Alphabet傘下のVerilyが新型コロナ検査ツールキットを公開

Alphabet(アルファベット)傘下の医療科学会社であるVerily(ヴェリリー)の新型コロナウイルス検査プログラムは、当初トランプ大統領の誤解を招く発言で水を差されたが、このほどVerilyはカリフォルニア州におけるコミュニティーベースの新型コロナウイルス検査プロジェクトを設立、ドライブスルー検査場を展開して米国時間3月25日には1200件ほどだった検査件数が、3月28日には3700件を超えた。

Verilyのチームは最新のブログ記事に成果を報告しており、CNBCは先週の報道で、同社がGoogleを含むAlphabet傘下企業から1000人のボランティア協力を得て検査能力を高め、この検査サイトが新たなレベルに達したことを伝えた。現在カリフォルニア州全体で計4カ所の検査施設を運営中であり、これらはわずか2週間で設立された。

これは決して長くはない時間に成し遂げられた大きな結果であり、Verilyはこの実験で得られた成果と学んだ教訓を広めていきたいと考えている。同社はガイドラインと資料を整理して、コミュニティーベースの検査プログラムを実施したい人(認定された検査機関、検査材料、医療専門家が揃っていることが条件)が誰でも利用できるようにこちらで公開している

提供されたガイド資料には、ドライブスルー検査プロセスに関わる全員のワークフローや必要な個人防護具の種類、現地スタッフの調整、派遣方法などさまざまなドキュメントがある。ダウンロードしてプリントできる検査場の掲示物も一式用意されている。

このガイド資料はVerilyのProject Baseline(プロジェクト・ベースライン)チームがカリフォルニア州公衆衛生局を始めとする州の管理・規制機関と協同で作成したものであり、スタンフォード大学医学部の指導も受けている。総合的にこのガイドは、Verilyの実験結果を自社だけでは実現できなかったスケールで広めることを目的にしている。

しかしVerilyは、自社の検査施設の拡大も目指していることは間違いなく、新たな場所にも開設しようとしている。このガイドは同社の経験を他社が最大限に活用するためのものだが、再現するためには、移動式新型コロナウイルス検査の最新知識をもつチームが情報を共有したとしても、数多くの専門知識や資源が必要だ。

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

新型の超音速飛行機2機種とスペースプレーンをStratolaunchが発表

航空機を高高度で空中発射させるスタートアップStratolaunch(ストラトローンチ)は、いくつかの変遷を経験しつつも、3月30日、超音速飛行機2機種とスペースプレーン1機種の詳細なデザインを公開した。どちらも同社の航空母機から発射される。すべて計画通りに進めば、試験飛行は、この3つのうちいちばん早いもので2022年に始まる。そこまでの資金は十分にあると同社は話している。

Stratolaunchは、もともと2011年にMicrosoftの共同創設者Paul Allen(ポール・アレン)氏によって設立された。アレン氏は惜しくも2019年に亡くなり、現在この会社は、Steve Feinberg(スティーブ・フェインバーグ)氏率いる投資家グループによって運営されている。だが新しい経営陣も、大気圏を飛ぶ超音速飛行機を開発するという設立当初と変わらない目標を掲げている。

3月30日の月曜日、同社はそのミッションを拡大し、貨物も人も運べる新型スペースプレーンによる宇宙飛行に進出することを発表した。機体は完全に再利用可能。つまり、貨物を搭載して通常の滑走路で離着陸できる能力を有していることを意味している。

だが、Stratolaunchの最初の目標は、超音速自動航行飛行機Talon A(タロンA)を実現させることだ。こちらもまた完全に再利用可能なタロンAは、全長はおよそ28フィート(約8.5メートル)、翼長は11.3フィート(約3.4メートル)。1分間以上の超音速モードで飛行し、自動航行により通常の滑走路に着陸させることを目的とした実験機だ。Stratolaunchの航空母機から発射できるが、通常の飛行機と同じように、滑走路から自動航行での離陸もできるよう設計されている。

この飛行機の第1の目的は、さまざまな機器を搭載して超音速飛行中のデータを収集するテストベッドになることだ。これまでシミュレーションでしか得られなかった状況を現実に体験する、事実上の実験室となる。Stratolaunchの航空母機からは、最大で同時に3機のタロンAを発射できる。

より大型の超音速機Talon Z(タロンZ)については、その性能と目的に関する詳細は明かされなかった。スペースプレーンBlack Ice(ブラックアイス)も、軌道上での実験手段を求める顧客にその機会を提供することが主な目的のようだ。だが、貨物の積載量と、将来的に人を乗せる場合の搭乗員数を考えると、実際に地球軌道上での運輸業に適している。さらに衛星配備の能力も備えていそうだ。

Stratolaunchのブラックアイスを使った取り組みは、Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)とVirgin Orbit(バージン・オービット)が行おうとしている商用有人宇宙飛行と小型衛星の運搬に近いものがある。この2つのVirgin系企業も、通常の滑走路から離陸する航空母機から宇宙船を発射する方式だが、開発計画はずっと先を行っている。Stratolaunchも、航空母機の最初の試験飛行を2019年に成功させた。彼らは、2023年のタロンAによる商用サービス開始を目指している。

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(翻訳:金井哲夫)

米宇宙軍のスペース・フェンス衛星追跡システムが正式運用開始

米国宇宙軍は新しい軍だが、そのリソースの中にはすでに稼働しているものがある。USSF(米国宇宙軍)は先週後半、スペース・フェンスと呼ばれるレーダーシステムが正式に運用可能になったことを発表した。ちょっと奇抜な呼び方だが「スペース・フェンス」というのが間違いなく正式な名称だ。スペース・フェンスはレーダーシステムで商用衛星、軍事衛星、宇宙ゴミなど軌道上の物体を精密にモニターする。

スペース・フェンスの主要システムは太平洋のマーシャル諸島にあるクェゼリン環礁に置かれ、現在、「初期運用・システム受け入れ」の段階にある。現行の宇宙監視ネットワーク(SSN)は2万6000個の軌道上物体を追跡しているが、新しいスペース・フェンスは独自の機能追加によりSSNのモニター能力を大きく拡大するとUSSFは期待している。

地球低軌道上の物体を詳細に追跡するためにロッキード・マーティンが開発したレーダーシステムは、最終的にはビー玉サイズの物体を認識できるようになるという。このレベルの観測能力があれば、軌道上にあるほとんどの物体のカタログを作ることができる。これには観測衛星、通信生成、軍事衛星(可能なものも含む)などあらゆる軌道上のアイテムが含まれるはずだ。

状況を正確に把握することは、軍にとって作戦を成功させるためのカギとなる。スペース・フェンスが正式に稼働することは宇宙軍にとって大きな一歩となる。先週、宇宙軍として最初の衛星打ち上げが行われた。これは米国軍の作戦にミリ波帯域で安全性の高いコミュニケーションを提供する先進EHF通信衛星システムを構成する衛星の6基目だった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

新型コロナ治療開発にも取り組む細胞・遺伝子治療のElevateBioが約183億円調達

見通せない経済状況、そして世界中で新型コロナウイルス感染拡大が続く中で、今は資金調達を行うベストな環境ではないが、一部の企業は巨額調達のクローズを発表している。その一例が、ケンブリッジ拠点のElevateBio(エレベートバイオ)だ。同社は30日、1億7000万ドル(約183億円)のシリーズBを発表した。このラウンドには新規投資家としてThe Invus Group、Surveyor Capital、EDBI、Vertex Venturesが、既存投資家としてF2 Ventures、MPM Capital、EcoR1 Capital、Redmile Group、Samsara BioCapitalが参加した。

ElevateBioは1年弱前に一般向けのサービスを正式に立ち上げた。同社は新しいタイプの細胞・遺伝子治療開発を専門としており、開発と製造それぞれを専門とする新会社を立ち上げて運営している。今回のラウンドで、ElevateBioがこれまでに調達した額は3億ドル(約323億円)超となった。同社は2019年、スイス投資銀行UBSのOncology Impact Fundがリードした1億5000万ドル(約162億円)のシリーズAラウンドを発表した。

ElevateBioは動きを加速させている。R&Dにフォーカスするためにマサチューセッツ州に建設中の広さ14万平方フィート(約1万3000平方メートル)の施設は完成間近だ。同社はまた、特に幹細胞移植に伴うウイルス抑制のためのT細胞免疫治療に取り組むAlloVirという会社も立ち上げた。この治療は臨床試験の後期段階にある。そしてElevateBioはHighPassBioという会社も立ち上げた。HighPassBioもまたT細胞治療を使って幹細胞関連の病気の治療をサポートすることを目的としている。こちらは移植後の白血病再発に主眼を置いている。

ご予想の通り、ElevateBioはCOVID-19の影響を抑制するための取り組みも行っている。特にAlloVirは、免疫システムが脆弱になりCOVID-19によってリスクが高まっている状態の患者を救うのに役立つ一種のT細胞治療の開発に取り組むために 、ベイラー医科大学との既存の研究提携を拡大させている。

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(翻訳:Mizoguchi

ドイツ航空宇宙センターが3Dプリントのリソースを医療機器生産に転換

ドイツ版NASAに相当するDLR(ドイツ航空宇宙センター)は、COVID-19こと新型コロナウイルス感染症の治療で使用される、最前線の医療従事者が使用する個人用保護具(PPE)の世界的な不足をサポートする。DLRは通常、航空宇宙グレードの部品生産に使用されるオンサイトの3Dプリンターを、保護マスクや人工呼吸器を含む、医療機器の生産に転換する試験に成功したと発表した。

世界中でさまざまな種類の部品や機器が必要とされているが、他の選択肢がないという理由だけで、理想的とほど遠く必ずしも行政機関に使用が承認されているわけではないソリューションを医療従事者は検討している。DLRはSytemhaus Technikのエンジニアリングおよび生産グループと連携して何ができるかを調査し、世界的な機器不足に対処するために活動しているグループによって作成された個人用保護具のテンプレートを含む、無料でオープンなリソースを活用する。

DLRの装置は保健機関から医療用途での使用を認められており、また同宇宙機関とSystemhaus Technikは、他の機関や科学/研究機関と知見やノウハウを共有し、それぞれのリソースを活用して同等の生産能力を獲得することを目指している。

これまでのところDLRは「1日に最大10個の防護マスクと15個の人工呼吸器用バルブを生産できる」としているが、今後は生産量と生産率を引き上げられる施設ネットワークの構築に取り組みたいと述べている。

この3Dプリント装置が世界的に必要とされているのは、物資リソースが足りないのはもちろんだが、より重要なのは、同様の3Dプリント装置で同じことを行うために開発された知識を共有することかもしれない。他の生産環境でも再現可能で、医療レベルの要件を満たすソリューションの開発に航空宇宙技術者を投入することは、新型コロナウイルスのパンデミックのため、高度な治療を必要とする患者が世界中の医療機関に流入する中、最終的に多くの人命を救うことにつながるかもしれない。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAのルナ・ゲートウェイ宇宙ステーションへSpaceXの新型DragonXL宇宙船が物資を輸送

NASAは3月27日、ルナ・ゲートウェイへの機器の材料、貨物、補給品の輸送を請け負う初の宇宙物流企業としてSpaceX(スペースエックス)を選定したことを発表した。つまりSpaceXは、月軌道を周回して、将来の有人月面ミッションの基地となるプラットフォームと地球との間を往復して物資を輸送する必要が生じたときに、NASAが業務を発注する企業のひとつに加えられたわけだ。

今回の契約により、SpaceXは事実上、月に人類を常駐させる科学調査基地の設置を目指すNASAのアルテミス計画で重要な役割を果たすだけでなく、さらに火星へと足を伸ばそうとするNASAの計画にも参加できることになった。ゲートウェイの建設はこれからだが、NASAでは新しい専用の宇宙船でゲートウェイに貨物を運搬し、6カ月から12カ月滞在するというミッションを複数計画している。

トータルの契約金は、契約全体で最大70億ドル(約7500億円)に達し、1つの企業につき少なくとも2つのミッションが保証される。他の企業もこれから指名されるはずだが、SpaceXは契約に基づいて選定された最初の企業となった。なお同社は、地球の軌道を回る国際宇宙ステーションへ同社のDragon(ドラゴン)輸送船を使った通常の物資の輸送については契約済みだ。

SpaceXは、このミッションに使用する予定のDragon宇宙船の派生型DragonXLを打ち上げることにしている。DragonXLは、月の軌道を回るゲートウェイ宇宙ステーションに5トン以上の物資を輸送できる。打ち上げには、SpaceXが保有しているFalcon Heavy(ファルコン・ヘビー)ロケットが使われる。

実際に最初のミッションが打ち上げられるまでには、まだ少し時間がかかりそうだ。最初のゲートウェイ用モジュールを載せて打ち上げられるのが早ければ2022年となっているものの、ゲートウェイがある程度のかたちになり定期的な貨物輸送が始まるのは、そこからほんの数年後だろう。

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(翻訳:金井哲夫)

米食品医薬品局が15分で結果が出る新型コロナ用検査を複数承認、ただし留意点あり

米食品医薬品局(FDA)は3月26日、新型コロナウイルス(COVID-19)であるSARS-CoV-2の診断検査に関する緊急ポリシーを修正した。FDAは3月16日に行われた変更に続き、多くの民間企業や検査機関が15分程度という短時間で結果を出せる検査方法を開発・提供するための扉を開いた。ただし、検査方法が市場に出回る前に覚えておくべき非常に重要な留意事項が数点ある。

検査方法は「血清学的」で、人の血液中の抗体の存在を特定する方法だ。これは、FDAが承認した検査機関やドライブスルー検査会場で、緊急使用許可(EUA)に基づき実施されているPCR検査(分子検査)とはかなり異なり、血清学的検査では人がSARS-CoV-2に対して抗体を作ったかがわかる。抗体が作られていればSARS-CoV-2と接触した可能性が非常に高いことを意味する。そして感染しているか、感染後すでに回復しているかもわかる。一方、PCR検査は実際には血流中のウイルスDNAの存在を検出する。検出されれば、少なくとも綿棒で採取した時点で実際に感染していたことを示し、血清学的検査による結果よりはるかに決定的な指標となる。

中国、台湾、シンガポールなど、新型コロナウイルスのパンデミックへの対応の有効性を示した国では、血清学的検査が依然広く利用されている。米国のさまざまなコミュニティでも採用されている方法で、民間検査機関での診断に関する従前のガイドラインに基づいている。FDAは3月26日、必要な通知をFDAに対して行った29の法人を指定し、血清学的検査が実施できるようにした。

FDAの緊急使用カテゴリに含まれている分子検査とは異なり、血清学的検査はFDAによるレビューや検証を受けていないことに注意することが重要だ。その代わり、検査結果に以下の情報を付すことなど、所定の基準を満たす限り、FDAは血清学的検査の「民間製造業者による開発および配布に反対しない」ことを表明している。

  • この検査はFDAのレビューを受けていません。
  • 陰性の結果が出たとしてもSARS-CoV-2への感染の可能性がないわけではありません。 特にウイルスに接触したことがある人はそうです。感染の可能性を排除するためには、PCR診断による追加検査を検討すべきです。
  • 抗体検査の結果を、SARS-CoV-2への感染に関する診断や可能性の排除、または感染状態を通知する際の唯一の基礎にすべきではありません。
  • 陽性の結果は、コロナウイルスHKU1、NL63、OC43、229Eなどの非SARS-CoV-2コロナウイルス株による過去または現在の感染が原因である可能性があります。

FDAは緊急使用に関するFAQの中で、指定法人が血清学的検査を独自に検証していること、指定法人がEUAを求めているわけではない点を断っている。とはいえ、これは指定法人による検査実施を妨げるものではない。つまり、米国人の検査に使用して新型コロナ蔓延の全体像をより的確に描けるようになる。ただし上述したとおり、FDAはSARS-CoV-2に感染したことを確定するため、逆の言い方をすればウイルスに感染していないことを示す確かな指標を得るために、血清学的検査を単独で使うつもりはない。

それでも、EUAのもとで承認された検査が広く利用可能になるなど、もっといい選択肢がない現状では、血清学的検査(その多くは、ほんの少しの血液があれば現場で結果がわかる)が新型コロナの拡散と到達範囲に関する正確な全体像を描くのに役立つ。特に分子検査に必要な機器と備品へ優先的にアクセスできない小規模なクリニック、総合診療医のクリニック、地域の検査機関にとって有用だ。

例えば、今回のリストにある検査の1つ「Healgen Scientific COVID-19 IgG / IgM(全血/血清/血漿)Rapid Test Device」は、機器を必要とせず、わずか15分で結果が出る。ディストリビューターのIdeal Rehab Careは、法定代理人であるFox Rothschildと協力して、「できるだけ早く」使用するためにシンガポールから検査方法を輸入することにした。

FDAが更新したウェブサイトに血清学的検査を使用する意向を通知した法人の1つとしてHealgenが載ったことで、同社は検査方法の販売が可能になった。今回のリストにない法人が検査を実施・販売することは依然として違法だ。FDAはまた、公式ガイドラインに基づき在宅での血清学的検査の使用を引き続き明確に禁止している。

画像クレジット:Pedro Vilela / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

ロケット打ち上げスタートアップのSkyroraは消毒液とマスクの生産に注力

Skyroraは、実際にペイロードを軌道上に運ぶ稀有な民間打ち上げスタートアップの仲間入りを目指している新しい企業の1つだ。しかし今、英国内の製造能力のすべてを、COVID-19対応に集中させることにした。スコットランドのエジンバラに拠点を置くSkyroraは、英国政府やNHS(英国民医療サービス)からの製造業者への呼びかけに応じて、できる限りのことをすることにした。新型コロナウイルス危機と最前線で戦っている人たちのために、切望されている医療用品を供給するのだ。

Skyroraryによれば、英国にある事業全体つまりすべての人的資源と運転資金を現在はCOVID-19対応に向けているという。同社は2017年に設立され、最初の宇宙船の試験飛行に向けて活動していた。この2月にはより環境にやさしい実験的なロケット燃料を使った初期のエンジンテストに成功したばかりだった。

しかし現時点、Skyroraは手指消毒液の製造に注力することにした。これが同社としてCOVID-19対応をサポートする初の仕事となる。すでにWHOのガイドラインと要件に沿って最初のバッチを生産している。現在、1週間あたり250mlボトルで1万本以上を製造できるよう生産活動拡大を目指している。

実際のところ、ロケット工学と手指消毒液の間にはかなり密接な関係がある。消毒液の基本的な殺菌成分はエタノールだ。これはアルコールの一種で、初期のロケット燃料に使用されていた。ただしSkyroraの「Ecosene」燃料は灯油の一種で、現在の航空機やロケットの燃料としてかなり一般的に使われているものとなる。

Skyroraは消毒液だけでなく3Dプリンターで作った保護用フェイスマスクが、医療従事者の安全確保に貢献できる可能性についてスコットランド政府と協議している。現在、初期のプロトタイプのテスト中だ。効果が確認できれば、この保護器具を大量生産することを検討している。

多くの企業が、自社の生産ラインと製造能力を最も需要のある領域にシフトするなど、可能な範囲で努力している。今は間違いなく「総動員」が求められる時期だ。とはいえ、注力する分野をここまで大きく変更した企業に、今回のような緊急事態が過ぎたとき、いったい何が起こるのかという疑問もある。特に新しい分野の若いスタートアップにとっては、深刻な問題だろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

市販の材料を使い1分で完成する医療用フェイスシールドの作り方をニューヨーク大学が無料公開

ニューヨーク大学(NYU)は他の多くの学術、民間、公営機関と同様、世界中の医療従事者が必要としている個人防護具(PPE)の供給についてできることに取り組んでいる。同大学はいち早くオープンソースのフェイスシールドを開発し、量産してすこしでも需要に応えるべくその作り方を無料で公開した。

フェイスシールドは、新型コロナ患者と濃密な接触をする現場の医療従事者にとって不可欠な器具だ。具体的にはプラスチック製の透明なマスクで、顔全体を覆う。呼吸器防護具のN95マスクやサージカルマスクとともに使用され、患者が咳やくしゃみをした際に飛散するウイルスを含有する飛沫から医療従事者を保護する。

NYUのプロジェクトはフェイスマスクを量産するためのさまざまな試みの1つだが、他の多くは3Dプリントを使用している。3Dプリントは小規模な業者や個人でも製作に貢献できるという利点があるが、1枚作るのに30分から1時間もかかってしまう。NYUのデザインは一般的な材料だけを使う。透明で柔軟なプラスチックと伸縮性のあるバンドがあればよく、薄くて平らな製品をつくる設備(穴あけ器、レーザーカッターなど)のある製造施設であればどこででも1分以内で製造することができる。

マスクは臨床医と共同で設計され、すでに100個以上が緊急治療室に配布されている。NYUのチームは製造能力を上げ、材料が製造パートナーに揃えば最大30万個を作る計画だ。パートナーにはDaedalus Design and Production、PGR Scenic Technologies、Showman Fabricatorsらがいる。

チームはその作り方をダウンロード可能なツールキットとして一般公開しており、多くの人が同大学のやっていることを真似してより多くのマスクが配布されることを望んでいる。大量生産に協力してくれるメーカーからの連絡も待っている。

個人防護具不足のさまざまな側面に取り組んでいるプロジェクトでは人工呼吸器を作ったり、1台の人工呼吸器を4人同時に使える器具を作っている。これは、コミュニティーのために賢明な人々や組織が協力することで何ができるかを示すすばらしい例であり、新型コロナ危機が深まるにつれ、同様の事例がさらに出てくるに違いない。

画像クレジット:NYU / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

5分間で陽性がわかる米食品医薬局が新たに認可したAbbottの新型コロナ検査

ヘルスケアテクノロジーのAbbottが開発した新しいCOVID-19の検査方法は、結果が出るまでの時間がこれまでで最速で、しかもその場でできるため検査機関への往復がする必要がない。現在、全世界的なパンデミックを起こしている新型コロナウイルスを検査するこの方法は、米国のFDA(食品医薬局)から緊急時使用許可を受けており、来週から生産を開始する。毎日50000セットも生産できるという。

このAbbott ID NOW COVID-19という検査は、診断プラットフォームAbbott ID NOWを使用する。検査装置は小さな台所用品ほどのサイズで、陽性の結果は5分間、陰性は15分間以下で出る。臨床の現場や診療所などでも検査できるようになること、また検査とその結果が出るまでの時間が短くなることから、非常に有用な手段になる。

他の国で使われてきた高速検査や、結果の精度を確認しないFDAの新しいガイドラインによる高速検査方法と違い、この検査は患者から採取した唾液や粘液を使う分子検査法を利用する。

この検査が利用可能になった良いニュースであるのは、検査に使用するAbbottのハードウェアID NOWが、米国ではすでに臨床現場即時遺伝子検査用として広く普及しているためだ。ID NOWは医師のオフィスや救急病院、集中治療室などの医療施設に設置されていることが多い。

Abbottによると、この新しい迅速検査と3月18日にFDAの緊急時使用認可を受けた施設での検査と合わせて4月には500万回の検査が可能になるという。

検査が、新型コロナウイルスによるパンデミックに対処する上で初期の問題の1つだ。1人あたりの検査実施数で、他国に後れをとっていた。そのためウイルスの拡散とそれによる呼吸器疾患を正確に調べることもできなかった。患者は、検査まで待つ日数が長すぎると不満の声をあげており、接触の可能性が高くてそれらしき症状が出ていても、これまでは迅速な対応を受けることができなかった。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ソフトバンクなどからの追加資金を確保できずOneWebが破産を申請

TechCrunchが得た情報によると、衛星コンステレーションによるブロードバンド事業者のOneWebは、米国時間3月27日にも、米国で破産保護の申請を行うことになる。既存の投資家であるソフトバンクからも含めて、新たな資金の確保に失敗した結果だ。Financial Timesも、独自の複数の情報源に基づき、同社が資金確保に失敗したことを、同日レポートしている。TechCrunchの情報源によれば、OneWebは、ほとんどの社員をレイオフすることにしており、1つのチームだけを残して、すでに打ち上げて宇宙空間にある衛星の運用を続けるという。

OneWebは、今回の報道についてプレスリリースで認めた。それによると「COVID-19の拡散による市場の混乱」が、資金確保失敗の原因だったという。「私たちは、あらゆる場所であらゆる人たちをつなぐという私たちの使命の、社会的および経済的な価値を確信し続けています」と同社CEOのAdrian Steckel(エイドリアン・ステッケル)氏は述べている。

OneWebは、2012年にWorldVu Satellitesという名前で創立。ブロードバンドインターネットを実現する低軌道衛星コンステレーションの構築を目指していた。それにより、現状の地上のネットワークではカバーしきれないような遠隔地や、アクセスが難しい地域も含めて、地上のユーザーに安価なインターネット接続を提供しようというものだった。

2020年3月初め、BloombergはOneWebが他の選択肢も検討しつつ、破産保護の申請を検討していることをレポートしていた。他の選択肢の1つというのは、新たな資金調達ラウンドのことだ。およそ20億ドル(約2158億円)の確保を目標としていた。同社はこれまでに、複数のラウンドを通して合計30億ドル(約3237億円)を調達している。2019年と2016年に、それぞれ13億ドル(約1403億円)と12億ドル(約1295億円)のラウンドを実現していた。どちらも主要な投資家はソフトバンクグループだった。

OneWebは、3月の初めに打ち上げを成功させ、軌道上にある衛星の総数を74としていた。その後同社は、先週のTechCrunchの記事でレポートしているように、レイオフによって人員の数を10%ほど削減していた。

この最新の動きは、OneWebが現金を確保し続けるために、他のすべてのオプションを使い尽くしてしまったことを基本的に示すものだ。実際、計画していたような頻繁な打ち上げペースを維持するには、相当な準備金を必要としていた。その計画では最終的に650以上の衛星を打ち上げて、地球全域をカバーできるサービスを提供することになっていた。ソフトバンクが投資家として身を引くと、埋め合わせが難しい大きな穴を残してしまうことになる。WeWorkなど巨額の投資額に対して得られるリターンが少なく同社に苦境をもたらしている案件もあるため、ソフトバンクは実際に、いくつかの注目度の高い投資から身を引こうとしている。

OneWebの資金繰りの厳しさに、進行中の新型コロナウイルスのパンデミックに揺れる世界情勢が追い打ちをかけた形だ。複数のレポートによると、少なくとも一部の投資家は、より保守的なアプローチをとっているという。伝統的な手段によって、より多くの投資を確保することは、これまでよりもずっと実現困難になっているという指摘もある。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

1台の人工呼吸器を4人で同時に使える3Dプリント可能な器具をFDAを認可

米国の病院では人工呼吸器の不足が目の前に迫り、すでに危機的状態となっているが、症状が重篤化し入院が必要な新型コロナウイルス(COVID-19)患者が増加すれば、さらに深刻な事態となる。だからこそ、新たにFDA(米食品医薬品局)から非常用として認可を受けたこのシンプルな器具(ソースコードが無料公開されており病院で3Dプリントできる)が、最前線で対応している人たちの負担を最小限に抑える鍵となるかも知れない。

Prisma Health(プリズマ・ヘルス)のVESper(ベスパー)は、信じられないほどシンプルな3口のコネクターだ。これで1台の人工呼吸器を最大4人までの患者が同時に使えるようになる。この器具は、現在のISO規格に準拠した人工呼吸器本体とチューブに適合する。ウイルスやバクテリアが他の患者に感染しないよう、フィルター装置も接続できる。

VESperは2つ1組で使用する。人工呼吸器の吸気側にひとつ、呼気側にひとつを装着する。またこれをつなげることで、最大で4人の患者の治療が可能になる。ただしすべての患者の酸素供給量、酸素濃度、空気圧などすべての設定要素が同じで同じ臨床治療を行う場合に限られる。

この器具は、緊急治療室勤務のSarah Farris(サラ・ファリス)医師によって考案された。夫でソフトウェア・エンジニアのRyan Farris(ライアン・ファリス)氏は、彼女からこのアイデアを聞くと、最初のプロトタイプをデザインして3Dプリントした。Prisma Healthは、求めに応じてVESperのプリント仕様書を提供しているが、FDAが使用を認めた緊急時に限って使うよう注意していただきたい。つまりこれは、あくまで最後の手段として作られたものなのだ。FDAが定めた基準に適合する人工呼吸器がすべて塞がっていたり、患者の命をつなぐための器具や代替手段がない施設などでの使用に限定される。

FDAの緊急時使用許可(EUA)を受けたこれらの器具は、プロトタイプであること、そして実際に使ってみた結果を報告することが条件であることを十分に理解しておく必要がある。そうしたデータが、その有効性の検証に役立ち、安全と有効性のためのさらなる開発や改善に供されるのだ。

現地で3Dプリントするためのデータを提供するだけでなく、Prisma Healthでは3Dプリンターが使えない医療施設にプリントしたもの送るための資金の募集も行っている。南カリフォルニアの医療系基金Sargent Foundation(サージェント・ファウンデーション)がいちばんに寄付をしてくれたが、Prisma Healthは、研究の継続と新しい器具の開発のためのさらなる寄付を求めている

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(翻訳:金井哲夫)

新型コロナウイルスのワクチンは長期間有効という研究結果

イタリアの研究者による新しい研究によれば、新型コロナウイルスのパンデミックの原因となっているウイルスの変異は比較的遅いという。言い換えれば、人間が感染することを防ぐ効果を持つワクチンが開発されれば地理的に広い範囲で有効なはずで、しかも比較的長期間にわたって効果が続くはずだと考えられる。

画像クレジット:Bloomberg/コントリビューター/Getty Images

この研究は、お互いに独立して仕事をしている2つの異なるチームによって実施された。1つは、ローマにあるLazzaro Spallanzani(ラザロ・スパランツァーニ)国立感染症研究所(IRCCS)、もう1つはAncona(アンコーナ)大学病院の生物医学および公衆衛生局(DSBSP)の法医学部門だ。それぞれ、イタリアの患者から採取したウイルスのサンプルについて、Thermo Fisher Scientificが開発した技術を使って遺伝子の配列を解読した。そして、これらのサンプルを、約2か月前の武漢での流行の際に採取された元のウイルスのサンプルから解読された基準のゲノムと比較した。

遺伝的変異の観点から言えば、これら2つのウイルスサンプルの違いはかなり少なかった。時期的に後となるイタリアのサンプルからは、5種の新しい異型が認められただけだった。この結果からは、SARS-CoV-2コロナウイルスが、複数の個人や集団にまたがる長い感染経路を経ても、それなりに安定した状態を保つことが、今のところは示される。

他のコロナウイルスが、短期間で変異する可能性があることを考えると、これは心強いニュースと言える。一般的な、毎年のインフルエンザを考えてみよう。これは、本質的に絶えず変異しているため、毎年新しいインフルエンザワクチンが開発されている。研究者は、毎年のインフルエンザシーズンには、時間との戦いの中で、どの突然変異株が最大の脅威をもたらすのかを予測し、ワクチンを適応させて、最新の予防接種を受けるよう、人々に促すのだ。

他のウイルスは、非常にゆっくりと変異するか、あるいはまったく変異しないかのどちらかだ。新型コロナウイルスは、どうやら前者に属するようだ。このイタリアの研究だけでなく、John Hopkins(ジョン・ホプキンス)大学や、他の世界中の健康科学研究者によって行われた研究も、同様の見解を支持してる。時間の経過による突然変異を、より包括的に追跡しようという、ある英国のコンソーシアムの取り組みによって、より明確な見解が得られるはずだ。

新型コロナウイルスのパンデミックに関して言えば、それを引き起こすウイルスの遺伝子構造の変化が遅いものであるという説を支持する研究結果は、非常に良い知らせだろう。ワクチンの開発には、まだ少なくとも1年はかかりそうだが、今回の研究結果からすれば、いったんワクチンが開発されれば、その効果は、地球上の広い範囲で、数年間は有効だろうと期待できるからだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ダイソンとGtechも新型コロナ対応で人工呼吸器を生産へ

世界中の企業が、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大のスピードを抑制しようとしている政府や公衆衛生当局の求めに応じようと、生産ラインや事業モデルを変更している。そしてDysonとGtechも呼びかけに応じ、人工呼吸器に取り組んでいる。人工呼吸器をデザインし、性能の承認を受け、そして可能な限り早く生産するために、両社は掃除機やモーター駆動の空調機器で培った経験を活用している。

家電メーカーとして世界に名を馳せるDyson(ダイソン)は、CoVentという新たな人工呼吸器のデザインでThe Technology Partnership (TTP)と協業している。なるだけ早く、そして大量に製造することを念頭にしたデザインだ。そしてDyson創業者のJames Dyson(ジェームズ・ダイソン)氏が従業員に送り、TechCrunchにも共有された内部メールによると、COVID-19患者に安全でコンスタントな換気を提供するために、人工呼吸器にはDysonの既存のDigital Motorデザインと同社の空気清浄の製品を使用する。

Dysonは英国のBoris Johnson(ボリス・ジョンソン)首相からの人工呼吸器製造の要望に応えていて、最初に英政府から注文のあった1万台を納入するつもりだ。同社の人工呼吸器はまだテストする必要があり、製造プロセスも政府や英医薬品・医療製品規制庁(MHRA、米国のFDAに相当)に承認されなければならないが、Dysonは電子メールの中で「生産に入ることが差し当たっての急務だ」と述べている。国のヘルスケア当局とMHRAの専門家がデザインの全プロセスに関わっていて、素早く承認を得るられるはずだ、とも記している。

CoVentは臨床医が求める要素をクリアしている。ベッドに備えつけて使用できるほか、バッテリーで電力を供給しながら患者搬送中などあらゆる状況でフレキシブルに使える。Dysonの既存のDigital Motorデザインに若干手を加えたバージョンを使用しているため、生産に必要なファンは「かなりの量を用意できる」としている。

「Dysonのエンジニアと、TTPのパートナーたちが成し遂げたことを誇りに思う。この新たなデバイスが可能な限り早く生産され、病院に配備されることを望む」とダイソン氏は電子メールに書いている。「これは明らかに重大な国際危機だ。したがって国際的な取り組みに5000台を寄贈し、このうち1000台を英国に贈る」。

もう1つの英国の家電・掃除機メーカーGtechもまた、政府からの人工呼吸器製造の求めに応じるために、できることはすでにやったようだ。同社のオーナー、Nick Grey(ニック・グレイ)氏は2週間で人工呼吸器3万台を製造してほしいというリクエストを受けた、と述べた。このため、同社はただちに人工呼吸器のデザインに着手した。

Gtechのチームは、ストックが豊富な素材から簡単に入手できるパーツ、または在庫がありまだ組み立てられていないパーツで作ることができる人工呼吸器を開発した。鋼鉄製造とCNC機械サプライヤーを確保できさえすれば、1週間かそこらで人工呼吸器の生産を1日あたり100台のペースに加速させることができる、と同社は話している。

自社での生産に加え、同社は生産を加速させるために人工呼吸器のデザインを公開している。こうしたやり方で「数千台もの救急人工呼吸器が毎日製造されていはいけないという理由はない」と、グレイ氏はCTV Newsでのインタビューの中で述べている。Dysonのモデルと同じく、実際に使用されるようになる前にGtechのデザインも英政府や当局から評価や認証を受ける必要がある。

画像クレジット: Michael Nagle / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Mizoguchi

ULA初の米宇宙軍向けロケット打ち上げをライブ配信

United Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス、ULA)は米国時間3月26日のミッションで、米宇宙軍のために特別な機密通信衛星を打ち上げる。これは昨年正式に発足した米軍の新たな宇宙部門で、現政権は宇宙における米国の資産を適切に保護する必要性が高まっていると主張している。

打ち上げはフロリダ州ケープ・カナベラルから実施され、打ち上げ時刻は米国東部夏時間で午後2時57分(日本時間3月27日午前3時57分)に設定されている。衛星を搭載するロケットはアトラスVで、3月26日の朝の時点では天候やシステムチェックの結果に問題はなかった。

これは、米軍向けに打ち上げられる6機目の超高周波(AEHF)衛星だが、宇宙軍が正式に発足したのはつい昨年なので、これまでの5機はすべて米空軍のもとに配備されている。最初の5機の衛星は2010年から2019年の間に打ち上げられ、6機の衛星は連携して空、陸、海を越えた軍事作戦にセキュアな通信機能を提供する、コンステレーションを形成することになる。

これはアトラスVにとって83回目の打ち上げとなり、この機体構成では11回目の打ち上げとなる。ULAはBoeing(ボーイング)とLockheed Martin(ロッキード・マーチン)が共同で設立した合弁会社で、現在のミッション成功率は100%となり、これまでに133回の打ち上げを実施している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

米国食品医薬品局が新型コロナから回復した患者の血液を使った重篤患者の治療を許可

FDA(米国食品医薬品局)は、進行中の新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックに対する実験的治療の適用に関する規定を変更し、「回復期血漿」が使えるようにした。これは、患者の生命が緊急かつ深刻な危機にさらされている場合に限られる。また、認定された治療法としての手順の承認ではなく、ケースバイケースで、極端な症状の場合にのみ適用できる緊急認可としてだ。また、いったん新型コロナウイルスに感染し、その後回復した患者から採取した血漿の有効性について、今後の研究のヒントになる手段としても位置付けられている。

画像クレジット:Bloomberg/コントリビューター/Getty Images

血漿とは、人間の血液の成分で、特に液状部分を指す。その中には、身体の免疫反応を生み出す抗体が含まれてる。血漿を、患者に直接輸血する方法は、新型コロナウイルス(およびそれを引き起こすSARS-CoV-2ウイルス)に対して提案されている他のすべての治療法と同様、本当に安全で、疾病と闘うために効果的なのかどうかを確かめるために必要な臨床試験を受けていない。

そうした臨床試験が完了していないにもかかわらず、FDAは、eINDS(Investigational New Drug Applicants、申請新薬治験)の免除を与え、この一時的な承認を認可した。それもCOVID-19が突きつける現状の公衆衛生上の脅威の大きさと性格を配慮してのこと。回復した患者から採取した血漿の使用に関しては、いくつかの前臨床および臨床試験が進行中だ。そこでは、回復期の血漿が実際にSARS-CoV-2に対して有効である、という可能性を示すいくつかの有望な兆候が認められている。

回復期の血漿が疾病を撃退するために提案され、実際に試みられたのは、もちろんこれが初めてではない。何らかのウイルスに感染し、その後回復した人は、通常、それに対する免疫を獲得する。水痘のように長期に渡って有効なものもあるが、毎年流行するインフルエンザのように短期間しか有効でないものもある。論理的には、すでに抗体を獲得している人から抗体を採取し、免疫系が十分な機能を発揮していない患者に輸血するのが、少なくとも理論上は可能であることは、むしろ当然のことと言える。

回復期の血漿を輸血することは、H1N1インフルエンザのほか、SARSやMERSの流行など、これまでも大規模な感染症の発生に対して使用されてきた。ただし、結果はさまざまだ。

新型コロナウイルスに対して血漿を使用する方法については、いくつかの研究プロジェクトが進行中だ。たとえば、中国の医療専門家チームが査読を受けていないドラフト版として発行した研究がある。これは、最近に回復した患者から提供を受けた血漿を輸血した10人の重症患者に関するもの。この研究では、10人のうち5人で、輸血後すぐに抗体レベルが「急激に増加」した。他の4人の患者については、それ以前から比較的高いレベルの抗体を持っていたが、それが維持された。その結果、7人の患者については、1週間以内にウイルスが検出されない状態となった。

これは、まだ正式な臨床研究ではないが、別の小規模の臨床診療の調査でも、同様の結果が示されてる。また、ドナーとレシピエントの両方に対応している医師が使用できるような、一連のプロトコルをまとめた医師と研究者のグループもある。それによって、あちこちで行われている研究の取り組みの足並みを揃え、医学界でこの問題に取り組んでいるすべての人が、共通の戦略で作業できるようにしようというものだ。

ニューヨーク州知事のAndrew Cuomo(アンドリュー・クオモ)氏は、州の保健機関が、回復期の血漿の試験を今週にも開始すると発表した。これについては、FDAの長官、スティーブン・ハーン(Stephen Hahn)博士も、先週のホワイトハウスのコロナウイルスに関するタスクフォースのブリーフィングで、早い段階で期待の持てる領域として言及している。

すべてのドナー患者は、検査を受けて、ウイルスを感染させるリスクがないことを確認する必要がある。また、通常の献血者としての資格を得る必要もある。これは、州および連邦政府の機関によって実施されている既存の規制に基づく検査による。初期の研究には、血漿輸血が予防的な効果を発揮することを示すものもある。つまり、まだウイルスに遭遇する前の健康な人にも有効だという。ただしFDAは、予防的な治療を明確に禁止している。

現在開発中の他のすべての治療法と同様、この方法も、まず効果を確かめ、それが一般的に適用可能であることを検証するためには、多くの試験と研究を必要とする。それでも、多くの研究者が、この課題に取り組んでいる。というのも、これまでのところ、症状がかなり重篤な段階に進んでいなけば、より効果的な方法であることが示されているからだ。回復期の血漿による治療は、けっして新しいものではなく、むしろ古典的な方法だ。それでも、比較的安全であるという利点がある。それは、通常の輸血と同様、ドナーがもはや活性化されたウイルスを保有していないことが確認された場合に限られるのはもちろんだ。というわけで、実用化までにまだ時間のかかる他の開発中の治療技術と並んで、今後の最新情報を見守るべき治療法と言えるだろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

安価な新型コロナテストを英研究チームが開発、30分で結果判明

英国のブルーネル・ユニバーシティ・ロンドン、ランカスター大学、サリー大学の研究者が開発した新たなタイプのテストでは、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染をわずか30分で調べられる。この検査では、100ポンド(約1万3000円)しかしない手に持つタイプのハードウェアと、1人あたり5ドル(約550円)ほどの綿棒サンプルキットを用いる。ニワトリのウイルス感染をテストするのにフィリピンで使用された既存のテクノロジーを活用していて、今回研究者らが人間での新型コロナウイルス検査向けに作り変えた。研究チームは現在、大量生産に取り組んでいる。

新たなテストは当然のことながら実際に使用されるようになる前に、米食品医薬品局(FDA)のような各国の当局に承認される必要がある。しかしこのプロジェクトに関わっている研究者らは、いい反応が得られると自信を持っていて、「数週間以内に」提供することが可能だとさえ言う。ハードウェアそのものはバッテリーで作動し、スマートフォンのアプリに診断結果を表示する。テストするには鼻もしくは喉に使う綿棒が必要だが、サンプルをラボに提出する必要はない。

同様の手法を用いた現場で使えるテストの中にはすでに承認されたものがある。CepheidMesa Biotechの商品などだ。しかしこれらは高価な専用卓上型ラボを必要とし、ラボはヘルスケア施設に設置される。英国の科学者たちが開発したテストは高価ではないハードウェアを使用するというアドバンテージがあり、しかも1度に最大6人の検査に対応する。また、クリニックや病院に、もしかすると職場や家庭にも配備できる。

欧州や中国の一部の医療現場ではすでに、すぐに結果が得られるテストが使用されている。しかしこれらのテストは往々にして抗体の有無に頼る血清学的なものだ。

一方、英国の科学者たちのテストは分子によるもので、抗体ができる前でもウイルスのDNAの存在を検知できる。このテストは、自宅で自己隔離している無症状の個人のウイルス検査や、他のテストでは現在検査が優先されない不特定多数の人を調べるのに活用できるかもしれない。しかし新型コロナウイルスの市中感染という静かな広がりについての貴重な知見を提供することにもなる。

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(翻訳:Mizoguchi

新型コロナ検査の「自己綿棒拭き取り」は医師による検体採取と同等の結果

今週、米国食品医薬品局(FDA)は、新型コロナウイルス検査の自己検体採取を認めるガイドラインを改訂すると発表した。これは患者が自分で綿棒を使って鼻から検体を採取し、医療従事者に渡して検査するものだ。米国時間3月25日、UnitedHealth Group(ユナイテッドヘルス・グループ)は、大規模な相互監視研究の結果を発表し、この侵襲性の低い検体採取方法に切り替えることの科学的根拠を示した。

ただし自己拭き取りプロセスはFDA認可検査を行うことのできる場所を変えるわけではない。このガイドライン拡大は採取方法にのみ適用される。つまり多くのスタートアップが市場参入を期待している自宅における綿棒によるPCR検査は未だに保留されている。

この最新研究は、自己拭き取り方式が、新型コロナ感染者から医療従事者にウイルスを伝搬させる可能性を減らすだけでなく、医療専門家が患者の鼻孔の奥深くから検体を採取した場合と同等の効果があることを示している。ユナイテッドヘルスはBill & Melinda Gates Foundation(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)、Quest Diagnostics(クエスト・ダイアグノスティクス)およびワシントン大学と共同でこの研究を実施し、ワシントン州のOptumCare(オプタムケア)診療施設で検査を受けた約500名の患者を対象とした。

自己拭き取り採取方法にはほかの利点もある。特別に訓練を受けた医療専門家が診療現場で検査に立ち会う必要がなくなることがその一つだ。これは要因不足による積み残しを解消するはずだが、検査を希望する患者の増加にともなう物資や検査機関の不足は今後も避けられないだろう。

画像クレジット:MIGUEL MEDINA / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

UPSとドイツのWingcopterが共同で配達用多目的ドローンを開発

宅配大手のUPSがドイツのWingcopter(ウイングコプター)と共に、新しいタイプの配達用ドローンを開発している。米国でも世界でも今はロジスティクス企業のドローンによる配送が増えているが、新型機はその方面の需要を狙っている。Wingcopterはすでに電動の垂直離着陸機(eVTOL)を設計しており、最大航続距離約120kmで、許容最大風速は70mで最大約240km/hでフライトさせることができる。

Wingcopterは、UPSのドローンデリバリ子会社Flight Forwardと提携する。昨年の7月にできたこの子会社が、UPSの商用ドローンデリバリ事業を担当する。2019年10月にFlight ForwardはFAA(連邦航空局)から、荷物配達用ドローン専門の航空会社として認可を得ている。

Wingcopterはすでに、ドローンの商用利用のデモを終えており、例えば2020年始めに製薬企業Merckとのデモで、同社の自動操縦eVTOLによる小型荷物のドイツ国内Merk事業所間の配送に成功した。また、UNICEFなどの救援団体とのパートナーシップにより、僻地に医薬品や救命器具などを運んだ経験もある。

このコラボレーションには、Wingcopterの航空機を米国における商用配送に使用する認可を得る目的もある。認可が下りれば、今後両社はこの垂直離着陸タイプの多様な機種を開発して、いろんなニーズに応えていくだろう。ヘルスケアやホスピタリティ、小売業など、想定される需要分野は少なくない。

Wingcopterの主な利点は、ホバーリングや垂直離陸から低ノイズの前進飛行に切り替えができることだ。そのため人口過密地帯での利用に適している。同社のティルトローターの設計は、この垂直飛行と水平飛行をスムーズに切り替えられるだけでなく、雨や強風といった悪天候下でも安定飛行できるという利点もある。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Ford、3M、GEが新型コロナ用の人工呼吸器やフェイスシールド製造へ

Ford(フォード)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の医療現場で働くスタッフや患者が必要としている医療機器の製造に関する最新の情報を発表した。ここには、3Mとの提携による電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)製造が含まれる。保護具の性能を確保し、増産に対応できるよう、両社が手がける既存のパーツを使用する新たなデザインとなっている。

Fordはまた、同社の3D印刷能力を活用してフェイスシールドも製造するとしていて、週10万枚の生産を見込んでいる。フェイスシールドは、最前線で働くヘルスケアスタッフが患者の咳やくしゃみを通じて広がるウイルスを含んだ飛沫から、自らを保護するためになくてはならない重要な保護用具だ。Fordは新たなフェイスシールドをデザインし、その性能を評価するために最初の1000ユニットを今週、デトロイト・マーシー大学、ヘンリー・フォード・ヘルス・システムズ、そしてミシガンのDMCサイナイグレース病院でテストする予定だ。想定通りの性能が確認できれば、今週末までに7万5000ユニットを製造し、来週以降はミシガン州プリマスにある生産施設の1つで週10万ユニットの製造を見込む。

さらにFordは、GEヘルスケア人工呼吸器の生産能力アップでGEと協業することにしている。この呼吸器のデザインは簡素化されたもので、大量生産が可能だ。こうした取り組みはヘルスケア必需品をめぐる米政府の要望に応えるためのもの、と同社は述べた。米国にフォーカスしたGEとの人工呼吸器プロジェクトに加え、Fordはまた英政府からの要請に基づき同国でも人工呼吸器の製造に取り組んでいる。そして、2020年初めに同社が米国から中国に送ったN95マスク16万5000枚を米国に送り返している。米国での需要が大きいからだと同社は説明。加えて、中国の状況は改善している。

週末にトランプ大統領はFord、GM、Tesla(テスラ)といった米国の自動車メーカーに、人工呼吸器や他のプロダクトをなるだけ早く生産するよう「ゴーサイン」を出したとツイートした。

「我々は米国と英国の政府と事前協議を行い、実現可能性について調べた」とFordの広報担当Rachel McCleery(レイチェル・マッククリーリー)氏はTechCrunchに述べた。「危機に立ち向かうため、皆がこれまで以上に力を合わせて国をサポートすることが必要だ」。

今回のアップデートに基づくと、Fordは貢献できる部分にかなり素早く取り組んでいる。同社は多くの需要がある医療備品を生産するために自前の施設、そしてパートナー企業の施設も使用するつもりだと24日の電話会見で述べた。そしてまた、生産能力と生産量をアップするために既存のパーツや設備を活用する。

例えばFordが生産するPAPRは同社のF-150トラックの冷却シート用の部品や3Mの既存のHEPAフィルターを使っている。こうしたPAPRはバッテリーで動く。1つのバッテリーで8時間駆動して空気中のウイルス微小物質をフィルターで除去できるため、N95マスクよりもかなりの利点がある。交換できる独立型のバッテリーパックは腰につける。生産のタイムラインや能力についてはというと、3MのグローバルテクニカルディレクターのMike Kesti(マイク・ケスティ)氏は、まだそれを確かめているところであり、特に新バージョンの生産に入る前にFordが既存のPAPRの生産をどれだけ補強できるかを精査している、と話した。

「Fordは我々の既存のユニットの生産能力拡大をサポートしてくれている」とケスティ氏は述べた。「今後数日から数週間で既存の製品の増産という形で成果が現れるだろう。しかし我々はFordが保有する部品、そしてNIOSH(米国立労働安全衛生研究所)の規格をクリアした弊社フィルターの活用でも緊密に連携している。可能な限り早期の生産拡大を目指す」。

Fordはまた、既存のN95マスクの生産拡大でもM3をサポートしている、とも同氏は述べている。

FordもGEも、現在取り組んでいる新しいタイプの人工呼吸器のタイムラインや予想される生産能力などは示していない。しかしGEヘルスケア副社長で品質責任者のTom Westrick(トム・ウェストリック)氏によると、発表できるよう鋭意進めているとのことだ。

「新たな人工呼吸器のでデザインやリリースに関する具体的なタイムライン、数字は持ち合わせていない。しかし明らかにこれはGE、そしてFordにとって最重要のものだ」と同氏は述べている。

画像クレジット: Ford

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(翻訳:Mizoguchi