マイクロソフトがビデオ制作・編集ソフトウェアのClipchampを買収、Microsoft 365の生産性エクスペリエンス拡大にぴったり

ビデオ編集ソフトウェアが、Microsoft(マイクロソフト)の一連の生産性ツールに加わる次の大きなものになりそうだ。同社は米国9月7日、ウェブベースのビデオ制作・編集ソフトウェアを展開しているClipchamp(クリップチャンプ)を買収すると発表した。Clipchampのソフトウェアでは、ビデオプレゼンテーション、販促、FacebookやInstagram、YouTubeといったソーシャルメディア向けの動画を1つに集約できる。Microsoftによると、家庭、学校、企業で使われるMicrosoft 365の既存の生産性エクスペリエンスを拡大するのにClipchampは「ぴったり」とのことだ。

今回の買収は、いくつかの理由でMicrosoftにとって魅力的なものだった。今日では、プロでない人でも手軽に高度な編集を行ったり、高品質なビデオコンテンツを制作したりできる新しいツールが増えているおかげで、人々はますます動画を制作したり使ったりしている。このため、企業にとって動画はアイデアを発表したり、プロセスを説明したり、あるいはチームメンバーとやり取りしたりするための新種の「書類」としての地位を確立した、とMicrosoftは説明する。

同社はまた、いかに「GPUアクセラレーションを備えたPCの完全なコンピューティングパワーを、ウェブアプリのシンプルさ」と組み合わせているかという点で、Clipchampを興味深い買収対象会社として見ていた、と述べた。この点ではClipchampのソフトウェアはMicrosoftのWindows顧客ベースにうまくフィットする。

Clipchampはビデオ制作・編集分野で数多くのオンラインツールを作り出してきた。そのうちの1つが、トリミングや切り取り、切り出し、回転、スピードコントロール、テキスト挿入、オーディオ、画像、カラー、フィルターなどの機能を提供するビデオメーカーClipchamp Createだ。同社はまた、動画制作をより簡単なものにするテンプレート、無料のビデオ・オーディオライブラリー、スクリーンレコーダー、テキスト読み上げ、その他ブランドのフォントやカラー、ロゴのビデオでの使用をシンプル化するツールを提供している。現在はもうないClipchamp Utilitiesというユーティリティではかつてビデオ圧縮やコンバーター、ブラウザ内ウェブカムレコーダーが提供されていた。しかしこれら機能の一部は新しいClipchampアプリに移された。

Clipchampを使って動画を制作した後は人気のソーシャルメディアネットワーク向けにさまざまな出力スタイルやアスペクト比を選ぶことができるため、オンラインマーケッターにとって人気のツールとなっている。

画像クレジット:Clipchamp

2013年の創業以来、Clipchampは1700万人超のユーザーをひきつけ、39万社にサービスを提供し、前年比54%増というペースで成長してきた。パンデミックによって多くの組織がリモートワークを採用し、企業がトレーニングやコミュニケーション、レポートなどの手段としてビデオを活用するようになったのにともない、動画の使用は増加した。2021年上半期にClipchampのビデオエクスポートは186%増えた。アスペクト比16:9の動画は189%増、Instagram StoriesやTikTokなどでのシェア向けのアスペクト比9:16の動画は140%増だった。Instagram向けのアスペクト比1:1は72%増えた。スクリーン録画も57%増え、ウェブカム録画は65%増だった。

2021年7月にClipchampのCEOであるAlexander Dreiling(アレクサンダー・ドライリング)氏はこの成長についてコメントし、同社が2020年チームの規模を3倍に拡大したと述べた。

「当社は1年前に比べて平均2倍超のユーザーを獲得しています。その一方で使用頻度も2倍となっていて、これはより多くのユーザーがビデオコンテンツをこれまでになく制作していることを意味します。ソーシャルメディアビデオは常にビジネスニーズの最前線にありましたが、2020年は当社のプラットフォームで多くのスクリーンウェブカム録画が行われ、内部コミュニケーションのユースケースの急速な広がりを目のあたりにしました」とドライリング氏は話した。

Microsoftは買収額は開示しなかったが、CrunchbaseによるとClipchampはこれまでに1500万ドル(約16億5000万円)の資金を調達している。

Microsoftがビデオマーケットに足を踏み入れるのは今回が初めてではない。

トランプ氏が国家安全保障の脅威と呼んだ中国企業所有のビデオソーシャルネットワークTikTok(ティクトック)の売却を強制しようとしていたとき、MicrosoftはTikTok買収を検討した企業の1社だった(TikTokの運営を米国内で続けるためにByteDanceはTikTokの米国事業を売却する必要があった。しかしバイデン政権がその動きを棚上げし、売却は実現することはなかった)。数年前、MicrosoftはStreamというビジネスビデオサービスを立ち上げた。これは消費者がYouTubeを使うような手軽さで企業が動画を使えるようにすることを目指していた。2018年に同社は、コラボのために短いビデオクリップを使うソーシャル学習プラットフォームのFlipgridを買収した。リモートワークが当たり前になるにつれ、MicrosoftはチームコラボレーションソフトウェアMicrosoft Teamsにさらに多くのビデオ機能を追加してきた。

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Adobeがビデオ・クリエイティブの雄Frame.ioを1400億円超の巨額で買収

MicrosoftのClipchamp買収は、Adobeの12億8000万ドル(約1410億円)でのビデオレビュー・コラボレーションプラットフォームFrame.io買収に続くものだ。Frame.ioは2014年の創業以来、100万人超に使用されてきた。しかし仕事、学校、あるいは家庭で誰でも使うことを想定しているClipchampのツールと異なり、Frame.ioはどちらかというとクリエイティブなプロをターゲットとしている。

ドライリング氏は、Clipchampが多くの人にとってビデオ編集をアクセスしやすいものにすることに注力し、今後もMicrosoftで成長を続けると述べた。

「Microsoftほどレガシーを持つテック企業はそうありません。我々はみな、アイコン的なMicrosoftのプロダクトで育ち、以来ずっとそのプロダクトを使っています」とドライリング氏は説明する。「Microsoftの一部になることで我々は未来のレガシーの一部になります。我々の前途がこれほどエキサイティングなものになる他のシナリオは考えられません。機会に事欠くことはなく、ビデオ分野には絶対的にチャンスがいくらでもあるとClipchampは常に言ってきました。いかにそのチャンスをつかむか、答えを見つけ出す必要があるだけです。Microsoft内で我々は完全に新しい方法でチャンスをつかみにいくことができます」とドライリング氏は付け加えた。

いつClipchampを既存のソフトウェアに統合する予定なのかMicrosoftは明らかにせず、今後詳細を明らかにすると述べるにとどまった。

画像クレジット:Clipchamp

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

クラウドインフラのDigitalOceanがNimbellaを買収してサーバーレス開発を強化

開発者はソフトウェアの作り方を単純化したいと願っているため、アプリケーションを動かすために必要なインフラを気にせずにコードを書ける「サーバーレス」と呼ばれるソリューションが人気を増している。インフラをサービスとして開発者に提供するDigitalOceanは、米国時間9月7日、サーバーレスのスタートアップNimbellaを買収し、この分野における同社の既存提供品目をさらに強化することを発表した。買収の条件は公表されていない。

DigitalOceanはNimbellaにより、オープンソースのコンテナオーケストレーションプラットフォームKubernetesと、同じくオープンソースのサーバーレス開発プラットフォームApache OpenWhisk上に構築されていサーバーレスアプリケーションを開発するためのプラットフォームを獲得する。

2年前にDigitalOceanのCEOになったYancey Spruill(ヤンシー・スプルイル)氏は、Nimbellaの機能を「サービスとしてのファンクション(Function as a Service)」と呼ぶ。その目標は、サーバーレスの開発を、オープンソースの環境の中で、ターゲットの顧客のためにより単純化することだ。スプルイル氏は「サーバーレスという呼び名でまとめられる一連の機能は、開発者や企業からあらゆるレベルのインフラストラクチャの負担を取り除き、それらを私たちのようなPaaSないしIaaSが吸収してしまうことでし。ユーザーはツールの構成がより自由になり、私たちが単純にその選択などの負担を取り除いて、彼らの開発スピードを上げます」という。

NimbellaのCEOであるAnshu Agarwal(アンシュウ・アガルヴァル)氏によると、具体的には同社が、高度なサーバーレスアプリケーションを作りDigitalOceanのサービスに接続するための、一連のツールを提供していく。「私たちがDigitalOceanのポートフォリオに加える能力は、高速なソリューション、サービスとしてのファンクションのソリューションであり、そしてそれが、マネージドデータベースやストレージなどのDigitalOceanのサービスと統合して、開発者による完全なアプリケーションの開発を容易にします。それはイベントに応じるだけでなく、完全にステートレスなものの管理も行います」とアガルヴァル氏は語る。

スプルイル氏によると、DigitalOceanがサーバーレスに本腰を入れるのはこれが初めてではないという。2020年同社が最初のサーバーレスツールセットを提供したときから始まり、その上に構築していくものとして、Nimbellaがふさわしかった。

DigitalOceanはクラウド上のIaaSであり、またPaaSのプロバイダーとして、個人デベロッパーとスタートアップ、そして中小企業を主な顧客にしている。同社の2020年の3億18万ドル(約331億円)という収益は、クラウド市場全体の1290億ドル(約14億2177億円)という収益の一部に過ぎないが、それだけ小規模でもクラウドインフラストラクチャサービスが成り立つことの証拠でもある。

今回の買収の条件や異動する人員数、アガルヴァル氏の待遇など、まだわからないことだらけだが、とにかく計画ではNimbellaをDigitalOceanのポートフォリオに完全統合し、その提供品目のブランドも2022年前半にはDigitalOceanになるようだ。

【更新】Nimbellaから12名の従業員がDigitalOceanへ移籍する。

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画像クレジット:Erik Isakson/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

会議を日常のワークフローに統合する「ミーティングOS」を目指す仮想会議プラットフォームのVowel

仕事を進める上で会議を避けることはできない。だが、Vowel(バウエル)のCEOであるAndy Berman(アンディ・ベルマン)氏は、過去18カ月におよぶ職場の分散化の中で、私たちは「会議による死」に向けて着実に歩んでいるという。

このたび、彼の仮想会議プラットフォームが、会議前、会議中、会議後をより実り多いものにすることを目指して、ベンチャーキャピタル資金1350万ドル(約14億9000万円)を調達した。

Vowelが立ち上げるミーティング運営システムは、リアルタイムの文字起こし、統合された議題、メモ、アクションアイテムを備えており、会議の分析機能、会議の検索可能なオンデマンド記録を提供する。同社はフリーミアムビジネスモデルを用意しており、2021年秋には、1ユーザーあたり月額16ドル(約1764円)のビジネスプランを展開する予定だ。また追加機能として、高度な統合機能、セキュリティ、および管理機能が含まれる。

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今回のシリーズAは、Lobby CapitalのDavid Hornik(デビッド・ホーニック)氏が主導し、既存の投資家であるAmity VenturesとBox Group、そしてCalendly CEOのTope Awotona(トープ・アウトナ)氏、Intercomの共同創業者であるDes Traynor(デス・トレイナー)氏、Slack VPのEthan Eismann(イーサン・アイスマン)氏、元Yammer幹部のViviana Faga(ビビアナ・ファガ)氏、元InVision社長のDavid Fraga(デビッド・フラガ)氏、Oktaの共同創業者であるFrederic Kerrest(フレデリック・ケレスト)といった個人投資家グループが参加した。

Vowelを始める前のベルマン氏は、ベビーモニター会社Nanit(ナニット)の創業者の1人でもあった。同社は世界中にチームを分散させていたため、結果としてコミュニケーションには苦労がともなった。2018年に同社は同期型および非同期型の会議に使えるツールを探していたが、さらに管理するタイムゾーンもたくさんあるという課題があったと彼はいう。

1日17時間ビデオをストリーミングしているNanitのベビーモニター機能からヒントを得て、Vowelのアイデアが生まれた。そして同社はこの先分散作業が普及していくという仮説に焦点を合わせ始めたのだ。

「はじめまわりの人たちは、私たちがクレイジーだと思っていましたが、その後パンデミックが発生して、皆がリモートで作業する方法を学び始めたのです」とベルマン氏はTechCrunchに語った。「ハイブリッド作業に戻りつつある現在、私たちはこれはチャンスだと考えています」。

2017年、ハーバードビジネスレビューは、経営幹部は毎週23時間を会議に費やしていることを報告した。またベルマン氏は、現在平均的な労働者は、毎週就業時間の半分を会議に費やしていると推定している。

Vowelは、いつでも一時停止できるオーディオとビデオ記録とともに、Slack(スラック)、Figma(フィグマ)、GitHub(ギットハブ)のコンポーネントを会議に持ち込む。ユーザーはメモを追加したり、そうしたメモがリアルタイムの文字起こし情報どこに対応するかを確認したりすることができる。これによって、会議に後から参加した人や、会議に参加できなかった人が、内容に簡単に追いつくことができる。会議が終わった後には、それらは共有することが可能だ。Vowelには検索機能があるので、ユーザーは内容に戻って特定の人やトピックが議論された場所を確認することができる。

新しい資金により、同社はプロダクト、デザイン、エンジニアリングのチームを成長させることができる。Vowelは、2022年までに最大30人の新規採用を計画している。同社は最近ベータテストを終了し、順番待ちリストに1万人を集めた。ベルマン氏によれば、一般公開は秋に行われる予定だという。

職場における生産性とオフィスのコミュニケーションツールは、新しいコンセプトではないが、ベルマン氏が説明したように、過去18カ月間に自宅がオフィスになるにつれて、ますます重要なものとなってきた。

競合他社は、これらの問題を解決するためにさまざまなアプローチを取っている。ビデオ会議、音声、またはプラグインを使用した会議管理に重点を置いていることが多い。ベルマン氏によれば、まだ多くの競合相手が成功していない分野は、会議を日常のワークフローに統合する部分だという。そこがVowelの「ミーティングOS」が活躍できる場所なのだ、と彼は付け加えた。

ベルマン氏は「私たちの目標は準備、会議そのもの、フォローアップを含めて、会議をより包括的で価値のあるものにすることです」という。「将来はナレッジマネジメントが重要になると考えています。私たちと他との違いは、そうしたナレッジベースをすばやく検索し、維持できるようにすることです。ガートナーのレポートによれば職場の会議の75%が2025年までに記録されるようになるいわれています。私たちはそのトレンドをゼロから作り直しているのです」。

Lobby Capitalの創業パートナーであるデビッド・ホーニック氏は、既存の投資家であるAmity VenturesからVowelのことを知ったという。GitLab(ギットラブ)の取締役会のメンバーでもあるホーニック氏は、GitLabはパンデミック以前から技術分野では最大の分散型企業の1つであり、分散型チームを機能させるという課題に直接取り組んできたのだと語る。

そのホーニック氏がVowelの話を聞いたときに、そのチャンスに「すぐに飛び乗った」のだという。彼の会社(Lobby Capital)は通常、ビジネススペースを変革する能力を持つプラットフォームビジネスに投資している。その多くはSplunk(スプランク)やGitLabのような純粋なソフトウェア企業だが、その他は中小企業が財務業務を管理する方法を変革したBill.com(ビルドットコム)に似ている、と彼は付け加えた。

特に、何十年も進化することのなかった会議スペースを変革する「ミーティングOS」に対するVowelのビジョンを考えると、同社は変革の要素が凝縮されたような会社なのだとホーニック氏は語る。

「このことのすばらしさは私の目には明白でした。なにしろ私の日常は会議また会議の繰り返しなのですから、1日8回のZoom(ズーム)が普通になって、なんとかすべてを覚えておける方法はないものかと考えていたのです」とホーニック氏は語る。「この製品を使用している初期の顧客のみなさんと話して、もしこれがなくなったらどうするかと尋ねたところ、彼らが最初に言ったのは『泣くよ』でした。代替手段がないので、Zoomや他のツールに戻るだろうけれど、それは大きな後退になるだろうと答えてくれたのです」。

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画像クレジット:Vowel

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(文: Christine Hall、翻訳:sako)

設立10周年を前に黒字化を達成した元Nokiaスタッフが企業したJolla、モバイル以外の展開も視野に

約10年前、Nokia(ノキア)のスタッフ数人が、Google(グーグル)のAndroidに代わるLinuxベースのモバイルOSを開発するために設立したフィンランドのスタートアップ企業Jolla(ヨーラ)。現在Sailfish OSを手がける同社は、現地時間8月25日、黒字化を達成したことを発表した。

モバイルOSのライセンス事業を行っているJollaは、2020年を事業の「ターニングポイント」と位置づけていた。売上高は前年同期比53%増、EBITDAマージン(利払い前・税引き前・減価償却前利益を売上高で割った比率。経営効率を示す)は34%となった。

Jollaは、新しいライセンス製品(AppSupport for Linux Platforms)の提供を開始したばかりだ。この製品は、その名の通り、Linuxプラットフォームに一般的なAndroidアプリケーションとの互換性をスタンドアロンで提供するもので、顧客はSailfish OSのフルライセンスを取得する必要はない(もちろん、Sailfish OSは2013年からAndroidアプリケーションに対応している)。

Jollaによると、AppSupportは初期の段階から、自社のインフォテインメントシステム(情報と娯楽を提供するシステムの総称)を開発するためのソリューションを探している自動車会社の「強い」関心を集めているという。AppSupportがあれば、Googleの自動車向けサービスを使わずに、車載のLinux互換プラットフォームでAndroidアプリケーションを実行できる、というのがその理由だ。多くの自動車メーカーがAndroidを採用しているが、Jollaが提供する「Googleフリー」の選択肢には、さらに多くのメーカーが興味を持ちそうだ。

車載のLinuxシステムにもさまざまなユースケースが考えられる。例えばIoTデバイスで人気の高いアプリケーションを実行できるようにして顧客に付加価値を提供する、といった幅広い需要が期待できる。

CEOで共同創業者のSami Pienimäki(サミ・ピエニマキ)氏は次のように話す。「Jollaは順調に成長しています。2020年、正式に黒字化できたことをうれしく思っています」。

ピエニマキ氏は「資産や会社が全体的に成熟してきたことで、顧客が増え始めています。私たちは少し前から成長に注力し始めました」と述べ、同氏のトレードマークでもある控えめな表現で好調な数字の理由を説明する。「Jollaは10月に設立10周年を迎えますが、ここまで長い道のりでした。この過程で、私たちは着実に効率性を高め、収益を向上させることができました」。

「2019年から2020年にかけて、私たちの収益は50%以上伸び、540万ユーロ(約7億円)となりました。同時に運用コストベースもかなり安定してきたので、それらが相まって収益性を高めることができました」。

消費者向けのモバイルOS市場は、ここ数年、GoogleのAndroidとApple(アップル)のiOSにほぼ独占されているが、JollaはオープンソースのSailfish OSを政府や企業にライセンス供与し、Googleの関与を必要としない、ニーズに合った代替プラットフォームとして提供している。

意外かもしれないが、ロシアは同社が早くから参入した市場の1つである。

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ファーウェイがAndroidに代わるスマホ向けHarmonyOSを正式発表

近年では、地政学的な緊張が技術プラットフォームにもおよび、場合によっては外国企業による米国の技術へのアクセスが(破廉恥にも)禁止されるなど、デジタル主権の主張が強まり、特に(米国以外の)独立したモバイルOSプラットフォームプロバイダーの必要性が高まっている。

これに関連して、6月には中国のHuawei(ファーウェイ)が、Androidに代わる独自のスマートフォン「HarmonyOS」を発表している。

ピエニマキ氏はこの動きを歓迎し、Sailfish OSが活躍する市場の妥当性を示しているとしている。

HarmonyOSがSailfishのパイを奪ってしまうのではないかという質問に対し、同氏は次のように答える。「私は、HuaweiがHarmonyOSの価値提案や技術を出してきたことを、必ずしも競合するものとは考えていません。むしろ、市場にはAndroid以外の何かへの要求があることを証明しているのだと思います」。

「Huaweiは彼らの市場を開拓し、私たちも私たちの市場を開拓しています。両者の戦略とメッセージは、お互いにしっかりとサポートし合えていると思います」。

Jollaは、数年前からSailfishの中国進出に取り組んできたが、この事業は現段階ではまだ進行中である。しかし、ピエニマキ氏によれば、Huaweiの動きは、極東地域におけるAndroid代替製品のライセンス事業拡大という目標を妨げるものではないという。

「中国市場では一般的に健全な競争が行われ、常に競合するソリューション、激しく競合するソリューションが存在しています。Huaweiはその中の1つであり、私たちもこの非常に大きく難しい市場にSailfish OSを提供できることをうれしく思います」。

「私たちは中国で良い関係を築いており、中国市場に参入するために現地のパートナーと一緒に仕事をしています」とピエニマキ氏は続ける。「Huaweiのような大企業がこの機会を認識することは非常に良いことだと思っています。これにより、業界全体が形成され、Androidを選択せざるを得ない状況は解消されました。他に選択肢があるのですから」。

Jollaによると、AppSupportについては、自動車業界が「このようなソリューションを積極的に探している」という。同社は「デジタルコックピットは自動車メーカーにとって他社と差別化するための重要な要素」と指摘し、自動車メーカー自体がコントロールできる戦略的に重要な要素であると主張する。

「ここ数年、この分野はポジティブな状況にあります。Tesla(テスラ)のような新規参入企業が自動車業界を揺るがしたことで、従来のメーカーはコックピットでどうやってユーザーに楽しんでもらうか、という点について、これまでとは異なる考え方をする必要に迫られています」とピエニマキ氏。

「この数年間の多額の投資により、この業界は急速な発展を遂げてきました。しかし同時に、私たちは、私たちの限られたリソースの中で、この技術のチャンスがどこにあるのかを学んでいるところだということを強調しておきたいと思います。(Sailfish OSは)自動車分野での利用が多いのですが、他の分野、たとえばIoTや重工業などでも可能性があると考えています。私たちはオープンに機会を探っています。でも、ご存じの通り、自動車は今とてもホットな分野ですからね」。

「世界には一般的なLinuxベースのOSが数多く存在していますが、私たちはそれらのOSに優れた付加技術を提供することで、厳選されたアプリケーションを利用できるようにしています。例えばSpotifyやNetflix、あるいは特定の分野に特化した通信ソリューションなどが考えられます」。

「そのようなアプリケーションの多くは、当然ながらiOSとAndroidの両方のプラットフォームで利用できます。そして、それらのアプリケーションを単に存在させるだけでなく、Linuxプラットフォーム上で独立して実行することができれば、多くの関心を集めることができます」。

Jollaはもう1つの展開として、AppSupportの販売促進とSailfishライセンスビジネスのさらなる成長のために、2000万ユーロ(約26億円)を目標とした新たな成長ステージの資金調達の準備を進めている。

ヨーロッパは現在もモバイルOSライセンスビジネスの最大の市場であり、Sailfishの成長の可能性が見込まれている。また、ピエニマキ氏は、アフリカの一部の地域でも「良い展開」が見られると述べている。中国への進出をあきらめたわけでもない。

この資金調達ラウンドは2021年の夏に投資家に公開され、まだクローズされていないが、Jollaは資金調達を成功させる自信があるという。

「私たちはJollaストーリーの次の章を迎えようとしています。そのためには新しい機会を探る必要があり、そのための資本が必要で、私たちはそれを探しています。投資家サイドには現在資金が豊富にあります。一緒に仕事をしている投資銀行と私たちは、そこに勝機を見出しています」とピエニマキ氏。

「この状況であれば、投資家には必ず興味を持ってもらえると思います。Sailfish OSとAppSupportの技術への投資、さらには市場開拓のための投資を獲得して、市場の多くのユーザーに私たちの技術を利用してもらえるはずです」。

画像クレジット:Jolla

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

「量子オーケストレーション・プラットフォーム」でニッチな分野を開拓するQuantum Machinesが55億円調達

イスラエルのスタートアップであるQuantum Machines(クォンタムマシーンズ)は、量子マシンを動かすための古典的なハードウェアとソフトウェアのインフラを構築しており、現地時間9月5日、5000万ドル(約55億円)のシリーズBラウンドを発表した。

今回のラウンドはRed Dot Capital Partnersがリードし、Exor、Claridge Israel、Samsung NEXT、Valor Equity Partners、Atreides Management LPの他、TLV Partners、Battery Ventures、2i Ventures、その他の既存投資家の協力を得て実施された。Crunchbaseのデータによると、同社はこれまで約8300万ドル(約91億円)を調達した。

一般的に量子コンピューティングはまだ始まったばかりだが、Quantum Machinesは「Quantum Orchestration Platform(量子オーケストレーション・プラットフォーム)」と呼ばれるハードウェアとソフトウェアのシステムを構築することで、ニッチな分野を開拓している。

確かに、Quantum Machinesの共同創業者でありCEOのItamar Sivan(イタマール・シバン)氏は、これまでずっと量子分野の仕事に携わり、この技術の大きな可能性を感じている。「量子コンピューターは、古典コンピューターが合理的な時間内に完了することが不可能な計算を極めて高速化する可能性を秘めており、この分野への関心は現在、最高の水準に達しています。Quantum Machinesのビジョンは、量子コンピューターをユビキタスなものにし、すべての産業に革命をもたらすことです」と同氏は語る。

そのために、同社は古典コンピューターが量子コンピューターの発展に力を与えるシステムを開発した。同社はこの目的のために独自のシリコンを設計しているが、量子チップを作っているわけではないことに注意が必要だ。シバン氏の説明によると、古典コンピューターにはソフトウェアとハードウェアの層があるが、量子マシンには3つの層があるという。「心臓部である量子ハードウェア、その上に古典的なハードウェアがあり、さらにその上にソフトウェアがあります」と同氏はいう。

「我々が注目しているのは、後者の2層です。つまり、古典的なハードウェアとそれを動かすソフトウェアです。我々のハードウェアの核心は、実は古典的なプロセッサーです。これが量子スタックの最も興味深い点だと思います」と説明している。

同氏は、古典的なコンピューティングと量子コンピューティングの間のこの相互作用は、テクノロジーの基本であり、将来にわたり、あるいは永遠に続くものであるという。Quantum Machinesが構築しているのは、基本的には、量子コンピューターを稼働させるために必要な古典的なクラウドインフラだ。

Quantum Machinesの創業チーム。イタマール・シバン氏、ニシム・オフェク氏、ヨナハン・コーエン氏(画像クレジット:Quantum Machines)

これまでのところ、このアプローチは非常にうまくいっている。シバン氏によると、政府、研究者、大学、そしてハイパースケーラー事業者(Amazon、Netflix、Googleなどの企業が含まれる可能性があるが、同社は顧客であるとは述べていない)が、いずれも同社の技術に興味を持っているという。具体的な数字については言及していないが、同社は現時点で15カ国に顧客を持ち、名前を明かせない大企業とも協力関係にある。

今回の資金調達は、同社の活動を裏づけるもので、ソリューションの開発継続を可能にする。同社は研究開発にも多額の投資を行っている。開発の初期段階にあり、この先ずっと大きな変化が起こるこの産業では重要なことだ。

このソリューションは、わずか60人の従業員でここまで完成させることができた。今回の資金調達により、今後数年間でチームを大幅に増強することができる。シバン氏は多様性に関して、それが当然とされるアカデミックなバックグラウンドの出身であり、それを会社に持ち込み新しい人材を採用しているという。さらに、パンデミックのおかげで、どこからでも採用できるようになり、同社はこの機会を活用しているという。

「まず第一に、我々はイスラエルだけではなく、世界中で採用活動を行っており、特定の地域での採用に限定していません。当社には多くの国から人が集まっています」と話す。また「私個人にとっての多様性とは、できるだけ多くの人を採用プロセスに参加させることです。それが多様性を確保するための唯一の方法です」。

パンデミック期間中も、ハードウェアチームは、許可されている場合は必要な注意を払い、オフィスで対面のミーティングを行ってきたが、ほとんどの社員は自宅で仕事を続けていた。これは、定期的にオフィスに行くことが安全になったとしても続けていくアプローチだという。

「もちろん、ポストコロナ時代には、相当の仕事量がリモートワークによって行われます。【略】ですから、当社の本社でも(希望者には)リモートワークを認めることを想定しています」。

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画像クレジット:Quantum Machines

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

友達が食べているものがわかったり注文もできるソーシャルフードオーダープラットフォームSnackpass

あらゆる食品デリバリー企業が、割引コードやより迅速なサービス、さらにはゴーストキッチンやダークストアといった領域への進出などでライバルに差をつけようとしている一方で、友人が何を食べているかを見たり、食べ物や飲み物を注文し合ったり、グループオーダーをして購入者が自分で受け取りに行くといった、よりライトでソーシャルなコンセプトで作られたスタートアップ企業が、多額のシリーズBを調達したばかりで、すでに多くの市場で利益を上げているという。

Snackpassは、自らを「food meets friends(食で友達とつながる)」と表現し、本質的にはレストランでの注文のためのソーシャルコマースプラットフォームであるとしている。CEOによれば「snack」には「食べる」という意味と「かわいい人」を意味する媚びた意味があるとのことだが、当社は7000万ドル(約77億4100万円)という超大型のシリーズBを獲得し、資金は米国内のより多くの市場への拡大を継続するために使用される。

Snackpassは、4年前、Jamie Marshall(ジェイミー・マーシャル)と共同で会社を設立したCEOのKevin Tan(ケビン・タン)がまだイェール大学で物理学を専攻していた頃に構想され、高等教育機関というルーツに忠実であり続けることで成長してきた。現在、同社は13の大学都市に50万人のユーザーを抱え、前年比7倍の爆発的な成長を遂げている。今回のラウンドで、同社の企業価値は4億ドル(約442億2000万円)以上になる。

今回の資金調達には、興味深い投資家グループが参加している。Craft Ventures(クラフト・ベンチャーズ)を筆頭に、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、2100万ドル(約23億1900万円)のシリーズAを主導)、General Catalyst(ゼネラル・カタリスト)、Yコンビネータ、Pioneer Fund(パイオニア・ファンド、YCの卒業生によるファンド)、そして個人の出資者が多数参加しており、Snackpassが注目されていること、そしてミレニアル世代や若いユーザーが利用するフードプラットフォームとしての地位を確立しつつあることを物語っている。

このリストには、Airbnbの卒業生による投資家のシンジケートであるAirAngels、Uberに買収された配送大手Postmates(Bastian、お前もか)、ホスピタリティ起業家のDavid Grutman(デイビット・グラットマン)、ゴールデンステート・ウォリアーズのDraymond Green(ドレイモンド・グリーン)、Gaingels、Kevin Hart(ケヴィン・ハート)のベンチャーファンドであるHartBeat Ventures、ミュージシャンのJonas Brothers(ジョナス・ブラザーズ)、Shrug Capital(「非技術系」の消費者向けスタートアップに興味があるというベンチャーキャピタル)、Boston Celtics(ボストン・セルティックス)の共同オーナーであるStephen Pagliuca(スティーブン・パリウカ)のファミリーオフィスであるPags Group、ヒップホップDJのスティーブ・アオキ、Banana CapitalのTurner Novak(ターナー・ノヴァック)、Moving CapitalのWilliam Barnes(ウィリアム・バーンズ)、そしてUberの卒業生による投資家シンジケートなどが含まれている。

最近の食品注文プラットフォームの多くはデリバリーに焦点を当てており、多くの場合、その実行方法において他のプラットフォームよりも優位に立つ方法を模索しているが、それらのコスト差は往々にして非常に小さい。Snackpassの大きな突破口は、単純にそのような出し抜き作戦から撤退し、そうした前提から離れて、もっと平凡なもの、つまり行列をなくすことを目指したことだ。

タンは、Snackpassがユーザーにもしアプリを使っていなかったらどうするかを尋ねたところ「ああ、列に並んで注文するだけですよ」と答えたとインタビューで語っている。

「現在のマーケットシェアは、レジに並んで注文する人が占めています。私たちのビジョンは、5年後にはそのような光景はなくなっている、例えばレジがなくなっていることです。そうした行為は意味のないことだと思っています」。

彼は、どうしても配達を希望する人には、配達を選択することもできると付け加える。SnackpassはUberEatsのようなデリバリーサービスと統合しているが、Snackpassでの注文の90%は店頭受取だ。つまり、自社で配達員やそのインフラを用意する必要がないだけでなく、そのための運営コストもかからないということだ。

実際には、多くの若者が何かおいしいものを食べに行くことを喜んでいるようだ。つまり、社交的になり、食べ物や飲み物(タピオカティーが多い)を買った場所で自撮りをする。それが1つの経験になるのだ。

これは、別の意味で市場が存在する場所でもある。

タンは「デリバリー市場は、レストラン業界の8%に過ぎないということを人々は知らないのです。デリバリーは大手企業が競って参入しており、巨大な市場ですが、レストラン業界はそれよりもはるかに大きく、8000億ドル(約88兆3816億円)もの規模があります。そして、その購買の90%は未だにオフラインで行われています」と、行列に並び、注文し、購入して帰る多くの人々のことを指していう。「この購買方法は匿名性が高く、今まさに崩壊の危機に瀕しています。私たちは、その大きなブルーオーシャンに注目しています」。

そのやり方は、ターゲットとなるユーザーに効果を発揮しているようだ。タンは、このサービスを開始した市場では、学生への浸透率が80%に達しているという。平均的な顧客は月に4.5回注文し、中には毎日注文する顧客もいるという。「UberEatsのようなデリバリープラットフォームの5倍から10倍のエンゲージメントがあることが実際にわかります」。

同社のコミッションは7%からとなっており、現在はオンライン注文、セルフサービスキオスク、デジタルメニュー、マーケティングサービス、顧客紹介プログラムなどを提供している。すでに(特定の市場で)利益を上げているが、今後の成長に合わせて(他の購買層にも拡大するかもしれない)、これらすべてを追加・拡張していくことが考えられる。

Snackpassには、Snapchatを彷彿とさせる何かがある。それは、名前の響きが似ているということだけではなく、どちらも大学生のユーザーに支持されているということだけでもない(そして、どちらも彼らを正面切ってターゲットにしているということだけでもない)。それは、このアプリの少し変わっている点であり、そして他の方法では面倒だと感じたり、平凡だと感じたり、基本的には年配の人がすることだと思われることを、いかに軽いタッチで行うかということなのだ。

今のところ、SnackpassにはSNSとしての「ユーザー数グラフ」それ自体はなく、特定のSNSアプリとも深く連携していないが、SnapやFacebookのような企業が商売に大きく関与していることを考えれば、将来的にはパートナーシップを結ぶことも考えられる。

クラフトベンチャーズのパートナーであるBryan Rosenblatt(ブライアン・ローゼンブラット)はこう語る。「Snackpassは、共有された報酬、プレゼント、SNSのアクティビティフィードを通じて食を中心としたソーシャルな体験を構築することで、ダイナミックで魅力的なレストラン注文システムを作り上げました。その市場の成長と製品の口コミによる人気は、Snackpassの優れたチームとビジョンと相まって、消費者と企業の両方にとって究極のソリューションとなっています。今回の資金調達により、Snackpassを次のレベルに引き上げるお手伝いができることをうれしく思います」。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

LinkedInのメタデータツールDataHubを商用化するAcryl Dataが約10億円を調達しステルスを脱却

2019年、LinkedInのエンジニアリングチームは「DataHub」を発表した。同社の膨大なデータコレクションからインサイトを整理、検索、発見するのに役立つように構築されたメタデータツールだ。LinkedInは2020年にこれをオープンソース化している。そしてこのたび、DataHubの開発者の1人と、Airbnbのデータポータルの開発に貢献した元上級エンジニアが共同で設立したスタートアップがステルスを脱し、LinkedInなどの支援を受けて、DataHubプラットフォームをその最新チャプターとなる商用化へと導こうとしている。

Acryl Dataと名付けられた同社は米国時間6月24日、8VCが主導し、LinkedInとInsightも参加した900万ドル(約10億円)でローンチした。企業が自社のビッグデータのニーズに合わせてこのツールを利用できるように支援していく。

Acryl Dataの推進力は、ビッグデータが、運用に大規模なデジタルコンポーネントを有する組織にインパクトを与える難しい課題を抱えているという、顕著な事実から生み出されている。具体的には、ビッグデータの組織化や理解を促進し、断片化されたビッグデータの宝庫(SnowflakeやDatabricks、Lookerなどの複数の場所から取得されたり、そこで利用されている情報を含む)を最大限に活用できるようにすることだ。従来、大手テック企業はこの問題に対処する上でより革新的な存在となっており、その多くは自社の技術をオープンソース化して他の企業が利用できるようにしている。

Acrylの創業者たちにとってのブレークスルーは、メタデータがビッグデータ情報を整理するための鍵を握ると認識したことを契機に訪れた。同社を立ち上げる前、まだ彼らがそれぞれの大手テック企業で働いていた頃のことだ。

「メタデータに関して興味深い側面は、それが事実上ビッグデータにおける解決すべき問題になっていることです」と、LinkedInでCEOを務め、Swaroup Jagadish(スワロウプ・ジャガディシュ)氏(AirbnbのCTO出身)と共同で同社を設立したShirshanka Das(シャルシャンカ・ダス)氏は語る。「つまり、私たちが保有するデータインフラのDNAはすべて、大規模なデータコレクションの構築、ストリーミング、インデックス作成、検索といった点で、現代の企業の要求に実際に対応できるメタデータ管理ソリューションを必要としているのです。それこそが当社が提供する、解決の鍵となる妙策であると考えています。私たちは、データインフラを適切に運用するためのベストプラクティスを取り入れたメタデータプラットフォームを構築し、それをメタデータインフラの運用に適用することを可能にしました」。

オープンソースプロジェクトとして、DataHubは大きな牽引力を得ている。LinkedIn自身に加えて、Expedia、Saxo Bank、Klarnaをはじめとする多くの企業が、本質的には一般化されたメタデータ検索および発見ツールであるこのフレームワークを利用しており、独自のメタデータグラフを構築して、さまざまなデータエンティティを相互接続している。プロジェクト全体でGitHubのスターは3200人を超え、100人以上のコントリビューターがいる。

Acryl Dataは、他のオープンソースの商用化の取り組みと同様、フレームワークのスケールアップを容易にし、より多くのユースケースに適用できるようなツールセットの構築に着手している。特に、これらの実装を独自に構築するリソースが不足している企業に向けたものだ。その第1弾は、Airbnbのデータポータルから得た設計情報に基づくデータカタログになるという。LinkedInは、今後の製品に関して、より広範なオープンソースコミュニティに加えて、Acryl Dataとの協業を進めていく予定だ。

LinkedInの最高データ責任者であるIgor Perisic(イゴール・ペリシク)氏は、声明の中で次のように述べている。「LinkedInの世界経済に対する独自の見解は、データ駆動型のインサイトとAIを活用した製品を通じて、世界中の何億人もの人々の経済的成果を改善する機会をもたらします。適切なデータを発見して、研究者やエンジニアが毎日使用する何万もの派生データセットをナビゲートし、それらを適切に管理するために、DataHubの存在は欠かせないものです。Acryl Dataと提携して、DataHubをさらに進化させていくことに、私たちは大きな期待を寄せています」。

これは意義深い好機といえるだろう。同じ分野の競合であるCollibraは、2020年に23億ドル(約2540億円)の評価額でラウンドを行った。別の競合、Alationは2021年6月初めに12億ドル(約13330億円)と評価された。しかし、イノベーションの余地は十分に残されており、この分野で最も基礎的なツールを開発した人財がこの課題に取り組むために起業家として留まっているのを見るのは、とても興味深いことだ。

「最新のデータスタックにおいては、メタデータの管理方法を根本的に見直す必要があります」と、Insight PartnersのMDであるGeorge Mathew(ジョージ・マシュー)氏は声明の中で語っている。「次世代のリアルタイム・メタデータ・プラットフォームが求められています。Acryl Dataは、DataHubでの先駆的な活動をベースに、この変革をリードしていく最高のチームです」。

画像クレジット:Who_I_am / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

理髪店にテクノロジーで活気をもたらすtheCut

theCutの共同創業者オビ・オミルJr.氏とクッシュ・パテル氏(画像クレジット:theCut)

理髪店の経営のバックエンドをテクノロジーで支えるTheCutが、新たに450万ドル(約4億9000万円)を調達した。

Nextgen Venture Partnersがこのラウンドをリードし、Elevate VenturesとSingh CapitalとLeadout Capitalが参加した。創業者のObi Omile Jr.(オビ・オミルJr.)氏によると、これで2016年創業以来の同社の調達総額は535万ドル(約5億9000万円)になる。

オミル氏とクッシュ・パテル氏が開発したこのモバイルアプリは、理髪店の情報やレビューをこれからお客になるかもしれない人たちに伝え、その一方で理髪店のためのバックエンド部分で予約やモバイルの決済、料金表示などを管理する。

「クッシュも僕も、散髪ではひどい目に遭っているから、良い床屋を見つけるためのアプリを作ろうと決めたんだ」とオミル氏はいう。「立派な床屋さんがいることは知ってるけど、それを見つける方法がない。Googleで検索しても、理髪師個人のことはわからない。theCutでは個人の理髪師を見つけられるし、自分の好みに合っているか、ひどい髪にされるおそれはないかなどもわかる」。

アプリは、理髪店用のアプリとしてはおそらく初めて、クライアントのリストを作り、ヘアスタイルの写真を保存し、来店履歴や支払い額を記録できる。決済機能により、売上アップにつながる今のトレンドに合った追加サービスをお薦めすることもできる。また顧客は、理髪師のプロフィールや、仕上がりの写真、格付け、レビュー、提供サービスの一覧そして料金を確認することができる。

オミル氏によると、米国には理髪師が40万から60万人ほどいて、激しく成長している市場の1つになっている。そこで今度新たに得た資金は、社員を増やし、マーケティングを強化して全国市場に対応していくことに当てたいという。

「今回はどうやら大当たりのようだし、業績も伸びているから、今のうちは雇用増進モードだ」とオミル氏は語る。

実際に、同社の理髪店からの売上は2016年の創業以来今日までで5億ドル(約548億6000万円)を突破、ユーザーは毎月10万以上増えている。このアプリ経由で行われる予約は1カ月平均で150万件だ。

次のステップとしてオミル氏が考えていいるのは、デジタルストアのような新しい機能を理髪店に提供することだ。またユーザーサイドでは、カードリーダーを利用してデジタルの決済ができるようにすることだ。それにまた、theCutの上で理髪店 / 理髪師と顧客が、個人的な関係を持てるようにしたいという。

「自分たちが作るソフトウェアによって理髪師を元気づけ、アプリを通じてその人の最高の真価が発揮できるようにしたい」とオミル氏はいう。「顧客との人間関係ができれば、新製品や新しい整髪体験のおすすめなどもできるようになる」。

今回の投資の一環として、Leadoutの創業者でマネージングディレクターのAli Rosenthal(アリ・ローゼンタール)氏が同社の取締役会に加わる。彼女によると、オミル氏とパテル氏は、ベンチャーキャピタリストがいつも探しているタイプの創業者だ。つまり、自らのマーケットの市場のエキスパートであり、データドリブンな技術の持ち主だ。

「彼らに会ったときには、資金などほとんどない状態ですでに成果を上げていた。彼らは元気活発なコミュニティを作っていたし、そのモダンなテクノロジー機能は、彼らの顧客のニーズにぴったり合っていた」とローゼンタール氏はいう。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】データを重視する企業はAIと同じくらい人にも価値を置くべきである

編集部注:本稿の著者Asaf Cohen(アサフ・コーエン)氏は、データ運用プラットフォームであるMetrolink.aiの共同設立者兼CEO。

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「80:20のルール」としても知られるパレートの法則は、結果の8割は、原因全体の2割に相当する事柄に起因しているのであり、その他の原因が結果に及ぼす影響は小さいとする。

データ関連の仕事をしている人なら、この80:20のルールの別バージョン、すなわち、データサイエンティストは実際の分析やインサイトの生成ではなく、雑然としたデータを整えるのに勤務時間の80%を費やしている、というフレーズを耳にしたことがあるのではないだろうか。通常なら30分で行ける道のりを、交通渋滞のために2時間半かかるという例を考えれば、このフレーズの言わんとするところが理解していただけるだろう。

実際には、ほとんどのデータサイエンティストはデータ分析に勤務時間の20%以上の時間を割いているだろうが、それでも雑然とした大量のデータを分析に適したものに整えるのに数え切れないほどの時間を費やしているのが現状だ。重複したデータを削除したり、すべてのエントリが正しくフォーマットされていることを確認したりすることもこのプロセスの一部であり、その他の準備作業もしなければならない。

Anacondaの最新の調査によると、このプロセスに平均して全体の時間の45%が費やされていることがわかった。それより前に実施されたCrowdFlowerの調査では、その数字は60%と推定されており、またその他の調査でもこの範囲内の数字が示されている。

データの整備が重要でない、というわけではない。「使い物にならないデータを投入しても、使いものにならない結果が得られるだけ」とは、コンピューターサイエンス界でよく知られた法則であるが、これはデータサイエンスにも当てはまる。例えば、顧客番号1527のエントリーが数字ではなくテキスト形式になっていると、顧客あたりの平均支出を算出することができず、エラーになってしまうが、これはまだましな例である。最悪な場合には、企業は現実とは無関係なインサイトを元に今後に向けての判断を下すことになる。

ここで本当に問われるべきなのは、顧客番号1527のデータを、高給取りの専門家の時間を費やして再フォーマットするのが最良の方法なのかどうかである。さまざまな推定によると、データサイエンティストの平均給与は、年間で9万5000~12万ドル(約1050~1300万円)である。このような高給取りの従業員に、誰にでもできるようなつまらない雑用をさせるのは彼らの時間と会社のお金の無駄である。さらに、現実世界のデータには寿命があり、時間的制約のあるプロジェクトの場合、データセットの収集と処理に時間がかかりすぎると、分析を行う前に、それは古くて使いものにならなくなる可能性がある。

さらに、企業のデータの探求には、データに関与するはずではない人員が、本来の仕事ではなく、データの収集や生成の支援を命じられるなど、時間の無駄遣いが発生していることが少なくない。企業が収集したデータの半分以上はまったく活用されておらず、このことは、収集に関与した人員すべての時間が無駄に使われ、業務上の遅延とそれにともなう損失しか生み出さないことを示唆している。

データは収集されるものの、データサイエンスチームに負荷がかかりすぎてしまっていて、すべてのデータを活用できないこともしばしばだ。

すべてはデータのために、データはすべてのために

ここで概説された問題は、GoogleやFacebookなどのデータのパイオニアを除き、企業がデータ主導の時代における自らのあり方に頭を悩ませているという事実と結びついている。データが巨大なデータベースに投入され、データサイエンティストはデータ整備に多くの時間を費やし、またデータの収集の支援に時間を浪費している他の従業員がそのことから利益をえることはあまりないのである。

有り体に言えば、データ変革は始まったばかりである。データを事業モデルの中核に据えたテック大手の成功は、始まりの合図にすぎない。そして今のところその結果はまちまちであり、これは企業がまだデータに関する思考に習熟していないことの表れである。

データは多大な価値を持っており、企業もそれには気がついている。それは、 テック企業ではない企業がAI専門家を求めていることにも表れている。企業は道を誤ること無く進む必要があり、そこで重要になってくることの1つが、AIに注力するのと同じくらい人材に注力することである。

データは、事実上、あらゆる業種の組織構造内のあらゆる要素の運用を強化することができる。すべてのビジネスプロセスに機械学習モデルが存在する、といった未来を想像するのは魅力的かもしれないが、今はそこまで踏み込む必要はない。今日データを利用しようと考える企業のゴールは、データをA地点からB地点に移すことである。A地点はワークフローの中のデータが収集される地点であり、B地点は意思決定にそのデータを必要としている人物である。

重要なのは、Bがデータサイエンティストである必要はないということである。これは最適なワークフロー設計を解明しようとしているマネージャーかもしれないし、製造プロセスの欠陥を見つけ出そうとしているエンジニアかもしれないし、特定の機能のA/Bテストを行っているUIデザイナーかもしれない。これらの人々は全員、必要なデータを、インサイトを得るために処理できる状態で常に手元に持っていなければならない。

企業が人々に投資し、基礎的な分析スキルを身に付けさせた場合は特にそうだが、彼らはモデルと同様データで力を発揮することができる。このアプローチにおいては、アクセシビリティが鍵である。

懐疑論者はビッグデータは使い古された経済界の流行語にすぎないと主張するかもしれない。しかし、高度な分析能力は、明確な計画と適切な期待が備わっている限り、あらゆる企業の収益を強化することができる。最初の第一歩は、データをアクセスしやすく使いやすくすることであり、可能な限りデータを取り込むことではないのである。

言い換えれば、オールラウンドなデータ文化は、企業にとってデータインフラと同じくらい重要なのである。

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画像クレジット:Getty Images under a alphaspirit license.

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(文:Asaf Cohen、翻訳:Dragonfly)

デザインをコードに変えるノーコードツールAnimaが約10億9900万円のシリーズAを調達

デザインをコードに変換するプラットフォームを提供しているAnima(アニマ)は、米国時間9月1日、1,000万ドル(約10億9900万円)のシリーズA資金調達を完了したことを発表した。このラウンドは、MizMaa Ventures(ミズマー・ベンチャーズ)がリードし、INcapital(インキャピタル)とHetz Ventures(ヘッツ・ベンチャーズ)が参加した。

私たちは、昨年までブートストラップで運営されていたAnimaをしばらくの間、追ってきた。

このスタートアップは、ボトムアップ式のアプローチや、ローコード/ノーコードの人気など、コーディングにおける現在のトレンドを指標にしている。

その仕組みはこうだ。

ほとんどの開発者は、デザイン要素をコードに変換するのに膨大な時間を費やしている。しかし、この作業は、アプリやウェブサイト、プラットフォームなどを実際に動かすコードを書くことほどワクワクする仕事ではない。

そこでAnimaを使うと、デザイナーがFigmaからアップロードした要素やデザインが、React、Vue.js、HTML、CSS、Sassをサポートした高品質なコードに自動的に変換される。また、デザイナーは自分の作品のプロトタイプをAnimaの中で作成することができ、静的な外観だけでなく、動きまでシステムで処理することができる。

共同設立者のAvishay Cohen(アビシャ・コーエン)氏とMichal Cohen(ミシェル・コーエン)氏、そしてOr Arbel(オア・アーベル:アプリYoを開発した輝かしい時代から聞き覚えのある名前かもしれない)は、資金をどのように使うか明確なビジョンを持っている。チームの規模を3倍にすると同時に、Figma、SketchなどのプラットフォームやGitHubとの統合を進め、Anima自体が効果的に機能し、デザイナーや開発者がこれらの要素をすでに存在しているプラットフォームから引き継ぐことができるようにすることを計画している。

サービス配信に関しては、Animaはそのボトムアップ型のアプローチを最大限に活用している。デザイナーは誰でも無料でAnimaに登録でき、現在60万人以上のユーザーが登録している。これは、2020年10月のユーザー数がおよそ30万人だったことと比較すると、大きな差だ。アビシャ・コーエン氏は、アクティブユーザーも増加しており、1年前には1万人だったプラットフォームの月間アクティブユーザー数が、現在は8万人であることを明かした。

さらにコーエン夫妻は、無料ユーザーの5%以上が有料ユーザーに転換し、有料アカウントの15%が、有料ユーザーになってから1~2カ月の間にチームに有機的に拡大していると説明した。共同創業者たちによると、今回の資金調達を機に、ビジネスの次の段階である企業用アカウントの依頼をすでに受けているという。

アーベル氏はTechCrunchに対し、いまの最大の課題は、リモートでの雇用であり、Animaにとってのその答えは、世界規模で人材を探すことであったと述べている。コーエン夫妻は、ハイパースケーリングを行い、1年間でチームを4人から30人に増やし、採用を続けるとし、企業文化を維持・育てるのが課題であると付け加えた。

[原文へ]

Chromeベータ版はよりパワフルな新しいタブページ、ウェブのハイライト、検索の変更を実験的に実施

Googleは米国時間9月1日、Chromeベータ版ブラウザの新バージョンを発表し、ユーザーインターフェースとデザインにいくつかの重要な変更を行った。新しいタブページでは、従来のお気に入りのウェブサイトへのショートカットだけではなく、過去のウェブ検索履歴を表示するカードが追加される。その他の変更点としては、検索結果のナビゲーションがより簡単になり、ウェブ上の引用文をハイライトして共有することができるようになる。

新しいタブページのアップデートは、Chromeベータ版ユーザーが最初に気づく変更点の1つとなるだろう。

このデザイン変更の背景にあるアイデアは、レシピやショッピングなどで利用していたサイトを思い出すために閲覧履歴を調べる必要なく、過去のウェブでのアクティビティにすばやく戻るということだ。また、Googleドライブの最近使ったドキュメントのリストにもすばやく戻ることも可能で、Googleのサービスとのクロスプロモーションにもなる。

画像クレジット:Google

ページには、単なるリンクではなく、Googleが「カード」と呼ぶものが表示され、例えば、最近訪れたレシピサイトでアイデアを探していたり、編集を終えなければならないGoogleドキュメントがあったり、ショッピングカートに入れたままになっている小売業者のウェブサイトにアクセスしたりすることができる。後者は、Googleがオンラインショッピングへの投資を拡大していることに関連している。Googleはすでに、商品リストを無料にしたり、Shopifyといったeコマースプラットフォームと提携したりすることで、この分野でのマーケットシェアを拡大しようとしている。

関連記事:Googleがオンラインショッピング拡大でShopifyと提携

Googleは、Amazonの広告ビジネスが急成長していることに懸念を抱いている。同社の「その他」カテゴリーの大部分を占めている広告事業は、第2四半期に前年同期比87%増の79億ドル(約8687億6000万円)を売り上げた。今回の変更は、Chromeの新しいタブを利用して、ショッピングを活性化させ、ユーザーの取引が完了することを期待してのものだ。

もう1つの変更は、ウェブでのリサーチをより簡単にすることを目的としている。Googleによると、ユーザーがプラットフォーム上で何かを検索する際、答えを見つけるために複数のウェブページに移動することがよくあるという。Android版Chromeで、アドレスバーの下に検索結果の残りの部分を表示する行を追加することで「戻る」ボタンをタップすることなく他のウェブページに移動できるようにしている。

画像クレジット:Google

Android版Chromeベータ版にも搭載された「quote cards(引用カード)」のテストも予定されており、ウェブサイトに上のテキストを使って、ソーシャル共有のための定型化された画像を作成することができる。ウェブサイトのテキストをスクリーンショットで残すことは、すでに一般的になっており、特にニュース記事の重要なポイントをTwitterやFacebook、Instagramといったプラットフォームのフォロワーと共有したい人にとって便利な機能だ。この新機能では、テキストを長押ししてハイライトした後「共有」をタップし、メニューから「カードを作成」をタップしてテンプレートを選ぶことができる。

すべての機能は、Chromeベータ版ブラウザの一部だ。実験を有効にするには、ブラウザのアドレスバーに「chrome://flags」と入力するか、実験ビーカーアイコンをクリックし、フラグを有効にする。これらの実験に関連するフラグは、#ntp-modulesフラグ(新しいタブページ)、#continuous-search(検索結果の変更)、#webnotes-stylizeフラグ(引用カード)だ。

これらの実験は、必ずしもChromeの機能として広く展開されるわけではない。その代わりにGoogleは新デザインのアイデアに関する大規模なユーザーフィードバックを集めており、一般公開前に機能を微調整できるようになっている。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Katsuyuki Yasui)

95%の精度で請求書を処理する「会計自動化」プラットフォームのVic.aiが55億円調達

企業会計を「自動化」することができるとうたうAIベースのプラットフォームを構築したスタートアップVic.aiがシリーズBラウンドで5000万ドル(約55億円)を調達した。本ラウンドはICONIQ Growthがリードし、既存投資家のGGV Capital、Cowboy Ventures、Costanoa Venturesも参加。Vic.aiの累計調達額は6300万ドル(約69億円)になった。

Vic.aiの顧客にはHSB(スウェーデン最大の不動産管理会社)、Intercom Inc、HireQuest Inc、そして会計事務所のKPMG、PwC、BDO、Armanino LLPが含まれる。これまでにVic.aiのプラットフォームは5億3500万件の請求書を95%の精度で処理した、と同社は話す。

会計プロセスでさらにオートメーション化を進めるために過去のデータと既存のプロセスから学習することでこの自動化を実現しており、時間を節約するとともにミスや重複も減らしているとVic.aiは説明する。

同社のCEOであるAlexander Hagerup(アレクサンダー・ハーゲルップ)氏は次のように話す。「2021年です。そろそろ財務と会計のチームがAIテクノロジーを利用すべきときです。会計業務は単調で繰り返しが多いものですが、そうした悩みはもうなくなります。我々のAIプラットフォームが財務と会計のチームのために自律性とインテリジェンスを提供します」。

ICONIQ Growthの創業パートナーであるWill Griffith(ウィル・グリフィス)氏は、Vic.aiのチームは「他の非常に優れた創業者らと同じ情熱、プロダクト中心・顧客第一の精神を持っています」と述べた。

画像クレジット:Vic.ai

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

デジタル化、リモート化が進むビジネスオペレーションをモダナイズするRattle、就業時間短縮で好評

テクノロジー企業の従業員たちは、いつも消費者向けのすばらしいアプリを開発しているが、社内におけるお互いのコミュニケーションは、使いにくいアプリで困っていることが多い。

中規模から大規模ほどの企業では、社員たちは1日の時間の4分の1もしくは3分の1を社内コミュニケーションに費やしているため、これは深刻な問題だ。

現在、サンフランシスコに本社を置くあるスタートアップが、ビジネスサービスをより便利に利用できるソフトを構築しようとしている。

Rattleは、現代の記録管理や情報プラットフォームのサイロ化した性質を対応するために、リアルタイムで協力的な「接続性のある組織」を構築していると、同名スタートアップの共同創業者兼最高経営責任者Sahil Aggarwal(サヒール・アガーワル)氏は、TechCrunchのインタビューで語っています。

「Salesforceを例にとると、Salesforceにデータを書き込むことと、Salesforceからデータを取り出すことの2つを行っています」とアガーワル氏は説明する。「Rattleは、Salesforceからのすべてのインサイトをメッセージングプラットフォームに送信し、メッセージングサービス内のデータをSalesforceに書き戻すことを可能にします」。

画像クレジット:Rattle

 

Rattleのユースケースは、もっといろいろなサービスで可能だ。たとえば電話の通話を認識して個人にそれをログするよう促し、そこから生ずる商機をSlackで追えるようにするようにもできる。

「SlackとSalesforceの統合から初めましたが、その買収によってその真価は実証されました。それは企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を急速に進めるでしょう」とアガーワル氏はいう。彼がこのスタートアップを思いついたのは、以前の企業で社内チームのために作ったアプリケーションが大好評だったからだ。

関連記事:SalesforceがSlackを約2.9兆円で買収、買収前の企業評価額は2.6兆円強だった

3月にローンチしたそのスタートアップは、すでに試用した企業の70%ほどが正規ユーザーになっている。顧客は50社を超え、その中にはTerminusやOlive、Litmus、Imply、Parse.lyなどがある。

Rattleの導入後、「導入部分の応答時間(リードレスポンスタイム)が75%、主要なプロセスが数日から数分に短縮されました」とLogDNAのGTM Ops ManagerであるJeff Ronaldi(ジェフ・ロナウディ)氏はいう。

Rattleは米国時間8月31日に、LightspeedとSequoia Capital Indiaからの280万ドル(約3億1000万円)のシードラウンドを発表した。Ciscoの執行副社長でDisneyの取締役Amy Chang(エイミー・チャン)氏と、Outreachの初期の投資家Ellen Levy(エレン・レヴィ)氏、Brex & Cartaの初期の投資家Jake Seid(ジェイク・セイド)氏、ユニコーンのSaaSであるChargebeeの創業者Krish & Raman(クリシュ&ラマン)氏らが参加している。

LightspeedのパートナーであるHemant Mohapatra(ヘマント・モハパトラ)氏は声明で次のように述べている。「世界中の企業は、営業、マーケティング、人事、ITなど、さまざまなプロセスに縛られています。デジタル化やリモートワークの増加にともない、プロセスやその遵守状況は時間の経過とともに乖離していきます。Rattleのチームが、このパズルの最も重要なピースである、プロセスに巻き込まれた人々に絶え間なくフォーカスしていることに感銘を受けました。これほどまでに顧客から愛されている企業は稀であり、Rattleと一緒にこの旅に出られることを光栄に思います」。

同社のサービスの利用料金は、社員1人あたり月額20ドル(約2200円)から30ドル(約3300円)となる。同社は今回の資金をプロダクトの拡張と、より多くのエンタープライズアプリケーションの統合に当てる計画だ。

画像クレジット:Rattle

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クアルコムがBluetooth用の新音声コーデック「aptX Lossless」を発表、CDロスレスオーディオを伝送可能に

クアルコムがBluetooth用の新音声コーデック「aptX Lossless」を発表、CDロスレスオーディオを伝送可能に

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クアルコムが、Bluetooth用の新音声コーデック「aptX Lossless」を発表しました。CDのサンプリング仕様である44.1kHz / 16bit PCM信号をロスレスで伝送することが可能な高音質コーデックです。音源の送信側(プレーヤー)と受信側(イヤホン / ヘッドホンまたはBluetoothスピーカー)双方がこのコーデックに対応していれば、CDの音質を劣化させることなくワイヤレスで再生することが可能です。

aptX Losslessはクアルコムが3月に発表した「Snapdragon Sound」という高音質オーディオ伝送技術およびソフトウェア群の一部として提供されます。Snapdragon SoundではaptX Adaptive機能によって最大96Hz / 24bitまでの音源伝送を可能としますが、この場合は不可逆圧縮を加えるため音質の劣化が発生します。aptX LosslessはaptX Adaptiveの拡張として提供され、44.1kHz / 16bitまでの音源であればロスレスでの伝送を行います。つまりCDが採用する仕様のPCMデータならそのままの音質で伝送し、ロスレス再生が可能ということです。

Snapdragon Soundでは、Bluetooth High Speed Link技術の改良によってCDロスレスオーディオ信号を送信可能なするだけのスループットを提供すると述べています。もしCDロスレス以上の音質のデータをスマートフォンから伝送する場合は、最大96kHz / 24bitの圧縮伝送を使用するとのこと。なお、ユーザーは設定により手動で44.1kHz / 16bitにするか96Khz / 24bitにするか選択もできますが、ソース音源がCDロスレスまでの場合は自動的に44.1kHz / 16bitになります。また通信環境が悪くスループットが出ない場合は、圧縮伝送に切り替え140kbpsにまで伝送速度を下げます。

技術仕様は以下のとおり。

・44.1kHz / 16bit CDロスレスオーディオ品質をサポート
・Bluetoothリンク品質に基づいてCDロスレスオーディオにスケールアップ
・ユーザーはCDロスレスの44.1kHz / 16bitと、96kHz / 24bitロッシーから選択可能
・ソース音源がロスレスの場合にCDロスレスオーディオを有効にする自動検出
・正確なビットレートは約1Mbps

クアルコムはSnapdragon SoCにaptXコーデックをデフォルトで搭載するため、今後発売される北米や欧州で流通するスマートフォンのほとんどは、音楽プレーヤーとしてaptX Losslessに対応していくはずです。発表によれば、このaptX Losslessは今年後半に利用可能になり、搭載する製品もその時期当たりには最初のものが発表されるとのことです。

これまで、Bluetooth経由でのオーディオ再生でもっとも高音質とされたのはソニーの独自コーデック「LDAC」でした。これとアップスケーリング技術のDSEE HXを組み合わせることで、LDACは96Khz / 24bit相当の音質での伝送は可能ですが、これもやはり不可逆圧縮で、厳密に言えば音質の劣化は避けられません。また当然ながらLDACも、プレーヤー側とイヤホン / ヘッドホン、スピーカー側の双方がLDACに対応していなければなりません。

ちなみに、Apple MusicやAmazon Music Ultra HDなどはすでに楽曲のロスレス / ハイレゾ配信を行っており、Spotifyも今年後半にロスレス配信を提供する予定です。近々、Androidスマートフォンを新しくしようと思っている人は、Snapdragon SoCを搭載しaptX Losslessに対応する機種が出るまで待つ方が得策かもしれません。一方、アップルのiPhoneは、Bluetooth音声伝送には伝統的に自社のAACを使用しておりBluetoothでの音楽再生はロスレスオーディオに対応していません

(Source:Qualcomm 2021 State of SoundEngadget日本版より転載)

円滑なカスタマーサービスのために、あるアクセントをリアルタイムで別のアクセントに変換させるSanas

カスタマーサービス産業では、アクセントが仕事のさまざまな側面を左右する。本来アクセントには「良い」も「悪い」もないはずだが、現在のグローバル経済(とはいえ明日のことは誰にもわからないが)では、米国人や英国人のアクセントのように聞こえることには価値がある。多くの人がアクセントを補正するトレーニングを受けていいるが、Sanas(サナス)はそれとは違うアプローチを採用するスタートアップだ。同社は音声認識と音声合成を利用して、ほぼリアルタイムで話し手のアクセントを変える。同社はまた550万ドル(約6億1000万円)のシード資金を調達している。

同社は、機械学習アルゴリズムに訓練を施し、人間の発話をすばやくローカルに(つまりクラウドを使わずに)認識し、同時にその同じ単語をリストから指定したアクセントで(または相手の会話から自動的に検出したアクセントで)出力する。

画像クレジット:Sanas.ai

このツールはOSのサウンドスタックに直接組み込むことができるので、ほとんどのオーディオ / ビデオ通話ツールですぐに使用することができる。現在同社は、米国、英国、フィリピン、インド、ラテンアメリカなどの拠点で、数千人規模のパイロットプログラムを運用している。年内には米国、スペイン、英国、インド、フィリピン、オーストラリアのアクセントに対応する予定だ。

正直なところ、最初はSanasのようなアイデアには賛成できなかった。それは、自分のアクセントが優れていて他の人を下に見ているような偏狭なな人たちに譲歩しているように感じたからだ。偏狭な人たちを許容する方向で、技術が問題を解決する……。いいだろう!

だが、まだその気持ちは少し残っているものの、やがてそれだけではないことに私は気づいた。基本的には、自分と同じようなアクセントで話している人の方が、理解しやすいということだ。しかし、カスタマーサービスやテクニカルサポートは巨大な産業であり、実際には顧客がいる国以外の人びとによって行われていることが多い。この基本的な断絶を改善するには、初級レベルの労働者に責任を負わせる方法か、テクノロジーに責任を負わせる方法がある。どちらの手段をとるにせよ、自分を理解してもらうことの難しさは変わらず、なんとか解決しなければならない。自動化されたシステムはそうした仕事をより簡単に実現し、より多くの人が自分の仕事をできるように手助けしてくれるだけのことだ。

もちろんこれは魔法ではない。以下のクリップからわかるように、話者の特徴や調子は部分的にしか保持されておらず、結果としてかなり人工的な音になっている。

しかし、技術は進歩を続けているので、他のスピーチエンジンと同様、使えば使うほど良くなっていくだろう。また、元の話者のアクセントに慣れていない人にとっては、米国人のアクセントの方が理解しやすいかもしれない。つまりサポート役の人にとっては、自分の電話がより良い結果をもたらすことになり、誰もが得をすることになる。Sanasによると、パイロット版はまだ始まったばかりなので、この運用によるちゃんとした数字はまだ出ていないものの、試験運用によっても、エラー率が大幅に減少し、対話効率が向上していることが示唆された。

いずれにせよ、Human Capital、General Catalyst、Quiet Capital、DN Capitalが参加した550万ドル(約6億1000万円)のシードラウンドを獲得できたことは喜ばしい。

今回の資金調達を発表したプレスリリースで、CEOのMaxim Serebryakov(マキシム・セレブリャコフ)氏は「Sanasは、コミュニケーションを簡単で摩擦のないものにするために努力しています。これにより人びとは、どこにいても、誰とコミュニケーションをとろうとしても、自信を持って話しお互いを理解することができるのです」と語っている。そのミッションに反対することはできない。

アクセントや力の差といった文化的・倫理的な課題がなくなることはないだろうが、Sanasが提供する新しい試みは、プロとしてコミュニケーションをとらなければならないのに、自分の話し方がその妨げになっていると感じている多くの人にとって、強力なツールになるだろう。これは、たとえ完璧な世界であったとしても、お互いをよりよく理解するために、探求し議論する価値のあるアプローチだ。

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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

Windows 11の提供開始は10月5日から、マイクロソフトが発表

Microsoft(マイクロソフト)は、6月にWindows 11を発表した際「2021年のホリデーシーズン」という大まかな発売日を提示した。もちろん、どの祝日になるのかは明確にしていない。もしかしたら「世界教師デー(10月5日)」や「仮庵の祭り(9月20日〜25日)」の後、あるいは極端に早い「ハロウィン(10月31日)」を狙っていたのかもしれない。数カ月前には10月下旬のリリースを強く示唆していたが(一部では20日とも言われていた)、米国時間8月31日朝、同社はこのOSが10月5日にリリースされることを発表した。

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この日付は、間違いなく、マイクロソフトが提示したリリースウィンドウの中では早い方にあたる。2015年以来となるWindowsのメジャーリリースは、Windows 10を搭載した対象PCを所有するユーザーには無料でアップグレードが提供される。また、10月5日にはWindows 11がプリインストールされた最初の製品も発売になる。

画像クレジット:Microsoft

TechCrunchでは、Windows Insider(ウィンドウズ・インサイダー)のDev Channel(開発チャンネル)を通じて最初のプレビュービルドが利用可能になった際に、Frederic(フレデリック)が記事を書いた。その時、彼は「これは半年に1度の小さなUI変更をともなうWindows 10アップデートとは明らかに別物だ」と述べている。

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確かに、マイクロソフトは適切にも、10月のアップデートで行われる主な変更点を、11項目にまとめたブログ記事を公開している。1つ目は、最も早くから明らかになり、最初のプレビュービルドからずっと継続されていること、それはこのOSのデザインが刷新され、全体的によりクリーンな印象になったことだ。

これには、新しく導入されたスナップレイアウト、スナップグループ、そしてプリセットしておいたレイアウトを切り替えられるデスクトップが含まれており、マルチタスクをより整然と使い分けられるようになっている。また、マイクロソフトのオンラインサービスの多くが、OSに深く統合された。Microsoft 365は「スタート」メニューに組み込まれ、最近閲覧したファイルへアクセスできるなど、よりクロスプラットフォームな統合が行われている。一方、Microsoft Teams(マイクロソフト・チームズ)はタスクバーに追加されている(マイクロソフトは、心からみなさんにTeamsを使ってもらいたいと思っている)。ウィジェットも復活し、ニュース、天気、スポーツ、株価などの情報にすばやくアクセスできるようになる。

アクセシビリティに関するさまざまなアップデートも行われた。7月に発表された長文の投稿で、マイクロソフトはそれらのアップデートを紹介し「アクセシブルなテクノロジーは、社会のあらゆる部分で機会を開くことができるようにするための不可欠な構成要素です。よりアクセシブルなWindows体験は、『障害による格差』を解消し、世界中の障害者に教育と雇用の機会を増やすことに貢献する力を持っています」と強調した。

Microsoft Store(マイクロソフト・ストア)のデザインもアップグレードされ、独立系の開発者がこのOS用の新しいツールを作成するためのアクセスを増やすことも約束されている。また、この新バージョンのWindowsは、DirectX12 Ultimate、DirectStorage、Auto HDRなどの機能を搭載し、引き続きデスクトップゲームにも力を入れている。

画像クレジット:Microsoft

最近では、これらの措置がサポート対象外のマシンにおいては何を意味するのか、また、率直に言って、どのマシンがサポート対象となるのかについて、若干の混乱も生じている。

今週初めには、マイクロソフトの条件に当てはまらないPCは、新しいOSを手動でインストールしても、Windows Update(ウィンドウズ・アップデート)を受けることができないということが報告された。Windows Updateは、セキュリティパッチやその他の更新を配信するものであり、これは非常に残念なことだ。

「Windows 11への無償アップグレードは10月5日から開始し、品質を重視しながら段階的に実施します」と、マイクロソフトは今朝の投稿で書いている。「Windows 10から得られた非常に多くの教訓をもとに、私たちはお客様に最高の体験を確実に提供したいと考えています。そのため、まずは新しい対象デバイスにアップグレードを提供します。その後、アップグレードは、ハードウェアの適格性、信頼性の指標、デバイスの経年、そしてアップグレード体験に影響を与えるその他の要因を考慮したインテリジェンスモデルに基づいて、市場に出ているデバイスに時間をかけて展開されます」。

同社によれば、2022年中頃までに、適合する機種にはすべてにアップグレードが提供される見込みだという。アップグレードされない機種については、マイクロソフトは2025年10月14日までWindows 10のサポートを継続するとしている。

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画像クレジット:Microsoft

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

世界初、韓国がグーグルとアップルのアプリ内課金手数料を抑制する「反グーグル法」可決

韓国国会は現地時間8月31日、何度も延期されてきた「反グーグル法」を可決した。この法案は、Google(グーグル)とApple(アップル)が、市場を支配する2つのアプリストア向けのアプリを開発する際に、両社のアプリ内決済システムを利用するようデベロッパーに義務付けることを禁じるもので、検索の巨人Googleにちなんだ名称だが、より広範な内容となっている。

この法案は、GoogleとAppleが自社のアプリ内決済システムを開発者に強要することを防ぐために、政府が介入した世界で初めてのケースだ。

GoogleとAppleは、他の市場での両社のシステムの制限的な側面についてますます厳しい目を向けられるようになっており、今回の韓国での動きが転機となって、他の国でも同じような措置が取られるかどうかに注目が集まっている。メディアの報道によると、オーストラリアの競争・消費者委員会(ACCC)も、AppleとGoogle、さらにWeChatのデジタル決済システムに対する規制を検討しているとのこと。

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韓国の予備委員会は8月25日、GoogleとAppleがアプリ内課金でアプリ開発者に手数料を請求する慣行を制限しようとする電気通信事業法改正案を進めることを承認した。

2020年8月以降、韓国の国会議員たちは、世界的なテック企業がアプリ決済市場で支配力を振るうことを禁止する法案を提出してきた。

Googleは2021年3月、アプリ開発者からの批判を鎮めるために、アプリ内課金の手数料を当初の30%から15%に引き下げた。しかしその4カ月後には、新しいアプリ内課金システムの導入を2022年3月に延期すると発表した。

Appleは8月、米国のソフトウェア開発者らが同社を相手取って起こした訴訟の和解案を提示した。その内容は、アプリ開発者がiOSアプリやApp Store以外での支払い方法をユーザーに指示できるようにするというものだったが、アプリ自体に別の支払い方法を組み込むことまでは認めていない。

Appleは声明の中で「提案されている電気通信事業法は、他のソースからデジタル商品を購入するユーザーを詐欺のリスクにさらし、プライバシー保護を弱め、購入の管理を困難にし、(子ども向けの)『承認と購入のリクエスト』やペアレンタルコントロールなどの機能の効果が失われることにつながる」と懸念を示していた。

Googleのコメントは得られていない。

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

Windows 11の「PC 正常性チェック」アプリが刷新され「Windows Insider」向けにプレビュー版が公開

Windows 11の互換性チェックアプリが刷新され「Windows Insider」向けに再公開、対応プロセッサも拡大米マイクロソフトは米国時間8月27日、以前に取り下げていた「PC 正常性チェックアプリ」(PC Health Check)をアップデートし、「Windows Insider」向けに再度公開しました(プレビュー版をダウンロード可能)。また、同OSの動作要件も一部変更されています。

今年後半にリリースされる予定のWindows 11はすでにプレビュー版が公開されており、同時に互換性をチェックするアプリ「PC Health Check」も提供されました。しかしマイクロソフトは公開直後、最初のバージョンのチェックアプリでは「ユーザーに正確な情報を提供できなかった」として、配布を中止していたのです。Windows 11の「PC 正常性チェック」アプリが刷新され「Windows Insider」向けにプレビュー版が公開

今回新たに公開されたPC 正常性チェックアプリアプリでは、以前のバージョンで問題となっていた「どの点が動作要件を満たしていないかがわかりにくい」という点を改善。上画像のように、「TPM 2.0(PCのセキュリティ管理機能)」をサポートしていない、あるいはプロセッサが対応モデルでない、などの詳細情報を提供してくれます。

また今回、Windows 11の動作要件も変更されました。以前から対応していた第8世代Intel CoreプロセッサやAMD Zen 2プロセッサだけでなく、第7世代のCore Xシリーズ、Xeon Wシリーズ、Core 7820HQが対応プロセッサとして追加。なお、以前対応がテストされていた「初代Zenプロセッサ」については、対応が見送られています。

一方でマイクロソフトは、Windows 11に非対応のシステムでもISOファイルによる手動インストールが可能だと説明しています。ただしそのようにインストールされたWindows 11にはアップデートが提供されず、セキュティやドライバの更新も保留される可能性がある、とのこと。ISOファイルでのインストールは、あくまでも自己責任での対応となります。

先述のTPM 2.0の要求や互換性チェックアプリの一時取り下げなど、若干の混乱もみられたWindows 11のアップデート準備作業。しかしチェックアプリを更新し、対応プロセッサも拡大するなど、幅広いシステムをWindows 11へとアップグレードしてもらおうというマイクロソフトの努力もいたるところで見受けられるといえそうです。

(Source:Windows BlogEngadget日本版より転載)

アーティストが私生活について語るオーディオ共有プラットフォーム「Mindset」が間もなく正式版をリリース

Mindset(マインドセット)は、レコーディングアーティストの個人的なストーリーを集めたプラットフォームだ。同社は米国時間8月25日、シード資金として870万ドル(約9億5500万円)を調達したと発表した。

K-POPに特化したポッドキャスト制作会社であるDIVE Studios(ダイブ・スタジオズ)の共同設立者として、Brian Nam(ブライアン・ナム)氏、Eric Nam(エリック・ナム)氏、Eddie Nam(エディ・ナム)の3兄弟は、スターが私生活における悩みをどのように処理しているかを語るポッドキャストのエピソードが、同スタジオで最もパフォーマンスの高いコンテンツであることに気づいた。そこでナム兄弟は、DIVE Studiosから派生したMindsetの着想を得た。

「私たちはこのようなコンテンツが、まさに人々からより多く求められているユニークなセールスポイントであることに気づきました。そこで私たちは、この点をさらに強化する方法を考え始めたのです」と、CEOのブライアン・ナム氏は語る。「この価値あるコンテンツを、Z世代やミレニアル世代の若い視聴者にもっと提供するにはどうしたらいいか。私たちは、この種のストーリーテリングに最適なプラットフォームが存在していないと判断し、これらのストーリーをオーディオ形式で共有するための独自のモバイルプラットフォームを開発することに決めたのです」。

画像クレジット:Mindset

Mindsetは現在、Jae(ジェイ)、Tablo(タブロ)、BM、そしてMindsetの共同設立者であり自身もK-POPスターであるエリック・ナムという4人のアーティストによるオーディオコレクションを提供している。それぞれのコレクションには10本のエピソードが揃っており、各エピソードの時間は10分から20分ほど。最初のエピソードは無料だが、各アーティストの残りのエピソードを聴くためには24.99ドル(約2700円)を支払う必要がある。このアプリには無料の「Boosters(ブースターズ)」も用意されている。これは就寝時に聴くための物語や、やる気を起こさせるマントラなど、瞑想アプリ「Calm(カーム)」に似た5分間ほどのクリップだ。

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「これまでミュージシャンにとっての主な収入源は、ツアー、音楽配信、そしてエンドースメント契約でしたが、私たちは4つ目の収入源となるストーリーの収益化を実現することができます」と、ナム氏は述べている。「その価格設定は、チケットの価格設定や商品の販売方法に似ています」。

Mindsetはセラピーアプリではない。「私たちはセラピストの資格を持っているわけではありませんし、そのように振る舞おうともしていません」と、ナム氏はいう。それよりもむしろ、アーティストがファンとより親密な体験を共有することで、音楽の背後にある彼らもまた人間であることを示すための方法なのだという。

Mindsetは、2021年2月にMVP(minimum viable product、必要最小限の機能のみを備えたプロダクト)バージョンとして発表された。そのアクティブユーザー数や売上高については、ナム氏は明らかにしなかったものの、このアプリが十分な人気を獲得できたため、5月にはベンチャー資金を調達したと語っている。今回の870万ドルの資金調達は、Union Square Ventures(ユニオン・スクエア・ベンチャーズ)が主導し、先ごろTaylor Swift(テイラー・スウィフト)の原盤権問題で注目を集めたレコード会社の重役であるScooter Braun(スクーター・ブラウン)氏などが戦略的投資を行った。ブラウン氏はベンチャー投資会社のTQ Ventures(TQベンチャーズ)の共同創立者でもある。その他の出資者には、Twitch(ツイッチ)の共同創業者であるKevin Lin(ケヴィン・リン)氏、Opendoor(オープンドア)の共同創業者であるEric Wu(エリック・ウー)氏などが含まれている。

「スクーター・ブラウン氏は戦略的投資家でした」と、ナム氏はTechCrunchに語った。

ブラウン氏は、Ariana Grande(アリアナ・グランデ)、Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)、Demi Lovato(デミ・ロヴァート)などのアーティストとも仕事をしている。

「ブラウン氏のおかげで、私たちが伝統的なK-POPの世界からハリウッドや欧米に進出するための多くの扉が開かれました」と、ナム氏は付け加えた。

Mindsetは今回調達したシード資金を、コンテンツの制作、雇用、製品開発に充てるという。このアプリは現在、iOSAndroid向けに提供されているが、9月14日には正式版がリリースされる予定だ。その後は2週間ごとに、他のアーティストや俳優のオーディオコレクションが、追加されることになっている。これらのアーティストが誰になるのか、ナム氏は具体的な名前を明かすことは避けた。

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画像クレジット:Mindset

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

訪問型リラクゼーションマッチングの「HOGUGU」が2億円のプレシリーズA調達

訪問型リラクゼーションマッチングアプリ「HOGUGU」が2億円のプレシリーズA調達

体と心をほぐしてくれる訪問型セラピストのマッチングアプリ「HOGUGU」(ホググ)を展開するHOGUGUテクノロジーズは、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額2億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、田川翔氏(ギフト代表取締役)をはじめとする個人投資家数名。

HOGUGUは、C2C PTEが提供する「C2C Platform」を利用しつつ、共同でサービスを開発している。新型コロナウィルスの感染拡大により、自宅での施術が可能なサービスへの需要が高まりを見せ、HOGUGUの国内インストール数は2万件を突破した。対応エリアも拡大中という。なお同社は、カスタマー用iOSアプリセラピスト用iOSアプリを配布している。

セラピストの労働条件や環境は厳しく、賃金の低下や離職率の高さが問題となっており、リラクゼーション業界のビジネスモデルの転換が強く求められている。そんな中、飲食業界と同じく、セラピストも「デリバリー型」へのシフトが進んでいるとのこと。店舗や時間に縛られない働き方に急速に移る傾向にあるとHOGUGUテクノロジーズでは話している。そこで同社は、高い技術力を持つC2Cと互いの優位性を活かしつつ、リラクゼーション業界のDXを促進するとのこと。

今回調達した資金で、HOGUGUテクノロジテクノロジーは、認知度を高めるマーケティングの強化、サービスエリアの拡大、Android版アプリとウェブ予約のリリースを行い、事業の成長スピードを高める体制強化と人材採用を進めるとしている。