エンタープライズ向けAPIプラットフォームのPostmanが約160億円を調達

APIは、一連の異なるアプリケーションおよびデータソースへの接続を実現する方法を提供し、企業が直面する複雑な統合問題の多くを簡素化するのに役立つ。Postman(ポストマン)はエンタープライズ向けAPIプラットフォームを構築している企業だが、パンデミックの最中の米国時間6月11日、なんと20億ドル(約2100億円)という評価額の下に、1億5000万ドル(約160億円)のシリーズC調達を行った。

既存投資家であるCRVとNexus Venture Partnersの協力を受けて、ラウンドをInsight Partnersが主導した。同社によれば、今回のラウンドにより調達総額は2億700万ドル(約220億円)に達したという。これには、1年前に行われた5000万ドル(約54億円)のシリーズB(未訳記事)も含まれていて、結果として1年のうちに2億ドル(約210億円)が調達されたことになる。これは潤沢な現金だ。

PostmanのCEOで共同創業者のAbhinav Asthana(アビナフ・アスタナ)氏は、そうした投資を引きつけている魅力は、そのエンドツーエンドのプラットフォームだと語る。「私たちは、開発者、QA、DevOps、ともかくAPIの構築に携わっている方なら誰でもが、同じプラットフォームで作業できるように支援します。利用者は、高品質のAPIを開発するために、私たちのツールを設計、文書化、テスト、監視のために利用できますし、開発速度も向上させています」とアスタナ氏はTechCrunchに語った。

彼は、このラウンドが進むまでは、投資を積極的に求めていなかったと言う。実際、彼によれば、パンデミックが3月にカリフォルニアですべてを閉鎖してから、投資家たちが彼に接近してきたのだと言う。そして彼はそれをスタートアップの価値が認められたからだと理解している。

「私たちは、それは会社の強さを表していると考えています。開発者や企業を横断して驚異的な採用が進んで、パンデミックは(私たちに大きな影響を与えていません)。わが社は(投資家の皆さんから)クレイジーと言えるほどの関心を集めているのです」と彼は語った。

彼はまだ株式公開の問題に触れたくはないようだったが、この巨額の評価額が市場に対して、自社がしっかりした企業でありこの先もしっかり存続していくというメッセージを送ったとは感じている。

今回のリード投資家であるInsight Partnersの、共同創業者兼マネージングディレクターであるJeff Horing(ジェフ・ホリング)氏は、確かにそのように考えている人間だ。「市場機会、現経営陣、およびPostmanの成功実績が組み合わさることで、彼らがソフトウェア業界の次の大成功者になる準備が整っていることが示されています」と彼は声明で述べている。

現在、同社の従業員数は約250人で、米国とインドのバンガロールに分かれているが、彼は来年にはその数が2倍になるとみなしている。パンデミックが彼に示したことの1つは、彼の従業員がどこからでも働くことができることだった。この先彼は最も多様な人材プールを可能な限り活用して、世界中から人材を雇うつもりだ。

「私たちが労働力を増強していく際に、私たちの大規模なコミュニティの中から多様な才能を探すことは、労働力確保の解決のための重要な手段となることでしょう。それとともに、さまざまなコミュニティの人たちにイベントに参加してもらい、それらのコミュニティと常に連絡を取り合うようにしたいと思います。そうすることで、非常に強力で多彩な雇用機能を構築することができる筈です」と彼は言う。

彼はさらに付け加えて「私たちはそれについて慎重に考えたいと思っています、そして今後数ヶ月にわたって、私たちが具体的に何をしているのかについてより多くの光を当てていくことになるでしょう」と語った。

関連記事:Postman raises $50 million to grow its API development platform(PostmanがそのAPI開発プラットフォームを拡大するために約54億円を調達、未訳

画像クレジット: Postman

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(翻訳:sako)

米アマゾン上でのマスクの価格釣り上げで3Mが悪徳業者を訴訟

Amazon(アマゾン)は、新型コロナウイルス(COVID-19)が全世界的なパンデミックになって以降のサードパーティーによる価格釣り上げを警戒すると約束している。しかしながら同社の取り組みは、同社の巨大なeコマースプラットフォームを利用するベンダーの数があまりにも多いこともありうまくいったとはいえない。今週、カリフォルニアで起こされた訴訟において3M(スリーエム)は、売り手が傷物や偽造品に著しい高価格を付けていたと主張している。

同社によると「被告はその不正なマスクに、3MのN95マスクがつけている定価の20倍以上の価格にしていた、と弊社は申し立てている。アマゾンは、被告がこれらの法外な価格を付けたものの正体を偽り、購入者が3M製でないマスクを受け取ったこと、購入した数よりも少ない数、包装が疑わしい商品、欠陥品や破損品を受け取ったことを知った。アマゾンは同社のプラットフォーム上でそれらのアカウントをブロックした」と主張(3Mリリース)している。

N95は濾過効率がたいへん良いため、現在の危機において最も需要の大きい個人防護具になっている。CDCの推奨によると、外科用マスクよりもこのマスクを推奨(CDCリリース)している。後者は多くの場合、大きな飛沫や液体の遮断に適している。一方、N95マスクは、大小の大気中微粒子の95%以上を遮断できる。そのため多くの団体が、最前線の疾病対応者のためにそのマスクを優先確保することを主張してきた。

関連記事:アマゾンが新型コロナ禍の便乗値上げ禁止の法制化を米議会に求める

アマゾンは、同社がこの訴訟に関わっていることを認め、本誌に対して「アマゾンには偽物を売ったり価格を釣り上げたりするような場所はない。3Mと協力してこれらの悪質な者たちに法的責任を課すことを誇りに思う。アマゾンは長年のポリシーとして偽造品の販売や価格釣り上げに反対してきており、疑わしい製品や言語道断な価格を事前に排除するプロセスもある。弊社のポリシーに違反している悪者を見つけたときには直ちにその製品を排除し、悪者に対してそれにふさわしい処置をとる。それは私たちがかねてから行なってきたことだが、このたび3Mのようなブランドの協力を歓迎する」とのことだ。

同社サイトによると、これまでに排除した製品は50万品目あまりで、価格釣り上げで停止したアカウントは6000件を超えている。一方、3Mのプレスリリースによれば、同社は偽造製品や不正な主張のある3000以上のサイトの削除に関わってきたという。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

レーザー測距技術のLiDARで発見された長さ1km以上の古代マヤの遺跡

LiDAR(レーザー測距技術)は、考古学の世界でも、最も効果的なツールのひとつとして、急速に認められつつある。それ以前なら、ジャングルを切り開いて人手で計測するなど、数カ月にも及ぶ作業の末にようやく発見できたかもしれないものを、わずか数時間で明らかにすることができる。最近も、3000年も前のマヤ文明の建造物が発見されたばかりだ。大きさは1辺の長さが1km以上もあり、おそらく天体の観測に使われたのではないかと考えられている。

画像クレジット:Inomata et al

この巨大な人造の台地について、ネイチャー誌に掲載された論文の筆頭著者は、アリゾナ大学の猪俣健氏だ。この前例のない構造物は、このようなタイプとしてこれまでで最大かつ最古のもの。2年前にグアテマラで発見された「マヤのメガロポリス」にも匹敵するものだろう。

関連記事:マヤの巨大古代都市を発掘したレイダーは考古学を変革するか

このような巨大な構造物、列をなす基礎、その他の人造的なものは、見ればすぐにそれとわかるだろうと思われるかもしれない。しかし地上にいる限り、それらは想像するほど明らかではない。通常、木々に覆われ厚く草が生えているからだ。

「私はフィールドワークに何千時間も費やしてきました。森を一直線にナタで切り進む地元の人の後ろをついて歩きました」と、人類学者のPatricia McAnany(パトリシア・マカニー)氏も書いている。彼女は、今回の研究には参加していないが、ネイチャー誌にコメントを寄せている。「この時間のかかる工程では、グアテマラのTikal(ティカル)や、ベリーズのCaracol(カラコル)など、古代マヤの都市の地図を作るのに、何年も、場合によっては何十年ものフィールドワークが必要だったのです」。

下に示したのは、この場所を上空から見た映像だ。そこに何かがあることを知らなければ、なんとなく幾何学的に見える丘があること以外、何にも気づかないだろう。

LiDARは対象物によって反射するレーザー光線から、その物、あるいは地面までの距離を測定する。強力な計算技法を用いることで、森林を透過して、その下にある地面の高さを知ることができる。それにより、地面の詳細な標高マップを作成できる。

今回研究者は、グアテマラとの国境に近いメキシコのタバスコ州の広い領域を選んだ。そのあたりは、初期マヤ文明があったことで知られている地域だ。まずその領域全体を、低解像度のLiDARでスキャンして、先行調査した。それに基づいて絞り込んだ領域を、より高い解像度でスキャンすることで、以下に示すような画像が得られた。

そこに出現したのは、Aguada Fénix(アグアダ・フェニックス)と呼ばれることになった巨大な儀式場だった。その中でも重要なのは、高さは10メートルを超え、長さが1.4キロメートルある人工の台地だ。こうした巨大な台地は、季節の移り変わりを通して太陽の動きを追跡し、さまざまな儀式を行うために使用されたという説が提示されている。中でも、アグアダ・フェニックスが最古、かつ最大のものだ。

高解像度のLiDARによるマップは、他の発見にも寄与している。例えば、当時の指導者を敬うような彫像や彫刻がないことで、アグアダ・フェニックスを建造したコミュニティは「おそらく、それほど不平等なものではなかった」と考えられる。これは、炭素年代測定からわかる紀元前1000〜800年ころの他の社会と同様だ。そのような巨大なプロジェクトは、財力を持った中央政府の支援と指示がなければ完成し得なかっただろう。そう考えると、マヤ文化の発展に関する通説を覆す可能性もある。というのも、当時のマヤのコミュティは小さく、安定したものではなかったと考えられてきたからだ。

こうしたレーザースキャン技術の進化も、ほとんどの人は自動運転車が歩行者を避けるための手段としか考えていないだろう。アグアダ・フェニックスについてさらに詳しく知りたければ、Nature誌や、このナショナル・ジオグラフィックの記事で読むことができる。

関連記事:Startups at the speed of light: Lidar CEOs put their industry in perspective(未訳記事)

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

FCCからの242億円の罰金と複数の州からの訴訟に直面するがロボコール業者たちはわずかしか払わない

人間の悪辣さの頂点を極めた2人の男が、2019年の最初の数カ月だけで約10億回のロボコール(自動音声勧誘電話)を行ったことを認め、現在FCC(連邦通信委員会)の2億2500万ドル(約242億円)の罰金(米国政府記事)と、それ以上の額に達することが見込まれる複数の州司法長官たちからの訴訟(米国政府記事)に直面している。しかし、実際に彼らがそれを支払うということにはならないだろう。

悪名悪いテキサス人のJohn Spiller(ジョン・スピラー)とJakob Mears(ジェイコブ・ミアーズ)は、怪しげなクライアントからの健康保険を販売することを目的として、1日に数百万のロボコールを行なう2つの会社を設立した件で訴訟を受けている(彼ら自身も自白している)。

彼らの行為は、米国内のDo Not Callレジストリ(セールス電話禁止を希望する電話番号登録制度)を無視しただけでなく、「そうした消費者を対象とする方が収益性が高かった」ために、特に対象として選んでいたのだ。しかも番号が偽装されていたために、怒ったユーザーたちがコールバックを行った結果、相手が何もわからず当惑するという事態が起こり、ますます事案は悪質化した。

これらの電話は2年間で数十億件にのぼり、最終的にFCC、複数の州司法長官および業界の詐欺防止協会によって事態が暴露された。

現在、この2人は2億2500万ドル(約242億円)の罰金を突きつけられているが、これはFCC史上最高額となる。また訴訟には複数の州が関与し、それぞれのケースでさまざまな法的損害賠償が含まれており、控えめな金額の見積もりでもFCCの罰金額を上回る可能性がある。

残念ながら、これまでもそうであったように、こうした罰金額は実際に支払われる金額とはほとんど相関関係がないようだ。FCCとFTC(連邦取引委員会)にはこれらの罰金の徴収を強制する権限がなく、執行は司法省に任されているからだ。そして司法省が実際にお金を集めようと試みたとしても、彼らは被告が持っている以上のものを徴収することはできない。

例えば2019年、FTCは1人のロボコール業者に500万ドル(約5億4000万円)の罰金を科したが、彼が払ったのは時価で売り払った彼のベンツの代金1万8332ドル(約200万円)だけだった。当然のことながら、こうした知能犯罪に関わる犯人たちは、処罰を回避する方法を知らないわけではない。連邦政府がドアをノックする前に現金資産を処分しておくことは、そうしたゲームの一部に過ぎない。

こうした場合、状況はさらに悲惨なものになる可能性がある。司法省が関与することすらしない場合だ。FCC委員のJessica Rosenworcel(ジェシカ・ローゼンウォーセル)氏は、同庁の発表にともなう声明の中で次のように述べている。

この総力戦には欠けているものがあります。司法省です。彼らはこの詐欺に取り組む一員ではないのです。なぜなのでしょう?彼らが関与することを拒否することで、どんなメッセージが送られるでしょうか?

私が受け取るメッセージは以下のようなものです。過去数年間、FCCは今日ここにいる者たち同様に、ロボコール業者に対して数億ドル(数百億円)の罰金を科してきました。しかし、これまでのところ、こうした目を見張るような罰金に関する徴収実績は、ほぼ無きに等しいものなのです。実際、何億ドル(数百億円)もの罰金に対して、私たちがせいぜい6790ドル(約73万円)しか集められていないという計算を、ウォールストリートジャーナルが発表したのは2019年のことです。何故でしょう?まあ、ひとつの理由は、FCCが司法省にロボコール業者からの罰金徴収を頼っているからです。私たちには彼らの助力が必要なのです。したがって、彼らが動いてくれない場合には、つまり今回のようにということですが 、それは良い兆候ではありません。

確かに、FCCからの罰金と訴訟はこうしたロボコール業者を廃業させ、より多くの詐欺行為を防止するものの、彼らは億万長者ではないため、実際には数億ドル(数百億円)を負担することはない。

罰金がこのような事業を破産させるほど大きなものであることは良いことだが、2018年にまた別の莫大な罰金がロボコール業者に科されたときにローゼンウォーセル氏が述べたように、「それは小さじ1本で海をカラにしようとするようなもの」なのだ。FCCと各州は2人のろくでなしを追い詰めたものの、さらに多くのろくでもないヤカラたちが同じようなことを狙って出現する可能性は高い。

ロボコールを抑制するための業界全体の対策は何年も前から行われてきたものの、何度もの警告と遅延が繰り返された後、ようやくFCCによって最近義務付けられたのだ(未訳記事)。2021年には新しい詐欺対策フレームワークが施行されることを期待しよう。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:sako)

共和党議員がソーシャルメディアによるコンテンツの編集、警告の免責を認める通信品位法230条の見直しを要求

2020年5月29日に米大統領は「REVOKE 230!(230条を廃止せよ!)」とシンプルにツイートした。メッセージはすべて大文字で、おまけに感嘆符が付いていた。直接の関係はないにしても、このメッセージは、以前の大統領命令をフォローしているようだ。その大統領令は、Communications Decency Act(通信品位法)230条によるコンテンツプロバイダーの保護を、剥離しようとしている。

米国時間6月9日、4名の共和党上院議員がFCC(連邦通信委員会)に公開書簡で、Ajit Pai(アジート・パイ)委員長に対してこの法の下でソーシャルメディアサイトに認められている「特別の地位」を法に照らして検査するよう求めている。書簡の筆者はMarco Rubio(マルコ・ルビオ)氏、Kelly Loeffler(ケリー・レフラー)氏、Kevin Cramer(ケビン・クレイマー)氏、Josh Hawley(ジョシュ・ホーリー)氏の4名となる。以下は書簡の一部だ。

現在のソーシャルメディア企業は、一定の編集行為やプロモーション行為に関わるようになっている。パブリッシャーと同じく彼らはユーザーコンテンツを収益化し、編集し、ときには論評もしている。そのため現在、230条を改めて見直し、「誠意」と呼ばれる曖昧な基準を具体的なガイドラインと方向性で解釈すべきときである。加えて法廷は、230条の条文が、企業(プロバイダー企業、プラットホーム企業)が「部分的に … 開発している」いかなるコンテンツにも免責を禁じているにも関わらず、企業がコンテンツを編集し警告することに免責を認めているようである。このような解釈もまた、見直しに値する。したがって我々は、ソーシャルメディア企業などのテクノロジー企業が230条の下で保護を受ける場合の枠組みを、FCCが明確に定義することを求めるものである。

この書簡では、フォロワーが8200万名いるDonald Trump(ドナルド・トランプ)大統領と違い「平凡な米国人たちがこれらの企業によって蚊帳の外に置かれ、沈黙させられ、ときには検閲されている」と述べている。トランプ大統領自身もかなり前からこのルールを問題視し、仲間の共和党員らとともに、Twitterなどのプラットホームに保守的な発言の自由の検閲ができることを、非難してきた。彼は前からこの法を廃棄することに関心があると噂されていたが、トランプ大統領のツイートに警告ラベルを付けるというTwitterの決定で、ついに引き金を引いたようだ(プロバイダー / プラットホームの免責が否定される場合に関する日本政府資料)。

以前、FCC委員長のパイ氏はこのような方法でソーシャルメディアサイトを規制することには関心がない、と発言していた。ロイターの取材に対して委員長は、コメントを拒否しつつ「まだその書簡を見ていないのでなんとも言えない」と話している(The New York Times記事)。

米国時間6月9日の朝には、法令の起草者であるRon Wyden(ロン・ワイデン)上院議員が、230条を擁護する論評を寄せている(CNN記事)。

Black Lives Matterや警察の暴力に対する先週の抗議活動に目を向けてみよう。George Floyd(ジョージ・フロイド)の首を膝で押さえつけている警官を撮った携帯電話のビデオが、ソーシャルメディアのプラットフォームで広がった。そしてそれによって初めて米国人は、その不法な殺人について知った。そしてそこからさらに米国の黒人に対する権力の非道な行使がたくさんあることが、ソーシャルメディアにポストされたビデオの結果として明るみに出た。

画像クレジット:Scott R. Galvin/AP

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ソフトバンク出資の保険販売LemonadeがIPO申請

住宅所有者と賃貸者に保険を販売するLemonade(レモネード)が米国6月8日、新規株式公開を申請した。SoftBank(ソフトバンク)やSequoia(セコイア)の部門、General Catalyst(ゼネラル・カタリスト)、Tusk Venture Partners(タスクベンチャーパートナーズ)などからかなりの資金を調達しているLemonadeが発表した業績は急発展中のインシュアテック市場に光を当てるものだ。インシュアテック市場はここ数四半期、かなりの資金を引きつけてきた。

TechCrunchは2019年初めにインシュアテック業界を特集(未訳記事)した。なぜ保険マーケットプレイスがそんなにも多くの資金を、しかも急速に引きつけているのかについてだ。Lemonadeはフルサービスの保険プロバイダーという点で、保険マーケットプレイスとは異なる。

実際、フォームS-1にはこう記載されている。

テクノロジー、データ、AI、現代的なデザイン、行動経済学を駆使することで、当社は保険をより手軽で手の届きやすいものに、そしてきめ細かく、社会的インパクトのあるものにしていると確信している。そのために、米国と欧州で全額出資の保険会社と垂直統合された会社を設立した。フルテクノロジーが会社を支える。

Lemonadeは、保険をより良いビジネスに、そしてより良い消費者プロダクトにするテクノロジーを持っているとうたっている。そそられるものだ。保険はみんなのお気に入りの商品というわけではない。保険のマージンが少なければ、素晴らしい。もしLemonadeがそのプロセスで具体的に純利益を生み出せたら二重に素晴らしい。

数字を見てみよう。LemonadeのIPO資料を紐解くと、同社は保険からいくぶんかの利ざやを稼ぐことができるが、営業コストをカバーできるには程遠い。この資料は、Zoomの驚異的な儲けの多いデビューよりもVroomの益のない上場を(未訳記事)思い起こさせる。

数字

申請書類によると、Lemonadeは1億ドル(約108億円)のIPO規模を想定している。この数字は不正確だが、方向性としては使える。この一時的な目標額が示すのは、同社が5億ドル超(約539億円超)ではなく、1〜3億ドル(約108〜323億円)の上場での調達を目指そうとしている可能性が高いことだ。

これまでにプライベートキャピタルで4億8000万ドル(約517億円)が投じられたLemonadeは、調達額を倍増とまではいかなくても増やそうとしている。そうした資金でLemonadeはどうしたいのか。まだ損失が出ているなら、損益の改善だ。同社が提供したチャートを詳しく見てみよう。

まず申請の最初にあった3つの棒グラフだ。

総計上収入保険料(GWP)は、販売した保険プロダクトから予想される売上高のトータルだ。想像できるかと思うが、Lemonadeが時間の経過とともにより多くの保険プロダクトを販売すると仮定すればこの数字は大きくなる。

2つめのチャートは、GWPの結果に比べて同社が正味ベースでいくら損失を出しているのかを詳細に示している。これは回りくどいメトリックで、あまり力強いものではない。LemonadeのGWPは2018年から2019年にかけて倍以上になった。しかし同社のGWPのドルあたりの純損益はずっと少ない。これは芳しくない営業レバレッジを意味する。

最後のチャートはよりポジティブなものだ。同社は2017年に徴収した保険料よりも多くの保険金を支払った。そして2019年までに保険プロダクトで利ざやが出るようになった。ここで示されているトレンドラインは堅調で、2018年から2019年にかけて急激に改善している。

そしてこのグラフもある。

好調に見える。誇るべきものとして現にマイナスのままである調整後のEBITDA利ざやの改善はユニコーンそのものだ。しかし2020年はアニマルスピリットが見られ、おそらくこれが投資家の追従を引き起こす。

とにかく数字を見よう。下に主な収入源を示した。

まずいくつかの定義。正味経過保険料とは何だろう。Lemonadeによると「総計上収入保険料(GWP)の経過した分で、再保険契約のもとにサードパーティの再保険者に引き渡された経過分を減じたもの」だ。販売前のソフトウェアの売上高のように、保険料収入は「通常、保険契約の経過比例となる」。

2つの数字が同社の売上源だ。2つの合計はかなりの成長を見せている。2018年に2250万ドル(約24億円)だったのが、2019年には6730万ドル(約73億円)と199.1%増えた。直近では、同社の第1四半期決算で、2019年の売上高が1100万ドル(約12億円)だったのが2020年には138.2%増の2620万ドル(約28億円)になった。ゆっくりした伸びではあるが、収穫不足の公開市場に成長を示すには十分だろう。

次は損失について取り上げよう。

欠損

利ざやについては少し厄介なので後で取り上げる。ここで問題になるのは、支払い能力に比べてLemonadeのコスト構造が耐えがたいものであることだ。損金は2018年に5290万ドル(約57億円)だったのが、2019年には1億850万ドル(約117億円)に増えた。直近では、2160万ドル(約23億円)だった2019年第1四半期の損金は、2020年第1四半期に3650万ドル(約39億円)に膨れ上がった。

実際のところ、Lemonadeは時間の経過とともに損を重ねるばかりのように見える。なので、同社はどのようにして成長しながらそのような大きな損失を出しているのだろうか。ここにヒントがある。

ごちゃついているが、理解は可能だ。まず営業収入が、我々が以前目にしていたGAAP売上高メトリクスといかに異なるかを見よう。営業収入はnon-GAAPの数字で、「正味資産運用収益を加える前、再保険者に引き渡された経過保険料を差し引く前の総売上」を意味する。

そうした点を別にすると、真に関心が向けられるのは調整後の粗利益だ。これは「正味資産運用収益を除外し、純損失や損害調査費、繰延新契約費、クレジットカード処理費用など他の売上コストを減じた総売上」と定義されている。つまり売上総利益を意味するが、実際のところはそうでない。うんざりする。Lemonadeがすでに調整していることを考えると、同社が第1四半期に540万ドル(約5億8000万円)しか生み出せていないのは特筆すべきだろう。

同社の第1四半期3カ月間のGAAP売上高が2620万ドル(約28億円)だったのを思い出そう。なので同社の粗利を調整すれば、売上総利益率は20%をほんの少し上回ることになる。

それが何だろうか?同社の出費はかなりのものだ。比較的利ざやが少ない売上をあげるための販売やマーケティングに第1四半期だけで1920万ドル(約21億円)を費やしている。より正確に表現すると、Lemonadeは2020年第1四半期のGAAP販売とマーケティングの28%をカバーするだけの調整後粗利益を生み出した。

いずれにせよ、同社は2019年にSoftBankから3億ドル(約323億円)を調達し、キャッシュは十分にある。実際、2020年第1四半期末時点で、「キャッシュと短期投資で3億400万ドル(約327億円)」ある。営業活動によるキャッシュバーン(1940万ドル=約21億円)を長期間維持できる。では、なぜ上場するのか。

Extra Crunchに書いたように、IPOマーケットが成長株にオープンであることをVroomが示し、そしてソフトバンクは勝つ必要があるからだ。投資家がどのような反応を示すかは今後を待つとして、このIPOは上場のタイミングを図ったもののようだ。誰がそのことについて怒ることができるだろうか。

画像クレジット: dem10 / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

元VCが経営するヘアカラー製品販売Madison Reedが急成長中

Amy Errett(エイミー・エレット)氏の会社、Madison Reed(マディソンリード)は自宅で使える女性向けのヘアカラー製品を販売している。魅力的な事業のようには聞こえないかもしれない。しかしながら実際には、かなり永続性のあるビジネスだ。創業7年になる同社は、パーソナルケア業界を独占してきたL’Oreal(ロレアル)のような大企業のシェアを少しずつ奪ってきただけではない。L’Orealは現在300億ドル(約3兆2500億円)規模のマーケットを長い間コントロールしてきたが、過去100年で最も急激に経済が下降している時期である今、Madison Reedは新規顧客を引きつけてきた。

実際、従業員300人のMadison Reedの年間売上高は1億ドル(約108億円)を超えていて、2020年後半に黒字を達成する見込みだとエレット氏は話す。同氏は以前、VCファームのMaveron(マベロン)を運営し、現在True Ventures(トゥルー・ベンチャーズ)のベンチャーパートナーという副業を持っている。おそらく黒字達成により、遠くない将来に同社はIPOの有力候補になるだろう。

Madison ReedはこれまでにTrue VenturesやNorwest Venture Partners、Comcast Venturesなどの投資家から1億2500万ドル(約135億円)を調達してきた。このMadison Reedの最新状況をTechCrunchはエレット氏に聞いた。長さの関係上、そして意味を明確にするために下記の会話形式で編集している。

TC(TechCrunch):多くの消費者直結ブランドのように、最近、実在店舗のカラーバーをオープンさせた。新型コロナウイルス(COVID-19)の問題が起きる前に何店舗運営していたか。

AE(Amy Errett):12店舗展開していた。今、20店舗を再開させようとしている。8店舗は3〜5月に開店させる予定だったができていなかった。2020年末までに25店舗にする計画だ。

TC:店舗は全米に散らばっているのか。

AE:ハブとなるところに立地している。女性の人口統計、そしてオンラインビジネスから得られたことに基づき選んだ。本部を置いているカリフォルニア北部、それからニューヨーク、ダラス、ヒューストン、ワシントンD.C.エリアに構えている。またアトランタでも再開させ、ダラスとヒューストンには追加で出店する。年末までにマイアミとデンバーにも開店する。

TC:社の経済指標について聞かせて欲しい。一時期売上高は5000万ドル(約54億円)で、粗利益率は78%だった。

AE:プロダクトの利ざやは80%を超える。これは実際のプロダクトについてで、事業全体では60%だ。成長は目覚ましい。現在30万人の購読者を抱えるが、売上は(言及のあった額の)2倍を超える。当社は非公開企業であるため具体的な数字は明らかにしないが、2020年後半に黒字化を達成する見込みだ。

TC:全国的なロックダウンの中でサロンに行けない新規顧客を獲得したのは明らかだ。30万人という購読者は事業全体のどれくらいの割合を占めるのか。

AE:日によって変動する。米国の女性の52%がもっぱら家で染髪し、48%がサロンにいく。そのうちの一部が当社のカラーバーで染髪する。25%が家でもサロンでも染髪している。そうした人たちはかなり白髪か、サロンでの予約を先延ばししたいために、(予約の合間に)家で染める。

通常、我々の顧客の60%がサロンを利用している。そして50%が自宅で当社のプロダクトを使用する。利用の増加でこの数字は変わり、サロンに行けなくなったため、当社の顧客の70%が通常サロンを利用するようになった。サロンに行っていたかなりの人を獲得しているというのはいいニュースだ。平均的なオーダーサイクルは6週間で、ボックス1つを買う顧客がいるが、このような顧客たちは単発の購入を繰り返す。そのため、典型的なD2Cビジネスに比べて驚くほど持続可能な顧客層となっている。

TC:カラーバーを一時閉店するとき、従業員を1人も解雇しなかった?

AE:子供を持ち、与えられた仕事ができない従業員7人が辞めたと思う。しかし当社は誰も一時帰休にはしていない。3月15日ごろにカラーバー全店を閉め、店舗のカラーリスト全員をコールセンターに移した。ヘッドセットを購入し、従業員の自宅に届け、カスタマーサービスでのテクノロジーサポートのすべてについて教えなければならなかった。カスタマーサービスのスキルは店舗での作業で使うスキルとはまったく異なっている。そこから始まった。

当社のコールセンターのスタッフは全員、ライセンスを持つカラーリストで、売上は彼らの技術によるものだ。世の中の女性はみんな、髪について少なくとも5回の最悪な経験があり、カラーリストはアドバイスに関しては慎重な意見を提供する。というのも顧客にとって最も重要なことは髪を正しい色にすることだからだ。

TC:米国では経済が再開しつつある。カラーリストが店舗に戻るにあたって、どのような対策をとっているのか。各州での対応策を一様にしているのか。

ER:店舗を再開させつつあるが、まずは小売のみだ。店舗ではスケジュール調整しながらバッグを受け取り、品物を入れ、店の外に持って出る。いつになったら店内での染髪サービスを再開できるのかはわからない。

我々は各州の中で最も厳しいガイドラインに則り、それを全システムに反映させている。そのためとある州が客はマスクを着用しなくてもいい、といったとしても、当社では従業員も顧客もマスクを付ける。一部の人はマスクを着用したくない。それはそれでいい。ただ、そうした人にとって当社の店はふさわしくない。なぜなら、我々にとって顧客と従業員の安全が最優先事項だからだ。

TC:2019年に600店を展開する計画を発表した。そのうちの100店が自社経営で、残る500店がフランチャイズとなるだろうとのことだった。その計画は保留中という理解でよいか。もしそうだとしたら、永久に保留ということもあるのか。

ER:2020年2月にフランチャイズを販売し始めたばかりだった。実際のところ、可能性のあるフランチャイズ加盟店との最初の会合を持ち、フランチャイズを発表するために提出する必要がある書類をまさに準備していたところだった。そして新型コロナウイルス(COVID-19)が起きた。我々はフランチャイズの判断を2020年には行わないことに決めた。それが最終的なものになるかどうか決断していない。

こうした経緯で学んだことの1つは、今大きな決断をするのはCEOができることとして最も賢明なものではない、ということだ。世界は入り口に立ったばかりだ。いつになったら本部に従業員を戻すことができるのか皆目わからない。ワクチンや治療薬がどうなるのかもわからないし、あるいは再び感染が拡大したり、流行ホットスポットが出てきたりするかもわからない。私にはわからないし、誰にもわからないと思う。

TC:あなたの牽引力を考えたとき、次の資金調達が上場とならない理由はあるか。

ER:ヘアカラーリングは、これまで見過ごされてきた巨大なカテゴリーだ。繰り返し購入するというパターンにより、米国だけで150億ドル(約1兆6000億円)というマーケット規模だ。成功のために必要なすべての要件を満たしている。

私は投資家でもある。ベイエリアでMaveronのオフィスを運営していた。Connie(筆者のこと)、確かあなたと私は、私がベンチャーキャピタリストとして今よりもリラックスした生活を送っていた頃に初めて会った。私はTrueでパートナーも務めていて、投資チームのメンバーとして投資を行っている。だから投資家としてコメントする。当社の売上の80%強が社内で循環している。カラーバーでは、自社のプロダクトを使う能力があるのは我々だけだ。

TC:つまりは?

ER:スタイリストは、サロンに通う大半の女性にプロダクトを渡したりはしない。「バケーションに行く?これを持って帰って」とは決して言わない。私はMadison Reedを使っていて、このMadison Reedのカラーバーで同じ仕上がりが得られる。家に持ち帰り、誰かにまったく同じカラーで染髪してもらうこともできる。これはこの業界でゲームチェンジャーとなる。

あなたが店舗で我々に染髪して欲しいのか、それとも家で染髪するのか、我々にはわからない。L’Orealをみると、同社の事業の85%はサロンで働くスタイリストへの洗髪剤の販売だ。それは消費者と直接のビジネスではない。消費者との直接のビジネスは、Walgreens(ウォルグリーン)でのプロダクト販売であり、それは彼らのビジネスにおいてはかなり小さな割合だ。そして彼らはそこにフォーカスしていない。利ざやがかなり薄いからだ。考えてみて欲しい。彼らは10ドル(約1080円)で、我々は25ドル(約2700円)で販売している。

ここでの秘密は、 L’OrealとUnilever(ユニリーバ)の争いが、テクノロジーに基づく消費者直接販売の開拓を阻害してきたということだ。

TC:L’OrealとUnileverがMadison Reedと同じような戦略をとると思うか。

彼らはスマートだ。違うやり方で我々を追うことができる。それは構わない。我々はカスタマーサービス、顧客との関係、プロダクトイノベーション、いつでもモバイルテクノロジー第一というやり方をする。

TC:Madison Reedは現在いくつのプロダクトを販売しているのか。顧客を驚かすようなプロダクトを展開する予定はあるか。

AE:現在15のプロダクトを扱っている。すべて(アンモニア不使用の)ヘアカラーだ。パーマネントヘアカラー、パーマネントヘアカラー、グロス、トナー、アンモニア不使用のブリーチがついてくるハイライトキットなどだ。また一時的なカラーのための(シャワーで使える)カラーデポジットマスクも展開する。

最後にヒントを。当社の事業は現在、女性にフォーカスしていて、女性以外でも染髪したいという人がいることは想像に難くない。ワクワクするマーケットだ。男性だけ?まさか。すべてのドアを開放するつもりだ。

画像クレジット: Christopher Michel 

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(翻訳:Mizoguchi

米ファンドのSilver Lakeがインド大手通信Reliance Jio Platformsに約660億円追加出資

Silver Lake(シルバーレイク)は、インドのReliance Jio Platforms(リライアンス・ジオ・プラットフォームス)への賭け金を積み増す。米国のプライベートエクイティファンドであるSilver Lakeは米国時間6月5日、インドの大手通信事業者であるReliance Jio Platformsの6億ドル(約660億円)相当の株式を追加購入すると発表した。Reliance Jio Platformsは、世界的にパンデミックが猛威を振るう中、この2カ月足らずで122億ドル(約1兆3000億円)を調達した。

メンロパークに本社を置くSilver Lakeは先月、Reliance Jio Platformsに約7億5000万ドル(約830億円)を投資(未訳記事)した。追加の資本注入により、Jio Platformsへの出資割合は1.15%から2.08%に増加すると明らかにした。

Silver Lakeの新たな投資は、インドで最も価値の高い企業であるReliance Industries(リライアンス・インダストリーズ)の子会社Reliance Jio  Platformsにとって、この数週間で20%近くの株式を発行した一連の取引の7番目となる。アブダビに本拠を置く政府系ファンドのMubadala(ムバダラ)は6月5日の少し早い時間(現地時間)に、インドで最も裕福な人物であるMukesh Ambani(ムケシュ・アンバニ)氏が経営するJioに12億ドル(約1300億円)を投資(未訳記事)すると発表した。Facebook、KKR、General Atlantic、Vistaも、Jio Platformsに対し投資家として小切手を切った。

この発表はさらに、世界第2位のインターネット市場への参入機会を探る外国人投資家に、3億8800万人以上の加入者を4年足らずで獲得したJio Platformsの魅力を伝えている。

メディアの報道によると、Amazon(アマゾン)はインドで第3位の通信事業者であるBharti Airtel(バハーティ・エアテル)の株式を少なくとも20億ドル(約2200億円)相当取得することを検討しており、Googleは第2位の通信事業者であるVodafone Idea(ボーダフォン・アイデア)と同様の取引(未訳記事)について協議を行っている。

Silver Lakeの共同最高経営責任者兼マネージングパートナーであるEgon Durban(エゴン・ダーバン)氏は、Reliance Jio Platformsへの最近の投資の勢いが「ビジネスモデルの説得力を証明しており、アンバニ氏や彼のチーム、そして彼らの大胆なビジョンを裏付けている。彼らは世界で最も素晴らしいテクノロジー企業を創り、成長させようとしている」と述べた。

「当社は投資金額を増やし、多くの共同投資家にこの機会を提供できることに興奮している。高品質で手頃な価格のデジタルサービスを消費者や中小企業に提供するというJio Platformsの使命をさらにサポートしていく」と付け加えた。

Silver Lakeは、資産とコミットメント合計で約400億ドル(約4兆4000億円)を管理しており、ビデオゲームエンジンメーカーのUnity、オーディオおよびビデオコミュニケーションサービスのSkype、コンサルタント会社のGartner、AlibabaのAnt Financial、コンピューター大手のDell、中国の配車サービス大手Didiなど、何十ものテック企業に投資している。

通信コンサルタント会社Com FirstのディレクターであるMahesh Uppal(マヘシュ・アパル)氏は「アンバニ氏が資金を調達しているのは、少なくとも一部は、石油小売の巨人であるReliance Industriesの210億ドル(約2兆3000億円)に上る純負債を2021年初めにはゼロにするためだ。株主にそう約束した」と語った。同社は2012年には無借金だったが、Jio Platformsの創業資金を賄うため融資を受けた。

「新型コロナウイルスのパンデミックの中で、Silver Lakeが5週間を待たずにJio Platformsへ再び投資することは、包括的なデジタル化により確実に大きくなるインド経済の強い回復力をしっかりと裏付けている、ということを強調したい」とアンバニ氏は声明で語った。

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Aukeyの非常にコンパクトな100W充電器

充電器について話そう。おそらくそれらは、コンピューターに関するものの中で最も地味なものだ。誤解しないで欲しい。もちろんそれらが必要なのは明らかだ。だが、これまでみなさんは充電器について夢中になって考えたことがあるだろうか?

にも関わらず、私がここでお話ししたいのは、今日があなたが充電器を愛し始める最初の日になるということだ。その理由は?この「GaN」という大文字小文字の混ざった3文字のおかげだ。前回のCESのときに、私は「GaNの採用で2020年になっても充電器はまだまだおもしろい」という記事を書いた。私の意見は変わらない。そして、読者もGaNを支持するようになるだろう。

ちなみに、GaNとは窒化ガリウム(Gallium Nitride)の略だ。GaNについて主に知っておくべきことは、それを使うことで、アクセサリーメーカーが驚くほどコンパクトな容積に多くのワット数を詰め込むことが可能になるということだ。2019年のCESで、Anker(アンカー)の30ワットのPowerPort Atomを手に入れて以来、私はこの技術に夢中になっている。そのとき手に入れた充電器は世界最速ではなかったが、iPhoneに同梱されている充電器よりもわずかに大きなサイズで、13インチMacBookをうまく充電することができた。

とはいえ、最近では15インチのノートPCを持ち歩くようになったので、30ワットでは力不足であることが否定できなくなった。実際のところ、充電中でもバッテリー残量が減っていく様子を見ることになるだろう。2020年のCESでもいくつかの新しいACアダプターを試してみたものの、実際に満足できるものを見つけることはできなかった。そんなタイミングに登場した、Aukey(オーキー)のOMNIA 100W PD充電器(55ドル、約6000円)は、かなり私の理想に近い製品だ。

これはApple(アップル)純正充電器の半分のサイズで、私が数年間持ち歩いているGoogle Pixelbookのアダプターとほぼ同じサイズ感である(だがGoogleのアダプターは45ワットに過ぎない)。ところがこの新製品は、アップルが15インチと17インチモデル用に販売している96ワットの充電器よりもさらに強力なのだ。

現在のサイズは理想的なのだが、そうなった理由の一部はAukeyがもう1つポートを付けようとしなかったことにある。つまり、一度に1台のデバイスだけしか充電できないということだが、私のほとんどのニーズには完全に対応している。まだまだ先になると思われるが私が出張を再開できるときには、必ずバッグの中に入れることになるだろう。

なお、サイズから想像するものよりもはるかに重い。これは高密度の小さな充電器なのだ。我が家の壁のコンセントたちにはうまくささったままでいてくれるが、デルタ航空の悪名高い、緩いシートコンセントから落ちずにささっていてくれるかどうかはテストする必要があるだろう。私は、きっと落ちてしまうと予想している。それはかつて頻繁に出張をしていた私にとって大きな問題だ。まあ希望が持てるニュースとしては、通常こうしたメーカーたちは4〜6カ月ごとにさらに小さなモデルを発売していくということだ。

そうした問題には目をつぶれるとして、もし小さなサイズで十分な力を持った充電器を探しているのなら、アップルの96ワットモデルよりも24ドル(約2600円)安い本製品は、しばらくの間、すばらしい選択肢の1つだ。

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(翻訳:sako)

SlackとAWSの統合がMicrosoft Teams+Azureコンビを焦らす

SlackAmazonが米国時間6月4日の夕方、大きな統合を発表した。この統合によりSlackは通話機能にAmazon Chimeを利用することになり、また同社自身のインフラを担うクラウドサービスとして引き続きAWSを利用する。一方、Amazonは、社内コミュニケーション全般でSlackをそのためのオプションとして利用することで合意した。

Amazonのスポークスパーソンは本誌に「Amazonの一部は以前からSlackをライセンスしているが、全社員のオプションになるのはこれが初めてだ」と語った。

ここで強調しておきたいのは、この動きは確かにSaaSのコミュニケーションツールがAWSとの関係を深めたという大きな統合だが、それと同時にこの合意はMicrosoftとSlackのライバル製品である同社のTeamsへの対抗策でもあることだ。そのためクラウドではMicrosoftのライバルであるAmazon AWSと手を組んだのだ。過去にSlackのCEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏は、テクノロジー大手が彼の企業を自分たちの存在を脅かすものと見ている、とからかったこともある。

いずれにしても、Teamsは巨大テクノロジー企業が作った小さなソフトウェアにすぎないが、今回の契約を上記の文脈でみないことはできない。AWSとの関係強化はMicrosoftに対するメッセージであり、インフラサービスであるAzureはAWSと競合している。

もちろんバターフィールド氏自身がそう口にしたわけではない。彼は今回の契約のシナジー効果に関する声明で「AWSと戦略的なパートナーシップを結んだことは、今後の需要に対応するスケール能力を両社に与え、顧客にエンタープライズ級のサービスを提供できるようになる。AWSのサービスをSlackのチャンネル方式のメッセージングプラットホームと統合すれば、開発チームは彼らのクラウドインフラストラクチャのプロジェクトを、Slackを去ることなく容易にそしてシームレスに管理できる」と語っている。

この契約には、AWS Key Management ServiceとSlack Enterprise Key Management(EKM)との統合による暗号キーの管理や、AWSのチャットボットサービスとの連携強化、AWS AppFlowとの直接統合などといったことも含まれている。AppFlowの統合によって、SlackとAmazon S3ストレージやAmazon Redshiftデータウェアハウスとの安全なデータ転送が可能になる。

AWSのCEOであるAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏からみれば、これは純粋な統合劇だ。「AWSとSlackが共同で開発者チームに、フロントエンドのアプリケーションで迅速なコラボレーションとイノベーションの能力を与える。それと同時にバックエンドのクラウドインフラストラクチャに関しても、効率的な管理能力を与える」とジャシー氏は声明で述べている。

良好な契約の例に漏れず、これも明らかにWin-Winの関係だ。SlackはAWSに大きな顧客を獲得し、AWSはそのサービスの多くをSlackに直接統合する。エンタープライズユーザーがこれほどまでもSlackに惚れ込んでいる理由は、フォーカスをあっちこっち変えたり、いろんなインタフェイスを行ったり来たりしなくても、ただ1つの場所で仕事を完了できるからだ。

SlackとAmazonの統合によって、両社共通のユーザーにより多くのメリットをもたらし、その一方で共通の敵を焦らす。まさしく、Win-Winだ。

関連記事:SlackのバタフィールドCEOがマイクロソフトの「比較広告グラフ」を非難

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ジョージ・フロイド事件と新型コロナでTwitterのインストール記録が更新

Apptopia(アップトピア)とSensor Tower(センサータワー)の2つのアプリストア情報会社のデータによると、全国に広がったGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)氏の事件への抗議運動による不穏な情勢により、Twitter(ツイッター)の新規インストール数は米国時間6月1日の週、記録を塗り替えた。両社の調査による新規ダウンロード数や記録更新時期は正確には異なるが、Twitterアプリにとって世界全体で過去最高の週になった点では一致した。

Twitterの利用増加は、そのプラットフォームが提供するニュースの即時性によるものだ。抗議者がデモ、火災、略奪、警察の残虐行為などをライブとビデオで共有する際にTwitterを利用したため、需要が伸びた。一方、抗議に参加しない人々もTwitterアプリをダウンロードして、事件の展開を直接見届け、フィルターがかけられていない最新のニュースを確認しようとした。

Sensor Towerのデータによると、Twitterの米国時間6月1日月曜日のインストール数は100万強、翌火曜日も100万近くだった。同社がアプリストアのデータを取り始めた2014年1月1日以降、1日のインストール数としては6月1日が過去最多となった。米国における今週のインストール数はピークを迎え、4年ぶりの記録となった。Sensor Towerによると、6月3日水曜日にTwitterのインストール数はわずかに減少し、アプリストアのグローバルチャートにおけるランクもわずかに下落したようだ。

一方、Apptopiaによると、Twitterは6月3日水曜日のインストール数で世界のダウンロード数が67万7000を記録し、これまでの記録を上回ったという。この記録には米国での14万インストールという過去最高記録に近いダウンロード数が含まれるほか、英国、インド、ブラジル、メキシコなどの海外市場のインストールも多数含まれている。ただしApptopiaのデータによる米国のダウンロード数は、Twitter史上過去2番目に多いインストール数だという。

画像クレジット:Apptopia

真実は、おそらく2社が発表した異なる数値間のどこかにある。Sensor Towerの数値は、いつもApptopiaより大きい。だが大きく見れば、2社のデータは全体的に同じ傾向を示す。今週の場合、どちらもTwitterのモバイルアプリのダウンロード数急増により記録的な週になったことを示した。

Twitterが米国以外の市場で多くのインストールを記録したのは奇妙に思えるかもしれないが、これは世界中が事件の展開を注視していることの現われだ。だが、これはおそらくTwitterの需要にとって完璧な嵐のようなものだ。ジョージ・フロイド氏の事件に関する不穏な情勢だけが世界中でインストールが増えている要因ではないからだ。

多くの国が新型コロナウイルス(COVID-19)に対処しており、特にブラジルは現在大打撃を受けている。それがTwitterアプリへの関心を高めている可能性もある。Twitterはニュースが推進力となる特徴があるからだ。

Apptopiaによると、ダウンロード数の記録更新に加え、6月3日には米国におけるデイリーアクティブユーザー(DAU)の記録も塗り替えた。米国では約4000万人がアプリにログインしたという。

Twitterの発表によると、2019年第4四半期の米国の「収益化可能な(monetizable)」デイリーアクティブユーザー(mDAU)は3100万人に上り、2020年第1四半期には3300万人に増えた。mDAUはデイリーアクティブユーザーと同じ指標ではない。広告が表示されるプラットフォームにログインしたユーザーを数えるためにTwitterが開発した測定基準だ。mDAUはTwitterがユーザーデータとして発表する唯一の指標であるため、比較可能なデータとしては最も性質が近い。

インストール数と利用量の急増がどの程度続くかは不明だ。Twitterが次の四半期決算で最新の指標を発表するまで詳細はわからない。

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

食品の生産者や卸をD2C化するPortobelが大繁盛、利用者が3倍に

スタートアップのPortobelは、食品生産者が消費者へ直接配達をサポートできるようにビジネスをシフトする支援を行っている。

Portobelのメイン投資家はHeroic Venturesで、創業者のRanjith Kumaran(ランジス・クマラン)氏は過去に、ファイル共有のHightail(OpenTextが買収)やポイント還元のPunchTab(Walmart Labsが買収)を創業している。

クマラン氏によると、彼と共同創業者のTed Everson(テッド・エバーソン)氏とItai Maron(イタイ・マロン)氏は、安価なインターネット接続デバイスを使ってデリバリーのプロセスを改善することを最初の目標にした。乳製品やそ他の生鮮食品の生産者たちとそのテストを始めたとき、顧客たちは「こういう品物をモニターできるのであれば、配達もできないか?」と聞かれるようになった。

そこで2019年に同社は、自社によるデリバリーも始めた。そのためにはもちろん、倉庫やドライバーを管理しなければならない。クマラン氏によると、その工程は「卸売のパレットをD2Cのデリバリーに変えたもののようになった」という。

しかもパンデミックの間は衛生にも配慮し、倉庫の労働者とドライバーにはマスクなどの防御用の装備を身につけさせた。またドライバーは、配達の合間に手を消毒させるようにした。

Portobel warehouse

画像クレジット:Portobel

Portobelは現在、サンフランシスコのベイエリアとロサンゼルスのオレンジ郡地区で事業を行っている。パンデミックは同社のサービスに対する需要を拡大させ、サービスを提供する世帯数は2020年4月以降、3倍に増えた。

しかしスーパーマーケットは健在だし、今でも利用者は多い。また、スーパーマーケットは食料品の配達サービスもオプションで行っている。そんな状況で、なぜPortobelは成長できたのだろうか?

クマラン氏は、D2Cのモデルの方が生産者と消費者の両方にとってメリットが大きいと考えている。生産者にとっては安定して大量の注文があり、消費者にとっては卸から買うことになるため、欲しいものを何でも購入することができる。

デリバリーに関して、食料品をオンラインで買った場合はそれらが荷造りされて最寄りの店へ配達されると彼らはいう。しかしネットショップの品揃えがどれだけ豊富でも、地元の商店はeコマースの効率的なデリバリーに向けて最適化されていない。「通路が荷物でふさがり、デリバリー業務のための専用スペースがないため、サービスの規模を拡大することもできない。食料品の配達には今後、予測できない機会がいろいろあるが、それらにも対応できない」とクマラン氏はいう。

Portobelの顧客にはサンフランシスコのMoo Cow Marketがいる。Moo Cowの創業者であるAlexandra Mysoor(アレクサンドラ・ミズール)氏は、「パンデミックはリテールに新しい波をもたらし、現在、商業の古い形と新しい形が混在するようになった。そんな状況の中でMoo Cow Marketのような企業は、Portobelなどのおかげで事業を拡大し成長することができる」と声明で語っている。

関連記事:Where top VCs are investing in D2C…上位のVCたちはどんなD2Cに投資しているか(未訳)

画像クレジット:Portobel

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Instacartがショッパーの不満を受けてチップに関するポリシーを変更

Instacart(インスタカート)は米国時間6月5日、増加するショッパー(編集部注:顧客に買い物品を届ける人のこと)を「チップ釣り」から守るために、チップに関するポリシーを変更すると発表した。チップ釣りとは、顧客が多めのチップでショッパーを引きつけ、グローサリーを受け取った後にチップをゼロにするという酷い手法だ。新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックで人々が買い物に行けなくなってInstacartの需要が急増したのにともない、このチップ釣りが出てきた。

Instacartは、チップ釣りは稀で配達後のチップ削除はオーダー全体の0.5%に満たない、という。また、新型コロナパンデミックが始まってから、ショッパーへのチップの総額は倍増したとしている。しかしポリシーの変更は、同社のショッパーの待遇改善を示している。外出禁止令で人々が家にこもりグローサリーストアーに行かない間、ショッパーたちは重要な存在だった。

Instacartは現在、配達後にチップを削除する顧客にフィードバックを求めている。頻繁にチップを削除する顧客を利用不可にする、ともしている。加えて、チップ額を変更できる期間を3日から24時間に短縮する、と述べた。

チップ額を変更できる期間の短縮は、ショッパーが最終的なチップを待たなければならない時間を短くすることになる。

チップに関する変更に加え、Instacartは2019年に導入したキャッシュアウト機能をアップデートする。すぐにお金を必要としているショッパーのために、配達を完了した24時間後にチップを引き出せるようにする。同社はまた、Visaカードを使用しているショッパー向けに2020年7月末までキャッシュアウトの手数料を免除する。キャッシュアウト機能はカナダでも使えるようになる。

こうした措置の背景には、Instacartのショッパーたちが不満を募らせていることがある。同社は新型コロナパンデミックと外出禁止令による需要増大を受けて、ショッパーの数を250%近く増やす計画を発表した。そうしたアグレッシブな採用が火に油を注ぎ、アプリのバグやチップ釣り、感染を予防するためのキット配布の欠如など根本的な問題をInstacartは解決していない、と一部のショッパーは指摘する。

2020年3月に、ショッパーは待遇改善を求めてストライキを実行した。その中で、デフォルトのチップ割合を10%に戻すよう要求した。今回のポリシー変更にはチップ割合に関するものは含まれていない。デフォルトのチップ割合は5%だ。

新型コロナ禍において、ギグワーカーは必要不可欠な業務の担い手だ。Instacartがショッパーをそうした存在として扱おうとポリシーを変更するまでにかなり時間がかかった。

画像クレジット:Instacart

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(翻訳:Mizoguchi

今週の記事ランキング(2020.5.31〜6.4)

みなさんはどんな金曜日をお過ごしだろうか。金曜日に毎週お伝えしているTechCrunch Japanのウィークリーランキング。今週も本誌で最もよく読まれた記事を紹介しよう。

今週はハードウェア系の記事がよく読まれた。1位と2位の記事はそれぞれ、リッチなビデオチャット環境の整え方を説明したガイド記事だ。1位は、数多くのツールのなかでも特に重要な「照明」に特化した記事になっている。自分をキレイに見せるためにはカメラの画質も重要だけど、照明もすごく重要だ。照明以外のガジェットにも興味がある人は、2位の「軍資金を全投入して自宅で最高のビデオチャット環境をつくる方法、予算別で紹介」という記事もぜひ読んでいただきたい。

3位の「B&Oの第3世代Beoplay E8フルワイヤレスイヤフォンは最高の音質と着けごこち」と題した記事も、ビデオチャットになくてはならないワイヤレスイヤフォンのレビュー記事だ。これさえあれば、会議中にちょっとミュートしてトイレ!なんて時でも、会議の流れを追うことができる。でも、その際は絶対にミュートは必要だから、そこだけは気をつけてほしい。

それではまた来週!

Atlassianが新しいDevOps機能を発表

Atlassian(アトラシアン)は米国時間6月2日、Bitbucket CloudやPipelinesからJiraなどを含むさまざまなサービスに対して、DevOpsを中心に据えた多数のアップデートを発表した。

これはかなりの規模の発表だが、企業が開発手法としてDevOpsを採用する際に、チーム同士がさまざまな役割を横断してコラボレーションしやすくなるようにすることが、全体的なコンセプトだ。

AtlassianのアジャイルならびにDevOpsソリューションの責任者であるTiffany To(ティファニー・トゥ)氏は「私は何年にもわたって、多くのテック企業がアジャイルならびにDevOpsトランスフォーメーションに取り組んでいる様子を見て来ました」と語った。「誰もがDevOpsのメリットを望んでいますが、複数のチームを組み合わせようとすると事態は複雑化します、私たちはそのことを知って、今回のツールを追加したのです。多くのユーザーと話し合う中で、ユーザーがDevOpsで成功するためには、実際には単なるツールセット以上の多くのものが必要だということがわかりました。チームとして機能できるようにする必要があるのです。ということで、今回の機能の多くが、そうした目的に焦点を合わせたものになっているのです」と続ける。

トゥ氏が強調したように、同社は複数のエコシステムパートナーとも協力している。例えば、Jira Software Cloudの自動化機能を拡張した。これによって、GitHub、GitLab、およびJira Software Cloudに統合されている他のコードリポジトリ内での、コミットおよびプルリクエストによっても自動化機能がトリガーできるようになった。「これで、開発者の皆さんがイシューの更新に時間を費やすことを不要にできる、DevOpsへの素晴らしい統合を手に入れることができるのです」とトゥ氏は指摘した。

実際、発表の多くはサードパーティツールとの統合に焦点を当てている。これによってAtlassianは、開発者がどこにいても接触を保てるようになるのだとトゥ氏は語った。例えば、ユーザーが選択したコードエディターがVisial Studio Codeである場合、ユーザーはAtrassianのVS Code拡張機能を試すことができる。こうすることで、Jira Software Cloudからエディターにコードを引き出すようなタスクを実行できるだけでなく、コードレビュー作業や、Bitbucket PipelinesからのからのCI/CDトラッキングも使える。

また、Bitbucket Cloudの「Your Work」(割当作業)ダッシュボードも新しくなり、アサインされたすべてのJiraイシューと、Bitbucket CloudのCode Insightsを表示できるようになった。Code Insightsは、テスト自動化のためのMabl、監視のためのSentry、セキュリティ脆弱性を発見するためのSnykとの統合機能を備えている。これらの統合は公開APIの上に構築されているため、チーム自身が独自の統合を行うこともできる。

「なるべく早めの対応を行おうとする、本当に重要な流れが生まれています。バグやセキュリティの問題を取り除くためのコストは開発サイクルの後半になるほど高くなります。ではどうすればそれらの問題を開発サイクルの早い段階で取り除くことができるのでしょうか」とトゥ氏は言う。「その検出プロセス全体を、ソフトウェアライフサイクルのかなり早い段階で行う必要があるのです」。

Jira Service Desk Cloudには、変更のリスクをスコアリングしてリスクの低いものを自動承認できる、新しいRisk Management Engine(リスク管理エンジン)と、承認プロセスを合理化するための新しい変更管理ビューが組み込まれた。

最後に、アラートを一元化してノイズを除去することを約束する、新しいOpsgenieとBitbucket Cloudの統合、およびチームがインシデントが発生する前に発生した最後のデプロイメントを確認するのに役立つ、優れたインシデント調査ダッシュボードがある。

「こうした細々とした機能が必要な理由は、非常に多くのツールをつなぎ合わせるために、多くの摩擦点が生まれるからです」とトゥ氏は述べている。「仮に1つのベンダーだけから1つのツールチェーンをすべて購入した場合には、これらの摩擦点は少なくなりますが、最良のツール群を選択することはできないという、バランスの問題に突き当たります。私たちの使命は、万能のツールがない中で、最高のツールを選択できるようにすることなのです」。

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(翻訳:sako)

ソーシャルメディアを攻撃するトランプの大統領令が最初の法的問題に直面

大統領のツイートに手を加えたTwitter(未訳記事)を狙ったホワイトハウスの大統領令が、人権団体からの訴訟(PDF)に直面している。先週Twitterが、郵便投票に関する嘘の主張をしている大統領のツイート(未訳記事)に事実確認のラベルを付けたあと、大統領はその命令に署名した。

司法長官のWilliam Barr(ウィリアム・バー)氏が味方についたその大統領令は、特に通信品位法230条に狙いを定めている(未訳記事)。この条項は、インターネット企業がポストするコンテンツに関して当企業を法的責任から護っている。

先週、オンラインの市民の自由を守ることを掲げる非営利団体であるCenter for Democracy and Technology(CDT)が提起したその訴訟は、そのほかの市民団体と並んで大統領の命令を問題視した。またACLU(米自由人権協会)は、大統領令の発令行為そのものを表現の自由を押さえつけようとする露骨で薄っぺらな行為と呼んで退けた(ACLUプレスリリース)。

関連記事:Trump signs an executive order taking direct aim at social media companies(トランプがソーシャルメディア企業を狙った大統領令に署名、未訳)

文末にある訴状でCDTは、大統領令はTwitterに対する攻撃において「『明白に反動的』であり、大統領のツイートに注釈を付ける権利は米国憲法修正第一条で認められている」と主張している。その訴訟は大統領の意図を批判して、批判に対して政府が権力を行使することは「オンラインのプラットホームと個人の発言に対する憲法の保護を奪い無視するものだ」と述べている。

Twitterは米国時間6月2にCDTの訴訟の支持を共有し、「大統領令は自由なインターネットを侵食する『反動的で政治的意図に基づいた』アクションだ」と評した。

Twitter Public Policy:この大統領令は歴史的な法律に対する反動的で政治的動機に基づいたアプローチだ。法の230条は米国のイノベーションと表現の自由を保護し、民主的な価値によって裏打ちされている。それを一方的に侵食しようとする試みは、オンラインの発言とインターネットの自由を脅かすものである。

Twitterは先週後半の大統領のツイートを暴力を賛美しているとして警告し、同社とトランプ大統領との間の緊張はさらにエスカレートした。そのツイートの不吉な声明、「略奪が始まれば銃撃が始まる」に、アメリカの反政府活動家たちは恐怖を感じた。この言葉には、黒人アメリカ人に対する政府公認の暴力の忌まわしい歴史的ルーツ(ワシントン・ポスト記事)がある。

CDTの理事長でCEOのAlexandra Givens(アレクサンドラ・ギブンズ)氏は「この大統領令はソーシャルメディアサービスが誤報や有権者の抑圧、そして彼らのプラットホーム上における暴力の扇動と戦うことを、阻止しようとしている」と述べる。そして「大統領は脅しと報復と今後の規制を利用して、メディアが行うコンテンツのモデレーションのやり方を変え、有権者の抑圧や誤報が選挙の年に野放しで確実に増えることを意図している」と続けた。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SalesforceがVlocityの創業者デビッド・シューマイヤー氏を新しいSalesforce Industries部門のCEOに任命

Salesforce(セールスフォース)がVlocity(ブロシティ)を2月に13.3億ドル(約1460億円)で買収すると発表したとき、それは両社にとって理にかなった取引だと受け止められた。そして米国時間6月1日、同社は買収手続きが完了したことと、VlocityのCEOだったDavid Schmaier(デビッド・シューマイヤー)氏がSalesforce Industries(セールスフォース・インダストリーズ)という新しい部門のCEOに指名されたことを発表した。

Vlocityは、メディアやエンターテインメント、ヘルスケア、政府機関などに対する業界固有のCRMツールを、Salesforceプラットフォーム上に構築してきた。Salesforceも独自の業界ソリューションを開発してきたが、産業特化ツールに専念した部門を持つことで、さらなる市場機会が生み出される。

シュマイヤー氏は、この新しい部門を、個別業界に焦点を当てたアプローチの価値に基づいた同社の取り組みとして捉えている。

「VlocityがSalesforce Industriesと呼ばれる部門の一部となることで、業界固有のソリューションをお客さまに提供できる、Salesforceの中でも大きなグループとなります。お客さまのデジタル化と全く新しいやり方での仕事を支援することになるのです」とシューマイヤー氏はTechCrunchに語った。

Salesforceの社長でCOOのBret Taylor(ブレット・テイラー)氏がシューマイヤー氏のボスとなる。新しい部門を発表したブログ投稿の中で、テイラー氏は最近のテクノロジーソリューションの多くの側面と同様に、業界の焦点は企業のデジタルトランスフォーメーションの支援にあると語っている。パンデミックの中で、私たちの目の前で世界が変化するにつれて、企業は業務をオンラインに移行することを余儀なくされている、そしてSalesforceはそれを必要とする顧客に、さらに具体的なソリューションを提供したいと考えているのだ。

「あらゆる業界の企業が、かつてないほどデジタルトランスフォーメーションの必要性に迫られています。そして多くの企業がデジタルファーストで、どこからでも仕事ができる環境構築の計画を加速しているのです。Salesforce Customer 360とVlocityを使用することで、お客様は特定のニーズに完全に合わせて調整されたツールとエキスパートによるガイダンスだけでなく、最先端の業界プラットフォームを利用できるようになるのです」とテイラー氏は述べている。

シューマイヤー氏は、彼の会社のツールはすでにSalesforceの上に構築されているので、通常このような買収のあとで組織統合のために行わなければならない苦労をすることなく、すぐに全力で走り始めることができると語る。

「私は30年のキャリアの中で、さまざまな合併や買収に携わってきましたが、今回のものがこれまで経験したものの中で最もユニークなケースでした。なぜならこれまでに構築した6つの業界向けアプリケーションが、どれも既に100%Salesforceプラットフォームの上に構築されていたからです。つまり、製品は既に100%Salesforce対応済ということで、これは本当に驚くべきことなのです。これにより、統合がはるかに簡単になりました」と彼は語った。

プラットフォームが既に利用されていることを考えると、Salesforceが引き続き新しい部門で開発を続け、長期にわたってアプリケーションを追加していく可能性は高い。「私たちはいまや基本的に、Salesforceの中に業界向け開発を行うためのプラットフォームを持っているのです。したがって、この産業クラウドプラットフォームのおかげで、新しい業界向け開発を行うためのコストは、最初に業界向け開発を行うためにかかった費用に比べれば、ほんのわずかなものにできるのです。ということで、私たちは新しい業界向けの開発を行っていく機会を探っている最中ですが、本日の時点ではまだ発表できる準備が整っておりません。手始めに、私たちは今回の組織を立ち上げました」とシューマイヤー氏は語る。

同社は先週木曜日(米国時間5月28日)に記録的な四半期を報告したが、次の四半期への見通しが投資家を驚かせ、金曜日の株価は下落した (記事執筆時点の米国時間6月1日時点では0.77%上昇)。とはいえ、会社はその業績に甘んじることなく、Salesforce Industriesのような部門を設置することで、個別業界や他の可能な収益源に対処するための、より集中した方法を提供しようとしている。

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(翻訳:sako)

Twitterが共和党議員の反ファシズムツイートを「暴力賛美」として制限表示に

6月1日、Twitterは政治的に大統領と近い議員のツイートを警告表示で隠し、暴力を助長するコンテンツを禁止する同社のポリシーを掲げた。

共和党フロリダ州選出のMatt Gaetz(マット・ゲイツ)下院議員はツイートで、米国政府は国内の反ファシズム主義者を、国際テロリストを追うのと同じように「狩り出す」ことを示唆した。

「当社はこの @mattgaetz のツイートに公共の利益に関する警告を表示した」と、Twitter広報がTechCrunchに話し、同社のポリシーページへのリンクを貼った。Twitterユーザーはコメントをつけてこのツイートをシェアできるが、通常のリツイート、いいね、あるいは返信は無効化されている。

以前発表した公人による同社規則に違反したツイートに関わるポリシーと矛盾することなく、Twitterはツイートを残したが警告の陰に隠した。「世界のリーダーたちのアカウントがわれわれのポリシーの上位にはないことを,ここに改めて明らかにしたい」とTwitterは昨年発表したリリースに書いていた。「明確な公共の利益がある場合は、過ちを犯すにしてもコンテンツを残すことを尊重する」

画像クレジット: Yuri Gripas/Abaca Press/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

創業百数十年の老舗食堂から生まれた飲食向けデータ分析ツール開発のEBILABがパーソルから約1億円を調達

飲食や小売向けの店舗データ分析ツール「TOUCH POINT BI」を開発するEBILABは6月1日、パーソルグループのパーソルイノベーションから約1億円を調達したことを明らかにした。

EBILABでは同じくパーソルグループでクラウド型モバイルPOSレジ「POS+」を手がけるポスタスと2020年2月に業務提携を締結済み。今後はパーソルイノベーションやポスタスとの連携を通じて販売やマーケティング面を強化するほか、飲食・小売業のデジタル変革の支援に向けた新プロダクトの開発なども検討していくという。

TOUCH POINT BIは飲食店や小売店が保有する「店舗にまつわるあらゆるデータ」を一元的に収集し、可視化するプラットフォームだ。たとえばPOSレジサービスと連携することでユーザー自身が何も入力することなく売上データを自動で収集。期間別の売上や客数のほか、顧客の年齢層、入店時間別の来客比率、メニューごとの売上比率など店舗分析に不可欠な情報をダッシュボード上に表示する。

同サービスに繋げるデータはPOSレジに限らず幅広い。天候データと紐づけることで天気や気温が店舗の状況にどのような変化をもたらしたのかを数字で把握することもできるし、店舗に設置したネットワークカメラによる「画像解析AI」機能を活用してレジシステムだけではわからなかった顧客の属性や行動を掘り下げて分析することもできる。

また過去に蓄積してきたデータを用いた「来客予測AI」もTOUCH POINT BIの1つの特徴だ。未来の来客数が予測できることによってあらかじめ発注・仕入れを最適化し食品のロスを減らせるほか、オペレーションを効率化して料理の提供時間を短縮することも可能。「45日予測」機能は早い段階でシフトや休暇を調整する際にも役立つ。

「ユーザー側で画面設計の手間がないというのが大きな特徴。これまでためてきた知見やノウハウを元に最初からベストプラクティスを提供するという考え方で、飲食や小売の現場で必要とされる項目を最初の段階で揃えている。ユーザーは導入時にポスベンダーと連携さえしておけば自動でデータが収集されるので、業務の節目に自ら入力しなくてもデータを軸とした店舗運営ができる」(EBILABでCTO兼CSOを務める常盤木龍治氏)

TOUCH POINT BIがユニークなのは、なんと言ってもこのサービスが三重県伊勢市にある創業百数十年の老舗食堂「伊勢ゑびや大食堂」の“自社ツール”として生まれたものである点だろう。長い歴史を持つ同店舗ではデータ解析の力で勘に頼らない店舗経営への移行を目指すべく、TOUCH POINT BIの前身となるツールを自社で開発した。

これが1つのきっかけとなり2012年に1億円だった売り上げは2018年に5倍近くの4.8億円まで拡大し、利益ベースでは約10倍増加。現場では来客予測システムの効果によって米の廃棄を70%ほど削減することに成功したほか、人員の稼働をうまく調整することでスタッフが休暇を取りやすい体制を実現することにも繋がった。

「多くの飲食店ではそもそもデータを使った分析などをしていないか、やっていてもエクセルなどを使って特定の人に依存する形になっているところが多かった。後者の場合、担当者が変わってしまうとまたゼロから仕組みを構築しなければならない。結果的にデータではなく勘や経験頼りでしかビジネスが回らない状態に陥ってしまい、ロスも発生するし販促も成果に繋がらないという状況が様々な店舗で起きている。もし数字を基にして根拠を持って考えられるような仕組みが作れれば、もっと確度の高い形で経営ができるのではないか。そんな思想から生まれたプロダクトだ」(ゑびや代表取締役でEBILABの代表も務める小田島春樹氏)

2018年6月にはゑびやのシステム部門をEBILABとして分社化。同時にTOUCH POINT BIという形で正式にプロダクト化し、飲食店を中心とした小売事業者へサービス提供を始めた。現在もEBILABはゑびやと同じく伊勢市に本社を置き、沖縄市に構える同社のInnovationLabのメンバー達とリモート環境でプロダクトの開発に取り組む。

飲食店向けのシステムを開発しているIT企業はいくつもあるが、実際に飲食店を運営しているところは稀だろう。TOUCH POINT BIにはドッグフーディングの形で「実際にゑびやで試してみてハマった機能」が散りばめられていて、もしかしたらこの開発体制こそがEBILAB最大の強みと言えるかもしれない。

同サービスの利用料金はデータを分析するための「店舗分析BI」が1店舗あたり月額1万9800円、そこに来客予測AIも加えた上位プランが月額2万9600円(導入費用は別途必要)。地方のSMBなどでも導入しやすいように「多くの店舗が毎月かけているWeb販促費などの範囲内で使えて、実際に効果が実感できるサービス」を目指したという。

現在は約160社が導入しているが今の所は大手デベロッパーの案件なども多いそう。今後は当初のターゲットとしていた全国のSMBへの展開を進めるべく、スマホベースで来店予測や日々の進捗管理ができるサービスの開発や販売・マーケティングの強化を進める。

冒頭でも触れた通り、パーソルイノベーションおよびポスタスともその方向で連携を強めていく計画。ポスタスと共同で2月より提供をスタートしている「POS+BI powered by EBILAB」を2022年までに1万店舗へ展開することを目指すほか、中長期的には双方のアセットを活用しながら新サービスや飲食・小売事業者のためのデジタルソリューションの企画開発などを共同で行なっていく計画だという。

東工大発バイオインフォマティクススタートアップのdigzymeが3000万円を調達

コンピュータを用いた酵素探索技術によって有用化合物のバイオ生産を後押しするdigzymeは5月29日、ANRIやReBoostなどを引受先とする第三者割当増資により総額約3000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

digzymeは昨年8月に当時東京工業大学の博士課程3年生だった渡来直生氏(代表取締役CEO)が立ち上げたバイオインフォマティクス領域の大学発スタートアップだ。バイオインフォマティクスとは生命科学で得られた情報をコンピュータを使って解析していく分野を指すが、同社ではその中でも酵素の遺伝子を探索する技術を開発してきた。

渡来氏によると酵素とはある物質を別の物資に変換する能力を持つ分子のこと。酵素は遺伝子から作られているためその情報が変われば別の機能を持つ酵素を作ることができ、実際に自然界の中にはたくさんの酵素が存在している。

ただ酵素遺伝子は1200万種類以上あると推定されている一方で、既知の酵素触媒機構は1000程度、反応化合物は1万程度であり、すべての酵素遺伝子のうち正しく機能分類されているものはほんの10%程度にしか過ぎないそう。未知の酵素の中から目的に合うものを地道に実験的に確認していくのはコストの観点でも困難なため、そこにITを活用する余地が大きいという。

digzymeでは化学反応を扱うCheminformaticsと遺伝情報を扱うGenomicsを組み合わせることで「未知の遺伝子群から目的の酵素遺伝子を掘り当てる技術」を開発。その技術を軸にバイオ生産に取り組む化学メーカーや製薬メーカーをサポートする。

バイオ生産の特徴は、有機化学生産や直接抽出法といった他の有用化合物の生産方法に比べて安全安価であること。その反面、反応柔軟性の低さや開発コストの高さが課題となってきた。要は「1回できてしまえば合成コストや環境負荷を抑えられメリットが大きいが、作るまでが難しい」(渡来氏)そうで、digzymeのチャレンジはそのギャップをコンピュータによる酵素探索技術で埋めていくことだ。

現在は複数の大手企業と有用化合物生産に向けた共同研究を始めている段階。まずは受託事業からのスタートとなるが、ゆくゆくは化学メーカーと協業して自ら新しい成分を作っていくところまで取り組む計画だ。

digzymeでは今回調達した資金を活用して組織体制を強化し、プロダクト開発や協力企業の開拓を進める。今後は自社のコア技術の一部を「digzyme Moonlight Cloud」として無料提供する予定で、ユーザーが検索フォームに任意のターゲット化合物を入力すれば、原料候補の化合物との間を結ぶ推定反応経路が得られる仕組みを作っていくという。