Pivotal Software、IPO初日は5%高、5.55億ドルを調達

株式市場の投資家たちは、金曜日(米国時間4/20)にデビューを飾ったPivotalSoftwareに対してどっちつかずの反応を示した。IPO価格15ドルでスタートした同社は15.73ドルで引けた。

実際新たな投資家にとっての急騰は起こらず、提示された価格幅の中間程度の株価でPivotal調達した金額は5.55億ドルだった。同社の時価総額は30億ドルを超えた。

大企業向けクラウドサービスを提供する同社は、その過半数をDellが所有している。これは2016年にDellがEMCを買収した結果だ。Pivotalは2012年にEMCとVMWareからスピンオフした。

その後、17億ドルの資金をMicrosoft, FordおよびGeneral Electric

から調達した。

S-1申請書には同社の事業が以下のように記載されている。

Pivotalは「最高水準のクラウドネイティブなプラットフォームを提供し、当社顧客のソフトウェア開発とIT運用に戦略的優位性を与える」ことを目標としている。当社のクラウドネイティブプラットフォームである Pivotal Cloud Foundry (‘PCF’)は、新しいクラウドネイティブアプリケーションあるいは既存アプリケーションの改訂にともなう開発、運営の複雑さを減らすことで、ソフトウェア開発を加速させる。

申請書類によると、Pivotは2月締めの会計年度で売上5億940万ドルだった。これは前年の4億1630万ドル、前々年の2億8090万ドルから上昇している。

しかし同社は未だに大きな損失を出している。2018年度の損失は1億6350万ドルで、2017年の2億3250万ドル、2016年の2億8250万ドル、から改善されている。

「多くの損失があり、安定した利益を維持するのに十分な売上は得られないかもしれない」と、 IPO申請の必須項目である「リスク因子」の項目で同社は警告している。

Pivotalは、IBM、Oracleといったインフラストラクチャーおよびミドルウェアの伝統的ベンダーと競合することも認めている。さらに、RedHatなどの企業が提供する「オープンソースに基づく製品」とも競合すると同社は書いている。そのほかPivotalは、SAP Clude Platform、Amazon Web ServiceおよびMicrosoft Azureなどのからの挑戦も受ける。

Pivotalは、強力なセキュリティーと使いやすいプラットフォームで差別化すると信じている。また、ブランド認知度が高く評判も良いとも言っている。同社は米国特許を118件所有、73件出願中であり、革新的な企業であり続けると断言する。

Morgan StanleyとGoldman Sachsが引受会社となり、Davis PolkおよびFenwick & Westが法律顧問を務めた。

同社はニュヨーク証券取引所に上場され、銘柄記号は “PVTL” となる。

低調だった冬のあと、この春はIT企業のIPOが盛んだった。Dropbox、Spotify、およびZuoraがここ数週間で上場した。DocuSign、Smartsheet、Carbon Black、およびPluralsightの各社は来月中にデビューが予定されている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ZuoraのIPOは企業向けSaaS黄金時代への新たなステップだ

Zuroaの創業者兼CEOであるTien Tzuoは、多くの人たちの意識に上るはるか前から、サブスクリプション経済のビジョンを持っていた。彼は、企業がサブスクリプションで成功するためには、課金状況を簡単に知るための簿記システムが必要であることを理解していたのだ。同社は4月12日株式の公開を果たした。これはSaaSの成熟を示す、新たな道標のひとつである。

TzuoはSalesforce初期の従業員であり、同社最初のCMO(最高マーケティング責任者)を務めた。彼が勤め始めたのは、SalesforceのMarc Benioffが会社を立ち上げるためにアパートを借りたことで知られる、会社黎明期の90年代後半のことである。TzuoはSalesforceに9年間在籍し、そのことが、Salesforceのようなサブスクリプションベースのビジネスの本質を理解するのに役立った。

「私たちは、ソフトウェアを開発し、マーケティングし、そして提供するための素晴らしい環境を作りました。私たちが書き換えたのは、開発方法、マーケティング、そして販売に至るまでの全てのルールです」とTzuoは2016年のインタビューで私に語った。

彼は、単体製品の販売と計上のためにデザインされている従来の会計手法が持つ、基本的な問題点を認識していた。サブスクリプションはまったく異なるモデルであり、収益を追跡し、顧客とコミュニケーションをとるためには新しい方法が必要だったのだ。Salesforceのような成長企業における確実な仕事を捨て去って、2007年の初めに会社を設立したTzuoは、既に長期的な視点を持っていたのだ。

彼がそれに踏み切ったのは、他の誰よりも早く、SaaS企業がサブスクリプション向けの簿記システムを必要とするという見通しを持っていたからだが、他の無関係な企業たちも、やがてそれを必要とするだろうということに、やはり早い段階から気がついていたのだ。

サブスクリプションシステムの構築

彼が2016年のインタビューで語ったように、もし顧客が毎年1ドルずつ10年間の支払を約束したなら、会社は確実に毎年その1ドルを手にすることができて、最終的に
10ドルを手にすることができることを知っていることになる。しかしその金は実際に手に入れるまで計上することはできない。その繰り返し発生する収入はそれでも価値を持っている、なぜなら投資家たちは、まだ帳簿にのっていなくとも、会社がこの先10年間収益を挙げることができることがわかるからだ。そこがZuoraの登場する場所だ。他の誰もがそれをできなかったときに、その定期収入を織り込んで報告することを可能にしたのだ。さらに、時間に沿って請求を追跡し、リマインダを送信し、企業が顧客との関わりを保ち続けることを助けることができる。

写真:Lukas Kurka/Getty Images

Constellation Researchの創業者兼主席アナリストのRay Wangが語るように、Zuroaがサブスクリプション経済のアイデアを切り拓いたのだ。そしてそれはSaaS企業だけを相手にしたものではない。ここ数年私たちは、企業たちが1回限りのアイテム販売ではなく、サービスとSLA(サービス水準合意)の販売について語るのを耳にしている。しかし少し前には、大部分の企業がそれについて考えることはなかったのだ。

「Zuroaは企業たちが収益化を考える方法を開拓したのです」とWangは語る。「例えばGEのような大企業は、風力タービンの売り切りから、サブスクリプションの販売へと移行することが可能です。例えばあるレベルのキロワット時のグリーンエネルギーを、午後1時から5時までのピークタイムに98%の可用率で提供するなどという形です」。Zuoraが登場する前には、これを支援する手段は存在していなかった。

SaaSスタートアップに投資するSaaStrの創業者Jason Lemkinは、Tzuoは本物のビジョナリーであり、SaaSサブスクリプションの基本システムを作り上げることに貢献していると語った。「Zuoraの最も興味深い点は、それがSaaSの盛衰に依存するものだということです。それが繁栄するためにはSaaSが主流になる必要がありますし、その他の定期収入ビジネスと一緒に伸びることしかできないのですから。Zuoraは、SaaS企業が課金を行うことを助けるニッチプレイヤーとしてスタートし、SaaSが『ソフトウェア』そのものになることで劇的に拡大し、繁栄したのです」。

市場がアイデアに追いついてきた

Tzuoが2007年に会社を設立したとき、おそらく彼は遠くの地平線の向こう側へ彼のアイデアが伸びていることを知っていた。彼は、この先SalesforceのようなSaaS企業たちが、自分が作ることを決意した会社が提供するようなサービスを必要とすることになる確信があったのだ。初期の投資家たちは、彼のビジョンがまだ尚早で、エグジットのためにはゆっくりと着実な道を登っていくことを理解していたに違いない。彼らがその報酬を手にするまでに、11年の年月と2億4200万ドルのVC資金が必要だった。11年後の収益は、1億6700万ドルと報告されている。成長のための余地は、まだ大きく残されている。

ともあれ、同社は12日にIPOを行い、それはいかなる意味においても大成功と呼べるものだった。TechCrunchのKatie Roofによれば、「14ドルでのIPOによって、1億5400万ドルが調達された、終値は20ドルで評価額は20億ドルとなった」ということだ。この記事を執筆している今日の時点(米国時間4月13日)では、もう少しアップしている。

Tzuoが以前勤めていた会社が200億ドル規模の会社になったことや、Box、Zendesk、Workday、Dropboxなどの企業がみな公開に踏み切ったこと、そしてDocuSignSmartsheetなどの企業がそれに続こうとしていること等を考慮すると、私たちがSaaSの黄金時代に突入したことは間違いないようだ ―― そしてそれが良くなる一方であることも。

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(翻訳:sako)

画像クレジット: Zuora

「将棋ウォーズ」開発元のAIスタートアップHEROZがマザーズ上場へ

将棋ウォーズ」を始めとした個人向けのゲームアプリや法人向けのソリューション「HEROZ Kishin」など、AI事業を展開するHEROZ。同社は3月15日、東京証券取引所マザーズ市場に新規上場を申請し承認された。上場予定日は4月20日だ。

有価証券報告書によると同社の平成29年4月期(第9期)における売上高は8億7762万円、経常利益が9435万円、当期純利益が9406万円。平成30年1月期(第10期第3四半期)における売上高は8億7189万円、経常利益が3億394万円、当期純利益が2億2393万円だ。

HEROZは2009年4月の設立。「mixi」向けのアプリを複数リリースしたのち、2012年にAIを活用したスマホアプリ将棋ウォーズを開始した(東京大学将棋部の出身である同社エンジニアの山本一成氏が開発したAI「ponanza」や、将棋ウォーズについては以前TechCrunchでも紹介している)。

その後も「Backgammon Ace」や「CHESS HEROZ」、「ポケモンコマスター」などを立て続けにリリース。現在はこれらのサービスを通じて培ったAI関連技術を、金融や建設など法人向けにも提供している。

株式の保有比率については、代表取締役の林隆弘氏と高橋知裕氏がそれぞれ35.19%を保有。ついでMICアジアテクノロジー投資事業有限責任組合(モバイル・インターネットキャピタル)が8.44%、HEROZが3.57%、ビッグローブが2.81%と続く。

Dropboxの上場予定価格は16-18ドル、時価総額100億ドルには届かず――別途Salesforceが1億ドル出資

先月、上場準備中であることを発表したDropboxは、今日(米国時間3/12)、証券取引委員会に提出したS-1書式をアップデートし、売出し価格を改定した。DropboxはNasdaqに上場して1株当たり16ドルから18ドルで3600万株を売り出す。18ドルの場合、売却総額は6億4800万ドルとなる。ティッカーシンボルはDBXが予定されている。

またDropboxは新たなインテグレーション・パートナーとなったSalesforceに対して株式で1億ドル分を売却すると発表した。時期は上場の直後で、1株当たり価格は「上場売り出し価格に準じる」という。

上場の正確な期日は明らかにされていないが、今月末となるはずだ。

上場時のDropboxの時価総額は上場プレミアムを考慮すると70から80億ドルになるとみられる。 これはテクノロジー企業として昨年のSnap以来の大型上場となる。しかしDropboxが2014年に3億5000万ドルのベンチャー資金を調達した際の会社評価額、100億ドルには届かない模様だ。

Dropboxはその将来性と共に上場が他のテクノロジー系大型上場のいわば風見鶏となるものして各方面から注目されている。この中でSpotifyはすでに上場を準備中だが、Airbnbのように上場に関してまだ何も発表していない大型スタートアップもある。

もちろんDropboxのようなクラウド・ストレージと宿泊の共有経済(Airbnb)や音楽ストリーミング(Spotify)では全くビジネスモデルが異なるので比較は無理だという意見もある。特にSnapが上場後大きな株価下落―30%以上―によって投資家に手痛い損害を与えたことを考えればDropboxの上場にも慎重にならざるをえないかもしれない。

しかしプラスとして、Dropboxはクラウド・サービスというコンセプトを一般ユーザーに拡大したパイオニアだという点が考えられる。モバイルの急速な普及、端末アプリの軽量化、インターネット接続の高速化といった要素によりユーザーがデータをローカルデバイスから追い出ししクラウドに保存する傾向が一気に強まった。これらのトレンドを追い風として、現在Dropboxには180カ国以上に5億人のユーザーがいる。

マイナスの面は、この5億人のうち、有料メンバーが1100万しかいないという点だ。2017年の売上は11億ドルと発表されている。これは216年の8億4500万ドル、2015年の6億400万ドルから十分にアップしているものの、依然としては利益を出すまでに至っていない。2017年の赤字額は1億1200万ドルだった。

ただし2016年の赤字額は2億1000万ドル、2015年は3億2600万ドルだったから大きく改善されている。しかしDropboxには無料ユーザーを有料ユーザーに転換するための効果的なプランがあるのかというのは重要かつ緊急性の高い疑問だ。これは黒字化を待つために投資家はどれくらいの期間忍耐を続けられるかという問題と関連する。

この点、Salesforceが自社サービスにDropboxをインテグレーションすると同時に1億ドルを出資するというのはこの上ない信任投票といえるだろう。またDropboxが設定した上場売り出し価格が控えめであることも信頼性を高めている。Salesforceは顧客関係管理をクラウド化するサービスだ。ティッカーシンボルをCRMとしてもいいくらいだし、ロゴにはブルーのクラウドがあしらわれている。スタートアップから出発して現在は確固たる大企業の地位を築いている。

SalesforceがDropboxと密接な関係を築くことになったのは短期的にDropboxのビジネスモデルにとって有利な材料なのはもちろんだが、中長期的にはDropboxにイグジットの可能性を与えるかもしれない。Salesforceはクラウド・ストレージ・サービスにおいて重要な地位を築こうと年来努力してきた

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

DropboxがIPOを前にしてSalesforceの深い統合を発表、エンタープライズの評価アップをねらう

Dropboxはこのところ忙しい。2週間前にはIPOを発表した。ついこないだの先週には、Googleとの大型パートナーシップを発表し、そして今日(米国時間3/9)は、Salesforceとのより深い統合のニュースが飛び込んできた。

DropboxとSalesforceは共にクラウド企業だから、過去に多少の関わりはあったが、しかし今日の発表はもっと大きい。たとえば、DropboxのフォルダがSalesforce Commerce CloudとMarketing Cloudに埋め込まれて、それらがあたかも、軽量版のデジタルアセット管理ソリューションのような様相になる。

たとえば、企業を顧客とするクリエイティブエージェンシーなら、写真などマーケティングキャンペーン用の素材を作り、それらの一部をSalesforceのマーケティングクラウドに保存するだろう。しかしそのフォルダは完全に統合化されているから、マーケティングとは無縁な現場のクリエイターがそれらのアセットの一部を自分たちのDropboxのフォルダでアップデートしても、マーケティングのための素材が入っているSalesforceのフォルダも自動的にアップデートされる。両者は物理的には同一のフォルダだから。

このような統合化によって、ユーザーの、あれをしたらこれをして、というステップが省略できる。Dropboxをオープンしてそのフォルダへ行き、アップデートされているアセットを見つけたらそれらを手作業でSalesforceにも持っていく、…こんな手間が、一発で済むようになる。

Salesforce本体だけでなく、同社が2016年に7億5000万ドルで買収したコラボレーション型ワードプロセッサQuipとも、同様に統合化される。それは、先週発表されたGoogleのG Suiteの統合の場合と同じく、エンドユーザーが自分のコンテンツに、どこで仕事をしていてもアクセスできるようにするためだ。

しかしQuipの場合は、双方向の統合になる。DropboxのフォルダがQuipに埋め込まれるのは、MarketingやCommerceのCloudの場合と同じだが、逆にQuipのドキュメントにDropboxの中でアクセスして仕事ができるようにもなる。これもまたユーザーが、そのとき使いたいツールや、アクセスしたい場所を自由に選べるためだ。

このようなパートナーシップは一見わかりにくいが、DropboxのSVP Quentin Clarkが先週、G Suiteの統合のとき言ったように、すべてはユーザーを楽にし、自由にするためだ。

“仕事の性質や都合などで、そのときどきの、ベストのツールは変わってくる。でもそんなとき、今の仕事のコンテンツに、そのときのベストのツールでアクセスできると便利だ。ツールや場所を変えても、そこに仕事がついて来る。それが、いちばん気楽だ”、と彼は語る。

今後はこのパートナーシップをさらに進めて、SalesforceはクラウドストレージにDropboxを使い、Dropboxは社内でSalesforceを活用する、という状態にしていく。Salesforcは前にも、G Suiteの統合Office 365ツールの統合に際して、同様の発表をしている。

Dropboxは、パートナーシップの発表はIPOと何の関係もない、と言うだろう。でも今や、同社のあらゆることがIPOと関係している。IPO申請のS-1ファイルで、売上の大半が消費者サイドからと言っている同社は、エンタープライズからの信任をできるかぎり厚くしてからIPOに臨みたい。今回のパートナーシップもそのことに寄与するはずだが、まだまだ実際の数字は薄い。

先週のG Suiteの統合パートナーシップと同じく、今回のSalesforceの統合も、まだ発表だけであり、ローンチはない。ローンチはたぶん、今年の後半だろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ベンチャーキャピタルが、おべんちゃらキャピタルに化ける時――過剰な資金調達は毒

【編集部注】Eric PaleyはFounder Collectiveのマネージングパートナーである。

これまで私は、効率的な起業家精神(efficient entrepreneurship)の利点についてたくさん書いてきた。その視点に関して私は概念的に説明し、有り余る資金が有望な企業を殺してしまう仕組みを説明してきた。そして71のIPOのデータから、たとえ成功していたとしても、資金調達額と良い結果の間には相関関係がないことも示した。こうした説明が、それでもまだ概念的過ぎるという人びとに向けて、今回私は、このブログポストをまた別の感情 ―― 富への欲求 ―― に対して訴えかけるように構成してみた。

調達額を抑えたり、調達時期を遅らせることは、単に良い会社につながるだけでなく、創業者もより豊かになることにつながるのだ。

ZapposあるいはWayfairの創業者。あなたがなりたいのはどちら?

私はハーバードビジネススクールに通うMBAの学生たちに対して、しばしば質問をして挙手をしてもらう。君たちがなりたいのはZapposか、それともWayfairか?学生は皆、Zapposが成功事例だと知っている。一方、その多くはWayfairについて聞いたことさえない。スマートな学生たちの10人中9人がZapposを選ぶのだ。

Zapposは教科書に載るような成功事例だ。彼らは、シリコンバレーの最高のVCたちから段階的に資金を調達した。創業者であるTony Hsiehは、その型破りなアプローチなリーダーシップによって、雑誌の表紙を飾り、書籍が書かれることにもなった。同社がAmazonによって、8億5000万ドルから12億ドルの間の価格で買収されたとき、Hsiehが手にしたのは2億1400万ドルから3億6700万ドルである。もちろんこれは大した額だ。この成功によって、Zapposは創業者たちが学ぶべきお手本になったのだ。

しかし、研究すべき対象だということが創業者たちにあまり知られていない、より優れたeコマースのスタートアップストーリーたちが、他にも存在しているのだ。

Zapposと違い、Wayfairは家具の工場直送販売を行うeコマース企業だ。創設者、Niraj ShahとSteve Conineはビジネスをゼロから立ち上げ、Googleのアルゴリズムに対して最適化することで素早い成長を果たした。例えば何百ものSEOフレンドリーなURL(www.racksandstands.comのようなもの)を購入し、トラフィックを集約したのだ。同社は最初の月から利益を出していたが、多くのVCからの申し出を尻目に、彼らはビジネスが5億ドルの売上を超えるようになるまで、外部の資本を導入せずに成長したのだ。同社のことを、強固で、安定し、そして少々退屈な企業だとみる人もいるだろう。しかし創業者たちは、2014年のニューヨーク証券取引所へのIPOで最高の笑顔を見せることになる。同社にまつわる数々の注目すべき属性の中には、創業者たちの金銭的成功も含まれている。

創業者のそれぞれが、IPOの時点で同社の株式の約29%を所有していた。以後彼らは定期的に株式を売却しているが、同社の現在の市場価値が69億ドルであることを考えれば、Wayfairの2人の創業者は、それぞれがZapposの全株主を合わせたものよりも多額の金を手にしたことになる。別の言い方をするなら、並外れて資本効率の良いビジネスを構築し、会社に既に大きな価値が生まれてから初めて資金を調達したことで、Wayfairの共同創業者たちは、Hsiehのおよそ10倍の金を手にすることができたのだ。私ならShahとConineの方になりたい。

早期の資本を最小化する

おそらく、この違いは家具市場と靴市場の相対的な違いによるものだ、と言いたい人もいるかもしれない。公正を期すために言っておくならば、家具ビジネスは、靴市場の約2倍の大きさである、とはいえ靴産業は、顧客の反復注文が多く、輸送コストは安く、試用と返品のやりとりが少ないため、おそらくeコマースにより向いていると思われる。

業界の動向が重要な役割を果たすことはあるものの、違いを生み出すのは企業の資本戦略であると私は考えている。Wayfairは、会社を設立するためや、早期の成長を加速するための資金調達は行わなかった。もし途中で資金調達をしようと思ったならばそれは容易だったことだろう。しかし彼らが初めて資金調達をしたのは、ビジネスを劇的に拡大し、既に大きくて健全な会社に投資を行うべきタイミングに来た時だった。彼らは多額の資本を取り込むことを躊躇うことはなかった。Waifairが調達した資金はZapposの調達した資金の3倍に達している。しかしそれは会社の市場での優位性が確立し、膨大なスケールメリットを出せるようになった後であり、希釈性は最小に抑えられた。

金が全てではない

あまりにも早期に資本を導入して、あまりにも希釈してしまうと、最終的な払い戻し金額以上の波及効果がある。Hsiehは、Amazonに売却を行った後、株主からの圧力によって会社を売却することを強制されたのだとほのめかした。関係者は皆一財産を築いたものの、個人的な意向が軽んじられて、5年も早く金銭的な決定が下されたことは残念なことだ。もしZappos自身のコントロールがそのまま続いていれば、Hsiehは彼の会社を成長させ続けることができただろう。そしてWayfairの成功に肩を並べることも可能だったかもしれない。IPOの時点でも半分以上の株式を所有しており、限定的な希釈の範囲で資金を調達したWayfairの創業者たちは、彼らの運命をコントロールできる大きな自由を持ち、現在でもなお驚異的なビジネスを展開することができた。

TrueCar対CarGurus

さて、また同じ質問をしてみよう。どちらの自動車eコマース会社がお好みだろうか?TrueCarまたはCarGurusのどちらの創業者になりたいか挙手をお願いする。以下の表を見る前に答を決めて欲しい。

その通り、遥かに少ない資金調達しか行っていないCarGurusは、TrueCarと同程度の利益率を持ち、そして遥かに速く成長している。よってその価値が3倍以上に及ぶ。

CarGurusはあまり資金調達を行っていなかったために、Langley SteinartはIPOの時点で会社の29%を所有していた。これはTrueCarの価値全体に匹敵する金額だ。IPOの時点で、TrueCarの創業者であるScott Painterは自社の株式の約14%を所有していた、もちろん相当な額であることは間違いない。しかしそれはSteinertがCarGuruで所有する額の10分の1に過ぎないのだ。

たとえ成功していても、より多くの資本がより良いビジネスにつながるとは限らない。反対に調達額を抑えることで、個人的な資産を増やし会社に対するより多くの自由を確保することが可能になるのだ。

これらは大きな成果である

これらのそれぞれの例で、どちらの会社も成功し、創業者たちは目覚ましい経済的成功を収めている。私が起業家たちに思考実験を課してみると、彼らはしばしば抵抗しながら、有名なブランドを作り上げるチャンスをものにするためなら、個人的な金銭的利益は喜んで抑えることができるなどと言う。彼らは、たったの1億ドルならびに名声と引き換えに、10億ドルの銀行口座をドブに捨てようと言うのだ。しかし実際にはこんなトレードオフが創業者に与えられることは滅多にない。

より一般的なイグジットは、数十億ドルのIPOではなく、5000万ドルから1億ドルの買収によるものだ。適度な金額を調達すれば、それは素晴らしい結果をもたらす可能性がある。しかし、もし数千万ドル(場合によっては数百万ドル)を調達したならば、すべてではないにせよ、多くの場合買収によるイグジットオプションは閉ざされてしまう。過剰資本企業が直面する可能性の高い選択肢は、5000万ドルを調達してベンチャー投資家に優先権を手渡すか、破産の危機に直面し従業員全員を解雇する羽目になるかのどちらかである。どちらの場合でも、創業者にはほとんどまたは全く返ってくるものがない可能性が高い。

設立から10年が過ぎて、WayfairとCarGurusはそれぞれそのライバルに比べて、より価値のあるビジネスとなった。そして創業者たちはその軽量金融戦略の恩恵を大いに受けている。しかしそれ以上に価値のあることは、選択の自由があるということだ。

彼らはベンチャーキャピタリストたちや並外れて大きな評価額の影響を受けていないために、その過程で5000万ドルでも5億ドルでも、売却を行うことのできる自由度を有していた。こうした創業者たちは、売却すべきか否かを、その資本構成ではなく、ビジネスの業績とリスクに対する意欲に応じて、決定することができる。1億ドルのスタートアップを恥じる必要はないのだ。しかし創業者たちは早々とそのオプションに飛びつくべきでもない。

たとえ成功したとしても、多すぎる資本はコストが高く、安心していてはならない。その一方で、効率的な起業家精神には、軽んじてはいけない多くの利点がある。Niraj Shah、Steve Conine、Langley Steinertらに尋ねてみると良い。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: RUSSELL WERGES

駆け足で振り返るDropboxの歴史

Dropboxが初めてスタートアップシーンに登場したのは、2007年の夏の、Y Combinator Demo Dayでのことだった。その後同社は成長を続け、何億人ものユーザーを抱え、その評価額も100億ドルを超えた。このことで皆が期待してきたIPOのための機は熟したのだ。

しかし、このクラウドストレージ企業は、成功への道のりで沢山の競合相手を打ち負かしながら、どのように勝ち残ってきたのだろうか?Dropboxの歴史を駆け足で振り返ってみよう。

1/13:YCでDropboxがデビュー

CrunchbaseではDropboxの設立は2007年6月となっているが、このスタートアップが最初にTechCrunchのレーダーに補足されたのは、8月に開催されたYC Demo Dayでのことだ。このとき私たちはDropboxを以下のように紹介している:「デスクトップファイルをウェブ上に同期し、ファイルのバックアップを行い、任意の場所からのアクセスを提供し、ファイル共有を簡単にするための、(Mac/Win用の)透過的なファイル管理システムを開発している」。

2/13:成長の始まり

2007年の末に、DropboxはSequoiaから、程よい金額の120万ドルのシード資金を調達した。しかし私たちは2008年の春までは同社についてあまり耳にすることはなかった。そして人びとが競合相手であるBox.net(現在のBox)やMozyなどよりも、Dropboxが実際に選ばれるものの1つだと囁き始め、同社の快進撃が始まった。

共同創業者でCEOのDrew Houstonは後に、Disruptの前身であるTechCrunch50の壇上に招待されている。

3/13:100万人のユーザー

Dropboxは2008年にSequoiaが主導したシリーズAで、さらに600万ドルを調達した。しかしテクノロジー関係のプレスはそのことについて丸1年の間知らないままだった。CEOのDrew Houstonは、当時TechCrunchに対して、ユーザー数が25%増えたと語っている、その理由の一部は同社が公開した新しいiPhoneアプリのおかげだった。

2009年の春に、同社の会員数は100万人に達した。

4/13:更なる発展と大物の雇用

Dropboxは1年足らずで会員数を4倍にし、有名テクノロジー企業からの雇用を開始した。例えばSalesforceからはAdam Grossをマーケティングとセールス担当副社長として迎え入れている。

5/13:大金が投入された

2011年9月、TechCrunchはDropboxが多額の資金注入を行おうとしているという記事を書いた。このときの企業評価額は40億ドルで、Index Venturesに主導されたシリーズBで2億5000万ドルが調達された。

TechCrunchの情報源から伝えられるところでは、かつてAppleは同社に対して「9桁(億)」での買収を提案したという。CEOのDrew Houstonにとって、スティーブ・ジョブズに対して「No」ということは簡単ではなかったことだろう、but look where it got him.

6/13:DropboxがCrunchiesを受賞

Crunchiesはもう行われていないが、その歴史は残されている。これは今はもう存在していない年次のシリコンバレーアワードで、最大のテクノロジー企業や創業者たちが壇上に登った。2012年には、Dropboxの共同創業者のDrew HoustonとArash Ferdowsiが、同年のBest Overall Startupを受賞した。

さらにDropboxは”Best Cloud Service”(最高のクラウドサービス)でCrunchiesを受賞し、Houstonも”Founder of the Year in 2012″(2012年の創業者)の次点に入った。

7/13:Dropboxはさらに人気を博した

それまでに調達した資金のおかげで、Dropboxは膨大な数のメンバーをクラウドファイルの世界に引き込むことができた。2012年11月には1億人のユーザーがいた。その1年後にはサイズは倍増し、2億人となった。同社はGoogle、Facebook、その他の大手テクノロジー企業のトップタレントたちをヘッドハンティングしはじめた。

8/13:Dropboxはさらに資金を得た

Dropboxが、その急成長する競合相手のBoxを打ち負かすために、BlackRockその他から3億5000万ドルという巨額の資金を調達したことで、2014年の1月にはさらに多額の現金が流入した。

ウォール・ストリート・ジャーナルとRecodeの両者は、その当時同社に対して100億ドルの評価額を付けた。

9/13:Dropboxがリスクを取って、5億ドルを借り入れ

2014年の後半にはJPMorganがDropboxに5億ドルを貸し付けた。その当時、BoxがIPOを目指しており、Dropboxはそのクラウドストレージ競合相手と歩調を合わせるために、資金を必要としていたのだ。

10/13:Dropboxのキャッシュフローが黒字に

2016年、Dropboxは重要なファイナンシャルマイルストーンを達成したと発表した。キャッシュフローが黒字へと転じたのだ。「自分の目的を決めることができるようになったということです」とHoustonは語った。彼はまた、同社は株式公開を急いでいないことを強調した。

11/13:Dropboxは10億ドルの収益が予想できることを発表した

Dropboxは2017年の収益が、10億ドルに達する見込みであることを発表した。これはIPO前の企業としては、特にそのほとんどのユーザーがプロダクトに対して支払いを行わい企業としては、大きな数字である。エンタープライズユーザー向けに成長しているDropbox Businessカテゴリが、この大きな販売マイルストーンを達成するために役立っている。

12/13:そして新たな資金借入

前回の借入から3年後の2017年3月に、DropboxはJPMorgaから新たに6億ドルの借入れを行った。これにより同銀行に対する負債額は11億ドルとなった。

スタートアップ(とまだ呼ぶことができるのなら)の評価額は、100億ドルにとどまっている。

13/13:DropboxがIPOを申請

Dropboxは2018年2月に、待望のIPOを申請したことを明らかにした。同社にによれば、現在5億人の登録ユーザがおり、そのうちの1100万人が有償でサービスを利用しているということである。2017年の同社の収益は11億ドルとなり、損失として1億1200万ドルが計上されている。同社の公開は3月後半になる予定だ。

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(翻訳:sako)

Spotifyの上場後の株価はこうなる

Spotifyがついに上場を申請した。しかし多くのIT企業のIPOと異なり、Spotifyは新株を発行して資金調達するのではない。代わりに投資家や従業員が保有している既存の株をニューヨーク証券取引所(NYSE)で公開取引できるようにする。

IPOではない、ということは投資銀行が株式発行を引き受けたり、IPO価格を決めたりすることもない。つまり、取引が始まったあとのSpotify株の価値を決めるのは公開市場だけだ。

しかし、SpotifyのF-1申請書類には、同社株がこれまで非公開市場取引されてきた履歴が公開されている。最新の非公開取引状況を見れば、公開市場で取引が始まったとき、株式がどのくらいの価値になるかを示すかなりよい目安になる。

下のグラフにあるように、2017年にSpotifyの株は非公開取引で37.5ドルから125ドルの間で取引された。これはかなり広い価格幅だ。しかし、最近2カ月の価格範囲は少し狭まっており、2018年1月、2月の株価は90~132.5ドルだった。

つまり、Spotifyが上場した際の価格は、幅広い投資家層に公開されることで需要が伸びることから高値(132.50ドル)に傾く可能性が高い。

もちろん需要が多ければ株価は高くなり、Spotifyの上場は大いに期待されていたことから、150ドル(あるいはそれ以上)まで上がっても不思議ではない。

SpotifyはF-1申請書で、これらの株価と株数はすべて40対1株式分割が反映されたものであることを指摘している。この分割は同社が、「当社の1株当たり価格をNYSEに新規上場する会社として一般的な水準に下げるため」に行われているものだ。

もちろん上の数字は単なる過去の価格推移であり、Spotifyが自身の株の価値を実際にどう考えているかを正式に表しているわけではない。Spotifyもこれを認めて、「ただし、この情報は当社の普通株に対する公開市場の要求とはほとんどあるいは全く関係がなく、NYSEにおける当社普通株の上場価格やその後の価格にも関係ない」と言っている

Spotify株は、NYSEで来月にも取引を開始する。銘柄コードは”SPOT”だ

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ついにDropboxがIPOを申請、プライベート時代の評価額を上回るか?

いよいよ本物。DropboxのIPO申請書類がこれだ

上場はDropboxにとって大きな節目であり、それはここ数年間、もっとも期待されたIPOのひとつだ。このクラウドストレージ企業は2007年に創業され、これまでに6億ドルあまりを調達してきた

申請はすでに非公開で行われていたが、同社は今日(米国時間2/23)それを公開し、実際のIPOが近いことを匂わせた。たぶん、3月の後半だろう。

同社によると、ねらっている資金調達額は5億ドルだが、しかしこの数字は単なるプレースホルダーであることが多い。

その申請書類はDropboxの昨年の売上を11億ドルとしている。前年は8億4500万ドル、そして2015年は6億400万ドルだった。

同社はまだ利益を計上しておらず、昨年で損失が1億1200万ドル近い。しかし2016年は2億1000万ドル、2015年は3億2600万ドルの損失だから、大きな改善だ。

Dropboxは2016年以来、キャッシュフローでは黒字だ。

Dropboxはフリーミアムで、有料ユーザーは1100万人/社と公表している。無料の登録ユーザーは5億以上いるから、1100万はその小部分でしかない。

有料ユーザー一人/社あたりの平均売上は、111ドル91セントだ。

同社はプライベート市場で100億ドルの評価額を達成しているが、これからの公開市場ではどうなるか? その予測には、2015年に上場したBoxの推移が参考になるかもしれない。

趣意書は競合環境を警戒している:

“コンテンツコラボレーションプラットホームの市場には競合があり、急速に変化している。われわれのプラットホームの一部の機能は、クラウドストレージの市場で、AmazonやApple、Google、Microsoftが提供している製品と競合し、そしてコンテンツコラボレーションの市場ではAtlassian, Google, そしてMicrosoftが提供している製品と競合する。また大企業によるデプロイメンツに関しては、クラウドストレージ市場でBoxと、より限られた範囲で競合している”。

BoxのCEO Aaron Levieが、本誌のポッドキャスト“Equity”で、競合相手のDropboxのIPO申請に対する、その直後の反応をシェアしている。

〔訳注: ここにポッドキャストの起動インタフェイスがない場合は、原文を見てください。〕

申請を見ると、最大の株主はSequoia Capitalで、すべての発行済株の23.2%を保有している。それは大きな持ち分であり、対してAccelは全体で5%だ。

ファウンダーでCEOのDrew Houstonは、同社の25.3%を保有している。

同社はNasdaqに上場され、チッカーは“DBX”になる。

上場を志向している他社は、Dropboxのパフォーマンスに注目するだろう。投資家たちはこの“IPOの窓”を重視し、最近のデビューを、テクノロジー企業に対する投資‘食欲’の試金石と見ている。

Spotifyも同じ時期に上場するが、資金調達をしない上場により、伝統的なIPO過程を避けるだろう。

この記事は、事態の進展に伴い、今後のアップデートがありえる

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アンバサダーマーケティングのアジャイルメディア・ネットワークがマザーズ上場へ

商品やブランドのファンである消費者「アンバサダー」を活用したマーケティングサービスなどを提供するアジャイルメディア・ネットワーク(AMN)は2月21日、東京証券取引所マザーズ市場への新規上場が承認されたと発表した。上場予定日は3月28日で、証券コードは6573。

AMNでは上場にともない、7万株を公募し、5万4000株を売り出す。売出株を放出するのはモバイル・インターネットキャピタルが運営するMICイノベーション3号ファンド(3万6700株)、MICイノベーション4号ファンド(1万5300株)、および同社の監査役を以前務めていた御手洗大祐氏(2000株)。オーバーアロットメントによる売出しは1万8600株。

公募・売出し価格の仮条件の決定は3月7日、ブック・ビルディング期間は3月9日から3月15日までで、公開価格決定日は3月16日。主幹事証券会社はみずほ証券となっている。

AMNの2015年12月期の売上高は4億9861万円、経常利益は3286万円。2016年12月期の売上高は5億5467万円、経常利益は2090万円で、純利益は1123万円だった。

AMNは2007年2月の設立。ブロガーのネットワークを築き、ステルスマーケティングへの課題意識を発信するなど、現在のインフルエンサーマーケティングの礎となる活動を行ってきた。その後、SNSの発展にともない、「ブランドや製品の熱心なファン」であるアンバサダーを重視したマーケティングプログラムの運営を開始。アンバサダーの効果測定や分析を行うサービスなど、関連サービスも提供している。現在代表を務めるのは取締役社長の上田怜史氏。

キャッシュバックサービスのCardlytics、IPOで7000万ドル調達。株価は3%高

米国ジョージア州アトランタ拠点のCardlyticsは金曜日(米国時間2/9)、公開市場へのデビューを果たし、IPO価格の13ドルをわずかに上回る13.37ドルで引けた。同社は540万株を売り出し、7000万ドルを調達した。

Cardlyticsは、Bank of Americaを始めとする2000社の金融機関と提携してキャッシュバックプログラムを運用している。レストラン、小売店、旅行業者、食料品店、家庭用定期購入サービスなどのブランドと手を結び、割引サービスを提供する。現在Starbucks、Spotify、Airbnb、Hilton、Whole Foodsなどの店舗で銀行顧客が特典を受けている

同社は「消費者の購入行動に基づいてターゲットされた特典を提供している」と共同ファウンダー・CEOのScott Grimesが本誌に語った。また「オンラインだけでなく消費者を実際の店舗に送り込む」。

銀行の顧客は受けたい特典を選んでおくと、指定の店舗で買い物すれば自動的にディスカウントが適用される。これまでに2.3億人の顧客が利用したと同社は言っている

しかしCardlyticsはまだ利益を上げていない。2016年には1.238億ドルの売上があったが7570万ドルの損失だった。2015年は売上7760万ドル、損失4060万ドルだった。

「売上成長率を将来も維持できるかどうかはわからない」とIPO申請書の必須項目である「リスク要因」に警告が書かれている。

2016年、CardlyticsはIPOに備えた財務改善の取組みの一環として、15%近い人員整理を敢行した

共同ファウンダー・COOのLynne Laubeは、今後も広告パートナーを増やしていく予定であり、それは「提供するディスカウント1ドル当たり、売上30ドルに影響を与える」からだと説明した。

Cardlyticsは、2009年にDiscovery Capital、Canaan Partners、Polaris Venture Capitalらから、新株発行により約2億ドルを調達した。CEO Scott Grimesは、かつてCanaanの主任パートナーだった。

Bank of AmericaとJ.P. Morganのが引受銀行としてこのIPOを統括した。

昨年TechCrunchはCardlyticsのIPOを第一報で知らせた。CardlyticsのIPOは、今年初のベンチャーキャピタル支援によるテクノロジー系IPOだった。

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Webサイトビルダーの老舗Squarespaceが巨額$200Mを調達、評価額は$1.7B

誰もが容易に自分のWebサイトを作れる、いわゆるWebサイトビルダーSquarespaceは、創業から14年の老舗だが、今General Atlanticからの約2億ドルの資金調達を進めている。Bloombergによると、同社の評価額は17億ドルである。この資金調達プランと並行して、初期の社員や投資家から株を買い上げる計画もある。それにより、IPOを待たずして流動化(現金化)の機会が彼らに与えられる。

Squarespaceはずっと黒字企業で、今年の売上は前年比50%増の約3億ドルになる見込みだ。同社の大型ライバルで上場企業のWixは、今年の売上予測が4億2400万ドルだ。

Squarespaceは、同社が作ったWebサイトの上で顧客が製品を売れるようになったら、上場してもよい、と考えているらしい。つまり、しかりとしたコマース機能のあるWebサイトを、顧客が作れるようにする、ということだ。

CEOのAnthony CasalenaはBloombergにこう言っている: “それが目下、いちばん要望の多い機能だ。自分のブランドを作って何かを売りたい人が、多くなってるね”。

Squarespaceはこの前、General Atlantic, Index Ventures, Accelなどから7850万ドルを調達している。それに関してSquarespaceは、コメントを断(ことわ)った。

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Twilioなどと競合する専用通信サービスの古顔BandwidthがNasdaqに上場して好調

Bandwidthは、卸売企業やエンタープライズ企業に音声とテキストによる専用の通信サービスを提供するとともに、デベロッパー向けのAPIも公開している。同社は今日(米国時間11/10)Nasdaq に上場し、その初日の商いで6%上げた。IPO価格(一株あたり)は予想値の底値20ドルだったが、終値は21ドル19セントとなった。すなわち、6%高である。

ノースカロライナ州ローリーの同社は、上場により8000万ドルを調達した。これまで自己資本だけでやってきたBandwidthは、その資金を新規雇用と研究開発に充てる予定だ。

協同ファウンダーでCEOのDavid Morkenによると、Bandwidthは“キャッシュフローがプラスでずっと前から黒字”だ。彼が同社を創業したのは1999年で、その後作ったワイヤレス部門は別会社Republic Wirelessとして独立させた。

BandwidthはTwilioやNexmoと競合するが、同社によると彼らは、“APIのカバー範囲が狭い、カスタマーサポートが弱い、そのほかの機能が少ない、そしてサードパーティのネットワークや物理的インフラストラクチャに依存している”、という〔Bandwidthは主に自前のネットワーク〕。

通信企業としてはAT&TやLevel 3、Verizonなどと競合するが、こちらは同社に言わせると、“ネットワークサービスのプロバイダーだが、彼ら自身のネットワークや物理的インフラストラクチャはデベロッパー向けの機能が貧しい”そうだ。

Bandwidthによると、同社は865社の大企業が利用しており、その中にはGoDaddyやZipRecruiterなどもいる。音声ネットワークが自前なので、APIの統合のクオリティが良い。

同社の昨年の売上は1億5210万ドル、2015年には1億3780万ドルだった。

2016年の利益は2240万ドル、2015年は670万ドルの損失だった。

TechCrunchのオーナー企業はVerizonである。同社の事業はBandwidthと同じ分野である。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

MongoDBのNasdaq上場、初終値は34%アップ

ニューヨークのデータベース企業、MongoDBは今日(米国時間10/19)Nasdaqに上場し、初終値は32.07ドル、24ドルの売り出し価格から34%のアップとなった。当初、上場の目標株価は18ドルから20ドルとされていたものが20ドルから22ドルとアップされ、さらに直前になって24ドルに決定されたものだ。

MongoDBはこの株価24ドルの売り出しで11.8億ドルの評価額で1億9200万ドルを得た。上場初日の終値はさらにアップし同社の時価総額16億ドルとなった。これは2年前の資金調達ラウンドの際の会社評価額と同額だ。

MongoDBは2008年以降、3億ドル以上を株式売却で調達し、Sequoia Capital、Flybridge Capital、Union Square Venturesが大株主となった。

MongoDBを利用してデータベースを運用するクライアント企業にはAdobe、eBay、Citigroupなどが含まれる。MongoDBは同名のオープンソース・データベース、MongoDBやデータベース・アズ・ア・サービスのAtlasなどのプロダクトを提供している。

共同ファウンダーでCTOのEliot HorowitzがTechCrunchに語ったところでは、MongoDBは「次世代アプリケーションのための優れたデータベース」だという。Horowitzは「デベロッパーの生産性を一気に向上させるようなプロダクトを開発する」としている。

2017年1月に終わる会計年度の売上は1億140万ドルだった。前年同期の数字は6530万ドルで2倍近くの成長を遂げたことになる。最近の年間損失は8670万ドルと発表されている。その前年、2016年1月に終わる年度では7350万ドルの赤字を計上している。

画像: Nasdaq, Inc

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

MongoDBのIPO価格は一株あたり24ドルで当初予想を上回る、赤字企業に市場の期待大

MongoDBが上場に向かう最後のステップを終了し、そのIPOに24ドルの値をつけ、それにより1億9200万ドルを調達した。

公開市場にデビューするのは明日(米国時間10/19)だが、そこでもまた、同社のオープンソースソフトウェアをベースとするビジネスの真価を問われることになる。MongoDBが提供するオープンソースのデータベースソフトウェアは、これから離陸を目指す初期段階のスタートアップたちにとくに人気があり、同社は高度なツールを提供することによって彼ら(および大企業の顧客)を有料顧客に変換する努力を重ねてきた。それは、この前上場したClouderaとは異なる状況だ。

同社は今、800万株を売っているが、引受人にはさらに120万株を買えるオプションがある。その追加分を含めると、MongoDBは2億2080万ドルを調達するかもしれない。一株あたり24ドルでは、同社の時価総額は約12億ドルになる。

同社は成長しているように見えて、その損失も着実に増えており、確かに同社は大量のキャッシュを燃やしている。約12億ドルの時価総額になるのも、おそらくそのせいだ。MongoDBは、ある時点では16億ドルの時価総額まで行けそうだったが、MongoDBのようなマーケットの問題児はウォール街にとって明らかに売りづらい。しかしそれでも、同社のIPO価格は当初予想された20-22ドルより高い。つまり、市場の関心が高い、ということ。

このところの、同社の財務状況はこうだ:

最終的にはこれは、スタートアップのさらなる大型IPOを期待していたニューヨークのテクノロジー界隈にとって、快挙になるかもしれない。時価総額は安めになったが、MongoDBはいわゆる“IPOの狭き窓”に疑問符がつきかけていたこの時期に、ドアの外へ出ることに成功した。このIPOはSequoia CapitalやFlybridge Capital、それにもちろんニューヨークのKevin Ryanにとって、たぶん大勝利となるだろう。

どのIPOでも資金調達が目標だが、でもできるだけ多くの資金を確実に得ることと、初日の“ポップ”(急騰)を許容することとのあいだには、微妙なバランスがある。投資家や社員たちのために流動化イベントを立ち上げて、これから強力な上場企業になるぞ、という姿勢を示すのは一種のショーでもある。MongoDBが公式に上場を申請したのは、9月だった

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

インターネットTVのRoku、IPOの2日後にも13%高

デジタルストリーミングのスタートアップ、Rokuが華々しく株式市場デビューを飾った。

水曜日(米国時間9/27)にIPO価格14ドルでスタートしたRokuは、初日の取引きを23.50ドル、68%高で終えた。そして金曜日には26.54ドルで引け、48時間以内に90%値上がりした。現在同社の時価総額は約26億ドルだ。

これは同社にとって素晴らしいニュースに違いない、だろうか?まあ、そうではある。おそらくRokuのチームはここまで株式市場が気に入ってくれていることを、未来へのよい予兆だと喜んでいるだろう。

しかし、これはもっとずっと高く株を売ることもできたという意味でもある。RokuはIPO価格を1株当たり14ドルに設定して2.19億ドルを調達した。もし22ドルにしていれば、Rokuは3.45億ドルを調達し、投資家も20%以上の利益を上げられた。銀行は通常、上場価格を20~30%割り引くことを推奨する。株式市場での第一印象を良くするためだ。今後の値動きによって、これが1.25億ドルの失敗だったかどうかが明らかになるだろう。

投資家がRokuを買う理由のひとつに、コードカッティング(ケーブルテレビ潰し)分野の将来に楽観的だということがある。ミレニアル世代は伝統的ケーブルテレビモデルを回避し、デジタルコンテンツを見ることを選択している。

Rokuは、Amazon Fire StickやApple TV、Google ChromeCastなどとの激しい競争の中、米国でかなりのシェア維持している。ハードウェアで大きな利益を上げているだけでなく、スマートテレビのメーカーにはオペレーティングシステムをライセンスしている。

昨年同社は3億9900万ドルの売り上げを計上したが、収支は4300万ドルの損失だった。2015年の売り上げは3億2000万ドルで3800万ドルの赤字だった。

ファウンダー・CEOのAnthony Woodは木曜日、TechCrunchにこう話した、「売り上げの伸びは穏やかで、これは価格を下げているためだ。低価格のライバル製品に触発されて、29ドルのRoku Express端末が導入され、Woodいわく「大成功」だった。

Woodは同社のプラットフォーム事業を成長のチャンスだと主張する。そこには、Amazon、Hulu、Netflix、およびYouTubeから生まれる広告収入も含まれている。コンテンツの配信手数料による収入もある。

Rokuはこれまでに2億ドルのベンチャー資金を調達している。Menlo Venturesは、最初で最大の出資者であり、IPO時点で同社の35.3%を所有していた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Angry BirdsのRovioが10億ドルのIPOを計画

Angry Birdsを覚えているだろうか?まあ、おそらくIPOを正当化できる位には沢山の人がまだ遊んでいるのだろう。

この人気のあるスマートフォンゲームの親会社であるRovio Entertainment(フィンランド)は、2週間以内のHelsinki Nasdaqでの株式公開の準備を進めている。そして、同社はIPOのための価格設定を、評価額およそ10億ドルとして算出した。これは彼らが望んでいると言われていた20億ドル以上の価格よりもずっと少ない。

しかし、同社が目標としている1株当たり10.25ユーロから11.50ユーロの価格で公開されれば、まだ「ユニコーン」になることができる。IPOでは約3000万ユーロ(現時点で約40億円)を調達することになる。

Angry Birdsアプリは2009年に発売されて以来37億回ダウンロードされている。昨年にはこのゲームの成功を利用して、映画”Angry Birds Movie”も制作された。

同社はAccel、Atomico、Felicis Venturesなどから、少なくとも4200万ドルの出資金を調達している。

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(翻訳:Sako)

営業の最終過程を管理するサービスApttusが$55Mを調達、次はIPOか

Salesforce上の見積請求管理サービスApttus日本)は今やユニコーン企業だが、このほど5500万ドルの資金調達ラウンドを発表した。これは同社の、IPO前の最後のプライベート投資になるものと思われる。

CEOのKirk Krappeは上場についてまだ明言しないが、今日(米国時間9/13)のラウンドは今後の投資家の信任を獲得するだろう、と述べた。“バランスシート上に一定量の流動性が必要である、と判断した。企業が上場や買収に臨むときは、投資家たちがその企業の確実な流動性を求める。流動性は、企業を良い位置につける”、と彼は説明する。“弊社の成長は今でも大きいが、最後の手早いプライベートラウンドをやるのが賢明かつ慎重と言えるだろう”。

5500万ドルのラウンドをリードしたのは、インドのシステムインテグレーターWiproのプライベート投資部門Premjiだ。これまでの投資家Salesforce, K1, Iconiqも参加した。

今や13億ドル(2016/9現在)というユニコーン評価額の同社は、これで累計調達額が3億2900万ドルになる。最近では、投資家を国際的に求めることにも果敢だ。たとえばシリーズCの1億800万ドルには、Kuwait Investment Authorityが投資家として参加した。シリーズDの8800万ドルには、サウジアラビアからの投資も含まれる。

バックにSalesforceがいることは大きい。2015年の終わりには、SalesforceがApttusのライバルSteelBrickを買収して割りを食った形になったが、Apttusはその後Microsoft Dynamics用のバージョンを作るなどして独立を模索した。しかし今ではその傷もすべて癒え、今度のラウンドではSalesforceが投資家として戻ってきた。

Krappeによると、Steelbrickの買収によってSalesforceとの仲がこじれたわけではない、という。“彼らは小さなコンペティターを買ったけれども、弊社の同社との関係は一貫して良好であり、今でもうちの仕事の大半はSalesforceの上でやっている”、と彼は語る。

見積〜請求〜回収の全過程を管理するApttusのサービスは、営業過程の重要な部分を担う。営業が顧客企業との関係を築くと、その対話過程をSalesforceに記録するが、実際に最終的な売買契約の過程(本番の見積提出以降)に入ると、企業はApttusなどのソフトウェアを利用して、見積書の作成や、契約書の生成、そして最後の代金回収までの流れを管理していくことになる。〔quote-to-cash, 見積から現金までのサービス、と言う。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ストリーミング機器のRokuがIPO申請――財務情報から読み解く今後の展開

【編集部注】執筆者のAlex WilhelmはCrunchbase Newsの編集長で、VCに関するTechCrunchのポッドキャストEquityの共同司会者でもある。Crunchbase NewsのTwitterFacebookをフォローして最新情報を入手しよう。

先週金曜日、Rokuは財務情報や事業戦略の詳細が記載されたフォームS-1(上場申請書)を提出した。

同書類によれば、彼らはIPOで1億ドル調達しようとしているようだ。しかしこの数字が仮の値であることは周知の事実で、実際の調達額はそれ以上にも以下にもなり得る。

なお、これまでにRokuは2億ドル以上を調達してきた。

株価指数が過去最高に近い値を記録し、動画がメディア界の中心的存在となり、IPOで良い結果を残すテック株が出る(苦しんでいる企業もいるが)中、10億ドル前後の評価額での上場が噂されているRokuが市場に飛び込もうとしている。

そこで、Rokuのビジネスモデルや収益、そしてそれらの情報をどう解釈すればいいのかについて考えてみたいと思う。

Rokuのビジネスモデル

Rokuはテレビ用ストリーミング端末の販売に加え、ストリーミングサービスを手がける企業と手を組み、彼らのコンテンツを消費者のもとに届けるサービスを提供している。さらに広告ビジネスもRokuの収益源のひとつだ。ストリーミング端末以外の売上のことを、同社は「プラットフォーム収益(plartform revenue)」と呼んでいる。

フォームS-1の中には、それぞれの収益源が以下のように説明されている。

プレイヤー収益(player revenue)はストリーミング端末の販売によるもので、プラットフォーム収益(platform revenue)は広告収益と動画サービス各社とのレベニューシェアから構成されている。プラットフォーム収益は、ユーザーがRokuのプラットフォーム上でコンテンツを消費することで発生する。今後もストリーミングプラットフォームの収益化を推し進め、プラットフォーム収益の拡大を目指す。

Rokuの売上全体に占めるプラットフォーム収益の割合は年々増えてきている。具体的な売上構成比の推移については以下のグラフ(Jackdaw ResearchJan Dawson作成)を確認してほしい。

後述の通り、プレイヤー事業とプラットフォーム事業の利益率には大きな差があるため、売上高構成比の変化は重要なポイントだ。

プラットフォーム収益の割合増加は、最近Rokuがハードウェアの直接販売よりも(Rokuのソフトを搭載したテレビを製造する)ハードウェア企業とのパートナーシップを通じてユーザー数を伸ばしていることと関係しているようだ。つまり、Rokuは利益率の悪いハードウェア販売に力を入れずとも、新たなアクティブユーザーを獲得できるということだ。

ここまでの情報をまとめると、Rokuはストリーミング端末を販売してプレイヤー収益をあげ、Roku搭載テレビを普及させるためにテレビメーカーとパートナーシップを結び、広告とストリーミング企業とのレベニューシェアからプラットフォーム収益をあげている。

かなりわかりやすい構造だ。それでは、事業の規模はどのくらいなのか?

Rokuの収益損失額について

本題に入る前に、まずは全体の数字を確認してみよう。

フォームS-1からとった下の表には、2015・2016会計年度の業績、2016年前期(暦年)と比較した2017年前期の結果が記載されている。なお各数字の単位は1000ドルのため、「119,116ドル」は実際には「119,116,000ドル」であることをお忘れなく。

これまでのところ、2017年は売上額が増え純損失額が減少しつつある。2016年は2015年に比べて売上が増加したものの、損失額もわずかに増えてしまった。

2017年前期の売上額は前年比で23%伸びている。これには先述の収益源の変化が一部関係しているため、23%という数字は額面よりも大きな意味を持っている。

売上構成比の変化

売上構成比が変化したため、収益の移り変わりの確認には少し工夫が必要だ。まずプレイヤー収益の四半期別推移は下降傾向にあり、例えば2017年第2四半期の売上は第1四半期よりも少ない。さらに2017年第2四半期のプレイヤー収益は前年比でも下がっている。

つまり同社のハードウェア事業は全体として下降傾向にあると言える。その一方で、プラットフォーム収益は継続的に増えており、四半期ごと(暦年)の推移は以下の通りだ。

グラフが示す通り、2016年第4四半期から2017年第1四半期の微減を除けば、Rokuのプラットフォーム収益は順調に増加している。そもそも広告を販売している企業の収益の一部は、休暇が集中する第4四半期が終了した後に減少する傾向にある。それを考慮すると、Rokuの売上減少幅はむしろ小さく、2017年第2四半期には減少分を既にカバーできている。

投資家がこれをどう見るかはIPOの結果を待つしかないが、同社のプラットフォーム収益が前年比で約100%増という劇的な伸びを見せていることには変わりない。

全体を見てみると、2017年第2四半期の売上は9962万ドルで、第1四半期の1億9万ドル、2016年第4四半期の1億4734万ドルを下回っている。このように前四半期との比較では売上が減少傾向にあるものの、前年同期比だと直近の4四半期の売上額は全て増加している。

もしも投資家がプラットフォーム収益の伸びをもとにRokuの未来を信じられれば、前四半期と比べての売上減というのはそこまで問題にならないかもしれない。

それでは、なぜ投資家がプレイヤー収益よりもプラットフォーム収益を重視する可能性があるかというと、Rokuの利益の大部分がプラットフォーム事業によるものだからだ。Jackdaw ResearchのJan Dawsonが作成した別のグラフを見てみると、どれだけプラットフォーム事業の利益率が高いかがよくわかる。

これはかなりの差だ。ではここから何が言えるだろうか?

Rokuの財務情報を読み解く

Rokuはハードウェア事業からの脱却を図ろうとしている可能性が高い。利益率の低さを考えると、少なくともハードウェア事業を引き続きメインの収益源とするつもりはないだろう。これは自社でコンテンツを制作していないOTT(オーバー・ザ・トップ:ネットを通じたコンテンツ配信サービス)企業の目指す姿としては納得がいく。

熾烈な競争が続くコンテンツビジネスの状況を考えると、このような方向転換の可能性もゼロではなかった。Facebokがオリジナル動画に力を入れ始め、コンテンツに大金をつぎ込むNetflixAmazonが対抗し、Appleも攻勢を強め、Microsoftは一旦手をつけた動画事業を取りやめた

もしかしたら、競争が激しいからこそRokuのビジネスは上手くいっているのかもしれない。彼らは消費者へと繋がる流通チャンネルを持っており、コンテンツ企業はまさにそのチャンネルを求めている。両者の相互作用もあって、RokuのARPU(ユーザー1人あたりの平均売上額)は以下のような動きを見せているのではないだろうか。

ユーザー数を急増させた実績を持つRokuにとってこれは良い兆候だ。利益率の良いビジネスを短期間に成長させるということには大きな価値がある。

しかしRokuの評価額について確かなことは言えない。ある事業の売上は下降傾向にあり、赤字続きながらも大きな可能性を秘めた同社に、どんな評価額がつくのか楽しみだ。

詳細についてはフォームS-1を確認してもらい、何か面白いことに気づいたら連絡してほしい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Uberの新CEO曰く「IPOは18~36カ月のうちに」

新CEOを迎えたUberで、この男はすかさずIPOの計画について話した。

今日の全社ミーティングで、上場企業であるExpediaの経営経験をもつDara Khosrowshahiは、Uberは早ければ18カ月で上場できる、と宣言した。同氏は最大36カ月(3年)かかるかもしれない、とも言っていて時期はまだ固まっていない。このぶんだとIPOは2019年か2020年に起きることになる。

Khosrowshahiはこの任務を日曜日に打診され、火曜日には会社が正式発表した。

この役職は前CEOのTravis Kalanickが6月に辞任して以来空席だった。違法行為や性差別的起業カルチャーに対する悪評や捜査が続いた後のことだった。

UberのIPOのタイミングは重要だ。680億ドルの評価額も換金イベントまではぺーパーマネーにすぎない。 非公開取引市場というものもいくつかあるが、Uberはこれに関して非常に厳格なルールをもっている。ただし最近同社は、ルール変更について言及した。IPOの後は社員も会社も現金化が容易になる。

このところスタートアップが非公開のままでいる時期が長くなっている。これは、後期段階にある会社にとって民間資本の調達が容易になったことに加え、最近著名なIT企業がIPOに苦戦しているのを見ているからでもある。最近SnapおよびBlue Apronの株価は下落し、Twitterらも公開市場で気まぐれな動きを見せている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook