ミュージックビデオを簡単に作れるアプリTrillerにソーシャル機能が入った

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モバイルアプリTrillerは、もはや単にミュージックビデオを作るための簡単な方法というだけではない。他のユーザーをフォローして、ビデオを探すためのソーシャルな機能が最近追加された。

ここで、少し立ち戻ってTrillerが何かを説明しておく必要があるだろう。これは、お気に入りの歌の一部を切り取って、自分でビデオを撮影しながら、ビデオフィルターをかけたり口パクをしたりできる、iPhoneとAndroidのためのアプリだ。共同ファウンダー兼CEOのDavid Leibermanは、アプリは使いやすいと語ると同時に「しばしばビデオの中で損なわれてしまう、魅力的なイリュージョンが保ち続けられるようにしている」と話してくれた。

「私たちはみんなに、出来の悪いバルミツバー(ユダヤ教の13歳の男子に対して行われる成人式)ビデオのようには見えない映像を作るチャンスを与えているんだ」と彼は付け加えた。

当初、Trillerはただユーザーにビデオ作成をさせることに注力したものだった。アプリの中でビデオを作り、別の場所にシェアして鑑賞するというわけだ。

しかし、ユーザーが投稿したビデオを選別しスポットを当てるTriller Famousセクションの登場に伴い、それは変わり始めた。Leibermanによれば、その反応はとても良いもので、およそ100万人のユーザーが投稿のためにサインアップしたということだ(アプリは全部で1000万ダウンロードを数えた)。

サンショウクイプロフィール

最新のアップデートでは、Trillerはより本格的なソーシャルネットワークとなり、フォローしたりフォローされたりする機能も追加された。知っているひとや、Triller Famousを通して見つけたひとをフォローしたり、Famousフィードと自分自身のフィードを切り替えたりすることもできる。加えて、誰でも自分で公開した共有動画のプロフィールショウケースを手に入れることができる。

そしてあなたが私のように、口パク/ダンスのスキルを披露するには自信がないと感じているなら、このアプリを眺めてみる価値はあるだろう。

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(翻訳:Sako)

非集中型ネットワークの実証モデルMaidSafeが10年の研究開発期間を経てやっと一般ユーザー向けアルファを開始

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【抄訳】
10年の研究開発期間ののちにやっとローンチするスタートアップは、そんなに多くない。でも、インターネットの構造を根底から考えなおそう、作り変えよう、と志向するスタートアップも、そんなに多くはない。

イギリスのMaidSafeは、Steve Jobsが最初のiPhoneを発売する前から、今のインターネットに代わる、非集中的なP2Pネットワークを作っていた。そしてやっと今日、ついに、試行的なローンチにこぎつけ、ネットワークの最初のアルファテストを開始した。

アルファにアクセスするために必要なさまざまなダウンロード物は、同社のWebサイトが提供している。

もっと小さなネットワークによるテストは前にも行っているが、一般公開という形でのテストは今回が初めてだ。しかしあくまでもアルファリリースなので、“きわめて初期的なアーリーアダプター”がターゲットだ、とファウンダーのDavid Irvineは言っている。

アルファテストの目的は、ネットワークの動作の確認、フィードバックの獲得、そしてデベロッパーコミュニティの育成だ。アプリケーションのエコシステムを活発にして、採用を広げていかなければならない。APIの公開は、今週行う。

MaidSafeが志向する安全な(Safe)ネットワークとは、社名/製品名の中のSafeが‘Secure Access For Everyone’(みんなが安全なアクセス)の頭字語だと称するように、ネットワーク(インターネット)が今のように一部の熱心なマニアのものでなく、もっともっと広い層が安心して利用できるものになることだ。だからインストールのやり方も、平均的なユーザーを想定している。

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“インストールも実行も、非常にシンプルなものにしたい。クリックしたらインストールして動き出す、というように。その点では、モバイルアプリの配布方式を見習いたい。ダウンロードすれば即動く、というようにね”、Irvineはそう述べる。

アルファのネットワークは、MaidSafeの大きなビジョンの完全なローンチではない。その基本的なコンセプトは“ボルト(vault(s), 大金庫/大貯蔵庫)”と呼ばれ、ネットワークが、ユーザーがリソースを寄与貢献する場…すなわちボルト…になる。この点が、リソースが中央集権的な巨大サーバー群に集中している現状のインターネットの姿と大きく違う。ネットワークの基本構造はどこかの巨大サーバーの上にあるのではなく、ユーザー自身と自分たちが拠出したリソース(たとえば自分のハードディスク上のスペース)の上にある。リソース提供者は、Safecoinと呼ばれる暗号化通貨を稼ぐ。みんながそうやってリソースを持ち寄るから‘ボルト(巨大貯蔵庫)’だが、今回はそこまではテストできない。アルファの段階ではボルトは、MaidSafeが動かすリソースのみだ。

ユーザーがネットワークに(を)参加構成するためのソフトウェアは、Windows, Mac, Linux用がすでにあり、またRaspberry PiのようなARM系のデバイス用もある。

“最初はネットワークのユーザーサイドを重視し、それに関するフィードバックを集めていく”、Irvineはアルファテストのねらいをこう語る。“それによってアプリケーションのデベロッパーは、APIを使ってユーザー用のアプリケーションを作っていける。すでにフォーラム上にはそんな動きが見られる。しかし中核的なサポーターたちを超えて、もっと広いオーディエンスに広げていかなけらばならない”。

今チームが取り組んでいる懸案事項は、ネットワークのP2Pボルトの部分だ。非集中ネットワークのアーキテクチャでは、それが(従来の集中的ネットワークにおける)サーバーの役を担う。だから、ノードのクォリティが悪いと、ネットワークが劣化する。それを防ぐ方策が必要だ。

“現時点ではほとんど、われわれがDigitalOceanのドロップレット(Droplets,AWSのVMインスタンスに相当)の上に作ったボルトだけだ。でもこのアルファの過程では、ユーザーはスマートフォンや粗悪なインターネット接続から参加しているので、多くを望めない。こんな現状でユーザーボルトを構成したら、あまりにもネガティブな結果になるだろう”。

“今後の、二度目三度目のアルファでは、誰もがリソースを寄与貢献(コントリビューション)できるようにしたい”、と彼は付言する。あなたがリソースを寄与貢献できるか、それはあなたのインターネット接続やハードウェアのクォリティから、ネットワーク自身が判断する。だから、ボルトの寄与貢献がいつから始まるかを、現時点で具体的に言うことはできない。

このP2Pボルトのストレージ成分が、非集中化というMaidSafeのビジョンの中核であり、それをベースに、“自己治癒的(自然治癒的)で自己管理的な完全分散ネットワーク”が構成される。

サーバーを抹消したインターネットアーキテクチャには、セキュリティとプライバシーの面で大きなアドバンテージがある。サーバーがないから、どこかにストレージをたくさん集めて、そこにデータを集中しない。だからハッカーや盗視者にとって、ハニーポットとなるターゲットがない。サービスへのアクセスが、(政府などに)コントロールされることもない。データは暗号化され、巨大な分散状態で保存される。どれくらい巨大かというと、Safeネットワークのユーザーは、究極的にはグローバルなネットワークを構成する。

IrvineはMaidSafeの技術的な見地を次のように語る: “このプロジェクトを始めた理由は、サーバーベースのインターネットが持つロジックが、完全に反技術的かつ反工学的だからだ。MaidSafeのように、どこにもサーバーがなく、すべてのコンピューターが実質的にすべてのコンピューターおよびすべてのリソースと接続している、と考えると、YahooとGoogleとAppleをすべて合わせたものですら、矮小に見えてくるだろう。彼らは、みんなのデスクの上にある(未来の)ものに比べたら、無に等しい。

“しかも今、インターネットの現在の構造は、日に日に瓦解しつつある。人びとはインターネットから、略奪されハックされ盗視され、しかもやられ放題だ。そうなってしまった唯一の原因は、今のインターネットの中核的な設計が完全に非論理的で破綻しているところにある”。

プライバシーとセキュリティはネットワークに最初から組み込まれていなければならない。それらを、あとからのアドオンにすることは、不可能だ。

“サーバーは、セキュアでありえない。だからサーバーのところにあるパスワードも、セキュアではありえない。だのに、なんで今さらセキュリティなんかに努力するんだ? MaidSafeのようなものへのニーズは、ほとんど絶対的だ。万人が必ず、それを利用しなければならない。プライバシーとセキュリティはネットワークに最初から組み込まれていなければならない。あとからのアドオンにすることは、不可能だ”。

という大きなビジョンに向けて、今回の最初のアルファは小さな一歩だ。でもそれが一般公開の状態でのアルファであることは、重要だ。誰もがこの新しい車の、タイヤを蹴ってみれるのだから。またアルファに入ったことによって、今後の開発のピッチが上がる、とチームは考えている。必要なR&Dの大部分は、すでに終えている。

同社はbnktothefutureからの200万ポンドの資金調達と、技術者の増員を計画している。この前は目標額670万ポンドでクラウドファンディングしたが、bitcoinが多くてしかもそれらが値下がりしたため、失敗した

また、ボルトを作った人や、ブラウザーなど今後の重要なアプリケーションを作ってくれるデベロッパーへの支払いとして、500万Safecoinを確保している。このネットワークはサーバー不在が前提だから、これまでのアプリケーションはほとんど使えない。新たに作ることが必要であり、そのためにはアプリケーションのエコシステムを作らなければならない。新しいアーキテクチャのネットワークも、その価値は、その上で何ができるかで決まる。それゆえ、アプリケーションが重要だ。

今、外部のデベロッパーがSafeネットワークのために取り組んでいるプロジェクトのひとつ、プロジェクトdecorum〔礼儀作法プロジェクト〕は、非集中ネットワークにおけるソーシャルサービス(フォーラム、コミュニティ、コメントシステムなど)とそのためのオープンソースのプロトコルを作ろうとしている。MaidSafeは、このような外部努力がどっさりと必要である。Safeネットが、おもしろいエンジニアリングの実験で終わらないためには。

Irvineは言葉を続ける: “これまでの10年間は、最小限の人とお金で、サーバーの存在しない新しいネットワークアーキテクチャが実現可能で、しかも使い物になることを実証するための、努力を積み重ねてきた。しかし今では、技術的に難しい部分はもうほとんど残っていない。これから重要なのは商用化だ。まあそれは、これまでやってきた新しいインターネットの発明よりはやさしいけどね”。

でも、今およびこれからは、モバイルデバイスの時代ではないのか? コンピューティングの多くが、デスクトップからモバイルへ移った。そのことと、MaidSafeの非集中型インターネットは、どんな関係になるのか?

チームの考えでは、アルファはもっぱらデスクトップ機で行うが、将来的にはスマートフォンも今のデスクトップに劣らぬ“ネットワーク構成員としてのリソース”を持つに至るだろう。ただしそれらが十分な力を発揮できるためには、セルネットワーク(キャリアのデータライン)ではなくWi-Fiが主体になるし、充電の頻度も増すだろう。ただしこれらの話はすべて、将来の課題であり、今のアルファの対象にはなっていない。モバイル対応は、とりあえず、トゥドゥリストには載っている、という状態。

彼によると、ここから先は、自分にもチームにも鞭を当ててピッチを早めたいという。協力デベロッパーが増えてアプリケーションが増えてくれば、チームももっと、インフラストラクチャに専念できる。また、世界中でユーザーが増えるためにも、商用化を進めるためのパートナー作りが欠かせない。

Irvineは曰く、“うちは今、研究企業から商用企業への変わり目にいる。B2Cコンポーネントを作ったのも、多くの人たちに、アプリケーションを作る気になってもらうためだ。言い換えると、サードパーティに関心を持ってもらうための契機としてだ。たとえばHadoop Cassandraのストレージも、それを非集中型にする、というオルタナティブがあるはずなのだ。その方が、ずっと良いと思う”。

【中略】

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“アルファ以降には、アプリケーションを増やす方向に舵をきりたい”、とIrvineは語る。“Safeのネットワークの上なら、Web上のプライベートな情報を、当人しか見れないようにできる。またWebページ/Webサイトをどこかのサーバーにサーブさせなくても、手元のどんな情報でも、公開と共有を、自分のWebサイト上で指定できる。Wordのドキュメントでも、Skypeの会話でも、何でもだ。もちろん、それらを見た人に、そのオリジナルを改変や削除等する能力はない”。

“Webサイトも、自分のWebサイトはMaidSafeのアプリケーションが動き出したら1分以内に自分のマシン上に自動的に作られる。そのWebサイトは、各ユーザーの一生ものだ。どこかのサーバーに、それを委ねる必要はない”。

このような、サーバーがないネットワーク、サーバーがない世界を、多くの人たちが理解するには、時間がかかるだろう。しかし、その先例となるMaidSafeでさえ、アルファテストまでこぎつけるのに10年を要したのだ。なお、ブラウザーに関しては、Safeネットワーク専用ブラウザーに関する議論が、ここにある。

従来のブラウザーを使ってアルファテスターになりたい人は、MaidSafeからランチャーを入手して情報にアクセスする必要がある。また、いくつかのデモアプリケーションを試すこともできる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

エデュテックがフィンテックに続く狙い目だ

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【編集部注】著者のDavid Bainbridge氏はKnowledgemotionの創業者でCEO。

フィンテックは第4次産業革命の要だ。いまや完全に世界を席巻し、銀行とのつきあい方を永遠に変革した。しかし多くの人々は、それがまだまだこれからだと思っていて、数字もそれを示している: 今年の第1四半期におけるグローバル投資は、53億ドルに達した – 前年同期比でなんと67パーセントの伸びだ。

では何故その成功に悲鳴が上がっているのか?フィンテックスタートアップは、貪欲な消費者たちによる革新的デジタルサービスへの要求を社会の変化として捉えたのだ。実際、最近の研究によれば、もし最新テクノロジーを提供しなかったならば、銀行の3分の1以上の顧客は離れていくだろうという報告も出されている。

簡単なことだ ‐ 私たちは物事が簡単で、アクセスしやすく、すぐに提供されるようになっていて欲しいからだ。フィンテックの発案者たちは、この期待を察知し、金融サービスの伝統的な概念に革新のひと捻りとテクノロジーの手触りを追加し、銀行業務の未来が変わることを見つめて来たのだ。

そしてまあ、ベンチャーキャピタリストが目をつけたというわけだ。英国とアイルランドだけで、フィンテックスタートアップは2008年から2013年の間に投資家から4613億ポンドを調達した 。そして今や、私たちは携帯電話の電波で支払いを済ませ、時計に話しかけて資金を転送し、現金を必要とすることがほとんどなくなっている。

さて、では次は何だろう?フィンテックバブルは、まだはじける兆しはないがないが、現在のグローバル経済情勢の安定性が揺るがされるにつれ、減速の兆しを見せている。

世界が、Brexitの後遺症や、これから迎える米国の選挙、不安定な欧州の金融市場などによる経済的動揺の辻褄を合わせようと努力していることを思えば、投資家たちが過飽和のベンチャーマーケットで、賭けをして投資を行うことに消極的になる理由も理解できる。そこで、「フィンテック」の次の波を見つけ、捉え、乗ろうとしている投資家たちに、機会の窓を示したい。

エデュテック(edtech)へようこそ ‐ 2017年にやってくる、大きくて、手付かずで、安全な投資機会へ。

投資家たちへの呼びかけ

教育市場は巨大だ。ここで私たちが話題にしているのは世界で年間5兆ドルの規模を持つものである。エデュテックはまだ他の赤熱した投資機会に比べれば完全に見劣りしている。フィンテック産業だけでなく、他の産業にくらべても。例えば2015年には、全エデュテック業界に対するものよりも、Uber 1社により多くの投資がなされている。

しかし、ようやく猫が袋から出るところだ。新しい教育と学習世界の発展が、投資とともに始まっている。エデュテックへの投資は2020年までに、世界的に2億5200万ドルへ達する見込みである 。デジタル化が金融サービス業界を変えたのと同じように、その進歩的な手は教育も程なく掴みとっていくだろう。

過去150年の間というもの、ほとんどの学習モデルは – 特に子供に関しては – ほとんど変化していない。教師や講師は教室の前方に立って、主に印刷された教科書やプリントを前に座って聞いている生徒たちを相手に、考えや入門的な事実について説明している。

エデュテックは、最大のそしておそらく最も収益の高いデジタル適用分野の地位を求めてさまよっている最中だ。

しかし、いまや、デジタル技術は、今日の教室の姿を変え始めている。より多くの学生が、コンピューターやタブレットを使用しており、教師たちは講義の内容を表現するために、ますますスクリーンを使用するようになって来ている。物理的な教科書は、オンラインのインタラクティブサービスで置き換えられつつある。それらは、より最新で内容が深く、学習者に自分自身のペースでの探求と学習を可能にするものだ。

これは、2つ点で重要だ。まず、学生がデジタルDNAを持って生まれているということだ。ビジネスとして考えると、教育機関は、その消費者のデジタル需要に応える必要がある – 教室の外のデジタル技術に常にさらされている人々は、学習環境の四方の壁の内側にも同じデジタル機能を期待するようになる。

第2に、急成長するデジタルスキルが私たちの社会を分断することに、世界が気付き始めていることだ。デジタルは、程なくすべての産業の核となる。私たちは既に、人事からヘルスケア、そしてファッションに至る場所で、それが起きていることを目にしている。実際には、今から4年後には、英国ではデジタル熟練労働者だけで230万人が必要とされることが予測されている。私たちはそうした職場に向けての準備を若者たちに適切に与えているだろうか?多くの人はそうではないと言うだろう。実際には、10パーセントの学校だけが、何らかのコンピュータサイエンスのクラスを提供しているに過ぎない 。もし学校のレベルで、生徒たちを教室の外にあるテクノロジーに触れさせることを始めないならば、すぐにスキルのギャップは埋めることのできない谷になるだろう。

エデュテックは次のフィンテックだ

教育と学習テクノロジー界は、毎年英国経済に10億ポンド以上の寄与を行っていて、その過程で世界で最も革新的なスタートアップ企業を生み出している。Raspberry PiからBlackbullion、そして私たちのKnowledgemotionまで、現在英国には1000を超えるエデュテックスタートアップがひしめき合い、教育イノベーションで世界をリードしようとしている。

学校や、カレッジ、そして大学への直接アクセスを持っている唯一のテクノロジー業界であることとは別に、エデュテックは投資家にとって最も安全な賭けである。金融市場の浮き沈みとは異なり、エデュテックは安定していて、より広範な地政学的な情勢の圧力の多くから守られている。これは、賢い投資家からのスマートな資金のための、安全な避難所のようなものだ。

しかし、これは氷山の一角に過ぎない。エデュテックが、世界最大のコンテンツプロバイダー、最大の教育機関、「確実なこと」を探している投資家などに約束する機会は、ほぼ無限である。やがて「デジタルファースト」の仲間に遅れて加わるとしても、今のエデュテックは、最大のそしておそらく最も収益の高いデジタル適用分野の地位を求めてさまよっている最中だ。

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(翻訳:Sako)

韓国の美容品専門EコマースのMemeboxが6600万ドルを調達

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韓国の美容品を専門とするEコマース企業のMemeboxがシリーズCで6595万ドルを調達した。これにより、さらなるビジネス拡大を目指す。

このラウンドをリードしたのは新規投資家のFormation Groupで、既存投資家のGoodwater CapitalとPejman Mar Venturesも本ラウンドに参加した。2014年にY Combinatorから卒業したMemeboxは、これまでに合計で9500万ドルの資金調達を完了したことになる。同社は2015年3月にシリーズBで1750万ドルを調達している。

現CEOのDino Ha氏によって2012年に創業されたMemeboxの当初のビジネスモデルは、いくつかの美容品をパックにしたボックスを販売するというものだった。しかし、BirchBoxに代表される美容品の箱詰めビジネスに陰りが見えてきたと判断し、現在のコンシューマー直結型のEコマース・ビジネスに方向転換をすることとなった。

現在、同社は韓国、中国、アメリカの3ヵ国に拠点を構えており、その他の国々向けにもグローバル・サービスを展開している。サンフランシスコ、上海、ソウル、台北、香港、シンガーポールの6ヵ国にオフィスを構え、従業員は合計で250人だ。Memeboxによれば、美容品の箱詰め製品の売り上げが全体に占める割合は1~2%程度だという。

Memebox U.S.のプレジデント、Arnold HurとTechCrunchとのインタビューによれば、同社のトータルGMV(プラットフォーム上の取引額の合計)は年間で1億5000万ドルにものぼり、その年間成長率は280%だ。

K-POPや韓国ドラマの影響もあり、韓国の美容品に対する需要は爆発的に伸びている。しかも、それはアジアの国々に限ったことではない。

韓国はMemeboxの出身地であり、同社にとって最大のマーケットではある。しかし今では、米国市場と中国市場での売り上げの合計は韓国市場を上回るという。そして、その2つのマーケットは急速に成長中だ。グーグル出身のHurによれば、Memebox Chinaは年間1200%、Memebox U.S.では年間490%ものスピードで売上高を伸ばしているという。

Memeboxのグローバル成長の立役者であるHurは、「韓国市場は当社のハブ拠点としての役割を持ち続けるでしょう。しかし、当社はグローバルでの売上高を伸ばすことにも成功してきました」と話す。

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Memebox CEOのDino Ha (写真左) とHur (写真右)

自社ブランド製品

韓国の美容品を専門にするMemeboxは、現在1200点以上のプロダクトを展開し、それらの製品は同社のプラットフォームを通して米国と中国にも販売されている。しかし、Memeboxのビジネスが面白いのは、既存の美容品に存在する「ギャップ」を自社ブランド製品で埋めているという点だ。

Hurはこの取り組みについて、Netflixのオリジナル番組を例に説明してくれた。

「Netflixが政治ドラマとKevin Spacyの人気を理解しているのと同じことです。彼らはその2つの要素を組み合わせて素晴らしいドラマを製作しました。それと同様に、私たちはデータによって顧客のニーズを理解し、トレンドとギャップを見つけ出すことが可能なのです」と彼は話す。

自社ブランド製品の1つである純アロエのフェイスマスクは、コットン製の従来のフェイスマスクを補完する関係にある。さらに自社ブランドの価格は従来品の4分の1だ。そして、マーケットに製品を投入するまでのスピードも速い。Memeboxによれば、自社ブランド製品のコンセプトが決定してから販売までにかかる時間はたったの数カ月だという。これは、他社が18ヶ月から24ヶ月かける従来の製品開発期間を大幅に短縮することによって実現されている。顧客ニーズに関するデータを分析することで、レポート調査、トレンド調査、フォーカスグループによるニーズ調査などにかかる時間を短縮しているのだ。

この取り組みは同社の収益にも大きなインパクトを与えている。

4つの異なるブランド、450点のプロダクトを含む自社ブランド製品からの収益は、他社製品の販売から得る収益よりも高いとHurは話す。

「自社ブランド製品はEコマース・プラットフォームよりも高い収益をあげています。自社ブランド製品を販売し初めてからまだ1年あまりだという事を考えれば、この数字は驚くべきものです」と彼は話す。

しかし、Memeboxは製品開発にフォーカスしてはいるものの、プラットフォーム上で販売している製品と直接的に競合する気はないとHurは話す。実際に、同社は今年末までに2つの自社ブランドを販売開始すると同時に、有力な他社ブランドをプラットフォームに加えることを目指している。

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オンラインを超える

オンラインは顧客と企業をつなぐ大きな接点である。そして、Memeboxもまた、オンラインに関する素晴らしい数字を公表している。アプリのダウンロード数は400万件にのぼり、全体の8割の売り上げがモバイルから生まれているのだ。しかし、Memeboxはオフラインの取り組みにも注力し始めた。

先日、同社初となる従来型の店舗がソウルにオープンした。Hurによれば、この店舗が同社初のオフライン店舗となるが、今後も実際の店舗を展開していくかどうかはまだ未定だという。

「オフラインの店舗を構えることで、新しい顧客層との接点が持てるだけでなく、より多くのデータを集めることにもなります」と彼は話す。「例えば、異なるパッケージングや棚の構成に対する顧客の反応の違いなどです。オフラインは、完全な顧客満足を実現するための要素の一つなのです」。

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デジタル・ファッションブランド

Hurによれば、Memeboxを突き動かすイデオロギーとは、デジタル世界のL’Orealのような企業を創りあげるというものだ。

デジタルはMemeboxが積極的に取り入れてきた要素だ。同社がもつソーシャルメディアのフォロワーとは別に(同社によれば、Facebookページの動画視聴回数は7000万回を超える。この数字は、「L’Oreal、Benefit Cosmetics、H&Mの動画視聴回数を合計したものより多い」)、Memeboxは美容品を紹介するユーチューバーやブロガーと共同での製品開発にも取り組んでいる。その製品の紹介動画や紹介記事を見る人々の半分は18歳から24歳の女性達だ。通常のマーケティングではその年齢層にリーチするのは難しいとされており、そしてこの顧客層は同社のメインターゲット層でもある。

「CPR(Comsumer Product Revolution)という言葉があります。コマース業界に新しい風を吹き込むことを意味する言葉です。」とHurは語る。「新しいブランドがオンライン上で生まれており、特に美容業界では、それらのブランドは従来のものとは大きく異なります。(従来の美容品企業と比較した)私たちの強みとは、今の時代に適した企業とは、過去の企業とはどのように異なるのかという事を常に考えることなのです」。

Memeboxは進歩をつづけているが、まだ利益を出す段階には至っていない。

「来年度には黒字化することを目指しており、それに向けて着々と成果を出してきています」とHurは語る。

将来的にIPOを目指すのか、あるいは、先日Walmartが30億ドルでJet.comを買収し、UniliverがDollar Shave Clubを10億ドルで買収するなどの動きがあるなか、同社も他社との合併を目指すのかについてはHurはコメントを控えた。

ただし、Memeboxが注目企業だということは間違いない。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

フランク・アバグネイルは、詐欺師のように考えてセキュリティーを改善する

Frank Abagnale, a security expert for the FBI, poses for a photograph following an interview in London, U.K., on Wednesday, March 11, 2015. Abagnale, who made $2.5 million in the 1960s as a teenager faking identities as an airline pilot, lawyer and doctor now works with the FBI and others on cybercrime. Photographer: Chris Ratcliffe/Bloomberg via Getty Images

フランク・アバグネイルの巧みな詐欺師としての悪名高き青春は、2002年の映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンでレオナルド・デカプリオが若きフランクを演じて、よく知られるところとなった。しかし、やはりアバグネイルが語りたいのは、捕われて投獄され罪を償った後の人生についてだ。

その後アバグネイルは、詐欺師としてのスキルを善に転じ、セキュリティー・コンサルタントとして40年のキャリアをスタートした。映画にあるように(最近もう一度観た)、アバグネイルは裁判所命令を受け、刑務所を出てFBIで働いたが、裁判所命令が失効した後も、この仕事を天職と受け止め数十年間働き続けた。長年にわたり3000回以上のセキュリティー・セミナーを開催し、企業や警察に最新詐欺師事情を伝えた ― 容易な仕事ではない。

詐欺師はインターネットへ

1960年代、ティーンエージャーのアバグネイルが詐欺師として活動していた頃、もちろんインターネットはなかった ― あるのは紙と口先だけだった。アバグネイルは不正な小切手や改竄した推薦状、偽のバッジや身分証明書等を使って巧みに当時のシステムを回避した。電話を使ったり、図々しく人を操ったりして欲しい物を手に入れたこともあった。

インターネットのおかげで、今の方がずっと簡単だとアバグネイルは言う。なぜなら、ソーシャルエンジニアリングによって比較的容易に他人の情報をアクセスできるからだ。「私はFBIで40年間教えてきた ― 既製の枠組みにとらわれずに考え、ソーシャルエンジニアリングに対応する方法を。今のテクノロジーにソーシャルエンジニアリングで欺せないものはない」と、数ヶ月前のインタビューでアバグネイルは語った。

アバグネイルの若き日の体験は、自身が生涯にわたって利用することになる知識のベースとなった。実践の場がインターネットに変わっても、基本原理は変わらないことがわかった。

私はサイバー専門家ではないが、個人情報詐欺や、インターネット犯罪のやり方について多くのことを知っている。何も変わっていない。

— Frank Abagnale

「私はサイバー専門家ではないが、個人情報詐欺や、インターネット犯罪のやり方について多くのことを知っている。何も変わっていない」と話す。一つの問題は、ほとんどの人が正直で疑うことを知らないことであり、詐欺師はまさにそこを狙う。だからこれほどアバグネイルが必要とされているのだ。悪人たちと同じように考え、企業や警察や個人に何が危ないかを示すことができる。

「あなたの名前と生年月日がわかれば、個人情報を盗むには十分」とアバグネイルは自信満々に言い、近年様々なサイトで起きている侵入事件の結果、クレジットカード番号、社会保障番号、生年月日、その他の個人情報満載のデータベースが、本格的犯罪組織によって運営されていると指摘した。

限界を試す

セミナーを開くとき、アバグネイルは “confidential” と書かれたUSBメモリーを会場の駐車場にいくつか落としておく。すると何人かがそれを拾って会社のパソコンに差し込む。するとこんなメッセージが表示される。「これはテストです。あなたは不合格でした」。これは恥をかかせるためにやっているのではなく、そのたった一つの行動が会社に何十億ドルもの損害を与えるかもしれないことを指摘するためだとアバグネイルは言う。

消費者であれCEOであれ、もっと賢くなる必要があることを改めて伝えなくてはならない。少しだけ賢く、先を見越して、後手にならないよう考える必要がある。

— Frank Abagnale

これは、CrowdStrikeのCTO・共同ファウンダーのDmitri Alperovitchが2月のRSAセキュリティー会議で話した内容と一致する。どれだけ教育をしても、社員の5%は悪質なリンクをクリックすることを調査結果が示している。その同じ社員が、感染したUSBメモリーを拾って自分のパソコンに差し込むかもしれない。いずれにせよこうしたデータを見る限り、ネットワークを保護するのが困難であることは明らかだ。

人々に安全を守る方法を教えるために全国行脚することが使命だと、アバグネイルが考える理由はそこにある。「消費者であれCEOであれ、もっと賢くなる必要があることを改めて伝えなくてはならない。少しだけ賢く、先を見越して、後手にならないよう考える必要がある」。しかし、豊富な資金をもつ犯罪組織には、個人はもちろんほとんどの企業が太刀討ちできないとアバグネイルは打ち明ける。

経験を生かす

68歳になった今も、アバグネイルはTrusonaというスタートアップで仕事の幅を広げている。この会社が開発した認証プラットフォームは、インターネット上の取引きで、個人情報を詐称ができなくすることを目的としている。技術に自信を持つ同社は、自社製品を利用した取引の保証まで行っている。アバグネイルは自分がソフトウェアに詳しくないことを認めているが ― そこはファウンダーのOri Eisenに任せている ― どうやって破るかを考え、それに基づいてEisenがシステムに調整を加えるのだという。

Frank Abagnale speaking at Cloud Identity Summit in New Orleans in June.

Image: Brian Campbell, Ping Identity.

そうやってアバグネイルはセキュリティーに貢献してきた。テクノロジーが大きく変化した今も、悪人たちと同じように考えることで、セキュリティーの脆弱性を見つけることができる。しかしアバグネイルが今驚いているのは、自分が16から21までの間にやったことではなく、それ以降に起きたことだという。

もちろんアバグネイルは、自身の犯罪の歴史や、若い頃の行動を誇りに思っていない。6月にニュー・オリンズで行われたCloud Identity Summitでこう言っていた。「捕まることはいつもわかっていた。そう思わないのは愚か者だけだ」。

アバグネイルは大統領恩赦を3回拒否している。どんな書類も自分のやったことを消すことはできないと信じているからだ。それでも機会を与えられたことに感謝している。人生を好転させる機会も与えられ、結婚して息子を3人もうけることができた。

「私たちはすばらしい国に住んでいる。社会に借りを返し、やり直してポジティブなことを始めることができる」とアバグネイルは言った。40年以上にわたり、この男が実際にそれを成し遂げてきたことは間違いない。


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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

「カーボナイト冷凍されたハン・ソロ」冷蔵庫の作り方


子供の頃、『帝国の逆襲』でランドに裏切られたハン・ソロのように、カーボナイトで凍らされたら一体どうなるのかいつも考えていた。自分が冷蔵庫になることなど想像したことはなかったが、Adam SavageのYouTubeチャンネル、Testedを見て考えが変わった。

ビデオのコンセプトは実に単純:何の変哲もない冷蔵庫を、スターウォーズの奇妙な物質の中に閉じ込められたハン・ソロへの忠実なオマージュに変えることができるか? そしてそれは可能 ― 少なくとも映画用小道具メーカーであるFrank Ippolitoには可能だった。一般人でも、忍耐力と道具を使うスキルのレベル次第ではおそらく可能だろう。

製作の重要な材料は、カーボナイトの中で苦しみに顔をゆがめるソロの等身大レプリカだ。これを元にシリコンモデルを作る。グレイの塗料でメタリックに仕上げた後、Ippolitoはさらに、冷蔵庫に取りつけたサイドパネルで照明効果を加え、フィギュア全体に赤いパルスを当ててハンが『ジェダイの帰還』で生き埋めから解放された時の特殊効果を真似ている。

わが家の冷蔵庫も買い換えの時期だが、新型のステンレス製にしておくつもりだ。

Via CNET

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceX、スカパーJSAT放送衛星打上とブースターロケットの洋上回収に再び成功

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今日(米国時間8/14)、東部時間1:26am、SpaceXはケープカナベラルからFalcon 9ロケットを打ち上げ、第一段ロケットを海上を航行するドローン艀に着陸させることに成功した。さらに重要なことだが、SpaceXは今回の打ち上げの本来の任務であるJCSAT-16衛星を静止トランスファ軌道(Geostationary Transfer Orbit=GTO)に乗せることにも成功している。

SpaceX JCSAT mission patch

ブースター・ロケットを洋上のドローンに着陸させるたのは、衛星を静止軌道という非常に高い高度に投入する必要があったためだ。静止トランスファ軌道に乗せるためには多量の燃料を必要とするので、ブースターを地上基地に帰還させることはできなかった。これまでのところ、SpaceXが地上基地にブースターを帰還させたのはペイロードとなる衛星が低高度の場合だけだった。

今回打ち上げられたJCSAT-16は大型の商用放送衛星で、日本のスカパーJSAT株式会社のためにSpace Systems Loralが製造したものだ。この衛星はスカパーJSATが運用する16基の衛星ネットワークに追加され、アジア太平洋地区における衛星放送と衛星データ通信の役割を担う。

SpaceXでは今回を含めてブースターの回収を合計11回試みており、うち6回が成功している。2回は地上回収、ドローン艀への回収に成功したのは今回を含めて4回となった。
航行する艀への洋上回収は地上回収に比べて困難度が高いと考えられているが、SpaceXの打ち上げミッションによってはドローン艀への回収が最良ないし唯一のオプションとなる。

この1年に繰り返されてきた回収の試みでSpaceXは非常に多くの経験を積んだ。ある場合には温度が高すぎ、操縦をコントロールする液圧装置の作動流体が十分残っていない、安定脚がロックされずに転倒したことなどもあった。

しかしこの4月以降、イーロン・マスクの宇宙企業はブースター回収を6回試みて5回生功させている。

ただしこれまでのところ、回収されたブースターの再利用は行われていない。しかし先月、回収されたブースターの1基を用いて燃焼試験が実施された。この実験のは有意義だったはずだが、宇宙に飛び立ったわけではなかった。衛星打ち上げへの再利用に最初に使われるのは この5月に国際宇宙ステーションへの物資補給に用いられたブースターとなるはずだ。打ち上げスケジュールなどはまだ決まっていない。

今日のミッションはSpaceXにとって今年8回めの打ち上げとなった。打ち上げ回数を18回と昨年の3倍にアップするう野心的な目標を実現するなら、今年後半にかけてさらにペースを上げる必要がある。次回の打ち上げはわずか3週間後に予定されており、SpaceXはその準備に全力を挙げている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ポケモンGOはAR/VRの全てを変える(そして何も変えない)

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【編集部注】著者のTim Merel氏はEyetouch RealityDigi-Capitalの創業者でCEO。

 

「ポケモンGOをARと呼ぶのはやめろ」と純粋主義者たちは言う。しかし、あれほど成功したものをどのように呼ぼうが、誰が気にするものか。起こったことを喜ぼう。そしてこれがAR/VR産業にどのような意味を持つかを探ろう。

ポケモンGOは、誰もが待ち望んでいたAR/VRのシンギュラリティ(特異点)である、しかしその姿は皆が期待していたものとは随分異なっている。それは未来のメガネでもなく、ハイテクでもなく、新しいハードウェアは不要でしかもタダなのだ。誰がこれを予想していただろう?

ポケモンGOの開発者であるNianticですら、そうした予想はしていなかったことだろう ‐ ユーザーからの圧倒的な需要が(DDoS攻撃の助け借りずに)開始時のサーバーダウンを引き起こした程の大いなる成功にも関わらず。

ポケモンGOの素晴らしいところは、8歳から80歳までの 1億人を超える消費者たちが、世界中でゲームをプレイし、それをプレイするひとを困惑しながら眺めたり、奇妙な経験についての長々とした記事を読んだり、主流メディアが膨大な情報を投入するところを見たりしたことだ。AR/VRは、もはや業界のインサイダーや、イノベーター、そしてアーリーアダプター(やTechCrunchの読者)のための珍獣ではない。1週間も経たずにAR/VRは主流の現象となった、そしてそれは(私たちを含む)もっとも楽観的な業界インサイダーが思っていたものよりも、何年も早く起きたのである。

なぜポケモンGOはこれほど成功したのか?

まず、ポケモンは私たちの心の中の、大切な場所を占めているということ。溺愛するX世代の両親と、ベビーブーマーの祖父母が見守る中で、新世紀生まれはポケモンと共に育ち、いまやどこにでもあるブランドである。

第2に、プラットフォームが普及していたということ。今年中にはスマートフォンとタブレットによるモバイル通信契約が40億に迫ろうとしている、いまやどこにでもあるプラットフォームである。

第3に、馴染みやすく、すぐに遊べるゲーム体験。それは子供のころに遊んだポケモンではない。よりアクセスしやすい、誰にでも馴染みやすいゲーム体験である。

しかし、純粋主義者たちはなお「ポケモンGOはARではない」と言い続ける

第4に、純粋なモバイル体験。どこへ行っても遊ぶことができ、どこに行ってもそこで遊ぶ意味がある。そして、それはポケモンGOの成功だけではなく、すべてのARの成功の鍵なのだ。ARは本質的にモバイルであり、逆にモバイルであることが過去10年間の技術革新の多くを牽引してきた。

ARは火星から、VRは金星から

しかし、純粋主義者たちはなお「ポケモンGOはARではない」と言い続ける。一体彼らは正しいのか、それとも間違っているのか?

いくつかの定義を再検討してみよう。VR(仮想現実)は、仮想世界の内部にユーザーを配置する。AR(拡張現実)は、仮想オブジェクトをユーザーの実世界の上に重ねることによって、現実世界の拡張を行う。ARと密接に関連しているが、MT(複合現実)は利用者の実世界にしっかりとした仮想オブジェクトを配置する。そのため利用者にとっては、それらは実物のように見える。これまでのところ、分類は非常にシンプルだ。

Digi-Capital Reality Matrix

しかしこのテクノロジーは、それが最初に現れたときよりも、もう少し多様なものである。Digi-CapitalのReality Matrixは、いくつかの基本的な定義を使用してマーケットを区分している。

  • Virtual(仮想):現実の世界は排除される(すなわち、ユーザーは仮想世界と仮想物体だけを見ることができる)。
  • Augmented(拡張):現実の世界は排除されていない(すなわち、ユーザーは現実世界と仮想物体を見ることができる)。
  • Immersive(没入):ユーザーの脳を騙してそれらが本当の体験であるような反応を引き出すテクノロジー要素群(多種多様である、詳しくはここで)。
  • Ambient(環境):Immersive程の没入体験はもたらさない、1つまたはいくつかのテクノロジー要素群。

Reality Matrixは4区画から構成されている。いくつかのプレーヤーは、異なるユーザーニーズに対応するために複数の区画にまたがっている。

Console/PC VRは、仮想クジラが海面下でユーザーに迫ってきたときに、ユーザーを飛び退かせる(例えばHTC Vive、Oclus、PlayStation VR);Mobole VRはとても良いVR体験を提供するが、位置追跡などのキー技術のために没入型ではない(例えばSamsung Gear VR、Google Cardboard、そしてDaydream);Augment Realityには日中の現実世界の中に仮想オブジェクトを表示するIron Manのホログラフィックディスプレイのようなもの(例えばAtheer)からスマートフォン/タブレットの「魔法の窓」AR(例えば Google Project Tango)のようなものまでが含まれる;Mixed Realityでは仮想オブジェクトが日中の現実世界の中にリアルな物体として登場(例えばMicrosoft のHoloLens、Magic Leap、Metaなど)したり、ARとVRの間を簡単に切り替えられる(例えばODG)。

しかし、ポケモンGOはどこに入ることができるだろう?

それが拡張現実なんだよジム ‐ でもそれは私たちが知っているものじゃない

この点が純粋主義者たちを少々慌てさせるのだ(これがThe FirmによるStar Trekの間違った引用だからだ、という理由だけではない)。なので、ここではっきり言ってしまおう。

ポケモンGOはARだ。その本当に基本的なバージョンというだけのことだ。

多くの点で、ポケモンGOは唯一のロケーションベースのエンターテイメントであり、業界の人々が思い描いていたようなARではない。しかし、そこがポイントなのだ。これは、業界の人々の認識がどうこうという言う問題ではなく、一般の人々の認識の問題なのだ。

たとすれば、ポケモンGOがAR/VRの開発のために意味しているものは?

一般の人々がポケモンGOをARであると考えているのなら、そういうものなのだ。

友人とポケモン狩りのために近所を歩き回るときに、それがARであろうとなかろうと何の関係もない。使われているテクノロジーが新規性のないもの(GPS、クロック、カメラ)であってもなんの問題もないし、ファンシーな光学機器、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping:地図作成と位置同定を同時に行うこと)、先進的コンピュータービジョン、その他のハイテク魔法が使われていないことにも何の問題もない。そのどれも重要ではないだ。

なぜなら楽しいから。そして、どこにでもあるから。そして人々は、あなたがそれを好きかどうかに関わらずARだと思っている。だから、そのように対処するだけだ。

全てを変え、そして何も変えない。

たとすれば、ポケモンGOがAR/VRの開発のために意味しているものは?

消費者に受け入れられたという点で、それは記念されるべきものだ。何年もの間VR/AR/MRに関心を示さず、試行もして来なかったひとたちが、いまやマーケットでアクティブに活動を始めている。それは、業界のためには途方もなく良いことだ。なぜなら今やマスマーケット消費者の認知が得られているからなのだ。

アプリ開発者について言えば、誰もが時流に乗ることができるかどうかを見出そうと大騒ぎの最中だ。これまでVR/AR/MRにリソースを投入すべきかどうか決めかねていた人々は、少なくともどうすべきかを考えている。そのキャリアを活かして何をすべきかを決定しようとしいる気鋭の関係エンジニアたちは、それによって影響を受けている。市場に流入してくる才能にとっては、とても好都合だ。

VR/AR/MRテクノロジーの中核会社(すなわち、ハードウェアメーカーたち)にとっては、テクノロジーがどのように開発されていくのかに対して、ポケモンGOはほとんどが影響を与えていない。すべての課題はそのままであり、ARが真にテイクオフする(現在のロードマップに従えば、2018年頃 )ためには、ヒーローデバイス、長いバッテリ寿命、携帯通信機能、強力なアプリのエコシステムと電話会社による内部相互補助といったもののマジカルな組み合わせをまだ必要とするのだ。

投資家にとっては、非常に刺激的であると同時に混乱もしている。ポケモンGOは多大な努力を必要とする特別なアプリケーションである。規模の点で模倣することは困難だ。任天堂の株価はモンスターボールというよりヨーヨーのように見えた。ということで既に存在している以上のマーケットを巡る話題はある一方(可能性はあるものの )、VCの根底にある考え方は大きくは変わらないままである。

Apple CEOのティム・クックの言葉が最高である :「ARは本当に素晴らしいものです。私たちはこれに対して、これまでも、そしてこれからも、多大な投資を続けます。ずっとARに夢中なのです。お客さまにとって素晴らしいものを提供することができ、そして素晴らしい商業的チャンスがあると私たちは考えています…とても巨大な」。

ポケモンにとっては小さな1歩だが、ポケ類のためには大きな1歩なのだ。

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(翻訳:Sako)

記憶させたことを自然言語で取り出すことのできるチャットボットのWonder登場

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ダイアル錠の組み合わせが思い出せなくなったことはおありだろうか。スターバックスでガールフレンドが大好きな商品を注文しようとしてわからなくなることは大いにありがちな話だ。プリンターのインクを買いに出て、そもそもどのインクだったかがわからなくなるなんてことは普通の話だ。覚えていないことは検索すればいいと思うかもしれない。ただ、Googleっても見つけられない情報というのも多い。

個人的な情報は個人で管理するしかないのだ。そうした情報はNotepadを利用して書き留めておく人もいるだろう。しかし「どのようにメモしたか」を忘れてしまって検索できなかったりもするものだ。そんな人のためにと登場してきたのがボットプログラムでWonderというものだ。必要な情報を何でも記憶しておき、必要なときにテキストメッセージ経由で情報を教えてくれるというものだ。

発想は簡単なものだが、なかなか面白いボットになっている。Wonderのサイトにいくと、まずスマートフォンの番号を入力するように促される。あとはテキストメッセージを通じてボットとやり取りをすることになる。

データの入力(伝達)に特別な形式はなく、あとで必要となりそうな情報を送るだけで良い。データは後に活用できるように記憶される。データが必要となったときには、Wonderに「会社の保険業務を担当しているのは誰?」とか、「全社ミーティングの日程は?」などといった質問を送るだけで良い。予めデータを与えていた場合には、該当する情報が送り返されてくる。

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Wonderを考えだしたのはアリゾナ大学の学生であるJordan Singerおよび卒業生のShivkanth Bagavathyだ。Bagavathyの方はアリゾナ州スコッツデールのRecruiting Venturesで働いていた。この二人はこれまでにもいろいろプロジェクトを世に問うている。多くはProduct Huntに取り上げられ、WonderボットももちろんProduct Huntに登場している。

Shivkanthによると、「Siri’s best feature is its reminders」(Siriの最高の魅力はリマインダー機能)という記事をみてインスピレーションを得たのだとのこと。そして、バーチャルアシスタントがどのような機能があれば、さらに便利に利用できるようになるかを考え始めたそうだ。

「これまでのように、メモを取るだけの機能を充実させるのでは十分でないと考えました。インタフェース的に間違っていると思ったのです。メモも量が膨大になれば、検索することが難しくなってしまうからです」とShivkanthは説明する。「自然言語処理とAIの技術が進化する中、そこにボットを結びつけるやり方が注目されつつあります。この組み合わせこそ、つい忘れてしまいがちなことを思い出すために最高の仕組みだと考えるにいたったのです」とのこと。

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ボットの開発にはRuby on Railsを使った。テキストメッセージのやり取りにはTwilioを使い、自然言語処理および機械学習の機能を実装するためにはWit.aiを用いた。これに自分たちのもつ構文解析や類似文字列検索の技術を組み合わせたのだ。機械学習の機能を持たせたことにより、使えば使うほどに性能が向上してくることになると説明されている。。

Product Huntにもあったが、WonderのMessenger、Slack、Alexa(Amazon Echoなどのデバイスでの利用が考えられている)など、他プラットフォームへの移植が進行中であるそうだ。またAPIを使う方法も用意されているところであるらしい。この中ではMessengerボットが最初に実現される予定で、数週間のうちには利用可能になる予定だとのことだ。

Wonderはサイドプロジェクトとして始められたものだ。しかし現在ではShivkanthおよびJordanの2人ともにビジネス的に大きなポテンシャルがあるはずだと考えているようだ。Slackなどのプラットフォームに移植することで、ビジネス的な利用法が広がるはずだと期待もしている。「Slack上でWonderを実装すれば、従業員たちは必要な情報や必要なタスクの情報を簡単に入手することができるようになります」とShivkanthは述べる。さらにインターナルサポートや新人の実習、などデータや情報を活用するさまざまなシーンで応用可能だと考えているらしい。

TechCrunchでWonderを使ってみたところ、なるほどこれはなかなか良くできているように思う。いちど伝えた情報について質問をすると、直ちに情報が戻ってくる。また、データを記憶させるさいに使ったのとは異なる言い回しを用いても、きちんとそれを理解して必要な情報を戻してくれる。

たとえば2つ上の図にあるように、ロッカーの鍵番号を「My gym locker combination is 9976」と記憶させた。そして情報を取り出す際には「What’s my gym locker combo?」と尋ねてみたのだが、問題なく応えてくれた。

現在公開しているSMSボットは、アメリカとヨーロッパでのみ利用することができる。しかしMessenger版は全世界で利用できるようになる見込みだ。ちなみにSMS版は無料で使うことができる。

(訳注:日本からも利用できた。こちらでは「妻が生まれたのはxx年xx月xx日」と入力して「妻の誕生日は?」と訪ねてみても正しい解答が得られた。ただしやり取りは英語で行っている)。

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(翻訳:Maeda, H

オープンハードウェアのQubieで選挙の待ち時間をモニタリング

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アメリカでの極めて重要な国政選挙を控え、有権者全員が投票すること、さらには彼らが投票できる環境を整えることが今までにないほど大事になっている。そこで、選挙関連テック企業のFree and Fairは、自動で待ち時間をモニタリングし、有権者と選挙スタッフに情報を提供するシンプルなオープンソースデバイスを使って、混雑が予想される投票場の運営をサポートしようとしている。

Free and Fairは投票場で利用できるオープンソースソフトを開発しており、同社のソフトには有権者のチェックイン機能や実際に投票・集計が出来る機能が備えられている。しかしQubieは同社初のオリジナルハードウェアで、Hackaday Prizeにむけて開発された。Free and Fair設立者のDaniel Zimmermanは、同社が時代遅れだと感じる投票プロセスの別の側面をQubieで解決しようとしていると説明した。

「ここ最近の選挙では、長い待ち時間に耐えかね、投票を諦めて家に帰ってしまう人に関する報告がなされていました」と彼はTechCrunchの取材に応えた。「選挙関連のテクノロジーはとても悲惨な状況にあります。私たちは、待ち時間のような選挙に関する逸話よりもデータの収集を行う方が有益だと考えていました」

トラッキングについては既にいくつかの試みがなされているが、往々にして場当たり的なものだった。大きな選挙では管理委員会とボランティアスタッフが忙しすぎて、毎時間何人かのために(カウンターや紙に書かれた番号を利用して)待ち時間の計算をするということの優先度が単純に低いのだ。

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Qubieのつくりはシンプルで、小さなWi-Fiアダプターを備えた、電池かUSB経由の電源で動くRaspberry Piで構成されている。QubieはWi-Fiシグナルを使って携帯電話を認識し、各携帯電話がQubieのモニタリング範囲内にどのくらい滞在しているかというのを記録することができるため、その場所で投票するのにどのくらいの時間がかかるかという平均値を割り出すことができる。

もちろん、携帯電話を使ったトラッキングというアイディアに眉をひそめる人もいるだろう。そのため、Free and Fairでは個人情報の収集や保存を行っていない。

「私たちがまず行うのは投票者の匿名化です。Wi-Fiシグナルを読み込んだ後に暗号化し、個人が特定できるような情報は記録しません」とZimmermanは語った。

具体的には、QubieはデバイスのMACアドレスを探知し、起動時に生成された一定時間有効なキーのハッシュ値をデバイスに割り当てる。このハッシュIDを、Wi-Fiチャンネルや電波の強さと共にソフトがトラックするのだ。

考えてみれば、選挙スタッフは投票場を訪れる有権者の名前を書きとめ、そもそも投票自体が公的な行為であることから、Qubieが必要とする情報というのは大それたものではない。それでもやはりFree and Fairは、Qubieが何をするデバイスで、詳しい情報はどこで手に入るのかなどが記載された紙をQubieと共に準備した。

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現時点でQubieは未だ開発途中の段階にあるため、データは全てローカル上に保存し、後で回収できるようになっている。しかし、もちろんこれではリアルタイムの情報が分からないため、Free and Fairは、情報の扱いに気を使いつつリアルタイムで待ち時間を知らせるための方法を現在模索している。Qubie上で情報を処理してその結果をスタッフに伝えることもできるし、クラウド上に一旦データを送ることでアプリやウェブサイトを介したライブ情報発信を行うこともできる。まだ大統領選までは時間があり、場所によって好みもあるため、この点については今後固まっていくだろう。

10台のQubieを使った実装テストは問題なく進み、実態に合ったデータを生成することができた。Free and Fairは現在、できれば11月のアメリカ大統領選に間に合うよう、Qubieをもっと普及させたいと考えている。

さらに同社は、Qubieが爆発装置と誤解されないよう、専用の筐体も製作する予定だ。

「Qubieが公共の場にポンと置いてあったら心配になる人もいると思います」とZimmermanは冗談抜きで話していた。多くの人が選挙日には神経質になるものだ。

Qubieはソフト・ハード共にオープンソースのため自分で作ることができるが、ゲリラ的に設置するのはオススメできない。それでもQubieのようなガジェットで、投票プロセスが少しでも簡単になったり、投票場で何が起きているかが分かりやすくなるのであれば、追求する価値がある。是非近くの選挙スタッフにこのようなデバイスが役に立つか聞いてみて欲しい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

3Dプリンティングによる知的所有権侵害を防ぐための処方箋

Scattered colorful medical pills and capsules on white background

【編集部注】著者のRoy S. Kaufman氏は新興ベンチャーであるCopyright Clearance Centerのマネージングディレクター。

2000年ころの音楽ビジネスは依然強かった。レコード会社はアルバムを制作し、そうした物理媒体を販売店舗に出荷していた。インターネットはゆっくりと大量消費と流通のシステムになりつつあったが、ほとんどの消費者はまだ物理メディアを購入していた。レコード業界はオンライン海賊行為を意識していたものの、脅威はあまり感じられていなかった。

そしてNapsterがやってきた。

音楽業界は、プラットフォームやダウンロードする個人 ‐ 貧乏な大学生を含む ‐ の両方を追い詰めることで、この大規模な海賊行為を止めようとした。しかし世論は、業界に対して厳しいものとなった。結局のところ、デジタル音楽を盗むことはつかみどころのない行為で、レンガやモルタルで作られた店舗から実際のCDやテープを奪う行為とは違ったものなのだ。今日、多くの人が合法的に音楽にアクセスしながらも、音楽業界の収益は回復には至っていないと言えるだろう。

薬剤とMP3のダウンロードがもつ共通点は?あなたが思っているよりはもっと多い

また別の、革新的で破壊的な技術である3Dプリンティングは、物理的オブジェクトの生産を安価で簡単なものにする。家庭用コピー機が著作権産業を変えたように、3Dプリンティングは、特許ベースの産業に同じ変化を迫ろうとしている。

つまり実質的に、物理的オブジェクトを製造するビジネスは、潜在的にNapsterのシナリオに直面する可能性があるということだ。すべての産業にそれが起きるというわけではないが、プリンターテクノロジーが向上し、より多くの物質 ‐ 例えばタンパク質や特殊なポリマー、金属、そしてその他の化学物質 ‐ などが利用できるようになるに従い、より多くのものが対象になって行くだろう。

製薬業界を考えてみよう。最初のリリースに向けての制作時にもっとも費用がかかる音楽のレコーディング(ミュージシャンを集め、スタジオを予約し、編集するなど)のように、新しい薬剤を開発する際の大部分の費用は最初の段階にかかっている:研究と開発、治験、そしてFDAの承認。実際の原材料費などは僅かなものだ。そして3Dプリンティング – あるいはデジタル製造と流通という名で知られているもの – が、合法的または不法な、これらの薬剤の複製と提供をはるかに簡単にするだろう。

ヒューストン応答せよ、(特許)問題が発生した

もし大きな音楽関連企業から責められている貧乏な学生を気の毒だと思うなら、海賊版の処方薬に頼る以外必要性が満たされない、不十分な保険しか持たない人々のことを想像してみて欲しい。

今のところ例外的ではあるものの、Apreciaは薬剤が印刷できることを証明した。

デジタル製造薬剤は遠い話ではない。2015年、FDAは初の3Dプリント薬剤であるてんかん薬Spritam levetiracetamApreciaが製造)を承認した 。製造業者は、3Dプリント薬剤は実際により効果的だと主張している。なぜならば3Dプリンターの動作原理により生み出されるその積層構造によって、体内により簡単に吸収されるからだ。同社は、そのユニークなプロセスに対する50の特許で、その知的所有権(IP)が保護されていることを主張している。今のところまだ例外的ではあるものの、Apreciaは薬剤が印刷できることを証明したのだ。

DIYメイカーカルチャーの長所と短所

そのIPへの潜在的脅威にもかかわらず、3Dプリンティングは、例えばカスタマイズのような豊富な利便性を、消費者と(もし上手くやれるなら)製造者の両方に約束している。3Dプリント製薬の薬剤を用いれば、投与量をそれぞれの患者の必要性に合わせて調整することは容易になる、丁度薬剤師が材料を調合して、個別の患者向けの特製薬剤を作るようなものである。ちょうど個々の患者向けに義肢が正確に作られるように。

これが3Dプリンティングの唯一の利点ではない。プリンタが安くなるにつれ、それらは間違いなく薬局へと持ち込まれ、必要に応じて薬剤をプリントし、高価につく廃棄や劣化、そして在庫を減らすことになる。これは製薬業界にとってとても素晴らしいニュースだが、暗黒面も存在する。やがて、ほぼ全てのものに対する構成素材を誰でも作ることができるようになる ‐ 特許で守られているか否か、保護されているか否か、そして危険であるか否かにかかわらず。

すべての家庭に3Dプリンターが置かれるというシナリオは信じがたいと思うだろうか、ガートナーは2016年から2019年にかけて、毎年3Dプリンターの出荷数が倍増していくと予測している。その中では2500ドル以下の入門モデルは2019年までには40.7%のシェアを占めるようになるだろうと言われている。ガートナーはまた、3Dプリンティングが原因となって、海賊行為だけではなく業界の混乱も含めて、世界では毎年1000億ドル近くの知的所有権の損失が発生すると予測している。

3Dプリントがある未来に向けて、戦略を練るのは今だ

様々な業界が、これまでどのように新しいテクノロジーを扱ってきたかの事例から、多くのことを学ぶことが可能である。音楽業界では、Napsterは著作権にのっとった合法的独占権の利用へと辿り着いた。流通チャネルが変化し、コンピュータを持つ誰でもがダウンロードした曲を再生することができるようになって、著作権を強制するのは難しくなった。レコード会社が1つの侵害案件を訴えでも、またすぐにWhac-A-Moleのような別のものが飛び出してくる。 その結果、著作権の価値は急速に損なわれる。

しかし、これまで見てきたように、すべてのIPや、それが保護しているプロダクトの価値が下がるわけではない、いくつかのものは、より価値の大きなものになるだろう – そここそが現在の経営者たちが備えなければならない場所である。

3Dプリンティングで市場に影響を与える方法への準備には、必ずしも多大なコストがかかるわけではない。

3Dプリンティングテクノロジーがビジネスに与える影響にむけて、企業が積極的に計画できることには、沢山の方法がある。品質管理とサプライチェーンの保護に今投資することで、例えば製薬会社が、サプライチェーンが純正で、品質が保証されていて、顧客が安全な薬を手にすることを保証できるなら、安心料にコストが掛かっても、特許と市場シェアを守ることができる。これは、医療現場に届いたものが、違法な模造品ではなく、FDAが承認し品質が管理されたものであることに対する確証を求める顧客に訴求する。

3Dプリンティングで市場に影響を与える方法への準備には、必ずしも多大なコストがかかったり、意に沿わないものになったりすることはない。たとえば、家電や自動車のメーカーは、もしサードパーティーが3Dプリントされたより安価な交換部品を出せば、売上が減少するだろう。こうした可能性と戦う代わりに、メーカー自らが、サードパーティによる3Dプリンティングスペアパーツのビジネスモデルをうまく取り込んでしまえば良いのだ。この方法はなにも重工業だけに適用されるものではなく、製薬でも、あまり利益がでないと考えられているが故に現在製造されていない、いわゆる「オーファンドラッグ」のコストを下げることに使うことができる。

別の手段としては、メーカーはこうした課題を、特殊な材料を要求するデザインや3Dテクノロジーとは馴染まないデザインを採用することで回避することもできる。例えば、特定の方法で混合あるいは接合しなければならない材料と形状は、デジタル製造テクノロジーでは簡単に追従されない。しかしながら、金銭的なインセンティブが進化するテクノロジーと組み合わさると、こうしたタイプの延命策は短命であることを意識していなければならない。

3Dプリンティングの出現にも関わらず、私たちはまだ著作物のライセンスに基づく生産と流通が、合法的なビジネスとして機能し、知的所有権に敬意を払う世界に住んでいる。特許所有者は、製造権を合法的な3Dプリンティング企業にライセンスすることができる ‐ 例えばナイキ製品のための公式3Dプリンター、などだ ‐ ここでは認可を受けた装置だけが公式製品を製造することができる。このようにして、特許権者は収入を得て、3Dプリンティング業者は新しいマーケットを開拓し、買い手は合法的で品質管理の行われたプロダクトを手にすることができる。これはブランド品や低コストの無印品で行うことのできるオプションである。

デジタル技術がもたらすことができるすべての良い点とともに、特許およびその他の知的財産への大いなる挑戦もさし迫っている。主要産業の混乱もすぐに続くだろう。おそらく5年から10年にわたるこれからの変化の期間が、準備と転換のためにメーカーに残された唯一の時間なのだ。

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(翻訳:Sako)

非常に素早く色の濃淡が変わる調光ガラスをMITの科学者たちが発明、しかもスペクトルが広く低電力消費

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それらは、単なるビルディング用調光レンズの大きな集合ではない。まず第一に、MITの科学者チームが開拓したこの新しいガラス技術は、最新流行のサングラスなどよりもずっと速く明暗を変化させる。また光変色性の物質に比べて、不透明時のスペクトルがずっと広い。

Boeing 787 Dreamlinerで眩(まぶ)しさ防止のために使われている電気変色性の素材とも違う。やはり、こっちの方が速い。古い技術では、電子回路と、色の変化を作り出すためにイオンが必要なせいで、どうしても遅くなる。それに対して、この新しい技術では、海綿状の金属-有機物フレームワークを使用して、通電を速くしている。

新素材のスペクトルは、透明からほとんど黒までと広い。そのために、さまざまな化学物質の組み合わせを利用している。

化学研究のオンライン専門誌Chemの最新号に、この素材が紹介されている。用途は、Boeingの場合のような眩しさの減少、eインク的なディスプレイ、エアコン使用時には不透明にして太陽光を遮断し、エネルギー費用を下げる、などが考えられる。また電気変色性のソリューションと違ってこの素材では、不透明を維持するために電力を必要としない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

常時onでジェスチャーを検知する低電力消費のカメラをジョージア工科大学が開発…ピクセルの値ではなく加除だけを感知

Justinn Romberg and Arijit Raychowdury

ジョージア工科大学の研究者たちが、消費電力が非常に少なくて、常時onにしておけるカメラを開発した。このシステムは、offにされることのない不眠デバイス用として設計され、環境電力(ソーラーパワーなど)で動く。

超低消費電力を実現するためにこのカメラは、動きに気づいたら何でも撮影するのではなく、特定のパターンだけを検出する。このカメラはInternational Symposium on Low Power Electronics and Design(こんなの知ってた人いる?)でデビューし、人が前を横切ったなどの大きな動きだけを追うので、電池を浪費しない。

電気工学と計算機工学の教授Justin Rombergは曰く、“このカメラが実際に見ているのはピクセルの値ではない。むしろ、ピクセルがいろんな形で加えられる状況を検知するだけだから、標準モードで使えばその測度は劇的に小さい(数ピクセル)”。

このカメラはIntelがスポンサーした研究で開発され、監視カメラやロボット、未来の消費者電子製品などに用途が見込まれる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Google Play Storeでレビューを書くのに、これからはGoogle+のアカウントは要りません

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これからは、Google+のアカウントがない人でもGoogle Play Storeでレビューを書ける。

Googleは、本誌へのメールでこの件を確認した。この噂を最初に報じたのはAndroid Policeで、そこには読者からの情報もいくつか載っている。

今日(米国時間8/12)の時点では、まだ展開は完了していないようで、私が本のレビューを投稿しようとしたら、Google+のプロフィールの作成を要求された。でも、ほかの人たちはAndroidのスマートフォンから、Google+のアカウントがなくてもレビューを投稿できているようだ。

Googleは昨年あたりから、Google+と同社のその他の製品との関係を変えようとしている。今回の、‘レビューを誰でも書けるポリシー’も、その取り組みの一環だろう。その前には、Google+のアカウントがなくてもYouTubeのコメントを書ける、という大きな変化があった。

Googleのストリームと写真と共有担当VP Bradley Horowitzが、ブログ記事にこう書いている: “Googleにはいろんなものがあるから、一つのアカウントでどれにでもアクセスできた方が便利だ、という声をよく聞く。でもそのためのIDがGoogle+のプロフィールでなければならないのはおかしい、というご意見も、正しいと思う”。

Google+は今年で5年目を迎えるが、今では“歩く屍”と呼ばれている。Googleに8年務めてGoogle+の開発を主導したVic Gundotra が、いなくなったのが大きいね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

IBM PCが35歳の誕生日を迎えた…大統領選に出馬できる年齢だ

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ハッピーバースデー!、そこのおかしなおじさん、あなたのことですよ。あなたは35年前に、コンパクトなデザインと1565ドルという値札を身につけて、この世界にやってきた。当時は、IBMのいちばん安い“マイクロコンピューター”が9万ドルもした。それはコンピューターというより、乾燥機付き洗濯機に似ていた。

あなたが現れたとき、無関心な人もいた。IBMの社歴サイトには、同社の上級役員の一人が“誰が何のために家にコンピューターなんか置くんだよ?”と言った、とある。もう一人の役員は、“IBMにとって災いの元だ”、と言ったそうだ。

IBM 5150が初めてのホームコンピューターだったわけではない。Apple, Commodore, Atariなどの企業がすでに、初期の製品を出していた。それらを見た同社のシステムマネージャーWilliam C. Loweがプロトタイプを作り、そこからIBM PCが生まれた、と社歴は記している。

そのコンピューターは、“Chess”というコードネームで開発が進められた。そして、当時のIBMとしては異例にも、システムの主要部位を外部に求めた。中でも重要なのは、プロセッサーがIntelの4.77MHzの8088、そしてオペレーティングシステムはMicrosoftのQDOSだった。

1981年8月12日にニューヨークで行われた記者会見で、5150が披露された。記者たちはそれをすぐに、IBM PCと呼ぶようになった。その後の2年間で同機は、テクノロジーをホビイストからメインストリームへ移行させる動きの、主役を演じた。

それでは、ハッピーバースデー!、IBM PCさん。35歳になったら、アメリカの大統領に立候補できる。あなたなら、とっても役に立つリーダーになるだろうね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

北朝鮮、オリンピック選手にSamsungの無料スマートフォン受け取りを禁止(Radio Free Asia報道)

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オリンピックとは、人間の精神、卓越した身体、および国家の威信の証だ、そしてもちろん、みやげ物も。それはそれは山ほどのおみやげだ。考えても見てほしい、4年に一度のイベントのために全生涯をかけてトレーニングを積んできたのだから、すてきなお楽しみ袋をもらって帰るのは当然だろう。

Samsungは今年の大会で間違いなくその役目を果たした。夏季オリンピック公式スマートフォンスポンサーとして、同社はGalaxy S7 Edge端末のリオブランド版1万2500台を提供した。しかし、実際には誰もが輝ける最新Android端末を持ち帰れるわけではなさそうだ。

Radio Free Asia韓国支局の報道によると、北朝鮮オリンピック選手団にとっては気の毒なことに、同国当局は参加選手がこの無料スマートフォンを持ち帰ることを許していない。情報筋によると、同国役員は選手に贈られた端末31台を受け取ったが、意図された受取人には渡っていないという。

端末が渡されないのは選手のコミュニケーションを制限するためではないかと、記事は疑問を投げかけている

via CNET

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Spotifyの初オリジナルビデオは期待はずれな音楽史アニメ

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パッとしないオリジナルビデオ制作では、SpotifyがApple MusicやYouTubeに対抗することはできないだろう。ニューメディア企業ATTNとのコラボレーションで制作された3分間のビデオは、ウェブ上に溢れている無料動画となんら変わりないものだった。

「Deconstrucing」と名付けられたSpotify初となるこのビデオシリーズは、古臭い国歌や、LGBTラッパー、魔女のような振る舞いのアーティストなどについての短編アニメで構成されている。ハウスミュージックの誕生に関する最初のエピソードが、本日(米国時間8月11日)SpotifyアプリのVideos & Podcastsタブでプレミア上映され、今後さらにコンテンツが増えていく予定だ。以下がこの度発表されたビデオ。

5月にSpotifyはアプリ内のビデオコンテンツを充実させるため、12種類のオリジナルシリーズを制作予定だと発表した。以下が各シリーズの概要だ。

  • Rush Hour – バンに乗った2人のヒップホップアーティスト(伝説的なアーティストと新人)の話
  • Landmark – 音楽史を変えた出来事についてのドキュメンタリー
  • Drawn & Recorded – 音楽史のマイルストーンに関するアニメ(恐らくこれがDeconstructingになった)
  • Life in Short – 謎に包まれたアーティストの略歴紹介
  • Trading Playlists – 二人のセレブがお互いのSpotifyプレイリストを交換して音楽について教え合う
  • Singles – 様々なアーティストの代表曲をローファイなスタジオ録音音声で紹介
  • Rhymes & Misdemeanors – 音楽史に残る凶悪犯罪の検証
  • Ultimate/Ultimate – EDMアーティスト志望者のモキュメンタリー
  • Generations – 異なる世代のアーティストを組み合わせたパフォーマンス
  • Public Spaces – 歴史的建造物でのパフォーマンス
  • Flash Frame – Spotify版の音楽ビデオ
  • Focus On… – Spotifyのデータをもとに割り出された次世代の大型アーティストを追う

問題点として、オリジナルコンテンツはユニークで視聴者に見なければいけないと感じさせ、さらには話のネタにならない限りウケない。Game Of ThronesやHouse Of Cardsを思い浮かべてみてほしい。視聴者はこのような素晴らしい番組を制作者のプラットフォーム上でしか見ることが出来ないため、HBOやNetflixに利用料を払っているのだ。

しかし、Deconstructingの最初のエピソードは、どちらかというとアニメ化されたインフォグラフィックのようだった。ただの歴史を超越したドラマやストーリーがそこには感じられないのだ。ナレーションもわざとらしく媚をうっているように聞こえ、まるで法外な値段で制作されたスタートアップのローンチビデオと、バイラル化を狙いつつも内容の浅いBuzzFeedビデオの混ぜあわせのようにさえ感じる。

Spotify Deconstructed

実際のところ、元々Spotifyは3つのエピソードを公開する計画で、古い国歌がいかに差別・暴力的かという何ともつまらないエピソードからスタートしようとしていた。しかし昨夜急に計画が変更され、当初公開が予定されていた3つのエピソードには触れず、「How EDM Changed The World(電子音楽がどのように世界を変えたか)」という安っぽいビデオだけが公開されることとなった。どうやらSpotifyもビデオのクオリティに完全には満足していないようだ。

少なくとも来週中にはMetallicaに関するシリーズが公開される予定で、Napsterを廃業に追い込んだバンドという意味ではもっと面白いものを見ることができるかもしれない。さらにはApple Musicのビデオサービスとも対抗できるものになるだろう。なお、Apple Musicは最近権利を購入したCarpool Karaoke(米人気番組The Late Late Show with James Cordenの1コーナー)もビデオサービスの中に組み込む予定だ。

しかし、インターネット上の他のビデオを差し置いて、Spotifyの新しいビデオを見なければならない理由はどこにも見当たらない。つまり、この新たなサービスには、1億人のアクティブユーザーと3000万人の有料登録ユーザーを抱えるSpotifyのコミュニティに新たなユーザーを呼びこむ力がないのだ。Spotifyはビデオに手を出すのではなく、音楽という自らの強みを強化するような製品開発に集中すべきだ。新機能のRelease Raderプレイリストがその好例と言える。

Spotify Original Series

ビデオサービスへのリブランドは、未だビジネスモデルの安定化に取り組んでいるSpotifyにとってはとてつもなく大きな課題だ。ビデオ業界は既にYouTubeやNetflixなどの大手企業に支配されている上、既に忘れた人もいるかもしれないが、成功を左右する時期にVdioというサービスを立ち上げたことで軸がぶれてしまい廃業に追い込まれたRdioの例もある。

もしもSpotifyが音楽を聞いている人に視覚的なサービスを提供したいなら、再生されているアーティストの写真で構成されたスライドショーをループ再生すればいい。さらに、有名なバンドであれば個別にビジュアライザーを作ることもできるだろう。また、Geniusとのコラボで生まれたポップアップビデオ風の歌詞や曲の意味を表示する機能を強化してもいい。少なくともDeconstructingのような家でもつくれるようなアニメではなく、アーティストとのコネクションを利用して、Spotifyが今後他社とは違う映像を生み出していくことに期待したい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Alibabaが急成長、モバイル売上が初めてデスクトップを越える

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Alibabaが2016年度Q2に記録的な成長を遂げた。同時期に、中国の小売マーケットプレイスが急成長し、モバイルユーザーの売上が初めてデスクトップユーザーを上回ったのだ。

売上額は前年同期比で59%増となる322億元(48億ドル)に達し、これはアメリカ史上最大となった2014年9月のAlibabaのIPO以来最高となる成長率だ。

中国経済の減速が噂される中、Alibabaの中国ビジネスにはその影響がなかったようだ。同社の中国におけるマーケットプレイスでの売上は、前年同期比49%増の234億元(35億ドル)を記録している。このうち75%にあたる175億元(26億ドル)の売上はモバイルデバイス経由で発生しており、昨年度から119%の伸びを見せた。

Alibabaの中国でのマーケットプレイスは昨年の時点で既にモバイル売上がデスクトップを上回っていたが、この度モバイルユーザーの平均売上額がデスクトップユーザーを超え、ついに同社の成長源がビジネス全体でモバイルにシフトすることとなった。IPO以前、モバイルへの移行は投資家にとって大きな不安材料であったが、Alibabaの経営陣もこの移行スピードには驚きを隠せなかった。

売上額の増加は間違いなくAlibabaの経営陣にとってのハイライトである一方、昨年発生したAlibaba Pictures関連会社からの一過性収益の影響で、純利益は前年同期比で76%減少し71億4200万元(11億ドル)となった。その他の指標については、同時期に非GAAPベースの純利益が28%増、営業利益が71%増と素晴らしい実績を残している。

主要事業以外では、Alibabaはこれまでクラウドコンピューティングにそのリソースを費やしてきた。そしてAlicloudは、前年同期比で2倍以上となる12億元(1億8100万ドル)の売上と、57万7000人の有料会員数を記録している。

しかし、Alicloudのビジネスは未だ発展途上にある。同社の営業損失は4億39000万元(6600万ドル)へと改善しており、AlibabaのヴァイスプレジデントであるJoe Tsaiは、アナリストとの電話でAlicloudが「損益分岐点に向けて前進している」と語った。

Alibabaはこれまで財務諸表の分かりにくさを非難されており、証券取引員会は、Alibaba関連の物流企業Cainaoや、O2Oプラットフォームを運営するKoubei、ビデオプラットフォームのYouku Tudou、ペイメントプラットフォームのAnt Financialなどの会計処理に関する調査を行っている

それに応えるように、Alibabaは財務に関する情報量を増やし、デジタルメディアやクラウドコンピューティング、フードデリバリーなどの売上や損益を含む情報を初めて公開した。

今の時点では下記の表の通り赤字であるものの、Alibabaはこれらの関連会社が将来的にコアビジネスを支えるような存在になると信じている。

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さらにAlibabaは、新たに大きな賭けを新興市場で行おうとしている。

同社は今年に入ってから、Rocket Internetの投資先でもある東南アジアのEC企業Lazadaに対して10億ドルを投資し、インドではモバイルウォレットやEC事業を運営するPaytmや、EC界のユニコーンのSnapdealに出資している。

「私たちは、5億人もの現地顧客候補が存在する東南アジア市場でサービスを提供しようとしています。東南アジアは今後私たちにとって極めて重要な市場になってくるでしょう」とTsaiは語った。

さらにインドに「戦略上とても重要なアセットを配置することを決め、今後はモバイルと決済サービスがインド市場でのAlibabaにとって重要になってくると考えています」と彼は付け加えた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

続報:AdBlock PlusとFacebookの戦いは続く―相互に無効化の応酬

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昨日(米国時間8/11)、Adblock PlusはFaceookの広告ブロックを無効化するアップデートを回避して広告をブロックするアップデートをリリースした。しかしFacebookがTechCrunchに述べたところによれば、AdBlock Plusの回避策は「広告だけでなく友達の投稿や有益なページも削除してしまう不器用な仕様」だという。.Facebookの主張はこうだ。

問題の広告フィルター会社の新しい広告フィルターが広告をブロックするだけでなく、友達の投稿やページもブロックしてしまうことによってユーザーの体験を大きく損なっていることにわれわれは失望した。これはユーザーにとって望ましいことではないのでこの問題への対処を計画している。 広告ブロック・フィルターは洗練さを欠く製品だ。Facebookが広告表示設定のようなツールを提供してユーザーに広告の表示を委ねているのはこれが原因だ。

この「対処計画」はすぐに公開されるらしい〔アップデート参照〕。Facebookの事情に通じた情報源によれば、今日中、あるいは数時間後にもAdblock Plusの広告フィルターを再び無効化するアップデートが公開される。当初Adblock PlusがFacebookの広告をブロックするのに2日かかっていたのに比べるとFacebookに対応はその何分の一かの時間しかかからないようだ。

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アップデート:情報源によれば、FacebookはAdblock Plusの広告ブロックを無効化するアップデートの公開を始めた

アップデート2: 太平洋時間8月12日午前4時30分:Adblock Plusはさらに新しい回避策を公開したとツイートした。

アップデート3:太平洋時間8月12日午前10時05分:FacebookはAdblock Plusの新しい回避策を無効化したと発表。Adblock Plusはこれにもすぐに反撃するとブログ記事で宣言した。「イタチごっこ」が盛大に始まっているのは間違いない。

火曜日にFacebookはウェブの広告をHTMLコードの中に埋め込むことによって広告ブロックソフトのフィルターを回避するようにしたことを発表した。Facebookは広告ターゲティングにおけるユーザー側のオプトアウトをさらに強化し、広告ブロッカーが使われる最大の理由に対処すると同時に、ビジネスとユーザーを結びつけるという重要な機能を果たしていくとした。また広告によって成立しているウェブサービスから広告を奪うのは誤りであるとも指摘した。【略】

このイタチごっこでAdblock Plusは不利な状況にある。一部のプラットフォーム上ではユーザー側はフィルターをアップデートするかマニュアルで編集する必要がある。一日一回のアップデートでさえ遅すぎるかもしれない。FacebookはAdBlock Plusのフィルターを無効化するコードを一方的にリリースすることができるし、ユーザー側では何もする必要がない。つまりAdblock Plusのユーザーが新しいフィルターにアップデートしたときにはFacebookは一足先にそのフィルターを無効化するコードを実装ずみということがあり得るわけだ。

さらに重要な点は広告フィルターによってAdBlock Plus得る収入よりFacebookが失う収入のほうがはるかに大きいことだ。

しかし一方でFacebookはFTC〔連邦取引委員会〕の規定に従い、消費者を誤認させないため、広告に必ずSponsoredと表示しなければならない。このラベルはAdblock Plusがターゲットを特定するのに役立つ。

How Adblock Plus works

この戦いは広告ブロックというソフトウェアの正当性についての議論を再燃させた。広告ブロックを利用するユーザーの考えも多様だ。一部のユーザーは広告ブロックは広告テクノロジーの暴走をチェックし、プライバシーを保護するのに役立っていると感じている。単に広告を見たくない、あるいは広告が読み込まれる無駄な時間を省いてウェブ閲覧を高速化したいというユーザーも多いだろう。

逆にソーシャルメディアやオンライン・ニュース・サービスは広告ブロックに反発している。広告ブロックはメディアとそのコンテンツのクリエーターから正当な収入を奪うものだとしている。また「広告ブロックのデベロッパーは実のところユーザー体験の向上などは考えておらず、ある種のランサムウェアを開発しているだけだ。その証拠に料金と引き換えにフィルターを通過させ広告表示を可能にしているではないか」という主張もある。

オンライン広告テクノロジーは近年大幅に進歩した。広告ブロッカーは洗練を欠くフィルターであり、マルウェアやプライバシーを侵害する広告をブロックする一方で比較的無害なサービスの表示を妨害して収入の機会を奪っている。どちらの側も譲る気配はない。Facebookとクラウドソースされた広告ブロックのハッカーの戦いはまだまだ続くだろう。

画像: Bryce Durbin

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

文句なし!、GIFの最高傑作はこれだ!

slapstick_gif

今日のような、お天気の良い金曜日にふさわしいネタだね。

Vergeで見つけたこの迷作は、ぼくがこれまで見た中では、まさにサイコーのGIFかもしれない。インターネットに登場したものの中でも、最笑作品の一つだろう。本格的な喜劇を数秒に凝縮している、ということ以外、ほかに何も分からないが、昔々のテレビのスキットにとてもよく似ている。The VergeのJames Vincentが、詳しく書いている。

今週の金曜日ネタは、ほかに二つある。ここで取り上げる理由は互いに違うが、共通点はオリンピックだ〔どちらも画像はGIF〕。

最初のは、感動的なデータジャーナリズム。New York Timesからの140文字だ:

[水泳女子800メートルリレーでアメリカが金]

二つめは、インターネットで大人気の中国の女子水泳選手Fu Yuanhui。彼女はリオでもっとも幸せなアスリートだね:

良い金曜日を!

GIFを見つけてくれた@SimonNRickettsありがとう

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))