WeWorkが中国国内で提供する新しいサービスは、スターバックスの良きライバル?

中国国内におけるスターバックスの台頭は、ちょうど西洋と同様に、家庭と職場の間で立ち寄る「第三の場所」としての機能と、密接に結びついている。近年、多くのコーヒー起業家たちが、中国国内におけるこのアメリカの巨大企業の地位を脅かそうとしている。そして今度は予想外の競争相手 ―― WeWork ―― がその流れに加わった。

オフィステナントとワークプレースサービスプロバイダーであるWeWorkは、今月WeWork Goを立ち上げた。これは中国国内の利用者たちに、机を分単位で貸し出す新しいサービスである。このおかげでユーザーは長期のリース契約に縛られる必要がなくなったのだ。スターバックスが無料の場所と有料のコーヒーを提供しているのに対して、WeWorkはその関係を逆転させて、無料のコーヒーと有料の場所を提供するのだ。スターバックスはすでに、ライバルの新興企業であるLuckin Coffeeの挑戦を受けている。同社はスターバックスとの対決を鮮明に打ち出し、コーヒーデリバリーのモデルに集中している。

WeWork Goは他の共有サービスと似た点がいくつかある。ユーザーは移動する前に、一覧上のオフィスの混み具合をアプリでリアルタイムにチェックすることが可能だ。オフィスに到着すると、ユーザーは入口でQRコードをスキャンし、ドアを開けて、共有エリアに着席するが、その時点から請求が始まる。

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WeWork Goは、WeChat miniプログラムを通じてアクセスできる。スクリーンショット:TechCrunch

同社は、人の流れは綿密にモニタリングされているため、共有スペースが一時利用のユーザーたちで溢れ返ることはないと述べている。個室を予約するためには追加料金が必要だ。WeWorkの中国本社が置かれる上海内の18か所で、3ヶ月にわたるパイロットを行った結果、5万人の登録ユーザーを集めることができたとGoは主張している。

中国向けに

ネイティブアプリを開発する代わりに、WeWork GoはWeChat miniプログラムを介して運用されている。WeChat miniプログラムというのは、中国最大のソーシャルネットワークの中に存在する簡易アプリケーション形式だ。miniプログラムは、開発が比較的容易なために、スタートアップがアイデアを試すための、人気の高い方法になって来ている 。「(Goは)私たちの中国向けローカライズの中心的開発なのです」と、WeWorkの広報担当者はTechCrunchに語った。

Goはいわゆる「一時利用ユーザー」向けに合わせられている。「そうした人たちは、月々のメンバーシップを購入しません。彼らは、自宅や、コーヒーショップ、レストラン、あるいは図書館で働くのです」とTechCrunchに語るのは、WeWork Chinaでイノベーションとテクノロジーを率いるDominic Penalozaだ。彼は以前、Naked Hubというオンデマンドワークプレイスサービスのコンセプトを作り上げた人物だ。これはWeWorkにとっては地元の小さな競合相手だったが、昨年WeWork Chinaが4億ドルで買収した。合併後、エグゼクティブと彼の技術チームは共にWeWorkに参加し、後にGoとして実現されたプロジェクトの開発を続けて来た。

この「使った分だけ支払い」(pa-as-you-go)機能は、米国本土でも先週マンハッタンの新しいオフィスでも導入された。

Penalozaは、Goが「フリーランサー、モバイルワーカー、ビジネス旅行者、あるいは一時的にオフィスから離れて気持ちを落ち着かせたい人のための代替スペース」を提供するという意味で、コーヒーショップたちと競合する可能性があることを認めている。明らかなターゲットはスターバックスである。なにしろ同社は中国の急成長しているコーヒー市場の51%という大きなシェアを占めているのだ。

WeWork向けに

WeWorkにとっては、Goは月々のサブスクリプションを申し込むか否かを決めようとしている人にとっての、お試し機能として役立つ。そうした人たちが思案するのは、上海のダウンタウンでは1830元(271ドル)になるホットデスクの月極料金だ。比較のために挙げるなら、Goの料金は1時間あたり最低15元から始まり、プレミアロケーションでは30元に達する。この料金の中にはフルタイムのホットデスクと同じサービス(共有スペースへのアクセス、飲み物、そしてWi-Fi)が含まれている。

ユーザーは自分にとって有利なプランを自分で計算することができる。「もしWeWork Goメンバーとして始めて、サービスをたくさん使うようになったとしたら、月極料金のサブスクリプションに登録した方が遥かに経済的だということに気が付くでしょう。Wealo Goは、WeWorkがまったく新しい市場セグメントにリーチすることを可能にするのです」とPenalozaは語る。

柔軟な価格設定は、大企業からの収益の大部分を生み出しているWeWorkが、より幅広いユーザーベースにリーチすることを助けるかもしれない。中国のシェアードオフィス業界は、不動産業界研究者のJones Lang LaSalleが呼ぶところの「第2段階」に突入した。そこではWeWorkや地元のSoho 3Qのような大企業がプレミアムワークプレイスに参入してきている。一方資金不足のスタートアップたちは、徐々に政府に支援された低料金のインキュベーターに向かうようになってきた。

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写真:WeWork China

Goの初期ユーザーの何人かは、TechCrunchに対して、このサービスは大部分のコーヒーショップよりも、「より静寂」で「より快適」な雰囲気を提供してくれると語った。だが、急いでいるときにはそこまでの距離が重要となる。WeWorkは現在、中国の十数か所の主要都市に約60か所の拠点を展開している。一方スターバックスは3330店舗におよぶ密なネットワークを形成しているが、2022年末には6000店舗に拡大することを狙っている。WeWork Chinaは、昨年Naked Hubを買収したことで場所を増やし、またレストランなどのサードパーティのスペースを、レンタル対象に追加することは可能だと述べているが、そのビジョンに向けた確固たる一歩はまだ踏み出していない。

「繁華街には本当に面白いチャンスがあります。そこにあるWeWorkとNaked Hubは、ランチ後から午後5時まで本当に満席なのです」とPanalozaは指摘した。「驚くべきことに、その付近にあるレストランは、その時間ほとんどガラガラなのです。なので、そこには魅力的な機会があるのですが、私たちはまだ何もしていません」。

[原文へ]
(翻訳:sako)

空きスペース予約サービス「インスタベース」で最大50%の「直前割」が設定可能に

Rebaseは1月29日、同社運営のレンタルスペース予約サービス「インスタベース」において「直前割」機能の提供を開始した。加えて、スペースの予約が申し込み完了と同時に確定となる「今すぐ予約」の最短確定時間を1時間前から0時間前に短縮し、より効率的に空きスペースを活用できるようになった。

「直前割」とは、インスタベースのスペース掲載者が利用日より7日〜0日前の間に割引率を10%〜50%の5%単位で設定できる機能。同社が2017年と2018年の予約申請から利用日までの期間を比較したところ、直前(前日から2日前まで)の予約の比率が全体の予約の25%まで増加していることがわかったそうだ。「直前割」はこのような背景を基に生まれた機能とのこと。

インスタベース経由で利用できる空きスペースは、首都圏、東海圏、近畿圏を中心に約5200カ所。同社は、直前割機能の提供によって空き在庫に対して予約が入る確率を上げ、より収益期待値の高いスペース運営を実現したいとのことだ。

冷蔵庫シェアリング「よじげんフリーザ」が東京23区でサービス開始

シェア店舗の物件情報サイト「よじげんスペース」を運営するよじげんは1月29日、冷蔵/冷凍庫の空きスペースを店舗間でシェアリングできる「よじげんフリーザ」のサービス提供を開始した。冷蔵/冷凍庫のシェア自体は、既存サービスのよじげんスペースでは実施済みで、そのノウハウをベースに新サービスとして独立させる。

冷蔵/冷凍庫を提供するホスト店舗と、冷蔵/冷凍庫を利用したいゲスト店舗の登録受付が東京23区内の店舗限定でスタートしており、登録が一定数に達すると該当エリアのサービスを順次開始していくという。

同サービスを利用することで、自店舗の徒歩圏内に月額5000円から冷蔵庫を持てる。食材の保存のほか、かき氷機など特定期間に利用する機器の保管などが可能になる。「荷物を置く場所がない」という課題を解決しつつ、荷物の預かりによって収益を得えられる仕組みを目指す。サービス開始当初はイタズラ防止のため利用店舗は非公開とし、LINE経由でホストとゲストの登録とマッチングを実施する。

対象店舗は、飲食店、酒屋、氷雪販売業、物販店、冷蔵/冷凍倉庫などの店舗/倉庫で、現時点では個人は登録できない。税別の料金帯系は以下のとおり。ドリアンなどの匂いのきついものについては対象外となる。冷蔵庫を貸す店舗側は、手数料20%を差し引いた額が指定の口座へ入金される。

  • 常温:5000円/畳一畳程度を想定
  • 冷蔵:5000円/50リットル程度を想定
  • 冷凍:5000円/50リットル程度を想定

今後は、IoT温度計、冷蔵庫内カメラ、庫内温度記録システムなどを駆使して、安全で便利に利用できるサービスに進化させていく計画とのこと。

塾講師シェアリングサービスの事前登録を開始、家庭教師が約500名在籍

prdは、東京大学、東京工業大学、一橋大学に在籍している学生講師(家庭教師)の授業を、コンテンツとしてシェアできるサービス「レクシェア」(仮)の法人事前登録を開始した。塾における集客の難化、人材不足に対応するサービス。「自宅学習指南」や「志望校対策」など生徒の成績上昇をサポートしていくという。prdは、2018年1月設立のスタートアップ。

コンテンツとしてシェアできる「レクシェア」(仮)の法人事前登録を開始

ユーザーが授業コンテンツを購入すると、該当する学生講師が指定された日時に学校や塾などに出向いて実際に授業を行うという仕組み。授業コンテンツは以下の5項目で、知識や経験を生かしたさまざま形式で提供される。

  • 特定科目の特定領域の指導
  • 学習環境や親のあり方に関連する保護者向け指導
  • 自宅での学習を効率化させる勉強の仕方の指導
  • 特定の志望校向けの対策指導(中・高・大それぞれ)
  • 学校選択や学部選択の参考になる出身校の試験情報や学校生活の紹介

同社は2019年1月時点で約500名の東大、東工大、一橋大の学生ユーザーを擁する家庭教師マッチングサイト「スマートレーダー」を運営しており、レクシェアはスマートレーダーに登録している学生講師と、塾や学校などの教育事業者をマッチングすることで実現。

学生講師の多くは、大学受験だけでなく、中学受験や高校受験でも成功しているケースが多く、それぞれのベストプラクティスも理解し、体系化しているという。どのような学習環境がいいのか?、親としてどう接したらいいのか?、家でどう勉強すればいいのか?など、一般的な教育機関にはないコンテンツを提供できるのが強みとしている。

同社はレクシェアによって、家庭内学習への延伸、生徒獲得競争の激化、講師人材採用の難化という3つの課題の解消を目指す。なお今回の法人向け事前登録特典として、初期費用が無料、リリース前から格安プランでの利用、オンデマンドによるコンテンツ提供が受けられる。

家具レンタルの「airRoom」がオフィス家具レンタルの「Kaggレンタル」と提携

月額制家具のレンタルサービス「airRoom」を運営するElalyは1月24日、オフィス家具のレンタルサービス「Kaggレンタル」を運営する47インキュベーションとの業務提携を発表した。家具をシェアリングする文化の形成と活性化をより促すという目的での業務連携となる。

「airRoom」と「Kaggレンタル」が業務提携

2018年10月に正式ローンチした「airRoom」は現在、個人ユーザーが8割を占めており、引越しや模様変えに最も多く利用されているという。一方、2018年8月にリリースされた「Kaggレンタル」は、法人ユーザー数が伸長。

両社ともユーザー数の伸長に伴い、配送の効率化やユーザーが期待する商品ラインアップの拡充といった問題が生じていたが、業種が近いことから解決すべき課題に類似性が見られたことも業務提携につながったようだ。

業務提携の第1弾となる取り組みは、配送のシェアリング。配送対象の地区や日程が共通している場合に、両社の配送網をフル活用してユーザーに家具を届ける仕組みを構築するという。

ElalyでCEOを務める大藪雅徳氏は「『Kaggレンタル』との提携を通じ、より一層『家具を所有するだけではなく、利用する事』を通じ、新しい物の所有の形に様々なあり方を持てる文化の形成、活性化に努めてまいります」。47インキュベーションで取締役を務める梁原立寛氏は、「所有から利用への変化や、必要な数を必要な期間だけ使うという利用形態の普及を、共に促進していきたいと思います」とコメントしている。

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場所の“時間貸し”普及へ、スペースマーケットが8.5億円を調達——東京建物やJTBらから

さまざまなスペースを1時間単位から貸し借りできるプラットフォーム「スペースマーケット」。同サービスを展開するスペースマーケットは1月23日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資と金融機関からの融資により、総額8.5億円を調達したことを明らかにした。

今回は同社にとってシリーズCという位置付けで、11月に紹介した東京建物を含む複数社からの資金調達もこのラウンドに含まれる。参加した投資家は以下の通りだ。

  • 東京建物(新規)
  • JTB(新規)
  • 広域ちば地域活性化投資事業有限責任組合(広域ちば地域活性化ファンド / 新規)
  • XTech Ventures(新規)
  • マイナビ(既存)
  • オプトベンチャーズ(既存)
  • みずほキャピタル(既存)
  • SBIインベストメント(既存)
  • 千葉功太郎氏(既存)
  • その他社名非公開の事業会社数社と投資ファンド1社(いずれも新規)

2016年にオプトベンチャーズなどから4億円を調達した際に比べて、今回のラウンドでは東京建物やJTBなど事業会社の名が目立つ。

スペースマーケット代表取締役社長の重松大輔氏によると「場所の時間貸しをもっと当たり前にしていくことを目指し、(特に新規の投資家については)親和性の高い事業会社と連携を深めることを重視した」とのこと。各事業会社とは資本面だけでなく業務面でもタッグを組み、サービスのさらなる拡大を目指していくという。

業界活性化に向けてCM実施、法人とのアライアンスも強化

スペースマーケットは2014年4月のローンチ。個人や企業が保有する遊休スペースを時間単位で貸し借りできるこのプラットフォームには現在1万件を超えるスペースが掲載されている。

スペースのジャンルもイベント会場や会議室から、撮影スタジオ、映画館、住宅など幅広く、借り手となるユーザーの用途も会社のイベントやプライベートの女子会、本格的なロケやCMの撮影スポットなど、どんどん多様化している状況だ。

特にここ1〜2年で様々な領域でシェアリングエコノミー関連のサービスが広がったこともあり、スペースマーケット内でも貸し借りのサイクルが回るようになってきたというのは11月に紹介した通り。一方で重松氏が「まだまだ認知度は低い」と話すように、直近では「スペースの時間貸し文化」自体をさらに広めるための取り組みを進めてきた。

実際に見かけたという人もいるかもしれないが、11月からはテレビCMを実施。マス向けにレンタルスペースの概念や利用シーンのイメージを訴求するとともに、並行して法人とのアライアンスにも力を入れてきた。

今回資本業務提携を締結した東京建物とJTBはその代表例だ。東京建物との連携については前回の記事で紹介しているので詳しくはそちらに譲るが、重松氏いわく「サプライサイドを強化する」ための取り組み。

簡単に説明すると東京建物が保有する遊休スペースをスペースマーケットで扱うことによって、魅力的なスペースを拡充するだけでなく、時間貸しが根付いていない不動産市場に変化を加えようという試みだった。

一方でJTBとの提携は「特に法人を軸にしたデマンドサイドを強化する」こと、つまりスペースマーケットに並ぶスペースの利用をより活性化させることが目的だという。

JTBとは大きく2つの軸で協業する計画。1つは法人営業連携によるビジネスシーンでの利用の拡大で、JTBが顧客のニーズに応じてスペースマーケット上の場所を提案するというものだ。

背景にあるのはJTBが日本全国のクライアントへ実施しているMICE支援(Meeting : 会議・研修、Incentive tour : 招待旅行、Conference : 国際会議・学術会議、Exhibition : 展示会)においてニーズが多様化していること。オフサイトミーティングや社内イベントの満足度を向上させるためにユニークなスペースを活用したいというエンドユーザーの要望と、法人の利用を促進したいというスペースマーケットの考えが一致した。

「スペースマーケットはもともと法人向けのサービスとして始まったが、近年は個人ユーザーの利用が急速に伸びてきている状況。一方で法人のニーズは十分に取りきれておらずポテンシャルはあるものの、自社だけでは取りこぼしてしまうような部分もあった。(JTBは)法人向けの営業が強く、今後強化しようとしていることもあり、自社にとっては力強いパートナーだ」(重松氏)

スペースマーケットには廃校や古民家など特徴的なスペースも多い。たまには気分を変える意味も込めて、このような場所で社内の行事やミーティングをやってみるのも面白そうだ

2つ目として地域交流事業における連携を通じた地方の遊休スペース活用も進める。JTBグループが展開する地域交流事業のメニュー内でスペースマーケットの時間貸しスキームを用い、短時間のイベントや会議時の場所としてスペースの提供を行っていく計画だ。

サービスの成長とともにスペースの活用方法も多様化

こうした枠組みに加えて、企業の商品サンプリングなどマーケティングやプロモーションの文脈で遊休スペースを活かそうという動きも加速している。

12月にはプロジェクターやスピーカー機能を搭載したスマートライトを開発するpopInとコラボし、全国20のスペース内で同社のライトを体験できるプロジェクトを実施。同様に独自のコンセプトで開発された家具や家電製品を扱う企業を中心に、自社製品を実際の生活に近しい環境の中で試してもらいたいというニーズが増えてきているという。

たとえば炊飯器やオーブンなどを探している場合、店頭では実際にご飯を炊いたり調理をして使い勝手を試してみるといったことは難しい。パブリックなスペースではなくプライベートな利用シーンに近い形で友人や家族と製品を手にとって試せる機会はこれまであまりなく、企業としても「体験」にフォーカスした新たな商品訴求の場となり得る。

このようにシェアされた遊休スペースを企業のブランディング用途で活用するという取り組みは、重松氏自身もサービスローンチ当初から明確に思い描いていたものではない。まさにスペースのシェアエコが少しずつ広がる中で、その利用方法もどんどんアップデートされていっているような形だ。

「会社としてはこの1月で5周年を迎えるが、立ち上げ当初は自分自身もこのマーケットが存在するのか、存在するとしても国内でレンタルスペースの活用が根付くのか不安もあった。ただここにきて時間貸しが徐々に一般化しつつある。『akippa』など周辺ビジネスも盛り上がってきているほか、大企業も巻き込めるようになり手応えも感じている。この流れを加速させ、時間貸しを当たり前の選択肢のひとつにできるように、さらなる事業拡大を目指したい」(重松氏)

スキマ時間に働ける飲食店特化の単発ワークプラットフォーム「sukima works」

Yoloは1月23日、飲食店に特化したスキマ時間に働ける単発ワークプラットフォーム「sukima works」(スキマワークス)のサービスを開始した。

飲食店に特化したスキマ時間に働ける単発ワークプラットフォーム「sukima works」

飲食店アルバイトの有効求人倍率は4.18倍に達するなど、業界では労働力不足が深刻化している一方で、働き手としては「日払い」や「単発バイト」などシフトや給与の受け取り方に制約のないニーズが増加傾向にある。スキマワークスは、これらのニーズをマッチングすることにより飲食業界の労働力不足の解消を目指すという。

sukima worksの特徴

サービスローンチ時で、有名チェーンや個人事業の店舗など都内500店舗超が登録しているほか、時給1200円以上や当日現金払いのアルバイトもある。面接や履歴書を一切なくし、電話番号の認証によって即時に応募できるシステムを構築している。主な職種は、ホール接客や調理補助など。

曜日と店舗を選べばスキマ時間に働ける。時給1200円のアルバイトもある

Sukima Worksが提供するのはマッチングまでのため、契約形態については飲食店と従業員が直接やり取りして決める。単日のアルバイトでは、日々労働契約を結ぶケースが多くなるとのこと。、飲食店から見ると労働者はアルバイトの扱いになる。なお、総額9300円以上の給与の支払いの際は法律に準じた源泉徴収もある。

現時点では同社で保険を適応するシステムはないが、具体的には決まっていないとしたうえで将来的な付与は検討しているという。

写真右から2人目がYoloでCEOを務める赤荻 心氏

野菜のように、顔の見える生産者から電気を買う「みんな電力」が11.8億円調達

「顔の見える電力プラットフォーム」を提供するみんな電力は1月21日、シリーズBラウンドにおいてTBSイノベーション・パートナーズ、SBIインベストメント、TOKAIホールディングス、セガサミーホールディングス、丸井グループ、電通から11億8000万円を調達したと発表した。

みんな電力は電力小売業を営むスタートアップ。でも、普通の電力小売とはちょっと違う方法で電気を販売している。最近、道の駅や一部のスーパーなどでは野菜を作った人の顔が見えるように、農家の人々のプロフィールが入ったポップアップが売り場に用意されていることがある。みんな電力は、それと同じように、電気を発電した人の顔が見ることができ、その発電所を「応援」することが可能なプラットフォームだ。

みんな電力のWebページにいくと、電気の生産者の一覧ページがある。そこに掲載された発電所のプロフィールページでは、どんなひとが、どこで、どれくらいの電気を発電しているのかが分かる。みんな電力と契約して電気を買うユーザーがその中から応援したい発電所を選ぶと、電気料金の一部がその発電所に寄付される仕組みだ。みんな電力に供給される電気の約75%以上は、太陽光発電などの再生可能エネルギー電源で発電され、固定価格買取制度(FIT)を通して事業者に販売された「FIT電気」だ。だから、ユーザーはみんな電力を通して再生可能エネルギーの普及にも協力することにもなるというわけだ。

みんな電力は今回調達した資金を利用して、ブロックチェーン技術を用いたP2P電力流通プラットフォーム「ENECTION2.0」の商用化を進める。

固定価格買取制度は、個人などが再生可能エネルギー電源で発電した電気を一定期間のあいだは電力会社が固定価格で買い取ることを国が保証するという制度だ。しかし、みんな電力によれば、しかし前身となる「余剰電力買取制度」ができてから10年が経過した今年、2019年11月にはその買い取り期間が終了する電源が50万件以上発生する見通しだ。そうなれば、個人が電気の生産者にもなり、自由契約で電気を売ることが可能な時代になる。みんな電力はその時代に併せてENECTION2.0を拡大することで「誰でも再生可能エネルギーを作り、シェアできる社会」を目指すという。

荷物預かりサービス「ecbo cloak」にアプリ版登場、プラットフォーム化への布石

手荷物預かりサービスを展開するecboは1月21日、これまで提供してきたWeb版に加えて新たにiOSおよびAndroid版のアプリをリリースすると発表した。

TechCrunch Tokyo2017の卒業生でもあるecboが提供する荷物預かりサービスの「ecbo cloak」は、荷物を預けたい人と荷物を預かるスペースを持つ店舗をつなぐサービスだ。すでに東京、京都、大阪、福岡など主要都市で利用することができ、店舗提携数も100を超える。

同社はサービスリリースからこれまで2年間、ecbo cloakをウェブアプリとして提供してきた。しかし、外国人観光客などの利用も増え、ユーザーからアプリ版の要望が多かったことからアプリのリリースに踏み切ったという。専用アプリを用意することで、UIや検索機能が刷新され、よりスムーズなユーザー体験を提供可能になるという。

しかし、ecbo代表取締役の工藤慎一氏によれば、今回のアプリリリースの理由はそれだけではないという。これまでecboは荷物をあずけたいユーザーと、預かるスペースを持つ店舗などとのマッチング機能の提供に専念してきたが、今後ecboはそれ以外の機能も提供していく。

同社がどのような機能を用意しているかはまだ分からないが、工藤氏はプレスリリースの中で「このアプリはただの荷物一時預かりアプリにとどまらず、今後僕たちecbo社が創り出したい、ボタン一つで自分のモノをすべて管理できる『モノの管理プラットフォーム』への大きな一歩になると確信しています」と語っている。

引越しシェアの「Hi!MOVE」はトラックの共有で低価格実現、荷物写真を使った即時見積もりも

時間が経つのは本当にあっという間だ。つい先日2019年がスタートしたと思いきや、気づけば1月もすでに半分以上が経過した。今の時期と言えば、4月から新たな環境でチャレンジを始めるにあたって、そろそろ引越しの準備を本格的に始めようという人もいるのではないだろうか。

本日1月18日にリリースされた「Hi!MOVE」は、シェアリングエコノミーの概念を取り入れた“新しい引越し体験”を提案するサービスだ。トラックをシェアすることで「少しでも引越し料金を抑えたい」というユーザーに新たな選択肢を提供するとともに、荷物の写真を撮ることで手軽に見積もりを算出できる仕組みを構築した。

荷物写真を用いて即時見積もり、トラックのシェアで低価格実現も

同サービスでは引越し予定日や現在および新居の住所・間取りといった最低限の住所を入力し、荷物の写真を撮るだけで即座に見積もりを確認することができる。

一般的な引越し会社のサイトや一括見積もりサービスの場合、最初の段階で名前や電話番号といった個人情報を求められたり、家財情報など多くの項目を入力しなければ次のステップへ進めないケースも多かった。一方でHi!MOVEは基本情報と荷物写真から算出された金額にユーザーが納得した場合のみ、詳しい情報を入力して手続きを進めるフローを採用している。

手元のスマホを使って対象となるモノの写真を取ればその場ですぐに料金が表示され、その情報を基に申し込みの意思決定ができるという点は「CASH」を始めとする即時買取サービスの体験にも似ているかもしれない。

またHi!MOVEは単に見積もりをすぐに確認できるだけでなく、一般的な相場よりも料金を安くできるのも特徴だ。

上述した通り同サービスでは1台のトラックを複数の引越しでシェアするほか、作業時間フリーを前提とすることでトラックの空き時間や空きスペースを有効活用。運営元のGLIDEで代表取締役を務める荒木孝博氏によると「(一般的な貸切型の引越しと比べて)だいたい3〜4割は安い価格を提示できる想定」だという。

もちろん多少高くても時間をピンポイントで指定したいユーザーにとっては従来の仕組みの方が使いやすいかもしれない。ただ近年話題になっている「引越し難民」のように、料金がネックになって引越しができずに困っている人には新しい選択肢になりうるだろう。

Hi!MOVEではまず1名の引越しを対象に、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県からスタートする計画。サービスの利用状況などを踏まえながら対象ユーザーやエリアの拡大を進めるほか、相場確認から支払いまでをスマホで完結できるクレカ決済やQRコード決済機能(現時点の決済方法は指定口座への振込み)、トラックの空満状況を表示する機能、不用品の買取オークションサービスなども検討していくという。

「引越し一括見積もりサイト」を5年続ける中で見つけた課題

2014年1月創業のGLIDEは、これまで5年間に渡って「引越し達人セレクト」という引越し一括見積サイトを運営してきた。

約20年ほどの歴史があるというこの業界においては後発ながら、ここ2〜3年で着実に実績を積み上げてきた同社。その反面いくつかの課題にも直面し「件数が伸びてきた中で今後もこのモデルだけで続けるのはどうなのだろうということもあり、何かしら新しいサービスにも取り組みたいと考えていた」(荒木氏)という。

実際に引越しを検討するユーザー側にとって、一括見積サイトは一度情報を入力すれば複数社の見積もりが確認できるという点では効率が良い仕組みだ。ただ僕自身も経験があるのだけど、各社からひっきりなしに電話がかかってきて、毎回似たようなやりとりを繰り返すのはなかなか大変。人によっては相当ストレスに感じるかもしれない。

荒木氏の話でも、やはり引越し会社とのやりとりで不便を感じているユーザーが一定数いたほか、見積もりをすぐに調べたいというニーズや、(最初の段階で)個人情報を提供するのに抵抗があるという声も多かったという。

引越し業者としても一括見積サイトは重要な集客チャネルとなっている反面、相見積もりが前提となるため成約率が低いことや、特に中小の業者ではスタッフの人数が限られていて十分な対応ができないことが課題だ。

これらに加えて、近年は引越し業者の人手不足などが原因となり引越し難民のような新たな社会問題も生まれている。

「昔は繁忙期で需要があれば何が何でも対応するという企業もあったが、今は労基問題や人手不足などもあり1日あたりに対応できる件数が限られてきている。取扱件数が減少すれば引越し料金の高騰も続くので、引越し難民問題を解決するには引越し業者の生産性向上をサポートし、人手不足を解決する仕組みが不可欠だ」(荒木氏)

Hi!MOVEの場合は同サービスが引越し案件を集客し、引越しが確定したユーザーのみをプラットフォーム上で業者にマッチングする。具体的にはユーザーからどのような依頼が来ているのかを示す「発注依頼表」のようなものを共通のデータベースで共有し、それを各業者が取りにくるような構造だ。

業者の視点では確定した案件だけが紹介されるので営業人件費などのコストを削減できるほか、空いている時間やスペースといったリソースを有効活用できればトラック1台当たりの受注を増やすことにも繋がる。これまで十分な対応ができず、取りこぼしてしまっていたような案件をカバーできる可能性もあるだろう。

イメージとしては「ラクスル」に近いという旨の話もあったが、確かにシェアリングを軸に業界の仕組みをアップデートするという意味では共通する部分がありそうだ。

「(双方にこの仕組みがどれほど受け入れるかなど含めて)ハードルとしては結構高く、自分たちにとっても大きなチャレンジ。引越し会社の賛同がないと難しく、そこも含めて構想からここまで時間をかけて取り組んできた。引越しで不便や課題を感じている人たちをサポートするとともに、良いサービスを提供している引越し会社を少しでも応援できる仕組みを目指していきたい」(荒木氏)

上場を控えたAirbnb、2年連続で通年字決算――新CFOに強い期待

今日(米国時間1/15)、ホームシェアリングの巨人、Airbnbがいくつかの重要な数字を明らかにした。これによると同社は2年連続でEBITDA(金利・税金・償却前利益) ベースでの黒字化を達成した。

2018年第3四半期にAirbnbは「過去もっとも好調な四半期だった」と述べた。収入は10億ドルを優に超えたという。

第4四半期には、共同ファウンダー、 CEOのBrian Cheskyと対立して会社を去ったLaurence Tosiの後任となるCFO(最高財務責任者)のスカウトに成功した。 Airbnbを次の段階に進ませるのはAmaszonの副社長を長く務めた新CFO、 Dave Stephensonの役割となる。

今日のメモで、Airbnbは「急速な成長と長期的黒字化の双方を達成するために(Stephensonの)豊富な知識・経験が活かされるものと期待している」と述べている。また2019年第1四半期末までに延べゲスト数は5億人を超えるとしている。

Airbnbは今年中に株式上場を実施する意向を発表している。

〔日本版〕Airbnbは宿泊先ホストに株式を付与することを計画しており、SECにこれを可能にするよう規則改正を求める意見書を提出している。

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滑川海彦@Facebook Google+

チェーンゲート式空き駐車場もシェアできるakippaの新サービス

駐車場予約アプリ「akippa」(あきっぱ)を運営するakippaは、マンションや月極駐車場などに設置されているチェーンゲート式駐車場に対応したことを発表した。


アートと共同開発した、Bluetoothまたはテンキーでゲートを自動で開閉できる機器「シェアゲート」を使うことで実現する。同機器は、アートが開発した管理システム「ALLIGATE」(アリゲイト)連動しており、鍵や利用履歴などを一元管理できる。シェアゲートの施工・保守はアートが担当する。なお、無人ゲート式駐車場には対応済みだ。

2019年内の導入であれば初期費用は無料

akippaは、月極駐車場や個人宅の車庫、空き地、商業施設などで契約されていない空きスペースを、15分単位でネット予約して駐車できる、誰でも簡単に駐車場をシェア可能にするサービス。予約駐車場サービス、駐車場シェアサービスでは現在業界1位となる駐車場拠点数を確保しており、2018年11月現在で会員数は100万人を突破している。

チェーンゲート式駐車場

チェーンゲート式駐車場とは、無断侵入を防ぐために入り口がチェーンに仕切られている駐車場のこと。通常は、マンションに住んでいる人、もしくは月極駐車場の契約者でないとチェーンを操作して入り口を開けられないが、「シェアゲート」を使うことでakippaの利用者が一時的に操作可能になるわけだ。

マンションの管理組合や月極駐車場の運営元との協議は必要になるが、通勤に自動車を使っている場合は日中は空いている駐車場を貸し出せるのはもちろん、都市部を中心に問題になっているマンション内の空き駐車場を有効活用することもできる。

すでに大阪市にある24時間営業の「西長堀パーキング」 (大阪府大阪市西区新町4丁目10-13)は、2018年12月28日から「シェアゲート」を導入し、akippaのサービスに対応している。

akippaに対応した西長堀パーキング

新年からの新規制で滴滴出行に逆風――パートタイム・ドライバー排除で中国のギグ経済終焉へ

ここ数年、中国では何百万人ものドライバーがライドヘイリング(タクシー的配車サービス)に参加している。滴滴出行などの共有経済企業に登録する大きな理由は勤務時間の柔軟性だ。生活費の高い中国の大都市で車を持つにはこうしたギグ(不定期、パートタイム労働)からの収入が重要だ。また、たとえ毎月のローンに苦しめられていても、自家用車を持つことは中国ではステータスシンボルとなっている。

こうしたドライバーの大半は滴滴出行(Didi Chuxing)に登録している。コンサルティング企業のBain & Companyの2017年の資料によれば、中国のライドヘイリング・ドライバーの90%はパートタイムだ。これは2017年10月に滴滴出行は「ドライバーの半数は1日あたり稼働時間が2時間以下」と発表したことによってもも裏付けられる。

滴滴出行はこのレポートで同社を「中国の共有経済の金字塔」と自賛した。当時、中国政府は経済成長を加速するために共有経済を強く後押ししていた。シェエリング・エコノミーは交通機関だけにとどまらず、高齢者の介護サービスなど多くの分野を幅広カバーするもので、2017年だけでも7640ドルの売上があったと中国国家情報センターのシェエリング・エコノミー・リサーチ・センターは報告している。

しかし急速に成長を開始した中国のライドヘイリング・サービスには新年から急ブレーキがかかる。1月1日から施行される新規則はドライバーがパートタイムで参加することを非常に困難にするからだ。

ノーモア・ギグ・エコノミー

具体的に見ていくと、1月1日から中国のライドヘイリング・アプリはドライバーに「二重免許」の取得を義務付ける。つまりドライバーと使用する自動車の両方に免許が必要になる。自治体によって要求される免許の内容には多少の違いが出てきそうだが、乗客の輸送にあたる運転者にこれまでよりはるかに厳しく資格が求められることには変わりない。

ライドヘイリング・ドライバーの免許を得るには運転しようとする自治体の戸口(hukou)登録が必要だ。この居住許可がなければ合法的に職業につくことができない。大都市のライドヘイリング・ドライバーの多くは地方からの流入者で戸口を持っていないいない。つまり免許から自動的に排除されてしまう。

一方、自動車の営業免許を得るには、商用車でなければならない。つまり保険料、整備費用がかさむことになる。また自動車は8年で廃用となる。.

didi chuxing

1月1日以降、中国のライドヘイリング車は免許(赤丸で囲まれた部分に貼られている)が必須となる。写真:TechCrunch

新しい法律の下でもドライバーは契約による自営業者として運転できるが、パートタイム労働を排除する方向なのは間違いない。深センの滴滴出行のドライバーはTechCrunchの取材に対して「滴滴出行に参加するために自家用車を商用車として登録しようというドライバーはいない。金がかかりすぎるからだ。パートタイムではもう仕事にならない」と述べた。

滴滴出行の難題

中国の急成長市場の例に漏れず、ライドヘイリングも当初、政府の規制が比較的ゆるいものだったことが幸いした。.最初の業界規制は政府がUberなどのサービスを公式に認可した2016年に制定された(Uberは後に現地の有力ライバル、滴滴出行に買収された)。しかしその後中国当局はライドヘイリングへの規制次第に厳しくしていった。特に昨年、滴滴出行のドライバーが乗客の女性を殺害した事件をきっかけとして運転者の資格審査は厳格化の方向に動いた。

ただし新しい法律は運転者とライドヘイリング車両の数を制限する結果となる。中国城市等級制によるいわゆる2級都市である南京だけでも滴滴出行は規約違反の車両を16万台を排除する必要があったと現地メディアは報じている。しかし多数の車両が一掃されれば乗客の待ち時間は必然的に長くなる。また 評価額560億ドルの巨人の側でもドライバーの安定確保に新しい方策を考えねばならない。

滴滴出行は急成長を維持するためにドライバーに対しても乗客に対しても寛大な条件を提示してきた。そのため赤字額は 2018年上期だけで 5.85億ドルという天文学的数字だと報じられた。つまりドライバーの確保にあたってさらにキャッシュを注ぎ込む余裕はないということだ。労働力を確保するために滴滴はドライバーの訓練プログラムを開始するなどの手を打っている。またライドヘイリングに参加するハードルを下げるため、ドライバーが免許取得済の自動車をレンタルする道を開いた。12月から滴滴のスマートフォン・アプリを開くと「あなたが運転するなら私たちが車を用意します」というキャッチフレーズが表示されるようになった。

また当局の規制強化以外にも、フォルクスワーゲンのパートナーであるSAIC MotorBMW、また現地自動車メーカーもライドヘイリングに参入しており、滴滴にはライバルが増加している。

TechCrunchの取材に対し、「滴滴出行はライドヘイリングという文化を根付かせた。しかし情勢の変化にすばやく対応しなければ何十億元もの投資は無駄な終わり、利益を生まない危険性がある」と自動車レンタル・スタートップのファウンダー、Dong
Fengは述べた。

〔日本版〕「ライドヘイリング」はライドシェアリング一般と区別して特にタクシー的な配車サービスを指す用語。ただし日本では区別せず用いられることがある。Dong
Fengは中国の自動車メーカー、東風汽車集団の「東風」と同音だが関連は不明。

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滑川海彦@Facebook Google+

定額で複数の家に住めるコリビングサービス「ADDress」が2019年4月に登場、会員受付開始

仕事の場のシェアリング、コワーキング(co-working)サービスは日本でも認知度が高まり、実際のスペースも目にすることが増えてきた。では住まいをシェアする、コリビング(co-living)はどうだろうか。一軒家や寮をシェアするシェアハウスやルームシェアについては、ドラマや映画の舞台にもなり、なじみのある人も多いだろう。また、Airbnbなど民泊としての家・部屋の共有はしばしば目にする。だが、コリビングサービスが仕組みとして展開され、日本で広まるのはこれからだろう。

12月20日に発表された、定額で全国複数の拠点にどこでも住み放題になるサービス「ADDress(アドレス)」は、そんな日本のコリビングサービスの先駆けとなりそうな、不動産シェアの仕組みだ。

ADDressでは空き家や古民家、別荘など、使われていない物件を活用してコストを抑えつつ、水回りやキッチンは快適に利用できるようにリノベーション。シェアハウスと同様に個室が用意されており、リビングなどの共有スペースでは、ほかの会員や地域住人との交流も楽しめるようになっている。物件にはサービスアパートメントやホテルのように、アメニティや家具はそろっており、快適な空間としてケアされる。

2019年4月から、5カ所の物件でADDressのサービス第1弾を開始予定。月額4万円からの定額で、共益費もコミコミで、どの拠点にも住めるというコリビングサービスを提供していく。

「地方とシェアエコは実は相性がいい」

ADDressを展開するアドレスは今年11月に設立されたばかり。代表取締役社長の佐別当隆志氏はガイアックスの社員でもありながら、2016年にシェアリングエコノミー協会を立ち上げ、事務局長を務めている。また、自身が住む住居の1室を民泊として提供するほか、2017年からは内閣官房シェアリングエコノミー伝道師として任命を受け、シェアリングエコノミーの普及・啓発にも携わっているという、公私全面で「シェアリングエコノミー」にどっぷりと関わっている人物である。

佐別当氏は、少子高齢化が進む中、若い人は少ないが高齢者は住んでいるという地域では、人やビジネスを誘致するというより、住まいのシェアリングによる取り組みが、地方創生に効果があるのではないかと考えている。

「ただし、マーケットが小さい地方には事業者はこない。だからシェアリングを進めるとしても、立ち上げのところでは誰かの支援が必要だ」(佐別当氏)

サポートがなければ、全国へのシェアリングエコノミー普及はなかなか難しい、と佐別当氏は言いつつも、「クラウドソーシングなどの普及で、若い人が地方へ仕事を持ってくることは増えている。地方とシェアサービス、クラウドファンディングなどとは、実は相性がいい」と語っている。

一方で、そうした地方に移りたい若い人たちが住む家がないのが課題だ、と佐別当氏は続ける。

「家は余っていて、空き家も増えているけれども『持っているけど貸さない、売らない』というオーナーが多い。家族向けの物件はそれでもまだあるが、単身向けの部屋は特に少ない」(佐別当氏)

アドレス提供。数値出典:実績は総務省「住宅・土地総計調査」より。予測値は NRI。

2033年には空き家率が現在の倍、全住宅の3割に当たる2166万戸に増えるという予測もある中で、佐別当氏は「都市と地方とで人と人との交流を増やして、移住ではなく、旅行のような短期でもない、人口のシェアリング、『関係人口』を増やしたい、ということから、定額制の住み放題サービスの展開を考えた」と話している。

ADDressは、コワーキングスペースはあっても住むところがない、という人の住まいの課題を解決するサービスだ。2拠点、多拠点間を動きながら住み、働きたい、という人に生活の拠点を提供。佐別当氏は「家族の都合などで地方に縛られなければならない若い人も使えるようにしたい」と話す。また不動産オーナーで「地域活性化のためにも、そうした場の提供に興味はあるけれど、個人では所有・管理しきれない」という人も支援する。

「2拠点、多拠点で生活したいというのは、以前なら引退した年配の人の志向だったが、最近では若い人にも需要が増えている」と佐別当氏。「自然の中で子育てや仕事がしたい、地域との関わりを持ちたい、農業体験したい、という20代から40代の人も多くなってきた。だから若い女性でも楽しんで生活できるように、水回りのリノベーションやホテル暮らしのようなアメニティの提供などには、気を配ろうと思っている」という。

来年4月にスタートする第1弾物件は、東京都心から1〜2時間圏の物件からスタートする予定だ。都心からの週末の利用や日帰りでの利用を想定している。第1弾の5拠点については、土地・物件を購入または借りて、自社でサービスを運用する。

まずは2019年1月まで、第1期として30名限定で会員を募集する。また民泊や空き家のオーナーも同時に募集をスタート。「別荘の管理代行サービスのように使ってもらえれば」と佐別当氏は話している。

さらにチームマネジメントについても「拠点がいろいろなところに広がるので、分散型で進めるつもり」として、ADDressの拠点管理人も3名募集。「家守(やもり)」と呼ばれる拠点管理人には「企業版ベーシックインカムとして、1年間のADDress利用権と月額5万円を支給し、家の管理を実作業ではなく、窓口として担当してもらう」ということだ。

「管理窓口以外では、必須の仕事ではないけれども、コリビングスペースを核にした地域イベントや情報発信などもやってもらえればうれしい。今後何百人、何千人と家守が増えて、地域や空き家を守っていくという未来を想像している」(佐別当氏)

物件オープンまでの3カ月は、会員や管理人と物件の募集を進めながら、行政など関係各所との調整も進めていくという。「ずっと住む、という人が多くなるようであれば、プランも追加しなければならないし、短期利用が多いとなれば、民泊と同じように法律の縛りもかかってくる。この3カ月でいろいろ検討していきたい」(佐別当氏)

将来的には法人プランの導入も予定しているADDress。「オフサイトミーティングや出先拠点的にも使える場にする」という。また月額制ではない、1日利用プランなどの追加も考えているということだ。

「街の価値を上げる人が登録してくれるサービスにしたい」

佐別当氏はADDressを「WeWorkの住まい版」と表現する。実際、米国ではコワーキングサービスのWeWorkが子会社でコリビングサービスの「WeLive」を提供。ほかにも「OpenDoor」や「Common」、「Ollie」といったサービスがある。

日本でも、コリビングサービス提供の動きはある。長崎をベースに世界展開を目指すKabuK Styleが、11月に定額住み放題の多拠点コリビングサービス「HafH」を発表。「Makuake」で事業のためのクラウドファンディングを募っている。増える空き物件の有効活用を考えると、今後、日本でも住まいのシェアリング、コリビングサービスは増えていく可能性がある。

佐別当氏は「ADDressは、住所をADD(追加)できる、という意味で名付けた」と言い、「さまざまな場所に滞在しながら楽しんで働き、シェアハウスとしての中での交流も、そして地域とも交流してもらえれば」と話している。

「地域の人は、空いた家に(旅行者ではなく)定期的に来てくれる人がいると安心する。イベントなども行って交流が盛んになればいい。またオーナーも『地域のために物件を使いたい』『売ったり貸したりするのではなく、自分でも使いたい』という人をサポートしていく。利用者を会員制にすることで、街の価値を上げてくれる人が登録してくれるサービスにしたい」(佐別当氏)

街の価値が上がることで、物件の価値も上がり、街づくりにも貢献できる。そうした正の循環をサービスで生み出したい、と佐別当氏は考えているようだ。

「東京でカフェや店を開こうとしても競争が多く、お金もかかる。地方にはそれがないので、コリビングスペースが核になれば、周りにそうした店ができるようになり、若い人のチャレンジの場にもなる。また今後少子化がさらに進めば、都心も空洞化すると予測できる。そうなると都心から地方へのベクトルだけでなく、地方から都心へのベクトルもあるはず。都心部の拠点開拓にも力を入れていくつもりだ」(佐別当氏)

アドレスは設立後、佐別当氏が所属するガイアックスと「東京R不動産」を運営するR不動産、プロダクトブランド「ONFAdd」(オンファッド)などを提供するニューピースの各社、そして3拠点に滞在しながら活躍するITジャーナリストの佐々木俊尚氏や、ベンチャーアクセラレーターの須田仁之氏らエンジェル投資家からの出資を受けている。

また、アドバイザーとして家入一真氏や、Satoyama推進コンソーシアム代表の末松弥奈子氏らが参画。シェアリングエコノミーやIT、クリエイティブ、イノベーション、地方創生などでさまざまな知見を持つ創業メンバーと株主、アドバイザーが加わって、サービスを実践者としてサポートしていく体制を構えている。

傘シェアサービス「アイカサ」がtenki.jp共同運営元から資金調達

2018年12月19日、傘シェアリングサービス「アイカサ」を運営するNature Innovation Groupは、日本気象協会公式の天気予報専門メディア「tenki.jp」を日本気象協会と共同運営する、ALiNKインターネットを引受先とする第三者割当増資を実施した。

Nature Innovation Groupが提供している「アイカサ」は、「傘を持ち歩かない生活」という新しい雨の日のライフスタイルを実現すべく、誰もが簡単に街中のカラオケ店や飲食店などで傘を借りる/返すことを目指すサービス。サービスを開始した2018年12月3日の時点でユーザー登録数がで1300人超。今後、不安定な天候になる春先にかけて国内外のユーザーの利用が増えること見込む。

現在はアイカサは、東京・渋谷を中心に40~50カ所の傘シェアスポットで計1000本の傘が利用可能だが、今回の資金調達によりさらなるエリア拡大を進めていき、全国1万店舗を目指すとのこと。また、アイカサのサービスを提供中のエリアでは、市区町村単位でピンポイント雨予報が発表された際に「tenki.jp」アプリ内の広告掲載部分に「アイカサ」のバナーが掲載されるとのこと。tenki.jpアプリで天気予報を確認して、雨が降りそうならアイカサを借りるという流れを狙っているようだ。

eブックの余白に注釈などを書いて友だちとソーシャルに共有できるGloseが$3.4Mを調達

フランスのGloseが、そのiPhone、iPad、Android用の読書アプリのために340万ドルの資金を調達した。同社の基本的な姿勢は、本を読むことをもっとソーシャルにしたい、ということにある。

熱心な読書家はたいてい、片手に鉛筆を持って本を読み、気がついたことを余白にメモする。あるいは、小さな手帳に気に入った文や発言を覚え書きするだろう。でも、eブックではそれができない。

たしかに、Kindleなどのeリーダーではテキストを高輝度表示にできる。でも紙の本と違って読みながら何かをすることができない。Gloseは、今読んでるeブックにスマホを使って何かができるようにする。

今回の投資に参加した投資家は、OneRagTime, Expon Capital, Kima Ventures, そしてBpifrance。さらにエンジェルのSébastien Breteau, Patrick Bertrand, Julien Codorniouらも参加した。

Gloseにはe書店があり、DRMと無縁なeブックを提供している。そのアプリは、速読競争などのゲーム的な要素でユーザーのモチベーションを維持しようとするが、ぼくが気に入ったのはテキストの高輝度表示と、注釈の記入、それらを友だちとシェアする機能などだ。

友だちが半年後に同じ本を読むと、余白にあなたが書いた注釈を見つけるだろう。あるいは、ブックリストをフォローしたり、非公開の読書グループを作ったり、友だちがどこまで読んだか知ったりできる。このアプリはすでに、60万人がダウンロードしている。

次の段階としてGloseは、Glose Educationという別のサービスをリリースする気だ。これは、大学や高校向けのGloseだ。教師が読書グループを作ったり、宿題を課したり、クラス全体のための注釈を書いたりできる。こうやって学校に絞るのも、ソーシャルな読書アプリの自然なユースケースだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

エアーからシェアへairClosetがアパレル破棄問題に真剣に向き合う

エアークローゼットは12月13日、着なくなった古着をシェアリングできるサービス「shareCloset(シェアクローゼット)」を12月14日より開始することを発表した。

ユーザーから着なくなった洋服を回収し、同社の検品技術や衣類ごとに最適なクリーニング方法などを駆使して再生したものを、希望者にシェアリングする(貸し出す)という仕組みだ。

古着の劣化度合いでシェアリングが難しい場合や、ユーザーが希望した場合は、リサイクルが選べるのも特徴。リサイクルされる衣料は、衣類やプラスチックなどのリサイクル開発の事業を展開する日本環境設計の「BRING(ブリング)」と呼ばれるサービスにより、再生資源として別の用途に利用できるようになる。

ユーザーだけでなくアパレル各社をパートナー企業としてサービスを推進する計画で、shareClosetを利用することで各社は年間30億着以上といわれる衣類の廃棄問題の解決策と活用できるとしている。第1弾パートナー企業としてすでにフランドルが決定しており、12月14日~31日まで、フランドルブランドの洋服を対象店舗に持参すると、合計5000円以上の新しい洋服の購入に使える1080円の特別クーポンをプレゼントするキャンペーンを実施する。

対象店舗は、東京と大阪にある「INED」「ef-de」「7-IDconcept.」などの計6店舗。対象の洋服や店舗の詳細については、同社のウェブサイトを参照してほしい。

エアークローゼット代表取締役社長/CEOの天沼 聰氏は「消費者様のご反応やオペレーションの確認を行い、今後より大きな取り組みとなるよう改善していきたいと思います。今後この『shareCloset』を通して、お洋服がムダなく活用される社会づくりに貢献できたら幸いです」とのこと。

Airbnb、大手不動産所有会社と和解

カリフォルニア州判事がApartment Investment & Management CompanyのAirbnbに対する訴訟を棄却してから1年後、両者はすべての紛争で和解した。

Aimcoは5万物件を所有、管理する会社で、カリフォルニア州およびフロリダ州裁判所に損害賠償、およびAirbnbが人々に賃貸契約違反を可能にずくことを中止する裁判所命令を要求した。Aimcoの訴えるAirbnbの問題は、同プラットフォームが「経歴審査を受けておらず」「平和なコミュニティー環境の維持に関心を持たない」人々を建物内に入れている」ことにだった。

本日の共同声明でAimcoとAirbnbは、あらゆる争議で和解に至り、両者間の全訴訟を取り下げることで合意したと発表した。

「本和解が双方にとって最善の利益であると両者共に信じている」と共同声明に書かれている。「Aimcoは、この協定によって短期賃貸活動が同社の契約および財産権に沿うよう管理することが可能になると考えている。和解の一環としてAimcoとAirbnbは、複数世帯住宅事業の可能性を検討することで一致した」

本和解に金銭的要素が関わったかどうかは明らかになっていない。Airbnbは、共同声明以上の情報は提供できないとしたうえで、以下のように語った。

「Airbnbは、建物所有者および地主と独自のFriendly Buildingプログラムなどの取り組みを通じ、双方にとって有益な提携を結ぶことに尽力している」とAirbnb広報担当のChristopher NultyがTechCrunch宛の声明で語った。「両者が協力することで、ホームシェアリングが家主と借り手の両方に経済的利益をもたらすと信じている」

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Uber、上場の幹事証券にモルガン・スタンレーを選定か――テック投資責任者はUberのドライバー

Uberは2019年の第1四半期に計画されている株式上場のリード証券会社にはMorgan Stanleyが選ばれたと報じられている。ライドシェアリングの巨人の上場計画は、先週、証券取引委員会に非公開で提出された上場申請書がリークされたことでによって判明した。

UberがMorgan Stanleyを選んだことは、最初にBloombergが報じた。主幹事会社の選択にあたってはMorgan StanleyとGoldman Sachsが数ヶ月に渡って激しい競争を続けていたされる。この秋、両社はそれぞれ上場計画をUberに示していた。Uberは株式市場の歴城、最大の上場になると予想されており、ここで主幹事の座を得ることは投資銀行として極めて重要だった。リーダーに選定されたMorgan StanleyはUberの上場から巨額の手数料を得ることができる。

TechCrunchの取材に対し、Uberはコメントを拒否し、Morgan Stanleyからは回答が得られていない。

2010年の9月のTechCrunch Disruptカンファレンスで語るMorgan Stanleyのグローバル・テクノロジー責任者、Michael Grimes

UberがMorgan Stanleyを選んだのは順当と見られている。Morgan Stanleyのテクノロジー投資の責任者、Michael GrimesはFacebook上場でも主幹事の責任者を務めており、UberのIPOでも手腕を発揮するものと考えられてきた。 Wall Street Journalによれば、Grimesは何年も前から自らUberのドライバーとなって熱心さをアピールしていたという。Morgan Stanleyが主幹事を得たのであれば、この副業の見返りは他のUberドライバーが得ている報酬より相当大きいものになりそうだ。

Morgan StanleyとGoldman Sachsは共に 2016年に実行されたUberのシリーズGに資金調達ラウンドに参加している。またGoldman Sachsは2011年からUberに投資している。

最近Uberは企業価値を720億ドルと見積もらており、上場後の時価総額は最高に1200億ドルになるものと期待されている。アメリカにおける最大のライバル、Lyftも最近上場を申請している。Lyftは上場の主幹事にJPMorgan Chase & Coを選んでいるという。Lyftの上場も2019年第1四半期が予定されている。事情に通じた筋によればLyftも上場後の時価総額が今年6月に記録された151億ドルの会社評価額を大きく上回ることを期待している。

画像:Bloomberg / Contributor / Getty Images

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不動産の“時間貸し”当たり前にーースペースマーケットが東京建物とタッグ、VCらからの調達も

写真左から、東京建物代表取締役社長執行役員の野村均氏、スペースマーケット代表取締役社長の重松大輔氏、XTech Ventures共同創業者の西條晋一氏

「今までは“売買”と“賃貸”しかなかった不動産市場で、新しい選択肢として“タイムシェア(時間貸し)”の文化を作っていく。不動産の運用のあり方を根本から変えるようなチャレンジをしていきたい」

そう話すのはスペースマーケット代表取締役社長の重松大輔氏だ。同社では2014年4月より、さまざまなスペースを1時間単位で貸し借りできるプラットフォーム「スペースマーケット」を運営。現在は会議室や撮影スタジオ、映画館、住宅などバラエティ豊かなスペースが1万件以上も掲載され、個人・法人問わず幅広い“場所探し”のニーズに応えるサービスへと成長している。

そんなスペースマーケットが不動産の利活用にさらなら変革を起こすべく、業界の大物とタッグを組むというニュースが飛び込んできた。その相手は創立から120年を超える東京建物だ。

スペースマーケットは11月16日、東京建物と資本業務提携を締結したことを明らかにした。合わせてXTech Ventures、オプトベンチャーズ、みずほキャピタル、千葉功太郎氏を引受先とした第三者割当増資を実施したことも明かしている。

今回の資金調達は同社にとってシリーズCラウンドの一環という位置付け。具体的な調達額は公開されていないけれど、数億円規模になるという。

ローンチから4年半、幅広い用途で使われるプラットフォームに

TechCrunchで最初にスペースマーケットを紹介したのはサービスローンチ時の約4年半前のこと。当時は会議や研修、イベントなどのビジネス用途が多く“ビジネス向けのAirbnb”と紹介していたけれど、今ではパーティーやスポーツ、個展などプライベートでの利用も増えている。

重松氏の話では特にここ1〜2年で利用者の層や数も広がったそう。たとえば最近は働き方改革の波にも乗って、フリーランスや副業講師のレッスンやセミナーのスペースとして活用されるケースが増加。ヨガスタジオやトレーニングジム、多目的イベントスペースなどが人気だ。

背景にはそもそもユーザーが借りたいと思うスペースが増えたことがある。ローンチ時は“お寺”や“球場”などユニークなスペースを借りられるのがひとつのウリだったけれど、近年は幅広い用途で使えるおしゃれなクリエイティブスペースが集まってきた。

その結果として写真やロケ、CMの撮影場所として頻繁に使われるスペースも出てきているそうだ。

ここ数年で利用者の“シェアエコ”サービスに対する距離感も変わってきた。重松氏も「メルカリを始めさまざまなシェアリングサービスが登場し、他のユーザーと直接モノを売買したりシェアしたりすることへの抵抗感も減ってきているのではないか」とトレンドの変化が利用者層の拡大にも影響しているという。

そのような背景もあり、スペースマーケット自体もリリースから4年半の月日を重ねる中で“空きスペースのシェアリングプラットフォーム”としてのポジションを徐々に確立し、貸し借りのサイクルが回るようになってきた。

とはいえ重松氏が「自分の周りでも徐々に使われるになってきてはいるものの、認知度調査などを実施してみてもまだまだ認知度が低い」と話すように、世間一般で広く知られている状態にはまだ至っていない。

同社にとって今回の資金調達はこのサイクルをグッと加速させるためのものでもある。調達した資金を活用して今後大規模なマーケティング施策を実施する計画だ。

不動産大手にも広がる“シェアエコ”の波

ここ数年で変わってきたのは一般の消費者だけではなく、企業も同じ。特に大企業のシェアリングに対する考え方が一気に変わってきたというのが重松氏の見解だ。不動産関連では日本でも最近WeWorkの話題を耳にすることが増えてきたけれど、それに限らず大手ディベロッパーがコーワキングスペースを開設するなどシェアエコの波が広がり始めている。

冒頭でも触れた通り、従来の不動産市場においては売買と賃貸の二択が基本路線で、そこに時間貸しという概念が入ってくることはほとんどなかった。結果的にそのどちらも難しい場合は“遊休不動産”として使われずに放置されてしまっているのが現状だ。

時間貸しすることで有効活用できるポテンシャルがあるのは、遊休化したスペースに限らない。個人の自宅やオフィス、店舗などにも使われていない時間帯や空間が存在する。実際スペースマーケットではそのようなスペースの貸し借りが活発に行われてきた。

「ビッグプレイヤーが参入してきてこそ、この流れが本物になる。実は昔から大手のデベロッパーと話をしたりはしていたが、当時はなかなか具体的な話になるまでに至らなかった。(東京建物とタッグを組むことで)不動産の時間貸しをさらに加速させられると考えている」(重松氏)

東京建物が2018年10月20日にグランドオープンした「Brillia 品川南大井」のモデルルーム。今後このスペースをスペースマーケット上に掲載して貸し出す予定だ

不動産の時間貸しを当たり前にする挑戦

今回、東京建物側の担当者である古澤嘉一氏にも少し話を聞くことができたのだけれど、興味深かったのが「不動産の活用について“柔軟性”と“契約期間”の2軸でマトリクスを作って考えてみると、両社は真逆にいるようなプレイヤーだ」という考え方だ。

東京建物の場合は基本的にある程度長いスパンで顧客に不動産を提供し、従来からの伝統的なスタイルで顧客と関係性を築く。一方のスペースマーケットは登録されたスペースが1時間単位で、かつさまざまな用途で活用される。

「この間には不動産の活用方法に関する無数の選択肢がある。たとえばウィークリーマンションのようなものもそのひとつだし、ホテルに関しても家族が長期間宿泊することにフォーカスを当てたものがあってもいい。いろいろな答えを探っていくなら、完全に逆サイドのプレイヤーと組むのが1番おもしろいと考えた」(古澤氏)

ちなみに東京建物がスタートアップに直接出資を行うのは初めてのことなのだそう。両社では今後さまざまな角度から不動産活用の選択肢を模索していくようだけれど、まずは足元の取り組みとして東京建物の保有するアセットをスペースマーケット上で運用していく方針だ。

一例としてマンションのモデルルーム内のスペースを休業日に貸し出したり、再開発エリアにある未利用の開発用不動産を活用したりといったことから取り組む。賃貸不動産や商業施設などのシェアスペースを取り入れた空室活用や、シェアスペースを前提とした新しい不動産の開発も検討するという。

八重洲の再開発事業の対象エリアにあるヤエスメッグビル。同ビル内の地下音楽ホールもスペースマーケット上で有効活用する計画

「事例ができれば可能性も広がる。まずは事例を積み重ねて、業界の中でもシェアエコの話や不動産の時間貸しの話が普通に交わされるようにしていきたい。2〜3年後、“設計の段階からシェアすることを前提とした不動産”が作られるような段階が訪れた時に、いち早くその考え方を取り入れ業界を盛り上げていけるような存在になれれば」(古澤氏)

「自分たちの中では、これから不動産のタイムシェアが当たり前になると思って事業に取り組んでいる。歴史のある業界のガリバーと組んで、不動産業界を変えていくための第一歩にしたい」(重松氏)