資生堂オープンイノベーションプログラム「finabo」の採択企業3社が決定、Makuakeとの連携も

資生堂は8月29日、同社の新研究開発拠点である資生堂グローバルイノベーションセンター(GIC)が主導するオープンイノベーションプログラム「fibona」の採択企業を発表した。採択されたスタートアップは、3Dスキャニング技術を擁するDigital Artisan、スマートフットウェア「ORPHE TRACK」開発のno new folk studio、採取した尿を検査して最適な食事やサプリメントを提案してくれる「Vita Note」などのサービスを運営するユカシカドの3社。

GICのオープンイノベーションプログラムであるfibonaの名称は、フィボナッチ数列が由来。フィボナッチ数列の隣同士の数の比は,黄金比に近い値が並んでいることから名付けられたそうだ。fibonaの活動プランは、スタートアップ企業とのコラボレーション、生活者とのコラボレーション、スピード感のあるβ版の市場投入、新たな研究風土醸成の4つ。今回の3社との協業は「スタートアップ企業とのコラボレーション」(fibona with startup)にあたる。

資生堂のR&D戦略部長を務める荒木秀文氏

GICは、横浜のみなとみらいエリアである新高島駅前に建設された「S/PARK」(エスパーク)と呼ばれる施設に入っており、1階には「資生堂パーラー」とコラボした「S/PARK Cafe」、独自メソッドのオリジナルプログラムをS/PARK内のフィットネススタジオで試せる「S/PARK Studio」、パーソナライズされた化粧品の購入や資生堂の商品を試用できる半個室のパウダールームを備えた「S/PARK Beauty Bar」、2階には資生堂の最先端技術を展示する体験型ミュージアム「S/PARK Museum」が併設されている。1階、2階は一般に開放されており、2019年4月のオープン以来、4カ月でのべ1万人を超える来客があったとのこと。

Digital Artisan
Digital Artisanでは、同社が持つ人体の3Dスキャニングデータと、資生堂が持つ肌や健康に関するデータを掛け合わせ、新たなビューティー・ヘルスサービスを提供することを目指す。資生堂としては「我々が持ってないテクノロジーが魅力だった」と選考の理由が説明された。

no new folk studio
no new folk studioでは、ORPHE TRACKによって取得した走行・歩行データなどから、美しい歩き方をスコアリングして、美容に最適な走り方、歩き方を解析するとのこと。解析したデータを基にユーザーの歩き方を資生堂とともに提案していく計画だ。資生堂によると、すでに具合的な事業内容の提案も受けているとのことなので、サービスのローンチは早いかもしれない。

ユカシカド
ユカシカドも同社の保有する尿の分析データと資生堂が持つ肌や健康などのデータを掛け合わせたサービスを開発していく予定だ。同社はこれまでも多くの企業からコラボ提案が寄せられていたが、今回fibonaに応募した理由して「資生堂のグローバルに攻めていく気持ちを熱く感じた」とコメント。資生堂は「(外見や身体、心をトータルにサポートする)ホリスティックビューティ(包括的な美容)の観点からユカシカドのサービスとの連携に期待している」とのこと。

3社とも今後3カ月をかけて、資生堂のどのようなサービスやデータを連携できるかを検討して、サービスを具現化していく予定だ。

また、finaboの取り組みの1つであるスピード感のあるβ版の市場投入(fibona with incubators program)では、クラウドファンディング/テストマーケティングのサービスを提供するMakuakeと協業することも発表された。

具体的には、Makuakeの専門部署によるインキュベーション支援事業である「Makuake Incubation Studio」を利用して、資生堂社内の研究開発部門のアイデアをビジネスとして昇華させることを狙う。最終的にはMakuakeでのクラウドファンディングを利用したテストマーケティングを展開する計画だ。今後半年以上にわたって全9回のワークショップ形式のプログラムを実施するとのこと。

最近では大企業を中心にオープンイノベーションを掲げてスタートアップとのコラボを模索しているが、打ち上げ花火的なケースが多く、成功事例はまだまだ少ない。fibonaを成功に導くには、資生堂が自社の研究・開発のデータや事例、人材をスタートアップ企業とどれだけ共有できるかが成功の鍵となるだろう。Makuakeとの協業で、資生堂内で商品化できずに埋もれている技術がどれだけ掘り起こせるかにも注目だ。

フィットネスユニコーンのPelotonがIPO申請書類を公開

インターネットに接続するフィットネスバイクやトレッドミルのメーカーで、これまでに十分な資金調達を行ってきたニューヨーク拠点のPelotonがようやく、来たるIPOに向けた書類を公開した。同社は6月、米国証券取引委員会にS-1(証券登録届出書)のドラフトを非公開で提出していた。

Nasdaq上場で5億ドルの調達を計画しているPelotonのティッカーシンボルはPTONとなる見込みだ。

Pelotonの今年6月30日までの1年間の総売上高は9億1500万ドル(約970億円)で2018年の4億3500万ドルから110%増えた。2017年の売上高は2億1860万ドルだった。一方、損失のほうはというと、2019年は2億4570万ドル(約260億円)で、昨年の4790万ドルの赤字から大きく増えた。

同社のアカウントを持つ個人メンバーの数は140万人に達した。

顧客は、2200〜4295ドルするハードウェアの購入に加え、Pelotonのフィットネスコンテンツやストリーミング、オンデマンドのデジタルライブラリーを月額39ドルで購読できる。同社によると、2019年会計年度にPelotonのユーザーは5800万回のワークアウトを行った。購読者ベースは過去最多の51万1202人だった。

2019年会計年度の購読の売上は1億8100万ドルで、前年の8000万ドルから大きく増えた。

6700万世帯が接続するフィットネス機器を所有するという現状について、Pelotonの共同創業者でCEOのJohn Foley(ジョン・フォーリー)氏はS-1に「Pelotonは幸福を販売している」と書いている。

「Pelotonはただのバイクではない。現代で最もイノベーティブなグローバルテクノロジープラットフォームのひとつを作るチャンスを手にしていると確信している」とフォーリー氏は記している。「世界で最も重要で、影響力の大きいインターラクティブなメディア企業のひとつを作るチャンスだ。人々の暮らしを変え、重要さをインスパイアし、人々を結びつける」。

2012年創業のPelotonは昨年ベンチャーキャピタル投資で5億5000万ドル(約538億円)を調達し、企業価値は41億5000万ドル(約4400億円)になった。描くビジョンで当初ベンチャーキャピタルを説得するのに苦労した同社は「Mirror」という名称のスマートミラー企業などを含むフィットネステック企業が次々に生まれる新たな波の先駆けとなった。

PitchBookによると、Pelotonはこれまでにベンチャーキャピタルで計9億9400万ドル(約105億円)の資金を調達した。S-1書類には主要株主、あるいは同社の株を5%以上所有する投資家として、CP Interactive Fitness(IPO前で5.4%)、TCV(6.7%)、Tiger Global(19.8%)、True Ventures(12%)、そしてFidelity Investments(6.8%)の名を挙げている。

