アーリーステージ投資を中心とする米VCのLightspeedがシンガポールを拠点に東南アジア事業の立ち上げを発表

エンタープライズ技術と消費者分野の事業を進めるスタートアップ向けた初期投資に焦点を当てている米VCのLightspeed Venture Partnersは米国時間9月16日、東南アジア事業の立ち上げを発表した。シンガポールに新たに設立された地域本部を拠点とするLightspeed Venture Partnersのチームは、今年初めにクローズした総額約40億ドル(約4200億円)の3つのグローバルファンドから東南アジア全域のスタートアップ企業に投資を進める。

Lightspeedの東南アジアチーム。写真に向かって左から、アクシャイ・ブシャ氏、マーシャ・スガナ氏、ピン・ロージンダク氏、ベクル・ソマリア氏

東南アジアチームは、5年前にLightspeedに入社する前に、インドのEコーマス企業のFlipkartで企業開発チームの創設メンバーでだったパートナーのAkshay Bhushan(アクシャイ・ブシャン)氏、Lightspeed Indiaの設立を支援したパートナーのBejul Somaia(ベクル・ソマリア)氏、GrabとTiger Global ManagementのベテランであるPinn Lawjindakul(ピン・ロージンダク)副社長、米VCノL CattertonとGoldman Sachs(ゴールドマンサックス)デ勤務したことのあるシニアインベストメントアソシエイトのMarsha Sugana(マーシャ・スガナ)氏で構成されている。

ブシャン氏はTechCrunchに「Lightspeedが1月にシンガポールオフィスを開設したのは、チームが地域全体の起業家と会う際の拠点としての役割を果たすためです」と語った。新型コロナウイルスの感染蔓延により出張が制限されたのは明らかだが、ビデオ通話やEメールでのやり取りは継続している。

Lightspeedはアーリーステージの投資に力を入れており、すでにGrabをはじめとする東南アジアで最も勢いのある新興企業に投資している。この地域における同社の他の投資先企業は、ソーシャルコマースプラットフォームのインドネシアのスタートアップのChilibeli、B2BホールセールマーケットプレイスのUla、Eコマース物流プラットフォームのShipper、シンガポールのソフトウェア開発者NextBillion.AIなどがある。

Lightspeedの他の国への投資の中には、インドの新興企業のOYO Rooms、Darwinbox、Yellow Messengerなど、東南アジアをグローバル展開の重要な市場として注目している企業もある。

「地域で事業を展開することで、Lightspeedは投資先企業とより密接に連携し、起業家とより深いつながりを持つことができるようになります」とブシャン氏は述べた。

また「新型コロナウイルスの感染蔓延の影響で中小企業の業務のデジタル化やオンライン販売を支援するプラットフォーム、サプライチェーンソリューション、リモートワークやオンライン教育関連サービスなどのテクノロジーの急速な導入が促されています」とも付け加えた。

現在、フィンテックや物流などの分野では、東南アジアのいくつかの国で、変革的なプラットフォームやサービスを構築するための多くの機会がある。ブシャン氏によると」Shipperはインドネシアの電子商取引の売り手が直面している最大のサプライチェーンと物流の課題のいくつかを解決することに注力しており、Grabはデジタル決済や保険などの金融サービスへのアクセスを容易にしています」と説明する。

「東南アジアのほとんどの市場に当てはまる、ほとんどの新興市場では、基本的なインフラが壊れていることが多く、創業者はテクノロジーを活用してそのギャップを埋めることができます。私たちがワクワクするのは、こうしたインフラの問題を解決しようとしている創業者であり、私たちの投資の多くはそのためのものです」とブシャン氏は締めくくった。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Googleレポート:東南アジアのデジタルエコノミー、2025年までに2400億ドルに成長

中国とインドの影に隠れているようだが、東南アジアにおけるテクノロジー成長は実に大きな可能性を秘めている。計6億5000万人もの人口を抱えるこの地域のデジタルエコノミーは今後7年間で3倍に成長し、2400億ドル規模に達することが見込まれる。Googleが実施した3回目の「e-Conomy SEA」レポートで報告されている。

Googleとシンガポールの政府系投資会社Temasekが共同で行う年次調査は、間違いなく東南アジアにおけるテクノロジーについて最も包括的な研究プログラムだ。この調査によると同地域は“転換期”に到達し、2025年におけるデジタルエコノミーの規模の予測を当初の2000億ドルから引き上げた。

東南アジアは主要6カ国に3億5000万人ものインターネットユーザーを抱えるーこれは米国の総人口より大きい。そして最新のデータでは、インターネットエコノミーは2015年の191億ドル、昨年の500億ドルから増え、今年は720億ドルに達する見込みだ。

レポートによると、インターネットエコノミーにおける最も大きな収入はオンライントラベル(300億ドル)で、次いでeコマース(230億ドル)、オンラインメディア(110億ドル)、配車サービス(80億ドル)となっていて、この内訳は2025年まで続く見込みだ。

この地域では大きな成長が予想され、世界で4番目に人口が大きいインドネシアは2025年までにインターネットエコノミーマーケットが1000億ドルに到達し、それにタイ(430億ドル)、ベトナム(330億ドル)が続く。データをみると、特にインドネシアとベトナムはそれぞれ2015年の3倍超と著しい伸びが予想される。

今年のGoogle-Temasekレポートには配車サービスについての詳細も含まれている。今年初めにGrabがUberのローカル事業を買収して以来、配車サービスは東南アジアにおいて特に注目を集める分野となっている。レポートによると、GrabとそのライバルであるインドネシアのGo-Jekはかなりマーケットを拡大させている。2018年の1日あたりの配車サービスユーザーは800万人と、2015年の150万人から増えている。そして月間ユーザーも2018年は3500万人で、2015年の800万人から成長している。

売上の成長に目を向けると、実際には輸送サービスより食品デリバリーサービスの伸びが目覚ましい。これはGrabやGo-Jekにとっては良いサインだ。というのも、この2社はオンデマンドサービスへ積極的に事業を拡大している。一方、東南アジアの主要経済国である6カ国の中で人口が550万人と一番小さいシンガポールは、この地域における配車サービスでひときわ大きなシェアを持つーこの傾向は2025年まで続く見込みだ。

ひときわ大きいといえば、この地域における巨大企業がいかに資金調達をすっかり独占しているかもこのレポートでは取り上げられている。過去4年で同地域に投資された240億ドルのうち、数十億ドルの価値がある企業が実に160億ドルを占めていて、Grab1社で60億ドルだ。

レポートでは毎回、この地域の成長は東南アジアのスタートアップのエコシステムを全体として押し上げる資金調達のレベルに左右される、と強調していて、資金の多くが限られた大企業に集中しているという事実は懸念すべき点だ。しかしながら、他の部分では発展していることがレポートで示されている。ユニコーンでない企業の資金調達の額は、2018年上半期をみると年間でかなりの伸びが予想されるー上半期だけで2017年通年の額を超えている。

レポートには「東南アジアにおける200以上のインターネットエコノミー企業が投資を確保し、企業価値10億ドル以下の企業は過去3年間で合計70億ドルを調達した。それらの中で最もダイナミックな部門が価値1000万ドル〜1億ドルの企業だった。インターネットエコノミーの基盤となっているこれらの企業は2018年上半期に14億ドルを調達し、2017年に調達した10億ドルをすでに超えている」と記されている。

レポートはこちらから閲覧できる。

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(翻訳:Mizoguchi)

Alibaba、インドネシアのEC企業Tokopediaに投資――ラウンド総額は11億ドル

Alibabaが東南アジア市場への攻勢を強めている。この度インドネシアのEC企業Tokopediaは、Alibabaを中心とする投資家から合計11億ドルを調達したと発表した。

評価額は公表されていないが、両社共にAlibabaがTokopediaの少数株主になったことを認めた。

2009年に設立されたTokopediaは、小規模小売店や大手ブランドが(東南アジア最大の経済規模を誇る)インドネシアの消費者に向けて商品を販売できるマーケットプレイスを運営している。同社は2014年にソフトバンクとSequoiaから1億ドルを調達しており、East Venturesやサイバーエージェント、Beenos Partnersも初期からの株主だ。Tokopediaによれば、名前が明かされていない既存株主の多くも今回のラウンドに参加したとのこと。

「Alibabaとのパートナーシップを通じてサービスのスケールや質を向上させ、小売店やパートナー企業がインドネシアはもちろん、国外でも円滑にビジネスを運営できるようにしていきたい」とTokopediaは声明の中で述べた。

「Alibabaのことは私たちの師匠かつロールモデルのような存在として考えている」とTokopediaの共同ファウンダーでCEOのWilliam Tanuwijayaは同声明の中で語った。「そんなAlibabaを株主として迎えることができ、大変嬉しく思っている。テクノロジーを活用して商業を民主化するというTokopediaのミッションの実現に向けて、今回のパートナーシップが大きな追い風になるだろう」

東南アジアには現在注目が集まっている。Googleが共著したレポートでは、同地域の年間オンライン消費額が2015年の55億ドルから2025年には880億ドルに増加すると予測されている。さらに人口世界第4位のインドネシアが、その半分を占めるようになるとも言われているのだ。

最近Tokopediaには中国からの投資に関する噂が立っており、先月にも同社がAlibabaやTencentの投資先であるJD.com(Tokopediaの競合企業)と会談を行ったと言われていた。

本日(現地時間8月17日)発表されたAlibabaの四半期決算は第1四半期に続いて好調で、海外ECビジネスの伸びは目を見張るほどだった。同社は前年比136%増の26億元(3億8900万ドル)という海外ECビジネスの売上の原動力として、これまでに20億ドルを投じてきた東南アジアのマーケットプレイス企業Lazadaを挙げた。502億元(74億ドル)の総売上額と比べるとそこまで大きな金額とは言えないが、Alibabaが東南アジアを攻め込んでいるのは間違いなく、今回のTokopediaへの投資がそれを証明する形となった。

インドネシア発のスタートアップに対する大型投資は過去1ヶ月でこれが2つめだ。Alibabaの前には、Expediaが予約プラットフォームのTravelokaに3億5000万ドルを投じ、同社の評価額は10億ドルを突破した。それ以前には、Go-JekがTencentを中心とするラウンドで12億ドルを調達したと報じられていた。本件は正式には発表されていないが、近いうちに公表されることになるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

配車サービスGrab、ソフトバンクとDidiから20億ドル調達――今後は決済サービスにも注力

東南アジアでUberとライバル関係にあるGrabが、中国でUberを破った既存株主のDidi Chuxingとソフトバンクから新たに20億ドルを調達した。

他の既存株主や新しい投資家の意向を考慮すると、ラウンドの規模は最大25億ドルになりえたと同社は語っている。またGrabの広報担当者によれば、ソフトバンクからの出資はビジョン・ファンド経由ではなく、ソフトバンクグループ株式会社によるものとのこと。

さらに情報筋によれば、今回の資金調達によってGrabのポストマネー評価額は60億ドルを超えたとされている。これは、2016年9月に同社が7億5000万ドルを調達した際に報じられていた、30億ドルという評価額の倍以上だ。

「Didi・ソフトバンクとの戦略的関係をさらに深めることができ大変嬉しく思っている。また、先進的な両社が私たちと同じように、東南アジアや当地のオンデマンド交通市場、決済市場に期待していて、Grabがその巨大なチャンスを手にする上で有利な立場にあると考えていてくれていることにも勇気づけられる」とGrabの共同ファウンダーでCEOのAnthony Tanは語った。

要するにDidiとソフトバンクは、昨年8月にUberが中国事業をDidiに売却したのと同じように、Grabには東南アジア市場でUberを負かすだけの力があると考えているのだ。今月に入ってUberがロシア事業を現地の競合Yandexに売却したこともあり、その期待は高まる一方だ。

「市場でのポジションやテクノロジーの優位性、現地市場へのフォーカスといった特徴を備えたGrabが、配車事業を手始めに、東南アジアのネット経済でリーダー的な立場を築きつつあるのは明白だ」とDidiのファウンダーでCEOのCheng Weiは声明の中で述べた。これはUberにとってはかなり痛烈なメッセージだ(中国事業を買収したときの契約に基づき、DidiはUberの株式を一部保有している)。

現在Grabは東南アジアの7か国・36都市で営業しており、アプリのダウンロード数は5000万以上、ドライバーの数は110万人にのぼるとされている。サービスの中心は、営業許可を保有するタクシーや自家用車を使ったものだが、国によってはバイクタクシーやシャトルバス、カープーリングなどのサービスも提供している。

Uberは東南アジア事業の数字を公開していない一方で、インドネシアでGrabとしのぎを削るGo-Jekは、同国ではマーケットリーダーとして考えられている。

またビジネス面に関し、Uberは昨夏に東南アジアの一部で黒字化を果たしたと言われていた。しかし同社は中国市場から撤退した後、東南アジア(+インド)市場への投資額を増やしている(前CEOトラビス・カラニックは中国事業には年間10億ドルかかると語っていた)。Grabの広報担当者は「特定のサービス・都市に関しては黒字化を果たしているが、細かな分類は行っていない」と語ったが、同社が以前行った調査では、東南アジア全域に関し、営業許可のある車両を使った配車サービス市場の95%、自家用車を使った市場の71%をGrabが握っているとされていた。

今後ビジネスをひとつ上のレベルに押し上げるため、Grabはモバイル決済プラットフォームの開発にも取り組んでいる。そのかいもあってか、サービスローンチ当初は現金のみの支払いだったのが、クレジットカードも利用できるようになった。さらに決済プラットフォームの開発を進めるうちに、Grabは東南アジアで最大規模の経済、そして世界第4位の人口密度を誇るインドネシアでのフィンテックサービスに商機を見出した。

昨年Googleが共著したレポートによれば、東南アジアの配車サービス市場の規模は、2015年の25億ドルから2025年までに131億ドルへ成長すると予測されており、インドネシアがその半分以上を占めることになると言われている。Grabもインドネシアの古びれた銀行システムの影にその可能性を感じており、パイを拡大するためにも現代的な金融システムの開発を行っているのだ。

今年のはじめに、同社はインドネシアでのサービス開発に向けた7億ドルの投資プログラムを発表し、そのうち少なくとも1億ドルを企業への出資や買収に投じるとされていた。その後、発表から2か月ほどでオフライン決済スタートアップKudoを買収し、関係者によれば買収額は1億ドル近かったと言われている。

Go-JekもGrabが手をつけ始める前から決済サービスを提供しており、両社の正面衝突は必至だ。Go-Jekに近い情報筋よれば、同社は今年の5月にTencentを中心とする投資家から12億ドルを調達したと伝えられているが、当時Go-Jekはそれを認めず、それ以後も資金調達に関する発表を行っていない。しかし今回のGrabのニュースを受けて、Go-Jekは財務面のプレッシャーを感じていることだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Alibaba、東南アジアにおけるUberのライバルGrabへの投資を検討中か

Alibabaは、東南アジアにおけるUberのライバルGrabへの投資を通じて、同地域へさらに攻勢をかけるつもりなのかもしれない。

Bloombergの報道によれば、Alibaba社長のジャック・マーは、同社と関係の深いSoftBankが率いるGrabの投資ラウンド(総額14億ドル)への参加を検討しているとのこと。さらにTechCrunchでは、AlibabaがGrabと投資に関する話し合いを行ったという情報を入手しており、Alibaba傘下のAnt Financialが運営する決済サービスAlipayがGrabアプリに導入される可能性も出てきた。また、AlibabaはGrabの決済プラットフォーム「GrabPay」にも関わろうとしているようだ。

本件に関して両社にコンタクトしたが、Grabはコメントを控えており、Alibabaからは返答も得られなかった。

シンガポールに拠点を置くGrabは、昨年9月に行われたシリーズFで7億5000万ドルを調達しており、その際のバリュエーションは30億ドルだった。設立から5年が経ち、Grabアプリのダウンロード数は4500万回を記録しているほか、ドライバーの数は90万人を超え、現在営業している7か国での1日の合計利用回数は250万回におよぶという。

AlibabaとAnt FinancialのどちらがGrabに投資するかはまだハッキリしていないが、両社ともネット業界の成長が著しい東南アジアでいち早く礎を築くべく、同地域での投資を加速させている。Alibabaは東南アジアで活躍するEC企業Lazadaの株式の過半数を握っている一方で、Ant FinancialはAscend Money(タイ)やMynt(Philippines)といった金融サービスを提供する企業に投資しているほか、インドネシアでも金融サービス系のジョイントベンチャーを立ち上げた

AlibabaがGrabに興味を示したことで、Alibabaと同社最大のライバルTencentは、東南アジアやアジアの他の地域で新しい戦いを繰り広げることになるかもしれない。なお、東南アジアのインターネット市場は今後10年間で2000億ドル規模に成長すると予測されている

先月お伝えした通り、TencentはUberやGrabと競合するインドネシア企業Go-Jekへの投資を決め、12億ドルのラウンドでリードインベスターを務めることになった。本件に詳しい情報筋によれば、AlibabaとAnt FinancialもGo-Jekと話を進めていたが、結局Tencentが本件を勝ち取ったようだ。ちなみに、Go-Jekはまだこの資金調達について正式なアナウンスを行っていない。

両社のインドでの戦いはさらに熱を帯びている。Tencentは、AmazonのライバルであるFlipkartの投資ラウンドにMicrosoftやeBayらと共に参加した一方、Alibabaは決済・EC事業を行うPaytmをインドの投資先に選んだ

先月SoftBankが14億ドルという大金をPaytmに投資したが、それ以前にもAlibabaとAnt FinancialはPaytmに大金を投じていたのだ。そう考えると、Grab絡みの話でこの3社の名前が一緒に出てくるのも何ら不思議ではない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Dymon Asiaが東南アジアにフォーカスしたFintechファンドの1stクローズを発表 ― 組成額の目標は5000万ドル

以前、ヘッジファンドのDymon Asiaは同社初となるベンチャーファンドの組成を目指すと発表し、ベンチャーキャピタル業界への仲間入りを表明していた。

Dymon Asia Venturesはフィンテック企業に特化したファンドで、組成額のターゲットは5000万ドルだ。そして今日(現地時間9日)、同ファンドはタイのSiam Commercial(SCB)などから2000万ドルを行って1stクローズを完了したと発表した。SCBは傘下のDigital Venturesを通してDymon Asia Venturesに出資しているが、その金額は非公開だ。Dymon Asiaによれば、同ファンドのファイナルクローズは今後12ヶ月以内に行なわれる予定。

シンガーポールを拠点とするDymon Asia Venturesでは、ファンドの組成期間中に12〜15社に投資を行う予定だ。同ファンドはすでに5社への投資を行ったと発表している:ブロックチェーンのOtonomos、金融のCapital Match、外国為替にフォーカスする4XLabs、トレーディング・プラットフォームのSpark Systems、そしてマーケティングサービスのWeConveneだ。

TechCrunchは、Dymon AsiaのパートナーであるJinesh Patel氏とChristiaan Kaptein氏に取材を行った。その取材で彼らは、同社がベンチャーキャピタル業界に参入したのは、マーケット内での競争力を維持するため、そして、アジアに新しく誕生したチャンスを掴むためだったと説明している。彼らがフォーカスするのは主に東南アジア地域だ。GoogleとTechCrunchによる共同調査によれば、東南アジアにおけるインターネットユーザーは現在2億6000万人。そして、その数字は2020年には4億8000万人にまで拡大する。その結果、デジタルエコノミーの経済規模は2000億ドルにものぼる見込みだ。

「現状を考えれば、この地域のフィンテックが注目される可能性は非常に高いと思います。私たちがフォーカスするのは主にB2B向けにビジネスを行うフィンテック企業です。なぜなら、B2Bにはまだ手のつけられていないチャンスが転がっていると思うからです」とPatel氏は説明する。

フィンテック企業のシリーズAラウンドに参加するファンドは数多くあるが、Dymon Asiaでは同社のリソースや知識を有効活用できるいくつかのカテゴリーに投資先を絞り、それらの企業に対して出資を行っていくという。

「シリーズAからシリーズBに進むのは難しいと考えています」とPatel氏は話す。「そのための資金を集めるのももちろんですし、規制や人材などの問題もあります」。

Dymon AsiaはシードステージからシリーズBの投資案件にフォーカスしていく。投資規模については、一般的には30万ドルから300万ドルの範囲だという。今回取材したパートナーたちによれば、その後のラウンド用に「大規模のリザーブ」も用意しているそうだ。

Dymon Asiaは単に投資家としての役割だけでなく、アイデアのインキュベーションも行っていく。同社はこれまでにも投資先のSpark Systems(FXのトレーディング・プラットフォーム)に対してインキュベーションを行ってきたが、今後の投資先にも同様の支援を行っていく。

また彼らは、VCの数は過去よりも急激に増えてはいるが、東南アジアにはフィンテックのスペシャリストが少ないとも感じているようだ。

「フィンテック企業、特にこれまでVCから注目されてこなかったB2B向けのフィンテック企業に必要なアテンションを与えてあげたいと考えています」とKaptein氏は話す。ちなみに彼には以前、TechCrunchにも東南アジアのフィンテックについてまとめた記事を寄稿していただいている。

「私たちに出資するのは戦略的な視点を持った投資家が多く、このファンドもそのネットワークの拡大版であるとも言えます。私たちは、長い間このセクターで戦ってきました。そのため、私たちが古くからもつネットワークを今回組成したファンドにも利用することができます」とKaptein氏は語っている。

[原文]

(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

メニューはわずか数種類 ― マレーシアのフードデリバリー「Dah Makan」が1300万ドルを調達

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東南アジアのフードデリバリー企業として今年初めて大型の資金調達を果たしたのは、Dah Makanとなった。同国の投資家から浴びていた批判を跳ね返したかたちだ。

Dah Makanは現地時間19日、シードラウンドでNFQ Capital、East Ventures、Asia Venture Group、Gruparaなどから1300万ドルを調達した。Nestléの前CEOもエンジェル投資家として本調達ラウンドに参加している。

Dah Makan(現地の言葉で「もうご飯は食べた?」)は、2年前にクアラルンプールで生まれたサービスだ。どうサービスはアジアにおける「フルスタック」サービスの1つであり、業務のすべて(調理、配送、支払いなど)を自社で行っている。これは、創業初期のフード系サービスとしてはめずらしいことだ。Rocket InternetのFoodPandaは、地域のレストランと共同でビジネスを行い、レストランと顧客を結びつける大きな役割を果たしている。しかし、プロセスの中に外部関係者を多く含めれば含めるほど、プロセス全体の複雑性と不確実性が増す可能性がある。FoodPandaはサードパーティにプロダクトのクオリティ管理や配送を委託しているにもかかわらず、ユーザーの期待に応えるサービスではあるだろう。一方で、その同類のDah Makanは、サービスとシステムの管理がしやすい体制を整えている。

例えば、Dah Makanはランチとディナーのあらかじめ決められた時間にしか配送を行なわない。そして、その時間の45分前に注文された分だけを受け付ける。顧客にとってはかなり制限のあるサービスだということだ(ランチとディナーのメニューは日ごとに決められた数種類の料理しかなく、ビッグブランドの料理は取り扱っていない)。しかし、そのトレードオフによってDah Makanは徹底的なプロダクト管理を可能にしている。

配達ルートも最適化されている。注文が入るごとに配達用のバイクを送り出すのではなく、Dah Makanはその日の注文数と顧客の位置情報をもとに最適化された配達ルートを計算する。Dah Makanにとって、これは金銭的なメリットにもつながる。従来のフードデリバリーサービスでは、ある注文が利益を生む一方で、またある注文では損失を生むというのが一般的だった。しかし、同社のサービスではすべての注文から利益を得ることができると彼らは話している ― ただし、マーケティングや給与などのコストはユニットごとの損益計算にはもちろん含まれてはいない。

Dah Makanでは1回かぎりの注文をすることもできるが、同社は顧客に会員オプションに加入することを奨励している。彼らの会員サービスは固定されたプランというよりも、どちらかというとポイント制プランのようなものだ。99MYR(22ドル20セント)で5回、379MYR(85ドル)で20回、999MYR(225ドル)で50回分の注文をすることができる。しかし、ユーザーが数日のあいだ街を離れていたり、その日のメニューが気に入らない場合は、そのポイントを後々のためにとっておくことが可能だ。

同社のファウンダーたちはTechCrunchの取材に対して、会員制サービス「Dah Makan Prime」からの収益が「大半を占めている」と話している。

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Dah MakanとFoodPandaのサービスが似ているので、Dah Makanの共同創業者たちが元FoodPandaの従業員だったと言われてもそこまで驚かなかった。Dah Makan CEOのJonathan Weins氏とCOOのJessica Li氏は、2014年に同社のアイデアを考えつくまではFoodPandaの香港チームに所属していた。そして、後にCTOのChristian Edelmann氏が加わったことでアイデアが現実化した。

Weins氏は「フードデリバリーをもっと手軽な価格で提供し、もっと便利なサービスにしたかった」と語る。

Dah Makanは現在、1日あたり1000件の注文を獲得しているという。しかし、同社はマレーシア全土にビジネスを拡大するつもりはない。その代わり、彼らは今年のおわりまでに他の東南アジア諸国へと海外展開を進める予定だ。

「今回調達した資金はクアラルンプールに投下する予定です。この市場は非常に大きいからです。この市場にはまだ、私たちがリーチできる潜在顧客がたくさんいます」とWeins氏は説明する。彼によれば、クアラルンプールでリーチ可能な潜在顧客は約600万人だという。

「テクノロジーにも大きく投資していきます。ルーティングやクラスタリング、そしてドライバーの配送場所を決める機械学習などがその例です」と彼は加えた。

同社は「今年末をめどに」シリーズAの調達ラウンドも実施する予定だ。その資金を利用することで、人口密度、現地の購買力、競合関係などのファクターを考慮しながら海外展開を進めていくという。そうなれば、シンガポールのGrainなど、他の「フルスタック」フードデリバリー企業と直接的に競合する可能性が非常に高い。

Grainと同じように、人々がヘルシーな食べ物や利便性にどれだけ魅力を感じるのか、そして彼らがFoodPandaのメニューにあるようなビッグネーム企業の食べ物にどれだけ飽き飽きしているのか、という点が勝負の分かれ目となるだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

ホンダが東南アジアのタクシー配車サービスGrabに投資

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東南アジアのGrabはライドシェアサービスUberの競合だ。Grabは今回、ホンダから戦略投資を受けたことを発表した。金額は非公開だ。

Grabは今年の9月、ソフトバンクが率いるラウンドで7億5000万ドルを調達している。評価額は30億ドルだった。それでもさらに投資家を追加したいようだ。今回の調達は巨額だったシリーズFラウンドに付随する2回目の追加調達だ。今月はすでに金融サービスの東京センチュリーから、金額は非公開だが追加調達を行っている。Grabの投資家リストの中でもホンダは有名どころだ。今のところ、両社がどのように協力し、事業を進めるかは示されていない。ただ、まず注力するのはバイク事業だという。

Grabについて少し説明すると、Grabは東南アジアの6カ国で個人の車や免許を持つタクシーと共にバイクタクシーも配車するサービスだ。そのため、世界で最もバイクを販売しているホンダは大きな役割を担うことができるだろう。ただ、Grabは現時点でバイクタクシー配車サービス「GrabBike」をGrabが展開するすべての地域で展開しているわけではない。

「ドライバーへのバイク販売も含め、協力できる複数の分野について話し合いをしています」とGrabのスポークスマンはTechCrunchに話す。ホンダとはまず情報通信技術や安全設備の拡充に注力するという。その後、Grabの4輪自動車事業でも協力することも検討するそうだ。

プレスリリースにはホンダとGrabは「GrabBikeのドライバーやライダーにとって有益となる施策に協力して取り組む」とあったが、それ以上の情報を得ることができた。

GrabにとってUberは明らかな競合だが、Grabはインドネシア市場に重点を置いている。インドネシアではGo-Jekという最近13億ドルの評価を得たスタートアップが成長するバイクタクシー市場をリードしている。1000万人の人口を抱え、渋滞の多いインドネシアの首都ジャカルタを訪れたことがあるなら、A地点からB地点まで行くにはタクシーよりバイクの方が断然早いというのが分かる。それを念頭に置くと、ホンダとの協力によりGrabは東南アジア最大の経済圏であり、世界で5番目に人口の多いインドネシアで先を進むGo-Jekからシェアを取る方法を考えているのだろう。

ホンダの投資も東京センチュリーとのアライアンスと同様に、以前ソフトバンクで役員を務めた経験を持ち、10月にGrabの社長に就任したMing Maaが決めた話のようだ。Maaは案件を決めるのと同時に、Grabを去るCFOの仕事を引き継ぎGrabの財務管理も担っている。彼のソフトバンクでの経歴とGrabには上場によるエグジットができるポテンシャルがあるのを考えると、彼の役回りは興味深い。Grabはこうした話をしてこなかったが、Grabは2017年に本拠地のシンガポール、あるいは他の市場で新規上場するダークホースとなるかもしれない。

Grabは東南アジアの6カ国、34都市でサービスを展開している。2400万アプリダウンロードがあり、50万人以上のドライバーの登録があるという。Uberはこの地域のデータは開示していない。またGo-Jekがサービスを展開している地域はインドネシアのみだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

Toastが150万ドルを調達、アジアの移住労働者のために海外送金サービスを展開中

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盛り上がりを見せる東南アジアのフィンテック業界で最近資金調達を行ったのが、海外に住む移住労働者向けに、簡単で安い海外送金サービスを提供しているToastだ。

シンガポールを拠点とするToastは、”プレシリーズA”と同社が呼んでいるラウンドで、150万ドルを調達したと本日発表した。Aetius Capitalがリードインベスターを務めた今回のラウンドには、アメリカの1776やオーストラリアの金融サービス企業Pepper Groupが参加した。

Toastは、東南アジアのスタートアップの多くと同様に、これまでMoneygramやWestern Unionなどのサービスを利用して母国の家族へお金を送っていた、多数の移民労働者をターゲットにしている。2015年に設立された同社は、Androidアプリを介して、電子海外送金サービスを安価な手数料(もしくは無料)で提供している。毎月送金を行っている人であれば、1年間で手数料が1ヶ月分の給与に相当することもあるため、これはユーザーにとっては大きなアドバンテージだ。

さらにToastは、現状のシステムを壊して一からサービスを構築する代わりに、受取人がお金を回収するときなどは、地元の既存の送金業者と協力してサービスを提供している。その一方で、海外決済から1番恩恵を受けているWestern Unionのような大企業は、彼らのサプライチェーンには含まれていない。

「私たちは、銀行など旧来の金融機関を代替しようとは思っていませんが、事業を成長させるため、流通やアクセス面で意味のあるパートナーシップを結んでいきたいと考えています」とToastのCEO兼ファウンダーであるAaron Siwokuは、TechCrunchとのインタビューで語った。

当初Toastは、ビットコインやブロックチェーンテクノロジーを使っていたが、将来的に暗号通貨への規制が強まる可能性があることを考慮し、利用を取りやめた。

「規制を受けたくないという理由からビットコインを使っている企業はたくさん存在します。確かにビットコインやブロックチェーンテクノロジーは素晴らしい技術ですが、私たちが関わっているビジネスの実情を考えると、個人的には暗号通貨にも規制が必要だと考えています。今後、送金ライセンスを持っている私たちにとっては有利な状況になっていくと思いますし、いつかはビットコインも規制の網にかかることになるでしょう」とSiwokuは説明する。

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現在Toastは香港とフィリピンでオペレーションを行っており、フィリピンの送金市場の規模は、推定で年間297億ドルと世界で3番目の大きさだ。また、資金調達に関するニュースの他にも、本日同社はシンガポールで送金ライセンスを取得したと発表し、近日中に同国でもサービスが開始される予定だ。

イギリス出身のSiwokuは、家族へお金を送るために店頭に並んでいたフィリピン人労働者の列をシンガポールで見て、Toastのアイディアを思いついた。彼は、送金のために何時間も辛抱強く列で待っている労働者の手に、スマートフォンが握りしめられていることに気付いたのだ。

Siwokuによれば、今後Toastは、送金サービスの需要が多いと彼が考えるインドネシア、マレーシア、インド、パキスタンにサービスを展開していく予定だ。その後ヨーロッパへ進出していく可能性もあるが、そのためには追加で資金を調達する必要があり、18〜24ヶ月くらい先の話になるだろうとSiwokuは付け加えた。

3月のサービスリリース以降、Toastは成長を続け、今ではフィリピンから香港への月々の送金合計額が100万ドルを超えるほどだ。

またSiwokuは、Toastが他の国にサービスを展開する前に、単なる送金以外の新しいサービスを増やしていきたいと考えている。新サービスの内容は、香港やシンガポールに住む移住労働者向けの、マイクロローンや保険商品かもしれない。というのも、移住労働者のクレジットヒストリーやレーティング情報を集めるのは難しく、旧来の金融機関は彼らをターゲットにしていないのだ。

「私たちはお金の流れを把握していますし、融資やその他のサービスを提供するために必要な、顧客の情報やクレジットヒストリーも手元に持っています」とSiwokuは話す。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Alibaba傘下のLazadaがオンライン生鮮食料品販売のRedmartを買収予定か

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今年に入ってからAlibabaは、東南アジアにある、Rocket Internet投資先のEC企業Lazadaの支配権を10億ドルで獲得した。そして今、もともとの計画通りLazadaを”新興市場のAmazon”にすべく、Alibabaが動き始めている。

3人の情報筋から入手した情報によれば、Alibabaの管理下にあるLazadaは、シンガポールを拠点とする生鮮食料品配達サービス企業Redmartの買収契約のまとめに入っている。Redmartは当初、買収ではなく投資という形を希望していたようだが、ある情報筋によれば、3000〜4000万ドルの買収額で話がまとまりそうで、早ければ来週にもこの話が公になる可能性がある。

Redmart、Lazada、Alibabaのいずれからも、本件についてのコメントは発表されていない。

現在のLazadaの取扱商品には、電子機器やファッション、ベビー用品などが含まれており、Redmartを買収すれば生鮮食料品を商品カテゴリーに加えることができる。また、Lazadaは東南アジアの6カ国でビジネスを展開している一方、Redmartはシンガポールだけでオペレーションを行っており、長い間海外展開の夢を抱いていた。

しかしRedmartのビジネスの雲行きは怪しい。これまでに同社は5500万ドルもの資金を調達しており、今となっては東南アジアの有名ベンチャー投資家である、Facebook共同ファウンダーのEduardo Saverinや、大手ゲーム会社のGarenaも同社に投資している。Redmartは5年前に、東南アジアで初めて生鮮食料品のオンラインショッピングサービスを提供する企業として誕生したが、これまで資金繰りには苦しんできた。TechCrunchでも今年に入ってから、Redmartが海外展開や資金力強化のために1億ドルの資金調達を試みていたことが報じられたが、結局これは失敗に終わった。こうなるとイグジットも当然選択肢に含まれてくる。9月にはRedmartがある投資銀行と協力して売却先候補を検討しているとBloombergが報じており、その後も同社は売却先を探すのに忙しいようだ。

Redmartの売却交渉に詳しい情報筋によれば、同社はこれまでにシンガポールの小売企業NTUCや、政府系ファンドのGICとも交渉にあたったがそこでも話はまとまらなかった。しかし、これらの売却話がどこまで進んでいたかは定かではない。さらに別の人の話によれば、Redmartは今年Amazonから買収を提示されたが、金額の低さを理由にそれを断ったという。さらにRedmartは、最近再びAmazonにコンタクトをとり、Lazadaも買収に興味を持っているという情報で買収額を釣り上げようとしたが、それも上手くいかなかった(Amazonの東南アジアでの計画はこの時点でははっきりしない)。

どうやらRedmartは、AlibabaとLazadaの中に、ほかの売却先候補にはないものをみつけたようだ。AlibabaがLazadaに投資した際、Lazadaは資金を使い切る寸前だった。そしてTech In Asiaの最近のニュースによれば、バランスシートの詳細は分からないものの、Redmartも赤字続きの状況にある。

会長のJack Maやその他のAlibaba経営陣は、東南アジアや傘下にあるEC企業Paytmが拠点を置くインドを最も優先度の高い成長市場と呼んでいた。さらにLazadaへの投資や、直近に迫った金融業を営むAscend Moneyへの投資によって、Alibabaは東南アジア市場でいち早く足場を固めるため、サービスを提供する準備が出来たことを証明している。Amazonは、インドでは既にAlibabaのライバルとされている一方、東南アジアへはまだ進出していない。またオンラインでの取引は、東南アジア全体の取引の5%にも満たないと言われているが、この地域には6億人以上の消費者がいる。Googleが共著した最近のレポートによれば、段々と豊かになってきている中産階級の存在や、インターネットの普及が進むことで、東南アジアのデジタル経済は2025年までに年間2000億ドル規模に成長するとも予測されている。そしてEC業がその成長を支えていくと考えられているのだ。

上記のような可能性にも関わらず、現状は厳しい。イグジットの金額の低さに投資家はガッカリするかもしれないが、Redmartの売却話がまとまれば、同社は豊富な資金を持つ親会社と強調して競合を打ち負かし、市場に残り続けることができるだろう。

Redmartのライバルであり、設立から18ヶ月で2000万ドルの資金を調達したHappyFreshは、”事業の継続と利益率の向上”を目的に、最近東南アジアのふたつの市場から撤退した

HappyFreshよりもさらに若いHonestBeeは、昨年150万ドルを調達し、東南アジアとその周辺の6ヶ国以上へサービスを展開するという野心的な計画を立てていた。しかしそれから1年が経った今、同社のサービスは4都市へしか展開されておらず、これは限られた資金で資本集約型の事業をスケールさせることの難しさを物語っている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

東南アジア拠点のフリマアプリCarousellが3500万ドルを調達

Southeast Asia based Carousell raises1  35M for its social commerce app   TechCrunch

Carousellはユーザーが品物を掲載して個人間売買できるアプリだ。Carousellを運営しているのは創業4年目のシンガポール発のスタートアップで、現在、東南アジアにおいてアプリを展開している。CarousellはシリーズBラウンドで新たな国への進出とプロダクト開発のために3500万ドルを資金調達した。

Carousellは、整い始めたシンガポールのスタートアップエコシステムから芽を出したスタートアップの内の1社だ。Carousellを創業したNUS(シンガポール国立大学)卒業生のLucas Ngoo氏、Marcus Tan氏、Siu Rui Quek氏ら3人は20代前半は「一般的な」仕事に就いていた。加えて、このシリーズBラウンドはシンガポール発のスタートアップにとって確実に注目に値する(そして最大の)ラウンドである。

当ラウンドは以前からの出資者Rakuten Venturesに率いられ、Sequoia(東南アジアの取引を担うインドのファンド経由)、Golden Gate Venturesと500Startupsが参加している。Carousellは以前の2014年のシリーズAラウンドで600万ドル2013年のシードラウンドで80万ドルの資金調達をしている。新たな調達ラウンドを早い段階から検討していたことが垣間見える。

実際、昨年12月TechCrunchは、CarousellがシリーズBラウンドで5000万ドルに近い額を出資者から調達しようとしていると記事で伝えた。当時、その記事に関してCarousellのコメントを得られなかった。そして、今回に関してもCEOのQuel氏はその記事に関しては「既存投資家の支援が得られることを非常に嬉しく思っています」と述べるに留まった。

Carousellのアプリは「私たち自身が抱えている問題を情熱を持って解決するプロジェクト」としてシンガポールで開始したとQuek氏はTechCrunchのインタビューで語った。簡単にCarousellを言い表すとiOS、Androidアプリ経由のモバイル版クレイグリストだ。写真をアップロードできる機能を持ったチャットスタイルのインターフェースを採用しており、品物の売買に興味のあるユーザー同士を結びつける。個々のユーザーが自ら販売、支払いの管理を行い、今のところCarousellはサービスから収益を得ていない。

Southeast Asia based Carousell raises 35M for its social commerce app TechCrunch

Carousell上には既に3500万の品物が掲載されており、1分間に70個の品物が新たに掲載されている。アクティブユーザーは平均で17分間アプリ内を回遊しているとCarousellは説明する。(これは悪くない数値だ。Facebookグループの3つのアプリFacebook、Instagram、Messengerでは、ユーザーは平均で1日50分間利用していると先日Facebookは公表した)。

Carousellは現在、シンガポール、香港、台湾、マレーシア、インドネシアの5カ国でサービスを提供している。さらにシェアを拡大する計画もあり、現在、重点を置く東南アジア以外の国への進出も含まれるとQuek氏は語った。

「Carousellが解決している問題はグローバルなものです」とQuek氏は説明した。「Carousellの事業は本質的に地域に縛られないものです。(Carousellが進出を予定している)次の市場は東南アジアの外であり、進出に向けて準備を進めています」。

Carousellは国際的な市場拡大に向けて、今年初めには東南アジアでAirbnbの事業を牽引してきたJJ Chai氏をヘッドハンティングした。

東南アジアにおけるEコマースの市場獲得を巡る競争は厳しい。オンライン市場は市場全体の3%未満を占めていると推定される。今年、Alibabaから10億ドルの資金調達を行ったLazadaの他にも東南アジアには各国固有のEコマース企業が存在する。ソフトバンクの支援を受けているTokopedia、インドネシアの小売コングロマリットLippoが運営するMatahari Mallなどだ。一方、ソーシャルネットワーク上で従来の枠に捉われないコマースも成長しており、Facebookも注力し始めている。アメリカの大手SNSは、Facebook Shopの機能と並行するソーシャル決済システムを検証している。これは、東南アジアのユーザーがFacebookの囲いから離れなくても、商品の売買をすることを促すものだ。また、いくぶん奇妙ではあるが、Rakuten Venturesの親会社である楽天はCarousellに似たRakumaという名前のソーシャルコマースアプリを東南アジアで展開している。

「Rakumaを開始したことを知りませんでした」とQuek氏は語る。「子会社のベンチャーキャピタルのRakuten Venturesを通じて楽天から出資を受けています。Rakuten VenturesのCarousellへの出資は本質的に戦略的な意味合いはありません。私たちは独立して事業を運営しており、楽天の戦略的な計画は把握していません」。

厳しい競争の渦中だが、今の段階でCarousellが収益についてあまり考えていないことは驚くことではないかもしれない。Quek氏は、Carousell(と出資者)は将来的にマネタイズを行うだろうが、今すぐそれを行う計画ではないという。現在はアプリをスケールさせることに重点を置いているとのことだ。

Quek氏は、その時が来たのならCarousellが利益を得ることに何ら問題もないと楽観的に考えていることを強調した。

「Carousellのビジネスモデルは、基本的にはマージン率およそ50%の旧来のクラシファイド広告と同じです」とQuek氏は言う。「ビジネスモデルを新たに発明しようとしているのではなく、新たな顧客体験を創造しようとしています。結果的にそれがマネタイズにつながるのです」。

「現在、重点を置いているのは、市場の国際展開、そして競争力のあるプロダクトとエンジニアチームの整備に力を入れて取り組むことです」とQuek氏は補足した。

Carousellには現在90人の社員がいて、そのうち24人はエンジニアだ。Quek氏は今年の末までに、エンジニアの人数を倍にしたいと語った。そのようなチーム体制によって検索の改善、売り手と買い手のマッチング、スパム的な商品掲載を減らすことを狙うと語った。

Carousellの最終的なエグジット戦略に関して、東南アジアで初の注目を集めるIPOになるかと気になるかもしれないが、それに関してコメントは得られなかった。

「私たちはCarousellのエグジットについてあまり議論してきませんでした。私たちが常に大事にしていることは大きなインパクトを生むことなのです」とQuek氏はTechCrunchにそう語った。「Carousellはちょうど動き始めたところです。国際展開が’最も重点を置くことの1つになるでしょう」。

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(翻訳:Shinya Morimoto)

Uberが東南アジアでの黒字化を背景にサービスの拡充を目指す

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Uberは、東南アジアの主要市場での黒字化を背景に「土地の争奪」アプローチをやめ、代わりに新しいプロダクトやサービスの提供へと焦点を移した。

Uber内部の情報筋によれば、Uberはシンガポールとフィリピンで黒字化を達成した。シンガポールとフィリピンは、乗車数と売上が最も大きい2つの市場で、その他の国も両国のすぐ後ろにつけている。Uberは本件に関して、度重なるコメント要請に応じていない。

Uberが先月西欧市場の全てで黒字化を達成したと話していたことから、この情報は興味深い。新興市場でのUberのプレゼンスに関してはあまり知られておらず、特に現在シンガポール、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピン国内の合計15都市をカバーしている東南アジアについての情報はこれまでほとんどなかった。

Uberは、3年前にシンガポールを皮切りに東南アジア市場へ参入したが、「直近」の進出国であるベトナムへの進出は2年前のことだった。それ以降、担当チームは東南アジア中でのスケーリングというタスクを課されており、この度、競争力激化とユーザーベースの拡大を目的に新サービス導入を推し進めるという決定に至った。

合計で6億人もの人口を抱えているにも関わらず、東南アジアは中国とインドの影に隠れてしまっている。これはUberにとっても同じで、子会社のUber Chinaを通じて何十億ドルもの投資を中国で行うと同時に、インドでは、Softbankの支援を受けている企業価値50億ドルOlaとの戦いのため、昨年の夏に10億ドルの活動資金に関する発表を行った。

通貨、文化、規制障壁、そして言語の違う6つの主要国に人口が散らばっていることから、東南アジアのプライオリティはこれまで高くなかったが、TechCrunchの得た情報によると、その状況が変わってきており、UberはGrabとの競争を激化させようとしている。Grabは、1900万回のアプリダウンロード数と35万人のドライバーを誇る配車サービスを提供する企業で、Olaや中国のDidi、そしてLyftと協力関係にある。

フードデリバリー、乗り合い、バイクタクシー

Uberにとって、フードデリバリーサービスであるUberEats、乗り合いサービスのUberPool、そしてバイクタクシーサービスのUberMotoが東南アジアでの優先事項のようだ。クーリエサービスのUberRushも、現在アジアでは提供されていないが、今年中に地域限定で導入されるかもしれない。

最近、UberEatsはアジアで最初の市場となるシンガポールへ進出し、Uberは同サービスを、数ある都市の中でも、タイのバンコクへ今後展開することを示唆していた

シンガポールは、UberPoolでもサービス導入が行われた最初の市場のひとつだった。UberPoolは、同じ方向に行きたい乗客をまとめて移動させるサービスで、交通費の削減と渋滞の解消に一役買っている。同サービスはインドネシアの首都のジャカルタでも提供されており、フィリピンのマニラでは今年、シャトルバスを使った同様のサービスがローンチされている。

最後にUberMotoだが、このサービスはUberが願っていたようなサクセス・ストーリーを描けないでいる。当初2月にバンコクでローンチされたものの、5月にはタイ政府からサービス停止を命じられ、ふたつ目の市場となるインドでも規制対応に苦しんでいる。

現在Uberは、インドネシアをUberMotoの主要なターゲットとして考えているが、インドネシアの競争はかなり激しい。Sequoiaの支援を受けている地場企業のGo-Jekは、バイクタクシーサービスのパイオニアだ。20万人以上のドライバーがプラットフォーム上に登録されており、単に碁盤の目のようなジャカルタの街中をA地点からB地点へ乗客を乗せて4輪車よりも早く移動するだけではなく、フードデリバリーなどのサービスも提供している。Uberも、プラットフォームとしてのバイクタクシー隊を整備してサービスを追加していくという動きをとろうとしているが、Uberは強大な既存競合企業との戦いを強いられることとなる。

ライバル関係

Uberの新サービス導入には競合や抵抗が伴う。東南アジアにはたくさんのフードデリバリー企業が存在しており、メインのライバルとなるFoodPandaのほか、最近同地域に進出したDeliverooや、オーダーメイドサービスを提供するGrainのような企業もある。

そして潤沢な資金を持った競合の存在も見逃せない。

Go-Jekは軍拡競争のための準備を進めているようで、今月はじめにWall Street Journalは、現在インドネシアだけでオペレーションを行っているGo-Jekが、新たに4億ドルの資金を調達中で、その企業価値が10億ドル以上に達しようとしていると報じていた。TechCrunchは、この交渉に詳しい情報筋との確認を通して、ラウンドが向こう数週間のうちに完了するとの情報を得た。

Go-Jekの他にも、Uberとバイクタクシー(と配車サービス)で競争を繰り広げているGrabの企業価値は16億ドルに達し、これまでに6億5000万ドルの資金を調達している。GrabBikeサービスもバンコクでは禁止されているが、同社は書類や小包のデリバリーサービスとしてその事業を継続している。Grabは最近、インドネシアが乗車数で最大の市場であると発表していたが、経営数字については明らかにしなかった。

Grabも新たなサービスの導入を進めており、GrabFoodをインドネシアで運営するほか、シンガポールで昨年ローンチされたGrab式乗り合いサービスのGrabHitchは、その後マレーシアへの進出も果たした。Grabの担当者は、先月の時点で、GrabHitchの登録ドライバー数がシンガポールとマレーシアの2国合わせて5000人に達したと語った。

これで終わりではない。Grabは、今年中にインドネシアを皮切りに、ペイメントプラットフォームを導入していくと先週発表した。このペイメントシステムを利用すればお店での買い物もできるようになり、Grabはサービス開始にあたって、インドネシアの小売コングロマリットであるLippoとパートナーシップを結んだ。これにより、Grabもサービス提供を通じたユーザーベースの拡大を模索するにあたって、方向転換をしていくこととなる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

東南アジアの技術メディア企業E27が220万ドルを調達

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シンガポールに拠点を置くメディア企業E27が300万シンガポールドル(220万米ドル)でシリーズAラウンドをクローズした。難しい時期を乗り越えた同社は、技術関連に特化したニュースサイトとイベント事業の再開発を目指す。

E27は、過去にもシードラウンドで調達を行っており、直近では昨年の夏に65万ドルを調達しているが、ここ1か月ほど新たな資金調達の話が持ち上がっていた。今回の発表は、それぞれ初期段階にある技術に従事する新しい投資家グループからの調達をE27が認めた格好だ。今回のラウンドのリードインベスターは中国拠点のTechTemple Groupであり、ほかにはこちらも中国のLinear Venture、インドネシアのConvergence Ventures、さらにシンガポールからはVenturecraftとベンチャービルダーの Spacemobの2社が参加した。

東南アジアでは、E27はニュースサイトe27.coと、長年開催されているEchelonのイベント事業で知られている。2007年創立の同社にとって、昨年レイオフやリストラを行うなど厳しい1年となった。しかし、新たに資金を調達したことでE27の共同創立者でCEOのMohan Belani氏は、全社的に新しい人材を獲得し、編集チームとイベントチームを拡大するほか、求人情報サービス、Crunchbase型のデータベース、サードパーティがバンドル化した製品を販売可能な「マーケットプレイス」などの新規事業も展開する計画を明かした。

「目的とするのは、メディアのみに限られない環境的なプレイヤーです」と、Belani氏は電話インタビューの中で語った。「当社にとってメディアは最初の足掛かりでしたが、会社が成長するにつれ課題も変化することがわかりました。E27のデータベースとマーケットプレイスが合わされば、より大きなコミュニティにサービスを提供できます。さらにイベント事業と組み合わせることで、オンラインとオフラインをバランスよくとり合わせることもできます」

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Belani氏によれば、E27は新しい投資家たちとかなり直接的にやり取りをする予定であるといい、TechTemple Groupと提携して中国でコワーキングスペースやインキュベーションサービスなどの、スタートアップを支援するさまざまなサービスを提供するイベントを開催したり、初期段階での投資に注力するConvergence Venturesとインドネシアでイベントを開催することが示唆された。同様に、ほかの投資家にも専門分野でのタイアップの可能性があるという。

「特に注力するのは、イベント事業とオンライン事業です。また、最もなじみが深く、得意としていることから東南アジアのマーケットに重きが置かれる予定です」と Belani氏は付け加え、中国やインドの技術コミュニティが東南アジアのポテンシャルに対する関心を強めている点に言及した。

E27にとって強力なライバルとなるのが、同じく編集事業とイベント事業を手掛けるTech In Asiaだ。Tech In Asiaは現在までに400万ドルを調達した昨年のラウンドを含む700万ドルを調達しており、Y Combinator出身のアジア向けのCrunchbase型の分析サービスであるTechlistなどの事業に70名以上が従事している。これら2社に加えて、東南アジアには技術ニュース専門ブログとしてDigital News AsiaDeal Street Asiaがある。

[原文へ]

(翻訳:Nakabayashi)

Uberの東南アジアのライバルGrabがモバイルペイメントプラットフォームを開発中

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ライドシェアリングサービスを運営する企業が、車での移動という既存のサービスと全く異なる製品やサービスを提供できるということはめったにない。しかし、東南アジアでUberとの競争を繰り広げているGrabが、まさにそれを行おうとしている。

シンガポールを拠点とするGrabは、本日(米国時間7月22日)、同社のペイメントシステムを利用して、ユーザーがGrabのサービス以外の支払も行えるようにしていくと発表した。「GrabPay」はGrabのキャッシュレスデジタルウォレットサービスで、年初にはじめて発表されて以降Grabアプリ内に設置されている。

「Grabは、ペイメントプラットフォームをGrabPay内のモバイルウォレットオプションとして、Grabアプリ上に統合していきます。これにより、モバイルユーザーはGrabアプリを使って、日々の交通手段だけでなく、その他の生活サービスの支払も行えるようになります」と同社は説明した。

Grabは、はじめに2億5000万人の人口を誇る東南アジア最大の国インドネシアをターゲットとし、今年中に「ペイメントプラットフォーム」をインドネシアのユーザーに対して提供しようとしている。このプロジェクトでGrabは、インドネシアの10億ドル規模の小売コングロマリットLippoとパートナーシップを結んでいる。Lippoは、Grabの投資家でもあり、近年eコマーステック投資の分野へ進出している。GrabにとってLippoは初めての小売パートナーであり、Lippoのビジネス(デパート、映画館、オンラインショップなど)の顧客に対してGrabアプリを通じての支払サービスを提供していく。そのうち、他の小売企業もGrabのプラットフォームに加わっていくかもしれない。

ライドシェアリングからペイメントサービスというのは不思議な拡大路線のように感じられるが、市場全体を支配するひとつのペイメントシステムが存在しない新興市場においては、とてもロジカルな動きだといえる。ペイメントサービスを提供することで、今後さらにサービスの利用頻度が増えることが予想される既存顧客との結びつきを強めるだけではなく、もっと多くの人にサービスの魅力を伝えることでGrabのユーザーベースを拡大することにもつながる可能性があるのだ。東南アジアでは、「クラウド」という言葉には効き目がある。というのも、オンラインペイメント業界は、モバイルオペレータや銀行、Lineのようなメッセージアプリを運営する企業などがそれぞれのサービスを市場に売り込んでおり、細分化がかなり進んでいるのだ。Lippoとの協業は、間違いなくGrabにとって大きな後押しとなるが、決してそれで勝負が決まってしまうわけではない。

「東南アジアでのペイメントプラットフォーム開発の可能性は無限大です」とGrab CEOのAnthony Tanは、声明の中で語った。「東南アジアの人の大半が携帯電話を持っていながら、銀行口座を保有していません。私たちは、彼らにお金の管理ができるようなキャッシュレスソリューションを提供する必要があると考えており、モバイルウォレットはその一歩となります」

実は同様の動きは既にアジアで起きていた。Uberのインドのライバルであり、Grabと協力関係にあるOlaは、昨年11月にOlaアプリ内のペイメントシステムを、スタンドアローンのアプリとして展開していた。Grabは、少なくとも当面の間、ペイメントシステムをコアとなるGrabアプリ内にとどめておく意向だが、間違いなく同社は「アンチUber同盟」の仲間であるOlaにコンタクトをとり、ペイメントプラットフォームに関するヒントやアドバイスを求めていただろう。

Grabは、インドネシアがライドシェアリングの乗車数で最大の市場であると言っていたものの、同社のビジネスは今後インドネシアからさらに拡大していくと考えられ、今回のGrabPayのプラットフォーム構想が、どこかの時点でさらに5つの市場(シンガポール、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア)への拡大を想定していることを示唆していた。

「私たちは、各地域のローカルパートナーと協力し、東南アジアの大部分でキャッシュレス決済を現実のものにしていきます」とGrabは声明の中で述べた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

「東南アジアのStripe」日本人創業者の長谷川氏が率いるOmiseがシリーズBで1750万ドルを調達

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バンコクを拠点とし、Stripeに似た決済事業を展開するOmiseがシリーズBで1750万ドルを調達した。この資金を活用し、東南アジアでの事業を更に拡大する方針だ。

同社の決済ゲートウェイシステムを使えば、オンラインでのクレジットカード決済を簡単に導入することができる。東南アジアの主要6ヵ国ではそれぞれ異なる決済システムを導入する必要があり、オンラインのクレジットカード決済を導入するのは困難だった。それを解決するのがOmiseの決済システムなのだ。現状のところ、Omiseのサービスはタイと日本で利用可能だが(Omise CEOは日本人の長谷川 潤氏だ)、来月にはインドネシア、シンガポール、マレーシアにも事業を拡大する予定であり、同国でクローズド・テストを行っている最中だ。それに加えて、ベトナム、フィリピン、ミャンマー、ラオス、カンボジアへの事業拡大も視野に入れている。

今回のラウンドは東南アジアのフィンテック企業としては最大級の規模となる。日本のSBI Investmentがリード投資家を務め、他にもインドネシアのSinar Mas Digital Ventures(SMDV)、タイのAscend Money(通信会社Trueの子会社)、そして既存投資家のGolden Gate Venturesもラウンドに参加した。Omiseはこれまでに、2015年5月のシリーズAで調達した260万ドル、当時設立直後だったシンガポールのGolden Gate Venturesから去年10月に受け取った出資金(金額非公開)を合わせ、合計2500万ドル以上の資金調達を完了している。

Omise(日本語のように「おみせ」と発音する)は2014年に長谷川氏とタイ人のEzra “Donnie” Harinsut現COOによって設立された。二人は旅行中のホームステイ先で知り合った仲だという。

Omiseは東南アジアのEコマース企業のポテンシャルを引き出す役割をもつ。東南アジアのEコマースはリテール全体の5%にも満たないのが現状であるが、6億人以上の人口をもち、裕福な中間層が増え続けるこの地域のEコマースには大きな可能性が秘められている。Rocket Internet傘下のLazada(別名「Amazonのクローン」)をAlibabaが10億ドルかけて買収したのはそれが理由でもある。また、Googleが発表したレポートによれば、今後10年間の東南アジアの「オンライン・エコノミー」は毎年2000億ドルの規模となるだろうと予想されている。その東南アジアのオンラインショップで利用される決済サービスとしての地位を築くのがOmiseの目標なのだ。

ライバルは大勢いる。昨年に700万ドルを調達し、Facebookと共同してソーシャル・コマースを試験中の2C2Pなどがその例だ。Stripeも東南アジアで事業を展開している。ただ、完全なローカリゼーションというよりも、Atlasプロジェクトを通して海外からアメリカ国内へのEコマースを拡大するというのがStripeのアプローチのようだ。

東南アジアではオンライン決済の60%が現金決済であり、現地企業は現金決済にフォーカスしている。その一方で、Omiseが扱うのはデジタル決済のみだ。その理由としてHarinsutは、東南アジアにもキャッシュレスな未来がやってくるからだと話す。そして、完了までに何日もかかり、手動での操作も必要な現状の決算手段よりも速くて簡単なソリューションを目指しているのだ。

彼はTechCrunchとのインタビューで、「私たちは顧客から小売店への支払いだけでなく、小売店から業者への支払いにもフォーカスしています。現状では、(業者への支払いが完了するまでに)1日かかりますが、私たちが目指すのは即日送金です。すべてを自動化して、書類を作成して銀行に持っていくという手間も省きます。そのプロセスでは人間の手が一切必要ありません。そうすることで、ヒューマンエラー、時間、コストを減らすことを目指しています」と語った。

OmiseにとってEコマースは最も明らなビジネスチャンスだ。しかし、今後は大企業向けのビジネスにも注力していきたいと長谷川氏は語る。Omiseが日本で事業を展開しているのはそれが理由でもある。日本企業が東南アジアに進出するケースがとても多いからだ。

「Eコマース向けの事業は成長しています。しかし、私たちの収益の大半は大企業向けのビジネスから生まれています」と彼は話す。「小さなスタートアップ向けのビジネスはまだ発展途上です。サステイナブルなビジネスを構築するために、航空会社や保険会社、通信会社などの大企業向けの事業にフォーカスしています。それにはBDO-on-demandなどの会員制サービス、Eリテール、Eガバメントなども含まれます。そこが今のターゲット・セグメントなのです」。

Omiseは決算資料を公開していないが(頼んでみたもののダメだった)、Harinsutによれば来年には損益分岐点に達しそうだとのことだ。しかし問題はサステイナブルな水準まで利益を上げられるかどうかだと彼は語る。Omiseの収益は取引ごとに受け取る3.65%の手数料だ。100万タイバーツ(約303万円)未満の送金には約1ドルの料金がかかる。大口の顧客向けにはフレキシブルな料金パッケージも用意されている。

Omiseにとって東南アジアが最重要マーケットであることには間違いないが、将来的にはオーストラリア、ニュージーランド、韓国、香港などへの事業拡大も視野に入れている。

長谷川氏は「インド市場にもとても興味があります」と語る。「とても大きな市場ですし、今でもEコマースと金融機関には大きなギャップが存在しています。私たちが進出するスペースも残されているでしょう」。

このところOmiseは人員の増強にも力を入れている。June Seah(Visa APAC出身)とMichael Bradley(Visa子会社のCyberSource出身)がOmiseの顧問に就任したのだ。Bradleyは併せて同社の最高コマーシャル責任者(CCO)にも就任している。この2名に加えて、同じくVisa CyberSource出身のSanjeev Kumarが最高プロダクト責任者(CPO)に、Groupon APACのLuke Chengが最高財務責任者(CFO)にそれぞれ就任している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

東南アジアのaCommerceが1000万ドルを調達し、シリーズBに向けた足掛かりを得る

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バンコクを拠点とするスタートアップのaCommerceが1000万ドルを調達した。同社は東南アジア地域のEコマース企業の支援をする企業だ。今年後半にはシリーズBにて更なる資金調達も予定されている。

タイ、インドネシア、フィリピンで事業を展開する同社によれば、今回の資金調達をリードしたのはインドネシアの通信企業Telkom Indonesiaを親会社にもつMDI Venturesだ。他にも、オーストラリアを拠点とするファンドのBlue Skyや既存投資家のDKSHも参加している。スイスに本社を置く商社のDKSHは昨年12月、aCommerceに戦略的投資を行った。投資金額は非公開ではあるものの、TechCrunchでは2000万ドルから2500万ドル規模の投資だったと考えている。

今年の始めにはAlibabaがLazadaに10億ドル出資するなど、東南アジアのEコマースには大きな可能性が秘められている。Eコマース企業や小売店に対する支援事業を行うaCommerceは、在庫の保管や管理、流通支援、デジタルマーケティングなど様々なサービスを提供している。同社は2013年に創立され、2014年6月のシリーズAで調達した1070万ドルや、2015年5月のブリッジ・ラウンドでの500万ドル、同年12月のDKSHからの出資金などを合わせ、これまでに約5000万ドルの資金調達を完了している。

昨年5月のブリッジ・ラウンドで調達した資金と同様、今回調達した資金は今年後半に予定されている5000万ドル規模のシリーズBに向けた「つなぎの」成長の起爆剤となる。言い換えれば、aCommerceの銀行口座にはまだ資金は残っているものの、規模をさらに拡大して次のラウンドをより有利に進めるためにその資金を利用したいという思惑があるのだ。具体的には、マレーシアとベトナム、そしてシンガポールへの事業拡大のための資金だ。

「希薄化を最小限に留めながら、バリュエーションを最大化させたいと考えています」と語るのはaCommerce Group CEOのPaul Srivorakulだ。「(今の時点で)シリーズBでの資金調達を行うのではなく、その前に追加的な出資してもらうよう、投資家と交渉してきました」。

(ところで、すでに5000万ドルの資金を有しながら更にシリーズBを実施するというのは、東南アジア企業としては異例のことだ。Srivorakulは同社の資金調達の努力に値札をつけるつもりはないと話す。「ただ、私たちにとって都合のよい時に資金を調達しているまでです」)

SrivorakulはEnsogoとAdMaxの創業者でもある人物だ。その後、EnsogoはLivingSocialにAdMaxはオンライン広告のKomliに売却している。彼によれば、今回の資金調達についての話は前回のラウンドを行う以前からあったという。今回の資金調達はすでに予定されていたものだったのだ。しかし、シリーズBでは新たな出資者を募集する意向であり、そのためのピッチを行っていくと話している。

今回新しく出資者となったMDI Venturesとの関係は、同社にとってタイと並ぶ最大の収益源となったインドネシア市場において大きな戦略的価値を持つとSrivorakulは考えている。

「インドネシア市場には巨大な需要があります」と彼は話す。「その一方で、同国の商慣習やEコマースに関連する法律は年々複雑になっています。その点において、MDI Venturesの親会社であるTelkom Indonesiaは国有企業であり、彼らと協働すればインドネシアの商慣習に則ったプロダクトを生み出し、インドネシアで更なる成功を収めることができると考えたのです」。

aCommerceは2014年に撤退したシンガポール市場にも再度挑戦する予定だ。前回のシンガポール進出は時期尚早だったと認めつつも、今のaCommerceには新しい「パートナー」であるDKSHがついていると彼は語る。DKSHがもつコネクションによって新しい顧客を獲得し、それに他市場で獲得した既存顧客からの需要を合わせれば、今回のシンガポール進出が成功する可能性は高いと見ているのだ。

また、新興市場へ事業を拡大する際にはサステイナビリティを第一に考えるようになり、一時的にビジネスや資金調達が上手くいかなかったとしても、しばらく持ちこたえる自信があると彼は語る。

「今回調達した資金があれば、来年には損益分岐点に達することができます」と彼は話す。「今ある3つのマーケットを黒字化させることは可能です。しかし同時に、私たちは新たに3つのマーケットにも進出しなければなりません。今回調達した資金はそのために利用する予定です」。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook