AIでトレーディングを自動化するAlpacaDB、総額175万ドルの資金調達

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AIとデータベース技術を用いてトレーディングの自動化などを行う米AlpacaDB。同社は1月25日、イノベーティブ・ベンチャー投資事業有限責任組合、D4V、三菱UFJキャピタル、マネックスベンチャーズのほか、フィンテック領域に投資するエンジェル投資家のEric Di Benedetto氏ほか個人投資家らから、総額175万米ドルの資金調達を実施したことを明らかにした。

AlpacaDBは2015年2月の設立。もともとは独自のAI技術用いて画像認識のプロダクトを手がけていたが、2015年にそこからピボットしている。創業から現在のフィンテック領域へのチャレンジについてはTechCrunchの過去の記事を読んで頂きたい。

そんな同社では現在、AIを用いて株式(米国株式市場のみに対応)の売買タイミングをアドバイスする「AlpacaScan(アルパカスキャン)」、そして為替取引の自動取引サポートサービス「AlpacaAlgo(アルパカアルゴ)」の2サービスを展開。AlpacaAlgoは2016年11月から一部のユーザーに限定して限定して展開しているが、2カ月間で実取引総額は1億ドル超だという。

AlpacaDBでは今回の資金調達をもとに、これら2つのサービスの開発を進めるほか、トレーディングにおけるAI技術とデータベース技術の更なる研究開発と事業展開を進めるとしている。また今春にはAlpacaScanのモバイルベータ版を提供する予定だとしている。

住宅ローンいくらまで借りれる? 10項目による自動診断をMFSが開始

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住宅ローンの借換サービス「モゲチェック」でスタートした日本のFintechスタートアップのMFSが今日、新たなサービス「モゲスコア」を開始した。ユーザーの収入状況やその安定性を判断するための重要な10項目(年収、勤続年数および家族構成など)から信用力を判断してスコアを算出する。同時に信用力に応じた適用金利の目安も提示する。

このモゲスコアは借り手となるユーザーの信用力を数値化したものだが、実際の借り入れ可能予想額も、このスコアから直接算出できる。具体的にはモゲスコアに年収を掛け合わせて100で割ったものが借り入れ可能額という。例えばモゲスコアが700点で年収500万円の場合、住宅ローン借り入れ可能額は3500万円と推定できるということだ。

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これまで新規に住宅ローンを組んで家やマンションを購入する際、顧客側から見て金融機関が提供するローンの審査に通るかどうかはブラックボックスだった面がある。やったことがある人なら分かると思うが、購入を検討しているマンションの不動産デベロッパーの営業担当などに「おたくの世帯収入と家族構成なら3500万円くらい借りれますよ」とアドバイスされ、そんなもんかと実際に3本くらい同時にローン審査に申し込むことになる。ところが銀行の審査ロジックは開示されていないので、「なぜか審査に落ちた」ということもあるし、実はより条件の良い金利のローンを組めるのに、それに気付かないということが起こり得る。

つまり、ここには情報にの非対称がある。そしてローンを提供する金融機関が積極的に透明性を上げるインセンティブは働かない。それがMFSのように顧客メリットを売りにしているスタートアップ企業の出番となるところ。MFSは住宅ローンの借り換えによる総返済額の圧縮でサービスを開始しているが、この借り換え時の審査実績があるからこそ、金融機関の審査基準に近いスコア化ができているということだ。どの銀行のどのローンに、どういう条件だと通るか(あるいは落ちるか)というデータが蓄積しつつあって、それを今回新たに借り入れ時へのサービスとして展開する、ということだ。MFSは2016年3月から東京・京橋など相談窓口となるリアル店舗サービスも開始している

今回のモゲスコアはMFSのサイト上からも利用できるが、外部提携も進める。ネクストが運営する住宅情報サイトのHOME’SとAPI連携することでモゲスコア算出機能を提供するという。API連携は2017年3月に開始予定。

自分がどの程度の金額を借りられるのかが事前に分かれば、住宅購入時の基本方針の決定に役立つだろう。ちょっと面白いのは実際の審査と違って入力条件を変えたときのスコアの変化を見れること。例えば転職を挟む場合に、転職前に借りてしまうほうがいいのか転職後がいいかなど、これまで一般消費者には難しかったシミュレーションもできるようになることだ。

MFSは2015年6月にモゲチェックをローンチし、同年9月に総額9000万円の資金をマネックスや電通国際情報サービスなどから調達。2016年6月にはシリーズAとしてグロービス・キャピタル・パートナーズから2億円の資金を調達している。

(情報開示:MFS中山田明代表と、この記事を書いたTechCrunch Japanの西村賢は数年来の友人)

旅行版のGoogle Adwardsをつくる ― 旅行記サイト「Compathy」を運営する日本のワンダーラストが1.3億円を調達

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旅行の計画を立てるとき、それを紙のノートに書きとめたり、PCのメモ帳に書きとめるという読者も多いのではないだろうか。何を隠そう、僕も先日ロンドンに旅行したときには計画をワードに書き出していた記憶がある。なかなかアナログな方法だ。

今日紹介するワンダーラストは、旅行の計画から記録までワンストップで提供するWebサービスの「Compathy」を展開する日本のスタートアップだ。ワンダーラストは本日、モバイル・インターネットキャピタルとSMBCベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額1億3000万円を調達したと発表した。

ワンダーラストはこれまで、旅行記録を投稿と閲覧ができるSNSサービスの「Compathy」とメディアの「Compathy Magazine」(日本語、英語、中国語版)を軸にビジネスを展開していた。だが、同社は今回調達した資金を利用して、サイトから直接ホテルの予約や計画ができる新機能を追加する。また、ワンダーラストに蓄積された「旅行計画データ」を利用した新しい広告プラットフォームの構築も目指す。

ログブックは累計2万5000冊、メディアは月間300万PV

Compathyは、ユーザーが自分の旅行記を記録したり、それを外部に公開できるSNSサービスだ。ユーザーが写真を投稿すると、その場所が自動的にタグ付けされ、旅のルートや時間軸をまとめたログブック(旅行記)を作成してくれる。ユーザーは平均して一度に20枚から30枚程の写真を投稿するそうだ。

他のユーザーのログブックを閲覧することも可能だ。国や地域ごとにまとめられたログブックをお気に入りに登録しておけば、自分だけのオリジナル・ガイドブックを作ることができる。 compathy01

これまでに作成されたログブックは累計2万5000冊で、月間400冊のペースで増加しているという。ワンダーラストが手掛けるメディア「Compathy Magazine」日本語版のMAUは100万人。英語版と中国版のMAUは合計で10万人だ。日・英・中あわせると、Comapathy Magazineの月間PV数は300万だという。海外ユーザーは全体の10%程だ。

ワンダーラスト代表取締役の堀江健太郎氏は、「情報がフローとして流れがちのFacebookとは違い、自分専用のページに情報がストックとして溜まっていくのが嬉しいという声をよく聞く。ログブックの閲覧はスマホで、投稿はPCでという利用例が多い」と説明する。

Compathyは以前にもTechCrunch Japanで紹介しているので、参考にしてほしい。

ドラッグアンドドロップで行きたいところを追加、ホテルもその場で予約

ワンダーラストは今回調達した資金を利用して、Compathyに2つの新機能を追加する予定だ。

まず1つ目は、旅行の予約機能と計画機能だ。これまでのCompathyは旅行を「記録」しておくサービスだったが、今後新たにサイトから直接ホテルを予約できる機能を取り入れる。

自分の行きたい観光地をドラッグアンドドロップで追加していくと、それを踏まえた旅行ルートが自動的に表示される。そのため、ルートを参考にして近くのホテルを予約することもできる。

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僕の個人的な経験だが、旅行で行きたいところをピックアップして、その計画を踏まえて地理的に便利そうなホテルを探すのは面倒な作業だ。1日目に訪れる観光地の近くでホテルを探しても、次の日に訪れる観光地までのアクセスが便利だとは限らない。

だから、観光地をつなぐルートを表示してくれて、さらにホテルの予約がサイト内で完結するのは、僕にとって嬉しい機能だ。現段階では、Compathyから利用できるホテル予約サイトは1つだけだが、今後はホテルや航空予約の比較サイト「Skyscanner」のAPIを利用するなどして、さまざまな予約サイトの料金を一覧で表示していくそうだ。

「旅行版のGoogle Adwardsをつくる」

旅行の予約と計画はユーザーに向けた新機能だ。それに加えて、ワンダーラストはその旅行計画データを利用した収益施策も新たに展開していく。具体的には、ある旅行計画を立てたユーザーに対して広告を表示する権利に、企業が入札できる「リバースオークション」だ。Google Adwardsでは、あるキーワードが検索されたときに広告を表示する権利に入札するという仕組みだが、ワンダーラストが目指すのはその旅行版である。

堀江氏によれば、特にオンラインの旅行会社では、ほとんどの広告費をキーワード広告に費やしているという。しかし、旅行業界ではその費用対効果はそこまで高くない。

例えば、あるユーザーが「ハワイ」と検索したとしても、そのユーザーがハワイに「行きたい人」なのか、「行ってきた人」なのかという時系列は分からない。一方、Compathyが企業に提供するのは旅行の計画データなので、旅行会社にとってはこれから旅行する見込み客に直接アプローチすることが可能になる。

「ネット上には”どこどこに行ってきた”というデータは大量に存在するが、”どこどこに行くつもりだ”というデータはあまり存在しない。そのデータを活用することで、売りたい人に直接売れる仕組みを作りたい」と堀江氏は語る。

この入札機能に対する業界の反応を聞くと堀江氏は、「大手の旅行会社は、まだあまり興味を示してくれていないのが現状。しかし、新しい仕組みも柔軟に取り入れるオンラインの旅行会社は高い興味を示してくれている」と話す。堀江氏は、ホテルの予約機能で実績をつくることによって入札に参加する企業を増やしていきたいと語る。同社が狙う市場の規模は「国内で2700億円」だという。

ホテルの予約と旅行の計画機能は今年4月から正式に公開予定。リバースオークションの仕組みは今年中にも公開したいと堀江氏は語っている。

「タクシーのデジタル化」に向け日本交通がスマホ決済Origamiを導入、タクシー代割引も

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都内のタクシーに乗ると、薄毛治療とか怪しげな健康食品情報などリーフレット広告が目に入りがち。何かとイケてない。そんなタクシー広告のデジタル化を推し進めるために、セルラーネットワークによるコンテンツ配信でプレミアムな動画広告を事業化するぞ、と2016年7月に言い出したのが日本交通とアドテク企業のフリークアウトで、TechCrunch Japanでもお伝えした。その日本交通が、タクシー車内のデジタル化に向けて、また新たな一手を繰り出した。

今度は決済だ。

Origamiと日本交通、日本交通のグループ会社であるJapanTaxiの3社は今日、日本交通のタクシーに設置されている「TokyoPrime」端末を活用して スマホ決済サービス「Origami Pay」(オリガミペイ)に対応すると発表した。東京23区と武蔵野市、三鷹市の3500台のタクシーが対象で、1月27日からスタートする。中国最大手の電子決済サービス「Alipay」(アリペイ)にも対応する。今後は全国のタクシー5万台の車両への展開を進めていくという。

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デジタル色の強いTechCrunch読者の多くはタクシー料金をSuicaやEdy、iDといった電子マネーを使って支払っているかもしれない。Apple Payも使っていることだろう。だから「決済のデジタル化」といってもピンとこないかもしれないし、1つ決済方法が増えただけに思うかもしれない。でも、これは、そういうのとはちょっと違う話だ。

まずOrigamiは、スタートから3月末まで乗車料の10%を割り引くキャンペーンを実施する。これは恒久的なものではないが、仕組み上は割引を続けることができるというのが大きなポイントだ。

2012年創業のOrigamiはファッション系のモバイルECとして事業がスタートしているが、2016年5月に発表した「Origami Pay」で着々と現在進めているのが、スマホによるオフライン決済のデジタル化、もしくはネット化だ。ユーザーは既存クレジットカードとアプリを使って店頭(あるいはタクシー)で決済ができる。導入する小売側では、すでに稼働している既存POS端末はそのままに、iPadベースのアプリをプラスすることで、Origami Payを導入できる。

TechCrunch Japanの取材に対してOrigami創業者の康井義貴氏が語ったことで面白いのは、Origami Payが消費者に対して、ほとんど恒常的に割引を提示できるという話だ。例として、150円のペットボトルは120円を売れるというのだ。売り手から見るとはスマホ接点を活かすことで従来の広告宣伝費をガツンと下げられる、ということがあるという。

小売店舗やECサイトは顧客接点を増やすために、メルマガ登録や会員ID取得キャンペーン、特売メルマガキャンペーンなどに結構なコストをかけている。会員ID獲得なら、その単価は1ユーザーあたり数百円、購買キャンペーンだと数千円ということもある。これに比べるとスマホ決済のOrigami Payは使ってもらいさえすれば良いので顧客接点獲得の単価がぐっと安くなる。スーツのAOKIやロフト、阪急メンズ東京、FrancFrancなどにOrigami Payは導入されているが、こうした店舗で値引きを提供できるのは、これまで小売が費やしていた宣伝費やキャンペーン広告費用が削れるからだ、という。ユーザー属性に応じたプッシュ通知が送れると効果が高いが、そのために小売店ごとにナントカ会員になってもらうとか自社アプリを入れてもらう必要はないわけだ。

これはタクシーでも同じ。これまでSuicaのように電子マネーで支払うのは現金がデジタル化されているだけで、事業者にとっては決済データの収集にも顧客接点の獲得にも繋がっていなかった。今後のOrigamiとタクシー事業との展開について康井氏は具体的に明言していないが、もしタクシー会社が顧客接点を持てれば、いろいろな施策が考えられそうだ。例えばJapanTaxiの配車サービスアプリと組み合わせて、乗車率の低い地域や時間帯で割引きクーポンをプッシュ通知で出すといったことだ。もちろんタクシーは規制産業で料金は規制されている。だから、あくまでもOrigami Payのキャンペーンという形になるのかもしれないが、構図としてはタクシー料金でも割引ができるということだ。

「独立後も正社員と同等の社会保障を」――エンジニアの独立支援サービス「Midworks」が正式リリース

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スキルのあるエンジニアのなかには、1つの会社で働くことを選ばず、独立してより高い報酬を追い求める者もいる。だが、そこで心配になるのが独立後の社会保障だ。エンジニアが独立した場合、それまで会社と折半で支払っていた社会保険(社保)には加入できず、代わりに加入できる国民健康保険と国民年金は自己負担となる。

その問題の解決を目指すのが、日本のスタートアップであるBranding Engineerだ。同社は1月24日、エンジニア向けの社会保険付き独立支援サービス「Midworks」を正式リリースした。

独立したエンジニアにも正社員と同等の社会保険を提供

Midworksを利用するエンジニア(Midworker)はまず、Branding Engineerと専属契約を結ぶ。その後、エンジニアは勤務先となる企業に常駐するというかたちで働き始める。Midworksを利用するエンジニアは、Branding Engineerと労使折半で社会保険に加入することができる。そのため、エンジニアは独立しながらも正社員と同等の社会保障を受けられるという仕組みだ。

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Midworksが他の類似サービスと異なるのは、手数料の透明性だ。Midworksに支払う手数料は、エンジニアが企業から受け取った報酬の最大20%で一律となる(手数料率を下げられる特典もある)。Branding Engineer代表取締役COOの高原克弥氏(写真右)によれば、受け取った手数料の中から社会保険料を支払うため、実際のマージンは「10%から15%程度になる」という。

Midworksは社会保険料を折半して支払うだけでなく、さまざまなサポートも提供している。Midworkerになるとクラウド会計ソフトの「freee」を無料で利用できるだけでなく、書籍や勉強会の費用として月に1万円まで負担してもらうことが可能だ。

「Midworksのターゲットは、優秀だけれども、企業に所属していることで給料の上限が押さえつけられているエンジニアです。日本のエンジニアの15%から20%が、それに当てはまるのではないかと考えています」と高原氏は語る。そのため、Midworkerの大半は、ある程度キャリアを積んだ30〜40代のエンジニアを想定している。

エンジニアが企業から受け取る報酬が高ければ高いほどMidworksが受け取る手数料金額も増える。そのため、優秀なエンジニア(≒給料が高いエンジニア)をターゲットにしているのは納得がいく。しかし、Midworksが優秀なエンジニアにターゲットを絞る理由はもう1つある。

苦い経験から起業のアイデアが生まれる

自身もエンジニアである高原氏は、高校時代に音楽系サービスを立ち上げ、それを月間約300万PVにまで成長させたという経歴をもつ。その後、大学時代に3社のスタートアップの立ち上げに関わることになる。そこでの苦い経験が、のちにMidworksやTech Starsを作るきっかけとなったと高原氏は話す。

「大学時代、3社のスタートアップの立ち上げに関わってきました。しかし、その3社とも、ほとんどプロダクトを完成することができませんでした。その経験から、『なぜ優秀なエンジニアがいるのにプロダクトが完成しないのだろう』、『なぜ優秀なエンジニアが集まらないのだろう』と思うようになりました。そのような現場を見ているうちに、エンジニアのキャリアの部分に関わることをやりたいと思ったのが起業のきっかけです」(高原氏)。

Branding Engineerの創業は2013年。現在は25人の従業員(インターン含む)を抱え、渋谷にオフィスを構える。同社はこれまでに、ANRI2号投資事業有限責任組合、East Venturesなどから総額1億2000万円を調達している(前回の資金調達はTechCrunch Japanでも取り上げた)。

若年層・スマホ特化のアンケートアプリ「TesTee」、画像解析の新メニューが登場

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若年層向けアンケートアプリ「TesTee(テスティー)」を使ったリサーチサービスを運営するテスティーは、1月23日、画像解析メニューの提供を開始した。この画像解析メニューにより、ユーザーのスクリーンショットを使い、特定アプリのホーム画面上の配置や、ログイン状況、アンインストール動向といったアプリ利用動向の調査が可能になるという。

若年層ユーザー中心、スマホ特化のアンケートアプリ

TesTeeは10〜20代の若年層がユーザーの77%を占めるアンケートアプリ。ユーザーはタップ操作で選択肢を選んだり、チャット型のインターフェースで選択肢(フリーテキスト含む)を選んだりしてアンケートに回答する。回答完了でポイントが獲得でき、貯まったポイントはLINEギフトやAmazonギフト券などと交換可能だ。

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テスティー代表取締役の横江優希氏は、ネットリサーチ大手のマクロミル出身。2000年前後に拡大しはじめ、2015年度には600億円市場へと成長したネットリサーチ市場について「スマホへの移行がしづらいという課題がある」と話す。

「iPhoneの普及などにより、2012年から2013年ごろにはインターネットアクセスの中心はスマホへ移行してきている。一方、従来のPCでリサーチを行ってきたサービスでは『調査のインターフェースが変わり、データの取り方が変わることがノイズとなる』として、スマホへの移行はクライアントから嫌われる。このためサービスのスマホへの移行ができず、結果として回答するユーザー、特に若年層のユーザーを減らす状況となっている」(横江氏)

横江氏はスマホアプリの開発会社を起業したのち、2014年5月にテスティーを設立。スマホでの調査に特化したサービスとして2015年7月にTesTeeをリリースした。リリースから1年6カ月後の現在、登録ユーザー数は約48万人。DAU(1日のアクティブユーザー数)は4万人、MAU(月間アクティブユーザー数)は11万〜12万人を数えるそうだ。「スマホのアンケートアプリでは一番利用されている。また若年層を取り込めている点も特長だ」(横江氏)

TesTeeによるリサーチを利用するクライアントは、自身で調査設計を行い、管理画面で調査結果をダウンロードするため、リサーチャーによるレポーティングが行われる既存のネットリサーチと比べると、2分の1〜3分の1程度の費用でリサーチを実施することができる。ユーザーが若年層中心ということで、美容系や菓子、飲料メーカー、通信キャリアなどの企業の利用が多く、月に40〜50社、80〜100件の利用があるという。

今回登場した画像解析メニューは、自社開発の画像認識エンジンを使ったもの。TesTee登録ユーザーの属性情報や位置情報とあわせて分析することで、ユーザー動向がより分かるようになると横江氏は言う。「これまで広告のクリック状況や検索エンジンを通してしかつかめなかったユーザー動向が、モバイルを中心にしたネットリサーチと画像解析によって、よりユーザーにひもづいた情報としてリーチできるようになる。こうした技術を使った、アドテク企業やデータマネジメント企業との連携も進めている」(横江氏)

ホーム画面の画像解析による、トップアプリランキング

テスティーでは今回の画像解析メニューの提供開始に先立ち、2016年12月に自主調査でTesTeeユーザーのスマホ画面の画像解析を行っている。1234人のiPhoneユーザーを対象にホーム画面トップのスクリーンショットを収集し、画像解析したこの調査では、アプリ全体ではユーザーの約58%がホーム画面に設置していた「LINE」が1位に。そのほか、SNSでは「Instagram」が、ゲームでは「ポケモンGO」がホーム画面設置アプリの上位にランキングされた。

テスティー調べ(2016年12月)

テスティー調べ(2016年12月)

「自主調査は今後も月1回は実施していく。“ニュース”“飲食”などフォルダにまとめられやすいアプリのインストール状況の調査追加や、ホーム画面から2画面目以降へ移動したアプリは何かといった継続調査も行う予定だ」(横江氏)

ウェブサイトをネイティブアプリに変える 「Joren」、フラーが国内版を提供開始

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スマホ節電アプリ「ぼく、スマホ」や企業向けのアプリ分析プラットフォーム「App Ape」を手がけてきたスタートアップ、フラー(2016年11月にFULLERより表記を変更)。耳に覚えがあるという読者も多いかもしれない。そんな同社は1月23日、ウェブサイトのURLを入れるだけでスマートフォンアプリ(iOS/Android)を作成できるサービス「Joren(ジョーレン)」を国内法人向けに提供開始した。

ユーザーはアプリ化したいウェブサイトのURLさえ用意しておけば、Joren側でウェブサイトのコンテンツを自動で取得し、アプリのプレビュー版を生成。それを基にユーザーは管理ツールから、デザインのカスタマイズやプッシュ通知の設定などを行う仕組みだ。今までもアプリ上のブラウザでウェブページを表示するといういわゆる「ガワアプリ」や、ネイティブアプリをノンプログラミングで作成するサービスはあったが、Jorenはサイト情報を自動取得してネイティブアプリを作ることができるのが特長だ。

プログラミングやデザインの知識は必要なく、ウェブサイトを更新すればアプリ側も自動更新されるため、運用コストも抑えられる点が特徴。初期費用の100万円(先着50社は半額の50万円)と、プランに応じた数万円の月額料金で利用できる。

ただし現時点では全てのサイトに対応しているわけではなく、会員登録が発生するサイトや決済機能を持つサイトなどはアプリ化できないという。そのため、現在中心となっているのはニュースメディアやイベントの公式サイト、スポーツチームのメディアなどだ。

Jorenは2016年の7月から一足先に海外版がローンチされており、すでに70カ国以上の顧客から4000件を超えるアプリ作成依頼が届いている。検索流入など”一見さん”が多いウェブサイトに比べ、プッシュ通知などを活用することで”常連さん”を増やせるのがアプリの利点であることから、Jorenと名付けられた。

導入企業であるプロスポーツクラブの事例では、アプリを利用したユーザーの翌月継続率が9割に達するなど成果が出始めている中で、国内企業向けに正式なサービスローンチへと至った。

今後はECサイトや決済機能を持つサイトへの対応に加え、集客や広告をサポートする機能も順次追加予定。長期的には法人だけでなく、個人でも使えるようなプランを検討しているという。

「Joren」で作成したアプリの例

「Joren」で作成したアプリの例

アプリ分析支援サービスの提供を通じてサービスを構想

フラーは2011年11月に筑波大学出身の代表取締役・渋谷修太氏らが茨城県つくば市で立ち上げたスタートアップ(現在オフィスを構えるのは千葉県柏市)。冒頭でも触れたぼく、スマホやApp Apeなどのサービスを提供してきた。

App Apeを通じて様々な企業のアプリ分析をサポートする中で、「アプリを作って欲しい」という依頼が100件近く寄せられたことから、開発スキルやリソースがない人でもアプリを制作できるサービスの可能性を感じ、Jorenの構想が生まれたという。

「アプリを1から作ろうと思うと、まずプログラミングやデザインといった開発の壁があります。そして意外と手間がかかるのが更新や運用といった管理コストです。これらを極力取り除き、開発の知識がないマーケティング担当者や広報担当者でもアプリを制作・運用できるサービスがあれば役に立つのではないかと考えました」(渋谷氏)

リリース当初はウェブサイトのコンテンツ取得やアプリ化に加え、必要な条件を整えてアプリストアへ申請するまでの工程をなかなか自動化できず、苦戦していたという。現在では8〜9割の作業を全て自動化することに成功し、早い場合だとURLを準備してから30分ほどでストアへ申請できる状態になっている。

もちろん凄腕の専任担当者が作ったアプリと同じレベルのものが作れるというわけではないが、「アプリ制作におけるWordPress」のような位置付けで、スキルはなくても気軽にアプリを作ってみたいというニーズに応えていくことが狙いだ。

また、アプリが簡単に制作できるサービスであることに加え、これまでに培ったノウハウを生かして、ユーザーに使ってもらえるアプリを作れる点がJorenならではの強みだと渋谷氏は話す。「App Apeを運営することで蓄積されてきたアプリのデータを分析していくうちに、成功しているアプリの特徴や傾向のようなものが見えてきました。そのナレッジを最大限に生かし、どんな人でも最適なアプリを作れるようなサービスになっていると思います」(渋谷氏)

開発や運用のハードルを下げ、世の中で提供されるアプリの数を1億個以上にすることを長期的なミッションに、まずはJorenを通じて年内に1万個のアプリを制作することを目標として掲げている。並行して、会社全体では既存のApp Apeとも合わせ、アプリに関わる悩みであれば開発から分析までトータルで解決できる「アプリの総合商社」を目指し、各サービスの改善を行っていくという。

マッチングサービス「Pairs」が会員数500万人突破 —— 今後はアジア5カ国でサービス展開

恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs」(このタイミングでサービス名の表記がpairsからPairsに変更となった)、カップル専用コミュニケーションアプリ「Couples」を展開するエウレカ。同社は1月23日、Pairsが2016年内にユーザー数500万人、マッチング数3200万組(日本と台湾の合計)を突破したことを明らかにした。累計有料会員数は55万人だが、売上金額は非公表としている。

半年前、赤坂優氏から石橋準也氏へ代表取締役CEOが交代したニュースが記憶に新しいが、当時石橋氏が目標に掲げていた「2016年中のユーザー数500万人突破」は達成した形となる。

また、今回の発表に併せてインフォグラフィックスも公開されている。具体的な数値の推移に関しては、そちらをご覧いただきたい。

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Facebookページ上でのグロース施策が成長を牽引

会員数が500万人を突破したことについて、石橋氏は「台湾事業が好調だったことが大きな要因の一つ」と語っている。Pairsの台湾版は2013年10月にリリースされているが、本格的にグローバル展開を推し進めることにしたのは2016年のこと。

エウレカ代表取締役CEOの石橋準也氏

エウレカ代表取締役CEOの石橋準也氏

同年4月に台湾事業部を立ち上げ、グロース施策に力を入れていった結果、毎月のユーザー数が120%で成長。年内の達成に至ったそうだ。これまで広告出稿をメインに新規ユーザーの獲得を推し進めていた同社だが、具体的にどのようなグロース施策を行ったのだろうか?

「『生年月日をFacebookのコメント欄に投稿すると占いの結果を教えてくれる』といったbotを活用した施策やFacebookのライブ配信を活用した投票の施策を行うことで毎月数万人の新規ユーザーを獲得できた。この台湾で培ったグロース施策を国内にも展開することで、国内のユーザー数も順調に推移していったと思います」(石橋氏)。なお、サービス開始当初にあった診断系のFacebookページに「いいね!」を集めるマーケティングは実施していないという。

ユーザーの「男女比率」が強みに

Pairsはユーザー数だけでなく収益面でも好調だという。先週、App Annieが発表した調査レポート「2016年アプリ市場総括レポート」によると、PairsはiOSとGoogle Playの合計収益で国内6位にランクインしている。マッチングサービスが乱立する中でも収益を伸ばしていった理由の1つについて、ユーザー比率の良さを挙げる。

「一般的なマッチングサービスは男性が8割、女性が2割くらいの比率なのですが、Pairsは男性が6割、女性が4割くらい。すごくバランスがいいんです。売上ばかりを追っていってしまうと、男性ばかりが増えていき、サービスとして衰退していく。ただ、Pairsはオンラインデーティング黎明期からサービスをリリースし、国内ナンバーワンの立ち位置を築けているからこそ女性ユーザーの獲得に注力することができています」(石橋氏)

女性の新規ユーザーを獲得していくことで、男性ユーザーがアクティブに。その結果、Pairsの課金率(累計有料会員数55万人)、マッチング率(マッチング数3200万組)、継続率(平均186日)は業界で最も高い数値になっているとのこと。

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ちなみに、2016年アプリ市場総括レポートでPairsの下に「タップル誕生」がランクインしていることについて伺ってみると、「iOSとGoogle Playの収益は、Paris全体からすると一部でしかない」と石橋氏は答えた。

「Pairsは現在、ウェブ版(PC、スマートフォン)、iPhoneアプリ、Androidアプリの4デバイスでサービスを展開しているのですが、最も収益が高いのはウェブ版スマートフォンです。ネイティブアプリのインストール広告はごく一部しか出稿していないので、基本的な集客はWeb版スマートフォンへ流入するようになっています。きちんとWeb版スマートフォンでも使ってもらえるプロダクトになっているのは、他サービスとの差別化要因になっているのかなと」(石橋氏)

2017年内をめどに韓国・香港・シンガポールの3カ国でサービスを展開

国内のみならず、台湾版もトップシェアを争うほどの成長を見せているPairs。今後はオフライン広告にも積極的に投資を行っていく予定だという。

「現在、売上はナンバーワンにも関わらず全然知られていない。そんな状態になっているので、台湾国内での認知拡大を狙っていきたいですね。台湾のオフライン広告は費用対効果が高く、新規ユーザーの獲得、ブランドリフト効果もあるみたいなので積極的に投資していこうと思います」(石橋氏)

台湾での成功を皮切りに、今後Pairsのグローバル展開を本格化。2017年内(第3四半期めど)に韓国、香港、シンガポールでのサービス展開も予定しているという。具体的にはIAC/Matchグループのノウハウを強みに積極的な事業展開を行っていき、2018年にはアジア5カ国における会員数合計1000万人の獲得、フラッグシップのサービスになることを目指していくそうだ。

2016年12月に同じくIAC/Matchグループのマッチングサービス「Tinder」のカントリーマネージャー・日本支社長が就任しているが。競合になるのかというTechCrunchの質問に対しては、「Pairsはシリアスデーティング、Tinderはカジュアルデーティングと棲み分けができているので、直接的な競合に当たらない」と考えているとのこと。

国内に関しては、オンラインデーティング市場をニッチからマスに変えるべく、オンライン・オフライン双方の広告を通して、出会い系サイトとの違いの明確化、Pairsのブランドイメージの変化を狙っていくとしている。

カフェ難民に朗報、15分100円から席が借りられるCoin Spaceがローンチ

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カフェ以外のサードプレイスを

街のカフェはちょっとした時間に休憩したり、簡単な打ち合わせをしたり、仕事したりする人たちの受け皿になっている。しかし、本来は利用目的によって適した場所は違うだろう。コーヒーが飲みたいわけではないが、他に適当な場所がないからカフェに入ったという人も多そうだ。コインスペースは本日、ユーザーの利用シーンに応じて、適切な居場所を提供をする空きスペースのシェアリングサービスをローンチした。

この手のシェアリングサービスには、他にも会議室を中心とするSpacee(スペイシー)イベント会場から宿泊先まで幅広く取り扱うスペースマーケットなどいくつかある。コインスペースの使い方自体は、そういったサービスと大きくは変わらない。店舗が空きスペースの情報と空き時間を掲載し、ユーザーはそれを見て予約する仕組みだ。ただ、他のシェアリングサービスと違うコインスペースの特徴は、ユーザーが場所を貸し切るのではなく、10分から座席単位で場所を予約できることだ。場所を借りるというよりは、カラオケや漫画喫茶などの時間単位で席を借りる仕組みに近い。

コインスペースの予約画面

コインスペースの予約画面

現在コインスペースは、渋谷マークシティにあるクリエーションスクエアしぶやで観光案内を併設した時間貸しスペースを運営している。2月1日からは、QFRONT8階にある飲食店「ぷん楽」の店舗もコインスペースに掲載予定だ。ぷん楽の通常の営業時間は17時からだが、飲食店が営業していない10時から15時までの時間帯をコインスペースで貸し出す予定だという。店舗や席によって利用できる設備に違いはあるが、基本的にWiFi、電源、ホワイトボードがあり、飲食の持ち込みも可能だという。利用価格は15分100円からだ。

当初はスペースを貸し出す実店舗を運営していて、今回のウェブサイトのローンチを持ってシェアリングサービスにシフトしたとコインスペースの代表取締役を務める佐藤悠太氏は説明する。コインスペースはそもそもリアル店舗を運営していたデジサーフから佐藤氏が事業譲受し、改めて2016年1月に創業した。過去には期間限定で東急プラザ渋谷、QFRONT、ハイマンテン渋谷ビルでコインスペースを運営してきた。コインスペースではスペース貸し店舗を運営するための管理システムを開発していて、今回そのシステムを他の店舗でも使っていないスペースを時間貸しスペースとして掲載できるように開放したという経緯だ。

ユーザーはコインスペースで使いたい場所を検索して、席を予約できる。予めクレジットカードの決済情報を登録しておく仕組みなので、利用料の決済も自動だ。店舗側のスペースの掲載は無料で、コインスペースは取引手数料を得る形だ。店舗は席の貸し出す価格なども自由に設定できる。管理システムからは売り上げや予約状況をリアルタイムで確認でき、基本的には無人でも貸しスペース運営ができるという。使っていない時間帯に店舗を空けるだけで、副収入が得られるようになると佐藤氏は説明する。

コインスペース

コインスペースの管理画面

2度目の挑戦

コインスペース代表取締役、佐藤悠太氏

コインスペース代表取締役、佐藤悠太氏

佐藤氏にとって、コインサービスは2度目の挑戦となる。以前、佐藤氏はモバイル電子チケットサービスmoggyを立ち上げたが、売り上げの伸び悩みに直面し、サービス閉鎖という挫折を味わった。コインスペースではウェブだけでなく、店舗運営が基盤にあるので手堅いビジネスにしていけることを期待しているという。

「ウェブだけで完結するサービスでは現場の声が見えづらく、システムで解決できると考えがちでした」と佐藤氏は話す。自分たちでコインスペースの実店舗を運営することには多くの気づきがあったそうだ。例えば、スペースを貸し出す店舗の気持ちやアルバイト店員がオペレーションのために簡単に使えるUI設計とはどのようなものかなどを理解するきっかけになった。また、実際にどういう人がサービスを使っているか、目に見えて分かったのも大きいという。コインスペースを開店した当初、ビジネス利用が9割を占めると予想していたが、実際にはビジネス利用の他に、マンツーマンの英会話レッスンをしている人や手芸をしている人、カードゲームをしている人など様々な人が様々な用途のためにコインスペースを利用していることに気づいたそうだ。

「コインスペースが目指すのは、色んな利用シーンやニーズに合わせて最適なサードプレイスを提供することです」と佐藤氏は話す。同じような仕組みで利用できるコワーキングスペースなどもあるが、コインスペースは仕事をする場所を提供することに限定していない。個人レッスンでも趣味を楽しむ場所でも、「こういうことがしたいのに場所がない」という課題を解決したいと話す。はじめのうちはユーザーの利用に適しているか掲載場所をコインスペースで審査していく計画だが、年内には渋谷を中心に100店舗以上の掲載がある状態を目指すと佐藤氏は話している。

導入企業数1万社を突破したInstaVR、AWS元マーケティング本部長の小島氏がCMOに

ウェブ上で手軽にVRアプリを作成できるツールInstaVRを提供するスタートアップのInstaVRは1月19日、アマゾンでマーケティング本部長を務めていた小島英揮氏が1月からCMO(最高マーケティング責任者)として参画したことを明らかにした。同氏はInstaVR のユーザーコミュニティの構築や、テキサス州オースティンで開催される SXSW2017 内でのInstaVRのキックオフイベントを中心にマーケティング業務全般を担当するという。

小島氏はAWSの1人目の社員であり、世界最大のクラウドコミュニティ「JAWS-UG(ジョーズユージー。 Japan Amazon Web Service User Group の略))を創り上げてきた。多くの人を巻き込みながら熱量のあるコミュニティを形成し、事業の成長につなげていく手法を手がけてきた人物だ。

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InstaVRのCMOに就任した小島英揮氏

2016年9 月にAWSを退社した後もコミュニティ・マーケティングの勉強会を主催しており、その資料をInstaVR代表取締役社長の芳賀氏が発見。gumi 代表取締役で同社のシード投資家でもある國光宏尚氏の紹介で直接話をし、議論を深めていった。

元々クラウドの次にチャレンジしたい分野としてVRには関心を持っていた小島氏。最近のイチオシ書籍だという「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則」(ケヴィン・リー著)の中で、VRがこらからやってくる不可避な流れとして紹介されているが、小島氏自身もそのように感じていたそうだ。

芳賀氏と議論を深めていく中でその市場とツールの可能性に魅せられ、「7年前のクラウドを同じく、VRという言葉はみんな知っているが、その良さを”自分ごと”にできていない人が多いというのも、自分のクラウド市場立ち上げでの経験を活かせると思った」(小島氏)ことが参画を決めた理由になったという。

InstaVRは2016年8月にグリーベンチャーズ、Colopl VR Fundを割当先とした2億円の資金を調達。当時は1800社ほどであった導入企業の数は2017年1月で1万を突破している。海外売上比率は90%に上り、今後も接客的に海外展開を目指すとしている。

「現状、VR自体が黎明期ですので、自社製品の認知に限定せずに、幅広くVRそのものの認知を広げ、適用事例を増やす活動を行って頂きたいと考えています。小島さんがAWSで『一部の人が使うクラウドの世界をAWSで民主化した』ように『まだ一部の人に閉じこもってしまっている VR の世界を民主化する』活動を期待しています」と芳賀氏が話すように、今後も「だれでも簡単に当たり前にVRが使える世の中を実現し、ありとあらゆる人がありとあらゆる体験ができる世界」の構築を目指し、事業を推進していく。

相手の口座を知らなくても使える割り勘アプリ「paymo」、木村新司氏率いるAnyPayが公開

AnyPay取締役の日向諒氏(左)と代表取締役の木村新司氏(右)

AnyPay取締役の日向諒氏(左)と代表取締役の木村新司氏(右)

2016年11月に開催したイベント「TechCrunch Tokyo 2016」のセッション内で発表されたAnyPayの新サービス「paymo(ペイモ)」がいよいよ1月19日にローンチした。アプリはApp Storeより無料でダウンロードできる。

AnyPayは連続起業家でシリウステクノロジー、アトランティス、Gunosyなどに関わってきた木村新司氏が2016年6月に立ち上げた新会社だ。すでに決済サービスの「AnyPay」(詳細はこちら)をスタートしていたが、冒頭の通り2016年11月にpaymoを発表。ティザーサイトを公開していた。

AnyPayはサイト上でアカウントを作成し、販売したいアイテムを登録すれば自らの「ショップ」で商品の販売、決済が可能なサービスだった。それに対してpaymoは、“割り勘アプリ”と銘打ったサービスで、飲食店などで知人や友人と割り勘をする際の、個人間での支払いに利用する前提のサービスだという。

アプリをダウンロードしてユーザー登録を済ませれば、本人確認なしでサービスを利用できる。レシートを撮影して金額を入力すれば、あとは銀行口座などの情報を共有せずにユーザー間で支払い(入金はVisaおよびMasterのクレジットカード)、請求が可能。支払われたお金はpaymo内にチャージされるので、銀行口座に振り込みするかたちで受け取りが可能だ。1回の送金限度額は10万円、1カ月合計30万円。手数料は無料となっている。当初は20〜30代のクレジットカードユーザーを対象にするが、将来的には10代の学生から50代の社会人まで広くユーザーを広げる狙い。1年間で700万ダウンロードを目指す。

paymoの請求フロー

paymoの請求フロー

同日開催された記者会見で木村氏はまず、日本のキャッシュレス決済比率が19%で、米国(48%)、韓国(62%)などと比較しても低い数字であること、PayPal傘下の個人間送金サービス「venmo」の月間流通金額が1000億〜2000億円を超えるといった、モバイル送金、決済領域の成長を説明。日本でも同様にモバイル送金、決済が成長すると考えてpaymoの提供に至ったと説明した。

以前、TechCrunch Tokyoでも僕が質問したことなのだが、会見でpaymoは資金移動業者による「送金」サービスではないと木村氏は強調した。サービスは「割り勘」という債務に対する支払いであり、それを実現するために、レシートのアップロードを必須としているという。

日本の法律上、個人間送金を行う場合は送り手、受け手ともに身分証の提出などが必須となる。もちろんこれはユーザーを守るためのルールではあるが、海外を見ると、シチズンIDと口座番号だけで送金可能なサービスが出ているのが現状。日本の法律上可能なかたちでサービスを提供したのがpaymoだという。また、サービスの提供に当たっては「確固たる弁護士事務所と相談して、問題ないと確認している」(木村氏)とのことだが、監督省庁の確認はとっていないとしている。

「1年後の月間流通額400億円を目指す」連続起業家・木村新司氏が語った個人間決済の未来

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2016年11月17~18日に開催されたイベント「TechCrunch Tokyo 2016」。初日のセッションには、AnyPay代表取締役の木村新司氏が登壇した。オンライン決済サービスを開発するAnyPayは2016年6月の設立。9月にはサービスを正式ローンチした。モデレーターはTechCrunch Japan編集部 副編集長の岩本有平が務めた。

木村氏と言えば、これまでに数回のイグジットを経験している連続起業家であり、個人投資家としても約20社に投資をする人物。そんな同氏がなぜ多くのプレイヤーが存在する決済の領域で起業をしたのだろうか。

シンガポールで感じた日本の決済の課題

木村氏が決済に挑戦することを決めたのは2つの理由がある。1つは、2014年から木村氏が拠点を移しているシンガポールで、日本と異なる決済事情を見たことだ。シンガポールの生活では、当たり前のようにオンライン決済サービスが利用できる。移動にはUberやタクシーを利用し、ランチにはfodpandaDeliverooUberEATSなどのデリバリーサービスを利用している。また普段の買い物にはRed MartLAZADAなどのショッピングサービスを使っているのだが、それらすべてのサービスで、Apple PayPayPalでの支払いができる。その際、わざわざ新たにアカウントを作成する必要すらないのだ。「日本ではようやくApple Payが始まりましたが、ずっと海外とのギャップを感じていました。これが立ち上げの1つ目の理由です」(木村氏)

また2つ目の理由として、「Webでもお金を払えることを知った人が増えたこと」を挙げる。メルカリやラクマなどのフリマアプリの流行を契機として、都心はもちろん、地方のユーザーすらも、「ウェブでお金を払う」という体験をし始めた。これによって、お金を払うことが簡単にできることに気づいた人が多いと感じる一方で、サービスの外では個人間のお金のやり取りができないことに疑問を感じていたという。「個人間のお金のやり取りがもっとできてもいいと思うんです。それができないのはおかしいなと思って。今やったほうがいいと考えるようになりました」(木村氏)

「個人と個人の間での決済が重要である理由」

ウェブでお金を支払う体験に抵抗がない人が増えたと言っても、決済市場にはすでに多くのプレーヤーがいる。国内ではコイニーの「Coineyペイジ」やBASEの「PAY.JP」がスターとアップとして先行しているほか、海外でもでも先ほど例にも挙げたApple PayやPayPal、木村氏が度々口にするPayPal傘下の「Venmo」などがある。

木村氏はそれぞれのサービスにはそれぞれのポジショニングがあるとした上で、AnyPayは「近くにいる個人間の決済にポジション」を取ることを意識していると語る。

「これまでのサービスは、個人間決済と言っても、遠くの人と遠くの人のための決済が多い。我々は近くの人同士でも使える、現金でやりとりされているものを置き換えることが目的」「コミュニケーションはスマホでオンラインになったのに、お金はオンラインではやりとりができない。本来お金とコミュニケーションとは密接な関係がある。例えば買い物や食事、友達との金銭の授受もコミュニケーションと繋がっている。そんなコミュニケーションの中でも使えるようにしたい」(木村氏)とのことで、あくまでもCtoCを中心とした個人間、しかも日常生活で触れあえる距離にいる友人や家族のような、小さいコミュニティで利用されるサービスを目指していることを強調した。

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AnyPayはバイラルで成長、「サービスの決済」が中心

AnyPayのローンチ後の展開に話が移ると、順調に成長を遂げていると語る。「滑り出しは好調で、最初の想定を超えた数値を出しています。決済ビジネスは小さい顧客獲得が重要なので、広告費を出してユーザーを獲得し続けるようなものではなく、バイラルで獲得していくものです。バイラルでの獲得が順調なので、安心しています」(木村氏)

さらに、AnyPayの現在の利用方法、用途についてもこう語る。「現在は物販、サービス、チケットという形で利用方法を提示していますが、これまで個人の決済システムが持てなかったこともあって、『サービス』での利用が大きいです。例えば個人で英会話教室を受けていて、料金を支払いたいのに現金がない。そんなときにATMでお金を下ろす必要もなく、決済をすることができるのです」とし、サービスでの決済利用が多いことを紹介した。

今後は利用方法として多いものに注目して、ユーザーが利用しやすい「目的」を作っていくという。今後の利用方法を見て、多く利用されている、課題の大きい問題を切り出していくとのことだ。

「paymoはユーザーの目的をサポートする決済アプリ」

また木村氏は今回のセッションで「paymo(ペイモ)」という新サービスを立ち上げることを発表した。「AnyPay」はブラウザで利用可能なオンライン決済サービスだが、paymoはアプリサービス。決済のみにフォーカスをして開発を行っているAnyPayと比べて、「個人で使えるシチュエーション・目的」を明確にし、無意識に利用しやすいサービスにすると語る。

paymoでは、個人間のお金のやり取りを、サービスECの切り口を通して簡単にしていくという。例えば、「ココナラ」や「TimeTicket」ではサービスを“チケット”として扱っているように、売るものをわかりやすくする)しかし、あくまでも決済が軸になるという点は変わらない。「paymoはメディアではなく、決済サービスです。なので、ユーザーはサービスの中で出会うのではなく、いつものコミュニケーション、いつもの出会い、そこで必要となる決済をpaymoで行うというモデルです。サービス内で出会いを求めるメディアとはそこが違います」(木村氏)

なおAnyPayでは、1月19日にpaymoの詳細をあきらかにするとしている。

「個人が無駄に信用を消費する社会をなくす」

今後は国内でのサービス展開はもちろん、海外の展開も視野に入れているというが「まずは東南アジアが中心」だという。さらに、個人間決済に未来については「やはり、個人でお金を送れるようにしたい。個人同士でお金のやり取りをするとき、オフラインの繋がりでも、オンラインで支払うことが出来る世界を目指す」と語った。加えて、日本ではあまり普及していないデビットカードとスマートフォンの連携についても視野に入れていると語った。

AnyPayはプレーヤーの多い決済市場で、独自のポジショニングを築き上げ、日本の決済を変えることはできるのか。同社は2017年には社員数100人、月間流通額は400億円を目指す。

筋電義手を手がけたexiii、VR空間上のモノを“触れる”外骨格型デバイス「EXOS」を発表

exiii 共同創業者でCEOの山浦博志氏(左)、共同創業者でCCOの小西哲哉氏(右)

exiii 共同創業者でCEOの山浦博志氏(左)、共同創業者でCCOの小西哲哉氏(右)

3Dプリンタを使用して、低価格(本来100万〜150万円程度はかかるところ、数万円で実現する)で作成できる筋電義手「handiii」、そしてその後継機でオープンソース化されている「HACKberry」を提供するexiii。同社が次に取り組んだのはVR空間での触覚を提供するプロダクトだ。同社は1月18日、触覚提示デバイス「EXOS(エクソス)」を発表した。

EXOSは外骨格型(手の外側を覆うかたち)の触覚提示デバイスだ。デバイスには角度センサーを備えたモーターを4つ内蔵しており、このモーターによってデバイスを使ったユーザーの指に対して反力を与えることで、実際に物に触れたような感触を再現できる。

僕もこのEXOSのデモを昨日体験してきたばかり。デモ環境ではHTC Viveと組み合わせて利用する環境だった(ViveのコントローラーをEXOSに付けることで、センシングの部分はViveに任せているという環境だ)のだが、VR環境に用意されたオブジェクトにゆっくり手を触れると、そのオブジェクトに触れた感覚が伝わってきた。固定されたオブジェクトを無理に押そうとすると、手に強い抵抗がかかって、それ以上押し込むことが難しく感じる。さらにおきあがりこぼしのようなオブジェクトを動かしては止め、止めては動かし……なんてことも体験できた。デモ環境では立方体や円柱状の単純なオブジェクトを触るだけだったので、今後どういったオブジェクトの触覚を体感できるかというのは未知数ではあるけれども、それでも「VR×触感」という領域に新たな可能性を感じることができた。

exiiiではVRを用いたゲームやロボットの遠隔操作、手を動かすリハビリテーションなどに利用したい考えで、今後は広くパートナーを募りたいとしている。本体の価格は非公開。今後提供する形式により決めていくとしている(当面はC向けでなく、開発者やパートナー向けの提供を検討している)。

同社は2014年設立のIoTスタートアップだ。筋電義手のプロジェクトをオープンソース化した際、共同創業者でCEOだった近藤玄大氏が同プロジェクトに注力するためexiiiを退社。同じく共同創業者であった山浦博志氏がCEOに就任したのは2016年11月のこと。EXOSは新体制での第1弾プロダクトとなる。

EXOSのデザインモック

EXOSのデザインモック

「もともと大学生の頃に外骨格を使ったリハビリの装置を研究していたので、新しいプロダクトではその知見を何かに生かせないか考えた。2016年はVRが盛り上がり、私もいろいろと体験したが、コントローラーがモノ(VRスペース上のオブジェクト)を突き抜けてしまう現象がある。これを手持ちの技術で解決できないかと考えたのがEXOS開発のきっかけ」(山浦氏)

EXOS開発には筋電義手のノウハウも大いに役立った。「人間の手には20以上の関節がある。だがそれを全て外骨格で再現すると、(複雑すぎて)動かないプロダクトになってしまう。どうやって手の動きを簡略化するかは、義手の知見があったからこそ実現できた」(山浦氏)。外骨格の機構は特許も取得している。なおデザインはhandiii、HACKberry同様に共同創業者でCCOの小西哲哉氏が担当した。

筋電義手「handiii」

筋電義手「handiii」

海外を見ると、オランダでVR用グローブ「Manus VR」なども発表されているが、山浦氏は「振動によって没入感を得られるプロダクトは他にもあるが、モーター制御で『押し戻される感覚』までを得られるかというとまた別の話。触覚は没入感を提供するだけでなく、精密作業を行うためにも必要だと思う」(山浦氏)としている。

 

テクノロジーに「感動」を加える ― 電通ベンチャーズがアミューズメントツール開発の米Two Bit Circusに出資

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家庭用ロボットのJibo、コオロギから抽出したタンパク質を使用した健康食品のExoなど、新しい事業領域にチャレンジするスタートアップを中心に投資する電通ベンチャーズ。今年9月にVRスポーツのLiveLikeへ、12月にはVRエンターテイメントのSurviousへ出資するなど、同社はここ最近「エンターテイメント」領域への出資を進めているようにも感じる。

本日電通ベンチャーズが出資することを発表したTwo Bit Circusも、エンターテイメント分野のスタートアップだ。

電通傘下のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンドである電通ベンチャーズは2017年1月18日、アミューズメントツール開発の米Two Bit Circusに出資することを発表した。金額は非公開。今回の調達ラウンドには電通ベンチャーズのほか、JAZZ Ventures Partners、Foundry Group、Techstars Ventures、Intel Capital、Georgian Pineが参加している。

Two Bit Circusが表舞台に現れたのは、2013年5月にKickstarterでエンターテイメント・イベント「STEAM Carnival」の運営資金を募ったときだった。STEAM Carnivalはその後、10万ドルの目標数字を達成している。

Science、Technology、Engineering、Mathematicsの頭文字をとった「STEM」という言葉がある。彼らのイベント名にある「STEAM」は、それにArtの頭文字を加えた言葉だ。その後STEAM Carnivalは2014年10月にロサンゼルスで開催され、1万3000人を動員している。

心を揺さぶるプロダクト

Two Bit Circusが得意としているのは、最新技術にアートやエンターテイメントの要素を加えたプロダクトの開発だ。これまで同社は、イベントなどで展示されるプロダクトの受託開発を主に手がけていた。下の動画は、Verizonと共同で開発したアメリカンフットボールの世界を体感できるVRギアだ。

電通ベンチャーズのPedro Ao氏は、心を揺さぶるプロダクトの開発力こそ同社がTwo Bit Circusへの投資に踏み切った理由だと語る。「技術が普及するためには、それがただ生まれるだけでは不十分。そのためには消費者の感情に訴えかけることが必要になる。Two Bit Circusはそこが上手い。彼らには、新しい技術を消費者ウケするものに変える力がある」。

Two Bit Circusの事業領域は電通ベンチャーズがフォーカスする投資分野でもある。電通ベンチャーズは2016年9月、VRでスポーツ観戦ができるLiveLikeに出資。その3ヶ月後の2016年12月にはVRゲーム開発のSurviosに出資している。

Two Bit Circusは必ずしもVRだけにフォーカスした企業ではないが、VRをはじめ新技術を利用したエンターテイメントという共通点はある。「電通ベンチャーズがフォーカスする領域の1つがニューメディアだ。特に、VRは電通がもつ力が活かしやすい領域だと思っている」とPedro氏は話す。

Two Bit Circusのビジネスは新しいフェーズに突入

今回の資金調達を経て、Two Bit Circusのビジネスは新しいフェーズに突入する。

これまで、彼らのメインビジネスは企業からの受託開発だった。しかし、STEAM Carnivalなどでプロダクト開発の経験を積んだ彼らは、今後自社のプロダクト開発に力を入れていくという。Arduinoを搭載した紙でつくられたロボット「Oomiyu」のほか、「大人も子供も楽しめるテクノロジー・アトラクション」を楽しめる自社のテーマパークを建設する予定だという。そのテーマパークは新しいプロダクトをテストする場にもなっていくようだ。

電通ベンチャーズがTwo Bit Circusへの出資に加わったことで、将来的にアジア地域へのビジネス拡大も可能性がありそうだ。実際、電通ベンチャーズやKDDIがJiboに資本参加したあと、Jiboは東アジア地域への拡大を本格化している。それについてPedro氏は、「当面はアメリカ市場にフォーカスしていく予定だが、電通のリソースを利用することで将来的にはアジア地域への拡大もありうるだろう」と話す。Two Bit Circus側も、以前からアジア地域には興味を示していたようだ。

どれだけ業界から注目される新技術でも、ビジネスとして成り立つには、その技術を消費者の心に届くプロダクトへと落としこむことが不可欠だ。業界で注目されるVRにしても、今後どれだけ消費者を振り向かせるコンテンツを生み出せるかどうかが普及への鍵なのかもしれない。電通ベンチャーズがTwo Bit Circusに期待するのはその役割だ。

スタートアップのハードウェアが一挙集結、Amazon Launchpadが日本でもローンチ

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ここ数年で数多くのスタートアップがハードウェアプロダクトを開発し、市場に出ている。しかし、物流システムを持たないスタートアップにとって配送は大きな課題だ。Amazonは本日ハードウェアスタートアップのマーケティングと物流を支援するため、「Amazon Launchpad」をローンチを記者会見で発表した。Amazon Launchpadは、スタートアップのプロダクトのみを取り扱う特設ストアだ。

Amazon Launchpadは米国2015年7月に初めてローンチしたサービスで、昨年までに世界8カ国で展開している。すでに1200社のスタートアップの4000以上のプロダクトの掲載がある。

Amazon Launchpadに掲載することで、スタートアップはプロダクトの露出が狙える。また、Amazon Launchpadではプロダクトの配送をAmazonに委託する仕組みなので、スタートアップ自身が物流や配送について思い悩むことはない。スタートアップは海外でもブランドを広め、配送ができるようになる。

Amazon Launchpadは単に商品を紹介するだけでなく、スタートアップのブランディングにも貢献できると話す。Amazon Launchpadのサイトの詳細ページは、商品情報に加え、動画やプロダクトのビジュアルを多く掲載し、さらにスタートアップのチームやストーリーも伝えられるようになっている。startup-story

また、Amazon Launchpadのトップページでも、トップセラーやクラウドファンディングを達成した商品を集めたカテゴリーを用意したり、商品一覧からもプロダクトの動画が見れる機能をつけたりすることで、ユーザーにプロダクトを訴求できる仕掛けを作っているという。

Amazon は世界中のVC、アクセラレーターなど100社と協力し、スタートアップのプロダクトを掲載しているが、スタートアップ自身でAmazon Launchpadにプロダクトの登録をすることも可能だ。日本では、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)、クラウドファンディングプラットフォームMakuake、シードアクセラレエーターABBALabと協力していく。

本日からAmazon Launchpadで掲載しているプロダクトには、CerevoのプロジェクターTipron、落し物をなくすIoT端末Mamorio、コミュニケーションロボットBOCCO、スピーカー内蔵のテーブルSOUND TABLEなどがある。
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スタートアップの革新的なプロダクトは世界に影響を与える力があるが、そうなるまでにはマーケティングや露出を増やし、認知度を高める必要がある。Amazon Launchpadでは、配送や物流をはじめ、スタートアップが自社のプロダクトを効果的にマーケティングするツールなどを提供することで、スタートアップがイノベーティブな商品の開発に注力できるように支援したいと話す。

50年ぶりのコインロッカー革命、渋谷のカフェを荷物預かり所にするecbo cloakスタート

手ぶらで観光を

せっかくの旅行なのだから、身軽に観光したい。しかし、旅行には手荷物がつきものだ。ホテルのチェックインまでの時間や観光の合間、荷物を預けておくことができればもっと満喫できるのに。確かに、駅にはコインロッカーがあるが、都合よくコインロッカーが空いているとも限らない。本日ローンチしたecbo cloakはこうした手荷物の問題を解消する。ecbo cloakは店舗の空きスペースを可視化し、ユーザーが荷物を預けられるようにするサービスだ。

ecbo cloakにはカフェやレンタサイクルといった店舗が空きスペースを登録している。ユーザーはエリア別に空きスペースが検索可能だ。店舗までのアクセス、店舗で預かれる荷物の個数や営業時間など詳細情報を確認し、必要事項を入力して空きスペースが予約できる。

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お店に着いたら、店舗側は預る時に荷物をスマホで撮影して「預かり証明」を発行し、ユーザーと共有する。写真を撮るのは、荷物の引き渡し時に荷物を間違えないためでもある。用事や観光が終わってユーザーが荷物を受け取ったら、承認ボタンを押して、引き渡しが完了だ。

このサービスを利用するにあたり、ユーザーは氏名、電話番号、メールアドレス、クレジットカードの決済情報を予め登録しておく。荷物の引き渡しが完了した時点で、決済が自動で行われる。ユーザー登録があれば、ユーザーが荷物を預けっぱなしで取りに来ないといった問題も減りそうだ。預かり料金は一律でバッグサイズが1日300円、スーツケースが1日600円だ。

サービスのローンチ時点で、すでに渋谷のカフェを中心に100店舗以上がecbo cloakに登録しているという。ただ、登録店舗は運営の様子を見ながら順次公開していく予定だとecboは説明している。現時点ではウェブブラウザでのみサービスを展開しているが、今後iOSとAndroidアプリもリリースする計画だ。

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店舗がecbo cloakに登録するメリットとしては空きスペースの活用で副収入を得られることと観光客へのPR効果とecboの代表取締役社長の工藤慎一氏は説明する。ユーザーは荷物を預ける時と引き取る時に必ずその店舗を訪れることになり、その店のサービスにも興味を持つきっかけになるだろう。ecbo cloakではカフェやレンタサイクル店の他に、レンタル着物といった観光客向けにサービスを提供する店舗の登録も進めていく計画だという。

50年ぶりのコインロッカー革命

工藤氏はUber Japanにインターンとして立ち上げ初期から関わり、2015年6月に自分でもシェアリングサービスの立ち上げを考えecboを創業したという。当初は、オンデマンドの収納サービスを手がけていたが、渋谷駅で訪日外国人旅行客のコインロッカー探しを手伝ったのがecbo cloackを開発するきっかけになったと工藤氏は話す。その旅行客はスーツケースを預けられる場所を探していたが、渋谷にはそのような場所が少なく困っていたそうだ。工藤氏がその後調べたところ、渋谷駅のコインロッカーの数は1400個程度で、そのうちキャリーケースも収まるサイズのものはたった80個程しかなかったという。

2016年は訪日外国人旅行客が2000万人を突破し、政府は2020年には4000万人に伸ばす計画でいる。2020年には東京五輪も控えている。「初めて日本を訪れる旅行客にとって、どこにあるか分からないコインロッカーを探すのも手間ですし、行ってみるまで空いているか分からないのも問題です」と工藤氏は指摘する。訪日旅行客が荷物に煩わされず、旅行や観光を存分に楽しんでもらうためにも、ecbo cloakは店舗の空スペースのシェアリングでこの手荷物の課題を解消したい考えだ。

日本でコインロッカーが普及したのは、1964年の東京五輪の時なのだと工藤氏は話す。観光客の増加を見込み、荷物預かりの体制を整えるために駅などでコインロッカーの導入が進んだ。ただ、それ以降50年間、コインロッカーはさほど進化していない。2020年には再び東京五輪が開催されるが、今回はこのシェアリングで荷物の預かりに革新的な変化を起こしたいと工藤氏は話している。

ビジネス向けYouTube―、CRM統合の動画プラットフォーム「Vidyard」が日本上陸へ

C Chanelをはじめとしてソーシャル上に拡散することを狙う「分散動画」を扱うスタートアップ企業が伸びているが、その一方で、プラットフォーム側にもイノベーションは引き続き起こっている。

2011年創業のカナダのスタートアップ企業のVidyardは、CRMなどマーケティングオートメーションを統合した企業向けの動画配信と解析のプラットフォームとしてビジネスを拡大していて、現在日本市場への展開をうかがっている。

視察のために2016年12月に来日していたVidyard共同創業者のマイケル・リット(Michael Litt)氏がTechCrunch Japanに語ったところによれば、現在Vidyard上での動画視聴数は1日に5000万回。2016年秋にリリースした新機能の利用において、Vidyardの日本からの利用シェアが7%と伸びつつあることから、本格参入を検討しているのだという。

アニメーション制作ツールで創業し、プラットフォームへ転換

Vidyardは当初からビジネス向け動画を主軸に創業しているが、当初は動画の請負制作を手がけていた。動画制作とはいえ、カナダのウォータールー大学でエンジニアリングを学んだリット氏も共同創業者も2人ともエンジニア。当時伸びつつあったアニメーション動画をソフトウェアの力で安価に制作するというアイデアで創業して、これを軌道に乗せたという。

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Vidyard共同創業者のマイケル・リット(Michael Litt)氏

収益性の高いビジネスではあったものの、2011年にY Combinatorの夏バッチに参加した前後から動画制作はやめて、動画解析プラットフォームに転換。動画のA/Bテストや、CRMと統合した形でリード生成を行うビジネス向け動画プラットフォームとしての成長の道を選び、直近2016年1月の3500万ドル(約40億円)のシリーズCラウンドの資金調達を含めて、Y Combinator、Andreessen Horwitz、SV Angel、Battery Venture Partner、Salesforce Venturesといった著名VCから累計6065万ドル(約70億円)を調達している。

「最初は動画制作で得たお金でプラットフォームを開発していました。でも、それだと結局プロデューサーの数でしかスケールしないんです。それが動画制作というものです。でもソフトウェアは違います。小さなチームでも何百社という顧客にスケールできます。Y Combinator創業者のポール・グレアムは我々Vidardのことを『YouTube for business』だと言いました」(リット氏)

企業から請け負って動画制作ビジネスをしていたときに、どうやれば視聴者の60%が途中でドロップせずに最後まで見るのかという改善をし、「60%達成保証」をやっていたという。どういう動画だと最後まで見てもらえるのか。例えばイントロが無駄に長いものは冒頭でのドロップ率が高いというのは動画制作に関わっている人なら誰でも知っていることだろう。Vidyardでは簡易動画編集機能を使って長すぎるイントロを削ったり、ドロップ率の多いところに補足説明となるアノテーションを付けるといったことができるそうだ。

スプラッシュ画面のA/Bテストも簡単に

Vidyardの「Splash Screen」も面白い機能だ。動画のリンクをクリックするかどうかを、サムネイル画像で決めていないだろうか? 動画の中身と同じくらいサムネイル画像は大切なものだが、VidyardではA/Bテストができる。Splash Screenを使うと、動画中から好きな部分を静止画として抜き出し、4〜8つ程度の候補画像として、どの画像がいちばんクリックされるかをテスト可能だ。十分なデータが集まったところで最も成績の良いもの1つを残せる。

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こうした機能はYouTubeにはないが、YouTubeから動画をVidyardに持ってきたり、逆にエクスポートして戻すといったことができるので、「YouTubeはインバウンドのプラットフォームで補完的な存在です。VidyardにはYouTubeの創業者も投資していますしね」とリット氏は説明する。Vidyardは動画配信、簡易編集、アナリティクスのプラットフォームだが見え方としてはWebサイト制作サービスのWeeblyやWix、Jimdoのように、企業向けに動画ホスティングをまるっと提供している形だ。

ドロップ率を見たり簡易編集をすることならYouTubeでもできるが、Vidyardはビジネス向けプラットフォームとしてCRMとの統合で威力を発揮する。

例えばSalesforceが展開するマーケテイングオートメーションプラットフォームのPardotと合わせて使うと、どの動画を誰が、どこまで見たかが分かるようになる。誰が、というのは社名と肩書きなど本人が入力したものに限るが、それでも営業案件のリードとしては強力だ。さらに、Vidyardでは動画の任意のポイントに問い合わせフォームを表示する機能もある。一般消費者向け動画としてはウザい話だが、動画コンテンツをリード生成に利用するという法人ニーズにはピッタリだろう。法人向け機能としては、ほかにも各動画についてドメインやパスワードによる視聴制限や、タイマーによるエクスパイア機能が利用できる。マーケティングオートメーションのプラットフォームとしては、PardotのほかにMarketoやEloquaなどもサポートする。

テクノロジー企業らしいエッジの効いた新機能として2016年秋にローンチしたものが、ちょっと面白い。例えば動画中の登場する誕生日ケーキに利用者の名前やブランド名を埋め込む機能だ。動画解析によるモーション検知を使っているそうだ。

cake

何かソリューション導入を検討中の特定ユーザーに対してプロダクトの説明するとか、導入直後のユーザーサポートをするというとき、そのユーザーにのみ向けたスクリーンキャストを作りたいということがあるだろう。説明員の顔を右下に表示したままプロダクト画面を見せながら説明する、というものだ。VidyardではPCやAndroid端末で特定ユーザー向けのスクリーンキャストを作成できる。URLリンクをメールすれば、実際にスクリーンキャストが対象顧客に見られたときにノーティフィケーションを受け取って「いかがでしたか?」と顧客とコミュニケーションを続けることができるというわけだ。

統合プラットフォームとしてのVidyardの強みは多くのデータが集まっていること。MailChimpを使ったことがある読者なら分かるだろうが、何曜日の何時にメールを送ると開封率が高いかだとか、業界ごとの平均開封率と比べて自社のメールの開封率は高いのか低いのかといった知見が得られる。Vidyardでは、どのタイミングで動画を出すべきかといったことも教えてくれるのだそうだ。CVRや最後まで動画を見た人の比率などが競合他社と比較できる。

Vidyardは現在アカウント登録数は約5万。LenovoやSalesforceといった大手企業のユーザーは約1000社で、顧客の平均単価は年額2万〜3万ドル。もっとも、中堅向けサービスは料金が安いが、中には年間約1億円の利用料をVidyardに支払っている顧客もいるという。ちなみにリット氏にエグジットについて聞いたところ現在はIPOを目指していて、ちゃんと高い利益がでてビジネスが回るプラットフォーム構築を目指しているのだそうだ。

動画制作「Viibar」が新たに4億円調達、日経との資本業務提携でメディア事業を本格化

viibar

FacebookでもTwitterでも、料理動画やガジェットの紹介動画が流れてくるとついつい見てしまう。どのSNSもすでに動画に対応していて、多くのメディアや企業は動画コンテンツに関心を持っている。だが、テレビ局や制作会社でない会社が自社で高品質な動画を制作してマーケティングするのはそう簡単ではない。Viibar(ビーバー)は、その課題を解決するため、プロの動画クリエイターと企業とをつなぐクラウドソーシングサービスを提供している。

Viibarは本日、日経新聞社との資本業務提携を発表した。同時に日経新聞社、電通の100%子会社である電通デジタル・ホールディングス、そして既存投資家のグロービスから総額4億円の資金調達を実施した。

Viibarには審査を通過したプロクリエイターが登録している。企業は指名やコンペ形式で、自社のニーズに最適なクリエイターに動画制作を依頼できる仕組みだ。

Viibarは単に動画に特化したクラウドサービスというだけでなく、プロクリエイター向けの動画制作支援ツールも提供している。動画制作に関わるグループのスケジュール管理やチャット機能などがある。また、クリエイター同士が交流したり、プロジェクトを行うのに必要なスキルを持った他のクリエイターを募ったりする機能なども備えている。

現在3000名以上のプロの動画クリエイターがViibarに登録し、実写はもちろん、アニメやCG、ドローンを使った撮影やVR動画の制作にも対応できるとViibar代表取締役、上坂優太氏は話す。これまでに600社以上のデジタル動画マーケティングを手がけてきたという。

今回の資金調達では、クリエイターがより働きやすくするためのシステム開発を進めること、そして新たに立ち上げたメディア事業に投資していくと上坂氏は言う。Viibarはこれまでクラウドソースによる動画制作と動画マーケティングを主に手がけてきたが、今後はメディア向けの動画コンテンツ制作事業にも注力する。すでにViibarの社内チームは、ヤフーが手がけるエクササイズを紹介する動画メディア「Sporay(スポレー)」のディレクションを担っているという。

今回発表した日経新聞社との資本業務提携もメディア事業での提携だ。Viibarは日経新聞社が展開するライフスタイルメディア「NIKKEI STYLE」における動画コンテンツや動画広告の制作、そして動画コンテンツのマーケティングで協力していく。

2013年4月に創業したViibarにとって、シード投資をのぞくとこれが3回目の資金調達となる。2014年2月にはグロービスとグリーベンチャーズから3億円、そして2015年5月にはヤフー、グロービス、グリーベンチャーズから7億円を調達した。今回の調達を含めるとこれまでに総額14億円を調達した計算だ。

上坂氏はViibarで、クリエイターが適切な対価の仕事がマッチングできる世の中を実現していきたいと話す。オペレーションは機械に任せ、人がクリエイティブな仕事ができるような世界を目指している。

プリンターのように印刷ーーAPI型印刷クラウド「コーデンベルク」がリリース

codenberg

パソコンのボタン1つで、オフィスや自宅にあるプリンターから資料が印刷できる。それと同じくらい簡単に、本格的なデジタル印刷機で自社のチラシや販促物の印刷ができたら楽だろう。本日正式リリースしたAPI型印刷クラウドサービス「Codenberg(コーデンベルク)」が目指すのはまさにそのような世界だ。

フライデーナイトが手がける「コーデンベルク」は印刷工場と連携する印刷サービスだ。例えばチラシを印刷したい場合、コーデンベルクにデータを入稿し、用紙の種類や加工を指定して発注する。ダッシュボードからは、オフィスのプリンターさながら、現在印刷待ちや印刷中といった状況もリアルタイムで把握でき、これまでの印刷履歴も確認できる。dashboard

料金は印刷料と送料がかかる。月に100部まではサービス利用料はかからないが、それ以上利用する場合は月額プラン1万9800円に加入する必要がある。また、開発者向けにはAPIを提供している。企業やブランドは自社システムにAPIを組み込んで印刷の発注と管理を自動化することも可能だ。

チラシでも効果測定

コーデンベルク最大の特徴は、1部からでも印刷できる点だ。これにより例えば、チラシに1枚1枚個別のQRコードやクーポンコードを載せたり、各カスタマーにパーソナライズした販促物を作成したりすることができる。今まで印刷物では難しかったパッケージのA/Bテストや効果測定を行うことも可能になる。デジタルでは当たり前にできたことが、オフラインの印刷物でも簡単にできるようになるのだ。

通常印刷会社ではオフセット印刷を用いるため、このように柔軟な印刷のニーズに応えるのが難しかったとフライデーナイトで取締役CTOを務める木村俊範氏はTechCrunch Japanに話す。オフセット印刷では印刷の版を作成する必要があるため、手間と人件費がかかる。

フライデーナイトは佐賀県にある老舗の印刷会社サガシキと資本業務提携を行っていて、コーデンベルクの印刷はサガシキのデジタル印刷機で行っているという。デジタル印刷機では版を作成することなく印刷ができ、小ロットでの印刷が可能だ。ただ、印刷物は単に印刷して終わりではなく、製品として出荷するには、断裁したり、加工したりする必要がある。コーデンベルクでは、小ロットの印刷サービスを実現するために、印刷工場のラインを充実させることに力を入れているという。

フライデーナイトは、デザイン会社を経営していたCEOの長沼耕平氏とコンサルティング会社を経営していたCOOの中村直彦氏は2005年1月に立ち上げた会社。その後2016年7月よりコーデンベルクのベータ版を公開し、本日正式リリースに至った。

コーデンベルクでは今後チラシに加え、箱や冊子などの印刷物に対応していくとのこと。また小ロットごとの個別配送にも対応予定だという。

印刷工場には断裁、加工、組み立てなどの工程があるが、コーデンベルクは将来的に、そのような工場のリソースもネットワークでつなぎ、開放できるようにしたいと考えている。コーデンベルクはアマゾンAWSのようにリソースを割り振り、さまざまな人と印刷工場とがつながる世界の実現を目指している。

オフィス電話の不便さとBYODによる個人負担を解決―、「Dialpad」が日本に上陸

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わたしたちはモバイルデバイスによりどこででも仕事のできる環境を手に入れた。BYODは機器の持ち出しに伴う面倒な申請からの解放をもたらした。これらは一見魅力的だが、プライベートな時間とのトレードオフを余儀なくされているビジネスパーソンも多い。

どこででも仕事ができるが、プライベートタイムも確保したい――、それらを両立できるサービス「Dialpad」が日本でローンチした。

「Dialpad」とはどのようなサービスなのか。ダイアルパッドとソフトバンクによる合同記者会見の模様と、来日したDialpad CEO Craig Walker(クレイグ・ウォーカー)氏、Dialpad Japan President 安達天資氏へのインタビューから全貌と詳細をお届けする(取材日は2016年12月13日)。

フレキシブルな働き方へのニーズに応える「オフィス電話」

「個人向け通信システムには優れたプロダクトが増えているが、ビジネスコミュニケーションのためのものには不足がある」とWalker氏。「Dialpadのミッションは「ビジネスコミュニケーションに最高のエクスペリエンスをもたらすこと」だという。

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Dialpad CEO Craig Walker氏

Walker氏は2001年にDialpad CEOに就任したが、Dialpadは2005年に米Yahoo!に買収された。Dialpadとともに米Yahoo!に籍を移したWalker氏だが、ほどなくして同社を退職。その後創業したGrandCentralも2007年にGoogleに買収され、そこで『Google Voice』を2000万ユーザーにまで成長させた。

Googleに在籍していた3年の間、メール、カレンダー、ドキュメント作成アプリなどさまざまなサービスがクラウド化し、生産性を高めてきたのを目の当たりにしたWalker氏。電話システムもクラウド化したいとのことでGoogleを退社。Google VoiceのメンバーたちとともにDialpadを設立した。

2012年にはテレビ電話会議システム『UberConference』をローンチ。2015年には米Yahoo!から買い戻した「Dialpad」という名称でサービスの提供を開始した。

「Dialpad」が目指したものは「フレキシブルな働き方へのニーズに応える」こと。それには“Work anywhere”つまり、場所に制約されないということが求められるが、組織以外の人ともコミュニケーションを図れるよう“Connect everyone”(だれとでもつながること)、“Any Device”(どの端末でも使えること)も求められる。

「それらビジネスフォンとしての要件を満たすべくデザインされたのが『Dialpad』というサービスだ」とWalker氏は語る。「電話やビデオ通話ができるのはあたりまえ。テキストでメッセージのやり取りをしたり会議システムが使えるだけではなく、『G Suite』をはじめとしたクラウドツールとも接続でき、ビジネスフォンよりはるかに高度なコミュニケーションが図れる」と説明した。

アカウントの増減にフレキシブルに対応可能な“Cloud Telephony”システム

続いて記者会見に登壇した安達氏は「Dialpad」サービスの概要が説明した。

日本ではソフトバンクを通じて提供。ユーザーごとに「050」ではじまる13桁の電話番号が付与され、月額基本料は800円。初期費用不要で通話料は従量制だ。「03」や「06」ではじまる番号については1ユーザーごとの月額基本料が1300円で、2017第1四半期にサービスが提供開始される。

「Dialpad」アプリにログインすればその番号で受発信可能。ログインにはGoogleアカウント、Microsoftアカウント、または別のクラウドサービスアカウントでログインでき、アカウントには複数の番号を紐付けることもできる。

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「Dialpad」には既存のクラウドサービスでログインできる

「Dialpad」はWindows、Mac、iOS、Android OSに対応しているため、それらどの端末からでもログイン可能。複数端末で同時にログインしておけるため、オフィスのPCで「Dialpad」の電話を受けた後、スマートフォンに切り替えて会話を続けるといったことも可能。

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PCやスマートフォン、タブレットで利用可能。排他的ではないため端末を切り替えての通話もスムーズ

安達氏はこれを“Cloud Telephony”と呼ぶ。これまでのIP電話は、クラウド上のPBXをホストとして使うことで機能してきたが「PBXをホスティングせず、Googleプラットフォームを使った“ピュアクラウド”で成立。PBXという物理的な制約を受けないため、スケーラビリティがある」と説明した。

アカウントがクラウドサービスと紐付いていることには別のメリットもある。

Dialpadの番号にかかってきた電話を取ると(相手も同じクラウドサービスを使っている場合には)、発信者から直近で送られたメールや、やりとりしたドキュメントリストなどを右カラムに表示。通話中に相手とやり取りしたメールやドキュメントなどを探す手間が省け、スムースなコミュニケーションがとれる、というわけだ。

システム管理者にも導入のメリットは大きい。管理画面は『G Suite』や『Office 365』同様、Web UI。ユーザーの追加/削除、グループ管理(グループは既存の「部署電話番号」に類似。グループあて電話番号への呼び出しがあった場合、どのユーザーの「Dialpad」を鳴らすかを設定できる)、保留音設定、呼び出し可能時刻設定、時間ごとの応対方法(音声自動案内で担当部署につなぐ、対応時間以外に留守電メッセージを預かるなど)設定などおよそビジネスフォンに必要な設定が簡単に行える。

さらに、「Dialpad」にはアナリティクス機能も備わっている。これにより通話やメッセージの利用頻度、通話レーティング、社内外利用比率、不在着信比率などをチェックできる。営業部署などを抱えている企業であれば重宝するだろう。

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「Dialpad」の導入でコスト削減が見込めるわけ

――:よろしくお願いいたします。モトローラではアメリカ、イギリス、ポーランド、ドイツ、デンマーク、フィンランドでリプレースを完了し、1000万ドル近いコスト削減につながったとのことですが、具体的にはどのような理由で減らせたのでしょうか。

Walker:それまでモトローラでは既存の、しかも複数のプロバイダーと契約していましたが、そのコストがDialpadと比較して高かったことが挙げられます。複数プラットフォームの導入では、アップグレードやサポートなどメンテナンスに費用がかかるだけでなく、管理が複雑なので専任担当するITプロフェッショナルも必要でした。今では、それらメンテナンスが不要となり、担当者もパートタイマー1人で賄えるように。契約料、メンテナンス費用、人件費トータルでそれだけのコスト削減が実現しました。また、どこにいても電話が受けられ、仕事ができるようになったため、生産性も大幅に上がっています。

安達天資氏(以下、安達):付け加えると、これまでだと物理的なPBXを施設内に置く必要がありました。これらのハードにもメンテナンスが必要ですし、5年ごとに買い換える必要があります。Dialpadであればその両方が不要なため、その費用が削減できた、というわけですね。

“Cloud Telephony”はスタートアップ企業にも最適

――:PBXの話が出てきました。会見では“Cloud Telephony”という言葉が使われ、PBXに依存しないところが革新的という説明をされていましたが、もう少し詳しく教えていただけますか。

安達:現在でも「クラウドPBX」サービスを提供している会社では、非常に大きなハードウェアとしてのPBXをキャリアのデータセンター内に設置し、マルチテナントとしてホスティングサービスを提供しています。しかしそれは機器依存、PBXの性能にサービスの質が左右されてしまいます。それだとスケーラブルに対応できません。しかし、Dialpadの場合、いちからGoogleプラットフォームの上、つまりクラウド上にシステムを作っているため、アカウント数の増減にも、何十万何百万というアカウント数にも対応できます。どの場所にPBXがあるか? と機器に縛られていないため、グローバルなアクセスが可能になっている、という点が全く新しく、ほかにはない要素だと思っています。

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Dialpad Japan President 安達天資氏(右)

――:利用企業にはモトローラやNetflixなど大企業から、スタートアップ企業も名を連ねています。グローバルアクセスが「Dialpad」の強みだと思うのですが、スタートアップ企業など規模の小さな法人にとっても導入のメリットはあるのでしょうか。

安達:スタートアップ企業の場合、その成長とともにオフィスも移転するものです。そのたびに電話回線を引き直すとしたら手間と費用がかかります。またBYODで自分の端末を使う場合、取引先に“自分のプライベートな”番号を知らせることになりますよね。でも、「Dialpad」であれば、ビジネス用の番号を月額800円で維持できます。どこにオフィスを移転しても使えます。メンバーの増減にも柔軟に対応できます。まとまった初期投資も不要ですし、スタートアップ企業にこそ導入のメリットが大きいのではないかと考えています。

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――:管理画面から“ビジネスタイム”として電話を受けられる時間を設定できる、とありました。特に個人事業主や小さな企業では、時間外でもかかってくる電話が重要なものなのではないかと不安になるかもしれません。

安達:時間外にかかってくる、もしくは対応できないときにかかってくる電話に対しては留守電メッセージを残していただけます。そしてそのメッセージは「ボイスメール」としてユーザーに通知されます。音声を添付するものであれば、これまでの電話サービスでもありましたが、「Dialpad」では留守電の音声をテキスト化したものをメールとして送信します。これにより、例えば重要な打ち合わせ中や音を出せない場合などでもかかってきた電話の内容を確認でき、どのような対応を取るか決められます。また、後からテキスト検索できるというメリットもあります。

通話料はソフトバンクが提供するIP電話に準ずる

――:今回、ソフトバンクをパートナーとされましたが、その理由を教えていただけますか。

安達:出資を受けたということもありますが、ソフトバンクは2010年の頃から現在の『G Suite』を使うなど働き方変革に積極的な企業です。そのような中、足かせになるものとして電話がありました。代表番号や部署受付番号などにかかってくる電話を取るため、お昼休みに1人だけ事務所に残される、といった経験を見聞きしたことがあるでしょう。電話も含めてワークスタイルをイノベーティブにしたい……そういった考えがわれわれと一致し、ともに立ち上がることになったのです。

左からWalker氏、安達氏、ソフトバンク 法人事業統括 法人事業戦略本部 執行役員本部長 藤長国浩氏、同 技術統括 サービスプラットフォーム開発本部 本部長 折原大樹氏

左からWalker氏、安達氏、ソフトバンク 法人事業統括 法人事業戦略本部 執行役員本部長 藤長国浩氏、同 技術統括 サービスプラットフォーム開発本部 本部長 折原大樹氏

左からWalker氏、安達氏、ソフトバンク 法人事業統括 法人事業戦略本部 執行役員本部長 藤長国浩氏、同 技術統括 サービスプラットフォーム開発本部 本部長 折原大樹氏

――:ところで、今回の発表では「通話料」についての言及がありませんでした。「Dialpad」を利用した場合の通話料、また「Dialpad」番号にかけた場合にケータイキャリアによっては提供のある「カケホーダイ」の対象になっているかについても知りたいのですが。

安達:「050」ではじまる番号については、ソフトバンクが提供しているIP電話と同じ料金体系が適用されます。もちろん、「Dialpad」同士の通話は無料です。国内外問わずなので、場合によってはリースナブルですよね。

――:日本にもこれまでIP電話サービスがいくつかあり、その中でも固定電話や携帯電話にかけられ、なおかつ通話料を“格安”で提供しているViberなどもあります。

Walker氏:コンシューマー向けには充分満足できるプロダクトがあったかと思います。でもそれは個人対個人の場合です。「では、ビジネス用途としては?」というと充分ではない。なぜなら、グループナンバーをどうするか、営業時間外はどのように対応するか、留守電メッセージは? どのように管理する? といったところを解決してこなかったからです。Dialpadではビジネスフォンとして必要な条件を満たしている、という点でほかにはないプロダクトなのです。

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設定されているどの端末からでも「Dialpad」番号あてにかかってきた電話を受け取れるため、どこにいても電話を逃すことがない