NASAや米海軍用のソフトロボットを開発するBreeze Automation

サンフランシスコにあるソフトロボット工学のスタートアップであるBreeze Automationは米国時間4月18日、カリフォルニア大学バークレー校で開かれたTechCrunchのTC Sessions、Robotics + AIイベントのステージに登場した。共同創立者でCEOのGui Cavalcanti氏がステージに立ち、同社がNASAや米海軍といった組織から委託されている仕事を紹介したのだ。

Cavalcanti氏が、前回TechCrunchのステージに登場したのは、2016年9月だった。その際は、パイロット用のサングラスと米国旗を身にまとい、戦闘ロボットリーグのMegaBots共同創立者としての登場だった。このBoston Dynamics出身者の最近の仕事は、控えめながらずっと真剣なものになっている。水中や宇宙空間のような危険な状況でのミッションに取り組むものだ。

サンフランシスコにある研究開発施設、Otherlabの一部として設立されたBreezeは、適応力の高いソフトロボット工学というコンセプトを開拓している。この会社のロボットアームは、中に空気を含んだ織物のような構造を採用している。

「Otherlabが約7年間に渡って発展させてきたコンセプトは、Fluidic Robot(流体ロボット)、油圧ロボット、そしてPneumatic Robot(空気圧ロボット)を非常に安価に開発するというアイデアです」と、Cavalcanti氏はイベントを前にしてTechCrunchに語った。「環境に対して高い耐性があり、非常に軽い素材で作られたものです。当初は、最もシンプルなロボットとはどのようなものか、そして最も軽いロボットとは、という問いから始めました。そしてそのアイデアが、繊維と空気で作られたこれらのロボットとして結実したのです」。

Breezeは、そうした原理を構造全体に適用したことによって、ソフトロボットの分野で多くの競合から差別化することができた。既存のロボットアームの先にソフトなグリップを付けたようなものとは根本的に異なるのだ。

「すべてが、大規模な工場から外に飛び出した瞬間に物を言います。そのとき、ロボットが現実の世界とどのように関わり合うのかという問題が、より切実なものになるのです」と、Cavalcanti氏は続けた。「私たちがやろうとしているのは、ソフトロボット工学に関する研究の成果をもっと取り入れ、完全に密閉されたシステムであることの利点を活かし、空気のように本当に柔軟な動力源によって動作させることです。予測不可能な、雑然とした環境で動かそうとした際に、何だかわからないものにぶつかったとします。周囲の状況をセンサーによってくまなく把握できるとは限らないからです。そんな場合、マニピュレータとアーム全体をソフトなものにすることには大きなメリットがあります。単なる作動体では、そうはいきません」。

Breezeは、現在進行中の仕事についていくつか説明してくれた。その中には、米海軍用に開発されたシステムもあった。HTC Viveヘッドセットを使って遠隔操作するものだ。他にも、NASAとの協業で開発を進めているロボットシステムもあった。中枢となるドライブシャフトを必要とせず、伝統的なロボットシステムからの脱却を可能とするものだ。

「今御覧いただいているのは、それなりの荷重がかかるロボットの関節ですが、全体を射出成形で作成することができます」と、Cavalcanti氏は説明する。「金属製のシャフトは必要ありません。ベアリングや、その類のものもまったく不要なのです。射出成形された部品、つまりプラスチックのパーツを組み立てれば、ロボットのできあがりです」。

Breezeが獲得した資金の大部分は、現在のところ米海軍やNASAのような連邦政府との契約によるものだが、同社はこの先、徐々に民間との契約にシフトしていこうとしている。「私たちの現在の使命は、技術をさらに強化して、実社会でのアプリケーションに対応させることです。今は、ほぼ100%それに集中しています」と、彼は言う。「そこを確かなものにできれば、私たちが探求したいと考えている民間用のさまざまな用途の可能性が開けるはずです」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

認知症の高齢者の心を和らげる、モフモフなロボット犬「Tombot」

A dog is a man’s best friend(犬は人間の最良の友)。本当にそう思う。

犬好きな僕がひと目惚れしてしまったので紹介したいのが、米国のUC Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)で開催された「TechCrunch Sessions: Robotics + AI」にて展示されていたロボット犬の「Tombot」だ。

このTombotは本物の犬とそっくりな見た目をしていて、振る舞いに関しても、頭の動かし方がとてもリアルだ。でも、たまに吠えるので注意!触られたり、話しかけられたりすると喜び、反応する。

バッテリーは丸一日持つ。充電には、ちょっとかわいそうだが、夜間にコードを突き刺すかたちとなる。

このモフモフなロボットは単に「かわいいおもちゃ」なだけではなく、主に高齢者の孤独感や不安などを解消する「ロボットコンパニオン」としての役割がある。

この犬型ロボットを開発するTombotのミッションは、本物の犬を飼うことが困難な、認知症などを患う高齢者に寄り添うロボットを提供すること。創始者でCEOのThomas Stevens氏の母親が2011年にアルツハイマーを患ったことが起業の原体験となった。

同社いわく、認知症のBPSD(行動・心理症状、Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)はぬいぐるみや人形などへの愛着により和らぐという。触ったり話しかけたりすることで反応するTombotならばより大きな効果が期待できそうだ。

ロボット犬だと他にはソニーのAibo、高齢者向けの動物ロボットだと他にもセラピーロボのParoやHasbroのJoy for Allなどが存在する。

値段はAiboやParoは高額、一方でJoy for Allは100ドルくらい。TombotはKichstarterのアーリーバードでの値段は299ドル。動きや振る舞いはJoy for Allと比較すると圧倒的にリアルだ。機能面からしても200ドルを上乗せする価値はあると感じた。

TechCrunchセッション「Robotics + AI」に登場したロボットたち

4月18日に米国のUC Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)で開催された、TechCrunchのイベント「Sessions: Robotics + AI」。会場はロボットだらけで、メインMCを務めたTechCrunchの記者であるBrian(Heater)もロボなんじゃないかと一瞬、疑ったほどだ。

TechCrunchのハードウェア・エディターを務めるBrian Heater

すべてではないが、会場やステージなどで披露されていた、ユニークなロボットたちを画像や動画で紹介したい。

SpotMini(Boston Dynamics)

まずは、説明不要だとは思うが、Boston DynamicsのSpotMini。当日は創業者でCEOのMarc Raibert氏が登壇し、犬型ロボットのSpotMiniを紹介した。詳しくはBrianの記事を参考にしてほしい。

同セッションでは、同社が大量生産する予定のSpotMiniが登場したが、ぱっと見は従来のモデルと同じ。何が違うのだろうか。

Reibert氏いわく、より信頼性のあるプロダクトにするため幾つかの構成部品を再設計、そして、倒れた際などを想定し、より強固なスキンに更新した。同機にはカメラが前後左右に配置されていて、全方位を見ることが可能だ。

SpotMiniは7月に発売予定。Raibert氏は近い未来、デベロッパーたちが専用アプリを作ることで、SpotMiniが「ロボティクスのAndroid」になることを期待する、と述べていた。

同日、イベント終了後には会場の外でデモが行われ、多くの人たちが集まっていた。

Brianいわく、彼はBoston Dynamicsの従業員以外でSpotMiniを操縦したことのある、数少ないラッキーなロボットオタクだという。

だが、当日の会場では、Raibert氏に声を掛けられた小さな女の子が、SpotMiniの操縦をちょっとだけ体験していた。父親は終始「マジかよ」って顔をしていたが、彼女が大人になった時、有能なロボット開発者になっていることを期待したい。

Kiwibot

会場の外を走り回っていたのは、小さくてかわいらしい、お弁当配達ロボットのKiwibotだ。

このKiwibotはUC Berkeleyの構内でも食事を配達している。生徒たちは学校のキャンパスからアプリを通じてランチなどを注文し、Kiwibotが配達してくれるのを待つ。

当日のセッションで登壇したKiwibotのCEOであるFelipe Chavez Cortes氏は「これまでに3万5000件の注文に対応した」と述べた。同社のSasha Latsenia氏は、KiwibotはUber EatsやGrubhubと比べると配達の効率がはるかにいいと説明。注文を受けロボットに食事を入れるスタッフ1人につき、1時間に15回のデリバリーに対応することが可能だという。

Cortes氏は、来年までに、全米の30もの大学がKiwibotを導入し、毎日、合計500台ものロボットが数千食を配達している状態を目指す、と話していた。

Terra(iRobot)

お掃除ロボのRoombaなどでおなじみのiRobot。当日登壇した同社のCEO、Colin Angle氏がステージに連れてきたのは今年の1月に発表された芝刈りロボットのTerraだった。

The iRobot Terra

Terraは2019年中にドイツで販売、 米国ではベータ版プログラムとして提供開始される予定だ。Angle氏いわく、お掃除ロボに次いでリクエストが多かったのが芝刈りロボット。

Roombaの登場から17年後に発表されたTerra。Angle氏は、開発にあたり一番大変だったのは、Roombaと違い、強力な「刃」が必要だったことだと話した。Roombaは比較的「安全」なロボットだったのに対し、Terraには草を狩る刃がある。この刃を「ロボットフレンドリー」にするため、岩などに当たった際に「引っ込む」ように設計されている。

右がTerraに搭載された刃を説明するAngle氏

また、Roombaのような動きだと芝の模様が「ゴッホの絵画」(Angle氏)のようになってしまうため、また、芝生の中に花や木が植えられている可能性もあることなどから、「アウトドアナビゲーションシステム」を開発した。

LOOMO(SEGWAY ROBOTICS)

Kiwibotとともに会場の外に展示されていたのは、SEGWAY ROBOTICSのLOOMO。SEGWAYの上にロボットが乗っかっているような見た目。パーソナルモビリティーとパーソナルロボットのいいとこ取りといった感じだ。

公式サイトによると、最大時速は、ロボットモードで4.3mph (8km/h)、乗り物モードでは11mph (18km/h)。一回の充電で22 miles (35km)ほど走行できる。カメラが付いているので動画を撮影することも可能だ。

会場の外では走行デモが行われていた。

ロボットモードではLOOMOが後ろを付いてきてくれる。

Boston Dynamicsが4本足ロボの商用生産に先立ち新利用例をお披露目

昨年のTC SessionsのRoboticsイベントで、Boston Dynamicsは4本足ロボのSpotMiniを商品化する意向を発表した。それは秘密主義の同社にとって大きな一歩だった。世界で最も洗練されたロボットを四半世紀にわたって作り続けてきた後で、同社はついに商用化の世界に足を一歩踏み入れた。これで彼らの四足のロボットが、そのデバイスを必要とし、資金もある人たちの手に入るようになる。

今週私たちが開催したイベントに、CEOのマーク・レイバート(Marc Raibert)氏が、Boston Dynamicsがこの12カ月の間にどのような進歩を遂げたのかを語るために再び登場してくれた。それはSpotMiniに関わる話題と、より市場指向を意識したその多くの製作物に対する、同社のより大きな意向についての話題である。

同社にとって重要な買収を行ってから、Boston Dynamicsの姿勢は熱いものになっている。実際、Kinemaは同社の歴史の中で最初の大きな買収だった(疑いなくその親会社であるソフトバンクの潤沢な資金に助けられたものだが)。ベイエリアを拠点とするKinemaのイメージング技術は、Boston Dynamicsの改良型ホイール式ロボットハンドの重要な構成要素だ。新しいバージョンのシステムを得て、これまでの2本の腕が、複数の吸引カップを使ったグリップ装置に置き換えられた。

同社が最近発表した動画では、箱を棚からベルトコンベアに移動するために展開できるシステムの、効率性と速度が示されている。ステージ上でレイバート氏が指摘したように、このHandleと呼ばれるロボットは、Boston Dynamicsが作製してきたものの中で「特定目的ロボット」に最も近付いたものだ。すなわちある特定のタスクを実行するためにゼロから設計されたロボットということである。DARPAから資金提供を受けていた初期のプロジェクトを過ごしたあと、同社は新しい目標へと狙いを移したようである。それは主として世界で最も洗練されたロボットを作りたいという願望が原動力となっているようだ。

「私たちは、世界中で毎年約1兆立方フィート(約283億立方メートル)の箱が移動すると見積もっています」とレイバート氏は言う。「そしてそのほとんどは自動化されていません。そこに本当に大きなチャンスがあるのです。そしてもちろん、この私たちのロボットは素晴らしいものです。なぜならバランスをとるロボットとしてのDNAを持ち、ダイナミックに動き回り、長い距離に手を伸ばすことができるように、バランスウェイトを備えているからです。なので、ある意味では、私たちが何年もかけて開発してきたロボットと変わらないのです。また一方では、箱を認識することができて、綺麗に積み上げることができるようなタスクを行えるように、物を掴むという動作に焦点を当てています」。

同社は、その他の点でも歩みを進めるだろう。たとえばヒューマノイドのAtlasのようなロボットは、商用への応用がすぐに始まるとは言えないが、同社の仕事の重要な部分を占めることになるだろう。

だが、ショーにおける真のスターはSpotMiniだった。今回同社は、実際の量産が行われるバージョンのロボットをお披露目した 。一見したところでは、そのロボットは私たちがステージ上で見たバージョンと非常によく似ていた。

「信頼性を高め、外装の機能を高め、落下した場合に保護できるように、多くのコンポーネントを再設計しました」とレイバート氏は言う。「前面に2台、それぞれの側面に1台、背面に1台のカメラを搭載しています。このためすべての方向を見ることが可能です」。

私にはロボットを操縦する機会が与えられた。Boston Dynamics社外の人間でこうした機会を持つことができた者は少ない。SpotMiniは自律移動に必要な技術を、すべて備えているものの、特定の状況ではユーザー制御が可能であり、その方が望ましい場合もある(そのうちのいくつかを、すぐに説明する)。

このアニメーションGIFはオリジナルのものよりも若干スピードアップされている

コントローラーはOEMによるデザインで、中央に細長いタッチスクリーンを備えたXboxコントローラのように見える。ロボットはタッチスクリーンを使って直接制御することができるが、私はジョイスティックのペアを選んだ。SpotMiniを移動させることは、ドローンの操縦によく似ている。一方のジョイスティックでロボットを前後に動かし、もう一方のジョイスティックではロボットを左右に回転させる。

ドローンと同様に、慣れるのには多少時間が必要だ(特にロボットの方向に関しては)。ある方向がロボットにとっては常に前方を意味するが、操縦者にとってはかならずしもそうではない。画面上のボタンをタップすることで、ジョイスティックの機能が腕(または利用者の認識によっては「首」)の操作へと切り替わる。これは標準的ロボットアーム/グリップ装置のように動かすことができる。このアームはロボット本体が激しく移動している間は、邪魔ならないように固定しておくことができる。

一度コツを掴んでしまえば、とても単純だ。実際、ビデオゲームの経験がテトリスの頃でピークだった私の母も、イベントのバックステージにいて、Boston Dynamicsから喜んでコントローラーを受け取り、ほとんど問題なくロボットを操作していた。

Boston Dynamicsはこれまで以上にカーテンをめくって見せている。会話の途中で、レイバート氏はコンポーネントテストの舞台裏映像を披露した。それはロボットの様々な部位が実験室のベンチ上に広げられた様子が示された、必見のサイトだ。これは私たちが今までに見たことのないBoston Dynamicsの側面である。何体かが自律的にあたりを巡回している、多数のSpotMiniがいるテスト用囲いの映像も同様に披露された。

Boston Dynamicsは、未来がロボットにとってどのように見えるかについてのアイデアを、まだ他にも持っている。レイバート氏はSpotMiniをさまざまなテストシナリオを利用しているマサチューセッツ州警察の映像も紹介した。例えばロボットにドアを開けさせることができれば、人質事件やテロリスト事件の際に、人間の警官を危険から守ることができるかもしれない。

また別のユニットは、ストリートビュースタイルの360度カメラを装備して、東京の建設現場を自律的に巡回するようにプログラムされていた。すなわち建築の進捗をモニターすることが可能になる。「これを使うことで、建設会社は自社の現場の進捗状況を評価することができます」と彼は説明する。「おそらく、つまらない仕事のように思うかもしれません。しかし、こうした企業は何千もの現場を抱えているのです。そのため、彼らは進捗を知るために、週に2、3度は巡回を行わなければなりません。こうした用途にSpotMiniを使えることを期待しているのです。そのため、さまざまな段階のテストとシナリオの概念実証を行うために、10数社の企業が順番を待っている状態です」。

レイバート氏は、Spot Mini の7月の出荷は、今の所問題なく開始できる予定だと語った。価格についてはまだ発表できる段階ではないが、第一弾としておよそ100体が製造される計画である。

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(翻訳:sako)

Amazonのワンツーパンチ、従来の小売業者たちはどのように反撃できるのか

もし物理的な小売業は死んでしまったと考えているのなら大間違いだ。電子商取引の爆発的な増加にもかかわらず、私たちは今でもオフラインストアでたくさんのものを買っている。2017年の米国の小売業界の売上高は3兆4900億ドル(約390兆円)だったが、そのうち電子商取引が占める売上はわずか13パーセント(約4350億ドル、約49兆円)である。もちろん、電子商取引の方がはるかに速いペースで年々成長していることは事実だ。とはいえ、まだ転換点からはほど遠い段階である。

だが、電子商取引の巨人Amazonは、皆が考えているよりもはるかに長期的な勝負をしている。同社はすでにオンライン小売を支配していて、2018年に米国の電子商取引で使われた総額の、ほぼ50パーセントをAmazonが占めているのだ。そして現在、Amazonが目を向けているのははるかに大きな分野だ。洗練されたデータ分析の利用を中心に、実店舗での販売を近代化し支配しようとしているのである。最近行われたWhole Foodsの買収とは別に、Amazonが複数の米国の都市で、独自の食料品店チェーンを立ち上げているという最近のレポートは、この動きを示す例の1つである。

こうした動きは、Amazonのワンツーパンチと考えることができる。同社の電子商取引における強大な力は、相手の顔面に対して繰り出された最初の素早いジャブに過ぎないのだ。オフライン小売業におけるデータ中心のイノベーションこそが、Amazonの2発目、すなわちはるかに重いクロスパンチである。そのジャブばかりに焦点を当てている従来の小売業者たちは、後から追ってきているクロスパンチを見ていない。しかし著者たちは、賢明な小売業者による反撃は可能だと考えている、そしてノックアウトを回避することも。以下にそのやり方を説明しよう。

電子商取引のジャブは倉庫の整備から

商品の物理的な保管は、商取引の進歩にとって長い間重要な課題だった。この分野でのイノベーションには、1910年のヘンリーフォードのコンベアベルト組立ラインから、1970年代のIBMによる汎用製品コード(いわゆる「バーコード」)、そして1975年のJ.C. Penneyによる最初の倉庫管理システムの実装などが含まれている。Intelligrated(Honeywell)、Dematic(KION)、Unitronics、Siemensなどが従来の倉庫をさらに最適化し、近代化した。しかし、その後Amazonがやってきた。

書籍から多種商品提供へと拡大した後、Amazon Primeが2005年にローンチした。それから同社の事業の焦点は、翌日発送を可能にするスケーラブルな仕組に向けられた。何億もの製品SKUがある中で、課題はどのようにしてポケット3層縫合パッド(傷口の縫合を練習するための人工皮膚)を倉庫から取り出し、迅速に荷主に引き渡すかである(なお、この特殊な製品を例に挙げたのは、Amazonがいまやいかに特殊なものを扱っているかを示すためだ)。

自動化された倉庫に、まだ広大な設置面積と資本集約的なコストが必要だったときに、Amazonはこの課題に挑戦した。Amazonは2012年にKiva Systemsを買収した、これは自律誘導車両(AGV、Autonomous Guided Vehicles)の時代を先導するものだった。倉庫の奥から、固定した場所にいる人間の梱包担当者に素早く商品を運ぶロボットたちだ。

Kivaの買収以降、小売業者たちはAmazonの倉庫の効率性に負けないように、われ先にとテクノロジーを採用するようになった。そうしたテクノロジーには、倉庫管理ソフトウェア(Oracleに買収されたLogFire製のもの、その他のものにはFishbowlおよびTemandoなどもある)から倉庫ロボット(Locus Robotics、6 River Systems、Magazino)までのものが含まれている。こうした企業のテクノロジーの中には、倉庫作業員のためのウェアラブル(例えばProGloveやGetVu)なども含まれている。この分野では、Google Roboticsなどの、より汎用的なプロジェクトもみることができる。こうした新技術を主に採用している者は、Amazonの勢いをもっとも目障りに感じている業者たち、より正確に言えば電子商取引に対するフルフィルメントサービスを提供する運営者たちである。

以下の概略図が示すのは、そうした運営者たちの全体像と、彼らが採用している倉庫/在庫管理テクノロジーのリストの一部である。

Amazonがこれらを超えてどれほどの最適化をもたらすのかを言うことは困難だが、予測することよりも小売業者たち自身が認識することの方が大切だろう。

クロスパンチ、物理的小売環境の近代化

最近Amazonは、オフラインショッピングへの進出を重ねている。それは、Amazon Books(実書店)、Amazon Go(消費者がレジを通ることのない高速小売店)、そしてAmazon 4-Star(4つ星以上のランクが付けられた商品のみを扱う店舗)などである。Amazon Liveは、QVCのようなホームショッピングコンセプトの旧来型テレビショッピングストリームさえ提供する。おそらく最も顕著な動きは、2017年に買収したWhole Foodsによって、食品小売と全国規模の実店舗展開への足ががりを得たことだ。

大部分の小売業界のウォッチャーたちは、こうしたこれらのプロジェクトを道楽として片付けるか、集中する業種として狭すぎる(特にWhole Foodsの場合)と言って、まともに取り合うことをしなかった。しかし著者たちは、そうしたウォッチャーたちはAmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏の長期的な戦略目標を見誤っていると考えている。

そのクロスパンチに注目しよう。Amazonは現在の実店舗小売業がどのように回っているかをマスターしつつある。つまり既にオンラインで驚くほど上手くやっているようにオフラインでも上手くやることができるのだ。そこでは小売業者たちがより多く賢く売ることができるように、データが活用される。Amazonは、特定の製品がオフラインショッピングに向いていることを認識している。食料品や子供服はそうしたものの単なる例に過ぎない。

そうしたショッピング体験はなくなりそうもない。しかし、従来の小売業者(およびオフラインのAmazon)は、ショッピングと実際の購入の間をつないでいるデータを、もっともっとたくさん理解することができるのだ。ショッピング客は店内でどのコースを歩いたのか?彼らはどの製品に触り、どの製品をカートに入れたか?どのアイテムを試着し、どの製品を諦めたか?彼らは異なるサイズの有無をたずねたか?店舗内における商品の置き場所が、消費者の購買意欲にどのように影響するのか?商品間の相関関係はタイムリーなマーケティングとして、何を知らせることができるのか?例えば春には女性がしばしば帽子とサングラスを一緒に購入するとしたら、タイムリーなクーポン提供によって、追加の購入へと誘うことはできるだろうか?Amazonはすでに、これらの質問の大部分に対する答をオンライン上で知っている。彼らは、それと同じ情報をオフラインでの小売にも持ち込もうとしている。

当然ながら、顧客のプライバシーは、この勇敢で新しい未来における重大な関心事になるだろう。とはいえ、いまや消費者たちはオンラインデータ追跡を期待するようになり、そうしたデータによってもたらされる、より多くの情報に基く推奨や利便性をしばしば歓迎もするのだ。オフライン小売で同様のマインドシフトが起こらない理由はあるだろうか?

小売業者たちはどのように反撃できるのか?

見誤ってはならない。Amazonのワンツーパンチはおそるべきものになる。不意打ちがどれほど重要なものであるかを思い出そう。あまりにも多くのベンチャーキャピタリストが、実小売業の重要性を過小評価しており、その分野に注力するスタートアップたちを鼻で笑っている。だがそれは極めて近視眼的な態度だ。

AmazonがAmazon Goのためのコンピュータビジョンを開発しているという事実は、同様のセルフ精算手段会社(例えば、Trigo、AiFi)などが不利であることを意味しているだろうか?従来の小売業者たちがAmazonへの追従に苦労していることを考えると、著者たちはそれがむしろ好材料と成り得るのだと主張したい。

従来の小売業者はどうやって反撃できるのか?とにかく先を見越した対策が肝心だ。Amazonが小売業の次のベストプラクティスがどうあるべきかを示すのを、座して待っていてはならない。ジェフ・ベゾス氏にパンチで反撃するために、今日にでも採用できるたくさんの刺激的な技術が存在している。例えば、フィンランドのスタートアップであるRelexのことを考えてみよう。この会社はAIと機械学習を用いて、実店舗や電子商取引企業に対して、製品がどれほど売れるのかに対するより良い予想を助ける。あるいは、より没入型でインタラクティブなオフラインショッピング体験のためのソリューションを開発しているMemomiやMirowのような企業もある(どちらもメイクや試着などをよりインタラクティブな体験にするソリューションを提供している)。

Amazonのワンツーツーパンチ戦略はうまくいっているように見える。従来の小売業者たちは、巨人の倉庫イノベーションによってほとんど目くらましを受けているが、店舗内でのイノベーションによっても打撃を受けようとしている。だが従来の小売からの反撃を助けるための新しい技術が出現しつつあるのだ。唯一の問題は、意味のある十分な速さで、ソリューションを実装できるかどうかという点だ。

【編集部注】著者のアーロン・リンバーグ氏は、イスラエルのヘルツリーヤにあるBattery Venturesのアソシエートである。また、もうひとりの著者であるスコット・トービン氏は、同じくBattery Venturesのゼネラルパートナーである。

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(翻訳:sako)

産業用ロボット大手ファナックがAI利用でオートメーションをオートメーションする

工場等の製造工程はオートメーションによってすでに相当合理化されているが、しかしそれらのマシンは有能な技術者が苦労して訓練しなければならない。産業用ロボットの大手ファナックは、ロボットをもっと訓練しやすくして、オートメーションを製薬などより幅広い産業が利用できるものにしたい、と考えている。同社は米国時間4月18日に行われたTechCrunchのイベント「Robotics + AI Sessions」で、人工知能を利用する新しいツールを発表した。それは、簡単なアノテーションとセンサー技術によりロボットに容器から正しいオブジェクトを取り出すよう教え、訓練工程を従来より数時間も短縮する。

Bin-picking(ビンピッキング、より単純にはピッキング)はその名のとおり、ロボットアームを容器(bin)から正しい品物を取り出せるよう訓練して、一括注文した部品を正しく選り分けるなどの面倒で時間のかかる仕事をやらせる。そのために部品のサンプルを写真に撮り、ロボットが視覚センサーで目の前の部品とマッチできるようにする。従来のビンピッキングロボットの訓練では、正しいパーツを取り出せるようにたくさんのルールを教えなければならない。

ファナックのロボット事業本部本部長の稲葉清典博士はこう語る。「以前はそのためのルールを作るために大量の試行錯誤ややり直しが必要で時間もかかり、とても面倒だった」。

たとえば積まれた部品の山を見て、そこに目的の部品を見つけるためのルールがある。あるいはその中でいちばん目立つもの、目立つという概念を教えなければならない。エラーを犯したら人間オペレーターがそのことをロボットに教え、訓練をやり直す。オートメーションを導入してまだ日の浅い産業では、ロボットを訓練するための技術者やオペレーターを確保することが難しい。

そしてそこに、ファナックの新しいAIベースのツールが登場して、訓練工程を単純化する。人間オペレーターは容器に乱雑に放り込まれているパーツの写真を見て、ロボットに取り出させたいパーツの例を画面上でタップする。それは、幼児におもちゃの片付け方を教えるのに似ている。これは通常のAIベースの視覚センサーを訓練する場合に比べてかなり短時間で済み、同時に複数のロボットを訓練できる。

稲葉氏はこう語る。「人間が物を動かすときと同じやり方をロボットに人間オペレーターが教えるのは、きわめて難しい。しかしAIを利用すれば、従来のやり方よりももっと直観的にロボットに教えることができる」。彼によると、この技術はまだ初期的な段階なので、実際に工場の組立ラインで使えるようになるためには、さらなる研究開発が必要、という。

画像クレジット: Bloomberg/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ボストン・ダイナミックスの開発製品版4本足ロボがデビュー

昨年のTCセッション、ロボティクスカンファレンスでBoston Dynamics(ボストン・ダイナミックス)は、SpotMiniが商業展開する初の製品になると発表した。改良されたバージョンに至るまで、同社は基本的に事業所内をパトロールすることを目的にしているこの4本足ロボの開発に数十年費やしたかもしれない。

今日のイベントで創業者でCEOのMarc Raibert(マーク・レイバート)氏は電動ロボットの製品版をデビューさせた。昨年言及したように、同社は今年100モデルを生産する計画だ。レイバート氏は、同社が7月か8月に生産を開始することを目指していると語った。いくつかのロボットがすでに組み立てラインにあるが、それらはベータテストに使われる。そして同社はまだデザインに手を加えている。価格は今夏発表される予定だ。

生産が近づいたSpotMiniについての新たな情報としては、SpotMiniが転倒したときに、ロボットそのものと、全方位が見えるように前後や左右に取り付けられたカメラを守ることができるよう、しっかりとしたスキンにするために再設計された構成部品がある。

SpotMiniはまた、アームを持っているが(よく頭に間違われる)、異なるアプリケーションに応じてフレキシブルであるよう、他のパーツが動こうともアームは同じ場所に位置する。

レイバート氏は、ナビゲーションソフトウェアや、デベロッパーがゆくゆくはロボットのコントロールと相互作用することができるアプリを書くことで、SpotMiniがロボティクスのAndroid(あるいはアンドロイドのAndroid)になることを願っていると語った。

SpotMiniは、Boston Dynamicsがリリースしようとしている最初の商業ロボットとなる。しかしすでにわかっているように、当然のことながらSpotMiniで終わりではない。同社は、車輪のついたHandleロボットをロジスティック分野に売り込もうとしている。ロボティクスにおいてこの分野は現在かなりホットだ。特にAmazonは最近、コロラド拠点のスタートアップのCanvasを買収して配送センターロボット部門の傘下に収めた。

Boston Dynamicsも今月初めに同社初となる買収を行っている。Kinemaの買収で、この分野で重要な部分を担うより高度なビジョンシステムを開発ロボットに搭載できる。

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(翻訳:Mizoguchi)

機械視覚を備えたIAMのモバイルロボが倉庫業務の改革を目指す

最新のロボットは非常に高度な能力を発揮するようになった。人工知能と機械視覚を備えたロボットは人間がやりたくない単調、汚い、あるいは危険な作業を一手に引き受けて今後のオートメーションの原動力となるに違いない。フルフィルメントセンターなどを含む倉庫業務がロボット化の最前線となっているのは驚くにあたらない。

先週、AmazonはCanvasを買収することを発表した。これによって現在25か所のフルフィルメントセンターで稼働してい10台のロボットがAmazonのポートフォリオに追加される。 先進的なロボティクスの実験に集中していたBostonDynamicsも機械視覚スタートアップを買収してHandleロボットを倉庫業務に参入させようとしている。

ピッツバーグは世界のロボティクスの中心地の1つであり、ロジスティクスのオートメーション化でも重要な役割を果たしている。ピッツバーグでも最も重要なロボットスタートアップのひとつがIAM Roboticsだ。われわれは最近この会社を訪問して取材するチャンスがあった。本社は郊外の小さなオフィスだったが、IAMのアプローチはロボットアームとモバイルシステムを組み合わせて倉庫業務のオートメーションを図るというユニークなものだった。

TechCrunchの取材に対してIAMのCEOであるJoel Reed氏はこう述べた。

倉庫内を自由に動き回れるモバイル・ロボットでなおかつ多様な荷物の処理できるのがIAM Roboticsの製品のユニークなところだ。サイズの小さい商品であってもわれわれのロボットは人手を借りることなくサ認識して取扱うことができる。これを可能にしているのは人口知能と機械視覚のテクノロジーだ。ロボットは何をすべきか自ら判断することができる。自分の視覚を用いて自由に移動する。つまり完全に自律的だ。

昨年末にKCKが主導した2000万ドルのベンチャーラウンドにもかかわらず、スタートアップはほとんど静かに運営されてきた。オフィスでの簡単なデモの後は、初期の投資家がどのように会社に期待を寄せているかがわかりやすくなりました。それでも、このデモは、私たちが前日過ごしたBossa Nova倉庫とはかなり対照的です。

IAMは昨年、KCKがリードしたラウンドで2000万ドルの資金を調達しているが、どちらかといえば脚光を浴びることを避けてきた。しかしオフィスでロボットのデモを見て投資家がなぜこの会社を有望と考えたのか理解できた。しかし、その前日ピッツバーグで訪問したWallmart(ウォルマート)の倉庫業務の効率化を目指すロボティクス企業、Bossa Nova Roboticsの大型施設とはいろいろな意味で対照的だった。

IAMのオフィスの一角に商品を並べた棚が数列並んでいたが、スタッフがデスクを並べているスペースとは1メートルと離れていなかった。同社のSwiftロボットが急ごしらえの通路の間を忙しく行き来して自力で目指す商品を探していた。目指すアイテムを発見すると多関節のアームを伸ばしてつかみ、自分が持ち運んでいる箱に収めた。ロボットハンドの先端には真空吸引式のカップがあり、関節は巧妙に旋回して狭い隙間からも巧みにアイテムを取り出していた。

Swiftはうまく使えば人手不足を解消して倉庫業務の効率を大きく高めることができそうだ。Reed氏は「われわれは顧客のコスト削減だけでなく、労働者を集めるのが困難な作業を自動化することを目指している」と述べた。同氏によれば若い世代の労働者はUberやLyftのようなギグエコノミー(共有経済)的の仕事を好む傾向があり、作業が単調で時間に縛られる倉庫業務は人手不足に悩まされているのだという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ディズニーとルーカスフィルムがSTEM教育グループに150万ドル寄付

スターウォーズの最新作エピソード9の予告編を公開した翌日、ディズニーとルーカスフィルムはFIRSTに150万ドルを寄付すると発表した。FIRSTは1989年にDean Kamen氏によって設立された非営利のグループで、ロボティクス競技大会などのイニシアチブを通じてSTEM教育をサポートしている。

ディズニーの寄付は、FIRSTが力を入れているサービスが十分に行き渡っていないコミュニティに教育を提供するのに使われる。このパートナーシップで実際にどんなことが行われるのか詳細は不明だが、ディズニーは明らかにこうした種の奉仕活動から多くのものをこれまで得てきた。そしてルーカスフィルムはロボットのことを多少は知っている。

スターウォーズの寄付企画であるForce for Changeは、シカゴで行われた恒例のファンイベント「スターウォーズ・セレブレーション」の場で発表された。イベントではティーザーやタイトルの発表などを含め、最新作のキャストが登場するパネルがあった。

「スターウォーズは、若い人々に過去を振り返り、そして今後世界がどうなるのかを想像させるなど、いつも影響を与えてきた」とルーカスフィルム会長のKathleen Kennedy氏は今回の発表についてのリリースで述べている。「サイエンスやテクノロジーの重要性を若い人々に伝えていくことは極めて重要だ。彼らは、この先待ち構えるグローバルの課題に立ち向かわなければならない。それをサポートするため、ルーカスフィルムとディズニーはFIRSTと組んで、次世代の改革者に学習機会やメンターシップを提供する」。

FIRSTへの協力という点では、今週は大きな成果があった週だった。ちょうど昨日、アマゾンがFIRSTと組んでロボティクス教育のサポートを行う、と発表した。

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(翻訳:Mizoguchi)

Amazonがテクノロジー教育のNPO FIRSTと組んでロボティクス教育の助成事業を展開

今週の半ばにAmazonは、Canvasの買収を発表した。このあまり知られていないコロラドのスタートアップは、倉庫における配送業務のための自動運転システムを作っている。それは未来の倉庫の自動化を真剣に考えている同社の、最近の一連の動きの中では最新の動きだ。

昨年同社は。Amazon Future Engineerの立ち上げを発表した。それは教室におけるSTEM教育の便宜を提供する事業だ。その事業の立ち上げを支援してもらうためにAmazonは、STEM振興の非営利団体FIRSTとパートナーして、とくに恵まれない人びとにロボティクス教える一連の助成事業を作ろうとした。

その計画は21の州の100校で、今年の秋から動き出す。事業にはFIRSTのロボティクス授業チームの支援や先生の教育が含まれ、さらに10000ドルの助成により地元のAmazonフルフィルメントセンターの見学旅行も行う。同社の倉庫には現在、計10万台あまりのロボットがいる。

FIRSTのファウンダーであるDean Kamen氏がニュースリリースでこう言っている。「われわれのロボティクス授業チームと活動をすべての学校に提供していきたいが、Amazonはこの目標の実現を助けてくれる。FIRSTでは、授業に参加するすべての子がプロになれる。FIRSTの授業には、テクノロジーやコンピューター科学や生産工程の実際を体験する実習課程もある。それによって児童生徒は前進し、イノベーションを着想することもできる」。

今年初めにAmazonは、同社の第2本社のローンチ(こちらはのちに廃案になった)の前にニューヨーク地区の教室で同社の投資によりテクノロジー教育を展開する、と発表した。左のリンクの記事は、ニューヨークのAmazon第2本社は廃案でも教育事業の方は続く、と報じている(未訳)。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

まるで本物の魚のように泳ぐロボット「MIRO-5」が日本上陸、開発は韓国スタートアップ

韓国ロボティクススタートアップのAIROが開発した魚型ロボット「MIRO-5」が日本で販売開始する。

MIRO-5は手のひらサイズのロボットフィッシュで、船のようにスクリューで動くのではなく、まるで本物の魚のように体をくねらせて泳ぐのが特徴だ。本体にはレーザーセンサー4個と自動遊泳アルゴリズムが搭載されていて、前方と左右、上下の障害物を避けながら遊泳する。2000mAhのバッテリーも搭載されていて、連続8時間の遊泳が可能だ。また、専用のAindroidアプリを使えば、自分でMIRO-5をコントロールすることも可能だ(iOSアプリは2019年5月以降にリリース予定)。

日本での販売を手がけるのは、IoTショールームの「+Style(プラススタイル)」。発売開始は5月20日で、予約受付はこちらのWebページで本日より開始する。価格は6万4800円と決して安いとは言えないが、「どうせ飼うなら未来を先取りした魚を」と考えるTechCrunch Japan読者はチェックしてみてほしい。

MITのリサイクルロボットは「触覚」で材料を識別する

RoCycleは、もちろん「Recycling Robot」の略で、MITのCSAIL(コンピュータ科学・人工知能研究所)が発表した最新技術だ。このピック&プレイス・ロボットは独自にセンサーを組み合わせることで、物体の材質の違いを識別してリサイクル処理の前に分別する。

Rethink RoboticsのBaxterをベースに作られたこのシステムは、テフロン製ロボットハンドと物体の大きさと硬さに基づいて材質を識別する内蔵センサーからなっている。ただし、まだ完璧ではない。

仕組みは以下のとおりだ。

ロボットハンドがまず内蔵の「歪センサー」を使って物体の大きさを推定し、次に2つの圧力センサーを使って物体をつかむために必要な力を測定する。これらの数値と、さまざまな材質の物体の大きさと硬さに基づく較正データを利用することで、物体がどんな物質からできているかを推定する(触覚センサーには導電性もあるので、電気信号の変化から金属も識別できる)。

同大学は、静止した物体の識別では85%の精度を得られたと言っている。この数字は、物体がベルトコンベアーなどの上を動いているときは63%へと大きく低下する(この方がこのシステムが使われるであろう現実世界のシナリオに近い)。誤認識の大部分は、アルミニウムやスチール製の缶に貼られている紙が原因だ。

研究チームはセンサーを増やして改善しようとしている。また、このテクノロジーは既存のシステム、たとえば磁石を使って金属を選別したり、視覚情報で材質を識別するシステムと組み合わせて利用することもできる。CSAILは、今後の実験で視覚情報システムと組み合わせる計画だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アマゾンが倉庫用ロボットのスタートアップCanvas Technologyを買収

TechCrunchAmazonがコロラド州ボルダー拠点の倉庫ロボティックスのスタートアップであるCanvas Technologyを買収したことを確認した。配送センターの機械が増加しているAmazon Roboticsに重要な要素を加えるこのディールは、端から見ても理にかなったものだ。

AmazonCanvas Technologyの買収をTechCrunchに対し認めた。「我々はCanvas Technologyのイノベーションに刺激を受けている。そしてより安全で快適な職場環境となるよう、ロボットと共に働くという未来に向けた同じビジョンを共有している」と広報は発表で述べた。「顧客のための発明を続けるため、Canvas Technologyの素晴らしいチームと共に働くことを楽しみにしている」。

2015年に設立されたCanvasは、同社をベイエリア拠点のFetchの直接的な競合相手と位置付けることになった完全自動のカートシステムを含め、いくつかのすごい技術をすでに披露してきた。CanvasPlayground Globalが主導したシリーズA1500万ドルを調達している。

Canvas Autonomous Cartは、昨年のちょうど今頃、Playgroundのオープンハウスで披露され、来場者の注目を集めた。このシステムは3Dイメージングと、他のハードウェアに応用できる社内ソフトウェアソリューションを活用している。これは本質的には倉庫環境における自動運転車のように作動する。

CanvasAmazon Roboticsのラインナップにいいロボットを追加できるはずだ。AmazonRobotics部門は、2012年にKiva Systemsを買収した後に創設された。Kiva Systemsの棚用ロボティクスはいま、Amazonの多くの配送センターのロボティックにおいて中心的存在となっている。

スタテン島にあるAmazonの配送センターJFK8を最近訪れたとき、Amazonは同社が現在25の配送センターで10万ものシステムを展開していると説明した。この数字はAmazonの自前のシステムと、日本の電気機器メーカー大手ファナックを含むサードパーティーからのデバイスを合わせたものだ。しかしながら明らかにAmazonは、今後オートメーションを通じた配達効率を押し上げるシステムを自前のものにしたがっている。

安全もまた大きな要素だ。当然のことながら共に働くロボティクスというこの手のものには安全が伴うが、Amazonの配送センターには何重もの厳重なチェックが組み込まれている。今年初め、我々はAmazonのロボティック安全ベストを目にした。このベストはKiva systemsを操作するフロアに設けられた囲われたエリアに入る従業員のさらなる安全を確保するためのものだ。

一方、Canvasは自律ビジョンシステムを活用した自前のビルトインの安全策を有している。ハードウェアはフロアでよりダイレクトに作業員と作用するようにデザインされている。Canvasがすでにあるシステム向けのテクノロジーを取り入れることは想像に難くない。

注目すべきは、Canvasの共同創業者でCTONima Keivan氏は来週バークリーで開かれるTechCrunchRobotics + AI イベントに登壇するということ。そこで、間違いなく彼はCanvasの顔ぶれについて何らかの見方を示すことができるだろう。

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(翻訳:Mizoguchi)

メジャーリーグのピッチャーの投球を400万球分析して人間審判の誤審率を計算

ボストン大学の院生たちが、メジャーリーグ(Major League Baseball、MLB)の過去11シーズン(2008〜2018)の400万投あまりの投球を調べた結果は、人間アンパイアにとってうれしいものではなかった。その調査によると、2018年に球審は、ボールとストライクを34294回誤審している。それは1ゲームあたりでは14回、1イニングあたりでは1.6回だ。

1シーズンに32のチームがそれぞれ162ゲーム戦うのだからそれほど大きな数ではないが、でもそれは多くの憤慨した観客たちが長年疑っていたことを確認するには十分だ。

調査によると、MLBの審判の平均年齢は46歳、平均経験年数は13年だ。各シーズンに球審はホームプレートの後ろで約4200球の投球を判定する。面白いことに、調査結果では若くて経験の浅い審判のほうがベテランよりも成績がいい。

誤審の頻度は、当然かもしれないがプレーの性質によって異なる。これまで何度か球場に足を運んだことのある人たちの多くが、審判は今どっちがリードしているかによってピッチャーかバッターのどちらかをえこひいきすると疑っている。その点はどうか。

調査にはこう書かれている。「調査結果によれば、アンパイアは特定の状況下では圧倒的にバッターよりもピッチャーに有利な判定をする。バッターが2ストライクのときは、次の球がボールでもストライクと判定した誤審率が29%で、2ストライクでなかった場合の誤審率15%に比べほぼ倍である」。

なお、このニュースの1か月前のMLBの発表では、同団体が現在、独立リーグ、アトランティックリーグのマイナー戦でロボット審判の利用を試行している、ということだった。それは、将来のある時点でメジャーがその技術を実装することを目指している。最近は野球のテレビ放送でストライクゾーンの図解が表示されるようになったため、球審のロボット化という話題も、急に現実味を帯びてきている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

RightHand Roboticsが箱から箱に商品を移す産業用最新ロボを発表

信頼性の高いピックアンドプレースシステムは、産業ロボット業界にとって長年にわたる至高の目標だ。箱から箱へと商品を移す作業は、多くの倉庫や配送センターが特に自動化したい仕事だ。

ここ数年、RightHand Roboticsはこの分野で特に注目を集めているスタートアップだ。同社はこれまでに3400万ドルの資金をMenlo Ventures、GV 、Playground Globalなどの投資家から調達している。そして今週シカゴで行われたProMatカンファレンスでは、同社の第2世代ピースピッキングソリューションRightPick2を発表した。

これに伴い同社は、前バージョンのプラットフォームが1000万ピックを達成したことも発表した。この最新バージョンは、ハードウェア、ソフトウェアの両面で数々のアップグレードが施されている。

例えば、最大2 kgを持ち上げる第5世代の産業用グリッパー、新しいインテルの奥行き検知カメラ、Universal Robotsの改善されたアームなどを備えている。加えて、ビジョン/モーション制御ソフトウェアのRightPic.AIも改善されている。

その結果は、上のデモ動画で見られるように、非常に印象的だ。システムはスピーディー、スムーズにさまざまなタイプの製品をピックアップすると同時に、注文配送用のバーコードも認識する。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

人間の作業を手伝うCMUのバックパック型ロボットアーム

カーネギーメロン大学のBiorobotics Labは、モジュール式のヘビ型ロボットの開発で一躍有名となったバイオロボット研究室。当初は、狭い場所に入り込んで、捜索、救助活動に従事したり、インフラ検査などに利用する目的で開発されたヘビ型ロボットだが、そこからさまざまなプロジェクトを派生させ、ピッツバーグ地域ではスタートアップを生み出すことにもつながった。

数年前、このロボットはモジュール式となり、エンジニアの手によって複数の部品を組み替えたり、故障した部分だけを交換することが可能となった。そうしたモジュールを利用して、CMUの学生チームは、バラエティに富むさまざまなプロジェクトを立ち上げた。たとえば、クモのような6本足のロボットもある。6つの脚のそれぞれが、モジュール化されたロボットセグメントでできているのだ。また以前にTechCrunchでも取り上げたHebiは、この研究室で生まれたモジュールを商品化したロボットアクチュエーターを採用している。

その2年後に、再び研究室を訪ねてみると、研究者はまったく新しいプロジェクトを見せてくれた。「このグループの学生は、かなり自主的に活動しています。自分たちで考えたプロジェクトに取り組んでいるのです」と、CMUの博士課程の学生、Julian Whitman氏は語った。「このハードウェアを組み替えることで、どんな形にでもできるので、いろいろなアイディが浮かんできます。最初はモジュールの山から始めます。それらを組み立て、あっという間にプログラムして、意味のある動作ができるようにします。そこから、まったく新しい研究の方向性が触発されることもあるのです」。

Whitman氏のプロジェクトは、モジュールを組み合わせて、ウェアラブルな「追加の腕」として機能させている。このシステムは、彼も言う通り、外骨格のようなものではない。むしろ、バックパックスタイルの支持構造に取り付けられたロボットアームなのだ。このプロジェクトは、普通の人が2本の腕でこなすには、ちょっと難しい仕事を手伝えるようなものを作れないか、というアイディアから生まれた。

「自動車の組み立てや、飛行機の組み立てに見られる共通の課題の1つに、頭上に何かを持ち上げて支えながら、それを天井に取り付けるという作業があります」と、Whitman氏は説明した。それから、近くの作業場で、その工程を実際にデモしてくれた。「自動車の床下や、飛行機の屋根に部品を取り付ける場合、2人の作業員が1つの作業に取り組むのが、製造業では常識となっています。ひとりは単に部品を所定の場所で保持し、もうひとりが固定するのです」。

このプロジェクトでは、今のところ1本の腕を、ゲームパッドを使ってコントロールできるようになっている。Whitman氏によれば、「ひとりの人間で運べる限り」もっと多くの腕を追加することも可能だという。アメコミのドクター・オクトパスのような感じになるのだろうか。しかし最も大きな問題は、ひとりの作業者が同時に何本までの腕をコントロールできるかということだろう。

「今のところ、ボタンや音声コマンドによってコントロールしています。つまり2組のボタンコントローラーと2組の音声コマンドがあるわけです」と、Whitman氏は説明する。「アームを追加していくと、ある時点からコントロールが難しくなり、かえって使いにくくなってしまうかもしれません。しかし将来は、これらのアームがもっと自律的に動くようにしたいと考えています。それぞれが独自の知覚機能と、独自の意思決定プロセスを持つようにしたいのです」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Brainの工場・小売向け自動走行荷物配送ロボが近くデビュー

Brainという社名はなんだかスーパーヒーロー漫画に出てくる悪い会社の名前のようだ。しかしサンディエゴ拠点のこのスタートアップは近年大きな資金調達を行なっていて、ここには2017年にソフトバンクが主導した11400万ドルのシリーズCも含まれる。

Brainは調達した資金を活用し、今日、店舗用の自動走行荷物配達ロボット立ち上げを発表した。現在まだコンセプト実証あるAutoDeliveryは独自のBrainOSナビゲーションシステムでつくられている。このシステムは、TennantMinutemanICENilfisk、そしてソフトバンクロボティックスを含む多くの企業のプロダクトを動かしている。

Brainのシステムは、店舗から工場、そして倉庫まで、幅広い用途を満たすようにデザインされているという興味深いものだ。それは、在庫ストックから配達向けのフルフィルメントまで、あらゆることができるということになる。この分野はAmazon RoboticsFetch、そして工場向けの自動走行ロボットを手がけるPlayground VentureがサポートするCanvasのプロダクトにみられるように巨大なビジネスで、数年後にはさらに大きくなると予想される。

まったくBoston Dynamicsでさえ、最近のKinema Systems買収でこの分野に参入しようとしている。

Brainのシステムはカートを引っ張る能力で持ってこの分野での競争に打ち勝ちそうだ。この能力は、上のビデオにあるように小売の分野で有用だろう。また、ロボットはタッチスクリーンも備えていて、雇用側は指示を直接インプットできる。これは、Bossa Novaの在荷を調べるロボットのようなプロダクトとは異なった従業員との関係を構築するものだ。

ロボットはまだ初期段階にあり、来週シカゴで開催されるProMat showでデビューする。Brain来年初めの商業展開を見込んでいる。

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(翻訳:Mizoguchi)

レゴは小学校高学年から中学生向けのエデュケーションSPIKEプライムを発表

米国時間4月2日にニューヨークで開かれた教育イベントで、レゴはエデュケーションSPIKEプライムを発表した。これは同社として最新のSTEAM(Science=科学、Technology=技術、Engineering=工学、Arts=美術、Mathematics=数学)教材で、教室での利用を前提に設計されたもの。具体的には小学校6年生から中学2年生(11歳から14歳)レベルを対象にしている。

このキットは、レゴブロックに、センサー、モーター、そして「プライムハブ」を組み合わせたもの。なんだか、Amazonの新サービスのような名前だが、この製品は、基本的にあらゆるSPIKEの工作で「頭脳」として機能する。

その中には、100MHzで動作するプロセッサ、加速度計、ジャイロスコープ、スピーカー、ディスプレイが内蔵され、6つの入出力ポートを備えている。このシステムは、専用アプリをインストールしたモバイルデバイスでコントロールできる。そのアプリには、ちょうど45分で学習が完了できるようなレッスンが数本含まれている。生徒はアプリを使って学習を始めるところから、Scratchによるプログラミングまでが可能となっている。

「私たちは世界的に、小学校高学年から中学生、特に11歳から14歳まで子供たちの教育に課題があると見ています」と、レゴの教育責任者であるEsben Stærk Jørgensen氏は、この発表にともなうリリースの中で述べている。「その年齢あたりで、子供たちは学習への自信を失い始めます。Confidence Pollのデータによると、ほとんどの生徒は、何かで一度失敗したら、もう一度挑戦することはしたくない、と言っています。SPIKEプライムと、SPIKEアプリに内蔵されているレッスンにより、そうした子供たちも、さまざまな解決策を試すことによって触発され、新しいことに挑戦し、そして最終的には自信を持って学ぶことができるようになるでしょう」。

このシステムは、米国ではすでに予約が可能となっている。ただし、実際に出荷されるのは8月以降だ。

画像クレジット:LEGO

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Boston Dynamicsが3D画像認識技術を擁する企業を買収、ロボット商用化にも注力へ

先週我々が紹介したHandleロボットのビデオはBoston Dynamicsが公開してきたこれまでのロボットのデモとは少し様子が違っていた。なるほど現在のエンジニアリングの水準を超えるような驚異的なロボティクスが紹介されている点は同じだが、アプローチはこれまでとかなり異なる。

まず全体的な雰囲気が違っていた。ロボットはやや大型化しており、オリジナル版が2本腕だったのに対し、新しいHandleは本体の中央から尖端に吸着カップが装備された恐竜の首のような長いアームが1本延びていた。なにより違うのは背景で今回は殺風景な倉庫が舞台だった。Handleはすばやく動き回ってパレットに積まれたダンボール箱を別のパレットに移したり、ベルトコンベアに載せたりした。

ではなぜBoston Dynamicsは最新ビデオでは倉庫を舞台にすることに決めたのか? 我々はその原因をいま少し詳しく知ることができたので紹介しよう。

米国時間4月2日、Boston Dynamicsは最初の大型買収を実施したことを発表した。買収先はサンフランシスコ地区のスタートアップで、ロジスティクスを効率化するための新しい3D画像テクノロジーを開発・市販しているKinema Systemsだ。

この買収で多くのことがわかってくる。この数年、Boston DynamicsはGoogleの親会社でもあるAlphabetに買収され、続いてソフトバンクに転売された。その間のどこかでマネタイズがBonston Dynamicsにとって重要な課題となったはずだ。その経緯をCEOのMarc Raibert氏はTechCrunchにこう語った。

Googleがまず素地を作ったのだと思う。我々の知る他のロボティクス企業も商用アプリケーションや製品づくりに我々より熱心だった。そこで我々も商用化の方角に動いた。自然な発展だと思っている。ソフトバンクが急に我々の尻を叩いて「製品を作れ」と命じたということではまったくない。ソフトバンクの人々も新しいテクノロジーの研究、開発に非常に熱心だ。R&Dとマネタイズの双方ができるのはいいことだ。

Boston Dynamicsは車の両輪路線で前進を試みるようだ。同社は一方で今までどおり二足歩行のAtlasに代表されるロボティクスの最先端をさらに進化させる研究を進める。同時に今回デモされたHandle、また昨年のTechCrunchのロボティクス・イベントで発表されたSpotMiniのようなプロダクトで商用化の可能性を探る。SpotMiniは2019年中に市販される計画だ。

ロボティクス関係の多くのスタートアップとは異なり、今回買収の対象となったKinemaは実際にPickをプロダクトとして市場で販売している。Kinemaによれば、Pickは「産業用ロボットのための世界初の深層学習による3D画像認識システム」だという。Handleの新バージョンが装備するロボットアームがPickのデモに登場する吸引カップを装着したアームにそっくりなのは偶然ではない。

Boston Dynamicsの買収に伴い、Kinema PickはBoston Dynamics Pick Systemと改名された。下に掲載したビデオでもわかるとおり、Boston Dynamicsの3Dコンピュータービジョンの紹介ビデオをはともとKinemaが製作したものだ。Boston DynamicsはPickの販売、サポートを続ける。つまりSpot Miniに先駆けて、同社が商用販売する最初の製品となったわけだ。Handleの新バージョンが実際にパッケージを処理し始めたところをみると、Boston Dynamicsはロジスティクス分野への参入を考えているようだ。これはFetchやさらにはAmazon Robotics.がライバルとなる。Boston Dynamicsの事業開発担当シニアバイスプレジデントのMichael Perry氏がTechCrunchに語ったところでは、

Kinemaの買収で我々が気に入っている点の1つは、この会社の製品がすでに倉庫や物流という現実のビジネス環境の中で使われていることだ。ロボティクスではユーザーの利用環境によって個別の困難な問題が発生することがある。それによってコミュニケーションや安全性の面などで製品のデザインを修正する必要が発見されることも多い。

KinemaのテクノロジーはまずHandleの商用化に役立つだろう。Raibertは新しいHandleはBoston Dynamicsとしてほとんど初の「作業目的から逆算して新規開発されたプロダクト」だという。Raibertによれば、オリジナルのHandleではロボットの運動能力の飛躍的な向上に成功しているものの、特定のアプリケーションを念頭に置いたものではなかったという。

しかし、Handleタイプのロボットはロジスティクス分野で可能性があるように思えてきた。そこで我々は特にロジスティクスを念頭に置いて新しいHandleを開発することにした。

もうひとつKinemaがもつ優位性は本拠の位置だ。Kinemaはマウンテンビューのスタートアップであるため、Boston Dynamicsにとってこの買収は「シリコンバレーでコーヒーが飲めるようになる」ものだった。Perryによれば、「Kinema(の買収)はシリコンバレーにおけるハード、ソフトの人材獲得にも大いに役立つものと期待している」ということだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ロボットとドローンを組み合わせて鉱山救助に挑むCMUチーム

ピッツバーグを訪れた最後の日に、今では廃坑となった炭鉱に行く機会を得た。市街地の北東側にあるTour-Ed鉱山では、気候の穏やかな期間だけ見学ツアーを開催しているのだ。とはいえ、坑道の中は1年を通して華氏50度(摂氏10度)に保たれている。

入り口の上の方にはまだ雪が残っている中、カーネギーメロン大学とオレゴン州立大学の学生チームは、次の競技に向けて、1組のロボットの準備を整えていた。この少人数のチームは、DARPAが主催するSubterranean Challenge(地下への挑戦)に参加している十数チームの内の1つだ。

数年におよぶSUbT競技は、「複雑な地下の環境に対して迅速に地図を作成し、ナビゲーションし、検索してすり抜けるための新しいアプローチを探索する」ことを目指すもの。そこには「人工的なトンネルシステム、都市の地下道、網状になった自然の洞窟」などが想定されている。具体的には、鉱山から洞窟、さらに地下鉄の駅といった地下構造物内の捜索、救助という課題が各チームに与えられている。

賞金200万ドル(約2億2000万円)の競技の目的は、複雑な地下の地形をナビゲーション可能なシステムを設計すること。想定しているのは、崩落やその他の災害だ。ロボットは、人間の救助隊が行くことのできない場所、あるいはレアなケースとして、足を踏み入れるべきではない場所にも行けるように作られている。

CMUチーム戦略は、4輪の探査車に加えて、アマチュアが使うような小さなドローンを中心に据えたマルチロボット方式を採用するもの。「われわれのシステムには、まず地上のロボットがあります。これが地形に合わせて進みます」と、このプロジェクトのアドバイザーを務めるCMUのSteve Willits氏は言う。「さらに、6つのプロペラを持つ無人の飛行装置も含まれます。鉱山の中の、さまざまな領域を探索するのに必要な機材をすべて備えたものです」。

探査車は、3DカメラとLIDAR(レーザー測距装置)を使って、ナビゲーション機能を働かせながら周囲環境の地図を作成する。瓦礫の中から人間を探すことも可能だ。残骸にぶつかったり、通路が狭かったり、階段のような人造の障害物によって動けなくなると、今度はドローンが車体の後部から飛び出して捜索を続ける。

このような捜索の際、探査車は非常に頑丈に作られたWiFiリピーターを、ときどき後部から落としながら進む。迷子にならないように目印として落とすパンくずのようなものだ。これで通信距離を伸ばすことができる。これらの大部分は、まだ初期段階のもの。チームは、探査車とドローンの動作を実演することはできたものの、まだそれらを連携して動作させる手法は確立していない。

ロボットのコンテストは今年の8月に開始される。最初は規定のTunnel Circuitを使う。その後2020年2月には、人工的なUrban Circuitで、さらにその年の8月にはCave Circuitと続く。最後のFinal Eventは、2021年の8月だ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)