Pelotonがコネクテッド筋力トレーニングシステム「Peloton Guide」を発表、約5万6000円

ほとんどの企業は、Peloton(ペロトン)のようなユーザーからの支持をのどから手が出るほど欲しがるだろう。Pelotonのサイクリングマシンやトレッドミルは、コネクテッドフィットネスのプラットフォームとして、カルト的な人気を博している。出荷の遅れや2度のリコールなどの問題があったにもかかわらず、パンデミックの間にもその熱狂的なファンは増すばかりだった。

しかし、ジムの崩壊をめぐる数々の主張にもかかわらず、再開されたジムは同社の収益に影響を与え始めている。Pelotonのような企業は、どうすればこのような状況を打開できるのだろうか?迅速かつ簡単な解決策は、ホームフィットネスの他のカテゴリーにも拡大していくことだ。タイミング的には、このPeloton Guide(ペロトン・ガイド)が2020年3月頃に登場していたらベストだったかもしれない。しかしこの新しいハードウェアが、ホームフィットネス分野での同社の地位を維持するために役立つ可能性は十分にある。

最近の噂では、PelotonはHydroのようなブランドと並んで、活況を呈する家庭用ローイングマシン分野に飛び込むと言われており、そのような動きは今でも十分に考えられるが、米国時間11月9日の発表は、TempoやTonalのようなブランドをより強く意識したものだ。そしておそらく最も重要なのは、Pelotonがこれまでで最も安価なハードウェアを発表したということだ。

Peloton Guideの495ドル(約5万5900円)という価格は、同社の最も安い製品であったBikeよりもさらに1000ドル(約11万3000円)安い。その理由の1つには、この製品が最も包括的でないということが少なからず貢献している。この価格で手に入るのは、Guide本体(テレビに接続するカメラシステム)、心拍数バンド、そしてリモコンだ。その他の筋力トレーニングに必要な器具は、ユーザーが用意することになっている。これは同社が資料の中でプラスとして説明していることで「メンバーは自分の器具やウェイト、アクセサリーを使うことができ、筋トレ体験を始めるのにかさばる装置は必要ありません」と記している。つまり、BYOW(Bring Your Own Weight=マイダンベル持参されたし)。

Peloton Guideは、先日発表された競合の「Tempo Move」(395ドル、約4万4600円のミニ冷蔵庫サイズで、独自のウェイトがあらかじめ搭載されている製品)よりも高価だ。しかし、ハードウェア面でのもう1つの大きな違いは、Tempoの製品はユーザーのスマートフォンに依存しているため、潜在的なユーザーは比較的新しいモデルのiPhoneを持っている人に限られてしまう点だ。

画像クレジット:Peloton

その代わりに、Peloton Guideは、同社独自のカメラシステムを中心に構築されている。その機能について、同社は次のように述べている。

Peloton Guideは、定評のあるPelotonのストレングス(筋トレ)クラスの体験を向上させるために、データを使ってパターンを特定し、エンジニアの最小限のインプットで判断するAIの一種である機械学習(ML)を使用することで、初心者から上級者まで、ストレングストレーニングを魅力的でモチベーションを引き出すものにしています。Peloton Guideは、メンバーが自分の動きや進捗状況を把握できるよう、MLを利用しています。

このシステムは、同社の既存のストレングスコースのラインナップと連動しており、同社はそれが「Pelotonにとって最も急速に成長している分野です」とも述べている。Guideの発売はホリデーシーズンには間に合わないが、2022年初頭に米国とカナダで発売される予定で、新年の抱負を立てる頃には間に合うはずだ。英国、オーストラリア、ドイツのユーザーは同年の後半まで待たなければならない。

画像クレジット:Peloton

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

高齢者転倒時の骨折リスクを軽減する床・マット「ころやわ」のMagic Shieldsが1.4億円調達、量産体制を拡大

⾻折予防床材「ころやわ」開発・販売のMagic Shieldsが約4000万円を調達、量産性向上と事業拡⼤を目指す

高齢者転倒時の骨折リスクを軽減する床・マット「ころやわ」のMagic Shieldsが1.4億円調達、量産体制を拡大


医療機関や介護施設において、高齢者の転倒による大腿骨の骨折リスクを軽減させる「転んだ時だけ柔らかい床『ころやわ』」を製造するMagic Shieldsは、第三者割当増資による1億4000万円の調達を発表した。引受先は、リード投資家のインクルージョン・ジャパン、またMonozukuri Ventures、信金キャピタル、グロービス。累計調達額は約1億8000万円となった。調達した資金により「ころやわ」の量産体制を拡大し、全国の病院・高齢者施設での普及と、転倒骨折ゼロを目指す。

2019年設立のMagic Shieldsは、自動車工学と医学をベースに新素材と構造「メカニカル・メタマテリアル」の研究開発、および製造・販売を行うスタートアップ。高齢者の転倒による骨折を減らすため、転んだときだけ柔らかい「可変剛性構造体」を使った「ころやわ」を開発。床やマットとして病院や高齢者向け施設へ提供している。高齢者転倒時の骨折リスクを軽減する床・マット「ころやわ」のMagic Shieldsが1.4億円調達、量産体制を拡大

同社の「ころやわ」は、従来両立が困難とされていた「歩行安定性」と「衝撃吸収性」という2つの性質をあわせ持つ新素材・構造を採用。120施設を超える医療機関・介護施設で導入されており、「ころやわ」上での骨折は確認されていないという(2021年11月1日時点)。

また「ころやわ」は、歩行時の踵やつま先、杖・車いす使用時の沈み込みが少なく、へこまない硬さであり、「歩行時/車いす移動時の安定性」を実現しているとした。

椅子やベッドからの転落、車いすへの移乗や歩行からの転倒時には、大きく沈み込み、大腿骨の骨折リスクを軽減する「衝撃吸収性」を実現。転倒時には、フローリングに対して約半分に衝撃を抑え、骨粗鬆症の大腿骨骨折の目安荷重(221kgf)を下回るという。

内閣府「ワクチン・検査パッケージ」対応、playgroundが有観客イベントの感染対策をワンストップで支援するサービス提供

総合エンターテック企業のplaygroundは11月4日、有観客イベント運営における感染対策を支援する「イベント入場業務の感染拡大対策、ワンストップアウトソーシングサービス」の提供開始を発表した。

内閣府の「ワクチン・検査パッケージ」に関する技術実証事業および経済産業省のコロナ禍のイベント開催様式の実証事業で採択された、プロバレーボールチーム「ヴォレアス北海道」との実証実験では、全来場者にワクチン・検査履歴の登録を義務付け、「ワクチン・検査パッケージ」を基に合計1000名が入場したという。

なおこの「ワクチン・検査パッケージ」とは、「ワクチン接種歴およびPCRなどの検査結果を基に、個⼈が他者に⼆次感染させるリスクが低いことを⽰す仕組み」を指す(内閣官房「ワクチン接種が進む中における日常生活の回復に向けた特設サイト」)。

playgroundの支援サービスは、「入場管理面」「イベント運営面」の双方から、新型コロナウイルスの感染対策を一気通貫でサポートするというもの。興行主側の専門知識やノウハウの不足、運営リソースの不足などの課題をクリアでき、様々なイベントの実施ハードルを下げてWith/Afterコロナ時代における有観客イベントの実現が可能になるという。

入場管理においては、playground独自の入場認証機能「MOALA QR」を搭載した電子チケット発券サービス「MOALA Ticket」を利用。今回コロナ対策として、同伴者を含めた全来場者に対する来場者情報と「ワクチン・検査パッケージ」の登録を事前に行える機能を搭載したという。

まずイベント来場者は、playground提携のチケット販売各社でチケットを購入後、ウェブブラウザーで表示された電子チケット券面上において、本人確認用の顔写真・来場者情報・ワクチン接種履歴(または検査履歴)の3点を登録する。来場者は、この際発行された入場用QRコードを、スマートフォン(または紙印刷)でイベント会場に持参することになる。

イベント当日は、入場認証端末に顔とQRコードをかざす動作だけで、チケット確認・本人認証・発熱検知および「ワクチン・検査パッケージ」確認を1.5秒以内に終えられる。

興行主は全入場管理を1つの管理画面上で確認できるため、コロナ対策に向けた新たな人員拡充や設備追加、管理業務が不要となることに加え、蓄積した来場者データに基づくイベント後のアフターフォローやマーケティング活動に活かせるという。

またplaygroundによると、イベント運営支援の面において、感染対策における運営設計から、官公庁・医療機関などの関係各所とのコミュニケーション代行、抗原検査キットといった各種物品の仕入れ支援までワンストップでサポートする。playgroundは、専門業者として情報収集と対策を実施しており、日々変化する感染情報や政府方針、世論に対してタイムリーで最適な対応が可能であるとのこと。こうした部分をアウトソーシングすることで、イベント運営者はイベント本来の価値向上に集中できる環境を構築できるとしている。

2017年設立のplaygroundは、スポーツ・エンターテインメント業界に特化した技術開発、コンサルティング、SI事業を行なう総合エンターテック企業。エンタメのデジタル化支援プラットフォーム「MOALA」の提供、コンサルティング・SIサービスの提供などを事業としている。

治験・臨床研究文書の共有・管理クラウドを手がけるアガサが総額3.6億円調達、組織力とプロダクト強化

国立がん研究センターが8K腹腔鏡手術システムによる遠隔手術支援の有用性を確認

治験・臨床研究の文書をクラウド上で共有・管理するサービス「Agatha」(アガサ)を提供するアガサは11月4日、総額3億6000万円の資金調達を発表した。引受先は、リードインベスターのOne Capital、ダブルシャープ・パートナーズ、既存株主のモバイル・インターネットキャピタル、GMO VenturePartners。累計調達額は8億8000万円となった。今回調達した資金は、Agathaを一層強化するためのプロダクト開発・アガサの組織力強化に充当される予定。

Agathaは、医療機関と製薬企業の利用者が、治験・臨床研究の文書をプロジェクト単位で共有・保存・管理できるクラウドサービス。日本並びにグローバルで提供されており、日本国内では臨床研究中核病院の8割で利用実績がある。コロナ禍の影響で、治験・臨床研究の現場でも医療機関への訪問制限やリモートワークの実施が進んだことを背景に、従来の紙ベースでの業務を電子化して管理するシステムへのニーズが加速。国内利用者数は1万名以上増加している。

2015年10月設立のアガサは、医療機関、製薬企業、医療機器企業、CRO(医薬品開発受託機関)、SMO(治験施設支援機関)、臨床検査会社などにAgathaを提供することで、治験・臨床研究の効率化・省力化に貢献することをミッションに掲げるスタートアップ。

将来の日本の子どもが、日本の生活、文化、技術、医療が世界一と信じられる、誇りと感じられる世の中を作ること、そして日本中の研究機関から、新しい治療法や薬が創出される仕組み・基盤を作り、日本の技術や産業によって、世界中の人々の健やかな人生に貢献することをビジョンとしている。

認知機能障害検出のソフトウェアを開発するBrainCheckが約11億円調達

世界的に高齢化が進むのにともない、脳の健康に関する研究が進んでいて、スタートアップがテクノロジーを活用して認知障害を軽減する方法を模索している。

ヒューストンとオースティンを拠点とするBrainCheck(ブレインチェック)は、認知障害の検知とケアを専門とする医師をサポートする認知ヘルスケアソフトウェアの開発を手がけている。同社はアルツハイマー病や関連する認知症に対する新しいデジタル治療法の研究開発と市場開拓のために、シリーズBで1000万ドル(約11億円)を調達した。

このラウンドは、Next Coast VenturesとS3 Venturesがリードし、Nueterra Capital、Tensility Ventures、True Wealth Venturesが参加した。さらに、UPMC EnterprisesとSelectQuoteが戦略的投資家として加わった。今回の資金調達により、2016年の300万ドル(約3億4000万円)のシードラウンド、2019年の800万ドル(約9億1000万円)のシリーズAを含め、BrainCheckがこれまでに調達した資金総額はおよそ2100万ドル(約23億9000万円)となる。

BrainCheckの技術は、患者と米国内の約1万2000人という限られた数の神経内科医との橋渡しをする。対面または遠隔(スマートフォン、タブレット、コンピューターを介して)で行う10〜15分のテストを通じて、認知機能障害を早期かつ正確に検出することができる。

検査結果に基づき、患者にはCognitive Quotient(CQ)スコアが割り当てられ、これをもとに数分以内にパーソナライズされた認知機能ケアプランが作成される。現在、400以上の神経科、プライマリーケア、老年医学の診療所がこの技術を使用していて、マウントサイナイの臨床医も新型コロナウイルス感染症による認知障害の追跡と管理に活用している。

BrainCheckの共同創業者でCEOのYael Katz(ヤエル・カッツ)博士は、パンデミックがヘルスケアのエコシステム全体のすべてを変えた、とTechCrunchに電子メールで語った。

同社は、シリーズAの2年後に新たな資金調達を行うことを常に考えていたが、世界的な大流行がその方針にどのような影響を与えるかを見極めるために一旦停止したとカッツ氏は話した。しかし、新型コロナが人々の医療に対する認識に光を当て、リモートケアに慣れてきたことで、継続する機会を見出した。

今回の資金調達により、同社はチームの拡大と研究開発への投資を継続することができる。同社はすでに、患者との関係を深めるためのいくつかの新しい取り組みを行っており、これらは間もなく市場に投入される予定だと同氏は付け加えた。

BrainCheckは2020年、前年比で3倍という収益増を達成したが、カッツ氏は2022年も同様の成長を見込んでいる。今回のシリーズBでは、2年前と同じように成長させることを目標としている。

「リモートワークへの移行やメンタルヘルスの重要性の高まり、予防医学への投資、高齢化社会への対応など、これらすべての要因が重なって、私たちが行っていることが重要であり、今後も重要であり続けることが証明されました。医師がBrainCheckのようなツールに投資して患者の治療の質を向上させることが、かつてなく重要になっています」と述べた。

画像クレジット:Jorg Greuel / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

国立がん研究センターが8K腹腔鏡手術システムによる遠隔手術支援の有用性を確認

高度医療ロボのリバーフィールドが約30億円調達、執刀医にリアルタイムで力覚を伝える空気圧精密駆動手術支援ロボの上市加速

国立がん研究センターは11月2日、8K映像システムを使った腹腔鏡手術のリアルタイム映像を送受信して手術指導を行う世界初の実証事件により、その医学的有用性が確認されたことを発表した。また、遠隔支援(指導)により外科医の内視鏡技術が向上し、手術時間が短縮されることも確認できた。

これは、日本医療研究開発機構(AMED)「8K等高精細映像データ利活用研究事業」の支援による、国立がん研究センターとNHKエンジニアリングシステムなどによる共同研究。実験では、NHKエンジニアリングシステムと池上通信機が共同開発した小型の8K内視鏡カメラと、オリンパスが開発した8K腹腔鏡手術システムが使われた。手術室を想定した千葉県の実験サイトで、動物の直腸切除手術を行い、その様子を光ファイバーや5Gなどによるブロードバンドで京都府の京阪奈オープンイノベーションセンターに送信。外科医3名で手術を行ったが、遠隔支援がある場合とない場合との手術技術の改善度を評価した。

超高精細映像の「本物に迫る立体感」で、遠隔地でも手術状況を詳細に把握でき、質の高い手術支援が提供できたことで、外科医の内視鏡技術が向上し、手術時間が短縮された。また、映像伝送においては、転送レート80Mbps、遅延時間約600ミリ秒を達成し、十分な性能を確認できた。

これにより、少数の医師での治療が可能になり、若手育成、外科医の偏在の解消などが期待される。今後は、外科医を1名減らした場合の評価、「4K8K高度映像配信システム」への手術映像のアーカイブの開発などを進め、近い将来の社会実装に向けた具体的な計画を策定するとのことだ。

睡眠中の脳卒中を早期に警告するZeitのウェアラブル、実用化に向けシード約2.3億円調達

睡眠中の脳卒中を早期に警告するシステムを開発しているZeit Medicalは、Y Combinator(Yコンビネータ )のSummer 2021コホートを卒業した直後に、シードラウンドで200万ドル(約2億2800万円)を調達した。同社の研究によると、脳モニタリング用ヘッドバンドは、脳卒中の可能性を数時間前に警告することで命を救うことができると考えられており、今回の資金調達は、実用化に向けた推進力となる。

同社のデバイスは、軽量の脳波計(EEG)が内蔵されたソフトなヘッドバンドだ。スマートフォンのアプリと連動して、脳の活動を分析し、人間の専門家によって訓練された機械学習モデルを使って、差し迫った脳卒中の兆候を監視することができる。

共同創業者でCEO(そして現在はFerolynフェロー)のOrestis Vardoulis(オレスティス・バルドゥリス)氏は、使用状況の調査で、CPAPマシンを使用している人も含め、90%の夜にヘッドバンドを装着して、装着感や快適性に関する不満はほとんどなかったと述べている。脳卒中の影響を軽減するという目標を達成するためには、継続して使用することが重要であり、不快なヘッドバンドやかさばるヘッドバンドは確実に悪影響を及ぼす。

「当社は、製品を最終的に完成させ、今後の研究でテストできるようにすることに加えて、入院患者へのAIのさまざまな応用を試してきました。集中治療室の患者の多くは、綿密な虚血モニタリングを必要とします」とバルドゥリス氏は語る。本来であれば専門家や専用のシステムでなければ診断できないような様々な状態を、Zeitが作成したモデルで警告できる可能性がある。「くも膜下出血の患者を脳波でモニターしているいくつかの大規模な国立学術センターに、当社の技術が許容可能なアプリケーションであるかどうかを確認するためにアプローチしました」とも。

バルドゥリス氏によると、脳卒中患者のコミュニティはこの装置に非常に興味を持っており、我々の以前の記事でも、コメント欄にこの装置が自分にどれほど役に立つかを指摘する人がいたという。ZeitはFDA(米国食品医薬品局)の認可に向けて進んでおり、「Breakthrough designation(ブレイクスルー指定)」という一種のファストトラックを取得しているが、広く普及するまでにはまだ1〜2年かかるかもしれない。

これは、医療機器としては非常に短いリードタイムであり、投資家たちは明らかにこの製品がインパクトとROIの両方をもたらす機会であると考えた。

200万ドル(約2億2800万円)のラウンドは、SeedtoBとDigilifeが共同で主導し、Y Combinator、Gaingels、Northsouth Ventures、Tamar Capital、Axial、Citta Capital、そしてエンジェルのGreg Badros(グレッグ・バドロス)氏、Theodore Rekatsinas(テオドール・レカツィナス)氏をはじめとする医療関係者数名が参加した。

この資金はご想像のとおり、事業の継続と拡大、チームの構築、FDAの検討と承認に必要な研究のために使用される予定だ。運がよければZeitのデバイスは、早ければ2023年には、脳卒中のリスクを抱える人々に標準的に使われることになるだろう。

画像クレジット:Zeit

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Aya Nakazato)

東大COI開発の行動変容促進システム活用、日立システムズが特定健康保健指導を支援する「健康支援サービス(MIRAMED)」

東大COI開発の行動変容促進システム活用、日立システムズが特定健康保健指導を支援する「健康支援サービス(MIRAMED)」提供

日立システムズは11月1日、特定保健指導を受ける人たちに向けた業務支援サービス「健康支援サービス(MIRAMED)」(ミラメド)の提供開始を発表した。メタボリックシンドロームのリスクを図式化したり、日々の目標を示したり、専門家によるアドバイスや遠隔面談、チャットなどを提供することで、特定保健指導対象者の健康をサポートするサービスだ。

このサービスは、東京大学センター・オブ・イノベーション(COI)が開発した、AIを活用しメタボリックシンドロームのリスクや関連疾患のリスクを減らすための行動変容アプリ「MIRAMED」を通じて提供される。特徴としては、健康診断やアンケートの結果などから、生活習慣関連疾患のリスクを抱える人に、自分の体の状況を図式化などでわかりやすく伝えること、遠隔面談、チャット、ウェアラブルデバイスとの連携などで、指導担当者との情報共有ができること、簡便に濃厚な指導が受けられること、長期目標だけでなく日々のチャレンジも取り込めること、食事や運動に加え、飲酒、喫煙、睡眠、ストレスを毎日記録して1週間ごとの評価を受けられること、東京大学の専門家が科学的根拠のある内容を基に作成したアドバイスが受けられることなどがある。

自治体や健康保健組合など、健康指導を行う側にも、ユーザーの情報が把握しやすく円滑な指導が可能となり、遠隔面談やチャットなどで場所や時間を選ばず指導できることや、指導ポイントの自動集計などで、労力が削減できるといったメリットがある。

日立システムズでは、「医薬・ヘルスケア領域において、健診から治療支援、介護までのサイクルを包括した切れ目のないサービスの提供」を目指しており、これはその中の「未病分野」の取り組みにあたる。自治体、企業、健康保健組合が行う特定保健指導に着目した同社は、 Amazon Web Services(AWS)を利用し、クラウド基盤上で特定保健指導を支援するこのサービスの提供に至った。今後は、日本遠隔保健指導センターを運営し、機械学習による医療系データ解析などを行うLiDAT(ライダット)と連携し、「より先進的で高品質・高効率な特定保健指導の確立にも挑んでまいります」と話している。

AIを使った超音波分析の拡大を目指すイスラエルのヘルステックDiAが約15億円調達

独自の光超音波3Dイメージング技術を手がけるLuxonusが約4.3億円調達、2022年に医療機器の開発・生産および薬事申請準備

イスラエルに拠点を置くAIヘルステック企業DiA Imaging Analysisは、深層学習と機械学習を利用して超音波スキャンの分析を自動化している。同社はこのほど、シリーズBのラウンドで1400万ドル(約15億3700万円)を調達した。

DiAの前回の資金調達から3年後に行われた今回の投資ラウンドには、新たにAlchimia Ventures、Downing Ventures、ICON Fund、Philips、XTX Venturesが参加し、既存投資家としてCE Ventures、Connecticut Innovations、Defta Partners、Mindset Ventures、Shmuel Cabilly(シュムール・カビリー)博士らが名を連ねている。同社のこれまでの総調達額は2500万ドル(約27億4500万円)に達している。

今回の資金調達により、DiAはプロダクト範囲の拡大を継続し、超音波ベンダー、PACS / ヘルスケアIT企業、リセラー、ディストリビューターとのパートナーシップの新規構築や拡充を進めるとともに、3つの地域市場でのプレゼンスを強化していく。

このヘルステック企業は、AIを利用したサポートソフトウェアを臨床医や医療従事者に販売し、超音波画像のキャプチャと分析を支援している。このプロセスを手動で行うには、人間の専門家がスキャンデータを視覚的に解釈する必要がある。DiAは、同社のAI技術を「今日行われている手動および視覚による推定プロセスから主観性を取り除く」ものだと強調している。

同社は、超音波画像を評価するAIを訓練して、重要な細部の特定や異常の検出を自動的に行えるようにしており、心臓にフォーカスしたものを含む、超音波分析に関連する各種の臨床要件を対象とした広範なプロダクトを提供している。心臓関連のプロダクトには、駆出率、右心室のサイズと機能などのアスペクトの測定と分析の他、冠動脈疾患の検出支援などを行うソフトウェアがある。

また、超音波データを利用して膀胱容積の測定を自動化するプロダクトもある。

DiAによると、同社のAIソフトウェアは、人間の目が境界を検出して動きを認識する方法を模倣しており「主観的」な人間の分析を超える進歩につながるもので、スピードと効率の向上も実現するという。

「当社のソフトウェアツールは、正しい画像の取得と超音波データの解釈の両方を必要とする臨床医を支援するツールです」とCEOで共同創業者のHila Goldman-Aslan(ハイラ・ゴールドマンアスラン)氏は語る。

DiAのAIベースの分析は、現在北米や欧州を含む約20の市場で利用されている(中国ではパートナーが自社のデバイスの一部として同社のソフトウェアの使用の承認を取得したと同社は述べている)。DiAは、チャネルパートナー(GE、Philips、コニカミノルタなど)と協力して市場開拓戦略を展開しており、チャネルパートナーは自社の超音波システムやPACSシステムに追加する形で同社のソフトウェアを提供している。

ゴールドマンアスラン氏によると、現段階で3000を超えるエンドユーザーが同社のソフトウェアへのアクセスを有している。

「当社の技術はベンダーニュートラルであり、クロスプラットフォームであることから、あらゆる超音波デバイスやヘルスケアITシステム上で動作します。そのため、デバイス企業およびヘルスケアIT / PACS企業の両方と10社以上のパートナーシップを結んでいます。当該分野には、このような機能、商業的牽引力、これほど多くのFDA・CE対応のAIベースソリューションを持つスタートアップは他にありません」と同氏は述べ、さらに次のように続けた。「現在までに、心臓や腹部領域のための7つのFDA・CE承認ソリューションがあり、さらに多くのソリューションが準備されています」。

AIのパフォーマンスは、当然ながら訓練されたデータセットと同等である。そして、ヘルスケア分野での有効性は特に重大な要素である。トレーニングデータに偏りがあると、トレーニングデータにあまり反映されていない患者群で疾患リスクを誤診したり過大評価したりする、欠陥のあるモデルにつながる可能性がある。

AIが超音波画像の重要な細部を突き止めるためにどのような訓練を受けているのかと聞かれて、ゴールドマンアスラン氏はTechCrunchに次のように答えている。「私たちは多くの医療施設を通じて何十万もの超音波画像にアクセスできますので、自動化された領域から別の領域にすばやく移動する能力があります」。

「各種のデバイスからのデータに加えて、異なる病理を持つ多様な集団データも収集しています」と同氏は付け加えた。

「『Garbage in Garbage out(ゴミからはゴミしか生まれない)』という言葉があります。重要なのは、ゴミを持ち込まないことです」と同氏はいう。「当社のデータセットは、数人の医師と技術者によってタグ付けされ、分類されています。それぞれが長年の経験を持つ専門家です」。

「また、誤って取り込まれた画像を拒否する強力な拒否システムもあります。このようにして、データがどのように取得されたかに関する主観的な問題を克服しています」。

注目すべき点は、DiAが取得したFDAの認可が市販前通知(510(k))のクラスII承認であることだ。ゴールドマンアスラン氏は、自社プロダクトの市販前承認(PMA)をFDAに申請していない(また申請する意思もない)ことを認めている。

510(k)ルートは、多様な種類の医療機器を米国市場に投入する承認を得るための手段として広く利用されている。しかし、それは軽薄な体制として批判されており、より厳格なPMAプロセスと同じレベルの精査を必要としないことは確かである。

より大きなポイントは、急速に発展しているAI技術の規制は、それらがどのように適用されているかという点で遅れをとっている傾向があるということだ。巨大な展望が確実に開かれているヘルスケア分野への進出が増えている一方、まことしやかなマーケティングの基準を満たすことに失敗した場合の深刻なリスクもある。つまり、デバイスメーカーが見込んだ展望と、そのツールが実際にどれだけの規制監督下に置かれているかということの間には、依然としてギャップのようなものが存在している。

例えば、欧州連合(EU)では、デバイスの健康、安全性、環境に関するいくつかの基準を定めているCE制度において、一部の医療デバイスはCE制度の下での適合性についての独立した評価が必要になるが、実際にはそれらが主張する基準を満たしているという独立した検証が行われることなく、単にメーカーが適合性の宣言を求められるだけの場合もある。しかし、AIのような新しい技術の安全性を規制する厳格な制度とは考えられていない。

そこでEUは、来るべきAI規制法案(Artificial Intelligence Act:AIA)の下で「高リスク」と見なされたAIのアプリケーションに特化して、適合性評価の層を追加することに取り組んでいる。

DiAのAIベースの超音波解析のようなヘルスケアのユースケースは、ほぼ確実にその分類に該当するため、AIAの下でいくつかの追加的な規制要件に直面することになる。しかし現時点では、この提案はEUの共同立法者によって議論されているところであり、AIのリスクの高いアプリケーションのための専用の規制制度は、この地域では何年も効力を発揮していない状態にある。

画像クレジット:DiA Imaging Analysis

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

アップルがSharePlayを利用したFitness+グループワークアウトを開始

Apple(アップル)は、SharePlay(シェアプレイ)を利用したグループワークアウトにより、Fitness+(フィットネスプラス)ユーザーが他の場所にいる人々と一緒にワークアウトや瞑想を行うことができる機能を開始した。この機能は、9月14日に開催されたバーチャルイベントで発表されたものだ。


Fitness+の加入者は、SharePlayを利用し、iPhoneやiPadでFaceTime(フェイスタイム)を使いながら、最大32人の相手とグループワークアウトや瞑想のセッションをすることができる。Fitness+のセッションは、通話中の全員が完全に同期してストリーミングされる。

グループセッションを開始するには、ユーザーはFaceTime通話を開始し、Fitness+アプリにナビゲートする必要がある。そこから、ワークアウトを選択して開始することができる。SharePlayはApple TVとも連携しているので、ユーザーはiPhoneやiPadを使ってFaceTimeで友達とつながりながら、大画面でワークアウトを追うことができる。

関連記事:アップルが瞑想やグループワークアウト機能を「Fitness+」サブスクに追加、15カ国で新たに展開

Appleは、SharePlayを使ってグループでワークアウトを行うと、その人の指標やアクティビティリングを完成させるまでの進捗状況が表示されると述べている。また、ワークアウト中に誰かがアクティビティリングを完成させると、セッションに参加している全員に通知される。

さらに、Fitness+は11月3日より、オーストリア、ブラジル、コロンビア、フランス、ドイツ、インドネシア、イタリア、マレーシア、メキシコ、ポルトガル、ロシア、サウジアラビア、スペイン、スイス、アラブ首長国連邦など、新たに15カ国で提供される。Fitness+は英語で提供され、ブラジル・ポルトガル語、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ロシア語、スペイン語の字幕が付く。

このサービスは現在、米国、カナダ、アイルランド、ニュージーランド、オーストラリア、英国で提供されているが、今回の拡張により、Fitness+は合計21カ国で利用できるようになる。

また、Appleは、2021年11月1日から、米国の約300万人のUnitedHealthcare(ユナイテッドヘルス)の保険加入者が、プランの特典の一部として、追加費用なしでApple Fitness+の1年間のサブスクリプションに登録できるようになるとしている。

また、Fitness+は、俳優であり障害者支援者でもあるMarilee Talkington(マリーリートーキントン)氏による、音声による没入型ウォーキング体験であるTime to Walkシリーズの新しいエピソードを紹介している。このエピソードでは、期待を裏切ることや、他の人が同じことをするのをどのように助けているかについて語っています。

Appleは、2021年12月14日にFitness+の提供を開始し、以来、Peloton(ペロトン)をはじめとする他のサブスクリプション型フィットネスサービスとの競争に取り組んできた。Fitness+は、月額9.99ドル(約1100円)の独立したサブスクリプション、または月額29.95ドル(約3400円)のApple One Premier(アップルワンプレミア)プランの一部として利用できる。このプランでは、Apple Music、Apple TV+、Apple Arcade、Apple News+、そして2TBのストレージを備えたiCloud+へのアクセスが可能だ。

画像クレジット:Apple

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

【コラム】今こそ米国兵士は帰還後の外傷性脳障害との戦いから解放されるべきだ

戦争は終わった。米国軍は、多くの兵士が複数回の軍務を経て帰還した。帰還すると、次の段階の職務が始まる。子どもの世話や親の介護などの家族に対する奉仕や、学校に戻ったり新しい仕事を始めたりする地域社会への奉仕だ。

しかし、多くの戦士にとって戦いは続く。43万人以上の米軍兵士がイラク戦争とアフガニスタン戦争の代表的な負傷とされる外傷性脳損傷(TBI)を負っている。TBIの中で最も多いのは「軽度」TBI(mTBI、または脳震盪)というやや誤解を招きやすい名称のもので、TBIと診断された米軍兵士の82%以上が罹患している

多くの人は負傷から回復したが、何千人もの人が、負傷してから何年も経っているにもかかわらず、思考の速さ、注意力、記憶力などに影響を及ぼす持続的な認知機能の問題に悩まされており、仕事や学校、家族としての役割への復帰が困難になっている。また、TBIの既往歴がある人は、特に認知症予備軍や認知症などの他の疾患を併発するリスクが高いと言われている。

これは軍人やその家族にとって負担であると同時に、米国軍人の才能や経験が十分に生かされていないため、国にとっても負担となっている。

米国防総省は10年以上前にこの問題を認識し、この新しい種類の戦傷に対する新しい種類の治療法を見つけるために、学界や産業界の研究者に呼びかけた。多くの研究グループがこの要請に応えた。私がCEOを務めるPosit Science(ポジット・サイエンス)では、全米の軍病院や退役軍人医療センターから一流の臨床医を集めたチームを結成し、新しいタイプのコンピューターによる脳トレーニングをテストする提案をした。

TBIを罹患する軍人たちを支援するためには、2つの問題を解決しなければならないことがわかった。

まず、脳トレーニングのプログラムが機能する必要があった。幸いなことに私たちは、米国国立衛生研究所が資金提供した複数の研究により高齢者の認知機能を向上させることが示された脳トレプログラム「BrainHQ」を構築できたが、これを若い軍人にも使えるようにする必要があった。BrainHQの脳トレは、従来の認知機能トレーニングとは異なり、脳の可塑性(学習や経験によって脳が脳自身を再構築する能力)を利用して、脳の情報処理機能の基礎を向上させるように設計されている。

第二にこの脳トレプログラムは、彼らの生活圏内で実施する必要があった。現役の軍人や退役軍人の多くは、派兵を控えていたり、学校や仕事に復帰したり、一流のクリニックがある大都市以外の地域に住んでいたりするため、週に数回、数カ月にわたってクリニックに通い、対面で治療を受けることができない。そんなときに役立つのが、コンピューターを使った脳トレだ。インターネットを介して配信されるため、自宅で自分のスケジュールに合わせて、どこにいても、時間のあるときにいつでも使用できる。

この夏、Brain誌に掲載されたBRAVE研究では、5つの軍人病院と退役軍人病院で、認知障害とmTBIの既往歴があると診断された83人の患者を二重盲検法による無作為化対照試験に登録した。この研究に参加した平均的な患者は、この介入の前に、7年以上にわたって持続的な認知機能の問題を抱えていた。

BRAVE研究では、可塑性を利用したBrainHQのエクササイズの介入に対し、注意力を必要とするビデオゲームを対照した。その結果BrainHQを使用した患者は、ビデオゲームを使用した患者と比較して総合的な認知能力が大幅に向上したことがわかった。この介入によって、各患者が天才になったわけではないが、平均して約24パーセンタイルポイント(50番目のパーセンタイルから74番目のパーセンタイルへ移動するようなものだ)の改善が見られた。これは、mTBIのゴールドスタンダード研究において、スケーラブルな介入が有意な向上を達成した初めての例だ。

この結果は、ニューヨーク大学で行われた2つ目の研究でも正しいことが確認され、さらに拡張されて学術誌NeuroRehabilitationに掲載された。この研究は、軽度、中等度、重度のTBIを罹患している48人の一般人を対象としたものだ。その結果、BrainHQを使用した患者では、客観的計測値による認知機能の向上が認められた。また、認知機能の自己評価を行ったところ、患者自身が認知機能の有意な向上を実感していることがわかった。

成功を収めたのは私たちだけではない。訓練を受けた臨床医が対面で認知機能補償技術を用いて研究を行った他のいくつかの学術研究グループや軍の研究グループ(特にテキサス大学ダラス校のCenter for Brain Healthで開発されたSMARTトレーニングや、UCSDとVAサンディエゴヘルスケアシステムで開発されたCogSMARTトレーニング)が良い結果を収めた。

しかし、現在、これらの科学技術の多くは棚上げされている。議会と国防総省は、TBIの基礎科学と臨床試験に何億ドルも費やしてきたが、私が軍人病院や退役軍人医療センターを訪れると、献身的に人々を助けようとしている医療従事者がいる一方で、研究結果を実践するためのスタッフやスペース、技術などが不足していることが分かる。国防総省と退役軍人省が一丸となって、実証された科学技術を研究室から世の中に送り出し、必要としている人々を助けることが必要だ。

海外での戦争が終結しても、私たちは、自国の戦士のために、戦士に代わって行われた研究から利益を得られるようにする義務を忘れてはならない。私たちは、軍人そして米国全体が、研究が提供するすべてのものから恩恵を受けることができるように、研究の成果を解き放つ必要がある。

編集部注:本稿の著者Henry Mahncke(ヘンリー・マンケ)氏はUCSFで神経科学の博士号を取得。脳トレプログラム「BrainHQ」を開発したPosit ScienceのCEO。

画像クレジット:bubaone / Getty Images

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(文:Henry Mahncke、翻訳:Dragonfly)

脊椎の成長を促すスマートインプラントを開発するIntelligent Implantsが約10億円を調達

気弱な人は、脊椎の手術など受けられたものではない。しかし、Intelligent Implants(インテリジェント・インプラント)が750万ユーロ(約9億9000万円)を調達し、脊椎手術の苦痛を軽減する。同社のスマートインプラントの最初の用途は、脊椎固定術だ。これは、2つ以上の椎骨を永久的に結合し、安定性向上、変形の矯正、痛みの軽減を図る。世界中で100万件以上の手術が行われているが、合併症のリスクや手術後の継続的な痛みのため、一般的には最後の手段とされる。

Intelligent Implantsは、ワイヤレスのインプラント用電子機器により、骨の成長を促進・誘導・監視する。現在の最先端の術後管理によったとしても、理学療法や鎮痛剤に長期間依存する可能性があると同社は指摘する。同社はこの市場に参入し、より技術的に優れたソリューションを提供する。

同社のスマートでアクティブなインプラントは、この領域で最初の機器ではない。ペースメーカーや人工内耳は、それぞれ1950年代と1970年代に発売されており、ご存知の方も多いだろう。同社の革新性は、ワイヤーやバッテリーを必要としないソリューションを生み出したことにある。この製品は、現在の非アクティブなインプラントと同じ標準的な手術方法で椎骨の間に設置する。

このインプラントは、携帯電話のワイヤレス充電パッドのように、誘導によって外部から電力を供給する。これにより電界が形成され、骨の成長が促進される。

Intelligent ImplantsのCEOであるJohn Zellmer(ジョン・ゼルマー)氏は「誰に対してもこの手術をすることは避けたいと思っていますが、しなければならないのであれば、結果はできるだけ良いものにしなければなりません」と話す。

刺激を与えるための電極は、センサーとしても使える。この機器は、標準的な整形外科用インプラントに、さらにいくつかの魔法を組み込んだものだ。この場合の魔法とは、骨の成長を助けるニューロモデュレーションのための多数の電極と、それを制御するためのアンテナや電子機器のことだ。脊椎固定術の後、患者はすべてを正しい場所に固定するためコルセットを装着するが、これが機器の電源と制御ユニットの格納に便利な場所となる。

Intelligent Implantsは、骨の成長を促すことの副次的効果として、センサー側の機能が使えるとゼルマー氏は説明する。このデバイスでは、インピーダンス測定ができるという。骨は導電性に乏しいため、移植材が体内で徐々に骨に置き換わると、電気信号が変化し、その過程で骨の成長を測定できる。

Intelligent Implantsの共同創業者であるErik Zellmer(エリック・ゼルマー)氏、John Zellmer(ジョン・ゼルマー)氏、Martin Larsson(マーティン・ラーソン)氏(画像クレジット:Intelligent Implants)

同社の製品「SmartFuse」は、FDA(米食品医薬品局)からBreakthrough Device(革新的機器)の指定を受けたばかりだ。この指定は「そのデバイスが、人間の生命を脅かす、または人間を不可逆的に衰弱させる病気や状態の、より効果的な治療または診断を提供する」とFDAが考えていることを意味する。同社は、このプログラムに参加するため、羊を使った大規模な動物実験を完了した。この実験で、骨の成長が3倍になり、固定までの時間が50%短縮されたという。

「前臨床試験のデータに基づいてBreakthrough Device Designation(BDD)を取得するのは非常に珍しいことです」とゼルマー氏は話す。BDDのほとんどがヒトでの試験に基づいているという。「このニュースを聞いて、私たちはオフィスで小躍りしました」。

同社は、これまでの臨床試験では羊を使用してきた。整形外科領域の臨床試験で使用される動物としては、羊またはヤギが一般的だ。同社は2023年に最初のヒト臨床試験を行うことを目指している。

「家族の1人の術後が悪く、私たちはこの難しい問題に取り組むことにしました。チームがこの領域に関する豊富な知識を持ち、長期的にコミットし、今日の外科医の実践(スタンダード・オブ・ケア)に私たちの技術を適合させることができなければ、私たちのソリューションが機能しないことはわかっていました」とゼルマー氏は語る。「当社は現在、半分以上の時間を、SmartFuseという製品を市場に投入するために費やしています。FDAの決定は当社のアプローチが健全であったことを裏付けるものです」。

同社は、SOSVHAX技術プログラムに参加した後、卒業し、10月22日にシードラウンド完了を発表した。EUのEIC AcceleratorとSOSVから合わせて450万ユーロ(約6億円)を、そしてスウェーデンのエンジェル投資家グループから300万ユーロ(約4億円)を調達した。

「SOSVのパートナーであるBill Liao(ビル・リャオ)氏とは2015年に出会い、それ以来ずっと支援を受けています。それからの時間は、ベンチャーキャピタルとしては長い期間です。彼らはオペレーション面での支援だけでなく、それ以降のすべてのラウンドでの支援など、本当にすばらしい仕事をしてくれています」とゼルマー氏は語る。「これはすばらしいことだと思います。私たちは本当に難しいことに取り組んでいます。これはクラス3の機器であり、刺激促進システムを備えたアクティブなインプラント機器です。私たちの試みはまったく新しいもので、それを整形外科分野に持ち込んだことは、先見性と勇気の証しだと思います」。

「移植可能な技術を開発することは非常に困難ですが、Intelligent Implantsは極めて着実に進歩しています。数百万人の患者さんを助け、数年後には90億ドル(約1兆円)に達すると言われている市場に貢献するため、彼らの旅を支え続けることを誇りに思います」とSOSVのゼネラルパートナーであるリャオ氏は述べた。

画像クレジット:Intelligent Implants

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nariko Mizoguchi

ナノテクを用いた針不要の血糖値モニターのためにGraphWearが約23億円調達

血糖値のモニタリングに対し、針不要のアプローチを追求するGraphWearは、シリーズBラウンドで2050万ドル(約23億円)を調達した。このシリーズBラウンドは、GraphWearのアプローチ、つまり「皮膚をまったく傷付けずにブドウ糖のような体内の重要な指標を監視する手法」に対する投資家の信任投票のようなものだといえる。

GraphWear Technologiesは2015年、Rajatesh Gudibande(ラジャテシュ・グディバンデ)氏とSaurabh Radhakrishnan(サウラブ・ラダクリシュナン)氏によって創設された。2人はともにペンシルベニア大学でナノテクノロジーの修士号を取得している。具体的にいうと、GraphWearはグラフェン(この材料については後で詳しく説明)で作られた皮膚表面レベルのウェアラブルを開発している。このセンサーは小さく、Apple Watchと同じサイズだが、中核となる重要なテクノロジーは実は裏側部分にある。薄いグラフェン片をウォッチの裏や、下腹部に貼るステッカーの上に設置して使用する。

グディバンデ氏によると、このシリーズBは、同社が以前行ったこのウェアラブルの検証研究を踏まえ、極めて重要な試験を完了し、FDAへの承認申請を提出することに焦点が絞られている。このラウンドはMayfieldが主導し、MissionBio Capital、Builders VC、VSC Venturesが参加して行われた。

「追求すべき重要な課題は、皮膚に穴を開け血液を取るための道具を使わず、血液の中でなにが起きているかを本当に知ることができるのか、ということでした。GraphWear は進歩を遂げつつあり、何百万という人にお届けできる製品を実際に作り出す最初の企業の1つになる可能性があると考えています」とMayfieldの工学生物学投資部門の共同リーダーであるUrsheet Parikh(アーシート・パリク)氏は述べた。

持続血糖モニタリングは、糖尿病関係者の中で注目を集めている。2017年にFDAに承認を受けたFreeStyle Libreなど、いくつかの持続血糖値モニターが近年承認されている。このデバイスは現在でも血糖値を計測するのにアームパッチに取り付けられた皮下フィラメントを利用している。

これらのデバイスは1型糖尿病の糖尿病患者(体がインスリンをほとんどまたはまったく生成しない人々)にとって明確なメリットがある。そうした患者は米国だけでも160万人  いる。米国糖尿病学会は、定期的にインシュリンを注射しているほとんどの患者に対し、持続血糖モニターを含め、血糖値を自己監視できるテクノロジーの使用を「促すべきである」と同学会発行の2020年ガイドラインの中で、述べている。

2型糖尿病の患者(米国では3400万人)、または定期的にインシュリンを注射していない患者の場合は、議論が行われている。一部の人々は、これらの患者にとって、、モニターを用いて定期的に血糖値をモニタリングすることは(これこそ持続血糖モニターが行うことであるが)、それほど意味がないと主張している。例えば、2017年に行われたJAMA Internal Medicineが行った調査によると、患者が血糖値を定期的に自己監視して1年経過しても、患者の A1cレベル(糖尿病の重要なバイオマーカー)は改善しないことが判明した。しかしこの調査は非侵襲的な血糖値モニターではなく、指から血を採血するフィンガースティックテストを定期的に使用していた患者を対象にした調査であった。

しかし、米国糖尿病学会は、インスリン治療と組み合わせて適切に持続血糖モニターを使用することができれば、2型の人々にとってもこのツールは有用になり得ると 述べている

GraphWearの持続血糖モニターのセンサーには、ナノテクノロジーに基づくアプローチが取られている。このデバイスは、小さな引き込み式フィラメントやフィンガースティックを必要とする他の持続血糖モニターと異なり、皮膚をまったく傷付けずに済むとグディバンデ氏はいう。

「グラフェンには分子を引き上げる電場があります。約200の分子が対象になります。次にグラフェンはそれを『吟味』し、電気信号に変換し、Bluetoothを介してユーザーの携帯電話に転送します。携帯電話は、血糖値を持続的にグラフ化して表示することができます」。とグディバンデ氏は説明する。

これらのセンサーは血液中のブドウ糖ではなく、実際には間質液中にあるブドウ糖を計測している。しかし、米国糖尿病学会の2020年のガイドラインによると、間質液中の血糖値は「血漿ブドウ糖とよく相関している」という証拠があるため、この方法で測定された値は糖尿病の患者にとって臨床的に適切なものである。グディバンデ氏は「私たちの経験的臨床データでも同様のことが示されています」と付け加えた。

GraphWearはすでに1型と2型の両方について、40人の患者を対象にこのウェアラブルセンサーの実行可能性調査を実施した。同社は、静脈血から収集した血糖値とこのデバイスがモニタリングした値を比較する検査をしたのだが、結果はまだ公表されていない。しかしグディバンデ氏によると、GraphWearの精度は従来のセンサーの精度と「同等」だったとのことである。

ブドウ糖のモニタリングはさておき、GraphWearについて語る際に、他に注目すべき点は、センサーの素材であるグラフェンだ。

グラフェンは単一原子からなる薄いカーボンシートであり、大変よく電気を通し、強く、軽く、柔軟性がある。グラフェンが2004年に発見されて以来、この素材は大変な注目を集め、まだ完全にそうなってはいないが、次なるシリコンになるだろうと喧伝された。

英国、中国、EUはグラフェンの生産に大々的な投資を行っており、グラフェンを使った製品が少しずつ市場に登場するようになっている(2019年のレビューペーパーで強調されていたいくつかの用途をあげれば、自転車、靴、センサー、テニスラケットがある)

グディバンデ氏によると、GraphWearは、センサーの中で使用されているグラフェンを「新品の状態」に保つことができるため、グラフェンのブドウ糖分子に対する感度を非常に高い状態に保てるという。同社は大規模にその素材を製造することもでき、またナノテクノロジーを用い、ブドウ糖のセンサー以上に有益な新しい用途を開発中である、とパリク氏は述べた。具体的には、同社は分極化された液体をトランジスタとして用いる方法で特許を取得している。

「ブドウ糖分子が皮膚上にあれば、それは一時的なトランジスタのように立ち表れて作用します。これは新しいカテゴリーのトランジスタで、本格的なイノベーションといえます」とパリク氏。

しかし、血糖値モニタリングは GraphWearにとって賢い最初の一歩と言える。というのも承認への道筋がはっきりしているからである。GraphWearの重要な試験が他の持続血糖モニターと同類であることを示せば、同社はFDA 510(k) 承認を求める可ことができる。ただしグディバンデ氏が認識しているように、予測できない落とし穴がいくつかあるかもしれない。例えばGraphWearの非侵襲的なアプローチのために、このデバイ氏が独自のカテゴリーに分類されてしまうことも考えられる。

「ですから、私たちが510(k)になるのかどうかわからない、というリスクはあります。しかし、いずれにしてもそのプロセスは6カ月から14カ月ほどです。当社のゴールは試験を通過して規制機関に承認をもらえるよう申請することです」とグディバンデ氏はいう。

GraphWearがグラフェンプラットフォームを用いて他のバイオ分子を計測できる製品を実現できれば、そのプラットフォームを利用して他の分子を検出したり、あるいは体内でなにが起こっているかを持続的にモニターすることができる。しかしこのシリーズBラウンドは「臨床的に評価された、グラフェンを用いたセンサー」という最初のステップを実現することに焦点をあてている。

画像クレジット:GraphWear

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

従業員コンディション分析のラフールが医療従事者向け特化サーベイ「LAFOOL SURVEY for Medical Workers」提供開始

従業員コンディション分析のラフールが医療従事者向け特化サーベイ「LAFOOL SURVEY for Medical Workers」提供開始

組織や従業員の状態を可視化するツール「ラフールサーベイ」(Android版iOS版)を提供するラフールは10月21日、医療従事者向けに特化したサーベイ「LAFOOL SURVEY for Medical Workers」の提供を開始した。

東北大学が発表した、病院に勤務する看護職1万名を対象とした調査によると、約42%の看護職が、コロナ禍の影響で「看護職の仕事を辞めたいと思った」「自信がなくなった」と回答しており、コロナ禍が看護職の離職を促す可能性が懸念されている(「新型コロナウイルス感染症流行下における看護職の精神健康ケアの必要性増」)。

さらに、新型コロナウイルス感染症の程度の大小にかかわらず、看護職の精神健康の状態が悪化やネガティブな影響をもたらしていることが明らかになったという。

同社は、創業当初より企業や企業で働く人のメンタルヘルスケアを支援しきた実績やパートナーである精神科医、大学の知見を元に医療従事者に力添えができるよう、医療従事者向けに特化したサーベイの提供を開始したという。

医療従事者向けに質問をカスタマイズ

LAFOOL SURVEY for Medical Workersは、同社ラフールサーベイをベースに医療従事者向けに質問のカスタマイズを実施しており、メンタル不調予防対策やエンゲージメントの低下を未然に察知することが可能という。

従来のストレスチェック(57項目)に職場環境を把握できる設問を追加し、計141項目により状態把握・要因分析を行い、対策リコメンドをワンストップで導き出せる。また、ストレスやフィジカルの状態の良し悪しを図る「状態把握」の項目をはじめ、なぜストレス状態が悪いのか理由を特定するための「要因分析」の項目を加えることで、分析が可能となっている。

職員のセルフケアを促すマイページを⽤意

従来のサーベイツールでは、施設や指示者側が職場を変えるため、「職場の状態を可視化する」ことを重視したサービスが⼀般的という。⼀⽅「医療従事者向けメンタルヘルスサーベイ」では、「働く個⼈の意識を変える」ため、サーベイを回答した職員⾃⾝の結果を閲覧できるマイページなどを⽤意している。⼼⾝の健康状態やエンゲージメントなど、⾃⼰認知の向上やセルフケアの促進の⼀助となるとしている。

職場課題の要因特定から課題解決の施策をレコメンド

LAFOOL SURVEY for Medical Workersでは、職員の状態の可視化と合わせ、個⼈の体調やメンタルが悪化している要因を分析する機能を採用。また、課題に対しての施策をレコメンドするため、どのような施策を⾏うべきか思い悩む必要がないという。施設や指示者が施策を⾏う上での⼯数を削減し、職場課題に直結した施策を実施することでコスト削減や業務効率の向上を実現するとしている。

新型コロナウイルスを検出するバイオセンサーを東海大学・豊橋技術科学大学・中部大学・デンソーが共同開発

新型コロナウイルスを検出するバイオセンサーを東海大学・豊橋技術科学大学・中部大学・デンソーが開発

東海大学・豊橋技術科学大学・中部大学デンソーは、日本医療研究開発機構(AMED)の支援のもと、新型コロナウイルス検査機器の開発に取り組んでおり、新しい仕組みのバイオセンサーを開発し、新型コロナウイルスの検出に成功したと発表した。今後は、感染症の早期診断に貢献することを目指し、実用化に向けた開発を加速する。

感染症の拡大および医療のひっ迫を防ぐには、感染症の早期診断、早期隔離によるウイルス拡散の未然防止が重要とされる。しかし現在、新型コロナウイルス感染症の診断には、PCR検査・抗原検査などが利用される一方、それら検査では検出したウイルスの感染力の有無を示す「ウイルスの感染性」が評価できないことが課題となっている。

また、PCR検査はウイルスの検出感度は高いものの前処理など医療従事者への負荷が大きく、抗原検査は簡便な検査であるが検出精度にバラツキがあるなどの課題があり、「ウイルスの感染性」を評価する高感度かつ簡便な検出方法の開発が求められている。

東海大学、豊橋技術科学大学、中部大学、デンソーが共同開発を進めているバイオセンサーは、「ウイルスの感染性」を高感度かつ迅速に定量検出する臨床検査機器としての活用を目指したもの。PCR検査や抗原検査とは異なり、感染のきっかけとなるウイルス表面のスパイクタンパク質を、半導体センサーとアプタマー(人工的に合成した核酸分子。特定の物質に結合する性質を備える)で検出することが可能という。

この技術は世界で初めてものとしており、今回同手法を用いて新型コロナウイルスを高感度で検出することに成功した。

新型コロナウイルスを検出するバイオセンサーを東海大学・豊橋技術科学大学・中部大学・デンソーが開発

新型コロナウイルス検出イメージ

半導体センサーは、ウイルス量を電気信号で定量的に計測できるため、高い精度での感染状況の把握や、治療の有効性の確認などへの活用が期待できるという。また、アプタマーはサイズが小さく、さまざまなタンパク質と選択的に結合する性質を持つとともに、設計が容易であり短期間での量産も可能であることから、未知のウイルスの検出に応用することも可能としている。

3大学とデンソーは、同バイオセンサーが、新型コロナウイルスの感染性が把握できることに加えて、PCR検査と同等レベルのウイルス検出感度を持ち、抗原検査と同等レベルの簡便な検査となることを目指し、さらに基礎技術を固めていくとともに、実用化に向けた開発を加速する。

各機関の役割およびコメント

  • 東海大学:感染制御と検査の専門医の立場から、感度・特異度に優れ、感染性の有無がわかる操作が簡便かつ迅速な検査機器の開発を切望している。世界に誇る技術力で開発された検査機器についてニーズに対応する仕様と性能、信頼性と精度の確保を目指す
  • 豊橋技術科学大学:ウイルス量を電気信号に変換できる半導体センサーを製作して、同プロジェクトに提供。半導体技術を使うと、米粒大のセンサーにより、1種類のウイルスだけではなく、症状が極めて似て区別がつきにくい場合でも1回の検査で区別できるようになる
  • 中部大学:半導体センサーの性能を評価するため、様々な種類のウイルスを準備し提供。同バイオセンサーは、従来のPCR検査だけでは把握できない「感染力を有するウイルス」を短時間で検出できる技術。体内に入ったウイルスが増殖の真っただ中なのか、終息に向かっているかなどの現状認識が可能になれば、隔離解除のタイミングが明確になり、安心した社会復帰の実現が期待できる
  • デンソー:快適な車室内空間を作るための先行研究の1つとして行っていた、様々なウイルスやバイオマーカー検出の研究開発の中で得た知見を生かし、より感度高く半導体センサーでウイルスを検出するためのバイオ技術を提供。これまで培ってきたバイオと半導体技術を生かし、実用化を目指した開発を加速する

米食品医薬品局が補聴器を医師の診断書なしでも購入可能にする提案発表、軽~中程度患者対象

米食品医薬品局が補聴器を医師の診断書なしでも購入可能にする提案発表、軽~中程度患者対象

AlexRaths via Getty Images

米食品医薬品局(FDA) が、米国内の軽~中程度の聴覚障害者が、医師の診断や業者によるフィッティング作業なしに手軽に穂著行きを購入できるようにするOTC(over the counter)化の提案を出しています。

この提案は「OTCおよび従来の診断を必要とよる補聴器の安全性と有効性を確保しつつ市場における教祖の促進を目的としている」とFDAは述べています。これによって補聴器の恩恵を受けられるにもかかわらず診断を受けることに抵抗を感じてそれを享受できない状況を改善し、手軽に補聴器を入手できるようになると考えられます。

米国政府は、2017年に人々がより安価に補聴器を入手できるようにするため「市販補聴器法(Over-the-Counter Hearing Aid Act)」を定めています。しかしこれまで、FDAによってClass I~IIの医療機器として分類される補聴器は、それを得るのに医師の診断を必要とするままでした。バイデン大統領は7月に大統領令に署名し、120日以内にOTC補聴器に関する新たな規則を発表するよう指示しました。

FDAの今回の提案は現在90日間のパブコメ募集期間となっています。最終的に採用となった場合は、連邦官報に掲載され、60日後に発効の運びとなります。

米国ではすでに複数の企業がOTC補聴器に参入の動きを見せており、Boseがそれに先駆けてFDA認定のSoundControlシリーズを発売、JabraもEnhance Plusと称するヒアリングエイド機能付きイヤホンを発表しています。日本ではシャープが完全ワイヤレスの軽度・中等度難聴者向け補聴器を発売。こちらも、音楽も聴ける便利な製品です。

またアップルは、先日AirPods Proのアップデートで周囲の騒音を低減して会話を聞き取りやすくする機能を搭載しており、将来的にAirPodsシリーズの守備範囲をヘルスケア用途に拡げることも検討中と言われています

(Source:FDAEngadget日本版より転載)

運動習慣を形成する音声フィットネスアプリのBeatFitが2億円調達、健康経営領域での成長を加速

音声フィットネスアプリ「BeatFit」(Android版iOS版)を開発・運営するBeatFitは10月19日、第三者割当増資を実施しシリーズBラウンドとして約2億円の資金調達を2021年9月に完了したと発表した。引受先はリード投資家のインフォコム、共同投資家のツクイキャピタル、またVOYAGE VENTURES、そのほか個人投資家。

調達した資金は、エンジニアや法人向け人材の獲得費用にあて、プロダクト開発を促進させるとのこと。同時に、リード投資家であるインフォコムとの業務提携を締結し、健康経営領域での成長速度を加速させる。健康増進領域にとどまらず新規事業の開発も開始し、さらなる企業価値の向上を目指す予定。

BeatFitは、運動習慣を形成し運動不足を解消するための音声フィットネスアプリ。筋トレやウォーキング、ストレッチや睡眠など12ジャンル700以上のクラスが用意されている。運動に最適な音楽、また現役プロトレーナーの音声ガイドで構成されるオリジナルフィットネスコンテンツの配信を通じて、効果的な運動習慣作りをサポートするという。

「この世から不健康をなくす」というビジョンを掲げて2018年に設立されたBeatFitは、同名のアプリの開発・運営を主事業とする。健康という資産を楽しくスマートに管理できる仕組みを実現し、元気な社会の実現を目指している。2020年に開始した法人向け事業も順調に成長を遂げているとのこと。

東北大学がスマートチェアとAIで「腰痛悪化予報」を可能に

東北大学がスマートチェアとAIで「腰痛悪化予報」を可能に

東北大学大学院医工学研究科健康維持増進医工学分野の永富良一教授らの研究グループは、荷重センサーを装着したオフィスチェア(スマートチェア)と人工知能解析技術で、日々の腰痛悪化を高い精度で予測することを可能にした。

研究グループは、22人のオフィスワーカーの協力で、3カ月間にわたり4個の荷重センサーを座面下に装着したスマートチェアで仕事をしてもらい、データを収集した。また被験者には、1日3回、タブレットで主観的な腰痛の程度を記録してもらった。

その結果、同じ姿勢を保つこと(姿勢の固定化)を避けるために、人は細かく体を動かしており、それには共通する特定のパターンがあることが発見された。そして、そのパターンが見られなくなると、腰痛が高い確率で悪化することがわかった。このことから、腰痛の発生が予測でき、ストレッチやエクササイズを促すことが可能となる。

東北大学がスマートチェアとAIで「腰痛悪化予報」を可能に

これまでは、「実生活におけるさまざまな規則性に乏しい時系列信号の数理モデル化」が難しかった。つまり、座っているときの短時間の不規則な姿勢の変化などを数式化することが困難であったため、「主観的腰痛」の予測はできなかった。その点において、それを可能にした今回の研究は大変に重要だと、同グループは話している。

こうした姿勢の固定化を防ぐ細かい体の動きの発見により、腰痛の他にも、肩こり、頭痛、関節痛などの不定愁訴の要因の解明と対処法の開発が進むとのことだ。

家庭用治療器で脳卒中患者のリハビリに変革をもたらすBrainQが44億円調達

肘を痛めた場合は手術が効果的で、脚を失った場合は義足という手段がある。しかし脳に問題があった場合の治療は非常に難しく、脳卒中の場合リハビリは身体の修復メカニズムに委ねられることが多い。そんな中、脳の損傷部分に刺激を与えて自己修復を促進する装置でこの状況を変えようとしているのがBrainQだ。試験で十分な改善が見られたため、FDA(米国食品医薬品局)から画期的医療デバイス指定を受けたこの装置。同社は最近、この製品を市場に投入するため、4000万ドル(約44億円)を調達した。

最初に言っておくが、脳波を発する奇跡のデバイスの効果を疑うのは当然のことだ。実際、BrainQの創設者であるYotam Drechsler(ヨータム・ドレクスラー)氏と話した時、2017年に我々が対談した際に筆者が「強い疑いの念を表明した」と同氏が思い出させてくれたのも事実である。

悪気があったわけではない。当時の技術はほとんど概念的なものだったと同氏も認めるほどだ。しかし、以来チームは研究を続け、資金を調達し、当時は単なる有望な論文とされていたものが、実際のデータと臨床結果に裏付けられたものに変わったのである。このようにして完成したシステムは、ここ数十年あるいはそれ以上変わることのなかった、脳卒中治療を大きく改善するものになるかもしれない。

関連記事:AIを利用して神経障害を治療するBrainQが$5.3Mを調達、世界最大の脳波データベースを持つ

脳卒中になると、握力や調整能力などさまざまな障害を招くが、当然、損傷は手や足そのものではなく、それらの部位を司る脳内のネットワークに起きている。しかし、医学的にはそのネットワークを直接再構築する方法はなく、脳は自分の力で、自分のペースで再構築していかなければならない。

これをサポートするため、定期的な理学療法と脳の健康診断を時には何年も続けて行い、脳がまだ働いているかどうか、体の各部分自体が衰えていないかどうかを確認するのである。

近年このプロセスに加えられた改良の中でも最も興味深いのは、例えばバランスが片側に偏っていることなどを即座にフィードバックし、それを修正することを目的とした刺激を提供するテクノロジーである。ただしあくまでもこれはフィジカル・セラピーである。

関連記事:音楽を利用して脳卒中患者の歩行能力を改善させるMedRhythms

ドレクスラー氏とBrainQの問題の捉え方はこれとは少し違う。脳卒中は単なる怪我ではなく、脳が慎重に培ってきたホメオスタシス(恒常性)を乱し、それに対抗する手段を持たない状態であると考え、脳卒中を怪我ではなく、早産で生まれた赤ちゃんが体を温めることができない状態にあることに例えている。このような場合何をすべきか。より低い温度で活動できるように体を「修理」したり、熱の生産活動を増強したりするのではなく、その子どもを保育器に入れて、すべてを正常に機能させようとするのが通常である。

これと同様に、脳内の環境を変化させることで脳の働きを良くしようとしているのがBrainQのデバイスだ。

「健康な脳とそうでない脳のチャンネルをマッピングして比較します。これらを見つけたら低強度の磁場療法で脳に共鳴させ、内因性の回復メカニズムを促進させるのです」とドレクスラー氏は説明する。

このような刺激は、中枢神経系が自らを再プログラムする能力である神経可塑性を向上させることが他の状況でも明らかになっている。脳卒中の患部に絞って刺激を与えることで、BrainQのデバイスは患部の神経可塑性を促進し、早期の回復を目指すのである。

しかし「脳卒中の影響を受けたのは右後頭葉の腹側半分だから、そこに磁石を当てたら良い」というわけではない。脳は複雑なシステムであり、脳卒中は特定のエリアだけでなくあらゆるネットワークに影響を与えてしまう。BrainQでは機械学習と膨大なデータを駆使して、これらのネットワークをどう狙えば良いのかを理解しようとするのである。

脳がどう機能するかについてここでは深く掘り下げないが、脳波を測定すると、特定のネットワークが非常に特殊なスペクトルサインや周波数で局所的に機能していることがわかる。例えば左手と左足が運動皮質の同じ領域を占めていても、手は22Hz、足は24Hzで動作していることがある。

「問題はこのサインをどうやって見つけるかということです」とドレクスラー氏はいう。説明するのはやや難しいので、対談後に同氏自身の言葉で書いてもらうことにした。

BrainQの治療法は、データに基づいてELF-EMFの周波数パラメータを決定するところに特徴があります。パラーメータを選択する際、中枢神経系における運動関連の神経ネットワークを特徴づける周波数や、脳卒中やその他の神経外傷後の障害に関連する周波数を選択するというのが弊社の目指すところです。そのために、健康な人とそうでない人の大量の脳波(電気生理データ)を解析しました。弊社のテクノロジーは説明的な機械学習アルゴリズムを用いて、自然なスペクトルの特徴を観察し、独自の治療的インサイトを導き出します。これらはBrainQの技術によって、損なわれたネットワークを回復するために使用されます。

この治療のために開発された同デバイスは一風変わった様相である。全脳磁界発生装置のため、かなりかさばる円筒形のヘッドピースが付いているが、その他の部分は背中のブレースとヒップパックのようなものに収まっている。一般的な脳磁気イメージング技術であるMRIとは異なり、発生する磁場や電流が非常に小さいためこういったデザインが可能となったのだ。

画像クレジット:BrainQ

「通常の脳活動と同程度の、非常に低強度のものを使用しています。活動電位や活動のジャンプを起こすのではなく、回復メカニズムに適した条件を整えるのです」とドレクスラー氏は話している。

この刺激に関する結果は、小規模(25人)ながらも決定的な研究結果として証明され、近日中にレビューと出版が予定されている(査読前の原稿の抄録はこちら)。通常の治療に加えてBrainQの治療を受けた患者は、バランス感覚や筋力の改善などの指標である回復評価が大幅に改善し、92%が通常の治療に比べて大幅に改善し、80%が回復と呼べる結果を得ることができた(ただし、この言葉は正確なものではない)。

一般的には、1度の治療につき約1時間、デバイスを装着したままさまざまな運動を行い、それを週に5日、2カ月ほど繰り返す必要がある。ヘッドセットが患者のパターンをBrainQのクラウドベースのサービスに送り込み、必要な処理とマッチングを行ってオーダーメイドの治療パターンが作成される。操作はすべてタブレットアプリで行われ、外来看護師などの介護者が操作することも、内蔵の遠隔医療プラットフォームを利用することも可能だ。

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ドレクスラー氏によると、このアプローチは初期の段階では評判が悪かったという(筆者だけではなかったようだ)。

「2017年、私たちは患者がどこにいても治療できる、クラウド型の治療機器の基盤を整え始めました。当時は病院という管理された環境の外で患者を治療することについて、意欲的な人などどこにもいませんでした。しかし2020年に新型コロナウイルスが登場しすべてが変わりました」。

今回のパンデミックにより、通常であれば病院で定期的なケアを受けることができた脳卒中の患者の多くが、同様のケアを受けることができなくなった(未だできていない人もいる)と同氏は話す。低リスクで大きな成果が期待できる在宅療法は、現在脳卒中から回復しつつある何千人もの人々にとって非常に有益なものである。そして重要なのは、既存の治療計画を変更することなく、その結果の改善に寄与することができるという点だと同氏はいう(「我々は誰の邪魔をするつもりもありません」と同氏)。

通常であれば「しかし、FDAが保険適用を承認するまでにはまだ5年かかるかもしれない」というような内容をここらで書くだろう。しかしBrainQは先日、画期的医療デバイス指定を取得したのだ。これは迅速承認プロセスで、2021年に入ってからはメディケアの適用を受ける資格も与えられている。つまり、BrainQは1〜2年先にはこのデバイスを出荷できている可能性があるということだ。

次のステップとして同社はより大規模な試験を行おうと考えており、最近の資金調達額の大部分(Hanaco Venturesが主導し、Dexcel PharmaとPeregrine Venturesが参加した4000万ドル)をこの試験に充てる予定である。

「これだけの資金を集めたのは、12の施設でとてもユニークな研究を行おうとしているからです」とドレクスラー氏は話す。提携先の病院や研究機関の名前はまだ公表できないようだが、基本的には脳卒中リハビリテーション分野のトップレベルの施設であり「これらトップレベルの施設が同じ研究に参加してくれて、これ以上のことは望めません。何か新しいことが起こるのではないかという大きな期待に胸を躍らせています。脳卒中の回復分野においてはこの20~30年ほとんど進歩がなく、理学療法が200年前から標準的に行われてきたのです」と話している。

もちろん保証はできないが、このような研究は障害を軽減するだけでなく、元に戻すための医学につながる可能性があるため、その価値には計り知れないものがあると同氏は期待に胸を膨らませている。

「2016年の自分のピッチデッキを見返していました。CEOとしての初期段階では大きな夢を持っていましたし、プロセスの初期には多くの懐疑的な意見を聞きましたが、その夢の多くが今、実現しつつあることを心から誇りに思います」とドレクスラー氏は語っている。

画像クレジット:BrainQ

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

AIを使った超音波分析の拡大に注力するイスラエルのヘルステックDiAが約15億円調達

イスラエルに拠点を置くAIヘルステック企業DiA Imaging Analysisは、深層学習と機械学習を利用して超音波スキャンの分析を自動化している。同社はこのほど、シリーズBのラウンドで1400万ドル(約15億3700万円)を調達した。

DiAの前回の資金調達から約3年後に行われた今回の投資ラウンドには、新たにAlchimia Ventures、Downing Ventures、ICON Fund、Philips、XTX Venturesが参加し、既存投資家としてCE Ventures、Connecticut Innovations、Defta Partners、Mindset Ventures、Shmuel Cabilly(シュムール・カビリー)博士らが名を連ねている。同社のこれまでの総調達額は2500万ドル(約27億4500万円)に達している。

今回の資金調達により、DiAはプロダクト範囲の拡大を継続し、超音波ベンダー、PACS / ヘルスケアIT企業、リセラー、ディストリビューターとのパートナーシップの新規構築や拡充を進めるとともに、3つの地域市場でのプレゼンスを強化していく。

このヘルステック企業は、AIを利用したサポートソフトウェアを臨床医や医療従事者に販売し、超音波画像のキャプチャと分析を支援している。このプロセスを手動で行うには、人間の専門家がスキャンデータを視覚的に解釈する必要がある。DiAは、同社のAI技術を「今日行われている手動および視覚による推定プロセスから主観性を取り除く」ものだと強調している。

同社は、超音波画像を評価するAIを訓練して、重要な細部の特定や異常の検出を自動的に行えるようにしており、心臓にフォーカスしたものを含む、超音波分析に関連する各種の臨床要件を対象とした広範なプロダクトを提供している。心臓関連のプロダクトには、駆出率、右心室のサイズと機能などのアスペクトの測定と分析の他、冠動脈疾患の検出支援などを行うソフトウェアがある。

また、超音波データを利用して膀胱容積の測定を自動化するプロダクトもある。

DiAによると、同社のAIソフトウェアは、人間の目が境界を検出して動きを認識する方法を模倣しており「主観的」な人間の分析を超える進歩につながるもので、スピードと効率の向上も実現するという。

「当社のソフトウェアツールは、正しい画像の取得と超音波データの解釈の両方を必要とする臨床医を支援するツールです」とCEOで共同創業者のHila Goldman-Aslan(ハイラ・ゴールドマンアスラン)氏は語る。

DiAのAIベースの分析は、現在北米や欧州を含む約20の市場で利用されている(中国ではパートナーが自社のデバイスの一部として同社のソフトウェアの使用の承認を取得したと同社は述べている)。DiAは、チャネルパートナー(GE、Philips、コニカミノルタなど)と協力して市場開拓戦略を展開しており、チャネルパートナーは自社の超音波システムやPACSシステムに追加する形で同社のソフトウェアを提供している。

ゴールドマンアスラン氏によると、現段階で3000を超えるエンドユーザーが同社のソフトウェアへのアクセスを有している。

「当社の技術はベンダーニュートラルであり、クロスプラットフォームであることから、あらゆる超音波デバイスやヘルスケアITシステム上で動作します。そのため、デバイス企業およびヘルスケアIT / PACS企業の両方と10社以上のパートナーシップを結んでいます。当該分野には、このような機能、商業的牽引力、これほど多くのFDA・CE対応のAIベースソリューションを持つスタートアップは他にありません」と同氏は述べ、さらに次のように続けた。「現在までに、心臓や腹部領域のための7つのFDA・CE承認ソリューションがあり、さらに多くのソリューションが準備されています」。

AIのパフォーマンスは、当然ながら訓練されたデータセットと同等である。そして、ヘルスケア分野での有効性は特に重大な要素である。トレーニングデータに偏りがあると、トレーニングデータにあまり反映されていない患者群で疾患リスクを誤診したり過大評価したりする、欠陥のあるモデルにつながる可能性がある。

AIが超音波画像の重要な細部を突き止めるためにどのような訓練を受けているのかと聞かれて、ゴールドマンアスラン氏はTechCrunchに次のように答えている。「私たちは多くの医療施設を通じて何十万もの超音波画像にアクセスできますので、自動化された領域から別の領域にすばやく移動する能力があります」。

「各種のデバイスからのデータに加えて、異なる病理を持つ多様な集団データも収集しています」と同氏は付け加えた。

「『Garbage in Garbage out(ゴミからはゴミしか生まれない)』という言葉があります。重要なのは、ゴミを持ち込まないことです」と同氏はいう。「当社のデータセットは、数人の医師と技術者によってタグ付けされ、分類されています。それぞれが長年の経験を持つ専門家です」。

「また、誤って取り込まれた画像を拒否する強力な拒否システムもあります。このようにして、データがどのように取得されたかに関する主観的な問題を克服しています」。

注目すべき点は、DiAが取得したFDAの認可が市販前通知(510(k))のクラスII承認であることだ。ゴールドマンアスラン氏は、自社プロダクトの市販前承認(PMA)をFDAに申請していない(また申請する意思もない)ことを認めている。

510(k)ルートは、多様な種類の医療機器を米国市場に投入する承認を得るための手段として広く利用されている。しかし、それは軽薄な体制として批判されており、より厳格なPMAプロセスと同じレベルの精査を必要としないことは確かである。

より大きなポイントは、急速に発展しているAI技術の規制は、それらがどのように適用されているかという点で遅れをとっている傾向があるということだ。巨大な展望が確実に開かれているヘルスケア分野への進出が増えている一方、まことしやかなマーケティングの基準を満たすことに失敗した場合の深刻なリスクもある。つまり、デバイスメーカーが見込んだ展望と、そのツールが実際にどれだけの規制監督下に置かれているかということの間には、依然としてギャップのようなものが存在している。

例えば、欧州連合(EU)では、デバイスの健康、安全性、環境に関するいくつかの基準を定めているCE制度において、一部の医療デバイスはCE制度の下での適合性についての独立した評価が必要になるが、実際にはそれらが主張する基準を満たしているという独立した検証が行われることなく、単にメーカーが適合性の宣言を求められるだけの場合もある。しかし、AIのような新しい技術の安全性を規制する厳格な制度とは考えられていない。

そこでEUは、来るべきAI規制法案(Artificial Intelligence Act、AIA)の下で「高リスク」と見なされたAIのアプリケーションに特化して、適合性評価の層を追加することに取り組んでいる。

DiAのAIベースの超音波解析のようなヘルスケアのユースケースは、ほぼ確実にその分類に該当するため、AIAの下でいくつかの追加的な規制要件に直面することになる。しかし現時点では、この提案はEUの共同立法者によって議論されているところであり、AIのリスクの高いアプリケーションのための専用の規制制度は、この地域では何年も効力を発揮していない状態にある。

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画像クレジット:DiA Imaging Analysis

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)