コンシューマー向けプロダクトの成功に欠かせないネットワーク効果

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【編集部注】本記事はBattery Venturesに勤めるRoger Lee(ジェネラルパートナー)、Jeff Lu(ヴァイスプレジデント)、Deepak Ravichandran(アソシエイト)によって共同執筆された。

各分野でトップのシェアを握り、「カテゴリーキング」と呼ばれる企業が、そこまで厳しい競争にさらされているわけでもないのに、市場価値の大部分を生み出しているというケースが多く見られる。テック業界ではこの傾向が顕著で、ある調査によれば業界全体が生み出す価値のうち、70%をカテゴリーキング(小売のAmazon、ソーシャルメディアのFacebookなど)がつくりだしているとさえ言われている。

さらに私たちが最近行った調査では、カテゴリーキングによって創出された価値の6分の5が、「ネットワーク効果」を利用したビジネスによって生み出されていることがわかった(この考察は、当初Play Bigger Advisorsのコンサルタントによってまとめられた調査を、私たちが2016年12月31日時点の数値を使ってアップデートした結果得られたものだ)。なおネットワーク効果とは、利用者が増えるほど、その製品やサービスの利便性が高まることを指す。

また、ネットワーク効果についてもっと深く分析したところ、ネットワーク効果の持つ力はさまざまな観点で、私たちの想像を超えるものであることが判明した。ネットワーク効果は、販促活動の効果を高めたり、参入障壁を作ったりするだけでなく、ユーザー数の急増と共にカテゴリーキングの爆発的な成長を支えているということがわかったのだ。

AirbnbやUber、Snapなど今後12〜18ヶ月中のIPOも噂されている(既にSnapは上場を発表した)、ネットワーク効果を有効活用した企業は、それぞれの分野で自分たちがつくり上げた「勝者独り勝ち」の市場をほぼ独占している。

彼らが成功を収め、その名が世に広まっていくにつれ、私たちはコンシューマーテクノロジー市場の中でも、特にカテゴリーキングが持つネットワーク効果の価値を数値化してみたいと考えるようになった。その結果生まれたのが、Battery Ventures Network-Effect Index(詳細はウェブサイト参照)だ。この指数や関連データからは、ネットワーク効果に突き動かされている経済への洞察が得られると私たちは信じている。

ネットワーク効果を生み出すのにこれまで有効だった手段が、明日には通用しなくなるかもしれない。

そもそもBattery Ventures Network-Effect Index(BNI)とは、次の条件を満たす36社の時価総額/評価額を加重平均したものだ。1)現在上場中もしくは過去に上場していた 2)2016年12月31日時点で10億ドル以上の時価総額/評価額を記録していた 3)ビジネスモデルの全体もしくは一部にネットワーク効果が利用されている 4)コンシューマー向けネット企業。以下のチャートからわかる通り、BNIに含まれる企業の株価は過去5年間に全体で161%も伸びており、S&P 500を84%、テック系企業の多いナスダック総合指数を60%も上回っている。つまり、2011年の時点でBNIに含まれる企業群へ1000ドル投資していれば、そのお金が今では2606ドルになっているという計算になる。

さらにBNIに含まれる企業の評価総額は1兆800億ドルに及び、設立からIPOまでにかかった期間の平均は8年だった。これに対し、ベンチャーキャピタルから資金調達を行ったスタートアップ全体を対象にした場合のIPOまでの平均期間は11年だった。

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各月の値は、調査会社CapitalIQが公開しているデータをもとに算出されており、Y軸の数字は全体の時価総額/評価額の伸び率を表している。

以下がBNIに含まれている36社だ。

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印(*)のついている企業は、これまでにBattery Venturesが投資したことのある企業を表している。併記されている金額は、2016年12月31日時点での時価総額。買収の結果、非上場企業になったHomeAway、OpenTable、Kayak、Truliaについては買収額を記載している。

さらにBNIの企業は、以下の3つのカテゴリーにわけることができる。

  • 決済型マーケットプレイス:売り主と買い主が出会い、モノやサービスの売買が行われるプラットフォーム。旅行サイトのPriceline、フードデリバリーのGrubHub、中国のECサイトAlibabaなどが含まれる。
  • 広告型マーケットプレイス:このカテゴリーに含まれるZillow、Yelp、TripAdvisorなどは、消費者に対しては無料でサービスを提供しているが、売り主(不動産業者、クリーニング店、ホテルなど)から広告掲載の対価を受け取っている。
  • ソーシャル・ネットワーク:Facebook、Snapchat、WhatsAppなどがこのカテゴリーの代表的な企業として挙げられる。

そして下のチャートが、過去5年間の時価総額/評価額の推移をカテゴリー別に示したものだ。

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各月の値は、調査会社CapitalIQが公開しているデータをもとに算出されており、Y軸の数字は全体の時価総額/評価額の伸び率を表している。

FacebookやTencent、LinkedInといったサービスの成長をうけ、予想通りソーシャル・ネットワークのパフォーマンスが突出しており、過去5年間の伸び率は254%を記録している。広告型マーケットプレイスの成長率が他の指数を上回り、決済型マーケットプレイスにも勝っているのはなかなか興味深い。広告型マーケットプレイスの時価総額/評価額の伸び率は、S&P 500を57%、ナスダック総合指数を32%上回っており、ネットワーク効果によって彼らは株式公開後も成長し続けていたことを示唆している。

その他にも、私たちの調査から以下のような高次元の洞察を得ることができた。

市場規模の重要性 コンシューマー向け決済型マーケットプレイスは、狙っている市場の規模が500億ドル以上でないと爆発的な成長スピードに達しないことがわかっている。10億ドルの規模を持つターゲット市場というだけでも、スタートアップのピッチ上はまずまずなように感じられる。しかしBNIに含まれるコンシューマー向けマーケットプレイスを運営する企業は、10億ドル以上の評価額を達成するために、最大で500億ドル以上の規模になりえる市場を狙わなければならなかったのだ。

しかし、各企業は最初から大きな市場を狙っていたわけではない。HomeAwayは別荘、OpenTableはレストラン予約、Uberは黒塗りのタクシーというニッチな市場からそれぞれのビジネスをはじめた。その後ビジネスが成長するにつれて、彼らは既存の市場に近い市場へと進出していき、最終的にTAM(Total Addressable Market:狙いうる最大の市場規模)が500億ドルを超えたのだ。

一方TAMに関するルールは、カテゴリーによって変わってくる。私たちが調査対象として選んだソーシャル・ネットワークは、ほとんど需要に際限がないような巨大な市場(消費者全員)を相手にしている。対照的に広告型マーケットプレイスは、決済型マーケットプレイスが狙っている市場の小集団にあたるような、比較的小さな市場を相手にしている。

大きな市場を開拓するための方法のひとつが、既存の市場に隠れている「影の市場」をみつけだすということだ。

例えば、オンラインレビューサイトのYelpは飲食店をターゲットにしているが、同社の収益は広告を掲載したいと考えている各地域の飲食店によってもたらされている。つまりYelp自体は飲食サービスのやりとりには関わっていないため、同社が狙っている市場が飲食業界全体に占める割合は小さい。一方、レストランメニューの配達サービスを行っているGrubHubは、全ての注文から手数料をとっている(私たちはこちらの方が優れたビジネスモデルだと考えている)ため、飲食ビジネスの流れに食い込んだビジネスを展開していると言える。

そのため、Yelpは準独占的な立場にいて、GrubHubは厳しい競争にさらされているにも関わらず、両社の時価総額はほぼ同じ水準にあるのだ。Zillow(不動産)やTripAdvisor(旅行)のように、広告型マーケットプレイスのモデルで、高いパフォーマンスを誇るビジネスを生み出すことは今でも可能だが、そのためにはかなり規模の大きなカテゴリーで魅力あるサービスを売っていかなければならない。

  • 「影の市場」をみつける 大きな市場を開拓するための方法のひとつが、既存の市場に隠れている「影の市場」をみつけだすということだ。AirbnbとUberがその典型例だ。誰が空き部屋をホテルに、自家用車をタクシーに使えると思っていただろうか?彼らは当時まだ発掘されていなかった需要と供給をみつけだし、魔法のように新しい経済行動を消費者に植え付けることに成功したのだ。そして当然のように、この分野の企業は現在自らの功績の恩恵にあずかっている。BNIには含まれていないが、この分野で今後活躍が期待される企業としては、ペットシッター検索サービスのRoverや、スポットコンサルティングサービスのCatalantなどが挙げられる。

小規模な市場を狙っている企業でも、独占状態さえ築くことができれば、何十億ドルという評価額も夢ではない。GrubHubのイギリス・ヨーロッパ版にあたるJust Eatや、Zillowのオーストラリア版にあたるREA Groupは、小規模市場を席巻することで、今の地位につくことができている。

ビジネスモデルを考えるときには需給分析をしっかりと行う コンシューマー向けのマーケットプレイスで、10億ドルを超えるビジネスをつくろうとした場合、まず経営者はどちらの側から料金をとるかというのを決めなければならない。私たちの研究結果を参考にすると、一般的に企業は余裕のある側(単にプレイヤーの数が多い側とも言えるし、よりそのサービスを必要としている側と読み換えることもできる)からお金をとったほうが良い。

例えば300億ドルの評価額を誇るAirbnbは、設立当初より家の所有者ではなく宿泊者から手数料をとっている。というのも、ホテルがすぐに埋まってしまう(しかも高い)ような街で、泊まる場所を必死に探しているのは家の所有者ではなく、宿泊者側だからだ。一方この分野の先駆者にあたり、Expediaによる買収時の評価額が40億ドルだったHomeAwayは、物件を登録する所有者から手数料をとっていた。これこそ、先行者利益がありながら、HomeAwayがシェアを伸ばせなかった理由なのかもしれない。その反面、Airbnbは物件数をどんどん伸ばし、サービスの訴求力を高めていった。

販促費がカギ 最後に、BNIに含まれる企業に共通して見られたのが、販促費とネットワーク効果の関連性だった。ネットワーク効果を大いに発揮し、2200億ドルの時価総額を(2016年12月31日時点で)記録しているAlibabaの販促費は、売上の15%未満におさえられている。一方で育児や介護サービスのマーケットプレイスで、2億4700万ドルの評価額(2016年12月31日時点)を記録しているCare.comは、売上の48%以上を販促費に充てている。結局、ベビーシッターや介護スタッフの検索というのは、一時的に発生するニーズで、中抜きのリスクが高く、ネットワーク効果も薄い。その結果、Care.comは成長を維持するために、大金を販促費につぎ込まなければいけなくなってしまったのだ。

私たちは、ネットワーク効果が未来のスタートアップの成功に欠かせないものであると考えている。しかしルールは常に変化しているため、ネットワーク効果を生み出すのにこれまで有効だった手段が、明日には通用しなくなるかもしれず、起業家は常に新しい情報を仕入れなければならなくなるだろう。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

コンシューマー向けプロダクトの成功に欠かせないネットワーク効果

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【編集部注】本記事はBattery Venturesに勤めるRoger Lee(ジェネラルパートナー)、Jeff Lu(ヴァイスプレジデント)、Deepak Ravichandran(アソシエイト)によって共同執筆された。

各分野でトップのシェアを握り、「カテゴリーキング」と呼ばれる企業が、そこまで厳しい競争にさらされているわけでもないのに、市場価値の大部分を生み出しているというケースが多く見られる。テック業界ではこの傾向が顕著で、ある調査によれば業界全体が生み出す価値のうち、70%をカテゴリーキング(小売のAmazon、ソーシャルメディアのFacebookなど)がつくりだしているとさえ言われている。

さらに私たちが最近行った調査では、カテゴリーキングによって創出された価値の6分の5が、「ネットワーク効果」を利用したビジネスによって生み出されていることがわかった(この考察は、当初Play Bigger Advisorsのコンサルタントによってまとめられた調査を、私たちが2016年12月31日時点の数値を使ってアップデートした結果得られたものだ)。なおネットワーク効果とは、利用者が増えるほど、その製品やサービスの利便性が高まることを指す。

また、ネットワーク効果についてもっと深く分析したところ、ネットワーク効果の持つ力はさまざまな観点で、私たちの想像を超えるものであることが判明した。ネットワーク効果は、販促活動の効果を高めたり、参入障壁を作ったりするだけでなく、ユーザー数の急増と共にカテゴリーキングの爆発的な成長を支えているということがわかったのだ。

AirbnbやUber、Snapなど今後12〜18ヶ月中のIPOも噂されている(既にSnapは上場を発表した)、ネットワーク効果を有効活用した企業は、それぞれの分野で自分たちがつくり上げた「勝者独り勝ち」の市場をほぼ独占している。

彼らが成功を収め、その名が世に広まっていくにつれ、私たちはコンシューマーテクノロジー市場の中でも、特にカテゴリーキングが持つネットワーク効果の価値を数値化してみたいと考えるようになった。その結果生まれたのが、Battery Ventures Network-Effect Index(詳細はウェブサイト参照)だ。この指数や関連データからは、ネットワーク効果に突き動かされている経済への洞察が得られると私たちは信じている。

ネットワーク効果を生み出すのにこれまで有効だった手段が、明日には通用しなくなるかもしれない。

そもそもBattery Ventures Network-Effect Index(BNI)とは、次の条件を満たす36社の時価総額/評価額を加重平均したものだ。1)現在上場中もしくは過去に上場していた 2)2016年12月31日時点で10億ドル以上の時価総額/評価額を記録していた 3)ビジネスモデルの全体もしくは一部にネットワーク効果が利用されている 4)コンシューマー向けネット企業。以下のチャートからわかる通り、BNIに含まれる企業の株価は過去5年間に全体で161%も伸びており、S&P 500を84%、テック系企業の多いナスダック総合指数を60%も上回っている。つまり、2011年の時点でBNIに含まれる企業群へ1000ドル投資していれば、そのお金が今では2606ドルになっているという計算になる。

さらにBNIに含まれる企業の評価総額は1兆800億ドルに及び、設立からIPOまでにかかった期間の平均は8年だった。これに対し、ベンチャーキャピタルから資金調達を行ったスタートアップ全体を対象にした場合のIPOまでの平均期間は11年だった。

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各月の値は、調査会社CapitalIQが公開しているデータをもとに算出されており、Y軸の数字は全体の時価総額/評価額の伸び率を表している。

以下がBNIに含まれている36社だ。

newnegraphic

印(*)のついている企業は、これまでにBattery Venturesが投資したことのある企業を表している。併記されている金額は、2016年12月31日時点での時価総額。買収の結果、非上場企業になったHomeAway、OpenTable、Kayak、Truliaについては買収額を記載している。

さらにBNIの企業は、以下の3つのカテゴリーにわけることができる。

  • 決済型マーケットプレイス:売り主と買い主が出会い、モノやサービスの売買が行われるプラットフォーム。旅行サイトのPriceline、フードデリバリーのGrubHub、中国のECサイトAlibabaなどが含まれる。
  • 広告型マーケットプレイス:このカテゴリーに含まれるZillow、Yelp、TripAdvisorなどは、消費者に対しては無料でサービスを提供しているが、売り主(不動産業者、クリーニング店、ホテルなど)から広告掲載の対価を受け取っている。
  • ソーシャル・ネットワーク:Facebook、Snapchat、WhatsAppなどがこのカテゴリーの代表的な企業として挙げられる。

そして下のチャートが、過去5年間の時価総額/評価額の推移をカテゴリー別に示したものだ。

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各月の値は、調査会社CapitalIQが公開しているデータをもとに算出されており、Y軸の数字は全体の時価総額/評価額の伸び率を表している。

FacebookやTencent、LinkedInといったサービスの成長をうけ、予想通りソーシャル・ネットワークのパフォーマンスが突出しており、過去5年間の伸び率は254%を記録している。広告型マーケットプレイスの成長率が他の指数を上回り、決済型マーケットプレイスにも勝っているのはなかなか興味深い。広告型マーケットプレイスの時価総額/評価額の伸び率は、S&P 500を57%、ナスダック総合指数を32%上回っており、ネットワーク効果によって彼らは株式公開後も成長し続けていたことを示唆している。

その他にも、私たちの調査から以下のような高次元の洞察を得ることができた。

市場規模の重要性 コンシューマー向け決済型マーケットプレイスは、狙っている市場の規模が500億ドル以上でないと爆発的な成長スピードに達しないことがわかっている。10億ドルの規模を持つターゲット市場というだけでも、スタートアップのピッチ上はまずまずなように感じられる。しかしBNIに含まれるコンシューマー向けマーケットプレイスを運営する企業は、10億ドル以上の評価額を達成するために、最大で500億ドル以上の規模になりえる市場を狙わなければならなかったのだ。

しかし、各企業は最初から大きな市場を狙っていたわけではない。HomeAwayは別荘、OpenTableはレストラン予約、Uberは黒塗りのタクシーというニッチな市場からそれぞれのビジネスをはじめた。その後ビジネスが成長するにつれて、彼らは既存の市場に近い市場へと進出していき、最終的にTAM(Total Addressable Market:狙いうる最大の市場規模)が500億ドルを超えたのだ。

一方TAMに関するルールは、カテゴリーによって変わってくる。私たちが調査対象として選んだソーシャル・ネットワークは、ほとんど需要に際限がないような巨大な市場(消費者全員)を相手にしている。対照的に広告型マーケットプレイスは、決済型マーケットプレイスが狙っている市場の小集団にあたるような、比較的小さな市場を相手にしている。

大きな市場を開拓するための方法のひとつが、既存の市場に隠れている「影の市場」をみつけだすということだ。

例えば、オンラインレビューサイトのYelpは飲食店をターゲットにしているが、同社の収益は広告を掲載したいと考えている各地域の飲食店によってもたらされている。つまりYelp自体は飲食サービスのやりとりには関わっていないため、同社が狙っている市場が飲食業界全体に占める割合は小さい。一方、レストランメニューの配達サービスを行っているGrubHubは、全ての注文から手数料をとっている(私たちはこちらの方が優れたビジネスモデルだと考えている)ため、飲食ビジネスの流れに食い込んだビジネスを展開していると言える。

そのため、Yelpは準独占的な立場にいて、GrubHubは厳しい競争にさらされているにも関わらず、両社の時価総額はほぼ同じ水準にあるのだ。Zillow(不動産)やTripAdvisor(旅行)のように、広告型マーケットプレイスのモデルで、高いパフォーマンスを誇るビジネスを生み出すことは今でも可能だが、そのためにはかなり規模の大きなカテゴリーで魅力あるサービスを売っていかなければならない。

  • 「影の市場」をみつける 大きな市場を開拓するための方法のひとつが、既存の市場に隠れている「影の市場」をみつけだすということだ。AirbnbとUberがその典型例だ。誰が空き部屋をホテルに、自家用車をタクシーに使えると思っていただろうか?彼らは当時まだ発掘されていなかった需要と供給をみつけだし、魔法のように新しい経済行動を消費者に植え付けることに成功したのだ。そして当然のように、この分野の企業は現在自らの功績の恩恵にあずかっている。BNIには含まれていないが、この分野で今後活躍が期待される企業としては、ペットシッター検索サービスのRoverや、スポットコンサルティングサービスのCatalantなどが挙げられる。

小規模な市場を狙っている企業でも、独占状態さえ築くことができれば、何十億ドルという評価額も夢ではない。GrubHubのイギリス・ヨーロッパ版にあたるJust Eatや、Zillowのオーストラリア版にあたるREA Groupは、小規模市場を席巻することで、今の地位につくことができている。

ビジネスモデルを考えるときには需給分析をしっかりと行う コンシューマー向けのマーケットプレイスで、10億ドルを超えるビジネスをつくろうとした場合、まず経営者はどちらの側から料金をとるかというのを決めなければならない。私たちの研究結果を参考にすると、一般的に企業は余裕のある側(単にプレイヤーの数が多い側とも言えるし、よりそのサービスを必要としている側と読み換えることもできる)からお金をとったほうが良い。

例えば300億ドルの評価額を誇るAirbnbは、設立当初より家の所有者ではなく宿泊者から手数料をとっている。というのも、ホテルがすぐに埋まってしまう(しかも高い)ような街で、泊まる場所を必死に探しているのは家の所有者ではなく、宿泊者側だからだ。一方この分野の先駆者にあたり、Expediaによる買収時の評価額が40億ドルだったHomeAwayは、物件を登録する所有者から手数料をとっていた。これこそ、先行者利益がありながら、HomeAwayがシェアを伸ばせなかった理由なのかもしれない。その反面、Airbnbは物件数をどんどん伸ばし、サービスの訴求力を高めていった。

販促費がカギ 最後に、BNIに含まれる企業に共通して見られたのが、販促費とネットワーク効果の関連性だった。ネットワーク効果を大いに発揮し、2200億ドルの時価総額を(2016年12月31日時点で)記録しているAlibabaの販促費は、売上の15%未満におさえられている。一方で育児や介護サービスのマーケットプレイスで、2億4700万ドルの評価額(2016年12月31日時点)を記録しているCare.comは、売上の48%以上を販促費に充てている。結局、ベビーシッターや介護スタッフの検索というのは、一時的に発生するニーズで、中抜きのリスクが高く、ネットワーク効果も薄い。その結果、Care.comは成長を維持するために、大金を販促費につぎ込まなければいけなくなってしまったのだ。

私たちは、ネットワーク効果が未来のスタートアップの成功に欠かせないものであると考えている。しかしルールは常に変化しているため、ネットワーク効果を生み出すのにこれまで有効だった手段が、明日には通用しなくなるかもしれず、起業家は常に新しい情報を仕入れなければならなくなるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

米ドミノ・ピザのボットがパワーアップ、Messenger経由で全てのピザが注文できるように

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米ドミノ・ピザの注文受付ボットDomが、大きなテストに臨もうとしている。スーパーボウル開催直前にドミノ・ピザが、Facebook Messengerを通じてフルメニューから注文できる機能をローンチしたのだ。しかも、この機能は事前に設定が必要な「ピザ・プロフィール」無しでも利用できる。つまり今回のアップデートによって、普段あまりドミノ・ピザを利用しない人も、電話やウェブサイト経由での注文の代わりにボットを試しやすくなる。

今回がドミノ・ピザのボットのデビューではないので、誤解のないように。同社はAnyWhereオーダリングプラットフォームを使って、既に1年間以上も電話やウェブサイト以外からの注文を受付けている。例えば2015年の春には、Twitter経由の注文受付をスタートし、その後Apple TVGoogle HomeAmazon Echo、Ford Sync、SMS、サムスンのスマートテレビ、スマートウォッチ、アプリ内の音声アシスタントなど、様々な新興プラットフォームへも対応してきた。

しかし、これまでのAnyWhereを利用した注文方法の問題点は、顧客がまずドミノ・ピザのアカウントを作り、個人情報を入力した後に「Easy Order」と呼ばれるものを作らなければいけないという、実際の注文までにかかる手間だ。なお、このEasy Orderには、顧客のお気に入りのピザや、最も注文回数の多いピザなどの情報が含まれている。そして前述のようなプラットフォーム経由で注文するときは、このEasy Orderに含まれているものしか注文できず、フルメニューを見ることはできなかった。

その後ドミノ・ピザは、前回注文したピザを再び注文するリオーダリング機能を、AnyWhereプラットフォームを利用しているアプリに追加した。

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しかし、今回のMessengerボットのアップデートにより、今後はフルメニューを見ながらDomに注文をお願いできるようになる。一見大したことがないように思える変化だが、DomのようにECに特化したボットの使い勝手を考えると、これは大変重要なポイントだ。

ドミノ・ピザとの確認の結果、これまでDomはおろかドミノ・ピザを利用したことがない人でも、新しい機能は問題なく使えるということがわかった。住所や電話番号などの注文に必要な情報は、Domが顧客に尋ねるようになっているのだ。

しかし、ドミノ・ピザにすぐにでも解決してほしい、大きな問題がひとつある。Dom経由で注文すると、現金でしか支払いができないのだ。(もう誰も現金なんか使ってないのに!)特にピザをチャットボット経由で注文するのがカッコいい、と考えるようなアーリーアダプターが現金で支払を行う姿は想像しづらい。

昨年の秋にローンチしたMessengerプラットフォームには、チャットボット向けの決済機能が追加されていた。しかしローンチ当初、同機能はまだ限定ベータ版だったので、ピザを注文するためのボットは、その対象に含まれてなかったのかもしれない。

しかしドミノ・ピザも、将来的にはMessenger経由の支払機能追加を検討していきたいと話している。

Messenger経由で注文した商品は、配達だけでなく店舗で受け取ることもできるため、店舗受け取りを選択すれば、店頭で自分の好きな決済方法を選ぶこともできる。

ドミノ・ピザにとって、スーパーボウルサンデーは一年で最も忙しい日のひとつだ。当日はアメリカ中で1200万枚ものピザを販売する予定で、この数は普通の日曜日の5倍にあたると同社は話す。

そのため、チャットボットでの注文というのは少し馬鹿げて聞こえるかもしれないが、もしもMessengerのような代替ルートで注文する人が出てくれば、電話回線に余裕を持たせ、トラフィック過多でウェブサイトの読み込みが遅くなるのを防ぐことができ、ドミノ・ピザの利益に影響を与える可能性さえあるのだ。

Domを試したい人は、ドミノ・ピザのFacebookページを訪れるか、Messengerアプリで「Domino’s」と検索してみてほしい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

気軽に試せるファッションECサイト「LOCONDO」がマザーズに上場承認

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靴とファッションの通販サイトLOCONDO.jpを展開するロコンドは本日、マザース市場への上場が承認された。上場予定日は3月7日だ。

ロコンドは2010年に創業し、2011年2月にLOCONDO.jpをリリースした。ロコンドでは「買って試してみて、気に入ったもの以外を気軽に返品できる」をコンセプトに送料無料・サイズ交換・返品無料のサービスを提供している。サービスはUIとUX、梱包、問い合わせの改善を繰り返し、2015年10月に黒字化を達成した。2016年10月にはサイトを全面リニューアルしている。

ロコンドはECサイト事業の他に、「ロコチョク」などブランド向けのプラットフォーム事業などを展開している。ロコチョクは、ロコンドの取り扱いブランドの店舗で欠品があった場合、ロコンドの倉庫からユーザーに商品を直接届けるサービスだ。

ロコンドはこれまでに複数回資金調達を実施し、総額約50億円を調達している。主な引受先には楽天、ジャフコ、エキサイト、伊藤忠テクノロジーベンチャーズなどが含まれる。ロコンドの2016年2月期における売上は約22億2783万円で、経常損失は約2億976万円だ。

以前にもロコンド上場の話を聞いた覚えがあるという人もいるかもしれない。実は昨年11月、日経が2017年3月にロコンド上場のニュースを伝えていた。ただ、その後ロコンドの代表取締役社長を務める田中裕輔氏は、NewsPicks上で「会社としては今後の事業拡大のため、様々な検討はしていますが、現段階で正式に決まっている事実はありません」とその報道を否定していた。

いずれにしろ今回の上場承認で、ロコンドは正式に公開会社として新たなスタートを切ることが決まったようだ。

リピート率9割のカスタムアパレルEC「LaFabric」が4億円の資金調達——工場を結んだ生産基盤の構築へ

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採寸した自分のサイズを保存し、オンライン上で自分好みのオーダースーツやシャツを簡単につくることができる「LaFabric」を運営するライフスタイルデザイン。同社は1月26日、総額約4億円の資金調達を実施したことを発表した。

今回の資金調達は第三者割当増資と金融機関からの借り入れを含めたもので、増資の割当先は、既存株主であるニッセイ・キャピタルをはじめ、IMJ Investment Partners Japan LLP、ちばぎんキャピタル、フューチャーベンチャーキャピタルといった複数のベンチャーキャピタル。さらにはバリュー・フィールド代表取締役社長の市川貴弘氏、エンジェル投資家の千葉功太郎氏、三星グループ代表取締役社長の岩田真吾氏ら個人投資家となっている。

ライフスタイルデザインでは今回調達した資金を元に組織体制を強化し、LaFabricの業務拡大とともに、日本各地の生産工場とタッグを組みながらアパレル生産プラットフォームの構築を目指すという。

リピート率9割、スマホから気軽に買えるカスタムオーダースーツ

ライフスタイルデザイン代表取締役の森雄一郎氏

ライフスタイルデザイン代表取締役の森雄一郎氏

LaFabricは2014年にベータ版としてローンチし、2015年3月に正式にサービスを開始した。当初は試着の壁を超えるオーダーメイドスーツECとして、質問に答えるだけで最適なサイズを提案する「フィットアルゴリズム」を用い、個々の体型に合ったスーツやシャツが注文できることを売りにしていた。そこから現在のカスタムオーダーファッションレーベルへとブラッシュアップしていったことは、以前TechCrunchでも紹介している。

ライフスタイルデザイン代表取締役の森雄一郎氏によると「一度サイズを登録すればスマホから自分にフィットしたスーツやシャツを気軽に購入できるという利便性と、LaFabricならではのオリジナルの生地素材やカスタム性」が好評で、1年前に比べて売上は350%〜400%程伸びている状況だという。特に一度購入した人からの支持が集まっており、リピート率は9割以上だそうだ。

ものづくりの生産工程における課題をITで解決

これまでカスタマイズのアパレルECとして事業を推進してきた同社だが、今回の資金調達も踏まえ、今後はものづくりの生産プラットフォームの構築にも力を入れていく。

現在のものづくりは各生産工程ごとに分業されており、それぞれに協力体制はあるもののコミュニケーションコストなどが原因で納期がかかり、海外の勢力に負けている部分がある。その一方で作っているものは素晴らしいため、テクノロジーの力を活用することでアパレル生産の“川上から川下を繋ぐプラットフォーム”の必要性を感じているという。

「今はまだ実際にものを作っている人とIT 業界との間に隔たりがありますが、ものづくりの現場でもITへの理解は進んでいます。今後各地の生産工場や素材メーカーさんとも繋がりをつくりながらネットワーク化し、お客さまの『身体のサイズデータ』『生地やデザインの趣味趣向データ』といったパーソナルデータと合わせることで、より一層質の高いサービスを提供していきたいです」(森氏)

LaFabricが構想しているアパレル生産の川下から川上までを担うプラットフォームというのは、D2C(Direct to Consumer)と呼ばれる分野。メンズのアパレル関連では海外ではBonobos、日本発だとFactelierといったサービスが該当するが、消費者から選ばれる存在になるためには独自の高い技術をもった工場との提携にも力を入れていく必要があるだろう。

今回のラウンドに個人投資家として参加している岩田真吾氏が代表取締役社長を務める三星グループも、2017年に創業130周年を迎える岐阜県発の老舗テキスタイルメーカーだが、ものづくりのノウハウを持った工場との提携数は増加傾向にある。その数は100カ所を超えており(縫製工場だけでなく素材工場なども含む数値)、今後もこの繋がりを広げていくという。

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同社が考えるアパレル生産プラットフォームのイメージ

Eloquent Labsが150万ドル調達ーAI+担当者+クラウドソースの新しいサ―ビス

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Keenon Werlingは、恐らく対話型AIが過大評価されていると最初に認めた人物だろう。そんな彼が最近設立したEloquent Labsは、他社のようにきらびやかなディープラーニングならぬディーパーラニングのアルゴリズムを売り出す代わりに、人間というもっとローテクな力を使ったサービスを開発している。カスタマーエクスペリエンス向上のための彼らの秘策は、AIとAmazonのMechanical Turkのようなクラウドソース、そして従来のカスターマービス担当者の融合だ。

本日Eloquent Labsは、シードラウンドでKhosla VenturesXSeed CapitalAlchemist Accelerator、エンジェル投資家などから150万ドルを調達したと発表した。

同社のビジネスモデルは、Elleと名付けられた対話型AIアシスタントを、Shopifyを利用しているオンラインショップに組み込み、配達状況の確認や返品処理、キャンセル、よくある質問への対応など、一般的なカスタマーサポート機能をスモールビジネスに提供するというものだ。このようなビジネスはこれまでにも存在したが、ここにクラウドソースが融合することに彼らのユニークさがある。

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左からSydney Li、Gabor Angeli、Keenon Werling、Brandon Maddick、Tian Wang

まずDigital Geniusのような企業は、以前からカスタマーサポートにおける「人間+AI」の活用をうたっている。例えばセーターを返品したいという人がシームレスなサービスを受けられるようにするため、ほとんどのスタートアップはシステムがどこで諦めるべきかに関するトレーニングを行っている。こうすることで、顧客とAIアシスタントのやり取りがとんでもない方向へ向かうのを防ぎ、顧客の質問内容がAIの処理できる範囲を超えると、人間の担当者が出てきてスムーズにやり取りを引き継ぎ、問題を解決できるようになっている。

この人間と機械の連携によって、企業はかなりのコストを削減してきた。Werlingによれば、小売企業は人間の担当者が関わるたびに平均で5ドル消費しており、逆に言えば機械が問題を処理するたびに、企業は自動的に5ドル得しているのだ。

しかしEloquent Labs設立の背景には、ほぼ機械がこなせるという十分な確証がないようなタスクに人間の担当者をあてがうことで、企業は未だに無駄なお金を使っているという考えがある。

Werlingは、AmazonのMechanical Turkのようなクラウドソースを利用した機械学習の研究を大学で行っていた。クラウドソーシングプラットフォーム上では、何十万もの人々が比較的簡単な作業をオンラインで請け負うことで収入を得ている。Eloquent Labsは、Mechanical Turkと人間の担当者、そしてAIを組み合わせることで、企業のコストをさらに抑えるようとしているのだ。

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実際のところ、ほとんどの機械学習は情報の分類の問題だ。誰かがチャットに文章を入力すると、機械がそのよくわからない文章を予め準備したリストと照らし合わせて、どうにか分類しようとする。もしも質問内容が商品の配達日に関することだと機械が自信を持って判断できれば、これは簡単な話だ。

しかし質問内容に(例示のためにかなり簡略化しているが)”オーダー”や”配送”といった単語が含まれていない場合、”DHLの予定”というフレーズが62%の確率で商品の配達日を示していたとしても、それは実際に機械が配達日に関する回答をするには十分な確率ではないのだ。従来のサービスであれば、ここで企業の担当者が出てきてフレーズの意味を判断するのだが、Eloquent Labsはこの段階でクラウドソースを利用している。

コスト削減以外にも、このアプローチには利点がある。クラウドソースを通じて仕事を請け負っている人は、Elleが処理できなかったタスクを引き継ぐと同時にEloquent Labsの機械学習モデルのトレーニングも行っているのだ。このような利点は全て、訓練もなしにオンデマンドで短い間だけ仕事をお願いすることができるクラウドソースのおかげで成り立っている。

営業・ビジネス開発面において、Eloquent Labsは発展段階にあるため、まだ同社のサービスに対してお金を払っている企業は存在しない。Zendeskのような巨大な競合がいるため、WerlingはAppleの戦略をまねて、まずはエグゼキューションを完璧にしようとしているのだ。

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さらにElleは、人間と機械の連携における他の問題の解決にも役立つようにつくられている。例えば”見習い”モードを使えば、重要な顧客とのやりとりをElleに任せられると感じるまで、企業はElleが生成した回答を手動で承認・却下することもできる。

プロダクトの開発にあたり、Eloquent Labsはうまく課題に優先順位をつけられているようだ。人間の担当者にふられたやりとり(全く意味をなさないような質問)を再度機械に戻すといった機能を搭載することで、同社はさらにプロダクトを進化させられる可能性を持っている。一方でこのような双方向の連携は、現状のAIの性能を考えると大変難しいため、同機能を省いたのはEloquent Labsの賢い選択だと言える。しかし競争の激しい市場の中で、最終的には彼らもさらに他社との差別化を図る必要が出てくるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Stadium Goodsが460万ドルを調達、コレクター向けアパレル商品の販売を拡大

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Stadium Goodsが2015年にニューヨークのソーホー地区にオープンした店舗は、本物のコレクター向けスニーカーやストリートウェアを求める男性にウケそうな、Appleストア風委託販売店という雰囲気を持っていた。

ローンチから間もなく、Stadium Goodsは”本物と認証済み”のスニーカーを扱うオンラインブランドへと進化を遂げ、アメリカのeBayから中国のT-mallや自社のオンラインマーケットプレイスまで、世界中にその名を広めている。同社はさらに、GOATのような新進気鋭のスニーカー専門マーケットプレイスにも在庫を供給している。

共同ファウンダーのJed StillerとJohn McPhetersが、小売店舗を素晴らしいオンラインストアに進化させていくというのはある意味予測できたことだ。StillerはStadium Goods設立前、2014年にGrouponに買収されたSwarm Mobileという小売分析企業に投資していた。またMcPhetersは、以前ビンテージ風スニーカーを扱う人気ショップFlight Clubのビジネス開発担当ディレクターを務めていた

ふたりの才能が融合して生まれたStaduim Goodsは、次のアマゾンになるべく、この度460万ドルの資金調達を行った。Forerunner VenturesがリードインベスターとなったこのシリーズAには、The Chernin GroupやStadium Goodsのアドバイザーを務めるMark Cubanのほかにも、匿名希望の投資家が参加した。

Dollar Shave ClubやGlossier、Bonobosといった企業にも投資しているForerunner VenturesのファウンダーであるKirsten Greenによれば、投資家はStadium Goodsを単なるファッションのマーケットプレイスとしては見ていない。同社は例えば、小売向けのSaaSを開発・販売する企業へと成長する可能性も持っているのだ。しかしこの点に関しては深掘りしないでおこう。リセール市場自体の規模もバカにすることはできない。

Dun & Bradstreet傘下のFirst ResearchとNational Association of Resale Professionalsのデータによると、アンティークショップや慈善団体が経営する店舗を除いたリセール市場の年間売上は、アメリカだけで94億2000万ドルに達する。新品と中古のフットウェア市場を合わせて考えると、その市場規模はさらに大きくなる。NPD Groupの調査によれば、2015年のアメリカにおける新品のスポーツ用フットウェア市場の規模は172億ドルだったのだ。

「小売業界は今大きな変化のときを迎えていて、新たなリーダーが生まれたり既存のブランドが生まれ変わったりする可能性があります。Stadium Goodsのユニークな点は、世界中でスニーカーの売り主・買い主とのコネクションをもっているため、フットウェアのエコシステムで何が起きているかを知り尽くしているということです」とGreenは話す。

さらに彼女は、共同ファウンダーであるふたりの専門性のおかげで、Stadium Goodsがフットウェア販売で優位に立っていると考えている。「熱狂的なファンがいる分野では、顧客側・販売側のどちらの視点で考えても、信用に値する本物の人間が必要になってきます」

Stillerは今回の調達資金が、人員増強やマーケティング、広告キャンペーンのほか、新たな店舗やコレクター向けフットウェア・アパレルの認証や受け入れを行う施設の建設にあてられることになると話す。新しい店舗の場所については明らかになっていないが、スニーカーを探している人はニューヨークの店舗かStadiumGoods.comを訪れれば、45ドルのNike Dunk Low プレミアム SB QSから2万3000ドルのEminem Air Jordan 4レトロまでさまざまなスニーカーを購入することができる。

編集者注:記載されている価格は誤りではなく、2万3000ドルもするスニーカーは実在する。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Instagramが写真投稿から買い物ができるタグ機能の検証を開始

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Instagramは、ユーザーが商品を見るために毎回ブラウザに移行しなくても、アプリ内で買い物をできるようにする。今回InstagramはKate SpadeやJackThreadsといった20の小売ブランドと協力し、写真投稿にショピングのためのタグ機能の提供を開始する。まずはアメリカ国内のiOSユーザーが利用できる。

小売ブランドはプロダクトの写真にタグをつけることができるようになる。「タップしてプロダクトを見る」ボタンをタップすると表示される機能だ。ユーザーが気になるプロダクトを選択すると詳細ページを見ることができる。そこには価格、説明、プロダクトの別の写真、ウェブで購入するための「いますぐ購入」ボタンがある。

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このショッピングと連携する投稿はFacebookのインスタント記事の商品版といった印象だ。Instagram内でプロダクトページをロードし、ブラウザに遷移するよりも早く情報を見ることができる。購入が決まらないようなら、ユーザーはすぐにタップして元のフィードに戻ることができる。

Instagramは、アプリ内で販売した商品毎に手数料を得るモデルにはしない。その代り、ブランドがフォローしていない人たちにもショッピングと連動する投稿を見せるための広告を販売することでマネタイズを図るとInstagramのマネタイズ部門のVPを務めるJames Quarlesは話す。Instagramはすでに50万の広告主を獲得し、Facebookが10億ドル近い価格でInstagramを買収してから4年経った今、ようやく十分な収益を得るようになった。

Facebookがチャットボットで行っている施策のように、Instagram内で商品の購入が完結できる仕組みの開発はまだ行っていないという。Pinterestではすでに購入可能なピン(Buyable Pins)を検証していて、決済機能もつけているので、この点に関しては少し出遅れていると言える。ただ、どちらのサービスもまだ何がほしいか決まってなく、そのためAmazonで特定の商品を探せないユーザーが目当ての商品を見つける強力なツールになりつつある。

最終的にInstagramは「保存」機能をつけ、フィードを見ている途中でもプロダクトの投稿をブックマークし、後で確認できるようにする予定だ。ユーザーがいつも衝動買いするとは限らない。Instagramの既存の広告は決済サイトにすぐ飛ぶ仕組みだが、これらのショッピングと連携するプロダクトの写真投稿は、例えば違う色の商品や価格の違う商品と比べる時間の余裕をユーザーに与えることができ、本当に購入したい時に購入できるようになる仕組みだ。

FacebookのマネタイズVP、James Quarlesはショッピングと連携するタグは将来的に動画投稿、カルーセル写真にも実装し、他の国にも展開する予定という。Instagramはより多くのブランドのプロダクトがこの機能を利用できるようにするという。また、現在はInstagramのチームが素材を受け取り個々のブランドのプロダクトページを手作業で制作しているが、将来的にはブランド自身がプロダクトページを作成できるようになるという。

ショッピング連携タグのおかげで、ブランドは「プロフィールのリンクをチェック」という分かりづらいキャプションを写真に付けなくてもすむようになる。Instagramは、投稿そのものにリンクを付けることを許可していない。また、プロフィールには1つしかURLを設定できないために、これまではこのようなやり方を取るしかなかった。この機能のローンチ・パートナーは以下の通りだ。Abercombie&Fitch、BaubleBar、Coach、Hollister、 JackThreads、J.Crew、Kate Spade、Levi’s Brand、Lulus、 Macy’s、Michael Kors、MVMT Watches、Tory Burch、Warby Parker、Shopbop.

[更新情報:今朝Instagramが落ち 、サービスが一時的に利用できなくなったことをこれらのブランドは良く思わないだろう。Instagramの信頼性に対していくらか不満を持つかもしれない。]

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ショッピングができる投稿は、邪魔にならないのがいいところだ。プロダクトタグが最初に目に入ることはなく、小さなタグのボタンをタップした時に現れる。そのため投稿された写真の美しさを損なうことはない。FacebookやTwitterが試している購入ボタンほど押し付けがましくもない。この機能は、セレブが持っている商品にスポンサーがタグ付けする行動が元になっている。

ショッピングと連携する投稿は、ユーザー行動とも合致する。Instagramの調査によると、インスタグラマーの60%はアプリでプロダクトやサービスについて知るという。また、Instagramの投稿を見て75%がそれらのサイトを訪問したり、検索したり、友人にそれを話したりとした行動を取っているそうだ。

今回の機能でアプリを閉じてブラウザを開き、プロダクトの詳細を探す手間がなくなる。Instagramはロサンゼルスとシカゴでフォーカスグループによる検証を行った時、Instagramで買い物したいユーザーの多くは「プロダクトについてもっと知りたいが、別アプリを開いてウェブで商品情報を検索するのが難しい。プロダクトの詳細を見つけられない」と不満を持っていたという。

Instagramのユーザーに買い物の付加価値を提供することで、このアプリがユーザーのホームスクリーンにあり続けることになるかもしれません。また、ブランド側はショッピングと連携する写真投稿をより多くのユーザーに見せるために多くお金を払ったり、フィードでオーガニックにプロダクトの写真を見るフォロワーを獲得するために広告を購入するようになるだろう。しばらく前からInstagramはショッピング体験の構築に取り組んできた。Instagramはコミュニティーの成長を維持するため、整ったユーザー体験を最優先していることが分かる機能の内容だった。

Postmatesが1億4000万ドルを調達、バリュエーションは6億ドル

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私たちが先月報じたように、オンデマンドの配達アプリを展開するPostmatesが追加の資金調達を完了したことを発表した。リード投資家はFounders Fundで、既存投資家も本ラウンドに参加している。同社は今回のラウンドで1億4000万ドルを調達したことを発表し、資金調達後のバリュエーションは6億ドルとなる。また、同社の取締役会にFounders FundのBrian Singermanが加わることも同時に発表している。

かつてはホットな投資カテゴリーだったオンデマンド分野だが、最近ではその分野に対するVCの視線は冷たくなった。オンデマンド分野のスタートアップの多くが利益をあげることができていないからだ。特にPostmatesに対するVCの態度は非常に厳しいものだった。

しかし今年の初旬ごろ、私たちはPostmatesの売り上げが加速していること、そして彼らのビジネスが十分な粗利益率をもっていることを伝えるプレゼン資料を手に入れた。配達料金以外のマネタイズの方法を見つけたからこそ達成できた数字だ。Postmatesに登録している店舗は追加料金を払うことで、アプリの中のより有利な位置に店舗情報を表示できるだけでなく、25ドル以上の買い物で配達料が無料になるという会員制サービスのPostmates Plus Unlimitedで自分の店舗を特集してもらうことができる。現在約6000の店舗がこの制度を利用しているという。また、AppleやStarbucksなどの企業からはPostmatesのAPIを彼らの注文プラットフォームに統合するための料金を受け取っている。

「私たちのビジネスモデルはとてもユニークなものであり、そのおかげで利益率を犠牲にせずにビジネスを急速に成長させることが可能なのです」とLehmannは私たちに話してくれた。

現在、同アプリは月間で150万件の配達実績をもっており、Postmatesで成長戦略部門のバイスプレジデントを務めるKristin Schaeferによれば、彼らが「望みさえすれば」来年にも黒字化を達成できる見込みだ。しかし、今回調達した資金に関しては、エンジニアの強化や新マーケットへの拡大のために利用する予定だと彼女は話す。Amazon Primeとの競合関係についてSchaeferは、「Unlimitedは私たちがもっとも期待を寄せているプロダクトです」と話し、UnlimitedはAmazon Primeにも負けないサービスだということを強調した。

しかし、競合はAmazonだけではない。今ではDoorDashやGrubHubなど無数の配達アプリが存在するだけでなく、Uber EatsをリリースしたUberも強敵だ。

「マーケットの主導権を握るために、そして、それを守っていくために私たちは今後アグレッシブな戦略をとっていきます」とLehmannは語る。

Postmatesが買収によるエグジットを検討しているという噂もあったが、それに関しては同社はコメントを控えている。

IPOについては、「私たちが検討している選択肢であることは間違いない」とSchaeferは話しながら、それは少なくとも2年後になるのではと示唆していた。

Lehmannは、「IPOは1つのオプションだが、2017年に上場することは考えていない」と話している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

 

Alibaba傘下のLazadaがオンライン生鮮食料品販売のRedmartを買収予定か

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今年に入ってからAlibabaは、東南アジアにある、Rocket Internet投資先のEC企業Lazadaの支配権を10億ドルで獲得した。そして今、もともとの計画通りLazadaを”新興市場のAmazon”にすべく、Alibabaが動き始めている。

3人の情報筋から入手した情報によれば、Alibabaの管理下にあるLazadaは、シンガポールを拠点とする生鮮食料品配達サービス企業Redmartの買収契約のまとめに入っている。Redmartは当初、買収ではなく投資という形を希望していたようだが、ある情報筋によれば、3000〜4000万ドルの買収額で話がまとまりそうで、早ければ来週にもこの話が公になる可能性がある。

Redmart、Lazada、Alibabaのいずれからも、本件についてのコメントは発表されていない。

現在のLazadaの取扱商品には、電子機器やファッション、ベビー用品などが含まれており、Redmartを買収すれば生鮮食料品を商品カテゴリーに加えることができる。また、Lazadaは東南アジアの6カ国でビジネスを展開している一方、Redmartはシンガポールだけでオペレーションを行っており、長い間海外展開の夢を抱いていた。

しかしRedmartのビジネスの雲行きは怪しい。これまでに同社は5500万ドルもの資金を調達しており、今となっては東南アジアの有名ベンチャー投資家である、Facebook共同ファウンダーのEduardo Saverinや、大手ゲーム会社のGarenaも同社に投資している。Redmartは5年前に、東南アジアで初めて生鮮食料品のオンラインショッピングサービスを提供する企業として誕生したが、これまで資金繰りには苦しんできた。TechCrunchでも今年に入ってから、Redmartが海外展開や資金力強化のために1億ドルの資金調達を試みていたことが報じられたが、結局これは失敗に終わった。こうなるとイグジットも当然選択肢に含まれてくる。9月にはRedmartがある投資銀行と協力して売却先候補を検討しているとBloombergが報じており、その後も同社は売却先を探すのに忙しいようだ。

Redmartの売却交渉に詳しい情報筋によれば、同社はこれまでにシンガポールの小売企業NTUCや、政府系ファンドのGICとも交渉にあたったがそこでも話はまとまらなかった。しかし、これらの売却話がどこまで進んでいたかは定かではない。さらに別の人の話によれば、Redmartは今年Amazonから買収を提示されたが、金額の低さを理由にそれを断ったという。さらにRedmartは、最近再びAmazonにコンタクトをとり、Lazadaも買収に興味を持っているという情報で買収額を釣り上げようとしたが、それも上手くいかなかった(Amazonの東南アジアでの計画はこの時点でははっきりしない)。

どうやらRedmartは、AlibabaとLazadaの中に、ほかの売却先候補にはないものをみつけたようだ。AlibabaがLazadaに投資した際、Lazadaは資金を使い切る寸前だった。そしてTech In Asiaの最近のニュースによれば、バランスシートの詳細は分からないものの、Redmartも赤字続きの状況にある。

会長のJack Maやその他のAlibaba経営陣は、東南アジアや傘下にあるEC企業Paytmが拠点を置くインドを最も優先度の高い成長市場と呼んでいた。さらにLazadaへの投資や、直近に迫った金融業を営むAscend Moneyへの投資によって、Alibabaは東南アジア市場でいち早く足場を固めるため、サービスを提供する準備が出来たことを証明している。Amazonは、インドでは既にAlibabaのライバルとされている一方、東南アジアへはまだ進出していない。またオンラインでの取引は、東南アジア全体の取引の5%にも満たないと言われているが、この地域には6億人以上の消費者がいる。Googleが共著した最近のレポートによれば、段々と豊かになってきている中産階級の存在や、インターネットの普及が進むことで、東南アジアのデジタル経済は2025年までに年間2000億ドル規模に成長するとも予測されている。そしてEC業がその成長を支えていくと考えられているのだ。

上記のような可能性にも関わらず、現状は厳しい。イグジットの金額の低さに投資家はガッカリするかもしれないが、Redmartの売却話がまとまれば、同社は豊富な資金を持つ親会社と強調して競合を打ち負かし、市場に残り続けることができるだろう。

Redmartのライバルであり、設立から18ヶ月で2000万ドルの資金を調達したHappyFreshは、”事業の継続と利益率の向上”を目的に、最近東南アジアのふたつの市場から撤退した

HappyFreshよりもさらに若いHonestBeeは、昨年150万ドルを調達し、東南アジアとその周辺の6ヶ国以上へサービスを展開するという野心的な計画を立てていた。しかしそれから1年が経った今、同社のサービスは4都市へしか展開されておらず、これは限られた資金で資本集約型の事業をスケールさせることの難しさを物語っている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

EC基盤「BASE」と決済サービス「PAY.JP」運営のBASEが15億円の資金調達、今後は金融領域強化へ

BASE代表取締役の鶴岡裕太氏

BASE代表取締役の鶴岡裕太氏

最近では金融×IT領域を指す「FinTech」というキーワードを見ない日はないが、そんなFinTech銘柄の大型調達が続いているようだ。昨日もウェルスナビが大型調達を発表していたが、今日はEコマースプラットフォーム「BASE」や決済サービス「PAY.JP」を手がけるBASEの大型調達のニュースが入ってきた。

BASEは10月13日、SBIインベストメントが運用するFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合などのファンド、SMBCベンチャーキャピタル3号投資事業有限責任組合、サンエイトインベストメント(既存株主)を引受先とした総額15億円の資金調達を実施したことを明らかにした。BASEでは今回調達した資金をもとにBASEおよびPAY.JPの事業拡大のための開発体制とマーケティングの強化を図るとしている。

EコマースポータルのBASEは店舗数約30万件、年間での流通総額は「3桁億円」(BASE代表取締役の鶴岡裕太氏)にまで成長した。「メルカリはこれにゼロが1つ多くて(流通総額で数千億円)、楽天はゼロが2つ多い(数兆円)。100倍だったら(挑戦することは)あり得るんじゃないか。もっとBASEを使ってもらえるのではないかと思っている」——鶴岡氏は現状についてこう語る。

同社は2016年1月にメルカリからの資金調達を実施。その後はメルカリ代表取締役の山田進太郎氏や取締役の小泉文明氏などからのメンタリングで組織運営についての考え方が変わったという。

「今までずっと僕がコミュニケーションの真ん中にいたが、今はピラミッド型。良くも悪くもウォッチできないところはあるが、結果として大きいチャレンジができることが分かった。『人がモノを作れる体制』を作らないといけないし、その体制を作れると、今までとはできることが大きく違ってくる。組織はすでに70人近くに成長して、今では元Googleといった人材も入社している。BASE単体でもまだまだ攻めるというメッセージを出していきたい」(鶴岡氏)

マーケティングも強化する。具体的なプランこそ話さなかったが。テレビCMについても「できるできないで言えばできる金額を集めた」(鶴岡氏)としている。また最近ではスマートフォンアプリのECモール機能も強化。さらなるサービス拡大を進めるとしている。

同時に今後より力を入れていくのが決済サービスのPAY.JPだ。PAY.JPで提供するID決済サービス「PAY.ID」はリリース45日で10万IDを突破。現在では20万IDを超えているという。

最近、決済領域のスタートアップの動きが急激に加熱している。連続起業家の木村新司氏が「AnyPay」を立ち上げ、Squareライクなクレジットカード決済からスタートしたコイニーが「Coineyーペイジ」を発表。また楽天傘下となったフリマアプリ「フリル」運営のFablicも決済領域に興味を持っていたスタートトゥデイからのMBOを発表した「STORES.jp」運営のブラケットも決済を強化することを視野に入れている。メタップスの提供する決済サービス「SPIKE」なんかもある。さらには米オンライン決済の雄、Stripeも日本に上陸している。

AnyPayの木村氏は以前TechCrunchの取材で、AnyPayをショッピングモールやフリマといった「マーケット」と結び付けて活性化を狙うと語っていたが、その考えで言えば、BASEはすでに30万店舗のマーケットと20万IDの決済が結びついた状態だ。今後はBASE外のサイトも含めてPAY.IDの導入を進めて、その経済圏を大きくする狙いだ。

「PAY.JPは『決済』だけをやりたいではない。インターネット上の個人を証明するということをやりたい。それと相性いいのが、決済、そして送金や融資といったビジネスだと考えている。インターネットではアカウントだけで人となりを証明しないといけない。今はコマースからスタートして、ペイメントをやっているスタートアップだが、将来は『金融』の会社でありたい」——鶴岡氏はこのように語るが、そんな同氏の構想を元にした新サービスも2017年の早いうちにリリースされる予定だ。

インドのオンライン家具販売サイトPepperfryが3100万ドルを調達

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インドの急速に成長する経済を背景に、都市部に移り住んで住居を構えはじめる人が増加している。その結果、持ち家や貸し家に家具を提供するためのネットサービスを運営する企業が誕生した。Pepperfryは、そのような企業のひとつで、本日(米国時間9月22日)インド中にビジネスを展開するために3100万ドルの資金調達を行ったと発表した。

設立から4年の同社は、元eBay幹部のAmbareesh Murty(Pepperfry CEO)とAshish Shah (同COO)によって設立された。彼らは、同社設立直前に「起業家となり、インドに秘められたECの可能性を最大限利用することに決めた」とMurtyはTechCrunchとのインタビューで語った。

Murtyは、インドのインテリアデザイン市場は、売上げ額にして300〜400億ドルの規模だとふんでおり、同業界にはそろそろディスラプションが必要だと考えている。

「インドには、きちんと整備された小売業界が成立しておらず、家具市場は極めて分散しています。その証拠に、業界トップ5のブランドを合わせても、全体の売り上げの4%しか占めていません」と彼は付け加えた。

Ppperfryは、これまでに1億6000万ドル近くの資金を投資家から調達しており、今回は、以前から同社に投資しているGoldman Sachs、Bertelsmann India Investments、Norwest Venture Partners、そしてZodius Technology Fundがラウンドを率いた。なお、Goldman Sachsは、昨年の夏に行われた1億ドルのシリーズDラウンドでもリードインベスターを務めていた

Pepperfryは、自社ブランドを含む、1万以上のパートナーの製品を販売していると公表しており、家具からデコレーション、キッチン・ダイニング用品、ペット用品までさまざまな製品を取り揃えている。オンラインでの販売以外にも、同社はいくつものエクスペリエンスセンターを運営しており、インテリアデザインの専門家が、家のデコレーションに関するアイディアを求める顧客にアドバイスを提供している。Murtyによれば、Pepperfryは現在10軒あるエクスペリエンスセンターの数を30軒にまで増やし、インドの第2、第3階層の都市へも進出していく計画だ。

さらに同社は、物流拠点の拡大も目論んでいる。Murtyによれば、現在Pepperfryはインド国内の500都市へ製品を届けることができるが、物流ネットワークへの投資を行い、今年中にはこの数を1000都市まで伸ばしたいと考えている。Pepperfryは、ユーザーへ最終的に製品を届ける部分を含む、物流システム全体を独自で確立しており、彼はその理由について、「Pepperfryが誕生するまで、インドには大きな箱を消費者まで届けることができる企業がいなかったんです」と説明する。今では同社は、17箇所のフルフィルメントハブと400台以上もの輸送車を保有している。

それと並行して、Pepperfryはテクノロジーへの投資も倍増させ、エンジニアの数を現在の50人から100人まで増やそうとしている。既に同社のアプリはARをサポートしており、ユーザーは携帯電話のカメラを、家具を設置するつもりの場所に向けるだけで、例えば、購入予定のソファーの様子を確認することができる。しかし、Pepperfryは、さらなるVRテクノロジーを同社のアプリに組み込む予定で、エクスペリエンスセンターにVR機能が備えられる可能性もある。

経済力が限られている若者にアピールするため、Rentomojoのようなレンタルモデルを提供することを検討しているかMurtyに尋ねたところ、彼は、長期的に見ると、レンタルよりも家具を購入するニーズの方があると考えていると説明してくれた。

「私たちは、レンタルの段階というのは、消費者が自分で家具を購入し始めるまでの3、4年間しか続かないと考えています。もしも、Pepperfryが企業努力を重ね、顧客が家具を購入する際に素晴らしい価値を提供できるとすれば、レンタルの必要性はないでしょう」と彼は主張する。

同様に、Pepperfryの郊外への進出計画からも分かる通り、同社は、現時点でインド国外への進出は予定していない。

「インドはまだ若い国家で、その購買力は急速に増大しています。今後数年の間はインド市場に集中し、その後どうするか改めて考えようと思っています」とMurtyは付け加えた。

しかし、利益については明確な計画が立てられている。

Murtyは、今回のラウンドがPepperfryにとって最後の資金調達になると予測しており、今後半年の間で、販管費を除いた黒字化を目指していると話す。そして、それが計画通りいけば、向こう2年内に”完全な損益分岐点”に達する可能性があると彼は考えている。

「私たちは幸運にも、長期的な視点で物事を考え、そして実行できる論理的な投資家を迎えることができています」と彼は語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Product Huntで人気のプロダクトだけを集めたAmazonの専用ショップがオープン

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Amazonは、最新の注目アプリ、ウェブサイト、ガジェット、テクノロジー作品などを取り上げ、キュレートするサンフランシスコが拠点のスタートアップProduct Huntと組み、Product Huntのウェブサイトで過去にトレンド入りした商品を購入できる場を提供する。このコレクションは「 Features on Product Hunt」とい名称で、オンラインストアAmazon Launchpadの一環として開設された。

Amazonが最近新設したLaunchpadはスマートホーム用端末、ウエアラブル・テクノロジー、子供のおもちゃ、健康や美容製品などを含むスタートアップのプロダクトを特集している。このプラットフォームは昨年デビューし、若い会社の新しいハードウェアや物理的なプロダクトの購入に関心のあるコンシューマーに訴求する。

オンラインのコレクションを拡充するため、AmazonはVC、アクセラレーター、インキュベーターの協力を得てプロダクトを集めている。

Product HuntはAmazonとの接点がある。この小売大手は、Launchpadでテクノロジーコミュニティーと広く関係性を築いてきた。AmazonはProduct Huntに投資しているAndreessen Horowitz、さらにはProduct Huntが在籍していたY Combinatorとも協力している。

先日、AmazonはKickstarterとパートナーシップを結び、同じように選りすぐりの商品のコレクションを構築した。そこでは電化製品、書籍、自宅やキッチン用品、映画、テレビなどのカテゴリーでクラウドファウンディングを達成し、人気のある商品を特集している。

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Product Huntコレクションの商品には「Featured」バッジがつき、Product Huntのサイトで得た票数を表示する。

例えば、Star Wars BB-8 Spheroは114人が支持票を投じ、BellabeatのLEAFウエアラブルは302人の支持票を得たことが分かる。だが、この投票数は必ずしもプロダクトの全体的な人気と相関するものではない。LEAFの女性向けウエアラブルガジェットが「Star Wars」の最新映画に出てくるおもちゃより2倍人気があるということではないだろう。

このバッジはあくまでテック分野の流行に敏感な人たちによってアイテムが認められたことを示すものだ。

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AmazonとProduct Huntは、双方向で協力関係にある。Product Huntのユーザーは、Launchpadセクションに掲載された商品であれば、Product Huntの商品ページでAmazonから購入するという選択肢をドロップダウンで選ぶことができるようになる。また、Product Huntのユーザーは、The Launchpad listをフォローすることで最新コレクションを閲覧することができ、そこからもAmazonから商品を直接購入することができる。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

CarvanaがシリーズCで1億6000万ドルを調達、オンライン中古車販売と車自販機の拡大を目指す

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中古車業界はとても面白い業界だ。市場規模は大きく、アメリカの年間中古車販売台数は4500万台を記録している。しかし、同市場最大のプレイヤーであるCarMaxのマーケットシェアはたった2%しかない。にも関わらず同社の評価額は120億ドルにのぼる。

つまり、中古車ビジネスはディスラプションを必要としているだけでなく、とてつもなく儲かるのだ。

中古車ディーラーのCarvanaは、ECのアプローチを中古車業界に応用することでマーケットシェアを獲得できると考えている。そのため、先日の記事でも紹介した同社は、販売プロセス全体のオンライン化を行った。そして本日(米国時間8月10日)、Carvanaは、同社のビジネスモデルをアメリカ中でさらに展開させるため、シリーズCで1億6000万ドルを調達したと発表した。

中古車の購入を検討しているユーザーは、まずCarvanaのウェブサイトを訪れ、自分の要望にピッタリの車を選ぶことになる。Carvanaは、ほぼ全ての車種と価格帯をカバーしており、昨夜の時点で5000台程の中古車が販売されていた。価格交渉には応じていないものの、Carvanaの価格はKelly Blue Book(Kelly社の発行する中古車相場についてまとめられた本)に掲載されている販売価格から数1000ドル低く設定されており、ユーザーは実際にふたつの価格を比べることもできる。

ローンなどのファイナンス面や書類のやりとりも全てオンライン上で完結でき、さらにユーザーは、購入した車の準備が出来次第、Carvanaに納車をお願いするか、自ら「車自販機」でピックアップすることができる。

車自販機とは一体どんなものなのだろうか?車自販機とは、その名の通り、顧客がピックアップを行う数日前にCarvanaが補充した車を自動的に販売する、大きなガラス張りの建物のことを指している。昨年、Carvanaは最初の自販機をナッシュビルに設置し、今回調達した資金を利用して今後国内の自販機の数を増やしていく予定だ。

車自販機のことを、ただのマーケティング上の仕掛けであると思う人ももちろんいるだろう。しかし、Carvanaは素晴らしい広告塔としての機能以外にも、自販機には実用的な目的があると説明する。現状として、Carvanaは販売した車を購入者のもとに配送しているが、それには当然購入者が受け取りに来るよりもコストがかかる。そのため、各都市に車自販機を設置することで、従業員が車を配達するのにかかるコストを抑えることができるのだ。

今回の1億6000万ドルにのぼる資金調達以前にも、Carvanaは1億4000ドルをエクイティで、4億ドルを借入で調達していた。個別の投資家については明らかにされていないが、同社によれば今回のラウンドには、新規・既存どちらの期間投資家も参加していた。

これまでのラウンドのように、Carvanaは成長と拡大に調達資金を充てる予定だ。しかし、今回の資金は、今年中に計画されている20以上にのぼる市場への参入と在庫の確保に利用される予定で、大量の中古車のために多額の資金が投入されることになる。

さらに、同社は新たな都市で車を保管(そして願わくば販売)するための物理的な拠点を必要としている。Carvanaはもっと少ない資本でゆっくりと成長することもできたが、投資家共々、確固たるビジネスモデルを作り上げたと信じている彼らは、さらなる成長を続け、中古車業界の鉄が熱いうちに打とうとしていると設立者兼CEOのErnie Garciaは説明した。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

友人とVRでファッションショーを見ながらショッピング、KABUKIが挑む未来型ECサービス

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2016年はVR元年と言われている。今年10月にはPlayStation VRも発売され、一通りのVR向けハードウェアが出揃う。けれども、VRが本当に立ち上がるためにはVRコンテンツが鍵となる。徐々に360ChannelなどのVR番組やゲームといったエンターテイメント領域でのコンテンツが立ち上がる中、KABUKIが提供を目指すのはVR内でのショッピング体験だ。KABUKIは「VR Shopping with Voice Chat」を8月下旬から提供開始するにあたり、本日、記者発表会を実施した。

「VR Shopping with Voice Chat」と銘打つこのサービスでは、どこからでも友人と一緒にファッションショーを見ながら、買い物を楽しめる体験を提供する。このサービスの利用方法は次の通りだ。専用アプリをダウンロードし、VRを視聴できるヘッドマウントディスプレイにセットする。LINEやFacebookなどでつながっている友人同士がアプリにアクセスすると、ファッションショーのランウェイが目の前に広がる。ランウェイには、マネキンが最新ファッションを着用して登場し、ユーザーは友人とおしゃべりをしながらファッションショーを楽しむことができる。ランウェイに登場するファッションアイテムは、ファッション情報サイト「コレカウ」のスタイリストによるスタイリングだそうだ。気に入ったファッションアイテムがあれば、VR画面内で詳細を確認することが可能だ。詳細画面では洋服を回転させたり、拡大表示させたりすることで細部まで確認し、そこからアイテムの購入もできる。

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KABUKIの代表取締役CEOを務める大城浩司氏は前職、楽天市場の営業部長を務め、複数の新サービスを手がけた経験を持つ。大城氏はインターネットショッピングが普及するにつれ、ECサイトはUIや検索の精度に重きが置かれるようになったが、ショッピングの楽しみもあるサービスを作ることを考えたという。例えば友人とデパートに行って会話をしながら買い物をするのもショッピングの楽しみだ。「VR Shopping with Voice Chat」では、沖縄と東京にいる友人同士でも場所に関わらず、そういった会話をしながらショッピングする体験を提供するという。

このVRショッピング体験は、同社が提供するメディア型ECモールである「kabuki ペディア」と連動していくと大城氏は説明する。「kabuki ペディア」は単に商品のECページだけでなく商品のストーリーを伝えることで、潜在的な需要を喚起するサービスだという。例えば、バルミューダーのトースターを紹介する記事では、商品の機能だけでなく、このトースターで「素敵な朝を迎える」ライススタイルをストーリーとして伝えることに重点を置く。KABUKIが目指すのは、そういった生活スタイルのストーリーを伝えることで商品が売れていく世界とし、VRショッピングもストーリーを伝える手段として取り入れるという。Kabuki pedia

具体的には、「kabuki ペディア」のECページの上部に「VRで見る」といったボタンを設置し、VR上で商品の詳細を見るための動線を置く計画だという。今回、重点的に紹介されたのはファッションという切り口だったが、今後はアウトドア関連商品やインテリア商品もVRショッピングに対応していく予定だそうだ。

VR

今回私もVRショッピングのデモを視聴してみたが、残念だったのは全体の解像度が低いためにファッションアイテムの魅力を伝えきれていないように思えたことだ。もちろんこういった部分は技術の進歩とともに改善することだろうし、視聴コンテンツに関してもクオリティー面も内容も充実していくことが期待できるだろう。また、VRコンテンツは自分1人で視聴するとVR空間が広いために寂しさを感じることもある。けれど、今回の友人と一緒になってファッション談義に花を咲かせることを勧める「ソーシャル」な体験を強調したVRショッピングはコンテンツとしては面白いかもしれない。

ファッションECのIROYA、自社ノウハウをもとにオムニチャネル基盤を提供——大和ハウスや東急など提携

毎月特定の「色」をテーマにしたセレクトショップとファッションECを展開するIROYA。これまでC向けにサービスを展開してきた同社が、大和ハウスグループや東急グループと組んでB向けビジネスを展開する。同社は7月12日、アパレルなど小売流通事業者向けのオムニチャネル支援に向けたプラットフォーム「Monopos」の提供を開始した。

IROYAは2013年10月の創業。代表取締役社長兼CEOの大野敬太氏は、学生時代に地元・神戸のアパレルショップの店員を経験。その後広告代理店やコスメ系IT企業、コーポレートベンチャーキャピタルなどを経てIROYAを起業した。

冒頭で書いた通り、毎月特定の色をテーマに、幅広いブランドを集めたセレクトショップ「IROZA」を展開。東京のほか京都、名古屋、博多などでポップアップストア(期間限定ショップ)を出店した後、現在は東京・渋谷の東急百貨店東横店に旗艦店を出店。同時にECサイトの「IROZA」も展開している。

IROZAの実績について

IROZAの実績について

そんな同社が展開するMonopos。これはIROZAの店舗、ECサイト運用の経験をもとに、倉庫や物流のマネジメントから在庫登録、配送、ECサイトの運用、店頭でのPOS利用、決済代行まで、サプライチェーンの行程を一元管理するプラットフォームだ。“オムニチャネル支援”とあるように、EC、実店舗むけそれぞれに機能を提供している。EC向けに自社サイト構築やウェブでの集客サービス、決済代行、配送といった機能を提供する一方、実店舗向けにはスマートフォンベースのPOSレジを提供するほか、集客支援などの機能を提供する。

この仕組みを実現するため、IROYAでは大和ハウスグループの大和物流(倉庫提供やフルフィルサービスを支援)、VOYAGE GROUP傘下のVOYAGE VENTURES(アフィリエイトによるウェブ集客支援)と資本提携業務提携を実施。また東京急行電鉄(東急電鉄)、東急百貨店(新規出店店舗向けにオムニチャネルサービスを提供)と業務提携、ヤマト運輸(配送連携および決済代行)とサービス連携を実施している。なお資本提携による調達額やバリュエーションは非公開となっている。

「Monopos」のサービスイメージ

「Monopos」のサービスイメージ

Monoposを利用するメリットの1つは、ECサイトと店頭の在庫を共有できること。これまではシステムが分かれているため、ECサイトと店頭で販売アイテムの在庫を分けて管理する必要がった。だがMonoposではそれを一元管理できるため、販売チャネルごとの在庫を用意する必要がなく、結果としてアイテムの消化率を高めることができるという。また、ECサイト向けのアイテム撮影や商品登録などのフルフィルメント業務はパートナー各社が対応。登録したアイテムは、IROZAに在庫シェアが可能。新たな販路を開拓することもできる。ユーザーにはそれぞれ固有のIDとQRコードを発行。このQRコードによって、ユーザーごとのEC・店舗両方の利用を管理できる。

今回の取り組みは、東急電鉄が手がけるスタートアップ向けアクセラレーションプログラム「東急アクセラレートプログラム(TAP)」がきっかけになっているという。プログラム発表の際にはその温度感が分からないところがあったのだけれど、今回の発表といい、クローズドで開催している着実に成果を出しているということだ。もちろん大和グループには倉庫の新しい利用用途の発掘、東急グループにはテナント誘致といった狙いはあるだろうが、小売流通事業者にとっても、EC・実店舗を1つのプラットフォームで管理できる意味は大きいはず。最近だとアパレル業界の不況について報じられることも増えているが、このプラットフォームを利用して事業の効率化を図るといったケースも今後出てくるんじゃないだろうか。

物流アウトソーシングのオープンロジが2.1億円の資金調達、海外展開も視野に

左からオープンロジ代表取締役の伊藤秀嗣氏、取締役CTOの五十嵐正人氏

左からオープンロジ代表取締役の伊藤秀嗣氏、取締役CTOの五十嵐正人氏

ロジスティクスのアウトソーシングサービス「オープンロジ」を運営するオープンロジ。同社は5月24日、IMJ Investment Partners(IMJIP)、SMBCベンチャーキャピタル、インフィニティ・ベンチャーズLLPなどから総額2億1000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。また今回の資金調達に伴い、IMJIPの岡洋氏が同社の社外取締役に就任する。オープンロジでは調達した資金をもとに人材採用や経営基盤の強化を進める。また東南アジアを中心とした海外事業展開も視野に入れる。

オープンロジは2014年10月にサービスを開始した。一般的な物流倉庫では、見積もりを行い、そのあとで業種業態ごとに「坪単価いくら」という価格設定をしている。スペースを借り上げる設定のため大規模事業者でないと利用が難しい。そこでオープンロジでは物流倉庫会社と提携。「アイテム1つ単位いくら」というシンプルな価格設定と、オンラインでの管理機能を提供することで、中小規模のEC事業者や個人が倉庫を手軽に利用できるサービスを展開してきた。

直近の状況についてオープンロジ代表取締役の伊藤秀嗣氏に聞いたところ、中小規模のEC事業者やフリマアプリやオークション利用の個人などが多く利用するだけでなく、大規模EC事業者の利用、商品サンプルの発送、イベント用資材の搬入搬出、店舗の棚・什器の保管など幅広いニーズがあるという。

「評価されているポイントは3つ。費用が分かりやすく安い、またオンラインで倉庫内のアイテムを管理できる使い勝手、小ロットでも対応する柔軟性だ。ユーザーの継続率は90%に上る。また、想定以上に大規模なユーザーからの問い合わせを頂いている。そのニーズは単に倉庫スペースが欲しいと言うことだけでなく、現状利用している受注管理の業務システムの課題を解決をしたいというものもある。今後はそういった企業に向けたエンタープライズ向けプランも用意する」(伊藤氏)

パートナーとなる物流倉庫会社も拡大しているそうだ。倉庫側の業務システムも提供し、さらに送客も行う点が評価された。現在毎月1社のペースでパートナーが増えているのだという。

同社は今後、東南アジアを中心に海外展開も視野に入れる。

「海外の事業者が日本でビジネスをしたいときにもロジが必要。日本の事業者が海外でビジネスをしたい場合も同じだ。オープンロジであれば、在庫確認をオンラインでリアルタイムに行い、自国にいながら海外の物流オペレーションが実現できるようにもなる。来年以降は積極的に進出していきたい」(伊藤氏)

Facebookが「保存ボタン」を外部に開放、日本では楽天とメルカリがファーストパートナーに

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Facebookが4月12〜13日(米国時間)にかけて開発者向けカンファレンス「F8」を開催中だ。かねてからうわさになっていたチャットボットやVR撮影カメラの「Surround 360」をはじめとして、さまざまな内容が発表されている。すでに初日の発表内容はまとめ記事も用意されているが、日本で独自にパートナーと組んだ動きもあったのでこちらを紹介しておこう。

Facebookは今回のF8に合わせて、「保存ボタン(Saveボタン)」の外部提供を開始した。日本では楽天およびメルカリがローンチパートナーとして本日4月13日よりボタンの導入を開始した(まずはPCおよびモバイル向けのウェブサイトのみ。アプリは今後対応を検討する)。今後は利用動向を見て逐次パートナーを拡大していく。

保存ボタン自体は2014年7月にFacebookに搭載された機能だ。Facebookで友人やフォローしたユーザーの投稿を保存すると、ブックマークのようにあとから読んだり、あとからシェアしたりできる機能だ。世界で2億5000万人がすでにこの機能を利用しているという。

これまではFacebook内の記事に限定して提供していた機能だが、この機能を「いいね!ボタン」や「シェアボタン」、「コメントプラグイン」同様にパートナーサイトに対して開放する。これによって、例えば楽天やメルカリで気になった商品があれば保存し、それをFacebook上で管理することができる。

ここまでであればPocketやはてなブックマークのようないわゆるソーシャルブックマーク、“あとで読む”的なツールでしかない。だがこの機能では、保存されたページの情報がアップデートされた際、Facebookを通じてユーザーに通知を送ることができるのだという。

当初のパートナーとしてEC関連のサービスを選んだのは、「『価格の変動情報が欲しい』というニーズはある。一方でFacebookには滞在時間の長いユーザーも多い。そこ(Facebook上)がユーザーとの接点を持てるツールになると思っている」(Facebook執行役員 パートナーシップ事業 日本代表の横山直人氏)。メルカリでも「アプリのダウンロード数も2700万以上、当初は20代女性が中心だったが男性など(Facebookも多用するユーザー層)も増えてきた。Facebookからの流入の期待も高まり、その一方でFacebookはその価値を上げられる。ユーザーが欲しがっている情報であれば、やらない理由はない」(メルカリ取締役の小泉文明氏)と説明する。

今回の発表はFacebookがこれまでも進めてきたプラットフォームのオープン化施策の1つだ。今回のF8はチャットボットが話題をかっさらっていた印象はあるが、この保存ボタンの開放を含めた開発者向け機能のアップデートも注目すべき情報だろう。

ウェブ接客のKARTEが新機能、来訪者とのチャットやLINEを一元管理可能に

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プレイドが提供するウェブ接客プラットフォーム「KARTE(カルテ)」。サービス開始から1年が過ぎ、その利用実態に関するインフォグラフィックスも発表したばかりだが、大型の機能追加を実施した。同社は3月17日、KARTE上で新機能「KARTE TALK」の提供を開始した。エンタープライズプラン(上位プランだ)導入企業からオプション(月額固定費+メッセージ回数による従量課金)として段階的に提供するとしている。

KARTEは「ウェブ接客プラットフォーム」とうたうように、導入サイトの来訪者をリアルタイムに解析。その属性に合わせてクーポンを発行したり、ポップアップメッセージを表示したりするという“接客”を実現するプラットフォームだ。

前述のインフォグラフィックスによると、2016年2月末の時点の導入企業数は845社。これまでに解析した累計ユニークユーザー数は4億UU、月間の接客回数は2000万回、計測した解析売り上げ金額は150億円という規模に成長したという。ファッションやバッグのECを中心に広い分野で導入が進む。「接客効果はCVR(コンバージョン率)で30〜40%向上し、ROI(費用対効果)で2000〜3000%くらいになるケースもある」(プレイド代表取締役社⻑の倉橋健太氏)

KARTEのインフォグラフィックス(一部抜粋)

KARTEのインフォグラフィックス(一部抜粋)

プレイド代表取締役社⻑の倉橋健太氏

プレイド代表取締役社⻑の倉橋健太氏

そんなKARTEに追加されたKARTE TALKは、リアルタイムなコミュニケーション機能だ。前述のとおり、これまでポップアップメッセージのみだったコミュニケーション機能を拡充。LINE(2015年5月よりCLINE by KARTEとして提供)、ウェブサイト上のチャット、SMS、メール、Facebook通知、ブラウザ通知、スマホ通知をKARTE上でコントロールできるようになるというもの。

それぞれの機能はプラグイン形式で提供され、KARTE導入企業は自社のニーズに合わせて機能を組み合わせて利用できる。管理画面のタイムラインは導入プラグインを一元管理できるため、ツールを問わずにリアルタイムな接客が可能になる。

「KARTE TALKはKARTEのリリース前から想定していた機能群の1つ。コミュニケーションは分散しつつある。そんなコミュニケーションを単品で考えるのではなく、一元的に管理すべきだと考えた」と倉橋氏は語る。また「導入企業のニーズも拾えてきたので、2016年には機能面のリリースを積極的に進めたい」としている。

ヤマト運輸、「LINE」を通じて荷物の問い合わせなどが可能に——「LINE ビジネスコネクト」利用で

コミュニケーションアプリ「LINE」の各種機能を企業向けに提供するサービス「LINE ビジネスコネクト」(詳細記事はこちら)。2014年2月にリリースされたこのサービスを利用して、ヤマト運輸が新たなサービスを提供する。ヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸は1月19日、LINEを通じて荷物の問い合わせなどを行えるサービスを開始した。

これに合わせてヤマト運輸LINE公式アカウントを開設した。LINEユーザーはこのアカウントを友だち登録し、ヤマト運輸の会員サービス「クロネコメンバーズ」のクロネコIDを連携することで、公式アカウントのトーク画面で「お届け予定メッセージ」と「ご不在連絡メッセージ」を受け取ることができるようになる。

またこのメッセージを通じて、お届け日時や場所の変更が可能なほか、荷物の問い合わせや集荷・再配達の依頼、料金・お届け日検索などが可能だ。

サービスはこれにとどまらないようだ。今後は宅急便の送り状をLINE上で作成できるサービスも提供する予定。作成した送り状は、ヤマト運輸の直営店やコンビニエンスストアの店頭端末、集荷を担当するセールスドライバーの端末などから印字できるようにする予定だ。その詳細は今夏にも発表するとしている。

左からヤマト運輸代表取締役社長の長尾裕氏、LINE代表取締役社長の出澤剛氏

左からヤマト運輸代表取締役社長の長尾裕氏、LINE代表取締役社長の出澤剛氏