米小売大手が中国企業の防犯カメラを店舗から撤去、人権侵害を指摘され

米国の大手小売企業であるHome Depot(ホーム・デポ)とBest Buy(ベスト・バイ)は、中国の防犯ビデオ技術メーカーであるLorex(ロレックス)とEzviz(イージービズ)の製品を、人権侵害との関連性を理由に店舗から撤去した。

Home Depotは「当社は最高水準の倫理的な調達を行うことを約束しており、この件が明るみに出たとき、直ちにLorex製品の販売を中止しました」と、TechCrunchに送られてきた声明の中で述べている。同社はまた、Ezviz社製品の販売も中止したことを広報担当者が認めた。Best Buyは、LorexおよびEzvizとの「関係を打ち切る」と発表した。

Lowe’s(ロウズ)はコメントを控えていたものの、TechCrunchや防犯ビデオ関連情報サイトのIPVMからの問い合わせを受け、Lorex社製品を店舗の棚から撤去した。

LorexはDahua Technology(浙江大華技術、ダーファ・テクノロジー)の子会社であり、EzvizはHikvision(ハイクビジョン)のセキュリティ機器ブランドだ。中国に本社を置くDahuaとHikvisionは、ウイグル族のイスラム教徒が多く住む新疆ウイグル自治区で、中国が継続的に行っている少数民族の弾圧に関係した企業として、2019年に米国政府の経済ブラックリストに追加された

関連記事:ムスリム少数民族に対する人権侵犯に加担した8つの中国企業が米商務省の禁止リストに載る

米国政府によると、中国はウイグル人を監視するための監視機器の供給を、HikvisionやDahuaなどの技術系企業に大きく依存しているという。Biden(バイデン)政権は、新疆での人権侵害を「ジェノサイド(大量虐殺)」と呼び、中国のビデオ監視機器メーカーが、「ウイグル人やカザフ人などのイスラム系少数民族に対する中国の弾圧運動、独断的な集団拘束、ハイテクを駆使した監視の実行において、人権侵害や虐待に関与している」と非難した。

国連の監視団によると、中国当局は近年、100万人以上のウイグル人を収容所に拘束しているという。中国はこの疑惑を長い間否定してきた。

しかし、この制裁措置はDahuaやHikvisionの子会社であるLorexやEzvizには及ばず、また、連邦政府以外には適用されないため、現在も一般的に消費者はこれらの技術製品を自由に購入することができる。

先週までLorexは、Home Depot、Best Buy、Lowe’s、Walmart(ウォルマート)、Costo(コストコ)を5つの国内正規販売店として自社ウェブサイトに掲載していた

コメントを求められたLorexの広報担当者は次のように答えた。「2018年の買収以来、Lorexは当社の親会社について、小売店パートナーと完全に透明性を保ってきました。また、FCC(米国連邦通信委員会)の規則制定案に関する質問への対応も含め、当社は様々な規制やコンプライアンスの問題に関して、これらの企業の代表者と定期的に連絡も取っています」。

Lorexは、同社製品が撤去された後のフォローアップメールには応じていない。Lorexは自社のウェブサイトから大手小売企業5社のロゴを削除したものの、依然としてWalmart社を除く4社を同社の販売店として掲載している。

WalmartとCostcoは、LorexとEzvizの製品を引き続き在庫しているが、コメントの要請には応じていない。

世界ウイグル会議の会長であるDolkun Isa(ドルクン・エイサ)氏は、米国政府による強制労働防止や中国企業への制裁などの「意味のある行動」を歓迎しつつも、「弾圧をさらに進めることを直接支援している米国企業がまだ存在することは受け入れられない」と述べている。

Hikvisionは、TechCrunchとIPVMのコメント要求に応じていない。

編集部注:この記事は、防犯ビデオ関連情報サイト「IPVM」との協力で取材したものとなる。

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画像クレジット:Lorex / YouTube
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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フェイスブック第3四半期は売上未達、今後AR/VRの売上は新設部門に

米国の大手ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)であるFacebook(フェイスブック)は米国時間10月25日、取引開始後に第3四半期決算を発表した。売上高は290億ドル(約3兆3000億円)、希薄化後の1株当たり利益は3.22ドル(約366円)だった。Yahoo Financeが収集したデータによると、投資家は売上高295億8000万ドル(約3兆3670億円)、1株当たり利益は3.19ドル(約363円)と予想していた。

Facebookの株価は時間外取引で小幅に上昇しているが、これは売上高が予想をわずかに下回ったことに市場がショックを受けていないことを示している。

このサプライズのなさは、Facebookの報告書が、先に発表されたSnap(スナップ)のダイジェストに続いたためかもしれない。Snapは、第4四半期の業績が市場の予想よりもはるかに控えめなものになるとの見通しを示し、収益の伸び悩みの原因としてApple(アップル)とサプライチェーンの問題を挙げた。これを受けて同社の株価は下落した

Facebookは投資家への書簡の中で、売上高315億〜340億ドル(約3兆5850億〜3兆8700億円)と予想する2021年第4四半期のガイダンスを示した。市場予想はFacebookの数字を上回る348億9000万ドル(約3兆9710億円)だ。

Facebookの予想と市場の期待との間のギャップは、今後想定されることからきているようだ。Facebookは第4四半期のガイダンスに関して決算発表に次のように記している。

AppleのiOS 14の変更による継続的な逆風や、マクロ経済および新型コロナ関連の要因を踏まえ、当社の見通しは第4四半期に直面する大きな不確実性を反映しています。また、2020年の年末商戦でQuest 2の販売が好調だったことから、第4四半期の広告以外の収入は前年同期比で減少すると予想しています。

AppleのモバイルOSにおけるプライバシーの取り扱い方法の変更と、それに関連するダウンストリームの影響、および新型コロナウイルス感染症に起因する問題は懸念されていた。

Facebookはまた投資家向けダイジェストで「Facebook Reality Labs(フェイスブック・リアリティ・ラボ、FRL)を独立した部門として分離する」と報告した。「拡張現実や仮想現実の製品やサービスに多大なリソースを費やしてきた」ことを理由に、2つ目の収益カテゴリーを設ける時期が来たと考えているからだ。

次の四半期から、Facebookは2つの部門を持つことになる。1つは「Family of Apps」というくくりで「Facebook、Instagram、Messenger、WhatsApp、その他のサービス」からの収益を計上する。一方、FRLには「消費者向けハードウェア、ソフトウェア、コンテンツ関連の拡張現実および仮想現実 」が含まれる。

2つの部門を持つのは構わない。もしかしたら良いことかもしれない。しかし、なぜソーシャルアプリの決算をもっと細かく分類しないのか、とFacebookに問いたい。そうすれば、株主も理解しやすいだろう。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

Snap第3四半期、iOSのプライバシー変更が広告ビジネスに予想以上の打撃を与えたと発表

Snap(スナップ)は米国時間10月21日の収支報告で、第3四半期の収益予想を達成できなかったと述べた。第3四半期の売上高は10億7000万ドル(約1214億円)で、ウォール街が予想していた11億ドル(約1248億円)には届かなかった。

同社のデイリーアクティブユーザー数(DAU)は3億600万人で、第2四半期の2億9300万人から増加した。この成長は急激ではないが、少し前までは完全に存在価値が失われる危険性があったプラットフォームとしては、十分に健全なものといえる。

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Snapchat(スナップチャット)は、Apple(アップル)がiOSのプライバシーに関する大きな変更を行ったことで、ユーザーの行動を自社の枠を超えて追跡しようとするアプリに新たな制限が設けられたことが、収益の減少につながったと考えている。SnapのEvan Spiegel(エヴァン・シュピーゲル)CEOは、通話の中で、広告主ツールへの影響がいかに破壊的であるかということに気づかなかったと述べている。多くの広告主は、これまで慣れ親しんできた広い視野を失ったことで、ユーザーの行動を計測するための新しい、より抑制された方法に適応しなければならなかった。「それらのツールからは、基本的に何も見えなくなってしまいました」とシュピーゲル氏は語った。

シュピーゲル氏は、Snapのビジネスの落ち込みは一時的なものであるとし、新しい標準に適応するには「時間を要する」と述べ、Appleの広告変更による長期的な影響はまだわからないとしている。また、Snapの業績不振には、より広範なパンデミックの市場トレンドも影響していると述べている。

ユーザープライバシーに大きな恩恵をもたらすiOSの変更に適応しようとしている広告ビジネスは、Snapだけではない。Facebook(フェイスブック)も、Appleの新しいポリシーにより広告をターゲティングする能力が低下したため、第3四半期に大きな影響が出ることが予想されると警告している。

意外なことではないが、SnapやFacebookなどの広告事業者が依存しているクロスプラットフォームのトラッキングについては、選択肢を提示された場合、ほとんどのユーザーがオプトアウトする。Facebookのリーダーとは異なり、シュピーゲル氏は、モバイルOSにより多くのプライバシー機能を追加するというアップルの決定を、その変更がSnapの収益にどのように影響するかにかかわらず、一貫して支持してきた。

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)

【コラム】今現在も「ストーカーウェア」の大流出で数千人の携帯電話データが危険に晒されている

何十万人もの人々の個人的な電話データが危険にさらされている。通話記録、テキストメッセージ、写真、閲覧履歴、正確な位置情報、通話録音など、広く使われている消費者向けスパイウェアにおけるセキュリティ上の問題から、人の電話からすべてのデータが引き出される可能性がある。

しかし、私たちが伝えることができるのはその程度のことなのだ。TechCrunchは、身元が明らかになっていない開発者に、判明しているメールアドレスと非公開のメールアドレスすべてを使って何度もメールを送ったが、この問題を明らかにするための糸口は見えなくなってしまった。メールが読まれたかどうかを確認するために、オープントラッカーを使ってメールを送ったが、これもうまくいかなかった。

この問題が解決されるまでは、何千人もの人々のセキュリティとプライバシーが危険にさらされていることになるため、我々はスパイウェアの開発者へ連絡を試みた。スパイウェアやその開発者の名前を出すと、悪意のある者が安全ではないデータにアクセスしやすくなるため、ここで名前を出すことはできない。

TechCrunchは、消費者向けのスパイウェアに関する広範な調査の一環として、このセキュリティ問題を発見した。これらのアプリは、子どもの追跡や監視のためのソフトウェアとして販売されていることが多いのだが、本人の同意なしに人を追跡したり監視したりすることから「ストーカーウェア」と呼ばれることもある。これらのスパイウェアアプリは、無言で継続的に人の携帯電話のコンテンツを吸い上げ、その運営者が人の居場所や通信相手を追跡できるようにしてしまう。これらのアプリは、発見されたり削除されたりしないように、ホーム画面から消えるように設計されているため、多くの人は自分の携帯電話が危険にさらされていることに気づかない。

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電子フロンティア財団のサイバーセキュリティ担当ディレクターで、ストーカーウェア反対連合の立ち上げを主導したEva Galperin(エヴァ・ガルペリン)氏は、TechCrunchとの電話で「失望しましたが、少しも驚いていません。このような行為は、怠慢であると考えるのが妥当だと思います。悪用を可能にする製品を作っている企業があるだけでなく、流出した情報を保護するための対策があまりにも不十分なため、悪用された情報をさらに悪用する機会を与えてしまっているのです」と述べている。

TechCrunchは、開発者のスパイウェアのインフラににホスティングを提供しているウェブ企業のCodero(コデロ)にも連絡を取ったが、Coderoはコメント要請に応じなかった。Coderoはストーカーウェアのホスティングに精通している。このウェブホストは2019年にストーカーウェアメーカーの「Mobiispy」に対して、数千枚の写真や電話の記録を流出させていたことが発覚し「行動を起こした」という。

「あるストーカーウェア企業をホストしているウェブホストが、他のストーカーウェア企業をホストするのは当然だと思いますし、以前に反応を示さなかったのであれば、今回も反応を示さないのは当然でしょう」とガルペリン氏は述べている。

このように簡単に手に入るスパイウェアが蔓延していることから、業界全体でこれらのアプリを取り締まる取り組みが行われている。アンチウイルスメーカーは、ストーカーウェアを検出する能力の向上に努めており、また、Google(グーグル)は、スパイウェアメーカーに対して、配偶者の携帯電話を盗み見る方法として製品を宣伝することを禁止しているが、一部の開発者は、Googleの広告禁止を逃れるために新たな戦術を用いている。

関連記事:グーグルがスマホのスパイアプリを宣伝した「ストーカーウェア」広告を停止

モバイルスパイウェアは、セキュリティ上の問題として他人事ではない。ここ数年の間に「mSpy」「Mobistealth」「Flexispy」「Family Orbit」など、10社以上のストーカーウェアメーカーがハッキングされたり、データが流出したり、人々の携帯電話のデータを危険にさらしたりしたことが知られている。別のストーカーウェア「KidsGuard」では、セキュリティの不備により何千人もの人々の電話データが流出し、最近では、配偶者のデバイスをスパイできると宣伝している「pcTattleTale」が、推測されやすいウェブアドレスを使ってスクリーンショットを流出させていた。

連邦規制当局も注目し始めている。2021年9月、米連邦取引委員会は、2000人以上の電話データを流出させたストーカーウェアアプリ「SpyFone」の使用を禁止し、被害者に電話がハッキングされたことを通知するよう命じた。これは、当委員会がスパイウェアメーカーに対して行った2回目の措置で、1回目は、何度もハッキングされ、最終的に閉鎖に追い込まれたRetina-Xだ。

関連記事:米連邦取引委員会がスパイウェアSpyFoneを禁止措置に、ハッキングされた被害者に通知するよう命令

あなたやあなたの知り合いが助けを必要としている場合、日本の内閣府のDV相談+ (0120-279-889)は、家庭内の虐待や暴力の被害者に対して、24時間365日、無料で秘密厳守のサポートを提供しています。緊急事態の場合は、110に電話してください。

また、ストーカーウェア反対連合では、自分の携帯電話がスパイウェアに感染していると思われる場合に役立つ情報を提供しています。この記者の連絡先は、SignalおよびWhatsAppでは+1 646-755-8849、Eメールではzack.whittaker@techcrunch.com。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Zack Whittaker、Akihito Mizukoshi)

米政府が中国とロシアへのハッキングツール販売を禁止

米国商務省は、人権侵害をはじめとする悪質なサイバー活動を抑制するため、権威主義政府へのハッキングツールの輸出を禁止すると発表した。

ワシントンポスト紙が最初に報じ、その後商務省が確認したこの規則は、国家安全保障上の理由から、中国やロシアなどの懸念国へのハッキングソフトウェアや機器の輸出や転売を、同省産業安全保障局(BIS)のライセンスなしに事実上禁止するものである。

これは、バイデン政権が3月に中国とロシアへの国家安全保障上の強硬姿勢を継続するために、先進半導体や情報セキュリティのための暗号化を用いたソフトウェアなど、米国の技術の輸出を制限したことを受けた動きだ。

今回の制裁は90日後に発効する予定で、イスラエルのNSOグループが開発したスパイウェア「Pegasus」などのソフトウェアが対象となる。このスパイウェアは、いくつかの権威主義的な政府が、ジャーナリスト、活動家、政治家、企業経営者など、最も声高な批判者の携帯電話をハッキングするために使用してきた

関連記事:45カ国と契約を結ぶNSOのスパイウェアによるハッキングと現実世界における暴力の関連性がマッピングで明らかに

一方、サイバー防衛を目的としたソフトウェアについては、米国のサイバーセキュリティ研究者が海外の研究者と共同研究を行ったり、ソフトウェアメーカーに欠陥を開示したりすることを妨げるものではないため、輸出許可が免除される。BISが2015年に初めてこの規則案を発表した際には、300件近くのコメントが寄せられ、正当なサイバーセキュリティの研究やインシデント対応活動に与える影響について「大きな懸念」が示された。

この規則により、米国は、軍事的安全保障・デュアルユース(軍民両用)技術に関する自主的な輸出管理方針を定めたワッセナー・アレンジメント(Wassenaar Arrangement)に加盟する欧州の42カ国および同盟国と足並みを揃えることになる。

Gina M. Raimondo(ジーナ・M・ライモンド)商務長官は次のように述べている。「米国は、多国間パートナーと協力して、サイバーセキュリティや人権を脅かす悪意のある活動に使用される可能性のある特定の技術の拡散を抑止することに尽力しています。特定のサイバーセキュリティ品目に輸出規制を課す商務省の暫定最終規則は、悪意のあるサイバーアクターから米国の国家安全保障を守ると同時に、合法的なサイバーセキュリティ活動を確保する、適切に調整されたアプローチです」。

2020年、ロシアに起因するSolarWindsハッキングの最初の被害者の1つとなった商務省は、この規則について45日間、一般からのコメントを募集する。同省はコンプライアンスの潜在的なコストと、合法的なサイバーセキュリティ活動に与えうる影響についてのコメントを求めている。規則が最終的なものとなるまでには、それからさらに45日間の修正期間が設けられている。

画像クレジット:Jack Guez / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

ザッカーバーグ氏がフェイスブックのCambridge Analyticaスキャンダルの被告人に

ワシントンD.C.のKarl Racine(カール・ラシーン)司法長官は、Cambridge Analytica(ケンブリッジ・アナリティカ)のスキャンダルに関連した消費者のプライバシー侵害をめぐり、Facebook(フェイスブック)を相手取った訴訟の被告にMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏を加えた。

ザッカーバーグ氏を訴訟の被告とした理由について、ラシーン氏は「継続中の我々の調査により、Cambridge AnalyticaとFacebookのユーザーデータ保護の失敗に関連する決定にザッカーバーグ氏が個人的に関与していたことが明らかになりました」と述べた。

ラシーン氏は、2018年の提訴以来、同氏のオフィスが「数十万」の文書を再調査し、元従業員から多数の証言録取を行ったと指摘した。

ワシントンD.C.の司法長官は、Facebookが英国の政治コンサルティング会社であるCambridge Analyticaに、Facebookユーザー5000万人超のプロフィールデータを本人の同意なしに収集することを許可していたことが明らかになったことを受け、2018年に提訴した。

ザッカーバーグ氏を被告とする決定は、米国の政府機関が起こした訴訟で初めて、Facebook創業者が個人的な責任を問われる可能性があるという点で注目すべきものだ。

「この訴訟は、ワシントンD.C.の全住民の半数と全米の数千万人のデータを守るためのものです」とラシン氏は話した。「我々は、不正行為を調査する義務を非常に真剣に受け止めており、Facebookも同様にユーザーを保護する責任を真剣にとらえるべきです」。

関連記事:ワシントンDC司法長官がFacebookのCambridge Analyticaスキャンダルを巡り訴訟

画像クレジット:Zach Gibson / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

ウェブサイトに個人識別情報を利用しないレコメンデーション技術を企業に提供するCrossing Minds

Crossing Mindsの創業者。左から、セバスチアン・スラン氏、アレクサンドル・ロビケット氏、エミール・コンタル氏(画像クレジット:Crossing Minds)

私たちが見るメディアやショッピングの世界ではたいてい下の方に小さな枠があり、そこには似ている、あるいは他の人が利用したコンテンツや商品が表示される。

消費者はウェブサイトがもっとパーソナライズされることを期待している。ということは、ウェブサイトはあなたが見たいものを見せるために、あなたを知る必要がある。

Crossing Mindsは、CEOのAlexandre Robicquet(アレクサンドル・ロビケット)氏がEmile Contal(エミール・コンタル)氏およびGoogle Xの創業者でスタンフォード大教授のSebastian Thrun(セバスチアン・スラン)氏とともに始めた会社で、2018年にTechCrunchが開催したDisrupt Battlefieldでコンシューマ向けアプリのHaiを発表した。このアプリはユーザーに本、音楽、番組、ビデオゲーム、レストランなどのエンターテインメントを提案するものだった。

2年間でアクティブユーザーは数千人、そしていくつかの大企業を顧客として獲得したが、提案に課題があったため中断してB2Bにピボットした。

ロビケット氏はTechCrunchに対し「パーソナライズはあらゆるところにあり、今後進化する検索もフィルタリングされるようになるでしょう。1つの企業向けのレコメンデーションエンジンやAPIを作るのではなく、多くの企業にスケールして提供できるものを作ることが重要です」と語った。

同氏は、消費者の最大60%がサイトの新規ユーザーであるため、ゼロからの出発である「コールドスタート」が問題になることがあるという。さらに同氏は、サードパーティのcookieの価値が下がり、プライバシー関連の法律が厳しくなり、リアルタイムで現在と過去のウェブセッションをリンクするのが難しいといった障壁もあり、サイトの訪問者を知る方法はほとんどないと補足した。

Crossing Mindsはこうした課題に取り組み、オンサイトのアクションをもとに提案をする方法を開発した。これにより個人を識別する情報を使わずに、顧客は企業を簡単に見つけて関わりを持つことができる。

Crossing Mindsは同社のデータベースと関連づけ、KPIに基づいておよそ2週間でモデルを構築できる。このSaaSモデルはレコメンデーションごとに課金される。

米国時間10月18日にCrossing MindsはシリーズAで1000万ドル(約11億4500万円)を調達したと発表した。このラウンドを主導したのはRadical Venturesで、これまで投資していたIndex Ventures、Partech、Lerer Hippeauも参加した。ロビケット氏は今回の資金をエンジニアリングチーム、製品開発、カスタマーベースに投入し、リーダーシップチームを充実させる考えだ。

Crossing MindsはPenguin Random House、Danone、Inkboxなどにサービスを提供している。ロビケット氏は、利用企業は売上が平均で93%、クリックスルー率は120%増加したと推計している。

Radical Ventures共同創業者のTomi Poutanen(トミ・ポータネン)氏は、Inkboxなどの企業は「Crossing Mindsと連携したときにルビコン川を渡る」ことができたという。同氏は、コンバージョン、リピート販売、チャーンの指標によって経済的な手法が成長すると述べた。

例えばInkboxは2月にCrossing Mindsを利用し始め、Crossing Mindsによればメールのクリックスルー率が250%増、カート追加が250%増、新規ユーザーのオンサイトのコンバージョンが68.6%増の結果がすでに見られるという。

ポータネン氏は「アレクサンドル、エミール、セバスチアンはユニークなものを持っています。数学とディープテックに関する経歴や学位の基盤は、他にはなかなかありません。彼らはプロダクトの価値とその使い方を深く理解しています」と述べた。

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(文:Christine Hall、翻訳:Kaori Koyama)

Facebookアプリの元責任者が内部告発者の議会証言に対して同社を擁護

米国時間10月19日の午後、WSJ Tech Liveイベントで、元FacebookアプリのトップでCEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏の直属だったFidji Simo(フィジー・シモ)氏が、自分が以前在籍していたソーシャルネットワークを擁護した。Instacartの新CEOになった同氏は、イベントでフードデリバリーの未来について述べたが、質問では、最近のFacebookの内部告発者の議会での証言と、それが喚起した社会的関心についても尋ねられた。

関連記事:グローサリー配達のInstacartが新CEOにフェイスブック幹部のシモ氏を指名

シモ氏によると、Facebookが多くの人の生活に与える影響を考えるとセキュリティは重要だが、Facebookが批判を鎮めるために十分なことをやっていないのが心配だ、という。Facebookは世界最大のソーシャルネットワークとして複雑な問題に取り組んでいるにもかかわらず、まだ十分でない、と。

シモ氏は自分が最近離れたFacebookを擁護し「Facebookは、ユーザーの安全のために大金を投じている。また自らの社会的影響についても、業界屈指の詳細な調査研究を行っています。心配なのは、多くの人が『イエス』か『ノー』かの答えを求めることです。実際のところ、この問題は多くのニュアンスを含んでいます」と述べている

内部告発者のFrances Haugen(フランセス・ハウゲン)氏によると、ユーザーのエンゲージメントを優先するFacebookのアルゴリズムにより、人間よりも利益が重視されているという。シモ氏が警告するのは、問題がこれまで説明されてきたようにAかBか、人間か利益かといった、単純な二分法ではないということだ。シモ氏の説明によると、Facebookが行ってきた調査研究に基づいて成し遂げるべき変化は、何かのダイヤルを回して、突然、魔法のように問題が消滅するものではない。なぜならFacebookは基本的に、人間性の反映そのものであるからだ。

画像クレジット:Instacart

シモ氏によると、むしろFacebookの本当の問題は、Facebookが何かを変えるたびに、社会に重要な影響が及ぶことと、その在り方だ。そのためFacebookはついでに何かが起こってしまったではなく、Facebookの事業で問題が起こりそうな部分を判断し、そこをを事前に改善することが重要だ。

「トレードオフがあるときは、それは通常、2種類の社会的インパクト間のトレードオフだ」とシモ氏はいう。

彼女が挙げるかなり単純な調整の例は、ユーザーを怒らせるような投稿を事前に判断して、その種の投稿をあまり見せないようにすることだ。

ハウゲン氏が上院で証言したのは、Facebookのアルゴリズムがエンゲージメントを奨励するようになっていることだ。「いいね!」などのインタラクティブなアクションの多い投稿はより広く拡散され、ユーザーのニュースフィードで上位に表示される。しかしハウゲン氏によると、エンゲージメントが「いいね!」やポジティブなリアクションだけでなく、クリックベイトや人を怒らせるような投稿でも起こるため、アルゴリズムはそれらも優先してしまう。その結果、虚偽情報や悪質で暴力的なコンテンツなど、激しいリアクションを喚起するポストが広まる。

しかしながら、Facebook上の怒りはダイヤルを回して音量を下げるように簡単に減らすことはできない。もしそんなことをしたら、別のタイプの社会的インパクトが生じるだろうとシモ氏はいう

シモ氏によれば、そもそも大きな社会運動は怒りがつくり出すため、企業は多くの人の行動を左右するようなインパクトをどうやって変えるのか、という問題を抱えてしまう。

(しかしWSJの記事によると、そのような状況ではなかった。むしろアルゴリズムの加工によって個人の感情的なポストがプロたちの知的なコンテンツより優先されるようになると、発行者や政党などは怒りやセンセーショナリズムに迎合するポストを発表するようになる。記事によると、この問題を修復せよという提案に対しザッカーバーグしは抵抗している)

シモ氏によると「怒り」の問題はほんの一例にすぎない。「実際には、どんな問題でも常に別のタイプの社会的インパクトとのトレードオフになります。そんな状況に、長くいたためわかりますが、それは『社会にとって良いこと』vs.『Facebookにとって良くて利益になること』という単純な問題ではありません。実際の議論は常に、異なる種類の社会的インパクト同士の間にあります。それは私企業にとって非常に扱いづらい議論です」。

「だからFacebookは公的規制を求めているのだ」とハウゲン氏はいう。

「この部分でFacebookが長年規制を求めてきたのも意外ではない。立場を異にする複数の社会的インパクトがあるとき、私企業はどちらか一方の主張を味方することはできない。行司役を担うのは、政府がふさわしい」とシモ氏はいう。

最近増えているエビデンスによれば、Facebookの事業が社会に負の影響を与えていることはFacebook自身も社内調査などで理解している。そんな中でシモ氏は、Facebookを辞めたことを、Facebook内で起きていることが理由だとはしなかった。

むしろシモ氏は「Facebookにいた10年はあまり勉強しませんでした。Instacartへの移籍は、Facebook以外のいろいろなことを学べる良いチャンスだからです」という。

画像クレジット:Porzycki/NurPhoto/Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Facebookアプリの元責任者が内部告発者の議会証言に対して同社を擁護

米国時間10月19日の午後、WSJ Tech Liveイベントで、元FacebookアプリのトップでCEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏の直属だったFidji Simo(フィジー・シモ)氏が、自分が以前在籍していたソーシャルネットワークを擁護した。Instacartの新CEOになった同氏は、イベントでフードデリバリーの未来について述べたが、質問では、最近のFacebookの内部告発者の議会での証言と、それが喚起した社会的関心についても尋ねられた。

関連記事:グローサリー配達のInstacartが新CEOにフェイスブック幹部のシモ氏を指名

シモ氏によると、Facebookが多くの人の生活に与える影響を考えるとセキュリティは重要だが、Facebookが批判を鎮めるために十分なことをやっていないのが心配だ、という。Facebookは世界最大のソーシャルネットワークとして複雑な問題に取り組んでいるにもかかわらず、まだ十分でない、と。

シモ氏は自分が最近離れたFacebookを擁護し「Facebookは、ユーザーの安全のために大金を投じている。また自らの社会的影響についても、業界屈指の詳細な調査研究を行っています。心配なのは、多くの人が『イエス』か『ノー』かの答えを求めることです。実際のところ、この問題は多くのニュアンスを含んでいます」と述べている

内部告発者のFrances Haugen(フランセス・ハウゲン)氏によると、ユーザーのエンゲージメントを優先するFacebookのアルゴリズムにより、人間よりも利益が重視されているという。シモ氏が警告するのは、問題がこれまで説明されてきたようにAかBか、人間か利益かといった、単純な二分法ではないということだ。シモ氏の説明によると、Facebookが行ってきた調査研究に基づいて成し遂げるべき変化は、何かのダイヤルを回して、突然、魔法のように問題が消滅するものではない。なぜならFacebookは基本的に、人間性の反映そのものであるからだ。

画像クレジット:Instacart

シモ氏によると、むしろFacebookの本当の問題は、Facebookが何かを変えるたびに、社会に重要な影響が及ぶことと、その在り方だ。そのためFacebookはついでに何かが起こってしまったではなく、Facebookの事業で問題が起こりそうな部分を判断し、そこをを事前に改善することが重要だ。

「トレードオフがあるときは、それは通常、2種類の社会的インパクト間のトレードオフだ」とシモ氏はいう。

彼女が挙げるかなり単純な調整の例は、ユーザーを怒らせるような投稿を事前に判断して、その種の投稿をあまり見せないようにすることだ。

ハウゲン氏が上院で証言したのは、Facebookのアルゴリズムがエンゲージメントを奨励するようになっていることだ。「いいね!」などのインタラクティブなアクションの多い投稿はより広く拡散され、ユーザーのニュースフィードで上位に表示される。しかしハウゲン氏によると、エンゲージメントが「いいね!」やポジティブなリアクションだけでなく、クリックベイトや人を怒らせるような投稿でも起こるため、アルゴリズムはそれらも優先してしまう。その結果、虚偽情報や悪質で暴力的なコンテンツなど、激しいリアクションを喚起するポストが広まる。

しかしながら、Facebook上の怒りはダイヤルを回して音量を下げるように簡単に減らすことはできない。もしそんなことをしたら、別のタイプの社会的インパクトが生じるだろうとシモ氏はいう

シモ氏によれば、そもそも大きな社会運動は怒りがつくり出すため、企業は多くの人の行動を左右するようなインパクトをどうやって変えるのか、という問題を抱えてしまう。

(しかしWSJの記事によると、そのような状況ではなかった。むしろアルゴリズムの加工によって個人の感情的なポストがプロたちの知的なコンテンツより優先されるようになると、発行者や政党などは怒りやセンセーショナリズムに迎合するポストを発表するようになる。記事によると、この問題を修復せよという提案に対しザッカーバーグしは抵抗している)

シモ氏によると「怒り」の問題はほんの一例にすぎない。「実際には、どんな問題でも常に別のタイプの社会的インパクトとのトレードオフになります。そんな状況に、長くいたためわかりますが、それは『社会にとって良いこと』vs.『Facebookにとって良くて利益になること』という単純な問題ではありません。実際の議論は常に、異なる種類の社会的インパクト同士の間にあります。それは私企業にとって非常に扱いづらい議論です」。

「だからFacebookは公的規制を求めているのだ」とハウゲン氏はいう。

「この部分でFacebookが長年規制を求めてきたのも意外ではない。立場を異にする複数の社会的インパクトがあるとき、私企業はどちらか一方の主張を味方することはできない。行司役を担うのは、政府がふさわしい」とシモ氏はいう。

最近増えているエビデンスによれば、Facebookの事業が社会に負の影響を与えていることはFacebook自身も社内調査などで理解している。そんな中でシモ氏は、Facebookを辞めたことを、Facebook内で起きていることが理由だとはしなかった。

むしろシモ氏は「Facebookにいた10年はあまり勉強しませんでした。Instacartへの移籍は、Facebook以外のいろいろなことを学べる良いチャンスだからです」という。

画像クレジット:Porzycki/NurPhoto/Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Facebookアプリの元責任者が内部告発者の議会証言に対して同社を擁護

米国時間10月19日の午後、WSJ Tech Liveイベントで、元FacebookアプリのトップでCEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏の直属だったFidji Simo(フィジー・シモ)氏が、自分が以前在籍していたソーシャルネットワークを擁護した。Instacartの新CEOになった同氏は、イベントでフードデリバリーの未来について述べたが、質問では、最近のFacebookの内部告発者の議会での証言と、それが喚起した社会的関心についても尋ねられた。

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シモ氏によると、Facebookが多くの人の生活に与える影響を考えるとセキュリティは重要だが、Facebookが批判を鎮めるために十分なことをやっていないのが心配だ、という。Facebookは世界最大のソーシャルネットワークとして複雑な問題に取り組んでいるにもかかわらず、まだ十分でない、と。

シモ氏は自分が最近離れたFacebookを擁護し「Facebookは、ユーザーの安全のために大金を投じている。また自らの社会的影響についても、業界屈指の詳細な調査研究を行っています。心配なのは、多くの人が『イエス』か『ノー』かの答えを求めることです。実際のところ、この問題は多くのニュアンスを含んでいます」と述べている

内部告発者のFrances Haugen(フランセス・ハウゲン)氏によると、ユーザーのエンゲージメントを優先するFacebookのアルゴリズムにより、人間よりも利益が重視されているという。シモ氏が警告するのは、問題がこれまで説明されてきたようにAかBか、人間か利益かといった、単純な二分法ではないということだ。シモ氏の説明によると、Facebookが行ってきた調査研究に基づいて成し遂げるべき変化は、何かのダイヤルを回して、突然、魔法のように問題が消滅するものではない。なぜならFacebookは基本的に、人間性の反映そのものであるからだ。

画像クレジット:Instacart

シモ氏によると、むしろFacebookの本当の問題は、Facebookが何かを変えるたびに、社会に重要な影響が及ぶことと、その在り方だ。そのためFacebookはついでに何かが起こってしまったではなく、Facebookの事業で問題が起こりそうな部分を判断し、そこをを事前に改善することが重要だ。

「トレードオフがあるときは、それは通常、2種類の社会的インパクト間のトレードオフだ」とシモ氏はいう。

彼女が挙げるかなり単純な調整の例は、ユーザーを怒らせるような投稿を事前に判断して、その種の投稿をあまり見せないようにすることだ。

ハウゲン氏が上院で証言したのは、Facebookのアルゴリズムがエンゲージメントを奨励するようになっていることだ。「いいね!」などのインタラクティブなアクションの多い投稿はより広く拡散され、ユーザーのニュースフィードで上位に表示される。しかしハウゲン氏によると、エンゲージメントが「いいね!」やポジティブなリアクションだけでなく、クリックベイトや人を怒らせるような投稿でも起こるため、アルゴリズムはそれらも優先してしまう。その結果、虚偽情報や悪質で暴力的なコンテンツなど、激しいリアクションを喚起するポストが広まる。

しかしながら、Facebook上の怒りはダイヤルを回して音量を下げるように簡単に減らすことはできない。もしそんなことをしたら、別のタイプの社会的インパクトが生じるだろうとシモ氏はいう

シモ氏によれば、そもそも大きな社会運動は怒りがつくり出すため、企業は多くの人の行動を左右するようなインパクトをどうやって変えるのか、という問題を抱えてしまう。

(しかしWSJの記事によると、そのような状況ではなかった。むしろアルゴリズムの加工によって個人の感情的なポストがプロたちの知的なコンテンツより優先されるようになると、発行者や政党などは怒りやセンセーショナリズムに迎合するポストを発表するようになる。記事によると、この問題を修復せよという提案に対しザッカーバーグしは抵抗している)

シモ氏によると「怒り」の問題はほんの一例にすぎない。「実際には、どんな問題でも常に別のタイプの社会的インパクトとのトレードオフになります。そんな状況に、長くいたためわかりますが、それは『社会にとって良いこと』vs.『Facebookにとって良くて利益になること』という単純な問題ではありません。実際の議論は常に、異なる種類の社会的インパクト同士の間にあります。それは私企業にとって非常に扱いづらい議論です」。

「だからFacebookは公的規制を求めているのだ」とハウゲン氏はいう。

「この部分でFacebookが長年規制を求めてきたのも意外ではない。立場を異にする複数の社会的インパクトがあるとき、私企業はどちらか一方の主張を味方することはできない。行司役を担うのは、政府がふさわしい」とシモ氏はいう。

最近増えているエビデンスによれば、Facebookの事業が社会に負の影響を与えていることはFacebook自身も社内調査などで理解している。そんな中でシモ氏は、Facebookを辞めたことを、Facebook内で起きていることが理由だとはしなかった。

むしろシモ氏は「Facebookにいた10年はあまり勉強しませんでした。Instacartへの移籍は、Facebook以外のいろいろなことを学べる良いチャンスだからです」という。

画像クレジット:Porzycki/NurPhoto/Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

グーグルが新OS「Android 12」配信開始、セキュリティを改良しよりパーソナルに

世界で最も使用されているモバイルOSであるAndroidは、独自のセールスポイントを確立し、AppleのiOSとの差別化を図るべく、着実な歩みを続けている。Pixel 3以降で利用可能なこの新OSのAndroid 12は、同OSの長所をさらに強化するとともに、いくつかの新機能も追加されている。

誰もが、これまでに製造された他のすべてのデバイスと基本的に同じに見えるスマートフォンを持つようになると、パーソナライゼーションがより重要になる。Google(グーグル)はMaterial You(マテリアルユー)機能をOSに導入し、壁紙を変更すると、Android 12エクスペリエンス全体がその色に合わせて変化するようになった。OSには色抽出アルゴリズムが搭載されているため、すべてが統合され、洗練されて見える。ロックスクリーン、通知、設定、ウィジェット、そしてアプリまで、すべてがパーソナライズ可能だ。Material YouはPixelに先行して搭載され、他のデバイスメーカーの端末にも順次搭載されていく予定だ。

完全にカスタマイズ可能なOSで、あなたのスマホともっとあなたらしく(画像クレジット:Google)

セキュリティとプライバシーは、このOSのもう1つのテーマだ。例えば、Android 12では、スムーズに機能するためにおおよその位置情報しか必要としないアプリから、正確な位置情報をプライベートにしておくことができる。また、アプリがマイクやカメラ機能を使用しているかどうか、ステータスバーに表示される新しいインジケーターで確認できる。さらに、OS全体でカメラとマイクをオフにしたい場合は、クイック設定で新しいトグルスイッチを使ってオフにすることができる。また、忘れていたアプリをロックダウンする機能も追加され、数カ月間使用しなかったアプリの許可を自動的に取り消すことができる。

またこのOSでは、位置情報とBluetoothの関係がようやく切り離された。Googleは次のように述べている。「ワイヤレスヘッドフォンは携帯電話に接続する必要があるが、あなたがどこにいるかを知る必要はありません」。Android 12では、それがようやく可能になった。

Googleは、以前のOSリリースで、Googleレンズのための大量の新しいAndroid機能を導入した。例えば、任意のスクリーンショットで光学式文字認識(OCR)を行うことができるようになった。Android 12では、その機能に加えて「スクロールスクリーンショット 」などの拡張機能が追加されている。画面の端に到達したからといって、スクリーンショットの端に到達する必要はない。新しいスクロールスクリーンショットを使えば、ページ上のすべてのコンテンツを1枚の画像に収めることができる。これは賢い。

新フィーチャーは機能性にとどまらず、Android 12では省電力機能やアクセシビリティの向上も実現している。また、ホットアップデートの導入により、同じアプリのアップデートがバックグラウンドでダウンロード、インストールされていても、そのアプリを使い続けることができる。ポケモンGOを数分間中断しなければいけないことなど、あってはならない。

GoogleのAndroid 12 OSは、米国時間10月19日より対応機種に順次導入される。

画像クレジット:Google

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

Evervaultの「サービスとしての暗号化」がオープンアクセスに

ダブリンに拠点を構えるEvervaultは、APIを介する暗号化を販売する開発者向けセキュリティのスタートアップだ。Sequoia、Kleiner Perkins、Index Venturesなどの大手投資家から支援を受けている。同社は2021年8月中旬、クローズドベータを終え、暗号化エンジンへのオープンアクセスを発表した。

E3と称される同社の暗号化エンジンを試す待機リストには、約3000人の開発者が登録していると同社は述べている。

クローズドプレビューに参加している「数十の」企業には、ドローン配送会社のManna、フィンテックスタートアップのOkra、ヘルステック企業のVitalなどが名を連ねている。Evervaultによると、同社のツールは4種のデータ(アイデンティティおよび連絡先データ、財務および取引データ、健康および医療データ、知的財産)の収集や処理を必要とするコアビジネスを持つ企業の開発者をターゲットにしているという。

E3で提供する最初のプロダクトスイートはRelayとCagesだ。Relayは、開発者がアプリの入出力時にデータを暗号化および復号化するための新しい方法を提供する。Cagesは、AWS上で実行される信頼性の高い実行環境を使用して、プレーンテキストデータを処理するコードを開発者スタックの残りの部分から分離することで、暗号化されたデータを処理する安全な方法を提供する。

創業者のShane Curran(シェーン・カラン)氏によると、EvervaultはAmazon Web ServicesのNitro Enclavesにプロダクトをデプロイした最初の企業になるという。

「Nitro Enclavesは基本的に、コードを実行でき、データ自体の中で実行されるコードが本来実行されるべきコードであることを証明できる環境です」と同氏はTechCrunchに語っている。「AWS Nitro Enclavesに関するプロダクトのプロダクションデプロイメントを行ったのは当社が最初です。そのアプローチを実際的に遂行する当事者という意味では、私たちが唯一の存在だと言えるでしょう」。

データ侵害がオンラインで深刻な問題であり続けていることは、もはや周知の事実であろう。そして残念なことに、アプリメーカーによる杜撰なセキュリティ対策、さらにはユーザーデータの安全性に対する配慮の全面的な欠如について、プレーンテキストのデータが漏洩したり不正にアクセスされたりした場合に責任を問われる頻度が高くなっている。

アプリエコシステムのこの不幸な「特性」に対するEvervaultの解決策は、開発者がAPIを介する暗号化を極めてシンプルに行えるようにすることであり、暗号化キーの管理などの負担を軽減するものである。(「DNSレコードを変更して当社のSDKを含めることで、5分でEvervaultを統合」というのが、同社のウェブサイト上の開発者を惹きつけるピッチだ)。

「私たちが行っている高いレベルの取り組みにおいて【略】私たちが真に注力しているのは、どのような観点からもセキュリティとプライバシーにまったくアプローチしていない(という状況にある)企業を、暗号化で稼働状態にし、少なくとも、制御機能を実際に実装できるようにすることです」とカラン氏は語る。

「最近の企業が抱える最大の問題の1つとして、企業がデータを収集した後、そのデータは実装とテストセットの両方に散らばっているような状態になっていることが挙げられます。暗号化の利点は、データがいつアクセスされ、どのようにアクセスされたかを正確に把握できることにあります。ですから、データに何が起こっているのかを確認し、それらの制御を自分たちで実装するためのプラットフォームが提供されるだけでいいのです」。

何年にもわたって発生してきたおぞましいデータ漏洩スキャンダル(そしてデータ漏洩デジャヴ)、さらには欧州の一般データ保護規則(GDPR)をはじめとするデータ保護法の改正により脆弱なセキュリティやデータの悪用に対する罰則が強化されたこともあり、企業幹部はデータを適切に保護する必要性に一層の注意を払うようになっている。こうした中「データのプライバシー」を提供することを約束するサービスをアピールし、データを保護しつつ開発者が有用な情報を抽出できると主張するツールを売り込むスタートアップが増えている。

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Evervaultのウェブサイトはまた「データのプライバシー」という用語を次のような意味の定義として展開している。「プレーンテキストのユーザー / 顧客データにアクセスできる権限のない当事者はいない、ユーザー / 顧客および権限のある開発者は誰がいつどの目的でデータにアクセスできるかを完全に制御できる、プレーンテキストのデータ侵害を終結する」(つまり、暗号化されたデータは理論上はまだ漏洩する可能性があるが、重要なのは、情報が強固に暗号化されている結果、保護されたままになるということだ)。

この分野のスタートアップが商用化しているテクニックの中に、準同型暗号がある。準同型暗号とは、暗号化されたデータを復号することなく分析できるプロセスだ。

Evervaultの最初のオファリングはそこまで踏み込んでいない。ただし同社の「暗号化マニフェスト」には、この技術を注視していると書かれている。そしてカラン氏は、このアプローチをいずれは取り入れる可能性が高いことを認めている。しかし、同社の最初の焦点は、E3を稼働させ、幅広い開発者を支援できるオファリングを提供することにあると同氏はいう。

「完全な準同型(暗号化)はすばらしいことです。通常のサービスを構築しているソフトウェア開発者をターゲットにする場合、最大の課題は、その上に汎用アプリケーションを構築することが非常に難しいことにあります。そこで私たちは別のアプローチを採用しました。そのアプローチとは基本的に、信頼できる実行環境を使用することです。そして私たちはAmazon Web Servicesチームと協力して、Nitro Enclavesと呼ばれる彼らの新しいプロダクトの最初のプロダクションデプロイメントを行いました」とカラン氏はTechCrunchに語った。

「私たちがより重視しているのは、基盤となる技術そのものではなく、すでにこの分野に多額の投資をしている企業のために最善のセキュリティプラクティスを採用し、暗号化がどのように機能するかについて知識を持たないような平均的な開発者でも利用できるようにすることです」と同氏は説明する。「Evervaultが他のプライバシーやセキュリティ企業と違う最大のニュアンスはそこにあります。私たちが開発を進めるのは、何かを構築するときに通常はセキュリティについて考えることなく、それを中心にすばらしいエクスペリエンスを築こうとしている開発者のためです。それはまさに、『アートの始まり』の間にあるギャップを埋め、それを平均的な開発者にもたらすことに他なりません」。

「時間の経過とともに、完全な準同型暗号化はおそらく私たちにとって簡単なものになりつつあるのですが、平均的な開発者が立ち上げて実行するためのパフォーマンスと柔軟性という点では、現在の形式をベースにして構築することはあまり意味がありませんでした。しかし、そこに私たちは注目しています。私たちは学究的環境から生まれてくるものを実際的に精査しています。現実の環境に適合させることができるかどうかを検討しているのです。しかし当面は、今てがけているような信頼できる実行環境がすべてです」とカラン氏は続けた。

カラン氏によると、Evervaultの主な競合相手はオープンソースの暗号化ライブラリであり、開発者は基本的に自分で暗号化作業を行うことを選択している。そのため、同社はオファリングのサービス面に照準を合わせている。開発者が暗号化管理タスクを実行しなくて済むようにすると同時に、データに明確に触れる必要がないようにすることで、セキュリティリスクを軽減する。

「この種の開発者たち、つまりすでに自分たちで暗号化を行うことを考え始めている開発者たちを考慮すると、Evervaultの最大の差別化要因としてまず統合のスピードが挙げられますが、さらに重要な点は暗号化されたデータの管理そのものにあります」とカラン氏。「Evervaultではキーを管理していますが、データは保持しておらず、お客様は暗号化されたデータを保持していますが、キーは保持していません。つまり、Evervaultで何かを暗号化したいと思っても、すべてのデータについて、プレーンテキストで保有することは決してありません。一方、オープンソースの暗号化では、暗号化を行う前のある時点でプレーンテキストデータを保有する必要があります。これが私たちが見ている基本の競合他社です」。

「もちろん、Tim Berners-Lee(ティム・バーナーズ-リー)氏のSolidプロジェクトのような他のプロジェクトもいくつかあります。ですが、暗号化に対して開発者エクスペリエンスに焦点を当てたアプローチに特化しているところが他にあるかどうかは明確とは言えません。APIセキュリティ企業は明らかに数多く存在します【略】しかし、APIを介する暗号化は、私たちが過去に顧客との間で出会ったことのないものです」と同氏は付け加えた。

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Evervaultの現在のアプローチでは、アプリメーカーのデータはAWS上の専用の信頼できる実行環境でホストされていると見ているが、情報は今のところプレーンテキストとして存在している。しかし、暗号化が進化するにつれ、アプリがデフォルトで暗号化されるのではなく(Evervaultの使命は「ウェブを暗号化する」ことだとされている)、ユーザーデータがいったん取り込まれてから暗号化されれば、すべての処理が暗号化されたテキスト上で実行されるため、ユーザーデータを復号する必要がなくなる未来を想像することも可能になる。

準同型暗号は当然のことながらセキュリティとプライバシーの「聖杯」と呼ばれており、Dualityのようなスタートアップはそれを追い求めて奔走している。しかし、現場、オンライン、そしてアプリストアでの現実は、はるかに初歩的なままだ。そこでEvervaultは、暗号化のレベルをより一般的なものにしようとすることには大きな価値があると考えている。

カラン氏はまた、多くの開発者は収集したデータを実際にはあまり処理していないと指摘し、そのため、信頼できる実行環境内でプレーンテキストデータをケージングすることで、いずれにしてもこうした種類のデータフローに関連するリスクの大部分を取り除くことができると主張している。「現実には、最近のソフトウェア開発者の多くは、必ずしも自分でデータを処理しているわけではありません。彼らはユーザーから集めてサードパーティのAPIと共有しているだけなのです」。

「Stripeを利用して何かを構築しているスタートアップを見てみると、クレジットカードはシステム内を流れていますが、最終的には必ず別の場所に渡されることになります。これは、最近のスタートアップのほとんどが行っている傾向だと思います。ですから、Amazonのデータセンターのシリコンのセキュリティに依存して実行を信頼することができるのは、ある意味最も理に適っていることです」。

規制面では、このデータ保護のストーリーは、通常のセキュリティスタートアップの展開よりも少し微妙なところがある。

欧州のGDPRは確かにセキュリティ要件を法制化しているが、旗艦的なデータ保護レジームは、個人データに付随する一連のアクセス権も市民に提供している。これは「データプライバシー」に関する開発者ファーストの議論では見落とされがちな重要な要素だ。

Evervaultは、チームの初期の焦点は暗号化であり、データアクセス権は今のところ意識の中心にはなっていないことを認めている。しかしカラン氏は「時間をかけて」「アクセス権もシンプル化する」プロダクトを展開する計画だと語ってくれた。

「今後、Evervaultは次の機能を提供していく予定です。暗号化されたデータのタグ付け(例えばタイムロックデータの利用)、プログラム的な役割ベースのアクセス(例えば従業員がUIでプレーンテキストのデータを見れないようにする)、そしてプログラム的なコンプライアンス(例えばデータのローカリゼーション)です」と同氏はさらに説明した。

画像クレジット:Janet Kimber / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

WhatsAppはチャットのバックアップをクラウド上で暗号化する新機能をついに展開

WhatsAppは、20億人のユーザーにiCloudまたはGoogle Driveに保存されているチャット履歴を暗号化するオプションを提供する新機能の展開をついに開始する。これにより、政府が個人間の私的な会話を入手して閲覧したりするために利用されてきた重大な抜け穴を塞ぐことができる。

WhatsAppは、これまでもユーザー間のチャットを暗号化していた。しかし、ユーザーがクラウド上に保存されたチャットのバックアップを保護する手段はなかった(iPhoneユーザーの場合、チャットの履歴はiCloudに保存され、AndroidユーザーはGoogle Driveだ)。

この抜け穴を利用して、世界中の法執行機関がWhatsApp上の疑わしい個人間の私的な会話にアクセスできていたことが広く報道されてきた。

1日に1000億通以上のメッセージを処理するWhatsAppは、この弱点を解消するために、この新機能をアプリが運用されているすべての市場のユーザーに提供するとTechCrunchに述べている。同社によると、この機能は任意だという(企業が法的規制上の理由からプライバシー機能を搭載しないのは珍しくない。Apple(アップル)の新しい暗号化されたブラウザ機能は、中国、ベラルーシ、エジプト、カザフスタン、サウジアラビア、トルクメニスタン、ウガンダ、フィリピンなど、特定の権威主義体制国のユーザーには提供されていない)。

Facebook(フェイスブック)の創業者兼CEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、エンド・ツー・エンドの暗号化されたメッセージングとバックアップを提供しているこの規模のグローバルなメッセージングサービスとしてはWhatsAppが初めてだと述べている。「プライベートな会話のためのセキュリティをリードし続けているチームを誇りに思う」と、自身のFacebookページへの投稿で綴っている

WhatsAppは2021年9月、少人数のユーザーを対象にこの機能のテストを開始した。同社は、AndroidおよびiOSのWhatsAppユーザーが、チャットのバックアップを暗号鍵でロックできるような仕組みを考案した。WhatsAppは、ユーザーにクラウドバックアップを暗号化する2つの方法を提供するとしている。

WhatsAppのユーザーには、クラウド上のチャットバックアップを保護するための64桁の暗号化キーを生成するオプションが表示される。ユーザーはこの暗号化キーをオフラインまたは自身のパスワードマネージャーに保存するか、暗号化キーを、WhatsAppが開発したクラウドベースの「バックアップキー保管庫」にバックアップするパスワードを作成することができる。クラウドに保存された暗号化キーは、ユーザーのパスワード(WhatsAppは確認できない)がなければ使用できない。

同社はブログで「エンド・ツー・エンドで暗号化された送受信メッセージはデバイスに保存されますが、多くの人は携帯電話を紛失した場合に備えてチャットをバックアップする方法も求めています」と述べている。

この機能は「設定」→「チャット」→「チャットのバックアップ」→「エンド・ツー・エンドの暗号化バックアップ」で利用できる(画像クレジット:WhatsApp)

先月、私たちが書いたように、このような追加のプライバシーを導入する動きは重要であり、広範囲に影響を及ぼす可能性がある。

各国政府の考えは?

エンド・ツー・エンドの暗号化は、世界各国の政府がバックドアを求めてロビー活動を続けているため、依然として厄介な話題となっている。Reuters(ロイター)通信によると、AppleはFBIからクレームを受けた後、iCloudバックアップに暗号化機能を追加しないように圧力をかけられたそうだ。また、Google(グーグル)はGoogle Driveに保存されたデータを暗号化する機能をユーザーに提供しているが、この機能を展開する前に政府に伝えていなかったと言われている。

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インド政府がソーシャルメディアやストリーミングサービス企業に厳しい新規制を発表

WhatsAppのユーザー数が最大の市場であるインドでは、疑わしいメッセージの「トレース」を可能にする方法を考案することを同社に要求する新しい法律が導入された。WhatsAppは、この新たな義務化についてインド政府を訴え、このような義務化は事実上「新しい形の大量監視 」を義務付けるものだとしている。

英国政府は、暗号化にはあまり関心がなく、最近ではメッセージングアプリに対して、子どものアカウントにエンド・ツー・エンドの暗号化を使用しないよう求めている。他にも、オーストラリアでは3年前に、テック企業が警察や治安機関に暗号化されたチャットへのアクセスを提供することを義務付ける法律が可決され、物議を醸している。

WhatsAppは、この新機能について、議員や政府機関と協議したかどうかについては言及を避けている。

電子フロンティア財団をはじめとするプライバシー保護団体は、今回のWhatsAppの動きを高く評価している。

「FacebookのWhatsAppは、未成年者がメッセージで送信した写真や、ユーザーがiCloudにアップロードしたすべての写真をデバイス上でスキャンする計画を立てているAppleとは対照的に、プライバシー保護の面で勝利を収めています。Appleは、その計画に対するフィードバックを再検討するためにこれを一時停止していますが、長年にわたるプライバシーの落とし穴の1つである、iCloudバックアップが暗号化されていない点を修正することが含まれている兆候はありません」と同団体はいう

「WhatsAppは基準となるハードルを上げており、Appleや他の企業もそれに倣うべきです」。

画像クレジット:Kirill Kudryavtsev / AFP / Getty Images

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(文:Manish Singh、Akihito Mizukoshi)

【コラム】データプライバシーを全世界的に標準化すれば、それは真の意味で人類の進歩となるはずだ

中国は2021年8月、初めて抜本的なデータプライバシー法を可決した。今後、中国の個人情報保護法(PIPL)の対象となる中国の住民(中国の人口は世界で最も多い)と関わるであろうグローバル企業や意欲的なスタートアップ企業は、オンラインで売買やサービスの提供を行う際に影響を受ける可能性がある。

この法律自体は2016年に導入されたEUの一般データ保護規則(GDPR)と類似し、目新しいものではない。衝撃的なのは、GDPRが導入された際は企業に2年の準備期間があったのに対し、PIPLは2021年11月1日に施行されるということである。

PIPLを受けて、関連する企業はコンプライアンスの遵守を確立するために奔走することになる。また、データプライバシーの重要性と緊急性が世界規模で高まっていることも明らかになった。中国は、GDPR類似のプライバシー法を制定した17番目の国となるが、さて、いまだにプライバシー法を制定していない世界の超大国はどこだろうか?

米国は、消費者に焦点を当てた国家レベルのデータプライバシー法をいまだに採用していない。国民はオンライン上の個人データの管理強化を望んでいるにもかかわらず、である(複数調査による)。データプライバシー法の不整備は、特にテクノロジー業界に大きな影響を及ぼす。

さまざまな事象が急速に進む現在、データプライバシーの発展は明らかに重要な分岐点に達している。私たちのとる行動によっては世界中の何十億、何千億もの消費者に影響を与える可能性があり、また、小さなスタートアップ企業から巨大なグローバル企業まで、さまざまな企業の発展にも影響が生じる。今こそ慎重な検討が必要だ。

この記事では、最初に米国におけるデータプライバシー法の進展、およびこれが世界にとって何を意味するかを検討し、次にデータの最小化(「必要」かつ「適切で、関連性があり、限定された」個人データのみを処理する原則)の取り組みでこれらの問題に対応できるかを確認して、データプライバシーという難問に挑んでみる。最後に、データプライバシーという問題の解決に欠かせないこれらの要素を比較した上で、人々が自分のデータを確実に管理できる、世界規模のデータプライバシー基準を提唱することで締めくくりたいと思う。

米国におけるデータプライバシー

米国のデータプライバシーを取り巻く状況は複雑だ。連邦レベルでは、(動きがあるものの)包括的なデータプライバシーポリシーは存在しない。その代わりに医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA)、消費者金融商品を対象としたグラムリーチブライリー法(GLBA)など、業界ごとのプライバシー規制がある。

13歳未満の子どもを保護するための児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)も存在する。また、連邦取引委員会(FTC)も、FTC独自のプライバシーポリシー(連邦取引委員会法)に違反しているアプリやウェブサイトを積極的に取り締まっている。

しかしながら、米国政府は、消費者のデジタルプライバシー権を保護するための包括的な法案を可決しておらず、各州が独自に対応している(例:カリフォルニア州のCCPA、バージニア州のVCDPA、コロラド州のColoPA)のが現状だ。このため多くの米国人のプライバシー権が侵害され、企業は何をすべきかを決めることができずに混乱している。

これが本来あるべき姿だと主張し、停滞した議会では意味のある消費者プライバシー法案を可決することはできないと警告する人々もいる。彼らは、仮に国家レベルのプライバシー法が可決されたとしても、内容は骨抜きにされ、慎重に構想された各州の法律にも悪影響を及ぼすだろうと考えているらしい。

それと同時に、50の州で異なるデータプライバシー法が存在することになる可能性も否定できない。どれも類似しているものの、それぞればらばらで、異なっている……正しく法を遵守しようとする企業にとっては悪夢のようなシナリオだ。この状況を世界規模に拡大してみよう。

データの最小化は唯一の解決策ではない

データプライバシーの問題に対処するための1つの方法として、データ最小化の原則が挙げられる。これは、企業が具体的な目的のためだけに個人情報を収集・保持することを認めるものである。

データ最小化の原則では、基本的には企業が収集するデータの量を減らすことが求められる。これには、マーケティングチームが収集するデータ量を減らしたり、データ保持のスケジュールを設定して使わなくなったデータを消去したりすることが考えられる。

これにメリットを感じる人もいるだろうが、現実的ではない。消費者に強く配慮する企業であっても、マーケティング担当者に対して潜在顧客の個人情報の収集を減らすように提案することはないだろうし、データを収集する正当な理由を探し出すことは間違いないだろう。

そして、たとえ目的が純粋なものであったとしても、個人情報や嗜好を調査して製品を開発し、ビジネスを成長させているスタートアップ企業にとって、この原則は有害なものになりかねない。この点で、データの最小化は、思わぬところでイノベーションを阻害する可能性がある。

さらに率直に言えば、消費者が自分自身のデータの取得・利用方法について選択できるようにすれば、データを最小化する必要はないと思われる。パーソナライズされたオーダーメイドの体験を好む消費者は、個人情報を共有しても問題ないと考えているケースもある。たとえば「Stitch Fix(スティッチフィックス)」「Sephora(セフォラ)」のようなブランドは、よりショッピングを楽しんでもらうために事前にたくさんの個人的な好みを質問しているが、多くのユーザーがそれを問題視していない。

世界規模のデータプライバシー基準の必要性

筆者は、このような複雑で微妙な問題が表面化し、企業や消費者を悩ませてしまうのは、皆が同じ見解を持つためのグローバルスタンダードが存在しないからだと考える。グローバルスタンダードが存在しない限り、他のいかなる法律や規則、基準も一時しのぎに過ぎない。

今こそ、世界中の消費者を保護し、企業が遵守すべき要件がどの地域でも同一になるよう、各国が合意できる基本原則を策定するときだ。

国際的なデータプライバシー法が乱立し、この地域の要件は厳しく、あの地域の要件は少しだけ異なる、といった状況になれば、企業がコンプライアンスを完全に遵守するのは不可能に近い。そうなるのも時間の問題だ。私たちは事態を収拾しなければならない。

データプライバシー基準は、国境を越えた公平性の基本を確立し、あらゆる段階の企業に適用される。そして、企業の国際的なビジネス展開は飛躍的に容易になる。

筆者は、今影響を受けている企業や地域が、国際的なデータプライバシー基準に向けた変化を促進してくれることを期待している。グローバル化を目指す企業にとって、地域で異なる基準は大きなマイナスであり、膨大なコストにつながっている。そういった企業が協力すれば、共通の解決策を見出すことができるだろう。推進力はそこにある。中国の動向を見れば、他の国が追随する日もそう遠くはないはずだ。

米国内でのデータプライバシー法の制定を待たずに、米国を拠点とする業界団体でさえグローバルスタンダードへの第一歩を踏み出そうとしている。例えばConsumer Reports(コンシューマーレポーツ)は解決策を検討するためのワーキンググループを立ち上げた。これにより、企業と消費者の双方を保護するためのデータプライバシーに関する世界的な関心が急速に高まる可能性がある。

データプライバシー基準の核心

データプライバシー基準はもはや必要不可欠であるといえるが、その策定にあたって忘れてはならないのは「消費者自身が、企業による自分の情報の扱いをコントロールできる」ようにしなければならないということである。

とりわけサービスやアプリケーションが取引を促進するために利用される場合は、消費者自身が、誰が自分の情報にアクセスできるのか、それはなぜなのかを知る権利を持つ。また、要求に応じて個人情報を削除させる権利や、企業が許可なく自分の情報を販売することを防ぐ権利も必要だろう。これらは基本的かつ普遍的な権利であり、政府機関や支援団体はこれを理解しなければならない。

マーケター、マーケティング担当者は不満かもしれないが、すべての消費者が自分の情報を共有することに反対していると考える必要はないだろう。実際には、前述の例のように、企業が個人情報を収集・保持することで、パーソナライズされた体験やショッピングができることを評価する人も少なくない。

消費者の選択権は、最終的にエコシステム全体の健全性を高め、企業が信頼と透明性を築くための新たな手段となる。企業も(地域ごとに)何種類もの消費者の権利を開発・管理するためにいつまでもあたふたする状況から解放される。

筆者は、スタートアップ企業がプライバシーファーストで設立されるようになると予想している。これは企業の差別化にもつながるだろう。しかし、変化の最大の要素は、消費者が世界のどこにいようと、個人情報を含むシステムが世界のどこにあろうと、自分のデータを確実にコントロールできるようにすることだ。データプライバシー基準は消費者の権利を保護し、混乱を解消して企業が効率的にビジネスを行えるようにする。他のアプローチでは同じことを合理的に行うことはできないし、大規模に展開することもできない。

データプライバシーを全世界で標準化し、私たち全員が同じステージに立つことができれば、それは真の意味で人類の進歩となるはずだ。

画像クレジット:Kardd / Getty Images

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(文:Daniel Barber、翻訳:Dragonfly)

欧州議会が生体認証による遠隔監視の禁止を支持

欧州議会は、生体認証による大規模な監視を全面的に禁止することについて賛成の立場を採択した。

顔認証などのAIを使った遠隔監視技術は、プライバシーのように自由や基本的な権利に大きく関わる問題だが、欧州ではすでに公共の場での使用が浸透している。

「プライバシーと人間の尊厳」を尊重するため、欧州議会は公共の場での個人の自動認識を恒久的に禁止することを可決すべきで、市民が監視されるのは犯罪の疑いがある場合のみだとした。

また、欧州議会は、民間の顔認証データベースの使用を禁止するよう求めた。米国のスタートアップ企業であるClearviewが開発した、物議を醸しているAIシステムがその例だ(これも欧州の一部の警察がすでに利用している)。欧州議会は、行動データに基づく予測的な取り締まりも非合法化すべきだとしている。

加えて欧州議会は、市民の行動や性格に基づいて信頼性を評価するソーシャルスコアリングシステムも禁止したいと考えている。

欧州連合(EU)執行部は4月、高いリスクをともなう人工知能技術の利用を規制する法案を発表した。この法案には、ソーシャルスコアリングの禁止や、公共の場での生体認証による遠隔監視の原則禁止が含まれていた。

しかし、市民社会、欧州データ保護会議、欧州データ保護監督官、および多くの欧州議会議員は直ちに、欧州委員会の提案が十分に行き届いていないと警告した

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欧州議会全体としても、基本的権利に対する保護措置の強化を望んでいることが明らかになった。

現地時間10月5日夜に採択された決議で欧州議会議員は、市民の自由・司法・内務委員会の「刑法における人工知能」に関する報告書に377対248で賛成し、人工知能法の詳細を詰める今後のEU機関間の交渉で欧州議会が何を受け入れるかについて、強いシグナルを送った。

生体認証による遠隔監視に関する関連パラグラフでは、欧州委員会に次のことを求めた。

立法および非立法の手段により、また、必要ならば侵害訴訟により、法の執行を目的とした顔画像を含む生体データの処理で、公共の場での大量監視につながるようなものを禁止することを求める。さらに欧州委員会に対し、公共の場での無差別な大量監視につながる可能性のある生体データの研究や展開、プログラムへの資金提供を禁止するよう求める。

この決議は、アルゴリズムによる偏見にも目を向け、AIによる差別を防ぐために、特に法執行機関において、あるいは国境を越える場面で、人間による監督と強力な法的権限を求めた。

最終的な判断を下すのは常に人間のオペレーターでなければならず、AIを搭載したシステムに監視されている対象者は救済措置を受けることができなければならない、と欧州議会議員は合意した。

また、欧州議会議員は、AIベースの識別システムを使用する際に基本的権利が守られるよう求めた。AIベースの識別システムは、少数民族、LGBTI、高齢者、女性の誤認識が高いことが指摘されている。そして、アルゴリズムが備えるべき要件として、透明性、追跡可能性、十分な文書化が必要だとした。

公的機関に対しては、可能な限り透明性を高めるために、オープンソースのソフトウェアを使用するよう求めた。

さらに欧州議会議員は、EUから資金提供を受け、物議を醸している研究プロジェクトにも狙いを定めた。顔の表情を分析して「スマートな」嘘発見器を開発するという「iBorderCtrl」プロジェクトは中止すべきだと主張した。

関連記事:欧州司法裁判所で異議申立てされた「オーウェル的」AIうそ発見器プロジェクト

報告者のPetar Vitanov(ペーター・ビタノフ)氏(ベルギー、社会民主進歩同盟)は声明で次のように述べた。「基本的権利は無条件に与えられるものです。今回初めて、法の執行を目的とした顔認証システムの導入を一時停止することを要求します。この技術は効果的ではなく、しばしば差別的な結果をもたらすことが証明されているためです。私たちは、AIを利用した予測的な取り締まりや、大量の監視につながる生体情報の処理には明確に反対します。これは、すべての欧州市民にとって大きな勝利です」。

TechCrunchは欧州委員会に対し、今回の投票についてコメントを求めたところだ。

同議会の決議は、司法判断を補助するAIの禁止も求めている。これも、自動化がすでに適用されている大きな議論を呼ぶ分野だ。自動化により、刑事司法制度における偏見が体系的に固定・拡大される危険性がある。

世界的な人権慈善団体であるFair Trialsは、今回の採択を「テクノロジー時代の基本的権利と無差別のための画期的な結果」と歓迎している。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

プライバシー重視のモバイルブラウザー「Firefox Focus」アップデート、新ロゴ、ショートカット機能などなど追加

Mozillaは、プライバシーを重視したモバイルブラウザー「Firefox Focus」をアップデートし、外観やショートカットを一新するとともに、プライバシーコントロールを強化した。Firefox Focusは2016年に初めて登場し、基本的にデフォルトでプライベートブラウジングモードを提供する。このブラウザーは、ニューカラー、新しいロゴ、ダークテーマを採用している。また、Mozillaは、ユーザーが頻繁に訪れるサイトにすばやくアクセスできるように、新しいショートカット機能を追加した。

最新のアップデートには、個々のトラッカーの有効 / 無効をすばやく切り替えられるシールドアイコン(盾型アイコン)がある。また、現在、グローバルにブロックしているトラッカーの数がわかるカウンターがある。Mozillaによると、これらによりユーザーは、自分がトラック(追跡)されているか気にせずに検索をすばやく完了できる。

Cybersecurity Awareness Monthの一環としてMozillaは、Android上のFirefoxに新しい機能を加えた。アプリのアカウントをこれから作るユーザーは、新しいパスワードを直接ブラウザーに保存可能で、モバイルとデスクトップの両方で、アカウントに簡単にログインできるようになる。

またブラウザーに保存したパスワードを自動入力して、そのアカウントにログインできる。Firefoxのアカウントを作ったユーザーは、すべてのパスワードをデスクトップとモバイルデバイスの両方で同期できる。さらにパスワードなどを使わずにユーザーの顔や指紋でアカウントのロックを解くこともできる。

Mozillaの発表によると、Firefoxは年内にWindowsのMicrosoft Storeで入手できるようになるという。Microsoftが、ストアにおけるサードパーティー製ブラウザーの制限を緩めたからだ。

「Firefoxのような独立したブラウザーを含む企業やアプリケーションに対して、Microsoft Storeがよりオープンになったというニュースを歓迎します。より健全なインターネットとは、人々が多様なブラウザーやブラウザエンジンから選択する機会を持つことだと考えています」とMozillaは声明で述べている。

画像クレジット:Mozilla

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

準同型暗号を用いたプライバシー重視のデータコラボツールを開発するDuality Technologiesが約33億円調達

Duality Technologies(デュアリティ)は、パイオニア的な暗号技術者とデータサイエンティストが創業したスタートアップだ。企業が機密情報を漏えいすることなく、データを共有したり共同作業を行ったりすることを容易にするツールを開発している。同社は、初期に獲得した重要な契約を背景に、相当の金額を調達した。その中には米国防総省との契約も含まれる。

同社は準同型暗号(ホモモルフィック暗号)を利用する。これは、暗号化されたデータを復号せずに分析・利用することを可能にする比較的新しい技術だ。同社はこの技術を、プライバシーを重視した安全なコラボレーションツールを開発するために使っている。同社は今回、多数の戦略的投資家が参加したシリーズBで3000万ドル(約33億円)を調達した。LG Technology Venturesがこのラウンドをリードし、Euclidean CapitalとNational Bank of Canadaのコーポレートベンチャーキャピタル部門であるNAventuresが参加した他、Intel Capital(シリーズAをリードした)、Hearst Ventures、Team8も参加した。

Dualityはバリエーションを公表していない。これまでに約4900万ドル(約54億円)を調達した。PitchBookは、今回のシリーズBでのバリエーションを1億4500万ドル(約160億円)としているが、シリーズBのフルバリューを載せていないため、金額は異なる可能性がある。

CEOのAlon Kaufman(アロン・カウフマン)氏はインタビューで、より安全なコラボレーションツールの開発に向けた取り組みを継続していく方針だと語った。同氏は、データサイエンティストや数学者、エンジニアなどのチームと共同で同社を創業した。その中には、準同型暗号の基礎となった暗号アルゴリズムの画期的な研究でチューリング賞を受賞したShafi Goldwasser(シャフィー・ゴールドワッサー)氏、Rina Shainski(リナ・シャインスキー)氏、Vinod Vaikuntanathan(ビノッド・バイクンタナサン)氏、Kurt Rohloff(カート・ローロフ)氏などがいる。

商用化に関して言えば、準同型暗号化はまだ初期段階にある。Dualityは今回の資金を、この技術の発展・製品化のために使い、あらゆる種類の法人顧客が利用できるようにする。また、同社単独での、あるいは他のベンダーとの提携による研究開発の継続のためにも使う。ベンダーには、同社の戦略的投資家の他、Oracleなども含まれる。

「当社の製品を利用する顧客は準同型暗号の専門家ではないと考えるのが自然です」とカウフマン氏は話す。同社がこの技術を、OracleやIBMの製品など顧客が一般的に使用すると思われる他のシステムに組み込む取引を結ぼうとしているのはそのためだ。「つまり、フロードアナリスト(不正アクセスやオンライン詐欺を監視する担当者)は、マウスボタンをクリックするだけで、裏で何が行われているかを気にする必要はないということです。重い仕事はDualityが行います」。

同社の他にも、IBM、パリ拠点のZama、CIAの投資部門が投資するEnveilなど、準同型暗号の応用を研究している企業は多数ある(また、Evervaultのように、準同型暗号を使わない代替製品を作っている企業もある)。

Dualityの成長にとって重要な点として、同社はすでにいくつかの興味深い顧客を見つけている。同社は2021年初め、DARPA(米国防高等研究計画局)との1450万ドル(約16億円)の契約締結を発表した。この契約では、サードパーティと協力して、準同型暗号処理に必要なリソースをより効率的に扱える新しいハードウェアを開発する。

関連記事:Duality Labsはハードウェアアクセラレーション利用の準同型暗号テクノロジーで15.3億円のDARPA契約を獲得

Dualityは、DARPAとの契約と並行して、準同型暗号と他のデータサイエンス技術を融合させたツールを開発し、Duality SecurePlusという名で販売している。これは、準同型暗号を最も機密性の高いデータに適用し、他のツールは別の場所で使用するという考え方だ。Dualityの顧客には、金融サービス、ヘルスケア、政府機関などが含まれている。

Dualityの技術は、ビッグデータの世界における根本的なパラドックスを解決する。

良い側面は、データコラボレーションが企業にとって大きな可能性を秘めていることだ。複数のソースから可能な限り幅広くデータを集めれば、画期的な医学的洞察、人工知能モデルのトレーニング、不正行為やセキュリティ問題の追跡、消費者行動のより良い理解など、さまざまな面で企業を支援することができる。場合によっては、物事を進める上で欠かせない要素であり、ビジネス上、選択するものではなく、必要不可欠なものとなる。

だが、良い物事には必ず悪い側面がある。企業は、意図しないあるいは悪意のあるデータ流出のリスクを負う。企業の権利が関わる状況では、競合する可能性のある他社とデータを共有することで得られるものには興味があるかもしれないが、自社の知的財産や貴重な顧客情報を他社と共有することには抵抗があるかもしれない。

昨今、データ漏えいやその他のサイバーセキュリティ問題が頻繁に発生する一方で、データ保護規制や消費者の期待は厳しくなっており、データの使用方法を管理する優れたツールの必要性が高まっている。

これが、Dualityが多くの戦略的投資家の注目を集めている理由の1つだ。

LGはこの点で興味深い投資家だ。Dualityの本社はニュージャージー州だが、そのルーツはイスラエルにある。LGはイスラエルでサイバーセキュリティや自動車などの特定の市場での応用を強化しており、その活動はますます活発になっている。LGは最近、イスラエルでの初の買収として、コネクテッドカーのサイバーセキュリティを専門とするCybellumを買収した

「データが主導する世界でプライバシーに関する課題が山積するなか、Dualityは急速に発展するプライバシー技術の分野でマーケットリーダーとしての地位を確立しました」とLG Technology VenturesのマネージングディレクターであるTaejoon Park(テジュン・パク)氏は語る。「プライバシー保護のためのAIや機械学習分析など、協調的で安全なコンピューティング技術への需要は急増しています。企業が複雑化するプライバシー規制に適切に対応しながら、データという宝箱の鍵を開けようとしている状況で、今後もその傾向は続くでしょう。Dualityは、この急激な変化の時期に、多くの業界におけるプライバシー強化コンピューティングの応用をリードする理想的な立場にあります。同社の極めて革新的なソリューションがさらに多くの分野に拡大していくことを期待しています」と述べた。

関連記事:スマホ事業を閉鎖したLGが自動車向けサイバーセキュリティのCybellumを264億円で買収

画像クレジット:Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】プライバシーを侵害しないモビリティデータの共有

近年、米国の各都市では、歩道に電動スクーターや自転車が並んでいるのがよく見られるようになった。

電動スクーターの市場規模は、2025年には400億ドル(約4兆4500億円)を超えると予想されており、米国人は2010年以降、3億4200万回以上もシェアサイクルや電動スクーターで移動している。

マイクロモビリティサービスは、潜在的に機密性の高いユーザーの正確な位置情報を含む大量のモビリティデータを生成する。モビリティサービスから得られるデータは、交通政策やインフラ政策の指針となる貴重でタイムリーな情報を提供するが、企業間や政府機関との間で機密性の高いモビリティデータを共有するには、まずプライバシーや社会的信用の問題が解決されなければ正当化することはできない。

革新的なモビリティオプションは、交通機関の隙間の移動に関するラストマイル交通問題を解決する機会を都市に提供しており、これらのサービスから得られるデータはさまざまな生産的な用途がある。

これらのサービスから得られるデータは、都市計画者が利用者の安全を確保するために、保護された自転車レーンなどの交通改善を設計するのに役立つ。また、モビリティデータにアクセスすることで、地域の支援者や政府関係者は、特定の地域にどれだけのモビリティデバイスがあるかをほぼリアルタイムで知ることができ、その地域が過密状態やサービス不足にならないように制限を設けることができる。また、これらのデータは、企業と市政府間のコミュニケーションを効率化し、モビリティサービスが都市のイベントや緊急事態に迅速に対応することを可能にする。

しかし、デジタル化されたモビリティサービスが収集し、政府との共有を要求できるデータの粒度と量については、プライバシーに関する確かな懸念がある。

例えば、ロサンゼルス市交通局とロサンゼルス市を相手取った最近の訴訟では、市がMobility Data Specificationを通じて電動スクーターの走行データを収集していることが、米国憲法修正第4条とカリフォルニア州電子通信プライバシー法に違反していると主張している。下級裁判所はこの訴訟を棄却したが、電子フロンティア財団と北カリフォルニアおよび南カリフォルニアのアメリカ自由人権協会(ACLU)は最近、連邦控訴裁判所にこの訴訟の復活を求めている。

さらに、最近カリフォルニア州議会に提出された法案では、モビリティデータを公的機関や契約者と共有する前に、特定の条件を満たすことが求められている。この法案では、データを共有できるのは、交通計画を支援するため、または利用者の安全を守るために限られている。また、この法案では、共有できる移動データは24時間以上経ったものでなければならないとしている。

ほぼリアルタイムの位置情報データは、安全性や規制強化の目的を果たすために必要とされることが多いが、このデータは個人の生活の親密な部分を明らかにする可能性があるため、非常にセンシティブなものである。位置情報データのパターンは、個人の習慣、対人関係、宗教上の慣習などを示す可能性があるからだ。

特定の個人やデバイスに関連付けられた位置情報データを「非識別化」することが可能な場合もあるが、正確な位置情報の履歴を持つデータセットを完全に匿名化することは非常に困難だ。大人数のパターンを高度に集約した位置情報データであっても、意図せずにセンシティブな情報が漏えいする可能性はある。

2017年には、フィットネスアプリ「Strava」のユーザーの動きを示す「グローバルヒートマップ」によって、機密扱いの場所に配置されている軍人の位置情報が誤って公開された。位置情報データは、たとえ非識別化または集計されたものであっても、データが保護され、非公開であることを保証するために、チェックとコントロールの対象であるべきだ。

地方自治体やモビリティ企業は、ユーザーのプライバシーに関するこうした問題に真剣に取り組んでいる。この数カ月間、Future of Privacy Forumは米国自動車技術者協会(SAE)のMobility Data Collaborativeや官民の関係者と協力して、プライバシーに配慮した方法でモビリティデータを共有したいと考えている組織が考慮すべき点に焦点を当てた、交通機関に合わせたプライバシー評価ツールを作成した。

モビリティデータ共有アセスメント(MDSA)は、官民を問わず、組織がデータ共有のプロセスにおいて、慎重かつ綿密な法律とプライバシーの検討を行うための運用ガイダンスを提供する。このツールを使ってモビリティデータを共有する組織は、モビリティデータ共有契約の設計に、プライバシーと公平性への配慮を組み込むことができる。

MDSAの目的は、個人のプライバシーを保護し、地域社会の利益と公平性を尊重し、一般市民への透明性を促進する責任あるデータ共有を可能にすることだ。オープンソースで、相互運用性があり、カスタマイズ可能で、ガイダンスを含む自主的なフレームワークを組織に提供することで、モビリティデータの共有に対する障壁を減らすことができる。

これはMDSAツールの最初のバージョンであり、特に地上のモビリティデバイスと位置情報に焦点を当てている。電動スクーターなどのモビリティ・ビークルには車載カメラが搭載されていて、将来的には、MDSAがモビリティデバイスによって集められたイメージやビデオについてのガイダンスを追加することも可能だ。

MDSAツールはオープンソースでカスタマイズ可能なので、この種のモビリティデータを共有する組織は、画像を含むセンサーやカメラのデータを共有する際のリスクとメリットを考慮して編集することができる。

マイクロモビリティサービスは、仕事、食料、医療へのアクセスを向上させる上で重要な役割を果たす。しかし、企業や政府機関がモビリティデータを他の組織と共有する際には、共有するデータの精度、即時性、種類など、考慮すべき複数の要素がある。企業は、バイアスの可能性を考慮した上で、これらの要素を、慎重かつ構造的に評価しなければならない。

それが、都市をより安全かつ迅速に移動できるよう、短期的にはサービスのメリットを最大化し、長期的にはインフラを構築する、モビリティデータの活用の鍵となる。

編集部注:執筆者のChelsey Colbert(チェルシー・コルベール)氏はFuture of Privacy Forum(FPF)のポリシーカウンセル。自動運転車、ライドシェアリング、マイクロモビリティ、ドローン、配送ロボット、モビリティデータ共有などを含むモビリティと位置情報に関するFPFのポートフォリオを担当している。

画像クレジット:Anna Lukina / Getty Images

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(文:Chelsey Colbert、翻訳:Yuta Kaminishi)

新Amazon Echoデバイスは音声をローカルで処理してプライバシーをさらに強化

これまでのAmazon Echoデバイスでは、Alexaがインターネットへの接続してリクエストを処理し、レスポンスを行ってきた。しかし、Wi-Fiに接続するスマートデバイスがいつもウェイクワードを聞いていることに不安を感じる消費者も一部存在していた。Amazonは本日のイベントで、Echo Show 10と最新のEchoをはじめとするAmazon Echoデバイスは、音声情報をクラウドへ送らずにローカルで処理できるようになったと発表した。

Amazonは、自分たちはこのようなプライバシーファーストの技術をスマートスピーカーで提供する初めての企業だと主張する。2020年、Amazonは現行のAmazon Echoデバイスを動かす「AZ1 Neural Edge」プロセッサーを発表したが、新しいEcho Show 15には「AZ2」プロセッサが搭載される。同社によると、このプロセッサーは前世代に比べて22倍のTOPS(1秒間に数兆回の演算)が可能だという。

Echo Show 15は、ローカルでの音声処理に加えて「ビジュアルID」と呼ばれる新機能をサポートする。これによりAlexaは、1つのビューフレームに複数の人がいるとき、各人を認識できる。個人化されたコンテンツを送ることができるので、たとえばカレンダーの内容を尋ねたら、その日のその人の予定を教えてくれる。他の家族のスケジュールを教えることはない。

Amazonによると、このビジュアルIDもプライバシーがを基本に作られているという。この機能はオプションであるため、使用したい場合は登録が必要だ。また、すべての処理がローカルで行われ、自分のビジュアルIDはいつでも削除することができる。

画像クレジット:Amazon

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

1Passwordがプライバシー保護のためのログイン用電子メール生成機能を導入

iPhoneとMacのユーザーは2019年以来、新しいウェブサイトやサービス、アプリにアクセスするとき「Appleでサインイン」でランダムな電子メールアドレスを作り出すことでプライバシーを保護できるようになっている。大きな影響を及ぼすことができる小さな機能の1つであり、似たような機能が1Password(ワンパスワード)にも導入される。

同社はMasked Emailと呼ばれる機能を導入するために、電子メールホストFastmail(ファストメール)と提携した。Appleのものと同様、Masked Emailではログインのためにユニークな電子メールアドレスを生成することができる。1Passwordアプリ内で直接エイリアスを生成でき、つまりパスワードマネジャーが利用できるあらゆるプラットフォーム上でこのツールにアクセスできる。

あなたの電子メールを隠す能力は、どれだけ誇張してもし過ぎることはないあなたのオンラインプライバシー保護をサポートできる。プライバシー侵害の大半はフィッシングの電子メールから始まる。まず第一にそうしたメッセージを受け取らなければ、疑わしいリンクをクリックしたり、個人情報を不注意に共有したりというのはなくなるだろう。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のIgor BonifacicはEngadgetの寄稿者。

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Nariko Mizoguchi