その他大勢のためのアマゾンになることを狙うWishを小売業投資家は買うだろうか?

ほとんどの人が、Wish(ウイッシュ)のことを、中国からの安価な小物を販売するサイトとして知っているが、サンフランシスコに拠点を置く創業10年のこの会社が、間近に迫ったIPOを見込んで、一般大衆のためのAmazon(アマゾン)としての自画像を描き始めた。

私たちがここ数カ月の間に情報源から読んだり聞いたりしたことから判断すると、Wishは、1兆ドル(100兆円)規模の巨人アマゾンに対抗する、愛国的な代替選択肢として自分自身をアピールしたいと考えている。米国で推定60%を超える、3カ月分の支出をまかなうのに十分な流動資金を持たない家庭のための、より良い選択肢として自分自身を位置付けたいのだ。そのようなコストを気にする顧客は、Amazonプライムに加入することができず、(少なくともWishの言葉によれば)もしかなり安く買えるなら1週間でも、ときには3週間待つことも厭わない。

公開市場の投資家たちが、そのプレゼンを受け入れるかどうかはすぐにわかるだろう。Wishは米国伊J感12月8日朝、来週にも行われると予想されているIPOで、1株当たり22ドル(約2289円)から24ドル(約2497円)の間で4600万株を販売する計画を発表した。評価額は、個人投資家たちによって最後に割り当てられた112億ドル(約1兆1700億円)の評価額から上がって、最大140億ドル(約1兆4600億円)に達するだろう。

Wishには、公開に向かう物語の中で、楽観的に感じることができるたくさんの理由がある。1つには、明らかに多くの人たちがWishのビジネスに気づき続けている最中だということだ。Sensor Tower(センサー・タワー)によれば、2020年11月のショッピングアプリのダウンロード回数は、アマゾンのダウンロードが600万回、Walmart(ウォルマート)のダウンロードが200万回だったことに比べて、Wishは900万回ダウンロードされている。2019年には、すべての種類のアプリ含む総合順位で、Wishは16番目にダウンロードされたアプリだった。

潜在的な顧客がWishに出会ったら、さらに多くのものを発見するだろう。同社の目論見書によれば、100カ国以上にまたがる月間1億人以上のアクティブユーザーが、50万の加盟店からショッピングをしており、プラットフォーム上では約1億5000万点の商品が販売されているという。

そうした商品の多くは、タトゥーキットからペットの爪切りといったWishが長年に渡って扱ってきた不要不急の小物だが、ペーパータオルや消毒剤のような必需品の割合も増えており、顧客を安定したリピーターにするためにひと役買っている。

初期の頃はほとんど重さのない安価なものばかりに力を入れていた同社にとって、これはちょっとした進化だ。そもそもWishは常に、製品やプラットフォームにマーケティングコストをかけられない中国を中心とした無名ブランドの業者と協力してきた。そうすることで業者たちを、既存の市場の中での共食いを回避しつつ、新しい顧客に無償でリーチできるようにできるからだ。

しかし、各取引に15%の手数料をかけているWishは、ePacketと呼ばれるUSPS(米郵便公社)と中国の間の提携にも大きく依存してきた。これにより、商品が異常に大きくて重くない限り、1ドル(約104円)から2ドル(約208円)で海外の商品を米国に送ることができていた。しかし、それは2020年7月1日(Stamps.com記事)に変更され、新しいUSPSの価格体系の中では、Wishのような企業が商品を出荷するためにはもっと支払うか、またはより高価な商業ネットワークに移動する必要が生じたのだ。

当然のことながら、Wishには複数の予備プランがあった。そのうちの1つは、中国内で顧客の所在地に応じて複数の注文をまとめて梱包し、米国に一括して送り、受け取りが行える専門の場所に届けるやり方だ。

関連して、2019年初めにさかのぼるが、Wishは商品をストックしている米国やヨーロッパの何万もの中小企業と提携を始め、その保管スペースをWishの顧客からのアクセスのために利用し、店舗内でのピックアップが行われるごとに小さな金銭的なボーナスを支払うことを始めた(もしその注文を直接顧客の自宅に届けることができるなら、Wishは店舗のオーナーにさらに多くのボーナスを支払うことになる)。Forbes(フォーブス)によれば、これらのパートナーシップにより、Wishは「安価な流通ネットワークを実質的に一晩で」(Forbes記事)手に入れることができたのだ。

コンビニエンスストア業界を破壊することに失敗したゴリアテ(アマゾン)が、自身のコンビニエンスストアを使って挑戦を行おうとしている中で、このWishの動きは、既存コンビニに対する援護射撃となるという意味でアンチアマゾンの物語の中にうまくフィットしている。

またそれは、アマゾンと比較しても必要資産の少ないモデルだ。Wishは在庫を持たず、飛行機やトラック、倉庫を購入したり維持したりする必要もない。

こうしたことは、対峙する巨人アマゾンに比べれば、まだほんの小さなものに留まっていて利益の出ていないWishにとって、挑戦への妨げにはならない。

同社は緩やかな収益成長を示しているが、その報告書によれば、そのマーケティング費用の一部を原因とする一定の損失(SeekingAlpha記事)も続いている。2019年には、Wishは前年比10%増の19億ドル(約1977億円)の売上を報告したが、同時に1億3600万ドル(約141億5000万円)の純損失も計上した。

同社は世界中の新しい地域に進出を続けているが、いまでも中国を拠点とする業者に大きく依存しているのが現状だ。これに対応するために、過剰在庫や返品された品を処分したかったり、整備済電子機器を販売したかったりというニーズを持つ米国や欧州の大手小売業者たちとの提携が徐々に増え始めているという。「多様化したいと思っています」とCEOのSzulczewski(スルチェフスキー)氏はこの夏、フォーブスに語っている。

Wishは常に品質管理の問題に悩まされてきたが、それもまだ完全には解決していない。実際のところYouTubeには、Wishの商品が実際にはどのようなものなのか、そしてオンラインではどのように買い物客に紹介されているのか、という話題に焦点を当てたチャンネルがある(非常におもしろいものもある)。最後の動画を参照して欲しい。

主にこれは文化の問題だ。たとえば2016年に本記者が主催したイベントで、共同創業者でCEOのピーター・スルチェフスキー氏は、米国の顧客の期待値について中国の業者に学んでもらわなければならないと語っていた。

「中国での消費者の期待値が、大きく異なっているのは事実です」とスルチェフスキー氏は当時説明している。「たとえば赤いセーターを注文して青いセーターが届いても、(中国の消費者は)『仕方ない、次に期待しよう』というような感じになります。中国の消費者にしか販売していない商売をしている業者が多いので、私たちは赤のセーターの在庫がないからといって青のセーターを出荷しても良いということにはならないと教育しなければならないのです」。

Wishは、この意識ギャップを埋めるだけでなく、プラットフォーム上の詐欺行為にも徹底的に取り組んできた。そうした多くの動きの1つとして、Facebook(フェイスブック)の元コミュニティマネージャーを、コミュニティエンゲージメントのディレクターとして雇用した。伝えられるところでは、その仕事は腐ったリンゴを取り除く(Forbes記事)ためにWishのユーザーを組織化することを含むものだという。しかし、悪い経験をして、去っていったWishの買い物客は確かに多いのだ。

当面は、公開市場における多くの投資家が見守り、待つことになるだろう。これまで何年もの間、同社に21億ドル(約2184億円)の資金を提供してきたFormation 8、Third Point Ventures、GGV Capital、Raptor Group、Legend Capital、IDG Capital、DST Global、8VC、137 Ventures、Vika Venturesなどのベンチャーキャピタリストたちも同様だ。

ボストンに拠点を置く Flybridge Capital PartnersのAnna Palmer(アンナ・パーマー)氏は、Wish には出資していないものの、いわゆるコマース 3.0に非常に力を入れている人物だ。彼女はWishがアマゾンの買い物客に対するものとは「異なるユースケースと顧客ニーズに対応している」と考えている。

「たとえばDollar General(ダラー・ジェネラル)やDollar Tree(ダラー・ツリー)といったオフプライスならびにディスカウント市場の力強い小売業たちを見れば、Wishの継続的な成長を期待することができます。特にディスカウント市場は追加の流通コストのためにこれまでオンラインにするのが困難だったのですから」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:WishIPO

画像クレジット:Wish

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(翻訳:sako)

MS Officeのサポート企業AvePointが企業価値2100億円でSPAC経由の上場へ

AvePointは、Microsoft Office 365やSharePoint、Teamsなどを使っている企業に、それらに対するコントロールレイヤーを提供している。同社は米国時間11月23日、Apex Technology Acquisition CorporationとのSPAC合併で上場すると発表した。この取引でAvePointの価値はおよそ20億ドル(約2090億円)になる。

この買収で、テクノロジー業界の強力な役員たちが一堂に会することになる。Apexを経営しているのは元OracleのCFOであるJeff Epstein(ジェフ・エプスタイン)氏と、元Goldman Sachsの技術投資銀行部門のトップBrad Koenig(ブラッド・ケーニッヒ)氏で、2人はこれからAvePointのCEOであるTianyi Jiang(ティエンイー・ジャン)氏と密接に協働することになる。Apexは2019年9月に、3億500万ドル(約318億円)のSPACを申請している

この取引の条件として、Apexの残高3億5200万ドル(約367億円)と、1億4000万ドル(約146億円)のプライベート投資がAvePointに引き渡される。取引の手数料とそのほかの報酬が支払われた後、AvePointのバランスシートには2億5200万ドル(約263億円)が計上されると予想される。AvePointの既存の株主は合併後の法人の約72%を保有し、残りをApex SPACとプライベートな投資のオーナーたちが手にする。

ジャン氏は、これが同社を成長させる方法と考えており「上場によって弊社はこの要求に応えられるようになり、プロダクトのイノベーションとマーケティングの進展、国際市場、および顧客の成功のためのイニシアチブなどすべてにわたって、より高速なスケールアップが可能になる」と述べている。

AvePointは2001年に、SharePointのインストールの複雑性を緩和する企業として創業された。当時のインストールは、すべてオンプレミスだった。現在、同社はSaaSツールとしてクラウドへのシフトに適応し、主に社員たちがこれらのツールを確実なコンプライアンスのもとに使っていることを、企業が確認できるためのポリシーレイヤーとして動いている。

同社は1月に、Sixth Street Partners(元TPG Sixth Street Partners)がリードするラウンドで2億ドル(約209億円)を調達(未訳記事)し、これに以前の投資家であるGoldman Sachsが参加した。現在Apexのケーニッヒ氏はそのときの投資を通じて、AvePointを知ったと思われる。

今回の発表前までの同社の調達総額は2億9400万ドル(約307億円)で、2020年の予測年商は1億5000万ドル(約156億円)、ARR(年間経常収益)の成長率は30%以上と見られる。なお、同社の年商とARRは2019年の第1四半期以降、成長が続いている。同社の予測では次の2年間も成長が大きく、2022年末では売上2億5700万ドル(約268億円)、ARRは2億2000万ドル(約299億円)を予想している。

画像クレジット:AvePoint

この取引は、2021年最初の四半期に完了すると予想されている。完了後も同社の名前はAvePointのままであり、チッカーシンボルAVPTでNASDAQに上場される。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AvePointSPAC新規上場

画像クレジット:Brasil2 / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

子供向けゲームプラットフォームのユニコーン「Roblox」が年内上場へ

オンライン決済のAffirm、宿泊施設シェアリングのAirbnbが上場申請(未訳記事)した直後というタイミングでRobloxが提出していたS-1上場申請書の内容が公開された。

Robloxが米国証券取引委員会(SEC)に申請書を提出したのは2020年10月中旬だったが内容はこれまで公開されていなかった

ゲームエンジンのユニコーン(10億ドル超スタートアップ)としては2020年初めにUnityが上場しており、Robloxは2020年初めて株式を公開するゲームプラットフォームではない。上場後Unityの株は急上昇しているので、市場はRobloxの上場にも強い期待を抱いているはずだ。

ここではSECに提出された申請書に基づいてRobloxのビジネスの概要、これまでのベンチャーキャピタル調達、株式の所有者について解説してみる。申請書を精査して詳細がつかめればさらにレポートする。

財務の現状

Robloxは無料ゲームとそれらのゲームを開発するためのデベロッパープラットフォームだ。つまりユーザーはゲームやサービスにアクセスするために料金を払う必要はない。ただしRobuxとゲーム内通貨による課金とRoblox Premiumというサブスクリプションサービスがある。これらが同社の収入の大部分を占めている。

サードパーティのデベロッパーはRobloxのプラットフォーム上でゲームを製作できる。この仕組みは近年急拡大してきた。Robloxによると、2019年の第1から第3までの四半期のデベロッパー、クリエイターの収入合計は7220万ドル(約75億5000万円)だったが、2020年の同期間には2億9020万ドル(約303億4000万円)に急増している(TechCrunchは上場申請以前からRobloxの成功に注目して紹介してきた)。

Robloxは総収入も急成長を遂げており、2018年には139%増の3億1280万ドル(約327億円)、2019年には56%増の4億8820万ドル(約510億4000万円)となっている。さらに2020年の最初の3四半期では対前年比で68%アップの5億8870万ドル(約615億5000万円)となっている。

Robloxの規模の拡大は驚異的で、2020年には2019年よりも成長が加速している。同社はS-1申請書でパンデミックがむしろ追い風となったことを認めている。第1四半期にパンデミック由来の「急速な成長」が始まり、第2四半期と第3四半期では全面的に「新型コロナウイルス感染症による世界的なロックダウン政策の結果、ユーザーがいっそうオンライン化したことが(成長に)影響している」と述べている。

同社は、「今後の展望」について「収入の拡大速度は低下傾向となる」と警告している。パンデミックによるインフレを含む2020年の業績と比較すると「今後はブッキング(後述)、ユーザー数の成長が見られない可能性がある」としている。

現在のところ投資家がこの警告をどう受け止めるかは不明だが、Robloxの2020年の成長は並外れたものだった。例えば、ブッキング(同社の定義によれば「所定の期間における特定の非現金調整に影響を与えない販売活動」)は2018年に62%アップの4億9900万ドル(約521億7000万円)、2019年に39%アップの6億94300万ドル(約725億9000万円)、そして2020年の最初の3四半期には171%アップの12億4000万ドル(約1296億6000万円)に達している。

ともかくこの成長率はすごい。途方もない売上増はユーザーの関心の高まりを表している。Robloxは2020年の最初の9カ月間に「180カ国以上で平均DAU(1日あたりアクティブユーザー数)3110万人」を達成し、2019年の同時期の1710万から大幅に増加している。

Robloxプラットフォームを訪れる一般ユーザーの増加にともない利用時間も増加した。一般ユーザーの利用時間は2020年の最初の9カ月間に222億時間だったが、2020年の同時期に122%アップしている。DAUにカウントされるユーザーはプラットフォームで毎日平均2.67時間を費やしている。

ただしこの爆発的成長にもかかわらず、他の多数のユニコーン同様に、Robloxはまだ赤字だ。同社は2018年に9720万ドル(約101億7000万円)、2019年には8600万ドル(約89億9000万円)の損失を出している。赤字は2020年に急拡大しており、2019年の最初の第3四半期には4630万ドル(約48億4000万円)の赤字だったのに対し、2020年の同期は2億3320万ドル(243億9000万円)に膨れ上がっている。

2020年の赤字拡大の主因は、事業拡大に比例するコストの増加と、株式による報酬費用の増加したのようだ。

しかしGAAP基準の損益の数字から最初に受ける印象よりも、キャッシュフローはずっと良い状態にある。同社の営業キャッシュフローは、2019年最初の9カ月間に6260万ドル(約65億5000万円)だったのに対して2020年の同期は3億4530万ドル(約361億1000万円)に増加している。同期のフリーキャッシュフローは2019年に600万ドル(約6億3000万円)だったが、2020年は2億9260万ドル(約306億円)だった。

これらの数字は、Robloxのビジネスモデルのマーケットが巨大であり経済的に高い可能性があることを示している。ともかく株式公開は大勢のベンチャーキャピタリストに大金をもたらすはずだ。

既存株主

我々のCrunchbaseのデータによると、Robloxは非公開企業として3億3570万ドル(約351億円)を調達している。ラウンドをリードしたのはAltos Ventures、First Round Capital、Meritech、Index、Greylock、Tiger Global、Andreessen Horowitzだ。

Robloxは、上場に向けて約8億1000万ドル(約847億円)の現金および現金同等物を保有している。株式が公開されると、これまで流動性に乏しかった同社の株式は上場後は自由に換金できるようになる。投資家は株式を市場で売却できるようになる時点に向かってストップウォッチをスタートさせる。

S-1申請書は、誰がどれほどの株式を所有しているかを示している。つまり上場で最も利益を得るのは誰かなのかを推測できる。筆頭株主はAltos Venturesで、21.3%ないし1億1426万1961株を所有している。同社がRobloxのラウンドを何度もリードしてきたことを考えれば予想どおりといえる。Altosの後に10.3%を保有するMeritech Capital、9.9%を保有するIndex Ventures、7.3%を保有するTiger Global、6.3%を保有するFirst Round Capitalが続く。

Roblox経営陣の保有株数は合計で16.4%にすぎない。共同ファウンダーでCEOのDavid Baszucki(デビッド・バズースキ)氏は、6553万9773株を所有しているがこれは12%にあたる。Robloxのように巨額の資金を調達すると持ち分がいかに希釈化されるかよく表している。

数字以外の状況

RobloxhはS-1申請書で「我々の成功は子供たちに安全なオンライン環境を提供できるかどうかにかかっている」と述べている。それができなければ「ビジネスは劇的悪影響を受ける」という。

この言及は2018年に同社の提供するゲーム内で女の子のアバターがレイプされるという言語道断なハッキング被害(未訳記事)を受けたことを指すものだ。S-1によると同社の「プラットフォームを犯罪者が利用し子供たちをプラットフォーム外の犯罪者との交流に誘い込んでいる」などという疑惑が引き続き主張されるという。

「このような事態の発生を防ぐべく大量のリソースを費やしているがこうした試みのすべてを防ぐことはできない」としている。Robloxプラットフォーム上での通信は、「現時点」では暗号化されていないためデータのセキュリティ上の問題が起きる「リスクが増大している」と続けている。プラットフォームが子供向けゲームであるという点そのものがRobloxにとっての大きな弱点となっている。

ニューヨーク証券取引所のティッカーシンボルはRBLXを希望している。

【Japan編集部】当初英語記事には株式保有割合などに誤りがあったがアップデート済み。

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:RobloxIPO

画像:Steve Jennings / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Airbnbが上場申請、第3四半期の回復は驚異的

10億ドル超スタートアップ、いわゆるユニコーン企業の代表、Airbnbは11月16日にアメリカ証券取引委員会にS-1書式を提出し、株式上場を申請した。これで同社は公開企業にまた一歩近づいた。

公開された財務諸表は同社の打撃からの回復を示しているが、企業規模は縮小している。これはパンデミックが旅行業界のユニコーンにいかに深刻な打撃を与えたかを物語っている。Airbnbの企業価値を見極めるには、急速な成長カーブが中断された打撃と、そこから回復しては再び利益を上げていることの間でバランスを取る必要がある。

ここまでの経緯

宿泊施設共有のスタートアップにとって2020年は多難な時期となった。COVID-19によるパンデミックはAirbnbは第1四半期、第2四半期の業績に大きな打撃を与えたが、その後地域内旅行の増大によって回復した。

Airbnbの上場申請は、ユニコーン仲間のDoorDash、C3.aiの申請のほんの数日後に行われ、高価値スタートアップのちょっとした上場ラッシュとなっている。

Airbnbが証券取引委員会S-1書式を提出するのは先週の予定だったが大統領選挙による影響を理由に延期されていた(実のところTechCrunchのスタッフはこの説明に完全に納得していたわけではない)。

われわれは以前からAirbnbの財務状況についてはなんども記事にまとめてきた。しかし今回のS-1申請書は文字通り宝の山だった。以下、重要な数値を吟味し、財務と株主について掘り下げてみる。

判明した財務状況

まず知りたいのはパンデミックがAirbnbのビジネスにどのように影響したかだ。今年に入ってからの全期間と四半期ごとの傾向からどういうトレンドが読み取れるだろうか?

AirbnbのS-1申請書の最初のグラフはこのサービスを通じて行われた予約を示す月単位グラフだ。つまりこれがAirbnbがわれわれに積極的に公表したい数字らしい。以下トレンドを見てみよう。

当然だがAirbnbは3月に大打撃を受けた。 しかし、5月までにビジネスは成長軌道に戻りそれを維持した。

しかし6月以降は予約数の増加はごくわずかだ。数か月たった現在、予約数は減少している。さらに悪いことに、キャンセルを除外した後の正味予約数は対前年比で減少している(当初の記事で表を読み間違えている部分があったのでアップデートした)。

では伝統的な財務諸表ではどういう結果になったのか?  Airbnbが報告した損益計算書は次のとおりだ。

 

残念ながらAirbnbは今年驚異的な成長をとげていない。われわの読み方が正しければ同社の規模は2018年とほぼ同一だ。

2020年の最初の3四半期と前年同期を比較すると、収入に対するコストの減少(収入が減ればそれに対するコストも減る)を別にすれば、費用の大幅な減少がもっとも注目される。Airbnbはセールスおよびマーケティング支出を2019年の最初の3四半期の11.8億ドルから、2020年の同時期にはわずか5億4550万ドルに減らしている。

 

2020年3月31日を終期とする四半期までAirbnbの成長は続いたがこの第1四半期は対前年比で実質的に横ばいだった。COVID-19の打撃がなければもっと大きく成長していたに違いない。その後、2020年6月30日を終期とする四半期では、Airbnbの売上は前年同期の12億ドルからわずか3億3480万ドルへというショッキングな売上減少が起きた。ここで実際の被害が計上された。

しかし第3四半期には大きな回復が見られる。なるほど今年の第3四半期は昨年同期より会社規模が縮小している。売上は2019年は16.5億ドルだったが、今年は3億4000万ドルにすぎなかった。しかし直前の四半期からみると売上をほぼ4倍に伸ばした。同社が今年の第4四半期にさ第3四半期なみの売上を確保できれば2018年の売上より数億ドル増える計算だ。

重要なことに、Airbnbは、長く続いた赤字四半期の後、今年の第3四半期に黒字に転換することに成功した(2019年も第三第3四半期は黒字だった)。しかし第3四半期にGAAP純利益2億1930万ドルを計上したものの、それ以前の巨大な赤字にくらべるとさほど印象的ではない。同社が2020年にブレークイーブンに達することはない。

ではAirbnbの財政状況は2020年末にはどうなっているのか? 四半期ごとの結果を確認すると以下のとおりだ。

Airbnbは調整後の利益指標も発表した。EBITDAの調整は次のとおりに行われている。

EBITDAは、純利益または純損失に以下の費目を加えたものとして計算しています
(i)法人税引当金
(ii)受取利息、支払利息、およびその他の収入(費用)
(iii)減価償却
(iv)株式に基づく報酬費用
(v)宿泊税の徴収および納付について、ホストと連帯して責任を負う可能性のある宿泊税準備引当金
(vi)リストラ費用

Costanoa Venturesの投資家、Amy Cheetham(エイミー・チーサム)氏は、リストラ費用を撤廃するという決定は眉をひそめ、「リストラ費用を含めるは少し行き過ぎでないでしょうか」と述べた。この点についてはわれわれも同感だ。 運用コストの削減など良い方向への努力は反映できる一方、その結果を得るために必要なリストラなどのコストを除外しているのはいささか都合が良すぎるとわれわれも感じた。よく「ケーキを持っていることと食べてしまうことは両立しない」というが、「ケーキを食べてしまった上にカロリーを勘定に入れない」ようなものだ。

TechCrunchは知り得た情報はなんであれ読者と共有するのが信条だ。そこでAirbnbが発表した強く調整されたEBITDAは次のとおりだ。

 

同社の財務はあれこれのコストを削減してもまだ健全な水準にならない。キャッシュバーンはさらに悪い。その赤字は、Airbnbが今年初めに巨額の資金を調達する必要があった理由を説明するものだ。

今回のS-1申請書を断定的に評価するのは困難だ。ここには投資家の期待に応えるグッドニュースも含まれている。しかし2020年第3四半期の収入が対前年比で減少していることと、直前の2020年第2四半期と比較すれば急速な回復を遂げたことの間の比較が企業価値の推定にあたって重要な点となるだろう。 全体としてみればAirbnbはどん底から立ち直るという離れ技をなしとげた。

しかし株式上場に向かって進み始めた以上、この回復を「グッドジョブ!」と賞賛しているだけではすまない。Airbnbは企業価値の最大化、取引の活発化を図らねばならない。投資家が進んで株式を買う気になるのはどれくらいの価格だろうか? 株式公開に当たっての株の値付範囲に強い注目が集まっている。

画像:OSHIFUMI KITAMURA / Contributor / Getty Images

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滑川海彦@Facebook

フードデリバリーのDoorDashがIPO申請書類を公開、驚異的な成長が明らかに

2020年初めの申請を経て、DoorDash(ドアダッシュ)は米国時間11月13日にS-1を公開し、様々な数値がガラス張りになった。年末までに予定されている公開デビューに近づいた。

同社は最近の米国における市場の混乱と選挙の混沌にもかかわらず、年末までにIPOが予想されるスタートアップの1つだ。

DoorDashは多額の投資を受けている。Crunchbaseによると、食品配達の巨人である同社はこれまで約25億ドル(約2620億円)の資本にアクセスした。直近では6月に4億ドル(約420億円)のラウンドを実施し、ポストマネーで160億ドル(約1兆6800億円)という高額で評価された。IPO価格を設定して取引が開始される際の期待が高まったことになる。

以下は同社の数字の簡単な要約だ。TechCrunchのクルーは11月13日午前中にはIPO書類を読み込む。株主の状況、法的リスク、その他の詳細については追って報告する見込みだ。

数字

DoorDashは信じられないほど急速に成長し、売上高は2018年の2億9100万ドル(約300億円)から2019年には8億8500万ドル(約930億円)に拡大した。直近では、2019年の最初の9カ月の5億8700万ドル(約610億円)から2020年の同期間は19億2000万ドル(約2010億円)に拡大した。

つまり2020年は目下226%の成長ということだ。これが高い価格で多くの資本を引き付けた理由を説明している。

DoorDashの収益の質は高いのか。2019年の最初の3四半期の粗利益は39.9%だったが、2020年の同期間は53.1%に上昇し、消費者向け商品配送を営む同社にとって大幅な改善となった。

DoorDashの急成長と粗利益率改善の結果、収益性が大幅に向上した。営業損失は2019年の最初の9カ月の4億7900万ドル(約500億円)から、2020年の同期間はわずか1億3100万ドル(約140億円)に減少した。純損失はわずかに改善し、同期間でそれぞれ5億3300万ドル(約560億円)と1億4900万ドル(約160億円)だった。トップラインの成長や収益の質の向上と比べれば重要ではない。

DoorDashは、第4四半期に向かうにあたり、約16億ドル(約1680億円)の現金及び現金同等物を保有している。つまり、IPOを行わなくても資金をまかなうに十分な現金を持つ。同社が外に打って出るのは、機が熟したと考えるからだ。

DoorDashのすさまじい成長を牽引したのは注文数と総注文数の大幅な増加だ。一方、粗利益率はコアビジネスの収益性の著しい改善によって上昇したようだ。以下のデータを見て欲しい。

DoorDashのS-1のスクリーンショット

貢献利益の2019年から2020年にかけての変化と、黒字へと跳躍した調整EBITDAをみると、Uber(ウーバー)がUber Eats(ウーバーイーツ)ビジネスで同じことを達成するのに苦労しているのが不思議に思える。とにかく、調整後で黒字への転換は、最終的にGAAPベースで利益を出すことへのウォール街の懸念を和らげるのに十分なはずだ。

このまま行けば1年程度でそれが達成できる。

また、DoorDashの事業はキャッシュを生み出す領域へと転じた。2019年の最初の3四半期の営業キャッシュフローはマイナス3億800万ドル(約330億円)だったが、2020年の同期間はプラス3億1500万ドル(約330億円)へと増加した。

全体を一見して筆者は強い印象を受けた。筆者の予想よりも会社は大きく、成長は速く、キャッシュの流出も少ない。キャッシュ生成能力、黒字になった調整EBTIDA、粗利益の改善を考慮すれば、DoorDashの価値はかなりのものだろう。ソフトウェア会社のような経常的な収益がなく、ワクチンが将来の成長を遅らせる可能性があるなら、DoorDashが価格を設定する時にSaaS会社のマルチプル(企業価値評価の指標)を獲得することはない。しかしおそらく、160億ドル(約1兆6800億円)のバリュエーションを守ることは、数字を入手する前に予想していたほど難しくはないだろう。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:DoorDash新規上場

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Antの超大型IPOが延期、中国当局がアリババ創業者から事情聴取

上海証券取引所はAnt Group(アント・グループ)の巨大な新規株式公開(IPO)を延期することを発表した。中国当局によるフィンテックに関する新たな規制の導入、また当局がJack Ma(ジャック・マー)氏や他の幹部を聴取したことを受けての措置だ。

中国の金融当局トップとAntの間でもたれた稀にしか行われない話し合いで「フィンテック規制における大きな変更」が明らかにされ、これによりAntが11月5日の上場の基準を満たさなくなるかもしれない、と上海証券取引所は11月3日夜に出した声明で述べた。

そうした「変更」がどういうものなのかは明らかではないが、同証取はAntにそれらを開示するよう求めた。10月下旬にマー氏が中国の金融規制を批判する刺激的なスピーチ(新波財経記事)を行っていたことは記すに値する。スピーチが行われたカンファレンスには中国の上層部も出席していて、後に広範にわたる論争を巻き起こすことになった。

Antは上海証取からの通知を受け、計画していた香港でのIPOも一時停止した、と声明の中で発表した(Ant Groupリリース)。

「投資家にご迷惑をおかけすることを心よりお詫び申し上げます。2つの証券取引所の規則に則って今後の問題に適切に対処します」と述べた。

Antはこれまで当局に従順であろうとしてきた。Ant FinancialからANT Technologyにブランド名を変更したとき、この動きは金融大手を脅かすという同社のイメージを払拭し、優しいテクノロジープロバイダーの1社であることを強調するものだと受け止められた。Antは「techfin(fintechの反対)」という奇妙な造語の会社であり、従来の金融機関(多くが国有だ)とは競合していない、ということを周知するキャンペーンを数年前に始めた。

言葉は単なるショーではなかった。Antは何億人もの顧客に従来の金融機関が提供していた金融商品を紹介し、オンラインマーケットプレイスにゆっくりと守備範囲を広げてきた。同社はまた国家安全保障基金や中国合弁投資銀行といったヘビー級の国家主体を投資家にもってきた。

しかし保証材料は十分ではなかったようだ。中国の金融当局はフィンテック部門を監督するための新たな提案を11月2日に発表した(中国銀行保険規制委員会リリース)。Antが世界最大のIPOで345億ドル(約3兆6000億円)を調達することになっていた数日前のことだ。ドラフトははっきりとAntを指してはいないが、金融当局によるAnt幹部の聴取とタイミングは一致する。

「金融部門の健全性と安定に関する考えを交換した」とAntの広報担当はTechCrunchへの声明文で述べた。「Ant Groupは意見交換を深めること、そして安定したイノベーション、規則の遵守、実経済へのサービス、ウィンウィンの企業という原則に基づいた方針を取り続けることを約束する」。

メッセージはクリアだ。Antは中国政府当局の要望に応える努力をする。

「当社は引き続き包括的なサービスを提供する能力を向上させ、一般市民の生活を良くするために経済発展を促進する」とAntは付け加えた。

新たな提案は、活発なフィンテック部門に安定をもたらそうと中国が進める取り組みにおける最新の動きだ。規制草案には、当局が認めたもの以外の地方間オンラインローンの禁止、個人向けのオンラインローンの最高額を30万元(約470万円)とすること、オンライン小口融資貸し手の登記資本金を10億元(約157億円)とすることなどが盛り込まれている。

AntのIPO目論見書によると、貸付事業は急成長中で、同社の年間売上の34.7%を占め、額にして419億元(約6600億円)だ。6月までの1年間にAntは約100行の銀行と共同で1兆7000億元(約27兆円)の消費者金融を実施し、中小企業に4000億元(約6兆円)を貸し付けた。

中国の金融当局は近年、フィンテック企業の拡大と収益性を抑制しようと、多くの規制を導入してきた。例えばAntの決済サービス Alipayと、そのライバルサービスは、顧客準備金から利子収益をあげることが2019年から禁じられている。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Ant Group新規上場 / IPO

画像クレジット:Ant Group

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(翻訳:Mizoguchi

アリババ子会社Ant GroupのIPO調達額は上海、香港同時上場で数兆円規模に

ずいぶん前から予想されていたが、Alibaba(アリババ)の子会社で中国のフィンテック大企業であるAnt Group(アント・グループ)のIPOによる調達額は、上海と香港株式市場への同時上場で数百億ドル(数兆円)に達する可能性がある。

Ant Group(旧社名Ant Financial)の株価は80香港ドル(約1080円)あるいは68〜69人民元(約1060〜1080円)になることが予想される。同社は香港株式市場デビュー時に1億3400万の株式を売り出し、1株80香港ドルの場合172億5000万ドル(約1兆8000億円)の調達が見込まれる。

上海株式市場でも似たような額の調達が予想されることから、同社のIPOによる調達額は345億ドル(約3兆6000億円)ほどになりそうだ。これはAramco(アラムコ)が最近IPOで調達した294億ドル(約3兆800億円)を(Reuters記事)上回って過去最大規模となる。

AlibabaのAnt Groupの持分は33%だ。現在予想される株価で計算すると、Ant Groupの企業価値はニThe New York Timesによると3100億ドル(約32兆5000億円)、CNBCによると3130億ドル(約32兆8000億円)だ。

Ant Groupの巨大なIPOは、同社の途方もない規模を反映している。TechCrunchが7月に報じた(未訳記事)ように、2020年3月時点のAntの年間アクティブユーザー数は約13億人だった。そしてこの数字はここ数四半期でさらに増えている可能性もある。AntのAlipayは、巨大で儲かる中国マーケットにおいてTencentのWeChat Payと競合する。

Ant GroupのIPOは、米国の株式市場が弱さを露呈した中でのものとみることができる。Alibabaが2014年に株式を公開したとき(未訳記事)、同社はニューヨーク証券取引所に上場した。同社はその後、香港株式市場にもデビューした。Ant Groupのニューヨークではなく、香港と上海でのダブル上場は米国外で資本調達が可能なことを示している。

グローバルパンデミックで消費者の行動が変わり、商品の購入や決済をデジタルで行うようになったため、大方のフィンテックスタートアップは2020年に売上高を増やしている。そして一般的にIPOはプラスに作用し、Ant Groupは株式が売買され始めた時にさらに追い風を受けて企業価値を増やすことが考えられる。

Antは本来の業務に固執しておらず、他のスタートアップに投資することで忙しくしてきた。例えば同社は、2020年初めに分割払いサービスKlarna(クラーナ)の少数株式を取得した。

3100億ドル(約32兆5000億円)超というバリュエーションだと、Ant Groupは現在最も企業価値が大きい米国企業であるJPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)に匹敵することになる。また米国拠点のデジタル決済リーダーPayPal(ペイパル)のバリュエーション2360億ドル(約25兆円)、そしてSquare(スクエア)のバリュエーション770億ドル(約8兆円)を上回る。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Ant GroupAlibaba新規上場ジャック・マー

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(翻訳:Mizoguchi

日本風に見える中国のバラエティストアMinisoが高値で米国でのIPOを果たす

日本にインスパイアされたライフスタイルグッズを世界中の消費者に届けるバリューストアチェーンに、投資家たちが飛びついている。Minisoは米国時間10月15日、ニューヨークでの新規株式公開で6億800万ドル(約640億2000万円)を調達した。初値は予定価格帯の16.50〜18.50ドル(約1740〜1950円)を上回る24.40ドル(約2570円)で、初日の終わりには4.4%の上昇となった。

創業7年のこの企業は、名前もブランディングも商品もウェブサイトも日本企業を連想させるものだが、実は生まれも育ちも中国だ。さまざまな面で無印良品、ユニクロ、100円ショップのダイソーと著しく似ていて(RADII記事)、日本のライフスタイルの先輩を模倣しているといわれている。

画像クレジット:Miniso

TencentとHillhouse Capitalが投資しているMinisoは、意図的に、誤解を招くような形で、自社を日本企業であるかのようにブランディングしている。プレスリリースや国ごとのサイト(日本語サイトはこちら)といったパブリックメッセージには「2013年に日本人デザイナー三宅順也と中国の若手起業家 葉国富により東京で創設され」と書かれている。しかしIPOの目論見書には日本発祥であるとの記載は見当たらない。

代わりに文書には、中国南部の大都市である広州が同社の最初の拠点で、葉氏が単独の創業者であり現在の最高経営責任者であると記されている。主要な取締役や経営陣はすべて中国人らしい。

ブランディングが混乱していることはさておき、Minisoが価格に敏感で多くの品物の中から選びたいと考える若者の支持を集めていることは否定できない。中国の来店者の80%以上は40歳未満だ。2020年6月時点で、近くに製造業者が多いため中国で販売されている商品の95%以上が50元(約790円)未満となっている。同社は毎週100種類の新しいSKUを発売するという目標を誇示している。

2019年のMinisoの収益は14億ドル(約1474億2000万円)に達した。これに対し創業71年のユニクロは178億5000万ドル(約1兆8800億円)、創業40年の無印良品は41億7000万ドル(約4400億円)だ。

ユニクロを思わせる鮮やかな赤色で飾られたMinisoの店舗は現在80カ国以上に広がり、4200店のうち40%は中国以外にある。店舗の90%以上がフランチャイズ店で、これが急速に拡大できた理由のひとつである。しかしこのモデルは、他社が運営する巨大な店舗ネットワークに対してMinisoのコントロールはあまり効かないということでもある。

カテゴリー:ニュース
タグ:Miniso中国IPO

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(翻訳:Kaori Koyama)

無料で遊べるゲーム配信大手Robloxが株式公開に向けて米証券取引委員会に非公開申請

ゲーム配信大手のRobloxは米国時間10月12日、IPOに向けて米証券取引委員会(SEC)に非公開で申請書類を提出したことを発表した(Robloxリリース)。

数千万人のユーザーを抱える無料ゲームサービスを運営する同社は、2月にAndreessen Horowitz率いるシリーズGの資金調達ラウンドを経て、40億ドル(約4214億円)の企業評価を得ている。Crunchbaseによると、同社はベンチャーキャピタルから3億3500万ドル(約353億円)以上の資金を調達しているという。

同社は、IPO時に提供する予定の株式数の詳細を明らかにしていないほか、実際の株式公開の時期については「市場その他の条件に左右される」と一般的な回答に留まっている。2019年のテクノロジー企業のIPOは低調だったが、2020年の新型コロナウィルスの関せ拡大の最中に株式市場が回復したことにより、現在はテック系スタートアップがデビューを果たす非常にいい機会が与えれている。ちなみにゲーム分野では最近、人気の3Dゲーム開発エンジンを開発するUnity Technologiesがデビューした。

Robloxは、消費者と開発者の両方に興味深い売り込みをしており、グラフィックを多用したゲームデザインから、様々なデバイスで遊べるコンテンツを構築することに向けて開発者を押し上げる、未来のフリー・トゥ・プレイのビジョンを打ち出しています。ゲーム会社は、ファーストパーティ体験の成功を強力な開発者ネットワークに変換することで、他のどの会社よりも成功しています。Robloxのプラットフォームは、若いオーディエンスに特に成功しています。

Robloxは、消費者と開発者の両方に興味深い売り込み方をしているのが特徴だ。開発者には、グラフィックス重視のゲームデザインから離れ、さまざまなデバイスでプレイ可能なコンテンツを構築する方向に向かわせる未来の無料ゲームのビジョンを提供している。ゲーム会社には、売り手(ファーストパーティー)としての成功によって強固な開発者ネットワークを構築している点で他の会社よりも成功している。また、Robloxプラットフォームは特に若いユーザーの獲得にも成功している。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Roblox、IPO

画像クレジット:Roblox

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(翻訳:TechCrunch Japan)

バックアップおよびディザスターリカバリーのDattoが株式公開へ

Vista Equity Partners(ビスタ・エクイティ・パートナーズ)が2017年にバックアップおよびディザスターリカバリーの会社であるDatto(ダット)を買収したとき、同社の話題はこれで終わりだと思ったかもしれない。同社はプライベートエクイティのために金を稼ぎ続けるポートフォリオの中に心地よく吸い込まれるはずだったが、実際のVistaのやり方はそうではなかった。Vistaは会社を築き上げる傾向があり、時には最後に株式を公開する。Dattoが9月29日にS-1を提出したのはそれに当てはまる。

Dattoは買収されて以来忙しく、健全に5億700万ドル(約540億円)のARR(年間経常収益)を計上し、1万7000のマネージドサービスプロバイダー(MSP)の顧客を抱える。そのうち10万ドル(約1060万円)以上のARRで貢献している顧客が1000社以上ある。MSPは、社内リソースがない会社のIT部門として機能するサービスプロバイダーだ。

同社は公開時の調達予定金額として、標準的な金額である1億ドル(約106億円)を記載しているが、まず確実に変わるはずだ。マネージドサービスプロバイダーの顧客ベースを考慮して会社のティッカーシンボルはMSPになる。

同社が2015年にシリーズBで7500万ドル(約80億円)を調達したとき、創業者でCEOを務めていたAustin McChord(オースティン・マッコード)氏は、Vistaにドアノックされた2年前の時点でDattoはすでに利益を上げていたと述べた。「高収益企業として、Dattoは(既存)事業のために資金を調達するのではなく、新市場に参入し、新製品や新技術を開発するために資金を調達するのだ」と同氏は当時の声明で述べた。

同社の財務数値を見ればそれがわかる。2020年の最初の6カ月で、サブスクリプションの売上高は2億3400万ドル(約250億円)、粗利益は1億7800万ドル(約190億円)だった。販売、マーケティング、その他のコストを加味した純利益は1000万ドル(約11億円)だった。2019年の同じ期間のサブスクリプションの売上高は1億9600万ドル(約210億円)、粗利益は1億4300万ドル(約150億円)、純損失は約2600万ドル(約28億円)だった。

つまり、同社はトップラインの売上高を伸ばし、コストを一定に保ち、その他の費用の増加をコントロールし、純利益への影響を限定することに成功した。これにより1株当たり純利益はマイナス0.19ドル(約マイナス20.1円)から0.07ドル(約7.4円)に変動した。

もちろんDattoのような企業は公開に備えて常に数字の見栄えを良くしようとする。次の数四半期にわたり、Dattoが成長を続け経費を抑えることができるかどうかを観察して初めて本当の理解が得られる。

昨年VistaのシニアマネージングディレクターであるAlan Cline(アラン・クライン)と話したとき、VistaはDattoのような高いパフォーマンスを出しているスタートアップを好む傾向があると述べた。

「ソフトウェアはテクノロジーを内側から革新する最も簡単な分野だ。エンドビジネスの顧客にもたらす生産性の点で大きな利点がある。また、高いROI(投資利益率)は非常にパワフルだ。アップマーケットでもダウンマーケットでも、顧客に対し『当社のソフトウェアを使えばもっとお金が稼げる』とか『もっとお金を節約できる』ということを証明できれば、顧客は予算を確保してくれる」とクライン氏はTechCrunchに語った。

ちょうど昨年、Vistaのポートフォリオの別の会社であるPing Identity(ピンアイデンティティ)が同じ1億ドル(約106億円)での公開を申請し、最終的に1株当たり15ドル(約1600円)で1250万株を売り出した。現在、同社は1株当たり31.68ドル(約3360円)で取引されており、時価総額は25億ドル(約2650億円)を超えている。

画像クレジット:coffeekai / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

IPO直前のPalantirの参考価格は企業価値1.7兆円超相当

Palantir(パランティア)が(17年を経て)明日、米国時間9月30日のNYSE(ニューヨーク証券取引所)上場の準備をする中、本誌は同社の株価を投資家がどう判断するかに関わるデータを入手した。

NYSEは、ティッカーシンボル「PLTR」で取引されることになる同社の参考価格を1株あたり7.25ドルと発表した。Palantirはダイレクトリスティング(直接上場)を実施するため、参考価格は投資家に対するNYSEの指針に過ぎず、実際の取引価格を表すものではない。

米国時間9月29日の取引終了後にPalantirがSEC(証券取引委員会)に提出した書類によると、同社はクラスA株式11億6000万株、クラスB株式4億8500万株、クラスF株式100万株、合わせて約16億4000万株を、現時点の資本施策表に載せている。完全希薄化ベースでは計22億株、企業価値は160億ドル(約1兆6800億円)になると最新のS-1書類にPalantirに記している。2つの数値の相違は発行済株式の実績、ワラントその他の金融商品による。

同社株の取引は30日午前に開始予定であり、ダイレクトリスティングを実施することから、上場によって第一次資本が増えることはない。

TechCrunchではPalantirの株価を内部取引に基づいて追跡してきた。2019年1月初めに5ドル前後だった価格は、同社が上場に向けて目論見書の準備を始めたことで今月初めに9.17ドルまで跳ね上がった。参考価格の7.25ドルはこの最終取引価格を下回っているだけでなく、先週The Wall Street Journal が報じたPalantirの銀行筋による10ドルという価格ラインも切っている。

もちろん、参考価格はIPO価格と同じくほとんどが作られた値であり、こうした株の真の価値は、明日トレーダーがインサイダーから株を買い取った後の市場で決まる。

本日午後の申請書類でPalantirは、およそ4億7500万株が取引に出され、残りはロックアップされると書いていている。Palantirはロックアップ付きダイレクトリスティングの先駆者なので、今後株式がさらに出回ったとき、この構成が株価にどう影響を与えるかが注目される。

関連記事:In its 5th filing with the SEC, Palantir finally admits it is not a democracy(未訳記事)

カテゴリー:ネットサービス

タグ:Palantir 新規上場 / IPO

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

EV充電ネットワークのChargePointがSPACとの合併を経て上場へ

2020年、Canoo、Fisker Inc.、Lordstown Motors、Nikola Corp.などの電気自動車(EV)のスタートアップが、SPAC(特別目的買収会社)と合併して上場した。そして今、長くなる一方のSPACのリストにEV充電会社が加わり始めた。

EV充電ネットワークであるChargePointは、特定目的買収会社のSwitchback Energy Acquisition Corporationと合併する契約を結んだ。ChargePointのバリュエーションは24億ドル(約2520億円)。同社は、Pasquale Romano(パスカル・ロマーノ)社長兼CEOと現在の経営陣が引き続き率いる。新会社はChargePoint Holdings Inc.の社名でニューヨーク証券取引所に上場する。同社は合併が年末までに完了すると見込む。

同社はBaillie Gifford(ベイリー・ギフォード)氏などの機関投資家やNeuberger Berman Alternatives Advisors(ニューバーガー・バーマン・オルタナティブ・アドバイザーズ)が管理するファンドがリードした2億2500万ドル(約240億円)のPIPE(公開会社への私募増資)で資金を確保できたと述べた。同社の手元現金は約6億8300万ドル(約720億円)に上る。増資で調達したキャッシュは、負債返済、事業資金、成長資金などに使う。

「EV充電業界は成長しており、2030年までに充電インフラへの投資は1900億ドル(約20兆円)になると予想されている」とSwitchbackのCEO、CFOおよびディレクターのScott McNeill(スコット・マクニール)氏は声明で述べ、「ChargePointは求められているインフラを供給する良いポジションにいる」と付け加えた。

ChargePointはEV用のハードウェア、付随するソフトウェア、クラウドサブスクプラットフォームを設計、開発、製造している。同社はEVやSUV向けの公共・半公共の充電スポットだけでなく、家庭用充電器のブランドとしても良く知られている。またChargePointは、フリートオペレーター向けに配達用バン、バス、乗用車を管理するハードウェアとソフトウェアを提供する商用ビジネスも行っている。同社は世界全体で11万5000以上の充電スポットを持つ。北米と欧州全体のネットワークとのローミングにより、さらに13万3000カ所の公共スポットへのアクセスを提供する。

2007年創業の同社は、新しく得た資金を使って北米と欧州での拡大、技術ポートフォリオの改善、商用・フリート・住宅向け事業の大幅な拡大を計画していると語った。

ChargePointのSPACとの合併は1億2700万ドル(約140億円)の資金調達(未訳記事)の1カ月後に行われた。調達には石油、ガス、電力、ベンチャー業界の既存投資家から、American Electric Power、Chevron Technology Ventures,、Clearvision、Quantum Energy Partnersが参加した。

カテゴリー:モビリティ

タグ:ChargePoint 電気自動車 SPAC 新規上場 / IPO

画像クレジット:ChargePoint

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(翻訳:Mizoguchi

VCのコペルマン氏インタビュー:SPACについてはまだ結論を出せないが、いわゆるローリングファンドは威力を発揮すると考えている

TechCrunchは、アーリーステージ投資を専門とする創業16年のベンチャー企業First Round(ファースト・ラウンド)の共同設立者ジョシュ・コペルマン氏に会い、さまざまな問題について話す機会を得た。当然ながらその際に、現在ベンチャー業界で起きている大きな変化、例えば、いたるところで立ち上げられているSpecial Purpose Acqusition Company(SPAC、特別目的買収会社)、勢いが増しているローリングファンド構想、さらに多様性に関するファースト・ラウンドの考えなどについて、同氏に意見を尋ねた(このインタビュー全編は今週末にポッドキャストで皆さんにお届けする予定だ)。

コペルマン氏は創業者たちからも高く評価されているため、前述のような新しい変化に対する同氏の意見を知りたい読者は多いと思う。以下が今回のインタビューの内容だ。長さを調整し、わかりやすくするために、多少の編集が加えられている。

TC:ファースト・ラウンドの設立以来、あなたの業界は明らかに大きく変化しましたね。現在、何百もの企業がアーリーステージの取引を求めています。市場で起こっていることは御社の業績にどのような影響を及ぼしてきましたか。以前と変わらない投資収益率を維持していますか。

過去5年間の変化については、まだ結果は出ていません。そのため過去5年間の未実現のマークアップについて言えば、確かにうまくいっているように見えます。とはいえ、私はこのビジネスに長く携わっているため、実現利益と未実現利益の間には大きな違いがあることはわかっています。ただし中間指標を見ると、一般的には、我々が最初のラウンドをリードする企業は、次のラウンドを調達する可能性が業界平均の2倍高くなっていることがわかります。まだ明るい兆しがあるということです。しかし15年前には逆張り的だと言われていたもの(組織化されたシード投資)が、今では広くコンセンサスを得ているということは認識しています。

TC:結果が出るまでに時間がかかる一因は、ここ10年ほど、企業が上場するまでに要する時間がどんどん長くなってきたことにあります。IPOプロセスは破たんしていると思いますか。スタートアップを上場させるには新しい手段が必要だという意見が多く聞かれます。

IPOが破たんしているとは言い切れないと思います。あなたは、はるかに多くの企業がイグジットするのを目にしていると思いますし、我々は、そのようなイグジットの件数も規模も実際に拡大しているのを目にしています。これは期待できる状況です。

公開市場で発揮されている企業の透明性にはメリットがあると思います。なぜなら透明性こそが真に価値を持続させる方法だからです。非公開市場で実際に評価額Xを獲得した企業を調べたことがありますが、その評価額は、完全に透明性のある公開市場においては、同企業の決定的な価値を正しく反映するものではありませんでした。

現在、SPACの登場によりまったく新しい要素が入ってきています。

TC:SPACについてはどう思われますか。

これは半分冗談ですが、SPACを立ち上げたくなった場合に備えてLastround.comを所有しておこうとあらためて思いました(笑)。とはいえ、SPACの本当のメリットを知るのは難しいです。そして、資金調達要素をともなうダイレクトリスティング(直接上場)を認める方向に市場がシフトし始めた今、あなたはダイレクトリスティングの方がはるかに実行可能性が高く、頻度の高い資金調達または資金繰りの手段だと考えるかもしれません。

TC:SPACと比較して、ダイレクトリスティングのメリットは何だと思いますか。

ダイレクトリスティングの方が経済的だと思います。ダイレクトリスティングなら、キャップテーブル(資本構成表)の多くの部分をプロモーションに配分することはありません。[編集者注: SPACのスポンサーは通常、創業者株式を名目的な対価で取得し、発行済み普通株の20%を保有することになる。]ダイレクトリスティングは業績ベースのワラントではありません。はっきりと言えるのは、ダイレクトリスティングにおける実質的な作業は、企業にとって適切な市場清算価格を見つけることだけだということです。

ここ数年の変化を見ていると、なんとなく自分は[ダイレクトリスティングの提唱者である]Gurley(ガーリー)氏寄りだと思いました。

TC:ポートフォリオ企業が、SPACを使用して株式を公開することに興味があるかどうかを尋ねられた場合は…

実際に今、そのようなことが起きています。

TC:そのことについてどう思いますか。どのようにアドバイスしますか。

1つのことについて選択肢がないまま話し合うのは意味がないと思いませんか。腰を据えて、「何の解を求めようとしているのですか。流動性ですか。それとも資本増強、公共通貨ですか。最古参の従業員に流動資産と現金を提供して、彼らが会社にささげた時間の恩恵を受けられるようにすることはできますか」といった話をすべきです。あらゆる選択肢を検討する必要があります。選択肢を検討せずにSPACについて検討するのは意味がないと思います。また、ダイレクトリスティングを熟考しているのなら、SPACの利点や欠点も検討すべきです。

TC:四半期ごとのサブスクリプションベースで運用担当者がファンド投資家とディールフローをシェアできるローリングファンドについて、どう思われますか。

とてもクリエイティブだと思います。私自身もリミテッドパートナーとして、いくつかのローリングファンドに参加したことがあります。私が2004年にHoward Morgan(ハワード・モーガン)氏とファースト・ラウンドを創業したときには、どちらもいつまで続けるのかわかりませんでした。創業時には、3つの課題がありました。1つ目は「起業家ではなくVCであることを楽しめるか」、2つ目は「地理的ハンディキャップを克服できるか」でした。当時私たちはフィラデルフィアに住んでいましたが、出資していた企業の大部分は西海岸にあったからです。そして3番目の課題は「私はVCに向いているか」というものでした。従来型の資金調達には本当に苦労しましたが、資本市場では苦労知らずでした。また、この仕事を10年続ける、と最初からコミットすることはなかなかできませんでした。

FRC Iは、実際には1年ファンドを積み重ねたものです。当社は「2005年に投資して様子を見る。気に入ったら2006年にも資金を調達する。そして2007年にも同じことを繰り返す」というように、1年の期間で資金を調達しました。そして3年後、前述の3つの課題に対応できるという十分な自信を得たので、安心して10年間の任務に就くことができました。ですので、投資の分野でキャリアを積みたい人が、最初から10年契約を結ばなくても、キャリアを追求し模索できるようにすることは、本当に効果的だと思います。

TC:先ほどハワード・モーガン氏について言及されましたが、同氏はその後、投資会社Bキャピタルの会長になりましたね。VCの多くはアクティブに投資を行う立場から脱却しつつあります。ファースト・ラウンドの継承についてはどのようにお考えですか。ファースト・ラウンドは、今から20年後も存在すべきだと強く感じているブランドなのでしょうか。この業界は、個々のプレイヤーとドアの上の看板に重きを置く形で発展しているようです。

個人的にはすぐにどこかに行くつもりはありません。今やっていることが楽しいのです。当社には将来性を持つ非常に強いチームがあると思っています。当社は現在、積極的に新しいパートナーを探しています。ますます資本が調達しやすくなる世界で、何よりも差別化できるのはブランドだと思います。

ファースト・ラウンドをスタートした頃は、シードファンドがあまりにも少なかったため、Footlocker(フットロッカー、アメリカのスポーツ用品店)に入り、棚に並んだスニーカーを3足だけ見るようなものでした。創業者は3足すべてを試し、どれが合うかを確認してから選ぶことができました。しかし現在は、靴屋に入り、棚に並ぶ1000足の靴を見て、最初にどれを試せばいいのかわからなくなっている状態です。私たちは、これまで勝者を生む能力があることを証明してきたブランドこそが本当に重要だと信じています。例えば、Nike(ナイキ)の価値は、その製品から利益を得た企業家によって決まります。同じように、実のところブランドは今まで以上に重要になっていると思います。

TC:現在、新しいパートナーを募集していますね。スタートアップの世界のVCや起業家にとって多様性が明らかに大きな課題になっています。あなたのファンド内だけでなく、ポートフォリオ企業内でも多様性を促進するために、どんな取り組みを実施していますか。

当社は実際にパートナーの職務内容を掲載し募集をかけるという手段を取りました。大抵の場合、パートナーの採用活動は独自のネットワーク内で行われるからです。そのような方法は良くないと思います。他の3人の投資パートナー、Bill(ビル)氏、Haley(ヘイリー)氏、Todd(トッド)氏を見ると、彼らには以前ファースト・ラウンドの創業者だったという共通点があります。

そのため、自分たちのコミュニティの中だけで採用活動を行うのではなく、それ以上のことをしようとしていますし、採用活動をフェアでオープンなプロセスにしようと非常に熱心に取り組んでいます。私たちは、Kapor Capital(ケイパー・キャピタル)のBrian Dixon(ブライアン・ディクソン)氏のブログ記事から強く影響を受けました。その記事の中で同氏は「自分のベンチャー企業の求人情報を公開しないのは、意図的に排他的になっているためだ。人はその存在を知らない仕事に就くことはできない」と述べています。

当社もディクソン氏と同じ意見です。それで、パートナーとなる有望な人材の新たなソースを見つけることに注力しており、会社全体で多くの取り組みを行っています。その一環として、先日、当社が提出するすべての条件概要書において有色人種の資金提供者や過小評価された資金提供者に対する配分が確保されるようにするための誓約書を作成して署名しました。このように当社は、事務所や会社内での多様性だけでなく、キャップテーブル(資本構成表)における多様性についても考えています。

さらに当社では多くのトレーニングプログラムも実施しています。また採用時に多様な人材パイプラインを構築することに注力できるよう新たな投資を行い、かなり強力なプロセスを用意しています。なぜなら、一般的にはネットワーク内から採用する傾向があるため、最初の10人を採用する時点で多様なチームを構築することに注力しなければ、多様性を拡大するのはますます困難になるからです。多様性が欠けた状態でスタートすると、後から苦労するだけです。

TC:ここ数年、シリコンバレーの文化について多くの問題が提起されてきましたが、投資家と、テクノロジーを取材するジャーナリストとの間で衝突することが急に増えたような気がします。なぜだと思いますか。

そのことについて私個人は特に深い考えはありません。以前は別個のエコシステムだったテクノロジーが、今ではあらゆるものに関与しているということを、私たちは目にしているのだと思います。医療テクノロジーは医療と同じようになり、消費者向けテクノロジーやソーシャルテクノロジーは世界の一部にすぎなくなりました。

これまでエコシステムに縛られていたであろうジャーナリストが、テクノロジーの世界で起きていることに今まで以上に懐疑的な目を向けなければならなくなったのは、当然のことだと思います。成熟段階にあるだけだと思います。テクノロジーは発達すればするほど、あらゆる業界を象徴する存在になっていくのではないでしょうか。近い将来、すべてのジャーナリストがテクノロジーを取材するのを目にする日が来ると思います。

関連記事:Facebook共同創業者サベリン氏が語る「シリコンバレー後のイノベーション戦略」

カテゴリー:VC / エンジェル

タグ:インタビュー IPO

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(翻訳:Dragonfly)

3Dゲームエンジン開発のUnityがIPO、正式な取引初日に株価が31%以上も上昇

ビデオゲームで稼ぐことはできないと言っていた人は、明らかにUnity Softwareの株価を見ていない。

正式な取引初日、同社の株価は31%以上も上昇した。1株当たり75ドルで始まり、68.35ドルで取引を終えた。Unityの株価上昇は、昨夜同社の株価が1株当たり52ドル(Business Wire記事)と、44ドルから48ドルのレンジ(未訳記事)を大きく上回り、それ自体が同社の当初の目標を上方修正したあとに来た。

「Pokémon GO」や「Iron Man VR」のようなゲームはUnityのソフトウェア開発環境に依存しており、同社のツールキットをサポートに使用しているほかの多くのモバイルゲームアプリケーションも同様だ。同社の顧客は、小規模なゲームパブリッシャーから、Electronic Arts(エレクトロニック・アーツ)、Niantic(ナイアンティック)、Ubisoft(ユービーアイソフト)、Tencent(テンセントなどの大手ゲーム会社まで多岐にわたる。

UnityのIPOは、クラウドベースのビッグデータ分析会社のSumo Logic、データ特化型クラウドサービスのSnowflake、パッケージリポジトリのJfrogなどの評判のいいデビューIPOに続くものとなった。TechCrunchは米国時間9月18日の株取引の時間外にUnityのCFOであるKim Jabal(キム・ジャバル)氏に取材し、取引について少し掘り下げた。

同氏によると、機関投資家向けの会社説明会であるロードショーをZoomで開催したことに利点があるという。彼女のチームは1日に1つの地域に集中して業務に取り組む必要がないため、Unityでは特定の火曜日の朝、ボストンやシカゴで誰が暇だったかではなく、会社が会いたがっている人に基づいて時間を 「最適化」 できる。

ロードショーが対面ではなくデジタル形式でうまくいっていると聞いたのはジャバル氏が最初ではない。もし旧式のロードショーがこれからも生き残れば私たちは驚くが、民間のプライベートジェット会社は将来的にはビジネスを失うだろう。

取引自体についてジャバル氏は、従業員、価値、そして従業員が持つ同じ価値感について強調した。SECへの提出書類によると、UnityのIPOのユニークな点は現従業員と元従業員は「現執行役・現取締役」を除き、初日に所有株式の15%を売りに出せたことだ。

この行為は同社株への投資家の熱意を削ぐものではなく、むしろ早期の株価上昇に貢献した。結果、需給曲線の両サイドがより早く会社の真の価値に近づくことを可能にしたようだ。

UnityのIPO価格設定について同氏は、「データ駆動型のプロセス」と呼ぶものについて議論した。そのプロセスを採用した結果、IPO価格は上昇幅を超え、取引初日に上昇したが50%以下だった。これはIPOで期待以上のいい結果だ。

最後にSaaSオタクの方に向けてひと言。米証券取引委員会の言葉を借りれば、Unityの「ドルベースの純増率」は2020年に「非常に良好」から「優秀」になったという。

既存顧客の収益の拡大率を測定する「ドルベースの純拡大率」は、引き続き12カ月間の既存顧客の収益の拡大率を測定し、2018年12月31日時点の124%から2019年12月31日時点の133%、2019年6月30日時点の129%から2020年6月30日時点の142%へと成長し、この戦略の力を実証している。

私たちは聞かざるを得なかった。そしてその答えは「同社のプラットフォームの強さと、顧客がどのように時間をかけてUnityのサービスをより多く利用する傾向があるかの組み合わせであり、それは顧客とともに成長している」と同氏は説明する。2つ目のカギとなる要素は「ゲームを中心とした利用の増加」によってUnityに「追い風」を与えた2020年特有の状況だったという。

2019年と比較した2020年の自身のゲームレベルを見るとその差は明らかだ。

 

この記事で今週のIPO関連の話題は終了だ。次はPalantir、そしてAsanaが控えている。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

「従来型IPOはナンセンス」という説にIPOの専門家が反論

Lise Buyer(リズ・バイヤー)氏はこれまで13年間、自身のコンサルタント会社であるClass V Group(クラスVグループ)を通じて、株式公開の仕方をスタートアップにアドバイスしてきた。バイヤー氏は同社を創業する前に、はじめは投資銀行家として、その後はGoogle(グーグル)のディレクターとして働いた経験を持つ。グーグルでは、例外的な方法が採用されたことで有名な2004年のIPOの計画立案に携わった。

バイヤー氏が年を追うごとに従来型のIPOを高く評価するようになったのは、おそらくグーグルのIPOが大きな誤解を招いたからかもしれない。バイヤー氏は自身を「コースを何度もプレイして」さまざまな環境で何が起こるかを経営陣に進言できるようになったゴルフキャディーのようだ、と言う。

確かにバイヤー氏は、経営陣が通常のIPO、オークション式、SPAC、ダイレクトリスティング(直接上場)のどれを選ぶかに「関係なく、自分の報酬は変わらない」と言うが、その一方で、直接上場やSPACについては、それを組織する投資家が見せかけてきたほどの必要性はないと思っている。むしろ、従来型IPOプロセスは近年、不当に低く評価されてきたと考えており、おそらくその不評は、憤慨したBill Gurley(ビル・ガーリー)氏という人によってあおられているのではないかと感じている。

(この名前にピンとこない人のために付け加えると、ガーリー氏がパートナーを務める老舗VCが昨年、IPOのことを「悪い冗談」と呼んで公然と反対し始めた。IPO直前の株が銀行から優遇された機関投資家に渡り、その機関投資家がIPO初日に数千万ドル(数十億円)もの利益を得ることがあるが、本来その資金は発行企業のところに行くはずのものだ、というのが同VCの言い分である。ガーリー氏は昨秋、サンフランシスコで「Direct Listings:A Simpler and Superior Alternative to the IPO(直接上場:IPOに代わるシンプルで優れた方法)」という招待客限定のイベントも主催している)。

確かに最近、従来型IPOを選ぶ企業はIPOの引き受け業務を行う投資銀行に付け込まれる「能なし」だと主張する声が聞かれるようになっており、そのことにバイヤー氏は憤慨している。

バイヤー氏は次のように語る。「株式公開にはいろいろな側面がある。この話題が現在のような方向に進んでいるのは非常に残念だ」

バイヤー氏には、従来型IPOに関する上記のような主張が正しいと思えない。その理由として同氏がまず指摘するのは、IPO初日の「高騰」は経営陣も想定しているという点である。同氏はこう説明する。「適正な価格を選ぶのはビル・ガーリー氏ではない。従来のIPOでは銀行が企業に対して『御社は(一株あたり)40ドル(約4240円)の価値があると思うが、IPO価格は(一株あたり)20ドル(約2120円)とする』と言い、それによってIPO価格が決まると考えている人がいるが、そうではない。その考えは間違っている。適正な価格を選ぶのは経営陣である。経営陣は普通、IPO初日のことだけでなくその先のことも考える必要がある。IPO初日に高値になることを望む企業もあれば、そうでない企業もある。それは経営陣が決めることだ」。

バイヤー氏は一例として、ビデオ会議システムの会社であるZoom(ズーム)を挙げる。ズームの株価は去年4月のIPO初日に72%急騰した(このパンデミックの間も急伸を続けている)。同氏によれば、CEOのEric Yuan(エリック・ヤン)氏と役員たちは「株価が跳ね上がることを承知していた」のであり、いずれにしても最初に設定された株価に同意していた。ヤン氏らは、膨れ上がった期待に応えようと競い始めるよりも、現実的で達成可能な期待値を設定したいと思ったのである。

経営陣は「市場が天文学的な金額を支払うことに一時的に積極的になっているというだけで、困難な立場に置かれたくないと思っている。そのように高騰した価格で買う人は、実際には市場のファンダメンタルズを理解していない場合が多い。もし3か月後にその企業がIPO時のクレイジーな期待に沿わない予測を発表したら、経営陣は非常な長期にわたってその状況に耐えていかなければならなくなる」とバイヤー氏は説明する。

同様のケースとして、バイヤー氏はソフトウェア企業のBill.com(ビルドットコム)のことを指摘する。同社の株価は昨年12月のIPO初日に60%跳ね上がった。最終的にどの程度の資金を調達できるか心配だったかもしれないが、同社は正しい判断をし、それによってすぐに報われたと同氏は考えている。

「ビルドットコムの場合、経営陣は需要が供給を劇的に上回ることを知っていたので、IPO価格を大幅に高く設定することもできた」とバイヤー氏は言う。経営陣がそうしなかったのは「株式市場に関して常軌を逸したメッセージを送り」たくなかったからだ、と同氏は続ける。加えて、ビルドットコムはすでに次の株式売却を計画していた。実際6月に、同社のビジネスが加速して株価が上がると、経営陣はずっと多くの割合の株式を、ずっと高い価格で売却した

多くのソフトウェア企業と同様、ビルドットコムもパンデミックの影響で予想外の利益を得たと言われるかもしれないが、バイヤー氏はそうは見ていないようだ。「同社は以前から、価格を抑えた例のIPOによって投資家と親密な信頼関係を築いてきたので、ずっと多くの資金を集め、4か月後にダイリューション(希薄化)を抑制することができた。同社が(IPO初日に)判断を誤って公的年金基金を少し増やしたと誰が批判できるだろうか」とバイヤー氏は語る。

今年最も期待されているIPOの一つがAirbnb(エアビーアンドビー)だが、上記と同じような理由で従来型IPOを選ぶかどうかは間もなく明らかになるだろう。Bloomberg(ブルームバーグ)がちょうど本日伝えたところによると、同社は従来型IPOを行うために、ヘッジファンドの億万長者Bill Ackman(ビル・アクマン)のSPACによる買収を断ったという。

一方で、ビジネスにとって最善の方法を今すぐ決定する必要があるのは、決して宿泊業界の巨人であるエアビーアンドビーだけではない。特にSPACは今、創業者の目にも投資家の目にも魅力的に映っているようだ。バイヤー氏は自身のクライアントについてこう述べている。「6週間前にはSPACのことを考えていなかった人々が、今では周りに影響されて、合弁パートナー兼買収者の候補企業に関する条件やトレードオフについて具体的な評価を行い始めている」。

直接上場は費用が安く済む手法として歓迎されており、先週時点のSEC命令では、企業は直接上場によって資金を集めることができることになっているが、バイヤー氏はSPACや直接上場についてはまだ様子を見たいと考えている。

「最初の募集を含む直接上場では、企業がアドバイザーではなく引受人を参加させるかどうか、それによって費用が従来型のIPOよりも安くなるか、または高くなることさえあるのか、興味深いところだ。どちらの可能性もあるが、まだ結論は出せない」とバイヤー氏は語る。

「繰り返すが、確信があるわけではない。ただ、強い意見によって刷り込まれたものではなく、現実に存在する本質的な問題は何なのかを見きわめるために、今は様子を見守りたいと思っている」とバイヤー氏は付け加えた。

関連記事:データ特化クラウドのSnowflakeがIPOで約2.5兆円の評価、セールスフォースとバークシャーハサウェイも出資

カテゴリー:VC / エンジェル

タグ:コラム IPO

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(翻訳:Dragonfly)

データ特化クラウドのSnowflakeがIPOで約2.5兆円の評価、セールスフォースとバークシャーハサウェイも出資

Sumo LogicとJFrogによる新規申請(未訳記事)の直後に、データに特化したクラウドサービスの強みをベースに公開を目指すSnowflake(スノーフレーク)がIPOの仮条件の範囲を設定した(米証券取引委員会資料)。ユニコーンの同社にはベンチャーキャピタルが投資している。

IPOでの株価の目標は1株当たり75~85ドル(約8000~9000円)だ。同社のバリュエーションは209~237億ドル(約2兆2600億~2兆5100億円)ということになる。未公開企業としては巨額だ。同社はIPOで27億ドル(約2900億円)以上を調達する可能性がある。

Snowflakeが今年初めのシリーズGで4億7900万ドル(約510億円)相当を調達したときのバリュエーションは約125億ドル(約1兆3200億円)だった。

同社のバリュエーションには2件の私募増資が織り込まれている。よく知られたCRMプレーヤーであるSalesforce(セールスフォース)と、80~90年代の投資リターン、Cherry Coke(チェリーコーク)氏、Charlie Munger(チャーリー・マンガー)氏のユーモアで有名なBerkshire Hathaway(バークシャーハサウェイ)の両方からそれぞれ2億5000万ドル(約270億円)の出資だ。

冗談はさておき、セールスフォースがIPOに関与していることは注目に値するが衝撃的とは言えない。一方、暴力的とも言える歴史的損失を計上したBerkshireがSnowflakeの公開市場デビューに参加するのは衝撃的だ。

S-1/Aに記載された今回の建て付けは以下のとおりだ。

株式公開のクロージング直後に「同時私募増資」のセクションに記載のクロージング条件に従い、Salesforce VenturesおよびBerkshire Hathawayが私募増資により発行されるクラスA普通株式を2億5000万ドル、株式公開における公募価格と同じ1株当たり価格で引き受ける。Salesforce VenturesおよびBerkshire Hathawayは、本目論見書の表紙に記載の価格帯の中間値である1株当たり80.00ドルの想定公募価格に基づき、クラスA普通株式312万5000株を引き受ける。

さらにBerkshire Hathawayは、セカンダリートランザクションにおいてクラスA普通株式の404万2043株を株式公開のクロージング直後の公募価格と同じ1株当たりの価格で引き受けることに同意した。

2つ目の段落は、Berkshireが実際にさらに多くの株を求めた結果、合計購入価格が5億ドル(約530億円)を超える可能性があることを明らかにしている。

Snowflakeの魅力は何か。TechCrunchでは同社が申請したときに少し書いた(未訳記事)が、要は同社が著しい成長を遂げ、粗利益率が向上し、損失を劇的に削減したためだ。それらが価値あるIPOにつながり、Buffett(バフェット)氏を魅了するに至った。

いずれにせよ、ここ米国で今年最大のIPOになる可能性があり(Airbnbの状況による)非常にエキサイティングだ。

画像クレジット:dolgachov / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

安売り通販王のWishが非公開で上場準備書面提出、ロジスティクス問題にも対処中

Wishはサンフランシスコを本拠とする社員750人のeコマース企業だ。売っているものが恐ろしく安い。あまりに安いのでモルモットの散歩用ハーネス、Appleウォッチのコピー腕時計、ミニ監視カメラなどいらないものでもつい買ってしまう。このWishが証券取引委員会に企業上場の準備書面を非公開で提出したと発表した。

非公開であるためまだ財務関連の数字を正確に把握できていないが、これまでに総額16億ドル(約1700億円)を出資してきた投資家が、2019年夏に直近のラウンドである3億ドル(約319億円)のシリーズHを完了した際に会社評価額を112億ドル(約1兆1892億円)としていることはわかっている。一方、Wish自身は40言語100カ国に7000万人のアクティブユーザーがいると発表している。

最大の疑問はもちろん、創立10年になるこの通販会社が現在の勢いを維持できるのかさらに成長できるのかという点だろう。

この疑問に答えるのは、そう簡単ではない。一方では、Wishが取り扱う商品のほとんどは中国から来ているため、次第に激しさを増す米中対立の影響を受けることになる。しかしWishは変化する世界情勢に合わせてマーケットや仕入先を多様化させる努力を続けている。

例えば2019年のRecodeのインタビュー記事によれば、同社はメキシコ、アルゼンチン、チリなどラテンアメリカ市場へのシフトを強めている。同社は既に南アフリカ、ガーナ、ナイジェリアなどをカバーしているが、今後アフリカでの活動をさらに強化する計画だ。

Wishのビジネスは常に変化し続けてきた。ファウンダーでCEOのPeter Szulscewski(ピーター・セルチェスキー氏)はWishの前身であるContextLogicのファウンダーでもあるが、それ以前はGoogle(グーグル)に6年勤務したコンピューター科学者だ。当初狙ったのはグーグルのAdSense的な次世代広告ネットワークをモバイルアプリをベースとして構築することだった。しかし以前、セルチェスキー氏が私が主催したイベントで語ったところによると、セルチェスキー氏と共同ファウンダーのDanny Zhang(ダニー・ザン)氏は「2人とも事業開発にはまったくセンスがないことがわかった」のだという。そこで2人はピボットしてWishを創立した。

Wishというブランド名は、当初ユーザーに欲しいものを挙げるウィッシュリストを作らせたからだった。会社はその後、ウィッシュリストを元に供給できるマーチャントを探した。こうすればマーチャントにアプローチしたときすでに商品、例えば特定のデザインのテーブルに対して一定の需要があることがわかっていた。商品をプロモートする際に適切な推薦があることは決定的に重要だったが、どのようなマーチャントが目的の商品を供給できるのか事前に予測することはできなかった。ほとんどのマーチャントは中国やインドネシアなど東アジアないし東南アジアに所在し、ひたすら低価格を狙う会社だったからだ。Wishがすぐに気付いたのは、これらの企業は地域外の消費者にアプローチする手段をまったく持っておらずWishに対し15%の手数料をを進んで支払おうとすることだった。

Wishは、中国からは主として軽量の商品を仕入れることによって送料の節約をはかってきた。米国と香港の郵政当局との間で9年前に結ばれたeパケットという取り決めを利用するとスピードは多少遅いが、極めて送料が極めて安くなる。eパケットはその後、40カ国をカバーするようになった。このサービスを利用すると一定の範囲の外形寸法で2kgまでの荷物が安く配送できる(損害賠償は6000円まで)。

これらの手法を利用できたことがWishにとって極めて有利だった。もちろん中国にもWishに対抗して低価格で世界中に通販するAliExpressのようなサービスが現れたし、Amazonやウォルマートとも競争しなければならなかった。

Wishが主として扱うのは必需品というより雑多な商品の「福袋」的な「あまりに安いので買っておく」というアイテムが多かった。 The Informationの以前の記事によれば、顧客はもの珍しさから一度は使うもののしばらくすると離れていくという傾向があった。

しかしそれより大きな問題は2カ月前に米郵政公社の国際郵便サービスに新しい価格体系が導入されたことだろう。これによればeバケット参加国は料金の値上げを承認しなければならず、また米国を受取地とする対象国も40カ国から12カ国に減らされた。この郵送料金の値上げにより、Wishはベンダーに対してより高い手数料を請求するか、郵政公社以外の商業国際配送サービスを利用するかを選ばなければならなくなった。

ただしWishの地位を将来さらに強化するような第三の道もある。米国やヨーロッパ、その他の成長中にある国や隣接する国のロジスティクスにさらに投資することだ。同社はRecodeのインタビューでも、そうした努力を払っていると述べている。また注文者の居住地に近い地域でベンダーを探す努力も払っているという。

eコマースの進展により米国各地でショッピングモールのような小売店舗地域を産業地域に転換するプロジェクトが進んでいる現状を考えると、Wishはこのトレンドを利用するのが賢明だろう。ただしこれによって安定的な成長がもたらされるかどうかは将来の課題だ。

上場準備のために証券取引委員会に提出された書類に目を通すことができれば、はるかに多くの確実な情報を得ることができる。S-1様式は大いに興味深い読みものとなるだろう。

Wishに対する投資家にはGeneral Atlantic、GGV Capital、Founders Fund、Formation 8、Temasek Holdings、DST Globalなどのベンチャーが含まれる。

カテゴリー:ネットサービス

タグ:Wish eコマース 新規上場 / IPO

画像クレジット:Wish

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

中国のEVスタートアップXpengがニューヨーク証券取引所に上場、約1600億円を調達

中国の電気自動車スタートアップであるXpeng(小鹏、シャオペン)は、米国での最初の株式公開の結果、15億ドル(約1600億円)を調達した。米国と中国との緊張の高まりが懸念される中、投資家のEVとクリーンエネルギーへの興味がそれに勝ったかたちだ。

中国の広州に本社を置き、シリコンバレーとサンディエゴにもオフィスを構えるこの自動車メーカーは、9970万株を1株15ドル(約1600円)で販売し、およそ15億ドル(約1600億円)を調達したと書類には記されている。当初は、8500万株を11〜13ドル(約1170〜1380円)の公募価格で売り出す予定だった。

Xpengの株式は、ニューヨーク証券取引所で「XPEV」というティッカーシンボルで木曜日から取引が始まった。同社は、ウォールストリート・デビュー以前に受けた中国のeコマース大手Alibaba(阿里巴巴、アリババ)とXiaomi(小米科技、シャオミ)からの援助を含め、投資家たちから総計で17億ドル(約1800億円)を調達している。7月には、中国のテクノロジー好きな中流層を狙った電気自動車の新型車種を開発する目的で、およそ5億ドル(約530億円)をシリーズC+ラウンドで調達したことを発表した。

公開市場に移行したことで同社は、次第にEVメーカーが増えつつ中国市場での競争に必要なさらに巨額な資金に手が出せるようになった。Li Auto(理想汽車、リー・オート)、Nio(蔚来汽車、ニーオ)、WM Motor(威馬汽車、ウェルトマイスター・オート)、 そしてもちろん、2019年12月に新しい上海工場でのModel 3の生産を開始したTesla(テスラ)と競うことになる。

中国上海、2019年8月25日:中国の自動車メーカーXpengの上海のショールームで新車を下見する客たち(画像クレジット:Alex Tai/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

Xpengは、現在、G3 SUVとP7セダンの2車種を販売している。G3の生産は2018年12月に始まった。7月31日時点で、1万8741台のG3 SUVを顧客に納品したと同社は話している。

P7の出荷は2020年5月に開始された。Tesla Model 3の直接のライバルとなるP7は、7月31日時点で1966台が出荷されている。Xpengは、3つ目の車種も計画している。これもセダンタイプだが、2021年mp発売予定だ。

画像クレジット:VCG / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

金属3Dプリント技術を擁するのDesktop MetalがSPACを利用したIPOで2600億円超企業に

Desktop Metalはその5年間の存在を通じて、投資家が足りないことはなかった。これまでのところ、この金属3Dプリント企業は4億3000万ドル(約460億円)を調達し、その間に米国で最も最速でユニコーンの資格を達成した企業になった。

米国時間8月26日、同社は上場の意図を発表(Businesswire記事)している最近の一連の企業の中(未訳記事)で最新の企業になった。

マサチューセッツ州バーリントンを拠点とする同社は、SPAC(特別目的買収会社、ブランク・チェック・カンパニー)であるTrine Acquisitionと合併(GlobalNewswire記事)し、「DM」のテッッカーシンボルでニューヨーク証券取引所に上場するつもりだ。この特別目的買収会社は昨年の3月に、2億6100万ドル(約278億円)の自社のIPOを発表(IPOScoop.com記事)した。

この新しい取引でTrineは、Desktop Metalと合併して同社自身の見積もりでは最大で25億ドル(約2663億円)の企業(Businesswire記事)を作る。Desktop Metalの昨年初頭以降最新の評価額は15億ドル(約1600億円)だ(Pichbookデータ)。従って、この特別目的買収会社がリードする取引はDesktop Metalの投資家に魅力的な上げ幅を与える。

この取引に先立って、SPACによる合併のブームがあり、さらにその背景には活発な活動があった。その典型がVirgin Galacticのケースだ

関連記事:Desktop Metal just raised another $160 million(未訳記事)

この特別目的買収会社がリードする上場は、5億7500万ドル(約612億円)の資金を生み出す(BusinessWire記事)という。Trineで3億ドル(約320億円)、さらに「普通株PIPEは1株当たり10.00ドルでコミットされている」いることから2億7500万ドル(約293億円)となる。PIPE(Private Investment In Public Equity)は「公開株式への民間投資」という意味(Harvard Law School Forum on Corporate Governance記事)で、必要に応じて特別目的買収会社主導の案件により多くの資金を投入できる仕組みだ。

SPAC以後の計画

Desktop Metalは、自社の研究開発をさらに深く進めることに加え、付加価値製造、3D印刷業界の「建設的統合」と呼ばれる分野での買収も計画している。この計画によって同社は「付加製造2.0」における主要なプレーヤーになる狙いだ。3Dプリントイノベーションの第二波により、今までの数十年間、期待と誇大宣伝で膨らんでいた金属の3Dプリントというものがついにそのポテンシャルを満たし、従来の製造業を打ち負かしていく。(付加製造(additive manufacturing, AM)、3Dプリントは素材を徐々に付加していって物を作るので、こう呼ばれる。従来の、素材を削って物を作る技術は除去加工と呼ばれる)。

Desktop Metalは、自社の研究開発努力を進めるとともに、付加製造(材料を付加しながら製造していく造形方法)、3D印刷業界の「建設的統合」と呼ばれる分野での買収も計画している。今回の買収によってDesktop Metalは、同社が「付加製造2.0」(3Dプリンターでは付加製造の材料に樹脂や金属を使える)とみなしてきた分野の主要なプレーヤーとなる狙いだ。これは3Dプリンティングのイノベーションの第2の波になり、何年も何十年にもわたって喧伝されてきた製造業を真にひっくり返す可能性をついに実現できるかもしれないと考えている。

同社創業者でCEOのRic Fulop(リック・フロップ)氏はプレスリリースで「私たちは付加的製造の採用における大きな転換期にあり、Desktop Metalはこの変革をリードしています」と述べている。

このような業界では、誇大広告と真に影響力のある技術と区別するのは難しいかもしれないが、Desktop Metalは設立以来5年の間に、確かに目覚ましいブレークスルーを示してきた。Lux Capital、NEA、Kleiner Perkins、Ford Motor Company、Google Ventures、Koch Disruptive Technologiesなどの著名な投資家に加えて、同社は数々のビッグネームのパートナーシップを結んでいる。Ford(フォード)とBMWの両社は、自動車産業の製造工程を革新させる可能性を十分に同社が秘めていることを感じ、投資家として契約した。

画像クレジット: Desktop Metal

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SequoiaがビデオゲームエンジンUnityのIPOで大きなリターンの可能性

米大手VCのSequoia Capital(セコイア・キャピタル)とそのパートナーらがラスボスを倒せるなら、ビッグボーナスが待っている。

大方の予想どおり、3DゲームエンジンのUnity(ユニティ)は8月24日、フォームS-1をSEC(米証券取引委員会)に提出した(SECサイト)。今後数週間での公開を目指し、ロードショーの準備中だ。

Unityの株主情報が公開された今、IPOの大きな勝者が1社明らかになった。それはSequoiaだ。申請書類によると、Sequoiaの現在の保有割合は約24.1%。Unityの直近のバリュエーションは2019年半ば時点で約60億ドル(約6400億円)だった(未訳記事)。数週間経てば市場での価値がわかる。しかし、Sequoiaにとって数十億ドル(数千億円)のほぼ4分の1を保有していることは大きなリターンになる。

もう1つの主要なVC投資家はSilver Lake(シルバーレイク)。2017年に最大4億ドル(約430億ドル)を投資したようで(PR Newswire記事)、現在18.2%を保有している。創業者および経営幹部の中では、Unityの創業者で現在取締役を務めるDavid Helgason(デビッド・ヘルガソン)氏が4.4%を、Unityの現在のCEOであるJohn Riccitiello(ジョン・リッチティエッロ)氏が3.4%を保有している。申請書類によれば株主は合計782人だ。

Sequoiaの持ち分について興味深い点は、2009年に遡る10年以上前のシリーズAでUnityに最初に投資して以来、長期間でUnityがどれだけ成長したのかということだ。下表で、Sequioaのさまざまなファンドからの長年にわたる投資を確認してほしい。

Sequoiaがビデオゲームプラットフォームの分野に手を付けたのは確かに早かったが、何年にもわたってカギとなったのは、成長投資の一環としての追加投資と、おそらく初期の投資家、従業員、創業者からの普通株の買い集めだ。最初の12号ファンドからの出資割合は合計10.28%だが、グロースファンドからは合計で13.82%だ。

最後に、シリーズAから現在までのUnityの株価上昇のグラフを以下に示す。

リークされたS-1申請書類のコピーに基づきTechCrunchが8月20日に報じたPalantirの数字(未訳記事)とは異なり、Unityの業績は過去10年間で比較的上向きだ。2011年のシリーズBと2016年のシリーズCの間には調達額にかなりの開きがあり、価格は指数関数的な成長カーブを描いている。今度は、公開市場の反応を見てみよう。

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi