EUが大手テック企業の「新型コロナ偽情報対応は不十分」と指摘

欧州連合(EU)は、大手テック企業に対し、各社のプラットフォームにおける偽ワクチン情報の拡散に対する監視の取り組みについて、さらに6カ月間報告するよう要求した。

現地時間6月3日、欧州委員会は「EU全域でのワクチン接種キャンペーンが着実かつペースを上げながら進展する現在、できるだけ多くのワクチン接種を完了するためには今後数カ月が決定的な意味を持つ。この重要な時期に、有害な偽情報によってワクチン接種を忌避する気持ちが助長されないようにするために、監視プログラムの継続が必要である」とするレポートを公表した。

Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)、TikTok(ティックトック)、Twitter(ツイッター)の各社は、EUの(法的拘束力のない)「偽情報に関する行動規範」に参加し、毎月報告書を作成しているが、今後は隔月で報告することになる。

欧州委員会は、4月の各社の報告書(最新版)を公表し、大手テック企業が「危険な嘘」を自分たちだけで取り締まることはできないことが示されたと述べ、ネット上の偽情報に対する取り組みについて、各プラットフォームから(自発的に)提供されているデータの質と内容に引き続き不満を表明した。

EUの価値観・透明性バイスプレジデントであるVěra Jourová(ベラ・ヨウロバー)氏は、声明の中で次のように述べる。「これらの報告書は、偽情報を減らすために各プラットフォームが実施している施策を効果的に監視することの重要性を示しています」「このプログラムを延長することにしたのは、危険な嘘がネット上に氾濫し続けていること、そして偽情報に対抗する次世代の規範の作成に有益であることが理由です。私たちは、強固な監視プログラムと、各プラットフォームの取り組みの影響を測定するためのより明確な指標を必要としています。プラットフォーム単独では取り締まることはできません」。

欧州委員会は2021年5月、自主的な規範を強化する計画を発表し、有害な偽情報を排除するために、より多くの企業、特にアドテック企業が参加することを望むと述べた。

この行動規範の取り組みはパンデミックより前、2018年に開始された。大規模な政治関連の偽情報スキャンダルを受けて「フェイクニュース」が民主主義のプロセスや公共の議論に与える影響に対する懸念が高まっていた年だ。今般、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による公衆衛生上の危機によって、危険な偽情報がネットで増幅されるという問題への関心が加速し、議員の間でも重要視されるようになった。

議員たちは、欧州委員会が「共同規制」と呼ぶ自主的なアプローチを継続することを希望していて、オンラインの偽情報に対する地域的な法的規制を確立することは(今のところ)計画していない。共同規制は、(違法ではないものの)潜在的に有害なコンテンツに対するプラットフォームの行動と関与を促すもので、例えばユーザーが問題を報告したり、削除を訴えたりするためのツールの提供を求めるが、プラットフォームが規制を遵守できなかったとしても直接的な法的制裁を受けることはない。

とはいえ、EUデジタルサービス法(DSA)という、プラットフォームへの圧力を高める新たな手段も用意されている。2020年末に提案されたこの法案は、プラットフォームによる違法コンテンツの取り扱いを規定するもので、欧州委員会は「偽情報に関する行動規範」に積極的に関与するプラットフォームは、DSA遵守の監督当局から好意的に見てもらえるだろうと示唆している。

また、EU域内市場担当委員のThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏は、現地時間6月3日の声明で「行動規範を強化してDSAと組み合わせれば『EUにおける偽情報対策の新たな1ページ』を開くことになる」と述べ、次のように続けた。

「ワクチン接種キャンペーンの重要な時期に、各企業が取り組みに力を入れ、私たちのガイダンスに沿う強化された行動規範への遵守を、できるだけ早く実現することを期待しています」。

規制当局にとって偽情報は依然として厄介なテーマだ。なぜなら、ネット上のコンテンツの価値は非常に主観的なものであり、問題となっているコンテンツがどれほど馬鹿げたものであっても、中央集権的な情報削除の命令は、検閲と見做される危険性があるからだ。

公衆衛生に対する明らかなリスク(反ワクチン接種のメッセージや欠陥のある個人用防護具の販売など)を考えると、新型コロナ関連の偽情報の削除には、確かに議論の余地は少ない。しかし、ここでも欧州委員会は、ワクチンに肯定的なメッセージを発信させたり、権威ある情報源を明らかにさせたりすることで、プラットフォームが行っている言論保護措置を前面に押し出そうとしているように見える。欧州委員会のプレスリリースでは、Facebookはワクチンのプロフィール写真フレームを用意してユーザーにワクチン接種を奨励したとか、Twitterは16か国で開催された世界予防接種週間の期間中にユーザーのホームタイムラインに表示されるプロンプトを導入して、ワクチンに関する会話で500万回のインプレッションを得たことなどが紹介されている。

2021年4月の報告書には、各社が実際に行った削除についても詳しく記載されている。

Facebookは、新型コロナウイルスおよびワクチンの誤情報に関するポリシーに違反したとして、EU域内で4万7000件のコンテンツを削除したと報告したが、欧州委員会は、前月に比べてわずかに減少したと指摘している。

Twitterは、新型コロナの偽情報に関する話題について、4月中に全世界で2779のアカウントに異議申し立てを行い、260のアカウントを停止し、5091のコンテンツを削除したと報告した。

一方、Googleは、AdSenseで1万549のURLに対して措置を講じたと報告しており、欧州委員会はこれを2021年3月(1378件)に比べて「大幅な増加」としている。

この増加は良いニュースなのか?悪いニュースなのか?疑わしい新型コロナ広告の削除数の増加は、Googleによる取り締まりの強化を意味するかもしれないし、Googleの広告ネットワークにおける新型コロナ関連の偽情報問題の大幅な拡大を意味するのかもしれない。

ネット上の偽情報について曖昧な線引きをしようとしている規制当局が今まさに抱える問題は、報告要件が標準化されておらず、プラットフォームのデータへの完全なアクセス権がない状態で、これらの大手テック企業の行動をどのように定量化し、その効果や影響を正しく把握するか、ということにある。

そのためには、各社が内容を選択できる自己申告ではなく、規制が必要なのかもしれない。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

マイクロソフトがXboxクラウドゲーミング専用ハードを近く発売予定

Microsoft(マイクロソフト)は米国時間6月10日、ゲームストリーミングのための専用デバイスを近日中に発売すると発表した。また、いくつかのテレビメーカーと協力して、インターネット接続TVにXboxエクスペリエンスを組み込むことも計画している。さらにマイクロソフトは、2021年後半にPC用のXboxアプリにもクラウドゲーミングを導入する予定で、そこでは購入前にお試しプレイできるシナリオに重点を置くという。

これらの新しいゲームストリーミングデバイスがどのようなものになるかは不明だ。マイクロソフトは詳細を明らかにしていない。しかし、Chromecast(クロームキャスト)のようなストリーミングスティックか、Apple TVのような小型ゲーム機のどちらかである可能性は高いと思われる。また今のところ、どのテレビメーカーと提携するのかもわかっていない。

マイクロソフトがクラウドゲーミングに関して積極的なのは周知の事実だ。例えば「Xbox Game Pass Ultimate」では、サブスクライバーがAzureクラウドからストリーミングされた100種類以上のコンソールゲームをAndroidでプレイできるようにしている。数週間後にはすべてのXbox Game Pass Ultimateサブスクライバーが、Edge、Chrome、Safariのブラウザ上でクラウドゲーミングができるようになる(現在は限定的なベータ版)。また、2021年後半には、オーストラリア、ブラジル、メキシコ、日本でもGame Pass Ultimateを提供する予定だ。

多くの点で、マイクロソフトはゲームとハードウェアのアンバンドリングを進めている。これは、Google(グーグル)がStadiaで試みていること(その試みは今のところGoogleにとっては失敗に終わっているが)や、Amazon(アマゾン)がLuna(ルナ)で試みていることに似ている。ここでのマイクロソフトの主な強みは人気ゲームの膨大なライブラリであり、それはNVIDIA(エヌビディア)のGeForce Nowプラットフォームを除いて、競合サービスにはほとんど見られないものだ。ただしNVIDIAのプラットフォームはサブスクリプションではなく、SteamやEpicストアなどのサードパーティストアで購入したゲームをプレイできるようにすることに重点を置いているため、ビジネスモデルが異なる。

マイクロソフトは明らかに、高性能な専用コンソールの販売台数が減ったとしても、Xboxのエコシステム全体を拡大したいと考えている。これは、音楽業界が聴き放題のサブスクリプションモデルに支えられたクラウド型サービスへと移行していることに似ている。

マイクロソフトのXbox事業を率いるPhil Spencer(フィル・スペンサー)氏はこう述べた。「私たちは、ゲームやインタラクティブエンタテインメントは、ハードウェアやソフトウェアではないと考えています。ピクセルの話ではありません。ゲームは人々を結びつけるものです。ゲームは人と人との架け橋となり、絆を深め、世界中の人々との共感を生み出します。喜びとコミュニティ、それが私たちがここにいる理由です」。

なお、マイクロソフトは専用ゲーム機を廃止するわけではなく、すでに次世代のコンソールハードウェアの開発に取り組んでいるとのこと。だが、新しいXboxコンソールがすぐに登場することは期待しないほうがいいだろう。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

iOS版Outlookの音声操作がMicrosoft Graphにより強化、口述筆記や音声でスケジュール追加などが可能に

iOS版Outlookの音声操作がMicrosoft Graphにより強化、口述筆記や音声でスケジュール追加などが可能に

Microsoft

マイクロソフトのメール・情報管理アプリOutlookは2019年に音声AIアシスタントCortanaに対応し、音声で着信箱の新着メールチェックができるようになりました。それから遅れること2年、マイクロソフトはiOS版のOutlookに、音声操作で電子メールの読み上げや会議予約機能または検索機能などを追加しました。

音声操作機能をオンにすると、Cortanaに次の会議の時間をたずねたり翌週の予定を記入するよう指示ができます。予定を入れる際は招待する人を指名することも可能。また音声でメールに添付ファイルを指定したり、音声からテキストへの変換機能を使用して新しいメールを作成したりできます。

マイクロソフトはこれまでにもOutlookモバイルアプリにPlay My Emails機能を搭載するなど徐々に音声機能を強化していました。今回のアップデートで、Outlook mobileのほぼすべての部分に音声機能が搭載されたと言えそうです。

なお、この音声操作機能を支えるのはMicrosoft 365や関連するクラウドサービスにおいてそれぞれを一体として連携させるAPI​を提供するMicrosoft Graphというツール。このAPIが音声アシスタントが必要とするコンテキストを提供することで、Cortanaがスケジュールに添付する人名のスペルなどを住所録から引っ張ってくるといった細かい便利さを提供します。

ただ、マイクロソフトは今年3月にiOSおよびAndroid版の、音声AIアシスタント単体でのCortanaの提供は終了しています。今回の動きは、マイクロソフトがCortanaをSiriやAlexaなどのようにあらゆる操作に対応するものとせず、ユーザーの生産性向上に特化したツールとして提供していこうという考えを反映したものと言えそうです。

(Source: MicrosoftEngadget日本版より転載)

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マイクロソフトの「Windows Virtual Desktop」が「Azure Virtual Desktop」に名称変更

パンデミック中、多くの企業ではリモートワークがデフォルトとなっていた。そのため、ユーザーにほぼどこからでもWindows 10のフルマネージドエクスペリエンスにアクセスすることを可能にするMicrosoft(マイクロソフト)のWindows Virtual Desktopといったサービスが大企業や、新しく中小企業からも注目されたのは当然のことかもしれない。企業は突然、リモートワーカーをよりよくサポートする方法を見つける必要に迫られた。Microsoftは当初、Windows Virtual Desktopのターゲットを世界の大企業だと考えていたようだが、ユーザー層の変化にともない、Microsoftの製品に対するビジョンも変化し、Windows Virtual DesktopからAzure Virtual Desktopへと名称を変更することになった。

「1年半前にWindows Virtual Desktopを初めて提供したとき、世界はまったく違いました」と、MicrosoftのAzure Virtual Desktop担当ゼネラルマネージャーであるKam VedBrat(カム・ベドブラット)氏はいう。「率直にいうと、私たちはこのサービスを、何のために構築するのか、誰のために構築するのかを、かなり違った角度から見ていました。当時は誰も、このような世界的なパンデミックが起こり、世界中の多くの組織や何百万人もの人々が実質的にオフィスを離れ、自宅で仕事をしなければならない状況になるとは考えていませんでした」。

画像クレジット:Microsoft

当初の目的は、企業が仮想デスクトップ環境をデータセンターからクラウドに移行することだったが、パンデミックの発生により、Azure Virtual Desktopには多くの新しいユースケースがもたらされた。現在では、バーチャルスクールの実験室から従来のリモートの会社といったユースケースまで、あらゆるものをホストしている。こうした新しいユーザーは、元々このサービスが対象としていたユーザーとは多少異なるニーズや専門知識を持っているため、米国時間6月7日の名称変更に加え、新しいユーザーがAzure Virtual Desktopをより簡単に使い始められるよう、一連の新機能を発表した。

その中には、まもなくパブリックプレビューが開始される新しいクイックスタートエクスペリエンスも含まれている。「私たちが受け取ったフィードバックは、多くの企業がハイブリッドワークのための新しいシナリオを実現するためにAzure Virtual Desktopに注目する中、その環境をすぐに稼働させ、それがどのように動作し、アプリがどのように振る舞い、アプリグループやホストプールについてどう考えるべきなのか、またそこに現れる新しいコンセプトを理解したいということでした」とベドブラット氏は説明した。理想的に運べば、Azureポータルから数回クリックするだけで、完全な仮想デスクトップ環境を構築することができるはずだ。

また、Azure Virtual Desktopの新機能として、Microsoftのデバイス管理用統合サービスである「Microsoft Endpoint Manager」によるマルチセッション仮想マシンの管理がサポートされている。Endpoint Managerがマルチセッション仮想マシンを扱えるようになったのは今回が初めてだ。これはAzure Virtual Desktopの最大のセールスポイントの1つだ。クラウド上でWindows 10 Enterpriseを実行する同じマシン上で複数のユーザーをホストすることができる。

さらに、Azure Virtual Desktopでは、Azure Active Directoryのサポートが強化された他、(Azureインフラストラクチャ上での実行コストに加えて)ユーザーごとのアクセス料金オプションが新たに追加され、ユーザーが外部ユーザーにアプリを配信できるようになる。これにより、ソフトウェアベンダーが自社のアプリをSaaSソリューションとして提供することなどが可能になるとMicrosoftは主張している。

名称変更についてベドブラット氏は、Windowsがエクスペリエンスの中核であることは明らかだが、このサービスのユーザーの多くは、ストレージやネットワークなど、基盤となるAzureインフラにも関心を持っていると主張する。「ユーザーは、自分が作っている幅広い環境、つまりクラウド上に作っているウィンドウ・エステートをより大きなものとして捉えており、Azureの多くの側面をそのように見ています。そのため、顧客のより広い視点に対応するためには、新しい名称を検討することが適切だと考えました」と説明している。

筆者は、Windows Virtual Desktopはコアコンセプトをただうまく説明しているだけと思っていたが、誰も私を「マーケティングの天才だ」と責めたことはない。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

ウェブ関連技術の標準化推進団体「W3C」がブラウザー拡張機能の共通化に向け「WECG」コミュニティ立ち上げ

ウェブ関連技術の標準化推進団体「W3C」がブラウザー拡張機能の共通化に向け「WECG」コミュニティ立ち上げ

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ウェブ関連技術の標準化推進団体W3C(World Wide Web Consortium)は6月4日(現地時間)、各社ウェブブラウザの拡張機能に関して「共通のビジョンを持ち、将来の標準化に向けて活動することを目的」としたコミュニティグループ WebExtensions Community Group (WECG) の立ち上げを発表しました。

立ち上げに関わったのはApple、Google、Microsoft、Mozillaの主要ブラウザメーカーで、他のメーカーや拡張機能の開発者らの参加を呼び掛けています。

まずは、Chrome、Microsoft Edge、Firefox、Safari でサポートされている既存の拡張機能モデルとAPIを基盤とし、仕様を作成することから始めます。

なお、コミュニティグループでは、ブラウザ拡張機能のすべてについて標準化を行うつもりはないともしています。つまり、1つの拡張機能を作れば、すべてのブラウザで利用可能になるようなものを目指しているわけではありません。拡張機能が利用するAPIやアクセス許可などの共通コアの標準化をすすめることで、開発者が各ブラウザ向けに簡単に拡張機能をリリースできるようにするほか、安全で悪用されにくいアーキテクチャの概要を示していくとのことです。

また、各ブラウザが拡張機能プラットフォームをさらに改善するために、APIを革新しリリースし続けることを望んでいるともしています。

WebExtensionsコミュニティグループの憲章は、Githubで確認が可能となっています。

(Source: W3CEngadget日本版より転載)

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EU諸機関によるAWSとマイクロソフトの各クラウドサービス利用について同プライバシー責任者が調査を開始

欧州の主要データ保護規制当局は、EU機関による米国クラウド大手Amazon(アマゾン)とMicrosoft(マイクロソフト)のそれぞれのクラウドサービス利用について、調査を開始した。欧州の団体、機関、官公庁は、AWSおよびMicrosoftの間でいわゆる「Cloud II」契約を締結している。

欧州データ保護監察機関(EDPS)によると、欧州委員会によるMicrosoftのOffice 365の使用についても、以前の勧告への準拠状況を評価するための独立した調査が開始されたという。

Wojciech Wiewiórowski(ヴォイチェフ・ヴィヴィオロフスキ)氏は、2020年10月に発表されたより広範なコンプライアンス戦略の一環として、EUのクラウドサービスの利用を調査している。当該戦略は、欧州司法裁判所(CJEU)による画期的な裁定(通称Schrems II)を受けたものだ。この裁定は、EU-米国間の「Privacy Shield」データ移転協定を無効にし、EUユーザーの個人データが大規模監視体制によって危険にさらされる可能性のある第三国に流出している場合の、代替的なデータ移転メカニズムの実行可能性に疑問を投げかけるものだった。

EUの最高プライバシー規制当局は去る2020年10月、EU加盟国以外の国への個人データの移転について報告するようEU加盟国の機関に要請した。EDPSが米国時間5月27日の発表したところによると、この分析によってデータが第三国に流れていることが確認されたという。また、特に米国への流入が顕著であり、その理由として、EU機関が大手クラウドサービスプロバイダ(その多くは米国を拠点としている)への依存を高めていることが挙げられる。

驚くことではない。しかしEDPSは、Schrems II判決以前に署名された2社との契約がCJEUの判断に沿っているかどうかを見極めたいと考えており、次のステップは非常に興味深いものになるだろう。

実際、EDPSはその準拠性について懸念を示しており、将来的にはEU諸機関に対して代替のクラウドサービスプロバイダ(法的な不確実性を回避するためにEU内に設置されている可能性が高い)を探すことを要請する可能性もある。今回の調査は、規制当局主導による、EUの米国クラウド大手からの移行の始まりとなるかもしれない。

ヴィヴィオロフスキ氏は声明で次のように述べている。「EUの機関や団体からの報告の結果を受けて、私たちは両社との契約が特別な注意を要するものであることを特定しました。それが今回の2つの調査を開始することにした理由です。『Cloud II契約』は『Schrems II』判決前の2020年初めに署名されたこと、そしてAmazon(アマゾン)とMicrosoftの両方がその判決に沿うことを目的とした新たな措置を発表したことを認識しています。しかし、これらの措置はEUのデータ保護法を完全に遵守するのに十分ではない可能性があり、適切に調査する必要があります」。

AmazonとMicrosoftは、EU機関とのCloud II 契約に適用した特別措置に関する問い合わせに応じているところだ。

【更新1】現在、Microsoftの広報担当者が次のような声明を出している。

当社は、欧州データ保護監督機関から提起された質問に答えるために、EU機関を積極的に支援し、いかなる懸念にも迅速に対応する自信があります。EUのデータ保護要件を確実に遵守し、それ以上の成果を上げるための当社のアプローチに変更はありません。当社の「Defending Your Data」イニシアチブの一環として、EUの公共部門または商業部門のお客様のデータを求める政府の要請に対し、我々に合法的な根拠がある場合はすべて異議を申し立てることを約束しています。また、適用される個人情報保護法に違反してデータを開示し、損害を与えた場合には、ユーザーに金銭的な補償を行います。当社は今後も規制当局の指導に対応し、顧客のプライバシー保護の強化を継続的に図っていきます。

【更新2】Amazonからも次の声明が届いている。

EUの機関は、Schrems IIの要件に準拠してAWSサービスを利用することができ、お客様が欧州データ保護監察機関(EDPS)にそのことを実証してくださることをうれしく思います。顧客データを保護するための当社の強化された契約上のコミットメントは、Schrems II判決で要求されている以上のものであり、法執行機関の要求に挑戦してきた当社の長年の実績に基づいています」と述べている。

EDPSは、EUの機関に模範的な主導を求めていると表明した。欧州データ保護委員会(EDPB)は2020年、Schrems IIの判決の意味するところを実行するための規制猶予期間はないと公に警鐘を鳴らしたが、未だにデータ移転に関する本格的な取り組みがなされていないことを考えると、今回の動きは重要に思える。

対応が遅れていた理由として最も可能性が高いのは、法的基準を満たすことを期待して契約に加えられた、かなりの量の向こう見ずな反応や表面的な変更だろう(ただし規制当局による審査はまだ行われていない)。

EDPBからの最終的なガイダンスも保留中だが、当委員会は2020年秋に詳細な勧告を提示している。

CJEUの判決は、当該領域のEU法は看過されるべきではないことを明確に示した。EUのデータ規制当局がEUのデータを外部へ持ち出している契約を精査し始めることで、必然的にこれらの取り決めのいくつかは不十分であると判断され、関連するデータフローは停止を命じられることになるだろう。

ちなみに、長期戦となっているFacebook(フェイスブック)によるEU-米国間データ移転をめぐる苦情申し立ては、まさにそのような可能性に向けての歩みを遅らせている。申し立ての発端は、EUのプライバシー活動家で弁護士でもあるMax Schrems(マックス・シュレムス)氏によって2013年に提起された訴えにある。

2020年秋のSchrems II判決を受けて、アイルランドの規制当局はFacebookに対し、欧州の人々のデータを海を越えて移動させることはできないとする仮命令を出していた。Facebookはアイルランドの裁判所でこれに異議を唱えたが、今月初めにはその手続きを阻止する試みに失敗した。そのため、数カ月以内に業務停止命令を受ける可能性がある。

Facebookがどう反応するかは誰もが予想しているところだが、シュレムス氏は2020年夏TechCrunchに対し、同社は最終的にEUユーザーのデータをEU内に保存し、サービスをフェデレートする必要があると示唆している。

Schrems IIの判決は、法的な不確実性の問題を解決するために自らを位置づけることができるEUベースのクラウドサービスプロバイダにとって、一般的には朗報になりそうだ(米国ベースのクラウド大手ほど競争力のある価格や拡張性がない場合であっても)。

一方、CJEUの裁判官が繰り返し指摘しているように、EUの人々のデータへの脅威とみなされないようにする目的において、米国の監視法を独立した監督下に置き、市民以外の人々が利用可能な救済メカニズムを確立するには「数カ月」よりもはるかに長い時間がかかる可能性が高いだろう。それも米国当局が自らのアプローチを改革する必要性を確信することができるのならではあるが。

それでも、EUの規制当局が最終的にSchrems IIに対して行動を起こすようになれば、米国の政策立案者の意識を監視改革に集中させるのに役立つかもしれない。そうでなければ、ローカルストレージが将来の新しい標準になることもあり得る。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

マイクロソフトが次期Windowsの発表オンラインイベントを6月24日開催

マイクロソフトが次期Windowsの発表オンラインイベントを6月24日開催

Microsoft

マイクロソフトが6月24日にWindowsのメジャーなアップデートに関する発表イベントをオンラインで開催します。すでに主要メディアにはイベントの案内が送られました。

このイベントは、マイクロソフトがデュアルスクリーンデバイス向けに開発していたWindows 10Xの開発を中止したあとにやってきます。マイクロソフトは、Windows 10Xに用意していた新機能やUIなどの一部をWindows 10に導入すると述べています。

新システムアイコン、改良されたエクスプローラー、Windows 95時代から残っていたアイコンの廃止などビジュアル面での更新のほか、マルチモニター環境におけるアプリの再配置問題の修正、Xbox Auto HDR機能の追加、Bluetoothオーディオの改善など、Windowsの基本的な機能の改善も取り込まれています。

Windowsのアプリストアの改善にもマイクロソフトは取り組んでおり、そのストアをあらゆるアプリや第三者の決済プラットフォームに開放すると言われています。

イベントにはマイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏とチーフプロダクトオフィサーのパノス・パネイ氏が登壇し、詳細を発表する予定。ナデラCEOは先週、この次世代Windowsをしばらくのあいだ「自らテストしてきた」と述べ、「次世代Windowsに非常に期待している」と語っていました。

新しいWindowsが一体どんなものになるのか、24日が楽しみです。

(Source: MicrosoftEngadget日本版より転載)

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「マインクラフト」次期大型アップデート「Caves and Cliffs(洞窟と崖)」パート1が6月8日配信決定

「マインクラフト」次期大型アップデート「Caves and Cliffs(洞窟と崖)」パート1が6月8日配信決定

Mojang

マインクラフトの次期大型アップデート『Caves and Cliffs』(洞窟と崖)パート1の配信が6月8日に決定しました。

プラットフォームはWindows 10、ニンテンドースイッチ、PS5 / PS4、Xbox One / Xbox Series X|S、iOS / Android スマートフォン等で動く統合版 Bedrock Edition と、PC / Mac / Linux の Java版のすべて。

『洞窟と崖』アップデートの第一弾となる今回は、地底湖や植物で覆われた洞窟、アメシストの晶洞(ジオード)といった新たな地形が増え、初の両生類ウーパールーパーやヤギ、発光イカといった新規モブ、銅鉱石やアメシスト、望遠鏡、避雷針などさまざまな新規ブロックやアイテムが追加されます。

「マインクラフト」次期大型アップデート「Caves and Cliffs(洞窟と崖)」パート1が6月8日配信決定

Minecraft

Caves and Cliffs (洞窟と崖)は、2020年10月のイベント Minecraft Live で発表された大型アップデート。

マインクラフト大型アプデ「ケイブ&クリフ」発表。銅鉱石にウーパールーパー、地底湖や考古学など新要素多数

大量の新規要素を含む野心的な内容ですが、新型コロナウイルス感染症の流行により開発元 Mojang がリモートワークに移行し開発に遅れが生じたこと、無理に当初スケジュールに間に合わせるよりも開発陣の健康と製品の品質を優先するとの判断で、パート1とパート2の分割リリースになりました。

6月8日にリリースされるパート1は、銅やウーパールーパー、新規の洞窟バイオーム等々を追加する内容。年末予定のパート2では、音で周囲を認識する強力な敵対モブ「ウォーデン」が生息する地底世界 Deep Dark や考古学といった要素が加わる予定です。

「マインクラフト」次期大型アップデート「Caves and Cliffs(洞窟と崖)」パート1が6月8日配信決定

Minecraft

ウーパールーパー(アホロートル、幼形成熟したメキシコサンショウウオ)は、バケツで捕獲できる水生モブ。プレーヤーを守り一緒に戦ってくれます。

「マインクラフト」次期大型アップデート「Caves and Cliffs(洞窟と崖)」パート1が6月8日配信決定

Minecraft

銅鉱石の追加も大きなニュース。生成した銅を建築素材に用いた場合、時間経過で緑青を生じ、歴史的建造物によく観られる落ち着いた緑の色合いになります。

「マインクラフト」次期大型アップデート「Caves and Cliffs(洞窟と崖)」パート1が6月8日配信決定

Minecraft

銅を使ったクラフトは避雷針や望遠鏡など。

「マインクラフト」次期大型アップデート「Caves and Cliffs(洞窟と崖)」パート1が6月8日配信決定

Minecraft

緑豊かな洞窟(ラッシュケーブ)。食べられる発光ベリーの実る蔦やなど、新たな生態系が。

「マインクラフト」次期大型アップデート「Caves and Cliffs(洞窟と崖)」パート1が6月8日配信決定

Minecraft

アメシストの晶洞(ジオード)。滑らかな玄武岩、方解石、凝灰岩といった新たな鉱物で構成された構造。アメシストは「芽」から結晶が育ちクラスターになる。上を歩いた時、物を当てた時、叩いた時などに独特の音がすることも特徴。望遠鏡など新たなクラフト材料にも。

マインクラフトには「光」の要素があり、モブの出現や植物の生成など世界の法則に組み込まれていますが、洞窟と崖では「音」の要素も重視されるようになります。

マインクラフト大型アプデ「ケイブ&クリフ」発表。銅鉱石にウーパールーパー、地底湖や考古学など新要素多数
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Engadget日本版より転載)

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【コラム】アクセシブルなゲーミングの未来を創る

編集注:本稿の著者Williesha Morris(ウィリーシャ・モリス)氏は10年以上のキャリアを持つ、フリーランスのジャーナリスト。執筆していないときは、本を読んだり、ビデオゲームをしたり、マーベル・シネマティック・ユニバースについてしゃべったりしている。

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2011年、プロダクト開発者Fred Davison(フレッド・デイヴィソン)氏は、発明家のKen Yankelevitz(ケン・ヤンケレヴィッツ)氏と同氏が開発した四肢麻痺患者向けのビデオゲームコントローラー「QuadControl」に関する記事を読んだ。当時、ヤンケレヴィッツ氏はリタイアを目前にしていた。デイヴィソン氏はゲーマーではなかったが、母親が進行性の神経変性疾患であるALSにかかっていたことから、ヤンケレヴィッツ氏が手を離そうとしていたことに意識が向いたという。

2014年に発売されたデイヴィソン氏のQuadStickは、幅広い業界で関心を集めていたヤンケレヴィッツ氏のコントローラーの最新モデルだ。

「QuadStickは私がこれまで携わった中で最もやりがいのあるものでした」とデイヴィソン氏はTechCrunchに語った。「(障害を持つゲーマーたちが)こうしたゲームに参加できることが何を意味するのかについて、たくさんのフィードバックを得ています」。

土台作り

デンバーのCraig Hospital(クレイグ病院)で作業療法士を務めるErin Muston-Firsch(エリン・マスタン・ファーシュ)氏は、QuadStickのようなアダプティブゲーミングのツールは同病院のセラピーチームに革命をもたらすものだったと語る。

同氏は6年前、脊髄損傷で来院した大学生のためのリハビリ療法を考案した。その青年はテレビゲームをするのが好きだったが、けがのために手が使えなくなっていたという。そこで、リハビリ療法にデイヴィソンの発明が取り入れられ、患者はWorld of Warcraft and Destinyをプレイできるようになった。

QuadStick

Jackson “Pitbull” Reece(ジャクソン・「ピットブル」・リース)氏は、QuadStickとXAC(Xboxアダプティブコントローラー)の操作に口を使うことで有名なFacebookのストリーマーだ。XACはMicrosoft(マイクロソフト)ソフトが障害者向けに設計したコントローラーで、ビデオゲームのユーザーインプットを容易にする。

リース氏は2007年のオートバイ事故で脚の機能を失い、その後、感染症のために手足の切断を余儀なくされた。同氏は、スポーツビデオゲームによって満たされていた健全な頃の生活が思い出されると語っている。ゲーミングコミュニティの一員であることは、自分のメンタルヘルスの重要な部分だという。

幸いなことに、支援技術のコミュニティ間では、ゲーマー向けのハードウェアを作ることに関して競争ではなくコラボレーションの雰囲気がある。

しかし、大手テクノロジー企業のすべてがアクセシビリティに積極的というわけではない。その一方で、障害を持つゲーマー向けにカスタマイズされたゲーミング体験を実現するアフターマーケットデバイスが提供されている。

マイクロソフトの参加

マイクロソフトでインクルーシブリードを務めるBryce Johnson(ブライス・ジョンソン)氏は2015年のハッカソンで、障害を持つ退役軍人の支援団体Warfighter Engagedと面会した。

「私たちは時を同じくして、インクルーシブデザインに対する考え方を発展させようとしていました」とジョンソン氏は語る。実際のところ、第8世代のゲーミングコンソールは、障害を持つゲーマーにとって障壁となっていた。

「コントローラーは、前提条件を設定した主要なユースケースに合わせて最適化されています」とジョンソン氏はいう。実際、従来のコントローラーのボタンやトリガーは、耐久性の高い健常者向けのものだ。

Warfighter Engaged以外にも、マイクロソフトはAbleGamers(障害のあるゲーマーのための最も有名な慈善団体)、クレイグ病院Cerebral Palsy Foundation、および英国に拠点を置く障害のある若いゲーマーのための慈善団体Special Effectと協力している。

Xboxアダプティブコントローラー

2018年にリリースされたXACは、移動性に制限のあるゲーマーが、他のゲーマーとシームレスにプレイできるように設計されている。ゲーマーたちがコメントを寄せた細部の1つに、XACは医療機器ではなく、消費者向け機器のように感じるということが挙げられている。

「このコミュニティのためにこの製品を設計する、ということは不可能だと分かっていました」とジョンソン氏はTechCrunchに語った。「コミュニティ一緒に製品を設計する必要がありました。『私たちがいなければ、私たちは何もできない』という信念を私たちは持っています。インクルーシブデザインという私たちの原則は、最初の段階からコミュニティを取り込むよう促すものです」。

大物たちの協力

他にも協力する人たちがいた。多くの発明がそうであるように、Freedom Wingの誕生は偶然の産物だった。

ATMakersのBill Binko(ビル・ビンコ)氏は、支援技術(Assistive Technology:AT)カンファレンスのブースで、ATMakersのJoystickという電動車イス向けデバイスを使用した人形「Ella」を展示した。カンファレンスにはAbleGamersを支えるブレーントラストの一員であるSteven Spohn(スティーブン・スポーン)氏も出席していた。

スポーン氏はJoystickを見て、ビンコ氏にXACで動作する同様のデバイスが欲しいと伝えた。センサーを使って、イスの代わりにゲームコントローラーを操作するというものだった。このデバイスはすでに電動車イスデバイスとして路上テストされているため、何カ月にも及ぶ研究開発とテストを必要としなかった。

ATMakers Freedom Wing 2

ビンコ氏によると、零細企業は、アクセシブルゲーミング技術の変革において先陣を切っているという。マイクロソフトやLogitech(ロジテック)のような企業は、最近になってようやく足場を固めた。

一方、ATMakersやQuadStickなどの小規模なクリエイターたちは、この業界をディスラプトすることに奔走している。

「誰もが(ゲーミングを)手にすることができ、コミュニティと関わり合う機会が広がっていきます」とビンコ氏。「ゲーミングは、人々が極めることができ、参加できるものなのです」。

参入の障壁

技術が進化するにつれて、アクセシビリティへの障害も進化する。こうした課題にはサポートチームの不足、セキュリティ、ライセンス、VRなどが含まれる。

ビンコ氏によると、需要の増加にともない、こうした機器のサポートチームを管理することは新たなハードルになっているという。AT業界に参入して機器の製造、設置、保守を支援するためには、技術的なスキルを持つ人材がさらに必要となる。

セキュリティとライセンスは、多様なハードウェア企業との協業に必要となる資金やその他のリソースのために、デイヴィソン氏のような小規模なクリエイターの手を離れている。例えば、Sony(ソニー)のライセンシングエンフォースメント技術は、新しい世代のコンソールではますます複雑化している。

デイヴィソン氏はテクノロジー業界での経験から、機密情報を保護するための制限について理解している。「製品の開発に膨大な資金を費やし、そのあらゆる側面をコントロールしたいと考えているのです」とデイヴィソン氏は語る。「力の小さい者が一緒に仕事をするのを厳しくしているだけです」。

デイヴィソン氏によると、ボタンマッピングではPlayStationが先行したが、セキュリティプロセスが厳格だという。コントローラーの使用を制限することがコンソール企業にとってどのようなメリットがあるのか、同氏には理解できない。

「PS5とDualSenseのコントローラーの暗号化は今のところクラックできないため、ConsoleTunerのTitan Twoのようなアダプターデバイスは、非公式な『中間者』攻撃のような他の弱点を見つけなければなりません」とデイヴィソン氏は述べている。

この手法を使えば、デバイスはQuadStickから最新世代のコンソールまで旧世代のPlayStationコントローラーを利用できるようになり、障害を持つゲーマーはPS5をプレイできるようになる。TechCrunchはソニーのアクセシビリティ部門に問い合わせたが、この部門の代表者によると、適応性のあるPlayStationやコントローラーに関する当面の計画はないという。しかし、同部門はアドボケイトやゲーミング開発者と協力し、最初からアクセシビリティを考慮しているとした。

これとは対照的に、マイクロソフトのライセンシングシステムはより寛容で、特にXAC、そして新システムで旧世代のコントローラーを使用する機能を備えている。

「PC業界とMacを比較してみてください」とデイヴィソン氏は続けた。「さまざまなメーカーのPCシステムを組み合わせることはできますが、Macではできません。一方はオープンスタンダードで、もう一方はクローズドです」。

よりアクセシブルな未来

日本のコントローラー会社HOLIは2021年11月、Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)用に正式にライセンスされたアクセシビリティコントローラーをリリースした。現時点では米国内では販売されていないが、オンラインで購入可能な地域の制限はない。任天堂はまだこの技術を完全には採用していないが、今回の開発は、アクセシビリティを重視した任天堂の方向性を示している。

任天堂のアクセシビリティ部門は完全なインタビューには応じなかったが、TechCrunchに声明を送った。「任天堂は、誰もが楽しめる製品およびサービスの提供に努めています。当社の製品は、ボタンマッピング、モーションコントロール、ズーム機能、グレースケールと反転カラー、触覚と音声のフィードバック、その他の革新的なゲームプレイオプションなど、さまざまなアクセシビリティ機能を備えています。さらに、任天堂のソフトウェアおよびハードウェアの開発者は、現在および将来の製品でアクセシビリティを拡大するために、さまざまな技術を評価し続けています」。

障害を持つゲーマーのための、よりアクセシブルなハードウェアを求める動きはスムーズではない。これらのデバイスの多くは、資本がわずかな小規模企業のオーナーによって開発されたものだ。いくつかのケースでは、開発の初期段階で包括性の意思を持つ企業が関与している。

しかし、徐々にではあるが確実に支援技術は進歩しており、障害を持つゲーマーにとってよりアクセシブルなゲーミング体験を実現する方向に向かっている。

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:アクセシビリティインクルーシブMicrosoftXboxSonyPlaystationHOLINintendo Switch任天堂コラム

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(文:Williesha Morris、翻訳:Dragonfly)

OpenAIの約109億円スタートアップファンドはマイクロソフトがパートナー

OpenAIが、スタートアップを対象とする1億ドル(約109億円)のファンドを立ち上げる。OpenAI Startup Fundと呼ばれ、これによりファンドとそのパートナーたちは、重要な問題および生産性の問題に挑戦している初期段階のAI企業に投資する。パートナーとファンドの投資家たちにはMicrosoftがおり、BuildカンファレンスではOpenAIの創立者である元Y CombinatorのSam Altman(サム・アルトマン)氏がこのニュースを発表した。

め録画されたビデオの中でアルトマン氏は「これは、よくあるような企業のベンチャーファンドではありません。私たちは、10社を超えない少数の企業に大きな投資をしていきたいと計画しています」と説明している。

1億ドルがどのように分割・分配されるのか、どのようなスケジュールで行われるのか、また、これがより長期的なプログラムの一部なのかなど、明らかになっていない。しかし、2021年のラウンドに限らず、限定的な資金であることは間違いなさそうだ。

アルトマン氏は、OpenAIのミッションステートメントに沿って、AIを活用したアプリケーションやアプローチが「人類全体に利益をもたらす」ようなヘルスケア、気候変動、教育といった深刻な問題に取り組んでいる企業を探していくと述べた。また、Microsoftが先に発表したGPT-3を利用した自然言語処理のように、生産性の向上も考慮するとしている。

MicrosoftのCTOであるKevin Scott(ケビン・スコット)氏は、Buildカンファレンスのキーノートで次のように述べている。「GPT-3のような強力なツールを使って、世界に貢献するような意欲的なアプリケーションを作ることができるのは、デベロッパーであるみなさんだ。Microsoftがこのファンドをサポートできることには、とても感激している」。

投資対象に選ばれた企業は新しいOpenAIのシステムへのアーリーアクセスとMicrosoftのAzureのリソースを使えるようになり、より本格的な研究開発ができる。OpenAIは、投資対象企業の所有権や、スタートアップに求める要件、その他の出資パートナーの参加など、詳細を明らかにしていない。現在、決まっているのは1億ドルという数字だけということもありうる。

申請はとても簡単であり、非常に多くの申請件数を期待しているのかもしれないが、自身の企業をこの渦中に投じたい人は、まずエレベーターピッチの準備から始めよう。申請には1分間の動画も必要だが、デモや音楽やエフェクトは不要だ。OpenAIがまだその詳細を明らかにしていない審査員たちにとって、それを見ることが審査の最初のふるいになるだろう。Zoomの背景は、まだ外さない方が良さそうだ。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:MicrosoftMicrosoft BuildMicrosoft Build 2021OpenAI

画像クレジット:OpenAI

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Microsoft AzureがPyson向け機械学習プラットフォーム「PyTorch」のエンタープライズサポートを提供

Microsoft(マイクロソフト)は米国時間5月26日、PyTorch Enterprise(パイトーチ・エンタープライズ)を発表した。Azure(アジュール)上でPyTorchを使うための新たなサポートをデベロッパーに提供する新サービスだ。

PyTorchはPython(パイソン)向けのオープンソース機械学習プラットフォームで、コンピュータビジョンと自然言語処理に焦点を当てている。当初開発したのはFacebookで、Google(グーグル)の人気フレームワークであるTensorFlow(テンサーフロー)と似ている部分もある。

Microsoftのコミュニケーション担当コーポレートVPであるFrank X. Shaw(フランク・X・ショー)氏は、新サービスPyTorch Enterpriseについて「データサイエンス業務にPyTorchを使っている組織のデベロッパーに、より信頼性の高い生産体験を提供する」ものであると説明した。

PyTorch Enterpriseは、MicrosoftのPremier(プレミア)およびUnified(ユニファイド)のサポートプログラム・メンバーに、ホットフィックス、バグ、セキュリティ・パッチなどの優先リクエスト、直接サポート、ソリューションなどを提供する、とショー氏は説明した。Microsoftは毎年、長期的なサポートを行うPyTorchのバージョンを1つ選んでいる。

AzureはすでにPyTorchを比較的容易に使用できるように作られていて、Microsoftは2020年、PyTorch for Windowsの開発を引き継ぐなど、長年このライブラリに投資してきた。この日の発表でMicrosoftは、最新リリースのPyTorchはAzure Machine Learningに統合され、デベロッパーから入手したPyTorchコードを公開PyTorchディストリビューションにフィードバックすることを約束した。

PyTorch Enterprizeは、Windows 10およびいくつかのLinuxディストリビューションで動作しているPyTorch バージョン1.8.1以上で利用できる。

「Microsoftが提供するこの新しいエンタープライズレベル製品は、重要なギャップを埋めるものです。PyTorchは私たちの研究者がモデルをデザインしたり実験を行う上で、これまでにない柔軟性を与えてくれます」とNuance(ニュアンス)の上級主任研究員Jeremy Jancsary(ジェレミー・ジャンクサリー)氏はいう。「しかしこれらのモデルを製品化するのはチャレンジです。Microsoftが直接関わることで、私たちはAzure上に新しいバージョンのPyTorchを安心して展開できます」。

この新サービスの提供でMicrosoftは、オープンソースプロジェクトの上に追加サービスを提供することによって、スタートアップにオープンソース収益化戦略の見本を示している。PyTorchはスタートアップが開発したものではないため、メジャーなクラウドサービスがオープンソースコードの上に自社の商品バージョンを載せることも、問題なく受け入れられるだろう。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftMicrosoft BuildMicrosoft Build 2021Microsoft Azure機械学習自然言語処理PyTorchオープンソース

画像クレジット:Gingagi / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nob Takahashi / facebook

マイクロソフトのナデラCEOがBuild 2021で「自らテストしてきた」次世代Windowsに言及

マイクロソフトのナデラCEOがBuild 2021で「自らテストしてきた」次世代Windowsに言及

Igor Bonifacic / Engadget

マイクロソフトが開催中のイベントBuild 2021では、PC向けデスクトップOSに関する大きな発表はありません。それは近い将来に発表する予定の次世代Windowsに取り組んでいるからのようです。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOはBuild 2021の基調講演で「過去10年で最も重要なWindowsのアップデートのひとつをまもなく公開する」と述べました。

ナデラ氏はここ数か月、最新のOSを自身でテストしていたとし「次世代Windowsに非常に期待している」そして「すべてのWindows開発者にさらに多くの機会を提供、アプリケーションを構築し配布、収益化するための革新的で新しい”オープンプラットフォーム”を求めるすべてのクリエイターを歓迎します。近いうちにさらに多くをお伝えすることを楽しみにしています」と述べました。

現状でも、WindowsはアイコンやUIのアップデートに加え、新しいWindowsアプリストアに取り組んでいます。The Vergeが伝えるには、次世代Windowsのアプリストアではアプリケーションの中にサードパーティが独自の課金システムを含めることを認めるかもしれないとのこと。もしそうなれば、開発者はマイクロソフトがアプリ15%、ゲーム12%のストア税を徴収するのを回避できます。

先週にはWindows 10Xの開発を取りやめることを明らかにしたマイクロソフトですが、そこに含まれていたいくつかの重要な機能は今年後半のSun ValleyアップデートでWindows 10に導入される予定です。

ナデラ氏は、将来のWindowsに関し「近いうちに」としました。発言が守られるなら数週間ほどのうちに何か発表やイベントが行われるかもしれません。

(Source:The VergeEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Windows 10(製品・サービス)OS / オペレーティングシステム(用語)Satya Nadella / サティア・ナデラMicrosoft / マイクロソフト(企業)Microsoft Build(イベント)Microsoft Build 2021(イベント)

マイクロソフトが今や1日に1億4500万人が利用するTeamsの開発者向け新機能やツールを発表

Microsoft(マイクロソフト)は、米国時間5月25日に(バーチャルで)開催された開発者・エンジニア向けイベント「Microsoft Build(マイクロソフト・ビルド)」で、自分たちのサービスをSlack(スラック)の競合製品であるMicrosoft Teams(マイクロソフト・チームズ)に統合したいと考えている開発者のために、さまざまな新機能やツール、サービスを発表した。マイクロソフトが、今や1日のアクティブユーザー数が約1億4500万人となったTeamsを、企業の社員が仕事を進めるための新たな拠点であると見做していることは明らかであり、サードパーティの開発者に彼らのサービスをTeamsに導入してもらいたいと望むのも当然と言える。

そこでマイクロソフトは、開発者がTeamsで新しいユーザー体験を容易に構築できるように、新しいツール群を提供することになった。

その内容は多岐にわたるが、最も重要なニュースはVisual Studio(ビジュアル・スタジオ)および Visual Studio Code(ビジュアル・スタジオ・コード)向けに強化されたMicrosoft Teams Toolkit (マイクロソフト・チームズ・ツールキット)の発表だろう。

「これによって開発者は、基本的にアプリケーションをより簡単かつ迅速に作成することができ、さらに豊富なマイクロソフトのスタックを活用した非常に強力なアプリケーションを作成することができます」と、マイクロソフトのグループプログラムマネージャーを務めるArchana Saseetharan(アーチャナ・サシーサラン)氏は説明する。「このアップデートしたツールキットで【略】、私たちは開発者が柔軟に対応できるようにしました。私たちは開発者の置かれている状況に対応したいと思っています」。

画像クレジット:Microsoft

このツールキットは、React(リアクト)、SharePoint(シェアポイント)、.NET(ドットネット)などのツールやフレームワークに対するサポートを提供する。今回のアップデートでは、Azure Functions(アジュール・ファンクションズ)との統合、SharePoint Framework(シェアポイント・フレームワーク)との統合、Microsoft Graph(マイクロソフト・グラフ)とのシングルライン統合などが実現した。

またマイクロソフトは、開発者が作成したTeamsアプリに認証ワークフローを簡単に統合できるようにもした。「ログインは、すべてのユーザーがアプリを使用する際に最初に体験することです。そして、ほとんどの落伍はここで発生します」と、サシーサラン氏はいう。「ですから、(シングルサインオンは)私たちが非常に力を入れて取り組んでいることです」。

また、Microsoft Teamsのための新しい開発者ポータルも開設され、開発者は1つのツールでアプリの登録や設定が簡単にできるようになった。ISV(独立系ソフトウェア事業者)は、この新しいポータルを使って、自社のアプリをTeamsアプリ内購入向けに提供できるようになる。

その他のTeamsの開発者向け新機能には、例えばホワイトボードやプロジェクトボードのようなリアルタイムのマルチユーザーエクスペリエンスを構築する方法や、会議の開始から終了までのワークフローを構築できる新しい会議イベントAPI、さらに開発者がTeamsの「Together(トゥギャザー)」モード用にシーンを簡単に作成・カスタマイズできる新機能などがある。

関連記事:マイクロソフトが「Together」モードでビデオ会議の疲れを軽減

他にもいくつかの新機能が追加されているが、要するにマイクロソフトは開発者の人々に、Teamsを自社サービスの実行可能なプラットフォームとして考えてもらいたいと思っているようだ。そしてそれは、1億4500万人のデイリーアクティブユーザーを抱えており、ソフトウェア企業にとって自社のサービスを新たなユーザーに提供するための有益な手段となる可能性がある。

「Teamsは、コラボレーションアプリと呼ばれるアプリの新たなクラスを実現します」と、マイクロソフトのTeams担当製品マーケティングディレクターであるKaran Nigam(カラン・ニガム)氏は述べている。「私たちはその協業スペースをさらに豊かにすることができる独自の立場にあります。拡張性の面で多くの革新を行うことで、アプリはより豊かになり、ツールキットのアップデートによって、それがより簡単に行えるようになりました。そして開発者ポータルは、ライフサイクル全体を管理できるワンストップショップとなります。最終的に、開発者は複数の場所に行く必要がなく、企業の観点からも1つの流れとして、開発を行えるようになります」。

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マイクロソフトはGPT-3を使い自然言語でコードを書けるようにする

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画像クレジット:Rick Lawrence / 500px / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

マイクロソフトはGPT-3を使い自然言語でコードを書けるようにする

2021年のMicrosoft Build開発者会議には例年ほどの大きな驚きはなかったが、開発者がおそらく注目するであろう発表が1つある。Microsoftは同社のノーコード / ローコードサービスであるPower AppsでOpenAIの強力なGPT-3自然言語モデルを使って、話し言葉を最近発表されたPower Fx言語のコードに翻訳する。

しかし我を忘れてはいけない。自然言語だけを使って次のTikTokを開発しようということではないのだ。MicrosoftがやっているのはPower Appsのようなツールでローコードになっている部分の一部をなくすことであり、AIを使って基本的にノーコードのエクスペリエンスにしようともしている。現時点で主眼となっているのはPower Appsの数式で、これはもともとローコードのサービスではあるが、高度なアプリを開発しようと思ったら遅かれ早かれ何らかの数式を書かなくてはならない。

Microsoftのローコードアプリケーションプラットフォーム担当CVPであるCharles Lamanna(チャールズ・ラマンナ)氏は「このような高度なAIモデルを使うことで、まさに私たちがノーコードと呼んでいるものになり、Microsoftのローコードツールはさらに多くの人たちに使われるようになります」と述べた。

実際には、シチズンプログラマーが「find products where the name starts with ‘kids’」(「kids」で始まる名前の製品を見つける)のように書くと、Power Appsが「Filter(‘BC Orders’ Left(‘Product Name’,4)=”Kids”)」とレンダリングする。

MicrosoftはOpenAIに投資しているので、MicrosoftがこのエクスペリエンスにOpenAIのモデルを利用することに決めたのは当然だ。

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画像クレジット:Microsoft

これによってプログラミングが簡単になるが、そうはいってもユーザーは自分が開発しているアプリケーションのロジックを理解する必要があるとMicrosoft自身が強調していることは重要なポイントだ。同社は今回の発表の中で「この機能によって自分が実装しているコードを理解する必要性がなくなるわけではありませんが、プログラミング言語のPower Fxを学んでいる人を支援し、必要な結果を得るための正しい数式を選ぶ助けとなります。高度なアプリ開発へのアクセスが劇的に広がり、ローコードツールの使い方をこれまで以上に短期間でトレーニングできます」と説明している。

ExcelやPowerBI、Googleスプレッドシートなどで利用できる自然言語クエリ機能を使うのと、まったく違うというわけではない。これらも結局のところ、自然言語を数式に翻訳している。おそらくGPT-3はもう少し高度でもっと複雑なクエリを理解できるだろうが、自然言語を数式に翻訳するという点ではそれほど新しくはない。

長期的にはこのようなツールがもっと賢くなって複雑なプログラミングタスクを処理できるようになると見られる。しかし複雑なプログラミングができるようになることは、翻訳の問題よりもずっと高いステップアップだ。概して、クエリが複雑になるほどプログラムをしっかり理解することが必要だ。数式はたいてい自己完結型のステートメントだが「本物の」コードを生成できるようなモデルではもっと多くのコンテクストを処理しなくてはならない。

この新機能は、2021年6月末までに北米のユーザーに対して英語版のパブリックプレビューが公開される。


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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftMicrosoft BuildMicrosoft Build 2021ノーコードローコードPower Apps自然言語処理OpenAI

画像クレジット:Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

マイクロソフトのブラウザ「Edge」は起動が速くなりタブがスリープする機能も搭載する

米国時間5月25日、毎年恒例のBuildカンファレンスでMicrosoftはEdgeブラウザのバージョン91に搭載される新機能を紹介した。2021年のBuildは驚くような発表(開発者のベロシティ!)があまりなく、それはEdgeの新機能も同様だが、ユーザーにとっては生活の質が上がる良いアップグレードだ。MicrosoftはEdgeをオープンに開発しているため、Edgeのロードマップに注目している人にとってはすでに知っている機能のように感じられるかもしれない。実際、筆者はEdge 90で新機能の大半をすでに見ていた気がする。

新機能の1つは、Edgeがほぼ瞬間的に起動するStartup Boostだ。Microsoftはかなり単純な方法でこれを実現している。Windowsマシンを起動するたびに単純にEdgeのコアのプロセスの一部をロードしているので、Edgeを起動するときには処理する作業があまりないのだ。Windows 10の起動時間にはあまり影響を与えないはずなので、おそらくトレードオフの価値はあるだろう。しかし筆者はここ数年、誰かがブラウザの起動時間について不平をいうのを聞いた記憶はない。

もう1つの新機能は「スリーピングタブ」で、名前から期待するとおりのものだ。タブをスリープさせるので、不要なメモリやCPUサイクルを消費しなくなる。

Microsoftは2020年12月にこの機能をテストしていることを初めて公表した。その時点でEdgeチームは、スリープしているタブはスリープしていないタブと比べてCPUの使用が平均で37%少ないため、メモリ使用量が32%減りバッテリー駆動時間も伸びると述べていた。

ベースのテクノロジーの多くをEdgeと共有しているGoogleのChromeブラウザも、リソースの使用を制限するツールを提供していることを付記しておく。例えば、現在の主なブラウザのほとんどが備えている機能で、Googleが「タブフリージング」と呼んでいるものなどだ。

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Surface Duoの2つのスクリーンがゲーム画面+バーチャルコントローラーとして使用可能に

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftMicrosoft Build 2021Microsoft Edgeブラウザ

画像クレジット:Olga Gimaeva / EyeEm / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

Surface Duoの2つのスクリーンがゲーム画面+バーチャルコントローラーとして使用可能に

2020年12月にMicrosoft(マイクロソフト)が掲載した「Surface Duo(サーフェイス・デュオ)の今後1年」と題したブログ記事には、このデュアルスクリーンデバイスが米国以外の地域(カナダ、英国、フランス、ドイツ)でも発売予定であることや、いくつかの機能が紹介されていた。だが、このデバイスを使ってみたことがあるほとんどの人(我々を含む)は、このデバイスがまったくの未完成であることを認めている。

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マイクロソフトは米国時間5月24日、Android版「Xbox Cloud Gaming(エックスボックス・クラウド・ゲーミング)」のアップデートを行い、この製品のエンターテインメント性の一部を解放した。これまでベータ版として提供されてきたこの機能は、マイクロソフトの中で議論が続けられ、プレビューも行われていたが、今まで隠された機能の1つだった。

本日、#SurfaceDuoをご利用のお客様にとてもクールなアップデートが公開されました!@Xboxと協力して、私たちはその2つ目のスクリーンにタッチ式コントローラーを搭載しました。@xboxGamePassのアルティメットメンバーなら、50種類以上のゲームがタッチ操作で遊べるようになりました。

このアプリは、あなたがSurface Duoに期待する通りの使い方を実現する。横向きのCompose Mode(コンポーズモード)にすると、上の画面にゲームが表示され、下の画面はバーチャルなXboxコントローラーに変わる。もちろん、タッチスクリーンでできることは限られているが、ゲームが2画面あると便利なアプリケーションであることは確かだ。

Engadgetによると、このタッチコントローラーはXbox Game Pass Ultimateに加入しているユーザーが利用できる50以上のタイトルに対応しているという。

従来の折りたたみ式フォームファクタに代わる製品として大いに宣伝され、非常に期待されていたSurface Duoだが、発売当初は期待外れだった。マイクロソフトはその後、この製品の価格を1399ドル(約15万2000円)から999ドル(約10万9000円)に値下げしている。つまり、あまり売れていなかったということだろう。しかし、今回のようにソフトウェアのサポートが続けられているということは、初期の失敗にも拘らず、同社が今後もこの製品をサポートしていくという意思の表れなのかもしれない。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:MicrosoftXbox Game Pass折りたたみスマートフォンSurfaceSurface Duo

画像クレジット:Microsoft

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【レビュー】マイクロソフトのSurface Laptop 4は予想どおり堅実な進化を遂げている

最近では、ノートパソコンのデザインで最も簡単なやり方は、Apple(アップル)のMacBook(マックブック)をそのまま模倣することだと言われている。確かにこの数年の間には、酷いケースも目にしてきた。しかし、Microsoft(マイクロソフト)はその製品ラインアップ全体の工業デザインにおいて、独自の道を挑戦的に切り開いてきた。同社の製品は概して非常に興味深く、革新的だ。最近こんな言葉はすべてのハードウェアメーカーに対して言えるものではなくなっているが。

しかし、マイクロソフトのやることが常に正しかったとは限らない。例えば、Surface Duo(サーフェイス・デュオ)では非常に大胆な試みに打って出た。確かに革新的ではあったものの、誰もに推奨できるとは言えない部分があったのも事実だ。その一方で、Surface Laptop(サーフェイス・ラップトップ)は、シリーズで最も画期的な製品というわけではないが、Windows対応のタッチスクリーンと、より標準的なノートブックのデザインを併せ持つ、一貫して最も優れた製品の1つであり続けている。

ここ数世代のモデルは堅実で、2021年のモデルも(おそらく大方の予想通り)大きな変化はなかった。約1年半ぶりの大きなアップグレードは、新しいチップ(AMD Ryzen、Intel Core i5またはi7のいずれか)の搭載と、8時間30分も長くなったバッテリー駆動時間の大幅な向上だ。基本的には、モデルの定期的な刷新時に予想される(あるいは期待される)種類の改良に過ぎない。

画像クレジット:Brian Heater

デザイン言語はほとんど変わっていない。Surface Laptopは、テーパードした側面やフェルト(アルカンターラ素材)で覆われたパームレストなど、その面では類を見ない独自性を備えている。素材の感触は良く、特に寒い日にはメタル素材製のものを明らかに凌ぐが、しかし短期間使用しただけで、すでに少し摩耗していることに気づいてしまった。

キーボードは従来と同じくソフトな感触で、驚くほどの弾力性がある。これまで私が見たノートパソコンの中で最高のキーボードというわけではないが、最悪のキーボードでもない(あのアップルの粗雑なキーボードの動きを忘れることができるだろうか?)。他のすべてのキーボードと同じように、慣れるには少し時間がかかる。

また何度も同じことを繰り返すと思うかもしれないが、おそらく毎回マイクロソフトが気候の良い時期にSurface Laptopを発表するせいだろう、私はいつもこれを外に持ち出したくなる。そして毎回、残念に思うのがあのディスプレイの反射だ。ほとんど集中できない。もちろん、多くのノートパソコンに光沢(グレア)スクリーンが採用されているが、マイクロソフトは特にその傾向が強い。この点において、Surface Laptopを陽光の下で使うことはおすすめできない。たとえ輝度を最大にしても、スクリーンは反射を打ち消すことができないからだ。

画像クレジット:Brian Heater

見える環境に持って来れば、画面の表示はきれいだ。マイクロソフトが送ってくれたのは、2サイズが用意されているうち小さい方の13.5インチで、解像度は2256×1504px、201ppiとなる(15インチでも画素密度は同じ)。我々は新色のアイスブルーを選んだ。しかし、これは微妙な色合いだ。正直なところ、私にはブルーというよりシルバー / グレーに近ように見える。スピーカーの音は素晴らしく、ウェブカメラも問題ないが、依然としてビデオ会議が多く行われている現在、そろそろ(現在の720pから)1080pにアップグレードする時に来ていると言っていいだろう。

13.5インチのモデルの価格は1000ドル(日本では税込12万8480円)からで、8GBのRAMと256GBのストレージ(SSD)、そしてAMD Ryzen 5 4680Uプロセッサを搭載する。我々の手元にあるモデルは、RAMとストレージを2倍に増やし、プロセッサをAMDからIntelのCore i7に変更した仕様で、価格は1700ドル(日本では税込21万6480円)となる。さらに600ドルを足せば、RAMとストレージがさらに2倍になる(プロセッサは同じCore i7、日本では税込29万3480円)。Geekbenchのスコアでは、シングルコアで1378、マルチコアで4876という堅実な数値が出た。パフォーマンスは全体的に安定しているものの、アップルのM1を長時間使用した後では、Intelに大変な仕事が残されていることは明らかだ。

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マイクロソフトは、依然として独自のマグネット式充電ポートの採用にこだわっている。熱狂的なファンがいることは承知しているが、個人的にはUSB-Cポートをもう1つ追加するなど、より一般的な方法を採用してもらいたいと思う。だが、それでは他のSurface用のさまざまなアクセサリーとの互換性に影響が出てしまう。反対側には、USB-A、USB-C、そしてヘッドフォンジャックが備わる。これは良い組み合わせだが、ポート数が増えればさらに強化されることは間違いない。

2020年のSurface Laptop Goでは、さまざまな機能が削減されており実に失望させられた。もちろん、エントリーレベルの13.5インチLaptopは、12インチLaptop Go(日本では税込8万4480円)よりも300ドルも高い。しかし、基本的な作業以上のことをやりたいと思うのであれば、これはおそらく賢明な投資になるはずだ。

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

半導体不足で新品入手が困難となる中アップルやマイクロソフトが「修理する権利」法案成立の阻止に尽力

半導体不足で新品入手が困難となる中アップルやマイクロソフトが「修理する権利」法案成立の阻止に尽力

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米国では「修理する権利」つまりユーザーが自ら選んだ方法で(主に製造メーカー非公認の修理業者に持ち込むことで)購入した製品を修理する権利に関する法案が次々と提出されています。具体的には製造メーカーに純正の修理部品や回路図を独立系の修理業者に提供することを義務づける内容です。

こと新型コロナ感染拡大によるリモートワークや自宅学習が広まったもと、タブレットやChromebookなどの需要が増えており、壊れたデバイスをメーカー修理に送ると時間や費用がかかることや、半導体不足が悪化の一途をたどり新品の入手が困難となっているため、いっそう機運が高まっている事情もあります。

しかしアップルやマイクロソフト、アマゾンやGoogleといったハイテク大手が、それらの法案成立を阻止するために数々の努力をしていることが報じられています。

米Bloombergによると、2021年だけで全米27の州にて「修理の権利」法案が検討されたものの、そのうちの半分以上はすでに否決されたり、却下されたとのことです。それはハイテク大手を代表するロビイストや業界団体が猛反発しており、特にアップルはこうした法律がデバイスの損傷や、修理しようとする消費者の自傷行為につながる可能性があると主張していると伝えられています。

例えばワシントン州の下院議員ミア・グレガーソン氏も「修理する権利」法案を提出したところ、MS、Google、アマゾン、そしてアップルを代表するロビイストに反対されたと述べています。なかでもアップルのロビイストは法案が取り下げられれば、地元の大学での修理プログラム(授業)を支持すると持ちかけたそうです。

ほかアップルはコロラド州やネバダ州でも法案に反対しており、独立系修理業者のひとりは学校で需要が高いiPad(その地域で1万3000台以上が流通し、うち10~15%が修理が必要のため)のスクリーンを調達するのに苦労しているとのこと。その人物はアップルが新しいデバイスを買ってもらうために修理プログラムに反対していると主張しています。

アップルは「修復する権利」法案と戦う一方で、日本を含む世界各地で独立系修理業者の認定プログラムを展開しています。これは非正規業者にも純正部品や工具、修理マニュアル、診断方法を提供し、アップル直営店や正規サービスプロバイダと同等の品質を受けられるようにすることが目的とされています。

このプログラムは無償で提供されていますが、やはり独立系業者はiPadのディスプレイなど一部の部品は入手できないため、アップルと正規サービスプロバイダが修理する上で唯一の選択肢となっているわけです。

ほかBloombergの記事はMSのブラッド・スミス社長がワシントン州の議員らを集めた会議を仕切って、「修理する権利」法案が自社の知的財産権を脅かすもので「存亡の危機」だと主張したこと。そうした会社そのものが関わるMSと違い、アップルは雇ったロビイストや業界団体に反対運動を任せているなど興味深い事実も伝えられています。

ある議員が発した「なぜ自分のXboxのファンが壊れたとき、ゲーム機をMSに返送し、修理のために何週間も待たなければならないのか」という疑問は、多くのゲーマーが頷けるところかもしれません。

(Source:BloombergEngadget日本版より転載)

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タグ:iPad(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Amazon / アマゾン(企業)カーボンニュートラル(用語)Google / グーグル(企業)修理する権利 / Right to Repair(用語)Microsoft / マイクロソフト(企業)リサイクル(用語)

さらばIE、25年以上にわたるセキュリティバグの思い出

そのスピード、信頼性、そしておそらく最も有名なのはセキュリティについて数え切れないほどのジョークのネタにされてきた長命インターネットブラウザー「Internet Explorer(IE)」が、25年以上の歴史を経て2022年に引退することになった。敬意を表して一杯捧げよう。

Microsoft(マイクロソフト)によると、2022年6月に同ブラウザーの生命維持装置のプラグを引き抜くとのことで、最後に残った5〜6人のユーザーには、ChromeやFirefoxに移行するための猶予期間がまるまる1年与えられる(正直な話、他にも優れたブラウザーは存在するが)。このブラウザーが動作に必要な産業用機械など、サポート終了計画には一部例外もある。

Microsoftは長年にわたりInternet Explorerのユーザーに対して、より信頼性と安全性の高い新しいブラウザーであるEdgeへの移行を促してきたが、ライバルのブラウザーを使おうとした瞬間に画面上に広告を表示するなど、可能な限り不愉快な方法をとってきた。ウェブ上でのIEの支持率が低下していく中、多くの企業も同ブラウザーのサポートを終了し始めている。

Microsoftは、IEのサポートを終了することで、同社の歴史の中で最も問題が多かったセキュリティの頭痛の種と決別することになる。

事実上、Internet Explorerほど多くのセキュリティバグに悩まされてきたソフトウェアは他にない。Microsoftは過去20年間、ほぼ毎月IEにパッチを当ててきた。これは、ブラウザーの脆弱性を見つけて悪用し、被害者のコンピュータにマルウェアをドロップするハッカーの一歩先を行くためだ。IEは長年にわたって強化されてきたが、ほとんど目に見えないほど頻繁に行われるセキュリティアップデートや、ユーザーのコンピュータ上でマルウェアが実行されるのを防ぐためのより厳しいサンドボックス化などで先行する競合他社に比べて遅れをとっていた。

関連記事:マイクロソフトがWindowsの脆弱性パッチを緊急リリース、ユーザーは即刻適用を

Internet Explorerの悪口をいうのは簡単だが、Windows 95に搭載されて以来、30年近くも我々の生活に溶け込み貢献してくれた。10代から20代にかけてインターネットで育った我々の世代のユーザーの多くは、Internet Explorerを最初に、そして唯一のブラウザーとして使ってきた。我々のほとんどが、最初にHotmailのメールアドレスを登録したのもInternet Explorerだった。そのブラウザーを使ってMyspaceページをコーディングする方法を学び、怪しげなマルウェア入りの「ゲーム」を大量(実に大量)にダウンロードしてコンピュータの動作をナメクジ並みに遅くしても、何とも思わなかった。

昔、10歳くらいの子どもだった頃、実家の寒い屋根裏部屋にあった明るいティール色の壁紙のCRTモニタに、ピクセル化されたInternet Explorerのアイコンを初めて見た時のことを私はよく覚えている。なぜ記憶に残っているかというと、インターネットが何かよく知らなかった私は、父にこう文句をいったから。「ただインターネットだけを探検(Explore)したいんじゃない。僕は全部を見たいんだ」。

Internet Explorerのおかげで、私はその大部分を見ることができた。

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

Internet Explorerが2022年6月15日にサポート終了、ただしEdgeのIEモードは2029年までを予定

Internet Explorerが2022年6月15日にサポート終了、ただしEdgeのIEモードは2029年までを予定

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米国Microsoftは5月19日(現地時間)、Windows 10におけるInternet Explorer 11のサポートを2022年6月15日に終了すると発表しました。ただし、Windows 10 LTSC(Long-Term Servicing Chanel)とWindows 10 ServerのIE11は対象外です。

これにより、上述したOS上を除けば、IEのサポートがついに終了となります。

長らくWindowsの標準ブラウザとして利用されてきたInternet Explorer(IE)。すでにEdgeへの移行も進んでおり、個人利用でIEを使い続けているユーザーはごく少数と考えられますが、業務システムなどで利用しているなどの都合で、まだIEを継続している企業もあります。

Microsoftは、数年前からIEを使い続けるのは技術的な負債だとして、Edgeへの移行を推進していましたが、ようやくサポート終了にこぎつけたという印象です。

詳細な予定としては、2021年8月17日にMicrosoft 365および他アプリでのIEサポートを終了し、デスクトップアプリは2022年6月15日に終了します。それでもIEを使い続ける必要がある企業向けに対しては、EdgeのIEモードを少なくとも2029年までは継続するとしています。

最近は日本の行政サービスでもEdgeやChromeをサポートするようになっており、IEを使うシーンはかなり少なくなってきています。とはいえ、オンライン統計ツールのStatcounterによると、2021年4月時点でのIEのシェアは、日本ではまだ3.05%あるようです(グローバルでは0.71%)。

工場や基幹システムなど特殊な環境で利用しているのであれば、あきらめてIE脱却に本腰を入れるか、今回は影響を受けないLTSCライセンスへの移行を検討するのが良さそうです。

Internet Explorerが2022年6月15日にサポート終了、ただしEdgeのIEモードは2029年までを予定

(Source:MicrosoftEngadget日本版より転載)

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