析した上で需要を予測し価格を導き出すシステムが必要だ。

メトロエンジンの場合は競合宿泊施設の客室単価や在庫数、レビュー数など「宿泊客の予約行動」に関わる様々なビッグデータを収集。それらをAIが分析した上で客室単価を算出する。

従来はこれらの業務をレベニューマネージャーと呼ばれるような担当者が人力で行なっていたわけだけど、複数のツールを使って多様な情報を収集したり、何度も新しい情報を反映させるのには相応の時間とコストがかかっていた。

メトロエンジンの特徴のひとつはそれをテクノロジーによって効率化できること。同社代表取締役CEOの田中良介氏は「適正な価格を出すことで収益の向上に繋がるだけでなく、そこにかかっていた人件費や調査費用、時間といったコストを削減できる」と話す。

現時点で国内を代表とするホテル数十チェーンへの導入が決定済み。調達した資金を活用してエンジニアやデータサイエンティストの人員を100名程度まで拡大し、ダイナミックプライシングの精度向上を始めサービスのさらなる改善、成長を目指していくという。

また今回のラウンドは同社にとって資金面以外でも大きなインパクトがある。このビジネスを拡大していく上では欠かせないのが、宿泊施設の基幹システムであるPMS(Property Management System)との連携だ。調達先であるNECとタップはPMS領域において実績のある2社。両社とタッグを組めたことはメトロエンジンにとって大きいだろう。

同社ではまず宿泊施設における価格の最適化を支援していくが、今後は他の領域においても単価設定や需要予測の仕組みを展開していく方針だ。

「今後あらゆる領域でモノやサービスの価格がダイナミックプライシングかサブスクリプションのどちらかになっていくと考えている。宿泊施設のように供給に上限があるものはダイナミックプライシング、ニュース記事の購読のように供給に上限がないものはサブスクリプションというように、この流れが2〜3年で一気に加速する」(田中氏)

たとえば航空券や高速バス、駐車場などは同社が持つ技術だけでなく、保有している宿泊施設のデータとも関連性がある領域。すでに持っているアセットを組み合わせることで、精度の高い需要予測や単価設定も実現できるという。

メトロエンジン以外でも、TechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルで最優秀賞を獲得した価格決定に関わる技術をホテル業界以外にも展開しようとしているし、6月には三井物産とヤフーがダイナミックプライシング事業の合弁会社を設立するといった動きもあった。

日本でもこれからいろいろな領域に、ダイナミックプライシングの波が訪れるのかもしれない。

メトロエンジン代表取締役CEOの田中良介氏

CookpadTVが三菱商事から40億円を調達、共同で新事業も予定

クックパッドの連結子会社であり、料理動画事業を展開するCookpadTVは8月23日、三菱商事を割当先とした第三者割当増資により40億円を調達することを明らかにした。

CookpadTVはクックパッドの料理動画事業を分社化する形で、2018年4月に設立。2017年12月スタートの大手流通チェーンと連動して実店舗で料理動画を配信する「cookpad storeTV」をはじめ、ユーザー投稿型の動画撮影スタジオ「cookpad studio」、ライブ配信を通じてプロの料理家や有名人から料理を学べる「cookpadTV」など料理×動画の軸で複数のサービスを運営してきた。

中でもcookpad storeTVは全国のスーパーマーケットからの要望が高く、独自開発した店頭サイネージ端末の設置台数はまもなく1万台を突破する予定。配信している料理動画の週間閲覧者数も350万人を超えたという。

今回CookpadTVがタッグを組む三菱商事は原料調達から小売まで、食のバリューチェーンごとに事業アセットを持ちグローバルで食品関連の事業を展開する。資本提携を通じて三菱商事のネットワークやノウハウを活用し、cookpad storeTVの成長スピードを加速させるのが狙い。国内だけでなく海外進出も視野にいれていくという。

また三菱商事がグループ企業と展開する流通企業向けのデータ分析事業と連携した広告商品の開発など、店頭での新サービスの提供にも取り組む。

CookpadTVでは調達した資金をもとに積極的なプロモーションを実施し、cookpad storeTV以外の事業も含めてさらなる成長を目指すとともに、両者の強みを生かした新規事業も「年内を目処に開始する予定」としている。

クラウド人材管理ツール「カオナビ」が人材紹介会社の求職者データベースと連携した新機能を発表

人材マネジメントプラットフォーム「カオナビ」を提供するカオナビは8月23日、同社いわく日本で初めて人材紹介会社の求職者データベースと社内人事システムを直接連携した新機能「TALENT FINDER(タレントファインダー)」のサービス提供を開始した。

第一弾として、リクルートキャリアの転職スカウトサービス「リクナビ HRTech 転職スカウト」との連携を本日より順次開始すると発表している。

「TALENT FINDER」を使うと何ができるのか。クラウド人材管理ツールのカオナビ上で社内人事データに紐づく“こんな人ほしい!”ボタンをクリックすることで選定された社員の実績や能力がそのまま募集要項に反映され、提携先の求人サービスにて直接求人募集ができる。“このポジションに入る人がほしい”ボタンからは、ロールモデルにしたい社員を4名まで選定することが可能だ。

同社によると「人材を必要とする現場担当者がカオナビ上で直接求人募集ができるほか、社内で実際に活躍している社員の人事データに基づいて募集要項を作成することができるため、効果的に即戦力となる候補者を見つけることができる」といったメリットがあるという。

また、リクナビ HRTech 転職スカウトとの連携により、リクルートキャリアの求職者データベースからAIが最適な候補者をレコメンドする。TALENT FINDERを使えば企業は自社が求める人材により簡単に・短時間で出会える可能性が高まるだろう。

カオナビは、社員の実績や評価、スキル、才能などを、顔写真を切り口にした独特のインターフェイスで一元管理できるクラウドサービスだ。2012年のローンチ以降、業種・業態を問わず1100社以上の経営者や現場のマネジメント層に選ばれているという。同社は2020年までに導入企業3000社を目指している。

オフィス家具通販サイト「Kagg.jp」が月額レンタルサービスを開始ーー中古品取り扱いも視野に

オフィス家具通販サイト「Kagg.jp」を手がける47インキュベーションは8月23日、新品オフィス家具の月額レンタルサービス「Kaggレンタル」を新たにスタートした。

Kagg.jpは45万点以上の商品数を誇る国内最大規模の家具通販サイト。先月には、累計売上10億円を突破した。これまでは販売に特化していたがレンタルを始めることで「時代に合ったオフィス家具利用」を提案する。

Kaggレンタルでは、Kagg.jpで販売中のチェアを、1脚あたり月額990円(税抜)からレンタルすることができる。家具は新品で、対象商品は10万点以上。サービス開始当初の対応エリアは東京23区内で、順次拡大予定。また、将来的にチェア以外の商品の取り扱いも計画している。

サービスの大きな特徴としては、初期投資が抑えられる、必要な数だけ借りられる、いつでも返却できる、などが挙げられる。Kagg.jpで人気のSylphy(シルフィー)というチェアの販売価格は74736円だが、レンタルだと月額2990円。レンタルを2年間継続した商品は、そのまま無償で譲り受けることができる。

同社取締役でKagg.jp事業担当の梁原立寛氏は「シェアリングエコノミーに代表されるように、モノにお金を使う・モノを持つという考え方は変化してきている。サービスに関してもサブスクリプション化しているというのが大きな流れとしてある」と新サービス開始の背景について語った。

たしかに、同氏が言うとおり消費形態は近年“所有”から“利用”へと大きくシフトしてきている。音楽を聴くなら「Spotify」、映画を見るなら「Netflix」、オフィス系だと「Adobe Creative Cloud」や「Office 365」、アパレルは「airCloset」や「Laxus」といった具合に、サブスクリプションサービスは若い世代を中心に徐々に浸透・定着してきている。

さらに「企業は多様化し、スタートアップ・ベンチャーが増加している」「WeWorkに代表されるようにオフィス自体も流動化している」という観点から、家具レンタルのニーズは高まっているはずだと梁原氏は睨む。

「必要な数だけ借りられる上、いつでも返却できる。スタートアップ・ベンチャーだと、一年後にどんな人数でどんな組織になっているかわからない。一月単位、一脚単位で必要な数だけ借りていただき、いらなくなれば返していただく」(梁原氏)

家具の分野ではKaggレンタルのほかに「CLAS」やTechCrunch Japanでも以前に紹介している「KAMARQ」などのサービスがすでに存在している。

KAMARQも7月30日に月額制のオフィス家具提供を開始しているが、Kagg.jpとの決定的な違いは商品数だ。KAMARQはテーブル、椅子、チェスト含む22種のオフィス家具を提供しているが、Kaggレンタルの対象商品は10万点以上。なので「既にある家具をもう一つ追加したい」といったニーズに応えられるのが強みだと梁原氏は語った。

なお、お気づきかもしれないが、Kaggレンタルにより貸し出される家具は全て新品だ。返却が相次いでしまった場合にはどのように対応するのか。梁原氏は「基本的には長くお使いいただけるという期待をしている」というが「新古品として販売」したり「中古品として販売またはレンタル」することも視野にあると説明した。

「中古オフィス家具のニーズはかなり強い。新品のレンタルあるいは何か別の入手方法によって在庫となったオフィス家具に関しては販売またはレンタルといった形で提供したいと考えている」(梁原氏)

「お客様のニーズに合わせた様々な利用形態を提供できるようにするのが理想的だ」と同氏は話していた。

個人的に、中古家具の在庫を抱えるのはリスクになりうると思う。だが、例えばフリマアプリ「メルカリ」では多くの中古品が流通していたりするし、「絶対に新品でないと」という価値観を持つ人は昔に比べると減ってきているはず。

中古家具のレンタルならスタートアップ・ベンチャーにとってさらなる初期投資の削減になる。同社のさらなるサービス展開に今後も注目していきたい。

スマホから誰でも気軽にファンクラブを作れる「CHIP」――公開2週間で約1700個のファンクラブが開設

「今は個人がスマホからTwitterやInstagramなどのSNSを通じて気軽に情報発信する時代。だからこそ“ファンクラブ”の仕組みももっと簡単にできるはず。スマホさえあれば誰でも気軽にファンクラブを作れて、ファンと交流できるような空間を作りたい」ーーそう話すのは8月5日にファンクラブ作成サービス「CHIP」をリリースしたRINACITA代表取締役の小澤昂大氏だ。

公開から約2週間が経った8月21日時点で同アプリ内には1700個ほどのファンクラブが開設。ユーザー数は約1.3万人で、実際に課金しているユーザー(同アプリでは“CHIPする”という表現を使っている)もすでに1400人ほどいるという。

多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーが登録していることもあって、SNSでもちょっとした話題になった。

テーマは“ファンクラブの民主化”

冒頭でも少し触れたが、CHIPはスマホアプリ(現在はiOS版のみ)から誰でも自身のファンクラブを開設できるサービスだ。

ファンクラブを作るのに必要なのは、テーマ画像を選びファンクラブの名前と説明を入れて、会員費と会員証のテーマを設定するだけ。説明文をどれだけ丁寧に書くか次第だけど、おそらく数分あればファンクラブができるはず。試しに僕も作ってみたけど、かかった時間は3分ほどだった。

会員費は月額100円から10万円までの範囲で100円単位で選ぶことができ、特にリターンなどを前もって決めておく必要もない。一方でファンクラブを通じてでできることも現時点では少なく、基本的には開設者からテキストや画像を投稿し、それについてファンがコメントするのみ。

この辺りは今後アップデートして行く予定で、たとえばライブ・音声配信機能やコミュニティ要素を強化した機能などを検討しているようだ。

小澤氏によると、今はイラストレーターやデザイナーのファンクラブが1番多いそう。そのほか音楽系のアーティストやアイドル、モデル・俳優、YouTuber、写真家など幅広い。nanapi創業者の“けんすう”こと古川健介氏や、エンジェル投資家の有安伸宏氏など、TechCrunch読者の皆さんにとっては馴染みのある起業家も自身のファンクラブを作っている。

もちろんファンクラブという仕組み自体はずっと前からあるもので、Webベースでファンクラブを作れるサービスも存在してはいたものの「開設するのに敷居が高かった」というのが小澤氏の考えだ。

「事務所に入っているようなアーティストや影響力のあるクリエイターだけでなく、個人で活動していてまだファンが少ないアーティスト・クリエイターでもファンクラブを作れるようにしたかった。やりたいのは“ファンクラブを民主化”すること」(小澤氏)

近年では「CAMPFIREファンクラブ」や「pixivFANBOX」など、クリエイターが継続的に応援してくれるファンを獲得できるプラットフォームも増えてきている。CHIPでは“スマホ”にフォーカスすることで、クリエイターとファン双方にとってより身近でアクセスしやすい環境を作るのが狙いだ。

ドラムに打ち込んだ20歳の起業家が立ち上げたスタートアップ

RINACITAは2018年3月の設立。20歳の小澤氏を中心に若いメンバーで構成されるスタートアップで、これまでSkyland VenturesとEast Venturesから資金調達をしている(金額は非公開)。

代表の小澤氏は以前からドラムに打ち込んでいて、大学進学前にはアーティストの道に進むことも本気で考えていたそう。小澤氏の場合は最終的にドラマーではなく大学を選び、今は起業家としてチャレンジをしているけれど、同じように悩んだ結果アーティストやクリエイターの道を選んだ人達を支えるプラットフォームを作りたいという思いがあった。

「才能があって努力もしているけど、環境やお金が原因で夢を諦めざるを得ない人も少なくない。ニッチな領域だと注目を集めるのが難しいなど、活動しているジャンルにも左右される。お金になりやすいとか、人気を集めやすいジャンルとか関係なく、アーティストやクリエイターがもっと自由にチャレンジできるようにしたいと考えた」(小澤氏)

目指しているのは、クリエイターにとって新たな収益源にもなるのはもちろん、自分の活動や作品に共感して応援してくれようになったファンとのつながりが深まっていくようなサービスだ。

とはいえCHIPはまだまだ始まったばかり。上述した通り現時点の機能は非常にシンプルだし、一定数のファンを獲得できているのはインフルエンサーなど一部のユーザーだ(CHIPはファンがいなくても気軽に利用できるのがウリなので、それでもいいのかもしれないけれど)。

「まずは各ユーザーが興味のあるファンクラブとうまく出会えるような導線(検索性)を強化していきたい。ある程度ファンクラブを作る障壁は低くすることができたと思うので、あとはコミュニティの熱量を継続できる仕組みを作れるかどうか。たとえばライブ配信や音声配信機能なども検討してはいるが、アーティストやクリエイターがCHIPの運営に多くの時間を割かないと継続できないのは目指すべきところではない。そうしなくても盛り上がるような仕掛けを作ることが、今後の課題だ」(小澤氏)

dely代表の堀江氏がTC Tokyoに登壇、成長続けるスタートアップの経営で学んだ教訓と“これから“

11月16日、17日の2日間にわたって開催予定のスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2018」の登壇者が徐々に決まりつつあるので、随時みなさんにお知らせしていく。この記事では、先日ヤフーによる連結子会社化が発表されて話題になったdely代表取締役の堀江裕介氏の登壇を発表したい。

dely代表取締役の堀江裕介氏

delyはレシピ動画サービス「クラシル」などを展開するスタートアップ。2016年2月にサービス開始したクラシルは現在までに1200万以上のダウンロード件数、290万人を超えるSNSフォロワー数を獲得するまでに成長している。delyの堀江氏は間違いなく、料理レシピを短尺の動画でみるという新しいライフスタイルの火付け役の1人だ。

delyが行った過去の資金調達ラウンドだけみても2016年11月の約5億円2017年3月の約30億円2018年1月の約33億円と、かなり早いスピードでビジネスを拡大してきたことが分かる。今回の登壇では改めて創業時から現在までの振り返りを聞くとともに、delyの“これから”についても聞きたいと思っている。

delyは2018年7月に類似サービス「mogoo」を運営するスタートアウツを買収。この領域で「ダントツ」を目指すという意思表示をした。でも、delyが目指すところはもっと先にある。僕たちがヤフーの傘下入りについて取材したとき、堀江氏は生鮮食品ECという“モノを売る”サービスの提供に対する意欲も語ったのだ。レシピ動画サービスだけで目指せるのは時価総額1000億円。でも、1兆円企業を目指すには生活インフラとなるようなサービスを作らなければならないと堀江氏は話していた。

堀江氏が登壇するセッションでは、彼の頭の中にある1兆円企業になるまでのロードマップを聞く。みなさんもTechCrunch Tokyoに参加して、その話に耳を傾けてほしい。最後にちょっとだけ宣伝させてもらうと、一般チケットは4万円のところ、9月18日までなら1万8000円の「超早割チケット」や学生限定割引の「学割チケット」を入手できる。以下のページからぜひ参加登録してほしい。当日、みなさんにお会いできることを楽しみにしている。

チケット購入はこちらから

米SaaS領域への投資額は年間3.2兆円、SaaS業界レポート

SaaSを提供する企業とそれらのサービスを利用したい人をつなぐ「ボクシル」を提供するスマートキャンプは8月21日、SaaS業界の現状をまとめた「SaaS業界レポート」を発表した。発行は今年で2回目。なかなか興味深いレポートなので、TechCrunch Japan読者のみなさんにも簡単に紹介しよう。

国内におけるSaaSの導入状況

企業によるクラウドサービスの導入は年々拡大している。本レポートによれば、2013年時点でクラウドサービスを利用している企業は全体の33%程度(n=2183)だったのに対し、2017年時点では57%にまで上昇している。僕たちTechCrunch Japanの運営はほぼクラウドサービスに依存しているから、正直「まだこんなものか」と思ってしまったけれど、それでもオンプレミスに比べてクラウドが主流になりつつあるのは事実だ。

クラウドサービスを利用することのメリットの1つとして、労働生産性の向上が挙げられると本レポートは指摘している。ここでは労働生産性を「営業利益、人件費、減価償却費の合計を従業員数で割ったもの」と定義しているが、クラウドサービスを利用していない企業に対して利用している企業の労働生産性は約30%高いことが分かったという。

クラウドサービスはオンプレミスに比べ、導入コストが低く、更新性や拡張性にも優れているうえ、本レポートによれば労働生産性も高くなる。クラウドを導入していない企業でも、こうしたメリットは理解しているようだ。本レポートによれば、「(クラウドサービスの)メリットが分からない、判断できない」と回答した企業は前年比で約6%ほど減ったという。でも、今年になって増えたのは「必要がない」という回答だった(約4%以上)。TechCrunch Japanで普段取り上げるスタートアップはSaaSを開発していることも多いが、これまで以上にサービスが持つ良さ、必要とされる理由を打ち出す必要があるということなのかもしれない。

SaaS業界における資金調達の動向

普段、TechCrunch Japanでスタートアップによる資金調達のニュースを伝えるのは、「資金の流れから業界のトレンドが見えてくる」と僕たちが考えているのが理由だ。なので、SaaS業界についても、資金調達の動向からこの業界のトレンドを見てみることにしよう。

まずは米国から。本レポートによれば、米国のVCはSaaS領域に年間で約300億ドル(約3兆2000億円)を投資している。この数字は2014年頃からVCマネー全体の拡大とともに上昇していて、2016年にはVCマネー全体の40%がSaaS領域に投資されたという。SaaS企業によるIPOも盛んだ。2015年のAtlassian、box、Shopifyや2016年のtwillio、2017年のmongoDB、oktaなどがその代表例だろう。そして今年はSaaSの代表格とも言えるDropboxの上場があった。

国内におけるSaaS企業の資金調達も活発だった。2017年には名刺管理サービスのSansanが約42億円を調達MAサービスのフロムスクラッチも約32億円を調達している。2018年における大型調達にはSmartHRの約15億円プレイドの約27億円などがある。また、2017年には会計分野のSaaSを展開するマネーフォワードが上場するなどしている。各分野における資金調達状況(2018年)は以下の通りだ。

この記事で紹介したのは「SaaS業界レポート」のほんの一部だ。レポート全文にはこのWebページからアクセスできるので、確認してみてほしい。また、このレポートでは各分野ごとの国内外のSaaSをまとめたカオスマップも公開されている。まさに“カオス”マップという様相で目がチカチカしてくるけれど、「自分は大のSaaS Loverだ」と主張したい人がいれば、これをデスクトップの壁紙にしてみてもいいかもしれない。