電気航空エコシステムの構築に向けBeta TechnologiesがシリーズAで約405億円調達

電動航空機のスタートアップBeta Technologies(ベータテクノロジーズ)は米国時間5月18日、Amazon(アマゾン)のClimate Pledge Fundからも投資を受け、3億6800万ドル(約405億円)のシリーズAラウンドをクローズした。新しい資本は同社が2021年発表した資金調達として2回目だ。同社は3月にも1億4300万ドル(約160億円)の資本を私募により調達した。

この資金調達ラウンドはFidelity Management&Research Companyがリードし、AmazonのClimate Pledge Fundも金額非公開で加わった。Climate Pledge Fundは持続可能な技術の開発を進めるために2019年9月に設立された20億ドル(約2200億円)のファンドだ。電気自動車メーカーのRivian、バッテリーリサイクルのRedwood Materials、水素燃料電池航空機のZeroAviaにも投資している。

CNBCによると、同社のバリュエーションは現在14億ドル(約1540億円)。10億ドルを超えるバリュエーションを達成した電気垂直離着陸機(eVTOL)の小さな輪に加わった。

Beta Technologiesは、10億ドル(約1100億円)を超えるバリュエーションを達成した開発業者のJoby AviationやArcher Aviationとは違う。エアタクシーに力を入れているわけではなく、防衛への応用、貨物配送、医療物流を対象とし、米国北東部で急速充電システムのネットワークを構築している。航空機デビューとなったALIA-250cは、そうしたさまざまな分野のソリューションに対応できるよう開発された。6人、またはパイロットと1500ポンド(約680kg)を運ぶことができる。

バーモントを拠点とする同社は、上記すべての業界ですでに大きな提携を達成した。その中には、人間への移植のために人工臓器を輸送するUnited Therapeuticsとの提携や、10機のALIA購入と140機の購入オプションをもたらしたUPSとの提携、そして米空軍との提携がある。

しかし、同社は旅客輸送を完全に無視しているわけではない。2021年4月、2024年に5機を納入するBlade Urban AirMobilityとの提携を発表した。

Beta Technologiesは、米空軍から耐空性の認証を得た最初の会社だ。同社は2021年6月に空軍と契約を結び、ワシントンD.C.とオハイオ州スプリングフィールドにある同社の航空機とフライトシミュレーターへのアクセスを許可する予定だ。ただし、さらに連邦航空局からの認証を取得する必要がある。

同社は18日のニュースリリースで、この資金は、ALIAの電気推進システムと制御装置の改良、製造に関連した領域の強化、バーモント州のバーリントン国際空港における利用面積の拡大などに使うと述べた。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Beta Technologies資金調達eVTOL

画像クレジット:Beta Technologies

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

すべての街を「駅前化」するインフラを目指す電動マイクロモビリティシェアの「Luup」が7.5億円を調達

すべての街を「駅前化」するインフラを目指す電動マイクロモビリティシェアの「Luup」が7.5億円調達

「街中を『駅前化』するインフラをつくる」とのミッションのもと電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」(ループ、Android版iOS版)を展開するLuupは5月19日、第三者割当増資による7億5000万円の資金調達を2021年4月に実施したと発表した。引受先は、Spiral Capital Japan Fund 2号投資事業有限責任組合をリード投資家に、ANRI3号投資事業有限責任組合、ENEOSイノベーションパートナーズ、アダストリア、非公開の投資家複数名。このラウンドは2021年夏に最終クローズの予定で、現在も投資家候補との協議を続けている。同時に、LUUPの設置を希望する全国の企業の募集も開始した。

LUUPは現在、東京の渋谷、新宿、六本木(赤坂から虎ノ門も含む)、大阪のキタ、ミナミの計5カ所でサービスを運営。街中を「駅前化」とは、駅からちょっと遠いなと感じる場所へ楽に行ける交通インフラの構築を意味しているそうだ。Luupの取締役兼CEOの岡井大輝氏によれば、同社は創設からこれまで2年半の間、アライアンス、省庁、自治体との協議が先行し、プロダクト開発とオペレーションがそれに続く形だったが、4月23日、電動キックボードのヘルメット着用義務を免除する政府の特例制度の認可を受け本格的なシェアリングサービスを開始したことで、次のフェーズに入ったという。今後は、プロダクト開発を先行させ、アライアンスやオペレーションがそれに続く形になる。

今回の投資を受け、同社はサービスエリア拡大とともに、安全で便利な新しい機体の開発も進めてゆく。将来的には、高齢者も簡単に安全に乗ることができるモビリティーの導入も目指すとのこと。そのための、営業部長とテックリードの募集も行っている。

また、今ラウンドに参加したENEOSイノベーションパートナーズとアダストリアとは、将来の協業も視野に入れている。ENEOSとは電動マイクロモビリティーのエネルギー供給体制の構築を、カジュアルファッションのSPAブランドを展開するアダストリアとは、移動手段までを含めた店舗展開で協力してゆく予定だ。

画像クレジット:Luup

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:資金調達(用語)電動キックスクーター(用語)マイクロモビリティ(用語)Luup日本(国・地域)

パブリッシャーが個々の記事、動画、ポッドキャストに対する支払いを受け取ることを可能にするFewcentsが1.7億円を調達

パブリッシャーの多くは、サイトの訪問者たちをサブスクユーザーにすることに熱心だが、他にも重要なユーザーグループがいる。特定のプレミアム記事や動画を見たいけれど、サブスクリプションに登録する気はない人たちだ。シンガポールに拠点を置くフィンテックスタートアップであるFewcents(フューセンツ)が、シンガポール時間5月5日、160万ドル(約1億7000万円)のシード資金調達を発表した。同社はパブリッシャーが個々のコンテンツに対する「マイクロペイメント」を受け取ることを可能にする。

記事、動画、ポッドキャストを収益化するために、Fewcentsを使用することができる。現在同サービスは50種類の通貨に対応し、広告やサブスクリプションへによる収益の補完的な流れとして機能することを意図している。現在の顧客には、5500万人の読者を擁するインドのDainik Jagran(ダイニク・ジャグラン)、インドネシアのニュースサイトDailySocial(デイリーソーシャル)、ストリーミング動画サイトDailymotion(デイリーモーション)などがある。デジタルパブリッシャーと売上をシェアすることで収益を上げる同社は、欧州での拡大を目指してJnomics Media(ジェイノミクス・メディア)とのパートナーシップも締結した。

M Venture Partners(Mベンチャーパートナーズ)とHustle Fund(ハッスルファンド)がラウンドに参加しているが、同時にフィンテック、アドテック、メディア企業のトップ企業出身のエンジェル投資家たちも参加している。例えばDBS銀行の元会長のKoh Boon Hwee(コー・ブン・ハウェー)氏、Facebook(フェイスブック)の東南アジア元マネージングディレクターのKenneth Bishop(ケネス・ビショップ)氏、Stripe(ストライプ)のパートナーシップ責任者のJeremy Butteriss(ジェレミー・バターリス)氏。Boston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ)のパートナー兼マネージングディレクターのShiv Choudhury(シブ・チョウドリィ)氏、ブルームバーグ・メディア配信の元APAC地域セールスディレクターのFrancesco Alberti (フランチェスコ・アルベルティ)氏、Summit Media(サミット・メディア)社長のLisa Gokongwei-Cheng(リサ・ゴコンウェイ=チェン)氏、電通マネージングディレクターのPrantik Mazumdar(プランティック・マズムダー)氏、Mission Holdings(ミッション・ホールディングス)の会長で創業者のSaurabh Mittal(サウラブ・ミッタル)氏、Amazon(アマゾン)ビデオ・インディアの元ディレクターでカントリー責任者のNitesh Kripalani (ニテシュ・クリパラニ)氏などだ。

Fewcentsは、2020年Abhisek Dadoo(アブシェク・ダドゥー)氏とDushyant Khare(ドゥシェン・カーリー)氏(上の写真)によって創業された。ダドゥー氏が以前創業したスタートアップShoffr(シャッフラー)(オンラインからオフラインへの橋渡しを行うプラットフォーム)は、2019年にAffle(アフル)によって買収された。またカーリー氏は、東南アジアとインドの戦略的パートナーシップのディレクター職を含め、Google(グーグルで)で12年間働いた経歴を持つ。

ダドゥー氏とカーリー氏は、電子メールの中でTechCrunchに対して、パブリッシャーのアクセスユーザーのうち、月間サブスクリプションに進むのは1~5%しかいないと語った。大多数は、たまたま訪れたか、他ページのリンクからのユーザーであり、パブリッシャーはそのトラフィックを収益化するために広告に頼っている。

コンテンツクリエイターたちは、マイクロペイメントや、その他ワンタイム支払いを行えるFlattr(フラッター)や、Axate(アクセイト)の都度払いツールなどを試行している。しかしパブリッシャーたちはいまだに、モデルがどれくらい効果的かの議論を続けていて、2020年にはTechCrunchは、Googleがサイトのチップ機能を提供しないことを決定したことを報告している。

都度払いコンテンツモデルをうまく実装するには、パブリッシャーは魅力的なコンテンツを作成するだけでなく、支払いそのものを極めて簡単にする必要がある。Fewcentsにとって、これは3つの大きな課題を解決することを意味していると、ダドゥー氏とカーリー氏は語った。まず第1に、彼らはどのサイトでもそのまま動作するプラットフォームを構築する必要があった、なぜならたまたま訪れたユーザーは、新しいサイトを訪れるたびにいちいち新しいサービスにサインアップなどしたくはないからだ。そして第2に、デジタルウォレットなどの最も身近な支払い方法を使用して、現地通貨での国境を越えた支払いを受け入れる必要がある。そして最後に、パブリッシャーは、ユーザーがコンテンツにアクセスできる期間などの、デジタル著作権を管理できる必要がある。

パブリッシャーはまた、購入者を遠ざけることはなく、かつ十分な収益を生み出す価格ポイントも決定する必要がある。現在Fewcentsは、既存のトラフィックデータを使用して、各コンテンツの価格を手動で設定している。ダドゥー氏は「各地域の需給曲線に基づいて、私たちは最高の収益結果を得るために、柔軟に価格を変更しています」という。「しかし、私たちはAI アルゴリズムの開発も進めています。その目的はアクセス場所とコンテンツの内容に応じて、価格設定を動的に提案することです」。

カーリー氏は、コンテンツを分売することで、Fewcents はページビューよりもさらに深いデータを提供することが可能になり、パブリッシャーが特定の市場やユーザーセグメントの好みを理解しより特化した「マイクロバンドル」を開発することを、助けることができるようになるという。また彼は、Fewcentsの目標は、ユーザーごとに特化したコンテンツバンドルを自動的に推奨できるようにすることだと付け加えた。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Fewcentsシンガポール資金調達サブスクリプション

画像クレジット:Fewcents

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(文:Catherine Shu、翻訳:sako)

すでに70万人の教師が利用するインドのオンライン教育プラットフォームTeachmintが約18億円

2020年のグローバルなパンデミックの発生後に生まれたインドのスタートアップが3度目の資金調達ラウンドを完了し、世界で2番目に大きなインターネット市場の何十万人もの先生たちが、クラスをオンラインで運営して生徒たちに提供できるようにしている。

ベンガルールのTeachmintによると、同社は現地時間5月4日、シリーズAのラウンドで1650万ドル(約18億円)を調達した。ラウンドをリードしたLearn Capitalはサンフランシスコのベイエリアに本社があるベンチャーキャピタル企業で、特にEdTech企業にフォーカスし、CourseraやUdemy、Nerdy、Minerva、Brainlyなど、世界で最も将来性に富むオンライン学習プラットフォームを支援してきた。

CM Venturesと、まだ登記もしていない時点のTeachmintに最初に投資したBetter Capital、そして同じく前からの投資家であるLightspeed India Partnersも新たなラウンドに参加し、同社の調達総額は2000万ドル(約21億8000万円)に達した。

Teachmintは、AndroidのスマートフォンやiPhone、あるいはウェブのアプリから、先生たちのオンラインによるクラス管理をサポートする。アプリは自由度が高いプロダクトであり、教師はクラスをリアルタイムで開始し、生徒たちの疑問に答えるセッションを行い、出席を取り、ウェビナーを行い、料金を集めたり、新入生を見つけ、電話によるサポートを提供、そしてテストを行うなどの機能がある。

Teachmintの共同創業者でCEOのMihir Gupta(ミヒル・グプタ)氏は、TechCrunchのインタビューに対して、次のように語っている。「パンデミックが発生したとき、教師たちはGoogle MeetやZoomなどの限られたツールだけでなくYouTubeやFacebook Liveのようなツールまでも使い、苦労してオンライン授業を、またテストにはGoogle Form、通信にはWhatsAppを利用していました。しかし、どのツールも教育用に作られてはいなかったため、それは多くの教師にとって困難で統一性のないものでした。そこでTeachmintの創業者たちは、教育に焦点を合わせた、モバイルファーストでビデオファーストなソリューションを作ろうと決意したのです」。

グプタ氏によると、プロダクトはインド国内の10言語で利用でき、インド固有のニーズに合わせて高度にローカライズされているという。

またグプタ氏によると、Teachmintの立ち上げから10カ月ほどで、1500あまりの市や町の教師たち70万名以上が、このプラットフォームの登録会員になったとのことだ。

Learn CapitalのパートナーであるVinit Sukhija(ヴィニット・スキーヤ)氏は声明で次のように述べている。「数カ月前にLearn CapitalのチームはTeachmingの共同創業者らと初めてのミーティングを行いました。そこで彼らのチーム全員が、エンド・ツー・エンドかつマルチモードで、この分野における最良のソリューションで、インドの教師たちが短時間かつシームレスに自分のクラスをデジタル化できるよう、細心の配慮でシステムを設計していることがわかりました」。

また「70万人以上の教師が登録しているTeachmintは、今やインドで最良のオンライン教育プラットフォームです」とスキーヤ氏は述べている。さらにLearn Capitalは、今後Teachmintがインド国外にもサービスを拡張していくと信じている、という。

グプタ氏によるとTeachmintは現在、同社のプロダクトを収益化していないが、近い未来にそれをする気もないという。なぜなら目下の最優先事項はインドでもっと多くの教師たちに同社のサービスを届けることと、プロダクトそのものを拡張することだからだ。

同社はマーケティングにあまり投資をしていないため、教師たちは主に友人からの口コミでTeachmintのことを知っている。小規模なスタートアップの戦略的買収については、今後積極的に検討していくそうだ。

カテゴリー:EdTech
タグ:Teachmintオンライン学習インド資金調達

画像クレジット:Teachmint

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

オフラインから企業向けバーチャルイベントにピボットしたTameがシードラウンドで約6億円を調達

Tameの創業者チーム

2020年3月にTameはオフラインの企業イベントで利用するデジタルイベント製品を公開した。しかしコロナ禍により、主にセールスイベントに利用したい企業向けにカスタマイズの自由度が高いバーチャルイベントプラットフォームを提供する、難しいピボットを実施。その結果、同社はシードラウンドでデンマークの企業としては大規模な550万ドル(約6億円)を調達した。このラウンドを主導したのはデンマークの投資基金であるVF Ventureで、byFoundersと、エンジェルであるPlandayの共同創業者でCTOのMikkel Lomholt(ミケル・ロムホルト)氏、The Eye Tribeの共同創業者で元CEOのSune Alstrup(スネ・アルストラップ)氏、Ulrik Lehrskov Schmidt(ウルリック・リースコフ・シュミット)氏も主導した。

この資金は、コペンハーゲンとロンドン、ポーランドのクラクフにいる従業員を20人から60人に増員、英国進出、売上増のために使われる。

Tameの共同創業者でCEOのJasenko Hadzic(ヤーセンコ・ハジチ)氏は、バーチャルへのピボットで売上が「2020年にオーガニックで700%増加しました。セールスもマーケティングもせずに、オーガニックに、です。したがってTameは大きなチャンスがあると見ており、マーケットリーダーとしての地位を積極的に拡大しようと全力で取り組んでいます」と述べた。

VF VentureのパートナーであるJacob Bratting Pedersen(ヤコブ・ブラッティング・ペダーセン)氏は次のように述べた。「VF Ventureは開発を支援しイノベーションを推進したいと考えています。コロナ危機でデジタルの勢いが増し、デンマークのIT起業家にはこの課題に取り組んでデンマークのテクノロジーと専門性を世界のマーケットへと展開するチャンスがあります。Tameはまさにその好例です。Tameにはデンマークで成長と雇用をもたらす強力なグローバルビジネスを構築する大きな可能性があります」。

ハジチ氏自身がすでにサクセスストーリーだ。同氏はユーゴスラビア内戦の中、子どもの頃に戦禍のボスニアから難民としてデンマークにわたり、最終的にテック業界に入った。

TameをバーチャルイベントプラットフォームのHopinと間違えてはいけない。ハジチ氏は筆者に対し「我々はTechCrunch Disruptを顧客として獲得しようとは思わないし、大規模なトレードショーにも関心はありません。企業のマーケティングや人事部門への販売に集中していきます」と語った。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Tameデンマーク資金調達バーチャルイベント

画像クレジット:Tameの創業者チーム

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

小型人工衛星打ち上げサービスFirefly Aerospaceが2021年6月の初飛行前に約82億円調達

Firefly Aerospaceは、10億ドル(約1094億円)を超える評価額で獲得したシリーズAの7500万ドル(約82億円)と、Fireflyの筆頭投資家Noosphere Venturesの保有株の売却からなる1億ドル(約109億円)の二次取引で合計1億7500万ドル(約191億円)を調達した。人工衛星を打ち上げるスタートアップである同社は、2021年6月に予定している最初のAlphaロケットの打ち上げの後、さらに今年後半に3億ドル(約328億円)を調達すると発表した。

Fireflyは、SpaceXやRocket Labの後を追って商用の打ち上げプロバイダーになろうとしているスタートアップたちの1つだ。目標は、現在成長中の小型衛星の打ち上げ市場に貢献することで、同社はこれまでの数年間、Alphaロケットを開発してきたが、すでにNASAやGeneral Atomicsなどから商用および政府非軍事部門の打ち上げ契約を獲得している。テキサスを拠点とする同社はこれまで、最初に立ち上げたFirefly Space Systemsの破産をはじめ、挫折も経験しているが、その後はFirefly Aerospaceと改名してNoosphere Venturesが全資金を提供する完全保有ベンチャーになった。

同社の2度目の命には、Alphaロケットを改造して打ち上げ容量を大きくしたことも含まれる。現在は、低地球軌道で1000kg、太陽同期軌道で600kgを運ぶことができる。また、NASAのCommercial Lunar Payload Services(CLPS)プログラムの一環として、月へのペイロードデリバリーサービスを提供するために「Blue Ghost」と呼ばれる月着陸船も開発している。

Fireflyは、カリフォルニアのヴァンデンバーグ空軍基地の施設で、打ち上げ機の準備がかなり進んでいるため、実際の飛行にこれまでになく近づいているようだ。初飛行を予定している2021年6月は近づいており、同社はそのデモ打ち上げの成功の勢いに乗り、同社がすでにその意図を表明している次の巨額調達(3億ドル)への関心が大きくなることも期待している。しかも同社は、シリーズAのラウンドが「申込過多」だったという。

シリーズAはDADA Holdingsがリードし、Astera InstituteとCanon Ball LLCなどが参加した。Fireflyによると、Noosphereの持ち株売却による二次調達にはシリーズAの参加社も含まれていた。

カテゴリー:宇宙
タグ:Firefly Aerospace資金調達

画像クレジット:Firefly Aerospace

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フィットネスリングメーカーのOuraが約109.3億円を調達

フィットネスウェアラブルメーカーのOuraにとって、ここ数年は激動の時期だった。特に2020年、同社は大きな勢いを得た。2020年にコロナ禍でプロスポーツが突然の停止に追い込まれ、NBAやWNBA、UFC、NASCARなど多くの主要リーグが同社のリングを採用した。

OuraはUCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)の協力で健康に関する研究にも力を入れ、UCSFはこのリングの体温モニタに関するピアレビューの研究を公開した。発熱が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の初期段階などの大きな問題を示唆する可能性があるため、特に体温モニタ機能は前述のリーグにとって大きな魅力となった。

米国時間5月4日、Ouraは1億ドル(約109億3000万円)のシリーズCを発表した。このラウンドを主導したのはThe Chernin GroupとElysian Park(ロサンゼルス・ドジャースの投資部門)で、Ouraのこれまでの調達金額の合計は1億4830万ドル(約196億900万円)となった。新たに投資したのはTemasek、JAZZ Venture Partners、エーザイで、これまでに投資していたForerunner Ventures、Square、MSD Capital、Marc Benioff(マーク・ベニオフ)氏、Lifeline Ventures、Metaplanet Holdings、Next Venturesも参加した。

Ouraは当初はそのフォームファクターで他社とは差別化して、腕時計型を中心とする競合の多い分野に参入した。しかし明らかにここ数年で真価を認められてきた。これまでに50万個以上のリングを販売している。

CEOのHarpreet Singh Rai(ハープリート・シン・ライ)氏は今回の報道発表の中で「ウェアラブル業界はアクティビティトラッカーから人々の生活を向上させるヘルスプラットフォームへと移行しています。Ouraはまず睡眠に注目しました。睡眠は毎日の習慣であり、睡眠不足は糖尿病、心疾患、アルツハイマー病、ガン、メンタルヘルスの低下など健康状態の悪化と結びついているからです」と述べている。

同社は今回のラウンドの資金をマーケティングとカスタマーエクスペリエンスに加え、ハードウェアとソフトウェアの研究開発や雇用に充てるとしている。今回のラウンドでは、サイエンス責任者のShyamal Patel(シャマル・パテル)氏、現場リーダーのTommi Heinonen(トミー・ハイネノン)氏、CFOに昇格したDaniel Welch(ダニエル・ウェルチ)氏といった主要な役職者も新たに加わる。

Forerunner VenturesのマネージングディレクターであるEurie Kim(ユーリ・キム)氏は発表の中で「2021年はヘルスケア業界の欠落が明らかになり、我々1人ひとりが自分の健康をコントロールする必要性が増しています。Ouraはパーソナライズされたデータで健康増進のために実践できるインサイトを提供して人々の力になることで、この業界の信頼できるリーダーおよびコミュニティとしての存在感を増しています」と述べた。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Ouraフィットネス資金調達ウェアラブルデバイス

画像クレジット:Darrell Etherington

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(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)

フォードとBMWが全固体電池のSolid Powerに142.2億円を投入

BMWグループならびにFord Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)向けの、20アンペア時(Ah)の全固体電池セルを両手に持つSolid Power(ソリッド・パワー)の製造エンジニア。この全固体電池セルはコロラドにあるSolid Powerの試作ラインで製造された。

固体電池(SSB)システムは、長い間、電池技術の次のブレークスルーだと考えられてきたもので、複数のスタートアップが最初の製品化を競い合っている。自動車メーカーたちが、この技術に対するトップ投資家群の一角を占めている。各社とも電気自動車(EV)をより安全に、より速く、そして航続距離を拡大するための突破口を求めている。

そんな中、Ford Motor CompanyとBMWグループが、電池テクノロジー企業Solid Powerへ資金を投入した。

コロラド州ルイスビルを本社とする、SSB開発のSolid Powerは、米国時間5月3日に、その最新のラウンドとなる1億3000万ドル(約142億2000万円)のシリーズBが、FordとBMWによって主導されたと発表した。このことは、その2社がSSBが将来の輸送を支えるものだと考えていることを示している。今回の投資で、FordとBMWは対等な株式所有者となり、両社代表者はSolid Power の取締役会に参加する。

また今回のラウンドで、Solid Powerは米国エネルギー省のアルゴンヌ国立研究所からスピンアウトしたベンチャーキャピタルのVolta Energy Technologies(ボルタエナジー・テクノロジーズ)からも追加投資を受けた。

固体電池という名前は電解溶液を使わないことに由来している(Mark Harris記者が年頭のExtra Crunch記事で説明している)。通常の電解溶液は、可燃性で過熱の危険があるため、一般的にSSBは比較的安全だと考えられている。ライバルである電解溶液を使うリチウムイオン電池と比べたときのSSBの真の価値は、そのエネルギー密度だ。Solid Powerは、同社の電池は、既存の充電式電池に比べて50~100%エネルギー密度を向上させるとできるという。理論的には、よりエネルギー密度の高い電池を搭載した電気自動車は、1回の充電でより長い距離を移動することができる。

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この最新の投資ラウンドは、Solid Powerが自社史上最大のアンペア時間(Ah)出力を持つ電池セルを生産するために、製造力を強化するのに役立つ。FordならびにBMWとの個別の共同開発契約に基いて、同社は2022年以降、テストよ車両統合のために100Ahのセルの納入を開始する予定だ。

これまで同社は、2Ahと20Ahの出力を持つセルを製造してきた。Solid Powerはその声明の中で、2020年後半にFordとBMWによって、2Ahバッテリーセル「数百個」が検証されたと語っている。一方、同社は現在、標準リチウムイオン用の機器を使い、20Ahの固体電池をパイロットベースで生産している。

Solid Powerの広報担当者Will McKenna(ウィル・マッケナ)氏はTechCrunchに対して、9×20センチ22層で構成されてる20Ahパイロットセルとは対照的に、100Ahセルは、より大きな底面積とさらに多くの層を持つことになると語った(「レイヤー」とはカソードの数を指していると、マッケナ氏は説明した。20 Ahセルの中には22枚のカソードと22枚のアノードがあり、それぞれの間に全固体電解質セパレータが挟まれていて、すべてが単一のセルの中ににまとめられている)。

Solid Powerの製造法とは異なり、従来のリチウムイオン電池では、製造プロセスで電解質の充填と循環を行う必要がある。Solid Power によると、一般的なGWh規模のリチウムイオン製造施設における設備投資の5%から30%が、そうした追加工程に投入されている。

Solid Powerが自動車メーカーからの投資を受けたのは、今回が初めてではない。2018年に行われた2000万ドル(約21億9000万円)のシリーズAでは、BMWやFordの他、Samsung(サムスン)、Hyundai(ヒュンダイ)、Volta(ボルタ)などからの資本金を集めた。同社は、OEMたちの注目を集めている新しい企業群の1つなのだ。他の注目すべき例としては、Volkswagen(フォルクスワーゲン)が支援するQuantumscape(クアンタムスケープ)とGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)によるSESへの資金投入がある。

Fordは自身でも先進的な電池技術を研究していて、1億8500万ドル(約202億円)で電池R&Dラボを開設する予定であることを先週発表している

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カテゴリー:モビリティ
タグ:BMWFord全固体電池電気自動車Solid Power資金調達バッテリー

画像クレジット:Solid Power

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

インドネシアのクラウドキッチンHangryが約14億円調達、レストラン展開も

グローバルな食品・飲料会社になることを目指すインドネシアのクラウドキッチンスタートアップHangry(ハングリー)がシリーズAで1300万ドル(約14億円)を調達した。同ラウンドは既存投資家のAlpha JWC Venturesがリードし、Atlas Pacific Capital、Salt Ventures、Heyokha Brothersが参加した。調達した資金は、他国に進出する前にまず今後2年で初の店内食事型レストランなどインドネシアでの店舗拡大に使われる。

Alpha JWCとSequoia CapitalのSurgeプログラムから300万ドル(約3億円)を調達した以前のラウンドを含め、Hangryの累計調達額は1600万ドル(約17億円)となった。Hangryは現在、ジャカルタ首都圏とバンドンでクラウドキッチン40店を展開していて、そのうち34店は2020年に立ち上げた。同社は2021年、店内食事型のレストランを含め、120店以上に拡大する計画だ。

Abraham Viktor(アブラハム・ビクトール)氏、Robin Tan(ロビン・タン)氏、Andreas Resha(アンドリアス・リシャ)氏が2019年に創業したHangryは、インドネシアで急成長中のクラウドキッチン産業の一角を占める。テック大企業Grab(グラブ)とGojek(ゴジェック)もフードデリバリーサービスを統合したクラウドキッチンネットワークを運営しており、その他にスタートアップのEverplateやYummyもこの業界にはいる。

Hangryが他社と差異化を図っている主な方法の1つが、クラウドキッチン施設やサービスをレストランやその他のサードパーティの顧客に提供するのではなく、自社ブランドへの注力だ。同社は現在、インドネシア鶏料理(Ayam Koplo)や日本食(San Gyu)など4つのブランドを展開している。各料理の価格は約1万5000〜7万ルピア(約110〜530円)だ。Hangryのアプリに加えてGrabFood、GoFood、ShopeeFoodを通じて注文できる。

「Hangryがインドネシアで広範なクラウドキッチンネットワークを築いたことを踏まえ、当然のことながら当社のネットワークを活用しようと他のブランドから関心が寄せられました」とCEOのビクトール氏はTechCrunchに語った。「しかし当社は自社ブランドを成長させることにフォーカスしています。というのも、当社のブランドはインドネシアで急速に人気を得ていて、全潜在能力を現実のものとするのに欠かせないキッチンリソースすべてを必要とするからです」。

新型コロナウイルスによるロックダウンと社会的距離の維持が実施された間に、Hangryはフードデリバリーの提供で成長した。しかし10年以内にグローバルブランドになるためには複数のチャンネルで展開する必要がある、とビクトール氏は付け加えた。

「いつの日か、店内での食事も含めてすべてのチャンネルで顧客にサービスを提供しなければならないと認識しています。当社はまずデリバリー事業という難しい分野でスタートし、顧客の家まで良い味で届けるという難題に直面しました。そしていま、当社はレストランで顧客にサービスを提供する用意ができています。店内食事型のコンセプトは配達分野で行ってきたあらゆることの拡大となります」。

報道機関向けの発表文の中で、Alpha JWC VenturesのパートナーであるEko Kurniadi (エコ・クルニアディ)氏は「1年半という期間でHangryはさまざまな味やカテゴリーの複数のブランドを立ち上げ、それらのほぼすべてが複数のプラットフォームでのレーティングでベストセラー入りしているというのは、プロダクトマーケットに適していることを如実に示しています。これは始まりにすぎず、Hangryがインドネシアでトップの食品・飲料会社に成長すると予見できます」と述べた。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Hangry資金調達インドネシアクラウドキッチン

画像クレジット:Hangry

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

ユーザー10万人のアジャイルミーティングソフトウェアParabolが約8.7億円を調達

先にアジャイル開発チームに振り返りミーティングソフトウェアを提供するベンチャー企業Parabolは、800万ドル(約8億7400万円)でシリーズAを完了したことを発表した。取引はMicrosoft(マイクロソフト)のベンチャーキャピタル部門であるM12が主導した。この投資には、Techstars、CRV、Haystackも参加している。

TechCrunchは、ParabolのCEOであるJordan Husney(ジョーダン・ハスニー)氏にインタビューし、今回のラウンドと同氏の会社について話を聞いた。私たちは、Parabolが提供している市場がどれほど大きなものなのか、そして同社がサービスを過剰にニッチ化しているのではないかと思っていた。Parabolはまだ若い会社だが、私たちの考えは誤りだったようだ。聞くところによると、ソフトウェア市場は考えていたよりも大きな市場であるという印象を受けた。

Parabolはどのようにして誕生し、どのようにしてターゲット市場を選んだのだろうか。あるいはより正確には、ターゲットとなる市場はなぜParabolを選んだのだろうか。

水平に構築し、垂直に焦点を合わせる

コンサルティングの世界に身を置いていたハスニー氏は、分散したチームが抱えるコミュニケーションの問題を十二分に認識していた。大企業では複数のオフィスを持つことが当たり前になっており、リモートワーカー同士のコミュニケーションは、メールのやりとりか、ミーティングかのどちらかになっていたとTechCrunchのインタビューで答えた。自称「回復期のエンジニア」であるハスニー氏は、ビジネス市場に「構造化されたコミュニケーション」、つまりコードライティングの世界で人気のある、非同期ミーティングの需要があるのではないかと考えた。

ハスニー氏は、プロセスや書面化よりも強力や進化を優先するソフトウェア開発手法であるアジャイル開発の精神を受け継ぎ、開発者ではないビジネスチームにアジャイルワーキングやコミュニケーションの手法を導入するためにParabolを構築した。アジャイルの原則が、ステータスミーティングを通じた開発者の成果の促進に適しているのなら、同じプロセスが他の仕事の場でも通用するのではないだろうかと考えたのだ。

しかし、市場には別の考えがあった。ビジネス界で大成功を収めるには、ハスニー氏がいう「行動の変化」が必要なことから摩擦が避けられず、それは新しいサービスや製品の迅速な導入には致命的だ。Parabolはビジネス界全体でヒットしたのではなく、なんとアジャイル開発チーム自身がParabolのテクノロジーを使い始めたのだ。

Parabolは、その需要を追いかけた。そしてその需要は非常に大きいことが分かったのだ。ハスニー氏は、世界には約2000万人のアジャイル開発者がいると推定しており、そのビジネスによってAtlassianのような企業が巨大な成功を収めている。ベンチャー企業にとっては、長い間泳ぎ続けるのに十分な大きさのプールなのだ。

先ほどのソフトウェア市場の大きさの話に戻ると、Parabolは良い参考になる。Parabolはソフトウェア制作の世界特有の会議スタイルの一部をサポートすることで、本物の会社となりつつあるようにも見えるが、ソフトウェアの市場はとにかく巨大なのだ。

成長

アジャイルソフトウェアチームのサポートを決定した後、Parabolにはすぐに成長が訪れた。2018年と2019年には毎月20%から40%の成長が見られたと同社のCEOは語る。自社を「ロケット」と呼ぶハスニー氏は、ParabolのフリーミアムのGTMモデルを一部評価している。これは、従来の販売プロセスを敬遠する開発者に販売する際の一般的なアプローチだ。

Parabolは、既存の顧客に販売することで、プロダクト・マーケット・フィットを実現した。ハスニー氏自身は、アジャイルソフトウェア開発者の作業サポートツールの需要を過小評価していた。それは開発者らは自分たちのニーズをすでに把握しているだろうと思っていたからだとTechCrunchに語った。

しかし、Parabolが作ったのは単純なツールではない。まず振り返りミーティングやインシデントの事後検証を行うためのソフトウェアで、作業者から「やるべきこと」「やらない方がいいこと」「維持すべきこと」などのメモを収集する。そして、それらのメモはトピックごとに自動的に集約され、その後、ユーザーが投票して変更点や取るべき行動を決定するというサービスなのだ。その結果、開発チームは非同期に同期された状態を保つことができる。

Parabolは2019年11月にシードラウンドを完了し、ちょうど新型コロナウイルス感染症流行に備えた資金を用意するのに間に合った。在宅勤務への急激な切り替わりにより、Parabolのユーザー数は2020年1月には週600人だったのが、同年3月には週5000人にまで増加した。データを自分の目で確認したい場合は、ここに同社による公開データがあるので参照して欲しい。

400万ドル(約4億3700万円)の資金を調達したハスニー氏は、周囲から「今がチャンスだ」と言われ、さらなる資金調達を決意。そして、いくつかの会社の中から選ぶことになり、最終的にはマイクロソフトの資金を受け取ることになった。

そこにはストーリーがある。ハスニー氏によれば、マイクロソフトのM12は、ベンチャーキャピタルのリストの上位にはなかったという。純粋なベンチャーキャピタルではなく、戦略的資本を利用することは1つの選択肢に過ぎず、すべてのベンチャー企業にとって最適なものではないからである。しかし、ハスニー氏たちがマイクロソフトのパートナーと知り合いになり、お互いに調査を行った結果、その適合性が明らかになった。CEOによると、M12の投資チームは、AzureやGitHubなど、さまざまなマイクロソフトのグループに電話をしてParabolに対する意見を聞いたそうだ。彼らは絶賛した。そしてマイクロソフトはこの取引に関して強い内部シグナルを発し、Parabolは自社の投資元となる可能性のある企業が自社製品のヘビーユーザーであることを知ったのだ。

取引は成功した。

なぜ800万ドルで、それ以上ではないのか?ハスニー氏によると、このベンチャー企業の成長計画は資本集約的ではなく、むしろ市場が成長を引っ張っているとのことだ。また、チームは希薄化を意識していると説明する。創業チームが会社を結成したのは2015年で、シードラウンドを完了したのは2019年になってのことだった。当時はひもじい時代だったと同氏はいう。そこまでして得た所有権にはこだわりがあるのだろう。

Parabolは意図的に無駄のない経営を行っている。ハスニー氏は、自身のチームはReid Hoffman(リード・ホフマン)氏のような電撃的な規模拡大の理念には従わず、個人の成長を考えた採用を重視しているという。コラボレーション製品を作るためにすぐに規模拡大する必要はないと、CEOは考えている。

この800万ドルの資金調達により、Parabolは無限の可能性を秘めているとCEOは語ったが、同社はこれを約24カ月間分の資金調達とした。24カ月後には、社員が現在の10人から30人程度に増えていることを期待する。

Parabolは、2021年の収益を4倍にし、2022年にはそれを3倍にしたいと考えている。また、現在10万人のユーザーを2021年中に50万人に拡大し、来年末には100万人にしたい計画だ。目標に対する同社のパフォーマンスから目を離すことができなさそうだ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Parabol資金調達アジャイル開発

画像クレジット:Chainarong Prasertthai / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Dragonfly)

動画クリエイター向けAI作曲サービスSOUNDRAW、楽曲を「選ぶ」のではなく誰もが「作る」時代へ

SOUNDRAWの作曲家による作業風景

動画コンテンツはスマホ1つでいつでもどこでも楽しめるようになり、近年急速に普及している。YouTubeなどの動画サイトや各種SNSで目にしない日はないのではないだろうか。そしてほとんどの動画コンテンツでは楽曲がBGMとして使われている。

現状、動画クリエイターはストックBGM素材サービスから楽曲を探し、動画に合うかを1曲ずつ確認していかなければならない。「動画に合う楽曲を探すのはとても時間が掛かり大変」との声が多いという。

2020年2月に設立したスタートアップのSOUNDRAW(サウンドロー)は従来の「楽曲に合わせて動画を完成させる」といった手順を根本から変える。同社が提供する動画クリエイター向けAI作曲サービスSOUNDRAWは、独自開発したAI技術やアルゴリズムによって楽曲を自動生成し、その楽曲をユーザーが編集して商用利用もできるようにした。

動画クリエイターは動画に合わせて楽曲を「選ぶ」のではなく、SOUNDRAW上で「テーマ」や「ジャンル」などを選ぶことで、曲を作れるようになるのだ。SOUNDRAWの楠太吾代表は「これまで作曲家という特殊能力を持つ人しかできなかった『作曲』を、誰もができるように一般化していきます」と語る。

動画クリエイターなどからの反応も上々だ。2020年6月にベータ版、9月に製品版をリリースし、2021年4月時点ですでにアカウント登録者数は2万人を超えているという。

数多の楽曲から思い通りに編集も可能

自動生成された楽曲を自分好みに編集可能

SOUNDRAWの使い方はシンプルだ。ライフスタイルやビジネスなどの「テーマ」、ヒップホップやアコースティックなどの「ジャンル」といったカテゴリーを選ぶだけで、15個の楽曲が自動生成される。

ユーザーは選んだ楽曲の長さや構成、テンポ、音程などを動画に合うようにカスタムできる。演奏楽器も変更できる上、メロディやドラムといった特定の音を抜くことも可能だ。楠氏は「どんな構成でも、動画に合わせて自由に編集できます」という。

楽曲をダウンロードしたら企業PR動画やCM動画、YouTubeに投稿する動画、ゲームなどに、ロイヤリティフリーで使うことができる。著作権はSOUNDRAWに帰属しており、使用ライセンスをユーザーに付与しているかたちだ。このため楽曲の転売などは禁止している。

SOUNDRAWの会員登録は無料で、月間プランは月額税込1990円、年間プランは年額税込1万9900円。両プランともにAIによる作曲回数無制限、楽曲のダウンロード無制限となる。無料会員は作曲回数無制限と楽曲をキープする機能が使える。SOUNDRAWは今のところPCのみで利用可能だ。

また、SOUNDRAWでは動画編集ソフトAdobeのPremiere Pro、After Effectsのプラグインも開発し、有料会員に無料で提供している。SOUNDRAWはブラウザ版でも使えるが、プラグイン版はより効率よく作業できるようになる。なお、ブラウザ版はSafariでも使えるが、Chromeでの利用を推奨している。

楠氏は「プラグイン版は動画と楽曲を同時に編集できる点が大きなメリットです。楽曲をダウンロードすれば、動画編集ソフト内にインポートされます。そのデータを動画のタイムライン上にもっていくだけで、簡単に音楽と映像を合わせることもできます」と説明した。

楽曲データ量産AI

AI作曲によって自動生成される楽曲の組み合わせは理論上、数億もの数に上るという。「数えるのは途中でやめました」と楠氏は笑顔で話すが、開発に至るまでの2年間はテストをしては壊してを繰り返すなど苦労を重ねてきた。初めは鍵盤をランダムに叩いているだけといったフレーズが生まれてきたという。

楠氏はインプットするデータの質には特にこだわって独自開発を進めた。SOUNDRAWには作曲家が2人おり、インプット用のデータを実際に制作して貯めてきたでは「Melody」「Backing」「Bass」「Drum」と、楽曲を4つの要素に分解し、それぞれAIで生成したフレーズを組み合わせて楽曲を生み出す。

どのような基準で楽曲を作り上げているのか気になるが「あまり詳しくは言えません。ただ、いわゆるヒットソングを学習させているわけではありません」と楠氏はいう。楠氏はSOUNDRAWにおける質の高い楽曲には、独自に作り上げた学習モデルなどが大きく関わっているとの説明にとどめた。

楽曲数の追加と海外進出を

右から3番目がSOUNDRAWの楠太吾代表

SOUNDRAWは数億に上る楽曲の組み合わせを有しているものの、楠氏は「人間の耳で聴くと『どこか似ているな』といったものはどうしても出てきます」と話した。SOUNDRAWは2021年3月1日に3500万円の資金調達を実施し、累計調達額は1億円を超えた。今後は資金調達を元に楽曲数の追加などに力を入れる考えだ。

楠氏は「楽器1つとっても、ピアノならオルガンやエレクトリックといった音色・フレーズの幅などを増やしていくことで、将来的には『聞いたことがある』という状況を回避できるはずです。今は外部人材も加えてチームを作って取り組んでいる最中です」と語った。

また、SOUNDRAWは海外市場への進出も視野に入れている。「これまでは国内を中心にアプローチしていましたが、音楽は非言語であり、デジタルで提供できるため、国境を越えやすい。SOUNDRAWが持つカスタム性やクオリティが高いAI作曲ツールは、海外でもまだ多くはありません。SOUNDRAWは世界で戦うレベルに達していると思っています」と楠氏は意気込む。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:SOUNDRAW音楽日本動画編集

画像クレジット:SOUNDRAW

欧州の金融スーパーアプリへ向けてVivid Moneyが約79.6億円を調達

ドイツのスタートアップVivid Money(ビビッドマネー)は、GreenoaksがリードするシリーズBラウンドで新たに7300万ドル(79億6000万円)を調達した。既存の投資家からRibbit Capitalも参加した。この資金調達ラウンドで、Vivid Moneyのバリュエーションは4億3600万ドル(約480億円)に達した。

Vivid MoneyはRevolutの競合企業と見ることができるが、ユーロ圏向けに特別にデザインされている。同社は銀行インフラにSolarisbankを利用して開発されており、ユーザーはさまざまな方法で送金、受け取り、支出、投資、貯蓄が可能になる。

アカウントを作成すると、DEで始まるドイツのIBAN(国際銀行口座番号)と、メタルカードが届く。カード自体にはカードの情報は記載されていない。すべての情報はアプリにある。他のフィンテックスタートアップと同様、Vivid Moneyを利用すると、アプリからカードをコントロールできる。カードをロックしたりロックを解除したり、GooglePayやApplePayに追加したりできる。

その後、アカウントにチャージすれば、数十の異なる通貨を持つことができる。海外でカードを使って支払う場合、同社は現在の為替レートに少額のマークアップをのせる。通常銀行で適用される為替レートよりも良いレートが得られるはずだ。

このかなり標準的な一連の機能に加え、VividMoneyは端株での株取引を提供している。株式やETFに投資でき、手数料はかからない。同様に、アプリから暗号資産(仮想通貨)を購入、保有、共有することもできる。同社はこれらの機能についてCM Equity AGと提携している。

また、キャッシュバックプログラムと月額9.90ユーロ(約1300円)のプレミアムサブスクリプションもある。有料ユーザーは、無料の現金引き出し枠の拡大、バーチャルカードを作成する機能、追加の通貨のサポート、より良いキャッシュバックリワードの対象となる。

最後に、ユーザーはポケットと呼ばれるサブアカウントを作成できる。あるポケットから別のポケットにお金を移動したり、他のユーザーをポケットに追加したりできる。各ポケットには独自のIBANがある。従い、それぞれのポケットで別々の請求書の支払いを行うことができる。また、将来の買い物のために、カードを特定のポケットにリンクさせることもできる。

Vivid Moneyは、またたく間に多数の機能を追加した。今では銀行口座に多額の資金を預かる。今後、定評ある欧州のフィンテックプレーヤーとの競争の中で、多くのユーザー層を引き付けることができるかどうか注目したい。

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画像クレジット:Vivid Money

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

エネルギー事業で余った天然ガスを利用し暗号資産のマイニングに電力供給するCrusoe Energy

Crusoe Energy(クルーソーエナジー)の2人の創業者が、今日の地球が直面している2つの大きな問題、すなわちハイテク産業のエネルギー使用量の増加と、天然ガス産業に関連した温室効果ガスの排出に対する解決策を見つけたかもしれない。

エネルギー事業で余った天然ガスを利用してデータセンターや暗号資産のマイニング事業に電力を供給するクルーソーは、事業の拡大に向けて、つい最近ベンチャーキャピタル業界のトップ企業から1億2800万ドル(約139億6396万円)の新規資金を調達したところであり、これはこれ以上なく良いタイミングだ。

温室効果ガスの排出量を削減し、地球温暖化をパリ協定で定められた1.5℃以内に抑えることを目指す研究者や政策立案者にとって、メタンガスの排出は新たな注目分野となっている。クルーソーエナジーはまさにこのメタンガス排出を使用してデータセンターやビットコインマイニングへの電力供給を行おうとしている。

メタンの排出量を削減することが短期的に非常に重要である理由は、メタンの温室効果ガスは二酸化炭素の温室効果ガスに比べてより多くの熱を閉じ込め、またより早く消散するからだ。そのため、メタンの排出量を劇的に削減できれば、人間の産業が環境に与えている地球温暖化の負荷を短期間で緩和することができる。

メタンを排出する最大の原因は、石油・ガス産業だ。クルーソーエナジーの共同設立者であるChase Lochmiller(チェース・ロックミラー)によると、米国だけでも毎日約3964万立方メートルの天然ガスが焼却されているという。焼却量のうち約3分の2はテキサス州で、さらに約1415万立方メートルはクルーソーがこれまで事業を展開してきたノースダコタ州で焼却されている。

米国の大手金融機関でクオンツトレーダーとして活躍していたロックミラーと、石油・ガス業界の3代目社長であるCully Cavness(カリー・カブネス)にとって、回収した天然ガスをコンピューターに利用することは、金融工学と環境保全という2人の関心が自然に結びついたものだった。

ノースダコタ州ニュータウン。2014年8月13日、ノースダコタ州ニュータウン近くのフォート・バートホールド・リザベーションにて、3つの油井と天然ガスのフレアリングの様子。1カ月に約1億ドル(約108億9600万円)相当の天然ガスが焼却されるのは、それを回収して安全に輸送するパイプラインシステムがまだ整備されていないからだという。フォート・バートホールドにある近親三部族は、マンダン族、ヒダーツァ族、アリカラ族から成る。ここは、フラッキングと、そこに住む多くのネイティブアメリカンに石油使用による収益をもたらしていた石油ブームの震源地でもある(画像クレジット:Linda Davidson / The Washington Post via Getty Images)

デンバー出身の2人は、予備校で出会い、その後も友人として付き合っていた。ロックミラーがマサチューセッツ工科大学に、キャブネスがミドルベリー大学に進学したときには、まさか一緒にビジネスを立ち上げることになるとは思ってもいなかった。しかし、ロックミラーは大規模なコンピュータや金融サービス業界に触れ、キャブネスは家業を継いだことで、天然ガスの大量廃棄に対処するためのより良い方法があるはずだという結論に達した。

クルーソーエナジーにまつわる会話は、2018年にロッキー山脈にロッキー・クライミングに行った際に、ロックミラーがエベレストに行った話をしたことから始まった。

2人がビジネスを構築し始めたとき、最初に注目したのは、ビットコインのマイニングで発生するエネルギー・フットプリントに対処するための環境に優しい方法を見つけることだった。この試みが、Olaf Carlson-Wee(オラフ・カールソン-ウィー、ロックミラーの元雇用主)が立ち上げた投資会社Polychain(ポリチェーン)や、Bain Capital Ventures(ベインキャピタル・ベンチャーズ)、新たな投資家であるValor Equity Partners(ヴェイラー・エクイティ・パートナーズ)などの目に留まった。

(この試みについては、私が同社のシードラウンドを取材する際にロックミラーが言及していた。当時、私はこの会社の前提に懐疑的で、この事業は炭化水素の使用を長引かせ、政府の崩壊に対する投機的なヘッジ目的以外には実用性が限られている暗号資産を支えているだけではないかと心配していた。しかし、少なくとも私の懐疑のうちの1つは間違っていたと言える)

ヴェイラー・エクイティの広報担当者はメールで以下のように述べている。「持続可能性についての質問ですが、クルーソーには、排出量を実質削減するプロジェクトのみを追求するという明確な基準があります。通常、クルーソーが担当する油井はすでにフレアリングしており、クルーソーのソリューションがなければフレアリングが続くでしょう。同社は、従来のパイプラインから低コストのガスを購入することになる数多くのプロジェクトを断ってきました。その需要と排出量の実質増加を望んでいないためです。さらに、マイニングは再生可能エネルギーへの移行が進んでおり、座礁資産であるエネルギーに対するクルーソーのアプローチは、座礁資産であり限界のある再生可能エネルギーの経済的価値を向上させ、最終的には再生可能エネルギーをより多く取り入れることができます。マイニングは、電力の需要が増加したときに削減できる中断可能なベースロード需要を提供することができるため、全体として、より多くの再生可能エネルギー源をグリッドに追加する動機付けとなる効果があります」。

その後、Lowercarbon Capital、DRW Ventures、Founders Fund、Coinbase Ventures、KCK Group、Upper90、Winklevoss Capital、Zigg Capital、Tesla(テスラ)の共同創業者であるJB Straubel(J.B.ストラウベル)といった投資家が加わっている。

同社は現在、ノースダコタ州、モンタナ州、ワイオミング州、コロラド州で、廃棄された天然ガスを動力源とする40のモジュール型データセンターを運営している。来年は、クルーソーがテキサス州やニューメキシコ州などの新しい市場に参入するため、その数は100ユニットに拡大する見込みだ。2018年の立ち上げ以来、クルーソーは、ビットコインマイニング、レンダリング、人工知能のモデルトレーニング、さらには新型コロナウイルス感染症の治療法研究のためのタンパク質のフォールディングシミュレーションなどのエネルギー集約型コンピューティングによってフレアを削減する、スケーラブルなソリューションとして登場した。

クルーソーは、メタンガスの燃焼効率が99.9%であることを誇っており、さらにデータセンターやマイニング現場でのネットワーク構築という新たなメリットももたらしている。将来的にはクルーソーの事業所周辺の農村地域の接続性向上にもつながる可能性がある。

現在、同社の業務の80%はビットコインマイニングに関するものだが、データセンター業務での使用の需要も高まっており、ロックミラーの母校であるMITをはじめとするいくつかの大学が、自校のコンピュータのニーズのために同社の製品を検討している。

ロックミラーはこう述べている。「今はまだ潜伏期の段階です。プライベート・アルファ版には、何人かのテストを行う顧客がいますが、2021年後半には一般のお客様にもご利用いただけるようになるでしょう」。

クルーソー・エナジー・システムズのデータセンターの運用コストは世界で最も低いはずだと、ロックミラーは述べている。同社は、データを顧客に届けるために必要なインフラ構築をサポートするために費用をかけるつもりだが、エネルギー消費量に比べれば、それらの費用は無視できるレベルだという。

これはビットコインマイニングにおいても同様で、中国で石炭を使ったマイニングを行う代わりに、(送電網の整備に使用されるのではない)再生可能エネルギーを使った新たな設備の建設という選択肢を提供できる。暗号資産業界は、その生成と流通にともなうエネルギー使用に対する批判をかわす方法を探しており、クルーソーはすばらしいソリューションとなる。

また、制度や規制面での追い風も同社を後押ししている。最近では、ニューメキシコ州が来年4月までにフレアリングとガス放散を事業者の生産量の2%以下に制限する新しい法律を可決した一方で、ノースダコタ州は現場でのフレアガス回収システムを支援するインセンティブを推進し、ワイオミング州はビットコインマイニングに適用されるフレアガス削減のインセンティブを設ける法律に署名した。世界最大の金融サービス企業もフレアガス対策に取り組んでおり、BlackRock(ブラックロック)は2025年までに日常的なフレアガスの発生をなくすよう呼びかけている。

ロックミラーは「電力消費量については、プロジェクトの評価段階で、石油・ガスプロジェクトの排出量を削減するための明確な線引きをしています」と語った。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Crusoe Energy温室効果ガス暗号資産データセンター資金調達電力

画像クレジット:Spencer Platt / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

よく聞くマルチ商法的なサービスを批判するWest Tenthはアプリで女性の在宅ビジネスえの起業を支援する

シードファンドから150万ドル(約1億6400万円)の資金提供を受けたWest Tenth(ウェストテンス)という新しいデジタルマーケットプレイスは、女性が在宅ビジネスを始め、拡大させていくためのプラットフォームの提供を目的としている。女性は、モバイルアプリを使って、自分のビジネスを地域の人々に宣伝し、アプリに統合されたメッセージングプラットフォームにより問い合わせやリクエストに対応し、アプリの決済機能で取引を完了させることができる。

このスタートアップは、Lyn Johnson(リン・ジョンソン)氏とSara Sparhawk(サラ・スパーホーク)氏により共同で設立された。両氏は、金融機関で働いていたときに出会い、ジョンソン氏は金融業界に残ったが、スパーホーク氏は後にAmazon(アマゾン)に転職した。

ジョンソン氏は、自分の経験から、米国における女性の経済的不平等について理解を深めることができたという。男性が所有する金融資産1ドル(約109円)あたり、女性は32セント(約35円)しか所有していない。その大きな要因となっているのが、女性が育児のために離職し、それに伴い、数年間収入が得られなくなるためだと説明する。

「私たちの社会は、育児のために離職する女性を支援するのは得意だが、復職する女性を支援するのはひどく苦手だ」とジョンソン氏は言い「女性はこのことが分かっていて、当てにならない雇用の代わりに、次々とビジネスを始めている」と話す。

画像クレジット:West Tenth

West Tenthは、こういった起業を奨励することを目的としている。さらに広く言えば、女性たちが家庭で培った多くの才能が、実際にはビジネスになる可能性があることを理解してもらうことも目的としている。

このアプリでは、ホームベーカリーや調理師、フォトグラファー、ホームオーガナイザーやデザイナー、ホームフローリスト、乳幼児睡眠コンサルタント、パーティープランニングやイベントサービス、クラフト教室、フィットネストレーニング、ホームメイドグッズなど、さまざまなビジネスの入口を用意している。

同社は、このアプリが必ずしも男性を閉め出している訳ではないとしているが、子育てのために仕事を辞めるのは女性が多いため、現在の米国のホームビジネス市場は、女性向けになっている。しかし、同社のプラットフォームには男性もいる。

現在、これら起業家の多くはFacebook(フェイスブック)でホームビジネスを展開しているが、地元のグループに積極的に参加したり「いいね!」のリクエストに応えたりしなければ、顧客を獲得する機会を逃すことになる。対してWest Tenthでは、地元のビジネスを1つの場所に集中させることで、発見を容易にしている。

画像クレジット:West Tenth

このアプリでは、顧客は画面上部のボタンを使ってカテゴリー別に地元の店舗を閲覧し、買い物をすることができる。検索結果は提供される商品やサービスの写真、説明、開始価格とともに距離順に表示される。また、アプリのメッセージング機能により、見積もりや詳細情報を直接問い合わせることも可能だ。そして、顧客は、アプリに統合されたStripe(ストライプ)の決済機能を介して購入を完了することができる。West Tenthは、これらの売上に対して9.5%の手数料を取る。

West Tenthのもう1つの重要な側面は、教育部門のThe Foundry(ザ・ファウンドリ)だ。

ビジネスオーナーは、四半期ごとに100ドル(約1万900円)、または年間350ドル(約3万8200円)のサブスクリプション会員になることで、月2回のイベントに参加できる。イベントには、在宅ビジネスを立ち上げるための基礎知識、マーケティング、顧客獲得などに焦点を当てたクラスが含まれている。また、これらのクラスは、セッション単位の支払いとしたい顧客のために、1セッションあたり約30ドル(約3270円)のアラカルトでも提供されている。

さらに、参加者は在宅ビジネス市場での経験を持つゲストスピーカーから話を聞くことができ、同社のマスターマインド・ネットワーキング・グループに参加して会員同士で意見交換をすることもできる。

画像クレジット:West Tenth

教育やネットワーキングとビジネスオーナーシップを組み合わせたこのシステムは、よく見られるMLM(マルチレベルマーケティング、マルチ商法)企業に加入するのではなく、在宅ビジネスの起業家になる女性が増える可能性を秘めている。

「このビジネスを始めた時、MLM企業は、米国における未開拓な巨大人材プールである、離職した女性層に焦点を当てた数少ない産業の1つであることは認識していた」とジョンソン氏は述べ「しかし、MLM業界は非常に搾取的だ。儲かるのは上位1%のディストリビューターだけで、残りの人は損をする。そして、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)も失ってしまう。当社は、さまざまな面でMLMに代わる存在になりたいと考えている」と付け加える。

当然のことながら、West TenthのプラットフォームではMLMは許されていない。

画像クレジット:West Tenth

2020年夏にカンザスシティでのTechStars(テックスターズ)のプログラムを終えたこのスタートアップは、今回、プラットフォームを軌道に乗せるためにシードファンドから150万ドル(約1億6400万円)の資金を調達した。今回のラウンドには、主導したBetter Ventures(ベター・ベンチャーズ)に加え、Stand Together Ventures Lab(スタンド・トゥギャザー・ベンチャーズ・ラボ)、Kapital Partners(キャピタル・パートナーズ)、The Community Fund(ザ・コミュニティ・ファンド)、Backstage Capital(バックステージ・キャピタル)、Wedbush Ventures(ウェドブッシュ・ベンチャーズ)、およびGaingels(ゲインジェルズ)が参加している。

West Tenthは、この資金を製品開発とユーザー基盤の拡大に充て、より地域ビジネスに重点を置いた製品機能の拡充を目指している。これには、友人が購入したものを見ることができるといったショッピング支援機能や、動画によるデモンストレーションなどが含まれる。

2019年以降、West Tenthは、アプリに掲載されたわずか20のショップから、現在では主にロサンゼルス郊外とソルトレイクシティにある600以上のショップへとその対象地域を広げている。現在は、フェニックス、ボイシ、北カリフォルニアで展開中だ。

画像クレジット:West Tenth

West Tenthの事業拡大は、女性の従来型の雇用形態を悪化させ続けている新型コロナウイルス感染症危機に遅れて行われた。

学校や保育園の閉鎖と、女性の職に大きな影響を及ぼす雇用の喪失が相まって、これまで男性に比べてより多くの女性が失業に追いやられているMcKinsey(マッキンゼー)によると、パンデミックが始まって以来、労働人口に占める女性の割合は48%しかないにもかかわらず、離職者では約56%を女性が占めている。誰かが名付けた、この新型コロナウイルス感染症による「シーセッション(shecession:女性雇用の不況)」は、有色人種の女性に偏った影響を与えていることも研究で明らかになっている。

「500万人もの女性が職を失っている。解雇や一時解雇を余儀なくされた人もいれば、育児の負担が重くのしかかってきたために離職を選んだ人も数多くいる」とジョンソン氏はいう。

「育児を理由に女性が離職すると、なぜかそれは軽視され、復職がより困難になるという現実がある。そのため、今後1年半から2年の間に、在宅ビジネスを営んで収入を増やそうとする女性たちによる、自宅での経済活動が急増すると思う」と同氏は語った。

West Tenthのアプリは、iOSAndroidの両方で利用できる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:West Tenth資金調達リモートワーク女性、MLM

画像クレジット:West Tenth

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

緊急通報対応を効率アップさせるクラウドベース開発のRapidDeployが約32億円調達

2020年のパンデミック禍での暮らしは現実世界であり、ときに悲惨なもので、効率的かつ万全の緊急対応サービスを利用できる状態にあることがいかに重要かを証明した。緊急対応サービスは必要とされればリモートで人々をサポートできる。そして遠隔からサポートできないときは、医療的な措置などを必要とする状況においてスタッフがすばやく派遣されるようにしている。このプロセスをサポートするクラウドベースのツールを構築している企業が米国時間4月29日、引き続き成長するための資金調達ラウンドを発表した。

911センター(日本の119番、110番通報センター)向けにクラウドベースのサービスとしてコンピューターを活用した出動テクノロジーを提供しているRapidDeploy(ラピッドデプロイ)は2900万ドル(約32億円)のシリーズBラウンドをクローズした。この資金は事業の拡大と顧客に提供しているSaaSツールの拡張の継続にあてる。RapidDeployの考えでは、最も効率的な方法で緊急対応を展開するのにクラウドは必要不可欠だ。

「911通報対応は初期においてはトランシーバーで行われていました。そして今、クラウドが信号の結節点になりました」とRapidDeployの共同創業者でCEOのSteve Raucher(スティーブ・ローチャー)氏はインタビューで述べた。

オースティン拠点のRapidDeployは911センターにデータと分析を提供している。助けを求めている人との重要なつながりであり、そうした通報を最寄りの消防救急や警察とつなげている。現在同社のプロダクトのRadiusPlus、Eclipse Analytic、Nimbus CADを使っている顧客は約700を数える。

この数字は米国の911センター(計7000)の約10%にあたり、人口の35%をカバーしている(都市部や人口の多いエリアにはより多くのセンターがある)。同社のプロダクトが利用されている州はアリゾナ、カリフォルニア、カンザスなどだ。また同社の元々の創業の地、南アフリカでも展開している。

今回の資金は、金融および戦略的投資家という興味深い組み合わせからのものだ。Morpheus Venturesがリードし、GreatPoint Ventures、Ericsson Ventures、Samsung Next Ventures、Tao Capital Partners、Tau Venturesなどが参加した。PitchBookのデータによると、直近のラウンドの前にRapidDeployは約3000万ドル(約33億円)を調達していたようだ。評価額は公開されていない。

EricssonとSamsungは、通信産業の主要プレイヤーとして、何が次世代の通信テクノロジーとなるのか、必要不可欠なサービス向けにどのように使われるのか、という点で利害関係がある(実際、かつての、そして現在の911通信の主要リーダーの1社はMotorolaで、EricssonとSamsungの競合相手となるかもしれない)。AT&TもまたRapidDeployのGTM戦略(物流と販売)パートナーで、同社はデータをシステムに送るのにApple、Google、Microsoft、OnStarを統合している。

緊急通報対応テクノロジーの事業は細分化されたマーケットだ。それらを「パパママ」事業だとローチャー氏は表現した。緊急対応サービスの80%が常時対応スタッフ4人以下という規模で(米国の町の大半が、あなたが思うような巨大な大都市よりもかなり小さいという事実の証だ)、多くの場合こうした町は昔ながらの古い設備で対応している。

しかし米国では過去数年、Jediプロジェクトや次世代の公共セーフティネットワークのFirstNetのようなイノベーションが盾となって状況は変わってきた。RapidDeployのテクノロジーは、人々の正確な位置の特定とサポート改善を支えるために携帯電話テクノロジーのイノベーションを利用してきたCarbyneRapidSOSのような企業と同じものだ。

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RapidDeployのテックはRadiusPlusマッピングプラットフォームをベースとしていて、これはスマートフォンや車両、ホームセキュリティシステム、その他のコネクテッドデバイスからのデータを使っている。データストリームにその情報を流し、911センターが位置だけでなく、通報した人の状態に関する潜在的な他の要素を判断するのをサポートできる。一方、Eclipse Analyticサービスはセンターが状況に優先順位をつけたり、どのように対応すべきか洞察を提供したりと、アシスタントのように機能する。そしてNimbus CADは出動して対応をコントロールすべき人を見つけ出すのを手伝う。

長期的には、新しいデータソース、そして通報者とセンター、緊急ケアプロバイダーの間の新しい通信方法をもたらすためにクラウドアーキテクチャを活用する、というのがプランだ。

「メッセージのスイッチというより、トリアージサービスです。ご覧の通り、プラットフォームは顧客のニーズとともに進化します。戦術的なマッピングは究極的にニーズをカバーするのに十分ではありません。当社は通信サービスの統合について考えています」とローチャー氏は述べた。実際、それはこうしたサービスの多くが向かおうとしている方向であり、消費者にとって良いことづくめだ。

「緊急サービスの未来はデータにあります。これまでよりも速く、対応が細やかな911センターを作ります」とMorpheus Venturesの創業パートナー、Mark Dyne(マーク・ダイン)氏は声明で述べた。「RapidDeployが構築したプラットフォームは、次世代911サービスを全米の過疎地や都市部のコミュニティで実際に使えるようにすることができると確信していて、スティーブやスティーブのチームと未来に投資することを楽しみにしています」。今回のラウンドの一環としてダイン氏はRapidDeployの取締役会に加わった。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:RapidDeploy資金調達SaaS緊急通報

画像クレジット:Spencer Platt / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

ゲーム的アプローチでギターやピアノ、歌などの音楽教育をもっと身近にするYousicianが30.6億円調達

自身が認めているように、Chris Thür(クリス・トゥール)氏はいかにも音楽教育の企業を始めそうな人物ではなかった。

レーザーの研究者だったトゥール氏は、ある投資家との初期のミーティングを思い出す。その投資家は、トゥール氏と共同創業者で電気系エンジニアであるMikko Kaipainen(ミッコ・カイパイネン)氏が音楽の指導者か、あるいはミュージシャンなのかと聞き、最後には「2人がその世界に適しているかどうかを判断する項目をすべて」尋ねた。すべての項目に2人はいちいち「ノー」と答えなくてはならなかった。

トゥール氏は「我々はただ、楽器を演奏したいがその機会がなかったと感じていただけでした。もちろん、そう思うのは我々だけではありません」という。

トゥール氏とカイパイネン氏はあの時の投資家を説得することはできなかったが、Yousicianを始めた。今では音楽教育アプリのYousicianとギターチューニングアプリのGuitarTunaの2つで月間ユーザー数が2000万人に達している。米国時間4月28日、ヘルシンキに拠点を置く同社はシリーズBで2800万ドル(約30億6000万円)を調達したと発表した。

YousicianのCEOであるトゥール氏は「ちょっとした旅」を経てここに至ったと語る。以前はOvelinという社名だった同社が創業したのは10年前で、もともとは子どもにターゲットを絞っていたが、その後年齢を特定しない戦略で成功した。

YousicianのCEOクリス・トゥール氏(画像クレジット:Yousician)

トゥール氏は、Yousicianアプリではインタラクティブなゲーム的アプローチでギターやピアノ、ウクレレ、ベース、歌を練習できるが、ゲーム性はそれほど強くないと説明する。ユーザーは1日に15〜20分練習するという標準的なカリキュラムで上達していく。アプリがユーザーの演奏を聞き取り、間違いの回数に応じて1〜3個の星で評価する。1日に1レッスンは無料で受けられるが、それ以上受けたい場合や曲のライブラリをすべて利用したい場合、あるいは複数の楽器を練習したい場合は、月額19.99ドル(約2180円)からのプレミアムまたはプレミアムプラスのサブスクリプションに登録する必要がある。

トゥール氏は、Yousicianを活用すると自分のスケジュールに合わせて対面のレッスンよりもずっと安い費用で音楽を学べるという。同時に、これは音楽指導者との「ゼロサム」の競合ではないとも指摘する。レッスンとレッスンの間に練習や学習を続ける手段としてYousicianを生徒に勧める指導者もいるという。

Yousicianがユーザーに役立っている事例として、トゥール氏はKaren Gadd(カレン・ガッド)氏のストーリーを挙げる(以下の動画)。ガッド氏は楽器をまったく演奏したことがなかったが、1年後にはバンドメンバーとしてステージに立つまでになった。ただし、人前に立って演奏する機会がなくてもこのアプリは有用であるとトゥール氏は補足した。

トゥール氏は「我々は音楽を読み書きの能力と同じぐらい普通のものにしたいのです。誰もが時々演奏して楽しむべきです。(中略)指導者のもとで学ぶことは多くの人にとって有効ですが、残念ながらすべての人にとって有効なわけではないと思います」と語る。

同氏は、この1年は「我々にとって困難な年であり興味深い年」でもあったという。学生がほとんどリモート学習に移行して「音楽のレッスンはほとんど実施されなかった」ため、実施されなかったレッスンの一部に代わるものとして、Yousicianは10万人以上の指導者と学生に対してプレミアムのサブスクリプションを無料で公開した。

同時に、コロナ禍で自己啓発全般に注目が集まったことの一環として多くの人が楽器の習得に関心を示すようになり、利用が「大幅な自律的成長」を遂げた。月間ユーザー数は1450万人から2000万人に増え、サブスクリプションは80%増加して同社の2020年の売上は5000万ドル(約54億6500万円)となった。

Yousicianはこれまでに合計で3500万ドル(約38億2500万円)を調達した。今回のシリーズBはTrue Venturesが主導し、新たな投資家であるAmazonのAlexa FundとMPL Venturesの他、Zynga創業者のMark Pincus(マーク・ピンカス)氏、LAUNCH Fund創業者のJason Calacanis(ジェイソン・カラカニス)氏、Unity Technologies創業者のDavid Helgason(デビッド・ヘルガソン)氏、Trivago共同創業者のRolf Schrömgens(ロルフ・シュレームゲンス)氏、Cooler Future創業者のMoaffak Ahmed(モアファク・アフメド)氏、Blue Bottle Coffee Company会長の Bryan Meehan(ブライアン・ミーハン)氏が参加した。

True Ventures共同創業者のJon Callaghan(ジョン・カラハン)氏は発表の中で「Yousicianは10年近くにわたって音楽指導をリードするプラットフォームであり、人々は新たな活力を得てこれまで以上に創造性と音楽の追求に目を向けています。我々は楽器を演奏する喜びと興奮を多くの家庭と家族にもたらす企業およびチームを支援できることを誇りに思っています」と述べた。

トゥール氏は、今回調達した資金をチームの拡大、ブランドマーケティングの向上、製品のローカライズ、音楽アーティストとの関係構築にあてると語った。

カテゴリー:EdTech
タグ:Yousician音楽資金調達

画像クレジット:Yousician

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(文:Anthony Ha、翻訳:Kaori Koyama)

南ヨーロッパのペット向けウェルネススタートアップ「Barkyn」がシリーズAで約10.5億円を調達

Barkyn創業者のAndré Jordão(アンドレ・ジョルダン)氏とRicardo Macedo(リカルド・マセド)氏

ペット用のフードと遠隔獣医サービスを組み合わせたヨーロッパのサブスクリプション「Barkyn」が、フードテック投資家のFive Seasons Venturesから300万ユーロ(約3億9000万円)を調達した。これにより、以前から実施していたシリーズAが800万ユーロ(約10億5000万円)に増え、これまでの調達金額の合計は1000万ユーロ(約13億1000万円)となった。Five Seasons Venturesは、これまでに投資していたIndico Capital Partners、All Iron Ventures、Portugal Ventures、Shilling Capitalに続く投資家となった。Barkynは、Nestléに買収されたTailsや2800万ドル(約30億6000万円)を調達した英国のButternut Boxと同じジャンルの企業だ。

2017年に創業したポルトガルのBarkynは現在、ポルトガル、スペイン、イタリアでサービスを展開し、南ヨーロッパの主要な「ペットウェルネス」ブランドとなることを狙っている。

Barkynによれば、同社のサブスクリプションサービスは「新鮮な肉を使ったヘルシーなフード」と専任のリモートオンライン獣医を提供している。犬の栄養状態に合うようにフードをカスタマイズしていることが顧客を引きつけている部分だという。同社はペット向け抗炎症サプリで商標登録済の「Barkyn Complex」や、ポルトガルの顧客を対象としたペット保険商品も開発した。

Barkynの共同創業者でCEOのAndré Jordão(アンドレ・ジョルダン)氏は発表の中で「栄養や体の状態を考えれば1つですべてのペットに合う製品はありません。我々の知識、既存の製品、継続的な研究開発によってこれを解決します」と述べている。

Barkynにとってはチャンスの扉が開かれている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大し、世界中がロックダウンの辛さと闘う中でペットを飼う人が増えたことは広く知られている。

同社によれば、2020年には南ヨーロッパ全体で四半期ごとに40%ずつ成長したという。

Barkynへの投資に関してFive Seasonsの創業パートナーであるNiccolo Manzoni(ニコロ・マンゾーニ)氏は「ペットを飼う人が多いのに魅力的なデジタルペットウェルネスブランドがない南ヨーロッパにおいて、Barkynは類のない企業です。フードのカスタマイズと遠隔獣医サービス、ポルトガルでは保険も組み合わせることで、顧客にペットの健康と安心を1カ所で提供しています」とコメントした。

ジョルダン氏はTechCrunchに対し、Barkynは既存のペットフードブランドを超えることに挑戦していると述べ、その背景を「テクノロジーを活用したペット市場はどうあるべきかを再考し、ペットフードのサブスクリプションだけではなくペットケアサービスを構築しています。我々は360度全体にわたるエクスペリエンスを開発しました。自分の犬に最適なフードと遠隔医療のサブスクリプションです。我々はモデルを成長させながらも極めて緊密な関係を獲得できます」と語った。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:ペットBarkyn資金調達ポルトガルヨーロッパ

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

南ヨーロッパのペット向けウェルネススタートアップ「Barkyn」がシリーズAで約10.5億円を調達

Barkyn創業者のAndré Jordão(アンドレ・ジョルダン)氏とRicardo Macedo(リカルド・マセド)氏

ペット用のフードと遠隔獣医サービスを組み合わせたヨーロッパのサブスクリプション「Barkyn」が、フードテック投資家のFive Seasons Venturesから300万ユーロ(約3億9000万円)を調達した。これにより、以前から実施していたシリーズAが800万ユーロ(約10億5000万円)に増え、これまでの調達金額の合計は1000万ユーロ(約13億1000万円)となった。Five Seasons Venturesは、これまでに投資していたIndico Capital Partners、All Iron Ventures、Portugal Ventures、Shilling Capitalに続く投資家となった。Barkynは、Nestléに買収されたTailsや2800万ドル(約30億6000万円)を調達した英国のButternut Boxと同じジャンルの企業だ。

2017年に創業したポルトガルのBarkynは現在、ポルトガル、スペイン、イタリアでサービスを展開し、南ヨーロッパの主要な「ペットウェルネス」ブランドとなることを狙っている。

Barkynによれば、同社のサブスクリプションサービスは「新鮮な肉を使ったヘルシーなフード」と専任のリモートオンライン獣医を提供している。犬の栄養状態に合うようにフードをカスタマイズしていることが顧客を引きつけている部分だという。同社はペット向け抗炎症サプリで商標登録済の「Barkyn Complex」や、ポルトガルの顧客を対象としたペット保険商品も開発した。

Barkynの共同創業者でCEOのAndré Jordão(アンドレ・ジョルダン)氏は発表の中で「栄養や体の状態を考えれば1つですべてのペットに合う製品はありません。我々の知識、既存の製品、継続的な研究開発によってこれを解決します」と述べている。

Barkynにとってはチャンスの扉が開かれている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大し、世界中がロックダウンの辛さと闘う中でペットを飼う人が増えたことは広く知られている。

同社によれば、2020年には南ヨーロッパ全体で四半期ごとに40%ずつ成長したという。

Barkynへの投資に関してFive Seasonsの創業パートナーであるNiccolo Manzoni(ニコロ・マンゾーニ)氏は「ペットを飼う人が多いのに魅力的なデジタルペットウェルネスブランドがない南ヨーロッパにおいて、Barkynは類のない企業です。フードのカスタマイズと遠隔獣医サービス、ポルトガルでは保険も組み合わせることで、顧客にペットの健康と安心を1カ所で提供しています」とコメントした。

ジョルダン氏はTechCrunchに対し、Barkynは既存のペットフードブランドを超えることに挑戦していると述べ、その背景を「テクノロジーを活用したペット市場はどうあるべきかを再考し、ペットフードのサブスクリプションだけではなくペットケアサービスを構築しています。我々は360度全体にわたるエクスペリエンスを開発しました。自分の犬に最適なフードと遠隔医療のサブスクリプションです。我々はモデルを成長させながらも極めて緊密な関係を獲得できます」と語った。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:ペットBarkyn資金調達ポルトガルヨーロッパ

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

リモートワークに必要なツールとサポートを提供するFirstbaseが約14億円調達、フィンテックから方向転換

FirstbaseのファウンダーTrey Bastian(トレイ・バスティアン)氏とChris Herd(クリス・ハード)氏(画像クレジット:Firstbase)

将来、 筆者がきちんと頻繁に通勤する可能性はゼロだ。あまりに非効率的である。従業員と雇用主は、リモートワークの問題に関して立場が若干違うものの、新型コロナウイルスのパンデミックは将来にわたり職場環境を揺るがした。新型コロナ以前のノーマルな状態には戻らないだろう。

Firstbase(ファーストベース)は、オフィスに戻らず遠隔地から働き続ける従業員らを支援するために、ソフトウェアとハ​​ードウェアのソリューションを開発して、リモートの従業員に必要なツールとサポートをすばやく提供している。同社は米国時間4月29日、Andreessen Horowitz(アンドリーセンホロウィッツ)がリードする1300万ドル(約14億円)のシリーズAをクローズしたと発表した。B Capital GroupとAlpaca VCもこのラウンドで資本を投入した。TechCrunchがFirstbaseの風を最初に捉えたのは、同社が2020年半ばにAcceleprisのアクセラレーターコホートに参加したときだった。

注目すべきはFirstbaseが、現在特化している製品から始めたわけではないということだ。スタートアップの間では一般的だが、同社もまったく違うものとして生まれた。元々はフィンテック寄りだったが、2018年にリモートワークに関わり始めた。だがそのエクスペリエンスは輝かしいものではなかった、とFirstbaseの共同創業者でCEOのChris Herd(クリス・ハード)氏がTechCrunchに語った。従業員に必要なテクノロジーを提供するのは難しいし、会社を辞めてしまうとそれを取り戻すのも難しいと彼は説明した。

同社はその後、フィンテックへ注ぎ込む資金と時間は少ないままに、リモートスタッフのハードウェアとソフトウェアのニーズをサポートするために開発した社内の技術の一部が幅広い用途を持つ可能性に気づいた。Firstbaseは2019年後半に方向転換し、2020年3月の時点でハード氏はTechCrunchに、同社の順番待ちリストは600社に上ると語った。以来、その数は数倍になった。

同社の製品は二重構造になっている。これは、リモートワーカーが利用するハードウェア資産を企業が追跡・管理するのに役立つソフトウェアサービスだ。また、ハードウェアにソフトウェアをプレインストールしたうえで従業員に渡し、リモートITサポートを提供できるハードウェアサービスでもある。特に、顧客は、FirstbaseのソフトウェアのみをSaaSベースで料金を支払い利用することも、ソフトウェアとハ​​ードウェアの両方を利用することもできる。

Firstbaseの粗利益には2つの源泉がある。ソフトウェア事業はもちろんソフトウェア収入を生み出すが、ハードウェア事業からも粗利益を生み出すことができるとハード氏は説明した。同社のモデルのハードウェア部分は、ソフトウェアコンポーネントに比べ、まだ初期段階にあるように見える。Firstbaseは2020年11月に顧客のオンボーディングを開始したばかりであり、まだ物事を理解する段階にいることが許されている初期のスタートアップだと言える。

TechCrunchはハード氏に、リモートワーカーに必要な機器を提供するのに現在いくらかかるか尋ねた。同氏は、それはさまざまだが2000〜5000ドル(約22〜55万円)の間に落ち着くだろうと述べ、Firstbaseは顧客に対し、そのコストを長期にわたり均等払いで支払うことを可能にする予定だと付け加えた。

会社の今後の見込みは?CEOによると、同社は現在わずか10人の会社で、そのうち3人はパートタイムであり、2021年はスタッフを4〜5倍に増やしたいと考えている。当然、Firstbaseはそのリモートのルーツに立ち返るつもりだ。つまり、単一の地理的地域で従業員を探すことはない。採用予定のスタッフの一部は、ハード氏がインタビューで述べた販売組織に所属する。同社はまた、新しい資本で法人向けのソフトウェア機能を開発し、より大規模な顧客をターゲットにする準備を整える。

FirstbaseがシリーズAでどこまで成長できるのか、そして年末までに投資家から投資をオファーされるのか、注目したい。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:リモートワークFirstbase資金調達

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko MIzoguchi

開発者向け動画プラットフォーム「Mux」が約115億円調達しユニコーンに

わずか8カ月ほど前に3700万ドル(約40億4000万円)の調達ラウンドを完了したビデオAPIのMuxが、さらに1億500万ドル(約114億8000万円)を獲得した。

そのシリーズDはCoatueがリードしたが、そのとき同社の評価額は10億ドル(約1093億円)を超えていたと思われる(Muxは金額を非公開)。既存の投資家であるAccelやAndreessen Horowitz、そしてCobaltも参加し、また新たな投資家としてDragoneerが加わった。

共同創業者でCEOのJon Dahl(ジョン・ダール)氏によると、同社はさらに多くの財源を必要としていたわけではないが、会社の上部と引き続き縁のあったCoatueとその他の投資家たちにその気があり、結局彼らが「ビデオの転換期」においてより迅速な成長を支援するにはさらなる投資が必要、と決めてしまった。

a16zの共同創業者Marc Andreessen(マーク・アンドリーセン)が流行らせた言葉を借りてダール氏は「10年前にソフトウェアが世界を食べていたのと同じように今は、ビデオがソフトウェアを食べている」と述べたた。つまり、それまではデスクやソファーの上で視るものであった動画が、今や至るところにあり、ソーシャルメディアのフィードをスクロールしても、Pelotonでエクササイズをしても必ず動画がある。

「現在は今後5年か10年かかる大きな移行期の最初期です。その間にビデオはあらゆるソフトウェアプロジェクトのメインのパーツになっていきます」とダール氏はいう。

ダール氏によるとMuxはこの移行期によくなじんでいる。なぜなら同社は「ソフトウェアの開発者のためのビデオプラットフォーム」であり、API中心のアプローチによりビデオを迅速にリリースでき、視聴者から見てストリーミングの信頼性も高い。同社の最初のプロダクトはMux Dataと呼ばれるモニタリングとアナリティクスのツールであり、その次がストリーミングビデオのプロダクトMux Videoだった。

ダール氏はこう説明する。「動画プラットフォームを作ってそれをデータファーストで運用したければ、大量のデータとモニタリングとアナリティクスが必要です。私たちはまず最初にデータのレイヤーを作り、次にストリーミングのプラットフォームを作りました」。

同社の顧客にはRobinhoodやPBS、ViacomCBS、Equinox Media、VSCOなどがいる。ダール氏によると、創業した2015年からMuxはデジタルメディア企業の仕事もしているが「メインの市場はソフトウェアだ」と話していた。その頃、動画はほとんどニッチであり「ESPNやNetflixのような企業にしか必要ないもの」だった。しかし2年前からは「動画がコミュニケーションを支える重要な部分」になり「すべてのソフトウェア企業が動画をプロダクトの主役」と考えるようになった。

Muxの創業者たち、Adam Brown(アダム・ブラウン)氏、Steven Heffernan(スティーブン・ヘファーナン)氏、Matt McClure(マット・マクルーア)氏、そしてジョン・ダール氏(画像クレジット:Mux)

当然ながらパンデミックの間、需要が急増した。この1年でMuxのプラットフォームを利用するオンデマンドのストリーミングは300%成長し、ライブのストリーミングは3700%成長、そして売上は4倍に増えた。

「大量の仕事です。2020年の大半は、顧客の急増と会社の規模拡大とプラットフォームへの投資に追われていていました」とダール氏は笑顔でいう。

今回のシリーズDで調達総額が1億7500万ドル(約191億3000万円)になるMuxは、投資をさらに続けるつもりだ。たとえばダール氏の計画ではチームを今の80名から200名に大きくし、買収も検討することになるという。

CoatueのゼネラルパートナーであるDavid Schneider(デビッド・シュナイダー)氏は、声明でこう述べている。「Muxが開発者のコミュニティに的を絞っていることはすばらしい。そして私たちの目に強い印象を残す顧客の維持拡大の様子は、同社のソリューションが強力な価値を提供していることを表しています。この投資でMuxは同社の顧客中心のプラットフォームの構築を継続でき、そして私たちは、ハイブリッドな未来への道を先導するMuxのパートナーであることを誇りとするものです」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Mux資金調達ユニコーン動画制作API

画像クレジット:valentinrussanov/Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)