中国国内におけるスターバックスの台頭は、ちょうど西洋と同様に、家庭と職場の間で立ち寄る「第三の場所」としての機能と、密接に結びついている。近年、多くのコーヒー起業家たちが、中国国内におけるこのアメリカの巨大企業の地位を脅かそうとしている。そして今度は予想外の競争相手 ―― WeWork ―― がその流れに加わった。
オフィステナントとワークプレースサービスプロバイダーであるWeWorkは、今月WeWork Goを立ち上げた。これは中国国内の利用者たちに、机を分単位で貸し出す新しいサービスである。このおかげでユーザーは長期のリース契約に縛られる必要がなくなったのだ。スターバックスが無料の場所と有料のコーヒーを提供しているのに対して、WeWorkはその関係を逆転させて、無料のコーヒーと有料の場所を提供するのだ。スターバックスはすでに、ライバルの新興企業であるLuckin Coffeeの挑戦を受けている。同社はスターバックスとの対決を鮮明に打ち出し、コーヒーデリバリーのモデルに集中している。
WeWork Goは他の共有サービスと似た点がいくつかある。ユーザーは移動する前に、一覧上のオフィスの混み具合をアプリでリアルタイムにチェックすることが可能だ。オフィスに到着すると、ユーザーは入口でQRコードをスキャンし、ドアを開けて、共有エリアに着席するが、その時点から請求が始まる。
WeWork Goは、WeChat miniプログラムを通じてアクセスできる。スクリーンショット:TechCrunch
同社は、人の流れは綿密にモニタリングされているため、共有スペースが一時利用のユーザーたちで溢れ返ることはないと述べている。個室を予約するためには追加料金が必要だ。WeWorkの中国本社が置かれる上海内の18か所で、3ヶ月にわたるパイロットを行った結果、5万人の登録ユーザーを集めることができたとGoは主張している。
中国向けに
ネイティブアプリを開発する代わりに、WeWork GoはWeChat miniプログラムを介して運用されている。WeChat miniプログラムというのは、中国最大のソーシャルネットワークの中に存在する簡易アプリケーション形式だ。miniプログラムは、開発が比較的容易なために、スタートアップがアイデアを試すための、人気の高い方法になって来ている 。「(Goは)私たちの中国向けローカライズの中心的開発なのです」と、WeWorkの広報担当者はTechCrunchに語った。
Goはいわゆる「一時利用ユーザー」向けに合わせられている。「そうした人たちは、月々のメンバーシップを購入しません。彼らは、自宅や、コーヒーショップ、レストラン、あるいは図書館で働くのです」とTechCrunchに語るのは、WeWork Chinaでイノベーションとテクノロジーを率いるDominic Penalozaだ。彼は以前、Naked Hubというオンデマンドワークプレイスサービスのコンセプトを作り上げた人物だ。これはWeWorkにとっては地元の小さな競合相手だったが、昨年WeWork Chinaが4億ドルで買収した。合併後、エグゼクティブと彼の技術チームは共にWeWorkに参加し、後にGoとして実現されたプロジェクトの開発を続けて来た。
この「使った分だけ支払い」(pa-as-you-go)機能は、米国本土でも先週マンハッタンの新しいオフィスでも導入された。
Penalozaは、Goが「フリーランサー、モバイルワーカー、ビジネス旅行者、あるいは一時的にオフィスから離れて気持ちを落ち着かせたい人のための代替スペース」を提供するという意味で、コーヒーショップたちと競合する可能性があることを認めている。明らかなターゲットはスターバックスである。なにしろ同社は中国の急成長しているコーヒー市場の51%という大きなシェアを占めているのだ。
WeWork向けに
WeWorkにとっては、Goは月々のサブスクリプションを申し込むか否かを決めようとしている人にとっての、お試し機能として役立つ。そうした人たちが思案するのは、上海のダウンタウンでは1830元(271ドル)になるホットデスクの月極料金だ。比較のために挙げるなら、Goの料金は1時間あたり最低15元から始まり、プレミアロケーションでは30元に達する。この料金の中にはフルタイムのホットデスクと同じサービス(共有スペースへのアクセス、飲み物、そしてWi-Fi)が含まれている。
ユーザーは自分にとって有利なプランを自分で計算することができる。「もしWeWork Goメンバーとして始めて、サービスをたくさん使うようになったとしたら、月極料金のサブスクリプションに登録した方が遥かに経済的だということに気が付くでしょう。Wealo Goは、WeWorkがまったく新しい市場セグメントにリーチすることを可能にするのです」とPenalozaは語る。
柔軟な価格設定は、大企業からの収益の大部分を生み出しているWeWorkが、より幅広いユーザーベースにリーチすることを助けるかもしれない。中国のシェアードオフィス業界は、不動産業界研究者のJones Lang LaSalleが呼ぶところの「第2段階」に突入した。そこではWeWorkや地元のSoho 3Qのような大企業がプレミアムワークプレイスに参入してきている。一方資金不足のスタートアップたちは、徐々に政府に支援された低料金のインキュベーターに向かうようになってきた。
写真:WeWork China
Goの初期ユーザーの何人かは、TechCrunchに対して、このサービスは大部分のコーヒーショップよりも、「より静寂」で「より快適」な雰囲気を提供してくれると語った。だが、急いでいるときにはそこまでの距離が重要となる。WeWorkは現在、中国の十数か所の主要都市に約60か所の拠点を展開している。一方スターバックスは3330店舗におよぶ密なネットワークを形成しているが、2022年末には6000店舗に拡大することを狙っている。WeWork Chinaは、昨年Naked Hubを買収したことで場所を増やし、またレストランなどのサードパーティのスペースを、レンタル対象に追加することは可能だと述べているが、そのビジョンに向けた確固たる一歩はまだ踏み出していない。
「繁華街には本当に面白いチャンスがあります。そこにあるWeWorkとNaked Hubは、ランチ後から午後5時まで本当に満席なのです」とPanalozaは指摘した。「驚くべきことに、その付近にあるレストランは、その時間ほとんどガラガラなのです。なので、そこには魅力的な機会があるのですが、私たちはまだ何もしていません」。
[原文へ]
(翻訳:sako)