AppleとGoogleが新型コロナ暴露通知アプリのサンプルコード、UI、詳細なポリシーを公開

Apple(アップル)とGoogle(グーグル)は、最初のバージョンのExposure Notification(暴露通知)APIの開発者向けに、さらなるリソースの提供を開始した。このAPIは、両社が制作した開発ツールだ。アップルとグーグルは、公的保健機関が新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が診断された患者との接触の可能性を個人に知らせる、クロスプラットフォームの通知手段の開発に取り組んでいる。

第1バージョンのExposure Notification APIは、Contact Tracing(接触者追跡)APIと呼ばれていたものを、その実際の用途と目的を正確に表現しようとAppleとGoogleが名称を変更したものだが、iOSとXcodeのベータ版アップデートとともに先週公開された。そして米国時間5月4日、開発例となるUIアセット、iOSとAndroidのサンプルコードなどを含む開発者向けの新しいサンプルリソースがアップルとグーグルから公開された。これらは、公的保健機関がアプリ開発をすぐに始められるよう、開発の出発点としてデザインされている。

同時にアップルとグーグルは、新しいポリシーも発表した。これには、このAPIを使ったアプリの使用が承認されるように開発者が留意すべき、以下のような要件が含まれている。

  • これは公式な政府の保健当局によって作成され、または同局が使用するためものであり、その使用は新型コロナウイルス感染症対応に限定される。
    実際に使用する前に、当APIの実際の使用についてユーザーの同意を求めなければならない。
  • テストの陽性結果などの情報を、アプリを運営をする公的保健当局が公表する以前に、本人の同意を求めなければならない。
  • 暴露通知に必要な最低限の情報のみを収集し、新型コロナウイルス感染症対応のためのみにそれを利用すること。すなわちこれらのアプリが広告やその他の目的にその情報を利用することを明示的に禁ずるものである。
  • アプリは、特定の地理位置情報データを提供するデバイスの位置情報へのアクセス、およびアクセスの許可を求めることができない。公的保健当局から既に公開されている位置情報を利用するアプリについては今後も提供を続けるが、それらの情報を利用するいかなるアプリも、新しいExposure Notification APIへのアクセスをグーグルとアップルは認めない。
  • 効率性を高めるために細分化を避けるようデザインされているため、1つの国にアプリは1つと定めるが、国が地域や州などに分割されている場合、アップルとグーグルは当該保健当局と積極的に話し合い、最善の方法を探ることとする。これは基本的に国が州ごとに異なるアプリを使用したいとアップルに申し出た場合、アップルは複数アプリを許可し、その国のストアに掲載されるようにすることを意味する。また、これらは州ごとの暴露通知メカニズムが他州にまたがり連携できるか否かという点において、柔軟に対応する。

両社は、2020年5月末の一般消費者に向けた公開バージョンのAPIのリリースに先立ち、ソフトウェアおよびソフトウェア開発キットのアップデートのペースを今のまま保持するとも話している。アップルとグーグルは、APIの消費者向けリリースの時期を「5月中旬」に予定している。最終的な予定として、2020年末までには、システムレベルの機能として暴露通知をリリースするという。

以下の写真で、両社のサンプルUIリソースを見ることができる。これらは、アプリが完成した場合の通告方法、設定画面、その他の外観の案を示すものだ。もちろん、公衆衛生当局(または開発を請け負った者)が作るアプリごとに多少の違いは生じるだろう。

  1. 04-COVID-19-Exposure-Notifications-Settings-Android

    暴露通告の設定
  2. 02-COVID-19-Exposure-Notifications-Sample-Public-Health-Authority-App-Positive-Result-Android

    公的保健機関サンプルアプリの陽性報告の流れ
  3. 02-COVID-19-Exposure-Notifications-Sample-Public-Health-Authority-App-Positive-Result-iOS

    公的保健機関サンプルアプリの陽性報告の流れ
  4. 03-COVID-19-Exposure-Notifications-Sample-Public-Health-Authority-App-Exposure-Notifications-Android

    公的保健機関サンプルアプリの暴露通告の流れ
  5. 03-COVID-19-Exposure-Notifications-Sample-Public-Health-Authority-App-Exposure-Notifications-iOS

    公的保健機関サンプルアプリの暴露通告の流れ
  6. 04-COVID-19-Exposure-Notifications-Settings-iOS

    暴露通告の設定
  7. 01-COVID-19-Exposure-Notifications-Sample-Public-Health-Authority-App-Onboarding-Android

    公的保健機関サンプルアプリの登録画面
  8. 01-COVID-19-Exposure-Notifications-Sample-Public-Health-Authority-App-Onboarding-iOS

    公的保健機関サンプルアプリの登録画面

アップルとグーグルは、独自に接触者追跡アプリの開発に取り組み、それを機能させるためにiOSとAndroidの特定の部分にアクセスしたいという数多くの公的保健当局からの要請に応えて、この前例のない共同事業に乗り出した。両社は、ユーザーの身元がわからないように、また地理的位置情報衛星のサービスが受けられない屋内を含むあらゆる環境でもシステムが確実に機能するように、地理的位置情報データではなく、Bluetooth識別子を使うという基準のもとで協力し合うことを決めている。

保健当局は、自分が受けたテストの結果に紐付けられた一意のコードの入力をユーザーに求めるようにもできる。それによりユーザーは、陽性の診断が、自己判断や保健当局が新型コロナウイルス感染症診断用として認可していないテストに基づくものではなく、公式なテストで認められたものであることが確認できる。

グーグルとアップルが提示したサンプルの参照アプリケーションは、一般ユーザー向けに公開されることはない。あくまでも開発者限定だ。だが両社とも、新型コロナウイルス感染症に適時に対応するアプリの開発者の努力を支援するために、完全なソースコードを含んだ参照アプリケーション全体を開発者に提供している。

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceXとNASAの有人宇宙飛行「Demo-2」の詳細が明らかに、5月27日にライブ配信決定

NASAとSpaceXにとって宇宙開発の歴史を作る決定的な瞬間が今月末に迫ってきた。5月27日に実施されるDemo-2ミッションではSpaceXが初めて有人宇宙飛行に挑む。乗員はNASAの宇宙飛行士2名で、米国による有人飛行としては2011年に退役したスペースシャトル以来となる。

先週、SpaceXとNASAの代表がDemo-2の詳細を説明した。NASAの宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏の2名はSpaceXのCrew Dragonに搭乗しFalcon 9でISS(国際宇宙ステーション)を目指す。

Demo-2というミッション名でも明らかなようにこのミッションはまだテストの一部だ。それでもSpaceXとNASAにとっては2名の宇宙飛行士を無事に帰還させることが至上命題であり、責任は重い。ちなみにDemo-1も今回同様Crew Dragon宇宙船をISSへ往復させるミッションだったが、飛行は無人で実施された

【略】

Demo-2は当初の計画されていたよりもかなり長くなる。NASAの発表によれば。ミッションは30日以上、最長で119日継続される。その期間内でで必要に応じて実際のスケジュールが決定される。NASAにとって現在最も重要な目標は、商業有人飛行ミッションであるCrew-1の実施だ。このミッションではNASA、JAXAなどからの4名を宇宙に運ぶ予定だ。

【略】

発表されたタイムラインによれば、Falcon 9の1段目のブースターが点火されて打ち上げプロセスが開始される。上昇後、ブースターが分離されCrew Dragonを搭載した2段目ロケットが作動する。ブースターは前後を入れ替えるフリップ動作を行い、ブーストバックと呼ばれる噴射により、着陸に向けた軌道に入る。ブースターは大西洋を航行するSpaceXの回収艀に着陸する予定だ。

一方、Dragonカプセルは2段目ロケットから分離してISSに向かう。到着までの時間は打上時のISSの位置により、最短で2時間、最長48時間かかる。

打ち上げ予定日前後のフロリダの天候は予測しにくい。またDemo-2が有人飛行であるためDemo-1のときよりも天候条件はシビアなものとなるだろう。直前でスケジュールに変更が加えられる可能性はあるが、打上に適した「窓」はその後も多数ある。

Crew Dragonは2段目から離脱して飛行を開始した後、ISSに近づくために何回かロケットエンジンを作動させる。ドッキングそのものは自動操縦となる。Crew Dragonは完全に自動化されたドッキング機能を備えている。従来はカナダ企業が開発したためCanadarmと呼ばれるロボットアームを使ってISS側のオペレーターがカプセルを捕獲する必要性があった。

ドッキングが完了すると、Crew Dragonは与圧され、宇宙飛行士がISSに移乗できる。 ISSでは、ベンケンとハーリーは実験やメンテナンスなどの業務を行う。その後2名はCrew Dragon戻り、ドッキングを解除、貨物コンパートメントを投棄して軌道離脱のためにロケットを作動させる。大気圏再突入後、十分に減速した段階でパラシュートを展開して大西洋に着水するという予定だ。ISS離脱からから着水までには約24時間かかる。

地上支援チームは5月16日からクルーの厳重な隔離を開始する。これは打上まで続く。打上施設のスタッフは新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止のためのソーシャルディスタンスのルールに従い、互いに常に2mの距離を取る。飛行司令ステーションもこのため改装されスタッフの配置も変更される。

ミッションは各段階ごとにみればさほど複雑には見えない。 しかしすべての段階が完璧な信頼性をもって実施されねばならず、これはSpaceXとNASAの長年のハードワークの集大成となる。2011年のスペースシャトル退役以後、米国は国産ロケットでISSにクルーを送ることができなかった。米国が有人宇宙飛行の舞台に復帰する瞬間が近づいている。5月27日の米国東部夏時間正午(日本時間5月28日午前1時)にジョン・F・ケネディ宇宙センターで行われる打ち上げは、ぜひともライブ配信で楽しもう。

画像:NASA

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXは最初の有人飛行の打ち上げ中脱出テストのビデオを公開

SpaceXは、人間を乗せる最初の宇宙船、Commercial Crew Demo-2ミッション(DM-2)を打ち上げる準備を整えている。5月27日にフロリダから発射する予定のフライトの前には、まだ仕上げなければならないことがいくつか残っている。その中には、米国時間4月30日に行われた最終的なパラシュートシステムのテストもあった。同社は、直近の無人のCrew Dragonの打ち上げの様子を要約したビデオを公開した。今年の1月19日の打ち上げで、飛行中の脱出の予行演習を撮影したもの。

このビデオは、今回のテストの進行状況を映し出している。実際に搭乗することになる宇宙飛行士のボブ・ベンケン(Bob Behnken)氏とダグ・ハーリー(Doug Hurley)氏が、管制センターで飛行の様子を見守る姿も捉えている。Crew Dragonは、SpaceXのFalcon 9ロケットに取り付けて打ち上げられた。打ち上げの初期段階で緊急切り離しが発生し、爆発が起こってロケットは火だるまとなる。もちろん意図的なものだ。その後カプセル自体はパラシュートで安全に海まで降下し、SpaceXの船に回収される。

これは、安全装備として設計された重要なシステムのデモンストレーションだ。打ち上げ時にロケットが重大な不具合を起こしながら、すでに離陸してしまったという、万が一の場合にのみ発動される。このシステムは、宇宙飛行士が乗っているCrew Capsule(クルーカプセル)を、ブースターと第2ステージからすばやく自動的に遠ざけ、爆発が発生した際にも乗員は安全な距離を確保できることを保証する。

離陸前に、カプセルと打ち上げエリアから素早く退去できるようにする地上脱出システムなど、宇宙飛行士が搭乗し、米国内で打ち上げる有人宇宙飛行に対して、NASAは多くの安全装備を必須のものと定めている。これまでのところSpaceXは、NASAを満足させる程度には、そうしたシステムの準備ができたことを実証してきた。そして今、残された飛行前のチェックとリハーサルの数は、わずかとなった。あとは、歴史的なものとなるはずの5月27日のミッションを待つ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NVIDIAの主任研究員が4.3万円で作れる人工呼吸器を開発

NVIDIAの主任研究員のBill Dally(ビル・ダリー)氏は、人工呼吸器のハードウェア設計をオープンソースとして公開した。世界的な新型コロナウイルスのパンデミックによって、人工呼吸器が不足していることに対処するためだ。ダリー氏が開発した人工呼吸器のメカニズムは、既存の部品を利用して手早く組み立てることができる。費用は総額で約400ドル(約4万3000円)程度。通常の専用人工呼吸器の価格が2万ドル(約214万円)以上であることを考えると、かなり入手しやすいものとなる。

ダリー氏の設計はシンプルさを追求したもので、主要な部品は、基本的にソレノイドバルブとマイクロコントローラーの2つだけとなっている。この設計は「OP-Vent」と名付けられた。以下のビデオを見れば、一般的な人工呼吸器のハードウェアに比べて、部品がスカスカなことがわかるだろう。また新型コロナ対策として、救急用に設計された他の人工呼吸器よりもずっとシンプルだ。

ダリー氏は、これを機械工学のエンジニアや医師からのインプットを活用して設計した。その中には、スタンフォード大学のチーフレジデントであるAndrew Moore(アンドリュー・ムーア)博士や、医療機器の専門家で、企業の共同創立者でもあるBryant Lin(ブライアント・リン)博士も含まれている。わずか5分で組み立てることができ、ペリカンケースに余裕で収まるので、輸送するのも持ち運ぶのも簡単だ。部品点数が少ないだけに、エネルギー消費も少ない。救急医療隊員が緊急対応で使うシンプルな手動のブリーザーバッグを利用するタイプよりも少ないくらいだ。

次のステップは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応機器として、FDAの緊急使用許可プログラムの認可を得ること。それから製造パートナーを探して、大量生産を実現することだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAの火星ヘリが地球外で最初に動力飛行する想像ビデオが公開

NASAは、今年後半に次期火星探査車を「赤い惑星」に送る準備を整えている。このミッションには、Ingenuityと呼ばれる新型ヘリコプターロボットも搭載される。地球以外の惑星の大気の中を動力飛行する最初の機体となることで、新たな歴史を刻むことを目指したもの。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

NASAのジェット推進研究所(JPL)は、そのフライトがどのようなものになるのかを示す、一種の予告編を作成した。実際には、Mars 2020ミッションとして、2021年の2月18日に火星に到着することを目標とし、その後に現実となるはずのことを映像化したものだ。

Ingenuityは、シンプルなデュアルローターを備えたドローンのように見えるだろう。しかし実際には、火星で低高度の「ホップ」を繰り返すというミッションを完遂するための、重大な技術的課題を克服する革新的なエンジニアリングの賜物なのだ。実は、それを唯一の目標としている。現に、この4ポンド(約1.8kg)の機体は、何の計測機器も搭載していない。これは基本的に、将来の火星研究に役立つ空中探査機の設計と開発を準備するためのデモ機なのだ。

現実的には、Ingenuityのソフトボールほどの大きさの本体を空中に浮かすだけでも、偉業と言える。というのも、火星での飛行には、地球上に比べてはるかに大きな揚力を必要とするからだ。それは大気の性質の違いによるもの。そのため、このヘリコプターのテスト飛行は、毎回約90秒しか持続せず、わずか16.5フィート(約5m)の高さまでしか上昇できない。地球上ならたわいもないことだが、地球上での高さに換算すると、だいたい10万フィート(約30km)に相当する。普通の旅客機よりもずっと高い。

NASAのMars 2020ミッションは、今のところ今年の7月17日から8月5日の間に打ち上げ予定となっている。NASAの長官、ジム・ブライデンスタイン(Jim Bridenstine)氏は、新型コロナ対策のために必要とされる制限や回避策にもかかわらず、このミッションが最優先事項であると、何度も繰り返し表明してきた。というのも、火星に向けて飛び立つのに最適な機会は、2年に1度ほどしか訪れないからだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

医療スタートアップNinesがAIトリアージツールを放射線診断医に無料提供

米食品医薬品局(FDA)から認可を受けたAIベースのトリアージツールを開発したメディカルスタートアップのNines(ナインズ)は、放射線診断医の負担増大に対処するため、6月30日までツールを無料で提供する。新型コロナウイルス(COVID-19)が米国におけるヘルスケアの姿を変えつつある。

NinesAIは、頭蓋内出血の可能性のある緊急症例と患者の血腫による圧迫の状態を識別するように設計されており、放射線科医が症例に優先順位を付けての診断に役立てることができる。NinesAIは兆候を検出する補助ツールであり、その上で訓練を受けた放射線科医がCTスキャンによってさらに検査すべきか検討することになる。とはいえ、作業負荷を減らし、時間のかかる手作業の初期ステップを省くのに非常に役立つ。

これはAIの応用が非常に理にかなっている良い例だ。Udacity(ユダシティ)の創業者とGoogle(グーグル)の自動運転車のパイオニアであるDavid Stavens(デイビッド・ステイブンズ)氏が共同で創業したNinesは、ニューヨーク市のマウント・サイナイ病院放射線科会長のAlexander Kagen(アレクサンダー・カーゲン)博士をチーフ・メディカル・オフィサーに擁する。同社は機械学習の専門知識を駆使して、診断プロセスの中で繰り返しが生じる部分を担うソフトウェアを開発し、放射線科医が最終診断や特別な症例などのより専門的でコピーが難しい部分に集中する時間を確保する。

NinesAIツールは同社の遠隔放射線診断プロダクトを使用するNinesのユーザーが無料で利用できるだけでなく、既存のユーザーも放射線診断の現場で追加費用なしで使用できる。

Ninesは、頭蓋内出血と血腫による圧迫のトリアージ向けAIツールにFDAから認可を受けた最初の企業だ。同社は2017年に創業され、これまでにAccel(アクセル)や8VCなどの投資家から1650万ドル(約18億円)を調達した。

画像クレジット:Nines

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(翻訳:Mizoguchi

NASAのジェット推進研究所が開発した緊急時用人工呼吸器をFDAが認可

アメリカの食品医薬品局(Food and Drug Administration, FDA)が、同局のCOVID-19ガイドラインに示されている緊急時の使用を、NASAのジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory, JPL)の技術者たちが新たに設計した人工呼吸器に対して認めた。NASAは昔から頭字語が大好きなお役所なので、この人工呼吸器も早速「VITAL」という頭字語で呼ばれている。それは、Ventilator Intervention Technology Accessible Locally(現地で使用できる人工呼吸器インターベンション技術)の略だ。その設計は、コロナウイルスの危機の間は誰もが無料で使用できる。

JPLが開発した緊急時用人工呼吸器は挿管式人工呼吸器で、鎮静剤を投与した患者の気道のずっと下の方まで呼吸管を挿入して呼吸を助ける。それはもっとも重症のCOVID-19患者用とされ、しかも機器の不足時には、それまでに患者が使っていた正規に承認された人工呼吸器を他に回してから使う、となっている。

NASAによると、VITALのいちばん興味深い点は、これまでの人工呼吸器に比べて部品点数が「きわめて」少ないことだ。だから組み立てもはやく、メンテナンスに時間と専門技術者を要しない。ただし数年間使える従来のハードウェアと違って推奨使用期間は3〜4か月とされ、あくまでもCOVID-19の患者専用とされている。つまり、今後もいろんな医療状況で使用できる一般的な人工呼吸器ではない。

しかしそれでも、NASAのJPLは、FDAの認可を得たことを機に、そのハードウェアの商用生産のパートナーを探している。大量生産により、それを必要とする多くの病院に配布したいのだ。

COVID-19によって需要が増えたため、これまでにもさまざまな緊急時用人工呼吸器が登場している。でもNASAのJPLというと、技術者集団としてのイメージも高いし、もっとも深刻な緊急時用とされているこの製品は、技術的にも優れているものと思われる。

画像クレジット: NASA/JPL-Caltech/Getty Images

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

NASAやJAXAが5月末に新型コロナ対策ハッカソンを共同開催

NASAとESA(欧州宇宙機関)、JAXA(宇宙航空研究開発機構)は共同で、新型コロナウイルス(COVID-19)の抑制をテーマとするハッカソンを開催する。5月30日から31日にかけて、パンデミック対策で国際協力のモデルケースともなるべきバーチャルハッカソンになる。このプロジェクトはこれらの宇宙組織が保有する公開データを使用して新型コロナウイルスのパンデミックに対する画期的な解決策を開発することが目的だ。

これらの機関は宇宙事業で常に協力しているが、 「Space Apps COVID-19 Challenge」(新型コロナウイルスアプリ宇宙チャレンジ)と名付けられたプロジェクトでは共有されるデータをベースに48時間のダッシュで役立つ成果を得ようとしている。

衛星が宇宙から収集した観測データは、新型コロナウイルスの拡散経路や地球の生態系、都市にウイルスがどのような影響を与えているのかを推測するために役立つはずだ。

ハッカソン参加者は3宇宙機関が運用する衛星からのデータにアクセスできる。画期的ソリューションとプロダクト開発のためにNASAのデータの使用を奨励しようという目的でNASAがこれまでもSpace
Apps Challengeを定期的に開催してきた。Space Apps Challengeに地域等の制限はなく、実際世界の学生やデベロッパー、研究者が参加してきた。これに日本とヨーロッパの宇宙開発機関が協力し、世界的なスケールでバーチャルハッカソンを行うことになった。このような試みは今回が初めてだ。

またNASAは新型コロナウイルスの拡散に起因する諸問題に対する解決策を探るため部内のクラウドソーシング・プラットフォームを使っている。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ジョンズ・ホプキンス大学が新型コロナの検査状況がわかる新しいサイトを公開

米国における新型コロナウイルス(COVID-19)の検査状況を理解することは容易ではない。政府や公共、民間の医療機関などの異質な組織が関わっているためだ。新型コロナの追跡と基本情報源の収集にすばらしい成果を上げているジョンズ・ホプキンス大学が「COVID-19 Testing Insights Initiative」という新たなハブを立ち上げ、利用できる検査の種類や米国内でどのように実施されているかどんな規模で行われているかを詳しく紹介している。

新しいハブは、現在新型コロナをどうやって診断しているのか、2種類のテスト(分子生物学的と血清学的)はどう違うのか、検査を受ける際の支払いや該当する症状、暴露のリスクなど、よく聞かれる質問への答えを用意している。

特に重要なのは、検査実施回数を確認された感染者数、死者数と比較したグラフを州別に提供していることだ。一週間の検査陽性率の変化もすべての州について報告されいて、陽性者数の増減を週単位で見ることができる。

ジョンズ・ホプキンス大学は、データは必ずしも一貫していない、それはさまざまな公開情報を元にしているからであり、州のデータ自体も一貫していないからであると注意している。一貫性に欠けるデータから生じる不規則性についてはできる限りのことをしているが、データの事実を曲げることはしたくない、と同大学は言っている。

何回検査が実施されたか、どこで、誰が検査され、何人陽性だったかに関する全体像は多くの混乱と議論を生んでいる。ホワイトハウスが提供する数字は、州が報告する数字とことごとく不一致があり、検査総数については特にそうだ。

ジョンズ・ホプキンスの新しいハブは、検査の現状を州毎に見るために最良の情報源であり、新たな情報が入り次第更新される。検査能力の拡大は、あらゆる有効な新型コロナ対策にとって決め手の一つであり、われわれが適切に行動しているかどうかを示す通信簿の役割を果たすだろう。

画像クレジット:USC / L.A. County Department of Public Health

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルとグーグルが新型コロナ感染警告向け通知APIのベータ版をリリース

新型コロナウイルス(COVID-19)の流行の抑制に取り組んでいるApple(アップル)とGoogle(グーグル)は共同で、感染者との接触をモニタするアプリを開発している。両社が感染追跡APIと呼んでいた感染リスク通知APIの最初のバージョンがリリースされた。これはデベロッパー向けAPIのシード版であり、フィードバックを得るのが主たる目的だという。公衆衛生機関と契約して感染者との接触を追跡しリスクがある人々にこれを通知するアプリを開発するデベロッパーが対象だ。

先週、アップルのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏はEU委員会のThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏に「APIはまもなくリリースされる」と述べている。これが事実リリースされたわけだ。ただし、現在利用できるのは「世界中の公衆衛生当局の依頼を受けてアプリを開発しているデベロッパー」だと両社は述べている。

シード版という意味は、5月中旬に一般に公開されるAPIに先駆け、デベロッパーから利用上の問題点などのフィードバックを得ることを目的としたテストだという。正式に公開されれば、デベロッパーはAPIを利用したアプリを開発してiOSとGoogleのストアから公開できる。

両社は「今週の金曜にAPIのリリースに関する詳細を発表する」と述べた。ここでサンプルコードに加えて実際にどのように作動するのかがが明らかにされるようだ。両社は一般公開された時点でマニュアルなどのドキュメンテーションのアップデート版も提供する。またテスト期間中、アクセスできるデベロッパーを随時追加する。ただし両社はAPIへのアクセスを公衆衛生当局のために活動するデベロッパーに限定している。

両社はデベロッパー向けサイトでスペックの詳細を記述した文書を公開しており、機能の改良についてのアップデートもすで行われている。先週の電話記者会見でも述べられていたが、ユーザーのプライバシー保護と利用の容易さには特に重点が置かれ、デベロッパーがこれをアプリ内で実装する方法に特に努力が払われた。

最新版では、公衆衛生当局がそれぞれの実情に基づいて独自の基準を作成しユーザーの感染リスクを判定できる機能が追加された。変数には新型コロナウイルス感染確認者と接触した距離や時間の長さなどが含まれる。デベロッパーはどのレベルのリスクがあった場合にユーザーに警告を通知するか容易にカスタマイズすることができる。

ベータアップデートでは、下のスクリーンショットにあるように、ユーザーが個々のアプリの新型コロナウイルスの感染警告の通知の有効、無効を簡単にトグルできる機能が追加されている。

両社は4月10日にAPIと、最終的には、OSレベルに感染リスク追跡機能を組み込むアプリを共同開発していることを発表した。APIの一般公開は5月中旬、その後数カ月の間にOSレベルでへの統合を行う予定だ。 このテクノロジーはプライバシー保護に留意してデザインされている。特定個人が識別されることがないよう、ランダムに生成したユーザーIDが割り当てられ、2週間で破棄されて新しいIDが付与されるという。

画像:Bryce Durbin/TechCrunch
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(翻訳:滑川海彦@Facebook

NASAが太陽帆宇宙船のテストにリトアニアの大学からスピンオフしたNanoAvionicsの小型衛星を採用

NASAは小型衛星の操縦のための推進剤によるスラスターの代わり、あるいは深宇宙ミッション用宇宙船の低コストでの輸送の可能性を判断するために、新しいソーラーセイル(太陽帆)システムをテストする。同宇宙局は米国時間4月29日、イリノイ州をベースとする小型衛星開発会社であるNanoAvionics(ナノアビオニクス)を、ソーラーセイルシステムのテストのための宇宙船メーカーとして選定したと発表した。

Advanced Composite Solar Sail System(ACS 3)と呼ばれるNASAのミッションは、同宇宙局のAmes Research Systemが率いるもので、地球低軌道に展開される小型衛星に、ほぼ1ベッドルームのアパートに相当する約800平方フィートの面積のソーラーセイルが装着される。ソーラーセイルは太陽光発電ではなく、太陽からの光子がソーラーセイルに衝突して発生するエネルギーを利用して、宇宙船を推進する。この方法は非常に微力だが、摩擦の影響を受けずに真空中に放たれた光子の力を利用することで、最終的にこの方法で推進する宇宙船は、かなりの量のエネルギーを蓄積することになる。

NASAがこの種の推進システムを開発する理由は、推進剤をまったく必要としないため、打ち上げや運用コストを大幅に削減できるからだ。これにより同宇宙局は太陽系を旅するような長期間の科学ミッションを行うことができ、最終的には従来の燃料システムではコストやロジスティックの制約で実現不可能な、深宇宙での小惑星採掘のようなより複雑な作業に挑戦することができる。

ソーラーセイル技術は新しいものではなく、NASAは2011年にもソーラーセイルの試験飛行を行ったが、2014年のSunjammerと呼ばれる2回目の実証飛行は、飛行テストの前に中止された。非営利の科学団体である惑星協会は昨年、クラウドファンディングによるソーラーセイル宇宙船を独自に打ち上げ、太陽の力だけで小型衛星を推進させられることを実証した。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

アップルが全米の新型コロナ検査施設をマップに追加

Apple(アップル)は、同社のマップアプリに全米の新型コロナウイルス(COVID-19)検査施設を追加した。全50州とプエルトリコが対象だ。この更新によって病院、診療所、救急施設、一般開業医、薬局などに加えて、専門の新型コロナ検査場など、検査が可能な場所の位置が表示されるようになる。さらに、位置を検索したときの目的地候補として新型コロナ施設が優先的に表示される。またアップルは、新型コロナ危機の中で人々がどのように都市を移動しているかを示す、Mobility Trends(移動傾向レポート)サイトも更新した。

マップアプリのアップデートは先週9to5Macが発見している。検査施設の提供者がデータベースに位置を追加するためにアップルが作ったポータルを通じてわかった。追加情報は既に有効になっており、パンデミックのためにカスタマイズされた優先検索オプションに追加されている。他には食料品店、フードデリバリー、薬局、病院、救急施設などが優先検索対象になっている。

移動傾向レポートは地域指定が改善され、米国、カナダで週単位での検索ができるようになり、地域の地元での呼び名が検索結果に追加され、世界中の人が目的の場所を見つけやすくなった。米国では、対象になる都市が追加されている。

アップリはこのデータを公開することで、政府や交通機関、都市などがパンデミックによる影響の理解を深めるとともに、ソーシャルディスタンスや自宅待機などの行動がどれだけ守られ、どれだけ効果を生んでいるかに関する情報を提供するために役立てることを期待している。このデータは、ユーザーがマップアプリで検索した目的地情報に基づいているが、アップルのマップには既にプライバシー対策が講じられているため、検索情報と共に個人情報が収集されることはない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

イーロン・マスク氏が天文観測の邪魔をしないStarlink衛星の新機能を解説

今週開かれたバーチャル記者会見で、SpaceXの創設者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、同社のStarlink衛星のコンステレーションが夜間の天文観測を邪魔しないようにする新計画の詳細を解説した。マスク氏は、以前、衛星の視認性を低減させるための「サンバイザー」を作るつもりだとTwitterで明かしていたが、その仕組みや以前にSpaceXが試した黒く塗る方法と比較してどうなのか、詳しいことをマスク氏もまだわかっていなかった。

Space Newsの記事によると、SpaceXの新しい「VisorSat(バイザーサット)」のアイデアは、基本的にサンバイザーで太陽の直射光をブロックし、衛星に搭載されている反射率の高いアンテナに光が当たらないようにして、反射光が地上に届くのを阻止するというものだ。その反射光が、夜空の明るい光として見える原因になっている。

将来のStarlinkに追加予定のこの新しいハードウェアは、その他の対策を補完するものでもある。その1つが、打ち上げ後に目標の軌道にのるまで、特に地上から見えやすくなる期間に衛星の向きを変えるという対策だ。全体的なゴールは「1週間以内に衛星を肉眼では見えないようにして、天文学への悪影響を最小限にする」ことであり、コンステレーションによるいかなる影響も科学者や研究者による新発見を妨害しないよう重点的に取り組むことだと、マスク氏は言う。

Starlinkコンステレーションを見えにくくするSpaceXの最初のテストでは、反射しやすい表面を暗い色で覆う方法に重点が置かれていた。テスト当初はある程度の効果が示されたものの、VisorSat方式の方が効果的であり、明るさを少し下げるといった程度ではなく、大幅に低減してくれるものだとマスク氏は確信している。

今のところSpaceXは、次のStarlinkの打ち上げでVisorSatシステムをテストしたいと考えている。2020年に入ってからこれまで、月に1度のペースで打ち上げが行われてきた。だが、このシステムには機械工学上の問題が残されている。太陽の直射光を遮る日よけを飛行中に展開する必要があるのだが、それはまったく新しい装置だ。しかもStarlinkの本来の仕事を邪魔しないよう、日よけの素材は電波を通すものでなければならない。そうでなければ、地上の利用者に低遅延の高速ブロードバンドを提供できなくなってしまう。

これがうまくいけば、その後のStarlink衛星にはVisorSatが搭載されることになる。ちなみに、現在軌道上にある衛星は比較的寿命が短く、それらに対策を施さなくても、ほんの3、4年で運用を終えて軌道から落ちることになっているとマスク氏は話す。そのころには、さらに工学的に進歩した衛星に置き換わっているはずだという。

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(翻訳:金井哲夫)

MITが筋肉でロボットをコントロールするシステムを開発、ドローンをジェスチャーで正確に操縦

MITの計算機科学と人工知能研究所(Computer Science and Artificial Intelligence Lab、CSAIL)が、今手がけている筋肉の信号でデバイスを制御するプロジェクトをビデオで披露した。彼らの最新の成果ではドローンを完全かつ細かく制御でき、手と腕のジェスチャーだけを使って複数の輪を通り抜けることができた。これは、デバイスをバイオフィードバックでコントロールし、別途ジェスチャー認識のための光学系などを必要としないだけでなく、細かい明確な制御ができるので、遠隔制御の応用領域を大きく広げることができる。

この研究グループも、さまざまな利用分野を展望している。たとえば、複数のロボットのコラボレーションの産業分野への応用だ。もう一つの領域がドローンの操縦で、現実世界での用途に大きな利点をもたらす。例えば、パイロットがVRで大きな視界を獲得できれば、ドローンの複数の編隊をコントロールすることも可能だろう。これでたとえば、大きな建設現場の測量を一人でできたりするだろう。あるいは人が行くのが困難なオフショアのプラットホームなどで、遠隔の機器装置を検査できる。

ロボットと人間のシームレスな対話は、ロボット工学の究極の目標の1つだ。人間は自分の動作や環境を効果的に扱うことを直観的にできるから、ロボットを制御したりロボットと一緒に仕事をするときもそうありたいと願う。人間が環境と対話するときは、思考と行為が基本的には並列で生じているが、機械や遠隔のツールが相手のときはその滑らかさと直観性が翻訳過程で失われ、ロボットの学習過程や訓練は急峻な学習曲線になる。

人間と一緒に安全にコラボレーションで仕事ができるロボットの研究開発は、ロボティクスでなくコボティクス(Cobotics、協働ロボット)と呼ばれる。これは、人とロボットの対話をもっと自然で直観的に、そして究極的には安全にするための研究開発の進歩から生まれる。この分野でのMITの研究は、大規模な仕事でも訓練やプログラミングが少なくてすむ未来の工業用ロボットに結実するだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SpaceXはStarship試作機の最後の重要なテストに合格し初飛行へ

SpaceXは、次世代型ロケットStarship(スターシップ)の開発を始めてずいぶんになるが、テキサス州ボカチカで建造中の大型プロトタイプは、これまで「クライオ」と呼ばれる重要なテストになると決まって致命的なエラーに見舞われてきた。これは、宇宙の真空を再現した状態で燃料タンクに最大圧力で燃料を満たすというものだ。だが最新のプロトタイプSN4(シリアルナンバー4という意味)はこのテストに合格し、エンジン点火テスト、そしてそれに続く短距離飛行へと道が開かれた。

SpaceXのSN4プロトタイプは、同社が当初、新型Raptor(ラプター)エンジンの性能を披露するためだけに飛ばした小型の実験機Starhopper(スターホッパー)とは異なり、最終的なロケットの形に近い姿をしている。SN4もStarhopperと同じく、Raptorエンジンを1基だけ搭載していて、実験目的の短距離飛行が可能だ。次期バージョンのSN5は、SpaceXのCEOで創設者のElon Musk(イーロン・マスク)氏によると、Raptorエンジンを3基搭載し、実際に運用に使われる機体に搭載予定の6基には及ばないものの、軌道に載るデモ飛行に備えた長距離飛行が可能だという。

新しいロケットや打ち上げシステムのテストと開発には、どうしてもトラブルが付きまとう。世界中のどのシミュレーションも、現実の使用条件や物理法則を完全に再現できないからだ。しかし、これまでのStarshipのクライオ試験の段階での失敗は、もっと初歩的な問題によるものなのではないかと彼らは考えるようになった。結局それが、SN1からSN3までを失敗に追い込んだ原因だった。

これでSpaceXは、プロトタイプに搭載した形でRaptorエンジンの地上点火テストが行えるようになり、早ければ今週末にも実施される。その後は、高度150メートルほどの飛行が予定されている。これはStarhopperが実証飛行したときと同じ高さだ。もちろん、軌道までの距離からすれば足下にも及ばないが、これは実物大のロケットが低空でどのように挙動するかを確かめるためのものであり、高高度まで飛行できる、さらには軌道にのることができるプロトタイプの開発につながる鍵をSpaceXに渡すものとなるのだ。

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(翻訳:金井哲夫)

ビル・ゲイツ氏が財団の全リソースを新型コロナとの戦いに向けると表明

Microsoft(マイクロソフト)創業者のBill Gates(ビル・ゲイツ)氏が、グローバルの新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックと戦うために現在展開されている取り組みをサポートしようと、Bill & Melinda Gates Foundation(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)の活動をいかに「ほぼ全面的」に新型コロナウイルス感染症にシフトさせているかをファイナンシャル・タイムズに語った(Fast Company経由)。同紙に対してゲイツ氏は、新型コロナウイルスの感染拡大は恐ろしいほどの経済影響をもたらしうると語り、その結果、誰も想像できないほど世界が苦しむことになるかもしれないとした。そのため、世界で最も資金力のある慈善財団の1つであるゲイツ財団のリソースすべてを注いで新型コロナ問題を克服する必要があるとの考えを示した。

ビル&メリンダ・ゲイツ財団は新型コロナウイルスが世界に広く認識されるようになったときから、ワクチンの試験や臨床研究、そして治療薬や治療法の開発に関連する基礎研究に資金を提供してきた。これは、同財団がリソースを新型コロナに向ける一方で、ポリオやエイズの根絶など同財団の既存の任務が一時的に縮小もしくは停止することを意味する。かなりのリソースを新型コロナに向けるというゲイツ氏の決断は状況の深刻さを浮き彫りにしている。

活動の一時的シフトは、実際には同財団の根幹的な目標に取り組む長期的で最善の方法となる。というのも、新型コロナウイルス危機によるグローバルの影響は、食料や基本的必需品はもちろん、医療、テスト、治療へのアクセスなども含め、暮らしのあらゆる面に及ぶと考えられるからだ。感染拡大を早く抑制することは、新型コロナ対応に苦戦している経済に最も大きな影響を与えるかもしれない。また、他の病気が地域のインフラを破壊したり影響を長引かせたりするのではなく、妥当なタイムラインで根絶させる効果的な取り組みにつながるかもしれない。

2015年のTEDでの講演の中で、ゲイツ氏は世界的な感染症の発生を予言し、世界の健康衛生機関や政府に大規模な感染症が発生した場合に何をすべきか、ともに準備するよう訴えた。ゲイツ氏の発言は主に、取り組みの格差やシステムの欠点などを明らかにした2014年のエボラ熱の流行を念頭に置いたものだったが、振り返ってみると同氏のアドバイスは先見の明があったようだ。

残念ながらゲイツ氏は、極度のパラノイアや嘘をばらまくグループによる多くの誤情報やインチキ陰謀説のターゲットになっている。しかしインタビューからすると、ゲイツ氏は超有名な個人にそれらは付き物とある程度予想していた向きがある。そうした陰謀はゲイツ財団の取り組みに影響は与えていないようだ。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Mizoguchi

米食品医薬品局が新型コロナ治療薬候補の一部に危険性ありと再警告

FDA(米食品医薬品局)は、ヒドロキシクロロキンとクロロキンの重大な副作用について再度警告した。両医薬品は抗マラリア(および皮膚エリテマトーデスなど)薬として以前から使われているが、最近新型コロナウイルス(COVID-19)治療薬の候補として臨床試験が行われていた。しかし研究者がJAMA(ジャーナル・オブ・アメリカン・メディシン)に 発表した論文によれば、試験は「重大な副作用」のため試験は急遽中止されている。

論文によると両薬品は「初期の結果」において22人の患者の死亡を含む重大な危険が認められ、試験は中止されたという。初期試験では薬剤の大量投与を受けたグループの死亡率は39%に上った。少量投与のグループでも死亡率は15%あった。双方を総合すると死亡率は27%だった。

「試験の結果は同薬剤の大量投与に対して強い懸念を示すものとなった。毒性のリスクが効能を上回ることが明らかだった」と研究グループは所見を述べている

4月24日のFDAの警告では特にこの臨床試験には言及していないが、81人の患者を対象としており、フェーズII臨床試験として最大規模のものだった。今回FDAは「ヒドロキシクロロキンを単独あるいは他の薬剤と併用して投与された新型コロナウイルス患者の死亡に関する報告を受けている」と注意を呼びかけている。「他の薬剤」には抗生物質のアジスロマイシンが含まれている(JAMA論文によれば被験者全員がアジスロマイシンの投与を受けていた)。治験者には心臓の鼓動が遅くなるQT間隔延長や逆に速くなる心室性頻拍などの危険な症状が見られ、一部の例では死亡の原因となったという。

ヒドロキシクロロキンとクロロキンはトランプ大統領が新型コロナウイルスの治療薬として有望だと述べたことで注目されたが、フランスにおける初期の小規模調査な研究で治療薬としての可能性が認められたものの、安全性に関しては科学的証拠が得られるような臨床試験は行われていなかった。医薬品として承認されたのはあくまで抗マラリヤなどに処方されることを前提としており、大量投与には重大な副作用があることは以前から知られていた。

画像クレジット:Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

MITが布に織り込んで洗濯機で洗濯できる常時健康モニタリング用センサーを開発

MITが開発した新しいタイプの軽量センサーは、布のような曲げられる素材に組み込める。たとえばそれをアスリートのウェアに織り込めば、体温や心拍数、呼吸数などのバイタルを常時モニタできる。また洗濯機で洗えるし、外から見て目立つものが何もない。あるいは織り込まずに取り外せるようにすると、複数の衣類で使える。

このセンサーの研究プロトタイプはスマートフォンと通信でき、最終的には中国のパートナーが量産する。応用分野は健康産業のほかに、宇宙飛行士の生命兆候を知るなど宇宙での利用も考えられる。MITのこの研究は、NASAとMITメディアラボの宇宙探究計画も出資しているが、ポテンシャルが圧倒的に大きいのは地球上での利用だ。とりわけ、COVID-19に悩まされている今は、将来のもっとコントロールの幅が広がったバージョンが、ヘルスケアの分野で多用されるだろう。

中でもとくにこれは、定常的なモニタリングと医師の診察を必要とする慢性病患者にとって費用効果が高くて容易な方法であり、多くの場合手作業で一貫性を維持することが難しかった記録の作成と維持を助けるだろう。記録の更新を人間の手や遠隔医療に頼るのではなく、患者自身がバイオメトリックデータの安定的なストリームを、治療をモニタしているヘルスケアのプロフェッショナルに提供できる。そしてそのプロセスを自動化すれば、患者と介護者の両方がつねに最新の状態情報をリアルタイムで提供し取得できる。

遠隔医療はCOVID-19のおかげですでに需要が急増しており、患者もヘルスケアのプロフェッショナルも共に、COVID-19の感染リスクを下げながらヘルスケアのニーズを継続的に管理する方法を求めている。とくに重要な対象は、慢性病や既往症を抱える弱者だ。

アメリカのプライマリーケアのスタートアップForwardなどは、すでにこの方式を実験している、。それは、バイオメトリックのセンサーを自宅にいる患者に配布してモニタするやり方だ。インターネットに接続されるセンサー(コネクテッドセンサー)を作っているKinsaも、匿名のバイオメトリックデータを集積するやり方に価値を見出している。それはセンサーのデータをマッピングしてCOVID-19の拡散の兆候、とくに地域における発熱の広がりを調べようとする。

衣類に埋め込まれるウェアラブルなセンサーは、前にも試みられ、製品化されたこともある。でも今回のMITのバージョンは、もっとも着用のなじみが良く、邪魔にならず、快適だ。将来、健康データの常時モニタリングによってパンデミックのもっと良質なモデリングが可能になれば、まさにこのセンサーがイノベーションの最先端として注目されるだろう。

画像クレジット: MIT

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

アップル/グーグル共同開発のコロナウイルス接触者追跡APIの最初のバージョンが来週リリース

Apple(アップル)のCEO Tim Cook氏と欧州委員会の単一市場担当委員Thierry BretonThe氏の会話によると、AppleとGoogleが共同開発しているクロスプラットホームな接触者追跡APIは来週から使用できる。Breton氏が彼のオフィスで共有した写真には、彼とCook氏のビデオ会話の様子が写っており、また彼がLes Echosに語ったところによると、AppleのCEOは、公衆衛生当局のためにアプリを作るソフトウェアデベロッパーがその接触者追跡APIを利用できるのは4月28日からだ、と述べた。

AppleとGoogleは4月10日に、両社がiOSとAndroidの両方のモバイルデバイスで動く接触者追跡システムで協働していると発表し、そのオプトインのネットワークがユーザーの実際のID情報とは無関係なランダムなIDにより、COVID-19の検査で陽性と確認された人と接触した可能性を 通信する、と詳しく説明した。それは、個人のプライバシーを保護するために位置データを決して集めない分散システムで、AppleとGoogleは、そのAPIを使って作られたいかなるアプリも、それらがユーザーベースの最遠のリーチを持ちうるために、プロジェクトで協働することを選んだ。

その接触者追跡システムの展開は二段階で行われる。最初に、APIがデベロッパーにとって可利用になる…それが来週起きることだ。この段階は最初、5月中旬を予定していたが、Breton氏とCook氏の会話を聞いたかぎりでは両社はそのスケジュールを早めたようだ。ソーシャルディスタンシング措置の変様や緩和をいついかにして行うべきかを正しく知るためには、接触者追跡が喫緊に必要だから、このスケジュール変更は理にかなっている。

計画の第二段階は、接触者追跡システムのアップデートをOSのレベルで行うことだ。オプトインはデバイス上で管理され、AndroidもiOSスマートフォンもどちらも、このイン・アウトの切り替えにより、ローカルな追跡行為に参加できるものでなければならない。しかもそれは、公衆衛生当局の特定のアプリの有無とは無関係でなければならない。ただしAppleとGoogleが行なったQ&Aセッションによると、接触者の可能性を通知する公衆衛生アプリのダウンロードとインストールを示唆するプロンプトが出るのは構わない。それによってユーザーは、信頼できるソースから、次にどうすればよいか関する追加的情報を取得できるだろう。

なお、この第二段階は今年後半の展開になる。でもAPIの最初のバージョンの到着がこれだけ早まったことは、これをなるべく早く市場に出したいとする両社の意欲と努力の表れだろう。おそらく、相当多くの技術者をつぎ込んでいると思われる。

現在開発中またはすでに実装された接触者追跡システムはたくさんあるが、共通の技術による相互乗り入れ通信が可能で、もっとも人気の高い複数のモバイル機種間の幅広い参加の機会が開けることは、そんなシステムが実際に効果的でありうる大きなチャンスになるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

アップルが自社設計チップ搭載Macの来年発売を準備中との報道

長らく噂されてきたApple(アップル)のARMチップMac搭載が早ければ来年にも実現するかもしれない。Bloomberg(ブルームバーグ)が報じた。次世代iPhoneに搭載されるSoC(システム・オン・チップ)であるA14のデザインを基にアップルは現在3種のMacプロセッサーに取り組んでいるとブルームバーグには書かれている。ブルームバーグの情報筋によると、初バージョンの処理スピードはiPhoneやiPadのプロセッサーよりもはるかに速い。

アップルのiPhoneとiPad向けのARMベースのAシリーズはこれまで着実に改良されてきた。ベンチマークテストでのパフォーマンスが、Macラインで現在使用されているIntel(インテル)のプロセッサーを常に上回るようになっている。インテルのチップ開発は最近の世代のものでは後退やスローダウンがみられ、アップルが自社開発のARMチップに切り替えるのではとの噂は近年増えていた。

アップル独自のチップを搭載する「少なくとも1種のMac」が2021年のリリースに向け準備中で、チップ製造メーカーでアップルの長年のパートナーである台湾TSMCが製造するとブルームバーグは報じている。Macを駆動させるチップの最初の1つは少なくとも12コアで、内訳は高性能アプリケーション向け8コアと、バッテリーの持ちを良くする低強度のアクティビティ向け4コアだ。これに比べ、アップルがMacBook Airなどに搭載している現在のインテル製のものは4コアで、2コアのものすらある。

当面、アップルは新チップを新たなMacに、ハイエンドなプロレベルのMacにはインテルのチップを引き続き使うとブルームバーグは書いている。これはARMベースのデザインが部分的には高性能ながらも、インテルのチップ技術の最高パフォーマンスには及ばないからだ。ARMチップは一般的に計算処理能力よりバッテリー効率を優先していて、これこそがモバイルデバイスでよく利用されている理由だ。

ブルームバーグの情報筋によると、初のARMチップ搭載MacはmacOSのままで、現在のインテルベースのMacで使われているソフトウェアと互換性を持たせる方向とのことだ。これはアップルが2006年にMacラインでPowerPCベースのプロセッサーからインテルのチップに切り替えたときと似た試みとなる。その当時、アップルは切り替えが2006年から2007年の間に行われると発表していたが、その後2006年末までに出荷される新しいMacすべてがインテルプロセッサー搭載となるよう計画を加速させた。

画像クレジット:Neil Godwin/Future Publishing / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi