食料品店従業員の腰を守る外骨格のパイロット試験を経てVerve Motionが約16.5億円調達

ここ数年、エクソスケルトン(外骨格) / エクソスーツのカテゴリーが盛り上がっている。これは実に理に適っていると思う。2つの巨大な、そして劇的に異なる潜在的な顧客層があるからだ。1つは、ウェアラブルの支援によってメリットを得られる職種。もう1つは、このような技術が非常に役立つ可能性のある、モビリティの問題を抱える人々だ。

ハーバード大学のヴィース研究所(Wyss Institute for Biologically Inspired Engineering)と工学応用科学部に所属するConor Walsh(コナー・ウォルシュ)博士の研究室からスピンアウトしたチームによって2020年に設立されたVerve Motionは、現在のところ前者をターゲットにしている。労働集約的な仕事がしばしば負傷につながることを理解するのにたくさんの統計は必要ないかもしれないが、ここでは同スタートアップのサイトから3つほどご紹介する。

  • 連邦労働統計局によると、米国の職場では毎年100万件の背部傷害が発生している
  • 米国のBone and Joint Initiativeによると、背部傷害による労働損失日数は毎年2億6千万日以上にのぼる
  • 「Liberty Mutual Workplace Index 2018」レポートによると、これは米国の事業者にとって年間140億ドル(約1兆5400億円)の直接コストとなっている

画像クレジット:ADUSA Distribution

人々の良識に訴えられないのであれば、せめて彼らの財布に訴えることは可能なはずだ。いずれにしてもVerve Motionは、シードラウンドと、大手食料品流通会社ADUSA(Ahold Delhaize)での試験運用の成功を受けて、新たな資金調達を発表した。シードの調達はパンデミックの最中、フードサプライチェーンで働く多くのエッセンシャルワーカーが日常的に肉体的限界に追い込まれていた時に行われた。

Construct Capitalが主導した今回のシリーズAでは、Founder Collective、Pillar VC、Safar Partners、OUPなどの既存投資家が参加し、同社は1500万ドル(約16億5000万円)の資金を調達した。

共同創業者兼CEOのIgnacio Galiana(イグナシオ・ガリアナ)氏は、リリースで次のように述べている。「今回の新たな資金調達は、当社のソリューションの継続的な開発を促進し、製品に対する需要の高まりに対応するため事業規模を拡大して、これを最も必要としている労働者の方々に製品を提供するためのものです。新規および既存の優れた投資家グループの支援に感謝しています。また、未来の産業労働者のためのソリューションを創造するために、Construct Capitalを迎えることができてうれしく思います」。

Verveの最初の製品「SafeLift」は着用者の動きに適応する布ベースのソフトなエクソスーツで、腰にかかる負担を最大30~40%軽減することができる。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:エクソスケルトンVerve Motion資金調達倉庫

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

ウォルマートが25の配送センターにSymboticのロボットを導入

配送センターや倉庫用のロボットを作っている企業に、彼らの顧客企業が自動化を図る理由を尋ねてみると、異口同音に労働力不足や作業のスピードアップを挙げる。しかし迫りくる本当の真実は、ひと言に要約される。「Amazon(アマゾン)」だ。そして、最悪の危機を感じているのが小企業であることは事実だが、このオンラインリテールの市場支配に対して免疫のある者は1人もいない。スーパーマーケット最大手のWalmart(ウォルマート)でもだ。

米国時間7月13日は、このリテール大手の仲間がロボティクスの最新のパートナーシップを発表し、マサチューセッツの自動化企業Symboticとチームを組むことになった。本日の発表で両社はこれまでの協力関係をさらに拡大して、ウォルマートの25の流通センターをロボット化、「数年後」に完了する。

2017年のパイロット事業では、Symboticの自律型ロボティクスプラットフォームをウォルマートのフロリダ州ブルックスビルの流通センターに導入して、仕分けや棚卸し、荷降ろしの増量を狙った。

今回のプレスリリースではウォルマートのサプライチェーン担当執行副社長のJoe Metzger(ジョー・メッツガー)氏は次のように述べている。「今日行われているDXは顧客の習慣の進化にともなうものであり、小売業界の形を変えつつあります。現在と未来の顧客に奉仕するためには、私たちの事業が社員たちに正しいツールと教育訓練を提供し、顧客が求める品物を彼らがそれを欲するときに、比べられないほどの利便性で提供できなければなりません。私たちは今、その過程をエンド・ツー・エンドまで最適化するために、サプライチェーンに対する前例のないほど大規模な投資を行っています」。

ウォルマートはここ数年間、ロボットのパイロット事業に熱心で、一部を実際に採用しようとも考えていた。しかしながら前にも述べたように、現在のところその結果にはムラがある。最も目立つのは、Bossa Nova Roboticsのケースだ。同社のロボットは在庫管理用に採用されたが、突然、契約を打ち切られた。もちろんパイロット事業だったが、小さなスタートアップにとって打撃は大きい。

それに比べると、Symboticには実績がある。同社の顧客には、ウォルマート最大の競合他社であるTargetがいる。ウォルマートには、ロボティクス部門としてKiva Systemsを買収したAmazonのように、独自にスタートアップを買収する手もあったと思われるが、彼らとの関係の現状を見るかぎり、それはハードルが高いようだ。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:WalmartSymbotic倉庫eコマース

画像クレジット:Walmart

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

見た目以上に難しい、人にジャケットを着せるロボットのプログラミングにMITチームが挑戦

私たちが大好きなYouTubeのポンコツロボットたちから学んだことがあるとすれば、人間とロボットのインタラクションは難しいということだ。硬いロボットの腕が、柔らかい人間の体の周りで繊細な作業をする方法を開発するのは、口でいうほど簡単ではない。

今週、MITコンピュータ科学・人工知能研究所(Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory、CSAIL)のチームは、ロボットアームを使って人の着替えを手伝う研究を紹介している。このような技術の将来性は明らかで、私たちの多くが当たり前のように思っているタスクを、モビリティの問題を抱える人々ができるように支援することだ。

その中でも特に大きなハードルとなっているのが、人の形を効率的にナビゲートし、相手を傷つけることのないアルゴリズムの開発だ。あらかじめプログラムされたモードでは、形状や人間の反応など、さまざまな変数に遭遇する。一方、変数に過剰に反応してしまうと、最適なルートがわからなくなりロボットが固まってしまうことがある。

そこでチームは、さまざまなシナリオに適応し、学習していくシステムの開発に着手した。

画像クレジット:MIT CSAIL

MITはブログ記事でこう書いている。「人間の安全性を理論的に保証するために、チームのアルゴリズムは人間のモデルの不確実性を推論しました。人間が他の人間を理解する方法をより忠実に再現するために、ロボットが1つの潜在的な反応しか理解できないような単一のデフォルトモデルではなく、多くの可能性があるモデルを機械に理解させました。ロボットはデータを収集することで、不確実性を減らし、モデルを改良していきます」。

チームは、この種のタスクに対する人間の反応についても研究する予定だという。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:マサチューセッツ工科大学

画像クレジット:MIT CSAIL

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

建ロボテックが鉄筋結束作業を行う「全自動鉄筋結束トモロボ」を開発、年内量産開始を目指す

建ロボテックが鉄筋結束作業を行う「全自動鉄筋結束トモロボ」の年内量産開始を目指すと発表

「世界一ひとにやさしい現場を創る」をビジョンに、ロボットが人とともに働く楽しい建設現場の実現を目指すロボットソリューションの建ロボテックは、7月8日、人の代わりに鉄筋結束を行う協働型ロボット「全自動鉄筋結束トモロボ」の開発を終え、年内の量産機提供開始を目指すと発表した。

建設業界では、人口減少の影響で労働者数が減る傾向にあり、さらに労働時間や休日などの条件が原因で若者の離職率が高いという。しかも2024年4月には「時間外労働の上限規制の適用」が実施され作業時間が短縮されるなど、人手不足の深刻化が心配されている。こうした問題に対処すべく、建ロボテックは、「ロボット本体とともに、ロボットを活用したスマート施工の導入から運用、アフターケアまでの全プロセスに必要なサポートを包括したソリューションを、ワンストップで従量課金制にて提供」している。

なかでも建ロボテックは、協働型ロボット「トモロボ」シリーズ第1段として、鉄筋工事の約2割の工数を占めると言われる鉄筋拘束作業を自動化する「鉄筋拘束トモロボ」を2020年1月から提供を開始した。市販の電動工具をセットして使用する国内初の小型鉄筋結束ロボットソリューションだ。現在約500台が21の企業の56の現場で活躍している。

しかしこれは、1列(レーン)分の鉄筋拘束作業を終えると、人の手で隣のレーンに移動させる必要があり、1人のオペレーターが同時に運用できるロボットは3台が上限だった。そこで、レーンを移動させる際に使われる「スライダー」にセンサーとモーターを組み込んだ「自動スライダー」を開発。トモロボとスライダーとの動作アルゴリズムにより、トモロボは自動でレーンを移動できるようになった。スライダー自身も、次のレーンに移動して待機するという具合に、すべて自動化される。スライダーは、通常の鉄筋をレールとして使用するため、経費も抑えられる。これで「鉄筋拘束トモロボ」が「全自動鉄筋拘束トモロボ」に進化する。10月から量産機開発のための試験運用を開始し、「国内初の現場で実利用が可能な小型全自動鉄筋結束ロボットソリューション」を年内に提供開始する予定。さらに、自動スライダーにトモロボの運用管理機能を搭載さいたオペレーターロボットも、今年中の開発完了を目指している。

レーンを移動させる際に使われる「スライダー」にセンサーとモーターを組み込んだ「自動スライダー」

トモロボとスライダーとの動作アルゴリズムにより、トモロボは自動でレーンを移動できる

トモロボとスライダーとの動作アルゴリズムにより、トモロボは自動でレーンを移動できる

建ロボテックが鉄筋結束作業を行う「全自動鉄筋結束トモロボ」の年内量産開始を目指すと発表

レーンチェンジをする鉄筋の端に「スライダー」が移動し、トモロボの到着を待つ。鉄筋結束作業を終えた後、トモロボは待機している「スライダー」に移動し、スライダーに乗る。トモロボが乗った後、スライダーは次の鉄筋結束作業場所に移動する。これらすべてを自動で行う

「全自動鉄筋結束トモロボ」は、2021年7月14日から開催される「生産現場におけるロボット活用を推進する専門展示会 第4回自動化・省人化ロボット展」で初披露される。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:建設 / 建築(用語)建ロボテック(企業)日本(国・地域)

入門ロボット「mBot」でプログラミングが学べる小中学生向け「mBotスタートガイドセット」が発売

入門ロボット「mBot」でプログラミングが学べる小中学生向け「mBotスタートガイドセット」が発売

SB C&S(旧ソフトバンク コマース&サービス)は7月12日、小学校中学校でのプログラミング教育およびSTEM教育用のMakeblock製入門ロボット「mBot」(エムボット)に、SB C&Sオリジナルのスタートガイドをセットにした「mBotスタートガイドセット」の発売を開始した。SoftBank SELECTION オンラインショップとAmazonで購入できる。SoftBank SELECTION オンラインショップでの直販価格は1万6500円(税込)。

同製品は、プログラミング学習用ロボット「mBot」(mBot V1.1-Blue Bluetooth Version)に、SB C&Sが制作した学習教材「楽しいプログラミング! mBotスタートガイド」をセットにして、プログラミングの基本からセンサーなどを使った応用的なプログラミングまで8つのレッスンが学べるというもの。また、モーターが回る仕組み、摩擦、色と光の関係など、プログラミング以外の物理的な要素も同時に学べる。

mBotは、STEM教育用機器の開発販売を行う中国深圳のスタートアップMakeblockの製品。簡単に組み立てられて、障害物回避やライントレースといったあらかじめ設定されている機能を使ってすぐに遊べる。Scratchベースの「mBlock」(エムブロック)という専用のビジュアルプログラミングソフトウェアでプログラミングでき、豊富な拡張パーツで世界を広げることもできる。

「mBotスタートガイド」で学べるレッスンは次の8つ。

  • 円を描こう(順次処理1):モーターの仕組みとプログラムの基本である順次処理を学び、mBotでいろいろな大きさの円を描くプログラミングに挑戦
  • 8を目指そう(順次処理2):摩擦について学び、mBotが8の字を描くプログラムに挑戦
  • 光と音のワンダーランド(LEDとブザー):繰り返し処理や色と光の関係、音が伝わる仕組みについて学び、パレードを行うプログラミングに挑戦
  • メッセージを伝えよう(メッセージ機能1):メッセージの機能について学び、メッセージを使って画面上のキャラクターを動かすプログラミングに挑戦
  • コントローラーで動かそう(メッセージ機能2):メッセージ機能を使い、mBotを自由に動かすコントローラーのプログラミングに挑戦
  • 目指せ! 自動運転車!(超音波センサー):音の周波数や超音波と超音波センサーの仕組みについて学び、mBotが壁にぶつからずに動き続けるプログラミングに挑戦
  • おやすみmBot(光センサー):光センサーの仕組みについて学び、明るさによって違う動きをするプログラミングに挑戦
  • 部屋の中のmBot(ライントレースセンサー):ライントレースセンサーの仕組みについて学び、黒い線の上に来たら、違う動きをするプログラミングに挑戦

「mBotスタートガイドセット」には、mBotスタートガイド、mBot組み立て用パーツ、ライントレースシート、組み立て用ドライバー、リモコン、USBケーブル、取り扱い説明書が含まれる。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:教育 / EdTech / エドテック(用語)ScratchSTEM教育(用語)ソフトバンクグループ / Softbank Group(企業)プログラミング(用語)Makeblock(企業)日本(国・地域)

即興で難易度の高い地形にも対応する「転ばないロボット」を研究者たちが開発

ロボットというものは即興が苦手だ。いつもと違う路面や障害物に遭遇すると、突然停止したり、激しく転倒したりする。しかし研究者たちは、どんな地形にもリアルタイムで対応し、砂や岩、階段などで路面が急に変化しても、その場で直ちに歩幅を変えて走り続けることができるロボットの新しい動作モデルを開発した。

ロボットの動きは正確でさまざまな用途に対応でき、段差を登ったり崩れた場所を渡ったりすることを「学習」することができるが、これらの行動は個々の訓練されたスキルに近いもので、ロボットはそれらを切り替えて行っている。また、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)が開発した「Spot(スポット)」のようなロボットは、押したり蹴ったりしても跳ね返せることで有名だが、これはシステムが物理的な異常を修正しながら、歩行における変わらない方針を追求しているに過ぎない。対応能力を備えた動作モデルもいくつか開発されているが、非常に特殊なもの(例えば、このモデルは本物の昆虫の動きに基づいている)だったり、対応するまでにかなり時間がかかるものもある(対応力を発揮する前に、確実に倒れてしまうだろう)。

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Facebook AI(フェイスブックAI)、UC Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)、Carnegie Mellon University(カーネギーメロン大学)の研究チームは、この新しい動作モデルを「Rapid Motor Adaptation(迅速運動適応)」と呼んでいる。これは、人間や他の動物が、さまざまな状況に合わせて、すばやく、効果的に、無意識のうちに歩き方を変えられることに由来している。

「例えば、歩けるようになってから、初めて砂浜に行ったとします。足が沈み込み、それを引き上げるためには、より大きな力を加えなければなりません。違和感は覚えるでしょうが、数歩歩けば固い地面を歩くのと同じように自然に歩けるようになるでしょう。そこにはどんな秘密があるのでしょうか?」と、Facebook AIとカリフォルニア大学バークレー校に所属する上級研究員のJitendra Malik(ジテンドラ・マリク)氏は問いかける。

確かに、砂浜に行ったことがなかった人でも、人生の後半になってから初めて浜辺に行った人でさえ、すぐに自然に歩くことができる。柔らかい場所を歩くために、特別な「サンドモード」に切り替えているわけではない。動き方を変えることは自動的に行われ、外部環境を完全に理解する必要もない。

シミュレーション環境を視覚化したもの。もちろん、ロボットはこれらを視覚的に認識することはない(画像クレジット:Berkeley AI Research, Facebook AI Research and CMU)

「置かれた状態に違いが生じると、その影響によって身体自体に生じる違いを、身体が感知してそれに反応するのです」と、マリク氏は説明する。RMAシステムも同じように機能する。「歩く場所の環境が変わると、0.5秒以下の非常に短い時間で十分な測定を行い、その環境が何であるかを推定し、歩行の方針を修正します」。

システムはすべて、現実世界をバーチャルで再現したシミュレーションで訓練された。そこでは、ロボットの小さな頭脳(すべてはロボットに搭載されている限られた計算ユニット上でローカルに実行される)が、(仮想)関節や加速度計などの物理的なセンサーから送られてくるデータを、即座に認知して応答し、転倒を回避しながら最小限のエネルギーで最大限の前進を行う歩き方を学習した。

マリク氏はこのロボットが視覚入力を一切使用していないことを指摘し、RMAアプローチの完全な内部性を強調する。しかし、視覚を持たない人間や動物だって普通に歩けるのだから、ロボットにできないことがあるだろうか?歩いている砂や岩の正確な摩擦係数などの「外部性」を推定することは不可能なので、このロボットは自分自身に注意を向けるだけということになる。

「私たちは砂について学ぶのではなく、足が沈むことについて学ぶのです」と、共同研究者であるバークレー校のAshish Kumar(アシシュ・クマール)氏は述べている。

根本的にこのシステムは2つの部分から成り立っている。1つはロボットの歩行を実際に制御する常時稼働のメインアルゴリズム。そしてもう1つは、それと並行して作動し、ロボットの内部情報の変化を監視する対応アルゴリズムだ。顕著な変化が検出されると、それを分析して「足はこうなっているはずだが、こうなっているということは、状況はこうなっているということだ」と、メインモデルに調整方法を指示する。それ以降、ロボットは変化した状況下においても、どのように前進するかということだけを考え、実質的に即興で状況に合わせた歩行を行うようになる。

シミュレーションによるトレーニングを経て、このロボットは以下のようにニュースリリースにあるとおり、現実の世界でも見事に狙いを成功させた。

このロボットは砂、泥、ハイキングコース、背の高い草、土の山など、すべての実験で一度も失敗することなく歩行できました。ハイキングコースでは、70%の成功率で階段を降りることができました。セメントの山や小石の山では、訓練中に初めて出くわす不安定な地面や沈む地面、障害物となる植物、階段などがあったにもかかわらず、80%の成功率で乗り越えることができました。また、体重の100%に相当する12kgの荷物を積載して移動する際にも、高い成功率で身体の高さを維持することができました。

画像クレジット: Berkeley AI Research, Facebook AI Research and CMU

このような多くの状況における歩行の例は、こちらの動画や上の(ごく簡単な)GIFで見ることができる。

マリク氏は、NYU(ニューヨーク大学)のKaren Adolph(カレン・アドルフ)教授の研究を参考にした。同教授の研究では、人間が歩き方を覚えるプロセスが、いかに対応性が高く、自由な形態であるかを示している。どんな状況にも対応できるロボットを作るには、さまざまなモードを用意してそこから選ぶようにするのではなく、はじめから対応力を身につけなければならないというのが、チームの直感だった。

すべての物体や相互作用を網羅的にラベル付けして文書化しても、洗練されたコンピュータビジョンのシステムを構築することはできないのと同じように、砂利道、泥道、瓦礫、濡れた木の上などを歩くために、それぞれ専用のパラメータを10個、100個、さらには数千個も用意しても、多様で複雑な現実の世界にロボットを対応させることはできない。さらに言えば、ただ「前進せよ」という一般的な概念以外のことは何も指定しなくても済むようになるのが理想だ。

「脚の形状やロボットの形態については、あらかじめ一切プログラムしていません」と、クマール氏は述べている。

つまり、このシステムの基本部分は、四足歩行ロボットだけでなく、他の脚を持つロボットや、さらにはまったく別のAIやロボット工学の分野にも応用できる可能性があるということだ。

「ロボットの脚は手の指にも似ています。脚が環境と相互作用するように、指は物体と相互作用します」と、共同執筆者であるCarnegie Mellon University(カーネギーメロン大学)のDeepak Pathak(ディーパック・パターク)氏は指摘する。「基本的な考え方は、どんなロボットにも適用できます」。

さらにマリク氏は、基本アルゴリズムと対応アルゴリズムの組み合わせが、他のインテリジェントなシステムにも応用できることを示唆している。スマートホームや自治体のシステムは、既存のポリシーに依存する傾向があるが、しかし、状況に応じてその場で対応できるようになったらどうだろう?

今のところ、チームは初期の研究成果を「Robotics:Science and Systems(ロボット工学:科学とシステム)」会議で論文として発表しているだけであり、まだ多くのフォローアップ研究が必要であることを認めている。例えば、即興的な動作を「中期的な」記憶として内部にライブラリー化したり、視覚を利用して新しいスタイルの運動を開始する必要性を予測したりすることなどが考えられる。とはいえ、RMAのアプローチは、ロボット工学の永遠の課題に対する将来性の高い新たなアプローチとして期待が持てそうだ。

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タグ:Facebook AIUC BerkeleyCarnegie Mellon University

画像クレジット:Berkeley AI Research, Facebook AI Research and CMU

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ロシアYandexの自動運転部門がGrubHubと提携、米国の大学キャンパスにロボット配達を展開

ロシアの大手ハイテク企業であるYandex(ヤンデックス)の自動運転部門としてスピンオフしたYandex Self-Driving Group(ヤンデックス・セルフドライビング・グループ)は、フードデリバリーサービスのGrubHub(グラブハブ)と提携し、米国の大学キャンパスで複数年にわたりロボットによる配達を行うと発表した。Yandex Self-DrivingのDmitry Polishchuk(ドミトリー・ポリシュチュク)CEOからの発表によると、同社はこのパートナーシップの期間中に250以上のキャンパスにサービスを提供したいと考えており、まずは今秋に数十台のロボットを導入することから始めるという。

Yandexの自動運転部門は、2020年9月にUber(ウーバー)との合弁会社からスピンオフした。2021年5月には、自動運転で合計700万マイル(約1100万キロメートル)の走行距離を記録し、当時のWaymo(ウェイモ)を上回ったと発表している。Yandexは2017年よりフルサイズの自律走行車を開発しており、イスラエルのテルアビブやミシガン州のアナーバー、ロシアのイノポリスで、ロボットタクシーを使ったテストを行っている。2020年4月には、ロシアのスコルコボで、同社の自律走行車と同じ自動運転技術スタックを搭載した重量約68キログラムの6輪自動走行ロボット「Yandex.Rover(ヤンデックス・ローバー)」による商業配達を初めて開始した。

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「技術は確かに非常に複雑ですが、小さな町や大都市の特定の地区では、配送ロボットやロボットタクシーの形で導入を開始できるレベルに達しています」と、同社の広報担当者はTechCrunchに語り、次のように続けた。「3~4年後には、モスクワやニューヨークのような都市の中心部における渋滞時間帯に、経験豊富な人間のドライバーと同じように、安全かつ効率的に運転できるレベルに到達すると、私たちは確信しています」。

Yandexの商業化へのアプローチは独特だ。自動車用の自律走行技術を開発している多くの企業の中でも、Yandexはまずロボットで市場に出ようとしており「それは非常に効率的な方法のように思えます」と、広報担当者は語っている。「2018年6月に始まった配達用ロボットを作るというアイデアから、このようなきちんとした商業契約を結ぶまでに2年を要しました」。

Yandex.Roverは、ロシアではすでにフード配達プラットフォーム「Yandex.Eats(ヤンデックス・イーツ)」と食料品速達プラットフォーム「Yandex.Lavka(ヤンデックス・ラフカ)」で商用テストを行っている。同社の発表によると、Yandex.Roverは、時速5〜8キロメートルで移動し、歩道、歩行者エリア、横断歩道を自律的に運行できる。自動車が通行不可のキャンパスエリアには適したアイディアだ。このサービスはすでにGrubHubのアプリに完全に統合されている。ユーザーエクスペリエンスの面では、ローバーが目的地に到着すると、顧客はプッシュ通知を受け取り、外に出てアプリでロボットのハッチを開けることができる。

Yandexによると、同社の配送ロボットは、昼夜を問わず、雨天時や雪天時にも、信号機付きあるいは信号機のない横断歩道でも、運行させることができるという。ローバーはほとんどの場合、自律的に運行可能だが、同社の広報担当者によると、酔っぱらった大学生に乗られるなど、困難な状況に陥った場合には、遠隔支援のリクエストを送信することがあるとのことだ。

同社では、まだGrubhubとの提携を反映したロボットのブランド化は行っていないとTechCrunchに語っているが、今秋に数十台の車両を送り出すという目標が、無理なく達成できることを期待していると述べている。

「Yandexと協力して、大学生のフードデリバリー体験を変えていきます」と、Grubhubの法人・大学パートナー担当バイスプレジデントであるBrian Madigan(ブライアン・マディガン)氏は語っている。「私たちは、学生たちのユニークな食事のニーズに対応しようとしている全国の大学に、費用対効果が高く、拡張性があり、迅速なフードの注文 / 配達機能を提供できることをうれしく思います。大学のキャンパスは、特にフードデリバリーにおいて、自動車の乗り入れが難しいことで知られていますが、Yandexのロボットは、自動車が通行できないキャンパスの一部にも簡単にアクセスすることができます。これは大学が新しいテクノロジーを導入する際に直面する大きなハードルを効果的に取り除くことになります」。

問題は、新型コロナウイルス収束後の秋の新学期が始まる頃、酔っ払った男子学生がロボットを破壊したり盗んだりしようとする危険を掻い潜って、それらのロボットのうち何台がYandexに戻って来られるかということだ。

Yandexは、ロボットタクシーサービスの開発も継続して事業の商用化を進め、同社の自動運転技術をさまざまな場面で活用していきたいと述べている。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:YandexGrubHub自動運転ロボット配達フードデリバリー

画像クレジット:Yandex Self-Driving Group

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Fetch RoboticsのCEOが、自社の買収と倉庫ロボットの未来について語る

米国時間7月1日、エイタープライズ・コンピューティング企業のZebra Technologies(ゼブラ・テクノロジーズ)はFetch Robotics(フェッチ・ロボティクス)を買収する計画を発表した。カリフォルニア州サンノゼ拠点のスタートアップは、倉庫・仕分けロボティクスの主流として、企業の裏方を自動化するモジュラー・システムを長年提供している。

会社評価額は3億500万ドルで、すでに5%を取得済みのZebraは、残りの95%を2億9000万ドルで買収する。この業界では史上最高金額であり、パンデミック下で広がる労働力不足が背景にある。

ニュースが報じられた後、本誌はFetchの共同ファウンダー・CEO、Melonee Wise(メロニー・ワイズ)氏にこの買収および倉庫ロボティクスの将来につい話を聞いた。

なぜこの買収はFetchにとって正しい行動なのですか?

過去7年間、私たちは非常に優れたクラウド・ロボティクス・プラットフォームを構築してきました。約2年前、ZebraはFetchに投資をして、提携を通じて互いに協力してきました。初めに行ったことの1つが、彼らのモバイル・コンピューティング機器の統合で、当社のクラウド・ロボティクス・プラットフォームのワンボックス体験のためでした。当社顧客がロボットを導入したとき、それまで使っていたハンドスキャナーを使ってロボットにバーコードを読み取らせることができます。

シリーズDラウンドで資金調達した時、このチャンスが訪れました。過去数年間を見てもらえば、彼らと良好な関係にあったことがわかるでしょう。パンデミックの中、オートメーション技術の需要は急速に高まっています。パンデミック以前から倉庫・仕分けの労働力はすでに不足していましたが、パンデミックがそれをいっそう悪化させました。Zebraと一緒になるもう1つ大きな利点は、彼らには強力な市場開拓能力があり、私たちの販売能力を増幅できることです。私たちがつきあいたい顧客をZebraはすでに掴んでいます。当社がもっと幅広く奥深く潜在顧客にリーチする大きな後押しになります。

Fetchは適した買収対象だったと想像しますが、私は、Walmart(ウォルマート)がAmazonロボティクスと競っているような話だといつも思っていました。何年にもわたって多くの企業からアプローチされたのではないでしょうか。今回の買収の方が理にかなっていると最終的に判断した理由を聞かせてください?

この買収が意味をなす理由は、当社の長期的ビジョンと一致しているからだと私は思っています。プラットフォームを作ったとき、私たちは統一化を念頭に置いて作りました。当社のロボットだけではなく。私たちは何年もかけて、徐々に他のパートナーもプラットフォームに載せてきました。当社はSICKと提携していますし、VARGOなどの倉庫オートメーション・プロバイダーとも提携関係にあります。それは今後も変わりません。私たちはこれからもパートナーに優しく、他社デバイスをエコシステムに迎え入れていきます。この選択肢と可能性を見れば、これが素晴らしいチャンスであり、私たちが作りたかったチームとよく合っていることがわかるでしょう。

Zebraは独自のロボットを開発していて、他のロボティクス会社にも投資しています。貴社はエコシステムの基盤になるのですか? Zebraはロボティクス小売・物流エコシステムをFetchを中心に構築しようとしているのですか?

はい、これまでそのように検討されています。今も発展中です。もちろん、すべてを詳しくお話することはできません。しかも、まだ契約完了までには30日だか35日あるので、当社はまだ独立会社として活動しています。私たちの考えているビジョンについて、Zebraは彼らが作り上げようとしている全く新しいソリューションの中心にFetchを置くことを非常に喜んでいます。彼らにとってこれは戦略的に高い優先順位にあります。

Fetchブランドは残りますか? 会社はサンノゼに留まりますか? あなた自身は残りますか?

Fetchは移動しません。私たちは一種の中心的存在になるので、チームをサンノゼに置いたままにしたいとZebraは考えています。私も動かない予定です。詳細はまだ検討中です 〈中略〉 Fetchのブランドは非常に強力なので、両方の世界の良いところを取れるようにするつもりです。

買収は、Fetchのような会社が目指していたものですか? これは必然のようなものだと考えていますか?

複雑だと思っています。会社を始めた時、私はほとんど何も計画していませんでした。ただ、何かを作りたかっただけです。本当の意味でそう言っています。何かを作って、かつ失敗したくなかったのです。問題は、失敗しないとはどういうことかです。現実として、過去20何年間、ロボティクス会社はほとんどIPOしていません。私たちはSPAC(特別買収目的会社)を考え始めています。これまでに伝統的方法でIPOしたロボティクス会社はありません。

もしある日私に、IPOと買収のどちらの可能性があるかとあなたが尋ねたら、おそらく買収と答えたでしょう。なぜならロボティクス企業にはIPOの歴史がないからです。その理由はいろいろあります。ハードウェア集約型ビジネスであること。多くのテクノロジーと投資が必要であること。多くの場合、非上場を続けています。公開企業にとって、この奥深いテクノロジーに投資する損益計算書を維持することは困難です。ただし変わり始めていると思います。SPACの登場によって大きく変わることを期待しています。それでも、今後10年間はIPOよりも買収の方が多いと私は考えています。

過去に買収を持ちかけられたことはありますか?

はい、過去には、でもほとんどは時期が早すぎました。

早すぎるというのはどういう意味ですか?

適切な時期だと感じなかっただけです、いろいろな理由で。たとえば、私の望むことに関係するもの。チームが望むことに関係するもの。さらには私たちの出資者の望むことに関係するもの。関係する人がたくさんいます。これは常に難しい質問です。かつてこういう話が持ち上がったとき、市場はまったく定義されておらず新しかったので、私たちはどうなっていくかをただ見ていたかった。今は環境がずっと構造化されているので、転換点を探し始めたところです。

海外展開の拡大は計画に入っていますか?

はい、現在ヨーロッパの数社と契約しています。アジア太平洋地区にも進出していて、拡大を目指しています。現時点では、どの国にも大きく賭けるつもりはありません。市場が発展していくのを待っているところですが、拡大はを目指しています。

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ヒートアップする倉庫や仕分けのロボティクス、Zebra TechnologiesがFetchを約324億円買収

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Pepper生産中止・肉の包装・ベリーの収穫、多数の資金調達が行われた今週のロボティクスまとめ

私たちはピッツバーグでの大規模なイベント終えたばかりだ。来週にはインタビューや発表されたプロフィール、その他の楽しい情報をすべて見直した上で感想をお届けしたい。一方、山のような投資ニュースに押されているせいで、後回しになっている部分もあることをお伝えしておく。そしてPittsburgh Robotics Network(PRN、ピッツバーグ・ロボティクス・ネットワーク)が、私たちのイベントと同じ日に、独自の大規模イベントを開催したことにも注目したいが、実際今週は国の政治家の訪問も含めて、市内では多くの活動が行われていたのだ。

PRNのプレスリリースは以下の通りだ。

本アライアンスには、カーネギーメロン大学、Argo AI(アルゴAI)、Aurora(オーロラ)、ピッツバーグ大学、Kaarta(カールタ)、RE2 Robotics(RE2ロボティクス)、Neya Systems(ネヤ・システムズ)、Carnegie Robotics(カーネギー・ロボティクス)、HEBI Robotics(HEBIロボティクス)、Near Earth Autonomy(ニア・アース・オートノミー)、BirdBrain Technologies(バードブレイン・テクノロジーズ)、Omnicell(オムニセル)、Advanced Construction Robotics(アドバンスト・コンストラクション・ロボティクス)など、ピッツバーグ地域のトップクラスのロボット企業、研究機関、大学のリーダーたちが参加している。Richard King Mellon (リチャード・キング・メロン)財団は、今回の会員数の増加を記念して、PRNの継続的な発展を支援するために12万5000ドル(約1395万円)の助成を行った。

先週私は、資金調達の発表が活発になるだろうと示唆したが、今週は確かにそれが実現した。かつては、夏枯れと呼ばれるような現象が起きていたものだ。それがおそらくはパンデミックのせいなのか、かつてのようなのんびりしたシーズンはいまは起きそうもない。VCたちはロボットに非常に積極的で、カテゴリーを問わず資金を投入し続けている。

しかし、その話を始める前に、Pepper(ペッパー)に対して少々悲しいお別れを告げておこう──少なくとも今は。SoftBank Robotics(ソフトバンク・ロボティクス)の担当者がTechCrunchに語ったところによれば、SoftBank Roboticsは、この愛嬌のある挨拶ロボットの生産を一時停止するとのことだ。ロイターが最初に、フランス国内で330人分の雇用枠を削減することをはじめとする、ソフトバンクのロボット部門の「縮小」を最初に報じた。ソフトバンクはプレスリリースの中で「ソフトバンクの子会社であるSoftBank Robotics Groupは、2012年以降ヒューマノイド(人型)ロボットに投資を続けてきました。PepperならびにNAO(ナオ)ロボット事業はこの先も継続していく意向です」と述べている。

画像クレジット:Aldebaran Robotics(CC-BY-3.0ライセンス)

おさらいしておくと、投資大手のソフトバンクが2021年にフランスのロボット企業Aldebaran Robotics(アルデバラン・ロボティクス)を買収したことで、SoftBank RoboticsとPepperが誕生した。後者は、その分野ではかなり広く普及していた研究用ロボット「Nao(ナオ)」を発展させたものだ。今でも、あちこちの大学や研究機関でこのロボットを目にすることができる。

Pepperは、その基礎となる技術の一部を、より多くの人々に提供しようとしたものだ。このロボットは人間に近い大きさで作られ、タブレットを持って挨拶をするようにデザインされていた。だが正直にいって、それは「それっぽいもの」というだけだった。テクノロジーを適用できる問題を探して、Applebee(アップルビー、米国のファミリーレストラン)での挨拶や、空港での情報提供などを行うことができる洗練されたロボットとして売り込まれた。

なぜPepperがうまくいかなかったのか、そのことに2020年の問題がどれほど影響しているのかについての詳細は後回しにするとして、そもそも私はこのロボットが本当に役に立つのかどうかをいつも疑問に思っていた。これには高度なロボット技術が必要とされるという説得力のある議論を見つけることは、なかなか難しい。もちろん、研究用ロボットの製作に特化しても、せいぜい客寄せのための目玉商品にしかならない、という、はるかに説得力のある議論もある。

画像クレジット:CMR Surgical

とはいえ、ロボット投資にはまだまだ期待が持たれている。そしてSoftBank Roboticsも規模は縮小しているかもしれないが、同社の投資部門は、メッセージボードを手に持っているだけではないロボットに対して、非常に強い関心を持っているようだ。たとえばVision Fund 2(ビジョンファンド2)は、CMR Surgical(CMRサージカル)の6億ドル(約669億6000万円)に及ぶ大規模なシリーズDを主導している。英国を拠点とするこの外科用ロボット企業は、いまやキーホール手術の技術で30億ドル(約3348億円)の評価を受け、ユニコーン3個分の価値となっている。

私がこのカテゴリーで最も魅力的だと思う理由は、高度に専門化した施術の分野を実質的に平準化できるという期待からだ。この技術へのアクセスは、高額な医療を受けることが困難な発展途上国やその他の市場にとって、非常に大きな意味を持つ。

画像クレジット:Soft Robotics

一方Soft Robotics(ソフト・ロボティクス、SoftBank Roboticsに似ているが「bank」が外れている)は、その23億ドル(約2553億円)のシリーズBを1000万ドル(約11億円)拡大する中で、パンデミックによる需要について言及している。すべてがアプトン・シンクレア(米国精肉業界の実態を告発した小説家)の書く世界のようではないものの、食肉加工業界はパンデミックの最中、まったくの地獄のような様相だった(私自身は肉を食べないので、この問題に関する私の個人的な考察は省くことにする)。Soft Roboticsは、損傷しやすい食品を移動させることができる空気圧式のグリッパーを提供しており、ロボットピッキングの分野では以前から注目されていたスタートアップだ。

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画像クレジット:Traptic

損傷しやすい食品の移動といえば、和たちたちは米国時間7月1日の午前中に、2019年のStartup BattlefieldのファイナリストであるTraptic(トラプティック)が、イチゴ摘みロボットの商業展開を開始したことを独占的に報じた。これは、先に行われた未発表である500万ドル(約5億6000万円)のシリーズAに続くもので、これによってこれまでの資金調達額は840万ドル(約9億4000万円)に達した。他の多くの業界と同様に、パンデミックのためにフィールドワークは大規模な人員不足に陥った。

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画像クレジット:Toggle

飲み物をミックスするロボットキオスクのBotristaは、今週シリーズAを発表した。同社は、最大8種類の材料を約20秒で混ぜることができるこのシステムをさらに改良するために、1000万ドル(約11億1000万円)を調達した。一方、ニューヨークを拠点とする建設用ロボット企業ToggleはシリーズAで800万ドル(約8億9000万円)を調達した。

画像クレジット:TechCrunch

退屈さを感じている暇はなかった。水曜日(米国時間6月30日)の大きなまとめを、木曜日に向けて書くおもしろさを味わえたからだ。だが時には、朝に大きなニュースがやってくることもある(ロボット関連のスタートアップ企業のみなさん、勝手なお願いだが、木曜日に大きなニュースを発表するのは控えていただけると個人的には大変助かる。ご協力に対してあらかじめお礼を述べておこう)。たとえばZebra(ゼブラ)がFetch(フェッチ)を2億9千万ドル(約323億1000万円)で買収する意向を示したといったニュースだ。この件については、もう少し考えをまとめて、別記事で紹介するが、とりあえず、FetchのCEOであるMelonee Wise(メロニー・ワイズ)氏の言葉を紹介しておきたい。

Fetchチームは、Zebraに参加してAMR(自律走行搬送ロボット)と当社のクラウドベースのロボティクスプラットフォームを通じて、柔軟な自動化の導入を加速させることに、期待を膨らませています。私たちは、適切なチームと適切な技術を合わせて、お客様の真の問題を解決できるエンド・ツー・エンドのソリューションを提供します。お客様がフルフィルメント、流通、製造のオペレーションを動的に最適化し、総合的に協調させることを支援することを通して、需要の増加に先んじて、配送時間を短縮し、労働力の減少に対応することを可能とします。

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タグ:SoftBankPepperAldebaran RoboticsCMR SurgicalSoft RoboticsToggleFetch資金調達

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

イチゴを傷つけずに収穫するロボットのTrapticが商業展開を開始

Trapticを初めて取り上げたのは、2019年のDisrupt SFのBattlefieldで決勝に残ったときだ。米国時間7月1日、サウスベイのロボティクススタートアップは、いくつかの大きな進展を発表した。Trapticは2021年7月初めに、イチゴを収穫するモバイルロボットの商業展開を開始する。

Trapticによると、米国のイチゴ生産者のトップ5に入るBlazer-Wilkinsonが、6月にこの技術の導入を開始し、システムは人間のピッカーと連携して仕事をしている。これは、パンデミックの影響で多くの農業関連企業が支援を求めていた2020年の試験運用に続くものだ。

新型コロナウイルス(COVID-19)以前にも、人手不足による廃棄物は非常に多かった。Trapticの調査によれば、米国のイチゴの約10%が収穫されずに畑で腐っており、年間で3億ドル(約334億8000万円)もの廃棄物が発生しているという。パンデミックの際には、H-2A労働者の渡航が制限されていたため、さらに大きな問題となった。

同社の飛躍は、2019年後期のパンデミック前に500万ドル(約5億6000万円)のシリーズAを未発表で調達したことの効果が大きい。そのときの投資家は、Collaborative Fund、Homebrew Ventures、そしてK9 Venturesだった。共同創業者でCEOのLewis Anderson(ルイス・アンダーソン)氏は「最新の資金はパイロットモデルを成功させるために使いました。商用機の設計と製造、そして弊社初の顧客が代価を払うデプロイを、どうしても成功させる必要がありました」と語る。それ以前の資金調達は、2017年のアーリーステージ300万ドル(約3億3000万円)、さらにその前は前年となる2016年の40万ドル(約4500万円)だった。同社の合計調達額は840万ドル(約9億4000万円)になる。

 

Collaborative FundのCraig Shapiro(クレイグ・シャピロ)氏は、TechCrunchへのコメントの中で「記録的な熱波によって農作業者が屋内に閉じ込められ、収穫ができなくなっている現在、Trapticの使命はこれまで以上にタイムリーなものになっています。」と述べている。「彼らのロボット式イチゴ収穫機が商業用の畑に投入されたことは、100億ドル(約1兆1160億円)規模のイチゴ市場にとって大きな前進であり、広く農業生産の未来を覗き見ることができます。Collaborativeは、作物の安全性を高め、フードサプライチェーン全体でより安全な雇用を創出する技術を支援できることを誇りに思っており、Trapticがそのビジョンを実現するための適切なチームであることを確信しています」と述べた。

Trapticのシステムは、ロボットのアームに3DカメラとAIによる視野を組み合わせて、傷つきやすい果実を破壊せずに収穫する。同社は現在、主にロボット工学とエンジニアリングの分野で約10人の従業員を抱えており、カリフォルニア大学バークレー校のPieter Abbeel(ピーテル・アブベル)氏とコーネル大学のSerge Belongie(セルジュ・ベロンジー)氏がアドバイザーを務めている。

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タグ:Traptic農業資金調達

画像クレジット:Traptic

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ヒートアップする倉庫や仕分けのロボティクス、Zebra TechnologiesがFetchを約324億円買収

Zebra Technologies(ゼブラテクノロジーズ)は米国時間7月1日、ベイエリア拠点の倉庫ロボティクス会社Fetch(フェッチ)を買収する意向を発表した。買収額2億9000万ドル(約324億円)のこの取引では、すでにZebraが保有しているFetchの株式5%に加え、残りの95%を取得する。

パンデミックで労働力が不足し、また小売事業者がAmazon支配への抵抗で潜在的な優位を模索していることを受けて、倉庫や仕分けのロボティクスはヒートアップし続けている。そうした中でこの取引は興味深いものだ。最近SPAC(特別買収目的会社)と合併したBerkshire-Greyを含め、大小のロボティクス会社への投資にとってロボティクス業界のヒートアップは大きな原動力となっている。

関連記事:ピックアンドプレースロボットBerkshire GreyがSPACを通じての上場を発表

Zebraに関していうと、同社はロボティクス分野でかなり攻めている。2020年初めに発表した在庫システムSmartSightのような自前の小売ロボティクスを立ち上げたのに加えて、LocusのようなFetchの直接的な競合相手に投資してきた。Zebraは2020年6月、Locusの4000万ドル(約45億円)のシリーズDラウンドをリードした。

外から見ると、Zebraは1つの統一されたプレイをめぐるマーケットを統合することを模索しているかのようだ。LocusのCEOであるRick Faulk(リック・フォーク)氏は直近の別のラウンドの際に「独立して操業することで最大かつ最高の価値を生み出せると考えています。『Amazon』競合社とされていない企業を助けるために投資したい投資家もいます」と筆者に語った。

フォーク氏は当時、Locusは買収されることに興味はないとも語った。Zebraが積極的にLocus買収を追求していたのかどうかはわからないが、もし今日のニュースが何らかの兆候であるなら、Zebraがどちらのご馳走にも飛びつくことを考えていたのは明らかだ。そしてFetchの多様なモジュラー商品は手始めとしては最適だ。

「Fetch Roboticsの買収は、ワークフローを強化する新しいモードを擁し、ますます自動化されデータで動く環境において当社の顧客がより効率的に操業できるようサポートすることで、Enterprise Asset Intelligenceビジョンと、インテリジェントな産業オートメーションにおける成長を加速させます」とZebraのCEO、Anders Gustafsson(アンダース・グスタフソン)氏は声明文で述べた。「この動きは生産から消費に至るまでのサプライチェーンを最適化するという当社のコミットメントをさらに広げます。FetchのチームをZebraファミリーに迎えることを楽しみにしています」。

FetchのCEOであるMelonee Wise(メロニー・ワイズ)氏は「FetchのチームはZebraに加わって、AMRと当社のクラウドベースのロボティクスプラットフォームを通じてフレキシブルなオートメーションの浸透を加速させることに胸躍らせています。一緒になることで、我々は真に顧客の問題を解決するエンド・ツー・エンドのソリューションを提供するために、正しいテクノロジーを持つ正しいチームを抱えます。顧客が動的に最適化し、梱包、配送、そして製造のオペレーションを全体的に統合するのをサポートすることで、顧客が増大する需要に先んじ、また配達時間を最小化し、縮小しつつある労働力の問題を解決するのをサポートします」。

TechCrunchはさらなるコメントを求めている。買収取引はいつものことながら当局による承認次第だ。第3四半期の取引完了が見込まれている。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Zebra TechnologiesFetch倉庫買収

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

ROS対応協働ロボットアーム「myCobot」のラズパイ版「myCobot Pi」、商業向け「myCobot Pro」が発売開始

ROS対応協働ロボットアーム「myCobot」のラズパイ版「myCobot Pi」、商業向け「myCobot Pro」が発売開始スイッチサイエンスは7月1日、Elephant Robotics(エレファント・ロボティクス)のROS対応で安価な協働ロボットアーム「myCobot」の制御システムにRaspberry Piを採用した「myCobot Pi」の発売を開始した。直販価格は9万7790円(税込)。また同時に、商業用途にも適した「myCobot Pro」とその専用エンドエフェクターの取り寄せ販売も行う。myCobot Proの直販価格は42万3665円(税込)。

ROS対応協働ロボットアーム「myCobot」のラズパイ対応版「myCobot Pi」

myCobotは、ロボット開発用のソフトウェアプラットフォームROS(ロボット・オペレーティング・システム)に対応した6軸ロボットアーム。5月に発売された「myCobot 280」では、制御システムにM5Stackを使っていたが、myCobot PiはRaspberry Pi 4を採用。ディスプレイ、マウス、キーボードを接続すれば、簡単にプログラミングが行える。Pythonでのプログラミングも可能になった。

またmyCobot Piのアーム部には、「myCobot 280」と同じくM5Stackの「ATOM Matrix」が搭載されている。

myCobot Piは、Raspberry Piを搭載し、インターフェイスがM5Stack Basicのものと異なる以外は、基本的に「nyCobot 280」と仕様は同じ。オプションのエンドエフェクター(アームの先端で物を使うなどの実際の作業を行う装置)や固定用の器具も共通して使える。

myCobot Piの仕様

  • 軸数:6軸
  • ペイロード:250g
  • アーム長:350mm
  • 作業半径:280mm
  • 精度:±0.5mm
  • 本体重量:850g
  • 電源電圧:12V
  • 動作温度:-5〜45度
  • Raspberry Pi 4 Model B / 2GB:OS書き込み済みSDカード搭載(32GB)

インターフェイス

  • 2×USB 3.0、2×USB 2.0
  • 2×microHDMI
  • GPIO40ピン
  • myCobot Pi

商業用途にも適した「myCobot Pro」はM5Stack Basicベース

取り寄せ商品となる「myCobot Pro」は、やや大型で、関節にはブラシレスモーターを採用して精度±0.3mmという本格的な産業用ロボットとしての性能を備えている。制御システムはM5Stack Basic、アーム部にATOM Matrixを搭載、プログラミング環境は、UIFlow、ROS、moveit、RoboFlowなどに対応している。エンドエフェクターには、産業用ロボットに使用されるmyCobot Po専用の「電動グリッパー」が用意されている。

myCobot Proの仕様

  • 軸数:6軸
  • ペイロード:1kg
  • 作業半径:320mm
  • 精度:±0.3mm
  • IPレベル:IP42
  • 本体重量:3kg
  • 電源電圧:24V
  • 動作温度:0〜50度

インターフェイス

  • USB Type-C
  • Ethernet Port
  • ベースIO:2×D-INPUT、3×D-OUTPUT
  • ツールIO:2×D-INPUT、3×D-OUTPUT

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:スイッチサイエンス(企業)Python(製品・サービス)myCobot(製品)プログラミング(用語)Raspberry Pi(組織・製品)ROS(製品・サービス)

食品加工を柔らかなタッチの「手」でこなすSoft Roboticsがパンデミック関連の需要を見込み新たに約11億円調達

パンデミックの影響で投資家の関心が高まっているオートメーション企業の長いリストに、Soft Roboticsが加わった。米国・ニューイングランド地方を拠点とする同社は、2020年1月に発表したシリーズB(2300万ドル、約25億円)の延長として、1000万ドル(約11億円)の資金を調達したと米国時間6月29日朝に発表した。

この延長はMaterial Impact、Scale Venture Partners、Calibrate Venturesが主導し、既存の投資家であるTekfen Venturesと産業用ロボットメーカーのABBが参加した。今回のラウンドにより、同社の資金調達総額は約5800万ドル(約64億1000万円)となった。

2013年に設立された同社は、ピッキングマシンに対して斬新なアプローチをとっており、硬いロボットでは破損してしまうような壊れやすい食品などに最適な、空気圧を利用したソフトなグリッパーを採用している。食品はいうまでもなく、労働力不足や病気感染の懸念から、パンデミックの中で自動化への関心が高まった主要ターゲット分野となっている。

Soft RoboticsのMark Chiappetta(マーク・キアペッタ)COOは、リリースでこう述べた。「現在の産業用ロボットは、農業、食品加工、物流などの分野で、労働力が不足しているフードサプライチェーンに見られる製品のばらつきや非構造的な環境に対応できません」。

「当社の革新的なソフトグラスピング、3D知覚、AI技術により、広く普及している産業用ロボットに真の手先と目の連動機能を持たせることで、Soft Roboticsは従来は人間にしかできなかった作業を可能にし、ロボットによる自動化を実現します」とも。

今回のラウンドには、世界最大の食品多国籍企業であるTyson Foods(タイソン・フーズ)の投資部門、Tyson Venturesも参加した。鶏肉、牛肉、豚肉を大量に生産しているTysonは、既存の顧客だ。

Tyson VenturesのRahul Ray(ラフル・レイ)氏はリリースの中で、次のように述べた。「Tyson Venturesでは、安全性を高め、チームメンバーの生産性を向上させることができる自動化の新分野を常に模索しています。Soft Roboticsのクラス最高のロボット技術、コンピュータビジョン、AIプラットフォームは、食品業界を変革する可能性を秘めており、いかなる企業の自動化の旅においても重要な役割を果たすことでしょう」。

関連記事:繊細な処理が可能なロボットの「手」を開発するSoft Roboticsが大手ファナックと提携

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Soft Robotics食品加工資金調達

画像クレジット:Soft Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

ハイネケンがキンキンにビールを冷やしながら自走するクーラーボックスロボ「B.O.T」発表

ハイネケンがキンキンにビールを冷やしながら自走するクーラーボックスロボ「B.O.T」発表

Heineken

ビール大手ハイネケンの米国法人が、缶ビール用自走式クーラーボックス「Heineken B.O.T.」を発表しました。B.O.T.とは、Beer Outdoor Transporterの略。B.O.T.には缶のハイネケン12本を氷と共に収納でき、持ち主の後ろに付いて走行する機能を備えます。

つまりこれさえあれば、これからの季節、ビールを冷やしているクーラーボックスを駐車場からBBQをしている場所まで抱えて歩き、腰を痛めることがなくなる…というわけです。

ハイネケンは、B.O.T.にはピクサーの映画『ウォーリー』の主人公ロボットのような「チャーミングなAIパーソナリティ」を備えていると述べ、どういう仕組みか不明ながら、夏の暑さのなか人の喉の渇き具合をチェックすると主張します。要するに、目の前の人を常に監視して、後を追いかけるように作られているということのようです。

B.O.T.の外観はハイネケンカラーに彩られていることを除けば、ここ最近よくテクノロジー系ニュースで取り上げられている、食料品などの”ラストマイル”自動配送用の出前ロボットのようにも見えます。ただ、車輪で走行する以上、砂利浜や河原、段差のあるキャンプ場などでは思うように走行できないかもしれません。とすると、よく整備されたプールサイドなどでの使用になら向いていそうですが、自宅にプールがある海外ならともかく、日本ではなかなか上手く使える場所を探す方が難しそうです。

ハイネケンがキンキンにビールを冷やしながら自走するクーラーボックスロボ「B.O.T」発表

Heineken

まあ、どちらかと言えば実用性よりも見た目の面白さと、こうしたニュースで露出することによる宣伝効果のための製品といえるかもしれません。ハイネケンはB.O.Tを商品として販売する予定はなく、わずかな数を7月1日からのキャンペーンに応募、当選した人にプレゼントするとのこと。残念ながら応募対象者は米国の方々です。

(Source:HeinekenEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:飲食業界(用語)オンデマンド配送(用語)酒 / アルコール飲料(用語)Heineken / ハイネケン(企業・サービス)配送 / 宅配 / デリバリー(用語)ビール(用語)物流 / ロジスティクス / 運輸(用語)

ハンバーガーのパテをひっくり返すロボットで有名なMiso Roboticsが自動飲料マシンを発表

ハンバーガーのパテをひっくり返すロボットの次は何だろう?そのロボットを作っているMiso Roboticsの答えはシンプル。飲み物だ。同社は引き続きファストフード業界をターゲットとして、飲料を自動で注ぐロボットの提供を予定している。

新しいシステムは飲料ディスペンサーメーカーのLancerとの協業の一環として作られているもので、標準的なファストフードの飲料マシンをこれまでより自動化する。POSシステムが直接統合され、POSシステムからの指示で飲料を注ぎ、封をして、提供する。さらに、大規模な販売システムとも統合して対面の顧客や配送ドライバーの注文を正しく受けられる。

画像クレジット:Miso Robotics

基本的には、どこのファストフード店にも映画館にもある飲料マシンを大幅に賢くしたものだ。この1年半、人手不足やコロナ禍で多くのスタッフを勤務させられないといった事情があり、このカテゴリーに対する関心は高まる一方だとMiso Roboticsは述べている。

この米国時間6月22日の発表に関するプレスリリースで、Misoの最高戦略責任者であるJake Brewer(ジェイク・ブルーワー)氏は「Lancerには卓越した品質の伝統があり、飲料のイノベーションと未来のデザインに関する我々のビジョンを共有しています。注文に応じることは顧客満足における重要な要素であり、配送ドライバーやお客様が来店したときに飲料に手が回らないような運営をするわけにはいきません。我々は業務用キッチンで働く人々に役立つだけでなく、一流のカスタマーエクスペリエンスを提供して業界全体にとってのゲームチェンジャーになる製品を開発することにたいへん強い意欲を持っています」と述べている。

画像クレジット:Miso Robotics

鉄は熱いうちに打てということで、同社は最近完了した2500万ドル(約27億6500万円)のシリーズCに続いてシリーズDを計画していることも明らかにした。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:Miso Roboticsファストフード

画像クレジット:Miso Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)

トヨタのTRIが家庭内の透明・反射面にひるまず対応して家事をこなすロボットを披露

米国時間6月21日朝、現代自動車がBoston Dynamicsの買収を完了したという発表に続き、別の自動車会社からもロボティクス関連のニュースが発表された。今回のToyota Research Institute(TRI、トヨタ・リサーチ・インスティテュート)の発表は、そのような大ニュースに比べると衝撃的なものではなく、むしろ同部門が取り組んできたことの進捗状況を確認するものといえる。

関連記事:現代自動車がソフトバンクからBoston Dynamicsの支配権取得を完了「歩くクルマ」に向け前進

もちろんロボティクスに関しては、段階的な更新が最も肝心な部分であることが多い。今回の発表は、TRIが家庭内で行ってきた研究に興味深い光を当てている。同社は、家事労働を行うために設計されたロボットの重要な進展を発表した。

「TRIのロボット研究者たちは、さまざまな状況下で透明または反射する表面を認識して反応するなど、他の多くのロボットが困惑するような複雑な状況を理解して動作するようにロボットを訓練することに成功しました」と、同研究所はブログ記事で書いている。

画像クレジット:Toyota Research Institute

キッチンのような環境では、ロボットはさまざまな透明表面や反射面に出くわすが、これは従来のビジョンシステムにとってはハードルが高いものだった。特にキッチンでは、透明なガラスや反射する家電などが問題になる。

TRIロボティクスの副社長であるMax Bajracharya(マックス・バジュラチャリア)氏は、研究について次のように述べている。「この問題を解決するために、TRIロボティクスの研究者たちは、物体や表面を検出しながら同時に、環境の3D形状を知覚するための新しい学習方法を開発しました。この組み合わせにより、研究者は大量の合成データを使ってシステムを訓練することができます」。また、合成データを使用することで、時間やコストのかかる実用的でないデータ収集やラベリングの必要性を軽減できるという。

日本では高齢化が進んでいることから、トヨタはロボット研究を進める上で、高齢者介護を重要なテーマとしている。そのため、このようなロボティクスの課題が分野の研究の中核をなしていることは非常に理に適っているし、同社のWoven Cityでの研究にもつながる。Samsung(サムスン)のような企業がロボット製品分野に声高に参入する前に、トヨタがこの分野に力を入れていたことは評価されるべきだろう。

画像クレジット:Toyota Research Institute

「自分の家により長く住み、自立した生活を送ることだけが目的ではありません」とバジュラチャリア氏は最近インタビューに答えてくれた。「そういう面もありますが、日本では20~30年後には、65歳以上の人口と65歳未満の人口がほぼ同数になると言われています。これは労働力という点で、社会経済的に非常に興味深い影響を与えるでしょう。トヨタでは、このような人々が仕事を続け、仕事をすることで充実感を得たり、より長く家に住めるようにするにはどうしたらよいかを考えています。ただ人を置き換えるだけではありません。当社は、人間を中心に据え、人間を増幅させることを考えています」。

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

現代自動車がソフトバンクからBoston Dynamicsの支配権取得を完了「歩くクルマ」に向け前進

Hyundai(現代自動車グループ)は現地時間6月21日、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)の買収を完了したと発表した。この取引は革新的なロボットメーカーを11億ドル(約1210億円)で評価するもので、2020年末に発表されていた。両社は、今後の財務的な詳細については明らかにしていない。

韓国の自動車大手である現代(ヒュンダイ、2020年よりヒョンデに表記変更)は、これまでソフトバンクグループ(SBG)が所有していたBoston Dynamicsの支配的利権を持つことになった。3年強にわたってBoston Dynamicsを所有していたGoogle(グーグル)から前者を購入したSBGは、実質的に過渡期のオーナーだった。

ソフトバンク傘下にあった期間はGoogle / Alphabet X時代に比べてそれほど長くはなかったが、Boston Dynamicsは約30年前に設立されて以来、初めて2つの製品を商品化した。同社は、四足歩行ロボット「Spot」を市場に投入し、2021年には、倉庫用ロボット「Handle」のアップデート版である「Stretch」のローンチを発表した(発売日はまだ未定)。

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現代自動車のErnestine Fu(アーネスティン・フー)氏は、TechCrunchのMobilityイベントに最近出演した際、Boston Dynamicsの80%経営支配権を取得する計画について語った。フー氏は、現代自動車のUMV(Ultimate Mobility Vehicle、究極の移動手段)開発に特化したユニットであるNew Horizon Studiosが、数十年にわたるBoston Dynamicsの研究を基にした「歩く」自動車のコンセプトを複数プレビューしていることに言及した。

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「New Horizon Studiosでは、ロボット工学と、歩行ロボットや歩行車両などの従来の車輪付き移動手段とを組み合わせたときに何ができるかを再考することが課題となっています」とフー氏はTechCrunchに語った。「当然、Boston Dynamicsが開発してきた技術は、そのようなコンセプトを実現する上で重要な役割を果たします」とも。

Boston Dynamicsはこれまでの変遷の中で、独自の研究部門を維持することにこだわり、ヒューマノイドロボット「Atlas」のような商業的ではない技術を生み出してきた。現代自動車の傘下でどのように機能するかは未知数だが、現代は少なくとも将来を見据えたアプローチを維持することに強い関心を持っているようだ。

Boston DynamicsのCEOであるRob Playter(ロブ・プレイター)氏は、今回の買収が発表された際にこう述べていた。「当社と現代自動車はモビリティがもたらす変革力という視点を共有しており、最先端のオートメーションで世界を変える計画を加速させ、両社の顧客のために世界で最も困難なロボティクスの課題を解決し続けられるよう、協業することを楽しみにしています」。

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

HarvestXがイチゴの完全自動栽培ロボットシステムの研究開発施設「HarvestX Lab」開設

HarvestXがイチゴの完全自動栽培ロボットシステムの研究開発施設「HarvestX Lab」開設

ロボットによる受粉と収穫で植物工場での果菜類の完全自動栽培を目指す農業機器開発スタートアップHarvestX(ハーベストエックス)は6月21日、イチゴの完全自動栽培ロボットシステムの研究開発施設「HarvestX Lab」を、東京大学本郷キャンパス内のアントレプレナーラボに開設したと発表した。

イチゴ農園などとの協力で受粉と収穫のための技術の検証を続け、すでに要素技術の概念実証を完了したHarvestXは、次にロボットシステムの検証、評価項目の追加、試験サイクルを加速する目的で、年間を通じて実験が可能なこの施設を開設した。植物工場事業者と同等の栽培設備を使うことで、開発環境と運用環境を効率化し、製品の機能や品質を向上させ、2021年夏ごろ、「植物工場に特化した機能拡充に向けて」新たなロボットを発表する予定とのこと。

HarvestXは、「ロボットによる完全自動栽培で農業人材不足・食料の安定生産に貢献する」をミッションに、未踏やロボコンの出身者が集まって2020年8月に創設された。おもに「ミツバチを媒介とした虫媒受粉」という不安定で手間のかかる受粉方法に依存している果物類を、ロボットで自動化する研究を重ねている。

HarvestX Lab設立に伴い、「検出や制御システムを担う人材」の採用を進めてゆくという。

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自律型芝刈り機を提供する造園ロボットスタートアップScythe、芝を刈った面積に応じて料金が決まる

米国時間6月15日、2018年に創業しこれまでステルスだったScythe Roboticsが1380万ドル(約15億2000万円)のシリーズAを発表した。このラウンドを主導したのはInspired Capitalで、True Ventures、Zigg Capital、Lemnosが参加した。Scytheはコロラド州ボールダーを拠点とする造園ロボティクス企業で、True Ventureが主導した400万ドル(約4億4000万円)のシードラウンドなどと合わせて、これまでの調達金額は1860万ドル(約20億5000万円)となった。

Scytheの最初の製品は自律型芝刈り機で、RaaS(ロボット・アズ・ア・サービス)として提供されている。この方法は企業や産業界で、基本的には定期的なアップデートやメンテナンスも含めてレンタルでロボットを提供する場合に人気が高まりつつある。Scytheが芝を刈った面積に応じて顧客に課金している点は興味深い。

芝を刈る際に8台のHDRカメラとさまざまなセンサーを利用して人や動物、各種の障害物を避けるように設計されている。当然、ロボットの効率を上げるためにデータもたくさん収集する。造園はロボットにとっては比較的難易度が低い。広い面積を刈る人にとって自動化の意義は間違いなく大きい。ゴルフ場整備車輌のToroは最近Left Hand Roboticsを買収し、iRobotは芝刈りロボットを発表した(遅れているが)。

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Scytheの共同創業者でCEOのJack Morrison(ジャック・モリソン)氏は発表の中で「これまで造園業者には需要に応えゼロエミッションで操業するためのテクノロジーパートナーがいませんでした。我々がそのパートナーです。当社の自律型芝刈り機はエコに貢献しつつ造園業者の成長につながります。最先端の自律機能と堅牢なオール電化設計を組み合わせてこれまでの芝刈り機よりも大幅に信頼性、生産性、安全性を高めるためにゼロから開発しています」と述べた。

今回調達した資金はコロラド、テキサス、フロリダにあるオフィスの増員、製品の研究開発、芝刈り機の新規顧客獲得に使われる予定だ。

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タグ:Scythe Robotics造園芝刈り / 芝刈り機資金調達自動運転

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(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)

ファミマの商品陳列を自宅から、遠隔操作ロボット開発のTelexistenceが目指す人とロボットの新たな働き方

私たちにとって、いまや「リモートワーク」は特別なことではなくなった。世界中どこにいてもインターネットにさえ接続すれば仕事ができる。一方で、エッセンシャルワーカーともいわれるコンビニやスーパーで働く人たちは、当然ながら「その場」にいなければ仕事ができない。

この現状を変えることを目指すスタートアップがTelexistence(テレイグジスタンス)だ。「遠隔操作ロボット」を開発する同社は、2021年6月15日モノフルのグループ会社などから約22億円を調達したと発表した。

ターゲットは日本全国のコンビニ

「これまで不可能だったブルーカラーのリモートワークを実現する」と話すのは、同社CEOの富岡仁氏。VRヘッドセットとグローブを装着すると、インターネットを経由して遠く離れた場所にいるロボットを「自分の体のように」操作できる。「自分が左手を動かすと、ロボットの左手も同時に動く」という感覚はまるで、離れた場所にいるロボットへ自分が「憑依」するかのようだ。

上記動画のロボット「Model-T」は、2020年10月より「ローソン Model T 東京ポートシティ竹芝店」に導入され、飲料(ペットボトル、缶、紙パック)をバックヤードから補充、食品(サンドイッチ、弁当、おにぎり)を並べるといった業務を行っている。合計22の関節を持ち、5つのパターンに変化する手を持つこの人型ロボットは、約200形状・約2200SKUにおよぶ商品を「しっかりと掴んで、任意の場所に置く」ことが可能。このModel-Tを遠隔操作することで、従業員は商品陳列作業を自宅からでもできてしまえるのは、なんとも不思議な感覚だ。

また同社は、Model-Tの改善点を踏まえてより機能を向上させたロボットを開発。2021年10月から「ファミリーマート経済産業省店」に導入し、回転率の高い飲料を中心に商品陳列を行っていく。富岡氏は「基本的に、日本のコンビニは店舗フォーマットが決まっていて、扱っている商品も似通っている。つまり1店舗でも問題を解決できれば、日本全国にあるコンビニ5万6000店舗の問題も解決できるというスケーラビリティがある」という。同社は2024年度までに2000店舗に2000台の同社ロボットを導入することを目指している。

マニラから日本のコンビニで作業する

遠隔操作ロボットの登場は、店舗運営の効率化だけでなく、労働市場にも大きな影響を及ぼすかもしれない。「2022年の夏からは、フィリピンのマニラにいる従業員がロボットを操作して、日本のコンビニの商品陳列作業を行っていく予定」と富岡氏。当然、日本のスタッフに比べるとマニラのスタッフは人材コストが低いため、企業にとっては大きなメリットといえる。このように今後、労働力の移転が「小売業のスタッフ」にまで広がっていく可能性を考えると、遠隔操作ロボットのインパクトの大きさは計り知れない。

また同社は陳列什器メーカー大手のオカムラと提携し「ロボットの動きに最適化された什器」の開発にも着手。「例えば、棚の奥までロボットの手が届かない場合は、棚に少し傾斜をつけ商品が滑り落ちるようにするなど工夫をする。こうすることで、大きなコストをかけずにロボットを店舗運営に導入できるようになる」と富岡氏はいう。

同社ロボットの活用場面は店舗での商品陳列にとどまらない。今回の資金調達先であるモノフルと提携し、物流業者向けにもサービスを展開。物流施設内の業務に携わる労働者がロボットを遠隔操作することで、倉庫にいなくても商品の積み下ろしができるようになる。

一方で「人間が遠隔操作するのは私たちが目指す最終型ではない」と富岡氏。同社のロボットはすでに、コンピュータビジョンを活用することで商品陳列作業の約8割を自動的に行うことが可能。また同時に、人が遠隔操作するモーションデータをクラウドに蓄積し、これを教師データとしてロボットに機械学習させている。これらにより、いずれは人の操作さえも必要としない「完全にオートマティックなロボット」を完成させることが狙いだ。

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自動化の恩恵を「個人」へ

テレイグジスタンスが掲げるビジョンは「世界に存在するすべての物理的な物体を、我々の『手』で1つ残らず把持(はじ、しっかり掴むこと)する」こと。「これが実現すると、世の中のあらゆる物理的な仕事をロボットが代替できるようになる」と富岡氏はいう。

しかし同社は、ただ企業の業務効率を上げることのみを目指しているわけではないという。同氏は「これまで産業用ロボットによるFA(工場自動化)の恩恵は、現場で働く労働者ではなく、ロボットを所有する大企業の株主が得ていました。しかし私たちは、究極的には企業ではなく『個人』がロボットを所有する未来を実現したい」と話す。

つまり同氏が目指すのは、労働者である個人がテレイグジスタンスのロボットを所有し、さまざまな現場に派遣して遠隔操作(あるいは自動化)しながら金を稼ぐという未来。同社はハードウェアからソフトウェア、自動化技術までを自社で一貫して開発する稀有なスタートアップだが、その「ビジネスモデル」も既存のものには当てはまらないようだ。

自分は旅行でニューヨークまで来ているけれど、ロボットは東京にいて代わりに仕事をしてくれている……そんな世界はすぐそこに来ているのだろうか。テレイグジスタンスが「掴む」ことを目指す未来に、思わずワクワクしてしまうのは私だけではないはずだ。

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