中南米のフィンテック投資ブームに乗りブラジルのオンライン金融会社Creditasが264億円調達

中南米全域で金融サービスのスタートアップが巨額の資金を集め続ける中、ブラジルでオンライン融資事業を展開するCreditas(クレディタス)は、新たに2億5500万ドル(約264億1000万円)の資金調達を行った。

同社の与信ポートフォリオは10億レアル(約203億円)を超え、これまで5回のラウンドで5億7000万ドル(約590億5000万円)の外部資金調達を行っているため、新たなラウンドでは17億5000万ドル(約1812億8000万円)の企業価値になる。

Creditasは、中南米全域における金融サービス系スタートアップ投資ブームの恩恵を受けた最新の企業だ。CB Insightsのレポートによると、2020年になってから、ラテンアメリカにおけるフィンテック系スタートアップへのベンチャー投資は、2014年の5000万ドル(約51億8000万円)から2020年には139件で21億ドル(約2175億3000万円)を超えるまでに成長しているという。

今回のラウンドの投資家にはLGT Lightstone、Tarsadia Capital、Wellington Management、e.venturesAdvent Internationalの関連会社であるSunley House Capitalなどの新規投資家が含まれている。これまでに出資していたSoftBank Vision Fund 1、SoftBank Latin America DFund、VEF、Kaszek、Amadeus Capital Partnersもまた、同社にさらなる資金を投入するために戻ってきた。

「Creditasは、ブラジルとメキシコの巨大な未開拓の有担保融資市場に参入するための初期段階にあるところです」と、SoftBank Latin America DFundのマネージング・パートナーであるPaulo Passoni(パウロ・パッソーニ)氏は声明で述べている。

同社の成長は、ラテンアメリカ全域における新しい金融商品のニーズと、ラテンアメリカの金融サービスに取り組むスタートアップへの投資で大きな勝利を収めてきたKaszek Venturesのような投資家の洞察力の両方を証明するものだ。

「シリーズAでの投資以来、我々の道のりは本当に素晴らしいものでした。チームはビジョンを実行し、Creditasは顧客の生涯にわたる主要な金融ニーズに応えるアセットライトなエコシステムへと進化しました」と、Kaszek Venturesのマネージング・パートナーであるNicolas Szekasy(ニコラス・セカシ)氏は声明の中で述べている。

レッドポイントのe.venturesファンドも、ここ数年ラテンアメリカへの投資に注力し、成功を収めてきた。

「Creditasは、ブラジル人がリーズナブルなレートで金融ニーズをコントロールできるようにすることで、顧客や投資家に大きな価値をもたらす、愛される消費者向け商品を生み出しています。レッドポイントであるe.venturesを通じてシード段階から関与してきた私たちは、ブラジルのフィンテック業界に変革をもたらすCreditasを、我々のグローバル成長ファンドでサポートできることに興奮を感じています」と、e.venturesの共同設立者でありマネージングパートナーであるMathias Schilling(マティアス・シリング)氏は述べている。

Creditasはこの資金を利用して、住宅ローンや自動車ローンのほか、顧客の給料を担保にするベイデイローンや小売オプションとしての後払いローンなど、サービスの拡大を計画している。

同社は他の市場への進出も視野に入れており、その足がかりとしてメキシコ市場に目を向けている。

2012年にサンパウロのベリーニ通りにある5平方メートルのオフィスで創業したCreditasは、現在では数百人の従業員を擁し、担保付き融資のマーケットプレイスと独立した住宅・自動車融資事業を基盤とした強固な事業を展開している。

また、同社は初めて四半期決算を発表し、前年同期の7,490万ブラジル・レアル(約15億2000万円)から4050万レアル(約8億2000万円)に損失が縮小していることを示した。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Creditasラテンアメリカ資金調達ソフトバンク・ビジョン・ファンド

画像クレジット:Getty Images under a license

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

株取引アプリRobinhoodが過去に「劣悪な価格」で顧客の注文を実行したというSECの告発で約67.2億円支払う

米国時間12月17日、米国の証券監視機関であるSECは、近年急速に成長している(未訳記事)手数料無料の株取引ブローカーのRobinhood(ロビンフッド)が、その歴史的なビジネス慣行の一部に対する告発を解決するために、6500万ドル(約67億2000万円)の罰金(SECサイト)を支払ったと発表した。問題の行動は2015年から2018年の間に発生したもので、SECは同社が「その最大の収益源」をどのように生成するかについて「顧客とのコミュニケーションで誤解を招くような記述や省略をした」と主張している。具体的には「ペイメント・フォー・オーダーフロー」と呼ばれるものについてだ。

SECはまた、この資金力豊富なユニコーンであるロビンフッドが、「2018年10月から2019年6月の間にウェブサイトのFAQで、その実行品質が競合他社と同等または勝っていると虚偽の主張をしていた」と述べている。実際に同社は「手数料を支払わないことによる節約を考慮した上でさえ、顧客から3410万ドル(約35億2000万円)を奪った劣悪な取引価格」で、顧客の取引を実行していたと、SECは主張している。

ロビンフッドはSECの告発を認めも否定もしなかった。

コメントを求められたロビンフッドの最高法務責任者Dan Gallagher(ダン・ギャラガー)氏は、6500万ドルの和解が「今日のロビンフッドを反映していない歴史的な慣行に関することだ」と電子メールで述べた。同社は、やや珍しい記事用発言で「最良の実行プロセスを大幅に改善し、実行品質を向上させるために追加のマーケットメーカーとの関係を確立した」と付け加えた。

ロビンフッドは、最新のペイメント・フォー・オーダーフローの書類で5つの取引企業をリストアップした。

TechCrunchは、最近の四半期にロビンフッドのペイメント・フォー・オーダーフローが、どれだけの利益を生み出したか追ってきた。同社はユーザーベースと取引量の両方を拡大し、顧客の注文をどのように実行するかによって成長する利益を上げてきた。

たとえば(未訳記事)、2020年第2四半期には、ロビンフッドのペイメント・フォー・オーダーフローによる収入は約1億8000万ドル(約186億2000万円)と、2020年第1四半期の約9000万ドル(約93億1000万円)から倍増している。もちろん、これらの数字は、和解の発表に記された時期より数年後のものだ。

【更新】このSECのニュースが発表されたのは、マサチューセッツ州証券部がロビンフッドに対して告訴状を提出してから1日も経っていないことは注目に値する。同州証券部はロビンフッドが「顧客の最善の利益を無視して積極的にマサチューセッツ州の投資家に自らを売り込み、急速に成長する顧客基盤の需要を満たすために必要なインフラと手続きを維持することを怠り、法と規則に違反する行為と慣行に関わった」と主張している。

マサチューセッツ州はロビンフッドの問責、その企業運営の改善とともに、金銭的賠償およびその他の金融罰則を求めている。マサチューセッツ州の訴状はここで読むことができる。

【更新2】ロビンフッドはマサチューセッツ州の状況について、「(同社は)マサチューセッツ州証券部による訴状の申し立てに同意しません。積極的に(同社自身を)守るつもりです」とコメント。同社は投資アドバイスを提供しておらず、「システムの規模を確保するために熱心に取り組み」、この数カ月の間にオプションサービスを改善してきたと付け加えた。

影響

ロビンフッドにはこれまで、特にこの不安定な年には一触即発の出来事があった。重要な市場の瞬間にシステムがダウン(未訳記事)したり、利用者の自殺をきっかけにオプション取引サービスの改革(未訳記事)を余儀なくされた。オーダーフローからの収入による成長が鈍化(未訳記事)しているのも見てきた。

しかし、それらの問題にもかかわらず、同社の2020年の軌道はほとんど印象的といってよい。その急速な収益により、同社は今年、拡大する評価で数億ドル(数百億円)を調達(未訳記事)し、2021年のIPO候補になった。

今回のニュースがロビンフッドの成長を完全に脱線させるとは想像しにくいが、告発が現在に近い過去の期間を対象とした場合、おそらく影響はより大きいだろう。ロビンフッドの競合他社で、先日6500万ドル(約67億2000万円)を調達したPublic.com(未訳記事)は、今回のニュースを利用することができるかもしれない。

カテゴリー:フィンテック
タグ:RobinhoodSEC裁判

画像クレジット:Towfiqu Photography / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

新興市場向けデジタルバンクのUmbaが2億円超の調達、アフリカ全土に事業拡大へ

アフリカを最初の市場として目指している、新興市場向けのデジタルバンクUmbaは、Stripeの元発行責任者であるLachy Groom(ランシー・グルーム)氏、Ludlow Ventures、Frontline Ventures、Act Venture Capitalなどの新規投資家からシードラウンドで200万ドル(約2億660万円)の資金を調達した。

現在ケニアとナイジェリアで事業を展開している同社は、従来のアフリカの銀行に代わるデジタル金融サービスを提供している。Umbaのモバイルアプリでは、無料の当座預金口座、無料の端末間即時送金、貸付、預金、BillPay、キャッシュバックを顧客に提供する。これはアフリカ諸国の伝統的な銀行に見られる一般的な高コストのハードルの高さとは対照を成す。

現在はケニアとナイジェリアで利用可能であり、両国の人口を合わせると2億5000万人を超える。

Umbaと競合するのは、Kudao、Carbon、Eversend、そして「チップ入りカードまたは現金」支払い方式だ。

UmbaのCEOであるTiernan Kennedy(ティアナン・ケネディ)氏は次のように述べている。「当初から、私たちは複数の市場、通貨、支払いインフラに対応できるようにプラットフォームを構築しました。後からシステムをアップグレードすることは難しくなるため、この柔軟性は非常に重要な考慮すべき事項です。例えば、ナイジェリアでは銀行やデビットカードの普及率が高いため、Umbaはこれらの支払い方法に深く統合されていますが、ケニアと東アフリカではモバイルマネーが主流であるため、当社のプラットフォームもこれらのサービスと密接に統合されています」。

Ludlow VenturesのパートナーであるBrett deMarrais(ブレット・デ・マライアス)氏は次のように述べている。「Umbaは我々がアフリカ市場に投資した最初の企業であり、参加することに興奮しました。Umbaのチームは、顧客のために銀行業務のコストを削減し、アクセスを民主化する優れたサービスを提供しています。物理的な銀行支店のインフラから離れる動きはすでに進行中で、今年に入って加速しています。アフリカ市場が成熟しつつあり、非常に興味深い段階に入っていることは明らかです」。

このニュースの直前、今年10月にはStripeが2億ドル(約206.6億円)でナイジェリアの決済サービススタートアップであるPaystackを買収した。7月にはDPO Groupが2億8800万ドル(約297.5億円)で、8月にはSendwaveが5億ドル(516.6億円)で買収されるなど、アフリカのデジタル決済・送金サービス業界はベンチャーラウンドや買収で記録的な更新が続く盛況を呈している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Umba

画像クレジット:Umba、資金調達、アフリカ、モバイル決済

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

インドの農家に収穫した農産物の保管・販売サービスと資金を提供するAryaが約21.8億円調達

インドの農家が生産した農産物のうち、大規模な市場に届くのは約3分の1に過ぎない。それらの農産物を生産している人々は、ポストハーベスト(収穫後)サービスを活用することができるが、それ以外のすべての農家はその恩恵を受けられていない。

このポストハーベストサービスの欠落を埋めるため、農家、食品加工業者、取引業者、金融機関など、すべての利害関係者と協力して活動を続けているインドのノイダを拠点とするスタートアップが、新たな資金を確保した。

創業7年のAryaは米国時間12月15日、シリーズBの資金調達ラウンドで2100万ドル(約21億8000万円)を調達したと発表した。このラウンドは、新興市場のフィンテックに特化したベンチャー企業であるQuona Capital(クオナ・キャピタル)が主導し、従来から投資しているLGT Lightstone AspadaとOmnivoreも参加。一方、Aryaによれば、複数の名前が明かされていない貸金業者もこのスタートアップに追加のデットファイナンス(負債による資金調達)を提供しているという。

現在インドでは、ほぼすべてのポストハーベストの措置が、インド北部ラジャスタン州のコタや首都ニューデリーのアザドプル・マンディなどの主要な農業センターを中心に行われていると、Aryaの共同設立者であり最高経営責任者のPrasanna Rao(プラサナ・ラオ)氏は、TechCrunchによるインタビューで説明した。

この不均等な集中は、国内の何百万もの農家から、農産物を効率的に保管・販売するための合理的な選択肢や、キャッシュフローを維持するための資金調達の選択肢を奪っている、と同氏は述べている。

「私たちの信念は、現在十分なサービスを受けられていない市場の3分の2に対応すべきだということです。たとえばコーターのマンディ(市場)には、半径1km圏内に35の銀行支店があります。しかし、コーターから70~80km離れた場所に行くと、これが本当に減少します」と、以前は銀行で働いていたラオ氏はいう。

Aryaは前述の課題をすべて解決する。インドの20の州で1500以上の倉庫のネットワークを運営しており、そこでは総額10億ドル(約1040億円)以上の産物が保管されている。このネットワークにより、農家は自分たちの農場に近い場所に農産物を保管することができ、農産物の損失や大規模市場のような莫大な不動産コストを回避できる。融資面においては、Aryaは農家に3650万ドル(約38億円)以上の資金を提供しており、その協力銀行は9500万ドル(約99億円)以上を提供している。

「Aryaは、インドの農家という広大で十分なサービスを受けていない市場に対処しています。その半数は、これまでポストハーベストのための資金をほとんど得ることができませんでした」と、クオナ・キャピタルの共同設立者であるGanesh Rengaswamy(ガネーシュ・レンガスワミー)氏は声明の中で述べている。「小規模農家に金融を組み込んだフルサービスのデジタルプラットフォームと差別化された効率性を提供するAryaのユニークなアプローチは、インドの農業の未来を牽引するものと我々は確信しています」。

2020年初めにニューデリーが世界で最も厳しいロックダウンを実施(未訳記事)した際には、このスタートアップの提供するものが、新型コロナウイルス感染拡大の中、さらに有用であることが証明された。ロックダウンはサプライチェーンネットワークを破壊し、農産物の価格は20%以上も下落した。

この状況に対処するため、Aryaは独自のデジタルマーケットプレイス「a2zgodaam.com」を通じて、農家の青果物組織(FPO)とバイヤーを結びつけた。「即時流動性の必要から、これらの倉庫収入に対する借入れ需要が増加した。Aryaの信用ポートフォリオは前年比3倍に跳ね上がった」と、インドのAccelの共同創業者であるPrashanth Prakash(プラシャーント・プラカシュ)氏とOmnivoreの共同経営者であるMark Kahn(マーク・カーン)氏は先週の業界レポートで述べている(Seed To Scale記事)。

ラオ氏によると、Aryaはインド全土に倉庫ネットワークを拡大していくとともに、新たな資本を投入してそのフィンテックプラットフォームを「大々的に」拡大していく予定だという。さらにこのスタートアップは、未組織の倉庫を集約するa2zgodaam.comを活用し、金融機関や保険会社を独自に組み合わせ、農家が必要に応じて直接これらの倉庫を介して販売できるようにすることで、その成長を促進させる計画だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Aryaインド農業資金調達

画像クレジット:Sanjit Das / Bloomberg / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

シンガポール政府が9.3億円でコロナ禍でさらに重要度が増したブロックチェーン研究プログラム開始

シンガポール政府機関のグループが、1200万シンガポールドル(約9億3600万円)の資金提供を受けて、ブロックチェーン技術のための新しい研究プログラムを開始する。Singapore Blockchain Innovation Programme(SBIP)と呼ばれるこのプロジェクトはEnterprise Singapore(シンガポール企業庁)、Infocomm Media Development Authority(情報通信開発庁)、およびNational Research Foundation Singaporeの3つの機関が協力しており、シンガポールの中央銀行で金融規制当局であるシンガポール金融管理局の支援を受けている。

SBIPの資金は国立研究財団から提供されており、企業によるブロックチェーン技術の開発、商業化、採用促進に使われる。プログラムではまず貿易、物流、サプライチェーンにおけるブロックチェーンの利用に焦点を当てる。

プレスリリースによると、このプログラムは今後3年間で「75社近くの企業と参加する」という。すでに世界的なサプライチェーンプラットフォームであるDimutoと提携して、ブロックチェーン技術を使って生鮮食品の追跡を行い、農家の信用力を高めることを目指している。

このプログラムにおける他の計画には、ブロックチェーンのシステムとネットワークが互いに協力するのを助ける方法を見つけること、ブロックチェーン部門の人材プールを増やすことが含まれている。

スタートアップからIBMのような巨大企業まで、何年も前からブロックチェーン技術を使ってより透明で結束力のあるサプライチェーンを構築しようと模索してきているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行が国際的な物流とサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにしたことで、この問題はより緊急性を帯びてきた。

シンガポール企業庁の会長であるPeter Ong(ピーター・オン)氏は声明で、「新型コロナウイルスは、新しいデジタルの世界において、信頼できるビジネスシステムの必要性を強調してきました。ブロックチェーン技術は、物流やサプライチェーンにまたがるアプリケーションへの信頼の向上、デジタルアイデンティティや認証情報への貿易金融を支援します」と述べている。

シンガポール政府は自らをブロックチェーン開発者や企業のパートナーと位置づけ、他国よりもオープンな「暗号ハブ」になることを目標にしている(未訳記事)。他のブロックチェーンに関する政府の取り組みとしては、シンガポール金融管理局の「Project Ubin」がある。2016年にスタートしたこのプロジェクトは、40社以上の企業と行ったテストの結果、同社のマルチカレンシー決済ネットワークがその商業的可能性を証明したと2020年7月に発表している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:シンガポールブロックチェーン

画像クレジット:cgImages / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

融資スタートアップFigure創業者は新サービスを生み出すため米銀行システムの限界を探る

創業者のMike Cagney(マイク・キャグニー)氏は常に限界を押し広げようとしており、そのため投資家は同氏を愛している。2011年に共同で創業した個人向け金融企業であるSoFiを、セクシャルハラスメントの申し立て(The New York Times記事)により辞めてからまだそれほど経たないうちに、同氏は(フィギュア)という新しい融資スタートアップのために5000万ドル(約52億円)を調達した。このスタートアップは、投資家から少なくとも2億2500万ドル(約230億円)を調達し、1年前には12億ドル(約1250億円)と評価された。

現在、キャグニー氏はFigureで前例のないことをしようとしている。ブロックチェーンを使用して、住宅担保ローンやその借り換え、学生および個人ローンの承認の迅速化を進めるという。同社は米国で商業銀行の認可を申請した。認可を受けてもFDIC(米連邦預金保険公社)の保証付き預金の受け入れは行わないが、適格投資家から25万ドル(約26億円)を超える無保険の預金を受け入れることができる。

なぜそれが重要なのか。American Bankerが説明しているように(American Banker記事)、このアプローチは規制上のメリットをもたらす。同サイトが米国時間12月2日に報じたように、「Figure Bankは保険付き預金を保有しないため、FDICの監督の対象にはならない。同様に保険付き預金がない場合、銀行持株会社法に基づくFRB(米連邦準備制度理事会)の監督も受けない。この法律は、銀行業以外の活動に制限を課しており、銀行業が本業ではないハイテク企業にとってはディールブレーカーになると広く考えられている」。

実際、もし承認されれば、Figureは多くのフィンテックスタートアップに道を開くことができる。FRBやFDICの監督を受けずに収益性の高い金融商品を扱って取引したい小売企業にも道が開かれる。そして非伝統的な銀行に対する認可を獲得することができる。

自身が所属する老舗のファイナンシャルアドバイザリーファームがFigureの申請を支援したMichelle Alt(ミシェル・アルト)氏は、American Bankerに次のように語った。「このモデルが承認されたとしても、すべての会社に適しているわけではありません。多くの銀行候補は、とりわけ強力な資金源を持つ銀行になりたいと考えています」。だが、それが成功すれば「多くの人々が興味を持つでしょう」と同氏は付け加えた。

どのような波及効果があるかは推測するしかないが、アマゾン銀行が出現したとしても同社をフォローしている人を驚かせることはないだろう。

一方、戦略はFigureのような小さな会社にとってハイリスク・ハイリターンの開発であるようにみえる。従来の銀行よりもはるかに自由に動けるが、同社の経営は自社または顧客のためのセーフティネットなし行われる。最も明白な危険は取り付け騒ぎだ。高金利でプラットフォームに資金を貸すことをいとわない適格個人が、同時に資金の返還を要求し始めれば取り付け騒ぎが起こり得るし、実際に起こる(The New York Times記事)。

いずれにせよキャグニー氏はBrian Brooks(ブライアン・ブルックス)氏と一緒に今すぐ受け入れてくれる聴衆を見つけるかもしれない。長年Fannie Mae(米連邦住宅抵当公庫)の幹部を務めたブルックス氏はCoinbaseの最高法務責任者を2年間務めた後、この春に米通貨監督庁(OCC)に移った。OCCは商業銀行と連邦貯蓄組合の安全かつ健全な方法での経営を保証する機関だ。

ブルックス氏は5月にOCCの責任者に任命され、この夏(The Wall Street Journal記事)にVaro Moneyに対しフィンテックへの最初の銀行認可の1つを出した。OCCは10月下旬、SoFiからの商業銀行認可の申請についても、予備的にかつ条件付きで承認した(Reuters記事)。

ブルックス氏はFigureの申請に関する憶測についてコメントしていないが、7月のブルッキングス研究所のイベント(Banking Dive記事)で、フィンテックや決済の会社に認可を付与する取り組みに関する業界団体からの懸念について次のようにコメントしたと伝えられている。「いくつかの業界団体が誤解していると思われるのは、どういうわけか、少ない義務しか負わない軽量版の認可を与えることになり、競争条件が不平等になるという点です。まったく正反対だと思います」。

業界団体であるIndependent Community Bankers of AmericaのエグゼクティブバイスプレジデントであるChristopher Cole(クリストファー・コール)氏は納得していない。今週初め、同氏はFigureの銀行認可の申請について懸念を表明し、ブルックス氏が「退任する前に迅速に承認したい」のではないかと疑っていると付け加えた。

おそらくそうだろう。ブルックス氏の残りの日は数えるほどになりそうだ。トランプ大統領から2020年11月、5年間の任期で連邦銀行規制当局を率いる立場に指名され(The Hill記事)、現在上院の承認を待っている。だが、次期バイデン政権をスローダウンさせることを目的としたこの動きは、次期大統領のジョー・バイデン氏によって取り消される可能性がある。バイデン氏は、OCCの責任者を自由に解任(The Hill記事)し、上院で候補者が確認されるまで代わりを任命することができる。

コール氏が示唆するのは、ブルックス氏にはそれでもFigureの今後の道筋を理解するのに十分な時間があるということだ。また、新しい認可申請が承認され、法的な問題にも持ちこたえられるなら、他の多くの企業にも同じことがいえる。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Figure

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

GrabやAnt Groupがシンガポールのデジタル銀行免許を取得

テック大企業が金融サービス商品を拡大するのを許容する流れがあるなか、シンガポールは12月4日、Ant Group(アントグループ)やGrab(グラブ)などを含む4社にデジタル銀行を運営する免許を付与した。

シンガポールの中央銀行、シンガポール金融管理局(MAS)はデジタル銀行候補を選ぶのに「厳格な、メリットベースのプロセス」を適用したと述べた。これらのデジタル銀行は試験運営を開始するが、他の企業に同様の免許を付与するかどうかもレビューする、とMASは話した。

TikTok(ティクトック)の親会社ByteDance(バイトダンス)を含む計21社がデジタル銀行の免許を申請し、うち14社が申請要件を満たした、とMASは明らかにした。大手企業は金融サービスへの事業拡大を急成長地域で売上高を大幅に伸ばす大きなチャンスだととらえている。

MASは、新しいデジタル銀行が2022年初めから営業を開始すると見込んでいると述べた。Ant GroupとGrab以外の残る2つの免許はインターネット大手Sea(シー)が完全所有する企業と、それからGreenland Financial Holdings、Linklogis Hong Kong 、Beijing Cooperative Equity Investment Fund Managementのコンソーシアムに付与された。

Grab-SingtelとSeaは従来の銀行と同じように顧客に銀行口座とデビットカード、クレジットカード、その他サービスを提供できる。大口のデジタル金融業務を行うAnt所有の企業とGreenland Financialのコンソーシアムは、中小企業向けにサービスを提供する。各社いずれも実在店舗を展開する必要はない。

「新しいデジタル銀行が既存の銀行とともに成長し、特に現在十分なサービスを受けられていない事業所や個人への金融サービスの質という点で業界のレベルを上げると考えています」とMASのマネージングディレクターRavi Menon(ラヴィ・メノン)氏は声明文で述べた。英国やインド、香港などいくつかの国は、テック企業がデジタル銀行を運営できるようにするために近年規制に手を加えた。

配車サービスのGrabと通信会社Singtelはデジタル銀行の完全免許を申請するために昨年コンソーシアムを組成した。両社の経験と専門性は「より多くの人が自分の資金をうまく管理して自分自身や事業、家族のために経済状況を改善することができるようにする、という我々の目標の達成を支えます」とGrabのグループCEOで共同創業者のAnthony Tan(アンソニー・タン)氏は声明文で述べた。

Ant Groupは「これまでにAnt Groupはかなりの経験を積み、特に中小企業のニーズに応えるためにパートナーの金融機関と共に展開してきた中国において成功を収めました」と声明文で述べた。「シンガポールの金融サービス分野において、より強固で深いコラボレーションを全ての参加企業と展開していくことを楽しみにしています」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Ant Group、Grab

画像クレジット:ROSLAN RAHMAN / AFP / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

Stripeが銀行の機能をSaaSとして提供する埋め込み型金融サービス「Stripe Treasury」発表

フィンテックスタートアップのStripeが、Stripe Treasuryという意欲的な新製品を発表した。同社が銀行とパートナーして、銀行の機能をAPIからSaaSとして提供するいわばBanking-as-a-Service、つまりStripeのクライアントが銀行口座を顧客に提供できるというものだ。このサービスは現在のところ、招待制のみとなっている。

この新しいサービスは、埋め込み型金融(embedded finance)と呼ばれる大きなトレンドの一環だ。これまで、ユーザーが現在使っているサービス(eコマースなど)と銀行サービスはそれぞれ別だったが、埋め込み型金融ではエンドユーザーが使っているサービスの中で金融サービスも提供する。

Wiseのように、企業向けの埋め込み型銀行プロダクトを作っているところもある。Stripeは、既存のユーザーベースを利用して、Stripe Treasuryを新しい銀行サービスプロダクトとして使うよう説得できる。

たとえばShopifyは、Stripe Treasuryを使ってShopify Balanceを実装する。Shopifyのマーチャントが、お金を置いたり、請求を払ったり、お金を使ったりを自分のShopifyアカウントからしたければ、銀行口座をShopify Balanceに直接開ける。これまでのように自分の銀行口座にアクセスしなくてもよい。それを楽屋裏で可能にするのが、Stripe Treasuryだ。

ただし、Stripeが銀行になるのではない。同社は以前と同じく、インフラストラクチャと決済にフォーカスしている。そして米国ではEvolve BankやGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)のような銀行と協力する。またCitibankやBarclaysと提携して、ほかの国でもStripe Treasuryを立ち上げる予定だ。

Stripeは、あらゆるものをAPIの呼び出しに換える。APIは、簡単な命令でサードパーティのサービスと対話するためのプログラミングインタフェイスだ。たとえばデベロッパーは、StripeのAPIを呼び出してStripe Treasuryを利用し、銀行口座を直接開くことができる。

お金の移動や支払いもAPIを呼び出してできる。Stripe Issuingと組み合わせると、バーチャルやフィジカルのカードを発行して、それを銀行口座に接続できる。Stripeは徐々に、決済チェーンのより大きな部分をカバーするプロダクトを作っている。

関連記事:Shopifyが小売業者向けデビットカードと分割払いプランのサポートを発表

カテゴリー:フィンテック
タグ:StripeAPI

画像クレジット:Stripe

原文へ

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

フィンテックのRevolutがウェブアプリと英国での早期給与支払い機能をローンチ

フィンテックスタートアップのRevolutは今週、2つの新機能を発表した。同社はビジネスユーザーだけでなく、通常のユーザーに向けたウェブアプリをローンチする。そして英国でRevolutModulrと提携し、ユーザーは給与を1日早く受け取れるようになる。

Revolutはこれまで、同社のモバイルアプリに注力してきた。一方で同社のビジネスアカウントを持っていれば、通常のウェブブラウザからアカウントにアクセスでき、過去の取引を確認することもできた。しかし同社の1300万人の顧客は、コンピュータからアカウントにアクセスできなかった。

今後は誰もがRevolutのウェブアプリにアクセスし、取引履歴やカードを表示できる。インターフェイスからはデビットカードの凍結と解除、カード機能の制御ができる。また銀行振込やカード決済、Apple Pay(Safariに対応)を使用した、アカウントへのトップアップもサポートしている。

デフォルトではRevolutのアプリがプッシュ通知を送信し、ウェブブラウザからのアクセスを承認して利用する。スマートフォンを紛失した場合には、電子メールでセキュリティコードを受け取ることもできる。

いくつかの機能にアクセスするにはモバイルアプリを使う必要があるが、スタートとしては十分だ。

英国在住のユーザーに向け、RevolutはModulrとの提携を強化し、少しでも給与を早く送金できるようにする。英国ではほとんどの人がこの方法を使っているが、Bacsの支払いスキームで支払われた給料は通常より1日早く到着する。これは支払いインフラを最適化するためのものであり、特に長期休暇の週末前に役立つ。

多くのユーザーが通常の銀行口座に加えてRevolutを利用していることから、これはRevolutに直接利益をもたらすはずだ。銀行口座を解約しやすくする機能を追加することで、同社の利用数を押し上げることに繋がるかもしれない。これにより、Revolutはカード交換手数料やサブスクリプション収入などの収入源を増やすことができる。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Revolutイギリス

画像クレジット:Revolut

原文へ

(翻訳:塚本直樹 / Twitter

Facebookの暗号資産プロジェクトが「Diem」に再度名称変更

Facebook(フェイスブック)が暗号資産Libra(リブラ)を推進するために設立したLibra Association(リブラ協会)は米国時間12月1日、名称をDiem Association(ディエム・アソシエーション)に変更するとともに、運用開始に先立ち複数の幹部を新規採用したことを発表(Diemリリース)した。

2019年に発表(未訳記事)されたLibraプロジェクトにとって、これはいくつもの方針変更の1つにすぎない。世界中の金融規制当局の反発を鎮めるために、同プロジェクトは単一の国際的ステーブルコインを作ることを断念し、それぞれが異なる不換通貨(米ドルやユーロのような)と連動したステーブルコインを複数つくる戦略に方針転換(未訳記事)した。

プロジェクトは、参加を表明していたVisa(ビザ)、Stripe(ストライプ)がプロジェクトを去るなど、 主要メンバーの離反にも見舞われてきた。またFacebookは、Libra用ウォレットの名前をCalibraからNoviへと変更した。

Diem AssociationのCEOであるStuart Levey(スチュアート・リービー)氏は声明で、新しい名称は同グループをフェイスブックから独立させ、以前の議論を沈静化させる目的であることを事実上認めた。

「Diemプロジェクトは、フィンテックイノベーションのためにシンプルなプラットフォームを提供することで、消費者や企業が低価格で安全な取引を瞬時に行うことを可能にします」とリービー氏は語った。「私たちは金融包摂、すなわち一番必要としている人たちへと利用を拡大する方法でそれを実現し、同時に不法行為を抑制、検出することで金融システムの完全性を維持します。プロジェクトの成長と独立を伝えるこの新しい名称、Diemを発表することを嬉しく思っています」。

新規雇用者は、最高技術責任者のDahlia Malkhi(ダリア・マルキ)氏、主席顧問のChristy Clark(クリスティー・クラーク)氏、最高法務責任者のSteve Bunnell(スティーブ・バネル)氏、および成長・イノベーション担当執行副社長兼副法律顧問のKiran Raj(キラン・ラジ)氏ら。Diem支払いシステムの実運用を担当する子会社のDiem Networksも、マネージング・ディレクターのJames Emmett(
ジェームズ・エメット)氏、最高コンプライアンス責任者のSterling Daines(スターリング・デインズ)氏、最高財務・リスク責任者のIan Jenkins(イアン・ジェンキンス)氏、法律顧問のSaumya Bhavsar(サウミヤ・バヴサール)氏を採用した。

この日の発表では具体的日時に言及しなかったが、プロジェクトは近日中の運用開始に向けて準備していることを示唆した。ただしそれは「規制当局の承認が前提であり、同協会の運用子会社のための支払いシステムライセンスをFINMA(スイス金融市場調査局)から取得するのもその1つ」だという。

関連記事:
Facebookの暗号通貨Libraが2021年1月ローンチの可能性
VisaやStripe、eBayなどのLibraメンバーが離反、Facebookがいまやるべきことは?
FacebookはLibraウォレットのCalibraをNoviに改名し独立させようとしている

カテゴリー:フィンテック
タグ:FacebookLibraDiem Association

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Crezitが1.65億円調達、与信サービス構築基盤を提供する「Credit as a Service」を来春展開

Crezitが1.65億円調達、与信サービス構築基盤を提供する「Credit as a Service」を来春展開

Crezitは12月1日、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額1.65億円の資金調達を発表した。引受先は、既存投資家のジェネシア・ベンチャーズ、また千葉道場ファンド、East Ventures、Plug and Play Ventures。

2019年3月創業のCrezitは、「Optimize Credit, Unleash Potential. / 信用を最適化して、人の可能性を解き放つ。」をミッションに掲げ、個人の顧客向けにモバイルクレジットサービス「CREZIT」を中心とした金融サービスを開発。今回の調達資金を元に、これまで自社サービスで構築してきた基盤を、与信サービスを構築したい企業に対して開放する「Credit as a Service」構想の実現に向けたプロダクト開発のための組織体制の強化を行う。

消費者信用事業(貸金・割賦販売など)に参入したいあらゆる企業に対して、金融サービス構築に必要なシステム基盤やオペレーションをサービスとして提供するCredit as a Serviceを来春より展開する予定。

通常、与信サービスの立ち上げには膨大なリソースを必要とし、金銭的にも時間的にも多大なコストを要する。結果として、一部の大資本を持つ事業者以外による参入は限定的な状況にあったという。

テクノロジー企業が自社の顧客基盤に対して、ユーザーデータを活用した金融サービスを展開する流れ起こりつつある中で、同社が与信サービスに必要な様々な要素をソフトウェアとして提供することで、利用企業の早期の消費者信用事業の立ち上げを可能とする。

同社サービスの利用企業と共に新しい金融サービスを共創していくことで、より多くの個人に対して適切な金融サービスが届く世界を実現していく。

関連記事
消費者信用市場の変革目指すCrezit、スマホ完結のモバイルクレジットサービスをローンチ

カテゴリー:フィンテック
タグ:Crezit資金調達(用語)FinTech日本(国・地域)

eコマースの支払いシステム統合を支援するフィンテック「Primer」が19.4億円調達

英国のフィンテック、Primer(プライマー)は、小売業者が支払いレイヤーを統合し、新たな支払い方法を容易に追加できるようにするサービスだ。このほどシリーズAラウンドで1400万ポンド(約19億4000万円)を調達した。ラウンドをリードしたAccelは、Primerに自社の資金を受け取るようかなり強く働きかけたといわれている。

若きスタートアップはこれまで積極的な資金調達を行っておらず、静かに380万ポンド(約5億3000万円)調達したことを5月に発表した(未訳記事)。同社はプロダクト開発と潜在顧客の獲得に注力すべく、100社の小売業者を対象に、技術ワークショップと詳細なインタビューをZoomで実施してきた。そんな活動が見過ごされることはなかった。

シリーズAには既存出資者のBalderton、AppedInvest、Seedcampに加え、新たな出資者としてRTP Globalが参加した。AccelのパートナーであるSonali De Rycker(ソナリ・デ・リッカー)氏はPrimerの取締役に就任する。

(PayPalのBraintree買収にともなう)元PayPal社員によって設立されたPrimerは、1つの支払いAPIで(願わくば)すべてを支配したいと考え、売り手の支払いスタック(支払いにともなうさまざまな階層)の透明性を高めることを明確な目的として掲げている。

大規模な小売業者、特に複数の地域で運営している会社はさまざまな支払い方法に対応する必要があり、その結果著しい技術負担と貧弱なユーザー体験や透明性の欠如が生まれているという考えだ。

Primerは、最近「ローコード」プラットフォームと呼ばれている仕組みにより、小売業者に代わって力仕事を引き受け、支払い方法に依存しない堅牢なサービスを提供している。市場に登場した新しい支払い方式をスムーズに導入するとともに、それぞれのチェックアウト方法がどのように利用されているかを明瞭に見渡せるようにすることが狙いだ。

同プラットフォームは支払いサービスプロバイダー(PSPs)としてだけてなく、不正防止、支払い取り消し、サブスクリプション請求エンジン、BI(ビジネスイン)ツール、ポイント・報酬プラットフォームなどのサービスとの接続も行っている。支払いサービス、非支払いサービスとも「ワークフローを通じてチェックアウト・支払いフローとスムーズに接続することで、売り手は不正行為の報告、高度なトランザクションルーティング、複雑なフローの解決などをコードを書くことなく統合できます」とPrimerは説明した。

追加の資金は国際ビジネス開発とチームの拡大に使うとPrimerはいう。リモートファースト企業を謳うPrimerでは、6カ国で23名の社員が働いていて、すでに欧州全体で中規模から大規模企業のeコマース業者の取引を扱っているといっている。

「PayPal在籍中、オンライン小売業者が全世界の顧客に最高の支払い体験を提供するために技術的な負担を強いられているのを目の当たりにしました。私たちのローコードアプローチは、小売業者の支払いチームが彼らの支払いエコシステムを拡張し、高度な支払いロジックを使い慣れたワークフローUIで維持できるようにするものです」とPrimerの共同ファウンダーでプロダクトおよび技術責任者のPaul Anthony(ポール・アンソニー)氏は語る。

同社プラットフォームのサービス開始からまだ数週間しか経っていないにも関わらず、新たな投資によってPrimerの総調達額は1780万ポンド(約24億7000万円)となった。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Primer資金調達

画像クレジット:Primer

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Coinbaseが米商品先物取引委員会の指導に従い信用取引を中止

Coinbase Proで信用取引を開始してからわずか数カ月後(未訳記事)、同社はこの機能を無効(Coinbaseブログ投稿)にする。信用取引ではレバレッジをかけて取引を行うことができるが、これは双方向で機能し、逆に利益と損失を倍増させる。

太平洋時間11月25日午後2時から、ユーザーは新たな信用取引ができなくなる。既存の信用取引のポジションは、数日から数週間で失効する。これらのポジションの有効期限が切れると、信用取引は永久に無効となる。

Coinbase(コインベース)は米商品先物取引委員会 (CFTC) の指針に従っている。興味深いことに、CFTCは同社の信用取引開始計画をよく知っていた。

Coinbaseによると、CFTCとは定期的に話し合いを持ち、今後の商品やサービスについての注意喚起を行っているという。また、信用取引でも同じことを行っていた。

信用取引はCoinbaseのメインウェブサイトでは利用できなかった。信用取引はCoinbase Proの一部のユーザーに限定されており、利用できるユーザー数には上限が設けられている。

しかしCoinbaseが規制面での方針転換を予想できていたら、信用取引を開始することはなかっただろう。10万人以上のユーザーが待機リストに登録しており、Coinbaseのユーザーからの関心を示している。

しかしCoinbaseは現行の規制に可能な限り準拠しようとしているため、信用取引を終了するしかない。米国で運営されている他の取引所が同社に追随するかどうかが注目される。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Coinbase暗号資産
画像クレジット:Chesnot / Getty Images

原文へ

(翻訳:塚本直樹 / Twitter

会員数200万人超え、チャレンジャーバンクCurrentが約137億円調達

6カ月足らずで会員ベースを倍増させた米国のチャレンジャーバンクCurrent(カレント)は米国時間11月24日、Tiger Global ManagementがリードするシリーズCラウンドで1億3100万ドル(約137億円)を調達したと発表した(Currentリリース)。本ラウンドによりCurrentの累計調達額は1億8000万ドル(約188億円)となり、バリュエーションは7億5000万ドル(約784億円)を超えた。

シリーズCラウンドには新規投資家のSapphire VenturesとAvenirも参加した。そしてFoundation Capital、Wellington Management Company、QEDなどの既存投資家も戻ってきた。

Currentは親が管理するティーンエイジャーのためのデビットカードとして始まった(未訳記事)。しかし2019年、同じバンキングテクノロジーを使って個人当座預金口座の提供も始めた。このサービスは現在、多くのモバイルバンキングアプリと競合する。これらのアプリは無料の借越、最低預金残高不要、迅速な振り込み、即時の支出通知、バンキング分析、スマホカメラを使った小切手入金、その他チャレンジャーバンクにとっていまやスタンダードとなっている基本的な機能を提供している。

2020年8月にCurrentは競合他社との差異化を図るためにポイントプログラムを導入した。2020年11月、競合相手にGoogle Payも加わった。

Currentが昨秋シリーズBラウンドを調達したとき、同社には50万超の口座があった。今日では会員数は200万人超だという。売上高も成長していて、前年比で500%増だと同社は11月24日明らかにした。

「Currentが提供するのに比類なく適している最高クラスのモバイルソリューションで安価なバンキングにアクセスしたいという明らかな需要を目にしてきました」とCurrentの創業者でCEOのStuart Sopp(スチュアート・ソップ)氏は資金調達に関する声明文で述べた。「当社は、毎月の給料を使い切るような生活をしている何百万という勤勉な米国人、そして従来の銀行で満足にサービスを受けられていない人の財政状況を改善するプロダクトの開発に取り組んでいます。新たに調達した資金で当社は引き続き、会員がより迅速にお金を確保したり、賢く消費したり、経済の不平等を縮めたりするためのミッションや成長、イノベーションを広げることができます」と付け加えた。

調達した資金はCurrentのモバイルバンキング商品のさらなる開発と拡大に使われると同社は話している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Current資金調達

画像クレジット:Current

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

チャレンジャー銀行N26が月額約610円の中位サブスクプランを発売

チャレンジャー銀行のN26は「N26 Smart」と呼ばれる第3のサブスクリプションサービスを追加する。N26 Smartは高度な銀行機能を備えたミッドティアのサブスクリプションプランであるが、旅行保険パッケージは含まれていない。

ヨーロッパでは無料プランに加えて、N26はすでに「N26 You」と「N26 Metal」と呼ばれる2つのサブスクリプションを提供している。N26 Youは月額9.90ユーロ(約1230円)でATMでの引き出し手数料が3回から5回まで無料になったり、外貨の引き出しが無料になったりと、より高い限度が設定されている。

N26 Youのアカウントでは、サブアカウント(N26 Spaces)を作成したり、他のN26ユーザーと共有したり、貯金に利用したりできる。N26 Youの加入者になると、医療旅行保険、旅行保険、航空券保険などの旅行保険がセットになったパッケージが付属する。また、一部のパートナー特典も利用できる。

N26 Metalは最も高額なプランで、月額16.90ユーロ(約2100円)だ。N26 Youのすべての特典に加えて、海外でのレンタカー保険や電話保険も付帯している。またその名のとおり、メタルカードも入手できる。

新しいN26 Smartのサブスクリプションは4.90ユーロ(約610円)で、旅行保険を必要としない人のためにある。N26 Smartでは最大10のサブアカウントを作成でき、毎月5回の無料でのATM引出しが利用できる。またアプリ内のサポートチャットに加えて、N26サポートに直接電話することもできる。

さらにN26は、N26 Smartのための新しいラウンドアップ機能をローンチする。またN26 Smartでは、N26 Youと同じくカラフルなデビットカードが用意される。

N26はサブスクリプション製品を全面的に刷新することを計画しているため、これはほんの第一歩に過ぎない。近い将来、N26 YouはN26 Internationalになり、ボーダーレスバンキングに焦点を当てた機能が増える。また、N26 MetalはN26 Unlimitedになる。

無料のN26 Standardアカウントについては、N26はデジタルカードに注力したいとしている。一部のユーザーは、無料口座で使用していた機能の一部を使い続けるため、N26 Smartプランに切り替えることになるだろう。この動きは、同社の収益に貢献するはずだ。

画像クレジット:N26

カテゴリー:フィンテック
タグ:N26

画像クレジット:N26

原文へ

(翻訳:塚本直樹 / Twitter

質屋のDXを目指すセール アンド リースバック「CASHARi」のガレージバンクが資金調達

質屋のDXを目指すセール アンド リースバック「CASHARi」のガレージバンクが資金調達

モノの価値を活用したファイナンスを実現する、個人向けセール アンド リースバックサービス「CASHARi」(カシャリ)を開発・運営するガレージバンクは11月19日、第三者割当増資による資金調達を実施したと発表した。引受先は、リード投資家のW venturesのほか、East Ventures、起業家・エンジェル投資家の有安伸宏氏。

今回の資金調達により、CASHARiの開発を推進するとともに、運営体制の強化に取り組む。

2020年1月設立のガレージバンクは、「モノの価値を、みんなの力に」をミッションとするスタートアップ。モノの価値を公正に評価し、その価値を即座に資金化する仕組みを整えることで、所有から利用へのシームレスな切り替えによる、信用情報に頼らない新たな個人向けファイナンスを実現するとしている。

質屋のDXを目指すセール アンド リースバック「CASHARi」のガレージバンクが資金調達

カシャリは、モノの価値を活用したファイナンスを実現する、C向けセール アンド リースバックサービス。

利用者は、簡単なアプリ操作だけで、ファッションアイテムやデジタルガジェットなどのアイテムの価値を確認し、そのまま資金化可能。カシャリは質屋のDXを目指したプロダクトで、申し込みに際し、対面でのやり取りやアイテムの発送はなく、一切の手続きはオンラインで完結する。資金の受け取りは、銀行振込以外に、銀行口座不要のセブン銀行ATMでの受け取りも選択可能。

質屋のDXを目指すセール アンド リースバック「CASHARi」のガレージバンクが資金調達

質屋のDXを目指すセール アンド リースバック「CASHARi」のガレージバンクが資金調達

またカシャリでは、そのほかフリマアプリとは異なり、アイテムを手放す必要がなく、リース料を支払うことでアイテムを使い続けられる。借入とも異なり、個人の信用情報に頼らないため、利用者の職業や収入などの審査もない。

これまでクローズドβを展開し、ビジネスモデルの検証を進めていたが、2020年11月にオープンβの提供を開始。さらなる検証を進める予定。

カテゴリー:フィンテック
タグ:CASHARiガレージバンク資金調達(用語)セール アンド リースバック日本(国・地域)

Google Payがリニューアル、オプトインで支出履歴の把握など家計簿サービス的に進化

米国時間11月18日、Google(グーグル)はAndroid版、iOS版のGoogle Payアプリのメジャーアップデートを行った。他のスマートフォンベースの非接触型決済サービスと同様、Google Pay(以前のAndroid Pay)は、クレジットカードを代替するサービスを目的としてスタートした。その後、さらに機能が追加されたが、基本的な狙いは変わらなかった。

5年後の現在、Google Payには30カ国で約1億5000万人のユーザーがいる。今回のリニューアルでグーグルは従来のコア機能を維持したまま、個人の財政管理を助けることに重点を置いた新しい方向を打ち出した(新機能の詳細は下記に)。

またグーグルはPlexとよばれる新しい種類の銀行口座を2021年にスタートさせるために11の銀行と提携した。Plexはモバイルファーストの銀行口座で利用は月額使用料、当座貸越手数料はなく最低残高などの制限もない。口座は銀行に開設されるがGoogle Payアプリが管理の主要なチャンネルとなる。Plexのスタート時のパートナーは、Citi(シティ)とStanford Federal Credit Union(スタンフォード連邦信用組合)だ。

画像クレジット:Google

グーグルのプロダクトマネジメントディレクターのJosh Woodward(ジョッシュ・ウッドワード)氏は私に新アプリについてこう説明してくれた。

新しいGoogle Payアプリは3つのタスクを1つにまとめます。3つのタスクはアプリの3つのタブに対応します。1つは友人や企業に簡単、迅速に支払を行う能力です。2つ目は、ショッピングで料金を節約できるようセールスや特典を見つけることです。3つ目は、支出を記帳、管理して自分の財政状態を常に把握しておくことです。

友人や店舗などへの支払は、これまでもGoogle Payのコア機能だったが新アプリでは重点の置き方が少し変化している。グーグルの支払プロダクトの責任者であるCaesar Sengupta(シーザー・セングプタ)氏はこう説明した。

ここではすべてがユーザーとの関係に基づいて整理されます。取引記録の数字が延々と並ぶ無味乾燥なリストではありません。すべての活動は相手となる人や会社が中心となります。

アプリの中心となる新機能は友達とのピア・ツー・ピア決済だ。いままでどおりに支払いや請求を行うこともできるが、リニューアルの目玉はレストランへの支払い友人とワリカンにしたり、家賃や公共料金をルームメイトと分割したりできるようになった点だ。誰がもう支払っているのか、誰が滞納しているのかもすぐわかる。ウッドワード氏によれば、ユーザーアンケートの結果、請求書の分割が非常に大きな問題であることがわかったため、グーグルはこの機能をシステムに導入したという。

Google Payからタップで直接支払をした場合であれ、クレジットカードまたはアプリにリンクされた銀行口座であれ、このタブから、最近の取引のリストを見つけて詳細を確認することができる。

画像クレジット:Google

上でも触れたが、このリニューアルで銀行口座とクレジットカードをGoogle Payに接続し、支出に関する情報を取得できるようになった。これが最も重要な変化かもしれない。簡単にいえばGoogle Payアプリ内に簡易版のMintが導入されたことになる。これによりGoogleアプリで多彩な財政管理機能を提供できるようになった。グーグルはこの機能を有効にするために「いくつかのデータソース」と協力していると述べているが、アグリゲーターとなるパートナーが具体的にどこであるかは明かしていない。他の新機能と同様に、デフォルトではオフで、利用するためにはオプトインが必要だという点は強調しておくべきだろう。

基本的には他の個人財政情報サービスと似ている。最も初歩的な機能は一定期間にどれだけ支出したか、手持ちの残高はどれほどかを確認できる点だ。しかしグーグルは強力な分析力によりユーザーの消費習慣に対して興味深い洞察をいくつか示すことができる。例えば月曜日にはその週末に費やした金額が表示される。ウッドワード氏に次のようにいう。

データをストーリーとして読めます。スワイプして最近の大口支出や今週の支出額を確認して通常の週と比較することもできます。今月、友達に送金した金額、その相手、お金を払った店舗なども簡単にわかります。

こうした情報の確認がすばやくできるのは、グーグルだからだ。強力な検索機能を使用して特定のトランザクションを発見できる。開発チームは「トルコ」で検索すると店名に「トルコ」が含まれていなくてもケバブレストランを利用したことを発見できるところをデモしてくれた。ユーザーがレシートをスキャン、もしくは撮影している場合はGoogle Payからそうした画像を検索して、購入した商品やGmailの受信トレイで受け取った領収書、請求書に遷移することもできる。.

Google Payの新機能として、割引クーポンを仮想的に「切り取って」クレジットカードにリンクすることができる。リンクされたクレジットカードを使用して特定のトランザクションを実行すれば自動的に所定の割引を受けられる。ユーザーは他に何もする必要はない。オプトインすればこうした機能を利用し、さらにカスタマイズすることもできる。

画像クレジット:Google

開発チームGoogle Lensのチームと協力し、プロダクトやQRコードをスキャンして割引を発見できるようにした。

これまでアプリのコアとなってきた決済機能については3万カ所のガソリンスタンドで非接触型決済が使用できるようになるという(多くの場合、割引が適用される)。スタート時のパートナーはShell、ExxonMobil、Phillips(66、76)、Conocoだ。

また近く400以上の都市の駐車料金の支払いも、このアプリからできるようになる。現在でもポートランド市ならかわいいネコのアイコンのParking Kittyアプリから払えるが、私たちはいつもポートランドにいるわけではない。駐車料金支払に参加する都市は当初オースティン、ボストン、ミネアポリス、ワシントンDCだが、他の都市も続くという。

Google Payを使って支払いをすることと、すべての資金移動データ(極めて個人的な情報だ)を提供することはまったく別物だ。開発チームも強調していたとおり、Google Payは、例えば広告ターゲティングのためにデータを販売することはしない。サードパーティの企業はもちろんグーグル社内の他部署に対しても一切データを流用をすることはないという。付加機能もすべてデフォルトでオフになっておりユーザーはオンにして3カ月試用することができる。3カ月後に改めてオンにするかオフにするかを決定することになる。

つまり今回追加されたオプション機能を利用し、財政データをグーグルに保存するかどうかは個人の選択となる。グーグルに財政データへのアクセスを許すことを望まないユーザーも当然いるだろう。いずれにせよ、Google Payのその他の主要機能は変更されていない。クレジットカードからの支払いもできるし、スーパーなどでスマートフォンのNFC機能を使った支払いもできるのは以前と同様だ。

【編集部追記】11月19日現在、日本版最終更新は11月3日。

カテゴリー:フィンテック
タグ:GoogleGoogle Pay

画像クレジット:dowell / Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

Google Payがリニューアル、オプトインで支出履歴の把握など家計簿サービス的に進化

米国時間11月18日、Google(グーグル)はAndroid版、iOS版のGoogle Payアプリのメジャーアップデートを行った。他のスマートフォンベースの非接触型決済サービスと同様、Google Pay(以前のAndroid Pay)は、クレジットカードを代替するサービスを目的としてスタートした。その後、さらに機能が追加されたが、基本的な狙いは変わらなかった。

5年後の現在、Google Payには30カ国で約1億5000万人のユーザーがいる。今回のリニューアルでグーグルは従来のコア機能を維持したまま、個人の財政管理を助けることに重点を置いた新しい方向を打ち出した(新機能の詳細は下記に)。

またグーグルはPlexとよばれる新しい種類の銀行口座を2021年にスタートさせるために11の銀行と提携した。Plexはモバイルファーストの銀行口座で利用は月額使用料、当座貸越手数料はなく最低残高などの制限もない。口座は銀行に開設されるがGoogle Payアプリが管理の主要なチャンネルとなる。Plexのスタート時のパートナーは、Citi(シティ)とStanford Federal Credit Union(スタンフォード連邦信用組合)だ。

画像クレジット:Google

グーグルのプロダクトマネジメントディレクターのJosh Woodward(ジョッシュ・ウッドワード)氏は私に新アプリについてこう説明してくれた。

新しいGoogle Payアプリは3つのタスクを1つにまとめます。3つのタスクはアプリの3つのタブに対応します。1つは友人や企業に簡単、迅速に支払を行う能力です。2つ目は、ショッピングで料金を節約できるようセールスや特典を見つけることです。3つ目は、支出を記帳、管理して自分の財政状態を常に把握しておくことです。

友人や店舗などへの支払は、これまでもGoogle Payのコア機能だったが新アプリでは重点の置き方が少し変化している。グーグルの支払プロダクトの責任者であるCaesar Sengupta(シーザー・セングプタ)氏はこう説明した。

ここではすべてがユーザーとの関係に基づいて整理されます。取引記録の数字が延々と並ぶ無味乾燥なリストではありません。すべての活動は相手となる人や会社が中心となります。

アプリの中心となる新機能は友達とのピア・ツー・ピア決済だ。いままでどおりに支払いや請求を行うこともできるが、リニューアルの目玉はレストランへの支払い友人とワリカンにしたり、家賃や公共料金をルームメイトと分割したりできるようになった点だ。誰がもう支払っているのか、誰が滞納しているのかもすぐわかる。ウッドワード氏によれば、ユーザーアンケートの結果、請求書の分割が非常に大きな問題であることがわかったため、グーグルはこの機能をシステムに導入したという。

Google Payからタップで直接支払をした場合であれ、クレジットカードまたはアプリにリンクされた銀行口座であれ、このタブから、最近の取引のリストを見つけて詳細を確認することができる。

画像クレジット:Google

上でも触れたが、このリニューアルで銀行口座とクレジットカードをGoogle Payに接続し、支出に関する情報を取得できるようになった。これが最も重要な変化かもしれない。簡単にいえばGoogle Payアプリ内に簡易版のMintが導入されたことになる。これによりGoogleアプリで多彩な財政管理機能を提供できるようになった。グーグルはこの機能を有効にするために「いくつかのデータソース」と協力していると述べているが、アグリゲーターとなるパートナーが具体的にどこであるかは明かしていない。他の新機能と同様に、デフォルトではオフで、利用するためにはオプトインが必要だという点は強調しておくべきだろう。

基本的には他の個人財政情報サービスと似ている。最も初歩的な機能は一定期間にどれだけ支出したか、手持ちの残高はどれほどかを確認できる点だ。しかしグーグルは強力な分析力によりユーザーの消費習慣に対して興味深い洞察をいくつか示すことができる。例えば月曜日にはその週末に費やした金額が表示される。ウッドワード氏に次のようにいう。

データをストーリーとして読めます。スワイプして最近の大口支出や今週の支出額を確認して通常の週と比較することもできます。今月、友達に送金した金額、その相手、お金を払った店舗なども簡単にわかります。

こうした情報の確認がすばやくできるのは、グーグルだからだ。強力な検索機能を使用して特定のトランザクションを発見できる。開発チームは「トルコ」で検索すると店名に「トルコ」が含まれていなくてもケバブレストランを利用したことを発見できるところをデモしてくれた。ユーザーがレシートをスキャン、もしくは撮影している場合はGoogle Payからそうした画像を検索して、購入した商品やGmailの受信トレイで受け取った領収書、請求書に遷移することもできる。.

Google Payの新機能として、割引クーポンを仮想的に「切り取って」クレジットカードにリンクすることができる。リンクされたクレジットカードを使用して特定のトランザクションを実行すれば自動的に所定の割引を受けられる。ユーザーは他に何もする必要はない。オプトインすればこうした機能を利用し、さらにカスタマイズすることもできる。

画像クレジット:Google

開発チームGoogle Lensのチームと協力し、プロダクトやQRコードをスキャンして割引を発見できるようにした。

これまでアプリのコアとなってきた決済機能については3万カ所のガソリンスタンドで非接触型決済が使用できるようになるという(多くの場合、割引が適用される)。スタート時のパートナーはShell、ExxonMobil、Phillips(66、76)、Conocoだ。

また近く400以上の都市の駐車料金の支払いも、このアプリからできるようになる。現在でもポートランド市ならかわいいネコのアイコンのParking Kittyアプリから払えるが、私たちはいつもポートランドにいるわけではない。駐車料金支払に参加する都市は当初オースティン、ボストン、ミネアポリス、ワシントンDCだが、他の都市も続くという。

Google Payを使って支払いをすることと、すべての資金移動データ(極めて個人的な情報だ)を提供することはまったく別物だ。開発チームも強調していたとおり、Google Payは、例えば広告ターゲティングのためにデータを販売することはしない。サードパーティの企業はもちろんグーグル社内の他部署に対しても一切データを流用をすることはないという。付加機能もすべてデフォルトでオフになっておりユーザーはオンにして3カ月試用することができる。3カ月後に改めてオンにするかオフにするかを決定することになる。

つまり今回追加されたオプション機能を利用し、財政データをグーグルに保存するかどうかは個人の選択となる。グーグルに財政データへのアクセスを許すことを望まないユーザーも当然いるだろう。いずれにせよ、Google Payのその他の主要機能は変更されていない。クレジットカードからの支払いもできるし、スーパーなどでスマートフォンのNFC機能を使った支払いもできるのは以前と同様だ。

【編集部追記】11月19日現在、日本版最終更新は11月3日。

カテゴリー:フィンテック
タグ:GoogleGoogle Pay

画像クレジット:dowell / Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

英国のMarshmallowが評価額3億1000万ドルで3000万ドルを調達、より「包括的な」自動車保険を目指す

特定の顧客に提供するサービスの種類や価格設定を導くのにアルゴリズムを始めとする計算手法を用いることに関して、保険業界は最も古い活用歴を持つ業界の1つである。しかし、その伝統的なポジションの水面下には、そうした手法による測定の中に改善の余地があるという事実が存在する。プロファイルに適合しない顧客に競争力のある価格を提供できていないからだ。

英国のスタートアップMarshmallowは、リスクを判断する新しいアプローチでこれらのレガシー保険会社大手に挑戦することを展望し、3000万ドル(約31億円)の資金調達ラウンドを発表した。自動車保険からスタートした同社は、より幅広いアナリティクスとシンプルなモバイルやウェブネイティブのインターフェースを活用して、十分なサービスを受けていない市場セグメントをターゲットに展開している。今回調達したシリーズA資金を用いてダイバーシティとインクルージョン(多様性と包括性)を重視した事業拡大を継続し、今後18ヶ月のうちに、より広範な種類の保険を対象国を拡大してローンチする計画だ。

同社は今回のラウンドで3億1000万ドル(約321億円)の評価を得たとみられているが、現時点では市場浸透と成長という観点から顧客数を明らかにしていない。保険業界は巨大産業であり、McKinsey(マッキンゼー)の推計によると、2017年の保険料は全世界で4兆ユーロ(約49兆円)以上であった。一方Allianz(アリアンツ)は最近の報告書の中で、COVID-19による経済不安の結果、市場は今年「冷え込んだ」が、それはまた、新技術と新たなアプローチの傾向を加速させていると指摘した。それに加えて、全体的に巨大な市場のわずかなシェアでも大きな収益につながるという事実は、Marshmallowが注目すべき挑戦者であることを意味する。

同社は今回のラウンドの参加者の名前を明らかにしていないが、著名なフィンテック支援者と、大手金融機関の1つが名を連ねているようだ。PitchBookによると、Outrun Venturesのほか、匿名の投資家がこのラウンドに参加している。以前の支援者はPassion CapitalとInvestecだった。

Marshmallowは2018年、外国人居住者をターゲットにした製品を携えて登場した。英国の保険会社は通常、保険料を決定する際に被保険者の英国での実績を評価するが、それはつまり、海外から英国に移住した成人の場合、履歴は良くとも悪くとも関係しないということだ。同社はそのロジックに着目した。Marshmallowの解決策は、国のデータだけでなく、グローバルなデータを組み込んだ評価アルゴリズムを構築することだった。

同社の共同創設者兼CEOであるOliver Kent-Braham(オリバー・ケントブラハム)氏は当時、TechCrunchに次のように語っている。「自動車保険では概して、人の運転能力、運転歴、現在のライフスタイルを捕捉したうえで保険会社が適正価格を提示する必要があります。残念なことに多くの保険会社は、英国に住む外国人ドライバーを適正に評価することなく彼らに過剰請求しています。英国を拠点とする外国人ドライバーは、市場平均より51%高い提示価格が見込まれています」。

現在ではより幅広い年齢層の、英国で一貫した記録を持たない人たちにもその範囲が広がっている。

「引き続き外国人居住者を対象とした自動車保険を提供していますが、現在当社は21歳から50歳までの人を対象にした保険サービスも手掛けています。これは、住所や信用履歴が断片的で、あまり裕福ではなく信用スコアが低い人たちに対して魅力的な価格と経験を提供することに焦点を当てたものです」と同氏は近況をTechCrunchに語る。「これらの顧客グループはいずれも、従来の保険業界からより高い料金を請求されています」。

ケントブラハム氏自身、規範から外れていることについての意識が高いかもしれない。同氏は双子の兄弟Alexander(アレクサンダー)氏と共同でこの会社を設立したが、両氏は黒人である。アメリカでは黒人の創設者は1%未満であると推定されており、ヨーロッパでも同様に有色人種の創設者の数字は低いものとなっている。なお、David Goate(デビッド・ゴート)氏は3番目の共同創設者である。

実際、Marshmallowの台頭は、少数派の創設者のストーリーとしても、十分なサービスを受けていない社会のセグメントにサービスを提供するという同社のフォーカスにしても、時宜を得たものである。

今年のテック業界の大きな焦点の1つは、ダイバーシティとインクルージョンをより積極的に業界に組み込む方法に関するものだった。米国で黒人が警察に殺害された事件が多発し、社会不安の波が押し寄せたことをきっかけに、経済的、社会的格差にどう対処するのが最善かという問題意識が世界中で高まっている。

テクノロジーの世界では、関係する企業の構成に多様性を持たせることが、より幅広いオーディエンスとニーズに対応するために重要であることが長い間認識されてきた。その意味では、2人の黒人男性が率いる保険スタートアップが、より幅広いユーザーグループのための製品を特定し、構築しようとしていることは驚くことではないだろう。

「当社には、従来の保険会社を悩ませている顧客に保険を提供するためのツールがあります」とアレクサンダー氏は声明で述べている。創業者の1人で現在は会長を務めるTim Holliday(ティム・ホリデイ)氏は、保険業界で長い実績を有する人物だ。既存企業が市場に残したギャップをスタートアップが特定するために同氏は不可欠な存在となっており、Marshmallowは自身の新しいテクノロジーを用いてそれに取り組んでいる。

COVID-19のパンデミックと世界中に広がる不確実性を背景に、前年度はインシュアテックに大きな注目が集まった。

現在の時価総額が28億ドル(約2900億円)を超えるLemonadeの上場に加えて、Hippoの評価額は大幅に上昇し、ターゲット層の選択やモデル化の手法という観点で保険モデルを再考する企業の増加も顕著になってきている。BIMAとWaterdropはそれぞれ、新興市場向けのマイクロ保険と、クラウドファンディング保険サービスのアイデアに注目している。

関連記事:新型コロナも対象のネットネイティブのペット保険が香港で誕生

カテゴリー:フィンテック
タグ:イギリス 保険 資金調達

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

米司法省がMastercardのオープンバンキングスタートアップFinicity買収を承認

米司法省は、Mastercard(マスターカード)によるユタ州ソルトレイクシティ拠点のオープンバンキングスタートアップ、Finicity(フィニシティー)の買収を承認した。買収金額は8億2500万ドル(約862億2000万円)と推定されている(Business Wire記事)。

「当社は司法省が私どもの計画しているFinicity買収の審査を終え、契約を進めることを承認したという通知を受けました。この節目に到達したことを大いに喜んでいます」とMastercardが声明で述べている

Finicityは、ユーザーが自分の財務情報がどのように共有され、誰が自分の金銭取引を代行できるかを、オープンAPIを通じて決められるサービスだ。この買収によってMastercardは、自ら力仕事をすることなく消費者や企業に提供する取引の選択肢を増やすことができる。

CrunchbaseによるとFinicityは、これまでに8000万ドル(約83億6000万円)のベンチャー資金を調達している。契約が完了すると、10億ドル(約1045億1000万円)近い2020年最大級のフィンテック買収になる。

今回の司法省の承認は、同省がVisa(ビザ)の53億ドル(約5539億2000万円)のPlaid(プレイド)買収を阻止する反トラスト訴訟(未訳記事)を起こしてから2週間後のことだった。Plaidは自社データネットワークを通じて、VenmoとAcronsなどの大規模な財務サービスを支えており、買収によってVisaはオンライン支払いサービスを独占すると訴えられている。

Plaidは一連の批判を否定し、「Visaはこの契約を強く保護する意向」であると発言している。当局は、Intuit(インテュイット)が2月に発表(未訳記事)した70億ドル(約7315億1000万円)のCredit Karma(クレジットカルマ)買収提案にも目を光らせている。

Mastercard – Finicity買収の承認は、フィンテックスタートアップの価値を高めるカンフル剤になるかもしれない。PlaidとCredit Karm両社の契約に対する規制当局の監視が強まる中、果たして大規模M&Aはフィンテックユニコーンの選択肢になりうるのかという疑問が投げかけられていた。

もし規制当局の関心によって道が閉ざされるのであれば、フィンテックスタートアップはもっと早くにに安く身売りするか、最終的なIPOまで待つかのいずれかになる。もしそうであれば、ベンチャーキャピタリストはこの分野への投資を避けるかもしれない。しかし、Finictyの買収承認によって価値5億ドル(約522億6000蔓延)以上のフィンテックM&Aがすべて監視の悩みに直面するわけではないことがはっきりした。これはレイトステージフィンテックの評価額にとって歓迎すべきニュースだ。

関連記事:米司法省が阻止しようとするVisaとPlaidの合併問題を理解するための「火山モデル」

カテゴリー:フィンテック
タグ:MastercardFinicity買収米司法省

画像クレジット:gmutlu/iStock / Getty Images

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook