植物由来の乳製品代替品スタートアップ「Califia Farms」が約248億円を調達

乳製品の代替品を手がける企業のマーケットが、まさに沸いている。

2019年12月に、スタートアップのPerfect Day Foodsが乳製品の代替品のための資金として1億1000万ドル(約121億円)を調達したと発表した。そして今度は、オーツ麦とアーモンドミルク由来のさまざまな製品(コーヒー、ジュース、乳製品不使用のスナック)を製造するCalifia Farmsが、新たに2億2500万ドル(約248億円)を調達した。

このラウンドには、カタール投資庁、シンガポールの政府系ファンドのTemasek、カナダのClaridge、香港を拠点とするGreen Monday Venturesなどが参加した。

Temasekとしては、驚異的に成功したBeyond Meatへの投資に続くものとなる。Beyond Meatは植物由来人工肉の企業で、ダンキン、マクドナルド、カールスジュニアなどのフードチェーンと提携している。Beyond Meatの華々しい株式公開は、昨年最も成功したIPOのひとつだ。

以前に投資していたSun Pacific、Stripes、Ambrosiaに加え新しい投資家からの資金を得て、Califia Farmsはオーツ麦由来製品を拡充し、さらに新しい製品ラインをスタートさせる。同社は、調達した資金を生産能力の増強、研究開発、地域の拡大にも使うとしている。

2010年に設立されたCalifia Farmsは、乳製品の代替品を作るスタートアップのひとつだ。乳製品の代替品は、植物由来の原料または遺伝子組み換え生物を使って乳製品を構成するタンパク質と糖質を生成し作られる。

乳製品の市場は1兆ドル(約110兆円)を超える。この市場の一部を獲得するために、Perfect Day、Ripple Foods、Oatlyといった企業が資金を調達してきた。

Califia Farmsの創業者でCEOのGreg Steltenpohl(グレッグ・ステルテンホフ)氏は発表の中で「1兆ドルを超える乳製品とコーヒー飲料の業界では、継続的なディスラプションの機が熟している。加工が最小限で栄養豊富、そして地球と動物の両方にとってより良い食品の摂取を通じて自身の健康状態を変えたいと思う人々が世界中にいるからだ」と述べている。

Califia Farmsの資金調達にあたっては、Barclaysがファイナンシャルアドバイザーとプレースメントエージェントを務めた。

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(翻訳:Kaori Koyama)

ドイツのスパイスミックスのブランド「Just Spices」が約16億円を調達

ドイツ生まれのスパイスミックスのブランドであるJust Spicesが、シリーズBで1300万ユーロ(約15億8300億円)を調達したことを公表した。このラウンドをリードしたのはFive Seasons Venturesで、Coefficient CapitalとBitburger Venturesも参加した。D2C(消費者直販)のJust Spicesには、2つの製品系列としてSpice MixesとIN MINUTESがある。

Spice Mixesはさまざまなスパイスのブレンドで、売れ行きと同社が蓄積している顧客からのフィードバックデータに基づいて新しいブレンドが開発されている。

2018年に展開が始まったIN MINUTESサービスは、スパイスを中心とする27種のスピード調理の食事献立で、新鮮な食材をあと少し足すだけで料理が完成する。英国のSimplyCookに似ているかもしれない。

Just Spicesの共同創業者でCEOのFlorian Falk(フロリアン・フォーク)氏は「革新的で速くてしかもバランスのとれた食生活は最近ますます重要です。まず、時間のない人が多いから食べ物はシンプルであるべきですが、一方で人間には欲求やニーズがあります。しかしJust Spicesの、特にIN MINUTESでは、さまざまなことを気にする必要がありまえん。早く作れておいしくてしかも健康的な食事であることに、消費者は確信を持てるでしょう」と語る。

顧客獲得努力と製品開発のためのフィードバックループの一環としてJust Spicesは、家庭料理の活発なコミュニティをネット上に作っている。同社の売上の60%以上はネットからで、ヨーロッパのソーシャルメディア上では最も多くフォローされているスパイスのブランドであると自負している。確かに同社はコンテンツ制作に力を入れており、社内にスタジオを用意し、ポッドキャストも手掛けている。

フォークは「世界最大の、ライフスタイルの一部であるようなスパイスのブランドになりたい。そのためには素晴らしいパートナーシップのネットワークを作るだけでなく、制作チームの充実と向上も必要だ。楽しくて面白いクッキングをもっと多くの人びとにお届けしたい」とコメントした。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

英国のHuelが栄誉補給バーを米国で発売へ

欧州で栄養補充バーやサプリメント、食事代替シェイクなどの食品を展開しているHuel(ヒューエル)が、その栄養補給バーの米国販売を考えている。同社はさまざまなバーを欧州で取り扱ってきたが、米国にはまずチョコレート味と塩キャラメル味を持ち込む。

このバーは、27種類のビタミンとミネラルを含み、1本あたり200カロリーある。それらをネットで15本入り1箱28ドルで販売している。バーの原料は、オーツ(燕麦)の粉や挽いたもの、エンドウ豆、玄米のたんぱく質、ココアの粉、ココナッツ、デーツのシロップ、アマニ、そして各種のビタミンとミネラルだ。これまで同社は、世界の80カ国で5000万個のシェイクやパウダー、バーを販売してきた。

Huelの共同創業者でCEOのJulian Hearn(ジュリアン・ハーン)氏は「パウダーやドリンクは前から米国でも販売しており、しかも売り上げは全国的に急速に伸びている。今度はHuel Barで勝負したい。このバーはとてもユニークで、おいしいだけでなく栄養補給になるので、食間や外出時に食べるのに適している」。

米国では栄養サプリメントや食事代替製品がビッグビジネスだ。2017年にはKellogg(ケロッグ)がRxBarを6億ドルで買収したが、それは同社の業績を大きく押し上げた。シリアル食品の販売が落ち込んでいる中で、それを補って余りある売り上げだった。

米国で食事代替製品の市場を若返らせたスタートアップの寵児であるSoylent(ソイレント)は、新しい原料配合と売り方でシリコンバレーのプログラマーたちに人気があるが、同社もやはり栄誉補給バーを開発している

関連記事:スナックバーの破壊的創造、完全食を目指すSoylentが米国1兆円規模の市場に参入

画像クレジット: Huel

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Whiskの人工知能レシピアプリは食材を宅配してくれる

料理のレシピを紹介するウェブサイトやアプリが急増しているが、作りたい料理を組み合わせたり探したりが、ここ数年難しくなってきている。レシピのサイトは、広告やら長たらしい個人的な話で埋め尽くされ、今の利用者は買い物リストを作って店に買いに行よりネットで食材を揃えたいという事実を多くのアプリは無視している。米国時間12月17日、Whisk(ウィスク)という企業が、新しい形の食事のプランニングとレシピ検索のサービスを開始した。集めたレシピの整理も行えるほか、Walmart(ウォルマート)、Amazon Fresh、Instacart(インスタカード)など、さまざまな食材宅配業者で簡単に材料を購入できる。

Whiskは、収益を3倍に伸ばし、収益性と月あたり5億件を超えるレシピのインタラクションを生み出す力を備えるようになった今年の3月、会社そのものが今年の3月にSamsung NEXT(サムスンネクスト)に買収されている。

そして今、Whiskはウェブサイト、モバイルアプリ、音声アシスタントなどに対応する新しいクロスプラットフォーム・エクスペリエンスを提供するまでになった。すべては、食事のメニューやリストの共有、そして買い物を楽に行えるようにするためだ。

誤解のないように説明しておくが、Whiskは一般的なレシピサイトとは違う。ほかで見つけたレシピを保存してくれる手段だ。レシピサイトの散らかりっぷりは最悪。メディアの注目は集めたが、ユーザーからは悲鳴が出ている。また、好きなレシピをPinterestでピンにしている人が大勢いるが、その管理にうんざりした私は、メモアプリにそのテキストと写真をコピーしている。だがWhiskは、今の私のやり方を再考させてくれた。

Whiskのサインアップは、FacebookやGoogleでログインしたくない場合も、メールアドレスか電話番号で簡単に行える。あとは、ウェブ上で見つけたレシピのURLを加えていくだけだ。

Piterestのようなサイトの場合は、リンクが自分のアカウントに保存され、簡単に見られるようになる。だが、Whiskはそれだけではない。そのサイトから重要な情報を抽出し、再構成してくれるのだ。たとえば、レシピのタイトル、写真、材料、所要時間などが、Whiskのレシピ用の記入フォームのそれぞれ適切な場所に配置される。

私が試したところでは、残念ながら作り方の説明が漏れてしまっていたが、そこだけ後からコピーして貼り付ければ済むことだ。説明を書き加えたり、メモを入れたり、自分の好みに合わせて材料を足したり変更したり削除したりもできる。レシピには、元の場所へのリンクを含め、直接保存もできるが、Whisk上で作ったレシピ集への追加もできる。

実際に料理を作るときには、余計な話や広告を一切省いて、レシピだけを見ることができる。

公正を期すために言えば、このやり方でレシピを保存する場合、単純に“Pin It”ボタンを押すだけよりも手間がかかる。Whiskが写真を抽出してくれない場合もある。また、レシピのYoouTube動画へのリンクなど、料理方法以外の詳しい情報を後から追加したくなることもある。

しかし、レシピを追加する際に、数分間の余計な手間をかけることで得られる恩恵も大きい。レシピを整理するだけでなく、Whiskは、スマートテクノロジーを駆使して食事のプランニングも手伝ってくれるのだ。追加されたレシピには、小さな写真アイコンで認識できるようになるのだが、Whiskは各レシピの栄養面を計算して、“Health Score”(健康スコア)を付けてくれる。

この処理は、材料、組み合わせ、日持ち、味、カテゴリーなどのマッピングを行うWhiskの自然言語型深層学習アルゴリズム“Food Genome”(フード・ゲノム)が担当する。今では、Whiskのエコシステムは月に5億件のインタラクションがあると、同社は話している。

Whiskはまた、ボタンをクリックするだけで人数分に合わせた材料の分量に変更できる。頭の中で材料の計算をしなくても(あちこちググらなくても)いいのだ。

材料を買い揃える段階では、ボタンをタップするだけで買い物リストが作られる。必要に応じて材料を個別に加えたり、外したりもできる。このリストはSMS、電子メール、またはURLで共有して、他の人が見たり編集したり、これに従って買い物を頼んだりもできる。Whiskの音声アプリを利用すれば、またはBixby、Alexa、Googleアシスタントのユーザーならば、手を使わずにリストにアイテムを追加できる。

そして、自分の地域で利用可能なオンライン食品宅配業者から、注文したい店を選ぶ。これこそWhiskが他の競合レシピアプリと一線を画す機能だ。ほかのアプリは、往々にしてこの最後のステップを見落としている。

現時点では、Whiskは世界の29のオンライン食品宅配業者に対応している。米国ではWalmart、Instacart、Amazon Fresh、PeaPod。イギリスでは、Tesco、Ocado、Waitrose、ASDA、Amazon Fresh。その他の海外市場では、GetNow、Woolworths、REWEなどが使える。

「米国人のおよそ半数が、今でも紙にペンで買い物リストを書いています。それなのに、ほとんどの人が料理のアイデアをデジタルメディアから得ています」とSamsung NEXTのWhisk製品責任者Nick Holzherr(ニック・ホルチエ)氏は、アプリ立ち上げの際の声明で述べている。「新しくてより健康的な食事関連のコンテンツをインターネットで探し回るのに、何時間も費やされています。しかし、7つから9つの同じレシピのデータが繰り返し出て来るだけです。オンラインとオフラインとの間に根本的な断絶があります。Whiskは、そこをつなげることができます」と彼は話す。

同社はまた、2025年には、米国人の70%がインターネットで買い物をするようになると指摘している。インターネットで買い物をする人が増えれば、一部の食品小売業者からアフィリエイト料も入るようになり、Whiskはこのサービスによる収益を増大させることだろう。

本日からWhiskは利用できるChromeの拡張機能として、またAndroidAlexaGoogleアシスタントBixbyで利用できるようになった。iOS版は間もなく登場する。

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(翻訳:金井哲夫)

水や大豆、天然の香辛料を使うDaring Foodsの植物由来チキン、英国から米国に進出へ

現在、肉を使わないバーガーにはいろんな製品や種類がある。しかし、本当に健康にいいものはどれだろうか?Daring Foods(ダーリン・フーズ)がもうすぐ、そんな製品を提供してくれるかもしれない。同社は5種類の遺伝子組み換えとは無縁な原料である、水、大豆、ひまわり油、塩そして天然の香味料(パプリカ、胡椒、ジンジャー、ナツメグ、メース、カルダモン)を使った植物由来のチキンを生産している。

Daring Foodsの共同創業者でCEOのRoss Mackay(ロス・マッケイ)氏は「世間の関心を呼ぶために、植物由来にこだわっているのではない。人々の生活の一部になりたくてやってるんだ。本当にヘルシーな植物由来の食品へのニーズは大きい」と語る。同社は今年の初めに、同社製品であるDaring Piecesの最初のバージョンを英国で発売した。

そして米国時間12月17日に同社は、英国の食品大手Rastelli Foods Groupから1000万ドル(約11億円)の支援を受けることを発表した。Rastelliは小売店などのほかにホテルやレストランにも食材を納めている企業だ。RastelliはDaringに対して、金銭だけでなくインフラや営業、流通面でも支援する。

Rastelliの支援を得たDaringは2月に英国で、ウェブサイトで消費者への直販を始め、レストランや小売店にも卸販売していく。また、同社は活動の中心を英国から米国に変えるために、本社をグラスゴーからニューヨークに移す。

CEOのマッケイ氏が私のためにランチを用意してくれた時に、Daring Piecesを試食する機会があった。調味料を使わずにフライパンで炒めただけで8分間で調理は終わった。彼は私にDaring Pieces のチキンらしさを感じるために手で食べることを勧めた。私はベジタリアンなのでチキンには詳しくないが、それでも本物に近い食感だと感じた。もう1ついただいたので家に持ち帰り、翌々日の夕食に食べた。

マッケイ氏自身もビーガンだが、同社のターゲットは「肉は食べるが植物由来のものがいい」と感じている一般消費者だ。彼によると、同社のチキンなどを植物性食肉の「第2世代の製品」したいと言う。第1世代よりも本格的にヘルシーで、日常的な食事に定着するような植物性食品を、彼は第2世代と呼んでいる。確かに、Daring Piecesは食感がとても軽い。また人工的な原料をまったく使っていないため、その点でも気持ちがいい。

関連記事: Seattle Food Tech looks to replace the chicken nugget with a plant-based copycat(航空宇宙技師から植物性チキンナゲットのスタートアップに転身、未訳)

画像クレジット: Daring Foods

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

真空調理器のスタートアップ「Nomiku」が事業閉鎖

2012年創業のNomiku「ノミク)は、お手ごろ価格の真空調理器をキッチンに届けてシリコンバレーの寵児となった。その年のKickstarterプロジェクトで75万ドル(約8200万円)集め、目標の20万ドルを大きく上回った。翌年はそのバックストーリーとともにTechCrunchでも大きく取り上げた

しかし米国時間12月14にち、同社は公式サイトおよび各ソーシャルメディアで事業の閉鎖を報告した。

残念ながら私たちに終わりがきたことを報告しなくてはなりません。Nomiku Smart CookerおよびNomiku Mealsの販売を直ちに中止し、業務を停止することをお知らせします。今もコンセプトは正しいと信じていますが、ビジネスを維持することができませんでした。みなさまのご愛好に感謝するとともに、私やNomiku社員全員にとって大きな意味があったことをお伝えします。

「フードテック業界の様相は以前と大きく異なっている」とファウンダーでCEOのLisa Fetterman「リサ・フェッターマン氏がTechCrunchに電話で語った。「フードテックとハードウェアがもっとホットで有望だった時期もあった。会社はいくつかの障壁や課題を乗り越えることができると私は思っている。私の場合は破滅的な結果になってしまった」。

NomikuはこれまでにKickstarterで総額130万ドル以上を集め、食品分野のクラウドファンディングで最高水準に達した。2015年にはY Combinatorに参加し、クッキングアプリのTenderを提供して有名シェフのレシピを公開した。

ある意味で、Nomikuは自分自身の人気の被害者とも言える。彼らは法外な費用のかかるクッキング技術を誰にでも買える値段にするイノベーションを起こし、その結果市場はライバルであふれた。

2017年にSamsung Venturesは、つながるプラットフォームのSmartThinkgsとの統合を目論んでNomikuに投資した。その年Nomikuは食事計画のサブスクリプションへのピボットを図ったが、思うようにいかなかった。フェターマン氏によると同社は最後まで資金調達を模索したが実現しなかった。

たとえ勇敢な会社と偉大な製品があっても、スタートアップの世界は容赦しない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Google級の良質な社食を多くの企業へ、社食の遊休資産を使ったランチケータリングのノンピが2億円調達

突然だが「社食」と聞いてどんな空間、シーンを想像するだろうか?

もしかしたら社食に対しては「社員のお腹を満たすため、健康をサポートするための食事を提供してくれる場所」というイメージが強いかしれない。もちろんそれは今でも変わらない重要な機能ではあるが、現代の社食は必ずしもそれだけに止まらないようだ。

「特に近年はGoogleを始め社食のクオリティが上がってきていることに加え、そういった事例が共有されていることもあり、企業が社食に期待することも変わり始めている。具体的には単純な福利厚生としてだけではなく、社員のコミュニケーションを活発にし、そこから新しいアイデアや関係性が生まれる空間として捉えられている」

そう話すのは社食領域を軸に事業を展開するフードテック企業「ノンピ」の取締役副社長・上形秀一郎氏だ。

同社ではまさにこれから「社員食堂の遊休資産」を用いたランチケータリングサービスを本格展開する計画。自社では社員食堂を有していない企業でも会議室などのスペースを活用し、質の高い社食環境を導入できる仕組みを広げていこうとしている。

そのための資金としてノンピでは本日11月27日、池森ベンチャーサポート(ファンケル創業者の池森賢二氏が立ち上げたベンチャー支援企業)などを引受先とする第三者割当増資により総額で2億円を調達したことを明らかにした。

ケータリングを通じて良質な社食環境をサービスとして提供

ノンピは普段TechCrunchで紹介するテック系のスタートアップとは若干毛色が異なるタイプの企業だ。2003年の創業当時の主力事業は外食。西麻布に飲食店を開いたのが始まりだった。

そこからは店舗を広げつつも徐々にケータリングや社食/社内カフェの運営受託、キャラクターフードなど事業の幅を拡大。これまで川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアムカフェにおけるメニューの企画販売や三菱地所の大手町新社屋内キャフェテリアの運営のほか、LINEの「LINE FRIENDS cafe&store」内サラダバーランチの運営なども担ってきた。

ノンピの役員陣。左から取締役副社長の上形秀一郎氏、創業者で代表取締役社長の柿沼寛之氏、取締役の中矢誠一氏

当初はエクイティファイナンスをするような企業形態ではなかったが、トーマツ出身でフードスタートアップのfavyで副社長を勤めていた経験もある上形氏や複数社の経営に携わってきた中矢誠一氏らが経営に参画。

以前Google JAPANのフードチームで総料理長を担当していた飯野直樹氏が総料理長として、同チームのリーダーでGoogleの社食作りに関わってきた荒井茂太氏が取締役として加わるなど、事業の変遷とともにチームのアップデートも行ってきた。

そういった背景もあり2018年5月には飲食店事業から完全に撤退。現在は社食の企画運営とケータリングECを軸に事業を展開している。

このケータリングEC「munchies」はユーザーから見れば比較的シンプルなプロダクトで、シーンに合わせて様々な料理をオンライン上で気軽に注文できるというもの。既存の飲食店を束ねたケータリングプラットフォームやデリバリーサービスとは異なり、ノンピ自ら開発したこだわりのメニューのみを提供しているのが特徴だ。

季節ごとに変わるオリジナルピンチョスに加え、寒いシーズンには嬉しいおでんセットなども扱うほかオプションとして有名シェフとコラボしたオリジナル商品も手がける(たとえば人気焼肉店とタッグを組んで特製のハンバーガーを作ったり)。

上形氏によると商品開発力が1つの強み。これまでは社内パーティーを中心に夜の時間帯に単発の注文をベースにしていたが、中には年間20〜30回注文するような会社も複数あり、一度購入に至ると何度もリピートに繋がるケースが多く手応えをつかめていたそう。そこで今後は要望も多かったランチケータリングにも本格的に参入していくという。

ランチについては定期契約(1食あたりの料金+社員数に応じた月額利用料)のモデルを基本としつつ単発の注文にも応じる。⾷事の配送から配膳、⽚付けまでを全てノンピ専属スタッフが担当するので社内の負担なく「会議室などのスペースをレストランのような空間に変える」ことができるのがウリだ。保湿器なども用意して「温かい⾷事は温かく、野菜などは⽔々しいまま」提供することにもこだわる。

今風の言い方だと良質な社食環境をサービス化した「社食 as a Service」型のプロダクトと捉えられるかもしれない。

遊休資産となっている社員食堂をシェアエコ的に有効活用

先ほどノンピのケータリングサービスは「ユーザーから見れば比較的シンプルなプロダクト」と紹介したが、実は表には見えない裏側の部分でユニークな仕組みを取り入れている。

その仕組みとは同社が受託運営している社員食堂の空き時間を活用し、その設備を用いてケータリング用のメニューを調理していること。大量の食事を作るには充実した設備を持つキッチンが不可欠だが、遊休スペースとなっている社員食堂をシェアリングエコノミー的な形で活用しているのだ。

上形氏の話では、既存の社員食堂はランチだけでは採算が取れず企業側が社食運営事業者に「運営補填金」を支払うことが多い状況なのだそう。その運営補填金がネックとなって運営事業者が見つからず、閉鎖状態のままになっている社員食堂も少なくない。

そこでノンピでは遊休資産となっている社員食堂を運営補填金なしで運営受託。ランチタイムには通常通りその場所で社食を提供し、それ以外の時間を使ってケータリング用のメニューを作って周辺企業に届ける。

ポイントは「通常のランチ営業は赤字でもいい」(上形氏)こと。実際に現在ノンピでは2箇所の社員食堂をこのモデルで運営しているが、ケータリングと合わせることで通常のランチ売上の約5倍〜10倍の売上を作り黒字化に成功しているという。

社食コミュニケーションには「美味しい」が不可欠

上述した仕組みによってノンピでは完全内製のケータリングメニューをスピーディーに調理しているわけだけれど、当然ユーザーからは他のサービスと比較されることもある。特にノンピの場合は1食あたりの価格を見ると比較的高価な部類に入り、もっと手軽に頼めるサービスも存在する。

ランチの本格展開はこれからだが、すでに外資スタートアップや国内メガベンチャーなど直近スタート予定の企業も含めて十数社で導入。様々な選択肢の中からユーザーはなぜノンピを選ぶのか。上形氏いわく「最終的には料理の味」が決め手になることが多いそうだ。

「比較検討されるパターンで多いのは2つ。1つは自社で社員食堂を作るか悩んでいる企業。社員に豪華な食事を提供したいが、社内に作るには数億円単位の投資が必要になるため別の手段を考えた結果ノンピに問い合わせ頂く。もう1つが既存のケータリングサービスに飽きてしまったケースだ。廉価なものを導入したものの(味や種類などがネックで)社員にあまり活用されず、もっと良いものを求めてノンピを選んで頂くこともある」(上形氏)

ある会社のランチケータリングの実例。各社ごとで異なるが、ケータリングと言えどかなり本格的な食事が楽しめるのがノンピの特徴だ

背景には、冒頭でも触れた通り「社食の位置付けやそれに対する期待感」が変化していることもありそうだ。

ノンピのサービスを検討するような企業は社食を「社員同士がコミュニケーションをとり関係性を深める場」としても考えている場合が多いようで、そもそも社員がその場所に集まってこなければ十分に機能しているとは言えない。そのためには「味が良いことは大前提」なのだ。

特に直近ではフリーデスクの会社などからのオーダーが多いそう。フリーデスクに加え、働き方改革の文脈でテレワークや在宅勤務などを取り入れた結果、メンバーが一同に集まってコミュニケーションを取る機会が限られるような会社では、社食コミュニケーションを重要視する傾向があるという。

「ケータリングで質の高い料理を常に提供するというのは意外とハードルが高い。作ってから数時間たっても美味しい状態を保つにはどういった工夫が必要かなど、調理には独特のノウハウが必要だ」(上形氏)

飲食店をネットワーク化したマーケットプレイス型の場合、どうしても料理の質の部分は飲食店ごとにバラツキがでる。そこは内製型のノンピの強みが活かされる部分ではあるが、一方で事業の立ち上がりスピードはマーケットプレイスの方が加速させやすく、内製だとスケールさせるのに時間がかかるという課題もある。

上形氏もその辺りが今後事業を拡大させていく上でのポイントになるというが「中長期的にグローバルにも出ていくことを考えていて、それを見据えると自分たちのブランドをしっかりと確立させていった方が最終的には結果が出る」ため、これからも軸はブラさずに事業を作っていく方針だ。

Googleの社員食堂で7年間総料理⻑を勤めていた飯野直樹氏。現在はノンピ総料理⻑としてメニュー、商品開発を統括している

Googleレベルの社食をもっと多くの企業へ

必ずしも社食に限定した話ではないけれど「ケータリング」は国内外でポテンシャルがあると考えられている領域。実際にアメリカなどでもDropbox・Adobeなどを顧客に抱える「Cater 2.me」、これまで二桁億円規模の調達を実施している「ZeroCater」や「EAT Club」など注目を集めるスタートアップがいくつも登場している。

「海外ではケータリング市場がマーケットとしてしっかりと認知されていて市場調査データなどを見ても1ジャンルとして確立されている状況」(上形氏)であり、ノンピでも日本からこの市場にアプローチしていく計画だ。

今後は調達した資金を用いて組織体制を強化していくほか、テクノロジーに対する投資も行っていく予定。たとえばスマホからメニューを簡単にオーダーできるシステムや料理の質に影響を与える温度管理システムなどを考えているほか、将来的には調理をサポートするロボットアームなどの導入も検討していきたいという。

「もともと日本企業からイノベーションがどんどん生まれるために何ができるかを考えた結果、自分たちが直接やるというよりは、食事を届けた企業からイノベーションが生まれれば良いよねという考えが根本にある。それこそGoogleの社食のように、今までは一部の企業でしか実現が難しかったような質の高い社食をもっと多くの企業に届けていくようなチャレンジをしていきたい」(上形氏)

Banditがニューヨークに「モバイル専用」コーヒーショップをオープン

ニューヨークのミッドタウンにあるBandit (バンディット)コーヒーショップでは、ただカウンターに行って何かを注文するということができない。その代わりに、モバイルアプリをダウンロードする必要がある。

私も昨日の午後、自分自身でそれを体験してみた。他の客にまざって携帯電話を取り出し、Banditアプリをダウンロードしてプロファイルを作成し、注文と支払いを行った。数分後、バリスタがカウンターで私の名前を呼びコーヒーを手渡してくれた。とてもおいしいコーヒーだった。

別の言い方をするなら、スターバックスがモバイルによる注文と支払いの実験を行っている一方で、Banditは共同創業者兼CEOのMax Crowley(マックス・クロウリー)氏が言うように「モバイル専用」ストアと呼ばれるものに賭けている。

もちろん、このモデルは初回にもたつく可能性がある。特に事情を知らないフリー客が入ってきたときにはなおさらだ。とはいえ、親切なBanditスタッフが控えているし、クロウリー氏(以前はUber for Businessのゼネラルマネージャーだった)は、このモデルは「まったく新しいタイプの体験」を生み出す機会を提供すると語っている。

彼は中国のLuckkin Coffeeの急速な成長をインスピレーションとして指摘し、最終的にBanditは、顧客のコーヒーへの渇望を満足させる最も便利な方法(どこにいてもアプリを立ち上げて飲みたいドリンクを注文できる)を提供するはずだと語る。注文後アプリは、いつ準備が整うか、どこでそれを受け取れるかを顧客に伝える。

今の所Banditは、1店舗しか存在しないため、そこまでの利便性を提供することはまだできない。しかし、クロウリー氏は、コーヒーショップモデルの他の側面も再考したと語る。

その例の1つとして、この最初のBanditストアは、基本的に特別な施工をされていない小売スペースに置かれているという点が挙げられる。クロウリー氏によれば、彼のチームはその中ですべてのコーヒー準備を行うことができる11×11フィート(3.35×3.35m)のカウンタースペースを用意したという。他の場所で組み立てることもでき、単に電源を引き込むだけで使うことができるため、大げさな工事は不要だ。

「(新しい場所を)数時間で立ち上げることができますし、従来の店舗の約10分の1のコストでそれを実現することがでます」と彼は言う。

このため、今後数か月でさらにニューヨーク市内に4つまたは5つの店舗を立ち上げ、2020年の第1四半期の終わりまでにはニューヨークを超えて拡大する計画だ。

クロウリー氏は、コストを抑えることでBanditがコーヒーを手頃な価格に保つこともできると付け加えた。「アイスラテが6ドルや7ドル(約650円〜760円)である必要はないと思っています(例えば、昨日私が飲んだコーヒーは2ドルだった)。私たちの目標は、スターバックスよりも安く提供することです」。また、他の価格モデルの実験も行っていて、手始めに毎月20ドル払えば1杯1ドルで無制限にコーヒーを飲めるプログラムを始めた。

そして、この携帯電話を使ってて商品をポンと受け取るだけのやり取りが、事務的でおそらくはやや気持ちがこもっていないような気がするとしたら、私が実際に行った店ではそんな感じはまったく受けなかったということを指摘しておきたい。場所は多少むき出しのままだが、目を引く外見で、コーンホール(トウモロコシの粒などが入った袋を、斜めに置かれた穴に投げ入れる対戦型ゲーム)のようないくつかの遊具が顧客のために置かれていた。最も重要なことは、人びとは単にコーヒーを急いでとりに来ているのではなく、実際にその辺でくつろいでいたということだ。

「コーヒーショップの場所に関する基本的な調査を行っていとき私たちが観察したのは、お客さんの80%がコーヒーを受け取ってすぐに去っていく姿でした」とクロウリー氏は言う。「その層は、間違いなく私たちが中心的に狙っている層です。1分以内に飲み物の注文を完了して、受け取って店を出るまでを本当に簡単なものにしたいのです。将来的には、さまざまな場所で、さまざまな体験に対して、このようなものを提供したいと思っています」。

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(翻訳:sako)

人が食べる限りなくならない、フードテック投資機会の現在とこれから

この地球上に、食料と農業ほど大きな産業はない。70億人という安定した忠実な顧客数を誇る。実際、世界銀行は全世界のGDPに占める食料と農業の割合を10%と見積もっている。つまり食料と農業は、2019年の全世界のGDP予測88兆ドル(約9500兆円)に対して、およそ8兆円(約960兆円)になる計算だ。

食料に関して言えば、2018年に食料品店やその他の小売店で飲食料に支出された金額、および外食やスナックに支出された金額の総計は、米国内だけで1兆7100億ドル(約184兆7000億円)が記録された。同年、米国人の可処分所得の9.7%が食品に費やされている。そのうちの5%が自宅、4.7%が自宅外での出費だ。経済が大きく変動する中、この割合は過去20年間で一定水準を保っている。

不動の顧客数を誇る食品産業だが、消費者の傾向に起因する、生産、需要、規制において、いまだかつてない難題に直面している。この数年で、消費者の要求と関心が変化した。持続可能性、健康、鮮度への消費者の関心が高まり、食品産業のイノベーションを求める圧力が非常に大きくなっているのだ。

避けられないイノベーション

近年、アグテック分野の革新を進める者たちは世界の食料供給量を増やそうと、大変に面白く斬新なテクノロジーの使い方を生み出している。アグテックのイノベーションは、穀物を守り、生産量を高める。それは、農業システムの構造変革を促し、温室効果ガスの削減、水の使用量の削減、森林伐採の阻止、さらには二酸化炭素の土中への隔離といった重要な持続可能性の目標達成にもつながる。

しかし、これはまだ序の口だ。人が食べなければならない限り(しかも1日に何度も!)、飲食料の技術革新への巨大な投資機会はなくならない。それは、よりよい食品流通、保存、アクセスを通じて、革新的な食材や栄養価の改善による食料エコシステムの健全化をもたらすフードテックだ。

食料の改善にテクノロジーを利用する機会は膨大にあり、その範囲は世界人口の増加にともなう環境破壊を最小化するために不可欠な食料消費方法の改善から廃棄量の削減にわたっている。この巨大な好機を認識したベンチャー投資家たちは、この分野に密着して観察を行っている。PitchBook(ピッチブック)によれば、フードテックへの投資は2008年のおよそ6000万ドル(約65億円)から2015年の10億ドル(約1080億円)以上へと激増している。またCB Insightsによれば、この分野に特化したベンチャー投資家やプライベート・エクイティ・ファンドからの投資は、2015年の223件から2017年の459件へと倍増している。投資総額とイグジットの動きを見てみると、フードテックは今や両方の分野でアグテックを超えている。フードテックセクターの全世界の潜在顧客数が70億人(さらに増加中)であることを考えると、まだまだ規模は小さい。

フードテック投資を牽引する投資家たち

消費者は、自分たちが食べるものに関して神経質になってきている。忙しい仕事と個人の生活を両立させようとすれば、自分たちの食事には利便性を求めたくなる。だが、便利であっても品質は落としたくない。これまでになく人々は、食品に何が含まれているか、原産地はどこか、その収穫と加工の方法は環境に悪影響を与えていないかを気にするようになっている。

数年前、消費者向けパッケージ製品(CPG)の既存メーカーは、消費者の高まる要求に応じようと、こぞって便利で高品質な食品の提供を約束した。しかし、原材料のマージンが低下して企業統合なども重なると、その努力は腰折れとなって多くの企業は方向転換を余儀なくされた。だが門戸は開かれたままだったので、腹を空かせた投資家やスタートアップに新しい波が沸き立つことになった。

現在の消費者が求めるのは利便性と安定性だけではない。簡単に手に入り、食品ロスが少なく、自己ブランドに合致する栄養価の高い食品も求められている。実際、今ほど食品会社が厳しい思いをする時代はないだろう。消費者の需要は、倫理的な信念にまで広がっているが、利便性は決して落としてはならない。しかしその出費傾向を見ると、消費者は、利便性、健康、環境への影響への高まり続ける要求に応えてくれるフードテックイノベーションのためなら、喜んで高い金を払う覚悟でいることがわかる。革新的な食品業者がこの市場の要求を逆手に取れるチャンスは増え続けているのだ!

フードテックの存在

世界的に食事の出前サービス業界には、ベンチャー投資家に支えられた株式非公開のフードテック系スタートアップがもっとも多く存在しており、今では最大のフードテック分野となっている。去年は、フードテックにとって投資額169億ドル(約1兆8300億円)を記録した特別な年だった。Crunchbaseによれば、その年の投資額トップ3は、インドを代表するオンラインレストランマーケットプレイスSwiggy(スウィギー)の10億ドル(約1080億円)、米国の食品配達サービスInstacart(インスタカート)の6億ドル(約650億円)、ブラジルを拠点とするレストランマーケットプレイスiFood(アイフード)の5億9000万ドル(約640億円)だった。

消費者の食事の出前や食品配達サービスに対する食欲は衰えないものの、食事キットサービスのBlue Apron(ブルー・エイプロン)などの大失敗の余波を受けて、投資家たちは警戒感を強めた。その失敗例は、規模の拡大、役に立たない食品特許、サプライチェーンでの腐敗や汚染といった課題を強調している。この失敗により、多くの投資家は、新しいフードテックの未開拓地に目を向けるようになった。

フードテックのこれから

フードテックのイノベーションにより、まったく新しい画期的なアプローチをバリューチェーンに即して提供する3つの重要な分野が誕生した。これらは、食品産業における深刻な問題点に対処する技術的なアプローチを代表するものであり、今後数年で目覚ましい成長を遂げ、投資家の注目を集めることが期待されるセクターだ。

消費者向けフードテック

消費者向けフードテックは、おもに消費者に向けてマーケティングされる技術開発に焦点を当てたフードテック投資の中のセグメントだ。例えば、植物由来の肉、画期的な配送システム、栄養学に基づくテクノロジーなど、消費者の要求を満たすことを目的としている。消費者向けフードテックのイノベーションを進める企業には、代替タンパク質、代替乳製品、栄養キットや食事キットを配送するものなどが含まれる。

オーガニック食品の流行がピークに達し、商品化が始まると、その隙間に新しい食品の流行が始まった。植物由来、肉を含まない、アニマルフリーなど、呼び方はどうあれ、人々は肉を食べないことに熱狂し始めているようだ。肉を使わない肉が登場したというニュースや広告を見ない日はない。

バーガーキングもマクドナルドも、肉を使わないハンバーガーをメニューに加え、トレーダー・ジョーズやホール・フーズといった自然食品スーパーでよく買い物をしている人たちを呼び込むようになった。バーガーキングはImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)の製品を、マクドナルドはBeyond Meat(ビヨンド・ミート)の製品を使っている。もうひとつはMemphis Meats(メンフィス・ミーツ)だ。小売大手のIKEA(イケア)で出しているような悪名高いスウェーデン・ミートボールのベジタリアンバージョンの開発を行っている。

それだけではない。代替タンパク質の商品化を目指す企業がいくつもある。細胞培養で卵白を作るClara Foods(クララ・フーズ)、乳製品やナッツを含まないミルクの代替品の開発に特化したRipple Foods(リップル・フーズ)やOatly(オートリー)など。UBSの見積もりによれば、植物由来タンパク質の市場だけでも、現在の50億ドル(約5400億円)以下の規模から、今後10年で850億ドル(約9兆1800億円)あたりの規模にまで拡大するという。年間およそ28%の成長率だ。

一方、Brightseed(ブライトスティード)、Just(ジャスト)、Renaissance Bioscience(ルネサンス・バイオサイエンス)といった企業は、生物学と栄養機能食品の新しい道を開拓し、清潔で小規模、そして持続可能性のある方法での食品やサプリの製造方法を研究している。

業務用フードテック

食品そのものに取り組む企業もあれば、持続可能で健康で革新的なこのニューウェイブの食品を、どのように加工、パッケージング、配送するかに取り組む企業も数多い。業務用フードテックは、食品産業における基本的なビジネスモデルとB2Bの弱点に対処することを目的としたフードテックのサブセグメントだ。これに携わる企業には、加工とパッケージングの革新的テクノロジーや、栄養、ラベリング、製法が改善された新しい、または機能性のある食材に取り組むところが含まれる。

Apeel Sciences(アピール・サイエンセズ)やHazel Technologies(ヘイゼル・テクノロジーズ)などの食品保存技術を開発する企業は、輸送中の食品の質を保ち、食品の無駄をなくす努力を牽引している。そこはイノベーションを待ち望んでいる分野だ。消費者の手に届く前に無駄になる食品は、米国でのすべての食品ロスのうちの40%を占めている。食品ロスの削減は、必要とされる耕作面積の削減にもつながる。

食品加工と品質評価の技術も、このセグメントの先頭に立つ分野だ。例えば、食品調査のスタートアップであるP&P Optica(ピー・アンド・ピー・オプティカ)は、食品の品質評価と異物検出の技術に投資を受けている。そのハイパースペクトル技術には、異物の自動検出による食品の安全性向上のみならず、食肉の等級付けを標準化し、時間をかけて改善できる可能性がある。

乳化剤、甘味料、安定剤、その他の食品添加物などの業務用素材を扱う急成長中のセクターと合わさり、大手食品加工業者が革新的になること、さらにずっと革新的であることを消費者から強く望まれている中で、このセクターも急成長している。Aromyx(アロミックス)などの企業は、味や匂いといった要素を評価することで、調剤、化学、農業、飲食品、PCGなどさまざまな産業で製造工程を強化することができる。

サプライチェーンと調達

メキシコ料理のファーストフード、チポトレの集団食中毒事件やそれに準ずる問題により、食品サプライチェーンの透明化が重視されるようになった。Safe Traces(セーフ・トレーセズ)をはじめとするスタートアップは、食品原産地の新しい追跡モデルを商品化することで、食品のトレーサビリティーを高めようとしている。食品偽装、トレーサビリティー、さらに原産地表示の必要性から、消費者の意識は高まっている。これが、その問題に対処する食品サプライチェーンのイノベーションという強力なビジネスケースを生み出した。消費者の、食品サービスにおける品質、利便性、グルメ商品に関する好みが変化したことで、ファストカジュアルレストランというカテゴリーが誕生し、ファストフード店はそのデリバリーモデルの再考を迫られることとなった。

Finistere Ventures(フィニステア・ベンチャーズ)のポートフォリオにも含まれているFarmer’s Fridge(ファーマーズ・フリッジ)やBingoBox(ビンゴボックス)といったスタートアップは、シェフが厳選した食事やスナックをパッケージ化して、便利な場所に置かれた自動販売機や無人コンビニで販売している。6D Bytes(シックスディー・バイツ)は、AIと機械学習を使い、スムージーなどの健康的な食品をオーダーメイドしてくれる。Starship Electronics(スターシップ・エレクトロニクス)は、地域の店舗やレストランと提携して人々に食品を配達するロボット軍団を提供している。

このセグメントでのイノベーションは、トレーサビリティー、持続可能性、鮮度の改善、食品ロスの削減に焦点が当てられている。例えば、Good Eggs(グッド・エッグズ)とFarmdrop(ファームドロップ)は、新鮮で持続可能な方法で入手した食品を再利用可能な容器で届けてくれる。Full Harvest(フル・ハーベスト)は、食品サプライチェーンにそのままでは捨てられてしまう規格外または余剰作物を利用する、いわゆるShop Ugly(ショップ・アグリー、不格好なものを買うこと)を推奨している。

テクノロジーは、私たちが食べるものがどのように作られ、どのようにパッケージ化され、どのように届けられ、どんな味、食感、匂いがして、どのように再利用されるかに関して、ますます重要な役割を果たすようになる。フードテックへの投資は、より健康的で、より持続可能な食品システムを世界に届けることを期待して、これからも増え続ける。つまるところ、私たちは私たちが食べたもので作られているのだ。

【編集部注】著者のIngrid Fung(イングリッド・ファン)は、Finistere Ventures(フィニステア・ベンチャーズ)のアソシエイト。

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(翻訳:金井哲夫)

3DプリントステーキのNovameatが新たな資金調達

肉市場で代替タンパクの開発を推進するスペインのスタートアップNovameat(ノバミート)が、大手フードテック投資会社のNew Crop Capitalから新しい資金を得て、その動きを加速する。

生物医学工学の専門家であるGiuseppe Scionti(ジュゼッペ・シオンティ)氏によって創業されたNovameatの技術は、これまでカタロニア工科大学、ロンドン大学、チャーマーズ大学、そしてミラノ工科大学でバイオエンジニアリングの助教授を務めたシオンティ氏の10年に及ぶ研究に基いている。

同社は、世界初の3Dプリントされた植物ベースのビーフステーキの生産で、2018年に有名になった。今回New Crop Capitalからの新しい資金を使って、鶏むね肉などの繊維質の質感を持つ、ステーキのような肉の開発を加速するための、さらなるプラットフォーム開発を行う予定だ。

同社は、ビーフステーキ、鶏むね肉、魚の切り身といった、繊維質の肉の質感、外観、栄養、感覚特性を模倣するための、新しい基本技術を開発したところだ。

シオンティ氏は、このテクノロジーを、植物ベースで実験室で開発されてきた、これまでの代替タンパク質開発の次のステップと位置付けている。多くのクリーンミートや植物ベースの食品会社が、本物と同様の味と質感を持つ品質の挽き肉代替品を市場に出すことに成功してきたが、ステーキや切り出された筋肉を複製することは難しいことが証明されている。

Novameatにはその問題を解決できる可能性がある。

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「私は生物医学および獣医学用途のバイオプリンティング技術を通じて、動物組織の再生について研究して来ましたが、その中で肉の質感を実現するために様々な植物ベースのタンパク質の3Dマトリックスの構造を、バイオハックする方法を発見したのです」とシオンティ氏は発表の中で述べている。

Novameatの技術の中核は、企業がステーキを作るための必要な種類の繊維組織を作成できるようにする、カスタマイズされたプリンターだ。「私たちは、そうした企業とのライセンス契約に基づいて、機器や機械を提供します」とシオンティ氏は語る。「植物ベースの食肉メーカーが、ステーキの食感と味を作り出す手段にアクセスできるのです」。

従来の成型技術では、Beyond MeatやImpossible Foodsからの材料を用いてステーキをプリントすることはできなかったが、Novameatの創業者は同社の技術を使えばそれが可能になると主張している。

この技術は、拡大しつつある肉代替品市場で、最も経験豊かな投資家の1つであると思われるNew Crop Capitalの注意を引きつけることができる位に有望なものだった。このベンチャーファームが扱うポートフォリオには、Memphis Meat、Beyond Meat、Kite Hill、Geltor、Good Dot、Aleph Farms、Supermeat、Mosa Meat、New Wave、そしてZero Eggなどが含まれている。

「私たちは、グローバルな食糧サプライチェーンが壊れていると考えいます、そしてこれらの課題の1つである、動物性タンパク質の解決に注力しています」と、New Crop CapitalのDan Altschuler Malek(ダン・アルツシュラー・マレク)氏は語る。「消費者のみなさんによる動物タンパク製品の消費を削減し、みなさんが払いたいと思える価格の商品へのシフトを起こすチャンスがあると思っています」。

マレク氏は、肉代替製品の作成時間を短縮するNovameatがコストの削減に役立つと考えている。

シオンティ氏によると、同社のマイクロ成型技術を使えば、企業は時間がかかりコストが増大する可能性のある培養期間をとることなく、3次元構造を手に入れることができるということだ。「Novameatのバイオプリンティング基盤技術は、柔軟で調整可能な植物ベース肉の生産手段を提供します。また、さまざまな食材からさまざまな質感を一片の肉の中に形成するユーティリティを提供します」と彼は言う。

Good Food Instituteの科学技術ディレクターであるDavid Welch(デビッド・ウェルチ)氏は声明の中で以下のように述べている。

「植物タンパクを使って肉の質感を生成するために、現在業界で主に使われている手段は、高低水分押出成型機によるものです。この押出成型がうまくいく応用もありますが、全てのタイプの動物肉を模倣する手段としては理想的なものではないとも思っています。このとき、Novameatのような代替技術は、植物ベースの食肉メーカーに、あらゆる種類の肉や魚介類を模倣するための幅広いツールを提供してくれるのです」。

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(翻訳:sako)

完全栄養の麺・パンをリニューアルしたベースフード、まもなくアメリカでの販売を開始

完全栄養の主食「BASE PASTA(ベースパスタ)」ならびに「BASE BREAD(ベースブレッド)」を開発してきたフードテック領域のスタートアップ、BASE FOOD(ベースフード)。

同社は7月1日、BASE PASTAならびにBASE BREADをリニューアルしたと発表した。BASE PASTAは「BASE NOODLE(ベースヌードル)」に一新、BASE BREADは常温保存が可能となった。

また、同社の代表取締役社長、橋本舜氏はTechCrunch Japanの取材に対し、今秋には同社商品のアメリカでの販売を開始する予定だと明かした。

完全栄養の主食をリニューアル

BASE FOODいわく、従来商品のBASE PASTAに対し、「雑穀感が強い為、アレンジしにくい」「あわせるソースが限られてしまう」などの声が挙がっており、また、和洋中を問わず様々なソースに合わせて食べられるようにするため、同社はBASE PASTAを改めBASE NOODLEとしての販売を開始した。

確かに、BASE PASTAは味に癖が強かったのに対し、BASE NOODLEはよりスッキリとしている印象だ。

橋本氏いわく「10種類以上の原材料を使って作る麺というのは他にはないので、それぞれの配合の仕方や順番、加えて、製麺する時の工程の順序などを工夫したことによって、より歯切れやツルッと感、美味しさが改善している」が、詳しい内容は企業秘密とのことだ。

ソースは「コクと旨みのボロネーゼソース」「とろとろ玉ねぎとアンチョビのソース」「具材たっぷり 中華風あんかけソース」「ピリ辛 台湾まぜそばソース」の4種が用意されている。以前はより多くのソースが用意されていたが、整理して4種類にした。橋本氏いわく、以前の麺は癖が強く市販のソースにはあまり合わなかったが、BASE NOODLEでは十分美味しく食べることができる。

日清食品が3月にパスタで完全栄養食の新ブランド「All-in PASTA」の展開を開始したため、「PASTAからNOODLEに変更したのはこのためか?」と聞いたところ、橋本氏は「NOODLEの構想はもともとあった」と回答。

「大手が入ってくるとスタートアップは厳しいという話を多くの人がするが、実際はそんなことはない。スタートアップは『このプロダクト』『このビジョン』に専念・集中している。一方、日清は多くのプロダクトがある中でのAll-in PASTA。同社が参入したことによってBASE FOODの客が減った印象はなく、むしろ、認知が相当大きくなっている」(橋本氏)

また、このPASTAからNOODLEへの名称変更には、「焼きそばなどにして食べるような工夫が広がってきている中、PASTAという名前の場合、一見の客はPASTAとしてしか食べられないと勘違いしてしまう」(橋本氏)といった、マーケティング面での理由もある。

1食で1日に必要な栄養素の1/3を含み、一般的なパスタと比べて糖質45%OFFのBASE NOODLEには以下の栄養素が含まれている。

完全栄養パンのBASE BREADは常温保存が可能な商品へとリニューアルされている。

2月に同商品が発表された時、「冷凍での保存」が必須なため「解凍が手間だ」と僕は感じた。BASE FOODいわく、ユーザーからも「冷凍庫に入りきらない」「冷凍便での配送受け取りが面倒」といった声が挙がっていたという。

そのため、常温でも商品が届いてから約1ヵ月保存できるようBASE BREADは改良された。

橋本氏いわく「保存料を加える形ではなく、水分や酸素、アルコール、酸性アルカリ性などの細かな工夫により、完全栄養かつ、一定の消費期限があるものを作り上げている」が、こちらに関しても詳細は企業秘密。

1食で1日に必要な栄養素の1/3を含み一般的なロールパンに比べ糖質35%OFFのBASE BREADに含まれる栄養素は以下のとおりだ。

今秋にはアメリカでの販売も開始予定

BASE FOODは2018年、米国法人を立ち上げ、サンフランシスコにオフィスを開設。現在は日本人のアメリカ代表と食品開発のCTOが米オフィスに常駐しており、アメリカ人も3人採用している。

橋本氏は「販売開始も近い」と話し、今年の秋にはアメリカでの発売を開始する予定だと明かした。同社は設立当初より海外展開を目指していたのだという。

「もともと海外展開を予定していたので、ガラパゴス化しないように、アメリカや中国でもできるようなビジネスモデルでやっている。それは『D2C掛けるフードテック』。ゆえに、どちらかというと日本市場のほうが厳しい。日本にはD2Cで買うようなミレニアル世代が少ない上、フードテックの認知度も低い。ただ、同じやり方をD2Cもフードテックも既にあるアメリカでやると、より楽に広められると思っている。アメリカの方が日本よりスピーディーに立ち上がる可能性は十分にある。アメリカ人の社員もいるので日本人としての不利もない」(橋本氏)

現在、アメリカでは植物性の肉を製造するBEYOND MEAT(ビヨンド・ミート)などにより、フードテック領域が話題だ。橋本氏はBEYOND MEATに関して「(同社が)解決する課題は、国連SDGsのサスティナビリティ関連の話であり、『買い物にいくのが面倒だ』などといった話ではない。地球規模の社会課題解決をするために、『肉』という人類史上変わらなかったものをひっくり返そうとしている。それがフードテックの面白いところだ」と話した。同氏はBEYOND MEATのビジョンに強く共鳴しているようだった。

「BEYOND MEATは肉をプラントベースのものに入れ替えることによって、評価されている。入れ替える理由は、『美味しいから』。従来のものは美味しくなく、ビーガン向けだったので市場は小さかった。だが、BEYOND MEATは美味しいので『一般人向け』。海外の投資家はBASE FOODを全く同じように見ている。肉と同じくらい大きい市場は主食くらいしかないと思うが、BASE FOODは炭水化物中心の主食を栄養バランスの良い主食に切り替えようとしている。その理由は『美味しいから』」

培養肉から発酵菌まで食品系CVCが夢中になるスタートアップ

食通が夢に描くのは、健康的で、職人気質の農家やパン屋やシェフが提供する、加工食品ではない料理をみんなが味わえる世界だ。しかし現実は、ひと握りの巨大食品複合企業体から供給される食品が摂取カロリーの大半を占めている。そのため、そうした企業の都合によって選ばれた素材や加工方法が、私たちの日々の食事に大きなインパクトを与えることになる。

このことを踏まえ、Crunchbase Newsでは、食品関連のコーポレートVCと、そこが投資するスタートアップを調査し、その取り引き関係から見えてくる私たちの食べ物の将来を探った。私たちは、一部の大手食品製造業者や清涼飲料水製造業者によるベンチャー投資のリストを作成した。その内容は文字通りフルコースだ(ランチョンミートと飲み物付き)。

巨大食品企業から投資を受けたスタートアップの内容は、その投資元と同じように多岐にわたる。最近、資金を獲得した企業は、代用タンパク質からバイオスペクトルの視覚化、発酵菌などさまざまだ。しかし、重要なトレンドをピンポイントで狙いたいならば、安さよりも、消費者に優しい方向へ転換する必要がある。

「フードテックやアグテック1.0を思い浮かべるかも知れませんが、それらは基本的に生産者に利益をもたらすものです」と農業食品投資家ネットワークAgFunderの創設パートナーRob LeClerc氏は言う。「新しい世代の企業は、消費者が欲しがっているものに重点を置いています」

では、消費者は何を求めているのだろう?消費者の私に限って言えば、カロリーゼロのホットファッジサンデーだ。しかし、LeClercはもっと広い視野で一般的なトレンドを見ている。より健康的で、よりおいしくて、より栄養価が高く、満足感があって、倫理的に問題のない材料を使い、環境への影響が少ないものだ。

ではここから、このトレンドについて、投資を受けたスタートアップ、活発に動いている投資家、そしてそこから生まれてくる食品について詳しく見ていこう。

新しいニュープロテイン

大量市場の食品も改善されてゆくだろうが、同時にますます謎になっている。その傾向は、フードテック投資の世界で変わらずホットな分野である代用プロテインで顕著に見られる。高タンパク食品の需要は動物を消費するという倫理的なやましさと相まって、長年にわたり投資家やスタートアップに植物由来で肉のような味のする製品を作らせてきた。

だが近年になって、食品大手は、大豆やエンドウ豆の遙か先を見るようになった。一時はひとつ1000ドルのミートボールという見出しで世間を驚かせるだけだった人工培養の肉の研究も、今では巨額の資金を集めるようになっている。昨年以来、その分野の少なくとも2つの企業が、米国の最大手食肉製造業のベンチャー投資部門Tyson Venturesからの投資ラウンドを決めている。その中には、高価なミートボールを作ったMemphis Meats(でも本社はカリフォルニア)もある。同社は2000万ドル(約22億3800万円)を調達した。動物由来でない肉を開発しているイスラエルのFuture Meat Technologiesというバイオテックスタートアップは、2万ドル(約2億2380万円)を調達した。

もし、研究所で培養された肉と聞いてドン引きしてしまった人にも、火山性温泉に棲息する微生物からタンパク質を得るというオプションがある。それを大きな目標としているSustainable Bioproductsは、ADMやDanone Manifesto Venturesを含む投資企業からシリーズA投資として3300万ドル(約36億9300万円)を調達した。このシカゴの企業は、イエローストーン国立公園の火山性温泉に棲息する極限環境微生物の研究から、食用タンパク質を作り出す技術を開発した。

また、本物の牛乳は欲しいが牛をいじめたくないという人には、その解決策を研究するスタートアップPerfect Dayがある。同社のウェブサイトにはこう書かれている。「牛に苦労をかけないために、私たちは微小植物と前世代の発酵技術を使い、牛から搾乳されるものとまったく同じ乳タンパクを製造しています」。その努力の甲斐あり、このバークレーの企業はADMより、2月にシリーズB投資3500万ドル(約39億1700万円)を獲得した。

発酵食品

発酵技術で大きな投資を受けたのはPerfect Dayだけではない。フードテック向けのコーポレートVCは、長い間あまり注目されていない微生物や人気のない穀物から需要の大きな食材を作り出す加工技術に興味を示してきた。LeClercによれば、最近は、発酵という一世代前の技術を新しい形で応用する方法を研究するスタートアップに投資家たちが夢中になっているという。

発酵と聞くと、大抵の人が思い浮かべるのは、穀物とイーストと水を混ぜたぐちゃぐちゃしたやつが、ビールという飲み物に変化するプロセスだろう。しかし、より広義には、発酵は酵素の働きによって有機基質に化学変化を起こさせる代謝過程ということになる。つまり、何かと何かを混ぜると反応して、新しい何かができるということだ。

食品分野で最も多くの資金を調達し大きな話題になった企業は、発酵技術を応用しているとLeClercは言う。Perfect Dayの他に、LeClercが指摘するスタートアップには、ユニコーン企業のGinkgo Bioworks、もうひとつの代替プロテイン企業Geltor、キノコに特化したMycoTechnologyがある。

とくに最近では、コロラドのMycoTechnologyが投資家の興味を惹いている。同社は複数の企業や古くからのベンチャー投資家から8300万ドル(約92億8900万円)を調達した。これには、1月のTysonとKelloggのベンチャー投資部門Eighteen94 CapitalからのシリーズC投資3000万ドル(約33億5700万円)が含まれている。6年前に創設されて以来、同社は発酵菌の利用方法を幅広く探ってきた。それには、味覚を高めるもの、タンパク質の補給、保存性を高めるものなどがある。

サプライチェーン

家の食料棚に新しい奇妙な食材を並べさせること以外にも、フードテック向けのコーポレートVCは、既存のサプライチェーンの安全性と効率性を高める技術やプラットフォームにも資金を投入している。

新しい食材もそうだが、食品安全技術というのも聞き慣れない。シリコンバレーのImpactVisionは、Campbell Soupのベンチャー投資部門Acre Venture Partnersからシード投資を受けたスタートアップだが、汚染、食品品質、熟成度といった情報を把握するためのハイパースペクトル画像の研究をしている。

同じくAcreのポートフォリオに入っているボストンの企業Spoiler Alertは、食品企業のための売れ残った在庫の管理を行うソフトウエアと分析技術を開発している。また、AIを使った自律飛行ドローンで店内の在庫を記録する技術を持つPensa Systemsは、今年、シリーズAのラウンド投資を、Anheuser-Busch InBevのベンチャー投資部門から受けている。

風変わりならいいのか?

食品向けのコーポレートVCが支援する企業をいくつか紹介したが、これ以外にも注目株はある。健康ドリンクのGoodBellyをはじめとする、プロバイオニクスを利用した企業にも投資家は関心を高めている。タンパク質以外の新しい食材にも資金が集まりつつある。消化が遅い新しいタイプの炭水化物で作られた健康スナックのスタートアップUCANなどがそうだ。こうした企業はまだまだある。

私たちが新しい食品に熱狂してすぐに飛びつきたくなる心理は、既存の食材を食べ過ぎて幻滅してしまったことが関係している。しかしLeClercは、新製品は、最初はいいかも知れないと思えたものでも、長い目で見ればそうではないものもあると指摘する。

「私たちの脳裏には、こんな疑問があります。ずっとマーガリン2.0を作っているのではないか?」と彼は言う。「植物由来だからって、体にいいとは限らないのです」。

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(翻訳:金井哲夫)

完全栄養ラーメンが「すごい!煮干しラーメン」のラーメン凪とのコラボで実現、12月10日より発売

1食で1日に必要な栄養素の3分の1が摂れる、完全栄養食品「BASE PASTA」を開発したフードテックのスタートアップ、ベースフードが、今度は完全栄養ラーメンを作り出した。しかも商品開発は「すごい!煮干しラーメン」で有名なラーメン凪とのコラボによるもの。商品名はその名も「BASE RAMEN すごい煮干し」という。

不健康、食べ過ぎ注意のイメージがあるラーメンだが、BASE RAMEN すごい煮干しなら、必要な栄養をバランスよく食べることが可能。摂りすぎを警戒すべき脂質、飽和脂肪酸、炭水化物、ナトリウム(塩分)、熱量(カロリー)を除いた栄養を、1食で1日の3分の1まかなうことができるそうだ。

BASE RAMENに含まれる栄養素
(1食当たりの推奨摂取量との各栄養素比較(ゆで調理後))
※推定値、栄養素等表示基準値に基づく
(脂質・飽和脂肪酸・炭水化物・ナトリウム・熱量を除く)

また完全栄養食品というだけでなく、オリジナル開発の超濃厚な煮干しスープで減塩を、麺の糖質も50%オフ(一般的な中華麺との比較)を実現したという。

BASE RAMEN すごい煮干しは12月10日から、ラーメン凪の都内7店舗を含む10店舗で販売を開始する。価格は1080円(税込)だ。

近くにラーメン凪の店舗がない人も、店舗と同じ12月10日からベースフードのサイトで「BASE RAMEN セット」が購入できるそうだ。BASE PASTAと同じく、噛むと味が広がるもちもちの雑穀麺だが、食感はパスタに比べてつるつるになり、ラーメンスープと合わせておいしい麺に仕上げたとのこと。セットにはBASE PASTA 細麺タイプ」2食分と「しょうゆ豚骨スープ」、「ラーメン凪監修 すごい煮干しスープ」が含まれる。価格は980円(税込)だ。

私も販売中のBASE PASTAを試してみたことがあるけれども、「噛めば噛むほど味が出る」不思議な食感で、塩分が少なめなのにちゃんと「味がある」のに驚いた。朝食・昼食がいい加減になりがちでラーメン好きな私としては、今回のラーメンも試してみたいところだ。

農業食品 ―― 価値ある8兆ドル産業

大麻入りの飲み物。研究室で育成されたハンバーガー。瓶入りの完全な食事 。消費者、小売業者、そして農家たちは、次世代の食品に飢えており、投資家もその味を試しつつある。農業食品テクノロジーのスタートアップに対する初期ステージ投資は2017年には101億ドルに達した。これは前年に比べて29%の増加である。

農業食品(Agrifood)という言葉は2つの部分に分けることができる。「農業技術」(Agritech)の部分は農家を対象とした技術を指す。対照的に「食品技術」(Foodtech)の部分は、加工業者、小売業者、レストラン、そして消費者をターゲットとしている。共同で両者は、農場から食卓に至る生産ラインのすべての部分に、幅広い影響力を与える。

最近の食品技術投資は、Delivery HeroのIPOを筆頭にして、ele.meInstacartの数百万ドルに及ぶラウンドで 活況を呈している。とはいえ、農業技術の投資も負けずに追い付こうとしている。Indigo AgricultureとGinkgo Bioworksはそれぞれ、2億300万ドル2億7500万ドルを調達した。

また、この分野での買収活動も増えている。最近のニュースでは、UberとAmazonの両社が、Deliverooと買収に関する話し合いをしたことが示唆されている。その一方で、John Deereはロボット会社Blue River Technologyのテーブルに3億500万ドルを積み、DuPontは農業管理ソフトウェアのGranularを3億ドルで買収した。

なぜ農業食品への関心が高まっているのだろうか?

食品は巨大な市場であり、急速に変化している

1958年には、地球上に30億人の人間がいた。現在では、人口は76億人に達しており、2100年には112億人を突破する予定だ。食料を供給しなければならない口の数は多い。

しかし、食品市場の魅力は量的なものだけではない。実際、ベネットの法則に従えば、人々の収入が増えるにつれて、食の嗜好はより多様化する。多様性を追求するこの経済的な強制は、倫理的プロダクトを好む消費者の増加によって補完されている。多くの人々が、食品と生態系、健康、そして動物の福祉との関係を意識している。米国のビーガンの数は過去3年間で6倍になり、英国では過去10年間で3倍以上に増加している。

これらの2つの流れが、スーパーマーケットの棚やレストランのメニューを急速に進化させることにつながった。消費者たちは新しい健康「スーパーフード」を発見するのに熱心だ。例えば昆虫
GrubCricke)や、Huelのような代替食品オプションからallplantsのようなビーガンミールボックスまでを含む新しい消費形態などが挙げられる。

農業技術に目を向けてみると、消費者の好みに応えるための代替生産モデルも生まれている。例えばGrowUpLettUs Growといった総合農場では、農業の環境への影響を劇的に減らすことができた。

人口の増加と食事の多様化という上記の2つの要素を組み合わせることで、投資家の食欲をそそる料理が生み出される。世界の農業ならびに食品産業は、少なくとも8兆ドルの価値があると見積もられている。

新しい技術が大きなチャンスを生み出す

食品と農業のバリューチェーンはボトルネックと非効率性で溢れている。それらのうちのいくつかは、よく知られている技術を用いたインテリジェントなアプリケーションで解決することができる。

例えば、慎ましいオンライン市場がある。YagroHectare Agritech、そしてFarm-rなどを含む市場では、農家が機械や商品を取引し、WeFarmのようなピアツーピアプラットフォームでは知識共有が可能になる。COLLECTIVfoodPesky Fish、そしてCOGZなどの食品調達市場や、FarmdropOddboxのような消費者直販サービスも出現している。

はるかに複雑な技術ソリューションもある。

その中の1つである遺伝工学は、たくさんの「考えることを強いる食品」を提供している。実際国連は、世界の増加する人口に対して食糧を供給するためには、2050年までに食糧生産量を70%増やさなければならないことを示唆している。遺伝子工学は世界の作物収量を22%増やすことができるだけでなく、収穫前損失の回避にも役立つ。

この目的のために、CRISPRが作物の栽培に革命を起こしている。CRISPR技術は、作物が光合成とビタミン含量を最適化することを助ける。2013年にタバコに対して最初に試験されて以来、CRISPRは、コムギや米からオレンジ、トマトなどの多くの作物に使用されて来た。作物の害虫への耐性向上から、栄養成分の改良まで様々な応用が行われている。CRISPRは家畜にも適用されている。スコットランドのロズリン研究所では、研究者たちはCRISPRを使って、ウイルス耐性ブタをの開発に成功している。

同じように、 セルラー(細胞)農業は大きな進歩を遂げている。セルラー農業とは、バイオテクノロジーを食品ならびに組織工学と組み合わせて、実験室の中で培養された細胞から、肉や皮革などの農業製品を生産する手法である。

セルラー農業やそれらを応用する企業たち(例えばMeatableHigher Steaksなど)が、どれほど劇的に農業と食糧生産を変えているのかは簡単にわかる。

したがって投資家たちは、「クリーンミート」業界を一口味わってみる誘惑に駆られがちだ。ヨーロッパでは、Mosa Meatが880万ドルを調達したばかりだし、米国のMemphis Meatsは2017年に1700万ドルを調達した

そうした製品はまだ店の棚に並んではいないが、その魅力は明らかだ。食肉市場は2025年までに7.3兆ドルに成長し、2050年までには需要が73%増加すると予想されている。そして、クリーンミート技術は、肉の生産を実質的に無限に拡大することを可能にする。わずか2ヶ月で、10匹の豚から得たスターター細胞を使って、1培養基あたり5万トンの豚細胞を培養することができる。これは、肉の生産コストとその環境コストを劇的に下げることができる。「伝統的な」肉と比較して、クリーンミート1ポンドあたり、必要な水は6分の1、排出される温室効果ガスは4分の1となる。

人工知能と機械学習もまた農業に影響を与えている。そのなかでも主要なチャンスの1つが、精密農業である。

画像認識、センサー、ロボット工学、そしてもちろん機械学習の進歩によって、農家は作物の状態に関する、より良い情報を受け取るようになった。Hummingbird TechnologiesKisan Hubなどのスタートアップは、人間による「作物の見回り」を上回るソリューションを開発した。同様に、Observe Technologiesは、魚の養殖業者に対して、給餌を最適化するための、AIによる情報を提供する。

屋内に目を向けると、Xihelm(情報開示:Oxford Capitalが投資家である)は、ロボット化された室内収穫を可能にするマシンビジョンアルゴリズムを開発している。このような技術は、農業における労働力不足を解決するのに役立つ。労働力不足によって2017年には英国での労働コストは9〜12%上昇しているのだ。

食品が農場から小売業に移動するとき、サプライチェーンは扱いにくく、管理が難しい場合が多い。その結果、食品には400億ドル規模の不正の問題がつきまとう。この問題を解決するために、Provenanceなどの企業が提供するブロックチェーン技術が適用されている。Walmartは最近、葉物野菜のサプライヤーたちに対して、そのデータをブロックチェーンにアップロードすることを要求することを発表した。このことで食品をその生産者まで(1週間ではなく)2.2秒で遡ることができるようになる。

農業食品テクノロジーへの馴染みはまだ薄い

農業食品市場は巨大で投資の機会も多いものの、依然としてハイテク投資家の好きな料理ではない。もちろん、2017年には投資額は101億ドルに増加している。しかし同じ年にはフィンテックは394億ドルに達しているのだ。

これにはいくつかの理由がある。デジタル化は進んでいるものの、その速度は遅い。農家は当然ながらリスク回避的だ。彼らの回避傾向は、活動の季節変動性と失敗可能性によって強化される。ほとんどの作物は年に一度だけ生産されるので、収穫に失敗するとその影響は劇的かつ長期に及ぶ。大規模な技術的ソリューションを実装することにはリスクを伴う。したがって現状から離れる決定は気軽に下すことはできない。

規制はセクターにとって大きな考慮事項だ。欧州司法裁判所は最近、CRISPRで作られた作物に関しても、遺伝子組み換え作物と同じ期間の承認期間を経なければならないという裁定を下した。2018年にはフランスで、ベジタリアンおよびビーガン向けの完全植物性製品に対して「肉」や「乳製品」といった用語の使用が禁止された(これまでは完全に植物性でも「ソーセージ」「ステーキ」といった名称が使われていた)。とはいうものの、この法律が将来「培養」肉に対してどのように適用されるかは明らかではない。消費者に受け入れてもらうために、クリーンミートスタートアップたちはこの用語を巡る戦いには勝利したいと願っている。

消費者による受容は、農業食品の経済的、環境的、倫理的な影響によって形作られる可能性も高い。農業は世界の労働人口の4分の1を雇用しているが、その労働力の多くが女性であることを忘れてはならない。

食の未来には、農業における失業問題、家畜や原材料生産の大幅な変化、土地管理手法の大幅な変更などが予想されている。さらに、遺伝子編集は、個別の農家ではなく、大企業に利益をもたらす可能性が高い。このことによって通常の農家は危機に晒される可能性がある。

これは単にケーキを手に入れて食べるという話ではない。必要な要素は、とても慎重に選択する必要がある。そうでなければ「食の未来」には苦い味がリスクとして残されることになるだろう。

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(翻訳:sako)

Nima、ピーナツ成分検出ツールをリリース

実は、重度のナッツアレルギーに罹患している。そんなぼくにとって、 Nimaのピーナツセンサーは救いの神となるのかもしれない。これまでに、ナッツが含まれていると思いもしない食材を摂取して救急搬送されたことも何度かある。Nimaがあれば、食べる前に適切な判断を下し、そしてER直行の悲劇を回避することができるのかもしれない。

ご存知ない方のためにお伝えしておくと、NimaとはTechCrunchのBattlefield出身のスタートアップだ。彼らは「ピーナッツセンサー」のローンチに向けて邁進しているところだ。彼らのセンサーは、ppm単位を検知することができる。カプセルに食材を入れて、それをセンサーに装着すれば結果が表示される。5分以内に、アレルギーの原因となるピーナッツ成分の検知を完了してレポートしてくれる。

センサーは、Bluetooth経由でスマートフォンと連携するようになっている。これまでにNimeデバイスを利用してチェックした食べ物の検査結果を保存しておくこともできる。但し、現在のところでは、センサーはピーナッツにのみ反応するようになっている。他の種類のナッツを検知することはできない。しかしNimaのファウンダーであるShireen Yatesは、他の成分の検出も行えるようにしたいと語っている。

おわかりのことと思うが、このNimaデバイスは「エピペン」(Epi-Pen)の代替となることを目指すものではない。「エピペン」とは、アナフィラキシーに対する緊急補助資料に用いられるものだ。エピペンは症状を引き起こすものを食べてしまってから用いいるもので、Nimaのセンサーは食べること自体を防ごうとするものなのだ。内部的なテストを行なったところでは、97.5%の検知率を示したとのこと。

Nimaデバイスの価格は229ドルで、それに12個のテスト用カプセルを加えて289ドルとなっている。Nimaは、これまでにもグルテン成分を検出するためのテストツールの開発などを行なっている。詳細については、冒頭に掲載した紹介ビデオを参照してほしい。

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(翻訳:Maeda, H

古代の絶滅種マストドンのグミ菓子を作ったGeltorは屠殺に依存しない動物性蛋白質を目指す

[筆者: Paul Shapiro](”Clean Meat: How Growing Meat Without Animals Will Revolutionize Dinner and the World“の著者)

古代食といえば、われわれ人類の農業以前の遠い祖先たちが食べていた、と考えられる食物による、一種の食養生や食餌療法を指すことが多い。しかしながら、祖先たちが本当に何を食べていたのか、に関する議論や研究は未だに乏しい。でもシリコンバレーのVCたちが支援するサンリアンドロのスタートアップGeltorにとっては、合成生物学(synthethic biology)が、そのような古代食の、その文字通りの理解〔==本物の古代の食べ物〕を作り出すための手段になった。

人類が初めて北アメリカへ来たとき、われわれが目にしたのは巨大な動物たちがたくさんいる大陸だった。マストトドンが最大の動物だったと思われるが、しかしこれらの、アジア象の牙の長い親戚たちは、ホモ・サピエンスが登場するころまで進化を続けることができず、したがってわれわれの獲物になることもなかった。きわめて急速に、彼らやそのほかのいわゆる大型動物相(megafauna)は絶滅危惧種となり、そして完全に絶滅した。しかし、その消滅した四足獣たちの一部は、氷の墓地に閉じ込められ、その肉体は数千年を経た今でも腐敗変質せずに保存されている。

そして、古代の有機体がみなそうであるように、彼らの肉体にタンパク質がまだあれば、それらはおそらくコラーゲンの形で残っている。それはわれわれの肉体にも豊富にある分子だ。いや、それどころか、人類は今や、遠い昔の動物たちのタンパク質をシークエンシングすることにより、われわれの祖先たちが満喫した巨大生物の、少なくとも分子レベルでの採掘に向かう第一歩を踏み出したばかりなのだ。インターネットに接続できる人なら誰でも、ほんの数秒で、マストドンのタンパク質のシークエンス(アミノ酸配列)に無料でアクセスできる。

そこでGeltorだが、同社は基本的には、発酵を利用してバクテリアのような微生物からコラーゲンを逆行分析(reverse engineer)し、またその副産物としてゼラチンを得ている。パン屋さんのイースト菌がCO2を作ってパンを膨らまし、醸造所のイースト菌がアルコールを作るように、Geltorは微生物を使って本物のコラーゲンのストランドを作り出している。協同ファウンダーのAlex LorestaniとNick Ouzounovが遺伝子コードをプログラミングしてそれを微生物中に植えることにより、目的とするタンパク質を大量に作り始める。

LorestaniとOuzounovは、地球上に現存する動物のDNAシークエンスでこの能力をマスターしたあと、2015年の終わりごろ、彼らの実験を先史時代に適用する決心をした。Geltor はDNAをプリントしてくれる企業に注文して、マストドンのコラーゲンをエンコードしているDNAのバイアルを入手した。それらを確保した二人の科学者は、マストドンのゼラチンの現物を作り出す(微生物利用の)プロセスを開始した。

画像提供: PASIEKA/SCIENCE PHOTO LIBRARY/Getty Images

LorestaniとOuzounovはグミベアを作ることもできたかもしれないが、しかし二人の協同ファウンダーはEtsyで象の抜き型を買った方がクールだ、と考えた。さすがにマストドンの抜き型は見つからなかったが、ふつうの象さんでも同じだ、と彼らは考えた。グミエレファントで十分じゃないか。すぐさま、彼らのゼラチンに砂糖とペクチンを混ぜ、世界初のマストドンのゼラチン・キャンデー〔いわゆるグミ菓子〕が完成した。その小さなグミエレファントをOuzounovが自分の口に運ぶのを見たLorestaniは思った: “おいおい、人類がマストドンのタンパク質を食べるのは、ものすごく年月が経って、今がやっと初めてだな”。

別の言葉で言えば、それが今日の世界では唯一の、本物の古代食だ。

その後同社は数百万ドルの資金を調達して、化粧品などにも使われている今のふつうの動物のDNAから本物のコラーゲンを作り出す研究開発を開始した。そのコラーゲンを、本物の革に成長させることもできた…もちろん、牛を一頭も使わずに。そして、世界で初めての、実験室で育てた皮革を使った革表紙の本まで作った。

Geltorは、クリーン・アニマル・プロダクトの分野を開拓しているスタートアップたちのグループに属する。それは、本物の動物性食品を、動物を繁殖したり殺したりせずに入手する技術だ。この用語は“クリーン・エナジー”をもじっているが、動物性食品を今の畜産のように資源浪費型で作るのではなく、ずっと少ない資源消費量で得ることに加え、クリーン・ミートやクリーン・ゼラチンは、食べ物の安全性という見地からもずっとクリーンだ。

今日の食肉産業は、つねに病原性大腸菌のリスクにさらされているが、食肉(やゼラチンなどの)の生産を家畜の肥育に依存しないようにすることができれば、真に安全な食品が現実のものになる。また動物から動物性タンパク質を得ることに比べて、それにはありえない、ずっと多様な機能性食品が得られる。

写真提供: Flickr/Mike Licht

“食べ物のコミュニティとしてのわれわれ人間は今、安易に稼働できるタンパク質製造プラットホームに甘んじている”、とLorestaniは彼の見解を述べる。同社は仲間のスタートアップMemphis Meatsとオフィスを共有しているが、こちらは、屠殺からではなく細胞の培養から本物の食肉を育てようとしている。Lorestaniは、彼のトレードマークであるグレーのフーディーで頭と顔を覆ったまま、話を続ける: “多くの場合それは動物の搾取であるだけでなく、豊富な植物にも危機を及ぼしている。人間は大量の動物を作り出す名人だが、しばらくは、それでもよかった。しかし今日では、動物を作物とする農業はわれわれの文明に大きなストレスをもたらしている。しかも、それよりも良いやり方があるのにね。われわれは、そのことを世の中に示したい”。

絶滅した動物のタンパク質を食べることは、古代食愛好家である/ないを問わず、必ずしも万人にとって魅力的ではないだろう。しかし今日の、動物製品の作り方は、われわれの惑星に現在住んでいる種にとってまったく持続可能性がない。もちろん、人間も含めてだ。食肉や、そのほかの動物製品への高い需要が、今日の野生種絶滅の主な要因であることは、今や周知の事実だ。

Geltorのようなフードテック企業の活躍によりわれわれはもうすぐ、もっと安全でエコフレンドリーで人間的な方法で動物製品を食卓に運ぶことが、できるようになるかもしれない。そしてそれはまた、多くの種がかつてのマストドンの道をたどることを、防ぐ方法でもある。

トップ画像: James St. John/Flickr CC BY 2.0のライセンスによる

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

AppleフェローのRich Pageがサラダ調理ロボットと「自動化による失業」について語る

最初に私たちがChowboticsのサラダ調理ロボットについて書いたとき、それはまだ単なるプロトタイプで、ちょっとした議論を巻き起こした。同社は、大きな食堂を持っておらず、フルタイムの調理人を雇う予算のない事業所へ、栄養価の高い食事を提供することを約束している。しかし、他の食品自動化技術と同様に、彼らのロボットSallyは、もしレストランの下働きコックを置き換えるなら、大勢の人びとを失業の危機に追い込むだろう。

今週、私たちはChowbotics会長のRich Pageにインタビューを行った。彼はSteve Jobsと一緒に働き、Appleでパーソナルコンピューターのデザインを開拓し、NeXT Computerの共同創業者にもなった人物だ。彼と、ChowboticsのCEOであるDeepak Sekarが、完成したロボットをTechCrunchに見せてくれた。Sallyはほどなく、コワーキングスペースから病院に至る様々な場所に設置され、サラダの提供を始める。

Sallyを自動販売機以上のものにしているのは、内部で使われているセンサーと様々な動くパーツだ、とPageが説明する。「自動販売機は単に物を落とすだけですが」とPage。「Sallyの中では重要な働きが行われています。プライマリー重量センサーによってSallyは各材料の使用量を調整します。どの材料が使われるかは、ユーザーの指示次第です」。

切り整えられたり、丸ごとだったり、あるいは液状になった材料が個別のチューブの中にストックされる。システムはそれぞれのチューブがドレッシングなのか、野菜なのか、あるいはチーズやその他のトッピングなのかを知っている。チューブは少なくとも1日に1度人によって満たされる。いずれかの材料が残り少なくなって補充が必要な際には、システムは顧客に通知を行う。

Cowboticsのサラダ調理ロボットSallyの内側に並ぶチューブ。

ロボットのデザインを十分にコンパクトに保ち、事業所や小売環境で繰り返し利用できる耐久性を実現することが、同社の乗り越えなければならない大きな課題だった。Sekarによれば、従来の「くしゃみガード」をつかったサラダバーではなく、ロボットによってサラダを衛生的に準備できるというアイデアを気に入った、病院からの問い合わせを受け続けていたということだ。

スタートアップは「職を奪う」ことに関しては心配しているのだろうか?Pageは同社を始めとする食品自動化とロボットの企業たちは、イノベーションの手を緩めるべきではないと語る。「既存の職業と、新しい職業の間には、いつでもトレードオフがあります。これは世界にある種の不満をもたらすでしょう。しかし、全体として見れば世界は進み、皆にとって全てが良くなって行くのです」。

Pageは、そのキャリアの初期に、タイピストたちがワードプロセッサによって置き換えられ、Apple IIで動作したVisicalcというプログラムによって紙が消えて行くのを眺め、色々と考えた。彼は言う「誰かを失職させたという事もできると思いますが、同時に生産性も向上させたのです」。

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(翻訳:Sako)

ピザを3D”プリント”―、BeeHexが100万ドルを調達

beehex_pizza_heart

「3Dプリンター」というフレーズを耳にすると、普通の人はプラスチック製のアクセサリーやおもちゃ、ハードウェアのプロトタイプまたは人工装具といったものを作る機械のことを思い浮かべるだろう。しかし3Dフードプリンターを開発しているBeeHexは、この度シードラウンドで100万ドルを調達し、最初の製品となるピザプリンターの「Chef 3D」をローンチしようとしている。

当初BeeHexは、地球から長期間離れることになる宇宙飛行士が、バラエティー豊かな食事を楽しめるようなフードプリンターを開発しようとしていた。しかし共同ファウンダーの4人(Anjan Contractor、Chintan Kanuga、Jordan French、Ben Feltner)は、既に地球上に存在する市場に向けて、当初のコンセプトを作り替えることにした。彼らのプリンターは材料をあちこち動かさなければいけないので、プリント方式は従来のアディティブ・マニュファクチャリング(AM)方式ではなく、空気圧式を採用している。

The BeeHex 3D food printer at the TechLovesFood conference.

Food Loves Tech 2016の会場に展示されていたBeeHexの3Dフードプリンター。

長期的には、複数の3Dプリンターをつなぎ合わせて、その場でお客さんの要望に合った軽食や料理を作れるようなシステムを開発していきたいとFrenchは話す。将来的には、お客さんがアプリ上で食べたいものを選ぶことができるようになったり、もしかしたらネットにつながった医療機器やフィットネス系のウェアラブルデバイスから受け取ったデータを使って、BeeHexのプリンターがお客さんの健康上のニーズに沿った料理を作れるようになったりするかもしれない。

今回のラウンドでは、フードオートメーションの専門家であるJim Groteがリードインベスターを務めていた。彼はピザチェーンDonatos Pizzaの創業者で、2013年にはCBSの番組「Undercover Boss」にも出演していた。さらにGroteは、1960年代後半から調理をスピードアップする機械の開発を行っており、製造された機械は自らの名前を冠したGrote Companyを通じて販売している。これまでには、「Peppamatic」という可愛い名前のついた、自動でペパロニをスライスして並べる機械などが開発されている。

BeeHexの共同ファウンダーでCEOのAnjan Contractorによれば、同社は今年中にChef 3Dをソフトローンチし、まずは食品企業数社と共にパイロットプロジェクトに取り組んでいく予定だ。さらに、最近BeeHexはR&D拠点をオハイオ州のコロンバスに移転した。この街の経済開発に取り組んでいるColumbus2020によれば、コロンバスには170社近い食品・飲料製造企業が拠点を置いており、特に製パン所の数が多いという。

「企業は顧客ひとりひとりの要望に沿った商品を提供したいと考えていますが、それを実現するために必要な従業員のトレーニングにはそこまで時間を割きたくないとも考えています」とContractorは話す。BeeHexのChef 3Dのような機械があれば、特にスタッフが特別なスキルを身につけなくても、企業は作りたての美味しいピザを提供すると同時に、例えば子どもには、お気に入りのキャラクターの形をしたものを、セリアック病の人にはグルテンフリーのものを、といったように個々の顧客のニーズを満たすことができる。

A rendering shows the BeeHex 3D food printer in a retail kiosk.

BeeHexの3Dフードプリンターを導入した売店のイメージ図。

先述のJim GroteはTechCrunchに対し、BeeHexは販売ボリュームのあるピザチェーン(特にDominosやLittle Caesars、PizzaHutなどの大手チェーン)だけを相手に3Dプリンターを開発したとしても、長期的に利益を生み出し続けるできるかもしれないと語った。市場調査会社Packaged Factsの調査では、ピザレストランの市場規模は世界中で年間430億ドルに達するとされている。

さらにGroteは「ピザの次は、他のさまざまな食品にもBeeHexのテクノロジーを応用できる可能性があります。彼らは、作るのがとても難しい生地まわりの技術をマスターしているので、ピザ以外の焼き物の分野に進出してもうまくやっていけるでしょう」と話す。また、買い物客にその場で食べ物を提供したいと考えている小売やレストラン、さらにアミューズメント施設やフェスティバルを運営している企業も、従来の方法ではなく、3Dプリンターを使ってピザを焼くようになるかもしれないと彼は付け加える。これまでのやり方でピザを作ろうとすると、かなりのスペースと労力が必要になるのだ。

BeeHexの製品はまだ一般には販売されていないが、量産前のプロトタイプはFood Loves Tech 2016オハイオ州立大学のホームカミングデーといった展示会や催し物でお披露目されている。次にChef 3Dの登場が予定されているのは、3月27〜29日にラスベガスで開催されるInternational Pizza Expoだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter