Googleに次いでMicrosoftも太平洋横断光ケーブルの敷設に投資―日中台との接続の高速化へ

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今日(米国時間5/11)、Microsoftは日本、中国、台湾、韓国とアメリカの西海岸(オレゴン州ヒルズボロ)を結ぶ太平洋横断海底光ケーブルの敷設のためのテレコム企業のコンソーシアムに参加することを 発表した。Microsoftは「このNCP (New Cross Pacific)ケーブル・ネットワークはクラウド事業の価格競争力を強める高速接続を提供するだろう」と述べた。

Microsoftは、今日これに加えて、カナダ、イギリス、アイルランドとの接続を高速化するHiberniaと契約を結んだことを発表した。この光ケーブル回線は AcquaCommsが準備しているAEConnectケーブルを利用し、ニューヨーク州シャーリーとアイルランドの西岸を結ぶ(その後、中間ネットワーク・プロバイダによってイギリスに接続される)。

Hibernia Expressケーブルは新たな大西洋横断ケーブルとしては12年ぶりのもので、来る9月に運用開始の予定だ。この新ネットワークはレイテンシーの低さ(ニューヨーク-ロンドン間で60ミリ秒を約束)をセールスポイントとしている。運用が軌道に乗れば、一対のケーブルが10Tbpsの伝送速度を発揮することが期待されている。AEConnectの建設費用はおよそ3億ドルでMicrosoftが最初のユーザーとなる。建設資金の借り入れは野村が仲介した。

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グローバルな通信インフラの拡大に努力しているのはMicrosoftばかりではない。最大のライバル、Googleも2008年と2011年に3億ドルを投じて日本とアメリカを結ぶ光ケーブルを敷設している。

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Googleがスケーラビリティとパフォーマンスの高いNoSQLデータベースCloud Bigtableをベータで提供開始

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Googleが今日(米国時間5/6)、新しいNoSQLデータベースCloud Bigtableをローンチする。名前が示しているように、それは同社のデータストレージシステムBigtableを利用しているが、APIはApache HBaseのそれと互換性があり、というかHBaseもGoogleのBigtableプロジェクトを利用しているのだ。BigtableはGmail(メール)やGoogle Search(検索)、Google Analytics(アクセス分析)も利用しており、いわば実戦で鍛えられたサービスだ。

GoogleはCloud Bigtableのレイテンシがひと桁のミリ秒で、コストパフォーマンスはHBaseやCassandraの二倍、と約束している。HBaseのAPIをサポートしているから、Cloud BigtableをHadoopのエコシステム内の既存のアプリケーションと統合することも可能だが、また同時に、GoogleのCloud Dataflowもサポートしている。

Cloud Bigtableのクラスタはわずか数秒でセットアップでき、ストレージはユーザのニーズに応じて自動的にスケールする。

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なお、GoogleがクラウドベースのNoSQLデータベースを提供するのはこれが初めてではない。同社のApp Engineプラットホーム上ではかねてからデベロッパが、高可用性のNoSQLデータストアCloud Datastoreを利用できている。そのサービスもやはり、Bigtableがベースだ。Google Cloud PlatformのプロダクトマネージャCory O’Connerによると、Cloud DatastoreはWebアプリケーションやモバイルアプリに多い、リード主体のワークロードに向いているそうだ。

“Cloud Bigtableはその逆で、大規模なデータ処理を必要とする大企業など向けに設計されており、複雑なワークロードに対応する”、とO’Connerは言っている。“たとえば、企業がデータをストリームでぶち込んだり、データの分析をしたり、一つのデータベースから大量のデータをサーブする、といった用途にCloud Bigtableは向いている。弊社の顧客は今後、Cloud Datastoreでプロトタイプを作り、大規模で複雑なデータ処理を伴う本番の展開ではCloud Bigtableへ移行する、というパターンになるだろう”。

この新しいサービスは当面ベータで提供されるので、誰でも利用できるけどSLAや技術的サポートは提供されない。

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ContainerShipはコンテナ化したアプリケーションのマルチクラウド展開を助ける

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今日(米国時間5/5)のDisrupt NYでは、ContainerShipがステージに登場して、コンテナに収めたアプリケーションを複数の異なるクラウドサービスへ容易にデプロイする技術を紹介した。ContainerShipは、このところ雨後の筍しているコンテナ関連サービスの一つで、アプリケーションをたとえば複数のクラウドプロバイダにまたがって展開する作業を助けてくれる。

ContainerShipのチームが述べる彼らの目標とは、ユーザ企業のインフラストラクチャを“ポータブル”にすることだ。

ContainerShipは、オープンソースでありながら商用化を志向している企業だ。つまりコアプロダクトはオープンソースだが、ContainerShip Cloudと呼ばれるプロダクトはユーザの頭数をベースとする有料制だ。

ContainerShipのセールスポイントは、ポータビリティ。同社は、ホスティングプロバイダの乗り換えをもっと簡単にやりたい、というデベロッパの願いに応える。簡単にとは、そのことに伴う複雑な技術をラップしてしまう、ということだ。そうやって面倒な部分をすべてContainerShipが引き受けるから、デベロッパは自分のアプリケーションを新しいクラウドプロバイダや、現在のプロバイダの新たなリージョンへ、容易にデプロイできる。

同社は、最初のうちは中小企業のスタートアップを主な顧客にしていきたいが、能力的には今からでも大企業のニーズに対応できる、と言っている。

今のところ同社のサービスの利用は無料で、いずれは有料化すると言っているが、その‘いずれ’がいつのことかは、未定だ。

今Dockerには、おそらくあなたご自身も含め、多くのデベロッパが夢中になっている。でも一歩引いて世界を見渡してみれば、大企業の世界ではレガシーでオンプレミスの技術への訣別が始まっている。だからそこには、ContainerShipのような企業が活躍すべき大きな機会が眠っている。Dockerの勢いは当分衰えないだろうから、ContainerShipが作っている“金鉱掘用のつるはし”も、順調に売れていきそうだ。

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Microsoftはクラウド企業への変身を志向する…2018会計年度の商用クラウドの売上を$20Bと予測

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Microsoftが今日(米国時間4/29)のデベロッパカンファレンスBuildで、2018会計年度(2017年半ば以降)に同社の商用クラウドの売上(年商)が200億ドルに達する、と発表した。Microsoftがここで“商用クラウド”と言っているのは、Azureと企業向けのOffice 365などのことで、その売上が一四半期あたり約50億ドルになる、というのだ。

それは、大金だろうか? まさに、そのとおりだ。同社の商用クラウドの今の年商は63億ドルだ。これは前年比で8億ドルの増になる。Microsoftの2017会計年度は今からほぼ9四半期後だが、それまでに各四半期ごとに10億ドルあまりの成長を達成する必要がある。今のペースから、大きく飛躍しなければならない、ということだ。

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ということはMicrosoftは、商用クラウドがなるべく早く同社の収益の柱になってほしい、と期待しているのだ。同社の最新四半期の総売上は、217億ドルだった

企業としてのMicrosoftは、WindowsやOfficeのユーザをオンラインの有料会員に変えたいと画策している。消費者向けのOffice 365は急成長して、最新四半期では会員が前四半期比で35%も増えた。Office 365の1250万の消費者会員ユーザは、同社にとって重要な継続的売上源だ。

つまりMicrosoftのクラウド化は、今や実際に起きていることであり、同社は投資家たちに、その成長がはやいのだ、と訴求している。これまでクラウドでは影が薄かったMicrosoftは、今やクラウド化に積極的に挑戦しようとしている。もしも目標の200億ドルに達しなかったら、同社のクラウド化はまだ道半ば、ということになる。

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Mesosphereの総合化プロダクトDatacenter Operating System(DCOS)がMicrosoft AzureとAWSに上陸

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さまざまなサーバで構成されるデータセンターを単一のエンティティとして扱えるためのサービスを提供しているMesosphereが、重要な結実期を迎えた。今日(米国時間4/29)同社は、Microsoft AzureとAmazon Web Services(AWS)の両クラウド上で、同社のDatacenter Operating System(DCOS)の公開ベータローンチした。オープンソースのApache Mesosをベースとする同社の技術にとって、これは大きな前進だ。

デベロッパはDCOSを使ってHadoopやCassandra、Jenkins、Googleのコンテナ管理サービスKubernetesなどのLinuxアプリケーションをクラスタ上で容易に動かすことができ、処理需要の増減に応じてのスケーリング、そのためのリソースプロビジョニングは、DCOSが自動的に行う。Mesosの基本機能により、これらのアプリケーションにとってデータセンターは、共有リソースの単一のプールになる。〔データセンター全体を一台のPCのように操作/管理できる。〕

TwitterやYelp、NetflixはすでにMesosを使っており、AppleもSiriのバックエンドをMesosの上で動かしている。

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今日行われたMicrosoftのデベロッパカンファレンスBuildで、AzureのCTO Mark Russinovichが、Mesosphereを使ってAzure上でクラスタをローンチするやり方を見せた。彼はその、200のノードから成るクラスタを素早く始動し、その上で2000のDockerコンテナをローンチした。Azureは今日、ややカスタムなデモを見せたが、AWSを使っているデベロッパもそれと同じ機能を同プラットホーム上で利用できる。

これまでMesosphereという名前だったはずのプロダクトがなぜ今日から急にDCOSになるのかというと、それまで同社はそのサービスを、Mesosの“スタック”に焦点を当てて語っていたのに対し、昨年の終わりごろからはそれらの関連サービスのすべてをDCOSへとパッケージングして、選ばれた少数のデベロッパにアーリーアクセスを提供し始めていたからだ。そして今日からは、すべてのデベロッパがここを窓口として、公開ベータにサインアップできる。

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クラウド上のIDE Nitrous.IOが企業ユーザ向けのProバージョンをローンチ

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プログラミングをクラウド上で行うことによってその困難性を軽減する、というサービスNitrous.IOが、その‘Pro’バージョンをローンチして本格的に企業ユーザの獲得を目指している。

昨年同社はBessemer Venture Partnersが率いるラウンドにより665万ドルを調達し、その前にはシード資金として100万ドルを獲得している。同社によると、Nitrous.IOの新たなProサービスはNitrous.IOを使って構築した。自分で作ったドッグフードはまず自分が食え、という格言を、より高いレベルで実行したようだ。

いちばん単純に言うとNitrous.IOはクラウド上のIDEだが、その機能は単にコードを保存するだけではない。コードをそこに置くこととプロジェクトの開発を同じ単一の場所で行うため、開発環境のセットアップは10分で終る。何時間も、あるいはまる一日も、かかることはない。また一つのプロジェクトに対するコードの共有とコラボレーションは、最大20万名まで可能だから、そのスケールはGoogle Docsなみだ。

Proバージョンで機能は拡充されたが、特定の要件を満たせば他の組織や企業とのコラボレーションも可能だ。そのためにProの顧客はrootアクセスができ、各人のIDEが独立のインスタンスとなり、カスタマイズによりDockerもサポートできる。コンピューティングのインフラストラクチャも、それぞれ自分だけのものを使用する。

料金はまだ最終決定していないが、Nitrous.IO Proは一人あたり月額14ドル99セントから64ドル99セントまで程度、プラス、カスタム化による費用が加わる。

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なお、今後はオンプレミスでの利用にも対応していく予定だ。そのための非公開ベータは、もうすぐ始まる。

CEOのAJ Solimineは曰く、“5年後にはWeb開発のほとんどがクラウドで行われるようになる。Nitrous.IOはそのための初期の製品としてはよく出来ていると思うが、Proは開発環境としてさらに充実している。もう、GitHubのReadmeは要らないね”。

Nitrous.IOに、GitHubと決闘するつもりはない。むしろ、GitHubにないものを補うという見方をしており、今後はGitHubとの統合をよりタイトにしたいそうだ。営業担当VPのJustin Fryは、Nitrous.IOの目的を、大企業の中の点を、つないで線にすることだ、と言う。現に大企業では、Nitrous.IOが複数のチームで使われ、事実上コミュニケーションのメディアになっている例が多い。

Nitrous.IOは学校とその生徒学生、それに、たまにプログラムを作るレベルの人たちも無視していない。それらの人たちは、一日2時間まで無料、というプランを使えるが、彼ら向けのプランは今後もっと多様化するつもりだ。

“教育専用の料金体系を今後作るつもりだ”、とSolimineは述べる。“学校や学生生徒たちにとって無理のない料金にしなければならないが、今はいろんなやり方を検討中だ”。

過去にNitrous.IOは、Chrome用のパッケージアプリケーションを作ったこともある。それを使うと、200ドルのラップトップでもプログラミング用のマシンになる。同社の収益源はあくまでもプロのデベロッパたちだが、同時にこのような、‘プログラミングの民主化’を推進することにも関心があるのだ。

今、同社の社員は18名、オフィスは合衆国とシンガポールにある。CEOの考え方はとても長期的で、今はまだ10%にも満たないオンライン開発が、今後徐々に増えていくことが同社の成長源でもある、と展望している。長期戦のためのお金は、すでに十分、手元にある。

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専門知識不要でネット予約ページ作成、1万事業者が導入するクービックが3.1億円調達

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専門知識がなくてもネット予約受付ページが作れる「Coubic」は、2014年4月のリリースから1年間で導入事業者が1万件を突破した。ユーザー調査によれば、導入前に使っていた予約システムは「ない」という回答が77%。Coubicを運営するクービックの倉岡寛社長は、ネット予約を裾野が広がっている証拠と話す。その同社が22日、米DCMとグリーベンチャーズ、個人投資家から総額3億1000万円の第三者割当増資を実施した。

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ビジネス支援機能でマネタイズ図る

CoubicはPC、スマートフォン、タブレットに対応した予約ページが無料で作れるサービス。電話やメール経由の予約もオンライン上の予約台帳に記入できるため、あらゆる予約を一元管理する「クラウド型予約台帳」として使える。サロンやヨガ教室といったスモールビジネスを中心に導入している。

現在の収益は月額4980円で広告非表示、予約情報のCSV出力、アクセス解析が可能となるプレミアムプラン。ただ、無料プランでも予約管理数・顧客管理数が無制限なため、ハッキリ言って有料・無料プランにほとんど差はない状況だ。今回の調達資金をもとに顧客管理機能を強化し、有料ユーザーを増やす狙いがある。

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具体的には、来店頻度に応じて顧客を絞り込んだり、来店から数カ月後にメールを自動送信するなど、休眠顧客を掘り起こす「セールスフォースの簡易版のような機能」(倉岡氏)を追加する。導入事業者からの要望が多い決済機能も年内に投入する予定だ。「Coubicにとって予約は入口にすぎない。事業者のビジネスを支援する機能でマネタイズを図る」。

Coubicの競合となるのは、日本航空やヤマハ、ソフトバンクなど1200社の導入実績がある「ChoiceRESERVE」が挙げられる。こちらはフリーミアムモデルのCoubicと違い、月額5000円〜2万円の有料サービスだ。米国では、倉岡氏も参考にしていると語る「BookFresh」が、2014年2月にモバイル決済のSquareに買収されたことで話題になった。

競合はリクルート、サロン当日予約アプリの勝算は?

クービックは今年2月、渋谷周辺の美容院やネイル、エステなどのサロン当日予約に特化したアプリ「Popcorn(ポップコーン)」を公開した。ユーザーは、当日限定の縛りがあるかわりに、人気サロンのサービスが最大70%オフで予約できるのが特徴。予約と同時に事前登録したクレジットカードで決済する仕組みなので、サロンとしてもドタキャンを防げるメリットがある。

以前の取材で、サロンの開拓は「ドブ板営業」が中心と語っていた倉岡氏。現在も同社のスタッフがサロンを訪問し、口説いて掲載しているのだという。最近ではCoubicを導入するサロンからの流入も増え、掲載サロン数は100件目前。夏までに500件を目指す。

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予約成立数については「3桁」(倉岡氏)と数字を濁すように、まだ決して多くはない。サロンの当日・直前予約のビッグプレイヤーといえば、ホットペッパービューティーでお馴染みのリクルートだが、倉岡氏は「勝算はある」と自信をのぞかせる。

「プロダクト面では1〜2タップで予約ができ、Uberのようにその場での決済不要な体験は差別化につながる。Uberも最初はドブ板のようなことをやっていたが、サンフランシスコの熱量が他の地域にも飛び火し、インバウンドでやっていけるようになった。Popcornでもまずは渋谷周辺で熱量を高めたい。狙い目は人口密度の高い地域。シンガポールや台湾の進出も視野に入れている。」

今回の増資に伴い、ゴールドマン・サックス証券のヴァイス・プレジデントを務めていた間庭裕喜氏が取締役に就任する。同時に、リードインベスターを務めるDCMのジェネラルパートナーの本多央輔氏を社外取締役として迎え入れる。海外事情に精通したDCMとの取り組みは、Popcornアジア進出の布石となっているのかもしれない。

Microsoftが発表したAzure Service Fabricは完全なオートスケーリングのPaaSを提供する(将来的には他社クラウドに対しても)

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Microsoftが今日(米国時間4/20)、Azure Service Fabricというものを発表した。スタートアップやISVたちが、スケーラブルなクラウドアプリケーションを作りやすい、というAzureの新サービスだ。

このサービスを使ってクラウドアプリケーションを作ると、ユーザ数や提供物がどんどん成長しているときデベロッパやアドミンは、インフラを抜本的にいじるとかの、スケーリング対策をいっさいやらなくてもよろしいし、気にする必要もない。

Service Fabricはそのために、マイクロサービス方式のアプリケーションアーキテクチャと、同社独自のオーケストレーション技術を結びつけて、自動的に分散システムを拡張していく。またVisual Studioとコマンドラインツールにより、アプリケーションのライフサイクル管理をサポートする。

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Microsoftのクラウドプラットホームマーケティング担当ゼネラルマネージャMike Schutzによると、Service Fabricは(Microsoftの定義では)次世代型PaaSの技術であり、Microsoftはその基盤となるハイパースケール技術をAzureDBやDocumentDB、Cortanaなど自社のサービスで使ってきた。というかMicrosoftによると、Service Fabricは、これらのサービスを動かすために内製して使ってきたものと、まさに同じ技術だ。

Service Fabricは、現代的なアプリケーションを構成しているマイクロサービス群と、アプリケーションがその上でホストされているクラウドの両者をつねに見張る。Microsoftの説明ではその新しいサービスは“インフラストラクチャの可利用なリソースとアプリケーションのニーズの両方をデベロッパに代わって見張り、両者の需給バランスが危うくなってきたら自動的にアップデートして自己修復を図る。それにより、どんなスケールにおいても、高可用性と耐久性の高いアプリケーションのサービスが維持される”。

マイクロサービスというとDockerのコンテナを連想する人が最近は多いと思うが、Service FabricはMicrosoftの自社技術とJavaアプリケーションに焦点を当てる。Microsoftの計画では、Windows Serverの次のバージョンでDockerのサポートと同社独自のWindows Server Containersが提供される。そのときはさらに、Service FabricがWindows Serverの上で動く、という形のオンプレミスのサポートも提供される。さらに今後の計画ではLinuxをサポートする予定もあり、また、そのほかのクラウドサービスを使っているデベロッパにはService Fabricへの移行を(希望者には)ガイダンスする。

Microsoftはハイブリッドクラウドのサポートにも積極的だから、今後はService Fabricをプライベートクラウドや、Microsoft以外のホストによるクラウドにも提供して行く予定だ。これだけ手広くやる、という点がなかなかおもしろい。

Service Fabricはある意味では最近ローンチしたAzure App Serviceの対極にあるようなサービスだ。App Serviceはクラウド上にスケーラブルなアプリケーションを載せて動かすことに伴う複雑で面倒な要件をすべて抽象化しようとするが、Service Fabricではデベロッパが必要に応じて低レベルをコントロールできる。

Service Fabricそのものについてはここに述べたような抽象的な説明しかまだ提供されていないが、デベロッパが実際に試してみようにも、まだ具体的には何もリリースされていない。Microsoftによると、デベロッパプレビューとSDKは、来週行われるデベロッパカンファレンスBUILDでリリースし、その際、Service Fabricの詳細なデモも見せてもらえるらしい。BUILDは来週の水曜日からだが、そのときService Fabricについて具体的なことがいろいろ分かるのだろう。

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freeeはクラウド完結型社会を目指す、e-Gov API初対応の新サービス投入へ

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政府がe-Gov(電子政府)のAPIを公開する動きに合わせて、労働保険の更新手続きをクラウド会計ソフトのfreee上で完結する機能を公開する。年に1度行う労働保険の更新に必要な申告書を自動作成し、申告書の提出から保険料の振り込みまでの手続きがfreee上で完結することになる。

現状の労働保険更新の手続きは、1年分の給与支払い額から保険料を計算→申告書へ転記→申告書を郵送・承認通知を紙で受け取る→保険料を銀行で振り込む、という流れ。これらの手続きが、freee上で完結することになる。5月後半にリリース予定で、freeeの佐々木大輔社長は「e-Gov APIを利用した初のプロダクトになる」と話している。

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今年はe-GovのAPI公開に加えて、国民に番号を割り当てて行政手続きに活用するマイナンバー制度、電子帳簿保存法改定など、政府が電子化に向けて動き出す。freeeは、今までクラウド上で完結できなかった手続きや、紙での管理がクラウド上で完結できると見ていて、「クラウド完結型社会」を実現するサービスを続々と投入する予定だ。

今年度中に公開予定のサービスは以下の通り。

  • freee上での電子帳簿保存法対応
  • 法人・税理士向けマイナンバー管理サポート
  • 法人番号を取引先情報として管理
  • 給与支払・経費精算連携機能

これらのサービスによって例えば、従業員を採用する際に必要だった面倒な手続きまでもがfreeeで完結する、と佐々木氏は意気込む。「これまでは労働基準監督署や税務署、年金事務所、区役所、健康保険組合を回らなければならなかった。自分もかつては自転車でこれらの場所を回っていたが、こうしたすべてのバックオフィス業務をfreeeで済むようにしたい」。

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短期的なIPOよりもユニコーンクラブ入りを

freeeは2013年3月のサービスを開始。簿記の専門知識がなくても使えることをうたい、リリース2年で導入事業者は30万件を突破した。これまでに累計17億5000万円の資金調達を実施している。そろそろIPOが期待されそうだが、佐々木氏は短期的なIPOは考えていないと語る。

「日本のスタートアップは短期的にIPOを目指すのが通常とされるが、海外に目を向けると時価総額1000億円以上の『ユニコーンクラブ』が多い。(freeeと同じ)海外のクラウドサービスは時価総額1000億円規模でIPOしているが、私達もそのモデルを目指す。」

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DropboxとMicrosoft、提携をさらに強化―無料Office OnlineでDropbox上のOffice文書が編集可能に

今日(米国時間4/9)、MicrosoftとDropboxはすでに親密な関係をさらに強化する新しい提携を発表した。ユーザーはウェブのOffice Onlineを利用してDropbox上のOfficeファイル(Word、PowerPoint、Excel)をブラウザから開き、自由に編集できるようになった。

これまでもデスクトップのOfficeアプリから直接Dropboxのファイルを開くことができたが、そのためにはユーザーはOfficeがインストールされているコンピュータを利用しなければならなかった。オンライン編集が可能になったことでユーザーはビジネスセンターやインターネットカフェなどのマシンでDropboxのOfficeファイルを編集できるようになり、自由度が大幅に増した。

Dropboxのブログ記事によれば、新機能を利用するためには、ファイルをプレビューしたときに表示される“Open”ボタンをクリックすると、「Office Onlineを利用してブラウザから編集」というオプションが現れるという。このオプションが利用できるのはOffice 365のライセンスを持つDropbox for BusinessのユーザーおよびDropbox Basic、Proのユーザーだ。ただしBasic、Proのユーザーは、事前にOffice Onlinのアカウントを作っておくことが必要だ。Office Onlineは無料版でよい。Microsoftにアカウントを登録するだけで無料版のアカウントが作成できる。

今回のアップグレードの意味は大きい。これまでウェブ版のOfficeのユーザーはDropbox内のOfficeファイルをプレビューすることはできても編集は不可能だった。Dropbox BusinessのユーザーはDropbox Badgeというコラボ・ツールでWordやExcelファイルをオフラインのOfficeアプリ開き、他のユーザーと共同で編集することができた。新しい統合機能のおかげでホーム・ユーザーもビジネス・ユーザーも簡単にブラウザ上でOfficeファイルのオンライン編集ができるようになった。

新機能は今日から有効となる。

なお、既存ファイルの編集だけでなく、Office Online内からDropboxへ新ファイルを保存することも可能だ。

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Dropboxによれば、現在Dropbox上には350億のOfficeファイルが保存されている。Microsoft のOfficeユーザーは12億、 Office 365のHome、Personalのユーザーは9200万だという。今回の統合はDropboxユーザー数百万の利便性を向上させることになるだろう。これはGoogle DriveなどOfficeに似た生産性アプリを備えたクラウド・ストレージのライバルに対する少なからぬ優位性となる。

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MicrosoftとDropboxが最初の戦略的提携を発表したのが、2014年11月だった。このときにはOffice文書がDropboxのモバイル・アプリから編集可能になり、またOfficeアプリから Dropboxに保存した文書が開けるなどOfficeのDropboxサポートが向上した。

ただしMicrosoftはOfficeの活動場所を拡大するにあたってDropboxだけと提携しているわけではない。さる2月にはiCloudやBoxなどのクラウド・サービスとも広汎な提携低関係を結んでいる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

MicrosoftがWindows ServerのDockerコンテナサポートのために、新たな仮想化ハイパバイザ層とWSの極小化コアNano Serveを提供

コンテナはアプリケーションの書き方や展開の仕方を急速に変えつつある。このバスに乗り遅れたくないMicrosoftは昨年10月に、Windows Serverの次のリリースでDockerによるコンテナをサポートする、と発表した。そして今日(米国時間4/8)同社は、Windows Server上のコンテナの安全を確保するためのハイパバイザと、Windows Serverから余計なものをそぎ落として極小化し、クラウドとコンテナ向けに最適化したバージョンを発表した

Microsoftでクラウドプラットホームのマーケティングを担当しているマネージャMike Schutzによると、このところMicrosoftでも、コンテナ技術のサポートを求める顧客からの要望が日に日に増えている。またMicrosoft自身も、本来はLinuxの技術であったDockerをAzureやWidows Serverなど同社のプラットホームでサポートするための技術を、十分な実用レベルにまで育ててきた。

今日の発表は2014年に発表されたWindows ServerのDockerサポートと、Windows Server Containersの発表に次ぐものである。後者Windows Server Containersは、.NETなどのWindows技術で書かれたアプリケーションを、コンテナにパッケージして動かすための技術だ。

Schutzによると、今日発表されたHyper-V Containersは、コンテナとオペレーティングシステムを隔離する仮想化層によりセキュリティを強化して、Windows Server上のコンテナの展開に新たな次元を加える。そしてそれらはすべて、既存のDockerツールと共存できる。

“デベロッパがコンテナの利点を大きなアプリケーション集合に適用しようとするとき、新しい要求が生まれることに気づいた”、とSchutzは語る。それは、もっと良好な隔離とともに、“もう少しコントロールの幅を広げたい”という欲求だ。

Hyper-V Containersは、まさにそれを提供する。とくに大企業では“エンタプライズシステムやホスト環境においてより高いレベルの信頼性が要求される”、とMicrosoftは指摘している。

Windows Server Containersのアプリケーションは、無変更でこの新しいHyper-V Containers中へ展開できる。

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またWindows Serverの極小化バージョンNano Serverは、Schutzによると、フルサイズのWindows Serverの1/20のフットプリントしかない。それはコンテナへの関心に応えるだけでなく、軽量級のクラウドサーバを動かすためのオペレーティングシステムとしても利用できる。Microsoftは長年、Windows ServerのGUIのない最小インストールをServer Coreとして提供してきたが、Nano Serverはそれをさらに徹底させて、目的をクラウドの展開に絞り、軽量でベアメタルなハイパバイザとしても利用できるようにした。

なおNano Serverは、単独のバイナリとして提供されるのではなく、Windows Serverの次のバージョンのインストールオプションなので、サービス規約も料金モデルも本体WSと同じになると思われるが、その件に関してMicrosoftからの公式発表はまだない。おそらく詳細は、来月行われるデベロッパカンファレンスBuildで発表されるのだろう。同社はNano Serverのプレビューを来月提供する、と約束している。

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CoreOS、Google Ventures等から1200万ドルを調達―Docker管理ツールKubernetesをエンタープライズへ

CoreOSはDockerに特化したLinuxディストリビューションで、主なターゲットは大規模なサーバー群だ。同社は今日(米国時間4/6)、 Google Venturesがリードし、Kleiner Perkins Caufield & Byers、Fuel Capital、Accel Partnersが参加したラウンドで1200万ドルの資金を調達したことを発表した。これでCoreOSの調達資金総額は2000万ドルになる。

これと同時にCoreOSはTectonicをローンチした。これはCoreOSにGoogleのオープンソースのコンテナ管理と統合運用のツールKubernetesを加えた商用ディストリビューションだ。

〔KubernetesはMicrosoft、IBMなどもサポートし、昨年Azureにも組み込んでいる。〕これによりCoreOSはエンタープライズ版Kubernetesをフルサポートした初のOSとなる。この新しいディストリビューションは現在、限定ベータテスト中だが、大企業がコンテナ・ベースの分散インフラに移行するのを容易にすることを目的としている。

CoreOSのCEO、Alex Polviはプレスリリースで「われわれがCoreOSをスタートさせたのはGoogleのインフラを万人に提供したかったからだ。今日発表したTectonicによってそれが実現した。世界中のエンタープライズはGoogleのインフラと本質的に同等の安全、確実な分散コンテナ・インフラを構築し、運用することができるようになる」と述べた。

GoogleのKubernetesのプロダクト責任者、Craig McLuckieは「Googleの顧客はCoreOSを利用すればインフラの構築にあたって、特定のプロバイダにロックインされることなく、相対的なメリットの比較によって自由にクラウド・プロバイダを選択することができるようになる」と述べた。

GoogleはCompute Engineサービスで、CoreOSを1年前からサポートしている。Googleは最近、クラウド・プラットフォームにおけるコンテナの利用に力を入れており、CoreOSとの提携(および同社への投資)は、AmazonやMicrosoftと競争して進取的な大企業をGoogleクラウドに惹きつけるために大いに理にかなった戦略というべきだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

セキュリティが気になるならオンプレミスよりクラウドを選ぶべき

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一般的に、自社のデータセンターはオンプレミスの方が安全でセキュリティが高いと言われてきた。しかし、ここ2年の間に起きた情報漏洩の事件を思い出してほしい。例えば、AnthemSony、 JPMorganやTargetの事件だ。これらは全てオンプレミスのデータセンターからの情報漏洩でクラウドからではなかった。

クラウドサービスの管理が行き届いているなら、自社のデータセンターよりクラウド上の情報の方が安全だと言えるだろう。なぜなら、Amazon、Google、SalesforceやBoxはセキュリティ対策に尽力している。セキュリティの穴はビジネス全体に大打撃を与えることを理解しているからだ。

クラウドサービスを提供する会社から、情報漏洩に関する大事件を聞かないのはそれが理由だろう。クラウドからの情報漏洩で思い当たるのはジェニファー・ローレンスの写真の漏洩やその他セレブに関するものだが、オンプレミスでのハッキング行為ほど注目を集め、大規模な問題に発展した情報漏洩をクラウドでは聞いたことがない。

管理する側の感覚の問題もあるだろう。オンプレミスのデーターセンターの方が安全なように感じるのだ。だが、本当にそうなのだろうか?

どちらの方が安全か

第一にクラウドサービスを提供する企業に比べ、いくつかの例外を除き、ほとんどの企業はセキリティ対策にリソースを費やしていない。

彼らの本業はセキュリティ対策とは関連が薄いのだ。少なくとも直接的には関係していない。CEOにとっても大抵の場合、セキュリティ対策が最優先事項ではない。注目を浴びるほど大規模にハッキングされることは恥ずかしく、経済的な損失も大きいが、彼らの本業はお客様にサービスや商品を提供することなのだ。

David Cowanは、Bessemer Venture Partnersで90年代からセキュリティ関連企業に投資を行っている。彼曰く、多くの企業はセキュリティについて考えておらず、Sonyも例外ではなかったと言う。

「Sonyも最新技術を活用したビジネスを行っていますが、SonyはGoogleやAmazonではないのです。彼らは、映画を作り、映画を作ることに卓越した人たちを採用しています。彼らの事業の根幹はそこにあるのです。データや認証やセキュリティについては考えていないのです。」

Cowanは、だからと言ってクラウドの方が安全だとは言い切れないが、GoogleやAmazonのようにクラウドサービスを提供してきた経験のある会社のサービスの方が既存のデータセンターより安全である可能性は高いと言う。多様なクラウドサービスがある今、それぞれのセキュリティへの対応レベルが異なっているのが問題であるとも話した。

「GoogleやAmazonに全ての情報を置いてはいません。複数のサイトに分散して置いています」と彼は言った。そして問題は、それぞれのサービスのセキュリティレベルが同じではないということを指摘した。

データの権限は誰にあるのか?

クラウドコンピューティングの問題の一つは、誰がデータの権限を持っているかということだ。もし行政がやってきて情報開示を求めたら、クラウドサービスを提供する企業は、ユーザーが開示してほしくない場合でも情報を提供しなければならないのだろうか。ここのルールはまだ明確ではない。いくつかのクラウドサービスのベンダーはこの問題に取り組んでいる。

数ヶ月前、BoxはEnterprise Key Managementというプロダクトをリリースした。これを利用する法人は情報の権限を全て掌握できるこようになる。Boxに置いた情報は、暗号化キーを保有しているオーナーにしか利用することができない。つまりBoxは、行政に情報開示を求められても、全て暗号化されているため、情報を提供することはできない。行政は直接ユーザーに情報開示を要請する必要がある。

Cowanがクラウドサービスのセキュリティについて指摘したように、全てのクラウドサービスがBoxのような機能を備えているわけではない。このような機能がない場合、事態は混迷する。Googleのようなクラウドサービスは、常にユーザーの情報開示を求められていて、Googleは会社としてどのように対応していくかを検討しなければならない。

Electronic Frontier Foundationは、オンラインベンダーが行政の要請を受けた場合のユーザーへのサポート体制についての年間報告書を公表した。全てではないが、ほとんどのサービスが情報を開示するには令状が必要だ。しかし残念ながら、過去の報告書を見ると全てに適応しているとは言えない。2013年の報告書でもこのことが確認できる。

EFFは、主なクラウドサービスの暗号化の状況を知ることのできる年間報告書も作成している。ユーザーのデータの保存時と送受信時にどれだけ守られているかを知ることができる。

データを分散させる

Sonyでの情報漏洩事件について考えてみよう。Sonyのシステムは一つに集約されていたため、ハッカーがSonyのセキュリティを突破して、Eメール、公開前の映画、さらにはパートナーシップ契約の内容まで何でも手にすることができた。ひどい話だ。もしデータが複数のクラウドサービス上に分散していたのなら、1つのサービスに侵入されたとしても、失うのはそのサービスに保管されている情報だけになる。

私は、昨年のTechCrunch Disrupt San FranciscoのStartup AlleyでCloudAlloyという会社と話をした。彼らはリスクを分散させるというアイディアを形にしている。CloudAlloyは、ファイルをパーツに分け、それぞれを複数の異なるサーバーに保存することを考えた。ファイルを開きたいときは、サーバーに分散されたファイルを呼び出す。この方法でもファイルを開くのに遅滞はなく、ハッカーが一つのサーバーに侵入したとしてもそこにあるのはファイルの一部分で、その情報には意味がないということになる。

データの保管場所を分散させておくことで、1つの保管場所がハックされたとしても、全てのデータが奪われる危険性が低くなる。このアプローチはとても理にかなっている。

しかし、どのアプローチにおいても人が介在している限り、抜け穴がないとは限らない。問題は必ず起きるのだ。ハッカーは、フィッシング詐欺組織を作ったり、強力な攻撃を行ったりすることで、個人のアカウントをハックできることがジェニファー・ローレンスの事件で証明された。

自社保有のデータセンターにも弱点があり、オンサイトでデータを保持していることが安全であるとは限らない。むしろ危険だと言える。クラウドは、今ある選択肢の中で最も希望のあるものだ。クラウドコンピューティングが誕生したその日から、クラウドに向けられた批判はセキュリティ面に関してだったことを考えると、皮肉な状況と言える。しかし今の所、クラウドが一番安全であり、ここに賭けるべきだということには変わりない。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ facebook

OpenStackは市場の整理統合がさらに進行、初期の選手Nebulaが引退へ

OpenStackのインストールを単純化してくれるサービスNebulaが、昨日(米国時間4/1)閉店した。

サービス閉鎖の発表が2015年4月1日だったが、しかしそれは、エイプリルフールのジョークではなかった。

たいへん心苦しいことですが、本日、2015年4月1日に、Nebulaがオペレーションを停止することを発表いたします。

これは私たちにとってつらい発表ですが、顧客や株主や社員のみなさまには、あらゆる選択肢を検討した結果、万策尽きたことをご報告申し上げなければなりません。

同社の将来性は大きかった。これまで3850万ドルのベンチャー資金を調達し、2014年4月13日には350万ドルの融資を獲得していた。協同ファウンダには元NASAのCTO Chris Kempもいたが、彼は2013年に同社を去り、今ではOpenStack Foundationの取締役の一人だ。

OpenStackのエコシステムで使われているデータベースTesoraのCEO Ken Ruggは、この発表が今進行中のOpenStack世界の整理統合の一環だ、と言う。

Ruggはこう説明する: “MetacloudCloudScalingは、どちらもすでに買収された。池に大きな魚が入ってきたので、今でも残っている小さな“OpenStack専門/汎用企業”はますます競合が難しくなっている。Red HatやHP、IBM、Oracle EMC、VMwareなどが全員、自分たちのディストリビューションに巨額の投資をしているから、Nebulaのような企業は対抗できない”。

Ruggによれば、Nebulaは市場参入が早すぎて、OpenStackはまだ成熟に達していなかった。同社のようなサードパーティサービスが提供する、より容易なインストールを求める顧客も、まだ十分に多くなかった。アーリーアダプターたちは自分で自分の手を汚すことを厭わないが、しかし市場の成熟とともに、第二波のユーザがやってくる。彼らは、もっとシンプルなやり方を求める。アプライアンス的なサードパーティサービスは、OpenStackを使うための、もっとすっきりとした方法を提供する。Nebulaがまさにそうだったが、まだ市場がそこまで成熟していなかった。

Ruggは説明を続ける、“アプライアンスとしてのソフトウェアソリューションの提供は、市場がもっと成熟していて、それを使うソフトウェアと人間への大きな需要がすでにある、という状態でなければだめだ。つまりそれは、十分な技術力がなくて“プラグ&プレイ”を求める、中〜後期市場の多数派に売れるものだ。データウェアハウスアプライアンスのNetezzaが登場したときは、人びとがすでにデータウェアハウスの必要性を認識していて、上品質でしかも使いやすい実装を探し求めていた。OpenStackはまだ、アーリーアダプターの段階だ”。

そしてNebulaは、市場参入が早すぎたことの高い代価を払ったのだろう。今のような市場の変動期には、小粒な選手たちにとって、生き残り策を見つけることがとても難しいのだ。

情報開示: ぼくはTesoraのブログを担当して給料をもらっていた。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Amazon、日用品をワンプッシュで補給できるハードウェア、Dash Buttonをリリース

AmazonはDash Buttonという新しいハードウェアを発表した。これは消費者が定期的に補充を必要とするような日用品を簡単に注文できるデバイスだ。Dash Buttonは横長の小さなデバイスで、それぞれ特定のブランドの商品に関連付けられており、多くの種類が用意されている。デバイスの裏に粘着テープがあり、対象となる商品を保管している場所に貼り付けられる。

Dash ButtonはAmazonのワンクリック注文の拡張といえるだろうが、専用のハードウェア化したところが独創的だ。たとえば洗濯機に日頃使っている洗剤用のダッシュボタンを貼り付けておけば、洗剤が残り少なくなったらワンプッシュするだけで補充がができるというわけだ。商品を実際に消費する場所にこのボタンが置かれていれば、たとえ近所の店に買いに行く方が配達を待つより便利な商品であっても、消費者はこのボタンを押して注文するだろうとAmazonは狙っているのだろう。

Dash Buttonの設定はAmazonのモバイル・アプリから行う。ボタンを家庭のWi-Fiに接続し、ワンプッシュで注文する商品を確認する(これはハードウェアによって限定される)。設定が終わってからこのボタンが押されると、指定の商品が指定の住所に配達される。支払いはデフォールトのAmazon支払い方法が用いられる。ボタンを押した後でもモバイル・デバイスから取り消しができる。また二重注文を防ぐため、一度ボタンが押されると、その商品の配達が完了するまでボタンは無効にされる。ただし、ユーザーは設定でこの機能を無効にできる。

ローンチの時点でDash Buttonがサポートする商品はトイレットペーパー、洗剤、清掃用品、トイレタリー、ドッグフードなどだ。

Dash Buttonは AmazonのDash補給サービス(DRS)の一環でもある。このサービスではデバイス自身から補給品の補充注文ができる。コーヒーメーカーからコーヒーの粉のパックが、洗濯機から洗剤が注文できるというわけだ。AmazonはWhirlpoolやbrotherなどのメーカーをパートナーとしてベータテストを行っている。一部のデバイスでは、デバイス自身がストックの量をモニタし、自動的に補充発注する機能を備える(ユーザーはこの機能をオフにすることもできる)。サービスの本格スタートはこの秋となる予定だ。

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消費者がDRSの恩恵を受けるには当面、Dash Buttonを利用するのがいちばん簡単だ。ただしそのためにはAmazonのプライム会員であり、またプログラムへの参加の招待を受ける必要がある。ただしDash Buttonハードウェアそのものは無料だ。もちろんAmazonはボタンを通じての売上の増大を狙っているわけで、ボタンの販売で利益を上げようとしているわけではない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Google Cloud Launcherで、よく使われる120あまりのオープンソースパッケージを素早くデプロイできる

GoogleとBitnamiが今日、GoogleのCloud Platformで立ち上げる新しい機能により、デベロッパは120あまりのポピュラーなオープンソースアプリケーションをCloud Platformへデプロイできる。GoogleとBitnamiがパックした120あまりのアプリケーションには、WordPress、Drupal、Redis、MongoDB、Gitlab、Djangoなどのほか、RubyやLAMPアプリケーション、Puppetなどのためのインフラストラクチャスタックも含まれる。

Googleが言うようにVMベースのソリューションをセットアップするとき、デベロッパはサービスのさまざまな部位を構成するために多くの時間を費やす。しかしこのCloud Launcherを利用すると、必要なアプリケーションやサービスを指定するだけで、数クリックでその作業が完了する。

GoogleのプロダクトマネージャVarun Talwarが今日の発表声明の中でこう述べている: “デベロッパは設計やコーディングに時間を割くべきであり、ライブラリを見つけてデプロイしたり、依存性を調整したり、バージョニングの問題を解決したり、ツール類を構成したり、といった作業は、デベロッパの貴重な時間を奪う”。

Googleはこれらのパッケージの多くを今後、同社のCloud Monitoringサービスに統合する予定だ。

なおGoogleはすでに、Casandra、MongoDB、Drupal、Joomlaなど一連の人気アプリケーションに関しては、これと同様の”click-to-deploy“(クリックツーデプロイ)サービスを提供している。今回の新しいサービスは、この既存の機能にBitnamiのパッケージを足したもののようだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa


Amazon、クラウド・ストレージで強烈攻勢―月1ドルで写真を無制限に保存、5ドルなら全種類無制限

去年、Amazonはプライム会員向けにCloud Drive容量無制限、無料の写真ストレージを提供した。今日(米国時間3/26)、Amazonは有料の容量無制限のストレージ・サービスを発表した。Unlimited Cloud Storageと呼ばれる新サービスはプライム会員以外のユーザーも対象となり、写真以外のファイルのアップロードもサポートされる。これには2種類のプランが用意され、写真のみを対象とするプランは年額11.99ドル、unlimited everythingというビデオやPDFファイルなどあらゆるメディアファイルがサポートされるプランが年額59.99ドルとなる。

また最初の3ヶ月間。無料トライアルができる。

Amazonのこの動きはDropbox、Google、Microsoftその他クラウド・ストレージ分野のライバルに対して真っ向から勝負を挑むものだ。「容量無制限」のサービス自体はこれが初めてではないが、広く一般ユーザーを対象としたものとしてはこれが最初の試みだろう。たとえばDropboxの容量無制限プランはDropbox for Businessの中にある。同様にGoogleの場合も容量無制限サービスは教育機関向けエンタープライズ向けDrive for Workの一部となっている。今回のAmazonのサービスにいちばん近いのはMicrosoftだが、それでも無制限の容量が提供されるのはOffice 365の契約者だ。

この新サービスの狙いは、明らかに一般ユーザーだ。今や一般消費者がもつデジタル・コンテンツはさまざまなデバイスとプラットフォームをまたいで、大量かつ無秩序にちらばり(おっと、私もそうだ!)、伝統的な方法による管理が限界に近づいている。.

Amazonのクラウド・ドライブのディレクター、Josh Petersenは、「多くの人々は誕生パーティー、バケーション、旅行その他ありとあらゆる無数の記憶すべき瞬間を多様なデバイスの上に保存している。そのすべてをバックアップするには何ギガバイトあればいいのかもわからないという状態だ。われわれが今日発表した2種類の新しいプランを使えば、消費者はもうストレージについて心配する必要がなくなる。写真、ビデオ、映画、音楽、その他あらゆるデジタル・コンテンツを安全、確実、かつ手頃な料金で一箇所でまとめて保存、管理できるようになる」とコメントした。

現在AmazonのCloud Driveのユーザー数がどれほどなのか、正確なところは不明だが、Amazon Musicなど既存サービスのユーザーを転換させるというより、まだクラウド・ストレージをまったく利用していない一般消費者から大量の新たなユーザーを獲得することを目的としているようだ。

ただしすでに写真について無料で容量無制限のストレージを提供されている既存のプライム会員やFireデバイスのユーザーも追加料金を払えばUnlimited Everything プランを利用できる。またCloud Driveの他の他のプランのユーザーも今日から新サービスに乗り換えができる。

Amazonによる新サービスの紹介は以下のとおり。

無制限写真プラン(Unlimited Photos Plan) 最初の3ヶ月は無料試用期間。その後は年額11.99ドル(すなわち月1ドル以下)。契約者は枚数制限なしに写真をCloud Driveに保存できる。ユーザーは撮影した写真をデバイスからアップロードすることも、既存の写真フォルダーをアップロードすることもできる。このプランにはビデオや文書の保管のために5GBの容量が追加提供される。

無制限全種類プラン(Unlimited Everything Plan) 最初の3ヶ月は無料試用期間。その後は年額59.99ドル(すなわち月5ドル以下)。写真、ビデオ、文書、映画、音楽のファイルを本数無制限でCloud Driveに保存できる。

〔日本版〕Amazonの日本版クラウド・ドライブのトップページには新プランについてまだ記載がない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Microsoftは新たに立ち上げたAzure App Serviceですべてのデベロッパサービスを一本化+いくつかの新サービスを導入

Microsoftが今日(米国時間3/24)、クラウド上の総合的なデベロッパサービスAzure App Serviceを立ち上げる。デベロッパはこの上でモバイルとWebのアプリケーションを開発でき、またそこからさまざまなクラウドサービス上のビジネスプロセス自動化ツールにもアクセスでき、さらにまた、APIを構築し消費できるための新しいサービスもある。これらのサービスのすべてが、Microsoftが近年好んで唱えているお念仏、“モバイルファースト、クラウドファースト”(mobile first, cloud first、まずモバイル, まずクラウド)を軸に展開される。

このパッケージ自体は新しいが、中身は新しくないものもある。というよりMicrosoftは、既存のAzure WebsitesMobile ServicesBiztalk Servicesを束(たば)ねて新しいパッケージApp Serviceを作り、そこに若干新しいサービスも加えたのだ。Azure Websitesの既存のユーザは全員が自動的にこの新しいパッケージへ移行する(料金は前と同じ)。

Azure Mobile Servicesのユーザも新しいサービスに移行するが、移行はゆっくりしたペースになる。というのも、移行によって既存のAPIの一部が使えなくなるためだ(アプリケーションを新しいサービスにポートするためにデベロッパが加える変更はとても容易である、とMicrosoftは言っている)。当面はAzure Mobile Servicesと、App Servicesのモバイル部位が併存するが、いつまで両サービスをサポートするのかは不明だ。

Azure App Serviceは、これらの機能を単一のサービスに統合した。MicrosoftのAzure Application Platformチームの部長Omar Khanは、“統一化によってアプリケーションの開発がずっとシンプルになる”、と言っている。Microsoftがデベロッパたちから聞いていたのは、アプリケーションを多様なデバイスやプラットホーム向けに作らなければならない、しかもできるかぎり既存のスキルで、という話だ。さらにまた、いろんなソースからのデータをそれらのアプリケーションに接続することも必要だ。

既存のサービスでデベロッパは、スケーラブルなWebサイトや、モバイルアプリをホストするために必要なバックエンドツール(データベース、プッシュ通知、シングルサインオンなどなど)を迅速にセットアップできる。それらはApp Serviceに移っても新しい重要な機能は加わらない。しかしKhanによると、これまでばらばらに存在したそのほかのサービスの利用を一箇所でできるようになるから、そのことに対応した、あるいはそのことを十分に生かせる、変更がありえるだろう。たとえばそれらは、ステージング、プロダクションスロット、Webジョブなどのサービスだ。

二つの新しいサービス(API Apps、Logic Appsで、より面白い方は、Microsoft語で“ロジックアプリケーション”と呼ぶものを構築するためのサービスLogic Appsだ。ロジックアプリケーションとは、オンラインやオンプレミスのさまざまなAPIを組み合わせて作る、ビジネスプロセスを自動化するためのアプリケーションで、そのために使われるであろうオンラインのAPIはたとえば、Office 365、Salesforce.com、Dropbox、Facebook、Twitter、OracleやSAPのデータベースなどのものだ。新しいAzure App Serviceでは、これらのAPIをドラッグ&ドロップで拾って組み合わせるだけで、Webアプリケーションやモバイルアプリができあがる。

なお、そのApp ServiceにはAPI管理機能もあるが、それは既存のAzure API Managementサービスを置換しない。しかし既存のサービスと同じく、Azure App Serviceの新しいサービスであるAPI Appsでも、Zendesk、Office 365、SAP、Siebel、OracleなどなどのAPIを、見つけてホストして管理できる。

そしてKhanによると、この新たなAzure App Serviceのターゲットは、企業向けのビジネスアプリケーションのデベロッパと、消費者向けアプリケーションのデベロッパの両方だ。

この新サービスに関して質問(既存のサービスとの違いなど)のある方は、この記事のコメントにその質問を書くと、KahnとMicrosoftのApplication Platform担当CVP Bill Staplesが、今日の太平洋時間午前9時にコメント上で答えてくれる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa


スマホで業務マニュアルが作れる「Teachme Biz」 大手需要にらんでWindowsストア対応

業務マニュアルを作るのは大変だ。オフィス系ソフトを使って作る場合、デジカメで撮った写真をPCに取り込んで、それからファイルを新規作成、画像を貼り付けて編集、テキスト入力、フォント・サイズ・カラーの変更……と、なかなかに手間がかかる。こうした作業をスマートフォンで実現し、しかも作業時間を5分の1に短縮することをうたうのがクラウド型マニュアル作成・共有ツール「Teachme Biz」だ。

便利なのは、スマホで撮った写真を選び、説明文を追加するだけで、スライド形式のマニュアルができあがる点。手順ごとに1枚の写真と説明文を入力するシンプルな操作で、画像編集アプリ「Skitch」のように、画像に矢印を追加したり、特定の部分を枠で囲む機能もある。

社内から「この手順が足りない」という指摘があれば、それを追加すればマニュアルが随時更新される。オフィス系ソフトと違い、クラウドツールならではの特徴でもある。

iOSやAndroid向けのアプリのほか、ブラウザーからの利用にも対応。OSを問わずマルチデバイスをサポートしているのが売りだが、本日、Windowsストアアプリをリリースした。Surface Pro 3をはじめ、Windows 8.1搭載のタブレットやPCから利用できる。

街のパン屋さんから損保最大手までが利用

Teachme Bizは現在、Amazon Web Services(AWS)で「マルチテナント」(1つのシステム環境を複数企業で共有する)ツールとして稼働しているが、Microsoft Azure上で動く「シングルテナント」(企業ごとに環境を構築してサービスを提供する)パッケージの開発にも着手する。信頼性や安全性を重視する大手企業を意識した取り組みといえそうだ。

iOSやAndroidと比べて盛り上がりにかけるWindowsストアだが、ビジネスシーンでの重要性を考えると、Windowsを無視するわけにはいかないのだろう。Teachme Bizを開発するスタディストの鈴木悟史社長は、「Windowsタブレットを大量導入する大企業にも使われやすくなる」と狙いを語る。マイクロソフトとスタディストは2014年11月に協業を発表している。

Teachme Bizは2013年9月に本格提供を開始。当初は個人事業主や中小企業の引き合いが中心だったが、損保最大手の損保ジャパン日本興亜が採用して以降、大手からの引き合いが増えているという。

スタディストによれば、業務マニュアル以外にも、ユーザー向けヘルプページや道順案内、商品のプロモーションにも活用されているという。導入企業数は毎月15%増のペースで、現在は「街のパン屋さんや職人さんから大手企業まで」(鈴木氏)2000社が導入。料金は月額5000円〜のプランがある。

Teachme Biz導入企業


多種類のセンサを収めて出力をBluetoothで送るPocketLab、科学教材にもセンサ応用システムのプロトタイプやホビーにも

ふつうは、固有の機能や目的を持った製品にセンサを組み込むのだが、ここでご紹介するのは複数種類のセンサそのものを、多目的的に、あるいは子どもの科学教材や、大人の各種ホビー/お仕事目的のために構成した製品だ。もちろんセンサ素子単体ではなく、センサへの入力系と出力系もパッケージしているし、アプリ(クラウドアプリ)も提供しているから、簡単にスマホなどに接続できる。また、これを内蔵させて、特定の目的をもったアプリやデバイスも作れる。

PocketLabと名付けられたこのデバイス(上図)は、その名のとおり、ポケットに入る実験室で、こいつが計測できるのは、加速度、力、角速度、磁界(磁場)、圧力、高度、そして温度だ。出力はBluetooth 4.0でAndroidおよびiOSのスマートフォンやタブレットへ行く。出力データはさらにそこからPocketLabのクラウドへ行き、保存され、視覚化され、分析される(たとえばリアルタイムのグラフを表示できる(上図画面))。またExcelやGoogle Docsなど、そのほかのソフトウェアと統合できる。

Kickstarterで‘買う’と100ドルだが、センサとプローブから成るこれまでの専用教材ハードウェア(Vernier、PASCO、Texas Instrumentsなど製)を置換することをねらっている。PocketLabは、他種類のセンサがあって、いろんな実験に使えるのが強みだ。

また子どもたちがデータを自分のiPad(などのデバイス)で簡単に見られる、という単純なユーザ体験を重視している。センサの使い方の細部を勉強する必要はない。PocketLabを対象にセットしたら、あとはデータを画面で見るだけだ。

PocketLabを作ったClifton Roozeboomは、Mountain View(Googleの本社がある)に住むPhDの学生だ。これまでの科学教材は高価で大きくて重くて使いづらい(しかも技術的に古くて単機能)ものが多かったから、子どもでも簡単に使えるものにしよう、と思ったのが開発のきっかけだ。彼がPhDを取ったテーマが、「新しいセンサテクノロジの開発」、だった。

PocketLabを買うと、いろんな実験の仕方を説明している‘教科書’がおまけでついてくる。ただし同社は、教材企業になるつもりはない。PocketLabはあくまでもスタート地点であり、むしろ、これを手にした教育者のコミュニティが、さまざまなカリキュラムのネタにしてほしい、と考えている。ただデータをリアルタイムで測定〜表示するだけでなく、センサで何ができるか、という生産的あるいは生活的/社会的な応用に、ほぼ無限の可能性がある。それを掘り出すのが、先生たち、あるいは子どもたちだ。

“PocketLabは、あくまでもユーザのスタート地点だ、と考えている。今後は、Little BitsやArduinoやRaspberry Piなどのように、応用系〜応用製品の無限の可能性をユーザ自身が探求していただきたい。うちは、ハードウェアと、アプリと、クラウドソフトウェアの開発に専念したい”、とRoozeboomは語る。〔訳注: Kickstarterのページの大見出しも、Explorers Wanted(探求者を求む)となっていて、製品のセールスポイントや利点を訴求するふつうの売り込みタイトルはない。〕

“Leigh高校のAPの物理のクラスで、大量のユーザテストを行った。またスタンフォードの二つの物理学のクラスと二つの機械工学のクラスでもPocketLabを使った。ハードウェアのベータテストには、全国の科学の教師12名が参加した”。

PocketLabに使われているセンサは、スマートフォンなどにも使われている最新の標準規格のセンサだ。だからこれまでのセンサ利用製品よりも性能が良い。“従来のセンサ利用/応用製品は、高度な専門家でないと使えない”、とRoozeboomは言う。

スマートフォンなどでとっくに使われている最新のセンサの利用が、教材畑で遅れていた理由として彼は、教材がシリコンバレーの盲点だったから、と言う。むしろ教材こそ、最新のイノベーションがいち早く導入されるべき分野なのに。消費者家電ばかり珍奇に進歩しても、しょうがないよね。

このプロジェクトの最初の資金は、Yale School of Management Education Leadership ConferenceとStanford BASESからの、両者が主催したビジネスプランコンペの賞金だった。また最近では、小額のエンジェル資金も得ている。

Kickstarterの目標額25000ドルは、とっくに超え、締め切りまであと28日を残して今では40000ドル近くに達している(日本時間3/18 13:30)。発売(支援者への送付)は、6月の予定だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa