垂直農法スタートアップInfarmがカタールに果物の栽培センターを計画

欧州の垂直農法企業であるInfarm(インファーム)は今週、シリーズDラウンドで2億ドル(227億円)を調達したことを発表した。カタール投資庁(QIA)の主導した今回のラウンドは、2020年の1億7000万ドル(約193億円)の資金調達に続くもので、これにより社の資金調達総額は6億ドル(約680億円)を超えた。評価額も10億ドル(1134億円)を「大きく」超え、欧州初の垂直農法ユニコーン企業としての地位を確立している。

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「気候変動に強い垂直農法でグローバルな農業ネットワークを構築することは、Infarmの中核的な使命です。だからこそ、今回の資金調達を発表できることに私たちは興奮しています」と、共同創業者兼CEOのErez Galonska(エレツ・ガロンスカ)氏はリリースの中で述べている。「今回の戦略的な投資は、当社の急速なグローバル展開を支え、研究開発を強化するものです。それによって私たちは、欧州、アジア、北米、中東の消費者の近くで、より多くの種類の作物を栽培できるようになります。それは、近い将来、果物と野菜のバスケット全体を栽培し、高品質な生産物を手頃な価格ですべての人に提供するという当社の野望を達成するための新たな一歩です」。

今回調達した資金の多くは、米国、カナダ、日本、欧州などを視野に入れたInfarmの国際的な事業拡張計画に充てられる。また、同社はアジア太平洋地域や中東へのさらなる拡大も予定している。

QIAが今回のラウンドに参加したことが、後者の大きな原動力になることは間違いない。今回の提携の一環として、同社はカタールにトマトやイチゴなどの果物を栽培するための栽培センターを設立する計画を発表した。制御された屋内環境で比較的容易に栽培できることから、これまで主流であった葉物野菜やハーブの栽培からの脱却を目指している多くの垂直農法企業にとって、果物は強力な後押しとなっている。

「責任ある長期投資家として、QIAの目的は将来の世代のために価値を創造することです。私たちは、垂直農法を、世界のあらゆる地域の食糧安全保障を向上させる手段であると考えています」と、QIAのMansoor bin Ebrahim Al-Mahmoud(マンスール・ビン・エブラヒム・アル・マフムード)氏は、同じリリースで述べている。「私たちは、Infarmと協力してカタールに同社初の栽培センターを開発し、カタールの食糧安全保障と経済の多様化に貢献できることを楽しみにしています」。

垂直農法は確かにこの地域にとって理に適っている。生産者は、標準的な農法よりもはるかに少ない水で、気候制御された建物内で作物を生産する能力を得られるからだ。2018年には、Crop One(コープ・ワン)が、UAEに13万平方フィートの農業施設を開設すると発表している。もちろん今後、このような懸念は、1つの地域に留まるものではなくなるだろう。

画像クレジット:Infarm

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ジャックフルーツを使った代替肉の普及を目指すjack & annie’sが約26.3億円調達

jack & annie’sの創業者アニー・リュウ氏(画像クレジット:jack & annie’s)

ジャックフルーツ(パラミツ)を原料にするサステナブルな代替肉ブランドJack & annie’sが、米国時間12月14日に2300万ドル(約26億3000万円)のシリーズBの調達を発表した。

ラウンドはCreadevとDesert Bloomがともにリードし、Wheatsheafと既存の投資家Beta AngelsおよびInvestEcoが参加した。同社の創業者でCEOのAnnie Ryu(アニー・リュウ)氏は、TechCrunchに対して、以前のラウンドは発表しなかったし、これまでの総調達額も公表しないが、今回は「これまでのラウンドの合計より大きい」と語った。

ジャックフルーツの製品化のアイデアを思いついたのは10年前、リュウ氏がハーバードの医学部大学院の学生時代だった。彼女は弟と一緒に会社を起こし、インドでジャックフルーツを知った。

リュウ氏はこの果実が干ばつに強くて収量も多いことを知ったが、現地の人たちが好きなだけ食べても70%が未使用であることもわかった。世界の健康が研究テーマだったリュウ氏は、この果実の利用量を増やすことで地域の貧困を終わらせたいと考えた。今日では彼女のブランドは1000戸の農家と協力して、彼らの収入の10〜40%を提供している。

その後、リュウ氏は「ジャックフルーツ最大のサプライチェーンの開拓」を始めた。最初に作ったブランドは2015年に厚い果肉を利用し、コクのあるフレーバーでタンパク質や食物繊維など栄養価も高かった食品を提供した。現在、The Jackfruit Co.は約10種類の製品を、主にベジタリアン向けに販売している。当初はWhole Foodsが販路だったが、その後、拡大している。

2020年にローンチしたjack & annie’sは、リュウ氏によれば「とても親しみやすい」ブランドだという。同社は10種類の冷凍食品をそぼろやミートボール、ナゲットなどの原料として売っている。小売価格は、冷凍製品が4.99〜5.99ドル(約570〜約680円)、冷蔵製品が6.99ドル〜7.99ドル(約800〜910円)となっている。

ジャックフルーツを原料とする植物性の代替肉食品を扱う企業がいくつか登場している。2020年はシンガポールのKaranaが170万ドル(約1億9000万円)を調達して、植物性の豚肉代替食をこの果実で開発している。UptonのNaturalsThe Very Good Butchers、そしてNative Forestなども、この果実を使った代替肉食品を作っている。

関連記事:ジャックフルーツで人工肉を作るシンガポール拠点のKaranaが1.8億円調達

しかしリュウ氏のブランドは1年足らずで1500ほどのリテイラーに広がり、その中にはWhole FoodsやSprouts、Meijer、Wegman’s、Hannaford、Target、Giantなどもいる。同社はまた、植物性代替肉の冷凍製品では3番めに大きいブランドだ。また自然食品の流通チャネルでは同社は、SPINS Natural Channelによると、10月3日までの12週でナゲットのトップだった、とリュウ氏はいう。

同社の売上は前年比で倍増というペースを続けており、今度の資金はパートナーシップの構築の継続と、新たなイノベーション、各店におけるシェルフスペースの拡大、総流通量の拡大に投じられる。

リュウ氏によると「ジャックフルーツはビーフやポーク、チキン、シーフードなどのようにしやすため、これまで行ってきたことは氷山の一角にすぎないでしょう。リーダーとしてやるべきことは、多くの顧客のイノベーションパートナーであることです。彼らがジャックフルーツの肉のような食感を利用し、素性がわかる良質な原料だけで美味しい製品やメニューを開発しているときは、私たちがボウルダーにあるR&Dセンターを利用して協力することができます」という。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

NYの都市型屋内水耕農業ゴッサムグリーンズがカリフォルニアに4万平米の研究農場開設

この数カ月間、かなりの時間を割いて垂直農法(vertical farming)について調査、執筆する中、あるキーワードが何度も浮かんできた。「近接」だ。近年の農業で使われている手法の多くが、農作物を遠距離に輸送することに注力し、結果的に炭素排出量を増やしている。Gotham Greens(ゴッサムグリーンズ)は厳密には垂直農法ではないが、地元生産農業の象徴になってたのは、ニューヨーク州ブルックリン、ゴーワヌス地区のWhole Foods(ホールフーズ)店舗の真上に立てられた都市型グリーンハウスのおかげだ。

創立10年の同社は、現在ニューヨーク市内の3カ所(ブルックリンに2つ、クイーンズに1つ)の他、東海岸(メリーランド州ボルチモアとロードアイランド州プロビデンス)に2カ所、中西部(ミシガン州シカゴ)に2カ所、山岳部(コロラド州デンバー)に1カ所所農場を所有している。米国時間12月8日、同社は西方向への拡大を進め、カリフォルニア州で初めてのグリーンハウスを、UC Davis(カリフォルニ大学デービス校)近くに設置したことを発表した。

画像クレジット:Gotham Greens

Gothamで9番目の農場は、広さが10エーカー(約4万平米、4ヘクタール)で、栽培に必要な資源を劇的に減らすように設計されている。同社は水耕技術を用いて、レタス1玉の栽培に通常必要な水、10ガロン(約37.9リットル)を1ガロン以下まで減らすことができるという。農場全体では年間2億7000万ガロン(約102万キロリットル)の水を節約でき、占有面積は従来型農業よりも300エーカー(121ヘクタール)少ない。

国の農作物のかなりの部分を生産しているカリフォルニアへの進出は興味深い動きであり、ニューヨークやシカゴに施設を開設するのとは明確に異なる戦術だ。もちろん、カリフォルニアの農作物栽培への誇り高き伝統にも関わらず、この州も気候変動の極めて深刻な影響を受けている。

画像クレジット:Gotham Greens

「カリフォルニアは北米の葉物野菜生産の中心であり、気候変動による水不足や山火事をはじめとするさまざまな影響が、農業に不可欠な資源を圧迫しています。私たちはカリフォルニアに拠点を置くことで、ますます深刻化する気候変動の影響に対する農産業界の解決策の1つになることを熱望しています」と共同ファウンダー・CEOのViraj Puri(ビラージ・プーリー)氏はリリースで語る。「カリフォルニア北部の当社最新のグリーンハウス施設は、地域全体の小売店やフードサービス提供者に商品を提供しながら、土地や水をはじめとする貴重な資源を保護するために、戦略的に選ばれた場所にあります」。

UCデービス校近郊という場所に間違いはない。同社は同大学の研究者と協力していきながら、将来の従業員との堅牢なつながりをつくるに違いない。さらに同社はこの機会を利用して、2024年までに同社がパッケージに使うプラスチックを40%(対2020年比)、使用電力を5%削減する計画も発表した。

画像クレジット:Gotham Greens

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

産直通販サイトの食べチョク、伊勢海老や丸ごとチキンなどごちそう食材を集めた年末年始特集コーナーを開設

産地直送の食材通販サイト「食べチョク」、ごちそう食材を集めた年末年始特集コーナーを開設

産直通販サイト「食べチョク」(Android版iOS版)を運営するビビッドガーデンは12月8日、年末年始のシーンに合わせた食材を集めた「年末年始特集」を開設したことを発表した。伊勢海老やローストチキン、スイーツ、アルコール飲料など、クリスマスの食事や手作りおせちで使えるこだわりの食材が特集されている。

食べチョクは、野菜や果物、米・肉・魚・飲料などの食材全般と花き類を生産者から直接購入できる産直通販サイト。ユーザー数は50万人、登録生産者数は6000軒、3万5000点を超える商品が出品されている。ユーザーの好みに合った生産者から野菜を定期的に発送する「食べチョクコンシェルジュ」、旬の果物が届く定期便「食べチョクフルーツセレクト」、友達と分けあえる共同購入機能、販売前に商品を取り置きできる予約機能など、ユーザーのライフスタイルに合わせた様々なサービスを提供している。

今回の特集では、年末年始を美味しく・楽しく過ごすために厳選された商品を掲載。高知産の伊勢海老や鳥取産のベニズワイガニなど「ちょっと豪華」な商品を集めた「ご褒美特集」、ローストチキンやケーキを集めた「クリスマス特集」、手作りおせちにチャレンジするユーザー向けの「おせち特集」として利用シーン別に商品を紹介している。家庭で過ごす時間のマンネリ化の解消や、自炊生活の彩りとして利用してほしいという。

また食べチョクは、50食限定で一流イタリアンシェフが全国の生産者のこだわり食材を使って調理したおせち「食べチョクおせち」の販売を2021年12月9日12:00から行う。「お歳暮・冬ギフト」特集も実施している。

産地直送の食材通販サイト「食べチョク」、ごちそう食材を集めた年末年始特集コーナーを開設

食べチョクおせち」。12月9日12:00に予約販売を開始

東京農工大学が日本で初めて果樹工場から冬季生産のブルーベリーを出荷、伊勢丹新宿店で発売

東京農工大学は12月3日、日本ガスコムの植物工場を使ったブルーベリーの通年生産システムで、これまで不可能とされていた冬季生産のブルーベリー果実の出荷を成功させた。2021年12月から伊勢丹新宿店で発売される。

ブルーベリーは春夏秋冬を通して開花、結実、休眠を繰り返す。そのため日本では、ブルーベリーが出荷できるのは夏の4カ月ほどの間に限られ、後の季節は輸入に頼らざるをえない。そこで東京農工大学の荻原勲名誉教授らによる研究グループは、2011年に農工大キャンパス内に建設した「先進植物工場研究施設」において、春夏秋冬それぞれの環境を再現した部屋を作り、ブルーベリーのライフサイクルを短縮化させ、連続開花結実の研究を行った。それにより、通年での果実の収穫が可能になり、収穫量も4〜5倍に増えた。また、1本の木で花・未熟果・成熟果が混在する「四季なり」の様相も見せ、長期にわたる出荷も可能となった。この「連続開花結実法」は、2021年に特許を取得している。

研究グループは、この技術を社会実装するために、日本ガスコムが2021年6月に設立した6000m2の植物工場での実験を行ったところ、9月に開花が認められ、11月には果実が成熟した。品種によって大きさや糖度は異なるものの、大粒で高糖度の果実が収穫できたので、伊勢丹新宿店で販売されることとなった。ただし、初年度は出荷量に制限があるため、店頭に並ばないこともあるとのことだ。

アジアの伝統的な食材を家庭に届けるUmamicartが約6.8億円調達

人々は好きな食べ物が並ぶ食卓に集まる、しかし、Umamicart(ウマミカート)の創業者兼CEOであるAndrea Xu(アンドレア・シュー)氏にとって、家族と一緒に食べて育った料理を作るための食材を見つけるのはいつも簡単ではなかった。

シュー氏の両親は中国人だが、スペインに移住し、自分たちの中華料理店を開いた。彼女は、スーパーに、アジア料理でよく使われるソースや薄切りの肉、野菜などが置いていなかったことを思い出す。大学進学のために渡米したときも、スーパーのアジア料理専用の通路に何がないか、友人たちと話していたそうだ。

Umamicartの創業者兼CEOのアンドレア・シュー氏(画像クレジット:Umamicart)

「食べ物はアイデンティティを再確認する手段ですが、私の家庭に普及している食べ物にアクセスすることは困難でした」彼女はTechCrunchに語った。「米国には2900万人のアジア系米国ホトがいますが、商品にアクセスするにはまだハードルがあります」。

最近は何でもデリバリーできるようになったので、シュー氏はアジアの食材でそれを試してみることにした。3月に、元FJ Labs(FJラボ)のWill Nichols(ウィル・ニコルズ)氏と共同で、アジアの伝統的な商品と独創的な商品を厳選して提供する、アジアのオンライン食料品・宅配サービスUmamicartを立ち上げた。

Umamicartは、家庭で料理をする人のためのあらゆる商品を取り扱うショップを目指しており、定番商品やパントリーの必需品、レシピのインスピレーション、休日のローストダックやDIYの寿司ナイト、火鍋や餃子作りなどの調理活動のための特別なキットを提供している。

注文は同社のウェブサイト(そして近日中にモバイルアプリ)ですることができ、ニューヨーク市のカスタマーには即日配達、ニューヨーク市以外のニューヨーク、ニュージャージー、コネチカット、マサチューセッツ、ペンシルバニア、デラウェア、バージニア、メリーランド、マサチューセッツ、ワシントンD.C.の郵便番号には翌日配達を行っている。

米国時間12月3日、同社は、M13とFJ Labsが共同で主導し、Picus Capital(ピカス・キャピタル)、Starting Line(スターティング・ライン)、Golden Ventures(ゴールデン・ヴェンチャーズ)、First Minute Capital(ファースト・ミニット・キャピタル)、Goldhouse Ventures(ゴールドハウス・ベンチャーズ)が参加したラウンドで、600万ドル(約6億7600万円)のシード資金を調達したことを発表した。これにより、100万ドル(約1億1200万円)のシードラウンドを含め、同社の資金調達総額は700万ドル(約7億8900万円)となった。

M13の投資家であるBrent Murri(ブレント・ミューリ)氏は、FJ Labsからシュー氏を紹介され、Umamicartは、食品のデジタル化を視野に入れた、彼の会社が通常投資している消費者向けテクノロジーの種類と一致していると述べた。M13は、これまでにThrive Market(スライブ・マーケット)やShef(シェフ)などの類似企業に投資してきた。

「シュー氏とニコルズ氏の共同創業者という組み合わせは、私が2021年に見た中で最も市場にフィットしている」ミューリ氏は言った。「シュー氏は両親から学び、食品流通業者との多くの関係を維持しており、ニコルズ氏はInstacart(インスタカート)のニューヨーク市場を率いていたため、彼は食料品ビジネスの規模を拡大する方法を知っています。これらの要素が彼らを際立たせています」。

同氏は、食料品の専門家が、2022年には米国の人口の半分が少なくとも1回はデジタルで食料品を購入すると予想していることを指摘した。しかし、食料品店のデジタル化はすべての人に平等ではなく、アジア市場は大部分がオフラインであり、Umamicartのような企業が厳選された食品を優れた顧客体験とともに提供する場を提供していることを挙げている。

今回の資金調達により、同社は配送範囲の拡大、チームの成長、商品カタログの追加、カスタマカーからの需要が多くなっているサービスエリアの拡大が可能になる。シュー氏は、東南アジアの料理をより多様に提供し、ユーザーが利用できるレシピの数を増やしたいと考えている。

「アジア料理を食べて育ったわけではないが、アジア料理を楽しんだり、料理をしたりするようになった人たちからも大きな関心が寄せられています」と彼女は付け加えた。

ResearchAndMarkets.comのレポートによると、世界のフードデリバリー市場は、昨年は約1110億ドル(約12兆5100億円)と推定され、2023年には1540億ドル(約17兆3600億円)になると予測されている。エスニック料理を作って食べることへの関心は、全体的に高まり続けている。米国のエスニック食品の小売売上高は、2013年の110億ドル(約1兆2400億円)から2018年には125億ドル(約1兆4000億円)となり、米国の中華料理店での年間消費額は、2020年には150億ドル(約1兆6900億円)強になると推定されている。

Umamicart自体は、3月のローンチ以来、前四半期比で313%のウェブトラフィックの伸びを示し、前月比で20%から30%の成長を遂げており、現在では3000以上の商品を取り扱っている。

今回のパンデミックで、アジア料理を作る際には新鮮なプロダクトが好まれるが、それらが手に入らないと料理に支障をきたし、人々は代替品を探そうとするという重要な洞察が得られたとシュー氏は述べた。

「また、コンシューマーは、インターナショナルやエスニックの通路にあるものを拒否し、より良い製品やブランドを求めています」と彼女は付け加えた。「私たちはそのことを大切にしています。ですから、彼らがUmamicartに来たとき、私たちが棚に並べるものは吟味された製品であり、試行錯誤された定番商品や、私たちが探し出すことができた最高の新しいブランドであることを知っているのです」。

画像クレジット:Umamicart

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(文:Christine Hall、翻訳:Yuta Kaminishi)

キリンビールが仕込み・発酵工程をAIで自動計画し立案するシステムを2022年1月から本格運用、熟練技術の伝承と時間の節約

キリンビールが仕込み・発酵工程をAIで自動計画し立案するシステムを2022年1月から本格運用、熟練技術の伝承と時間の節約目指す

キリンビールは11月29日、NTTデータと共同でビール類の仕込みと発酵の工程をAIで自動的に計画し立案するシステムを開発し、試験運用を開始したことを発表した。これは「確実な熟練技術の伝承」と時間の節約を目指すもので、9つの工場で年間1000時間以上の時間創出が見込まれるという。2022年1月より同システムの本格運用を開始する予定。

ビールの製造には、仕込、発酵、貯蔵、濾過、保管の5つの工程がある。特に仕込から発酵の工程では、出荷に合わせて原材料を仕込み、どの液種をどのタンクに移すかといった計画を立てる必要がある。そこは、熟練者の知見に頼ることが多い複雑な作業であり、様々な条件を勘案しなければならないため時間もかかる。そこで、キリンビールとNTTデータは熟練者へのヒヤリングを行い、NTTデータが開発した「制約プログラミング技術」(制約を洗い出し、問題に対する制約条件を満たす答をコンピューターで効率的に見つけ出すもの)で、熟練者の知見を標準化した。

キリンビールでは、すでに2020年12月から、濾過計画はAI化している。これと合わせて、創出される時間は4000時間にものぼるという。その時間は、「さらなる品質向上に向けた取り組みや、若手の育成など、人にしかできない価値創造」にあてるとしている。

霜降り技術が売りの植物性ステーキ開発Juicy Marblesが5.1億円を調達

スロベニアのスタートアップJuicy Marbles(ジューシーマーブルズ)のおかげで、肉を食べる人に対し、環境にやさしい食事をするよう説得することが(それが矛盾に聞こえなければ)少し楽になるかもしれない。同社は、植物性のホールミートカット(塊肉)を作る方法を開発した。

「Fancy Plant Meat(すてきな植物性肉)」は、フィレミニョンステーキやその他の(動物)肉の「プライム」カットに代わる、ヴィーガン向けの同社製品を表現する力強い売り文句だ。

リュブリャナを拠点とするこのスタートアップは、植物性タンパク質の最高級品を市場に投入するため、450万ドル(5億1000万円)の資金調達を発表した。前述の(ヴィーガン)フィレミニョンを皮切りに、2022年第1四半期の発売を予定している。

なぜフィレスミニョンなのか。それは、独自に開発した「霜降り技術」を最もよく発揮できるカットだからだ。また、フィレミニョンを選んだのは、このカットが(肉の)ステーキの「王冠の宝石(重要部分)」と考えられているからだという。

さらに、高級フェイクミート市場は比較的競争が少ない。それに対し、ハンバーガーソーセージベーコンチキンテンダーなどの、派手さが少なく、カットがより小さい代替タンパク質製品は、製造する企業が多数存在する。そのため、大きなサイズでがっしりとしたものにすることは、盛り上がる代替タンパク質市場で目立つための1つの方法だ。

「他のホールカットに先駆け、まずはフィレスミニョンから始めることにしました。フィレミニョンはステーキ界の『王冠の宝石』であり、当社の霜降り技術が最もよく発揮されるからです。当社の明確かつ決定的なセールスポイントと言えるでしょう」とJuicy MarblesはTechCrunchに語った。

「私たちは、最も高価なカットだけではなく、サーロイン、ランプ、フィレ、トマホーク、和牛、そしてフィレミニョンで知られるようになりたいと思っています。長期的には、フィレミニョンをより手頃な価格で、植物性であることによる経済性の違いを考慮した上で、入手しやすいものにしていきたいと考えています」。

Juicy Marblesのフィレミニョンにかぶりつくとき、あるいはかぶりつくとして、実際に食べているのは何だろうか。主なタンパク質は大豆だ。大豆は栄養価が高く、環境的にも持続可能であると同社は主張している。

「大豆栽培が森林破壊を引き起こしているという問題があります。これは、大豆栽培が家畜を育てるために必要とされるからこその問題です。大豆生産量の97%は家畜の飼料として使われており、もし私たちの肉がすべて植物由来になれば、大豆栽培の悪影響は単純になくなってしまうでしょう」と同社はいう。「人間が食べるための作物として、純粋に人間が消費する大豆に必要な土地ははるかに少なく、現在必要とされている農地の3分の1以下になるでしょう」。

大豆は用途が広い。Juicy Marblesは、あらゆる形態で食べることができると指摘する。生、ドライ、プレーン、発芽、粉末、発酵といった状態の他、豆腐、ソース、スープ、デザート、飲み物などとして摂取することができる。同社は「大豆中心のフードカンパニー」となることで、より柔軟に料理を提供できると述べている。

例えば、大豆を使ったマグロのステーキなどのアイデアがある(動物性ではない、マグロ代替品を最初に市場に出す会社というわけではない。例えばYCが支援するKuleanaなどがある)。

「私たちのビジネスは、タンパク質の食感というコンセプトを基盤としています。これこそが、人々が安価な肉と比較してステーキに惹かれる決定的な要因なのです。植物性食肉のホールカットの分野では、あまり革新的な技術がなく、誰も高級品を模したステーキを開発することができませんでした」と同社は語る。「この分野でも脱炭素化や植物由来の代替品のニーズがあることを考えると、これは大きなライバル企業が開拓していない巨大な機会だと思います」。

画像クレジット:Juicy Marbles

「植物由来の製品といえば、現在はハンバーガーやソーセージ、ベーコンなどの安価なカットに限られています。また、チキンテンダーやツナ缶などの塊もありますが、ホールカットはありません」と付け加えた。

Juicy Marblesは、どのようにしてこのような大量のフェイクミートを製造できるのかを明らかにしていない(タンパク質の霜降り技術を解明しようと「多数の大手食品会社が嗅ぎ回っている」と主張している)。

しかし、同社は、自社の知的財産が確実に保護されるようになれば、より透明性が高まるとしている。

同社は、植物性ステーキが研究室で栽培されたものでも、3Dプリントされたものでもないことを明記した上で、特許出願中の独自の3D組み立て技術を使用しており、これによって「形状、食感、霜降り、味、香り、栄養を完全にコントロールした、A5等級の高級肉」を作ることができると主張している。

もちろん、これらの主張の真偽は食べることで明らかになる。しかし、Juicy Marblesは「高レベルの霜降り効果」と「大胆で豊かな風味」の両方で肉を食べる人は驚くはずだ、という。

また、発売時には「平均的な価格」のフィレミニョンと「同等」の価格を実現するが、最終的には(「2〜3年以内に」)ステーキ1枚あたりのコストがより手頃価格の肉を買うのと同じになるよう縮小していくとしている。

Juicy Marblesは、植物性ステーキには非飽和脂肪酸が使用されており、肉類に比べてナトリウムが少ないこともメリットだと指摘している。なので、植物性ステーキへの切り替えを検討する健康上の理由付けがあるかもしれない(地球上の生命の未来が十分に大きな理由ではない場合)。

今回のシードラウンドは、植林活動を行う検索エンジンEcosiaが新たに設立したWorld Fund(3億5000万ユーロ=約448億円の基金)がリードしている。同ファンドは、地球の脱炭素化に役立つテックに取り組んでいるスタートアップにフォーカスしていて、TechCrunchは2021年10月同ファンドの立ち上げを取り上げた(Juicy MarblesはWorld Fundの最初の投資先だ)。

このファンドのゼネラルパートナーDanijel Visevic(ダニジェル・ビシェビッチ)氏は、声明で次のように述べた。「近年、地球と自分の健康のために真の変化を起こしたいと願う世代によって、植物由来の代替品へのシフトが起こっています。しかし、多くの場合、代わり映えのしないものを目にしたり、ホールカット肉のようなちょっとした贅沢を諦めることができず、完全な植物性食品への移行に抵抗を感じたりしています。Juicy Marblesのチームは、これを真に理解しています。チームの現実的で熟考されたアプローチは、彼らの技術力、そして食欲(!)と相まって、植物性食品のパズルの主要な部分をついに解明しました。チームに加わり、今後数カ月、数年のうちにどれほどのインパクトを与えるかを目撃できることに興奮しています」。

今回のラウンドには、Agfunderの他、Y CombinatorやFitbitなどのエンジェル投資家が参加している。

Juicy Marblesによると、今回の資金調達は、植物由来のステーキを小売市場に投入するための生産規模の拡大に使用される。

同社は、こだわりのある食料品店やレストランだけでなく、スーパーマーケットへの販売も計画している。しかし、生鮮食品を個人の消費者に配送するための「地球に優しい」梱包は複雑であるため、消費者への直接販売は特別なオファーに限られるとのことだ。

また、同社はチームを拡大し、新しいカットの開発含むR&Dをさらに強化する予定だ。

「学習サイクルとして、次のラウンドでは、植物性肉のギガファクトリーを設立して事業規模を拡大し、植物性肉の価格をさらに下げることができます」とも話す。

ちなみに、Luka Sinček(ルカ・シンチェク)氏、Maj Hrovat(マジ・フロヴァット)氏、Tilen Travnik(ティレン・トラブニク)氏、Vladimir Mićković(ウラジミール・ミッチコビッチ)氏の創業チームにはヴィーガンと肉食のどちらもいる。

画像クレジット:Juicy Marbles

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

植物性の冷凍食品を届けるMosaic Foodsが約6.8億円調達、食餌療法を行うVCトップが高評価

植物性食品の食品企業Mosaic Foodsは、米国時間11月23日に600万ドル(約6億8000万円)のシード資金を獲得し、もっと多くの製品を開発していくと発表した。

2019年に食品の世界に登場したニューヨーク拠点の同社は、Matt Davis(マット・デイビス)氏とSam McIntire(サム・マッキンタイア)氏の2人が創業し、ピーナッツ豆腐ボウルやバターナッツ・スクワッシュ、セージパスタなどの菜食メニューのベジボウルを冷凍食品として提供している。

Mosaicを立ち上げる前のCEOのデイビス氏とCROのマッキンタイア氏は、それぞれBain & Coにいた。そこで彼らは、植物性のダイエット食品をおいしく食べて成功するためには工夫が必要で、特に肉がなくても満足できるおいしい料理が必要だと悟ったという。

Mosaic Foodsの核には、人間はもっと植物を多く食べて肉を減らすべきだという2人の信念がある。しかし彼らは、植物性の食事はおいしくないから食べないという言い訳をよく耳にする。

Mosaic Foods共同創業者のマット・デイビス氏とサム・マッキンタイア氏(画像クレジット:Mosaic Foods)

「植物を多く食べることへの言い訳をなくし、おいしくすれば、人々は植物を多く食べることを楽しみにするようになり、大きなインパクトを与えることができるでしょう」とマッキンタイア氏はいう。

また「私たちは、植物性食品をテイクアウトで注文するのと同じくらい簡単に食べられるようにしたいのです。自分たちの好きなレシピを料理することになり、最初の6品は私たちのキッチンから生まれました」とデイビス氏はいう。

Mosaicの仕組みは次のとおりだ。8食または12食のミールプランを選択、スキップやキャンセルも可能だ。朝食、昼食、夕食のオプションを選択し、冷凍庫に保存できる急速冷凍食品を受け取る。1食あたりの平均価格は4.99ドル(約570円)だ。

発売から2年で、商品数は6種類から50種類に増え、売上は15倍になった。ニュージャージー州に1万6000平方フィートのキッチンを開設し、カリフォルニア州にも出荷を拡大している。また、オートミールボウル、スープ、ファミリーミールなどの製品ラインアップを拡充するとともに、トップシェフやフードパーソナリティとのパートナーシップにより生み出された食事のキュレーションコレクション「Mosaic+」も開始した。

シードラウンドはGather Venturesが主導し、GreycroftとAlleycorpが参加した。今回の投資により、Mosaicの資金調達総額は約1000万ドル(約11億3000万円)となった。

「アダム(スルツキー)と一緒に仕事をすることは、大きなチャンスを掴むことになると思っている。資金調達で、より早く、より多くの人々に影響を与えることができるでしょう」とデイビス氏はいう。

Slutsky(スルツキー)氏はMoviefoneの創業者で、Mimeo.comの前CEO、そしてTough Mudderの元社長だ。彼は2019年にGatherを興し、植物ベースの企業だけに投資している。

ただしその部分は彼の個人的な領域で、42歳で心臓病と診断され食生活を変えさせられたことが契機だ。投資対象は自らの目と判断で選ぶため、1年に4件程度だ。

「現在、世界が便利さの追求から健康と環境とその他の倫理的価値の追求に変わりつつある。それが安価に手に入るならより良いことだ。Mozaicのメンバーはそれを行っている」とスルツキー氏はいう。

現在、従業員は40名で、東海岸を中心に全米の約50%をカバーしている(ただし、直近では7月にカリフォルニア州が加わった)。また、2021年末までに100万食の販売を達成する予定だ。

今回の新たな資金調達は、すでに配置されているチームの強化、自社キッチンの継続的な運営を含むインフラへの投資、および新製品の発売に充てられる。共同設立者らは、2022年の今頃には、DTCに加えて他のチャネルでも販売することを期待している。

画像クレジット:Mosaic Foods

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

グルメコミュニティアプリSARAHや外食ビッグデータサービスFoodDataBankを運営するSARAHが2.2億円調達

グルメコミュニティアプリ「SARAH」(Android版iOS版)や外食ビッグデータサービス「FoodDataBank」などを運営するSARAHは11月25日、第三者割当増資により総額2億2000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、既存投資家のセブンーイレブン・ジャパン、Social Entrepreneur3投資事業有限責任組合(PE&HR)、DD Holdings Open Innovation Fund投資事業有限責任組合、クロスボーダーインベストメント、新規引受先であるインフォマート、エー・ピーホールディングス。累計調達総額は7億7000万円となった。

調達した資金は、各サービスのマーケティング・セールス・カスタマーサクセス、飲食店向け電子メニュー化サービス「Smart Menu」の体制強化と組織増強に投資予定。

SARAHが展開する事業は3種類。累計投稿数80万件(2021年10月現在)のSARAHは、レストランの1皿に対する投稿を中心としたグルメコミュニティアプリ。レストラン単位ではなくメニュー単位での投稿や検索が可能だ。FoodDataBankは、SARAH内の膨大なユーザーの声を抽出し分析することで外食市場とその顧客ニーズをデータで定量化する。Smart Menuは、2020年5月よりβ版が稼働中のサービス。SARAHのデータを組み合わせることで来店客ごとにお勧めのメニューを表示でき、客単価向上に貢献することを目標としている。

フードテックPerfeggtが植物由来の代替卵販売に向け3.2億円調達

世界市場では、乳製品や肉などの植物由来の代替品の売上が急増しており、Perfeggtは卵でも同じことをしたいと考えている。

ベルリン拠点のフードテック企業Perfeggtは、2022年第1四半期にドイツ、スイス、オーストリアでニワトリが存在しない卵製品をデビューさせようとしている。まず製品を立ち上げ、その後2022年後半にヨーロッパで事業を拡大すべく、同社は現地時間11月25日、初のラウンドで280万ドル(約3億2000万円)を調達したことを発表した。

このラウンドの出資者は、EVIG Group、Stray Dog Capital、E2JDJ、Tet Ventures、Good Seed Ventures、Sustainable Food Ventures、Shio Capitalだ。

PerfeggtのCEOであるTanja Bogumil(タンジャ・ボグミル)氏は、Lovely Day Foods GmbHの傘下にあるPerfeggtを、EVIGの創業者でCEOのGary Lin(ゲーリー・リン)氏、ドイツのベジタリアン・ビーガン食肉メーカーRügenwalder Mühleで長年R&D責任者を務めたBernd Becker(ベルント・ベッカー)氏と2021年初めに共同で設立した。

Perfeggtの共同設立者、左からベルント・ベッカー氏、ゲーリー・リン氏、タンジャ・ボグミル氏(画像クレジット:Patrycia Lukaszewicz)

「私たちはもっと良い食べ物を食べるべきだと心から信じています」とボグミル氏は話す。「私の母方の家系は小規模な農業を営んでいたので、私たちが食べるものがどこからくるのかを常に意識してきました。12歳のときにベジタリアンになったのは、叔父が屠殺場に連れて行ってくれて、自分が食べていたソーセージが正しい方法で作られていないことを教えてくれたからです。そこで起こっていることを完全に理解していたわけではありませんが、正しいとは思えませんでしたし、人道的とも思えませんでした」。

すでにサステイナビリティが確立されている乳製品とは異なり、卵はまだ未開発の部分が多いとボグミル氏は考えている。確かに、Simply Egglessや、2021年夏の初めに2億ドル(約230億円)を調達したJust Eatなど、同様の植物性代替品を製造する企業はある。しかし、世界では年間1兆3000億個以上の卵が生産されており、つまり成長の余地があり、用途も多様だとボグミル氏はいう。

Perfeggtの最初の植物性卵製品は、空豆から作られたタンパク質が豊富な液体の代替品だ。この製品は、フライパンでスクランブルエッグやオムレツのように調理することができる。同社はまず、外食産業向けに製品を発売する予定だ。

他の食品と同様、味が肝心だ。この製品では、口当たり、感覚、風味、食感が似ているものを目指したが、これらの要素はすべて、人々が植物性の代替品に切り替えるために必要だとボグミル氏は話す。

「これは、私たちが時間をかけて見つけ出したものです。私たちの製品は、これらの用途に必要な機能性を模倣するのに非常に適した空豆を中心に作られています」と同氏は付け加えた。

そのため、ドイツのエムスランドにあるPerfeggtの研究開発拠点では、生命科学の研究で知られるワーヘニンゲン大学・研究機関と緊密に連携し、動物性食品の栄養的・機能的特性に最も近い植物性タンパク源とその組み合わせを検証している。

今回の資金調達により、同社は本社と研究開発施設のチームを増強する。同社では現在、食品科学者、マーケティング、研究開発を担う人材を募集している。

一方、ボグミル氏は、卵の代替品の分野に参入する企業が増えることは、人々を植物性食品にシフトさせるというPerfeggtの使命につながると考えている。

「これは1人勝ちの市場ではありません」と同氏は話す。「代替タンパク質がこれほどまでにメインストリーム市場に近づいたことは、歴史上初めてのことです。明らかに、これは資本市場に反映されており、ニッチ市場の開拓だけでなく食の未来にも影響を与えています」。

E2JDJの設立パートナーであるStephanie Dorsey(ステファニー・ドーシー)氏は、声明文で次のように付け加えた。「私たちは、次世代の代替タンパク質を開発し、人間や地球、動物の健康を向上させるソリューションを見つけたPerfeggtの急速な技術進歩に、非常に感銘を受けています。卵市場は巨大な機会であり、これは始まりにすぎません」。

画像クレジット:Patrycia Lukaszewicz

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

植物由来のタンパク質を利用して安価に細胞肉を生産するTiamat Sciences

細胞培養培地とは、実験室で育てた食肉を低コストで生産する細胞農業の構成要素だ。しかしそのための成長因子すなわち試薬を作る従来からの方法はそれ自体が高費用で、大量生産が困難だった。

報道によると、実験室で育てた食肉を使ったバーガーは1個が約50ドル(約5750円)になるが、新技術はそれを2030年までにはもっとリーズナブルな1ポンド(約450g)3ドル(約340円)にまで下げるという。

Tiamat Sciencesは、高価なバイオリアクターに代わるコスト効率の良い生物分子を開発しているバイオテックスタートアップの1つだ。米国時間11月24日、同社はTrue Venturesがリードするシード投資で300万ドル(約3億4000万円)を調達したことを発表した。これには、 Social Impact CapitalとCantosが参加した。

Tiamet Sciencesの創業者でCEOのフランス-エマニュエル・アディル氏(画像クレジット:Tiamet Sciences)

CEOのFrance-Emmanuelle Adil(フランス-エマニュエル・アディル)氏は2019年に同社を創業し、独自の植物分子の育成による非動物性たんぱく質の生産を目指している。そのやり方は、バイオテクノロジーと垂直農業と、コンピュテーションデザイン(コンピューターによる設計工程)を結びつけて、独自の組み換え型プロテインを作るものだ。

「現在のものは、培地で使われている成長因子が高価です。私たちはコストを大幅に下げて、食肉と同じ価格にできます」と彼女はTechCrunchの取材に対して語った。

アディル氏の推計では、今日の成長因子は1グラム生産するのに200万ドル(約2億3000万円)必要となるが、Tiamat Sciencesなどの努力により、そのコストは今10分の1まで下がっており、2025年までには1000分の1に下げて量産を可能にしたい、という。

300万ドルのシードラウンドの前、2021年7月に小さなラウンドを行ったので、同社の総調達額は340万ドル(約3億9000万円)になる。アディル氏が大きくしたいと願う同社はベルギーに本社があったが、現在、5月にノースカロライナへ移転した。

新たな資金は、ノースカロライナ州ダラムにパイロット的な生産設備を作ることと技術開発に充てるという。同社はすでに、カーボンニュートラルに向かう途上にいる。

顧客については、まだ公表できる段階ではないが、リリースを目的とする最初のプロダクトは年内を目処に開発している。それによりTiametは顧客がテストするためのサンプルを送れるが、2022年中にはそれらの企業が何らかのかたちでパートナーになる、と彼女は考えている。

アディル氏によると、Tiamatのやり方は食品以外に再生医療やワクチンの製造などにも応用が効くという。

「その成長因子は、似たような工程の他の業界にも移せる」と彼女は語る。「2022年の終わりごろには拡張に励んでいるでしょう。プラント数の拡張は急速にできるため、その頃には、プラント数は10万に達しているはずです。このような規模拡大を助けてくれそうな企業と現在、協議しています」。

True Venturesの共同創業者であるPhil Black(フィル・ブラック)氏によると、Tiamat Sciencesへの投資はTrue Venturesの植物ベースのポートフォリオと相性が良い。最初に調達した資金で、同社の技術が有効であることを多くの人たちに証明し、プロダクトの試作を行った。そしてその次の大きなラウンドでは、リットルからガロンへと規模拡大を行なう。

「細胞肉産業はこれからも続くでしょう。そして今、人々はそれを自分たちのために利益を上げ、より多くのものを作ることに興味を持っています。限られた要素が存在しており、Taimatのソリューションはゲームチェンジャーとなるでしょう」とブラック氏はいう

関連記事:培養肉の最大の問題点に立ち向かうカナダ拠点のFuture Fields、培養を促す安価で人道的な材料を発見

画像クレジット:Tiamet Sciences

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

「動物なし」のモッツァレラチーズの商品化を進めるNew Cultureが約28億円を獲得

Allied Market Research(アライド・マーケット・リサーチ)によると、チェダーやモッツァレラの販売に牽引され、米国のチーズ市場だけでも2019年には343億ドル(約3兆9300万円)、2027年には455億ドル(約5兆2200万円)に達し、年平均成長率は5.25%になると予測されている。

それに比べて、ヴィーガンチーズの業界は小さく、同社の調査によると、2019年の市場規模は約12億ドル(約1370億円)、2027年には44億ドル(約5050億円)に達すると予測されている。

しかし、このような大きなギャップにもかかわらず、シンジケートの投資家たちの「牛がいない牛のチーズ」を販売するNew Culture(ニュー・カルチャー)への、シリーズAでの2500万ドル(約28億6900万円)の資金投入は止まらなかった。それどころか、投資家たちは、ベイエリアを拠点とする設立3年目のこのスタートアップ企業が、動物を使用しないモッツァレラを通じて、市場を大きく成長させることができると考えている。投資家のSteve Jurvetson(スティーブ・ジュルベッソン)氏によれば、味も香りも伸び方もミルクチーズのようであり、彼が「これまでのところ、非常に不愉快だ」と表現したほとんどのヴィーガンチーズとは一線を画す。

ジュルベッソン氏によると、不足している成分は牛乳のカゼインタンパク質で、これまでは牛乳からしか摂取できなかったという。一方、New Cultureでは、精密な発酵プロセスにより、カゼインタンパク質を大量に生産しているという。VegNewsの記事に説明されているように、New Cultureは、巨大な発酵タンクを使って、糖液を与えた後に目的のタンパク質(αカゼイン、κカゼイン、βカゼイン)を効果的に発生させるよう微生物にDNA配列を注入しているそうだ。

その後、カゼインを回収し、水、植物性油脂、ビタミン、ミネラルなどと混ぜ合わせてモッツァレラを作る。

コレステロールや乳糖が含まれていないため、より健康的な製品ができあがる。また、環境にも優しい。実際、乳製品を使ったチーズを1oz(28.35g)生産するのに必要な水の量は56gal(約211L)といわれている。(土地の使用量もはるかに少なくて済む)。

なお、New Cultureのモッツァレラは近所の食料品店では販売されていない。まだいまのところは。計画では、まず2022年から全国のピザ屋にこのチーズを卸すことになっている。

ニュージーランド出身で、遺伝学と微生物学を学び、以前は教育関連のレビューサイトを立ち上げて販売していたNew Cultureの共同設立者兼CEOのMatt Gibson(マット・ギブソン)氏は、最終的には、ヨーグルトやアイスクリーム、さらには牛乳も作ることができるだろうと述べている。しかし、当面はモッツァレラが中心であることを強調した。

New Cultureのラウンドは、Ahren Innovation Capital(アーレン・イノベーション・キャピタル)とCPT Capital(CPTキャピタル)がリードした。また、ADM Ventures(ADMベンチャーズ)、Be8 Ventures(ビーエイト・ベンチャーズ)、S2G Ventures(S2Gベンチャーズ)、Marinya Capital(マリンヤ・キャピタル)、そしてジュルベッソン氏とパートナーのMaryanna Saenko(マリアンナ・サエンコ)が運営するFuture Ventures(フューチャー・ベンチャーズ)が新たに参加した。

今回の資金調達には、SOSVのIndieBioプログラム、Bee Partners(ビー・パートナーズ)、Mayfield(メイフィールド)、Bluestein Ventures(ブルースタイン・ベンチャーズ)、Kraft Heinz(クラフト・ハインツ)のコーポレートベンチャー部門であるEvolv Ventures(エボルブ・ベンチャーズ)など、以前からの支援者も参加している。

画像クレジット:New Culture

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(文:Connie Loizos、翻訳:Akihito Mizukoshi)

植物性アイスクリームのEclipse FoodsがWhole Foodsと提携、まずはカリフォルニアで提供

植物性の肉代替品に対する需要がかつてなく高まっている中、Impossible(インポッシブル)やBeyond(ビヨンド)といった企業がハンバーガーで成し遂げたことをアイスクリームでも実現したいとEclipse Foods(エクリプス・フーズ)が考えているのは間違いない。パンデミック前に同社はニューヨークと、地元であるサンフランシスコの一部の小売店での販売を発表していたが、今回、有名な小売店との提携により販売場所を増やす。

2019年初めに創業されたEclipse Foodsは、YCからの資金調達を含め、これまでに約1600万ドル(約18億円)を調達している。CEOのAylon Steinhart(エイロン・ステインハート)氏はTechCrunchとの以前のインタビューで、代替となる食料源をまかなうのにシンプルなアプローチを取ることで他の植物性食品との差別化を図ろうとしている、と述べた。

関連記事:Eclipse Foodsの純植物性アイスクリームがニューヨークとサンフランシスコの高級店に登場

「我々は、目的を達成するために高価なバイオテクノロジーを使用していません」と同氏は述べた。「植物の機能性タンパク質とその働きに関する世界レベルの専門知識を用いて、極めてシンプルな方法で植物をブレンドさせています」。

Eclipseは、乳製品ベースのアイスクリームをより直接的に模倣することを目指している。「プレミアム食材を使用した高品質なプロダクトを提供する小売店の代名詞であるWhole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)との提携は、当社が全米で販売を拡大していく上で画期的なものです」とステインハート氏はニュースリリースで述べた。

アイスクリームは、まず北カリフォルニアの一部の店舗で販売される。

画像クレジット:Eclipse Foods

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

フードテックのAmaraが約13億円を調達、栄養価の高い乳児食事業を拡大

市販のベビーフードの一部に「危険なレベル」の有害金属が含まれていることが、2021年2月に米下院の監視改革委員会の報告書で判明し、親たちは衝撃を受けた。

これを受けて、その影響や、原材料のチェックといった親ができることなどの情報がにわかにメディアに溢れることになった。そうした栄養に対する意識の高まりは、乳幼児により栄養価の高い選択肢を提供することに注力している食品企業にも恩恵をもたらした。

Amara(アマラ)はこの分野で資金調達を行った最新のスタートアップで、米国時間11月19日、シリーズAラウンドで1200万ドル(約13億円)を調達したと発表した。7歳以下の子ども向けの栄養価の高い食品の製品ラインを拡大するためだ。今回の資金調達の1年半前に同社はシードラウンドで200万ドル(約2億2800万円)を調達し、この間、取扱店舗を100店から1000店に増やしてきた。

Amaraの創業者でCEOのジェシカ・シュトゥルツェンエガー氏(画像クレジット:Amara)

今回の資金調達ラウンドは、大きな提携を結んでいる植物由来の食品会社Eat Well Groupがリードした。経営陣は現在のままで、Amaraの企業価値を1億ドル(約114億円)と評価している、と創業者でCEOのJessica Sturzenegger(ジェシカ・シュトゥルツェンエガー)氏はTechCrunchに語った。シードラウンドからの既存投資家も参加し、ここにはPharmapacksが含まれる。

シュトゥルツェンエガー氏と同氏のチームは、技術開発に3年を費やした後、2017年にWhole Foodsで初の製品を発売した。Amaraは、保存可能な新鮮なベビーフード食のパウチに味、食感、栄養素を閉じ込める独自の技術を開発した。10のSKUと、母乳や粉ミルク、水を混ぜるためのベビーフード生産ラインを展開している。

現在、食料品店の棚に並んでいるパッケージ食品の大半が果物ベースで砂糖を多く含んでいる。1食あたり3〜7ドル(約340〜800円)の価格帯で販売されていて、冷蔵あるいは冷凍で保存しなければならない、とシュトゥルツェンエガー氏は指摘する。これに対し、Amaraの食事は1食あたり1.8ドル(約200円)〜と低価格で、幅広い家庭の予算に合わせた商品を提供するという同社の使命を果たしている。

2021年、Amaraは商品を拡大し「ヨーグルトスムージーメルト」を発売した。「砂糖を一切加えていない、乳幼児向けの唯一の口溶けの良いスナック」とシュトゥルツェンエガー氏はうたう。

「研究によると、0歳から7歳までに食べたものが、その後の人生での考え方や感じ方、パフォーマンスに影響を与えると言われています」とシュトゥルツェンエガー氏は話す。「『You are what you eat(人は食によって決まる)』は決まり文句かもしれませんが、研究によるとそれは真実でもあり、親たちは注目しています」。

シリーズAの資金を獲得する前、Amaraはすでに注文で利益を上げていた。実際、口コミで前年比3倍のオーガニック成長を遂げていたが、2月にベビーフードに関するレポートが発表された後、親とベンチャーキャピタル企業の両方からますます注目を集めるようになった、とシュトゥルツェンエガー氏は語る。

Eat Well Groupの社長であるMarc Aneed(マーク・アニード)氏は声明文の中で「Amaraは、小売店での販売と卓越したeコマースを通じて事業拡大するすばらしい能力を証明してきました。Eat Well Groupが提供する資金と業界専門知識は、2022年に向けてAmaraの成長を加速させるでしょう」と述べた。

今回の資金調達によりAmaraは雇用、商品開発、ブランド認知度向上に資金を投じながら、需要に応えるために急成長することができる。同社は自社ウェブサイト、Amazon、主にカリフォルニア州の食料品店で販売しているが、全米のSproutsでも販売している。今後1年でAmaraの製品をより多くの食料品店に置くことをシュトゥルツェンエガー氏は計画している。

一方、栄養へのシフトは、多くのスタートアップにとってベビー・子ども用食品市場をディスラプトするチャンスにつながっている。そのため、2019年に673億ドル(約7兆6740億円)だった世界のベビーフード市場は、2027年には963億ドル(約10兆9800億円)に成長すると予想されていて、現在の米国市場での売上は63億ドル(約7180億円)だ。

これに目をつけたベンチャーキャピタルは、乳幼児や子どもに特化した食品企業に新たな資本を投入している。例えば、Little Spoonは7月にシリーズBで4400万ドル(約50億円)を調達し、低糖のベビーフードを提供するSerenity Kidsは6月にシリーズAで700万ドル(約8億円)を調達した。

シュトゥルツェンエガー氏は「さまざまな親や価格帯をターゲットにしている企業にとって、市場開拓余地があります」と語る。「我々が目指すのは、すべての人に良い食べ物を提供することです。将来の世代の食生活を変えようとするなら、アクセス可能でなければならないのです」。

画像クレジット:Amara

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

もっと地下へ、GreenForgesは地下農場システムで野菜を栽培

垂直型農場と聞けば、空に向かって伸びているさまを思い浮かべるのが一般的だろう。例えばAerofarms(エアロファームズ)、Plenty(プランティー)、Gotham Greens(ゴッサムグリーンズ)などの企業は、高層のプラントに栽培装置を満載して農業に革命を起こそうとしている。しかし、ある人物は地下に着目しているようだ。その人物とはPhilippe Labrie(フィリップ・ラブリー)氏。2019年に設立されたプレシード(シード以前のステージ)の地下農業スタートアップ、GreenForges(グリーンフォージズ)のCEOかつ創業者である同氏は、垂直型農場技術を地下に導入することを考えている。同氏もキャリアの初期には、屋上の温室で農業の可能性を求めて空を見ていたが、空には限界があることに気がついたという。

ラブリー氏は次のように話す。「都市部の屋上温室にはどのくらいの食料生産能力があるか、という分析を行っている論文を偶然見つけました」「2050年で2~5%、という低めの数字でした。誰も『地下で栽培できないか?』とは考えなかったようです」。

空間を利用した事業である農業には常に制約があった。農耕が始まったとされる1万2000年前、人々は森を切り開いて農地にしていた。この自然破壊的なプロセスは現在も続いている。農家がより多くの食物を育て、より多くの利益を得るためには、さらに多くの土地が必要である。従来の垂直型農場は、都市部にプラントを設置し、栽培装置を積み重ねることでこの農地転用という問題を解決しようとするものだ。しかし、それでもプラントの用地という問題が残る。そこでGreenForgesは、私たちの足元にある、使われていないスペース(地下)を利用しようとしている。

2年間の研究開発を経て、同社は農業技術のインキュベーター、Zone Agtech(ゾーンアグテック)と共同で、2022年春にモントリオール北部で最初の試験的な地下農場システムを稼働させることを計画している。GreenForgesの農業システムは、LED照明のコントロール、水耕栽培(土を使わない栽培)、湿度と温度の管理など、既存の屋内農業の管理技術の他にも、斬新なアプローチを採用している。

GreenForgesのシステムでは、大きなプラントを利用するのではなく、新たに建造される建物の下の地面に直径1メートルの穴を開け、そこに栽培装置を降ろす。メンテナンスや収穫の際は、それを機械で地表に引き上げ、人が修理や収穫を行う。今回の試験的なプログラムでは地下15メートルのシステムを利用するが、地下30メートルまでの農場システムを計画済みだ。

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    GreenForgesのシステムでは、地下の垂直型農場から栽培装置が機械で引き上げられ、利用者は地上で簡単に葉物野菜を収穫できる(画像クレジット:GreenForges)
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    画像クレジット:GreenForges
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    画像クレジット:GreenForges
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    画像クレジット:GreenForges
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    画像クレジット:GreenForges
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    画像クレジット:GreenForges

ラブリー氏によると、垂直型農場を地上から地下に移すことには多くの利点があるが、その中には、環境制御型農業が直面する最大の障害であるエネルギーコストを解決できるものもあるという。

「暑さ、寒さ、降雨、乾燥など、外の気候の変化に合わせて空調システムを常に稼働させなければならないことが、垂直型農場にとって最大のエネルギー負荷となっています。室内の環境を安定させるために、空調システムが必要なのです」とラブリー氏は話す。

このエネルギーコストという問題により、垂直型農場は従来の農法と比較して、二酸化炭素排出量と金額の両面で高くつく場合もあり、これが、多くの垂直型農場が葉物野菜のみを栽培している理由の1つだ。つまり、他の作物の栽培はエネルギーコストがかかり過ぎて割に合わないのである。しかし地下に潜ると「天気が変化しても室内で安定した環境を維持しなければならない」という課題が一気に解決される。

GreenForgesのエンジニアリングマネージャーであるJamil Madanat(ジャミル・マダナト)氏は次のように話す。「地下に潜った途端に季節に関係なく栽培できるようになります」「地下こそ が省エネの聖地です」。

マダナト氏によると、世界中どこでも、いつでもどんな環境でも、地下は温度が安定しているという。地上の温度変化に関係なく、マレーシアでは深度10メートルで温度は安定して20℃になり、カナダでは深度5メートルで温度は安定して10℃になる。

「電気やエネルギーの供給に関しては、条件が安定していれば経済的にもメリットがあります」とマダナト氏。「一度に大量のエネルギーを消費し、それをいきなり停止するのは電力網にとって良くありません。安定的な需要(供給)のほうが電力網にとっても好ましいのです」。

地下施設は外気温が安定していて、その結果エネルギーの需要も安定すれば、大規模な省エネと持続可能性につながるだろう。GreenForgesでは、植物の半分には昼間、残りの半分には夜間に照明を当てることで、照明にかかるエネルギーが常に同じになるようにして、さらなる安定化を実現している。

さらに、GreenForgesは、化石燃料の燃焼による環境への二酸化炭素排出を増やさないために、エネルギーのほとんどが太陽光や水力などの再生可能エネルギーで賄われている地域のみをターゲットにしている。

「単に、何かを燃やして屋内で食べ物を育てるのは理にかなっていないからです」とラブリー氏。

GreenForgesは、地下システムでは従来の垂直型農場に比べてエネルギー効率が30~40%向上する、と予測している。現在、同社は葉物野菜、ハーブ、ベリー類などの伝統的な屋内作物だけを扱っている。同社の計画では、地下30メートルの農場ではレタスを毎月約2400個、年間では約6400kg生産できる。しかしラブリー氏は、GreenForgesの効率が上がれば、将来的には他の野菜や作物、それも小麦のように代用肉になるような作物にも対応できるようになるだろうと期待している。

地下での栽培に障害がないわけではない。マダナト氏によると、トラックのタイヤ2本分しかないトンネルに収まる栽培装置の設計が課題だという。このような小さなスペースにシステムを収めるためには、独自のハードウェアソリューションを開発する必要がある。また、地下の湿気との戦いも残っている。

垂直型農場の先駆者であるPlentyやAerofarmsとは異なり、GreenForgesは食料品ブランドになることを望んでいない。その代わりに、高層ホテルやマンションの建設業者にアピールし、宿泊客や入居者に新鮮な野菜を提供することで、新たな収益源を生み出すことにフォーカスを当てている。

「建築物に組み込むことで、多くの可能性が見えてきました。ホテル会社や不動産開発会社にも関心を寄せてもらっています」とラブリー氏は話す。「建物の中に食料生産システムを組み込むことは、見た目ほど簡単ではありません。平米単価が非常に高い商業施設やマンションのスペースが犠牲になるからです。私たちのソリューションを利用すれば、地下の空間を収益化することが可能です」。

画像クレジット:GreenForges

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(文:Jesse Klein、翻訳:Dragonfly)

ヒトタンパク質を使い母乳に最も近い乳児用ミルクを開発するHelainaが約22億円を調達

世界初となる乳児用ミルクを製造しているHelaina(ヘライナ)は、最初の製品の製造と商業化プロセスを開始して次の成長段階へ進むため、シリーズAで2000万ドル(約22億円)を調達したと発表した。

ニューヨーク大学で食品科学を教えている食品科学者のLaura Katz(ローラ・カッツ)氏は2019年に同社を設立した。「機能性ヒトタンパク質を食品用に製造する初の企業」とうたっている。

これを実現すべくHelainaは、母乳に含まれるものとほぼ同じタンパク質を開発するために酵母細胞をプログラムして製造のハブとなるように教える精密な発酵プロセスを活用している。

「私たちがHelainaを始めたとき、多くの産業に多くのテクノロジーが導入されていましたが、赤ちゃんへの栄養補給はあまり進展していませんでした」とカッツ氏はTechCrunchに語った。「どの人々の栄養と健康を向上させるかを考えたとき、乳幼児と親が真っ先に思い浮かびました」。

2026年には1030億ドル(約11兆7300億円)の市場になると言われている乳児用粉ミルク市場が成長する一方で、幼少期の子どもたちにどのような食事を与えるべきかについては、恥ずべき部分や偏見が残っている。Helainaは、誰もが手に入れやすい価格の食品を親に提供するだけでなく、親が自分の選択を検討するのをサポートすることを目指している。

Helainaは、最初にタンパク質を作り、現在は母乳のすべての成分を1つずつ作りたいと考えている。Helainaの製品はカロリーを供給するだけでなく、真菌、細菌、ウイルスなどの病気に対する免疫力を高めるのにも役立つ。

今回の資金調達はSpark CapitalとSiam Capitalが共同でリードし、Plum Alleyと Primary Venture Partnersも参加した。今回のラウンドにより、Helainaの資金調達総額は2460万ドル(約28億円)となり、その中には2019年と2020年に行われたプレシードとシードの合計460万ドル(約5億円)が含まれているとカッツ氏は話した。

シリーズAは計画的なラウンドだったが、カッツ氏が予想外だったと指摘したのは、投資家からの同社に対する「圧倒的な関心」だった。

「資金調達をしてわかったことは、私たちがやっていることに個人的なつながりがあるということです」とカッツ氏は付け加えた。「フードテックの分野では多くのことが起こっていますが、この技術を人々の心に近い製品に使うことができるのを目にするのはすごいことです。多くの人が私たちの取り組みに興味を持ってくれています」。

今回のシリーズAでは、商品化に向けて製造パートナーとの連携を強化する。その目的は、製造能力を高め、経営陣を充実させ、市場投入計画を最終決定することにある。

同社は、米国食品医薬品局から製品の承認を得ることを目指している。その後、臨床的に証明された多数の消費者向け製品に同社のタンパク質を使用する計画で、 これは本質的に栄養の定義を免疫にまで広げ、消費者部門に新たなカテゴリーを創出するものだ。

より栄養価が高く、母乳に最も近いミルクを作ろうとしているのは、Helainaだけではない。2021年初めには、ヨーロッパのブランドをモデルにしたミルク開発のためにBobbieがシリーズAで1500万ドル(約17億円)を調達した。ByHeartもミルクを開発中で、Biomilqは「世界で初めて母乳以外の細胞培養された母乳」を製造したとしている。

カッツ氏は、自社が行っているタンパク質の製造方法や、健康面でより優れた製品を作ることに注力している点が、競合他社との違いだと話す。

「Helainaは、ヒトのタンパク質を食品に導入した最初の会社です 」とカッツ氏は付け加えた。「これまで誰もやったことがありません。育ち盛りの子どもに食べさせるための技術を親に展開することで、消費者向けの免疫学のようなこの新しいカテゴリーを創出しているのです」。

一方、同社はSita Chantramonklasri(シタ・チャントラモンクラスリ)氏が新たに設立したファンドSiam Capitalの最初の投資先の1つだ。チャントラモンクラスリ氏によると、同ファンドは持続可能性と消費者のニーズが交差するビジネスに投資しているという。

チャントラモンクラスリ氏はフードテック分野に多くの時間を費やしており、カッツ氏とつながるずいぶん前にSpark Capitalのシードラウンドを担当したKevin Thau(ケビン・タウ)氏からHelainaのことを聞いた。

当時、チャントラモンクラスリ氏は母乳の分野を深く掘り下げ、Helainaの競合他社の斬新な技術に注目していた。同氏はカッツ氏と多くの時間を過ごし、カッツ氏の背景やHelainaがこの分野で何をしているのかを理解した。実験室で過ごし、同社の酵母工学の取り組みを見て、Helainaは科学的に優れた製品を提供していると感じた、とチャントラモンクラスリ氏は話した。

「ローラはすばらしい創業者で、年齢以上に賢く(29歳!)、Helainaのミッションを見届けたいと思っています」と付け加えた。「市場の競争はますます激しくなり、顧客のロイヤリティと同様にタイミングが勝負です。Helainaは、母親や家族の擁護者となるべき立場にあります。技術的な観点からは、何が起こるかを判断するのは時期尚早です。Biomilqのような他の細胞培養技術にも革新が見られますが、Helainaは進歩の面でこの分野のリーダーとなるでしょう」と述べた。

画像クレジット:Helaina / Helaina founder Laura Katz

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

代替肉ミラクルミートのDAIZと物語コーポレーションが資本業務提携、代替肉メニューを焼肉きんぐなど国内外の店舗で展開

植物肉スタートアップのDAIZが18.5億円をシリーズB調達、国内生産体制強化と海外市場早期参入を目指す

発芽大豆由来の代替肉(植物肉)「ミラクルミート」を開発・生産するスタートアップ「DAIZ」は11月19日、物語コーポレーションとの資本業務提携を発表した。物語コーポレーションは、焼肉きんぐにおいて、ミラクルミートをベースにした新たな焼肉商材の共同開発とイノベーションを推進する。また、DAIZがミラクルミートを使用してレシピ開発した餃子・春巻きなどの商品を丸源ラーメンなど複数業態において展開を拡大させる。海外店舗においても、ミラクルミートを使用した商品の現地製造ならびに販路拡大を予定しているという。

物語コーポレーションは、国内において郊外ロードサイドを中心に「焼肉きんぐ」「丸源ラーメン」、中国・上海では「蟹の岡田屋総本店」「熟成焼肉 焼肉王」など国内外16ブランド595店舗を展開する外食企業。物語コーポレーションが掲げる中期経営計画「ビジョン2025」では、2025年期に「アジアにおける業態開発型カンパニー」として、グループ売上高1500億円(直近2021年期実績:959億円)を目標とし、既存事業の強化や新事業、新業態の開発を推進している。

DAIZは、独自技術「落合式ハイプレッシャー法」(特許第5722518号)をコア技術とするフードテック領域のスタートアップとして、環境負荷が小さなミラクルミートの研究開発・提供を通じて、タンパク質危機や地球温暖化の解決の一助となることを目指している。より多くの消費者へ、新たな肉として代替肉の認知向上を図り、サステナブルな食文化の啓蒙をするべく、今回の資本業務提携に至った。

SDGs(持続的開発目標)達成に対する取組みとして、地球環境に配慮した商品ニーズに対応するべく、環境負荷の小さミラクルミートを使用した新商品開発および販売を拡大させる。また「環境」「飢餓」などの課題解決に、より積極的に取り組みを推進するという。

DAIZによると、従来代替肉に使用されてきた主原料は大豆搾油後の残渣物(脱脂加工大豆)であったため、味と食感に残る違和感、大豆特有の青臭さ・油臭さ、肉に見劣りする機能性(栄養価)の点で課題が残っており、本格的な普及の妨げとなっていたという。

これに対してDAIZの代替肉ミラクルミートは、原料に丸大豆を採用。オレイン酸リッチ大豆を使用することで、大豆特有の臭みをなくし、異風味を低減した。また、味や機能性を自在にコントロールする落合式ハイプレッシャー法で大豆を発芽させ、旨味や栄養価を増大。この発芽大豆を、水を加えながら高温下でスクリューで圧力をかけ押し出すことにより混練・加工・成形・膨化・殺菌などを行うエクストルーダー(押出成形機)にかけ、膨化成形技術により肉のような弾力・食感を再現している。これらの独自技術により、異風味を低減したミラクルミートを製造しているという。

代替肉ミラクルミートのDAIZと物語コーポレーションが資本業務提携、代替肉メニューを焼肉きんぐなど国内外の店舗で展開へ

国内産直通販サイトの食べチョクが「お歳暮・冬のギフト2021」特集コーナーを新設

産直食材をマンション敷地などで販売する移動型八百屋「食べチョクカー」が始動、同じ生産者の商品をオンラインでリピート可

ビビッドーガーデンは11月18日、国内産直通販サイト「食べチョク」(Android版iOS版)において「お歳暮・冬のギフト2021」特集を新設した。クーポンを入手できる「お歳暮キャンペーン」も同時に実施されている。

お歳暮・冬のギフト2021特集では、海老やフグなどこの時期の贈り物にぴったりの商品を集めている。生産者自身が1箱ずつ梱包しているほか、直接購入のため既存流通より高い金額で生産者に還元ができたり、直送ならではの市場に出回らない希少な商品が購入できたりといった特徴がある。

食べチョクは、こだわりの生産者から直接食材や花きを購入できる産直通販サイト。取り扱っているのは、野菜・果物から米・肉・魚・飲料といった食材全般と花き類。

ユーザーの好みに合う生産者を選んでくれる野菜定期便「食べチョクコンシェルジュ」や旬の果物が届く定期便「食べチョクフルーツセレクト」により、定期的なお取り寄せにも対応している。友人と分け合える「共同購入」機能、販売前に商品を取り置きする予約機能などライフスタイルに合わせた買い方ができるようになっている。

Gooder Foodsが約7.3億円を調達、大人のマカロニ&チーズ「Goodles」を発売開始

親会社であるGooder Foods(グッダー・フーズ)が44億ドル(約5000億円)規模の乾麺カテゴリーでニッチを開拓するために640万ドル(約7億3400万円)を調達した後の米国時間11月16日、マカロニ&チーズの新ブランド「Goodles(グードルズ)」が発売を開始した。

Gooder Foodsの共同創業者兼CEOであるJennifer Zeszut(ジェニファー・ゼスツット)氏は、TechCrunchの取材に対し、この食品はコンフォートフードの上位に位置しているが、大人の59%が毎週少なくとも1品の麺料理を食べているにもかかわらず、何十年もの間、子ども向けに特化した広告が出されてきたと語っている。

「ここには製品とブランドの革新もあります。重要なのは、既存の競合他社がマカロニ&チーズを子ども向けと考えているのに対し、我々の経験とデータでは誰もがマカロニ&チーズを好きだと示しているということです。製品の差別化や、大人をターゲットにした他のフレーバーも考えています。すべてを壊していく楽しい機会となっています」と彼女は付け加えた。

Annie’s(アニーズ)の共同創業者で元社長のDeb Churchill Luster(デブ・チャーチル・ラスター)氏、元Kraft(クラフト)ブランドの幹部でEarle & Co(アール・アンド・カンパニー)の創業者であり、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院の教授でもあるPaul Earle(ポール・アール)氏、そして女優のGal Gadot(ガル・ガドット)など、豪華な創業チームを集め、ゼスツット氏が4度目の指揮を執ることとなった。ゼスツット氏とガドット氏は3年前に出会い、ガドット氏のマカロニ&チーズ好きを通して意気投合した。ゼスツット氏が会社を設立する際に、彼女が参加したいと連絡してきたという。

Goodlesは、KraftとAnnie’sというこの分野の2大老舗企業の後を受けて、味と栄養の両方に優れた健康的な代替品を提供する。Goodlesは高タンパク、高繊維で、21種類の有機野菜の栄養素を含んでいる。

「1つは83年前、もう1つは30年以上前のものです」とゼスツット氏。「あれから食品は飛躍的に良くなっています。マカロニ&チーズはとても普遍的なものですが、食べ物をパフォーマンスとして考え、体に入れるものを気にする人が増えました。これまでイノベーションがなかったので、私たちはこのカテゴリーを見直すことにしたのです」。

通常であれば、企業は何度も味見テストをするところだが、パンデミックの影響で、Gooder Foodsはオンラインコミュニティを作り、何千もの小袋の麺を発送して、人々に試してもらう方法をとった。実際、同社は最良のものに決めるのに1000種類以上もの麺を開発した。全員が1000種類すべてを試したわけではないが、マスブランドを構築するためには味が重要だったと、彼女は付け加えている。

画像クレジット:Gooder Foods

92%の人がGoodlesに乗り換えるという調査結果もあり、ゼスツット氏は「私たちは何か大きなものを手に入れたと考えており、このことを箱の裏に印刷しています」と語り、これはこれまでの食品の中では最高数値だと考えている。

同ブランドは、カチョエペペにインスパイアされたマカロニ「Mover & Shaker」、ゼスツット氏がマカロニ&チーズのオリジナルフレーバーに近いと考える「Cheddy Mac」、Annie’sに真っ向勝負を挑む「Shella Good」、そしてアシアゴとクリーミーなパルメザンをブレンドした「Twist My Parm」の4つの品目で本日発売される。

今回の640万ドル(約7億3400万円)の投資は、シードラウンドとコンバーチブルノートを組み合わせたもので、消費者への直接販売の開始、在庫、ブランディング、マーケティングに充てられる。DTC(D2C)モデルに重点を置いているが、ゼスツット氏は他の販路での全米販売も計画している。

今回の投資にはSpringdale Ventures(スプリングデール・ベンチャーズ)、Willow Growth Partners(ウィロー・グロース・パートナーズ)、Third Craft(サード・クラフト)、Gingerbread Capital(ジンジャーブレッド・キャピタル)、Purple Arch Ventures(パープル・アーチ・ベンチャーズ)、First Course Capital(ファースト・コース・キャピタル)などの投資家や、個人投資家のグループが参加している。

アーリーステージの消費者向け投資会社であるSpringdale Venturesの共同設立者兼ジェネラルパートナーのGenevieve Gilbreath(ジュヌビエーブ・ギルブレス)氏は、同社は通常、Gooder Foodsのような収益化前の企業には投資しないが、この会社は製品市場に適合しているという点で珍しいと感じ、パンデミックの際に同社が行った、何千人もの味覚テスト参加者を生んだコミュニティの構築に好感を持ったという。

フードテックの動向について、セルラーミートのような技術的な分野も興味深いが、ギルブレス氏がより大きなインパクトを与えると見ているのは、栄養価と味が向上した本物の食品を使ったブランドだと述べている。まさにそれが、Goodlesが今行っていることだと彼女はいう。

「リーダーとして、ジェンの粘り強さ、情熱、経験、そしてチームを率いる能力は、非常によく伝わってきました。本当に感銘を受けたのは、彼女が市場や消費者のニーズを調査し、データを追跡していることでした」とギルブレス氏は付け加えている。

画像クレジット:Gooder Foods

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)