先週、Kindle Oasisが「紙の本を読むような感覚」を感じさせてくれるのかどうか、確かめる意味もあってずっと使ってみた。実際のところ、「紙の本のように」とはいかない感じだ。
個人的に、本が大好きで、そしてKindleも好きだ。Kindle Oasisがこの気持ちを「統合」させてくれるかとも期待したのだが、そういうわけにはいかなかったようだ。
もちろん、Oasisの開発にあたっては、紙の本の感覚を活かそうということが考慮されたのは間違いなかろう。左右非対称にしてグリップを用意したのも、本の背を意識したものと思われる。
しかしやはり紙の本を手に持って、ページを繰りながらちょっと端を折ってみたりしつつ、アンダーラインをひいたりメモを書き込んだりする感覚は、なかなか再現できるものではない様子。
Kindle Oasisを横からみたところ。全体的に非常に薄く、それと同時に本の背を意識したグリップがある。
紙の本は、離れたページヘの移動もごく簡単に行える。あるいは上等な紙に印刷された文学作品などを味わっていると、気持ちもその作品の中にどんどん入り込んでいったりもする。一歩も動かないでいながら、時空を超えて精神を飛び回らせることができるのだ。
少なくともいまのところ、Kindleでそのような「感覚」を味わうことはできないと思う。もちろん進化していることは認める。
従来のものから大幅に変更されたデザインはなかなか美しく、おそらくはかなり魅力的な電子書籍リーダーであると言えるだろう。ただし、旧バージョンと同様にタッチに対するレスポンスには若干の遅れが感じられる。紙の本のようにパラパラとページをめくって行ったり、あるいは簡単にメモを書き加えたりということはできない(機能としてはできるが、紙の本に比べてインターフェース的に劣る)。そうしたことを多く繰り返す人にとっては、やや苛立ちを感じるデバイスとなるだろう。
また、Voyageと比べて「格好に見やすくなった」というわけでもない。4つのLEDライトが加えられたようではあるが、解像度も同じでさほどの違いは感じられないように思う。
価格に伴う魅力を感じるかどうかも微妙なところだ。価格は35,980円から(米ドルでは290ドルより)で、Kobo Aura H2Oの190ドルよりかなり高価だし、iPad Mini 2の270ドルよりも高い。たとえばiPad Mini 2には電子書籍リーダーにはない機能もいろいろと備わっていて、Kindle Oasisを高いと感じる人が多いのではないかと思う。
もちろんE-inkのディスプレイはiPadなどより目に優しく、物理ボタンを配したことでタッチ操作時に感じる遅れにも対処されてはいる。
バッテリー内蔵カバーを外したところ。
個人的に、Oasisが最高に活躍するシーンは、旅行にいくときだと思う。
一般的にいっても電子書籍リーダーは、紙の本に比べて持ち運びに便利だ。そして軽く、薄く、それでいて非常に丈夫なOasisは旅先への携行にとても便利だ。ケースに用いられているポリマー樹脂フレームはかなりの強度をもつ。バッグのポケットにもいれておけるサイズながら、440万冊(2007年時点では9万冊だった)をいつでも読むことができるのだ。ちなみにデバイスは4GBの記憶容量を備えている。
バッテリー内蔵カバーを使えば、バッテリーは60日間ももち、長期間の旅行のお供としても最適なデバイスだと言えるのではなかろうか。
ただしOasisは、万人向けのデバイスというわけではなさそうだ。電子書籍を読む時間が長く、かつ最高の環境でそれを楽しみたいと考えている人向けのものだろう。言ってみればニッチ向けだ。しかしそうしたニッチが確かに存在するのは間違いなかろう。
私自身について言えば、「最新モデル」が好きだ。ただKindle Voyageが90ドルも安いことを考えれば、Voyageで満足する気持ちももっている。
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(翻訳:Maeda, H)