法律×IT領域で起業・サービス普及しやすく——LegalTech協会発足、RPAテクノロジーと業務提携も

テクノロジー、特にデジタルテクノロジーを既存の産業の中で活用する動きを指して「○○(産業)×テック」と、TechCrunchでも紹介することがある。金融×ITの「フィンテック(FinTech)」や広告×ITの「アドテック(AdTech)」などは、読者の方なら目にする機会は多いだろう。

とはいえ、日本でも話題になることが多くなったフィンテックでさえ、老若男女に広く知られているかと言えばまだまだ怪しいもので、ほかの領域ならなおさら認知されていないのが現実だ。法律×テクノロジーの「リーガルテック(LegalTech)」もまた、そうした領域のひとつ。この状況を打破するため設立されたのが、LegalTech協会だ。

今日発表されたLegalTech協会が設立されたのは、2018年9月。代表理事には集団訴訟プラットフォーム「enjin」を運営するクラスアクション代表取締役CEOで、弁護士の伊澤文平氏が就任している。

伊澤氏は日本のリーガルテックについて「対象企業も少なく、この領域で事業運営をするための下地もなければ社会的認知もほとんどないのが現状」と憂慮する。

「この状況では、弁護士の間や法務の領域では顕在化している課題のIT活用による解決だけでなく、クラスアクションが行おうとしているような、潜在マーケットへの進出もままならない。関連する士業に携わる個人をはじめとした、多くの人が、リーガルテック領域で起業しやすく、サービスを普及しやすくするための啓蒙活動などを行うのがLegalTech協会設立の目的だ」(伊澤氏)

先行するフィンテック業界では、2015年9月にFintech協会が設立されている。同協会は、この領域でスタートアップや一般企業、関係省庁との連携を図り、市場の活性化や日本の金融業界のプレゼンス向上を目指して活動。2018年10月末現在でベンチャー107社、一般法人241社と個人会員が参加し、一大業界団体として機能している。伊澤氏はFintech協会をモデルに、LegalTech協会でも活動を行っていく考えだ。

具体的には、国内外の関連する団体などとの情報交換や連携・協力のためのミートアップや、ビジネス機会創出のための活動、関連省庁との連携や意見交換、リーガルテックに関する調査研究や情報発信などを実施していくことを予定している。

特に省庁への政策提案やガイドラインの策定・提言については「クラスアクション自身でも法律の壁を経験した」と伊澤氏は述べ、積極的に手がけていくという。

「幸い、弁護士や法務に携わる、法的素養を持つ人の集まりとなるので、ほかの領域の団体に比べてこうした活動は進めやすいだろう」と伊澤氏は話す。「弁護士や関連領域に携わる士業、リーガルテック領域のサービスを利用するユーザー企業も巻き込んで、議論やアライアンスの場、営業ツールとしても機能させたい」(伊澤氏)

既に弁護士や、クラスアクション以外のリーガルテック企業からの賛同も得ているというLegalTech協会。Wordで作成した法務文書の履歴管理・共有サービス「Hubble」を運営するRUC CEOの早川晋平氏、契約書の作成・締結・管理サービス「Holmes」(旧社名リグシー)の代表取締役 笹原健太氏、オンライン商標登録サービス「Cotobox」のCEO 五味和泰氏、東大発の判例検索サービス「Legalscape」の代表取締役CEOの八木田樹氏など、TechCrunchでも紹介してきたリーガルテックのスタートアップのほか多数の関連企業が参加を表明。さらに日本マイクロソフトが顧問として参加、ココペリSmartHRといった法務以外の領域の企業の参画も決定している。

伊澤氏は「リーガルテックに関わるすべての企業に参加してもらいたい」と話していて、年内にもセミナーを開催予定、そのほかにも研究会や分科会を協会内に設置していくということだ。

RPAテクノロジーズとの提携で士業の自動化を推進

活動の一環として、LegalTech協会は発足発表と同じ11月16日、RPAホールディングスの子会社RPAテクノロジーズとの間で業務提携契約を締結したことを発表した。

提携は、弁護士事務所をはじめとした士業の業務効率化を目的としたもの。RPAテクノロジーズが提供するRPA(ソフトウェアロボットによる業務の自動化)サービス「BizRobo!」を活用することで、士業関連業務に合わせたロボットを共同開発し、業務の置き換えによる負担の軽減を図る。

例えば、手書き書類のデジタル移行の自動化や契約書類の自動チェック、使用ツール間のデータ連携、判例検索とその絞り込みの自動化などの業務へのRPA適用が考えられている。

両者はまた、導入効果を測定・記録し、さらに業務改善につながるRPAソリューション開発のための提案も行っていくとしている。伊澤氏は「弁護士だけでなく、ほかの士業のニーズも把握したい」と話す。

「実は士業のRPA導入のハードルは高い。一方で、手書き書類の多さや業務の煩雑さなど、RPAで改善されるはずのことも多い。日本のRPAサービス提供者としては大手のRPAテクノロジーと組むことで、業界の業務改善を進めていきたい」(伊澤氏)

LegalTech協会とRPAテクノロジーズは、必要に応じて、これらの取り組みを行う別事業体の立ち上げも視野に入れながら、協業していく予定だ。さらにRPAの普及後は、各種業務へのAI導入・普及にも取り組んでいくという。

SPORTS TECH TOKYOにかける思いとSports Tech最新事例——TC Tokyo 2018レポート

写真左からTechCrunch Japan編集統括の吉田博英、Scrum Ventures創業者の宮田拓弥氏、データビークル代表取締役/Jリーグアドバイザーの西内啓氏、日野自動車フューチャンプランアドバイザーの山下大悟氏

オリンピックはテクノロジーの見本市と呼ばれることもある。2018年に平昌で開催された冬季オリンピックでは、世界初の5Gの実証実験サービスが行われたり、Intelのドローン技術を用いたライトショーもあった。東京2020オリンピックでも、さまざまな最新テクノロジーを見たり体験することだろう。

テクノロジーは、スポーツそのものやスポーツビジネスにも進化や新たな価値を生み出している。11月15日、16日で開催中のTechCrunch Tokyo 2018では、今後注目がますます集まるであろう「Sports Tech」をテーマにしたセッション「スポーツ系スタートアップを支援する『SPORTS TECH TOKYO』が始動」を開催。日本や世界におけるSports Techの最新事例や、今後の課題、SPORTS TECH TOKYOにかける思いなどが語られた。

登壇したのは、Scrum Ventures創業者の宮田拓弥氏、データビークル代表取締役/Jリーグアドバイザーの西内啓氏、日野自動車フューチャンプランアドバイザーの山下大悟氏。モデレーターはTechCrunch Japan編集統括の吉田博英。

世界中からテクノロジーを持ってくる「SPORTS TECH TOKYO」

まずはセッションタイトルにもなっている「SPORTS TECH TOKYO」の概要について。SPORTS TECH TOKYOは、Scrum Venturesと電通が共同運営するアクセラレーションプログラムで、スポーツ分野(eスポーツも含む)で優れた技術や事業アイデアを持つスタートアップを世界中から募り、事業化のためのメンタリングなどを約1年間支援するというもの。

競技団体、プロリーグ、チームなどの関係者や選手を「スポーツアドバイザリーボード」に迎え、参加するスタートアップに対してネットワーキングやプレゼンテーション、実証実験の機会も提供する。プログラムは、アスリートの育成や競技に関するデータ解析などはもちろん、スポーツの観戦やファンの満足度、スタジアム体験なども含んでいる。開催期間は、2019年1月から1年間。

宮田氏はプログラムのネーミングについて、「Sports Techが進んでいるアメリカをはじめ世界中のテクノロジーを日本に持ってきてもらいたいと思い敢えて“TOKYO”をいれた」とその理由を説明。TOKYOという旗を立てることでテクノロジーが集まるチャンスを創出する。

また、日本のスポーツ産業がテクノロジーに注目しはじめていることを実感しており「日本が目覚めてきた」と語った。

アメリカの最新Sports Techと日本のテクノロジー活用

ここで気になるのは、宮田氏が進んでいるというアメリカのSports Tech事情だろう。宮田氏は最先端の事例としてアメリカンフットボールを挙げた。

「アメリカンフットボールのスタジアムにはセンサーが入っており、リアルタイムで選手の位置の把握やランのスピードを解析している。(そのデータを使って)視聴者に対して、例えば競り合っている選手のどちらが速いのかをリアルタイムで画面表示もしている」(宮田氏)。

2019年には、上記のデータトラッキング技術とAI技術が組み合わさることで「選手が今からどの方向にボールを投げるのかを予測した情報」なども表示されるそうで、「アスリートの考えをファンが見られるようになる。面白い進化が起きている」と語った。

一方、日本ではどのようにテクノロジーやデータが使われているのだろうか。西内氏はJリーグでのテクノロジーやデータ活用に触れる前に「サッカーは野球よりデータ利用の歴史が浅い」と語った。野球は何十年も前から打率の概念が存在していたが、サッカーは2000年代に入るまでパスの成功率の指標すら管理されていなかったそうだ。そこからスポーツデータの解析を専門におこなうデータスタジアム社の活用などがはじまり、現在に至る。

「Jリーグでは、画像解析ソフトやGPSを使って選手の位置の把握や、走行距離などをはかったデータ活用をしている。加えて、ここ1、2年で主要なクラブチームではチケット販売サービスとデータを共有してCRMのようなものができるようになってきた」(西内氏)。

山下氏は、「ラグビーでは、10年くらい前から選手にGPSをつけて位置の把握などさまざまなデータを取得し、選手の評価や改善に取り組んできた」と説明した。山下氏が監督をしていた早稲田大学ラグビー蹴球部でもGPSを使っていたそうだ。また、早稲田大学ラグビー蹴球部では選手の評価や、トレーニング内容、練習メニューなどさまざまな事柄にデータを活用し「ほぼデータだった」と振り返った。

eスポーツから学んでスポーツに展開する

登壇者3人は日本のスポーツにおける今後のSports Tech活用についてどのような課題があると考えているのだろうか。それぞれが見解を聞いたところ、西内氏と山内氏はそろって「若年層のデータ化」を挙げた。

サッカーもラグビーも、プロになってからのデータを取ることはできるようになってきているが、ユース選手のデータが少なく、ユースチームのコーチが選手個人のデータを持っていないという。

「1万時間の法則みたいな鉄板的なものをデータで見出してほしい。また、個人にカスタマイズしていくことが重要になってくのではないか」(山内氏)。

「データが取れたとしても、一方でプロでもデータを活用しきれていないところがあるので、分析をどう活かすかも課題になってくる」(西内氏)。

「選手とファンのエンゲージメントやコミュニケーションが今後のキーワード。また、eスポーツ的な見せ方をスポーツに導入するといった、eスポーツから学んでスポーツに展開することがあるのではないか」(宮田氏)。

SPORTS TECH TOKYOは今だからこそチャンスがある

最後に、観客の皆さんからスピーカーに直接質問できる「Q&Aコーナー」セッションの様子を紹介する。

Q.アメリカなどに比べてスポーツ関連の事業化が遅れているが、スポーツ系スタートアップが立ち上がることによって、どれくらいで挽回できそうか?予想と期待値を教えてください。

A.2019年に我々が開催する「SPORTS TECH TOKYO」や、2020年に開催されるオリンピックもあるので、「このタイミングしかない」と思っているし、まだまだチャンスはある。(宮田氏)。

NFLやメジャーリーグはすごく収入があるが、1980年代は日米で収入の差はそこまでなかった。この20年~30年のあいだでマーケティングなどによる差が広がった。逆に言えば、ちゃんとキャッチアップすればアメリカの市場価値まで日本も上がるのではないかと期待している(西内氏)。

Q.ウェアラブルデバイスがSPORTS TECHで普及していく条件は?

A.ハードウェア側として、もっと小さくて軽くすることをもっとやっていかなければならない。また、カッコよい、ストレスなく使えるなど、デザイン面でも突き詰めていく必要がある。ソフトウェア側は、取得してデータをどう活かすかが課題ではないか(西内氏)。

Q.東京2020オリンピックはSports Techにとってどのような意味を持つか?

A.オリンピックは、大勢のプレイヤーがやってきて、大勢の人が見る場。会場やテレビで見るだけではなく、スポーツとどうエンゲージするかが重要になってくる。ARやVRを使った表現や、例えばさまざま角度から競技をみることができるかもしれない(宮田氏)。

各国から選手やコーチが集まるので、ほかの国が使っていた技術を見れる機会でもあるので「いい技術があった」「この技術うちも使いたい」といったことが起こることも期待できる(西内氏)。

(文/写真 砂流恵介)

あと数年でドローンによる”空飛ぶクルマ”は実現——TC Tokyo 2018レポート

TechCrunch Japanは2018年11月15日から2日間、スタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2018」を都内で開催。本稿ではDay1のFireside Chat「空飛ぶクルマをどう実現するか、日米のキーパーソンに聞く」で語られた内容を紹介する。モデレーターはScrum Ventures創業者/ジェネラルパートナー 宮田拓哉氏が務めた。

左よりモデレーターを務めたScrum Ventures創業者/ジェネラルパートナーの宮田拓哉氏、Top Flight Technologies共同創業者/CEOのLong Phan氏、楽天AirMap代表取締役/CEOの向井秀明氏

Top Flight Technologiesは、新しいビジネスソリューションを提供するUAV(商用無人航空機)を手掛けるスタートアップとして2014年に米ボストンで創業。現在のドローンが抱えるバッテリー駆動時間や積載重量といった課題解決に取り組んでいる。同社の「Airborg H8 10K」は一般的な自動車と同じ8〜11km/リットルの燃費効率で、10kgの貨物で40分間の飛行を可能とする。本パネルディスカッションの主題である「空飛ぶクルマ」について同社は、「(我々のドローンは)空飛ぶクルマと同じ。全長 220cm、33kgと大きめだが、強風下でも高い安定性と正確な位置コントロールが可能だ」(Top Flight Technologies共同創業者/CEOのLong Phan氏)と語る。

一方で日本の楽天AirMapは2016年5月にPoC(概念実証)として、ゴルフ場のデリバリーサービスを千葉県御宿町のゴルフクラブで実施。その後も愛知県今治市による離島間配送PoC(2016年10月)や、静岡県藤枝市で個人配送を想定した実証実験(2017年3月)など「楽天ドローン」に取り組んできた。直近では、福島県南相馬市でドローンと地上配送ロボットを組み合わせた商品配送実験に成功(2018年10月〜2018年3月)。これらの取り組みを通じて同社は物流を見据えた「無料配送ソリューションの構築を目指している」(楽天AirMap向井氏)。中長距離間の配送は”空飛ぶクルマ”が担い、短中距離配送はドローンを活用し、「ラスト1マイルの無人化」を目標に掲げている。

昨今では多くの製造系企業やIT企業がドローンを”空飛ぶクルマ”として注目しているが、モデレーターの「実現可能か?」との質問に対して、楽天AirMapは「現在は信頼性が足りない。2016年末頃はもっと早く提供できると考えていたが、ドローンの運用は街上を飛ぶ危険な行為。安全性やトラックレコード、長時間のテストを求められ、(ビジネスの進捗)速度が遅くなる。信頼性という足枷(あしかせ)を踏まえて、スタートアップとトラディショナルが手を組んで進められるか。これが重要な課題だ」(向井氏)と指摘した。2018年11月に現代自動車と提携を発表したTop Flight Technologiesは、「シミュレーターなど多くのツールを使って開発を続けている。仮想現実内で(ドローンを)作り、現実世界でテストと試作を重ねてきた。ハードウェアとソフトウェアを組み合わせることで24時間テストのコスト低減、リスクの軽減と共に開発期間を短縮している」(Phan氏)と自社の開発姿勢をアピールした。

2018年11月中旬には、Alphabet傘下のWaymoが今後2カ月以内に世界初の商用自動運転車サービスを開始する予定だと発表したことは記憶に新しいが、モデレーターが本件に触れつつシミュレーションの限界について問うと、「現在は燃料や速度、信頼性といった課題がありつつも、3年先に”空飛ぶクルマ”は実現する」(Phan氏)と回答。ただし、最初に活用される場面は軍隊であるとTop Flight Technologiesは指摘した。「例えば戦場で傷を負った兵士に薬品を運ぶようなシーン。そこで(効果が)実証されれば、一般社会に広まっていくと思う」(Phan氏)。他方で日本国内ではドローンに関わる多くの規制が存在する。

この点について楽天AirMapは、「国の皆さんも協力的。空を使った配送や移動を実現しようと官民一体で考えている。ただ、人や国道、線路を越えて飛ぶことに高いハードルがあり、現時点では航空機のように飛行記録など完ぺきなアプローチが必要となり、コスト的に見合わない。安価なコストで(空飛ぶクルマを)社会実装できるかという視点が重要だ」(向井氏)と分析しつつ、危険性が少ない過疎地での運用や、プロによる整備記録の保持など、リスクベースアプローチに議論が進めば、ドローン運用が加速すると語った。

前述のとおりWaymoは米国アリゾナ州という限定地域でデータを取得し、規制問題をクリアしているが、「(過疎地運用も)需要があれば受け入れられやすい。東アフリカ・ルワンダではワクチンをドローンで運搬し、多くの人が助かっている。住民の利便性を証明することが必要だ」(向井氏)という。日本の規制に問題ついてTop Flight Technologiesは、「弊社に取って日本は可能性のある市場。将来的に人やモノの輸送方法を考えると、自動車や電車といった従来型手段を超えることが必要だ。私も(日本で)通勤通学混雑時に電車へ乗ったが驚くほど混雑していた。(この混雑も)新たな交通手段で解決できるだろう。例えば未使用空域。今足りないのは技術と活用能力、そして信頼性である」(Phan氏)と指摘した。

モデレーターが高人口密度化した都会で”空飛ぶクルマ”の運用リスクに恐怖を覚えると述べると、「私はアニメが大好きだが、(あの世界では)いろいろなモノが都会で飛んでいる」(Phan氏))と冗談めく一方で、「例えば5分以内に病院へ搬送しなければ、生命の危機に関わる心臓発作患者を救う唯一の選択肢は”空飛ぶクルマ”だ」(Phan氏)と必要性を強調した。他方で楽天AirMapも「日本は安全を優先するため、いきなり”空飛ぶクルマ”が都会を飛び交うことは難しい。ただ、自動車産業などで培った製造技術が大きい。資金と体力を持った大手企業が本気で投じれば、今の日本が注力すべき新たな産業になると思う」(向井氏)と新たな可能性を提示した。

続いて三菱重工の「MRJ」や本田技研工業の「ホンダジェット」など、製造業が航空機開発に取り組みつつある現状を踏まえて、製造プレーヤーが増加する可能性を尋ねると、楽天AirMapは「企業はルールが決まらないと製品を出したくないが、ルールが決まれば試作機を世に出せる。『(ルールを制定する政府側や参加プレーヤーの間に)一緒にルールを作ろう』というフットワークや価値観があれば、大手企業の参入も増えるだろう」(向井氏)と現状の課題を指摘する。ドローンが抱える課題について、Top Flight Technologiesは「適切な交通管理が必要。(ドローンは)どこでも飛べるが高層空域には規制が求められる。ただ、自動車が世に登場した頃は馬車がメインで、道路というインフラもなかった。時間と共に規制が生まれてきた」(Phan氏)と、”空飛ぶクルマ”の実用化に至るまでのジレンマを明示した。

5G時代は”空飛ぶクルマ”の位置や情報を地上で把握すれば衝突が減るとモデレーターの提案に、楽天AirMapは「我々の空域管理側システム『空域管理ダッシュボード』とドローンを操縦専用アプリ『AirMap』がそれにあたる。今後、無人化が進むと処理やルーティングも自動化されるだろう。このビジョンを前提に製品を開発してきた。人やモノを一定空域間で運搬する際はマルチモーダルで自動計算し、最適なルートを飛ぶ。空は立体空間なので((同社ソリューションが)大きなウェイトを占める」(向井氏)と回答。

最後にTop Flight Technologiesは来場者に向けて、「これから2年間はエキサイティングな時代。楽天さんを始めとする多くのプレーヤーが参入するだろう」(Phan氏)。楽天AirMapも「空のモビリティ活用は皆の利便性を高め、スマートフォンのように普及すると我々は考えている。2019年のどこからサービスを提供し、2020年には皆が驚く世界を迎えるように取り組みたい」(向井氏)と意気込みを語った。

(文/写真 阿久津良和/Cactus

“営業リスト作り”を変革する企業情報DBのBaseconnectが4.3億円調達、半年で約5000社が導入

法人営業のリスト作りなどに活用できる企業情報データベース「Baseconnect LIST」を開発するBaseconnectは11月16日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資と金融機関からの融資により、総額4.3億円を調達したことを明らかにした。

プレシリーズAラウンドとなる今回は同社にとって4度目の資金調達。2017年2月のプレシードラウンド、同年12月のシードラウンド2018年2月のユーザベースとの資本提携に続くものだ。今回も含めると累計の調達額は約6.4億円。代表取締役の國重侑輝氏の話では、そのうち4億円程度が融資による調達だという。

以下は今回の調達先のリスト。フォローオン投資が中心で、キャナルベンチャーズ、京銀リース・キャピタル、池田泉州キャピタルは新規の株主だ。

  • ジェネシア・ベンチャーズ
  • YJキャピタル
  • キャナルベンチャーズ(日本ユニシスCVC)
  • 京銀リース・キャピタル(京都銀行グループ)
  • 池田泉州キャピタル
  • ユーザベース
  • みずほキャピタル
  • イーストベンチャーズ
  • 京都銀行、みずほ銀行、池田泉州銀行など (融資)

Baseconnectでは今後さらにデータの増強に力を入れる計画。データ作成を担うリサーチャーの採用を進めるほか、新機能の開発に向けて開発体制を強化する。

β版リリースから半年で導入企業数が5000社超え

Baseconnect LISTは法人営業を支援する企業情報データベースだ。各企業ごとに事業説明や業績など35項目以上のデータが整理されていて、それらをさまざまな切り口(25以上)で絞り込むことが可能。過去の営業アプローチ履歴や成約企業の特徴を基に、成約の可能性が高い企業を提案する機能も備える。

従来であれば担当者が数時間かけて苦労しながら行なっていた“見込み客のリスト作り”や“テレアポや商談前の情報収集”を効率化し、数分程度までにグッと削減できるのがウリ。現在は月間に取得できる企業情報の数に応じて、無料から月額30万円まで複数のプランで提供している。

2月1日にクローズドのα版、4月1日に現在のβ版をそれぞれローンチ。β版の公開から約半年で導入企業数は5000社を突破した。

國重氏によると初期は中小・ベンチャー企業が中心だったものの、直近3ヶ月ほどで大手企業や有名企業でも導入が加速。法人営業の業務効率化だけでなく、提携先の開拓やM&Aの候補先探しなどにも使われ始めているという。

これまではほぼノンプロモーションだったため、5000社についてはオーガニックの検索流入や口コミ、既存顧客からの紹介で獲得しているそう。ここ数ヶ月は毎月約1000社ペースで顧客が増えている。

「未上場企業も含めて会社の正しい情報をデータベース化し、それをオンライン上で公開しているサービスがほとんどない。その点に関してはローンチ前の目論見が当たった部分もあり、いいスタートがきれている。会社名や『アパレル企業』などのジャンルで検索した際に上位表示されるケースが増えてきていて、検索エンジン経由の流入が多い」(國重氏)

背景にあるのは企業データ数の増加だ。11月13日時点でデータベース上に登録されている企業データ数は42万件を突破。2月に取材した際は13万社ということだったから、8〜9ヶ月ほどで約30万社増えたことになる。

「ここがユーザーへの価値にも直結する。営業のリスト作成に使われることが多いので、自社の見込み顧客を探したときに100件くらいしか出てこないと、お金を払って使おうとはなかなか思われない。どれだけデータベースの網羅性を上げられるかを重要視して、データ作成に注力してきた」(國重氏)

データ整備を加速、営業管理に対応した新たなアプリケーションも

β版リリースからの半年はデータの整備に力を入れていたこともあり、現在のBaseconnect LISTでは膨大なデータベースから該当する企業をリストアップしたり、その情報をダウンロードしたりできる部分が強み。一方でダウンロードした後のリスト管理や進捗管理にはエクセルやセールスフォースなど別のツールを利用するユーザーが多く、十分には対応できていなかった。

「ここでデータが分断されてしまい、ユーザーにとっても使い勝手が良くない」(國重氏)こともあり、今後は自社で営業管理や取引先管理に関する新機能を提供する方針。そのほかデータ作成の一部を自動化するシステム開発にも取り組む。

「(営業リストの作成など成約前だけではなく)ゆくゆくは成約後の与信管理までやっていきたい。与信スコアリングや、代表者の交代など何か取引先で変更があった際のアラート、反社チェックまでを自動化、効率化できるようにしていく」(國重氏)

そのためにも、まずはできるだけ早くユーザーが満足するレベルの企業データを網羅することが目下の課題。今回調達した資金も主にこのデータの拡充のために用いるという。

國重氏曰く「40万社でもまだまだ足りない。靴屋で例えると、まだ運動靴しか扱っていないような状況」なのだそう。まずは来年春を目処に100万社まで企業データ数を拡大する予定のほか、拠点データや経営陣などの人物データ、扱う商品のデータなどより細かいデータも整備していく計画だ。

後列の左から3人目が代表取締役の國重侑輝氏

グノシーから“スポーツ特化”の情報アプリ登場、今後もバーティカル領域のサービス拡充へ

ニュースアプリ「グノシー」を軸に、KDDIと共同開発する「ニュースパス」や女性向け情報アプリの「LUCRA(ルクラ)」など複数の切り口の情報メディアを展開するGunosy。同社は今後、特定の領域に特化したバーティカルアプリを増やしていく計画だ。

Gunosyは11月15日、その第一弾としてスポーツ特化の情報アプリ「グノシースポーツ」のiOS版を今月末より提供すると明らかにした。

グノシースポーツは、独自のアルゴリズムを用いてスポーツに関する情報を配信するサービス。野球、サッカー、バスケットボール、テニス、ゴルフなど、様々なスポーツのニュースを閲覧できるほか、試合予定や結果を速報で入手可能だ。

試しに「鹿島アントラーズ」をマイチームに設定してみるとこのような感じだ。マイチームタブから順位や結果、最新ニュースを一覧できる

10月から先行してAndroid版が提供されているので僕も試してみたけれど、マイチーム機能が便利だと感じた。最初にJリーグのクラブやプロ野球チームからお気に入りの“マイチーム”を選択することで(もちろん後からも追加できる)、チームの最新情報や試合結果、順位表などにすぐアクセスできるようになっている。

iOS版の配信タイミングに合わせてAndroid版もアップデートする予定とのことで、今後はスポーツに関連した配信コンテンツの強化を進めていく方針だ。公式サイトの説明を見ている限り「ハイライトの動画」「詳細なゲームの流れや、仲間たちの熱い声援」に関する機能も予定しているようなので、グノシー本体とは一味違ったグノシースポーツならではの機能が増えていくのかもしれない。

先月公開された2019年5月期の第1四半期決算説明資料でも“バーティカル領域のアプリ切り出し”に関しては触れられていたけれど、Gunosyでは今後も別領域のアプリを準備している模様。「バーティカル領域のアプリコンテンツを拡充し、ユーザーが求める情報を各アプリから快適に届けられるよう、需要にあったアプリのご提供を目指して参ります。」としている。

TC Tokyoのライブ配信が決定!一部のセッションがPCやスマホで見られるぞ

11月15日(木)、16日(金)に開催される日本最大級のスタートアップイベントである「TechCrunch Tokyo 2018」。今年はより多くの方にスタートアップ業界の熱気を伝えるべく、一部のセッションをライブ配信で無料公開することが決まった。Video-Streaming PartnerのPR TIMES協力のもと、以下のセッションをライブ配信する予定だ。都合が合わずに会場に来られなかった方は、PCやスマホからTechCrunch Tokyo 2018にぜひ参加してほしい。

なお、15日と16日ではYouTubeのURLが異なるので注意しよう。

TechCrunch Tokyo 2018 11月15日(木)

11:50-12:20 Fireside Chat

空飛ぶクルマをどう実現するか、日米のキーパーソンに聞く
Long Phan博士(Top Flight Technologies共同創業者/CEO)
向井秀明氏(楽天AirMap代表取締役/CEO)

12:40-13:20 Product Update

猪瀬雅寛氏(ecbo執行役員)
大塚裕太氏(助太刀社長室室長)
島田寛基氏(Scouty代表取締役CEO)
緒方憲太郎氏(Voicy代表取締役CEO)

13:40-14:10 Fireside Chat

スポーツ系スタートアップを支援する「SPORTS TECH TOKYO」が始動
宮田拓弥氏(Scrum Ventures創業者/ジェネラルパートナー)
西内 啓氏(データビークル代表取締役/Jリーグアドバイザー)
山下大悟(日野自動車フューチャンプランアドバイザー)

14:30-15:00 Fireside Chat

ソフトバンク傘下のARMが6億ドルで買収、日本人によるアメリカ起業家
芳川裕誠氏(Arm IoTサービスグループ データビジネス担当バイスプレジデント/ジェネラルマネージャー)

15:20-16:00 Panel Discussion

今年もあと少し、スタートアップ投資業界のトレンドを知ろう
仁木勝雅氏(ディープコア代表取締役社長)
村田祐介氏(インキュベイトファンド代表パートナー)
千葉功太郎氏(Drone Fund創業者/代表パートナー)

  

TechCrunch Tokyo 2018 11月16日(金)

11:50-12:20 Fireside Chat

充電不要、洗濯可能ーーAppleも認めるスゴいヘルスタグ
Jonathan Palley氏(Spire CEO)

12:40-13:20 Product Update

渡辺良太氏(justInCase商品開発部)
西尾夏樹氏(リフカム営業部ゼネラルマネージャー)
松村大貴氏(空CEO)
藤原健真氏(ハカルス代表取締役)

13:40-14:20 Panel Discussion

2018年は新型旅行サービス元年だったのか、旅領域のキーパーソンに聞く
有川鴻哉氏(Hotspring代表取締役)
光本勇介氏(バンク代表取締役/CEO)
岩本有平氏(プレジデント社プレジデントオンライン編集部)

14:40-15:10 Fireside Chat

スタートアップの経営で学んだ教訓と“これから“
堀江裕介氏(dely代表取締役/CEO)

15:30-16:00 Fireside Chat

氷河期の創業、今年の上場、そしてこれから——将棋AIのHEROZが語る“次の一手”
林 隆弘氏(HEROZ代表取締役/CEO)

17:40-18:20 Fireside Chat

Periscope創業者が描くTwitterの新たな未来像
Kayvon Beykpour氏(Twitterプロダクトリード/Periscope共同創業者)

18:20-18:50 Startup Battle授賞式

 
TechCrunch Tokyoでは現在、一般チケット(4万円)、5人以上の一括申し込みが条件の「団体チケット」(2万円)、創業3年未満(2015年10月以降に創業)のスタートアップ企業に向けた「スタートアップチケット」(1万8000円)、学生向けの「学割チケット」(1万8000円)も販売中だ。やっぱり現地でセッションを見たい、スタートアップ企業や投資家と話してみたいという方は、チケットの購入を検討してほしい。

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TC Tokyo 2018バトル出場のPOLがプレシリーズAラウンド調達、研究者・理系学生と企業つなぐLabBase運営

理系学生のための採用プラットフォーム「LabBase」や、産学連携を加速する研究者データベース「LabBase R&D」など、研究者・理系学生の支援サービスを提供するPOLは11月15日、プレシリーズAラウンドで資金調達を実施することを発表した。第三者割当増資の引受先は、PKSHA Technology、個人投資家の千葉功太郎氏、松田良成氏(漆間総合法律事務所 所長弁護士)、森本千賀子氏(morich 代表)、御立尚資氏、岡野求氏(元FiNC CHO)ほか1名。調達金額は非公開だ。

POLが運営するLabBaseは、研究者版LinkedInとも言える、理系学生に特化したダイレクトリクルーティングサービス。多忙な理系学生が研究や論文内容を登録してアピールすることができ、企業は既存の採用サービスでは見つけづらい才能に直接アプローチすることができる。2018年11月現在、登録者数8000人を超え、一部上場企業からスタートアップ企業まで、約100社に利用されているという。

またLabBase R&Dは、共同研究先の候補となる研究者のデータを、企業が大学横断で検索し、コンタクトできるサービスだ。論文や受賞歴だけでなく、共同研究への姿勢やパートナーに求めること、これからやってみたい研究など、研究者の情報を詳しく確認できる。2018年5月に事前登録を開始し、企業と研究室のマッチング実績を積み重ねているそうだ。

POLは2016年9月、東京大学工学部に在籍する加茂倫明氏が、元ガリバーインターナショナル専務取締役の吉田行宏氏とともに創業した。2017年4月にはBEENEXTなどから5000万円を調達している。

ICC KYOTO 2018内で行なわれたスタートアップコンテストでは準優勝を受賞。また本日、東京・渋谷ヒカリエで開催中のTechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトル・グループDにも、POLは出場を予定している。

TC Tokyo 2018に登壇するゲストスピーカーへの質問を大募集

11月15日(木)、16日(金)に開催される日本最大級のスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2018」。すでに昨年を超える枚数のチケットが売れており、今年も2500人以上の来場者が見込まれる。

今回、一部のセッションでは観客の皆さんからスピーカーに直接質問できるQ&Aコーナーを特別に設けた。具体的には、スマホやPCから質問を投稿できる「Sli.do」というサービスを利用する。誰もが自由に質問できるほか、自分が質問したい内容がすでに投稿されていれば、その質問に「いいね」を押すことで賛同できる。当日は「いいね」の多いものを中心にスピーカーに質問を投げかける予定だ。

質問の投稿や「いいね」を押すには、sli.doのサイトで下記に記載した「#TC」で始まる番号を入力するか、リンクをクリックしてsli.doのページを該当ページを開こう。Q&Aコーナーは10分程度と時間が限られているが、ぜひみなさんの知りたいことをぶつけてほしい。

■11月15日(木)
#TC11
TOYOTAの投資ブレーンに聞くモビリティの未来
Jim Adler氏(Toyota AI Venturesマネージングディレクター)

#TC12
Nianticが考えるこれからのAR
川島優志氏(Nianticアジア統括本部長)

#TC13
空飛ぶクルマをどう実現するか、日米のキーパーソンに聞く
向井秀明氏(楽天AirMap代表取締役/CEO)

#TC14
スポーツ系スタートアップを支援する「SPORTS TECH TOKYO」が始動
宮田拓弥氏(Scrum Ventures創業者/ジェネラルパートナー)
西内 啓氏(データビークル代表取締役/Jリーグアドバイザー)
山下大悟(日野自動車フューチャンプランアドバイザー)

#TC15
ソフトバンク傘下のARMが6億ドルで買収、日本人によるアメリカ起業家
芳川裕誠氏(Arm IoTサービスグループ データビジネス担当バイスプレジデント/ジェネラルマネージャー)

#TC16
今年もあと少し、スタートアップ投資業界のトレンドを知ろう
仁木勝雅氏(ディープコア代表取締役社長)
村田祐介氏(インキュベイトファンド代表パートナー)
千葉功太郎氏(Drone Fund創業者/代表パートナー)

#TC17
上場を果たしたメルカリ、これから目指すもの
小泉文明氏(メルカリ取締役社長/COO)

■11月16日(金)
#TC21
モバイル決済界の“大型ルーキー”誕生、後発組のPayPayが考える勝機とは?
中山一郎氏(PayPay代表取締役社長/CEO)

#TC22
アジア市場における決済事業の未来
長谷川潤氏(Omise CEO)

#TC23
2018年は新型旅行サービス元年だったのか、旅領域のキーパーソンに聞く
有川鴻哉氏(Hotspring代表取締役)
光本勇介氏(バンク代表取締役/CEO)
岩本有平氏(プレジデント社プレジデントオンライン編集部)

#TC24
スタートアップの経営で学んだ教訓と“これから“
堀江裕介氏(dely代表取締役/CEO)

#TC25
氷河期の創業、今年の上場、そしてこれから——将棋AIのHEROZが語る“次の一手”
林 隆弘氏(HEROZ代表取締役/CEO)

#TC26
Periscope創業者が描くTwitterの新たな未来像
Kayvon Beykpour氏(Twitterプロダクトリード/Periscope共同創業者)

WeWork、さらに30億ドルをSoftBankから調達――今回は2019年9月期限のワラント

シェアオフィスのWeWorkがSoftBank本体から30億ドルの追加出資を受けることが判明した。これはSoftBankのVision Fundからの投資とは別だ。今回の投資はワラントによるもので、SoftBankは30億ドルのキャッシュと引き換えに2019年9月より前に1株あたり110ドルまたはそれを超える額でWeWork株式を購入する権利を得る。この株価をベースにするとWeWorkの会社評価額は420億ドル以上となる。

8月にSoftBankは転換社債で10億ドルをWeWorkに投じている。

Financial Timesによれば、SoftBankはWeWorkに対して2019年1月15日に15億ドルを支払い、4月15日に残りの15億ドルを支払う。

SoftBankはWeWorkでダントツ1位の大株主であり、SoftBank Vision Fundは昨年、44億ドルを投資している。

WeWorkの戦略は単なる不動産事業以上のものだ。

WeWorkでは物理的なスペースの提供に加えて働き方改革全般のハブとなることを目指している。同社は30万を超える会員の力をバックにして、さまざまなサービスのプロバイダーに「卸売価格」を提示させることに成功してきた。またWeWorkはMicrosoftのような大企業と長期にわたる有利なリース契約を結んでいる。実際、この種の収入がWeWorkの収入の29%を占めている。

最大の注目ポイントはWeWorkが今後どこまで驚異的な成長率を維持していけるかだろう。驚くべき会社評価額が正当化されるかどうかもこの点にかかっている。 WeWorkはまだ黒字化を達成していない。

ビジョンは現実になるだろうか? SoftBankは現実になることに大きく賭けているようだ。

原文へ

滑川海彦@Facebook Google+

TechCrunch Tokyo History——来場者600人から始まった8年間の軌跡

日本最大級のスタートアップの祭典である「TechCrunch Tokyo」。通算8回目となる今年は、11月15日(木)、16日(金)に東京・渋谷ヒカリエで開催される。いまでこそ入場者が2500人を超える大規模イベントとなったが、2011年に開催された最初のTechCrunch Tokyoは、入場者が600人、開催も1日のみの小規模なイベントだった。ここでは、これまでのTechCrunch Tokyoの歴史を振り返っておこう。

TechCrunch Tokyo 2017
Slack共同創業者のCal Henderson氏が登壇。Henderson氏はFlickrとSlackという2つのサクセスストーリーを持つ起業家だ。Slackのことは知っていても、彼と彼の共同創業者であるStewart Butterfield氏の2人がゲーム開発の副産物としてFlickrとSlackという、いずれもホームランと言えるスタートアップ企業を生み出したことは知らない人もいるかもしれない。彼らはゲーム開発スタートアップとしては失敗続き。しかし、その副産物として生み出したサイドプロジェクト2つがFlickrとSlackというホームランなのだから恐れ入る。

TechCrunch Tokyo 2016
TechCrunch Tokyo 2016の最終セッションには、サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏が登壇した。2016年4月11日の本開局(サービス正式ローンチ)からわずか半年で1000万ダウンロードを突破するなど、快進撃を続けるインターネットテレビ局「AbemaTV」についてサービス開始から今後の展開までを語ってくれた。

TechCrunch Tokyo 2015
TechCrunch Tokyo 2015の最終セッションにはエウレカ代表取締役CEOの赤坂優氏が登壇した。エウレカは2015年5月、ニューヨークに拠点を置き、Tinder、Vimeo、Matchなどを傘下で運営するInterActiveCorp(IAC)にクロスボーダーM&Aによりグループ参画した。

TechCrunch Tokyo 2014
「ユニコーンクラブ」(短期間で時価総額が10億ドルを超えた稀有の成功事例)入り目前と評されるデートアプリ「Tinder」のバイスプレジデント・Rosette Pambakian氏が登壇。ロサンゼルス発のTinderは、スマホで異性の写真を見て「好み」「好みじゃない」と直感的に右へ左へと写真をスワイプしていくテンポの良いインターフェースが特徴。この斬新なUIはファッションや学習、ニュースなどのアプリにも採用されるなど注目を集めた。デートアプリで10億ドル(約1000億円)と言われてもピンとこないかもしれないが、彼女はTinderの戦略や、実際に周囲の人々がどう使っているかも含めて話してくれた。

TechCrunch Tokyo 2013
Dropboxと並んでY Combinatorの顔の1つとなった感もあるAirbnbだ。TechCrunch Tokyo 2013には、北欧・アジア・パシフィック地域担当のマネージング・ディレクターを務めるOle Ruch氏が登壇した。わずか3年後の2012年6月時点で、世界192カ国の3万都市に26万件の登録物件を持つほどに成長。通算で1000万泊の成約があり、企業評価額も1000億円を超えたと言われるほど爆発的成長を果たしたサービスだ。

TechCrunch Tokyo 2012
Uberの共同ファウンダー/CEOのトラビス・カラニック氏が登壇。彼のリムジン・タクシー配車サービスを紹介した後、アジアに事業を拡張する意向を発表した。.講演の最後でカラニック氏は、東京で「20人程度の非常に有能な人材」を採用し、「ウーバー東京」を発足させるつもりだと述べた。どうやらUberのアジア進出は東京が最初のターゲットとなるらしい。条件が整えば3週間くらいで新会社を立ち上げたちあげられると思うと壇上で語った。

TechCrunch Tokyo 2011
Y combinatorの卒業生で子供向け決済のソリューションを提供するPayStackのLawrence Krimker氏が登壇。彼はPaul Grahamのお墨付きで、Y combinatorが投資家として(彼によればY combinatorはインキュベーターではなくて投資家なんだと言っている)どう機能しているのか、普段は外に明かされないような内容を話してくれた。

オウチーノ運営のくふうカンパニー、家計簿アプリZaimを子会社化へ

オウチーノとみんなのウェディングとの共同持株会社として10月に設立された、くふうカンパニー。同グループに今後、家計簿サービス「Zaim」運営元のZaimも加わることになるようだ。

くふうカンパニーは11月13日、Zaimの株式取得に関する基本合意書を締結する決議をしたことを明らかにした。Zaimの発行済株式920株のうち470株を既存株主から取得する計画で、これによってZaimはくふうカンパニーの子会社となる。取得金額に関しては非公開だ。

くふうカンパニーではZaimの件とは別に、生命保険および損害保険の募集代理を行う子会社「保険のくふう」を設立したことも発表。これを機に今までサービスを展開してきた不動産領域と結婚領域に加え、新たに金融領域にも進出する(なお結婚式プロデュース事業を運営するアールキューブの完全子会社化、グループ内の独立したテクノロジー・デザイン組織Da Vinci Studioの設立も本日発表)。

くふうカンパニーグループの事業方針説明会資料より

Zaimはもともと閑歳孝子氏(現Zaim代表取締役)の個人プロジェクトとしてスタートした家計簿アプリだ。サービスのグロースに伴い2012年9月に会社化。現在Zaimとくふうカンパニーの双方で取締役を務める穐田誉輝氏がクックパッドの代表執行役兼取締役だったころに、同社から資金調達も実施していた。

開示されている資料によると2018年8月期の売上が2億5500万円、営業利益が4200万円。またZaim側の発表によると現在のダウンロード数は800万件を突破しているという。

VR/AR用触覚デバイス「EXOS Wrist DK2」の無償レンタルプログラムが開始

VR/AR用触覚デバイス「EXOS」シリーズを開発・販売するexiiiは11月13日、手首装着型の「EXOS Wrist DK2」の無償レンタルプログラム「EXOS for Hackers」を開始した。

exiiiはEXOS Wrist DK2の販売を2018年10月に開始したが、販売先が“一定以上の規模の企業”に限定されてしまったという。原因は何といってもその値段で、通常販売では片手60万円(税別)、サブスクでは月額で片手5万円と確かに高額かもしれない。なので、今回のプロジェクトは予算が限られている個人開発者やスタートアップを対象としている。ユースケースの拡大やデベロッパーコミュニティの形成がその狙いだ。

応募の条件は以下のとおり。

対象:個人もしくはスタートアップのVR/ARコンテンツデベロッパー

地域:日本もしくは米国での使用を前提

期間:原則1ヶ月とし、希望の場合はexiiiと相談の上で最大6ヶ月まで延長

EXOS Wrist DK2はVR/AR内でバーチャルオブジェクトに触れることを可能とする、触覚ウェアラブルデバイス。手首の前後方向と左右方向の二方向へ力を加えることで、さまざまな触覚を提示する。Vive ControllerやOculus Touch等のコントローラと組み合わせて使用することもでき、これにより既存のVRコンテンツに触覚を付与するような拡張にも対応可能だ。

exiiiに関しては2018年4月に8000万円を資金調達した際にも記事を出しているのでそちらも参考にしていただきたい。あと、僕は今月中にも同社を取材する予定なので記事化を楽しみに待っていてほしい。

都心にシェア型ウェットラボ開設、スタートアップ育成にかけるBeyond Next伊藤氏の思い

Beyond Next Ventures 代表取締役社長 伊藤毅氏

去る10月30日、三井不動産ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)は共同で、東京・日本橋にシェア型ウェットラボを開設することを発表した。2者と協力し、このシェアラボ「Beyond BioLAB TOKYO」を運営するのは、独立系アクセラレーターとして2つのファンドを運用するBeyond Next Ventures(以下BNV)。ラボ開設は2019年2月を予定している。

彼らのライフサイエンス領域におけるスタートアップ支援の取り組みと、開設されるラボとはどのようなものなのか。またBNVがライフサイエンス領域に密に関わるようになった経緯や、今後のスタートアップ支援への思いについても、BNV代表取締役社長の伊藤毅氏に詳しく話を聞いたので紹介したい。

三井不動産、LINK-JとBeyond Next Venturesの協業体制

LINK-Jは、ライフサイエンス領域でのオープンイノベーション促進、新産業創造支援を目的として、三井不動産と産学の有志が中心となって設立した一般社団法人だ。イノベーションの「場の整備」に取り組む三井不動産とともに、国内外のアカデミアや海外団体との連携による「コミュニティ構築」に取り組んでいる。

LINK-Jでは、カンファレンスルームやラウンジ、オフィスなどの各種スペースを日本橋を拠点に提供し、シンポジウムやセミナーなどの交流イベントも開催する。また、BNVが運営する先端技術系のアクセラレーションプログラム「BRAVE」や、同じくBNVが東京都から委託を受けて運営する創薬系ベンチャー育成プログラム「Blockbuster TOKYO(ブロックバスタートーキョー)」への支援なども行っている。

LINK-J設立から2年半で国内外の15大学が参加し、うち8大学は関連施設内にオフィスを開設。そのほか、ライフサイエンス領域のスタートアップやこれらを支援する企業、VC、団体などとも協業している。

今回のシェアラボ開設発表と同時に三井不動産は、BNVが10月に組成した2号ファンドへ出資したことも明らかにした。資金面でもライフサイエンス領域のスタートアップ支援を進める姿勢を明確にしている。

都心にシェア型ウェットラボ開設へ

さて、日本橋はデパートや老舗など、商業の中心地のイメージが強いが、実は江戸時代から薬種問屋が軒を連ね、現代でも医薬関連企業が集積する地域だ。その地で三井不動産がスペースを提供し、LINK-Jも入居する日本橋ライフサイエンスビルディングの地下にシェア型ウェットラボ、Beyond BioLAB TOKYOがオープンする。ラボは三井不動産からBNVヘフロアを賃貸し、BNVが整備してライフサイエンス領域のスタートアップと契約する形で運営される。

ラボの周辺はコレド室町や三越本店などの商業ビルや、オフィスビルが立ち並ぶ都心のど真ん中。そこへ生化学実験や細胞培養実験などが可能なウェットラボが、しかも共用で利用できる設備として登場する。となると「安全性は確保できるのか」「本当に有効な実験ができる施設になるのか」という両面で懸念が出そうだ。

米国では、既にシェアラボ施設が多数あり、多くのバイオ系スタートアップが輩出されている。先に米国の事情を見てみよう。

2017年1月にBNVと業務提携したIndieBioは、年間30のスタートアップを支援するアクセラレーターだ。サンフランシスコのダウンタウンに位置するIndeiBioは、バイオセーフティレベル1および2の設備を持つラボを24時間・365日提供。物理的な施設に加え、4カ月間のアクセラレーションプログラムと25万ドルのシード資金で、バイオテック関連のスタートアップをサポートする。

ニューヨークやノースカロライナ、サンディエゴなど、米国7カ所に拠点を持ち、2009年から累計230社の企業を支援してきたBioLabsも、ライフサイエンス系スタートアップにシェアラボとオフィス設備を提供する。例えばニューヨークのラボであれば、マンハッタンのダウンタウンに位置しており、ニューヨーク大学ランゴンメディカルセンターと提携、ライフサイエンス領域のスタートアップの成長を支援している。

米国のこうしたシェアラボやアクセラレーターは、いずれも物理的施設に加え、アクセラレーションプログラム、場合によっては資金の提供により、バイオ系スタートアップを支援している。また、ラボの周りに起業家や研究者のほか、投資家や事業会社、公的機関が集積することで、事業化が進めやすい環境となっている。

こうした先行事例を踏まえて東京の都心に誕生するシェア型ウェットラボ、Beyond BioLAB TOKYOは、どのような環境を提供するのかを見てみよう。

日本橋ライフサイエンスビルディング地下1階のワンフロア、実験スペース、オフィススペースに事務所エリアも含めて、約445平方メートルを占めるBeyond BioLAB TOKYO。研究開発支援エリアは、ベンチ(実験台)を共有して使えるオープンエリアと個室の実験室に分かれている。共有エリアは基本的にはバイオセーフティレベル1(P1)の実験が可能。個室とオープンエリア内で隔離されたP2実験室ではレベル2(P2)の実験も行える(ただし感染症法で特定される病原体の取り扱いはできない)。

実験室共有機器には、安全キャビネット、オートクレーブ、CO2インキュベーター、超純水製造機、ヒュームフード、PCRシステム、フロア型冷却遠心機、超低温フリーザー、コールドルーム、エアバリアブースなどがあり、生化学・細胞培養実験などに必要なベーシックな機器は一通り備え付けられている。

実験素材のコンタミネーションや取り違えを防ぐため、チームごとに専用の鍵つき冷蔵庫も用意されており、試薬保管庫、廃液保管庫なども整備されている。

ラボの設備ももちろんだが、米国で展開されるシェアラボと同様、アクセラレーションプログラムBlockbuster TOKYOとの連動や、ラボ周辺への起業家、研究者、投資家などの関係者の集積ももくろんでおり、三井不動産・LINK-Jとのコラボレーションによる、ネットワーキングやイベント連携も行っていくということだ。

ラボの入居対象は創業前〜起業直後、そして起業後初期までのスタートアップ。料金は10月30日現在の仮の設定だが、1チーム当たり月額20万円前後を予定している。

BNV代表の伊藤氏によれば、ラボ全体で「1〜2名のチームで10〜15チーム、プラス個室を利用する数チーム、合計20チーム弱ぐらい」の入居を想定しているという。ラボのグランドオープン前の約1カ月をプレオープン期間とし、その時点から、2018年度のBlockbuster TOKYOで採択された21チームのうちの約半数の利用を見込んでいる。

医療・ライフサイエンス領域に注力するBeyond Next Ventures

伊藤氏は「日本では、大学などに対する研究資金は米国の約半分強。米国で年間6.3兆円のところ、日本では3.7兆円だ。一方、大学のライセンス収入は、米国の3050億円に対して日本が約27億円と桁が2つ違う、極端に少ない状態」と説明し、「研究によって得た技術が循環していない。大学の技術シーズを実用化し、社会還元することが急務」と述べる。

BNVは2014年の設立後、大学発の研究開発型ベンチャーを対象として1号ファンドを立ち上げ、2016年にクローズ。ファンド総額は55億円を超える規模となった。そして今年の10月には1号ファンドを超える規模の2号ファンドを設立している。

2号ファンドでは先端技術のなかでも特に、医療・ライフサイエンス領域に注力する、とBNVはコメント。伊藤氏は「日米のライセンス収入の差が100倍あるような状況で、スタートアップ支援のエコシステムを確立するためには、お金が必要なことも事実」といい、「資金調達をひとつのきっかけ、起業の第1歩として活用してもらえれば」とファンドの役割に言及。「3桁億円(100億円〜)規模のファンドを目指す」としている。

ファンドによる資金面での支援に加えて、2016年には技術系アクセラレーションプログラムのBRAVE、2018年には創薬系ベンチャー育成プログラムのBlockbuster TOKYOと、BNVはソフト面でもスタートアップを支援してきた。人材面でもサポートを行い、多角的にアカデミア発スタートアップを支えている。今回のシェアラボ開設により、設備・インフラ面でもこの領域の支援が強化されることになる。

BNVが医療・ライフサイエンス領域にフォーカスした理由のひとつには、地縁ともいうべきつながりもあったようだ。「そもそも2年前、BNVのオフィスを日本橋に移したとき、建物のオーナーが三井不動産で。そこから縁が始まった」と伊藤氏は3者の連携が生まれたきっかけについて話している。医薬の街・日本橋を舞台に、大学発のライフサイエンス系スタートアップが集うLINK-Jに、BNVは会員・サポーターとして参加。LINK-Jのほうも、BRAVEの第1回プログラムからスポンサーとして参画し、現在も公式アクセラレーションプログラムとして取り扱っている。

「こうした縁で、医療・創薬系スタートアップのネットワークを3者で培ってきた」という伊藤氏。「IndieBioの事例なども参考に、アクセスが良い場所に設備を提供し、ネットワークも提供することで、バイオ系スタートアップが起業できる場を作れないか、と考えてきた。Blockbuster TOKYOの運営が決まって、育成環境も整ったので、後は実験できる場所だけ。三井不動産、LINK-Jとの連携により、今日、シェアラボという形が実現した」(伊藤氏)

写真左からBeyond Next Ventures 代表取締役社長 伊藤毅氏、三井不動産 常務執行役員/LINK-J理事 植田俊氏、LINK-J理事/事務局長 曽山明彦氏

VCからアクセラレーターへ

ベンチャーキャピタルといえば、ファンドとしてスタートアップの資金面をサポートするもの、というイメージが強い。だが伊藤氏は「確かにお金には価値がある。だが、技術シーズが社会実装できないのは、資金だけでは事業の形にならないから。そうしたシーズはアカデミアにいっぱい埋もれている」として、BNVの立場について「最近、VCからアクセラレーターへと呼び方を意識的に変えた」と話している。

「すばらしい技術があれば、それに興味を持ってもらわなければ。技術だけでは、ビジネスの人には(その先進性が)理解してもらえない。ビジネスの人が『面白い』と思ってくれるようなプランに作り変えるのも、アクセラレーターとしての仕事」(伊藤氏)

BNVでは、技術シーズを事業計画へ落とし込むサポートも行う。伊藤氏は「起業家がリスクを負ってチャレンジをするなら、支援者のほうも同じようにチャレンジをしないと」と語る。

2017年には社内にヘッドハンターを採用した。実はアカデミア発の技術系スタートアップで事業化が難しいのには、「社長がいない、見つからない」という理由も大きい。この課題を解決すべく、BNVでは1500名の社長候補者をプールして、スタートアップとのマッチングも行っている。また、起業家育成もあわせて行う。

ファンドから環境整備へ。伊藤氏は「とにかく、目の前にある課題を解決していくことだ。そうすることで、新しいことをやる人を、チャレンジを増やしたい」と語る。「自分たちも2014年に始まったばかりのベンチャー。だから枠組みにとらわれずに、できることをやっていきたい」(伊藤氏)

TC Tokyo 2018にAIが解析するスマートフットウェアプラットフォーム「ORPHE TRACK」の展示が決定

11月15日(木)、16日(金)に開催される日本最大級のスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2018」。そのフューチャーラウンジに新たな企業の出展が決まった。スマートフットウェアを開発するスタートアップ企業であるno new folk studioの「ORPHE TRACK」が展示されるのだ。ORPHE TRACKはすべての靴をAI搭載のIoTシューズにするためのプラットフォーム。

ORPHE TRACKの核となるモジュールである「ORPHE CORE」は、6軸モーションセンサー、気圧センサー、振動モーターのほか、STマイクロエレクトロニクス社の最先端のマイクロコンピューター「STM32L4+」シリーズを内蔵。リアルタイムで高精度の運動解析とフィードバックを低消費電力かつ高速処理で可能にしたという。また、ORPHE COREに搭載されるAI「ORPHE AI」は、足の動きのデータを機械学習して、ランニングフォームのコーチングや健康状態のアドバイスを行うそうだ。運動能力や健康状態と密接な関係にある「歩き」や「走り」を精密に記録して解析することで生活を変革していきたい、と同社は語っている。

また同社は、「ORPHE TRACK」プラットフォームに適合する靴をデザインするためのフレームワーク「ORPHE FRAMEWORKS」を靴メーカー向けに用意している。このフレームワークに沿って「ORPHE CORE」を内蔵できるようにデザインすることで、あらゆる靴が「ORPHE TRACK」プラットフォーム対応になるそうだ。

TechCrunch Tokyo 2018では現在、一般チケット(4万円)、5人以上の一括申し込みが条件の「団体チケット」(2万円)、創業3年未満(2015年10月以降に創業)のスタートアップ企業に向けた「スタートアップチケット」(1万8000円)、学生向けの「学割チケット」(1万8000円)を販売中だ。

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LINE上で収支管理ができる「LINE家計簿」がローンチ

最近は保険や資産運用など“お金”に関するサービスに次々と着手しているLINE。その同社が次に取り組むのは家庭の資産管理、つまり“家計簿”だ。

LINE Payは11月13日、「LINE」アプリ上から利用できる家計簿・資産管理サービス「LINE家計簿」をローンチしたことを明らかにした(ローンチ日は12日)。

同サービスは「楽しくつづける。楽しくたまる。」をコンセプトとした、完全無料の個人向け家計簿サービス。以前紹介した「LINEほけん」や「LINEスマート投資」のようにLINEの“ウォレット”タブからアクセスできるLINE版と、独立したアプリ版(iOSAndroidに対応)の2つの形式で提供する。

アプリ版では銀行やクレジットカード、電子マネーなどの金融サービスや「LINEポイント」を始めとする各種ポイントサービス、ECサービスと連携が可能。それらの情報を一括で管理して、自動で家計簿を作成できるのが特徴だ。「LINE Pay」での送金や支払い、チャージなどの利用履歴、残高確認を自動で取り込み家計簿に反映する機能も備える。

一方のLINE版はLINEアプリ上からすぐに起動できるのがウリだ。収支の記録や連携した金融サービスの情報をチェックすることが可能。ただし現時点では一部の機能には制限があり、すべての機能を使うにはアプリ版のインストールが必要だという(この辺りは公式のリリースに詳しい)。

そのほかアプリ版では手入力のほか、レシートを撮影すると品目や金額を読み取り自動入力する仕組みも構築。入力された収支をもとに“今日使えるお金”の上限を自動計算してくれる機能や、過去の支出をグラフ化した1週間や1ヶ月単位のレポートを無料で閲覧できる機能なども備える。

LINE Payでは「『LINE家計簿』は、LINEのさまざまな金融サービスのハブとなり、お金の流れを可視化し、決済や収支の管理はもとより、賢く効率的な貯蓄を可能にし、資産形成、資産運用をサポートする家計簿・資産管理サービスを目指します」とコメント。

今後はLINE上の友だちと貯金や収支・資産が共有できるグループ機能の搭載も予定しているという。

家計簿アプリと言えばマネーフォワードZaim、スマートアイデア(お金レコ)、 BearTail X (Dr.Wallet)など複数のスタートアップがサービスを展開している領域でもある。そこにLINEが加わることでどのような変化が起こるのか、今後の動向が気になるところだ。

TC Tokyo 2018のフューチャーラウンジにWEAR SPACEが展示されるぞ!

Shiftallが、パナソニックのデザインスタジオ「FUTURE LIFE FACTORY」と共同で開発した「WEAR SPACE」(ウェアスペース)をご存じだろうか。独創的なフォルムで集中力を高めるウェアラブル端末で、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)グループが運営する「GREEN FUNDING」を通じて現在クラウドファンディング中だ。

WEAR SPACEは、ノイズキャンセリング機能を搭載したヘッドフォンと視界を調整できるパーティションで構成されている。この機能とデザインにより、周囲の雑音を低減して不要な視覚情報を排除することで、オープンな空間にいながらも瞬時に周囲との境界を作り出し、心理的なパーソナル空間を生み出すという。

WEAR SPACEの試作品は、これまで国内外のさまざまな展示会やイベントなどにを出展。2017年には、国際的なプロダクトデザイン賞のひとつである「Red Dot Design Award(レッド・ドット・デザイン賞)」のデザインコンセプト部門において「Best of the Best Award(ベスト・オブ・ザ・ベスト賞)」を受賞している。

TechCrunch Tokyo 2018では、このWEAR SPACEをフューチャーラウンジに展示してもらうことが決まった。しかも、TechCrunch Tokyo 2018初日となる11月15日には、渋谷ヒカリエのBホールに設置されるTC LoungeでWEAR SPACEの開発担当者によるプレゼンテーションも予定されている。

TechCrunch Tokyo 2018では現在、一般チケット(4万円)、5人以上の一括申し込みが条件の「団体チケット」(2万円)、創業3年未満(2015年10月以降に創業)のスタートアップ企業に向けた「スタートアップチケット」(1万8000円)、学生向けの「学割チケット」(1万8000円)を販売中だ。

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飲食店と厳選農家をつなぐ食材コンシェルジュ「食べチョクPro」がローンチ

オーガニック農家と消費者をつなぐC2Cマーケットプレイス「食べチョク」を運営するビビットガーデン。同社はこれまで培ったネットワークや基盤を活用して、11月13日より飲食店向けの新サービス「食べチョクPro」を始める。

食べチョクProは飲食店からの要望に合わせて適切な農家を提案する、コンシェルジュ型の仕入れサービスだ。特徴は要望を伝えるだけで簡単に“農家直送”のこだわり食材を手に入れられること。飲食店の担当者は自らサイト上で生産者や食材を探す手間なくスムーズに仕入れができる。

飲食店が生産者から直接仕入れをできるサービス自体は以前紹介したプラネットテーブルの「SEND」などいくつか存在するけれど、まだコンシェルジュ型のサービスは多くない。ビビッドガーデン代表取締役CEOの秋元里奈氏いわく食べチョクProは「コンシェルジュが買い付け代行をするようなイメージに近い」そうで、「サラダに使えそうな野菜が欲しい」といったアバウトな注文にも対応できるのがウリだという。

食べチョクProには食べチョク同様に厳選されたオーガニック農家が参画(Proでは一部オーガニック以外の食材にも対応するとのこと)。農家直送であるからこそ、少量しか生産していない珍しい食材も並ぶ。

秋元氏によると、これまでは飲食店がこだわりの食材を産地直送で仕入れようと思った場合、自ら農家を見つけてきて直接やりとりすることも多かったそう。その際に農家側が急に出荷できなくなってしまうリスクがあったり、仕入れに関するコミュニケーションに毎回がかかったり、いくつかネックがあった。

食べチョクProの場合は運営が双方の間に入り、一連のフローを円滑に進めて“ギャップ”を解消する役割も担う。

サービスの流れとしてはまず飲食店が食材のリクエストを送る。その要望に基づいてコンシェルジュから農家と食材が提案されるので、あとは買いたい食材と個数を選択するだけ。注文後に農家からお店へ食材が直送され、決済フローに沿って代金を支払う。

もともと食べチョクでは2018年2月より一般消費者向けに「食べチョクコンシェルジュ」を提供している。このサービスが好調で翌月の継続率も95%と高いこともあり、今回の食べチョクProはこの食べチョクコンシェルジュの仕組みを飲食店向けに改良して提供する。

これまでは特に一般消費者向けと飲食店向けとで区別することなくサービスを展開していたため、実は現時点でも数十件の飲食店が食べチョクを通じてオーガニック農作物を仕入れている状況。すでに月間で25万円の注文が入るような飲食店もあるという。

主に「こだわりの食材を扱っている単価が高めの飲食店」「サラダバーなどをウリにしているオーガニックカフェ」「ジュース専門店」などで利用されていて、今後も利用店舗の拡大が見込めるそう。それも踏まえて飲食店向けにサービスを切り出し、システムも活用しながらニーズに合った形で農家とのマッチングを促進することを選択した。

2~3ヶ月ほど前からはLINE@を活用したスモールテストも実施。結果的には自分たちが当初想定していたよりも幅広い飲食店で使ってもらえそうな感触を得たそうで、今回のローンチを機にさらにサービスを拡大していく方針だ。

コンシェルジュの部分に関しては人力の要素も多いが、ゆくゆくは機械的にレコメンドする仕組みを検討中とのこと。人がサポートする場合は別プランにするなどの計画もあるという。

TechCrunchで食べチョクを紹介するのは同社が資金調達をした2月以来、約半年ぶり。現在食べチョクに登録する農家は約200軒まで増加している。この半年は継続率や月の購入頻度を高めるための施策に取り組んできた中で、ユーザー当たりの月間購入頻度も1.1回から約2回にまで成長しているようだ。

今回の食べチョクProは飲食店にとっての使い勝手を向上するためだけでなく、飲食店に購入してもらえる仕組みができることで、より多くの農家が参画してくることも見込んだ取り組み。秋元氏も「相乗効果が見込める。飲食店のニーズに応えるのはもちろん、C向けのサービスを加速させるためのB向けサービスでもある」と話す。

まずは1年後、2000店舗に使われることがひとつの目標。飲食店とのマッチングを通じて、農家のさらなる販路拡大を支援していきたいという。

Startup Battle History——TC Tokyoで最優秀賞に輝いたスタートアップたち

11月15日(木)、16日(金)に開催される日本最大級のスタートアップの祭典である「TechCrunch Tokyo 2018」。その目玉と言えるのが、創業3年未満のスタートアップ企業が、未ローンチもしくはローンチ1年未満のプロダクトで競う「Startup Battle」だ。今年も100社を超える応募があり、書類選考を突破した20社がファーストラウンドに進出する。TechCrunch Tokyoは今年で8回目となるが、ここでは過去のStartup Battleで最優秀賞に輝いたスタートアップ企業を紹介する。最優秀賞を獲った後に資金調達や提携が決まった会社がある一方、異なるプロダクトで再出発を図った企業までさまざまだ。

2017 ホテル番付(空)
ホテル経営者向けに無料の経営分析ツール。ホテル経営者向け料金設定サービス「MagicPrice」と合わせて業界の価格最適化を進めるサービスだ。2018年に入り、ホテルニューオータニ系やベストウェスタンホテル系への導入が続々と決まった。

2016 小児科オンライン(Kids Public)
小児科に特化した遠隔医療相談サービス。平日の夜18〜22時、こどもについての質問や悩みをLINE、電話、Skypeで医師に相談することができる。料金は初週無料で、それ以降は月額3980円。これからは健保、保育園を中心にB向けにビジネスを推進。”受診すべきか”を医師なしで判断できる遠隔医療システムの浸透を目指していくとのこと。

2015 SmartHR(SmartHR)
社会保険・雇用保険といった労務手続きを自動化するクラウド型ソフト。提示されるフォームに入力し、「雇用契約書を用意しましょう」といったTo Doをこなすだけで、必要書類を自動作成できることをうたう。電子政府のAPIを使うことで、まもなくウェブ経由で役所へ書類を届け出られるようになり、面倒な労務手続きがオンライン上で完結する。フリーミアムプランで月額利用料は980円から。社労士に労務手続きを依頼する場合と比べて、手続時間も3分の1に抑えられるという。

2014 AgIC(エレファンテック)
最優秀賞と2つのスポンサー賞を獲得したのは、AgIC(エージック)。家庭用インクジェットプリンタで導電性をもった専用インクを「印字」して紙の上にも電子回路を打ち出せるプロトタイピング向けプロダクト。AgICを使うことで電子回路の試作に要していた時間を1週間から、2〜3分へと短縮し、コストも大幅に抑えることを可能とした。インクの技術を強みにするだけではなく、自社サイトでの回路図の共有などサービスを拡充することで、ユーザーの囲い込みを図っていきたいと意気込む。3Dプリンターだけではカバーできない部分を見事に解決したとして高い評価を得た。

2013 Ring(ログバー)
Ringはまったく新しいウェアラブルデバイス(入力デバイス)。名前のとおりリングの形状をしており、指にはめて利用する。Google Glassやスマートウォッチといったウェアラブルデバイスはディスプレイが付いていて、その上でアプリなどを動かすが、Ringは入力デバイスとして機能する。しかし、開発の遅れやデザイン面で問題が発生し、販売は終了。現在同社は、スティック型のオフライン翻訳機「ili(イリー)」の展開に力を入れている。

2012 WHILL(ウィル)
足が悪くて歩けない、遠くまで歩くのが辛い方のための乗り物。車イスやシニアカーは乗り物の中で唯一、乗っている人のステータスを下げてしまうという問題を解決するためのカッコよく、操作性を考慮した電動車イスだ。ハードウェアの製品ということでTechCrunch Tokyoの審査員も迷った点があったものの、イモーショナルに訴えかけ、将来性のあるプロダクトであることからWHILLを選んだ。昨年のTechCrunch 2017では招待出展としてWHILLがヒカリエにも展示された。

2011 Picotube(ヴェッテル)
Picotubeは、ビデオのTurntable.fmと言えばわかりやすい。このサービスはYouTubeのコンテンツを利用し、ユーザは自分のアバターを決めてから、ほかのユーザたちと仮想劇場でビデオを楽しみ、プレイリストを作り、ディスクジョッキーならぬ”ビデオジョッキー”たちが選んだビデオに[良い/だめ]などと格付けをする。サービスには英語版もあり、将来の収益化の方法としては仮想グッズの販売を考えていた。なお同サービスはすでに終了しており、同社は現在受託アプリ開発を中心に事業を進めている。

TechCrunch Tokyo 2018では現在、一般チケット(4万円)、5人以上の一括申し込みが条件の「団体チケット」(2万円)、創業3年未満(2015年10月以降に創業)のスタートアップ企業に向けた「スタートアップチケット」(1万8000円)、学生向けの「学割チケット」(1万8000円)を販売中だ。

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スマホ決済のPayPay Yahoo! JAPANアプリから利用可能に

eng-logo-2015ソフトバンクとヤフーの合弁会社「PayPay」(ペイペイ)は11月12日、スマホ決済サービス「PayPay」と「Yahoo! JAPAN」アプリの連携を開始しました。

Yahoo! JAPANアプリのトップにある「PayPay」アイコンから、「スキャン支払い」および「コード支払い」の2方式を選択できます。なお初回利用時にはYahoo! JAPAN IDとPayPayの連携登録が必要です。

PayPay」は、QRコードを使った決済手数料0円(2021年9月まで)のスマホ決済サービスです。支払い方法は銀行口座からチャージした電子マネー(PayPay電子マネー、Yahoo!マネー)、またはクレジットカードから選択可能。決済が完了すると、決済額の0.5%相当のPayPayボーナスが還元されます。なお、還元額は1人につき月間累計で最大5000円に留まります。

Yahoo! JAPANアプリとの連携開始に伴い、ヤフーの決済サービス「Yahoo!ウォレット」の実店舗決済機能は終了。一方、Yahoo!ウォレットのオンライン決済機能は提供を継続します。

Engadget 日本版からの転載。

Nianticが考えるこれからのAR、アジア統括本部長・川島優志氏がTC Tokyoに登壇

-o7qHqPg11月15日、16日の2日間、東京・渋谷ヒカリエで開催される「TechCrunch Tokyo 2018」。15日の朝9時40分から始まるセッションには、Niantecでアジア統括本部長/エグゼクティブプロデューサーを務める川島優志氏の登壇が決定した。

Nianticといえば熱狂的なファンが多い「Pokémon GO」や「Ingress」でおなじみの会社。しかも、スマートフォン向け位置情報ゲームであるIngressは、メジャーアップデート版である「Ingress Prime」がリリースされたばかりだ。Ingress Primeでは、開発環境にUnityを採用し、UIが大幅に改良されているのが特徴。また、レベル16以上のエージェントは「プレステージモード」が利用可能となり、「リカージョン」(生まれ変わり)により、「ファクションチェンジ」やレベル1からの再スタートが可能になるようだ。

川島氏には当日、地図/位置情報を使った技術のチームから生まれた会社がなぜゲームを出しているのか、ARでなにをしようとしているのか、なぜオフラインイベントにこだわるのか——などを話していただく予定だ。

TechCrunch Tokyo 2018では現在、一般チケット(4万円)、5人以上の一括申し込みが条件の「団体チケット」(2万円)、創業3年未満(2015年10月以降に創業)のスタートアップ企業に向けた「スタートアップチケット」(1万8000円)、学生向けの「学割チケット」(1万8000円)を販売中だ。

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