米国で17年ぶりにCD売上げが増加し前年比21%増を記録、アナログレコード売上げも61%増で1986年以来の売上高に

米国で17年ぶりにCD売上げが増加し前年比21%増を記録、アナログレコード売上げも61%増で1986年以来の売上高に到達

Rick Madonik via Getty Images

近年の音楽市場はすっかりストリーミングが主流になり、もしかするともう何年もCDを購入していないという人が多数を占めているのかもしれない状況ですが、全米レコード協会(RIAA)のまとめによると、2021年のCDの売上げが5億8400万ドル(約690億円)になり、前年に比べ21%も増加したことがわかりました。米国でCD売上げが増加するのは2004年以降で初めて、17年ぶりとのことです。

元気が良いのはCDだけではなく、アナログレコード売上げはなんと2021年に61%増の10億ドル(約1182億円)を記録、こちらも1986年以来の売上高に達し、物理媒体全体での音楽の売上げは16億6000万ドル(約1961億円)にのぼっています。

音楽市場全体としては、やはり時代の変遷を反映して音楽ストリーミングが最も強く、ラジオ形式のストリーミングを含めた総売上高は23.8%増の124億ドル(約1兆4652億円)と桁違い。録音音楽市場全体の83%を稼ぎ出しています。

では音楽市場のなかでいったい何の売上げが減少したのかといえば、それはダウンロード販売です。デジタルダウンロードでの音楽の売上げは前年比12%減で5億8700万ドル(約694億円)になりました。このあたりは、Apple MusicやAmazon Music Unlimitedといったストリーミング勢がハイレゾ音質での配信を始め、ダウンロード販売の利点のひとつだったハイレゾ音源の商品価値が相対的に低下したことが影響している可能性も考えられます。

なお、単純に額を比べるだけならCDの売上げは5億8400万ドルであり、ダウンロードとの差は300万ドルほどとなっています。

CDやレコードといった物理媒体の売上げ増加は、アーティストサイドには良い傾向です。音楽ストリーミングは再生回数あたりの単価が低く、これまでにも幾度か問題となっていますが、CDなど物理メディアなら特典やジャケットなど付加価値を付ければより高価格で販売でき、その分実入りも良くなります。またファンは物理媒体を購入して手にすることで所有欲が満たされ、作品に愛着を感じる可能性も高まるため、ストリーミングよりはアーティストが固定ファンを獲得するのに役立ちそうです。

(Source:RIAA(PDF)Engadget日本版より転載)

Amazon Musicが2022年中にPandoraを抜いて米国2位の音楽配信サービスに、調査会社が予測

かつてのeMarketer(イーマーケター)、現Insider Intelligence(インサイダー・インテリジェンス)の予測によると、Amazon Music(アマゾン・ミュージック)は2022年中にPandora(パンドラ)を抜き、米国で2番目にユーザー数の多い音楽ストリーミングサービスになる見込みだという。ただし、この調査では、有料プランのユーザーと広告付き無料プランのユーザーの両方が含まれている。Insider Intelligenceは、2022年末時点における各社音楽ストリーミングサービスのユーザー数を、Amazon Musicが5260万人、Pandoraが4910万人、そしてApple Music(アップル・ミュージック)は3820万人になると予想しているが、Apple Musicの利用者はいずれも有料ユーザーであり、広告付き無料プランのユーザーはいない(もちろん、無料トライアル中の可能性もあるが)。

Insider Intelligenceの予測によると、Amazon Musicは前年比5.3%の成長が予想されるが、Pandoraは2017年からユーザーを減らし続けており、このSiriusXM(シリウスXM)傘下のストリーマーのユーザー数は、2022年に6.7%の減少が予想されるという。Pandoraの担当者は、この新たなレポートに関するコメントを辞退したものの、Pandoraは米国における広告付き音楽ストリーミングサービスの首位であると語った。同社の最新の業績報告によると、Pandoraのユーザー数は現在5230万人で、前年の5890万人から減少している。

また、2021年のInsider Intelligenceの調査によると、有料会員数に関しては、Pandoraは競合他社に大きく遅れを取っている。

画像クレジット:eMarketer

Spotify(スポティファイ)は、全世界で1億8千万人のプレミアム会員を抱え、月間アクティブユーザーは有料・無料プラン合わせて4億600万人。他を大きく引き離し、米国のナンバー1音楽ストリーミング配信事業者として君臨している。Spotify独自の報告によると、北米のアクティブユーザーは約9338万人で、そのうち有料会員数は2880万人とされている。Spotifyの数字は国別に加入者数を分けていないため、Pandoraの聴取者とSpotifyの聴取者の規模を直接比較することはできないものの、Pandoraの市場シェアは下がり続けている。それでもPandoraは2021年、2020年から30%増となる7億4300万ドル(約859億円)の粗利益を上げた

Amazon Musicは成長を続けると同時に、その製品自体にも注目すべき改善が見られる。Amazon MusicApple Musicはいずれも2021年、ロスレスオーディオのストリーミング配信を全加入者に提供開始したが、Spotifyにこの機能はまだなく、その遅れについても説明できていない。Amazonはポッドキャストの配信も強化しようとしており、一部のポッドキャストに同期したトランスクリプト(文字起こし)機能を追加した。しかし、Spotifyのポッドキャストリスナーは、同プラットフォームのコンテンツに関する決定が物議を醸しているにもかかわらず、急速に増え続けている。ポッドキャスト業界における買収相次ぐ中、Spotifyがストリーミング業界において支配の手を緩めるつもりがないことは明らかだ。

画像クレジット:TECHCRUNCH

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スポティファイ、Hi-Fiサブスク提供の遅れがライセンス問題に関係していることを示唆

Spotify(スポティファイ)のCEOであるDaniel Ek(ダニエル・エク)氏は、ストリーミングサービスのHi-Fiサブスクの開始延期が、ライセンス問題に関連していることをほのめかした。2月2日に行われたSpotifyの四半期および年間収益発表会で、エク氏はアナリストや投資家に対して、Hi-Fiサービスの計画についてあまり話すことはないとしながらも、議論は進行中であると述べた。

Spotifyが約束どおりHi-Fiサービスを一般に提供できなかったことに関する直接的な質問に対して、エク氏は曖昧な答えだけを述べ、次に進んだ。

「私たちが話している機能の多くは、特に音楽に関連するものでライセンスに行き着きます」と、エク氏は投資家に語った。「だから、これを市場に出すためにパートナーと常に対話をしているということ以外、これに関して具体的に発表することはできません」。

2021年2月、Spotifyは新しいハイエンドサブスクサービスを展開する計画を発表した。同社は、Spotify HiFiが2021年中に開始され、Spotify Premiumの加入者に「CD品質のロスレスオーディオ形式」で音楽を聴くオプションを提供すると発表していた。Spotifyはまた、Hi-FiサービスはSpotify Connect対応スピーカーを含む、デバイス間で動作すると述べていた。同社は、価格やどの市場がこの新しいサブスクをサポートするかなど、詳細な情報は提供しなかった。しかし、このサービスはPremiumの「add-on(アドオン)」として提供される予定だった。つまり、通常のPremiumサブスクよりも高い費用がかかるということだ。この計画は、競争環境の変化によって複雑になる可能性があった。

この延期された機能に関するエク氏のコメントは、2021年12月、この機能に関するスレッドが数百ページにもおよぶ怒りの書き込みに爆発した後、Spotifyの担当者が同社のコミュニティフォーラムに残したものに続くものだ。

「私たちは、Hi-Fi品質のオーディオがあなたにとって重要であることを知っています」と、コメントはいう。「私たちも同じように感じており、将来的にSpotifyのHi-Fi体験をPremiumユーザーに提供できることを楽しみにしています。しかし、まだ共有できるタイミングの詳細はありません。もちろん、可能な限りここでアップデートします」。

なお、Spotifyのロスレスサブスクの噂は、ストリーミングサービスがSpotify HiFiという新しい有料オプションの導入を考えていることが明らかにされていた2017年に遡る。当時、この機能は月々5〜10ドル(約570〜1150円)の追加料金がかかると噂されていた。

SpotifyのHi-Fi層の導入が遅れているのは、Apple Music(アップルミュージック)とAmazon Music(アマゾンミュージック)の両社がその顧客向けにハイファイストリーミング機能をリリースしているためだ。2021年6月、Apple(アップル)は追加料金なしでApple Musicのサブスクに、ロスレスオーディオストリーミングとDolby Atmos(ドルビーアトモス)をサポートするSpatial Audio(スペイシャルオーディオ)の提供を開始した。Apple Musicの7500万曲以上の全カタログがロスレスオーディオに対応している。ロスレスオーディオは、CDクオリティの16ビット/44.1 kHzから始まり、24ビット/48 kHzまで対応する。オーディオマニアは、24ビット/192kHzまでのハイレゾロスレスも選択できる。

一方、Amazonは2019年にロスレスオーディオストリーミングを備えたサブスクAmazon Music HDを月額5ドル(約570円)の追加料金で開始した。2021年5月には、対象となるAmazon Music Unlimitedの加入者全員に、Amazon Music HDを追加料金なしで提供するようにした。Amazon HDは、ビット深度16ビット、サンプルレート44.1kHz(CD品質程度)で楽曲をストリーミングする。一部の楽曲はUltra HD、つまり24ビット、最大192kHzのサンプルレート(CD品質以上)でストリーミング配信される。

ハイファイストリーミングの開始は、オーディオファン向けにより高品質なストリームでを提供してきた音楽ストリーミングサービスTidal(タイダル)の脅威に対抗する方法と考えられている。Tidalは、加入者数では業界トップの音楽ストリーミングサービスに及ばないが、その存在は、より質の高い音楽を求める需要があることを示している。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

Spotifyは依然としてトップの音楽サービスだが、市場シェアは減少中

音楽ストリーミングは、世界中で成長を続けている。エンターテインメント調査会社MIDiAの新しいレポートによると、2021年第2四半期時点で5億2390万人が音楽ストリーミングサービスに加入している。前年から1億950万人(26.4%)の増加だ。

Spotify(スポティファイ)は依然として最も加入者数の多いストリーミングサービスで、マーケットの31%を占めているものの、そのシェアは非常にゆっくりと減少している。2020年は33%、2019年には34%だった。2021年第2四半期までの1年間で、Spotifyは競合他社よりも総加入者数を増やしたが、Spotifyの成長が20%だったのに対し、Amazon Musicは25%だった。一方、Google(グーグル)のYouTube Musicは2021年第2四半期までの1年間で50%以上成長し、欧米のストリーマーで唯一、世界マーケットにおけるシェアを伸ばした。Tencent Musicを運営する中国のゲーム大手Tencent(テンセント)は、Amazon Musicと同じシェアを有している。

画像クレジット:MIDiA

Amazon MusicとApple Musicのシェアは今後も伸びるかもしれない。というのも、同レポートは2021年第2四半期までしかカバーしていないため、5月にAmazonAppleにロスレスオーディオが導入された影響は表れていない。Spotifyは1年近く前に「CD品質のロスレスオーディオ形式」で音楽を提供するSpotify Hi-Fiというハイエンドのサブスクリプションを立ち上げる、と予告していた。しかし、同社はこのプロダクトがいつ利用できるようになるのか、まだ明らかにしていない。

それから、より高品質なオーディオ体験を求める消費者をターゲットにしてきたTidalがある。Tidalのロスレスオーディオの料金は月額9.99ドル(約1100円)で、Apple Musicと同額、Amazon Musicより月額2ドル(約230円)高いだけだが、MIDiAのレポートによると、Tidalの世界マーケットシェアは2%未満だ。Jay-Zが設立し、後にBlockが買収したTidalは「アーティストが意図したとおりに」(つまり、極めて優れた音質で)アーティストが音楽を共有できるようにするサービスとして売り込んでいる。

画像クレジット:Tidal

しかし、Blockの下では、アーティストに優しいストリーミングサービスという考え方は音についてだけではない。現在、同社は音楽ストリーミングをアーティストにとってより収益性の高いものにする方法を試行中だ。2022年に入り、TidalはHiFi Plus(月額19.99ドル[約2300円])という最も高いプロダクトにファン中心型のロイヤリティを導入した。このプロダクトでは、ユーザーの購読料の10%が、最もよく聴いているアーティストに直接支払われる。

この動きは、マスター品質のオーディオよりもアーティストへの支払いを重視する新規加入者の獲得につながるのだろうか。試してみる価値はあるだろう。なにしろ、(ユーザー中心型の支払いを実現しようと取り組んでいる)Deezerは丸々2%というTidalよりも多いシェアを手にしている。

画像クレジット:alengo / Getty Images under a RF license.

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップル、iOS 15.2でSiri専用の「Apple Music Voiceプラン」を開始

Apple(アップル)が、秋のハードウェアイベントで発表したApple Musicの低価格プラン「Voiceプラン」へのアクセスを開始する。このサービスは。ほぼHomePodのスピーカーとAirPods専用で、主にSiriのコマンドでApple Musicにアクセスする。音声だけで操作するこのシンプルなバージョンは、標準の個人プランの月額9.99ドル(税込980円)に対して、月額4.99ドル(税込480円)で提供される。

関連記事:アップルがSiriでのみ利用できる安価なApple Music Voiceプランを発表、月額480円

音楽の新サブスクリプションはiOS 15.2のさまざまなアップデートの一環で、他にもアプリのプライバシー報告や、メッセージの子どもの安全警告「メールを非公開」によるプライバシー機能などがある。

音声コマンド専用の音楽サブスクなんて誰が必要とするんだ?と疑問に思った人もいるかもしれないが、実のところ、初めてそれを提供するのはAppleではない。

2019年、Amazon(アマゾン)はAmazon Musicサービスをもっと手頃な価格で提供する方法として無料で広告入りのプランを、Echoスピーカー専用として用意した。つまりそれは、AlexaのコマンドからしかアクセスできないAmazon Musicだった。

今回のSiriだけサービスもそれと似ているが、Appleのスマートスピーカーだけに限定されていない。AppleによるとHomePod、AirPods、iPhone、CarPlayなど、Siri対応のデバイスなら何でもよいとのことだ。

この音声オンリーのプランは、曲数が少ないApple Musicの簡易バージョンではない。これまでのサブスクと同じく、会員はApple Musicのカタログに載っている9000万曲や数万のプレイリスト、数百種類のムード、アクティビティプレイリスト、個人化されているミックス、ジャンル別のステーションなどにアクセスできる。Apple Music Radioも含まれている。

このコンテンツにアクセスするために、ユーザーは曲やアルバムやアーティストをSiriにリクエストし、おそらくは「play something chill(チルな曲をプレイして)」や「play the dinner party playlist(ディナーパーティー用のプレイリスト)」「play more like this(こんな曲をもっと)」といった音声コマンドでジャンルやプレイリストを指定するだろう。

Voiceプランの会員は、Apple Musicアプリをある程度利用できる。しかし通常のようにライブラリ全体を閲覧するのではなく、「今すぐ聴く」に先にプレイされた曲が表示され、タップやSiriのコマンドでそれに似た曲を聴くことができる。「ラジオ」は、ライブやオンデマンドのラジオにアクセスできる。検索機能もあるが、検索結果の曲はSiriに要求しないと再生されない。アプリには、Apple Music向けにSiriを最適化する方法も紹介されている。

Siriへのフィードバックは「I like this song(この曲は好き)」とか「I don’t like this song(この曲は好きではない)」などといえばよい。Siriは、歌手の名前や、曲名、アルバム名、発売年なども教えてくれる。

音声でApple Musicに付き合うことは、Siriを訓練することにもなり、ユーザーの好みをよく理解するようになる。そうなると、Siriに「play some music I like(私が好きな音楽をかけて)」や「play my favorites mix(私の好きなミックスをかけて」」などとお願いすると、そのとおりの曲をかけてもらえるようになるだろう。

AmazonのEchoオンリープランに対抗し、Apple MusicのVoiceプランはユーザーのSiriの利用履歴にAppleがアクセスできるようにしている。そしてそのデータを利用して、AlexaやGoogleアシスタントと比べて後塵を拝しているプロダクトを改良することができる。より大きな意味では、有料の音楽サービスを利用することをためらっていたお金に敏感なユーザーに、初めてそれを試してもらう機会になる。広告のない音楽をオンデマンドで聴けることの良さに目覚めたら、Pandoraの広告入りバージョンから離れるかもしれない。

関連記事:安価なApple Music VoiceプランはSiriの改良を進める作戦である可能性が高い

iOS 15.2のアップデートにより、Apple Music Voiceが提供されるのは、オーストラリア、オーストリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、香港、インド、アイルランド、イタリア、日本、メキシコ、ニュージーランド、スペイン、台湾、英国、米国となる。

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Tencentとの提携でApple Musicに中国の音楽が増える

世界中のApple Musicユーザーはこれまで以上に多くの中国ミュージシャンの音楽を聴けることになりそうだ。Tencent傘下でオンラインミュージックのTencent Music Entertainment(TME)が現地時間11月8日、同社の「Music Cloud」プログラムに参加する「レコードレーベルとアーティスト」の作品が今後Apple Musicで配信されると発表した

Tencentが欧米大手のオンラインミュージックと手を組むのは、これが初めてではない。2017年に同社はSpotifyと株式交換について合意した。この合意にはコンテンツの共有は含まれていなかった。

TMEの発表は具体的ではなく、TMEもAppleも今回の計画について詳しく述べていない。この計画のポイントはTMWの「Music Cloud」とは何かということだ。これについてTMEは以下のように説明している。

TMEが公開する新しいグローバル音楽配信プラットフォームのTME Music Cloudには、コンテンツのセルフマネジメント、オンライン配信とプロモーション、利用料金の処理、音楽データのインサイトの機能もあり、幅広いパートナーレーベルやクリエイターに世界レベルでの多チャンネル配信を提供します。同時にTMEが持つ業界のリソースとTencentのソーシャルエコロジーにより、コンテンツクリエイターに対してコンテンツ制作やプロモーション、商業化に関して総合的に支援します。

この説明からすると、Music Cloudは大手レコードレーベルからの配信やマーケティングの支援がない、あまり売れていないアーティストに提供されるようだ。

この4年間、TMEはインディーズのミュージシャンを対象とするプラットフォームを構築し、作品の配信、ファンへのアピール、バーチャルコンサートの開催、そして最終的には収益化ができるようにしてきた。その代わり、TMEは作品に対してライセンスの権利を取得する。

しかしTMEにとっての本当の収入源は、台湾のJay Chou(ジェイ・チョウ)のようなトップミュージシャンの権利だ。ジェイ・チョウはユーザー確保の上で極めて価値が高い存在で、TMEは2017年にチョウの権利を侵害したとしてNetEase Musicを提訴した

TMEは長年にわたり、レコードレーベルの「ビッグ3」と呼ばれるユニバーサルミュージック、ワーナーミュージック、ソニー・ミュージックエンタテインメントから独占ライセンスを確保するために多額の資金を投じてきた。しかし中国がテック業界に対して独占的活動を取り締まり、TMEの厚い壁が壊れ始めている。2021年7月に中国の市場規制当局はTMEの「不公平な」市場活動に対して制裁を課し、オンラインミュージックの独占権を放棄するように通告した。

TMEが高額なライセンスの音楽をApple Musicと共有するとは考えにくい。もし共有すれば、この提携は代償をともなうだろう。TMEとAppleが詳細を明らかにすれば、さらに多くのことがわかるはずだ。今のところ、世界中のオーディエンスに聴いてもらえる可能性に中国の新人ミュージシャンが大きな魅力を感じることは確かだ。

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

安価なApple Music VoiceプランはSiriの改良を進める作戦である可能性が高い

Apple(アップル)は、先に開催したイベントで数多くの興味深い発表を行った。その中で私が特に注目した、かつあまり注目されていないように思えたのが、Apple Musicの新しい料金プランだった。新しい「Voice」プランでは、Apple Musicの全ライブラリを月額5ドル(日本では税込月額480円)という低価格で利用できる。ただし、Siriを使ってアクセスしなければならず、Apple Musicの標準的なビジュアルと入力しやすいアプリ内のユーザーインターフェイスは使用できない。

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Appleは、このプランを開始する理由を明らかにしていないが、iPhoneメーカーとしては、音声アシスタントの学習と改良のために音声データをより多く収集したいため、価格の障壁を低くして、より多くの人にSiriを使ってもらおうとしているのではないかと推測するのが妥当だと思う。

AppleのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は、このイベントで「より多くの人が、声だけでApple Musicを楽しめるようになることをうれしく思います」と述べていた。

このApple Music Voiceプランが存在する理由として、他に説得力のあるものが考えられない。特に、Apple Music上の曲目全体を提供するために、Appleはレーベルとのライセンス契約を変えていないため、標準プランよりもはるかに低いマージンでこの新サービスを提供していると思われる。

繰り返しになるが、これは単なる推測だ。ただ、AppleとSpotify(スポティファイ)間の厳しい競争を考えると、スウェーデンの会社がApple Musicを価格で打ち負かすために自社のストリーミングサービスを月額7~8ドル(月額税込980円)で提供できるのであれば、そうするのではないだろうか。そしてAppleは、どうしても膨大なデータを集めたいがために、新しいサブスクリプションプランであえて多少の損失を出しているのではないだろうか。私がこの説をツイートしたとき、同僚のAlex(アレックス)は、ではなぜAppleはサブスクリプションを無料にしないのかと疑問を抱いていた。2兆5000億ドル(約285兆円)規模の企業であるAppleは、技術的にはバランスシート上でそれだけの打撃を飲み込むことができると思うが、Spotifyのような独立した音楽ストリーミング企業からの批判をこれ以上集めたくはないのだろう。同社はすでに、さまざまな分野で反競争的な行為を行っているという批判を受けている。

テクノロジー企業は、AIモデルに膨大な量のデータを与え、サービスの機能を向上させている。Siriが長年にわたってかなり改良されてきたとしても、テック業界で働く多くの人々や大衆の間では、Amazon(アマゾン)のAlexaやGoogle Assistantの方がはるかに優れているというのが一般的な意見だ。

Appleはすでにこのような音声データを、Apple Musicの既存ユーザーから取得していると思われるが、ある友人が言ったように「要は、この機能はもともとあった。ただ、高い有料の壁を設置していただけだ。今回、彼らはその壁を低くしたということ」。新プランでMusicを音声操作のみにしたことで、参入障壁が下がっただけでなく、ユーザーはSiriを使わなくてはいけなくなった。SiriはApple Musicの標準加入者向けの機能だが、ほとんどのユーザーは基本的に、もしくは意図的にアプリのUIを使ってコンテンツにアクセスする可能性が高いと思われる。

音声アシスタントに「音声優先」や「音声のみ」のサービスを求めるとどうなるかわかる例として、AmazonのAlexaを見てみよう。Alexaは、最初から音声でアクセスしなければならなかった。これにより、AmazonはAlexaのアルゴリズムのために大量の学習データを収集することができただけでなく、Alexaを最大限に活用する方法についてユーザーをトレーニングすることもできた。

