北欧の若者が熱狂するスタートアップイベント「SLUSH」、アジア版は金曜日に東京で開催

フィンランド発のスタートアップ向けイベント「SLUSH」のアジア版となる「SLUSH ASIA」がいよいよ今週金曜日、4月24日に東京で開催される。

本家のSLUSHは、2014年実績で参加者は約80カ国・1万4000人以上、出展企業1300社、欧州各国の首相なども訪れるという大規模なイベントだ。

このイベントの特徴は「ライブ感」。よくあるカンファレンスとは異なり、起業家や投資家などの登壇者が音楽ライブのさながらのステージでプレゼンテーションやディスカッションを繰り広げる。より詳しい説明はこのスライドが参考になると思う。グローバルを意識したこのイベントでは、すべてのセッションは英語で行われる。

日本ではRovio Entertainmentの元日本代表であるAntti Sonninen(アンティ・ソンニネン)を中心にしたTEAM SLUSHがイベントを牽引する。この発起人チームには、Mistletoe CEOの孫泰蔵氏やAmano Creative Studioの天野舞子氏らも含まれている。ちなみに孫泰蔵氏は本家のSLUSHにも登壇しており、その話を日本で発起人チームと話したことが今回のSLUSH ASIA開催のきっかけになっているとか。

ではなんで日本でSLUSHを開催するのか? 孫氏は自身が参加した経験を振り返り「世界中にカンファレンスがある中で、SLUSHは他とは違うユニークなモノだったから」だと語る。

冒頭のとおり、ショーアップされたステージに登壇する起業家の姿はまるで音楽アーティストだ。そこで繰り広げられるセッショを見た若者たちが、彼らを尊敬し、賞賛することで、「起業はカッコいい、自分もやってみようとなることは大事」だと孫氏は説く。

同氏はこれまで「バンドのように起業をすべき」といろいろな場所で語っているのだけれど、これはバンド活動が最初はコピーから初めて、オリジナル曲を作って——となっているように、最初からすごいビジネスモデルやテクノロジーを持ってスタートするのではなくても、少しずつ事業を作り、それでダメだったら解散するくらいのカジュアルさであってもいいので、何よりもまずは「最初の一歩「を踏み出して欲しい」ということなんだそう。そんな考え方がSLUSHのテーマともマッチしたのだろう。

フィンランドの若者の多くもこのイベントに共感しており、1万7000人という参加者に加えて、2014年実績で1700人の学生ボランティアが関わっているそうだ。基本的には非営利で、今後は社団法人化も進めるとか。

フィンランドのSLUSHコミュニティにも参加していたSonninen氏いわく、SLUSHが若い世代に起業という選択肢を提示してきた影響度はかなりのものだそう。「今となっては『グローバル思考』は当たり前だが、8年前のフィンランドではほとんどそんなものがなかった。だが、SLUSHというイベントも起業という選択肢も認知されてきた。SLUSHは数年前からは首相が参加するまでになっている」

イベントの開催開催場所は東京の臨海地区にある青海。特設のドーム型ステージを5つ並べている。設営中の様子はTwitterにもアップされている。

最近は「上場ゴール」と揶揄される一連の新規上場企業の業績不振等でスタートアップやその支援者に対する風当たりは厳しいものになっている。僕も市場関係者から起業家までいろんな意見を聞いたし、そのあたりの話をの一部は記事としても書いている。

ただそういう時期だからこそ、起業について今までよりもちょっと身近な選択肢として考える場所があってもいいと思っている。僕たちがやっているTechCrunch Tokyoもそんな1つだと思っているし、SLUSHは日本で初開催だけれども、北欧ではそういった点でも非常に意味のあるイベントになっているそうだ。

僕自身は正直「誰でも彼でも起業しちゃえ」とまでは言えないのだけれども、まずは起業の意味をちゃんと理解している人が増えて欲しいし(同時に悪い大人にそそのかされない知恵も付けて欲しい)、人生の選択肢の1つとして考える人は増えていいと思っている。さらにそういう人の中から、世の中を変えるような起業家が生まれて欲しいとも。そういう意味でSLUSH ASIAは、起業についてあらためて考えたい人にとっても価値のあるイベントになるのではないだろうか。

レジャー予約サイト運営のアソビューがJTBと資本業務提携、6億円の資金調達

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遊び・体験の予約サイト「asoview!」を運営するアソビューは4月22日、JTB、YJキャピタル、グロービス・キャピタル・パートナーズ、ジャフコを引受先とする総額約6億円の第三者割当増資を実施した。JTBとは出資とあわせて業務提携も締結している。

asoview!は2012年にスタートしたアクティビティ予約サイト(当初はサービス名が「あそびゅー!」、社名はカタリズムだった)。2013年10月にYahoo!トラベルと連携。2014年3月にはグロービス・キャピタル・パートナーズとジャフコを割当先とした約2億円の資金調達を実施している。ちなみに創業期には現在YJキャピタル取締役を務める小澤隆生氏がエンジェルとして投資をしている。

同社によると、この1年間でasoview!の提携店舗数は3倍以上の約2700社に増加、申込数は非公開ながら、約5倍に拡大しているのだそう。今回の資金調達をもとに、サービスの改善と予約管理システムの機能拡充を図るほか、サポート体制の強化をすすめる。さらにインバウンド(訪日外国人観光客)向けコンテンツを整備。さらに地域行政・観光協会向けのソリューション提案人員を拡充するとしている。

またJTBとの業務提携では、以下の5分野を中心に、着地型商品(アウトドアアクティビティや文化体験など、旅行目的地側が企画・運営する観光商品のこと)の企画・販売などを進める。

Web販売:JTB」及び「るるぶトラベル」とasoview!の相互商品提供及び連携等

・エリアプロモーション:地方自治体及び観光協会向けの着地型コンテンツを利用したプロモーションサービス及び販売等

・インバウンド:訪日旅行オンライン予約サイト「JAPANiCAN.com(ジャパニカン)」におけるasoview!コンテンツの販売等

・法人ソリューション:着地型商品を活用した企業向けの体験型研修事業の企画・販売、企業向けプロモーション事業での企画・販売等

・福利厚生サービス:会員制福利厚生サービス「えらべる倶楽部」サイトにおけるasoview!コンテンツの提供等

スマホアプリを動画で解析するRepro、デジタルガレージなどから約1億円の資金調達

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App Storeに登録されるアプリの登録者は2014年末で約39万人、アプリ数では120万種類以上にもなっているそうだ。そんな数のアプリの中からユーザーに選ばれるためには、ASO(アプリストア最適化)やブーストを含む広告などでの「どうユーザーに対して露出するか」のテクニック、定期的なキャンペーンやプッシュ通知などを使った継続率向上施策にはじまり、アプリ内やストア内を問わず、本当にいろいろなことが求められる。

もちろんユーザーのユーザーの行動を解析することも重要なことの1つ。タップされた位置や離脱した画面、そういったユーザーの行動を動画で取得し、アプリの改善に生かすことができるのが、動画を使ったモバイルアプリ解析サービス「Repro」だ。サービスを提供するReproは4月22日、DGインキュベーションとブレインパッド、SHIFTを引受先とした総額1億円の資金調達を実施した。同時に約1年ベータ版として提供してきたReproのiOS向けサービスを正式にオープンした。

Reproでは、SDKを組み込んだアプリ上でのユーザーの⾏動をリアルタイムに動画で取得し分析。そのデータをウェブ上で閲覧できる。パスワードやクレジットカード番号の入力なんかはどうするのかと気になったのだけれども、テキスト入力を検知してモザイクをかけるほか、マスキング用のAPIを用意しているのだという。

では具体的にはどんな時にこのツールを利用できるのか? まず開発段階においては、クラッシュレポートを動画とスタックトレース(ざっくり言うとエラー発生時のログのこと)で提供する。この2つをセットで提供することで、クラッシュ時の挙動が非常に分かりやすくなるわけだ。また、ウェブの管理ツールを通じて、アプリ内にテスト操作を依頼する画面を表示したり、その後のアンケートを投稿してもらったりする機能も用意する。

いざアプリをリリースしたあとは、アプリ開発者が設定したイベントがどの程度実行されているのかを分析したり(カスタムイベント分析)、イベントごとのユーザーの遷移率を分析したり(ファネル分析)といったことができる。Repro代表取締役の平田祐介氏いわく、このような定量的な分析と、動画による定性的な分析を同時に行えるのがこのサービスの最大の強みなんだそう。

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海外を見てみると、スウェーデンの「Lookback」やイスラエルの「Appsee」などの競合サービスはいくつかあるそうだが、「開発会社に協力してもらって3つのアプリで調査したが、SDKの容量やCPU使用率、メモリ使用量でもReproは競合製品より優秀。中には十分な品質で撮影できないものもあった」(平田氏)のだそう。そんなこともあってすでに海外市場も視野に入れており、英語版でもサービスを提供しているとのこと。Android版も現在開発中だという。

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専門知識不要でネット予約ページ作成、1万事業者が導入するクービックが3.1億円調達

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専門知識がなくてもネット予約受付ページが作れる「Coubic」は、2014年4月のリリースから1年間で導入事業者が1万件を突破した。ユーザー調査によれば、導入前に使っていた予約システムは「ない」という回答が77%。Coubicを運営するクービックの倉岡寛社長は、ネット予約を裾野が広がっている証拠と話す。その同社が22日、米DCMとグリーベンチャーズ、個人投資家から総額3億1000万円の第三者割当増資を実施した。

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ビジネス支援機能でマネタイズ図る

CoubicはPC、スマートフォン、タブレットに対応した予約ページが無料で作れるサービス。電話やメール経由の予約もオンライン上の予約台帳に記入できるため、あらゆる予約を一元管理する「クラウド型予約台帳」として使える。サロンやヨガ教室といったスモールビジネスを中心に導入している。

現在の収益は月額4980円で広告非表示、予約情報のCSV出力、アクセス解析が可能となるプレミアムプラン。ただ、無料プランでも予約管理数・顧客管理数が無制限なため、ハッキリ言って有料・無料プランにほとんど差はない状況だ。今回の調達資金をもとに顧客管理機能を強化し、有料ユーザーを増やす狙いがある。

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具体的には、来店頻度に応じて顧客を絞り込んだり、来店から数カ月後にメールを自動送信するなど、休眠顧客を掘り起こす「セールスフォースの簡易版のような機能」(倉岡氏)を追加する。導入事業者からの要望が多い決済機能も年内に投入する予定だ。「Coubicにとって予約は入口にすぎない。事業者のビジネスを支援する機能でマネタイズを図る」。

Coubicの競合となるのは、日本航空やヤマハ、ソフトバンクなど1200社の導入実績がある「ChoiceRESERVE」が挙げられる。こちらはフリーミアムモデルのCoubicと違い、月額5000円〜2万円の有料サービスだ。米国では、倉岡氏も参考にしていると語る「BookFresh」が、2014年2月にモバイル決済のSquareに買収されたことで話題になった。

競合はリクルート、サロン当日予約アプリの勝算は?

クービックは今年2月、渋谷周辺の美容院やネイル、エステなどのサロン当日予約に特化したアプリ「Popcorn(ポップコーン)」を公開した。ユーザーは、当日限定の縛りがあるかわりに、人気サロンのサービスが最大70%オフで予約できるのが特徴。予約と同時に事前登録したクレジットカードで決済する仕組みなので、サロンとしてもドタキャンを防げるメリットがある。

以前の取材で、サロンの開拓は「ドブ板営業」が中心と語っていた倉岡氏。現在も同社のスタッフがサロンを訪問し、口説いて掲載しているのだという。最近ではCoubicを導入するサロンからの流入も増え、掲載サロン数は100件目前。夏までに500件を目指す。

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予約成立数については「3桁」(倉岡氏)と数字を濁すように、まだ決して多くはない。サロンの当日・直前予約のビッグプレイヤーといえば、ホットペッパービューティーでお馴染みのリクルートだが、倉岡氏は「勝算はある」と自信をのぞかせる。

「プロダクト面では1〜2タップで予約ができ、Uberのようにその場での決済不要な体験は差別化につながる。Uberも最初はドブ板のようなことをやっていたが、サンフランシスコの熱量が他の地域にも飛び火し、インバウンドでやっていけるようになった。Popcornでもまずは渋谷周辺で熱量を高めたい。狙い目は人口密度の高い地域。シンガポールや台湾の進出も視野に入れている。」

今回の増資に伴い、ゴールドマン・サックス証券のヴァイス・プレジデントを務めていた間庭裕喜氏が取締役に就任する。同時に、リードインベスターを務めるDCMのジェネラルパートナーの本多央輔氏を社外取締役として迎え入れる。海外事情に精通したDCMとの取り組みは、Popcornアジア進出の布石となっているのかもしれない。

ツイキャスがECに参入、まずは電子チケットから—配信中に売れれば手数料は無料

4月に入ってすぐ、ユーザー数1000万人突破を発表したモイの動画ストリーミングサービス「TwitCasting(ツイキャス)」。その発表の際にも、コマース関連の機能が提供されると報じたが、その姿がいよいよ明らかになった。同社は4月22日より、EC機能のキャスマーケット」の提供を開始する。

このキャスマーケットでは、ツイキャスの公式グッズのほか、キャス主(動画配信者)の電子チケットの購入が可能になる。また、配信者はツイキャスの配信画面からもチケットの販売が可能だ。なお、ツイキャスの配信中および配信終了1時間以内にチケットが売れた場合、チケットの手数料は無料になる(通常は販売価格の8%)。当初はアーティストや法人など、ユーザーを限定して機能を公開するが、今後は利用可能なユーザーを拡大していく予定。

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前回の記事でも「ツイキャスで女性誌のモデルがおすすめした化粧品が翌日にはAmazonで売り切れになるといった現象も起きている」という話を紹介したのだけれども、ほかにも「iTunesでシングルがリリースするタイミングでツイキャスを配信し、配信中にランキング1位を獲得」「配信中に予約用の電話番号を紹介し、100枚以上のチケットを販売」といった事例も出てきているそうだ。

具体的な割合は教えてもらえなかったが、ツイキャスではアーティストを始め音楽関連の配信者はかなり多いらしい。そこで「彼らの収益のためにお手伝いできないか。ツイキャスで人を集めて、その次の支援ができないかと考えた」(モイ代表取締役の赤松洋介氏)のだそう。「チケット売るのはなかなか大変。EC機能についてそこまで多くの要望があったわけでもないが、せっかくファンが見てくれているのにもったいないと思っていた」(赤松氏)。

同社の公式グッズを除いては、電子チケットの販売のみに対応するとのことだが、今後は物販についても検討しているそう。「商取引のルールを整理するには時間がかかると思っている。まずはフローを確認する意味でも試験的に公式グッズのみ物販を行う。ユーザーとファンがソーシャルでつながっている場所で売買をする場合、さまざまなリスクがある。今回はメールアドレスすら共有せずに売買可能な仕組みを用意している」(赤松氏)

配信で自分のアイテムを紹介して、それをフリマ感覚で販売するなんて世界もちょっと考えたのだけれども、「フリマって知らない人だから(値引き交渉を含めて)成り立つ取引だったりするのでそこは考えていない」(赤松氏)とのこと。さらに、「売ること」自体が配信の中心にならないように配慮したいと赤松氏は語る。「配信者が『売りたい』と思った時にチケットなどを販売するのはいいが、ただ売り子になってしまうのは辛い。ツイキャスはあくまでコミュニティ。ビジネスビジネスしないようにしたいし、あくまで楽しめる範囲で使って欲しい」

ちなみにこの電子チケットは、モイが独自に提供するもの。配信者はチケットの在庫を登録して、購入されればコードを発行。それを当該のイベント会場などでチェックするという仕組みになっている。

freeeはクラウド完結型社会を目指す、e-Gov API初対応の新サービス投入へ

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政府がe-Gov(電子政府)のAPIを公開する動きに合わせて、労働保険の更新手続きをクラウド会計ソフトのfreee上で完結する機能を公開する。年に1度行う労働保険の更新に必要な申告書を自動作成し、申告書の提出から保険料の振り込みまでの手続きがfreee上で完結することになる。

現状の労働保険更新の手続きは、1年分の給与支払い額から保険料を計算→申告書へ転記→申告書を郵送・承認通知を紙で受け取る→保険料を銀行で振り込む、という流れ。これらの手続きが、freee上で完結することになる。5月後半にリリース予定で、freeeの佐々木大輔社長は「e-Gov APIを利用した初のプロダクトになる」と話している。

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今年はe-GovのAPI公開に加えて、国民に番号を割り当てて行政手続きに活用するマイナンバー制度、電子帳簿保存法改定など、政府が電子化に向けて動き出す。freeeは、今までクラウド上で完結できなかった手続きや、紙での管理がクラウド上で完結できると見ていて、「クラウド完結型社会」を実現するサービスを続々と投入する予定だ。

今年度中に公開予定のサービスは以下の通り。

  • freee上での電子帳簿保存法対応
  • 法人・税理士向けマイナンバー管理サポート
  • 法人番号を取引先情報として管理
  • 給与支払・経費精算連携機能

これらのサービスによって例えば、従業員を採用する際に必要だった面倒な手続きまでもがfreeeで完結する、と佐々木氏は意気込む。「これまでは労働基準監督署や税務署、年金事務所、区役所、健康保険組合を回らなければならなかった。自分もかつては自転車でこれらの場所を回っていたが、こうしたすべてのバックオフィス業務をfreeeで済むようにしたい」。

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短期的なIPOよりもユニコーンクラブ入りを

freeeは2013年3月のサービスを開始。簿記の専門知識がなくても使えることをうたい、リリース2年で導入事業者は30万件を突破した。これまでに累計17億5000万円の資金調達を実施している。そろそろIPOが期待されそうだが、佐々木氏は短期的なIPOは考えていないと語る。

「日本のスタートアップは短期的にIPOを目指すのが通常とされるが、海外に目を向けると時価総額1000億円以上の『ユニコーンクラブ』が多い。(freeeと同じ)海外のクラウドサービスは時価総額1000億円規模でIPOしているが、私達もそのモデルを目指す。」

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KDDIがライフネット生命と資本業務提携、金融領域サービスを拡大

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先週、ECサイト運営のルクサを子会社化したばかりのKDDI。今度はライフネット生命保険との資本・業務提携を発表した。

ライフネット生命では、監督官庁(金融庁)の認可を経て5月中にもKDDIを割当先とする第三者割当増資を実施する。KDDIはライフネット生命が発行する普通株式800万株 (議決権ベースで15.95%) を30億4000万円で取得する予定。KDDIでは「ライフネット生命はこれまでどおり経営の独立性を維持・確保しながら、さらなる成長を目指す」としている。

KDDIは、プリペイド型決済サービスの「au WALLET」や三菱東京UFJ銀行と共同出資して展開するネット銀行の「じぶん銀行」など、IDサービス「au ID」を起点とした金融事業領域のサービスを展開している。

今回の提携では、「au WALLETやau IDを起点として金融ビジネスをさらに推進し、金融事業領域での事業拡大を目指すとともに、auの商品・サービスと融合した従来にない新たな金融サービスを提供する」としている。

ライフネット生命は、ネット専業でスタートした生命保険会社。設立は2006年で、2012年3月には東証マザーズに上場している。

スタートアップCEOと幹部人材候補が直接つながる転職サイト「Amateras Online」

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スタートアップ幹部を志す人材と、CEOが直接コミュニケーションできる転職サイト「Amateras Online」がスタートした。COOやCFOなど「CxO」と言われる幹部メンバーとしての採用が前提で、求職者は面接前にCEOとメッセージをやりとりすることで、採用後のミスマッチを防げるという。

ユーザーは会員登録すると、アマテラスが選んだ「優良スタートアップ」の概要だったり、株主や資金調達に関する情報を閲覧できる。過去に経営に携わったことがあったり、MBAホルダーのような経歴を持つ人は、「プレミアム会員」に自動アップグレードされる。

スタートアップ側は、登録情報を見て興味を持った人材に対して、CEOが直接オファーを届ける。その後は、サイト上でメッセージをやりとりして、CEOが面談するかどうかを判断する。プレミアム会員であればオファーを待つことなく、CEOへ直接メッセージを送って自分を売り込めるようになっている。

コンサル目線で「優良スタートアップ」を厳選

Amateras Onlineの大きな特徴は、“厳選”したスタートアップだけを掲載していることだ。アマテラスが考える、優良スタートアップとはどのような会社なのか。この点について藤岡氏は、「経営者の志の高さ」「事業の社会的意義」「成長性の高さ」の3つの条件を満たす会社を「優良スタートアップ」と定義している。

「わかりやすく言うと、たとえ儲かっていてもゲーム系はお断りしています。個人的な意見ですが、ゲームは社会を白痴化しているだけで、来年なくてもおかしくないビジネス。栄枯盛衰がある中で生き残れるかは、3つの条件を満たしているかどうか。偉そうですが、伸びないベンチャーに人を紹介したくないので。」

アマテラスの藤岡清高社長

アマテラスの藤岡清高社長

藤岡氏は2011年4月にアマテラスを創業する以前、企業コンサルティングのドリームインキュベータに在籍。同社では2004年からベンチャー支援に携わり、1500人以上のCEOと経営についてディスカッションしてきた。それだけに、優良スタートアップを見極める「目利き力」に自信があると、藤岡氏は話す。

気になる求人企業としては、クラウドソーシングのランサーズやスマホ学習塾の葵、3Dプリンティング商品CtoC「Rinkak」のカブク、NewsPicksを運営するユーザベース、中古マンションのリノベーションを手がけるリノべるなどがある(求人スタートアップの一覧はこちら)。

個人の求職ユーザーは登録・利用料すべて無料。スタートアップは1人採用につき100万円の成功報酬をアマテラスに支払う。転職が決まったユーザーには、お祝い金として10万円を進呈するキャンペーンも期間限定で行っている。

目指すは日本版Angellist

シリコンバレーの幹部人材採用では、アクティブ会員3億人超の「LinkedIn」を使ったダイレクトリクルーティングが盛んだ。また、起業家と投資家をマッチングするSNS「Angellist」が、スタートアップ向けの人材採用支援サービスを開始。現在は世界中の8400社以上がAngellistで求人を公開し、アクティブ会員は12万人超と言われている。

ところが日本でLinkedInは流行っていないし、Angellistも存在しない。最近でこそ、ネット大手の幹部人材がスタートアップに加わる事例は出てきたが、それでも「知り合いのつてをたどるアナログな手法や、Facebookで直接スカウトするのが現状」と藤岡氏は指摘。自らの新サービスは「採用支援に特化した日本版Angellistになれる」と見ている。

日本の採用サービスマップ(アマテラス提供)

日本の採用サービスマップ(アマテラス提供)

日本からGoogle・Facebookを100社創出する

ドリームインキュベータの7年間、ベンチャーに戦略提案してきて痛感したのは、「本当にベンチャーに必要なのは、優秀な人材の採用」ということだった。

「支援先の社長も確固たる思いがあって起業しているので、我々が偉そうに戦略をアドバイスしても、聞いてもらえないことも多々ありました。それで我々が何をしたかというと、社長の思いに共感する人を探すこと。そのほうが売り上げがググっと伸びるものなんです。」

「口を出すより、人を探す」スタイルでベンチャー支援を続ける中、転機となったのはリーマンショックによる景気後退だ。そのあおりを受けて、藤岡氏が所属していたベンチャー支援部門は規模を縮小。自らが活躍できる場所がなくなった。

そんな中、会長の堀紘一氏から「独立してベンチャー支援を続けてみろ。ドリームインキュベータも支援する」と後押しがあり、起業するに至った。ちなみにアマテラスの社是は「日本からGoogle・Facebookを100社創出する」。これはドリームインキュベータの「日本からソニー・ホンダを100社創出する」という理念を受け継いだものだ。

物流アウトソーシングのオープンロジが海外発送に対応、手続きは国内発送同様の手軽さで

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物流アウトソーシングサービス「オープンロジ」を運営するオープンロジ。

3月に資金調達を発表した際にも、月次売上400%増という数字を聞いたりもしたのだけれど(といっても母数は非公開で、規模もまだこれからだとは思うが)、早速次の一手を打ってきた。同社は4月20日より、EMS(国際スピード郵便)を利用した海外発送に対応する。

オープンロジは、中小および個人EC事業者向けの物流アウトソーシングサービス。ECで取り扱う商品をオープンロジのサイト上で登録し、同社が提携する物流会社の倉庫に送付すれば、倉庫にて商品サイズや重量を計測した上で入庫。オンラインでの入出庫管理が可能になる。出庫時には倉庫のスタッフが梱包の上、配送までを行う。

今回の海外発送対応も、EC事業者はあらかじめ商品を登録・入庫した上で、オンラインで出庫処理をするだけ。もちろん出庫処理の際、国名や住所などの入力は必要になるが。ちなみに国ごとに禁制品(輸出入を禁止している商品)があるが、管理画面で国を選択した際に確認できるようになっているそうだ。料金はEMSの料金に準じるが、1個口500円の作業料が加算される。複数商品を同梱する場合はさらに追加料金がかかる。配送可能な国は120カ国(こちらもEMSに準じる)。

「EMSを利用する場合、インボイス(伝票)を3枚、4枚と英文で書き、強度を考えた梱包をした上で郵便局に商品を持ち込んだり、集荷をしたりする必要があった。だがオープンロジではそういう手間がなくなるので、海外発送のハードルが下がると思う」(オープンロジ代表取締役社長の伊藤秀嗣氏)。

海外発送に加えて、オープンロジではAPI公開を進めている。すでに一部EC事業者に限定してAPIを公開しており、今後その範囲を拡大していくという。

ニコ動ライクなスマホ向け掲示板アプリ「festy」—ニックネーム制でネガティブ投稿を抑止

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グリーを1年で退職してWakuTech(ワクテク)を設立した起業家が提供するのは、「2ちゃんねる越え」を目指すiOS向け掲示板アプリ「festy」だ。

festyはiOS向けの掲示板アプリ。ユーザーはニックネームを設定すれば、掲示板にスレッド(festyでは「ポスト」と呼んでいる)を投稿したり、投稿内容にコメントしたりできる。画像の添付も可能で、お気に入りの投稿にはFacebookの「いいね!」のような「粋」を付けることができる。ちなみにこの粋のボタンは太鼓のアイコンになっているんだけれども、タップするたびに「ドドン」と太鼓の音が鳴る(最大5回まで連続でタップ可能だ)。

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特徴的なのは人気のポストを表示するトップ画面。投稿されたコメントがニコニコ動画のように右から左に流れていく。「盛り上がっている感を大事にしている。非同期だが一緒に話しているような感覚になればいいと思った」(蒋氏)

掲示板には「おもしろネタ」「マンガ・アニメ」「ドラマ・バラエティ」「アイドル・芸能」「ゲーム」「スポーツ」の6つのカテゴリを用意する。今マンガ・アニメ系の投稿ではちょっと権利関係のまずそうな画像もあるのだけれど、「規約で注意を促しており、問題があれば対応する」(蒋氏)のだそう。

二度のピボットから誕生

WakuTech代表取締役CEOの蒋詩豪氏と取締役COOの白土聡志氏の2人は、2013年4月に新卒でグリーに入社。それぞれ将来は起業することを考えていたそうだが、「思いの外早いタイミングで気の合う創業者を見つけた」とのことで、丸1年でグリーを退社。2014年4月にWakuTechを創業した。

当初企画していたのはオタク特化のフリマアプリ。だが開発が後半に差し掛かったところでjig.jpの「オタマート」、セブンバイツの「A2Mart(アニマート)」など“ガチ競合”なサービスが続々とリリースされたことからピボット。今度はオタク向けのニュースキュレーションアプリを開発するも、ディー・エヌ・エーから「ハッカドール」がリリースされるなど、二度も競合サービスに先を越されてしまったのだそうだ。

「マンガやアニメ、ゲームといった領域で勝ちたいと思っていたが、起業して8カ月くらいまでは迷走していた。それで、新卒時代に創業メンバー2人で意気投合した『インフラを作る』ということを振り返って、Festyを作った」(蒋氏)

WakuTechでは、festyの開発に当たり、ANRIから1500万円の資金調達を実施。2月末にアプリをリリースし、4月以降サービスを本格化させた。

ちなみにこのアプリにもすでに競合サービスが存在している。NTTドコモ・ベンチャーズのインキュベーションプログラムである「ドコモ・イノベーションビレッジ」の卒業生、SODAの「doyo」だ。こちらもスマートフォン特化の掲示板アプリ。ただしFestyと違って匿名での投稿が可能で、より2ちゃんねるライクなサービスとなっている。

Festyをニックネーム制にした理由について蒋氏らに聞いたのだけれども、「完全匿名だと、ネガティブな話題ばかりになる可能性があるので、誰の発言かは特定できるようにしている。ただしなれ合いにはしたくないので、フォロー機能などは持たない」とのことだった。

 

マッチングサービスのHowAboutWe、「オンデマンド」でのデート相手検索にも対応開始

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スタートから5年となり、デートサービスの大手であるIACに買収されたHowAboutWeが、新機能を搭載してモバイルアプリケーションのリニューアルを行った。それに伴い価格も見直されている。最も変わった点は「Tonight」機能の実装だ。この機能を使って、デート相手を「オンデマンド」で探すことができる。

Tonightはオプトイン形式で提供されるようになっている。デート相手を探したい人が、デート開始の時刻を入力すると、HowAboutWeがオプトインした利用者の中からマッチしそうな相手を探してくれる。5分ほど(iTunesの説明には「LESS THAN FIVE MINUTES」と書いてある)で相手が見つかり、HowAboutWeからプッシュ通知が送られてくる。気に入りそうな相手が見つかれば、ダブルタップしてデート相手の候補者とすることができる。

マッチングについてはHowAboutWe側でさまざまな要素を考慮して行われるようになっている。そして候補が決まればテキストメッセージのやりとりができるようになる。但しこのメッセージはHowAboutWeの番号を通じて行うようになっているので、いきなり相手に電話番号が伝わってしまうようなことはない。

他にも追加された機能がある。

HowAboutWeではこれまで、デート相手の候補者を画面をスワイプしながら探していた(この機能はPoolと呼ばれる)が、新たに「Connections」という機能が加わった。HowAboutWeが「可能性の高いマッチング相手」を日々リストアップしてくれるようになったのだ。また身長や宗教などの条件をつけて相手を検索する機能もできた。

尚、無料で利用できるサービスが広がったのも興味深いところだ。これまではメッセージのやり取りをするためには有料版にアップグレードする必要があった。今回のバージョンアップから、無料版のままメッセージをやり取りすることができるようになった。

まとめると、新しい版ではメッセージのやりとりが無料でできるよういなり、従来型のマッチングサービスに加えてTonight機能も使えるようになったわけだ。但し、システム側からマッチング相手としてリストアップされていない相手にメッセージを送ったり、あるいは条件付き検索を行う場合には有料版にする必要がある。

有料版の価格は、月額10ドルから月額20ドル(申し込む利用期間により異なる)となっている。

昨年6月にIACにより買収されたHowAboutWeにとって、これが新しいスタートとなる。共同ファウンダーのBrian Schechter曰く、より便利なTinder風サービスを意識しているのだとのこと。Tinderではメッセージのやり取りが頻繁すぎて、便利さよりも面倒くささが勝ってしまっていると感じているのだそうだ。

HowAboutWeはこちらのサイトからも利用できる。

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原文へ

(翻訳:Maeda, H

シロクがグロースハックの新ツール、任意のタイミングでアプリ上にメッセージを表示する「Growth Message」

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写真共有アプリ「my365」の開発をきっかけにスタートしたサイバーエージェント子会社のシロク。同社は2013年夏以降アプリ開発で得た知見をもとに、スマートフォン向けプッシュ通知・解析サービスの「Growth Push」、行動記録・分析サービスの「Growth Replay」などスマートフォン向けのグロースハックツールを提供してきた。

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そんなシロクが新たに提供するのがアプリ内メッセージ配信・分析サービス の「Growth Message」だ。Growth Messageは、SDKを組み込んだアプリ上に、文言や画像のメッセージを表示できるサービスだ。

特定のタイミングでユーザー全体にメッセージを配信できるだけでなく、セグメントを指定してメッセージを配信したり、セグメントごとに内容の異なるメッセージを出し分けしたりできる。メッセージの配信結果の分析も可能だ。

利用用途としては、特定のタイミングでアプリ内にメッセージを表示してアプリストアでのレビューを促したり、チュートリアルやキャンペーン告知を表示することで継続率の向上を図ったり…といった具合。アプリをアップデートをしなくとも、最新のキャンペーンなどを告知することもできる。

シロク取締役の向山雄登氏いわく、同社のグロースハック関連ツールは国内を中心に合計5000アプリ程度にインストールされているそう。現在、アプリ上での行動分析に特化したツールも開発中とのことで、5月にもリリースを予定しているという。

Dormiは引き出しの奥に眠る古いAndroidデバイスを利用した赤ちゃんのビデオ・モニター

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スマートフォンの普及にともなって、スマートフォンベースの赤ちゃんモニターを提供する会社が増えている。しかしその多くは、NapTimeEvozのように、カメラその他の専用ハードウェアを必要として、価格もそれなりのものとなっている。しかしDormiのアプローチはこれと異なり、新しいハードウェアを使わず、古いAndroidスマートフォンまたはタブレットを再利用して赤ちゃんの様子を遠隔モニターする。

このほど、Dormiのシステムがひさびさにアップデートされ、以前から要望されていたビデオ機能がサポートされるようになった。

以前はDormiのシステムは音声のみだった。今回のアップデートで、ユーザーはWiFiまたは携帯網を通じてどこにいても赤ちゃんの様子をビデオと音声でモニターすることができる。またボタンを押すと赤ちゃんに話しかけることができる。

Dormiのサービスを利用するには、使っていない古いAndroidデバイスが必要だ。あるいはもちろん、現在使っているデバイスをDormi用にして、別のAndroidデバイスを入手してもよい。

システムがシンプルであるのと同時に、料金もたいへん手頃だ。ハードウェア・ベースの高価なシステムと比べると安すぎるといってよいくらいだ。

サブスクリプション契約もできるが、Dormiは期間無制限の契約をたった7ドルで提供している。低価格でどこへも持ち運べる赤ちゃんモニターを探しているユーザーには理想的だ。

ビデオ機能が追加されても7ドルの料金は変更されない。その他に月1ドル、年5ドルのコースも用意されている。Dormiでは近く、高画質モニタをアプリ内購入方式で提供する予定で、すでに機能の実装は終えているという。

今回のアップデートはハードウェアベースのコード/デコード機能によってルアルタイム・ストリーミングを実現している(2010年にリリースの2.3 Gingerbread以降のAndroidがサポートされる)。 Dormiを提供しているチェコのスタートアップ、Sleekbitの共同ファウンダー、Pavel Krylによれば、こうした古いAndroidでビデオ・ストリーミングをサポートするためにOSのリバース・エンジニアリングなど多大の努力を払ったということだ。新しいDormiアプリは色使いやフルスクリーン・モードに画面を拡大する遷移時のアニメなどAndroidのマテリアル・デザインに準拠しているという。

さらに重要な機能的アップデートとしては、Chrome OSのサポートがある。これによってDormiサービスをChromebookから利用できるようになった。近くChromeブラウザのサポートも加える計画だ。

Dormiには現在12万のアクティブ・ユーザーがおり、さらに増え続けている。ただし料金の低さから月の売上は6000ドル程度にとどまっているという。長期的にサービスを継続していくためには、売上をスケールさせる方法を考える必要があるだろう(ただしSleekbitは他のアプリ,も販売している)。

DormiはGoogle Playでこちらからダウンロードできる。

〔日本版〕DormiをGalaxy S4(4.4.2)とGalaxy S3(4.1.2)にインストールしてテストしてみた。正常に動作するようだ。ペアリングは自動化されている。インストール後、双方のデバイスでDormiを起動し、同じWiFiネットワークに接続する。双方をフォアグラウンド状態にすると相手デバイスの型番が表示されるので矢印をタップする。相手デバイス側にペアリング・リクエストが表示されたら承認する。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

「利用まで数カ月待ち」定額制ファッションレンタルairClosetが資金調達

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月額6800円でプロのスタイリストが選んだ洋服を借り放題の「airCloset(エアクローゼット)」を運営するノイエジークが、寺田倉庫や個人投資家などを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達額は非公表だが、関係者によれば1億円を超える規模という。

airClosetの対象は20〜30代女性。ファッションの好みや自分のサイズを登録すると、スタイリストが選んだ洋服が毎回3点、専用ボックスで届く。レンタル期限はなく、飽きたらクリーニング・送料不要で返却する。交換回数は無制限で、気に入った服は買い取ることもできる。

2014年10月から事前登録ユーザーを募集し、2月の正式サービス開始までに、サイトを閲覧するだけの無料会員を含む約2万5000人を獲得し、現在は4万人を突破した。

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有料会員の比率は非公表だが、ノイエジークの天沼聰社長は「人気のため、多くのお客様に数カ月お待ちいただいている状況」と、順調な滑り出しを見せていることをアピールする。

順番待ちの要因としては、洋服が足りないことや、オペレーション面の課題が考えられそう。この点を天沼氏に聞くと、今回の資金調達ではこうしたボトルネックを改善する狙いもあるのだという。

出資元の寺田倉庫はすでに、airClosetの洋服を管理・配送・クリーニングするサービスを提供することで業務提携を結んでいる。今回の資金調達ではさらに一歩踏み込んだ提携として、寺田倉庫から取締役を経営陣に迎え入れた。倉庫人員も増やしてオペレーション強化を図る。

現在は女性向け洋服だけを扱うが、次の展開としてはアクセサリーを追加する予定。将来的には男性、キッズ、シニア向けにもラインナップを拡充していきたいという。

KDDIがECサイトLUXA運営のルクサを子会社化——商品調達力に期待

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KDDIは4月14日、セレクト・アウトレット型ECサイト「LUXA(ルクサ)」を運営するルクサの発行済株式の取得について、同社の株主と合意したと発表した。取得額や株式の割合等は非公開となっているが、株式取得後はKDDIの連結子会社となる予定だ。

ルクサは、人材サービスを手がけるビズリーチの一事業として2010年8月にスタート。当初はいわゆる“グルーポン系“のフラッシュマーケティングの手法を用いたECが乱立していた時期だったが、ルクサはそこで飲食店やエステサロンへの焼き畑農業的な営業をかけることよりも、メーカーや問屋との関係作りに注力していたと聞く。例えば食料品や飲料であれば賞味期限があるし、家電であれば型落ちしていくわけだが、そういった商品を取り扱ういわばアウトレットモールのような立ち位置を作っていたそうだ。

KDDIでは、2013年9月にグローバル・ブレインと運営する「KDDI Open Innovation Fund」を通じてルクサに対して出資。auスマートパス会員向けにサービスを提供するなどの提携を進めてきた。またルクサは、2014年に立ち上げたスマートフォンポータル構想の「Syn.」にも参画した。

KDDIでは「今回の資本関係強化により、これまで以上に両社の持つ様々な資産を最大限活用し、新たなショッピング体験をお客様に提案していきます」とコメントしているが、KDDIに聞いたところだと、「一番期待しているのはルクサの商品調達力」だそう。今後はルクサ上だけにとどまらず、広い範囲でサービスを連携していくとのことだ。

アプリ解析ツールの「App Ape」にプレミアム版、今後は海外展開も

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FULLERは4月13日、同社の提供するスマートフォンアプリ利用動向調査ツール「App Ape Analytics」のプレミアム版サービスを開始した。

App Ape Analyticsは、数万台に上るAndroid端末をサンプルにした統計データをもとに、アプリの利用情報や詳細情報、性別年齢を含めるユーザーのデモグラフィック情報を閲覧し、スマホアプリ市場やアプリの競合分析が可能なツール。データは、FULLERのアプリを導入したユーザーから取得している。

FULLERによると、これまでのApp Ape Analytics アルファ版および法人向けのApp Ape Analytics エンタープライズ版の累計顧客数は3000を突破。コロプラやKingといった大手のゲーム開発会社から広告代理店、官公庁など幅広く利用されており、すでに単月黒字化も見えているそう。

今回提供するプレミアム版では、時間帯別のアクティブ率やHAU(時間ごとのアクティブユーザー数)、アプリの同時所持率(あるアプリを持っているユーザーがどのアプリを併用しているのかの割合)などの閲覧が可能。これによってテレビCMや時間限定のアプリ内イベントなどの効果測定が可能になるとしている。なおデータはCSV形式のファイルとしてダウンロード可能。

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FULLERは2月にGlobal Catalyst Partners Japan、朝日新聞社、インフォテリア、オプト、コロプラ、日本交通およびnanapi代表取締役の古川健介氏ら個人投資家複数名から2億3000万円の資金調達を実施したことを明らかにしている。

この調達した資金をもとに、今後は海外のサンプルデータも拡充していく予定。海外向けに複数のスマートフォンアプリを提供していくとしている。「データの精度はユーザーから評価されており、国内のサンプルが足りないという話はない。今後は国内のサンプルを100万人に増やすというよりは、各国10万人のサンプルを持ちたい」(FULLER代表取締役社長の渋谷修太氏)

 

アウトドア地図アプリ「YAMAP」が栄冠、B Dash Campプレゼンバトル「ピッチアリーナ」

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B Dash Venturesの渡辺洋行社長(左)とセフリの春山慶彦社長(右)

 

福岡で開催中の「B Dash Camp」で10日、スタートアップのピッチコンテスト「ピッチアリーナ」が開催された。国内外54社が参加し、前日の予選を通過した12社が本戦でプレゼンを実施。本戦には韓国や台湾、タイなどの海外勢が9社半数以上を占め、国際色の強いコンテストとなった。最優秀チームにはアウトドア向けの地図アプリ「YAMAP」を手がけるセフリが選ばれた。以下、出場各社とサービスを紹介する。

YAMAP(最優秀チーム)
携帯の電波が届かない状態でも、スマートフォンで現在位置がわかる地図アプリ。地図を印刷して持ち歩くこともできる。利用シーンは登山、スキー、スノーボード、釣りなどアウトドア全般を想定。特に近年社会問題化しているという「山での遭難事故」を解決したいという。2013年3月にリリースし、ダウンロード数は10万件。アプリには自分のアウトドア用品を登録する欄があり、これと連動するアウトドア用品の比較評価アプリをまもなくリリースする予定。ちなみにYAMAPはTechCrunch Tokyo 2013のファイナリストでもあった。

VIDEO SELFIE(審査員特別賞)
加工機能のついた動画撮影アプリ。顔をリアルタイムでトラッキングし、顔の位置、距離に合わせて画像や音楽でデコレーションできる。2014年11月から50万ダウンロード。MAUは7万5000人。

CREVO(PayPal賞)
クラウドソーシングを活用したアニメーション動画制作サービス。企画から納品までをサポートする。国内外のクリエイター1000人が登録し、このうち7割は海外のクリエイター。リリースから1年間で250社が導入している。価格は18万円〜。過去にはhuluのテレビCM動画を作った実績もある。

MakeLeaps
フリーランスや中小企業向けの見積書・請求書オンライン作成・管理・郵送ツール。楽天などもサービスを導入しており、98.3%のリテンション率を誇る。これまでに500Startupsをはじめとして、75万ドルを調達。

BookTrack
音声付き電子書籍プラットフォーム。本を読んでいる位置をトラッキングし、その動きと同期して音楽やエフェクトを付け流ことができる電子書籍。サービスは1年3カ月前にスタート。これまで30カ国200万ユーザーが利用している。学校用のプログラムは1700校、2万5000人が利用している。

CATFI
ネットワーク接続する体重計付き自動給餌器。以前の名称は「Bisrto」でクラウドファンディングのIndiegogoなどにも出展していた。スマートフォンを通じて、ネコの食事量や体重を管理。猫向けの顔認識機能により、複数の猫への給餌が可能。また猫の健康状態に合わせて最適な餌を提供する。

PopUp Immo
法人向けの賃貸物件版のAirbnb。数週間とか短期間にだけレンタルするニーズに対応する。保険などもカバー。フランスのパリでサービスを展開。すでに大手企業からの引き合いもあるのだそうだ。ビジネスモデルは20%の手数料。今後は年末までに1500スペース(現在は500スペース)まで拡大。さらにアジア圏でのサービス展開を検討している。

Sellsuki

東南アジアのECサイト向けツール。東南アジアでは、ECサイトとのチャットを通じて購買まで至るようなECサイトもあるそうなのだが、そういったサイト向けの注文管理やコミュニケーションを管理できる。7000人(店舗)がサービスに登録

ChattingCat
英語のネイティブスピーカーに、自分の英語を添削してもらえるサービス。韓国人創業者のApril Kim氏によれば、世界で一番使われている言語は「ヘタな英語」。自身もその1人で、実際に先生に添削してもらった経験がある。これをオンラインで提供しようと、サービスを開発した。ユーザーは英文を入力すると、平均4分以内に世界中で登録している600人以上のネイティブスピーカーに添削してもらえる。

EatMe
レストランのディスカウントクーポンを配布する台湾のアプリ。ユーザーは2000店舗以上のレストランを検索できる。店舗側は、クーポンの利用状況に応じて、どんなキャンペーンがユーザーに刺さるかがわかる。年間で10万ユーザーが利用しているという。

FANDORA
クリエイターが投稿したキャラクターやイラストをグッズ化し、販売できるプラットフォーム。台湾で2013年にスタートした。1500人以上のクリエイターが登録し、4万点以上の商品が購入可能となっている。すでに130万ドルの資金調達を実施し、翌年には日本、中国、東南アジアにも進出する予定。

フリップデスク
スマホECサイト上で実店舗のような販促・接客を提供するASPサービス。サイトに埋め込んだタグによって訪問者の行動を解析し、最適な販促を行う。例えば、購入を迷っている新規ユーザーを判別し、オーバーレイコンテンツやクーポンを配布したり、チャットでサポートすることができる。販売開始7カ月で約200サイトが導入している。

住まいのコミュニティサイト・米国Houzzが日本上陸、iemoとは何が違う?

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リフォームをしたい人と住まいの専門家をつなげる米国のコミュニティサイト「Houzz」が日本に上陸。4月9日にサイトをオープンした。同サイトは専門家が投稿したインテリアやエクステリア、住空間の写真を閲覧して、自分の気に入ったものを保存したり、それらを元に専門家に発注できるのが特徴。写真は600万点以上にのぼり、世界最大のデータベースであるとHouzzは謳っている。

もともとは創業者のアディ・タタルコ氏が個人プロジェクトとして立ち上げたサイトから始まった。同氏は2006年にパロアルトに中古住宅を購入し、後にリフォームしようと計画していたが、予想以上に住宅の設計やデザインに関する情報が世の中には少なかったという。

「建築業者の評判を知るには友人からの口コミを頼るしかなかった。適切な情報を得るのに苦労し、かなりの予算と時間をかけたが、最終的に満足できる結果は得られなかった」と振り返る。そこで自らコミュニティサイトを立ち上げ、広く建築関係の専門家に関する情報を募ったのだという。

Houzz創業者のアディ・タタルコ氏

Houzz創業者のアディ・タタルコ氏

スタート時のユーザーはタタルコ氏夫婦2人、子どもの学校の家庭が20組ほど。パロアルト在住の設計士が数人いた程度だった。それにもかかわらず、サイトは「自律的、有機的に成長した」とタタルコ氏。少しずつ米国の他の都市にも拡大し、さまざまな業界、例えば造園業者の間にも浸透するなど、個人では管理しきれないほどスケールしたそうだ。

現在では毎月2500万人のユーザーがHouzzを利用しているという。そのうち住まいの専門家は約70万人。彼らがお互いにコラボレーションし、どうやったら自分の家がより住みやすくできるか相談できるコミュニティになっている。

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アジア最初のオフィスとして日本を選んだ理由

驚いたことにHouzzのユーザーは「世界のすべての国」にいるのだそうだ。国の数は195カ国ほどあるが、「文字通り“すべての国だ”」とタタルコ氏は断言した。ただし、コミュニティのローカライズは始まったばかり。2014年に米国外にも拠点を設ける方針を決定し、アジアの最初のオフィスとして日本を選んだ。

日本を選んだ理由は2つ。日本の住宅環境がHouzzと相性がいいというのが1つ目にある。タタルコ氏は「日本のリフォーム市場は数年前の米国に似ているし、可能性がある。課題としては空き家率の高さがある。中古住宅を改装して住みたいが、どうすればいいのか、わからない人も多い。また日本人は新築を好むが、新築に住んでも、いずれはリフォームが必要になる。そういった課題を抱えたマーケットであり、それを助けるコミュニティが求められている」と話した。

また2つ目の理由としては、グローバルのユーザーが日本の住環境に興味を持っていることがあるという。Houzzが実施した調査によれば、多くのユーザーが日本の建築、たとえば仏間や畳などについて学びたいと思っていることがわかったそうだ。「日本の住環境や文化がHouzzプラットフォームの成長を助けるものになる」とタタルコ氏は言う。

「Houzzは住宅デザインのWikipediaと表現されている。加えて、Houzzはただの情報提供ではなく、さまざまなプロフェッショナルのアイデアと知識が蓄積されており、それをコミュニティに提供できる場になっている。日本の方々が世界に発信されることも期待している」(タタルコ氏)

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Houzzは住宅デザインのWikipediaと表現されているという

 

iemoは日本市場で競合となるか

日本法人の代表は加藤愛子氏が務める。同氏はシカゴ大学経済学部を卒業後、米国投資会社ゴールドマンサックスのロンドン、および東京オフィスに勤務した経験を持つ。2011年にM.B.Aを取得後、ビューティー・トレンド・ジャパン株式会社の代表取締役に就任し、化粧品のサブスクリプションサービス「GLOSSYBOX」日本法人を成功に導いた。その後、ニューヨークを拠点にベンチャー企業の海外展開に関するコンサルティングを行い、2014年11月より現職だ。

日本の戦略を担う加藤氏に質問した。住まいに関するサイトといえばDeNAが買収したキュレーションメディア「iemo」が挙げられる。同サイトは少なからずHouzzを意識して作られたものだ。立ち上げ時にiemo代表の村田マリ氏に取材した記事では、ユーザーが投稿したコンテンツをシェアしたりコメントできるコミュニティ機能を持つプラットフォームは「海外のHouzzなどを除けばイエモのみ」と発言していた。

今後、Houzzにとってiemoは日本市場で競合となるのだろうか。加藤氏の答えはこうだ。「印象としてはかなり違うコンセプトで展開されていると思う。まず1つとして弊社としてはグローバルなプラットフォームで住宅のデザインをご紹介させていただいていて、そこから裏にいる専門家との交流の場を作っていく。専門家の方とエンドユーザーの方が同じ空間の中で共存し、いろいろなコミュニケーションを取っていただく。そういったところが大きく違うのかなと思います」

Houzz日本法人の加藤愛子氏

Houzz日本法人の加藤愛子氏

あくまで専門家とのつながりを促すグローバルなコミュニティに強みがある。Houzzに蓄積された写真や知識を記事として公開していく試みも始めている。メディアとしても人気を獲得できそうだ。

日本でのマネタイズは現段階では考えていないという。米国ではまずコミュニティを拡充し、情報を流通させ、そして最後にコマース機能で収益をあげてきた。それと同じステップを日本でも踏む。コミュニティを作り、ユーザー体験を満足いくものに仕上げ、その後にコマースのプラットフォームを構築する。

米国サイトの売上チャンネルの1つに「プロダクトマーケット」というものがある。実際に住宅業者1000社ほど参加し、そこで月間2500万ユーザーに商品を提案している。いずれ日本にも同様のマーケットを開設する方針だ。

「Amazonより速い」bento.jpが配送代行スタート、弁当の自転車デリバリー網活用で

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スマートフォンで注文してから20分以内に弁当が届くサービス「bento.jp」は、自社の自転車デリバリー網のあらゆる可能性を試そうとしている。本日、ECサイトや地域店舗の注文を最短30分で配送代行する「kaukul」(カウクル)をスタートした。配送エリアは渋谷、港、目黒、新宿、世田谷の5区。順次23区に拡大する。

ECサイトに対して、注文から最短30分から数時間以内で商品を届けることを可能にする「kaukul API」と、自社でデリバリースタッフを抱えられない小売店や飲食店に、オンデマンドデリバリー(出前代行)機能を提供する「kaukul for Stores」の2つのパッケージを用意する。

EC事業者に即配オプションを提供

kaukul API はこれまで2、3日後の配送が最短だったEC事業者が、最短30分で所定の場所に商品を届けられるようにするもの。即配のリクエストから配達状況の確認までの機能をAPIで提供する。現時点では写真入りケーキのBAKE、シャンパンを扱う「シャンデリ屋」などが導入している。

kaukul for Storesは、最短30分の即配から毎日のルート配達、来店客向けの商品持ち帰りを代行する。青果店やカフェなどが導入していて、靴とバッグの修理店「ミスターミニット」も導入する予定。ミスターミニットでは、商品を集荷して修理後に届けたり、ユーザーが店舗で預けたモノを修理後に所定の場所に届けるサービスを検討中という。

kaukul for Storesおよびkaukul APIはどちらも月額の固定費不要で、注文に応じてベントー・ドット・ジェイピーに手数料を支払う。商品に上乗せするかたちになる配送料は、各店舗とECサイトが決める。

Amazonお急ぎ便に対する優位点は?

ベントー・ドット・ジェーピーの小林篤昌社長は「Amazonより速く届く」とスピード感を強調する。

Amazonは514円で「当日お急ぎ便」(Amazonプライム会員は無料)を提供しているが、kaukulの配送料は店舗ごとに異なる。目安は「ヤマトや佐川急便の短距離と同じか、それ以下」(小林氏)。つまり756円以下ということだ。

配送料の安さではAmazonに軍配が上がるが、小林氏は「当日お急ぎ便は朝注文で夜に届けるのがメインの“半日便”。数時間以内の配送はできない」と優位性をアピールする。

オンデマンドECにはLINEが参入

1年前にbento.jpをローンチした当初から、「単なる弁当デリバリー屋にとどまるつもりはない」と語っていた小林氏。その言葉通り、これまでに期間限定ながら、オイシックスの献立セットやバリスタ世界チャンピオン「Paul Bassett」のコーヒーを販売するなど、デリバリー網の汎用性を試してきた。

今後は自転車のデリバリー網を外部に開放し、消費者が即座に購入できるオンデマンドEC事業に本格参入することとなる。同様の取り組みは、スタートアップのdely(デリー)が2014年7月に渋谷限定で開始。同年11月にはLINEが参入し、delyは翌年1月末にサービスを撤退している。

LINEは3月、150店舗以上の飲食店の料理を即時配達する「今すぐ配達」と、ユーザーの買い物を代行する「おねがいWOW」を開始し、オンデマンドEC事業に本格参入したばかり。2015年中に100事業者の導入を目指すというベントー・ドット・ジェイピーは、この市場にどう挑むのか。

LINE元社長・森川氏の次なる挑戦は動画メディア——5億円を調達し、女性向けの「C Channel」で世界を視野に

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4月1日にLINEの代表取締役社長CEOの座を退いたばかりの森川亮氏。LINEを取締役COOだった出澤剛氏に託し、自身はスタートアップの起業家として新たにサービスを立ち上げる。

新会社の名称は「C Channel」。設立にあわせてアイスタイル、アソビシステムホールディングス、グリー、GMO VenturePartners、ネクシィーズ、B Dash Ventures、MAKコーポレーション、楽天などから約5億円を調達する。今後は社名と同名の動画配信プラットフォーム(同社では「動画ファッション雑誌」とうたっている)「C Channel」のベータ版を展開する。現時点ではウェブのみでのサービス提供となるが、今夏にもスマートフォンアプリも提供する予定。

C Channelでは、「クリッパー」と呼ぶ約100人のモデルやタレントが、独自の動画を配信する。動画では、「カワイイ」「クール」といった切り口で、日本のファッションやフード、トラベル情報など紹介する。動画の長さは1本1分で、1つの店舗やスポットのみを紹介。位置情報とも連携する。お気に入りのクリッパーをフォローするといった機能も備える。ターゲットにするのは10代〜30代の女性。動画は日本語のほか、英語でも提供していく。

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Pinterestライクなクリッパーページ ※クリックで拡大

動画はクリッパーの自撮り、もしくはプロのカメラマンが撮影。そのあとプロが編集している。デモ動画を見せてもらったが、1分でも情報量はそれなりにあるし、クオリティは非常に高い。

もちろんネットにもともとあるようなストリーミングの垂れ流し動画だってライブ感があって面白いのだけれども、それとはちょっと方向性が違う。テレビ番組に近いクオリティだ。

このあたりの理由を森川氏に聞いたのだけれども、C Channelには現在タレントやカメラマン、動画編集者やエンジニアなど約10人のスタッフがおり、SPA(製造から小売りまでを統合・内製)モデルでコンテンツを制作しているため、安価かつ速いスピードで高品質の動画を提供できるのだそうだ。テレビや映画など、映像制作の“職人”的な経験者も多いという。

動画はベータ版のスタート時点で100本程度を用意。今後は毎日アップデートしていく予定だ。「映像のプロとITのプロが集まっている。ちょっとやそっとじゃマネできないと思う」(森川氏)

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動画のイメージ

 

10年かけてタイム・ワーナーのような会社に

「グローバルなメディアを作りたい。マスメディアはまだまだ変わっていないので、その変化の中で大きな流れを作ることに挑戦したい。日本のメディアが海外に成功した事例はないので、10年かけてタイムワーナーのような会社を作りたい」——森川氏はC Cannelについてこう語る。

では森川氏はどうしてLINEの代表退任後のチャレンジとして動画の事業を選んだのか? 森川氏は「起業するのであれば、『自分がやるべき領域』でやろうと思った」と説明する。

新卒で日本テレビ放送網に入社し、その後ソニーを経てLINEの代表となった森川氏は、放送とネット両方のメディアを経験してきた人物。若いスタートアップがメディア事業を立ち上げることについては、「しんどいと思う。資金も人も必要になるので、バイラル的、ワイドショー的なものになりがち」と分析する。だが世界を見てみるとメディアは変革の時期。「(テレビなどマスメディアの)最前線の人は、メディアの中でも問題意識を持っている」と語り、メディアビジネスへの注目度を説く。

また動画メディア事業について、「映像と技術が分からないとできない難易度の高い事業。映像だけだと職人の世界になるし、技術だけだとPVなどを意識しすぎる」と語る。

ではその両方を経験してきた森川氏のサービスがすぐに成功するのかというとそこは慎重で、「ビジネス的には相当厳しい。C Channelは、最初の1年程度は売上ゼロでもユーザー拡大に注力する」のだそう。

ECと広告でマネタイズ、海外展開も積極的に

C Channelでは今後、ECと広告でのマネタイズを進める。ECについては、C Channelブランドの商品を販売する予定。所属タレントによるプロモーションを行うほか、リアルイベントでの販売なども予定する。4月16日には東京・原宿にスタジオ兼オフィスをオープンする予定で、週末などはそこでクリッパーなどを呼んだイベントを積極的に展開していく。また出資するアソビシステムを通じて、所属するアーティストなどとも連携したイベントを検討しており「今後はきゃりーぱみゅぱみゅなどが参加するイベントもやっていきたい」(森川氏)とのことだった。

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スタジオを兼ねた原宿のオフィス

 

直近にはブランド広告を中心に展開する予定。「今まではナショナルスポンサーがつくようなブランド価値の高いような動画メディアがなかった。C ChannelのCはコミュニケーション、キュレーション。質の高いブランドを作りたい。そのためには『選ばれている感』や『憧れ』をどう出していくかが重要」(森川氏)。

また将来的には「アドテクの会社にしたい」(森川氏)とのこと。ユーザーの属性にあわせてリアルタイムに動画広告を編集・生成するシステムを開発中だそうだ。「YouTubeなどに乗らずに自分たちで(インフラまで)抱え込めばいろいろとできることがある。将来的にはそのエンジンを外部に提供することも検討する」(森川氏)。そのほか海外展開もすでに予定中。年内にはニューヨークにスタジオを作り、試験的に動画の制作を開始していく。

48歳での挑戦、「ビジネスはタイミングが大事」

ところで森川氏は今年48歳。この年齢での新しい挑戦を「遅い」と感じなかったのだろうか。

「ビジネスはタイミングが大事。早すぎても遅すぎてもダメ。IoTもITとハードウェアの組み合わせだが、ITと動画という違うモノを組み合わすようなビジネスは難易度が高い。『スケールさせること』と『いいものを作ること』の両方考えないといけない」(森川氏)

森川氏いわく、タイミングの重要性はLINEの時にもさんざん経験した話なんだとか。

「例えば検索(NAVER検索。2013年12月にサービス終了)もそう。どれだけすごい人が最高のものを作っても、タイミングが合わないとダメ。LINEも原型をたどればただのメッセンジャー。(先進性という意味では)大したものじゃない。そう考えていく中で、今のタイミングであれば『動画』だと思った。本当は教育なんかもやりたいが、まだ早い。技術があるか? 市場が熟したタイミングか? そしてビジネスモデルが見えるか? の3点が重要」(森川氏)

新しい産業を生み出す

前述の通り、映像と技術の組み合わせは難易度が高いという話があったので、森川氏に「若手のメディア系スタートアップを蹴散らしていくような感覚を受けた」と話したのだけれど、森川氏は笑いながらそれを否定して、「どちらかというと海外のメディアと戦っていきたい」と語る。

また森川氏は「やるなら正直ゲームのほうが儲かるし、(動画メディアは)あまり若いスタートアップがやらない領域だと思っている。だからこそ選んだ」とも説明。また、「秋元さん(秋元康氏)にも相談したら『応援する』と言ってもらった。メディアも変わるべきところにきている意識がある」とマスメディア側の見方も語ってくれた。

ちなみにLINE退任についても少し話を聞いたのだけれども、一昨年くらいから社内では話をしていたのだそう。

「LINEの次に何をやるか——この年齢になるといつ死ぬか分からないから、社会的に何かを残したいと思った。そこで考えた日本の課題は高齢化に伴う衰退。ではそこで大事なのは何かというと、新しい産業を生み出すこと。それが今は動画だった。そこを考えつつ、また別の軸で教育や投資などもできることをやっていきたい」(森川氏)。実はエンジェルとしても「結構多い数投資している」とのことだった。