ゴールドマンサックスとJPモルガン証券がIPO引受人を務める。

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(翻訳:Mizoguchi)

「ひとつですべてを一元管理するアプリ」がデジタルヘルスの未来とはならないワケ

ヘルスケアの巨大企業は、「ひとつですべてを一元管理するアプリ」が魅力的なアイデアだと思っている。

この想像上のモデルでは、保険、検査結果の予定、疾病管理など、健康管理上必要となるあらゆる物事を一元管理できる総合的なユーザー体験に、患者たちが大挙して集まってくることになっている。巨大医療系企業は、市場を独占しようとその技術を開発したり買収したりするなどして、今では患者たちに相応しいな医療提供者、治療、サービスに導く能力を備えた。

しかし、「ひとつですべてを一元管理するアプリ」には欠点がある。人々のテクノロジーの使い方を無視している上に、患者の体験を二の次にしていることだ。あらゆる医療上のやり取りを、たったひとつのアプリで行うよう患者に強制することは、個々人固有の疾病や患者の人物像といった複雑な要素を軽視することになる。

健康管理の体験は、ほとんどが固有のものであるため、私たちは今まで「ひとつのアプリ」に問題があるとは考えてこなかった。しかし、支払者、提供者、薬局、製薬会社、デジタルヘルス企業がみなデジタル体験を開発し、製品の足場を固めようと競争を始めれば、たちまちある疑問にぶち当たる。個別の疾病管理アプリをひとつのベスト・オブ・ブリードのエコシステムモデルと連携させるのがよいのか、それとも、ひと握りの巨大企業がもたらす独占的な「すべてを一元管理するアプリ」がよいのか?

これまでの経緯

今まで市場では、誰がユーザー体験を支配するかは重要な問題ではなかった。ほとんどアプリは、他社と競合するほどの十分なユーザーベースを持っていなかったし、企業や団体は、それぞれが特定の問題空間ごとに「単機能」の体験を作っていた。支払者は、保険の範囲、医療提供者や健康管理システムの検索などができるツールを開発し、病院の予約、電子カルテや検査結果の閲覧を可能にした。薬局では、薬の再処方が可能になった。製薬会社は自社の医薬品をサポートするためのアプリを開発し、個別の疾病や使用事例に特化したデジタルヘルス企業が成功を収めている。

しかし、デジタルヘルスが定着した今、これを受け入れる患者が増加し、「単機能」体験が衝突し合うようになってきた。そこで企業や団体は、別の方向からこれに対処しようと考えた。

多くの健康管理システムや支払者は、これをエコシステムモデル構築の好機と捉え、それらがシームレスに機能するよう主要な患者の個別の必要性に対応するベスト・オブ・ブリードのソリューションを採用し、データをリンクさせた。

だが憂慮すべきは、これを一部の大手団体が、患者の体験の支配力を強めるチャンスだと捉えたことだ。

彼らは「すべてを一元管理するアプリ」というソリューションの開発を目指した。単一のユーザー体験が、あらゆる患者と予測し得るすべての疾病をカバーするというものだ。

プロペラヘルスでは、先日、ひとつのアプリが市場を独占した先の未来を見通せなかったある顧客と「決別」した。

難しい決断だった。しかし、私たちには仕方のないことだった。理由はこうだ。

なぜ「ひとつですべてを一元管理するアプリ」は患者の体験を劣化させるのか?

「ひとつですべてを一元管理するアプリ」の利点は一目でわかる。ユーザーは、ダウンロードして利用するアプリの数を減らせる。複雑な疾病を抱えた、または複数の疾病を併発した患者には、とくに有り難い。また団体側は、ひとつのアプリで望ましい医療提供者、治療法、サービスへ患者を導くことができる。

しかし、このアプローチには大きな問題がある。

ひとつのプラットフォームがあまりにも多くの分野で秀でようとすれば、全体に質の低下を招くことが常だ。名指しはしないが、ある有名なマーケティング・ソフトウエアのプラットフォームを使ったことがある人なら実感できるはずだ。のっけから大変に複雑でパーソナルな医療の場合は、さらに難しい。そのため、たちまちそれは複雑でやっかいな製品となってしまう。入力データや使用事例の数が膨大であるため、そもそもシンプルには作れないのだ。

デジタルヘルス業界でのあらゆる体験から、私にこう学んだ。ひとつの病状に対する魅力的で便利なユーザー体験を生み出すことは非常に難しい。複数の病状に対応するひとつのユーザー体験ともなれば言うに及ばずだ。

ユーザーの取り込みは難しい。彼らを惹きつけておくことも難しい。特定の臨床結果を改善し、それを継続的に証明することは、とくに難しい。優れた製品を作るには、特定のユーザーと問題空間に過剰なまでに集中し、粘り強く実験と練り直しを重ねる必要がある。そうした、一途に打ち込む姿勢がなければ、患者の必要性よりも会社の要求が優先されるようになってしまう。それでは患者は喜ばない。

このアプローチに価値を持たせようとするなら、ひとつのアプリ方式の劣悪なユーザー体験は、ユーザーの登録者数と引き留め率を上げることで相殺できると信じるしかない。ユーザー体験などは、オールインワンのプラットフォームの利便性の前では大した問題ではないと信じ込む以外にない。

それではいけない。医療はファストフードとは違う。患者の人間性、尊厳、そして生活を犠牲にすることになる。人間性、尊厳、生活は、患者のためを思って過剰なほどに集中して作り上げたユーザー体験を捧げてしかるべきものだ。

「ベスト・オブ・ブリード」のエコシステムのアプローチがなぜ最善なのか

この20年間で私たちは、人々がどのようにテクノロジーを使いたがっているかに関して、多くのことを学んできた。「ベスト・オブ・ブリード」こそが未来だという証拠が欲しい方は、他の業界が体験しているデジタル化への移行の様子を見ればよい。

たとえば、サービスとしてのソフトウエア(SaaS)だ。そこには、識別(OAuth)とデータ統合(API)を通して連携する特別なソリューションが大量にある。

それは、一般消費者向けアプリの事情とよく似ている。旅行アプリやコミュニケーションアプリなどで、ぴったりくるものはひとつもない。娯楽業界では多くの企業が「ひとつのアプリ」を目指していたが、結局のところ、Netflix、HBO、ディズニー、ESPNなど、個人が登録する垂直型の動画配信サービスが普及している。これらすべてが、みなさんのApple TVの中でシームレスに共存している。大手企業が新しいソリューションを買収したり開発したりしても、ユーザー体験の名の下に、それらのソリューションは個別に扱われる。たとえば、フェイスブックはメッセンジャーとインスタグラムとワッツアップを、すべてフェイスブックに含めるのではなく、切り離した。

消費者である私たちは、特定の問題に対応する特定のソリューションを、いくつも連携させて簡単に使う形を快適に感じている。大企業が私たちの活動全般を網羅しようと、次々に新しいソリューションに手を出すことがあるが、そうしたソリューションは得てして粗末で、使い勝手が悪く、サポートもいい加減だ。

しかし現在、この状況はかならずしも世界共通とはなっていない。中国では、テンセントの製品であるウィーチャットなどが、まったく異なる市場力学(医療と技術)を背景に、複数の医療垂直市場に手を伸ばしている。そんなウィーチャットですら、独自にソリューションを開発する傍ら、サードパーティーの企業がベスト・オブ・ブリードのソリューションでエコシステムを拡大してくれることを期待している。

未来はどうなるのか

私が思い描く未来は、ひとつのアプリが代表する世界でも、複雑なアプリの世界でもない。

その未来では、患者は、おそらく医療機関や主要な医療提供者から提供される臨床アプリを中心的に使っている。それは、スケジュール、臨床データ、リマインダー、フォローアップを管理できる。

その他に、患者は特定の健康問題に対応した専用アプリのセットも持っている。たとえば、呼吸器系の疾患、糖尿病、精神疾患、運動の増進、睡眠の質の改善などを管理するアプリだ。これらは、それぞれの問題の管理において市場でもっとも優れたアプリなので人気となる。精神疾患を管理するアプリと糖尿病を管理するアプリとでは、使用体験は異なる。インスタグラムとフェイスブックの使い方が違うようにだ。

こうしたエコシステムモデルでは、患者が中心的に使う臨床アプリが、その問題に特化したソリューションに外部リンクされる。医療機関と医師は、心血管系疾病、糖尿病、呼吸器官系疾病、精神疾患などの大きな臨床領域で治療に集中できるよう、絞られた数の専門プラットフォームや製品を使う。それらのソリューションから集められたデータは、アプリの提供者である団体で統合され、電子カルテや集団健康管理に反映される。

最終的にそれは、それぞれが垂直市場において最適な、さまざまなソリューションを含む多様なエコシステムとなり、個々の患者や医療提供者のタイプの必要性に合わせて作られたユーザー体験を届けるようになる。

それが患者にとってはいちばんだ。

【編集部注】著者クリス・ホッグ(Chris Hogg)氏は健康関連のデータの新しい形態が医師と患者の関係をどう変えてゆくかに注目するデジタルヘルスの提唱者。プロペラヘルス(Propeller Health)のCCOとしてサンフランシスコ支社を担当し、医薬品事業開発、ヘルスシステムおよび医療費支払者へのセールス、臨床と医療およびデータ科学チームを統括している。

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(翻訳:金井哲夫)

汗や心拍を遠隔モニターできる柔らかな貼り付け型センサー

多くの人が、人間の動作をより細かく定量化しようと努力しているおかげで、そうした動作をモニターするセンサーたちは、ますます軽く邪魔にならないものになっている。対岸に位置するライバル同士であるスタンフォード大学とバークレー大学が生み出した2つのプロトタイプは、肌にぴったりと貼り付き豊富な生理学的データを提供してくれるものだ。

スタンフォード大学の伸縮性のあるワイヤレスセンサー「BodyNet」は、体の伸縮する表面に貼り付けられても大丈夫なように柔軟性があるというだけではない。データどこから取り出すかについても柔軟性があるのだ。

このセンサーは、絆創膏のような柔軟な素材の上に置かれた金属インクで作られている。しかし、身体状況を追跡するために小さな加速度計や光学的な仕掛けを利用している携帯電話やスマートウォッチとは異なり、このシステムは、それ自体がどのように引き伸ばされたり、圧縮されたりするかを利用している。そうした動きは、電気がインクを通過する方法に小さな変化を引き起こし、その変化は近くのプロセッサーに伝達される。

当然、もしそれが関節に貼られていた場合には、この電子的なステッカーは関節の曲げの有無やその程度を報告することができる。しかし、このシステムは十分に敏感であるために、心拍による皮膚のわずかな変化や、呼吸に伴うより大きな変化も検知できるのだ。

問題は、その信号を皮膚から離れたところから取得しなければならないときに現れる。有線ケーブルを使用するのは面倒で、間違いなく90年代的なやり方だ。しかし、アンテナは変な方向に曲げられているとうまく機能しないし、効率はガタ落ちになる。そして非常に少ない電力しか使うことができないことも問題だ、このスキンセンサーは非常に微弱な電圧を与えるRFID信号を集めることで電力を得ている。

bodynet sticker and receiver

そしてその仕事の2つ目の部分が(明らかにさらなる改善と小型化が必要とされている部分だが)、センサーの信号を収集し携帯やその他のデバイスへ再送信するレシーバーである。彼らは、なんとか衣服に留められる程度には軽量なユニットを作成したものの、それでもまだ、ジムで装着したいようなものではない。

幸いなことに、それは理論的な限界ではなく、現時点でのエンジニアリングとデザインの限界だということだ。したがって、数年のうちには継続した努力と電子機器分野での進歩によって、はるかに魅力的なシステムを手に入れることができるようになるだろう。

「いつかは、全身スキンセンサーを作って人間の通常動作を邪魔せずに生理学的データを収集できるようになると思います」とニュースリリースに書くのはスタンフォード大学の鮑哲南(ジェーナン・バオ、Zhenan Bao)教授だ。

対岸のカリフォルニア大学バークレー校にも似たようなドメインのプロジェクトがあり、プロトタイプから製品化への取り組みが行われている。ここの研究者やちは、数年前から多くの生理学的要素を検出できる汗モニターに取り組んできた。

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通常なら、15分ごとに汗を収集し、それぞれのまとまりを個別に分析することになる。しかし、それでは実際のところ優れた時間分解能を得ることはできない。もし汗が1分ごとあるいはそれ以下の単位でどのように変化していることを知りたいとしたらどうだろう?汗の収集と分析を行うシステムを肌の上で上手に組み合わせると、それを行うことが可能になる。

センサー自身はしばらく前から使われるようになっていたが、汗の計測が正確に何を提供できるかをチームが大規模にテストし始めたのはつい最近のことである。

RollToRoll BN 768x960 「このプロジェクトの目標は、センサーを作るだけでなく、汗が私たちに伝えることができることを知るために、多くの研究テーマを生み出すことです。私は常々それを汗組成の「デコード」(解読)と言っています、それを行うためには、信頼性が高く再現性のあるセンサーが必要ですし、複数のセンサーを多くの被験者の体の上のさまざまな場所に配置できるように、大規模に生産できるようになる必要があるのです」と説明するのは、バークレー校でプロジェクト責任者を務めるAli Javey(アリ・ジェイビー)氏だ。

ハードウェアの仕事に関わる人なら誰でも言うように、手作りのプロトタイプから大量生産モデルに移行することは大きな挑戦である。そこで、バークレーのチームはVTTフィンランド技術研究センターにいるフィンランド人の友人たちに接触した。同研究所はロールツーロール方式の印刷技術を有している。

平坦で比較的単純な電子機器の場合、ロールツーロール方式は優れた技術である。基本的にセンサーを柔軟なプラスチック基板上に印刷して、その後簡単に必要なサイズへと切断することができる。このようにすることで、数百または数千のセンサーを迅速かつ安価に作成することができ、任意の規模での展開がはるかに簡単になるのだ。

これらは、単に柔軟なだけの、既存の皮膚装着電子機器プロジェクトとは一線を画すものだが、こうした機器が実験室を出て、病院やジム、そして家庭の中に向かう日が近付いているのは明らかである。

スタンフォードのフレキシブルセンサーを説明した論文は先週Nature Electronics誌に掲載され、もう一方のバークレーの汗トラッカーはScience Advancesに掲載された。

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(翻訳:sako)

VRはある種の手術訓練に効果がある、VR手術訓練のスタートアップによる研究結果

UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のDavid Geffen(デヴィッド・ゲフェン)医学校で実施された最近の検証試験によると、VR(バーチャルリアリティー)が手術の訓練に多大な効果をもたらす可能性がある。

本研究は、VR手術訓練のスタートアップであるOsso VRの資金提供を受けて行われたもので、同社の訓練手法を利用した被験者は、総合的な手術能力が230%向上した。

これは膨大な数値だが、バーチャルリアリティー訓練の効果に関する研究はまだ始まったばかりだ。

それでも、この「脛骨骨幹部骨折に対する髄内釘による外科技術訓練におけるバーチャルリアリティーツールのランダム化対照試験」は、バーチャルリアリティーによる訓練が現実世界の状況に役立つという長年抱かれてきた仮説を実証する第一歩だ。

バーチャルリアリティー訓練の特徴は「いつでも」「どこでも」行える応用性であるとOsso VRは謳っており、今回の研究結果は一定の制御環境下で同社の主張が正しい可能性を示唆している。

UCLAは、Osso VRの技術について追加の試験、検証、および実用化の可能性を検討する価値があるかどうかを調べるためにこの試験を行った。

UCLAの研究では、20人の被験者を一定の習熟度に達するまで従来の訓練を受けた群、およびVR訓練を受けた群とに分割した。次に被験者は脛骨髄内釘固定のシミュレーションを実施し、被験者がどちらの群に属するかを知らない観察者が被験者を採点した。

VR訓練を受けた学生は手順を2%早く完了し、より多くの項目を正確に実施したことが、本試験専用のチェックリストによる採点でわかった。

「整形外科医にとって、技術がエビデンスによって裏付けされていることは極めて重要である。当社のユーザーや顧客には、まったく新しい訓練方法を使用することで、このプラットフォームが効果的かつ信頼性が高いことを体験してもらいたい」とOsso VRのCEOで共同ファウンダー のJustin Barad(ジャスティン・バラッド)医学士が声明で語った。「これらの研究結果は、今日の医療産業が直面する膨大な課題に対する挑戦の始まりにすぎない。われわれのゴールは、この業界が生み出す価値を明らかにして世界中の患者たちに届けることだ」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

音声通話できない状況での緊急時連絡機能を米国でAndroidに導入

Googleが米国時間8月1日、災害時などに音声による連絡ができなくても対話できる機能をPixelやそのほかのAndroidデバイスに導入した。怪我などで声を出すと危険な状況や、発話機能に障害のある人が、タッチメニューでコミュニケーションできる。

この緊急通話を開始すると、火災、医療、警察などの状況やニーズを伝えることができる。これらの情報はオペレーターに伝わるので、通話者は話せなくてもよい。位置もGPSから伝わるので、自分が具体的なアドレスを知らなくてもよい。

AED Lower Speech Rate 06

メニューの情報は電話機上にローカルに保存され、すべての情報の守秘性が、オペレーター以外に対して保たれる。また可能なら、情報入力後にはオペレーターとは直接に話せる。

この機能は、National Emergency Number Association(全国緊急番号協会)とのコラボレーションで作られた。数か月以内に米国のPixelと一部のAndroidデバイスにやってくる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

高血圧患者を在宅モニターするHello Heartが13億円を調達

長期的なコストを減らすために、新しい遠隔センサー・モニター技術を展開し、企業の保険プログラムに予防的処置を提供するよう働きかけているHello Heartが新たに1200万ドル(約13億円)を調達した。

Khosla Venturesと、以前にも出資しているBlue Run Venturesが資金を出した。Hello Heartはこの資金を事業拡大に使う、としている。

Hello Heartは、血圧を追跡する在宅センシングシステムによる初期モニタリングや高血圧対策を紹介するスマホアプリで高血圧や心疾患に取り組んでいる。

UCLAとハーバードメディカルスクールが実施し、Hello Heartが費用を負担した研究によると、Hello Heartユーザーの70%が血圧を平均22mmHg下げることができた。

「ヘルス分野でそれなりの規模で臨床結果を出すには、さまざまなタイプの患者が参加するようにすることが必要だ。Hello Heartのそうした能力により、前例のない結果につながった」とハーバードメディカルスクールの研究者で、Shebaメディカルセンターの医学・イノベーション責任者を務めるEyal Zimlichman(エイヤル・ジムリッチマン)博士は話した。

発表によると、Hello Heartはポピュレーションヘルスにかかる情報を提供するためにランダム化・匿名化方式で患者のデータを集めた。インタビューの中でHello HeartのCEOであるMaayan Cohen(マーヤン・コーエン)氏は「Hello Heartはいかなるデータもサードパーティーに売っていない」と語った。

「我々のミッションは、患者が自分の健康を理解して改善できるようにすることだ。心疾患は世界の第1位の死因であり、心臓の健康で効率的に患者をサポートできることを誇りに思う」と話した。

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(翻訳:Mizoguchi)

アップル/グーグル/マイクロソフトが医療データ提供の新しい標準を試行

新たに発表された医療保険申請データを直接患者に提供するためのデータモデルと実施要項案が実現すれば、誰もが使っているデバイスから必要な情報を入手できるようになる。 「CARIN Blue Button API」と呼ばれるこのデータモデルは、消費者団体、保険会社、デジタル医療アプリ開発者ら民間部門が協力して開発された。実施要項案は今年中に参加企業がテストを開始する予定で、複数の保険会社とワシントン州、さらにApple(アップル)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)の各社も参加する。

このニュースは本日(米国時間7/30)ワシントンDCで行われたホワイトハウスBlue Buttonデベロッパーカンファレンスで発表された。新しい標準は、昨年Centers for Medicare and Medicaid Servicesが、米国内の医療保険利用者が過去の申請情報をどんなアプリケーションからでもアクセスできるようにするために開発したBlue Button 2.0に基づいている。

テスト作業に参加する各団体は、多方面の専門家からなる作業グループが開発したCARINモデルの「現実世界におけるテスト」を実施し、2020年の大きな発表に備える。

数多くの医療サービス提供者とともにApple、Google、Microsoftの名前があるのは良い兆候だ。これは、医療情報をアクセスする際のデータポータビリティーが整備され、プラットフォームに依存しない利用が期待できることを意味している。

すでにAppleは、昨年2月からiOSで自社のHealthアプリに医療記録のセクションを設けている。ただし、一部の医療機関で採用されている標準に準拠してはいるものの、ユニバーサルで真に相互利用可能な医療履歴機能にはほど遠い。なおAppleは退役軍人省や保険会社大手のAetna(エトナ)などの機関や企業と提携を結んでユーザーへの医療データ提供を具体化しており、Microsoftは独自の医療記録提供方式としてHealthVaultを持っている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

完全菜食主義者のためのオンライン食材店「Mylk Guys」は非菜食人種にも人気

ヴィーガン(Vegan、完全菜食主義者)のための食材をネットで売っているMylk GuysのCEOであるGaurav Maken(ガウラヴ・マケン)氏は、自分の会社を食べ物を買うだけの場所とは考えていない。スタートアップの起業家たちも、また既存の食品企業も、植物を使った食肉代替食品を探求し始めている今日のご時世の中では、次々と新しい健康食品が生まれてくるだろうから、同社はそれらのための試験場や、良い品物が生まれるためのプラットホームでありたい、と彼は考えている。

このたび、Khosla VenturesPear VenturesFifty Yearsなど、そのビジョンに共感する投資家たちが、同社に250万ドル(約2億7000万円)を投資した。

マケン氏は曰く、「うちの現状は、オンラインのグロサリーストアだ。しかしそのほかに、増大する地球の人口のために食品の生産能力を拡大する細胞培養肉や、遺伝子組み換え食品も今後は扱っていきたい」。

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マケン氏は、植物を使った食肉代替食品などよりも、顧客の持続可能な消費生活を支えるような製品を扱っていきたいと考えている。彼によると、実は同社の顧客の40%はヴィーガンではない。

同氏は「ヴィーガンのことだけを考えているのではない。むしろ考えているのは、持続可能な食品システムだ。うちの顧客は教育水準の高い消費者が多く、自分の食生活から悪い影響を受けたくない、と願っている。むしろ、食べることによってより健康にないたい、と思っている」とコメントしている。

現在扱っている製品はおよそ1300種類で、サプライヤーには顧客に関するデータ、どういう人たちか、好みや要望などを積極的に提供している。その点が、Amazonなどそのほかのオンラインリテイラーとの大きな違いだ。

マケン氏は「我々はアナリティクスを提供し、顧客データからの学び方を教えている。食品提供企業も、そろそろ、顧客ひとり1人に個人化されたビジネスを開拓すべきだからだ」と語る。

同社のトップセラーは、Sparrow Camembertのようなヴィーガンチーズや、一連のヴィーガンジャーキー、それにBeyondバーガーなどだ。

「ヴィーガン向けのようなニッチな食材でも、全国的な流通のためのプラットホームがあればそれを年商100万ドルや500万ドルのブランドに育てることができる。うちは、そのためのプラットホームでもある」とマケン氏は言う。

Mylk Guysは2018にローンチしてY Combinatorのアクセラレーター事業に参加した。今回得られた資金は、イーストコーストにおける営業とマーケティングの拡大に充て、とくに東部地区のための流通倉庫を確保したい、という。

持続可能な食品を消費者に直販するビジネスモデルは、ロサンゼルスに先例がある。2016年に1億1100万ドルを調達したThrive Marketは、持続可能な製品にフォーカスしたオンラインのグロサリーストアだ。

最近の報道が示しているように、持続可能なフードビジネスは今や成長業種だ。Ecovia Intelligenceの記事によると、Environmental Leaderの調査では有機食品の売上が2018年に初めて1000億ドルを突破した。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

CESがセックステック企業の出展を1年限定の試行として認可

毎年開催される消費者向け電子製品の展示会CES(Consumer Electronics Show)の主催団体CTA(Consumer Technology Association)が、遅まきながら時流に合わせようとしている。米国時間7月17日にCTAは、セックステックのスタートアップが健康とウェルネス(Health and Wellness)のカテゴリーに参加して賞を競うことを1年かぎりの試行として認めると発表した。

この決定の前の昨年には、CTAはセックステックの企業Lora DiCarlo(ローラ・ディッカーロ)と激しくもめた。CTAは、女性のGスポットとクリトリスを同時に刺激する、手を使う必要のない男性性器に似せた性具を作っている同社のイノベーション賞を取り消したが、5月にはそのことを謝罪して再び賞を与えた

CTAの執行副社長Karen Chupka(カレン・チャプカ)氏は、声明文で次のように述べている。「CTAは常に積極的に進化しており、差別のない、万人に歓迎される体験の創造を続けている。今回、多くのアドバイザーおよびパートナーと相談した結果、CESのポリシーをアップデートし改善することになった」。

さらにCTAは、各ブースのイベントコンパニオン(Booth Babes)を禁ずることになった。女性に限定しないために同団体はそれを、Booth Peopleと呼んでいる。

今回の発表で「ブースのスタッフは性的な露出のある衣料や、下着と見紛う衣類を着てはならない。肌の露出の多い衣料や、体や性器をぴったり覆う衣料を着てはならない」というルールが設けられる。

画像クレジット: Lora DiCarlo

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

前立腺がん、皮膚がん、乳がんを「ほぼ完全な正確さ」で検出するAI画像検査システム

メモリアル・スローン・ケタリング癌センター(MSK)とメディカルテックとコンピューター病理学のスタートアップであるPaigeの研究者らは、査読付き医学誌のNature Medicineで新しい論文を発表した。AIベースの検査システムは、前立腺がん、皮膚がん、および乳がんを「ほぼ完全な正確さ」で検出すると同社は公表している。論文に書かれている技術は、44カ国1万5000人以上の患者から得た4万5000枚の画像データを使って学習したディープラーニングを採用している。同研究の特徴は、事前に学習用データを収集する必要をなくすことで、正確なAIベース診断ツールの開発に必要なコストと時間を大幅に削減できることだ

昨年2月、 Paigeは2500万ドル(約27億円)のシリーズA調達ラウンドを発表し、MSKとの提携によって、世界最大級の病理学スライド保管庫を利用できるようになった。MSKには、Paigeの共同ファウンダー・最高科学責任者でコンピューター病理学の世界的権威でもあるThomas Fuchs博士の研究室もある。

Paigeのアプローチは、一般のAIベース診断よりもずっと大きいデータセットを使用するが、特定の種類のがん診断に特化した他の方法のように収集範囲を限定することはしない。その結果、「能力が向上するだけでなく、作られるシステムの適用範囲がずっど広い」と同社はコメントしている。

Paigeにとって次のステップはこのテクノロジーの商品化であり、すでに準備は進められている。Nature Medicineで発表された研究は、応用分野は異なるが現在FDA(医薬食品局)の審査を受けているテクノロジーですでに利用されている。

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一般消費者向け完全菜食製品のKenckoが3.6億円超を調達

果物や野菜の摂取量を増やそうとするKenckoが、シードラウンドで340万ドル(約3億6700万円)獲得し、その成長と製品開発をさらに加速していくことになった。

TechCrunchは昨年同社を紹介したが、ここであらためてご紹介するとKenckoは、植物を原料とする製品で、ひどい味の食品や極端な食事に悩まされずに健康な食生活を確保しようとする。最初の製品であるフルーツドリンクには、プレスジュースにない食物繊維やビタミンが含まれているが、小袋に入っていて、急速冷凍と遅乾処理により、栄養分をすべて保持している。同社によると、1袋20グラムを水で溶いて飲むことにより、1日の果物と野菜の推奨摂取量の5分の2を摂取できる。

Kenckoは健康を意味する日本語で、6種類のフレーバーのフルーツドリンクを売っている。ファウンダーでCEOのTomás Froes(トマス・フロス)氏によると、今年中にさらに6種類の新製品を出したいという。そのうち2つは近く発売されるが、それらはドリンクと同じく100%有機栽培の果物と野菜で作られ、簡単に食べられておいしく、しかも健康的だそうだ。

製品のほかに今度の資金でKenckoが開発しようとしているのは、消費者への直販方式だ。それはモバイルアプリをメインで使うが、アプリは今ベータで、初期の顧客と共にテストしている。一般公開は年内を予定している。

Kenckoの製品は好きな量を買うこともできるが、会員制もある。後者では同社のチームにいる栄養士が各人に合ったアドバイスをする。つまり食生活指導の個人化、パーソナライゼーションだ。米国内ならリモートだけでなく個人面談も提供できる。

同社は今、社員数が25名で、共同ファウンダーでCBO(最高ビジネス責任者)のRicardo Vice Santos(リカルド・ヴァイス・サントス)氏もいる。

関連記事:Kencko wants to help you eat more fruit and vegetables(果実食野菜食を振興するKencko、未訳)

Kenckoは米国とカナダが中心だが、製品は世界中から買える。フルーツドリンクは3日間試用パックが16ドル、20袋60袋がそれぞれ、60ドルと150ドルだ。

フロス氏は、急性胃炎になったあとにヴィーガン(Vegan、完全菜食主義者)になった。90%が果物と野菜、という食事療法で薬に頼らずに治ったあと2017年に、起業する気になった。それまで医師は、大量の薬を今後一生服用せよ、と彼に命じていた。

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今ではImpossible FoodsやBeyond Meatのような植物性食品のブランドに人気があり、メディアも熱心に取り上げているから、健康な食生活への関心も最高に盛り上がっているようだ、とフロス氏は見ている。

「消費者は食品の原料について知りたいと思うようになっている。表示にも、もっと透明性と正確性が必要だ。ここ5年ぐらいで、食べ物をめぐる革命が起きているのではないか」とフロス氏。

今回の投資家は、NextView Ventures、LocalGlobe、Kairos Ventures、Techstars、Max Ventures、そして匿名の支援者たちだ。同社は昨年、Techstarのロンドンのアクセラレーター事業に参加した

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

痛くない乳がん用診断装置を開発のLily MedTechがアフラックCVCから資金調達

Lily MedTecは7月12日、アフラック・イノベーション・パートナーズ(アフラック・コーポレート・ベンチャーズ)からの資金調達を発表した。調達額が非公開。

Lily MedTecは、超音波を用いた乳房用画像診断装置の開発を手掛ける2016年5月設立のスタートアップ。東京大学医学系研究科・工学系研究科での研究技術を基に、リング型の超音波振動子を用いた乳房用画像診断装置「リングエコー」の開発を進めている。

乳がん検査としては専用のX線装置であるマンモグラフィが普及しているが、検査時に検査台に乳房を載せて上下と斜め横から挟む必要があるため、痛みを感じることが多い。また。X線を利用するため被爆のリスクもある。さらに、脂肪性、乳腺散在、不均一高濃度、高濃度など、脂肪や乳腺組織が多い、いわゆる高濃度乳房の場合は精度が落ちるという問題もある。

リングエコーは、X線ではなく超音波振動を利用するため被ばくリスクがないほか、乳房を圧迫する必要がないので痛みもないのが特徴だ。Lily MedTecによると、臨床試験によって装置の基本機能の有効性は確認できているとのこと。今回の資金調達によって、開発スピードを向上させ、量産化に向けた社内外の体制強化を進めていくとのことだ。

アフラック・イノベーション・パートナーズは、アフラック生命保険の親会社である米アフラック社が2019年2月に設立したCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)。米本社のCVCであるアフラック・コーポレート・ベンチャーズが持つ2億5000万ドル(約271億円)の資金を、インシュアテック(保険テック)やヘルステック、バイオテックなどの分野のアーリーからレイターまでのスタートアップへ投資している。

国内ではLily MedTecのほか、予防医療プラットフォーム開発のMRSO(マーソ)、管理栄養士監修のレシピ検索・献立作成サービスのおいしい健康、医療検索サイトMedica Noteなどへ出資済みだ。

卵巣年齢チェックキット「F check」発売開始、約2万円で10日後に結果がわかる

F Treatmentは7月10日、卵巣年齢チェックキット「F check」の販売を開始した。卵巣に残っている卵子の数が何歳相当であるを示す「卵巣年齢」を調べられる。価格は税別で1万9880円。

製品に含まれる専用ツールを使って自分で0.1mlの血液を採血後、血液を検査センターに送ると投函後10日程度で結果がわかる。検査結果はスマートフォンやPCで専用のウェブサイトにアクセスすることで確認可能だ。サイトでは、病院の検索、19項目に回答することで不妊の兆候を把握できる自己診断ツールといったコンテンツも用意される。今秋には、専門家への相談サービスも開始する予定だ

採血ツールは、指先に針を刺して出た血を専用の容器で吸い取ることができるもので、一般的な自宅採血ツールと同様だ。採決後は専用の返信用封筒に入れて検査センターに郵送すればいい。なお、検査センターはCDC(米国疾病予防対策センター)の承認を受けているとのこと。

詳細は追って追記する。

病院の麻酔器と人工呼吸器に遠隔操作可能な脆弱性

多くの病院で利用されている麻酔器と人工呼吸器で使われているネットワーキングプロトコルに脆弱性があることをセキュリティー研究者らが見つけた。悪用されると医療機器の誤動作につながる可能性もある。

医療セキュリティー会社のCyberMDXの研究者らによると、医療機器のGE AestivaおよびGE Aespireは、病院のターミナルサーバーに接続されていると、コマンド送信に利用される可能性がある。それらのコマンドは、アラームの停止や記録の改変などができるほか、悪用されると人工呼吸器や麻酔器で使用する麻酔ガスの組成を変えることもできる、と研究者らは言っている。

国土安全保障省は火曜日(米国時間7/9)に勧告を発表し、この脆弱性の悪用に必要な「スキルは低い」と語った。

「問題の機器は独自プロトコルを使用している」とCyberMDXの研究責任者、Elad Luz氏は言った。「コマンドを推測するのはごく簡単だった」

解読されたコマンドの一つは、装置が旧バージョンのプロトコルを使用するよう強制できる(旧プロトコルは互換のために今も装置内にある)とLuz氏は言う。さらに悪いことに、どのコマンドにも認証は必要ない。

「どのバージョンでも、まず一番古いプロトコルに変えるよう要求するコマンドを送り、そのあとガス組成を変える要求を送信することができる」とLuz氏は言った。

「装置がターミナルサーバー経由でネットワークに接続されている限り、通信プロトコルに詳しい者ならだれでも、さまざまなコマンドを悪用することができる」

言い換えると、装置がネットワークに接続されていなければずっと安全だ。

CyberMDXは、2018年10月にこの脆弱性をGEに知らせた。GEによると、AestivaおよびAespireの7100型と7900型が影響を受ける。いずれも、全米の病院および医療施設で使われている装置だ。

GEの広報担当者、Amy Sarosiek氏はTechCrunchに対して、「正式なリスク調査を行った結果、想定されているシナリオによって、臨床上の問題や患者への直接的リスクが発生することはなく、麻酔装置自身には脆弱性はないと結論づけた」と語った。

GEは、調査の結果、国際的な医療安全基準によっても、指摘されている装置パラメータの改変が最大量で行われた場合のテストにおいても、患者治療上のリスクはなかったしている。「当社の調査によると、患者の安全に関する問題が起きたと考えられる事象は起きていない」。

同社は影響を受けた装置の台数を公表しなかったが、ガス組成を変更する機能は、2009年以降に販売されたシステムではすでに利用できないと言った。

これはこれまでにCyberMDXが発表した2番目の脆弱性だ。去る6月には、広く使用されていた医療用輸液ポンプの脆弱性を発見した。

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記録破りの猛暑がグローバルな傾向になりクリーンテックが急務に

アラスカからヨーロッパまで、世界はこれまでの数週間を記録破りの猛暑に焼かれて過ごした。米国気象庁によると、アラスカでは7月4日に全州で過去最高の気温を記録した。州最大の都市アンカレッジでは温度計が華氏90度(摂氏32度)を指し、1952年に記録が始まって以来の最高となった。

アラスカの他の都市で90度になったことは過去にあったが、アンカレッジで温度計がこの数値を指したのはこれが初めてだ。

7月4日のアラスカは各都市で過去最高: 華氏摂氏, 88F=31C, 89F=31.7C, 90F=32.2C

一方ヨーロッパではサハラ砂漠の熱風が北へ吹き、記録的な猛暑をもたらした。グローバルに記録的な高温をもたらした気温の急上昇は、ヨーロッパにおける摂氏3度の上昇がその主犯だ。

Screen Shot 2019 07 05 at 12.16.41 PM

EUのコペルニクス気候変動サービスのトップJean-Noël Thépaut(ジャン-ノエル・テポー)氏はこう語る。「各地の気温は予報より高いことも低いこともあったが、6月最終週のヨーロッパ南西部の気温は異常に高かった。これは例外的な事象ではあるが、今後の気候変動によりさらに頻繁に起きると思われる」。

コペルニクスのデータによると、6月のヨーロッパ全域の気温上昇は、その月としての過去最高を記録した。

同じ5日間について過去30年の記録を見ると、気温の摂氏2度から5度くらいの急上昇はその多くがフランス、ドイツ、スペイン北部全域、イタリア北部、スイス、オーストリア、チェコ共和国で起きている。

気温急上昇が一般的によくある現象になってくれば、炭素の排出量を減らす技術の導入と普及が一層急務になってくる。

クリーンテクノロジーや再生可能エネルギーへのVCの投資は、このところしばらく日陰者だったが、ここに来て電気自動車や省エネ建設技術、古いインフラ(橋、道路、鉄道など)の低炭素化復興、消費者製品の生産における低炭素化技術など、新しい切り口で蘇りつつある。

Bloomberg New Energy Financeによると、クリーンテクノロジーへの投資は2018年の92億ドルで2009年以来の最高に達し、そのうち33億ドルは中国の電気自動車製造関連である。

そしてかんじんのグローバルな炭素排出量は、Global Carbon Projectの推計によればこの2年間で増加している。ピークは過ぎたとする一部の研究者たちの見方は、虫の良い願望にすぎなかったのだ。たとえば激しい気候変動は、暖房や冷房などでエネルギー消費を増やす。またアメリカでは、新車の販売で大型車が増えている。

画像クレジット: コペルニクス気候変動サービス

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

記録破りの猛暑がグローバルな傾向になりクリーンテックが急務に

アラスカからヨーロッパまで、世界はこれまでの数週間を記録破りの猛暑に焼かれて過ごした。米国気象庁によると、アラスカでは7月4日に全州で過去最高の気温を記録した。州最大の都市アンカレッジでは温度計が華氏90度(摂氏32度)を指し、1952年に記録が始まって以来の最高となった。

アラスカの他の都市で90度になったことは過去にあったが、アンカレッジで温度計がこの数値を指したのはこれが初めてだ。

7月4日のアラスカは各都市で過去最高: 華氏摂氏, 88F=31C, 89F=31.7C, 90F=32.2C

一方ヨーロッパではサハラ砂漠の熱風が北へ吹き、記録的な猛暑をもたらした。グローバルに記録的な高温をもたらした気温の急上昇は、ヨーロッパにおける摂氏3度の上昇がその主犯だ。

Screen Shot 2019 07 05 at 12.16.41 PM

EUのコペルニクス気候変動サービスのトップJean-Noël Thépaut(ジャン-ノエル・テポー)氏はこう語る。「各地の気温は予報より高いことも低いこともあったが、6月最終週のヨーロッパ南西部の気温は異常に高かった。これは例外的な事象ではあるが、今後の気候変動によりさらに頻繁に起きると思われる」。

コペルニクスのデータによると、6月のヨーロッパ全域の気温上昇は、その月としての過去最高を記録した。

同じ5日間について過去30年の記録を見ると、気温の摂氏2度から5度くらいの急上昇はその多くがフランス、ドイツ、スペイン北部全域、イタリア北部、スイス、オーストリア、チェコ共和国で起きている。

気温急上昇が一般的によくある現象になってくれば、炭素の排出量を減らす技術の導入と普及が一層急務になってくる。

クリーンテクノロジーや再生可能エネルギーへのVCの投資は、このところしばらく日陰者だったが、ここに来て電気自動車や省エネ建設技術、古いインフラ(橋、道路、鉄道など)の低炭素化復興、消費者製品の生産における低炭素化技術など、新しい切り口で蘇りつつある。

Bloomberg New Energy Financeによると、クリーンテクノロジーへの投資は2018年の92億ドルで2009年以来の最高に達し、そのうち33億ドルは中国の電気自動車製造関連である。

そしてかんじんのグローバルな炭素排出量は、Global Carbon Projectの推計によればこの2年間で増加している。ピークは過ぎたとする一部の研究者たちの見方は、虫の良い願望にすぎなかったのだ。たとえば激しい気候変動は、暖房や冷房などでエネルギー消費を増やす。またアメリカでは、新車の販売で大型車が増えている。

画像クレジット: コペルニクス気候変動サービス

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AI画像解析でカロリーなどの栄養素を数値化する「カロミル」運営が1.7億円の資金調達

ヘルスケアアプリ「カロミル」運営のライフログテクノロジーは7月2日、アドバンテッジ リスク マネジメント、TIS、新日本科学、DGLab1号投資事業有限責任組合からの第三者割当増資による総額で1.7億円の資金調達を実施したと明かした。アドバンテッジ リスク マネジメント、TIS、新日本科学とは資本提携を締結している。

カロミルは食事や運動、体重などを記録し健康管理を行うためのヘルスケアアプリ。カロリー、脂質、炭水化物、糖質、食物繊維などの栄養情報を自動解析することで、不足・過剰な栄養素などの情報を把握することができる。また、体重や運動量の記録を記録し、健康改善も目標達成に役立つ機能も搭載している。

2016年2月創業のライフログテクノロジーは4月、カロミルに複数の食品を同時に画像判別し栄養素を自動計算するAIの搭載、そして画像判別が可能な食品が1万種類を超えたことを発表している。

本日、ライフログテクノロジーは、メンタルヘルスケアなどの事業を展開するアドバンテッジ リスク マネジメントとの業務提携を締結したことも併せて発表。 業務提携では「法人向けの従業員の総合的な健康管理プラットフォーム事業」などを展開する。

同社は、アドバンテッジ リスク マネジメントとの連携により、「より高い改善効果の見込める健康経営のソリューション」を提供できるようになるとコメントしている。

また、同社いわく、アドバンテッジ リスク マネジメントが展開する健康経営のコンサルティングサービスの一環としてカロミルが導入されることで、「食生活・体調・ストレスの状態・職場環境・仕事の生産性・エンゲージメントなどを総合的に判断する材料となる、これまで市場になかった貴重なデータ」を集積していくことが可能となる。

同社は今後もデータ活用に重きを置いた事業展開に注力。医療・介護・スポーツ・教育・美容・自治体など、より幅広い分野との提携を進めていく。同社は2018年5月、6000万円の資金調達を発表していた。

資生堂オープンイノベーションプログラム「fibona」始動、ビューティ分野の革新を目指す

資生堂は7月1日、スタートアップ企業との連携の機会を創出するオープンイノベーションプログラム「fibona」(フィボナ)を発表した。

同社はこのプログラムによって「国内外の最先端研究機関、異業種など多様な知と人の融合によって、Beauty分野でこれまでにない価値を生み出していくこと」を目指す。プログラムのテーマを「Beauty Wellness」と定め、新たな研究で連携できるスタートアップを広く募集する。

同プログラムへ参加することで、資生堂社員によるメンタリングが受けられるほか、4月に竣工したばかりの同社グローバルイノベーションセンターのコラボレーションラボ(横浜市西区)での活動やネットワークへの参加などが可能になる。

また、デモデイにおけるプレゼンテーション機会の提供が与えられるほか、優れた研究アイデアについては共同研究、優れたビジネスアイデアについてはビジネス化に向けたPoC、事業・業務提携、出資などを検討する。

オープンイノベーションプログラム「fibona」について語る、資生堂でR&D戦略部長を務める荒木秀文氏

募集要件は、前述のBeauty Wellnessに沿った事業で、具体的には資生堂の従来の事業セグメントに限らず、 広くBeauty(美容)やWellness(健康)分野に貢献できるアイデアを有するスタートアップ。

ただしアイデアベースでの参加はNGで、自社の製品・サービスまたはプロトタイプを有し、事業開始からおよそ10年以上であることが条件となる。また、同プログラムのへの応募の時点で商業登記が完了している必要がある。創業間もないシードやアーリーのステージではなく、ミドル、レイターのスタートアップを対象にしているようだ。

応募締切は7月26日と募集期間が26日しかないので注意。審査基準は、アイデアの新規性、ビューティーとの親和性、具体性や実現性の高さ、将来性や競合優位性の4点だ。プログラム採択の合否は、8月中旬~下旬に電子メールで通知される。

なお、プロジェクト担当者による事前相談会を7月12日に横浜(資生堂S/PARK 2F S/PARK Plaza)、7月18日に銀座(資生堂銀座ビル 3F 花椿ホール)で開催する。いずれも19時スタートとなる。

Facebook創業者夫妻の慈善団体が人体細胞地図プロジェクトに約73億円寄付

人間の体の細胞の地図を作る、現在進行形のグローバルなプロジェクトが、Chan-Zuckerberg Initiative(CZI、チャン・ザッカーバーグ・イニシアティブ)から6800万ドル(約73億円)を寄贈された。文字どおり人間の細胞の地図を意味するHuman Cell Atlasプロジェクト(HCA)を構成する数ダースもの個別プロジェクトを、このお金が支えるだろう。

Human Cell Atlasは複数のプロジェクトの集まりで、それぞれが健康な人間の細胞を詳細かつ実用性のあるレベルで記録しようとしている。CZIはこれまでも数年間、いろんなやり方で支援してきた。それは、同団体の基礎研究における継続的慈善事業の一環だ。

実はCZIはかなり前に、期間3年のプロジェクトを38件、期間1年のプロジェクトを85件、今回と同様に支援することを発表している。しかし審査と承認のプロセスが長引いたため助成金の交付は遅れた。科学者や研究機関が、何をしてもいい白紙小切手のようなお金をもらうことはまれだ。

しかし今回の6800万ドルは、CZIのHCAとの関わりの範囲をより明確化している。支援が決まったプロジェクトの一覧がここにあり、関わっている研究者と研究機関も明記されている。

仕事の結果とそのために作られたツールは、ほかの研究者たちが無料で利用できる。CZIのプライオリティには、オープンソースやデータセットも含まれている。

CZIの科学部のトップCori Bargmann氏はプレスリリースで「Human Cell Atlasの最初の草案を目指す進歩を加速する学際的なコラボレーションをさらに支援し構築していくことに、喜びを感じている」とコメントしている。とても大きな仕事だから、数年後にその進捗をチェックしてみたい。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa