【コラム】前代未聞のペースでインドにユニコーン企業を生み出しているTiger Global

過去15年間、世界第2位のインターネット市場であるインドのスタートアップ企業を世界的に有名にしたとして名高い、ある投資会社の最近の勢いは、前代未聞のペースで地元の若い企業をユニコーン企業へと変貌させている。

Tiger Global(タイガー・グローバル)は、2021年中にインドのスタートアップ企業と25件以上の契約を締結する(一部は締結済み)。これらの投資のうち、約10件はこれまでに公表されており、残りは1000万ドル(約11億円)から1億ドル(約109億円)を超えるものまで、今後数週間から数カ月の間に準備が進められる。

ニューヨークに本社を持つ同社は、最近67億ドル(約7297億円)のファンドを完了し、先週、ソーシャルネットワークサービスを運営するShareChat(シェアチャット)ビジネスメッセージングプラットフォームのGupshup(ガップシャップ)投資アプリのGroww(グロウ)への投資を主導し、フィンテックアプリのCREDのラウンドにも参加して、これらのスタートアップ企業がユニコーンとなるのを支援した。

関連記事
Tiger Globalが同社最大のベンチャーファンドを約7351億円でクローズ
顧客との会話型エクスペリエンスを支えるメッセージプラットフォームGupshupが約109億円調達しユニコーンに
インドのミレニアル世代向け投資アプリのGrowwが91.2億円調達、新たなユニコーンに
インドのハイエンド層にフォーカスしたクレジットカードを提供するCREDが新規ラウンドで評価額2415億円に

(インドでの報道によると、Tiger Globalは新しいファンドのうち30億ドル、約3267億円)をインドのスタートアップ企業に投資する予定だと推測されているが、TechCrunchでは、この30億ドルという数字は的外れだと考える)

Tiger Globalは、2021年初めにユニコーン企業となったインドのスタートアップ企業であるInfra.Market(インフラ・マーケット)とInnovaccer(イノヴァッサー)にも投資している(インドでは2020年11件、2019年には6件のユニコーン企業が誕生したが、2021年はすでに10件のユニコーン企業が誕生している。Tiger Globalはインドのユニコーン企業47社のうち20社以上に投資している)。

関連記事:小規模メーカーと大手建設業者を結ぶInfra.Marketが106億円調達、インドの最新ユニコーンに

また、支援の発展段階にあるのは、先週ユニコーン企業になった電子薬局のPharmEasy(ファームイージー)、フィンテックのClearTax(クリアタックス、評価額10億ドル、約1090億円の可能性)、暗号資産取引所のCoinSwitch(コインスイッチ)、保険会社のPlum(プラム)、B2BマーケットプレイスのMoglix(モグリックス、評価額10億ドル、約1090億円以上)、ソーシャル企業のKutumb(カタム)とKoo(クー、評価額1億ドル(約109億円)以上、CapTable調べ)、ヘルステック企業のPristyn Care(プリスティンケア)、B2B電子商取引のBzaar(バザー)、アグリテックのReshamandi(レシャマンディ)などが含まれていると関係者は話す(一部の案件はまだクローズしていないので、条件が変わる可能性もある)。

関連記事:Tiger Globalがインドの若いSNSに約190億円規模の投資を検討中

2021年、あるいはこれまでに、インドの企業にこれほどの規模の投資をした企業は他にない。この大盤振る舞いには、何十人ものベンチャー企業の創業者がTiger Globalのパートナーを紹介してもらおうと躍起になっているほどだ。

Tiger Globalのインドの若い企業への信頼は、過去にさかのぼる。2009年のFlipkart(フリップカート)と2012年のOla(オラ)への投資は、両社がインドの大手投資家からの資金調達に苦戦していた時期に、米国のTiger Globalがインドで事業を展開する際のリスク許容度を示すものだった。

元パートナーのLee Fixel(リー・フィクセル)氏の下で、Tiger Globalは、オンライン食料品店のGrofers(グローファーズ)、物流ベンチャーのDelivery(デリバリー)、ファッションEコマースのMyntra(ミントラ)、フィードリーダーのInShorts(インショーツ)、電動スクーターメーカーのAther Energy(アザーエナジー)、音楽ストリーミングサービスのSaavn(サーブン)、フィンテックのRazorpay(レーザーペイ)、ウェブプロデューサーのTVF(ティーブイエフ)など、若い企業を支援してきた。

何人かのベンチャー企業の創業者たちは、匿名を条件にTiger Globalからの投資を振り返り、Tigerの投資は最初の連絡から2~3週間で完了したと話す。

しかし、2019年の幹部交代でフィクセル氏が離脱した同社は、インドにおける投資のペースを落とし、一時的に主にSaaS系ベンチャー企業にフォーカスを移した。

Tiger Globalとともにいくつかのベンチャー企業に投資してきたあるベンチャー投資家は、率直な意見を述べるために匿名を条件に「最近の状況は変わり、Tiger Globalはこれまで以上に積極的になっている」と語る。

後期段階の企業への投資を続けている同社は、設立数カ月のベンチャー企業への投資機会も模索しているという。

上述の投資家は、Tiger Globalの新しい戦略のもう1つの例としてInfra.Marketを挙げた。Tiger Globalは2019年、まだ設立2年目だったB2BベンチャーであるInfra.Marketに最初に投資をしている。

「Tiger Globalはそれから、このスタートアップ企業が成長できるかどうか、そして他の投資家から投資を引き出せるかを見極めたいと考えました。その年12月、Infra.Marketが約2億ドル(約218億円)の資金を調達すると、その2カ月後、Tiger Globalは評価額10億ドル(約1090億円)で新たなラウンドを完了しました」とその投資家は述べる。

スタートアップ企業にとってはすばらしいことである一方、一部の投資家にとっては課題となっていると2人の投資家が話す。

彼らによれば、Tiger Globalが、業界の他社が太刀打ちできないレベルでスタートアップ企業を評価し、その後のラウンドを主導しない場合、次の資金調達ラウンドに投資できる企業は非常に少なくなるとのこと。

非公開のフォーラムや最近のClubhouseでは、多くの投資家が「一部の投資家が共有している最近の楽観的な見通しが実現するのは難しい」と警告している。ある投資家は「Tiger Globalは2~3年周期で、インドで非常に楽観的な投資を行います。問題は、状況が楽観的でないときに、我々がツケを払う羽目になっていることです」と語った。

「Scott Shleifer(スコット・シュライファー、Tiger Globalのパートナー、上の写真)の下では、状況は変わるかもしれない」と、別の投資家は付け加える。Tiger Globalの最近のインド国外における活動を見ると、いくつかの市場ではより積極的になっているように見える。

Steadview(ステッドビュー)、Prosus Ventures(プロサスベンチャーズ)、Falcon Edge Capital(ファルコンエッジキャピタル)、さらにはGoogle(グーグル)などの企業が、世界第2位の人口を誇るインドへの投資戦略を強化している中で、米国企業であるTiger Globalもインドへの関心を高めている(ある投資家は、最近のClubhouseのセッションで、この投資の狂乱は市場で余っている資本の多さの表れでもあると語っている)。

Credit Suisse(クレディ・スイス)のアナリストは2021年3月、世界第3位のスタートアップ企業の拠点であるインドは、今後数年間で100社のユニコーン企業を生み出す可能性がある、と顧客向けの報告書に書いている。

インド企業の状況は、過去20年間の資金調達、規制、ビジネス環境の著しい変化が重なり、急激な変化を遂げている。さまざまな分野で前例のないペースで新会社が設立され、イノベーションが進んだことで、価値の高い、未上場の企業が急増している。

評価の高い企業の成長の背景には、以下のようなさまざまな要因がある。

(1)1人当たりの資産が少ない経済ではベンチャー企業への投資が不足するのは自然だが、(主に外国の)プライベートエクイティが急増して、過去10年間は毎年、公開市場での取引額を上回るようになった。

(2)携帯電話の普及率、スマートフォンやインターネットの普及率の向上。2005年まではインド人の15%以下しか携帯電話を持っていなかったが、現在では85%に達している。また、安価なデータ通信とスマートフォンの低価格化により、7億人以上の人々がインターネットにアクセスできるようになった(現在の普及率は40%)

(3)深く根差した物理的なインフラの変化。2000年には半分しかなかった舗装道路がほぼすべての居住地に整備され、2001年には54%しかなかった電力供給が全世帯に供給されるようになった。

(4)金融イノベーションが加速している。世界をリードする『インディア・スタック』は、データの可用性の向上にも助けられ、ユニバーサルバンク口座へのアクセス、モバイル、生体認証ID(アドハー)をベースに構築したUPIといった革新的なアプリケーションが備わっている。(5)いくつかの分野でエコシステムが発展し、現在では世界の競合他社に対して競争力を持っている。例えば、テクノロジー(450万人のIT専門家)や製薬・バイオテクノロジー(インド企業のいくつかは、年間2~3億ドル(約218億円~326億円)の研究開発費を確保できる)などが挙げられる。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Tiger Globalインドコラム

画像クレジット:Amanda Gordon / Bloomberg / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Dragonfly)

「日本版StartX」目指す東大1stROUNDが東京工業大など4大学共催の国内初インキュベーションプログラムに

スタンフォード大学の卒業生が運営するStartXをご存知だろうか。これまで700社以上のスタートアップを生み出したこの非営利アクセラレータプログラムは、同大学出身者からなる強力なスタートアップエコシステムの形成に寄与している。

このStartXの「日本版」を目指し誕生した、東京大学協創プラットフォーム(東大IPC)主催のインキュベーションプログラム「1stROUND」は、新たに筑波大学、東京医科歯科大学、東京工業大学の参画を発表。国内初の4大学共催のインキュベーションプログラムとして始動する。

「株を取得しない」インキュベーションプログラム

1stROUNDは、ベンチャー起業を目指す上記4大学の学生や卒業生を主な対象として、最大1000万円の資金援助と事業開発環境を6カ月間提供するインキュベーションプログラムだ。その目標は、設立後間もないベンチャーの「最初の資金調達(ファーストラウンド)」の達成までをサポートするということ。実際に、1stROUNDの採択企業34社のうち90%が、VCからの資金調達に成功しているという。

1stROUNDの大きな特徴は、最大1000万円の資金提供をするにも関わらず「株を取得しない」ということだろう。これは、採択したベンチャーが後に大成功を収めることになったとしても、1stROUONDとしては直接的な利益を享受しないことを意味する。また同プログラムには、パートナー企業としてトヨタ自動車、日本生命、三井不動産など業界を代表する大企業が名を連ねているが、これらの企業も「無償」で同プログラムに資金を提供している。

画像クレジット:東大IPC

一見したところ「1stROUNDには投資家として参加するインセンティブがないのでは」と考えてしまうが、東大IPCやパートナー企業にも大きなメリットが存在する。それをわかりやすく示す例が、2020年4月に設立されたアーバンエックステクノロジーズだ。スマートフォンカメラを活用して道路の損傷箇所を検知するシステムを開発していた同社は、1stROUNDに応募して採択された企業の1社である。

当時、創業約5カ月にすぎなかったアーバンエックスに起こったことは、1stROUNDのパートナー企業である三井住友海上火災保険との戦略的提携だった。日本最大級の損害保険会社である同社は「ドラレコ型保険」を展開しており、約300万台のドライブレコーダーを保有する。これにアーバンエックスのAI画像分析技術を搭載することで、ドラレコ付き自動車が日本全国の道路を点検できるようになった。同プログラムを創設した水本尚宏氏は「1stROUNDのネットワークがなければ、まず実現し得なかったことだと思います」と話す。

その後、アーバンエックスはVCからの資金調達を成功させるが、そのリード投資家となったのは東大IPCの「AOI(アオイ)1号ファンド」だった。同ファンドは、1stROUNDと同じく水本氏が2020年に設立し、パートナーとして運営している。つまり、1stROUNDでは採択したベンチャーの株を取得することはないものの、のちにAOIファンドで出資を行い株を取得することができるので、東大IPCとしても将来的に利益を確保することが可能になる。

1stROUNDで支援を受けるベンチャーは、無償での資金提供に加えて大企業とのネットワーク支援を受けられる。一方でパートナー企業は「誰の手にもついていない」ベンチャー企業の情報収集や、戦略的提携の可能性がある。そして、東大IPCにとっても後のファンド投資につながる可能性がある。1stROUNDは、三者にとってメリットがある見事な仕組みといえるだろう。

画像クレジット:東大IPC

AOI 1号ファンドは240億円超に増資

これまで主に東大の学生や卒業生などを対象として運営してきた1stROUNDは、今後東京工業大学・筑波大学・東京医科歯科大学を含めた4大学に門戸を広げる。また、企業の一事業や部門を新法人として独立させる「カーブアウト」を主に扱うAOIファンドも、設立時の28億円から241億円への増資を発表し、さらに勢いに乗りそうだ。

1stROUND、AOIファンドの運営を行う水本氏はこう語る。「私達は『ファンドとしてきちんとリターンを出す』ことを目指しています。当たり前と思われるかもしれませんが、上から『儲からない案件をやれ』と言われがちな官民ファンドは、この基本的な部分が緩みがちなのです。しかし私は、1stROUNDのプレシードや、AOIファンドのカーブアウトといった、一般的に難しいとされる分野で成果を出したい。『こういう投資が儲かる』ことを証明し、民間VCや企業が参入してきた結果、エコシステムが大きくなると思うからです。私たちが民間VCと同じくらい、もしくはそれ以上にきちんと儲けることが、ゆくゆくは日本のためになると信じています」。

成功事例に乏しい分野にあえて挑戦し、国益に資することを目標とする東大IPC。数年後、ここから世界を驚かせるベンチャーがいったい何社出てくるか、楽しみだ。

関連記事:「東大IPC 1st Round」第4回の採択企業5社を発表、シード期から東大発スタートアップを支援

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:1stROUNDStartX東京大学筑波大学東京医科歯科大学東京工業大学インキュベーションアーバンエックステクノロジーズ東京大学協創プラットフォーム日本ベンチャーキャピタル

数百億円台のAIラウンドがあってもおかしくない理由

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

先週、Scale AI(スケールAI)が3億2500万ドル(約353億5000万円)のシリーズE調達を行った。TechCrunchも書いたように、この会社はデータラベリングの分野で活躍している。そして、ここ数年は資金調達にも大いに力を入れてきた。2019年にTechCrunchは、同社の当時22歳のCEOが1億ドル(約109億円)のラウンドを組んだことを記事にしている。そして2020年12月には約35億ドル(約3807億3000万円)の評価額で1億5500万ドル(約168億6000万円)を調達した。今では70億ドル(約7兆6000億円)以上の価値がある。

すごい話だよね?さて、先週初めにわかったのだが、どうやら2021年は、AIスタートアップにとって、全般的にとんでもない年になっているようだ。PitchBookのデータによれば、2021年の初めから4月12日までに、米国でのAIスタートアップの取引は442件、金額にして116億5000万ドル(約1兆2672億9000万円)に達している。そして、最近発表されたMicrosoftによるNuance AI(ニュアンスAI)の買収は、さらにこうした事象を加速させるかもしれない。

Sapphire VenturesのJai Das(ジェイ・ダス)氏に、AIベンチャー市場についての意見を、The Exchangeに寄せてもらった。同氏は、この分野の第1四半期における競争状況に対する、私たちからの質問に対し、第1四半期における「AI/MLスタートアップへの投資活動は、絶対にトチ狂っていますね」と答えた。

ダス氏によれば「AI / MLスタートアップは、日常的に一流のVCファームから5、6通の条件規定書を受け取っていますし、ARR(年間経常収益)の150~250倍の資金調達ができています」とのことだ。

このことを少し考えて欲しい。2020年私たちは、公開ソフトウェア企業が新たな高みに達したのを目にしてきたが、たとえ積極的なスタートアップのラウンドであったとしても、上の数字は非常に大きなものだ。経常収益が100万ドル(約1億1000万円)に過ぎないAIに特化したスタートアップが、25億ドル(約2719億5000万円)の評価を受けることを想像してみて欲しい。なんてこった。

しかし、AI投資のペースはどうだろうか?聞くところでは、多くのスタートアップで、ラウンド開始から終了までの時間に対する短縮に次ぐ短縮が行われているという。ダス氏は、この状況を説明するために「ほとんどの企業は、投資が実際に行われるはるか前にデューデリジェンスを完了しています」とメールで述べている。つまり「投資を行う時点ではもはやデューデリジェンスを行う必要がない」ということだ。

それって本当に意味があるのだろうか?もしラウンドが先制的なものならば、事前に徹底調査をしなければならない(これはダス氏が後ほどコメントで強調したことだ)。そうでなければ、盲目的に投資したり、動きの速い他の企業に取引を先取りされてしまうことになる。

今週のThe Exchangeでは、国内のベンチャーキャピタル市場についても、シード案件やニュースで話題になるような超レイトステージ投資に焦点を当てつつ掘り下げてみた。アーリーステージのベンチャー投資に関するコメントとして、EYの米国Venture Capital責任者であるJeff Grabow(ジェフ・グラボウ)氏からのコメントが寄せられた。

そのプレシード、シード、ポストシードについてのコメントの中で、私たちの注意を特に引くものがあった。予測に関するものだ。グラボウ氏は次のように語る。

2021年第1四半期のプレシード資金調達は、例年と比較すると好調でした。現在利用可能な資金が豊富で、技術的なソリューションで新市場を開拓できる、投資可能なテーマが数多くあることから、全体的な環境は引き続き堅調に推移すると考えています。このことから新型コロイナウイルス後の環境は、バラ色に描かれています。

これは私たちの社内での予測と同じだ。2021年第1四半期は、少なくとも米国のベンチャーキャピタル活動は非常に活発だったため(近々、海外事情も伝わってくるだろう)、2021年は多くの点で記録的な年になると思われる。大きく減速する傾向もみられないので、記録は更新されることだろう。そしてグラボウ氏もこうして新型コロナウイルスの流行が終了した後のベンチャー環境が、かなり魅力的なものになることを、はっきりと予想している。

ということで、記録は更新されるだろう。問題はその大きさがどれくらいになるのかということだ。

Coinbaseの直接上場に関するその他の情報

終わった話をあれこれいうつもりはないが、Coinbase(コインベース)の直接上場について、いくつか情報を追加しておこう。

消費者向け取引アプリRobinhood(ロビンフッド)の、ライバルであるPublic.com(パブリックコム)が、The Exchangeに対して、Coinbaseの株式に対する小口取引の関心がどれほどのものだったかを教えてくれた。いつもの広報担当者であるMo(モー)氏によれば、米国時間4月14日、Coinbaseは取引数で「公開されている全銘柄の中で最も人気があった」という。そしてさらに特筆すべきは、同じ日に「(投稿数で計測した)ソーシャルアクティビティが前日に比べて70%増加した」ことだ。

消費者トレーディングのブームがいつまで続くかはわからないが、これはかなりすばらしい指標値だ。

また、Similarweb(シミラーウェブ)は、2021年1月のcoinbase.comへのアクセス数が8640万件に達したことなどの、いくつかのデータを紹介している。いやあ、こいつはすごい。また、この月は新規訪問者数が再訪問者数を上回っている。このデータは、Coinbaseが第1四半期に大きな結果を出した理由を説明している。ということで現在の疑問は、こうした強気の動きを維持できるのかどうか、あるいは率直に言って、特に暗号資産の取引に対する消費者の関心が、株式取引のブームよりも長持ちするかどうかという点だ。

先週ポッドキャストなどでも何度か話題に出た、CoinbaseのシリーズDを主導した投資家のTom Loverro(トム・ラベロ)氏は「私たちはまだ暗号資産の第2ラウンドに立ったに過ぎません」と語っている。ということで、これらの話題は何度も何度も繰り返し出てくるだろう。ということでもう1度。

その他のことなど

さて記事の文字数の目標に達することができるように、先週のIPO市場に関するメモをいくつか。

まず、AppLovin(アプラビン)のIPOは計画どおりには進まなかった。モバイルアプリケーションに特化したハイテク企業の同社は、範囲の中央値である1株あたり80ドル(約8702円)という控えめな価格がついた後、最初の2日間の取引で価値が下落した。金曜(米国時間4月16日)終了時点では、1株あたり61ドル(約6636円)になった。

The Exchangeは、AppLovin社のCFOであるHerald Chen(ヘラルド・チェン)氏に、IPO当日にインタビューを行った。チェン氏との会話からは、上場したことで買収をより加速できるのではないかと感じることができた。流動性のある株式を所有しているということは、これまで以上に買収されやすくなったということだ。またS-1ファイリングによれば、AppLovin社は、他の企業を買収し、そのビジネスプロセスを実行して、収益を得ることができると主張している。

もしそれが実現できるなら、公開市場から同社に対する見方は少し厳し過ぎるかもしれない。現在の状況下で、ソフトウェア会社がIPO後に苦労しているのを見るのは少し奇妙なことだ。

また、チェン氏はThe Exchangeに対し、公開に先立つ会社説明会の際にマルチクラスの株式構造(株式に議決権などの差をつけること)についての反発は見られなかったと語っている。マルチクラス株式の悪影響については、同僚のRon Millerと一緒に書いたことがある。チェン氏は、たとえ議決権の異なる複数クラスの株式を保有していても、1人の人間が会社を完全にコントロールすることはできないと述べている。率直に言って、それが問題なのだが。

AppLovinの取引には注目して行くつもりだ(その数字に関する以前の記事はこちら)。

最後に。自動運転トラック会社のTuSimple(トゥーシンプル)が先週上場し、Similarwebが上場を申請した。また、UiPath(ユーアイパス)が価格帯を引き上げるか否かといった、幅広いIPO市場の動向にも注目している。私たちはその点について予測を行っている

そして週の終わりになって、Squarespace(スクエアスペース)がS-1(上場目論見書)を公開した。記事はこちら、続報も予定している。

ではまた。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch ExchangeAI機械学習Coinbase新規上場資金調達

画像クレジット:Nigel Sussman

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

近隣の小売り店舗の回帰など、意外な2021年の米不動産業界のトレンド

パンデミックにより、誰もが予想していたよりも早く、リモートワークやオンデマンドデリバリーが日常的なことになった。世界がパンデミックから抜け出そうとしている今、「場所」は1年前ほど重要ではなくなった。

現代社会は、超高層のオフィスビルや高級マンションが立ち並ぶ洗練された大都市を生み出した。そして今、これらの都市の中心で活躍していた人々は、ポストパンデミックの世界での都市のあり方を考えている。

ここでは取材を元に、不動産のプロパティテクノロジーに注目する10人のトップ投資家がどのように未来を見据えているかを探る。

投資家らは総じて楽観的だ。というのも、本来なら氷河期にあるはずの不動産業界では、不動産テックが将来不可欠なものになると考えているからだ。しかし、少なくともパンデミック以前の戦略を知る者からすれば、オフィス分野は最も見通しが難しいようだ。

投資家らは、リモートワークが将来的に重要な役割を担うと考えており、郊外や比較的小さな都市での住宅需要が引き続き高いと予測している。そして、一戸建て住宅の販売や賃貸などの分野に焦点を当てたフィンテックやSaaS製品を特に高く評価している。多くの投資家は大都市への投資を続けているが、代替住居(敷地を共有する付属住宅ユニット)や気候関連のコンセプトを中核に据えている。

最も意外だったことは、一部の投資家が小売りのリアル店舗に期待していることだ。最新のデータを見れば、それも納得できる。大げさに聞こえるかもしれないが、地方の小規模ビジネスにとっては、より良い時代を迎えているのかもしれない。詳細は後にしよう。

オフィスがより贅沢品となるとき

パンデミックと既存のトレンドが相まって、オフィスの賃借人は「より高級品の消費者に近くなった」と、Bain Capital Ventures(ベインキャピタル・ベンチャーズ)のベンチャーパートナーであり、古くからの不動産テック投資家および不動産事業者であるClelia Warburg Peters(クレリア・ウォーバーグ・ピーターズ)氏はいう。

「1950年代以降、優位な立場にいた」家主は、これからはテナントを第一に考えなければならないと同氏は言い「賢明な家主は、単に物理的なスペースを提供していれば良かったものが、テナントにマルチチャネルのワークエクスペリエンスを提供していかなければならないというプレッシャを感じているだろう」と続ける。

それには、複数のオフィスを行き来する従業員を管理するためのソフトウェアやハードウェアなど、具体的な付加サービスが含まれる。しかし、今日の市場では、新たな姿勢が求められている。同氏は「これらの資産は、テナントのニーズに応えることを重視した、より人間的な関係の中で提供される必要がある」とし「リース期間は必然的に短くなるため、テナントに対してこれまで以上に積極的に売り込み、サポートしていく必要があるだろう」という。

こういったオフィス環境の変化は、郊外では供給側に有利に働く可能性がある。

MetaProp(メタプロップ)のZach Aarons(ザック・アーロンズ)氏は「都市部に本社のある企業は、従業員にスペースを提供しなければならなくなるだろう」と語る(同氏の会社は、この分野に関して非常にポジティブなレポートを発表したばかりだ)。しかし、多くの企業は「時折、従業員が家を出て働く必要が生じたとしても、電車で1時間もかからないよう、郊外に何らかの代替オフィスも提供したいだろう」という。

そして「メタプロップチームの多くのメンバーが前職で行っていたように、今でも(資金提供ではなく)実際に不動産の購入をしていたとしたら、郊外のオフィスの購入を積極的に検討していただろう」と付け加えた。

ほとんどの人が、リモートワークは今後根づいていき、将来的にオフィススペースのあり方に影響を与えると考えている。

Wilshire Lane Partners(ウィルシャー・レーン・パートナーズ)の共同設立者でマネージングディレクターのAdam Demuyakor(アダム・デムヤコール)氏は、概して大都市には強気だが、スタートアップ企業自身がすでに特定の場所から移転しつつあると指摘する。これは重要な先行指標であるとTechCrunchは考えている。

「この1年を振り返って興味深かったのは、パンデミックによって地理的な柔軟性を得たことで、スタートアップ自身がどのように進化し始めたかということだ」と同氏は語り「以前は、スタートアップ(特に不動産関連のスタートアップ)は、顧客や見込みのある資金源、人材の集まる場所の近くに「本社」を置かなければならないというプレッシャーを感じていた。しかし、ここ数カ月でこうした変化が見られるようになった」と述べる。

実際、筆者の元同僚で、現在はInitialized Capital(イニシャライズド・キャピタル)のパートナーであるKim-Mai Cutler(キム-マイ・カトラー)氏は、同社のポートフォリオ企業に対して定期的に行っている最近の調査で、こうした傾向を明らかにしている。パンデミックが始まった頃、創設者が会社を設立したい場所の1位はまだベイエリアだった。今では、リモートファーストが1位になっている。一方、投資先の企業では、リモートファーストか、本社を小さくして遠くにオフィスを置くハブ&スポークモデルのどちらかに移りつつある。何らかのオフィスを維持している企業は、週5日よりも大幅に少ない日数しか使われていないと答え、また、3分の2近くの企業が、勤務地による給与調整は行わないと回答している。

これは小さなサンプルだが「スタートアップは(a)効果的なリモートワークに必要なテクノロジーの活用に長けていることが多く、(b)同時に、人材獲得のための激しい競争にさらされている。そのため、パンデミックが過ぎ去った後、スタートアップの動向を観察することで、『仕事の未来』がどのようなものになるか推測できるだろう」とデムヤコール氏はいう。

一部の(大きな融資を受けている)家主や(大きな予算を持っている)大都市は、オフィスの再配置を早急に進めており、一部の大企業はオフィススペースを増設したり、現在の所在地へのコミットメントを改めて明確にしたりしている。

そういった努力に加え、直にネットワークを築きたいという自然な欲求が、産業クラスターを元に戻し、人々を以前の場所に引き戻すことになるのかもしれない。ともすれば、以前の100%近くまで戻るかもしれない。その場合、それはどういったものになるのだろうか。

RET Ventures(RETベンチャーズ)のパートナー兼マネージングディレクターであるChristopher Yip(クリストファー・イップ)氏は、このようなシナリオでは、パンデミック時のような傾向が持続するだろうという。そして「公衆衛生への配慮に敏感になった人々は、大量輸送機関より自動車や自転車などの単独の交通手段を好んで使うようになり、駐車場関連やバイクシェアリングのテックツールが伸びる可能性がある。また、不動産管理の観点からも、タッチレステクノロジーやセルフリースを可能にするツールに消費者の関心が高まり、密集した環境での生活をより快適に、より健康的にするテクノロジーが増えていくだろう」と同氏は続ける。

もう1つのシナリオとして「多くの仕事が完全なリモートであり続ける場合」を挙げる。

同氏は「理論的には、小売店やオフィスビルは、経済的構造上苦しい状況が続く可能性があり、ある地域の政府関係者からは、オフィスビルを手頃な価格の住宅に転換するという話も出ている」と実情を話し「都市の市場の空室率が高いままであれば、住宅に対する需要が高くない市場でも家主がホテルタイプの滞在から収益を得ることができるAirbnb(エアビーアンドビー)Kasa(カーサ)のような短期賃貸プラットフォームへの需要が高まるだろう」と語る。

Fifth Wall(フィフスウォール)のパートナーであるVik Chawla(ヴィック・チャウラ)氏は、中間的なシナリオを描いている。「大都市はパンデミック後も知識労働者や優秀な人材を惹きつけると思うが、リモートワークが労働経済にとってますます重要な要素となり、オフィスとそれ以外の場所で過ごす時間の中で柔軟性が増すと予想している」。

これはやはり、ある種の長期的な価格の下落を意味する。「都市レベルでは、需要の減少により、パンデミック前の水準に比べて賃料は右肩下がりになるはずだ」と同氏は主張する。「そうは言っても、パンデミックを通して成長を遂げた都市の不動産エコシステムは、イノベーションの時期を迎え、それに伴い、住宅密度、ADU、モジュラービルディング技術の増加が見られるだろう」。

DreamIt Ventures(ドリームイット・ベンチャーズ)で都市開発テック部門のマネージングディレクターを務めるAndrew Ackerman(アンドリュー・アッカーマン)氏も、商業オフィスの価格はそのうち緩やかに下落し、その後、スペース管理に関する複雑な問題が発生すると見ている。

「仕事が平常に戻ることは、オフィスの終焉ではなく、より柔軟なワークアレンジメントをもたらすだろう。しかしそのことで、今後5年から10年で賃貸契約が更新されていく間に、オフィススペースの需要は壊滅的ではないものの、徐々に減少していくことになる。問題は、その後、余ったオフィススペースをどうするかということだ」。

「オフィスを住居へ転換することはなかなか厄介だ」と同氏は言い「レイアウトが一番の制約だ。最近のオフィスの多くは、窓がなく内部に深い空間を持っており、再利用することを難しくしている。たとえ、狭いレイアウトであっても、構造的な要素が住居には適さない場所にあることが多い。水道管やガス管を適切な場所へ移すために、建物のコンクリートに何千もの穴を開けるのは大変な作業だ」と説明する。

これは、まだ価値のある物件の新しいタイプの利用法につながりそうか、と問うと「共同生活やマイクロユニットがより魅力的な転用方法かどうかというのは、今調査している分野の1つだ。オフィスの休憩室やビル内側の大部屋を、共有のキッチンやダイニングエリア、そしてレクリエーションや仕事のためのフレックススペースに変えれば、多額の費用をかけて改装しなくても、ビル内部の深いスペースを再利用できるかもしれない。また、配管のルートをあまり変更する必要がないのであれば、時間とともに変動するオフィスや住居スペースに対する市場の需要に応じて、個々のフロアを転換することも(さらには元に戻すことも)可能かもしれない」と同氏は答えた。

投資家10人全員が、オフィス自体に対する見通しが強気か弱気かは別にして、(当然のことながら)不動産テックは次の時代の大都市の中核をなすものだと考えている。

住宅の新たな均衡

パンデミックの間、ほとんどの場所で住宅の供給は大幅に制限され、購入を希望する人が増え、売却を希望する人は減った。今まで注目を集めていた都市で、賃貸価格が大きく下落していることとは裏腹だ。

住宅問題とそのソリューションの1つとして共同生活に注目しているウィルシャー・レーンのデムヤコール氏は「パンデミックにもかかわらず、ミレニアル世代やZ世代にとって、現在の賃金水準では、物件の価格が最も高い都市(ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスなど)は依然として高嶺の花だ」という。そして「そのため、大都市での生活のコスト負担を軽減するための物件やソリューションに対する需要は、今後も継続すると考えている。例えば、その中核として、共同生活は経済的に1つの判断となるだろう。住みたい場所に住むことをより容易にするソリューション(ADUもその一例だ)は、今後も発展していくだろう」と続ける。

Camber Creek(キャンバー・クリーク)のマネージングディレクター兼ゼネラルパートナーであるCasey Berman(ケイシー・バーマン)氏は「都市がより充実した生活、仕事、遊びを求める人々を惹きつけ続けるのは、そういった体験を実現する住宅密度と機会を提供しているからだ。このような事実がある限り、その欲求を満たす都市空間と不動産に対する新たな需要が生まれるだろう」と主張する。

また同氏は、密度の高い生活をより安全に、より便利にする製品やサービスに投資しており「そのためのソリューションがますます普及していくことを期待している。Flex(フレックス)は、オンラインによる分割払いでテナントの賃料の管理と支払いを容易にし、それに伴い、家主にとっては期日通りに支払いを受ける可能性が高まる。Latch(ラッチ)の入退室管理システムは、新築の集合住宅の10棟に1棟の割合で導入されている。また、この1年で多くの人がペットを購入した。PetScreening(ペットスクリーニング)は、ペットが介助動物や支援動物の場合、ペットの記録の管理と確認を容易にする」と述べる。

Picus Capital(ピカス・キャピタル)のパートナーであるRobin Godenrath(ロビン・ゴーデンラス)氏とJulian Roeoes(ジュリアン・ルーエス)氏は、おおむねこの視点を共有しており、都市での新しい生活スタイルが、人々の暮らし方により根本的な変化をもたらす可能性があると述べている。

「柔軟な生活ソリューションにより、リモートワーカーは短期か長期かにかかわらず、都市生活のために完全に管理された手頃な価格の安全な賃貸オプションを使って、さまざまな都市で時間を過ごすことができる」と両氏はいう。そして「一方で、商業施設から住宅への転換は、単位面積あたりの価格を下げる効果があり、長期的に戻ってくる居住者がよりゆとりのある空間を購入できるようになる。共同生活は集合住宅を高密度化するが、リモートワークへの移行が進むことによる仕事での社会的交流の希薄化を考慮すると、私生活におけるコミュニティの重要性が増すため、今後も興味深い分野だと考えている」と述べる。

しかし、現代の不動産テックは、長期的には郊外やその他の地域も魅力的にしていると多くの人がいう。生活の役に立つすばらしい新技術は、あらゆる場所に導入することができる。

不動産テックは、新たな郊外ブームの火付け役にもなっている。「都市部への回帰の傾向が続いており、郊外型の生活への需要が高まっている」と両氏はいう。「不動産テック企業は、特に住宅の売買や賃貸の取引プロセスをデジタル化することで、このシフトを可能にする重要な役割を果たしている(iBuyer、代替融資モデル、テクノロジー対応仲介業者など)。さらに、不動産テック企業は、遠隔鑑定、3D / VR映像、デジタルコミュニケーションなどにより、物理的なやり取りの低減にも関与しており、パンデミックの間も住宅の購入者と販売者の効率的かつ安全な取引に大きく貢献している」。

最終的には、都市部の価格帯をより手頃にするテクノロジーが、郊外でも同様に役立つだろう。「当社は、住宅売買プロセスのデジタル化が加速していることに加え、郊外型住宅への需要が大幅に増加していることや、買い手のプロファイル(テクノロジーに精通したミレニアル世代など)が進化していることから、建設、交通の便、ライフスタイルなどの面で、不動産テックが郊外の生活に大きな影響を与える多くの機会が広がっていると確信している。これには、賃貸専用住宅の建設、モジュール型住宅の建設、低価格住宅、コミュニティの構築、デジタルアメニティなどに注力する企業が含まれる」と両氏は述べる。

インタビューを行った投資家の多くは、一戸建ての賃貸市場のトレンドを重視していた。再びRETのクリストファー・イップ氏の見解に戻る。

同氏は「過去10年間注目されなかったトレンドの1つに、一戸建て賃貸(Single-Family Rental、SFR)市場の成長がある」とし「多くの大手投資家がこのアセットクラスに参入している。SFR市場は都市部からの移住の恩恵を受けることができ、SFRを支えるテクノロジーは業界全体にポジティブな波及効果をもたらすだろう」という。

また「SFRの物件は、効率的かつ大規模に運営することが特に難しい。多世帯住宅と比較して、多種多様なレイアウトのユニットがあり、地理的にも分散している」と同氏は説明する。そして「テクノロジーによって、SFRの運営者はオペレーションとメンテナンスを合理化できるようになった。SmartRent(スマートレント)のようなスマートホームツールを使えば、分散した物件をリモートで監視し管理することができる。当社はこの分野を有望視しており、この市場で効果を上げる不動産テックツールに注目している」と述べる。

ドリームイットのアンドリュー・アッカーマン氏も同意見だ。「一戸建て市場は軽んじられてきたが、ここしばらく、資産と不動産テックの両方の観点から、徐々に関心を集め始めている。例えば、パンデミック前には、NestEgg(ネストエッグ)Abode(アバウド)など、この業界のエコシステムにサービスを提供するスタートアップに投資していた。新型コロナウイルス感染症はこれらのスタートアップにとって良い方に働き、概して一戸建て住宅の物件が注目を集めた」と同氏はいう。

Urban.us(アーバン・ユーエス)の共同設立者であるStonly Baptiste(ストンリー・バティスト)氏とShaun Abrahamson(シャーン・エイブラハムソン)氏は、共同生活や短期賃貸などの選択肢により人々が新しいライフスタイルを見つけることができ、地理的な自由度が増した世界が広がっていると考えている。「共同生活はコスト面だけでなく、コミュニティとのつながりという見過ごされてきた重要な問題を解決してくれるので、Starcity(スターシティ)のようなポートフォリオ企業は非常に成長している。また、ノマド的なライフスタイルが生まれる余地もある。マイアミについて話されることの多くは、移住についてだが、多くの場所にとって関心の高い問題は、人々が1年のうち何カ月をそこで過ごすかということだろう。つまり、リモートワーカーから見れば、例えばマウンテンバイク、サーフィン、スノーボードなど、特定のアクティビティにアクセスしやすい場所になるかもしれない。スターシティは都市間の移動を容易にし、Kibbo(キボ)はバンライフを中心としたコミュニティを構築することで、都市を超越したサービスを提供している」と両氏は語る。

ベインキャピタル・ベンチャーズのクレリア・ウォーバーグ・ピーターズ氏は、こういった変化が郊外不動産市場に与える影響を次のようにまとめている。

「住宅取引の混乱は、現在、iBuyers(インスタントバイヤー、売主から直接住宅を購入し、最終的には売主として物件を再販する)、ネオブローカー(一般的にエージェントを雇用し、権原ローンや権原保険などの二次サービスを利用して収益を上げる)、エリートエージェントツール(トップエージェントに焦点を当てたプラットフォームやツール)の3つのコアカテゴリーに落ち着いている」。

こういったイノベーションの組み合わせは、今までの住宅用不動産を変えつつある。「消費者は、ホームエクイティーベースの融資モデル(自宅を株式化して販売したり、自宅の完全な所有権を時間をかけて購入したりする)など、代替的な金融手段の活用にますます積極的になっている。このような新しいモデルの成長と普及により、住宅市場全体が統合され、仲介業者の販売手数料や、住宅ローン、権原保険、住宅保険の販売による手数料が、機能的に1つの大きな、そして絡み合った複雑な市場となっている」と同氏は語る。

近隣の小売店の驚くべき復活

人は、にぎやかで歩きやすい地元の店が並ぶ昔ながらのメインストリートのような雰囲気が好きなようだ。しかし、独立した小売店をやりくりしようとしている人々には難しい状況が続いている。

Amazon(アマゾン)をはじめとする90年代に登場した「Eテイラー(電子小売業者)」などの電子商取引は、薄利の従来型小売業に打撃を与えた。さらに最近では、アートギャラリーや高級レストラン、ブティックなどが多くの都市でジェントリフィケーション(富裕化)の前兆となっている。そういった場所ではより高い賃料を払える借り手が増えたため、小売業店舗の家主が積極的に賃料を値上げし、結果的に一等地では家賃が払えない店舗が続出することになった。

パンデミックの影響で地元の店が閉まっている間に、得意客さえもオンラインで注文するようになり、決定打となったようだ。

しかし、複数の投資家が妙に楽観的な見方をしている。パンデミックは1年以上にわたって社会・経済活動に大混乱をもたらしたが、ほとんどの人が、実生活において小売店の存在は現代生活に欠かせないものだと認めている。

「人間は基本的に社会的な動物であり、安全に人と会えるようになれば、誰もが直接対面での交流を求めるようになると考えている。さらに、週5日のオフィスワークからの解放は、自宅でも規律正しいオフィス環境でもない、『第3の空間』への欲求を高めることになるだろう」とピーターズ氏はいう。

「商品を販売することよりも、顧客が実際に商品を手に取りウェブサイト以上にブランドコンセプトを体感できる環境を整えることに重点を置く、『Apple Store』のような小売店が今後も増えていくだろう。パンデミックが終わる頃には小売店の賃料が大幅に下がっていると予想されるため、新型コロナウイルス感染症以前よりもさらに実験的な試みが行われると考えられる。小売業にとっては非常に興味深い時代になるだろう」。

小売関連のテクノロジーを専門に投資しているか、第3の空間のアイデアに広く投資しているかにかかわらず、他にも、複数の投資家がこの視点で見解を述べている。

「小売業が10年以上前から変化しているのは事実だ。eコマースで普通に買えるものは、書籍や衣料品だったものが今では惣菜や食料品にまで拡大している。また、パンデミックがeコマースの成長を加速させ、リアル店舗の小売業が損失を被っているのも事実だ」とRETのイップ氏はいう。そして「しかし、人はやはり人間であり、直接会って交流することを求めている。たとえ都市の完全な立ち直りまで時間がかかっても、大都市にはかなりの数の小売店を支える客足があり、ポップアップショップのような革新的なモデルを導入することで、空き店舗の問題に対処できるだろう。また、大衆市場では、小売業に対する信頼がまだあることも留意する必要がある。主要なREITは2020年初頭から半ばにかけて苦戦したものの、多くは大幅に回復しており、いくつかは実際にパンデミック前の数値を上回っている。小売業にとってはひどい10年であり、この1年は最悪の年だったが、このセクターの幕を引くにはまだ早すぎる」と述べる。

ピカスのゴーデンラス氏とルーエス氏によると、映画館は、パンデミック後に一般市民の生活が一斉に再開された場合の成功を待ち構える小売セクターの一例に過ぎないとのことだ。

「ショッピングセンターの目玉テナントである映画館は、予約席、4DX映像、劇場内のレストラン、カフェ、バーなど、より総合的な体験型ソリューションの提供により、すでに従来型の営業スタイルを刷新しており、さらにパンデミックをきっかけに、プライベートシアターのレンタルやイベントなどのサービスを拡大している。こうした傾向は、レストラン(実体験のように感じる料理エクスペリエンス)から伝統的な小売業(オンラインとオフラインを統合したショッピングエクスペリエンス)まで、小売不動産業界全体に拡大していくだろうと見ている。また、小売不動産オーナーが見込みのあるテナントを特定して物件を売り込んだり、小売業者が店舗内での顧客エンゲージメントを促進し、カスタマージャーニーに関する重要なインサイトを得たりする時にも、不動産テックが決定的な役割を果たすと考えている」。

意外なことに、最近ではインターネットも味方になっている。「また、オンラインとオフラインの体験を巧みに融合したハイブリッドモデルにも大きな可能性があると考えている」と両氏はいう。「フィットネス分野を例にとると、スタジオでのコースを配信してより多くの参加者を募ったり、スタジオでのレッスンや自宅でのワークアウトを通じてトレーニングや健康状態の推移をアプリでトラッキングしたりするという新しいスタイルが考えられる」。

インタビューで投資家から聞いたものではないが、小売業の未来を信じる理由は他にもいくつかある。

また、小売業が、投資家が出資している他の多くのソリューション、特に都市の魅力を高め、気候変動などのマクロな問題を解決するためのソリューションとどのように関わっているかもわかるだろう。

バティスト氏とエイブラハムソン氏は「都市には活用されていない多くの資産があるが、最大のものは自動車に割り当てられている公共スペースだろう」とし「永続的に変っていくだろうと思われることは、駐車スペースを自家用車からマイクロモビリティ(自転車、スクーター、キックボード用のレーンや駐輪場など)に再配分することだ。Coord(コード、スマートゾーンという技術を使い商用車などの縁石スペース利用を管理)、Qucit(キューシット、多くの大都市で自転車やスクーターのシェア事業を管理)、Oonee(ウーニー、安全な自転車、スクーター、ボード用の駐車場)などのポートフォリオ企業に多くの需要があると考えている」と述べる。

これは、両氏が予見する好循環の始まりに過ぎない。

「(自動車の排除)が起こると、物流のようなユースケースはマイクロEVにシフトできる。同様に、パークレット(車道の一部を転用して人のための空間を生み出す取り組み)やシーティングエリアによって公共のスペースが増える。EUでは自動車使用の禁止を推進しているが、全体的に道路で自動車の往来が減れば、大きな変化が起きるだろう。確かに個人の生活の空間を明け渡すことになるが、共有スペースや社会的なスペースが増え、都市を魅力的なものにする可能性がある。こうしたことにより、共同生活が促進され、都市で生活するためのコストを下げることができるとともに、低密度のコミュニティでは比較にならないほど共有スペースから多くのものを得ることができる」と両氏は話す。

ウィルシャー・レーンのデムヤコール氏も同様の見方をしている。

同氏は「当社の全体的な戦略を立てる上での原則の1つは、常にスペースの活用に焦点を当て、有効に活用されていないスペースを、テクノロジーによって収益化する最良の方法を見つけ出すことだ。このことは、StufNeighbor(スタッフ、ネイバー、地下室、駐車場、その他の空きスペースの収益化)MealCo(ミールコ、空きキッチンの収益化)WorkChew(ワークチュウ、レストランのシーティングエリア、ホテルのロビー、会議室の収益化)Saltbox(ソルトボックス、空き倉庫の収益化)など、当社の直近の投資案件の多くに明確に表れている。家主は、このようなタイプの戦略を適切に利用すれば、今日の不動産業界で見られる空室の増加を中期的に緩和できる」と述べる。

この主張が正しければ、小売業は、より共有スペースのような存在になるかもしれない。「特に、先に資金調達を発表したばかりのワークチュウの製品は、需要側と供給側の両方で多くの需要がある。ホテルやレストランは、あまり利用されていないスペースやインフラを収益化するために、同社との提携に対する関心は極めて高い」とデムヤコール氏は述べる。そして「もちろん、雇用主や企業は、本社のオフィス以外で過ごす時間を増やしたいと考えているハイブリッドな従業員に提供できる簡単なアメニティとして、この共有スペースに満足している」と付け加える。

インタビューした投資家らから明確に聞いたわけではないが、小売業の将来を信じる理由がいくつかある。

  • まず、経済学者や政策立案者さえも驚くほど、パンデミックの間に何百万もの新しいビジネスが生まれている。その大部分は、非常に地域に根ざしたもので、食品の宅配(カップケーキ)やサービス(出張ヘアカット)、地域で強い支持を得ているインターネットファーストの製品(Etsyの多く)などが挙げられる。これらの起業家らは、インターネットで事業を始め、商業施設の賃料が下がった今、実店舗を構えるに十分な収益を上げている。
  • 第2に、新型コロナウイルス感染症の期間を耐え抜いた地元企業の多くは、インターネットで成功する方法を見つけ出した。近隣でどの企業が嵐を乗り切っているかは、好みのオンデマンドデリバリーやサービスのアプリを開いて注文すればわかる。
  • 第3に、投資家の回答や入手可能なデータが示すように、家主はすでに賃料を下げ始めており、数十年ぶりに借り手市場が形成されている。
  • 第4に、従来のビジネスでも新しいタイプの資金調達が可能となり、オンラインでの副業や趣味(あるいはより大規模なプロジェクト)で成功を収めている企業は、拡大のための資金を得ることができるようになる。(この理由はおそらくかなり推測的なものだが、著者らは、ここTechCrunchで未来を見極めようとしている)。例えば、Shopify(ショッピファイ)は、新しい「定期収入を取引するためのプラットフォーム」のcom(パイプ・ドット・コム)に資金提供をしたばかりだ。両社はこの関係について今は多くを語っていないが、ショッピファイで成功している多くの小規模ビジネスが、リアル店舗の採算の目処が立ったときに速やかに新しい種類の資本注入を受けることの想像はできる。

こういったすべてのことを、都市の密度や自転車レーンの設置による気候変動への配慮など、都市に対する考え方の他の広範な変化も含めて考慮すると、パンデミック以前の世界というよりも、ニューアーバニストの空想といわれそうな世界が見えてくる。

同時に、これらのコンセプトは小規模な都市、郊外、そして町にも展開されている。産業クラスターの古いネットワーク効果が奇跡的な復活を遂げない限り、すべての都市が最高の生活の質を提供するために競争することになる。

仮に、産業クラスターがかつてのように集結しないとしよう。そうすると、多くの家主や金融業者、市の予算はすぐに支出を削減せざるを得なくなり、魅力的な都市の経済の足を引っ張ることになるかもしれない。

そのような場合でも、ニューヨークやサンフランシスコのように、住宅や小売店、アメニティを中心に据える都市が再生することは想像に難くない。もしかしたらいつの日かこの数十年を、パンデミックで全世界が底を打ち長期的に正しい答えを決める必要が生じる前の古き悪し時代だったと振り返る日が来るかもしれない。

ということで、読者には、著者がインタビューした投資家らの回答全文を紹介したい。各投資家の回答は、このすでに十分に長い記事より更に濃い内容であり、詳細を読む価値はある。このような変化に関する継続的な記事の支援のため、Extra Crunchを購読して欲しい。

不動産テックと都市の未来については、近々さらに掘り下げる予定だ。この件について他に考えがあればeldon@techcrunch.comにメールして欲しい。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:新型コロナウイルス不動産リモートワーク住宅アメリカeコマース店舗小売

画像クレジット:Boston Globe / Getty Images

原文へ

(文:Eric Eldon、翻訳:Dragonfly)

日本のVC「サムライインキュベート」がアフリカのスタートアップ向けに20億円超のファンドを組成完了

東京拠点のベンチャーキャピタルであるSamurai Incubate(サムライインキュベート)が「Samurai Africa Fund 2号」の組成を完了し、総額20億2600万円を集めたことを4月15日に発表した。

同社によると、目標額20億円のファンドには募集枠以上の応募があり、総勢54名の投資家がLP(有限責任組合員)として出資した。注目すべきLPの1つが豊田通商株式会社で、アフリカ大陸全体に多様なネットワークを持っている。同社はコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)のMobility 54を設立し、アフリカの輸送、物流、フィンテックのスタートアップへの投資を計画している。

榊原健太郎氏は2018年にSamurai Incubateを設立し、子会社のLeapfrog Venturesを立ち上げてアフリカへの投資を開始した。Samurai Incubateは新たな子会社を通じて2018年8月以来、アフリカのスタートアップ20社に250万ドル(約2億7000万円)出資した。そして2019年6月、Leapfrogの社名をSamurai Incubate Africaに変更した。

「当社は一貫してファウンダーへの価値提案を最大化するという経営方針の改善と最適化に注力してきました。しかし、いつも完璧だったわけではありません。私たちがもたらす価値は、資金や日本の投資家や企業へのアクセス以上のものであるべきだと信じています」と同社は声明で語った。

セクター無依存のファンドを提供するSamurai Incubate Africaはすでに26社に投資している。今回の第2号ファンドの投資先には、テック利用ホームサービスのスタートアップであるEden Life、オンライン融資マーケットプレイスのEvolve Credit、エネルギー・スタートアップのShyft Power Solutions、自動車レンタル向け少額融資サービスのFMG、貨物輸送会社のOneport、およびオンライン食料品プラットフォームのPricepallyら6社が含まれている。

Samuraiの会社の多くはアフリカの3つの国、ケニア、ナイジェリア、南アフリカにある。しかし、今後はそれが変わる。マネージングパートナーの米山怜奈氏によると、Samurai Incubate Africaは対象国にエジプトを加える予定だ。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

2018年以来、エジプトにおけるエコシステムの成長は目覚ましく、人材、スタートアップ、および地元投資家を猛烈なスピードで生み出している。Samurai Incubate Africaにとって、この成長に目をつけるのは当然であり、エジプトが加わることで、同社はアフリカ大陸のトップスタートアップエコシステムであるBig Fourすべてでスタートアップを持つことになる。

「エジプトのスタートアップエコシステムと経済は急速に拡大しており、この国には数多くの才能あるファウンダーと偉大な投資家がいることを知っています」と米山氏がTechCrunchに話した。「すでにエジプトのスタートアップ1社への投資を決めており、絶対に後悔しないことがわかっています」。

2020年にSamuraiが最初にこのファンドを発表した時、出資規模は5万ドル(約540万円)から50万ドル(約5400万円)だった。プレシードからシードラウンドまで、スタートアップは20万ドル(約2200万円)以下を獲得する。プレシリーズAとシリーズAラウンドでも50万ドル以下だった。しかしファンドの組成完了後は、投資金額を80万ドル(約8700万円)へと拡大する。

「投資先企業のプレシリーズAとシリーズAを既存出資者として支援するつもりです。そのために、投資額を企業の最近ラウンド規模と評価額に応じて増やすほうがいいと考えました」と米山氏は説明した。

セクター無依存ではあるが、同社が特に力を入れているのはフィンテック、インシュアテック、流通、医療健康、消費者、コマース、エネルギー、アグリテック、モビリティー、エンターテインメントだ。

日本のVCは、プレシードとシードステージの新規企業30~40社に加えて、投資先企業7~10社のプレシリーズAとシリーズAラウンドにも参加する計画だ。Samurai Incubateは、Kepple AfricaやUncovered Fundなどと並ぶ、日本で増えつつあるアフリカのスタートアップを対象としたVCの1つだ。

関連記事:日本のUncovered Fundがアフリカのアーリーステージ企業向けに15億円超のファンドを設立

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Samurai Incubate日本東京アフリカエジプト

画像クレジット:Samurai Incubate

原文へ

(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アマゾンがインドのスタートアップに投資する272億円規模のベンチャーファンドを発表

Amazon(アマゾン)はインド時間4月15日、主要な海外市場であるインドの中小企業(SMB)のデジタル化に焦点を当てた、同国のスタートアップや起業家に投資する2億5000万ドル(約272億円)のベンチャーファンドを発表した。

今回の発表は、これまでインド事業に65億ドル(約7062億円)以上を投資してきた米国のeコマース巨人が、政府当局や、同社がサービスを提供していると称する中小企業からの批判に直面している中でのことだ。

「Amazon Smbhav Venture Fund」と名づけられたこの新しいベンチャーファンドを通じて、Amazonは中小企業のオンライン化、オンライン販売、業務の自動化とデジタル化、そして世界中の顧客への拡大を支援することに重点を置いたスタートアップに投資したいと述べている。同社は、このファンドのライフサイクル(つまり、何年かけて2億5000万ドルを使い切る予定か)については明らかにしなかった。

Amazonの次期CEOであるAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏は4月15日に開催されたバーチャルイベントで「中小企業は経済のエンジンであり、生命線です」と述べた。「当社は、中小企業を加速させることに情熱を持っています」とも」。

Amazonは、中小零細企業(MSMEs)向けに売掛債権のオンラインマーケットプレイスを運営する、グルグラム(旧称グルガオン)に本社を置く設立3年目のスタートアップであるM1xchangeに1000万ドル(約10億9000万円)の投資ラウンドを実施したと発表した。M1xchangeは、マーケットプレイスを介して中小企業と銀行やノンバンク金融会社を結びつける企業だ。中小企業は売掛債権(為替手形や請求書)を銀行や金融機関に譲渡することでより有利な金利で融資を受けることができ、これにより、中小企業・小規模事業者の支払いに関する課題を解決することができるという。これは、同社のAmazon Smbhav Venture Fundからの最初の投資となる。

Amazon Smbhav Venture Fundは農業とヘルスケアの2つの分野にも重点を置いているが、中小企業との接点があれば、他業種のテックスタートアップも視野に入れていくとのこと。

アグリテック分野ではAmazonは、テクノロジーを活用してアグリインプットを農家によりアクセシブルにしたり、農家にクレジットや保険を提供したり、食品の無駄を減らしたり、消費者に届ける農産物の品質を向上させるインドのスタートアップに投資することを検討している。ヘルスケア分野では、医療機関が遠隔医療、電子診断、AIによる治療提案を活用できるように支援するスタートアップに投資するとしている。

今回の発表は、インドに拠点を置く中小企業に焦点を当てた、Amazonが毎年4日間にわたって開催するSmbhav(ヒンディー語で「できる、可能」を意味する)イベントで行われた。またAmazonはこのバーチャルイベントで、2025年までにインドの北東地域の8つの州から5万人の職人、織工、中小企業をオンライン化し、同地域からの茶、スパイス、蜂蜜などの主要商品の輸出を促進するための取り組みである「Spotlight North East」を発表した。

2020年の第1回Smbhavイベントで、Amazonは10億ドル(約1087億円)を投じて中小企業1千万社のデジタル化を支援することを発表した。同社は2021年4月初め、2020年1月以降、インドで30万人の雇用を創出し、30億ドル(約3260億円)相当のインド製商品の輸出を可能にしたと発表した。

関連記事:Amazonがインドのスモールビジネスのデジタル化促進のため約1100億円を投資

同社によると、5万以上のオフライン小売業者や近隣店舗(現地ではキラナと呼ばれる)がAmazonマーケットプレイスを利用しており、約25万の新規出品者もプラットフォームに参加したという。同社は15日「Local Shops on Amazon」プログラムを通じて、2025年までに100万のオフライン小売業者・近隣店舗のオンボーディングを目指していると述べた。

2020年には、Amazonの創業者兼CEOであるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が参加した最初のSmbhavイベントからそれほど遠くない場所で、何万人もの抗議者が通りをデモ行進し、Amazonは自分たちをつぶすために不公正な行為を行っている、と主張して懸念を表明した。

今回も同様の抗議活動が行われ、商人たちはAsmbhav(ヒンディー語で「不可能」の意)と名づけられたイベントで政府の介入を求めた。こちらから、彼らのストーリーを一部見ることができる。これはインドでの論争に巻き込まれないように長い間苦労してきたAmazonにとって、継続的な課題だ。

関連記事:進出から7年半で6775億円投じたインドでアマゾンは多くの問題に直面している

2021年2月には、米国のeコマースグループである同社がインドの一部の販売者を優遇し、それらの販売者との関係を公に偽り、インドの外資規制を回避するために利用しているとの報道を受け、何千万もの実店舗を代表する有力なインドの業者団体が、インド政府にAmazonの国内事業禁止を要請した。

関連記事:全インド商業者連合がアマゾンの事業禁止を政府に要請

全インド商業連合(The Confederation of All India Traders、CAIT)は、ロイター通信の記事で明らかになったことを受けて、インド政府にAmazonに対する深刻な措置を取るよう「要求」した。「CAITは長年にわたり、AmazonがインドのFDI(外国直接投資)規制を回避し、不公正で非倫理的な取引を行っていると主張してきました」とCAITは述べていた。

Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、そしてMicrosoft(マイクロソフト)を含む複数の国際的なテクノロジー大手が、近年、インドのスタートアップ企業に投資している。Amazonも、配車スタートアップのShuttlや、消費者ブランドのMyGlammなど、多くの企業を支援している。2021月3月、同社はリテール決済スタートアップであるPerpuleを約2000万ドル(約21億7000万円)で買収した。

関連記事
グーグルが世界最後の成長マーケットであるインドに1兆円超を投資
アマゾンがインド小売業者のデジタル化を支援する同国スタートアップを買収

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Amazonインド投資Amazon Smbhav Venture Fundeコマースアグリテックヘルスケアスモールビジネス

画像クレジット:Pradeep Gaur/Mint / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

放課後クラスのマーケットプレイスOutschoolがEdTech界で最も新しいユニコーン企業に

子どもの仮想校外活動を行う小さなグループのためのマーケットプレイスOutschool(アウトスクール)は、CoatueとTiger Global Managementが主導する7500万ドル(約82億円)のシリーズC投資を調達した。TechCrunchでは、この取り引きに詳しい筋から初めてこのラウンドについて聞かされていたが、同社はTechCrunchに対して、米国時間4月14日遅く、その事実を認めた。

この新たな資金により、Outschoolの評価額は13億ドル(約1400億円)に達し、1年も経たない前に確定した評価額およそ3億2000万ドル(約350億円)のほぼ4倍に跳ね上がった。

現在までにOutschoolは、今回のものを含め、ベンチャー投資1億3000万ドル(約140億円)を調達した。

関連記事:新型コロナ禍で急成長、小グループのバーチャル教育クラスを展開するOutschoolが47億円調達

同社の評価額の成長曲線は、パンデミックの間に大きな成長を遂げたEdTech企業であることを加味しても、どのスタートアップよりも急勾配になっている。しかしCEOで共同創設者のAmir Nathoo(アミール・ナテュー)氏は、同社の新しい評価額では、昨今の資金調達熱に影響された部分は小さいと話す。今回の資金調達は、収益の安定性がおもな要因だと彼は考えている。

新たにユニコーン企業となった同社の主力製品は、娯楽や補習のための放課後の校外活動だ。継続的なクラスもあれば、単独のクラスもある。会社が大きくなるにつれて、継続的なクラスが事業全体に占める割合は、10パーセントから50パーセントに伸びた。これは、時とともにより安定した収益が増えていることを示唆している。

単独のクラスから継続的な利用へ移行することは、同社にとっても生徒たちにとっても良いことだ。前者の場合、経常収益は投資家の耳に心地よく響く。後者の場合、その活動やグループとの親密性を高める上で、繰り返しの参加は重要だ。ディベートや毎週末のゾンビダンスといった活動を行う継続的なクラスは、子どもたちにまたやりたいという気持ちを起こさせる。

最も人気の高いクラスはどれかと聞かれることが多いナテュー氏は、常に変化していると答えるようにしている。常連客、つまり子どもたちの興味はどんどん移っていくからだ。ある週は算数であっても、別の週はマインクラフトや建築だったりもする。

収益プロファイルが変わったことで、Outschoolは2020年の予約で1億(約108億円)ドル以上を生み出した。2019年は600万ドル(約6億5000万円)、2017年にはわずか50万ドル(約5400万円)だった。2021年に関してナテュー氏は「積極的な成長を予測している」と答えるに留めた。

Outschoolは2020年、予約の大量増加により一時的に正のキャッシュフローを達成したが、ナテュー氏によれば、その後変化したという。

「私の目標は、収益に手の届く距離を常に保つことです」と彼はいう。「しかし、市場の変化は激しく、長期的に採算が取れると思われる機会に積極的に投資することは、理に適っています」

次は何か

ナテュー氏は、2021年末までにOutschoolのスタッフを110人から200人に増やしたいと考えている。特に国際的な成長を見据えてのことだ。2020年、Outschoolはカナダ、ニュージーランド、オーストラリア、英国でもローンチされた。そのため、それぞれの現地やその他の地域での人材募集は続く。

反対に、Outschoolの教師の数は、パンデミック最盛期と同じように伸びているわけではない。パンデミックが始まったころ、Outschoolのプラットフォームには1000人の教師がいた。数カ月のうちに1万人を抱えるまでになったが、採用審査の過程で大量のリソースを消費した。しかし、それが不可欠だったとナテュー氏は説明する。Outschoolは、フルタイムの教師が増えれば収益も上がる。教師は、クラスごとに自分で設定した料金の70パーセントを報酬として受け取り、残りの30パーセントがOutschoolの収入となる。だがナテュー氏は、同社のプラットフォームを従来型の教育を補完するものと見ている。教師を説得してフルタイムで雇い入れ収益を拡大するよりも、プラットフォームにパートタイムの教師を増やすことで成長したいと考えているのだ。

Airbnb(エアービーアンドビー)がプラットフォーム作りに貢献する人たちと収益を分かち合うホスト救済基金を立ち上げたのと同じように、Outschoolは調達した資金の2パーセントを同様のプログラムに割り当て、流動性リスクに備えることを決めた。

Outschoolの目標の中でも、最も野心的なものに、皮肉に聞こえるが学校に入り込むというものがある。一部のスタートアップは、パンデミックの最中に学校に販売を行って成功しているが、学区内での販売サイクルと限られた予算のため、拡大を目標にするならばかなり厳しい事業となる。それでもOutschoolは、学校とその職員と契約を交わすことで生徒の生活と関わり合う道筋を付けたいと考えている。そうすれば、低収入の家庭でも同社のプラットフォームが利用できるようになる。ナテュー氏によれば、企業向けの販売は事業のほんの一部分であり、新型コロナ対策として2020年に始めたばかりの戦略に過ぎないという。現在同社は、B2Bサービスのパイロット事業を、いくつもの学校を相手に開始している。

Outschoolは、国際市場で消費者向け学習に焦点を当てたアーリーステージのスタートアップを買収することも検討している。まだ1つも実行されていないが、EdTech分野では、今や広範囲にわたって企業統合が熱い。

ナテュー氏は、Outschoolの成長は続くと強調する。たとえ学校が再開しても、パンデミック後の不安に対処する方策がすでに固まっている。

「人と直接対面する活動には、大きなスパイクが起きるはずです。みんなが今すぐやりたいことだからです」と彼はいう。「しかしその後は、今よりも分散した形に落ち着くでしょう。教育の未来はハイブリッドですから」。

さらに彼は、Outschoolのオンライン学習に対する信念は、創設前の構想段階から変わっていないと話す。同社は、単位取得のための、専門分野のデジタル学習にはチャンスを求めたことがない。ずっと、放課後の補完的活動で子どもたちを援助することに集中してきた。

「これは、教育システムのなかでも、あまり手の届かなかった、見落とされがちだった部分です」と彼は話す。「オンライ学習の利点は、利便性、コスト、そして地域によっては機会が得られないような学習内容の豊富さという面で、今後も存続します」。

カテゴリー:EdTech
タグ:Outschool資金調達ユニコーン企業コラム

画像クレジット:Bryce Durbin

原文へ

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:金井哲夫)

ケビン・コスナーとロードトリップしたい?投資家たちはみんなそうだと確信している

Woody Sears(ウッディ・シアーズ)氏は以前からストーリーテリングに関心を抱いていた。2007年に初めてiPhoneが登場した後、iPhoneとiPad向けに児童書のナレーションと挿絵のライブラリを構築したストーリーテリングアプリのZuukaの基礎を作った。

シアーズ氏は後に、その会社をニューヨークを拠点とする小さな会社に売却した。だが、カリフォルニア州サンタバーバラを拠点とするシアーズ氏は、まだストーリーテリングを終わりにしたわけではなかった。その代わりに、2番目の会社となる新たなストーリーテリングのスタートアップであるHearHereのために160万ドル(約1億7571万円)の開業資金を調達したところだ。そのサブスクリプションベースのオーディオ・ロードトリップ・アプリでは、ユーザーが許可すると運転中にプッシュ配信し、3~5分の番組で、まったく知ることのなかった興味深い場所などの、周辺についてのちょっとした情報を提供する。

その狙いは地域の無名、あるいは忘れられた歴史を浮上させることだ。こうしたことは、より多くの人々がロードトリップを再びし始め、TikTokから子どもたちの注意をそらせたいと切に願う親たちが増えた世の中では意味がある。実際、シアーズ氏の隣人であるKevin Costner(ケビン・コスナー)氏は、こうしたアイデアに賛同し、最近、この5人のチームに共同創設者、ナレーター、投資者として参加した。Snap Inc.、法律事務所のCooley、Camping WorldのCEOであり、リアリティTVのスター であるMarcus Lemonis(マーカス・レモニス)氏、AAAやNextGen Venture Partnersも含めた多数の個人投資家たちもともに参加している。

私たちも歴史やロードトリップが(本当はケビン・コスナー氏が)好きなので、先ほど、シアーズ氏とコスナー氏に、他のリッチコンテンツのジオロケーションベース・アプリが本格的な選択肢として不十分な中で、なぜHearHereが成功すると考えるのかを聞いた。

以下、長さに関して軽く編集した会話の抜粋。

TechCrunch(以下、TC):米国のオーディオマップを作成されていますが、現時点でどの位のストーリーが用意されていますか?

ウッディ・シアーズ氏(以下、WS):22州全体で5500話までのストーリーが完成していて、夏までに全国を網羅する予定です。その地域の歴史、自然、個性的な人物たちのストーリーを提供して、旅先と人々を結び付けるのが目的です。また、スポーツや音楽のストーリーでローカル・インサイトも提供していきます。

TC:収集して、編集、録音するコンテンツがたくさんありますね。進行の様子はいかがですか?

WS:結局のところ、コンテンツが最も重要なので、トラベルジャーナリズムの経歴を持つ、リサーチャー、ライター、編集者、ナレーターから成る22人のチームで、最新の注意を払いながらストーリーを制作しています。そうしたチーム・アプローチで、最高の結果が得られると心底感じています。

最終的にはサードパーティーのコンテンツコントリビューターに開放して、プロのコンテンツとユーザー生成コンテンツの両方をホストしていく予定です。

TC:AIのコンポーネントはありますか?もしくは、これから用意する予定はありますか?

WS:このアプリは、旅行中にストーリーが風景に重ね合わされ、異なる視点を提供するという点で、むしろ拡張現実だと考えていますが、AIや機械学習は外国語やエンドユーザーのニーズにより合わせたコンテンツをてがけ始めたら組み込んでいく予定です。

TC:コンテンツ・ライブラリーを構築する際に、伝えるストーリーにはどのように優先順位を付けていますか?

WS:主要な歴史的な場所は非常に魅力的ですが、あまり知られていないすばらしい場所も探しています。それから、どの高速道路を使い、どの景色の良いルートが好まれるのかという、観光旅行の際の移動方法にも注目しています。

TC:サブスクリプションの内容はどのようなものですか?

WS:毎月5話のストーリーを無料で利用できます。無制限のストリーミングは年間35.99ドル(約3952円)です。

TC:ケビンさんには、多くのスタートアップの提案や投資の機会があったと思います。なぜこれに深く関わるようになったのですか?

ケビン・コスナー(以下、KC):どう見ても私はストーリー志向なので、このように関わるようになったことを誰も驚きませんでした。でも、あなたの言うとおり、多くの提案はされてきました。

HearHereについては、ウッディが私と話したいことがあるのだと、妻から伝えられました。彼女がそれを説明してくれたので、どんなものかを知ったのです。特に私たちの国に関して、ストーリーテリングをしたり、良いストーリーを生み出す力があるというのは、とてもすばらいく感じました。

だから、ミーティングを開いてコンセプトを説明してもらいました。その内容は、どこに行っても記念プレートに立ち寄り、歴史的意義について読むという、私がこれまでずっとしてきたことに似ていました。立ち寄っていると、みんなの旅行を妨げることになりますけどね(笑い)。クルマに残っている人たちは、立ち止まったせいで不満げですが、外に出て脚を伸ばし、少しばかり歴史について読んで、想像を膨らませたりしていたんです。

私にとって、この製品はその延長線上にあります。発展したより詳しいストーリーを車から降りることなく聞くことができるのです。車で通り過ぎていたものにも、もっと関わることができるし、同乗者たちも、私が立ち止まるほど引き付けられた魅力を感じることができるかもしれません。

画像クレジット:Hearhere

TC:歴史がお好きなんですね。

KC:HearHereは歴史だけではありませんが、私は歴史に引きつけられました。こうして、この会社にもっと関わりたいと考えるようになり、さらに知ることで、創設者として参加したいと思ったのです。

TC:AAAやCamping Worldが戦略的投資家となっています。彼らはどのようにアプリを宣伝していくのでしょうか?また、適切なタイミングでHearHereを発表するために、他にどのようなパートナーシップを締結しましたか?

WS:Camping Worldは世界最大のRV(Recreational Vehiclem,レジャーを楽しむためのクルマ)オーナーの組織であるGood Sam Clubも所有し、AAAは米国に5700万人の会員がいる巨大組織です。このアプリのことは、現在オーディエンスに提供していないサービスを実現させる手段だと捉えられています。デジタルへの架け橋となるこのアプリをこうした会員や顧客に提供できることを本当に喜ばしく感じています。

また、(RVマーケットプレイスの)OutdoorsyやRVshare、そして、(RVレンタルおよび販売会社の) Cruise Americaとも提携しています。今話題のマーケットです。

TC:これまでも似たようなアイデアがありました。カテリーナ・フェイクのFinderyは、ユーザーがその場所の詳細を知るのに役立つことを目指した初期のアプリでした。Grouponの共同創設者のアンドリュー・メイソンが設立したスタートアップのDetourは、都市のウォーキング・オーディオ・ツアーを提供していました。興味深いものでしたが、人気は出ませんでした。このスタートアップがうまくいくと考える理由は何ですか?

WS:Detourは好きでしたよ。私は両方とも、とても気に入っていました。

Detourがプロダクトマーケットフィットを逃したのは、使えるシナリオの数や、ユーザーの時間を得る必要があったからだと思います。私たちがロードトリップから始めようと決めたのは、囚われの聴衆がいるからです。歴史を探索する際に、本やツアーガイドなどのあらゆる選択肢がある町中とは違い、運転中はできることがあまりありません。それに、歩き回っているときは気が散り、2時間ほど割く必要もあります。

私たちは旅の途中にある、あまり知られず、語られていないけれども人を魅了する場所を捉えていきたいと考えています。短時間の形式で始めるのが功を奏することでしょう。オンデマンドなので、あらかじめ指定されたルートに従う必要はありません。左折したり、右折したりしなくてはならない、特定のツアーに連れて行くわけでもありません。どんなルートを取っても、ストーリーを提供していきます。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:HearHereケビン・コスナーロードトリップアプリ

画像クレジット:Yellowstone

原文へ

(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

スタートアップにとって今年はアツい夏になるかも

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。
準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

スタートアップたちにとって、忙しい夏になるかもしれない。

現在、経済が改善しつつあるからだ。失業率は低下しつつあるし、金利は低く保たれたままだ。市場にはたくさんの資金が溢れ、第3四半期には第1四半期のようなIPOの波が戻ってくることが期待されている。予防接種が広範囲に及んで、元に近い生活に戻ることで、ビジネスの世界も一気に加速できるようになるかもしれない。

もちろん、注意すべき点もある。多くの人々がこの復興から取り残されているのだ。そして、ワクチン接種へのためらいが、驚くほど一般的に見られるが、致命的に愚かな態度だ。しかし、期待される夏の経済状況、好調な市場、デジタルトランスフォーメーションの加速が続くという一般的な見方から、ハイテク業界はこれから(より)ホットな季節を迎えることになるだろう。

これは、スタートアップ企業にとっては朗報だ

すでにそうした動向を先取りした報告も始まっている。Wired(ワイアード)による、VCがスタートアップたちに迅速な投資を呼びかけているという最近の記事は、一読の価値がある。このことは、私が毎週のように話をしているスタートアップの多くが、順調な第1四半期を終え、第2四半期については心配していないようにみえることからも裏付けられる。もし私が、偶然にもうまくいっている創業者たちとばかり話していて、苦労しているスタートアップ企業を見落としているというわけではないなら、技術系の会社を作るにはかなりいい時期だと思われる。

先週初めに行われたPlaid(プレイド)のラウンドは、私が述べていることをよく表している。Plaidは、APIを活用したコンシューマー向けフィンテック企業だ。同社のCEOであるZach Perret(ザック・ペレット)氏は、TechCrunchの取材に対して、2020年1年間で金融サービスの世界のデジタル化がどれほど加速したかを語った。その通りだ。より平常なときならば、うまくやっていただろうスタートアップ企業たちも、彼らの市場が自分たちの方向に動いていることに気がつき始めた。それも急速に。だからこそPlaidには、現在2020年初頭の約3倍となる、130億ドル(約1兆4000億円)を超える価値があるのだ。

関連記事:Visaによる買収が破談になったフィンテックPlaidが約467億円調達

好調なスタートアップには、十分な資金が提供される。Ramp(ランプ)の最新のラウンドは、その点を明確にしている。そのため、経済全般や技術分野が加速すれば、投資家の財布の紐がさらに緩むことになる。暖かい季節になるにつれ、ビジネス環境も暖まっていくだろう。

つまり、それ以外には、Clubhouse(クラブハウス)のニュースTopps(トップス)のニュースを説明できないのだ(Toppsは有名なベースボールカード提供企業)。TechCrunchは、みんなが大好きなベースボールカードとNFTとお菓子の間の領域をカバーしなければならなかった。

来週のThe Exchangeでは、世界各国のベンチャーキャピタルの、2021年第1四半期の数字を掘り下げる予定だ。2021年のスタートがどれほど大きなものだったかはすぐにわかるだろうが、私たちにはなんとなく予想がついている。

Kudo、Coinbase、Canva

技術系スタートアップの成長や、暑かったり、暖かかったりする状況というテーマに立ち返って、先週の話題にいくつかのデータを追加しよう。

先週Kudo(クド)のCEOにインタビューしたのは、同社が2100万ドル(約23億円)のシリーズAラウンドの資金調達を発表してから数日後のことだった。私はこの「サービスとしての翻訳」(translation-as-a-service)企業を2020年行ったシードラウンド後に取材している。同社のCEOであるFardad Zabetian(ファーダッド・ザベティアン)氏によれば、2020年3月の時点では従業員数は14名だった。それが現在は150名となり、さらに50名以上の人材を募集中とのことだ。普通数回の増資だけでは、このような成長を目にすることはない。まあそれが成長というものだ。

関連記事:リアルタイム通訳・ビデオ会議のKudoが6.5億円調達、新型コロナが追い風に

Coinbase(コインベース)の絶好調の第1四半期は、過去10年間に開発された技術が成熟し、利益を生むようになっていることを示している。この会社の驚異的な収益の伸びと、ほとんど笑ってしまうような利益率は、間近に迫った直接上場を、私の予想以上に大きな出来事にしてくれるだろう。米国時間14日を心待ちにしておこう(その他のCoinbaseについては こちら)。

関連記事:上場間近のCoinbase、絶好調の2021年第1四半期決算を読み解く

そして、Canva(キャンバ)だ。7100万ドル(約78億円)の2度目の調達を経て、評価額を変えた。Crunchbaseのデータによれば、このクラウドデザイン企業の評価額は、2020年6月の約60億ドル(約6583億円)から150億ドル(約1兆6457億円)に上昇している。さらに、同社は共有する価値のあるいくつかの成長指標を発表した。

  • Canvaは年商5億ドル(約549億円)を突破した
  • 2020年Canvaは130%成長し、利益を出した(ただし、どのような内容かはわからない)
  • Canvaの月間アクティブユーザー数が5500万人になった

そして、株式公開は予定していない。はい、笑ってよし。その理由を同社のCEOであるMelanie Perkins(メラニー・パーキンス)氏に聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。

急ぐ必要はありません。当社は利益を上げていますし、非常に幸運なことに当社のビジョンや価値観に賛同してくれる投資家をまだ見つけることができます。私はよく「Canvaではまだ1%しか達成できていない」と言っています。私たちは、ビジュアルコミュニケーションを通じて、すべてのチームが目標を達成できるようにするという大きなビジョンを持っています。まだまだ達成しなければならないことがたくさんあるので、すぐに上場する予定はありません。とにかく今は急ぐ必要はないのです。

まあ、これだけは言っておきたいが、公開しなければならないのは、急がなければならない理由があるときだけではない。ただ単に、報道に関わる私たちを、新しい数字を発表して張り切って働かせるためだけに公開することもできるのだ。

その他のことなど

先週は充電のために少し休んでいたので、今回のニュースレターに期待されていたニュースやメモがいくつか落ちているかもしれない。だが休養したことで、The Exchangeはもっと大きく、もっと良く、もっとデータ満載で、ジョークも増えることになるだろう。私たちの小さなチームに加わる人もいるようなので、大きな計画を立てている最中だ。

では今回はこの辺で。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchange

画像クレジット:Nigel Sussman

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

慢性的に過小評価と資金不足に悩まされる有色人創業者支援プロジェクトをBlack Innovation AllianceとVillage Capitalが結成

Black Innovation Alliance(ブラック・イノベーション・アライアンス)とVillage Capital(ビレッジ・キャピタル)は米国時間4月7日、有色人ファウンダーが率いる有色人ファウンダーのための起業家支援組織(ESO)の取り組みを支援するResourceと名づけた国家的プロジェクトを発表した。

プロジェクト結成の動機は単純明快だ。ESOは「記録的な需要の高まりとリソースの減少に直面しており、慢性的に過小評価と資金不足に悩まされています」と同組織はいう。

Resourceの目的は地域のアクセラレーターやインキュベーターに教育やコミュニティというかたちで支援することだ。

Resourceの「ESOアクセラレーター」はスタートアップエコシステムのリーダーに財政的に維持可能な組織の作り方を教えるとともに、彼らが出資者候補とつながる手助けをする。

Resourceは有色人のESOリーダーと彼らの出資者による実践的な全国コミュニティを作り、ベストプラクティスを共有し、全米の黒人、ラテンアメリカ人、先住民ファウンダーのための「強力な資金とメンターシップの道筋を開拓する」計画も持っている。

Village CapitalのCEOであるAllie Burns(アリー・バーンズ)氏によると、同社は「歴史的に投資家の盲点にいた起業家に支援と出資を行ういます。盲点になった原因が解決しようとしていた問題であれ、地理的条件であれ、資金がごく一部の人々や場所、問題に集中する原因となっている人口統計学的要因であれ、構いません」。Village Capitalはこれまでに100以上のESOと一緒に仕事をして、過去5年間にわたりあらゆる生い立ちのファウンダーの会社の成長を支援してきた。

Resourceの目標は、有色人種の支援に力を入れているインキュベーターやアクセラレーターが、成功に必要なリソースを確実に得られるようにすることだと彼女は付け加えた。

「アクセラレーターやESOが持続、成長できるために、財政的、社会的および人的資産を持てるようにするのが私たちの願いです」とバーンズ氏はいう。

Black Innovation Allianceのエグゼクティブ・ディレクターであるKelly Burton(ケリー・バートン)氏は、黒人が率いるこれらの組織は黒人起業家支援の最前線にいることが多いのに、その成功の恩恵に預かっていないと指摘する。

「彼らは支援も資金もほとんど受けていません」と彼女は言った。「まるで彼らはすべての力仕事を引き受けているかのようで、種まきや栽培を全部やっているのに、そのファウンダーやスタートアップが成功しても利益を受けていません。これは私たちにとって、彼らが自分たちの能力を高めて組織を持続可能にするのを手伝って組織を安定させるチャンスです」。

Resourceは、有色人起業家の支援を表明している資金提供者の全米連合から支援を受けている。初期の連合メンバーにはMoody’s、The Sorenson Impact Foundation、Travelers、およびUBSらがいる。

これに関連して、TechCrunchはニュージャージー州のPhil Murphy(フィル・マーフィー)知事の、州予算1000万ドル(約11億円)を投じて黒人およびラテンアメリカ人スタートアップのシードファンドを作る提案について報じた。

記事中、本誌は多様なファウンダーへの出資を約束した組織が数多く存在していることを伝えた。

2021年2月に、国とシカゴ拠点のいくつかの組織が団結し、アーリーステージの黒人、ラテンアメリカ人起業家を支援するTechRiseというプログラムを立ち上げた。非営利団体のP33は、Verizonと民間ビジネスインキュベーターテクノロジーハブの1871などと提携して同プログラムをスタートし「シカゴの貧富差を縮め、数千のテック関係職を生み出し、黒人、ラテン系起業家に500万ドル(約5億5000万円)の助成金を出す」目標を掲げたことをChicago Sun Timesが報じた(情報開示:VerizonはTechCrunchの親会社)。

テキサス州オースチンでは、DivIncという非営利プレアクセラレーターが恵まれないテックファウンダーのために12週間のプログラムを開講した。2016年Dellの元幹部であるPreston James(プレストン・ジェームズ)氏が設立した組織は「有色人および女性起業家に力を与え、教育、メンター、バーチャルネットワークなどの利用を提供することによって成功する高成長ビジネスの構築を手助けする」ことを目指している。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Black Innovation AllianceVillage CapitalResource

画像クレジット:pinstock / Getty Images

原文へ

(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook

KKRがアジアの消費と都市化をターゲットにアジア太平洋地域最大級となる1.7兆円のファンドを組成

KKRが、アジア太平洋地域を含む新規および既存のグローバル投資家からの強い支持を受けて、当初の目標額を上回る150億ドル(約1兆6569億円)のアジア向けプライベートエクイティファンドの組成を行った。

今回のファンドは、KKRが4年前にAsian Fund IIIを93億ドル(約1兆円)で組成して以来のことで、このニューヨークを拠点とするオルタナティブアセットマネジメントの巨人がアジアに関心を持ち続けていることを示している。またKKR Asian Fund IV は、アジア太平洋地域に特化した最大級のプライベートエクイティファンドとなった。

KKR自身は、同ファームとその従業員のコミットメントを通して、他の投資家と並びFund IVに約13億ドル(約1436億円)を投入する。新ファンドでは、企業のカーブアウト、スピンオフ、統合などとともに、消費や都市化のトレンドに向けての投資機会を探していく。

KKRは、16年前にアジア太平洋地域に進出して以来、プライベートエクイティ、インフラ、不動産、クレジットなどの多面的なアプローチで、この地域に積極的に投資してきた。現在、同地域で300億ドル(約3兆3138億円)の資産を運用している。

同ファームは新型コロナ禍でも活躍してきたが、その一方で、パンデミックはオンライン活動への移行を加速させ、健康に対する危機の中でも、粘り強い力を発揮したハイテク企業を浮かび上がらせてきた。また、2020年の市場の混乱により、評価額が魅力的になり、企業は新たな資本源を求めるようにもなった。全体としてみれば、これらの力は「KKRのような柔軟な資本提供者にとって、ますます興味深い機会を提供しているのです」と、同社広報担当者であるAnita Davis(アニタ・デービス)氏はTechCrunchに語っている。

パンデミック以降、KKRはアジアで複数の戦略を展開し、約70億ドル(約7732億円)を投入してきた。

KKRはアジア全域で案件を探しているものの、各市場は経済状況に応じた違うかたちの機会を提供している。消費のアップグレードに関しては、KKRは中国、東南アジア、インドなどの新興市場の企業を探しているとデービス氏はいう。これに対して、日本、韓国、オーストラリアなどの先進国では、ROE(株主資本利益率)を重視した継続的なガバナンス改革により、コングロマリットからのカーブアウトや多国籍企業からのスピンオフを進めていると、デービス氏は付け加えた。

具体的には、KKRのアジアにおけるプライベートエクイティポートフォリオは、11カ国の約60社の企業で構成されている。代表的な案件としては、TikTok(ティックトック)の親会社であるByteDance(バイトダンス)が急成長する中で2018年に30億ドルの資金調達を共同で主導したことや、2020年にReliance Jio(リライアンス・ジオ)に15億ドル(約1647億円)の資金提供を行ったことなどが挙げられる。

関連記事:TikTokのByteDanceが世界最大のスタートアップに――Uberを抜く会社評価額で資金調達完了

KKRのアジアパシフィックプライベートエクイティ部門の共同責任者である平野博文氏は「アジア太平洋地域におけるプライベートエクイティ投資のチャンスは驚異的です」と語る。「各市場にはそれぞれ特徴がありますが、地域の成長を支える長期的なファンダメンタルズは一貫しています。消費のアップグレードに対する需要、中産階級の急速な成長、都市化の進展、破壊的技術の登場などです」。

今回のAsian Fund IVは、KKRが2021年1月に行ったアジアに特化した他の2つのファンド、39億ドル(約4308億円)のAsia Pacific Infrastructure Investors Fund17億ドル(約1878億円)のAsia Real Estate Partners Fundに続いて組成されたものだ。

関連記事:セコイアキャピタルがインド・東南アジア向けに1450億円、ベンチャーファンドとグロースファンドを設立

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:KKRアジア

画像クレジット:owngarden/Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:sako)

スタートアップたちは売りどきを逃したかもしれない

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

みなさん、お元気でお過ごしだろうか。みなさんが、心穏やかで健康であることを心から願っている。私は昼寝の習慣を身につけつつある。ニュースのサイクルが決して遅くならないことに気づいてからは、私の生活の必須項目となったのだ。また、パートナーと私は、早起きが好きな3匹目の犬を飼ったので「ワクチンの夏」に向けて私たちが休めるように「大人の昼寝」をみんなでクールなものにしていきたい。もうすぐだ。

さて仕事の話題だ。本日はいくつか、データに関する重要な話題をお伝えしたい。すなわち、2021年第1四半期のM&Aデータ、2021年3月のアフリカにおけるVCの結果、そして(少なくとも私にとっては)意外なポッドキャストの数字だ。

まず1つ目は、Dan Primack(ダン・プリマック)氏がRefinitiv(レフィニTV)を通じて紹介してくれた、いくつかの第1四半期の初期段階のデータだ。金融データ会社によると、2021年第1四半期の世界のM&A活動は1兆3000億ドル(約143兆9000億円)に達し、2020年第1四半期から93%増加した。米国のM&A活動も、第1四半期に過去最高を記録した。なぜこれを気にかけるのか?要するに、このデータは、この3カ月間がいかにホットであったかを強調するものだからだ。

同四半期のベンチャーキャピタルのデータ自体もまた、同様にすばらしいものになることを期待している。しかし、誰もが気がついているように、第2四半期の始まりである先週、IPO市場にいくつかの亀裂生じ、2021年の第2四半期はまったく異なるものになる可能性が出てきたのだ。といってもベンチャーキャピタルの世界自身が停滞するわけではない。特にTiger(タイガー)が67億ドル(約7416億円)という多額の調達をしたことを考えるとそれは明らかだ。

関連記事:Tiger Globalが同社最大のベンチャーファンドを約7351億円でクローズ

2つ目のベンチャーキャピタルについては、アフリカに特化したデータ会社であるBriter Bridges(ブライター・ブリッジ)の報告によると「Flutterwave(フラッターウェーブ)が、10億ドル(約1106億8000万円)の評価額の下に1億7000万ドル(約188億1000万円)という巨額のラウンドを実施したこともあり、2021年3月だけで2億8000万ドル(約309億9000万円)以上がアフリカで活動するハイテク企業に投入された」という。

このデータは、少なくとも2017年以降この3月が、アフリカ大陸のベンチャーキャピタル活動が最も活発だったことを示すものだ。私は歴史上最も活発だったのだろうと考えている。アフリカのスタートアップ企業は、下半期に多くの資金を調達する傾向があるため、この3月の結果は単月での史上最高記録ではない。しかし強気が続くことには変わりがないし、第2四半期のベンチャーキャピタルの業績は大きなものになるだろうという私たちの一般的な期待も高めてくれる。

そして最後に、Index VenturesのRex Woodbury(レックス・ウッドバリー)氏が、Edison(エジソン)のデータをツイートしたが、それによると「8000万人のアメリカ人(米国の12歳以上の人口の28%)が毎週ポッドキャストを聴いていて、前年比で17%増加している」らしい。ウッドバリー氏はさらに「米国の12歳以上の人口(約1億7600万人)の62%が毎週オンラインオーディオを聴いている」と付け加えている。

先週のEquityでもご紹介したが、ここ数カ月、消費者向けソーシャル企業としてブレイクしているClubhouse(クラブハウス)の成功を受けて、音楽以外のストリーミングオーディオ市場は多くのプレイヤーが賭けに乗り出している。Discord(ディスコード)やSpotify(スポティファイ)などによる賭けの背景には、上に挙げたようなデータの存在があるのだ。人間は、他の人間の話を聞くのが好きだ。それは音楽優先の私が想像していたものよりも、はるかに多い。

消費者向け投資に、力が注がれる時代に戻ってきたことが、どれほどうれしいことだろうか。B2Bはすばらしいものだが、すべてがエンタープライズSaaSになるわけではない(しかし、Clubhouseが自らの宣伝効果を維持するのに苦労していることには注目する必要がある)。

ベンチャーキャピタルのラウンドすべてにはついていけていない

先週はTechCrunch Early Stageが開催されたが、これはなかなかうまくいった。しかし、イベントを手伝ったことで、今週は思っていたよりも取り上げられるラウンド数が少なくなってしまった。そこで、もし時間に余裕があれば取り上げていたであろう2社を紹介する。

  • Striim(ストリーム)の5000万ドル(約55億3000万円)のシリーズC:Goldmanがこの取引を主導した。Striim(私は「ストリーム」と発音するのだろうと思っている)は、クラウドとオンプレミスの両方で、データをリアルタイムに移動させることができるソフトウェアを、企業向けに提供するスタートアップだ。現在のデータ市場の活発さを考えると、StriimのTAM(最大可能市場規模)は大きいのではないだろうか?「Quickly flowing」(超速流)とか?まあお暇なときに、ストリーム中心のもっとマシな言葉を考えて欲しい。
  • Kudo(クド)の2100万ドル(約23億2000万円)のシリーズA:2020年7月にKudoが600万ドルを調達した際に取材している。同社は、リアルタイム翻訳を備えたビデオチャットや会議サービスを提供している。ご想像の通り、COVID時代を謳歌している。シードラウンドに参加したFelicis(フェリシス)がシリーズAを主導した。今週、同社の新たな成長指標を引き出せるかどうか見てみることにする。注目すべき対象だ。

さらに、見逃してはいけない2つのラウンドがあった。Holler(ホラー)はシリーズBで3600万ドル(約39億9000万円)を調達した。当社のAnthony Ha(アンソニー・ハー)記者によれば「会話的メディアが何であるかを知らなくても、おそらくHollerの技術を使ったことはあるでしょう。例えばあなたがVenmoの支払いにステッカーやGIFを追加しようとしたなら、Hollerは実際にそのメディアのための、アプリによる検索やサジェッションを管理しています」ということだ。

老いを感じるね。

また、ラテンアメリカの技術に十分な注意を払っていないなら、このウルグアイの1億5千万ドル(約166億円)のラウンドが目を覚ますのに役立つだろう。

関連記事
リアルタイム通訳・ビデオ会議のKudoが6.5億円調達、新型コロナが追い風に
好きなアプリで「会話的メディア」を実現するHollerが40億円調達

その他のことなど

先週は、良いニュースが飛び込んできた。当The Exchangeをある程度お読みの読者は、私が公開ソフトウェア企業の先行きを予測するために話題として取り上げているBessemer(ベッセマー)のクラウドインデックスのことはご存知だろう。このたび、また市場に新しいインデックスが登場したのでご紹介したい。

Lux(ラックス)の「Health + Tech」(ヘルス+テック)インデックスだ。Lux Capitalによれば、このインデックスは「急速に台頭してきたHealth + Techという投資テーマを最もよく代表する57の上場企業のインデックス」だということだ。もちろん、これはBessemerのコレクション同様に、支援しているベンチャーキャピタル(Lux)に結びついている内容だ。だが、Luxの新しいインデックスは、Bessemerのコレクションと同じように、特定のベンチャーファームが自分のポートフォリオ内の公開企業を、どのように追跡しているかを示してくれるものだ。

便利なものなので、もっと増えて欲しい。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchange

画像クレジット:Nigel Sussman

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

【コラム】投資家とビジネスリーダーが今こそ導入すべきもの、それはコーチング

本稿の著者Ariane de Bonvoisin(アリアンヌ・ドゥ・ボンヴォワザン)氏は、最高経営責任者やスタートアップの創業者でVCのエグゼクティブコーチを務めている。彼女はOprahカンファレンスで基調講演を行い、TEDで講演した後、Google、Amazon、世界銀行、Union Square Ventures、Red Bullに招かれ、変化と創業者、スタートアップのウェルネスについて教えている。

ーーー

ビジネスの世界は、コーチングとは愛憎相半ばする関係のようだ。創業者たちはビジョナリーだ。彼らはアイデアと才能と夢は最初から持っているが、ビジネスのノウハウは必ずしも備えていない。起業家になるのにライセンスやトレーニングは必要ないからだ。Jeff Bezos(ジェフ・ベゾフ)氏はエンジニアでコンピューター科学者、Elon Musk(イーロン・マスク)氏は経済学者で物理学者という具合に、特定の資格が必要なわけではない。

他の業界では、すばらしい才能を持つ人物(アスリート、歌手、俳優など)がキャリアアップするために最初にやるのは、コーチを雇うことだ。そういう人物は、オリンピックで金メダルを獲っても、グラミー賞を獲っても、コーチングを受け続ける。

コーチのほうも、コーチングを受ける人のキャリアの最後までコーチングを提供する。タイガー・ウッズは、戦術を変え、パフォーマンスで他者に抜きん出るために多くのコーチを雇ったことで有名だ。

この国の文化は、自分の会社を築く創業者たちを、精神的にも肉体的にも個人的にも限界まで追い込む。創業者は単独でビジネスを行うものだという考えも根強くある。創業者たちは、助けを求めるのは弱さの象徴であると信じるようになっている。

この不名誉な社会的烙印を押されることに問題の多くの部分がある。我々がビジネス界の大物を尊敬しているのは、大学を卒業してから経営幹部レベルにまで難なく登りつめた人だと信じているからだ。しかし、水面下での苦労や努力は我々には見えない。私のクライアントが以前、こんなことを言っていた。最高と言われるリーダーたちでも、少なくとも生涯の3割の時間は自己破壊的な行いをしているという。シリコンバレーのトップクラスの億万長者たちは、栄養、子育て、瞑想、生活習慣などのコーチングを受けているが、私のクライアントの半分がそうであるように、彼らはその事実を表に出すのを嫌がる。

VCは、ビジネスに投資するのではなく、人に投資するのだということを分かっている。今、大量の資金がメンタルウェルネス関連スタートアップに流れているが、投資家たちは創業者自身のメンタルにも意識を向ける必要がある。投資先企業のすべての創業者たちがコーチングを利用できるようにすることで、ビジネスにエネルギーを注ぎ込むのを妨げている本当の問題に取り組むことになり、間違いなくVCとしての利益も向上するだろう。

1. 創業者が抱えているのはビジネスの問題だけではない

私はスタートアップの創業者やCEOをコーチングしているが、彼らの人生の難題の半分以上は仕事以外のことだ。彼らは実にさまざまな問題を抱えている。癌を患っている者もいれば、浮気をしている者もいる。IVF(特発性心室細動)に苦しんでいる者もいれば、過去の苦悩やトラウマに悩んでいる者もいる。

仕事関連では、コミュニケーションや心理的な問題を抱えていることが多い。「失敗の恐怖にどう立ち向かえばよいか?」「50人のチームを率いることになったが、これまでそうした経験もないのにどうすればよいのか?」「自分の直感を信じるべきかどうか?」といった問題だ。

こうした問題は、シリーズAの資金調達の最中に起こる。従業員の雇用と解雇、買収、ブリッジ資金を調達するか廃業にするかの決断といったことを行う必要があるからだ。こうした本質的な問題に1つ1つ対応しながら投資家の前や取締役会では平気を装うのに、創業者たちが(いや、誰でもそうだと思うが)どれほどの精神的エネルギーと時間を費やすのかを想像してみて欲しい。

創業者が私に話してくれる心配事の中で最も多いのは、彼らは孤独を感じているというものだ。

VCが誰かに資金を調達するということは、その人の過去、家族、個人的問題をすべて受け入れるということでもある。すべて込みである。次のように自問してみて欲しい。「現在、投資先企業の創業者たちすべての人生においてビジネスの妨げになっている主要な懸念事項を把握しているだろうか」と。もし把握していない場合は、彼らの人生に何か仕事以外の問題が起こっていると仮定してみることから始めてみよう。そして彼らがいつでもコーチングを利用できるようにしてみよう。

創業者たちに対して、自身の恐怖、自信の減退、盲点に対処するためのサポートを提供することは、会社または業界のリーダーとしての彼らの潜在能力を引き出すことにつながる。健全な企業は健全なリーダーシップがあってこそ成立するのだから。

2. コーチングの効果(ROC)

一流サッカー選手のコーチと同様、ビジネスコーチングの利点は明白である。しかも億単位の経費がかかることもない。創業者はコーチングを受けると、最初から意思決定の質が向上し始める。従業員を採用して研修したものの1カ月以内に解雇してしまうようなことがなくなり、適切な人材を雇用するようになる。

利害関係者とも誠実に会話するようになり、争い事を避け、多くの人たちがビジネスの成長に有意義に貢献できる環境を築けるようになる。資金調達についても正しい考え方をするようになり、そうした姿勢によって目標調達金額を達成できる。

さらには身体面でも改善が見られるようになる。私のコーチングを受けた創業者たちは、減量に成功し、飲酒喫煙もやめ、ビジネスの構築により多くのエネルギーを注ぐようになった。多くの創業者たちがそうだが、慢性疲労状態で働き続けると、すぐに体が悲鳴をあげる。私のところにも、大きな会議の前にパニック発作を起こしてしまい、ピリピリしている神経を何とか落ち着かせようとしているクライアントから電話がかかってくることがある。

創業者の健康に資金を出す方法はいろいろだ。投資先企業にマーケティングやPRサービスを提供するのと同様に、コーチングもサービスの一部として提供すべきだ。従業員のために管理職向けコーチを設置することもできる。必要なときにいつでも利用できるフルタイムの常駐コーチを選択するのもよいだろう。

VCは、少なくとも、推奨するコーチの一覧を用意する必要がある。リーダーシップのコーチング専任のコーチもいれば、女性創業者や健康面専門のコーチもいる。さまざまな個人スキルや職業スキルに対応しているコーチもいる。

中には、創業者にいくつかの無料セッションを提供し、創業者が継続を希望すれば、創業者個人の健康とビジネスの健全性のどちらについてコーチングを受けるか選択してもらう投資家もいる。そのビジネスには、他の投資家たち(読者のみなさんのVCも含め)も億単位の資金を投資しているだろう。しかしこれは、創業者個人の健康かビジネスの健全性か、どちらか一方だけサポートすればよいという話では決してない。

私の望みは、将来、VCが資金の一部を創業者と経営幹部のメンタルヘルス用に確保するようになることだ。

そうした目的に1%を確保することを誓約しているVCも数社存在するが、この領域で先頭に立っているのは欧州だ。エストニアやアイルランドのファンドは、すべての創業者のコーチング料とその他のサポートプログラム費用を出すという太っ腹ぶりだ。私の知っているプログラムでは、資金を枯渇させることなく10倍の成長を達成する方法について教えている。

3. 社会的汚点を打ち砕き創業者がコーチングを最大限に活用できるようにする

創業者たちは、投資家や取締役たちにどう思われるかを気にして自分でコーチを雇いたがらない。「自分が正常で優秀なら、コーチなどいらない」と自らに言い聞かせているのだ。

そう思っているのは何も彼らの内なる声だけではない。私のクライアントの1人は、シリコンバレーのスタートアップに入社したとき、コーチングを彼の報酬パッケージに含められるかどうか上司に聞いたところ、なぜコーチなど必要なのか不思議に思われたという。

他の業界では、誰かにコーチを付けることはその従業員の価値を認めていることの証である。投資家も次のような会話を持つべきだ。「君にはお金を出す価値があると思う。だから、今後の君のキャリアを支援するコーチを付けることにする。自分はできるなどと無理をしないでいつでも相談して欲しい」。

「メンタルヘルス」という言葉には否定的なニュアンスもあるため、この用語も考え直す必要がある。メンタルとヘルスという2つの単語は、うつ病、自殺思考、中毒といったことを連想させる傾向がある。つまり、精神的に不健康な状態だ。メンタル面の健康と創業者の健康についてもっと話そう。そうすれば、我々が掲げる目標の達成により注力できるようになる。

不名誉な社会的烙印を排除するには、まず、投資家と経営幹部の間で健康についてオープンに話し合うことから始めるとよい。そこにコーチも招き、こうした話し合いの意味について、また関係者全員の利益になる理由についても創業者に話してもらうようにする。タブーを打ち砕くことで、創業者は、その経験を最大限に活かすことができ、体裁を取り繕う状態に戻ることはなくなる。

今後コーチングを導入する企業が増えていけば、最終的には、すべての創業者がコーチングを必須と考えるようになるだろう。

4. 模範を示す

最後に、ビジネスリーダーと投資家はスタートアップコミュニティ、とりわけ起業したばかりのスタートアップに向けて、自身を高めるためにコーチのサポートを求めることは何も恥ずかしいことではないという先例を作る必要がある。

多くのVCは、トップクラスのCEOと同様、コーチを雇っている。VCがもっと手軽にコーチを雇うようになれば、コーチングの導入が当たり前となり、#IHaveACoachなどというハッシュタグがおしゃれにさえなるだろう。結局、我々は、瞑想ルームを流行させたり、kombuchaをオフィスに用意したりするメンタルヘルス系スタートアップたちと同じ業界の話をしているのだから。

今後の投資家会議でコーチングを主題にしたり、VC企業として、コーチングプログラムを受けた投資先創業者たちがビジネスで大きな成功を収めたケースについて調査を公開したりするのもよいだろう。

例えばUnion Square Ventures(ユニオン・スクウェア・ベンチャーズ)は創業者に価値を提供することに投資し、リーダーシップのトレーニング開発、メンターシップサークルの育成、創業者へのコーチの紹介といった業務を担当するチームを構築してきた。創業者にVC自体が人の心のケアに投資していることを示せば、創業者たちも人間的であることが弱いことだとは思わなくなるだろう。

こうしたアプローチは、VCが自身を次世代のエシカル投資家として位置づけるためにも重要だ。さまざまな資金調達方法が利用できる今、創業者は、単に資金を提供してくれるだけでなく、健康、ダイバーシティ、インクルージョンを成功に欠かせないものと見なすVCを探している。

創業者の健康とスタートアップの健全性は切り離すことができない。すべての投資家たちはこの点についてある程度気づいている。未来を形成する人たちの身になって考えてコーチングを導入することにより、創業者たちにストレスなく働き、すばらしい結果と信じられないリターンを達成するチームを率いる優れた技量を身につけてもらうようにしよう。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:コーチングコラム

画像クレジット:Klaus Vedfelt / Getty Images

原文へ

(文:Ariane de Bonvoisin、翻訳:Dragonfly)

コペンハーゲンの投資家6人に聞く2021年の投資見通し

デンマーク、あるいはコペンハーゲンが、ヨーロッパでスタートアップを創業する拠点として選ばれることは少ない。しかし、コペンハーゲンは、スタートアップ向けの優れたカンファレンス開催地として、地元のテクノロジー企業が活発に活動している都市だ。そもそも、コペンハーゲンに行ってみたくない人などいるだろうか。

住民の教育水準の高さ、名門大学の存在、充実した医療、ヨーロッパ各地への移動のしやすさといった特徴を持つコペンハーゲンは、他の都市に負けず劣らず、創業しやすい環境が整った都市である。

TechCrunchが投資家たちにインタビューしたところ、彼らが、サスティナビリティに配慮したサプライチェーン物流、eスポーツとゲーム、エンタープライズ向けSaaS、気候関連技術、ディープテックのハードウェア、農業や教育関連のテクノロジーといった分野に関心を持っていることがわかった。未来の働き方と、多様な働き方への移行に興味があると語った投資家も多かった。

彼らが期待している企業には、Afresh Technologies(エーフレッシュ・テクノロジーズ)、Seaborg Technologies(シーボーグ・テクノロジーズ、原子炉)、Labster(ラボスター、バーチャル科学研究所)、Normative.io(ノーマティブ、社会と環境への影響評価)、DEMI(デミ、シェフとコミュニティをつなげるサービス)などが含まれる。

投資家は全体的にデンマークを拠点とする企業を重視しているが「新スカンジナビア(スカンジナビアとバルト諸国)」地域へも進出しつつある。欧州や北米でスタートアップハブとなっている大都市に投資している投資家もいる。

「回復の兆し」はコミュニティ関連のあらゆるデジタル技術分野で観察され、パンデミックを契機として従来よりもスピーディーな新しいビジネスモデルを生み出したスタートアップ企業にも同じ兆しが現れている。

今回は以下の投資家がインタビューに応じてくれた。

  • Sara Rywe(サラ・リュー)氏、byFounders(バイファウンダーズ)、プリンシパル
  • Mads Hørlyck(マッズ・ヘリック)氏、Maersk Growth(マースク・グロース)、アソシエイト
  • Henrik Møller Kristensen(ヘンリク・モラー・クリステンセン)氏、Bumble Ventures(バンブル・ベンチャーズ)、アソシエイト
  • Benjamin Ratz(ベンジャミン・ラッツ)氏、Nordic Makers(ノルディック・メーカーズ)、パートナー
  • Mark Emil Hermansen(マーク・エミール・ヘルマンセン)氏、Astanor(アスタノー)、アソシエイト
  • Eric Lagier(エリック・ラジエー)氏、byFounders(バイファウンダーズ)、マネージングパートナー

Sara Rywe(サラ・リュー)氏、byFounders、プリンシパル

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

ソフトウェアとテック企業です(個人的に特にワクワクするのは「未来の働き方」、フィンテック「食の未来」です)。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Digitail(デジテイル)です(ミレニアル世代のペットの飼い主たちが期待するサービスと、現状のツールで獣医師が提供するサービスとのギャップを解決するための、獣医師向けソフトウェアプロバイダー)。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

宿泊業界のAirbnb(エアビーアンドビー)、タクシー業界のUber(ウーバー)などのように「これまでにない仕方で変革を起こす」ソフトウェアの分野で成功を目指す創業者たちが、もっと増えて欲しいと思っています。現在のスタートアップの多くが構築しているのは、全面的な解決策というより単一の機能であって、業界を徐々に変えていこうというビジョンで動いています。ですので、この場を借りて、スカンジナビアとバルト諸国にいる、先見の明を持った創業者のみなさんに呼びかけたいと思います。ぜひ私に連絡してください!

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

当社は常に、先見の明と情熱を持ち、人々が喜ぶ製品を作る、才能豊かな創業者を探しています。業界を特定しないベンチャーキャピタルとして、いつでも幅広い分野のさまざまな機会に目を配っています。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

次のようなトレンドが見られていると思います。

フィンテック:給与前払い、ファクタリング、サステナビリティの報告と測定。

フードテック:代替タンパク質食品、ペットフード、フードロス。

未来の働き方:バーチャルオフィス、コラボレーション、生産性向上ツール。

上記の業界のいずれかに進出することを決めるのであれば、どのように他との差別化を図るのか、そのミッションを遂行するためにチームをどのように整えるべきか、慎重に検討することをおすすめします。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

50%未満です。スカンジナビアとバルト諸国全体に投資しています。私自身はスウェーデン、ノルウェー、デンマークを担当しています。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。御社のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

デンマークには、サステナビリティとエネルギー(Vestas(ヴェスタス)やデンマーク工科大学などから優秀な人材が現れている)、消費者向け製品(LegoやCarlsbergなどのブランドが確立されるまでの長い歴史がある)、バイオテクノロジー(中でもNovo Nordiskの貢献が大きい)などの分野に関する優れた実績があります。さらに、Peakon(ピーコン)、Pleo(プレオ)、Templafy(テンプラフィ)といった拡大機のソフトウェア企業も、デンマークで新世代のテック系スタートアップの繁栄を牽引しています。デーマンク人の創業者については、経血を非侵襲的血液検査の機会として利用することで医療に革命をもたらそうとしているQvin(キューヴィン)のような企業に期待を寄せています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の投資環境と投資機会全体についてどのように考えるべきでしょうか。

大いに期待していただいていいと思います。2021年だけでも、以下のような進展が見られています。

イグジット:ピーコンが7億ドル(約750億円)でイグジット、Humio(ヒュミオ)が4億ドル(約430億円)でイグジット。

大規模ラウンド:Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のリードで、Public.com(パブリック・ドットコム)が2億2000万ドル(約235億円)、Vivino(ヴィヴィノ)が1億1500万ドル(約120億円)、ラボスターが6000万ドル(約65億円)を調達。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

ある程度はそうなると思います。すでに、多くのイノベーションがAarhus(アーフス)やOdense(オーデンセ)など、コペンハーゲン以外の都市で生まれています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

新型コロナウイルスの影響を最も強く受けた業界は、当然ながら旅行・宿泊業界です。しかし同時に、そのような状況だからこそ生まれたイノベーションもたくさんあります。当社の投資先にもいくつかの例があります。

AeroGuest(エアロゲスト):「非接触型」の旅行を可能にするプラットフォーム(順番待ちの列や受け付けを省略する、オンラインで直接部屋を予約するなど)。

BobW(ボブW):「自宅とホテルのいいとこ取り」、つまり、それぞれの長所を組み合わせた新しいタイプのサスティナブルな宿泊サービス。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も懸念していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

新型コロナウイルスは当社の投資戦略に大きな影響を与えていませんし、引き続き以前と同じ分野(ソフトウェアとテクノロジーへの投資)を重視しています。とはいえ、一部の業界において、このような難しい時期にもサスティナビリティや社会貢献などの分野での進歩が見られるのはうれしいことです。

当社の投資先企業の創業者にとって、最大の悩みは変動性と不確実性です。最初のロックダウン以降、当社は「ロックダウンの結果として生じる状況をコントロールすることはできない」というシンプルなアドバイスを伝えています。そのため、投資先の企業と一緒にいくつかのシナリオを準備しておき、ビジネスへの最終的な悪影響を緩和する方法をクリエイティブに考えるようにしてきました。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

Tame(テイム):投資先企業の1つですが、イベントプラットフォームの対象範囲をバーチャルイベントにまで広げたことで、このコロナ禍において非常に人気が出ています。

Corti(コルティ):別の投資先企業です。人工知能を使って新型コロナウイルスと戦うための製品を4週間未満という短時間で開発できました。

両社は、パンデミックに「プロダクトを順応させた」ことが優れた結果を生んだ良い例だと思います。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

ベンチャーキャピタルの間で、環境への影響と社会貢献投資への意識が突然高まっていることです。私たちの働き方を向上する方法について、いくつか優れた議論が行われています。

TC:地元で成功を収めたスタートアップ業界の主要人物を挙げていただけますか。投資家や創業者だけでなく、弁護士、デザイナー、グロースエキスパートなど、スタートアップのエコシステムで別の役割を果たす人たちでも構いません。地元住民のみぞ知る注目すべきキーパーソンについて教えてください。

デンマークで私が尊敬する非常に優れた創業者には、以下のような方々がいます。

Simple Feast(シンプル・フィースト)のJakob Jønck(ヤーコブ・ヨンク)氏、コルティのAndreas Cleve(アンドレアス・クリーブ)氏とLars Maaløe(ラース・マーロウ)氏、キューヴィンのSara Naseri(サラ・ナセリ)氏とSøren Therkelsen(ソーレン・ターケルセン)氏、ContractbookのNiels Martin Brochner(ニールス・マーティン・ブロシェナー)氏、Jarek Owczarek(ジャレック・オウチャレック)氏、Viktor Heide(ビクター・ハイデ)氏、CobaltのJacob Hansen(ヤーコブ・ハンセン)氏、Esben Friis-Jensen(エスベン・フリース-ジェンセン)氏、Jakob Storm(ヤーコブ・ストーム)氏、Christian Hansen(クリスチャン・ハンセン)氏。

デンマーク国内にはすばらしい投資家も数多くいます。PreSeed Venturesの(プレシード・ベンチャーズ)のHelle Uth(ヘレ・ウート)氏、Christel Piron(クリステル・ピロン)氏、Alexander Viterbo-Horten(アレクサンデル・ヴィタボ-ホルテン)氏、Anders Kjær(アンデルス・ケア)氏といった方々、バンブル・ベンチャーズのDaniel Nyvang Mariussen(ダニエル・ニヴァン・マリュッセン)氏とそのチームが挙げられます。また、デンマークのテック企業のエコシステムが今あるのは、デンマーク成長基金の貢献のおかげです。

Mads Hørlyck(マッズ・ヘリック)氏、Maersk Growth、アソシエイト

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

サスティナブルサプライチェーンをはじめとした、サプライチェーンと物流。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

エーフレッシュ・テクノロジーズ。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

全般的に、サプライチェーンにはいろいろな場所にまだたくさんのチャンスがあります。現在、具体的にあったらいいと思うものは特にありません。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

サプライチェーンの1つまたは複数の部分の効率を向上させるデジタルソリューション。上流側と下流側の両方を含みます。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

欧州と北米の貨物輸送は、両方とも大規模なスタートアップ数社によって成熟しつつあります。市場はまだまだ大きいのですが、利益率が低いため、強力な新しいモデルが必要です。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

デンマーク重視ではありません。特に重視しているのは、欧州と北米の大規模なスタートアップハブです。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。御社のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

医療産業とそのサポート機能向けのテクノロジーを提供するスタートアップは好業績です。また、デンマークのシーンにOnomondo(オノモンド)が現れたのはうれしいことです。当社の投資先でもあります。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の投資環境と投資機会全体についてどのように考えるべきでしょうか。

これからチャンスが見込める国だと考えてもらっていいと思います。テック企業のハブがいくつか出現しています。また、国の支援する融資やプレシード向け投資があり、かなりの数のエンジェル投資も始まっているなど、全体として環境は良好です。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

デンマークについては、創業者の環境が大きく変わるとは思いません(国が小さすぎるため)。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

パンデミックの期間中、人々はこれまで以上に柔軟で信頼できるサプライチェーンを利用し、依存する機会が増えました。それで、供給の安定性から、サプライチェーンの可視性、配達とラストワンマイルに至るまで、当社の投資分野であるサプライチェーンと物流への注目は高まっていると思います。サプライチェーンの変化の鍵を握るのは消費者だと思います。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も懸念していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

受注コンバージョン率は低下し、パイプラインは干上がりつつあります。アドバイスとしては、他の企業もしているように、コストを最小限に抑え、ビジネスモデルとして可能な限り収益を上げてランウェイを長く確保しておくことです。その上で、融資のニーズについて検討できます。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい。一部のスタートアップ企業は、柔軟性の高さとデジタル構造のおかげで、従来型の企業よりも、パンデミックをうまく利用しています。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

当社の投資分野が、グローバルにもデンマーク全体でも、まだデフォルトの波に襲われていないことです。

ヘンリク・モラー・クリステンセン氏、バンブル・ベンチャーズ、アソシエイト

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

期待しているトレンドとしては、(1)デジタルメディアとエンターテインメント市場の拡大、特にEスポーツとゲームの分野、(2)未来の働き方関連などエンタープライズ向けSaaS、(3)ディープテックのハードウェアとソフトウェアなどの気候変動対策、(4)eコマースビジネス、特にデジタルネイティブの垂直展開ブランドと消費者直販の事例があります。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

高齢者のニーズに応える製品やサービスです。今後数十年の間に高齢者の割合が大幅に増加するので、人口構成の変化に対応し、社会への圧力を緩和するためのニーズに対応した製品とサービスの市場が確立されるでしょう。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

チームスピリットとトラクションを非常に重視しています。エンジニアリング、製品、商品化の各方面で優れた能力を備え、可能であれば新規ソリューションで参入する業界で長い経験を持つ、優れた創業者を探しています。市場が製品を必要としていることを示すものがあると望ましいと思います。料金を支払う顧客、豊富な客層、制御可能なファネルがあって収益が着実に増大していく、しっかりしたコアビジネスがいいですね。収益が出るまでにまだ2〜3年かかるような製品は選びません。次のFacebookを見逃すことになるかもしれませんが、それは承知の上です。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

従来のソーシャルメディアとアプリは、ビジネスモデルが動き出すのに何百万人ものユーザーが必要になっています。SaaSマーケティングツールの市場も飽和しているように思います。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

今度、当社初のデンマーク国外での投資案件を発表します。デンマークだけでなく、スカンジナビアにも進出する第一歩になります。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。御社のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

デンマークで有望な業種は医療テック、フィンテック、ゲーム、クリーンテックです。GamerzClass(ゲーマーズクラス)、Pie Systems(パイ・システム)、LeadFamly(リードファムリー)、Omnigame(オムニゲーム)、Organic Basics(オーガニック・ベーシックス)、Cap desk(キャップ・デスク)、Roccamore(ロッカモア)、Too Good To Go(トゥー・グッド・トゥー・ゴー)、Pleo(プレオ)、Tradeshift(トレードシフト)、SYBO、Unity(ユニティー)といった企業は楽しみです。優れた創業者として、ゲーマーズクラスのVictor Folmann(ビクター・フォルマン)氏、パイ・システムのSunny Long(サニー・ロン)氏、ロッカモアのFrederikke Antonie Schmidt(フレデリッケ・アントニー・シュミット)氏、キャップデスクのChristian Gabriel(クリスチャン・ガブリエル)氏を挙げたいと思います。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の投資環境と投資機会全体についてどのように考えるべきでしょうか。

これまでは、成長段階のスタートアップをデンマークに引き止めておくためにもっと資本と人材が必要でしたし、人材と資本を求めて海外に出る必要はありませんでした。でも、投資環境は改善しています。資本と人材の獲得しやすさは相関しており、現実に投資環境をよくしている要因は、成功したデンマークのスタートアップがデンマークに戻り、スタートアップコミュニティに再投資していることだと思います。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

今後はリモートワークの人気がさらに高まるでしょう。それでも、スタートアップにとっては、バーチャルだけではなく実生活においても、志を同じくする他のスタートアップや創業者、アドバイザー、投資家の近くにいることが非常に重要だと思います。成功するためには、人脈を広げ、個人的な関係を深めることが大切で、リモートワークはあまりそれに適していないというのが私の意見です。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

旅行・宿泊業界は大変そうですし、リモートワークとサステナビリティの問題のために需要は減っていくでしょう。一方、ゲームやeコマース、およびデジタル関連の製品やサービスは伸びていき、画面を通じてつながる相手が増えていくと思います。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も懸念していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

新型コロナウイルス感染症の中でも投資を続けています。例えば、ゲーム業界にとってはコロナ禍が追い風になっています。とはいえ、多くのスタートアップが新型コロナウイルス感染症の影響に苦労しています。スタートアップにとって最善の道は、ランウェイをしっかり管理し、投資家とよく話し合い、コストをカットして、変化に対応できるようにすることです。限界ではなく機会に目を向けてください。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

まだですが、新型コロナウイルス感染症で不利な影響を受けた投資先は多くありません。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

投資家は、新たな投資先に投資したいと思っていますし、苦労している投資先企業を助けたいとも思っています。創業者は胸を張って新しい状況に対応すべく最善を尽くしています。時には、そこから新たなイノベーションも生まれています。

Benjamin Ratz(ベンジャミン・ラッツ)氏、Nordic Makers、パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

エネルギー関連や化石燃料社会からの移行、データガバナンス、教育の役割の変化。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

シーボーグ:モジュラー式で安全な小型原子炉を製作。

ラボスター:世界中の学生たちが科学およびSTEM(科学・技術・工学・数学)を集中して学べるバーチャル科学研究室。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

公共セクターの改善。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

パンデミックによってどのような行動変容が起こり、どれほど続くのか、という点についての見方。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

超小型モビリティ、遠隔医療。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

100%。

TC:御社の投資先であるかどうかは別として、今後が楽しみだと思う企業や創業者を教えてください。

Willa(ヴィラ)。コルティ。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の投資環境と投資機会全体についてどのように考えるべきでしょうか。

多くの創業者がこの地域で成功を収めています。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると思いますか。

いいえ。大都市で起業する創業者が増えると思います。

Mark Emil Hermansen(マーク・エミール・ヘルマンセン)氏、Astanor、アソシエイト

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

食品とアグリテック。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

デミです。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

フードテック企業にはもっと「食品を取り入れて」欲しい、つまり人間的要素に目を向けて欲しいと思います。テクノロジーだけを重視し、フードテックは人間中心でなければならない、という事実が見えていない企業が多すぎます。それがあまりに多いので「フードテック」を自称するスタートアップを本能的に避けるようになりました。食べ物はテクノロジーではないし、テクノロジーは食べ物ではありません。そこに難しさがあり、やりがいがあるのです。この記事にはその点がまとめられています。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

ジャック・ケルアックの『路上』の冒頭数行を思い出させるものすべてです。「彼らはディングルドディーのように路上を踊りながら進んでいき、僕はそれまでも興味を惹かれた人についていっていたのと同じように、その後をヨロヨロとついていった。なぜなら僕にとって人といえば狂った人だけで、狂ったように生き、話し、救われたがっている人、すべてを一度に欲しがり、決してあくびをせず、ありきたりのことを言わず、ただ燃えて、燃えて、燃えて……」

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

DNVB(デジタル・ネイティブ・バーティカル・ブランド)。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

地元が25%です(デンマークはスタートアップが頭角を現すほど十分に成熟していないものの、ベンチャーキャピタルの勢力が小さく、まだ競争があまり激しくない分、チャンスがあります)。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。御社のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

企業:デミのようなオンラインコミュニティ。

創業者:Infarm(インファーム)のErez Galonska(エレス・ガロンスカ)氏。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の投資環境と投資機会全体についてどのように考えるべきでしょうか。

いい商談の流れやコネにつながることができれば、たくさんのチャンスがあります。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

デジタルから脱却するコミュニティ、例えばTonsser(トンサー)やデミなど。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も懸念していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

懸念:不確実性と採用戦略。

アドバイス:生き残り、準備せよ。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

小売拠点を持つフィジカルなものすべて。コミュニティを持つデジタルなものすべて。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

誰もが今後(コロナ後)がどうなるか楽しみにしていること、物事は元に戻らないという実感(または「期待」かもしれません)。

TC:地元で成功していると思われるスタートアップ業界の重要人物を挙げていただけますか。

Highbridge(法務)のKasper Ottesen(カスパー・オッテセン)氏。

Kasper Hulthin(カスパー・フルシン)氏(起業家、投資家)。

Christian Tang-Jespersen(クリスチャン・タン-イェスペルセン)氏(投資家)。

エリック・ラジエー氏、バイファウンダーズ、マネージングパートナー

通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

未来の働き方、生産性向上プラットフォーム。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

ノーマティブ。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

未来の新しい人材採用手法。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

創業者の熱意、大きな問題を解決してより良い未来を築きたいという思い。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

新スカンジナビア(スカンジナビアとバルト諸国)地域を重視しています。欧州でも最も大きな発展の可能性がある地域です。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。御社のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

気候関連テクノロジー、ヘルステック、フィンテック。企業は、ノーマティブ、コルティ、Lucinity(ルシニティ)。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の投資環境と投資機会全体についてどのように考えるべきでしょうか。

コペンハーゲンは成長著しい都市です。経験豊かな創業者たちが変化を起こせる企業を作り、強固な基礎ができています。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

いいえ。ただし、リモートを優先させた多様なチームが増えるとは思います。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

オンライン化の加速、リモート化、eコマース、決済全般の迅速化。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も懸念していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

新型コロナウイルス感染症は今後のトレンドを大きく加速させています。うまく適応できた創業者が今後の勝者になるでしょう。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

その通りだと思います。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

このような激しい変化の中で、創業者たちが不屈の努力を続けている様子。

TC:地元で成功していると思われるスタートアップ業界の重要人物を挙げていただけますか。

シンプルフィーストの創業者、Jakob Jønck(ヤーコブ・ヨンク)氏。ノーマティブの創業者、Kristian Rönn(クリスチャン・レン)氏。コルティの創業者、Andreas Cleve(アンドレアス・クリーブ)氏とLars Maaløe(ラース・マーロウ)氏。

関連記事
ストックホルムの成熟したスタートアップエコシステムについて8人の投資家に聞く(前編)
ストックホルムの成熟したスタートアップエコシステムについて8人の投資家に聞く(後編)

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:インタビューコペンハーゲンデンマーク

画像クレジット:Joe Daniel Price / Getty Images

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

Tiger Globalが同社最大のベンチャーファンドを約7351億円でクローズ

我々と同じように、資金調達の発表に目を通している人なら、2021年はあることに気づいたかもしれない。多数のメガラウンドが行われている中、Tiger Global(タイガー・グローバル)という投資会社が、その多くに共同リードとして参加しているのだ。

今週だけでも半ダースほどの企業の資金調達で、このニューヨークを本拠とする大手投資会社はリードまたは共同リードを務め、あるいは小切手を切っている。それらの中には、D1 Capital(D1キャピタル)と共同で主導し3億ドル(約332億円)のシリーズCラウンドを行ったHighRadius(ハイラディウス)や、Tiger Globalが主導した延長シリーズCで1億9200万ドル(約212億円)を調達したCityblock Health(シティブロック・ヘルス)、1億2500万ドル(約138億円)のシリーズDラウンドでTiger Globalからフォローオンチェックを受けた6sense(シックスセンス)などがある。さらにTiger Globalは、創業5年目のAIチップメーカーであるGroq(グロック)の3億ドルの資金調達ラウンドを共同リードする交渉を行っているとも報じられている。

関連記事:AI搭載フィンテックソフトウェアのHighRadiusが約340億円調達、評価額を3倍の約3400億円に

その資金がどこから来ているのかと不思議に思う人もいるかも知れない。Tiger Globalは2020年1月に、13番目のベンチャーファンド(迷信的な理由から「XIV」と名付けられた)のために37億5000万ドル(約4146億円)を調達するという手紙を投資家に送ったのだが、新たに米国証券取引委員会に提出された書類によると、この新しいファンドはその2倍近い金額、66億5000万ドル(約7351億円)でクローズしたばかりであることがわかる。

この金額はこの市場においても、またTiger Globalにとっても莫大な数字だ。同社は2020年、12番目のファンドを37億5000万ドルの資本コミットメントでクローズしたばかりだ。

さらなる情報を求め、我々は1月に同社の資金調達計画を取材したが、その際にも記したように、Tiger Globalは潜在的なリミテッドパートナーに対して強力な提案をしているように見えた。

その直近の成果としては、ポートフォリオ企業であるStripe(ストライプ)が2021月3月に6億ドル(約663億円)の資金調達を完了し、評価額を950億ドル(約1兆502億円)に伸ばした。また、Tiger Globalが株式の10%を保有していたゲーム会社のRoblox(ロブロックス)は、直接上場して上場企業となった。同社の時価総額は現在380億ドル(約4兆2050億円)だ。

関連記事:決済サービスStripeが評価額10兆円超で約655億円調達、欧州事業の拡大に注力

2020年には、ポートフォリオ企業の多くが上場するか買収されており、その中には中国の大手化粧品ブランド「Perfect Diary(完美日記)」の親会社で、設立5年を迎えるYatsen Holding(逸仙控股)や、クラウドベースのデータウェアハウス企業であるSnowflake(スノーフレイク)、オハイオ州コロンバスに本社を置く保険会社で6年近く前に設立されたRoot insurance(ルート・インシュアランス)などがある。

M&Aに関しては、2020年はTiger Globalが出資する少なくとも3つの企業が大手ハイテク企業に吸収された。Postmates(ポストメイツ)はUberに26億5000万ドル(約2932億円)で全株式売却。Credit Karma(クレジット・カーマ)はIntuit(インテュイット)へ現金と株式による70億ドル(約7745億円)で売却された。顧客サービスプラットフォームとチャットボットに注力するKustomer(カスタマー)はFacebook(フェイスブック)に10億ドル(約1106億円)で買収されている。

ヘッジファンド運用をルーツとするTiger Globalは、ヘッジファンドのパイオニアであるJulian Robertson(ジュリアン・ロバートソン)氏の下でTiger Management(タイガー・マネジメント)に勤務していたChase Coleman(チェイス・コールマン)氏と、Blackstone Group(ブラックストーン・グループ)に3年間勤務した後、2002年に入社したScott Shleifer(スコット・シュライファー)氏が中心となり、2003年にプライベートエクイティ事業を開始。後にビジネスに大きく貢献することになるLee Fixel(リー・フィクセル)氏が2006年に加わった。

シュライファー氏は中国を、フィクセル氏はインドを担当し、その他のサポートチーム(現在、22名の投資プロフェッショナルが在籍)は、ブラジルやロシアでの案件発掘を支援していたが、その後は米国におけるチャンスをより積極的に狙うようになった。

すべての投資判断は、最終的に3人それぞれが行っていた。フィクセル氏は2019年に退社し、自身の投資会社、Addition(アディション)を起ち上げた。現在はシュライファー氏とコールマン氏のみが会社の意思決定者を務めている。

Tiger Globalの投資家には、政府系ファンド、財団、基金、年金、そして自社の従業員が混在しており、現時点では従業員がまとめて同社の最大の投資家であると考えられている。

Tiger Globalのこれまでの最大の成功例としては、電子商取引大手のJD.comに2億ドル(約221億円)を賭けて50億ドル(約5530億万円)の利益を生み出したことなどが挙げられる。WSJによると、2018年に上場した中国のオンラインサービス・プラットフォーム、Meituan(美団)でも10億ドル(約1106億円)以上の利益を上げている。

また、Tiger GlobalはコネクテッドフィットネスのPeloton(ペロトン)への投資を通じて巨額の利益を得ており、Pelotonが2019年にIPOした時にはその20%を保有していた。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Tiger Global Management投資

画像クレジット:Jeenah Moon/Bloomberg / Getty Images

原文へ

(文:Connie Loizos、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

YJキャピタルとLINE Venturesが合併、Z Venture Capitalとして300億円の新ファンド組成

YJキャピタルとLINE Venturesが合併、Z Venture Capitalとして300億円の新ファンド組成

Zホールディングス(ZHD)の連結子会社YJキャピタル(YJC)とLINE Ventures(LV)は4月1日、YJCを承継会社とする合併を行い、Z Venture Capital(ZVC)に商号変更し、新たに事業を開始した。

2021年3月1日に、ZHDとLINEの経営統合が完了し新体制に移行したことに伴い、両社コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)のYJCとLVを合併し、投資機能・活動を承継会社ZVCに統合した。

CVC機能の統合に伴い、ZVCの日本国内投資および、韓国・米国・中国・東南アジアなどのグローバル投資ファンドとして、新たに300億円の新ファンド「ZVC1号投資事業組合」を組成し、日本最大級のCVCとなった。

投資領域

国内投資においては、新生ZHDは、データやAI技術をかけ合わせ、新たな価値やシナジーを強固に創出し「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニー」の実現を目指す。

ZVCはZHDの中核事業であるコマース、メディア、フィンテックの3領域に加えて、ヘルスケア、サイバーセキュリティ、B2B ソフトウエア領域などにも積極投資を行う。特に、創業間もないシード期のスタートアップから、事業の拡大フェーズに入ったミドルからレイター期のスタートアップまでオールステージで投資活動を行うことで、投資先の継続的な成長支援に注力する。

さらに、投資先企業とZHDグループ企業との事業連携機会の創出や投資先企業の海外展開の支援するという。

グローバル投資においては、韓国、東南アジア、米国、中国での投資活動を推進し、各国の市場動向に応じて、フレキシブルな投資を実施する。まずはコンシューマー向けサービス、eコマース、フィンテック、O2O/モビリティ領域に注力して投資活動を行う。

さらに、投資先スタートアップに対しアジア進出支援を行うために、AI、ロボティクス、ブロックチェーンを含むディープテック(研究結果などにより裏打ちされた深い技術)分野でフロンティア市場の米国などを開拓する。加えて、韓国や日本をはじめとした事業のグローバル展開を支援する。

スタートアップ支援

ZHDグループは、経営統合を契機にグローバルエコシステムを余すことなく活用し、スタートアップが持続的に成長できる機会を提供する。

  • 事業提携機会の創出:ZHDグループが提供するサービスとスタートアップとの連携機会を創出するために、ピッチイベントの開催や1on1で担当者との面談機会を提供
  • ノウハウ共有:ZHDグループの持つ、メディア、コマース、フィンテックといった広範囲にわたる事業や技術のノウハウを提供
  • プロダクト導入支援、マーケティング活動の支援:ZHDグループ企業に対する、プロダクト提案の機会を設ける
  • 海外展開支援:ZHDグループがサービスを提供する約230の国と地域に広がるネットワークにより、スタートアップの海外進出をサポート

関連記事
YJキャピタルとEast Venturesの起業家支援プログラム「Code Republic」が第9期スタートアップ募集開始
空き時間や余剰在庫を有効活用できるマケプレ運営のタイムバンクが総額39.5億円を調達
LINEが50億円規模の投資ファンド設立——O2O、EC、決済、メディア、エンタメを対象に
ソフトバンク・Zホールディングスとスタートアップのマッチングイベント「Zピッチ」が毎月第2・第4水曜日開催
ヤフーとYJキャピタル、テック領域特化の新ファンド「YJテック」を組成

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Z Venture Capital(企業)YJキャピタル(企業)LINE Ventures日本(国・地域)

ダイバーシティに特化したHarlem Capitalが約148億円調達

Harlem Capitalは2回目のファンドで目標の1億ドル(約110億円)と当初の上限となる1億2500万ドル(約140億円)をはるかに上回る、1億3400万ドル(約148億円)を調達したと発表した。

Harlem Capitalは2015年に、マネージングパートナーのHenri Pierre-Jacques(アンリ・ピエール-ジャック)氏とJarrid Tingle(ジャリッド・ティングル)氏によって設立された。多様なバックグラウンドを持つ創業者に投資することを目的としたエンジェルシンジケートとしてスタートし、2019年末に4000万ドル(約44億円)規模の最初のVCファンドを発表した。投資先にはeコマース企業のPangaea、CashDrop、Malomo、Repeat、ウェルネス・スタートアップのWellory、Expectful、Wagmo、Shineなどが含まれる。

Harlem Capitalは最初の4000万ドルのすべてをまだ投資していない。同社はFund Iからさらに5つの投資を行うことを目標にしていると伝えている。Harlem CapitalのFund Iに含まれるポートフォリオ企業の61%は黒人かラテン系の役員が率いており、43%は女性が独占的に率いている。同社はニューヨーク市のハーレム地区で設立されたが、全米のスタートアップに投資している。

一方、Fund IIではポストプロダクト企業へのシードステージ投資に焦点を移しており、75万ドル(約8300万円)から150万ドル(約1億7000万円)を投資し、10%以上の株式取得を目指している。同社は業界にとらわれず、消費者向けおよび企業向けの技術に焦点を当てるとしている。また、ファンドが出資する創業者たちがキャリーの1%を分け合う 「カルチャーキャリー」 というアイデアも導入し、基本的にはファンドの利益とお互いの成功に出資することになる。

多様性への焦点はFund IIに投資したリミテッドパートナー(LP)にまでおよび、LPの42%は女性または有色人種である。

「私たちは多様な創業者を何世代にもわたって支援するための制度と、プラットフォームを構築することに注力しています」と、マネージングパートナーのピエール-ジャック氏は声明で述べている。「Fund IIは我々のミッションに一歩近づきましたが、仕事と旅はまだ続いています。私たちはユニークな問題に取り組むさらに多くの多様な創業者に、より多くの資本とリソースを提供できることを楽しみにしています」と述べている。

またHarlem Capitalは先にBrandon Bryant(ブランドン・ブライアント)氏をパートナーに、Gabby Cazeau(ギャビー・カゾー)氏とKelly Goldstein(ケリー・ゴールドスタイン)氏をプリンシパルに昇格させたことも発表した。

関連記事:ダイバーシティ重視のVCファンド「Harlem Capital」がファンド規模約44億円でデビュー

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Harlem Capital資金調達

画像クレジット:Harlem Capital

原文へ

(文:Anthony Ha、翻訳:塚本直樹 / Twitter

黒人創設者に投資せずにチャンスを逃す投資家たち

本稿の著者Craig Lewis(ジョセフ・ヘラー)氏は契約社員向けに開発されたシンプルなフィンテック給与計算プラットフォームであるGig Wageの創設者兼CEO。

ーーー

黒人である私は、米国でとても苦労している。テクノロジー業界では特に珍しい黒人創設者として、まったく勝ち目のない戦いを強いられている。

ベンチャーキャピタルからの資金が1%に満たない投資先には、制度化されたシステムの影響が重くのしかかる。私は起業家として活動してきたこれまでの約10年間で、成功した分だけ挫折や失敗を経験してきた。

黒人の起業家コミュニティを苦しめている格差にも耐えながらも、私は前進してきた。資金を調達しにくい中で最小限の資本とチャンスを確保しながら、黒人は存在感を示し、力強く前進している。

ハンデを負いながらも、自分のベンチャー事業に1300万ドル(約14億円)近くの資金を意欲的に調達したCEOとして思うことは、黒人の創設者が損をしているわけではないということだ。むしろ、力強く前進する黒人創設者を過小評価していることに気づかず、儲け損なっている投資家が損をしているのだ。

ベンチャーキャピタルとテクノロジーの融合(つまりこの2つをどのように機能させるか)をエンジニアリングの視点から考えると、答えにたどり着く。開発者やプログラマーになりたい人は通常、特定の学校やカレッジに進学することで、成功への階段を上り始める。

多くの黒人学生(特に男子学生)は以前から、高等教育を受けるためにスポーツに打ち込んでいる。テクノロジーに関する能力を教育機関に認めてもらう必要はあまりない。

黒人学生の両親やコミュニティは、スポーツに打ち込むことを後押しする。これまでの歴史で作り上げられた固定観念があるため、成功への道がそれしかないと思い込んでいる。学生がテクノロジーの世界へつながるレールに乗らなければ、つまり、多くのテクノロジー企業の創設者を輩出しているCal Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)、Stanford(スタンフォード大学)、Harvard(ハーバード大学)などに進学できなければ、すぐに「輪」の外に追いやられてしまう。これが、テクノロジー業界の黒人創設者にとって第一関門となり、その後もさまざまな障害を乗り越えなくてはいけない。

しかし私は、このような「障害」が黒人創設者の行く手を阻む壁ではなく、非常に大きな力を発揮するための重要なきっかけであると言いたい。

私の家族に起業家がおらず、一流大学についての情報を得る方法もなかったのは事実だ。良い成績を収め、特待生として卒業したにもかかわらず、Ivy League(アイビーリーグ)の教育が非常に価値のあるものであるということをまったく知らなかった。

私のスキルと成績があれば、全額支給奨学金のオファーがあったYale(エール大学)、Brown(ブラウン大学)、Columbia(コロンビア大学)、Southern Methodist(サザン・メソジスト大学)のような大学で、バスケットボールのスター選手としてプレーし、卒業することもできたかもしれない。しかし、それが可能であることも知らず、アイビーリーグの「輪」の中にいるメリットに関する知識もなかったため、私はそうしなかった。

私が大学で過ごした2000年から2004年の間に、多くのすばらしい企業がエリート校で創立された。私を含む多くの黒人学生に対して情報が遮断されるという傾向により、黒人学生の全体的な視野が形成され、それが見えない障壁となった。

その見えない障壁を突き破り、ぶれることなくハンデを克服し粘り強く前に進みつつ、私が対峙してきたような投資家や、私が創立したのと同じような会社と対話を続けるためには、黒人としての経験でのみ培える異次元の存在感が必要だ。黒人創設者は2021年以降、資金調達やテクノロジー企業を成功に導くためにその力を認識するだけでなく、解き放つ必要がある。投資家、ベンチャーキャピタリスト、起業家のエコシステム全体がそうしたことに留意することは賢明なことであり、非常に有益なことだ。

黒人創設者は発想を転換し続けることが必要だが、以下の5つの方法を実践しなければそれを実現することはできない。

黒人創設者のみなさん、資金調達の効果は忘れよう

黒人創設者(特にテクノロジー業界)には、資金不足を強調する屈辱的な統計が引き合いに出され「適切な方法で」資金を調達するためにワンパターンの台本が準備されている。ほぼ自動的にそのようなアプローチが採用されるようだ。そして、投資家のプレイブックとルールに従って投資家から資金を調達することを意図した、型にはまった起業家になろうとしている。

黒人創設者はこれに見合った資金調達策として、社会が押し付けることを黙って受け入れている。自分が交渉権を握っていることに多くの場合気づかず、自分のスタートアップの命運を投資家に委ね、媚びている。投資家が用意したこのようなプレイブックでは、黒人創設者になんの利益もない。今日からは自分自身の力を引き出すべきだ。

圧倒的な力を身につけ、専門知識を生かす

プレイブックは脇に置き、自分の専門性と独自性をもっと信じなければならない。

数年前、Mark Cuban(マーク・キューバン)氏がDallas Startup Week(ダラス・スタートアップウィーク)で基調講演を行い、成功への道のりを語った。同氏の主な主張の1つは「自分のビジネスを知り、自分のビジネスの短所に気づく」ことだった。とてもシンプルながらも、非常にインパクトのある内容だった。

私はキャリアを歩み始めて間もなく、スタートアップ企業で働いていた経験からベンチャーキャピタルについて学んだ。この分野を知り尽くしていたわけではなかったが、数年後に自分の会社のために資金を調達する際に、そこで得た若干の知識を参考にした。ベンチャーキャピタルとの取引には制限があったが、自分の経歴と専門知識(当時は給与計算テクノロジーの営業職)には自信があったので、自分の権利を堂々と主張するために交渉の席についた。

ベンチャーキャピタルは70億ドル(約7500億円)で会社を売却したり、350億ドル(約3兆7000億円)のAUM(運用資産)を持っていたりするかもしれないが、給与計算や給与計算テクノロジーには私ほど精通していないことを知っていた。このような強いマインドセットがあったからこそ、投資家に媚びるのではなく、投資家に向き合うようになり、対等な立場で交渉することができた。

すばらしい目標を共有する

人とのつながりや、ビジネスに必要な資金調達に至るすべての過程で、私はテクノロジー業界の黒人創設者として不当な扱いを何度も受けてきた。同じテーブルにつく人たちの中でも、世界観、政治的志向、宗教観など、不和の種となるものは数多くあるが、目の前のすばらしいビジネスチャンスに関与するという共通の目標を、関係する全員で共有することが何よりも大切だ。

そうすることで、ベンチャーキャピタリストが私個人や多様性を歓迎しているかを過剰に意識しないようにすることができた。起業家としての意欲的な気概を見せ、私の長所である黒人としての輝きに意識を向けることで、投資したいと投資家に思わせることができた。一言で言えば、情熱をもって意欲的に利益を上げようとする創設者に資金を提供したいと、投資家は思っている。あなたをあるがままに評価してくれる投資家を見つけよう。

できるだけ多くの投資家と会う

黒人創設者は、投資家と十分に向き合っていない。ベンチャーキャピタル界は総じて、黒人創設者のコミュニティを軽んじており、包括的なネットワークを拡大することができていない。現在マイノリティは、ベンチャーキャピタル業界にほとんど進出できていない。投資パートナーの80%は白人が占め、黒人(アフリカ系米国人)の割合はわずか3%に過ぎない。

黒人起業家はそれでも前に進み、表舞台に上がらなければならない。起業家が資金を調達する段階で顔を合わせる投資家は非常に多いため、機会を逸するたびに振り回されていてはならない。

現実的なことを言えば、資金調達には時間がかかる。見込みがある多くの投資家と話をすることで、私は現在の会社のために1300万ドル(約14億円)近くを調達できた。黒人創設者であれば資金調達にはさらに時間がかかり、もっと多くの人と会わなければならないだろう。ここで私は「障壁を乗り越え、ベンチャーキャピタルの関心を集めるのに十分な期間持ちこたえるための持久力があるか」と問いたい。貧富の格差を考えると、答えは「ノー」だろう。

Gig Wage(ギグウェイジ)の起業に乗り出した当初、投資家からの質問で一番多かったのは「どのくらい準備が整っているか?」だった。私は「目的を達成するまでの準備が整っている」と答える。そうすると投資家はもっと具体的に「銀行にはどのくらいの資金があるのか?あなたの奥さんは、このプロジェクトをいつまで続けさせてくれるのか?」と聞き直す。そして私は「銀行の残高がいくらかは関係ない、目的を達成するまで続けるつもりだ」と答える。

投資家は口には出さないが、資金調達のプロセスを持ちこたえるだけの経済的な能力と体力が私にはないだろうということを差別的に予想しており、このことに私は何度も大きく落胆した。銀行口座を見せれば、おおよそ9カ月から12カ月分程度の準備資金があったからだ。

黒人がベンチャーキャピタルから調達できる資金が1%にも満たないのは、米国社会の根強い人種差別が起業家のエコシステムにも影響しているからだ。それでも私は、これまで多くの投資家と面会を重ねてきた。絶対に成功するという意欲的な信念を持って耐えてきた。もう一度いうが、これが黒人の強さだ。

強靱さを備え、自分自身の力を発揮する

私は黒人男性として、米国の他の黒人男性と同じように、困難に耐えることで強靱さを培ってきた。警察への対応であろうと、麻薬、暴力、貧困で家族が苦しむ様子を目の当たりにすることであろうと耐えてきた。「投資家の会議や条件規定書を怖がる必要があるものか」とよく考える。私はもっとひどい仕打ちを米国の社会で受けてきた。

黒人創設者は強靱さを備え、自分の経験から得た力を活用する必要がある。そこから生まれる勝利を得るためのメンタリティは、ベンチャーキャピタリストに投資したいと思わせる類のメンタリティである。投資をしないで損をするのは、間違いなくベンチャーキャピタリストだ。

投資に値するのは「私はこの世界で不利な状況ではあるが、やめるつもりはない。柔軟に対応していくつもりだ。たとえ大変な状況でもそうする方法を考え出すのだ」という不屈の集中力を備えた人物だ。そのような人が画期的なビジネスアイデアを持っているとは限らないが、一般的に黒人には情熱があり、他の人が持っていない視点で物事を見ることができる。これは、ベンチャーキャピタリストが見落としている無限の可能性だ。

だからこそ2021年以降、特にテクノロジー業界の黒人創設者は、パラダイムを転換し、起業家のコミュニティで存在感を発揮し、力を取り戻し、黒人として最大限に輝くことで活動し続ける必要がある。チャンスを逃しているのは投資家であって、創設者ではない。遠慮する必要はない。勇気を持って大胆に行こう。

私自身が今できる一番良いことは、話題を提供し続け、格差を浮き彫りにし、黒人の起業家や専門家として成功して、世界全体のために貢献し続けることだ。力を保ち続け、先駆者として黒人の存在感を引き出していくことに尽力していきたい。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:アメリカGig Wageコラム

画像クレジット:Nuthawut Somsuk / Getty Images

原文へ

(文:Craig Lewis、翻訳:Dragonfly)

説明責任向上を目指してNorrsken VCはパートナー報酬にポートフォリオ企業の持続可能性達成度を紐づけ

最新の投資ファンドをクローズさせたNorrsken VC(ノルスケンVC)は、そのポートフォリオ企業が、単に経済的なリターンだけでなく、世界にもたらした有益な変化の評価も加味してパートナーへの報酬を決めるという、前代未聞の一歩を踏み出した。

2021年3月第4週に、2020年の影響評価を発表した同社は、国連が定める17の持続可能な開発目標(SDGs)のうちの7つに取り組む企業に投資を行い、その目標達成度を、厳しく監視されたものから、ややわかりきった当たり前のものまで、幅広い基準で審査してきた。

場合によっては、目標は単なる顧客満足度となることもある(製品に多くの顧客がつくことは、それだけよくやっている証だ)。しかし公正を期すならば、それは教育や医療など、企業のサービスが与えるインパクトを正確に測定するのが難しい分野に限られる。

同社のポートフォリオ企業は、気候変動緩和や持続可能分野において、はっきりと目に見える進歩を遂げている。排出削減やエネルギー効率の向上などの成果は、実際に簡単に測定できる。そしてそうしたエネルギー効率化や排出削減は、同社のフードテックおよびアグテック事業に関連する廃棄物低減の取り組みと相まって、同社では最高のパフォーマンスを示している。

ポートフォリオ企業がエグジットすれば、そのパフォーマンスは、Norrskenのパートナーに多大な影響を及ぼす。彼らの報酬は、直接それに左右されるからだ。

「私たちが投資を行うときは、その1つ1つに、インパクト面で期待される事業に関して投資前の目標を定めます」と、Norrsken VCのジェネラルパートナーTove Larsson(トーブ・ラーソン)氏はいう。「私たちはそれを、ファンドの主要なリミテッドパートナー数名とともに決めています。目標設定は、諮問委員会の承認を必要とするからです。目標は各年ごとに定め、その後は1年ごとに見直します」。

「ファンドがサイクルの終わりに到達すると、私たちはすべてのインパクトKPIを集計し、各企業の投資額に応じてウェイトを振り分けます。それに基づいて、Norrskenは各社の成功報酬の有無を判断します」。

ポートフォリオ企業は、Norrskenと諮問委員会が定めたインパクト目標の60パーセントを達成できた場合、成功報酬の半分を受け取ることができ、残りは慈善団体に寄付される。「割合は100パーセントまでの間で直線的に変化します。もし目標が達成できなかった場合は、成功報酬は慈善団体やNGOに寄付されます」とラーソン氏は話す。

「◯」はインパクト目標の達成度、「■」は成功報酬の割合(画像クレジット:Norrsken VC

Norrskenのパートナーは、その画期的な報酬構造を差別化のポイントと見定めつつ、特に国連のSDGsに関連するテーマに注力する企業の劇的な増加が継続されることに期待を寄せている。

「投資を開始したとき、私たちは一番手グループの一員でした。それは4年前です。それから市場は急速に変化しました。あまりにも変化が早いために、どうしたら突出できるのか、自分たちが本当のインパクトプレイヤーなのかどうか、どうすれば知ることができるのかを、みんなに聞いて回ったほどです」とNorrskenのジェネラルパートナーAgate Freimane(アガト・フリーメイン)氏は話す。

「これがDNAの中核部分です。私たちは良い結果を出して、有言実行を示さなければなりません」とフリーメイン氏はいう。そこで同社は、欧州投資基金の先例に倣うことにした。同基金は、報酬に同じような制限を課していると彼女はいう。「このやり方を聞いたとき、100パーセント納得できる、どうしてみんなやらないのかと感じました」。

これまで、同社が自ら定めた目標を達成できなかったことはなかった。「2020年の目標は119パーセント達成しました」とフリーメイン氏。それでも、長期目標の12パーセントに過ぎない。「現時点で実現したのは、私たちがファンドの期限内に行わなければならないことの10分の1です」。

不正確かも知れないが、その目標の一部として、同社のポートフォリオ企業が取り組んだ温室効果ガス排出とフードロスの削減、エネルギーの効率化には、計測可能な本物のインパクトがある。それは、データセンターのエネルギー需要を10ギガワット時まで削減するSubmer(サマー)の技術であり、食品廃棄量を1万1000トン削減できるKarma(カーマ)、Whywaste(ホワイウェイスト)、Matsmart(マットスマート)、 Olio(オリオ)の事業であり、洗車に使う水を400万リットル削減できるWoshapp(ウォッシュアプ)であり、Alight(オーライト)による38メガワットのソーラープロジェクトだ。

画像クレジット:Norrsken VC

「私たちが最も誇りに感じているのは、私たちが今これを実行しているということです」とラーソン氏。「現在開発中のものは完ぺきではありませんが、それは誰かが始めなければならないことだと、私たちは真剣に考えています。また、産業界がもっと透明になることが必要です。それを追跡し公開していることが1つの成果だと、私たちはまず言いたいのです」。

関連記事:スウェーデンのノルスケン財団が162.5億円のインパクト投資ファンドを応募超過でクローズ間近

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:ノルスケン財団SDGs環境問題持続可能性

画像クレジット:Malte Mueller / Getty Images

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

クレイジーな1週間だった

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

クレイジーな1週間だった

私が歳をとってしまったのかもしれないが、技術ニュースの勢いがトップギアに入りっぱなしになってしまったみたいだ。正気じゃないね。WeWork(ウィーワーク)がSPACで上場するというニュースが、どれだけ小さな扱いになってしまったかを考えて欲しい。この7日間に私たちをなぎ倒していったさまざまなニュースの中では、それは小さな出来事でしかなかった。

さて、Y Combinator(Yコンビネーター)のデモデイが行われてから、何週間も経ってしまったようにさえ思えるのに、実はあれは先週の出来事だったのだ。それでも、今回はそのことを読者と一緒に振り返ってみたい。アーリーステージのお披露目としてはおもしろかったといえるだろう。

1日限りのデモデイラッシュでは、数百のスタートアップたちが、自分たちのやっていることを1枚のスライドに凝縮して披露した。TechCrunchでもいくつかの お気に入り取り上げたものの、記事にできずに棚上げにしてしまったスタートアップの方がはるかに多かった。ということで、いくつかの名前をここに追加させて欲しいと思う。

フィンテック関連では、私が視聴できた時間帯では、いくつかの名前が目に留まった。Alinea(アリネア)は、Z世代向けのトレーディングアプリを作ろうとしている。Z世代は他のどの世代よりもはるかにクールだと思うので、私はそのアイデアを気に入っている。彼らには、彼らの世代特性に合わせたネイティブな投資体験をしてもらうべきではないだろうか?

Hapi(ハピ)のアイデアも似たようなものだが、対象はラテンアメリカだ。繰り返しになるが、私はそれを気に入っている。最近目にすることが多く、好ましいと思っている傾向は、米国で成功したスタートアップのモデルを新しい市場に適用し、地域に合わせた調整を加えて、より多くの人々に提供することだ。投資は長い間、不自然に高価なものだった。ここでの動きは、それをもっと低コストで行えるようにするものだ。

Atrato(アトラト)も、Affirm(アファーム)スタイルのBNPL(Buy Now、Pay Later:先渡し、後払い)モデルをラテンアメリカで展開している。個人的には、消費者向け貯蓄アプリに比べて消費者向けクレジットアプリは好きではないが、AffirmやKlarna(クラーナ)などが成長していることから考えると、そうした製品には実際の需要があるのだろう。Atratoが何を見せてくれるかが楽しみだ。

ラテンアメリカから東南アジアに目を向けてみよう。OctiFi(オクティファイ)は、同地域市場向けのBNPL製品を開発している。Demo Dayで見たスタートアップの中で、この地域で活動していたのは同社だけではない、BrioHR(ブリオHR)もその1つだ。

Bueno Finance(ブエノ・ファイナンス)は、欧米以外の市場向けのフィンテックというテーマによくフィットする会社だ。同社は「Chime for India」(インド向けChime)という製品を開発している。もしChimeやその他のネオバンクが、一般的に、裕福でない消費者たちに、低コストで質の高い銀行サービスを提供できるのなら、問題はない。もちろんほとんどのスタートアップは失敗するが、私は彼らが焦点を当てている場所は気に入っている(NextPayはフィリピンの中小企業向けデジタルバンキングに取り組んでいるし、その他にもいろいろある)。

私が注目しているもう1つのテーマは、自社のソフトウェアをマネージドサービスとしてではなく、API経由で提供するスタートアップだ。昔からThe Exchangeでも取り上げてきた。今回のデモデイの中では、Dyte(ダイト、ライブビデオのためのStripe)、Pibit.ai(パイビットAI、データの構造化を支援するAPI)、Dayra(デイラ、エジプト人のためのAPI利用の金融サービス)、enode(イノード、エネルギープロバイダーと電気自動車をつなぐAPI)などの名前が挙げられる。

他には、非ネット型中小企業向けのサービスに取り組んでいるスタートアップがいくつかあった。The Third Place(ザ・サード・プレイス)は中小企業向けのサブスクリプションサービスを開発しているし、Per Diem(パー・ディエム)はAmazon以外の企業たちに迅速な配送手段を提供したいと考えている。

他にもすてきな会社がたくさんあった(GimBooksRecoverWaspAxiom.ai!)、とても書き切れない。さて、これからの半年間で最も成長するのはどれかを、じっくりと見届けたい。しかし、私はこのデモデイを終えて、世界のスタートアップたちの活動に大きな希望を抱くことができた。3月23日の締めくくりは悪くなかった。

後期ステージのいろいろ

IPOやSPACのニュース(もしあまりご存知ないなら、これとかこれとか)の中に、私たちの時間を割く価値のある大きなラウンドがいくつもあった。そのうちの2つはインシュアテック分野からのもので、Pie(パイ、労災保険)が1億1800万ドル(約129億4000万円)、Snapsheet(スナップシート、請求管理)が3000万ドル(約32億9000万円)を調達した。

ServiceTitan(サービスタイタン)は、4倍となった評価額83億ドル(約9102億6000万円)で、5億ドル(約548億4000万円)を調達したことを、Forbesが報じている。約2年の間に、まるまると太った評価額となった。来年は彼らのIPOを取材することになると思う。また、会計に特化したPilot(パイロット)は、12億ドル(約1316億円)の評価額で1億ドル(約109億7000万円)を調達した。2021年のユニコーン誕生のペースは、決してスローではないと感じる。

また、UiPathのIPO申請書は、同社がいかにして恐ろしい損失を合理的な経済性に変えたかを示したという点で、非常に興味深いものとなっていると言わざるを得ない。少なくともGAAP的な意味で、Snowflakeの再現になろうと動いているように見える。

今月のニュースだけに絞って、さらに17段落を追加しても、数十億円、数百億円規模のラウンド全部についてはご紹介できない。正気じゃないね!確かに、2021年第1四半期のベンチャーキャピタルの数字は、ホットで刺激的なものになりそうだ。詳しくはデータを入手し次第、ご報告しよう。

その他のことなど

とはいえ、私はただマイルドな食べ物を提供するために来たわけではない。近い将来には、私の好きなスポーツと自分の仕事を絡めたストーリーの芽が出てきている。正確にいうならF1(カーレース)と技術のことだ。

最近、Cognizant(コグニザント)がAston Martin(アストン・マーチン)F1チームのスポンサーになった。Splunk(スプランク)はMcLaren(マクラーレン)と提携している。Microsoft(マイクロソフト)はRenault(ルノー)のAlpine(アルパイン)ブランドにちなんだ名前のチームと契約している。Epson(エプソン)、Bose(ボーズ)、Hewlett Packard Enterprise(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)の3社は、Mercedes (メルセデス)・レーシング・チームのスポンサーだ。そしてOracle(オラクル)はRed Bull(レッドブル・レーシング)のスポンサーだ。このリストはまだまだ続く!

そして先週、Zoom(ズーム)がF1ゲームにも参加することを発表した。これは私にとって楽しみであるだけでなく、ある希望にもつながっている。一部のハイテク企業が、F1チームを業界内競争の手段として利用し始めていることが明らかになってきた。だとすると、今まさに書いているように、仕事でF1について書くこともできるし、業績発表会の場で、なぜ貴社のチームは速くないのかという質問で責められるテック系のCEOも増えるだろう。すでに、SplunkのCEOであるDouglas Merritt(ダグラス・メリット)氏は、彼のオレンジ色のチーム(McLarenのこと)についての私からの質問にうんざりしていることだろう。もちろん、質問をやめるつもりはない。

ということで、私はこれから、もしあなたがテック系のCEOで、その会社がF1チームのスポンサーになっていないなら、あなたの会社は小さすぎて重要ではない企業か、もしくは退屈すぎて楽しくない企業だと考えることにする(というのは、ほぼ冗談だけどね)。

カテゴリー: VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch ExchangeY Combinator

画像クレジット:Nigel Sussman

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)