ノースカロライナ拠点の気候監査Climate Serviceが約4.1億円を調達

世界中の企業が、自社による事業活動が地球規模の気候変動に与える影響に注目する中、投資家たちは気候変動の影響を食い止めるためのソフトウェアやサービスを次々と支援している。

その中でも最も新しい資金調達を行ったのがThe Climate Serviceで、直近の資金調達ラウンドで382万ドル(約4億1000万円)を調達した。

興味深いことに、ノースカロライナ州ダーラムを拠点とするThe Climate Serviceは、従来のベンチャー投資会社やエンジェル投資家に加えて、国際公認会計士協会(Association of International Certified Professional Accountants)からも出資を受けている。

さらに、Persei VentureやSynovia Capitalなどの機関投資家も、このラウンドに参加した。

The Climate Serviceは今回調達した資金を、同社のソフトウェアサービスで監視する気候シナリオやリスク、資産クラスの範囲を拡大するために使用するという。

同社の気候監査サービスは、Climate-Related Financial Disclosuresのタスクフォースが策定した枠組みに基づいて気候リスクのモデルと価格設定を行っており、世界中の1000以上の組織で使用されているという。

「投資家、市場、規制当局は企業に対し、気候変動に関連するリスクへのエクスポージャーを測定するようさらに求めている。その結果として気候リスクを理解し、定量化し、管理するよう迫られている業界の要求に応えるために、The Climate Serviceはこの資金調達ラウンドを計画した」と、Persei VentureのDavid L.Jadow(デビッド・L・ジェドー)氏は語る。「我々はThe Climate Serviceに今後も大きな成長が見込まれ、気候リスクをグローバルな意思決定に組み込むという同社のビジョンとミッションを支援することを誇りに思う」。

原文へ

(翻訳:塚本直樹 Twitter

スタートアップの不安、スタートアップの大志

リキャピタリゼーション。レイオフ。スローダウン。CEOの交代。予算カット。規模縮小。

この数カ月間で、スタートアップの大型エグジットがいくつも達成され、米国時間2月25日にはIntuit(インテュイット)が71億ドル(約7830億円)でCredit Karma(クレディット・カルマ)を買収するというフィンテック界の輝かしい瞬間も迎えたが、スタートアップの世界では厳しい状況が続いており、方々でレイオフが行われている。その中心はおそらくソフトバンク・ビジョン・ファンドのポートフォリオだが、それに留まるどころの騒ぎではない。評判も悪く、知名度もないスタートアップは、どんどんシャッターを下ろしている。しかも、2020年の投資家たちの心情を左右するであろう新型コロナウイルスのようなグローバルでマクロな懸念をそこに織り込む余地すらない。

スタートアップの世界は、少々停滞し始めている。可能性が消えそうだという感覚がある。作ろうと思ったものはみな、すでに作られていて、技術そのものは世間の冷たい目で監視され、イノベーションはままならない。

多分、すべて本当だろう。しかしやれることは、まだまだたくさん残ってる。

どの経済セクターも、今なお抜本的な立て直しを必要としている。医療はまだほとんどデジタル化されていない。パーソナル化も一切されておらず、根拠に基づく、またはデータに基づく医療もほとんど進んでいない。住宅やインフラの建設コストはうなぎ登りだが、エンドユーザーが受ける利益は実際にはほとんどない。学資ローンの債務危機に苦しむ人たちも大勢いるというのに、学校制度は100年前からほとんど変わっていないように見える。

気候変動によって地球がますます浸食される中、数十億の人たちがインターネットを利用して産業と知識の経済圏に加わるようになり、先進国と同じ利便性を求めている。地球上のすべての人たちに空調、住宅、交通、医療などなどさまざまなものを提供するには、どうしたらいいのか。私たちは、二酸化炭素排出量を削減しつつGDPを100倍にしなければならない。数十億の人たちが我々を頼りにしているのだ。

組織の中において、私たちはデザイン、データ、意志決定をうまく組み合わせて製品のイノベーションと成長を生み出す方法を、ようやく理解し始めたところだ。昨日、私は、同僚のJordan Crook(ジョーダン・クルック)の目を通して見たデザイン界の変遷に関する記事を読んで、プロタイピング用のツールについて記事を書いた。たしかに、ツールは良くなっている。だが、無数の人たちが努力することなくデザインできるようになったとしたら、どうなるだろう? または、無数の人たちがコーディング不要のプラットフォームをもっと広く利用するようになったら、何が起きるだろうか? 我々は何をすれば、そうした人たちの創造力を後押しできるだろうか?

デジタル製品での一般的な体験を考えてみるのもいい。スマートフォンは高速になった。そのカメラで撮影できる写真も高精細になった。それでいて、手に持ったときの質感は変わらぬままだ。だがそれは本当の意味で、さまざまな利便性をきれいに融合させているだろうか? 私は今でも、ファイルの同期、電子メールのチェック、カレンダーへのランチミーティングの予定のリンクを行い、指で前後にフリックするときに細かい見落としがないか気をつけている。毎日のソフトウェアの利用がすっかり日常化したことで、特に指導を受ける必要もなく現代の技術で簡単に行えることを、笑えるほど初歩的なツールでやっているという現実に気づかなくなっている。

データもしかり。ビジネス、娯楽、行政におけるデータ革命は、ようやく幼年期を迎えたあたりだ。データは、大企業の周囲には散乱しているようだが、それが意志決定に何らかの影響を与えるまでには、今日でもほとんどなっていない。データをもっと効率的に利用できるようになったら、何が起きるだろうか? 今の無骨なビジネスインテリジェンスツールよりも高速にデータを調査できたとしたら、どうだろう? データの最適な調査パターンを、地球上のあらゆる個人が利用できるようになったとしたら、どうだろう? ごく簡単な意志決定においてすら、最善のAIモデルを即座かつ簡単に作って解決できるようになったとしたら、どうだろう?

例を挙げればきりがない。特定の市場から、コミュニティーの中のダイナミクスまで、そして社会と企業、エンドユーザーと、エンドユーザーに提供される製品に至るまで、現状はイノベーションサイクルの終点からはほど遠い。数百もの自動車メーカーと関連企業が最終的に現在のひと握りの巨大メーカーに統合されてしまった100年前のデトロイトとは違う。やれることはまだたくさんある。FAANGだけで対応できる数ではない。

適切な集団の中でさえ、何をやるべきかを知ることと、何をやらなければならないかを知っていることとの違いが、広く重大に受け止められていないのが奇妙に思える。今日、取り組む価値のある解決されていない課題は山ほどある。それは何千万もの人々の生活を支えるばかりでなく、数十億ドル(数千億円)規模の経済そのものになる可能性をも秘めているのだ。

だから、私たちは気持ちを切り替えなければいけない。私たちは、失敗したスタートアップのこと、それが成し遂げられなかった大志のことをしっかりと憶えておかなければいけない。いつ間違いが発生したのかを認識し、その煽りを受けた人たちの気持ちを考える必要がある。この業界のネガティブなニュースに蓋をしてはいけない。無視すれば、同じ過ちを犯してしまう。

とはいえ、雪崩のように押し寄せるネガティブなニュースや批判的な分析結果に立ち向かうには、ポジティブな気持ちが不可欠だ。未来を、変革を、私たち全員にまだ残っているパワーを見据えて、今すぐ方向転換をしよう。やらなければならないことが山ほどある。まだ日は昇ったばかりだ。

画像クレジットFlashpop  / Getty Images

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

2019年の気温は記録史上最高だった3年前に次ぐ第2位の高温に

合衆国政府のデータは、現政権はそう言わないかもしれないが、地球が温暖化していることを示しているようだ。どうやら今年の地球は、記録にあるかぎり2番目に暑い10月を経験したようであり、このまま行くと同じく記録上、今年は2番目に暑い年になるようだ。海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric Administration、NOAA)のデータがそれを示している。

10月が暑かっただけでなく、南極の氷が1979年に観測を開始して以来最も小さく縮小した。10月の暑さは記録に残るかぎり、2003年以降で10度目の、それ以前の記録を破る暑さであり、しかもその10回の記録破りの内の5回は過去5年連続だ。

地球の気候変動につながる大気中排出物質を減らそうとする政策をトランプ政権は廃棄しようとしているが、NOAAのような政府機関は、この惑星がどれだけ変わりつつあるかを正確に示す報告書を出し続けている。

今月初めに国務長官のマイク・ポンペオ氏は、米国を気候変動に関するパリ協定から離脱させる手続きを公式に開始した。現政権の極めて重大なこの出来事を、世界はTwitterから知らされた。

ポンペオ長官は「すべての排ガスの削減」へのこの国のアプローチを賞賛しているが、ヨーロッパとアフリカとオセアニア、カリブ海地域、そしてハワイ諸島はかつてない記録的な温度に達し、世界の平均海面温度は記録上で2番目の高温に達した。

一方、新たな予測が、気温上昇による氷河の溶解によって起きる海面上昇で都市が直面するリスクの大きさを、従来の予測の3倍に上方修正している。

研究団体であるClimate Centralが作り、NatureCommunicationsに載った地図は、都市の耐性が強化されるか、または気候変動の方向が今の逆にならないかぎり、海面上昇によって現在1億5000万人が住む陸地が2050年までに洪水や高潮の下になる。

連邦準備制度ですら、気候変動によるリスクに目覚めつつある。米国の金融政策を司るこの規制当局は、今月初めに、気候変動が財政に与える影響にフォーカスしたイベントを開催した。

The New York Timesの記事によると、このイベントのために前もって用意されたコメントで連邦準備制度理事会のメンバーであるLael Brainard(ラエル・ブレイナード)氏は「連邦準備制度が気候関連の研究と実践にもっと積極的に参加すれば、強力な経済と安定的な金融システムをもっと実効的に支援できるはずである」と述べている。

画像クレジット: NOAA

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アメリカ政府の最新報告書によると気候変動の被害額は今世紀中に年間$500Bに達する

【抄訳】
気候変動の社会的影響に関するアメリカ政府の新しい報告書は、何も対策が為されなかった場合、さまざまな気候学的事象がこの国にもたらす被害額は2090年までに年間5000億ドル近くになる、と指摘している。

議会が作成している全米気候評価報告書(National Climate Assessment、NCA)は、気候変動の影響に関する報告書で、10あまりの省庁にまたがるおよそ300名の著述で構成されている。その1000ページにわたる報告書は、アメリカの農業や労働、地勢、そして健康に及ぼす気候変動の影響を取り上げている。

報告書の第二巻は、国の政策立案者に向けた、地球温暖化がアメリカに及ぼす影響を詳述している。

それが公開された現時点は、国の現在の政権が、自らの省庁が挙げている増大して止(や)まない証拠をあらゆる手段を駆使して反駁し、グローバルな気候変動の影響を抑えるべき国内的および国際的な責任から逃れようとしている

報告書は、対策が取られなかった場合のアメリカの厳しい状況を詳しく描写しており、気候変動が国にもたらす多くの変化の中には、不可逆的(回復不能)なものも多い、と述べている。

【後略】
〔以下、報告書原文と解説。報告書第I巻は2017年に公開され、ネット上の各所で共有されている。この記事が取り上げている、最近公開されたばかりの第II巻は、まだネット上で共有されていないようだ(11月24日現在)…担当部門のページ上でもcoming soonになっている。〕

〔関連記事: Y Combinatorが気候変動対策スタートアップを募集(未訳)〕

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

サンゴ礁を絶滅から救うロボットLarvalBotはサンゴの幼生を何百万も海中に散布する

世界のサンゴ礁は今でも、徐々に死滅が進行している。それは気候変動という現実を重苦しく想起させるが、しかしそれは、人間の努力によって押し戻すことも可能だ。環境保護活動家たちがそのために手に入れた新しいツールLarvalBot〔幼生ロボット〕は、老いたるサンゴを健康な新しいポリプ(polyps, 個虫)で置き換えていく努力を、大幅に加速する水中ロボットだ。

このロボットの原型は、2015年のプロトタイプCOTSbotで、サンゴの敵オニヒトデ(crown of thorns starfish, COTS)を自力で見つけて破壊する…それが名前の由来。それをその後クイーンズランド工科大学(QUT)のチームが改良し、そのサンゴ狩猟者を殺すロボットはRangerBotと呼ばれた。

しかし、侵略的なファウナを探してサンゴ礁を安全に航行しモニタするその同じシステムが、これらの消えゆくエコシステムをもっと直接に助けることができるのだ。

グレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)のサンゴは毎年、クイーンズランド北部沖合の海を大量の卵子と精子で満たすという、一大イベントを展開する。サザンクロス大学の研究者たちは長年、それらの卵子と精子から新世代のサンゴを養殖する方法を研究していた。彼らは捕獲した卵子と精子を海に浮く囲いに隔離し、ほぼ一週間でサンゴの健康な赤ちゃんたちを孵化することに成功した(サンゴの赤ちゃん(coral babies)はぼくがひねり出した言葉ではないが、でも好きだね)。そしてそれらの赤ちゃんサンゴを、絶滅寸前のサンゴ礁に注意深く移植した。

LarvalBotは、この最後の段階で仕事をする。

QUTのMatthew Dunbabinがニューズリリースでこう説明している: “11月に生まれる幼生のためにはロボットを2〜3台用意したい。1台は約20万の幼生を運び、他は約120万を運ぶ。ロボットは指定した航路を進み、サンゴ礁全域で一定の深度を保つ。彼らをモニタしている人間が、最大の散布効率になるように幼生をリリースしていく”。

これはふつうならダイバーの仕事だが、ロボットはそのフォースマルチプライヤー(force multiplier, 力量増幅器)になる。ただし食べ物や酸素は要らない。わずか数台で、数十人のレンジャーやボランティアの仕事ができるだろう。

幼生復元技術を開発しているサザンクロス大のPeter Harrisonはこう語る: “生き延びたサンゴは成長を開始し、子芽を生成し、新しいコロニーを作る。それが約3年後には、生殖が可能なまでに大きくなり、そのライフサイクルを完了する”。

それは決して即効的な方法ではないが、でもこの、人工的にサンゴを散布する技術は、サンゴ礁とその領域があと数年生き延びる機会を増大し、そしてその間に、再び自活能力を回復するだろう。

画像クレジット: QUT

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

気候変動に関する世界的協定から離脱したらアメリカの産業にダメージ、とヒラリー・クリントンが主張

気候変動に関する国際協定にアメリカが留まるか脱けるか、トランプ大統領の決断をめぐっていろんな噂がある中*、前国務長官ヒラリー・クリントンが、水曜日(米国時間5/31)にカリフォルニア州ランチョ・パロス・ヴァーディーズで行われたCode Conferenceで、大統領に辛辣な言葉を進呈した。〔*: 日本時間6月1日午前9時現在〕

現国務長官Rex Tillersonや、大統領がパリ協定に留まるよう勧奨する署名運動にサインした多くの企業役員たちの意向を受けてクリントンは、協定の放棄はアメリカとその企業にとって悪である、と述べた。

“クリーンエネルギーの輸出で世界のリーダーになるのは、どこの国でしょうか”、クリントンは中国やヨーロッパにおける国家的支援と、それらの国々における再生可能エネルギー産業の活況を強調した。

“その大きな市場を誰かが手中にしようとしているとき、私たちはそれを捨てようとしているのです”、とClintonはぶち上げた。

パリ協定に署名していない国はシリアとニカラグアの二か国だけであることをクリントンは指摘して、大統領の翻意を促した。

クリントンはさらに、再生可能エネルギーや気候変動に取り組んでいる企業に現政権が示しているネガティブな認識は、グローバル市場におけるアメリカ企業の競争力を削いでいる、と主張した。

これらの企業がアメリカ政府の支持を得られないのは、“恥ずかしいことです”、とクリントンは述べた。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

科学を黙らせる努力、やりたいようにやってみれば!

IDL TIFF file

テクノロジーとインターネットは、ビジネスやコミュニケーションと並んで科学にも力を与えてきた。ほかのものと同様にテクノロジーは、科学の努力も、その活動と到達の範囲をグローバルにし、妨害に対して強くし、数十億の人びとがアクセスできるものにした。それは、権力の承諾の有無とは無関係に。そのことは、現在の政権の、科学の研究に口輪をはめようとする努力が失敗する、理由のひとつにすぎない。

オンラインのコミュニケーションを改ざんされたり、即座に閉鎖された国の省庁のリストが、日に日に成長している。環境保護局、国立公園庁、エネルギー省、農務省、運輸省、そして内務省、などなど。その雑でぶきっちょなやり方を見ると、これらの省庁がもっぱら気候変動に関して情報活動を抑圧されたことが明らかだ。うまくいくと、いいけどね!

しかしまず、早とちりを防いでおきたい。今はしょせん、政権移行期だ。模様替えでちょっとした失敗が起きるのは、当然ではないか? ホワイトハウスのWebサイトのスペイン語バージョンが完全になくなったのも、入れ替えに手間取っているだけかもしれない。

しかし、現政権のエネルギー計画に、“solar”や“wind”、“renewable”の言葉がないことは、たまたまではない。

また、Obamaの気候変動政策に代わるものや、まして反証すらもないことは、偶然ではない。

国立公園庁が、気候変動に関するいくつかのツイートのあとで叱責されたのも、

疾病管理センターが気候変動に関する会議を突然キャンセルしたことも、

閣僚指名者たちが何度も繰り返して、気候変動の存在やその危急性を認めることを拒否したのも、

硬軟多様なコミュニケーションの制限を受け取った省庁の多くに、気候変動に大きく影響する、あるいは影響される、担当行政職掌があることも、

環境保護局が気候変動のページを閉鎖され、削除を命令され、そして今では同局の研究を公表前に政府が検査するとなったのも、偶然ではない。

これは移行作業のちょっとしたミスでも、正々堂々とした主張でも、特定の考え方の誇大宣伝でもない。ほかのことは何を語ってもよいが、気候変動はだめ。それは、政府による、政府が危険と見なす話題に関連する情報の、意図的な抑圧だ。

もっと、ふさわしい言葉がある。今日(こんにち)、その言葉は誤用されることが多いが、この場合は正しい使い方だ。それは、検閲である。

検閲志望者にとって不運なことに、そんなものが有効だったのは遠い昔だ。どんなに強力な情報抑止努力よりもStreisand effectの方が強いことは、何年も前から証明されている。でも今回のは、そんなレベルではない。要するに、科学を黙らせることは、誰にもできないのだ。

とくに気候変動は、おとなしく寝かせておくことが難しい厄介者だ。ここ数十年にわたって、世界中の何千×n人もの科学者たちによる研究が、人為起源の気候変動(あるいは、いわゆる“地球温暖化”)という理論(重力や進化が理論だ、という意味での理論)に到達し、それを日々強化している。

それは、どこかの小さな研究室のひとにぎりのインテリたちではない。その膨大な数の科学者たちを、ほかの研究課題へ再配置したり、彼らの膨大な量の論文を小さな学術誌に封じ込めることは、誰にもできない。結果はすでに目の前にある。産業界はすでに、対応努力をしている。かつては議論があった場所の突然の沈黙は、これらの省庁が言うかもしれない文句などよりもずっと大声で語るだろう。それは、誰かに月について語るな、と言うのと同じで、そんなことをやってみようと思うだけでも、十分に異様だ。

しかしさらに加えて、今の科学は何にも増してグローバルであり、そしてテクノロジーに強い。科学のグローバルなコミュニティとテクノロジーおよびインターネットは、今や切っても切り離せない親密な仲だ。どの研究所にも、すべての実験を詳述している小さなブログがあり、そんなブログは何千もある。大学のニュースサービスは教授たちのインタビューを載せ、公刊されている学術誌は新しい研究を誰もがレビューできる形で公開し、Natureのような巨大でグローバルな出版物は、話題を求めて研究者たちの世界を掘りあさり、おもしろい研究結果を載せる。TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアも、ほとんど無限にある研究や意見の公式/非公式なアウトレットだ。その一つを切り殺せば、そこに新たな二つが生まれる。

要するに、彼らがやっていることは無駄である。もちろん、今日の人類が直面している最重要な問題への言及は、どの政権にとっても不快にきまっている。それらの言及は、過去の政策を批判し、新しい政策を求めているからだ。たぶん、現政権がやっている気候変動の無視は、ほかでもあったし、現にほかでもやっているだろう。それはとても不幸なことだけれども、でも、言及を削除するやり方は、単なる、途方もないアホだ。

今ではたくさんの気象衛星が地球のまわりの大気を見張り、そのデータを各国に報告している。海洋では多くのブイや船が水温等を調べ、結果を世界中のいろんな機関に共有している。専門の研究機関が世界各地にあって、研究者たちが毎日のようにたくさんのペーパーを発表している。今ぼくらがこうしているあいだにも、海水面の上昇が続き、国全体が水没しつつある。それを黙らせるなんて!

科学者も、自己の情熱というものを持つ個人である。ロボットの改良でも、疾病の治療法の発見でも、そしてこの惑星の気候というミステリーの解明でも。彼らは書き、共有し、友だちと話し合う。彼らは、真実を探求する者たちのグローバルなコミュニティだ。友だちの誰かがひどい目に遭ったら、黙っていないだろう。そのひどい目が、どんなに幼稚で無意味な方法だったとしても。彼らは、自分たちが発見したものに関する知識を、広める方法を見つける。ぼくたちは、彼らを助ける。そして、そう、彼らもワシントンでデモ行進をする

ところで、2016年が記録の上では史上最温暖の年だった、と言っているツイートはすべて消されるかもしれないから、ここでも言っておこう。2016年は記録上最温暖の年でしたd〔NASAのこのページは日本時間1/26 11:54現在、消されていない。〕。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

NASAの新しい海水位サイトには、気象変動に関する論文、データ、ツールが満載

nasa_displaydata

月曜日(米国時間4/4)、NASAは世界の海水位の変化を追跡する専用サイトを新たに開設した。そこに満載されたオンラインデータは、教員、気象変動マニア、そしてあらゆる公開データを堀り起こすのが好きな人々の役に立つことだろう。

The Sea Level Changeは、NOAA(国立海洋大気庁)ではなく、NASAのサイトで、それは宇宙に基づく観察が中心だからだ ― たたしNOAAの名前も随所に見られる。海水位観測の歴史や氷の量その他の気象マーカーについての部門もあり、海洋学に馴じみのない人にはよい教材になるだろう。

でもおそらく、データ分析ツールをいじり回す方が楽しいだろう。これは大きな世界地図にいくつかレイヤーを重ねられるもので、アニメーションもできる(シムアースににている!)。まだバグはあるが(現在アルファ版)試す価値はある ― 学生なら海水位と温度が時間と共に変化するところを観察して何かを学ぶかもしれない。今後さらにデータセットがレイヤーに追加され予定なので、授業計画を練るのは少し待った方がよいかもしれない。

サイトの情報を裏付ける公開済み論文のデータベースもある ― 無料で読めるものもあるが、自分で探す必要がある。(NASAへの注文:すばらしいサイトだが、自由にアクセスできる記事に印がついていればさらにすばらしい。

ランディングページにも最新の憂鬱なデータが知らされている。例えば、海水位は年間3~4 mm上昇していて、グリーンランドは毎年278ギガトン収縮している、等々。NASAのみなさん、すばらしい仕事をありがとう。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ホワイトハウス、気候変動問題を証明するためにクラウドソース活用キャンペーンを実施

ホワイトハウスは、気候変動キャンペーン推進のために、 優れたデータサイエンティストを必要としているようだ。自ら終末論のシナリオを書く代わりに、ホワイトハウスは政府データを公開し、研究者による独自のシミュレーションを可能にすると共に、各都市が変動に影響に備えられるようにした。

「オバマ政権は本日、アメリカ民間企業の優れたイノベーターらが、公開された政府データその他のデータセットを活用して、アメリカのコミュニティーの気候変動に対する抵抗力を増すためのツールを作り、分野を横断した協力によって、それらのツールをできるだけ有用なものにするよう要請する」、とホワイトハウスのウェブサイトに掲載された報告書は説明している

沿岸洪水から津波活動にいたるまで、あらゆるデータは開発者が使いやすい形式で、新しいウェブポータルData.govに置かれている。このやや不透明な主題に関する作業にインセンティブを与えるべく、新データには賞品付きの競技が設定されている。「沿岸洪水イノベーション・チャレンジ」から「人々に沿岸災害ならびに人口増加および海面上昇による脆弱性の増大を理解させる」までテーマは多岐にわたる。

この活動は、最高技術責任者、Todd Parkの〈オープン・データ・ハッピー政策〉の一環だ。Parkは2012年に彼のアプローチを私に説明してくれた。

われわれは、あらゆる方面の起業家やイノベーターが、機械読取可能な形で保管されている政府データを活用できるようにする。彼らは、天候データやGPSデータと同様、われわれが想像すらできないようなあらゆるサービスや製品を作ってくれるだろう」

デベロッパーやデータおたくは、新しいツールの全貌をここで見ることができる。

[Image Credit: Flickr User NASA Goddard Photo and Video]

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook