政府契約企業のHuawei、ZTEの機器の使用禁止法案、米議会に上程

最近アメリカ市場におけるHuaweiのスマートフォンの取扱をAT&Tが拒否したところだが、Huawei、ZTEという世界最大規模の中国のテクノロジー企業の前途にさらに暗雲が現れた。

Huawei、ZTEの両社はスマートフォンが有名だが、ビジネスの中心はむしろテレコム・ネットワークに関連するデバイスの供給、運用にある。アメリカ議会に新たに提案された法案は、セキュリティー上の問題を理由として、連邦政府諸機関が両社製のネットワークデバイスを使用しているサービス・プロバイダーを利用することを一切禁止するものだ。

法案を提出したのはテキサス州選出のMichael Conaway下院議員(共和党)で、同議員は 選挙に対するロシアの干渉を調査するチームのリーダーでもある。 テレコム機器の販売でHuaweiは世界でトップ、ZTEは5位だが、アメリカでは両社に対する制裁が続いていた。これにはZTEのデバイスをアメリカ政府機関が購入することを禁止する2013年の法律などが含まれる。昨年は国防省が中国あるいはロシアのテレコム企業の機器を購入することを禁止することを狙う法律が提案されている

今回の新法案は、制裁をさらに一歩進め、アメリカ政府機関がHuaweiおよびZTE製の機器と関わりをもつことを一切禁止しようとするものだ。政府契約には下請けの長い連鎖があるが、両社の機器はそこから排除される。

この法案は、政府が以下のようなサードパーティー企業と契約することを禁じようとしている。

  • Huawei Technologies CompanyまたZTE Corporation(およびその傘下、関連企業を含む)〔以下、対象企業〕が製造したテレコミュニケーション機器を使用する企業
  • 対象企業が提供するテレコミュニケーション・ネットワークあるいは対象企業が製造した機器を用いるネットワークを提供する企業
  • テレコミュニケーション機器またはサービスを提供する企業であって、契約を所管する政府機関の責任者が(別に定める)外国政府の所有、管理、あるいは影響下にあると信じる合理的理由がある企業

TechCrunchはZTEとHuaweiにコメントを求めているが、この記事の執筆時点では回答がない。

Conawayの法案には、提案理由として【略】ZTE、Huaweiその他の中国企業が「中国共産党から直接の指示を受けている」とした政府機関の調査結果」やCIAのMichael Hayden元長官が「Huaweiは中国政府と極めて密接な関係にあり、外国におけるテレコミュニケーション事業において得た情報を広汎に政府と共有している」としたコメントを引用している。【略】

法案が実際に法律として成立するまでにはまだ長い道のりが控えているものの、ワシントンがますますZTEとHuaweiの排除に傾いていることは疑いない。

昨年、ZTEは10億ドルの罰金を課せられている。ZTEはアメリカのイランに対する経済制裁に違反してアメリカからイランにプロダクトを輸出した上に、連邦政府による調査に対して虚偽を申し立てたことを認め、罰金を支払うことでアメリカ政府と和解している。

シリア、キューバ、イラン、スーダンとのHuaweiのビジネスについてアメリカ商務省も関心を示している

@paulmozurが法案を発見した) 

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

巨額赤字のLeEco〔楽視〕ファウンダーに帰国命令――中国証券監督管理委員会が公開状

問題山積みのテクノロジー多国籍企業、LeEcoのファウンダーがさらに新たな頭痛を抱えることとなった。LeEcoグループの負債の処理に関連して中国証券監督管理委員会〔CSRC〕はファウンダーのJia Yueting〔賈躍亭〕に対し12月31日までに帰国するよう命じた。同委員会は月曜日、異例の公開状を発表し、LeEcoグループが債務を返済できないことは、「上場企業として法的責任を果たせないだけでなく、投資家の利益に対する深刻な侵害ととなる。また社会的にも非常に大きな悪影響を与える」と述べた。

LeEcoの親会社、Leshi Internet Information and Technology Corp〔樂視網信息技術(北京)股份有限公司〕は深セン証券取引所に上場しているが、この4月以降、リストラ案を審査するため取引が停止されている。楽視は2004年に賈躍亭によってビデオストリーミング・サービスとして設立された。2016年にはLeEcoブランドの下で野心的な事業拡張に乗り出した。これにはアメリカのテレビ・メーカーVizioを20億ドルで買収する合意が含まれていた(この買収は後にキャンセルされた)。同グループはさらにスマートフォン、スマート自転車その他消費者向けエレクトロニクス製品の製造に進出し、さらにロサンゼルスに本拠を置く電気自動車のスタートアップ、Faraday Futureとも提携した。これらの事業の資金としてLeEcoは 数十億ドルの借り入れを行った。この際に 賈躍亭は自らの楽視グループの株式を担保として証券会社に差し入れたという。

しかしLeEcoの事業拡張は成功せず、債権者からの圧力は日増しに強まっていた。今年7月、賈躍亭は楽視聴の会長を辞任すると同時に、ソーシャルメディア上で「LeEcoの負債は必ず返済する」と約束した。

中国証券監督管理委員会によれば、同委員会は賈に対し、中国に帰国するよう9月から要請してきたが、「現在までこれに応じようとするいかなる行動も見られなかった」という。今月初め、香港のPing An Securities Group〔平安証券集団〕に47000万元(7100万ドル)の債務が返済ができなかったため、賈は中国における債務不履行者の公式リストに掲載された。 先週、LeEcoの香港法人が同地の高等裁判所に精算手続きの開始を申し立てたと香港メディアはと報じた。

われわれはLeEcoに対しメールでコメントを求めている。

画像; Bloomberg/Getty Images

〔日本版〕賈躍亭宛の公開状には「北京證監局關於責令賈躍亭回國履責的通告」(原文は簡体字)とある。『ポケットプログレッシブ中日』は、「zélìng 【责令】[動詞]責任をもって任務を遂行するよう命じる」と説明している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

中国のアクセラレーターCOMB+、7700万ドル規模のファンドを立ち上げ――中国進出目指すAI企業を支援

中国のテクノロジー界では、人材、イノベーション、ビジネスの観点から、アメリカと同じくらいAIに関する議論が活発に行われている。しかし、多くのAI企業がアメリカに拠点を構えようとする一方で、海外企業にとって中国進出のハードルは高い。

そんな背景を受け、この度新たなファンドが誕生した。中国でアクセラレータプログラムを運営するCOMB+が、中国進出を狙う海外AI企業のために6500万ユーロ(7700万ドル)のファンドを立ち上げたのだ。

先週、フィンランド・ヘルシンキで行われたSlushでお披露目されたこのファンドは、COMB+とBeijing Institute of Collaborative Innovation(BICI)が共同で設立したもの。COMB+は昨年、Sino Trackと名付けられたアクセラレータプログラムをローンチ。COMB+は同プログラムを通じて、北京とヘルシンキの拠点から、中国でのスケールを目指すアーリーステージ企業を支援しようとしており、このたび発表されたファンドは彼らの次なる一手と言える。

6500万ユーロの目標金額のうち、すでに半分以上の調達が完了しているとCOMB+ CEOのLeo Zhuは、TechCrunchとのインタビューで語った。具体的なLPの名前は明かされなかったが、政府系ファンドや政府系機関、私企業、大手企業など中国勢がそのほとんどを占めているようだ。

さらにZhuは、Sino Track同様、フィンランドからの投資にも期待していると話す。北欧からは19社がすでにSino Trackを卒業しており、COMB+はファンドの投資先としても北欧エリアに注目している。

「私たちは(フィンランドの)先進的なテクノロジーに感銘を受けた」と語るZhu。「エンジニアは通常5〜8年かけ、さまざまなテクノロジーについて学んでいる。中国は市場規模も大きいので、是非フィンランドの力を上手く活用したい」

また今回発表されたファンドでは、テクノロジーを含むさまざまな分野における中国・フィンランド両政府の協力関係を活用する目論見だ。

個別の投資額としては、100〜200万ユーロ(120〜240万ドル)の初期投資+フォローアップ投資程度を検討しているようだ。さらに各案件の上限は500万ユーロ(600万ドル)くらいになるだろう、とZhuは言う。

「私たちは、現地市場でビジネスの有効性を証明し、中国への進出を狙っている企業を投資対象として考えている」と彼は通訳者を通して語った。「そのような企業が、現状のテクノロジーを発展させ、中国市場でも活躍するための手助けをしていきたい」

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(翻訳:Atsushi Yukutake

AWSは中国から撤退しない――「法規によりインフラ資産の一部売却を余儀なくされた」と発表

AmazonはAWSが中国から撤退するという報道を否定した。同時に、中国におけるハード資産の一部を現地パートナーに売却することを余儀なくされたと認めた。

中国におけるAWSのパートナーである北京光環新網科技(Beijing Sinnet)が株主に対し、「AWSの資産を20億元(3億ドル)で買収した」と発表したことをWall Street JournalReutersが報じたため、AWSは中国から撤退するという観測が広まっていた。

しかし新しい情報はこれと異なっていた。Amazonの広報担当者はTechCrunchの取材に対して「AWSは中国にコミットを続ける」と明確に述べた。ただし、現地の法規により一部の物理的インフラを売却する必要があったことを認めた。

Amazonのコメント全文は以下のとおり。

ノー。AWSは中国ビジネスそのものを売却したわけではない。AWSは今後とも中国のユーザーに対してクラウドのリーダーとしてサービスを提供していく。中国の法規が非中国企業がクラウド・サービスの提供に必要なある種のテクノロジーを所有ないし運用することを禁じているため、中国の法規を遵守する必要上、AWSは一部の物理的インフラ資産を長年の現地パートナー企業であるSinnetに売却した。AWSの中国リージョン(北京)サービスの法律上の提供者は従来どおりAWSであり、そのサービス提供に必要な知的財産権はAWSが全世界で所有する。われわれは中国で大規模なビジネスを展開しており、今後数年の間にさらに事業を拡大する展望を抱いている。

注・われわれのこの記事はAmazonの声明を反映して修正された。

Amazonはクラウドサービス、つまりAWSを2014年に中国に導入している。クラウド・コンピューティングの分野でAWSは世界のライバルに大きく先駆けているものの、中国では現地の法規により、現地企業をパートナーにする必要があった。一方、TencentやAlibabaもクラウドに野心的に参入してライバルとなっている。Amazonは2016年9月にSinnetと提携契約を結んでいる。

AWSの中国でのビジネスは北京と寧夏の自治体の事業を処理しており、私企業ではXiaomi〔小米〕やセキュリティー企業のQihoo〔奇虎〕、ソフトウェア・メーカーのKingsoftなどもユーザーだ。

Sinnetは法規で定められた公告で、この〔Amazon資産の〕買収は「現地の法規の要求を満たすためであると同時にサービスのセキュリティーと品質を改善するもの」と述べている。

この文はもちろん 6月に発効したデータ処理に関する新しい法規を指している。これによって中国政府は国内のインターネット企業をこれまでよりさらに直接に支配することができるようになった。

中国の法規がAWSのビジネスに影響を与えたのは今回が初めてではない。

この夏、Sinnetはユーザーに対してVPNソフトウェアを運用しないよう警告した。これは中国政府が検閲していないインターネット・サービスに中国のユーザーが自由にアクセスすることを取り締まるための措置の一環だった。同様に、西側企業ではAppleもこの措置に従い、中国のApp Storeから VPNサービスのアプリが姿を消した。中国におけるインターネットの自由に対する打撃としてこの取り締まりは近年最大のものとなった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Alibabaが「独身の日」に250億ドル以上の物品販売を行い新記録を達成

Alibabaは、中国最大のオンラインショッピングの日である「独身の日」(11月11日)に250億ドル以上の物品販売を行い、再び売上最高記録を達成した。

プラットフォーム上の「全ての商取引量」を示すGMVの総計は1682億人民元となり、これはおよそ253億ドルに相当する。Alibabaの場合、海外向けセールスや海外への出荷も行っているものの、その圧倒的強さは淘宝網(Taobao)市場と天猫(Tmall)ブランドストアから来るものだ。Alibabaは、24時間の間に14.8億件の取引を処理したと言われている。

これは昨年の売上総額である1207億人民元(約177億9000万ドル)を39%も上回る結果である、これは絶好調の中国内コアビジネスに支えられて、Alibabaの収益が61%も上昇した大ヒットの前四半期に続けての偉業だ。

比較のために、Alibabaの「独身の日」の結果を、米国最大のショッピングデーと比べてみよう。小売業者たちは、ブラックフライデー(11月第4金曜日)30億ドル、サイバーマンデー(ブラックフライデーの次の月曜日)に34億5000万ドルという最高記録を記録している。

関連:ライバルのJD.com(京東商城)は、11月11日のGMVが初めて1271億人民元(191億4000万ドル)を達成したことを明らかにした。

#Double11 2017: 24時の時点で GMV の合計は1682億人民元を超えた――これは253億ドル以上であり。このうちモバイルの売り上げが90%を占めた。

今年の数字は独身の日(11月11日)における成長が回復に転じたことも示している、投資家からみて重要な点であり、Alibabaは進展を見せなければならない。

この成長はAlibabaが2013年から2015年にかけて達成した60%という伸び率には及ばないが、昨年の32%を上回るものだ。これは今日達成された数字の規模とAlibabaのこの1年成長を併せて考えると、とても印象的なものだ。

この記念日は、もともと天猫のプロモーションとして、現CEOのDaniel Zhang(当時はビジネス部門担当)によって始められたものだ。目的は単身者の孤独感を軽減しようというものだったが、その後世界最大のシッピングデーになるまでに成長した。

GMVはチャートに示されていないが、それはAlibabaの売上を示すものではないことには注意が必要だ。同社が、電子商取引から収益を挙げる主な方法は2つある。1つは、天猫に出店したブランドから、販売手数料と「家賃」を徴収する。その一方、淘宝網は店舗に対して販売手数料は請求しない、その代わりに各店舗が商品の売上や認知度を上げるための広告費を徴収することで、収益を挙げる。

人民元(RMB)と米ドル(USD)の売上を見る際には、為替の変動を考慮に入れる必要がある。

今年の11月11日は、その日の最初の30分だけで約70億ドルの商品が売られるという、急速なスタートを切った。Alibabaはわずか12時間で、昨年の売上である180億ドルを上回った

もう1つの重要な指標はモバイルだ。このより高い数字は、Alibabaが新規のインターネットユーザーにリーチできていることを意味しているだけでなく、モバイルユーザーはより引きつけられやすく、明らかに重要な目標であることも示している。

今年Alibabaは売上高の90%がモバイルから行われたと発表した。この数字は2016年には82%、2015年には69%だった。

Alibabaが発表した多くの数字の中で、以下のものが特に目を惹くものだ:

  • 受注総件数は8億1200万件で23%増
  • インフラストラクチャーを担当するAlibaba Cloudは、ピーク時には32万5000件の注文を同時に処理した
  • Alipayは15億件の決済取引を処理し41%増
  • 1500万点以上のプロダクトが並ぶ天猫には、14万のブランド(そのうち6万は海外ブランド)が出店している。
  • 167の店舗が、それぞれ1億元(1510万ドル)以上の売上を達成した
  • 17の店舗が、それぞれ5億元(7540万ドル)以上の売上を達成した
  • 6つの店舗が、それぞれ10億元(1億5090万ドル)を売り上げた

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: XINHUA/WANG DINGCHANG VIA GETTY IMAGES

電気自動車スタートアップの中国のNiobiumが10億ドルを調達か?

電気自動車は、徐々に儲かる投資対象としての地位を確立している。このまま世界的な排ガス規制と、よりクリーンな車両を求める動きが続く限りその流れは変わらない。このため、ロイターが伝えたように、Niobium(旧NextEV)が、Tencentに率いられた投資家たちから10億ドルという資金を調達するようなことが起きるのだ。

この中国の自動車メーカーは、既に来月中旬には、7人乗り完全電動SUVの発売を予定している。そしてNioは次に、自動運転電気自動車を2020年までに米国に持ち込むことを計画している。今年の3月には6億ドルの資金調達ラウンドを行っている。

上海を拠点とする同社は、今回のラウンドに、米国のヘッジファンドであるLone Pine Capitaなどの新しい投資家たちも引き込んでいて、この若い自動車メーカーのラウンド評価額はおよそ50億ドルに達している。またNiobiumは、中国の自動車メーカーChongqing Changan Automobile(重慶長安汽車)と協力して、電気自動車の開発と販売に重点を置いたジョイントベンチャーに力を注いでいる。

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(翻訳:Sako)

メルセデス・ベンツ、2022年までに全車種を電気化

メルセデス・ベンツも自動車の電気化計画を発表した。同社によれば、製造する全車種を2022年までに電気化するという。不満を感じるユーザーもいるだろうが、事態に慣れるしかない。有力自動車メーカーは電気化計画を次々に発表している。世界でもっとも重要な市場と目される中国において、最終的には化石燃料を動力とする自動車を禁止するという自動車の電気化の計画が明らかになったことが、このトレンドをますすますはっきりさせた。

メルセデスの計画はこうだ。同社のチーフ・デザイナー、Dieter Zetscheによれば、メルセデスは2022年までに同社が製造する全車種についてハイブリッドまたは全電気自動車をラインナップに加えるという。この時点で少なくとも50種の新しい電気自動車がオプションとして選択可能になる。ダイムラー・グループ傘下のもう一つのブランド、Smartについては2020年には完全に電気化される。

これによりメルセデス・ベンツは、Volvo(ラインナップの全電気化を2019年までに達成する計画)やフォード・リンカーン(2022年までに電気化)と並んで、スケジュールを明示した上で全車種に電気化オプションを加える高級車メーカーとなった。

上記のように中国は最終的には化石燃料車の国内での販売を禁止する計画だが、その期限が未定だ。中国の自動車販売台数は近年、世界をリードしており、ますます急ピッチでその数を増やしている。そこで自動車メーカーは中国市場のEV化をにらんで方針の転換を図らざるを得ないこととなった。中国のEV志向には多くの合理的理由がある。またフランスとイギリスも2040年までに化石燃料自動車の製造を終了する計画だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

中国、ICOを全面禁止――「金融詐欺、ネズミ講」と強く非難

ICO(Initial Coin Offering)に対する風向きが変わった。少なくとも中国ではそうだ。アメリカでもSEC〔証券取引委員会〕がICOのリスクを公式に警告しているが、最近急増してきた暗号通貨によるクラドファンディングを中国の当局は法規を改正して全面的に排除すると決めたようだ。

今日(米国時間9/4)、中国人民銀行を筆頭とする省庁を横断する委員会は次のように公告した[中国語原文]。これによればICOによる資金調達は「経済および金融の秩序を著しく乱す活動」として直ちに禁止された。

中国における金融ニュースメディア、Caixin〔財新〕 [中国語版]の記事によれば、同委員会は60箇所の暗号通貨取引所のリストを作っており、これらの証券取引所に対して監督当局は調査を行うと同時にその報告の提出が求められているという。これと同時に中国では新規のICOは凍結された。

ICOは新たな暗号通貨トークンを生成し投資家に売却することにより資金調達を行う手法で、多くの場合Ethereumが利用されている。効果として現実の株式を発行することに類似するため、金融監督当局がこのような活動を規制するかどうかに注目が集まっていた。

中国の委員会はICOの大部分は「金融詐欺であり、ネズミ講(pyramid scheme)である」と警告していた。このような見解はシンガポールのMAS〔シンガポール金融管理局〕も取っていたところだ。

「ICOは匿名取引を本質とするため、資金洗浄、テロリストの資金調達に利用されるリスクが高い。これによって巨額の資金が短期間に調達されている」とシンガポールの国営銀行であるMASは8月1日の声明で述べている。

ICOに関与している点で調査の対象となるか暗号通貨取引所がどことどこになるか、正確にはまだ不明だが。 ICOageICO.infoという中国の2大ICOトークンの取引所はサービスを中止した。また新規のICOの受付も停止している。両取引所ともこの運営停止は「自発的なもの」としている。

今年に入ってICOは世界各地で飛躍的に増加した。ゴールドマン・サックスのレポートによれば、2017年上半期に暗号トークンの売却により調達された総額は伝統的なベンチャーキャピタルによるアーリーステージの投資額を上回ったという。

今年のICOによる資金調達は16億ドルを超えたとされる。2017年にはいって、2社のbitcoinによる時価総額が10億ドル以上となっている。ただしその両社とも現在市場になんらのプロダクトも提供していないため、時価総額の意義は不明だ。

中国は世界でもっとも活発なbitcoinコミュニティーを擁しており、ICOブームでも資金調達側、投資家側の双方で中心的な役割を果たしてきた。

国営通信の新華社は7月に「中国企業は2017年上半期に10万5000人の投資家から3億8300万ドルを調達した」と報じている。

SEC〔アメリカ証券取引委員会〕はICOに対して声明を発表しているものの、まだ決定的な行動を取っていない。そこで世界の関心は中国に集まることになる。ICOを規制、監督するメカニズムはどのようなものがあり得るか、そもそも多様なICOを規制下に置くことが可能なのかが注目される。また暗号通貨市場における中国の重要な位置に照らして、この取締によりICO対し、また暗号通貨市場全般に対してどんな影響が生まれるのかもも興味ある点だ。

ベテランの暗号通貨専門家は今回の取締を2013年に中国当局が暗号通貨取引を禁じた事件と比較している。これにより元を通貨として暗号通貨を売買することが不可能になり、暗号通貨は大幅に下落した。しかしその後、元による預け入れが復活し、bitcoinは新高値を記録した。一部の取引所では5000ドルにも達しているという。

画像: crystal51/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

2人の元Google社員が、AIを用いて求職活動のマッチングを行う

2人の元Google社員が、ハイテク産業界の労働者たちに対して、理想の雇用主たちとのインタビューが確実になるようにしようとしている。人工知能を活用するのだ。

この1年ほどの間に、AIは広範な課題に対して適用されてきた。元GoogleのエンジニアだったRichard LiuYunkai Zhouが設立したLeap.aiは、AIがテクノロジー業界の雇用問題を解決することに利用できると考えている。

周知のように、現在のLinkedInは、オンライン求人を代表する体重360キログラムのゴリラだ。しかし、それはとても完璧とは言えない。ほとんどのHR(人事)チームと採用チームは、積み上がるデジタル履歴書を捌くために、終わることのない苦労を続けている。昨年Microsoftに260億ドル以上で売却されたLinkedInの中ではヘッドハンティングオプションが提供されている。しかしそれほほとんどの場合、質というよりは量を担保するもので、このサービスを活用するためには、多大な時間を注ぎ込んで手作業を行う必要がある。

Leap.aiの創業者であるLiu(CEO)とZhou(CTO)は中国からやって来て、もう長い間シリコンバレーに住んでいる。そして彼らは求職者が持つスキルと経験を、彼らの希望と雇用者候補のカルチャーに対してより効率にマッチさせる方法があるに違いないと考えたのだ。

「私はおそらく、私の部門に500人ほどを雇い入れました」とLiuはTechCrunchに語った。彼はGoogleで8年間を過ごし、Project Fi(Googleの格安SIMプロジェクト)のエンジニアリング責任者となった経験をもつ「そこで雇用が難しいことを学びました」。

「学び、協力し、統率力を発揮する能力は、強いアピールポイントとなりますが、それをインタビューから読み取るのは至難の業です。好奇心や動機なども、インタビュープロセスの中では多くを測ることはできません」と彼は付け加えた。

Leap.aiは18カ月前に設立され現在10人のスタッフを擁している。候補者のより完璧なキャリア志向を様々なデータを駆使して組み上げるが、使われるデータとしては例えば、就労履歴、様々な資格やスキルといった普通のものから、個人的興味、この先のキャリアに対する希望などまでが勘案される。そのプロセスの一部には、「理想」の雇用主と自身の理想とする役割のマッピングも含まれる。

そこからシステムは、DropboxやUberなどを含む(Leap.aiの常連客である)雇用者側と、求職者をマッチングする。求職者が働くことを熱望する候補の会社の名前を2つ挙げて貰うことで、Leap.aiは少なくとも1つの企業とのインタビューは保証できると考えている(特に希望対象がスタートアップでGoogleのような巨大企業ではなかった場合)。

なぜなら、企業は自身の文化に合った候補者に本当に価値を置いていて、財務的利益を超えて彼らを採用する意欲があるからだ、とLiuは説明する。

「ご存知のように、LinkedInは(人を集めるという)最初の問題は解決しました。しかしひとりひとりがどのように優れていて、どのように組織にフィットするかは、ずっと難しくて、ずっと価値がある問題なのです」と彼は語った。

Leap.aiサービスはまた、求職側や求人側から収集したデータに基づいて、候補者が働くのに適している場所について個人的な提案を行なうサービスも提供する。

これまでのところ、得られた結果は印象的なものだ。同社は、雇用が成立したときにのみ報酬を受け取るが、Liuは8月には利益が出るようになると述べている。現在までに、提供されたマッチングのうちの70%で、対象企業の(少なくとも)最初のインタビューはパスしている。

現在は、ニューヨーク、ボルダー、オースティン、シアトル、シリコンバレーの候補者に焦点を当てているが、米国内と海外の両方に、その範囲を広げようとしているところだ。これは、現行の50以上の顧客からの要請によって推進されている部分もある。Liuによれば、Leap.aiは現在、インドや中国の会社からの興味が大きく高まっていることを感じているそうだ。この両国の会社の中には、海外から故国に帰り、ハイテクプロジェクトで働きたいと思う海外居住者を探そうと考えるものが増えつつある。

すでにLeap.aiは、そうしたアジア系企業による米国での雇用を支援するための専用機能を構築している他、中国を起点にローカル採用オプションを試す予定だ。

中国でのネットワーク公開の準備は進んでいる。Leap.aiの創業者たちは、Googleの中で腕を磨いた中国人エンジニアとしての地位の他に、中国のトップテクノロジーVCの1つであるZhen Fudから支援を受けている。これはこれまで調達した240万ドルのシード資金の一部を構成している。

「私たちは積極的に中国でのチャンスを模索してはいますが、中国に進出する前に米国で確固たる地位を確立したいと考えいます」とLiu。「創業当初から、米国、中国、インドを目標として置いていました」。

同社の野望は単に雇用を支援するだけではなく、LiuとZhouがGoogleに参加していたときのような、メンターシップを再現することも考えている。すなわち、若い被雇用者たちが、キャリアゴールを設定しその野望を達成するためにステージからステージへの移動を描き出すことを助けるということだ。それは現在の会社の中での新しい役割かもしれないし、どこか外へ出て実現されるものかもしれない。

プロダクトの観点からみれは、これは人びとがずっと一定のキャリアコンパニオンとして使い続けるリソースとなることを意味する。既にスタートアップのアプリは、単なる就職活動を超えて、既にキャリアや個人の開発にむけて焦点を当てていて、この先更に深みが加えられていく予定だ。

「私たちはGoogleで積極的にメンタリングを行ってきました」検索の巨人で10年近く働いていたZhouはそう語る。「長期的観点でのキャリアの成功を助けたいのです」。

その成功の尺度として、同社はスタッフの半分以上を自社のサービスを通して雇用している。そして今は、自分たち以外の世の雇用者と従業員の双方にもメリットを与えられことを望んでいる。

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(翻訳:Sako)

ソフトバンクC&S、Ofoと共同でシェアバイク事業を開始――まずは東京・大阪で9月から

WeWorkの日本進出支援を発表してから約1か月が経ち、ソフトバンクは新たなユニコーン企業の日本進出をサポートしようとしている。本日同社は、ドックレスシェア自転車を日本に広めるべく、中国のシェア自転車サービス大手Ofoと協業すると発表した。

これまでにAlibabaやDidi Dhuxing、DST Globalらから合計10億ドル以上を調達してきたOfo。登録ユーザー数は1億人以上、シェア自転車の数は800万台とされている同社のサービスは、モバイルアプリ上でQRコードを読み込むことで、どこでも自転車を乗り降りできるというものだ。

Ofoが協業することになるソフトバンク コマース&サービス株式会社は、IoTやロボット、クラウドソリューションを提供しているソフトバンクグループの1社だ。まずは今年9月に東京と大阪にOfoの自転車を配備するとのことだが、恐らくそれ以降サービス提供地域を拡大していくのだろう。

「日本のことは重要な市場と位置付けています。自転車文化が根付いている日本で、Ofoはより便利でコストメリットのあるサービスを日本の皆さまに提供していきます」とOfoのAPAC部門を率いるLawrence Caoは声明の中で語った。

ドックレス自転車の解錠について説明するOfo CTOのAustin Zhang

WeWorkとは違い、今回の協業には(少なくとも現時点では)資本的なやり取りは含まれていないが、既に両社はさまざまな点で繋がっている。これまでに幾度となくソフトバンクと共同出資を行ってきたAlibabaは、Ofoが7億ドルを調達した直近のラウンドでリードインベスターを務めたほか、ソフトバンクの投資先であるDidi昨年Ofoに出資している。

最近の報道では、ソフトバンクが中心のラウンドがOfoが10億ドル超を調達しようとしていると噂されていることを考えると、今回の日本進出が両社の長期的な関係のスタート地点となる可能性もある。

Ofoは今年中に200都市へ進出するという野心的な目標を掲げているが、2017年の前半だけで、既に中国を中心とする100都市への進出(もともとはこれが2017年の目標だった)を果たした。そして現在同社は海外市場へ果敢に攻め込もうとしている。これまでのところ、イギリス、シンガポール、タイ、カザフスタン、マレーシアには進出済みもしくは進出間近の状態にあり、今回このリストに日本が加わることになった。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

香港証券取引所に人気再燃の兆し――アジア企業のアメリカ志向を覆せるか

アメリカのいわゆるIPOウィンドウは、昨年の小康状態を経て2017年に再び開いたと言われているが、地球の反対側に位置する証券取引所でも状況が好転しつつあるようだ。

香港証券取引所(HKSE)で、テック企業のIPOがルネサンスを迎えようとしているのだ。昨年12月にはセルフィーアプリのMeituが、テック企業としては過去約10年で最大規模となるIPOを果たし、5億ドル以上を調達した。最近ではPCゲームブランドのRazerや、Tencent傘下で電子書籍サービス企業のChina Publishingも同取引所での上場の意向を示している。

香港は2014年に、その名を世界に知らしめるビッグチャンスを逃したと言われている。当時Alibabaが上場を検討していたものの、HKSEは同社の株主構成を容認できなかったため、結局Alibabaはニューヨーク証券取引所をIPOの舞台に選んだのだ。しかしそれから3年近くが経ち、状況が変わり始めたようだ。

先月中国の深センで行われたTechCrunchのイベントでは、オンデマンド物流企業Lalamoveの幹部が、2020年までに香港で上場する計画だとステージ上で語っていた。今年の1月に行われたシリーズBで3000万ドルを調達した同社で国際部門のトップを務めるBlake Larsonは、アメリカと香港の同時上場という可能性もあるが、「香港でもグローバルなテクノロジー企業をつくれるということを証明するため」同地での上場を優先的に考えていると話した。

海外企業も香港には注目しているようだ。今月行われたRiseというイベントで、TechCrunchがアジアを拠点とする2社(どちらも1億ドル以上を調達し世界中で営業している)のファウンダーに話を聞いたところ、彼らはHKSEでのIPOに向け、かなりの時間を割いて準備を進めていると語った。

Alibabaグループのフィンテック企業Ant Financialにも香港でのIPOの噂がある。しかし同社は今年の始めに最大600億ドルの評価額で30億ドル以上を調達しており、この資金調達によってIPOの計画が最短でも2018年まで先送りされたと言われている

HKSEは、MeituやRazer、China Publishingといった有名企業の誘致には成功したかもしれないが、世界中の企業にとって有力な選択肢となる上では、まだまだ越えなければならない壁がある。

まず、上記3社は全て中国国内で有名な企業やブランドで、これが同取引所に上場するための条件なのだ。さらに財務面での条件も厳しく、スケール中の企業が香港で上場を果たすのは難しい。

「HKSEはテック企業が上場する際のオプションになり得ると思うが、香港政府や投資家は赤字テック企業の分析の仕方やルールを変えていかなければならない」とアメリカ・中国を拠点とするVCのGGVでパートナーを務めるHans Tungは話す。

シンガポールの政府系ファンドTemasekの関連会社Vertex Holdingsで、社長兼CEOを務めるKee Lock Chuaも同じ意見だ。

「HKSEは流動性や評価額の観点から言って、テック企業の上場先としてふさわしい場だ。(しかし)まだ黒字企業が好まれる傾向にある」とChuaはメール内で語った。

「急成長を遂げながらも短期的には赤字のテック企業であれば、アメリカの方が上場しやすいと感じるかもしれない」と彼は付け加える。

別の問題が株主構成に関する条件だ。HKSEは種類株を認めていないことで知られている。これこそAlibabaがアメリカをIPOの場に選んだ理由で、結果同社はアメリカで歴史的な上場を果たし、香港はその様子を指をくわえて見ているしかなかった。

「HKSEはAlibabaの株主構成を容認して、香港で上場させるべきだった。Googleをはじめとするテック企業は、NASDAQ上場の際に種類株を発行していた。Alibabaが香港で上場していれば、潮目は大きく変わっていただろう」とTungは説明する。

その一方で、諸々の条件を乗り越えて上場を果たした若い企業も存在する。

「我々のポートフォリオ企業であるIGG(モバイルゲーム開発)は、当初GEM(新興企業向けの市場)に登録されていたが、その後メインボードに格上げされた。今では同社の時価総額は25億ドルに達する」とVertexのChuaは話す。

先行きが不透明なアメリカの政情と、ユニコーン企業がアジア中で増加していることを受けて、HKSEは有力な上場先になりつつある。しかし、依然アジア企業の上場先としてはアメリカが人気で、直近でIPOを考えている企業ではその傾向が顕著に見られる。

シンガポール発のゲーム企業Sea前Garena)やベトナムのゲーム・メッセージング企業VNG、EC企業のReboonz(VertexとGGVの投資先)といった企業は、VCを中心としたエコシステムから卒業し、新たなチャンスを求めていると言われているが、報道を見るとアメリカでのIPOばかりが話題になっている。

しかし最近では、アメリカで上場したアジア企業(中国企業を除く)に関するいい話を聞かない。

恐らく、マレーシア発のMOL Globalの話がもっとも注目に値するだろう。決済サービスを提供している同社は、NASDAQに上場してからの18ヶ月間、嵐のような日々を過ごした。2014年10月の上場直後に30%も下がった同社の株価は、その後も急落を続け、結局2016年4月には上場廃止となった。皮肉なことに、MOLはRazerに投資していることから、同社のIPOにも関わっている。

新しいアジア企業の中では、Seaが最初にアメリカで上場を果たす可能性が高い(日本のLINEはリスクを分散するため、東京とニューヨークで同時上場した)。彼らのIPOがいつ行われ、株価がどのように動くかということが、同じ道を辿ろうとしている企業の決断を左右することになるかもしれない。その一方で、RazerとChina PublishingがHKSEで上場することで、アジアのファウンダーがアメリカから香港に目を向けるようになるかも注目だ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

中国の医療系スタートアップ、Infervisionが日本進出へ――機械学習と画像認識をがん診断に適用

日本版編集部注:ディープラーニングと画像認識をがんの診断などに利用するスタートアップ、中国のInfervisionが日本市場に進出することが明らかになった。

TechCrunch Japanの取材に対し、同社は「日本市場への進出にあたり、いくつかの医療設備メーカーに私たちのプロダクトを紹介したところ、彼らからは良い反応が得られた」とコメントした。また、「日本でのパートナーシップも探しているところだ。病院などの医療機関や大学との連携を考えている」とも話している。

以下では、米国版TechCrunchが公開したInfervisionに関する記事を翻訳して紹介する(2017年5月公開)。

中国では、およそ60万人が毎年肺がんで亡くなっている。大気汚染が進み、喫煙率も高いこの国では、肺がんは主な死因の1つだ。肺がんの発生件数は、2020年までに毎年80万件のペースで増加するといわれている。

状況が悪化し続けるなか、中国の国営メディアは肺がんの脅威について報じただけでなく、大気汚染を手に負えない状況にまで悪化させたとして政府関係機関の責任を追求している。

中国が抱える問題は肺がんの発生件数の増加だけではない。質の低い医療もこの問題に拍車をかけている。手遅れになるまで肺がんの発見が遅れることもある。

北京に拠点をおくInfervisionは、機械学習とコンピュータービジョンのテクノロジーをがんの診断に利用するスタートアップだ。同社のCEOであるChen Kuan氏は、この問題を身をもって体験した。

540万の人口をもつ中国の都市Mianyang。この地域に住んでいたKuan氏の叔母は、地元の病院で適切な医療を受けることができず、彼女のがんは発見されることなく放置されてしまった。

「単純に、十分な知識や技量をもつ医師の数が足りていないのです」とKuan氏は語る。「医師は毎日かなり多くの患者を診断しなければならず、患者が受ける医療の質には大きなバラつきがあります」。

特に、放射線医師の不足は深刻だと彼はいう。

2012年、Kuan氏はシカゴ大学で経済学と政治学の2つの博士課程に在籍していた。彼はそこで機械学習のテクノロジーにはじめて触れ、これが後のInfervision創業のきっかけとなる。

中国出身の友人たちと共に、彼はディープラーニングと人工知能がもつ可能性に惹きこまれていった。しかし、Infersionのアイデアが具体化したのは、2年前に彼が中国でコンピュータービジョンとディープラーニングについての講義を行ったときだった。

ある放射線医師がKuan氏の講義を受けていた。彼は、長引く病気に苦しむ患者を助けるために、がんの診断に機械学習を利用してはどうかと考えていた。そして、その気持ちがKuan氏の心を打った。Kuan氏は博士課程を中退し、中国に戻ってInfervisionの創業準備を始めた。

それからあっと言う間に2年が過ぎ去り、Sequoia Capital Chinaなどから資金を集めたInfervisionは、Nvidiaが主催するGPU Tech Conferenceに登壇するまでになった。

Infervisionは、2003年に大流行したSARSに対応するかたちで中国全土に導入されたインフラを活用している。同社は、その当時に収集されたレントゲン写真を利用してアルゴリズムをトレーニングしたのだ。Infervisionはそれに加えて、同社のソフトウェアを導入する20の病院から得たリアルタイムデータも活用している(Peking Union Medical College Hospital、Shanghai Changzheng Hospitalなど)。

また、InfervisionはGE Helthcare、Cisco、Nvidiaなどと業務提携を結び、同社の技術向上を目指している。昨年のローンチ以降、同社はこれまでに10万枚以上のCTスキャン画像とレントゲン画像を解析した。

Infervisionは病院のシステムにオンプレミス型のソフトウェアをインストールし、病院から収集した新しい画像データによって画像認識と診断ツールの精度を向上させているとKuan氏は語る。

Kuan氏によれば、アルゴリズムのトレーニングには2つの段階があるという。まず、放射線医師から集めたアノテーション済みのデータがInfersionのトレーニングデータに加えられる。その後、精度が向上したソフトウェアが病院のシステムに再配信されるのだ。

「このテクノロジーが医師の代替品になることは絶対にありません。これは何度も繰り返される仕事を削減するための技術なのです」とKuan氏は語る。

[原文]

(翻訳:木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Appleは初めて中華圏担当のマネージングディレクターを置く、中国政府とのコミュニケーション充実のため?

Appleが同社のIsabel Ge Maheを、中華圏における同社の事業の、初めてのVPおよびマネージングディレクター(専務取締役相当副社長)に任命した。

中国生まれのGe MaheにAppleのチャイナビジネスの経営管理が任されることになり、彼女の直接の上司はCEO Tim CookとCOO Jeff Williamsになる。オフィスは、“今夏の終わりに”上海に開設される。

Ge Maheは現在カリフォルニアにいて、過去9年間、Appleのワイヤレス技術部門のソフトウェア開発チームを率いてきた。それらは、実際に製品に搭載されるセルネットワーク、Wi-Fi、Bluetooth、NFC、位置対応、モーションキャプチャなどの技術開発であり、Appleによると彼女は、Apple PayやHomeKit、CarPlayなどの技術開発にも関わった。

“Appleの社員なら誰もが、自分たちがビジネスをするコミュニティに貢献できることを誇りに思っている。そして私も、私たちのチームと中国の顧客、政府、そして企業との結びつきを深め、イノベーションとサステナビリティを推進していけることを、楽しみにしている”、とGe Maheは声明で述べている。

彼女の声明に政府が言及されていることが、興味深い。それは、Ge MahaがAppleと中国当局との関係強化に指導的な役割を果たすことを、暗示しているようである。Appleは、初めて、中国を物理的所在地とするデータセンターを開設するプランを今月発表したが、それは6月1日に発効した同国の新しいサイバーセキュリティ法と関連があると思われている。そして、今回のトップクラスの人事も。

最近ではAppleのこの圏域の売上が同社の決算報告の明暗を左右するから、中華圏にMDを置く経営上の理由は数多くあるだろう。しかもここでトップを取れば、この国の面倒な問題にも対処しやすいかもしれない。たとえば今年の早い時期に北京当局は、ライブストリーミングの同社のスタンダートについて説明するよう、Appleに求めた。そしてその後政府は、メディアに関する同社のスタンダートに違反していることが明らかとなった数多くのライブストリーミングサービスを閉鎖した

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

中国初の月への有人任務に備えて、4人のボランティアが密閉された実験室で200日間過ごす

中国トップの航空学大学の4人のボランティアが、同国最初の有人探査隊を月に送る準備を整えるため、200日間密閉された実験室内で外部との交流なしで暮らすことになった。人民日報(中国共産党発行の公式新聞の1つ)によれば、同グループはこの任務を、北京航空航天大学(略称:北航大学=Beihang University)内にある160平方メートルの研究室で日曜日に開始した。

中国は米国とロシアに続き、2013年12月に月面への軟着陸を成功させた。現在政府は、今後15〜20年以内に月面に宇宙飛行士を送り込むことを目標として 、有人任務を遂行することができる宇宙船の開発に取り組んでいる

最近承認された米陸軍予算には宇宙戦闘専任の新たな部隊の創設も含まれているが、米国と中国がすぐに宇宙競争を始めるという意味ではない。米空軍は、軍隊の現在の部隊からリソースを奪うと主張して、この提案を阻止しようとしている。

中国は月への熱望は他国との平和的協力の精神の下にあると主張しているが、NASAは安全保障上の懸念から、2011年以降中国側と協力することを議会によって禁止されている。しかし、以前NASA長官であったCharles Bolden元管理官は、有人ミッションを宇宙に送るプログラムのチャンスを米国が逃してしまうのを防ぐため、禁止は一時的なものに止まるべきだと述べた

北航大学の研究室であり、月の宮殿を意味する「月宮一號」(Yegong-1)は、生物生命維持支援システム(BLSS=bioregenerative life support system)の信頼性と、それがそれぞれの乗務員にどのようにどのように影響するかをテストするために5月10日に開始された1年に渡る実験の一部である。

「この種のものとしては世界最長のこの実験は、中長期に渡る宇宙飛行士の安全と生命を保証するために必要なテクノロジーの開発を助けるものです」と同大学は英語サイト上で述べている。なおすべてのボランティアは北航の大学院生たちだ。

月宮一號には、生活空間用と植物栽培用の2つのモジュールがある。言うまでもないが、人間の排泄物はバイオ発酵プロセスで処理される。現在のボランティアは、60日間の任務を終えた別のグループに続くものだ。そして現在のグループが去った後、ボランティアたちの第3陣がやって来て、さらに105日間を過ごす。これにより合計365日間の実験が完了する。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: STR/STRINGER/GETTY IMAGES

中国のバイクシェアリングサービスOfo、自転車を広告化――北京でミニオン風の自転車を発見

週末にピッタリな話として、中国各地に広がるバイクシェアリングスタートアップ、そして彼らの自転車に関する話をお届けしたい。この度、業界の最前線にいる大手企業が、自転車を広告スペースとして使い始めたことがわかった。

2社あるユニコーン企業のひとつで、ドックレスのバイクシェアリングサービスを提供しているOfoが、ユニバーサル・ピクチャーズの『怪盗グルー』シリーズ第3弾(原題『Despicable Me 3』)の公開を控え、人気キャラクターミニオン風にカスタマイズされた自転車を配備しているのが見つかったのだ。

これは中国で現地のテック業界を追うEdmond Lococoが発見したもので、彼は本日(現地時間6月30日)北京の中心部にあるビジネス街で、たまたまミニオン自転車を見つけたと教えてくれた。下の写真からわかる通り、車輪の内側には映画の広告が貼られており、ハンドルの真ん中にはミニオンのゴーグルが取り付けられている。Ofoの自転車はもともと黄色なので、そこまで違和感もない。

同社によればサービスの利用回数は1日あたり1000万回にのぼるため、確かにOfoの自転車は広告主にとっては魅力的で新しい広告媒体として映るだろう。さらに、レンタル料は1回あたり1ドル以下に設定されているため、広告のような新しい収益源が彼らにとってどれだけ重要かというのも想像に難くない。

先週深センで行われたTechCrunchのイベントには、Ofoと彼らの最大のライバルMobikeの幹部が参加し、どちらも都市計画の手助けや渋滞の解消などのために自分たちのサービスがいかにユーザーデータをうまく利用しているかについて話していた。

レンタル料の安さもあり、これまでマネタイズはどちらの企業にとっても大きな問題だった。しかし、何億ドルという資金を調達し、何百万人というユーザーを獲得した両社の規模をもってすれば、自転車の貸出以外のビジネスにも参入していけるのは間違いない。

多い日には1日の利用回数が2500万回にのぼると言われているMobikeも、オンデマンド配達や小売店での割引サービス、データサービスといった将来的なマネタイズの手段を模索しているとCTOのJoe Xiaは先述のイベントで語っていた。しかし、その中に広告は含まれていなかった。

現在Ofoにミニオン自転車や今後の広告ビジネスに関するコメントを求めているので、新たな情報が入り次第この記事をアップデートしていきたい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

中国トップのデートアプリTantanが、収益化と海外展開のために7000万ドルを調達

中国のスタートアップTantan(Tinderと類似したアプリ)が、ビジネスの初の収益化と、海外展開の可能性を探求するために、7000万ドルの新規資本を調達した。

設立3年のTantanは、現在「認証済みの」(つまり偽アカウントではない)ユーザーが6000万人いて、そのうちの600万人が日常的にアクティブなユーザーだと主張している。それらのアクティブユーザーのうち、75%が2日に一度はアクセスするユーザーだ。印象的なことに、女性ユーザーに対してフォーカスしたマーケティングのおかげで、ほとんどのデートアプリよりもはるかに女性比率の高い6:4の男性:女性比率を達成していると主張している。

今回のシリーズDは、ビデオソーシャルネットワークのYYと、Genesis Capitalによって主導され、SAIF ChinaならびにZhongwei Capitalも参加している。YYは中国の最有力なライブストリーミングサービスの1つであり、既にMomo(友人ベースのデートアプリ)や、マイクロブログサービスのWeiboのようなソーシャルネットワークが、素晴らしい経済的成功をライブストリーミングへの移行で達成していることを知っている私たちにとっては、今回のラウンドは興味深い。Tantanは今回初めて収益化を行う準備をしているが、現時点ではライブストリーミングへの移行は計画していない。

「ビデオストリーミングを行なうかどうかに関するお約束はできませんし、計画もありませんが、もしある時点でその気になれば、(YYが)技術も経験も保有しています」と、TantanのCEOであるWang YuはインタビューでTechCrunchに語った。

「私たちとYYの両者は、中国内の出会い系市場には、現在巨大な機会があると考えています、特にMomoがそこから去った現在では」と以前ファッションコミュニティP1を立ち上げたWangは付け加えた。

Tantanはストリーミングではなく、メンバーシップサービスを通して収益を上げることに重点を置いている。月額料金を支払う「VIP」ユーザーのために一連の追加機能を提供することになる。その意味では、これはTinder Plusによく似ている。

「私たちは、より多くのお金を使って貰い、さまざまなユーザー体験を得ることができるサービスを試していくつもりです。まずは、いくつかの都市で、VIPサービスをテストするつもりです」とWang氏は述べたが、具体的な詳細については語ることがなかった。

Tantanのもう一つの拡大の焦点は、中国の外に出ることだ。Wangによると、同社はアジアを中心に、特にインドを中心に東南アジアへの拡大を考えているものの、まだ目標は設定していないと述べた。

世界的なブランド力のおかげで、Tinderはどうやら中国を除くアジア全域で好調なようだが、個々の市場には小規模なライバルたちがいる。また投資家たちから5000万ドルを調達し、ストリーミングサービスにも拡大したPaktorが、地域的なプレゼンスを維持しているようだ。

拡大しようとする他のプレーヤーを買収する可能性は残されているかもしれないが、WangはTantanはその成長を買おうとは考えていないと述べた。その代わり、適切な時期に独自のサービスを立ち上げていくつもりだということだ。

Crunchbaseによれば 、この新たな資金調達で、Tantanの投資家からの調達額は1億2000万ドルになる。前回の調達は、2016年5月にDST Globalの主導によって行われたシリーズCの3200万ドルだった。

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(翻訳:Sako)

Teslaの中国国内における車両工場建設が合意間近

Bloombergのレポートによれば、Teslaの次のGigafactory(巨大工場)は中国に設置される可能性がある。Teslaは同社の車両の、中国内での初の製造に向けて、上海市と交渉中であるが、上海近郊の工業開発地区に、製造施設を建築するための合意が間近ということだ。

合意の最終的な詳細は依然として流動的であり、Bloombergによればそれが公式に発表されるタイミングも、まだ変わる可能性があるということだ。Teslaはまた、他の海外から来た自動車メーカーたちが現地生産を行なう際に行ってきたように、現地の自動車メーカーとジョイントベンチャー契約を結ぶ必要がある。

中国における大いなる成長を望んでいるTeslaにとって、地元の存在はとても頼もしい。現在は、中国内で購入されるModel SおよびModel Xの車両には25%の関税を課されているので、Teslaがこの先ビジネスを、より手頃な価格帯の市場セグメントに拡大していくためには、現地の組立により課税を回避することが鍵となる。

中国はまた、車の電動化に向けての積極的な目標とインセンティブを持っている。これはTeslaの世界的な目標の一助となるだろう。3月には、TeslaはTencentからの出資も受けている。TencentがTeslaの株式の5%を18億ドルを取得した。これにより現地でも存在感を高める準備が整うことになる。

Elon Muskは、Teslaは今でもGigafactoryのための新しい場所を世界中で探しており、来年には最大4箇所の巨大工場の場所を公表できるだろうと語っている。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: DAVID BUTOW/CORBIS/GETTY IMAGES

LeEcoのアメリカ進出は失敗の典型―中国のコングロマリットの派手な上陸作戦の結果は大量レイオフ

1ヶ月以上前から点灯していた数々の赤信号の末、LeEco〔楽視〕のアメリカでの事業はついに人員の大幅削減に追い込まれた。LeEcoは中国の野心的なコングロマリットだが、アメリカだけで325人の社員をレイオフすることを明らかにした。私が受け取ったメールアドレスの変更通知の数からするとすでにレイオフは実行されているものと思われる。

月曜日のフットボール・ファンのように後知恵で試合を批評するのは簡単だとはいえ、惨事が起きたのは事実だ。しかもこのことは以前から予想されていた。LeEcoがアメリカで重要なスタートアップとみなされていたのはわずか1年前だという点には注意を払うべきだろう。大がかりで派手なプレス・カンファレンスが実施されたのはなんと昨年10月中旬だ。わずか7ヶ月でこの結果に終わるとは驚くべきスピードだ。しかしアメリカ事業には当初から事態を警告するシグナルはいくつも出ていた。

LeEcoはもちろん警報を無視した。同社は300人以上が職を失うという事態を招いたことを惨事とは認めず、何か悪いことが起きるたびに口にされる言い訳を持ち出している。つまり悪かったのは同社の戦略ではなく、資金調達で思わぬ障害を経験しただけだというわけだ。LeEcoはインドでレイオフを実行したときにも同じような声明を出した。

TechCrunchがコメントを求めたことに対する回答は、誰彼となく質問した者全員に送られるテンプレート・メールで、「消費者との間の壁を取り払おうとしたわれわれのビジョンは正しいと信じている。アナリストもこの点を認めている。今回、必要とする資金の調達ができなかったため、われわれはアメリカ事業において段階的アプローチ(a phased approach)を取ることとした」と書かれていた。

しかし「段階的アプローチ」というのは数百人をレイオフした後で使うべき言葉ではあるまい。そもそもこの会社の「スマート・ビジネス」そのものに問題があったというべきだ。国際的に展開して成功を収めた企業なら、中国とアメリカのように根本的に文化を異にする新市場への参入がいかに難しいか教えてくれるはずだ。われわれが掲載したAppleの中国進出の記事を見れば分かる。

LeEcoは「小さく始める」という戦略と無縁だった。無謀で派手な鳴り物入りが同社の本質だった。これが50エーカーに上るアメリカYahooの広大な跡地を高値で買わせ、金のかかった巨大な看板を立てさせた理由だろう。LeEcoの建設計画を聞けばアメリカ本社はまるでテーマパークのようなものになりそうだった。

アメリカで事業をスタートさせるに当たって、LeEcoは安いスマートフォンやテレビを売るだけが目的でないと宣言した。万人にすべてのもの提供するというのだ。いくぶんApple的、いくぶんNetflix的、いくぶんTesla的、いくぶんAmazon的というわけだ。VRヘッドセットやら自転車やら、加えてセレブのカメオにはトランスフォーマー・シリーズで知られるマイケル・ベイ監督まで動員した。同社はマット・デイモン主演の中国を舞台にしたアクション大作『グレートウォール』の製作にも出資し、ハリウッドの映画スタジオ・システムにも参入しようとした。

しかしこうした派手な車輪の回転は突如ストップした。LeEcoは約束のごくわずかな部分しか実現できなかった。LeEcoがスマートフォンを作る約束だけをしていたのならアメリカ市場を研究するチャンスはもっとあっただろう。失敗の可能性も低かったはずだ。しかし出だしで新市場の本質を見誤った場合、取り返すのは不可能だ。イカロスは太陽の側まで舞い上がって墜落したと言われているが、LeEcoはそれどころではない。世界に向かって「これから新しい太陽を作り、新しい太陽系を作る」と宣言した。

同社の今後の戦略がどうなるかは容易に想像できる。。同社はリストラ後、アメリカの中国語を話す家庭向けに「中国版Netflix」のようなサービスを提供しようとするだろう。同社はすでに中国語のコンテンツを持っているからこれは容易だし、マーケットもそれなりに大きい。アメリカ市場への参入の当初からこの道を選んでいればLeEcoの運命もかなり違ったものになっていたのではないか?

LeEcoの声明は大部分が無内容な企業語の大言壮語に過ぎない。企業も政治家も誤りを認めたがらず、失敗を自分の力の及ばない外部事情のせいにしようとする。そこでそうした外向きの発言ははともかく、社内では戦略の失敗を認めて今後の新戦略を立ててもらいたいものだ。どこからか再び資金が入ってくることを期待して小手先の修正でつないで済ませられる段階ではないだろう。

これはアメリカの消費者にとって安いスマートフォンの選択肢が一つ減ったというだけの話ではない。325人がある日突然職を失うというのは重大な事件だ。

画像: VCG/Getty Images

〔日本版〕LeEcoの沿革についてはWikipediaの楽視グループを参照。ただし記事末尾に「2016年 – 米テレビメーカーVIZIO買収」と書かれているが、これは今年4月に入って中止されている

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

中国のバイクシェアリング企業がアメリカへ接近中―、高まる投資家の期待

Uberの悲痛な叫び声がアメリカ国内にこだまする中、中国で成長を遂げた新たなオンデマンドサービスがアメリカに進出しようとしている。

これはカーシェアリングでなければバスシェアリングでもない。街中の交通手段の変化を必死に追っている投資家自動車メーカーが、バスシェアリングに注目しているというのは間違いないが、この記事のテーマは別だ。その新たなビジネスとはバイクシェアリング(自動車レンタル)、それも自転車を停めるドックが必要ないバイクシェアリングサービスだ。世界中の起業家やVCが、このサービスの可能性に大いに期待している一方、規制機関は(また)突然のように現れたトレンドで被害を被らないよう格闘している。

「ドックレス・バイクシェアリングは、人々がその(社会的な)メリットに気付くまでは、何かと不安をかき立てることになるでしょう」とAtomicoの共同ファウンダーMattias Ljungmanは話す。さらに彼は、目的地がどこであれ、ユーザーが移動し終えたタイミングで自転車を手放すことができる仕組みこそ「このサービスの本当に革命的なポイント」だと言う。ドッキングステーションの仕組みは「とても複雑」で、「ユーザーは予めどこに自転車を停められるか把握しておかなければならない上、ステーションがいっぱいで自転車が停められないということもあります。これは大変不便なことです」と彼は付け加える。

Atomicoは数ある企業の中でも、北京を本拠地とするドックレス・バイクシェアリングサービスのOfoに賭けることにした。同社はこれまでに、複数のVCから総額5億8000万ドルを調達しており、ポストマネーの評価額は10億ドルを超えている。Ljungmanによれば、Ofoの勢いを見た中国の投資家は、設立から3年しか経っていない同社にさらにお金をつぎ込もうとしているようだ。Ofoは100万台以上のコネクテッドバイクを中国の街中に配備しており、1日あたりの利用数は1000万回を超えるという。ちなみに、ロンドンが運営しているバイクシェアリングサービスの利用数は”1年で”約1000万回と言われている。

上海生まれで設立から16ヶ月が経ったMobikeも、Ofoと同じような過程をたどっており、保有している自転車の数は100万台以上、累計調達額は4億1000万ドル、さらに評価額は10億ドル強とのこと(WSJ調べ)。

上記の2社には劣るものの、半年前に設立されたばかりで北京に拠点を置くBluegogoも、既に6500万ドルを調達している。

とは言っても、アメリカと中国は全く別の国だ。中国で成功をおさめたビジネスモデルが、アメリカでもうまくやっていけるかどうかはまだわからない。「世界中でうまくいっているビジネスが、5000年におよぶ歴史を持つ中国ではうまくいかないケースがあるように、中国で成功したビジネスが、(アメリカでも)人気を呼ぶかどうかはわかりません」とSOSVのファウンダーでマネージングパートナーのSean O’Sullivanは言う。

仲間か敵か

O’Sullivanは、誰よりもドックレス・バイクシェアリングサービスに注目してきた。多くのVC同様、彼もこの分野の投資合戦に参加している。アメリカでは、ニューヨーク発のSocial Bicycles(またはSoBi)が、位置確認のためのGPSシステムを搭載したドックレスバイクや、ユーザーがどんな駐輪場にでも自転車を停められるような統合型ロックシステムを作った初めての企業だと言われている。

ファウンダーのRyan Rzepeckiは、2010年のSoBi設立以前、ニューヨーク市運輸局にプロジェクトマネージャーとして17か月間勤めていた。彼は、ニューヨーク市が当時Citi Bikeの親会社だったAltaとパートナーシップを結ぶずっと前の段階から、バイクシェアリングに関する同市の構想について知っていたと言う。今やアメリカ最大のバイクシェアリング・プログラムを運営しているニューヨーク市だが、その実現に向けては、何年も前から入念な準備を行っていたのだ。このことについてRzepeckiは、「街がどのように管理されているかや、何が地方自治体にとっての心配点なのかを知るきっかけになった」と話す。

数ある必要条件の中には「各自転車がきちんと検査・整備されるかや、ドッキングステーションがきれいに管理されるか、街全体に偏りなく自転車が配備されるか、データは共有されるか」といったものがあったと、当時はRzepeckiの上司にあたるニューヨーク市運輸局長で、現在はさまざまな地方自治体で都市計画関連の顧問を務めているJanette Sadik-Khanは話す。さらに彼女は、諸々の条件が「かなり基本的なもの」で、ニューヨーク市民の利益を最優先してプログラムに関する議論が進められていたという。しかし、「自分勝手な企業が提供するサービス」では、市民の優先順位が下げられてしまう危険性もあるとSadik-Khanは漏らす。

彼女はOfoやMobikeに関し、「最近設立された企業は、(自転車を)マーケティング用の車両のようなものと捉え、公共の道路を自分たちの利益のために使おうとしているように見えます」と語っている。上海のような渋滞の多い街では、バイクシェアリングサービスの登場によって、市民が自由に街中を移動することができるようになったが、その過程では、自転車が歩道に散乱したり、空に向かって高く積み上げられたりしている光景も見られた。「津波のような自転車の流入を全て受け入れてしまうと、街中の至るところに乗り捨てられた自転車が散乱するという危険な状況が生まれかねません」

Rzepeckiも、OfoとMobikeはSoBiに比べ、街への影響をしっかり考えていないと感じている。なおSoBiは、何千台もの自転車を既にカリフォルニア州のサンタモニカやオレゴン州のポートランド、その他のアメリカ、カナダ、ヨーロッパの各地に配備している。

さらに重要なこととして、SoBiは「営業している全ての都市で、地方自治体とパートナーシップを結んでいる」と彼は話す。「自治体側での経験から、私たちは彼らにとっての良きパートナーであることの重要性を理解しています」

さらにSoBiは駐輪に関してインセンティブを提供しているため、ユーザーは「自転車を探し求めて街を歩き回る代わりに、事前に数ブロック先にたくさん自転車が停めてあると把握できる」ようになっている。その仕組は次のようなものだ。まず利用料は、1時間あたり3〜8ドル(都市によって異なる)に設定されている料金に基いて、1分ごとにチャージされるようになっている。利用時間の平均は15分程度なので、1回あたりの利用料は2ドル前後となる。しかし、もしも自転車がSoBiの定めるエリア外に停められた場合、その自転車を利用していたユーザーは追加料金を払わなければならない。逆にSoBiがリクエストするエリアに自転車を停めたユーザーに対しては、クレジットが支払われるようになっている。

それだけで本当に効果があるのかと疑う人もいるかもしれないが、街全体に自転車を配備する上で、この作戦には「かなりの効果がある」とRzepeckiは話す。一方OfoとMobikeは、そのようなインセンティブプログラムを導入しておらず、将来的に自主規制されていくだろうと高をくくっている。さらに両社は、中国の各都市へ進出した際にも、現地規制当局との相談なしに営業を開始しており、投資家(XiaomiやTencent Holdingsなど中国の大企業を含む)はこの動きを容認しているようだ。

しかし、それも最近変わりつつあるようで、「Ofoは政府と協力して営業しています」とLjungmanは主張する。一方Rzepeckiは、「Ofoは常に解決策を探していますからね」と話し、彼らには政府と協力する以外の道はなかったことを示唆した。「深センや上海では、街で混乱が起きないようサービス基準が導入され始めています」

善か悪か

それぞれの街が、バイクシェアリング・プログラム(ドックレスかどうかは置いておいて)の成功を願う理由はたくさんある。自転車は二酸化炭素を排出しないし、車よりも場所をとらず、サイクリング自体も心臓に良い運動として知られている。

OfoとBluegogoの突然のアメリカ進出計画で不意をつかれたサンフランシスコでは、最近ドックレス・バイクシェアリングサービスの認可に関する法案が提出された(当初は公共の自転車置場を使うつもりでいたBluegogoも、最近では民間の駐車場内に設置されたバイクステーションを使う予定だと言いはじめている)。

北米の主要51都市が加入しているNACTOは、今週はじめに「街の交通網やビジョンに沿った」ものであれば、どんなバイクシェアリングサービスも歓迎するという旨の声明を発表した(さらに同声明には「本当の意味での交通手段を市民に提供するつもりがなく……(むしろ)メディアの注目を集め、いち早くエグジットすることを画策しているような(企業は)……各都市にとっての脅威だ」とも記載されている)。

公共交通機関ではカバーできない短い距離を移動する手段を求めている通勤者にとっても、ドックレスバイクは大変便利なサービスだろう。Rzapeckiは既にこの時点で、SoBiの自転車が電動になり、自動運転車や自動運転シャトルバスと共に通勤の足となる未来を思い描いている。Ofoも同じような野望を抱いているとLjungmanは言う。これには配車サービス大手のDidiがOfoの株主であるということも大いに関係しており、既にDidiのユーザーはDidiのアプリを通じて、Ofoの自転車を予約することができる。

設立当初から物流企業を目指しているUberのことを考えると、自転車には人以外のものを運ぶ力もあるということに気がつく。デリバリーサービスを例にすると、「(Ofoは)現状デリバリーサービスを始めようとは考えていませんが、同社が構築しているネットワークやそこでの流通の可能性を考えると……彼らのネットワークを利用できる製品やサービスはかなりたくさんあると思います」とLjungmnaは言う。

いずれにせよ、投資家やファウンダーがいわゆるデカコーン企業(評価額100億ドル以上の非上場企業)を目指したレースの先頭を走っているということは、恐らく間違いないだろう。

Ofoは、今年7月までにアメリカの約10都市に5万台の自転車を導入するという、グローバルな野望を抱いているようだが、Ljungmanはアメリカ市場はそう簡単に攻略できないと考えている。「進出先の都市は慎重に選ばなければいけません。世界の都市の中には、自動車の利用には適していない街がたくさん存在します。そのような街は、歩行や自転車、さらには馬での移動を前提につくられているのです」と彼は話す。「文化的な側面も重要です。例えばアムステルダムでは、街のいたるところで自転車を見かけ、自転車が主要な移動手段だということがすぐにわかります」しかし、アメリカの多くの都市では、通勤で自転車を利用している人の割合が1%以下だ。

また、バイクシェアリングというビジネスの経済性自体にも課題が残っているように見える。各社は中国メーカーとタッグを組んで、できる限り効率的かつコスト効率よく自転車を製造していると主張しているが、現時点でもバイクシェアリングが本当にもうかるビジネスなのかどうかはハッキリしていない。例えば、2014年にAltaからCiti Bikeを買収したMotivateは、国内10都市で1万台以上の自転車を管理しており、去年の利用回数は1400万回を記録していたものの、まだ黒字化を果たしていない、と同社に近い情報筋は語っている。電動自転車を使うとなると、コストはさらに上がってくるだろう。

さらにこの業界にはペテン師のような輩までいる。O’Sullivanによれば、あるドックレス・バイクシェアリングサービス企業の共同ファウンダーたちが、投資家を装ってSoBiのRzepeckiに近づき、累計調達資金額700万ドルで黒字化を果たしながら現在大型資金調達を検討している同社の詳細を聞き出していたという。その後、彼らは手に入れた情報をもとに資金を調達し、別のスタートアップを立ち上げたのだ。

Rzepeckiはこの件についてはコメントを控えており、「この業界に参入しようとしている人は大勢いて、なかには他社のスキに付け込もうとしている人もいるのかもしれません。これはバイクシェアリングがビジネスとして成り立つということを表しているという意味では、良いサインなのかもしれませんが、必ずしも全てのプレイヤーが私たちと同じことを重要視しているわけではないようです」と話すに留まっている。

バイクシェアリング業界の様子を見ていると、第二のUberとなる企業が誕生しそうな気さえする。少なくとも、同業界に注目している人たちはそう願っているようだ。

「Uberの問題児っぽい行動に影響を受けた企業は、法を破って何かしらの報いを受けるまで突進しようとしているように感じます」とO’Sullivanは言う。「実際にUberはそのような戦略をとった結果、何億ドルという罰金を支払いながらも、莫大なお金を手にしました」

「Uberが登場するまで、そのような戦略がうまくいくとは思ってもみませんでしたが、最近ではUberを真似しようとする企業もいるのかもしれません」

取材協力(かつ貴重な情報提供者):Lora Koldony

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

社員数は3倍、投資額は2倍に引き上げ―、Airbnbが中国市場に攻め込む

中国進出に失敗した欧米テック企業の長いリストに、最近Uberが加わったように思われたが、Uberと共にギグエコノミーの寵児となったAirbnbは現在同国に攻勢をかけようとしている。

本日同社は、中国事業の新たなブランド名と旅行サービス機能Tripsの中国でのローンチについて発表した。さらに、Airbnbは中国でのプレゼンスを高めるために、現地にいる社員数を3倍、投資額も2倍に引き上げていくとも語った。

まず、China Broadband CapitalやSequoia Chinaらを株主に持つ現地法人Airbnb Chinaは、サービス名を“Aibiying”(爱彼迎)へと変更した。Airbnbによれば、この名前には「愛を持って互いを迎える」という意味があるようだ。

Aibnbは現在中国でのビジネスに力を入れています。この度、現地での名称を「愛を持って互いを迎える」という意味の爱彼迎 (Aibiying)へと変更しました。

一方Tripsとは、旅行中のユーザーが観光情報を入手したり、アクティビティの予約をしたりするためのサービスだ。中国最初の都市として、上海の情報が現在公開されており、Airbnbが注目しているもうひとつの市場であるインドのデリーでも最近同サービスが公開された。

Airbnbによれば、現在同社のプラットフォームには191ヶ国から約300万軒の物件が登録されており、そのうち約8万軒は中国国内の物件だ。さらに、これまでに中国の物件が利用された回数は、160万回にのぼるという。

中国は旅の目的地としても人気が高い一方で、中国人旅行者も世界から注目を浴びている。最近発表された、VISAが共著したレポートによれば、昨年の中国の旅行関連消費額は1370億ドルだった。この数字はこれから10年間で87%も増加すると予想されており、その頃の中国の旅行関連消費額はアメリカの倍、さらにはイギリス・ロシア・ドイツの消費額を足したものより大きくなると言われている。

Airbnbも、これまで530万人の中国人観光客が世界中のAirbnb物件を利用しており、2016年の1年間だけで、中国人旅行者による海外のAirbnb物件の利用数が142%も伸びたと話している。

このような背景もあり、同社は現在60人いる現地子会社の社員数を3倍に増やして、現地でのプレゼンスを高めようとしているのだ。また中国は、Airbnbがアメリカ国外で唯一開発拠点を置いている国でもあり、同社は開発スタッフの増強に注力しながら、中国事業への投資自体も2倍に増やすと語っている。

「これまでとは違うスタイルで世界中を旅行したいと考えている、新しい世代の中国人旅行者は大勢います」とAirbnb CEOのBrian Cheskyは声明の中で語った。「AibiyingとTripsが彼らの共感をよび、これまで無縁だった世界中の人やコミュニティーや地域を、彼らが訪れたいと思えるようなサービスを提供できればと私たちは考えています。Airbnbの中国事業がこれからどうなっていくかとても楽しみです」。

最近Airbnbが310億ドルの評価額で10億ドルを調達したと報じられ、さらに興味深いことに、その際2016年の下期は黒字だったことがわかった。リーチや売上という意味では、同社はこれまでとは違う地域に注目しはじめたようだが、依然中国では劣勢に立たされている。Airbnbに比べるとずっと低い10億円の評価額がついている地元企業のTujiaは、国内のAirbnbのコピー企業を駆逐しながら、中国トップの座を狙っている。

Expedia傘下のHomeAwayとパートナーシップを結んでいるTujiaによれば、現在プラットフォームには40万軒の物件が登録されており、同社は物件のオーナー・ユーザーの両方に関して中国市場を狙い撃ちしているという。Airbnbも最近Alipayでの支払いやWeChatのサポートを開始した一方、Tujiaは中国人旅行者の期待に沿うようなサービス重視のアプローチをとっている。具体的には、チェックイン専門の担当者や清掃担当者の配備や、さらに物件管理さえ行っていると、CEOのMelissa Yangは2015年のインタビューで語っていた

中国を訪れる欧米の旅行者にとっては、引き続きAirbnbが第一候補になるかもしれないが、Tujiaは徹底的に中国人旅行者のニーズを満たすことを目指しており、Airbnbのライバルで2015年に39億ドルでExpediaに買収されたHomeAwayとのパートナーシップを通じて、海外の旅行者にもリーチできる可能性がある。そうは言っても、Airbnbは中国を除く世界のほぼ全ての国を支配しており、特に中国で失敗を繰り返してきたアメリカの大手テック企業のことを考えると、今後同社の動向からは目を離せない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter