解析ツールのユーザーローカル、YJキャピタルとEast Venturesから約2億6000万円の資金調達

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ヒートマップに対応したアクセス解析ツール「User Insight」やソーシャルメディア解析ツール「Social Insight」などを提供するユーザーローカルが5月25日、YJキャピタル、East Ventures引受先として約2億6000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。同社は今回調達した資金をもとに、ビッグデータ分析事業強化進める。

ユーザーローカルは2007年の設立。代表取締役を務める伊藤将雄氏は、もともと楽天のエンジニア・プロデューサーで、「みんなの就職活動日記」を事業化、法人化した人物。その後早稲田大学大学院にウェブ上の行動解析を研究し、その成果をベースにした製品を提供すべく、ユーザーローカルを設立した。これまで国内外25万サイト以上への無料解析ツールを提供しているほか、国内700社以上へ商用アクセス解析ツールを導入。月間70億PV以上のデータを分析しているという。

同社によると、顧客増による分析対象となるデータ量増大、スマートフォン・マルチデバイス領域やO2O分野での分析ニーズの高まりを受けて資金調達を実施したという。今後は大規模なインフラ投資のほか、業種に特化の解析サービスも提供していくという。すでに4月から、メディア業界に特化した「Media Insight」なども提供している。

LINE元社長・森川氏の動画メディアC CHANNEL、「黒字化はやろうと思えばすぐに」

「黒字化はやろうと思えばすぐになります。(再投資して事業を成長させるので)すぐにするつもりはありませんが」——LINE代表取締役社長の座を離れ、4月に自らスタートアップの起業家として動画プラットフォーム「C CHANNEL」を立ち上げた森川亮氏。完成間もないオフィスで、こう語ってくれた。

森川氏の新会社C Channelは5月21日、東京・原宿にオープンしたばかりのオフィス兼スタジオで戦略発表会を開催した。冒頭のコメントは、その発表会の後の懇親会でのものだ。

女性向けメディアとの提携、同時にコンテンツも強化

まずは戦略発表会の内容から。森川氏が語ったところによると、サービス立ち上げから1カ月が経過したC CHANNELは100万ページビュー、コンテンツ(動画)数は800件、全視聴時間の合計は4300万時間。ユニークユーザー数は非公開だが、「数十万人」(森川氏)とのこと。

森川氏に100万ページビューという数字をどう評価しているのか尋ねたところ、「世の中的には決して高い数字ではない」とした上で、「動画コンテンツはこの短期間で800も集まったし、これからもっと増えると思う」と説明した。

すでに各所からC CHANNELの動画を配信して欲しいという相談があるそうで、「いろんなメディアに出ることでトータルでのブランドが作れる。縦長のモニタはすべてC CHANNELのコンテンツになっていく。将来的には(プラットフォームではなく)、ブランドを作っていきたい」とのことだった。

森川氏の言葉通り、C Channelでは積極的な提携を進めている。5月20日にはロケットベンチャーの手がける女性向けキュレーションメディア「4meee!」とのコンテンツ提携を発表。今回の発表会でも、Tokyo Girls Collectionを手がけるF1メディアとの提携が発表された。これにとどまらず、今後も広く外部との提携を進めていく予定だという。

コンテンツも引き続き強化していく。発表会では、モデル・タレントの三戸なつめさんや、カナダ生まれのモデルのテイラーさん(ようかい体操第一のYouTubeへの投稿は89万回再生だそうだ)がC CHANNELの動画投稿者である「クリッパー」として参加することが発表された。

さらにネイリストや皮膚科医師など、専門家によるワンポイントレッスン動画の配信も開始する。クリッパーとして参加を希望する女の子も増えているそうだが、現在はその枠を100人に限定して、まずは品質の担保に努めるということだった。

会場となったC Channelのオフィス

会場となったC Channelのオフィス

縦長動画とデジタルサイネージの親和性

質疑応答の場で広告のニーズについて聞いたのだが、今まで動画プラットフォームと比較して、投稿を限定してクオリティコントロールができていること、C Channelが社内で撮影から編集、配信までを実現する体制があること、そしてLINE元代表によるスタートアップという自身の話題性があることなどから、「期待され、応援されている」(森川氏)状況なのだという。具体的な社名は挙がらなかったが、すでに複数社の広告配信が決定しているそうだ。

森川氏が主張するのはデジタルサイネージとの親和性。C CHANNELでは、スマートフォンでの閲覧を想定して、縦横費で横長の動画ではなく、縦長の動画を制作している。これが駅や複合ビルの柱などに設置されるデジタルサイネージにぴったりだそうで、そのニーズは「想定以上」なんだとか。その理由は、柱のように縦長な場所に設置するサイネージは、もちろん画面も縦長だからだ。テレビでもウェブでも、基本横長の動画が求められているため、そのままサイネージで流すのは難しいのだ。

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C Channelでは以前からECなんかも展開する予定だとしているが、冒頭に紹介した森川氏のコメントは、コンテンツの多面展開、そして動画広告ですでに収益化が見えているということだろうか。

発表会の最後に森川氏はこう語った。「つい最近までは渋谷のヒカリエで仕事をしていたが、若い人のメディアを作りには文化を知らなければいけないと慣れない原宿に来た。ビルの上から見下ろすのではなく、地上で時代の流れ、最先端のはやりを勉強するためにここに来た。小さいスペースではあるが、ここから情報を発信していく」

生活密着型クラウドソーシングのエニタイムズが高野真氏、グリー、DeNAなどから2.3億円の資金調達—リアルでのマーケティングなど強化

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生活密着型のクラウドソーシングサービス「Any+Times(エニタイムズ)」を運営するエニタイムズ は5月21日、元ピムコジャパンリミテッド取締役社長でアトミックスメテディア代表取締役CEOおよびフォーブス ジャパン編集長の高野真氏、グリー、ディー・エヌ・エー(既存投資家)、その他個人投資家を引受先とする、総額2億3000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。今回調達した資金をもとにシステムの強化を進めるほか、マーケティングや人材の採用・育成を進める。

また、今回の調達とあわせて、高野真氏のほか、既存投資家であるインキュベイトファンドの和田圭祐氏が社外取締役に就任する。さらに、3月から同社のエバンジェリストとして活躍しているジャーナリストの佐々木俊尚氏がメディア顧問に就任する。

Any+Timesは、日常の家事や旅行の間のペットの世話、家具の組み立て、語学レッスンなど、生活に密着した「手伝って欲しいこと」「得意なこと」を提供しあえるクラウドソーシングサービス。同社はこれまで「生活密着型クラウドソーシングサービス」「生活密着型シェアリングエコノミーサービス」銘打ってサービスを展開してきたが、今回の発表にあわせて、Any+Timesを「サービス ECのマーケットプレイス」と再定義したそうだ。最近はスタートアップによる家事代行サービスなども増えているが、クラウドソーシングを使うことで、そういったものよりも柔軟な仕事の依頼ができるというわけだ。

ユーザー数は非公開とのことだったが、スマートフォンアプリのダウンロード数はiOS、Android合わせて13万2000件。現在は東京・多摩地区で慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科などと協力した地域人材活性化のための取り組みも進めるなど、リアルでのマーケティング活動も強化している。

犬の飼い主と預かり先をマッチングするペット版Airbnb、CAV出資先のDogHuggyがサービス開始

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国内では法律上はグレーゾーンだと指摘されるAirbnbだが、検索してみると、すでに国内でも数多くの代行業者がいることは分かる。日本のホスト数は8000件以上だと聞くし、僕の周囲ではサービスを利用した、よく使っているなんて話を聞くことも増えた。

そんなAirbnbやUberなどが代表格に挙げられるシェアリングエコノミー関連の新しいサービスにチャレンジしているのが、ペット版Airbnbとも言える「DogHuggy」だ。同社は5月20日にサービスを正式公開した。

ペットの飼い主とホストをマッチング

DogHuggyは、旅行や外出などでペット(主に犬)を預けたい飼い主と、現在、もしくはこれまでに犬を飼うなどして飼育経験のあるホストをマッチングするサービスだ。

サービスを利用するにはまず、飼い主が住んでいる地域の近所にいるホストを検索。条件等を確認して予約。あとは当日ペットを預けに行けばいい。決済もサイト上で行う。

料金はホストが設定できるが、想定単価は1泊あたり5000〜6000円程度。その30%をDogHuggyが手数料として徴収する。ホストは収益をNPO寄付することもできる。

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2014年末から試験的にサービスを開始。現在のホストは首都圏を中心とした数十人。獣医やペット飼育経験者、さらにはペット関連の有資格者を中心に、面接などを行った上でホストとして認定しているという。ホストは1日数回ペットの写真を飼い主に送ることになっているため、状況の把握もできるという。また将来的には預けている最中のトラブルに対応するよう、保険の適用も検討中だそうだ。

ちなみにいわゆるペットシッターとしてホストが犬を預かるとなると、第一種動物取扱業の認可が必要になる。だが、DogHuggyでは動物取扱業の保管と貸出の免許を取得しており、まずDogHuggyが飼い主の犬を預かり(保管)、今度はDogHuggyがその犬をホストに預ける(貸出し)というかたちにすることで、法律上の課題をクリアしているという。

獣医を目指した高校生が起業

ペットの飼い主とペットシッターのマッチングサービスとしては、米国では「DogVacay」などが有名なのだそう。CrunchBaseにもあるが、同社は2014年11月に2500万ドルという大規模な資金調達を実施している(これまでの合計調達額は4700万ドル)。国内でも「inDog」など、サービスを準備しているスタートアップがあるようだ。矢野経済研究所の調査によると、国内のペット市場は2014年度で1兆4288億円。美容室や医療、保険、ホテルなどの各種サービスでは前年度比100.9%の7314億円となっている、大きな市場だ。

DogHuggy代表取締役の長塚翔吾氏

DogHuggy代表取締役の長塚翔吾氏

DogHuggy代表取締役の長塚翔吾氏は現在18歳。日本でも数少ない獣医学部のある麻布大学附属高等学校をこの春に卒業したばかり。もともとは獣医を目指していたそうだが、高校で動物保護について学んでいる中で、自らができることを模索した先にあったのがこのサービスでの起業だったのだという。

飼い主が長期で外出する際に利用するペットホテル。しかし狭いケージは犬にストレスを与え、価格も決して安くない。そんな環境に対して罪悪感を感じると答える飼い主もいたそうだが、他にソリューションがないというのが現状だ。

代々木公園などで実際にペットを散歩させていた飼い主などにも数多くヒアリングしたが同様の意見が出たという。そこで考えたのが、すでに適切な環境で犬を飼っているホストに犬を預けるという仕組みだった。

「目の前の困っている犬1匹を救うことも大事。だが、目先のことだけを考えるのではなく、飼い主にもっと動物保護とはどういうことか知ってもらって、人とペットの真の共存を実現していきたい」(長塚氏)

CAVからシードマネーを調達

DogHuggyは3月にサイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)のシード投資枠「Seed Generator Fund」からシードマネーを調達している。金額や出資比率は非公開。ただしシードの投資枠は3億円で、基本的には1社1000万円を上限にしているという話だから、数百万円というところだろう。

ちなみに、高校生だった長塚氏は、検索エンジン経由でCAVのシード投資について知り、その門戸を叩いたのだそうだ。そして親を説得した上、高校生だった2月に起業している。その後、東京大学獣医学科出身でサイバーエージェントの広告や開発を担当していた染谷洋平氏がCTOとして参画した(僕はこの染谷氏の経歴にも驚いたのだけれども)。

同社が目指すのは「動物後進国の日本を先進国にすること」。その第一歩となる目標は、DogHuggyのホスト500人までの拡大だという。

短期的な採算性ではなく長期的な協業に——中小企業バックオフィス支援のBizerと法律事務所のAZXが資本提携した理由

中小企業のバックオフィス業務をクラウドで支援するサービス「Bizer」。このサービスを提供するビズグラウンドが5月18日、AZX Bizer Support Fund なるベンチャー投資ファンドを割当先とする第三者割当増資を実施したと発表した。投資額等は非公開だが、数百万円程度だと聞いている。

このAZX Bizer Support Fund 、実は今回の出資に向けて組成されたファンド。AZX 総合法律事務所を筆頭に、士業によるスタートアップ支援を手がけるAZX Professionals Groupがパートナーとなっている。外部資本も入っておらず、その名の通りビズグラウンドへの投資だけを行うファンドだ。

両者は今回の投資を契機に業務提携も実施。Bizerのユーザーは、AZXの弁護士に初回30分無料相談ができるようになるほか、AZXの契約書作成サービス「契助」の割引利用が可能になる。今後については、ビズグラウンド代表取締役の畠山友一氏いわく、「今のBizerのサービス範囲だけにとどまらず、新たな事業領域での協業も検討していく」のだそう。

法律事務所がスタートアップ投資をする意味

Bizerのユーザーからすれば弁護士によるサポートが強化されるワケだし、AZXからすれば投資先の支援をすることで将来的なキャピタルゲインも期待できる。さらにはスタートアップのクライアント獲得にもつながる話だ。ただスタートアップの法務に強いとは言え、法律事務所が投資まで行うというのは日本ではあまり聞かない。

ちなみに、米国シリコンバレーに拠点を置く大手法律事務所のWilson Sonsini Goodrich & Rosati Professional Corporation(ウィルソン ソンシーニ)もクライアントであるスタートアップに積極的に投資してきていることで知られている。これはスタートアップへの支援の強化につながる一方、士業として客観性を欠くことになるということで賛否両論あるようだ。

「もともとはBizerをAZXのクライアント向けに利用できないかという点を検討したことが最初の契機。だが出資をすることで、短期的な収益面での採算性ではなく、長期的な視点で一緒に協業していくことができると考えた」—AZX Professionals Group CEOで弁護士の後藤勝也氏は語る。

実はAZXでは1月頃からスタートアップへの投資を検討していたのだそうで、これが初の案件となる。「以前からフィーベース(都度士業に料金を支払って相談などをするという形式)でサービスを受けるのはまだ厳しい状況なので、株式を持ってもらえないかというような相談もあった。今回の出資は、フィーベースのサービスを無料・低額にするという趣旨ではなく、連携してサービスを作るためのものだが、今後はこのような趣旨でも投資していきたい」「我々もビジネスとしてやっている以上、お金をもらっていないとできないこともあったが、投資先であれば組織としてきっちりと支援していける」(後藤氏)

具体的な投資目標などは聞けなかったが、「ベンチャーキャピタル等が想定する資本政策を乱さないよう了解を得つつ投資を進める」(後藤氏)とのこと。また投資先ごとにファンド(ただし、基本的には外部のLPを入れない)を組成する予定だという。

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Simon Cunningham

 

動画制作クラウドのViibarがヤフーと資本業務提携、既存株主含め7億円の資金調達

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「動画元年」なんて言われていたのは去年か一昨年のことだっただろうか。ともかく動画に関するビジネスが急速に拡大しているのは事実だ。十代のカップルが自らの動画をアップする「MixChannel」は女子中高生の2人に1人が利用しているそうだし、動画広告のプラットフォームも複数スタートしている。UUUMのようなYouTuberのマネジメント会社も登場してきたし、動画制作向けのクラウドソーシングサービスもある。

そんな動画制作特化型クラウドソーシングサービスの1つ、「Viibar」を運営するのがViibarだ。同社は5月18日、ヤフーと資本業務提携を行うことを明らかにした。

資本提携では、ヤフーに加えて既存株主であるグロービス・キャピタル・パートナーズおよびグリーベンチャーズが出資。総額約7億円の第三者割当増資を実施した。あわせて、ヤフー執行役員 マーケティングソリューションカンパニー長の荒波修氏が社外取締役に就任する。なお、業務提携の詳細については、6月後半にも詳細を発表するとしている。

動画広告が成長。売上は前年比30倍に

Viibarは動画制作に特化したクラウドソーシングサービスだ。現在国内を中心に約2000人のクリエーターがユーザー登録。動画制作はスタッフが進行管理や制作スタッフのマッチングを担当。クライアントとクリエーターはオンライン上でコミュニケーションを取りながら動画を制作していく。

Viibar代表取締役の上坂優太氏

Viibar代表取締役の上坂優太氏

これまで、動画広告や商品説明動画などウェブで利用される動画をはじめ、テレビCMやOOH(交通広告や屋外広告)などに向けた動画を制作してきた。売上高は非公開ということだったが、「2013年度から2014年度で30倍成長」(Viibar代表取締役の上坂優太氏)なのだそう。

初年度ということでベースとなる売上が決して大きいとは思わないが、それでも30倍というのはすごい数字だ。この成長の背景にあるのは、急増する動画広告のニーズ。「テレビCMやOOHなど、利用の幅も広がっているが、そこはあくまで一次関数的な成長でしかない。当初から明確にあったウェブの動画広告が大きく成長している。市場ではクリエイティブ不足が明確な課題になってきた」(上坂氏)

制作だけでなく、“成果”に結びつく機能の提供へ

上坂氏は、「安かろう悪かろうではない」と、Viibarで作成する「動画」そのものの品質が評価されていると説明するが、同時に「動画広告」としての品質を高めているところだと語る。

動画広告は、単純に動画としてのクオリティだけでなく、動画を閲覧した人がそのサービスを利用したり、商品を購入するといった“成果”が求められるもの。そのため、どれだけイケてる動画を作るかということではなく、動画広告をユーザーに配信するという一連のフロー——企画、制作者のマッチング、動画制作、動画の配信、効果測定、そして効果測定を元にしたPDCAを回す——を通じて、成果を出していかなければならない。

だがこれまでのクラウドソーシングが担当していたのは「制作者のマッチング」「動画制作」といったパート程度だ。Viibarでは現在、動画広告にまつわる一連のフローを自社でまかなえるよう、各種開発を進めているのだそうだ。「動画広告はクリエイティブの要素が大きいが、そのクリエイティブを評価して、次の企画に落とし込むというところまでをデータドリブンでやっていく」(上坂氏)

具体的な内容については聞けなかったが、動画制作に加えて動画配信やアナリティクスの機能も提供していくということだろう。実際、今回の調達を機に、データアナリストなどの採用も始めていると聞いた。

ヤフー本体が出資するも「基本的にはIPO目指す」

ヤフー本体によるスタートアップへの出資というのは、それほど多いケースではない。Facebookを使った懸賞サービスを提供していたクロコスや、映画チケットの共同購入サービスを提供していたブルームなど、買収案件が比較的目立っている印象だ。

ヤフーによる買収の可能性について上坂氏に尋ねたところ、「基本的にはIPOを目指している。動画広告は急速に伸びており、特にBtoB、BtoBtoCでレバレッジを書けてサービスを展開するには、以下にジャイアントと組むかというのは重要になると思っている。ただし我々はYouTubeやFacebookなどともすでに取引もあるし、基本的に独立した存在」としている。

「赤字上場でもしっかりした成績が残せた」2Q決算でクラウドワークス吉田社長

20年後にクラウドソーシングで年間総契約額3兆円の仕事を提供する——クラウドワークス代表取締役社長の吉田浩一郎氏は、5月15日に開催された決算説明会兼事業戦略発表会でこのように語った。

事業は成長、「しっかりした成績が残せた」

すでに昨日発表済みではあるが、クラウドワークスの2015年9月期第2四半期(第1〜2四半期累計)の営業収益で3億6500万円(前年同期比で307.8%増)、営業利益は2億8300万円の赤字(前年同期は1億700万円の赤字)、経常利益は2億8700万円の赤字(同1億700万円の赤字)、純利益は2億9500億円の赤字(同1億800万円の赤字)。

事前見通しの通り利益を見ると赤字ではあるものの(ただし、質疑応答以外、プレゼンで利益のことに全く触れなかったのはちょっと気になったのだが)、総契約額では前年同期比で97%となる6億5600万円。クラウドワーカー(登録ユーザー数)は年間257%増の58万人(4月末時点の数字、5月に60万人を突破したそう)。営業収益は四半期ベースで見ると前四半期比229%となる218億円。会見でクラウドワークス代表取締役社長の吉田浩一郎氏は「『赤字上場で大丈夫か』と言われたが、しっかりした成績が残せたのではないか」と語る。

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2015年9月期は総契約額はプラットフォームサービスで25億円(上半期実績で8億4000万円)、エンタープライズサービスで9億円(上半期実績で3億円)を目指す。2014年にスタートしたエンタープライズ向けの事業も好調とのことで、継続利用に加えて、大手企業の新規獲得も好調だったとした。

会見で吉田氏が繰り返したのは「総契約額」というKPI。同社では2017年9月期に総計約100億円という計画を掲げていたが、今後体制強化と新サービスで2016年度での達成を目指すという。ただし黒字化の時期については明言せず、事業への投資の可能性も挙げつつ、「(総契約額)100億円での黒字か赤字についてもまだ考えているところ」と説明するにとどまった。

さらに20年後の目標として、年間総契約額3兆円という数字を掲げた。吉田氏は—名前こそ出さないものの、ソフトバンク代表の孫正義氏を暗に例に挙げつつ——「僕らの世代でも夢を持っていい。今は『何を言っているんだ』と言われるかもしれないが、温かく見守って頂きたい」「上場市場の末端に立った以上、投資家のみなさまに精一杯答えたい」と語った。

新サービス「クラウドワークスBPO」を展開

4月には、最長6カ月程度のクライアント企業でのオフィスワークを経てリモートワークへ移行することで企業の不安を取り除き、長期のリモートワークを実現する「クラウドワークステクノロジーズ」を発表していたが、同社は今回新たに「クラウドワークスBPO」なるサービスを開始した。

BPOとはビジネス・プロセス・アウトソーシング、つまり作業ではなく業務そのもののアウトソーシングだ。クラウドワークスBPOでは、同社のスタッフがクライアント企業に常駐。クラウドソーシング事業の「クラウドワークス」や前述のクラウドワークステクノロジーズを使ってアウトソーシングの組織体制を設計するというもの。

このサービスでターゲットとするのは、電力関連事業。2016年4月に電力小売が完全自由化されるが、「関する業務が大量に発生する。その課題に対応する」(吉田氏)のだという。具体的には補助金申請や電力会社向けの接続申請、電力需給管理といった業務に向け、リサーチ・マーケティング・経理・コールセンター・原稿制作・書類作成・監視などを行う。同社ではこの事業で2018年内に10億円規模の業務をクラウドソーシング化するとしている。

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マーケティングデータを一気通貫で分析、「B→Dash」運営のフロムスクラッチが3億円調達

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「収益に一番直結するチャネルがわからない」「複数のツールを使うと手間とコストがかかる」「情報量が多すぎて見づらい」――。

企業のウェブ担当者にありがちな悩みである。コンバージョン数やCPAを追いかけても、本当に収益につながっているか不明。わからないので様々なツールを試してみても、見るべき指標が重複する。重複を解消しようと自分で各レポートを組み合わせるのも大変……というわけだ。

企業のマーケティングプロセス全体のデータを統合し、一気通貫で分析するSaaS型マーケティングプラットフォーム「B→Dash」は、こうしたウェブ担当者の悩みを解決しようとしている。ウェブ集客から顧客管理までと、マーケティングの入口から出口までを一元管理できる。

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例えば、認知や流入、回遊といった「集客プロセス」は、Google AnalyticsやSiteCatalystで分析できる。しかし、メール配信やコンテンツ、ソーシャルメディアの管理といった「集客後のプロセス」となると、HubspotやMarketo(マルケト)、オラクルのEloqua(エロクア)といったツールが必要になってくる。

最近ではDMPやマーケティングオートメーションが話題だが、これらはGoogle AnalyticsやSiteCatalystのようなアクセス解析ツールとの接続が前提。バラバラのサービスを導入したせいでデータ間の断絶が起き、運用工数やコストだけが増えてしまうケースもあると、B→Dashを運営するフロムスクラッチは指摘する。

これに対してB→Dashは、他のサービスとの連携ではなく、集客から顧客管理までの機能をオールインワンで実装。同社はこれを「プライベートマーケティングプラットフォーム」という独自の名称をつけている。料金はプラットフォーム開発費用が100万円〜、月額課金が50万円〜。昨年11月に販売開始し、デジタルマーケティングに注力するB2C企業を中心に50社が導入している。

15日には、Draper Nexus Venture Partnersと伊藤忠テクノロジーベンチャーズなど4社を割当先として、総額約3億円の資金調達を実施したことを発表。B→Dashの新規機能開発や組織体制の強化を図る。

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素人でも使える統計分析ツールのサイカが2億円調達

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専門知識不要で使えるクラウド統計分析ツールを手がけるサイカは15日、総額2億円の資金調達を実施したと発表した。同社は2013年10月、企業が持つデータに潜む関連性を見つけられるツール「adelie」を公開。売上という「成果」に対して、CM放映回数、チラシ配布枚数、天候などの「要素」が、お互いにどのように影響したのかを自動抽出してくれる。

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例えば、アパレル販売メーカーが導入した場合、CM放映後に売上が100万円アップ、チラシ配布週に売上が10万円アップ、天候は売上と無関係……といったことを分析。これによって、経験の裏付けや盲点の発見、未来の予測ができるようになるわけだ。

通常、統計分析をするには専用ツールだったり、成果と要素の関係を読み解く専門家が必要。一方、adelieは企業が持て余すExcelデータをインポートするだけで、相関するデータを自動抽出するのが特徴。ヤフーやリクルート、GUなど40社以上が導入している。

営業マンの「行動の効果」を数字で表す

2014年1月には米Salesforceなどを引受先として、1億円の資金調達を実施した。以降、Salesforceのクラウド型営業支援ツール「Sales Cloud」と連携し、営業マンの行動データに基づいて最適な行動を提示するツール「Rockhopper」を開発。今月リリースした。

Rockhopperは、セールスパーソンの「行動の効果」を数字で示す営業支援ツール。例えば、家電量販店向けにルートセールスする企業が導入した場合、「売場作成」「商談」「店頭での接客」などの行動と、それに費やした時間をプルダウンメニューから入力する。これにより、「売場作成は1時間につき800円の効果」「接客は成果への影響なし」といったことがわかる。

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Rockhopperの利用イメージ

 

セールスパーソンにとって、活動記録を逐一報告しようとすると、本業が圧迫されてしまうことも少なくない。Rockhopperは行動記録に最適化したインターフェイスを採用したことで、日々の報告業務の負担を軽減。すでに導入した大手電機メーカーでは、行動データの入力率が23%から97%にも上がったのだという。

現場で記録されたデータは、アプリ上で一覧可能。営業マネージャーは分析結果を見ながら改善点をアドバイスできる。アプリ上で「ノウハウを学ぶべき営業マン」と「ノウハウを教えるべき営業マン」をリコメンドし、マッチングする機能もある。

今回調達した資金は主に、Rockhopperの開発に投入。エンジニアや、adelieやRockhopperを導入した企業向けのサポート要員も増やす。増資に伴い、リードインベスターを務めたDraper Nexus Venture Partersに在籍する倉林陽氏がサイカの取締役に就任している。倉林氏はSalesforceの元日本投資責任者。サイカとしては、ベンチャー経営やSaaS事業の知見を得る狙いがあるようだ。

サイカは2013年11月に開催したTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルに登壇し、マイクロソフト賞を受賞している。

“ちょうど良いERP”を実現、クラウドで勤怠や経費精算を一元管理するチームスピリットが4億円調達

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勤怠管理に経費精算、電子稟議……と従業員が日々入力するデータの数々。そのツールがバラバラだと、面倒くさいことこの上ない。こうしたデータをセールスフォース上で、1回のログインですべて作業できるようにしたのが「TeamSprit」だ。

運営元のチームスピリットが15日、シリーズCで総額4億円を調達した。このラウンドを仕切ったのはDraper Nexus Venture Partners。これに米salesforceや日本ベンチャーキャピタルが参加した。

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TeamSpritは勤怠管理から就業管理、経費精算、工数管理、電子稟議といった、基幹業務につながるシステムをクラウドで一元管理。各機能を連動させ、必要なデータだけを既存の会計や給与計算のシステムに取り込める。導入にコストや時間がかかるERPと比べ、“ちょうど良いERP”を実現すると同社は謳っている。

料金は1ユーザーあたり月額600円。salesforce.comのクラウドプラットフォーム「Salesforce1」に対応しているため、iOSやAndroidなどマルチデバイスで使えるアプリを標準装備する。

サービス開始3年で360社、4万人以上が利用。主に社員100人前後で、大企業の子会社や上場が視野に入ってきたスタートアップが導入しているようだ。

調達した資金ではセールスマーケティングを強化。増資に伴い、リードインベスターを務めたDraper Nexusの倉林陽氏が取締役に就任する。倉林氏はsalesforceの元日本投資責任者。当時から引き続いて、チームスピリットを支援することとなる。

Amazonじゃダメ? ギフト特化キュレーション参入のトレンダーズに勝算を聞く

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ジャンルに特化したキュレーションメディアが、ECに参入する動きが広がりそうだ。例えば、ディー・エヌ・エー(DeNA)。同社傘下のインテリアメディア「iemo」や女性ファッションメディア「MERY」は、どちらもECでの収益を見込んでいる。そして明日15日、トレンダーズが“記念日”に特化したキュレーションメディア「Anny magazine」をスタートする。記事で気になった商品を、すぐに贈れるのが特徴だ。

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誕生日や結婚祝い、出産祝い、クリスマスといった記念日にまつわる情報を配信する。単なるギフト情報にとどまらず、どのように記念日を楽しむか、あの有名人が愛用する商品……といったコラム的な記事も盛り込む。当面は社内で記事を執筆するが、外部からの投稿も受け付ける。

Anny magazineで気になったギフトは、7月に公開予定のiPhoneアプリ「Anny Now」で贈れる。贈り手はアプリ上でギフトを3点選んで、メッセージを作成。LINEもしくはメールで送信する。貰い手は専用サイトでギフトを1点選び、送り先を入力すればギフトが届く。

ここでポイントなのは、贈り手が3点のギフトを選ぶ点。1点であれば、「相手が持ってるかも」「好みじゃなかったらどうしよう」と心配になり、結局無難なモノを贈ってしまうかもしれない。カタログギフトのように複数の中から選んでもらえれば、そうした心配はなくなるというわけだ。

商品はいずれも、提携予定の大手百貨店が扱うもので、約200点の中から、8000円/5000円/3000円の商品を選べる。店頭同様のラッピングも施される。

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「きちんとしたものを手軽に贈りたいニーズはある」

最近ではAmazonや楽天でギフトを買う人も少なくない。わざわざAnny Nowを使う必要があるのだろうか? この点について、サービスを運営するトレンダーズ執行役員の中村武士氏は「手軽にきちんと贈れる」ことが差別化ポイントだと語る。

「ECサイトは贈り手が実物を見られないし、ラッピングや配送も不安。ギフトはどこから届くのかが重要だったりするんです。本来であれば、百貨店に足を運んで買いたいけど、時間がない……。そういった人が、きちんとしたものを手軽に贈りたいニーズはある。」

トレンダーズの調査によれば、Anny magazineがターゲットとする20〜30代の女性の70%は、ギフトを贈り忘れた経験があるのだという。その理由としては「時間がない」や「相手が欲しいものがわからない」という答えが多かったことも、ギフトのキュレーション事業に参入した背景にあるようだ。

キュレーションメディアはSEOやソーシャル経由の流入を見込んでいて、初年度で月間アクティブユーザー数で45万人を目標に掲げる。

米ベライゾン、44億ドルでAOL買収へ

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1時間ほど前に発表された話で僕もちょっと驚いたのだけれども、取り急ぎ紹介しておこう。

米国の大手通信キャリアVerizon Communications(ベライゾン)がAOL(米国でTechCrunchをはじめ、EngadgetやHuffington Postを運営している僕らの親会社だ)を買収することで合意した。金額は1株当たり50ドル(5月11日の終値に17.4%のプレミアムを上乗せしている)で、総額44億ドル(約5280億円)になる。

すでに米国のTechCrunchでもこの内容は紹介されている。米国では2015年1月に、ベライゾンがAOLに対して買収もしくは事業合弁を提案したとBloombergが報じていた。

ロボットタクシーの実現に向けて—DeNAとZMPが合弁会社設立へ

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遺伝子解析からアイドル、キュレーションメディアまで新規事業を続々と発表しているディー・エヌ・エーだが、今度はZMPと組んで、ロボットタクシーの実現に向けて動き出した。両者は5月29日をめどに、合弁会社を設立。自動運転技術を活用した旅客運送事業の実現に向けた研究・開発を進めると発表した。

合弁会社の社名は「ロボットタクシー」(仮称)。資本金は7億円で、出資比率はDeNAが66.6%、ZMPが33.4%となっている。ZMP代表取締役社長の谷口恒氏が取締役会長に、DeNA執行役員 新規事業推進室長の中島宏氏が代表取締役社長にそれぞれ就任する。

ZMPは2001年の創業。当初はコンシューマ向けのロボットの開発・販売を手がけていた。30代以上の人であれば、同社のロボット「PINO」をアーティスト、宇多田ヒカルの「Can You Keep A Secret ? 」(2001年のヒット曲だ)のプロモーションビデオなんかで見たことがあるかもしれない。

そんな同社は現在、ロボットの技術を応用した自動運転技術開発用プラットフォーム「RoboCar」シリーズやセンサシステムの開発・販売を主力事業としている。IPOが間もなくと噂されたり、直近ではビジネスメディアへの露出も多いロボット関連の注目企業だ。

発表によると、合弁会社では DeNAのネットサービス運営ノウハウとZMPの自動運転に関する技術を連携させることで、ロボットタクシーやロボットバスなどの旅客運送事業の実現を目指すという。まずは自動運転技術の向上やサービスモデルの仮説検証などの実証実験を重ねていく計画だという。

DeNAはプレスリリースで次のように説明している。

過疎化や高齢化の進む地域のお年寄りや子ども、障がいのある方など不便な生活を送られている方々のサポートの役割なども担う新たな交通手段を実現させることでもあると考えており、ロボットタクシー事業の実現を通じて、将来的には日本の地方創生・地域再生の一助にもなれればと考えています。

また今回の発表にあわせて、DeNAでは「DeNA AUTOMOTIVE」のサイトをローンチしている。

名刺管理のSansanがオープン化、API公開でビジネスインフラ目指す

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法人向け名刺管理サービス「Sansan」がオープン化する。運営元のSansanが8月中旬をめどに、APIを無償で公開。APIを利用するパートナー企業は、Sansanの名刺情報を組み込んだソフトやサービスを開発・販売できる。現時点でマイクロソフトやセールスフォース、日本郵便など20社がパートナー企業に名乗りを上げている。

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Sansanはユーザーがスキャンした名刺を、OCR処理とオペレーター入力でデータベース化。名刺情報はクラウドを通じて組織内で共有できる。日経テレコンやダイヤモンド社の人事情報をもとに名刺情報を更新したり、同じ会社の社員が受け取った名刺を共有する機能もあり、クラウド上で常に最新の顧客情報を閲覧できるのが強みだ。

APIオープン化により、どういった連携製品が出てくるのか。例えば、はがきのデザインから投函までの一連の作業を依頼できるポータルサイトを開発中の日本郵便は、Sansanの名刺データベースと連携し、宛名の印字に活用する予定だ。

そのほかには、顧客管理データベースを手がける企業であれば、キーマンの情報が常に最新の状態に保たれる営業支援システムを構築できる。あるいは、名刺交換した顧客の情報が地図上にプロットされ、近くの営業先をすぐに参照できるマップも作れそうだ。

Sansanは2015年4月時点で3000社が導入していて、2017年までに1万社の導入を見込んでいる。今回のオープン化では、名刺データと連携した300以上の製品が生み出されると見ていて、これによってSansan自体の導入企業も増えると見込んでいる。

Sansan以外にも名刺をデータ化するサービスは珍しくないが、「名刺データを自由に活用できる世界は、誰も想像できていない」と、取締役の富岡圭氏は指摘する。「1年間で世界中で流通する名刺は100億枚以上。これまで捨てられていた情報を生かし、ビジネスインフラとしての価値を生み出したい」。

Sansan取締役の富岡圭氏

Sansan取締役の富岡圭氏

エビソルの予約台帳サービス「ebica予約台帳」が多言語対応、インバウンド需要見込む

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先日はクラウド予約台帳サービスの「トレタ」とヤフーの飲食予約店サービス「Yahoo!予約 飲食店」のシステム連携について報じたが、本日ご紹介するエビソルもクラウドで予約台帳サービスを提供するスタートアップだ。同社は5月12日、飲食店向けのクラウド予約台帳サービス「ebica(エビカ)予約台帳」の多言語対応を実施したことを明らかにした。第1弾として、英語および中国語(簡体字/繁体字)版の提供を開始する。

ebica予約台帳はiPadアプリおよびPCを使ったクラウド予約台帳サービス。また店舗のレイアウト図を使って配席・予約状態を一画面で管理可能。複数店舗のマネジメント機能も備える。24時間365日、オンラインでリアルタイムな予約に対応するほか、顧客の基本情報や嗜好・来店履歴等の登録機能もある。

また、ぐるなびやホットペッパーをはじめとした複数の飲食店予約サイトと自店の空席在庫を取り込み、予約の一元管理ができる。ただしこの仕組みは各グルメサイトをスクレイピングしているものがほとんど(ヒトサラについてはシステムを直接連携しているそうだ)。今後は各種サイトと正式なサービス連携を進めるという。価格は初期設定費が5万円、月額運用費が1店舗2万円(契約店舗数により応相談)。

特徴的なのは顧客のニーズに応じてサービスをカスタマイズして(厳密にはすでにある機能を、店舗ごとにオン/オフして提供するのだそう)サービスを提供していること。現在は気鋭のチェーン店や有名店を中心に導入を進めているそう。同社サイト上には、居酒屋チェーンの「塚田農場」、焼肉の「うしごろ」などをはじめとした導入店舗が掲載されている。サービスを利用するのは、導入準備中の店舗も含めて800店舗。店舗数ベースでは前述のトレタが4月時点で2600店舗。また同じく予約台帳サービスを手がけるVESPER(2014年2月創業。代表の谷口優氏はクーポンサイト「Piku」の立ち上げメンバーだった)の「TableSolution」が2月時点で1200店舗という報道もある。

今回の機能追加で、増加するインバウンド需要に対応していく。同社の顧客店舗の中には、すでに予約の半数が海外旅行者というケースもあるそうで、もともとニーズが高かった機能だという。エビソルでは2020年までに5万店舗の導入を目指すのだとか。

サービスを手がけるエビソルは2011年の設立。これまでに個人投資家および事業会社から資金を調達している。詳細については非公開だったが、金額は1億円以上になるのだそう。代表取締役の田中宏彰氏はインテリジェンスの元執行役員。同社にて2000年に三井物産とのジョイントベンチャーで、アルバイト採用メディア「OPPO」(その後インテリジェンスとサービス統合。さらに学生援護会も買収により統合した)を立ち上げるなど、人材関連の新規事業を手がけてきた。

「飲食店はメディアで集客して、店舗に送客する。そのハブになるようなサービスがなかった。そのため店舗のお客が新規なのか既存なのか、そもそもどんな客なのかといった情報をほとんど取れないでいた」と田中氏は当時を振り返って語る。顧客の属性を知り、効果的な集客支援を行う方法を模索する中で、予約台帳サービスを提供するに至ったのだそう。

ただし、2012年にリリースしたウェブ版のサービス自体は「顧客のニーズを満たせず、鳴かず飛ばずだった」(田中氏)のだそう。そこで気付いたのは、飲食店のニーズは顧客単価や立地、規模などでニーズが違うということ。そのため要望にあわせて提供する機能をカスタマイズする、さらにiPadアプリで提供して飲食店で手軽に利用できるようにするといったことを行い、現在に至る。

「世界の農業変える」日本発のガジェットSenSproutがIndiegogoに登場

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今年のSXSWで注目を集めた、日本発の農業ガジェット「SenSprout」がIndiegogoでキャンペーンを開始した。

SenSproutは、センサーを使って土壌に含まれる水分をモニタリングできるガジェット。双葉の形を模していて、根っこに当たる部分には導電性のインクで電子回路を印字。これが土の中に含まれる静電容量を測定する。この数値の変化によって、土壌の水分がわかる仕組みだ。葉っぱにあたる部分にも同様の印字があり、葉に含まれる水分を検知する。

電子回路の印字には、昨年のTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルで優勝した「AgIC」のプリント技術を採用。家庭用のインクジェットプリンターに、市販されているAgICの銀ナノ粒子インクカートリッジを装着するだけで、専用紙に電子回路を印字できる。(Indiegogoでは印字済みのセンサーがセットになっている)。

もう片方の葉っぱには、土壌と葉っぱに含まれる水分量を表すLEDライトを搭載。水分が足りなければ赤、ちょうどよければ青、多すぎる場合は緑に点灯する。給電は単3電池が1本のみで、約1年使えるという。今後は水分量をBluetooth経由で送信し、PCやスマートフォンでも水分量を確認できるようにするそうだ。

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土壌の水分を計測するセンサーは既存製品も存在するが、開発元であるSenSproutの三根一仁社長は、「センサーだけで約40〜50万円、大規模な農地に導入するとなると1000万円ぐらいかかることが珍しくない」と指摘する。

一方、SenSproutは印刷技術を使って電子回路を作れるため、価格は早割で1ロットあたり45ドルと、低コストで製作できるメリットがあるのだという。

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三根氏はスタートアップ支援を手がけるインスプラウトの社長でもあり、SenSproutには彼とともにネット家電ベンチャーのCerevoを立ち上げたメンバーが名を連ねる。

例えば、東京大学で特任研究員として農業を研究する西岡一洋氏、同じく東大で電子情報学を教える川原圭博准教授。両名が土壌の水分計測に関する基礎技術を研究していて、これをSenSprout社で製品化したかたちだ。

国内のクラウドファンディングではなくIndiegogoに出した理由は、「干ばつ被害が深刻な米国西海岸など、海外需要の高さを見込んだため」と三根氏。主な用途は家庭菜園やハウス栽培を想定しているが、今後は根が深い農作物が植えられた土壌の水分をモニタリングする“プロ仕様”のSenSproutも投入したいという。

「世界の生活用水の7割は農業に使われている。例えば食糧危機になって今よりも2倍の農作物が必要になったとしても、それをまかなえる水がない状況。SenSproutがあれば水の使用をもっと効率化でき、世界の農業を変える可能性がある。」

SenSproutの三根一仁社長

SenSproutの三根一仁社長

テレビで見た芸能人の衣装が買える、ファッションメディア「アイマニ」が資金調達

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テレビで見た芸能人の衣装が買えるファッションメディア「imanee(アイマニ)」を運営するニューワールドが12日、サイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)を引受先として、1000万円の資金調達を実施したことを明かした。

アイマニは芸能人や番組名、ブランド名、アイテム名で気になるアイテムを検索し、提携先のECサイトで購入できるメディア。例えば、石原さとみがドラマで着てるワンピースが欲しい。そんなときにアイマニで検索すれば、その場で即買えるというわけだ。

衣装情報は、提携する30社以上のアパレル企業からオンエア前に入手し、オンエア後にいち早く掲載。提携先以外のアパレル企業の衣装については、番組のエンドロールに一瞬だけ流れる衣装協力をもとに、人力で探しているのだとか。

ニューワールドの井手康博社長

ニューワールドの井手康博社長

ニューワールドは2013年11月、アイマニの前身となる「ガイダー」を公開。同社の井手康博社長によれば、その頃は録画したテレビのエンドロールを一時停止し、ネットで衣装を検索していたという。現在は2300点の衣装情報を掲載し、そのうち8割は、アパレル企業から事前提供してもらっている。

アイマニのアプリをリリースした2014年11月時点での月間PVは4万、ユーザー数は7万超。今年3月にはPC版をリリースした。今回調達した資金ではユーザーのヒアリングを繰り返し、グロースハックを強化するほか、マーケティングにも注力していく。

ついつい「だら見」し続けるサービスに——オタク特化のニュースアプリ「ハッカドール」にウェブ版、アニメ化も

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4月のGunosy上場でさらに注目の集まるニュースキューレーションアプリ。その中でもひときわ異彩を放つのが、ディー・エヌ・エー(DeNA)が手がける「ハッカドール」だ。これまでiOSアプリでサービスを展開してきたが、5月3日にはウェブ版をリリース。あわせて、10月からのテレビアニメ化を発表した。

オタク系コンテンツ特化のニュースキューレーションアプリ

ハッカドールは2014年8月にリリースされたスマートフォン向けアプリで、アニメやマンガ、ゲームなどいわゆるオタク系コンテンツに特化したニュースを閲覧できる。ユーザーが閲覧したり、記事の評価をしたりして、好みのコンテンツを学習。朝、昼、夜の1日3回、25件のニュースをプッシュして配信してくれる。

遊び心も満載だ。ハッカドール1号、2号、3号という美少女キャラクター(それぞれ声優もついている。厳密には3号は男の娘…つまり男性なんだそうだ)がアプリの機能を紹介したり、ログイン時などに入手できる仮想通貨「ハッカ」でプレイできるミニゲームも用意する。

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また、ユーザーの好むコンテンツを「成分」として表示できるが、通常表示だけでなくお弁当風(食品の原材料表示のように表示)、レシート風といった表示形式を用意。そのほかユーザーのさまざまなアクションに応じてのバッジ取得といった要素も盛り込んでいる。さらに同人誌へのキャラクターの利用を認めており、その旨を示す「同人マーク」もサイトに表示していることで話題となった。

こんな風に1つずつ書くとちょっとカタい印象もあるのだけれども、テキストの内容1つとってもネットスラングを使っていたりと、ネット好き、オタクカルチャー好きのツボを抑えた作りになっているのだ。

現在のダウンロード数は約60万件、月間8000万ページビューほど。ユーザー層は20代から30代の男性が中心。アクティブユーザーは非公開だが、とにかくリターンレートや1人あたりの記事閲覧率が高いのだそうだ。ニュースアプリとしてダウンロード60万件という数字は決して多いとは言えないが、ざっくり60万ユーザーで月間8000万PVという数字を見ればヘビーユーザーの多さは理解できるんじゃないだろうか。オタク系というジャンル特化型ということもあるのか、冒頭のGunosyや競合のSmartNewsなどと併用しているというユーザーも多いそうだ。

リリース時にこのアプリを見て、「上場企業が提供するニュースアプリにしてはずいぶんととがったものを出すなあ」という印象があった。プロダクトを手がける岩朝暁彦氏に聞いたところ、リリース当初は社内でも評価はさまざまなだったのだそうだ。「そもそも最初は社内のサークル活動程度だった。だが今ではサービスもチームも認識されている」(岩朝氏)

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岩朝氏はMBAホルダーで外資系コンサルティング会社の出身。英語と中国語にも堪能だという。もともとは海外向けの事業のためにDeNAに入社したが、一方プライベートではラノベ(ライトノベル)やアニメといったオタクカルチャーが大好き。当初は別の事業を手がけていたものの、最終的に趣味が高じてハッカドールのプロジェクトを立ち上げるに至った。「僕がやりたかったのはベンチャーがチャレンジするような(立ち上げの)フェーズ。どうせやるなら汗をかくような仕事をしたかった。そんな中で社内のアニメやゲーム好きのグループに誘われたのがきっかけ」(岩朝氏)

ウェブ版は「だら見」での利用を提案

ウェブ版では、アプリの「記事25本配信」という仕組みではなく、ユーザーごとに最適化された最新のオタク系コンテンツが常に表示される(オートリロードを備えるほか、新着記事があればページ上部に表示する)ほか、検索にも対応する。アニメやゲームオタク関連のキーワードを網羅している辞書を持っているのもウリの1つだそうで、検索のサジェスト機能が(オタク系コンテンツに限定して)非常に優秀だそう。

画面を見ていてSmartnewsの前身のサービス「Crowsnest」をちょっと思い出したのだけれども、岩朝氏いわく同サービスは多少意識しているそうだ。開発については「もともとMobageをやっていて、大規模運用やセキュリティ分かっているチーム。気心も知れているので、アジャイル風に素早く回している」(岩朝氏)

アプリのリリース直後からウェブ版のニーズはあったそうで、開発陣も将来の提供を見越して処理をサーバ側に集中させていた。だが岩朝氏をはじめとしたメンバーは、ウェブ版のハッカドールをどういう形で提供するのが最適か迷っていたのだという。

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「アプリ版は1日3回プッシュ通知でニュースを教えてくれるが、スマホとPCではユースケースが違う。ウェブ版に向けて出した答えは『だら見』。頭を空っぽにしても、なんとなくだらだらと見続けてしまう、そんなものにしたかった」(岩朝氏)。ユーザーの趣向に合わせてレコメンドされる記事は延々閲覧できるし、ユーザーが能動的に求める情報もキーワード検索や「あとで読む」機能で取得できるのが強みだ。

目指すは「初音ミクパイセン」—アニメやIP戦略も強化

マネタイズについてはECのほか、IPの展開も検討している。実はこのハッカドール、今回発表されたテレビアニメ化以前にも複数のソーシャルゲームに「ゲスト出演」しているほか、DeNAのマンガアプリ「マンガボックス」でもマンガ化されている。さらにさかのぼればコミケやアニメ関連イベントへの声優の出演などもある。岩朝氏は「(他プラットフォームとの)相互送客に関してはいろいろと仕込んでいるところ」と語る。

こういう話を聞くと、僕はクリプトン・フューチャー・メディアが生んだボーカロイドの「初音ミク」を思い浮かべたのだけど、岩朝氏も「まさに初音ミクパイセンですよ(笑)」と同意する。「(声優による)歌やトークなども含めて、全方位で作品として成長させていきたい。二次創作なんかも相互浸透性があると思っている」とのことだった。今後は独自コンテンツの展開も検討するとのことだ。

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リリース時にもプロモーション用の短編アニメを制作しているハッカドールだが、テレビアニメも短編アニメと同じく気鋭の制作会社「TRIGGER」が担当する。放映は10月2日23時から。放送局はTOKYO MX。

岩朝氏は「今後ウェブとアプリ、IPの2つでビジネスを作っていく」なんて語っていたのだけれど、もともとIPでのビジネスまでを考えていたのか。最後にそれを尋ねると「『キャラが一人歩きする思っていた』と言えたらいいが、そんなものではなかった。そもそも名前すら決めなかったから最後まで『ハッカドール1号(仮)』となっていて、そのまま1号という名前になったくらい」と答えた。

オタク系のカルチャーを取り入れたゆるい空気を作ってファンを集めているハッカドールだが、決してその中身がゆるいわけじゃない。バックグラウンドには大規模サービスを運営してきたDeNAのノウハウがあるし、オートリロードや検索のサジェスト、パーソナライズなど、ウェブのトレンドやテクノロジーを積極的に取り入れている。ウェブ版のリリースやIPのマルチメディア展開でどこまでサービスを拡大できるのだろうか。

日本郵政、高齢者サービスでApple、IBMと提携―iPadとAI利用で見守りやヘルスケアなど提供へ

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今朝(米国時間4/30)、日本郵政グループの西室泰三社長はAppleのCEO、Tim Cook、IBMのCEO、Ginni Romettyと共にニューヨークで記者会見を行い、共同で新事業に取り組むことを発表した。これはIBMとAppleのエンタープライズ事業での提携の成果の一つだ。

この夏発表されたApple/IBM提携では、IBMは大企業向けのソフトウェアを開発すると同時に大企業クライアントへのAppleのハードウェアの販売を助けることになっている。日本郵政は急速に増える日本の高齢者に対するユニークなサービスを提供するために、Apple/IBM提携のメリットを生かす考えだ。

西室社長は、記者会見の冒頭で、現在国有事業である日本郵政グループが今年中に株式上場を行う予定であり、同グループは「総合的なライフスタイルサポートサービス」の提供者に変身する計画だと述べた。日本郵政グループ(西室社長はその歴史は1871年に遡ると述べた)は巨大な保険事業を展開しており、IBMとAppleの協力を得てヘルスケア・サービスの拡充を図っていくことになる。

日本では65歳以上の人口が2006年の20%から2055年には38%に増加すると予測されるなど急速に高齢化が進んでおり、こうしたサービスを必要としている。日本郵政は高齢者サービスの拡充あたって2つの大きな柱を考えており、その第一の柱のカギとなるのがiPadだ。

西室社長は「高齢者にも使いやすいことで知られるiPadをベースにユーザー体験をデザインしていく」と述べた。その際にアプリの開発とクラウド・サービスでIBMの助けを借りることになる。日本郵政はヘルスケアサービスのコミュニティーを構築し、iPadとその上で動くアプリによって日本の高齢者にネットワーク化したサービスを提供する。2020年まで400万から500万世帯に普及させたい考えだという。日本郵政の高齢者サービス構想の第二の柱は、このサービスと既存のサービスとの統合だ。

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西室社長は「わが国の高齢化は急速であり、効果的な対策が求められている」と述べた。この点についてはIBMのRomettyも「高齢化は近くアメリカでも重要な問題となるだろう。アメリカだけでなく世界的に対策が必要とされる課題だ」と補足した。Romettyによれば、2050年には世界の人口の21%が「高齢者」に分類されるようになり、うち64ヵ国では高齢者の割合が30%にまで高まるという。

RomettyはIBMの日本郵政への協力は次の3点になると説明した。

その第一は、生活の質を高めるアプリの開発だ。独自開発とサードパーティーのアプリの統合の双方を行うが、いずれもアクセシビリィテーを最優先する。開発のターゲットはモバイル中心でアクセシビリィテーを高度に備えた点でiOSとなる。第二に、IBMは人工知能などの活用により現在提供されていないさらに高度なアクセシビリィテー機能を開発する。第三に、高齢者サービスを提供するバックエンドのレイヤーを提供する。

AppleのTim Cookはこのイニシアチブを「画期的」と評し、「日本だけでなく、グローバルに大きな影響を与えるものだ。われわれ3者とさらにそれぞれの協力者のチームは何百万という人々の生活を劇的に改善することを目指していく。(西室)泰三さんと日本郵政が示したこの分野におけるパイオニアになろうとする勇気、大胆さ、野心は賞賛すべきものだ」と述べただ。

Cookは日本郵政との共同事業に参加できたことはApple/IBMの「圧倒的な可能性」を実証するものだとしている。CookはまたAppleのヘルス事業への取り組みがさらに幅広い目標を持つことを説明し、HealthKit、ResearchKitなどを例に挙げた。CookはAppleのこれまでのヘルス分野での取り組みが日本郵政との事業に理想的な基盤を与えることも指摘した。

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現在、日本郵政の社員が行っている高齢者顧客の安否確認訪問をiPadで拡張、効率化するデモが披露された。 このデモでは日本郵政の社員が高齢者顧客と話をしながらiPadの設定を助けた。提供されるサービスには病院の診察の予約、処方薬を飲むよう促すメッセージ、荷物の受け取りなどがあった。

デモ・アプリにはAmazonのKindleタブレットのMaydayサービスのようにヘルプを提供する大きなクエスチョンマークのアイコンが表示されていた。また地域の配管事業者などは事前に審査を受け、承認されればこのシステムを通じてサービスを提供することができるという。

Appleがパートナーとして選定された理由について質問された西室社長は、「Appleがこれまでに実績を挙げてきた視覚、聴覚にハンディキャップのあるユーザーへのアクセシビリティーの提供は同社を選定した大きな要素だ」と述べた。最近Apple Watchに採用された振動を利用したタプティック・フィードバックなど、Appleデバイスのアクセシビリティーは今後もいっそう改善されるだろう。

RomettyはIBMのWatson人工知能を利用したWatson Healthがサービスのカギとなると述べた。また「世界中でこうした取り組みの必要性が高まっている。日本では日本郵政がすばらしいパートナーとなったが、他の地域ではそれぞれの実情に合わせて政府や民間企業とも協力していく」と述べた。

アメリカでは保険会社に詳細なヘルスケアデータを引き渡すことに懸念が生じるのではないかという質問に対して、Romettyは「データの種類によってきめ細かくオプトン、オプトアウトができるようにしていく。またビッグデータとして有益な分析を行う際には、個人が特定されないよう情報には匿名化処理を行う」と説明した。

高齢者ケア、高齢者サービスは今後多年にわたって急成長を続けることが確実なマーケットだ。今日の発表はIBMとAppleがこの分野にきわめて有望な一歩を踏み出したことを告げるものだ。日本における高齢化の進展の急速さを考えると、巨大な日本郵政グループは理想的なローンチ・カスタマーといえる。一方で、しばらく前からAppleのiPadセールスは頭打ちの傾向を見せていたが、これに対しても好影響が期待できるだろう。

Cookは「アメリカでも同様のプログラムは考えられるが、実現はまだ先のことになるだろう」と述べた。またIBM/Apple提携について「現在すでに22のアプリが公開されており、今年中にその数は100種類まで増えるだろう」と語った。

Appleジャパンのサイトにアメリカでのプレス発表資料の抄訳が掲載されている。日本郵政グループ、IBM、Apple、日本の高齢者がサービスを通じて家族・地域コミュニティーとつながるために、iPadと専用アプリケーションを提供 

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

宅配クリーニングのバスケット、アパレルのクロスカンパニー子会社に—非IT企業による買収は「スタートアップの1つの道になる」

インターネットを利用した宅配クリーニングサービス「BASKET」を運営するバスケットは、4月28日付けでアパレルブランド「earth music&ecology」などを展開するクロスカンパニーの100%子会社となった。クロスカンパニーによる取得価格は非公開。バスケット代表取締役社長の松村映子氏はBASKETの事業を継続すると同時に、クロスカンパニー執行役員として、同社のECやネット関連の新規事業にも携わる。

一度目の起業は2年以上サービスを続けても鳴かず飛ばずだったという女性起業家。二度目のチャレンジでは、元オプト代表取締役CEOの海老根智仁氏、元enish代表取締役社長の杉山全功氏、DeNA共同創業者で投資家の川田尚吾氏、Genuine Startupsが支援。創業わずか1年で、年商1000億円超のアパレル会社が買収するに至った。

 14歳で起業を決意、最初の起業で苦い経験

BASKETはネットを利用した宅配クリーニングサービスを展開。ネットで注文をして宅配業者が専用のボックスで衣類を引き取り。提携する工場でクリーニングを行い、最短5日でユーザーの元に届ける仕組み。料金はワイシャツで240円から。競合にはYJキャピタルやジャフコが出資するホワイトプラスの「リネット」などがある。

サービスを提供するバスケットの創業は2014年4月。それだけ見ればわずか1年だが、現在32歳の松村氏にとってこれは二度目の起業となる。BASKETはメディア等に露出せず事業を続けていたこともあって、僕も聞いてはいたもののサービスを紹介したことはなく、いきなり買収に関する取材をすることになるというちょっと珍しいパターンだった。

「中学生の頃から友人に頼まれたりして、服を自分でアレンジしたり、作ったりして売っていた」という松村氏。中高生のお小遣い稼ぎにこそなれど、当時はすべての作業を自分で行っていたためその規模は小さい。ものづくりはやはり組織で行わないといけない、と14歳で起業を決意したのだそう。

そして大学で情報工学を学び(そこでTaskRabbit風のクラウドソーシングサービスを立ち上げたがうまくいかなかったそう)、一部上場のコンサルティング会社に入社。IT関連企業のコンサルを4年ほど経験した上で退社。インキュベーションプログラム(松村氏は明言しなかったが、デジタルガレージグループのOpen Network Labだ)に参加したのち、2011年5月に元同僚など4人で女性向けサブスクリプションコマース(定期購入)を展開するスタートアップを立ち上げた。

当時は雨後の竹の子のごとくサブスクリプションコマースが登場し、消えていったのだけれども、松村氏の会社もその1つ。冒頭でも触れたとおり鳴かず飛ばずで「全然うまくいかなかった」(松村氏)のだそう。

「サブスクリプションコマースの仕組みは、事業者がテーマに合った商品をキュレーションし、それを仕入れて送るというもの。だが知名度のないスタートアップでは仕入れにも苦戦した。そうなると結局、仕入れ元にもユーザーにもバリューを提供できるような仕組みを作ることができなかった。同時に私もCTOも開発ができるのだが、そのせいで『作ること』に専念しすぎて、苦手だったことに手が回っていなかった」(松村氏)。3年目には事業は休止状態となりコンサルティングや受託で収益をあげていたが、その会社をいったんクローズ。CTOと2人でバスケットを設立するに至った。

ネットとリアルの融合に期待—著名起業家らが支援

最初にバスケットの創業時に出資したのは、前回の起業でも資金を提供していたGenuine Capital(当時はMOVIDA JAPANのインキュベーション・シード投資部門だった。その後投資部門が独立したかたちになっている)と川田氏。Genuine Capitalの伊藤健吾氏は「MOVIDAの頃からシード投資をしてきたが、数を打って起業家をあおるだけでなく、失敗しても二度目のチャレンジをするのであればその支援をしたいと思っていた。バスケットはその1社だった」と語る。

前回の起業でも投資を検討したという川田氏は、「(ネットで完結するのではなく)リアルに寄ったサービスが伸びると考えていた。そして大きな会社がそのポータルになりたがっている状況。ITが分かるチームが生活関連向けのサービスを手がけるのであれば、いいモノが作れるのではないかと思った」とした。2人の投資から数カ月して杉山氏、海老根氏からも資金を調達をした(金額に関しては非公開だが、「2人のチームで1年ほど事業を回せる程度」(伊藤氏)とのこと)。

杉山氏もザッパラス、enishの前にはリアルビジネスも経験しており「ネットとリアルの融合というのは絶対出てくると思っていたがそこで求められるのは泥臭さ。それをやってのけるチームだと思った」と語る。実際提携するクリーニング工場は電話で問い合わせたり、ネットに情報がないので松村氏が直接出向いたりして口説いていったのだそう。

クロスカンパニーでは、今年度からアパレルに加えてインターネット・ライフスタイル事業へ参入し、生活周辺サービスのプラットフォームを作るとしている。BASKETもそのプラットフォームの一翼を担うことになると同時に、クリーニングにとどまらないビジネスを展開するとしている。

非IT企業の買収は「スタートアップの1つの道」

今後も継続して事業に携わるだけでなく、クロスカンパニーグループのIT部門を統括する立場になるという松村氏。子会社化という選択肢について、次のように語った。

「黒字化はまだこれからだったが、ユーザー数やリピート数は伸びているし、起業経験もある投資家陣にはいつも学ばせてもらっている。正直言うとこのままでも伸ばせた自信はある。でも二度目の起業、それも1年でお声がけ頂いたというのは、スタートアップとしては1つの道になると思う。今後はITではない会社がITスタートアップを買収することもあると思う」(松村氏)