Dropbox、1億ドルで買収した人気のメール整理アプリ、MailboxのAndroid版を発表

iOS向けメール管理アプリMailbox1億ドル前後で買収してから1年後、今日(米国時間4/9)、DropboxはMailbox for Androidをリリースした。同時にデスクトップ(Mac)向けのプレビュー版も公開された。また、読む必要のないメールをアーカイブするだけでなく、同様のメールをその後自動的にアーカイブするオートスワイプ(Auto-swipe)機能も発表された。

Dropboxは今日、サンフランシスコで大がかりなプレスイベントを開催し、ユーザーが2億7500万人に達したことを明らかにした。またDropboxを使ってMicrosoftのWord、Excel、Powerpointで共同作業ができるサービス 、Project Harmonyなどいくつかの重要な新しいプロダクトが発表された。

Android版MailboxはオリジナルのiOS版とほとんど同様の機能で、Google Playからすでにダウンロードできる。

〔日本版:日本のPlay Store。Android版Mailboxを利用するには事前に最新版Dropboxのインストールが必要。Playストアの説明は日本語化されているが最初の起動時に表示されるガイドツアーを含めてアプリ自体のUIは英語〕

Mac版のデザインはシンプル極まりない。モバイル版ではアーカイブや削除などの動作はすべてスワイプで行うが、デスクトプではトラックパッドをジェスチャーに利用できる。Macのプレビュー版を試したいユーザーはこのページの一番下からダウンロードできる。

こちらがデスクトップ版のスクリーショット。

オートスワイプ機能についてMailboxチームは「一度タップするだけで明日から確実にメールの数を減らせる」と説明した。われわれは毎日毎日同じようなスパムを受け取り、そのつどアーカイブしている。しかしスパム・メールの「配信停止」ボタンはわかりにくいところに隠されていたり、実際には機能しないことも多い。

Mailboxのオート・スワイプは広告や勧誘などの迷惑メールを簡単に退治できる。Mailboxはユーザーがメールをアーカイブしたり「後で読む」に分類したりするパターンを学習して不要メールを識別する。やがてユーザーに代わって自動的に不要メールをアーカイブしてくれるようになる。ユーザーの選択パターンはDropboxに保存され、どのデバイスでも共通に適用される。オートスワイプは現在Android版のみだが、iOS版にもすぐに追加される。またデスクトップ版も正式公開時にはオートスワイプをサポートしているはずだ。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


今年も秋に! TechCrunch Tokyo 2014は渋谷・ヒカリエで11月に開催します!

毎年秋にTechCrunch Japanが開催しているイベント「TechCrunch Tokyo」の開催日が決まったのでお知らせしたい。今年は11月18日(火)、19日(水)の2日間にわたって東京・渋谷のヒカリエで開催する。

一昨年に約750人だった参加者数は、昨年は1500人弱と倍増したので、今年は3000人! ……なわけないのだけど、だいぶ大きな会場を抑えたので、ぜひたくさんの方にご来場頂ければと考えている。ヒカリエのイベントホールに行ったことのある人なら分かると思うが、AホールとBホールの両方を借りて、通路の半分はスタートアップ企業のブースで埋め尽くしたい、というぐらいの勢いで計画を進めている。今年もスタートアップ企業のブース出展料は低くさせて頂ければと考えている。

今年もまた国内外のテック業界のキーパーソンや注目スタートアップの起業家などをお呼びして、テクノロジービジネスの話題やスタートアップの現在について、講演やパネルディスカッションを行う予定だ。スタートアップ業界の投資家や起業家の方々だけでなく、テクノロジー業界を注目しているような企業の方々、学生さん、エンジニア、マーケター、企画屋さんなど、幅広い層の人に参加してほしいと思っている。そして今年も米国からTechCrunchの共同編集長か記者が来る予定だ。

今年もスタートアップバトルやります!

そして今年もまたスタートアップバトルを予定している。詳細はまだ決まってないが、プロダクトをオーディエンスの前で披露するピッチと質疑のセッションを10〜20チームぐらいに行ってもらって勝者決めるコンテストだ(去年の様子は、こちら)。

ベンチャーキャピタルの投資家や個人投資家、大企業の新規事業担当者など、スタートアップ企業にアツい視線を送っている人たちの前で未来を変えるプロダクトをローンチしてみませんか? 夏とか秋ごろにサービスローンチを考えているスタートアップ企業の人たちには、ぜひTechCrunchでのデビューを検討してもらえればと思う。

ちなみに、去年優勝したのは指輪型ウェアラブルデバイスの「Ring」を披露したログバーだ。審査員の1人だった本家TechCrunch共同編集長のアレクシアもとても気に入っていたし、Kickstarter開始時にはTechCrunch Japanでも、本家TechCrunchでも記事にしている。そうそう、これを書いている数日前にはKickstarter上のRingのキャンペーンは終了していて、5161人の支援者と約88万1000ドルの資金を集めているね。すごいね! (念の為に書いておくと、TechCrunchとしてRingは応援も期待もしているが、今のところ手放しで賞賛する気はない。まだ実物を触っていないしね)

基調講演、パネルセッション、スタートアップバトルのほかにも、昨年同様にハッカソンCTO Nightなどの企画も考えているので、順次アナウンスさせて頂ければと思う。また、昨年に参加者の方々から頂いた声を反省材料として、今年は「交流の場」となることを強く意識したプログラムを検討している。というのも、より多くのセッション(コンテンツ)を用意して時間イッパイに詰め込むことがサービスなのだと考えて、休憩時間を最小限にしてセッションを詰めまくったのだが、セッションだけではなく、「もっといろいろな参加者と話したかった」という声を数多く頂いたからだ。なので、ランチや、セッション終了後の交流会についても時間的にも場所的にも余裕を取ろうと考えている。


世界最大のテトリス、フィラデルフィアの高層ビルを使ってプレイに成功

当地の土曜の夜、フィラデルフィアの29階建ビルを使った世界最大のテトリスがプレイに成功した。おそらく全ビデオゲームを通して世界最大に違いない。

Drexel大学のコンピュータ科学科のFrank Lee教授のトームは、フィラデルフィアの中心街に位置するCira CentreビルのLED照明をコンピュータ操作する仕組みを開発し、フィラデルフィア市のテクノロジー・ウィークのさまざまな催しの一つとして披露した。

New York Timesすばらしいビデオを作ったが、残念ながらサードパーティーのサイトにエンベッドできないので、YouTubeのビデオを上に貼り付けておく。

LeeがNew York Timesに語ったところによると、

これは見たところゲームだが、私自身は(コミュニケーションのための)公共装飾の一種と考えている。テクノロジーはとかくわれわれを孤立させがちだが、私はテクノロジーを用いて見知らぬ人々がつながりを持ち、ともに楽しむ手段を提供したかった。

Leeのチームは2013年の4月にもCira Centreの1400個のLED照明を操作して古典的なビデオゲーム、Pongを壁面に再現している。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


Amazon、メディア・ストリーミング・サービス、Fire TVを発表―セットトップ・ボックスは99ドル

Amazonが長く噂に上っていたメディア・ストリーミング・ハードウェア、Amazon Fire TVをついに公式に発表した。 Amazonはライバルたちがこの分野で行ってきたことを長らく観察して十分に学習してきた。満を持して発表したFire TVはシンプルな操作性や強力な機能などいろいろな面でライバルに対して差別化を図っていることが見てとれる。

シンプルで強力

Amazonがまず狙ったのはシンプルさだ。Amazon Fire TVは居間のテレビに接続する小さな黒い箱で、クオドコアCPUとAndroidベースの独自OSを採用している。2GBのRAMはライバルの2倍から4倍の容量がある。デュアルバンドのWi-Fiは高速なネットワーク接続を約束する。厚みは10セント硬貨(1.8cm)よりやや薄く、UIはPlexに多少似ている。

専用リモコンは7つのボタンとクリックホイールが設けられている。Playボタンを押すと待ち時間なしに即座に再生が始まる。メインのホームスクリーンにはカテゴリー、再生リスト、アクセス、ユーザーのビデオライブラリー、映画、テレビ番組、アプリ、写真、設定がタイル状に配置される。即時再生はライバルとの大きな差別化要素だ。これまでのメディア・ストリーミングではどれも多少のバッファリングが必要だった。

コンテンツ

Fire TVのプラットフォームはHTMLとAndroidベースのカスタムOSだ。Amazonによればデベロッパーがウェブアプリ、Google Playのアプリを移植するのは簡単だという。またAmazon Studiosからの独自コンテンツが提供されるのもFireのセールスポイントだ。

Amazonにとってメディア・ストリーミング事業の重要性は大きくなっている。Amazon Instant Videoサービスを開始してNetflixやHuluに挑戦しているだけではなく、AmazonStudiosでオリジナルのコンテンツ製作にも乗り出している。どちらの場合でも最終的に覇権を打ち立てるためにはセット・トップ・ボックスを通じて消費者の居間のテレビを支配することがカギとなってくる。

ライバル

AmazonはFireの発表に当ってライバルに対する優位性を強く主張した。曰く、Rokuの検索機能は貧弱、Apple TVのリモコンはテキスト入力が面倒、またどのサービスもストリーミング開始までバッファリングのための待ち時間がある、等々。またライバルのプラットフォームはそれぞれが閉鎖的エコシステムで、これも消費者にとって不利益となっているとAmazonは指摘した。たとえばAppleはInstant VideoをApple TVから排除している。Netflixの月額料金の他に、Microsoftは接続料金として年に60ドルを要求している。

パートナー、検索

Fire TVのローンチにあたってNetflixがパートナーとなったことも発表された。HBO GO、SHO Anytime、Pandora、Hulu、ESPNなどもすぐに後に続くという。コンテンツの検索やオプションの選択はテキストやクリックだけでなく、音声入力でも行える。確実な音声認識ができるようリモコンにはマイクが内蔵されている。Amazonは「一部のサービスと違ってわれわれの音声認識は実際に作動する」と述べたが、これは暗にMicrosoftなどのサービスを指したのだろう。検索はジャンル、タイトル、出演者、キーワード、コンテンツのソースなどをサポートする。

アプリと機能

コンテンツのストリーミング機能に加えて、Fire TVには写真アプリがインストールされている。このアプリはAmazon CloudDriveを通じてユーザーのスマートフォンの写真をシームレスにFire TVに取り込む。アップロードはバックグラウンドで自動的に行われ、Fire TVで即座に表示が可能だ。これはフォトストリームをiOSデバイスからApple TVに表示させるより手間が少ない.

X-rayというのはKindleの補助ツールだという。視聴している映画や番組のリリース日付、出演者、監督、脚本その他関連するメタ情報をFireTVと同期設定したKindle Fireタブレットに表示させることができる。 つまりKindle FireがFire TVのネーティブなセカンドスクリーンになるわけだ。来月にはX-rayは音楽にも拡張され、歌詞の表示をサポートするという。

なお音楽コンテンツはPandora、iHeartRadio、TuneInなどのパートナーに加えてAmazon自身の音楽サービスが提供する。またFree Timeという子供向けの機能が用意され、コンテンツが子供向けに確実にフィルターされる他、「恐竜」など子供に人気のあるカテゴリーが用意される。Free Time UnlimitedはNickelodeon子供向け番組が月額料金で見放題となるのオプションだ。

ゲーム

AmazonはGaming on Fire TVでゲーム専用機メーカーに挑戦しようとしている。Amazonは専用機ゲームを「価格が高すぎる」と批判し、Apple TVに対しては名指して「消費者は満足していない」と述べた。AmazonはEA、Disney、Gameloftその他のゲーム・ソフトの大手をパートナーとして新しいゲーミング環境を提供していくとしている。UbisoftとTake-Twoも提携パートナーに加わっている。

Amazonは「来月には数千のゲームタイトルが公開される」と約束した。ゲームの操作はFire TVのリモコン、専用アプリをインストールしたスマートフォン、タブレットの他に、Amazon独自のゲーム・コントローラーが利用できる。価格は40ドル。AmazonはFireTVでMinecraftをデモした。

Amazon Fire TVは今日(米国時間4/2)からアメリカ市場に99ドルで出荷される。購入者にはNetflixとAmazon Primeの30日間の無料トライアルがついてくる。

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シュワルツェネッガー、戦車に乗って何もかも踏み潰す―というチャリティ

アーノルド・シュワルツェネッガーが個人所有の戦車でタクシーや直径1.5mの梱包用プチプチのロールを踏み潰すところが見られるという。

数年前からOmazeは奇抜な体験を売り出すという手法でチャリティーの資金集めをしてきた。セレブと1日デートできるとかSpaceXの宇宙基地を見学できるとかいう体験だ。

しかしプロジェクトを始めた当時は彼らでさえこのチャリティのためにシュワルツェネッガーが戦車でタクシーを轢いてくれるとは思っていなかっただろう。

しかしそれが実現した。下のビデオで戦車の大暴れをご覧いただきたい。

Omazeのチャリティーに参加して(まだあと2日ある)くじに当たるとシュワルツェネッガーといっしょに戦車でいろいろなものを轢き潰すイベントにカップルで招待される。特大の葉巻をくゆらせながらアーノルドに映画の裏話を聞くなどすれば一生の自慢になるだろう。くじに当たらなくても安心していい。集められた資金の大半は子どもたちに放課後のスポーツの機会を与えるために活動しているAfter-SchoolAll-Starsというチャリティー団体の支援に充てられる。

ちなみに、このイベントはあるredditのユーザーのアイディアだという。シュワルツェネッガー自身、redditの常連で、チャットで質問に答えるAsk Me Anythingのセッションに何回か登場してボディービルダーたちに答えている。

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大阪がスタートアップ都市になれんって誰が言うてん? TechCrunchは大阪でハッカソンやりまっせ!

TechCrunch Japanは来る4月12日(土)、13日(日)の2日間にわたって大阪でハッカソン「TechCrunch Hackathon Osaka」を開催することにしたので、お知らせすると同時に参加申し込みの受け付けを開始したい。場所は大阪・梅田のグランフロント大阪に入居しているイノベーションハブで、参加者50人ほどの規模を想定している。

今回、TechCrunchが大阪でハッカソンをやる理由は2つある。

1つは京阪神エリアが、スタートアップ企業がどんどん生まれてくる「スタートアップシティ」となるのを応援したいということだ。今回、会場となるイノベーションハブは大阪市都市計画局にお貸し頂くのだが、大阪市のスタートアップ誘致にTechCrunchとして共感している。東京がダメになったら日本はダメなのだから東京のインフラ整備にもっと投資するべきだということは思っているのだが、日本で2番めに大きい経済圏の関西が元気にならないようで、どないすんねんという気持ちである。これを書いているTechCrunch Japan編集長の私は生まれも育ちも大阪なので、なおさらそう思う。

大阪を関西圏のスタートアップシティの中心に

京阪神というのは大阪を中心に神戸、京都とも30分圏内である。関西圏のGDPは約80兆円もあり、これはオランダ並み――、というのが大阪市都市計画局で旗振りの先頭に立つ吉川正晃理事の主張だ。小さな先進国1つ分ぐらいの規模があり、そこにはシャープやパナソニック、任天堂、村田製作所など名だたる製造業の拠点があり、学研都市もある。質の高い人材がコンスタントに輩出される大学の存在と、10年とか20年単位で地元にコミットする人たちがいるという2点は、スタートアップコミュニティが根付く上で重要な条件だ。これは米国の著名アクセラレータ「Techstars」を立ち上げた起業家で、投資家でもあるブラッド・フェルド氏が著書「Startup Communities」の中で言ってることだ。ブラッド・フェルド氏は、コロラド州ボルダーという小さな街にスタートアップコミュニティを根付かせた立役者の1人だ。彼はボルダーで可能だったモデルは、ほかの都市でも適用可能であるはずだと主張している。

スタートアップコミュニティが育つ土壌が関西圏にはあると思う。欠けているものは、経済学者のリチャード・フロリダが「クリエイティブ・クラス」と呼んだタイプの人々が一定範囲の場所に集まる密度なのではないかという気がする。核融合のように一定の密度と熱量に達すれば連鎖反応が始まるものであるとするならば、必要なのは「ここにみんなで集まろう」という場所と、そこに集まるコアメンバーなのではないか。もしそうなら、大阪市の旗振りをキッカケに「よっしゃ、分かった!」と思う人たちは今こそイノベーションハブにもっと集まるべきだと思うし、それをTechCrunchは後押ししたい。

大阪イノベーションハブが入居しているグランフロント大阪

ロンドンかて、「そんなん無理」とみんな思ってたよ

掛け声だけで何になるねん、と冷めた見方をする人もいるかもしれない。しかし、ロンドンの事例なんかは参考になるのではないだろうか。

ロンドンの「シリコンラウンドアバウト」(イースト・ロンドン・テックシティー)と呼ばれるスタートアップ企業の密集地区が生まれたのはごく最近のことだ。先日、大阪で開催された国際イノベーション会議 Hack Osaka 2014で基調講演をしたBERG共同創業者でCEO、マット・ウェッブ氏によれば、「2008年頃のロンドンにはテックなスタートアップというのはなかった。みんなサンフランシスコやニューヨークを目指した」そうだ。私は2009年にシリコンバレーに行き、当時Y Combinatorのパートナーを務めていたハジート・タガー氏にインタビューしたことがあるのだが、彼はまさにロンドンからサンフランシスコへ移住した1人だった。そんな彼は、ロンドンにスタートアップコミュニティが生まれるというのは非常に考えづらい、と言っていた。2009年当時にタガー氏が言っていたのは、ロンドンのテック系のミートアップに行くと参加者のほとんどが非テック系のコンサルやMBA、法律家ばかりということだった。実際に起業しているアントレプレナーは50人中3人もいればいいほうだと肩をすくめていた。一方シリコンバレーのミートアップでは参加者の半分以上が起業家ということも普通にあり、しかも成功者がゴロゴロいる。こうした密度の違いは越えがたいと話していた。そのとき私は「東京がシリコンバレーのようになることはあると思うか?どうすればそうなると思うか?」と聞いたのだが、シリコンバレーの中東料理店でランチを頬張りながら、タガー氏が寂しそうにただ首を振っていたのを思い出す。

ロンドンでスタートアップ企業が密集している「シリコンラウンドアバウト」

2011年の時点でもロンドンにはスタートアップ企業が急増していた

その後、タガー氏の予想は良い意味で裏切られた。2010年の段階でロンドンにスタートアップ企業は15社のみで、そのうちテック系は10社を数えるだけだった。「シリコンラウンドアバウト」という呼び名は2008年に生まれているが、これは自虐的なジョークとしてTwitter上でつぶやかれたツイートが元になったという。ラウンドアバウトというのは、ヨーロッパに良くあるクルマが360度ぐるぐる回る信号のない交差点だが、ぐるっと歩いて回れる程度の範囲という「小ささ」を、シリコン「バレー」の「峡谷」(valley)に対比して生まれた呼称だった。ところが、その後に2011年にはロンドンにあるスタートアップ企業の数は200〜300社程度となり、2012年には1300社程度に急増。2011年頃からは政府主導の旗振りでシリコンラウンドアバウトではなく「テックシティー」という呼び名を得たことや、2012年にグーグルが空きスペースをスタートアップコミュニティに解放したことなどと相まって、風向きが変わったのだという。2012年から2013年にかけて、1万5000社ものスタートアップがロンドンで生まれ、デロイト・テクノロジー Fast 50によれば、ロンドンのスタートアップ企業の5年間の平均成長率は1382%にも及ぶという。2012年の英国政府の統計によれば、いまや新しく生まれる雇用の27%はテクノロジー産業が占めているという。

今ではロンドンは、ヨーロッパでもベルリンと並んで押しも押されもせぬスタートアップシティとなっていて、TechCrunch Disrupt Europeも今年はロンドンで開催するということを発表したばかりだ。

ウェッブ氏は講演で「大阪だってロンドンのようになれる」と話を締めくくっていた。大阪がロンドンになれるかは私には分からない(そもそも比較するならリバプールちゃうんけーっ!というツッコミもある)。けれども、土壌とモーメンタムさえあれば、数年で活発なスタートアップシティが生まれる可能性があるということじゃないかと思う。大阪がそうならないと誰に言えるのか。「無理だ」という人は多いけれど、ロンドンだって、ほんの数年前までそう言われてたじゃないかと思うのだ。

製造業の伝統がある大阪ならではの「IoT」を

大阪には商業とともに製造業の伝統がある。

ということもあり、今回のハッカソンのテーマは「IoT」(Internet of Things)としたいと思う。「モノのインターネット」とも訳されるが、今やソフトウェアが特定のデバイスの中で閉じている時代ではなくなり、あらゆるものがネット接続される前夜という段階にある。今回のハッカソンでは複数メーカーの協力が得られることになっているので、APIで操作できるデバイスを使って新しい価値を生み出すような、そういうハッカソンになればと願っている。

TechCrunchが大阪でハッカソンをやる理由はもう1つある。それは関西圏と東京を結びたいということだ。だから、今回のハッカソンで優勝、準優勝したチームには11月に東京・渋谷で開催予定の年次イベント、TechCrunch Tokyo 2014でのブース設置権を贈呈したいと思う。ブース展示はハッカソンで作ったプロダクトでなくても構わないので、「機会があれば、本業とは違うプロダクトも作ってみたい」と思っているようなスタートアップ企業のチームにも、気軽にご参加頂ければと考えている。

昨年秋に東京で行ったTechCrunch Hackathon Tokyo。今年は大阪からの参加も歓迎したい

ハッカソン初日にはチームビルディングをするのでチームでも個人での参加でもOKだ

大阪と「MVP」は相性がええんとちゃうやろか?

さて、テーマはIoTと言ったが、密かに掲げたいテーマがもう1つある。「MVP」(ミニマム・バイアブル・プロダクト)だ。TechCrunch読者には今さら説明するまでもないかと思うが、MVPは定義もマチマチのようなので改めて説明させてほしい。

私の理解では、「MVPとは何らかの機能やサービスに市場性があるかどうかが分かる最小のプロダクトの実装」ということで、Wikipediaの英語版にある記述 に近い(日本語版WikipediaにMVPの項はない)。潜在顧客やアーリーアダプターに提供可能な最低限の機能セットをもったプロダクトのことだ。

スマートウォッチ「Pebble」の生みの親のエリック・ミジコフスキー氏が国際イノベーション会議 Hack Osakaで講演したときにも、MVPの重要性を語っていた。Pebbleのプロトタイプを作るとき、ユニットあたり数ドルのコストのために素材を探しまわったことは、振り返ってみれば意味がなかったというのだ。そんなことよりも、開発者を巻き込むエコシステムを1日も早く作ってフィードバックをもらうことが大事だと後に理解したのだという。初期ユーザーはアーリーアダプターやファンが多いので、完成度に対する要求レベルが低い。だから、初期段階では素材にこだわるよりも1日も早くMVPを作って出せというのだ。

MVPという方法論は、実装コスト単価当たりで得られるマーケティング上の知見を最大化するアプローチという言い方もある。最近では、ヘタしたらプロダクトを実装すらせずに、「ベータ版を間もなくリリースします!」と書いたユーザー登録ページだけを用意して実際には1行もコードを書かずに済ませるという話も良く聞くようになった。

プロダクトなしのユーザー登録画面だけというのは極端だが、もう1つの極端は、最初からプロダクトの完成形を議論したり、仕様にまとめたりして全てを実装しようとすることだろう。プロダクトが提供するコアの機能だけに絞って、まず「手触り」が分かるような実装をして自分自身や周囲、アーリーアダプター層に出してみてフィードバックをもらったほうがいいということがある。

ゴチャゴチャつけんでええねん! 本質はなんや!?

先日、TechCrunch Japanのティップス(tips@techcrunch.jp)に寄せられた個人制作のWebサイトを見ていて、これこそMVPではないかと思ったプロダクトがある。それは「中学3年生までに習う英単語だけで書かれた海外の英語ニュースだけをピックアップして表示するWebサイト」だった。メールに書かれたURLをクリックしてみると、確かに英語圏のニュースの中でも比較的平易なものだけが表示されていた。トップ画面に表示されていたピックアップニュースのうち、10個中1個ぐらいはエラーとなっていたが、それがまた良かった。10個中1個のエラーなんて、アイデアがイケてるかどうかを知るという目的の前では、どうでもいいことだからである。ログイン機能も全く不要だし、まして記事にタグを付けて分類したり、タグをフォローするなんて機能も不要。ソーシャルでシェアするボタンすら不要だ。必要なことは、毎日対象サイトをクロールして自動更新されるサイトを作り、自分自身で1日に2、3個の記事をクリックしてみること。そして、それを友人らに使ってみてもらいつつTechCrunchにリンクを送りつけることなのではないかと思うのだ。実際に私が抱いた感想は、「英単語こそ難しくないものの、文体や内容が平易というのにほど遠くて、これは誰が読むサイトなのか分からない」というものだった。それ自体はネガティブな感想だが、手を動かして実装してみたのは素晴らしいと思うし、あれこれ機能を付けずにコアバリュー1つだけに絞って実装してあったこと、そして荒削りなのを気にせずにTechCrunchに送ってきたことも素晴らしいと思った。

TechCrunchに送られてくる新サービスやアプリの案内の中には、見た目がイケていても「結局なんのサービスなの?」「誰かの役に立つの?」というものが少なくない。そして、最近あちこちのハッカソンに審査員として出ていて抱くのが似た感想だ。コアとなるアイデアや実装の周囲に2つ、3つと機能がある。デモではたいてい「こんなこともできます!」「そして、実はこれはxxxにもなるのです!」と言う。元々荒削りなプロトタイプなのだから、中途半端な機能を多く詰め込むよりも、機能は1つに絞って実装やメッセージを磨くべきではないのかと思うのだ。そこにキラリと光るものがあれば、ユーザーを獲得して人々の暮らしや仕事をラクにしたり、楽しくしたりする何かが生まれてくるというイメージが湧いてくるはずだと思う。そうした一点突破型のMVPを、もっと見てみたいと思う。

TechCrunch Hackathon OsakaでMVPをテーマに掲げたいと思ったのは、まさにこれが理由だ。いろんな機能を実装した「機能デモの集合」や「ウケそうだから実装してみた一発ネタ」よりも、世の中に良い変化を起こすために必要な最低限の機能を実装したMVPを評価したい。

左が東京のエレベーターの注意書き。右が私が書き直したもの

大阪とMVPは相性がいいと思うのだ。なぜなら大阪には本質的なことをズバッと言う文化があるからだ。ごちゃごちゃ説明しないで、ひとことでズバリを言う。遠慮がない。だから、電車のドアには「ゆびつめちゅうい」と書いてあるし、動物園のライオンの檻には「かみます」と書いてある。子どもでも分かるし、1秒で分かる。実にムダのない合理的な国民性を大阪人は持っている。東京では注意書きが責任逃れの予防策になり下がっていることが多い。「動物に餌を与えないでください。特に小さなお子様はご注意ください。檻に手を出すと場合によっては……」って読んでる間にガブっとやられたら、どないすんねん! ということだ。ごちゃごちゃとゴミみたいな文字で書いあるのだが、それは危険が及ぶ利用者に対する配慮なんかではなく、万が一のときに「ちゃんと書いてあるじゃないか」とサービス提供側が言うためだけに書いてある言い訳ちゃうのんか? そんなん上品に書いたって事故が防げんかったらしゃあないやんか。注意書きのコアバリューはなんや? MVPはなんや? 「かみます」に決まってるでしょうが!

いや、取り乱して申し訳ない……。隠れ大阪人として東京で暮らしていて抱きがちな違和感を、つい吐露してしまった。

本質は何やろうか? 何をやったら人は喜ぶんや? どうやったらお金を払ろうてもらえる商品になるんやろう? 商業の街として栄えてきた関西圏には、そういうことを徹底して考え抜く文化が連綿と引き継がれてると思う。そして、こうした文化は、シリコンバレーの人たちがいうMVPに通じるものがあると思うのだ。

と、いろいろと書いてきたが、TechCrunch Japanは大阪市と協力して4月12日、13日の週末に大阪でハッカソンを開催する。ぜひ、起業家、エンジニア、デザイナなど皆さんの参加をお待ちしている。詳細はまた別途お知らせする予定だが、ひとまず参加の受付を開始したので、早めの申し込みをお願いできればと思う。大阪を離れて20年になる西村だが、今回のイベントは大阪弁全開で参加させてもらいたいと思っているので、よろしゅうに!

photo by sakura


Twitter、ヨーロッパの博物館や美術館とのタイアップで「#MuseumWeek」イベントを開催

リアルタイムでニュースを感じ続けていたい人や、あるいはメディア業界にいる人々は、Twitterのことをなくてはならないものと考えている人が多い。但しTwitterはそこに留まることなく、さらに利用者層を広げたいと努力を続けている。さまざまな分野で「なくてはならないもの」として広め、そして誰もが利用するものとして定着させたい考えだ。そのような中、Twitterが今回着目するのは「アート」分野だ。3月24日から30日の1週間、Twitterはヨーロッパおよびイギリスにおける数百の美術館とタイアップして、スペシャルコンテンツを提供していく予定なのだそうだ。「Twitterを利用しているみなさんに、これまでに存在しなかった直接的な美術館体験を提供し、また美術館員の方々とのコミュニケーションの機会を提供いたします」とのことだ。

公式にタイアップする美術館は既に公表されているが、他にもいろいろな美術館の飛び入り参加を期待しているそうだ。「#MuseumWeek」のハッシュタグを使えばイベントに参加できる。参加を表明している美術館は次のような感じだ。サイエンス・ミュージアム(@sciencemuseum)、ロンドン自然史博物館(@NHM_London)、ヴィクトリア&アルバート博物館(@V_and_A)、大英博物館(@britishmuseum))およびテート・ギャラリー(@Tate)、それに小さなところではあるがRoald Dahl MuseumやPencil Museum(鉛筆のミュージアムだ)(@PencilMuseum) などとなっている。

今回のイベント以前にも、たとえばテート・ギャラリーでは昨年、ロイ・リキテンスタインのライブツアーを行った。ここでは「#TateTour」のハッシュタグを使って、キュレーターに質問したりもできた。このイベントの成果もあって、テート・ギャラリーはヨーロッパの中で最もフォローされるミュージアムとなり、また全世界でも3位となった(100万人以上のフォロワーがいる)。

テート・ギャラリーのDigital Communications部門ManagerのJesse Ringhamは「アート関連の話題を提供していくにつき、多くの人に注目して頂いていることを大変光栄に思っています」と述べている。「イギリス国内外の大小博物館ないし美術館が参加する新たなイベントに参加できることを、非常に楽しみにしています」とのこと。

Twitterでは同時期に美術館訪問者の話(#MuseumSelfies)、スタッフとのやり取り(#AskTheCurator)、あるいは美術館を巡るさまざまな話題(#MuseumMemories)なども盛り上げていきたい考えだ。

直近のアニュアルレポートによれば、2013年12月までの四半期におけるTwitterの月間アクティブユーザー(MAU)は2億4100万人であったとのこと。それまでの2期に比べて、MAUの伸びが低くなっている。Twitterは既存利用者層の活性化を狙うだけでなく、これまでにTwitterを利用していなかった層にもTwitterを利用してもらうために、いろいろな活動を行おうとしているわけだ。

スポーツイベントを楽しむために、Twitterを利用し始めたという人はかなりの数にのぼるようだ。Twitterとしては、今回のMuseumWeekにより、こうした「従来型行動との連携」による利用者ないし利用頻度の増加を狙っているのだ。イベントをきっかけに新たなムーブメントの誕生を期待しているわけだ。今回のイベントの仕掛け人でもあるMar Dixonは次のように言っている。「多くの博物館や文化事業団体などが、非常に有益で面白い情報をTwitter上で提供していることに注目してもらいたいのです。今回のイベントがそのきっかけになればとも思っています」。

Twitterはもともと文字情報のみを展開するメディアだった。最近ではビジュアル情報の充実を目指してさまざまな拡張を行っている。今回のMuseumWeekイベントもその一環として理解できるし、またそうした方向に成長していくことで、広告ビジネスモデルの確立を目指してもいるのだろう。

Image: Jan Steen, As the old sing, so twitter the young Wikimedia Commons.

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(翻訳:Maeda, H


SXSWのロボット・ボクシング試合でTechCrunchがVentureBeatを破る

噂とは違ってSouth by SouthwestのInteractive部門は野心的なアイディアのキーノートと真面目一方のパネルディスカッションばかりというわけではない。たまにはHammacher Schlemmerの提供による車輪付きボクシングロボット、Bionic Bopperカーに乗り込んで戦ったりする。 .

先週末にはDistil Networksが来場者に友だちとボクシングをしようと呼びかけて、怪しげなタイトルマッチなるものを宣伝していた。

私は古巣のVentureBeatのライター、Tom Cheredarを誘ってみた。するとTechCrunch TVのプロデューサーのSteve Longがその一部始終を録画した。そういうわけで結果はご覧のとおりだ。Cheredarはひととおりでなく悔しがっている。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


Google、モジュール入れ替え型スマートフォンの実現を目指すProject Araディベロッパー・カンファレンスを開催

Googleは、Motorolaによって展開されていたスマートフォンデザインの実験的プロジェクトを捨ててしまったわけではなかったようだ。Motorolaからの研究成果をATAP(Advanced Technology and Projects)にてProject Araにて進化・熟成させてきていた様子。ATAPはつい先日、3Dセンサーを活用するシステムであるTangoをリリースしたばかりだ。そのATAPが、今度はProject Ara関連のディベロッパー・カンファレンスを4月15日および16日に開催する旨のアナウンスを行った。開催場所はマウンテンビューのComputer History Museumだ。

ちなみにAraはモジュール組み込み型のスマートフォンで、自分で搭載パーツを入れ替えることで別種のセンサーや、性能の良いカメラを搭載したり、あるいはより大容量のバッテリーを利用するようにしたりといったことができるようにするものだ。Play Storeでアプリケーションを購入するような感覚で、新たなモジュールを入手して搭載モジュールと入れ替えて、より自分のニーズにあったスマートフォンに作り変えていくことができる。そうした仕組みを取り入れることで、わずかの期間のうちに、一部の機能アップデートが必要だからと新しいスマートフォンに買い直すといったことは必要無くなり、新しい機能をもったパーツ部分のみをアップデートしていくことが可能になるわけだ。

Googleによれば、年内に何度かAraディベロッパー・カンファレンスを開催していく予定だとのこと。今回は、4月にウェブ上でも公開する予定となっているAra Module Developers’ Kit(MDK)の紹介を主目的とするものだとのことだ。誰でも無料で使うことのできるプラットフォームであり、これを使って「なんでも必要なモジュール」を使うことができるようになる。カンファレンスはオンラインでも開催されるが、現地参加者も募集中だ。参加費用は100ドル(学生は25ドル)で、食事および現地でのセッション参加費用が含まれている。申し込み時に記す動機(application)にて出席の可否が決まるようだ。積極的に、熱意ある申込書を書く必要がありそうだ。

Araは、ひとつのデバイス上でモジュールをいろいろと入れ替えることで、すべてのニーズにこたえられるようにしたいとするものだ。あまりに壮大過ぎる目標だとも思えるが、ATAPとしては、あらゆるリスクを考慮しても利用者のニーズに答えていきたいということなのだそうだ。「壮大過ぎる」と言われるのは、むしろ「望むところ」であるのかもしれない。

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(翻訳:Maeda, H


Samsung Galaxy S5の詳細―防塵防水、心拍計、指紋スキャナ、4Kビデオカメラなど新機能多数

SamsungのGalaxy S5がはされた。5.1インチ、1920×1080ディスプレイを備えサイズはファブレットのジャンルに近いた。ホームボタン上に指紋センサー、裏側のフラッシュの近くに心拍モニターがあり、おそらくこれがもっとも実用的に効果が大きい改良点だろうが、防塵防水仕様〔IP67準拠・訳注参照〕となった。

このAndroid 4.4 Kitkat搭載フラグシップモデルは筐体デザインの面では現行モデルをほぼ踏襲している。やや大きなスクリーンを収容するために若干サイズが増加しているが、依然プラスティックのボディーだ(金属採用の高級版も存在する)。指紋スキャナー、心拍モニターはハードウェア上の大きな新機能だ。Galaxy S5はヘルスとフィットネスに大きな重点を置いているようだ。AppleのiOSの次世代版もこの方向だと噂されている。またS5ではカメラの能力も大きくアップした。


心拍モニター

alaxy S5では、モニターで計測した心拍情報をSamsungのフィットネス・アプリS Health 3.0に転送する。このアプリは歩数と消費カロリーのモニターもできる。また指先に取り付ける光学式心拍モニターも今回同時に発表されたSamsung Galaxy Gear 2スマートウォッチに用意されている。

指紋スワイプで支払い

もう一つの重要な新機能は指紋スキャナーだ。またしてもSamsungがAppleをコピーしたと非難する声も出そうだが、このスキャナーはiPhone 5のものとはまったく異なる。3種類の指紋を登録することができ、登録には8回のスワイプが必要だ(Appleのスキャナが指を押し付ける方式なのと異なり、Galaxy S5のものは指をボタンの上で滑らせるタイプ)。指紋認証は画面ロックの解除はもちろん、PayPalでのオンライン支払にも使える。

指紋認証でPayPalが利用できるということはオンラインでの購入だけでなく、リアル店舗での支払にも使えるということだ。Samsungはモバイル支払サービスを大幅な拡大できる可能性がある。もちろんそのためには使いやすいサービスの構築が必要だし、偽造その他の不正に対する耐性が十分かどうか検証されねばならないだろう。

またスワイプによる指紋認証でプライベート・モードを起動することができる。Galaxy Sのプライベート・モードでは、自分専用のファイル、フォルダーにアクセスできる。子供や他人に見せたくないコンテンツをモバイル・デバイスに保存しておけるようになったのはたいへん便利だ。

4Kビデオ、撮影後に焦点変更可能

カメラにも大幅な改良が加えられた。リアカメラは1600万画素で動画の録画解像度は4K対応だ(デバイスに搭載されているディスプレイは1080pなので解像度としては約4分の1)。Galaxy S5は最初の4Kビデオカメラ搭載モデルではないが、少数のアーリーアダプターの一つであることは間違いない。4Kテレビが普及期を迎えており、4Kコンテンツへの消費者の需要が高まっている現在、これは大きなセールスポイントになる。この調子だとホームビデオの画質が放送番組の画質を上回ることになりそうだ。

新カメラにはiPhone 5のようなスローモーションが備えられた。また高価でかさばるLytroのような撮影後に焦点を変更する新機能が追加された。モバイル撮影マニアを大いに喜ばせそうだ。撮影後後の焦点変更も今年の新機種のトレンドになりそうだが、メジャーブランドとしてはSamsungが一番乗りしたことになる。

オートフォーカスは高級デジタル一眼で標準となっているコントラスト検出と位相差検出の双方を用いるハイブリッド方式になった。Samsungによれば、合焦にわずか0.3秒しかかからず、スマートフォンのカメラとして過去最速だという

その他の仕様

その他S5のmicroSDスロットは、最新の128GBのSDカードをサポートする。またLTEとWi-Fiの双方を利用して高速でダウンロードができるダウンロード・ブースターも搭載された。

2.5GHzのSnapdragon 800、クオドコア・プロセッサー、2GBのRAM、NFC、LTE、Bluetooth 4.0、16GBまたは32GBのストレージなどは標準的だ。その他画面表示をモノクロにする省電力モードが用意されているのが面白い。4月11日に世界150か国で同時発売を予定しているという。

〔訳注:IP67とは国際規格で防塵6等級、防水7等級を意味する。防水能力としてJIS規格7等級相当となる。日本では通常「完全防水」と表示される。〕

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


TechCrunch School第3回は3月5日、受付開始! テーマは「スタートアップ企業のマーケティング戦略」

1月末に第1回を開催したTechCrunch Schoolは早くも第3回目となる。3月5日水曜日の夕方6時から、再び東京・秋葉原(末広町)で100名規模のミートアップを開催する。今日から参加申し込みの受け付けを開始したのでお知らせしたい。

今回のテーマは「スタートアップ企業のマーケティング戦略」だ。TechCrunch Schoolの1回目と2回目は大学生・大学院生を対象としていたが、今回はスタートアップ企業のマーケティング担当者やCxO、中でも特にCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)の肩書きを持つ人、そうした役割を設置する必要性を感じている起業家などの参加をお待ちしている。

今回はゲストスピーカーとして、プレスリリース・ニュースリリース配信サービスの「PR TIMES」でマーケティング本部アカウントプランナーを務める千田英史氏、自動家計管理・資産管理ツールを提供する「マネーフォワード」代表取締役社長でCEOの辻庸介氏(ブログ)、日本最大級のクラウドソーシングサイト「クラウドワークス」の代表取締役社長でCEOの吉田浩一郎氏(ブログ)の3名をお呼びしている。

千田氏には今どきのPRの成功事例を国内・国外でご紹介頂き、どういったPR手法が存在していて、なにがトレンドなのかといったことをお話し頂く。ネット上のバズ(シェア)によって爆発的に成功したキャンペーンの話など、昨今のトレンドが感じられるようなトピックをお話し頂けると思う。

クラウドワークス吉田浩一郎CEO

クラウドワークスの吉田氏はマーケティングについて「お金で広告を打ってもダメで、共感を得られるような文脈づくりが重要」と言う。革新(イノベーション)とは商品を見直すことよりも関係を見直すことが重要といい、クラウドソーシングについても「コストダウンが本質ではない。個を活かした「共創」によるモノ作りの始まりである」という風に捉えてメッセージを出しているという。企業のCSRっぽいキレイすぎる文言という気がしなくもないけれど、若い頃にビジョンや夢のない起業では人がついて来ない(裏切られた)という苦い経験したという吉田氏だからこその、本気の理念なのだろうと思う。使ってみれば分かるが、確かにクラウドソーシングというのは無味乾燥な発注・下請けという関係などではない、ということが多い。それがサービスを使ったことがない人に伝わらなければマーケットは広がらない。

マネーフォワードの辻氏も「共感」という言葉を使う。「KPIだけ見ていてもダメ。KPIからは共感が見えてこない。数字だけを見ていると(正しいことや、やるべきことを)やってるよう見えてしまう」という。これは私も同感だ。最近のネットのサービスは毎日のようにメールを送り付けてくるサービスがあってウンザリすることが増えた。数字だけ見ていれば、再訪率は上がるように見えるだろう。しかし、画面の前でウンザリしているユーザーがいることを想像しているだろうか、と感じることがある。

マネーフォワード辻庸介CEO

さて、辻氏は新聞やテレビといったマスメディアから、TechCrunchというニッチな専門媒体まで幅広いメディアの人間と付き合っていく中で、どういう頻度、ネタでプレスリリースを出すべきか、どういうストーリーにすれば記事になるのかといったことを考えながらマーケティング戦略を立てているという。「一般紙の記者は担当ジャンルが2、3年で変わるので、知識が追い付かないこともある。だから人間関係と同じで、分かってくれていると思ったら誤解されてたということも起こる」という失敗談なんかもパネルディスカッションでは共有してくれるだろう。ここら辺は、TechCrunchとしてもスタートアップ側の皆さんに知ってもらいたいことがあるので、私もそういう話ができればと思っている。

このほか、「C向けとB向けのマーケティングの違い」「スタートアップ企業の社長は自ら客寄せパンダとなるべきか?」「競合サービスとの差別化より市場拡大のメッセージを出すべきか?」といったようなテーマでパネルディスカッションができればと思っている。

さて、今回のパネルディスカッションでは、会場でのみ聞けるトークの時間として「オフレコタイム」を設けようと思う。パネルの模様は動画コンテンツとしてTechCrunch上での公開を考えているのだが、アーカイブに残る前提では話しづらい本音というのがある。

今回も参加は無料。19時半以降の交流会では食事とドリンクも用意するので、是非早めにお申し込みをいただければと思う。

TechCrunch School #3
スタートアップ企業必修!
「スタートアップ企業のマーケティング戦略とは?」
【開催日時】 3月5日(水) 17時半開場、18時開始
【会場】 東京・末広町 3331 Arts Chiyoda 3331 Arts Chiyoda地図
【定員】 100名程度
【参加費】 無料
【参加資格】 スタートアップ企業のCxO、CMO、またはマーケティングに携わる方
【ハッシュタグ】#tcschool
【主催】 AOLオンラインジャパン
【協賛】 PR TIMES
【内容】18:00~18:05 TechCrunch Japan挨拶
18:05~18:20 講演セッション「いまどきのPR成功事例」(PR TIMES 千田英史氏)
18:30~19:30 パネルセッション「スタートアップ企業のマーケティング戦略とは?」パネラー:
千田英史氏(PR TIMES)
辻庸介氏(マネーフォワード 代表取締役社長CEO)
吉田浩一郎氏(クラウドワークス代表取締役社長CEO)モデレーター:
西村賢(TechCrunch Japan編集長)

19:40~21:00 懇親会(アルコール、軽食も出ます)
【申し込み】イベントページから事前登録必須
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp


次世代Samsung Galaxy Sの概要明らかに―発表は来週火曜のスペインのイベント

Samsungのスマートフォンの新しいフラグシップモデルは来週月曜〔日本時間火曜〕からスペインのバルセロナで開催されるMobile World Congressで発表されるものとみられる。

新モデルの詳細もだいぶ明らかになってきた。 Bloombergその他によれば、鮮明度の向上した5.2インチ・ディスプレイ、容量が拡大したバッテリー、改良型のカメラを備えるという。それに網膜あるいは指紋スキャナーが加わるかもしれない。

指紋スキャナーはSamsung専門サイトのSammobileによるもので、このサイトはかなり信頼性が高い。Sammobileによれば、Samsung Galaxy S5は8種類まで登録可能な指紋スキャナーを備えるという。デバイスのアンロック、特定のアプリの起動、個人情報を記録したフォルダのオープン、新しいプライベート・モードの起動などに指紋認証が利用できる。プライベート・モードでは通常隠させているファイルやフォルダが表示されるようになる。指紋スキャナーはホームボタンに内蔵され、ユーザーはその上に指を滑らせて(iPhone 5の場合はセンサーに指をあてるだけ)指紋を読み取らせる。

Bloombergが伝える改良点は新世代へのアップデートの際に通常予想されるようなものだ。ディスプレイは対角線長5.2インチのサイズで、現行GalaxyS4の5インチよりやや大きく、「鮮明度が高い」という。おそらく現行の1080 x 1920(441 ppi)よりも解像度が高いという意味なのだろう。

今回のBloombergの記事にはバッテリーとカメラの改良に関する詳しい情報は含まれていなかった。以前の記事ではリアカメラは16MP、リチウムイオン・バッテリーの容量は現行の2,900mAhから3200mAhに拡大されるとあった。

いずれにせよ正確なところはすぐに判明する。Samsungは中央ヨーロッパ時間2月24日午後8時にバルセロナでUnpacked5というイベントを開催する。TechCrunchではライブ・ブログで内容を報じる予定だ。

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Crunchies賞、受賞者決定―最優秀スタートアップはKickstarter、最優秀ハードウェアはOculus VR

第7回を迎えたわれわれのCrunchies賞の最優秀スタートアップ賞は、CloudFlare、Snapchat、Twitter、Uberという強敵を破ってKickstarterが獲得した。Chris Saccaが最優秀エンゼル投資家賞、DropboxのDrew HoustonとArash Ferdowsi が最優秀ファウンダー賞、Tinderが新スタートアップ賞、Oculus VRが最優秀ハードウェア賞をそれぞれ受賞した。

―受賞者の発表セレモニーの開始にあたってホストのJohn Oliverは(多少は激励の意味もあったろうが)「Crunchiesに敗者はいない。ノミネートされたものはすべて勝者だ。ただ受賞を逃したものがいるだけだ」と述べた。われわれはすべてのノミネーション対象者に深い敬意を払い、クレージーなイノベーションを日々生み出しているスタートアップとそのファウンダーたちを賞賛するものだ。

各部門の受賞者は以下のとおり。


最優秀テクノロジー
Apple A7 Processor – ―次点
Bitcoin – ―受賞者
Node.js
Planet Labs low-cost satellites
Project Loon

最優秀共同消費サービス
Airbnb – ―受賞者
Crowdtilt
DogVacay
Homejoy
Lyft – ―次点

最優秀eコマース・アプリケーション
BarkBox
Good Eggs
Polyvore – ―次点
Warby Parker
Wanelo – ―受賞者

最優秀モバイル・アプリケーション
Mailbox
Snapchat – ―受賞者
Tinder
VSCO Cam
WhatsApp
Vsco Cam – ―次点

最速成長スタートアップ
Lulu
QuizUp – ―次点
Tinder
Upworthy – ―受賞者
Whisper

最優秀ヘルス・スタートアップ
Fitbit
MyFitnessPal
One Medical Group – ―受賞者
Oscar – ―次点
Practice Fusion

最優秀デザイン
Exposure by Elepath
Nest Protect
Pencil by FiftyThree – ―受賞者
Hi
Yahoo Weather – ―次点

最優秀自己資金スタートアップ
Grammarly – ―次点
Imgur – ―受賞者
NerdWallet
SmugMug
TaskUs

最優秀エンタープライズ・スタートアップ
Box
ClearSlide
New Relic – ―次点
Optimizely
Zendesk – ―受賞者

最優秀国際スタートアップ
BlaBlaCar – ―次点
Huddle
Supercell
Waze – ―受賞者
Xiaomi

最優秀教育
Code.org – ―次点
CreativeLIVE
Duolingo – ―受賞者
Khan Academy
Treehouse

最優秀ハードウェア
3D Robotics – ―次点
Oculus VR – ―受賞者
SmartThings
Sonos
Square

最優秀エンタテインメント
Candy Crush Saga – ―受賞者
Netflix – ―次点
Tinder
Vibease
Vine

最大ソーシャル・インパクト
Code.org – ―次点
Crowdtilt
Edward Snowden’s NSA Revelations – ―受賞者
StopWatching.Us
Watsi

最優秀エンゼル投資家
Steve Anderson
Michael Dearing
Keith Rabois
Babak Nivi & Naval Ravikant – ―次点
Chris Sacca – ―受賞者

最優秀ベンチャーキャピタリスト
Peter Fenton (Benchmark) – ―受賞者
Jim Goetz (Sequoia Capital)
Reid Hoffman (Greylock Partners)
Bill Maris (Google Ventures)
Bijan Sabet (Spark Capital) – ―次点

最優秀ファウンダー
Arash Ferdowsi & Drew Houston (Dropbox) – ―受賞者
David Karp (Tumblr)
Aaron Levie (Box) Lee Holloway , Matthew Prince & Michelle Zatlyn(CloudFlare) – ―次点
Deena Varshavskaya (Wanelo)

最優秀CEO
Jeff Bezos (Amazon)
Dick Costolo (Twitter) – ―受賞者
Travis Kalanick (Uber) – ―次点
Marissa Mayer (Yahoo!)
Elon Musk (Tesla Motors & SpaceX)

最優秀2013年創立スタートアップ
Anki
Coinbase – ―次点
Glow
Tinder – ―受賞者
Whisper

最優秀スタートアップ
CloudFlare
Kickstarter – ―受賞者
Snapchat
Twitter
Uber – ―次点

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満員御礼! TechCrunch School第1回開催報告と、第2回の申し込み受付開始のお知らせ

TechCrunch Japanでは、1月31日金曜日の夕方に、東京・末広町で「TechCrunch School #1 ベンチャー投資家に学ぶスタートアップ概論」を開催した(告知記事)。ゲストスピーカーとしてクロノスファンド EastVentures パートナーの松山太河氏と、ベンチャーキャピタルファンドANRIのパートナー佐俣アンリ氏のお二人に登壇頂いた。講演、パネルディスカッションとも素晴らしいお話を頂けたし、来場した「起業に前のめり」な学生さん同士の交流も活発だったし、第1回目として盛況のうちにスタートを切れたと思う。申し込みは告知後24時間以内に定員がイッパイになり、想定以上の反響だった。わざわざ京都など東京近郊以外から参加してくれた人も少なくなかった。

クロノスファンド EastVenturesパートナーの松山太河氏

ここで簡単に第1回の開催報告と、第2回の告知をしたいと思う(前回申し込みが間に合わなかった!という人は以下は読み飛ばして申し込みページへゴー!)

「起業か就職か?」の問いに「就職興味ないっす」の声も

「スタートアップ概論」というテーマで学生からの申し込みが一瞬で集まったことも驚いたのだが、もっと驚いたのは当日の参加者の前のめり感だ。

事前アンケートで「起業に興味あり」とした回答は9割を超えていたが、「まあそうは言っても大半は大企業に就職するんだろうけどね」という話を内部ではしていた。ところが、交流会などで来場者と話をしてみると、これが驚くほど誰も彼もが起業を目指しているというし、すでに事業を始めて儲かっているという話や、VCから資金調達を受けている学生さんも来ていた。

例えば、読書の感動を共有するサービスという「Booklap」を提供するProsbee代表取締役CEOの笠井レオ氏はIncubate Camp 3rdの最年少出場者としてVCから資金を得て大学2年生で起業した学生さんだ。せっかくなので会場では前に出てきて自己紹介をしてもらったが、実は2週間前に退学届けを提出したところなのだとか(!)。

forEstの後藤匠氏は、東工大の大学院生。受験参考書などをタブレットで閲覧し、復習や類題探しを最適化できる新サービス「ATLS」(アトラス)を準備中だという話だった。「参考書がどのように選ばれてどのような使われ方をしているのかというデータを出版社に提供してtoB向けに出版コンサルをしたり、個人の学習傾向や苦手分野などの個人データを軸にして他のEdTechサービスを繋ぐハブのようになれれば」と話していた。ほかにも、共同編集型比較表「Wikiparison」を開発する河又翔平氏を始め、スタートアップ企業、あるいは関連企業でインターンをしている学生さんが非常に多かった。

リアルなアドバイスや洞察に満ちたトーク

ベンチャー投資家の松山太河氏には「スタートアップ概論」の講演をお願いしてあったのだが、起業するにあたって本当に大切なことは何か? というお話しを頂いた。シード期の資金調達の存在意義とは何か……というような、どちらかと言えば「型」に関するスタートアップ入門的なお話し以上に興味深かったのは、スタートアップに関わる人々の精神面に関するリアルな洞察やアドバイスのほうだ。

例えば、多くのスタートアップや起業家を見てきた松山氏が、成功のカギとして挙げた3つの要素は、「実力 x 意志の力 x 善悪」だったりする。起業家やチームに実力があるだけではダメで、ほかに意志の力と善悪判断の伴った思い入れのある・なしがスタートアップの成否に強く影響するという。善悪について松山氏は、こう指摘していた。「社会的に求められているもので、社会の問題を解決するために頑張っているという人は強い。プレゼンで魂が入ってくるし、採用でも有利。採用は、その人(起業家)が本気かどうかで決まる面があるから」。意志の力や善悪(社会的意義を起業家自身が強く信じていること)によって実力以上の結果が出せる、というのが長年ベンチャー投資をしてきた松山氏の観察だ。

起業家が人材採用することに関しての生っぽいアドバイスとしては、遠くのスーパーエンジニアよりも身近にいる友だち、という発言もあった。いまどきのネット時代の若者はみんな勉強熱心で耳年増。だから、目が肥えていて人材に対するハードルが上がりがち。若い人は半年ほどで別人になるほど能力を開花させる人もいて伸びしろが大きいので、むしろある時点での能力よりも友だちとしてどうかという人格を見たほうがいいというアドバイスだ。

松山氏によれば、2014年、2015年は資金調達がやりやすい流れになっていて起業環境は悪くないという話。新卒で企業に就職しても初任給は年収でせいぜい400万や500万。自己評価で「切れ者」だと思っているのなら、シードファンドで400万円ぐらい調達し、その次の資金調達で2000万円も集めれば3000万円ぐらいになる。チームメンバーが3人として、それぞれ300万円の年収でやれば3年間は走れる。大学院に行ったと思えば、何らかのアイデアにかけてみる価値はある、という話だった。

実際に起業のリスクには、どういうものがあるのか? 起業と大企業への就職という選択肢の間には、どんな道があり、それぞれのメリット・デメリットは何なのか? そんな「起業か就職か」というテーマを巡って話していた感もあるパネルディスカッションでは、ベンチャーキャピタルファンドANRIのパートナー佐俣アンリ氏も加わって、割とアグレッシブな議論が展開した。

佐俣アンリ氏(左)と松山太河氏(右)

「アグレッシブ」と書いたのは、起業を勧めるトーンが強かったからだが、それには理由がある。一般論としては学生一般に就職より起業を勧めるような大人はいないと思うが、対象によっては話が変わってくる。すでに書いたように、TechCrunch School第1回は、TechCrunch上で告知しただけなのに24時間で参加枠が埋まった。ここにやってきた人たちは一般論で話しかけるべき学生ではない、というのが松山氏や佐俣氏の見立てだったようだ。

さて、当日の講演とパネルの模様は近日動画で公開する準備を進めているので楽しみにしていてほしいのだが、投資家の松山氏は、むしろ来場者同士の交流こそを深めてほしいと語っていて、実際、開催時間を過ぎても会場で話し込む人たちが多かったのは開催サイドとしては嬉しいことだった。

TechCrunch Schoolの第2回のテーマはグロースハック

第1回開催から、まだ時間があまり経っていないのだが、TechCrunch Schoolの第2回目を2月17日月曜日18時から開催することとしたので、お知らせしたい。

第2回のテーマは「グロースハック」。今回も参加者は大学生・大学院生に限らせて頂ければと思う。ちょっと現場寄りなテーマではあるが、スタートアップ企業というのは「起業」の中でも爆発的成長を遂げる企業群のこと。小さく始めて少しずつ成長するスモールビジネスとは異なる。昨今そうした爆発的に規模を大きくするスタートアップでカギと言われているのが「グロースハッカー」という主にユーザー数やトラフィックの成長をドライブする人々である……、というのは恐らくTechCrunch読者であれば説明不要だろう。

TechCrunch Schoolの第2回には海外スピーカーとして、LaunchRockの創業者であるJameson Detweiler氏、そして国内スピーカーとしてファッションSNSの「iQon」を運営するVASILYの金山裕樹氏にご登壇頂けることとなった。

LaunchRockは製品のプレローンチサイトを簡単に設置し、バイラルで拡散するためのツール。Detweiler氏はプロダクトをバイラルに拡散していく際の知見や経験の豊富な人物。学生起業家や起業準備中という人であれば、会場で個別のアドバイスをもらえるかもしれない。一方、VASILYの金山裕樹氏は、Yahoo!JAPANに入社後、Yahoo!FASHIONなどの立ち上げに参画し、その後株式会社VASILYを設立し代表を務めている人物。VASILYではファッションコーディネートアプリのiQonを運営しながら、専門のグロースチームも設置しており、ここでの経験をシェアしてくれるだろう。

パネルセッションでは、顧客獲得のためのモバイルSDKを提供するAppSociallyの高橋雄介氏にモデレーターをお願いして「新しい専門キャリア、グロースハッカーとは?」というタイトルで3人にお話しいただく。グロースハッカーというのはかなり新しい専門職だが、コーディング、データ、デザイン、UX、マーケティングなどの重なる領域におけるグローバルなキャリア、専門性形成ができる職種だ。その実際のところと今後の可能性について、学生の皆さんにとって興味深い話が聞けるのではないかと思う。

また今回のイベントには特別ゲストとして元TechCrunch Japan編集長で、現在B Dash Venturesでシニア・インベストメントマネージャーを務める西田隆一氏にも参加して頂けることとなっている。シード期の投資やPR関連で話を聞いてみたい学生さんは、メディアの視点も投資家の視点も持っている彼に相談すると、良いアドバイスがもらえるかもしれない。第1回と同様に、交流目当てに来て頂くのも大いに歓迎だ。

というわけで、TechCrunch School第2回の開催概要は以下の通り:

【イベント名】

TechCrunch School #2
学生起業家、その予備軍へ!
内外注目スタートアップに学ぶグロースハックの基礎
【開催日時】 2月17日(月) 17時半開場、18時開始
【会場】 東京・末広町 3331 Arts Chiyoda 3331 Arts Chiyoda地図
【定員】 100名程度
【参加費】 無料
【参加資格】 大学生もしくは大学院生
【ハッシュタグ】#tcschool
【主催】 AOLオンラインジャパン
【協賛】 リクルートホールディングス
【内容】

18:00~18:05 TechCrunch Japan挨拶

18:05~18:45 講演セッション「グロースハックとは」(LaunchRock創業者 Jameson Detweiler氏)

18:50~19:30 パネルセッション「新しい専門キャリア、グロースハッカーとは?」

モデレーター:高橋雄介氏(AppSocially創業者)
パネラー:Jameson Detwiler氏(LaunchRock創業者)
金山裕樹氏(VASILY創業者)

19:40~21:00 懇親会(アルコール、軽食も出ます)

特別ゲスト:西田隆一氏(元TechCrunch Japan編集長、B Dash Venturesシニア・インベストメントマネージャー

【申し込み】イベントページから事前登録必須
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp


2月の「Growth Hacker Month」に、海外のグロースエキスパートが東京に大勢やってくる

Optimizely CEOのPete Koomen氏も来日

2014年2月の1カ月間を通して、「Growth Hacker Month」(グロースハッカー・マンス)というミートアップ・シリーズが開催予定だ。シリコンバレーから著名なグロースの専門家を招聘して、講演やグローサソン(グロースハックのハッカソン、前回の記事を開催する。グロースハッカー志望者や売り出し中のスタートアップ企業、そして企業の中で新規事業としてアプリやサービスを出している担当者などにとって注目のイベントとなると思う。

イベント全体はリクルートが主催していて、グローサソンのほうはCCIの主催でアライドアーキテクツ本社(東京・恵比寿)で開催されるSocial Media Week Tokyo 2014において行われる。私はGrwothHacker.jpの立場から、このイベントの企画に協力しているので、ここで概要について紹介したい。スケジュールは、ざっと次の通りだ。

【RECRUIT Growth Hacker Month】

  • 2/5(水)18:30~ Andrei Marinescu (500 Startups)
  • 2/12(水)18:30~ Kyle Wild (Keen.io)
  • 2/18(火)13:00 -19(水)16:00 Growthathon
  • 2/24(月)18:30~ Janice Fraser (Luxr), Pete Koomen (Optimizely)
  • 2/26(水)18:30~ Nir Eyal (NirAndFar)

各ミートアップへの参加登録方法は、GrwothHacker.jpでアップデート予定だが、ここでは登壇予定者と、それぞれのプロフィールを紹介しよう。

2/5(水) 18:30に登壇するAndrei Marinescu氏は、500 StartupsのDistribution Hacker-in-Residenceであり、投資先企業のグロースのアドバイスをハンズオンで行っている。500 Startupでの投資先支援に従事する前には、ViddyHuluMOGにて、グロースチームの指揮をとっていた経験あるグロースハッカーだ。

2/12(水) 18:30に登壇するKyle Wild氏は、Keen.ioの創業者兼データサイエンティストであり、かつては、GoogleでGoogle Analyticsに関わっていた。Keen.ioはテックスターズ出身のデータ分析のためのプラットフォームを提供しており、500 Startupsのメンターとしても、グロース、データサイエンスなどについてのアドバイスをしている。

2/24(月) 18:30には、Luxr代表のJanice Fraser氏とOptimizelyの創業者兼プレジデントであるPete Koomen氏が登壇する。Janice Fraser氏は、Adaptive PathのCEOを経て、Lean UXの専門家集団であるLuxrを創業し、シリコンバレーを中心に多くのスタートアップおよび大企業のLean UXの実践をサポートしている。主にウェブサイト上のユーザ体験の向上に貢献しているAjaxという言葉は、彼女が生み出したものだ。

同じく2/24(月)に登壇するPete Koomen氏は、言わずと知れた世界一のA/Bテストツールを提供するOptimizelyの共同創業者だ。Optimizelyの共同創業者であるDan Sirokerは、2008年の大統領選挙キャンペーンのオバマ陣営でアナリティクス担当ディレクターとして勝利に貢献した人物として有名だ。Peteは、Google時代には、Google App Engineの開発を率いていた。Peteはソーシャルメディアウィークでも、最終日の2月21日金曜日の11時からキーノートを行う予定。

2/26(水) 18:30には、Nir Eyal氏が登壇する。Nirは、グロースハックの必須分野である消費社行動心理学の専門家であり、製品のグロースのためにどのように習慣を培っていくかについて書いた「Hooked」という書籍を最近上梓したことでも話題になっている。彼は、シリアルアントレプレナーでもあり、現在は、NirAndFarというグロースのアドバイスを行うコンサルティングファームを創業し、500 Startupsを始め、スタートアップや大企業の支援を行っている。

上記以外にも、現在調整中のゲストがいるので、最新情報はGrwothHacker.jpでお伝えするのでご期待頂ければと思う。


日本上陸間近? Spotifyがソーシャルメディアウィークにやってくる

2月17日から5日間、東京を含む世界8都市で「ソーシャルメディアウィーク」が開催される。東京で3度目の開催となる今回は、初の試みとしてハッカソンを実施。そこでは、数年前から「日本上陸間近」と言われている定額制音楽配信サービス「Spotify」がAPIを提供するとともに、イベントスポンサーにも名を連ねている。Spotifyの一部UIはすでに日本語対応していることもあり、いよいよ立ち上げ準備が最終段階に入ったのかもしれない。

Spotifyのイメージ

Spotifyは2008年10月にスウェーデンでサービスを開始。Sony Music EntertainmentやEMI、Warner Music、Universal Musicといった主要音楽レーベルと提携し、2000万曲を配信している。一定間隔で広告を配信するかわりに無料で聴けるFree版と、広告がなくオフラインでも聴ける月額9.99ドルのPremium版がある。2013年12月時点では欧米など55カ国に展開し、月間アクティブユーザー数は2400万人、うち600万人が有料会員だという。

そのSpotifyがソーシャルメディアウィークでAPIを提供するのは「Music Hackday」と題するハッカソン。アーティストやデザイナー、プログラマー、デベロッパーが集まり、SpotifyのほかGracenoteやThe Echo NestなどのAPIをもとに、ソフトウェア、ハードウェア、モバイル、ウェブ、楽器、アートなど、音楽が関係していれば何を作ってもアリというイベントだ。東京・原宿の会場で2月22日から夜通し24時間ハックに打ち込める環境を用意している。一度帰宅して2日目に再参加することも可能だ。

日本でSpotifyの立ち上げ準備を進めているハネス・グレー氏は、Music HackdayでAPIを提供するにあたって、TechCrunchからの取材に対して次のようにコメントしている。「日本の音楽産業は活気に満ちていて、テクノロジーコミュニティも賑わっている。ハッキングの精神で音楽と技術を組み合わせるのは心が踊る。Spotifyはさまざまな音楽体験を可能にするAPIをいくつか用意しているので、Music Hackdayでお会いしましょう」。

ハッカソンはこのほか、エンジニアやマーケター、デザイナーでチームを組み、サービスが成長段階で持つ課題を解決することを目的とした「Social Media Week TOKYO 2014 グローサソン」を2月18日に、記者やエンジニア、アナリスト、ウェブデザイナーが1つのチームとなり、社会問題をデータに基づいて分析し、わかりやすいビジュアルで伝える「データジャーナリズム・ハッカソン」を2月20日に開催する。


「TechCrunch School」始めます! 第1弾は「ベンチャー投資家に学ぶスタートアップ概論」

ここ数年、TechCrunch Japanでは毎年秋に1000人規模のイベントを実施している。去年の2013年11月のTechCrunch Tokyo 2013では、ハッカソンCTO NightMashup Award 9といったイベント内イベントを開催することでエンジニア層の参加も増え、2日間で約1500人の方にご来場いただく大きなイベントとなった。

起業家や投資家という直接的にスタートアップに関わる人が参加する「スタートアップの祭典」として大きく成長するだけでなく、大企業で新規事業を担当されている方や、新しいアイデアやプロダクトを持ったチームとの提携を模索するマーケターといった方々、テック系トレンドを追うエンジニア、財務や法務関連のサービスを提供するプロなど、幅広い層の方々にご参加いただけるようになっている。日本では才能・モノ・資金などのリソースが大企業に豊富にあるので特にそうだが、スタートアップコミュニティというのは起業家や投資家だけではなく、より広い範囲のビジネスパーソンやクリエーターが参加するエコシステムであるべき――、TechCrunch Japanではそう考えていて、オンラインでもオフラインでもビジネスのキッカケや出会い、交流の場を提供するような「場」になれればと願っている。

不定期で50〜100人規模のイベントを開催

こうした考えもあって、TechCrunch Tokyoという大型の年次イベントとは別に、今後50〜100人規模のイベントも不定期で開催していくこととした。学びや出会いの場という意味を込めて「TechCrunch School」と名付けて、主に平日の夕方から夜にかけて集まってカジュアルな交流ができる場としていきたい。

成功した起業家や経営者の方々、あるいは注目のスタートアップの創業者をお招きしてお話し頂くことを考えている。公開の場でTechCrunchスタッフがインタビューするような形式や来場者から質問を募りつつ、「講演+パネル&QA+交流会」という構成で食事やビールも用意するイベントだ。イベントの様子は記事化や動画掲載による紹介を検討している。

ちなみに、TechCrunch Shoolと「School」という語を入れたのには、Y Combinatorが行っているStartup Schoolの名にあやかったというのもあるし、TechCrunch Japanが入居しているのが秋葉原の外れにある廃校となった中学校を改築した建物で、ここのイベントスペースでの開催するからという理由もある。会場となる場所には黒板や教壇もあったりするし、実はTechCrunch Japanでは打ち合わせを学校の椅子に座って行うこともあったりする。

さて、そのTechCrunch Schoolの第1弾として、スタートアップ業界の著名な2人の投資家をお招きした。

クロノスファンド、East Venturesパートナーとして知られている日本を代表するテック系ベンチャー投資家の1人である松山太河氏と、まだ20代でありながら独立系ベンチャーファンド ANRI を立ち上げて多数のスタートアップ企業に投資している佐俣アンリ氏の両名だ。

イベント概要は以下のとおり。

【イベント名】

TechCrunch School #1
就活生も知っておきたい!
ベンチャー投資家 松山太河氏に学ぶスタートアップ概論

【開催日時】 1月31日(金) 17時半開場、18時開始
【会場】 東京・末広町 3331 Arts Chiyoda地図
【定員】 70名程度
【参加費】 無料
【参加資格】 大学生もしくは大学院生
【ハッシュタグ】#tcschool
【主催】 AOLオンラインジャパン
【協賛】 リクルートホールディングス
【内容】

18:00~18:05 TechCrunch Japan挨拶

18:05~18:45 講演セッション 「スタートアップ概論」(East Ventures パートナー 松山太河氏)

18:50~19:30 パネルセッション 「2014年の日本のスタートアップ業界の展望」
参加者:松山太河氏(East Ventures)、佐俣アンリ氏(ANRI)、西村賢(TechCrunch Japan)

19:40~21:00 懇親会(アルコール、軽食も出ます)

【申し込み】イベントページから事前登録必須
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp

今回は概論なので、起業に興味がある、あるいはこれから社会に出て行く学生さんたちに集まってほしいと考えている。もちろんすでに起業していて松山氏、佐俣氏に会いたいという人も大歓迎だ。学生起業家でTechCrunchに売り込みたいという人も歓迎したい。

松山氏には、そもそも起業するとはどういうことかを俯瞰できるような概論をお願いしている。資金調達や資本政策の話に始まり、事業と組織の成長を遂げてIPOやM&Aというエグジットに至るスタートアップのライフサイクルや、スタートアップを取り巻く環境には、どういう役割の人がいるのかというエコシステムの話を、テック系スタートアップの本場とも言えるシリコンバレーと、2014年の日本という両軸でお話し頂けるようお願いしている。

起業とかスタートアップというのがどういうものかをイメージとして理解しておくのは、今後企業への就職を考えている若い人たちにとっても重要なことだと思う。起業という選択肢があるということを知るという意味でも、今後企業内で新規事業を始めるような場合であっても、そうだ。

パネルセッションでは投資家の佐俣アンリ氏に加わっていただき、もう少し具体的な話を掘り下げつつ会場からの質問にも答える形で進められればと思う。佐俣氏は学生に年齢も近く、投資先スタートアップのメンバーとも日常的に接しているので、来場頂く学生のみんなとも感覚が近いものと思う。

グローバルな視点で見た場合、いまの日本はスタートアップブームといえる状態なのか? ライブドア事件以後やリーマンショック以降に起業環境は変わったのか? 起業のトレンドはどう変わっているのか? 昨今、大企業とスタートアップが提携するという動きも増えているが、今後起業を取り巻く環境はどう変わっていくのか? そもそも起業という選択肢が昔に比べて特殊でなくなっているのだとしたら、それは働き方が変わりつつあるということなのだろうか? ぶっちゃけ、起業のリスクって、どんなもの? アイデアやプロダクトはあるけど、どうやれば投資を受けられるの? 投資のプロは事業計画書の何をみるの? などなど、質問を寄せてもらえればと思う。

今後のTechCrunch Schoolのイベントがそうというわけじゃないけれど、今回は参加者を大学生と大学院生に限らせて頂いている。当日会場では参加者に大きな名札を付けてもらって、交流を促せればと思う。志を同じくする他大生と出会う場となるかもしれない。

イベントは1月31日金曜日の18時から。参加申し込みは前日まで受け付けているが、定員になり次第、先着順で締め切らせて頂くので、早めに以下からお申し込み頂ければと思う。

「TechCrunch School #1 ベンチャー投資家 松山太河氏に学ぶスタートアップ概論」参加のお申し込みはこちらから→


マーサ・スチュワート、CESで3Dプリンタを研究―大型Makerbot Z18お買い上げになるもよう

3Dプリンタと空飛ぶドローンが大人気だが、マーサ・スチュワートもその例に漏れなかった。私はCES 2014の南ホールでマーサ・スチュワートを案内するという光栄に浴し、Parrot、Form Labs、MakerBotその他いくつかのブースを回った。

スチュワートはわれわれの新企画CESハードウェア・バトルフィールド賞の審査員を務めてくれることになっている。スチュワートは日頃からイノベーションに関心があり、新テクノロジーが一般消費者の生活にどんな影響を与えるか知っておきたいと考えている。しかし今回はとkに3Dプリンタを研究したかったという。マーサは多数の生活用品をデザインし販売しているので、そのプロトタイプづくりに利用できないか考えているのだ。

3Dプリンタの区画を訪れる前にはわれわれはParrotの最新のオモチャ、おおきな車輪がついて空を飛ぶMini Droneや地上専用だがカメラを備え、ジャンプもできるSumo Roverのデモを見た。

スチュワートはすでにAR.Drone 2.0を所有しており、所有する施設や、海で泳ぐ孫たちの動画を撮影している。しかしやはり、スチュワートの真剣な関心を引いたのはプロトタイプの製作用に購入を考えている3Dプリンタだった。

われわれはFormlabsとMakerbotを訪れた。スチュワートがいちばん気に入ったのはMakerbotの大型の産業用プリンタ、Z18だった〔幅30.5cm、奥行30.5cm、高さ45.7cmで価格6499ドル。スチュワートは「それは安い」と感心し「きっと買うわ」と語っている〕。

しかし、スチュワートは単に見て回るだけでなく、Makerbotの共同ファウンダー、CEOのBre Pettisと「マーサ・スチュワートの3Dプリントできるコレクション」などの提携の可能性についても話し合っていた。

ツアーの最後に私はMarthaを初級レベルの3Dプリンタのブースに案内した。この3Doodlerは私が知る限り最安の3Dプリンタで価格はわずか99ドルだ。接着剤を加熱して押し出すグルーガンのようなシンプルは仕組みだ。しかしMarthaはこの製品の精度にはあまり満足できないようだった。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


経産省、大企業とベンチャーをマッチングするイベントを開催

経済産業省は、ベンチャー企業と大企業のマッチングを図るイベント「新事業創出支援カンファレンス」を1月29日に開催する。目玉企画の「大企業ピッチ」ではKDDIやNEC、セブン&アイ・ホールディングスなどの大企業10社が登壇し、「今、我々が求めているベンチャーとは」をテーマに約10分間のプレゼンを実施。ベンチャーにとっては大企業にどうやってアプローチすべきかがわかる貴重な機会になりそうだ。

イベントではこのほか、アジア人初の米GE元副社長を経て、現在はLIXIL社長を務める藤森義明氏によるキーノートスピーチ、「ベンチャーと大企業のコラボレーション」をテーマにしたベンチャーキャピタリストらのパネルディスカッションが行われる。開催日時は1月29日13時から18時まで。会場は東京・ベルサール新宿グランド。参加費は無料で、事前の登録が必要となる(先着700人)。

イベント終了後には、大企業の経営者約100人と、ベンチャーキャピタリストなど70人が推薦する次世代ベンチャーの経営者約500人、上場・著名ベンチャーの経営者が一堂に会する「TOKYO イノベーションリーダーズサミット」も開催する。これは招待制イベントで、業務提携、資本提携、M&Aなどの機会を作ることを目的としている。


新日本プロレス社長が語るネット戦略、看板興行「1.4」をスペイン語でUst中継する理由

1月4日はプロレスファンにとって特別な日である。国内最大手の新日本プロレスが1992年以降、ビッグイベント「レッスルキングダム」を東京ドームで毎年開催しているからだ。ファンから「1.4(イッテンヨン)」の愛称で呼ばれる年に1度の看板興行の生命線はチケットの販売枚数。にもかかわらず、昨年からはUstreamニコニコ動画で有料ライブ配信する取り組みを開始。それ以外にも記者会見をYouTubeで配信したり、主要選手の大半がTwitterを使ったりと試行錯誤を重ねている。そんな新日本プロレスのネット戦略を手塚要社長に聞いた――。

新日本プロレスの手塚要社長

新日本プロレスは1980年代に黄金時代と言われたブームを迎えたものの、1990年以降はK-1やPRIDEなどの格闘技人気に押されて低迷。しかしその後、2012年1月に親会社がゲーム会社のユークスからカードゲームのブシロードに変わり、再び復調の兆しを見せている。売上高はブシロード傘下前の11億円から2013年7月期で16億円、2014年7月期は20億円に達する見込みだ。売上増はチケットやグッズ販売、PPV(ペイパービュー)視聴などが寄与している。

復活の要因は選手や試合内容の魅力もさることながら、「以前と大きく変わったのがネットを始めとするメディア戦略」と新日本プロレスの手塚要社長は語る。その言葉通り、ブシロード傘下後は広告宣伝を重視。1.4に向けても、山手線の交通広告、テレビ朝日のTVCM放映、渋谷や新宿、秋葉原、池袋で走らせる宣伝トラックなど、12月上旬から下旬までの期間で「一つの大会としては最高額の広告宣伝費」を投入しているのだという。

ネットについてはFacebookやTwitter、Google+で公式情報を発信したり、YouTubeでは記者会見や試合のダイジェストを配信。新日本プロレスの所属選手に対してはTwitterの利用を推奨し、今では全レスラーの3分の2がアカウントを開設しているのだとか。選手のつぶやきはファンがにやりとするような内容も目立つと、手塚氏は話す。

「メールの返信もままならなかった“野人”こと中西(学)選手もやっていて、この出来事自体がニュースにも取り上げられた。遠征先ホテルの朝食バイキングの写真を『頂くドン』などと投稿している。邪道選手はももクロのことばかりつぶやいていたりと、リング上と違う顔を見せている」

ネット経由のPPVを始めたのは2012年8月から。1.4をライブ配信するのは2014年で2度目だ。興行は来場者を増やしてナンボの世界。ネット配信するのは矛盾しているようにも思えるが、「チケット収入が減るというのは一昔前の考え。見てもらう選択肢を増やすべき」と手塚氏は語る。

「1.4は毎年テレビ朝日で放送している。それを見ればタダだけれども、リアルタイムではないし、すべての試合を見られない。ライブコンテンツを最大限に楽しむのはやはり会場とはいえ、場所や時間の関係で行けない人もいる。売上はまだまだだが、コンテンツが『ワンソース・マルチユース』の時代ではネット経由のPPVは欠かせない。」

ネット活用で意識しているのは「時代に取り残されないこと」と手塚氏。「プロレスはネットのトライアル&エラーがしやすい環境。年間100試合以上しているので、この会場ではこれをやろうと試せる」。試行錯誤の一環として今回の1.4では、Ustreamで従来の日本語と英語、中国語に加えて、スペイン語による実況解説を用意し、主にプロレス文化が根付くメキシコに向けて配信する。「プロレスを見せることだけでなく、見せる方法も追求していきたい」。