在宅勤務(リモートワーク)はもはや新しい話題ではない。新型コロナウイルスのパンデミックを受け、世界の多くの地域で1年以上前から実施されている。
大企業も小規模企業も、多様な対策を講じなければならなかった。初期の課題の多くは、ワークフローや生産性などに集中していた。しかし、それほど注目されてこなかったリモートワークシフトの要素がある。それは文化的側面だ。
新型コロナウイルスが猛威を振るい始めるかなり前からリモートワークの課題に取り組んでいた100%リモートのスタートアップが、今度は企業がリモートワークにおける「人」の課題に取り組むのを支援するサービスの需要の拡大を目の当たりにしている。同社はIcebreakerという名前でスタートしているが、これは一緒に仕事をする人たちとの間の「breaking the ice(雰囲気を和ませる)」という事業目的を反映したものだ。
「初対面の人同士をつなぐ手段として、いわばバーチャルスピードデートのようなものを、私たちは製品の初期バージョンとして設計しました」と共同創業者でCEOのPerry Rosenstein(ペリー・ローゼンスタイン)氏は説明する。「ですが、私たちは人々がそれ以上のことを行っていることに気づきました」。
同社のサービスは時間の経過とともに、最初の出会いを超えて人々が集う(「together」)のを支援するという大きな目標を盛り込んだものに進化を遂げてきた。それが新しい企業名「Gatheround」の由来だ。
「リモート企業が直面している重要な課題や問題は、物理的な空間を共有していない人々の間で、つながりや信頼、共感をどのように構築するかということです」と、共同創業者兼COOのLisa Conn(リサ・コン)氏は語る。「ミーティングの後に5分間の会話をすることも、食事を共有することも、カフェテリアを利用することもありません。そうした空間ではつながりが有機的に構築されます」。
リモート化が進むにつれて、業務のトランザクションが増え、従業員が孤立していくことを組織は懸念すべきだとGatheroundは主張する。人は主としてソーシャルな存在であることを無視することはできない、とコン氏はいう。
同スタートアップは、さまざまなチャット、ビデオ、1対1やグループ会話などのリアルタイムイベントを通じて人々をオンラインで結びつけることを目指している。さらに、文化的儀式の他、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(受容)に関する全員参加のミーティングやワークショップのような学習と開発(L&D)活動を促進するためのテンプレートも提供している。
Gatheroundのビデオ会話は、Slackの会話を新鮮な形で補完することを目的としている。Slackはコミュニケーション機能を提供しているものの、ユーザー同士が直接会って会話するようなものではない。
画像クレジット:Gatheround
Gatheroundはその設立以来「Fortune 500」の28社、米国テック企業大手15社のうち11社、大学トップ30に名を連ねる26校、700以上の教育機関など、目覚ましい顧客基盤を地道に築いてきた。具体的には、Asana、Coinbase、Fiverr、Westfield、DigitalOcean、そして大学を始め、ジョージタウンのInstitute of Politics and Public Service(政治公共サービス研究所)、Chan Zuckerberg Initiative(CZI、チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ)などの学術センター、非営利団体などが挙げられる。現時点でGatheroundは約26万人のユーザーを擁し、同社のSaaSベースのビデオプラットフォーム上で57万件もの会話が交わされている。
これまでの成長はすべて有機的なもので、そのほとんどが紹介と口コミによるものだった。そしてこのほど、前回の50万ドル(約5445万円)の調達に続く350万ドル(約3億8113万円)のシード資金を得て、Gatheroundは市場に積極的に進出し、その勢いを加速させようとしている。
今回の資金調達は、ベンチャーファームのHomebrewとBloomberg Betaが共同で主導し、StripeのCOOであるClaire Hughes Johnson(クレア・ヒューズ・ジョンソン)氏、Meetupの共同創業者Scott Heiferman(スコット・ハイファーマン)氏、Li Jin(リー・ジン)氏、Lenny Rachitsky(レニー・ラシツキー)氏などのエンジェル投資家が参加した。
共同創業者のローゼンスタイン氏、コン氏、そしてAlexander McCormach(アレクサンダー・マコーマック)氏は、自らを「経験豊富なコミュニティビルダー」と表現する。過去にはオバマ大統領のキャンペーンや、Facebook、Change.org、Hustleなどの企業で働いた実績がある。
3氏は、GatheroundがZoomやビデオ会議アプリと大きく異なる点として、同社のプラットフォームでは互いを知り、学び合うためのプロンプトや体系化された方法が提供され、イベントをカスタマイズする柔軟性もあることを強調している。
「基本的に当社はコネクションプラットフォームであり、単に楽しいというだけではない、有意義なリアルタイムイベントを通じて、組織が従業員を結びつけられるよう支援しています」とコン氏は語る。
Homebrewでパートナーを務めるHunter Walk(ハンター・ウォーク)氏によると、HomebrewはGatheroundの創業者の市場適合性に魅力を感じたという。
「政治的な行動主義の面で構築された経験に基づくコミュニティを持ち、優れたプロダクト、デザイン、運用スキルを兼ね備えた、実に興味深い創業者の組み合わせだと言えるでしょう」と同氏はTechCrunchに語った。「彼らがエンタープライズ製品や純粋な社会的バックグラウンドの出身ではないことは、ある意味特徴的な存在感を放っていました」。
同氏はまた、Gatheroundのプラットフォームがパーソナライズされていることにも惹かれたという。過去1年間で、仕事の未来を支えるソフトウェアには「感情的知性が必要」であることが明白になってきたからだ。
「2020年には多くの企業がリモートワークの生産性向上に注力するようになりました。しかし、人々がこれまで以上に求めているのは、同僚と深く有意義なつながりを築く方法です」とウォーク氏。「Gatheroundはどのプラットフォームよりも優れています。Gatheroundで行われている、質問をしたり、ストーリーを共有したり、グループとして学習したりするような人々のバーチャル上の集まりは、これまでなかったものです」。
Bloomberg BetaのパートナーJames Cham(ジェームズ・チャム)氏もウォーク氏の意見に同意し、創業チームの行動心理学、グループ力学、コミュニティ構築に関する知識が彼らに強みを与えているという見解を示した。
同氏は声明で「しかし何より重要なことは、彼らは世界が結束し、つながりを感じるのを助けることに関心があり、それを実現するための組織作りにキャリア全体を費やしてきたことです」と述べている。「ですから、Gatheroundを支援することはごく自然な決断でした。彼らが社会に大きな貢献をもたらすことを期待しています」。
14名で構成される同社のチームは、今回調達した資金で規模を拡大し、Gatheround製品の機能や細部の追加を支援していく予定だ。
「パンデミックが起きる前から、リモートワークは他の仕事形態に比べて速いスピードで加速していました」とコーン氏はいう。「今、それがさらに勢いを増しています」。
この分野への参入を試みている企業はGatheroundだけではない。アイルランドに拠点を置くWorkvivoは2020年1600万ドル(約14億4226万円)を調達し、2021年初めにMicrosoftは新しい「従業員体験プラットフォーム」であるVivaをローンチしている。
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画像クレジット:Gatheround
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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)