Tumblrが「大人向け」コンテンツを巡って再びアップルと闘争中

「Tony the Tiger(トニー・ザ・タイガー)」や「Eugene Levy(ユージン・レヴィ)」のパロディは今すぐ隠すこと。これらをはじめとする数百件のフレーズは、現在、Tumblr(タンブラー)のiOSアプリから排除されている。

現在、自らを「mature(大人向け)」と称したいかなる個人ブログもiOSアプリでアクセスできない。ユーザーには「思わせぶり、あるいは露骨である可能性のあるコンテンツ」のために隠されている旨を説明するポップアップが表示される。Tumblrによると、一部の投稿は、検索機能やおすすめ投稿やフォローしているユーザーのコンテンツを表示するユーザーダッシュボードでも隠されるという。

「私たちがAppleのApp Store(アップ・ストア)に存続し、TumblrのiOSアプリを利用できるようにするためには、慎重に扱うべきコンテンツに関するAppleのポリシーにこれまで以上に厳格に従うよう修正する必要があります」とTumblrは公式ブログで述べている。

画像クレジット:Tumblr

Tumblrユーザーたちは、iOS版Tumblrアプリが一連のポリシーを守るために禁止したタグの非公式クラウドソースリストを作った。禁止されたタグの中には、繊細なコンテンツに関して潔癖でいようとするプラットフォームとして理にかなったものもあり、たとえば「porn(ポルノ)」「drug(ドラッグ)」「sex(セックス)」などが禁止されている。それ以外は理解不能(あるいは、それについて考えすぎると頭が痛くなる)であり、上にもあげた「Tony the Tiger」や「Eugen Levy」などがある。数字の「69」と「420」も禁止されている。

サイトには多くのTumblrユーザーが集まり、自分たちの体験について匿名で語り合っているが、タグの禁止によって、その会話も実質的に検閲状態にある。stimming(自己刺激行動)という自閉症患者にとって一般的な対処行動に関わるいくつかのタグ、例えば「depression(うつ病)」「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」「bipolar(躁うつ)」なども禁止されている。

「これらの調整によって、ユーザーが当社のiOSアプリを使って慎重に扱うべきコンテンツをアクセスできるかどうかに影響を与えることがあり、いらだたしいこともあることを理解しています」とTumblrの広報担当者がTechCrunchに伝えた。「現在もっと考慮された解決方法を検討中で近いうちに公開する予定なので、逐次状況をお知らせします」。

元TumblrのiOSエンジニアがsreegs(スリーグス)というブログで、この問題が起きた原因や、効果のないバンドエイドのような解決方法につい説明している。

「レビュー担当者がアプリを動かしてみて、ポルノが見つかればそのアプリは拒否されて、開発者は修正するようにいわれます」とブログに書かれている。そのエンジニアは、おおよそ「5回に1回のアップデート」でそれは起きるが、問題の投稿(スクリーンショットがTumblrに提供される)が削除されると、アプリは公開OKになる、と述べている。

「時おり、Tumblrが特別頑固なレビュー担当者に当たることがあります。ゴーサインをもらうまでにはいくつものポルノ粛清と再提出が必要になります」。同じようなことが今のTumblr iOSアプリでも起きているとエンジニアは考えている。

TumblrはiOS App Storeで承認を得るために、1年近く苦闘したことがある。2018年、TumblrのiOSアプリはApp Storeから削除され、それは児童性的虐待資料(CSAM)がアプリのフィルタリング機構に組み込まれた後のことだった。1カ月後、Tumblrはあらゆるポルノおよび性的に露骨なコンテンツを禁止し、ほぼ直後にトラフィックが29%減少した。それ以来、同プラットフォームのウェブトラフィックは低迷を続けている。

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画像クレジット:SimilarWeb

もちろん、ユーザー生成コンテンツのプラットフォームからあらゆるアダルトコンテンツを排除するのは果てしない無駄な作業だ。

「何かと言いたくなる気持ちもあるんです。Instagram(インスタグラム)やTwitter(ツイッター)はあまりに巨大なので、Tumblrよりも許されることが多いのでしょう」と、その元Tumblr iOSエンジニアは理論づけた。「それとTumblrが2018年の終わりまでポルノをあからさまに許していた歴史とを合わせてみてください。もちろん証明はできませんが、もしTumblrのAppleでの評判というものがあるなら、それは良いものではありえません」。

それとは別に、Tumblrコンテンツは「#rule 34」から「#long post」まで、あれこれのタグを禁止されている。

Tumblrは米国時間12月28日、同社のChangesブログで、iOSアプリで利用できないタグのリストをレビュー中であり、1月までに完了する予定だと書いた。

そして「現在、iOSアプリで繊細なコンテンツを許容することをユーザーが選択できるウェブベースのスイッチを開発しています」と付け加えた。

Tumblrユーザーはしばしば、このプラットフォームをインターネットの荒れ地と呼ぶ。Tumblr自身、あるときApp StoreでiOSアプリの副題に「hellsite (affectionate)」(地獄サイト[愛情をこめて])と書いていたこともある。だったらなぜ使い続けるのか?

「サイトは死んだと思われていますが、この手のことには超簡単な回避方法があるものです」とあるTumblrのヘビーユーザーがTechCrunchに話した。「tab ban」をサイトで検索すればそういう抜け道を見つけるのは難しくないが、常連ユーザーはTumblrの検索機能がバグだらけなことも知っている。「実際、壊れた検索機能はこのピンチに役立っています。使った時の半分は欲しい物を見つけられませんが、Appleも見つけられませんから」。

しかし、TumblrがiOSアプリと検索機能で不足している部分は、アルゴリズムというかそれが欠けていることで補われている。TikTok(ティックトック)、Twitter、YouTube(ユーチューブ)、Facebook(フェイスブック)、Instagramなどのプラットフォームが上院に呼ばれて、彼らの謎の多いコンテンツの扱い方について釈明していた一方で、Tumblrは、昔風のやり方で仕事をしている。フォローしているユーザーのコンテンツを、逆時間順に表示するだけだ。

「正直、収拾不可能な状態でいることが、今はTumblrにとって完全に有利方向に働いていると私は信じています」とその熱心のTumblrユーザーは言った。「そこにアルゴリズムはないので、今でも自分の欲しいままの体験を収集することができています」。

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルは控訴審の判決が出るまでApp Storeのポリシー変更の必要なし

Apple(アップル)は、Epic Gamesとの法廷闘争で判事が下したアプリ内購入とAPP Storeのガイドラインの変更命令を、実行しなくてもよくなった。判決は、Appleは独占ではなかったというほぼ勝訴だが、同社は、開発者がアプリ内購入の決済先であるApp Store以外のリンクをアプリに追加することを禁じてはならないと命じられた。最初の判決に対してAppleとEpicの両方が上訴し、Epicはメインの主張が認められなかったこと、そしてAppleはアプリ内購入に関する当の判決そのものが不服であるとした。判決ではApp Storeのポリシーの改定は12月9日までとなっていたが、Appleはアプリ内購入ガイドラインの変更は控訴への判決が決まるまで猶予とすることを求めた。

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控訴裁判所は今回、差し止め命令が発効するまでの猶予をAppleに認めた。つまり、開発者はAppleが提供する既存のアプリ内課金システムを使い続けなければならない。アプリ内での支払いのために、自社のウェブサイトにリンクしたり、ユーザーを誘導したりすることは許されない。

米国時間12月8日、米国第9巡回区控訴裁判所に提出された文書(下記参照)では、Epic Games Inc.がAppleの行為が反トラスト法に違反していることを証明できなかったが、同じ行為がカリフォルニア州の不正競争防止法に違反していることは証明できた、という連邦地裁の判断に対して、「少なくとも、その控訴が本質的な問題を提起するものである」とAppleは判断した。

裁判所はさらに、Appleは「修復不能な損害の十分な提示」を行ったとして、判決の一部を猶予にするAppleの申し立てを認めている。

その文書によると、猶予は控訴が審理されるまで有効だ。

Appleは、以前にも停止の申し立てを試みたが、裁判所はその申し立てを却下した。今回の申請は、App Store以外で行われた購入を委託するためのまったく新しいシステムを考え出さなければならないなどと主張し、戦術を変えた後に認められた。

Epic Gamesは、裁判所の決定についてのコメントを控えている。

一方、Appleの広報担当者は、以下のような声明を発表した。

私たちはApp Storeを絶えず進化させて、さらに良いユーザー体験と、優れたiOS開発者のをコミュニティを築くことに努めています。私たちは、これらの変化によってプライバシーとセキュリティのリスクが生じ、また、顧客がApp Storeに関して愛する、ユーザー体験が壊されることを懸念しています。私たちは、この猶予を認めて控訴のプロセスを継続される裁判所に感謝します。

The Verge9to5Macがこの猶予のニュースを先に報じている。

Apple granted stay on injunction in Epic ruling by TechCrunch on Scribd

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アプリストアの2021年消費者支出は過去最高約15兆円、新規インストールは1436億回を記録

アプリエコノミーは、2021年に再び新しい記録を打ち立てようとしている。米国時間12月7日に発表された、Sensor Towerによる2021年のグローバルアプリエコシステムのレビューによると、アプリの初回インストール回数は2021年、1436億回に達し、前年比0.5%増となったが、アプリでの消費者支出は同19.7%増の1330億ドル(約15兆円)と大幅に増加した。この数字には、Apple App StoreとGoogle Playにおけるアプリ内購入、プレミアムアプリ、サブスクリプションでの支出が含まれるが、中国にあるようなサードパーティのアプリストアは含まれない。

画像クレジット:Sensor Tower

この成長率は、消費者支出が21%急増して1111億ドル(約12兆6400億円)に達した2020年とほぼ同じだとSensor Towerは指摘する。

もちろん2020年には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の直接の影響を受けて消費者は自宅で仕事をしたり、オンラインで買い物をしたり、友人とバーチャルにつながったり、より多くの娯楽コンテンツをストリーミングしたり、オンラインで授業を受けたりと、さまざまな行動上の変化を余儀なくされたためだ。こうした変化は、2020年には消費者のアプリ利用と支出の面で現れた。パンデミックがモバイルアプリの世界に影響を与えたこともあり、世界のアプリ収入は2020年上半期に500億ドル(約5兆6900億円)にまで急増したと、当時TechCrunchは報じた。

画像クレジット:Sensor Tower

こうしたパンデミックに起因する個人消費の変化は、2020年の新型コロナによる政府のロックダウンを超えて、2021年のモバイルトレンドに影響を与え続けるだろうというシグナルが早くからあった。例えば米国では、iPhoneアプリでの消費者支出は、2020年の平均136ドル(約1万5500円)から2021年には平均180ドル(約2万500円)に達する見込みだと、Sensor Towerは指摘していた。しかし、最終的には165ドル(約1万8800円)にとどまったとのことだ。また、2021年上半期の消費者支出はすでに新記録を達成し、世界全体では649億ドル(約7兆3900億円)に達した。

Sensor Towerが発表したところによると、世界全体で1330億ドルという記録的な支出の内訳は、App Storeでの支出が851億ドル(約9兆6900億円)で、2020年の723億ドル(約8兆2300億円)に比べて前年比17.7%増となった。また、Google Playの消費者支出は479億ドル(約5兆4500億円)で、2020年の388億ドル(約4兆4200億円)から23.5%増加している。App Storeの売上高はGoogle Playの約1.8倍と引き続き上回り、これは例年通りだ。

ゲーム以外では、2021年に世界で売上最多だったアプリは、中国版Douyinを含むTikTokだった。ByteDanceの短編動画アプリの各バージョンを合わせると、2021年は11月までに20億ドル(約2280億円)の売上高を突破し、年末までに23億ドル(約2620億円)に達する見込みだ。これにより、累計売上高は38億ドル(約4330億円)に達する。

同アプリは、App Storeのグローバルの支出額でもトップだったが、Google Playでは、TikTokは消費者支出額で第4位にとどまった。Googleの自社サービスであるGoogle Oneが第1位だった。年末までにGoogle Oneの消費者支出は10億ドル(約1140億円)に達し、2020年の4億4850万ドル(約510億円)から123%増だ。

画像クレジット:Sensor Tower

一方、世界のアプリのダウンロード数は伸び悩み始めている。全体としては、2020年の1429億回から1436億回へと0.5%増えているが、これは主にGoogle PlayでのAndroidアプリのダウンロードの伸びによるものだ。Google Playでのインストール数は、2020年の1085億回から2.6%増の1113億回に達した。

しかし、AppleのApp Storeでは、新規アプリインストール数が減少した。2021年のダウンロード数は、2020年の344億回から323億回へと6.1%減少するとSensor Towerは予想している。

TikTokのインストール数は、2020年の9億8070万回から減少したものの、世界全体で7億4590万回となり、引き続き最もダウンロードされたアプリだった(Appleは先日、iPhoneの無料アプリチャートで、TikTokが米国で年間トップのダウンロード数を記録したことを明らかにした)。Google Playでは、Facebookが5億90万回でトップとなり、Androidが普及している多くの新興市場で、同アプリが人気を博していることを示している。しかし、2つのアプリストア合計で2021年のFacebookのインストール数は6億2490万回で、2020年の7億780万回に比べて12%減となる見込みだ。

関連記事:アップルが2021年の米App Store Award受賞者と年間最もダウンロードされたアプリを発表

画像クレジット:Sensor Tower

モバイルゲームは、例年通り世界のアプリ売上高の中で大きなシェアを占めている。2021年のモバイルゲームへの支出は、App StoreとGoogle Playを合わせて896億ドル(約10兆2000億円)に達し、2020年の796億ドル(約9兆620億円)から12.6%増となる見込みだ。

しかし継続的な流れとして、パイ全体に占めるゲームの割合は縮小している。2019年には、アプリ全体の支出のうちゲームが74.1%を占めていたが、2020年には71.7%に低下した。2021年は再び低下し、アプリ内支出全体の67.4%にとどまっている。この変化は、ゲーム以外のサブスクリプションベースのアプリの増加によるもので、2021年は特にパンデミックから経済的恩恵を受けたストリーミングやエンターテインメントアプリの成長が顕著だ。

画像クレジット:Sensor Tower

App Storeでは、ゲームの2021年の消費者支出は523億ドル(約5兆9540億円)で、2020年から9.9%増だ。iOSにおけるゲームマーケットを牽引するのは、Tencentの「Honor of Kings(王者栄耀)」で、2020年の25億ドル(約2850億円)から16%増の29億ドル(約3300億円)だった。

Google Playでは、最高の売上を記録したのはやはりMoon Activeの「Coin Master」で、前年比13%増の約9億1200万ドル(約1040億円)に達した。全体として、Google Playでのゲーム支出はグローバルで2020年の320億ドル(約3兆6400億円)から16.6%増の373億ドル(約4兆2480億円)となる。

画像クレジット:Sensor Tower

ゲームのインストール数は、他のモバイルアプリのインストール数と同様に、App Storeでは前年比で減少し、2020年の101億回から2021年は86億回に減った。中国版「Game of Peace」を含む「PUBG Mobile」は、最多のダウンロード数(4750万回)を獲得した。Google Playでは、ゲームのインストール数は、2020年の461億回から2021年は467億回へと1.3%増加し、Garena Free Fireがダウンロード数最多となった(2億1880万回)。

2021年のトレンドは、2020年に異常なほどの盛り上がりを見せた後、ある程度、少し正常化した。しかし、例えば、消費者支出のうちゲームが占める割合が減少していることや、ダウンロード数ではAndroidがiOSを上回っているが売上高ではそうではないことなど、その他の傾向は変わっていない。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

フェイスブックがアップルやグーグルに手数料を払わずファンが投げ銭「スター」を購入できるウェブを公開

Meta(Facebook)は、アプリストアのアプリ内購入手数料を回避する新たな方法を発見した。新しいウェブサイトではユーザーが 「Facebookスター」と呼ばれるバーチャルアイテムを購入し、Facebookの動画やライブストリームでお気に入りのクリエイターを応援する手段として使うことができる。スターは、通常モバイル端末でアプリ内購入のかたちで購入されるため、アプリストアプラットフォーム提供者(つまりAppleまたはGoogle)との収益分配の対象になる。しかし、ファンがFacebookの新しいウェブサイトでスターを購入する場合、Facebook Payを使用し、AppleやGoogleの決済手段を利用しない。

これによってファンは「より多くのスターを安く手に入れる」ことができます」とFacebookの発表にかかれている。これは少なくとも現在は真実のようだ。なぜならFacebookがすべての購入について「ボーナス」スターを提供しているからだ。例えば、530スターを9.99ドル(約1130円)で買う場合、新ウェブサイトを通じて購入するとボーナスとしてさらに420個のスターがもらえる。Facebookモバイルアプリのアプリ内購入を使う場合、スターは530個しかもらえない。(注記:これは公開されたウェブサイトのボーナス額に基づいている。Facebookのブログに載っているスクリーンショットは異なるボーナス額を示している。12月の「スターフェスト」期間中は価格が下げられていると編集部は理解している。いずれにせよ、これらのボーナスは、ウェブ経由なら同じお金で多くのスターが手に入ることを意味している)。

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ボーナススターの数はさまざまで、購入金額が増えるほど追加スターの数は増える。最少で45スター(ボーナスは35スター)を0.99ドル(約110円)から最大6400スター(ボーナス3600スター)を99.99ドル(約1万1350円)で購入できる、と現時点のウェブサイト(上記参照)に書かれている。

しかし、ボーナスがなければ、アプリ内購入の代わりにウェブサイトを使うメリットはない。ボーナスを別にした料金はどちらも変わらないからだ。

ウェブサイトのStars Store(スター・ストア)で購入したスターは、ユーザーのバーチャルウォレットに格納され、Facebook Liveやオンデマンドビデオで対象のクリエイターに送ることができる。クリエイターはスターを使ったユーザーに対して好きな方法で報いる事ができる。ビデオの中で大声で呼ぶなど、自分のスタイルやコンテンツにあった報酬を与えられる。

画像クレジット:Facebook

Facebookがアプリストアの収益分配を回避する方法を見つけたのはこれが初めてではない。2021年11月にFacebookは、クリエイター向けのカスタムサブスクリプションリンクをiOSで提供し、賛否渦巻くAppleの30%手数料を避けて直接支払いを受けられるようにした。この仕組みが、少なくとも現段階で、可能なのはFacebookがこの取引で自分の取り分を得ていないからだ。そうすることでFacebookは、AppleのApp Store Guidline(アップストア・ガイドライン)に細かく書かれている現在許容されている方法で手数料を回避することができる(具体的にはガイドラインの3.2.1項「許容される行為」に、個人は他の個人に金銭を贈与できる、ただし受け手側が金銭の100%を受け取る場合に限る、と書かれている。Clubhouse(クラブハウス)はこの隙間と自身のアプリ内チップシステムを利用している)。

関連記事:フェイスブックがクリエイターにアップルの料金を回避できるリンクを提供

スターをウェブ経由で買う仕組みは、新たな興味深い動きであり、ファン多くのスターを安く手に入れる方法があることに一度気がつけば、さまざまな取引をFacebookのモバイルアプリとアプリ内購入からシフトする機会が生まれる。Appleは、Epic Games(エピック・ゲームズ)訴訟の結果、近いうちにアプリデベロッパーがアプリ以外で購入できる場所を指し示すことを可能にすることになっているが、現在Appleは、その強制命令を遅らせるよう法廷に要求している。最初の試みは却下された

画像クレジット:Facebook

FacebookのStar Storeウェブサイトの発表は、12月いっぱい行われている「Star Fest」期間中に数多く発表されたものの1つだ。同社は、スターを他の場面でも利用するテストを行うといっている。ニュースフィード、Facebook Watchフィード、ゲーミングタブ、さらに2022年に始まるFacebookリール内のビデオなどだ。

さらに同社は「Stars Party」なるものも開始する。ライブストリーム中にファンが一体となってスターを贈る新しい方法だ。カウントダウンタイマーがあらわれて、5分間のうちに集団が一緒にスターゴールを目指す。2021年12月22日から2022年1月3日まで、Star Partyを完了したクリエイターは、1回につき50ドル(約5680円)のボーナスをもらえる、とFacebookはいう。

Facebookは、10億ドル(約1135億円)のクリエイターファンドの一環として、3月31日まで、スターの「ダブルボーナス」にも投資している。期間中、Metaは一部のクリエイターのスター収益に最大月額750ドルまで同額を上乗せする。これでクリエイターは最大3750ドル(約42万6000円)のボーナス支払いを受け取ることが可能になる。ただし、同プログラムは招待制だ。Facebookはさらに、ユーザーがライブビデオを見ながら新機能を試せるように、300万ドル(約3億4000万円)分の無料スターを配布する予定だ。

Stars Festでは他にも、期間限定のバーチャルギフトやバッジ、さまざまなクリエイターによるスペシャルライブプログラミング、クリエイターがライブ中継を行うための金銭的インセンティブなど、さまざまなサービスを提供している。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルが2021年のApp Store Award受賞者と年間最もダウンロードされたアプリを発表

Apple(アップル)は米国時間12月2日、iPhone、iPad、Mac、Apple TV、Apple Watchの各分野において、楽しみにされていた年間で最も優れたアプリとゲームを紹介するリストを発表した。2021年は、子ども向けアプリメーカーのToca Bocaが「Toca Life:World」でベストiPhone Appを受賞した他、Riot Gamesの「リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト」がベストiPhoneゲームを受賞した。

その他、ベストiPad AppをLumaTouchの「LumaFusion」、ベストiPad ゲームをNetmarbleの「MARVELフューチャーレボリューション」、ベストMac AppをLuki Labs Limitedの「Craft – ドキュメントとメモエディタ」、ベストMacゲームをCyanの「Myst」、ベストApple TV AppをDAZN Groupの「DAZNスポーツをライブ中継」、ベストApple TVゲームをPixelbiteの「Space Marshals 3」、ベストApple Watch AppをGrailrの「Carrot Weather」、そしてベストApple ArcadeゲームをMistwalkerの「FANTASIAN」が受賞した。

通常、受賞作品は、App Storeに登場して間もない作品や、Appleのテクノロジーを興味深い形で活用した作品、あるいはその年に特に注目を集めた作品などが対象となることが多い。例えば、2020年の受賞作品は、パンデミックの影響がアプリの業界にも反映しており、iPhoneではホームワークアウトアプリ「Wakeout! – 運動療法」、iPadでは「ZOOM Cloud Meetings」が受賞した。

しかし、2021年のベストiPhone Appに選ばれた「Toca Life:World」は、別の理由で興味深い作品だ。このアプリのメーカーであるToca Bocaは、2021年の3月で10周年を迎えたことを祝っていた。最初のアプリをリリースして以来、同社は40以上の子ども向けアプリをリリースしてきた(Toca Bocaではデジタルトイと呼んでいる)。「Toca Life:World 」は、これまでの「Toca Life 」アプリを1つにまとめた集大成とも言える作品だ。

Appleは、この賞を受賞したToca Bocaについて「10年経った今でも、子どもたちの遊びと自己表現の芸術を見事に反復している」と賞賛している。

今回の受賞は、App Storeへの反発や動揺が見られたこの年に、デベロッパーがApp Storeで長期的なビジネスを構築していること、そしてAppleはこのような賞の受賞を含め、その成功をサポートする役割を果たしていることをさりげなく示すものでもある。

また、ストリーミングサービスの「DAZNスポーツをライブ中継」がローカルのスポーツ文化を世界的に広めたことを紹介するなど、他の受賞者も称賛した。一方で、AppleはApple TVやiOSアプリ向けのSportsKitフレームワークを静かに構築しており、DAZNもいつか活用することができるかもしれない。

Appleはまた「Carrot Weather」が誇る最高峰の気象予報精度をアピールした。これは、Appleのデフォルトの天気予報アプリと競合するもので、Appleが所有する「Dark Sky Weather」のデータを使用している。Appleは「LumaFusion」のより速く、煩わしさなくビデオ編集ができるようになる能力を紹介し、ドキュメントエディタの「Craft – ドキュメントとメモエディタ」が「効率性と芸術性」を兼ね備えていることについてもアピールした。しかし、これらのアプリがApple製品(それぞれiMovieとiWorkのPages)と競合していることも無視できない。どちらかというと、このリストの多くは、サードパーティ製アプリの運命が、Appleのソフトウェア開発といかに密接に結びついているかを思い起こさせるものでもある。

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2020年は、App Storeにとって過渡期の年だった。規制当局の監視が強化され、世界各地で新たな法律が制定され、App Storeのコミッションベースのビジネスモデルをめぐるさまざまな訴訟に直面した(現在、控訴中のEpic Gamesとの訴訟を含む)。その結果、Appleは、市場の要求や和解合意に応じて、ポリシーを調整明確化し、場合により手数料の引き下げも行った。

このような変化にもかかわらず、アワード受賞者を含む多くのアプリの成功と品質は依然として高い水準にある。

また、Appleは年末の受賞者を発表するにあたり「つながり」を2021年のトレンドのトップに掲げ、このテーマを念頭に置いて人々の生活に長く続く影響を与えた数多くのアプリやゲームを称えた。このリストには、InnerSlothの協力・対戦型ゲーム「Among Us!」、デート・ネットワーキングアプリ「Bumble – 誠実なマッチングアプリ」(そのトップライバルである「Match 婚活・マジメな出会いマッチング アプリ」は、たまたまApp Storeの批評家として注目されている)、デザインリソース「Canva-インスタストーリー,年賀状デザイン作成や写真編集」、黒人経営のビジネスに焦点を当てた地元の食べ歩きガイド「EatOkra」、2021年から音声チャットルームを開始した女性向けソーシャルネットワーク「Peanut:Find Friends & Support」などが含まれている。

AppleのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は、声明の中で「2021年にApp Store Awardsを受賞した開発者たちは、自らの意欲とビジョンを活かして、その年の最高のアプリやゲームを提供し、世界中の何百万人ものユーザーの創造性と情熱を刺激しました。独学で学んだインディーズのコーダーから、グローバルビジネスを構築する刺激的なリーダーまで、傑出したデベロッパーの方々はAppleのテクノロジーで革新を起こし、その多くが2021年必要とされた深い一体感の醸成に貢献しました」と述べている。

受賞者には、Apple製品の製造に使用されている100%リサイクルのアルミニウムに、App Storeの象徴である青いアイコンがはめ込まれ、反対側に受賞者の名前が刻まれた現物のApp Storeアワードが届くことになっている。

また、Appleは例年通り、その年に最もダウンロードされたアプリのリストも発表した。米国では、最もダウンロードされたアプリは以下のとおりだ。

トップ無料iPhoneアプリ

  • TikTok
  • YouTube:Watch, Listen, Stream
  • Instagram
  • Snapchat
  • Facebook
  • Messenger
  • Google Maps
  • Gmail – Email by Google
  • ZOOM Cloud Meetings
  • Amazon Shopping

トップ有料iPhoneアプリ

  • Procreate Pocket
  • HotSchedules
  • The Wonder Weeks
  • TouchRetouch
  • Facetune
  • Shadowrocket
  • 75 Hard
  • Dark Sky Weather
  • Autosleep Track Sleep on Watch
  • SkyView®

トップ無料iPhoneゲーム

  • Among Us!
  • Roblox
  • Project Makeover
  • Call of Duty®:Mobile
  • Subway Surfers
  • High Heels!
  • Magic Tiles 3:Piano Game
  • Water Sort Puzzle
  • Shortcut Run
  • Bridge Race

トップ有料iPhoneゲーム

  • Minecraft
  • Heads Up!
  • Bloons TD 6
  • Monopoly
  • Geometry Dash
  • My Child Lebensborn
  • Plague Inc.
  • True Skate
  • Grand Theft Auto:San Andreas
  • Incredibox

トップ無料iPadアプリ

  • YouTube
  • ZOOM Cloud Meetings
  • Disney+
  • Netflix
  • TikTok ティックトック
  • Google Chrome ウェブブラウザ
  • HBO Max:Stream TV & Movies
  • Hulu / フールー 人気ドラマや映画、アニメなどが見放題
  • Amazon Prime Video
  • Gmail – Google のメール

トップ有料iPadアプリ

  • Procreate
  • GoodNotes 5
  • Notability
  • Duet Display
  • Toca Kitchen 2
  • Toca Life:Hospital
  • LumaFusion
  • Shadowrocket
  • Affinity Designer
  • Toca Life:Vacation

トップ無料iPadゲーム

  • Among Us!
  • ROBLOX
  • Project Makeover
  • Phone Case DIY
  • Subway Surfers
  • Hair Challenge
  • 魔法のタイルズ3
  • タイルホップ:音楽ゲーム
  • Blob Runner 3D
  • Bridge Race

トップ有料iPadゲーム

  • Minecraft
  • Bloons TD 6
  • Geometry Dash
  • Monopoly
  • Five Nights at Freddy’s
  • Stardew Valley「スターデューバレー」
  • Plague Inc. -伝染病株式会社-
  • ヒューマン フォール フラット
  • Ultimate Custom Night
  • Grand Theft Auto:San Andreas

トップApple Arcadeゲーム

  • The Oregon Trail
  • NBA 2K21 Arcade Edition
  • 忍び足のサスクワッチ
  • ソニックレーシング
  • SpongeBob:Patty Pursuit
  • Skate City
  • パックマンパーティロワイヤル
  • Cut the Rope Remastered
  • Hot Lava :灼熱のホットラバ
  • Angry Birds Reloaded

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Akihito Mizukoshi)

プッシュ通知を送るだけのアプリ「Push it」が5カ国のApp Storeでナンバー1になった理由

Push itと呼ばれる、友達に「プッシュ通知」を送る機能を持つ新しいアプリがアプリストアのナンバー1アプリになっている。このアプリには2つのスクリーンショットしかない。1つは大きく赤いボタンで、もう1つは「送信中」というテキストが書かれた黒と赤のスクリーンだ。このアプリをインストールした人々の多くはこのアプリをまだ使用することができていない。それなのに、このアプリが5カ国でナンバー1になっているのはなぜなのだろう?

わかったのは、Push itが、Snapchatプラットフォームアプリ、Sendit(ARゲームや匿名Q&Aの機能を持つ)を作った人々が作り出した最新のアプリであることだ。

画像クレジット:fullsenders

Push itがなんであるのかを理解するには、この会社のオリジナルアプリであるSenditについて知る必要がある。

Senditは若い層を中心に人気のアプリで、ゲームをしたり、友達と会話をするのにこのアプリを利用するSnapchatユーザーを着実にひきつけている。Sensor Towerのデータによると、現在までのところ、Senditは世界中で900万回ダウンロードされ、300万ドル(約3億4000万円)近くの個人消費を生み出している。

Senditは、SnapchatがSenditの最大のライバルであるYOLOとLMKを一時停止したことを受け、最近新たに何百万人ものユーザーにインストールされた。このYOLOとLMKの2つのアプリは、これらを使用していた男の子が他の匿名のユーザーにいじめられ自殺したことから、その男の子の母親が裁判所に訴え、提訴の対象になっているのだ。Senditもやはり友達に自分が誰であるかを明かさずに質問するよう促す「何でも聞いて」ゲーム、といった匿名の機能を提供しているが、いまのところYOLOとLMKのような運命に陥らずにすんでいる。

Senditについての否定的なレビューの中には、やはりいじめについて言及したものがあるが、Snapchatはまだこれに対する措置を講じていない。TechCrunchがSnapchatに対し、未成年に対する匿名アプリをめぐるポリシーについて尋ねたところ、同社はプラットフォームの安全性を世界的に統括する責任者を採用したところであり、アプリのエコシステムとポリシーを見直しているとのことだった。

さらに、Senditのユーザーの一部は、このアプリは友達が絶対にしていないはずの質問を表示するボットを使用していると信じているようだ。

あるユーザーはアプリストアのレビューで次のように書いている。

このアプリはランダムにフェイク/自動化された質問を送ってくる。例えば、私と私の友達は全員20台中頃なのだが、全員がまったく同じ、「あなたは人間不信に陥っていますか?」「宿題を写すとしたら、誰が一番よい相手ですか?」といった質問を受け取ってっている。

こんなレビューもある。

受け取った質問の中には、私が知っている友達からのものではないと確信を持っていい切れるものがある。これがフェイクなのは間違い無く、AIからのものだと確信している。それらは誰も質問しないような、「ゾンビだらけの世の終末に生き残りをかけて自分のチームを作るとしたら、そのチームのメンバ-に誰を選びますか?」といったランダムで安っぽい質問だ。ばかばかしいし、こんな質問は誰もしない。本物のアプリを作るべし。

Senditの創設者である Hunter Rice(ハンター・ライス)氏は、ボットは関わっていないと述べている。また彼はSenditがティーンエイジャーに受け入れられているのは、匿名性によるものだという考えに異議を唱えている。

「私たちのユーザーがSenditに惹きつけられているのは、すばらしいAR体験のためです。私たちが当社の使命と感じ目指しているのは、友達との会話を盛り上げるの際の摩擦を低減する新しい方法です。私たちは非常に魅力的なフォーマットをこれらのARゲームを通して発見しました。これがSenditの背後にあるマジックであり、Senditがここまで成功している理由です」とライス氏は説明する。

今日、Senditは「Never Have I Ever」「Truth or Dare」など、若い層に受けるゲームを提供している。Senditではユーザーが「私とお似合いなのは誰だと思う?」といった質問をすることができたり「告白ー誰を好きか言ってください」「適合性試験」など、ティーンエイジャーが友達と話したがるような内容が反映されたものを提供している、

同様に、ライス氏によると、新しいアプリPush itも会話をはずませる新しい方法を提供するということである。

ただし、これは、Snapchat向けの有望なARレンズゲームやQ&Aではなく、直接友達のiPhoneに通知を送るというベーシックなツールだ。

画像クレジット:fullsenders

「私たちはSenditを通し、これらのARでのやり取りの中にすばらしいフォーマットを見つけました。そして、これは順調に進んでいます。そこで、これと同じ仕組みを別のフォーマットを使って複製しようと考えました」とライス氏はいう。

アプリストアの必要最低限のことしか書かれていないリストでははっきりしないが、この新しいアプリはベーシックなフォロワー / フォロウィングモデルを提供しており、ユーザーはアプリで、自分をサブスクライブしている人全員にプッシュ通知を送ることができる。これらのフォロワーはSenditと同様、その通知に反応して、一対一の会話を始めることができる。

ライス氏らは、このコミュニケーションスタイルが、友達グループやクリエーター、ブランドにも受け入れられるのではないかと考えている。

Push itを使用する場合、このアプリはユーザーのiphoneにあるアドレス帳データベースへの完全なアクセスを求める。またこれはテキストメッセージで友達を招待するツールも提供する。招待が必要な友達の名前の横に「OK」ボタンが表示され、それを押すと、友達を招待するためのテキストが作成される(アプリがテキストを送る相手をユーザーのアドレス帳にある人々の名前からランダムに選択するのかどうかは、はっきりとはわからない)。

プライバシー保護への機運が高まりを見せるなか、アプリ招待スパムはびこる現状を受け、SMSベースの成長メカニズムは一般的に良いものとは捉えられていない。しかし幸いなことに、Push itは友達に自動テキストを送るのではなく、ユーザー自らが友達にテキストを送るよう促すだけである(ただし、このアプリのプライバシーポリシーは、ユーザーの個人情報を使ってなにが行われているかについての不安を和らげる効果はありまない。ポリシーを読むと、データがマーケティング目的で使用され、Push itのベンダーやビジネスパートナーと共有されるのは明確である)。

このアプリはユーザーに熱心に5つ星レビューをねだってもくる。ユーザーが星のアイコンをタップすると、ポップアップウィンドウが表示され、アプリストアでPush itを5つ星評価をしたユーザーには「特別なメッセージ」を送ることを約束してくる。

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Push itのiOSアプリは10月後半にアプリストアで公開されたが、Sensor Towerのデータによると以前は「プロジェクトレッド」という名前のもとで準備が進められていた。昨夜の時点(米国時間11月3日)で、オーストラリアやカリフォルニアを含む一部の市場で利用可能になっている。このアプリがすでにナンバー1になっているのを見ると、そのローンチが、発売前マーケティング、あるいは今や当たり前の手法となったグロースハックに大きく依存したものなのではないか、という疑念が湧いてきてしまう(こちらの記事も参照して欲しい。春のチャートのトップを占めるPoparazzi(ポパラッチ)、このアプリがナンバー1になったのはグロースハックによる)。

関連記事:米App Storeトップに華々しく登場、作られた完璧さが並ぶInstagramのアンチを謳う新SNS「Poparazzi」

しかし、ライス氏はこれを否定している。

「Push itにまつわる熱狂は、すべて自然発生的なものです」とライス氏はいうが、それでも同社がソーシャルメディアを使ってアプリの発売を宣伝したことは認めている。例えば、現在Push it のインスタグラムのアカウントには約3万2000人のフォロワーがいる。

しかし、Sensor Towerのデータによると、Push itはすでに記事執筆時点(米国時間11月4日)で、5つの国で急速に拡散しており、米国、カナダ、バミューダ、アイルランド、ノルウェーでナンバー1になっている、と同社はいう。また英国、オランダ、オーストラリア、フィンランド、ニュージーランドでもトップ10に入っている(これらの国の多くは、Push itのInstagramインスタグラムには発売市場としてリストされていない、ということに留意すべきである)。

画像クレジット:fullsenders

Push itがナンバー1であることに違和感があるのは、まだ利用可能になっていない地域(記事執筆時で米国の大半の州を含む)では、このアプリは基本的に機能しないからだ。ユーザーは、アプリに対しユーザーネームを請求することができるが、それだけである。そしてユーザーは自分の地域でアプリが使えるようになるのを待たなくてはならない。

ライス氏によると、段階的な展開戦略をとっているのは、Push itが確実にトラフィックを処理できるようにするためであるが、これによって多くのユーザーの間に混乱が生じているようである。Instagramには「ちょっと、これいつから機能するの?」とか、「これ、一体なんの役に立つわけ?」とか、「超混乱してて、大爆笑」といったコメントが寄せられている。

「私たちは、ユーザーができる限り最善の体験をできるようなスムーズなかたちでアプリを展開しようとしています。全員がアプリにアクセスできるようにしたいですし、すぐにそのようになります。でも、私たちのサーバーが確実に機能し続けるようにしたいとも思っています」とライス氏は述べた。

Push itとSenditは、サンタモニカに拠点を置くFullsenders, Incの10人からなる小さなチームが作っている。同社は資金調達先を公開していないが、TechCrunchでは、関与しているエンジェル投資家の少なくとも1人を正しく推測することができた。

Push itの今後の試練は、アプリストアで現在のような高いランクを保てるかどうかである。自然な手法で、あるいはそうでない方法でダウンロード数を増やすにしても、新しく登場したソーシャルアプリが、高いランクを維持することは通常難しいとされている。また、未成年や10代前半の子ども向けのソーシャルメディアに今後規制がかかること予想されるが、Push itはそうした規制への対処にも取り組まなくてはならない。Push itに弾みがついた場合は、プライバシーポリシーと収益モデルを再考することも必要だろう。

ただし、当分の間Push itが収益を得ることはない。

「私たちは現在、とにかくすばらしいコミュニティを作り、ユーザーが関与したいと思うようなすばらしい機能を築きたいと考えています。そして、私たちが価値ある製品を提供できれば、当社に最もふさわしいビジネスモデルを思いつくことができると思います」とライス氏は述べた。

Push itはiOSにのみ対応している。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

アップルにEpic Games訴訟のアプリ内課金をめぐる裁判所の決定に従うよう命令

カリフォルニア州でのEpic Games(エピックゲームズ)対Apple(アップル)訴訟の判決で、米連邦判事はAppleがApp Storeポリシーの更新期限を延期することはできない、と裁定した。この訴訟では、Epic Gamesが主張していたような独占的な行為をAppleが行っているわけではないと判事が宣言したことでAppleはほぼ勝訴したが、アプリ内課金の制限に関するAppleの反ステアリングポリシー(「転向」行為の禁止)の問題では、裁判所は「Fortnite」メーカーのEpic Gamesに味方した。裁判所の当初の判決では、開発者がApple独自の決済システム以外の決済手段を取ることをAppleが禁止することはもはや許されないとしていたが、Appleはこの決定を控訴審の判決が出るまで保留とすることを望んでいた。保留となった場合、App Storeの変更は事実上数年後に延期されることになる。

具体的には、Epic Gamesの反トラスト訴訟について米地方裁判所のYvonne Gonzalez Rogers(イボンヌ・ゴンザレス・ロジャーズ)判事が2021年9月10日に下した判決では、Appleが以下のことを開発者に禁止しないよう命じていた。

「……アプリとそのメタデータボタンに、外部リンク、またはアプリ内購入に加えて顧客を購入メカニズムに誘導するその他のコールトゥアクションを含めること」

裁判所はまた、アプリ内でのアカウント登録を通じて顧客から自発的に取得した連絡先を通じて顧客とコミュニケーションをとることを、Appleが開発者に禁止することはできないとしている。

Appleは、開発者がユーザーとコミュニケーションを取れるよう、10月にApp Storeの規則を正式に更新した。この変更も、同じ問題で集団訴訟を起こした米国の開発者グループとの和解の一部だった。しかし、Epic Gamesとの訴訟を控訴したAppleは、ゴンザレス・ロジャーズ判事が下した、App StoreをApple以外の決済システムに開放することになる差し止め命令の保留を求めた。

判事は、9月10日の判決から90日以内に差止命令を実施するよう命じたため、判決によると、求められるApp Storeのポリシー変更は12月初旬が期限となっていた。つまり、Appleが差止命令の保留を認められなかった場合、同社は開発者がiOSアプリ内で代替の決済手段を示すことを許可しなければならない。

11月9日に行われた差止命令に対する双方の主張の公聴会で、Appleの顧問弁護士は、Appleが実施を余儀なくされている変更は「プラットフォームを混乱させる」と主張した。

「消費者に害を与えます。開発者にも悪影響を及ぼします。それが事実なのです。これから起こることです」と、Epic Gamesの訴訟でAppleの主任弁護士を務めたGibson, Dunn & Crutcherのパートナー、Mark Perry(マーク・ペリー)氏は述べた。ペリー氏は、アプリ内のリンクを許可することは、iOSエコシステムにセキュリティやプライバシーのリスクをもたらす可能性があるというAppleの立場を繰り返した。

Epic Gamesの弁護士Gary Bornstein(ゲーリー・ボーンステイン)氏は、Appleは裁判中に、同社のファーストパーティ決済プラットフォームはウェブ決済と競合すると述べていた、と指摘した。方向転換して、この競合する代替手段について消費者の認識を高めることは「回復不能な損害」をもたらすとはいうことはできない。ボーンステイン氏はまた、これまでのところAppleがApp Store開放のために取った措置の多くは、集団訴訟や法規制の動向に対応するためのものであったため、Appleが自分たちだけで変更を整理するようにはすべきではないとも付け加えた。Appleは、App Storeのプライバシーラベルのような、消費者に配慮した他の変更を指摘し、同氏の主張に反論した。

最終的に判事は11月9日、Appleが保留を求める訴えをうまく主張できなかったと判断し、申し立てを却下した。

ゴンザレス・ロジャーズ判事は「要するに、Appleの申し立ては、当裁判所の所見を選択的に読んだものであり、差止命令を支持した所見のすべてを無視しています。超競争的な手数料率を含む初期の反トラスト行為は、非常に高い営業利益率をもたらし、知的財産の価値とは相関していません」と判決に書いた。「このような初期の反トラスト行為は、Appleが競争を阻害するために実施した反ステアリングポリシーの結果でもあります」。

コメントを求められたAppleは、再挑戦するつもりだと述べた。

「Appleは、この訴訟のすべての控訴が解決されるまで、追加のビジネス上の変更を要求すべきではないと考えています。このような状況に基づき、当社は第9巡回区控訴裁判所に保留を求めるつもりです」と同社広報担当は述べた。

Epic Gamesは直ちにコメントを出さなかった。

判決が支持された場合、App Storeの事業モデルに大きな影響を与える可能性がある。というのも、Appleの手数料を回避したいと考えている開発者は、ポリシーが更新された場合、ユーザーに他の支払い方法を紹介することができるからだ。この決定の影響は、どれだけのデベロッパーがこの機会を利用するか、またどれだけの消費者がApp Store以外での支払いを決断するかによって変わってくるが、Appleに数十億ドル(数千億円)損害を与える可能性がある。

すでに市場では、ポリシーが正式に改訂される前に、その潜在的な変化を利用しようとする動きが見られた。

例えば、サブスクリプション事業のソリューションプロバイダーであるPaddle(パドル)は、差し止め命令が発効すると同時に、iOS開発者向けにApple独自の決済システムを置き換えることができる新しいアプリ内課金システムを導入すると、見切り発車的に発表した(ただし、Appleのアプリ内課金システムを完全に置き換えることはできず、外部リンクのみとなる)。一方、Facebook(フェイスブック)は、App Storeを通さずにクリエイターに直接支払うシステムを導入した。このシステムは、Facebookが当面クリエイターの売上から手数料を取らないため、技術的には認められていた。しかし、他の支払い方法を認める決定が下されたことで、このシステムは将来的に変更され、Facebookの新たな収益源となる可能性がある。

裁判所がAppleの申し立てを認めなかった場合、Appleが裁判所の決定に従うためにどのようにルールを書き換えるのかは不明だ。韓国がアプリストアに他の支払い方法を認めることを義務付ける新しい法律を施行したとき、Google(グーグル)は手数料を調整しながらこれに従ったが、Appleは法律内容に現在のポリシーは準拠している、と述べた。

裁判所はAppleに対し、当初の判決では差止命令に従うために90日間の猶予があり、発効までにはまだ約30日あることを念押しした。

画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

NetflixがiPhone、iPadユーザーにもモバイルゲーム提供開始

先週、Netflix(ネットフリックス)は初のモバイルゲームのラインナップを全世界のAndroid(アンドロイド)ユーザーに提供した。本日、そのゲームの提供がiOSユーザーにも拡大された。「ストレンジャー・シングス」のゲーム2本と、その他いくつかのカジュアルゲームが含まれているラインナップは、Androidと同じ方法でiOSユーザーに配信さる。つまり、クラウドからストリーミング配信されるのではなく、App Store(アップルストア)から直接ユーザーの携帯電話やタブレットにインストールされる。

Android版のリリースにともない、Netflixは、ユーザーがカタログを閲覧してプレイしたいゲームを見つけることができる「ゲーム」タブをアプリ内に導入した。しかし、実際にゲームをプレイするには、Google Playにアクセスして、ゲームを端末にインストールしなければならない。最初の起動時に、ユーザーは、Netflixの認証情報を使ってゲームにサインインすることになる。

Netflixによると、iPhoneおよびiPadでのNetflixゲームの提供でも、同様のシステムを採用しているとのことだ。ただし、今回ゲームのダウンロードは、Google Playではなく、Apple(アップル)のApp Storeからになる。また、ゲームを開始する際には、Netflixの会員情報を使った認証が必要となる。

このシステムは、ゲームアプリに対してより寛容な内容に、2020年変更されたAppleのApp Storeのルールに準拠していると同社は考えている。

クラウドゲームサービスの増加に対応するために更新されたものだが、Appleのポリシーによると、開発者は、カタログ内の各タイトルが専用のApp Storeリストに掲載されている場合に限り、ゲームカタログへのアクセスを加入者に提供する集中型のアプリを提供することが認められている。これにより、Appleは各ゲームタイトルを個別に審査することができるという。このシステムは、定額制のゲームサービスGameClub(ゲームクラブ)が、会員のみがプレイできるクラシックゲームのタイトルをより幅広く提供するために開発したものだ

しかし、iOSでのNetflixゲームの実装と、Androidでの仕組みには、1つの違いがある。

Android版のNetflixユーザーには、アプリに専用の「ゲーム」タブがあるが、iOSユーザーにはない。その代わり、iPhoneユーザーには、アプリ内にゲーム専用の列が表示され、そこで任意のゲームを選択してダウンロードすることができる。一方、iPadユーザーには、(6番目に固定された)「ゲーム」タブが表示され、カテゴリのドロップダウンメニューからゲームにアクセスすることができる。

画像クレジット:Netflix

NetflixはTechCrunchに対し、AppleはNetflixのゲームにおいてすばらしいパートナーである一方で、ゲームタブが、独自の「アプリストア」を提供するアプリを禁止するApp Storeのポリシーに抵触するかどうかは、Netflixにとって完全には明らかではなかったと述べている。Netflixは、iOSユーザーにゲーム体験を提供する上でゲームタブは重要ではないと考え、ゲームタブなしでサービスを開始することを決定した。ただし、将来的にこの規則がより明確になれば、現在Androidで提供されているタブのように、iOSアプリに「ゲーム」タブを追加できるようになるかもしれない。

発売にあたってのゲームのラインナップは、Android版と同じだ。これには、BonusXP(ボーナスXP)の2つのタイトル「ストレンジャー・シングス:1984」と「ストレンジャー・シングス 3:ザ・ゲーム」の2タイトル、Frosty Pop(フロスティ・ポップ)の「ティーター」と「シューティング・フープス」の2タイトル、Rogue Games(ローグ・ゲームズ)の「カードブラスト」の1タイトルが含まれる。前者2作品は、Netflixの人気番組「ストレンジャー・シングス」のスピンオフ作品で、後者3作品はカジュアル作品だ。

長期的には、Netflixはこのカタログに他の追加要素やジャンルを加えて拡大する計画を持っている。例えば、同社は9月に「Oxenfree(オクセンフリー)」などのストーリー性のあるタイトルで知られる独立系ゲーム開発会社のNight School Studio(ナイトスクールスタジオ)を買収し、Netflixゲームのライブラリーをさらに充実させている。

Netflixは、ゲームへの関心を、直接収益を得る方法ではなく、加入者を楽しませ、維持するためのもう1つの方法であると説明している。現在のところ、ゲームは無料でダウンロードでき、広告もなく、アプリ内課金もない。同社は、カタログが充実してくれば、テレビ番組や映画だけでなく、同じアルゴリズムを使ってモバイルユーザーに新しいゲームを提案することも可能だとしている。

Netflixは「私たちは、ゲームを、オリジナル映画やアニメーション、台本のないテレビへの進出と同様に、当社のもう1つのコンテンツカテゴリーであると考えています」と2021年第2四半期の株主向けのお知らせで述べ、まずはモバイル機器向けの無料ゲームに重点を置くとしている。そして「オリジナル番組への進出から約10年が経過した今、会員のみなさまがゲームにどのような価値を見出しているのか、より深く知るべき時期に来ていると考えています」と述べた。

編集部注:US記事では全世界での開始となっているが、本稿作成時点(2021年11月10日)、日本でのiOS端末ヘの同サービスノ提供は確認できていない。

画像クレジット:Netflix

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

2021年、アップルの米App Storeはホリデーシーズンも休まず営業

Apple(アップル)によると、App Storeは、例年と違い2021年はクリスマス休暇中も通常どおりに営業する。この方針変更は、1年で最も忙しいシーズンに緊急のバグフィックスがあったり重要なアップデートがあっても十分対応することができるため、開発者的にはうれしいことだろう。またiPhoneなどのApple製品をギフトにもらった顧客は、新しいアプリを探したり、好きなアプリを再びダウンロードできる。休日が増えた消費者は、新しいアプリやゲームを探して。1年の最後を過ごそうとするだろう。すると第4四半期におけるApp Storeの利用も上向きになる。

通常、AppleのApp Store Connectサービスは、ホリデーシーズンには完全に休みになるため重要なアップデートがある開発者はその前に間に合わせようとして焦ってしまう。しかし2021年は、ホリデーにも営業を行うが、11月24〜28日と12月23〜27日は、レビュー完了まで時間がかかるかもしれないと人が少ないことを示唆している。

この変更は、AppleがAppp Storeのビジネスモデルをめぐって世界中の規制当局からの締め付けがますます厳しくなっている時期に行われた。問題のビジネスモデルとは、有料アプリのダウンロードやアプリ内購入に対してAppleが手数料を取ることだ。そこでAppleは、App Storeの提出プラットフォームを閉鎖して、これ以上議員や批評家などから攻撃されたくない。しかも提出プラットフォームには開発者が手数料のかたちでお金を出しているのだ。料金を徴収するのはデベロッパーコミュニティへの奉仕のためだ、というApple側の理屈があるのならなおさら閉鎖はおかしい。

もちろん、同社が単純に理解していたのは、ホリデーの期間中にはトラフィックの増加で実際にショップを閉鎖するには最悪の時期だということだろう。だからむしろ、店をずっと開けておくことを解決策とした。

ホリデー期間中のストアの人減らしについてAppleは詳細を言っていないが、もっぱら少数の契約社員に頼ったり、この時期に特有の社内業務で店の人が減るのかもしれない。Appleにコメントを求めたが、今回は応えがない。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップルのフェデリギ氏が基調講演でアプリのサイドローディングに苦言を呈す

Apple(アップル)のソフトウェアエンジニアリング責任者であるCraig Federighi(クレイグ・フェデリギ)氏は、Web Summit 2021カンファレンスの壇上で、iPhoneにアプリをサイドロードするための要件案に対する長々とした不満のリストを述べ、この行為を「マルウェア業界のゴールドラッシュ」と表現した。

この問題が議論の対象となっているのは、単にこのテーマについて活発な議論が行われているからではなく、EUのデジタルマーケット法が現在の計画通りに施行された場合、Appleが長年にわたって提供してきたApp Storeやレビュープロセスを回避してiPhoneにアプリを搭載する方法が義務づけられる可能性があるからだ。

CEOのTim Cook(ティム・クック)氏は6月、この規則が「iPhoneのセキュリティを破壊する」可能性があると述べ、同社の立場(当然、これには強く反対)をすでに明らかにしている。そのため、フェデリギ氏がクック氏を支持することは大きな驚きではないが、壇上でのスピーチのほとんどを、明らかに誤解を招くような、しかもまったく議論されていない一連の主張に費やしたことは、見る者に絶望感のようなものを与える。

各アプリやアップデートを手作業で確認するというAppleのアプローチには問題があるが、マルウェアを防ぐという目的においてはかなり良い解決策だ。しかし、自分の方法が優れているということと、他の方法が絶対に許されないということはまったく別のことだ。

フェデリギ氏は「ここには明確なコンセンサスがあります。それは、サイドローディングはセキュリティを弱め、人々のデータを危険にさらすということです」と話した。それは確かにそうかもしれないが、唯一のコンセンサスではない。また、独占禁止法の当局はいうに及ばず、開発者やユーザーの間では、AppleがiOSアプリ市場を支配しており、それが随分前からグローバルマーケットの資産というよりも、むしろ障害になっているという意見もある。

フェデリギ氏は特定の選択肢を非難してから「我々の使命は、最高と思われる選択肢を人々に提供することです」と述べた。同氏は、アプリをサイドロードするという選択肢をユーザーに提供することは「より安全なプラットフォームを求めるユーザーの選択肢を奪うことになる 」と考えている。

選択肢が増えれば、選択肢が減るということだ。続けざまにフェデリギ氏は、家を持つ人たちの心に響くような、少し面倒な例え話をした。以下に全文を引用する。

あなたは選択をしました。家族を守りたいと思い、優れたセキュリティシステムを備えたすごく安全な家を購入しました。そして、それが本当に良かったと思っています。なぜなら、あなたが引っ越してきて以来、空き巣はかつてないほどあの手この手で多発しているからです。現実のサイバーセキュリティの世界でも、これほど真実味のある話はありません。攻撃者は事実上、郵便配達人に扮して地下にトンネルを作り、裏庭の壁を鉤爪で登ろうとしています。この世界では、一部の隣人が度重なる不法侵入に悩まされていますが、あなたの家があなたの安全を守ってくれています。

しかし、そんな時に新しい法律が成立します。荷物の配達をより最適化しようと、家の1階に常に鍵のかからない通用口を作ることが義務づけられたのです。隣人の中には、このアイデアを気に入っている人もいます。しかし、あなたはそうは思いません。なぜなら、一度横のドアを作ってしまえば、誰でもそこを通ることができるからです。あなたが選んだ安全な家は、セキュリティシステムに致命的な欠陥を抱え、空き巣はそれを利用するのが得意なのです。ひと言で言えば、サイドローディングとは、鍵のかかっていない通用口のようなもので、iPhoneにサイドローディングを搭載することは、サイバー犯罪者にデバイスへの簡単な侵入口を与えることになります。このような事態を誰も望んではいないでしょう。特に、ユーザーに選択肢と保護をこれまで以上に提供しようとしている政策立案者はそうでしょう。

選択肢を増やす代わりに、審査されていないマルウェア付きソフトウェアのパンドラの箱を開けてしまい、すべての人がiPhoneの安全なアプローチを選択することができなくなってしまいます。

しかしこのようなイメージは、どんなに鮮明であっても、現実味が少し足りない。ドアを持つかどうか、使うかどうかはユーザー次第であり、Appleにはそのリスクを明確に説明する責任と機会がある。これについてGoogle(グーグル)には十分に行っていない点があるとフェデリギ氏は指摘したが、それはアップルが単に改善すればよいことのように思える。ほとんどのユーザーは、アプリをサイドロードする必要も願望もないだろうし、たとえあったとしても、その狙いはワイルドウェスト(辺境地帯)を作ることではなく(ちなみに、ほとんどのコンピューターは長い間そうだったが)、市場に競争の余地を作ることだ。

フェデリギ氏のいう「お気に入りの家」に話を戻すと、フェデリギ氏があの大きく安全な玄関のドアにはリンゴ型の特別な穴があり、そこからはAppleブランドの荷物しか届かないようになっていることに言及しなかったことは注目に値する。これは、単に家に別の穴を開けるということではなく、この10年間唯一の選択肢であり、それを運営しているすでに金持ちの会社を史上最高の金持ちにしたシステム(効果的なシステムだが、別の時代の遺物である)に対して、文字通り代替手段を持つということだ。

壇上でフェデリギ氏が語ったのは、半端な真実を盛り込んだ、かなり恐怖心を煽るものだった。おそらく、テック業界で影響力を持つ人に対して聴衆が期待していたような刺激的なスピーチではなかった。

避けられないことを先延ばしにしているだけかもしれないが、消費者のためにAppleがすでに選択したものを消費者が選択する権利に対し、同社は明らかにあらゆる手段を使って戦う。

画像クレジット:Web Summit / YouTube

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

フェイスブックがクリエイターにアップルの料金を回避できるリンクを提供

Facebookという名前だった企業は、米国時間11月3日、Apple(アップル)の悪名高いプラットフォーム料金を回避する計画を発表した。このところ有力なソフトウェア企業とiOSを開発した企業との間で戦争が続いているが、これはその最新の戦いとなる。Facebookの11月3日の投稿でMetaのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、同社プラットフォーム上の特定のクリエイターに対して、支払いを直接受けとることができるリンクを提供し、議論の多いAppleによる30%の手数料を迂回できるようにすると述べた。

「メタバースの構築のために、クリエイターが自分の仕事からお金を稼ぐ機会をクリエイターの手に開放することに注力したい。Appleが取引に際して徴収する30%の料金は、その開放を困難にしているため、この度、私たちのサブスクリプションプロダクトをアップデートして、クリエイターがもっと多くを得られるようにしたい」とザッカーバーグ氏はいう。

サブスクリプションの対象となるFacebookページを運営しているクリエイターは、テキストやeメールで新しいプロモリンクを共有し、独自の決済システム「Facebook Pay」で運営される決済ポータルにファンを誘導することができる。また、このクリエイター向けの投稿の中で、Facebookは、以前発表した10億ドル(約1142億1000万円)規模のクリエイタープログラムの一環として、年末までにクリエイターが新規購読者を獲得するごとに、5〜20ドル(約570〜2280)を支給するという新しいボーナスプログラムを発表している。

画像クレジット:Facebook

FacebookのPatreonに似たサブスクリプションプロダクトは、人気のあるFacebookページを持つ人々に、毎月の定期的な支払いで特別な収益化ツールを提供するものだ。現在の申込資格は、1万人のフォロワーまたは250人以上のリターンビューワーに加え、5万件の投稿エンゲージメントまたは18万分間の視聴があることになる。

Facebookは、2023年まではFacebook自身がクリエイターの決済から料金を徴収することはない斗述べているが、この分野に最近熱心になってきた同社としては、導入期の数年間無料にした後、ブームとなっているクリエイターエコノミーで自らも稼ぐ計画をきっと持っているだろう。そもそも同社自身が以前は、30%の手数料徴収を計画していたのだ。少なくとも現在のところ、その計画を引っ込めているようだが。

Appleはこれまで、iOSで提供されるすべての有料アプリとアプリ内課金から、標準で30%の手数料を徴収してきた。この手数料は、Appleにとって莫大な収益をもたらしてきた。しかし2020年末、同社は小規模なアプリメーカーに救いの手を差し伸べ、年100万ドル(約1億1000万円)未満の開発者の手数料を15%に引き下げている。

AppleのApp Store手数料は、多くの大手ソフトウェア開発者にとって大きな悩みの種となっている。2020年「Fortnite」のメーカーであるEpic Gamesは、自らを開発者のために闘う小さな会社と位置づけ、派手なキャンペーンでアプリ内課金をめぐってAppleを裁判で訴えた。本稿執筆時点で9230億ドル(約105兆4241億円)の価値があるMetaは、Appleとの間で行われたクリエイターへの支払いをめぐる新たな戦いにおいても、同様の位置づけをしている。

2021年9月、カリフォルニア州のEpic Games対Appleの訴訟の判事は、Appleが開発者に対して、同社による多額の手数料を回避する外部の支払い方法をユーザーに紹介することはもはや阻止できないという判決を下した。この判決により、Facebookの新たな回避策の道が開かれた。Appleはこの判決を不服とし、2021年10月に、判事の差し止め命令の停止を要求している。

クリエイターへの支払いに関する新たな回避策は、FacebookにとってAppleとの初めての大きな衝突ではなく、Facebookがユーザーの味方に回った初めての例でもない。Facebookは、ユーザーのプライバシーを強化するためにiOS 14に搭載された新しいトラッキング防止機能に脅威を感じ、すべての主要な全国紙に変更に抗議する全面広告を掲載した。表向きにこの行動は、自社ではなく影響を受ける中小企業を代表してのものだった。

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画像クレジット:Sean Gallup/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ザッカーバーグ氏がアップルのプラットフォームポリシーと手数料は「イノベーションを阻害する」と非難

Facebook(a.k.a Meta)のCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、米国時間10月28日の自社イベント、Facebook Connect 2021の基調講演でメタバースの計画について述べた際、Apple(アップル)およびアプリのエコシステム全体に対する明らかな批判を口にした。具体的には、アプリプラットフォームとそれにともなう手数料は「イノベーションを阻害」していると非難し、同時にFacebook自身が手数料を高く維持することについては、成長を続けるVRエコシステムと自社のOculus Questストアへのさらなる投資が必要であることを理由に正当化した。


同氏の発言は、Facebookの広告ビジネスに打撃を与えた、Appleによる最近のアプリ・プライバシー変更を受けたものだ。App Tracking Transparency(アプリのトラッキングの透明性[ATT])の導入によって、Appleはアプリが他のアプリやウェブサイトを横断して消費者を追跡することを消費者が拒否できるようにした。そしてこの変更によってFacebookの収益が落ち込んでいることを会社は認めている。

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現在Facebookは、Oculus向けに独自のアプリプラットフォームを構築することで新たな収入の流れを作る可能性に期待してる。デベロッパーが手数料を払う代わりに、収益を得るプラットフォーム。そして、別の会社の気まぐれな戦略変更によってビジネスが破壊されることのないプラッフォームだ。

ザッカーバーグ氏は、今こそこの変化を起こす時であることを強調し、最近彼が「プロダクトを作るだけでは十分ではない」ことを学んだと語った。

「私たちは、将来何百万もの人たちが恩恵に預かることのできる、人々の仕事が報われ、波が高まるにつれ利益をあげられるようなエコシステムを構築する必要があります。消費者だけでなく、クリエイターやデベロッパーにとっても」と彼は言った。「この時期私たちは謙虚でもあります。なぜなら私たちのような大きな会社でも、他のプラットフォームのためにものを作ることがどういうことかを学んだからです。そして彼らのルールの下で生きることは、テック業界に対する私の見方に大きな影響を与えました」とザッカーバーグ氏は続けた。

「何よりも、選択肢の欠如と高い手数料はイノベーションを妨げ、人々に新しいものを作るのをやめさせ、インターネット経済全体を抑制します」とザッカーバーグ氏は付け加えた。

一連のコメントは、AppleとGoogle(グーグル)に直接向けられたものであり、Facebookのプロダクトのほとんどは両社のプラットフォーム上にある。Facebookはアプリ内購入の手数料をApp Storeに払わなくてはならず、例えばユーザーがクリエイターをサブスクライブしたり、バッジを買ったり、ストリーミング提供者に直接チップを渡す場合も含まれる。Apple、Googleともに、小さな会社やメディア・プロバイダーやサブスクリプション・アプリに対しては手数料を値下げしたが、標準の取り分は今も変わらず70 / 30(プラッフォーム / デベロッパー)だ。

App Storeのルールは、Facebookが高い収益を得る可能性のある他のプロダクトを開発することも妨げている。最新のゲーミングサービスが一例だ。

たとえば2020年、iOSでFacebook Gaming(フェイスブック・ゲーミング)を公開した際、同社はAppleのポリシーを激しく非難した。Appleは他のアプリやゲームを中に含むようなアプリを許していおらず、それはサードパーティー・デベロッパーから収益を得る機会を失うからだ。このため、Android(アンドロイド)版ではミニゲームをプレイできるのに、iOSユーザーはFacebook Gamingでストリームを見ることしかできない。

しかし、Facebookの将来にとって本当の懸念は、手を出せないプラットフォームのポリシー変更によって、広告収益が脅かされていることだ。

広告収益は、過去何年にもわたってFacebookが他分野に投資し、アプリを無料にすることを可能にしてきた、とザッカーバーグ氏は指摘した。

「私たちはできるだけ多くの創作と商取引が生まれるように、クリエイターや販売者向けのツールを原価あるいはわずかな料金で提供しています。そして成功しています。何十億人もの人たちが私たちのプロダクトを愛しています」と同氏は強く語った。「私たちのプラットフォームには何億ものビジネスがあるのです」。

現在会社は、メタバースのエコシステム構築にも同じアプローチを取ろうとしている。デバイスを助成したり原価で販売することによって、消費者が手に入れやすくなる、とザッカーバーグ氏は言った。そしてAppleのApp Storeと異なり、Facdbookはサイドローディング(ストア外からのダウンロード)やパソコンへのリンクを可能にすることで、囲い込むのではなく消費者とデベロッパーに選択肢をあたえる計画だとFacebookは言っている(もちろん、多くのデベロッパーは発見してもらうためにQuest Store(クエスト・ストア)で公開することを選ぶだろう。Facebookにこの約束ができる理由はそこにある)。

さらに同氏は、Facebookはデベロッパーとクリエイターのサービス費用を極力低く抑えるつもりだとも言った。しかしザッカーバーグ氏は、会社の次のビジネスモデルへの思いを馳せながら、そうではないケースもあると警告した。新エコシスコムへの投資規模を踏まえると、一部の手数料は高くなるだろうと彼は話した。

「将来への投資を続けるために、一部の手数料を一定期間高く据え置いて、このプログラム全体であまり大きな損がでないようにする必要があります」とザッカーバーグ氏は説明した。「なんといっても、すでに利益をあげているデベロッパーが増える一方で、私たちは将来メタバースの規模が大きくなるまでの何年間、数十億ドル(数千億円)を投資する見込みなのです。しかし私たちは、次の10年間全員で努力を続ければ、メタバースは10億人に達し、何千億ドル(何十兆円)ものデジタルコマースをホストし、何百万人ものクリエイターとデベロッパーの職を支えられるようになると期待しています」。

言い換えると、Facebookの計画は今まで以上にデベロッパーの収益を活用し、独自のルールを決めることで、むしろAppleに似てくるだろうということだ。

画像クレジット:Facebook(ライブストリームより)

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップル、iOS 15.1でより多くの純正アプリをApp Storeで評価できるように

Apple(アップル)は、独占禁止法の調査を前に規制当局からの圧力が強まる中、今秋、初めて自社のファーストパーティアプリをユーザーが評価・レビューできるようにすることで、ようやくライバル企業と対等な立場に立った。これまでAppleのアプリの中には個別にダウンロードできるものもあったが、それらを評価することはできなかった。そして蓋を開けてみると、結果的にはあまり評価の良くないものもあった。例えば、メール、News、Podcastのように、星3つ以下でスタートしたものもあった。今回、Appleは、電話アプリ、メッセージ、写真、Safariなど、さらにいくつかの純正アプリをApp Storeで評価・レビューできるようにした。

この変更を最初に見つけて報告したのは、特に詐欺アプリの問題に関してApp Storeの改革を推進してきた著名なデベロッパーのKosta Eleftheriou(コスタ・エレフテリウ)氏だった。

Appfiguresのデータを引用して、エレフテリウ氏は、iOS 15.1で多くのAppleアプリが評価・レビューできるようになったことを指摘している。この中には時計、電話、メッセージ、カメラ、写真、ヘルスケア、Safariなどの標準搭載アプリが含まれている。また、ワークアウト、世界時計、探す、心拍数などのApple Watch対応アプリも含まれている(iOS 14.xのユーザーは、これらのアプリを見ることはできても、評価やレビューはできないとのこと)。


この変更により、Appleは現在のようにiOSのアップデートの際だけでなく、標準アプリを個別にアップデートできるようになるかもしれない。これは、Google(グーグル)がAndroidのコア機能の多くで採用している戦術で、後者はPlay Storeに独自のリストを用意している。

Appfiguresが確認したところ、これらのアプリは、iOSのアップデートとは別に、10月25日に独立したリストとして追加されたようだ。現時点で多くのユーザーはこれらのアプリが加えられたことを知らないため、レビュー件数は少ない。例えば電話アプリには、これまでのところ6件の評価しかない。メッセージアプリにも同様にまだ7件の評価しかないが、星4.7という高い評価を得ている(下図参照)。

グラフはこれまでのグローバルな評価を示す(画像クレジット:Appfigures

奇妙なことに、現在4件の評価を受けているSafariは、ウェブブラウザの年齢レーティングが4才以上となっている。ライバルのブラウザであるChromeやFirefoxの年齢レーティングは17才以上だ。

Appleの標準アプリを評価できることを多くのユーザーが知るようになったとき、これらのアプリがどのような評価を受けるのかは興味深いところだ。願わくば、コンシューマーからのフィードバックを受け入れることで、Appleがユーザーの望む内蔵アプリの変更に意欲的に取り組み、バグが発生した場合には早期にアラートを受けることを期待したい。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

アップルがApp Storeガイドライン更新、アプリ開発者がユーザーに他の支払い方法について連絡することを許可

Apple(アップル)は米国時間10月22日、App Store(アップ・ストア)のガイドラインが更新されたことを発表した。これには3つの重要な変更が含まれている。1つは、先に発表された米国のアプリ開発者グループとの和解合意に基づく変更だ。新しいガイドラインでは、アプリ開発者が、アプリ外で利用可能な他の支払い方法をユーザーに提案できるようになったことが明確に認められている。これに関連して別の項目では、アプリはユーザーに名前やメールアドレスなどの顧客情報を要求することができるが、その要求はユーザーにとって任意のものでなければならず、アプリの使用を妨げるべきではないと説明している。

3つ目の変更は法的措置とは関係ないもので、来週導入されるApp Storeの新機能「App内イベント(アプリ内イベント)」を開発者がどのように利用できるかを説明している。

8月にAppleは、米国のアプリ開発者グループが2019年に同社に対して起こした集団訴訟において、和解案に合意したことを発表。この合意にはいくつかの項目が含まれていたが、最も大きいものは、開発者がiOSアプリやApp Store以外で購入する支払い方法について、ユーザーに情報を伝えることができるようになるということだった。当時、Appleは開発者が「電子メールなどのコミュニケーションを利用して、iOSアプリ以外の支払い方法に関する情報を伝えることができる」ことを、ガイドラインの変更によって明確にすると述べていた。

「これまでどおり、アプリケーションやApp Store以外で行われた購入については、デベロッパがAppleに手数料を支払うことはありません」ともAppleは述べていた

今回、その変更案が正式にApp Storeガイドラインに盛り込まれた。

具体的には、Appleはガイドライン3.1.3の条項を削除した。この条項では、開発者はアプリ外で個々のユーザーに対し、Apple独自のアプリ内課金以外の購入方法を利用するために、アプリ内で得た情報を使うことは認められないとしていた。旧ガイドラインには、ユーザーがアプリにサインアップした際に登録されたアドレスにメールを送信することも、上記の行為に含まれると書かれていた。

この条項が廃止されたことによって、開発者はユーザーとこのようなコミュニケーションを取ることも可能になった。

また、Appleは以下のように、ガイドライン5.1.1 (x)に新しいセクションを追加し、開発者がどのようにユーザーの連絡先情報を要求できるかを詳しく説明している。

Appは、ユーザーの基本的な連絡先情報(たとえば名前やメールアドレスなど)の共有がユーザーの任意の選択であり、いかなる機能やサービスの提供もこれらの情報の共有を条件にしておらず、本ガイドラインのその他の規定(子どもからの情報収集に関する制限を含む)にすべて遵守するものである限り、これらの情報をユーザーにリクエストすることができます。

顧客への連絡を禁止する規則、いわゆる「ステマ防止」ガイドラインは、数カ月前から規制当局の監視対象となっている分野だ。世界中の立法府は、Appleが開発者に対し、ユーザーへの働きかけや、マーケティング、決済システムの選択など、ビジネスを運営する方法を制限することで、独占的な行為を働いているのではないかと突き止めようとしている。

すでにAppleは、いくつかの市場でさまざまな和解に至ったことにより、App Storeの規則の調整を余儀なくされていた。

例えば韓国では、AppleとGoogle(グーグル)が各々の決済システムの使用を開発者に要求することを禁止する新しい法律が最近可決された。また、日本では先月「リーダー」アプリをめぐる公正取引委員会との和解が成立し、アプリ内から自社ウェブサイトへリンクを張ることが可能になった。

一方、米国では、Appleは「Fortnite(フォートナイト)」の開発元であるEpic Games(エピック・ゲームズ)と裁判で争っている。この訴訟は現在控訴中だが、判事の当初の判決では、Appleに開発者がアプリ内で自社のウェブサイトを表示できるようにすることを求めており、そこでユーザーはサービス料や定額料金を直接支払うことができ、その過程においてAppleの決済システムを回避することが可能になるというものだった。

しかし、今回のガイドライン変更では、直接アプリに代替決済システムを組み込むことまでは認めていない。

anti-steering(外部への誘導禁止)の変更は、規制当局の圧力が大手テクノロジー企業に導入を促している新ポリシーの分野の1つに過ぎない。

AppleとGoogleは、それぞれの方法で、開発者の収益から自社の取り分を減らすように、手数料体系を見直している。その対象には特に、小規模ビジネスメディアへのアクセスを提供するアプリ報道機関によるアプリなどが含まれる。Googleは今週、これまで初年度は30%、2年目は15%としていたサブスクリプション型アプリの手数料を、初日から15%に引き下げた。また、特定のメディアアプリに対しては手数料を10%に引き下げた。

関連記事:グーグルがPlayストアの一部手数料をさらに引き下げ、サブスクアプリは15%に、メディアアプリは10%に

画像クレジット:Apple

今回発表されたもう1つの新ルールは「App内イベント」と呼ばれる新機能に関するもので、その使用方法についての単なるガイダンスだ。

WWDCで発表されたApp内イベントは、アプリメーカーにとって、ゲーム対戦、新作映画のプレミア上映、ライブストリーミング体験など、アプリ内で行われるイベントをユーザーに紹介するためのより良い方法となる。App内イベントは10月27日のiOS 15.1アップデートから、App Storeに掲載されるようになる予定だ。

関連記事:アップルがApp Storeに製品ページA/Bテストとアプリ内イベントの宣伝を導入

Appleは今回の新ガイドラインで、開発者に対し、App Store Connectでイベントを設定する際には、入力するメタデータが正確で、直接そのイベントに関連していることを確認するようアドバイスしている。イベントは(複数のストアフロントに関わる場合も含めて)、App Store Connect上で選択した日時に開催される必要がある。また、ディープリンクはタップすると直接イベントが起動しなければならないことや、イベントが収益化できることも明記されている。

これら3つのルール更新は、10月22日より有効となっている。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップルが中国で人気のイスラム教コーランアプリをApp Storeから削除

BBCの報道によるとApple(アップル)は、中国政府の要請に応じて、イスラム教の聖典やその他の祈りに関連する情報を読むための人気アプリ「Quran Majeed」を中国のApp Storeから削除した。この動きは、外国のコンテンツを取り締まる、あるいは単にグレートファイアウォール内にそれらのコンテンツが存在することを困難にするという、中国における大きな規制変化の一環として行われている。ちょうど昨日(10月14日)、LinkedIn(リンクトイン)は、国家によるコンプライアンス要件の高まりを受けて、年内に中国版サイトを終了すると発表した。

関連記事:マイクロソフトがLinkedInを中国市場から撤退

中国で最も人気のある宗教アプリの1つであるQuran Majeedは、全世界で利用可能で、約3500万人のユーザーがいる。

Quran Majeedアプリは、他の国のApp StoreやGoogle Playでは引き続き提供されているが、Google Playも厳密には中国では利用できない(ただし、VPNを介してアクセスすることは可能だ)。

Quran Majeedが最近削除されたことに最初に気づいたのは、AppleのApp Store上のアプリをモニタリングしているApple Censorship(アップル検閲)というサイトだった。

中国は公式にはイスラム教を宗教として認めているが、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒が多数を占めるウイグル人の人口に対する人権侵害や虐殺などで批判を浴びている。

この件に関してTechCrunchは、Appleにコメントを求めている。さらに詳しい情報が得られた場合、記事を更新する。

Appleはこれまで、現地のルールをどのように遵守するかについて、多くの論争に直面してきた。批評家たちは、特定の国におけるコンテンツに焦点を当てた規制の多くは検閲に相当し、Appleはそれに簡単に従いすぎると考えている。Appleは、規制に同意するかどうかにかかわらず、事業を展開する国の法律を尊重することが最優先事項であると主張している。

Appleの人権方針にはこうある。「当社は現地の法律を遵守する必要がありますが、時には政府と意見が合わない複雑な問題もあります」。

Appleが行うことには一貫性があるようだ。5月にニューヨーク・タイムズ紙が報じたところによると、同社は中国において、天安門広場、中国の精神運動である法輪功、ダライ・ラマ、チベットや台湾の独立など、禁止されている話題を扱っているアプリを削除する予定だという。

Appleのビジネスにはさらに複雑な要素があり、それは同社が国家の規則に従い続けることを意味している。中国はAppleにとって最大の市場の1つであり、また、同社ハードウェアのサプライチェーンを維持するために、この国に大きく依存している。

Quran Majeedは、中国のApple App Storeから削除された唯一のアプリではない。Olive TreeのBible(聖書)アプリも今週、中国で削除された。Olive Treeは、Appleが積極的に削除したと主張している。

画像クレジット:Quran Majeed App

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

アップルが「大勝利」と呼んだ対Epicの判決に不服申し立て、App Store変更の延期を要求

米連邦判事は9月、カリフォルニア州のEpic Games(エピックゲームズ)対Apple(アップル)の訴訟について裁判所の決定を出す際に、Appleは独占企業ではないと判断した。しかし、Appleが地歩を失ったのは、自社のApp Storeでどのようなルールを作れるかという点だった。この点については、判事はEpic Gamesを支持し、Appleはもはや開発者がApple独自の決済システム以外の決済手段へリンクするのを禁止することはできないとした。現在、Appleはこの判決を不服とし、裁判官が下した差し止め命令の延期を求めている。この動きにより、控訴審の判決後に最終決定が下されるまで、App Storeのルールに何らかの変更を加えることが遅れる可能性がある。

関連記事:アップルのApp Store外での決済方法への誘導ブロックが禁止に、Epic Gamesとの裁判で

Appleは、App Storeのポリシーを更新し、開発者がアプリ内に外部リンクやその他のコールトゥアクション(CTA)を含め、顧客をアプリ内課金(IAP)以外の購入方法に誘導することを禁止することをやめるよう命じられていた。また、開発者がアプリの登録を通じて顧客から自主的に入手した連絡先を通じて顧客と連絡を取ることも、Appleは止めることができないと差し止め命令は述べている。

これは、日本の規制当局が「リーダーアプリ」に対する方針を変更したのを受け、アプリ内にウェブサイトへのリンクを追加できるようにしたことなど、Appleが最近行った米国内外での和解と軌を一にするものだ。韓国でも、AppleとGoogle(グーグル)が開発者に自社のアプリ内課金システムの使用を強制することを防ぐ法案が可決された。また、米国で行われた開発者との集団訴訟の和解において、Appleは、開発者がEメールなどの通信手段を利用して、iOSの顧客に代替決済手段に関する情報を共有できることを明確にした。

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世界初、韓国がグーグルとアップルのアプリ内課金手数料を抑制する「反グーグル法」可決
アプリ開発者は今後、アップルに手数料を支払わなくてすむ直接購入をユーザーへ提案可能に
App Storeの変化を期待してPaddleが「アップル税」回避する代替アプリ内課金システムを開発中

しかし、Epic Gamesの判決では、Appleは2021年9月10日の裁判所の判決から90日以内に新しいルールを導入することが求められた。市場の一部では、この変化に対応するための動きがすでに始まっていた。例えば、サブスクリプションビジネス向けのソリューションプロバイダーであるPaddleは、差し止め命令の発効と同時に、Apple独自のIAPに取って代わるものとして、iOS開発者を対象とした新しい代替アプリ内課金システムを提供開始すると、やや早まった形で発表した。

もしAppleが停止を勝ち取った場合、差し止め命令に従うべき12月初旬の期限は、控訴審が法廷で争われている間に破棄されることになる。つまり、App Storeの開発者にとっては今後何カ月も変化がない可能性があるということだ。

AppleはEpic Gamesとの戦いにおいて「アンチステアリング」ルールに関するこの1つの些細な点を除いて、ほぼすべてのポイントで勝利した。しかし、Epicの控訴により、Appleはいずれにしても法廷に戻ることを余儀なくされる予定だった。

Epic Gamesは、代替決済システムへのリンクを追加する権利を獲得したものの、Appleの成功は「違法ではない」とした裁判所の最初の判決には満足していなかった。Epic側も、Appleが独占的な行為を行っていると控訴裁判所に納得させることを目指し、9月中旬に控訴していた。

この2つのテック巨人の戦いは、法廷外でも続けられている。先週、Epic GamesのTim Sweeney(ティム・スウィーニー)CEOは、Twitter(ツイッター)への投稿を通じ、Appleが自社のプラットフォームを利用して、iPhoneの設定画面内で自社アプリをユーザーに売り込んでいると指摘した。これは、サードパーティの競合他社がアクセスできない、事実上の広告枠であると同氏は述べた。ただし、この点を後の裁判で提起するかどうかについては、明言を避けた。

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画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

App Storeの変化を期待してPaddleが「アップル税」回避する代替アプリ内課金システムを開発中

サブスクリプション型ビジネスのソリューションプロバイダーであるPaddleは、App Storeのデベロッパーがサードパーティの決済システムを利用できるようになる未来に賭けている。そして、そのようなシステムが認められた暁には、いち早く代替手段を提供したいと考えている。同社は米国時間10月7日、iOSデベロッパー向けの新しいアプリ内課金(IAP)システムを発表した。このシステムは、Apple(アップル)が提供するIAPに代わるものとして設計されている。このシステムにより、デベロッパーは獲得した収益のより多くをキープできるとPaddleは述べている。

これは大きな賭けであり、報われるかどうかはわからない。

Paddleによると、同社のシステムは、デベロッパーが顧客のライフサイクル全体を通して顧客データにアクセスできるようにし、直接サブスクリプションを管理したり一時停止するツールを組み合わせて提供するとともに、PayPal(ペイパル)などの他の支払いメカニズムにも対応するという。また、多くのデベロッパーが以前から望んでいた、デベロッパー自身による返金の管理も可能になる。手数料は、10ドル(約1110円)未満の取引では10%、10ドル以上の取引では5%となっている。これは、Appleの手数料30%よりも低い水準だ(サブスクリプションベースのアプリの2年目、およびスモールビジネスプログラムとApple News Partnerプログラムの参加者は15%に下がる)。

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しかし、Paddleの製品は、Epic Games対Appleの訴訟における裁判所の判決が控訴審でも支持され、Appleがその判決をうまい具合に解釈し、Paddleのような代替決済システムの利用が可能になるという信念に基づいている。これは、現時点でPaddleが明確に知り得ないことだ。

9月、米連邦地裁のYvonne Gonzalez Rogers(イボンヌ・ゴンサレス・ロジャーズ)判事は、App Storeでのサードパーティによる決済の問題について、Appleは反トラスト行為を行っていないと判断したものの、Fortnite(フォートナイト)の開発元であるEpic Gamesを支持する画期的な判決を下した。Epicは、独自の決済システムを使用することに加えて、iOSユーザーに直接ゲームを配信することもできるようにしたいと考えており、裁判所の判決を不服として控訴すると述べている

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一方、今回の判決では、Appleはデベロッパーがアプリ内にボタンや外部リンク、その他のコールトゥアクション(CTA)を含め、ユーザーを別の決済メカニズムに誘導することを禁止することはできないとされた。

控訴後に判決のこの部分が調整されなかったとしても、サードパーティによる支払いの問題に関する判事の表現は、Appleにとって解釈の余地がある。現在のところ、この判決は、Appleがストア外の他の決済手段にリンクされたアプリをリジェクトすることを阻止するだけであり、アプリ自体に組み込まれた競争力のある支払いシステムをサポートするまでには至らないだろうと考えられている。このPaddleシステムがApp Reviewを通過する可能性については、すでに専門家が反論している

しかし、Paddleはその可能性があると考えている。

Paddleは声明でこう述べた。「当社および当社の法律顧問の理解では、Paddleのアプリ内課金システムはApple対Epicの法的判決の範囲内で許容されます。iOSデベロッパーや市場に大きな影響を与えるこの問題をより明確にするために、Appleがこの点について同社の解釈を示すことを歓迎します」。

Paddleは、裁判所の判決に合わせて、2021年12月7日から同社のシステム提供開始する予定だ。

現在、3000社以上のソフトウェアクライアント(販売者)がPaddleのプラットフォームを他のサービスに利用しており、同社は年間数十億ドル(数千億円)の決済量を処理している。このAppleのIAPの代替サービスを実際に導入するデベロッパーが出てくるかどうかは興味深いところだが、その場合、アプリがApp Storeからリジェクトされるリスクがある。これまでのところ、Paddleによると、MacPawを含む何社かのデベロッパーがこの試みに同意しているとのことだ。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

アップルがApp Storeの「問題を報告」リンク復活、不正行為対策への協力を呼びかけ

Apple(アップル)がApp Storeに変更を加える。iOS 15、iPadOS 15、およびmacOS MontereyデバイスのApp Store製品ページに「問題を報告」リンクを復活させる。ユーザーがアプリに関する問題を簡単に報告する方法を提供する。アプリに不快なコンテンツや違法なコンテンツが含まれていないか、あるいは消費者からお金を騙し取ろうとしていないかなどを報告することができる。Appleは数年前、App Storeからユーザーフレンドリーな「問題を報告」ボタンを削除したが、それはあだとなったのかもしれない。新たな報告によると、上位アプリの多くが詐欺であり、消費者に数百万ドル(数億円)の損害を与えている。Appleはこの状況について議会から質問を受けたこともある。

このボタンの復活は今週初めに発見の報告があったものの、Appleは米国時間10月6日まで正式に発表していなかった。

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Appleによると、この新機能は現在、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで提供されており、時間をかけて他の市場でも提供していくとのことだ(ただし、厳密にはこの機能は新しいものではなく、このようなボタンはApp Storeの初期の頃には重要な機能だった)。

「Report a Problem(問題を報告)」ボタンのある古いApp Storeの例(画像クレジット:Dummies.com)

このボタンは、ユーザーがインストールしたアプリにのみ表示される。

ボタンをクリックすると、ユーザーはreportaproblem.apple.comで「詐欺または不正行為を報告」や「有害な、乱用的な、または違法なコンテンツを報告」などのオプションを選択することができる。また、アプリ内課金を含まない無料アプリの問題も報告できるようになる。

App Storeのスクリーンショット、2021年10月

Appleによると、AppleのApp Review、Discovery Fraud and Live Moderation、Financial Fraudの各チームは、報告された問題について、不正、人為的操作、乱用、その他のApp Store Review Guidelines違反の兆候がないか調査する。そして、発見した問題を解決するために開発者に連絡を取る。ただし、消費者に対する直接的な金銭的救済措置については言及していない。消費者はこれまで通り、このページから別の手続きで返金を要求しなければならない。

Appleが数年前にサブスクリプションモデルに移行して以来、App Storeでの詐欺行為は明白で悪質なものとなり、多くの場合、収益性が高い。悪質な業者らは同モデルに移行してすぐに、ビルトインされたツールを利用して消費者を騙し、サブスクリプション購入に誘導しようとした。Appleは、定額制アプリに「ダークパターン」やその他の不正な手段を使おうとする開発者を捕まえることを目的とした新しいガイドラインを発表した

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ある開発者、特定して言えば、詐欺師によって失われた収益をめぐってAppleを提訴したKosta Eleftheriou(コスタ・エレフテリオ)氏は、App Storeにおける最悪の詐欺行為に焦点を当てることを自らの使命としている。

同氏自身のビジネスに影響を与えたその詐欺では、Apple Watchアプリの偽物が消費者から数百万ドル(数億円)を騙し取ったと言われている。同氏はまた、エンドユーザーにとっていかに大胆で悲惨な行為であるかという理由で見出しを飾った詐欺も発見した。その中には、ユーザーの生活費(約60万ドル=約6600万円)をビットコインで騙し取った暗号資産ウォレットアプリや、実はオンラインカジノが隠れている子ども向けゲーム、年間500万ドル(約5億5000万円)を騙し取っていたVPNアプリなどがある。

エレフテリオ氏は現在、App Storeの詐欺事件をもう1件調査しており、近日中に公開する予定だと話している。この事件では、数百万件ダウンロードされたアプリの開発者が、数千万ドル(数十億円)の収益を上げていた。

同氏の仕事は、AppleがApp Storeの不正行為対策にどれだけ投資しているかについて疑問を投げかけた。結局のところ、1人の開発者が空いた時間に次から次へと詐欺を暴くことができるなら、世界で最も価値のある企業にもできるのではないだろうか。

実際、同氏は、より簡単に詐欺を発見するためのシステムさえ開発した。「Bunco Squad」というこのツールは、アプリの評価、レビュー、ダウンロード数、収益などの指標をダッシュボードに表示し、アプリに信頼度のスコアを付与する。詐欺師の多くは偽の評価を購入しているため、アプリの総合的な星評価とレビューの記載があるもののみから算出した評価を比較し、詐欺の可能性を見つけるというのは非常に簡明だ。

同氏は「Bunco Squad」をApp Storeで公開しようとしたが、当然のことながら却下された。Appleからは、アプリが提供する情報の一部が不正確である可能性があると言われたそうだ。

App Storeの不正に関する問題は、2021年になって議会にまで持ち込まれた。

Appleは、4月に行われた上院の反トラスト法に関する公聴会で、App Storeの詐欺師を止める能力がないように見えることについて質問を受けた。同社は、安全で信頼できるアプリ市場を維持するため、開発者に代わって詐欺行為に対処していることから、開発者に課す手数料を正当化していた。上院議員たちは、このようなApp Storeの詐欺行為を発見するために、なぜジャーナリストやその他の「オープンソースの報告」(エレフテリオ氏のような公の取り組みを指していると思われる)に頼らなければならないのかについて情報を求めた。

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そのときのAppleの回答は、セキュリティや不正行為との戦いは「いたちごっこ」であり、改善に努めているというものだった。

Appleは、10月6日の発表で、不正行為への効果的な対策には一般の人々からの協力が必要であることを認めたようだ。

同社は、App Storeの変更に関するお知らせという形ではあるが、一種の声明を発表した。その中で、同社が詐欺対策に十分な努力をしていないのは、おそらく詐欺アプリの収益がApp Storeの利益に貢献しているからだ、という噂を打ち消そうとしたようだ。

「問題のあるアプリは、ユーザーと開発者のApp Store体験を低下させます。私たちは、削除すべき問題のあるコンテンツの種類を特定する技術を常に拡げています。問題のあるアプリは削除され、その開発者はApple Developer Programのメンバーシップを失う可能性があります」と述べている。

「Appleは、App Storeがすべての開発者にすばらしい機会を提供し続けるために、問題のあるアプリからユーザーを保護することに深くコミットしています」と付け加えている。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

Windows 11のアプリストアはサードパーティにも開放、Epic Games Storeも登場予定

Microsoft(マイクロソフト)がWindows 11のポータルにサードパーティのアプリストアを増やしたいと言ったのは、単に夢想に耽っていたわけではなかった。The Vergeによると、Microsoft Storeの新しいポリシーは、サードパーティのストアフロントアプリの展開が可能になるという。Amazon(アマゾン)のアプリストアだけでなく、Epic Games Storeも「今後数カ月」内にMicrosoft Storeに登場する見込みだ。約束通り、マイクロソフトはこれらのストアから得られる収益の分配を要求しない。

同社がライバルのブラウザに対する方針を緩めたこと(マイクロソフト以外のエンジンを搭載したブラウザを認めるようになった)も実を結ぶ。Microsoft Storeでは、OperaとYandex Browserが、Edgeの代替品として提供される。最初から衝動的にChromeやFirefoxをダウンロードしてしまう人には、これらの追加はあまり役に立たないだろうが、マイクロソフトが少なくとも、自分のところのストアで競争することには、寛容であることを示している。

SteamやGOGなどの有名なアプリやゲームストアについての言及はない。Epicが早いうちから選ばれていることは驚くに値しない。EpicはApple(アップル)のApp Storeポリシーに声を大にして反対しており、できるだけEpic Games Storeを提供したいと考えている。マイクロソフトがこれを利用しない手はない。Microsoft Storeを、アップルのApp Storeよりもオープンなストアであると宣伝できるからだ。もっとも、Mac(マック)ユーザーがEpic Games Storeや他のストアフロントにアクセスするのに、何か実際に問題があるわけではないのだけれど。

編集部注:本稿の初出はEngadget執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿ライター。

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画像クレジット:Microsoft

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(文:Jon Fingas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Vungle傘下のモバイルマーケターが「Fontmaker」をApp Storeのトップに押し上げたカラクリとは

よくあることだろうか?TikTokをはじめとするSNSで話題になったアプリが、すぐにApp Storeのトップに躍り出て、その露出度の高さからさらに新規インストール数を増やしていく。最近、米国のApp Storeで1位になった定額制のフォントアプリ「Fontmaker」は、TikTokの動画やその他のSNS投稿による口コミの恩恵を受けていたようだ。しかし、ここで私たちが目にしているのは、App Storeマーケティングの新しい形であり、この分野で最も歴史のある企業の1つ、Vungleを巻き込んだものだ。

Fontmakerは、一見すると、大ヒットしたインディーズのアプリのように見える。

Mango Labsが開発したこのアプリは、ユーザーが自分の手書き文字を使ってフォントを作成し、それをカスタムキーボードで利用できるというもので、1週間あたり4.99ドル(約551円)というかなり高額な料金が設定されている。このアプリが最初に登場したのは7月26日だった。Sensor Towerのデータによると、約1カ月後には、米国のApp Storeで第2位のアプリとなった。8月26日には、さらに1つ順位を上げて1位になったが、その後、無料アプリ総合ランキングの上位から徐々に下がっていったという。

8月27日には15位となり、翌日には一時的に4位まで上昇したが、その後は再びランクダウンした。現在アプリは全体で54位、競争の激しい写真 / ビデオカテゴリーでは4位となっているが、主に若いユーザーをターゲットにした新しくてややニッチな製品としては、堅実な位置にある。Sensor Towerによると、このアプリは現在までに6万8000ドル(約750万円)の収益を上げている。

しかしFontmakerは、ボットではなく実際のユーザーからのダウンロード数の増加によってトップチャートにランクインしたにもかかわらず、真の純粋なサクセスストーリーとは言えないかもしれない。むしろ、モバイルマーケティング担当者がアプリのインストールを促進するために、インフルエンサーのコミュニティを活用する方法を見つけ出した一例と言えるだろう。また、インフルエンサーマーケティングによって流行ったアプリと、真の需要によってApp Storeのトップに躍り出たアプリとを区別するのは難しいということを示す例でもある。例えば、トランシーバーアプリのZelloは、ハリケーン「アイダ」の影響で最近1位になったという。

Fontmakerは、典型的な「インディーズアプリ」ではない。実際のところ、誰が作ったのかは不明瞭だ。そのパブリッシャーであるMango Labs, LLCは、実際には、モバイル成長企業JetFuelが所有するiTunesの開発者アカウントである。JetFuelは最近、モバイル広告・収益化企業のVungleに買収された。Vungleは長年この分野で活躍し、時には物議をかもした企業で、自身も2019年にBlackstoneに買収されている。

Vungleが主に関心を示したのは、JetFuelの主力製品であるインフルエンサー向けアプリThe Plugだった。

モバイルアプリの開発者や広告主はThe Plugを通じて、合計したInstagramのフォロワー数は40億人、TikTokのフォロワー数は15億人、Snapchatの1日の再生回数は1億回になる1万5000人以上の検証済みインフルエンサーが集うJetFuelのネットワークにアクセスできる。

マーケターは、これらのネットワークのそれぞれに組み込まれた広告ツールを使ってターゲット層にリーチしようと試みることもできるが、JetFuelの技術を使えば、Z世代のうち価値の高いユーザーにリーチするためのキャンペーンを迅速に展開することができるとしている。このシステムは、従来のインフルエンサーマーケティングよりも労力をかけずに済む場合がある。広告主は、アプリのインストールに対して、CPA(Cost Per Action)ベースで支払いを行う。一方、インフルエンサーはThe Plugをスクロールして宣伝したいアプリを見つけ、それを自分のSNSアカウントに投稿するだけで、収益を得ることができる。

The Plugのウェブサイト。インフルエンサーにプラットフォームの仕組みを紹介している

つまり、多くのインフルエンサーがFontmakerに関するTikTok動画を作成し、消費者にアプリのダウンロードを促していたかもしれないが、インフルエンサーはそれに対する報酬を得ていたのだ(また、Fontmakerのハッシュタグを見ていると、金銭的な関係を一切開示せずに動画を作成している場合が多く、これはTikTokで増加しているよくある問題であり、FTCも懸念している)。

厄介なのは、Mango LabsとJetFuel / Vungleの関係を整理することだ。App Storeを見ていると、Mango Labsは楽しい消費者向けアプリをたくさん作っているように見えるし、Fontmakerはその中でも最新のものだ。

JetFuelのウェブサイトがこのイメージの促進にも役立っている。

同社はMango Labsという「インディー開発者」のケーススタディと、同社の初期アプリの1つであるCaption Proを使い、インフルエンサーマーケティングの仕組みを紹介していた。Caption Proは2018年1月に配信された(App Annieのデータによると、2021年8月31日にApp Storeから削除されている)。

画像クレジット:App Annie

しかし、VungleはTechCrunchに対し「Caption Proアプリはもう存在しないし、長い間App StoreやGoogle Playにも載っていない」という(App Annieの記録には、Google Playにこのアプリが掲載されている記録は見つからなかった)。

また「Caption Proは、JetFuelになる前にMango Labsが開発したもの」であり、JetFuelの広告機能を強調するためにケーススタディを使用したのだとも話した(しかし、その関係を明確に開示することはなかった)。

「JetFuelが現在のようなインフルエンサーマーケティングプラットフォームになる前、同社はApp Store向けのアプリを開発していました。同社がマーケティングプラットフォームへと方向転換した後、2018年2月にはアプリの作成を中止しましたが、Mango Labsのアカウントを時折使用して、第三者機関と収益化パートナーシップを結んだアプリを公開し続けていました」とVungleの広報担当者は説明している。

つまりこの主張は、Mango Labsは元々、ずっと前に方向転換してJetFuelになった人々やCaption Proのメーカーと同一であったけれども「Mango Labs, LLC」の下で公開されている新しいアプリはすべて、JetFuelのチーム自身が作ったものではないということだ。

「App StoreやGoogle PlayでMango Labs LLCの名前で表示されているアプリは、実際には他社が開発したものであり、Mango Labsはパブリッシャーとしての役割しか果たしていません」と広報担当者はいう。

Mango Labsを「インディー開発者」と表現するJetFuelのウェブサイト

この主張が腑に落ちないのには理由があり、JetFuelのパートナーがMango Labsの名前に隠れて喜んでいるように見えるからだけではなく、Mango Labsが過去にJetFuelチームのプロジェクトであったからでもある。また、Mango LabsとTakeoff Labsが一連の同じアプリを提供していることも奇妙だ。Mango Labsと同じく、Takeoff LabsもJetFuelと関係がある。

この記事を書いている現時点で、Mango LabsはApp StoreとGoogle Playの両方でいくつかの消費者向けアプリを公開している。

iOSでは、最近のNo.1アプリFontmakerをはじめ、FontKey、Color Meme、Litstick、Vibe、Celebs、FITme Fitness、CopyPaste、Part 2などがある。Google Playでは、さらに2つのアプリ、StickeredとMangoを提供している。

画像クレジット:Mango Labs

App StoreにあるMango Labsのリストのほとんどは、アプリの「開発者のウェブサイト」としてJetFuelのウェブサイトを提示しており、VungleがいうJetFuelがアプリのパブリッシャーとして機能していることと一致している。

しかし奇妙なのは、Mango Labsのアプリ、Part2が、App StoreのリストでTakeoff Labsのウェブサイトにリンクしていることだ。

Vungleの広報担当者は当初、Takeoff Labsは「独立したアプリ開発会社」であると説明していた。

Takeoff Labsのウェブサイトには、JetFuelの共同創業者兼CEOのTim Lenardo(ティム・レナルド)や、JetFuelの共同創業者兼CROのJJ Maxwell(JJ・マックスウェル)など、JetFuelのリーダーたちで構成されたチームが表示されている。Takeoff LabsのLLC登記申請書は、レナルドによって署名されている。

一方、Takeoff Labsの共同創業者兼CEOのRhai Goburdhun(ライ・ゴバードハン)は、LinkedInとTakeoff Labsのウェブサイトを見ると、今も同社で働いているのだ。この関係について質問されたVungleは、ウェブサイトが更新されていないことに気づかなかったと答えており、今回の買収ではJetFuelもVungleもTakeoff Labsの所有権を持っていないとのことだ。

Takeoff Labsのウェブサイトには、JetFuelの共同設立者を含むチームが掲載されている

Takeoff Labsのウェブサイトでは、同社の「ポートフォリオ」として、Mango LabsがApp Storeで公開しているCeleb、Litstick、FontKeyの3つのアプリも紹介されている。

Google Playでは、Takeoff LabsはCelebsの他、VibeとTeal(ネット銀行)の2つのアプリの開発者となっている。しかしApp Storeでは、Vibeを公開しているのはMango Labsだ。

Takeoff Labsのウェブサイトでは、同社のアプリのポートフォリオが紹介されている

(さらに事を複雑にするわけではないが、RealLabsという企業もあり、同社はJetFuelやThe Plug、そしてMango LabsがGoogle Playで公開しているアプリMangoなどの消費者向けアプリを提供している。Labsという名前を付けたがっている人がいるようだ)。

Vungleによれば、この混乱は、同社がMango LabsのiTunesアカウントを使ってパートナーのアプリを公開していることと関係があり、これはApp Storeでは「よくあること」だと主張する。Vungleも混乱を招いていると認めており、Mango Labsで公開されているアプリを開発者のアカウントに移行するつもりだという。

またVungleは、JetFuelは「現在アプリストアで公開されているいかなる消費者向けアプリも作っておらず、所有していません。同社がMango Labsとして知られていた頃に作られたアプリは、ずいぶん前にアプリストアから削除されています」と主張している。

JetFuelのシステムは混乱しているが、今のところその目標は成功している。Fontmakerは、インフルエンサーマーケティングによってグロースハックが行われ、確かに1位になった。

しかし消費者としては、自分がダウンロードしているアプリが実際に誰によって作られたのか、そして自分が非公開の広告に「影響」されてダウンロードしたのかどうかを知ることができないということになる。

インフルエンサーによるプロモーションを通じてグロースハックによりトップに躍り出たのは、Fontmakerが初めてではない。夏に大ヒットしたPoparrazziも、同様の方法でApp Storeのトップに躍り出た。しかしPoparazziはその後、写真 / ビデオ部門で89位に沈んだ。

Fontmakerについては、手を回したインフルエンサーのおかげで1位を獲得したものの、トップチャートにいる時間は短いものだった。

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画像クレジット:Fontmaker

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)