マーク・べニオフがAppStore.comドメインをスティーブ・ジョブズに贈った舞台裏

Salesforce(セールスフォース)の創業者であるMarc Benioffマーク・ベニオフ)氏は著書「Trailblazer」(邦訳未刊)で、Apple(アップル)の創業者であるSteve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏がまいたアイデアの種がどのようにして最初のエンタープライズアプリストアとして実を結んだのか、それに対しベニオフ氏がAppStore.comドメインを贈ってジョブズ氏に報いることになった経緯を語っている。

セールスフォースが1999年に始めたエンタープライズクラウドサービスは同社が道を切り開くのに大きく貢献したが、2006年にオンラインストアで関連サービスを配布する最初のSaaS企業になったとき、さらにもう一歩踏み出した。

同社のCTOで共同創業者のParker Harris(パーカー・ハリス)氏は年のSalesforceの20周年に関するインタビューで、AppExchangeを始める3年前に、スティーブ・ジョブズ氏とのミーティングでアプリストアのアイデアが生まれたと語った。ベニオフ氏、ハリス氏、共同創業者のDave Moellenhoff(デイブ・モレンホフ)氏は2003年、ジョブス氏と会うためにクパチーノを訪れた。ミーティングで、伝説のCEOは3人に賢いアドバイスを送った。「企業として本当に成長・発展したいのなら、Salesforceはクラウドソフトウェアエコシステムを開発する必要がある」。これは現代のエンタープライズ向けSaaS企業にとっては当たり前のことだが、2003年当時のベニオフ氏とそのチームにとっては斬新だった。

ベニオフ氏が著書で述べているように、ジョブズ氏のいうアプリケーションエコシステムとは何を意味していたのか、はっきり説明してほしいとベニオフ氏はジョブス氏に頼んだ。ジョブズ氏は、アイデアをどのように実現するかはベニオフ氏次第だと答えた。そのコンセプトの熟成には時間がかかった。ベニオフ氏は、ジョブス氏とのミーティングから数年後のある晩、夕食時にアプリストアというコンセプトがひらめいたと書いている。レストランの座席に座ってナプキンに最初のアイデアをスケッチしたという。

「ある晩、サンフランシスコで夕食を取っているとき、抗い難いほどにシンプルなアイデアがひらめいた。 世界中の開発者がSalesforceプラットフォーム用の独自のアプリケーションを作成できるとしたら?そして、Salesforceユーザーなら誰でもダウンロードできるオンラインディレクトリにアプリを格納すると当社が提案したら?」。

同氏が語った通りに物事が展開したかどうかはともかく、App Storeというアイデアは最終的に実現した。ただ当初は、現在のAppExchangeという名前ではなかった。ベニオフ氏は、AppStore.comという名前が気に入り、翌日弁護士にドメインを登録してもらった。

立ち上げ前にベニオフ氏は顧客にその話をした。彼らはオンラインストアのコンセプトは気に入ったが、同氏が考えた名前についてはいいと思わなかった。同氏は結局その名前をあきらめ、2006年にAppExchange.comという名前で立ち上げた。続いて2007年にはForce.comが始まり、プログラマがアプリケーションを作成しAppExchangeで配布できる本格的な開発プラットフォームを提供することになった。

その間、AppStore.comは2008年まで休眠状態だった。ベニオフ氏はiPhoneに関する大きな発表イベントに招待され、再びクパチーノを訪れた。ベニオフ氏は当時「クライマックスの瞬間にジョブスが発した『みなさんにApp Storeをお届けする』という言葉に卒倒しそうになった」と述べている。

ベニオフ氏は、同氏とSalesforceの幹部がその名前を聞いたとき、実際息をのんだと書いている。どういうわけか、最初のミーティングから紆余曲折を経て、両社は同じ名前にたどり着いたのだった。ただ、Salesforceのほうは結局採用しなかったため、ベニオフ氏がメンターに名前を譲る余地を残すことになった。ベニオフ氏は基調講演の後にバックステージを訪ね「ジョブズ氏にドメインを譲渡する契約にサインした」と著書で述べている。

だが結局、ウェブドメインのアイデアは、App Storeのコンセプトという意味では、ジョブス氏にとってそれほど重要性を持たなかった。スマホにApp Storeを入れたため、アプリをダウンロードする際にウェブサイトを必要としなくなったからだ。おそらくそれが現在、ドメインがiTunesストアを指定し、iTunesを起動する(または開くオプションを提供する)理由だ。

Apple.comのApp Storeページも、現在サブドメイン「app-store」を使用している。だがジョブス氏とベニオフ氏の間の会話が最終的にエンタープライズソフトウェアの配信方法に大きな影響を与え、ベニオフ氏はジョブス氏のアドバイスに報いることができたといういい話だ。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

【スティーブ・ジョブズ氏追悼】iPhoneはもうすぐ日本で売れなくなる、アップルはどうするのか?

stevejobs01.png正直言ってもう記事として扱うことはないと思ったが、隣の編集長からの強い依頼があったので改めてスティーブ・ジョブズ氏没後のアップルについて個人的な感想を書きたいと思う。

日本時間の2011年10月4日の午後だったと記憶しているが、現地時間の10月5日にアップルのCEOであったスティーブ・ジョブズ氏の死去が発表された。訃報を聞いたとき私は千葉の幕張メッセでCEATECのブースイベントに出演していた。まったくの赤の他人だが、それほどの驚きはなく覚悟はできていた。部位は違えど実父が同じ病気で10年前に死去していたので、ジョブズ氏が罹患した事実とその部位を発表したときには、経営の第一線で活躍できる期間はそう長くないなと感じていたからだ。亡くなる前の2011年6月に開催されたWWDCでは、iCloudをはじめとするクラウドの重要性を熱く語ったジョブズ氏だったが、結局それが最後のスピーチとなってしまった。死亡証明書の職業欄には「起業家」と書かれていたそうだ。

当時編集長を務めていたアップル系専門誌のMacPeopleでは、2011年8月29日発売号で「Steve Jobs Keynote History」という小冊子を特別付録として制作した。これは、アスキー(KADOKAWA)のアップル系専門誌やウェブメディアが過去に取材したジョブズ氏の基調講演記事を時系列にまとめたもの。意図せず追悼号になってしまったわけだが、身売り危機があったどん底から、一筋の光が差していた互換機戦略を葬り去り、iMacで復活の足がかりを作り、iPodによって復活。iPodのWindows対応によってアップル製品のユーザー層が飛躍的に拡大した。

そして2007年1月9日にアップル初のスマートフォンとしてiPhoneが登場する。当初の販売目標は年間1000万台だったが、ご存じのように今では四半期で4000万台以上を売り上げるプロダクトに成長した。現在、ハイエンドモデルのiPhoneはローエンドモデルのMacBookを凌ぐ価格設定だが、MacBookよりも一桁多い販売台数を記録している。

国内に限ってみると、PCのシェアではMacは10%未満であえいでいるアップルだが、スマートフォンのシェアでは変わらずトップを走っている。最近ではOS別のシェアではAndroidのシェアが1位なったという調査も出てきているが、あと数年はメーカー別シェアの1位は揺るぎないだろう。この他国とは異なるiPhone一人勝ちの市場を形成したのは、iPhoneを開発したアップルはもちろんだが、メールやメッセージなどの諸条件が整わない中で、いち早くiPhoneを日本に持ってきたソフトバンクの功績が非常に大きいことを忘れてはならない。

しかし、多くのユーザーが感じているように近い将来iPhoneはたいして売れなくなる。アジア地域での伸長の余地はまだあるが、Windowsマシンに対するMacのように、iPhoneが低価格で高性能なスマートフォンに置き換えられることは容易に想像できる。乱暴にいうと、iPhoneでできることは、Androidでもできるのだ。確かにiPhone XSのカメラ機能は素晴らしいが、そこを絶賛したところで食指が動くユーザーの数は次第に減っていくだろう。新興国で低価格のiPhoneを旧モデルの価格を大幅に下げてシェアを取るという戦略もあるかもしれないが、長年アップルを見てきた読者ならわかるように、おそらくその選択肢をアップルが採ると失敗する。

Macの新モデルが出るたびに買い替えていたユーザーの買い替え頻度が落ちるのと同様に、高性能化したiPhoneは3年、4年使い続けるのがそろそろ当たり前になる。アップルが公表している四半期ごとの各プロダクトの販売台数で、iPhoneの売り上げはすでに鈍化しており、いずれYoYで100%を切ることだろう。

アップルは、いまのところポストiPhoneと呼ばれるものを生み出せていない。Apple Watchがある!と答える人もいると思うが、決済と通知の機能以外においてiPhoneを代替えするほどのポテンシャルはない。スマートフォンとは異なり競合他社の勢いがなく、スマートウォッチ市場ではApple Watchが一人勝ち状態であることは事実。最新のSeries 4は米国で心電図の計測に対応するなど、今後は医療系での進化も期待できる。しかし、やはり画面が小さすぎるのだ。

もちろんアップルはそのことに気付いているはずだ。そこで現行のプロダクトでポストiPhoneを感じさせるものを無理矢理挙げるとすると、個人的にはAirPodsを推す。現在はワイヤレスイヤフォンでしかないAirPodsだが、イヤフォンというよりもウェアラブルデバイスと言っても差し支えない操作性を備えている。例えばこのAirPodsがメガネのようなウェアラブルデバイスと結合するとどうなるか。そのメガネでウェブサイトを見たり、SNSでのメッセージのやり取りができるとどうなるか。さらに電話ができるとどうなるか。

アップルは現在、VR系については視聴環境も開発環境も甚だしく出遅れているし、スマートスピーカー市場ではすでに太刀打ちできない。そんな中、なぜだかARについてはかなりの力を入れて取り組んでいる。この先にはさんざんウワサされているアップル純正のARグラス(メガネ)、「Apple Glass」が控えているのではないか。今年の8月には、ARグラスの実現に必要な技術を持つAkonia Holographics社をアップルが買収した事実もある。また、MR技術のヘッドセットを作っているVrvana社も2017年に買収している。さすがにジョブズ氏がARグラスの構想を具体的に練っていたとは思えないので、これこそジョブズ氏亡きあとのポストジョブズのメインプロダクトとなるはずだ。
そのうえで「ジョブズがいたらこうはならなかった」と想像するのも楽しいのだが。

Tim CookがAppleの社員に宛てて: 私たちを前進させるのは1兆ドルの株主価値ではない

あなたが勤めている会社が、古代のクロイソス王よりずっとずっと大金持ちだと知ったら、一体どんな気持ちだろう?

BuzzFeed Newsが入手した、AppleのCEO Tim Cookの、スタッフ宛てメモが語っているように、Steve Jobsが1976年に創業したコンピューター企業は今や、1兆ドル以上の価値がある。あなたは、A)自分の労働の成果だと喜ぶ、B)成功の真の測度はイノベーションと創造性なので気にしない、C)一瞬喜んですぐ仕事に戻る、のどれだろうか?

Cookは、全世界12万3000名の社員宛に、次のように書いた:

チームのみなさま,

今日Appleは、重要なマイルストーンを通過しました。株価の終値が207ドル39セントに達し、株式市場は今やAppleを1兆ドル以上と評価しています。この成果は確かに誇るべきことですが、しかしそれは私たちの成功のもっとも重要な尺度ではありません。財務上の数字は単純にAppleのイノベーションの反映であり、つねに製品と顧客を再優先し、弊社の企業価値に忠実であり続けたことの結果です。

Appleを偉大にしているのは、あなた、そして私たちのチームです。弊社の成功はあなたの勤勉と献身と情熱の結果です。私はみなさまのお仕事を深く畏敬しており、みなさまと共に働けることは、私の生涯の名誉です。みなさまのすべての深夜労働とすべての超過出張に、心の底から感謝しています。なにごとに関しても中途半端を拒否し、卓越のみを求めるみなさまの日頃の姿勢にも、感謝申し上げます。

この場を借りて、弊社の顧客とサプライヤーとビジネスパートナーとAppleのデベロッパーコミュニティ、そしてすべての協力者のみなさまと、このすばらしい会社を作った先人たちにも、感謝いたします。

Steveは、人間の創造力は最大の難題でも解決できる、という信念のもとにAppleを創りました。彼は、自分は世界を変えることができるというクレージーな考えを持つ者が、難題の解決者だと信じていました。今日の世界では、弊社のミッションはこれまで以上に重要です。弊社の製品は一時的な驚きと喜びを作りだすだけでなく、世界中の人びとに力を与え、その人たち自身の生活とほかの人たちの生活を豊かにします。

Steveがこのような場でいつも申したように、私たちはAppleの輝かしい未来と、私たちがこれから一緒になってやっていくすばらしい仕事に目を向けるべきです。今の現在ではなく。

Tim

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Apple発インテリジェントスピーカーのHomePod、2月9日に発売開始

AppleのHomePodが、いよいよ売り出されることになった。発売開始は2月9日で、2017年のWWDCでアナウンスして7ヵ月後の出荷となる。価格は349ドルで、販売開始時はアメリカ、イギリス、そしてオーストラリアでの限定展開となるようだ。

情報元はAppleで、HomePodではSiriも主要な役割を担う。「メッセージの送信、タイマーの設定、ポッドキャストの再生、ニュースやスポーツ、ないし交通情報や天気などの確認を行うことができ、スマートホームを構成する各種HomeKitデバイスのコントロールも行うことができます」とのこと。ちなみにSiriを通じた音楽再生は、当初の情報通りApple Musicに限定されるとのこと。SpotifyやPandoraなどを音声コマンドで操作することはできないそうだ。

外見はWWDCでのアナウンス時点と同様にみえる。高さ7インチで、デバイス上部にウーファーを配置し、低部には7つのトゥイーターが並ぶ。デモ時はなかなかの高音質であったが、スペック的に変更のないことを望みたいところだ。

Appleによれば、リリース後に提供する無償アップグレードにより、複数の部屋で連携してHomePodを使えるようになる予定だとのこと。すなわち、複数のHomePodを家の中のあちこちに配置して、同じ曲を鳴らすことができるようになるわけだ。1部屋に2台を配置して、ステレオスピーカーとして用いることもできるようになるらしい。

HomePodの狙う市場は、AmazonおよびGoogleによって急速に成長しつつあるところだ。Appleは、高音質を武器に殴りこみをかけることになる。ただし価格もかなりの高額となる。AmazonおよびGoogleのデバイスは50ドル以下で手に入る「日用品」としての立場をとっているわけだが、349ドルの値をつけたAppleは「高級品」としての市場展開を狙っているわけだ。ただし機能的にみた場合、少なくとも当初はAmazonないしGoogleのデバイスに劣るものともなっている。

すなわちAmazonおよびGoogleは、プラットフォームをサードパーティーにも提供しており、機能の拡張を許している。Amazonデバイス上であっても、Amazon MusicのみならずSpotifyの機能を利用できるようになっているのだ。Appleも開発者向けにSiriKitなるプラットフォームを用意しているが、サードパーティーのサービスが使えるようにはなっていない。基本的なサービスはAppleによるものを利用するように設計されているのだ。こうした方針が、どのように受け取られるのかはまだわからない部分がある。プロダクトが世に出てから、デバイスをとりまく状況について改めてレポートしていきたいと思っている。

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(翻訳:Maeda, H

Xiaomi、今度は858ドルのMacbook Proライバル機でAppleに対抗

本日(米国時間9/10)中国のIT大手Xiaomiは、Appleに何本もの矢を放った。同社はスマートフォンに続き、Macbook Airに対抗する低価格Windows機を発表した。

2016年に発表されたXiaomi初のノートパソコンはMacbook Airに狙いをつけていたが、このほど同社はAppleの上位機種に焦点を定めた。Mi Notebook Pro ―― 比較はまず名前から ―― は15.6インチディスプレイとIntel Core i7プロセッサーを備え、メモリー16GB、Nvidia GeForce MX150グラフィックチップを内蔵している。この組み合わせによって、同機は昨年のMi Notebook Airの40倍のパワーをもつとXiaomiは言っている。

ほかには、トラックパッドに内蔵された指紋センサー、3 in 1 SDカードリーダー、USB-Cおよび標準USBポート、ヘッドホンジャック、フルサイズHDMIスロットなどが実装されている。Xiaomiは、AppleのMacbook Proシリーズ最新機種よりもはるかに多くのオプションを提供していることを強調した。

昨年のMi Notebook Airは3599人民元だったのに対してProバージョンは高めに値付けされている。i5/8 GBモデルは5599人民元(858ドル)、i7/8GB が6399人民元(980ドル)、i7/16 GBモデルが6999人民元(1072ドル)となっている。

リリースを見る限り、これは中国国内のみを対象とした製品だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

MacBook ProのTouch Barが正しい選択である理由

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人はギリシャ悲劇を好む。イカロスは太陽に近づきすぎて地球に墜落した。Appleはコアユーザーを忘れ、Microsoftに名声を奪われた。Touch Barは、MacBookでタッチスクリーンを採用するか、タッチを完全に無視するかを決めかねた妥協の産物だ。

この手の話を語るのは容易だ、なぜなら感情や行動を誠実に調査した記事よりも、読者の心を把みやすいからだ。そこにヒーローと悪役がいれば、すべてはゼロサムゲームとなり、ライバルたちの行動は真価によって判断されない。

The MacBook ProのTouch Barのやり方は正しい、なぜなら人はノートPCの画面をタブレットのようには使わないからだ。

私は自宅にSurface Proを持っていて、満足している。ペンはクールだし、ハードウェアもよく出来ていて、タッチ操作は場面によっては非常に便利だ。(タブレットとしては完全な失敗作だが、それは別の話)。私がSurfaceを使ってきた経験と、タッチ式ノートやその類を使っている他の人々の意見とをあわせることで、ある単純な真実がわかった。

ほとんどの人は、タッチスクリーンを一日に5回か10回、簡単な操作に使うだけである。

ノートパソコンはタブレットではない。そこには作業場所と見る場所がある。画面の上で何らかの操作をするためには、作業場所から見る場所へと手を動かさなくてはならず、今見ているコンテンツの一部を遮ぎる。手首とキーボードの位置を考えると、ユーザーは画面から遠く離れて座っていることになる ― そして画面にタッチするかどうかは、手がどれほど近くにあるかどうかでほぼ決定する。操作のほとんどは、スタートボタン等の大きなタッチ標的に対してなされる。

コンテキストに応じて変化する専用の表示バーを備え、日々のそうした10種の操作をそこでできることは極めて有用だ。タッチに最適化されていないOSに無理矢理タッチスクリーンをはめ込み、マウスのためにデザインされた小さなボタンを押させるより、はるかに合理的だ。

Touch Barが解決していないことの一つはスクロールだが、MacBookのトラックパッドが大きくなった理由は恐らくそれだろう。

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私のテーマに従って、ここでMicrosoftやそのやり方をけなすことはしない。アーティスト兼フォトグラファー改革派の一人として、私はSurface Studioがとっているアプローチに感銘を受けており、一度使ってみたいと思っている。しかしMicrosoftが取り組んでいるのは、歴史的に成長が遅くて小さな市場の、無視できるほど小さな部分だ。MacBookは違う。

Appleがイベントで披露したDJのデモは、Touch Barの見せ方としてはおそらく最良ではなかった。あれは98%の人たちの使い方ではないし、たとうDJayのデモがいくらカッコよくても、中学の卒業パーティーでおじさんが回すのを別にすれば、DJも使わないと私は思う。

プロフェッショナルユーザーが欲しがっているのは ― 私が今も写真家として毎週何千枚もの写真を編集しているとしたら ― 奥深く沈められたコマンドを浮上させる方法だ(余談になるが、Appleはショートカットキーの重要性を昇華させるべく、未来の世代にすばらしい支援をしていると思う。あれは難解すぎて発見して使うのは困難だ)。

Touch Barショートカットの候補(いくつか例外あり)は以下の基準を満たす必要がある:

  1. ショートカットを押すための、一種異常な指の歪みを回避できる。
  2. トラックパッドのクリックを2回以上減らせる。

これが有効に働くためには、人々がMacBookをどう使っているかも正確に把握して考慮する必要がある。例えば画面は一番よく見えるのは40度の角度で開いた時だ。通常のOLEDスクリーンは真正面からが一番よく見えるが、それではキーボードに顔をつけることになるので誰もそんなことはしない。またTouch Barの表面はザラザラに加工されているので、反射を防ぐとともにキーボードのキートップと似た感触を与えている。 1d539p

操作モデルもiOS端末とは異なる。iPadでは、タッチ操作はすべて1対1だ ― 例えばボリュームスライダー等を直接指で操作する。MacBookでは、ボリュームボタンをタッチした直後に動かしてスライダーとして使うことができる。つまり、シングルタップとスライドを使うことによってTouch Bar上で様々な操作が可能になり、ボタンやコンテンツ(写真のサムネイル等)の表示を邪魔することもない。これはタッチスクリーンではできない。

Touch Barは、消費者にもプロにも非常に広く利用されることになると私は思う。また長い目で見て、フォームファクターにも良い効果をもたらすと考えている。そして私の考えに同意しない人がいることも承知しているが、それは問題ない。なぜならわれわれはギリシャ神話のディオニューソスを称えているのではない ― われわれは消費者の行動を分析しているのであって、人によって欲しがるものが異なるのは当然だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

シリコンバレーの偉大なメンター、ビル・キャンベルが逝去。愛情あふれる追悼文が寄せられる

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フットボールの古い諺がある。「重要なのは注ぎ込んだ時間ではなく、その時間に何を注ぎ込んだかだ」。

ビル・キャンベル ― 誰からも畏敬された元コロンビア大学アメリカンフットボール
部コーチは、1990年代にIntuitのCEOを4年間務め、今年1月まで会長だった。彼は数多くの起業家たちに魔法を注ぎ込んだに違いない。

その大勢が今日悲しみにくれている。ビル・キャンベルは今日(米国時間4/18)、75歳で逝去した。家族によると死因はがんだった。

今日、起業家・投資家のBen Horowitzは、多くのファウンダーがキャンベルとの関係を表現しようとしたことを受け止めたかのような文章を書いた。「人生で苦闘に直面したときには必ず、ビルに電話をかけた。かけたのは彼が何か不可能な質問の答えを持っているからではない。かけたのは彼が私の感じていることを100%理解してくれるからだった。彼は私を理解してくれた。ビルのようにそれができる人を他に誰も知らない。どんな時でも私を理解してくれる人物。100回は電話をかけたに違いない。彼なら私の気持ちを感じてくれるとわかっていたから」

気持ちは広く伝わった。ペンシルバニア州生まれのキャンベルは、長年にわたり地元の学区に 2000万ドル近くを寄付し、後にカリフォルニア州アサートンのSacred Heart Schoolで中学2年生を指導した。彼はシリコンバレーの優れた人々の「コーチ」として知られていた。

その中には、Alphabet会長のEric Schmidt(キャンベルをGoogleの取締役に何年も誘い続けたが失敗した)やAppleの共同ファウンダー、スティーブ・ジョブズのように人より幸運な人たちもいる。

2014年のFortune誌のインタビューによると、ジョブズとキャンベルはパロアルトの近所同志で、ジョブズはしばしばキャンベル家を訪ね、ドアをノックしたり、バックヤードのプールサイドに座ったりしていた。1997年のApple復帰後すぐ、ジョブズが「ある日やってきて、プールサイドのベンチにふたりで腰かけた」とキャンベルはFortuneに語った。「そして彼はこう言った、『Appleの取締役になってくれないか』と」。

キャンベルはこう付け加えた。「あんな切迫感は、コロンビア大学の理事を依頼された時以来だった。私はためらうことなく言った。『もちろん』」

Forutuneの2008年の記事でキャンベルはジョブズについて、「彼には非常に人間的なところがある」と言った。

Appleは今日本誌に送った声明の中で、キャンベルについてこう書いている。「Appleの多くの人々にとってコーチであり、メンターであり、何十年にもわたって幹部としてわれわれ家族の一員であり、アドバイザーであり、最終的には取締役だった。彼は他の人が信じない時にAppleを信じた、良い時にも悪い時にも。彼がわが社に与えた貢献は言い尽せない。彼の英知、友情、ユーモア、そして人生への愛を忘れることはできない」

Eric Schmidtはキャンベルへの賛辞の中でこう書いている。「ビル・キャンベル。われわれの非常に親しい友人が今日午前に亡くなった。巨大なハートの持ち主で、会う人全員を抱きしめ、メンターを越えた存在だった。われわれがGoogleを作るのを数え切れない方法で手伝い、成功をもたらした。われわれは彼を外部コーチとしてスタートしたが、すぐに彼は経営のエキスパートになった。スタッフミーティングに参加し、幹部と会い、会社のリーダーたちと長い時間を過ごした。取締役会設立を手伝い、会社のカルチャー構築にも手を貸してくれた。わが社のファウンダーたちとは非常に密接にあらゆる方法で共に仕事をした」

「Google、そして今のAlphabetの成功に対する彼の貢献は計りしれない。彼の遺産は全員の顔に彼がつくった笑願と、彼がコーチしたシリコンバレーの偉大なリーダーたちだ。ビルは真に才能ある人物であり、世界は今日、偉大なリーダーを失った。」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

自称Appleストア熱狂者ゲイリー・アレン、67歳で死去

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私が一番心配していることの一つ、それは趣味 ― 没頭できる健全な情熱 ― を持っていないこと。もちろんテクノロジーは大好きだが、これは私の仕事でもある。Gary Allen、自称「Appleストア熱狂者」が日曜日(米国時間10/11)、脳腫瘍との闘病の末67歳で亡くなった。Washington Postが伝えた。同紙が指摘する興味深い点。それは、AllenがApple製品に関しては、それを一般に販売する場所ほどのファンではなかったことだ。

彼のTwitterrプロフィールがすべてを物語っている:「Apple小売店舗熱狂者、新規店舗のグランドオープニングを祝福しに世界中どこへでも出かける」

Screen Shot 2015-10-15 at 1.26.16 PM「ファンボーイ」という単語はテク業界に氾濫しているが、おそらくAllenは、Appleの小売戦略についてどのApple従業員よりも知っていた。彼のウェブサイト(今はダウンしている)ifoapplestore.comは、Appleの最新ストアに関する情報で満載だった。彼は殆どの店を訪れ実際に体験もした。

かつて賢人は私に、崇拝者がいなければそれは芸術作品ではないと私に言った。Allenのような崇拝者は、スティーブ・ジョブズがAppleの店舗を、魅誘的な、エレガントで探し求める価値のある場所にしたがっていた、という事実の信憑性を高める。

Allenの場合、彼自身たしかに探求していた:

ありがとうGary Allen、人生で大切なのは小さな物たちであることを思い出させてくれて。たとえその小さな物たちが、テクノロジー世界の多くの人々の夢と希望を育む幸せで小さな店の中に置かれているとしても。あなたの鋭い洞察はこれからも生き続ける

【日本語版注:見出しの写真はAppleストア大阪。Gary Allenはここにも来ていたらしい】

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アーロン・ソーキンのスティーブ・ジョブズ映画、初の予告編はかなり『ソーシャル・ネットワーク』っぽい

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アーロン・ソーキンはスティーブ・ジョブズの一生を描いた脚本について数年前から構想を練っていたが、制作への道は険しかった ― しかし、ユニバーサルスタジオはついに最初の予告編を正式公開した。

内容はまだかなり限られてはいるが、予告編には主役のマイケル・ファスベンダーが登場し、複数の俳優がファスベンダー/ジョブズに対して、彼がどれほどの天才/嫌な奴であるかを口にするところが聞ける。その意味では、ソーキンのテク業界を描いた前作、『ソーシャル・ネットワーク』の予告編によく似ている(私に言わせれば、あの映画は世界で言われていたよりもずっと面白かった ― 今回もそうなることを願う)。

ファスベンダーの他に、本作品ではセス・ロジャースがスティーブ・ウォズニアック、ジェフ・ダニエルズがジョン・スカリー、ケイト・ウィンスレットがジョアンナ・ホフマンを演じる。映画『スティーブ・ジョブズ』の監督は『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル、ウォルター・アイザックソン著の伝記に基づいており、公開は10月9日を予定している

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

スティーブ・ジョブズの伝記映画はユニバーサルから配給(Sonyから$30Mで買い取りか?)

Aaron Sorkin作、待望のスティーブ・ジョブズ映画の配給元がUniversal Picturesに決まった。制作会社Sony Picturesは、今月、この映画の2年がかりの制作を終え、配給権をユニバーサルに譲渡した。

Hollywood Reporter誌の記事によると、月曜日にユニバーサルの広報がこの件を確認した。記事によるとユニバーサルはSonyに3000万ドルを支払った、とされているが、これについては確認がない。

映画はWalter Isaacsonが書いて好評を得たジョブスの伝記が下敷きで、監督はDanny Boyle、脚本がSorkin、彼はFacebook未公認のFacebook映画The Social Networkの脚本も書いた。

Inglourious BasterdsやX-MenのMichael Fassbenderは、確かに出演している。 プロデューサーはScott Rudin(初めてエミー賞とグラミー賞とオスカーとトニー賞を全部取った人)とMark Gordon(The Chronicles of Narnia: The Silver Chairなど)だ。

Sorkinによると、この映画はAppleの故CEOの生涯を‘ゆりかごから墓場まで’忠実に追ったものではない。アカデミー賞を取ったこともある彼が、プレッシャーを感じた、と認める。最初は、対象があまりにも大物すぎるので、脚本の仕事を引き受けるのをためらったそうだ。“ビートルズ映画の脚本を書くようなものだからね”、と彼は語った。

彼がほのめかしたところによると、それは30分の映画3本からなる作品で、その各篇がAppleの重要な製品発表を軸にしているそうだ。やっと配給会社も決まったことだから、もうそんなに長く待たされることはないだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Webサミットで見た、未だに大きいスティーブ・ジョブズの影


今週ダブリンで行われたWeb Summitに参加していた私は、没後3年以上が過ぎた今も、われわれはAppleの共同ファウンダー、スティーブ・ジョブズに取り付かれていると思わずにいられなかった。当時の彼を知っていたり、ましてや彼とミーティングをしたことのある人がいれば、インタビュアーは必ずそれについて聞きたがる。

TechCrunchでさえ、ジョブズの未公開写真で追想にふけるくらいだ。ジョブズと何らかのつながりのある人には需要があるようだ。例えば、元Apple CEOのジョン・スカリー。彼は1983年、ジョブズに誘われてAppleに入ったことで有名だが、蜜月時代は短命に終り、失意のジョブズは会社を去り1985年にNeXT Computersを立ち上げた。スカリーはAppleに来る前、経営者として成功していた。彼は11年後に黒字のAppleを去り、その後20年間にも様々なことをしてきたが、それを知る機会はない。

誰もが知りたいのは、スティーブがどんな人間だったのか、そして彼がジョズブを会社から追い出したことだけだ(本人は反論しているが)。その事実から30年近くたった今も、人々はそれを話題にし、当時の社内政治を詳細に分析しては、何が起きたのかをスカリーに尋ねる。彼は関係によって有名であるわけで、奇妙な力が働いている。

しかし、ジョブズについて聞かれたのはスカリーだけではなかった。DropboxのDrew Houstonは、2009年に彼がジョブズと会った1度のミーティングこついて質問された。彼がこれについて話したのは初めてではなかった。常に聞かれていると言ってもよい。なぜか? それは、われわれがあの男の話を聞きたいからだ。Houstonにとって、自分の会社を買いたがっていた英雄とミーティングは、あらゆる意味で非現実的体験だった。しかし、彼は売るためにそこへ行ったのではなく、話は先に進まなかった。なぜならHoustonが今週Web Summitの壇上で話したように、会社を売りたくないなら、会社を売るためのミーティングには参加すべきではないからだ。買収話はそれで終ったが、5年後にわれわれは、Houstonがあの男と会話をしたというだけの理由で、今も話を聞きたがっている。

Web Summitの最終セッションで、U2のリードボーカル、ボノが、House of Cardsのプロデューサー、Dana Brunetti、SoundCloudの共同ファウンダー、Wahlforssと共にパネル討論に参加した。そこではもちろん多くの業界トークが交されたが、モデレーターを務めていたNew York TimesのDavid Carrは、ボノに7年前彼がジョブズとフランスで会った時の話を聞かずにはいられなかった。ジョブズに、iTunesはスプレットシートみたいだと言ったという有名な話だ。ボノは、あれほどデザインにこだわっていたジョブズが、iTunesをもっと美しくしなかったことに驚いていた。正直なところ私に言わせれば、iTunesのルックスは数ある問題の中で最も小さなものだが、とにかく彼はジョブズと直接顔を合わせているので、世界はそれについて聞きたかったのである。

ジョブズは3年以上前に死んだが、IT業界に対する彼の影響は今後も長く続くに違いない。そしてWeb Summitが何かの兆候であるなら、この業界に多大なインパクトを与えた男に関する話を聞きたいというわれわれの欲求もまた、続くに違いない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


『沈みゆく帝国』の著者、ケイン岩谷ゆかり氏がセミナーでDanbo山田昇氏と対談

ケイン岩谷ゆかり氏の『沈みゆく帝国 スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか』(日経BP刊) についてはTechCrunch JapanでもApple CEOティム・クックが名指しで批判した「沈みゆく帝国」で詳しい書評を掲載しているが、岩谷氏が昨夜(7/16)東京でセミナーを行ったので取材してきた。

このセミナーは出版元である日経BPが企画し、趣旨に賛同したサイバーエージェントがビジネスパーソン向けイベント事業、SHAKE100の一環として運営協力したものという。

セミナーはサイバーエージェントの渡邉大介氏がモデレータとなり、岩谷氏とMacお宝鑑定団の会長、山田昇(Danbo)氏が対談するという形で行われた。

なお、岩谷氏の日本での発言については本書の編集者である日経BP出版局の中川ヒロミ部長の、「ジョブズが去って一番変わったのは広告」、『沈みゆく帝国』著者がアップルの今後を語るという記事がたいへん参考になる。

執筆の動機―「Appleはもうクールじゃない」

岩谷氏は、もともとAppleについて、ジョブズを支えたチームに焦点を当てた本を書こうと考えていたという。しかしウォルター・アイザックソンによる膨大な伝記の出版とジョブズの死で、Appleの過去についてはひとつの答えが出たと感じ、その未来について考えてみたくなった。そのモチーフは、「偉大な創業者を失った会社がその後も偉大でいられるのか?」という疑問だった。この点は、20世紀末に井深大と盛田昭夫という創業者を失った後のソニーがいつの間にか不振にあえぐようになったことが念頭にあった。

はたして、スティーブ・ジョブズという不世出の天才を失った後もAppleは全盛期の輝きを維持し続けることができるのか? 岩谷氏はこの点について最近体験したエピソードを語った。岩谷氏は1月ほど前にサンフランシスコの名門中学で話をする機会があった。そのときに「自分(岩谷)はiPhone、iPadのユーザーだが、最近のAppleのプロダクトには問題もあると思うが、UIやアプリ連携の点でまだAndroidには移行しにくい」と言ったところ、すかさず中学生から「後で教えてやるよ!」と返されたという。新しいものを追う若者の間ではiPhoneはすでに一時のような「クールなプロダクト」ではなくなっていることを感じたという。

情報源は「歴史に残りたい」と協力

ガードの固いことで知られるAppleからこれほど豊富な内部情報を取材できた秘密について岩谷氏はこう語った。「Wall Street Journal時代もAppleは厳しい取材相手で、記事の個々の単語のニュアンスについてもAppleから要請を受けることがあった。ジョブズの生前であればあれほど多くの情報は得られなかったと思う。しかしジョブズの死後、その呪縛が薄れた。一方でジョブズに近い場所で働いていた人々には『この偉大な企業で果たした自分の役割をきちんと歴史に残したい』と考える人々がいて、取材に応じてくれた」という。

またジョブズが後継者としてクックを選んだのは「ジョブズの栄光を薄れさせるような独自性を発揮せず、かといってAppleを傾けもせず、堅実に経営してける人物」ということだったのかもしれないと岩谷氏は推測する。

ジョブズ時代には驚くほど細かいこと点ジョブズがすべてを決めていたという。データの出る幕はなく、M&Aだろうと製品開発だろうとジョブズの一言がすべてだった。その結果、エンジニアの地位は高く、MBAの出る幕はほとんどなかった。しかしティム・クックはデータと多数決が好きだという。この点はAppleが世界有数の巨大企業になってきたことからの必然だったかもしれないが、それでも官僚化は進んでいる感触だという。山田昇氏によるとは「以前のAppleは副社長(VP)が15人くらいだったが、今は50人くらいに増えた」という

ジョブズ後にAppleの空気が変わった例として、岩谷氏はApple内でG2Gという言葉が使われていることを挙げた。”Go to Google”の略で「誰それは最近見えないね」というと「ああ、奴はG2Gさ(Googleに転職したよ)」というような会話が交わされているのだという。

Appleのビジネスは絶好調ではないか?

山田氏は「Appleの現状は売上、利益ともに世界有数で、株価も高い水準を維持している。危機というのは当たらないのでは?」と疑問を呈した。

岩谷氏は『沈みゆく帝国』というのは日本語版のタイトルだと断った上で、「ソニーも創業者を失った後何年も好調を続けた。またジョブズがAppleから追放された当初、経営のプロのジョン・スカリーの下で業績は好調に見えた。しかし岩谷氏が取材したところでは、1985年当時も、ジョブズが去った後ですぐに社内ではエンジニアの地位が低下し、リスクを取ったプロジェクトがなくなるなどカルチャーの変化が感じられたと証言する人が多かったという。「業績の低下が表に出たときには事態はすでに相当悪化している」として岩谷氏は現在伝えられるAppleのカルチャーの変化に懸念を示した。

岩谷氏はスカリーにもインタビューしたが「創業者でないCEOはやはり自由が効かない」と語ったという。「スティーブなら通ってしまうようなことが自分の場合は株主や幹部が反対してやりずらかった」のだそうだ。ティム・クックはスカリーと同様、経営のプロで、ジョブズのパートナーとしては理想的だったが、ジョブズの天才の輝き、超人的な説得力はない。またAppleの社内文化は非常にタイト(結束力が強く)で、M&Aで外部から参加した人材は溶け込むのに苦労するという。

つまり、外部の人間がCEOになれるようなカルチャーではなさそうだ。岩谷氏はApple Store事業のチーフにスカウトされた元バーバリーのCEO、アンジェラ・アーレンツがAppleに溶け込めるか、その動向に注目していると語った。

どんな企業も永遠に輝き続けるのは無理なのかも

筆者(滑川)は、たまたまその朝、飛び込んできた速報:AppleとIBMがハード、ソフトで全面提携―エンタープライズ分野に激震という記事を翻訳したところだったので、Q&Aの際に「AppleとIBMの提携はうまくいくと思うか?」と質問してみた。

岩谷氏は「その成否はわからないが、もしうまく行かないとしたら、それはティム・クック自身の能力不足などによるのではなく、Appleという組織が巨大化し、官僚化したことによる結果だろう」と答えた。

岩谷氏はこれに続けて「本書はAppleを批判するために書かれたという誤解があるが、私はそうしているつもりはない。しかしAppleといえども永遠にあの輝きを放ち続けるのは無理なのかもしれないと感じることはある」と締めくった。

ティム・クックという人物の謎

最後に筆者(滑川)の感想を少し付け加えると、まず岩谷氏の徹底した取材ぶりにもとづく事実の積み重ねに圧倒される。さまざな場面が印象に残っているが、その一つがティム・クックCEOの人物像を得るためにアラバマ州南部のスモールタウン、ロバーツデールにまで足を運んでクックを教えた高校の教師などにインタビューした部分だ。

私はそこで描写された南部の町の雰囲気はハーパー・リーのベストセラー『アラバマ物語』にそっくりなことに気づいた。グレゴリー・ペック主演の映画も有名な『アラバマ物語』の舞台は1934年、ヨーロッパでヒットラーが権力を握った頃の南部の町だが、その町のモデルになったハーパー・リーの生地モンローヴィルをGoogleマップで調べてみると、ロバーツデールから車で2時間くらいの近所だった。

『沈みゆく帝国』を読んでいくうちに、アラバマの田舎町では80年経っても(物質的な面は別として)人々の行き方がほとんど変わっていないのに驚かされた。岩谷氏は本書でティム・クックがゲイ・レズビアン向けの雑誌の人気投票でナンバーワンになったことを紹介しながら、「(ゲイであるかどうかは)大きな違いはない。クックに私生活の時間はほとんどないからだ」とユーモラスに述べている。

それやこれを考えるとティム・クックの容易に人を寄せ付けない性格は、桁外れの才能と独自の感性を秘めた少年が「全員が全員のことを隅から隅まで知っている」南部の町に違和感を感じながら育ったことからも形成されたのではないかなどと勝手な想像が膨らんだ。そういえば、『アラバマ物語』には「おもしろい作り話をいくらでも作ってくれる」ディルという「変わった」少年が登場する。このディルのモデルであり、ハーパー・リーの従兄弟で一時隣家に住んでいたのが後年のゲイの天才作家、トルーマン・カポーティだったという。

外村仁Evernote Japan会長、林信行氏、小林啓倫氏を始め、Appleに詳しく、IT分野で影響力ある方が大勢出席しており、岩谷氏の著書への関心が高いことが感じられた。Appleの今後に興味があれば必読の基礎資料とといっていいだろう。

滑川海彦 Facebook Google+ 写真撮影:滑川)


【書籍】Apple CEOティム・クックが名指しで批判した「沈みゆく帝国」

編集部:この記事は、本の要約サイト「flier(フライヤー)」と共同で選書したIT・テクノロジー関連書籍の要約を紹介するものだ。コンテンツは後日、フライヤーで公開される内容の一部である。

タイトル 沈みゆく帝国 スティーブ・ジョブズ亡きあと、Appleは偉大な企業でいられるのか
著者 ケイン岩谷ゆかり 著、井口耕二 訳、外村仁 解説
ページ数 540
出版社 日経BP社
価格 2160円(税込)
要約者の評点 総合:3.7(5点満点、下記3点の平均値)
革新性:3.5、明瞭性:4.0、応用性:3.5

要約者によるレビュー

Appleの偉大な経営者スティーブ・ジョブズが存命中には、彼のリーダーシップやプレゼンテーションに注目が集まり、それにまつわる多数の書籍が出版された。その後ジョブズが膵臓がんで亡くなると、『インサイド・アップル』(早川書房)や『アップル帝国の正体』(文藝春秋)といった、Appleの組織構造について言及した書籍が発表されるようになる。

そしていま、世間の関心は「ビジョナリーなリーダーが去っても、偉大な会社が偉大なままでいられるのか」という点に寄せられている。たとえば、昨年末に日本で発売された『アップルvs.グーグル―どちらが世界を支配するのか―』(新潮社)では、GoogleとAppleがテクノロジーの領域にとどまらずメディア業界まで視野に入れた戦いを繰り広げるなかで、AndroidがiPhoneのシェアを追い抜き、優勢に立っているのはGoogleだと主張している。

対する本書はAppleの内部について深く掘り下げた1冊だ。社員が辞め、イノベーションが生まれないばかりか、アプリまで失敗作続きという状態に陥ってしまった内情を探るとともに、下請けの台湾企業フォックスコンの労働環境やサムスンとの特許裁判における争点など、次々と明らかにされる事実は衝撃的なものばかりである。

Appleの現CEO、ティム・クックが「寝言だ」と名指しで批判したと言われる本書は、米国の読者レビューを見ても肯定派と否定派に二分されているようだ。しかしながら、仔細にわたる著者の調査や分析は現経営陣が陥っている苦境を白日の下に晒している。日本に多いApple信者にこそぜひ読んでいただきたい一冊だ。著者のケイン岩谷ゆかりは、ウォール・ストリート・ジャーナルでApple担当として活躍した人物。ジョブズの肝臓移植やiPadの発表など数々のスクープを出した後、本書執筆のために退職した。

本書の要点

・ジョブズの後継者としてAppleのCEOに就任したティム・クックは、「在庫のアッティラ王」と呼ばれるほど管理面には強いが、ビジョナリーではなく、イノベーターの経験もない。

・帝国と化したAppleはSiriや地図アプリの失敗、Androidの台頭によるスマートフォン市場でのシェア低下、終わらない特許係争、制御不能になったサプライヤーなど、多くの課題を抱えている。

・ジョブズ亡きあと、問題が噴出しているAppleにはもはや世界を再発明するような製品を生み出す能力はなく、クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」の例外ではなくなってしまった。

【必読ポイント】沈みゆく帝国

Siriの失敗

ジョブズの死去前日に発表されたiPhone 4Sは、見た目は前機種と変わらないものの、いくつかの機能が改良されたほか、新たな機能としてSiriが搭載されていた。未来を感じさせるものとして当初センセーショナルを巻き起こしたSiriだが、「バーチャルアシスタント」という謳い文句ほど役には立たないことがすぐに明らかになる。関係のない答えを返してきたり、わけのわからないことを言ったりすることが多いのだ。聞き間違えによって質問すら理解できないことすらある。

未熟な段階であるにもかかわらず、Appleは世間のSiriに対する期待値を上げすぎてしまっていた。それゆえ、Siriは「洗練されている」というAppleのイメージを叩き壊すとともに、今後もAppleが並外れた新製品を生み出せるということに疑問を抱かせてしまったのだ。

イノベーションのジレンマ

ハーバード・ビジネス・スクールの教授であるクレイトン・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」は、巨大企業が新興企業に敗れる理由を説明した理論だ。技術がどんどん進化していく世界においては、既存市場を破壊する能力がなければ生き残りは難しい。

新たな製品を発表するたびに大きく、また無敵になっていくAppleは、これまでこの理論が適用できない例外となっていた。市場に新たな可能性を拓き、新たな消費者の欲求を生み出すことを一番の目標とし、利益は二の次にするのが特徴だった。しかし最近はライバルをたたくことに重きを置きすぎており、製品をより完璧に近づけることに邁進している。その結果、安さを武器にライバルが市場参入する隙ができてしまったのだ。

ソニーが共同創業者である盛田氏の引退を機に偉大な企業から単なる良い企業になってしまったように、Appleもイノベーションのジレンマに囚われてしまう可能性があるとクリステンセンは指摘する。そうならないためには、オペレーティングシステムをオープンにして技術を供与するという形でイノベーションを推進し、自社開発では得られないほどの存在感を業界内で確立すること。もしくは、破壊的な製品カテゴリをまた生み出すことが必要だ。クックは「最高の製品をつくることこそ、我々の道しるべだ」と繰り返し述べている。あとは、それができることを証明しなくてはならない。

地図アプリの失敗

スマートフォン市場におけるAppleのシェアが低下する一方、サムスンのシェアが急伸している。失敗が許されない状況の中で、新たに発表されたiPhone 5に標準搭載となる地図アプリは悲惨な結果を招いてしまう。それまで搭載されていたGoogleマップではなく、自社開発の地図アプリに差し替えることにしたのだが、あるはずの道路が表示されない、お店やランドマークの名前が間違っている、と地図自体が使い物にならない有様だったのだ。

AppleはGoogleを超えるものを作ろうとするあまり勇み足になってしまった。さらに、Siriと同様に開発を秘密裡に進めたために十分な試験ができなかった。地図アプリの試験を担当したディベロッパーはバグを報告しており、その問題がトップに報告されていなかったのか、それとも大した問題ではないと判断されたのかは定かではない。いずれにせよ、Appleの仕事の進め方がおかしくなってしまっていた。

クックは自ら謝罪を表明するとともに、ライバルのアプリの利用を促すという屈辱を受けた。さらにこのアプリを監修していたフォーストールが謝罪を拒否したため、クックは次期CEO候補と言われていたフォーストールを辞任させる。失敗を厳しく追及するクックのやり方では、部下がリスクを嫌ってイノベーションが生まれにくくなるおそれがある。このように見てくると、「Appleの未来を描く人物としてクックが最良の人物なのか」という疑問が湧いてくる。

弱まるAppleの支配力

Appleは自社工場を持っていない。iPhoneなどの製品の多くは、サプライヤーである台湾の巨大メーカー、フォックスコン(鴻海精密工業)に作らせている。軍隊にたとえられるフォックスコンの工場では教育と訓練が施された100万人もの工員が計画通りに製品を作っている。Apple製品に対する需要が高まるにつれ、Appleはフォックスコンに対して圧力をかけ、その厳しい労働環境は自殺者が相次いで問題になるほどであった。

そしてフォックスコンがiPhone 5の製造を受注し、組立ラインをフル稼働させるよう工場のマネージャーに指示が下されたとき、工員たちの堪忍袋の緒が切れた。今回は自殺ではなく、外に対して怒りを爆発させたのだ。2000名もの工員が暴徒と化し、建物を破壊した。別の工場では製造の基準が高すぎるとして、工員と品質管理係がストライキに入った。美しいiPhoneやiPadを製造する現場の暗い実態が明るみに出てしまった格好だ。

Appleにとって痛手なのは、こうしたイメージ面での失敗だけではない。クックがCEOに就任してからもAppleとフォックスコンの蜜月関係は続いていたが、Appleがあまりにフォックスコンに依存してしまったため、最近では力関係が逆転し、フォックスコンの方がAppleの要求を押し返し、価格の引き上げを交渉できるようになってしまったのだ。

Appleは委託先を拡大してフォックスコンへの依存を引き下げようと努力しているが、製造ノウハウはサプライヤーが握っているため、なかなか一筋縄ではいかない。新しいサプライヤーをAppleが要求する高い品質基準を満たすよう鍛えるのは容易ではない。最近ではシャープのようにAppleの販売減速の影響を受けて窮地に立たされる企業も出てきており、以前のようにAppleとの取引には大きなメリットがあるわけではなくなってしまったのだ。

沈みゆく帝国

ジョブズが亡くなって2年あまりのうちに、彼が生み出し、愛した会社は四方八方から押し寄せるたくさんの課題に直面している。

業界自体を変えてしまう夢のような新製品が出なくなったことだけではない。世間からの憧れは消え失せ、厳しい目が注がれるようになった。フォックスコンに依存していることに伴う危険が明らかになった。スマートフォンやタブレット市場はAndroidが席巻しつつあり、Apple製品のシェアが低下した。士気が低迷した社員が次々と辞め、あろうことかGoogleに行く人も多い。

こうした課題が大挙して押し寄せているなかで、株価は低迷し、利益もこの10年で初めて減少してしまった。株主総会でクックは新製品の開発に注力していると繰り返し述べたが、「クックが話すたびに株価が下がる」とまで揶揄される始末だ。

Appleに求められていることは、もう一度世界をあっと言わせる魔法のような新製品を出し、Appleの売上や利益にはっきりと貢献するような成功を収めることだ。だが、ジョブズが後継者に選んだクックはビジョナリーではなく、イノベーターの経験もなく、強みは表計算ソフトでしかない。クックの口から出てくる言葉は単調で、ちょっと調子が外れている。きらめきも、炎のような活気も感じられない。

元Apple取締役で、ジョブズの親友でもあったOracleのCEOであるラリー・エリソンは、「ジョブズがいなくなったいま、昔ほどの成功はもう無理だ」と語っている。


Dropboxは、あなたの写真保管場所になりたがっている

ここ数年Dropboxを見てきた人にとって、今日発表された新機能は何の驚きでもないだろう。Mac版アプリに、スクリーンショットを自動的に検知し、アップロードしてリンクで共有できる 新機能が追加された。

これはCloudappなどのアプリが存在する主な理由であり、Dropboxはその邪魔をしようとしている。しかし、実際にはこの機能を便利に感じるのはDropboxユーザーの一部だけだ。スクリーンショットの自動アップロードは「インターネット・ピープル」にとってはすばらしいだろう。ジャーナリスト、Twitterのヘビーユーザー、アプリ開発者、デザイナー、および協同作業チーム等の人々だ。これは、〈わずかな〉一部ではなく、私もCloudAppの代替を手に入れたことを喜んでいる。また、Dropboxがこの機能をサポートしたいう理由〈だけで〉、スクリーンショットの共有がより一般的になると私は信じている。どうしても皮相的な見方をしたければ、この機能は日頃から〈大量の〉スクリーンショットを撮る ― そしてこの機能について記事を書くであろう(hi!</a)ジャーナリストに対するファンサービスだと言っても構わない。

しかし、今日はもう一つの発表の方がずっと大きい。iPhotoライブラリー全体をDropboxにアップロードし、イベント毎に整理するまでを一気に行うインポートツールだ。

以前Dropboxは、iPhoneやAndroid端末で撮影した写真を自動的にアップロードする機能を発表した。今日の発表がこれらと異なるのは、過去の、Dropbox以前の写真も含めて全てコピーすることだ。

これは、Dropboxビジネスのロードマップを考える上で重要な一歩だ。もし、今の「押し」のゴールが、ユーザーの写真保管場所の標準になるためであるなら ― そうだと私は信じている ― これで何が可能になるのか。もし、スマートフォンやデジカメで撮った写真の全部が自動的にアップロードされるようになると、答えは「たくさん」だ。

何よりもあなたは、驚くほど強力な〈囲い込み〉にあう。もちろんファイルは自分のものであり、いつでもダウンロードして他のクラウドに持っていくことはできる。しかし、囲い込まれるのは「データ」だけではない。Dropboxが「安全に保管している」という「記憶」もだ。もし、別のプラットフォームに移ったときに、主要な保管場所としてDropboxから離れる理由はあるのか? 使っているどのプラットフォームにも自動アップロードを設定していれば、「入ったら、入ったまま」になる可能性は高い。

ここまで書くと、AppleやGoogleが写真をどうしようとしているかが気になるだろう。AppleはiCloudを使って、ユーザーがiPhone(多くの人がメインのカメラとして使っている)で撮った写真を最優先で捕えている。Googleも、Google+の写真で同じことをしている。そして、サードパーティーであるDropboxは、自動化ツールによって両方からさらっていこうとしている。Dropboxに乗る、ということは、iOSとAndroidの間を行き来しても、写真はクラウドで自由に利用できることを意味している。Googleは、iOS用G+アプリで利用することを可能にしているが、どちらかといえば片道切符だ。

ここで改めて思い出されるのは、スティーブ・ジョブズが、Dropboxのパートナー、Arash FerdowsiとDrew Houstonの2人と行ったとされるミーティングだ。ジョブズはHoustonに、君には機能はあるが商品はないと言い、Appleが「クラウドストレージ」市場で後を追うところだと告げた。当時Dropboxが、消費者市場で写真に注目することを考えていたかどうか私にはわからないが、ユーザー行動の検証を数多く重ねた結果今に至ったのだろう。

しかし結局Dropboxは、スタンドアロン機能として存在している方が、他の主要エコシステムの交換可能な歯車の一つとして生きるよりも得策かもしれない。つまるところiCloudも本当に信頼できるとは言えず、Googleは、データを広告に活用する以外の関係を顧客との間に築いたことがない。中立的なサードパーティーの一「機能」が、実は私たちの写真を安全に保管する最良の方法なのかもしれない。もちろん、存続する方法をDropboxが見つければの話ではあるが。

画像提供:Frédéric BISSON/ Flickr CC

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(翻訳:Nob Takahashi)


アシュトン・カッチャーは、スティーブ・ジョブズの果実食を真似た結果入院していた

メソッド俳優は、自分が演じるキャラクターを理解するのに夥しい時間をかけることで知られている。ナタリー・ポートマンはブラック・スワンでバレリーナを演じるために20ポンドも体重を落とした。

アシュトン・クッチャーは、評伝jOBSでスティーブ・ジョブズを演じるための準備が極限に達し、病院に搬送される結果となった。USA Todayによると、彼はスティーブ・ジョブズの果実ダイエットを実践しようと試みた結果、2日間の入院生活を強いられた。果物とナッツ、種子類だけを食べていた。

「撮影が始まる2日前くらいに入院しました。痛みで身をよじらんばかりでした。私の膵臓は完全に機能不全に陥っていました。本当に恐ろしくて・・・あらゆることを考えました」

「あらゆることを考えた」というのは、2011年にジョブズを死に致らしめた膵臓ガンのことかもしれない。ジョブズは果実食を続けてきたことで知られており、クッチャーはそれを役作りに取り入れたほか、ジョブズの猫背の歩き方や身ぶりを真似するために何時間も彼の映像を見て研究した。

しかしクッチャーは、テクノロジーへの愛以外にも、故Apple共同ファウンダーとの共通点が多いと感じている。

「彼は失敗の後立ち直った男です。私は、何かを目指して進んでは失敗する人生のどこかで、誰もが共感できることだと思います。立ち直ってもう一度進むためには勇気が必要です。私はそれも共有していると思っています」、クッチャーは語った。

もう一人のApple共同ファウンダー、スティーブ・ウォズニアックは、同映画の初めて公開されたクリップを見て、期待していたほど現実に即していないと言った。彼は、ジョシュ・ギャッドによるウォズの描写の方が、クッチャーのジョブズよりもリアルだったとも指摘した。しかし、アシュトンの不断の努力は、映画の他の未公開部分で役立っているだろう。

jOBSは、金曜夜のサンダンス映画祭で主要作品として上映された。劇場では4月公開の予定。


[Image credit: AP]

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(翻訳:Nob Takahashi)