ニンテンドースイッチ、改良版の計画は当面なしとの噂。ネットワーク機能の追加や新周辺機器投入でユーザー層を拡大

eng-logo-20152018年3月3日に、発売から2年目に突入するニンテンドースイッチ。この任天堂ハードにつき、当面は本体の改良バージョンを開発する予定がないとの噂が、同社内の事情に詳しい人物からの情報として伝えられています。

任天堂はむしろ、ダンボール工作キット『Nintendo Labo(ニンテンドーラボ)』に大きな期待を持ち、ゲームよりも子供用の教育玩具を求める親世代へのアピールを目指しているとのこと。

スイッチ全体の戦略としては、より広いユーザー層を開拓するステップの一つとして、新たな周辺機器の投入やネットワーク機能の強化により、ハードウェアを変更せずに販売台数をさらに増やそうとしている、と報道されています。

任天堂がスイッチを現状のハードウェア構成のまま販売拡大を目指すことは、たびたび仄めかされていました。2017年末にも同社の君島社長は2018年度の年間販売数量について「2千万台以上にはしたい」と言及しています。

一方ではスイッチの供給は慢性的に不足気味で、さらに増産に力を入れるとの報道もあります。まだ売れる伸びしろが大いにある現状では、本体ハードウェアを改良した「スイッチ2.0」は考えにくいでしょう。

いっそう販売を加速するにあたり、ハードの改良よりもユーザー層の拡大に重きを置くことは、2018年2月、同社の経営方針説明会でも語られていました。

「これまでのところは、どちらかというとゲーム愛好者の⽅々にとって魅⼒的なソフトが多くありました」と、任天堂ゲームのコアなファンに支えられていると現状をまとめています。

次のステージはその認識に立った上で「これからは男⼥問わずより広い年齢層の⽅々にどうNintendo Switchの魅⼒をお伝えするのかが課題だと感じています」とさらなる非ゲームファンの取り込みに意欲を見せています。そのためにも、ニンテンドーラボは戦略的に大事ということなのでしょう。

さらに事情通によれば、2年目のスイッチは追加のネットワーク関連機能や、本体やドックのUSBタイプC端子に接続する形での周辺機器の投入があるとのこと。ファミコンに例えるなら、本体にモデムを外付けしてネットワーク機能を追加した「ファミコンホームトレード」といったところでしょうか。

開発スタッフがハードの能力を最大限に引き出したソフトをつくる上でも、ハードの更新はなるべく少ないことが望ましいはず。

その声を代表するマリオ産みの親・宮本茂氏も、先の説明会の席上で「これまでのハードのライフサイクルは 5 年から 6 年ほどでしたが、それよりもっと続くようにできれば⾯⽩いと思いますので、どうぞご期待ください」とコメントしていました。

​​​​​​スイッチは「持ち運びできる据え置きコンソール」ということで、携帯して外で遊ぶには少し大きくて重すぎという声もあります。改良版やバリエーションがしばらく出る見込みがないのは残念な感もありますが、その分はソフトのラインナップや周辺機器の充実を望みたいところです。

Engadget 日本版からの転載。

仮想通貨ビジネスの自主規制へ向け、金融庁登録16社が新団体を設立へ

金融庁に登録済みの仮想通貨交換業者16社が、認定自主規制団体を目指す新団体の設置でこの2018年3月1日に合意した。2018年3月2日、JCBA会長でもあるマネーパートナーズ代表取締役の奥山泰全氏とbitFlyer代表取締役の加納裕三氏が記者会見に臨み、合意について明らかにした。2018年1月末のコインチェックへのハッキングによる仮想通貨NEMの大量盗難事件を受けて業界への規制強化、健全化への取り組みが進んでいる中、いままで遅れていた業界団体による自主規制に取り組む。

JCBA会長でもあるマネーパートナーズ代表取締役の奥山泰全氏

新団体の名称はまだ未定。会長にはマネーパートナーズ奥山氏、副会長にはbitFlyer加納氏が就任する。今後1カ月ほどかけて設立手続きを終え、数カ月以内に金融庁認定の自主規制団体となることを目指す。まず登録業者の団体として出発するが「今後登録を目指す団体にも入会してもらうようにする」(奥山氏)としている。

「仮想通貨交換業者」は2017年4月に施行された改正資金決済法(いわゆる仮想通貨法)で定めた概念だ。いわゆる仮想通貨取引所や仮想通貨販売所を日本で営むには、この仮想通貨交換業者として金融庁への登録を済ませる必要がある。金融庁による監督と、金融庁が認定した「自主規制団体」による民間業社団体による自主規制を組み合わせ、健全な仮想通貨ビジネスを展開することが、日本での仮想通貨に関する制度作りの青写真だった。

ところが、法律の施行から11カ月が経過しているというのに認定自主規制団体はまだ登場していない。仮想通貨の業界団体として、奥山氏が会長を務める日本仮想通貨事業者協会(JCBA)と、加納氏が会長を務める日本ブロックチェーン協会(JBA)の2団体が競う形となっていたためだ。JCBAにはbitFlyer、エフ・ティ・ティ、BITOCEANの3社が参加していないものの13社と多くの登録仮想通貨交換業者が参加する。一方のJBAは登録業者の参加社数は3社と少ないが、仮想通貨の法整備へ向けロビー活動を展開していた日本価値記録事業者協会(JADA)を前身とし、法制度やブロックチェーン技術への取り組みでは実績があった。そこでステークホルダーや経緯が異なる2団体を統一するのではなく、既存団体とは別に金融庁への登録を終えた業者16社が新団体を設立する形とした。記者会見では「ここで業界が一つになるターニングポイント」(加納氏)、「既存団体は存続しつづける。各団体の連携も進めたい」(奥山氏)との発言があった。

bitFlyer代表取締役の加納裕三氏

加納氏は、自主規制に関する取り組みはすでに進めていたと強調する。「日本ブロックチェーン協会(JBA)では従前より自主規制について議論を重ねている。直近では、(1)利用者管理に関する規則。(2)仮想通貨インサイダー情報管理の規則。(3)不公正取引の防止のための取引管理体制に関する規則。(4)注文管理体制に関する規則。(5)仮想通貨交換業に関与する従業員に関する規則。(6)広告等の表示および景品等の提供に関する規則。(7)仮想通貨資金決済に関する規則。(8)セキュリティに関する規則。(9)AML/CFT(マネーロンダリング防止テロ資金供与対策)に関する規則、それぞれの案を作成していた」(加納氏)。

ひとつの疑問がある。コインチェック事件のようなハッキング被害を防ぐうえで、業界団体による自主規制にはどれだけの実効性があるのだろうか。筆者の問いに対して、bitFlyer加納氏は「コインチェック事件は全容が明らかになっていないので分析はまだできていない。だが業界としてセキュリティを一定程度に高めることが必要だ。セキュリティ基準を作る必要があるが、それについて有識者と議論を進めている。コールドウォレットやマルチシグを活用していく必要があるだろう。PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard、クレジットカード業界のセキュリティ基準)のような既存の基準も見て、セキュリティを上げることができる部分は積極的に導入し顧客保護に努める。認定自主規制団体になると強力な権限を持つことになる。技術的なセキュリティについても(その権限のもと)見ていく事になるだろう」と語った。

動画広告市場は2020年に2000億円を突破、YouTuber市場も2022年に579億円へ——YouTube総研

 

YouTubeなどインターネットマーケティングに関するコラムやニュースの配信、トレンドや実態調査を含むマーケットリサーチを行うYouTube総研は3月2日、動画広告市場に関するレポートを公開した。

動画広告市場は2020年に2000億円を突破、5年で4倍の規模へ

サイバーエージェントとデジタルインファクトが共同で実施した調査によると、2017年の動画広告市場は1093億円、2020年には2,000億円を突破する勢いで成長するとされている。2015年の市場規模は506億円のため、5年で約4倍というスピードだ。

特に成長著しいスマートフォン市場。若年層のテレビ離れもあり、スマートフォンによるユーザーの動画視聴時間は引き続き増加中で、今後もこの傾向が続くと予想されている。

YouTuber市場規模は2022年に579億円へ

CA Young Labとデジタルインファクトが実施した国内YouTuber市場動向調査では、2017年の国内YouTuber市場規模を219億円と推計している。

これは「YouTube広告収入」「タイアップ広告収入」「イベント・グッズ収入」というYouTuberの3つの収益源の年間総額を集計し、市場規模として割り出したものだ。

人気YouTuberはもちろん、次々とYouTuberが生まれることによって動画コンテンツの再生回数が増加。今後もYouTube広告を軸に市場規模の拡大が見込まれていて、2019年には約2倍の400億円、2022年には約2.6倍、579億円規模に達すると予測されている。

YouTuber市場規模の拡大に合わせて、2017年8月にはYouTuberのマネジメントを手がけるUUUMがマザーズに上場。同業のVAZも総額約11.5億円の資金調達を本日発表するなど、関連するスタートアップも盛り上がってきている。

音楽の使用権を販売できるマーケットプレイス「Audiostock」が2.6億円調達、ラインナップは約9万点

音楽著作権プラットフォーム「Audiostock(オーディオストック)」を運営するクレオフーガは3月2日、スペースシャワーネットワーク日本ベンチャーキャピタル広島ベンチャーキャピタルFFGベンチャービジネスパートナーズトマト銀行港京共創科技投資(HBCC Investment)を引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は2億6000万円だ。

写真販売サービスの「Snapmart」をはじめ、クリエイターたちが従来とは異なる方法で収入を得られるサービスが近年増えてきている。Audiostockはその“音楽版”と言えるようなサービスかもしれない。

Audiostockは、クリエイターが自身で作った楽曲や効果音などの使用権を、動画製作会社など他のユーザーに対して音楽の使用権を販売できるマーケットプレイスだ。現在、同サービス上には約9万点の音楽使用権が販売されていて、クリエイターは売り上げに応じた印税を受け取ることができる。

音楽を使用する側のユーザーは、サービス上で購入手続きを行うだけで音楽の使用権を取得できる。著作権管理団体等への申請など各種手続きを簡素化できることなどがメリットだ。

先ほど述べたように、Audiostockでクリエイターの楽曲を購入するユーザーの1人として考えられるのは、その楽曲を使用した動画を制作するクリエイターたちだ。最近では、すっかり将来なりたい職業ランキング上位をキープするようになった「YouTuber」たちをはじめ、法人や個人問わず、さまざまな人々が動画コンテンツを制作・公開するという世の中になった。

インターネットの普及などに伴い知的財産権が侵害される被害が増えていることは事実だけれど、法により定められた方法で音楽を利用したいと考えているユーザーにとって、Audiostockを利用することによる手続きの簡素化は大きなメリットとなりうるだろう。

クレオフーガは今回調達した資金を利用して、マーケティング活動やプロダクト開発体制の強化に取り組むとしている。また、機械学習、ブロックチェーン、AI作曲等の先端技術の研究会を創設し、それらの技術を利用した新事業の創出も目指すという。

クレオフーガは2007年10月の設立。Audiostockを開発する以前から、音楽投稿サービスの「クレオフーガ」などを手がけてきた。同サービスのユーザー数は約2万人だという。また、2016年11月には、写真や動画素材のマーケットプレイス「PIXTA」を運営するピクスタとの資本業務提携を結んでいる(記事中に紹介したSnapmartも現在はピクスタ傘下だ)。記事執筆時点における同社の資本金は、3億355万円だ(資本準備金含む)。

YouTuberプロダクションのVAZが21の投資家から総額約11.5億円を調達、就職支援サービスの拡大へ

インフルエンサーマーケティング事業や複数のメディア事業を展開するVAZは、2017年6月から2018年3月までの期間において、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額11億5200万円を調達したことを明らかにした。

同社にとってはシリーズCラウンドという位置付けで、合計21の投資家(事業会社、VC、個人)が参加している(投資家陣のリストは末尾に記載)。

VAZは2015年7月の創業。チャンネル登録者数が240万人を超えるヒカル氏、同じく190万人を超える禁断ボーイズなど人気YouTuberを中心に、約70人のインフルエンサーを抱えるプロダクションとなっている。昨年8月にはヒカル氏らのVALU騒動もあったが、自粛期間を経て11月に復帰した。

同社では所属するインフルエンサーのネットワークを活用したマーケティング事業やエンタメ事業を展開。並行して中卒、高卒、専門卒、大学中退などの非大卒を主な対象とした就職支援サービス「バズキャリア」(2017年6月公開)にも取り組む。

バズキャリアは各ユーザーに専属のキャリアカウンセラーが付き、チャットベースのやりとりを通じて就労支援を行うサービス。インフルエンサーの力も上手く活用して、ターゲット層へのリーチを拡大。今回調達資金を元に、事業のさらなる成長を目指すという。

以下、今回VAZのシリーズCラウンドに参加した21の投資家陣だ。

  • コロプラネクスト(既存投資家)
  • ホリプロ(既存投資家)
  • 読売テレビエンタープライズ(既存投資家)
  • 共同ピーアール
  • ドワンゴ
  • フリークアウト・ホールディングス
  • フロンティアエージェント
  • PERSOL INNOVATION FUND
  • オプトベンチャーズ
  • みずほキャピタル
  • Skyland Ventures
  • GCM
  • 恵島良太郎氏
  • 大湯俊介氏
  • 久保直之氏
  • 玄君先氏
  • 田口茂樹氏
  • 田中陽加満氏
  • 宮地俊充氏
  • 非公開の事業会社1社、個人投資家1名

スマホで開け閉めできるロッカーのSPACERは、自販機投資ならぬ“ロッカー投資”で普及を目指す

Amazon.comをはじめとするEC業者の躍進とともに、宅配便で送られる荷物の数は近年急伸している。国土交通省が2017年7月に発表した資料によれば、2016年度の宅配便取り扱い個数は約40億個だった。2006年度の約29.4億個と比べると、この10年間で約1.4倍に増えたことになる。

その一方で問題となっているのが、宅配便の再配達にかかる社会的コストだ。同じく国土交通省が発表した報告書によれば、宅配便全体の約20%にあたる荷物が再配達となっているという。営業用トラックが排出する二酸化炭素の約1%(42万トン)は再配達によるものであり、年間9万人に相当する労働力が再配達に充てられているなど、社会的損失も無視できないレベルにまで膨らんだ。

そんななか、日本が抱える配送問題をビジネスの力で解決しようとするスタートアップがいる。本日サービスローンチを発表したSPACER(スペースアール)だ。同社は3月1日、スマホで開け閉めができる受け渡しロッカー「SPACER」のサービス開始を発表した。

SPACERの利用方法は以下の通りだ。荷物を預けるユーザーがロッカーの近くで専用アプリを立ち上げると、アプリが自動的にロッカーを認識する。荷物をロッカーに入れたあと、アプリをスワイプすることでロッカーが閉まり、その“鍵”となる電子キーがアプリに保存される。ロッカーのそばで電子キーが保存されたアプリを立ち上げ、もう一度スワイプするとロッカーが開く仕組みだ。アプリとロッカー間の通信はBluetoothで行う。

ロッカー使用料は2時間まで無料で、その後は6時間ごとに240円の料金がかかる。

現時点でSPACERが対応しているのはiOSのみだ。しかし、SPACER代表取締役の田中章仁氏は、近日中にはブラウザでBluetooth通信ができる「Web Bluetooth API」を利用したWebアプリをリリースする予定で、これによりAndroidにも対応する予定だと話す。

鍵を“共有する”ことで、ロッカーの可能性が広がる

さきほど説明したSPACERの使用の流れは、ユーザーが自分の荷物をロッカーに預けるときを想定したものだ。しかし、SPACERではアプリに保存された電子キーを他のユーザーに受け渡すこともできる。

SPACERのアプリにはチャット機能が内蔵されていて、そこにある「鍵を譲渡」ボタンを押せば電子キーを他のSPACERユーザーに受け渡すことができる。また、同社はURLによる電子キーの共有機能も2018年7月をめどにリリースする予定だ。それが実現すれば、URLを発行し、それをLINEやFacebook Messengerなどのメッセージングアプリで共有するだけで、電子キーのやり取りが可能になる。複数人への共有も可能だが、一度使用されたキーは消滅する。

セキュリティについては、「1回使用するごとに(電子キーの)暗号がランダムで変わるほか、ロッカー本体ごとにその解読方法が違う」(田中氏)という方法で安全性を担保しているという。

この電子キーの共有という特長により、SPACERの可能性が一気に広がる。家族や友人が本人の代わりに荷物を受け取ったり、スケジュールを調整することなく個人的な貸し借りを行ったりするといった用途が考えられる。また、記事冒頭にあげた“再配達問題”の文脈で言えば、宅配業者から受け取った電子キーを利用してユーザー自身がロッカーまで荷物を取りに行けば、結果的に再配達される荷物の数は減る。

これについては、「自分で取りに行くという行為が面倒くさい」という読者もいることだろう。でも、僕の場合は、再配達時間として指定した数時間のあいだは落ち落ち昼寝もできないという不便や、今すぐにでもプレイしたいゲームソフトを受け取るのに帰宅が間に合わず、翌日に再配達となったときの絶望感を考えると、どこかに置いておいてくれれば自分で取りに行くのに、と思うたちだ。

また、最近ではすっかり市民権を獲得した感のある「メルカリ」などのフリマアプリでもSPACERは活躍しそうだ。出品する側と買い取る側の両方が都内に住んでいるのであれば、例えば渋谷にあるSPACERに商品を入れ、入金が確認できたところで電子キーを送るというようなことも可能になるだろう。

個人投資家を巻き込み、普及を促進

SPACERは普及するのだろうか。昔からコインロッカーはいたるところにあるし、最近では専用の宅配ロッカーを設置するマンションも目にするようになった。それらと比較したSPACERの優位性はどこにあるのだろうか。

SPACER代表取締役の田中章仁氏は、「通常のコインロッカーには、3Dプリンタで鍵を複製されてしまったり、鍵を失くしてしったりといったリスクがある。最近ではPASMOなどのカードで開けるタイプのロッカーも登場しているが、本体価格が200〜300万円と高価だ。(宅配業者が設置する大型の)宅配ロッカーについても、通常200〜300万円程度と初期コストが高く、現状では宅配業者がCSR(企業の社会的責任)として設置している状況」だと語る。

また、最近では個人が小型の宅配ボックスを自宅に設置する例も増えているように思うが、プラネットが2017年5月に発表した宅配業界に関する調査を見ると、「宅配ボックスに入れてくれる(ので、再配達は必要ない)」と答えた人は全体の13.6%に留まる。一方で、「ドライバーに電話して再配達を頼む」と答えた人は55%だった。現時点ではロッカーや宅配ボックスで荷物を受け取るという習慣はまだ根付いていないようだ。

SPACERがその習慣を根付かせるのだとすれば、街に設置するロッカーの数を増やすことがもっとも重要な課題となるだろう。そのための施策として同社が選んだのは、ロッカーを“投資商品”として位置づけるというものだった。

従来のロッカーは初期費用が数百万円かかるのに対し、SPACERは設置からメンテナンスまでの“初期投資コスト”を40万円にまで抑えた。この価格設定でも、設置から利用まで「一連のキャッシュフローの中で弊社が赤字になる所がない」(田中氏)。

ここまで投資コスト抑えることができれば、個人が投資先としてロッカーを購入することも可能になると同社は主張する。自動販売機の投資と同じ要領で、個人がロッカー本体を購入・設置し、リターンとして利用料を受け取る収益モデルだ。

SPACERは、ロッカーを所有するオーナー、それを設置する土地の所有者である地権者、そしてメンテナンス業者それぞれの橋渡しをする役割になる。設置する土地の紹介やメンテナンス依頼はSPACERが行うので、オーナーは同社と契約して資金を拠出するだけでいい。収益の分配比率は、ロッカーのオーナーが50%、地権者が15%、メンテナンス業者が15%、SPACERが20%となる予定だ。

SPACERの資料によれば、既存のコインロッカーの使用予測と同じく1日1回の利用(6時間以内)を想定した場合、年間の収益は240円×6室(1つのロッカーあたり室数)×365日で52万5600円となる。オーナーの取り分はその50%である26万2800円だ。約2年あれば投資費用が回収できてお釣りがくる計算となる。

このように、SPACERはロッカーを金融資産として投資家に提案することで、ロッカーの普及を促進していきたいとしている。実際、今回ローンチ時点でSPACERと契約を交わしたロッカーのオーナーはすべて個人の投資家だ。「オペーレション上の限界もあるので、ローンチ後まずは企業や複数台購入いただける個人の投資家をオーナーとして募るが、最終的には広く個人のオーナーを募集したい」と田中氏は語る。

SPACERは2018年1月にエンジェル投資家などを引受先としたシードラウンドを行い、資金調達を完了した(金額は非公開)。今後の展開について、「3〜5月までを実証期間とし、様々なモニタリングを行いながら、ECなどと直接受け渡し取引等の実証実験を行う」としている。本日より設置を開始するTSUTAYA店舗は以下の通りだ(いずれも東京都)。

  • SHIBUYA TSUTAYA(渋谷区)
  • TSUTAYA BOOK APARTMENT(新宿区)
  • TSUTAYA 赤坂店(港区)
  • TSUTAYA 祖師谷大蔵店(世田谷区)
  • TSUTAYA 新大久保店(新宿区)

7つの質問に答えるとオススメ保険を教えてくれるロボアドバイザー「Donuts」が5000万円調達

ロボット保険アドバイザー「Donuts(ドーナツ)」を開発するSasuke Financial Labは3月2日、Klab venture PartnersGlobal Catalyst Partners Japanマネックスベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は5000万円だ。また、同社はこれに併せてDonutsの事前登録の開始も発表した。サービスローンチは今年4月を予定している。

Donutsは、ユーザーが7つの質問に答えていくだけで自分に適した保険商品をレコメンドしてくれるWebアプリだ。質問されるのは「お金を遺したい人はいるか」、「貯蓄はいくらか」などの簡単なもので、保険に関する深い知識がなくても自分に適した保険商品にたどり着ける仕組みになっている。

個人的にすごく好感を持てたのが、ロボアドバイザーであるDonutsならではの“正直さ”だ。取材でサービスを見せてもらったとき、少し意地悪をして、7つすべての質問に「(資金を遺したい人は)いない」などのネガティブな答えを返してみた。するとDonutsは、「あなたにオススメする保険はない」と言い切った。

人間の営業員の場合、話している相手に対して「あなたには保険は必要ないのでお帰りください」と言うのは難しい。それには大人の事情もあるから仕方がないことは分かるけれど、ユーザー目線で言えば、必要ないならないと言い切ってもらいたいのが本音だ。

記事執筆時点において、Donutsが提携する保険会社はアフラックの1社のみだ。同社はアフラックに加えて3社の保険会社と提携に向けた準備を進めている最中で、4月に予定されているサービスリリース時点では、これら4社が提供する20〜30の保険商品を取り扱う予定だとしている。

保険はまだまだ対面が主流

日頃からテクノロジーに慣れ親しんだTechCrunch Japan読者の中には、「今の時代、インターネットで選んだ保険に加入するなんて常識」と思う人も多いだろう。だが、どうも世間はそうじゃないらしい。

生命保険文化センターの調査(2015年)によれば、2010年から2015年のあいだに民間保険に加入した調査対象者のなかで、インターネットを含む「通信販売」を加入チャネルとして選んだのは全体の5.6%だったという。この通信販売にはテレビや雑誌なども含まれているから、純粋にインターネットで保険に加入した人だけに限ればわずか2.2%という結果だ。

この結果は、保険販売の現場ではいまだに対面営業が主流だという現状を表していて、Donutsには分が悪い結果のようにも見える。

でも、もう1つ面白い数字がある。同じ調査のなかで、保険の情報収集にテレビやネット、雑誌などの「人を介さないチャネル」を使ったと答えた人は全体の16.2%だったのだ。つまり、インターネットを含む人を介さない方法で情報収集しているにもかかわらず、結果的には対面営業で保険を加入した人はいる。

2つ目のアンケート調査は複数回答が可能なタイプなので単純には計算できないが、それを承知で計算すると、インターネットで調べたものの、結局は対面営業で保険に加入した人が全体の10%ほどはいるのではないかと推測できる。

この中には、やはりネットだけで保険に加入するのは不安だと感じ、結局は対面営業を選んだという人もいるだろう。実際、前回調査と比べると通信販売を選んだ人の割合は3%ほど低下している。形の見えない金融商品だからこそ、できれば人の力を借りたいという人が多いのは十分に理解できる。

しかしその一方で、自分で保険について調べてみたものの、結局どの商品が自分に適しているのかよく分からずにさじを投げてしまったという人もいるはずだ。だから、本当に分かりやすい方法で自分に適した保険を示してくれるWebサービスやアプリがあるとすれば、そこには一定のニーズがあると僕は思う。取り扱う保険商品のラインナップが少ないなど、Donutsにはまだ超えなければいけないハードルはあるけれど、彼らがそんなニーズを掴める可能性は大いにあるだろう。

1センチ単位でサイズを指定できる家具ブランド「Yourniture.」が3000万円調達

1センチ単位でサイズの指定ができるオーダーメイド家具ブランド「Yourniture.(ユアニチャー)」を提供するユアニチャーは3月2日、ジェネシア・ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は3000万円だ。

引っ越しをしたことがある人なら分かると思うが、家具選びは楽しい反面、とても面倒くさい。その時にしか使わないであろうメジャーをわざわざ買い、測ったサイズを書いたメモを手に量販店に行く。でも、置きたいスペースにぴったりとはまる家具がないので肩を落として家路につく。

そんな人はオーダーメイド家具を注文できるYourniture.を試してみても良いかもしれない。同サービスでは、家具のサイズや色を自分好みにカスタマイズして注文可能だ。サイズは1センチ単位で指定でき、カラーも全11種類の中から選ぶことができる。

リリース時点でYourniture.が提供するのは「SIMPLE BOX」という木製の収納ボックスのみだが、同社は今後、扉つきの収納や机などのラインナップも増やしていく予定だ。その際には、扉の有無や足の数などのデザインも変更可能になるという。指定できるサイズの幅も大きい。今年中にラインナップに加わる予定の木製シェルフの場合、横幅が240〜30センチ、高さが120センチ〜60センチの間で自由に指定できる。

Yourniture.代表取締役CTOの堀江光氏は、同サービスのカスタマイズシステムについてこう話す

「Yourniture.のシステムは『ある対象を因数分解しておき、本体をカスタマイズしたことによる影響を、それぞれのパーツに反映させる』もの。どんな家具でも、分解すれば個別のパーツに分かれる。(同システムでは、)本体に何かしらの変更を加えることで、各パーツの加工内容(工程)にどのような変化があるかを自動で算出する。そのため、家具の種類や形状に関わらず、どんなものでもカスタマイズが可能だ」(堀江氏)

Yourniture.第一弾の商品「SIMPLE BOX」

Yourniture.のようなカスタマイズを前提とするサービスの場合、どこまでカスタマイズ性を持たせるのかという点が悩みどころだと思う。大抵の消費者は、店頭に並ぶ商品をみて好みのもの見つけることはできるが、「じゃあ今から好きな家具デザインして」と言われると困ってしまうのと同じだ。その点、Yourniture.ではユーザーの用途(文庫本を入れるなど)に併せて適切なサイズを提案し、ユーザーはそれを基準にして細かなところをカスタマイズできるようになっている。

また、そのようなオーダーメイド家具を「量販店と同等の価格で」購入可能だと言うのがYourniture.の特徴だ。ちなみに、各辺30cmの正方形型としてサイズを設定し、カラーを白にしたボックスの場合、価格は3219円だった。

それを可能にしたコスト削減施策として同社は3つの要素を挙げている。

1つ目は、従来は職人が行っていたという家具のサイズの計測、色やデザインの指定を顧客自身がオンラインで行えるようにすることで、それを基にした価格の算出を自動化したこと。2つ目に、ユーザーが入力した変数をもとに生産工場に送る「製造指示書」作成の自動化。そして最後に、自社が製造した製品を自社のECサイトで販売するD2Cのモデルにより、不要なコストを削減したことを挙げている。

Yourniture.代表取締役の峯浦望氏は、これらの3つの施策により「家具製造のコストを約50%削減できた」と語る。ここには挙げられていないが、製造を人件費の安いインドネシアの提携工場で行っていることも1つの要因ではあるだろう。

量販店と同等の価格を実現したとするユアニチャーだが、時間の短縮についてはまだ試行錯誤が必要だと峯浦氏は話す。実際、構造がシンプルな「SIMPLE BOX」でも、注文してから自宅に届くまで5週間ほどの時間がかかる。

「良いものを作るときには、時間とお金がかかるという考え方を変えたい。“お金”については実現できたが、“時間”についてはまだまだ。ユーザーが指定したサイズなどの情報が直接ロボットに入力され、そのまま製造が始まるようにするなど、自動化の余地はまだある」と峯浦氏は語る。

写真左より、ユアニチャー代表取締役CTOの堀江光氏(工学博士)と、同CEOの峯浦望氏

スクラムベンチャーズとパナソニックが新事業の創出へ新会社、代表はDeNA元会長の春田真氏

米国サンフランシスコに拠点を置くScrum Ventures(スクラムベンチャーズ)パナソニックは3月1日、新規事業の創出を目的とした新会社BeeEdge(ビーエッジ)を共同で設立したことを明らかにした。

合わせてスクラムベンチャーズでは、大企業とスタートアップのコラボレーションにより新たな価値を生み出すことを目的とした新事業「Scrum Studio」を本日発表。BeeEdgeがその第1号案件になるという。

新会社はシリコンバレーと日本でアーリーステージのスタートアップへの投資を行うスクラムベンチャーズ(創業者でゼネラルパートナーの宮田拓弥氏は、日米で複数のスタートアップを起業した元起業家としても知られる)と、パナソニック家電事業部門のアプライアンス社が共同で出資、運営する。

近年パナソニックでは次世代の家電ビジネス創出に向けて、新規事業の開発に取り組んできた。新会社BeeEdgeではスタートアップに対して投資、事業化支援を行っていく方針。まずはパナソニック社内のアイデアを切り出して会社化したスタートアップを中心に出資をするという。

BeeEdgeの資本金は1億円。出資比率はスクラムベンチャーズが51%、パナソニックが49%だ。なお代表取締役には新たにスクラムベンチャーズのパートナーとなった春田真氏が就任する。

春田氏は過去にディー・エヌ・エー(DeNA)の取締役CFOや取締役会長を務め、同社の上場を主導するとともに大手企業とのジョイントベンチャー設立、横浜DeNAベイスターズの買収などを推進してきた人物。2015年4月にはベータカタリストを設立。医療やライフスタイル、AI、IoT領域のスタートアップを中心に投資、支援をしてきた。

冒頭でも触れたとおり、今回のプロジェクトはスクラムベンチャーズの新事業Scrum Studioの1号案件だ。

Scrum Studioの目的は「各業界を代表する大企業パートナーの持つ優れた技術や人材を最大限活用し、世界中の革新的なスタートアップ(斬新な技術やアイディアを持ち、急成長するベンチャー企業)とのコラボレーションを行っていく」こと。事業創出、アクセラレータープログラム、M&A、出資など、各企業ごとに最適なスタイルを選んでいくという。

新事業の開始に当たって、春田氏と外村仁氏(複数スタートアップの起業経験があり、Evernote Japanの会長も務めた人物)が同社のパートナーに就任している。

買取価格比較サイト「ヒカカク!」や「Peing-質問箱」提供のジラフが7000万円を調達

買取価格比較サイト「ヒカカク!」や匿名質問サービス「Peing – 質問箱(ペイング)」などを提供するジラフは3月1日、アドウェイズと梶原大輔氏および匿名の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、約7000万円を調達したことを明らかにした。

合わせて個人投資家として参加している梶原大輔氏が同社の技術顧問になることも発表している(梶原氏はヤフーを経てグリーに入社後、執行役員に就任。インフラストラクチャ本部長や開発本部長を歴任した人物)。

今回の調達はジラフが2017年11月に実施したシリーズBの追加増資という形で、調達金額は総額で約5億円となる。シリーズBでジラフに出資した投資家陣は以下の通りだ。

  • アイ・マーキュリーキャピタル
  • アドウェイズ
  • アドベンチャー
  • 梶原大輔氏
  • グリー
  • 佐々木俊介氏
  • ドリームインキュベータ
  • メルカリ
  • ベンチャーユナイテッド
  • その他個人投資家1名

アドウェイズ、ドリームインキュベータ、佐々木俊介氏はシリーズAに続いて2度目の出資となる。

なおジラフは2017年8月に「CASH」運営のバンクから数百万円規模の資金調達をしているほか、同年3月に1.3億円を、2015年10月にも複数の投資家から4120万円を調達している。

これまでTechCrunch Japanでも紹介してきたように、ジラフでは2014年9月にリリースしたヒカカク!を始め、修理価格比較サイトの「最安修理ドットコム」や中古スマホに特化したフリマサイト「スマホのマーケット」、スマホの即時買取サービス「スママDASH」などリユース領域で複数のサービスを展開してきた。

昨年12月には匿名質問サービスのPeingを買収。累計120万アカウントを突破し、2018年2月にはスマホアプリの提供も始めている。

ジラフでは今回の調達を踏まえて引き続き各事業の成長を目指す方針。加えて同社代表取締役社長の麻生輝明氏によると、現時点で詳しい内容は非公開だが「直近で即時買取の横展開を考えている」とのこと。

これまでもひとつのプロダクトに固執するのではなく、機会があれば積極的に新規事業にチャレンジしてきたジラフ。近いうちにまた新たなサービスが生まれるのかもしれない。

“商品サンプリング”の概念を変えるリアル版アドテク「aircatalog」、提供元が資金調達

街を歩いていると、女性に化粧品の試供品のようなものを配っている人の姿を見かけることがある。残念ながら僕自身はターゲット層ではないのか、無愛想に見えるのかティッシュくらいしか受け取ったことがないのだけれど。いわゆる「商品サンプリング」とよばれるものだ。

このサンプリングという仕組みには、まだまだ改善できる余地が残されている。今回紹介する「aircatalog(エアカタログ)」は、テクノロジーを活用することでサンプリングが抱える課題の解決を目指すサービスだ。

同サービスを提供するキャトルは2月28日、ハックベンチャーズ名古屋テレビ・ベンチャーズ、元スカイプジャパン代表取締役で現ATOMICOパートナーの岩田真一氏らを引受先とした第三者割当増資により、総額5250万円を調達したことを明らかにした。

合わせてアドテクノロジー開発やインターネットマーケティング支援を行うフルスピードと戦略的業務提携契約を締結したことも発表。デジタル広告と商品サンプリングを組み合わせた体験誘導型プロモーション「AD OFFICE(アドオフィス)」を3月から開始するという。

サンプリング商品と配布場所をマッチングするリアル版DSP

aircatalogはサンプリング商品を持つメーカーと、配布場所となる施設をマッチングするサービスだ。

化粧品や健康食品などを配りたいメーカーの担当者は、aircatalog上で年齢や性別、職業などターゲットの情報を登録する。一方で商品を配布したいホテルやフィットネスジムといった施設も同様に、サービス上に普段訪れる顧客の属性を入力。

これらのデータによる最適なマッチングを通じて、効果的なサンプリングの仕組みを実現するのがaircatalogの目的だ。

流れとしては登録したデータを基に、施設側へマッチしそうな商品がレコメンドされる。施設側の担当者は自分たちで配布したい商品を選び申請。メーカー側が承認した場合にはマッチング成立、商品が施設へ届きサンプリングが開始する。

「サンプリングの概念を変えたいという思いが強い。従来の仕組みでは、いわゆる『商品のばらまき』が発生したり、そもそもきちんと配られたのかがメーカー側からわかりづらかったりといろいろな課題があった。『先が見えない』という声も聞いたことがあり、(メーカーからは)あまりイメージが良くなかった」(キャトル代表取締役の横町享之氏)

横町氏の話では、街中でサンプリング商品をもらった女性の8~9割は試供品を捨てているそう。その一方で、まずは試供品を使って良かったら購入するという女性も多いという(これは同社が限定的な人数を対象に行った調査結果のため、あくまで参考程度ではあるが)。

このギャップを埋めることで、つまりサンプリングのミスマッチをなくし「商品体験をして欲しい人、したい人にきちんと商品が届く仕組み」を構築することで、サンプリングの可能性はもっと広がるのではないか。そんな思いから生まれたのがaircatalogだ。

それならばメーカーと商品を試したい個人を直接つないでしまう方が効率的なんじゃないだろうか、そう思って聞いてみると「個人を直接マッチングすると『サンプルゲッター』と呼ばれる、実際に商品を買う気はないけど試供品だけ試したい人たちが群がってきてしまう。最近では集めてきた試供品をフリマサイトなどで売る人もでてきているほど」(横町氏)だという。

この「サンプルゲッター問題」をなくすためにも、直接個人へ商品を送るのではなく、施設を間に挟むのがポイントなのだそうだ。

顧客の満足度向上や社員の福利厚生に活用

サービスのリリースは2017年7月。まだ開始から半年ほどではあるが、すでに15000の施設・店舗が配布先として登録。マッチングの数も増えてきているという。

たとえば美容家電メーカーとホテルの事例だ。両社がタッグを組み、ホテルの宿泊客が人気美顔器を体験できるレディースプランを設計。メーカーとしては使って欲しい層のユーザーに美顔器を試してもらうことができ、ホテルとしても宿泊客の満足度向上に活かせる。

「施設側の担当者も、サンプリングと聞くと面倒なイメージを持つ人が多い。ただ新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の満足度を上げる目的でも活用できる『販促ツール』ならば、積極的に試したいという声がほとんど。それが結果的にメーカーの要望を満たすことにも繋がる」(横町氏)

ユニークなものだと、新聞配達所や一般企業が施設としてメーカーとマッチングが生まれている。たとえば主婦層に商品を試してもらいたい飲料メーカーと新聞配達所をマッチング。メーカーが自分たちでリーチするのが難しい層に対してアプローチする手段となる。

企業の場合も同様だ。ビジネスマンをターゲットにしたコーヒーやビール、エナジードリングを企業に試供品として提供する。企業側にとっては無料の福利厚生ツールとして活用できるため、評判も良いという。

顧客の満足度向上や社員の福利厚生に活用

企業向けにサンプリング商品を提供するという点に関しては、より一歩進んだプラン「AD OFFICE(アドオフィス)」を3月から始める予定だ。

これはIPアドレスを活用して特定の企業にディスプレイ広告を配信(オフィスターゲティング)する技術を持つ、フルスピードとタッグを組んで行うもの。サンプリング商品を提供した企業に対して、その商品のディスプレイ広告を配信することで商品の認知や購買を訴求する。

対象となる企業の社員からすると、今しがた飲んでいたコーヒーの広告がピンポイントで表示されるようなものだから、少しビックリするかもしれない。とはいえ従来のサンプリングの仕組みではできなかった新しい取り組みだ。

キャトル代表取締役の横町享之氏

横町氏は美容師としてキャリアをスタートした後、ぐるなびやアイスタイルで広告に携わり、2014年に起業したというユニークな経歴の持ち主。

前職でサンプリングに関わることもあり、その際にさまざまな課題に直面したことがaircatalogにつながっているそうだ。

テクノロジーによって日々進化し続けているデジタル広告のように「リアルプロモーションももっと科学的にやれる部分や、可視化できる部分は多い。『リアルDSP』のような形で、サンプリングももっと進化できる」と横町氏は話す。

同社では今回調達した資金を元に組織体制を強化。施設データベースの拡充やマッチングアルゴリズムの改善などを通じて、サービスの拡大を目指すという。

AIアナウンサー「荒木ゆい」が正式サービスイン、月額9800円で20回分の音声をダウンロード可能

写真はゆいプラ公式ページより

SNSにアップされた事件・事故情報やその画像などを報道機関に提供するSNS速報サービスの「Spectee(スペクティ)」。

その運営元であるSpecteeはもう1つ、テレビ局など報道機関での利用を想定したサービスを開発している。人工知能がヒトに近い音声で文字を読み上げる、AIアナウンサーの「荒木ゆい」だ。

報道機関の記者が他の作業をしながらでもニュースを追えるよう、Specteeには事件・事故の概要を端的に伝える「見出し」を自動で生成し、それを音声で読み上げる機能が備わっていた。荒木ゆいは、その読み上げ技術を生かしたサービスだ。

荒木ゆいのベータ版は2017年11月にリリースされていたが、Specteeは3月1日、荒木ゆいの読み上げ音声を自動生成できる商用サービス「AI アナウンサー『荒木ゆい』ボイス・プラットフォーム(略称、ゆいプラ)」をリリースすると発表した。

ベータ版リリース後の反応についてSpectee代表取締役の村上建治郎氏は、「読み上げのクオリティは(他社サービス)よりも高いという評価を頂いた。おかげで、テレビやラジオでも取り上げて頂いたり、実際に30分番組の通しナレーションを荒木ゆいが行うという事例もあった」と話す。

荒木ゆいの読み上げクオリティがどれほどのものか知りたい読者は、以下の動画を観ると分かりやすいと思う。

この荒木ゆいの読み上げ機能をクラウドサービスとして公開したのが、ゆいプラだ。ユーザーが原稿を入力すると、荒木ゆいがそれを自動的に読み上げる。音声ファイルはダウンロードできるほか、音のピッチを変えたり、アクセントの位置を調整したりといったチューニングも可能だ。

ゆいプラの基本料金は月額9800円。これで20回分の音声ファイルをダウンロードすることができる。ダウンロード回数を使い切った場合には、2450円で5回分を追加購入できる。なお、SpecteeはアプリやWebサービスの開発者向けに音声読み上げ機能のAPIも併せて発表している。

Specteeは2014年2月の設立。SNS速報サービスのSpecteeは現在、130社以上のテレビ局や新聞社に導入されているという。最近では、野外イベントの警備などを目的として、警備会社や地方自治体がSpecteeを導入する例も増えているようだ。

村上氏はAIアナウンサー事業の今後の展開として、「荒木ゆい以外の声や、マルチ言語に対応した読み上げサービスの開発も進めている。スマートスピーカー向けのコンテンツ開発会社や、東京オリンピックで来日する外国人向けの多言語による音声案内などがターゲット」と語った。

eBayが日本のeコマースQoo10.jpを買収して日本でのプレゼンス強化に本気

eBayは、アジアにおける最新の投資により、日本でのプレゼンスを強化しようとしている。

アメリカのオンラインリテールの巨人であるeBayは今日(米国時間2/27)、汎アジア的eコマース企業Giosisの日本における事業Qoo10.jpを買収したことを発表した。買収の価額等は公表されていない。

eBayは最初、2010年に、韓国のGmarketと共にシンガポールの企業としてGiosisを設立したが、今日の取引の一環としてGiosisの日本以外の持ち分を放棄する。それはとくに、シンガポールとインドネシア、マレーシア、香港、そして中国をカバーするGiosisのeコマースサイトのネットワークのことだ。Giosisは2015年に、Singapore Press Holdingsなどから8210万ドルを調達した

eBayはアジアではこのほか、昨年インドのAmazonライバルFlipkartに、14億ドルの投資ラウンドの一部を投資し、それによりFlipkartはeBayの地元インドにおけるビジネスを引き継いだ。この取引は一種の転換点を表現しており、eBayは最初、インドではSnapdealに賭けていた。Snapdealは昨年、Flipkartによる買収を断り、その後操業が大幅に縮小した

eBayは、中国ではうまく行かず、2006年に撤退した

日本は、アジアの他の部分に比べると比較的明るかった。具体的な数字は挙げていないが、同社によると“数千もの日本企業”がeBayを介して世界中の1億7000万のバイヤーに製品を売っている。Qoo10.jpはそれに対して、日本国内の顧客に売るビジネスを育てる取り組みのようだ。eBayによると、Qoo10.jpの顧客は約200万だ。十分大きな数字だが、登録ユーザー数9000万弱で日本のeコマースを支配しているRakuten(楽天)には遠く及ばない。

しかもRakutenは、オンラインリテール以外に銀行や金融サービスを提供して、顧客のエンゲージメントを高めようとしている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

55万DLを突破したコスメの口コミアプリ「LIPS」が5.5億円調達、すでにタイアップ広告などにも着手

コスメのコミュニティアプリ「LIPS(リップス)」を運営するAppBrew(アップブリュー)は2月28日、GunosyグリーANRIおよび個人投資家らを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達額は5億5000万円だ。

LIPSはユーザーが投稿したコスメ商品の口コミを閲覧できるコミュニティアプリ。他のユーザーをフォローできたり、口コミにコメントできたりといったSNSに近い使用感が特徴だ。アプリを通してコスメ商品を購入することもできるが、その場合はAmazonなど他のECサイトに遷移する。

LIPSのダウンロード数は、リリースから9ヶ月目にあたる2017年10月に30万件を突破し、翌年の2018年2月には55万ダウンロードを記録するなど、順調に成長を重ねているようだ。

AppBrewはプレスリリースのなかで、「(アプリの)急成長の背景には、若い世代を中心に購買の意思決定が『人ベース』に変化していることがあげられる。特に、若い女性にとっては、属性の近いユーザーやインフルエンサーから発信される情報が大きな影響力を持っており、購買行動を大きく左右している」と述べる。

LIPSのターゲットとなる世代は比較的早い時期からスマホに慣れ親しんだ世代。LINEなどメッセンジャーアプリの登場で友人らとこれまで以上に頻繁な意見交換ができるようになり、InstagramなどSNSの登場でインフルエンサーや有名人との距離が近くなった世界に慣れ親しんだ人たちだ。

「『コスメ選び』の文脈における口コミの価値が最大限に発揮されるよう、日々企画・開発を進めていく」と述べるAppBrewは、今回調達した資金を、アプリの開発、人材採用、マーケティング費用などに充てるという。また、同社は2018年よりタイアップ広告とサンプリングサービスの販売も開始している。現在、すでに10社以上の導入実績があるということだが、今後もパートナー企業の募集を続け、販路を拡大していく方針だ。

AppBrewは2016年2月の創業。2017年10月には今回のラウンドにも参加したANRIなどから7600万円を調達している。

ソニー新スマホ「Xperia XZ2 Compact」に足りないもの

eng-logo-2015スペイン・バルセロナのMWC 2018会場より。ソニーモバイルの新型スマートフォン「Xperia XZ2 Compact」の実機インプレをお届けします。

「Xperia XZ2 Compact」は、5.0インチのフルHD+(2160 x 1080)液晶を搭載した小型高性能スマートフォンです。OSにはAndroid Oreoを搭載します。

左から5.0インチの「Xperia XZ2 Compact」、5.7インチの「Xperia XZ2」

5.0インチと聞くと『小型ではなくなった?』と感じますが、横幅は4.6インチの先代「Xperia XZ1 Compact」と同じ65mm。これは、液晶のアスペクト比が18:9となり、縦方向にディスプレイが伸びたことによるものです。なお、縦方向のサイズや厚み、重量は増しており、XZ1 Compactに比べて身の詰まったずんぐりしたような外観となっています。

<本体サイズ比較>
・XZ2 Compact  135 x 65 x 12.1mm 168g
・XZ1 Compact  129 x 65 x 9.3mm 143g

いざ実機に触れてみると、ディスプレイの視認性の高さに驚きます。18:9の縦長液晶は、画面下にオンスクリーンメニューを表示させてもなお、余裕を持ってWEBやSNSなどのコンテンツを表示できます。

本体デザインも大幅刷新されました。背面が中央部に近づくにつれて盛り上がる形状となり、手のひらによくフィットします。また、背面がガラスの「Xperia XZ2」に対して「Xperia XZ2 Compact」はプラスチック素材を採用し、マットで指紋がつきにくい手触りが魅力的です。

先代の「Xperia XZ1 Compact」と同じ横幅で片手操作も楽

横から見ると、身の詰まったずんぐりとした形状

指紋センサーはXZ1世代までの側面から背面に移動。右手だけでなく左手でも指紋認証を使いやすくなりました。また、イヤホンジャックも廃止されており、音楽を再生する場合はBluetoothからUSB-C端子を経由します。

指紋センサーは背面に移動、イヤホンジャックも廃止された

カメラは4K HDRの動画撮影推し

カメラ機能は詳細に試せていませんが、ソニーモバイルの発表によれば「Xperia XZ2」と同等性能。1900万画素のMotion Eyeカメラを搭載し、0.1秒を3秒に引き伸ばす「920fpsスーパースロー」映像をフルHD画質で撮影できる機能や、スマホ初となる4K HDR撮影にも対応します。

Xperia XZ2 / XZ2 Compactは4KのHDR映像を撮影できる世界で唯一のスマホ

XZ1世代からの進化は小幅な印象を受けますが、意外にも4K HDR撮影が魅力的。従来のSDR映像に比べてハイダイナミックレンジで映像を記録するので、4Kの精細感と合わせて、スマートフォンで撮影したとは思えない鮮明な映像を撮影できるといいます。ブースで流れていた夜中を撮影したイルミネーションの作例では、豆電球の1つ1つの明かりが潰れずに、周囲の暗さとともに鮮明に描写されているのが印象的でした。

また、SDR映像をHDRにリアルタイム変換しながら再生する機能も搭載。ディスプレイもHDR対応なので、過去に撮影した映像も鮮明なHDR画質で楽しめます。

SoCにはクアルコムのSnapdragon 845を採用。これは上位モデルの「Xperia XZ2」や、サムスンの「Galaxy S9」など、各社フラグシップのSoCと同じ。見た目はコンパクトながらも、Androidとしては最上級の処理性能を誇り、動作も非常にスムーズです。

さらに、RAMは4GB、ストレージ容量は64GBと、こちらも「Xperia XZ2」と同等仕様。従来のXperia Compactシリーズは、上位モデルに対してディスプレイ解像度やRAM容量が劣ることが常でしたが、今回は完全に同等仕様となった点で、真のハイエンド・コンパクトを体現しているとも言えます。

ワイヤレス充電、新バイブレーターには非対応

このように処理速度や画面解像度、カメラ性能で「XZ2」と遜色のない「Xperia XZ2 Compact」ですが、1つ残念なポイントがありました。それがワイヤレス充電への非対応です。

ソニーモバイルの染谷氏

上位モデルの「Xperia XZ2」ではQi方式のワイヤレス充電に対応する一方、本機では対応を見送った理由について、ソニーモバイル商品企画の染谷洋祐氏は『価格帯やターゲットのお客様を考慮するなかで、コンパクトには不要と判断した』と説明します。

Xperia XZ2 が対応するワイヤレス充電は慣れると便利だが…

また「Xperia XZ2」の裏の目玉とも言える「ダイナミック・バイブレーションシステム」にも非対応。これは、映像のサウンドに合わせて本体が重低音のようにプルプルと振動し、コンテンツの臨場感を増す機能。YouTubeなどあらゆる映像やゲームアプリで適用できます。

「Xperia XZ2」では、このためにXZ1比で何倍もの大きさの巨大な振動アクチュエーターを実装するなどの力の入れようです。実際に試してみると魅力的な新機能なだけに、ぜひ「Xperia XZ2 Compact」にも搭載してほしかったと感じます。

Xperia XZ2はXZ1比で何倍もの巨大な振動アクチュエーターを搭載するが、XZ2 Compactは非搭載

このように、Xperia XZ2がそのまま小型になったわけではないことに留意する必要のあるXperia XZ2 Compactですが、手に収まる小型でSnapdragon 845の処理性能、4K HDR動画を撮影できる点はやはり魅力的。ハイエンド・コンパクトの有力な選択肢となることは間違いなさそうです。

Engadget 日本版からの転載。

ミクシイ代表取締役の森田仁基氏が退任、モンストやXFLAG事業手がけた木村氏が新社長に

画像はミクシイ決算資料より

2014年6月からミクシイの代表取締役を務めていた森田仁基氏が同職を退任することが明らかとなった。同社は2月27日15時に本人事を開示し、森田氏の退任(6月開催の株主総会、取締役会を経て正式に決定)と11人の執行役員の選任を発表した。

ミクシイはこの人事の理由として、「今後新たな成長戦略を描き、推進していくためには、経営体制を一新することが望ましいと判断」したとしている。森田氏の後任として選任されたのは、ミクシイが提供する人気スマホゲーム「モンスターストライク」事業を手がけ、現在はゲームスタジオ「XFLAG」の事業本部長を務める木村弘毅氏だ。

新任代表取締役の木村弘毅氏

森田氏の在任中にあたる2015年3月、ミクシイはチケット売買仲介サービスの「チケットキャンプ」を運営するフンザを買収した。だが同社は2017年12月、そのフンザが商標法違反および不正競争防止法違反の容疑で捜査当局から捜査を受けていることを発表。ミクシイはその後にチケットキャンプの事業終了と関係者の処分を決定していた。

その一方で、2013年9月にリリースしたモンスターストライクが大ヒットしたこともあり、2014年3月期には約121億円だったミクシイの売上高は、2017年3月期の決算では2071億円に急伸。最終損益も約2億2000万円の赤字から598億円の黒字へ転換するなど、森田氏の任期中にミクシイが業績面で飛躍を遂げたのも事実だ。

なお、TechCrunch Japanには、森田氏が社員に向けて発信したとされるメールの内容が読者から匿名で寄せられている。編集部では複数のミクシィ関係者に確認して、それが社内でも配信されたものだという証言を得ている。

その中で森田氏は「チケットキャンプの件に関しては、事業を正しく導けなかったこと、そのことによる損失を出してしまったことに経営トップとして責任を感じており、それが退任のひとつの決断理由ではある」とした上で「それはあくまで理由のひとつで、今ミクシィが置かれている状況を冷静に考えると、新たなミクシィの飛躍には新しい体制で行っていくのがベストだと思っています」とコメントしている。

企業情報DBを提供するBaseconnectが「NewsPicks」、「SPEEDA」のユーザベースと資本業務提携

企業情報データベース「BaseconnectLIST(以下、LIST)」などを提供するBaseconnectは2月27日、ソーシャル経済ニュースの「NewsPicks」や経済情報の検索プラットフォーム「SPEEDA」などを提供するユーザベースと資本業務提携を締結した。同社は本提携の一環としてユーザベースから第三者割当増資を実施し、総額4000万円を調達している。

写真左よりユーザベースグループのFOCAS/JVR代表取締役の佐久間衡氏、Baseconnect代表取締役の國重侑輝氏

法人向け営業を行う企業にとって、“見込み客リスト”の作成というのは避けては通れない作業の1つだ。LISTはそのような企業に対し、営業先となる企業の情報をクラウド型のデータベースとして提供する。企業データを約20項目の検索条件(従業員数、売上規模など)で絞り込み、それを見込み客リストとして出力することが可能だ。

また、企業の既存顧客のデータをサービスに取り込むことで、それらの企業と潜在的な顧客企業との類似点を数値化。その数値に応じて成約率の高い企業を自動でリコメンドするという機能も、LISTならではの特徴だ。

Beseconnectは2017年12月にLISTのベータ版を公開。代表取締役の國重侑輝氏によれば、事前登録があった150社のうち70社が現在でも同サービスを利用しているという。

Baseconnectは今回の資本業務提携により、ユーザベースが提供するSPEEDAやBtoBマーケティングエンジンの「FORCAS」向けにLISTに蓄積された企業データを提供する。それに加え、企業データの開発と研究も共同で行う。

ユーザベースグループのジャパンベンチャーリサーチ、およびFOCASで代表取締役を務める佐久間衡氏は、「國重氏は、構造化された企業データについて深い知見とオペレーション構築力を持つ。この資本業務提携を通じた、共同でのデータ開発・研究により、ユーザベースグループのサービスが大きく進化することを確信している」とコメントしている。

このデータの“共同開発”という言葉は、「企業情報データ作成の知見やノウハウの提供」(國重氏)という程度のものということだが、これから早いペースでデータ数を増加させようとしているBaseconnectにとって、この提携は大きな意味をもつ。國重氏は、「まず当面の目標となるのは、本社ベースで100万社の企業のデータ化。現在はまだ13万社だ。残りの約90万社のデータ化を年内には終えたい」と語る。

先に述べたが、LISTのベータ版で事前登録をした企業のうち約半数の70社はサービスに残る一方で、半数以上はサービスから離脱してしまっている。“カバーする企業数の少なさ”がその大きな理由の1つではないだろうか。そのため、LISTが今後どれだけ早くデータ化する企業を増やせるかが今後の鍵となりそうだ。

Baseconnectは2017年1月の創業。2017年12月にはジェネシア・ベンチャーズなどから1億円を調達している。

AIを駆使したOCRツールやチャットボットを開発するシナモンが資金調達

人工知能を利用した文書読み取りエンジンなどを開発するシナモンは2月26日、MTパートナーズ、マネックスグループのマネックスエジソンベクトルRPAホールディングス、および島田亨氏ら複数の個人投資家を引受先とした第三者割当増資を実施した。また、これまで既存株主(名称非公開)が所有していた同社株がD4Vへと譲渡されたことにより、D4Vがシナモンの投資家に加わったことも併せて明らかとなった。

シナモンはOCRツールの「Flax Scanner」やチャットボットの「Scuro Bot」など、自然言語処理を中心とした人工知能関連技術を駆使するスタートアップだ。

同社が主力プロダクトと呼ぶFlax Scannerは、さまざまなビジネス文書から情報を抜き出してデータベース化するためのOCRツール。PDF、Wordファイル、印字・手書きの紙文書などさまざまなフォーマットに対応しており、手書き文字の読み込み精度は95〜98%(本番導入後の実績値)と高い。

Flax Scannerは金融や保険業界を中心に導入されている。導入社数は非公開だが、「数社」程度だという(シナモン COOの家田佳明氏)。また、選択式の会話ではなく、自然言語による会話に対応したScuro Botは、企業の問い合わせ対応や面接時間の設定などの用途で導入されているようだ。

シナモンは今回の資金調達をもとに、AIプロダクトの基盤技術およびUIの強化、組織体制の強化などに注力する。今後の展開について同社は、「『ホワイトカラーの業務効率化』をテーマに、AIプラットフォームとしてのさらなる基盤を築き、業務改善を推進する様々なプロダクトの開発に取り組む。また、シナモンのプロダクトの提供を拡大するパートナー企業と協同することで、より多くの顧客へサービス提供を推進していく」と述べている。

代表取締役の平野未来氏は、東京大学大学院に在学中、携帯電話向けのアプリ開発プラットフォーム「Colors」などの開発で知られるネイキッドテクノロジーを創業。平野氏は2011年に同社をmixiに売却後、2016年10月にシナモンを創業したシリアルアントレプレナーだ。

「全国タクシー」のJapanTaxiが未来創生ファンドから10.5億円を資金調達、累計調達額は91.5億円に

タクシーアプリ「全国タクシー」を運営するJapanTaxiは2月26日、スパークス・グループが運営する未来創生ファンドを引受先とする第三者割当増資により、10.5億円の資金調達を実施すると発表した。

JapanTaxiは、タクシー会社・日本交通の傘下でタクシーアプリをはじめとするモビリティ分野のソフトウェア、ハードウェアを開発するITベンチャーだ。2011年よりタクシー配車アプリの全国タクシーを提供開始。2017年12月には累計400万ダウンロードを突破した。車両登録数は全国のタクシー車両の約4分の1となる約6万台で、タクシー配車アプリとしては国内トップのシェアを誇る。

JapanTaxiは2017年6月に未来創生ファンドから5億円を調達。その後10月にタクシー会社2社から総額1億円、今年の2月8日にはトヨタ自動車から約75億円の出資合意を発表しており、今回の調達金額を合わせると、累計金額は91.5億円となる。ちなみにトヨタ自動車は未来創生ファンドにも出資している。

これまでの調達についてJapanTaxiでは「少子高齢化が進み、さらに重要性が高まる『移動』の課題を解決するとともに、『移動』に伴い発生するデータの利活用により、日本のモビリティ革命を実現し、社会インフラの進歩に貢献していく」と述べている。

また全国タクシーアプリについては今後、操作性の向上や配車時間の短縮、新機能の追加などで、2020年までに配車可能タクシー台数を9万台(全国のタクシー台数の約4割)、累計アプリダウンロード数を1600万を目指すという。

タクシー配車サービス関連では、ソフトバンクが中国の滴滴出行(DiDi)と、日本のタクシー事業者向けサービスにおいて協業することを2月9日に発表。ソフトバンクと滴滴はUberへの投資も行っており、そのUberは、日本のタクシー会社では第一交通産業と提携すべく、協議・検討を進めているところだ。

またソニーも日本でタクシー会社6社との連携により、AIを使った配車サービスを始めることを2月20日に発表している。こちらに参画するのはグリーンキャブ、国際自動車、寿交通、大和自動車交通、チェッカーキャブ無線、日の丸交通の各社で、合計すると都内では最大規模の1万台の車両をかかえている。

「リグレト」「Picsee」「TypeTrace」のディヴィデュアル、スマートニュース傘下へ

(写真左から)スマートニュース代表取締役社長 共同CEO 浜本階生氏、ディヴィデュアル代表取締役 遠藤拓己氏、ディヴィデュアル取締役/共同創業者 ドミニク・チェン氏、ディヴィデュアル取締役 山本興一氏、スマートニュース代表取締役会長 共同CEO 鈴木健氏

スマートニュースは2月26日、ディヴィデュアルの同社への参画を発表した。ディヴィデュアルは、2008年4月にメディアアーティストで代表取締役の遠藤拓己氏と、情報学研究者で取締役/共同創業者のドミニク・チェン氏によって設立された会社だ。創業時にはMITメディアラボ所長の伊藤穰一氏らからエンジェル投資を受け、メディアやコミュニケーションアプリ、ゲームなどさまざまなプロダクトを生み出してきた。買収のスキームや買収額については非公開としている。ディヴィデュアルは登記上存続し、現在提供している事業も継続していくという。

凹んだ経験を書き込むと誰かが慰めてくれる「リグレト」については、TechCrunch Japan 東京Camp 2009にもデモ出展していたから、読者の中には覚えている人もいるかもしれない(残念ながら,サービスは2017年1月に終了してしまったのだが)。それから、タイピングの行為そのものを時間軸も含めて記録し、後から再生できる「TypeTrace」なんかも印象的なソフトウェアだ。

“Lie” (inspired by Saskia Olde Wolbers) [TypeTrace] from dominick chen on Vimeo.

その後フォトメッセンジャーの「Picsee」、コミュニティの「Syncle」といったアプリを展開。現在はリズムゲームの「Steps!」、養蜂シミュレーションゲームの「Honeybee Planet」の開発・運営を行っている。正直終了したサービスも多いのだが、リグレトをはじめとして、シンプルなデザインの中に、強い思想を持ったプロダクトを生み出してきた印象も強い。

前述のとおりディヴィデュアルは今後も既存事業を継続していくが、すでに同社のメンバー3人は、スマートニュースのプロダクト開発にコミットしていくという。具体的には今後はニュースアプリの「SmartNews」上に新機能を提供していくことになるようだ。

スマートニュース代表取締役会長 共同CEOの鈴木健氏は、ディヴィデュアルの参画について、下記の通りコメントしている。
「ぼくが尊敬する世界最高のクリエーター集団がスマートニュースの仲間として参画していただくことになり、とてもうれしく思っています。TypeTraceが紡ぎ出す打感の息づかい、リグレトが露わにした人類の優しさの可能性。彼らが生み出してきた奇跡のようなサービス達は、インターネットの歴史にその名が刻まれるだけではなく、形を変え、姿を変え、スマートニュースを『いきるためのメディア』という新たな次元へと進化させてくれることでしょう。ミトコンドリアが細胞を進化させ、腸内細菌がヒトと共生体であるように、スマートニュースはこれからも異なるDNAを取り込み、多様性を拡張していきます。当社は、dividualという思想と実装の散種に協力できることを、大変誇りに感じております」

また、ディヴィデュアルの遠藤氏は、鈴木氏との出会いから参画に至るまでの心境について、次のように述べている。
「フランスに住んでいた2004年当時、Google検索で鈴木健さんとPICSYの存在を知り、同世代の日本人にこんなユニークな人がいるのかと大変驚いたことを覚えています。翌年東京で出会い、その後次第に肝胆相照らす友人となり、ディヴィデュアル創業の際にも大きく背中を押してもらいました。
2017年の初夏にその健さんからスマートニュースへの参画についてお誘いを頂き、人の世の縁を感じ、今回の決断に至りました。今後はディヴィデュアルでの10年で得られた経験を活かし、世界がこれからも多様性とセレンディピティに満ち溢れた場所であり続けるよう、スマートニュースの一員としてその使命を果たしていければと気持ちを新たにしています」

なおスマートニュースでは、3月中にももう1社スタートアップのグループ化する予定。今後はその他のスタートアップについても買収等の検討を進めるとしている。