買取価格比較サイト「ヒカカク!」運営のジラフがミクシィ子会社やメルカリ等から4億円調達——月間140万人以上が利用

買取価格比較サイト「ヒカカク!」やスマートフォンの修理価格比較サイト「最安修理ドットコム」、スマホ特化型フリマ「スマホのマーケット」を提供するジラフは11月2日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資により総額4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回ジラフに出資したのはアイ・マーキュリーキャピタル、グリー、メルカリ、アドベンチャーに加え既存投資家であるドリームインキュベータとポケラボ創業者でジラフ執行役員の佐々木俊介氏だ。

ジラフは8月に「CASH」運営のバンクから数百万円程度の資金調達をしているほか、3月にアドウェイズ、アナグラム、個人投資家から1.3億円を、2015年10月にEast Ventures、TLM、個人投資家から4120万円を調達している。それ以前にもシードラウンドで資金調達をしていて、今回の調達により同社の資本金は約6億円となる。

「ヒカカク!」の月間利用者数が140万を突破

2014年9月に開始したヒカカク!が好調で月間利用者数は140万人を突破。3月の時点では100万人を突破したという話だったので、約半年で1.5倍近く伸びたことになる。

ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏いわく「シブい事業」である修理価格比較サイトの「最安修理ドットコム」も同様に伸びていて、月間利用者数は30万人を超えた。会社全体では3月時点ですでに黒字化をしているという話だったが、事業全体でみても約半年で2倍近く成長しているそうだ。

直近の成長について麻生氏は「SEO経由でのトラフィックの伸びだけでなく、営業サイドやマーケティングサイドなど含めて組織として利益を出せる体制、スピーディーに事業展開できる体制が整ってきたのが大きい」と話す。

ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏

ヒカカク!では査定申込数(見積もり数)が重要な数値となっているが、トラフィックの増加に加えて申込率も増加したことで全体の数値が底上げされているそうだ。麻生氏の話では申込数を最大化するうえで、特にこの半年は細かいサイト改善など含めた申込率の改善施策を実施。結果としてこの申込率が1.5倍〜2倍近くになったという。

申込率を押し上げる要因のひとつとなったのが、一括で最大5社の見積もりが出せる「一括査定機能」だ。「ユーザーが自分で買取業者を選ぶのはハードルが高い。査定したい商材や住んでいるエリアを入力することで、ニーズに合った店舗の結果が複数返ってくるようになった」(麻生氏)。これによりユーザーの使い勝手が向上し、査定申込をする率が高くなった。

スマホ特化型フリマもリリースし、C2C領域も拡大

冒頭でも紹介した通り、ジラフは8月にCASH運営元のバンクから資金調達をしている。今後はCASHとヒカカク!の連携、協業も進めていくほか、買取事業者向けのマーケティング支援や電話代行といったサービスも充実させる予定だ。

とはいえ既存事業についてはかなり自走できる状態であり、今回調達した資金は主に10月に開始したスマホ買取サービスの「スマホのマーケット」に使うという。スマホのマーケットはスマホに特化したC2Cサービスではあるが、ジラフが間に入って動作チェックや品質サポート、個人データの削除などを行い安全面を担保していることが特徴だ。

今回のラウンドには複数の事業会社が新たに参加しているが、既存の価格比較サイトの伸びを評価している投資家と、C2Cの新サービスを評価している投資家がいるそう。ちなみにメルカリはスタートアップへの投資スキームである「メルカリファンド」を7月に打ち出しており、今回の発表に合わせてサイトも立ち上げている。先日自社の傘下に入れたLabitの「ブクマ!」のように、特化型のC2Cサービスとしてジラフに興味を持ったということだろう。

スマホのマーケットでは購入した端末の修理補償サービスなど未着手だった機能の開発から始めるというが、その先の展開について麻生氏に聞くと「単なるフリマサービスに見えるかもしれないけれど、そこを起点にいろいろな領域に広げていけると考えている」と話してくれた。

デート率の高さがウリ、第3世代のマッチングアプリ「Dine」提供元が1.5億円を調達し日本版リリース

マッチングアプリ「Dine(ダイン)」をアメリカ、カナダで展開するMrk&Coは11月1日、結婚相談所を運営するパートナーエージェントおよびベンチャーユナイテッドを引受先とした第三者割当増資と、日本政策金融公庫からの資本制ローンにより、総額約1.5億円を調達したことを明らかにした。内訳は非公開だが、パートナーエージェントが1億円を出資しているという。

同社はこれまでサイバーエージェントベンチャーズとiSGSインベストメントワークスから約4000万円を調達していて、累計の調達総額は約1.9億円。 今回の調達に合わせてDineの日本版を正式にリリース、まずは東京から始めて順次エリアを広げていく予定だ。

「実際にデートできること」にコミットしたマッチングアプリ

Dineは「直接会うこと」にフォーカスをしたマッチングアプリで、2016年3月にアメリカとカナダでリリースされた。海外から展開を始めていたが、提供元のMrk&CoはDeNA出身の上條景介氏と森岡崇氏が創業した日本発のスタートアップでオフィスも渋谷にある。

日本国内でもマッチングアプリが普及し始めているが、Dineも仕組み自体はシンプルで割と一般的なものだ。毎日定刻にユーザーがレコメンドされ、気に入った相手にはデートのリクエストを送る。そして双方がリクエストを送ってマッチングした場合には個別でメッセージをやりとりし、実際に会うという仕組みになっている。

特徴的なのは、よく見ると相手の顔写真の下に3件のレストラン写真が表示されていること。Dineでは全ユーザーが登録時に自分が行きたいレストランを3件選ぶところから始まり、相手にリクエストを送る際には「どのレストランで会いたいか」を選ぶ仕様になっている。

写真左からレストラン選択画面、ホーム画面、デート日程調整画面

つまりマッチングした時点では、すでに相手と「このお店で会いたい」ということまで具体的に決まっているわけだ。今回リリースした日本版ではまず恵比寿と銀座でそれぞれ50店舗ずつ、合計100店舗のレストランが対象となる。

「アメリカで人気のTinderBumbleはマッチングはするものの、実際に会える確率が低い。大きな要因として、必ずしも婚活や恋活を目的にしている人ばかりではなく目的意識がバラバラだということがある。そしてマッチング後に相手とデートするためには、メッセージスキルが必要で手間もかかるなど障壁が高い。Dineでは実際に会うことにフォーカスしていて、そのために障壁となるものを取り除くことを徹底的に意識している」(上條氏)

最初にレストランを選ぶという設計もそうだし、マッチング後のメッセージ画面にもこだわりが見える。Dineではデートのスケジュールを提案するフォーマットが組み込まれていて、候補日を選択するだけでデートの提案ができる。

当初は自由にメッセージを送れる仕様だったが、それでは脱線してしまったりコミュニケーションが上手くいかないケースがあった。そこでフォーマットを取り入れたところ、デートに行く確率が20%から40%まで跳ね上がったそうだ。

「オンラインではそこまで印象が良くなかったが、実際に会ってみるとすごくいい人だったということは恋活に限らずよくあること。メッセージが苦手だとか、オンラインの人格だけで人が評価されてしまうのは双方にとって損失。Dineではまずは短時間でも実際に会ってみることを大切にしている」(上條氏)

結婚相談所の運営企業から出資を受け、将来的には業務提携も

写真左が代表取締役の上條景介氏、右が取締役CTOの森岡崇氏。

Dineを立ち上げた背景には上條氏が前職時代にカナダに赴任した際の体験も関わっている。当時はオンラインの掲示板を通じて現地にいる日本人との繋がりが広がっていったこともあり、オンラインで人と出会うという体験にポジティブな想いがあったそうだ。

上條氏は業界の変遷も踏まえて、Dineをサードウェーブデーティングアプリ(第3世代)と表現する。

第1世代は1995年にリリースされたマッチングアプリのパイオニア的存在でもあるMatch.comのように、身長や年収など求める条件を入力し、条件に合った人を検索してマッチングするサービス。そしてスマホで使うことを想定し、第1世代の操作性を改善しながらよりカジュアルに使えるようにしたのがTinderを代表とする第2世代のアプリだ。

MAUが5000万人を超えるとも言われるTinderを筆頭に、現在北米で主流となっている第2世代のアプリだが、上述したようにユーザーの目的がバラバラなため真剣に出会いを求めるユーザーの中には不満を持つ人もいるそう。上條氏も複数のマッチングアプリを使う中で「実際に会う」というところに課題を感じ、そこにフォーカスしたDineの開発に至った。

リリースしてから約1年半が経つが、特にデート率(会話が始まってから実際にデートに行く確率)が40%と高く、それに伴ってDAUや売上といった指標も毎月120~150%ほど成長しているそう。創業者の2人はDeNAでソーシャルゲームの開発に携わってきたメンバー。データを基に細かい改善を日々繰り返していて成長の兆しが見えてきたこともあり、その勢いを加速するため資金調達に踏み切った。

今回はVCに加えて結婚相談所を運営するパートナーエージェントからも出資を受けている。具体的な話は今からとのことだが、相談所やイベント運営のノウハウを活用した新サービスなど、将来的な業務提携も考えているそうだ。

「TinderのMAUや会員数を越えようとは思っていない」と上條氏が話すように、Dineでは「デートに行ける」という部分にコミットしながら、今後アプリのグローバル展開を進めていくという。

みん食コミュニティサイトの「KitchHike」がメルカリなどから2億円調達

食べる人が好きな人をつなぐ“みん食”コミュニティサイトの「KitchHike」を運営するキッチハイクは10月31日、Mistletoeメルカリ東京神奈川イノベーション応援1号投資事業有限責任組合ベンチャーユナイテッドから総額2億円を調達したと発表した。

2013年5月にリリースされたKitchHikeは、複数人が集まって食事をする料理イベントの開催、検索、参加ができるコミュニティサイトだ。参加者同士の会話を楽しんだり、開催者からおいしい料理のレシピを聞いたりできる料理イベントを簡単に開催し、その参加者を募ることができる。

イベントを主催して料理を提供するユーザーである「COOK」が、KitchHikeと提携するレンタルスペースや飲食店のキッチンを利用した料理イベント(「Pop-UP」と呼ぶ)を企画する。イベントに参加したいユーザーの「HIKER」たちはKitchHike上から気になるPop-UPを検索し、参加登録をするという流れだ。

僕と同じく1人暮らしのTechCrunch Japan読者は理解してくれると思うけれど、1人で食べる食事ほど寂しいものはない。食事は“楽しむ”ものというより、ただ腹を満たすだけの行為という感覚になっている人も少なくないはず。KitchHikeを使えば、そんな人も料理の楽しさを再発見することができるだろう。

これまでにKitchHikeを通して開催されたイベントには累計で1万人のユーザーが参加した。

KitchHikeのマネタイズは手数料モデルで、HIKERからはイベント参加料の5%を、COOKからは20%を手数料として受け取っている。例えば、イベントの参加料が1000円だった場合、HIKERは1000円×5%の1050円を支払い、COOKが受け取る金額は1000円から20%の手数料を差し引いた800円となる。

KitchHikeは今回調達した資金を利用してエンジニアやカスタマーサポートなどの人材採用を行い、事業の拡大を目指すとしている。具体的な内容はまだ不明だが、今回のラウンドに参加したメルカリが運営するフリマアプリの「メルカリ」やコミュニティアプリの「メルカリ アッテ」とも連携を検討しているという。

ロボアドバイザー「THEO」を提供するお金のデザイン、NTTドコモなどから7.8億円調達

AIを活用した資産運用サービスの「THEO」を提供するお金のデザインは10月31日、NTTドコモ第一生命保険、大垣共立銀行グループのOKBキャピタルを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額7.8億円を調達したと発表した。

独自のアルゴリズムに基づき、それぞれのユーザーに最適な資産運用を提案する「ロボアドバイザー」が近年注目を集めている。お金のデザインが提供する「THEO」もその1つ。ユーザーの年齢や金融資産などのデータをもとに、約6000種類以上のETF(上場投資信託)の中から最適な組み合わせを提案し、実際に運用まで行うというサービスだ。

スマホから手続きが完了する、1万円から資産運用ができる、運用報酬も年率1%〜で低コストといった手軽さが特徴で、20〜30代の若年層からの支持を集めている。

今回の資金調達で注目すべきなのは、投資家リストにNTTドコモの名前が加わっている点だ。2017年7月に実施した新生銀行からの5億円の資金調達など、これまでは金融機関との関係を深めてきたイメージの強いお金のデザイン。その分、同社がNTTドコモからの出資を受けた意図は気になるところだ。

実は、NTTドコモが2017年4月に発表した中期経営計画「beyond宣言」にそのヒントは隠されている。

beyond宣言のなかでも特に注目を集めたのは、今後同社がFintech分野に注力していくという部分。これまでにも取り組んできた決済や送金の分野以外にも、投資やレンディングの分野にも注力するとしている。また、投資分野に関しては「ロボアドバイザー」という言葉が明記された。

NTTドコモはこの中期経営計画を進めるにあたり、ロボアドバイザー活用におけるパートナーとしてお金のデザインを選んだわけだが、残念ながらその具体的な共同案についてはまだ分からない。お金のデザイン代表取締役の中村仁氏からも明確な答えは得られなかった。でも、これが”スタートアップ×大企業”という歓迎されるべき取り組みの1つであることは確かであり、今後も両社の取り組みには注目していきたいところだ。

小学生のためのプログラマブルロボットで成功しているWonder WorkshopがシリーズCで$41Mを獲得

ベイエリアのWonder Workshopが今日(米国時間10/30)、4100万ドルのシリーズCラウンドによる資金調達の完了を発表した。同社は、子どもたちが自分のスマートフォンの上でプログラミングでき、コンピューターサイエンスの基礎もある程度習得できる、かわいいロボットをいろいろ作っている。

このラウンドには同社の既存の投資家たちの一部のほか、Tencent Holdings, Softbank Korea, TAL Education Group, MindWorks Ventures, Madrona Venture Group, VTRON Groupなどが新たに参加した。同社は2016年7月にも2000万ドルを調達しており、これまでの累積調達額は78万ドルあまりとなる(出典: Crunchbase)。

何らかのハードウェアを使って、実際に触ったり操作したりできる形で、プログラミングの基礎を子どもたちに教える企業はほかにもいくつかあるが、Wonder WorkshopのCEO Vokas Guptanによると、同社はロボティクスを、子どもたちをさまざまな指示や説明の“サイロ”に閉じ込めるのではなく、それによって友だちの輪を広げられる。

“ロボットだと、複数の人間が自然にコラボレーションできる”、とGuptaは語る。

Wonder Workshopのプログラマブルロボットは全米で12000の小学校が利用している。また同社自身も、子どもたちにSTEMの基礎を教えるためのロボットコンペを主催している。

今後はいくつかの新製品により、同社は対象年齢を今の8-10歳だけでなく、11歳以上のティーンにも拡大しようとしている。

先月200ドルで発売されたCueは、対象を11歳以上と想定している。センサーが多くて、ユーザーはいろんなデータを収集したり、コントロールへの反応を得たりできる。また、さまざまな“アバター”によってロボットの性格や特徴をカスタマイズできる。

Guptaによると新たに得た資金は世界進出の継続および拡大と、今後の新製品開発に充てられる。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

トランスリミットから2年ぶりの新作ゲーム「Craft Warriors」、総額3億円の資金調達も発表

人気スマートフォンゲーム「Brain Wars(ブレインウォーズ)」「Brain Dots(ブレインドッツ)」を生み出したトランスリミットが、2年3カ月ぶりとなる新ゲームタイトルをリリースした。10月30日に、ニュージーランドで先行配信が開始されたのは、スマートフォン向け戦略ゲームの「Craft Warriors(クラフトウォリアーズ)」。LINEとの共同提供で、企画・開発・運営はトランスリミットが、マーケティングをLINEが担当する。

Craft Warriorsは、街の修繕・強化を行いながら、部隊編成、武器の強化などを行い、他のプレーヤーと戦うリアルタイムストラテジーゲーム。3Dモデルを作成できる「クラフト機能」を搭載していて、自分だけのキャラクターやフラッグなどのアイテムが作れるという。

トランスリミットは、2014年1月、サイバーエージェント出身のエンジニア2人が中心となって設立したスタートアップ。2014年5月に初プロダクトとしてローンチした対戦型脳トレアプリのBrain Wars、2015年7月にリリースされたお絵描きパズルゲームのBrain Dotsはいずれも1000万ダウンロード超の人気ゲームとなり、累計で5000万ダウンロードを突破している。海外利用者の比率は95%を占めるそうだ。

トランスリミットでは、Craft Warriorsリリースの発表と同時に、グローバル・ブレインが運営するファンド、およびSkyland Venturesから総額3億円の資金調達を実施したことも公表している。今回の調達は、MOVIDA JAPANおよびSkyland Venturesからのシード資金調達、LINEの投資ファンド、ユナイテッド、East Ventures、Skyland Ventures、Genuine StartupsからのシリーズAラウンド調達に続き、同社にとって3回目の資金調達となる。

東大発コスメの口コミアプリ「LIPS」30万DL突破、運営元が7600万円の資金調達

コスメの口コミアプリ「LIPS」を提供する東大発のスタートアップAppBrew。同社は10月30日、ANRISkyland Venturesフリークアウト代表取締役社長の佐藤裕介氏、PKSHA Technology代表取締役の上野山勝也氏、ほか個人投資家を引受先とした総額7600万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした(実施は5月)。アプリはリリースから9カ月で30万ダウンロードを達成したという。

LIPSの特徴は「よりSNSに近い」使用感だろう。気になるコスメの口コミを探したり、使ったコスメの口コミをシェアすることができるのは、従来のサービスやアプリと同様だが、口コミやコミュニケーションの内容はYouTubeのコスメ動画やInstagramの投稿に近い。他のユーザーのフォローや、口コミにコメント・いいねを付けることができ、気になった商品や口コミは「クリップ機能」で保存しておくことも可能。気に入った商品の購入は、基本的にはAmazonやYahoo!ショッピングなどの外部サイトへ移動して行う。

ユーザーランキングの上位には人気のコスメYouTuberも。10代20代を中心に利用が広がり、現在アプリ内の口コミ投稿は16万件を超えるという。ダウンロード数は冒頭にあるとおり、約9カ月で30万ダウンロード。10月21日にはApp Store無料アプリの総合ランキングで1位を獲得した。

AppBrew取締役の松井友里氏は「主に開発体制の強化と採用に投資していく」と調達資金の用途について説明する。また現在、収入源となっている商品販売のアフィリエイトだけではなく、「広告など、アプリ内でマネタイズできる仕組みも取り入れていく」と松井氏は話している。

ナレッジ共有とポートフォリオで映像クリエイターを支援するVook、提供元が1億円を調達

映像クリエイター向けのプラットフォーム「Vook (ヴック)」を提供するアドワールは10月30日、みずほキャピタル、大和企業投資、みずほ銀行、日本政策金融公庫より総額1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

Vookは近年需要が増している映像コンテンツの制作者を支援するプラットフォーム。現在は映像制作に関する情報共有サービス「Vook note」と招待制のポートフォリオサイト「Vook port」を提供している。

Vook noteはクリエイターが現場で直面した課題やその解決方法といったノウハウをシェアするサービス。タグやお気に入り、コメントなど機能はシンプルだが、書き手・読み手ともに映像クリエイターであり、現場で使えるナレッジが蓄積されているという点が価値となりそうだ。

もうひとつのVook portは審査制のポートフォリオ共有サービスで、他ユーザーとのネットワーク作りだけでなく登録者限定のプログラムを通じてスキルアップにも活用できる。

アドワールは2016年にVookを立ち上げ、Webサービスに加えて全国で開催するユーザーイベントや合宿なども通じて、映像クリエイターのコミュニティを作ってきた。現在は国内外のカメラ、編集機材など映像制作のメーカーや販売店とのタイアップも実施している。代表取締役の岡本俊太郎氏は学生時代から映像クリエーター向けのコンテストやミートアップを主催、リアルでのクリエーターの交流などを積極的に行ってきた。その後は自身で映像制作会社を設立。この会社がアドワールの母体となった。

「ネット動画に限らず、これまで以上にたくさんの映像が作られるようになってきている。一方で機材やソフトウェアなどは拡大し、アップデートのペースも速い。そこにナレッジを提供し、いいクリエイティブを作る人を支援する。我々は『 動画時代』の金脈で金を掘るのでなく、ジーンズやつるはしを売るビジネスをしていく」(岡本氏)

今後はカメラや編集だけでなく、CG、音楽、俳優など映像に関わるあらゆるクリエイターにとって快適な制作環境を作ることを目指し、プラットフォーム事業やリアルイベントを加速させていくという。また来年にはVookに有料機能を提供することも検討している。

プロダクトの背景にあるストーリーを伝え、企業とエンジニアをつなげる「Mewcket」が資金調達

エンジニア向け求人アプリ「Mewcket」を提供するMewcket(ハチキューから社号を変更)は10月26日、サイバーエージェント・ベンチャーズファンコミュニケーションズ代表取締役の柳澤安慶氏、ラクスルビズリーチの創業メンバーである河合聡一郎氏を引受先とする第三者割当増資を実施したことを発表した。

調達金額は非公開だが、数千万円規模と見られる。

Mewcketは、エンジニア向けの求人情報を閲覧できるスマホアプリだ。ただ、求人情報だけではなく、CEOへのインタビュー記事などのコンテンツも配信しているので、求人メディアと言ったほうが正確なのかもしれない。

先日TechCrunch Japanでも紹介した「GLIT」など、新興の求人アプリは数多く存在する一方、Mewcketの差別化要因でもある一番の特徴は、掲載されている情報がプロダクトを起点にしているという点だ。

Mewcketでは、採用を行っている企業のプロダクトのストーリーやビジョンを記事コンテンツとして提供する。そして、それに共感したユーザーが企業の情報を「ポケット」と呼ばれるお気に入りに登録し、企業側にはポケットしたユーザーのリストが渡されるという仕組みだ(この段階ではユーザーの個人情報は含まれていない)。

企業はリストを通して、ユーザーが事前に入力した転職意向の度合いや所持スキル(たとえばPythonでの開発歴など)を確認することができる。そのなかに自社に適していると判断したユーザーがいれば、Mewcketのチャットシステムを通してダイレクト・リクルーティングをすることができる。

ここがMewcketのマネタイズポイントだ。Mewcketはユーザーへアプリを無料で提供する一方で、この企業からユーザーへのアプローチ1件ごとに課金する。その課金料は掲載企業ごとに決定されるため非公開ということだが、Mewcket代表取締役の小林奨氏によれば、その金額感は「1件につき数万円程度」だという(別途、約20万円の初期費用が発生する)。

そのほか、Mewcketには「コンシェルジュ」と呼ばれるチャットボット機能もついている。僕が取材時にそのチャットボットを確認した限りでは、これは自然言語処理を駆使したハイスペックなチャットボットではなく、ボットからの問いかけに選択式の答えを返すというタイプだった。

たとえば、過去の閲覧履歴などからチャットボットがある企業の求人情報をリコメンドすると、ユーザーはそれを気に入ったかどうか回答する。「気に入らない」と回答すれば、次はボットがなぜ気に入らなかったのかを聞いてくる。もしユーザーが「規模感が合わない」という選択肢を選べば、次回はもう少し規模が大きな(小さな)企業の求人情報がリコメンドされるという具合だ。

テクノロジーで人材エージェントをリプレース

Mewcketは2017年8月にテスト版をリリースし、参加ユーザーの募集を開始。その結果、約100社の企業と1000名のエンジニアが集まった。2017年12月1日(予定)の正式リリースに向け、現在は新規の受付を停止中だ。また、小林氏はそれまでに有料職業紹介事業の許可を取得する予定だとしている。

Mewcketは2016年8月の創業。リクルート住まいカンパニーの事業開発室を経て独立した小林氏が、「エンジニアの転職市場は超売り手市場であり、かつ転職活動のオンライン化率が高い」という点に着目してMewcketを創業した。

「Mewcketが目指すのは、テクノロジーで人材エージェントをリプレースすることだ。エンジニアが自分のスキルを人間のエージェントに伝えたとき、それに適したおすすめ企業として人間の頭に浮かぶのは、せいぜい10社くらいだろう。スキルセットをもとにした企業とユーザーのマッチングは、人間よりも機械の方が得意な分野だと思う。プロダクトを起点にして企業とエンジニアをテクノロジーでつなげる世界を目指していきたい」(小林氏)

Mewcketのチームメンバー。左から2番目が代表取締役の小林奨氏。ここに1名のエンジニアを加えた総勢5名で運営している。

クリエイター向け入力デバイス「O2」がMakuakeで販売開始、ペンタブとの組み合わせで作業を効率化

クリエイター向けの入力デバイスを開発するBRAIN MAGICは10月25日、新型入力デバイス「O2」をクラウドファンディングサービスMakuakeで販売開始した。

映像制作やデザイナー、イラストレーターなどのクリエイターは、従来のマウス・ペンタブレット+キーボードの環境ではキーボードのショートカットキーやUIを使って制作ソフトの操作を行うことが多い。O2はマウスやペンタブレットと組み合わせて使うことで、キーボード操作の煩わしさを置き換え、作業を効率化するための新しい入力デバイスだ。

操作はO2を「倒す」「回す」「押す」ことで行う。「Illustrator」や「Photoshop」、「Premiere」などのAdobe製品のほか、「SAI」、「CLIP STUDIO」、「Avid」、「MediBang Paint」などのソフトに対応。よく使う機能やショートカットキーを最大256種類、設定することができる。ジョイスティック操作・マウス操作も可能で、画像加工ソフトの「ブラシ濃度変更」や映像制作ソフトの「コマ送り・コマ戻し」など、連続的な値を上下させる操作も、手を離さずに行うことができる。エルゴノミクスデザインを採用したことで、手や腕への負担も軽減できるという。

ダイヤル式のコントローラーとしては、Microsoftが2016年10月に発表したSurface Dialが既にあり、1万円強で買うことができる。O2は現在、限定数・先着順のクラウドファンディング特価2万7800円(税込)で販売されていて、Surface Dialと比べると結構高く感じる。ただO2は、Windows 10だけではなくOS Xにも対応しており、Windows 8/Windows 7でも動作確認されている。またSurfaceシリーズに特化したSurface Dialと違って、ペンタブ環境との併用にも適している点は、既存のハード・ソフト資産を生かしたいクリエイターにとっては魅力的だろう。またBRAIN MAGICでは、O2の価格設定について「プロのクリエイター向けのハイエンド製品として、妥協なく性能を追求した結果」と説明しており、製品の水準の高さにはかなりの自信があるようだ。

BRAIN MAGICは2016年2月の設立。代表取締役の神成大樹氏は、自身もイラストレーターとして活動していた人物だ。2015年に、デジタルハリウッド大学院とMakuakeによる「アイデア実現支援プロジェクト」に企画が採用され、それから2年間、新しい入力デバイスの試作とフィールドテストを重ね、7世代20種以上のプロトタイプの制作を行ってきたという。

BRAIN MAGICは9月27日、ウィルグループデジタルハリウッドABBALabを引受先とする、数千万円規模の第三者割当増資を実施したことを明らかにしている。同社では今後、O2の開発・生産を進めるほか、AIを活用したクリエイターの作業分析を行うソリューションも準備中とのことだ。

マンションの1室から生まれた完全栄養パスタ、ベースフードが1億円調達

完全栄養食品の「BASE PASTA」などを提供するベースフードは10月25日、グローバルブレインを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額1億円を調達したと発表した。

同社が提供するBASE PASTAは、パスタ麺の生地にチアシードなどの栄養食品やビタミン群を練り込むことで、1食に必要な31種の栄養素をすべて含むことに成功した完全栄養食品だ。

ベースフードは2016年10月にMakuakeでクラウドファンディングを開始。目標金額の50万円に対し、その2倍となる約100万円を集め資金調達を成功した。

D2Cのサブスクリプションモデルで販売

ベースフードはD2C(Direct to Customer)と呼ばれるビジネスモデルを採用しており、自社で開発した製品を自社で販売している。基本的にBASE PASTAをスーパーなどに卸すことはせず、会員となったユーザーに定期販売するというモデルだ(一部レストランでは取り扱いもある)。

考えてみれば、健康食品とサブスクリプション型のビジネスは昔から相性が良いように思う。テレビショッピングでよく目にする青汁食品も、サブスクリプションモデルだ。

ベースフード代表取締役の橋本舜氏は、「健康食品は継続的に食べるからこそ意味があるもの。パスタという主食の一部を完全栄養食品にすることで、主食から健康を当たり前にしたいと思っています」と語る。

BASE PASTAを定期購入するユーザーは現在300人。平均して、1人あたり毎月15食をリピート購入しているという。

ベースフードは今回調達した資金を利用して、PASTAにつづく新商品の開発、マーケティング施策、メンバーシップサービスの充実を進める。これまで提供してきたパスタ麺だけでなく、パンやラーメンを完全栄養食品にした新商品を開発中なのだという。

また、同社はアメリカへの海外展開の準備も進めている。アメリカでも主食としてよく食べられているパスタを軸に、現地生産を行いながらの展開を考えているそうだ。海外での価格も、日本と同様に1食500円程度での販売を想定しているという。

新商品開発は今でもマンションで

ベースフードは2016年4月の創業だ。DeNA出身で食品開発のノウハウを持たなかった橋本氏。当時は彼が住んでいたマンションの1室で、さまざまな種類の小麦粉や栄養素を混ぜあわせ、試行錯誤しながらBASE PASTAを作り上げたそうだ。

でも、それは今でも変わらない。彼らは橋本氏が当時購入した個人用のパスタ製麺機を使い、さまざまな栄養食品を組み合わせ、目黒区にあるマンションの一室で新商品の開発に取り組んでいる。

もちろん最終製品の生産は製麺工場で行っているけれど、彼らが生み出す完全栄養食品は今でも“手作り”だ。

今も現役の新商品開発セットと、代表取締役の橋本舜氏

手のひらサイズの瞬間音声翻訳デバイス「ili」が5億円調達

ウェアラブル音声翻訳デバイス「ili(イリー)」を開発するログバーは10月24日、ティー・ワイ・オー(以下、TYO)、フィールドマネージメントAd Hack Venturesを引受先とする第三者割当増資を実施したと発表した。調達金額は5億1750万円だ。

ログバーは「STREAM」という独自の瞬間翻訳技術(最速0.2秒)をもち、それを応用したウェアラブル音声翻訳デバイスのiliの開発、販売を手がけるスタートアップだ。

iliには旅行に特化した辞書が搭載されており、旅行先でのユーザーの言葉をその国の言語に翻訳してくれる。インターネットへの接続は必要なく、手のひらに収まるサイズだから、どこにでも持ち歩いて使うことができる。

旅行に特化ということでビジネスシーンでの翻訳は苦手ということだが、その分、旅行シーンでは高精度な翻訳が可能だという。

また、デバイスには専用アプリが搭載されていて、ログと音声データをサーバーが取得して機械学習を行うことで、継続的な翻訳精度の向上がなされる仕組みになっている。

現在、言語は日本語、英語、中国語、韓国語の4ヶ国語に対応中だ。

今回のラウンドに参加したAd Hack Venturesは、広告制作のTYOと戦略コンサルティングのフィールドマネージメントが共同で運営するVCだ。

ログバーは今後、Ad Hack Venturesからの資金的な支援だけではなく、TYOからの広告・プロモーション面での支援、およびフィールドマネジメントによる事業成長のサポートを受けるとしている。

オンラインで契約書の作成から締結まで可能、クラウド契約サービスの「Holmes」が資金調達

法務系クラウドサービス「Holmes」を提供するリグシーは10月24日、500 Startups Japanを引受先とする第三者割当増資を実施したと発表した。調達金額は非公開だが、数千万円規模だという。

Holmesは、クラウド上で企業間の契約書の作成、締結、管理までを一括して行えるSaaSサービスだ。サービス上には弁護士が作成した様々なタイプのテンプレートが用意されているほかそれらの文言を自由に編集することでオリジナルの契約書を作成することが可能だ。

土地や建物の売り買い、担保の譲渡などの取引関係や、労務関係のものまで200種以上のテンプレートが利用できる。

作成した契約書はサービス上から直接Eメールを通して契約相手に送ることができる。受け取った企業がメールに記載されたリンクから契約書の内容を確認し、承認することで契約が締結される。

通常、紙ベースの契約書で締結を完了させようとすると、承認フローを含めて1〜2週間程度の時間がかかってしまうこともある。その一方、締結までのフローをすべてオンラインで完結できるHolmesを使えば、その時間を大幅に短縮することができる。

Holmesは2017年8月にサービスを正式ローンチ。リグシー代表取締役の笠原健太氏は、いざローンチしてみると意外な顧客層からの反響が大きかったと話す。

「当初は、コストや時間的な面から契約書の作成を避けてきた中小企業やスタートアップをターゲットとして想定していました。しかし、ローンチしてみると、意外にも大企業からの問い合わせが多かったのです」(笠原氏)

大企業ともなれば、様々な企業と契約を交わす機会も多い。しかし、その数が多ければ多いほど管理が煩雑になってしまう。その点、オンラインで契約書を締結でき、その後の管理もサービス上で行えるHolmesは大企業にもウケたようだ。

現在Holemsは、月額無料で契約書ごとに都度購入する「Freeプラン」、月額980円で契約書を作成し放題の「Standardプラン」、契約フローや権限の管理までを行いたい大企業向けの「Enterpriseプラン」を用意している(料金は個別見積もり)。

自身も弁護士である笠原氏に聞けば、契約書の作成を弁護士に依頼すると1通3〜5万円ほどの費用がかかるというから、この料金設定は十分に魅力的だと言えるだろう。

創業は「裁判をなくしたい」との想いから

今回の取材はリグシーのオフィスも兼ねる法律事務所で行った。そこはオフィスビルが立ち並ぶ赤坂見附の中心地にあって、巨大な円卓で取材をするなんていうスタートアップではちょっとないような、立派で豪華なオフィスだった。普僕は普段マンションの1室で取材をすることも多いものだから、最初、場所を間違えたと思い一度エレベーターを降りたくらいだ。

普通なら現在の成功に甘んじてしまいそうなものだけれど、その笠原氏がなぜスタートアップを立ち上げようと思ったのだろうか?

「もともと弁護士として自分の法律事務所を立ち上げたのは、『この世から紛争裁判をなくしたい』という想いからでした。裁判は費用もかかるし、それまで取引相手だった相手方との関係も崩れてしまう」と笠原氏は語る。

「紛争裁判が起こる一番の理由は、面倒くさいだとか作成の仕方が分からないなどの理由で契約書を作成しないことです。だから、今度は『契約書を作らない理由をなくしたい』という想いでリグシーを創業しました」(笠原氏)

それまではスタートアップ業界とはかけ離れた業界で暮らし、もちろんSaaSサービスの開発ノウハウもなかった笠原氏は、当初は外部企業と協力しながらHolmesをつくり上げ、2017年3月にリグシーを創業。現在は自社の開発メンバーも含む11名でリグシーを運営している。

東工大発・手術支援ロボットベンチャーのリバーフィールドが総額11.5億円を調達

東京工業大学発の医療機器ベンチャー、リバーフィールドは、第三者割当増資による資金調達の実施を明らかにした。同社は7月末、芙蓉総合リース三恵技研工業を引受先として、合計5億円を調達。10月18日には、SBIインベストメント東レエンジニアリングジャフコBeyond Next Venturesの各社または各社の運用するファンド等を引受先として、第三者割当増資を実施。一連の調達による調達資金は総額11.5億円となる。

リバーフィールドは、東京工業大学で長年研究が行われる流体計測制御技術をベースに、東京医科歯科大学の協力を得て研究開発を進めてきた、手術を支援する医療機器を開発・販売する大学発ベンチャー。2012年に文部科学省の大学発新産業創出拠点プロジェクト(START)に採択され、2014年5月に設立された。

リバーフィールドは現在、空気圧で駆動し、術者のヘッドセンサーの動きに連動して操作ができる内視鏡ホルダーロボット「EMARO」を製品化し、販売している。さらに遠隔手術において「手術の操作感」のフィードバックを術者へ返すシステムなど、手術支援用ロボットの研究開発を進める同社では、今回の資金調達、業務提携をもとに、次世代の医療機器の開発を促進させるとしている。

エッジ処理向けの深層学習モデルを開発、LeepMindがIntel Capitalなどから11.5億円調達

企業向けのディープラーニング・ソリューション「JUIZ DoT」などを提供するLeepMindは10月23日、合計7社を引受先とする第三者割当増資を実施し、総額11.5億円の資金調達を完了したと発表した。

投資家リストは以下の通り:

LeapMindは、高い処理能力や高電力を前提としたこれまでのディープラーニング(深層学習)とは違い、小さなコンピューティングリソースでも動くような計算処理を圧縮した独自モデルの開発を行うスタートアップだ。

通常、ディープラーニングというと大きなコンピューティングリソースを利用したものを想像する人が多いと思う。たとえば、人間のプロ囲碁棋士を打ち負かしたことで話題になったAlphaGoにはCPU1202個とGPU176基がものリソースが利用されていた。

もちろん、そんな巨大コンピューターをいちいち移動させたり色々な場所に配置したりする訳にはいかない。だから、処理を行うサーバーは離れた場所に置かれ、データを取得する端末とネットワークを介して通信することになる。いわゆるクラウドコンピューティングだ。

クラウドのメリットは、たとえ端末自体の処理能力が低くても、外部のリソースを活用することでディープラーニングのような複雑な処理ができること。逆にデメリットとして挙げられるのは、離れた場所にあるサーバーと通信を行う以上、処理結果が返ってくるまでに多少の遅延が発生してしまう点だ。

でも、人のいのちに関わる自動運転の分野などでは、そのような遅延は許されない。そこで自動運転の発展とともに注目され始めているのがエッジコンピューティングだ。これは、端末の近くにサーバーを分散配置することで遅延を少なくするというもので、クラウドとは異なる発想をもつコンピューティング技術だ。

エッジコンピューティングで利用できるリソースは限られている。巨大なコンピューターをクルマに積むことなんてできないからだ。すこし前置きが長くなってしまったけれど、LeepMindはそんな小さなコンピューティングリソースでもディープラーニングを行えるよう、計算量を圧縮した独自モデルの開発をしている。

従来モデルの500分の1のサイズ、10倍の処理速度

LeepMindによれば、同社の独自モデルはケンブリッジ大学が開発した「SegNet」と比べて500分の1のサイズでありながら、精度は5%ほどの低下に留めることに成功したという。また、LeepMindが提供するSaaS型ディープラーニングサービスであるJUIZを利用してFPGA(参考)上に専用回路を構築することで、CPUでの処理に比べて10倍の速度で処理を完了することができるという。

また、FPGAに構築されたモデルは従来のものに比べて省電力であり(約12分の1)、電力が限られたIoTデバイスでもディープラーニングが行えるように開発されている。

LeepMindが掲げる「DoT(Deep Learning of Things)」という言葉のとおり、エッジ上で精度の高いディープラーニングを行うことが可能になれば、自動運転だけでなく、ドローンに高度な画像認識モジュールを搭載するなど様々なことが可能になりそうだ。

今回のラウンドには米国のIntel Capitalがリード投資家として参加しているけれど、彼らは注力分野としてAI、FPGA、IoT、自動運転などを挙げている。それを考えれば、LeepMindはIntel Capitalにとって絶好の投資先だったのかもしれない。

LeepMindは今回調達した資金を利用して、「ソフトウェアとハードウェアの両領域におけるソリューションの研究開発、またそれに伴う世界中からの優秀な従業員の雇用、さらには海外を含めた事業開発/営業基盤の拡大に充当する予定」だとしている。

過去に、同社は2016年8月のシリーズAで3.4億円を調達している。

人気シェフ監修のミールキット「Chefy」提供元が数千万円規模の資金調達

料理に必要な素材や調味料とレシピが一体になったミールキット。近年このミールキットを自宅にデリバリーするサービスが注目を集めている。6月末に上場したBlue Apronを筆頭に、関連するサービスも多い。直近ではベルリンに拠点を置くHelloFreshが上場間近と話題だ。

日本でも情報番組でミールキットの特集が組まれたり、新規でサービスをリリースする企業もでてきたりと少しずつ盛り上がり始めている。

人気シェフが手がけるミールキットを宅配する「Chefy(シェフィ)」を提供するシェフィも、この市場でサービスを展開する1社。同社は10月16日にKLab Ventures Partnersとエウレカ共同創業者の赤坂優氏から資金調達を行ったことを明かした。金額は数千万円規模だという。調達した資金をもとに人材の拡大を進める。

Chefyは2017年6月にリリースされたミールキットサービスで、全てのレシピを都内有名店のシェ
フが考案していることが特徴。素材や調味料など厳選された食材をレシピ通りに調理すれば、自宅でもレストランのようなメニューが楽しめる。「楽しく作って美味しく食べる」がChefyのコンセプトであるため、カット野菜は不使用。珍しい部位の肉など普段扱う機会が少ない食材も提供している。

料金プランは1回あたり1メニュー×2人前で3500円のプランと、2メニュー×2人前で6000円(いずれも税別)のプランの2種類。頻度は毎週、隔週、月1回の定期宅配がベースとなるが、定期宅配はキャンセル可能で特定のメニューのみ宅配することもできる。現在の配送エリアは北海道、四国、九州、沖縄を除く各都道府県で離島は対象外となる。

冒頭でも紹介した通り、国内でも少しずつミールキットサービスを手がける企業の数が増えてきた。食品ECの大手ではオイシックスドット大地が「Kit Oisix」を、らでぃっしゅぼーやが「私が仕上げる10分キット」を提供。スタートアップでは5月に7000万円を調達したブレンドの「TastyTable」がある。

加えて直近でも「ごちクル」運営のスターフェスティバルから「ごちレピ」、紀ノ国屋から「グルマンセット with KINOKUNIYA」、シャープから「ヘルシオデリ」が公開。セブン&アイとアスクルが11月28日からスタートする生鮮EC「IYフレッシュ」でもミールキットを扱う予定だ。

ただしシェフィ代表取締役の川野秀哉氏によると、国内でミールキットとして紹介されているものでもそのコンセプトは大きく異なるという。「日本では料理の手間を削減したり、簡単で手頃なことを売りにしているサービスも多い。Chefyの場合は時短などではなく食事をより楽しむ体験や、ライフスタイルを提供したいというのがコンセプトだ」(川野氏)

川野氏自身が前職でレストランプロデュースに関わっていたことに加え、シェフィにはフランスの星付きレストランで修行していたメンバーもいる。その知識やネットワークも生かして、スーパーなどではなかなか手に入らないような食材も提供できるそうだ。

「(リリースから4ヶ月ほど経つが)普段はあまり料理をしない男性にも使われるなど、新しいライフスタイルを提供できるのではという手応えはある。時短目的でミールキットを検討している人には合わないかもしれないが、毎日ではなくても特別な日にミールキットを活用するという新しい価値観や市場を作っていきたい」(川野氏)

「競合はフィットネスジム」遊休農地を活用した貸し農園を運営するアグリメディアが2.5億円を調達

サポート付き貸し農園「シェア畑」をはじめ農業関連のサービスを複数手がけているアグリメディア。同社は10月20日、グロービス・キャピタル・パートナーズを引受先とする第三者割当増資により総額2.5億円を調達したことを明らかにした。また今回の増資にともなって、グロービスの今野穣氏が社外取締役に就任する予定だという。

アグリメディアは前回2016年12月にSMBCベンチャーキャピタル、ちばぎんキャピタル、事業会社から1億円を調達。それ以前にも2015年9月から2016年4月にかけて事業会社から資本業務提携を通じて1億3700万円を、2013年1月に三菱UFJキャピタルなどから4300万円を調達している。

首都圏中心に70ヶ所の農園を開園、利用者数は1.5万人超え

アグリメディアでは「都市と農業をつなぐ」をコンセプトに、主力事業として「農業体験」「農場人材」「農業流通」の3つを運営している。

  • 農業体験事業 : サポート付き市民農園「シェア畑」、収穫体験付きBBQ「ベジQ」など
  • 農業人材事業 : 農業特化の求人情報・人材紹介サービス「あぐりナビ
  • 農業流通事業 : 道の駅や直売所などを活用した流通プラットフォーム

創業期から行っているのが農業体験事業で、中でもシェア畑がアグリメディアにとって核となっている。シェア畑は使われずに放置されている遊休農地と、農業を体験したい人をマッチングするサービス。

このサービスがユニークなのは単に畑をレンタルするのではなく、農具やナレッジといった作物の栽培に必要なアイテムがセットになっていること。まず野菜の種や苗、肥料、農具、資材が畑に備えられているので自分で準備する必要がない。加えて経験豊富な菜園アドバイザーが週に4回以上畑へ出勤していて、具体的なアドバイスをもらえる。

アグリメディア代表取締役の諸藤貴志氏に話を聞くと、サービス設計時に「ユーザーがサービスを使う際に障壁となりうるものを、徹底して取り除く」ことを意識したそうだ。

「実は都市部でも農業をやってみたいという人は多い。自治体や市民農園が畑を提供しているケースは従来からあったが『畑を貸すから後は全部自分でやってね』ではハードルが高い。そこで手ぶらで行けて、趣味やレジャー感覚で農業を体験できるというアプローチに可能性を感じた」(諸藤氏)

シェア畑は2012年のリリースで現在扱っている畑・農園は約70ヶ所、利用者数も1.5万人を超えた。利用者の数自体も増えているが、そのニーズや用途も広がってきているという。

「近年では法人の利用も増えてきた。福利厚生や会員とのコミュニケーションの場を作る目的で一般企業が活用しているほか、幼稚園や老人ホームでも使われている。中でも最近多いのが飲食店。自社農園として畑をレンタルし、ベビーリーフなど育てた野菜を店舗で提供するという形だ。自社で直接農家とやりとりをするのは敷居が高いということもあり、シェア畑を活用いただいている」(諸藤氏)

個人利用者も夫婦やファミリーからシニア層まで幅広いため、中上級者向けの農園などニーズに応じたサービスの提供も始めている。

中上級者向けの「 シェア畑Masters 」

今回諸藤氏の話を聞いていて興味深かったのが、フィットネスジムをベンチマークにしているという話だ。菜園アドバイザーがついて野菜作りを継続的にサポートしていく仕組みや、サービス設計などは特に参考にしている。立地や条件によっても異なるがシェア畑の料金は月額8000円から9000円が多く、実際にフィットネスと比較しているユーザーも少なくないという。

「ユーザーからは『シェア畑の場合は2人で月額9000円だからいいんだよね』という声もある。空いた時間にジムで体を動かすか、畑で農作業をやりながら体を動かすか。趣味として農業をやるというライフスタイルをさらに広げていきたい」(諸藤氏)

農業プラットフォームの構築や地方活性事業を本格化

アグリメディア代表取締役の諸藤貴志氏

アグリメディアは2011年に住友不動産出身の諸藤氏が創業したスタートアップ。前職時代に貸し会議室の新規事業を手がけた経験や、起業家である兄の影響もあって起業を志した(諸藤氏の兄はエス・エム・エス創業者の諸藤周平氏)。

変化が大きい業界や課題が大きい業界で事業機会を探った結果、農業領域で起業することを決意。実家が専業農家である友人とともに事業を始めた。当時から農業の収益を上げていくためには都市部の人を巻き込む必要性を感じていたそうで、目をつけたのが趣味やレジャーとして農業を体験するというアプローチだ。

最初に立ち上げたのは農業体験イベントプラットフォームの「ノウジョウシェア」。そしてノウジョウシェアを運営する中で遊休農地が増えていることを実感し、農業体験と結びつける形でサービス化したのがシェア畑だ。2017年4月には農業分野に特化した人材事業を運営するアグリ・コミュニティを子会社化するなど、近年は農業体験だけでなく人材や流通事業にも力を入れている。

アグリメディアがこれから力を入れていくのは、ITを活用した農業プラットフォームの構築と地域活性事業だ。

農業プラットフォームについては、シェア畑を運営する中で蓄積されてきたデータを活用した栽培ナレッジをツールとして生産者に提供していく。加えて地域の道の駅や直売所と都市住人をつなぐ流通プラットフォームを準備している。

「道の駅や直売所では余った野菜が廃棄されたり、農家が自分たちで消費したりすることも多い。POSデータを活用しながらこの直売所と野菜を買いたい人を直接繋ぐプラットフォームを作る。個別の農家とユーザーをつなぐサービスはあったが、それでは物流コストや手間の問題など難しい部分もある。道の駅や直売所は日本全国の農産物流通額の16%を担い、規模は約1兆円。この領域にはまだ成長余地がある」(諸藤氏)

またアグリメディアには自治体から遊休農地の活用や事業サポート、農業人材の呼び込みなどの問い合わせが集まっているという。この地域活性事業も手がけながら「農業の収益性改善に繋がるサービスを複数扱うプラットフォーマー」を目指していく。

次世代パーソナルモビリティ開発のWHILLがMistletoeと資本提携、スマートモビリティ社会の実現に向けて協業

次世代パーソナルモビリティを開発するWHILLは10月19日、孫泰蔵氏が代表を務めるMistletoeと資本提携を行ったことを明かした。金額は非公開。WHILLでは調達した資金を研究開発およびマーケティング強化に用いるほか、未来のスマートモビリティ社会の実現に向けてMistletoeと協業していくという。

昨年のラウンドで約20億円、累計では約30億円を調達していてハードウェアスタートアップの中でも注目度の高いWHILL。日産自動車出身のCEOの杉江理氏を始め、ソニー、トヨタグループ、オリンパスなどメーカー出身のエンジニアを中心とするチームで、TechCrunch Tokyo 2012のスタートアップバトルの優勝者でもある。

同社では2014年9月より「WHILL Model A」、2016年7月よりWHILL Model Aの仕様を一部改良した「WHILL Model M」の一般販売を開始。そして2017年4月には普及価格版の「WHILL Model C」を発表し、より広範なユーザーに同社のプロダクトを提供していく方針を示していた。

提携したMistletoeは「人口増加や過疎化における人々の移動の問題」を重点課題と捉え、スマートモビリティ社会を実現させる技術を持つスタートアップの支援を行っている。今後は両社のノウハウを持ち寄って、スマートモビリティ社会の構築を見据えた市場創造を目指していく。

またWHILLはパナソニックと共同開発しているロボティクスモビリティ「WHILL NEXT」とWHILL Model Cを10月27日から開催される「東京モーターショー2017」に出展することを発表。会場では活用事例として、早稲田大学とNTTの共同研究による運転支援システムの一例を展示する。このシステムはWHILL Model Cに試乗する来場者の走行データにもとづき、「技能」「心理」の2つの側面から運転を支援するものだという。

秘密主義のMR/AR企業Magic LeapがシリーズDで5億200万ドルを調達

複合現実と拡張現実のスタートアップMagic Leapは、本日(米国時間10月17日)シリーズDで5億200万ドルを調達したことを公表した。このラウンドはTemasekによって主導され、EDBI、Grupo Globo、Janus Henderson、Alibaba Group、Fidelity Managementなどが参加している。ちょうど先週デラウェア州の記録によってMagic Leapの調達は最大10億ドル分に達することが判明していた。

「私たちはTemasekとその他の新しい投資家の皆さんを、Magic Leapファミリーにお迎えすることができて感激しています」と、Magic Leapの創業者で社長であるRony Abovitzはリリースの中で語っている。「私たちはまた、既存の株主の皆さまからの、強力なサポートとパートナーシップに対しても感謝しています」。

Magic Leapが何をしているのかは、いまだに完全には判明していない。しかし同社が、現在行っているもののために、既に莫大な資金(19億ドル以上)を調達したことは確かである。これまでのところ、私たちが知っているのは、同社が”Magic Leap One”という名前のデバイスを発売するだろうということである。そして先月にはBloombergが、Magic Leapが次の6ヶ月程の間にデバイスを「少数のユーザーグループ」に対して出荷するかもしれないと報じている。

先週Equityポッドキャストのキャスターが、Magic Leapの野望について語った内容は、以下のリンクから聞くことができる。

原文へ
(翻訳:sako)

東大発AR/MRスタートアップのGATARIが4000万円の資金調達、新時代のUI/UX開発を目指す

Amazon EchoやGoogle Homeなど、音声で操作するAIアシスタントが現実のものとして身近に広がりはじめた現在。この環境がさらに進化した先には、どんな未来が待っているのだろう。GATARI(ガタリ)は、音声を使ったコミュニケーションが、AR(Augmented Reality、拡張現実)/MR(Mixed Reality、複合現実)環境にも広がることを予測し、MR時代に最適なUI/UXを模索・開発する、東大発のスタートアップだ。

10月18日、そのGATARIが総額4000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はVenture United三井住友海上キャピタルKLab Venture Partners、Nikon-SBI Innovation Fund、および個人投資家。今回の調達はシリーズAラウンドに当たる。

GATARIは2016年4月に設立された、東京大学の学生を中心とするAR/MRスタートアップだ。2016年には、Tokyo VR Startups(TVS)のインキュベーションプログラム第2期に採択された。TVSプログラムでは、しゃべった声がテキストの形になってVR空間上に現れ、話者の母語に翻訳されたものを見ることができるコミュニケーションツール「コエカタマリ」を開発している。

GATARI代表取締役の竹下俊一氏はコエカタマリについて、こう話している。「元々は音声を使った、未来のMRコミュニケーションツールを作りたかった。ただデバイスの発達がまだ進んでいないので、この時点ではMRよりはVRの方が実装が楽だと判断して、VRのコンテンツを制作している。とはいえ、VRでもリアルな空間をCGで用意して、MRっぽい、MRにつながる操作感を実現しようとした」(竹下氏)

プログラム終了後の現在、GATARIでは企業向けにHoLolensなどを使ったMRソリューションを開発するほか、ARKitを利用したスマートフォン向けARアプリを開発中で、年内にもストーリーテリングアプリをリリースしようと準備しているそうだ。「VRでは空間内を“見渡す”ことが必要だが、ARでは見渡さなくてもよい。前にある画面を自分で動かして変わるという、カメラワークが楽しい点が特徴だ。その楽しさを反映したプロダクトにしたい」(竹下氏)

竹下氏は「AR/MRを実現する環境は活発化していて、スマートフォンやHoloLensなどのデバイスも進化している。市場規模までは予想しきれないけれども、ARKitから始まって、スマホ連携のAR/MR環境が実現し、いずれは一体型のウェアラブルMRデバイスが来るだろう」と予測する。「そうした状況に合わせて、声による操作や入力をしっかり使ったプロダクトを用意したい。LINEやSnapchatは、スマホ時代のコミュニケーションのデファクトスタンダードとなった。我々は、MR時代のデファクトスタンダードとなるようなUI/UXを開発・提供したい」(竹下氏)

竹下氏は、現在も東京大学在学中。GATARIを設立後にも東京大学を中心としたインターカレッジのVRサークル「UT-virtual」を立ち上げ、全国のVR関連サークルをつなぐ日本学生バーチャルリアリティ連盟の設立・運営を行うなど、若い世代のVRコミュニティ醸成にも力を入れている。

「今回の調達では、エンジニアやデザイナーに加え、ユーザーへのヒアリング体制も強化しようと考えている。その中でも、インターンを採用しての開発や、学生へのヒアリングを通して、若い人の感性を生かしていきたい」(竹下氏)