ジェフ・ベゾスの資産世界一は一瞬だけ――AmazonのQ2は平凡、株価やや下げる

今日(米国時間7/27)、Amazonは第2四半期の決算を発表した。投資家にとって平凡な内容であり、株価は3%下がった。CEOのジェフ・ベゾスは決算発表の直前に一瞬だけビル・ゲイツを抜いて資産世界一になっていたが、株価下落によってたちまち冷たい現実に直面することになった。ベゾスは依然として世界で2位の金持ちにすぎない。

冗談はさておき、今期Amazonは137億ドルで Whole Foodsスーパーマーケット・チェーンを買収しており、その決算はAmazonにとって大きな意味を持つものだった。しかしAmazonは途方もないサイズの取扱総額からごく薄い利益を絞り出すというこれまでのやり方を踏襲したようだ。しかしAmazonがWhole Foods買収を完了し全米で数百にもなる現実店舗の運営をするようになれば、この方式には市場から強い圧力を受けることになるかもしれない。

問題はAmazonの多様な事業の損益がきめて広い範囲に散らばっていることだ―4億ドルの損失もあれば3億ドルの利益もあるという具合だ。同社はこれまでアグレッシブな成長を続けながら利益も確保してきた。しかし来期にはこの路線も限界に突き当たる可能性がある。Whole Foodsの買収を境として、今後Amazonは成長するために投資すれば赤字となるモードに戻るかもしれない。

Amazonの株価は今年驚くべき急上昇をみせた。今年初めと比較して40%もアップした。この値上がりでベゾスは一瞬だがビル・ゲイツを抜いて世界一の金持ちになった。 パソコンをベースにした現実世界とインターネットをベースにしたオンライン世界との交代を象徴するものと受け取られた。AmazonはAlexaで音声認識の世界へ、Twitchでビデオ・ストリーミングの世界に進出したが、Whole Foodsで現実世界の小売業に戻って来たともいえる。

決算資料からAmazonの巨大なオペレーションを支える重要な柱はAWSだということが分かる。Amazonの営業利益は前年同期の7億1800万ドルから今期は9億1600万ドルにアップした。今期純益は1億9700万ドルで前年同期の8億5700万ドルから大きくダウンした。サーバー事業はAmazonの利益を維持する部門であり、仔細に検討するなら、AWS事業そのものだと分かる。この事業はビジネスとして軌道に乗り、年間100億ドルの売上をもたらしている。

AmazonのEPS〔1株あたり利益〕は0.4ドル、で売上は380億ドルだった。アナリストの予測はEPSが1.42ドル、売上が371億8000万ドルだった。売上は前年同期比で25%アップしている。

全体としてAWSは昨年同様のペースで成長を続けている。Amazonは今期AWSの売上は対前年比で42%%アップしたとしている。2016年第2四半期の対前年比成長率は58%だった。今年の成長率はややダウンしているものの健全な成長を続けていることはAmazonにとって重要だ。世界の多数の企業がAWSをインフラとして利用している。Amazonは毎期きわめて高い利益率を誇っている。

もちろんクラウド事業の競争は激しさを増す一方だ。ことにGoogleがクラウド事業に本格的に取り組み始めたし、 Microsoftも当然ながらライバルだ。AWSはクラウド・コンピューティングのパイオニアであり今やほとんどその代名詞ともなっているが、世界の大企業、スタートアップのニーズを満たしていくためには日々サービスを拡充していくことを怠れないだろう。

画像:Drew Angerer/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ベゾス、Amazon株を毎年10億ドル売却して宇宙事業の資金調達―乗員カプセルのモックアップを披露

Amazonのファウンダー、ジェフ・ベゾスは彼の他の事業の資金を得るために保有するAmazon株式の一部を売却する計画だ。 Reutersによれば、ベゾスは発表した。33回目のスペース・シンポジウムで 毎年10億ドル相当のAmazon株を売却して有人宇宙飛行を目指すBlue Originの資金にあてると述べた。ベゾス保有するAmazon株式は、水曜日の引け値で735.4億ドルの価値があるから、10億ドルの株式はごく一部に過ぎない。

Blue Originはイーロン・マスクのSpaceXと同様、ロケットの再利用によるコストダウンにより最終的にはそれ自身で黒字化を達成することを目標としている。このコストダウンによって宇宙で健全ビジネスが展開できると考えている点もSpaceXに似ている。ベゾスは「ロケットの再利用がビジネスの成功のカギ」というマスクの考え方に賛成した上で、「目標は似ているものの、われわれわれエンジニアリングのアプローチは〔SpaceXとは〕異なる」と述べている。

SpaceX同様、Blue Originも有人飛行の実現を目指している。Blue Originが有人宇宙飛行のために開発中のNew Glennロケット・システムは合計25億ドルのコストがかかるものと推定されている。これは巨額だがベゾスの資産も巨大だ。Blue Origin事業はビジネスであると同時に、ベゾス自身の情熱の対象でもあるようだ。ベゾスは引き続き現在のペースで資金援助を続けるとみていいだろう。

Blue Originは宇宙観光旅行を目指している。ベゾスは2018年を有人宇宙飛行開始の目安としている。シンポジウムでは11分間の宇宙旅行に用いられるのと同じサイズのリアルな乗員カプセルのモックアップが披露された。

画像:Mark Wilson/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

これがジェフ・ベゾスの次世代ロケットだ―Blue Origin、New GlennのCGビデオ公開

ジェフ・ベゾスの宇宙企業、Blue Originは次世代大型ロケット、New Glennを開発中だ。Blue Originはさきほどビデオを公開し、このスーパーロケットがどのように打ち上げられるかを紹介するCGビデオを公開した。ネタバレになってしまうが、これはSpaceXのFalcon 9に非常によく似ている。

下にエンベッドしたビデオで、ロケットはBlue Originの発射基地から垂直に打ち上げられ、洋上を航行する大型プラットフォームに垂直に着陸する。これは現在SpaceXが用いているのとほぼ同様の方式だ。ただしCGアニメを見るかぎりでは、New Glennの着陸プラットフォームは大型船上に設けられており、乗員がいるもようだ。SpaceXのブースターはこれと異なり、自律航行する無人の艀に着陸する。

今回のビデオはBlue Originが宇宙計画の紹介するメディア・ツアーの一環でだ。昨日(米国時間3/6)、ベゾスは次世代ロケットで用いられるBE-4 エンジンを公開した。これに続いて今日、ベゾスはフランスの衛星テレビ企業、Eutelsatと契約を結んだことを発表した。この契約によれば、Blue Originは2021年ないし2022年に静止軌道に放送衛星を打ち上げる計画という。

SpaceXとBlue Originは本格的な宇宙競争に突入したようだ。平和的な競争なのが何よりだが、この2社のアメリカ企業の目標ははたいへん似通っている。つまりブースターを再利用することによって劇的なコスト削減と打ち上げ回数の増加を狙っている。Blue Originは2015年にNew Shepardでブースターの垂直着陸に最初に成功しSpaceXを出し抜いた。しかしSpaceXはその年の後半になってNew Shepardよりはるかに大きい実用衛星打ち上げロケット、Falcon 9で垂直着陸に成功し、その後も着陸を繰り返している。その中には洋上の艀への着陸も含まれる。現在、
両社とも月を目指しているという。さいわいなことに両社の競争はゼロサム・ゲームではない。どちらが勝つにしても本当の勝利は人類のものだ。

〔日本版〕 Blue Originのロケットはアメリカ初の有人宇宙飛行プロジェクト、マーキュリー計画の乗員の名前から命名されている。アラン・シェパードはアメリカ人として初の大気圏外飛行をした人物となった。ジョン・グレンは衛星軌道を飛んだ初のアメリカ人で、後にオハイオ州選出の上院議員を長く務めた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Amazon、米国内で10万人を新規雇用へ―トランプ次期大統領、早くも功績を強調

Tech CEO's meets with President-elect Donald Trump at Trump Tower December 14, 2016 in New York . / AFP / TIMOTHY A. CLARY        (Photo credit should read TIMOTHY A. CLARY/AFP/Getty Images)

ドナルド・トランプが正式にアメリカ大統領に就任するまでまだ1週間ほど先あるが、トランプ政権は早くもアメリカ国内の雇用増加の実績を誇ろうとしている。これまでのところで目立つのはインディアナ州に所在する空調設備大手のCarrierと日本のテレコムの巨人、SoftBankの計画だ。

今回、職の創造に関するトランプ政権のヒットは意外なところからやってきた。今週、Amazonは、向こう1年半でアメリカ国内で10万人を新規雇用する計画を発表した。Amazonによれば、同社は過去5年間に15万の新たな職を作ってきたという。

たしかに巨大なスケールではあるが、さまざまな分野でのAmazonの急速な成長を考えるとある程度予想できた数字だ。プレスリリースでAmazonのCEO、ジェフ・ベゾスは新規雇用は主としてフルフィルメントセンター、ロジスティクス、クラウドテクノロジー、機械学習の分野で実現されるだろうと述べた。

トランプ・チームはこれまでAmazonに対して批判を繰り返してきたが、今回は素早く歓迎の意向を発表した。アメリカ国内における職の確保は次期大統領が選挙戦を通じて公約としていた重要項目だ。

今日(米国時間1/12)、ショーン・スパイサー次期大統領報道官はメディア向けカンファレンス・コールで次のように述べた。

今回のAmazonの発表に先立って、次期大統領はテクノロジー業界のトップ経営者グループと会談し、アメリカ国内における職の確保と増大に留意するよう要請している。次期大統領はAmazonの意思決定になんらかの役割を果たせたと考えて満足している。

スパイサーが指しているのは最近ニューヨークのトランプ・タワーで開催された会談だ。これにベゾスも出席したが、トランプは選挙戦を通じてAmazonのビジネスを批判し続けた。トランプはベゾスとAmazoはの「大型の独禁法違反」や「租税回避」を行っていると非難し、「大統領に当選したなら厳正に対処する」と脅していた。

ベゾスは(多少の皮肉も含まれていただろうが)「トランプについては様子を見る必要がある」としていた。

その後ベゾスとトランプという大富豪の間にはロマンスが芽生えたのかもしれない。ベゾスはトランプとの会談で和解的な(少なくとも希望を交えた)会話を試みたようだ。会談後、プレスに次のように語っている。

次期大統領ならびに政権移行チーム、テクノロジー業界のトップとの今日の会談はきわめて生産的なものだったと思う。次期政権がイノベーションを政策の重要な柱とするという見解に私は同感だ。イノベーションはテクノロジー産業のみならず農業、製造業、インフラその他あらゆる面でアメリカの雇用を大きく増加させるだろう。

もちろんAmazonは新規雇用の理由として同社の成長も指摘するだろうが、計画発表のタイミングはトランプ・チームにとって追い風となった。われわれはAnazonに対してスパイサー次期報道官の説明にあった「大統領が果たした役割」が実際どのようなものであったか問い合わせている。

〔日本版〕トップの写真はドナルド・トランプとテクノロジー業界のリーダーの会談を撮影したもの。テーブル正面にトランプ次期大統領、向かって左にペンス次期副大統領、Facebookのシェリル・サンドバーグ、Googleのラリー・ペイジ、テーブルの角にAmazonのジェフ・ベゾスが見える。トランプの向かって右隣は政権移行チームの重要メンバーでこの会談の人選をしたといわれるベンチャー・キャピタリストのピーター・ティール、その右がAppleのティム・クック、Oracleのサフラ・カッツ。会談にはTeslaのイーロン・マスク、Microsoftのサティヤ・ナデラ、IBMのジニ・ロメッティーらも参加している。Googleからはエリック・シュミットも出席した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Amazon CEO Jeff Bezosがまたバイオテク企業に投資、今度は新しいアンチエージング療法のスタートアップだ

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シリコンバレーでは必ず何年かに一度、不老不死や長寿を喧伝する者が現れる。その前に、そんなに長生きをして一体何をするのかを、考えておいた方がよい、と私は思うのだけど。今度登場したUnity Biotechnologyは、加齢に関連した症状の進行を遅くすることによって長寿を実現する、と主張するスタートアップだ。同社は今日(米国時間10/27)、シリーズBで1億1600万ドルという巨額を調達したことを発表した。投資家の中には、AmazonのJeff Bezosもいる。

体(からだ)が、細胞の老化を遅らせることがある。何かのストレスで、細胞が分裂を停止することがあり、それは、がん細胞の分裂と成長を停止することもあるから、抗癌治療にも利用できる、と考えられている。でもそんな細胞が多すぎると、加齢とともに別の問題が生じる。Unityが追究しているのは、炎症や、加齢と結びついているその他の疾病を起こす古い細胞を、体が積極的に捨てるようにするための方法だ。

Unityの技術には、体の老化を遅らせる可能性があり、科学や医療分野の上位投資家たちの関心を招(よ)んでいる。またバイオテクノロジー分野の非上場企業としては、相当巨額な資金を獲得した少数企業の、仲間入りをしている。

Bezosは、前にもバイオテクに投資している。それは2014年のJuno Therapeuticsだが、そのときは彼のVC Bezos Expeditionsからの投資だった。Junoはがんの免疫療法で画期的な発見をして、バイオテク企業としては数少ないIPO成功企業の一つになった。

バイオテク企業への投資案件の多いスコットランドのミューチュアルファンドBaillie Giffordのほか、Venrock, ARCH Venture Capital, Mayo Clinic, WuXi Pharmaceuticalsなどがこの投資ラウンドに参加した。

同社の発表によると、元KYTHERA BiopharmaceuticalsのCEO Keith Leonardが新たにCEOになり、これまでのCEOで協同ファウンダーのNathaniel “Ned” DavidはUnityの社長になる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Amazonのファウンダー、ジェフ・ベゾスがスタートレック Beyondにカメオで登場する

COLORADO SPRINGS, CO - APRIL 12: Founder of space company Blue Origin, Jeff Bezos, speaks about the future of commercial space travel during the 32nd Space Symposium on April 12, 2016 in Colorado Springs, Colorado. Bezos, founder and CEO of Amazon, spoke to the crowd about the business and future of commercial space travel and how his new company, Blue Origin, is looking to make that more accessible to the general public. (Photo by Brent Lewis/The Denver Post via Getty Images)

資産600億ドルの大富豪だったら、いろいろなことができる。宇宙観光旅行の会社を作ったり、深海を探査したり、スタートレックに、短時間だが金のかかった出演をすることもできる。

スタートレック Beyondの監督、ジャスティン・リンとプロデューサーのJJ エイブラムスはAmazonのファウンダー、CEO、ジェフ・ベゾスがこの秋公開される最新作で謎のエイリアンの一人としてカメオ出演していることをことを確認した。リンはもちろんベゾスについてベタ褒めだ。スケジュールが立て込んだ撮影現場で「ベゾスは常に完璧だった」とリンは語った。

一瞬だが重要な役割を果たすベゾスの姿は無事に移動撮影のカメラに捉えられたようだ。大富豪は現場に大量のセキュリティー・チームを引き連れて現れたという。カーク船長を演じた主役のスター、クリス・パインはこれに驚いた。「最初誰だか全然知らなかった。ともかくすごいVIPなのは分かった」そうだ。

〔日本版〕映画は10月21(金)から日本で公開予定。Facebookにも公式ページがある。これまでのスタートレックの歴史についてはこのページが詳しい。

画像l: Brent Lewis/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

宇宙観光、大きく近づく―ジェフ・ベゾスのBlue Origin、同一機体の打上げ・回収に4回連続成功

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Blue OriginはNew Shepardブースターと乗員カプセルの宇宙への打ち上げと安全な回収に成功した。用いられた機材は過去3回軌道飛行に成功しており、これで4回目の宇宙旅行となった。ジェフ・ベゾスのBlue Originは世界で最初に宇宙観光旅行を提供する民間企業となるという目標に向けて大きく前進した。

この成功でBlue Originは弾道軌道を飛行するロケットが繰り返し使用に耐えることも証明した。

今日(米国時間6/19)の無人飛行ミッション目的の一つは、乗員カプセルの減速パラシュートの一つが作動しなかった場合でも安全に着陸できることを確認する点にあった。Blue OriginではNew Shepardシステムで有人ミッションを行う前にあらゆる面で安全性を高めるべテストを繰り返している。

パラシュートが開かないというのはありそうにないシナリオと思われるが、実は過去に起きている。ジェフ・ベゾスは以前、アポロ15号が降下中にパラシュートの一つが開かなかった例を挙げた。

Failed parachute during Apollo 15 / Image courtesy of NASA

アポロ15号のパラシュートの一つが作動不良 / 画像: NASA

これに先立つ3回の打ち上げと異なり、New Shepardシステムにいくつかの改良が加えられ、また打ち上げから着陸までの一部始終がライブのウェブキャストで中継された〔ライブ録画は下にエンベッドされている〕。

打ち上げ後、ほぼ11分でNew Shepardシステムは高度100kmを超えて宇宙に達し、その後ブースター、乗員カプセルの双方が安全に地上に降り立った。New Shepardシステムは弾道飛行中に約4分間の無重量〔マイクロG〕状態を経験した。

New Shepard upon descent, slowed by circular fin on the top and smaller fins along the outside / Screenshot of Blue Origin webcast

降下中のNew Shepard。ブースター上部に、大型のリング型フィンとスタビライザー、下部に小型の安定用フィンが見える。 / Blue Originのウェブキャストのスクリーンショット

New Shepardのロケットブースターの上部(乗員カプセルと接合する部分)の円周にはリング型の安定フィンが取り付けられ、降下中の空力安定性を増している。ローンチパッドの直上でメイン・エンジンを逆噴射し、時速5マイル〔8キロ〕程度にスピートを落とす。着陸脚が展開してブースターは静かに着陸するという仕組みだ。

Blue Origin's New Shepard vehicle touches down as the crew capsule begins its descent / Screenshot of live Blue Origin webcast

ローンチパッドに着陸したブースター。インセット内はパラシュートで減速しながら降下する乗員カプセル / Blue Originのウェブキャストのスクリーンショット

ブースターが安全に着陸した後、われわれの注意は乗員カプセルに移った。ウェブキャストで鮮明に映されているとおり、カプセルからはパラシュートが2個しか打ち出されていないが、これは安全性テストのためで、計画どおりだ(このシステムでは減速パラシュートは3個が用いられる)。乗員カプセルはタッチダウン数秒前に小型エンジンを逆噴射してさらに減速する。着地の瞬間の下向き速度はわずか時速2マイル(3.2キロ)程度だという。

Blue Originの説明によると、このような正常に行われた着陸では乗員は「枕をして横になっている」ようなソフトなショックしか受けないという。

New Shepard crew capsule descent with two parachutes deployed / Screenshot of BlueOrigin webcast

New Shepardの乗員カプセルが西テキサスの山なみを背景に降下する / Blue Originのウェブキャストのスクリーンショット

ウェブキャストの解説者を務めたエンジニアによれば、乗員カプセルの着地は「完璧に計画の通りであり、大成功」ということだ。

打ち上げ前の解説によれば、もし降下中に乗員カプセルに何か問題が検知されれば即座に「パラシュートの不具合のテスト」は中止され、3個のパラシュートすべてが作動する手はずになっていた。Blue Originではカプセル・ハードウェアの安全な回収を最優先事項としているためだという。

カプセルは料金を支払った観光客を念頭に置いて設計されている。Blue Originの企業としての当面の目標は観光客を宇宙まで往復させることだ。乗客の視界を最良のものとするため、これまで宇宙に到達したカプセルとしては最大のサイズの窓が設けられている。

ただしこれまでテストされてきたカプセルには本当の窓は設けられていない(外観では判別しにくいが、窓はペンキで描かれたもだ)。しかし次回以降の打ち上げにはカプセル表面積の3分の1にも及ぶ窓が設置される。

New Shepard crew capsule / Image courtesy of Blue Origin

窓を設置した新しい乗員カプセル / 画像: Blue Origin

今回のミッションの成功でBlue Originは同一のブースター、乗員カプセルを4回(おそらくはそれ以上)繰り返して軌道飛行させることことできるのを実証した。

ジェフ・ベゾスは当面の目的として早ければ2018年にも最初の有人飛行を行う準備をしている述べた。 今回のミッションの成功でBlue Originが世界で最初に有人宇宙旅行を実現する民間企業となる可能性は高まった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

絶好調のQ1決算で輝きを放つAmazon Web Service

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Amazonは今日(米国時間4/28)第1四半期の決算を発表し、その内容は期待を裏切らなかった。アナリストの予測をほぼ全部門で上回り、株価は12%以上上昇した。

特に大きい存在がAmazon Web Serviceだ。AWSは多くの企業で必需品となっていることから、この部門が順調に伸び続けていることに不思議はない。その対前年比成長は膨大であり、これはGoogleやMicrosoftらとの競争が激化しているにもかかわらず、需要が未だに伸びていることを意味している。この調子が続けば、AWSは益々この会社に膨大な利益を与えることになりそうだ。過去12ヵ月間の売上は約90億ドルだった。

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ほぼ一生涯を消費者向けサービスに注力している会社が、新たなビジネスを一から作り成長させることには、他の巨大IT企業も新たなビジネスを探して仕掛けてくることを考えると、いつ見ても感銘を受ける。FacebookならVRやWhatsApp等のサービス。Googleなら自動走行車のような壮大な計画。これらはまだ結実していないが、AWSは本物のビジネスになってきたことを示している。

さらに興味深いのは、AmazonのAWS部門の営業利益が、同社の北米の中核ビジネスよりも大きいことだ。同社によるとAWSの営業利益は6.04億ドルで、それに対して北米の中核事業の利益は5.88億ドルだった。このビジネスは、Eコマース事業より売上は少ないが、一見したところ運用効率が高く、未だ順調に成長を続けているようだ。Bezos自身、AWSが年間100億ドルのビジネスになることを期待していると株主宛の書簡に書いている。

成績表は以下の通り:

  • 1株当たり利益1.07ドルは、予測を0.58ドル上回った。2015年Q1は1株当たり0.12ドルの損失だった。
  • 売上は291.3億トルで、アナリスト予測の279.8億ドルを上回り、前年同期比22%増。
  • Amazon Web Serviceの売上は25.7億ドルへと伸びた — アナリスト予測の25.3億ドルを上回った。前年同期は15.7億ドルであり、約64%の急上昇だった。
  • 同社はQ2の売上を、280~305億ドルと予測している。
  • 前受収益は37.7億ドルで、前期の31.2億ドルから上昇した。
  • テクノロジーおよびコンテンツ収益は35億ドル、2015年Q1の28億ドルから上昇した。
  • 海外売上は96億ドルで、前年同期の78横ドルから上昇した。

かくして同社は、全員の予測をほぼ全部門で上回る実績を上げた。Amazonはビデオストリーミングをはじめとする山ほどの新市場に拡大し、ウェブサービス事業も拡大し、そしてもちろん年額99ドルのPrime会員がいる。さらにFire TVとAmazon Echoでデバイス事業の製品ラインアップも増やしている。

株価では何が起きているのか? 基本的にAmazon株は決算発表後には必ず大きく揺れる。第4四半期で予測に届かなかった後、株価は13%下落した。全般的には厳しい年だが、同社は好調な株の一つだ(42%高)。これだけ成功した四半期の決算報告をした今日、大きな値動きがあるのは当然だろう。

投資家が注目している重要な一点は、Amazon Primeメンバーシップに関する傾向情報だ。理論的に、物品の配送を簡単、低価格にすることで、もっと買うよう顧客を説得すれば、増加する配送コストを上回る利益を上げて、事業を維持できる。それは理論的に、前受収益として計上され、現在これが増え続けているようだ。

この決算報告書に見られる、もう一つの大きな傾向がある。Amazonは4期連続で利益を上げた。同社は歴史的に、利益には熱心ではなく、成長のみに投資して定常的に損を出し続けてきたが、今はそのビジネスを儲かるマシンへと変えつつあるようにみえる(少なくとも、ある程度その方向に焦点を合わせている)。

Screen Shot 2016-04-28 at 1.55.48 PM例によってAmazonはハードウェア製品について、新しい詳細情報を公開していない ― 新しいKindle(Kindle Oasis)1機種と、Amazon Alexaを使った新デバイス2機種を発売していたのだが。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ジェフ・ベゾスの宇宙ロケット、Blue Origin、再度の打ち上げ・地上回収に成功

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昨日(米国時間1/22)、ジェフ・ベゾスが創立したBlue Originは何の予告もなくいきなりNew Shepherdロケットを打ち上げた。ロケットは宇宙を準軌道飛行した後、無事に地上に着陸することに成功した。この種のミッションに成功したのはBlue Originが史上初で、ジェフ・ベゾスはまたも歴史の1ページを書いたことになる。今回の飛行が特筆すべきなのは、打ち上げられたのが昨年11月に宇宙飛行したその同じロケットだという点だ。

地上への回収に成功したNew Shepardロケットはテキサス西部のBlue Originの実験場から発射され、無人のカプセルを高度101.7kmまで運んだ。ブースターロケットとカプセルは両方とも無事着陸に成功した。国際航空連盟が大気圏と宇宙との境界と認めているカーマン・ラインの高度は100kmだから、わずかではあるがそれを超えたことになる。

ブースターロケットは発射地点に戻り、逆噴射によってゆっくり着陸した。カプセルは3基の大型パラシュートを開き、逆噴射を併用して別な場所にこれも安全に着陸いた。

Blue Origin's New Shepard flight profile / Image courtesy of Blue Origin

Blue Origin’s New Shepard flight profile / Image courtesy of Blue Origin

New Shepherdの飛行のビデオは「「発射、着陸、繰り返し」とタイトルを付けられている。コンセプトは単純だが、これを実現しつつあるベゾスのBlue
Originやイーロン・マスクのSpaceXはまさに宇宙ビジネスに革命を起こしつつある。

昨年11月にBlue Originは今回使われたのと同じロケットを用いて同様の宇宙飛行を行い、カプセルは100.5kmの高度に達した。

New Shephardのカプセルは将来、ツーリストを有料で載せて準軌道を飛行する計画だ。リチャード・ブランソンのVirgin Galacticも同様の低層宇宙にツーリストを往復させようとしている。

Blue Originの公式ブログで、同社のファウンダー、ジェフ・ベゾスは、再度の打ち上げにはいくつかの部品の交換と同時にソフトウェアの大幅な改良が行われたことを明らかにした。

去る12月、イーロン・マスクのSpace XはFalcon 9ロケットで衛星を打ち上げた後、ロケット・ブースターを地上に着陸させることに成功している。ただしマスクを含む大勢の専門家が、ロケットの再利用に成功したといっても、衛星を打ち上げ可能な大型実用ロケット、Falcon 9と準軌道飛行を目的とした小型ロケットの間には大きな差異があることを指摘した。

Getting to space needs ~Mach 3, but GTO orbit requires ~Mach 30. The energy needed is the square, i.e. 9 units for space and 900 for orbit.

— Elon Musk (@elonmusk) November 24, 2015

宇宙高度に到達するだけならマッハ3でいいが、弾道飛行にはマッハ30が必要。エネルギーは2乗以上だ。つまり9に対して900のエネルギーが必要になる。 

しかしベゾスはNew ShephardはBlue Originが開発しようとしてブースターの中で最小のものだと述べた。つまりBlue Originには今後さらに大型の軌道カプセルの開発計画があるということだ。ベゾスはこう述べている。

われわれが軌道旅行ビジネスに参入してからすでに3年以上になる。計画している軌道カプセルは最小のモデルでも〔今回打ち上げられた〕New Shepherdの何倍も大きい。今年中にこの軌道飛行カプセルについて詳しいことが発表できるものと期待している。

【略】

過去3ヶ月の実績をみると、Blue OriginとSpace Xは宇宙ビジネスの革命に向けてすでに大きな前進を遂げた模様だ。

画像: Blue Origin

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ジェフ・ベゾス、SpaceXにケチをつける(SpaceXが何年も前からロケット着陸に成功していることを忘れている)

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さて、Twitterの悪口合戦に参加したのは誰あろう、Mr. Jeff Bezosだった。

自らの宇宙会社 Blue Originがロケットの着陸に成功したばかりのAmazonファウンダーは、Falcon 9ロケットの着陸に成功したSpaceX に対して、初めて今日攻撃を仕掛けた。

[@SpaceXがFalconの準軌道ブースターの着陸に成功したことをお祝いする。
わがクラブへようこそ!]

「クラブへようこそ」― イタッ!!

注意深い読者(および今日一日中Twitterを見ている人)なら、SpaceXのファウンダー、Elon Muskが最初に火を着けたことを知っているだろう。先月BezosとBlue Originの偉業を称えると同時に、「軌道」ロケットと「準軌道」ロケットの違いを指摘した時だ。

[Jeff BezosとBO チームには打上げロケットの着陸成功をお祝いしたい。]

[ただし、はっきりさせておく必要があるのは、「宇宙」と「軌道」の違いであり、 https://what-if.xkcd.com/58/ に説明がある]
[宇宙高度に到達するだけならマッハ3でいいが、弾道飛行にはマッハ30が必要。エネルギーは2乗以上だ。つまり9に対して900のエネルギーが必要になる]

[ジェフは気づいていないかもしれないが、われわれのSpaceXは準衛星軌道へのロケットによるVTOLを2013年からテストしている。海面への着水は昨年成功した。次は軌道飛行の後の着陸だ]

[功績を正確に記録するなら、準衛星軌道を飛行した最初の再利用ロケットはX-15だ。最初の商業飛行に成功したのはバート・ルタンと言わねばならない。]

今日のBezosの反論で問題なのは ― 億万長者同志が互いの宇宙ゲームを巡って口論するとことを見るのは面白いが ― SpaceXがBlue Originのクラブに入会することはないことで、それはSpaceXは小型ロケットを何年も前から着陸させているからだ。

しかしそれ以上に、Blue OriginとFalcon 9を比較すること自体が不釣り合いだ。

TechCrunchのロケットマニア、Matt Burnsに言わせると、両社の着陸を比べることは、「縦列駐車を自転車と大型SUVで比べるようなもの」だそうだ。

今日着陸したFalcon 9は巨大なロケットだ。今回の発射には人工衛星が11基積載されており、塔載部分は再利用されず着陸もしていない。

Burnsがこう説明している

Falcon 9は本格的なロケットで、9基のエンジンが生み出す150万ポンド力(667万N)の推進力によって、高度124マイル(200 km)まで到達する能力を持つ。重要な機器を重要な軌道に運ぶために設計された。Blue Originは数人の人間を62マイル(100 km)の上空に送る能力がある ― これもまた素晴らしい。

果たしてElon Muskが再び反撃に出るか、誰かがBezosに少々状況を説明する機会を与えるか見物だ。

まもなく次のラウンドが始まる…

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ジェフ・ベゾスは(多分他の人も)、ドナルド・トランプを宇宙に送りたいと思っている

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トランプ、トランプ、トランプ。たぶんもう聞き飽きているだろうが、それでも彼はいなくならない。しかもまだ本格的大統領選挙シーズンでもないのに。

彼の最新のTwitterでの怒鳴り(他にも多数あり)の一つは、AmazonのCEO Jeff Bezosに宛てられていた:

大きな損を出している@washingtonpostを、@JeffBezosは彼の無利益会社 @amazonの税金を減らす目的で所有している。]

[もし@amazonが公正な税金を払えば、株価は暴落して紙袋のようにくしゃくしゃになるだろう。@washingtonpostのイカサマで助かっている!]

見事な侮辱だ。そして、Bezosはこの大ぼらで切り返した:

[とうとう @realDonaldTrumpに中傷されてしまった。Blue Originロケットにはまた彼の席を予約してあるからね。 #sendDonaldtospace http://bit.ly/1OpyW5N]

今年は政治候補者たちにとって妙な年のようで、あらゆるメディアを駆使して自分の考えや感覚を伝えようとする。誰もがトランプのように「あたり構わず乱射する」戦法をとっているわけではないが、FacebookやTwitterで何かを言えば、世界中がそれを見ることになる。そして今回、その世界には彼の標的、Bezosが含まれていた。

宇宙飛行の話に戻ろう。彼は座席料金を払わなくてはならないのだろうか?そう願いたい。しかし私の大きな疑問は、「帰りのフライトはあるのか」だ。ないことを願う。

オマケ:この笑えるハッシュタグ、#SendDonaldToSpaceをリアルタイムでフォローすべし。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ロケットVTOLの成功は偉大な進歩―ただしベゾスのBlue OriginとマスクのSpaceXはカテゴリーが違う

CAPE CANAVERAL, Fla. (July 19, 2013) An Atlas V rocket launches the Navy's Mobile User Objective System (MUOS) 2 satellite from Space Launch Complex-41 at Cape Canaveral Air Force Station, Fla. MUOS is a next-generation narrow band tactical satellite communications system designed to significantly improve beyond-line-of-sight communications for U.S. forces on the move. (U.S. Navy photo courtesy of NASA by Patrick H. Corkery/Released) 130719-O-ZZ999-102
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低料金で宇宙飛行を提供するとしているBlue Originは、大気圏外にロケットを発射し、無事に地上に着陸させることに成功した初の企業となった。コンセプトはこの上なくシンプルだが、宇宙産業にとってこの成功の意義はまさに歴史的だ。ロケット・ブースターの再利用に道を開いた意義はいくら強調しても足りない。

Blue Originのファウンダー、ジェフ・ベゾスは、初めてTwitterを使い、こう述べた。

世界でも使用済みロケットというのは珍しい存在だ。制御された着陸は恐ろしく難しい。しかし成功してしまえば簡単に見える。下のビデオ見て欲しい。

現在、再利用可能な商用ロケットは市場に存在しない。こういう際に成功を伝える言葉はごく簡潔な「使命完了」だけ足りる。

われわれは飛行機の切符が高いと文句を言うが、宇宙旅行にかかる総額はとても比較になるものではない。その主な理由は打ち上げ1回ごとにほとんど何かもが捨てられてしまう―再利用できないからだ。SpaceXのCEO、イーロン・マスクはこれを「3億ドルのボーイング747をまるごと宇宙に捨ててくる」ことに例えた。

ロケットが再利用可能になればコストは最高100分の1まで下がるという推計もある。これは文字通り宇宙ビジネスのディスラプトだ。

しかし詳細に見れば、ロケットの再利用にもさまざまな種類があることがわかる。Blue Originの成功だけを見れば、同じくロケットの再利用を目指すSpaceXは遅れを取ったように見えるかもしれない。

SpaceXはFalcon 9が宇宙から帰還したとき、海上の艀に安全に垂直着陸させることを目指している。残念ながらこれまでの実験は2回ともロケットの爆発に終わっている。マスクはベゾスのロケット、New
Shepardの垂直着陸成功の報に接して、祝意を述べると同時に、Falcon 9との差を急いで説明しなければならなかった。

Getting to space needs ~Mach 3, but GTO orbit requires ~Mach 30. The energy needed is the square, i.e. 9 units for space and 900 for orbit.

— Elon Musk (@elonmusk) November 24, 2015

宇宙高度に到達するだけならマッハ3でいいが、弾道飛行にはマッハ30が必要。エネルギーは2乗以上だ。つまり9に対して900のエネルギーが必要になる。 

Blue Originは準軌道を目指している。つまりベゾスのNew Shepardは6人の乗客を乗せて短時間高度100キロの宇宙空間に飛び出すが、そこでただちに地上に引き返す。これに対してマスクのSpaceXは単に宇宙空間に出るだけでなく、大量のペイロードをマスクがGTOと呼ぶ静止トランスファ軌道(静止軌道への遷移軌道)まで運び上げることができる。この軌道は遠地点では地表から9万キロも離れる。

容易に想像がつくように、100キロと9万キロという高度の差は非常に大きく、必要とされるロケットの能力はまったく異なる。マスクはこの点を「宇宙に出るだけならマッハ3で足りるが、静止トランスファ軌道に入るためにはマッハ30を必要とする」と説明している。XKCDの記事はこれを「単に宇宙に出るだけなら簡単だ。難しいのは宇宙に留まることだ」と表現している。

宇宙に留まるためには衛星軌道を飛ばねばならなず、これは非常な高速が要求される。 SpaceXのFalcon9がNew ShepherdやVirgin Galacticの機体よりもはるかに巨大で強力なのはそういう理由による。マスクはベゾスに張り合ってか、SpaceXはロケットの垂直着陸テストに2013年に成功していると述べた。

ジェフは気づいていないかもしれないが、われわれのSpaceXは準衛星軌道へのロケットによるVTOLを2013年からテストしている。海面への着水は昨年成功した。次は軌道飛行の後の着陸だ。

実のところ、これは少々誤解を招く表現で、マスクの批判にかかわらず、Blue Originは実際にロケットに宇宙と地上を往復させた史上初の会社だ。マスクのツイートの前半はSpaceXのGrasshopper計画でロケットの垂直離着陸(VTOL)を成功させたというものだが、この実験でロケットは744メートルまでしか上昇しておらず、ベゾスのNew Shepardが到達した高度の1%程度だった。

2番目のツイートでマスクは、SpaceXはFalcon 9を軌道に送り、第一弾を安全に地表に帰還させる実験を行ったと述べている。これは事実だが、実験は2回とも海上の艀の上の爆発という華々しい失敗に終わっている。

つまり Blue OriginがロケットのVTOLを史上初めて成功させる一方で、SpaceXはまだその試み成功していない。そういう次第で、この2社の試みを同一の基準で公正に評価するのは難しい。両社はそれぞれに宇宙旅行の改良における重要なマイルストーンを達成したと考えるべきだろう。

ベゾスのBlue Originは宇宙旅行を希望する一般消費者(非常に裕福な旅行者)に直接切符を販売することを目的としている。これに対して SpaceXは大企業や政府(Orbital Sciences社、NASA、アメリカ空軍など)のペイロードを軌道上に有料で運び上げる。この2つはまったく異なるカテゴリーの活動であり、必要とされるロケットの能力も異なる。

そうではあるが、最初に再利用可能な宇宙ロケットを開発した栄誉は正式にBlue Originのものとなった。 New ShepardのVTOL実験成功でBlue Originは準衛星軌道に旅客を運ぶという当初の目的に向けて大きく踏み出したといえるだろう。

画像:Official U.S. Navy Page/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

宇宙旅行が大きく近づいた―ジェフ・ベゾスのBlue Originロケットが垂直着陸に成功(ビデオあり)

2015-11-25-blueorigin

ジェフ・ベゾスが創立した宇宙旅行会社Blue Originのロケットが垂直発射、垂直着陸に世界で初めて成功した。ベゾスはこの記念碑的な達成をTwitterで報じ、インターネットはこのニュースに沸き返った。

世界でも使用済みロケットというのは珍しい存在だ。制御された着陸は恐ろしく難しい。しかし成功してしまえば簡単に見える。ビデオで確認して欲しい。

New Shepardと呼ばれるBlue Originのロケットは宇宙(正確には準衛星軌道)に達し、最高高度は32万9839フィート(100.5km)を記録した。その後ロケットは西テキサスのベゾスの宇宙基地に垂直に着陸することに成功した。

最初にベゾスにお祝いのメッセージを送ったのはほかならぬイーロン・マスクだ。SpaceXのファウンダーであるマスクはある意味でベゾスと同様にロケットの垂直着陸による低価格の宇宙旅行の実現を目指している

ジェフ・ベゾスとBlue Originのチームに対し、ロケット・ブースターがVTOL(垂直着陸)に成功したことにお祝いを送りたい。

ただ…やはりマスクはライバルだった。彼はこう付け加えている。

ただしここで正確を期すなら「宇宙」と「軌道」の差について触れておく必要がある。リンク先に詳しい説明がある。

宇宙高度に到達するだけならマッハ3でいいが、弾道飛行にはマッハ30が必要。エネルギーは2乗以上だ。つまり9に対して900のエネルギーが必要になる。

ジェフも気づいているかもしれないが、われわれのSpaceXは準衛星軌道へのロケットによるVTOLを2013年からテストしている。海面への着水は昨年成功した。次は軌道飛行の後の着陸だ。

功績を正確に記録するなら、準衛星軌道を飛行した最初の再利用ロケットはX-15だ。最初の商業飛行に成功したのはバート・ルタンと言わねばならない。

一見離れ業に見えるベゾスの偉業をマスクはひとつずつの要素に分解し、それらを達成したのはBleu Originが初めてでないことを指摘している。またマスクはSpaceXがFalcon
1ロケットの時代からGrasshopper垂直着陸モジュールの実験を重ねていたと述べた。そういえばNASAはこの件に関してツイートしていない。それではベゾスの垂直着陸は本物だったのだろうか? というのは冗談だが、NASAにはなんとか言ってもらいたいものだ。しっかりしてくれ!

われわれの編集長はTwitterで下のようにジョークを飛ばしている。

いつか私もビリオネアになって、仲間のビリオネアといちばん古いハイパードライブを持っているのは誰かとか議論したいものだ。

〔日本版:イーロン・マスクのSpaceXも海上の艀へのロケットの垂直着陸実験を繰り返している。今のところFalconロケットによる垂直着陸はまだ成功していない。〕

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ジェフ・ベゾスのBlue Originがフロリダにロケット工場建設へ。イーロン・マスクのSpaceXに対抗

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今日(米国時間9/15)AmazonのCEO Jeff Bezosは、古き良きフロリダにロケット製造工場を建設する計画を明らかに した。このニュースはもちろん、ケープカナベラルで発表された。

BezosがSpaceXに対抗するために使う会社はBlue Originと呼ばれ、彼は離陸のために2億ドルを投資する計画だ。

Blue Originのロケット、New Shepardは既に開発、テスト中であり、同社によると、ボーイング、ロッキード・マーチンらのUnited Launch Allianceと協力して未来のエンジン開発を行っている。

Blue Originのプレスリリースより:

われわれのフロリダ事業の特徴は、ここから発射するだけでなく、ここで製造することだ。Exploration Parkには21世紀の生産設備を持ち、再利用可能な軌道ランチャー群を製造して、繰り返し飛ばす体制を作ることに専念している。機体の組立て工場を発射現場近くに置くことで、非常に大きなロケットの処理と移動という難題を緩和できる。

われわれは10年以内にここから発射するつもりだ。ニュースに注目していてほしい。アメリカ製のBE-4エンジン ― われわれの軌道打上げ機の心臓部 ― はここで受入れ検査が行われる。われわれのBE-4エンジンは、United Launch Alliance製Vulcanロケットの初飛行の動力となることでも歴史に名を残すだろう。

今この分野は非常に熱く、既に多大な資金が民間宇宙飛行に注ぎ込まれている

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Bezosが買ったThe Washington Post紙が今度はKindle上で無料に

Washington Postが、AmazonのタブレットKindle Fireの無料アプリで提供される。これは、AmazonのCEO Jeff Bezosが同紙を買収してから1年あまり後の発表となる。

Bloomberg Businessweekの記事によると、アプリを開発したのはPost内部のProject Rainbowと呼ばれるグループだ。プロジェクトのリーダーKerry Lauermanが今後、このアプリ向けの記事や写真を選んでいく。そのアプリは現在、大型のKindleの上で無料でダウンロードできる。WaPoのそのほかのデジタル提供物と同じく、いずれは有料制が導入されるものと思われる。これから買うKindle Fireには、このアプリがすでにインストールされている。

1年前にBezosが同紙を買ったことは、奇妙に思えた。紙に印刷されたニュースの不人気によりWaPoは、同紙を売る直前に利益が55%落ち込んでいた。だから、Bezosが何をするつもりなのか、よくわからなかった。しかしAmazonのCEOがキャッシュと100名あまりの新たな社員を注ぎ込んだため、この名門紙は息を吹き返した。Timesによると、今年の7月の同紙の読者は前年同期比で63%増加した。

The Washington Postの役員級編集者Marty Baronが、The New York Timesにこう語っている: “記者たちの不安感を一掃する必要がある。自分や仲間がクビにならないこと、安心して仕事に専念できること。楽観主義は、悲観主義と同様、社内に伝染する”。

同紙はすでにiOSとAndroidのアプリがあり、モバイルWebからの提供もある。いずれも、印刷版から選んだ良質なコンテンツを無料で提供し、有料バージョンもある。Web上の購読料は14ドル99セントからだ。

Kindleの新聞アプリはほかに、USA TodayやThe New York Timesがあり、どれもKindle Fire上で無料だ。

〔訳注: この記事からは今回のKindleアプリと、既存のiOS/Androidアプリの違いがよく分からない。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


ドローンの商用化は予想より急ピッチ―AirewareはドローンOSとバックエンド・クラウドを構築中

ジェフ・ベゾスが去年、クリスマス商戦を控えて60 minutesのインタビューでAmazonは商品配送のためにドローンを利用することを研究していると発表したとき、大方の反応は「PRのための派手なパフォーマンスだろう」といったものだった。しかしドローンの商用利用は一般に考えられているよりもはるかに急ピッチで進んでいるというのが事実だ。荷物の配達を含めてドローンがビジネスで利用されるようになる日はかなり近い。

向こう10年程度で、ドローンが日常生活でありきたりの存在になることは間違いない。現在では、ドローンといえばまず軍事利用が思い浮かぶが、今後は人手で作業することが困難、危険、コストが合わないなどの場面に広く導入されるはずだ。すぐに考えつく応用分野は捜索、救難、石油やガスなど天然資源の探査、農業、ライフラインの保守、そしてもちろん商品配送などだ。

しかしドローンが広く使われるようになるためには単に機体が進歩するだけでは不十分だとAirwareのCEO、Jonathan Downeyは強く主張する。Downeyは先週マサチューセッツ州ケンブリッジのMIT(マサチューセッツ工科大学)で開催されたEmTechカンファレンスで講演し、ドローン向けOSを開発していることを紹介した。Downeyの会社はさまざまな商用ドローン・システムのプラットフォームとなるべきソフトウェアを作るろうとしている。

Downeyのビジョンによれば、ドローンのプラットフォームには3つのレベルが想定されるという。つまり、オペレーティング・システム、バックエンドとなるクラウド処理サービス、そして各種のハードウェアだ。

Downeyは「われわれは中立のサードパーティーとしてドローン向けOSを提供したい。そのため、自らドローンの開発を行うことはしない。われわれのOSの上に各種のドローンが開発されることになる。その点、Microsoftが Windows OSを提供するだけで自社ブランドのパソコンを販売しなかったことに似ている」と述べた。

MicrosoftのWindowsに似て、DoneyのOSの上にサードパーティーのデベロッパーはさまざまな目的に応じたドローン管理アプリケーションを開発することができる。

ドローン向けに関連するビッグデータ処理を行うクラウド・サービスについては、先月のTechCrunch DisruptでBoxのCEO Aaron Levieがその必要性を論じていた。Levieはドローンが収集する膨大な情報を意味のある有用な情報に加工するビッグデータ処理の分野にBoxが進出する計画があると述べた。

BoxのサービスがDowneyが開発しているクラウドサービスとバッティングするものなのかは不明だが、Downeyは自身のOSとBoxのようなクラウドサービスがオープンAPIを通じて協調動作するのはあり得ることだと述べた。Boxはすでに商用ドローン・サービスのSkycatchとデータ収集処理で提携している。

またDowneyは規制当局やASTM(米国材料試験協会)の標準化委員会と協力して商用ドローンの利用に関するルールづくりにも取り組んでいる。またNASAのドローンによる交通管制システム構想uにも協力している。

Airwareは去る7月にシリーズBのラウンドで2500万ドル万ドルを調達したのを始め、総額4000万ドルの資金を得ている。

今後ドローンが社会的な認知を得るまでには安全性、プライバシーなどさまざまな面でハードルが予想される。

ベゾスがテレビ番組で吹聴した商品の配送に関してはドイツのDHLがドローンを利用する実験を始めたことが報じられている。これは他の手段ではアクセスが困難な離島に医薬品を届けるもので、ドローンの利用として理解が得られやすそうだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


筋萎縮性側索硬化症チャリティーでティム・クック、ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾスもバケツの氷水をかぶる

まさかビルやティムはカメラの前でバケツ一杯の氷水をかぶらないだろうと予想した読者は、残念ながらハズレだ。筋萎縮性側索硬化症の治療法研究を支援するためのチャリティーで、まずビル・ゲイツがマーク・ザッカーバーグの挑戦を受けて立った。

下のビデオによれば、ご苦労様にもゲイツは紐を引くとバケツがひっくり返る仕掛けをトーチ片手に作ったらしい。

ステーブン・ホーキング博士が罹患していることで知られる筋萎縮性側索硬化症(ALS)は神経を侵して体を麻痺させ、最終的に死に至る難病で、まだ有効な治療法がわかっていない。ALS協会への寄付はこちら

このチャリティーでは挑戦を実行した人物は新たに3人の挑戦者を指名できる。ゲイツはイーロン・マスク、TEDカンファレンスのキュレーターのクリス・アンダーソンらを指名した。マスクのビデオはきっとテスラかロケットがかかわるに違いない。楽しみだ。

(おい、そこの「こんなことやって何になるんだ? 億万長者はただ100ドル寄付しておけよ」というコメントした奴。ALSはこのキャンペーン開始後、驚くほどの寄付の洪水を経験しているという。それにiビル・ゲイツはチャリティーに天文学的な額を投じている)。

それからこちらはフィル・シラー上級副社長の挑戦を受けて、Appleキャンパスで集まった大勢の社員の前でCEOのティム・クックが氷水を浴びているところだ。

アップデート:こちらは今日(米国時間8/15)の午後、Amazonの全社員集会で氷水を浴びるジェフ・ベゾス。 ベゾスが挑戦者に指名したのはまず氷水をかぶりそうにない面々―スタートレック・シリーズのカーク船長、ウィリアム・シャトナーと共演者のパトリック・スチュワート、ジョージ・タケイだった。下のビデオでベゾスが氷水を浴びるのは3分あたり。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Amazonを描いたノンフィクションの決定版、Everything Storeの著者インタビュー:起業家がベゾスに学ぶべき点は?

ジェフ・ベゾスの妻、マッケンジー・ベゾスはブラッド・ストーンの新刊にAmazonの読者レビューで 1つ星をつけて批判した。しかし大半の批評家はストーンの大作ノンフィクション、The Everything Store: Jeff Bezos and the Age of Amazon(エブリシング・ストア―ジェフ・ベゾスとAmazonの時代)たいへんな力作と評価している。ウォルター・アイザクソンのスティーブ・ジョブズの伝記、Googleの歴史を描いたスティーブン・レヴィのグーグル ネット覇者の真実と並んで、ストーンの本はジェフ・ベゾスとAmazonを描いたノンフィクションの決定版となりそうだ。

ストーンは「Amazonはガレージから出発したスタートアップが世界を変えたというストーリーの典型だ」という。ストーンが即座に指摘するとおり、Amazonのストーリーは終始ジェフ・ベゾスが圧倒的に大きな役割を果たしている。おそらく、現存する起業家の中でベゾスはスティーブ・ジョブズに匹敵する唯一の存在だろう。

私はストーンに「スタートアップ起業家がベゾスから学ぶべきなのはどういう点か?」と質問した。ストーンによれば、第一の教訓は「ビジョンに固執する」ことだという。ドットコム・バブルが弾けた2001年はAmazonにとってもっとも暗い時期で、そのビジネスモデルはアナリストからの攻撃にさらされたが、ベゾスは断固として基本的な信条を守った。第二に、他のウェブの巨人、YahooやeBayとは違い、ベゾスとAmazonは決してイノベーションの手を緩めなかった。KindleからクラウドコンピューティングサービスのAmazonWeb ServicesまでAmazonは決して成功の上にあぐらをかいて前進を止めるということをしない。

ではAmazonとベゾスの将来は? ストーンは非常に楽観的だ。Amazonはディスラプトの手を休めることなく成長を続け、やがてタブレットなどのデバイスを利用したデジタルコンテンツ配信市場の支配を巡ってGoogleとAppleの手強いライバルとなるだろうという。

ブラッド・ストーンが正しいなら、Amazonとジェフ・ベゾスにとって「お楽しみはこれからだ」ということのようだ。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


メーデー!メーデー!Amazonのオンデマンドサポートはスケーリングの悪夢を呼ぶかもしれない

問題をGoogleするよりテクニカルサポートに電話した方が簡単だと何が起きるか? Amazonは、新しいタブレットKindle Fire HDXの持ち主が、同社のオンテマンド・ビデオ・カスタマーサポート機能をどれだけ使うかによっては、その答えが高価なものになることを発見するかもしれない。Amazon自身がどう行動するかによっても。

Mayday は、Kindle HDXのクイック設定メニューのトップにあるボタンだ。24時間年中無休で、サポート・エージェントが映しだされた小さなビデオウィンドウがポップアップする。相手からこちらは見えないが、声を聞き、しゃべりかけ、画面に描いて指示することもできる。画面を制御して助けてくれることさえ可能だ。

Farhad Manjooが言うように、Maydayは最大の技術的問題の一つを解決することはできないかもしれない。ネットがつながらない時だ。それでも、老若を問わず始終困惑する人たちから来る大量の問い合わせに答えなければならないことに変わりない。Maydayを利用しているところのビデオはここで見られる。

もしAmazonがMaydayをスケーリングできたら、それは驚くべきことだ。多くの人々のテクノロジー生活を楽にするという意味でも、並ひ外れたロジスティックの偉業という意味でも。これは、高付加価値サービスの業界ベンチマークになるかもしれない。是非成功してもらいたいものだ。

サポート乱用のハードルがない

今日、多くの企業がオンラインサポートに力を注いでいるが、人間に構まってもらいたければ、それなりの努力が必要だ。

Appleのジーニアスバーを見てほしい。予約を取り、小売店に出向き、時間通りに現れなくてはならない.これはユーザーにとって障壁であると同時に、本当に手助けが必要な時のための選択肢を与えているこのにもなる。

電話によるカスタマーサポートでは、電話番号を調べ、音声ガイダンスをくぐり抜け、待たされ、何をしてほしいかを、事実上計器飛行しているサポート担当者に説明しなくてはならない。

このあらゆる摩擦が悪悪だ。ではなぜ存在するのか? 費用効率がいいからだ。

オンデマンドでデバイスと直接つながるサポート要員が山ほどいることは素晴らしい・・・かつAmazonにとって非常に高くつく可能性がある。Maydayはこの端末の大きなセールスポイントになり、返品の損失を防ぐことで自らペイするかもしれない。しかし、人々があのボタンを必要以上に押しまくるかどうかは、ギャンブルだ。

問題は、Amazonがどこまでそのビジョンを妥協できるかだ。同社は記者団に対して、Maydayが毎回15秒以内にユーザーがサポートを受けられるようにしたいと語った。忙しいクリスマスの朝にも。回数の制限もなく。Amazon CEOのJeff BezosはMaydayについて、同社の他のコールセンターと同じように機能すると本誌に語った。結局のところ、この会社はEコマースのスケーリングにおいて相当数のミラクルを演じてきている。

それでもしかし、Maydayサービスの乱用を防ぐための但し書きを入れておく必要はあるかもしれない。寂しいからMaydayしたり、ネコの写真を見せたくてMaydayしたりする人は切り捨てる必要がある。猥褻画像を見せたり言葉のテロリズムを仕掛ける輩は、永久追放する必要があるかもしれない。しかし、ひたすら怠惰なユーザーが、毎日ギリギリまともな質問をし続けたらどうするだろう。Amazonはどこに線を引くかを決めなくてはならない。

Maydayのスケーリングにおけるこの根本的問題は、現在AmazonにはアクティブなKindleユーザーが、Benedict Evansが想像するほど膨大にはいないことを示しているのかもしれない。AmazonはKindleの売上とアクティブ利用者数に関して秘密主義で知られているので、HDX端末がどの程度売れ、サポートが必要なのかわれわれにはわからない。

しかし、もしこのすべてを成功させ、われわれをサポート電話メニュー地獄から救える人間がいるとすれば、それはBezosだろう。法外な費用のかかるファンタジーをギリギリのリアリティーに変えることは、彼の十八番だ。そしてもし、問題がMaydayのユーザー当たり質問数ではなく、Kindle HDXがたくさん売れたためであれば、それは悪い話ではない。Microsoft Surfaceに聞いてみるといい。

[Image Credit]

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(翻訳:Nob Takahashi)


ジェフ・ベゾス、ワシントンポスト紙をポケットマネー2.5億ドルで買収―その中味を検討する

ジェフ・ベゾス(Amazonではない)が2億5000万ドルのキャッシュを投じて名門紙、Washington Postを買収したというショッキングなニュースが飛び込んできた。ベゾスが買収したのはWashington Post本紙だけでなく、いくつかのローカル紙、 Washington Postのウェブサイト、Comprintという印刷会社も含まれる。Post自身の発表はこちら

ところでベゾスが購入したこの資産の健全度はどの程度なのだろう? まずは公開されている数字を見てみよう。ただし、Washington Postグループで売上の内訳を公表しているのはPost本紙だけだという点に注意する必要がある。

今年の第2四半期に、Postグループの新聞事業部の売上は1億3840万ドルで、対前年同期とほぼ同額だった。つまりベゾスが買った新聞事業は、ありきたりのイメージとは違って、急速に没落しているわけではない。

紙媒体のWashington Postの広告収入は5450万ドルで対前年同期比4%のダウンだが、これもまずは安定した状態だ。Washington PostとSlate.comのオンライン収入は合計で2980万ドル、前年同期比で15%の増加だ。BezosはSlateを買収しなかったのでPost単独での数字はこれより多少下がるだろう。しかしWashington Postの方が圧倒的に大きいので、その差はわずかだろう。

オンラインの広告収入は前年同期比で25%アップしている。ただしオンライン案内広告の収入は7%のダウンだ。これはどういう意味なのだろう? 簡単にいえば、Washington Postのオンライン広告は、部分的なダウンはあるものの全体として順調なペースで成長しているということだ。

紙媒体のからの収入の減少は発行部数の低迷を反映している。2013年上半期の日刊発行部数は前年同期比で7.1%減少して44万7700部だった。

Washington Postが赤字を出しているのか、出しているすればどれほどの額かを推定するのは難しい。主要業務である新聞事業部は2013年の上半期で4930万ドルの赤字を計上している。ただしそのうち3970万ドルは年金経費だ。さらにこの時期には1960万ドルの早期退職、レイオフ関連の費用が計上されている。

こうした年金、早期退職経費を除けば新聞事業は単体としては黒字である可能性もある。

証券取引委員会への提出書類にはこうある。

購入者は現在のPost従業員の退職後の福祉に関してすべての責任を負う。売却者は以前のPost従業員の退職後の福祉に関してすべての責任を負う。

つまりベゾスは過去の従業員の年金問題を引きずる必要がないわけだ。

非公開企業であるため、Postグループの財務情報には不明な点が多い。そのためベゾスが今回購入した会社のの正確な価値を推計するのは困難だ。しかしPostのデジタル収入が増加傾向にあり、紙媒体の漸減をカバーできる可能性がある。 ごく大まかに言えば、希望のもてる状態といえるだろう。この規模の新聞社に対して、異例に楽観的な評価と思われるかもしれないが、ベゾスが今後ビジネスモデルの舵取りに成功するなら、Postが金食い虫で終わることはないかもしれない。

もうひとつ考慮すべき点は、ベゾスがファウンダー、CEOであり大株主であるAmazonとの関係だ。たとえば、ベゾスはPostの有料購読をAmazon Primeサービスの一環に取り込み、それに対して(比較的少額だろうが)収入の一部を分配するといったことができるだろう。

ちなみにPost紙の運営コストは今後、減少していくはずだ。第2四半期の決算報告によれば紙媒体の経費は第2四半期で17%、上半期で14%で減少している。その主な理由は、発行部数の減少によるものという。なるほど。

トップ画像: Jon S

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+