私の理論が正しいと思うもう1つの理由は、Appleがこの新しいサブスクリプションを最初に提供する予定の国についてだ。オーストラリア、オーストリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、香港、インド、アイルランド、イタリア、日本、メキシコ、ニュージーランド、スペイン、台湾、英国、米国だ。

インド、スペイン、アイルランド、フランスが第一陣に名を連ねているのは、Appleが世界中のさまざまな言葉を集めようとしていることを意味している。ところで、インドなどの発展途上国や、中国や日本など、テキスト入力が音声に比べて不必要に複雑になることがある市場では、音声検索が非常に人気がある(世界第2位のスマートフォン市場であり、約98%のパイをAndroidが占めているインドで、音声検索が驚くほど大量に採用されたことで、Googleアシスタントの改良や、音声分野での革新に向けたより積極的なアプローチが可能になったと、Googleの幹部が話してくれたことがある)。

Siriは、他の音声アシスタントと比較して、その能力の点でやや遅れをとっていると言われているが、Appleのサービスにおける新しい動きは、顧客に音楽ストリーミングサービスに参加するための割安な方法を提供するためのものでもある一方で、この認識されているギャップを埋めるための試みでもあると捉えられるだろう。

画像クレジット:Heng Qi / Visual China Group / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

アップルがSiriでのみ利用できる安価なApple Music Voiceプランを発表、月額480円

Amazon(アマゾン)は2019年に、同社のEchoスピーカーでストリーミングする広告つき無料音楽サービスの提供を開始し、家庭でAmazon Musicをストリーミングするより手頃な方法を導入した。そしてApple(アップル)は米国10月18日「Voiceプラン」というApple Musicサブスクリプションの新しい低価格バージョンをデビューさせてAmazonを追撃する。Amazonのサービスと違って、Voiceプランは無料ではない。従来のものよりも安い月額4.99ドル(日本では月額480円)の広告なしのサブスクで、Siriの音声コマンドでのみApple Musicにアクセスできるようになっている。

本日開催されたイベントで同社が説明したところによると、新しいVoiceプランでは、今秋のサービス開始時にはまず17カ国でSiriを使ってApple Music内の曲やプレイリスト、すべてのステーションを再生できるようになる。気分や活動に応じた一連の新しいプレイリストや、パーソナライズされたミックス、ジャンル別のステーションにもアクセスできる。つまり、例えば、ディナーパーティーのための音楽や、1日の終わりに気持ちを落ち着かせるための音楽をSiriに流してもらえるようになる。何百もの新しいプレイリストが利用できるようになる、とAppleは話した。

SpotifyやAmazon Music、PandoraなどApple Musicのライバルは、すでにこうした機能を何年も前から提供している。なのでこれは、Appleがムードやアクティビティに合わせて選べるさらに豊富になったプレイリストでもってこの分野でのライバルに追いつこうとしていることになる。現在のところ、Apple編集のプレイリストは「Favorites Mix」「Chill Mix」「New Music Mix」「Get Up Mix」などのパーソナライズされたプレイリストを含む「Made for You」のラインナップに限られている。

新しいVoiceプランは「すべてのAppleデバイス」でApple Musicにアクセスするのに使えるとしているが、AmazonがEcho向けに提供している無料の音楽ストリーミングと同様、HomePodを念頭に置いて設計されたことは明らかだ。スマホやタブレット、パソコンなど、画面のあるデバイスを使っている場合、Siriに話しかけて音楽を再生するのは必ずしも理に適うものではない。しかし、主にAirPodsでApple Musicを聴いていて、すべてのコマンドを話すことに抵抗がない人にとっては、このサービスは興味深いものかもしれない。

Appleによると、このサービスはiPhoneをはじめiPad、Mac、Apple TV、Apple Watchなどのデバイスに加え、CarPlayでも利用できるという。

Apple Music加入者は、自分の音楽の好みに基づいた提案や、Siriを通じて最近再生した音楽のキューを表示する、カスタマイズされたアプリインターフェイスを目にする。また「Just Ask Siri」というセクションもあり、そこではSiriをApple Musicに最適化する方法を紹介している。

Apple Musicの他のサブスクには「個人プラン」と「ファミリープラン」があり、それぞれ月額9.99ドル(日本では月額980円)、月額14.99ドル(月額1480円)となっている。新Voiceプランも個人プランと同様に、1つの契約で利用できるのは1人に限定されている。このプランでは、9000万曲を超えるApple Musicの全カタログにアクセスすることができる。

画像クレジット:Apple

Voiceプランはオーストラリア、オーストリア、カナダ、中国本土、フランス、ドイツ、香港、インド、アイルランド、イタリア、日本、メキシコ、ニュージーランド、スペイン、台湾、英国、米国で提供される。

Siriを使って音楽をリクエストしている非加入者にもこのサービスを販促するとAppleはいう。非加入者はVoiceプランを7日間無料で試すことができ、自動更新はない。

新サービスの開始に合わせて、Appleは第3世代の新しいAirPodsと、カラフルなHomePod miniスマートスピーカーのラインナップも発表した。

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画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

Apple MusicはShazamの技術でDJミックス内の楽曲に対しきちんと使用料を払おうとしている

Apple Music(アップル・ミュージック)は米国時間9月10日、DJミックスの作成に関わるすべてのクリエイターを個々に適切に特定して支払いを行うプロセスを作成したことを発表した。Apple Musicは、Appleが2018年に4億ドル(約439億5000万円)で買収した音声認識アプリShazam(シャザム)のテクノロジーを使用して、メジャーならびに独立レーベルと協力して、ミックスに登場するDJ、レーベル、アーティストの間でストリーミングロイヤルティを公正に分配する方法を考案しようとしている。これは、DJミックスが関係するすべてのクリエイターに対して長期的な金銭的便益を提供して、他のアーティストが繰り返しクリエイターの作品を利用して制作した場合でも、クリエイターに報酬が支払われるようにすることが狙いだ。AppleはShazamのテクノロジーの初の大がかりな統合として、その価値を認めているようだ。

これまでは、YouTube(ユーチューブ)やTwitch(トゥィッチ)などのライブストリーミングプラットフォームは、他のアーティストの曲の使用を著作権侵害としてフラグ付けする可能性があったため、DJがミックスをオンラインでストリーミングすることは困難だった。アーティストは、ライブセット中にDJが曲を再生されたときにはロイヤリティを受け取る権利があるが、ダンスミュージックの場合には、さまざまな曲を編集して混ぜ合わせて認識できないものにすることができるため、事情はさらに複雑になる。

Apple Musicは、2020年と2021年のトゥモローランドのデジタルフェスティバルのセットを含め、すでに何千ものミックスをホストしている、だがビルボードが6月にそれを指摘していたものの、今回の技術を正式に発表したのはこのタイミングになった。この発表の一環として、Studio !K7のDJ Kicksアーカイブが同サービス上で展開され始め、ファンは15年以上市場に出ていなかったミックスにアクセスできるようになる。

DJのCharlotte de Witte(シャーロット・デ・ウィッテ)氏は「Apple Musicは、ミックスにトラックが含まれているアーティストと、それらのミックスを作成しているアーティストに公正な料金を提供できるような連続ミックスを提供する最初のプラットフォームです。これは、誰もが公平に扱われる正しい方向への一歩です」と、Appleを代表する声明の中で述べている。「オンラインミックスを再び提供できることに、言葉ではいえないほど興奮しています」。

画像クレジット:Apple Music

ダンスミュージックファンにとって、DJミックスをストリーミングできる機能は画期的であり、Apple MusicがSpotify(スポティファイ)と競争するのに役立つだろう(SpotifyはAppleのポッドキャスティングの利用者を上回り、有料サブスクリプションで業界をリードしている)。Apple Musicはロスレスオーディオや空間オーディオを導入し、クラシック音楽チャンネルを買収したにもかかわらず、まだSpotifyには追いつけていない。だがDJミックスの追加によりさらに別のユニークな音楽機能が追加されることになる。

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だがApple MusicがDJロイヤルティの難問へ果敢に切り込んだとしても、パンデミックを乗り越えて生き残ったライブミュージシャンやDJの間で起こっている、より広範な危機に必ずしも対処できるわけではない。

Mixcloud(ミックスクラウド)のようなプラットフォームでは、DJが事前にライセンスされた音楽を使用してセットをストリーミングし、収益化を行うことができるが、Apple MusicのDJミックスにはユーザー生成コンテンツは含まれない。Audible Magic(オーディブル・マジック)と提携しているMIDiA Research(ミディア・リサーチ)は、ユーザー生成コンテンツ(UGC) が、リップシンクのTikTok(ティクトク)であれSoundcloud(サウンドクラウド)DJミックスであれ、音楽を使用するオンラインコンテンツが、今後2年間で60億ドル(約6589億8000万円)を超える価値のある音楽業界の金鉱になる可能性があることを発表した。しかし、Apple自身はまだUGCに投資していない。個人は、Soundcloudの場合のような、個人のミックスをプラットフォームにストリーミングをアップロードすることはまだできない。6月のビルボードレポートによると、Apple Musicは、プラットフォームが結合されたトラックの70%を識別したときのみ、ミックスをホストする。

Apple Musicは、ロイヤルティが正確にはどのように分割されるかについての質問には答えなかったが、これはミュージシャンたちがデジタル環境の中で生計を立てる方法を再考するための小さな一歩に過ぎない。

これらの革新はアーティストに報酬を与える役には立つものの、ストリーミングロイヤルティは、ミュージシャンがお金を稼ぐ方法のごく一部しか占めていない。Appleはミュージシャンに1回のストリームごとに1セント(約1.1円)を支払うが、Spotifyのような競合他社はそれよりもはるかに少ない額しか支払っていない。このことから、UMAW(ミュージシャンと関連労働者組合)は、3月にJustice at Spotify(Spotifyに公正さを)という名前のキャンペーンを開始した。これは、Appleと同じく1回のストリームあたり1セントの支払いを要求するものだ。しかし、特にプラットフォームからのストリーミングに対するわずかな支払いを考えると、ライブイベントはミュージシャンにとって不可欠なもののままだ。もちろん、パンデミックはツアーに対して良い影響を与えていない。さらに追い打ちをかけるような情報だが、2016年にエレクトロニックミュージック協会は、ダンスミュージックプロデューサーたちがライブパフォーマンスと認定されないまま使用された作品から1億2000万ドル(約131億8000万円)のロイヤルティをもらうことができなかったと推定している。

画像クレジット:TechCrunch

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(文: Amanda Silberling、翻訳:sako)

クアルコムがBluetooth用の新音声コーデック「aptX Lossless」を発表、CDロスレスオーディオを伝送可能に

クアルコムがBluetooth用の新音声コーデック「aptX Lossless」を発表、CDロスレスオーディオを伝送可能に

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クアルコムが、Bluetooth用の新音声コーデック「aptX Lossless」を発表しました。CDのサンプリング仕様である44.1kHz / 16bit PCM信号をロスレスで伝送することが可能な高音質コーデックです。音源の送信側(プレーヤー)と受信側(イヤホン / ヘッドホンまたはBluetoothスピーカー)双方がこのコーデックに対応していれば、CDの音質を劣化させることなくワイヤレスで再生することが可能です。

aptX Losslessはクアルコムが3月に発表した「Snapdragon Sound」という高音質オーディオ伝送技術およびソフトウェア群の一部として提供されます。Snapdragon SoundではaptX Adaptive機能によって最大96Hz / 24bitまでの音源伝送を可能としますが、この場合は不可逆圧縮を加えるため音質の劣化が発生します。aptX LosslessはaptX Adaptiveの拡張として提供され、44.1kHz / 16bitまでの音源であればロスレスでの伝送を行います。つまりCDが採用する仕様のPCMデータならそのままの音質で伝送し、ロスレス再生が可能ということです。

Snapdragon Soundでは、Bluetooth High Speed Link技術の改良によってCDロスレスオーディオ信号を送信可能なするだけのスループットを提供すると述べています。もしCDロスレス以上の音質のデータをスマートフォンから伝送する場合は、最大96kHz / 24bitの圧縮伝送を使用するとのこと。なお、ユーザーは設定により手動で44.1kHz / 16bitにするか96Khz / 24bitにするか選択もできますが、ソース音源がCDロスレスまでの場合は自動的に44.1kHz / 16bitになります。また通信環境が悪くスループットが出ない場合は、圧縮伝送に切り替え140kbpsにまで伝送速度を下げます。

技術仕様は以下のとおり。

・44.1kHz / 16bit CDロスレスオーディオ品質をサポート
・Bluetoothリンク品質に基づいてCDロスレスオーディオにスケールアップ
・ユーザーはCDロスレスの44.1kHz / 16bitと、96kHz / 24bitロッシーから選択可能
・ソース音源がロスレスの場合にCDロスレスオーディオを有効にする自動検出
・正確なビットレートは約1Mbps

クアルコムはSnapdragon SoCにaptXコーデックをデフォルトで搭載するため、今後発売される北米や欧州で流通するスマートフォンのほとんどは、音楽プレーヤーとしてaptX Losslessに対応していくはずです。発表によれば、このaptX Losslessは今年後半に利用可能になり、搭載する製品もその時期当たりには最初のものが発表されるとのことです。

これまで、Bluetooth経由でのオーディオ再生でもっとも高音質とされたのはソニーの独自コーデック「LDAC」でした。これとアップスケーリング技術のDSEE HXを組み合わせることで、LDACは96Khz / 24bit相当の音質での伝送は可能ですが、これもやはり不可逆圧縮で、厳密に言えば音質の劣化は避けられません。また当然ながらLDACも、プレーヤー側とイヤホン / ヘッドホン、スピーカー側の双方がLDACに対応していなければなりません。

ちなみに、Apple MusicやAmazon Music Ultra HDなどはすでに楽曲のロスレス / ハイレゾ配信を行っており、Spotifyも今年後半にロスレス配信を提供する予定です。近々、Androidスマートフォンを新しくしようと思っている人は、Snapdragon SoCを搭載しaptX Losslessに対応する機種が出るまで待つ方が得策かもしれません。一方、アップルのiPhoneは、Bluetooth音声伝送には伝統的に自社のAACを使用しておりBluetoothでの音楽再生はロスレスオーディオに対応していません

(Source:Qualcomm 2021 State of SoundEngadget日本版より転載)

アップルがクラシック音楽配信サービスのPrimephonicを買収

米国時間8月30日、Apple(アップル)はクラシック音楽の提供を拡大するために、Primephonic(プライムフォニック)を買収したことを発表した。2014年にスタートしたアムステルダムを拠点とするPrimephonicは、これまでApple Musicの一般的なストリーミングのアプローチでは不足していた音楽ジャンルに、特に大きな貢献をすることになる。

サービスはApple Musicのプラットフォームに吸収されるため、単独での提供は事実上終了する。米国時間9月7日にPrimephonicは終了し、Appleは自社のストリーミングサービスをベースにしたクラシック音楽アプリを2022年に立ち上げる準備を進める。

Primephonicの共同創業者でCEOのThomas Steffans(トーマス・ステファンス)氏は、Appleが発表したプレスリリースの中で「アーティストのみなさんには、Primephonicのサービスと私たちがクラシック音楽の世界で行ってきたことを気に入っていただいていると思っていますが、今回Appleと一緒になることで、より多くのリスナーのみなさんに最高の体験を届けることができるようになります」と語っている。「クラシック音楽をメインストリームにお届けし、新世代の音楽家と次世代の観客を結びつけることができるのです」。

2020年発表されたPrimephonicのCTO Henrique Boregio(エンリケ・ボレジオ)氏へのインタビューによれば、150カ国でサービスが開始されているとのことだった。また、一般的なストリーミングサービスに比べて、より高い年齢層の人々が利用しているようだ。

エンリケ・ボレジオ氏は、2020年にMixpanel(ミックスパネル)に対して「当社のユーザーの多くは55歳以上で、高学歴で比較的裕福な生活を送っていらっしゃいます」と語っている。「クラシック音楽が好きになってお金持ちになるのか、それともその逆なのかわからないね、とオフィスでは冗談を言っています」。

Appleはこの先行う提供に関して「Apple Musicのクラッシックファンのみなさまは、作曲家やレパートリーごとのより優れたブラウジングや検索機能、クラシック音楽のメタデータの詳細な表示、さらに新しい機能や特典などの、Primephonicの最高の機能を備えた体験をお楽しみいただけるようになります」とコメントしている。

新しいクラシック音楽サービスが開発されている間、Primephonicの既存のユーザーには、Apple Musicの6カ月間 無料利用という形の特別提供を行う。

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画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(文: Brian Heater、翻訳:sako)

Apple Musicの空間オーディオとロスレスストリーミングがAndroidでも利用可能に

Androidのスマートフォンを使い、しかもApple Musicを利用する人は、やや変わった消費者かもしれない。しかし、ベン図のその小さな重なった部分は、今後もっと大きくなるかもしれない。2021年6月のWWDCでApple(アップル)は、Apple Musicの会員のための無料のアップデートにより、ロスレスオーディオストリーミングと空間オーディオをDolby Atmosのサポートで提供していくことになった。そしてこれからは、Androidユーザーもこれらの機能を利用できる。

2020年にGoogleは、Google Play Musicアプリを閉鎖して(ご冥福を)、ユーザーをYouTube Musicに移行させようとした。しかし長年のAndroidファンは今でもその決定が気に入らず、YouTube Musicに納得していない。オーディオファンは、Apple Musicのアップデートでその気になったかもしれない。ただしAndroidデバイスの中にはまだ、Atmosをサポートしていないものがある。

オーディオのクオリティを上げようとしているストリーミングプラットフォームは、Apple Musicだけではない。AppleがWWDCでオーディオのアップグレードを発表した同じ日に、Amazon Musicも、Atmosによるロスレスストリーミングと空間オーディオのサポートを発表した。Appleと同じくAmazonも、これらの機能強化は会員に無料で提供される。SpotifyもHiFiと呼ばれるロスレスオーディオを計画しているが、こちらはApple MusicやAmazon Musicと違って、無料のアップグレードではなく有料のアドオンだ。YouTube Musicはまだ、比べられる機能がない。

現在、音楽のストリーミングは有料会員が1億5800万いるSpotifyがトップだ。対して、Apple Musicは2019年6月で6000万、Amazon Musicは2020年1月で5500万とされている。その後両社とも最新の数字を発表していないが、YouTube Musicは有料ユーザーが少なくとも2000万はいると思われる。ロスレスのFLACファイルとmp3の圧縮ファイルは、一般消費者向けのヘッドフォンで聴いても違いはわかるが、マスター品質の音を聴きたいという熱心なオーディオファンでもないかぎり、Tidalで十分だ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Apple MusicAndroid音楽ストリーミング

画像クレジット:Apple

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Apple Musicが空間オーディオとロスレスオーディオの提供を開始

Apple(アップル)は2021年5月に、間もなくApple MusicサブスクでDolby Atmos(ドルビーアトモス)によるロスレスストリーミングとSpatial Audio(空間オーディオ)を無料で利用できるようにすると発表した。そのアップグレードが利用できるようになった、とAppleは米国時間6月8日朝に発表した。ただ、多くの人はこのアップグレードが実際には6月7日のWWDCキーノートの後に行われたことに気づいていた

Apple Musicの7500万曲を超える全カタログでロスレスオーディオをサポートする。

ロスレスオーディオはCD品質の44.1 kHz/16bitで始まり、48 kHz/24 bitまでとなる、と Appleは以前言及していた。オーディオファイルは192 kHz/24 bitまで対応するハイレゾのロスレスを選ぶこともできる。こちらを利用するには外部のデジタル/アナログUSBコンバーターを使う必要がある。ヘッドフォンをiPhoneに差し込むだけでは機能しない。

Apple Music購読者は設定で音楽をタップし、オーディオの品質から新しいロスレスのオプションを選ぶことができる。そこではWi-Fi、データ通信、ダウンロードなど異なるコネクションのために使えるよう、いくつかの品質が用意されている。

設定で品質を選ぶと、ロスレスファイルが端末の「かなり多くのスペース」を使うとiOSは警告する。ストレージ10GBで約3000曲を高品質で保存でき、ロスレスだと1000曲、ハイレゾロスレスだと200曲だ。

画像クレジット:Apple

一方、空間オーディオは、H1チップやW1チップ搭載のAppleのAirPodsやBeatsヘッドフォンなどDolby Atmosに対応するハードウェアではデフォルト設定される。iPhone、iPad、Macの最新モデルもDolby Atmosに対応する。Apple Musicの空間オーディオは「間もなく」Androidデバイスでも提供される、とAppleは述べた。

提供開始に際し、Apple Musicは空間オーディオを案内するための新しいプレイリストの展開も6月8日開始した。プレイリストは以下の通りだ。

Appleはまた、 リスナーが違いを聞き分けられるようサポートする特別ガイドもApple Musicの空間オーディオに追加する。ここにはMarvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)やThe Weeknd(ザ・ウィークエンド)といったアーティストのトラックが含まれる。そしてAppleはZane Loweがホストするトップのサウンドエンジニアと専門家を招いた空間オーディオについての座談会を米国太平洋標準時間6月8日午前9時(日本時間6月9日午後10時)からApple Musicで提供する。

楽曲はDolby Atmos向けにリマスタリングされる必要があるため、これらのガイドやプレイリストは音楽好きの人が探し回らなくても新しいフォーマットを体験できるようにする。さらに多くの新規リリースとベストなカタログ曲を空間オーディオで加えるために、アーティストやレーベルと協業しているとAppleは話す。この点を強化すべく、Appleはさまざまな取り組みが進行中だと指摘する。主要マーケットでドルビーを利用できるスタジオの数を倍増させたり、独立アーティストへの教育プログラムやリソースを提供したりといったものが含まれる。

Appleはまた、音楽オーサリングツールを「Logic Pro」に直接組み込むと述べた。2021年後半には、ミュージシャンなら誰でも自分の曲をSpatial Audio for Apple Musicで制作しミックスできるLogic Proのアップデートをリリースする予定だ。

関連記事:Apple Musicがロスレス・空間オーディオを2021年6月から提供、追加料金なし

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AppleWWDCWWDC 2021Apple Music音楽音楽ストリーミング

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルが動画や音楽をバーチャル共同視聴できる新機能「SharePlay」をiOS 15で導入

Apple(アップル)はiOS 15でのFaceTimeアップデートの一環として、新しい体験共有機能を発表した。FaceTimeコールで一緒にテレビ番組やTikTokビデオを観たり音楽を聴いたり、あるいはスクリーンシェアしたりできるというものだ。SharePlayというこの機能では、コールそのものからアプリへのアクセスを統合することで、FaceTimeを使いながら家族や友人とリアルタイムにつながることができる、とAppleは説明した。

画像クレジット:Apple

Appleは米国時間6月7日に開催したWWDC基調講演で新しい機能のデモンストレーションを行い、友達と一緒に音楽を聴くためにApple Musicで再生ボタンを押してコールに参加している人に音楽をストリームする様子を見せた。音楽共有では、コールに参加している人は誰でも再生、一時停止、曲送りができる。

また、ストリーミングサービスであるApple TV+の動画をコール参加者の間でリアルタイムに同期する様子も紹介した。パンデミックの間、人々はバーチャルで家族や友人と映画や番組を一緒に観る方法を模索し、HuluやAmazon Prime Videoといったサービスはネイティブの共同視聴機能を搭載した。

しかし AppleのSharePlayは自社サービスの音楽やビデオのストリーミング以外のものもカバーしている。

同社はDisney+、Hulu、 HBO Max、NBA、Twitch、TikTok、MasterClass、ESPN+、 Paramount+、Pluto TVなどとの提携を発表した。またデベロッパーがアプリにSharePlayを統合できるよう、APIにも着手している。

画像クレジット:Apple

ユーザーはSharePlay経由でスクリーンシェアもできる。不動産会社Zillowの物件を一緒にブラウズしたり、モバイルゲームプレイを自慢したりといったことができる、とAppleは紹介した。

「スクリーンシェアリングは、誰かの手助けをしたりその場で質問に答えたりするためのシンプルでかなり効果的な方法でもあり、 Appleの全デバイスで利用できます」とソフトウェアエンジニアリングのSVPであるCraig Federighi(クレイグ・フェデリギ)氏は述べた。

SharePlay機能はiOS 15で提供される。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleWWDC 2021WWDCiOSiOS 15FaceTimeApple MusicApple TV+共同視聴

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

Apple Musicでのストリーミング売上詳細をアーティストへの手紙に記載、やはり中堅や独立系たちには厳しい

ストリーミング収入はミュージシャンにとって長年の懸案事項であり、特にレコード会社が業界全体で崩壊したことにより何とか生活しているミュージシャンにとって、大きな問題だった。もちろんツアーが不可能になった2021年は、多くのミュージシャンにとって主要な収入源が完全に絶たれたため、こうした問題を浮き彫りになった。

Apple(アップル)はアーティストに送ったレターの中で、ストリーミング売上げに関する主要な疑問の一部を明らかにしたいと考えている。The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)が報じたこのメモには、Spotify(スポティファイ)が支払う金額の約2倍に相当する売上高の概要が記されている。

「ストリーミングのロイヤリティについての議論が続く中、私たちは価値観を共有することが重要だと考えています」と、Appleは述べている。「私たちは、すべてのクリエイターに同じ料金を支払うこと、1回の再生には価値があること、そしてクリエイターはそのサービス上の最高のディスプレイスペースで音楽をフィーチャーするために料金を支払うべきではないことを信じています」。

Appleのコメントは、Spotifyのはるかに多様な支払いモデルを明確に指摘している。しかし、それが実際にどのくらいの金額になるのかはもう少し複雑な問題だ。Spotifyの支払いモデルは、最初は1ストリームあたり1ペニー(1円)程度だった(さらに下がることもある) 。この金額はレコード会社であれ出版社であれ、権利者に支払われる。この問題は、2021年に多くのミュージシャンが仲介業者の存在意義に疑問を持つようになった、一連の問題のうちの1つだ。

SpotifyのDaniel Ek(ダニエル・エク)CEOは2020年のインタビューで「3〜4年に1度も音楽をリリースせず、それで十分だと考えているような過去に成功を収めたアーティストは、将来はうまくいかない人もいるかもしれません」と述べ、この騒動を煽った。

結局のところ、多くのアーティストにとっては小銭、あるいはさらに小さな金額の奪い合いの戦いだ。そして、世界がストリーミングモデルに移行した現在、中堅や真の独立系アーティストたちが生活を維持するのは非常に難しくなっている。BandcampやSoundcloudのようなサービスは、小規模なアーティストがより管理しやすいように努力してきたが、現代のミュージシャンの生活は、特に新型コロナウイルス(COVID-19)の時代では依然として苦しいままだ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:AppleApple MusicSpotify音楽音楽ストリーミング

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

Appleが独立系アーティストを支援する音楽配信プラットフォームUnitedMastersに出資

独立した音楽配信プラットフォームでツールファクトリーのUnitedMasters(ユナイテッドマスターズ)は、AppleがリードしたシリーズBラウンドで5000万ドル(約55億3600万円)を調達した。A16z(アンドリーセン・ホロイッツ)とAlphabet(アルファベット)もUnitedMastersのラウンドに再び参加した。UnitedMastersはまた、Appleと戦略的パートナーシップも結ぶ。

UnitedMastersについて説明すると、同社はInterscopeとSony Musicの元幹部Steve Stoute(スティーブ・スタウト)氏が2017年に立ち上げた配信会社だ。UnitedMastersは、ファンがコンテンツやコミュニティと関わっている方法に関するデータに直接つながるパイプラインをアーティストに提供することで、アーティストがチケット販売や宣伝、その他の販促活動を直接行えるようにしている。

こうした内容はいずれも音楽業界では一般的ではない。典型的なアーティストとの契約では、レコーディング会社がオーディエンスやターゲティングのすべてのデータ、そして所有権を持つ。これはコミュニティを育むために新しいテクノロジーを利用するなど、アーティストが機敏に動く能力を制限している。

Appleはさまざまな企業に投資しているが、通常は米国の製造を促進するため、あるいはシリコン鋳造ガラス製造など自社のハードウェア製品にとって重要な部品を作っているパートナー企業との戦略のために Advanced Manufacturing Fundを通じて行う。Appleは投資よりも買収を多く行っていて、自社の製品に関する取り組みを補うためにほぼ数週間おきに企業を買収している。そのためUnitedMastersへの出資は、特に音楽部門において比較的ユニークな提携となる。

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筆者はUnitedMastersのCEOであるスタウト氏に今回の資金調達について、そして現在と未来のアーティスト100万人のビジネスにとってそれが何を意味するのか話を聞いた。スタウト氏は、Appleの役員Eddy Cue(エディ・キュー)氏がUnitedMastersのビジョンと一致する哲学を持っていることが今回の取引につながったと考えている。

「我々は、すべてのアーティストに同じ機会を手にして欲しいと思っています」とスタウト氏は話す。「現在、独立しているアーティストが手にしている成功のための機会は少なく、そうした恥ずかしい点を取り除こうとしています」。

今回調達した資金は、UnitedMastersをグローバルな存在にするというミッションに燃える人材を雇用するのに使われる、とスタウト氏は説明する。UnitedMastersは世界中でプラットフォームを構築するためにローカルのテック人材とアーティスト人材を探している。

「どのアーティストもCTOにアクセスする必要があります。アーティストにとってのマネジャーの価値の一部は今日、CTOの役割に移行する必要があります」とスタウト氏は話す。

UnitedMastersは、アーティストがコミュニティレベルでファンベースを構築できるようにする先端技術を広範に提供したいと考えている。

画像クレジット:Steve Stoute

UnitedMastersは目下、通常はレーベルやマネジャーによって仲介される大きなブランドとの取引をアーティストが行えるようにする契約をNBA、ESPN、TikTok、Twitchなどと結んでいる。UnitedMastersはまた、すべての主要ストリーミングサービスに公開できるようにする直接配信アプリも展開している。さらに重要なことに、アーティストはストリームやファン、収益のデータをひと目でチェックできる。

「スティーブ・スタウト氏とUnitedMastersは、キャリアを積み、自身の音楽を世界に届けるための多くの機会をクリエイターに提供しています」とAppleのキュー氏はニュースリリースで述べた。「独立したアーティストの寄与は音楽産業のさらに発展させるという点で大きな役割を果たしています。Appleと同様、UnitedMastersはクリエイターに力を与えることに取り組んでいます」。

「UnitedMastersはアーティストがクリエイトし、作品の主有権を保持し、そしてファンとつながる方法を一新しました」とAndreessen Horowitzの共同創業者でゼネラルパートナーのBen Horowitz(ベン・ホロウィッツ)氏はリリースで述べた。「より良い、そしてさらに大きな、そしてより収益性の高い世界を音楽アーティストのために構築すべく、スティーブやUnitedMastersのチームに協力できることをうれしく思います」。

アーティストとファンが互いにつながるという点で、我々は現在ターニングポイントにいる。アーティストがソーシャルメディアや他のプラットフォームを使ってメッセージを出したり、ファンに話しかけたりする方法は無数にあるが、作品をコミュニティに配信し、そこから利益を得るという実際の業務は、レコーディング産業が始まって以来、完全にアーティストの手を離れてしまっている。NFT、DAO、ソーシャルトークンなどの最近の開発は、DTCフレームワークの爆発的な増加と同様に、そうした取引に変化をもたらしつつある。しかし大手は、この「アーティスト中心」の新世界を手にするために必要な、真にアグレッシブな姿勢にまだ転じていない。

配信のメカニクスは何十年もの間、DRMとDMCAによって定義されたフレームワークに基づいてきた。このフレームワークは常にアーティストのために価値を守る方法と宣伝されてきたが、実際のところ、配信業者のために価値を守るように設計されていた。我々は配信の仕組み全体を再考する必要がある。

筆者がUnitedMastersとTikTok(ティクトック)の取引を報じたときに言及したように、それはアーティストのためのより公平な未来において役立つ

カルチャーのクリエイターがそのカルチャーの恩恵を受けることは時間以上の意味があります。だからこそこのUnitedMastersのディールはかなり興味深いと考えています。レコーディング業界のヴァルチャーイズム(ハゲタカのように獲物を狙って自分のものにする風潮)の付き添いなしにオーディエンスに直接つながるパイプラインの提供は、本当にTikTokのようなプラットフォームとよく調和します。TikTokは「バイラルサウンド」をコラボレイティブなパフォーマンスにしています。従来の取引の構造は、数週間で変動させられるヴァイラルな誇大宣伝をとらえるのに適していません。

音楽業界では、Spotify(スポティファイ)のようないくつかの大手とともにAppleは激動の中心にいる。筆者の意見では、Apple Musicに近年欠けている最大のもの1つは、アーティストがファンと広くつながることができ、直接配信し、チケットを販売し、宣伝することができる、そして最も重要なことに自身のコミュニティを育てて保持することができる業界基準ポータルにApple Music Connectを変えなかったことだった。

UnitedMastersとのタイアップはその目標に直接つながらないが、材料を何かしら得ることができるはずだ。タイアップがどんなものを生み出すのか、楽しみにしている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:AppleUnitedMasters音楽音楽ストリーミング資金調達Apple Music

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Nariko Mizoguchi

Googleアシスタント対応デバイスがいよいよApple Musicをサポート開始

Google(グーグル)は米国時間12月7日の朝、米国やイギリス、フランス、ドイツ、日本でGoogle NestなどのGoogleアシスタント対応スマートスピーカーやディスプレイに、Apple Musicのサポートを追加すると発表した(Googleリリース)。これによりNest AudioやNest Hub Max、Nest Miniを含むGoogleのスマートスピーカーでApple Musicの楽曲、アルバム、プレイリストを音声コマンドで再生できるようになる。

今回のアップデートにより、グーグル独自のスマートスピーカーは、Apple(アップル)のHomePodや新モデルのHomePod Miniだけでなく、2018年後半からApple MusicをサポートしているEchoのようなAlexa対応スマートスピーカーとの競争力を高めることができる。

グーグルのデバイスでApple Musicから楽曲をストリーミング再生するには、まずGoogle HomeアプリでApple Musicのアカウントをリンクしてから、オプションでApple Musicをデフォルトの音楽サービスとして設定する必要がある。すると、たとえば「Hey Google, play New Music Daily playlist(ヘイ、グーグル、新しいMusic Dailyのプレイリスを再生して)」や、「Hey Google, play Rap Life playlist(ヘイ、グーグル、Rap Lifeのプレイリストを再生して)」といった音声コマンドを使用したり、あるいは特定の曲やアーティスト、またはプレイリストをリクエストしたりできるようになる。

また、ユーザーはジャンルやムード、アクティビティに基づいてGoogleアシスタントに音楽のストリーミングを指示したり、「Hey Google, play my library(ヘイ、グーグル、自分のライブラリを再生して)」といって、Apple Musicに自分の曲のライブラリからストリーミング再生を指示することもできるようになる。

さらにApple Musicはマルチデバイス環境でも動作し、グーグル製デバイスの所有者が一度にすべてのスピーカーでストリーミングしたり、あるいは1つのデバイスから他のデバイスに音楽を移動したりできるようになる。

現在のところ、グーグル製スマートスピーカーのオーナーの多くはSpotify、Pandora、Deezerなどのサードパーティーのサービスを利用しており、これらはGoogle Homeアプリですでにサポートされている。しかし、Google Play Musicの長年のユーザーは同サービスが閉鎖(未訳記事)されYouTube Musicと統合されたことを受けて、新しいサービスに移行するかグーグルのエコシステム内に止まるかを決断しなければならなかった。その結果、以前Google Play Musicを利用していたユーザーの一部はライブラリ機能を利用するために、Apple Musicに移行した。

Apple Musicではユーザーが自分の音楽ライブラリに最大10万曲(Appleサポート)を登録できるが、これは一部のGoogle Play Musicのユーザーにとって魅力的だ。また、Apple Musicは7000万曲以上をオンデマンドで広告なしのストリーミングで提供している。

グーグルによると、Apple Musicのサポートは本日から対象デバイスに展開されるという。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:GoogleApple MusicGoogle Nestスマートスピーカー

画像クレジット:Google

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

アップルがApple MusicやApple Arcadeなど複数サービスのサブスクセット販売を計画中

Bloomberg(ブルームバーグ)によると、アップルはさまざまな定期購読(サブスクリプション)サービスのバンドルプランをリリースする準備を進めているという。「Apple One」 と呼ばれる可能性があるこのバンドルパッケージには、Apple Music、Apple Arcade、Apple TV+、Apple News+、iCloudなど同社のサービスが含まれており、それぞれを個別に購読するよりも安い料金で提供される。

ブルームバーグによると、この新バンドルサービスは新型iPhoneが発売される言われている10月に、早くも登場する可能性があるという。バンドルにはApple MusicとApple TV+を含むエントリーレベルのプランのほか、Apple Arcadeを追加するアップグレードオプション、Apple News+を含むオプションも存在する。記事によると、より高価なオプションとして追加のiCloudストレージもバンドルされるというが、これらの計画はリリース前に変更される可能性がある。

最終的な価格設定は報じられていないが、月額2ドルから5ドルの月額料金が節約できるとされている。またすべてのサブスクリプションは、既存のファミリープランで利用できる。つまり1世帯で最大6人の家族が、アップルのバンドルサービスにアクセスできることになる。

アップルはまた、新しいハードウェアの購入に無料サブスクリプションをバンドルする戦略を継続するといわれている。昨年にはApple TV+が発表され、最近リリースされたハードウェアを購入した顧客に1年間無料で提供された。

サービスサブスクリプションのバンドル化は、アップルがサービスプランへの投資を本格化して以来、アナリストらの多くが予測してきた。この戦略は非常に理にかなっており、特にアップルがほかのサービスほど人気があるとは限らないサービスの採用を促進するのに役立つ。これはまた、同社がより包括的で潜在的に安定した経常収益ビジネスを構築するための方法を提供するという意味で、Amazon Primeのようなものに似ている。

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(翻訳:塚本直樹Twitter