AWSがロサンゼルスにローカルゾーンを新たに開設

米国時間12月3日、AWSはロサンゼルスにローカルゾーンを新たに開設したと発表した。南カリフォルニアの顧客に高バンド幅、低レイテンシのコンピューティングリソースを提供する目的だ。この地域がエンターテインメント産業の発信地であることは偶然の一致ではない。

画像:franckreporter / Getty Images

AWSのJeff Barr(ジェフ・バー)氏はこの新しいゾーンについて発表するブログの中で、ロサンゼルス近辺で動画処理、ゲーミング、アドテック、機械学習などに関わる企業は、ローカルゾーンを使用することでこれまで以上に地域に近いリソースを使えるようになると述べている。

バー氏は「本日、カリフォルニア州ロサンゼルスにローカルゾーンを開設する。ローカルゾーンは新しいタイプのAWSインフラストラクチャのデプロイメントで、AWSの一部のサービスを特定の地域のごく近くで展開するものだ。このローカルゾーンは、ロサンゼルスをはじめとする南カリフォルニア地域からアクセスするアプリケーションにきわめて低いレイテンシ(1桁のミリ秒)を提供できるよう設計されている」と書いている。

同氏が指摘しているように、ロサンゼルスにはゲーミング、3Dモデリングとレンダリング、リアルタイムのカラーコレクションなどの動画処理、ビデオストリーミング、メディア制作パイプラインなどローカルコンピューティングを必要とする企業がたくさんある。

ロサンゼルスのゾーンは、実際には米国西部(オレゴン)リージョンの一部だ。新しいゾーンを利用したい顧客は、ローカルゾーンのコンソールで選択して申し込む必要がある。費用は別にかかるが、割引プランもある。

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(翻訳:Kaori Koyama)

AWSがウェブベースの機械学習用IDE「SageMaker Studio」を発表

AWSのCEOであるAndy Jassy(アンディ・ジェシー)氏は米国時間12月3日、re:InventカンファレンスでSageMaker Studio発表した。機械学習ワークフローを構築し、トレーニングするためのウェブベースのIDEだ。データサイエンティストが仕事を始めるために必要なものすべて、つまりノートブック、データセット、コード、モデルなどを編成するための手段が含まれている。とにかく始めるために必要な、すべての機械学習ツールと成果のワンストップ・ショップになることを目指したもの。

Studioの中核には、同じプロジェクトに対して作業している他のユーザーと、プロジェクトやフォルダを共有する機能もある。そこには、ノートブックや成果について議論する機能も含まれている。

そうしたモデルもトレーニングする必要があるので、当然ながらこのサービスも、AWSのSageMaker機械学習サービスに統合されている。そのサービスは、ユーザーのニーズに応じて自動的にスケーリングされる。

Studio本体に加えて、Studioに統合されることになるSageMakerの他の多くの部分のアップデートも発表された。そうした機能のほとんどは、Studioの内部で実行されるが、スタンドアロンのツールとして使用することも可能だ。その中には、デバッガ監視ツール、それにAutopilotが含まれる。Autopilotは、ユーザーのデータに基づいて、最適なモデルを自動的に作成してくれるもの。どのような判断によってモデルを構築したかを、詳細に可視化する機能もある。

これに関連してAWSは、SageMaker Notebooksも発表した。これもStudioに統合される。これは、本質的にマネージドサービスとしてのノートブックだ。必要に応じてインスタンスを自動的にプロビジョニングしてくれるため、データサイエンティストが自らプロビジョニングする必要はない。

Studioを利用することで、より広範なデベロッパーにとって、モデルの構築が身近なものになる、というのが理想だ。AWSでは、これをスタックのミドルレイヤーと呼んでいる。機械学習を実践する人が、あまり詳細を掘り下げなくても、実質的なコントロールがしやすいものになることを意図したものだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

AWSがスループット保証付きマネージドCassandraサービスをローンチ

米国時間12月3日に開催されたAWS re:InventでAmazonは、AWS上でCassandra(カサンドラ)データベースを管理できる機能を発表した。

このAmazon Managed Apache Cassandra Service(Amazon MCS)と呼ばれるマネージドサービスは、サードパーティのベンダーからではなくCassandraを直接デベロッパーに提供しようとするAWSの意図の現れであり、すでにGrubhub.com、Netflix、Ooyala、Openwave、Reddit、Uberなどさまざまな企業が使っている。

同社によると、Amazon MCSはサーバーレスなので、ユーザーは自分が実際に使うリソースにだけ料金を払い、アプリケーションのトラフィックに応じてスケールアップとダウンは自動的に行われる。アプリケーションは毎秒数千のリクエストに応じられ、そのスループットとストレージに上限はない。IoTにとっては、とびきり魅力的な特性だ。

デベロッパーは、Cassandraの既存のアプリケーションをそのままAWS上で動かせるし、これまで使っていたデベロッパーツールを使える。アプリケーションのアップデートはAmazon MCSのサービステーブル中のエンドポイントを変えるだけだ

データはデフォルトで暗号化されて保存される。暗号化にはAWS Key Management Service(KMS)に保存されている暗号鍵が使われる。同社によると、Amazon MCSAWS Identity and Access Management(IAM)と統合されているので、デベロッパーはテーブルデータの管理やアクセスが容易とのこと。

Amazonによると、同社はCassandraのAPIライブラリにも協力しており、またオープンソースのApache Cassandraプロジェクトにバグフィックスで貢献している。プレビュー期間中はオンデマンドのキャパシティに課金され、一般公開時にはある程度予測できるワークロードに対して一定のスループットを確保・提供する。

今このプロダクトはAmazonの無料ティアに含まれている。企業は、最初の3か月はライトリクエスト3000万、リードリクエスト3000万、ストレージ1GBの無料ティアを使用できる。

画像クレジット: Ron Miller

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

AWSのCodeGuruは機械学習を応用してコードレビューを自動化

AWSは米国時間12月3日、コードレビューを自動化する機械学習ベースの新サービスのCodeGuruを発表した。同社内でコードレビューを実施して収集したデータに基づくもの。

デベロッパーは、コードを記述したらプルリクエストにCodeGuruを追加するだけでいい。今のところ、GitHubとCodeCommitをサポートしている。CodeGuruは、Amazon社内のレビューと、約1万件におよぶオープンソースのプロジェクトのレビューから得た知識を利用して問題を見つけ、必要に応じてプルリクエストにコメントする。問題を特定するのは当然として、修正方法を提案するほか、関連するドキュメントへのリンクも示してくれる。

CodeGuruには、AWS自身のベストプラクティスが蓄積されている。一般的な問題に加えて、並行処理に関する問題、リソースの不適切な処理や入力の検証に関する問題も指摘してくれる。

AWSとAmazonのコンシューマー部門は、ここ数年、CodeGuruのプロファイラー部分を利用して、「最も高くつく1行のコード」を見つけてきた。その数年間、同社のアプリケーションが大規模なものになっていく中で、CPUの利用率を325%以上向上させ、コストを36%も削減したチームもあったという。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

AWSが最大7倍高速なARMベース次世代プロセッサ「Graviton2」を発表

Amazonのクラウド部門でありAWSは、ARMベースの次世代プロセッサであるGraviton2発表した。7nmアーキテクチャを採用したカスタムチップで、64ビットのARM Neoverseコアを採用している。

第1世代のGravitonプロセッサー(A1)と比較すると、今回の新しいチップはA1インスタンスに対して最大7倍のパフォーマンスを発揮する場合もある。浮動小数点演算のパフォーマンスも2倍だ。メモリチャネルも増強され、キャッシュによるメモリアクセスははるかに高速になっているはず。

同社は、現在3種類のGraviton2のEC2インスタンスに取り組んでいて、いずれもまもなく利用可能になる。末尾に「g」が付いたインスタンスは、Graviton2チップを搭載している。「d」が付いたものは、NVMeタイプのローカルストレージを装備していることを意味している。

3種類のインスタンスは以下のとおり。

  • 汎用のインスタンス(M6gとM6gd)
  • 数値計算に最適化したインスタンス(C6gとC6gd)
  • メモリを最適化したインスタンス(R6gとR6gd)

最大64個のvCPU、512GBのメモリー、25Gbpsのネットワーク機能を備えたインスタンスを選択可能だ。ARMベースのサーバーは、単なる一時的な流行というわけではない。すでにAWSでは、ARMベースのインスタンスのコスパが、x86ベースのインスタンスと比較して40%も優れていることを確約している。

AWSは、OSのベンダーや独立系のソフトウェアベンダーと協力して、ARM上で実行できるソフトウェアのリリースを支援している。 ARMベースのEC2インスタンスは、Amazon Linux 2、Ubuntu、Red Hat、SUSE、Fedora、Debian、およびFreeBSDをサポートしている。さらに、Docker、Amazon ECS、およびAmazon Elastic Kubernetes Serviceといったいくつかのコンテナサービスでも動作する。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

AWSが機械学習を利用する企業向け検索ツール「Kendra」を発表

12月3日に開催されたのre:InventでAWSは、Kendra(ケンドラ)と呼ばれる新しい検索ツールを発表した。機械学習を利用してコンテンツのさまざまなリポジトリーを自然言語で検索する。

AWSの人工知能担当副社長であるMatt Wood(マット・ウッド)氏によると、この検索ツールは機械学習を使うけど、ユーザーは機械学習の専門知識をまったく必要としない。その部分は、ボンネットの下に隠されたままだ。

ユーザーはまず、コンテンツのリポジトリーを指定する。それはS3のストレージでもOneDriveでもSalesforceでも何でもいい。AWSは既製のコネクターをいろいろ提供しているので、ユーザーは自分の認証情報でAWSにアクセスし、これらのさまざまなツールに接続できる。

Kendraは自分が接続されたリポジトリーに見つけたコンテンツのインデックスを作り、ユーザーは自然言語のクエリを使ってこの検索ツールとの対話を開始できる。このツールは時間などの概念を理解するので「When is the IT Help Desk is open」(ITのヘルプデスクはいつオープンしているか)と質問すると時間であることを理解し、正しい情報をユーザーに渡す。

この検索ツールがすごいのは、機械学習を使っているだけでなく、ユーザーのフィードバックから自動的に学習して、良い回答と改良を要する回答を見分けられることだ。フィードバックは、笑顔や悲しい顔などの絵文字でもいい。

この検索ツールをセットアップしたら、会社のイントラネットに検索機能を持たせたり、アプリケーションの中で使ったりできる。タイプアヘッド(先行入力、候補文字をユーザー入力よりも前に表示する能力)など、検索ツールにあるべき機能はほぼそろっている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

AmazonのAWS re:Inventのストリーミング視聴はこちらから

NoSQLデータベースを夢見てやまないのなら、米国時間12月3日に開催されるAWS re:Inventの内容は最も回答に近いだろう。太平洋標準時朝8時(日本時間12月4日午前1時)に、クラウドコンピューティング分野の最先端をいく人々がAWSの次なる機能を紹介する予定だ。

Amazon(アマゾン)は、Google CloudやMicrosoft Azureとともに、ウェブのインフラを構築している。そして、無数のスタートアップが唯一のホスティングプロバイダーとしてAWSを利用している。従って、同社がクラウド分野でライバルを打ち負かすために何を準備しているかを見るのは興味深い。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

CircleCIの継続的統合とデリバリーサービスがAWSのサポートを拡充

継続的インテグレーションとデリバリーのサービスを提供するCircleCIは1年ほど前から、そのコマンドやインテグレーションをサードパーティのサービスで容易に再利用するための方法としてOrbsを提供してきた。当然ながら、Orbsが最も多く使われるサービスといえばAWSであり、同社のデベロッパーもコードのテストやデプロイをAWSで行っている。米国時間12月2日、ラスベガスで行われているAWSの例年のデベロッパーカンファレンスre:Inventと日を合わせたかのように、同社はOrbsにAWSのServerless Application Model(SAM)のサポートを加えたことを発表した。これにより、AWS Lambdaのテストとデプロイを行う自動化CI/CDプラットホームのセットアップがとても容易になる。

同社によると、1年前にローンチしたOrbsを今では1万1000社あまりが利用している。OrbsのAWS用の利用の中で特に多いのは、例えばAmazon Elastic Container ServicesとElastic Container Service for Kubernetes(EKS)のイメージの構築とアップデートや、AWS CodeDeployのサポート、AWSのコマンドラインインタフェイスをインストールし構成するためのOrbs、S3ストレージサービスで利用するOrbsなどだ。

CircleCIの事業開発担当副社長Tom Trahan(トム・トラハン)氏は「最近ではますます多くの企業がLambdaやECS、EKSなどのマネージドサービスを使うようになっている。サーバーレスのエコシステムを管理しているAWSのプロダクトチームと協力して、LambdaにCI/CDのワークフローを加えたいユーザーのための出来合いのサービスを作ることはタイミングとしても理想的だ。Lambdaも最初の頃は、従来のソフトウェアのパターンとデリバリーのフローに従わないデベロッパーが多かった。しかしその後は徐々にLambdaの利用機会が増えて、それを最も有効利用するためには、プロダクション品質のコードを作るべきという風潮になってきた。そしてLambdaでも同じソフトウェアデリバリーの能力と規律を持つべきという理解が定着してきた」と語る。

トラハン氏が強調するのは、今はまだアーリーアダプターが多いし、最初からクラウドネイティブでやってるような企業が顧客として多いことだ。しかし最近では、そういう顧客の中にも従来型の企業が多くなっており、彼ら独自のデジタル革命が急速に進行しているという。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アマゾンが医療向け音声認識サービス「Amazon Transcribe Medical」を発表

Amazon(アマゾン)はAWSの文字起こしサービスであるAmazon Transcribeの新機能として、医療会話のサポートを開始した。これは米国時間12月2日、午前のAWS re:inventカンファレンスで発表された。機械学習に基づく新サービスであるAmazon Transcribe Medicalは、医師の診断などに関する会話を、人間の介入なしにリアルタイムで正確なテキストに変換するとアマゾンはコメントしている。

一部のサービスのように「カンマ」や「ピリオド」などと言う必要はなく、普通に話すだけでいい。変換されたテキストは、ERシステムやAWSのAmazon Comprehend Medicalなどの言語サービスに送り込まれて処理される。同サービスはHIPAA(医療保険の相互運用と責任に関する法律)に準拠しており、ユーザーのニーズに応じたスケーリングも可能で、前払金不要で使ったぶんだけ料金を支払う。

技術的な仕組みは次のようになる。マイクロホンから取り込んだ音声をパルス符号変調したデータをストリーミングAPIにWebSocketプロトコルを使って送り込む。APIは変換されたテキストに単語単位のタイムスタンプと句読点を加えてJSONのBlobオブジェクトとして送り返す。データはAmazon Simple Storage Service(S3)) のバケットに保存することもできる。

Amazon Transcribe Medicalは、2017年に公開されたAmazon Transcribeを基に開発され、アマゾンが医療分野への投資を増やし始めたときに登場した。音声技術と医療の融合には特に力を入れている。例えば、先週アマゾンはAlexaの投薬管理サービスを公開し、ユーザーは薬の追加や服用のリマインダーを音声で依頼できるようになった。

さらに同社は、音声アプリAlexaをHIPAA準拠に改善し、医療スタートアップのPillPackHealth Navigatorを買収し、社員向けの医療サービスとしてAmazon Careを提供しているほか、病院現場でのAlexa利用の試行も行っている。

医療分野で音声認識に力を入れているのはアマゾンだけではない。GoogleもGoogle Brainで参入し、MicrosoftNuancePhilipsなど既存の大手企業やさまざまなスタートアップもこの分野に加わった。Amazon Transcribe Medicalは、米国東部(バージニア北部)と米国西部(オレゴン)の両リージョンでまず提供される。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

AWSが量子コンピューティング・サービス「Braket」を発表

ここ数カ月、Google、Microsoft、 IBM他の有力ライバルがこぞって量子コンピューティングにおける進歩を宣伝する中、 AmazonのAWSは沈黙を守ってきた。またAWSには量子コンピュータ研究の部署がなかった。しかし米国時間12月2日、AWSはラスベガスで開幕したデベロッパー・カンファレンスのre:Invent 2019で、独自の量子コンピューティングサービスとしてBraket(ブラケット)を発表した。

現在利用できるのはプレビュー版で、量子力学計算でよく用いられるディラックが発明したブラケット記法が名称の由来だ。ただしこの量子コンピューティングはAWSが独自に開発したものではない。D-Wave、IonQ、Rigettiと提携し、これらのシステムをクラウドで利用可能とした。同時にAWSは量子コンピューティングの専門組織を整備し、 Center for Quantum Computing(量子コンピューティングセンター)とAWS Quantum Solutions Lab(量子ソリューションラボ)を開設した。

Braketではデベロッパーは独自の量子コンピューティング・アルゴリズムを開発してAWSで実行をシミュレーションできる。同時にAWSを通じて提携パートナーの量子コンピュータハードウェアを用いて実際にテストすることが可能だ。これはAWSとして巧妙なリスクヘッジ戦略だろう。

AWSとしては量子コンピュータを独自に開発するための膨大なリソースを必要とせずに量子コンピューティングをサービスにとり入れることができる。提携先パートナーは自社の量子コンピューティングのマーケティングやディストリビューションにAWSの巨大なユーザーベースが利用できる。デベロッパーや研究者はAWSのシンプルで一貫したインターフェイスを利用して量子コンピューティングを研究、開発することができる。従来、個別の量子コンピューティングにアクセスするのは手間のかかる作業であり、いくつもモデルを比較してニーズに適合した量子コンピューティングを選ぶのは非常に困難だった。

Rigetti Computingの創業者でCEOのチャド・リゲッティ(Chad Rigetti)氏は「AWSとの提携により、我々のテクノロジーを広い範囲に提供することが可能になった。これは量子コンピューティングというマーケットの拡大を大きく加速するだろう」と述べた。D-Waveの最高プロダクト責任者、R&D担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのアラン・バラツ(Alan Baratz)氏も同じ趣旨のことを述べている。

【略】

AWSが自社のデータセンターに直接量子コンピュータを導入したわけではないのが重要なポイントだ。簡単にいえばAWSは複数の量子コンピューティングに対して多くのユーザーになじみがある一貫したインターフェイスを提供する。個々の提携先企業はすでに量子コンピューティングを自社のラボやデータセンター内で稼働させていたが、それぞれインターフェイスが異なるため外部のユーザーがアクセスするのが難しかった。

これに対してBraketはAWSの標準的インターフェイスを通じて他のクラウドサービスと同様のマネージドコンピューティングを提供する。またデベロッパーはオープンソースのJupyter notebook 環境を通じてアルゴリズムをテストできる。Bracketにはこれ以外にも多数のデベロッパーツールがプリインストールされているという。また標準的量子コンピューティングやハイブリッドコンピューティングを開発するためのチュートリアル、サンプルも多数用意される。

また新たに開設されたAWSの専門組織は、研究者が量子コンピューティングのパートナーと協力、提携することを助ける。「我々の量子ソリューション・ラボはユーザーが量子コンピュータを開発している各社と提携することを助ける共同研究プロジェクトだ。これにより世界のトップクラスの専門家と提携し、ハイパフォーマンス・コンピューティングを推進できる」とAWSでは説明してる。

研究センター、ラボの開設はAWSにとって長期的な量子コンピューティング戦略の基礎となるものだろう。AWSの過去の動向から考えると、これはテクノロジーそのものの開発というよりむしろサードパーティが開発したテクノロジーに広い範囲のユーザーがアクセスできるプラットフォームを提供するところに力点が置かれるものとなりそうだ。

AWSのユーティリティ・サービス担当のシニア・バイスプレジデント、チャーリー・ベル(Charlie Bell)氏は次のように述べた。「量子コンピューティングは本質的にクラウド・テクノロジーであり、ユーザーは量子コンピュータにクラウドを通じてアクセスするのが自然だ。Braketサービスと量子ソリューション・ラボはAWSのユーザーがわれわれのパートナーの量子コンピュータにアクセスする。これにより新しいテクノロジーにどのようなメリットがあるのかは実際に体験できる。また量子コンピューティング・センターは大学を始め広く研究機関と協力し量子コンピューティングの可能性を広げていく」。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

セールスフォースがService CloudにAmazon Connectを導入

Salesforce(セールスフォース)とAWSは継続的なパートナーシップの拡大を発表した。両社のパートナーシップは2016年のインフラサービスに関する4億ドル(約434億円)の合意に始まり、昨年には両社間でのデータの統合に拡大されていた。今年は、セールスフォースは同社のService Cloudのコールセンターソリューションの一部として、Amazon ConnectでAWSのテレフォニーと通話のトランスクリプション(文字起こし)サービスを提供すると発表した。

画像:vgajic / Getty Images)

Service Cloudプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのPatrick Beyries(パトリック・ベイリーズ)氏は「我々はAWSと戦略的パートナーシップを組んでいる。そのためお客様は我々からAmazon Connectを購入すれば、あらかじめ統合されていてすぐに通話をトランスクリプションできるし、もちろん通話の録音もできる」と説明する。

セールスフォースはほかのテレフォニーベンダーとも提携しているので、顧客はAmazonのソリューションのほか、Cisco、Avaya、Genesysからも選択できるとベイリーズ氏は語っていることに注目だ。

こうしたテレフォニーのパートナーシップはService Cloudのコールセンターサービスに足りない部分を埋めるもので、セールスフォースから直接、通話そのものにアクセスできるようになる。テレフォニーベンダーが通話のトランスクリプションを処理し、それをセールスフォースに渡す。するとセールスフォースはEinstein(アインシュタイン)という同社のAIレイヤーを使ってトランスクリプトを「読み取り」、CSRとして次にとるべきアクションをリアルタイムで提示する。こうしたことはチャットなどのチャネルでは可能だったが、音声のやりとりではできていなかった。

ベイリーズ氏は「会話が進むと、消費者はどういう問題が起きているかを説明する。Einsteinはその会話を『モニタリング』している。会話が決定的な局面になるとEinsteinはその内容を理解し、具体的な解決策を担当者に示す」と言う。

セールスフォースはService Cloudのこの新機能を来年春に試験的に開始する。一般への提供は来年夏になる見込みだ。

わずか1週間ほど前にセールスフォースは、同社のMarketing CloudをMicrosoft Azureに移行する大規模なパートナーシップを発表した。最近の一連の発表は、セールスフォースはビジネスの理にかなっていれば複数のクラウドパートナーとこれからも協力していくことを示している。今回はAmazonの番だった。

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(翻訳:Kaori Koyama)

SalesforceがMarketing CloudをMicrosoft Azureに移行すると発表

エンタープライズソフトウェアの世界では、ときどき不思議な組み合わせが出てくるものだ。米国時間11月13日、Salesforce(セールスフォース)はCloud Information Modelに関してAWSとの大きな意味を持つ連携を発表した。そしてその翌日、セールスフォースは同社のMarketing CloudをMicrosoft Azureに移行すると発表した。エンタープライズの協力関係があっちに行ったりこっちに行ったりして混乱することがあるというのを体現しているようだ。

画像:Steve Jennings / Sean Gallup / Getty Images

セールスフォースとMicrosoft(マイクロソフト)は、セールスフォースのSales CloudとService CloudをMicrosoft Teamsと統合することでも協力すると発表した。

同社は、自社のデータセンターで稼働してきたMarketing Cloudを数カ月以内にMicrosoft Azureに移行する計画だ。ただし現時点では移行の明確なタイムラインは示されていない。AWSと熾烈な争いをしているマイクロソフトにとって、これは大きな意味を持つ。AWSが市場をリードしていることは明らかだが、マイクロソフトはここしばらく強力な2番手となっている。セールスフォースを顧客として迎えることは、マイクロソフトにとって品質の証明のひとつになる。

CRM Essentialsの創業者で長年業界をウォッチしているBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、この連携はビジネスに対するマイクロソフトの現在のアプローチを強く表していて、同社はゴールを達成するために幅広い連携を望んでいるのだと語る。リアリー氏はTechCrunchに対し「セールスフォースがアマゾンよりもマイクロソフトとの関係を深めることを選んだというのが重要なニュースで、セールスフォースの強化によってマイクロソフトのCRMツールであるDynamics 365が脅かされるおそれがあることをマイクロソフトは問題視していない。マイクロソフトの成長を最も大きく担っているのはAzureであることが、その主な理由だ」と述べた。

両社はこれまでもずっと複雑な関係にあった。マイクロソフトのCEOがSteve Ballmer(スティーブ・バルマー)氏だった時代には、CRM製品をめぐって法廷で争っていた。その後、マイクロソフトのCEOになったSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は2015年のDreamforceカンファレンスで仲良くする意向を示した。それ以降、両社の関係は一進一退だったが、今回の発表で敵というよりは友に近づいたようだ

とはいえ、セールスフォースがCloud Information Modelに関してAWSとの連携を発表したばかりであることも見逃せない。Cloud Information ModelはAdobe、Microsoft、SAPのパートナーシップと直接競合するものであり、セールスフォースはデータの統合に関するAWSとの大規模な連携を昨年発表している。

こうした矛盾するような関係はややこしいが、現在のコネクテッドクラウドの世界においては、市場のある部分で激しく戦う企業同士であっても、別の部分では両社と顧客のためになるなら協力しあおうとすることの表れだ。今回の発表はこうしたケースと思われる。

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(翻訳:Kaori Koyama)

AWSがマイクロソフトによるJEDI契約獲得へ異議を提出

先月国防総省が、10年にわたる100億ドル(1兆円超)規模のJEDIクラウド契約入札の勝者として、Microsoft(マイクロソフト)を指名したことは、間違いなくほぼ全員を驚かせたことだろう。誰もが勝者だと考えていたAmazonもそれ以上に驚いたに違いない。米国時間11月14日に同社は、連邦異議裁判所に対して異議を提出する意向だという先行していた報道を肯定した。

これを報じたのはThe Federal Timesである。

声明の中でAmazonの広報担当者は、選択プロセスにバイアスや問題があった可能性を示唆している。「AWSは、米国軍が必要とする重要な技術を提供するための、経験豊富で資格を満たす、比類なき存在です。そしてDoDの近代化の取り組みの支援に対して引き続きコミットしています。また、政府と選挙で選ばれた指導者たちが、政治的影響を受けないやりかたで、客観的に調達を管理することが、我が国にとって重要であると考えています」。

「JEDI評価プロセスの多くの側面には、明らかな欠陥、エラー、紛れもないバイアスが含まれていました。これらの問題を検討し、修正することが重要なのです」とAmazonの広報担当者はTechCrunchに語った。

トランプ大統領が、AmazonのCEOでありワシントンポスト紙の所有者でもある創業者のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏に対する軽蔑的な姿勢を隠していないことは、たしかに注目に値する。Microsoftが勝った後にも書いたように「マイクロソフトが勝利しても米国防総省JEDIのサーガは終わらない 」。

例えば、アマゾンは、ジェームズ・マティス元国防長官の著書を論拠にできる。マティス氏は大統領から「100億ドルの契約からベゾスを締め出せ」と命じられたという。彼は拒否したと書いているが、この疑惑がある限り、論争は終わらない。

Oracle(オラクル)もまた、プロセス全体を通じて多くの抗議を提出している。 その中には政府説明責任局に対して提出され、最終的には拒絶されたものも含まれている。Oracleは訴訟も起こしたが、その訴えも棄却されている。こうした抗議のすべては、選定プロセスがアマゾンを贔屓していると主張していたが、最終結果はそうではなかったことを証明したことになる。

大統領は8月に意思決定プロセスに介入し、調達プロセスが何らかの形でAmazonを贔屓していたかどうかを再度調査するように国防長官であるMark T. Esper(マーク・T・エスパー)氏に要求した。そしてホワイトハウスは入札の勝者が決定した週にワシントンポスト紙の定期購読を解約している。

10月についに決定が下され、DODはMicrosoftを選定した。現在、Amazonは連邦裁判所へ異議を申し立てようとしている。JEDIのサーガは、これが終わるまでは本当に終わることはない。

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(翻訳:sako)

AWSとSalesforce、GenesysがLinux Foundationと組んで新たなオープン・データモデルを発表

昨年AdobeとSAP、Microsoftの3社はOpen Data Initiativeを結成した。負けてはならじとAWSとSalesforce、Genesysの3社もThe Linux Foundationと提携してCloud Information Modelを発表した。

2つの競合するデータモデルには共通点がたくさんある。どちらも、データを集めて共通のオープンモデルを適用する。こうした大会社のソフトウェアのユーザーがよく経験する問題であるプロダクト間の相互運用を容易にしよう、という考えだ。

Linux Foundationのエグゼクティブディレクター、Jim Zemlin(ジム・ゼムリン)氏は、このプロジェクトはCloud Information Modelの中立なプラットフォームを提供するものであり、コミュニティーの人々が協力して問題解決にあたることができる、と語った。「セントラルガバナンスモデルの下で協力することでコミュニティーの誰もが貢献できる。コミュニティー全体のデータ相互運用と規格開発の推進と、急速な普及に対応するための道をひらく」とZemlin氏は声明で語った。

当初は参加各社ごとに異なった形でモデルを使用する。AWSはAWS Lake Formation ツールと併せて使用することで、顧客がさまざまなデータソースから得たデータの移動やカタログ化、保存、事前処理などを行うのを助ける。一方、Genesysの顧客はクラウドとAIプロダクトを使ってさまざまなチャネルを横断してコミュニケーションをとる。

SalesforceのPatric Stokes氏は、Cloud Information Modelを自社のCustomer 360プラットフォームの基礎的データモデルとして使うと言っている。「AWS、Genesys、The Linux Foundationというパートナーを得て、このデータモデルをオープンソース化することを大いに喜んでいる」とStokes氏はTechCrunchに語った。

もちろん、競合する2つの「オープン」データモデルが出てきたことで、両プロジェクトが一緒になる道が見つかるまで何らかの摩擦は避けられない。事実はと言えば、多くの会社がこれら各社のツールを使っているので、もし競争が続くようなら、そもそもこうしたイニシアティブを作る目的に反している。

MicrosoftのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏が 2015年にこう話していた。「それは私たちの責務なのです。特に私たちのようなプラットフォームベンダーは、顧客の抱える本当に困っている問題を解決するために、幅広いパートナーシップを結ぶことが求められているのです」。もしそうであれば、競合するモデルが存在していては目的を果たすことができない。

関連記事:価値の高いビジネスデータを共有、MSとアドビ、SAPがOpen Data Initiativeを拡大

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

AWSがわかりやすいディスカウントプランを発表

リザーブドインスタンス(RIs)は、一定コストでAWSリソースを使いたい企業のために作られた仕組みだ。しかし、AWSのJeff Barr(ジェフ・バー)氏も認めているように、複雑でわかりにくい。そこで同社は、新たに「Savings Plans」を発表した。

「本日提供を開始するSavings Plansは、1年または3年の間、一定量のコンピューターパワー(時間当たりの金額で計算)の利用を約束することで、RIs同様のディスカウントを得られる柔軟で新しい料金プランです」とバー氏が新サービス発表のブログ記事に書いた。

AWSの価格体系にはいくつか種類がある。第一がオンデマンド価格で、基本的にホテルのラックレート(正規料金)と変わらない。いきなりやってきてその場で注文するので料金は高くなる。

多くの企業は一定期間に必要なリソースの量をわかっているので、事前にまとめ買いすることで節約することができる。そうすることで企業はコストの不確定性が減り、Amazonにとっても企業が一定の量を利用することがわかるので計画が立てやすい。

リザーブドインスタンスも存続するが、Amazonは顧客を新しいプランに移行させようとしているようだ。「RIsの販売は続けるが、Savings Plansのほうが柔軟なので多くのユーザーがそちらを選ぶと思っている」とバー氏は書いた。

Savings Plansには2種類ある。Compute Savings Plansは最大66%の割引を受けられ、その点ではRIに似ている。顧客に喜ばれそうな特徴は、さまざまなAWS製品に割引を適用できることで、ワークロードをリージョン間で移動しても割引率は変わらない。

もう1つがEC2 Instance Savings Plans。こちらもリザーブドインスタンス同様、オンデマンド価格より最大72%安くなるが、利用は単一リージョンに限られる。それでも柔軟性はあり、同じインスタンスタイプを異なるサイズから選んだり、オペレーティングシステムをWindowsからLinuxに切り替えても、割引率に影響はない。

本日からAWSコストエクスプローラーでサインアップできる。

関連記事:Big 3 cloud infrastructure earnings reach almost $22B this quarter

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

エキスパートのいない企業とAWS認定サービスプロバイダーを結びつける新サービス

現在のAWSは、あまりにもいろいろなものがあるから普通のユーザーが自分のニーズを最もよく満たすサービスを的確に選ぶことはとても難しい。そこで同社は米国時間9月30日、ユーザーをAWSが認定したサービスプロバイダーに結びつけるサービスとしてAWS IQを発表した。

AWSのJeff Barr(ジェフ・バー)氏はブログで「本日ご紹介する新しいサービスのAWS IQは、皆さまをAWSが認定したサードパーティのエキスパートに結びつけて、プロジェクトの進捗をお手伝いします」と書いている。そのサードパーティが提供するものは、教育訓練やサポート、マネージドサービス、プロフェッショナルなサービス、コンサルティングなどさまざまだ。このブログ記事によると、それらのサードパーティ企業はすべて、AWSのアソシエイト認定やスペシャリティ認定、またはプロフェッショナル認定のどれかを持っている。

ニーズに合ったサービスプロバイダーを探すためには、まず、教育訓練やプロフェッショナルサービスなど、求めるサービスのタイプを指定する。それからIQの指示に従ってニーズを詳しく定義する。定義には、求める資格認定や謝礼条件などがあってもいい。するとIQサービスは要求を満たすプロバイダーを多くの場合複数提示する。ユーザーは彼らのプロフィールを見て格付けや提供機能を互いに比較しながら選んでいく。それはまるでオンラインのマーケットプレースのようだ。

AWS IQ start screen

最初に、目的とするサポートのタイプを指定する

AWSの副社長Swami Sivasubramanian(スワミ・シバスブラマニアン)氏によると、彼らは顧客とサービスプロバイダーを互いに出会わせる方法を探していた。彼は声明で 「AWS IQは顧客とエキスパートを結ぶ橋であり、両者の協働でプロジェクトの進捗を速め、どちらの側もプロジェクトを単独で手がけた場合に起こりがちな混乱や障碍の発生を未然に防ぐ」と述べている。

同社はこの新しいサービスを、中小企業に特に向いていると考えている。そこには、AWSのサービスをよく知ってるエキスパートがいないことが多い。一方エキスパートは、顧客を見つけ出す営業力を欠いているところが多い。AWS IQサービスは、顧客とAWSのエキスパートを結びつけて両社ウィンウィンの関係を作り出す。

画像クレジット: Ron Miller

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Capital Oneの1億人データ漏えいで内部犯行リスクに再び注目

最近のCapital Oneの1億人分の個人データ漏えいは テクノロジー界の注目を再びクラウドのセキュリティーに集めることとなった。実際なにがあったのかについてはまだ不明な部分が多い。公開された起訴状はCapital One以外の企業を匿名としている。クラウド企業側は広報上の一大危機を迎えている。

ここでは単なる推測でなく、確実な事実に焦点を当てたい。不愉快ではあるが避けて通れない問題、つまりクラウドのセキュリティーだ。

皆が気づかないフリをしようとしているのは、クラウドプラットフォームが本質的に抱えるセキュリティー上の問題だ。つまりクラウドサービスの顧客はクラウド企業の従業員の誰がどれほどのアクセス権限を持っているのか知りようがない。クラウド上の自社データに対し管理者レベルのアクセス権が与えられているのは誰なのか?

クラウドの顧客Xはクラウド企業Yで誰がどんな権限を持っているのか分からない。仮にクラウド企業の社員が倫理的義務にあえて違反すると決めれば、その社員は認証情報を含む特権的な内部情報を悪用してデータに対する不正なアクセスができる。顧客Xのデータをコピーするだけでなく、勝手にシステムを改変したりすることも可能だ。

念のために断っておくが、これはCaptal Oneのデータ漏えいがクラウド企業の社員ないし内部情報を利用できた人物の犯行だと示唆しているわけではない。FBIに逮捕された容疑者の職歴にはAmazon Web Services(AWS) も含まれており、データがダウンロードされたのはAWSのサーバーからだとみられている。しかし犯行に使われた知識、技能は必ずしもAWSに関する詳細な内部情報を必要とせず、インターネットにアクセスできるコンピュータと必要な好奇心があれば入手できる程度のものだったかもしれない。

問題はもっと幅広いものだ。企業トップが契約書にサインし、多数の顧客情報を含む機密データを第三者、つまりクラウド企業に引き渡すとき、トップはクラウド・プラットフォームに内在するメリット、デメリットの双方を正確に認識している必要がある。

簡単に言えば、クラウドに業務を移した後はオペレーションンのすべてがクラウドのホスト側に支配される。最悪の場合、クラウド企業が倒産してしまえば顧客のデータはいきなり路頭に迷う。もちろんそんなことになれば弁護士が慎重に作文した契約書のどこかの条項に対する違反となるだろう。しかし契約書や契約書上の文言には、例えばクラウド企業やその契約社員が悪事を働くことを止める力はない。しかもたとえ悪事が行われてもクラウドの顧客側では知りようがないのが普通だ。

つまりこういう状況を簡単に解決できる特効薬はないと認識することが重要だ。 今回の事件は、クラウドホスト側にとってビジネスに好影響をもたらしそうない極めて不愉快な話題であっても、クラウドに内在する危険を率直に検討するにはいい機会となった。こうした事件がなければクラウド内部の人間による悪行が公開される可能性はないからだ。

画像:Getty Images

【編集部注】この記事は米国カリフォルニア州のセキュリティー企業であるUpgurdChris Vickery氏(クリス・ヴィッカリー)の寄稿だ。同氏は、サイバーセキュリティー・リサーチ担当ディレクターとしてVickery氏は25億人のオンラインデータの保護にあたってきた。

【Japan編集部追記】 司法省の起訴状ではデータがダウンロードされたのはCloud Computing Companyからとあり、企業名は明かされていない。アメリカ議会の下院監視・政府改革委員会はCaptal OneとAWSに対し議会休会中の調査に協力するよう求めている。なおAWSの日本語サイトには成功したクラウド化事例としてCapital Oneが紹介されている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

AWSがマイクロソフトに続き中東・バーレーンに新リージョン開設

Amazon(アマゾン)のクラウドサービス部門AWSは米国時間7月30日、バーレーンに中東リージョン(Middle East Region)を開いたと発表した。中東はクラウドプロバイダーにとって新興市場だが、今度の新リージョンはこのクラウド大手の継続的拡張の一環だ。今日のニュースのすこし前にはMicrosoft(マイクロソフト)が、その中東データセンターをアブダビとドバイに置く、と発表した。

AWSのCEOアンディー・ジャシー(Andy Jassy)氏は昨年のAWS re:Inventで、クラウドは世界のさまざまな部分で成熟段階が異なる、と指摘した。そして当然ながらAmazonは、新興市場に進出してクラウドインフラストラクチャ市場におけるリードを広げたいと考えている。ジャシー氏はre:Inventで次のように語っている。

「米国のエンタープライズや公共部門はクラウドの採用の初期的段階だが、米国以外はさらにそれより1年ないし3年は後れている。だからそこでは、メインストリームのエンタープライズの多くが、クラウドへのアプローチをこれからやっと計画するという段階だ」。

AmazonはAWSの拡張を、中東の企業を助けることと見ている。これまで、米国やヨーロッパなどで、クラウドサービスにより、企業のデジタル化を助けてきたのとちょうど同じように。

今度の中東のリージョンはアベイラビリティーゾーンが3つある。この独特のAWS語は、その中に一つ以上のデータセンターを抱える地理的区域のことだ。同社の声明文は、次のように説明している。「各アベイラビリティゾーンごとに独立の電力系、冷房設備、そして物理的セキュリティが確保される。そして冗長性を持った超低レイテンシーのネットワークで接続される」。

Amazonは、これが継続的拡張の一環だ、と言っている。また今後数年以内に、インドネシアとイタリアと南アフリカに計9つのアベイラビリティゾーンを設ける、とも。

関連記事: Microsoft’s first data center regions in the Middle East are now generally available(Microsoftの中東初のデータセンターリージョンが供用を開始、未訳)

画像クレジット: Ron Miller

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

AWSのテキスト音声変換エンジンはニュースキャスターのような話し方をする

最新の機械学習技術のおかげで、テキスト音声変換エンジンはこの数年間で大きく進歩した。以前はコンピューターがテキストを読んでることがすぐ分かったが、最近はそれも変わりつつある。Amazon(アマゾン)のクラウドコンピューティング部門AWSは今日(米国時間7/30)、テキスト音声変換を行うニューラルネットワーク用のモデルをいくつかローンチし、その中にはテレビのニュースキャスターの喋りを真似るものもある。

同社の発表声明はこう言っている。「音声のクォリティーは確かに重要だが、もっと人間的にリアルな合成音声を作ることが、これまでは忘れられていた。たとえば、話し方のスタイル。人間なら、ニュースキャスターとスポーツキャスターと大学の先生の話し方スタイルを聞き分けることができる。またほとんどの人間が、状況に応じて話し方を変える。メッセージがいちばんよく伝わるような、話し方を選ぶのだ」。

ニュースキャスターふうの話し方スタイルは、Joanna(ジョアンナ)とMatthew(マシュー)という名前までついた二人のアメリカ人の声で提供され、USA TodayとカナダのThe Globe and Mailの協力により、実際にニュース原稿の読み上げに使われている。

それは、こんな喋り方だ:


このニュース読み上げ用テキスト音声変換サービスはAmazon Polly Newscasterと名付けられ、AWSの長年のテキスト音声変化に関する研究の成果だ。AWSはそのエンジン本体をNeural Text-to-Speech Engineとして提供している。このエンジンはGoogleのWaveNetなどと変わっているものではなく、今11の音声を提供している。イギリス英語が3人、アメリカ英語が8人だ。

たとえばこれは、女性(女声)のアメリカ英語の例だ:

今のフェイクニュースの時代においては、ここまで本物の人間のようなロボットの音声がニュースキャスターのように喋ったりすると、賛辞よりもむしろ問題を感じてしまうかもしれない。ただしほとんどの場合は、ニュースを人間が読もうとロボットが読もうと大差ないだろう。ユースケースはニュース以外にもいろいろありそうだ。それにAWSが提供したサンプルを聞いたかぎりでは、以前の、長く聞いていると気分が悪くなりそうなロボット音声よりも、ずっと長く聞いていられる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

AWSの成長率はやや鈍化したがAmazonのために金の卵を産み続ける

先週のAzureと同じく、AWSも米国時間7月26日の決算報告で成長率の鈍化を報告した。それは昨年の49%に対して、本年今期は37%だった。総売上高は昨年のQ2の61億500万ドル(約6630億円)から今期は83億8100万ドル(約9100億円)に増加した。年商としては330億ドル(約3兆5800億円)という驚異的な額になる、AWSだけで。つまりそれは、それでも成功している企業の一部門の売上にすぎないのだ。

でも、本体のAmazonもうれしいはずだ。今四半期AWSは同社の総収入の13%を占め、Amazon全体を引っ張るほどの勢いになっている。しかし多くの点でこれはいいニュースであると同時に、加速を続けている市場でMicrosoftとAmazonの両者がやや減速したことは奇妙だ。それでもなお、両社のクラウドインフラストラクチャ市場の支配は続いている。

Amazonは市場のほぼ33%をコントロールし、Microsoftはほぼ16%。アナリストによって数字に若干の違いはあるが、AWSのマーケットシェアはMicrosoftのほぼ倍である。しかし現時点では、2位以下の中でシェアが2桁の企業はMicrosoftだけだ。

両社の成長率の低下は、単純に大数の法則かもしれない。つまり、この2社のように大きくなりすぎると、成長市場においてもかつてのような高い成長率を長期的に維持することが困難になる。

Moor Insights & Strategyの主席アナリストであるPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は「これはいわゆる大数の法則であり、売上が大きくなりすぎると高い成長率の維持は困難になる。それでもAWSの売上は、2位から5位までを合わせた額より大きい」とコメントしている。

市場が成熟すると成長は自然に鈍化し、市場がどれだけホットでもAmazonが40%台の成長を維持することはできない。でも、その売上高は依然高く、AWSはAmazonの成功の大きな要因であり続けている。

関連記事:AWS remains in firm control of the cloud infrastructure market(AWSはクラウドインフラストラクチャ市場のトップの座を譲らず、未訳)

画像クレジット: Ron Miller

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa