スタートアップ幹部を志す人材と、CEOが直接コミュニケーションできる転職サイト「Amateras Online」がスタートした。COOやCFOなど「CxO」と言われる幹部メンバーとしての採用が前提で、求職者は面接前にCEOとメッセージをやりとりすることで、採用後のミスマッチを防げるという。
ユーザーは会員登録すると、アマテラスが選んだ「優良スタートアップ」の概要だったり、株主や資金調達に関する情報を閲覧できる。過去に経営に携わったことがあったり、MBAホルダーのような経歴を持つ人は、「プレミアム会員」に自動アップグレードされる。
スタートアップ側は、登録情報を見て興味を持った人材に対して、CEOが直接オファーを届ける。その後は、サイト上でメッセージをやりとりして、CEOが面談するかどうかを判断する。プレミアム会員であればオファーを待つことなく、CEOへ直接メッセージを送って自分を売り込めるようになっている。
コンサル目線で「優良スタートアップ」を厳選
Amateras Onlineの大きな特徴は、“厳選”したスタートアップだけを掲載していることだ。アマテラスが考える、優良スタートアップとはどのような会社なのか。この点について藤岡氏は、「経営者の志の高さ」「事業の社会的意義」「成長性の高さ」の3つの条件を満たす会社を「優良スタートアップ」と定義している。
「わかりやすく言うと、たとえ儲かっていてもゲーム系はお断りしています。個人的な意見ですが、ゲームは社会を白痴化しているだけで、来年なくてもおかしくないビジネス。栄枯盛衰がある中で生き残れるかは、3つの条件を満たしているかどうか。偉そうですが、伸びないベンチャーに人を紹介したくないので。」
アマテラスの藤岡清高社長
藤岡氏は2011年4月にアマテラスを創業する以前、企業コンサルティングのドリームインキュベータに在籍。同社では2004年からベンチャー支援に携わり、1500人以上のCEOと経営についてディスカッションしてきた。それだけに、優良スタートアップを見極める「目利き力」に自信があると、藤岡氏は話す。
気になる求人企業としては、クラウドソーシングのランサーズやスマホ学習塾の葵、3Dプリンティング商品CtoC「Rinkak」のカブク、NewsPicksを運営するユーザベース、中古マンションのリノベーションを手がけるリノべるなどがある(求人スタートアップの一覧はこちら)。
個人の求職ユーザーは登録・利用料すべて無料。スタートアップは1人採用につき100万円の成功報酬をアマテラスに支払う。転職が決まったユーザーには、お祝い金として10万円を進呈するキャンペーンも期間限定で行っている。
目指すは日本版Angellist
シリコンバレーの幹部人材採用では、アクティブ会員3億人超の「LinkedIn」を使ったダイレクトリクルーティングが盛んだ。また、起業家と投資家をマッチングするSNS「Angellist」が、スタートアップ向けの人材採用支援サービスを開始。現在は世界中の8400社以上がAngellistで求人を公開し、アクティブ会員は12万人超と言われている。
ところが日本でLinkedInは流行っていないし、Angellistも存在しない。最近でこそ、ネット大手の幹部人材がスタートアップに加わる事例は出てきたが、それでも「知り合いのつてをたどるアナログな手法や、Facebookで直接スカウトするのが現状」と藤岡氏は指摘。自らの新サービスは「採用支援に特化した日本版Angellistになれる」と見ている。
日本の採用サービスマップ(アマテラス提供)
日本からGoogle・Facebookを100社創出する
ドリームインキュベータの7年間、ベンチャーに戦略提案してきて痛感したのは、「本当にベンチャーに必要なのは、優秀な人材の採用」ということだった。
「支援先の社長も確固たる思いがあって起業しているので、我々が偉そうに戦略をアドバイスしても、聞いてもらえないことも多々ありました。それで我々が何をしたかというと、社長の思いに共感する人を探すこと。そのほうが売り上げがググっと伸びるものなんです。」
「口を出すより、人を探す」スタイルでベンチャー支援を続ける中、転機となったのはリーマンショックによる景気後退だ。そのあおりを受けて、藤岡氏が所属していたベンチャー支援部門は規模を縮小。自らが活躍できる場所がなくなった。
そんな中、会長の堀紘一氏から「独立してベンチャー支援を続けてみろ。ドリームインキュベータも支援する」と後押しがあり、起業するに至った。ちなみにアマテラスの社是は「日本からGoogle・Facebookを100社創出する」。これはドリームインキュベータの「日本からソニー・ホンダを100社創出する」という理念を受け継いだものだ。