MetaのMessenger責任者が退社を表明

Facebook(フェイスブック)がコーポレートブランドを変更し「メタバース」の未来に向けて組織改編する中、著名な幹部が続けて会社を去っている。

先に、元Messenger(メッセンジャー)のボスで暗号化の現皇帝であるDavid Marcus(デビッド・マーカス)が年内に退社することを公表した。米国時間12月7日、Meta(メタ)の現Messenger責任者であるStan Chudnovsky(スタン・チュドゥノフスキー)氏が「2022年第2半期のどこかで」Metaを去るつもりであることを発表した。

チュドゥノフスキー氏は2015年初頭にMessengerのプロダクト責任者としてFacebookに入社、2018年に部門の責任者になった。Facebookに加わる前、チュドゥノフスキー氏はベンチャーキャピタルのNFXを共同設立し、2013年に自身のソフトウェアスタートアップ、IronPearl(アイアンパール)を買収したPayPalでは、グロース担当VPを務めた。

「16歳の時からノンストップで働き続けてきました。プロジェクトの合間に2週間ほど休みを取る他は常に、会社を始めるか、ベンチャーファンド(NFX)を始めるか、会社を経営するか、会社を合併させるか、会社に投資するか、会社で働くかしていました」とチュドゥノフスキー氏が自身の計画を発表するFacebook投稿で述べた。「引退するつもりはありませんが、すてきな数カ月間の休暇をとれることを楽しみにしています」。

チュドゥノフスキー氏が職を離れた後、同僚の Loredana Crisan(ロレダナ・クリサン)氏が引き継ぐ予定だ。クリサン氏は2016年にMessengerチームに加わり、それ以前はIndiegogoのデザインチームを率いていた。

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebook Gamingに「PAC-MAN」登場、ゲーム配信者と一緒にプレイできる新機能も

Facebookゲームは、TwitchやYouTubeのゲームといったホットなストリーミング配信先ではないかもしれないが、ソーシャルネットワークは、その魅力を高めるためにインタラクティブな機能を着実に追加している。

Facebookは、視聴者がお気に入りのストリーミングパーソナリティと一緒にゲームストリームに参加できるようにする「Play with streamer」(配信者と遊ぼう)と呼ぶ新しいインタラクティビティを試している。この機能は、「Twitch Plays Pokémon」のような魅力を引き出すことを目的に、マルチプレイヤー、ユーザーが作成する迷路、視聴者のインタラクティブ性などの現代的な要素を加えた古典的なゲームバージョン「PAC-MAN COMMUNITY」を発表したことで注目を集めている。

この機能が有効になっているゲームでは、視聴者はボタンをクリックしてゲームを直接開き、マルチプレイヤーモードに参加することができる。今のところ、ゲームの種類はとても少なく、新作の「パックマン」と、8月にひっそりとこの機能を導入したMinecraftクローンである「Worlds FRVR」に限られる。

配信者は、誰がこの特権を得るかをコントロールでき、最も熱心なサポーターに特典として提供することができる。これは、クリエイターがゲームベースのコミュニティを構築し、接続するための重要なツールだ。

新人配信者にとって魅力的なハブとなるように、Facebook Gamingは現在、収益の100%をクリエイターに提供しているが、この契約は2022年に期限切れになる。

Facebookは10月に、クリエイター同士が協力して同時に配信できる「co-streaming」機能を追加した。これは、Twitchでは2019年当時から「Squad Stream」として提供していた機能であり、活気あるストリーミングエコシステムを構築するために必要なものだ。

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FarmVilleの登場以来、Facebookは、Twitchの人気タイトルとはほとんど共通点のない安定したカジュアルゲームを提供してきた。Facebook Gamingでは「Fortnite」や「Call of Duty」といったゲームのストリームを配信しているが、モバイル向けのHTML5ゲームに重点を置いているため、ハードコアゲーマー以外にもユニークな魅力を持つプラットフォームとなっている。さらにストリーミングが主流になれば、Twitchでは見られないような視聴者を惹きつけることができるだろう。

Twitchは、現在もストリーミング視聴時間の大半を占めている。2020年末には視聴時間の66%をTwitchが占め「YouTube Gaming」が23%「Facebook」が11%で続く。現在、後者2つのプラットフォームは成長しており、2020年には、Facebook Gamingのストリーミング視聴時間は前年の3倍に、YouTubeは2倍になっている。

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画像クレジット:Facebook Gaming

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フェイスブックがエンド・ツー・エンド暗号化の全面導入を「2023年中まで」延期

Facebook(フェイスブック)改めMeta(メタ)が、エンド・ツー・エンド暗号化を同社の全サービスに全面展開することを「2023年中まで」延期する。このことは、同社の安全部門のグローバル責任者であるAntigone Davis(アンティゴン・デイビス)氏が英国のTelegraph(テレグラフ)紙に寄稿した論説記事によって明らかになった。

Facebook傘下のWhatsApp(ワッツアップ)には、すでに2016年からエンド・ツー・エンド暗号化が全面的に導入されているが、ユーザーがメッセージデータを暗号化する鍵をユーザーのみに持たせるこの機能は、同社の他の多くのサービスではまだ提供されていない。つまり、エンド・ツー・エンド暗号化が提供されていないそれらのサービスでは、メッセージデータを公権力に提供するよう召喚されたり令状が発行されたりする可能性があるということだ。

しかし、Facebook創業者のMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、Cambridge Analytica(ケンブリッジ・アナリティカ)のデータ不正利用スキャンダルを受けて、2019年にはすでに「プライバシー重視のプラットフォームへと転換させる」取り組みの一環としてエンド・ツー・エンド暗号化を同社の全サービスに全面導入する計画であることを発表した。

ザッカーバーグ氏は当時、エンド・ツー・エンド暗号化の全面導入の完了時期について具体的な日程には言及しなかったが、Facebookは2021年初めに、2022年中には全面導入が完了する予定であると示唆していた。

それがこの度、同社は、2023年中の「いずれかの時点」まで完了する予定はないと発表した。明らかに先送りされているようだ。

デイビス氏によると、今回の延期は、子どもの安全に関わる捜査を支援するために情報を法執行機関に提供する能力を同社が保持できるようにして、安全性を確保しながらエンド・ツー・エンド暗号化を実装することに時間をかけたいと同社が希望しているためだという。

デイビス氏は次のように語る。「当社でもそうだが、ユーザーのメッセージにアクセスできない状態で、テック企業が虐待問題に立ち向かい続けることと法執行機関の重要な任務をサポートし続けることをどのように両立できるのかという点については、今も議論が続いている。プライバシーと安全性のどちらかを選ばなければならないような状態にしてはいけないと当社は考えている。だからこそ当社は、適切な方法でこの技術を導入するために、強力な安全対策を計画に盛り込み、プライバシー分野や安全分野の専門家、市民社会、政府と協力している」。さらに、同社は「プロアクティブな検知テクノロジー」を使用して不審なアクティビティを特定することに加え、ユーザーのコントロール権限を強化し、問題を報告する能力をユーザーに付与する予定だと同氏はいう。

Facebookが2年以上前に「全サービスへのエンド・ツー・エンド暗号化導入」計画を公に発表してからこれまで、英国を含む西側諸国の政府は、最高レベルの暗号化を全サービスに全面導入する計画を延期または断念するよう同社に対して強い圧力をかけ続けている。

英国政府はこの点で特に、Facebookに対して苦言を呈してきた。内務大臣のPriti Patel(プリティ・パテル)氏は、Facebookのエンド・ツー・エンド暗号化拡大計画は、オンラインの児童虐待を防止する努力を阻害するものになると、公の場で(繰り返し)警告し 、同社を、児童性的虐待コンテンツ(CSAM)の制作と配信を防ぐ闘いにおける無責任な悪役であるとみなした。

したがって、Metaが今回、英国政府ご贔屓の新聞に論説記事を寄稿したのは偶然ではなかったのだ。

Telegraph紙に寄稿された前述の論説記事の中で、デイビス氏は「エンド・ツー・エンド暗号化を展開するにあたり、当社は、市民の安全を確保する活動に協力しつつも、暗号化されていないデータの組み合わせを用いて各種アプリ、アカウント情報、ユーザーからの報告をプライバシーが保護された安全な状態に保つ」と述べ「この取り組みにより、すでに、子どもの安全を担当する当局機関に対し、WhatsAppから極めて重要な情報を報告することができている」と同氏は付け加える。

デイビス氏はさらに、Meta / Facebookは過去の事例をいくつも調査した結果「エンド・ツー・エンド暗号化をサービスに導入した場合でも、重要な情報を当局機関に報告することができていた」との結論に達したと述べ「完璧なシステムなど存在しないが、この調査結果は、当社が犯罪防止と法執行機関への協力を継続できることを示している」と付け加えた。

ところで、Facebookのサービスにおいてすべてのコミュニケーションがエンド・ツー・エンドで暗号化された場合に、同社は一体どのようにして、ユーザーに関するデータを当局機関に渡すことができるのだろうか。

Facebook / Metaがそのソーシャルメディア帝国において、ユーザーのアクティビティに関する手がかりを集めている方法の詳細をユーザーが正確に知ることはできない。しかし、1つ言えることとしてFacebookはWhatsAppのメッセージ / コミュニケーションの内容がエンド・ツー・エンドで暗号化されるようにしているが、メタデータはエンド・ツー・エンドで暗号化されていないということだ(そしてメタデータからだけでも、かなり多くの情報を得ることができる)。

Facebookはまた、例えば、2016年に議論を呼んだプライバシーUターンのように、WhatsAppユーザーの携帯電話番号データをFacebookとリンクさせるなど、アカウントとそのアクティビティを同社のソーシャルメディア帝国全体で定期的にリンクさせている。これにより、Facebookのアカウントを持っている、あるいは以前に持っていたユーザーの(公開されている)ソーシャルメディアアクティビティが、WhatsAppならではの、より制限された範囲内でのアクティビティ(1対1のコミュニケーションや、エンド・ツー・エンド暗号化された非公開チャンネルでのグループチャット)とリンクされる。

このようにしてFacebookは、その巨大な規模(およびこれまでにプロファイリングしてきたユーザーの情報)を利用して、たとえWhatsAppのメッセージ / コミュニケーションの内容自体がエンド・ツー・エンドで暗号化されていたとしても、Facebook / Metaが提供する全サービス(そのほとんどがまだエンド・ツー・エンド暗号化されていない)において、誰と話しているのか、誰とつながっているのか、何を好きか、何をしたか、といったことに基づいて、WhatAppユーザーのソーシャルグラフや関心事を具体的に把握できる。

(このことを、デイビス氏は前述の論説記事で次のように表現している。「エンド・ツー・エンド暗号化を展開するにあたり、当社は、市民の安全を確保する活動に協力しつつも、暗号化されていないデータの組み合わせを用いて各種アプリ、アカウント情報、ユーザーからの報告をプライバシーが保護された安全な状態に保つ。この取り組みにより、すでに、子どもの安全を担当する当局機関に対し、WhatsAppから極めて重要な情報を報告することができている」)。

Facebookは2021年の秋口に、WhatsAppが透明性に関する義務を遂行しなかったとして欧州連合から多額の罰金を科せられた。WhatsAppがユーザーデータの使用目的と、WhatsApp-Facebook間においてそのデータを処理する方法について、ユーザーに適切に通知していなかったことが、DPAの調べによって明らかになったためだ。

関連記事:WhatsAppに欧州のGDPR違反で約294億円の制裁金、ユーザー・非ユーザーに対する透明性の向上も命令

FacebookはGDPRの制裁金に関して控訴中だが、米国時間11月22日に、欧州の規制当局からの求めに応じて、欧州のWhatsAppユーザー向けのプライバシーポリシーの文言を少し変更することを発表した。しかし、同社によると、ユーザーデータの処理方法については、まだ何の変更も加えていないとのことだ。

さて、エンド・ツー・エンド暗号化そのものに話を戻すと、2021年10月、Facebookの内部告発者であるFrances Haugen(フランセス・ハウゲン)氏が、同社によるエンド・ツー・エンド暗号化テクノロジーの応用に関して懸念を表明した。このテクノロジーはオープンソースではなく、専有テクノロジーであるため、ユーザーはFacebook / Metaのセキュリティ方針を信じなければならず、同テクノロジーのコードが本当にそのセキュリティ方針を順守しているかどうか、独立した第三者が検証する術がない、というのが同氏の主張だ。

ハウゲン氏はさらに、Facebookがエンド・ツー・エンド暗号化をどのように解釈しているのかを社外の者が知る方法がないことも指摘し、同社がエンド・ツー・エンド暗号化の使用を拡大しようとしていることについて「Facebookが本当は何をするつもりなのかまったくわからない」と述べて懸念を表明した。

「これが何を意味するのか、人々のプライバシーが本当に保護されるのか、私たちにはわかりません」と英国議会の議員たちに語ったハウゲン氏は、さらに次のように警告した。「これは非常に繊細な問題で、文脈も異なります。私が気に入っているオープンソースのエンド・ツー・エンド暗号化製品には、14歳の子どもがアクセスしているディレクトリや、バンコクのウイグル族コミュニティを見つけるためのディレクトリはありません。Facebookでは、社会的に弱い立場にある人々を標的にすることが、この上なく簡単にできてしまいます。そして、国家政府がそれを行っているのです」。

ハウゲン氏は、エンド・ツー・エンド暗号化の支持については慎重に言葉を選んで発言し、エンド・ツー・エンド暗号化テクノロジーは、外部の専門家がそのコードや方針を厳正に調査できるオープンソースで対応することが望ましいと述べた。

しかし、Facebookの場合は、エンド・ツー・エンド暗号化の実装がオープンソースではなく、誰も検証できないため、規制当局による監視が必要だとハウゲン氏は提案した。ユーザーのプライバシーをどの程度確保するか(したがって、政府当局などによる潜在的に有害な監視からの保護をどの程度確保するか)、という点についてFacebookが誤解を招く指針を打ち出さないようにするためだ。

「私たちはプライバシーを保護し、危害の発生を防ぐ」という見出しの下で書かれた前述のデイビス氏の論説記事は、Metaが「外部の専門家と引き続き協力し、虐待と闘うための効果的な方法を構築していく」ことを誓う言葉で締めくくられており、英国議会の議員をなだめることによって、Facebookが一挙両得を狙っているように感じられる。

「Facebookはこの取り組みを適切な方法で進めるために時間をかけており、当社のすべてのメッセージングサービスでエンド・ツー・エンド暗号化を標準機能として導入することが、2023年中のある時点までに完了する予定はない」とデイビス氏は付け加え「Facebookはユーザーのプライベートなコミュニケーションを保護し、オンラインサービスを使用する人々の安全を守る」という、具体性のない宣伝文句をまた1つ発して記事を締めくくった。

英国政府は間違いなく、Facebookが今回、規制に配慮を示しながら非常に厄介な問題に関する記事を公に発表したことについて、喜ばしく思うだろう。しかし、同社が、パテル内相などからの長期にわたる圧力を受けて、エンド・ツー・エンド暗号化の延期の理由を「適切に導入するため」だと発表したことは「では、非常にセンシティブなプライバシーに関する問題という文脈において、その『適切』とは何を意味するのか」という懸念を強めるだけだろう。

もちろん、デジタル権利の擁護活動家やセキュリティの専門家を含むより大きなコミュニティも、今後のMetaの動向を注意深く見守っていくだろう。

英国政府は最近、児童性的虐待コンテンツ(CSAM)の検知または報告、作成阻止を目的として、エンド・ツー・エンド暗号化サービスにも応用できる可能性があるスキャニング/フィルタリング技術を開発する5つのプロジェクトに、およそ50万ポンド(約7700万円)の税金を投じた。「代替ソリューション」(プラットフォームにエンド・ツー・エンド暗号化を実装する代わりに、スキャニング / フィルタリング技術を暗号化システムに組み込むことによってCSAMの検知 / 摘発を行う)を開発することによって、革新的な方法で「テクノロジーにおける安全性」を確保するよう閣僚たちが求めたためだ。

したがって、英国政府は(ちなみに現在、オンライン安全法案の制定に向けても動いている)、子どもの安全に関する懸念を政治的な圧力として利用して、暗号化されたコンテンツを、エンド・ツー・エンド暗号化の方針のいかんに関わらず、ユーザーのデバイス上でスキャンすることを可能にするスパイウエアを実装するようプラットフォームに働きかける計画のようだ。

そのようにして埋め込まれたスキャンシステムが(閣僚たちの主張とは相容れないものの)堅牢な暗号化の安全性にバックドアを作ることになれば、それが今後数カ月あるいは数年のうちに厳密な調査と議論の対象になることは間違いない。

ここで参考にできるのがApple(アップル)の例だ。Appleは最近、コンテンツがiCloudのストレージサービスにアップロードされる前に、そのコンテンツがCSAMかどうかを検知するシステムをモバイルOSに追加することを発表した。

Appleは当初「当社は、子どもの安全とユーザーのプライバシーを両立させるテクノロジーをすでに開発している」と述べて、予防的な措置を講じることについて強気な姿勢を見せていた。

しかし、プライバシーやセキュリティの専門家から懸念事項が山のように寄せられ、加えて、そのように一度は確立されたシステムが(著作権下のコンテンツをスキャンしたいという市場の要求だとか、独裁政権下の国にいる反政府勢力を標的にしたいという敵対国家からの要求に応えているうちに)いや応なく「フィーチャークリープ」に直面する警告も発せられた。これを受けてAppleは1カ月もたたないうちに前言を撤回し、同システムの導入を延期することを表明した。

Appleがオンデバイスのスキャナーを復活させるかどうか、また、いつ復活させるのか、現時点では不明である。

AppleはiPhoneのメーカーとして、プライバシー重視の企業であるという評判(と非常に高収益の事業)を築いてきたが、Facebookの広告帝国は「利益のために監視する」という、Appleとは正反対の野獣である。したがって、全権力を握る支配者である創業者が、組織的に行ったプライバシー侵害に関する一連のスキャンダルを取り仕切った、Facebookという巨大なソーシャルメディアの野獣が、自社の製品にスパイウエアを埋め込むようにという政治的な圧力を長期にわたって受けた結果、現状を維持することになれば、それは自身のDNAを否定することになるだろう。

そう考えると、同社が最近、社名をMetaに変更したことは、それよりはるかに浅薄な行動だったように思えてくる。

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

WhatsApp、メッセージの自動消去をデフォルト設定可能に

WhatsAppユーザは、送信あるいは受信するすべての新規メッセージを簡単に消すことができるようになった。世界最大のインスタントメッセージングサービスは、同社幹部のいう次のプライバシー標準に向けて、機能を拡張している。

世界で20億人以上が使っているMeta(メタ)傘下のサービスは、ユーザーがすべてのチャットをデフォルトで自動消去させるオプションを米国時間12月6日に提供開始した。これまでユーザーは、新しいチャットごとに手動で自動消去を有効にする必要があった。

またWhatsAppは、メッセージを24時間あるいは90日後に消去させるオプションを、2020年最初に同機能を導入した際の7日間の期間に加えて提供する。

「自動消去によって、より自由で正直な会話が可能になります」とWhatsAppの消費者プロダクト責任者であるZafir Khan(ザファー・カン)氏がTechCrunchのインタビューで語った。全新規メッセージをデフォルトで自動消去させるオプションができることで、ユーザーが友達との気まずさを回避するのに役立つだろうとのことで、新機能の開発中、チームがユーザーからのフィードバックを得たことを付け加えた。

画像クレジット:WhatsApp

メッセージは、会話参加者のいずれかが自動消去オプションを有効にしていれば、一定時間後に消去する、と同氏は説明した。また、グループメッセージ向けにもこのオプションを提供する予定で、グループ作成時に選択できるようにする、と語った。

自動消去はWhatsAppが拡大展開する上での大きな焦点のようだ。「プライバシーは常にWhatsAppの中心にあります。私たちはエンド・ツー・エンド暗号化を提供しており、メッセージングの世界で標準となるずっと前にデフォルトにしました」と同氏はいう。

「自動消去はメッセージングの新たな業界標準だと考えています」とMetaのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏はFacebookの投稿で述べ「すべてのメッセージが永遠に残る必要はありません」と付け加えた。

メッセージが消える仕組みは絶対ではないので念の為。

今後もメッセージを転送したりスクリーンショットを取ることで、消去プロセスを回避できる。しかしカン氏は、これは技術の問題ではないことを示唆した。メッセージを送る相手がこちらの要求に従いたくなければ、連絡するのをやめる以外にできることはほとんどない。

画像クレジット:Kirill Kudryavtsev / AFP / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

MetaがAWSを戦略的クラウドプロバイダーに選定、Meta AIの研究開発やPyTorch利用企業のパフォーマンスを強化

MetaがAWSを戦略的クラウドプロバイダーに選定、Meta AIグループの研究開発やPyTorch利用企業のパフォーマンスを強化

Amazon Web Services(AWS)は米国時間12月1日、Metaが戦略的クラウドプロバイダーとしてAWSを選定したことを発表した。

MetaとAWSはこの5年間で連携する範囲を拡大してきた。今回の合意を基に、AWSは引き続きMetaが取り組む研究開発をサポートし、イノベーションの促進、サードパーティやオープンソースソフトウェア(OSS)コミュニティとのコラボレーションを支援する。

Metaは、AWSの実績あるインフラストラクチャと包括的な機能を活用し、既存オンプレミスのインフラを補完するとともに、AWSが提供するコンピュート、ストレージ、データベース、セキュリティのサービス利用を拡大し、クラウドにおけるプライバシー、信頼性、拡張性を実現するという。サードパーティ企業とのコラボレーションをAWS上で行うとともに、すでにAWSを利用している企業の買収支援にも活用する。

またMetaは、AWSのコンピュートサービスを活かし、Meta AIグループの人工知能の研究開発を加速させる。AWS上でOSSの機械学習フレームワーク「PyTorch」を活用する顧客企業のパフォーマンスを向上させ、開発者による人工知能と機械学習モデルの構築・トレーニング・デプロイ・運用の加速を目指す。

AWSとMetaは、機械学習モデルの大規模な構築、トレーニング、デプロイに向けて、PyTorchのパフォーマンスならびにAmazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)や、機械学習専用に構築された機能を提供するAmazon SageMakerなどのコアマネージドサービスとの統合において、さらなる最適化を進める。自然言語処理やコンピュータビジョンのための大規模な深層学習モデルを開発者が容易に構築できるよう、両社はAWS上でのPyTorch活用を促進し、AIアクセラレーターの分散システム全体で大規模なトレーニングジョブのオーケストレーションを可能にする。

また両社は、PyTorch上での推論のパフォーマンス、説明可能性、コストを向上させるネイティブツールを共同で提供。本番環境へのモデル展開を簡素化するため、PyTorchのネイティブなサービングエンジンであるTorchServeを強化し、学習したPyTorchモデルを容易に一括展開できるようにするという。これらのOSSへの貢献をベースにAWS上でパフォーマンスを最適化し、大規模な深層学習モデルの研究から本番環境までをより迅速に導入するための支援を展開する。

Facebook Messengerが米国で新しい割り勘機能「Split Payments」をテスト中

Facebook Messenger(メッセンジャー)は、ユーザーが同アプリを通じて請求書や費用を割り勘できるようにする新機能「Split Payments」のテストを開始すると発表した。同社は、この新機能は、Messengerを通じて財務処理を行うための「無料かつ迅速な」方法であるとしている。この新機能は、米国のユーザーを対象に来週から展開される。

Split Paymentsを使用するには、ユーザーはMessengerのグループチャットまたはPayments Hubで「Get Started」ボタンをクリックする必要がある。そこから、食事の勘定を均等に分割したり、自分を含めた、または含めないで、グループチャット内の各ユーザーの貢献額を修正することができる。また、パーソナライズされたメッセージを入力するオプションも用意されている。最後に、Facebook Payの詳細を確認するように求められる。その後、リクエストが送信され、グループチャットのスレッドで見ることができる。

同社はこの新機能について、ブログで次のように述べている。「グループでのディナーや共同の生活費、月々の家賃などで、うまく分担するのに(そして後から払ってもらうのに)苦労していた方は、これで楽になります」。

今回のSplit Paymentsの開始は、Messengerが数カ月前に個人間の支払いのためにVenmoのようなQRコードを追加した中でのことだ。QRコード機能は米国で提供開始され、Facebook(フェイスブック)の友達でなくても、誰でもFacebook Payを通じてお金を送ったりリクエストすることができる。この機能は、Messengerの設定にある「Facebook Pay」の項目からアクセスできる。

関連記事:米国でFacebook MessengerにQRコードによる個人間送金機能追加

Facebook Payは、個人間の支払いだけでなく、寄付やEC取引など、同社のアプリ全体に広がる決済システムを確立するための手段として、2019年11月に初めて登場した。

Split Paymentsは、クリエイターのEmma Chamberlain(エマ・チェンバレン)氏、Zach King(ザック・キング)氏、Bella Poarch(ベラ・ポールチ)氏、King Bach(キング・バーチ)氏がデザインした4つの新しいグループARエフェクトなど、他のいくつかのMessengerアップデートとともに導入された。また、Messenger内で送信すると音が鳴る絵文字である「Stranger Things(ストレンジャー・シングス)」のSoundmojiを新たに2つ、そして新しいチャットテーマをリリースした。Messengerは他にも最近、アルバム「Red」のリリースを記念して、新しいTaylor Swift(テイラー・スウィフト)のSoundmojiを発表している。

画像クレジット:Messenger

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(文:Aisha Malik、翻訳:Aya Nakazato)

フェイスブック、高リスクなアカウントの2要素認証を義務づけ

最近Meta(メタ)の子会社となったFacebook(フェイスブック)が、悪意のあるハッカーの標的となる可能性がある高リスクのアカウントを2要素認証(2FA)必須にする予定だと発表した

この動きは、ソーシャルネットワーキングの巨人が、人権擁護家、ジャーナリスト、政府関係者など、特定のリスクにさらされる可能性のある人びとのアカウントを保護することを目的として行う、強化されたセキュリティプログラムFacebook Protect(フェイスブックプロテクト)の大幅な拡張の一部だ。この動きは、2FAを含むセキュリティ機能を使いやすくし、アカウントとページに潜在的なハッキングの脅威への監視を含む追加のセキュリティ保護を提供することによって、対象となるアカウントがより強力なセキュリティ保護を採用できるようにする。

このプログラムは2018年に試験運用され、2020年の米国大統領選挙に先立って拡大されて、不正行為や選挙の干渉がプラットフォームに広がるのを阻止しようとした。Facebookによると、現在150万を超えるアカウントで有効になっており、年末までに米国、インド、ポルトガルを含む50カ国以上に拡大する。同社は2022年にさらなる拡張を計画している。

Facebook Protectにすでに登録されている150万のアカウントのうち、約95万が2FAを有効にしているが、これはFacebookによれば「インターネット全体でも歴史的に十分に活用されてこなかった」機能だ。Facebookは、この機能がすべての高リスクアカウントで使用されることを望んでおり、さらに強制的にしようとしているという。

これは、Facebookによって高リスクアカウントとして識別されたユーザーが、設定された期間が経過するまでに2FAを有効にしない場合、そのユーザーは自分のアカウントにアクセスできなくなることを意味する。同社によれば、ユーザーはアカウントへのアクセスを永久に失うことはないものの、アクセスを回復するには2FAを有効にする必要があるという。

Facebookのセキュリティポリシー責任者であるNathaniel Gleicher(ナサニエル・グレイシャー)氏は「2FAは、あらゆるユーザーのオンライン防御のコアコンポーネントですので、これを可能な限り簡単にしたいと考えています」という。「2FAへの登録を拡大するには、認知度を高めたり、登録を奨励したりするだけでは不十分です。ここは、みなさんにとって、公開討論のとても重要な場所を占め、非常に狙われやすいコミュニティです。したがって、みなさんの自身の保護のために、できれば2FAを有効にしていただく必要があるのです」。

グレイシャー氏は、初期のテストで、Facebook Protectを義務づけることで、高リスクのユーザーの90%以上が2FAに登録したと付け加えた。

ツールが提供する保護と、アカウントから重要な声がロックアウトされるなどの潜在的な可能性とのバランスをとるために、2FA義務化はまず、フィリピンやトルコなどの「Facebookが円滑に拡大を行えるリソースを持つ」場所から開始される。同社はまた、次の選挙が重要な市民活動と重なる可能性のある地域にも焦点を当てる予定だ。

なお現段階ではすべてのアカウントに2FAを義務づける「計画はない」という。

関連記事:Metaがメッセージのエンド・ツー・エンド暗号化導入延期にともなう安全性に対する取り組みを説明

画像クレジット:TechCrunch

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(文: Carly Page、翻訳:sako)

フェイスブックの暗号化部門責任者デビッド・マーカス氏が年内に退任

Facebook(フェイスブック)の親会社Meta(メタ)は、暗号化を率いる幹部を年内に失うことになった。

暗号化ユニットNovi(ノビ)の責任者で、以前は同社のMessenger(メッセンジャー)ユニットを舵取りしていたDavid Marcus(デビッド・マーカス)氏は、2021年中に会社を去ることを米国時間12月1日に発表した。マーカス氏は2014年にFacebookに入社した。同氏の辞任はFacebookにとって、9月に勤続13年の後に退社を表明したCTO、Mike Schroepfer(マイク・シュローファー)氏に続く重要人物の離脱となる。

元Upwork(アップワーク)のCEOで、Noviのプロダクト責任者だったStephane Kasriel(ステファン・カスリエル)氏がマーカス氏に代わって組織を率いる。

マーカス氏は、かつてPayPal(ペイパル)のプレジデント時代にBitcoin(ビットコイン)などの暗号資産(暗号資産)を最初に進んで取り入れた数少ないテック・リーダーの1人で、以来暗号化コミニュティーの重要人物として長年知られている。以前マーカス氏はCoinbase(コインベース)の取締役を務めていた。

彼がFacebookの暗号化責任者として在任中、同社の暗号資産プロジェクトDiem(ディエム)が業界と規制当局から大きな反発を浴び、会社は暗号資産分野参入の規模を縮小せざるを得なくなり、マーカス氏は挫折を味わい続けた。2021年初め、Facebookは暗号資産ウォレット、Noviの小規模なパイロットを開始し、米国とグアテマラのユーザーが同アプリを使ってステーブルコイン暗号資産の交換ができるようにした。

マーカス氏は近々自身でベンチャー事業を立ち上げる可能性を示唆した。

「Noviは公開直後でまだまだやることはたくさんあり、今私は決済と金融のシステムが変化する必要性をかつてないほど強く感じていますが、私の起業家精神DNAは、毎朝毎朝それを無視するようにと、私を肘でつつき続けています」とマーカス氏はツイートのスレッドに書いた。

個人的なお知らせ:Metaで7年間を過ごしたあと、私は難しい決断を下し、2021年末に会社を去ることにしました。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Metaがメッセージのエンド・ツー・エンド暗号化導入延期にともなう安全性に対する取り組みを説明

Meta(旧Facebook)は先日、同社のメッセージングサービスにおけるエンド・ツー・エンドの暗号化の導入を2023年中へと延期する計画を発表した。これは、この変更によって虐待者が発見されなくなるのではないかという児童安全擁護団体の懸念を理由としている。同社は米国時間12月1日、エンド・ツー・エンドの暗号化の導入と並行して、被害防止の必要性にどのように取り組むかについて詳細を発表した。

暗号化されていないプライベートメッセージをスキャンして悪意のある行動パターンを検出する技術はあるが、エンド・ツー・エンドで暗号化された環境ではそうはいかない、とMetaは説明する。同社はその代わりに、人工知能と機械学習を利用して、ユーザーのプロフィールや写真など、暗号化されていない部分を調べ、悪意のある行動を示す他のシグナルを探すことを計画している。例えば、大人が新しいプロフィールを設定して、知らない未成年者に連絡を取ろうとし続けたり、多くの見知らぬ人にメッセージを送るようになったりした場合、同社は介入して対策を講じることができる、とブログには書かれている

Metaは最近、未成年者が所有するアカウントの保護を強化するために、FacebookとInstagramのアカウントをデフォルトで非公開または「友達のみ」にするなど一連の策を実施した。また、2021年に入ってからは、成人のInstagramユーザーが、まだフォローしていない10代の若者に連絡を取ることができないようにする機能を導入した。さらにMessengerでは、機械学習を利用して開発された、疑わしい行動を発見するためのアドバイスや、他のユーザーをブロック、報告、無視、制限するなどの行動をとる方法を示す安全通知をポップアップで表示するようになった。過去1カ月間で、このアドバイスは1億人以上のユーザーに読まれた。Metaによると、このような機能は、エンド・ツー・エンドで暗号化された環境でも機能するとのことだ。

関連記事:Instagramが10代ユーザーのアカウントをデフォルトで非公開に、広告や望まない大人からの接触を制限

同社はさらに、受信箱を通じて誰が自分に連絡を取ることができるかをよりコントロールできる、ユーザー向けのさまざまな機能を挙げている。リーチ範囲の拡大を求めるクリエイターは、コントロールを少なくしたいかもしれないが、不正使用やスパムをフィルタリングしたいと思うだろうし、プライベートアカウントを持つ人は、連絡を知り合いだけに完全に制限したいと思うかもしれない。その他のメッセージング機能では、画像や動画をぼかしたり、メッセージングリクエスト(知らない人が始めた会話)からのリンクをブロックしたりすることができる。

Metaはまた、2021年初めに報告機能の変更を行い、報告フローの中に「子どもを含む」という選択肢を追加することで、児童搾取規則に違反するコンテンツの報告を容易にし、報告をより身近なものにしたと述べている。その結果、報告件数が前年比で50%近く増加したという。メッセージが報告されると、会話の一部が復号化され、警察やNCMEC(全米行方不明・被搾取児童センター)への児童搾取未遂の報告など、行動を起こせるようになる。Metaによると、児童搾取の画像を再共有することは、たとえ怒りに任せたものであっても有害であることをユーザーに警告し「報告して、共有しないで」というキャンペーンを開始した。

同社は、規制当局からの問い合わせや、エンド・ツー・エンドで暗号化された環境で児童搾取が増加することを懸念する児童安全擁護団体からの反発に対応するため、すでにこれらの手順や計画の多くを明らかにしていた。しかし、Metaは、ユーザーの非暗号化データのスキャンと既存のレポート機能を組み合わせることで、メッセージが暗号化されていても、不正使用に対して行動を起こすことができると主張している。実際、エンド・ツー・エンドの暗号化がすでに採用されているWhatsAppでも、この方法で不正使用の検出に成功している。WhatsAppは最近、過去の事例を検証した結果、問題のチャットがエンド・ツー・エンドで暗号化されていたとしても、法執行機関に情報を提供することができただろうとも述べている

暗号化されたメッセージングに関する問題は、Metaが規制当局からその展開を許可されるべきかどうかということだけではない。Metaの本日の投稿は、E2EEによってユーザーの安全を確保することができなくなることはないと主張しているように見えるが、Metaの元従業員は最近、同社が「馬鹿馬鹿しいほど早いスケジュール」でE2EEシステムへの移行を計画していたことを非難している。このことは、E2EE環境での保護のためのロードマップや計画がなかったために、子どもの安全保護が明らかに悪化していたと理解している子ども安全チームのメンバーの辞任につながった。従業員のDavid Thiel(デイビット・ティール)氏がTwitterで指摘した具体的な問題はMetaの投稿では解決されておらず、暗号化された通信を可能にしつつ、ユーザーにとって真に安全な環境を作るために必要なことを単純化しすぎている。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

フェイスブッックを内部告発したフランセス・ハウゲン氏、今度はプラットフォームの免責保護で証言へ

Facebookの内部告発者であるFrances Haugen(フランセス・ハウゲン)氏が今週、再び議会の出て、今度は、通信品位法230条関連で、同社のモデレーションとポリシーの失敗に関する独自の見解を述べる。この条項は、オンラインプラットフォームがユーザーが作ったコンテンツを掲載する際の、プラットフォーム側の責任を免除する重要な法的保護だ。

下院の通信と技術委員会のエネルギーと商業小委員会が行なうこのヒアリングは「Holding Big Tech Accountable: Targeted Reforms to Tech’s Legal Immunity(大手テクノロジー企業の有責化:テクノロジー企業の法的免責を標的とする改革)」と題され、米国東部標準時12月1日午前10時30分から行われる。Color of Changeの理事長Rashad Robinson(ラシャド・ロビンソン)氏とCommon Sense MediaのCEOであるJames Steyer(ジム・スタイアー)氏も、同日に証言する。

このヒアリングは、下院の委員会が行なう230条に関する議論として最新のものだ。3月にはFacebookとGoogleとTwitterが議員たちの前で、誤報や偽情報と戦うために彼らが行っている対策を擁護した。この2つの粗悪情報に対する懸念が民主党議員たちの関心を目覚めさせ、テクノロジー業界の長年の免責隔壁を再検討することになった。

10月の上院でのヒアリングではハウゲン氏は、プラットフォームがアルゴリズムによって特定のコンテンツを目立つようにしている件ではプラットフォームを有責とするよう230条の改正を提議した。今日のソーシャルメディアの病根に対してハウゲン氏は法的ソリューションのエキスパートではないが、長年Facebookの、その後解体されたシビックインテグリティチームにいた彼女は、アルゴリズムによって増幅されたコンテンツの危険な社会的影響についての洞察を、議員たちに提供できるユニークな立場にいる。

「ユーザーが作るコンテンツは、企業のコントロールがなかなか及ばないものです。しかし企業は、自らのアルゴリズムは100%のコントロールできます。人気が急上昇したり、バイラルで拡散されたり、公共の安全を害するようなコンテンツを、Facebookが思いどおりに選べるべきではありません」と彼女はいう。

Facebookの元ニュースフィードのトップで、現在Instagramを率いるAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏も、初めて来週上院で証言し、同社の事業が、一部の若く傷つきやすいユーザーのメンタルヘルスに危害を及ぼしていたとする遺漏文書の内容について述べる予定だ。

下院エネルギー・商業委員会は、発表で現在、議会が審議している4つのテクノロジー改革法案を挙げている。

最初の法案を提出したのは、水曜日のヒアリングを行なう委員会で、この法はプラットフォームがアルゴリズムを使って「意図的または無謀にも」有害なコンテンツを推奨したときには、230条の免責保護を撤廃する。

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画像クレジット:Photo by Matt McClain-Pool/Getty Images/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ロシア政府がアップル・メタ・GoogleなどIT大手に現地オフィス開設を要求、違法な情報に対するアクセス制限への同意も

ロシア政府がアップル・メタ・GoogleなどIT大手に現地オフィス開設を要求、法律に違反する情報へのアクセス制限への同意も

Mikhail MetzelTASS via Getty Images

ロシア政府は今週、アップルをはじめとする米ハイテク企業が同国での事業を続ける場合、2021年末までに現地オフィスを開設するよう求めました。

同国の通信規制当局ロスコムナゾル(Roskomnadzor)は、現地に公式なオフィスを持たない企業は広告やデータ収集および送金が制限され、あるいは業務を禁止する可能性があると警告しています。

今年7月、ロシアのプーチン大統領は「ロシアでのインターネット上での活動を行う企業」に対して現地オフィス開設を義務づける法律に署名しています。そして今週初め、ロスコムナゾルが初めて対象となる企業のリストと、ロシアの要件を満たすために具体的に何をすべきかを明らかにしたかっこうです。

今回の企業リストにはアップル、Meta(Facebook)、Google、TikTok、TwitterおよびTelegramが含まれています。Reutersいわく、この措置はロシア政府が米ハイテク大手の活動を抑え、国内のIT企業を育成・強化しようとしているためとのことです。

すでにロシア政府は外国のデジタルサービスに対する課税、国内のIT企業に対する減税、さらにはロシア国内で販売されるスマートフォンなどにロシア製ソフトウェアをプレインストールすることを義務付けるなどの政策を打ち出してきました。アップルもiPhone初回起動時に政府推奨アプリ導入の仕組みを取り入れたり野党指導者アプリを削除しろとの要求に応じるなど、数々の譲歩をしてきました。

ロスコムナゾルがReutersに語ったところによると、対象となった企業はロシア国内にオフィスを開設することに加え「ロシアの法律に違反する情報へのアクセスを制限する」ことに同意しなければならないそうです。

米9to5Macは、これは基本的に「ロシア政府に逆らう情報を検閲する」ことを意味しており、米ハイテク各社が困難な立場に置かれる、と指摘しています。

なおロスコムナゾルに名指しされた企業は、いずれもこの件についてコメントしていません。もしも要求に素直に従ってしまえば、ロシア政府の検閲や人権侵害(反政権活動家ナバリヌイ氏の毒殺未遂事件や、それに続く収監など)を支持したことにもなりかねず、欧米で厳しく追及される可能性もあります。

アップルやGoogleがどういった対応を取るのか、今後の展開を見守りたいところです。

(Source:Reuters。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

Instagramのアダム・モセリ氏、 10代のメンタルヘルスについて上院で証言

Instagram(インスタグラム)の責任者であるAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏は、子どもや10代の若者のオンラインの安全性に関する一連の公聴会の一環として、初めて上院で証言する。The New York Timesによると、モセリ氏の公聴会は米国時間12月6日に行われる。

モセリ氏の公聴会は、Richard Blumenthal(リチャード・ブルーメンタール)上院議員(民主党)が、Facebook(現Meta)のCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏に手紙を送り、彼かモセリ氏のどちらかが上院の公聴会に参加するよう要請したことに端を発する。

モセリ氏は、上院議会への出席のニュースを受けて動画を投稿した。彼は、10代の若者のオンラインでの安全性に対する懸念が高まっていることを話し、10代の若者のアカウントをデフォルトで非公開にしたり、若者が目にする広告の種類を制限したりするなど、Instagramが若いユーザーを保護するために行ってきた過去の対策を紹介した。

関連記事:Instagramが10代ユーザーのアカウントをデフォルトで非公開に、広告や望まない大人からの接触を制限

「これらの問題について、比較的近いうちに議会で話すつもりです」とモセリ氏は語った。「これらは重要な問題ですが、私たちは共通の目標を持っています。私たちは皆、若い人たちがオンラインで安全に過ごして欲しいと願っています」。

9月にInstagramが10代の少女に危険な影響を与えていることを知っていたという報道が流れたとき、上院商務科学運輸委員会はそれを重くみた。委員会はまず、Facebookのセキュリティ部門のグローバルヘッドであるAntigone Davis(アンティゴン・デイビス)氏に質問したが、上院からの直接の質問には答えなかった。その数週間後、委員会はFacebookの内部告発者であるFrances Haugen(フランシス・ハウゲン)氏の証言を聴取した。ハウゲン氏は「Facebook Papers(フェイスブック・ペーパーズ)」として知られる何千もの内部文書を流出させた元シビックインテグリティプロダクトマネージャーだ。ハウゲン氏はこの証言で、Facebookはユーザーの安全よりも利益を重視していると上院に訴えた。

「Facebookが、私や他の議員、一般市民に対して完全に透明性を保とうとせず、若者のメンタルヘルスや依存症に関する重要な情報を隠しているように見えることに失望しています」と、この公聴会を主催する上院委員会の議長を務めるブルメンタール上院議員は書いている。「私が8月の手紙でInstagramと10代の若者に関する具体的な情報を求めたとき、Facebookは、ハウゲン氏が直接反論した明らかに回避的で誤解を招くような回答をした」。

2021年10月、Snap(スナップ)、TikTok(ティックトック)、YouTube(ユーチューブ)の幹部から話を聞いた後、再びInstagramの代表者から話を聞くために委員会は開催される。思春期の摂食障害の発症とInstagramの関連性について委員会が関心を示していることを考えると、モセリ氏は、Instagramが10代の少女に与える影響についてMetaが行いリークされた内部研究について質問されることが予想される。

関連記事:Snap、TikTok、YouTubeの公聴会で、米議員がオンラインで子どもたちを守る新ルールを声高にアピール

The Wall Street Journalが入手し、後にMeta自身が発表したこの内部研究によると、Instagramは10代の女の子の3人に1人のボディイメージの問題を悪化させ、10代の女の子は不安や鬱病の増加をInstagramのせいにしていることがわかった。自殺願望のある10代の若者の間では、6%のユーザーが自殺で死にたいと思ったきっかけをInstagramだとしている。さらに、調査対象となった10代の女の子の32%が、自分の体に悪い印象を受けたとき、Instagramがその気持ちをさらに悪化させたと報告している。

これらの文書が流出した直後、モセリ氏はInstagramがInstagram Kids(インスタグラムキッズ)の構築を一時停止することを発表した。Metaには、13歳未満のユーザーが親の承認した相手とチャットできるMessenger Kids(メッセンジャーキッズ)などの製品がすでにある。

「この体験を開発する必要性を支持しますが、このプロジェクトを一時停止することにしました」とモセリ氏は書いた。「これにより、保護者、専門家、政策立案者、規制当局と協力し、彼らの懸念に耳を傾け、10代の若者のオンライン経験にとってこのプロジェクトの価値と重要性を示すための時間を得ることができます」。

しかし、批評家たちは、Metaが責任を持ってInstagram Kids製品を構築する能力があるかどうかについて懐疑的だ。2021年11月に発表された調査によると、Facebookは広告ターゲティングのために10代の若者を監視し続けていると言われている。

「あなたかアダム・モセリ氏が証言して、記録を整理し、議会のメンバーや親たちに、あなたがどのように子どもたちを守るのかという計画を示すことが緊急かつ必要です」とブルメンタール上院議員はザッカーバーグ氏に書き送った。

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Yuta Kaminishi)

ナイアンティック「現実世界のメタバース」構築のために約344億円調達、評価額1兆328億円に

「Pokémon GO(ポケモンGO)」などのゲームを開発する拡張現実プラットフォームのNiantic(ナイアンティック)は、Coatueから3億ドル(約344億円)を調達し、同社の価値は90億ドル(約1兆328億円)に達した。サンフランシスコを拠点とし、Googleからスピンアウトしたこのスタートアップは、この資金を使って「現実世界のメタバース」と呼ばれるものを構築する予定だ。

Nianticの創業者兼CEOであるJohn Hanke(ジョン・ハンケ)氏は、2021年8月以降、メタバース(少なくとも「レディ・プレイヤー1」のようにVRヘッドセットに拘束されるようなもの)を「ディストピアの悪夢」と呼んでいる。VR技術への投資を示すために社名を「Meta」に変更したFacebookとは違い、Nianticは人々を外の世界に近づける技術を開発したいと考えている。2021年11月初め、NianticはAR開発キット(ARDK)「Lightship」を発表した。これは、ARゲームを開発するためのツールを公開するというもので、ゲームエンジン「Unity」の基本的な知識を持っていれば誰でも無料で利用できる。

関連記事:Nianticが「現実世界のメタバース」というビジョン&AR開発者キット「Lightship」を発表、AR体験構築をよりアクセシブルに

「Nianticでは、人間はバーチャルな世界がフィジカルな世界につながるときに最も幸せだと考えています。SFのメタバースとは異なり、現実世界のメタバースは、何千年も前から知られている私たちの世界における経験を向上させるためにテクノロジーを活用します」とハンケ氏は語っている。

今回の資金調達は、Coachella、Historic Royal Palaces、Universal Pictures、SoftBank、Warner Music Group、PGA of Americaといった企業が拡張現実(AR)体験の構築に使用しているARDKの拡張に役立てられる。ARプロジェクトでは、VRヘッドセットのようなまだ多くの人がアクセスできない技術を使うのではなく、主にスマートフォンを使って、人々が外の環境を探索するように促す。例えば、毎日その前を通る壁画があるとして「ポケモンGO」では、ユーザーが作成したポケストップの説明文を見れば、その壁画が実際に何を表現しているのかがわかるかもしれない。Nianticによると、毎月何千万人もの人たちが同社のゲームをプレイしており、登場以来、ゲーム内でプレイヤーは109億マイル(約175億418万km)以上歩いているという。

CoatueのゼネラルパートナーであるMatt Mazzeo(マット・マッツェオ)氏は「Nianticは、3Dの世界地図をベースにしたARのプラットフォームを構築しており、次のコンピューティングの移行期において重要な役割を果たすと考えています。私たちは、このインフラが現実世界のメタバースを支え、インターネットの次の進化に貢献すると考えているため、Nianticとの提携に興奮しています」と述べた。

VRのメタバースはハンケ氏の目には「ディストピア」に映るかもしれない。しかし、他のテクノロジーと同様にARにも問題がないわけではない。Nianticの最新ゲーム「Pikmin Bloom(ピクミンブルーム)」は、歩くことを中心にデザインされており、高齢者や障がい者のプレイヤーに疎外感を与えかねない。ポケモンGOには障がいを持つプレイヤーのコミュニティがあるが、Nianticはゲーム内での小さな調整で、移動手段が限られている人でもゲームをより利用しやすくすることができることを主張しなければならなかった。

それでも、NianticのビジョンはMetaのヘッドセットに依存した計画に代わるものだ。アプリ分析会社のSensor Towerによると、依然として「ポケモンGO」は大成功を収めており、2020年には10億ドル(約1148億円)以上を稼ぎ出し、2021年はすでにその収益を上回る勢いだという。しかし、すべてのゲームが愛されているわけではありません。同社は最近「Harry Potter:Wizards Unite(ハリー・ポッター:魔法同盟)」は、アプリ内の消費者支出と全世界でのインストール数が前年比で57%減少したため、終了すると発表された。しかし、独立系の開発者がNianticのLightship ARDKを手に入れれば「現実世界のメタバース」というコンセプトはさらに広がっていくだろう。

画像クレジット:Steve Jennings/TechCrunch / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックがケニアで最も未成年者の性的搾取が横行するSNSであることが判明

新たに公表されたDisrupting Harmレポートによると、ケニアにおいてインターネットを通じた未成年の性的搾取が、他のどのサイトよりもFacebook(フェイスブック)で横行していることが判明した。この大手テクノロジー企業のプラットフォームは未成年にとって極めて危険なものになっている。

インターポール、ユニセフ・イノチェンティ研究所、子どもに対する暴力撲滅に関する活動がまとめたこのレポートにより、2020年の東アフリカ諸国における未成年者に対するオンラインでの性的搾取や性的虐待に関する事例の90%以上がFacebookを起因とするものであることが判明した。このレポートは、全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)のデータ、未成年者やその両親、警察機関、法定代理人との面談に基づいて作成されたものである。

Facebook以外に、WhatsApp、Instagram、YouTubeも児童の性的虐待に関する画像や動画が広く所有、制作、配信されるプラットフォームとして言及されているこのレポートは、NCMECのデータを受けて公表されたものである。そのデータによると、2020年1年間にFacebookが報告した児童の性的虐待の画像は世界全体で2000万件以上にのぼるが、これは2番目に件数が多かったGoogleの37倍であったという。その後に行われている調査でも、Instagramが10代の少女のメンタルヘルスに深刻な影響を及ぼしていることが判明したため、Instagramの親会社であるMetaも、現在中断している13歳未満の未成年者を対象としたInstagram Kidsを開始する計画について熟慮している。

自社のプラットフォームから未成年者の搾取を排除するためにどのような取り組みを行っているかについてMetaからコメントを得ようとしたが、この記事を発表する際の期限までにコメントを得ることはできなかった。

NCMECのCyberTiplineレポートによると、全体的には、ケニアの児童に対するオンラインでの性的虐待も、6%増えて1万4434件となっている。CyberTiplineは、未成年者の性的搾取に関する事例を報告するための一元的なシステムである。ケニアは東アフリカで唯一、同国の犯罪調査局(DCI)の人身売買防止・児童保護課(AHTCPU)やインターポールの国際児童性的搾取データベースを通じてNCMECの報告システムに直結している国である。

同レポートには次のように記されている。「WhatsAppとFacebook(またはFacebook Messenger)は、児童が最も標的にされるソーシャルメディアやインスタントメッセージアプリであった。その理由はおそらく、FacebookとWhatsAppがケニアで最も人気がある2つのソーシャルメディアプラットフォームであり、子どもたちが多くの時間をオンラインで過ごす場所だからである」。

AHTCPUの責任者であるMueni Mutisya(ムエニ・ムティシャ)氏は、TechCrunchの取材に対し、同課がサイバー情報に関するレポートを毎日22件受け取っていると答えた。ケニアでは、新型コロナウイルス感染症が世界的にまん延し始めたあとに記録された事例が増大しており、これもソーシャルサイトの利用に起因する状況であると同氏はいう。

同氏は次のように述べている。「ソーシャルメディアによって、オンラインでの児童の性的搾取と性的虐待(OCSEA)の共有、作成、配信が拡大した。搾取者が若者をだまして、自分自身の露骨な画像を提供させたり、過度に人を性の対象として見る文化のえじきにしたりすることが格段に容易にできるようになった」。

このソーシャルメディアの勢力レポートによると、WhatsAppはFacebookとYouTubeに次いでケニアで人気のあるソーシャルアプリである。これまでに、ケニアの人口の4分の3以上がインターネットにつながっており、FacebookやWhatsAppといったサイトに容易にアクセスできるようになっている。

犯罪者が児童を食い物にする方法が変化しているように思える状況下で、このレポートを作成するにあたって面談を行った被害者の半数以上が、性的なコンテンツの要求はオフラインではなくオンラインで行われたと言っており、未成年者の5人に1人が直接のアプローチを受けている。少年と少女のどちらもオンラインで同程度のリスクに直面しているという事実を報告している調査によると、オンラインでの性的搾取という危険に最もさらされているのは12歳から17歳の未成年者だった。

犯罪者は一般的に被害者の知っている人物であることが判明しており、プレゼントや金銭(性的な恐喝)を利用して、犯罪者に会ったり、画像や動画を共有したりするように未成年者を誘導していた。勧誘は一般的にFacebook(またはFacebook messenger)、WhatsApp、YouTubeを利用して行われる。InstagramやByteDanceのプラットフォームであるTikTokを挙げる者も少数いたが、ほとんどの者はゆすられたり脅されたりして、わいせつなコンテンツを提供させられたり、わいせつな行為に関わらされたりしている。

同レポートにはさらに、ケニアが児童に対する性的虐待の商業的ライブストリーミングの発信地になっていることを国外の法執行機関が明らかにしたことも示されている。Google検索エンジンのトレンドから、ケニアの性犯罪者はティーンエージャーとの性行為、ティーンエージャー同士の性行為、児童や乳児との性行為を題材にした画像や動画を探し求めていることが判明した。安全保障当局のレポートによって、国々を移動する外国の児童性的犯罪者にとってもケニアはホットスポットであることが明らかになっている。

性的な目的で子どもにオンラインで身づくろいをさせる行為もソーシャルサイトで横行している。この行為は、虐待のコンテンツを作成・提供するように操る意図を持って行われているものであり、直接子どもに会ったり、児童を虐待したりする意図はまったくない。これは、現在のケニアでは犯罪行為とはみなされないOCSEA(児童に対するオンラインでの性的搾取と性的虐待)の1つの形態であると同レポートには記述されている。犯罪者を告発する際の根拠となる法律は、児童を性的なコンテンツにさらした加害者を罰するコンピューター不正使用法と児童ポルノを刑事罰の対象としている性犯罪法のみである。

同レポートは次の点を指摘している。「ケニアにおいて、間もなく成立する、オンラインでの身づくろいに対処する児童法案2021(Children Bill 2021)の条文は、児童に会うことを目的としたオンラインでの身づくろいしか対象としていないため、例えばオンラインプラットフォームで性的なコンテンツを送るように犯罪者が児童に求めた場合には適用されない可能性がある」。

現在、立法府の承認手続きが進められているこの法案は2020年に提出されたものである。2週間前に国会議員がこの新しい法律に対する提言を一般に募り、先ほど述べた抜け穴を埋めるチャンスが到来した。

同レポートは次のように述べている。「性的虐待がオンラインで発生する行為である身づくろいを禁止する条文が依然として盛り込まれるように願っている」。

この種の犯罪には、国境を超えて行われるという性質があるため、ケニアは犯罪者の行動を追跡したり、犯人を検挙したりできるように国際機関や地方自治体と綿密な連携を行っている。ケニアのDCI AHTCPUも国の通信規制当局と連携して、この種の犯罪の性質を一般大衆に警告したり、報告を行うことを推奨したりしている。

ムティシャ氏は次のように語る。「インターネット犯罪には国境を超えて行われるという性質があるため、DCI AHTCPUはOCSEAとの戦いをサポートするために、国内や国外の戦略的パートナーと手を組んでいる。国境を超えるOCSEAの事例が発生した場合には、我々はインターポールを利用して通知を発令する」。

「英国高等弁務官事務所の国際渉外官や(ケニアの)米国大使館のFBI法務専門職員およびケニアにおいて同等の役割を担う人々と綿密に連携し、オンラインで虐待を受けた被害者のために正義を求め、犯罪者を追跡していく。これは、社会への啓蒙や学校訪問によって実現する教育、意識の向上と鋭敏化に加えて行うものである」と同氏はいう。

Disrupting Harmの執筆者たちは、同レポートに記された調査結果が、児童に対するオンラインでの性的虐待に関する戦略を導入するための指針となることを願っている。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Annie Njanja、翻訳:Dragonfly)

欧州のデジタル規制の再改定でフェイスブックの態度が変わる可能性、内部告発者フランシス・ホーゲン氏が欧州議会で証言

Facebook(フェイスブック)の内部告発者Frances Haugen(フランシス・ホーゲン)氏は、先に行われた英国と米国の国会議員の前でのセッションの後、欧州議会で洗練された証言を行った。

ホーゲン氏のコアメッセージは、大西洋の両側で発せられたのと同様の深刻な警告だった。「Facebookは安全より利益を優先し、個人、社会、民主主義に悪影響を及ぼす有害コンテンツの増幅を無視することを選んでいる。そして、欧州の規制監督は、こうした無責任な運営を行うプラットフォームを統制し、責任あるものにするために不可欠であり、立法者たちがソーシャルメディアに規制を課すことに一刻の猶予もない」。

Facebookの内部告発者として(これまでで)最も注目度の高い人物であるホーゲン氏は、欧州議会から非常に好意的な反応を受けた。議員たちは、同氏が時間を割いてくれたことや、彼らが同氏の「勇気」と表現する、懸念を公に表明してくれたことへの感謝の言葉を惜しまなかった。そして同氏が発言する前や、約3時間にわたるプレゼンテーションと質疑応答の最後にも、同氏を称賛した。

議員たちはさまざまな問題について同氏に質問した。最も大きな関心が寄せられていたのは、新たに導入されるEU全域のデジタル規制が、不安定なプラットフォーム大手に対して、効果的な透明性と説明責任をいかに最大限にもたらし得るかということだった。

Digital Services Act(DSA、デジタルサービス法)は、欧州議会議員の知性の前に置かれている。欧州委員会の提案に対する修正の検討と投票が行われており、この過程で同法案が大きく変化する可能性もある。

一部の議員が行動広告の全面禁止を求める動きを見せたことなどを受け、コンテクスチュアル広告のようなプライバシー保護に配慮した代替手段が法案に盛り込まれた。あるいは最近支持を得た別の修正案では、ニュースメディアをプラットフォームコンテンツの削除から除外するよう求めている

蓋を開けてみると、ホーゲン氏はこうした修正案に好意的ではないことがわかった。しかし、この規制を総じて支持すると同氏は発言した。

DSAの全般的な要点は、信頼できる安全なオンライン環境を実現することに置かれている。そして本日のセッション中に発言した多くの欧州議会議員たちは、ホーゲン氏が欧州議会で発言することに世界的な注目が集まっていることを受けて、EUの警笛を吹く街頭演説的なオポチュニティを捉えた。Facebookの(さらに)別のパブリシティ危機の真っただ中にある中、デジタル規制が審議中であるだけでなく、採択に向かって急速に進んでいる進歩的な状態であることを知らせるものだ。

Facebookの内部告発者は政治的エゴを満たすことに快く応じてみせた。EUがプラットフォーム規制に真剣に取り組んでいることに「感謝する」と述べ、EUはDSAにより「グローバルなゴールドスタンダード」を築くオポチュニティを有していると示唆した。

とはいえ、同氏は2021年10月に行われた別の証拠審議の際にも、英国議会で同様の表現を用いている。そこで同氏は、同国のオンライン安全法について同じように熱弁を振るった。

ホーゲン氏は欧州議会議員たちに対し、Facebookは「データを使ってごまかす」ことに並外れて長けている、と英国の立法者たちに警告した内容を繰り返し、Facebookのプラットフォーム上で起きていることに関するデータを提出することを単純に要求するだけのような甘い法律を通過させてはならない、と議員らに印象つけた。むしろFacebookは、データを引き出して監視監査を生成するのに使用するクエリの詳細に至るまで、同社が引き渡すデータセットのすべてについて説明を求められるべきだということだ。

法制化においてこのようなステップを取らなければ、EUの新しいデジタル規則に大きな抜け穴ができ、Facebookはチェックマークを付ける構図を描くのに必要なあらゆるクエリを実行して、選択的に自己利益的なデータを提供することでうまく乗り切るだろう、とホーゲン氏は警鐘を鳴らした。

Facebookのように信頼できないプラットフォームでも規制が効果を発揮するためには、市民社会組織や外部の研究者たちの幅広いエコシステムからの多層的で動的かつ継続的なインプットが必要だと同氏は提言した。新たに発生してくる弊害を掌握し、法律が意図した通りに機能していることを確保するためだ。

AIがもたらすインパクトに関して求められている説明責任を真に果たすためには、現在DSAが提案している「吟味された学識者」だけではなく、より広範な分野の外部専門家にプラットフォームデータを提供することで、監視に対する広い視野を持つべきだと同氏は強く要請した。

「Facebookがデータで偽ることは明らかです」と同氏は欧州議会で語っている。「DSAの導入を奨励します。Facebookはデータを提供する際、その取得方法を示す必要があります【略】データを引き出すために使用したプロセス、クエリ、ノートを開示することが極めて重要です。これを確認できない限り、提供された情報を信頼することはできません」。

ホーゲン氏は単に警告を発するだけではなかった。同氏はさらに賛辞を重ね、欧州議員たちに次のように伝えた。「欧州がこれらのプラットフォームを規制する上で重要な役割を担うことを強く信じています。欧州は活気に満ちた、言語的に多様な民主主義国家だからです」。

「言語的にも民族的にも多様な4億5000万人のEU市民のためのDSAの権利を獲得すれば、世界に向けたゲームチェンジャーを創出できます。ビジネスのオペレーションに対する社会的リスクの評価を各プラットフォームに義務づけることで、構築するプロダクトやその構築方法の決定は、利益の最大化だけに基づくものではなくなります。言論の自由を保護しつつ、リスクに対処する体系的なルールや基準を確立し、透明性、監視、執行がどのように機能すべきかを世界に示すことができるでしょう」。

「プラットフォームは自社がどのような安全システムを持っているのか、それらの安全システムがどのような言語に対応しているのか、言語ごとのパフォーマンスを明らかにしなければなりません。これを確実にすることが、深刻に、切実に求められています」と同氏は続け、包括的な情報開示の必要性に関する自身の主張を具体化した。「正直なところこれは欧州人の大多数にとって危険なことなのだろうか?と思われるかもしれません」。

ホーゲン氏によると、このようなアプローチは、そのプラットフォームが稼働するすべての市場と言語にまたがる弊害に対処する上で必要な「言語に依存しないコンテンツ中立的なソリューション」をFacebookに迫ることで、欧州を超えた規模のメリットをもたらすという。

Facebookの(限られた)安全予算における偏り、つまりどれだけの予算が英語圏の市場に向けられているのか、そして / または規制を恐れている少数の市場に向けられているのかという点は、Facebookの非常に多くの内部文書が漏洩したことで増幅された核心的な問題の1つである。そして同氏は、FacebookのAIモデルに状況に応じた透明性を持たせることで、強力なプラットフォームがどのように運用されているのか(そして何を優先するのか、何を優先しないのか)というグローバルな公平性の欠如に対処できると提言。そのためには一般的なパフォーマンス指標に加え、市場、言語、安全システム、そしてターゲットを絞ったコホート単位においても、詳細な情報が必要になると指摘した。

安全性を体系的な要件としてFacebookに取り組ませることは、欧州全域の市場でプラットフォームが引き起こす問題を解決するばかりでなく「世界の脆弱な地域に住んでいて、あまり影響力を持たない人々のために声を上げることにもなる」と同氏は主張する。そして次のように言い添えた。「世界で最も言語的な多様性に富む地域は、往々にして最も脆弱な地域であり、欧州が介入する必要性を抱えています。欧州は影響力を有しており、そうした地域の人々のために真に力を発揮できるのです」。

ホーゲン氏の発言の多くは以前の証言や記者会見でもお馴染みのものであった。一方、質疑応答では多くのEU立法者たちが、有害なコンテンツの増幅というFacebookの問題がマイクロターゲット / 行動広告(当議会で活発に議論されている)の全面禁止により解決されるのではないか、という論点に同氏の声を引き込もうとした。これによりアドテックの巨人は、背後にある人々の情報をデータ駆動型操作を通じて利益を得るために使用することができなくなるだろう、ということだ。

これについてホーゲン氏は異議を唱え、規制当局が決定するのではなく、人々が自分でターゲティング広告の有無を選択できるようにすることを支持すると述べた。

全面禁止の代わりに、同氏は「特定の事柄や広告は【略】実際に規制される必要があります」と提案し、規制の対象となる領域の1つとして広告料金を挙げた。「現在のシステムはヘイトを助成しています。つまり、ヘイト的な政治広告を掲載する方が、そうではない広告を掲載するよりも5倍から10倍安いのです。それを考えると、広告料を均一にする必要があると思います」と同氏は説明した。「ただし、特定の人をターゲットにした広告を規制すべきであるとも考えています」。

「ご存じかどうかわかりませんが、特定の広告について100人のオーディエンスをターゲットにすることも可能です。それが悪用されていることはまず間違いないと思います。政治広告に過剰にさらされているのはどのような人かを分析したところ、驚くことではありませんが、最も影響を受けているのはワシントンD.C.の人々で、それは極端に過度な露出状態です。私たちは月に何千もの政治広告について話し合っています。ですから、特定の人々を彼らの認識なしにターゲットにするメカニズムを持つこと【略】は容認できないと私は考えます」。

ホーゲン氏はまた、Facebookはサードパーティのデータソースを利用して、広告ターゲティング目的でユーザーのプロファイルを充実させていることに言及し、その利用を禁止するよう主張した。

「プロファイリングとデータ保持に関して、サードパーティのデータを取得することを許可すべきではないと思います。Facebookはクレジットカード会社やその他の形態と協働していますが、これは彼らの広告の収益性を根底から高めています」と同氏は述べ、次のように付け加えた。「データソースと連携する際にはその都度承諾する必要があると思います。人々は、Facebookに自分たちのデータの一部があることを知ればとても不愉快に感じるはずです」。

しかし、行動広告ターゲティングに関しては、全面禁止の支持を慎重に避けている。

それはこのセッション中に生じた興味深い波紋だった。この問題にはEU内部でモメンタムがあり、それにはホーゲン氏自身の内部告発が地域の立法者たちのFacebookに対する懸念を増幅させた結果としての影響も含まれていた。そしてホーゲン氏はそれを喚起するのに貢献したかもしれないのだ(しかしそうしないことを選んだ)。

「ターゲット広告に関しては、人々がどのようにターゲティングされるかを選択できるようにすべきであると強く提言します。そして、人々に選択を強要するダークパターンを禁止することを推奨します」と同氏はある回答の中で述べている(しかし「ダークパターン設計」のようなシニカルで多面的な要素に対し、規制当局がどのようにして有効な法律を作ることができるのかについての詳細には触れていない)。

「プラットフォームは、そのデータをどのように使うかについて透明である必要があります」と同氏は自身の提案のすべてを包含する本質を伝えてから、次の提案を繰り返すことに依拠した。「すべての政治広告に均一の広告レートを提供するようプラットフォームに義務づけるポリシーを公表すべきであることは、私が強く提唱するところです。政治広告でヘイトを助成すべきではありません」。

行動広告を禁止することに反対する同氏の主張は、規制当局が完全に包括的なプラットフォームの透明性を達成することに集約されている(むしろそれに依存している)ようだ。それは、Facebook(およびその他の同業各社)が人々のデータを使って実際に行っていることの正確な実態を提示できること、つまり、ユーザーがそのようなターゲティングを望むかどうかについて真の選択ができるようにすることだ。したがって、全面的な説明責任の遂行が重要な意味を持つ。

しかしセッションの別の局面で、それは子どもたちがFacebookのようなプラットフォームによるデータ処理に本当の意味で同意できるかどうかを尋ねられた後だったが、ホーゲン氏は、子どもはもちろんのこと、大人たちも、Facebookが自分たちのデータで何をしているのかを(現時点で)理解できているのか疑問であると主張した。

「自分がどのような情報をトレードしているのかを子どもたちが理解できるかということに関してですが、大人である私たちはほぼ間違いなく、何をトレードしているのかを理解していないと思います」と同氏は議員たちに語った。「アルゴリズムに何が含まれているのか、子どもたちにインフォームドコンセントが与えられるような形でターゲット設定されているのか、私たちにはわかりません。インフォームドコンセントが与えられているとは思えませんし、子どもたちの能力も限られています」。

これを踏まえると、同氏の信念、つまり「前述のような包括的な透明性は可能であり、すべての大人が操作的な行動広告を受け入れるか否かの判断を真に情報に基づいて下すことができるデータ駆動型操作、という普遍的に包括的な構図を描き出すだろう」との考えは、何というか、やや希薄に見える。

ホーゲンの論理、すなわち、規制当局がユーザーに提供されているあらゆるものについて不適切 / 不正確に伝達すること、および / または規制当局がユーザーに自らのリスクと権利に関する適切かつ普遍的な教育を保証していないことを含む、根本的な透明性の欠如に対して同氏が提案した解決策に従うならば、データ駆動型の搾取が(今まさに法律に組み込まれているフリーパスで)続いていくリスクがあることは確かであろう。

ここでの彼女の議論は一貫性に欠けているように感じられた。行動広告を禁止することに対する同氏の反対、そしてそれゆえに、ソーシャルメディアの操作的な有害性を助長する1つの根本的なインセンティブに対処することに反対している同氏の主張は、論理的というよりむしろイデオロギー的なものであるかのようだ。

(確かに、世界中の政府は同氏が主張しているような高い機能を備えた「完全な」監視機能を緊急に導入することができるという信念の飛躍は必要なように思える。とはいえ、同時に同氏は、何週間もかけて立法者たちに対し、プラットフォームは非常にコンテキストに特化した、データが詳細に記述されたアルゴリズムマシンとしてしか解釈し得ないものだと強く訴えてきた。同氏が今回の質疑応答で述べたようなFacebookの「驚くべき」データ量を考えれば、目の前にあるタスクの規模の大きさはいうまでもない。Facebookからデータを生の形で取得した場合、規制当局にとってあまりにも膨大すぎることが示されている)

これはおそらく、権利の専門家ではなく、データサイエンティストに期待される視点でもあるだろう。

(前述のような、行動広告の禁止に対する同氏の即座の拒否は、害が流れてそれが感じられるマシンの外にいるのではなく、ブラックボックスに内通してアルゴリズムやデータを操作することに専念してきたプラットフォームのインサイダーに見られるような、一種のトリガー反応といえよう)

セッション中の別の場面で、ホーゲン氏は、ソーシャルメディアの問題に対する唯一の万能薬として徹底的な透明性を求める自身の主張をさらに複雑にした。EUがこのような複雑な問題の施行を最大27の国家機関に任せることに対して警告を発した。

もしEUがそうするなら、DSAは失敗するだろうと同氏は示唆した。代わりに立法者たちに助言したのは、Facebookレベルのプラットフォームを包み込むために必要だと同氏が指摘する、非常に詳細で階層化された動的なルールの実施に対処するための中央EUの官僚機構を作ることだった。同氏はさらに、自身のような元業界のアルゴリズムの専門家たちがそこに「居場所」を見つけ、彼らの専門的な知識への支援や「公的な説明責任に貢献することによる還元」が推進されることを提唱した。

「アルゴリズムが実際にどのように機能し、その結果がどのような結果をもたらすのか、これらの分野の正式な専門家の数は、世界的に見て非常に少ないのが現状です。この分野に修士号や博士号はありません。そのため、分野に携わる企業の1つで働き、社内で実地訓練を受ける必要があります」と同氏は説明し、さらに次のように付け加えた。「この機能を27の加盟国に委譲した場合、1つの場所でクリティカルマスを獲得できなくなることを、私は深く懸念しています」。

「十分な専門家を確保し、それを広く分散させることは、非常に難しいでしょう」。

プラットフォームが人々の目をたやすく欺くことを防ぐためには、利己的なデータセットや「脆弱な」AIの中の悪質な詳細を明らかにする必要があると立法者たちに警告する声が非常に多い中、広告に個人データを使用しないなどの単純な制限を規制当局が実際に設定することにホーゲン氏が反対していることは、教訓的であるように思える。

同氏はまた、規制当局はプラットフォームがデータを使って実行できることに制限を設けるべきか、および / またはアルゴリズムに使用できるインプットに制限を設けるべきかについて、欧州議会議員らから直接質問を受けた。この質問に対しても、同氏は制限ではなく透明性を優先した(しかし他のところでは、前述のように同氏は、広告プロファイリングを充実させる目的でFacebookがサードパーティのデータセットを入手することは少なくとも禁止すべきだと主張している)。

結局のところ、このアルゴリズムの専門家のイデオロギーには、データ駆動型ソフトウェアマシンのための効果的な規制を考え出す方法について、ブラックボックスの外で考えることに関してはいくつかの盲点があるようだ。

民主主義社会がデータマイニングテクノロジーの巨人たちからコントロールを奪い返すためには、ある程度の急ブレーキは必要なことかもしれない。

したがって、ホーゲン氏の最大のアドボカシーは、デジタル規制を致命的に台無しにする抜け穴のリスクに関する極めて詳細な警告であろう。ここでのリスクが多元的であるという点で、同氏は間違いなく正しい。

同氏はプレゼンテーションの冒頭で、もう1つの抜け穴の可能性を指摘した。立法者たちに、ニュースメディアのコンテンツをDSAから除外しないよう求めた(これも議員たちが検討している修正案の1つだ)。「コンテンツ中立性のルールを作るのであれば、本当に中立でなければなりません」と同氏は主張した。「何も選ばれず、何も除外されないということです」。

「現代の偽情報キャンペーンはいずれも、システムを操作することで、デジタルプラットフォーム上のニュースメディアチャンネルを不当に利用していくでしょう」と同氏は警告した。「プラットフォームがこれらの問題に取り組むことをDSAが違法とする場合、私たちは法の有効性を損なうリスクを負うことになります。実際、今日の状況よりも状況が悪化する可能性があります」。

質疑応答の中でホーゲン氏は、いわゆる「メタバース」の構築に向けて計画されているFacebookの方向転換に照らして、規制当局が直面するであろう新たな課題について議員たちからいくつかの質問を受けた。

関連記事:ザッカーバーグ氏は110兆円規模のフェイスブックを「メタバース」企業にすると投資家に語る

これについて、同氏は議員らに対し「非常に懸念している」と述べ、家庭やオフィスでのメタバース供給センサーの普及によってデータ収集量が増加する可能性に警鐘を鳴らした。

同氏はまた、Facebookがワークプレイス用ツールの開発に注力していることが、ビジネスツールに関して従業員がほとんど発言権を持っていないことを考えると、オプトアウトが選択肢にさえならない状況をもたらすのではないかという懸念を表明した。これは人々が将来、Facebookの広告プロファイリングと、生計を立てることのどちらかを選ぶというディストピア的な選択に直面する可能性を示唆している。

Facebookが「メタバース」に新たな焦点を当てたことは、ホーゲン氏がFacebookの「メタ問題」と呼んだものを浮き彫りにしている。これはつまり、同社が現在のテクノロジーによって生じた問題を終わらせて修復するよりも「先に進む」ことを優先しているということでもある。

規制当局はこのジャガーノート(圧倒的な力を持つ存在)に対して、安全性に重点を置いた新たな方向性を計画させるためのレバーを投入しなければならない、と同氏は強調した。

​​画像クレジット:BENOIT DOPPAGNE/BELGA MAG/AFP / Getty Images under a license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックがグループや特定コンテンツの表示数を減らすニュースフィード制御機能をテスト

米国時間11月18日、Facebook(フェイスブック)はユーザーがプラットフォーム上で表示される内容をより細かくコントロールできるようにするためのテストを実施することを発表した。

このテストは、英語圏のユーザーを対象としたFacebookのアプリで実施される。Facebookのニュースフィードに表示される内容を管理するメニューに「友達と家族」「グループとページ」「有名人」という3つのサブメニューが追加されることになる。テストに参加しているユーザーは、自分の好みに応じて、これらの投稿の割合を「通常」のままにするか「多め」または「少なめ」に変更するかを選択できる。

テストに参加している人は、トピックについても同様に、自分が興味のあるものや見たくないものを指定することができるようになる。Facebookはブログ記事の中で、このテストが世界中の「ごく一部の人々」に提供されるとした上で、今後数週間のうちにテストを徐々に拡大していくとしている。

また、Facebookは、広告主が特定のトピック領域からコンテンツを除外できるツールを拡張し、ブランドが「ニュースと政治」「社会問題」「犯罪と惨事」の隣に表示されないようにすることができるようにする。「広告主が1つまたは複数のトピックを選択すると、その広告は、ニュースフィードで最近それらのトピックに反応した人々には配信されません」と同社はブログ記事で書いている。

Facebookのアルゴリズムは、扇情的なコンテンツや危険な誤報を助長することで有名だ。そのため、Facebookとその新しい親会社であるMeta(メタ)は、プラットフォームを浄化し、その慣行をより透明化するよう、規制当局からの圧力を受けている。議会では、ユーザーが表示内容をコントロールできるようにしたり、アルゴリズムによるコンテンツの不透明さを解消したりするための解決策が検討されているが、Facebookはまだ自主規制の時間が残っていると期待しているようだ。

2021年10月、Facebookの内部告発者であるFrances Haugen(フランシス・ハウゲン)氏は、Facebookの不透明なアルゴリズムが、特に同社が最も精査している市場以外の国では危険であることを指摘した。

米国やヨーロッパでも、ニュースフィードのランキングシステムでエンゲージメントを優先するという決定により、分断的なコンテンツや政治的に扇動的な投稿が急増している。

ハウゲン氏は、同じく10月に放送された「60 Minutes」で「Facebookの今日のコンテンツの選び方が招いている結果の1つは、エンゲージメントやリアクションを得られるコンテンツに最適化するようになっているということです。しかし、独自の調査によると、憎悪、分裂、偏向的なコンテンツは、他の感情よりも人々の怒りを刺激しやすいことがわかっています」と語っていた。

画像クレジット:Facebook

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Akihito Mizukoshi)

VRグローブHaptXが「Metaの試作品は自社デバイスと実質的に同じ」と主張

Facebook(フェイスブック)、つまりMeta(メタ)は米国時間11月16日、新しい触覚フィードバックグローブのプロトタイプを公開した。このグローブは、新世代のAR / VRユーザーに、これまで以上にデジタルコンテンツを身近に感じさせることができると説明している。そして11月17日、同じミッションを持つVRスタートアップのHaptX(以前ここで取り上げたことがある)は、Metaが自社の特許技術と「実質的に同じ」プロトタイプを公開したことを非難する、かなりアグレッシブな声明を発表した。

HaptXのCEOであるJake Rubin(ジェイク・ルービン)氏の声明によると、同氏のスタートアップは長年にわたって「Metaの多くのエンジニア、研究者、幹部」に自分たちの技術を披露してきており、最新のプロジェクトではMetaから相談を受けていないという。「Metaからはまだ連絡を受けていませんが、懸念を解消し、我々の革新的な技術を将来の消費者向け製品に組み込むことができるような、公正で公平な取り決めに向けて、Metaと協力していきたいと考えています」とルービン氏は述べている。

画像クレジット:HaptX

Metaの広報担当者はコメントを控えた。

HaptXのものと、最近発表されたMetaのプロトタイプは、ともにマイクロ流体フィードバックと呼ばれる技術を使用している。携帯電話やゲームのコントローラーには、小さなモーターを使ってブザーやゴロゴロという音をシミュレートする触覚フィードバックが搭載されているが、ユーザーの手全体のより深い感覚をシミュレートするとなると、マイクロ流体フィードバックは、チューブのネットワークを流れる空気の流れを制御するアクチュエーターを使って異なる動作を行い、物を拾うことに関連する感覚や、すべてデジタルでレンダリングされた独特の質感を高度に模倣することができる。

Facebookではこれまでにも数多くのAR / VRのプロトタイプを公開し、最終製品には至らないことが多いが、特定のテクノロジーの最先端をテストする複雑な技術を示してきた。HaptXは長年にわたって法人顧客向けに触覚フィードバックグローブを製造してきた。この技術を小型化するために、グローブの感覚フィードバックを管理するバックパックサイズの空気圧ボックスが必要だった。しかし、これはまだ非常に複雑な技術であり、Facebook、いまとなってはMetaがQuest 2で追求してきたようなメインストリームのユーザーにリーチするには、おそらく何年もの開発期間を要する。

しかし、Metaのチームがこの技術を大幅に進化させたことは明らかだ。Metaの研究ブログ投稿では、こうしたフィードバックコントロールを操るグローブのチップセットである「世界初の高速マイクロ流体プロセッサ」が開発されたことが報告されている。同社の研究者の1人は「目標は、AR / VRインタラクション問題の両面に対応するソフトで軽量な触覚グローブを発明することです。つまり、コンピュータが着用者の手の動きを正確に理解して反映するのを助けること、そして着用者のために圧力、感触、振動などの複雑で微妙な感覚を再現して、仮想オブジェクトを手で感じているような効果を生み出すことです」と詳細に述べている。

Facebookはこれまで、自分たちの製品が大手ハイテク企業に不当にコピーされたと、スタートアップから多くの批判を受けてきた。また、反競争的な行為を行っている、と規制当局からも厳しい調査を受けてきた。

以下は、HaptXのルービン氏による声明の全文だ。

この10年間、HaptXはマイクロ流体による触覚フィードバックの分野を開拓してきました。数々の賞を受賞した当社の技術は、一般紙や専門誌で広く取り上げられており、高忠実度の触覚フィードバックへのアプローチとして、マイクロ流体のユニークな利点を開発し、普及させるためにたゆまぬ努力を続けてきました。また、当社のエンジニア、開発者、投資家の方々の長年にわたる献身により、当社の技術と製品を保護するための業界屈指の特許ポートフォリオを確保しています。

VR業界の他社との交流において、我々は常に業界全体の発展のためには協力が最も重要であると考えています。長年にわたり、当社はMetaの多くのエンジニア、研究者、幹部を招き、当社の画期的な触覚技術のデモンストレーションを行ってきました。

本日、Metaは独自のマイクロ流体式触覚フィードバックグローブのプロトタイプを発表しました。シリコンベースのマイクロ流体触覚フィードバック積層体と空気圧制御アーキテクチャを含むこのプロトタイプのコア構成要素は、HaptXの特許技術と実質的に同じであると思われます。我々は、マイクロ流体触覚の分野における関心と競争を歓迎します。しかし、業界が繁栄するためには、競争は公正でなければなりません。

まだMetaからの連絡はありませんが、我々の懸念を解消し、Metaが我々の革新的な技術を将来の消費者向け製品に取り入れることができるような、公正で公平な取り決めに向けてMetaと協力していきたいと考えています。

画像クレジット:Meta

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

フェイスブックの新たな学術研究用APIがアーリーアクセスで公開

今週から、ひと握りの学術研究チームが、世界最大のソーシャルネットワーク上のほぼすべてのデータをリアルタイムに集約するために設計された、Facebook(フェイスブック)の新しいツールにアクセスできるようになった。

誰がどのようにFacebookのデータにアクセスできるのかということに関しては、現在Meta(メタ)となったFacebookは、2018年に起きたケンブリッジ・アナリティカ(CA)のスキャンダルの余波をいまだに受けている。このスキャンダルでは、政治コンサルティング会社であるCAが何百万人もの無自覚なFacebookユーザーの個人データを入手し、有権者に関する詳細なプロファイルを構築した。Facebookはその後の3年間、何千ものAPIを停止していたが、ようやく学術研究のための幅広いアクセスを再開し始めたところだ。

TechCrunchは、このFacebookの新しい学術研究用APIをプレビューし、さらにFacebook Open Research & Transparency(FORT)チームでこのプロジェクトを率いたFacebookプロダクトマネージャーのKiran Jagadeesh(キラン・ジャガディーシュ)氏に話を聞いた。

関連記事:フェイスブックがSNSを研究する学術コミュニティ向けに「Researcher API」リリース予定

ジャガディーシュ氏はTechCrunchに「これは始まりに過ぎません」と語り、このResearcher API(リサーチャーAPI)は同社が最終的に提供したいツールキットのベータ版であると説明した。2021年のF8で初めて発表されたこのAPIは、Python(パイソン)ベースで、オープンソースのノートブックインターフェースであるJupyterLab(ジュピターラボ)上で動作する。

Facebookが遭遇した過去の多くのプライバシー問題が考慮されて、新しいResearcher APIには最初にいくつかの注意が払われている。まずこのAPIは、少数の身元の確かな学術研究者にのみ、招待制で提供される。2022年2月には、最初のテストグループ以外にもアクセスを拡大することが計画されている。そこではトライアルで得られたフィードバックをもとに、すべての学識経験者に広く提供が行われる予定だ。

もう1つの注意点は、このResearcher APIが、ジャガディーシュ氏が「デジタル・クリーンルーム」と表現する、厳しくコントロールされた環境で動作するということだ。APIにアクセスできる学術研究者は、FacebookのVPNを介して環境に入り、データを収集して数値計算を行うことができるが、生データではなく分析結果のみがエクスポートできる。

これは、ユーザーのプライバシーを保護し、分析されたデータからユーザーが再識別されることを防ぐためのものだが、Researcher APIが収集する公開データはすでに出回っているものなのに、Facebookの既存ツールでは集約して分析するのが難しいという制限は、同社の批判者の一部を刺激するかもしれない。

このAPIでは、ページ、グループ、イベント、投稿の4種類のリアルタイムFacebookデータにアクセスできる。いずれの場合も、このツールは公開データのみを利用し、当初は米国およびEU内のソースからのみの抽出を行う。グループとページについては、APIでデータを利用するためには、少なくとも1人の管理者がサポート対象国にいる必要がある。

このツールを使うことで、研究者は大量の生のテキストを感情分析のような手法を使って分析することができる。なお感情分析とは、人があるテーマについて話すときに、その人が表現している価値や感情を追跡するものだ。研究者は、データの大半を占めるテキストベースの投稿に加えて、グループやページの説明、作成日、投稿へのリアクションなどの関連情報にもアクセスすることができる。

ただし生の画像のようなマルチメディアデータや、コメント、ユーザーの属性データ(年齢、性別など)は含まれない。また、このAPIはInstagramからデータを収集することもないが、ジャガディーシュ氏は、研究者にとってInstagramは非常に価値のあるプラットフォームであることを認識していて、彼のチームはInstagramのデータを利用できるようにする方法を模索している最中だ。

FORTチームは、学術研究者と密接に協力して、ジャガディーシュ氏が「現在進行形」と表現する現在のツールを開発・構築していきたいと考えている。Metaは、最初のアカデミックパートナーはまだ決まっていないとしながらも、開始にあたって世界の23の学術機関から研究者を招待している。

チームのオンボーディングプロセスを完了し、プライバシーポリシーに同意した研究者には、米国時間11月15日(月)にアクセスが許可された。Facebookは、研究内容にアクセスする人に対して、データ内の特定の個人を再識別しないことなどを含む、プライバシーに関する制約に同意することを求めている。

現在、この研究用APIはひと握りの学術機関のみに提供されているが、FORTチームはジャーナリストを含む他のグループへのアクセス許可を検討する予定だ。その目的は、研究者やジャーナリストたちに、チームが何を目指しているのかを透明性をもって示す、公開ロードマップを作ることだ。

同社は、研究コミュニティでの信頼を築くために多くの努力を払わなければならない。8月にFacebookは、ニューヨーク大学のCybersecurity for Democracy(民主主義のためのサイバーセキュリティ)プロジェクトに所属する、著名な研究者2名の広告データへのアクセスを遮断し、多くの学者や規制当局の非難を誘発した。この研究者たちは、Ad Observer(アド・オブザーバー)と呼ばれるオプトイン方式のブラウザツールを使って、誤報や政治広告の追跡に焦点を当てていた。9月になってFacebookは、Social Science One(ソーシャル・サイエンス・ワン)と呼ばれるエリート研究者グループに対し、不完全なデータを提供したことを謝罪したが、これは数カ月にわたる作業と分析を台無しにするミスだった。

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:sako)

フェイスブックの広告ツールが特定の個人をターゲティングできることを研究者グループが発表

スペインとオーストラリアの学者とコンピュータ-科学者のチームによって執筆された最新の研究論文で、Facebook(フェイスブック)のプラットフォームがユーザーに割り当てる関心事項について十分に認識していれば、Facebookのターゲットツール使用して、特定の個人のみに排他的に広告を配信できることが実証された。

「Unique on Facebook:Formulation and Evidence of (Nano)targeting Individual Users with non-PII Data(Facebook上での一意性:非個人データによる個人ユーザーのナノターゲティングの定式化と証拠)」と題するこの論文では、Facebookのプラットフォームによってユーザーに割り当てられた趣味・関心事に基づいて、ユーザーを一意に識別できる可能性を示すメトリックを定義する「データ駆動モデル」が説明されている。

研究者たちは、Facebookのアドマネージャーツールを使用して、意図した特定のFacebookユーザーのみに届くように多数の広告をターゲット配信することができることを実証した。

この研究では、Facebookの広告ターゲットツールが有害な目的に利用される可能性について、新たな疑問を投げかけている。さらには、Facebookがユーザーについて収集している情報を使用して個人を特定できる、つまり、ユーザーの趣味や関心のみに基づいてFacebook上の膨大なユーザーから1人を選び出すことができるという状況を踏まえ、Facebookの個人データ処理帝国の合法性についても疑問を呈している。

この研究結果により、行動ターゲティング広告の禁止または段階的廃止を求める議員に対する圧力が強まる可能性がある。行動ターゲティング広告は、個人的にも社会的にも害を及ぼす可能性があるため、何年にも渡って非難の対象になってきた。少なくとも今回の論文によって、こうした侵襲的なツールの使用方法について確固とした抑制と均衡を求める声が高まりそうだ。

また、この研究では、こうした独立系の研究機関でもアルゴリズムを利用したアドテックを調査できることの重要性も浮き彫りになっており、研究者のアクセスを遮断しないように求める対Facebookの圧力も強まるに違いない。

Facebookの関心は個人データ

「私たちのモデルで検証した結果、Facebookによってあるユーザーに割り当てられた関心事集合のうち4つの大変珍しい関心事または22のランダムな関心事によって90%以上の可能性でそのユーザーをFacebook上で一意に特定できることが明らかになりました」とマドリード大学Carlos III、オーストラリアのGraz University of Technology(グラーツ工科大学)、スペインのIT企業GTD System & Software Engineering(GTDシステム&ソフトウェアエンジニアリング)の研究者は書いている。これにより、1つの重要な事実がわかる。つまり、Facebookが認識している珍しい関心事または多くの関心事を持つ個人は、Facebook上で、数十億人という膨大なユーザーの中からでも容易に特定できるということだ。

「この論文は、私たちの知るかぎりでは、世界規模のユーザーベースを考慮した上で個人の一意性について調査した最初の研究です」と彼らは続け、28億人のアクティブなユーザーに対するデータマイニングというFacebook固有のスケールについて言及した(注:Facebookはユーザー以外の情報も処理している。つまり、Facebook上でアクティブなインターネットユーザーよりもさらに広範なスケールの人たちにリーチしている)。

研究者たちは、今回の論文は「Facebookの広告プラットフォームを体系的に悪用してインターネット上の非個人識別情報データに基づくナノターゲティングを実装できる可能性」について最初の証拠を提示するものであることを示唆している。

Facebookの広告プラットフォームが、1対1で相手を巧みに操るためのパイプの役割を果たしていることについては早くから論争が繰り広げられてきた。例えば2019年のDaily Dotの記事には、性生活に不満を抱えている夫に、妻やガールフレンドを心理的に操作するサービスを販売していたSpinner(スピナー)という会社の例が紹介されている。挑発的で無意識に相手を操作する広告がターゲットのFacebookやインスタグラムのフィードにポップアップ表示されるというものだ。

今回の研究論文では、2017年に起こった英国の政治生命に関する事例にも言及している。労働党の選挙運動の最高責任者がFacebookのカスタムオーディエンス広告ターゲティングツールを利用して、党首のJeremy Corbyn(ジェレミー・コービン)氏をだますことに成功したのだ。ただし、このケースでは、ターゲットになったのはコービン氏だけではなかった。彼の同僚や彼と同じ考えの数人のジャーナリストにも広告が送られた。

今回の研究チームは、Facebookのアドマネージャーツールを利用すれば、特定の1人のFacebookユーザーに広告を送ることができることを実証している。彼らはこのプロセスを「ナノターゲティング」と呼んでいる(現在のアドテックで「標準的」な「インターネットベース」の広告をユーザーグループに送るマイクロターゲティングとは異なる)。

「本稿では、21のFacebook広告キャンペーンによって実験を実施することで、広告主がユーザーの関心事を十分に認識していれば、Facebook広告プラットフォームを体系的に悪用して特定のユーザーに排他的に広告を配信できることを論文の3人の執筆者が証明する」と論文には書かれており、この論文は「ターゲットユーザーの関心事のランダム集合を認識するだけで、Facebook上に1対1のナノターゲティングを体系的に実装できる」という「最初の経験的証拠」を提示するものだとしている。

彼らが分析に使用した関心事データは、彼らが作成し、2017年1月以前にユーザーによってインストールされたブラウザ拡張機能を介して、2390人のFacebookユーザーから収集されたものだ。

この拡張機能はData Valuation Tool for Facebook Users(Facebookユーザー向けのデータ評価ツール)と呼ばれ、各ユーザーのFacebook広告設定ページを解析して、ユーザーに割り当てられた趣味や関心を収集すると同時に、Facebookのブラウジング中にそのユーザーに配信される広告によってFacebookにもたらされる利益のリアルタイムの推測値を計算する。

関心事データは2017年以前に収集されたものの、Facebookの広告プラットフォームを介して1対1のターゲティングが可能かどうかをテストする研究者たちの実験は2020年実施された。

「具体的には、この論文の3人の執筆者たちをターゲットとするナノターゲティング広告キャペーンを設定しました」と彼らはテスト結果について説明する。「私たちは、Facebookが各ターゲット執筆者に割り当てた関心事のリストから5、7、9、12、18、20、22個をランダムに選択したものを使用して各執筆者向けにオーディエンスを作成することで、データ駆動型モデルが実際に機能するかどうかをテストしました」。

「2020年の10月から11月の間に合計21回の広告キャンペーンを実施して、ナノターゲティングが現在実現可能であることを実証しました。実験でモデルの実施結果を評価したところ、攻撃者があるユーザーについて18個以上のランダムな関心事を認識していれば、そのユーザーに対して非常に高い確率でナノターゲティングを実行できることが分かりました。実験で18個以上の関心事を使用した9つのうち8つの広告キャンペーンで、当該ユーザーのナノターゲティングに成功しました」。

したがって、Facebookに18個以上のあなたの関心事が登録されている場合、あなたを巧みに操ることを目論んでいる人物にとって、それらの関心事は極めて興味深いものになる。

ナノターゲティングは止められない

1対1のターゲティングを防ぐ1つの方法として、Facebookが最小オーディエンスサイズに厳しい制限を課す方法が考えられる。

今回の論文によると、Facebookは、キャンペーンのオーディエンスサイズが1000人を超える(以前は21人以上だったが2018年にFacebookが制限値を上げた)可能性がある場合、アドキャンペーンマネージャーツールを使用して「Potential Reach(潜在的リーチ)」値を広告主に提示しているという。

しかし、Facebookは、実際には、この潜在的リーチよりも少ないユーザーをターゲットとするキャンペーンを広告主が実施することを禁止していない。ただ、メーッセージがリーチする人の数が極めて少ないことを広告主に知らせないだけだ。

研究者たちは、複数のキャンペーンで、1人のFacebookユーザーに無事広告が届いたことによってこの事実を実証することができた。その結果、広告のオーディエンスサイズはFacebookの広告レポート生成ツールによって生成されたデータを参照したものであること(「Facebookにより1人のユーザーだけにリーチしたことが報告された」)、ウェブサーバー上にユーザーが広告をクリックすることによってのみ生成されるログ記録が存在することによって確認された。さらには、ナノターゲティングの対象ユーザーに広告とそれに付随する「この広告が表示されている理由」オプションのスナップショットを取得してもらった。このオプションの値は、ナノターゲティングに成功したケースのターゲティングパラメーターに一致していたという。

実験結果のサマリーには次のように追記されている。「本実験から得られた主な結論は次のとおりである。(i)攻撃者がターゲットユーザーから18個以上の関心事を推測できる場合、Facebook上の特定の1人のユーザーをナノターゲティングできる可能性は非常に高い。(ii)ナノターゲティングは非常に低コストで実現できる。(iii)本実験によると、ナノターゲット広告の3分の2は有効キャンペーン期間中7時間以内にターゲットユーザーに配信されると予想される」。

ナノターゲティングの防止対策について議論されているこの論文の別のセクションでは、Facebookが課しているとされるオーディエンスサイズの制限は「まったくの無効であることが判明した」と主張しており、20人というオーディエンスサイズ制限は「現在適用されていない」と断言している。

また、Facebookがカスタムオーディエンス(広告主がPIIをアップロードできる別のターゲティングツール)に適用しているという100人制限の回避策も提示されている。

以下論文より抜粋する。

広告主による極めて少数のオーディエンスをターゲットとする広告の配信を防ぐためにFacebookが実装している最も重要な対策は、オーディエンスを形成するユーザーの最小数に制限を課すというものだ。しかし、この制限はまったくの無効であることが判明した。本論文の結果に動機付けられたFacebookは、アドキャンペーンマネージャーを使用して20人を下回るサイズのオーディエンスを設定することを禁止した。我々の調査では、この制限は現在適用されていない。その一方でFacebookは、最小カスタムオーディエンスサイズを100人とする制限を課している。セクション7.2.2で説明するとおり、この制限を回避して、カスタムオーディエンスを使用してナノターゲティングによる広告キャンペーンを実装するさまざまな方法が文献で紹介されている。

この論文では、全体を通して、インターネットベースのデータを「非個人識別情報(non-PII:Personally Identifiable Information)」と呼んでいるが、このような枠組みは欧州の法律のもとでは無意味であることを忘れてはならない。欧州では、一般データ保護規則(GDPR)のもとで、個人データについて非常に広い見方をしているからだ。

PIIという言葉は米国でのほうがより一般的だ。米国では、欧州のGDPRに相当する包括的な(連邦)プライバシー法というものがないからだ。

アドテック企業もPIIという言葉を使いたがる。ただし、それはずっと限定されたカテゴリでの話だ。アドテック企業が実際に処理するすべてのデータ(個人を識別およびプロファイリングして広告を配信するために使用できるデータ)という意味ではない。

GDPRのもとでは、個人データとは個人の名前やメールアドレス(つまり、PII)などの明白な識別子だけでではなく、個人を特定するために間接的に使用できる情報(居場所や関心事など)も含まれる。

以下に、GDPR(第4(1)項)の関連部分を抜粋する(強調部分はTechCrunchによる)。

「個人データ」とは、識別されている、または識別可能な自然人(データ主体)に関する任意の情報を指す。識別可能な自然人とは、特に、名前、識別番号、場所データ、オンライン識別子などの識別子、またはその人の身体的、生理的、遺伝的、精神的、経済的、文化的なアイデンティティに固有の1つ以上の要素を参照することで、直接または間接に識別可能な自然人のことである。

他の研究でも数十年に渡って繰り返し示されていることだが、個人は、クレジットカードメタデータNetflixの視聴習慣など、わずかな「非個人識別情報」があれば再特定できる。

膨大な数の人たちをプロファイリングし広告のターゲットにするFacebookは、継続的かつ広範囲にインターネットユーザーの行動をマイニングして関心事ベースのシグナル(つまり、個人データ)を収集し、個人プロファイリングを行って各個人に合わせた広告を配信する。そのFacebook帝国が、世界中のほとんど誰でも巧みに操作できる(ただし、相手について十分な知識があり、その相手がFacebookのアカウントを持っていることが条件)可能性のある攻撃ベクトルを作り出したとしても何も驚くには当たらない。

しかし、それが法的に問題のないことであるとは限らない。

実際、人々の個人データを処理して広告ターゲティングを行ってもよいというFacebookの主張の法的根拠は、EUで長年に渡って問題とされてきた。

広告ターゲティングの法的根拠

Facebookは以前、ユーザーは自身の個人データが広告ターゲティングに使われることについて同意していると主張していた。しかし、Facebookは、行動ターゲティングのためにプロファイリングされることを承諾するのか、ただ友人や家族とつながりたいだけなのかのどちらかをユーザーに選択してもらう際に、見返りを求めず、具体的で、明確な情報に基づいて選択できるようにしていない(ちなみに、見返りを求めず、具体的で、明確な情報に基づく同意というのは、同意についてのGDPRの基本的なスタンスだ)。

Facebookを使うには、自分の情報が広告ターゲティングに使用されることを承諾する必要がある。これは、EUのプライバシー運動家が「同意の強制」と呼ぶものだ。つまり、同意ではなく、強制だ。

しかし、2018年5月のGDPR施行以来、Facebookが合法的にヨーロッパ人の情報を処理できるのは欧州のユーザーが広告の受信についてFacebookと契約している状態だからだ、という主張に切り替えたようだ。

FacebookのEU規制当局として主導的立場にあるアイルランドのデータ保護委員会(DPC)によって今週始めに公開された仮決定では、こうした暗黙の主張変更は透明性に欠けるとして、Facebookに対し、3600万ドル(約40億9500万円)の罰金を課す提案をしている。

DPCは、Facebookの広告契約の主張には問題があるとは考えていないようだが、欧州の他の規制当局は問題があると考えており、アイルランドの仮決定に意義を唱える可能性が高い。この件に関するFacebookのGDPRに対する不満をめぐる規制当局側の調査は今後も続き、当分は終わりそうもない。

仮にFacebookがEUの法律を回避しているという最終判断が下った場合、Facebookはユーザーに対し、ユーザーの情報を広告ターゲティングに使用できるかどうかについて見返りを求めない選択肢をユーザーに与えることを強制されることになる。そうなると、Facebook帝国に存在の根幹に関わるような風穴をあけることになる。というのも、この研究でも強調しているとおり、(ターゲティング広告に利用せずに)保管しているだけの関心事データでも個人データになるからだ。

それでも、Facebookは、問題など存在しないと主張するいつもの常套手段を使っている。

今回の研究に対して回答した声明の中で、Facebookの広報担当はこの論文を「当社の広告システムの動作原理についての理解が間違っている」として一蹴している。

Facebookの声明では、この研究者たちの結論の核心部分から注意をそらして、彼らの研究結果の重要さを矮小化しようとしている。以下に、広報担当の言明を示す。

この研究は当社の広告システムの動作原理を間違って把握しています。広告ターゲティングに使用する特定の人に関連付けられた関心事のリストは、その人がそのリストを共有することを選択しないかぎり、広告主が見ることはできません。このリスト、つまり広告を見た人を特定する具体的な詳細情報がなければ、この研究者たちの手法を使って広告主が当社のルールを破ろうとしても無駄です。

Facebookからの反論に答えて、論文の執筆者の1人であるAngel Cuevas(アンヘル・クエバス)氏は、同社の議論を「残念だ」と表現し、問題がないなどと主張するのではなく、ナノターゲティングのリスクを防止するためのより強力な対策を実装すべきだとしている。

この論文では、ナノターゲティングにともなう数多くの有害なリスクが指摘されている。例えば心理的説得、ユーザーの操縦、脅迫などだ。

「驚くのは、ナノターゲティングが実現可能であり、対策は広告主がユーザーの関心事を推測できないと仮定することくらいしかないことをFacebook自身が暗黙に認識していることです」とクエバス氏はいう。

「広告主がユーザーの関心事を推測する方法はいくらでもあります。この論文でも、(ユーザーからは研究目的で行うという明示的な同意を得た上で)ブラウザのプラグインを使って実際に試してみました。それだけではありません。関心事の他にも、(今回の研究では試しませんでしたが)年齢、性別、都市、郵便番号などのパラメーターもあります」。

「これは残念なことです。Facebookのようなテック大手は、広告主がFacebookプラットフォームでのオーディエンスサイズを決めるために後で使用できるようユーザーの関心事を推測することなどできないという前提に頼らずとも、もっと強力な対応策を実現できるはずです」。

例えば2018年のCambridge AnalyticaによるFacebookデータの悪用スキャンダルを覚えているだろうか。Facebookのプラットフォームにアクセスした開発者が、クイズアプリを使って、気づかれることも同意を得ることもなく、数百万人のユーザーのデータを抽出することができたという事件だ。

つまり、クエバス氏のいうとおり、広告主 / 攻撃者 / エージェントが同じような不透明でずるいやり方を実装してFacebookユーザーの関心事データを取得し、特定の個人を巧みに操ることは決して難しくない。

論文の注には、ナノターゲティングの実験を行った数日後、テスト用キャンペーンに使用したアカウントがFacebookによって何の説明もなく閉鎖されたと記載されている。

Facebookからは(アカウントが閉鎖された理由も含め)論文に記載した具体的な質問に対する回答はなかった。だが、もしFacebookがナノターゲティングの問題を認識していたから閉鎖したのであれば、なぜそもそも特定の1人のユーザーをターゲットとする広告の配信を防ぐことができなかったのだろうか。

訴訟の増加

この研究結果は、Facebookの事業にどの程度広範囲な影響を及ぼすだろうか。

あるプライバシー研究者の話によると、この研究はもちろん訴訟に役立つという。欧州では、特にFacebook(広くはアドテック全般)に対するEU規制当局のプライバシー保護対策が遅々として進んでいないため、訴訟の数が増えている。

また別の研究者は、今回の研究結果は、Facebookが、個人データは処理していないと見せかけておきながら、実はユーザーの体系的な再特定化を大規模に行っていることを浮き彫りにしていると指摘する。つまり、Facebookは膨大な数のユーザーの膨大なデータを蓄積しており、個人情報の処理に制限を設ける程度の範囲の狭い法的規制など事実上回避できてしまうことを示唆している。

このため、行動ターゲティング広告がもたらす害を抑える有意義な制限を課そうとする規制当局は、Facebook独自のアルゴリズムが同社が保持する膨大なデータ内を検索して、その中からユーザーの代理人に相当するパラメーターを探し出して利用するという方法に気づく必要がある。また、同じような論法でFacebookのアルゴリズムによる処理は法的な制限を回避する可能性がある(例えばFacebookが慎重に扱うべき関心事の推測の問題で使った戦術)ことも認識しておく必要がある。

別のプライバシーウォッチャーで独立系の研究者でコンサルタントのDr Lukasz Olejnik(ウカシュ・オレジニク)博士は、今回の研究を驚くべきものだとし、過去10年間で最も重要なプライバシー研究結果のトップ10に入る内容だと説明する。

「28億人から1人を特定するのはとてつもないことです。Facebookプラットフォームは、そのようなマイクロターゲティングが行えないようにする予防策を講じていると主張しているにもかかわらず、です。この論文は、過去10年間で最も重要なプライバシー研究結果のトップ10に入ります」と語る。

「関心事は個人データに含まれるとするGDPR第4(1)項の意味する関心事によってユーザーを特定することができるようです。ただし、こうした処理をどのようにして大規模に実行するのかは明確に示されていませんが(ナノターゲティングのテストは3人のユーザーに対してのみ実行された点を指摘して)」。

オレジニク氏は、この研究はターゲティング広告が個人データ、そして「おそらくGDPR第9項の意味における特殊なカテゴリのデータにも」基づいて行われていることを示していると指摘する。

「これはつまり、適切な保護対策が行われていないかぎり、ユーザーの明示的な同意が必要であることを意味します。しかし、論文の内容から、私たちは、そうした対策は存在しているとしても不十分だという結論に達しました」と同氏は付け加えた。

今回の研究はFacebookがGDPR違反を犯していることを示していると思うかという質問に対し、オレジニク氏は「DPAは調査を行うべきです。その点は疑問の余地がありません」と話す。「技術的には難しい案件かもしれませんが、立件は2日もあればできるはずです」。

我々はこの研究結果をFacebookの欧州DPAで主導的立場にあるアイルランドDPCに知らせ、GDPR違反があるかどうかを判定するための調査を行うかどうか聞いてみたが、本記事の執筆時点では回答がなかった。

マイクロターゲティングの法的禁止に向けて

この論文によってマイクロターゲティングの法的禁止を肯定する論拠が補強されるかという質問に対し、オレジニク氏は、歯止めをかけることは「前進ではある」が、問題はその方法だと答えた。

「全面禁止にする場合、現在の業界および政治環境の対応準備ができているかどうかは分かりません。とはいえ、少なくとも、技術的な防止策は求めるべきです」と同氏はいう。「(Facebookによれば)すでに防止策は講じているということですが、(ナノターゲティングの件については)防止策は存在しないも同然のようです」。

オレジニク氏は、グーグルのプライバシーサンドボックス案に組み込まれているアイデアを一部利用すればすぐに変化が起こる可能性があると提案する。しかし、同案はアドテック各社が競争監視につながるとして不満を表明したため頓挫してしまっている。

マイクロターゲティングの禁止についてクエバス氏に意見を聞くと、次のように答えてくれた。「私の個人的な立場から言わせていただくと、我々はプライバシー保護のリスクと経済(求人、イノベーションなど)とのトレーオフについて理解する必要があるということです。私たちの研究によると、アドテック業界は、個人識別情報(メール、電話、住所など)について考えるだけでは不十分であり、オーディエンスの範囲を特定する(絞り込む)方法についてより厳しい対策を実装する必要があることは明らかです。

「その上で申し上げますが、私どもはマイクロターゲティング(少なくとも数万人規模のユーザーにオーディエンスを限定できる能力と考えます)を禁止することには反対です。マイクロターゲティングには重要な市場が存在しており、そこでは多くの仕事が生まれています。また、必ずしも悪いこととは限らない興味深いことが行われている極めて革新的な分野でもあります。ですから、マイクロターゲティングの潜在能力をある程度制限してユーザーのプライバシーを保護するというのが私どもの立場です」。

「プライバシーの分野で未だに解決されていない疑問は同意だと思います」と同氏はいう。「研究コミュニティとアドテックエコシステムは、(理想的には協力して)十分な説明を行った上での同意をユーザーから得るための効率的なソリューションを作成するために取り組みを進める必要があります」。

大局的な話をすると、欧州では、AI駆動形ツールの法的要件がおぼろげに見え始めたところだ。

EUでは2021年初めに提案された人工知能の高リスクの応用を規制する法律が施行される予定だ。この法律では「人の意識を超えて作用する行動を大きくねじ曲げるためのサブリミナル技術で、その人または別の人に心理的または身体的な害を及ぼすかその可能性のある技術」を展開するAIシステムの全面禁止が提案されている。

そのため、Facebookのアドツールが脅迫や個人の心理的操作に利用されないようにするための適切な保護策を同社がまだ実施していない場合、FacebookのプラットフォームがEUの将来のAI規制のもとで禁止に直面するのかどうかを推測してみるのは少なくとも興味深い。

とはいえ、現時点では、Facebookのターゲティング帝国にとっては、相変わらずもうかるビジネスである。

クエバス氏にFacebookプラットフォームに対する今後の研究計画について尋ねると「次の研究で是非やりたいのは、関心事と他の人口統計情報を組み合わせることでナノターゲティングが『より容易になる』のかどうかという調査です」。

「というのは、広告主がユーザーの年齢、性別、都市(または郵便番号)といくつかの関心事を組み合わせてユーザーに対してナノターゲティングを実行できる可能性が非常に高いからです」と同氏はいう。「こうしたパラメーターをいくつ組み合わせる必要があるのかを知りたいのです。年齢、性別、住所と数個の関心事をユーザーから推測するほうが、数十の関心事を推測するよちもはるかに簡単です」。

このナノターゲティングの論文は2021年12月のACM Internet Measurement Conferenceでのプレゼンテーションとして受理されている。

画像クレジット:NurPhoto / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックが新ショッピング機能「Shops in Groups」と「Live Shopping for Creators」を開始

Facebook(フェイスブック)は米国時間11月12日、新しいショッピング機能を展開することを発表した。「Shops in Groups(グループ内ショップ)」「商品のおすすめ」そして「Live Shopping for Creators(クリエイター向けライブショッピング)」のテストだ。

Shops in Groupsは、Facebookグループの管理者が、関連するFacebookページにオンラインストアを設置することができる機能だ。得た金をどうするかは管理者次第だが、この機能をテストしたページ、OctoNationの場合、利益は人々にタコ(タコ?) について教育するOctoNationの非営利団体に寄付された。明確な慈善活動を目的としていないグループにとってはこうしたことは難しいかもしれないが、これまでにもFacebookグループがドラマの舞台になったことがないわけではない。しかし、Meta(メタ)の製品管理担当副社長であるYulie Kwon Kim(ユリエ・クウォン・キム)氏は、多くのグループ管理者はボランティアであり、このようなショップは彼らの仕事に対する収入源になるだろうと指摘する。

「お金はグループ管理者に行き、彼らはそれをどう使うかを決めることができます」とキム氏はTechCrunchに語った。「これは、人々がグループを維持・継続するためのすばらしい方法です

Facebookは、2021年11月初めに開催された「Facebook Communities Summit」で、ショップ、募金活動、購読料など、グループの収益化機能の計画を発表していた

画像クレジット:Facebook

Facebookはまた、スキンケアやメイクアップのグループなど、ユーザーがグループ内で商品のレコメンデーションを求めることが多いと話す。このため、ユーザーがFacebookのショップに掲載されている商品について言及した場合、その商品をタグ付けしてコメントに埋め込むことができるようになっている。グループからの人気商品のレコメンデーションは、ユーザーのニュースフィード内に表示される。

Facebookは何年も前からLive Shoppingを展開しているが、ブランドとクリエイターのパートナーシップがより一般的になるにつれ、これらのコラボレーションをよりシームレスに見せる機能のテストを始めた。そしていま、インフルエンサーが商品を販売する様子を見せるためにファンを別のページに誘導したり、その逆を行ったりするのではなく、クリエイターとブランドが双方のページでクロスストリームを行うことができる。

画像クレジット:Facebook

いまMetaという会社名になったFacebookは2021年、企業やクリエイターのためのショッピングツールの構築に一貫して取り組んできた。だからこそ、ホリデーシーズンが近づくにつれ、Facebookアプリでお金を使う方法を増やしている。これらの機能は、今日からウェブ、そしてiOSおよびAndroidのFacebookモバイルアプリで利用可能だ。

現在、Metaの主な収入源は広告だが、ショッピングへの投資は別の収入源につながる可能性がある。創業者でCEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は今夏、Metaがクリエイターやコマースのツールを充実させていく中で、2023年まで企業やクリエイターの収益をカットしない、と発表した。ザッカーバーグ氏は、Metaが売上シェアを導入する際には、Apple(アップル)の30%よりも少ない取り分にすると述べている。しかし今eコマースのための強固なインフラを構築することで、Metaは将来の利益に向かっている。

画像クレジット:Facebook

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi