「猛烈に売れるインフルエンサーは100人もいない」3人の先駆者が語る、国内ライブコマースの現状と展望

写真左から左からメルカリ執行役員の伊豫健夫氏、Candee代表取締役副社長CCOの新井拓郎氏、BASE代表取締役CEOの鶴岡裕太氏

2017年の流行語大賞にはWeb関連の言葉としてAIスピーカーやユーチューバー、インスタ映えといったキーワードがノミネートされた。仮にもう少し範囲を絞り、国内のスタートアップ界隈限定で流行語を決めるとすると、「ライブコマース」は少なくともノミネートはされるのではないだろうか。

スマートフォンでライブ配信をしながら、その最中にモノを売るライブコマース、は中国で先行して注目を集め今年に入って日本でも話題となった。

11月16日・17日に開催されたTechCrunch Tokyo 2017でも、ライブコマースに取り組む3社によるパネルディスカッションを開催。TechCrunch Japan副編集長の岩本有平がモデレーターを務める中、メルカリ執行役員の伊豫健夫氏、Candee代表取締役副社長CCOの新井拓郎氏、BASE代表取締役CEOの鶴岡裕太氏がそれぞれの戦略や今後の展望を語った。

3社がライブコマースを始めた理由と狙い

3社の中でライブコマース用の独立したプラットフォーム「Live Shop!」を提供しているのがCandee、既存のプロダクトにライブコマース機能を組み込む形で提供しているのがメルカリ(メルカリチャンネル)とBASE(BASEライブ)だ。

国内でもいち早くライブコマース市場に参入したCandeeは6月に「ライブ配信× コマース× インタラクティブ」をテーマとしたLive Shop!をリリース。インフルエンサーやモデルが自身のチャンネルを解説し、ライブ配信を行う。

同社は「ソーシャルビデオ革命を起こすこと」を目標に掲げていて、スマホファーストかつソーシャル性とインタラクティブ性を兼ね備えるライブストリーミングに注目。この領域では女性向けのプラットフォームが少ないことから、ファッションなどの分野にまずは集中する形でスタートしている。新井氏によるとライブコマースにしたのは、広告以外のマネタイズ手段を作る目的もあったという。

メルカリの場合はライブフリマ機能という形で7月にメルカリチャンネルをリリース。直接的なきっかけは中国の上海で実際にライブコマースを目にしたこと。「C2Cの売買がリアルタイムで進む様子を見て驚いた。これを自分たちがやらなければ誰がやるのかという話で盛り上がりリリースに至った」(伊豫氏)

当初はインフルエンサーや芸能人が中心で始まり、8月から個人ユーザーにも解放。農家の人が野菜を売ったり、家族が古着を売ったりなど幅広い領域で利用が進み、1日800名ほどが配信を行うほどに成長している(11月のTechCrunch Tokyo開催時点)。

BASEもメルカリ同様にライブコマース機能を9月にリリース。BASEでは自分のブランドや商品を作る店舗が多く、商品のブランディングが課題のひとつ。商品ページのテキスト情報だけでは十分に伝わらない魅力を届ける手段として、ライブ機能を始めた。11月時点で1日あたりの配信数は100本弱、売れる商品だと1時間の配信で売り上げが100万円弱になっている。

メルカリやBASEで共通していたのは、商品の背景にあるストーリーを伝える手段としてライブ配信に注目していること。視聴者とのコミュニケーションも含めて、商品の魅力を深ぼって紹介できるのがライブならではの利点だという。

積極的にライブ参加する視聴者ほど、購入率が高い

参入の背景はそれぞれ違えど、やはり気になるのは実際に売れているのか、手応えを感じているのかどうかということ。その点について新井氏は「ぶっちゃけ日本でも売れるのか?またどうやったら売れるのか?ビジネスモデルの検証を最初にやった」という。

具体的にはユーザーボリュームは追いかけず、商品が売れるかどうかのコンバージョンやどのような演者の評判がいいのかを分析した。「結果として見えてきたのが、ライブに参加するほど購入率があがるということ」(新井氏)

Live Shop!ではライブ中にハートやコメントをした場合にライブ参加としてカウント。実際に商品を購入した人は、その他の人に比べて2倍のライブ参加率だったそうだ。それがわかったため、次のフェーズでは「どうやればライブに参加してもらえるか」に着目して映像の作り方や機能面の研究をしているという。

売れる人と売れない人の二分化が進む

メルカリチャンネルの場合はLive Shop!とはある意味真逆。伊豫氏いわく「インフルエンサーじゃない一般の人が配信しても売れるのか?」ということを検証してきた。

「売れる人と売れない人の差が広がり、二分化が進んでいる状態。売れる人はメルカリの中でインフルエンサーとなってフォロワーがつき、ずっと売れ続ける。1番の成功例はテレビでも紹介された農家の方。収入が20~30倍になり『人生が変わった』という声もいただいている」(伊豫氏)

その一方で全く売れない事例もたくさんあるそう。ライブ配信で商品の魅力を説明することは簡単なことではない。多くの場合はスペックを語るくらいしかできず、この点が今後伸ばしていく上でのポイントだという。

売れるユーザーと売れないユーザーの二分化現象はBASEでも同様だ。鶴岡氏は「本当に好きでその商品を作っている・売っている人と、お金儲けが先行している人で結果が大きく変わってくる」と話す。

「ユーザーからの質問に対する回答ひとつですぐにわかる。たとえばある漆職人の方の場合は『どこの漆なんですか?』という質問に対して、日本の漆の状況や特殊な作りなど永遠と語り続けるほど。好奇心があってものづくりが好きな人のライブは、インフルエンサーかどうかに限らず盛り上がる傾向にある」(鶴岡氏)

このようなチャンネルは固定のファンがつき「人で売れる」ようになるというのは、3社とも共通しているとのこと。商品を売り始めた瞬間に商品が売れて「バグが起きたのかと思った」(新井氏)こともあるそうだ。

少なくとも現段階においては、“誰が発信しているのか”ということが重要なポイントになっているのは間違いない。ただ新井氏が「猛烈に売れる人は、100人もいないのではないか」と話すように、ライブコマースで物を売ることのできる人数には限りがある。

「現時点でのマーケットサイズは小さいが、マーケットポテンシャルは大きい。人の育成や発掘にも力を入れていく」(新井氏)

ライブ配信を重ねていくうちにスキルをあげ、売り上げを伸ばしていく人は各社にいるそう。伊豫氏は「1日目と2日目の配信で結果は全然違う。配信者が育つのは間違いない」とメルカリチャンネルの事例を紹介。鶴岡氏も「最初は恥ずかしくて顔を出さない人が多いが(慣れていくにしたがって)徐々にみんな顔出しをするようになる」と話す。

ライブコマースの本質は「コミュニティ」にあり

3人は今後国内のライブコマース市場がどのようになっていくと考えているのだろうか。パネルディスカッションの最後にそれぞれが見解を述べた。

「地方のショップオーナーが『今お客さんがいないので1時間だけライブECします』とライブ配信をして商品を売っていたことに未来を感じた。これが来年なのか10年後なのかは別として、今後スタンダードになっていくと思う。ポテンシャルは十分にある」(鶴岡氏)

「中国の事例含め、(2時間で約3億円売れたケースなど)最大瞬間風速にスポットライトが当たっているが、実際にはコミュニティビジネスに近い。永続性、継続性を持ってファンとのコミュニティを育てていくことが重要。その上でスモールサイズのコミュニティをたくさん作るのか、ミドルサイズを狙っていくのか。自分たちはミドルとある程度大きなコミュニティを作りながらブランドを育てていく」(新井氏)

「重要なのは『在庫』と『人』。(この2つをつなぐ)スムーズな仕組みが作れれば日本でもポテンシャルはある。ライブコマースによって物と人の組み合わせのバラエティが豊かになり、新しい流通や市場が生まれている。インターネットとコミュニティの掛け合わせがライブコマースだと考えていて、メルカリでも可能性を狭めずにこの市場を捉えていきたい」(伊豫氏)

セッションが終了してまだ約1ヶ月ほどだが、その間にも大きな動きがあった。Candeeではセッション中に少し話のあった、ライブコマースとD2C(Direct to Consumer)を掛け合わせたプライベートブランドを11月16日に発表。新たな商品展開に取り組み始めるとともに、12月には24.5億円の資金調達を実施した。

メルカリも12月より伊藤久右衛門やインプローブスといった一部の法人にメルカリチャンネルの提供を開始。C2Cという枠組みを取り払って、コンテンツの拡充に向けて動き出している。

競合が多い分野で月間2億ユーザーを突破、高品質Q&Aサイト「Quora」の差別化戦略

インターネットにはQ&Aサイトやフォーラムが数多く存在する。その中で、シリエコンバレー発のQuoraが目指すのは、質の高い知識を共有するためのQ&Aプラットフォームだ。Quoraは2009年創業。2017年4月のシリーズDラウンドで8500万ドルを調達し、その時の評価額は推定18億ドルでユニコーン企業となった。2017年11月には日本語版もリリースした。

QuoraのファウンダーでCEOのAdam D’Angelo氏は、11月16日、17日に渋谷で開催したTechCrunch Tokyo 2017に登壇し、Q&Aサイトとしては後発であるQuoraの他社との違い、グロースについて語った。モデレーターは、米国TechCrunchの元ライターで、現在はKantan GamesのCEO、Serkan Toto氏が務めた。

“質が落ちるのはシステム設計に原因”

D’Angelo氏はエンジニアのバックグランドを持つ起業家だ。中高時代から趣味でプログラミングを始め、大学でコンピューターサイエンスを学んだ。卒業後は、エンジニアとして、当時創業して1年ほどだったFacebookにジョインする。後にFacebookの初代CTOに就任し、1年半ほど同社の開発チームを率いた。

Q&Aサイトを立ち上げたのは、もともと知識を学ぶのが好きで、ユーザーが知識を共有するプラットフォームに関心があったからとD’Angelo氏は言う。ただ、こうしたサービスは規模が大きくなるほど、コンテンツの品質が落ちることに疑問を感じていた。その課題を解決できないかと考えたのが、Quoraを開発するきっかけだった。

「自分でプロダクトを作ったり、Facebookで働いたりした経験から、コンテンツの質が落ちるのはシステム設計に原因があると考えました」とD’Angelo氏。Quoraでは実名制を採用したり、ユーザーが回答を評価するボタンを実装したりするなど、高品質なコンテンツを奨励するシステム開発に焦点を当てていると話す。他にもそれぞれのユーザーの専門分野に合致する質問をフィードに表示したり、重複する質問は定期的に1つにまとめて、優れた回答がより広く読まれるようにするなどの仕組みも導入した。

Quoraの画面

こうした施策の結果、Quoraには多くの優良なコンテンツが集まるようになり、それが他サービスとの差別化につながったとD’Angelor氏は説明する。「良いコンテンツが集まり、それがシェアされ、それを見たユーザーがQuoraにサインアップするという好循環が生まれています」。現在、Quoraの月間ユニークビジターは2億人を超えるまでになっているという。

時間が経つほど、サービスは良くなっていくとD’Angelo氏は話す。「優れた回答は何年も役に立つものです。データベースにナレッジが集まるほど、より多くの人にとって便利なサービスになっていきます」。

プレイヤーからマネージャーへ

D’Angelo氏はエンジニアとしてキャリアをスタートし、FacebookのCTOを経て、現在はQuoraのCEOとしてマネジメントを行なっている。プログラマーはマネジメントよりコードを書き続けるキャリアを望む人も多いかと思うが、自身はどうだったかとモデレーターのToto氏の問いに対し、最初は自分もそう思っていたが、マネージャーの経験を積んで考えが変わったとD’Angelo氏は話す。

「マネージャーになって最初の頃は、自分でコードを書いた方が早いと思うこともありました。ただ、マネジメントを続けるうちに、自分一人より、チームの方が多くをこなせるということが分かります。大事なのは、世界にインパクトを与えられるかどうかです。自分でコードを書くより、会社を運営することの方がそれを達成できると思います」。

Quoraは立ち上げ当初から、スタートアップの起業家や投資家などに多く利用されていたという。「起業家は、日々決断しなければならないことが多くあります。良い判断をするためには、質の高い情報にアクセスすることが大事で、Quoraはその役に立っています」とD’Angelo氏。Quoraは起業家同士が互いの知識を共有する場であると同時に、優秀な投資家や採用候補者とつながる場としても機能しているそうだ。

セッションの最後、D’Angelo氏は日本の起業家に向け「プロダクトの差別化に注力すること」とアドバイスをおくった。「競合がいる中でも、独自の立ち位置のユニークなプロダクトを作ること。Quoraが成長を続けられたのも、これがあったからです」と話している。

「『信頼せず検証する』ブロックチェーン技術で金融インフラを見直そう」、BlockstreamのSamson Mow氏

信頼(trust)の概念を見直し、金融インフラを再定義して置き換えよう──これが、カナダBlockstream社CSO(Chief Strategic Officer)であるSamson Mow氏が、TechCrunch Tokyo2017のGuest Session「ブロックチェーン技術で『信頼』を再考する」(関連記事)で語った内容である。

抽象度が高く、スケールが大きすぎる話題だと考える人もいるだろう。非現実的な話とすら受け止める人もいるかもしれない。だが、「信頼」の概念の再定義こそが、ブロックチェーン技術に注目が集まっている理由だ。つまりSamson Mow氏はブロックチェーン技術のインパクトについて正攻法で語ったのだ。

まず所属企業とプロダクトの話から。カナダBlockstream社は2014年設立。メインオフィスはサンフランシスコにあり、45名の社員の2/3はエンジニアだ。シリーズCでは6000万ドルの資金を調達した注目のスタートアップである。政治的配慮からかMow氏は強調しなかったが、Blockstream社は、ビットコインの開発者サトシ・ナカモトにメールで助言した人物であるAdam Back社長兼共同創業者を筆頭に、ビットコインに貢献した開発者が参加していることで知られている。

そのBlockstream社の主な製品は次の3種類だ。(1) 商用のブロックチェーンプラットフォーム「Element」、(2) 仮想通貨取引所どうしで流動性を融通するのに利用できる製品「Liquid」(ビットコインと2-way peg(双方向に連動)したサイドチェーンとして作られている)、(3) モバイル環境で使えるビットコイン・ウォレットの「Green Address」である。いずれもビットコインに深く結びついた製品である。

同社は無料のサービス「Blockstream Satellite」も提供している。静止軌道に位置する通信衛星を活用し、地球上のどこでもビットコインのブロックチェーン同期を可能にすることを目指す。例えば大災害でインターネットインフラが途絶したり、政情不安によりインターネットが遮断されたりするような事態に陥っても、パラボラアンテナを建てればビットコインのブロックチェーンの同期に必要な情報を受信することができる。衛星インターネットなど送信手段と組み合わせれば、地上のどこかででもビットコイン決済を使うことができる。ただし残念ながら日本を含むアジア地域は現時点ではサービスの対象外だが、「2018年Q1までにアジアでも使えるようにする」とのことだ。

同社はオープンソース・ソフトウェアへの貢献も行っている。主な対象は、ビットコインそのもの(Bitcoin Core)、ビットコインの少額高頻度決済を可能にするLightning Network、そして最近発表したスマートコントラクト用のプログラミング言語「Simplicity」だ。Simplicityは名称が示すようにコンパクトな言語仕様をもつ。Mow氏は「Simplicityはすべての言語仕様をTシャツ1枚に載せられる」と説明する。

「信頼せず検証する」原則で金融インフラを再構築する

続けて、Samson Mow氏は、Blockstream社が掲げるスローガン「Rethink Trtust(信頼を見直そう)」について説明した。ブロックチェーン技術を、金融インフラに活用するビジョンである。

前提となるのは、世界最大規模のパブリックブロックチェーンといえるビットコインだ。ブロックチェーンは耐改ざん性を重視する技術である。そして最も大きな計算能力(ハッシュレート)に裏付けられたビットコインのブロックチェーンは、最も頑健な耐改ざん性を備える。

ブロックチェーン技術を使うと信頼(trust)の概念が変わる。Mow氏はブロックチェーンの特性を列挙する。「検証可能性、リアルタイム監査、公開された取引台帳、セキュアな暗号学的トークン、インターネット上で動作、全ノードがデータの複製を持つこと」。これらの特性を活用することで、金融インフラを合理的に再構築することができる。

ここで提示された「信頼」に関する新しい考え方を象徴的に示すスライドを引用する。「Don’t Trust. Verify.」と記されている。これは金融分野の取引にあたり会社組織や制度を信用して全面的に任せるのではなく、自動的、機械的、暗号学的に検証するアプローチを採ることで、より良いシステムを作ることができるという提案である。

ブロックチェーンによるイノベーションの中心は「信頼できる仲介者が発行したIOU(借用証書)」を用いるやり方から、「デジタルな資産」を直接交換するやり方に移行できることだ。ブロックチェーン上のトークンは、データベース上に記録された帳簿という以上に「デジタルな資産」としての意味を持つ。帳簿には偽造や改ざんの可能性があるが、ブロックチェーン上のトークンは「資産」そのものなのだ。

「どういう場合にブロックチェーンが必要なのか? 監査・検証できることが重要である場合、マルチパーティーで情報を書き込む必要がある場合、マルチパーティーがお互いを信用していない場合、データの冗長化と回復可能性が求められる場合だ」。このようにMow氏は語りかける。

これはつまり、金融インフラのように「信頼」が重要と考えられている分野でブロックチェーンは特に大きな役割を発揮できるということだ。例えば銀行のシステム、銀行間送金、証券取引所、仮想通貨取引所など、あらゆる金融インフラをより合理的に見直すことができる。金融インフラはブロックチェーンを使うことで透明になり、効率的になり、第三者が監査可能となり、即時決済が可能となり、煩雑な手続きを省略できるようになり、しかもより安全になる。「例えば、仮想通貨取引は、従来のシステムから、(ブロックチェーンの2nd Layer技術である)Lightning Network上のアトミックスワップに置き換えることが可能だ」。

このようなビジョンを語った後、Samson Mow氏はこう締めくくった。「破壊的イノベーションが、ブロックチェーン技術の分野でも起きている。世界中のインフラを再構築するチャンスだ」。

国際送金サービスTransferWise創業者、Skype時代の経験を題材に破壊的イノベーションを語る

ロンドン発スタートアップ企業のTransferWiseの共同創業者で代表取締役のTaavet Hinrikus(ターヴェット・ヒンリクス)氏は、TechCrunch Tokyo 2017のGuest Session 「国際送金のヒドさに憤慨して起業―、英Fintechユニコーン創業ストーリー」で講演し、自ら関わった破壊的イノベーションについて語った。

TransferWiseは、移民のための国際送金サービスだ。銀行を使い国際送金をすると、手数料が高く日数がかかることに皆不満を持つ。この課題の解決に暗号通貨/仮想通貨が有効との議論があるが、現状では各国の法整備にはムラがあり普及の度合いも今ひとつ。TransferWiseは、既存の金融サービスの枠組みを使いながら国際送金に風穴を空けるサービスといえる(詳しくはこの記事参照)。

Skypeも最初は「オモチャだ」と笑われた

エストニア出身でSkypeの第一号社員だったHinrikus氏は「Skypeは電気通信のサーバをディスラプトする。TransferWiseも銀行業界を変える」と語る。

「2003年、エストニアの首都タリンにあるソビエト連邦時代の古いビルの一画でSkypeを作っていた」とHinrikus氏は振り返る。「優れた発明はオモチャと呼ばれて笑われる。Skypeはオモチャだ。AT&Tとは競争にならない、と言われていた」。これは、破壊的イノベーション理論の提唱者であるクリステンセンが語る通りの展開である。最初はオモチャに見えたイノベーションは市場で急速に洗練されていき、やがて既存のビジネスを打ち負かす力を持つようになる。

SkypeもTransferWiseも、移民であるHinrikus氏自身が必要としていたサービスだった。「高校時代にアメリカに留学した。国際電話料金が高すぎて、1カ月に1回しか電話をかけられなかった。今は毎日のようにSkypeで話をしている」。このような世の中の変化を作り出したいとHinrikus氏は語りかける。

「本当の問題を解決し、プロダクトを10倍良く、それを素早く」

Hinrikus氏は、講演のまとめとして次の3つのメッセージを伝えた。「第1に、マーケットの本当の問題を解決しよう。第2に、プロダクトを10倍良くしよう。第3に、それを素早くやろう」。

ここで強調したのは「10倍良い製品」というくだりだ。「クルマは馬車より10倍速い。『若干よい』ではなく、『数倍〜数十倍よい』を目指すべきだ。顧客はその10倍よい製品について話をし、噂で伝わっていく。TransferWiseも銀行送金より10倍安いと分かり顧客が広がってきた」。もちろん「素早くやる」ことも大事だ。「良い試みはすぐ模倣されてしまう。さらなる投資を迅速に行うことが重要となる」。

Hinrikus氏は「あなた自身がディスラプトされる可能性がある」と警告する。それを防ぐ方法は「(1) 欲深くならないこと、(2)カスタマーにフォーカスすること、(3)”What If”と問い続けること」だとHinrikus氏は続ける。収益の追求だけに気を取られると、カスタマーや自分達の動機を忘れてしまう。「もしコンピュータにマイクがあって簡単に電話できたらどうなるだろうか?」「金融危機の時、代替手段があればどうなっただろうか?」と常に問いを発することが、次のアクションにつながる。

締めくくりの言葉は「世界を変えたいと思うだろうか?」。Skypeで世界を変え、TransferWiseで国際送金ソリューションを立ち上げた経験者がスタートアップ関係者にエールを送る講演となった。

テスラの経験からクルマとヒトの接点となるサービスを着想、Drivemode上田北斗氏

米Drivemode共同創業者の上田北斗氏は、11月16〜17日開催のTechCrunch Tokyo2017のFireside ChatでTechCrunch Japan編集長の西村賢と対談し、「Drivemodeが見つめる近未来のクルマとヒトの関係」について語った。

Drivemodeはクルマの運転中にスマートフォンを使えるようにするサービス(関連記事)。ユーザーとの接点となるのは車載機器として考えられたUIを備えるスマートフォンアプリだ(デモ動画)。Google Mapなど普段使っているアプリを、運転中に操作することを考慮したUIで使うことができる。本田技研工業との共同研究で、クルマのハンドルに設置した操作用パッドからスマートフォンアプリを使う取り組みも進めている(デモ動画)。

「テスラはUXの積み重ねが『ガジェット』として評価された」

Drivemode共同創業者の上田氏はワシントン大学で機械工学を学んだ後、ハーバード大学でMBA(経営学修士)を取得し、2011年にテスラモーターズに入社する。在学中にインターン志望でテスラを訪問するが「MBAは要らない」と言われてしまう。「エンジニアリング専攻です。MBAは忘れてください」と食い下がり、そのときまでのテスラでは前例がなかったインターンとして働き始めた。

そんな上田氏は日本の観客のために日本語でセッションに参加してくれたのだが、実は日本滞在経験は最長3カ月。中身はアメリカ人だが日本語が喋れるのは「家では英語だと親に話を聞いてもらえない」環境だったからとのこと。

テスラでは「Model S」のローンチマネージャーを務めた。テスラが成功した理由のひとつは「クルマではなくガジェットして認識されたこと」と語る。シリコンバレーには、クルマに興味がなくガジェット好きな人が多い。タッチスクリーン付きディスプレイパネルや、ドライバーや乗客がクルマに近づくとドアハンドルが突き出す仕組みなど、ガジェットに興味がある人を引きつける細かなUXの積み重ねが評価された。UXが重要との知見は、Drivemodeに引き継がれていると見ることもできるだろう。

「テクノロジーとヒトの接点をおさえたい」

2014年、上田氏は4年働いたテスラを離れ、Drivemodeの共同創業者となる。クルマとスマートフォンの組み合わせはネガティブなイメージがある。「スマートフォン操作による不注意運転で事故が起きる。ここは誰かがなんとかしないといけない」。クルマを運転する動きの中で自然にスマートフォンを使えるUXを作る。そこがDrivemodeが目指すところだ。「一度使って便利だと分かっているテクノロジーはどうしても使ってしまう。(アメリカには)クルマのナビゲーションの方法がスマホしかない人も多い」。

上田氏はテスラ時代を振り返り、Drivemodeの構想について次のように語る。「それまでのクルマは古くなる一方だが、テスラはソフトウェアのアップデートでどんどん良くなっていく」。ここがテスラ車のユーザーにとって驚きだった部分だ。「ここで引いて考えると、アップデートで良くなるのはスマホと同じ」。クルマのパフォーマンスの評価尺度は、以前は加速や乗り心地だった。テスラ車ではそれに加えてテクノロジーとの触れあい、インターフェースの要素が強い。「今はクルマと人の関係の変化の時期。テクノロジーと運転者の接点をおさえることが大事だ。新しいスマホの使い方が出てくるなら、いち早くキャッチアップできる立場に立ちたい」。このような考え方がDrivemodeの背景にはある。

Drivemodeにはパナソニックが出資しているし、前述したように本田技研との取り組みも進めている。「日本の大企業と一緒に仕事をしていてやりづらいことは?」との質問に対しては、「『できない』前提で話が始まる。カルチャーが違う」と返した。「日本の会社はミーティングで『難しい』という言葉を多用するのでアメリカ人も「ムズカシイ」と音で覚えてしまう。意味を聞かれて”difficult”と訳したら、アメリカ人は『difficultは不可能ではない。OKだ。いける!』と受け取る。Noという意味だと説明すると驚く」。

セッションの最後、会場へのメッセージを聞かれた上田氏は次のようにコメントした。「やらないリスクを考えます。新しいことをやるか、現状維持か。やらないことで自分の中の可能性が下がる場合が多い。失敗する可能性が高いことをやらない理由にはしない。やればゴールに近づけるなら、やる」。

ソラコム玉川氏が語る起業、KDDIによる大型M&AとIoT通信の未来

11月16日・17日に渋谷・ヒカリエで開催されたTechCrunch Tokyo 2017。2日目の17日最初のセッションには、IoT向けの通信プラットフォームを提供するソラコム共同創業者でCEOの玉川憲氏が登壇し、KDDIによる大型M&Aの背景とIoT関連サービスの展望、今後のサービス展開について語った。聞き手はTechCrunch Japan編集長の西村賢が務めた。

ソラコム共同創業者でCEOの玉川憲氏(右)と聞き手のTechCrunch Japan編集長西村賢(左)

ソラコム誕生のきっかけは「仮想のプレスリリース」

まずはソラコム起業の経緯について。起業前の玉川氏は、Amazon Web Services(AWS)の日本のエバンジェリストとして知られていた。Amazonを辞めて起業をするのは自分でも「クレイジーだと思った」と玉川氏は明かす。

「新卒で日本IBMへ入社したときのキャリアゴールは、CTOになることだったが、それはかなわなかった。AWSでは、技術全体のリーダーと近いポジションだったので満足していた。しかし、ソラコムのアイデアを思いついてからは、それをやりたくて仕方がなくなってしまって」(玉川氏)

玉川氏はAWSを心から好きだった、と言う。「AWSの登場で、スタートアップがサービスを最初に始める時に,サーバーに6000万円とかかける必要がなくなった。パッションがあればスモールサービスで取りあえずやって、うまくいけばスケールする。インターネット上でサービスをやりたいスタートアップにとっては、そういうことができるというのは、劇的な変化だった。コンピューティングのような、みんなにとって必要なリソースを既得権益だけでなく、オープンにフェアに提供するというAWSの考え方が、僕は非常に好きだった」(玉川氏)

というわけで、日本でAWSのエバンジェリストを務めていた玉川氏だが、日本ではAWSを使って世界へ打って出るようなスタートアップは、なかなか生まれてこなかったという。そんな中、現ソラコムCTOの安川健太氏と出張先のシアトルでビールを飲んで話をする機会があった。「パブリッククラウドを使えば今、何でも作れる」という話で盛り上がった玉川氏は、ホテルに戻り、時差ぼけで寝付けない中で、Amazonの文化に則ってサービスのアイデアを仮想のプレスリリースに書き起こしてみた。翌朝起きて「リリース文を見たら、行けると思った」と玉川氏。クラウドスタートアップが出てくれないのなら、自分でやってみよう、と考えるようになったそうだ。2014年春のことだ。

「初めは起業しよう、と思っていたわけではなかった。(プロダクトを)作ってみたら面白いんじゃないか、ということでプロトタイプを試作していた」と話す玉川氏。Amazonの中でサービス化するという選択肢もあったというが、「ソラコムは通信の仕組みをクラウド上で作るという、AmazonにとってはAWSを利用するお客さん側にあたるので、自分たちで(起業して)やった方がいいんだろうなと思った」と起業に踏み切った理由を語った。

こうして2014年11月に、IoT通信プラットフォームを提供すべく起業したソラコムは、2017年8月、KDDIによる大型買収を決め、わずか2年半でイグジットを果たした。買収額は200億円程度と言われている(公表はされていない)。

買収先としては、Amazonもあり得たのでは?との西村の質問に、玉川氏は「クラウド上の通信サービスを提供するということから、買収先には2つの選択肢があった。ひとつは通信キャリア、もうひとつは(AWSのような)クラウドベンダーだ」と答える。「買収先は単に金銭的な条件だけが重要ではなく、パートナーでもある。お金も大事だが、M&A後のシナジーや、我々自身がモチベーションを保ったまま続けられる環境か、といったことも大切な条件だった」(玉川氏)

KDDIが買収先となった決め手のひとつは、KDDIが世界でもいち早く、ソラコムのクラウドベースの通信機関システムを採用し、ソラコムと共同開発したサービス「KDDI IoTコネクト Air」を提供開始したことだと玉川氏は話している。

「それにIoT向けの通信はまだ始まったばかり。乾電池で10年動くような通信など、モノに通信を入れるための規格は、これから本格化してどんどん出てくる。それをどこよりもいち早く取り入れて提供していこうとしたときに、やはり通信キャリアと組むのがいいだろうと考えた。もうひとつ、“日本発”でグローバルを目指したいというときに、一番やりやすいのはKDDIではないかと思った」(玉川氏)

スマホにおけるTwitterのようなキラーアプリがIoTにもいずれ来る

IoTとIoT向け通信の今後の行方について、もう少し詳しく玉川氏に聞いてみた。玉川氏によれば、携帯通信全体ではどんどん高速化・大容量の方向へ進んでおり、この方向性は変わらず進化を続けるが、IoT向け通信に限って見れば、それほど速度は必要なく、通信モジュールが小さく安く、どこででも電波が入って、低消費電力で動くことが求められるという。

「ちょうど昨日(11月16日)、KDDIがセルラーLPWA(Low Power Wide Area)通信サービスの提供開始を発表したところ。我々も今後ソラコムとどう組み合わせていくかを検討している」(玉川氏)

最近スタートアップでIoTサービスを提供する企業は、軒並みソラコムの通信サービスを利用している印象もあり、まさにIoT通信界のAWSのような状況と言える。現ユーザーはどういった傾向にあるのだろうか。「現在は8000件以上の顧客に利用されている。企業規模も大企業からスタートアップまで幅広く使ってもらっている」(玉川氏)

スタートアップでのソラコム活用例として挙げられたのは、TechCrunch Japanでも以前紹介したことがあるファームノート。農家へ牛の状態の管理をするアプリを提供する企業だ。「酪農家にとっては、子牛が生まれるときというのが非常に重要なタイミング。牛の胎盤の温度などを測ってモニターするのにソラコムが利用されている」(玉川氏)

またこちらもTechCrunch Japanで紹介済みのスタートアップだが、まごチャンネルもソラコムの顧客だ。スマホが操作できないシニア世代でも、テレビで遠くの家族の写真や動画を共有できるIoTデバイスを提供している。「テレビにくっつくセットトップボックスに(ソラコムの)SIMを入れてもらっている」(玉川氏)ということで、Wi-Fiの設定などインフラの心配なく、ユーザー体験を作り出すことができたという。

最近発表されて話題となった製品では、ソースネクストが12月14日に発売する通訳デバイス「POCKETALK(ポケトーク)」にも、ソラコムのグローバルSIMが採用されている。「世界61カ国で使えて、50言語以上に対応している。翻訳エンジンは、中国語ならバイドゥ、といった感じでクラウド上の最適なものを選んでいる。スマホはSIMの入れ替えや設定など、海外ですぐに使えないことも多いが、これはすぐ使える。また通訳目的に限定されているので、スマホと違って現地の人に渡すことにも躊躇しなくて済む」(玉川氏)

コンシューマーとインフラ系やセンサーネットワーク(かつてM2Mと言われた領域)とでは、どちらがIoT市場として大きくなるのだろうか? 玉川氏は「私自身も全く読めない」とこの問いに答えている。「“IoTのポテンシャルは無限大”みたいなところがある。日本だと2000年前後に“eビジネス”を切り口に企業がこぞってウェブサイトを作っていたが、それと似たような感じで各産業がIoTに取り組んでいる。今はクラウドがあって、IoT向け通信もある。そしてデバイスがメーカーのムーブメントで、どんどん安く小さくなっている。そうすると、そこら辺中のモノが通信でつながるかもしれないですよね」(玉川氏)

IoTにとってのキラーアプリは、どういったものになるのだろうか。玉川氏は「僕も分からない。ただ振り返ってみると、スマホが出てきたときにTwitterが出てきて『うわあ、これはキラーアプリだ』みたいな感覚があったでしょう。あれは誰も予測ができなかった。それと同じようなことがたぶん、IoTでも起こるんじゃないかと思う」と予想する。

ソラコムが「ブラック企業にしない」「ストックオプションを出す」理由

さて、ここからはスタートアップとしてのソラコムについて、玉川氏に聞いていく。まずはチームビルディングについてだ。スタートアップというと、若手のイメージがあるかもしれないが、ソラコムは比較的年齢層が高めだという。「平均年齢は36〜7歳。エンジニアが半分以上だ。日本だと『エンジニア35歳定年説』などと言われているが、うちは35歳以上のエンジニアが活躍している」と自身も起業当時39歳だった玉川氏が話す。

スタートアップあるあるとして、立ち上げ期の起業家や創業メンバーが配偶者に起業やスタートアップへのジョインを反対される、いわゆる“嫁ブロック”問題というのがある。ソラコムではどうだったのだろう。玉川氏は「我が家は大丈夫だったが、初期メンバーを集めるときに、ほとんどのメンバーがジョインを即決できなくて、家族に説明するために会いに行った」と明かす。

「給料などがちゃんとしていますよ、という話もそうだが、どちらかというと『こういうことがやりたいんです』というビジョンを説明した。また『ブラックな会社にするつもりはありません』といったこともお話しした」(玉川氏)

現在社員数45人のソラコムでは、子だくさんの社員が多いと玉川氏は言う。「自分も3人の子どもがいて、多い社員では5人の子どもがいる家庭も。最近、スタートアップ界隈では“憧れ”の関東ITソフトウェア健康保険組合(IT系企業が多く加入しており、寿司屋など保養・関連施設が充実していることで有名)に、ソラコムでも加入の申し込みをしたところ、子どもの数が多すぎて断られてしまった。でも『スタートアップで子どもが増えているのはいいことだ。日本(の少子化対策)に貢献しているし、メンバーが未来があると感じているから、子どもが増えているのであって、そのことを誇ろう』と思うことにした」(玉川氏)

会社の労働環境については、ブラックでないように心がけている、という玉川氏。「ソフトウェアテクノロジーで価値を作るスタートアップは、優秀なソフトウェアエンジニアがゼロからイチ(のサービス)を作れるか作れないかにかかっている。人数や時間をかければ作れるというものではなく、生産性で言えば今までの従業員と比べると、100倍にも1000倍にもなるエンジニアには希少価値があり、大切にしなければいけない」とその理由を説明する。

フルフレックスで、リモートワークもOK、基本的に社員を満員電車には乗せない、というソラコム。優秀な人材にジョインしてもらうために、玉川氏が待遇面で気を配ったのがストックオプションの付与だ。「テクノロジープラットフォームを作る会社でグローバルに展開したい。一気に投資をして一気に成長させる、いわゆるスタートアップをやりたかった」と話す玉川氏は、全員にストックオプションを付与したそうだ。「優秀なエンジニアはコアメンバーだ。給料を(前職の)半分しか出さないとか、ストックオプションを出さないとかいうことは僕にはできなかった」(玉川氏)

「我々の場合、少人数で価値の高いプラットフォームを作ろうとしていて、それは経験の浅いエンジニアだけではできないことだ。15年以上の経験・実績があって、サーバ側もアプリ側も分かるような、いわゆるフルスタックと呼ばれるようなエンジニアに入ってもらってやってきた。そうすると、きちっとした待遇でストックオプションも出してやりたいな、と。結果的にはそれがよかったと思う」(玉川氏)

大手企業で経験を積んできたエンジニアを採用する場合にも、基本的な給与についてはできるだけ前職と同じかそれ以上の条件を用意し、ただしインセンティブやボーナスに関しては「ストックオプション以上の可能性は(他には)ないので、がんばろう」と話しているそうだ。

また、ワールドワイドに事業展開を図るソラコムにとって、海外での採用にはストックオプションの提示が不可欠だったという側面もあったようだ。玉川氏はこう話す。「日本だと、ストックオプションの相場が分からない人も多いが、シリコンバレーでは会社のステージ(投資ラウンドのどの時点か)と、どのポジションでの採用になるか、というのがマトリックスになっていて、業界標準値のようなものがある。アメリカで入ってくるメンバーはそれをベースに交渉するのが普通となっているので、我々もその標準に合わせようと考えた」(玉川氏)

シリーズA段階でのストックオプションの付与は、保有する株の希薄化を避けたい投資家から見ると嫌がられることも多いはずだが、ソラコムではそのあたりはどのようにクリアしたのだろうか。玉川氏は「我々の場合はオプションプールを10%作った。投資家からは確かに嫌がられるのだが、『成長するために優秀な人材を確保するには必要なことだ』と説得すれば理解してもらえるので、オプションプールは作っておいた方がいい。特に海外ではストックオプションがなければ採用はできなかった」と話している。

ストックオプションの価値や相場について理解度が低い日本の場合でも、ストックオプションの付与は有効だったと玉川氏は言う。「ストックオプションはある意味、(会社の成長の仕方によっては)どういう価値が出るのか分からないものなので、細かい値(付与のパーセンテージ)にこだわっても仕方ない。それよりは、会社としてどこまで一気に成長させられるかという観点のほうが大事だ。そういう意味では、ソラコムの日本のチームも(ストックオプションの付与を)前向きに『これでがんばっていこう』ととらえてくれたかな、と思っている」(玉川氏)

ストックオプション付与の利点について、玉川氏は「説明コストが省けること」もあると説明している。「例えば、我々は2年ぐらいで買収ということになったので(イグジットまでの)時間はかからなかったが、通常スタートアップでは3年とか5年がんばっていかなければならず、疲弊してくる。そうすると、分かりやすいインセンティブやボーナス(が欲しい)という話になってくるのだが、それよりは、ストックオプションのほうが可能性としてはずっと高い。しかも全員ががんばればがんばった分だけ、プールは大きくなる。みんながひとつのビジョンに向かって突き進むには、非常にいい仕組みだなと思う」(玉川氏)

創業2年半、ソラコムの今後と起業を目指す中堅へのメッセージ

創業2年半の若い企業とはいえ、既にさまざまなサービスを展開するようになったソラコム。ゼロからイチを立ち上げる初期とは違い、ある程度ソフトウェアができてくるとメンテナンスタスクなども増え、新しいことがだんだんできなくなってきて、モチベーションが続かないこともあるのではないか。

「確かに最初は通信サービスのSORACOM Airとデータ転送サービスのSORACOM Beamの2つしかサービスがなかったが、今は10個以上ある。次に新たにサービスを出していく、となったときに、10個のサービスのメンテナンスもやっていかなければならないし、(新サービスとの)整合性、依存関係も考えていかなければいけないので、もちろん一番最初に比べると身重になっている、というのは正しい。またよく言われる“技術的負債”というのもあって、作ったときにはきちんと解決してきれいにしておかなかったところが、後々重荷になる、ということもある」と言う玉川氏。ただしソラコムの場合は「元々エンジニアを“作る”メンバーと“運用する”メンバーに分けていなかった」ことが功を奏しているとのこと。「(サービスを)作ったメンバーがサポートも受けているので、汚いコードをそのままにしておく、という人は誰もいない。汚いコードを書くと障害も出やすくなり、サポートもいっぱい受けることになって、自分に返ってきちゃうことになるので、きれいに作ろうという意識は高い」(玉川氏)

それでもサービス群が大きくなってくると、取り回しが大変になる部分もある。そこでソラコムでは、定期的に“お掃除の期間”を設けているそうだ。「この期間はディフェンシブに、技術的負債をクリアにしたり、運用を自動化したりするための開発期間に当てよう、ということで何度か期間を取ってきた。それにより、新しいものを作るときに技術的負債が重くのしかからないようにしている」(玉川氏)

今後のソラコムの動きはどうなっていくのか、KDDIとの今後のグローバル展開について聞いてみた。「今はアメリカの特にシリコンバレー周辺とヨーロッパ、それからシンガポールにもオフィスがある。アメリカはやっと立ち上がってきた感じがしている。既にソラコムの顧客に、C2Cの不動産売買プラットフォームを提供するOpendoorがいて、スマートロックを使って内見を自動的にできる仕組みに使っている。またカード型SIMではなく、基盤に埋め込めるように作った5mm×6mmのチップ型SIMを出したのだが、それもアメリカが一番採用が早かった。腕時計型デバイスに埋め込んでもらい、12月に発売される予定だ」(玉川氏)

日本のメーカーが海外展開するときに、ソラコムのサービスが採用されるケースも増えている、と玉川氏は言う。「ソースネクストのPOCKETALKもそうだし、IHIのグローバルでのプラントの遠隔監視に利用されていたり、旭硝子では工場で働いている人がどう動いているかログを取って、動きをより最適化するためにソラコムのグローバルSIMを使ってもらっている」(玉川氏)

最後に、これから起業しようという人たちの参考として、会社の立ち上げからこれまでで、苦しかったことは何かを玉川氏に聞いてみた。「スタートアップって、ずっと苦労してるものだと思うけど、それを言うと全部言い訳に聞こえるんじゃないか。だって自分たちでやりたくてやっているわけだから」と言いつつ、玉川氏は苦しかったフェーズは常にある、と話し、特につらかったのは資金調達だ、と打ち明けた。

「最初の資金調達は2015年のことだが、2015年初めのころは心臓が痛くなった。シリーズA調達が終わったら痛みがなくなったので、ストレスやプレッシャーはすごくあったのだと思う。手持ちの資金で始めてはいるものの、調達できなければせっかく“嫁ブロック”をくぐり抜けて参加してくれたメンバーが解散か、となるので責任感はあるし、引き下がれないし……。資金調達はいつでもつらいもの。調達のニュースがあったときに『まだおめでとうは言わないよ、これからだから』なんて言いたくなる気持ちは分かるが、KPIを達成してマイルストーンを超えているから調達できているわけで。『普通におめでとう、って言ってあげて』と思ってしまう(笑)」(玉川氏)

玉川氏のように、経験を積んだ上で中堅として起業する方へのメッセージももらった。「今、こうしてここに偉そうにすわらせてもらっているが、実際、2年半ほど前に起業を明かしたときには、こうなるとは全く思っていなかった。去年サービスインを伝える記事でTechCrunchに出たときにも、こうなると想像していなかったし、M&Aのことも全く考えていなかった。ただ、今ここにこうして座っている、というのはスタートアップの醍醐味だと感じている。チャレンジしたい、やってみたい、ということがあるならぜひ、チャレンジして欲しい」(玉川氏)

起業に際して最初にするべきことは何か。この質問に玉川氏は「私もTechCrunch Tokyoに来たり、起業家向けイベント、経営者向けイベントにAWSのエバンジェリストとして通っていて、顔見知りになっていて。これが結果的にはすごく役に立った。投資家の人に資金調達のお願いに行ったときにも、はじめてではなく、何度か会っていて、向こうにも『ああ、AWSの玉川さんね』と知ってもらっている状態だった。それは役に立っている」と答えてくれた。

CTOオブ・ザ・イヤー2017は1人開発体制からクラシルを立ち上げた大竹雅登氏に

テック系のスタートアップにとって、技術の立場から経営に参加するCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)は重要な役職だ。そのCTOにスポットライトをあてる企画が、TechCrunch Tokyo 2017の初日である2017年11月16日に開催された「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS」。LT(ライトニングトーク)を審査し、CTOオブ・ザ・イヤーを選出する。4回目となる今年は8社のCTOが登壇した。

結果からお伝えすると、今年の優勝者は料理動画「kurashiru(クラシル)」を運営するdelyの大竹雅登氏。まだ24歳の若さである。エンジニアが全員退職した後に1人開発体制を続けた大竹氏のチャレンジについては、ぜひ記事の続きに目を通していただきたい。

CTOオブ・ザ・イヤー2017に選ばれたdelyの大竹雅登氏

今年の審査員は、グリーCTOの藤本真樹氏、アマゾン ウェブ サービス ジャパン ソリューションアーキテクトの松尾康博氏、サイバーエージェントSGE統括室CTOの白井英氏、竹内秀行氏(ユーザーベース、インキュベーション担当 専門役員)の4名である。竹内氏は第1回CTOオブ・ザ・イヤーに選出されている。

空港設置のSIM自販機を3カ月で立ち上げる

最初のLTは「WAmazing」のCTOである舘野祐一氏。舘野氏の前職はクックパッドCTOで、「CTO Night」で審査員を務めた経験を持つ。現職は「CTO2周目」にあたる。

WAmazingは外国人旅行者をターゲットとする観光プラットフォームだ。サービスを知ってもらう手段としてSIMを無償提供する。そこで空港に「SIM受取機」を設置する形としている。

舘野氏がフルタイムでWAmazingにジョインしたのは2016年11月頭。着任と同時に「3カ月で空港設置のSIM受け取り機を立ち上げる」という高難易度のタスクを抱えることになった。ハードウェア開発はやったことがない。そこでハードは協力会社に頼り、できるかぎりの処理はサーバーサイドで実現した。それでも完成したのは期限の「2日前」。まだまだ万全といえる状態ではなかった。

ソフトウェア開発では開発サイクルを素早く回転させることが大事だ。この考え方を適用できる環境を用意した。社員が持ち回りでSIM受け取り機を設置する空港に常駐し、その場で問題対応できるようにする。必ずしも技術的な問題ばかりではなかったが、エンジニアでなければ切り分けられない種類の問題も多かったとのことだ。問題が発生するたびに原因調査とフィードバックを繰り返すことで「2〜3週間後には完全になった」。SIM受取機を最初に設置した成田空港での経験を元に、その後は日本各地の空港へのSIM受取機の設置を進めている。

質疑応答では、審査員の竹内氏が「僕も自動販売機のサービスをやったことがあり、大変でした」と意外な経験を披露しつつ、舘野氏から「改善の余力を残しつつ早めに改修していった」との方針を聞き出していた。不完全なサービスの完成度を上げていくやり方に、舘野のソフトウェアエンジニアとしての経験、そしてCTOとしての経験が活かされた形だ。

1人体制で開発開始、リリース直後にデータ分析基盤を整備

2番目のLTは、CTOオブ・ザ・イヤーに選ばれることになるdelyの大竹雅登氏である。料理動画(レシピ動画)サービス「kurashiru(クラシル)」は、dely社にとって3個目のプロダクトだ。1回目は配達サービス、2回目はメディア。「最初のプロダクトでは開発メンバーをけっこう集めたが全員辞め、しばらく1人で開発する体制が続いた」。「狭いオフィスで、手を伸ばせば届くところで料理人がスイーツを作っている」厳しい環境からkurashiruが生みだされた。

kurashiruではアプリのリリースの初期の段階から「Logpose」と名づけた独自のデータ分析基盤を構築した。「サービスを伸ばす、ユーザーを深く知る、PDCAを速く回す」ためにはデータ分析が欠かせないと考えたからだ。データ分析では「人の言葉で説明する」方針をとる。言葉で説明できなければ施策の納得感が得られないし、相関関係と因果関係を取り違える危険もある。分析結果を言葉で説明できるなら「大筋間違った方向にいかない」と話す。

「楽しければ嬉々として開発するはず」と環境整備

女性向け動画サービスC Channelの西村昭彦氏は、「コンテンツ×運営×開発」の重要性について語った。同社の今の規模は社員が約130名、月間動画再生数6億件以上。技術面でも新たな課題が出てきていた。

開発速度を上げる上で「楽しければ嬉々として開発するはず」と考え、開発言語とフレームワークを、それまでのPHPとZF1から、PythonとFalconに変更した。生産性、保守性が向上したほか、募集文面に「Python」と付けたことで「濃いエンジニアに来てもらえた」。また言語と開発フレームワークを切り替えた結果「コードをどう書くか」といった「宗教論争から卒業できた」。

開発インフラはAWS(Amazon Web Services)に移管した。従来のインフラでは「眠れない日々」が続いたが、AWS移管の後は工数削減と睡眠時間確保が可能となった。分析系ではGoogle BigQueryを活用している。

質疑では、女性向けメディアの特性を男性エンジニアが理解することの難しさへの質問も出た。女性向けメディアはコンテンツの消費速度や属性の違いが顕著とのことだ。「趣味や世界観が違うと見てくれない」。西村氏のスタンスは「男性エンジニアには理解できないと開き直って、とにかく作る」というものだ。

建築現場を支援するサービスを作る

CONCORE’S(コンコアーズ)の藤田雄太氏は、建築業向けの写真共有アプリ「Photoruction」への取り組みについて語った。同社は建築業向けの「建設IT」に詳しいエンジニアで起業した。今は写真共有サービスだが、「建築現場のすべての課題に対応するサービスを目指す」としている。今取り組んでいるのが図面の共有である。

建築図面の分野では、「1ページ、ベクターデータなのに400MバイトもあるPDFファイル」を取り扱う必要がある。従来の建築現場がどうしていたかというと、パソコンでPDFを開くのに時間がかかるので、その間にコーヒーで一服して時間を過ごしていた。そこで表示の高速化を図った。基本的な方針は、地図アプリのように、タイル状に分割して画面表示に必要な部分だけを描画するというものだ。LTで見せたデモでは、情報量が多い図面をなめらかに表示、スクロールできる様子を見せた。

証券会社にとってクラウド移行は「火星行き片道切符」

オンライン証券FOLIOの椎野孝弘氏は3社の起業経験を持つ。企業買収を経てヤフー ジャパンに在籍した時期もある。一方、FOLIOは創業2年弱で「第2創業期」にあたる時期だ。そこで椎野氏は、自分のミッションを「第2創業期をうまく離陸させること。そのためにエンジニア、デザイナーが実力を出せるよう環境を整備すること」と位置づける。

環境整備で大きかったのは、クラウドへの移行だ。「証券会社にとってクラウド移行は火星行きに等しい高いハードルだ」と表現する。これを「火星行きの片道切符を買った」との意識で乗り切った。

同社のシステムは、マイクロサービスの種類が30近くと複雑だ。マイクロサービスの弱点は、サービスをまたいで発生する障害の検出が難しいこと。そこでメトリクスを監視ツールPrometheusに集約した。利用言語は、フロントエンドではSwift、Kotlin、Node.js、バックエンドはScalaを中心にPythonとRuby on Railsに集約した。

椎野氏は「第2創業期の離陸はできた」と振り返る。今後の取り組みとして、FOLIOを起点とした新しいエコシステムを目指してAPI公開を目指していく。

排泄予知デバイスの未来を考え生データを保管

排泄予知デバイス「DFree」を開発するトリプル・ダブリュー・ジャパンの九頭龍雄一郎氏は、「100年続くTECH COMPANYへ」と題してLTに臨んだ。

DFreeは、介護施設で排尿時期を予知するデバイスとして利用できることを目指している。現状はビジネスの世界展開へ向け取り組んでいるところだ。技術面での難しさは、ハードウェアもサービスも両方とも新たに創り出さなければならなかったことだ。サーバー側ではAWSのS3、Dynamoなどクラウドサービス群を活用する。DFreeは超音波により腹部を調べるが、測定結果の時系列データはすべてS3上に格納している。「解析後のデータなら何十分の一かのデータ量になるが、あえて生データを入れている」。これは、将来は排尿時期の予知だけでなく、より多様な人体データの活用を視野に入れているからだ。

「FinTechは攻めと守りのバランスが大事」

個人間決済サービスAnyPayの中村智浩氏は、ゴールドマン・サックス、エレクトロニック・アーツなどを経て同社に参加した。スマートフォンによる決済サービスを提供する。個人向けサービスのpaymoと事業者向けサービスのPaymo bizを今年(2017年)ローンチした。

「FinTechは攻めと守りのバランスが大事。一発で信用を失ってしまう」と中村氏は語る。守りとPDCAを回すスピードの両方が大事だ。例えば、クレジットカードの情報をアプリケーションのほとんどの部分が持たない仕組みとした。「比較的安心してPDCAをRails上で回せる」。

同社の社員は投資銀行、広告代理店、コンサルティングファームなどからの転職組も多い。そこで開発に携わる気持ちを会社全体に浸透させることを狙い、GitHubアカウントをみんなに持ってもらった。ビジネス側もGitHub上の議論に参加してもらい、また「ちょっとしたランディングページの変更ぐらいはマーケティングの人がプルリクエストを出す」形とした。ほか、SQLの社内勉強会をして「ちょっとしたデータ分析はエンジニアに頼まなくてもできる」ことを目指す。

質疑では、外部の会社とのやりとりにもGitHubを活用しているという興味深い話が出た。FinTechサービスでは規制への対応が重要となるが、「資格を取得するための業者とのやりとりをGitHub Issueにした。けっこう効率的になった。相見積もりをしてGitHubに対応できる事業者を選んだ」。

技術力で「事業について考える時間」を作り出す

Tunnelの平山知宏氏は、住生活の実例写真の投稿・閲覧サービス「RoomClip」に取り組んでいる。自分の部屋をどう改善すればいいのか、それを考える上で他人の部屋を見る回数が普通の人は少ない。そこを埋めるサービスがRoomClipだ。

平山氏は、エンジニアを忙しくさせる要素を排除することで、エンジニアがユーザーの課題について悩む時間を作り出すことを狙った。「品質が高い開発環境を支える技術力は、考える時間を与えてくれる」。その時間を使い、エンジニア各人もビジネス側の会議に出席して「KPIを追い、一緒にPL(損益)を作り、CMJ(カスタマージャーニーマップ)を作る」ようにした。「エンジニアにとっても事業に責任を持てるポジションが開かれている」。

以上、8社のCTOのLTを紹介した。審査員を代表して、グリー 藤本真樹CTOは「今年特徴的だったのは、2周目、3周目の方々がいたこと。いいことなので、がんばっていきましょう」と締めくくった。

 

アプリ制作当初からグローバルを視野に入れるべき――Trelloが世界中の人に使われるワケ

11月16日、17日の2日間で開催したスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2017」は大盛況のうちに幕を閉じた。海外からの有名スピーカーも多く登壇するなか、初日にはTrello CEOのMichael Pryor氏がステージ上に現れた。TechCrunch Tokyoに集まった日本の投資家や起業家たちの前で彼は、日本市場のポテンシャルやTrelloが世界中の人々に受け入れられた理由について語ってくれた。

2011年にFog Creek Softwareの社内プロジェクトとして始まったタスク管理アプリ「Trello」は、2011年9月に開催された米国TechCrunchのスタートアップイベントDisruptで正式ローンチ。その後も順調にユーザーを集め、2017年1月にAtlassianに4億2500万ドルで買収されている。

Trelloが多くのユーザーを惹きつけたのは、コンセプトがシンプルであること、そして何より操作が楽しいことが要因だとMichael氏は語る。

「付箋を使ったことがあるユーザーであれば、Trelloのことをすぐに理解できる。Trelloは、付箋にメモを残すという行為をデジタル化したものです。操作は楽しく、人間味があります。付箋を貼るというコンセプトは、誰にとっても理解しやすいものなのです」(Michael氏)。

デジタル化した付箋メモというコンセプトのシンプルさゆえに、その使い道もユーザーによってさまざまだ。僕たちTechCrunch Japanでは、取材案件の担当者決めと進捗管理にTrelloを使っているけれど、ユーザーのなかにはTrelloをアンケートアプリとして使ったり、家庭でのタスク管理に使っているという人たちもいるという。

Trelloは今やグローバルで使われるタスク管理アプリへと成長したが、国によってもその使い方に違いがあるようだ。例えば、ブラジルでは家庭で使われることが多い一方で、ドイツでは主に仕事場で使われている。使用用途を選ばないTrelloの柔軟性こそがその人気の秘密なのかもしれない。

「IRC(インターネット・リレー・チャット)やSlack、その他のチャットアプリのようなツールから良いところを取り出し、誰もが使えるようなツールを作るというのがTrelloのアイデアでした」(Michael氏)

“翻訳”と“ローカライゼーション”の違い

2016年4月に行ったサービスの多言語化により、現在Trelloは日本語でも使用することができる。日本市場の可能性ついてMichael氏は、「現状、Trelloは日本向けにローカライズしたというよりも、単に翻訳したに過ぎません。それでも、日本のユーザー数は非英語圏のなかでは最も多い。日本市場には大きなポテンシャルを感じています」と語る。

しかし、その一方でMichael氏は、サービス内の文言をその国の言語に翻訳するだけでなく、その国の特徴にあわせてローカライズすることの重要性についても強調した。

「Trelloの多言語化で私たちが学んだのは、単なる翻訳とローカライゼーションの間には大きなギャップが存在するということです。Trelloはブラジルとスペインの両国に進出しています。しかし、それぞれの国におけるローカライズ度合いは大きく異なります。ブラジルではアプリを現地の言葉に翻訳するだけでなく、現地で人を雇い、ブラジル人ユーザーと対話することを心がけました。その一方で、スペインではアプリを翻訳するだけでした。ローカライズ度合いの差が、その後の成長速度にどんな影響を及ぼすのかを観察したかったのです。結果、ブラジル市場での成長速度はスペインのそれを大きく上回りました」(Michael氏)

アプリのグローバル展開とローカライゼーションについてのMichael氏の意見を紹介したが、これを聞いて「グローバル展開か。自分にとっては数年後の話かな」と思った起業家諸君。そんなことはない。この記事の最後に、起業家に向けたMichael氏のアドバイスを紹介しておこう。

「今の時代にアプリを作るのであれば、最初からグローバル展開を視野にいれて作るべきだと思います。翻訳すれば世界中の人々に使ってもらえるような仕組みのものを作るべきなのです。今ではサービスの翻訳がとても簡単にできるようになりました。最初からグローバル展開を視野に入れてアプリを開発するのは簡単なことですが、後からそれを行うのは非常に難しいことなのです」(Michael氏)

スマホの“次”をにらみ、AIアシスタント「Clova」にかける思いをLINE舛田氏に聞く

渋谷・ヒカリエで開催中のTechCrunch Tokyo 2017。2日目となる17日午前には、LINE取締役CSMOの舛田淳氏が登壇。日本発のスマートスピーカー「Clova WAVE」とAIアシスタント「Clova」を軸にした、ポストスマホ時代のLINEの戦略について語った。聞き手はTechCrunch副編集長の岩本有平。

スマートスピーカーは世界では「Amazon Echo」が2000万台、「Goole Home」が700万台が普及。今年に入って、これらの先行製品が続々と日本上陸を発表し、秋から発売されているが、それらに先駆けていち早く、8月に先行体験版の形で発売されたのがClova WAVEだ。これまではウェブでの直販のみでの取り扱いだったが、本日から、家電量販店362店舗でも販売が開始されている。

LINEではかつて、スマートフォン時代の到来を見据え、“PCのことは忘れて”スマートフォンに賭ける方向性を打ち出してきた。LINEのユーザーは現在、月間7100万人。スマートフォンの普及も進み、日本では国民の2人に1人以上、世代によっては、もっと浸透している状況だ。ではその後の「ポストスマホ時代」はどうなっていくのか。

ポストスマホ時代に向けた進化の結果生まれたClova

「我々は、ポストスマートフォン時代は、さまざまな環境にデバイスが出てくる『IoT』と、そこから取れる膨大なデータをより良くしていくための『AI』の時代となると考えている」と舛田氏は話す。

AIと言っても幅広いが、LINEが目指すのは生活を支えるアシスタントを作っていこう、という部分だと語る舛田氏。「PCもスマホもGUIがあって、タイピングやタッチでさまざまな情報に触れるインターフェースとなっていた。これがポストスマートフォンの時代になると、ボイスユーザーインターフェース(Voice User Interface:VUI)になっていくだろう」(舛田氏)

舛田氏は「LINEとClovaでは全く別々のことをやっているように見えるかもしれないが、メッセンジャーからスマートポータル、そしてClovaへ移行するのは、我々にとっては正常な進化」と言う。「メッセンジャーで人と人の距離を縮め、スマートポータルで人とコンテンツの距離を縮めてきた。次は人とモノ、コンピューターを近づけていく。それがClovaだ」(舛田氏)

Clovaの核は、会話の制御やサービスのレコメンデーションを行う頭脳となる「Clova Brain」と、インプットとアウトプットをつかさどる耳や目などとなる「Clova Interface」で構成される。その核の部分とさまざまなデバイスやハードウェアをつなぐSDKが「Clova Interface Connect」、コンテンツやサービスをつなぐSDKがClova Extension Kitだ。これらすべてを合わせて、Clovaのプラットフォームが構成されている。現在はこれらSDKは、サードパーティーには公開されていないが、自社内での開発と提携パートナーによる開発に利用されている。

舛田氏は、外部との連携による開発について「外部連携で開発されるデバイスは重要だと考えている。LINE自身でハードウェアを開発することも大切で、つなぎ込みやスペック、体験の最適化は自社でやってみないと十分なプラットフォームにはならないだろう。ただ、それだけではチャレンジングなもの、面白いものはできない。『それホントに役に立つの?』というものが生まれた方が面白いだろう」と話している。「来年あたりから順次、提携先、そしてサードパーティーにもSDKを公開していくことになるだろう」(舛田氏)

データの先読みと学習がAIアシスタントの本質

LINEが、Clovaにとって重要と考えるのは「家」「クルマ」「ウェアラブル」の3つの領域。そのうちの「家」の領域に対応する製品第1弾として提供されたのが、スマートスピーカーのClova WAVEだ。舛田氏は「今、スマートスピーカーは非常に注目されている。海外では既に何千万台普及しているが、残念ながら日本では今年ようやく始まったばかり。このギャップをどうしていくのか、ということが日本の産業、インターネットにとって課題だと思っている」と言い、「それほど待っていられないという思いもあって、我々LINEとしては自分たちで作る、という判断をして、8月の先行版販売、10月の正式発売に至った」とClova WAVE販売の経緯を語った。

販売開始からこれまでの反響について、舛田氏に聞いたところ「一般の方、リテラシーがあまり高くない方にも使っていただきたい、というこちらの狙いと合致しているようだ」とのこと。「お子さまやシニアからもいろいろな意見をいただくことが多い。もっと使いやすく分かりやすくするためのフィードバックをもらっている」(舛田氏)

Clova WAVEでは、キーとなるフレーズを毎回発声しなくても、連続でAIと会話することを実現。音楽、赤外線リモコン、ニュースなど毎日の情報提供、ラジオ、人物や百科事典の内容を回答してくれる、といった機能が備わっている。ほか、経路検索やデリバリー、ショッピング、朗読、タクシーとの連携など「スマートスピーカーで使いたいと思われるような機能を搭載しようと順次開発を進めている」(舛田氏)とのことだ。

赤外線リモコンについては「ローテクだが日本の実情に合わせて搭載した」と舛田氏は言う。「現在は韓国と日本で展開しているが、それぞれの国に最適化されたものを考えていきたい。海外の先行製品と違って、バッテリーを積んでいるのもそうだ。海外ではそれぞれの部屋にスマートスピーカーを設置する、という使い方になるだろうが、一般的な日本の家庭では『リビングで使っていたけど、寝る時間になったらベッドルームに持っていく』となる。これはこの冬発売予定の『Clova Friends』でも踏襲している」(舛田氏)

また、カーライフへの浸透も積極的に進めていると舛田氏は説明。「トヨタ自動車と提携し、先日の東京モーターショー2017ではトヨタのブースで、自動車の中にClovaを実装して、どのようなカーライフになるのかということをデモンストレーションさせてもらった」(舛田氏)

そして重要領域の3点目「ウェアラブル」については、11月10日に発表されたばかりの「MARS」が紹介された。MARSはイヤホンとして装着できるClova搭載デバイス。紹介動画では、MARSを使って日本語と英語でリアルタイム翻訳を聞きながら会話する男女が登場する。舛田氏によれば「まだコンセプトモデルで発売時期も未定だが、このような形でウェアラブル対応も進めている」とのことだ。

舛田氏は「スマートスピーカーがClovaの本質ではない」と強調する。「スマートスピーカーから始まって、さまざまなものにClovaがつながり、さまざまな環境とClovaをどう溶け合わせていくかというのが、我々の目指す方向だ」(舛田氏)

「クラウド型のAIがあることで、先読みをしながら、さまざまなことをサポートしていくことができる」と舛田氏は言う。例えば、クルマで移動中のデータをもとに、帰宅すると暖房がついている、あるいは、朝少し遅く起きたというデータをもとに、通勤中や出社時に何か提案する、といったシーンを舛田氏が説明。「さまざまなポイントから取れるデータをベースにした学習と先読みがAIアシスタントの本質。我々はまだまだそこまでのレベルには達していないが、段階的にそこに向かって進んでいる」(舛田氏)

TC Tokyo 2017スタートアップバトル優勝は、ホテル向けの経営分析ツール「ホテル番付」だ!

11月16日、17日で開催中のTechCrunch Tokyo 2017。本日が2日目となるが、その目玉イベントはなんといっても「スタートアップバトル ファイナルラウンド」だ。

昨日、113社が応募した書類審査、そして20社が参加したファーストラウンドを通過した合計6社がファイナリストとして選ばれた。そして今日、ついに優勝企業が決まった。

初日から大盛況で始まったスタートアップバトルの勝者に輝いたのは、ホテル向け経営分析ツールの「ホテル番付」を提供する空だった。スクリーンの前にいるTechCrunch Japan読者も、ぜひ優勝した空に、そして出場したすべてのスタートアップに拍手を送って頂きたいと思う。それだけ彼らは必死に闘ったのだ。

現在、会場では表彰式が行なわれている。各スポンサー賞の受賞企業が決まり次第、この記事をアップデートしていく予定なので、後ほどチェックいただいきたい。

受賞企業一覧

株式会社空: 優勝

ホテル経営者向けに無料の経営分析ツール「ホテル番付」を開発。すでに運営中のホテル経営者向け料金設定サービス「MagicPrice」と合わせて、業界の価格最適化を進める。

株式会社東京ロケット: 審査員特別賞
建設業における職人の労働環境をITの力で解決する「助太刀くん」を運営。職人が職種と居住地を入力すれば条件にあった現場情報が届くほか、勤怠管理やペイメントサービスを提供する。

(アップデート中)

TC Tokyo2017、スタートアップバトルのファイナルラウンドに選ばれたのはこの6社!

本日より開催中のTechCrunch Tokyo 2017は大盛り上がりだ。観客のみなさんの中には“#tctokyo”のハッシュタグ付きでツイートをしてくれる方も多く、とても嬉しいばかり。

そして、Twitterでも会場でも大盛り上がりだったのが「スタートアップバトル」だ。新進気鋭のスタートアップ計20社が熱いピッチを繰り広げた。この中で明日のファイナルラウンドに進出できるのは6社のみ。

この記事では、先ほど会場で発表されたばかりのファイナリストたちと、ファイナルラウンドの審査員を紹介しよう。

ファイナリストの6社

株式会社東京ロケット
建設業における職人の労働環境をITの力で解決する「助太刀くん」を運営。職人が職種と居住地を入力すれば条件にあった現場情報が届くほか、勤怠管理やペイメントサービスを提供する。

株式会社justInCase
テクノロジーで保険の無駄を省くInsurTech。必要な時に必要なだけ加入できる保険サービス「justInCase」にて、新しい保険のかたちを提案。

株式会社scouty
AIヘッドハンティングサービス。技術系質問投稿サイト、イベント登録サイト、SNSなどから優れた人材の情報を自動的に収集し、最適なタイミングでヘッドハンティングができる。

株式会社トラス
建材をメーカー横断で比較検討できる、建築設計者施工者向けクラウドサービス「truss(トラス)」を運営。建材メーカー各社の製品を横断して、法規の準拠や性能、価格やデザインなどを元に建材選択ができる。

株式会社空
ホテル経営者向けに無料の経営分析ツール「ホテル番付」を開発。すでに運営中のホテル経営者向け料金設定サービス「MagicPrice」と合わせて、業界の価格最適化を進める。

株式会社Voicy
パソコンやスマートフォンのアプリ向けの音声放送プラットフォーム「Voicy」を提供。現在は約25の新聞や雑誌の情報を音声で流しており、AIスピーカーとの連携なども進める。

ファイナルラウンド審査員

WeWorkが語る未来の働き方――グローバル展開する彼らならではの強みとは

11月16日、17日で開催中のTechCrunch Tokyo 2017。このスタートアップの祭典でトップバッターとして登壇したのがWeWork日本代表のChris Hills氏だ。Chris Hill氏は2010年のWeWork創業直後に入社し、同社で初めてのCOOに就任した人物である。

ソフトバンクとのジョイントベンチャー設立によって日本に進出すると発表したことが大きなニュースとなったWeWork。「ついに上陸―、2018年始動のWeWork日本代表Chris Hillが語る新しい働き方と生活のムーブメント」と題したセッションで、Chris氏はWeWorkが考える新しい働き方について語ってくれた。

未来の働き方

「デザイナーや建築家に巨額のお金を払って建てたオフィスをもつのではなく、そこにあるチャンスやニーズに応じて柔軟にオフィスを構えるという未来がくる」とChirs氏は語る。

2010年の創業で今年7年目を迎えるWeWorkは現在、19カ国178地域でコワーキングスペースを展開している。これまでにWeWorkメンバーに登録したユーザーは世界中で16万人にものぼる。それだけのユーザーから支持を集める理由について彼はこう語る。

「WeWorkでは、そこに集まるスタートアップと大企業の間にコラボレーションが生まれるだけでなく、大企業の内部の人々とのあいだに存在するインターナル・バリアも取っ払うことができる」(Chris氏)

Chris氏はメンバー同士の間でコラボレーションとイノベーションが実際に生まれた例についても話してくれた。その概要はこうだ。

オランダに夫婦で花屋を営んでいるWeWorkメンバーがいた。彼らはアメリカでビジネスを展開しようと考えアメリカにやってきたが、花屋である彼らは全米の家庭にチューリップを届ける方法を知らなかった。そこで彼らは、WeWorkのコミュニティアプリのなかで自分たちがチューリップの宅配事業を展開したいことを伝え、一方でディストリビューションについての知識やアイデアが足りないので誰か助けて欲しいと呼びかけた。

すると、世界中にいるWeWorkメンバーたちが彼らの呼びかけに答えた。チューリップを届けて配達依頼まで行うアプリを作ると申し出たのだ。その結果、そのオランダ人夫婦はアメリカに移住して約3ヶ月程でビジネスを作り上げることに成功した。

グローバルコミュニティメンバーシップ

オランダ人夫婦の話は、グローバルで展開するWeWorkならではの強みを表す良い例だろう。Chris氏自身もWeWorkのことをただのコワーキングスペースではなく、「Global Community Membership」と呼ぶ。WeWorkのメンバーになれば、一定の場所に留まって仕事をする必要はなく、世界中に散らばるオフィスに行き“Plug in & Play”で仕事ができる。メンバーにとって、世界中が仕事場になるのだ。

グローバル運営で培ったオフィス効率化のノウハウもWeWorkの強みの1つだ。「何が重要なのか。何をすれば効率化できるのか。メンバーは何時にオフィスに来ることが多いのか。何人が高級コーヒーを飲むのか。何人がコーヒーではなく紅茶を飲むのか。そういったことを知ることで、WeWorkのオフィスはどんどん効率的なものになっている」とChris氏は言う。

2018年、WeWorkのグローバル展開網に日本が加わる。WeWrokは2018年1月に1オフィスを開設し、つづく4月には銀座と新橋に2店舗を開設する予定だ。

明日から開催「TechCrunch Tokyo 2017」完全版プログラム

スタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2017」は、いよいよ明日から開催する。今年も例年通り、渋谷ヒカリエ9階のヒカリエホールが会場となっている。メインホール(Aホール)とBホールのTC Lounge、それぞれ11月16日、17日の2日間に渡る全てのプログラムをここにまとめたのでチェックしてみてほしい。

11月16日(木)A HALL

9:00-9:10 TechCrunch Japan ご挨拶
9:10-9:40 Keynote Session「ついに日本上陸―、2018年始動のWeWork日本代表Chris Hillが語る新しい働き方と生活のムーブメント」
Chris Hill氏(WeWork Japan 代表取締役)
10:00-11:10 Startup Battle
ファーストラウンド:Aグループ第1ブロック(5社)、第2ブロック(5社)
11:20-11:40 Fireside Chat「「スマート」から「コネクテッド」へ、さくらインターネットが考える真のIoT」
小笠原治氏(さくらインターネット フェロー/ABBALab 代表取締役)
sponsored by さくらインターネット
11:40-12:00 Fireside Chat「「カンバン方式」のアプリ化でタスク管理の定番となったTrelloの軌跡」
Michael Pryor氏(Head of Product, Trello at Atlassian)
12:10-12:40 Luncheon Session「Windows MRとAIが切り開く未来の多様な働き方」
安納順一氏(日本マイクロソフト テクニカル エバンジェリズム マネージャー)
sponsored by Microsoft
12:40-13:00 Product Update
小児科オンライン / DIGGLE
13:10-13:40 Guest Session 「いよいよ日本上陸、Google Home搭載の会話型AIの未来」
Brad Abrams氏 (Google Assistant Group Product Manager)
13:50-14:30 Panel Discussion「胎動する日本のライブコマース、その勝算を先駆者に聞く」
伊豫健夫氏(メルカリ 執行役員)
新井拓郎氏(Candee 代表取締役副社長 CCO)
鶴岡裕太氏(BASE 代表取締役CEO)
14:40-15:00 Fireside Chat「“モノを瞬時に現金化” 注目アプリ「CASH」、連続起業家の新たな挑戦」
光本勇介氏(バンク代表取締役CEO)
15:10-15:40 Guest Session「ブロックチェーン技術で「信頼」を再考する(Rethinking Trust with Blockchain Technology)」
Samson Mow氏 (Blockstream CSO)
15:50-16:20 Guest Session 「国際送金のヒドさに憤慨して起業―、英Fintechユニコーン創業ストーリー」
Taavet Hinrikus氏 (TransferWise Co-Founder and Chair)
16:30-17:40 Startup Battle
ファーストラウンド:Bグループ第1ブロック(5社)、第2ブロック(5社)
17:50-18:15 Fireside Chat「創業18カ月でFacebookが買収、YC卒の連続起業家が語るボットAIの未来」
Alexandre Lebrun氏 (Artificial Intelligence at Facebook, Co-Founder of Wit.ai)
宮田拓弥氏(Scrum Ventures 創業者/ジェネラルパートナー)
18:25-18:50 Fireside Chat「Drivemodeが見つめる近未来のクルマとヒトの関係」
上田北斗氏(米Drivemode共同創業者)
19:00-19:10 Startup Battle
ファイナル出場スタートアップ発表(6社)
19:20-21:00 TechCrunch Tokyo CTO Night 2017
powered by AWS

11月16日(木)B HALL  “TC Lounge”

12:00-12:30 Trello(Trello at Atlassian)
12:30-13:00 Refcome(リフカム)
13:00-13:30 AI Travel(AIトラベル)
13:30-14:00 isaax(XSHELL)
14:00-14:30 電玉(電玉)
14:30-15:00 Live Shop!(Candee)
15:00-15:30 CASH(バンク)
15:30-16:00 Drivemode(Drivemode)
16:00-16:30 Blockstream(Blockstream)

11月17日(金)A HALL

9:00-9:10 TechCrunch Japan ご挨拶
9:10-9:50 Keynote Session 「IoTプラットフォームで急成長、KDDIによる大型M&Aの背景と今後の展望を聞く」
玉川憲氏(ソラコム共同創業者)
9:50-10:10 Fireside Chat「スタートアップが陥りがちな採用戦略の落とし穴」
寺田輝之氏(エン・ジャパン 執行役員 デジタルプロダクト開発本部長)
sponsored by エン・ジャパン
10:20-10:50 Fireside Chat「失敗から出たホームラン「Slack」が時代の寵児となったワケ」
Cal Henderson氏 (Slack Co-Founder/CTO)
前田ヒロ氏(BEENEXT Managing Partner)
10:50-11:30 Keynote Session「高品質Q&Aサイト「Quora」で世界中の知識を共有、Facebook元CTOの挑戦」
Adam D’Angelo氏 (Quora Co-Founder/CEO)
Serkan Toto氏(Kantan Games CEO)
11:30-11:50 Fireside Chat「AIアシスタント「Clova」で切り開く、ポストスマホの時代」
舛田淳氏(LINE取締役CSMO)
12:00-12:40 Luncheon Session「IBM Watsonとスタートアップ企業のオープンイノベーション事例」
浜宮真輔氏(日本アイ・ビー・エム BlueHub担当)
田中良介氏(メトロエンジン 代表取締役CEO)
sponsored by IBM
12:40-13:10 Product Update
FOLIO / WHILL / スペースマーケット
13:20-14:10 Panel Discussion「ベンチャーキャピタリストと個人投資家が語る、国内スタートアップ投資の最新事情」
村田祐介氏 (インキュベイトファンド 代表パートナー)
千葉功太郎氏 (投資家)
14:20-14:40 Fireside Chat「PwCが自分たちで手を動かして事業開発をしている理由」
野口功一氏(PwCコンサルティング、パートナー/Global Innovation Factoryリーダー)
sponsored by PwC Japan
14:40-15:10 Fireside Chat「家計簿からクラウド会計まで、今年IPOしたFintechスタートアップ創業者に聞く」
辻庸介氏(マネーフォワード共同創業者/代表取締役社長CEO)
15:20-15:50 Fireside Chat「加速するインバウンド、KDDI傘下となったReluxの展望」
篠塚孝哉氏(Loco Partners創業者/代表取締役)
16:00-16:20 Product Update
Scouter / Smooz
16:30-17:40 Startup Battle
ファイナルラウンド(6社)
17:40-18:00 Product Update
タウンWifi / Spectee
18:10-18:40 Startup Battle 表彰式
18:40-20:00 Meetup

11月17日(金) B HALL “TC Lounge”

12:00-12:30 Clova(LINE)
12:30-13:00 SORACOM(ソラコム)
13:00-13:30 Quora(Quora)
13:30-14:00 Slack(Slack Technologies)
14:00-14:30 Hacarus(ハカルス)
14:30-15:00 Relux(Loco Partners)
15:00-15:30 chatbook.ai(ヘクト)
15:30-16:00 Mobingi SaaS(モビンギ)
16:00-16:30 TeamHub(Link Sports)

会場図

チケットはイベント当日まで販売しているが、興味がある方はお早めに購入いただきたい。5枚以上の申し込みで1人あたり半額の2万円(税込)で購入することができる団体割引も用意している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。

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続くファンド組成、エンジェル台頭、ハイテク領域への注目——2017年の投資動向をTC Tokyoで学ぶ

左からインキュベイトファンド 代表パートナーの村田祐介氏、投資家の千葉功太郎氏

いよいよ今週11月16〜17日開催と迫った「TechCrunch Tokyo2017」。まだ紹介できていなかったセッションをここで紹介しよう。2日目、11月17日の午後には、インキュベイトファンド 代表パートナーの村田祐介氏と、投資家の千葉功太郎氏によるセッション「ベンチャーキャピタリストと個人投資家が語る、国内スタートアップ投資の最新事情」を開催する予定だ。

村田氏は、独立系VCでベンチャーキャピタリストとして投資を行うかたわら、一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)企画部の部長としてVC業界の動向を調査。昨年登壇頂いたセッションでもその調査資料をベースに日本のスタートアップ投資の動向が語ってくれた。今回も同様の資料を中心に、この1年の投資動向について語ってもらう予定だ。僕の記憶しているところでは、今年は昨年に続いて独立系ベンチャーキャピタルの大型新ファンドが複数組成されているほか、研究開発が先行するハイテク領域の投資が進んでいる認識だ。はたしてデータで見るとどのようになっているのだろうか。

一昨年のTechCrunch Tokyoではコロプラ取締役副社長として活動するかたわらでのエンジェル投資活動について語ってくれた千葉氏。その後コロプラを離れ、エンジェル投資家として個人でスタートアップに対して投資を行いつつ、「千葉道場」と呼ぶメンタリング合宿等を開催するほか、各種VCファンドのLP、ドローン特化ファンドの「Drone Fund」のジェネラルパートナーなどでスタートアップの投資に関わっている。

先日千葉氏が「(前回の登壇から)2年の変化」として語ったのは、「エンジェル投資家」の認知の拡大。確かにこの数年でイグジットした経営者らがシード期のスタートアップに投資を行うことは増えており、すでにエコシステに組み込まれているといっても過言ではない。実際TechCrunchの記事でも、「エンジェル投資家の●●氏より資金を調達した」なんてニュースが増えてきている。千葉氏には、自身の経験を中心にエンジェル投資家が担うエコシステムがどう変化しているかを語って頂く予定だ。

チケットは引き続き販売中だ。創業3年未満のスタートアップ企業の従業員向けのチケットは1万5000円、5枚以上の申し込みで1人あたり半額の2万円で購入できる団体割引も用意している。

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今週開催のTechCrunch Tokyoに、WeWork日本代表Chris Hill氏が登壇

WeWork Japan代表Chris Hill氏

今週の11月16日、17日に開催が迫ったテック・イベント「TechCrunch Tokyo 2017」にコワーキングスペース「WeWork」の日本代表Chris Hill(クリス・ヒル)氏に登壇いただけることとなったのでお知らせしたい。Chris Hill氏は2010年のWeWork創業直後に入社し、同社で初めてのCOOに就任した人物でもある。

TechCrunch Japan読者なら、ニューヨーク発の「WeWork」についてはすでにご存知だろう。日本にもソフトバンクとのジョイントベンチャー設立によって進出するといったニュースが流れたときには、多くの人が注目したことと思う。日本以外にも、WeWork China、WeWork Pacificを設立してアジア圏に進出しつつある。WeWorkのページによれば、東京では新橋、銀座、六本木一丁目の3拠点がオープン予定となっている。

WeWorkは2010年創業で7年目。現在19カ国178地域にわたり16万人以上のメンバーを擁している。2017年にTechCrunchが行ったイベント「Disrupt NY」におけるインタビューのなかで共同創業者・CEOのAdam Neumann氏は、米国のWeWorkの利用者の平均月額単価は650ドルで、利益率は40%と高収益だと明かしている。いつでも利益を出せるビジネスだが、いまはブレークイーブンより少し上程度で投資、拡大路線を取っているのだという。

WeWorkのオフィスは以下のような感じだ。これはニューヨーク、上海などの例。世界各拠点のWeWorkオフィスの一覧と写真は、このページから見れる

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それにしてもコワーキングスペースで、この爆発的な成長は一体なんなのか? 美しく特徴的なオフィススペースというのは別に今は珍しいことではないし、オープンオフィスというのも良くある。いったいWeWorkの破竹の勢いの背後にある秘密は何なのか?

従来のコワーキングスペースとの外形的な違いは、例えば「WeWorkはテクノロジー企業なのか、不動産業なのか?」という質問が出てくることから分かる。この問いに対してNeumann氏は建築家や内装のデザイナーよりもエンジニアのほうが数が多く、「WeOS」と呼ぶサービスインフラがあることがWeWorkとほかのコワーキングの違いの1つだと答えている。WeOSは入居者の入出管理や会議室予約などができるメンバー向けアプリだが、より本質的なのはコミュニティーを作る機能にあるという。人と人が繋がったり、タレントやプロフェッショナルを探す、何かをやる仲間を探すといったこともできるそうだ。

コワーキングスペースといえば、フリーランサーやスモールビジネスの人々がオープンな共有空間で仕事をしている様子を思い浮かべるが、実際にはWeWorkの90%はいわゆるプライバシーのあるオフィス。残り10%がオープンスペースで、Neumann氏はオープンオフィスは過剰評価されているとも話している。ただ、そのオープンスペースで起こる人のインタラクションのデザインはテクノロジーを使って分析、最適化しているのだという。どのピンポンテーブルが誰も使っていないか、どのゲームがいちばん人々がエンゲージしているかといったことを良く分かってるのだそうだ。WeWorkはワーキングスペースのオーナー、オペレーター、クライアント管理者として機能するエンド・ツー・エンドのプロダクトを提供する数少ない企業で、調達や設計、建物管理ができる独自の技術データシステムを開発しているという。

もともとクリエイターなどのフリーランスやスモールチーム、起業家などを中心にユーザーを増やしてきたWeWorkだが、昨年からは法人向けニーズに対応するためにプロダクトの多様化も図っている。すでにFortune 500の企業の10%以上がWeWorkのメンバーだという。オープンな環境とコミュニティーで人と人の交流をはかり、イノベーションや価値創造を促進するプラットフォームとして、日本でも大企業から注目を集めるかもしれない。

TechCrunch Tokyoに登壇するChris Hill氏はWeWork創業直後に入社し、COOに就任。在任期間中に地域社会および運営のグローバル責任者として、そして最近ではGlobal Chief Community Officerなどを歴任。多くのプロセスや運用フレームワークも構築し、それらに関わる戦略を策定するなどで実績を挙げているそうだ。直近2年は海外で多くをすごし、アメリカ以外の国において同社のブランドを拡大することにも成功しているという。

WeWorkの拠点は国によって言語や服装、コーヒー文化などに異なる点があるものの、彼らが「We世代」と呼ぶ人々はどこの国も同じという。来年初頭にも正式にスタートする東京のWeWorkの拠点からは、どういうコミュニティーが生まれ、世界のWe世代とどう繋がっていくのだろうか。Chris Hill氏には、WeWorkがほかの「コワーキングスペース」と何が違うのか、どういう文化を醸成しようとしているのかを語っていただけるものと思う。

TechCrunch Tokyoのチケットはイベント開催まで販売中だ。5枚以上の申し込みで1人あたり半額の2万円(税込)で購入することができる団体割引も用意している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。

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調達額は300億円以上、TC Tokyoバトル卒業生の「今まで」と「これから」を聞く

11月16日、17日に開催されるスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2017」における注目のプログラムをまた1つ紹介しよう。

TechCrunch Tokyoでは毎年、創業3年目以内のスタートアップたちがしのぎを削りあう「スタートアップバトル」が開かれる。このバトルイベントに登壇したスタートアップ企業はこれまでに100社を超え、それらの企業の累計調達額は300億円以上だ。

今日紹介する「プロダクトアップデート」は、そんな卒業生たちにもう1度渋谷ヒカリエに集まっていただき、登壇してから現在までのアップデートを聞くというものだ。昨年に引き続き初日、2日目とも開催する予定で、総勢9人の起業家に話を聞けることになった。

登壇していただく起業家は以下の通りだ:

11月16日

11月17日

  • テーマ投資型の資産運用プラットフォーム「FOLIO」の甲斐真一郎氏
  • パーソナルモビリティ「WHILL」の杉江理氏
  • レンタルスペース予約「スペースマーケット」の重松大輔氏
  • Wi-Fiスポット自動接続アプリ「タウンWifi」の荻田剛大氏
  • 報道機関向け情報発信サービス「Spectee」の村上建治郎氏
  • ソーシャルヘッドハンティング「SCOUTER」の中嶋汰朗氏
  • 次世代スマホブラウザ「Smooz」の加藤雄一氏

ぜひ会場に足を運んでいただき、これら注目スタートアップの今の姿、そして将来のストーリーについて耳を傾けてほしい。

チケットは絶賛販売中だ。5枚以上の申し込みで1人あたり半額の2万円(税込)で購入することができる団体割引も用意している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。

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TC Tokyo、展示会場のミニステージでは国内外スタートアップのプロダクト紹介セッションを開催

来週の11月16日(木)、17日(金)に渋谷ヒカリエでスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2017」を開催する。ホールAのメインセッションのプログラムはご案内済みだが、ホールBの展示会場にもコンテンツを用意している。ホールBは、ホールA横のスタートアップデモブースが立ち並ぶ通路の先にある小さめのホールのことだ。

ホールB内にもデモブースがところ狭しと並んでいるが、ホール奥中央に「TC Lounge」と呼ぶミニステージを据えた。このTC Loungeでのセッションは「プロダクトショーケース」と銘打ち、各企業が自社プロダクトの紹介や使い方を説明する場となっている。12時から16時半までの間、30分ごとにかわるがわる国内外のスタートアップが登壇し、プロダクト紹介を行う予定だ。

海外からはタスク管理ツールTrelloやチャットサービスSlack、国内スタートアップとしてはライブコマースアプリ「Live Shop!」を手がけるCandeeや高級宿泊予約サイト「Relux」なども登壇する。気になっていたプロダクトについて聞いたり、今使っているプロダクトをさらに使いこなすにはどうしたら良いかも聞けるセッションとなっている。ぜひふるって参加してほしい。

ホールB、TC Lounge 「プロダクトショーケース」のスケジュールは以下の通りだ。

11月16日(木)

12:00-12:30 Trello
12:30-13:00 Refcome
13:00-13:30 AI Travel
13:30-14:00 XSHELL
14:00-14:30 電玉
14:30-15:00 Candee
15:00-15:30 BANK
15:30-16:00 Drivemode
16:00-16:30 Blockstream

11月17日(金)

12:00-12:30 LINE
12:30-13:00 ソラコム
13:00-13:30 Quora
13:30-14:00 Slack
14:00-14:30 ハカルス
14:30-15:00 Relux
15:00-15:30 ヘクト
15:30-16:00 モビンギ
16:00-16:30 LinkSports

チケットは絶賛販売中だ。5枚以上の申し込みで1人あたり半額の2万円(税込)で購入することができる団体割引も用意している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。

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TechCrunch Tokyo 2017で参加者全員が使える交流ツール「CommunityHub」を使い倒そう!

いよいよ来週、11月16日と17日にスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2017」を渋谷ヒカリエで開催する。

今年も国内外の起業家を招いたキーノートセッションや創業3年未満のスタートアップ企業によるピッチコンテスト「スタートアップバトル」などの企画を用意している。もちろんこうしたコンテンツも楽しんでもらいたいが、イベントに参加する方には、リアルの場だからこそ生まれる交流にも積極的に参加してほしいと思う。TechCrunch Tokyoにはスタートアップのみならず、投資家、CVC、スタートアップとの提携や出資を考える大企業の担当者など、スタートアップに関わるあらゆる人たちが集まる場となっている。TechCrunch Tokyoでの出会いがきっかけで資金調達や顧客獲得につながった、スタートアップにジョインした、起業仲間が見つかったといった声も聞いていて、嬉しい限りだ。

今年もこうした参加者同士の交流を活性化するため、TechCrunch Tokyoでは参加者交流ツール「CommunityHub」を導入した。CommunityHubはEventHubが提供するサービスで、登録ユーザーは他の参加者のプロフィールを検索し、ミーティングリクエストを送ることができるものだ。

チケット購入者の方々には、近日中にCommunityHubへの登録案内が届く。案内が届いたら、CommunityHubで自身のプロフィール情報を入力してほしい。来週頭には、他の参加者が記入したプロフィールを検索したり、ミーティングリクエストを送ったりできる機能を開放する予定だ。

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  2. CommunityHub_2

  3. CommunityHub_3

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互いににミーティングを承認すると、チャットルームが開くので、そこでミーティングする時間と場所を話し合ってもらいたい。TechCrunch Tokyo 2017の会場内にはCommunityHub用のミーティングスペースを用意している。ミーティング時にはそこを活用してほしい。ミーティングスペースは会場入って右に進んだところに設置予定だ。

TechCrunch Tokyo 2017のチケットは絶賛販売中だ。5枚以上の申し込みで1人あたり半額の2万円(税込)で購入することができる団体割引も用意している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。

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シリコンバレーのガレージで起業、米Drivemode共同創業者に聞くクルマとヒトの間にあるべきもの

もう来週の木金、11月16日、17日に開催が迫ったテックイベント「TechCrunch Tokyo 2017」の登壇者をお知らせしたい。2014年にシリコンバレーのガレージで創業したクルマ関連スタートアップDrivemodeの共同創業者の上田北斗氏だ。

Drivemodeは車内でスマホを使うためのUIを開発している。「車内でスマホを使う」というと、危険だし止めるべきと考える人が多いだろう。それはその通り。運転中のスマホ操作による事故は日本でも米国でも問題となっている。

Drivemodeが挑戦しているのは、以下の動画にあるように、いかにドライバーの認知的負荷を下げて運転しながらスマホアプリが使えるかを徹底して追求すること。Google Playから入手可能なこのAndroidアプリは、車内での利用に最も人気のあるアプリの1つだ。すでに100万ダウンロードを超え、アクティブな利用者は180カ国に広がっている。アプリは、ドライバーの邪魔にならないように、スマートフォンのさまざまな機能、例えばナビゲーション、メッセージング、通話などを声や簡単なジェスチャーでアクセスできるようにデザインされている。

Drivemodeの上田氏は、既存の大手企業が挑戦できない領域だからこそ、スタートアップ企業がやるべきだし、勝ち目があるのだとぼくに話してくれた。現実問題としてスマホのながら運転は法で禁じようが、良いスローガンを考えようが、なくならない。かといって大手企業がこの課題に取り組むことは難しい。企業イメージや一般社会からの反発が必至だからだ。

スタートアップ企業としてDrivemodeは2017年3月にシリーズAラウンドで650万ドル(約7.4億円)の資金調達を行っている。このとき、車載機器サプライヤーのパナソニックが戦略的投資家としてラウンドをリードしているほか、Innovative Venture Fund Investment、みやこキャピタルに加えて保険会社の三井住友海上(VC子会社経由)も投資家の顔ぶれに含まれている。

Drivemodeの共同創業者の上田北斗氏

上田氏はロサンゼルス生まれの日系アメリカ人。日本のコンテンツを見て育ったそうで、少し話をしただけだと日本人と信じて疑わない感じだ。ワシントン大学で機械工学を学び、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得。Drivemode創業前の2011年からはテスラ・モーターズでModel Sセダンのローンチ・マネージャーとして活躍していた経歴をもつ。シリコンバレーのCarTech動向には断然明るい人物だし、イーロン・マスクのそばで仕事をしていたことから、イベントでは「マスク伝説」もちょっとご披露いただけそうだ。

ぼくが聞いたなかで感銘を受けたのは、前にせり出すテスラのドアハンドル機構の話。工学的に実装ハードルが高く、現場のエンジニアが実現コストに対して提供価値が見合わないと匙を投げたくなっていたとき、こうしたハンドルこそがドライバー(ヒト)とクルマのユーザーインターフェイスで、ここは一切妥協してはいけないのだと言い張ったという話だ。

なんだ、そんなことかというヒトもいるかもしれない。もしかしたらDrivemodeが取り組む領域も「なんだUIか」というヒトもいるかもしれない。でも、「そんなことか」と鼻で笑う態度こそ、テレビの本分は画質なのだとハードウェアばかりにこだわって、ソフトウェアやサービス、UXを軽視した日本のテレビ産業と業界、あるいはケータイ業界の失敗の根底にある態度だったのではないだろうか。クルマはいま、複雑で高度なすり合わせを必要とし、日本企業群が得意だったアナログなマニュファクチャリングから、デジタル化され、モジュール化され、イノベーションや要素技術を採り入れて統合するソフトウェア産業に近いものに生まれ変わろうとしているようにぼくには思えてならない。

ヒトとクルマの間にあるべきもの、あるいは今後車内空間にあるべきものを考え続け、作り続けているDrivemodeの上田氏。スタートアップと大手企業、日本と米国、テクノロジーとビジネスと多面的にクルマの未来を見つめる上田氏の話をぜひTechCrunch Tokyoに聞きに来ていただければと思う。チケットは絶賛販売中だ。5枚以上の申し込みで1人あたり半額の2万円(税込)で購入することができる団体割引も用意している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。

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注目集まる「ライブコマース」の展望は? メルカリ、Candee、BASEがTC Tokyoで語る

左からメルカリ執行役員の伊豫健夫氏、Candee代表取締役副社長CCOの新井拓郎氏、BASE 代表取締役CEOの鶴岡裕太氏

いよいよ来週に迫った「TechCrunch Tokyo 2017」だが、ここでまた新たなセッションの紹介をしたい。初日11月16日午後のパネルディスカッションのテーマは日本でもいよいよサービスが立ち上がってきた「ライブコマース」だ。

ライブコマースとは、著名人やインフルエンサーから一般ユーザーまで、スマートフォンでライブストリーミングを行い、その配信を通じてモノを売るECのことだ。すでにライブコマースが人気を集めている中国では、2015年前後にライブ配信プラットフォームが勃興。2016年には中国最大級ECサイトの「淘宝網(Taobao/タオバオ)」もライブコマースプラットフォームの「淘宝直播」をスタート。ここでは2時間で約3億円の商品を売り上げた配信者も登場したといった事例も生まれている。

では日本の状況を見てみると、まだまだサービスは黎明期。「ニコニコ動画」や「ツイキャス(TwitCasting)」のようなライブ配信プラットフォームはすでにあれど、「配信」と「コマース」はほとんど分断されている状態で、ライブコマースに特化したプラットフォームが立ち上がったのはほぼ最近のこと。今回のTechCrunch Tokyoでは、メルカリ執行役員の伊豫健夫氏、Candee代表取締役副社長CCOの新井拓郎氏、BASE 代表取締役CEOの鶴岡裕太氏に登壇して頂き、それぞれの戦略や展望を語ってもらう予定だ。

メルカリは7月、フリマアプリの「メルカリ」上に「メルカリチャンネル」をローンチ。当初は芸能人やタレントがライブ配信を行っていたが、現在では一部のユーザーに限定してその機能を開放している。アプリ上に表示されたランキングを見ると、すでに1週間で2000点以上のアイテムを販売するユーザーも出ているようだ。

メルカリよりひと月早い6月にライブコマースアプリ「Live Shop!」をローンチしたのがCandeeだ。映像、音楽領域の出身者も多い同社は、会社設立から2年間で1300本以上の動画の制作・配信を請け負ってきた。その中でもライブ動画は500本以上ということで、そんな制作・配信ノウハウやインフルエンサーのネットワークを生かした番組作りが特長だ。また、コマースに関しては、アプリ内での決済から商品まで、自社で一気通貫で提供するという。

9月に入ってライブコマースの機能をスタートさせたのはEコマースプラットフォーム「BASE」を提供するBASEだ。BASEのアプリ上で、時間を限定するかたちで店舗向けにライブコマース機能を提供している。BASEにはこれまで40万店舗以上が出店しているが、その店舗をフォローしていれば、店舗運営者による配信を閲覧できるという仕組みだ。インフルエンサーの起用なども行うが、店舗とユーザーのコミュニケーションのためのツールというところに主眼を置いているように見える。

3社によるパネルディスカッションのほか、米ユニコーン企業のスピーチや国内気鋭スタートアップのプレゼンテーションなどが盛りだくさんのTechCrunch Tokyo、チケットは絶賛販売中だ。5枚以上の申し込みで1人あたり半額の2万円(税込)で購入することができる団体割引も用意している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。

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