【コラム】もっと平等な社会をつくるためにテックイノベーターはこの3ステップを実行しよう

テクノロジーの分野は障がいのある人々にとって世界をより良く、よりアクセシブルな場所にする、イノベーションとコラボレーションのすばらしい事例で満ちている。

例えば補聴器によってかつては想像できなかったほどの音を多くの人々が知覚できるようになり、現在の次世代型補聴器はさらに臨場感があって効果が高くなっている。

手話を音声言語に翻訳する手袋を開発し、手話があまりできない人とリアルタイムで会話ができるようにしている科学者もいる。スマートフォンやビデオゲームといった日常的なテクノロジーもアクセシブルになり、テクノロジーのイノベーターたちにはもっと公平な社会をつくるためのインスピレーションと能力があることを証明している。

こうしたことはアクセシビリティを日々拡張する驚くべき技術革新のほんの一部だ。テクノロジーのアクセシビリティは、社会のつながり、職業の広がり、市民的関与に欠かせない。

だから私たちは歩みを止めることはできない。あらゆる人にとってのより良いテクノロジーを構築するために私たちができることを3つ紹介しよう。

コミュニティと関わりを持つ

プロダクトやサービスにはそれぞれ固有のアクセシビリティのソリューションが必要で、あるプロダクトを障がい者にとって使いやすくする方法を他のプロダクトに適用できるとは限らない。したがってテック企業はコミュニティと深く関わり、アクセシビリティの現在のペインポイントを見つけなくてはならない。

例えば障がい者にとって重要な課題であるウェブのアクセシビリティには、可能性のあるさまざまなソリューション、つまりテックイノベーターが評価し、選択し、実装しなくてはならないモデルがある。

コミュニティとの関わりは開発者に対して方向性を示すだけでなく、テックプラットフォームとそのユーザーとの間の結束を高め、プロダクトやサービスをコミュニティの人々に継続的に適応させていくことでアクセシビリティを最大化することができる。

また、コミュニティと関わって何が必要か、何が最も最適かを理解すれば、ウェブ開発者がいい加減な、あるいは無駄なソリューションを実装することを避けられる。

最も効果的な部分に集中し、ゴールを設定する

コミュニティとの関わりから得たインサイトをもとにして、最も効果を上げられる部分に集中しよう。最も切実なアクセシビリティの障壁を見きわめ、進捗の測定のために具体的なマイルストーンを決める。

デジタルアセットをもっとアクセシブルにしようとするテックイノベーターは、コンテンツクリエイターや開発者向けの内部的なゴールを設定し、既存の、あるいは開発中のデジタルコンテンツに戦略的な変更を加える必要があるかもしれない。

対象範囲や流れは企業によって異なるだろうが、最も効果を上げられる部分に集中し進捗を測定すればアクセシビリティのゴールを現実にすることにつながる。

リソースを惜しまない

アクセシビリティの向上は明らかにwin-winだ。より多くの人がデジタルプラットフォームやサービスに参加することにつながると同時に、テック企業にとってはユーザーの数やエンゲージメントのレベルが増す。

ただし前進するには投資が必要で、適切な計画がなければ全体としての成果は少なくなってしまうだろう。バックエンドのROIは極めて高いので、先行投資はユーザーベースに対するエンゲージ、コミット、強化のための頭金と考えよう。

デジタルのプロダクトは変化し進化するので、アクセシビリティの基準やベストプラクティスもそれに合わせていく必要がある。アクセシビリティの構築を一度限りのものと考え、長期的に継続可能な結果を提供できないようでは困る。そうではなく、常にコミュニティや利用者と関わっていこう。

テクノロジーは世界をもっと良くすることができる。それは、より多くの人がプラットフォームやサービスに参加できるようになったときに最も効果的に達成される。

編集部注:本記事の執筆者Ran Ronen(ラン・ロネン)氏は、Equally AIの創業者でCEO。

画像クレジット:Malte Mueller / Getty Images

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(文:Ran Ronen、翻訳:Kaori Koyama)

YouTubeが動画をより身近なものにするキャプション機能を多面的に充実

YouTubeが米国時間10月7日に、新しいオーディオ機能をいくつか発表したが、いくつかはすでに展開されており、残りはこれからの数カ月でローンチする。本日からはライブのストリームに英語の自動キャプションを付けることができ、ストリームのアクセシビリティが増す。これまでこの機能は、チャンネル登録者が1000人以上のクリエイターしか使えなかった。

YouTubeは今後数カ月で、これまでキャプションを付けている13の言語(オランダ語、英語、フランス語、ドイツ語、インドネシア語、イタリア語、日本語、韓国語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語、トルコ語、ベトナム語)すべてに、このライブの自動キャプションを付ける予定だ。

また同社は、動画に複数の言語の音声を付けて、国際的な視聴者に複数言語の音声を提供するとともに、目の不自由な人たちのための説明音声もテストしている。この機能は現在、少数のクリエイターが利用できるが、今後の四半期ではもっと広く提供していくつもりだ。

Androidではキャプションの自動翻訳を、サポートされている言語で展開する(iOSは2021年後半に)。この機能は現在のところデスクトップのみ。さらに、YouTubeはAndroidとiOSで音声書き起こしに対する検索ができるようになるよう計画している。また、2021年後半にYouTubeはモバイルデバイス上で、一部ユーザーにより書き起こしに対するキーワード検索をテストする予定だ。

YouTubeはYouTube Studioで、チャンネルの新しいパーミッションを開発中だ。それは、キャプションや字幕の制作をクリエイターが誰か信頼できる人に委託できる機能だ。この機能は前に「Subtitle Editor」(字幕編集機能)という名前で発表されたが、その際、展開は遅くなるという注記があった。現在も「開発中」だが、この機能には力が入っているため数カ月後にはアップデートがクリエイターたちに提供されるということだ。

同社はコミュニティのブログで「アクセシビリティの向上はYouTubeにとって最も優先すべきものであり、これらのアップデートでクリエイターがより広いオーディエンスに到達できることを期待しています」と述べている。

YouTubeは2010年に自動字幕起こし機能を導入し、それ以降、改良に努めてより広範な可用性を実現してきた。2018年にはYouTube Liveが自動字幕起こし機能になり、YouTubeは他の多くのプラットフォームと並んで、キャプションの改良でプラットフォームのアクセス性と包容性を高めてきた。他のプラットフォーム、たとえばTikTokは、2021年初めにビデオにオートキャプションを加え、Instagramはほぼ同じ時期にStoriesにキャプション機能を追加した

画像クレジット:Olly Curtis/Future/Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アクセシブルなソフトウェアデザインのためのハブ「Stark」がMacアプリのベータ版を開始

Stark(スターク)は現地時間9月28日、Macアプリ「Stark」のプライベートベータ版を立ち上げた。プロジェクトに関わる誰もが簡単にコラボできるようにする一方で、プロダクトをより包括的なものにするためのアクセシビリティの規則遵守を簡素化するものだ。企業はデザインファイルをStarkのツールにアップロードすると、Starkがアクセシビリティの問題を特定し、変更を提案する。

Starkは、作品をアクセスしやすく包括的なものにするデザイナー向けの簡単なソリューションがないことにCat Noone(キャット・ヌーン)氏と同氏のチームが気づいた2017年に創業された。いまや50万人超が、Adobe XD、Figma、Sketch、Google Chromeのようなアプリ向けのStarkの統合されたプラグインを使った。これは、ビジュアル素材を視覚障害者のためのアクセシビリティ基準に合うよう、チェックしたり提案したりする。

「まずプラグインで始めました。あなたのプロダクトで起こっている問題を表面化することで意識を高めるすばらしい方法であり続けています」とヌーン氏はTechCrunchに語った。「しかしプラグインは大規模に、あるいは誰もがプロダクトに関われるようにする方法でアクセシビリティの問題を解決しません」。

ただ、ヌーン氏はMacアプリ用のStarkが多くのデザインファイルにある抜本的な問題を簡単に解決できるようにすることで「アクセシビリティを高める」と話す。例えばTwitterのようなアプリがフォントを変更すると(つい最近変更し、アクセスしやすいデザインにおけるカスタマイゼーションの必要性について議論を呼んだ)、デザイナーはアプリ内の何百ものスクリーンの書体を根気強く変更しなければならない。しかしStarkはこのプロセスをかなり迅速化する。

関連記事:ウェブデザイン変更後のツイッターはアクセシビリティが不十分と専門家は指摘

Starkに表示される可能性のあるアクセシビリティに関する警告メッセージ(画像クレジット:Stark)

「Starkがしようとしているのは、問題が起こったときに、あなたが提案された変更を受け入れ、デザインファイルを開き、変更し、そのまま進めてシンクさせるということです」とヌーン氏はいう。「ですので、その時点で1つのスクリーンだけでなく、全デザインシステム、あらゆるスクリーンで並行して表示されます。それはすごいことです。というのも、あなたのデザイン開発時間を短縮するからです。そして我々の目標は、これがなぜ修正されたのかあなたに教えながら、規則遵守にかかる時間を抑制することです」。

Starkがシードで150万ドル(約1億6800万円)を調達した2020年以来、プロダクトは消費者レベル、企業レベルどちらでも機能するアクセスしやすいデザインのGrammarlyだとヌーン氏はいう。Starkはまだ黒字になっていないが、同社の既存顧客にはMicrosoft、Pfizer、Instagram、ESPNなどがいる。加えて、Starkはアクセスしやすいデザインや、ヌーン氏いわくインターネット上で最大だというアクセシビリティリソースに興味がある人のSlackでのコミュニティもホストしている。同社はユーザーがプロダクトを試してSlackに参加できる限定無料プランを提供しているが、既存の一連のツールを利用するには年60ドル(約6700円)かかる。一元化された請求書へのアクセスや複数メンバーによる管理を加えるカスタムプランの見積もりを依頼することもできる。

関連記事:インクルーシブデザインの制作に役立つツールを提供するStarkが約1.6億円を調達

StarkのMacウェブサイトのスクリーンショット(画像クレジット:Stark)

アクセシビリティはテック企業にとって重要なものだ。というのも、障がいを持つ人が自社のプロダクトを使えなければ、巨大な顧客ベースを失うからだ。しかし包括的であることが十分な動機付けでなくても(ため息)、お金はそうだろう。

関連記事:【コラム】アクセシビリティを最初からスタートアップのプロダクトと文化の一部にする

「特にこのところ、パンデミックによって多くの企業がデジタルの活用を増やしました。プロダクトをすべての潜在ユーザーにとってアクセスしやすいものにしていないテック企業がマーケットから排除され、思いがけない大きな機会を逃すようになっています」とヌーン氏は述べた。しかしStarkは古いデザインファイルをアクセシビリティ基準に沿うものに変えるのを簡単にしている。「Macアプリ向けのStarkは、あなたがコンサルタントを10人も20人も雇わなくてもいいようにします。なぜなら、プロダクトを構築している個人は教育を受けていて、そばに使えるツールがあるからです」。

差し当たり、Macアプリ向けStarkのプライベートベータ版はSketchで使えるが、ほどなくFigmaやAdobe XDのような他の人気デザインツールでも使えるようになる、とヌーン氏は話す。その後、プロジェクト管理ツールを統合することで、ユーザーはアプリ内でタスクを他の人に割り当てることができるようになる。プライベートベータ版を試したい人はウェブサイトでアクセスをStarkにリクエストできる。ベータ版は無料だが、正式展開するときには料金プランが発表される。

「かなり意見を主張するコミュニティとともにこれを構築する余裕がありました」とヌーン氏は話した。「プライベートベータ版ですが、エンジニアやデザイナーにとってもかなりメリットのあるものです」。

Starkのチームは8カ国からリモートで働く17人だ。

「チームのメンバーは世界中に散らばっています。多くの言語、さまざまな肌の色、さまざまなバックグランドを持っています。我々自身のとらえ方、世界を誘導する方法はそれぞれの中にある包括性であり、かなりマジックのようなものだと考えています」とヌーン氏は語った。StarkがVRやARのような新手のテクノロジーに受け入れられることを同氏は願っている。その一方で、文化によってアクセシビリティが異なるという問題も解決して欲しいと思っている。例えば英語で書体を読みやすくすることはアラビア語やタイ語で書くことに必ずしも当てはまるとは限らない。「我々は構築したプロダクトを反映する存在であり、思うにそれが口でいうだけでなく行動で示すことを極めて簡単にしています。というのも、我々は毎日共同で暮らしているからです」。

画像クレジット:Stark

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイクロソフトがSurface Adaptive Kit発表、障がいがある方向けにPCのアクセシビリティを物理的に向上

マイクロソフトがSurface Adaptive Kit発表、障がいがある方向けにPCのアクセシビリティを物理的に向上

Microsoft

マイクロソフトがSurface新製品イベントで発表した「8つの新デバイス」のひとつは、PCでもタブレットでもスマホでもなく、ペンやマウスでもなく、Surfaceなどに貼り付けて使い勝手を向上する「アダプティブキット」でした。

マイクロソフトがSurface Adaptive Kit発表、障がいがある方向けにPCのアクセシビリティを物理的に向上

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中身は触覚で手がかりになるバンプラベル(写真)、特定キーを分かりやすくするキーキャップラベル+アプリケータ、どのケーブルをどのポートに挿すか見やすくするポートラベル、SurfaceのキックスタンドやノートPCなどを開きやすくするオープナーサポート

マイクロソフトがSurface Adaptive Kit発表、障がいがある方向けにPCのアクセシビリティを物理的に向上

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キーキャップラベルはこれ。従来から様々な製品が市販されてきた「キートップに貼って特定キーを触覚で分かりやすくする」シールです。

こちらは色分けがない半透明のみ、かわりに○や\など指先で認識しやすい形状を数種類用意します。アプリケータはこのシールをぴったり貼りやすくあわせる補助具。

ただのシールなのでどのキーボードにも、あるいはどんな機器のキーにでも貼れますが、Surfaceアクセサリ扱いなのでサイズがちょうど良いこと、Fキー列などハーフサイズのキー用もあることが利点といえば利点。

マイクロソフトがSurface Adaptive Kit発表、障がいがある方向けにPCのアクセシビリティを物理的に向上

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ポートラベルはこちら。色分けのほか、こちらも触覚でわかる手がかりで数組が用意されています。デバイスを持ち上げて側面を覗いたり、ケーブルを間違った端子に挿そうとして困惑することを防ぐ効果。

マイクロソフトがSurface Adaptive Kit発表、障がいがある方向けにPCのアクセシビリティを物理的に向上

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オープナーサポートは、ノートPCの天板やSurfaceのキックスタンドなどを開きやすくするための粘着式フック。指を引っ掛けて開くものと、ストラップを結んで引いて開くものがあります。

あらゆるデバイスが薄くツルツルになってゆくなかで、わずかな窪みに指を引っ掛けて開くことを前提にする製品も増えましたが、誰でも簡単に使えるわけではありません。

Surface Adaptive Kit はマイクロソフトのデバイス部門アクセシビリティ ディレクター Dave Dameの指揮のもと、実際に様々な障碍を持つ人々や団体から意見を募り開発したプロダクト。

ひとつひとつはすでに売っているようなものですが、デバイスメーカーであるマイクロソフトが純正として用意することで、より多くの人が見つけやすく入手性が改善すること、他のツルツルなデバイスのメーカーにもこれくらいは用意して当然と追従するきっかけになる点ですばらしい取り組みです。

マイクロソフトがSurface Adaptive Kit発表、障がいがある方向けにPCのアクセシビリティを物理的に向上

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マイクロソフトのアクセシビリティへの取り組みといえば、足でも使える巨大ボタンを備えた Xbox Adaptive Controller は日本でも販売中です。

足でも使えるXbox Adaptiveコントローラ発表。拡張自在なアクセシビリティ製品

単にボタンや十字キーがでかい、床置き対応コントローラというわけではなく、各種のボタンや機能に対して3.5mmアナログ端子をずらりと用意して、市販のさまざまなデバイスを接続できるようにすることで、ユーザーそれぞれに異なるニーズに適応する点が特徴。

マイクロソフトによれば、視聴覚や運動などでさまざまな障碍をもった人は世界で10億人。またいまは無関係と思っていても、ほとんどの人はいずれ何らかの障碍を持つことになります (その前に死ななければ)。

マイクロソフトの最近のマントラ ” to empower every person and every organization on the planet to achieve more. ”、公式訳は「世界中のすべての人々とビジネスの持つ可能性を最大限に引き出すための支援をすること」が単なるお題目でないこと、「すべての人々」を額面通りのすべてに近づける取り組みがうかがえるプロダクトです。

Surface Adaptive Kit は国内で2022年前半に提供予定。

(Source:法人向け Surface アダプティブ キット – Microsoft Storeマイクロソフト アクセシビリティ ホームEngadget日本版より転載)

グーグルが顔のジェスチャーを利用したショートカットやスイッチでアシスティブ技術を強化

スマートフォンをもっとアクセシブルにすることは、常に大切な考えだ。Google(グーグル)の最新機能では、主に表情で周囲とコミュニケーションをとる人がすばやくアクションを実行したり操作したりすることができるようになる。同社のProject Activateアプリやカメラスイッチ設定を使うと、ユーザーはカスタムのフレーズを話したりスイッチインターフェイスで操作するといったタスクを顔のジェスチャーだけで実行できる。

Project Activateアプリやカメラスイッチ設定の新機能では、スマートフォンの前面カメラが使われる。前面カメラがリアルタイムで、微笑む、眉を上げる、口を開ける、左を見る、右を見る、上を見るの6種類の表情のいずれかを認識する。完全にデバイス上の処理で実行され、画像データは保存されず、一般に「顔認識」と考えられていることもしていない。ここで利用されている機械学習は、例えば眉を識別してカスタマイズ可能な一定のしきい値を超えたときに信号を送るといった機能に特化されている。

それぞれの表情に異なる動作を割り当てることができる。Androidはすでにジョイスティックや息を吹き込むチューブなどのアシスティブ技術を使って操作できるようになっているが、カメラスイッチはこうしたスイッチの互換性と統合されている。これにより周辺機器を何も使わずに操作できるようになり、ユーザーは選択を繰り返す、選択項目を確認する、戻るなどの操作にさまざまな顔のジェスチャーを使うことができる。

画像クレジット:Google

Project Activateアプリを使うと、フレーズを話すというような単独で完結するアクションと表情を紐づけることができる。障がいのある人の多くはさまざまな理由で介助者のサポートを必要とするが、介助者にはできないことがある。それは、介助者に話しかけることだ。だから眉を上げるとデバイスが「ねえ!」とか「お願いします」とか「ありがとう!」と言葉を発するように割り当てられるアプリは便利だ。

ジェスチャーを使ってオーディオファイルを再生したり、テキストメッセージを送信したり、あらかじめ決めておいた番号に電話をかけたりすることもできる。表情や機能を増やすのはこれからだが、言語についてもこれからだ。顔にはもちろん言語はないが、アプリや対応するドキュメントには言語がある。Project Activateアプリはまず英語圏の国を対象とし、そこから広げていく。一方のカメラスイッチの設定は最初から80言語に対応する。

Project Activateアプリとカメラスイッチ設定は同時に使用できないことを付記しておく。両方ともカメラへのアクセスと表情の識別が必要だからだ。したがって、ユーザーは操作をするための予備の方法を用意しておく必要がある。両方とも、ここ5年ほどで販売されたAndroidスマートフォンでかなりきちんと動作するはずだ。

最後に、視覚障がいのある人向けにラベルなどを読み上げるGoogleのLookoutアプリがアップデートされ、印刷物と同じように手書きの文字もスキャンして読めるようになる。付箋、店頭にある「釣りに行っています」の貼り紙、贈り主からのメッセージが書かれたグリーティングカードなどに便利だ。このアプリはこの1年間で利用者が大幅に増えて機能が強化されている(新たにユーロとインドのルピーの紙幣を識別できるようになることも成長を加速させるだろう)。

紹介した新機能はすべて今週中に無料で使えるようになる予定だ。

関連記事:グーグルの視覚障がい者向けAIアプリ「Lookout」で食品ラベルや長文のスキャンが可能に

画像クレジット:Google

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Kaori Koyama)

【コラム】パラリンピック選手は金メダルを獲得するが、私たちはウェブアクセシビリティで選手を失望させている

1972年のパラリンピックで初めて金メダルを獲得した後、私は水泳競技チームと一緒にお祝いの夕食に出かけた。世界的なアスリートであるチームメイトたちが、車いすに乗せられて、アクセスの悪いレストランの数段の階段を上っていくという逆説的な光景は、今でも忘れられない。当時は決して珍しいことではなかったが、その日のプールでの勝利とは対照的に、この瞬間は特に際立っていた。

つり器具を装着して階段をゆっくり上がりながら、私はこの状況を皮肉に思った。パラリンピックのチャンピオンである私たちは、何百万人もの人々にインスピレーションを与える存在だった。私たちは固定観念を打ち破り、障害者が成し遂げられることについての一般の認識を変えていたからだ。しかし、社会から称賛される一方で、私たちは社会からは受け入れてもらえなかったのだ。

一般的な商品やサービスを利用するためには、超人的な体力と身軽さを必要とした。物理的な世界に完全に参加しようとすると、ハードルが高く、障害があった。当時、パラリンピックスポーツを通じて障害者の権利を促進しようとしていたパラリンピックムーブメントにとって、まだまだやらなくてはいけないことが残っていたのは明らかだった。それどころか、まだ始まったばかりだったのだ。

その後、私が参加した4つのパラリンピック大会では、よりアクセシブルな都市への移行が徐々に見られるようになってきた。それには、パラリンピックムーブメントが大きく貢献している。世界中のテレビにさまざまな障害者が登場することで、平等なアクセスの必要性がスポットライトを浴びるようになったのだ。

1980年のパラリンピックでのJoseph Wengier(ジョセフ・ウェンギアー)氏とチームメイトたち。左から2番目がウェンギアー氏。(画像クレジット:Joseph Wengier)

また、パラリンピックは開催都市にも要求し、都市のインフラのアクセシビリティを意味のある永続的なものに改善することを求めた。今日、確かにまだまだ改善の余地はあるが、障害者はほとんどの問題を解決し、かつてないほど社会に参加できるようになった。

しかし、インターネットが私たちの日常生活の中でますます中心的な役割を果たすようになると、私たちがこれまで経験し、戦ってきた排他的な物事が、新たな形で再び姿を表すようになってきた。最近の調査では、世界のトップ100万のウェブサイトを調査したところ、97%以上のホームページにアクセシビリティの問題が見つかったという。

キーボード操作に対応していなかったり、スクリーンリーダーが正しく動作しないレストランのホームページでは、これらの技術に頼っている人が料理を注文できないことがある。これは、車イスでの入店ができないのと同じことだ。

新型コロナウイルス(COVID-19)が私たちの日常を変えた今、オンラインへの移行は加速している。より多くの企業がデジタル化を進めており、予約をするにも、食料品を買うにも、仕事に応募するにも、ウェブサイトが唯一の手段となっている。そのため、アクセシブルなウェブサイトの必要性はこれまで以上に高まっているのだ。これは、ちょっとした不便さや、新しい技術やサービスにアクセスできないというレベルの問題ではない。日常の基本的なニーズがオンラインに移行し、その過程でアクセスしにくくなっているのだ。このような状況を目の当たりにして、私は声を大にして自分の体験を伝えたいと思うようになった。

私たちがオンラインで東京でのお気に入りのアスリートのパフォーマンスのハイライトを見たり、ソーシャルメディアでアスリートを祝福したり、お気に入りのスポーツサイトでイベントの報道を読んだりするように、これらの企業が自分たちのウェブサイトをアクセシブルなものに変え、パラリンピックチャンピオンも同じことができるようにすることをみんなで要求しよう。

メダルを背景にパソコンに向かうウェンギアー氏の最近の画像。(画像クレジット:Joseph Wengier)

編集部注:本稿の執筆者Joseph Wengier(ジョセフ・ウェンジャー)氏は、パラリンピックに5回出場し、9個の金メダルを獲得した。現在は、アクセシビリティ技術を提供する企業UserWayのアンバサダーとして、よりインクルーシブなインターネットの発展を推進している。

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【コラム】アクセシビリティを最初からスタートアップのプロダクトと文化の一部にする
Googleが手話認識技術開発で協力、ゲーム感覚で手話を学びろう者への理解を深める「手話タウン」をプレイしてみた
Xboxとスペシャルオリンピックスが知的障がい者のためのeスポーツイベントを初開催
画像クレジット:Charly Triballeau / AFP / Getty Images

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(文:Joseph Wengier、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Googleが手話認識技術開発で協力、ゲーム感覚で手話を学びろう者への理解を深める「手話タウン」をプレイしてみた

9月23日は「手話言語の国際デー」だ。これは、手話言語(以下、手話)が音声の言語と対等であることを認め、ろう者の人権が保証されることを目的に、国際連合が2017年12月19日に決議したもの。手話について意識を新たにする日となる。

とはいえ、「手話はよくわからない」「やったことがない」「学んだものの試す機会がない」という人も少なくないだろう。

そのような人たちにぜひとも試してもらいたいのが手話学習オンラインゲーム「手話タウン」だ。

手話タウンとは?―日本財団が香港中文大学・関西学院大学・Googleの協力によって開発

手話タウンとは、公益事業をサポートする社会貢献財団「日本財団」が、香港中文大学、関西学院大学、Googleの協力によって開発したウェブブラウザー上でプレイできるゲーム。現在はベータ版だが、手話言語の国際デーに正式公開することを目指してテストや開発が進められている

香港中文大学はプロジェクト全体の日本財団との共同統括、手話言語学における学術的見地からの監修、手話データの収集、ろう者に関する知見の提供を、関西学院大学は日本手話の学習データ収集とろう者に関する知見の提供、Googleはプロジェクトのコンセプト立案、AIによる手話認識技術の研究開発をするといった役割を担う。日本財団は、手話・ろう者についての知見の提供ならびに開発に必要な資金の提供を行っている。

また手話タウンプロジェクトでは、2Dしか認識できない一般的なカメラでも立体的な手話の動きを、上半身、頭、顔、口も含めて認識できる機械学習モデルを開発。日本と香港で手話を日常的に使用しているろう者の手話映像データを収集し、学習させることで、手話学習者が正しく手話を表現できているかの判断を可能にしているという。基盤となっている手話認識技術はTensorFlowを活用し3つの機械学習モデル(PoseNet、Facemesh、ハンドトラッキング)を組み合わせており、ソースコードについてはオープンソースとして公開している。

ウェブカメラ、PCとウェブブラウザー、そして手話を学びたい心があればすぐに始められる

ゲームに必要なのは、ウェブカメラを搭載してネットに接続されているPCとウェブブラウザー、そして手話を学びたいという心だ。アカウントの登録も、課金も必要ない。また、あらかじめ手話を覚えておく必要もない。

手話タウンにAndroidおよびiOSのウェブブラウザーでアクセスしたところ、PC用ブラウザーを利用するようメッセージが表示された

手話タウンにAndroidおよびiOSのウェブブラウザーでアクセスしたところ、PC用ブラウザーを利用するようメッセージが表示された

プレイヤーは手話タウンと呼ばれる架空の町を旅行しながら、少しずつ手話のアイテムを集めていく。例えば、色や服飾小物、食べ物などだ。

学べる手話は、日本手話と香港手話のいずれか。小学生の頃に手話に親しんだ筆者が、ベータ版手話タウンに挑戦してみた。選んだ手話言語は日本語手話だ。

荷づくりからチェックインまで体験

手話タウンにアクセスしたら、まずは表示する言語を選ぼう。日本語、英語、中国語(繁体字)から選べる。

ついで、手話言語を日本語手話と香港手話のいずれかを選ぶ。

ゲームは、出発前の荷づくりからスタートする。アイテムをどんどん選んでいき、荷造りを完成させる。なお、始めると、2つのアイテムを示す「お手本動画」が流れる。どちらかを手話で表現することで、アイテムを「選んで」いける。

2つのお手本動画が同時に流れるので、最初は自分にとってわかりやすいものを選ぼう。「できた」という達成感が重要なのだ

正しく手話を表現できると「手話で表そうとしたのは……?○○?」と表示され、その手話が表すアイテムの“バッジ”を集められる。表現が不明瞭だと「ごめんなさい!どの手話単語か分かりませんでした。」と表示される。スキップすることも、やり直すことも可能だ。

正しく表現できると「手話で表そうとしたのは……?○○?」と表示される。意図したものであれば「はい」を選んで次へ進もう

「腕時計」「ハイヒール」をなかなか表現できず、心が折れそうになる場面も

ゲームは、アイテムのバッジを集めていくことで進んでいくが、途中で次の場面に移動することも可能。もっとも、挑戦中のステップを完成させたほうが達成感を味わえるのは言うまでもない。

荷づくりのステップで集められるアイテムは6つだが、何回もチャレンジすれば、覚えられる手話単語はその倍の12に増やせる

ゲーム内では、手話タウンにあるレストランで食事をし、ホテルにチェックインするところまで体験する。レストランではメイン料理名、食材、飲み物などの手話単語を、ホテルでは喫煙・禁煙室、現地払い、カード払いといった、実際に宿泊する際に必要になる手話単語を覚えられる。

ゲームが進むにつれ、表現が複雑になってくるのだが、何度もお手本動画を確認したり、カメラに向かって表現することでクリアできるようになる。

また、何度もプレイしているうちに、「なぜワインは『3』を表す指で表現するのだろう」「なぜレモンは……」などと疑問が浮かんでくることだろう。能動的に調べることで、「そういうことか」と謎が解け、もっと手話を学びたいと思うようになるかもしれない。

ろう者についてもっと知ることができる工夫も

手話タウンでは、手話単語だけでなく、ろう者の文化を学べる工夫もなされている。場面が進んだときに現れる白いキャラクターをクリックすると、目覚ましのアラームはどうしているのか、ろう者がいたらどのように声がけすればいいかといったプチ情報が表示され、ろう者への理解を深めるのに一役買っている。

白いキャラクターのうち、線が赤く点滅しているものをクリックしてプチ情報を表示できる

ノックの代わりに電気を点けたり消したりする、という目からうろこの情報

各場面でのプチ達成感が、手話を学びたいという意欲をかきたてる

まだベータ版ということもあり、「荷づくり」「食事」「宿泊」の3場面だけだが、各場面をコンプリートしたときに得られるプチ達成感が、手話を学びたいという意欲をかきたてる。

なお、手話は手だけでなく、顔の表情や上半身も使う。そのため上半身全体が収まるよう、カメラとの距離が必要になる。また、AIが表現した手話を認識しやすいよう、プレイするときには柄物より無地に近い服を選んだほうがよいだろう。さらに、手話を表現するときに、それが表す単語を口にすると、口の形も読み取れるため認識率がアップする。

手話タウンにチャレンジする人が増えることで、ろう者への理解が深まり、手話への抵抗感が少ない社会の醸成されることが期待したい。

Xboxとスペシャルオリンピックスが知的障がい者のためのeスポーツイベントを初開催

ゲーミング全般がアクセシビリティに配慮する方向にある中、eスポーツはあまりそうではない。一般のスポーツと同じく、そこは本質的に競争世界であり、ある意味で排他的だ。Xbox(エックスボックス)とSpecial Olympics(スペシャルオリンピックス)は、競争とインクルージョンを組み合わせた新たなイベントの共同開催された。

今週、スペシャルオリンピックスのアスリートたちは、Rocket League(ロケットリーグ)、Madden NFL 22(マッデンNFL 22)およびForza Motorsport 7(フォルツァ・モータースポーツ7)のトーナメントで競い合った。賞品は、名声とプライドに加えて、スペシャルオリンピックスのセレブサポーターの1人とプレイできることだ。バスケットボールNBAのスーパースターであるJayson Tatum(ジェイソン・テイタム)、アメリカンフットボールNFLのレジェンドであるJamaal Charles(ジャマール・チャールズ)、女子バスケットボールWNBAのスーパースターJewell Loyd(ジュエル・ロイド)、プロレスWWEのスーパースターDominik Mysterio(ドミニク・ミステリオ)とEmber Moon(エンバー・ムーン)というスーパースターたちだ。

「このトーナメントはeスポーツをよりアクセシブルにし、スペシャルオリンピックスのアスリートたちに新たな競争の場を与える重要な一歩です」とXbox Social Impact(エックスボックス・ソーシャル・インパクト)代表のJenn Panattoni(ジェン・パナトニ)氏が語る。「Xboxは、Xbox Adaptive ControllerやCopilot、音声テキスト変換など、数多くのアクセシビリティ機能とプロダクトに投資してきました。こうような継続した取り組みの目的は、プレイヤーが間違いなく歓迎されていると感じ、Xboxプラットフォームの一員になれることです」。

トーナメントは録画され、今週中に配信されるとともに米国時間9月18日土曜日の「セレブリティーショーケース」でハイライトが放映される。スケジュールはこちらの投稿で確認できるが、Xbox TwitchチャンネルSpecial Olympics YouTubeチャンネルをただ眺めるのもいいだろう。

関連記事:マイクロソフトがXboxやPC用ゲームのアクセシビリティをテストする開発者向けサービスを開始

私がこうしたイベントを取り上げたいのは、ゲーミング世界では長年アクセシビリティが二の次にされてきたからだが、今こうしてデベロッパーやパブリッシャー、パートナーたちの大きな行動によって状況が改善されようとしている。Microsoft(マイクロソフト)のXACがすばらしい例で、最新のゲーム、Ratchet & Clank(ラチェット&クランク)はビジュアル、オーディオ、難易度オプションの装備を一式備えている。eスポーツが多様性をもっと必要としている分野であることは間違いないが、参加しているプレイヤーたちは喜んで協力してきた。スペシャルオリンピックスのアスリートであるJose Moreno(ホゼ・モレノ)氏とColton Rice(コルトン・ライス)氏に思いを聞いてみた。

競技ゲームは前よりアクセシブルになってきたと思いますか?

ライス:競技ゲーミングは間違いなく以前よりアクセシブルになっています。ゲームがアクセシブルになるだけでなく、アクセシビリティによって障がいをもつ多くの人たち競技ゲームのプレイヤーになっています。知的障がいをもつ人たちは常に全力で戦おうとしています。私たちは他のみんながやっているのと同じことをやりたくて、時々そのためにちょっとした力添えが必要なだけです。

モレノ:競技ゲーミングはよりアクセシブルになっていると思います。Microsoftが知的障がいや身体障がいをもつ人たちの利用できる、つまりすべての人たちが利用できるビデオゲームコントローラーを売り出したからです。私は生まれながらのゲーマーなので、eスポーツにおけるアクセシビリティは革新的な出来事です。アクセシブルなゲーミングは私の子ども時代にはありませんでした。今はあらゆる能力の友だちとプレイできて誰もが参加できるのでずっと楽しくプレイしています。

スペシャルオリンピックスのアスリートであるコルトン・ライス氏(左)とホゼ・モリノ氏(右)(画像クレジット:Special Olympics<)

どのように変化を経験していますか?

モレノ:私が思うに、ビデオゲーム業界がより多くの知的障がい者を受け入れるほど、ビデオゲームコミュニティは、私たちが他の人と同じようにビデオゲームをプレイするのが大好きだということを知るようになります。そしてGaming for Inclusion(ゲーミング・フォー・インクルージョン)のようなイベントを通じて、私は競技に参加できるだけでなく、私を歓迎して仲間に入れてくれるゲーマーコミュニティの一員になれました。

ライス:知的障がいをもつ人たちは細部に注意を払うスキルをもっています。何かをすることに集中し、自分にできるベストになるまで練習します、それを楽しんでいる時には特に。そしてゲーミングはその1つです。障がいを持つ人達は学習に時間が必要なだけですが、情熱をもてるものに専念した時、成功するまでやめることがありません。

デベロッパーやパブリッシャーなどに期待することはなんですか?

モレノ:ビデオゲームやコンピューターゲーム全般のデベロッパーやメーカー、パブリッシャーには、ビデオゲームに関わる仕事に知的障がい者を増やしていほしい。知的障がいをもつ人たちはさまざまな役割を果たすことができて、ゲーミング体験を改善するユニークなものの見方を教えてくれます。パブリッシャーとデベロッパーは障がいをもつ人たちから新たな見識を得られます。たとえばストーリーラインに知的障がいをもつ人たちが登場したり、ゲームそのものに出てくることなどです。私たちはこのプロセスにぜひ参加したい。そしてゲーム業界のフォーカスグループに参加したり、クリエイターとして本格的な仕事につきたい知的障がいをもつ熱烈なゲーマーはたくさんいます。

ライス:これらのゲームを作っている企業は、誰もが楽しめる高品質なゲームを作ろうとしています。ゲームをもっとアクセシブルにするためにできることはまだたくさんあります。例えば知的障がいをもつゲーマーが新しいゲームのやり方を学ぶ時、説明が読みにくいとイライラします。何年もプレイしたゲームの新しいバージョンのプレイ方法を知るために何時間もかかることがあります。それは知的障がいをもつ人たちにプレイや競技をする能力がないという意味ではありません。身につけるためにもっと良いアクセシビリティツールが必要なだけなのです。

ゲーム会社がアクセシブルでインクルーシブなゲームを作りたければ、開発プロセスに知的障がいをもつゲーマーを参加させて「読みやすい説明」や初心者向け説明の作成やテスト、あるいはゲームのレベル間のナビゲーションをシンプルにする方法を見つける手助けをしてもらうことだ。ゲーミングはコミュニティを作って取り残されたと感じている人たちとつながることができる。アクセシビリティはあらゆる人たちが楽しむことを可能にする。


この競技やオンラインゲーミングのその他のイベントは、困難な数年の間、スペシャルオリンピックスコミュニティが繋がり続け、アクティブでいるために非常に重要だ。

「スペシャルオリンピックスはMicrosoftと長い間、パートナーシップを続けており、スペシャルオリンピックス活動のアスリートや家族に大きな価値を与えています」と同組織の最高情報・テクノロジー責任者であるPrianka Nandy(プリアンカ・ナンディー)氏は語る。「新型コロナウイルス(COVID-1)パンデミックの中、私たちの大きな心配事はアスリートたちの安全と健康です。彼らはウイルスによる有害あるいは致命的被害を受ける最も弱い立場にあります。パンデミックのために何千という恒例の対面イベントや競技が中止や延期に追い込まれました。これはアスリートたちがチームメイトやコーチや友人たちとつながったり、一緒にいる楽しさを体験するを失ったことを意味します。今も私たちの目標は、スペシャルオリンピックス活動の認知を向上し、私たちの驚くべきアスリートたちの成果と希望と夢を叶えるとともに、ゲーミング・コミュニティにおける知的障がいをもつ人たちに対する姿勢を変え、ゲーミングが誰にとっても楽しくインクルーシブになりうることを常に忘れないことです。

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画像クレジット:Microsoft / Special Olympics

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

【コラム】アクセシビリティを最初からスタートアップのプロダクトと文化の一部にする

アクセシビリティの世界は転換点を迎えている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で、あらゆる能力・特性の人々がタスクやショッピングをオンラインでするようになったからだ。

この1年間、企業が顧客とつながることのできる場所はデジタルの世界だけだった。Forresterの調査によれば、8割の企業がデジタルのアクセシビリティへの第一歩を踏み出している。

こうした変化が進む背景には、デジタルでのやりとりが増えていること以外に何があるのだろうか。Fortune 500の企業は、障がいのある人が世界の市場に10億人いることをついに認識し始めている。調査会社Return on Disabilityの「The Global Economics of Disability」によると、障がいのある人とその家族の可処分所得は13兆ドル(約1427兆4000億円)を超えるという。

ただしForresterの調査対象の企業のうち、アクセシブルなデジタルエクスペリエンスを構築することに完全にコミットしているのはわずか36%だ。

デジタルのアクセシビリティは何十年も前からあるが、企業は最近までその利点をとらえていなかった。最新の調査では、WebAIM Millionが100万のホームページを分析したところ、評価したウェブサイトの97.4%にアクセシビリティのエラーが見つかった。

このことはスタートアップを手がけるあなたにとってどんな意味があるだろうか?なぜあなたはこのことに関心を持つべきなのだろうか?それは、あなたの会社が競合よりも先行しアーリーアダプターであることの報酬を得るチャンスだからだ。

デジタルのアクセシビリティにはどんな利点があるか

正しく行動することからさらに先へ進んでアクセシブルなプロダクトや資産を作ることの利点に、企業は気づきつつある。まず、人々の寿命が伸びている。世界保健機関(WHO)によると、60歳以上の人口は5歳未満の子どもの人口を上回っている。しかも世界の60歳以上の人口は、2015年の9億人から2050年には20億人に達すると予測されている。

W3C Web Accessibility Initiativeでは高齢者向けのウェブアクセシビリティについて概要を示し、以下のように紹介している。

  • 61〜80歳の47%に聴覚の問題が発生する
  • 65〜74歳の16%は視覚が低下する
  • 70歳以上の20%に軽度な認知機能障害が発生する
  • 65歳以上の50%以上に関節炎が発生する

つまり、アクセシブルなデジタルプロダクトを作れば、ずっと幅広い対象者にリーチできる。対象者にはあなた自身や同僚、家族もいずれ含まれるだろう。誰もが生活のある時点において、状況によって、あるいは一時的だったり散発的に、機能が低下する状態になる。暗いところやうるさい場所へ行けば見たり聞いたりしづらくなる。ケガや病気で一時的にインターネットの使い方が変わることもある。関節炎、偏頭痛、めまいで痛みや不快感を感じ、デジタルデバイスやアプリ、ツールを操作する能力に影響することもある。

しかも、より多くの人に適したアクセシブルなプロダクトやウェブサイトを作ることを否定する人はいない。それにもかかわらず、アクセシビリティを備えることが原則であるという比較的普遍性のある発言をしても、簡単にそのニーズを説明し組織の大きな変革に周囲を巻き込めるわけではない。こうした変革が必要な理由とその進め方について、周囲の人々の認識を高め教育をするためにすべきことはたくさんある。

あなたには変革する理由がある。あなたの会社を変え、アクセシビリティを事業の重要な部分として統合するのに役立つヒントを5つお伝えしよう。

1. アクセシブルなエクスペリエンスの構築に適した人に参加してもらう

毎年発行される「State of Accessibility Report」の2回目のレポートによると、Alexa Top 100のウェブサイトのうち完全にアクセシブルなのものはわずか40%だ。ウェブエクスペリエンスを構築する際に、障がいのある人のニーズはしばしば見過ごされている。

設計する際に、障がいのある人はあなたのプロダクトやウェブ資産をどう使うかを理解することが重要だ。障がいのある人が目的の結果を得るにはどういうツールがあればいいのかも知りたいはずだ。これらは、適任者に参加してもらうことから始まる。

アクセシビリティの専門家に依頼して開発チームに助言をしてもらうことで、早い段階で潜在的な問題を特定し、デザインのアクセシビリティを最初から考慮し、より良いプロダクトを作ることができる。さらに障がい者を雇用すればプロダクトについてより深く理解できる。

2. アクセシビリティに情熱を持つデザイナーを雇用する

チームに助言や指導をするアクセシビリティの専門家に依頼するのは、スタートとしては良い。しかしアクセシビリティに熱心でない人がチームにいると、それが妨げとなってしまう恐れがある。新しく雇うデザイナーと面接をする際に、アクセシビリティについて質問してみよう。そうすればアクセシビリティに関する候補者の知識と情熱を測ることができるだろう。同時に、あなたの会社ではアクセシビリティを重視していると期待値を設定する。

採用の段階で検討し、新たに雇用した人がアクセシビリティとインクルージョンの文化に貢献できるようにすれば、大きな頭痛の種を減らせる。アクセシビリティは設計とUXの段階から始まる。チームがその段階で導入していなければ後から修正する必要があり、どうしてもプロジェクトは遅れて企業としてはコストを要する。最初からアクセシブルに作るよりも、後から修正する方がコストがかかる。

3. すべての人のためのアクセシビリティであることを忘れない

アクセシビリティに投資するかどうかを決める人は、どれぐらいの人がこの機能を使うのだろうかと考えがちだ。こうした疑問が出てくるのは、ビジネスの観点からすれば理解できる。アクセシビリティにはお金がかかることがあり、お金の使い方に責任を持ちたいと考えるのは当然のことだ。

しかしこの疑問はアクセシビリティにおける最大の誤解に基づいている。その誤解とは、アクセシビリティは視覚や聴覚に障がいがある人にのみメリットがあるというものだ。このように思われていることには、本当にがっかりする。障がいのある人の数をあまりにも過小評価しているし、社会における障がい者のあり方を最小化しているからだ。しかもアクセシビリティ機能は障がいがない人にとっても大いにメリットがあることが見落とされている。

障がいの程度はさまざまで、私たち誰もが遅かれ早かれ何らかの障がいを自覚する。ケガをして一時的に動きが制限され、銀行の用事や買い物といった基本的なタスクがオンラインでしかできないこともあるだろう。年齢とともに視覚や聴覚も変化し、オンラインを使う能力に影響を及ぼす。

アクセシビリティとはできるだけ多くの人を対象とする設計だということを理解すれば、投資する価値があるかどうかに関する議論の枠組みを変えることができる。このアプローチは明確なメッセージの発信となる。急速に増える母集団を無視する余裕のある企業はない、というメッセージだ。

こんなふうに考えてみよう。エレベーターか階段のどちらかを使うとしたら、あなたはどちらを使うだろうか。多くの人がエレベーターを使う。交差点では歩道のへりから車道にかけてスロープになっていて「カーブカット」と呼ばれている。あのスロープはもともと、車椅子で交差点を横断できるように作られたものだ。

しかし多くの人がこのスロープを使っている。ベビーカーを押す保護者、スーツケースを転がす旅行者、スケートボーダー、台車で荷物を運ぶ人。もともとアクセシビリティのために設計されたものが、当初のターゲットよりもずっと幅広い人たちの役に立っている。これがカーブカット効果だ。

4. デフォルトでアクセシブルな開発をしているエージェンシーを選ぶ

小規模のチームだったり社内でアクセシビリティの実践を拡大したりしている場合でも、エージェンシーの協力を求めるとアクセシビリティの実践を効果的に取り入れられることがある。連携を成功させるための秘訣は、アクセシビリティの実践に向けてあなたのチームの成長を支援するエージェンシーを選ぶことだ。

適切なエージェンシーを見つけるには、デフォルトでアクセシブルな開発をしているところを選ぶことが重要だ。あなたの会社の価値観を共有するエージェンシーと連携すれば、アクセシビリティを向上させるミッションにおける信頼できるパートナーとなる。当てずっぽうで進めたり、やり直したりすることもなくなる。障がいのあるユーザーのエクスペリエンスの成否を左右する細部を見落としてしまうデザイナーが多いので、こうした連携には大きな意味がある。

アクセシブルなエクスペリエンスの提供を得意とするエージェンシーと連携すれば、気づかずに放置してしまうエラーの減少につながり、オーディエンス全体に対して優れたエクスペリエンスを提供していると自信を持てる。

5. サプライチェーンにアクセシビリティを統合する

大企業や大きな組織では多くのステークホルダーが関わることがよくある。ベンダーからエージェンシー、フリーランス、社内スタッフなど、現在のビジネスは広範囲にわたり共同作業が多いものだ。このことはアイデアを交換する上では有用だが、関係者が多いためアクセシビリティは見失われがちになってしまう。

見失われてしまうことを避けるには、ビジネスの全段階でアクセシビリティに注目するサプライチェーンとして関係者の意識を合わせることが重要だ。全員が十分に関与すれば、アクセシブルでなく将来的に問題を引き起こしてしまうコンポーネントのリスクを避けられる。

スタートアップの強み

繰り返し発生する大きな課題は、現状を変える難しさだ。アクセシブルでないプロセスやプロダクトがいったん発生して組織の文化に根づいてしまうと、意味のある変化を起こすのは難しい。変化させたいと全員が思っているとしても、それまでのビジネスのやり方を変えるのは決して簡単ではない。

スタートアップの強みはここだ。スタートアップはアクセシブルでない荷物を長年背負っているわけではない。スタートアップのプロダクトにアクセシブルでないコードは書かれていない。アクセシブルでないことは、企業の文化に織り込まれていない。いろいろな意味でスタートアップは白紙であり、既存の同業者が試行してきたことから学ぶ必要がある。

スタートアップの創業者には、アクセシブルな組織をゼロから作るチャンスがある。アクセシビリティへの情熱を持ち、プロダクトやウェブ資産のためにアクセシブルなコードを書き、アクセシビリティを取り入れている外部企業のみをパートナーとして選び、障がいのある人々の権利を支持する、そのような多様な人材を雇用することにより、今から10年、20年、30年後まで変える必要のないアクセシブルファーストの文化を作ることができる。

ここまで述べてきた考えには共通点がある。それは文化だ。テック業界にいる多くの人が、アクセシビリティは仕事の根拠として重要で価値があると同意するだろうが、認識に大きな問題がある。

アクセシビリティは、要件から始まりマーケティングやセールスといったテック以外のチームまで、ソフトウェア開発のどの部分においても必要だ。サイロ化されたチームが扱うニッチな事柄では決してない。もし業界や社会がアクセシビリティは「全員の」仕事であると認識すれば、我々は疑問の余地なくアクセシビリティを優先する文化を作っていくだろう。

こうした文化を作れば「これをアクセシブルにする必要があるだろうか?」とは考えなくなる。そうではなく「どうすればこれをアクセシブルにできるだろう?」と考えるはずだ。これは障がいのある10億人の人々、そして今後障がい者となったり、オンラインやデジタルプロダクトを使う能力に影響を及ぼすような一時的あるいは散発的、状況的に不便な場面に置かれる人々の生活を明らかに変える、考え方の大きな転換だ。

アクセシビリティの支持は困難な闘いのように思えることがあるかもしれないが、難しいことではない。最も必要なのは教育と認識だ。

アクセシブルなプロダクトを誰のために作るか、その人たちにはなぜそのプロダクトが必要かを理解すれば、あなたの会社のどの部署の人たちからも受け入れられやすくなる。このような文化を作ることが、アクセシビリティへの長い探究の旅の第一歩だ。そして幸いなことに、ここから先はもっと楽になる。

編集部注:本記事の筆者のJoe Devon(ジョー・デボン)氏は、アクセシブルなエクスペリエンスを構築するデジタルエージェンシー「Diamond」の共同創業者。GAAD(Global Accessibility Awareness Day)の創設者の1人で、GAAD Foundationの代表を務める。

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画像クレジット:Larry Washburn / Getty Images

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(文:Joe Devon、翻訳:Kaori Koyama)

ウェブデザイン変更後のツイッターはアクセシビリティが不十分と専門家は指摘

米国時間8月12日、Twitterはウェブサイトとアプリのデザインを大幅に変更した。この変更は1月の新しいフォントの導入に続くもので、同社は今回の更新を「プラットフォームのアクセシビリティを向上させる」ためのものとしているが、アクセシビリティの専門家によると、これらの変更は的外れだという。

関連記事:ツイッターがウェブサイトとアプリのデザインを見やすく変更、新フォントも採用

最もわかりやすい変更点は、ツイートがTwitter独自の書体である「Chirp」で表示されるようになったことと、背景と文字のコントラストがより強調されたことだ。不要な仕切り線がなくなり、インターフェースもすっきりとした。弱視のユーザーにとって、コントラストの高いデザインではウェブサイトがより見やすくなるが、現在のコントラストレベルは高すぎて、負担になるユーザーもいる。プラットフォームのコントラストレベルは、障害者が利用しやすいウェブサイトの推奨事項を定めたウェブコンテンツアクセシビリティガイドライン(Web Content Accessibility Guidelines、WCAG)の最低基準をはるかに超えている。しかし、ウェブアクセシビリティは一律ではない。高コントラストのディスプレイを必要とするユーザーもいる一方で、慢性的な偏頭痛に悩むユーザーにはもっとマイルドな表示が必要かもしれない。失読症の人は、コントラストの低いテキストの方が速く読めるという研究結果もある。

デザインリサーチャーであり、The Disabled Listの創設メンバーでもあるAlex Haagaard(アレックス・ハーガード)氏は次のように話す。「アップデート後のTwitterで、すぐに目が痛くなり、30分後には緊張性の頭痛に襲われました」「慢性的な苦痛がいくつもあるので、苦痛を悪化させるようなものを使うことはできません。痛みがますますひどくなるからです」。

2020年まで、Twitterのアクセシビリティチームはボランティアベースで、同社の社員が既存の仕事に加えてアクセシビリティのプロジェクトを担当していた(TechCrunchの記事を参照のこと)。アクセシビリティを考慮しない音声ツイート機能のリリースから数カ月後の9月、Twitterは社内に2つのアクセシビリティ専門チームを導入した。しかし、専門家は、新機能を検討する際には、最初から障害者をデザインの決定に関与させることが必要だと強調する。

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「Twitterは、この状況を変えるために、アクセシビリティや障害者の視点を設計プロセスにもっと取り入れると言っていましたが、今回の結果を見ると十分な仕事をしていないようです」とハーガード氏。「研究や構想の段階で障害者コミュニティのメンバーをコンサルタントとして関与させ、全体を把握できるようにすれば、テストの際にもはや手遅れであるような根本的な問題が生じるのを防ぐことができます」。

TwitterはTechCrunchの取材に対し「プロセスの最初から全体を通じて、障害のある人のフィードバックを取り入れてきました。人によって好みやニーズが異なるため、今後もフィードバックを集めてプラットフォームがより使いやすいものになるように改善していきます。集まったフィードバックを参考に、私たちは取り組みを続けます」と述べる。

Twitterのアクセシビリティチームは、アップデート後にユーザーから報告された眼精疲労や偏頭痛などの問題を認識している。現地時間8月13日午後、同社は、ユーザーからのフィードバックを受けて、すべてのボタンのコントラストを変更し、「目に優しい」デザインに変更したとツイートした。

Adobeのインクルーシブデザイン担当であるMatt May(マット・メイ)氏は次のように話す。「デザインの作成者の発表と同時にアクセシビリティ団体がそれについて発言するのは良いことです。両者が協力していることを意味するからです。重要なのは、常に目を凝らし、枠組みから外れてしまっているグループを見つけ、システムの別の部分で彼らを取り込むことです」。

メイ氏は、このような派手な(目に優しくない)アップデートは必ず反発を招くと指摘するが、その一方で「Twitterは通常は目立たない重要なアクセシビリティの向上を行っている」と話す。例えばTwitterは最近、ユーザーが動画にSRTファイルをアップロードして字幕を追加できるようにした。また、Twitter Spacesはライブキャプションをサポートしたが、Clubhouseのような競合他社はまだこの基本的なアクセシビリティ機能を備えていない。

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これまでユーザーが利用しやすいようにカスタマイズ機能を提供してきたTwitterが、なぜ(今回のコントラストの高いディスプレイや新しいデフォルト書体の導入に)カスタマイズ機能を追加しなかったのかは疑問だ。現在、ユーザーはデフォルトのライトモード、ダークモード、ブラックモードを切り替えたり、デフォルトのフォントサイズを変えたり、ボタンやハイパーリンクの色をパープル、オレンジ、ピンクなどに変更したりすることができる。現地時間8月12日のアップデート以前にも、ユーザーはTwitterのアクセシビリティパネルでより高いコントラストのモードを有効にすることができた。しかし、コントラストを下げたり、フォントを変更したりすることはできず、専門家はこれをデザイン上の欠陥であると指摘する。初の独自書体「Chirp」では、「感情を伝えやすくする」ことを目指していたが、ユーザーは「Chirp」以前に使用されていた「Helvetica」よりも読みにくいと報告している。

マサチューセッツ工科大学の研究者であり、WCAG基準の編集者、World Wide Web Consortium(ワールドワイド・ウェブコンソーシアム)のアクセシビリティ教育およびアウトリーチリーダーでもあるShawn Lawton Henry(ショーン・ロートン・ヘンリー)氏は「ウェブサイトは、ユーザーがフォントやコントラストレベルなどを切り替えられるカスタマイズオプションを備える必要がある」という。現在のWCAGの推奨事項にはこの件は含まれていないが、同氏は「今後のガイドラインの更新では、このようなオプションの設定が推奨されるようになる」と話す。

「主な問題は、デフォルトのコントラストがWCAG基準を満たし、ユーザーがそれを変更できるようにすることです。難しいことではありませんよね?」「デフォルトのフォントがあったとしても、それをカスタマイズできるようにする必要があります。(デフォルトのフォントが)一般的に最も読みやすいフォントであったとしても、個人差があります。変更できるようにすることが重要です」とヘンリー氏。

Twitterの広報担当者は、書体やコントラストレベルを変更するオプションに関する質問に対し「今すぐ共有できる具体的な計画はありませんが、私たちは常に使いやすさを向上させる方法を検討し、フィードバックに耳を傾けています」と回答する。

ハーガード氏は「Twitterがこの件をアクセシビリティの問題として捉えていることは残念ですが、これがブランドアイデンティティの確立につながることは明らかです」と話す。

CSS(スタイルシート)を使ってウェブサイトの設定を変更するユーザーもいるが、ヘンリー氏がWorld Wide Web Consortiumのために行った調査では、ウェブブラウザや電子書籍リーダーでは、ユーザーが設定をもっと簡単にカスタマイズできる機能を提供すべきと報告されている。CSSを書けるほどテクノロジーに精通しているユーザーは限られるし、アプリごとのアクセシビリティ設定を切り替える方が簡単なのだ。前例もある。Discordは6月、アクセシビリティの設定に彩度のスライダーを追加した。

「ウェブのメリットは、紙ではないこと、そしてそれを変えることができる、ということです」(ヘンリ画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

ツイッターの新UIに「目が疲れる・頭が痛くなる」などの苦情多数、ボタンの表示コントラストを再調整する事態に

ツイッターの新UIに「目が疲れる」「頭が痛くなる」など苦情が殺到し、ボタンの表示コントラストを再調整と発表

Twitter

数日前、Twitterはウェブ版やスマホアプリのUIを「Chirp」(チャープ)と称する新フォントと高コントラストなバージョンにアップデートし「利用しやすく、ユニークで、会話に集中できるようになる」とその効能を自慢げに述べていました。ところが、このアップデートを誰もが歓迎したわけではなかったようで、新しいUIになった直後からユーザーからは目が疲れる、頭が痛くなったなどの苦情が多数寄せられる事態になったため、再び調整して目に優しいものにすることを発表しました。

UIの主な変更点は、白背景の場合ならボタンの色を黒基調とすることで高コントラスト化、視認性を高めたと主張されるものでした。しかし、比較的目の敏感な人にとっては、これがかえって仇になってしまったようです。たとえばフォローするボタンは、従来ならまだフォローしていないアカウントが白色で表示され、すでにフォローしているアカウントなら黒く表示されていたのが、突然反対の表示になったことでユーザーに混乱を引き起こしました。

また、新しく採用したフォントChirpについても、あるユーザーは新しいフォントに代わってから「文字が波打って見える」と述べ、またあるユーザーは「頭が痛くなるためしばらく見るとイライラして目を閉じてしまう」と報告しました。そのため「Windowsユーザー向けのChirpフォントの問題を特定し、積極的に修正に取り組んでいる」とチームは返答しています。

Twitterはこのフォントの導入について「Chirpフォントをテストした際、慣れるまでに少し時間がかかるものの、全体的にはこの変更が気に入られることがわかった」と述べていました。しかし、慣れれば最終的には気に入るはずだと言われても、眺めるだけで(慣れるまで)苦痛なSNSなど誰も望んだりはしないはず。Twitterがどれぐらいの人数を対象にテストをしたのか、本当にそれほど良い評価があったのかも気になるところです。

Twitterは今回の変更に対するネガティブな意見が多かったことや不評だったことに関してTechCrunchに「最初からずっと、障害のある方々からのフィードバックを求めていた」と説明しています。しかし、障害のある人たちのために健常な人のことを忘れてしまっては改善とはなり得ません。そこはTwitterもわかったのか、「人々にはさまざまな好みやニーズがあり、今後もこのフォントに関するフィードバックに耳を傾け、改善を続けていく」としています。

(Source:Twitter。Via CNETEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:アクセシビリティ(用語)アプリ / モバイルアプリ(用語)SNS / ソーシャル・ネットワーキング・サービス(用語)Twitter / ツイッター(企業)

Twitterが音声ツイートに自動文字起こし機能追加、社内にアクセシビリティ専門チームを用意し取り組む

Twitterが音声ツイートに自動文字起こし機能追加、社内にアクセシビリティ専門チームを用意し取り組む

Anadolu Agency via Getty Images

Twitter社は、音声ツイートに自動文字起こし機能を追加したことを発表しました。2020年6月にiOS版アプリに導入された音声ツイート機能ですが、ようやくアクセシビリティ(心身の機能に制約ある人でも、等しくアクセスできて利用しやすくすること)に配慮されたかっこうです。

記事執筆時点では、サポートされている言語は英語、日本語、スペイン語、ポルトガル語、トルコ語、アラビア語、ヒンディー語、フランス語、インドネシア語、韓国語、イタリア語となっています。

これらの言語でしゃべった音声は、キャプション(文字起こし)が自動生成されるようになっています。ただしTwitter社いわく、キャプションの生成にはデバイスの言語設定を使うため、その設定としゃべる言語が食い違っている場合は正確に動作しないとのことです。

文字起こしを見るには、音声ツイートの右上にある「CC」アイコンをクリックまたはタップします。しかしTwitterがテックメディアThe Vergeに語ったところによると、文字起こしは新しめの音声ツイートのみに表示され、古いツイートには表示されないそうです。

音声ツイートが開始された直後、Twitter社は文字起こし機能がないことに対してアクセシビリティ擁護団体から批判を受けていました。が、当時Twitter社内にはアクセシビリティ専門チームがなく、有志の社員がその仕事をしていることが明らかに。その後9月に、アクセシビリティに特化したチームを結成したことが発表されています。

ちなみにTwitter社は、音声チャット「スペース」では文字起こし機能を提供済みです。Twitterは文字ベースゆえに身体的な条件を超えて様々な人々が交流する場となっていますが、それだけにアクセシビリティが強く求められているのかもしれません。

(Source:Twitter Japan。Via The VergeEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:アクセシビリティ(用語)インクルージョン(用語)ダイバーシティ / 多様性(用語)Twitter / ツイッター(企業)

視覚障がい者にとってのAIとアクセシビリティの未来を探るイベント「Sight Tech Global」が2021年も開催

黒い背景の上に、目の虹彩を描いたコンピュータグラフィックス。大きい文字で2021年のSight Tech Global が12月1日と2日に開催されると書かれている

2020年12月に第1回のSight Tech Globalが開催されてから間もなく、AppleとMicrosoftがスマートフォンの注目すべき新機能を発表した。ユーザーがスマートフォンのカメラを向けて「周囲の説明」をリクエストすると、即座にクラウドベースのコンピュータビジョンAIが周囲を判断し機械音声で情報を読み上げる。見える人にとっては「部屋に椅子が3つとテーブルが1つある」ことがわかっても大したことではないと思うかもしれないが、視覚障がい者にとってはこの新しい機能はアクセシビリティのテクノロジーに関して画期的だった。手頃な価格で、持ち運ぶことができ、ほぼ汎用と言えるデバイスが、あらゆる人の「目」の代わりになる可能性があるのだ。

2021年12月1日と2日に開催される第2回のSight Tech Globalイベントでは、周囲を説明するようなテクノロジーもプログラムに含まれるだろう。このイベントへの参加は無料で、スポンサーの支援を受け、バーチャルで全世界を対象に開催される。世界トップクラスの技術者、研究者、支援者、起業家が多数集い、AIを中心とする急速なテクノロジーの進化が視覚障がい者のアクセシビリティをいかに変えていくか(良い方にも難しい方にも)を論じる。

無料の事前登録がすでに始まっている。

Sight Tech Globalの根底にあるのは難しい問題だ。高度に進化したAIベースのテクノロジーは、視覚障がい者がすぐに使える魅力的で手頃な価格の製品になるのだろうか。例を挙げると、5万ドル(約550万円)の箱型のデスクトップデバイス「Kurzweil reading machine」(カーツワイルの読み上げマシン)から、スマートフォンでテキストを「読める」無料アプリを視覚障がい者が普通に使うようになるまでにおよそ40年かかった。この分野に携わる人なら誰もがいうように、テクノロジーを視覚障がい者にとって日常的に役立つ手頃の価格のツールにすることが、40年前と比べて簡単になったわけではない。

2020年のSight Tech Globalには、MicrosoftのSaqib Shaikh(サーキブ・シャイフ)氏、AmazonのJosh Miele(ジョシュ・ミーレ)氏、AppleのChris Fleizach(クリス・フライザック)氏、OrcamのAmnon Shashua(アムノン・シャシュア)氏、人権問題を専門とする弁護士のHaben Girma(ハーベン・ギルマ)氏、作家で大学教授のSara Hendren(サラ・ヘンドレン)氏、研究者で大学教授のDanna Gurari(ダナ・グラリ)氏など、アクセシビリティ関連テクノロジーのさまざまなジャンルから最高の講演者が多数集まった。さらに、Perkins Access、Salesforce、APH、Humanwareなどが開催した分科会も多数の参加者を集めた。

2020年12月のイベントは無料でバーチャルで極めてアクセシブルであったため、70カ国から4000人以上が参加した。全セッション(ビデオと字幕)を2020年のアジェンダから、またはYouTubeで現在も視聴できる。参加者アンケートでは、プログラムが5点満点で4.7点、アクセシビリティは5点満点で4.6点の評価を得た。

関連記事:視覚障がい者がバーチャルイベントに参加することを想像し、あなたが主催する次のイベントでその想像を実践しよう

登録すると、ボランティアチームからアジェンダの最新情報をお伝えする他、参加者数限定の分科会に申し込むチャンスもある。ぜひ今すぐご登録いただきたい

プログラムのアイデアをお持ちの方、特にテクノロジー系プロダクトに関わっている起業家、投資家、研究者のみなさんからのご連絡をお待ちしている。プログラム委員会のメンバーはBenetech / TechMattersのJim Fruchterman(ジム・フルヒターマン)氏、Verizon MediaのLarry Goldberg(ラリー・ゴールドバーグ)氏、Facebookの Matt King(マット・キング)氏、カリフォルニア大学サンタクルーズ校教授のRoberto Manduchi(ロベルト・マンドゥチ)氏、Be My EyesのWill Butler(ウィル・バトラー)氏だ。連絡先は、Info@sighttechglobal.com

スポンサーも募集している。2021年のスポンサーとしてすでにGoogle、TechCrunch、Verizon Mediaが決まり、他にも2020年のスポンサーのほとんどが今回も支援する意向で、たいへんうれしく思っている。個人の方からの寄付もぜひお願いしたい。詳しくはこちらをご覧になるか、sponsor@sighttechglobal.comまでお問い合わせいただきたい。

サンフランシスコのベイエリアで75年にわたって人々を支援している 501(c)(3)団体(非営利公益法人)のVista Center for the Blind and Visually Impairedが、Sight Tech Globalを設立した。VistaのエグゼクティブディレクターであるKarae Lisle(カレー・ライル)氏がこのイベントの実行委員長だ。イベントに対する寄付とスポンサーシップはすべてVistaの収益となる。2020年にはSight Tech Globalの収益の92%がVista Centerに対する支援となり、多くの視覚障がい者がベイエリアでより良い生活をするための活動に使われている。

12月にSight Tech Globalでお会いしましょう!

カテゴリー:イベント情報
タグ:アクセシビリティSight Tech Global

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(文:Ned Desmond、翻訳:Kaori Koyama)

デジタル障害者手帳「ミライロID」で障害者割引チケットのオンライ購入が可能に、第1号としてガンバ大阪が導入

デジタル障害者手帳「ミライロID」で障害者割引チケットのオンライ購入が可能に、第1号としてガンバ大阪が導入開始

ミライロは6月28日、2033事業者(2021年5月31日時点)が対応するデジタル障害者手帳アプリ「ミライロID」(Android版iOS版)で障害者割引チケットをオンライン購入できる「ミライロチケット」サービスの提供開始を発表した。

これまで、障害者割引を受けようとすると、チケット販売窓口で手帳を提示する必要があった。それには時間がかかり、新型コロナなどの感染リスクも高まる。なにより、オンライン購入ができないという不便さがあった。日本政府は、2021年6月18日「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定し、「障害者の負担軽減や均等な機会の提供のため、オンラインによる施設等の障害者割引入場券の予約・購入等への対応について、民間事業者等に対して要請を行う」とした。これを受けてミライロは、「ミライロチケット」の提供に至ったという。

ミライロIDに障害者手帳を登録している人なら、クレジットカードで障害者割引チケットが購入できる。イベント会場入場時は、スマートフォンの画面にチケットを係員に表示して、「入場確認」アイコンをタップするだけでよい。第1号として、7月11日からガンバ大阪が「ミライロチケット」の対応を開始し、「ミライロID」で観戦チケットが買えるようになる。

ジタル障害者手帳「ミライロID」で障害者割引チケットのオンライ購入が可能に、第1号としてガンバ大阪が導入開始

なおミライロでは、「障害者」を「障がい者」とは表記しない方針をとっている。コンピューターの画面読み上げでは「さわりがいしゃ」と読まれてしまうことがあるためだ。「障害は人ではなく環境にある」との考えから、「漢字の表記のみにとらわれず、社会における『障害』と向き合っていくことを目指します」とのことだ。

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ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号「Ashirase」が5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度に製品化

靴に装着した「あしらせ」とスマートフォンアプリ

本田技研工業(Honda)の新事業創出プログラム「IGINITION」(イグニッション)発第1号スタートアップ企業「Ashirase」(アシラセ)は6月11日、シードラウンドにおいて、5000万円の資金調達を発表した。引受先は、Hondaおよびリアルテックファンド。調達した資金により、視覚障がい者の方に実際の生活で利用可能かつ最終仕様に近い試作を2021年度に製作することを目的に、靴装着型IoTデバイスおよびナビゲーションアプリを開発、2021年中に実証試験を実施する。またその結果を活用し、2022年度中の製品化を目指す。

Ashiraseが開発する「あしらせ」は、音声入力や案内を行うスマートフォンアプリと、靴の中に取り付ける立体型のモーションセンサー付き振動デバイスで構成された、視覚障がい者向け単独歩行支援ナビゲーションシステム。

ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号「Ashirase」が5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度に製品化

「あしらせ」の振動デバイス

なおこのデバイスは、本体には柔らかく、形状を保てる素材を採用し、靴の中に入れても違和感が少ないという。装着したまま靴を脱ぎ履きできるため、付け忘れの心配もないそうだ。また充電はマグネットでの設置方式を採用しており、1回2時間の充電で1週間程度の使用が可能。

あしらせでは、GNSS測位情報と、ユーザーの足元の動作データから、視覚障がい者向けの誘導情報を生成。アプリで移動ルートを設定すると、白杖を持つ手や周囲の音を聞く耳を邪魔しないよう、靴の中に取り付けたデバイスが振動する形でナビゲーションを実施。直進時は足の前方の振動子が振動、右左折地点が近づくと右側あるいは左側の振動子が振動して通知する。進行方向を直感的に理解できるため、ルートを常に気にする必要がなくなり、より安全に、気持ちに余裕を持って歩行できるようになるとしている。

ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号「Ashirase」が5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度に製品化

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ロービジョンを含めた日本の視覚障がい者数は、国内164万人(【日本眼科医会研究班報告 2006~2008】日本における視覚障害の社会的コスト)、アメリカや欧州を含めた先進国全体では、1,200万人にのぼると推定されているという。一方、盲導犬は国内1000頭程度しか存在しないそうだ。また、ガイドヘルパーは自治体ごとに利用制限が設けられているとともに、歩行支援では腕を掴むなど必ず密になることから、コロナ禍の影響でヘルパーを辞める方が増えているという。

こうした背景から、視覚障がい者の方は単独で歩行するケースが増えているとされるものの、単独歩行には様々な課題がある。Ashiraseは、その中でも「歩行が出来ない、大変な思いをすることで、『外出が怖い』といった心理的課題が発生」「安全確認とルート確認に追われながら歩いている」「歩行時は聴覚に頼ることが多いため、音声ナビなどを使う聴覚を邪魔され、不安を感じたり危険に遭遇したりする」の3点に注目したそうだ。

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Ashiraseは、「あしらせ」により視覚障がい者が自分自身で安全を担保しつつ余裕を持って歩けることが外出したいと思える気持ちや達成感の後押しとなり、ひいては自立につながると考えているそうだ。

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【コラム】アクセシブルなゲーミングの未来を創る

編集注:本稿の著者Williesha Morris(ウィリーシャ・モリス)氏は10年以上のキャリアを持つ、フリーランスのジャーナリスト。執筆していないときは、本を読んだり、ビデオゲームをしたり、マーベル・シネマティック・ユニバースについてしゃべったりしている。

ーーー

2011年、プロダクト開発者Fred Davison(フレッド・デイヴィソン)氏は、発明家のKen Yankelevitz(ケン・ヤンケレヴィッツ)氏と同氏が開発した四肢麻痺患者向けのビデオゲームコントローラー「QuadControl」に関する記事を読んだ。当時、ヤンケレヴィッツ氏はリタイアを目前にしていた。デイヴィソン氏はゲーマーではなかったが、母親が進行性の神経変性疾患であるALSにかかっていたことから、ヤンケレヴィッツ氏が手を離そうとしていたことに意識が向いたという。

2014年に発売されたデイヴィソン氏のQuadStickは、幅広い業界で関心を集めていたヤンケレヴィッツ氏のコントローラーの最新モデルだ。

「QuadStickは私がこれまで携わった中で最もやりがいのあるものでした」とデイヴィソン氏はTechCrunchに語った。「(障害を持つゲーマーたちが)こうしたゲームに参加できることが何を意味するのかについて、たくさんのフィードバックを得ています」。

土台作り

デンバーのCraig Hospital(クレイグ病院)で作業療法士を務めるErin Muston-Firsch(エリン・マスタン・ファーシュ)氏は、QuadStickのようなアダプティブゲーミングのツールは同病院のセラピーチームに革命をもたらすものだったと語る。

同氏は6年前、脊髄損傷で来院した大学生のためのリハビリ療法を考案した。その青年はテレビゲームをするのが好きだったが、けがのために手が使えなくなっていたという。そこで、リハビリ療法にデイヴィソンの発明が取り入れられ、患者はWorld of Warcraft and Destinyをプレイできるようになった。

QuadStick

Jackson “Pitbull” Reece(ジャクソン・「ピットブル」・リース)氏は、QuadStickとXAC(Xboxアダプティブコントローラー)の操作に口を使うことで有名なFacebookのストリーマーだ。XACはMicrosoft(マイクロソフト)ソフトが障害者向けに設計したコントローラーで、ビデオゲームのユーザーインプットを容易にする。

リース氏は2007年のオートバイ事故で脚の機能を失い、その後、感染症のために手足の切断を余儀なくされた。同氏は、スポーツビデオゲームによって満たされていた健全な頃の生活が思い出されると語っている。ゲーミングコミュニティの一員であることは、自分のメンタルヘルスの重要な部分だという。

幸いなことに、支援技術のコミュニティ間では、ゲーマー向けのハードウェアを作ることに関して競争ではなくコラボレーションの雰囲気がある。

しかし、大手テクノロジー企業のすべてがアクセシビリティに積極的というわけではない。その一方で、障害を持つゲーマー向けにカスタマイズされたゲーミング体験を実現するアフターマーケットデバイスが提供されている。

マイクロソフトの参加

マイクロソフトでインクルーシブリードを務めるBryce Johnson(ブライス・ジョンソン)氏は2015年のハッカソンで、障害を持つ退役軍人の支援団体Warfighter Engagedと面会した。

「私たちは時を同じくして、インクルーシブデザインに対する考え方を発展させようとしていました」とジョンソン氏は語る。実際のところ、第8世代のゲーミングコンソールは、障害を持つゲーマーにとって障壁となっていた。

「コントローラーは、前提条件を設定した主要なユースケースに合わせて最適化されています」とジョンソン氏はいう。実際、従来のコントローラーのボタンやトリガーは、耐久性の高い健常者向けのものだ。

Warfighter Engaged以外にも、マイクロソフトはAbleGamers(障害のあるゲーマーのための最も有名な慈善団体)、クレイグ病院Cerebral Palsy Foundation、および英国に拠点を置く障害のある若いゲーマーのための慈善団体Special Effectと協力している。

Xboxアダプティブコントローラー

2018年にリリースされたXACは、移動性に制限のあるゲーマーが、他のゲーマーとシームレスにプレイできるように設計されている。ゲーマーたちがコメントを寄せた細部の1つに、XACは医療機器ではなく、消費者向け機器のように感じるということが挙げられている。

「このコミュニティのためにこの製品を設計する、ということは不可能だと分かっていました」とジョンソン氏はTechCrunchに語った。「コミュニティ一緒に製品を設計する必要がありました。『私たちがいなければ、私たちは何もできない』という信念を私たちは持っています。インクルーシブデザインという私たちの原則は、最初の段階からコミュニティを取り込むよう促すものです」。

大物たちの協力

他にも協力する人たちがいた。多くの発明がそうであるように、Freedom Wingの誕生は偶然の産物だった。

ATMakersのBill Binko(ビル・ビンコ)氏は、支援技術(Assistive Technology:AT)カンファレンスのブースで、ATMakersのJoystickという電動車イス向けデバイスを使用した人形「Ella」を展示した。カンファレンスにはAbleGamersを支えるブレーントラストの一員であるSteven Spohn(スティーブン・スポーン)氏も出席していた。

スポーン氏はJoystickを見て、ビンコ氏にXACで動作する同様のデバイスが欲しいと伝えた。センサーを使って、イスの代わりにゲームコントローラーを操作するというものだった。このデバイスはすでに電動車イスデバイスとして路上テストされているため、何カ月にも及ぶ研究開発とテストを必要としなかった。

ATMakers Freedom Wing 2

ビンコ氏によると、零細企業は、アクセシブルゲーミング技術の変革において先陣を切っているという。マイクロソフトやLogitech(ロジテック)のような企業は、最近になってようやく足場を固めた。

一方、ATMakersやQuadStickなどの小規模なクリエイターたちは、この業界をディスラプトすることに奔走している。

「誰もが(ゲーミングを)手にすることができ、コミュニティと関わり合う機会が広がっていきます」とビンコ氏。「ゲーミングは、人々が極めることができ、参加できるものなのです」。

参入の障壁

技術が進化するにつれて、アクセシビリティへの障害も進化する。こうした課題にはサポートチームの不足、セキュリティ、ライセンス、VRなどが含まれる。

ビンコ氏によると、需要の増加にともない、こうした機器のサポートチームを管理することは新たなハードルになっているという。AT業界に参入して機器の製造、設置、保守を支援するためには、技術的なスキルを持つ人材がさらに必要となる。

セキュリティとライセンスは、多様なハードウェア企業との協業に必要となる資金やその他のリソースのために、デイヴィソン氏のような小規模なクリエイターの手を離れている。例えば、Sony(ソニー)のライセンシングエンフォースメント技術は、新しい世代のコンソールではますます複雑化している。

デイヴィソン氏はテクノロジー業界での経験から、機密情報を保護するための制限について理解している。「製品の開発に膨大な資金を費やし、そのあらゆる側面をコントロールしたいと考えているのです」とデイヴィソン氏は語る。「力の小さい者が一緒に仕事をするのを厳しくしているだけです」。

デイヴィソン氏によると、ボタンマッピングではPlayStationが先行したが、セキュリティプロセスが厳格だという。コントローラーの使用を制限することがコンソール企業にとってどのようなメリットがあるのか、同氏には理解できない。

「PS5とDualSenseのコントローラーの暗号化は今のところクラックできないため、ConsoleTunerのTitan Twoのようなアダプターデバイスは、非公式な『中間者』攻撃のような他の弱点を見つけなければなりません」とデイヴィソン氏は述べている。

この手法を使えば、デバイスはQuadStickから最新世代のコンソールまで旧世代のPlayStationコントローラーを利用できるようになり、障害を持つゲーマーはPS5をプレイできるようになる。TechCrunchはソニーのアクセシビリティ部門に問い合わせたが、この部門の代表者によると、適応性のあるPlayStationやコントローラーに関する当面の計画はないという。しかし、同部門はアドボケイトやゲーミング開発者と協力し、最初からアクセシビリティを考慮しているとした。

これとは対照的に、マイクロソフトのライセンシングシステムはより寛容で、特にXAC、そして新システムで旧世代のコントローラーを使用する機能を備えている。

「PC業界とMacを比較してみてください」とデイヴィソン氏は続けた。「さまざまなメーカーのPCシステムを組み合わせることはできますが、Macではできません。一方はオープンスタンダードで、もう一方はクローズドです」。

よりアクセシブルな未来

日本のコントローラー会社HOLIは2021年11月、Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)用に正式にライセンスされたアクセシビリティコントローラーをリリースした。現時点では米国内では販売されていないが、オンラインで購入可能な地域の制限はない。任天堂はまだこの技術を完全には採用していないが、今回の開発は、アクセシビリティを重視した任天堂の方向性を示している。

任天堂のアクセシビリティ部門は完全なインタビューには応じなかったが、TechCrunchに声明を送った。「任天堂は、誰もが楽しめる製品およびサービスの提供に努めています。当社の製品は、ボタンマッピング、モーションコントロール、ズーム機能、グレースケールと反転カラー、触覚と音声のフィードバック、その他の革新的なゲームプレイオプションなど、さまざまなアクセシビリティ機能を備えています。さらに、任天堂のソフトウェアおよびハードウェアの開発者は、現在および将来の製品でアクセシビリティを拡大するために、さまざまな技術を評価し続けています」。

障害を持つゲーマーのための、よりアクセシブルなハードウェアを求める動きはスムーズではない。これらのデバイスの多くは、資本がわずかな小規模企業のオーナーによって開発されたものだ。いくつかのケースでは、開発の初期段階で包括性の意思を持つ企業が関与している。

しかし、徐々にではあるが確実に支援技術は進歩しており、障害を持つゲーマーにとってよりアクセシブルなゲーミング体験を実現する方向に向かっている。

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(文:Williesha Morris、翻訳:Dragonfly)

Twitter Spacesがウェブでも利用可能に、アクセシビリティ機能も搭載

米国時間5月26日夜、Twitter(ツイッター)はClubhouseのライバルである同社のSpacesをウェブでも利用できるようになると発表した。5月はじめにフォロワー600人以上のユーザーなら誰でもiOSかAndroidのアプリ上でSpacesを利用できるようになった。ほぼ同時に、Clubhouseはついに待望のAndroidアプリを公開した。ただ、Clubhouseはまだウェブでは利用できない。ライブソーシャルオーディオ市場でTwitterが一歩先行するかたちだ。

Instagramも自身をClubhouseのライバルと位置づけ、ユーザーがオーディオとビデオをミュートする機能を活用してライブができるようにしている。それぞれのアプリはどう差別化していくのだろうか?TwitterのNed Segal(ネッド・シーガル)CEOは、毎年恒例で2021年が49回目となる5月25日のJPモルガンのグローバルテクノロジー/メディア/コミュニケーションカンファレンスでこの点を明らかにしようと試みた。

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シーガル氏は次のように述べている。「Twitterは世界で何が起きているか、人々が何について話しているかを知る場です。Twitterを開いてホーム画面のタイムラインを見たときにSpaceがあれば、おそらくあなたの知らない人であってもそこで話されている話題はあなたに大いに関連のあることです。ビットコインのこと、あるいはグラミー賞の余韻やNFLのドラフトについて話されているかもしれません」。

Spacesのウェブ版に関してTwitterが重視している部分には、ユーザーの画面サイズに対応するUIとSpacesの予定をリマインドする機能などがある。Spaceに参加する前に、誰がそこにいるか、何が話されているかのプレビューが表示される。ユーザーはSpaceを画面の右側に開きつつ、同時にタイムラインをスクロールすることもできる。

画像クレジット:Twitter

特筆すべきは、このアップデートではアクセシビリティと文字起こしが重点項目に挙げられていることだ。オーディオのみのプラットフォームでは聴覚に障がいのある人が会話に参加するためにライブの文字起こしが欠かせない。新機能に関してTwitterが共有したスクリーンショットで、Spacesにライブキャプションが表示される様子を見ることができる。文字起こしの精度がどうなるかは、まだわからない。

2020年にTwitterは音声ツイートにキャプション機能をつけなかったことで当然の批判を受けた。Twitterのサポートは謝罪のツイートで「アクセシビリティは決して後回しにしてはいけないことです」と記した。2020年9月までに同社は2つのアクセシビリティチームを発足させた。

ライブオーディオが台頭する中、今でもアクセシビリティは後回しにされてしまうことがある。Clubhouseはまだライブキャプションに対応していない。

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タグ:TwitterTwitter SpaceアクセシビリティClubhouse音声ソーシャルネットワーク文字起こし

画像クレジット:Twitter

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Kaori Koyama)

【コラム】欠陥のあるデータは障がいを持つ人を危険にさらしている

編集部注:Cat Noone(キャット・ヌーン)氏は、世界のソフトウェアをアクセス可能にすることをミッションとするスタートアップStarkのプロダクトデザイナーで共同ファウンダー、CEO。彼女は世界の最新のイノベーションへのアクセスを最大化する製品と、テクノロジーを実現することにフォーカスしている。

ーーー

データは単に抽象的なものではなく、人々の生活に直接的な影響を及ぼしている。

2019年、ある車椅子ユーザーが交通量の多い道を横断していた際、AIを搭載した配達ロボットがその進行を歩道の縁石で妨げてしまうという事故が起きた。「テクノロジーの開発において、障がい者を副次的に考えるべきではありません」と当事者は話している。

他の少数派グループと同様、障がい者は長い間欠陥のあるデータやデータツールによって被害を受けてきた。障がいにはさまざまな種類がありそれぞれ大きく異なるため、パターンを検出してグループを形成するようプログラムされたAIの型通りの構造に当てはまるようなものではない。AIは異常なデータを「ノイズ」とみなして無視するため、結論から障がい者が除外されてしまうことが多々あるのが現状だ。

例えば、2018年にUberの自動運転のSUVに追突されて死亡したElaine Herzberg(エレイン・ハーツバーグ)氏のケースがある。衝突時、ハーツバーグ氏は歩いて自転車を押していたためUberのシステムはそれを「車両」「自転車」「その他」のどれかとして検出し、瞬時に分類することができなかったのだ。この悲劇は後に障がい者に多くの疑問を投げかけた。車椅子やスクーターに乗っている人も、同じようにこの致命的な分類ミスの被害者になる可能性があるのだろうか。

データを収集し処理する新たな方法が必要だ。「データ」とは個人情報、ユーザーからのフィードバック、履歴書、マルチメディア、ユーザーメトリクスなどあらゆるものを指し、ソフトウェアを最適化するために常に利用されているが、データが悪用される可能性や各タッチポイントに原則が適用されていない場合などもあり、そういった不正な方法を確実に理解した上で利用されているわけではない。

今、障がい者を考慮したデータ管理を実現するための、より公平な新しいデータフレームワークが必要とされている。それが実現しなければ、デジタルツールへの依存度が高まる日々の生活の中、障がいを持つ人々はこれからもより多くの危険に直面することになるだろう。

誤ったデータが良いツールの構築を妨げる

アクセシビリティの欠如が障がい者の外出を妨げることはないとしても、質の高い医療や教育、オンデマンド配送など、生活の要となる部分へのアクセスを妨げてしまう可能性はある。

世の中に存在するツールはすべて、作り手の世界観や主観的なレンズが反映された、作り手の環境の産物である。そしてあまりにも長い間、同一のグループの人々が欠陥したデータシステムを管理し続けてきた。これでは根本的な偏見が永続し、これまで光が当てられてこなかったグループが引き続き無視されていくという閉ざされたループに陥ってしまう。データが進歩するにつれ、このループは雪だるま式に大きくなっていくだろう。我々が扱っているのは機械「学習」モデルだ。「X(白人、健常者、シスジェンダー)でない」ことは「普通でない」ことを意味すると長い間教えられていれば、その基礎の下、進化していくのである。

データは私たちには見えないところでつながっており、アルゴリズムが障がい者を除外していないというだけでは不十分である。バイアスは他のデータセットにも存在している。例えば米国では、黒人であることを理由に住宅ローンの融資を拒否することは違法とされているが、融資は有色人種に不利なバイアスが内在するクレジットスコアに基づいて審査が行われるため、銀行は間接的に有色人種を排除していることになる。

障がいのある人の場合、身体活動の頻度や週の通勤時間などが間接的に偏ったデータとして挙げられる。間接的な偏りがソフトウェアにどのように反映されるかの具体的な例として、採用アルゴリズムがビデオ面接中の候補者の顔の動きを調査する場合、認識障がいや運動障がいのある人は、健常者の応募者とは異なる障壁を経験することになるだろう。

この問題は障がい者が企業のターゲット市場の一部として見なされていないことにも起因している。企業が理想のユーザー像を思い描いて意見を出し合う開発の初期段階において、障がい者が考慮されないことが多く、精神疾患のような人目につきにくい障がいの場合は特にその傾向が著しい。つまり、製品やサービスを改良するために使用される初期のユーザーデータには、障がい者のデータが含まれていないということだ。実際、56%の企業がデジタル製品のテストを障がい者に対して定期的に行っていないという。

テック企業が障がい者を積極的にチームに参加させれば、彼らのニーズをより反映したターゲット市場が実現するだろう。さらに技術者たちが、目に見える、あるいは目に見えない除外項目を意識してデータに反映させる必要がある。これは簡単な作業ではないためコラボレーションが不可欠となるだろう。日々使用するデータから間接的なバイアスを排除する方法について、話し合いの場を広げ、フォーラムに参加したり知識を共有することができれば理想的である。

データに対する道徳的なストレステストが必要

ユーザビリティ、エンゲージメント、さらにはロゴの好みなど、企業は製品に対して常にテストを実施している。どんな色が顧客を獲得しやすいか、人々の心に最も響く言葉は何かなど、そういったことは把握しているのに、なぜデータ倫理の基準を設定しないのか。

道徳的なテクノロジーを生み出すことに対する責任は、企業の上層部だけにあるわけではない。製品の土台となるレンガを日々積み上げている人々にも責任があるのだ。フォルクスワーゲンが米国の汚染規制を逃れるための装置を開発した際、刑務所に送られたのはCEOではなくエンジニアである。

私たちエンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャーは皆、目の前のデータを認識し、なぜそれを収集するのか、どのよう収集するのかを考えなければならない。人の障がい、性別、人種について尋ねることに意味があるのか、この情報を得ることによりエンドユーザーにとってどのようなメリットがあるのかなど、必要としているデータを調査して自身の動機を分析しなければならない。

Stark(スターク)では、あらゆる種類のソフトウェア、サービス、技術を設計、構築する際に実行すべき5つのフレームワークを開発した。

  • どのようなデータを収集しているのか。
  • なぜそのデータを収集するのか。
  • どのように使用するのか(そしてどのように誤用される可能性があるか)。
  • IFTTT(「If this, then that」の略で「この場合はこうなる」を意味する)をシミュレートする、データが悪用される可能性のあるシナリオとその代替案を説明する。例えば大規模なデータ侵害が発生した場合、ユーザーはどのような影響を受けるのか。その個人情報が家族や友人に公開されたらどうなるのか?
  • アイデアを実行するか破棄するか。

曖昧な言葉や不明瞭な期待値、こじつけでしかデータを説明できないのであれば、そのデータは使用されるべきではない。このフレームワークでは、データを最もシンプルな方法で説明することが求められるため、それができないということは責任を持ってデータを扱うことができていないということだ。

イノベーションには障がい者の参加が不可欠

ワクチン開発からロボットタクシーまで、複雑なデータテクノロジーは常に新しい分野に進出しているため、障がい者に対する偏見がこれらの分野で発生すると障がいのある人々は最先端の製品やサービスにアクセスできなくなってしまう。生活のあらゆる場面でテクノロジーへの依存度が高まるにつれ、日常的な活動を行う上で疎外されてしまう人々もさらに多くなる。

将来を見据え、インクルージョンの概念をあらかじめ製品に組み込むことが重要だ。お金や経験値の制限は問題ではない。思考プロセスや開発過程の変革にコストがかかることはなく、より良い方向へと意識的に舵を切ろうとすることが大切なのである。初期投資は少なからず負担になるかもしれないが、この市場に取り組まなかったり製品の変更を後から余儀なくされたりすることで失う利益は、初期投資をはるかに上回るだろう。特にエンタープライズレベルの企業では、コンプライアンスを遵守しなければ学術機関や政府機関との契約を結ぶことはできないだろう。

初期段階の企業は、アクセシビリティの指針を製品開発に取り入れ、ユーザーデータを収集して、その指針を常に強化していくべきだ。オンボーディングチーム、セールスチーム、デザインチームでデータを共有することで、ユーザーがどのような問題を抱えているかをより詳細に把握することができる。すでに確立された企業は自社製品のどこにアクセシビリティの指針が欠けているかを分析し、過去のデータやユーザーからの新たなフィードバックを活用して修正を行う必要がある。

AIとデータの見直しには、単にビジネスフレームワークを適応させるだけでは十分ではなく、やはり舵取りをする人たちの多様性が必要だ。テクノロジー分野では男性や白人が圧倒的に多く、障がい者を排除したり、偏見を持ったりしているという証言も数多くある。データツールを作るチーム自体が多様化しない限り、各組織の成長は阻害され続け、障がい者はその犠牲者であり続けることになるだろう。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
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画像クレジット:Jorg Greuel / Getty Images

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(文:Cat Noone、翻訳:Dragonfly)

Apple Watchに検知した手の動きで操作する「AssistiveTouch」機能が追加

Apple Watchの小さな画面を正確にタップすることには、ある種の根本的な難しさがある。障がいのある人には、純粋に不可能な場合もある。その対策として、Apple(アップル)は、手のジェスチャを検出してカーソルを制御し、画面の操作を行うことができる「AssistiveTouch(アシスティブタッチ)」という新モードを導入すると発表した。

この機能は、アップルの製品群におけるアクセシビリティに重点を置いた改良の一環として発表されたが、中でもApple Watch用のAssistiveTouchは、ユーザー層全体に大評判となる可能性が高いと思われる。

AssistiveTouchは、Apple Watchに内蔵されたジャイロスコープと加速度センサー、そして心拍センサーからのデータを利用して、手首と手の位置を推定する。ピースサインとメロイックサインの区別はまだできないものの、今のところ「ピンチ」(人差し指と親指を接触させる)と「クレンチ」(ゆるく拳を握る)を検知して、基本的な「次へ」や「確認」の操作を行うことができる。例えば、電話がかかって来た時、拳を握りしめればすぐに受けることができる。

だが、最も印象的なのは「Motion Pointer(モーション・ポインター)」と呼ばれる機能だ。これは、AssistiveTouchメニューで選択するか、手首を大きく振ると起動する。すると、画面にポインターが現れる。手を動すとその動きを検出して、ポインターを画面上で動すことができるので、画面の端に持っていって「スワイプ」したり、ピンチやクレンチして操作することが可能になる。

いうまでもなく、これは時計を操作するのに片手しか使えない人にとって非常に役に立つ機能ではあるが、どうしても必要としているわけではない人にとっても、例えばエクササイズマシンや杖などに片手を添えたまま、スマートウォッチを操作できるというのは、きっと便利であるに違いない(この操作方法は、他のプラットフォームでも使えるのではないだろうかと考えずにいられない……)。

画像クレジット:Apple

Apple WatchのAssistiveTouchは、アップルが今回のニュースリリースで発表した数多くのアクセシビリティに関するアップデートの1つに過ぎない。他にも以下のようなものがある。

  • Apple Storeでの接客やサポートで利用できる手話通訳付きビデオ通話「SignTime(サインタイム)」
  • 「Made for iPhone」認証アクセサリに新たに加わる補聴器のサポート
  • VoiceOver(スクリーンリーダー)を使った画像説明機能の向上
  • 集中したり落ち着くために役立つ「background sounds(背景音)」発生機能(私はこれを使うつもりだ)。
  • 一部のボタンやスイッチの働きを、口で発する言葉ではない音(「ポップ」や「イー」など)で代用できるSound Actions for Switch Control(言葉や動きが不自由な人のための機能)
  • 酸素チューブ、人工内耳、ソフトヘルメットを装着している人のためのMemojiのカスタマイズ機能
  • App Store、Apple TV、Apple Books、Apple Maps(「マップ」アプリ)で、障がいのある人向けのアプリや作品、有益な情報などを紹介。

これらはすべて、5月20日の「Global Accessibility Awareness Day(グローバル・アクセシビリティ・アウェアネス・デイ)」に合わせて発表されたものだ。

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タグ:AppleApple Watchアクセシビリティ

画像クレジット:Apple

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Zoomの会議を自動で文字起こしできるOtter.aiの新しいアシスタント機能

AIを利用した音声文字起こしサービスのOtter.aiは、企業ユーザーが会議を簡単に記録できるようにすることを目指している。米国時間5月19日、同社は新機能のOtter Assistantを発表した。これはカレンダーに入力されているZoomミーティングに自動で参加し、会話を文字に起こし、他の参加者とメモを共有できるようにする機能だ。Otter.aiはすでにZoomと統合しているが、アシスタントは毎回自分で会議の開始時に文字起こしを有効にしたり終了時に止めたりしなくても済むように設計されている。また、会議中に参加者が質問をしたり写真などを共有するなどの共同作業もできるようになっている。

この機能は、Otter.aiの統合を直接利用できるのはZoomミーティングの主催者だけというZoomの以前の制限に引っかからずに動作する。

会議の文字起こしを自動化しようというアイデアは、コロナ禍により発生したリモートワーク環境を考えれば納得がいく。この環境で人々は仕事や育児、在宅授業などに時間を割り振ってきた。このような状況では、会議から離れ、言われたことを聞き逃してしまうこともある。これはOtter.aiが役に立つケースの1つだ。他には会議が重なっている場合、あるいは長い会議の中で自分に直接関係するトピックはごくわずかだが他のトピックをリアルタイムではなく後で確認したいといった場合にも有効だ。

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新しいOtter Assistantを使うには、まずGoogleカレンダーまたはMicrosoftカレンダーをOtterのサービスと同期する。するとアシスタントが自動で今後のすべてZoomミーティングに参加する。透明性のため、アシスタントは1人のミーティング参加者として表示される。

文字起こしにアクセスするためのリンクがアシスタントからZoomのチャットで全員に投稿される。つまりこれは上司に知られずに会議をパスするための機能ではない。会議を文字起こしすることに全員が同意した場合に使う機能だ。

会議中に参加者はOtterのライブ文字起こしで重要な部分をハイライトしたり写真を追加したりメモをとったりすることができる。参加者は発言するのではなくコメント機能で質問をすることもできる。自分が騒がしい場所にいるときに便利だろう。

いったんアシスタントを有効にしたら、会議のたびにOtter.aiをオンにする必要はなく、会議をヘッドフォンでで聴いてもかまわない。Otter Assistantは会話の双方を録音する。

ただし、Otterのウェブサイトの「My Agenda」からOtter Assistantを会議ごとにオフにすることもできる。「My Agenda」には予定されている会議ごとにスイッチが表示される。

会議が終わったらOtter.aiの設定で参加者全員に自動で会議のメモを共有する機能もある。

Otter Assistantは1カ月20ドル(約2170円)からのアップグレードプランであるBusinessユーザーが対象で、2ファクタ認証、SOC2コンプライアンス、高度な検索、書き出し、カスタムの語彙、共有話者識別、データと支払いの一元管理などに対応している。

Otter.aiは2021年初頭に1億回の会議を文字に起こしたと述べていたが、そこからさらに増えてこれまでに1億5000万回以上になったという。同社はサブスクリプション利用者数の詳細を公開していないが、2020年に売上が8倍と大幅に増加し、2021年2月に発表された5000万ドル(約54億3500万円)のシリーズBにつながった。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Otter.ai文字起こしZoomビデオ会議アクセシビリティ

画像クレジット:Otter

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)