Apple、16インチMacBook Proと31インチ6Kディスプレイを発売か

AppleアナリストのMing-Chi Kuoは、ことApple製品のロードマップに関してはかなり信頼できる。先週末そのKuoが発表した情報満載の最新レポートを9to5macが入手した。2019年には、大画面のMacBook Proと新しいディスプレイ、さらにはiPhone、iPad、AirPodsにもアップグレードがありそうだ。

まずMacから。Kuoによると、Appleはまったく新しいデザインのMacBook Proを開発中だ。この新モデルが現在のキーボードを継承するかどうかはわかっていないが、多くのユーザーはバタフライキーボードの信頼性に不満を訴えている。

またKuoが掴んだ情報によると、16~16.5インチディスプレイの大型モデルになるらしい。Appleが画面周りのベゼルを狭くしてくれることを期待したい。

TechCrunchはAppleが2019年に 新しいMac Proを発売するであろうことはすでに報じている。しかしKuoは、同社がさらにMac Pro用のハイエンドディスプレイも出すと予想している。それは6K解像度の31.6インチという巨大モニターになるかもしれない。

iPhoneに関してKuoは、Appleが2018年と同じく3つのモデルを発売すると確信している。同じ画面サイズとLightningコネクターが踏襲される。背面にカメラセンサーを3台搭載したモデルもあるかもしれない。Face IDとワイヤレス充電がいずれもアップグレードされ、双方向充電が可能になるかもしれない。

これはiPhoneを使って別のデバイスを充電できるという意味で、ワイヤレス充電ケース付きの新しいAirPodsがやはり2019年に登場することを考えるとすばらしいアイデアだと言えよう。

一方iPadでは、エントリーモデルの9.7インチiPadがベゼルの細い10.2インチになるかもしれない。iPad Proの各モデルは高速CPUを搭載すると予想される。

先日報じたように、新しいiPad miniは今もロードマップ上にあり、iPod Touchの改訂版も同様だ。Apple Watchに関してはマイナーアップデートのみで、次期バージョンのApple Watchでは心電計が国際市場に展開され、セラミックオプションが戻ってくると考えられる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アプリ開発でヘマしないための控えめな提案

設計と開発のための技術の分野は進化し続けているのだから、そうしたシステムをデザインするためのプロセスも進化すべきだ。

投資のためなのか、製品の開発を手助けするためなのかは別として、起業家や企業にとって、その製品の長期的な影響を考慮し、よりよく気を配った慎重なアプローチを熟慮することの必要性を伝えることは重要なことだ。

製品化のためのプロセスは、常に次の順序で実行する必要がある。まず戦略、次に設計、最後にエンジニアリングだ。これらのプロセスの柱に対して、「なぜ?」という態度で臨めば、より優れた製品、より高い消費者の関心が得られるはずだ。そして拡張し続けるインターネットに対しても、有益な貢献ができるかもしれない。

フェーズ1:製品戦略

この製品戦略の柱の中では、製品を開発できる人がいるからといって、必ずしもその人に開発を任せるべきとは限らない、ということを覚えておくことが重要だ。ある種の技術が利用できるからといって、それが使いやすさを向上させるとは限らない。目的が製品開発を推し進めるのはであって、技術自体ではけっしてない。

最近開催された第40回のInternational Conference of Data Protection(国際データ保護会議)で、その会議のホストであるGiovanni Buttarelliは、「法律に準拠していて、技術的に実現可能でありさえすれば、道徳的に持続可能だというわけではない」と述べた。言い換えれば、「それを開発すべきなのか?」という問いを、この段階では常に問い続けるということになる。このフェーズを真に理解するためのヒントは、「このフェーズを始める前と、終えた後で、自分の考えがどのように変わるのか?」と自問してみることだ。

考え方が発展すればするほど良い、ということになる。

フェーズ2:製品設計

もし設計者がフェーズ1と2の間を行ったり来たりするようなら、それは良い兆候だ。フェーズ1で消えてしまうアイデアは、それにどれだけの作業や時間が費やされていたとしても、成功と見なされるべきだというを覚えておこう。

そして製品設計のフェースに移行する際には、消費者は飽きている、本当に飽き飽きしている、ということを意識しておくのは非常に重要となる。

従来的技法のほとんどに、もはや消費者は共鳴しないと仮定すべきだ。それは技術の燃え尽き症候群が広まったような状態、App Fatigue(アプリ疲労)というべきものなのだ。この完璧な例は、通知や、思慮を欠いた警告に見られる。

通知によって使いやすさは増すだろうか? 通知があることによって、ユーザーはそのソフトウェア、アプリを使いたいと思うようになるだろうか? もしそのように問われたら、それには大声で「ノー」と答えることになる。戦略フェーズに戻り、顔を洗ってやり直すべきだろう。

ここで質問すべきことは非常にシンプルだ。「通知や、似たような小細工を使わずに、この製品を使い続けたいとユーザーに思わせるものは何なのか?」ということ。

顧客と共鳴できるようにするには、どのような体験を作り出せばよいのだろうか? もしユーザー体験が、全般的に個々のユーザーと共鳴するものであれば、彼らは通知機能などなくても、喜んで使い続けるだろう。これは自明で簡単なことに思えるかもしれないが、自明な答えというものは、概して答えるのが最も難しく、そのために無視されがちだ。

Uberがタクシーを呼ぶために、あるいはAirbnbが休暇の賃貸のために何をしたか、ちょっと立ち止まって考えてみよう。これらの企業は、消費者にとって本当に有意義で豊かな機会を提供する製品体験を可能にするための技術を利用している。彼らは、消費者をつなぎ留めておくために通知は必要としなかった。 消費者がその必要性に気付いていなかったサービスを提供しているのだ。それは、独創的な差別化されたアイデアだった。問題は、障害を乗り越える新たな飛躍が遂げられるか? ということなのだ。

開発者が戦略段階を経て、設計すべきコアな機能を理解したら、エンジニアリングのアーキテクチャとユーザーのデータについて、より安全で配慮の行き届いた体験を提供できるようにするため、新たなエンジニアリングの解法に集中べきときだ。

フェーズ3:エンジニアリング

現在、Facebook、Google、Amazonのいずれの会社でも、ほとんどのユーザーデータは集約されたサーバー内に格納されている。これはセキュリティとプライバシー上の懸念を生じさせている。

こうした数の限られた大手ハイテク企業のどれかに託すのではなく、もっと配慮の行き届いた方法でユーザーデータを扱うために、開発者はどうすれば良いだろうか? フォロワー、友達、その他の似たようなメカニズムを利用して製品上の人々を結び付けるようなアーキテクチャでは、データを暗号化して、集約型のサーバーではなく、ネットワークで接続された電話機内に保存すべきだろう。簡単に言えば、ユーザーデータのバトンを、大企業ではなく、あなたの友達に手渡すのだ。

まだ初期段階のものだとしても、このようなアーキテクチャは、将来の世代のアプリに焦点を合わせた全般的な製品体験と、うまく組み合わせることができるはずだ。それによって、企業ではなく、消費者に有利な分散型アーキテクチャを作り出すことができる。これも、配慮の行き届いた「ユーザー優先のアプローチ」の例の1つだ。これは、スタートアップにとって大きな飛躍となる得る。この場合は、ユーザーデータとセキュリティに関して、新しいアプローチについて考え、常に規範に挑戦し続ける好例となる。

それらをすべて統合して

以下のようなケーススタディを青写真として考えてみよう。ここでは、本質的にソーシャルなアプリケーションの開発を提案することを想像してみる(この例は現実的だ。というのも、多くの若い起業家は、依然として彼らの中核にソーシャルを位置付け、多くの企業はソーシャルが、重要な第一の差別化要因であると信じているから)。

この回答例は、「なぜそのようなソフトウェアを開発したいと思っているのか?」というもの。さらに、「それが、人々や社会に対して、ポジティブな、あるいは生産的な方法で役立つと感じているか?」と続く(別に彼らの注意を引こうとしているわけではない)。これらの的を絞った質問は、ソフトウェアの行く末の重要性と、それが社会に及ぼす大きな影響に焦点を合わせたものだ。

これ以降は、高レベルの戦略(何を開発しているのか、そしてそれはなぜ?)から、具体的な機能(設計フェーズ)に焦点をシフトしてみよう。通常は、友達やフォロワーという、つながりのモデルがある。それによって人の活動を見ることができるが、ある程度の煩わしい通知や、入力の要求、あるいはアップデートもある。

それから、こうした標準的な機能に代わる、配慮の行き届いたソリューションを提供することに焦点を合わせる。製品が提供しているものを明確にするために、友達リクエストの数を制限することを検討すべきだろうか? あるいは、開発がもう少し先に進んでいる場合には、広告は見たくないという潜在的な顧客のために、有料コンテンツを設定することも考えてみるべきか? または、一定のアルゴリズムによってコンテンツを並び替える代わりに、ポストされたらすぐにコンテンツを表示するのか、あるいは消費者にオプションを提供するのか、といったことも考慮すべきだろうか?

いくつかの企業は、こうした類の選択肢を模索し始めている。Appleが、最近のiOSのリリースで、マップ共有のために採用した方法を考えてみよう。Googleも、それに追従している。

ソフトウェア設計および開発の世界では、現在も将来も、少ないほど効果が多い、と言われる。そして、配慮の行き届いた思慮深い決定が、次世代のアプリと、より大きなソフトウェアのエコシステムの基盤を強化することにつながる。

混雑した市場で価値を提供するのは、非常に困難だが、やりがいのあることだ。配慮の行き届いたアプローチを製品設計に取り入れることによって、合理化されたアーキテクチャーが可能になる。それによって、時間を節約し、人々が本当に使いたいと思う製品を開発するための枠組みを提供することができるのだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

米証取委、Appleの元社内弁護士をインサイダー取引疑いで告発

Appleに少し傷がついた。SEC(米国証券取引委員会)は今日(米国時間2月13日)、Appleの元社内弁護士Gene Levoffをインサイダー取引の疑いで告発した。決算発表前に数百万ドル分の株を売却して38万2000ドルの損失を回避し、これとは別に、その前には24万5000ドルの利益を得ていたという。

Levoffは2008年にAppleで法務部門のディレクターとして働きはじめ、その後シニアディレクターになった。そして2018年7月に勤務停止となり、9月に解雇された。

告訴は2015年から2016年にかけての取引を対象としていて、これは2017年にAppleが時価総額1兆ドルに近づく前の業績が落ち込んでいた時期だ。

今回のニュースはなかなか皮肉だ。しかし、Levoffが裁量権を持つ情報を考えた時に、これは驚きではないかもしれない。Levoffは Appleの法務部門のシニアディレクターを務めていて、“社のインサイダー取引ポリシーの徹底と、四半期ごとの決算時の取引で従業員(自身も含む)がやってはいけないことを取り決める責任を負っていた”。

調査は別の方向にも向いた。SECは、Levoffが2011年と2012年にも市場に影響を及ぼすようなニュースの発表に先駆けて株取引をし、24万5000ドルの利益を得たとしている。

SECは、“訴状に記した行為で得た利益・回避した損失と同じ額”の罰金を支払うこと、そして公開企業の幹部職に就かないこと求めている。

SECの告発では、2015年から2016年にかけて“少なくとも”3つの取引を指摘している。この期間、Levoffは公開される前の決算情報を知り得る立場にあり、その後情報に基づいて取引を行なった、としている。

訴状に記された取引の一つを挙げると、LevoffはiPhoneの販売台数が市場予想を下回るという情報をAppleが公開する前に1000万ドル分の株を売却した。

SECは、Levoffの利益のための動きと、Appleでの役割の切り離しを明確に記している。Levoffは、Appleのディスクロージャー・コミッティーのメンバーだった。このコミッティーは、社の情報公開の正確さと適時性を監視する責務をCEOとCFOが果たせるよう、サポートするためにつくられた。 コミッティーはAppleの公開義務を決め、さらにはSECへ提出する書類の内容や、他の情報公開がタイムリーで正確かつ完全なものか、Appleの財政状況や業績を正しく反映しているかといったことを確認する。また、 Appleの情報公開の過程が適切なものかといったことも確かめる。

LevoffはAppleの機密部分にかかわっていた。彼はまた、Appleの多くのM&A案件にも名を連ね、彼はかつて議員に対し、Appleが欧州で密かに買収したスタートアップの法的書類を調査しているとも話していた。

Levoffはまた、Appleのオフショア口座に関する2013年の調査でも名前があがっている。調査に対し、彼は70ものAppleの子会社の役員会に関わっていたことを明らかにしている。オフショア活動に関する報告書によると、この子会社には“従業員はおらず、実在もしない創業30年の企業であるApple Operations Internationalも含まれる。この企業の運営は米国外で行われている。Appleの広範にわたるオフショアコーポレート構造の中核として2009年から2011年にかけて300億ドルもの収益を受け取っているにもかかわらず、Apple Operations Internationalは税法上の居住地を申告していない。つまり、過去5年間どこの国にも法人税を払っていない”とのことだ。

しかし今回の告発では、SECはAppleが株取引禁止期間や、株取引・財務の情報に関する一般的な合法・違法のプラクティスについて従業員に警告するいくつかのステップを踏んでいたと記し、Apple自体はインサイダー取引に関わっていなかったことを明確にしている。

「Levoffの違法取引に先立ち、AppleはLevoffが受け取った非公開の決算結果を含め、非公表の情報に基づく株取引を従業員が行わないようにするいくつかの措置をとっていた」と訴状に記している。「Appleは全従業員に適用されるインサイダー取引ポリシーを持っていた。Levoffを含め多くの従業員は“ブラックアウト”期間として知られる株取引を制限する期間になると通知を受け取る。ブラックアウト期間とのタイトルで従業員に電子メールが送られるこの通知でインサイダー取引ポリシーの周知徹底を行なっていて、少なくとも2015年からはインサイダー取引ポリシーへのリンクも含んでいた」。

今回のニュースは、Appleが固く口を閉ざしている企業の一つであり、またユーザーのプライバシーといった問題で抜きん出た姿勢を見せているだけでなく、競合する他社の製品に比べてプレミアム価格で製品やサービスを展開していることにプライドを持っているなど、Appleがモデル企業としての役割を果たしているという意味において、かなり議論を巻き起こすものだ。

我々はAppleにコメントを求めていて、何かわかり次第、情報をアップデートする。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

iOSをアップデートするとApp Storeトップから定期課金を中止できる

Appleは、iOSのアップデートで小さいが重要な変更を加えた。これによってユーザーのサブスクリプション管理がこれまでより簡単になった。Appleは最新のiOS(12.1.4、12.2 ベータ版)で「サブスクリプションの管理」メニューに変更を加えた。

App Storeで自分のプロフィールをタップするとメニューのトップページに「定期利用の管理」(Manage Subscriptions)が表示される。これまでのようにメニューの奥深くを探しまわる必要がない。これは長年待ち望まれていた変更だ。

ますます多くのアプリが売上をサブスクリプションに頼るようになるにつれて、ユーザーがサブスクリプションを簡単に中止できるようにする必要も高まっていた。腹を立てたユーザーがApp Storeに書き込んだレビューを読むと多くのユーザーがどうやってサブスクリプションを中止したらいいか理解していないことが分かる。サブスクリプションを中止するにはデベロッパーにコンタクトする必要があると思っていたユーザーが多い。

しかし、これまでサブスクリプションの中止方法が広く知られていなかったのはユーザーの責任ではない。Appleがサブスクリプション中止のオプションをひどく見つかりにくい位置に埋めておいたことが原因だ。

従来のiOSの場合、設定からiTunes & App Storeをクリック、Apple IDを入力、画面を一番下までスクロールしてやってサブスクリプション管理に行き着くという具合だった

これと比べると、Google Playのサブスクリプション中止オプションはトップレベルにあり、左上隅のハンバーガーアイコンをタップすれすぐ見つかる(定期購入)。サブメニューを開く必要もスクロールする必要もない。

最新のiOSではApp Storeのトップページ右上のユーザー・プロフィールをタップすれば、すぐに「定期利用の管理」がある。スクロールする必要もなくなった。この機能の重要性を考えるとアクセシビリティの改善の意義は大きい。

この変更を最初に発見したのは、MacStoriesの編集局長、Federico Viticciだった。

Sensor Towerの最近のレポートによれば、アメリカのiPhoneユーザーは2018年1年で平均79ドルを支払ったという。これは対前年比36%のアップだった。この金額の大部分はモバイル・ゲームが占めているが、ゲームはますますアプリ内の定期課金に頼るようになっている。

残念ながらどの世界にもルールを守らないものが存在する。サブスクリプション料金を目につきにくいところに隠したり、うっかり押しそうな紛らわしいボタンを設置したり、、無料トライアルといいながら3日目に自動的にサブスクリプションに移動する仕組みにしたり、さまざまな手口でユーザーに誤解させてサブスクリプションを強制しようとするデベロッパーも少なくない。

これに対してAppleもApp Storeのガイドラインを発表してどういう手口は許されないかを明確化した。

しかしルールを制定したらといって、それに実効をもたせることができるとは限らない。ユーザーが必要ないと判断したサブスクリプションを簡単に中止できるようにするのは実効を確保する上で非常に重要だ。

ちなみに、Appleは近く独自のサブスクリプション・サービスを開始するものと見られている。3月に予定されているプレスイベントでこのビデオ・ストリーミング・サービスがお披露目されるかもしれない。

「定期購入の管理」はiOSをアップデートすれば世界中どこでも利用できる。

画像:TechCrunch

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滑川海彦@Facebook Google+

米国成人の16%がスマートウォッチを持っている

NPDの最新記事によると、ここ米国ではスマートウォッチが好調な売れ行きを続けている。このカテゴリーは全体的に下降気味のウェアラブル分野の中で唯一明るい材料であり、今回発表されたデータはさまざまな層で広く受け入れられていることを示している。12月時点の米国成人のスマートウォッチ所有率は16%で、一年前の12%から伸びている。

成長を支えているのはやはり若年層で、18~34歳のスマートウォッチ保有率は23%に上る。もちろんAppleを始めとする各メーカーは高齢世代での売上増を狙っていて、昨年登場した心電計などの本格的医療健康機能に期待を寄せている。

市場をリードしているのは依然としてApple、Samsung、Fitbitの3社で、昨年11月時点で全売上50億ドルのうち88%を占めた。しかし、Fossil、Garminらもある程度の市場シェアを獲得している。もちろんGoogleもこの分野での躍進を目指してFossil IPを最近買収した。Wear OSの伸びはほぼ横ばいだが、2019年に噂のPixel Watchが登場すればそれも変わるかもしれない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

iPhoneの中国における苦難の真相はこうだ

先月Appleが四半期決算報告の修正ガイダンスを発表したとき、同社は不調の原因として中国を特定した。たしかに、iPhoneの売上は前年比で15%落ち込んだが、最近のIDCの調査によると、その下落に中国市場が果たした役割がよく分かる。

その新しい数字によると、同四半期の前年同期比では、中国における出荷がほぼ20%落ち込んでいる。Appleの今後の成長計画にとって重要な市場でこれだけの落ち込みは、相当大きな意味を持つ。市場の12.9%を占めていたデバイスが11.5%に落ち込んだのだ。先月Tim Cookは、この世界最大のスマートフォン市場における落ち込みの理由を、いくつか挙げた。

それらの中で、貿易をめぐる国際的な緊張や、中国経済の総体的な低迷は、Appleだけに影響しているわけではない。しかしスマートフォンの売上は、アップグレードサイクルの遅滞によって全面的に落ち込んでいる。多くのスマートフォンが、現用機で十分に良いから、なかなか買い換えようとしない。さらにまた、今年のXSはこれまでのアップグレードほどドラマチックでなかった。

そんな中でしかし、何かを物語っているのは、ネイティブのスマートフォンメーカーが好調なことだ。たとえばHuaweiは当四半期、23.3%伸びた。上昇気流に乗った企業が、Appleのシェアを食った、とも言える。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

米国のiPhoneユーザーが昨年アプリに使った金額は平均79ドル、前年比36%アップ

Appleがデベロッパーにサブスクリプション(定期購読)ベースのアプリを推奨してきたことが、App Storeの売上に明確な影響を与えている。今週公開予定のSensor Towerの最新レポートによると、2018年に米国のiPhone 1台当たりに生み出された収益は、2017年の58ドルから36%増え79ドルだった。例によって増加の大部分はモバイルゲームによるもので、1台当り金額の半分以上を占めた。しかし、ゲーム以外で大きく伸びたカテゴリーがサブスクリプションベースのアプリだ。

iPhoneユーザーがアプリ内購入および有料アプリのダウンロードに使った金額は、2017年から2018年にかけて21ドル増えた。これは対前年比36%の伸びであり、2016年から2017年にかけて47ドルから58ドルになった23%増より高い伸び率だ。

しかし2018年の数字は、2015~2016年に33ドルから47ドルに増えたときの42%よりもやや低かった。

依然としてiPhone支出にモバイルゲームが占める位置は大きい。2018年に消費者がiPhone 1台あたりに使った金額79ドルのうち、56%近い44ドルがゲームだった。

しかし、この年のゲーム以外のカテゴリーの実績はさらに興味深い。

トップチャートの上位を占めたサブスクリプションベースのアプリは、さらに高い対年度比を記録している。

たとえばエンターテイメント・アプリの端末当たり支払い金額は82%増の8ドルだった。ライフスタイル・アプリも86%増の3.90ドルと大きく伸びた。

トップ5には入っていないが、健康&フィットネス・アプリに使用された金額は平均2.70ドルで2017年の1.60ドルから75%増えた。

トップ5にはほかに音楽およびソーシャルネットワーク・アプリが入り、どちらも22%の伸び率だった。

このデータから、サブスクリプションがiPhoneの消費者支出を増やす極めて大きな役割を担っていることがわかる。

このニュースに先立ち、AppleはiPhoneの売れ行きが鈍化していることを発表しており、売上を伸ばし続けるためにサービス事業を強化する必要に迫られた。これにはApp Storeのサブスクリプションだけでなく、Apple Music、Apple PayやiCloud、App Store検索、AppleCareなども含まれている。

サブスクリプションが普及するにつれ、Appleはシステムの悪用にも目を光らせていく必要がある。

たとえば、最近App Storeで卑劣なアプリがいくつか発見された。それらのアプリは紛らわしいボタンや隠されたテキスト、数日のうちに自動登録されるお試し、などの誤解を誘う策略でユーザーをだまし有料メンバー登録させていた。

後にAppleはこれらのアプリの一部を削除したほか、デベロッパー・ガイドラインを改訂してサブスクリプションの表示、運用を厳しく規定した。

AppleがApp Storeの適切な監視や、定期購読の過剰な利用を防ぐための境界設定を怠ると、ユーザーは新しいアプリのダウンロード自体を敬遠することになりかねない。どのアプリも長期的な料金徴収を目論んでいるとユーザーが考え始めるようならなおさらだ。

ユーザーを1回の支払いから毎月請求される方式へと切り替えさせるために、デベロッパーはもっと賢くならなくてはいけない。サブスクリプションの利点を正しく説明し、価値を高めるための特典も考える必要があるだろう。

しかし短期的には、今もサブスクリプションは、たとえiPhoneの売上が停滞していても、デベロッパーがApp Storeでいい稼ぎを得るための有効な手段に違いない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Appleは画面録画コードの使用を明らかにするか、さもなくば止めるよう、デベロッパーに指示

Appleは、アプリのデベロッパーに対して、ユーザーがどのようにiPhoneアプリを使っているかを記録することを可能にする分析コードを削除するか、ユーザーに適切に開示するように指示している。もし従わない場合には、App Storeからの削除も辞さないという。TechCrunchも確認を取った。

Appleの広報担当者は、電子メールで次のように述べた。「ユーザーのプライバシーを守ることは、Appleのエコシステムにおける最重要課題です。当社のApp Store Review Guidelinesは、もしアプリがユーザーの操作を録画、ログ化、あるいはその他の方法で記録する場合には、明示的にユーザーの同意を求め、それを明確かつ視覚的に表示することを要求しています」。

「これらの厳格なプライバシー規約とガイドラインに違反しているデベロッパーには、すでに通知しました。必要なら直ちに行動に移します」と、広報担当者は付け加えた。

この動きは、Expedia、Hollister、Hotels.comといった大企業が、サードパーティの分析ツールを使用して、アプリ内のすべてのタップとスワイプを記録していたことが、TechCrunchによる調査によって明らかになったことを受けたものだ。我々は、テストしたすべてのアプリが、ユーザーに許可を求めておらず、どの会社も、プライバシーポリシーの中で、ユーザーの操作を記録していることに触れていないことを見出した。

機密性の高いデータはマスクされることになっているはずなのに、パスポート番号やクレジットカード番号など、一部のデータは漏洩してしまっていた。

Glassboxは、セッションリプレイ技術に特化した、クロスプラットフォームの分析ツールだ。これにより、企業は自社のアプリに画面録画技術を組み込み、ユーザーがどのようにアプリを操作するかを再生して見ることができるようになる。Glassboxは、その技術にはさまざまな利点があるが、中でもアプリのエラー率を下げるのに役立つ、と主張している。しかし同社は、「Glassboxの画面録画ツールを使用していることをプライバシーポリシーで述べるように強制はしていない」とのことだ。

しかしAppleは、ユーザーの許可なしに、こっそりとデータを収集するようなアプリを、明確に禁止している。

TechCrunchは、アプリデベロッパーに対する聞き取りを木曜日から開始し、Appleから規則に抵触していると通告を受けたかどうかを尋ねた。あるデベロッパーは、AppleがApp Storeのガイドラインを引き合いに出して、アプリのアクティビティを記録するコードを削除するよう告げてきたと明かした。

「あなたのアプリは、分析ソフトウェアを使用して、ユーザーまたはデバイスのデータを収集し、ユーザーの同意なしに第三者に送信しています。ユーザーの操作を録画、ログ化、あるいはその他の方法で記録する場合には、明示的にユーザーの同意を求め、それを明確かつ視覚的に表示しなければなりません」と、Appleは電子メールで指摘している。

Appleは、同じ電子メールで、1日以内にそのコードを削除して、アプリを再提出するようにデベロッパーに求め、さもなければ、そのアプリはApp Storeから削除されるであろう、としている。

Glassboxに、App Storeの削除騒動を認識しているかどうか尋ねたところ、Glassboxの広報担当者は「Appleとのコミュニケーションは、私たちの顧客を通してのものです」とだけ述べた。

Glassboxは、Androidアプリのデベロッパーも利用できる。Googleは、画面録画コードを禁止するつもりがあるかどうか、即座にはコメントしなかった。Google Playも、アプリが密かにデバイスの使用状況を収集することを、明示的に禁止している。「アプリは追跡行為を隠したり、外から見えなくしたり、そのような機能についてユーザーを欺くようなことをしてはならない」と、デベロッパー規則には記されている。もし返答があれば、記事を更新するつもりだ。

これは、アプリの好ましくない動作が指摘された後で、Appleが顧客を保護するために干渉することを迫られた、プライバシーに関する最新の失態となった。

先週、TechCrunchは、AppleがFacebookの「調査用」アプリを禁止したことをお伝えした。それは、ソーシャルメディアの巨人が10代の若者たちに、彼らのすべてのデータと引き換えに、報酬を支払うというものだった。

その前には、Facebookが、Appleが発行したエンタープライズデベロッパー向けの証明書を悪用し、一般ユーザー向けのアプリをビルドしてAppleのApp Storeの外で配布していたことを、TechCrunchが暴いていた。Appleは、Facebookのエンタープライズデベロッパーの証明書を一時的に無効にして、同社の社内用iOSアプリのすべてを、ほぼ丸1日近くオフラインにしたばかりだ。

(関連記事:密かに画面を録画する有名なiPhoneアプリ

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Appleは最新のコマーシャルでアリアナ・グランデなど人気ミュージシャンをミー文字にした

グラミー賞の時期に合わせてApple Musicが、3つの新しいコマーシャルを披露した。それぞれ、Ariana Grande(アリアナ・グランデ)、Khalid(カリード)、そしてFlorida Georgia Line(フロリダ・ジョージア・ライン)のニューシングルをフィーチャーしている。

各ビデオで、ミュージシャンはミー文字(Memoji)で表現されている(人の形をしたアニ文字(Animoji)の一種で昨年発表された)。そしてその唇が、彼らの最新曲に合わせて動く。ミー文字やアニ文字が大ウケすることはないと思うが、好きな人にとっては楽しいはず。

実はAppleは、昨年のグラミー賞の前にも、アニ文字の唇がChildish Gambino(チャイルディッシュ・ガンビーノ)やMigos(ミーゴス)に同期する似たようなコマーシャルを作った。

The Vergeの指摘によると、ビデオを最後まで見ると小さな文字で、これらのミー文字は“プロフェッショナルにアニメーションされている”と表示される。だから、唇が歌と同期するアニ文字のビデオの出来があまり良くなくても、がっかりしないように。

画像クレジット: Apple

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

密かに画面を録画する有名なiPhoneアプリ

Air Canada、Hollister、Expediaなどの大手企業は、iPhoneのアプリ上のすべてのタップやスワイプ操作を記録している。ほとんどの場合、ユーザーはそれに気付かない。彼らは許可を求める必要もない。

ほとんどのアプリは、ユーザーに関するデータを収集していると考えてもいい。中には、ユーザーが知らないうちに、そのデータから収益を得ている場合もある。しかしTechCrunchは、ホテルや旅行サイト、航空会社、携帯電話のキャリア、銀行、金融会社など、さまざまな人気アプリの中に、ユーザーの了解をまったく得ていなかったり、はっきりと聞かないまま、情報を収集しているものがあることを発見した。それによって、彼らはユーザーがアプリをどのように使っているか、確実に知ることができる。

さらに悪いことに、特定のフィールドについてはマスクしようとしているものの、秘密にすべきデータを誤って曝してしまっているアプリもある。

Abercrombie & Fitch、Hotels.com、Singapore Airlinesなどのアプリも、Glassboxを利用している。これは、顧客の体験を分析する機能を提供する会社だ。同様の機能を提供する会社も何社かあるが、それを使うことで、デベロッパーは「セッションリプレイ」機能をアプリに組み込むことができるようになる。このセッションリプレイを利用すれば、アプリのデベロッパーは画面を録画し、ユーザーがアプリをどのように操作したのか、後から再生して見ることが可能となる。それにより、何がうまく動かなかったか、あるいはエラーが発生していたかどうかを把握することができるのだ。すべてのタップ、ボタンプッシュ、そしてキーボード入力が記録され、実質的にスクリーンショットが取られて、アプリのデベロッパーに送信される。

Glassboxは、最近のツイートで以下のように述べている。「御社のWebサイトやモバイルアプリが、顧客の行動をリアルタイムでありのままに見て、なぜそうしたのかをはっきりと知ることができる、ということを想像してみてください」。

モバイル技術に詳しいThe App Analystは、人気の高いアプリについての分析を同名のブログに書いているが、最近Air CanadaのiPhoneアプリが、セッションリプレイを送信する際に、適切にマスクしていないことを発見した。それによってそれらのセッションを再生する際に、パスポート番号とクレジットカードのデータが露出されてしまう。その数週間前に、Air Canadaは、そのアプリのデータに侵入され、2万人の個人情報が流出したと発表したばかりだった。

「これにより、Air Canadaの従業員、およびスクリーンショットのデータベースにアクセスできる他の人間は、暗号化されていないクレジットカードとパスワードの情報を見ることができるようになった」と、The App AnalystはTechCrunchに明かした。

Air Canadaのアプリの場合、そうしたフィールドはマスクされてはいるものの、そのマスクが必ずしも固着されていない。(画像:The App Analyst提供)

われわれは、The App Analystに依頼して、GlassboxがWebサイトに彼らの顧客として例示しているアプリを、いくつか調べてもらった。通信に介入して、アプリから送信されたデータを傍受できるツール、Charles Proxyを使えば、個々のデバイスからどのようなデータが送り出されるのか調べることができる。

必ずしもすべてのアプリがマスクされたデータをリークしているわけではないが、調べたアプリの中には、ユーザーの画面を録画していると明らかにしているものは1つもなかった。もちろん、それを自分の会社や、直接Glassboxのクラウドに送ったりしている、などと書いてあるものは、まったくない。

もし、Glassboxの顧客の誰かが、データを適切にマスクしていなければ、それは問題になり得ると、The App Analystは電子メールで指摘した。「このデータはGlassboxのサーバーに送信されることが多いので、機密の銀行口座情報とパスワードを収集した事例がすでにあったとしても、大した驚きではありません」。

The App Analystによれば、HollisterとAbercrombie&Fitchは、Glassboxにセッションリプレイを送信しているが、ExpediaやHotels.comをはじめとする他のユーザーは、セッションリプレイのデータを、自社のドメインのサーバーに送信するようにしているとのことだ。また、データは「ほとんど難読化されている」ものの、電子メールアドレスや郵便番号が見えてしまっている場合もあったという。シンガポール航空も、セッションリプレイのデータを収集しているが、その送信先はGlassboxのクラウドだった。

各アプリのデータを分析しなければ、アプリの使い方を調べるためにユーザーの画面を録画していることを知るのは不可能だ。各アプリの、細かい字で書かれたプライバシーポリシーを調べても、そうした記述は見つからなかった。

AppleのApp Storeに提出されるアプリは、必ずプライバシーポリシーを含んでいなければならない。しかし今回調査したどのアプリも、ユーザーの画面を録画していることを、そのポリシーに明記していなかった。Glassboxを利用するには、Appleの特別なパーミッションを取得したり、ユーザーの許可を得たりする必要はない。そのため、ユーザーは知る由もないのだ。

Expediaのポリシーには、画面の録画についての言及はなく、それはHotels.comのポリシーでも同様だ。そしてAir Canadaの場合にも、iOSアプリの利用規約プライバシーポリシーには、iPhoneアプリが画面データを航空会社に送り返していることを示唆する文面は、1行たりとも見つけることはできなかった。さらに、シンガポール航空のプライバシーポリシーにも、まったく言及はない

われわれは、これらのすべての企業に対して、ユーザーが自分の携帯電話で何をしているのかキャプチャすることを、プライバシーポリシーのどの部分に記述しているのか、正確に示してくれるように依頼した。

Abercrombieの返答は、Glassboxは「シームレスなショッピング体験をサポートするのに役立ち、お客様がデジタル体験において遭遇する可能性のある問題を特定して対処することを可能にする」ことを確認したというものだった。その広報担当者は、Abercrombieのプライバシーポリシーと、その姉妹ブランドのHollisterのポリシーに関して、セッションリプレイについては何も答えていない。

この記事が公開されると、Air Canadaの広報担当者は次のように答えた。「Air Canadaは、お客様から提供された情報を、旅行のニーズをサポートし、旅行に影響を与える可能性のある問題を解決できるようにするために使用します。これは、Air Canadaモバイルアプリに入力され、そこで収集されたユーザー情報を含んでいます。ただし、Air Canadaは、Air Canadaアプリの外で携帯電話の画面をキャプチャすることはありませんし、できません」。

その後シンガポール航空は、電子メールで次のように返答した。データの収集は「当社のプライバシーポリシーに準拠したもので、お客様のデータを問題の解決とテストのために使用するというものです。それは、当社のプライバシーポリシーの第3項に規定されています」。われわれは、もう一度調べてみたが、それに類するものは何も見つからなかった。

Hotels.comのオーナーであるExpediaは、返答しなかった。

「ユーザーは、自分のデータがどのように共有されるのかについて、積極的な役割を果たすべきでしょう。そして、その最初のステップは、企業がユーザーのデータをどのように収集し、それを誰と共有しているのかを、明らかにさせることです」と、The App Analystは述べている。

問い合わせに対してGlassboxは、顧客に対して、Glassboxを使っていることをプライバシーポリシー内で言及することを強制していない、と述べた。

「Glassboxには、モバイルアプリケーションのビューを視覚的に再構築する独自の機能があります。これは分析に別の視点を加えます。Glassbox SDKは、顧客のネイティブアプリとのみやりとりすることができ、アプリの境界を超えることは技術的に不可能です。たとえば、システムのキーボードが、ネイティブアプリの画面の一部を覆っているようなときには、Glassboxはその部分にアクセスできません」と、広報担当者は説明する。

Glassboxは、市場に出回っている多くのセッションリプレイ機能を持ったサービスの1つだ。他にも、たとえばAppseeは、デベロッパーが「ユーザーの目で自分のアプリを見ることができる」ようにする「ユーザー録画」技術を積極的に売り出している。また、UXCamは、デベロッパーに「ジェスチャーや操作のトリガーとなるイベントを含む、ユーザーのセッションの録画を見る」ことを可能にするとしている。機密情報をマスクする保護機能の不備により、Mixpanelが誤ってパスワードを収集していたことに対する怒りが巻き起こるまでは、このような機能は水面下で利用されていた。

この業界は、すぐになくなるような類のものではない。多くの企業は、この種のセッションリプレイのデータを利用して、なぜものごとがうまくいかなくなるのかを理解しようとしている。それは高収益を求める際には、大きな損失となり得るからだ。

そうだとしても、アプリのデベロッパーが、それを公表していないという事実は、かなり不気味なものに感じられる。彼らがそれに気づいていたとしてもだ。

Air Canadaとシンガポール航空からのコメントを受けて更新済。

(関連記事:Apple tells app developers to disclose or remove screen recording code

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

iOS 12.1.4 にアップデートすればグループFaceTimeがまた使えるようになる

あのFaceTimeのたちの悪いバグが過去のものになる。アップデートをダウンロードすればiPhoneとiPadでグループFaceTimeがまた使えるようになる。iOS 12.1.4はバグ修正リリースで、ほかに新規機能は入っていない。

偽のグループFaceTime通話をスタートすると他人のマイクロフォンとカメラで盗聴・盗撮できることが発覚してまもなく、AppleはグループFaceTimeそのものを無効化した。 iOS 12.1.3以前を使っている人は、3人以上のFaceTime通話を開始できない。

これまでAppleは、悪質なバグのないグループFaceTimeを再び有効化するための修正に努めてきた。そのアップデートが公開された。

「われわれはAppleのサーバー上のグループFaceTimeのセキュリティーバグを修正した。来週、ユーザーが再びこの機能を利用できるようにするためのソフトウェアアップデートを発行する」と先週の声明でAppleは言った。「影響を受けたお客様、このセキュリティー問題を心配されたお客様には、深くお詫びいたします。修正が完了するまでお待ちいただいたことに感謝いたします」

まずiPhoneやiPadをiCloudまたはiTunesを使ってバックアップすること。そのあと設定アプリを開いて「一般」>「ソフトウェアアップデート」に進み、アップデートをダウンロードしてインストールする。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

AppleとAplhabetが進化させるヘルスケアウェアラブル

Appleが、Apple Watchのデータを活用する新しいアプリに関して、健康保険会社のAetnaと提携したという発表や、Googleの親会社のAlphabetの傘下にある健康にフォーカスする会社Verilyが、体重と動きを検知できる靴を開発しているといったニュースは、ウェアラブルからのデータを、臨床用の健康管理アプリや治療に活用しようという動きが勢いを増していることを示している。

ベンチャーキャピタルの投資家にとって、このようなAppleとAlphabetの動きは、ウェアラブルデバイス用の新しいアプリケーションへの道を切り開くものであり、正しい方向への第一歩となる。それは、むしろ遅すぎたくらいだ。

「医療サービス提供者として、私たちは予防医療の重要性についてかなり話してきました。しかし米国の医療システムには、それにお金を払うための適切なインセンティブがありません」と、Trinity Venturesの起業家、Cameron Sepahは書いている。「大会社の経営者は(メディケードやメディケア以外に)すでに多額の医療費を支払っているので、予防のためにまでにお金を出そうという気には、なかなかなりません。というのも、従業員がそれほど長く会社に留まることもないので、長期的な健康管理の費用を負担しようとは思わないからです。そのため、この分野のスタートアップのほとんどは、企業にとって見返りの少ない健康手当となりがちです。しかし、Aetnaのような保険会社が会員を十分長く引き止めておけるのであれば、うまく連携して、このアプリを普及させることもできるでしょう」。

Sepahは、健康保険会社とハイテク企業が提携すれば、さまざまな種類のデバイスによって健康状態を検出して診断することができる、という大きな可能性を視野に入れている。

「ほとんどの患者と保険会社との関係は、紙に印刷された請求書や通知を郵便で受け取るだけで、顧客満足度(NPS)はどこを見ても最低です」とSepahは電子メールに書いている。「しかし、もし手首に装着されたデバイスを通して、より密接な関係を築く方法があれば、他の健康関連技術のスタートアップと協力して取り組む可能性も広がります。たとえばMindstrongは、自覚症状が出る前に精神的な健康の問題を通知できます。またCardiogramは、高血圧や睡眠時の無呼吸を検出して治療を促します。あるいは、Omada Healthは、デバイスからの健康データを、慢性疾患の治療プログラムに活用することができます」。

(関連記事:Apple partners with Aetna to launch health app leveraging Apple Watch data

Aetnaは、Apple Watchのデータを健康保険に結び付けた最初の会社ではない。John Hancockは、2018年の9月にVitalityというプログラムを立ち上げた。ユーザーがJohn Hancockのアプリとリンクすれば、最新のApple Watchを割引するというものだ。さらに、ユーザーがダイエットとエクササイズに関する習慣を変えれば、会社が報奨金を支払う。

米国、英国および南アフリカ共和国の40万人を対象としてRand Europeが実施した調査によれば、Apple Watchを着用し、Vitalityのプログラムに参加したユーザーは、Apple Watchを着けていない人と比べて、運動量が平均で34パーセントも増加したという。その数字は、1ヶ月あたり、ほぼ5日分もトレーニング量を増やしたのに相当する。

「CVSとAppleの協力が、どのような結果になるのか興味深く見守っています。個人の医療履歴と、ウェアラブルからのリアルタイムのデータの組み合わせに基づいて、健康に関するパーソナライズされたアドバイスを提供することは、非常に大きな価値のある目標となるでしょう」と、ベンチャーキャピタルMenlo Venturesの共同経営者、Greg Yapは書いている。しかしYapは、「彼らの第1世代のアプリが、幅広い利用者に対して十分な価値を提供できるだけのデータや学習能力を備えているかについては疑問があります。しかし話題性はあるし、それも重要だと思っています」と続けている。

その一方で、消費者の健康情報を記録するデバイスの種類は増え続けている。これも、少なからずVerilyのおかげだ。

CNBCによれば、Verilyはユーザーの動きや体重を監視するセンサーを備えた靴の共同開発に取り組んでいて、さらに健康状態の監視および管理のための常時接続型デバイスの種類を拡張しているという。すでに同社は、FDAが承認した心電図を含む、患者の特定のデータを監視する腕時計を実用化しており、さらに、糖尿病に由来する眼の疾患を感知する技術や、白内障を治療するスマートレンズを開発中だという。

こうした動きは、ハイテク企業が、ほぼ3兆ドル規模にもなるヘルスケア市場に食い込もうとして、消費者の健康に密接に関わることをもくろんでいるのを示すものだ。

ウェアラブルデバイスから、あるいは消費者の行動から、より多くのデータを収集できれば、そしてそれを継続的に監視できれば、ハイテク企業が、より早い段階で通知することで、より低コストの治療を提供することもできるかもしれない。緊急の、あるいは救急医療の必要性をなくすことにつながるからだ。

ハイテク企業による、いわば大風呂敷を広げたようなコミュニケーションとモニタリングのサービスは、うまくすれば、ユーザーと将来に医療を受ける人を、今とは異なったシステムに移行させるかもしれない。それは、治療の量や処置の回数よりも、結果にフォーカスすることになり、低コストのものになる可能性が高い。

持続的なモニタリングが良質な治療に結びつくと、すべての医師が確信しているわけではない。スタンフォード大学の有名な教授であるDr. John Ioannidisは、データが実際に何を明らかにするのかをはっきり理解しない限り、モニタリングを有効に利用することはできないと主張している。

「情報というものは、それが何を意味するのかを知っていれば、有益なものとなります。その情報の大部分については、何を意味しているのか分かっていません。それをどう扱えばよいのか、皆目見当も付かないのです。単に不安の種を増やすだけでしょう」と、Dr. Ioannidisは述べた。

ライフサイエンスのスタートアップを支援している投資家によれば、目標は、機械学習を使用して問題を特定し、同時に治療方法を確立できるような、パーソナライズされたアドバイスを提供することなのだという。

「Omada、Livongo、Lark、Vida、Virta、といったスタートアップは、リアルタイムのデータと、個人の履歴データを組み合わせるというアイディアに、すでに取り組んでいて、それはうまくいくと私は考えています。しかし、スタートアップが成功するためには、さらに細かく絞り込むことで、より良い結果を提供できるようにする必要があるでしょう。もちろん、早急に経済的な利益を生み出すことも重要です」と前出のYapは付け加えた。

画像クレジット:VenimoShutterstock

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ハイテク企業は健康管理の方法を変えられるか?

[著者:Cyrus Radfar]
V1 Worldwideの創設パートナー。

2018年9月の時点で、2012年からアメリカのハイテク企業上位10社が医療関係企業の買収に費やした総額は47億ドル(約5170億円)にのぼった。これらの企業による医療関係企業の買収件数は年々増加している。これは、アメリカのハイテク企業が医療への関心を高めている証しであることに違いはないが、ここにいくつもの疑問がわく。彼らの目的はなんなのか、また、医療業界はどんな帰路に立たされるのだろうか。

もうひとつ、なぜ医療がアメリカのハイテク大手企業の最新のターゲットになったのだろうか。表面上、この2つは気の合う仲間には見えない。片方は機敏で腰が軽いが、もう片方は鈍重で思いに耽るタイプだ。片方は未来に恋い焦がれ、もう片方は過去と共に生きようと必死になっている。

にも関わらず、これが事実だ。近年は、Apple、IBM、Microsoft、Samsung、Uberが医療に浮気し、データを収集する健康アプリ医療患者がタクシー配車のデジタルサービスを受けられる機器などを出している。なかでも、このところ医療分野に深く入り込もうとしているのがAmazonとAlphabetの2社だ。この2つの企業は、とくに健康保険を視野に入れているようだ。

Alphabet、Amazon、AppleのA

CB Insightsによれば、現在、アメリカで医療分野にもっとも多く投資しているハイテク企業はAlphabetだ。Alphabetの子会社Verilyは、テクノロジーで健康への理解を深めることに専念している。これもまたAlphabetが買収したDeepMindは人工知能(AI)によるソリューションを提供しているが、AlphabetはそのAIを活用し、データ生成、データ検出、生活習慣の改善で病気と闘う方法を探っている。Alphabetはまた、Oscar、Clover、Collective Hearlthといった、どれも健康保険分野に波風を立たせようという企業に相当額の投資を行っている。

一方、Amazonは、昨年の夏、インターネット薬局のスタートアップPillPackを買収するという、医療分野への大きな動きを見せて周囲を驚かせた。そして2018年10月には、音声アシスタントAlexaが風邪を感知する機能の特許申請を行った。さらにAmazonは、Heraという内部プロジェクトに取り組んでいる。これは、電子カルテ(EMR)のデータを使い、誤診を修正するというものだ。さらに昨年の1月、Amazonは、従業員の健康管理計画でBerkshireとJP Morganと提携したことを発表した。片方の目では一般市場への拡大を見据えつつ、企業の従業員を実験台にして健康保険の研究をしようという戦略が見え隠れしている。

Appleも黙って見ているわけではない。同社は2016年からAetnaと共同で、個々の顧客に合わせた運動と健康上の助言を提供し、健康的な生活習慣の実践を促す活動を行っている。

これら3つの企業は医療分野に大きな一歩を踏み出しているが、とくに、AlphabetとAmazonにとっては、医療保険が長期戦略の柱になりそうだ。

ハイテク大手は濠を超えられるか

アメリカの医療と健康保険の市場をハイテク産業が拡大したのは、今回が初めてではない。医療業界は、長い間、座ったアヒルのように何もせず自滅を待つ存在だと見なされてきた。それは事実であり、意外な話ではない。アナログシステム、複雑な縦割り組織、時代遅れの技術。デジタル改革の筆頭候補であり、その受け入れ準備ができている分野だと誰もが思う。最新のデジタル技術は、この時代遅れながら収益性の高い産業を合理化し、効率化し、利用者中心の形に変革できる。

それが、2013年、Health Heroの共同創設者でRock Healthの顧問を務めるGeoffrey Clappによって創設された、モバイル医療サービスを提供するBetterの設立の狙いでもあった。このスタートアップは、開業初日から投資や、過剰な問題をひとつの単純な方法で解決するという途方もない作業に翻弄された。そして設立からわずか2年後、Betterは敗北を認めることになった。

「私たちは、膝間接手術や脳卒中といった、あらゆる病状、あらゆる解剖学的状況に対処するコンシェルジュ・サービスを提供しつつ、包括支払い制度やその他の多岐にわたる支払い制度への対応を行なっていました」とClappは、2016年にBetterを振り返り話している。「人は製品を気に入ってくれるかも知れませんが、どんな問題にも対応して欲しいと望むのです。私たちはよく自分たちに言い聞かせていました。これはバーティカル市場なのだと」

健康保険は、アメリカの他の医療産業分野と同じく頑固であり、参入の手前ですでに巨額の資金を必要とするため、スタートアップには魅力の薄い分野だ。

規模、資本、アイデアに関わらず
医療産業への参入はハイテク企業にとって
容易なものではない

ここ数年のケーススタディーで興味深いのは、Oscar健康保険だ(ちなみに昨年、Alphabetから3億7500万ドル(約413億円)の投資を受けた)。Oscarは、2012年、テクノロジーと顧客体験からの洞察を活かして健康保険を簡素化するという条件のもとで設立され、健康保険業界を撹乱したことでスタートアップの鑑のように見られてきた。しかし、その道のりは決して平坦ではなく、巨額の投資を受けながらも、未来は混沌としている。

同社は、個人向け医療の市場で奮闘し、事業に必要な医師や病院とのネットワーク作りにも力を入れた。設立から7年目の2018年に初めて黒字の四半期を記録したが、そこに至るまでには資金の大量出血を経験している。2016年には2億ドル(約220億円)の損失もあった。もしOscarが、アメリカの健康保険に変革をもたらしたスタートアップの成功物語だとしたら、それは、この事業がどれだけ過酷な戦いであるかを知らしめる厳格な指標ともなる。

もちろん、AmazonとAlphabetは、健康保険という長期計画において損失を心配する必要はない。それでも、数々の規制や現実主義を乗り越えなければならず、こればかりは単に資金をつぎ込めば解決できるというものではない。企業規模や資金によって、自動的に信頼を獲得できるわけでもない。それは「思っていたほど広範なインパクトを与えられなかった」として2017年にGoogle Healthのサービスを打ち切ったGoogleが経験したことだ。

AlphabetやAmazonといった企業は、自身の失敗、仲間の失敗、Betterなどのスタートアップの失敗から学んでいるようだ。Alphabetは、今回は頭から飛び込むことは控え、特定の疾病に的を絞った。病院と提携し、AIに関する膨大なノウハウを武器に大勢のアメリカ人が抱える問題に立ち向かっている。Amazonは、Berkshire、Hathaway、JP Morganと提携し、ミクロのスケールで問題点を綿密に調べながら、引っかき回すべき市場を時間をかけて研究している。

成長するか死ぬか

もしアメリカの健康保険業界が本当に征服困難であるなら、ひとつの疑問が浮かぶ。ハイテク企業はどうして再挑戦しないのだろうか。答えは簡単。利益だ。

アメリカの健康保険業界の、2017年の健康保険と生命保険の純保険料は5949億ドル(約65兆4000億円)だった。これはAmazonの2017年の利益である1780億ドル(約19億6000万円)の3倍を上回る額であり、Alphabetの1110億ドル(約12億2000万円)の何倍にもなる額だ。

まだある。

年間の事業収益が1000億ドルを超えると、有意義な成長につながる新しい道を探すのが大変に困難になる。これは、AlphabetやAmazonのような企業には厄介な問題だ。彼らには、成長と規模の拡大が生命線だからだ。それが鈍れば、エコシステムから脱落すると見込んで、ハゲタカどもが頭の上を舞い始める。そしてそれが株価に響く。

近年、ハイテク大手企業は、他分野のバーティカル市場への拡大を成功させて、こうしたリスクを回避してきた。食品宅配サービス音声アシスタント自律運転車両など、ハイテク産業は帝国拡大の機会を求めて、新鮮なバーティカル市場を探し続けている。医療業界は、単に次なる征服目標にすぎないのだ。

行く手を阻む障害物

規模、資本、アイデアに関わらず、医療産業への参入は、どんなに気をつけたところで、ハイテク企業にとって容易なものではない。業界をかき回すことには慣れている彼らにしても、医療と健康保険はまったく別の生き物だ。

まず、規制の壁がある。薬を販売したり流通させるためには、複雑で費用のかさむいくつもの輪をくぐり抜けなければならない。そこでは米食品医療局や米麻薬取締局といった規制当局が目を光らせている。

これらの企業は膨大な独自のデータを
どのように活用するのかという疑問が
常につきまとう

そして、データとプライバシーの問題がある。ハイテク大手企業は、業界に長年居座っている既存企業にテクノロジーで勝ることができると信じているが、テクノロジーを活用しようとすれば、これまた厳しい個人情報保護のための規制に守られたデータへのアクセスが必要となる。とりわけ、健康保険に参入しようとする者には、乗り越えなければならない最大の障壁だ。

そしてそれらの上に、健康保険に参入したいと考えるハイテク企業が通らなければならない州ごとの保険規制制度がある。保険規制に関しては概して寛大だとされているユタ州で通用するものが、もっとも厳しいとされるカリフォルニア州では通用しない。

プライバシー、データ、国民皆保険

健康保険業界の主力選手となるための新規事業に挑むには、反対に打って出られる勇敢な人物が必要だ。成功しようと思えば、すべての人が喜ぶのとは違う道を行く必要もある。

まずは、これらの企業は膨大な独自のデータをどのように活用するのかという疑問符が常につきまとう。ハイテク企業はこの数年、自分たちのデータで金儲けをしていることを嫌った一般ユーザーの離反に揺さぶられてきた。しかし、そのデータが、その人の保険料の計算に使われるとしたらどうだろう。たとえば、健康的な食品を買っていたり、スポーツジムの会員になっていたり、日常的に運動をしていることを追跡するデバイスがあり、その人が健康的な生活を送っているとデータが証明してくれたなら、保険料が下がる可能性がある。

反対に、あまり体を動かさない人が不健康な食品や製品を買ったことがわかれば、保険料が徐々に上がるということも考えられる。

ジョージア工科大学Scheller College of Businessに在籍するプライバシー専門家であり、ホワイトハウスではクリントン大統領のもとで医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律のプライバシーに関するルールを取りまとめたPeter Swireは、そこに危機感を覚えるという。「私の知る限りでは、AmazonのウェブサイトはAmazonが取得した利用者の情報を、提携する健康保険会社に提供できるとなっています」とSwireはViceのインタビューに応えて話している。「言い換えれば、データが医療機関の外へ流れ、健康保険会社で利用されることを阻むルールの存在を私は知らないということです」

接線:ハイテク企業が押すのは単一支払者制度かユニバーサルヘルスケアか?

ちょっと一息入れて、アルミ箔の帽子をかぶらせていただく。

つい先日の2017年、AetnaのCEO、Mark Bertoliniは単一支払者制度についてオープンに議論したいと話した。「単一支払者。国として議論しておくべきだったと思う」

単一支払者制度、いわゆる「メディケア・フォー・オール」(すべての人に医療を:国民皆保険)は、どちらもワシントンの進歩的な民主党の考え方だ。イギリスやカナダなどの国をモデルにした単一支払者制度の実現を目指す人たちは、すでに、医薬品業界と保険業界が送り込んだ強力なロビイスト団体に対抗している。ゲームの理論から言えば、世界で最も裕福な企業をロビイスト団体の味方につければ、アメリカでのユニバーサルヘルスケア(国民皆保険)の実現を遠くに追いやることができる。

これは、ハイテク企業が独自の保険方式を作り始める未来を思うときに、常に私につきまとう大きな「もしも」のシナリオだ。彼らは、政府の介入で民間の保険が奪われてしまうことを決して好まない。

さて、ここでアルミ箔の帽子を脱いで、陰謀めいた話から現実的な話に戻ろう。

現状よりはマシ

もちろん、AmazonやGoogleなど、健康保険への参入に興味を示す企業が、利用者に不利益をもたらよう、あるいはユニバーサルヘルスケアに反対するロビイスト団体のためにデータを使う可能性を示す証拠はない。実際、それらの業者が唯一わかっていることがあるとすれば、それはできるだけ多くの人を喜ばせることの重要性だ。彼らは、おもに個人的な体験から、ネガティブな評判の影響力の大きさを知っている。それは特定の製品やサービスに止まらず、事業全体にもダメージを与える。悪辣な金儲けに走れば、健康保険業界をかき回す可能性は、手を付ける前に、ことごとく失われる。

ハイテク企業は、それぞれのソリューションに特製ソースで臨んでくるだろう。

Amazonは、高度な効率性を武器にするだろう。無駄のない驚くほど高速な物流で製品を提供する。GoogleとAlphabetの子会社は、AIと予測的アプローチで挑んでくるだろう。そこでは、すべての人に、それぞれの分野の専門家に支えられた健康アシスタントが着く。Aiphabetのマシンやキオスクに立ち寄れば、簡単な健康診断ができる。Appleは、洗練された小売の経験を持ち、顧客の支配を好むことから、管理医療機構Kaiser Permanenteのようなバーティカルな方式を作り出すかも知れない。どの企業も、高品質な利便性を追求するはずだ。それらは実質的に、異なるタイプの消費者を対象にすることになる。

彼らが手の内を見せて、健康保険業界の既存企業と真っ向対決するようになれば、制度の対象となるすべての人たちのために、既存企業に置き換わる善意の企業という立ち位置で戦うことになる。それは結果的に、より良く、より安価で効率的なものを生み出す。2017年のMckinseyの調査によると、アメリカ人が求めているものを提供している保険会社は非常に少ないという。具体的には、保険料に見合った利便性、より統合された技術、健康増進のためのツールだ。

技術者が秀でることのできる分野がある。レベルの高いカスタマーケア、サービスの向上とコストの削減、これらを最新テクノロジーを取り込むことで実現する。それを健康保険に活かせれば、テクノロジーの約束を短期間に果たすことができるだろう。それは、時代遅れの業界を引っかき回すことだ。

ハイテク大手企業にとって、成長は血と同じ。そして、引っかき回す準備が整った健康分野のバーティカル市場は、奇遇にも、我々が生きてゆくために欠かせないものでもある。この戦いは見ものになる。Uberが荒っぽいスタートを切ったときのように、はたしてハイテク企業は規制を飛び越えて、議会を動かし、消費者の要求に応えさせることができるだろうか。

[原文へ]
(訳者:金井哲夫)

アメリカのスマートスピーカーの採用台数は6600万、Amazonが大差でリード

スマートスピーカーにとって、良いホリデーシーズンだった。Amazonによると、Echo Dotは同社の全商品の中で最高の売上を記録した。そのことは、音声で命令するスピーカーの市場全体が大きく成長したことを意味するのだろう。今日(米国時間2/5)は、調査会社CIRPが、それらのスピーカーのアメリカにおける導入台数が2018年9月四半期の5300万台から2018年12月には6600万台に増加した、と報告した。そしてそれは、1年前の2017年12月にはわずか3700万台だった。

しかしその調査報告書によると、ホリデーシーズンの売上が、スマートスピーカーのメーカー各社のマーケットシェアを変えることはなかった。

報告書によると、AmazonのEchoデバイスが依然としてアメリカの市場を支配し、据え付け台数ベースで70%のシェアを握っている。次いでGoogle Homeが24%、Apple HomePodが6%だ。

CIRPのパートナーで協同ファウンダーのJosh Lowitzが、声明の中でこう述べている: “ホリデーの買い物客によって、スマートスピーカー市場は再度離陸した。しかし相対的なマーケットシェアは旧状を維持し、ここ数四半期にかけてAmazon EchoとGoogle Home、そしてApple HomePodが一定のシェアを維持している。AmazonとGoogleは共に、ベーシックからハイエンドまでの豊富な機種を揃えているが、Amazonの方が機種は多様である。言うまでもなくAppleは、高価格製品HomePodのみであり、Echo DotやHome miniのようなエントリーレベルの製品を出さないかぎり、大きなシェアを獲得することはないだろう”。

さらに興味深いのは、スマートスピーカーの購入者の一部が、自宅にすでに1台持っていることだ。CIRPによると、スマートスピーカーの所有者の35%が、2018年12月の時点で複数のデバイスを持っている。それは2017年12月の18%からの大きな増加だ(下図)。

この数字は、デバイスメーカーの今後の戦略にとって重要だ。つまり、最初の1台を売ることができたら、消費者が同じベンダーから再度買うこともありえるからだ。

Amazonはここでも初期的有利性を獲得し、Google Homeのユーザーに比べてより多くの消費者の複数台購入に成功している。1年前には、デバイスを複数持つユーザーの比率はEchoのユーザーがGoogle Homeユーザーのほぼ倍だった。しかしその後Googleは健闘し、2018年末ではEchoユーザーもGoogle Homeユーザーもどちらも、そのほぼ1/3が複数のデバイスを持っている。

しかし、市場調査会社の調査報告の数字は、各社横並びでほぼ同じ、ということはありえない。標本も、調査手法も、各社それぞれに異なる。

たとえばこの秋のStrategy Analyticsの調査報告では、アメリカにおけるAmazon Echoのマーケットシェアが63%、Googleが17%、Apple HomePodが4%だった。

またeMarketerの2019年予測は、Amazon Echoがアメリカ市場の63.3%を獲得し、Google Homeは31%、HomePodやSonosなど‘その他’が12%、としている。

とはいえ、すべての報告書に大書共通する所見は、Amazonの大差でのアメリカ市場の支配だ。差は縮まっているのかもしれないが、なくなる兆しはない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

公式 emoji に障害者、介助犬、ワッフルなどが追加

新しい emoji(絵文字)のセットがUnicodeコンソーシアムで承認された。emojiをサポートしているプラットフォームならどのアプリにも共通の標準になる。今回のセットには、さまざまな障害をもつ人たちや介助犬、アシカなどの新しい動物、食べ物などが入っている。

障害をもつ人々のための新しい emoji がいろいろと加わったが、もちろん完全ではない(学習障害や精神障害を表現するのは難しい)。それでも、新しい emoji へのAppleの提案は、車椅子も電動と手動の両方が必要であることを指摘している。

個々の人たちが利用している支援技術はまちまちで障害のニーズによって異なる。自分で車を動かせないために電動車椅子を使っている人たちにとって、手動車椅子しかないことは現実性に欠ける。手動車椅子を使える人たちにとっては、本来よりも移動能力がないことを暗示することは現実的ではない。このため、2つはまったく別種の支援機器であることが示されるべきである。

例によって、上記の画像はサンプルにすぎない。最終的に使われるデザインは利用するデバイスやサービスに依存する。しかし、これらを提案したのはAppleであり、Appleは emojiの利用が非常に普及しているプラットフォームなので、最終的にもこれとよく似たものを見ることになる可能性が高い。

ほかにも便利そうなものがたくさん追加された。盲導犬と介助犬、アシカとフラミンゴ、ワッフルやバターなどの魅力的な食べ物(これでようやく私の朝食を正確に表現できる)など。サリー、ディヤ(ランプ)、トゥクトゥクなどアジアのユーザーに特に関係の深いものもある。

さまざまな肌の色や性別の人々への対応は、性差を意識させないデザインを含め、数年来検討が進められてきた。性差のない2人が手をつないでいる emoji やさまざまな色のバリエーションが新たに追加された。ほかにもまだ確定していない提案がいくつかあるので、今後もこの種の追加があるはずだ。

新しい emoji の全リストはこちら。コードが確定してお気にいりのメッセージングアプリに追加されるまでには数ヶ月かかるだろう。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Apple、巨額の追徴税をフランスに納付することに

Appleは過去にさかのぼり巨額の追徴税を納付することに同意した。その事実をAFPReutersに対し認めた。L’Expressによると、Appleは5億ユーロ(5億7200万ドル)ほど払うことになりそうだ。この額についてはAFPも確認している。

「フランスの税務当局は、我が社のフランス部門についての数年にわたる監査をこのほど終えた。詳細については社が公表する収支報告書で明らかにする」とAppleはReuterに対し述べた。フランスの当局は守秘義務のため取り扱いについては語ることはできない。

フランスの税務当局がテック企業を調査するのはこれが初めてではない。Amazonは2018年2月にフランス税務当局と和解している。

2016年8月に欧州委員会はAppleが2003年から2014年にかけて不法な税制上の利益を得たと裁定した。他の多くのグローバル企業のように、Appleも欧州で法人税率を下げるために企業構造を変えていたと指摘されていた。

2016年の裁定については当時Appleは全て合法であると主張したが、結局2018年9月に追徴税を支払うことになった。いまエスクロー口座に164億ドル(143億ユーロ)が決済待ちの状態となっている。

今回の追徴税は、Appleはフランスにもっと税金を払うべきだった、というふうに受け取れる。フランス税務当局は過去10年にわたってフランスで生み出された利益にフォーカスして調査を行なった。

先月、フランス政府は、テック大企業がたとえフランス以外の国で収支報告書を出していても課税を始めると発表した。この税はフランスでの売上に対し課せられる。他の欧州の国々も同じ手法を取ることが予想される。

OECDに加盟する127カ国はまた、テック大企業に対する新たな課税ルールを検討している。OECDはそうした企業が事業を展開する全ての国で収支報告をするようにしたい考えだ。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

FacebookとGoogleの調査アプリ問題の要点解説

FacebookとGoogeは、先週、社内専用の証明書を不正に使用したことを突き止めたTechCrunchの2回にわたる調査により、Appleと共に煮え湯に放り込まれることとなった。FacebookとGoogleは証明書を取り消され、終日のアクセス停止措置に追い込まれた。

いったい何が起きたのか、混乱されている方もおいででしょう。ここに、私たちが知っておくべき事件のすべてを解説しよう。

そもそもの始まりと問題の発生

先週の月曜日(日本語版は1月31日)、我々は、企業内の従業員専用であることを条件に、AppleのApp Storeを介さず配布が許されるアプリのための企業向け証明書を、Facebookが悪用していたことを突き止めた。Facebookはその証明書を使って社外にアプリを配布していたのだ。これはAppleの規約に違反する。

このアプリは「Research」という名で知られ、デバイスに出入りするすべてのデータのアクセス権を要求するという、前代未聞のアプリだ。これには、ユーザーがもっとも知られたくない個人的なネットワークデータも含まれる。このアプリをインストールすると、Facebookからユーザー(13歳から19歳の若者を含む)に月20ドルの報酬が支払われる。しかし、実際にどのデータが吸い取られていたのか、またその目的は明らかにされていない。

このアプリは、ユーザーのデータをあまりにも集めすぎるという理由で、昨年、AppleのApp Storeでの配布を実質的に禁止されたアプリの体裁を変えただけのものだと判明した。

App Storeから排除し、二度と開けないように無効にしたアプリを、企業向けとして特別に発行された証明書を悪用し再び配布しているFacebookに、Appleは激怒した。しかしFacebookは、他の従業員専用アプリを使用するために、Appleが証明書を再発行するまで事実上オフラインで、その同じ証明書を使い続けている。

そしてGoogleも、ほぼ同じことをScreenwiseアプリで行なっていたことがわかった。これもまた、Appleによって配布が禁止された

企業向け証明書の何が問題で、それは何をするものなのか?

Apple用のアプリを開発するときは、その規約に従う必要があり、Appleは、開発者からの明示的な同意を得ることになっている。

規約の主眼は、アプリがAppleの入念な審査を経て安全であると確認された証拠として、必ずApp Storeで配布されるようにすることにある。ただし、企業内アプリの開発に関しては例外を設けている。社内目的により従業員のみが使用するアプリの開発は、その限りではない。問題のアプリは、FacebookとGoogleが企業内アプリの開発用として登録し、Appleの開発規約に同意している。

Appleが発行する企業向け証明書は、内部で開発したアプリの配布を許可している。これには、一般に配布するアプリをテストの目的で社内配布することも含まれる。しかし、この証明書では、社外の一般消費者に使わせることは許可されていない。一般のユーザーはApp Storeからダウンローロする決まりになっているからだ。

ルートアクセス権限とな何か、なぜルートアクセスがそんなに問題なのか?

FacebookのResearchもGoogleのScreenwiseも、AppleのApp Stroe以外の場所から配布されていたので、ユーザーは自分の手でインストールする必要があった。これを「サイドローディング」と言う。ユーザーは、煩雑な手順を踏んでアプリをダウンロードし、FacebookでもGoogleでも、企業内開発者のコード署名証明書を開いて信用する旨を伝えて、初めてアプリを実行できる。

どちらの場合も、アプリをインストールした後、さらにもうひとつの設定手順が要求される。いわゆるVPNプロファイルだ。ユーザーのデバイスから流れ出るすべてのデータを、専用のトンネルを使って、どちらのアプリをインストールしたかによってFacebookまたはGoogleに送られることを許可する手続きだ。

ここで、FacebookとGoogleとの違いが現れる。

Googleのアプリは、収集したデータを調査目的でGoogleに転送するが、暗号化されたデータにはアクセスできない。たとえば、HTTPSで保護されたすべてのネットワーク通信でのコンテンツだ。App Storeで配布されているほとんどのアプリもインターネットのウェブサイトも、これによって保護されている。

ところがFacebookは、もっと深く手を入れてくる。スマートフォンの「ルート」レベルのアクセスの自由を許可するための、もう一段階の手続きを要求してくるのだ。Facebook Researchのルートアクセス権限を許可すれば、スマートフォンから発せられる暗号化されたデータもすべてFacebookに開示されることになる。いわゆる「中間者攻撃」だ。これによりFacebookは、私たちのメッセージ、メール、その他スマートフォンから発せられる細かいデータを選り分けることが可能になる。ただし、証明書ピンニング(自分のもの以外の証明書を拒否する)を使用したアプリだけは守られる。Appleの「メッセージ」、Signal、そして終端間の暗号化ソリューションなどがこれに該当する。

Facebook Researchアプリはルート証明書アクセスを求めてくる。これにより、Facebookはスマートフォンから発信されるデータをひとつ残らず回収できる。

 

Googleのアプリは暗号化された通信を覗くことはできないかも知れないが、それでも規約を守っていないため、単独に所有していた企業向け開発コード署名証明書は無効にされた。

FacebookはiOSのどのデータにアクセスしていたのか?

それを確かめるのは難しいが、Googleよりも多くのデータにアクセスしていたことは確かだ。

Facebookでは、そのアプリは「人々がモバイルデバイスをどのように使っているかを理解する」ことを助けるものと話していた。実際、ルートレベルでは、スマートフォンから発信されるあらゆるデータにアクセスできたはずだ。

我々の記事に協力してくれたセキュリティー専門家のWill Strafachは、こう話している。「もしFacebookが、ユーザーに要求した証明書の効力で最大レベルのアクセスを可能にした場合、次のようなデータを継続的に収集できるようになります。ソーシャルメディア・アプリでのプライベートなメッセージ、インスタントメッセージ・アプリでのチャット(互いにやりとりした写真や動画も含まれる)、電子メール、ウェブ検索、ウェブ閲覧行動、位置情報を追跡するアプリがいずれかでもインストールしてあれば、そこからリアルタイムの位置情報もわかります」

注意して欲しいのは、ここで話しているのは「脱獄」によるスマートフォンのルートアクセスなどとは違う。ネットワーク通信のルートアクセスだ。

これらが一般の市場調査と技術的に異なる点は何か?

公平を期して言うなら、市場調査アプリを使っているのはFacebookやGoogleだけではない。NielsenやcomScoreといった企業も同様の調査を行なっている。しかし、VPNをインストールさせたり、ネットワークのルートアクセスの許可を求めるような企業はない。

いずれにせよ、Facebookはすでに私たちのデータをたんまり集めている。Googleもしかり。これらの企業が、他の人たちとのやりとりに関するデータだけを知りたいだけであったとしても、誰と話しているのか、何を話しているかを集中的に聞き出そうと思えばできる。しかし、いくつものセキュリティー上の問題や個人情報漏洩などの事件を起こして爆発的なスキャンダルとなったにも関わらず、去年はその対処にぜんぜん力を入れてこなかったFacebookにとっては、大きな問題ではないのかも知れない。

Facebookスキャンダルへの今年の対応に「満足」するMark Zuckerberg(本文は英語)

スマートフォンの持ち主が話す相手のデータも回収されるのか?

FacebookもGoogleも可能だ。Googleの場合、相手のデータも含め、暗号化されていないものは回収できたはずだ。Facebookの場合はさらに強力だ。他の人と交わしたあらゆるデータがFacebookのアプリによって回収された可能性がある。

どれくらいの人が影響を受けたのか?

はっきりとはわからない。GoogleもFacebookも、ユーザーの数については明らかにしていないからだ。両方で数千人程度だろうと思われる。アプリの停止の影響を受けた従業員は、Facebookで3万5000人以上、Googleで9万4000人以上だ。

Appleが証明書を無効にしたとき、FacebookとGoogleの社内用アプリが使えなくなったのはなぜか?

Appleのデバイスは、誰が持っていようとAppleがコントロールできるようになっている。

Appleは、Facebookのルート証明書には手が出せないが、Appleが発行した企業向け証明書は操作が利く。Facebookの活動が露呈した後にAppleはこう言っている。「企業向け証明書を使って開発されたアプリを消費者に配布すれば、例外なく証明書は無効になります。私たちのユーザーとそのデータを守るために、私たちはそれを履行しました」。つまり、Facebookの企業向け証明書に基づくあらゆるアプリ(社内で使用していたものも含め)が、ロードできなくなるということだ。これは、Facebookの公開前のビルド、開発中のInetagramやWhatsAppに止まらない。同社の旅行アプリや協働アプリも使えなくなったと報告されている。Googleの場合は、仕出しやランチのメニューアプリもダウンしたという。

Facebookの社内アプリは、およそ1日ダウンしていた。Googleの社内アプリが止まっていたのは数時間だ。しかし、FacebookもGoogleも、一般向けのサービスに影響はなかった。

この件を通して人々はAppleをどう見ているか?

現在、FacebookとGoogleを大歓迎している人はいないようだが、Appleもあまり良くは思われていない。Appleは、ハードウエアを販売しても、ユーザーの個人情報を集めたり、それを広告に利用したりはしない。それはFacebookやGoogleと違うところだ。しかし、Apple製品を使う消費者や企業に対するAppleの権力の大きさを不快に思う人たちがいる。

FacebookとGoogleの企業向け証明書の失効と、それによるアプリの機能停止は、Apple内部にも悪影響が伝搬した。

アメリカでは合法なのか? ヨーロッパのGDPRではどうなのか?

少なくともユーザーの同意を得ているので、アメリカ国内では合法だと、Facebookは言っている。さらに、13歳から19歳のユーザーは保護者の同意が必要だと同社は主張しているが、それは簡単に偽装できるし、検証もされていない。しかも、実際にどれだけの個人情報が吸い取られるのかを、同意した子どもたちが完全に理解しているかを確かめる方法がないことも、まったくもって明らかだ。

子どもの同意を浮き彫りにしたFacebookのVPNアプリ(本文は英語)

これは、規制上の頭の痛い問題に発展しかねない。「ヨーロッパの子どもたちがFacebookの調査に参加したとすると、ヨーロッパの一般データ保護規制(GDPR)から、また別の猛攻撃を受けることになる。さらに、その地区のプライバシー制度に定められた『プライバシーバイデザイン』の条件にそぐわず、受け入れられないと地元当局が判断すれば、多額の罰金が課せられる」とTechCrunchのNatasha Lomasは書いている。

証明書の不正利用者は他にいないか?

この問題の当事者はFacebookとGoogleだけだなどと思ってはいけない。規約に違反している企業がたくさんあることが判明している。

ソーシャルメディアで見受けられるそうした企業には、ベータプログラムに企業向け証明書を使っているSonos、同じことをしている金融アプリのBinance契約者の車両のためのアプリに利用しているDoorDashなどがある。これらの企業の企業向け証明書もAppleが無効にするかどうかは定かではない。

次はどうなる?

誰でも想像できることだが、こうした問題が今すぐ解決するとは思えない。

Facebookはヨーロッパでだけでなく、家庭でも反発を食らうだろう。Mark WarnerとRichard Blumenthalの2人の米国上院議員は、「十代の若者を盗聴した」として、すでにFacebook糾弾の呼びかけを行っている。Blumenthalの主張が通れば、米連邦取引委員会も調査を始めるだろう。

Warner上院議員はZuckerbergに市場調査のルールに従うよう要求(本文は英語)

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(翻訳:金井哲夫)

Apple、スパイ活動制裁の後Facebookの社内アプリを復活

Appleは制裁措置としてソーシャルネットワークの企業証明書を無効化した。無効化されたのはFacebookのResearchアプリだけでなく、職場コラボレーション、ベータテスト、さらにはランチメニューやバスの時刻アプリなど、社内iOSアプリすべてが使えなくなった。その結果昨日の午前Facebookのオフィスはカオスになった。そして今日、AppleはFacebookのお仕置きを解き、企業証明書を復活させた。これで社員たちはすべてのオフィスツールとFacebook, Instagramの公開前テストバージョンを再び利用できるようになった。ランチメニューも。

Facebook広報はTechCrunch宛に以下の声明を発行した:「当社は企業証明書を取得し、社内アプリケーションの有効化が可能になった。現在社内アプリを実行するプロセスを進めているところだ。なお、本件は当社の消費者向けサービスには影響を与えていないことを念の為付け加える」

一方、TechCrunchのフォローアップ記事によると、Googleもユーザーに金を払って利用状況をのぞき見するScreenwise Meterと呼ばれる「市場調査」VPNアプリで、 規約違反していた。本誌がGoogleとAppleに情報を伝えたところ、Googleは直ちに謝罪してアプリを削除した。しかし、おそらく一貫性を保つために、昨日AppleはGoogleの証明書を無効化し、社内向けiOSアプリの動作を停止させた

Googleの社内アプリは現在も停止している。大量の社員がiOSを使っているFacebookと異なり、Googleには自社製Androidプラットフォームを利用しているユーザーが数多くいるため、動作停止による問題はマウンテンビューの方がメンロパークよりも小さいかもしれない。「現在Appleと協力して一部の社内iOSアプリの一時的中断を修正中であり、まもなく解決する見込みだ」とGoogle広報は言った。Appleの広報担当者は次のように語った、「現在われわれはGoogleが企業向け証明書を一刻も早く回復できるよう協力して作業している」。

TechCrunchの調査によると、Facebook Researchアプリは、ユーザーの端末に企業証明書とデータ収集を可能にするVPNをインストールするだけでなく、Facebookが通信に介入したり暗号解除まで可能にするルートネットワークアクセスも要求していた。同社は13~35歳のユーザーに月額10~20ドルを支払ってアプリを実行させることで、買収あるいは模倣すべき相手を知るための競合情報を集めようとしていた。Facebook ResearchアプリにはOnavo Pretechに関するコードが多量に含まれていた。これは昨年8月にAppleが禁止してFacebookに回収を求めたアプリだが、Facebookはその後もデータ収集を継続していた。

本誌が最初にFacebookに問い合わせた時、同社はResearchアプリもAppleの監視をかいくぐった企業証明書もAppleの規約に沿っていると主張した。7時間後、FacebookはResearchアプリのiOS版を停止すると発表した(Android版は規則が緩いため現在も動作中)。またFacebookはこの件に関して「一切秘密はない」と言って本誌記事の論調に異論を述べた。しかし、その後TechCrunchは、Facebook Researchプログラムが、ユーザーがアプリについて口外すると法的措置をとると脅していたことを証明する会話を発見した。われわれにはかなりの「秘密」に思える。

そして昨日(米国時間1/31)の午前、Facebookは自発的にアプリを引き上げたのではなく、すでにAppleがFacebookの企業証明書を無効化していたため、Researchアプリや社内ツールが使用不能だったことがわかった。Appleの以下の厳しい声明を発表し、今日それがGoogleにも適用された。

当社は企業デベロッパープログラムを組織内でアプリを社内配布することのみを目的として制定した。Facebookはこの資格を利用して、データ収集アプリを消費者に配布していた。これはAppleとの契約の明確な違反である。企業証明書を使って消費者にアプリを配布したデベロッパーは誰であれ証明書を剥奪される。当社はわれわれのユーザーとそのデータを保護するために、本件でもそれを実行した。

AppleはFacebookどGoogleを監視するプライバシー規制自警団のようだ、とThe VergeのCasey NewtonThe New York TimesのKevin Rooseは書いている。いずれも競合相手であることを踏まえると過大な権力といえるかもしれない。しかしこのケースでFacebookとGoogleは、ティーンエージャーを含むiOSユーザーのデータを大量に収集するために、Appleの規約をあからさまに破っている。これはAppleにそれらの市場調査アプリを停止する合理的理由があることを意味している。社員用アプリを停止したことも、同じ企業証明書を利用していたための巻き添え被害ともいえるし、規約違反に対する付加刑と見ることもできる。問題になるとすれば、Appleが規約の境界を逸脱したときだ。しかし今のところ、人々の目はAppleがどのように規則を適用するのかに集まっている。それがユーザーのためであれ、ライバルを叩くためであれ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Apple、Googleの証明書乱用を受け社内iOSアプリを使用禁止に

Appleは、Googleが社内向けiOSアプリを企業ネットワーク上で配布することを禁止した。TechCrunchの調査によって検索の巨人による認証乱用が発覚したためだ。

「現在Appleと協力して一部の社内iOSアプリの一時的中断を修正中であり、まもなく解決する見込みだ」とGoogle広報は言った。Appleの広報担当者は次のように語った、「現在われわれはGoogleが企業向け証明書を一刻も早く回復できるよう協力して作業している」。

TechCrunchは1月30日の記事で、Googleがスタッフ向け社内アプリを開発するためにAppleから発行された証明書を、Screenwise Meterという消費者向けアプリに使用してAppleの規約に違反していることを報じた。そのアプリは、ユーザーのiPhoneから大量のデータを調査目的で収集するために作られていたが、特別な証明書を使うことで、GoogleはユーザーがAppleのApp Storeを回避することを可能にしていた。その後Googleは謝罪し、そのアプリは「Appleのデベロッパー・エンタープライズ・プログラムの下で運用されるべきではなかった。これは間違いだった」と語った。

本件は、今週本誌が報じたFacebookも調査アプリで社内専用証明書を乱用していた(若者に金を払ってウェブ利用状況を吸い上げていた)案件に続くものだ。

これがGoogleにどれほどのダメージを与えるのか現時点では明らかになっていない。Screenwise MeterがiPhoneで使えなくなるだけでなく、検索の巨人が証明書に頼っているあらゆるアプリに影響を及ぼすことを意味している。

The Vergeによると、多くのGoogle社内アプリも動作を停止している。これは、Googleマップ、Hangouts、Gmailなど消費者向けアプリの初期あるいはプレリリース版や、通勤アプリなどの社員専用アプリも動作しなくなるということだ。

FacebookもAppleの介入後に同様の非難を浴びた。本誌は、Appleの中止命令が下された後、FacebookとInstagramアプリの未公開版やテスト専用版の多くが動作しなくなったことを報じた。その他のオフィス・コラボレーション、トラベル、社員食堂メニューなどの社員専用アプリも同様だった。消費者がAppleのApp Storeからダウンロードしたアプリが影響を受けることはない。

Facebookには3万5000人以上、Googleには9万4000人以上の社員がいる。

Appleが新たな「社内専用証明書」をいつ(果たして?)発行するのかは不明だが、新たに、より厳格なルールが付加されることはまず間違いない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

若者に金を払い彼らをスパイするアプリをインストールさせるFacebook

競合他社のデータが欲しくてたまらないFacebookは、内密に人々に金を払い、Facebook ResearchというVPN(仮想プライベートネットワーク)をインストールさせていた。ユーザーのスマートフォンやウェブでの活動情報をすべて吸い上げるというものだ。これは、Appleによって6月に禁止され、8月に排除されたFacebookのOnavo Protectアプリとよく似ている。そこでFacebookはApp Storeから離れ、ティーンエイジャーや大人たちに報酬を支払ってResearchアプリをダウンロードさせるようになった。Facebookはこのアプリにルート権限を持たせ、おそらくAppleの規約に違反して、スマートフォンを使ったユーザーの活動の暗号解読と解析を行っていることがTechCrunchの調査で確認された。FacebookはTechCrunchに対して、Researchプログラムでユーザーの行動に関するデータを集めていたことを認めたが、止めるつもりはないとも話している。

2016年より、Facebookは、13歳から30歳までのユーザーに最大で月20ドルと紹介料を支払い、iOSまたはAndroid版の「Facebook Research」アプリをインストールさせて、彼らの個人情報を買い取っていた。Facebookは、Amazonの購入履歴のスクリーンショットの提出も要求していた。この計画は、ベータテストを請け負うApplause、BetaBound、uTestといった企業を通して運営され、Facebookの関与は隠されていた。一部の資料では、計画名が「プロジェクト・アトラス」とされていて、世界の流行やライバルをマッピングしようとするFacebookの思惑を見事に表現している。

我々が、Guardian Mobile Firewallのセキュリティー専門家であるWill StrafachにFacebook Researchアプリの解析を依頼したところ、彼はこう教えてくれた。「もしFacebookが、ユーザーにCertificate(証明書)のインストールを要求して、最高レベルまでアクセスを可能にした場合、次のようなデータを継続的に収集できるようになります。ソーシャルメディア・アプリでのプライベートなメッセージ、インスタントメッセージ・アプリでのチャット(互いにやりとりした写真や動画も含まれる)、電子メール、ウェブ検索、ウェブ閲覧、位置情報を追跡するアプリがいずれかでもインストールしてあれば、そこからリアルタイムの位置情報もわかります」 。この中でFacebookが本当に欲しい情報がどれなのかは不明だが、このアプリをインストールさせれば、ほぼ無制限にユーザーのデバイスにアクセスできるようになる。

この戦略から、Facebookが、その拠り所であるAppleのiOSプラットフォームの規約を破ってまでして、どこへ行こうとしているのか、また今の独占状態を保つためにどれだけ支払う気があるのかが見てとれる。Appleは、FacebookにResearchアプリの配布を止めさせる手段を講じたり、社内使用限定アプリの提供許可を取り消すなどしてきたが、両者の関係はどんどん悪化する恐れがある。AppleのTim Cookは、Facebookのデータ収集活動を再三批判してきた。iOSの規約に従わず、さらなる情報を吸い上げ続けるFacebookの問題は、新しい段階に入ろうとしている。TechCrunchは、この問題の認識についてAppleにコメントを求めたのだが、記者発表の前に話を聞くことはできなかった。

「とても専門的に聞こえますが、『私たちのRoot Certificate(ルート証明書)をインストールしてください』というステップにはゾッとします」とStrafachは私たちに話した。「これにより、Facebookは私たちのもっともセンシティブなデータに継続的にアクセスできるようになります。そしてほとんどのユーザーは、同意書にサインはしても、これに本当の意味で同意することはできません。同意した時点で、どれだけの権限をFacebookに譲り渡すのか、はっきりとわかる方法がないからです」

Facebookの調査アプリ

Facebookがデータを嗅ぎ回るビジネスを開始したのは、2014年に1200万ドル(約13億円)でOnavoを買収したときからだ。そのVPNアプリによって、ユーザーはモバイル機器のデータプランの利用状況を確認し節約することが可能になったのだが、同時に、ユーザーがどのようなアプリを使っているかという深いところまで解析する権利をFacebookに与えてしまった。BuzzFeed NewsのCharlie WarzelとRyan Macが入手した内部資料によれば、Facebookは、WhatsAppから1日に発信されるメッセージの量がFacebookのMessengerの2倍であることをOnavoを使うことで知ったという。OnavoはFacebookに、急速に成長するすスタートアップWhatsAppの存在を知らせ、2014年に同社を190億ドル(約2兆754億円)で買収する理由を与えた。それによりWhatsAppのユーザー基盤は3倍になり、Onavoはその優れた先見性を示すこととなった。

それから数年間、OnavoはFacebookに、どのアプリを真似するべきか、どのような機能を作り、どんな失敗を避けるべきかを提言してきた。2018年までFacebookは、メインのFacebookアプリのProtect」ボタンでOnavo Protectアプリを推奨し、情報源となるユーザーを増やそうとしていた。さらにFacebookは、監視中にパスコードや指紋でアプリをロックするOnavoのBolt App Lockアプリの配布を開始したが、プライバシー上の批判を受けてすぐに取り下げている。Onavoのメインのアプリは、今でもGoogle Playにあり、1000万回以上ダウンロードされている。

3月、ユーザーが画面をオンオフしたこと、またVPNがオフのときでもWi-Fiとスマートフォンのバイト単位のデータ利用状況をOnavo ProtectがどのようにFacebookに報告しているかをセキュリティーの専門家Strafachが詳しく解説すると、大きな反動が起きた。6月、Appleは開発者向けの規約を改定し、他のアプリの利用状況や、自身のアプリの機能とは関係のないユーザーの情報の収集を禁じた。8月、Appleは、Onavo Protectがデータ収集に関する規約に違反していること、そしてApp Storeでの配布を止めるようFacebookに伝え、Facebookはそれに従ったと、WSJのDeepa Seetharamanは伝えている。

しかし、それでもFacebookのデータ収集は終わらなかった。

プロジェクト・アトラス

TechCrunchがこのほど入手した情報から、Onavo ProtectがApp Storeから追い出されても、Facebookは似たようなVPNアプリを「Facebook Research」という別名で、ユーザーに報酬を支払う形でApp Storeとは別のところから配布していることがわかった。我々の調査で判明したのは、BetaBound、uTest、Applauseというベータテストを請け負う3つの企業に依頼して、FacebookがResearchアプリを配布しているということだ。Facebookは、2016年にResearch VPNアプリの配布を開始している。これは2018年中ごろから「プロジェクト・アトラス」と呼ばれるようになった。ちょうど、Onavo Protectの問題が騒がれ、AppleがOnavoを締め出すために規約を改定した時期だ。しかしFacebookは、一般ユーザーのスマートフォンの使用状況に関するデータの収集をあきらることはなく、Onavo ProtectがAppleによって排除された後も、Research計画を継続した。

uTestが運営するプログラムのInstagramとSnapchatの広告(下の写真)は、「有償ソーシャルメディア調査」と称して13歳から17歳の若者に参加を訴えかけている。Applauseが管理するFacebook Researchの申し込みページでは、Facebookの名前は出てこないが、「対象年齢:13-35(13-17歳の方は保護者の同意が必要です)」のユーザーを求めている。未成年者が申し込もうとすると、保護者の同意書の記入フォームが表示され、そこにはFacebookの関与がこう記されている。「当プロジェクトに参加することによるリスクは報告されてませんが、当プロジェクト固有の性質上、お子様がアプリをご使用になる際に個人情報が追跡されることをご理解ください。お子様のご参加には、Applauseより報酬をお支払いいたします」。お金が欲しい子どもたちは、報酬と聞けば自分のプライバシーをFacebookに売ってもいいと思うだろう。

Applauseのサイトでは、Facebook Researchアプリによって収集される可能性のあるデータの種類が次のように説明されている(私に該当する部分は太字にしてある)。

「このソフトウエアをインストールすることにより、あなたは私たちの依頼主に、あなたの携帯端末から収集したデータ、および、携帯端末にインストールしているアプリの機能の利用状況に関する情報の提供を許可したものとみなします。……つまり、あなたは以下のような情報の収集を、私たちの依頼主に許可します。あなたの携帯端末に入っているアプリは何か、いつどのようにそれを使っているか、あなたの利用状況およびそのアプリに含まれるコンテンツに関するデータ、それらのアプリを通じて、他の人たちがどのようにあなたやあなたのコンテンツに関わっているか。また、あなたは私たちの依頼主に、インターネットでの閲覧状況(どのウェブサイトを見たか、そして、あなたのデバイスとそれらのウェブサイトとの間で交わされたデータを含む)と、他のオンラインサービスの利用状況に関する情報の収集も許可することになります。私たちの依頼主は、アプリが暗号化されているとき、または保護されたブラウザーの利用中でも、これらの情報を収集することがあります

一方、URLの最後に「Atlas」と付いているBetaBoundの申し込みページでは、「アプリをあなたの携帯端末にインストールしてバックグラウンドで実行すると、1カ月に20ドル(eギフトカード)が支払われます」と説明されている。このサイトでも、最初にFacebookの名前は出てこないが、Facebook Researchのインストール説明書でFacebookの関与がわかる。

Facebookは、Appleの審査が必要で、参加者が1万人に限定されるApple公認のベータテスト・システムTestFlightは意図的に避けているようだ。その代りに、説明書では、ユーザーはアプリを「r.facebook-program.com」からダウンロードし、Enterprise Developer Certificate(企業向け開発者証明書)とVPNをインストールして、ユーザーのスマートフォンにFacebookがルートアクセスすることに加えて、大量のデータ転送を許可してFacebookを「信頼する」ことになっている。Appleでは、従業員に向けた社内用アプリの配布にのみこの証明書システムを使うよう、開発者に同意を求めている。テスターを無作為に募り、月額で報酬を支払うというのは、この規約の精神に反する。

インストールしても、VPNを常に実行状態にして、Facebookにデータを送り続けなければユーザーは報酬を受け取れない。Applauseが管理するプログラムでは、ユーザーのAmazonの注文履歴のスクリーンショットの提出も求めてくる。Facebookはこのデータを使って、ユーザーのネット閲覧の習慣とアプリの利用状況を、買い物の好みや買い方にが結びつけることができる。その情報は、ターゲットを絞ったピンポイントの広告を打ったり、どんなタイプのユーザーが何を買うのかを知る役に立つ。

TechCrunchは、Facebook Researchアプリの解析と、データの送り先の特定をStrafachに依頼した。彼は、データがOnavoのIPアドレスに関連付けられた「vpn-sjc1.v.facebook-program.com」にルーティングされていることを確認した。さらに、MarkMonitorによると、このfacebook-program.comドメインはFacebookに登録されているという。このアプリは、App Storeを介さなくても自動的に更新され、PeopleJourney@fb.comへのメールアドレスがリンクされている。さらに、企業向け証明書は、2018年6月27日にFacebookによって更新されていることをStrafachが突き止めた。これは、同類のOnavo ProtectアプリをAppleが禁止すると発表した数週間後だ。

「Facebookが実際にどのデータを(彼らのサーバーにアクセスせずに)保存しているかを探るのは困難です。今わかっている唯一の情報は、アプリのコードに基づいてFacebookが何にアクセスできるかだけです。それを見ると、とても不安になります」とStrafachは言う。「彼らの返答や主張によると、非常に限られた一部のデータのみを留め、または保存しているとのことです。それは本当かも知れません。どれだけFacebookの言葉を信じるかによりますが。この状況を、できる限り大目に見るなら、Facebookは自分たちに許しているアクセス権限の大きさを、あまり深く考えていないということになります。……もしそうであれば、衝撃的なまでに無責任な話です」

Appleの規約に対する目に余る反抗

TechCrunchの質問にFacebookの広報担当者は、これは人々がどのようにスマートフォンや他社のサービスを使っているかを調査するプログラムだと答えた。広報担当者はこう話している。「他の企業と同じように、私たちも事業の改善に役立つものを特定するために、人々に調査への協力をお願いしています。この調査は、人々がモバイル機器をどのように使っているかをFacebookが知るためのものなので、私たちがどのようなタイプのデータを収集するか、そしてどのように参加していただけるかに関する情報を、できる限り多く提供しています。ここで得られた情報を他者に漏らすことはありません。また、参加者はいつでも脱退できます」

Facebookの広報担当者は、Facebook ResearchアプリはAppleの企業向け証明書プログラムに準拠していると主張している。その逆であることを示す証拠を提示しても、弁解はなかった。彼らによると、Facebookが最初のResearchアプリを公開したのは2016年とのこと。このプログラムはフォーカスグループと同じだとの論を展開し、NielsenやcomScoreも同じことをしていると彼らは主張したが、NielsenもcomScoreも、VPNのインストールやルートアクセス権を求めたりしない。Facebook Researchプログラムは、たしかにティーンエイジャーを募っているが、世界中の他の年代の人々も募っていると広報担当者は語る。OnavoとFacebook Researchとは別物だと言うが、コードがそっくりだとの指摘に対して、どちらも同じ部署が担当ているからだと認めた。

Facebookは、Appleの企業向け証明書の規約には違反していないと言うが、規約の条件には真っ向から矛盾している。規約によれば、開発者は「プロビジョニング・プロファイルは貴社従業員の間でのみ、また開発およびテストの目的により社内で使用するアプリケーションと連結されている場合のみ配布できる」ことになっている。さらに「貴社の顧客に対して使用、配布、またはその他の形で提供してはならない」となっている。ただし、従業員の直接の管理下、あるいは会社の敷地内であればその限りではない。Facebookの顧客は、企業向け証明書に裏付けされたアプリを従業員が管理していない状況で使わせているので、Facebookが違反しているのは明らかだ。

Facebookは、これほどあからさまにAppleに反抗すれば、両社の関係は傷ついてしまう。「このiOSアプリに含まれるコードは、禁止されたOnavoアプリの単なる稚拙な焼き直しであることを強く示していて、Facebookは、Appleの規約に直接違反するFacebook所有の企業向け証明書を使い、このアプリをAppleの審査を受けないまま、好きなだけ多くの人に配布しています」とStrafachは我々に話した。ONVというプレフィックスと「graph.onavo.com」というメンション、そして「onavoApp://」や「onavoProtect://」というカスタムURLを使う手法で、彼らはアプリをばら撒いている。「これはいろいろな意味で甚だしい違反です。Appleは、署名した証明書を無効にして、このアプリを使えなくするために迅速に行動してくれるよう望みます」

ティーンエイジャーがソーシャルネットワークを離れ、SnapchatやYouTubeやFacebookが買収したInstagramに流れていく今、その年代がスマートフォンで何をしているのかは、Facebookが大いに知りたいところだ。中国の動画音楽アプリTikTokの人気の秘密と、そこでシェアされている話題(ミーム)を研究したFacebookは、Lassoというクローンアプリを立ち上げ、LOLというミームをブラウズする機能を開発していたことは、TechCrunchが最初に伝えている。しかし、Facebookがメディアで散々な批判を受けている最中も、ティーンエイジャーのデータを欲しがる同社に批評家たちはイライラを募らせている。明日のFacebookの収支報告会では、重要な情報を収集できる別の方法はないのかと、アナリストたちは質問すべきだ。

昨年、Tim Cookは、もしCambridge Analyticaスキャンダルの渦中にいるMark Zuckerbergの立場に立たされたらどうするかと聞かれたとき、こう答えている。「私は、そんな状況は決して招きません。……実際、お客様を金に替えれば、またはお客様が私たちの製品だったら、莫大な利益が得られます。私たちは、それをしないために任命されています」。ZuckerbergはジャーナリストのEzra Kleinに、Cookのコメントに対する感想として「まったく口先だけだ」と話している。

Appleが警告を発しても、Onavo Protectを排除しても、Facebookはそれでも貪欲にAppleのiOSプラットフォームを使って競合他社のデータを集めまくっている。「App Storeの開発者で、これほどあからさまなAppleの規約違反を見たことがありません」と、Strafachは締めくくった。AppleがResearchプログラムを排除しても、Facebookは、このプライバシーにうるさい状況下でまた別の方法で我々の行動を調査するか、あるいは闇に消えるかするだろう。

追加取材:Zack Whittaker

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(翻訳:金井哲夫)