最新ノートPCでIntelモバイルCPU「Core i7-1065G7」とAMD「Ryzen 7 4700U」の性能を確認する

最新WindowsノートPCでIntelとAMDのモバイルCPUの性能を確認する

現在モバイルノートPCで採用されている最新モバイルCPUというと、Intelの「第10世代Coreプロセッサー」、AMDの「Ryzen Mobile 4000」がある。基本的な特徴についてはすでに掲載してある記事の通りだが、実際の処理性能が気になる方は多いはずだ。

ノートPCの場合、同一スペックのCPUでも、メーカーが設定したTDP(Thermal Design Power。熱設計電力)値や、冷却性能でパフォーマンスが若干異なってしまう。そこで、IntelとAMDのCPUをボディデザインで採用している日本HPのノートPC「HP ENVY x360 15」を借り受け、ベンチマークを実施してみた。

日本HPの最新ノートPC「HP ENVY x360 15」シリーズ。お絵描きなどにも最適なペン入力にも対応

日本HPの最新ノートPC「HP ENVY x360 15」シリーズ。お絵描きなどにも最適なペン入力にも対応

日本HPは、CPUにIntel 第10世代Coreプロセッサー(Ice Lake)を採用した「HP ENVY x360 15(インテル)」と、第3世代Ryzen Mobileを採用する「HP ENVY x360 15(AMD)」を用意している。それぞれ10点タッチ、4096段階の筆圧感知対応の15型フルHD液晶IPSパネルや、タブレット形状にもできる360度回転ギミック、Wi-Fi6などのスペックを備えている最新モデルになる。

Intelモデルのシルバーに対して、AMDモデルはブラックのボディカラーを採用

Intelモデルのシルバーに対して、AMDモデルはブラックのボディカラーを採用

液晶ディスプレイは360度回転。タブレットとしても利用できる

液晶ディスプレイは360度回転。タブレットとしても利用できる

「HP ENVY x360 15(インテル)パフォーマンスモデル」(15-ed0026TU)のCPUは、4コア/8スレッド、ベース稼働クロック1.30GHz、最大稼働クロック3.9GHzの「Core i7-1065G7」。また512GB Optane SSD、16GBメモリー(DDR4-3200)などを搭載している。直販価格は税別13万9800円だ。

  • 「HP ENVY x360 15(インテル)パフォーマンスモデル」(15-ed0026TU)
  • Core i7-1065G7(Ice Lake)搭載。 4コア/8スレッド、ベース稼働クロック1.30GHz、最大稼働クロック3.9GHz
  • 直販価格は税別13万9800円

もう一方の「HP ENVY x360 15(AMD)パフォーマンスモデル」(15-ee0020AU)は、8コア/8スレッド、ベース稼働クロック2.0GHz、最大稼働クロック4.1GHzの「Ryzen 7 4700U」を採用。その他の仕様はIntelモデルと同様で、直販価格は税別12万9800円だ。

  • 「HP ENVY x360 15(AMD)パフォーマンスモデル」(15-ee0020AU)
  • Ryzen 7 4700U搭載。8コア/8スレッド、ベース稼働クロック2.0GHz、最大稼働クロック4.1GHz
  • 直販価格は税別12万9800円

物理4コアと、8コアの差や、ベース稼働クロックに700MHzの開きがあるが、最大稼働クロックは近い位置にある。しかも同価格帯になっている2機種で、CPUやiGPU(Integrated GPU。内蔵GPU)の処理能力を見ていこう。

Adobe製品を使ったテストでは、実稼働クロックの差が顕著に出る結果に

「Adobe Photoshop Lightroom」を使ったRAW現像や、「Adobe Premiere Pro」での4K動画編集、編集動画の書き出しなどといったCPUが重要な処理をいくつか行ったところ、Ryzen 7 4700U搭載のHP ENVY x360 15(AMD)パフォーマンスモデルが高速に処理を完了した。

Ryzen 7 4700Uが物理8コアを採用している点に加えて、シングル、マルチコア動作時ともに実稼働クロックが3GHz台と高いことがポイントといえる。

実際、オールコアに高い負荷をかけ、処理時間に大きく影響する「Adobe Premiere Pro」を使った4K動画の書き出し(4K→フルHD解像度、約13分40秒、ソフトウェア処理)に要した時間は、Intel Core i7-1065G7搭載のHP ENVY x360 15(インテル)パフォーマンスモデルが、28分12秒必要としたところ、Ryzen 7 4700U搭載のHP ENVY x360 15(AMD)は24分4秒で完了している。

HP ENVY x360 15(インテル)パフォーマンスモデルで、「Adobe Premiere Pro」を使って、編集動画を書き出した際のタスクマネージャー

HP ENVY x360 15(インテル)パフォーマンスモデルで、「Adobe Premiere Pro」を使って、編集動画を書き出した際のタスクマネージャー

フリーエンコードソフトウェア「HandBrake」で、約5分間の4K MP4動画をフルHD解像度(プリセット:Vimeo YouTube HQ 1080p60)のエンコードを試したところ、同様の状況となった。

H.265で出力すると、Ryzen 7 4700Uは10分26秒で出力が完了し、Intel Core i7-1065G7よりも11分程度高速だった。

Ryzen 7 4700Uの動画エンコード実行中のタスクマネージャー

Ryzen 7 4700Uの動画エンコード実行中のタスクマネージャー。CPU使用率は100%

Core i7-1065G7の最大稼働クロックは3.9GHzだが、あくまでもシングル負荷時の数値で、動画エンコードなどのすべてのコアに負荷がかかる際の実稼働クロックは1GHz台だったため、この差はやむを得ないところだ。

CGレンダリング系ベンチマーク「CINEBENCH R20」でシングルコアのCPU処理能力を見る

また、CGレンダリング系ベンチマーク「CINEBENCH R20」で、シングルコアのCPU処理能力(スコア)を見てみた。HP ENVY x360 15搭載のCore i7-1065G7は、ベンチマーク実行中に3.34GHz前後の稼働クロックになり、スコアは「398 pts」を記録した。3.72GHz~4GHz前後まで稼働クロックを伸ばしたRyzen 7 4700Uは「464 pts」のスコアを記録。デスクトップ向けと同じく、モバイル向けプロセッサーも、IntelとAMDのコアあたりの性能差はほぼないといえるようになっている。

冷却ファン非搭載でも運用できる第10世代Coreプロセッサー、冷却機構はマストだがクリエイティブ作業もこなせる第3世代Ryzen Mobile

第10世代Coreプロセッサーは、MicrosoftのタブレットPC「Surface Pro」(Core i3/Core i5搭載モデル)に代表される、冷却ファンを装備しない(できない)機種でも運用できる低消費電力(低発熱)な(Stock Keeping Unit)を用意したモバイルCPUといえるだろう。
一方の第3世代Ryzen Mobileは、冷却機構はマストだが、6コア以上の物理コア&高稼働なクロックでクリエイティブな作業もラクラクと行える性能を発揮するといったイメージだ。

最新ライトゲームをiGPUで楽しめる第3世代Ryzen Mobile

AMD Ryzen Mobileが内蔵するGPU「AMD Radeon Graphics」は、高パフォーマンスが特徴とされる。そこで実際のゲーム環境での動作を見るため、新たなeスポーツタイトルとして注目を集めるライトFPSゲームの「VALORANT」や、マイクラ好きにオススメなハックアンドスラッシュ&ダンジョンクローラーRPG「Minecraft Dungeons」を試してみた。

すると、Ryzen 7 4700UのiGPU「AMD Radeon Graphics(Vega 7)」では、「VALORANT」で平均フレームレート179.4fpsを叩き出し、「Minecraft Dungeons」でも30fpsオーバーの平均フレームレートになった。

注目の「VALORANT」。iGPUのAMD Radeon Graphics(Vega 7)なら、画質を上げても余裕で60fpsオーバーを維持できる

注目の「VALORANT」。iGPUのAMD Radeon Graphics(Vega 7)なら、画質を上げても余裕で60fpsオーバーを維持できる (C)2020 Riot Games, Inc. All rights reserved. Riot Games, League of Legends and PvP.net are trademarks, services marks, or registered trademarks of Riot Games, Inc.

IntelのモバイルCPU(Ice Lake)のうち、Core i7-1065G7が内蔵する最上位iGPU「Intel Iris Plus Graphics(64ユニット)」では、「VALORANT」は平均98.5fpsとゲームプレイを軽快に楽しめるフレームレートだった。ノートPCでカジュアルゲームを満喫するなら、第3世代Ryzen Mobileに注目といえるだろう。

Intel Iris Plus Graphics(64ユニット)は30fpsを切ってしまったが、AMD Radeon Graphics(Vega 7)は、30fpsオーバーでプレイ可能だった

Intel Iris Plus Graphics(64ユニット)は30fpsを切ってしまったが、AMD Radeon Graphics(Vega 7)は、30fpsオーバーでプレイ可能だった Mojang (C) 2009-2019. “Minecraft” is a trademark of Mojang Synergies AB

 

AMDのインテル対抗機EPYC RomeプロセッサーをGoogleとTwitterは早くも使用

AMDは米国時間8月7日、GoogleやTwitterもEPYC Romeプロセッサーをすでに使っていると、その7nmチップの立ち上げイベントで発表した。EPYC Romeのリリースは、AMDのIntel(インテル)とのプロセッサー競争で大きな差をつけたことになる。後者は先月、同社の7nmチップであるIce Lakeの提供は2021年以降になると発表したばかりだ。10nmノードのリリースは今年らしい。

データセンター用のプロセッサーでは依然Intelが最大のメーカーで、GoogleやTwitterもその顧客だ。しかしAMDの最新のリリースと低価格戦略は、同社を急速に手強いライバルに変えてしまった。

Googleは前にも、2008年のMillionth Server(百万台目のサーバー)などでAMDのチップを使用。そして今回は、自社のデータセンターで新世代EPYCチップを使っている最初の企業だ。今年遅くには、Google Cloud Platformからこのチップで動く仮想マシンが一般に供用される。

Googleのエンジニアリング担当副社長であるBart Sano(バート・サノ)氏は記者発表で「AMDの第2世代Epycプロセッサーにより私たちは、データセンターにおけるベスト、すなわちイノベーションを継続できる。そのスケーラブルなコンピュートとメモリとI/Oのパフォーマンスが、私たちのインフラストラクチャにおけるイノベーション推進能力を強化し、Google Cloudの顧客にはワークロードに最もよく合ったVMを選べる自由度を与える」とコメント。

一方Twitterは、同社データセンターにおけるEPYC Romeの使用を今年遅くに開始する。同社のエンジニアリング担当シニアディレクターであるJennifer Fraser(ジェニファー・フラサー)氏によると、このチップはデータセンターの電力消費量を節減する。すなわち[AMD EPYC 7702を使えばコンピュートクラスターのコア数増大と省スペースと省エネを同時に実現でき、TwitterのTCOを25%削減できる」という。

2ソケットIntel Xeon 6242とAMD EPYC 7702Pプロセッサーの比較テストで、AMDによれば「さまざまなワークロード」においてTCOを最大50%下げることができた。AMD EPYC Romeのフラグシップ機は64コア128スレッドの7742チップで、ベース周波数2.25GHz、デフォルトTDP225W、キャッシュ総量256MB、価格は6950ドルより。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

6月発売の12コアRyzen 9 3900XはCore i9 9920Xの半額ながら省エネで勝る

米国時間5月27日、台北で行われたComputexカンファレンスのキーノートでAMDのCEOであるLisa Su氏が、価格と性能の両面でIntel(インテル)やNvidia(エヌビディア)の強敵になると思われるチップとグラフィクスプロセッサーを発表した。なお、このカンファレンスでAMDがキーノートに招待されたのはこれが初めてで、イベントの実際の開会は5月28日だ。

チップ

同社の新製品となる第3世代Ryzen CPUの中で最初に登場する7nmのデスクトップチップは、6月7日に発売される。Su氏のキーノートのハイライトはAMDの12コア24スレッドRyzen 9 3900xチップの発表で、それは同社の第3世代Ryzen系列の旗艦機だ。499ドルの最低価格は対抗機であるCore i9 9920Xチップセットの1189ドルの半額だ。

Ryzen 9 3900xはブーストスピードが4.6Ghz、キャッシュ総量70MB、熱設計電力(TDP)はCore i9 9920Xの165Wに対し105Wとその効率性を誇る。AMDによると、Blender DemoではCore i9-9920Xより18%短時間で終了した。

この系列の他のチップの最低価格は、6コア12スレッドの3600が199ドル、8コア16スレッドのRyzen 3700xが329ドル(ブースト4.4Ghz、総キャッシュ36MB、TDP65ワット)、そして8コア16スレッドのRyzen 3800X(4.5Ghz、32MB、105ワット)が399ドルだ。

GPU

AMDによると、同社のゲーム用GPU新製品NaviグラフィクスプロセッサーはRadeon RX 5700シリーズになる(下図ツイート参照)。Nvidiaが対抗機を値下げすることもありうるので、価格は慎重に検討している。発表ではAMDのGPUの発売は6月だが、価格や性能、新たな機能等の詳細は来月ロサンゼルスで行われるE3(Electronic Entertainment Expo、6/12-14)までおあずけだ。

データプロセッサ

AMDは1月のCESで、データプロセッサーのEPYC Romeを発表・デモを行った。そのローンチは予想より1四半期早く次の四半期となり、インテルのCascade Lakeと競合する。AMDが主張するベンチマーク結果によると、EPYC Romeの処理速度はCascade Lakeの倍である(下図ツイート参照)。

画像クレジット: David Paul Morris/Bloomberg (opens in a new window) / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

AWSがクラウドのインフラストラクチャをさらに拡張、AMD EPYCを使うT3aインスタンスを供用開始

Amazonは常に、AWSを使っているデベロッパーに提供するオプションを増やそうとしている。そして米国時間4月25日、同社はそのためにAMD EPYCプロセッサーによるT3aインスタンスを数多く発表した。これらは最初、昨年のデベロッパーカンファレンスre:Inventで発表された。

しかし今日のは、その一般供用の開始を告げる発表だ。それらはバーストのある特殊なタイプのワークロードに適したインスタンスで、ユーザーの通常の計算力のニーズはそんなに、バースト時ほど高くはないというものだ。

AWSのJeff Barr氏がブログにこう書いている。「これらのインスタンスはバーストに対応できる費用効率のいいパフォーマンスを提供し、常時維持されるコンピュートパワーとしてはそれほど高いパワーを必要としないが、使用時に一時的なスパイクがあるワークロードに適している。そのため、十分に余裕のある、確実に保証されたベースラインの処理能力を提供するとともに、さらなる処理能力が必要なときには、必要十分な時間、完全なコアパフォーマンスにまで透明にスケールアップする能力がある」。

これらのインスタンスは、Amazonが数年かけて開発した特製のネットワーキングインタフェイスハードウェアAWS Nitro Systemを使用する。このシステムの主要な部位は、Nitro Card I/O Acceleration、Nitro Security Chip、そしてNitro Hypervisorだ。

今日のリリースの前身として、昨年発表されたArmベースのAWS Graviton Processorsを使用するEC2インスタンスがある。これもまた、スケールアウトするワークロードのためのソリューションを探しているデベロッパー向けのオプションだ。

さらにこの直前の先月には、低コストのAMDチップを使用するM5およびR5インスタンスが発表された。これらもやはり、Nitro Systemを基盤としている。

EPCYプロセッサーは今日から7つのサイズで可利用になり、必要に応じ、ユーザーが選んだスポットインスタンスやリザーブドインスタンス、あるいはオンデマンドインスタンスで提供される。可利用域はUS East(Northern Virginia)、US West(Oregon)、EU(Ireland)、US East(Ohio)、そしてAsia-Pacific(Singapore)だ。

画像クレジット: Thomas Cloer/Flickr CC BY-SA 2.0のライセンスによる

関連記事: AWSはアグレッシブに世界制覇を目指す――エンタープライズ・コンピューティングで全方位路線

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

HPの新しいAMD Chromebookの郎報と悲報

郎報:HPがAMD Chromebookを出した。悲報 :使われているチップセットが古い。

HPの新しいChromebook 14を紹介する。これは初めてのAMD搭載Chromebookだ。ただし喜びすぎないように。これは、多くの人たちが待ち望んでいたAMD版Chromebookではない。このChromebookは相当古いAMDチップセットで動いている。

これまで、ChromebookはIntelチップを使ってきた。しかし2018年夏、いずれQualcommとAMDのチップを使ったChromebookが提供されるという噂が広まった。どちらにもIntelに対して独自の優位性がある。Qualcommモデルは、理論的に、常時オンの接続性と長いバッテリー寿命が実現可能であり、一方AMDは、理論的に、優れたグラフィックレンダリング機能をChromebookにもたらすことができる。

このHP Chromebookはどちらでもない。

新しいHP Chromebook 14はAMD Dual-Core A4-9120を搭載している。このチップは2016年6月に発売された。CES 2019で発表された他のChromebookに使われているチップと比べると、このチップは遅く電源管理機能も劣っている。Radeon R4グラフィクスを採用している点はよいのだが、ここでもやはり、旧型チップと組合わさっていることから総合的結果は期待されるほど魅力的ではない。

願わくば、このモデルをきっかけに最新チップセットを使った他のAMD Chromebookが出てきてほしい。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

MITで開発されたメモリ分割方式により未来のMeltdown/Spectreバグを防げる

今年、研究者たちがIntel, AMD, そしてARMのチップに、設計上の根本的な弱点を見つけたときには、今の世代のコンピューターのプロセッサーのほとんどすべてに対し、極刑が求刑されたようだった。その設計ミスによって、コンピューターのメモリーから機密データを盗むことが可能だからだ。

そのMeltdownおよびSpectreと呼ばれる脆弱性は1995年まで遡(さかのぼ)り、アプリケーションがシステムのメモリーの、自分にパーミッションのない部分にアクセスできないようにしている壁に穴を開けた。それにより有能なハッカーは、パスワードや暗号鍵などの機密データが保存されている場所を見つけることができる。多くの企業がその欠陥の一部を緩和してきたが、真の長期的な解決は、コンピューターのプロセッサーの設計の最初からのやり直しであることも知っていた。

このたび、MITのComputer Science and Artificial Intelligence Laboratory(CSAIL)の研究者たちが、将来にわたって、MeltdownやSpectreのような欠陥を防止できる方法を見つけた。

アプリケーションが何かをメモリーに保存したくなったら、置くべき場所をプロセッサーに尋ねる。しかしメモリーの探索は遅いので、プロセッサーは“speculative execution”(投機実行)と呼ばれるトリックを使って、複数のタスクを同時に動かし、正しい空きメモリーを探そうとする。しかし悪質なハッカーは、その同じテクニックを使って、アプリケーションが自分に許されていない場所のメモリーから読めるようにする。

MITのCSAILによると、彼らのテクニックはメモリーを分割することによって、データが同じ場所に保存されないようにする。それを彼らは、“secure way partitioning.”(安全な方法によるパーティショニング)と呼んでいる。

彼らはこの方式をDAWG、“Dynamically Allocated Way Guard”(ガードを動的に割り当てる方法)と名付け、それは滑稽な名前のようにも聞こえるが、IntelのCache Allocation Technology, CAT(キャッシュ割り当て技術)を補完する意味を持つ。彼らの研究論文によると、DAWGはCATと同じような仕事をし、使うにあたってデバイスのオペレーティングシステムの変更箇所も少ない。したがって、Meltdownのフィックスとして問題のコンピューターにインストールするのも容易である。

ペーパーの著者の一人Vladimir Kirianskyによると、このテクニックは“共有が起きるべきところと、起きるべきでないところとの、明確な境界を確立し、機密情報を扱うプログラムがそのデータをまあまあ安全に保てるようにする”。

この技術は通常のコンピューターを保護するだけでなく、クラウドの脆弱なインフラストラクチャも保護できる。

DAWGはすべての投機的攻撃を防げるわけではないが、今研究者たちは技術の改良に取り組んでおり、すべての攻撃ではないものの、これまでよりも多くの攻撃を防げるようになる、と言っている。

しかし彼らの技術を実際にIntelなどのチップメーカーが採用すれば、DAWGのようなテクニックは“パブリッククラウドのインフラストラクチャに対する信頼を再興し、ハードウェアとソフトウェアの共同設計によりパフォーマンスのオーバヘッドも最小化できる”、という。

〔関連記事: スペクター! メルトダウン! カーネル・パニック!――今回の脆弱性はほぼ全員に影響が及ぶ。〕

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

強力なDIYボードUDOO BOLTは小さいけどMacやPCを超えてワークステーション並の性能

この前会ったときのUDOOは、Raspberry Piを使った強力なDIYボードで、多くのポートがあり、良いプロセッサーを選び、いろんな機能を用意していた。そして今日(米国時間7/3)彼らが発売したUDOO BOLTは、“AAA(スリーA)ゲーム”を動かせると称するDIYボードで、AMD Ryzen Embedded V1202B 3.2 GHz SoCプロセッサーとRadeon Vega 3グラフィクスカードを搭載している。Arduinoと互換性があるので、ロボティクスをはじめ、さまざまな電子工作プロジェクトをこれに接続できる。

BOLTに大量のRAMを載せれば、作者たちに言わせると、“Intel i5を搭載した13インチのMacBook Proの2倍、Mac Miniの3倍のパワーがある”そうだ。これだけでほとんど完全なコンピューターだから、ケースに収めてUSBキーボードや、マウス、モニタ用のHDMIなどがあれば、ミニ・ワークステーションになる。BOLTは4つのモニターをドライブでき、内二つは4KのHDMI、二つはUSB-Cだ。LinuxやWindowsを、動かせる。

発売は2018年12月を予定している。Kickstarter上で、スターターキットは298ドル、電源と4GBのRAMがある。8GB RAMでSATAとワイヤレスをサポートするタイプは、409ドルだ。

DIYボードにこれだけのプロセッサーとグラフィクスを載せるのは、やり過ぎだろうか? もちろん、やり過ぎだ。でもこのシステムは実験やオンザフライの設計用を想定しているから、商業用やワークステーションとしても十分使える。しかも、すごくポータブルだから、学校のデスクに数台置いて、子どもたちに好きなことをやらせるのも良いね。この、ピーナッツバターやジェリービーンズのパッケージぐらいのサイズのマシンで、VRゲームを楽しむこともできる。

UDOOのチームは長年、Raspberry PiやArduinoにいろんなものを足すことを仕事にしてきたから、ベーシックなボードをさらにさらにパワフルにすることのエキスパートだ。初期のモデルでもAndroidの上でドローンや多足ロボットを動かせたから、今度の強力な新製品は特級品だ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

AMDチップの欠陥を発見したセキュリティー調査会社、性急な発表で顰蹙を買う

AMDチップに見つかった一連の脆弱性は大きな波風を立てているが、それは事態が重大だからではない。自らの発見を公表した研究者らの、性急で一般うけを狙ったやり方のせいだ。プロの撮影したビデオと広報担当者のいるバグなど見たことがあるだろうか —— しかしAMDが警告を受けたのはわずか24時間前だ。欠陥は本物だとしてもこうしたやり方は不穏当だ。

問題の不具合を見つけたのはイスラエルのサイバーセキュリティー調査会社のCTS Labsで、欠陥にはRyzenfall、Masterkey、Fallout、Chimeraという派手な名前をつけ、専用のロゴとウェブサイトも作り、詳しい内容を記載した白書まで用意した。

ここまではまだよい。Heartbleedや、MeltdownとSpectreといった大きなバグにも名前とロゴはあった。

違うのは、過去のケースでは当事者たち、すなわちIntelやOpenSSLチームやAMDは、欠陥について十分前もって密かに警告を受けていたことだ。これが「責任ある開示」のコンセプトであり、公開前に開発者が問題の第一次対応を行う機会を与えるものだ。

大企業が自社にとって不都合な情報の開示について、どこまで統制力をもつべきかについては正当な議論があるが、一般に、ユーザー保護の観点から慣例は守られる傾向にある。しかし今回のケースでCTS Labsは、AMDの欠陥について事前にほとんど警告することなく、完全な形で公表した。

チームが発見した欠陥は本物だが、一連のアクションを実行するためには管理者権限が必要だ。つまり欠陥を利用するためにはターゲットシステムを深いレベルでアクセスする必要がある。調査報告書によると、バックドアは台湾企業のASmediaのチップに故意に仕掛けられたとしている。ASmediaは多くのメーカーと提携して部品を製造している。

この欠陥を利用するためには高度のアクセスが必要なことから、メモリー操作とアーキテクチャーレベルの欠陥を悪用したMeltdownとSpectreなどとくらべて問題ははるかに限定的だ。たしかに深刻ではあるが、その公表方法ゆえウェブには疑惑がうずまいた。

あの極端に専門性を排したビデオはなぜ背景素材にはめ込み合成されているのか? なぜAMDが軍で利用されていることを強調して恐怖を喚起する戦術をとってるのか? なぜ一連のバグには重大問題の識別に使われる標準追跡方法であるCVE番号が振られていないのか?なぜ、AMDには対応する時間がほとんど与えられなかったのか? なぜ、FAQにも書かれているように、数カ月のうちに修正できるのなら、少なくとも修正方法が用意できるまで公表を遅らせなかったか? そして、CTSはAMDの「業績に関わる直接または間接的な経済的利益を有する可能性がある」という情報開示はいったいなんなのか? これはこのような状況下で一般的に行われる情報開示内容ではない。

(私は欠陥の広報担当者[!]に連絡をとりいくつか質問をした)

AMDに対する何らかの悪意や恨みが背景にあるのではないかという疑念は拭いきれない。それが欠陥の深刻さを減じるものではないが、実に後味が悪い。

AMDは声明を発表し、「当社はついさきほど報告書を受け取り、発見された問題の手法と影響を解明すべく調査を続けている」と語った。これ以上1日に何かするのは困難だろう。

この種の大きなバグについはいつも言えることだが、真の影響範囲、実際にどれほど深刻なのか、ユーザーや企業は影響を受けるのか、予防するために何ができるのかといった情報は、専門家たちが詳しく調べデータを検証して初めて明らかになる。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

GoogleのProject ZeroチームはCPUの重要な欠陥を昨年発見していた

数分前(米国時間1/3)に公開されたブログ記事でGoogleのセキュリティチームが、今朝発表されたチップの脆弱性からGoogle Cloudの顧客を守るために彼らがやったことを述べている。その記事によると、この脆弱性は同社のProject Zeroのチームが昨年…時期不詳…発見していた。

発表によると、同社はその問題をチップのメーカーに報告した。それは、“投機的実行”と呼ばれているプロセスによって起きる。それは、CPUが次にやるべき命令を論理的に推測して実行し、処理速度を上げる、という高度なテクニックだ。そしてその機能に隙(すき)があり、悪者はそれを利用して、暗号の鍵やパスワードなどメモリ上の重要な情報にアクセスできる。

Googleによるとこれは、AMD, ARM, Intelなどすべてのチップメーカーに見られる現象である(AMDは否定)。Intelは、一部で報道された、脆弱性はIntelのチップのみという説を、同社のブログ記事で否定している。

Googleのセキュリティチームは、この問題を知った直後からGoogleのサービスを護るための措置を開始した、と書いている。早期に一般に発表しなかった理由は、調整版のリリース予定が来週(1月9日)だったため、という。そしてこのニュースがリークしたために、GoogleやIntelなどの関係企業は、情報を公開して憶測を終わらせることを選んだ。

なお、Google Apps/G Suiteには、被害が及んでいないので、ユーザーは何もしなくてもよい。そのほかのGoogle Cloudのユーザーは、何らかのリスク対策が必要かもしれない。ユーザーのアクションを必要とするプロダクトやサービスは、このページに詳細が載っている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Nvidiaに負けたくないIntelとAMDがCPU/GPU盛り合わせチップを共同開発

IntelがAMDと一緒に、IntelのCPUとAMDのGPUを合わせたノートブック用チップを開発している。それは小さくて軽量で、しかもグラフィクス要求の厳しい最高クラスのゲームもゆうゆう扱える、というチップだ。

この二社の提携は、見た目には分かりやすいが、でも両社がコラボレーションするのは80年代以来久しぶりだ、とアナリストのPatrick MoorheadがThe Wall Street Journal紙に語っている。これまでは、どちらかというと両社は互いに強力なライバルとして、PC用プロセッサー市場を争っていた。まあ、レースの常勝はIntelだったけど。

でも最近では、Intelのトップの座をねらうのはAMDよりむしろNvidiaのようだ。グラフィクスカードのメーカーであるN社は、このところAIと機械学習に力を入れているし、それと同時に消費者向けとエンタープライズ向け両方のコンピューター用に、トップクラスのグラフィクスカードを提供し続けている。

AMDは最近、Nvidia製品に負けない性能/機能のGPUを作って、Nvidiaを押さえ込もうとしている。そして今回のIntelとの協働では、どでかい専用グラフィクスカードがなくても最高のグラフィクス性能を発揮するチップによって、さらに未来の成長の余地を作ろうとしている。このチップはPCのメーカーに、プロセッサーのサイズが小さく、グラフィクスカードもそれ用のヒートシンクも要らないという、省エネ省スペースを提供するはずだ。

そしておそらくIntelは、昔のライバルと組むことによって現在の最強ライバルを引き離したい、という根性だろう。消費者にとっては、良いニュースかもしれない。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

AMDが満を持して世に送るハイエンドグラフィクスカードRX Vega 64とVega 56は8月発売

5月に予告されたAMDの新しいグラフィクスカードRX Vegaの、発売に関する詳細が公表された。そのハイエンドのグラフィクスカードは、NvidiaのGTX 1080と1070による市場支配の打破をねらっている。

発売日は8月14日とされ、お値段はRadeon RX Vega 64が499ドル、Radeon RX Vega 56が399ドルからだ。

仕様としては、RX Vega 64のコアは計算ユニットが64基、ベースクロックが1247MHz、ブーストクロックが1547MHz、HBM2メモリ8GBとなる。GPU用のこの新しいメモリ技術は、484GBの帯域を誇る。

この性能を日常語に翻訳すると、ケーブル1本で5Kを楽に表示できる、となる。あるいは、暗号通貨のマイニングができる、とかね。

AMDはFreeSyncモニタのエコシステムの改良を通じてその最新のGPUをプッシュしたい意向だ

RX Vega 64の消費電力は295Wであり、GTX 1080のTDP(thermal design point)180Wより大きい。しかしAMDはFreeSyncを装備した曲面モニタの普及に賭けており、また、それだけのハイパワーが正当化されるようなゲームをサポートする、としている。ゲーム用としての最高性能をねらっているのだ。

一方Vega 56はGTX 1070相当だが、お値段は64より100ドル安い。メモリは強力な兄機と同じく8GB、計算ユニットは少なく、ブーストクロックも1471MHzとやや低い。

しかしホリデイシーズンまでまだ間があるから、Nvidiaがその最上位機種の仕様をアップデートするための時間は十分にある。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

「世界最強のグラフィクスカード」を自称するAMDの長く待たせた新型機Radeon Vegaが6月に発売

グラフィクスカードに関してちょっと間(ま)が開(あ)きすぎた感のあるAMDから、ついにその次世代機Radeon Vega Frontier Editionが出た。この、おそらくペア搭載(duo)と思われるハイスペックGPUがねらうのは、NvidiaのPascalシリーズGTX 1080と1080Ti、そしてさらに最新のTitan Xpも標的だ。

その細部は: 64コア、単精度12.5TFPSのプロセッサー、帯域16GBのキャッシュ、そして8Kディスプレイのサポートだ。

それでも飽きたらぬAMDは、同機の水冷バージョンも用意した。限定生産だが、もっとも過酷な処理負荷に対応し、自分が焼け死ぬことを防ぐ。

同社American Micro DevicesはRadeon Vegaプラットホームを、AIなどのアプリケーションのための“世界最強のグラフィクスカード”と呼ぶ。これまでPC上のゲーマーたち向けにはNvidiaに人気をさらわれたが、それでもAMD製品は、サーバーやデスクトップ、ラップトップ、ゲーム専用機などさまざまなシステムに、全世界的に採用されてきた。

そして今回のVegaは、スピードでもNvidiaに勝つことが目的だ。“速い”という言葉が、Nvidiaの可用性の高いPascalに付着している状態を、解消したい。長年のAMDファンは、まるで醒めぬ夢のように、そう思い続けてきた。

AMDは、Vegaの得意分野を二つ挙げている: 今後のAIの研究を加速する機械学習の開発と、そしてもちろんゲームをさらに贅沢にするフォトリアリスティックな描画能力だ。

発売予定は6月半ば、価格は未発表だが、1000ドルラインまで届くかもしれない。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ソニーのPS4はJaguar第7コアの利用で少し強力になっている

2015-12-02-ps4

たぶん一般のゲーマーのほとんどは気づいていないだろうが、PlayStation 4はほんのわずかだが強力になっている。PlayStation 4のCPUはオクタ(8)コアのAMD Jaguarだ。これまでゲーム・デベロッパーはそのうちの6コアを利用できた。他の2コア、つまり第7と第8のコアはOS専用だった。しかしソニーは最近、第7コアのOSロックを外して、というか部分的にはずして、デベロッパーが利用できる道を開いた。

ソニーはこの点についてまだ何も発表していないが、一部のデベロッパーはすでに第7コアを使い始めている。たとえば、オーディオ・ミドルウェアを提供しているFirelight Technologiesは人気のサウンドエフェクト・エンジン、FMODの新バージョンをリリースしている。

Firelight TechnologiesではバージョンアップのログEurogamerサイトが第7コアについて新発見をしたと指摘し、特に次のように述べている。「PS4:新しく、FMOD_THREAD_CORE6が追加され、このスレッドによって第7コアへのアクセスが可能になった」。

FMODはすべてのゲーム・コンソールのOSで作動するモジュールだ。PlayStation 2、3、 4、Portable、Vitaだけでなく、MicrosoftのXbox、Xbox
360、Xbox One、任天堂のWii、Wii U、 3DS、また iOSやAndroid、OS X、Windows、LinuxでもFMODは走る。またUnreal EngineUnity、 CryEngineSource Engineなどのゲームエンジンを通じて多くの人気ゲームに組み込まれている。つまり、Firelight Technologiesは単にPS4だけでなくすべてのプラットフォームにおけるオーディオ・エンジンの効率改善の手法を教えてくれたわけだ。

ちなみに、Microsoftは今年、Xbox Oneについて第7コアの利用方法を発表している。

PS4とXbox Oneはどちらもこのコアを音声コマンドのようなタスクの実行に利用しているようだ。ゲーム・デベロッパーが第7エンジンを利用するときはすでにシステムこのコアを使っていることに留意する必要があるだろう。

ところでこのアップデートは一般のPS4ユーザーにはどの程度の影響があるのだろう? すべてのゲームは最初の6コアをフルに利用しており、ソフトウェアは6コアに最適化されている。つまりそのままでは7番目のコアを利用することはできない。利用するためには新しいパッチが必要になる。第7コアのり利用には6コアですでに順調に動いているソフトのためにわざわざパッチを開発するほどのインセンティブはなさそうだ。

しかし今後開発される新しいゲームについては話が別で、第7コアをフルに利用することが前提になるだろう。デベロッパーはゲーム開発の途中であっても第7コアが使えるようソフトを書き換えるはずだ。上記のゲーム・エンジンのメーカーは真っ先にアップデートを行い、新機能が利用できるようにするだろう。

ただしPS4やXbox Oneにおける現在のゲームソフトではGPUの能力がCPPUより重視される傾向にある。ゲーム・デベロッパーはさまざまな昨日をGPUに分担させてきたからだ。つまりCPUの改良は天地が逆転するほどの影響は持たない。しかしゲームを今よりスムーズに走らせるためには大いに役立つだろう。

画像: TechCrunch

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+